神様「お前さんの名前は」 男「僕は...」 (49)

※はじめに※

・SS投稿2回目ですが、相変わらず不定期です。

・毎週水曜日に更新を目指します。

・PCで上げるのでスマートフォンの方は見づらくなっております。

・リアルの都合で投稿が乱れます。

・誹謗中傷コメントは上げないでください。

・誤字、脱字があるかもしれません。

以上のことを踏まえたうえで、見てもらいたいです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459953926

僕を育ててくれていた人がよく言っていた。

『言葉には、不思議な力があるのよ。どんな言葉にも魂が宿っている。
その生きた言葉の見えない力を使って、人と人とは繋がっていられるのよ...』

子供に言葉の使う事に対して考えさせる時の美しい大人の嘘と考えるのが普通だろう。

ただ、その時はなぜだか『言葉が生きている』という事を僕は信じていた。

言葉にある『不思議な力』を心の底から信じていた。

年齢が上がるにつれそれは単なる『迷信』として片づけるようになり、
その言葉を言ってくれた人が亡くなった後も美しい『嘘』と考えて心の奥底に沈めていた。









―――――――――――――――― 僕があの日、神様に合うまでは.........



=2016年4月25日 K県K市=

大学生になるとよく変わる人が出てくる。今まで落ち着いてた人が活発にスポーツ
サークルに勤しむようになったり、身なりをガラッと変えてこじゃれた流行のファッションを
してきている人など今まで以上に環境が著しく変化する。僕はそんな環境には少し
離れた所にいた。

まぁ、本音を言えばその環境の速さに取り残されていた。

「あぁ、僕のキャンパスライフ、出だしからおわったな...」

「そんな事ぼやいているんだったら、悠真もサークル入ればいいのに。」

お昼のランチタイム、友人である早川ユウと大学内のカフェで昼食を取っていた。

悠真「入りたいサークルがあったらそうしてるさ。」

ユウ「まだ、見学やっている所もあるんだし、行ってみりゃいいじゃん。」

悠真「今見学している所って水泳とかサッカーとかスポーツ系しかないよ...」

ユウ「まぁ、スポーツ系って経験者がほとんどだからな。
テニスとかは割と初心者多いけど。」

悠真「先輩たちの酒癖悪いってこの間飲み会行った人から聞いたよ。」

ユウ「そうなのか、テニスサークルって色々あるって聞くからな。」

2人席用の丸テーブルに寝ている態勢で悩んでいる自分にユウが「そういえば、」と
手を叩き聞いてきた。

ユウ「なぁ、悠真、来月の3日~5日空いてるか?」

悠真「なんだよ、どっか行くのか?」

ユウ「おう、N県の広大な自然と山の幸が味わえる旅に行かない?」

目をキラキラと輝かせながら手を掴んできたユウ。本来なら「行きたい!」と
いうのだが、俺は親友の裏で考えていることがなんとなく読めていた。

悠真「どうせ、登山サークルで料理作れってことだろう。」

ユウ「おっ。さすが悠真、正解。」

ニカッと笑顔を作るユウ。

なんだ、その来るの当たり前だよねって訴えかけている笑顔は。

悠真「いかないよ。なんでユウのサークルの料理番やんないといけないのさ。」

ユウ「だって、サークルの中で料理できる先輩いないし、それに悠真の作る料理
華さんの作ってくれた物と同じでおいしいしさ。だからさ、お願い!!」

両手を合わせてまるで子供がおねだりをするような感じで言ってきた。

あぁもう。そんな顔したら僕が断れないの知っててやっているな。

悠真「............」

ユウ「...お願い」ポロッ

悠真「......簡単なものでもいいなら行ってもいいよ。」

ユウ「わぁ、ありがとう悠真!!」ダキッ

悠真「わ、ちょっ、抱き着くなよ!!」

ま、周りの目が...い、痛い…


悠真「わ、わかったから離してよ。」

ユウ「あぁ、ごめん。まさかオッケーしてくれるとは思わなくて。」

悠真(嘘つけ...)

親友のゴールデンウィークの勧誘(強制)を引き受け落ち着いたところでチャイムが
なった。

ユウ「あ!もうこんな時間かよ、俺、次に倫理あるから先行くね。」

悠真「うん。わかった、行ってらっしゃい。」

ユウ「じゃあゴールデンウイーク楽しみにしてるぞ。」

悠真「はいはい」

自己中心的な親友に苦労をかけられつつ、俺の話し相手をしてくれるユウに心の底では
感謝をしていた。

悠真(俺も、早くサークル探そう…)

カフェを出て帰ろうとしたとき不注意で後ろにいた人にぶつかった。
その人が持っていたテキストなどが床に散乱した。

悠真「あっ、すみません。大丈夫ですか?」

散らばったものを咄嗟に集める僕。

悠真「ごめんなさい。ケガはありませんか?」

???「大丈夫。私が不注意なだけだったから。」

悠真(見たことない人だな、外部の人?綺麗だな...)

???「あの、返してもらえる?」

悠真「え、あぁ、ごめんなさい。どうぞ。」

???「ありがと」

ガシッと受け取ってそのまま立ち去ろうとする少女。

悠真(なんか、不愛想だな...)

すると突然くるっとこちらを向き少女はこう言ってきた。

???「不愛想でごめんなさいね、元々なの。」

悠真(え?!なんで思ってたこと...)

???「......リュックのお守り無くさないようにね。」

それだけ言うとその人はそそくさとカフェを出て行った。

悠真「お守り...華さんからの?」

考え込んでいるとジーンズのポケットに入っていたスマートフォンが振動した。
ディスプレイには『陵介さん』と表示されていた。

悠真「もしもし、陵介さんですか?」

陵介「おお、悠真君。良かった出てくれて。」

声の主は安倍陵介。華さんの遠い親戚で僕の面倒を見てくれている人。
華さんが亡くなった後、学費や生活費など色々助けてもらった事があり
感謝している。そんな人から突然の電話。

悠真「何か僕に用が?」

陵介「あぁ、用ていうかお願いというか。僕に娘がいるのは知っているだろ?」

悠真「はい。まだ会ったことはありませんけど...」

陵介「実は娘の大学が家から遠い所になってな。G.W.明けに君の隣の部屋に
引っ越すことになってな。」

悠真「は、はぁ...」

陵介「もし、G.W.中暇だったら引っ越しの手伝いをして欲しいんだが...空いてる?」

悠真「あ、すみません。手伝ってあげたいのは山々なんですけど、僕、少し
予定が入っちゃいまして。」

陵介「そうか...困ったな。俺も仕事あるんだよなぁ...」

悠真「どうかしたんですか?」
何か悩んでいる恩人の声を聞いて助けられることはないかと思い、つい聞いてしまった。

陵介「いや、娘の引っ越しの手伝いがね誰もいなくなることになりそうで。典子と一緒に
仕事でG県に1週間行かないといけなくてね。」

悠真「あ、あの6日の午後からなら僕も大丈夫なんですけど。」

陵介「本当かい?いやぁ助かったよ。お願いできる?」

悠真「えぇ...了解しました。」

流石に恩人の悩みを聞いてしまったら助けなければ!という気持ちがこみ上げてOKした
ものの、これでG.W.が完全に潰れてしまったと後で気づいた。

悠真(また、断れなかった...)

=2016年5月2日22時30分 K市バスターミナル=

合宿日当日、ユウと登山サークル数名はN県に向けての夜行バスを待っていた。
乗る前にちょっとした手違いで顧問の先生が2名生徒の分の予約が取れていなかった
らしい。

話合いの結果ユウと僕はサークルのみんなとは違うバスで行くことになって
しまった。

悠真(最初っから不安になってきた...)

ユウ「まぁ、ちょっとしたトラブルも旅にはつきものだよ。」

ユウのそのポジティブさが僕にもあれば気が楽なんだろうとバスの座席に座った。

悠真「何もなきゃいいけど...」

ユウ「そんな事言ってたら本当に事故とか起きそうだからやめろよ。
   むしろ、今の状況を楽しまないと。」

悠真「...そうだね。ユウと旅行したのってかなり久々だしね。」

ユウ「小4の時以来か、確か華さんと3人で温泉入りに行ったっけ?」

悠真「あぁ、そういえば、そうだったね。」ニカッ

ユウ「......悠真が笑うようになってよかったよ。華さんが亡くなったときは
   魂抜けたみたいな雰囲気出てたし。」

悠真「それもこれもユウのおかげだよ。友達でい続けてくれてたからね。」

ユウ「そりゃどういたしまして。」ニカッ

悠真「もう、遅いから寝るね。」

ユウ「明日早いからな、お休み。」

2016年5月3日 13時00分 N県 縁ヶ岳

バスを降りてからは過酷な1日の始まりだった。まず7時に朝食。ただし僕は昼食の
お弁当を全員分作ったため、食べる時間は約15分と短く旅館の食事を味わう余裕すら
なく、すぐに登頂を開始。軽く10分くらい平坦な道を歩いたと思う。


それからは、崖。先生は『坂』って言ってたけど『崖』。これを続けて2時間ぐらい
登ったと思う。景色を楽しむことはなくユウの言っていた登山とは全く違うものだった。

悠真(ユウめ...)

ユウ「アハハ...」←引きつってる


無事登頂したものの、生憎の曇空でいい景色とはいかなかった。
唯一来てよかったと思えてくれたことはサークルの皆さんが僕の作ったお弁当をすごい
おいしいと言ってくれたくらいだ。中には、「俺の彼女よりも女子力高い」と言われた。

ユウ「ま、まぁ...喜んでもらえたし良かったじゃん。」

悠真「......」

ユウ「そう睨むなって」

悠真「もう登山はこりごりだよ。」

ユウ「そんな事言うなって。」

話していると顧問の先生が天気が悪くなりそうだから早めに切り上げると言い。
予定より早く下山した。

悠真「また、あの崖降りるのか...」

ユウ「山の天気は変わりやすいって言うし、早いとこ行こうぜ。」

それから崖を下り平坦な道まで来たものの、途中で大雨になり視界が見えなくなる
ほどの量が降ってきた。

悠真「ぼ、僕こんなの...聞いてない!!」

ぼやける前のユウの背中を必死に追いかけた。その時、

ピシャァァァ!!!

と突然目の前が真っ白になった。一番後ろにいた僕とユウの間に雷が落ちた。

悠真「う、うわぁぁぁぁ!!!!!!」


ユウ「悠真ぁぁぁぁ!!!」

目の前にいたユウがいつの間にか見えなくなった。

どんどん体が下に落ちているのが分かった。

悠真(やばい死ぬかも......)

ギュッと目をつぶり死を覚悟した。だが、運よく大きな木の葉の部分に着地。
ケガは腕をかすった程度で済んだ。

悠真「あれ?......まだ...僕..いき、生きてる!!」

自分の体に大怪我がなかったことが奇跡に近かった。ユウのところから何m落ちたの
だろうか?ここがどこなのかもわからない。

雨は弱まったものの、辺りは依然として暗く山の不気味さを醸し出していた。

悠真(なんか......怖い...)

ふとカバンを見ると華さんから貰ったはずのお守りがないことに気付いた。

悠真「あれ、もしかして落ちていた時に外れた?」

辺りを見回してもそれらしいものは見当たらない。

とりあえず、今はここから下りないともしかしたらまた落雷するかもしれない
という恐怖がわき、木から降りた。

悠真(助け...いつ来るのかな?...もしかしたら一生...!!)

人というのは最悪な場合に陥ったとき、最悪の結末を連想しやすいと大学の講義で
習ったが、まさに今の自分の状態がこの状態になっているではないか?!

悠真(いかん。いかん。とりあえず今は下手に動くのは良くないな...)

少しでも発見されるの可能性を上げるためにそこからあまり動かないようにした。

このまま一夜を野宿で過ごすかもしれない。助けが来るのか。そう思っていると、
悠真はあることに気が付いた。

雨が止み、木の葉から滴が水たまりに交じって何かゴソッと音がした。

熊かもしれないと思い草むらに隠れ、音のする方を見た。
もしかしたら人かもしれないという若干の願望があった。

悠真(...なんだろ?)

そっと音のする方を覗く。すると確かに『何か』がいる。ただ、僕たちが見たことの
あるどんな動物より明らかに姿が異様だった。

どす黒い液体のようなもの、スライムのようにも見える。ただその液体にはハッキリと
した口があり何かを貪っている。

悠真「?!?!?!」

何か見てはいけない、異質なものが自分の目の前にあるのだ。一気に全身の鳥肌
が立った。目の前の『何か』が食べているものが数メートルの熊であることが数秒経ってわかった。

本能が告げていた。ここにいては死ぬ。早くここから逃げなければ!!と。

悠真(早く...ここから...)

???「ニヒヒヒヒヒ......」

一瞬。そう、『何か』に気を取られていた時、すぐ真後ろから不気味な声と視線を
感じた。今まで見ていたものの『一部』がこちらを見つめていた。口はなく、
どこから発しているのか。だが振り返ったときも『何か』は『笑っていた』

悠真「?!」

僕はただ走った本能が自分の危険を察知してそこから逃げ出していた。
考えられないほどのスピードが出た。だが、後ろで『何か』の視線と追いかけている
音がした。時折、

「マテ、マテ、ヒヒヒ。ニンゲン...」

という不気味な声も聴いた。自分が今どこに向かっているのか、生きて帰れるのか、
『言いしれぬ恐怖』が体にきつく巻き付いていた。

今日はここまでにしようと思います。

次の投稿は来週の水曜日を予定しています。

おやすみなさい。

「ゴミ」らしくひっそりと書いていきます。

悠真「はぁ...はぁ...はぁ...ここは?」

気が付くと大きな滝壺が目の前に現れた。隠れる場所はないか目を凝らし滝の後ろに
小さな穴のような空間があった。身を隠すにはちょうどいい。ただ、藁の縄の様な物
が穴の目の前にあった。

悠真(やばい、どうしよう)

このままいても『何か』に見つかる。だが小さな穴にも別の異様な雰囲気を感じた。

悠真(行くしかないな。)

意を決して小さな穴に入ろうとしたその時背後から『あの声』が聞こえた。



「ミーツケタ」

すでに背後まで『何か』は追ってきたのだ。体が金縛りのように動けない。
その間、目の前の『何か』はケタケタと大きな口を開いていた。

「イッパイ...アソボウ...アソボウ?アソボウ?」

悠真「?!」

体が持ち上げられ、滝壺に投げつけられる。そしてまた引き上げられ投げつけられる。
相変わらず金縛りの様な物が続き抵抗できない。

悠真「ぐはっ!!」

「ソロソロ、タベヨウカナ?」

水責めが終わり荒く小さな穴の前に投げられた。すると突然、体が動けるようになった。

「動けてる。あ!これ!!」

自分の体の下に華さんのお守りの切れ端が落ちていた。動けるようになったものの前には
『何か』が迫っている。後ろに下がるほかなかった。

そして藁の紐が背中に当たりこれ以上は下がれない。

悠真(まずい、食われる。)

『何か』が目の前に迫っていた。大きな口を開け今にも食べようとしていた。その時、
ビリッと縄が切れる音がし、小さな穴に体が引き込まれた。

悠真「痛い...」

転んだ拍子に奥にあった小さな石にぶつかった。石はぶつかったと同時に真っ二つに割れた。
だが、そんなことに目を配る余裕はなかった。

今度こそ死ぬ。そう思い目を閉じた。

悠真(こんなところで...死ぬのか?)














???「やれやれ、死を覚悟するのは少し早いぞ、人の子よ。」

悠真「ん......明るい...」

悠真「なんだこれ...」

さっき入った小さな穴全体が明るくなっていた。入口近くにいた『何か』が
身を引いていた。

『ウウ、マブシイ。マブシイ。イタイ。イタイ。』

???「全く、目覚めてすぐ襲われるとは。今も昔も悪霊は変わらないのぉ」

悠真(???)

目の前に起きていることがよく理解できるのに時間がかかった。
自分のすぐ真横に巫女服に似た服を纏い、額に鏡の様な丸い飾りをしていた
美しい女の人が立っていた。

悠真「た、助かった...のか?」

???「まだ、安心するには早いぞ、外をようみてみぃ。ちらっとなぁ。」

その人の言った通り、外を覗いてみるとさっきよりも不気味な『何か』が滝壺の周りに
集まっていた。

悠真「うっ!!」

???「どうやらお前さん、呼びやすい性質を持っているのぉ。」

悠真「呼びやすい?一体どういうことだよ。」

???「お前さんが手に持っているそいつ。見た所、相当強い札が悪霊たちを
散らしていたんじゃろ。まぁ、今は破けて意味はないのぉ。」

悠真「は?何言ってんだよ!!」

???「とにかくじゃ、お前さん。このまま此処にいても餓死して死ぬぞ。」

悠真「はぁ?!」

???「今は私の力で奴らは此処へは近づけん。やろうと思えば一生近づけはできない。」

???「じゃが、お前さんの体が持たぬじゃろ。」

信じたくはない。だが、今、穴の外にいる『何か』に食われそうになった。
彼女の通りこのままいても死ぬ。
絶望的な状況下で生き残るすべは......ないのか?...


???「やれやれ、じゃから、死を覚悟するのはまだ早いと言うておるじゃろ。」

悠真「この状況をどうやって切り抜ければいいんだよ!!」

???「そこまで声を張らずともよい。簡単な話じゃ。」

悠真「??」

???「神であるこの私を貴様に憑かせれば良いのじゃ。」

なんだ、今なんて言った? 神?憑かせる?意味が分からない?

悠真「な、なぁどういうことだよ?まったく意味が分かんないぞ。」

???「私にはちょいとやらねばいけない事があってのぉ。それに付き合ってくれれば
    お前さんを助けてやろう。」

これまでないくらいに、戸惑っている僕は何をすればいいかわからないでいた。
その様子を見た彼女はやれやれ、といった感じでしゃべり始めた。

???「簡単な話だと言うておろう。お前さんは此処で死にたいのか?それとも
生きて帰りたいか?どっちじゃと聞いているのじゃが?」

鋭い視線と今までよりも落ち着いた口調で僕の前に彼女は聞いてきた。
分りきっているであろう、僕の答えを......

悠真「僕は...僕はまだ生きたい!!!」

すると彼女は表情を変えて、笑顔でこう言った。

???「よく言った!青年よ!!」ニカッ





セオリ「私の名は『セオリ』。」

セオリ「青年、お前さんの名は?」


悠真「僕は......僕の名前は、『田村悠真』」

セオリ「成程。では、悠真よ。今から言う事をよく聞け。死にたくないならな。」

セオリ「儀式が終わるまで目を潰れ、読み終わったらお前さんの頭に浮かぶ
    言葉を繋いでここから出るのじゃ。」

悠真「え、頭に浮かぶ言葉って何?!」

セオリ「ここから出たいんじゃろう?いいから、目を潰れ!!」

セオリ『常世に語り継がれる八百万の神々に仕う祀る一柱、名は【セオリ】。』

   
   
   『常世に生きし、天照大御神の子に仕えし人の子、名は【悠真】』


   

   『これより、この言の御霊を以って新しき現人神の生らんとす!!』


彼女の手の感触がなくなり体が心なしか体が重くなった。

悠真「うぉっ!」

セオリ(何をしておるのじゃ!!早く行くのじゃ!!)

悠真(まずい、そうだった!!)

目を開き無我夢中で穴から飛び出した、あの光は消え、『何か』が起き上がろうとしていた。

悠真(思い浮かんだ...言葉を......繋ぐ!!)

自然に自分の口が何かを呟いているのが分かる。



『天より授かりし言の御霊を持てして、理より外れける物の怪を打ち祓い給う!』



突然、「ボコッ!!」と何かが目の前にぶち当たる様な音がした。見ると目の前に
いた『何か』の一部がえぐり取られたように大きな穴が開いていた。


悠真「うぉ!何が起きた?!」

セオリ「おぉ~、力を貸しているとはいえ悠真、お前さんも大した霊力を
持っているのぉ」

悠真「感心しているんなら、君もなんか手伝ってよ!!」

悠真「とりあえず、山下りないと...」

セオリ「そのまま助かっても、奴らはお前さんを追って来るぞぉ。」

悠真「はぁ?じゃあどうすればいいのさ!!」

セオリ「悠真、少し止まれ...」

悠真「止まれるかよ!あいつ等が追ってくr」

セオリ「いいから黙ってくれ...」

少しおどけている様な口調が変わり、何かに集中している。

セオリ「悠真よ、この先左側に川の上流がある、そこに行くのじゃ。」

悠真「川で水浴びなんてする訳ではないよな。」

セオリ「奴らに追い回されたくないのじゃろ?黙って従え...」

悠真「......わかったよ。」

悠真「なぁ...セオリ。ここで何やるんだ?」

セオリ「まぁ、お祓いにも似たものじゃ。悠真、其処にある木から枝ごと葉を持って
きてくれ。」

悠真「は、はぁ...」プチィ

セオリ「さて、悠真、服を脱いで川の中に入れ。」

悠真「..................え?!」

セオリ「いいから、早く脱げ...」ゴゴゴゴ...

大人しく従い体を川の中へと沈める。

セオリ「さて、始めるかのぉ」

悠真「?!ものに触れられるのか」

セオリ「お前さんの霊力が思ってたより膨大じゃったからのぉ。まぁ、あまりやり
過ぎるとお前さんの体が持たんからのぉ。」

悠真「そ、そうなのか?」

セオリ「今はそんな事よりも、お前さんの頭から伸びている『縁』を切るぞ。」

悠真「縁?」

川に反射して映る自分の姿を見ると頭から黒い紐のようなものが垂れていた。

悠真「これが『縁』?」

セオリ「正確に言えば、『奇縁』というものじゃ。神仏との『奇縁』ならいいのじゃが
    悪霊の『奇縁』は放っておけば、ほとんどがあまり良くないものを呼び寄せる」

セオリ「半分正解じゃ。だが、これを切っても新しい『奇縁』が出てくる。」

悠真「え?それなら意味がなくない?」

セオリ「先ほどまで追いかけられた奴からは逃げることができる。代わりに別のものが
    お前の目の前に現れる。」

悠真「つまり...別の変な奴に追いかけられるってこと?」

セオリ「そうかもしれないし、そうかもしれん。」

悠真「う、嘘だろ...」

悠真「いい『奇縁』を信じろってか...」

セオリ「まぁ、何かあれば、私が助けるから安心せい。」ニカッ

セオリ「それじゃ、を始めるかのぉ。目をしばらく閉じておれ。」

悠真「......わかった。」

目を閉じて暫くして、体の表面から何か泥の様なものが纏わりつく感触があった。
体が完全に動かない。

悠真(お、おい...もしかして今『何か』に...)



プチィ



何かが切れた音がした。すると、あの心地悪い感触はなくなり体が軽くなっていた。
セオリ「もう、開けてもよいぞぉ。」

悠真「なぁ、さっき...」

セオリ「『何か』に触れられたじゃろ?」

悠真「すごく怖かったんだよ!!」ボロボロ

セオリ「実際には、何も来ておらん。あれは呪いみたいなものじゃよ。」

悠真「どういう事?」

セオリ「お前さんが私のとこに来る前『何か』に見られたじゃろ?」

悠真「??......あ、確かに」

セオリ「『見られた』つまり存在を『認識される』とは奇縁ができるある意味
    決まっていることじゃ。」

セオリ「まぁ今回は、お前さんにちょっとした仕掛けをかけていたようじゃったがのぉ。」

悠真「??」

セオリ「さて、さっさと服を着て山を下りるぞぉ、悠真。」

悠真「え?.........あっ」

悠真(そういえば、服脱いでたんだった。)

セオリ「やれやれじゃのぉ......服を着たらさっさと下山じゃ。」

=2016年5月3日 17時39分 N県=

春といえど日が落ちるのは早い。暗くなるごとに山は不気味な雰囲気を醸し出す。

山で遭難した時の一番注意しなければならないのは夜になり気温が低下し体温が
奪われる事だという。

一人の男がまだ山の中にいた。それも、余りにも場違いな格好をしていた。

男はとある小さな穴を覗き見て何か落胆したようにしゃべった。

???「おやおや......これはとんでもない事になっているね。」

苦笑いをしている男は目の前に割られた石を見ていた。

???「俺だ、霊の歪みの原因が分かった。」





???「呪い姫の封印が解かれた。」



今日はここまでです。来週も水曜日の予定です。
春休みが終わってしまった。お花見とか行きたかったな...

=同時刻 N県 緑ヶ岳 =

悠真「下山できたけど......どこだよここ。」

セオリ「お前さんが方向音痴にもほどがあるのじゃ。」

悠真「そう言うんだったら、前に川見つけた時みたいのできないの?」

セオリ「あれは、水脈を辿っていたからできたのじゃ!お前さんみたいに何も
    考えなしにいった訳ではないわ!」

セオリ「全く、反省してほしいのぉ。お前さんには。」

悠真「そんなこと言ったって...迷っちゃったし。」

悠真「それと、さっきは聞きそびれたけど、君の目的って何なの?」

セオリ「目的?」

悠真「ほら、付き合ってもらいたい事があるっていってただろ?」

セオリ「おう、そのことか。そういえば話してなかったのぉ。」

悠真「今まで忘れてたのかよ......」

セオリ「やてもらいたい事は単純じゃ。私の『本体』を探してほしい。
    ただこれだけじゃ。」

悠真「『本体』?」

セオリ「まぁ、お前さんたちの言うところの『御神体』というやつじゃ。」

悠真「穴にあった石じゃないのか?」

セオリ「あんなみすぼらしい石が私の『本体』な訳あるか!」

セオリ「『簪(かんざし)』じゃよ。私の『本体』はなぁ。」

悠真「なぁ、その『簪』ってどこにあるのか見当ついているのかよ?」

セオリ「ないのぉ」

悠真「考えなしは君もじゃないか!!」

セオリ「何せだいぶ長い間封じられたからのぉ...」

悠真「??なぁ、封じられてたってどういうk」

セオリ「お!今人の気配がしたぞ。悠真その道を左に行け!!」

悠真「え、ちょ...待ってよ!」

彼女の言うように、左側へ進むと小さな集落のようなものが見えた。
数件ほどの民家と少し大きな瓦屋根の民家があり、その家に灯りが灯っていた。

セオリ「ほれ、私の言うとおりじゃったろう?」

悠真「あぁ...」

???「あ......あの...」

悠真「ん?」

???「え~っと、旅人さん?」

声の主は見た所8歳くらいの女の子だった。

悠真「あぁ…道に迷っちゃって。ちょっと聞きたいんだけど○○町ってどこにあるか
   わかる?」

???「○○町?」

どうやら知らないらしく首をかしげている。だが、少し考え、何か思いついたような
身振りをした。

???「ババ様なら知っているかも?」

悠真「ババ様?」

???「うん、ババ様なんでも知ってるの。だから聞いたらわかるかも。ついてきて。」

悠真「え、あぁ。」

セオリ(.........)

悠真(いきなり、実体化解くんだからびっくりしたよ。どうしたの?)

セオリ(いや......なんでもない。)

悠真(??)

??「ババ様、旅人さんがきた!!」

家の中には年老いた1人の老婦がいた。女の子の声を聞き玄関にやってきた。

ババ様「ようこそ、お出でなさいました。私この村の村長をしております。
    山本と申します。こちらはユリと申します。」

膝を落として一礼してくる『ババ様』につられてユリという女の子も同じく一礼した。

悠真「あ、どうもご丁寧に。僕は田村悠真といいます。」

ババ様「田村様ですね。遭難でございましょうか?」

悠真「あぁ、僕たち○○町というところに行きたいんですが道に迷ってしまって。」

ババ様「○○町でございますか?それならこの村とは反対側にございます町ですが。」

悠真「え、本当ですか?」

ババ様「今日は日が沈んでおりますゆえ、泊まられていって構いませんよ。」

悠真「そ、そんな、いいんですか?」

ババ様「山の夜はさぞ冷えますので。」

そう言われババ様の家の一部屋に通された。

ババ様「お風呂は廊下を進んで左にございます。何かあれば気軽にお申し付け
くださいませ。」

悠真「ありがとうございます。」

ババ様とユリちゃんが夕食を作ってくれる間、お風呂に入ることにした。
風呂場へ行くとまるでとある旅館と勘違いしてしまうほどの大きな浴槽があった。

悠真「うわぁ...すごいや。」

悠真(うちの風呂の5倍以上はあるな......)

セオリ「確かにこれは広いのぉ。」

悠真「?!」

悠真「ちょ......何でいるの??!!!」

セオリ「そりゃお前さんに憑いておるじゃから居て当然じゃろ?」

悠真「だからって、一緒に入らなくてもいいじゃん!!
というか神様だから入んなくてもいいでしょう//////!!」

セオリ「あのなぁ...神だって風呂ぐらい入るわ。私にしてみれば久々の
風呂じゃからのぉ」

悠真「だからと言っても恥じらいぐらいはもって!!////」

セオリ「ん?ほほぉ...さては悠真私に欲情でもしたのかのぉ?」

悠真「お願いだら何かで体を隠してくれ!!」

タオルを巻いてくれてこのやり取りは収まったものの風呂まで来てさらに疲れが増えた。

悠真「せめて、風呂ぐらいゆっくりさせてくれ...」

セオリ「分った。私が悪かったと言うておろう。」

悠真「全く、突然実体化するんだから。今度やるときは言ってからにしてよ。」

セオリ「分った。今度からそうしよう。」

悠真「.........なんか、神様って人間とそんなに変わらなんだな。」

セオリ「お前さん、神がどうやってできるか知っとるか?」

悠真「え?...う~ん......『霊力』とか関係するの?」

セオリ「遠からず、まぁ関係しているの。簡単にいうとじゃな、
人の思い込みから生まれるんじゃよ」

悠真「どういうことだよ?」
セオリ「お前さんが言った『霊力』というものはのぉ、『思い込む力』
    なんじゃ。」

セオリ「『御神体』というただの『もの』に命があるとすごく思い込んで
生まれるのじゃよ神は。」

悠真「それって道具に魂が宿ってるみたいな?」

セオリ「それは九十九神じゃな。人と強く結ばれた『もの』は長い間を
掛けて人の「心」が宿るんじゃよ。」

セオリ「神はある意味で『人の心の寄せ集め』ともいえるのぉ。」

悠真「...言葉にも人の心って宿るのか?」

セオリ「言霊じゃの。あれはとてつもない力がある。いわば、人の心
そのものじゃ。」

セオリ「祓う時も仏教の経も言葉を言うじゃろ?」

悠真「そういえば、そうだったなぁ。」

セオリ「悪霊を祓うのも基本は言葉じゃ。強い奴は文字を使うがの...」

悠真「なぁ...セオリってなんの神様なんだ?やたら祓いとか
   詳しいけど......お祓いの神様とか?」

セオリ「.........まぁ、近いのぉ......」

悠真「あ、違った?」

セオリ「半分あってる、とだけ言おう...」

悠真(いけない事聞いたかな?)

悠真「まぁ、それはそうとして、こんな風呂に入れるとは思わなかったよ。
   これも『奇縁』を切ったからなのかね。」

セオリ「さて、果たしてそうかのぉ...」

悠真「どうしたんだよ?何か不満なのか?」

セオリ「あの、ユリとかいう娘、気配に気づかなかった。」

悠真「??」

悠真「セオリが不注意なだけだった訳じゃないの?」

セオリ「それでも人の気配を感じ取れはする。」


悠真「もしかして、ユリちゃんは......」

セオリ「じゃが、あの娘生者であることは間違いない。」

悠真「直接聞いてみた方がよさそうだね。」

セオリ「ああ、そうじゃな.........」



ガコン!


悠真「えっ?」

脱衣所の引き戸を開けるとそこには、ユリちゃんが膝をついた姿勢で
いた。

ユリ「あ、あの...お召し物を...」

セオリ「小娘......最初から見えていたな?」

ユリ「え...あぁ...」ブルブル

悠真「?!」

悠真「もしかしてユリちゃん見えてるの?」

ユリ「う、うん...」ブルブル

悠真(まずい、泣きそう...)

悠真「き、着るものを持ってきてくれたんだね。ありがとう。
もう、戻っていいよ。」

セオリ「お、おい悠真。」

悠真「流石に子供に泣かれるのは嫌だからね。」

セオリ「......わかった。すまんかったの。」

ユリちゃんの持ってきてくれた着物を着た。どうやら、セオリの分も
用意されていたから見えていたことはセオリの言った通りだった。

風呂場を出るとババ様が廊下に立っていた。

ババ様「少し、お話がございます。田村様。」

ババ様「どうぞ、こちらへ…」

悠真「あの……此処は?」

ババ様「離れとは言えませんが、客間として使
える部屋が此処しか有りませんので。」

ババ様「布団はその襖の中にあるので、そちら
をお使い下さい。」

悠真「あの………ユリちゃんは…」

ババ様「ユリなら、自分の部屋に居ますが?」

悠真「山本さん、少しユリちゃんのことで聞き
たいことが…」

ババ様「……田村様は不思議なモノを連れてい
らっしゃいますね?」

悠真「!!」

セオリ「やはりな。貴様ら神職の家系か何か
か?」

ババ様「はい。私どもは元々隣のY県の神社
に住んで居りました。」

セオリ「成る程…何となくだが読めてきたな」

悠真「??あの、さっぱり付いていけてないの
ですが…」

悠真「お前さん、ここへ来た時家が他にもあっ
たのを見たろう?」

セオリ「今日の厚い雲の中、夕方にこの家以外
の家に明かりが灯っていたか?」

悠真「え………言われてみれば、ついてなかった
な………」

セオリ「それに、この家はちと大きすぎる気は
しないか?」

悠真「まぁ、大きいとは思ったけど…」

セオリ「それに、この家が建ってる場所も不自
然じゃ。」

セオリ「この家を囲むように他の家々が建って
いる。狭すぎると思うくらいに密集し
ておる。」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom