姉「妹に監禁された」(248)

誰か書いてくださいお願いします

飯田しっぺの法則

スレタイだけじゃどんなの望んでるか分からん

妹がヤンデレで姉を監禁する感じでお願いします

実は姉は妹に頼み込んで監禁してもらった、超ドmというのはどうだろうか

姉「お願い!私を監禁してぇっ!!」
妹「仕方無いなぁ・・・・はぁ」

ってな感じ


姉「妹に監禁された」

姉「…とはいうものの、冷暖房完備、拘束無し、衣服も無事。家賃も月2万という好条件」

姉「唯一の問題は」


姉「食事が己の糞便だけだということだろう」


姉「そもそも、何故監禁されているのであろうか」

姉「特に恨まれる謂われもなく、妹とは仲良し姉妹と思っていた」

姉「昨日のオヤツは半分こ、お風呂も一緒、寝床も同じ」

姉「…それに、兄上の自慰行為を共に鑑賞する姉妹愛には、父も母も涙を流して喜んでくれていた」

姉「それが目覚めてみれば、一変してこの有り様」

姉「外に出ようにも、下手に外出すればニプルのピアスが爆発する仕掛け」

姉「…………」グゥ


姉「衣食住の中で、最も私が重要視する食を奪う暴虐ぶりに、…お姉ちゃん泣きそうだよ」


(一時間経過)


姉「……ふぅ」

姉「よもや便秘とは誰が予想しようものか」

姉「しかし、自分の便を食さねばならぬ以上必ず出さねばならぬ」

姉「排便は、adlの中でもかなり上位。…お姉ちゃん頑張るよ」

姉「…………」


姉「……出ぬ」


(二時間経過)


姉「…痔は日ノ本の国民病と人はいう」

姉「かの有名な水戸黄門も遠山の花吹雪も、晩年は痔によって馬にも乗れぬ程の痛みに苦しめられた」

姉「…………」サスサス

姉「こうして便所紙を折りたたんで刺激を与えていれば、やがては私も彼らの域に辿り着くやも知れん」

姉「だが、しかし」


姉「…鼻セレブが我がトイレットペーパーとは、これは果たして武士の一分であろうか」


(三時間経過)


姉「さてさて、相変わらず我が下腹には関所が敷かれたまま。…入り鉄砲に出女、まだまだ乙女の通過は難しかろう」

姉「…………」フンヌ

姉「ぬぅ、こうも日頃のダイエットが裏目に出るとは思わなんだ」

姉「食する時に食し、出す時に出す。この素晴らしさは恐らく全世界共通のもの」

姉「こうして洋式便器に腰掛ける姿は、ロダンの彫像や聖母の何やらに例えられよう」」

姉「…………」エイヤ


姉「産みの苦しみとは、まさにこの様なものであろうなぁ…」


(四時間経過)


姉「古の時代、日ノ本では自らの糞便を振る舞う豊穣の女神がいた」

姉「…………」チョイサ

姉「だが、その女神は宴会の席で排便する姿を見つかってしまい、斬り殺されてしまう」

姉「そうして五穀が誕生したのだという」

姉「この二神はわりとポピュラーで、同時にお祀りする神社も少なくない」


姉「…日本の夜明けは、まだ遠いな」

俺にはまだこのスレは早かったようだ


(五時間経過)


姉「もうお昼」

姉「世間ではイチャイチャウフフな大人達がキャッキャデュフフと食事に勤しむ時刻」

姉「…………」コリャコリャ

姉「だが、我がヤマタノオロチはまだ一頭も姿を見せぬ。まさに、ヤポネーゼニンジャの鑑といえよう」

姉「この様な私にも大和魂が根付いているとは、さすが日ノ本、八百万の神々のおわす場所」

姉「我が先人、小泉八雲もさぞやお喜びであろう」

姉「あの方にしろシーボルト氏にしろ、当時の日ノ本では、私達の様な人間が生きるには少し辛すぎたと聞く」

姉「ペリー氏などは天狗と間違えられる始末、…金髪白肌とはさも珍しき存在か」

姉「だが、今ではこうして神々が宿って下さる。一神教ではこうはいくまいて…」


ガチャ

姉「やあ兄上、トイレの神様に会いにきたのかい」


(小休止)


姉「…ああも怒鳴らずとも良いであろうに」

姉「…………」ドヤサ

姉「まったく、兄上は短気で困る。可愛い妹の苦難に、共に闘うのが兄妹愛であろう」

姉「まだまだ愛では地球を救えそうに無い」

姉「ああ、詳しくは卓上の紙を見て来てくれ」

姉「出来れば、下剤や浣腸なしで便秘を直す方法を一緒に考えて下さると嬉しい」


姉「…行ってしまわれたか」

待ってる


(六時間経過)


姉「…いかぬいかぬ。こうも便座が温かいと、睡魔が私の友人となる」

姉「…………」totoバンザーイ

姉「やはり寝ぼけまなこでは、下腹に力を入れることすら容易ではないか」

姉「兄上はまだ帰らぬか」

姉「…………」ボー

姉「…………」ウツラウツラ


姉「……クークー」


(七時間経過)


姉「……クークー」

姉「…………」


ちゃっぽーん。

姉「……zzz」


(八時間経過)


姉「…さて困った」

姉「いざ出たは良いものの、日頃の習慣とは侮れぬ」

姉「…………」ゴメーン

姉「まさかいつも通りに流してしまうとは…」

ガチャ

姉「ああ兄上、すまぬ。不甲斐ない妹で申し訳ない。…グスッ」

姉「否、泣いてなどおらぬ」

姉「…先に(下水道に)逝ってしまった我が娘の不憫さに涙が出ただけよ」

姉「何の抵抗も出来ず、曝気層の微生物達にその身を蹂躙され、原型を無くして世を去る」

姉「……ズビッ」

姉「何のための生であろうか」

姉「そう思うと涙を禁じ得ぬ。今はあの子の冥福を祈るのみ」


姉「…兄上、もう少しだけお胸を御借りしたい。優しく抱いて下され」

>>15
食事時にすまぬ。


(八時間半経過)


姉「…兄上すまぬ。落ち着いた」

姉「…………」ヨッコラセ

姉「それで兄上、何かお考えはまとまりましたか」

姉「よもや、妹の菊花を薔薇を変える等の世迷い言は申すまい」

姉「…………」パラパラ


姉「うむ、これからの技術大国を支える男は頭の回転も早くて良い。早速準備に取りかかろう」


(遅い昼食)


姉「…ふう」

姉「…………」カチャカチャ

姉「トイレで食するカレーとは、確かにシュールなものであるな」

姉「糞便に類似した形態だが、不似合いなほどに芳しき美味なる香気」

姉「これならば監視カメラ程度の解像度では見破れまい」

姉「美味し美味し…」

姉「日本のカレーがnasaの宇宙食に認められた理由が良く分かる」

姉「…………」モグモグ

姉「しかし兄上よ」

姉「これがバレてしまえば、一体我らはどうなることやら」


ガチャ

姉「おお、妹か。先に頂いておるゾ……………、」カラーン


(十時間経過)


姉「妹よ、さすがに兄上にやりすぎではないか」

兄上「…………」スッパダカ

姉「裸にひんむいた後、お隣さんの情事の最中に『突撃隣の晩御飯』の刑」

姉「その上、エネマグラ空気椅子とは…」

姉「お隣さんが理解ある人でなければ、そなたの好きな兄上は社会的にも人間的にも死んでいた所だ」

姉「…おい、聞いておるのか」


姉「駄目か、既に向こうの世界にいっておられる」


(早い就寝)


姉「兄上、すまぬ」

兄上「…………」ビクンビクン

姉「妹の拷問に二時間も耐えた御仁は、兄上が初めてだ」

姉「妹も嬉しかったのだろう。隣で満足そうに寝ている」

姉「寝顔はこんなに可愛いらしいのに、まったくこの妹の何処にあのような悪魔が潜んでおるのか」

姉「さて、二人をベットに運ばねばなるまい」

グイ……ギチン

姉「…旅立って尚、兄上を絞め続けるこの執念」


姉「これぐらいの根気があれば、我が母国もあんな結果にならなかっただろうに…」


【2012年12月 欧州】


ニュースキャスター
『予てより崩壊が危惧されておりましたギリシャ経済が、各国の尽力虚しく力尽きました』

『これにより、イギリスを除くeu圏内では混乱が続いており…』

ギリシャ政治家
「…土下座」フテブテ


この経済危機が世界に与えたダメージは予想よりも大きかった。

まもなくアジアでは中国の革命分子が動きを見せ、中国経済が停滞。

アメリカも金融不安から、超内需拡大に政策を変更せざるを得ず、南米もそれに倣う。

オセアニアでは、再び民族主義者が勢いを取り戻し、華僑や韓国人を国外追放。一時はインドネシア沖に、両軍が睨み合う事態に発展した。

比較的安全と思われた日本でも、都市部での失業者が増え、都会から地方へと政治の場が変わってしまった。


…そして彼女らの母国でも、『変革』は否応なく訪れた。


【2014年 5月】


友「ねーねー、きいた~?」

姉「何か」

友「ジャック・ザ・リッパー(四代目)の被害者が今月で24人目なんですって…」

姉「珍しく無いでしょう。模倣犯かも知れませんし、私達には直接関わりの無い事件です」

友「姉はkoolだね」

姉「…………」

友「犯人は青色ツナギや、ヤポーン・ソルジャ-、黒衣の僧侶」

友「多数の目撃者がいるにも関わらず、犯人は白昼堂々と被害者を暗い一室に監禁し、凌辱の限りを尽くす」

友「犯人はどんな人間なのかしら」

姉「ゴメンナサイ、何故それを私に聞くのかしら?」

友「いや、姉は日本文化に詳しいでしょ」


姉「…なんのこと?」


キーンコーンカーンコーン。


先生「諸君らに通達する」

先生「…諸君らも知っての通り、先の経済危機によって、我が国は政治にも経済にも破綻している」

先生「今まで大人達は、何とか騙し騙しやりくりをしながら、学校教育を続けていた」

先生「…だが、結果は無意味だった」

先生「最低限度の医療制度すら機能せず、国民は貧困の真っ只中にある」

先生「…そこで政府は、学力や運動面で本当に優れた者以外に対して、『公的』な『就業機関』を立ち上げた」

先生「…………」ガチガチ

先生「その第一期生として、今から読み上げる者にアンケート用紙を配る」


キーンコーンカーンコーン。


姉「…友、名前呼ばれてたけど大丈夫?」

友「うん、ほらアタシは頭悪いし、家も貧乏だからさ~。まさに渡りに船、立候補する手間が省けたってものよ」

姉「そう、なら良いのだけれど。それでどんな内容なの?」

友「ええと…」


アンケート用紙
『貴女が将来つきたい職業は何ですか?

《衣》…モデル、デザイナーなど
《食》…コック、パティシエなど
《住》…歌手、声優など

以上3つの中から1つだけ○をつけ、期日までに提出して下さい。

貴女の将来に幸あらんことを。

社会福祉公社 代表 』


姉「…意外に普通ね。むしろ普通過ぎて拍子抜けしてしまうわ」

友「そりゃそうよ。何たって政府のやることですから」

姉「あの先生があんなに震えていたのは何だったのかしら?」

友「さあ?」

姉「…それで何を選ぶつもり?」

友「そうね。《衣》《食》《住》だけれど、ここは私の才能を活かして《住》を選ぼうと思うの」

姉「才能も何も…、近所の聖歌隊のリーダーだっただけじゃない」

友「いいの!ほらほら、私の美声が世界を幸せにするの!。…せっかくの好機、利用しない手はないわ!」

姉「楽天的ね、友らしい」

友「エヘヘ…、女の子は笑ってなんぼの世界に生きてるのよ~」

姉「…変な歌」ハア


(同年 7月3日)


友「姉~、遊ぼ~」

姉「…勉強中」

友「良いの良いの。それにほら、姉はもう進学組に選抜されてるんでしょ?」

姉「……一応、ね」

友「ほ~ら~、天才だって休息は必要だよ~。トーマスも99%の休養と1%の努力って広言してたらしいし。遊ぼ~よ~」

友「…………」ウルウル

姉「分かった。分かりました~」

友「エヘヘ…、好きだー!」


(同年 7月15日)


友「姉~、あ~そ~ぼ~」

姉「…………」

友「ほれほれ、せっかくの美人さんが眉根にシワを寄らせてはダメだよ~」

姉「…今日は何をするの?」

友「暑いし、私の家でお菓子食べながらテレビ見ない?」

姉「随分と贅沢な提案ね」

友「うむうむ、それだけ政府も私の魅力に惚れ込んでいる証拠よ。モテる女は辛い。…でも、そのお陰で家族全員3食ご飯付きの生活が出来てるの」

姉「…そう」

友「そういえば、第3回生に妹ちゃんが選ばれたんだって?」

姉「うん、…あの子、食いしん坊だから《食》に迷わず○をつけてたわ」

友「これで姉の家も、3食ご飯付き決定だね!」


(同 7月23日)


友「あ~そび~ましょ~」

姉「…暇なの?」

友「エヘヘ…、実は最近、施設での発声練習が免除されてて。空いた時間は好きにして良いそうなの」

姉「大丈夫かしら、この国」

友「ひどい~、これも『才能』なの~」

姉「ふ~ん」

友「馬鹿にするな~。偉い学者さんが言うには、私の声には人を安心させる効果が含まれているらしいの」

姉「…確かに。友の落ち着いた声は、私も好きよ」

友「でしょ?」

姉「うん」

友「…だから、今度から昔話の音読練習なんかもするらしくて、忙しくなる前に姉と遊び尽くそうと」

姉「そういうことなら…」


この日を境に、友が私の家の扉を叩くことは無かった。


(同年 8月8日)


姉「…………」モクモク

姉「…………」カリカリ

姉「……クークー」

姉「……zzz」

ガクッ

姉「………!」キョロキョロ

姉「……ふぅ」


(同年 8月15日)


ミーンミーン。

姉「…暇ね」

姉「こんなに静かな夏休みは初めてだわ。妹も友も『施設』で、今頃何をしてるのかしら」

姉「やっぱり国を代表とする第1回生だもの。…きっと忙しいんでしょうね」

姉「…………」

姉「妹、泣いてないかな~。心配だな~」


ピーンポーン


宅急便の人
「すいませーん。御在宅ですか~」


宅「申し訳ないんすけど、お隣さんがお留守でして…。代わりに預かって貰っても宜しいっすか」

姉「…随分と大きな荷物ね」

宅「や~、そうなんす。こんなご時世にこんな大荷物。運ぶだけでも一苦労なんす」

姉「分かりました」

宅「…ありがとっした~」

姉「いえいえ、ご苦労さまです」

バタン
ブロロロロロ…。

姉「…………」

姉「…そういえば、最近お隣さん静かね。友ちゃんも顔を見せないし」

姉「まあ、私も勉強に勤しむといたしましょうかって、あれ?」

姉「…この荷物、届け人が友ちゃんだ」


(同年 8月16日夜)


ピンポーン

姉「はい、今出ま~す」

姉「…………」バタバタ

ガチャ

姉「あ、お隣さんでしたか。お久しぶりです。友ちゃんからお荷物届いてました」

姉「…って、うわあ!」

ギュッ、ナデナデ

姉「???」


(同年 8月31日)


姉母「姉~、ちょっと来てくれる~」

姉「は~い」

姉母「…最近、お隣の奥さんが元気ないの知ってる?」

姉「うん、友ちゃんが居なくて寂しんだと思う。…私も妹や友ちゃんの声が聞けなくて、調子が狂ってるもの」

姉母「やっぱりそうよね~。それでなんだけれど、少しお裾分けをお届けして欲しいの」

ホカホカ

姉「うわ、上小麦粉の蒸しパンだ。高かったでしょ」

姉母「ふふふ、凄いでしょ?…それもこれも妹ちゃんの頑張りの成果。早く帰ってこないかしら」

姉「うんうん、あの子絶対に喜ぶと思う!」

姉母「じゃあ、お隣さんに宜しく言っといて~」

姉「うん、わかった!」バタバタ


ピーンポーン


ピーンポーン


姉「こんにちは!おばさんいらっしゃいますか~」

ガチャ

友母「あら、お隣の…」

姉「こんにちは。今日はお届け…」

友母「……ヒッ」ガタガタ

姉「? あの…、お届け物の蒸しパンを母から」

友母「…あ、ああ。そうなの。ありがとう。お母さんにお礼を言っといて」

姉「はい。それでは失礼します」ペコリ

友母「…………」

友母「…あ、あの、確かに貴女の家も『施設行き』の方が」

姉「妹です。今頃何をやってることやら…。食べ過ぎてお腹壊してないか心配です」

友母「そ、そう…。なら見て欲しいモノがあるの」


姉「お邪魔します」

友母「…………」

姉「それで見せたいモノというのは、以前の友ちゃんからの届け物ですか?」

友母「……ええ」

姉「…何となく、おばさんの表情からあまり『良くないモノ』だったようですね」

友母「…………」ブルブル

姉「すいません。では、『とても大切なモノ』だったのですか」

友母「…………」コクリ

姉「分かりました。…それで、『目的のモノ』は友ちゃんの部屋で間違いありませんか」

友母「…………」コクリ

姉「おばさん、私は友ちゃんではないですけど」ギュッ

友母「あり…、ありがと」ガチガチ

トントントン

姉「それじゃあ、開けますね」


(独白)


友母「8月15日」

友母「あの日、私達夫婦は『施設』に呼ばれた」

友母「『久しぶりに我が子に逢える』」

友母「…その行為の、何と心震えたことか!」

友母「私達夫婦は、あまり学は無い」

友母「しかしその娘は、国のために働いて、国から期待を受けて生きている」

友母「真夏の向日葵に並ぶ笑顔と、天使に負けぬ声を持つ娘が、皆に認められ、皆のために生きている!」

友母「……ああ」

友母「今となっては貴重な化粧を惜しみなく、普段は着ない余所行きに着替えて、政府からの出迎えの車に乗り、堂々と『施設』に向かう」

友母「なんと誇らしかったことか!」


友母「しかし、『施設』で私達を出迎えたのは、痩せギスで暗い表情のいやらしい男」

友母「夫と私の姿を見るなり、ニンマリ腐った笑みを浮かべ、たった一枚の紙切れを渡したのみ!」


『お父さんお母さん、ごめんなさい。いってきます』


友母「震えた娘の文字!」

友母「そして続くニンマリ男の言葉、『もう帰って良いですよ。家には娘さんからの《プレゼント》が届けられたはずです』」

友母「…………」

友母「娘に会えず泣き崩れる私と、夫の怒声に『施設』は耳を貸さず、静かにシャッターが降りていきました」

友母「…愚かな夫婦が帰路についたのは、その日の琴座が南中を過ぎた頃でした」


友母「貴女の家に《プレゼント》を取りにいったのは、次の日の夜遅くでした」

友母「オルフェウスは愛する妻を、私達は愛する娘を冥府から取り返しにいくつもりで、夫婦は貴女の家に向かいました」

友母「…チャイムを鳴らし、数秒間」

友母「あの時ほど一秒を長く感じたことはありません」

友母「……1秒2秒」

友母「顔を覗かせた貴女は、純真無垢な笑顔で言うのです」


『あ、お隣さんでしたか。お久しぶりです。友ちゃんからお荷物届いてました』


友母「私達は、許しが欲しかったのかも知れません」

友母「貴女を精一杯抱きしめました」

友母「貴女に沢山キスをしました」

友母「そうすることで母親たろうと、そうしたことで父親たろうと……」

友母「……」


友母「けれども、神様は私達夫婦をお許しにはなりませんでした」


友母「女の私では抱えきれない大荷物の封を切ろうと心を決めたのは、その日、日付が変わろうか変わるまいかの時間帯です」

友母「…………」

友母「まず出てきたのは、梱包材と数枚のdvd。それから『必ず先にご確認下さい』の説明書」

友母「『ああ、これは娘からのビデオレターだ』と、夫婦は確信しました」

友母「私達夫婦は、指示に従いプレーヤーにdvdを差し込みました」

友母「…………」

友母「暫くの砂嵐の後、テレビ画面に娘の顔が映りました」


友母「貴女も御覧になりませんか」

友母「…親バカの私がいうのもなんですが、本当に綺麗なんです」
友母「目鼻立ちの整った顔に、恐らく初めてしたであろう薄化粧」
友母「…おっかなびっくり、そんな控え目な顔で微笑むあの娘は、本当に天使の生まれ変わりの様でした」

友母「けれども、くりっとした鳶色の眼は何か覚悟を決めていることだけは分かりました」

友母「…やがてカメラはズームアウトし、娘の肩までを映し出します」

友母「この間、娘は一言も喋ってくれません」

友母「ただ困った様に、泣きそうに微笑み続けるだけです」

案外話進んでてワロタ


友母「やがて時間と共に、次第にズームアウトは続きます」

友母「快活な娘は高級なビスクドールの様に、可愛いらしくも微笑ましい格好を身にまとい、清楚に佇んでいます」

友母「…………」

友母「そして次に、男が画面に映り始めます」

友母「残念ながら男が話す言葉が何語かは解りません。…ただ、男が言葉を発する度、娘の笑顔が非常に強張っていくことだけは分かりました」

友母「…娘は気丈でした」

友母「恐らく私達に心配させぬ様に、必死になって微笑んでいるのであろうことが見て取れました」

>>45
うむ、盛大な公開自慰を命じれた。長い物語にお付き合い頂いて、本当に感謝いたす。


友母「…遂に部屋の全貌が明らかになります」

友母「古風な彩りに、王公貴族に相応しい立派なベット。娘の枕元には、大きな熊のぬいぐるみ」

友母「…とても娘の趣味とは思えません」

友母「やがて男は、娘に何かを命じます」

『~~』

友母「娘は、ここで初めて声を出してくれました」

友母「それは、何処かの国のお伽噺でした」

友母「ゆっくりと、幼子を寝かしつける澄み渡った声で、娘は物語を紡ぎます」

友母「…聞いたことの無い遠くの国の出来事で、一篇一篇は短く、夜語り、千日一夜物語のように」

友母「…………」


友母「それから、1つの話が終わる度、男は娘に掛けられたシーツを一枚一枚脱がしていくのです」

友母「…………」

友母「シーツが終われば、次は娘の衣服にも男の手は伸びました」

友母「男のこの『作業』の間、ずっと娘は羞恥に顔を赤く染め、静かに物語を読み上げ続けます」

友母「…………」

友母「やがて娘がブカブカのフランス人形から、下着だけの半裸になるころ、やっと私達は娘の異常に気づきました」

友母「何故娘が抵抗しないのか、何故男にされるがままなのか」

友母「…………」

友母「もうお分かりでしょう。


友母「抵抗するも何も、娘は四肢自体が存在しない肉達磨だったのです」


友母「…いえ、上半身は二の腕半ばで、下半身は太股半ばで」

友母「切断面が見えぬよう、布で覆われながらも娘は痛々しい笑みを浮かべていたました」

友母「…そして、娘の『お話』には涙声が混じり途絶えがちになります」

友母「けれども、その都度男は娘に何かを囁きかけ、『お話』は最後まで紡ぎ続けられました」


友母「…………」


友母「物語が終わると、後には泣き顔で芋虫の様に跳ねる全裸の娘と、例の男だけが残りました」

友母「…………」

友母「娘は何度も母国語で、『死にたい』と繰り返し呟き、暴れています」

友母「そんな娘を、男は無表情で罵声を浴びせながら何度も殴りつけました」

友母「…娘が静かになると、今度は娘の首に首輪をつけ、猫の耳のついたカチューシャを娘の頭に乗せました」

友母「そして娘にカメラの方を向くように命じると、今度はリードを首輪につけ、乱暴に娘をベットから引き摺り下ろし、部屋の中の散歩を始めました」

友母「…娘は耳まで赤くなりながらも懸命に男の後に続こうとしますが、不揃いな手足ではどうすることも出来ません」

友母「何度も転びながら、部屋の中をグルグルとまわり続けます」


友母「男は娘の『散歩』に飽きると、根本に子供の握りこぶし大の球体が3つついた尻尾を、娘の肛門に押し当て、ゆっくりと差し込みました」

友母「…そうして苦痛に歪む娘の顔を見ては、あざけ笑うのです」

友母「1つ目の珠が入ると、娘は哀れみと懇願の表情を浮かべ、男を見上げました」

友母「しかし男はあまり気にした様子もなく、楽しげに娘の怯えた表情を楽しむのです」

友母「…2つ目は強引に、3つ目の珠は一旦1つ目を引き出してから一気に貫きました」

友母「娘は気を失ったのか、半開きの口を痙攣させながら、涙と涎まみれのままその場に崩れ落ちました」

友母「そうしている間にも、男は自らの逸物を取り出し、娘の口にお構い無しに突き立てました」


友母「…まだ年端もいかぬ娘は、苦痛と恐怖で声ともならぬ呻き声を上げ、目を白黒させていました」

友母「娘の肩まで伸びた美しい金髪は忽ち吐瀉物と唾液にまみれ、高そうな絨毯は娘の尿で汚れていきます」

友母「…やがて男が果てると、娘は塞き止められていた内容物を盛大にぶちまけ、嗚咽を漏らし、『殺せ殺せ』を連呼するようになりました」

友母「男は喚く娘の頭を掴み挙げると、吐瀉物の海に、娘の顔面を何度も擦りつけました」

友母「そうして、娘にその舌を使っての床掃除を命じ、精液とも胃液ともつかない『なにか』を処理させていきました」

友母「…全てを自分の中に収めた時、娘は精魂を尽きた虚ろな眼差しで宙空を見つめ、その顔を男がズームするところで、場面が切り替わります」


友母「その後男は、鈴付きのピアスを娘の色素の薄い乳首に穿ち、…女性器の中心にも指輪大のピアスが貫かせました」

友母「…当然麻酔をかけた様子もありません」

友母「…………」

友母「娘の声は嗄れ、もう悲鳴とも絶叫かも解らぬ声になった頃、男は娘に歌を唄うように命じました」

友母「何の歌かは不明ですが、曲調などから、いつもの娘のアドリブの歌詞だったのだと思います」


『お父さんお母さん、ごめんなさい。いってきます』


友母「あの歌詞は、あの手紙の通りでした」


『お父さんお母さん、ありがとう。こんな私を産んでくれて…』


友母「女の喘ぎと、男の圧し殺した息づかいの中、娘の唄は響き続けます」


『私は両親に恵まれました。
私は友人に恵まれました。
私は良き人に恵まれました。

育てて下さってありがとう。
見守って下さってありがとう。
今となってはこんな身体の私ですが、それでも、私は幸せを見つけることが出来ました。

お父さんお母さん、ありがとう。いってきます。』


友母「…そして最後に、『ありがとう』と一言呟き、焦点の合わぬ娘が弓なりに仰け反ると、後にはもう何も映してくれませんでした」

友母「愚かなる夫婦の、愚にもつかぬ独白、ご清聴に感謝を!」

なぜこんなことに…


(再び 8月31日)


姉「…それではやはり」

友母「ええ、ご想像の通り、二重蓋の下からは娘の手首と足首の悪趣味な剥製が見つかりました」

姉「…………」

友母「妹ちゃんは、《食》を選んだけれど、それは一体…」

姉「…ありがとう御座います。御二人の生々しい傷痕を見て、私のやらねばならぬ事、進むべき道が見つかりました」

友母「それは何より…」

姉「いえ、それと1つお願いがあります」

友母「何か私に出きること?」

姉「…友ちゃんの『ビデオレター』を捨てないであげて下さい。きっと貴女への感謝の告白だったのだと思います」

友母「…………」コクリ


ギュッ…ナデナデ


その日の夜、友母の家には青ツナギの集団が押し掛け、友母は行方不明の扱いとなる。

>>56
すまぬ、受験で溜まった性欲の捌け口として…。

だが、後悔はない
(>ω・)ノ☆。


(同年 9月21日)


先生「姉君、やはり決心は堅いのかね」

姉「はい。私は妹をあの地獄から救い出す道を選びます」

先生「…………」ジロリ

姉「…………」キッ

先生「…分かった。こちらが『施設』転入の為の書類だ」

姉「ありがとう御座います。この御恩はいつかお返し致しますね」ニコリ

先生「…………」

スタスタ…ガラリ

先生「待ちたまえ」

姉「まだ何か」

先生「…ああ、こちらの書類にもサインしていくと良い。きっと君の役に立つ」

姉「どうも」


(9月23日)


この日、2つの書類は無事に政府によって受理された。


1つ目は、『施設』転入のもの。
姉はアンケート表の配布を待たずして、当日役場にて妹と同じ《食》に○を付け、晴れて『施設』内部への潜入に成功する。


2つ目は、『婚姻届』

既に男性教諭の印が押されていたため、彼女は近所の犬の名前と肉球スタンプを押して提出。

初の異種間結婚として、男性教諭は歴史に名を刻むことに成功した。

(尚10月3日の朝刊に大々的に取り上げられたが、翌4日に離婚届けが提出される。それ以降、男性教諭は行方不明扱いになる)


(10月1日)


指揮官
「…貴女が第6期入隊の姉君か」

姉「はい、姉と申します」ニュウタイ?

指「分かった。君は非常に優秀な人材と学校側より連絡が入っている」

姉「……いえ、そんな」

指「謙遜しなくて良い。政府は君の入隊先を心待ちにしていた」

姉「はい」

指「そして、君に入隊したい希望先があるのだとも聞いている。…それは何処かね?」

姉「い、妹と同じ勤務先を」

指「ふむ、《メイド部隊》か。まあ適材適所と言えん事もない」

姉「それでは!」ブタイ?

指「…残念ながら、私が如何に権力があろうと、妹君のいる第4期生の小隊と同じにしてやることは出来ぬ」

姉「……」ショウタイ?


指「不満そうな顔だな。…もう少しポーカーフェイスの技術を学ばねば《立派なメイド》とは呼ばれんぞ?」

姉「…し、しかし」

指「馬鹿者おおおッッッ!」

姉「……ビクッ」キーン!

指「しかしも案山子も駄菓子もあるものかッ!!」

指「…君は誰しも、『白衣を着れば《女医》』、『ナース服を着れば《看護師》』に為れる危険分子かねェッッ!!!」

姉「い、いいえ…」

指「うむ、君が完璧な市民であることを期待する。…良いかね、《メイド》とは19世紀の英国に…」


クドクド(中略)クドクド


指「…以上である」

姉「ご教示ありがとう御座いました」



テクテク


姉「つまり、要約すれば…」


・《現代メイド》発祥の地、日本において、何故、《ユキ・コトノミヤ》以上の《メイド》が誕生しにくいか。

・《メイド服》を《割烹着》に変換すれば、実は【男性から見た理想の女性像】は古今東西変化してないのではないか。

・メイドとウェイトレスの違いとは何か。

姉「…この3点をレポートにすれば、きっと何か見えてくるに違いない」

姉「…………」カリカリ

姉「…………」フム

姉「……zzz」スースー


(独白)


妹「私は妹」

(いえす、あいあむりとるしすたー)

妹「生来引っ込み思案で、姉依存の強い私は、配置先の教官から姉離れの特訓を命じられた」

(いえす、あいあむりとるしすたー)

妹「母国を離れて3日。早くも姉さんが恋しい」

(いえす、あいあむりとるしすたー)

妹「だが、まだ会うことは許可されていない」

(いえす、あいあむりとるしすたー)

妹「…今はこうして、私はスマトラの戦場を駆ける一介の《メイド》に過ぎない」

(いえす、あいあむりとるしすたー)

妹「それじゃ姉さん、今日も行ってきます」


妹《…いえす、あいあむりとるしすたー》



妹「…スマトラの朝は早い」

妹「経済悪化の煽りを受けた韓国と豪の二国間戦争の後、一部脱走兵らがインドネシア各地で武装蜂起を起こした発砲音こそ、私達の朝の《任務》だ」

妹「相手が元豪兵ならば話が早い」

妹「…単純に『一撫で』するか、数が多ければ最寄りの多国籍軍駐屯地までの伝令を走らせれば問題は解決する」

妹「問題は、相手が元韓国兵だった場合だ」

妹「こちらは、まず熱意の方向性が違う。彼らは略奪の第一選択が『女』であることが多い」

妹「それも年齢制限や倫理観が崩壊した人間が多く、彼らと出会えば、《即時捕縛》か《即時射殺》が許可されている」


妹「…先のベトナム戦争のトラウマは、何処の国も同じらしい」


妹「勤務先の文句は山とあるが、誉めるべき点も無かったとも言い切れない」

妹「私は、幼馴染みの幼とこのスマトラで再開を果たした」

妹「聞けば、意外なことに、彼女は《メイド部隊》配属以前から、このインドネシアに駐留していたらしい」

妹「彼女は頭が良く、経済危機以降も昆虫学者を目指し、第1期生に混じってボルネオ島で臨戦研修を受けていたのだそうだ」

妹「初任務の私にとって、彼女の存在を得たことは生還率を大幅に上げるに違いない」

妹「…………」

妹「それに頭が良く、沈着冷静な姿は姉さんの姿を彷彿させる」

妹「健康的な日焼けと少し汗臭い点は違うけれど、彼女の隣は心地好い」


妹「…毎晩、彼女の枕と自分の枕を交換しているのは内緒である」


妹「スマトラの昼は地獄だ」

妹「近くの川からの羽虫が酷く、暑さに負けて不衛生な水を飲めば命取りになる」

妹「幸い、本日より多国籍軍内の青ツナギの好青年から蚊帳を借り受けることに成功」

妹「これを受けて、防虫スプレー臭いメイド服を脱ぐことにも成功し、束の間の涼を取る」

妹「…正直、故障の多い発電機よりも、蚊帳の方が我ら《メイド部隊》に貢献していると思う」


妹「尚、発電機の製造元はsoxyだったことを追記しておく」


妹「スマトラの夜は長い」

妹「…我ら《メイド部隊》の主目的は、現地の治安維持と意気向上らしい」

妹「夜伽関係は、母国と現地女性との交渉が上手くいっておらず、専ら夜泣きの対処と見回りだけで1日を終える」

妹「…………」

妹「その一方で、脱走兵らによる夜襲対応も任務である」

妹「圧倒的火力を持って殲滅し、不可能と判断すれば逃走と本部への報告が義務となる」

妹「現状、総勢12名の《メイド部隊》は大した戦果もなく、同時に被害もない」

妹「なにも無いことは、退屈ではあるか平穏である」


妹「…尚、強制夜伽は、延髄蹴りをもって返答としている。男性諸君は注意されたし」


(11月1日)


姉「祝、メイド研修1ヶ月」

姉「…………」

姉「《メイド》という職業の特殊性など、レポートを仕上げるまでもなく、着任当初から理解していた」

姉「…コードネーム《マホロ》《ユキ・コトノミヤ》《エマ》など」

姉「礼儀正しさ、清潔感、包容力のある身のこなし」

姉「彼女らから得た《メイドスキル》は数知れない」

姉「…偉大な日本の先達に対して、ただ頭を下げる以上の作法を私は知らない」

姉「…………」


姉「私の研修先は、日本の東京都、神奈川県、兵庫県の3ヶ所の中から選ばれるらしい」


(同年 11月3日)


姉「…ここが日本か」

姉「やはり、【fate/zero】の再放送で兵庫県を選ぶ当たりに、私が『日本通』を名乗ぬ由縁があるに違いない」

姉「ふむ、待ち合わせは三ノ宮の画材屋か」

姉「…こんな地下街は我が国では珍しい」

姉「それに見る人見る人、皆が若い。日本は高齢化社会でなかったのか。信じられぬ」

姉「ああ、すいません」

姉「…うむ、ぶつかっても率先して元気に謝れば事なきを得る」

姉「『良くぞ日本人に生まれけり』、とは実に上手い表現だと思うぞ」

姉「あまり時間が無いな」


姉「ああ、神戸牛という贅沢は言わぬ。…せめてハイカラうどん、ぼっかけを食しておきたかった」


【画材屋・銀杏と茶碗蒸し】


姉「失礼する」

店主
「これはこれは…。神戸は古くからの洋人街だけど、こんな小さなお客様は初めてだ」

姉「人を見かけで判断するな。例え小さくとも、私は立派なレディでありメイドである」

店「そうだね。僕も(21)の一派閥を預かる身。…年齢的特徴に基づいた発言、お詫び申し上げる」ペコリ

姉「…いや、私も多分店主の立場であれば驚くと思う。こちらこそよしなに」ペコリ

店「それで本日のご用件は」

姉「待ち合わせを」

店「何だ、『異国の旅行者』とは君のことかい」

姉「すまぬ、本来なら筆の1本を仲介の礼として買うのだが、ここの筆は皆高価だ」


店「いいさ、気にするな。お礼なんて青ツナギの青年からもう頂いている」


店「それより、何かお腹に入れないかね」

姉「御厚意に感謝する」

店「君の日本語は、まるで古の武将のようだ。可愛らしい身なりとは裏腹に、随分と厳めしい」

姉「…変、だろうか」

店「いいや、それが君の味というものさ。…少なくとも私は好感を覚える」

姉「そうか、なら良かった」

コポコポ…


店「ほら、こちらにどうぞ」


姉「ええと…、確かこれは今川焼き?」

店「ふふふ、多分兵庫県に限れば、これは御座候という。今川焼きと同じ回転焼きの一種だね」

姉「…ござそーろー?」

店「そうそう、御座候でござそーろー」

姉「…………」ハムハム

店「むむう、ジャンボ餃子もあるけど、お茶受けにはならないかなあ…」


カランコローン


男「…失礼する」

店「やあ、今日は千客万来だね。何かご用かい」

男「ん、ご推察通り」

店「君の待ち人はそこで昼飯を食べてる。良かったら君も食べてくかい?」

男「…それなら台所を貸していただけませんか?」

店「その心は?」

男「ん、姫路駅の名物『えきそば』をば。当方つまみの穴子ずし、食後の火打焼きも完備」

店「さすがご当地フリーク」

男「…単にミーハーなだけです」

店「ご謙遜を。是非とも御相伴させとくれ」

男「いつも御世話になってますし。こんな些細な物で宜しければ」

店「定住生活者は他の土地に憧れるもの。次は姫路城を担いで来たまえ。…そうすれば僕は君に愛を語るだろう」


男「ああ、遠慮しときます」


【新快速・播州赤穂行き】


姉「知ってるか、神戸の夜景は100万ベリーなんだそうだ」

男「ん、そだな」

姉「知ってるか、神戸の中華街は4000年の歴史があるそうだ」

男「ん、多分な」

姉「知ってるか、六甲山には役行者という灯台守りがいて、山に訪れた人間を歓迎するらしい」

男「…ん、それは心霊スポットだから、あまり近寄らない方が良い」
姉「むう、つまらぬ」

男「すまんな。去年、神戸のチーム《リース・ウェン》が配置移動になり、今回の新人研修も移動したんだ。悪いが諦めてくれ」

姉「…いいや、気にしないでくれ。『御主人さま』」

男「…っっ」


ヒソヒソ

乗客a
「…変質者かしら。あんな小さな子にメイド服なんか着せて」

乗客b
「やっぱりあれよ!オタク!ああいうのがいるから、犯罪が起きるのよ!」

車掌
「そうですよね~。鉄道警察呼びましょうか、未然に防ぐのが我らのジャスティス」

乗客cdef
「「……チッ(舌打ち)」」

青ツナギ
「…………」ニヤリ


姉「どうした『御主人さま』。頭を抱えてないで、次の行き先を教えてくれ」

男「すまん、『御主人さま』は車内で禁止。周りにいらん誤解を生むことは好ましくない。何か別の呼び名を頼む」

姉「…わかった」


【相生駅のりかえ】


姉「休まずとも平気か、顔色が優れぬぞ」

男「ん、んんん」

姉「…先刻の妙な黒服にイチャモンつけられたのが原因か」

男「…………」

姉「だとすれば申し訳ないことをした」

姉「そなたは私に劣情を抱いておらぬ。…そなたは私に『御主人さま』と呼ばせて興奮したりせぬ」

姉「みんなみんな、私が初めての日本に浮かれていたことが悪いのだ」

姉「すまぬ、私はそなたに迷惑をかけた。これでは《メイド》失格だ。…ヤポーン・スタイルでは、こんな時ハラキリかシュットウせねばならんと聞く」

姉「そこのコーコーセー、近くに六条河原は無いか」

高校生
「…………」キョトン


男「…ん、失礼」

高「…………」キョトン

男「や~、突然ごめんよ。この子時代劇で日本語覚えたらしくて、やれ富士山だ、やれ熊野古道だの見せろって煩いんだ」

高「…………」ナットク

姉「?」

高「いいかね、お嬢さん。六条河原とは京都に存在するかつての刑場跡のことで、今いっても大してみるべき点は少ない。…ならば代わりに嵐山方面の鳥辺野には…ウンタラカンタラ」

姉「!」

男「…いかんな、踏んではならぬ地雷を踏んだやも知れぬ。姉君、戦略的撤退の判断を…」

姉「委細承知!」スタコラサ


高「…二尊院と落柿舎について…ウンウンチクチク」


今更ですが、かなりの誤字脱字申し訳ない…。

あとビグロ注意。

一応、実際の土地名は使ってますが、人名や店名はテケトーです。

どれぐらい自分がエロいけるかの実験的作品です。

金髪ロリもの。

尚、筆者は狐色ぐらいの色合いと、例のモフモフ感の為に命を捧げたい生き物です。

本日もお仕事頑張って参りましょう…ショキショキ!


(佐用駅)


姉「ここは何処?」

男「私は誰だ?」

姉「冗談抜きで質問だ。ここが今回の研修先か?」

男「ん、まあ焦るな。今日はこの町に一泊する予定だ」

姉「なるほど。私の国とも町の空気の感じが似ている。意外と親しみ易いかも知れん」

男「そりゃ結構。…タクシーを呼んでくるよ」

姉「また移動か」

男「否、ほんの15分くらいだったと思う。疲れたら眠っても良いぞ」

姉「残念ながら、『御主人さま』より先に寝るメイドは存在しない」

男「職業熱心大いに結構。…けど、解らんかも知らんが『御主人さま』もお休みしてるんだ。張りつめ過ぎると死ぬぞ」

姉「…馬鹿にするな」


ブロロロロロ…


姉「……クークー」

運転手
「こんな片田舎に外人さんとは珍しい。兄ちゃん別嬪さんだからって、変な場所に連れ込むなよ」ガハハ

男「…………」

運「冗談だよ冗談。あんたらもう神戸の方は見てきたらしいじゃねぇか」

運「今の神戸はリンス・シャンプーだか何だかのが古参外人部隊が引き上げて以降、荒れ模様が続いている」

男「…下手に手を出さずに、こっちに来て正解だったわけか」

運「そうだとも」

男「だったら、三ノ宮を合流地点に選んだのは失敗だった可能性が高いな。この娘は顔を覚えられていた」

運「今さらだろ。それに安心しろ、その点は画材屋の兄ちゃんが手を回してくれている」


男「どういうことだ?」

運「本人曰く『只の気紛れ』らしいが、…奴は昼間、(21)同盟を使って兵庫県全域の裏組織に対して異常な圧力を加えている」

男「…………」

運「(21)同盟は、ほんの偶然、経済危機後に明るみに出た新規の組織だが、もっと前から何度も名前を変えて日ノ本に存在していたらしい」

男「…(21)同盟、か」

運「そんなわけで、今や兵庫県全体が肩入れしているといっても過言じゃない」

運「明日には西日本全域に圧力がかかる予定だから、逆にその娘の顔自体が、地域安全フリーパスになるってなもんだ」

男「…………」


運「…さてと、そろそろ目的地に着くぜ。荷物と起こす準備を忘れんなよ」



(西播州天文台)


男「さてと、お姫様そろそろ起きて頂けますか」ユサユサ

姉「…………」

男「おい、自称メイドの姉殿。起きれ起きれ」ペチペチ

姉「……zzz」

男「仕方ない、今日の所は大目にみてやるか」

女「そうですね。きっと慣れない長旅だったのでしょう。私で宜しければお手伝い致しますよ」

男「ああ助かる。悪いがその子をロッジまで運んでくれ。こちらはこちらで研修機材を担がにゃならん」

女「承知致しました」スタスタ

男「…………」オイヤッサ


エッチラオッチラ


男「時に…」

女「何か」

男「どうしてこんな時間帯に、君の様な若い女性が一人で彷徨いていたんだ?」

女「天体観測に偶然訪れていた奇妙な女、では説明になっていないと」

男「…ん、無理だろ」

女「ですね」クスクス

男「話す気は無さそうだな」

女「いえいえ、そうでは御座いません。申し訳ありませんが、明日の朝食時にでも御説明致します」

男「…………」

女「それで、今夜の夜具は何人分御用意すれば良いのでしょう」

男「3人分」

女「…ああ、紳士の方で御座いましたか」スチャッ

男「ん、何か物音がしたような」

女「紳士を殺す理由はこちらにはありません。そこの草陰の護衛に、武装解除を命じました」

男「既に包囲されてるのか」ハァ


【同年 11月4日】
(某山中のロッジ)


女「それでは今日より新人メイド研修を行います」

女「私は《メイド部隊》極東支部の支部長補佐、コードネーム《エルシェラント・デモン・アノイアンス》」

姉「…………」ゴクリ

男「知ってるのか」

姉「顔だけを。その名は最強にして最悪、我が国が誇る第1級メイドの中の1人だ」

男「ん、要するに凄腕ってことで良いのだな」

姉「…………」コクリ

男「分かった。信用しよう」


男「それでは詳しい作戦説明に移る」

男「今回の任務では、姉君の本国からの連絡が来るまで疑似家族として現地に留まり、姉君のメイド任務の学習に努める」

男「…日ノ本はほとんど一般人が銃器を持たず、当然、我々の携行する武器にも制限がかかる」

男「柔軟な対応が求められるが、ここでの訓練は必ず君の役に立つものとして欲しい」

姉「イエス、マイマスタ-」

男「エルシェラントさん。既に『御主人さま』がいる君には、今回、この子の『従姉』として補佐して欲しい」

従姉「承りました」


男「それでは質問が無ければ、これから現地散策に向かう」

エル「…それではお車の手配を致して参ります」


ガチャリ、パタン


男「それから、友母さんの件は既に『適切な』処置が取られたと聞く」

姉「!」ビクッ

男「…君の本心が何処にあるかは知らん。だが、今はつまらない事を考えるな。自分のことだけに集中しろ」

姉「…………」

男「それから俺のコードネームは《兄上》とする。宜しく頼むよ」

ポン、ナデナデ


姉「…分かりました。『兄上』」


【スマトラ島従軍日記】


妹「スマトラの密林は深くて暗い」

妹「…昨日、幼から連絡が入ったのだが、どうやら北の集落が脱走兵の襲撃を受けて壊滅したらしい」

妹「防衛隊は奮戦したものの、交戦から15分も持たずに連絡が途絶え、多国籍軍の増援が駆けつけた時には村人の死体ばかりが転がっていた」

妹「遺体は男性が殆どで、女性の方は拉致された点から、元韓国籍の脱走兵集団の仕業と推測される」

妹「我ら《メイド部隊》にも、これから件の集落に向かい、遺体の埋葬作業を手伝よう要請がきているらしい」

妹「『にらみ合い』で終わった戦争の尻拭いとは、全く手間を取らせてくれる」


妹「だが、全く暗いニュースばかりでは無い」

妹「遂に、私にも部隊名《ロベルタ》を名乗る権利が与えられた」

妹「私が黒髪ではないのが残念だが、それでも嬉しい。幼との仲も良好」

妹「さて、そろそろ彼女との交代時間になる。本格的に暑くなる前に、埋葬作業に勤しもう」


「いえす、あいあむりとるしすたー。貴女の妹は今日も元気です」


【スマトラ島従軍日記2】


妹「スマトラの飯は美味い」

妹「北の集落が襲撃を受けてから、今日で一週間」

妹「我々の懸命の捜索で、暴行を受けた女性の発見が相次いでいる」

妹「想像以上に死者が少ないのは、繰り返し使える様に一時解放するからなのだそうだ」

妹「…全く吐き気がする」

妹「被害女性は膣洗浄で肉体的な回復は認められるが、ptsdばかりはどうしようもない」

妹「我々チーム《ロベルタ》も、彼女らの突発的な自殺を防ぐべく、相談役に徹している」

妹「己の無力さが恨めしい」


妹「こうして食事の話題ぐらいしか明るいニュースが無いのは、本当に辛いことだ」

妹「我々は昼間、余裕のある笑顔をもつことが義務付けられている」

妹「…実はこれが結構辛い」

妹「自分の『御主人さま』が居る仲間はまだ良い」

妹「心の支えのない独り者の野良メイドは、夜中にひっそりと泣くしかないのだ」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は来月の体重測定が心配です。


【スマトラ島従軍日記3】


「スマトラの雨は優しい」

「本日未明、遂に私達《ロベルタ》は、初の夜間戦闘を経験する」

「北の集落の壊滅以降、我々は集落内に入念な防衛陣地を構築し、何度も綿密な訓練が行われていた」

「小銃火器程度の武装で我々《ロベルタ》陣地を突破しようとは、実に片腹痛い」

「備え付けの重機関砲を前にして、無策の人海戦術とは、日露戦争時の旅順要塞を知らないと見える」

「気づけば、我々は日頃の鬱憤を彼らにぶつけていた」

「モグラ叩きの様に、相手が飛び出す度に火線を集中させ、確実に撃ち倒す」

>>91
『「』→『妹「』に訂正致します。申し訳ない。


妹「この一発は、誰にも頼れない我々の分」

妹「この一発は、明日の戦場掃除の前払いの分」

妹「この一発は、姉と離れて暮らさねばならぬ私の分」

妹「たった12名の《ロベルタ》陣地を相手に、敵勢が撤退を始めたのは夜明け近くのこと」

妹「心地好い爽快感と徹夜の疲労感に包まれる中、我々は勝利しました」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は一杯のお水を所望です」


【スマトラ島従軍日記4】


妹「スマトラのクリスマスは切ない」

妹「初戦闘から1ヶ月、戦場のメリークリスマス」

妹「あれから、我々《ロベルタ》のもとには各国の記者団が訪れ、その対応も我々の任務となった」

妹「…我々が女性ばかりのチームなためか、男性記者はそれなりに礼儀正しく、鬱陶しい質問責めに我慢すれば良い」

妹「だが、女性記者の厚かましさは銃殺ものだと思う」

妹「同性であることを盾に、何かあればスクープスクープと叫び、我々のプライベート・ルームにまで立ち入ろうとする」

妹「…さすがに失礼かと、丁重にお断りすれば、やれ『生意気』だの、やれ『躾がなってない』だの喚き散らす」

乗っ取りとは思えないほど話広がってるな
支援


妹「それからイエロー・ペーパーの面倒臭さには閉口する」

妹「我々を散々アイドル扱いした後に、『御主人さま』との写真を掲載し、《熱愛発覚!》だの《裏切られた!》だの、好き勝手に書き立てる」

妹「…………」

妹「…残念ながら、私個人の扱いは小さい。多分姉さんは私が戦地にいることを知らないのだと思う」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、素敵な『御主人さま』を随時募集しています。(※要面談)」

>>95
thanks!




【スマトラ島従軍日記5】


妹「スマトラの新年は寂しい」

妹「今日の朝、ジャワ島の多国籍軍施設に向けて脱走兵達の一斉攻勢があったらしい」

妹「『…らしい』とは、以前のsoxy製発電機に続き、無線の調子があまり宜しくないことにある」

妹「現在、最寄りの多国籍軍陣地に幼が確認を求めているが、回答は無い」

妹「ここスマトラ島でも、『脱走兵に紛れて正規兵も何か工作活動を始めたらしい』という未確認情報がまことしやかに囁かれている」

妹「…………」

妹「…中国内戦が終息し、大連の石油施設が再建でもされない限り、このインドネシアの混乱はさりそうにない」


妹「そういえば、最近になって一通のファンレターが手に入った」

妹「本来ならば、検閲処分の対象となる手紙は、例の青ツナギの好青年経由で手渡された」

妹「内容は、私と私の仲間達の安全を祈願する拙い文章」

妹「世の中、奇特な人間がいるものだと呆れていると、手紙の消印は未スタンプのままでした」

妹「…………」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、生まれて初めての恋をしました」


>>98
ありがと~!

【スマトラ島従軍日記6】


妹「スマトラの土は苦い」

妹「…連日、ジャワ島で激戦が続いている話を知らぬ者はいない」

妹「豪韓の正規兵の噂は、もう限りなく黒に近いことを、誰もが知りつつ、誰もが口にしない」

妹「…我が母国に言霊の文化は無いけれど、それでもジンクスの様なものだろう」

妹「脱走兵達の襲撃も、以前の散発的な行動から、連夜の一撃離脱へとシフトしている」

妹「我々《ロベルタ》の軍事物質も補給する先から消費している感が否めない」


妹「誰も諦めないこと、きっと私達は繋がっている」

妹「…………」

妹「…全く関係ありませんが、私は青ツナギの好青年に頭を撫でて貰うことに成功しました」

妹「そして、幼からは日本のバレンタインの風習も教えて貰いました」

妹「軍用チョコバーはあまり美味しくないので、別ルートを開拓中」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、短期決戦型の人間のようです」

【2015年 1月3日】
(佐用町の一軒家)


姉「…………」パタパタ

兄「ん、姉君もメイド服がなかなか板についてきたな」

従「ええ、炬燵の魔力に屈することなく、機敏に動いてくれます」

兄「君は働かないのか?」

従「では、みかんの皮剥きと白筋に取りかかります。おひとつ如何です?」

兄「……結構」ヤレヤレ

カチャカチャ

姉「兄上、机の上を片してくれ。雑煮が置けない」

兄「ん、すまんすまん」

姉「熱いからお気をつけて」

コトリコトリ


ニュースキャスター
『…本日、豪韓の海軍がジャワ島沖にて集結しました』
『両軍は互いに威嚇射撃を行なった後、インドネシア政府の仲裁によって引き上げました』
『現在の所、負傷者などは確認されていない様子です』


兄「従姉君、真実は?」

従「…双方の被害が軽微だったため、日本のマスコミが情報を遮断しただけです」

兄「身も蓋もないな」

姉「?」

従「もうすぐ国連では、両国に対する経済制裁が可決される見通しです」

従「今回の件は、焦ったどちらかの国が行なった突発的な戦闘に分類されるでしょう」

兄「…………」ドモ

従「…………」イエイエ


マクマク…


姉「…お節料理も残り少なくなった」

兄「毎日食ってるからな。いつかは無くなるもんさ」ハクハク

姉「何か作ろう」

兄「いい。食っちゃ寝するのが日本の伝統的正月だ」

姉「…そうか」

兄「そう落ち込むな。《メイド》の道も一歩から。…今頃妹さんもどっかでのんびりしてるさ」

姉「…………」キッ
従「…………」ピクッ

兄「怖いな」クスクス

姉「…………」

兄「従姉君、頼みがあるんだが良いだろうか?」

従「…はい」

兄「この子の妹らしいんだ。君の権限で引き会わせてやるにはどうすれば良い?」

従「…お兄様。それは無理です」


兄「それは任務としての《お従兄様》か、《エルシェラント・デモン・アノイアンス》としての《お兄様》か」

従「…後者です」

兄「ありがとう。…ならば此方も『無理に』事を進めてもロクな結果に繋がらんな。悪かった」ペコリ

従「いいえ、賢明な判断感謝致します」ペコリ

姉「…………」

兄「…………」
従「…………」

姉「兄上、すまないが何を言っているんだ?」

兄「教えても?」

従「《従妹》の教育を、貴方にお願いしたのは私達の側です。私の許可を得る必要性はありません」

兄「…了解」

どうしてこうなった


(ある男の独白)


「3年前、戦争があった」

「…いや、戦争ならば遥かな昔から何度となくあった」

「彼らはビル風の街を出で、自らの同類を探してネットの海に対して振興を繰り返した」

「運に恵まれぬ彼らに、勝利が続くはずはない」

「…彼らは時代が変わったことに気付かなかった」

「炎上を繰り返しては自信を失い、少数派に戻りつつあった彼らは、比類無き妄想力を養い、それを熱意に、世界に向かって最後の戦争を挑んだ」

「それが3年前の戦争」


「彼らは甲斐甲斐しく戦い、…自滅した」

「自宅内で脳内嫁の話題をふる愚さえおかした強者たち」

「その無惨を目にした多数派は、自らの偏見を捨てようと心に誓った」

「世界に平和が訪れた」

「《彼ら》のおかげで…」

「それが永久に続くよう、日本は世界と手を結んだ」


「安定から最も遠い家庭状態で、安定者たらんと働く《彼女ら》」


《経済崩壊11ヶ月前(イエローアラート)》

「その時、私は東京にいた」

「変質者の戯言にならぬよう、机に向かい、条約の草稿に筆を走らせていた」

「総人口の10分の1が集まる狂気の都会を訪れていたのは、『メイド一筋』の共案者達がいると聞いてのことだったが、会議室が埋まる程とは思わなかった」

「この純真な瞳で発案させれば、世の微睡みも忽ち吹き飛んでしまうだろう」

「そのはずは、『自称』人権団体の介入で潰えた…」


「…後に残ったのは、『雪さんフリーク』。お蔵入りも躊躇われるa4用紙が『数枚』」

「そんな場合でもないだろうに、私の筆は勢いを増した」

「条約の第一条には、家庭のありがたさが強調され、第二項は人のありがたさが説かれた」


「…発案者の責任ではない」

「『自称』人権団体が無断で侵入してきたことは」

「そして、会議を開いている真横の土地が幼稚園の建設予定地だったことは」

「…自分至上主義者の唱えた題目のために、8人が捕まった」


『知りません』
(↑警官の任意同行に対して)

「ただ一人部屋に残っていた雪さんフリークは(警察に)視線を合わせる事なく言った」

「自分で書き上げた草案をみて、私は独り微笑んでいた」


「提出された草案は、a4用紙ごと人権委員によって取り上げられた」

「原稿無きまま、『人権』という言葉ばかりが一人歩きしていく」


(ある男の独白2)


「2013年1月27日」

「欧州での経済崩壊を切掛けに、遂に日ノ本は世界との交渉に踏み切った」

「【家族補完計画】の始まりだ」

「辛い日常に疲弊した各国は、伝統的なメイド服を前に屈伏」

「数日の内に、内戦地を除く全世界相手の協議を始めた日ノ本政府は、外国人コスプレヤーを招集」

「…欧州との連携に望みをかける」


「ここまでは、教科書にも載っている」


「だが、資料の中に、奇妙な草稿に紛れていた」

「一人の男が編纂した文章。…そしてそれに挟まれていた『本当の弱者達』の悲痛な叫び」

「情報としては不鮮明なモノが多い」

「…だが、各国はそこに惹かれた」

「世界は彼らの視点で、《何か》を創造することを考えた」


「その先には《何か》がある」

「この世界に本当に必要なものか、ただの理想論か」

「はっきりとした外形など無い」

「…存在自体があやふやだ」

「ただ、思案に暮れる国々の中から、早期に相互協力を取り付けることが出来た」


「姉という少女の国は、その中の一つだった」


(再び炬燵内)


兄「そうして昨年の今頃、世界に《何か》が生まれた」

姉「…………」

兄「何せ急造も急造。既存の組織を併合させたり、なんだったり」
姉「では、《メイド》も?」

兄「君達の部隊名や作戦名を調べてみると良い」クイクイ

従「…これが私のコードネームの源流となった少女です」


カチカチ

姉「…!!」ナント

兄「『本物』は姉君をツインテールした感じだな。可愛らしいな」

従「…自分を《何か》で枠固めし、後の立脚点とする。実に弱い人間の生き方でしょう?」

兄「しかし、世界はそれに《何か》を求め、希望を託した」


兄「…次に、破綻を前に焦る各国は《何か》の方向性を、日本の漫画やゲームに求めた」

従「『愛嬌』と『ハッピーエンド』を兼ね備え、具体的な幸せな世界観がありますから」ニコリ

兄「…かくして、世界に平穏が訪れるはずだった」

コポコポ

姉「でも、それは子どもの持つ『楽しい空想の理論』だ」

兄「ん、その通り。虚像に自分を投射しただけの『偽物』に浸るだけの自慰行為だな」

姉「…………」コクコク


兄「だが、そこらは後の世代が考えれば良い」

姉「………?」

兄「…早い話、今はまだ『全世界共通の新しい宗教』を立ち上げた段階なんだ」

従「日ノ本人らしい表現ですね」
クスリ

兄「姉君は、日ノ本の役人が、どうやって公務員を増やす方法を知ってるか?」

姉「…………」フルフル

兄「…何でもいいんだ。《何か》理由を見つけて人を配置する。それで万事完了だ」

姉「…………」アゼン

兄「《何か》を求める人間を国で雇い入れ、多国籍派遣会社の従業員としてしまう」

従「そして、『安全性』と『透明性』が約束された職場で、『共通の認識を持つ仲間』と生活させる」


兄「まあ、参考までにだが」

姉「?」

兄「…コードネーム《エルシェラント・デモン・アノイアンス》君に質問だ」

従「はい、なんでしょう?」

兄「自分は《日ノ本国公安調査庁の人間》として、君に聞きたい」

従「…………」

兄「君の所属する団体名、本当の任務、それと精密なスリーサイズの提示を要求する」

スッ

従「『禁則事項です』」


【スマトラ島従軍日記7】


妹「スマトラ島の旧正月が近い」

妹「本日、我々《ロベルタ》は華僑街の飾り付けを行った」

妹「1月1日を新年とする我々《ロベルタ》には、旧正月の感覚はあまり理解出来ない」

妹「…しかしパーティは、皆で行うほど楽しいもの」

妹「1人で参加するパーティは寂しいが、ここには仲間がいる」

妹「…憂鬱なジャワ島の戦局を忘れられる有意義な時間でした」

妹「…………」

妹「本音を書けば、きっと心配をかける」

妹「しかし本音をぶちまけてしまいたい」


妹「そんな二律背反が、常に私達の心に存在します」

妹「そしてだんだんこの日記に何を書けば良いかが判らなくなる」
妹「…………」

妹「…きっと今日は少し寂しい日なのだと納得させ、こうして寝床で日記を閉じます」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は生来の寂しいがりです。

おもろい

【スマトラ島従軍日記8】


妹「スマトラの祭は騒がしい」

妹「第2のテト攻勢に備え、我々《ロベルタ》は前日に充分な休息を頂いた」

妹「ここの所の苛立ちや焦燥感は、睡眠不足が原因だったと思う」

妹「ペンを持つ指先にも心なしか力が入る」

妹「…………」

妹「そんな我々《ロベルタ》も、本日の爆竹には大いに悩まされた」

妹「銃声かと警戒体制に移る我々《ロベルタ》陣地前を、爆竹を持った子ども達が走り抜けたのは、一度や二度ではない」


「…それから、仲間の1人の妊娠が分かったのも今日だ」

「毎夜、『御主人さま』のもとに、通い続けていたのだから当然のこと」

「彼女には、安定期を迎えるまでは『御主人さま』と共に住まうことが許可された」

「母体を気遣って、彼女と『御主人さま』は当分非番なのだそうだ」

「…幸いジャワ島守備隊の一部が、このスマトラにも『転進』してきたため、日常業務に支障はない」

「残念ながらテト攻勢は、ジャワのほうだったらしい」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は今日の給食当番です」

【スマトラ島従軍日記9】


妹「スマトラの空は明るい」

妹「本日午後、哨戒任務中の幼が姿を消した」

妹「我々《ロベルタ》はインドネシア陸軍と多国籍軍に捜査協力を要請」

妹「幼は欧州だけでなく、多くの国の新聞が一面を飾ったこともあった《メイド》だ」

妹「それだけに各国空軍は、夜間の照明弾と軍用ヘリを用いてまで、幼の捜索を重要な任務としてくれた」

妹「例の青ツナギの好青年も、我々《ロベルタ》の警護役として派遣され、先刻まで話し相手になってくれていた」


妹「もうバレンタインなんて気分ではない」

妹「『昼間、私が彼女と一緒に行動していれば、きっとこんな事態にはならなかった』」

妹「それが我々《ロベルタ》全員の心情だ」

妹「…………」

妹「…もうすぐ日付が変わる時刻にも関わらず、幼の足取りは依然掴めていない」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、今日から部屋に1人です」

【スマトラ島従軍日記10】


妹「スマトラの軍議は眠たい」

妹「幼が消息を断って1週間で、彼女の捜索は打ち切られた」

妹「これは捜索側の怠慢ではない。彼らとて、今すぐ幼の捜査に戻りたい気持ちは、我々《ロベルタ》同じだ」

妹「…………」

妹「だが、それは許されない」

妹「『ボルネオ島陥落』」

妹「この衝撃的な事実が判明したのは、つい先刻」

妹「久方ぶりに調子の良かった通信機に、一番初めに飛び込んできたのがこの緊急連絡だった」


妹「我々《ロベルタ》はインドネシアの土地勘に乏しく、西カリマンタン、東カリマンタンと言われても困惑するしかない」

妹「…だが、脱走兵たちの奇襲が成功したことを通信機は伝えてくれた」

妹「東南アジア諸国が南沙諸島問題に執着する隙をついての蛮行は、ここまでの規模になっている」

妹「…私達は認めねばならない」

妹「先の『にらみ合い』は、『正規軍をばら蒔くため』のパフォーマンスでしかなかったことを」

妹「そして我々《ロベルタ》は、最初から巨大な獣の中にいたことを…」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は《メイド》です」

>>122
さんくす!

【2015年 2月15日】


ニュースキャスター
『…本日、ボルネオ島インドネシア領にて、一部イスラム過激派が暴動を起こしました』
『暴動の規模などは、現地も情報が錯綜していて、詳しいことは分かりません』

『…次のニュースです。埼玉県熊谷市で犬のお巡りさんこと安西常陸介君が……』ドータラコータラ


(同日、画材屋『銀杏と茶碗蒸し』店内)


店「もしもーし」

店「やあお早うさん」

店「今のテレビみたかい?…あれは酷いねぇ」

店「正直、湾岸戦争やイラク戦争の時の方がマスコミは働いていたと思うよ」ハァ…

店「…本部に確認するまでもなく、ネット上では早くも動きがありまして」

店「幸い、同じボルネオ島でもマレーシア領とブルネイ領に殆ど被害が出なかった様で…」

店「そうそう。『マレーシア領』と『ブルネイ領』」

店「特にブルネイ領なんて、暴徒が素通りして隣のインドネシア領に向かったなんて話も」

店「…ああ、やっぱりねぇ」


店「多分次に彼らは、国連の本格的な武力介入が決議前に、現地の『実行支配』を狙います」

店「…ええ、無茶な論理とは承知の上での発言です」

店「ですが、現在の多国籍軍は、【家族補完計画】に則った治安維持目的の最小限の部隊しかいません」

店「インドネシア軍もいますが、彼らの装備水準はまだ途上」

店「…近年の原油高を考慮しても、もう少し時間がかかるでしょう」

店「…………」

店「テレビではイスラム過激派など言っていますが、彼らの裏に『脱走兵』という名の『工作員』がいることは明白です」


店「そうして、『脱走兵』による実行支配が完了すれば、『鎮圧』に向けて『本国』が軍を動かす」

店「…インドネシア政府には、『元々は我々の責任だ』とか、『今は暴徒が統治している』とかで理論武装すれば良い」

店「…………」

店「そうです、アフガン戦争と同じです」

店「後は出来レースでしょう?」

店「…テケトーに戦って、テケトーに人が死んで『脱走兵』達は降伏する」

店「これで、インドネシアでの『原油の優先権』を得る魂胆かと」

店「え、正しいかどうかの確証をくれ?」

店「あっはっは、…ご冗談を」


店「きっともっと悪い予感がするといった僕の勘で充分でしょ」

店「…………え、駄目?」

店「なら、今度から(21)同盟謹製のお土産は必要ないと? そう仰られるわけで」

店主「…………」ヒヒヒ

店「さすが! 手が早さに定評のある御方! その風体は伊達じゃないッ!!」

店「では失礼を」

店「『イエスロリコン、ノータッチ。…汝に淑女のご加護がありますように』」

ガチャリ

店「…………」ツーツー

店「さて、今の僕が出来る根回しはこんな所かねぇ」

店「そういえば、姉君の研修もそろそろ終わる頃だ」


店「…ふむ」ピポパ


プルルルル

店「もしもーし、はろー」

(同日 西播州天文台)


兄「…………」プツリ

姉「兄上、どうした?」

兄「ん、画材屋の店主からの電話だ。姉君の近況を聞きたかったらしい」

姉「ふむ、また一緒にお茶を飲みたいものだ」

兄「止めとけ」

姉「悪人には見えなかったが?」

兄「…本当に悪い人間とは、普段は本性を隠すんだよ」

姉「そうか、残念だ。それよりも任務の『植林作業』を見てくれ」ホレホレ

兄「…………」
姉「…………」ドキドキ

フムフム

兄「…ん、初めてにしては良くやったな。凄いじゃないか」

姉「そ、そうか」テレテレ


兄「時間も丁度良い。一端家に帰って飯にしよう」

姉「…………」コクリ

スタスタ
テクテク

姉「…でも兄上、どうしてメイドが『植林作業』を行うのだ?」

兄「ん、何か変か?」

姉「私達の国の常識では、メイドはハウスキーパーやベビーシッターの延長だ」

兄「…ん、だから『家事手伝い』以外は職業の範疇に無い、と?」

姉「そこまでは言わんが、まあ概ねはその通りだ」

兄「でも、君は《メイド》だろう」

姉「いかにも《メイド》だ」

兄「なら、『そういうこと』で良いじゃないか」

姉「???」クビカシゲ

(ある男の独白3)


「…まず最初に、《メイド》が古典的なメイドではなく、《メイド服》を着た個人を指す言葉でもないことを明記する」

「ただの『コスプレ』がしたければ、『仲間内』や『その筋のお店』で行えば良い」

「そう《メイド》はメイドではない」

「…我々の求める《メイド》の概念は、いわば汎用性の高い派遣社員に近似している」

「だが、目的が違う」

「《メイド》の任務は至って単純」

「《世界の歪み》を正すこと」
「『御主人さま』を探すこと」


「それが我々の求める《メイド》だ」


「…《世界の歪み》とは何か」


「例えば、陸」

「世界の陸地は汚れている。砂漠化が進み、森林資源の管理が行われていない地域がある」

「例えば、海」

「世界の海は汚れている。海洋汚染や漂流物などの問題は既に諸君らもご存知の事だ」

「例えば、空」

「夜空を見上げてみたまえ、そこにどれだけの星が見える」


「そして、そんな世界の中で生きる我々の家庭に全く澱みが無いといえるかね」


「だが、そうした問題は長期間放置され続けてきた」

「否…、企業間や自治体、或いは各家庭の問題として丸投げされ続けてきた」

「酷い場合には《歪み》にすら気付かないままで」

「それは何故か」

「当たり前だ。《メイド》にかせられた命題より幾分にも簡単といえよう」


「…それは『金』にならないからだ」

「故に我々は提示する」

「我々は、《メイド》を国家間を越えて雇い、我々の求める《何か》の『1つ』とする」

「そして、《メイド》を《我々の共通する歪み》に当たらせることを!」


「その為ならば、我々は幾らでも協力しよう」


「『安全』が欲しいかね」

「ならば、我々は多国籍軍を編成し、無理矢理にでも対象地区を『安全』にしてみせよう」

「…強姦、暴行、セクハラ」

「《メイド》を奴隷と勘違いする輩には、我々は厳罰を持って望もう」

「『賃金』が欲しいかね」

「ならば、我々は新たな共通貨幣をもってその労働を酬いよう」

「…横領、賄賂、天引き」

「《メイド》の報酬管理には、他国の監査官を義務付けるなど、その透明性を約束しよう」

「『友人』が欲しいかね」


「ならば、我々は舞台を整え、信頼出来るパートナーを傍に控えさせよう」

「…医者、軍人、sp」

「《メイド》の勤務時間以外の行動は、原則として自由とし、多くの物事に触れる機会を与えよう」


「一定期間の後、《メイド》は滞在地の変更を行うことも出来る」

「世界を旅する中で、《何か》を『何か』に変えていく」


「その中で、我々は《メイド》自身に、生涯の伴侶『御主人さま』をを手に入れる事を望む」


「…その時こそ、《メイド》が『メイド』になるのだから」

(ある男の独白4)


「…尚、この男性版が《執事》である」

「以上」



(同日 佐用町の一軒家)


兄「ん、そんなこんなが《メイド》誕生秘話だ」

姉「……」コクコク

兄「ふふふ、凄いだろう」

姉「……」

兄「新たな概念は新たな産業に繋がるわけだ」

兄「例えば、姉君の《メイド服》も、実は批准国独自のオリジナルモデルだったりする」

姉「」ワオ!

兄「…その《メイド服》を着るには、その国の国籍を得るか、現地で働くしかない」

姉「色々悪用は…」

兄「当然ある」

兄「…敵対国の《メイド服》女性に乱暴する風俗店や、粗造なレプリカを作製した業者の摘発は後を絶たない」

姉「彼らの処罰は?」

兄「今は見せしめの意味もあり、重罪が確定している」


兄「『偽御主人さま』事件もかなりの数が報告されている」

姉「問題ばかりだな」

兄「だから、デバックやアップデートが常に流動的に行われている」

姉「…………」

兄「そもそも《メイド》を含めたその他の超国家間公務員制度が、人類全体で《何か》を求めようという曖昧な構想に基づいている」

姉「問題はあって然るべき、と?」

兄「…………」コクリ

姉「デメリット以上のメリットを見込んで、の処置か」

兄「ん、まあ極論すれば、社会の構造なんて大半がそんなもんだからな」

姉「ふうむ」

兄「手厚い庇護下に置かれた《メイド》は、その土地の雰囲気に馴染むため、こうした現地研修を受けるわけだ」

姉「東京、神奈川、兵庫という選択の基準は?」

兄「何処も日本の歴史の中で、早くから異国文化があった土地だからだ」

姉「…………」ホウホウ

兄「将来的には、北海道や静岡、沖縄なども研修先に選ばれるだろう」

姉「…ふむ」

兄「君の選んだ兵庫県は土地柄、南北で複数の気候帯に属する珍しい県でもある」

姉「日本の風土を学ぶ上で、これほど適した県は無い、ということか」

兄「ご明察」

姉「それなら、何故この片田舎の小さな町が研修先になったのも分かる気がする」

兄「それは何より」

姉「…それで兄上達は、何故先程から防寒具を用意しているんだ?」

兄「ん、それはだな…」

ガチャッ

従「お従兄さま、こちらも準備が整いました」ホコホコ

姉「従姉上も温かそうな装いで…」
従「季節柄、甘酒やホットコ-ヒーも用意して御座います」

兄「ご苦労様。それじゃあ行こうか」

姉「一寸待て、もう夜だ。…わわっジャンパーぐらい自分で…」ワタワタ

従「いえいえ、ご遠慮なさらず可愛い従妹の面倒をみるのも、私達の役目です」

ヌガセヌガセ

姉「…ひぃっ!」

ドタドタバタバタ

従「…うふふ」ホッコリ

兄「どうした姉君、そんな泣きそうな顔をして」

姉「…兄上、実はわかってて言っているだろう」ゲッソリ

兄「さてな」シラジラ

従「冗談はさておきまして、そろそろあちらも準備が出来た頃でしょう。お車を用意してきます」

ガチャリ

姉「……あちら?」

兄「…ん、姉君」

姉「なんだ?」ジト

兄「君には、これから日本フリークの君でも知らない秘密の場所を案内しようと思う」

姉「?」

兄「兵庫県、いや日ノ本が誇ると言って良い」

姉「…!」ナント

兄「『西播州天文台』」

姉「ええと、それは今日私が植林していた山の天文台だろう?」

兄「…の中にある天体望遠鏡『なゆた』。日ノ本国最大級の一般開放型天体望遠施設」

兄「日ノ本は、君の母国とおおよそ同じ緯度だと聞いている」


兄「…久し振りに、君の母国と同じ空を眺めてみないかな?」

(西播州天文台 施設内)


係員
「それではこちらへ」

姉「……」ワクワク
従「……」ニコニコ
兄「……」

係「あ、申し訳ありません。当施設では様々な観測用の精密機器を用いています」

係「そのため、機器の悪影響を与える恐れのある携帯電話などは、必ず電源をoffにしておいて下さい」

姉「うむ、わかった」ドキドキ

従「…宜しいのですか」ヒソヒソ

兄「昼間のうちに、部下に下調べを行わせている。『不審な点』はなかったそうだ」ヒソヒソ

兄「一応、spとして、どちらかが姉君と共に入り、もう片方が外を見張ろう」ヒソヒソ

従「承りました」ヒソヒソ

兄「…ところで、従姉君は星に詳しいのか?」ボソボソ

従「『ホーエイ・ノジリが冥王星の命名者だ』という程度の初心者です」ヒソヒソ

兄「誰だ?」ボソボソ

従「日本の小説家の方です」ヒソヒソ

兄「わかった。なら君に姉君の補佐を任せたい」ボソボソ

従「…例え任務であっても、《お兄ちゃん》は《お兄ちゃん》でありたいと?」ヒソヒソ

兄「…………」フイッ

従「わかりました」クスクス


トテトテ

姉「兄上、従姉上、何を内緒話をしている?」

従「いえいえ、何でもないですよ。係員さんご案内宜しくお願い致します」

姉「…………」ジー

兄「…何でもない。ほら行ってこい」

姉「? 分かった」

トテトテトテ

姉「従姉上、兄上は留守番だそうだ」

従「…了解です」クスクス

係「…………」ポー

従「係員さん?」

係「あ、はい。…すいません外国の方と話すのは初めてでして」

従「日本語でokです」ニコリ

係「ど、どうも」キレイナカタダナー

ガチャリ

ワイワイガヤガヤ


兄「…行ったか」

兄「さて、こちらも見張りを任せて貰おうかな。『見張り』をね」

【2015年 2月16日】
(西播州天文台 施設内)


カチカチ

兄「日付が変わったか」

兄「こちら現在異常なし」

トクトク、コクコク

兄「ふぅ、冷える夜は甘酒が旨い。本酒粕も混ぜるとは、従姉君も趣味が渋い」

別の係員
「すいません」

兄「ん、何か」

別「はい、御来館の記念として、当館では細やかですが記念品やパンフレットを準備しておりまして…」

兄「それで?」

別「あの、ですね。…折角なら、お嬢さん方の好みの傾向を教えて頂ければ、喜んで貰えるのではないかと」

兄「なるほど」

別「お兄様、如何でしょう?」

兄「良い考えだと思う。…だが一応、安全確認に現物を見せて貰っても宜しいか」

別「はい、どうぞ!」

別「…………」ホイサ
兄「…………」ドモサ

パラパラ

兄「…なるほど」

別「どうですか? そしてこちらが記念品『当館オリジナルキーホルダー』です」

カチャカチャ

兄「ん、月に木星に、土星…」

別「竜座3000光年のキャッツアイ、牡牛座400光年のプレアデス、鯨座10億光年のパーフェクト10…」

兄「…結構種類があるんですね」

別「はい、星の数は限りないですから」ニコニコ

兄「分かりました。しかし、これだけの数があるなら、本人達が選んだ方が喜ぶと思います」

別「…なるほど、確かにそれはそうですね」フムフム

兄「『選択肢は多い方が楽しい』、そうでしょう?」

別「ええ確かに。後は、星座早見やグラスなどがありますが」

兄「そちらの中身の物は昼間に此方でも確認しています。…包装もキチンとしてありますし、開封の必要はありません」

別「分かりました」

兄「いえ、御協力感謝致します」


別「参考までに、お兄様自身はどの星を選ばれます?」

兄「当然これを」

別「…………」

兄「ん、何か変な選択ですか?」
別「いいえ、私達の町の歴史にお詳しいようでしたので、少し驚きました」

兄「シリウスを選んだ方が?」

別「さあ、どうでしょう?」ニコリ


ガチャリ

従「…お留守番ご苦労様です」

兄「お帰り、そっちも付き人ご苦労さん。姉君も楽しめたか?」

姉「うむ」コクコク

兄「…それは何より」

姉「兄上、兄上が手に持っているのは?」

兄「ん、…ああ、こちらの係員さんがお土産に下さったんだ」

別「はい、天体観測お疲れでした。こちら御来館の細やかですが記念品となります。宜しければどうぞお受け取り下さい」ドウゾ!

姉「…!」ペコペコ

姉「…それから、こちら当館オリジナルキーホルダーもどうぞ。沢山種類が御座います。お好きなのをお選び下さい」

カチャカチャ

姉「!」キラキラ

(同時刻 欧州某所)


プルルルル…ガチャリ

?「やあ、久し振りだね」

?『…貴方か』

?「ああ私だ。ところでモスクワの冬は、やはり寒いものかね?」

?『…挨拶は結構、要件は?』

?「ふむ、せっかちさは相変わらず健在のようだ」

?『…無駄がないだけだ』

?「物は言い様だな。まあいいさ…、いきなりですまないが【悪い情報】と【とても悪い情報】がある。どちらから聞きたい?」

?『【悪い情報】からどうぞ』

?「…君はそういう性格だね。これは今日、日本の同志からの報告だ」

?『結構、【インドネシアで戦争が近い】という情報なら既に此方も入手している』

?「その様子だと、もう何かしらの手は打った様子だね」

?『…黙秘する』

?「いいさ、どうせ今日か明日のニュースか新聞で分かる」

?『…それで【とても悪い情報】とは何だ?』

?「ああ、こちらは米国の同志達からの報告だ」

?『…それは何だ』

?「【メキシコ湾で大規模な原油流出事故が起こった】」

?『!!!』

?「…ああ、やはり流石の君でも驚くか。何か安心したよ」

?『…規模は』

?「…2010年と同規模か、それ以上。現在も全力で封じ込めに奔走している最中だそうだ」

『…施設の老朽化を放置し続けたむくいか』

「悪い時には悪いことが重なるとはよく言ったものだね」

『…それなら』

「ほぼ間違い無く、米国経済が止まる」

『…………』

「それに、油が無ければ軍艦なんてただの鉄の棺桶さ」

『…日本が油を買って、米国に渡せば』

「せっかく世界が《何か》を目指して動き始めたのに水を指すのかい?」

『…………』

「っと、すまん。声を荒げてしまった。私も年かな」

『…いいえ、お気になさらず』

「《何か》を求める原動力の日本が自由に動けるよう、私達は新たな『通貨』まで造ったんだ」

『…承知しています』

「戦争の為に金は必要だ。…だが、我々の作り上げた『通貨』は理想のための『通貨』だ」

『…血で染め上げてはならないと?』

「その通りだ。そうでなくては、『通貨』は『我々が戦争の為に造った通貨』になり果てる」

『…【家族補完計画】第11条第3項か』

「その通り。…『通貨』を使用するのは、《何か》の《代行者》に限る」

『…故に《何か》を求める我々は彼らに協力する』

「その為に【一度『通貨』を給与として発行し、現地通貨と変更する】などという面倒臭いシステムを創ったんだ」

『…………』

「まあ、そういうことだ」

『…この話を他の国には?』

「その真っ最中さ。まあ、常任理事国から始めてるがね」

『…私にどうしろと?』

「取り敢えず、今度の会議で米国の『通貨』の完全な軍事転用を要求してくるだろうから、それに反対票を投じて欲しい」

『…………』

「…ああ、そうさ。我々が『治安維持』という曖昧な目的で、『通貨』を使用しているのは百も承知さ」

『…………』

「しかし同時に、それまでゴミ拾いでしか生計を立てる手段の無かった子ども達が《執事》や《メイド》となって、人生を歩み始めたことも知っている」

『……ああ』

「わかるかい? 競争に破れて倒れた者に、最初から競争への参加が許されなかった者に…」

『…我々が一本のセーフティネットを構築した』

「その通り。…まあ突き詰めてしまえば、しがない老人の理想論だがね」

『…………』

「すまんね、年甲斐もなく」

『…いや、概ね理解した。

「どうも」

「…だが問題がある』

「なんだい?」

『…今更戦争は不可避だ』

「うん、そうだね」

『…現状、多くの国で《彼ら》が活動するために、多くの『油』が消費されている』

「ああ、そうだとも」

『…そのハンデを背負った我々が、どうやって戦争に勝つのか』

「大問題だね」

『…貴方はその【解答】を持っているのか』

「…いや、無いよ?」

『…………』
「…………」

「だから、《それ》を探すための会議を開きたい」

『…………』フッ

「…鼻で笑ってんじゃねぇよコラ」アアン

『…良いでしょう』

「おお即答」

『…いえ、我々も、あの閉塞感しかなかった時代を拭い去りたいのは同じです』

「…………」

『…それでは失礼を。貴殿の奮闘を応援致します。【ローマ教皇】殿』

「またな、【大統領】殿」


《イエスロリコン、ノータッチ。貴殿に淑女のご加護があらんことを!》
《イエスショタコン、チョイタッチ。貴殿に紳士のたしなみあらんことを!》

おはよう御座います>>6です。

こんな感じでテケトーに話をつくっています。ご意見、ご要望がありましたらいつでもどうぞ。

完全な即興なので、わりと変更が利きます。

…そして、読みにくい文章、誤字脱字、乗っ取りの件、本当にすいません。

平に平に…お許しを。

それでは、ハブアナイスホリデ-!

【sos、地底より】


「…私は《ロベルタ》所属の幼」

「現在時刻、現在位置ともに不明」

「唯一わかるのは現在、何処かの施設内で監禁されていることだけ」

「5メートル四方の室内にベッドが2つ。1つは私のもの、もう1つは私の世話役の少女のもの」

「彼女は、半分壊れている」

「…訂正、何故半分正気を保っているかが不思議な状態にある」

「年齢は、恐らく10代半ば」

「両手両足を有刺鉄線で拘束され、太い鎖が肋骨を貫通し、壁に繋がれている」

「その腹は、身体の肉付きに比べて異常に膨れ、一目で彼女が妊娠している様子が見て取れる」

「血色は良く、栄養は行き届いているらしい」

「やや浅黒い肌の色から、東南アジア系だということは分かる」

「彼女の顔には化粧が施された形跡があり、(化粧が)無くとも、アジアンビューティと呼ばれるに相応しい色気がある」

「だが、そんな彼女の瞳には生気が無い」

「時折、思い出したように小声で何かを呟くが、残念ながら私は聞き取れない」

「猿轡を噛まされるまでは、私も何度か対話を試みたが、返事は一向になかった」

「何となく、極度のストレスから幼児退行を起こしている可能性が高いと思われる」

「一方、この『無口』な隣人を横の私の待遇は、異常な程良い」

「私も拘束はされているが、革製の比較的品質も良い」

「私が着ている《メイド服》が荒らされた跡はなく、私が記憶している限り、膜が破られた記憶もない」

「唯一の変化は、私が意識を失っている間に、長かった髪が今はセミロングぐらいまで切り取られていたこと」

「《ロベルタ》内でも有数の艶やかな金髪ロングは、私の数少ない誇りでもあった」

「洗髪は行われているらしく、嫌な匂いはしない」

「空調設備は上々」

「…気分は最悪だ」

【sos、地底より2】


「多分恐らく夜が来た」

「夜になると、何となく施設内の雰囲気が変わる」

「それもあまり歓迎されない方に」

「私達は基本1日2食。朝と夜に軍隊でお馴染みの『臭い食事』が支給される」

「食事が終われば、私達の拘束が解かれ(といっても、少女の方は壁の鎖がほどかれるだけだが…)、『レクリエーション・ルーム』へと運ばれる」

「部屋には多くの軍服姿の東洋人と首輪に繋がれた多くの女性がいて、私達の方を見ている」

「ああ、少数であるが女性の軍人もいる。…いないこともない」

「そして私は必ずこう問われる」

「『…お前はこの男を選ぶのか?』」

「軍人達は、一人ずつ前に進み出ては、自らを指差しては自信満々に、私にそう尋ねる」

「しかも、続いてアメリカン・イングリッシュで、耳障りな浮わついた言葉が付随してくる」

「…馬鹿馬鹿しい、選ぶわけがない」

「だから私は、私が『マスメディア』に流した『曖昧な笑顔』を浮かべ、ダブリン訛りのクイーンズ・イングリッシュで『丁重に』お断りする」

「結果、彼らは立候補しては撃沈する」

「しかし、それさえも『遊び』の一種らしい」

「仲間が振られる度に、嘲笑と野次、拍手が巻き起こる」

「私が西洋人だからかも知れないが、この部屋の東洋人は皆一様な顔に見える」

「そして彼らは、水商売の女と同様、常人ではあり得ない色をした前歯を有しているのが特徴だ」

「私はかつて昆虫学者を目指し、ボルネオの密林を歩いていた」

「生来天然物が好きな私にとって、この軍人達の姿が妖怪に見える」

「吐き気がする」

「そして、この悪夢が過ぎ去れば今度は私達は衣服を剥がされ、『オムツ』の交換が行われる」

「私の身体をなぶる様な視線に、私は身の毛がよだたせながらも胸を張る」

「ここで弱みを見せることは、後々何か嫌なことに繋がる」

「ここでも、私の『着替え』は、女性仕官の手で着替えが行われる」

「私から《メイド服》を脱がせ、オムツを取りさると、私の糞尿にまみれたおしりが露になる」

「…それを掃除するのが、私の『世話役』の少女だ」

「彼女は無表情に、淡々と女性軍人に押し付けられるまま、私の陰部を舐めていく」

「少女が舐めにくければ、私は体制を変えられ、犬のように舐め回る彼女に身を委ねなくてはならかい」

「これは他の首輪付きの少女達も同じだ」

「少女による『清掃』が終われば、唾液でべとべとになった私の下半身はウェットティッシュで綺麗に拭き取られる」

「そして新たなオムツを持った女性軍人に連れられ、シャワー室に私の身体は石鹸やシャンプーで清められる」

「…この若い女性軍人は、すまなそうな顔で私の介助についてくれる」

「なんとなく彼女だけは、この妖怪の巣窟で唯一『普通』に思える」

「だが、彼女が話しかけてきても、私はあまり満足に答えられない」

「…なんとなく、一度妥協を許してしまえば、後は際限無く彼女に甘えてしまう予感がする」

「そして、『その状況』を妖怪達は待ち望んでいるのではないか」

「真偽を問う手段のない私は、彼女から乱暴にタオルを受け取り、身体を拭う」

「…私がシャワーで涙と鼻水を隠していることは彼女も知っている」

「だから、タオルに顔を埋めた私が落ち着くまで、彼女は頭を撫でてくれたり抱き締めてくれたりする」

「私は感謝の言葉を述べない」

「彼女もそれを強要しない」

「…そして、私の無事を確認すると私達はあのベッドしかない部屋へと向かう」

「その際、あの『レクリエーションルーム』前を通るのだが、そこからは獣の叫び声しか聞こえない」

「…私には、あの扉を開ける『勇気』はない」

【sos、地底より3】


「深夜遅くになって、私達の部屋は乱暴に開け放たれる」

「『あの部屋』の後、シャワーを浴びせられた少女が、男につれられやって来る」

「少女は全裸の場合が多い」

「数々の暴行痕が残る少女の股からは、シャワーを浴びせられた後であっても男の精液が垂れている場合も多い」

「そして、彼女のベッドで狂宴の続きが行われる」

「前記にもしたが、彼女は妊娠している」

「だが、男の前ではそれは何の意味も介さない。擦りきれるまでに打ち付けられ、叩きつけられる」

「半分壊れていても、少女は痛ければ泣くし、貫かれれば少女は喘ぐ」

「彼女は、もがきもするし、嘔吐もする」

「私の鼻孔に、先程少女が食させられた老廃物の匂いが飛び込んでくることも少なくない」

「明け方になり、男が部屋から引き上げると別の男達がやってくる」

「彼らは同じ東洋人の軍服を着ているが、位が低いか立場が低い」

「だが、彼らも糞便と精液で汚れた少女の身体を弄び尽くす」

「隣で縛られる私に触れる権利は無く、惜しげに覗き込んでは少女を犯す」

「そして時間が来ると少女を連れて部屋を出で、彼女の『洗浄』に取りかかる」

「何度でも書こう」

「ここは妖怪の巣窟だ」

「ここは地底、地面の国」

「ここに太陽は当たらない」
「ここに風は吹かない」
「ここに救いの光は無い」

「sos、地底より」

【2015年 2月18日】
(佐用町内の一軒家)


姉「…………」ゴソゴソ

パタパタ…ギィッ

姉「……ン」ショロロロロ

姉「…………」フキフキ

ジャー…キュッキュッ

姉「…すまん兄上。夜中に起こしてしまって」ザー

兄「ん、平気だ」

姉「…………」
兄「…………」ホラヨ

姉「…兄上は優しいな」フキフキ

兄「いや、自分も子どもの頃に、兄に連れていって貰った記憶がある」オオアクビ

姉「兄上の兄上か」

兄「そうだ、兄上の兄上だ」

姉「ハヤクチコトバみたいだ」ニコッ

兄「…………」

姉「…どうした兄上。鳩がマメデッポーを食らったみたいな顔をして」

兄「姉君が笑った」

姉「? 失礼だな、私も笑うぞ?」

兄「…いや、表現が悪かった。姉君が『本当の意味で』笑顔を見せてくれた気がする」

姉「そうか、兄上にはやはり分かるか」ニコリ

兄「…………」

姉「うん、もう少ししたら兄上に教えたいことがある」

兄「『今』では駄目か?」
姉「『今』では駄目だ」

兄「…………」ジッ

姉「…………」ニコニコ

兄「…分かった、君を信用する」

姉「ありがとう、そして今までごめんなさい」

兄「どうして姉君が謝る必要がある」

姉「…理由はきっと後でわかる。今は『兄上に対して秘密を持っている馬鹿な妹』の謝罪として受け取ってくれ」

兄「…………」

姉「兄上は私を信用してくれた」

兄「ん、当然だ」

姉「…だから、私も兄上を信用することにする」

兄「何を言っている? 何か悪いものでも食ったのか? それとも夕食時の心霊特集がそんなに怖かったのか?」

姉「落ち着いてくれ兄上」

兄「しかし…」

姉「…ん、んんんん、ん?」

兄「どうした? 思い当たる節があるのなら、何だって話してくれ。 何でも受け止めるし出来る限りの対処法を考えよう。 自分が駄目なら従姉君を呼ぼう」アセアセ

姉「…………」

兄「……姉、君?」ヒヤアセ

姉「…ん、そうだな。 兄上は本当に『何でも』聞いてくれるか」

兄「ん、男に二言はない」

姉「分かった。 なら、ついてきて欲しい」

兄「お、おう」

姉「…そして私と共に寝て欲しい」

兄「…お、おう?」アゼン

姉「ああ、勿論えっちなのは禁止だ」

兄「…………」

姉「ただの家族として、ただの兄として、今の私の側にいて欲しい」

兄「…それは自分が君の《兄上》だからか?」

姉「ああ、恐らくはそうだろう」
兄「…………」

姉「駄目か? 可愛い妹の頼みも兄上は叶えてくれないのか? 男に二言はないんじゃないのか?」

兄「…今日だけだぞ?」ポリポリ

姉「ああ、やっぱり《兄上》は『兄上』だ」ニコッ

兄「?」

姉「行こう、兄上」

【2015年 2月20日】


ニュースキャスター
『こんにちは、お昼のニュースを始めます』

『まず初めに、昨今、暴徒による島の占拠が騒がれているボルネオ島の話題です』

『現在のボルネオ島を占拠しているイスラム過激派は、インドネシア政府に対して独立を要求しているとの情報が入っています』

『マニラの何たらさ~ん』

『はい、フィリピンのマニラ支局の何たらです。こちらでは……』

>>186訂正

兄「…お、おう?」アゼン

姉「勿論えっちなのは禁止だ」

兄「…………」

姉「ただの家族として、ただの兄として、今の私の側にいて欲しい」

兄「それは自分が君の《兄上》だからか?」

姉「ああ、恐らくはそうだろう」
兄「…………」

姉「駄目か? 可愛い妹の頼みを叶えてくれないのか? 男に二言はないんじゃないのか?」

兄「…………」ハァ

姉「…………」ジー

兄「…今日だけだぞ?」ポリポリ

姉「ああ、…やっぱり《兄上》は『兄上』だ」ニコッ

兄「?」

姉「行こう、兄上!」

久々に来たら大作になっててワロタ

つ ④

>>189
thanks。読んで下さってありがとう。

【スマトラ島従軍日記11】


「スマトラの春は遠い」

「最近、インドネシア各地から《メイド》達がこのスマトラに引き上げに来ている」

「今日食堂で同席したのは、コモド島の赴任地から来た《執事》と《メイド》だ」

「2人はドイツ出身。アーリア系の良い顔立ちをしている」

「外来植物の草刈りをしている最中に、コモドドラゴンに鉢合わせた話は、聞いていて痛快だった」

「けれど、今はスマトラの住人だ」

「かくいう我々《ロベルタ》とて、今はかつての陣地を引き上げ、多国籍軍の基地にお邪魔している」

「仕事は近くの町に限られ、厳重な警護の下で行われる」

妹「中華街のあの子ども達は元気だろうか」

妹「人数が過剰で、我々が『何をする』かを考えるために人手が使われたりもする」

妹「飛行機が飛ぶ内に、本国に帰る者もいる」

妹「だが、実はここにも経済面での影響が生じている」

妹「例えば、このドイツ国籍の2人は比較的飛行機に乗るチケットが手に入りやすい」

妹「ドイツ本国の工業力が、彼らの背中に翼を生やしてくれるのだ」

妹「逆に、経済破綻した国では、本国に帰っても『仕事』が無い」

妹「それを知っているから、転勤願いをあまり申請をしない」

妹「そういうことだ」

「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、故郷の空が恋しいです」

【スマトラ島従軍日記12】


妹「スマトラの星は目映い」

妹「前回書き忘れたが、早くも飛行制限が始まっている」

妹「もともと原油高で本数の少なくなっていた空の便は、大幅に削減されている」

妹「そして、戦争が近いためか、各国が原油を買い漁り、産油国のインドネシアに殆ど油が残らない事態に陥っている」

妹「物価も少しだけ上昇している」

妹「特に飲料水の値上がりは、絶対に住民達の不安の現れではないかと推測する」

妹「こうした情報が入るのは、さす多国籍軍の基地だけのことはある」

妹「旧《ロベルタ》陣地のオンボロとは雲泥の差だ」

妹「青ツナギの好青年の部隊は、現在も幼の行方を追ってくれている」

妹「だが、発信器付きの《メイド服》が、あの陣地跡近くの森から発見されて以降、芳しい成果はないそうだ」

妹「こうやって書いていて、軍隊調のキツイ言葉に慣れつつある自分が嫌になる」

妹「我々《ロベルタ》は12人で我々の《ロベルタ》だ」

妹「幼の無事を心より願う」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は強い子です」

【スマトラ島従軍日記13】


妹「スマトラの闇は恐ろしい」

妹「多国籍軍関係者から、最悪最低な噂を聞いた」

妹「我々《ロベルタ》には『蛙爆弾』という名称で伝わっている」

妹「これは人間爆弾の一種だ」

妹「かつて、ヤポーンソルジャーが、米国の戦車相手に行なった肉薄攻撃ではない」

妹「ダーティ・ボム」

妹「…生きている人間の体内に爆発物を埋め込み、救助に来た人間もろとも吹き飛ばすのだという」

妹「最初に発見されたのが、若い身重の妊婦を用いた『爆弾』だったため、『蛙爆弾』というらしい」

妹「分かっているだけで、軍人十数名が被害にあっている」

妹「村人に被害が出ていないのは、遠隔操作式の爆発物を用いているためだという」

妹「『蛙爆弾』の『素材』は、老若男女問わず『使用』されている可能性が高く、やって出来ない話ではない」

妹「また、幼が『爆発』したという情報は入っていない」

妹「だが、いつ彼女の訃報が入ってもおかしくない状況下に、我々《ロベルタ》は置かれている」

妹「私達を他の《メイド》や《執事》達は優しく慰めてくれる」

妹「ありがたいことだ」

「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は今日も草刈りです」

【スマトラ島従軍日記14】


妹「スマトラの新婚さんはうらやましい」

妹「今日、近くの村での農作業の手伝いの後、我々《ロベルタ》は彼らの結婚式に招待された」

妹「こんな状況下でも、彼らは生の営みを忘れていない」

妹「私達と彼らは使用する日常言語が異なり、基本会話が成り立たない」

妹「だが、『《我々》のお陰でこうして華やかな式が挙げられる、ありがとう』と新婦は私達に礼を言ったのは聞き取れた」

妹「後で知ったのだが、新郎の妹が《メイド》になって家計を支えているのだという」

妹「それから、いつもの癖で料理を手伝おうとして、慌てて家人達に止められたのが今日の私の失態だ」

妹「仲間たちからも笑われたが、そこに嫌味は無かった」

妹「外では、私達のspが守る中で宴は始まり、楽しい夜となった」

妹「…………」

妹「酒も振る舞われたが、私達の任務中の飲酒は禁じられている」
妹「だから、帰りにお土産に各自一本つつんでもらった」

妹「これをどうするか、目下それを検討中である」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、琥珀色のガラス瓶を眺めています」

【スマトラ島従軍日記15】


妹「スマトラの兵隊は強い」

妹「今日の任務も、近くの農家のお手伝い。 額に汗を流しながら一本一本苗を植える」

妹「これは楽しいのだが、近所の子ども達が遊びに来ては我々《ロベルタ》に悪戯をする」

妹「…スカートめくりは、きっと何処の国でも共通の遊びだろう」

妹「室内で子ども達の面倒を見ていたはずの《執事》や《メイド》は、彼らの活動力に翻弄されている」

妹「のんびりとした昼下がり、私の背丈はある野生動物が飛び出してきたのには驚いた」

妹「けれど、警護のインドネシア軍人は対して動じず、1発の威嚇射撃だけで動物を追い払ってくれた」

妹「そして、尻餅をついた私に、紳士的に手を伸ばしてもくれた」

妹「…………」

妹「夕方になって基地に戻る時、私は彼から日本製のお菓子を貰い、頭を撫でてもらった」

妹「彼の妹も《メイド》」

妹「それは異国の《兄妹》という感情だけではない」

妹「それだけ、この国の《メイド》の職業的地位が高く、人々から感謝されているのだ」

妹「…尚お菓子は、部屋でみんなと食べました」


「いえす、あいあむりとるしすたー。
貴女の妹は、独りぼっちじゃないようです」

【2015年 2月22日】
(欧州内 某所)


カツン…カツン…

ローマ教皇
「やあ、諸君」ヨォ!

ロ「…苦しい情勢下、こんな遠い場所まで、私の呼びかけに集まって頂けたことを大変嬉しく思う」

ロ「いや、私だけではない。諸君らの協力は、全ての同志達からも感謝の言葉が送られるだろう」

ロ「…本当に、ありがとう」

フカブカ

ロ「さて、諸兄らも知っての通り、現在我々の《子ども達》に危機が迫っている」

ロ「危機とは何か」

ロ「それは、極東地域でこれから開かれるであろう戦争だ」

…ザワ…ザワ…

ロ「静まりたまえ」キッ

ロ「この議案に関して、既に国連も動き始めている」

ロ「かなり早期に本会議が開催出来るよう、現在も各国の首脳との調整が行われているのは承知の通りだろう」

ロ「恐らく4月か5月に、第1回会議が行われる見通しだと聞く」

ロ「…だが、それでは遅い」

ロ「あまりに遅過ぎる!」

ロ「…既にあの2国は、いつボルネオ島鎮圧に向けて、国内の軍隊を動かし『終わって』いる」

ロ「手元の資料を見てくれ」

ロ「これらの写真は、あの2国内の数少ない同志達が身の危険を省みずに送信してくれた『動かぬ証拠』だ」

ロ「スパイ衛星からも確認が取れている」

ロ「後はどちらかの国がゴーサインを出せば、それで『戦争』は始まってしまう…」

ロ「そして、その渦中に《我々の子ども達》は取り残されている」
ロ「…否、インドネシアだけではない」

ロ「日ノ本、ロシア、台湾、asean、nz…」

ロ「予想戦域の周囲全ての国と地域は、日々歩み寄るこの戦争の足音に対して、戦々恐々としながら日々生活を送っている」

ロ「…当然その中には、私達の《子ども達》も数多く存在している」

…ザワ…ザワ…

ロ「なあ諸君、申し訳ないが、私は諸兄らに今一度質問を投げ掛ける」

ロ「…『我々とは何者か?』」

ロ「…………」

ロ「…ああ、いまさら問われる問題でもないだろう。『我々』は『幼児性愛者』の集団だ」

ロ「ロリコン、ショタコン、ペドフィリア、エフェボフィリア…」

ロ「そう、医学上の分類はごまんとあり、社会から忌まれるべき『幼児性愛者』ね集団だ」

…ザワ…ザワ…

ロ「…静まりたまえ、諸君」

ロ「だがそれだけに、我々は現代医学が我らを誤解し、蔑ろにしていかを知っている」

ロ「…『幼児性愛者』とは『幼児性』を『愛する者』であり、『幼児』を『性的に愛する者』ではない」

ロ「仮に後者であっても、現実社会では慎みをもって対応する」

ロ「『変態紳士』」

ロ「…それが我々『幼児性愛者』だ 」

ロ「では、そんな『我々』の根源にあり、その『中心核』たる存在とは何か?」

ロ「…それは『庇護愛』だ」

ロ「『幼児性』とは、その者の未熟な部分をさす言葉だ」

ロ「…君、貧乳がどうとか叫ぶな。 視野狭窄の君は、机の上で国連加入番号の数だけ腹筋をしていろ下さい」カッ!

ロ「…すまん、話を続けよう」

ロ「相手が未熟な部分を愛し、認め、そしてそこに《何か》を見出す」

ロ「時には《父親》となりて未熟な者を導き、時には《母親》となりて未熟な者を支える」

ロ「時には《兄弟》となりて共に歩き、時には《姉妹》となりて共に寄り添う…」

ロ「…それが我々『幼児性愛者』の『心意気』であり、天におわす神から賜りし『永遠の使命』だ」

ロ「互いの弱さを認めあった者の中には、本当の『家族』になる者が現れるかも知れん」

ロ「…だが、それを我々は望む」

ロ「むしろ、そうでなくては、人類は遠くない未来に滅んでしまっても不思議ではない」

ロ「はっきり言おう。宗教家の私が今一度はっきり言おう!」

ロ「【《理想》だけでは『何』も動かないが、《理想》が無くては『何』も生まれない】!」

ロ「…我々は、そのための《何か》を築き上げた!」

ロ「…そのために我々は、宗教、国家、民族それら全てを取っ払う、新たな『枠組み』を我々は構築してみせた!」

ロ「では、後は何をせねばなるまいか!」

ロ「さあ議論を始めよう!」

ロ「国連会議が始まった瞬間に決議を取れるように! 我らの《何か》を助けるために!」


《イエスロリコン、ノータッチ!》
《イエスショタコン、チョイタッチ!》

(同日 画材屋『銀杏と茶碗蒸し』店内)


カランコローン

店「やあ、いらっしゃい」

姉「…………」ペコリ
兄「…………」ペコリ

店「畏まらなくて良いよ。 もっと楽に生きようよ」ヘラヘラ

姉「うむ、店主は元気そうだな」ニコリ

店「うんうん、女の子は笑顔が一番! 待ってろ、今日は玉露を用意させるよ」

姉「楽しみだな」ニコニコ

兄「…………」

姉「どうした兄上、そんな怖い顔をして?」

兄「ん、ああ少し考え事を」

店「平気さ。君の兄上は『兄上』なんだろ?」

姉「うむ、自慢の『兄上』だ」ギュッ

ダキシメダキシメ

店「随分仲が宜しいこって」

兄「…なつき過ぎてまして」ナデナデ

姉「くふふ」ニコニコ

店「仲良きことは美しきことかな。 さてもう大丈夫だよ。 この店の会話は外に漏れることはない」

兄「…さすがは各国の潜入工作員の御用達」

店「よせやい。っと痛てて」

姉「店主、何処か怪我を?」

店「うん、少し日本刀で腹を斬られただけだよ。 おかけで立つのも一苦労だ」ヤレヤレ

姉「!」

兄「…相手は?」

店「う~ん、何と言えば良いか。説明しづらいなあ」

ガチャリ…カラカラカラカラ

?「『旦那さま』~、お茶が入りましたよ~」

?「…こらこらはしたない、お客様の前ですよ?」

カラカラカラカラ…

兄「!」ビックリ
姉「えっ?」アングリ

友「あ、姉だ! 久し振りだね~」ピコピコ

店「ふふふ、びっくりしたかい? こちらは僕の『妻』だ」ニヨニヨ

?「…………」

店「んで、…こっちが僕に斬りつけてきた犯人」

店「僕の『義母上』だよ」ニコリ

(独白)


店「あれは昨年のこと」

店「その時、僕はバチカンにいた」

店「ああ、僕ら(21)同盟謹製の『届け物』を僕らの同志に配達にしてたんだ」

店「相手は、ローマ教皇」

店「本来ならば郵送で済ませるけれど、彼にも社会的な立場がある」

店「箱の中身は彼の名誉のために黙秘するけど、…ヒントとしては《アリス》《アイリスフィール》《画材屋》」

店「…我ながら会心の作品だったけれど、まあ分かる人にだけ分かれば良い」

店「で、無事に手渡ししている時に僕は彼から一人の少女について、小耳に挟んだ」

店「…その少女は、事故で両手両足を失い、バチカンで保護されているらしい」

店「ローマ教皇は『手の早い男』だからね。 直ぐに『弱い者』を自分の手元に起きたがる」

店「僕だって(21)同盟の一員」

店「…自然と僕の足は少女のもとへと向かった」

「少女がいたのは、バチカン市内のとあるマンションの一室」

「明るい色使いの部屋に、彼女を介護する女性が数名。 空調設備も完璧。 扱いは悪くない」

「…でも、僕にはその部屋が日本の座敷牢に見えた」

「だってさ、部屋に『窓』がないんだもの」

「その牢屋の中で、彼女は泣くは叫ぶは」

「挙げ句の果てに、自傷癖で周りに噛みついたり、舌が怪我しないようにとかで、猿轡まで装着させられてたんだ」

「…うん、僕の感覚からすれば狂気の沙汰だよ」

「あれは『医療』じゃない」

「…だから僕は直ぐに、彼女を担いで外に飛び出したんだ」

店「まあ…、僕らの逃避行は近くの公園までで、あっさり終わったんだけどさ」

店「僕は死ぬほど怒られたよ。 …あの時、ローマ教皇の取り成しがなかったら、きっとコロッセオ送りになってたと思う」

店「でもね、叱られる縮こまる僕を見て、彼女は笑ったんだ」

店「…うひひ」

店「んで、その日の晩御飯の時に、『どうして笑ったの?』って尋ねると、『お兄さんが面白かったから』って少女が笑うんだ」

店「そりゃお兄さん、必死にもなるぜ?」

店「…だってお兄さん『ロリコン』だもの」

(店主の独白2)


店「そんなこんなで、ローマ教皇を脅し…もとい『説得』して、僕達は日ノ本に帰ってきた」

店「僕が彼女の《保護者》として、ね」

店「でもね、やっぱり女の子は女の子なんだよ。 …どんな状態であってもね」

店「彼女の自傷癖は再発した」

店「暴れたり、わめいたり、叫んだりもした」

店「普通の『ロリコン』なら諦めてるはずだ。 だけど僕には彼女の症状に《心当たり》があった」

店「…うん、そうそう『自殺志願者の初期段階』」

店「『誰かに甘えたい』」
店「『誰かに見つけて欲しい』」店「『誰かから必要とされたい』」

店「…まあ、『人間』なら当たり前の欲求だろうさ」

店「でも、少女にはそれを満たす術がない」

店「今となっては、本人もそれが思い込みの一種だったと笑ってるがね?」

店「…けれどもそんなのは乗り越えてから解ること」

店「まあ、そこら辺は後でのろけるから良いや」

店「で、当時の僕は、彼女に対して《保護者》として出来る限りのことを行いつつ、彼女が生きるための『立脚点』を探し続けた」

店「我ながら馬鹿な男と思うよ」

店「…でも、それが僕の性分だ」

店「…8月の第1週目だったかな?」

店「取り敢えず、僕は店をspに任せて、少女とコミュニケーションを取り続けることを選んだ」

店「まずは、最大の敵手足を失った《絶望感》へのアプローチ」

店「僕はこれには驚かされた。 …《何が》って、少女の中に、独自の価値観があるってことに」

店「姉君は知っているが、少女の家は貧困層に位置する。 彼女が《何か》になることで『家族』を養う方針をとっていた」

店「…その矢先の事故」

店「もう自分では《何か》になることが出来ない、考えつかない」

店「…でも、それでは『家族』が飢えてしまうってね」

店「…そうなんだよなあ」

店「《何か》を求める職業の多くは『五体満足』という前提条件があるんだ」

店「少なくとも研修期間中は、『通貨』が支給される仕組みだけれど、少女の場合、『それ』が打ち切られかけていたんだ」

店「逆にそれこそ僕が見捨ててしまえば、少女は『あの部屋』か『家族』のもとで介護人の面倒になる」

店「『社会参加』してこその『通貨』だからね」

(店主の独白3)


店「僕達の会議は、既に初日から行き詰まってたんだよなあ」

店「…因みに、冗談で職業『抱き枕』では駄目かと聞いたら、本気でspに殴られた」

店「あれは禁句だったなあ」

店「けれども、幾つか発見もあった」

店「例えば少女が、軽度の『依存気質』を有していたこと」

店「ああ、悪くいうつもりは無い」

店「分かりやすい表現なら、『広く浅い交友関係』よりも、『狭くても深い人間関係』を結ぶことを好む傾向にあったというだけの話さ」

店「…そして、1人になる状態を極度に恐れること」

店「安心できる人間が側にいないと、極端に自信を失ってしまい、言葉が出てこないそうだ」

店「少女は、『信頼出来る人間』から『誉められる』という『経験』が極端に得にくい環境の子どもだったんだよ」

店「…一昔前、日ノ本で流行った《草食系うんぬか》ってのは、要するに、日ノ本人が『家庭』を省みなかった結果の産物だと思うよ?」

店「…勿論、正しいかどうかは別として」

店「だから取り敢えず、僕は彼女に自信を持たせるよう誉めることから始めた」

店「《君は可愛い》、《君は凄い》…」

店「でも、結果は効果無し」

店「僕らは気の良い話相手だけれど、そこまで深い関係じゃなかったからね」

店「だから少女は、泣くことはなくなったけど、ただそれだけの成果だったんだ」

店「ならば、本人の閉じ籠っている世界の環境を多少強引にも変えるしかない」

店「…そこで『コスプレ』の出番だ」

店「いや~、さすが我ら(21)同盟の面子は、やることなすこと全て抜かりが無い」

店「幸い、姉君が日本フリークだったのおかげで、少女も軽い日本語のヒアリングは出来た」

店「…つまり漫画は無理でも、アニメなら見ることが出来る」

店「いわいる名作アニメを見せて、『コスプレ』を行う」

店「うん、少女本人としては、自分の知っている単語以外、良く解らない言葉の羅列だ」

店「戸惑いながらも、恥ずかしげに《コスプレ》を行う少女の姿は、動画で残す価値があったよ」

店「…まあ、僕も一緒になって楽しんだし、結果オーライ」

店「その後、僕らはお互い水着を着て風呂に入った」

店「…本来、こうした【性的な行動】は原則禁止だけれど、本人と監査官の同意があれば良い」

店「裸ではなく半裸の付き合いけど、まあ風呂は良いものさ」

店「少女の身体を洗い、なんとなく誉めてみる」

店「例えば、頭をすすいだ後に、『良く出来たね』とかね」

店「湯船の中では、自分のつまらない話を餌に少女の話を誘いだし、会話を続ける」

店「そうして、少女の物理的に触れ合い、だんだん距離を縮めていく」

店「それを毎日繰り返す」

「そうして、僕は『話相手』から『信頼出来る人』を目指した」

「…少女の心の壁は、一寸特殊といえば特殊なものだからね」

「効果は、数日で出たよ」

「僕は、少女から【試練】を言い渡された」

(店主の独白4)


店「その日、僕らは車椅子で散歩に出掛けていた」

店「だがその散歩の途中で、彼女は心ない罵声が投げつけられた」

店「…奇天烈な格好に身を包んだ厚化粧の中年女性は、こう公衆の面前でこう叫んだんだ」

『気味が悪い』
『見ていて不快になる』
『あっちにいけ』

店「…………」

店「…僕はね、ただ単純にその女性に殺意が湧いたよ」

店「彼女が涙を堪えていなければ、きっと僕は奴に掴みかかっていただろう」

店「案の定、その夜は大荒れに荒れた」

店「少女は介護役の女性すら近づけず、周囲の人間を拒絶したんだ」

店「…そこで登場したのが僕だった」

「僕が部屋に入ると、彼女は出ていくように命令してきた」

「…勿論、断ったけどね」

「だって、介護役の人と違って、僕が傍に近づいても暴れなかったからね」

「そして彼女の恨み辛みを散々『聞き流した』後、僕は初めて彼女に怒ったんだよ」

『なるほど、確かに』
『あの女性は』
『君を侮辱した』

『…だが、僕らは君に何か失礼な事を言ったかい?』

「彼女は沈黙したよ」

「逆に物分かりが良すぎて、叱った僕の側が唖然としたものさ」

「次に彼女は、僕に赦しを乞うてきた」

「僕は咄嗟に答えたよ」

『ならば』
『お尻ぺんぺんだ』

「…習慣って恐ろしいね」

「彼女は頷いて、僕に任せると呟きやがりました」

「咄嗟の冗句に真面目に答えられると、これほど返答しにくいものは無いよ」

「でも、言ってしまった手前、紳士たる僕はやらざるを得ない」

「『有言不実行』は、お互いに信頼関係を失うものだからね」

「…暗い室内で、僕は黙々と彼女のおしりを叩き続けたよ」

「少女の方は良い気なもんさ」

「『優しく叱ってくれる大人』を手に入れて安心して身を委ねている」

「対して僕は、初めての体験に、いつ止めれば良いのかが分からず、ひたすら『ぺしーんぺしーん』だ」

「10分ぐらい叩い続けて、僕はあることに気がついた」

「少女の息が荒い」

「…語弊があること承知で発言するけど、ぶっちゃけ、女性の性感の半分は場の雰囲気に左右されてると思う」

「うん」

「気になって彼女の『おしめ』を取ってみると、やっぱりそこは濡れててさ」

「それで彼女の眼が、少しぼーってしてるわけですよ」

「うわぁですよ。うわぁ」

「それでいて、手を止めた僕を甘えた様に見上げてくるんだ」

「…………」

「…で、若干引き気味の僕が手を振り上げると、こくりと頷くわけですよ」

店「もうさ…、『聖騎士』の正体が『暗黒剣士』だった時以上の驚きだよ」

店「…僕も雰囲気に流されたら流石にやばいと思ってね」

店「こう、彼女のお尻の穴に急いで指を突っ込んで、ゆっくり出し入れして彼女を果てさせたんだ」

店「…今だから言えるけれど、あの時の僕は、彼女に危険を感じててさ」

店「何か『嫌われるための理由』を作ろうとしてたんじゃないかと思う」

(店主の独白5)


店「次の日からの少女の『変わり様』は凄まじかったよ」

店「…猫なで声どころじゃない」

店「隙あらば僕にスキンシップを求め、より刺激的な行為を要求するようになったよ」

店「いや、嬉しいか嬉しくないかと聞かれれば当然嬉しいよ?」

店「でも、だんだん要求はエスカレートはしてくるのさ」

店「多分ね、自傷癖と依存気質がハイブリッドした被虐癖というやつだ」

店「かなり異常だと思うよ」

店「《コスプレ遊び》をした後、御褒美にキスやスキンシップを望む」

店「僕はあの経験を通して、リストカットをしたがる女の子の心情に触れた気がするよ」

店「確か、最初は指で弄り始めて、次の日には洗濯鋏を使用していたと思う」

店「プレイ内容も、よりアブノーマルな方向性に」

店「…まあ、付き合う僕も僕なんだけどさ」

店「でもそれをすると、彼女は安定するんだ」

店「夜は良く寝る。 ご飯も良く食べる。 他の監査官とも仲良く接してくれる」

店「この時期が一番危険な綱渡りの時期だった気がする」

店「完全に『堕落』させてしまえば、それは彼女は人生を棒に振らることになる」

店「…でも、それを行わねば彼女の生きる『活力』に成らない」

店「だから、僕らは彼女に対する褒美を与える代わりに、彼女自身にも変革を求めた」

店「…彼女の《何か》には、かなり方向性が見えてきていたからね」

店「…………」

店「現在、《メイド》を含め、多数の外国人が日ノ本に訪れている」

店「けれども、完全に日ノ本語をマスターしている人材は、まだまだ足りない」

店「そして日ノ本人の中で、複数の言語を人材は少ない」

店「日本における《メイド》の任務場所になりやすい農村部や漁村部では、もっと少ないだろう」

店「故に、《彼ら》と他の日ノ本人との橋渡しとなる人材を目指すことは有効だ」

(再び 画材屋【銀杏と茶碗蒸し】店内)


店「…とまあ、そういうことだね」

兄「…………」
姉「…………」

店「どうした兄上君、鬼の形相をしているよ?」

兄「」コノヤロウ

店「…その後、8月第2週ぐらいに御家族に現状報告のdvdを送ったわけよ」チシシ

姉「…それでは、剥製は?」オソルオソル

店「ああ、妻の意向で、事故で千切れてた手首足首を型どりしてさ、デスマスクならぬ、デスハンドとデスレッグを複製しただけだよ」

友「やっぱり無くなるのは、寂しいですから…」

店「んで、国際状勢の雲行きが怪しくなれば、僕もあまり店を空けるわけにもいかない状態になる」
店「そこで急遽、ツテを頼んで友母さんを日ノ本で呼んだわけだが…」

友母「…………」ドキリ

店「まあ、dvdの中身は推して知るべし量るべし」

友「…私達の夫婦生活を勘違いしたお母さんは、京都で日本刀を買って店主さんに斬りかかったんです」クスクス

店「父親と母親の性交渉に衝撃を受ける子ども達が溢れる世の中で、お義母さんは、実に貴重な体験をされたのさ」

友母「……///」アセアセ

姉「兄上」フム

兄「なんだい姉君」

姉「やはり兄上も、『そういうこと』がしたいのか?」

兄「…君には質問の意味を理解した上で、良識的な質問を求める」ハァ

姉「?」キョトン

店「まあまあ、そう剥きになりなすんなって」

兄「…店主、本日まで自分は貴方に尊敬を持って接して参りました」

店「そだっけ?」

兄「……」ブチリ

店「冗句冗談、いきなり胸ぐらは良くない。 …それよりも、僕の独白を完全に理解している姉君の将来が少々気になるね」

兄「どの口が抜かすか」

友「うん、姉。私のおすすめはこの狐尻尾の……」フリフリ

姉「////」

店「あっはっは」

兄「…全く。 それで依頼していた情報は?」

店「それならこちらだ」

ヒョイッ…パシッ

兄「………!」クワリ

店「な、結構やばそうだろ?」

兄「…それでこんなに場をお茶らけた雰囲気にしたのか?」

店「さてね、僕が妻とイチャラブするのが好きなだけかもよ?」

兄「…いや感謝する」

ゴソゴソ

姉「兄上?」

兄「なんだ姉君」

姉「その紙、見せてくれ」

兄「…何を言っている?」ピクリ

店「ああ、良い忘れてた。 …既に姉君は、その紙が『何か』知っている」イヒヒ

>>236
『良い忘れてた』

『言い忘れてた』

乙乙

店「駄目だよ。 『中身まで』を確かめないと」

兄「…あの係員か」

店「うん、あの『パンフレット』は囮だね」

兄「封を切らず、包装紙の間に『伝言を書いた紙』を挟み込むのは常識だろ? …《兄上》?」クケケケ

兄「…………」クッ

姉「兄上、見せてくれ」

グイッ

兄「無理だ」

姉「…兄上?」

兄「姉君。本当に申し訳ない」グッ

姉「何故だ、どうしてそんな意地悪を言うんだ!」

姉「兄上は私を驚かそうと思って内緒で調べてくれてだろう!」

兄「…………」

店「…言えないなら僕の方から説明させてもらうよ」

兄「!」クッ

店「姉君、実は…」

兄「…君の妹は現在、多国籍軍スマトラ島基地にいる」

姉「! 本当か兄上!」パアァ

兄「…ああ本当だ」

>>240訂正

(同日 更に、画材屋【銀杏と茶碗蒸し】店内)


姉「…何故だ! どうしてそんな意地悪を言うんだ!」

兄「…………」

姉「兄上は私を驚かそうと思って内緒にしていたんだろう!」

店「言えないなら僕の方から説明させてもらうよ」スゥッ

兄「!」クッ

店「僕は優しいんだ。『結果』報告は、『兄上』の役目だと思ってね」

兄「…………」ギリッ
店「…………」ニヤニヤ

店「姉君、実はね~」

兄「! …君の妹は現在、多国籍軍スマトラ島基地にいる」

姉「それは本当か、兄上!」パアァ

兄「…ん、従姉君からの情報だ。 まず間違いがない」

姉「行きたい! 私は次の任地をインドネシアにしたい!」

店「…いやいや姉君、君はスマトラの引き上げを聞いてないのか?」

姉「?」ヒキアゲ?

兄「…日ノ本のマスコミは、計画に批准ていない中国や韓国に『配慮』している」

店「相変わらず腐ってんね」ヤレヤレ
姉「??」クビカシゲ

兄「…ん、姉君は気にしなくていい」

店「まあ…、せやね」

兄「話を続ける」

姉「……」コクリ

兄「…妹君は《ロベルタ》という部隊に属し、《ロベルタ》は『アイドル部隊』として世界では報道されている」

姉「!」ビックリ

兄「…この《ロベルタ》の任務は、《メイド》のイメージアップだけではない」

姉「?」

兄「同時に《ロベルタ》の国籍も広め、彼女らの国が持つ《経済崩壊》などの《悪いイメージ》を『払拭』することも任務としている」

店「投資は感情論、というやつだね」

姉「…つまり?」エート

兄「…君も見るか。 これが《メイド部隊》極東支部の『回答』だ」

ピラリ

【我々は《ロベルタ》の引き上げを《限界》まで『許可』しない】」

姉「っ!」

兄「…分かるだろう。 極東支部は《ロベルタ》を『悲劇のヒロイン』にするつもりだ」

店「…そして、既にインドネシアへの渡航は禁じられていると来たもんだ」

姉「そんな…」フラッ

兄「姉君!」

ダキシメ!

姉「…………」

兄「しっかりしろ!」

姉「…嘘だ、そんなの嘘だ」

兄「姉君…」

姉「…兄上も、従姉上も、みんなして、私を謀ろうとしているんだ」ジワッ

兄「…………」ギュッ

姉「全部冗談で、実は全部嘘だった、という『サプライズ』なんだろう…」ポロリ

兄「…すまない」モットギュッ

姉「……あんまりだ…そんなの、…あんまりじゃないか……」ボロボロ

兄「…店主、貴方はこんな姉君の泣き顔を見たかったのか?」ギロリ

店「いいや、僕は『ロリコン』、弱きを護る気高き者」

兄「…だが、姉君は泣いている」

店「うん、そだね」ハッキリ

兄「…………」

店「…だから、君達2人に1つ提案があるんだけど話していいかな?」

兄「」コクリ

店「ありがと。…今、僕の手元には、どうしてだか、インドネシアのお隣マレーシア行きの渡航券が2枚ある」

兄「…それが何か?」

店「そして、マレーシアには愛すべき我が(21)同盟の協力者がいて、彼らは良き理解者だ」

兄「」コクリ

店「さて提案、


店「…君達『密入国』って興味ある?」

>>6です。

一応、ここで区切りです。

次回…

姉『…妹を監禁しにきた』
更新未定。

誤字脱字ご容赦、まとめてくださると大感謝。

乗っ取り申し訳ありません、お邪魔致しました。

乙かれー



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