幼なじみ「これより、第十回貧乳会議を開催します!」(56)

幼なじみ「進行はわたくし、貧乳の会会長の幼なじみです。宜しくお願いします。他の参加者は」ペターン

妹「貧乳の会会員no.1、妹です。宜しくお願いします」ツルーン

後輩「貧乳の会会員no.2、後輩です。頑張って貧乳差別を無くしていきたいと思います」ストーン

幼なじみ「以上が今回の会議参加者です」

幼なじみ「今回の会議では、貧乳である事によって受けた精神的苦痛をみなさんに訴えましょう」

妹「つらい思い出を告白する事によって、貧乳差別をしている人や偏見の目で貧乳を見ている方々に考えを改めてもらおうと言う事ですね」

幼なじみ「そのとおりです。ではまずわたしから」

幼なじみ「あれは数カ月前、とても暑い夏の日の事でした……」

幼なじみ「いつものように男くん、つまり妹ちゃんにとっての兄、後輩ちゃんにとっての先輩の部屋に、窓から無断で入った時の事です」

妹「あの危ない移動方法まだ使ってたんだね幼なじみさん」

幼なじみ「ええ、一番手っ取り早いですからね」

幼なじみ「それはともかく、その時わたしは余りの暑さゆえに、薄着で男くんの部屋に向かったのです」

後輩「それはまずいですね……」

妹「貧乳が極力避けなければいけない薄着で、よりによってあのデリカシーのないお兄ちゃんの部屋に行くとは……」

幼なじみ「ええ、ええ、たしかにそのとおりです」

幼なじみ「しかしあまりの暑さに薄着せずにはいられなかったのです」

幼なじみ「もしかしたら暑さで少し思考力も落ちていたのかもしれないし」

幼なじみ「ひょっとしたらそうでなくて貧乳である事によって服装まで制限されるのに対する反抗心だったのかもしれません」

妹「立派です」パチパチ

後輩「自分の身を削って間違っている事に反対するとは」パチパチ

幼なじみ「ありがとうございます、ありがとうございます」

幼なじみ「では、続きをお話しします」

幼なじみ「そしてわたしは薄着のまま、男くんの部屋にお邪魔しました」

幼なじみ「男くんは18禁のpcゲームをやっている途中でした」

幼なじみ「長い付き合いですから、彼はそんな事で慌てませんし、わたしも引いたり蔑んだりはしません」

幼なじみ「むしろそのゲーム、あ、あま……?に巨乳の女の子ばかり映っていた事にイラッとしました」

幼なじみ「まあそんな怒りは明らかに理不尽なものなので、すぐに納める事にしました」

幼なじみ「問題は、部屋に入ってきたわたしに向けた男くんの言葉です」

後輩「ゴク……」

妹「お兄ちゃんはいったい何を……?」

幼なじみ「子供の時からの付き合いとはいえ、年頃の女の子、しかも薄着なうえに汗でちょっぴり服が透けている女の子に、彼はこう言ったのです」

幼なじみ「『おまえその胸なら肩紐ついてないブラジャーで充分だろww』と、彼はそう言ったのです」

後輩「そんな……」

妹「お兄ちゃん……なんてひどい事を……」

幼なじみ「しかもその時汗で透けて見られてしまったであろうブラは、わたしの一番のお気に入りだったので、それまで否定された気分になりました」

後輩「う、うう……」ポロポロ

妹「ひどい……ひどすぎるよそんなの……」グスン

幼なじみ「わたしは余りの怒りと絶望と悲しみにうちひしがれました」

幼なじみ「そして陸上で鍛えたこの足による金蹴りを10発男くんにくらわせました」

妹「お兄ちゃんが次の日まで喋ることもできずにうずくまってた、あの日にそんな事が……」

幼なじみ「それからわたしは自分の部屋に帰りました」

幼なじみ「余りのショックに彼の息子が二度と使い物にならなくなる心配もせず、かと言って泣くこともできず、ただただ自分の胸を見つめて座り込んでいました」

後輩「ぐすっ……ぐすっ」

妹「幼なじみさん……」

幼なじみ「もちろん見つめるだけでは大きくなるわけもなく、それによって更なる虚しさを覚え、さらに絶望しました……」

幼なじみ「以上がわたしの体験した貧乳差別の内容です」

後輩「ひっく、ひっく……」

妹「ごめんなさい。幼なじみさん……あたしの兄がそんな事を……もう二度とそんな事言わないように、あたしからもよく言って、蹴っておきますから……」

幼なじみ「いいえ妹さん。あなたのせいではありません」

幼なじみ「それに男くんが反省している事は、わたしに会うと股関を押さえながらブルブル震えて、なんでも言う事をきいてくれるようになった事からもわかっています」

妹「幼なじみさん……」

幼なじみ「しっかり反省しているなら、これ以上責めるのは止めましょう。わたし達は戦いたいのではなく理解してもらいたいのですから」

妹「はい……」

幼なじみ「では、お二人は何か貧乳差別を受けた話はありますか?」

妹「…………」

後輩「…………」

幼なじみ「あるけど話せない、という顔ですね」

幼なじみ「無理もありません。わたしも先程の話を人に話せるようになるまで、心の整理に時間がかかりましたから……」

幼なじみ「もし話せるようになったら、でけっこうですので、無理しないでください」

妹「はい……」

後輩「…………」

幼なじみ「ではその間に、基本的なところをおさらいしておきましょう」

幼なじみ「後輩さん、貧乳とはどんな胸の事ですか?」

後輩「は、はい……平均の大きさより小さい……それもギリギリではなく、目で見てわかるくらいに平均の大きさより小さいおっぱいの事です……」

幼なじみ「そのとおりです。平均と大差ないくらいの小ささなら、それは誤差の範囲として貧乳とは呼ばれません。虐を言えば、平均と大差ないくらいの大きさでは巨乳と呼ばれない、という事でもありますが」

幼なじみ「世の中にある大抵のものは何かの要素で測られてランク分けされます」

幼なじみ「例えば速さならば『速い・普通・遅い』とランク分けされ、重さならば『重い・普通・軽い』とランク分けされる、という事です」

幼なじみ「そしてこれを女性の胸の大きさに当てはめると『巨乳・普通乳・貧乳』となるわけです」

幼なじみ「まあこれは大雑把なランク分けであり、他にも巨乳より大きい超乳や、貧乳より小さい無乳などがありますが、今回は一番ポピュラーなランク分けとして、『巨乳・普通乳・貧乳』を採用して説明したいと思います」

幼なじみ「分かりやすいように、わたし達の周りの女性に当てはめてみましょう」

幼なじみ「まず巨乳。これは男くんと妹ちゃんの姉である姉さん、そしてその姉さん、男くん、妹ちゃんの母さん」

妹「」ビクッ!

幼なじみ「そしてもう一人、後輩ちゃんの親友である後輩友ちゃんの三人が当てはまります」

後輩「」ビクッ!

幼なじみ「二人とも、身近に巨乳がいるというのはつらいでしょう。しかもそれには誰の悪意もないから何をうらむ事もできない」

妹「う、うう……」ポロポロ

幼なじみ「妹ちゃん?大丈夫ですか?」

妹「うっ、大丈夫です……でもあたしが貧乳である事によって受けた被害を思い出してしまって……」ポロポロ

後輩「妹ちゃん……」

幼なじみ「……話していただけますか?」

妹「はい……あたしは、話さなきゃいけないんだと思います……」

妹「あれは、1週間前の事です……」

妹「朝起きると、雲一つない快晴で、あたしは朝からいい気分になりました」

妹「けれど、その五分後に、あたしはどん底に叩き落とされる事になるんです……」

妹「その快晴の下で深呼吸しようと、あたしは朝ご飯も食べずに一階の窓を開けました」

妹「そしてその快晴を見上げようと顔をあげると……」

妹「そこにあったんです。『それ』が……」

妹「いえ、そんなに珍しいものではありません。どこの家庭にもあるものです」

妹「ただ、珍しいものではなくとも忌まわしいものではありました」

妹「『それ』、つまり我が家の洗濯もの、いえ」

妹「もっと詳しく言うなれば、洗濯されて干されていたブラジャーです」

妹「母と、姉と、そしてあたしの……」

後輩「…………」

幼なじみ「…………」

妹「その様子だと、わかっちゃったみたいですね……」

妹「母のブラジャーと姉のブラジャー、その二つとまるで比較されるように並んで干されていた、あたしのブラジャー、という状況を」

妹「もういっそ、滑稽な画でしたよ」フッ

妹「あまりにも、差がありすぎて」

妹「マンガでたまに見られる『強さのインフレ』でやられる側のキャラのように、圧倒的な大差で負けていました」

妹「ましてやあたしの場合はやられる側のキャラと違って、『強かった時期』もないですからね……」

妹「ほんとう、滑稽なだけでしたよ……」

妹「バスケットボールとサッカーボールのとなりに、テニスボールが落ちているようなその画は……」

妹「以上があたしが貧乳である事によって受けた被害です」

後輩「…っ…っ」ヒグッヒグッ

幼なじみ「……っ」

妹「もちろん、お母さんにもお姉ちゃんにも悪意なんてないのはわかります」

妹「けれどあたしはあれ以来、どんなに晴れている日でも、自分の部屋での部屋干しでしか、ブラジャーを干せなくなってしまいました」

幼なじみ「妹ちゃん……」ギュッ

後輩「つらかったんだね、妹ちゃん」ギュッ

妹「う、ううう……」グスッ

幼なじみ「妹ちゃん」

妹「はい……」

幼なじみ「今度から晴れた日は、わたしの部屋のベランダにブラを干しなさい」

妹「……え?」

幼なじみ「雨ならしかたないけど、部屋干しするとちょっと臭うわよ。女の子がそれじゃいけないわ」

妹「で、でも……」

幼なじみ「大丈夫。家も隣なんだから。それに……」

幼なじみ「わたしもあなたと同じよ」

妹「…………」

幼なじみ「だから比べられる事もないわ」

妹「はいっ……ありがとうございますっ……」ポロポロ

幼なじみ「さて、次は普通乳です。周りの女性に当てはめてみましょう」

妹「はい」

後輩「わかりました」

幼なじみ(やっぱり巨乳の話よりはテンションが下がらないようね)

幼なじみ「では、わたし達の周りの普通乳の女性です」

幼なじみ「まず、わたしの友人にして男くんのクラスメイトである女ちゃん」

幼なじみ「そして、同じく男くんのクラスメイトのツンデレちゃんです」

後輩「たしかに、あのお二人は平均的なサイズですね……」

幼なじみ「ええ、それは修学旅行のお風呂で直接見たわたしが保証します」

妹「いいなぁ……ちっちゃくなくて……」ツルーン

幼なじみ「そうですね。わたし達のような貧乳の立場としては、普通乳さえも憧れのサイズになり得ます」

幼なじみ「いえ、巨乳までの大きさになりますとむしろ憧れではなく敵意を持ってしまいますから、ある意味普通乳こそが、貧乳の最も憧れるサイズなのかもしれません」

後輩「そう考えるとますます羨ましいなぁ……」ストーン

幼なじみ「そうですね。せめて普通乳になれば、初期からあるその不愉快な擬音もつけられずに済みますから」ペターン

幼なじみ「しかもその風呂で見たところ、ツンデレちゃんはただの普通乳ではなく、普通乳の中でもランクの高い『美乳』の持ち主でしたからね。ますます羨ましい」

妹「ふわぁ……」

後輩「いいなぁ……」

幼なじみ「そう、男性も女性も、胸の大きさよりも形や乳首の色を気にする人は多い」

幼なじみ「巨乳になるよりも美乳になるほうが、難易度は高い気がしますしね」

幼なじみ「まあ、一応巨乳や貧乳の中にも美乳は存在していますが……美乳といえば普通クラスの大きさの胸をイメージする事が多いでしょう」

幼なじみ「巨乳で美乳などという究極完全乳の事にいたっては想像すらしたくありません」

幼なじみ「それでは、最後に貧乳ですが……」

幼なじみ「これは最初にやりましたね……認めたくありませんが」

幼なじみ「わたしこと幼なじみ、妹ちゃん、後輩ちゃんの三人です」

妹「…………」

後輩「…………」

幼なじみ「繰り返しますが認めたくはありません。しかし認めなくてはならないでしょう」

幼なじみ「認めなくては胸を大きくする努力はできないのですから」

妹「……はい」

後輩「……はい」

幼なじみ「そう、それが第一歩です」

幼なじみ「わたし達には『努力する』という道が残されている」

幼なじみ「しかし認めないなら、その道さえも閉じてしまうのですから」

幼なじみ「では、もういい時間ですし、今回はここでお開きにしましょう」

後輩「…………」

後輩「あ、あの……」

幼なじみ「どうしました?後輩ちゃん?」

後輩「わ、私だけ貧乳被害を話してなかったから、その……」

後輩「ちゃんと話します……」

妹「後輩ちゃん……」

幼なじみ「……無理しなくていいんですよ?」

後輩「いえ……話します!話させてください!」

後輩「幼なじみさん、妹ちゃんが泣いたのを見て気を使ったんでしょう?」

後輩「巨乳の人達の話の時、後輩友の事はほとんど話さないままに、普通乳の人達の話に移りましたから……」

幼なじみ「……バレてましたか」

後輩「いえ、いいんです。むしろ、優しくされて嬉しかったですから……」

後輩「だからこそ、私は話したいんです」

後輩「同じ貧乳のみなさんに隠し事をしたら……」

後輩「私は本当に行くところが無くなるから……」

後輩「だから、話させてください」

後輩「私と、私の親友の後輩友の間に起こった出来事を」

幼なじみ「…………」コクッ

妹「…………」コクッ

後輩「そう、あれは去年の春」

後輩「身体測定の時の事です」

後輩「私は身長、体重、その他を計り終えました」

後輩「バストを計る時は……他の人のサイズが読み上げられるのが聴こえないように、耳をふさいで、目でもなるべく他の女子の胸を見ないようにしてましたけど」

後輩「それで自分の身長、体重、その他のデータが書かれている表を、保健室に持って行く途中でした」

後輩「その時、後輩友が声をかけてきました」

後輩「後輩友は、私の体重を教えて欲しいと言ってきたんです」

後輩「私は少し恥ずかしかったけど、誰にも言わないという約束で、後輩友に自分の体重を教えたんです」

後輩「すると、後輩友は何やら複雑そうな顔をしました」

後輩「どうやら身長は同じくらいなのに、体重は後輩友のほうがほんのちょっとだけ、重かったみたいなんです」

後輩「そして後輩友は言ったんです」

後輩「『やっぱりダイエットしなきゃダメかぁ』って」

後輩「『後輩と身長は同じくらいなのに体重はあたしのほうがあるんだもんねぇ』って」

後輩「そ、それで……それに対して私はこう返したんです」

後輩「『そ、そうだね』って」

後輩「『私も最近食べすぎだから一緒にやせよう!』って……」

後輩「違うのに……明らかに違うのに……」

後輩「原因は太ってる差じゃなくて胸の大きさの差なのは当然なのに……」

後輩「私はそれを認めたくなくって……」

後輩「嘘をついたんです……」

後輩「…………」ヒグッヒグッ

妹「後輩ちゃん……」

幼なじみ「…………」

後輩「以上が……私と後輩友の間に起こった出来事です」ヒグッヒグッ

幼なじみ「後輩ちゃん」

後輩「……?」

幼なじみ「本当にしてあげればいいじゃない。その嘘を」

後輩「え……?」

幼なじみ「後輩友ちゃんと一緒にダイエット頑張って、
それに加えて努力して胸大きくなれば……」

幼なじみ「体重もだいたい同じになって、こんな事はもう起こらないんじゃない?」

後輩「はいっ……はいっ」ポロポロ

幼なじみ「さっきも言ったでしょう?」

幼なじみ「私達には、まだ『大きくなる努力をする』という道が残されてるのだから」

幼なじみ「ただ、努力の結果についての決まり、『貧乳の会絶対の掟』も忘れないでね」

後輩「はいっ……」

幼なじみ「妹ちゃんもよ?」

妹「はい、もちろん覚えてます」

幼妹後「「「自分の努力が報われなくても、努力が報われた人をうらまないこと」」」

幼なじみ「ふふ、きちんと覚えてるみたいね」

妹「もちろん」

後輩「たとえ大きくなっても、小さいという事でみんなで悩んで、慰めあった時間は変わりませんから!」

幼なじみ「本当にいいコね、二人とも」ニコッ

妹「えへへ」

後輩「あはは」

幼なじみ「じゃあ今度こそお開きにしましょうか」

妹「はい」

後輩「そうですね」

妹「帰ったら今日も牛乳飲まなきゃ」

後輩「寝る前のストレッチ、忘れないようにしなきゃ」

幼なじみ「ふふ」

幼なじみ「では、これにて第十回貧乳会議を終わります!」


おわり

予定より長くなったけどおわりです
読んでくれた人、ありがとうございます

みんなも好みの胸じゃないからってひどいことしちゃダメだぞ!

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