マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」三機目再起動 (22)

やあ (´・ω・`)
ようこそ、このスレへ。
この1/144 マスラオはサービスだから、まず作って落ち着いて欲しい。
うん、「再開」なんだ。済まない。
エタってたくせにって言われるだろうね、こんどこそ終わらせますので許してください何でもしますから。
でも、このスレを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「死んでもいいやつだし」みたいな、まぁだいたいそんな感じの何かを感じてくれたと思う。
殺伐とした火星で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、このスレを立てたんだ。

とりあえず、注文を聞こうか。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459706391

とりあえず立てました。
木曜日に再開致したく思います。
現在これの続編となる【グラハム「私は……かつて、マスターと呼ばれたこともある男だ」】が存在します。
まだ始まったばかりでは有りますが致命的なネタバレが有りますのでまだ見ていない幸運な方は見ないもしくは見てなんか書いていってください。嬉しいです。

重ね重ね、ごめんなさい。

ジンネマン「」
アルベルト「」


  【リボンズでも分かりかねるあらすじ:一期編】


西暦2307年、地球は三国に分かれて互いに代理紛争の混沌に微睡むゼロサムゲームのまっただ中にいた。
その一柱、ユニオンのMSWAD基地に所属するエースパイロット、【グラハム・エーカー】。
三国全てに武力介入という名の宣戦布告をした、200年前の天才の御手【ソレスタル・ビーイング】の出現に運命を感じていた。

そんな矢先、自身の頼みとする上官ホーマー・カタギリの養子、謎多き少女【マリーダ・クルス】が部隊に転属してくる。
弱冠18歳という若さながら、自身に比肩し、彼の操縦技術を真綿のように吸収する彼女に、興味以上の感情を抱いていくグラハム。
彼女に何故か【マスター】と呼ばれ困惑しながらも、ガンダム捕獲作戦、ひいては最精鋭部隊【オーバーフラッグス】設立までの期間を共に過ごしていく。

互いに背を合わせ飛び続ける間、マリーダは狂人とも揶揄されるグラハムの本当の内面に惹かれていき、彼もまた彼女に寄ることで安らぐ自分に惑い始める。
そして、彼らはお互いの過去を吐露しあうことで、その関係を急速に深めていくこととなる。
欲望の犠牲になった哀れな実験体と、何も持たず生まれ師をも自ら殺した止まり木無き狂鷹の淡い関係。
そんな彼らを支えてきた人々、部隊の仲間、恩師。
彼らが新たなガンダムの魔手によって命を奪われたとき、グラハムは彼女のような特殊な存在【ニュータイプ】への覚醒を果たすのだった。

新しい力を得たグラハムは、三国間を彼女とともに飛び回り、マネキン大佐、スミルノフ大佐らと交流を深めつつ、自分らを付け狙うプルツーとリボンズの刺客、【EXAM・MS】の襲撃をくぐり抜けていく。
そんな中、彼の窮地を救ったのは、あろうことかガンダムマイスター【ニール・ディランディ】であった。
自分より遥かに強力な、それでいて強い信念を抱く存在との邂逅は、グラハムの能力を高め、「ユニオンのみに拘ることの矮小さ」
を考えさせ。
ひいては、自分にとってマリーダ・クルスがどれだけ大きい存在になっているかを思い知らせるに至る。

そして、長い一年がようやく終わりを告げる。

ガンダム掃討作戦【ブリティッシュ作戦】の発令に、世界は団結しソレスタル・ビーイングは孤立。
奸計に屈したグラハムを欠いたままの作戦は、ニールの命を奪うものの、謎の新システムによって部隊の大半を失う壮絶な消耗戦に移行していく。
そしてグラハムが追いついた先で見たものは、敵味方を問わず撃ち落とし、ただ悪意の導くままに暴れ狂う強化人間、アレハンドロ・コーナーの姿。

真なる狂人と、彼の命を食いつぶして動く【アルヴァアロン・ブルーデスティニー】との死闘は、グラハムの命を削る【GNフラッグ・ブレイヴ】の全力をもってしても紙一重の賭けを繰り返す大博打の連続。
その絶望的な戦力差を最後まで支えたのは、彼自身の【真骨頂】と、精神のみで機体に宿ったマリーダの想い。
切り札を二度打ち込んでなおも動く怪物に、最後の一閃を浴びせたのは間違いなく二人の力であった。
そして、乙女座の運命は、最後に彼らをまた結びつける。
黎明の蒼き運命を打ち破ったグラハムとマリーダは、遠方から飛翔した蒼白の機体めがけ、高らかに宣言し、剣を掲げた。

「敢えて名乗らせてもらおう少年!」

「グラハム・エーカー……君の存在に心奪われた男だッ!!」

――最後の死闘は、決着のつかぬ痛み分けのまま、終わりを告げる。

辛くも生命を繋いだグラハムは、マリーダをその腕の中に抱きしめたまま、運命の少年との再戦を決意するのであった。



  【フロンタルでも受け入れを拒むあらすじ:これまで編】


ソレスタル・ビーイングを打ち破り、世界は統一に向けて大きく動き出す。
その一方で、宇宙、そして中東・アフリカにおいては、新たな悪意の存在が鎌首をもたげ始めていた。

新たな隊員【リディ・マーセナス】、ニュータイプ研究者【ミーナ・カーマイン】を迎え、更には偶然によりニュータイプ少女【フェルト・グレイス】を加えて、オーバーフラッグスは中東のテロリスト集結地域へと向かう。

そこには新たなる脅威【袖付き】と、連邦軍以外では運用し得ない擬似太陽炉搭載型【ギラ・ドーガ(サイクロプス)】が待ち受けていた。

ライセンサーとして戦うグラハム、己の出自を知る何者かの手を振り払うマリーダ。
新たなるライセンサー【ヤザン・ゲーブル】との、模擬戦を超えた決闘、スイールにおいてイナクトを駆って臨んだジンクスとの死闘。
様々な強敵との邂逅を経て、グラハムはマリーダと過去を乗り越えるという目標を強く意識し出すようになる。

そんな二人の前に現れ、オーバーフラッグスを壊滅させる、真紅の悪魔。
フォン・スパークの【ガンダムアストレアF2】と水陸両用MA【シャンブロ】が状況を一変させてしまう。

腹心たるダリル・ダッジが重症を負って戦線離脱する中、マスターの死を予期し苦悩するマリーダの前に、満を持して姉であるプルツーが現れる。

彼女の甘言、それに対する答えを知らぬまま、グラハムは突如として提供された最新鋭MS【アドヴァンスド・ジンクスtypeG(グラハム)】を駆り、袖付きの大気圏離脱作戦妨害の任に就く……


 ――袖付き・秘密基地:防衛ライン――


 乾いた大地、緑無き不毛の平原に爛々と輝くのは、旧型MS【アンフ】のモノアイの光。 
 それは数十……概算、三十と少々……にも及ぶ大軍であった。
 横一列、整然とは行かないものの、一定のラインを守っていると推測される配置。

 かつての三国連合軍なら失笑とともに一蹴していたであろうこの烏合の衆。
 今では、その油断を食い返すほどの脅威になっていた。


『観測終了、データ送信します』

オペ子「大佐、エアロフラッグより偵察記録が送信されました」

マネキン「映せ」

オペ子「了解」


 大型モニターに転送された姿に、マネキンは舌打ちした。
 アンフ……石油燃料によって動く、旧型も旧型、ティエレンでも圧倒できる鉄のカカシ。
 そいつらの脚には外付された左右二輪のローラーダッシュ機構。
 そして、左手に装着された、センサー一体型の二連装粒子ビームガンが無骨なシルエットを浮かび上がらせていた。


マネキン「どうりで先遣イナクト隊が帰還できなかったわけだ……アンフの機動性と火力を外部改装で補っていたとはな」

コーラサワー「うへえ……うちと同じことやってら」

マネキン「骨董品にまであんなものを仕込む猶予があるということか……もはや敵の物量は想定すら出来んな」

マネキン「このまま作戦を開始するのは本来なら断固辞退するべきものだが、やるしかないのも事実か」

マネキン「パトリック、ヤザンに渡された【イナクト・クゥエル】はどうするつもりだ?」

コーラサワー「……といいますと?」

マネキン「あの化物に乗るつもりがあるのかと聞いているんだ、馬鹿者!」


 イナクト・クゥエル。
 ヤザン・ゲーブルが専用機として改造した機体で、大々出力の特注プラズマエンジンと関節部強化、装甲も五割ほど増された空飛ぶ重戦車だ。
 安定性や加速力自体は良好だが、重量のせいで旋回時のGは過大なものに変わっており、ましてやヤザンの異常な耐G能力あっての機体調整である。
 彼女でなくとも、この珍獣が乗れると思うものはまずいまい。
 が、彼の顔は事態を察していないのか、殊の外怪訝そうで。
 頭を掻いてから、ばつが悪そうに口を開いた。


コーラサワー「はい、乗りますけど」

マネキン「……なに?」

コーラサワー「つうか試しに何度か乗り回してみました。多分大丈夫じゃないかなあと」

マネキン「多分って、お前は……!」

コーラサワー「大佐」

マネキン「!」


 そこまで来て、彼の目の色が変わった。
 跪いて、マネキンの両手を包むように握り。
 まっすぐその眼を見つめながら、この男にあるまじき真面目な顔で言葉を続けた。


コーラサワー「俺もAEUのエースです。ヤザン大尉には勝てなくても、その看板背負ってる矜持ってもんが有ります」

マネキン「へっ?」

オペ子(えっ、何今の声)

オペ男(初めて聞いたぞ今の音程)

コーラサワー「マリーダとはちょっと違いますが、大佐に相応しい漢になるためなら、このイナクトでも、ジンクスでも!」

コーラサワー「どんなじゃじゃ馬だって乗りこなして、か・な・ら・ず!帰ってきます。貴女のために」

マネキン「…………」

コーラサワー「……もちろん、結果も出します。貴女のためにです!」

マネキン「え、あ……う、うん」

オペ2((うん?!))


コーラサワー「俺が戦うのは、誰でもなく貴女のためだけです」

コーラサワー「どうか信じていてください大佐。では! 失礼致します!」

マネキン「……………………」


 言いたいことだけ言って、勝手に敬礼して、言い返す暇もないまま、去っていった。
 え、何? 今いたの誰? 炭酸違い? カシスサイダーとかそんなの?
 司令室にいる十数名が全員言葉を失う、ロマンスの嵐に、彼女は真っ赤にセルフペインティングしたまま座り尽くしていた。

 しかしながら、おどけて話す事が多いコーラサワーが、あのように言い放っていったこと。
 そんなことはわかりきっていると言いたくなること……惚気ではない……を、改まって言ってきたこと。
 それだけは、マネキンの脳裏に冷えた思考を注ぎ込んでいった。

 あいつ、何かあったな、と。


マネキン「……なんだ、全員仕事にもどれ」

オペレーター「「「了解しました」」」



――――


コーラサワー「!」

リヴァイヴ「おや、パトリック・コーラサワー少尉……」

コーラサワー「うるせえ、話しかけんな」

リヴァイヴ「……塩対応は変わらずですか、困ったな。私何かしましたか?」

コーラサワー「これからしようとしてんのは分かってんだ、とぼけんじゃねえよ」

コーラサワー「……つっても具体的なことはさっぱりわかんねえ。不快なのは何となくってことだけ伝えといてやる」

リヴァイヴ「詳しく知らないのに突き放すと? ヤザン以上に横暴だな、貴方は」

コーラサワー「大佐に何かあっちゃ困る、勘ぐられねえように一応だ」

コーラサワー「……あの二人になんかするつもりだろうが……マリーダ泣かせたらてめえらも泣かせるぞ。覚えとけ、もどき野郎」

リヴァイヴ「……ええ、覚えておきますよ、少尉」



プルツー『感づかれてるな、大丈夫か、あれ』

リヴァイヴ「一応常に監視している。本当に核心について何も分かっていないのは確かだよ」

リヴァイヴ「だが、何となくでも意図を掴んでくるのが厄介極まりない」

リヴァイヴ「彼にもジンクス提供を匂わせたが、『絶対に大佐のそばから離れない』の開幕一点張りだったからね」

プルツー『地位を餌にしてマネキンから腹心を剥ごうという魂胆を『嗅ぎ分けた』ってことか』

プルツー『もどき野郎……脳量子波を感じ取ってすらいるのか、あいつ』

リヴァイヴ「判別不能のニュータイプ……引き込めない以上は、放置しておくしかないか」

プルツー『どちらにしても、あんな奴に邪魔されて失敗するような策をリボンズは練らないさ』

リヴァイヴ「ならいいけど……ね」

読み返しだけで時間食われて、まだ書ききれていないという罠。
また明日改めて。

名称改定【GNフラッグ】→【GNフラッグ・ブレイヴ】
    【ヤザン専用イナクト(仮)】→【イナクト・クゥエル】

リボンズは00一期時系列で済ませた範囲
フロンタルはそこから今から始める範囲までの流れです

コーラサワーが最高レベルのニュータイプなのはこのSSだけ。売りにならんですな

久しく始めるせいかあの二人の距離感がおかしい。続きです。


――MSドック――


 仮設の野外設備に並ぶ全領域型ティエレン、それを彼らは試作型の名前を取り【タオツー(桃子)】と呼んでいた。
 大気圏内を飛行可能な出力、頑強な装甲、ようやく改善を果たしたコクピットの運用性。
 それはイナクト、フラッグと同じ領域に立つに相応しい、人革連の夢の体現であった。


セルゲイ「今となっては、早くも太陽炉搭載型MSのテストベッド扱いだがね」

セルゲイ「ここにピーリスも連れてこれればよかったのだが……きっと寂しがっているだろう」

マリーダ「次に彼女と話す機会には、マリーダ・クルスこそ寂しがっていたと先手を打っておいてください、大佐」

セルゲイ「はっはっは! 容赦がないな、マリーダ。いいだろう、その作戦には喜んで参加させてもらおうじゃないか」


 並び立ち、作戦開始までの短い時間を語らう二人。
 かたや【ロシアの荒熊】の異名を持ち、智謀も兼ね備える猛将、セルゲイ・スミルノフ。
 かたや弱冠18歳でユニオン屈指のエースに上り詰めた美麗の精鋭【エーカーの麗鷹】マリーダ・クルス。
 自然と周りの人間は彼らの邪魔をしないようにと離れていく。
 

 彼らは次の任務において、前線指揮とその補佐を担当していた。
 故に珍しい、オーバーフラッグとタオツーの並列懸架された光景が彼らの背後にはあった。
 剛と柔を体現したような、正反対のシルエット。
 パイロットもまた正反対、なれど、風格のようなものが二人を引き立てて見せた。


セルゲイ「それで、例の件だが……グラハムは、どうだ」

マリーダ「マスターは……まだそこまでは。ダリルの離脱には相当堪えていたようですが、あの人は本来もっとクールな方です」

マリーダ「熱くなって判断を鈍らせたり、感傷で剣を取るような人ではありません」

セルゲイ「……では、技術顧問のほうが?」

マリーダ「はい、少々……その、思い入れが、やはり強い方ですので」

セルゲイ「次世代フラッグ開発計画の変更を渋る……か」

マリーダ「私は! ……強化されております、どのような疲労も残りはしません」

マリーダ「マスターは徐々に身体がGに適応している傾向がありますが……他の者は、正確な判断を保ちながらの可変戦闘は……」

セルゲイ「グラハムが慣れつつあるのがおかしいんだがな……まあそれはいい」


セルゲイ「やはり来たか、お前にも」

マリーダ「っ……ライセンサーの……権限を与えると、姉から、直々に」



セルゲイ「ふう……来ないほうが本来おかしい、それくらい、今のお前は強い」

セルゲイ「だが……本心では、当然、な」

マリーダ「行きたくなどありません。私にとって重要な戦功とは、マスターの栄誉に繋がるもののみ」

マリーダ「己の価値を高める意味などもう……ですが……」

セルゲイ「……お前の周りには多くの縁がある、そこを握られては元も子もないな」

セルゲイ「おかしいとは思っていたが、あの少女の後ろ盾、とんでもない曲者ということか」


 だが、しかし、でも。
 如何に繰り返しても、すでにマリーダの首には見えない鎖が繋がっていた。
 ライセンサーになって、独自判断による介入権を得たところで、恐らく彼女には自由など与えられまい。
 既に与えられた餌、最新鋭ジンクス。これから落とされる餌、太陽炉搭載MSの開発費用。
 わからぬことは多いが、おおよそ世界の裏側から延びた手が、彼女をしっかと掴んで離さずにいるのだ。


マリーダ「もとよりユニオンの暗部で産まれたこの身、元いた場所に帰るだけと思えばさして不思議なことでもない」

マリーダ「……かつての私なら、そう考えられもしたのでしょう」

マリーダ「ですが……私は、多くのものをあの人に与えられてしまった……!」

セルゲイ「マリーダ……」


マリーダ「離れたくなどありません! 出来るならは、あの人のそばにい続けたい……!」

マリーダ「それが不相応な夢と言われるのであれば……せめて、スミルノフ大佐とマネキン大佐には……っ」

マリーダ「あの人は……っ!」


 ――あの人は、止まれないから。
 言葉にならない先を呑み込んで、彼女は俯き黙りこむ。
 その肩に手を置いて、セルゲイは誓うように頷いた。

 マネキンに対し、フラッグの計画を隠さぬまま提示してきた時は、何を考えているのかと彼も思ったものだ。
 何かに焦っているのかと二人で話し合ったものだが、事態は、彼女にとってよろしくない方向に流れ出したらしい。
 何も出来はしないだろう。
 軍人とは、そういう生き物だから。
 彼女もまた、望んでその道に入ったのだから。




 続かぬ言葉を押し留めるように、乾いた風が二人に重なっていった。
 基地全体を揺らす、けたたましいまでのサイレンの音。
 【オペレーション・ファイアワークス】、作戦開始の合図だ。


セルゲイ「行くぞ中尉、感傷は今ここに置いていけ」

セルゲイ「マネキン大佐が報告してくれた。敵の旧型は軒並みRGMの真似事だそうだ」

マリーダ「……問題ありません、マスターの障害となるならば、ことごとく潰すのみ」

セルゲイ「可能だろう、我々だけならな」

セルゲイ「二機のみの敵陣中枢侵攻……奴は、やれるか」

マリーダ「愚問でしょう、あの人は……」


マリーダ「――グラハム・エーカーは、私が選んだ男なのですから」



 次々に兵士たちはMSへと乗り込み、様々な機影が夜闇に溶け込み浮き上がっていく。
 頂部特務部隊、オーバーフラッグス残存部隊、RGM部隊、【最精鋭の囮】が自らの戦場に向かってその身を傾けた。
 彼らだけでも、倍以上の粒子兵器搭載MSを相手取らねばならない。
 死地は、真っ暗な口を開けて彼らを招き入れているようであった。


セルゲイ(世界の裏側にいる者達……ソレスタル・ビーイングとの関係は何だ? 協力者? 黙認して利を得ただけ? もしくは……)

セルゲイ(だが……私になくて、彼女にあるもの……まだ、救いはあるはずだ)

セルゲイ(どう動く? ホーマー・カタギリは……)






 ――地下秘密基地改め・打ち上げ基地――


 ――――


 ――   ――

刹那「…………」

兵士「坊主、大丈夫か? もうすぐ着くからな」

刹那「子供扱いしないでくださいよ、ナユタって名前があるんですから」

刹那「それに、いっぱしだって認めてくれたからこそ、こうやって転換させてもらえたんでしょう?」

刹那「どんな仕事なんです? わからないと、なおさら緊張しちまいますよ」

兵士「ははは、はしゃぐんじゃねえよ、だから坊主だってんだ」

兵士「エンジニアにしか任せらんねえもんだってのは聞いてるが、まあ説明は向こうについてからだ」

刹那「ちぇっ……」


 揺れる荷台の上、荒野の上を行くホバートラックはライトもそこそこに道無き道をひた走っている。
 大型の荷台だが、そこには機材などはなく、大半が兵士やエンジニアらしき中途参加の人間ばかり。
 何故今になって、緊張状態のこのタイミングで配置転換を行っているのか。
 そもそも、どこに行くつもりだというのか。


刹那(さて、とりあえず速度と時間を概算で判断しても、100キロ近くは移動しているはず)

刹那(時折演技を挟んで情報を引き出しては見ているが、コイツは下っ端……聞けることはもう何もない)

刹那(感づかれているわけではないと思いたいが……万が一は想定してしかるべきか)


 今までの期間、刹那は諜報活動を気取られぬよう、若い機械技師を演じ基地内で働いていた。
 イアンに教わり、ガンダムに触れ学んだものは彼が理解している以上に成熟した知識として身についており、当初の思惑を超えて彼の力は周りに受け入れられていった。
 慌ただしい搬入作業と機械設備の点検、稼働テスト。
 【袖付き】の手の者の集めたテロリストたちは皆一心不乱に作業に没頭していた。
 刹那は、新入りという立場ながら多くの作業を効率よくこなせるという点から、既に不本意ながら一目置かれる存在になりつつあった。

 頑張りすぎた、といえば聞こえはいい。
 もとより、テロに加担するものに余裕なんてものがないということは身を以て知っていたのもあった。
 それを差し引いても、思い出していたのかもしれない。
 過去、かつての自分に今の力があれば。
 名前も知らないアイツや、あの子、あの人も、死なずに済んだかも、と。


刹那「今更だな……」

兵士「どうした、お前さんが愚痴なんて珍しいなナユタ」

刹那「ああ……いえ、いいもんだなって。屋根と食事と仕事がある生活ってのも、久しぶりで」

兵士「だなあ。お前さんくらいの子供が出稼ぎしねえと食っていけねえ家もあろうに、ましてや俺らみたいに何もなきゃあな」

兵士「恋しくっても、あんまり考えんなよ。死んじまったもんは、どうしようもねえからな」

刹那(…………)


「おい、戦闘が始まったぞ!」

刹那「!」


 通信機に近い一人の言葉が、その場に乗り合わせた全員の反応を誘発した。
 彼らは基地から離れていっているが、それはすなわち、本作戦の中核から外れたものだと全員が認識していた。
 地上での戦闘結果が、自分たちのこれからを左右するとなれば、聞かずにはおれまい。
 ただ、刹那だけは、そこから少し離れて、成り行きを聞いて判断することにした。
 体格的に、寄って突き飛ばされるのを嫌っただけだ。


刹那(…………)


刹那(三国連合は部隊の残存兵力、残りの機甲部隊の大半を投入してきた)

刹那(迎え撃つMS部隊は旧型の改修機……水陸両用の太陽炉搭載型MSは迎撃には出ていない……いや、違う)

刹那(出られないんだ……海上、空中戦等などを考慮していない……あくまで制海権奪取のための特務機体、だからジンクス相手に陸では戦えないのか)

刹那(エース機の集団が中央から圧力をかけている……恐らくは全体を押し上げて、連携が崩れた部分を突いて剥がす作戦)

刹那(しかし、肝心の機動力に富んだ機体が中央に多くない……オーバーフラッグスの崩壊した今、誰が……)



刹那「……どうですか、勝ってます、か?」

兵士「微妙だなあ、いくら相手にでけえ損害与えてるっても、物量で来られたら質でもきついこっちじゃ相手になんねえ」

兵士「戦線から離れてる俺らが言えた義理じゃあねえかもしれねえけどな」

刹那(そうだ……これだけの用意を出来る組織が、何故今こんなにも手札を見せてしまっている……)

刹那(もっと潜伏して、力を蓄えていれば……このタイミングである必要がかならずあるはず)

刹那(何が目的だ……【今ある力を見せておかねばならない理由】があるとするなら……)

刹那(まだ何かあるのか……? 【その力と掛けあわせて、連合の戦意を削ぐことが可能なもの】……)

また木曜日にお会いしましょう
読み返すとマリーダさんからプッシュしてた

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