【咲-Saki-】京太郎「霞色の空」 (1000)


 京太郎
 不定期
 非安価
 原作キャラ崩壊

 みやながけで予告していたシリーズ


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 1 【名前】


 今年の夏も熱い。

 地元の鹿児島も暑かったけれども、東京はコンクリートジャングルの名の通りもっと暑いのだ。

 特に一部分に汗が溜まり、汗疹になってしまうわ、なんて言っていたら古くからの親友に睨まれた。


 「霞ちゃんは贅沢なんですよー。

  あるだけマシなんです」

 「そうは言うけど、ここまで大きいと不便も多いのよ……。

  まともなブラもないし」

 「はいはい。皮肉ですかー。

  私なんてブラがなくても問題ないですよ。

  お小遣いを節約できてとっても嬉しいです!」


 プンプンと怒り始めた彼女に困ってしまう。

 霞からすれば本当に死活問題だ。

 この大きさの胸では下着や水着どころか、普通に生活するだけでも危ないときがある。

 しかし、初美からすればせめて年相応の体型が欲しい。とのことだ。

 幾度となく繰り返されたやりとりではあるが、話が平行線で進むことはない。


 「可愛いブラだって付けられないのよ。

  専用のオーダーメイドじゃないと」

 「なら作って貰えばいいじゃないですか。

  専用のオーダーメイドで可愛いやつ」

 「そんなお小遣いないわよ……」


 高校生として与えられているお小遣いなんてたかが知れている。

 霞は毎月5000円のお小遣いをもらっている。

 それはバイトが出来ない身分であるからこそ、親が渡してくれているものだ。

 他の女の子たちがバイトをして可愛い服や靴を買うことに憧れを抱いたことは一回や二回ではない。

 では霞もお小遣いを貯めて服を買えばいいのかといえば、そういうわけにはいかない。

 普通に買ってもらえる服などの分はいい。下着だって親に買ってもらえる。


 ――だが、女子高生が好きな『かわいいやつ』を買ってもらうのは些か難易度が高い。


 オーダーメイドで値段も張るし、なんと言って買って貰えばいいものやら、だ。 

 ため息をつき、諦めながらも初美の話に付き合う。


 「私だって霞ちゃんにないものがあるはずです!

  別の魅力で勝負するんですよー」

 「それにしても、その改造巫女服はやりすぎよ」

 「存在が18禁な霞ちゃんに言われたくないです」

 「それは酷くないかしら!?」


 うん。いつもこうだ。

 初美との言い合いに勝てた試しがない。

 女の子同士だから言える本音も、彼女となら言い合える。

 初美はギリギリアウト、いや思いっきりアウトな巫女服を着ている。

 それも彼女にとっては自分自信の魅力を探すための一つの行為なのかもしれない。

 それにしてもやりすぎなのではないか、数年後には後悔して頭を抱えるタイプかもしれない。

 果たしてこの痴女ルックを好きになってくれるような人はいるのだろうか?


 「もう、助けて巴ちゃん。

  あなたはどっち派?」

 「そんなの決まってますよねー。

  巴ちゃんもこっち派ですから!」

 「いきなりこっちに振らないで!?」


 先ほどから我関せずを貫いていた巴にも話を振る。

 こうして二人で何かを話して、巴を困らせるまでが一連のパターンだ。


 「だって巴ちゃんもない勢ですから!」

 「うっ、勝手に引き込まないでください!

  まだ成長途中なんです!」

 「ということは、私もまだ成長する可能性あるってことですかねー」

 「私はもういらないわ……」

 「「うぐぐっ」」


 心の底から吐露した。

 普通に大きいくらいならばステータスになると思うけれど、ここまで大きいと障害しかない。

 それに苦労していることは二人もわかっているから、これ以上は踏み込んでこない。

 私のいるところでは『可愛い下着を買いに行こう』、なんて話をしないように気を使ってくれているのはわかっている。

 どうせ買いに行ったところで霞用のサイズなんてないからだ。


 その辺り、何も言わずともわかってくれる。

 『六女仙』としてお役目を果たされた三人は同い年であり、仲が良い。

 何せ7歳の頃からの知り合いだ。永水女子に集まったのは遅かったとはいえ、気心しれた仲である。

 他の三人は年齢が離れているので、やはり気楽に話せる関係ともなるとこの三人になるのだ。

 古い時からの親友として一緒にいるからこそ、三人で気持ちを共有できる。

 お役目として側に使える『姫様』以上に、近しい仲を持っていた。


 ……
 …


 彼女の名前は、石戸霞。

 小さな頃から普通の子供とは離れた生活をしてきた。

 昔ながらのしきたりを今の世の中でも続けていくための生贄。

 昨今の巫女と言えば気軽にアルバイトで手伝える仕事なのだが、彼女の場合は本物の巫女だ。

 それも、『オカルト』を扱い、本物の神様をその身に卸すことができる。

 生まれた頃からそうして生きることを義務付けられてきた。


 ――しかし、彼女は『特別』ではあっても『一番』ではない。


 彼女はあくまで『一番』のための代理であり、身代わり。

 だからこそ、そのような意味を持って名付けられた。


 子供に名前をつける時ならば、『かすみ』とは『香澄』等の漢字を当てることが多い。

 その名前自体はよく聞く名前なのだから。

 それをあえて『霞』という漢字をつけた理由とはなんなのだろうか。

 この名前こそが、彼女が神代分家において重要な役割を担っていることを証明している。


 ――霞。

 儚く消えてしまう。沈み行くもの。

 霧島神社本家における『神代小蒔』のための天倪。

 いわば、石戸霞とは神代小蒔の身代わりだった。


 ……
 …


 今回、鹿児島からわざわざ東京までやってきたのには理由がある。

 自分たちが守るべき『姫様』が麻雀のインターハイ選手として東京に来ているからだ。


 「やっぱり東京は違うわよねぇ」

 「そうですねー。

  若者からのエネルギッシュなスタイルと、死んだ眼差しのサラリーマンの対比がこう……」

 「あっちでもサラリーマンはいるじゃない」

 「毎日毎日瞳孔をなくして満員電車に揉まれて出勤し、仕事をして帰宅するだけの生活」

 「それは……大変そうよねぇ」


 彼女たちにとってはそう言った一般の勤務とはかけ離れている。

 経験することもないだろう。


 「しかし! その満員電車の中の背中には霞ちゃんが!」

 「!?」

 「霞ちゃんが意図しないところで押し付けられるおっぱい。

  痴漢扱いになるんんじゃないかとビクビクするサラリーマン。

  ますます乗車率が上がる中、もはや押し付ける形になる霞ちゃん」

 「やめてー!」

 「隣の人が霞ちゃんを助ける目的で痴漢だと言い出す。

  ああ、霞ちゃんのおっぱいのせいで一人の男性の人生が!」

 「そんなわけないじゃないっ! もう!」

 「でも実際押し付けられる側は役得ですよねー。

  この前、膝枕してもらった時には命の危険すら覚えましたよー」

 「勝手に膝に乗ってきたのは初美ちゃんじゃない。

  それに、初美ちゃんだってその格好で電車に乗ったら大問題よ!」


 ビシッ! っと指をさして初美を指差す。


 「私は子供っぽく見えるからセーフです」

 「アウトよ!

  こんな時ばかり子供っぽさを利用しないの!」

 「むしろその言い分だと、霞ちゃんが私の母親……?

  子供にこんな格好をさせている母親と認識されて、お縄になっちゃうかもしれませんねー」

 「もう! そんなこと言うと酷いわよ!

  私だって母親なんて言われる年齢じゃありません!」

 「そーですかねー?」


 昔ではこのくらいの年齢で母親になるのは珍しいことではないと聞くが、乙女としては敏感だ。

 実の親からは聞いたことはないが、自分にも許嫁がいるだの高校卒業したら結婚するだの、おじいさま方から噂を聞くことはある。

 あまり、嬉しい噂ではない。

 霞としても、甘酸っぱい恋愛に憧れている。

 叶うことがないとしても、せめて男の人と普通に仲良くなりたいな、というのが細やかな夢だ。

 だが、それを考えてしまえば際限なく欲望が膨らむから考えないようにしている。


 「あのー、二人とも」

 「巴ちゃん」

 「ハッちゃんのお母さんが霞さんっていうのは無理だと思います。

  その……」


 巴は、何も言わずに胸を見比べた。

 悔しそうに歯ぎしりする初美と苦笑いする霞。

 やっぱりこの三人で話していることは、とても楽しい。


 「しかし東京と言ったら怖いところ、ってイメージがありますよー」

 「そうねぇ」

 「霞ちゃん、痴漢冤罪は起こさないでくださいねー」

 「まだその話は続くのかしら!?」


 ニヤニヤと話しかけてくるのも初美なりの愛情表現なのだろう。

 それを巴がたしなめる。


 「まぁまぁ。

  会場の方ならクーラーも効いていますよ」

 「それならいいけれど。

  春ちゃんと一緒に先に行った小蒔ちゃんが心配ねぇ」


 『姫様』は六女仙のもう一人、滝見春に任せて先に向かわせている。

 面倒な荷物や要件を片付けてから追いかけている形だ。

 だが、今思うと年長組が一人は残った方が良かったかもしれない。


 「はるるも子供じゃないんですから、姫様の面倒一人くらい見れますよー」

 「あはは……。姫様信頼されてないなぁ」

 「いきなりどこかで寝ちゃったら春ちゃんじゃどうしようもないから……」


 滝見春はお世辞にもコミュニケーション能力が高いとは言えない。

 そう考えれば、比較的その部分に優れているこの三人で行動しているのは失敗ではないか。


 「この組み合わせ分担をしたのは誰ですかー」

 「霞さん、です」

 「うぐっ」

 「霞ちゃんは本当に、ここぞって時にドジになるんですから」


 霞の体が萎縮し、その分初美が胸を張っても大きさが全く変わらない。

 そんな中、霞の携帯にメールが送られてきた。


 「あっ、春ちゃんからよ」

 「噂をすればなんとやら、ですねー」

 「どんな内容なの?」

 「ちょっと待って、えっと……」




 ――助けて



 


 携帯を使い慣れていないのか、一文だけの簡潔な文章。


 「……えっ」

 「ちょっ、何事ですかー!?」

 「これはただ事じゃないですよ!」


 今までのんびりとしていたのに慌ててしまう。

 この一文だけを読めば、滝見春は脅威に襲われていることになる。

 それも簡潔な文章でしか送れない内容かもしれない。

 普通ならば警察に連絡するなりするところだが、いかんせん彼女たちは『オカルト』に触れすぎていた。


 「今すぐ行きましょう!」


 霞の一言で、みんなで向かう流れとなった。

 下手に警察に連絡しても、『オカルト』が関わっていれば面倒な流れとなってしまう。

 何より、彼女たちには『姫様』を守るという使命があるのだから。


 「場所はどこですかー!?」

 「きっと会場の近くだと思うわ。

  姫様ともそこで合流する予定だったから」


 三人の脳裏に最悪の事態が想定される。

 いくら六女仙と言えどもその中身は女子高生。

 こういった詰めの甘さが出るのがまだまだ未熟なのかもしれない。

 護衛対象に何かがあれば『叱られる』では済まない。


 「とりあえず、バラバラに探しましょう」


 まずは合流して、携帯で連絡を取り合うことにした。


 ……
 …



 「メールの返信は、なし」


 霞は会場の近くを散策することにした。

 春に電話してもメールしても連絡が取れない。

 文明の利器を使わずに人と合流することがいかに難しいか、実感している。


 「小蒔ちゃんならどこに行くかしら」


 会場の周りは結構な数の人がいる。

 これならば攫われるということはないと思いたい。


 「あっ……」


 キョロキョロと周りを見渡していると、気づけば霞自身が不審に見られ始める。

 インターハイ事態は女性向けではあるが、場所が場所なので男性も多い。

 霞はとても目立つ容姿をしている。

 永水女子自体が巫女服ということで人目を惹くこともあるが、それ以上に目立つのはその大きな胸だ。

 ジロジロと見られる分にはまだいいが、舐め回すような目線が霞を這う。


 「(またこの視線)」


 地元でも変わらない、嫌らしい視線。

 体を蛇のように這われる感覚は好きではない。


 「(でもそれどころじゃないわ。

  今は小蒔ちゃんを……)」


 少し胸を隠すように手で抑える。

 そのままフラフラと歩きまわると、オカルトの気配のようなものを感じた。


 「小蒔ちゃん?」


 そのまま誘われるがままに歩いてみると、一つのベンチを見つけた。


 ――そこにいたのは、小蒔を膝枕する謎の男


 「?」

 「見つけたっ!」


 見つけたと同時に駆けつける。
 

 「知り合いですか?」

 「ええ。

  その、失礼ですが、貴方は?」


 ジロリ、と強い目線を向ける。

 金髪の青年。高身長に体格も良い。

 警戒心を強めると、彼は困ったように笑った。


 「インターハイ会場まで迷子になっちゃったみたいで、案内していたんです」

 「あら、そうなんですか。

  それにしては膝枕なんて……」

 「急に眠っちゃったんですよ。

  病院に連れて行こうかと思ったところに貴女が来たので」


 なるほど、ギリギリ間に合ったと言ったところだろうか。

 眠っている小蒔は神様が保護しているだろう。

 この場合の『間に合った』とは、彼が邪な思いを抱いた時に事件にならずに済んだ、というべきだ。


 「それじゃ、これで大丈夫です」

 「でも、この人眠っちゃってますよ?

  大丈夫なんですか」

 「大丈夫です。お構いなく」


 少し強めに拒絶した。

 本来なら礼を言うべき相手だとわかってはいるが、頭の中で『男性』を無意識に拒絶する。


 「このお礼はするので、良ければ名前と電話番号を教えてもらえますか?」

 「本当ですか!?

  いやー、なんか得しちゃったな。

  俺、清澄高校の須賀京太郎って言います」

 「では、電話番号を」


 お互いの連絡先を交換する。

 ちなみに、彼と交換したこの携帯電話は今回の東京行きように持たされた物で、個人用ではない。


 「それでは、ありがとうございました」

 「あ、あの、名前聞いてもいいっすか」


 そういえば名前も言っていなかったな、と気づく。


 「石戸霞と申します」


 ぺこりと頭を下げながら名乗る。

 彼はそれに魅入られたように呆然としていた。

続く


 2

 【親切】


 「それで、電話番号を交換してきたわけですかー」

 「ホント、小蒔ちゃんに何もなくてよかったわ」

 「あうう……」


 あの後は全員で合流し、何とかホテルまでたどり着いた。

 春からメールが来た時には心臓が止まるかと思ったが、何とかなって良かった。


 「それで、何であんなメール送ったんですかー?」

 「……気づいたら姫様がいなくなってた」

 「わ、私も気づいたら春がいなくなってて……」

 「二人とも両成敗です!」

 「「あうう」」


 霞が軽くコツン、と額を叩く。

 全く、本当に焦らせてくれたものだ。


 「まぁでも、霞ちゃんは得したんじゃないですかー?」

 「?」

 「男の人と出会えたんですよねー?」

 「ああ、それね」


 またこの話か、と少し面倒になる。

 大した話ではないのに、やけに首を突っ込んでくる。

 男子禁制の場所で育てば興味も持つ。


 「本当に少し話しただけよ」

 「はい。とってもいい人でした」

 「あら、小蒔ちゃんも寝ちゃう前に話したの?」

 「えへへ、春を探して泣きそうになっていたら話しかけてくれたんです」


 純粋に人の好意に触れて嬉しそうな表情を浮かべている。

 人を疑うことを知らないように育てられているのが羨ましい。


 「『とりあえず会場に行きましょう、後はスタッフさんに任せます』って」

 「あら、紳士ね」


 自分で案内するだとか、ホテルの場所を聞かないのは好印象だ。

 今多いと聞く草食系男子というものだろうか。

 もっとも、彼の見た目からはもっと肉食系かと思われたが。


 「でもそこから先は覚えていないんです……」

 「寝ちゃったのね」

 「霞ちゃんはどんな感じでした?」


 彼の顔を思い浮かべる。

 正直、状況を聞いて名乗っただけだ。


 「特に何もなかったわよ」

 「なんだー。つまらないですねー」

 「もう、どんな展開を期待していたの」

 「いいじゃないですかー。

  ちょっとくらい、女の子トークしたって……」


 霞には初美の気持ちがよくわかる。

 いずれ見たこともない誰かとの婚約が決められているとはいえ、年相応の女の子らしくしたい。

 その気持ちは同じだった。


 「それに、何かあっても困るじゃないの」

 「相手の人が何かしてきたらボコボコですよー」

 「あら、でも結構体格がよかったし、初美ちゃんじゃ勝てるかしら?」


 当然、六女仙は身を守るための護身術を学んでいるが、それを過信するのは禁物だ。


 「体が小さいからこそ出来ることもありますしー」

 「もう、無理しちゃダメよ」

 「ところで、霞ちゃんはガタイがいい方が好みなんですかー?」


 思わず吹き出しそうになる霞。

 危うくいつものお姉さんキャラの維持が出来なくなるところだ。


 「な、な、何を言っているのかしら」

 「えっ、霞ちゃんって男らしい人が好みなんですよねー。

  知ってますよー」

 「そ、そういう初美ちゃんはどうなのよ!」

 「私は草食系が好みですよー。

  かかあ天下になる予定ですし、男の好きにはさせませんよー」


 シャドーボクシングの真似をして牽制する初美。

 そういった気の強い部分は相変わらずだといつも変わらないと呆れてしまう。


 「ほらほら、好みを言っちゃってください。

  私だって言ったんですよー?」

 「初美ちゃんが勝手に言ったんじゃない!」

 「さあさあ! これ以上粘るのはなしですよー」


 霞が顔を真っ赤にする。

 観念したようにポツポツと話し出す。


 「その、確かに男らしいガッシリとした人が好み、かも」

 「続けて続けて」

 「体は筋肉質な方が好みかしら……。

  私の体全身をギュってしてもらいたいわ」

 「霞ちゃんの天然由来のものをギュッとしたら男性は幸せで死んじゃいそうですねー」

 「もう! からかうならこれで終わりよ!」

 「霞ちゃんも乗ってきてるじゃないですかー。

  もうちょっとどうぞ」

 「もう……。

  男らしく引っ張ってくれて、優しい人がいい、かしら」


 霞はもう首筋まで真っ赤だ。

 初美はそれを見てニヤニヤしている。


 「『みんなのまとめ役』の意外な一面ですよー」


 周りでこっそり聞いていた他のみんなが顔をそらす。

 それに気づいた霞がパタパタと腕を振りながら初美に詰め寄る。


 「初美ちゃんの番よ!」

 「えー、私ですかー?

  さっきも言いましたが草食系の男の子がいいですねー。

  私の言うことを何でも聞いてくれるといいです」

 「他には?」

 「終わりですよー」

 「なんでよ!」

 「むしろ霞ちゃんが相手に求めすぎなんですよー」

 「もう!」


 しばらく追いかけ回してみたが、どうやら無駄そうだ。

 いつものことだが、初美にはかなわない。


 「そんな相手だといいですね」

 「……そうね」


 彼女たちに選ぶ権利があるのだろうか。


 ――最後の一言には、同意できなかった。


 ……
 …



 インターハイ会場。

 全国から集まった雀士たちが青春を込めて戦う会場。

 そんな中、霞は飲み物を買いに来ていた。

 歩いていると、見覚えのある姿。


 「あら」

 「あっ、昨日ぶりですね。

  石戸霞さん」

 「須賀京太郎さんも選手なんですか?」

 「いやァ、俺は応援っす……」


 少し居心地が悪そうに呟いている。

 霞にはその仕草まではわからなかった。


 ――少し悲しかったのは、彼の視線が霞の胸に向いていたこと。


 先ほどまでの女子トークを思い出し、理想の王子様なんて考えていたから、勝手に落胆してしまった。


 「ところで、ちょっと相談があるんですけれど……」

 「あら、何かしら」

 「実は、うちの高校の大将が迷子になっちゃいまして」

 「あ、あらあら」


 つい先日、同じことで彼に助けてもらった。

 この頼みは断れなそうだ。


 「見かけたら電話してくれると嬉しいっす」

 「でも、私はその人がどんな人なのか知らないわ」

 「あっそうか。

  ええと、小動物みたいなやつで、コミュ症で、本が好きで……。

  ってこれじゃわかんねーよ!」

 「ふふっ」


 ノリツッコミをこなす彼を見て思わず笑ってしまう。

 先ほどまでの彼に対する悪いイメージが少し晴れたようだ。

 もちろん、それだけで気を許すほど単純ではない。


 「そうだと、一人で探したほうが効率がいいのかもしれないわね」

 「あー、じゃあせめて『宮永咲』って奴とだけ覚えておいてください。

  もしかしたら出会えるかもしれないんで」

 「……『宮永』?」


 その苗字は聞いたことがある。

 この二年間インターハイを無双する化け物、『宮永照』と同じだ。


 京太郎がスッと霞の前に出て、彼女がいそうな場所に向かい始める。

 その自然な仕草に、霞は思わずドキッとした。


 「(我ながら男性耐性がなさすぎじゃないかしら)」


 女の子は男の子らしい動作を見るだけで少しだけ反応するものだと言い聞かせる。

 やっぱり、この人は女の子慣れしている気がすると思う。

 今まで同年代の男性と話したことなど数回しかなかったが、こんなにスムーズに話が進んだことはなかった。

 その、霞の胸を見て俯いてまともに話してくれないタイプばかりか、単純に女の子と話すのが慣れていないようなタイプ。

 彼はそのどちらにも当てはまらないと、霞は感じていた。


 「(気を引き締めないといけないわね)」


 相手は二回戦で当たる予定の清澄高校。

 余計なことを漏らさないように、最低限の会話だけすればいい。

 そう、これはあくまで姫様を救ってくれたお礼なのだから……。


 ……
 …



 「清澄の大将さん、どんな方なのかしら」


 情報を引き出せないか、なんて考えながら発言する。

 漏らしてくれれば儲け物程度に考えていたら、彼は嬉しそうに話し始めた。


 「そんな大層なやつじゃないっすよ!

  確かに麻雀は上手いんですけど、それだけっす」

 「それだけ?」

 「今みたいに迷子になるし、道端で木に寄りかかって寝始めるし、ご飯も食べずに読書に熱中するし……」

 「あらあら」

 「それで中学時代についたあだ名が『ぽんこつ』ですよ。

  高校で麻雀を始めるまで、ずっとそうだったし、今も根本は変わらないっす」


 『アイツはどこかずれてんだよな』などと呟く彼に対し、安易に探りを入れた自分に後悔した。

 いつもこう言った面倒ごとや厄介ごとを引き受ける身分だからと、今回もやってしまった。

 楽しそうに話す彼に失礼だ。


 「石戸さんはどうなんですか?」

 「どうって?」

 「意外とぽんこつだったり?」

 「失礼ね。これでもみんなのまとめ役、って呼ばれているんだから」

 「マジっすか! すげー!」


 ふふん、と少し自慢してみせる。

 ここに初実がいれば『このドジ霞が何言ってるんですかー』などとも言われそうだが、今は忘れよう。


 「確かにそうですよね!

  石戸さんってなんか何でも出来そうなイメージありますし、知的って感じ?」

 「あら、褒め倒してどうする気?」

 「いや、実際そうじゃないですか。

  迷子探しに付き合ってくれるなんて、優しいですし!」


 霞が閉口した。

 迷子探しに付き合っているのは、借りを返すためと少しの打算。

 霞が喋らなくなったことにより、一瞬だけ気まずさが生まれる。

 そもそも親しい仲でもないのだから。

 しかしそれを察した京太郎がすぐに新しい話題を提供する。


 「あっ、そういえば石戸さんって東京観光はしました?」

 「えっ?」

 「ほら、麻雀麻雀って考えてたら頭いっぱいになっちゃうし。

  別のこと考えましょーよ」

 「ふふっ、宮永さんはいいのかしら?」

 「アイツを探してくれている石戸さん優先っす」

 「ありがとう。

  東京観光……、少しだけ考えていますね」

 「東京って言うとどこですかね」

 「海に行こうと思うの」

 「……う、海?」

 「あっ、今のは忘れて」

 「うっす(帰り道に寄るのかな?)

  泳ぐのいいっすよねー。俺も好きです」

 「私はあまり得意じゃないのだけれどもね……。

  須賀さんは泳ぎが得意なのかしら」

 「へっへー、これでも体育系全般得意なんです。

  中学時代にはハンドボールで県予選決勝までいきました!」

 「あら、そうなの。

  ……それって、すごいじゃない」

 「ははは、まぁハンドボール自体の規模が小さいから微妙なんですけど」


 それでも結果を残しているのならば十分だ。

 最初に見たとおり、体格が良いというのは間違っていなかった。


 「それじゃあ、なんで麻雀部に?」

 「ホント、なんでなんですかね?」


 京太郎的には笑いのポイントにしようと思ったようだが、深入りされたくないと感じた。

 それでもこちらを飽きさせないように会話を続ける京太郎は非常にコミュニケーション能力が高いのだろう。

 下心があって露骨にこちらを褒め倒すわけでなく、話の聞き手に徹するわけでもなく、単純にお互いの理解を深めていく。

 それでいて一定の距離を保っている。

 なぜか、非常に安心できた。


 「麻雀もお強いのね」

 「それがもー……。

  恥ずかしいほどに弱いんです。初心者なんです」

 「あら、そうなの?」

 「きっと石戸さんとやったらボッコボコですよー」

 「ふふっ、運動じゃ勝てなくても、麻雀なら負けないわ」

 「ぐえー」

 
 オーバーなリアクションをとってやられモーションを演出する京太郎。


 「実際、どうやったら上手くなるんですかねー。

  やっぱり経験っすか」

 「そう、ね」


 違う。

 強くなるために必要なものは『才能』つまり『オカルト』だ。

 凡人が100回やっても才能には勝てない世界、それが現実だ。


 「須賀さんはまだまだ始めたばかりなのよね?」

 「うっす」

 「それなら、とにかく打つことが重要よ。

  出来れば上手い人に指導してもらいながら打てれば効率も上がるわ。

  何も考えないで打っても成長しないから」

 「あーっ、だから毎回負けちゃうのか。

  俺、頭使うの苦手なんで同じことやっちゃうんですよ。

  今度先輩たちに見てもらおう」

 「今までは我流で?」

 「一応」

 「確かに、それだと辛いわね。

  教えてもらえなかったの?」

 「ほら、一年生なんて雑用バッチこいですよ。体育会系よりマシマシです。

  ハンドボールなんて一年間球拾いと筋トレでしたし、それに比べりゃやる気十分!

  美人の先輩方のために男京太郎は尽くします!」

 「ふーん……」

 「な、なんですか?」

 「それはちょっと外しちゃったかも?」

 「うげっ、やりすぎた」


 ネタのやりすぎのフォローをしてあげると、彼は尻尾を振るかのように喜んだ。

 短時間でこれだけ仲良くなれた人なんていないかもしれない。

 だから、ちょっと冗談を言う気になったのだ。




 「じゃあ、美人の私のために東京案内をしてくれる?」

 「はっ、……マジで!?

  やりますやります! 全力でやります!」

 「その、デートが姫様を助けてくれたお礼、じゃダメかしら」

 「最高です!」


 思わずテンションが上がってとんでも無いことを言い始めていることに気づいていない。


 



 自分のことを美人。


 自分からデートのお誘い。


 自分とのデートがお礼。


 たまたまテンションが上がりすぎてしまったのだ、そうに違い無い。



 迷子探しを忘れて話し込んでいた二人。

 数分後に原村和から宮永咲が見つかったと連絡があった模様。


 ……
 …


 「それでデートすることになったんですかー」

 「い、言わないで。自分が信じられないんだから」

 「これが清楚系を装った尻軽ビッチ女ですよー」

 「それはいくらなんでも酷いわよ!」


 ジト目でこちらを見てくる初美に対し、何も言い返せない。

 からかってくると言うよりかは、呆れているといったところだ。


 「だいたい霞ちゃんはいつも……」


 初美が続きを言おうとしたところで、電話が入る。

 霞が慌てて着信を確認すると、そこには須賀京太郎の文字。

 焦ってその場で着信を受け取ってしまう。


 『あっ、石戸さんですか?』

 『は、はい』

 『えーっと、昼間のあれって、本気ってことでいいんですか?』


 今ならば冗談のノリで済ませられると、彼は伝えてくれたのだ。

 でも、異性とあれだけ楽しく話せたのは初めてだった。

 それに、彼を悲しませたくない。


 「ええ、本気よ」

 『了解です!

  じゃ明日、集合しましょう!』

 「ふふっ、デートコース、期待しているわよ」


 自分はあくまで大人のお姉さん。

 そんなちょっと嬉しい気分。


 電話を切った横で、幼馴染に今まで見たことがないようなゴミ虫を見るような目で見られていた。

続く

途中でネットが不安定になってID変わってますが気にしないでください


 3

 【無邪気】


 その日はいつもより早く起きた。

 正確に言えば前の晩の時点でよく眠れなかったのだけれども、ちゃんと起きることができた。

 まさか東京に麻雀をしに来てこんな展開になるなんて思ってもみなかった。

 気合を入れようにも人並みの化粧道具くらいしか持っていない。

 買いに行って揃えようにも、完全に決意したのが夜だったのでもう無理だ。

 私服はとてもデートに使えるものではなかったので、朝からウンウン唸っている。


 「組み合わせなんて考えたことないわよ……」


 今時の女子高生ならば当たり前なのかもしれない。

 けれども、霞にとってはその『当たり前』がよくわからない。

 唯一持っている私服も、胸が隠れるように少し大きめのサイズを選んでいる。

 少なくとも、この服でデートに行きたいとは思わない。


 「(私、楽しみにしているのかしら)」


 ドキッと胸がなる。

 相手は関係なく、これが霞にとっての初めてのデート。

 今は須賀京太郎という存在のことが恋愛的な意味で好きなわけではないけれど、高まる胸の鼓動が抑えられなかった。


 「(でも、これで男慣れできるわよね?)」


 あまり京太郎を信頼しすぎるほどの関係にはなっていないが、悪い人ではないはずだ。

 嫌な言い方をすれば、身元が割れている。

 変なことをすれば清澄高校に迷惑がかかる以上、彼が何かをすることはないだろう。

 そんな黒い考えが一瞬浮かんでしまう。

 しかし、やはり霞は一人の女の子としてデートするのが楽しみなのだ。


 ――ずっと夢見ていた、一人の女の子としてのデート。


 「何やってるんですか、霞ちゃん」

 「初美ちゃん」

 「一人百面相ですよー」


 気づけばすぐ近くにまで初美が寄ってきていることにすら気づかなかった。


 「ずいぶん気合を入れていますねー」

 「そうね。

  あんまりみっともない格好で行けないわ」

 「その割には制服ですかー?」

 「うっ、だってこの服くらいしかデートに使えそうなものがなかったんだもの」


 健全なデート、であるから制服デートでも問題あるまい。

 もちろん、永水女子の制服であり巫女服ではない。

 今日はオカルトも何もない普通の女子高生になりたい、などと思っていることはバラしたくない。

 白とピンクのセーラー服。

 いつもより気合を入れて髪を梳いて、軽く化粧を施したそれは霞本人でも満足のいく出来だった。


 「本当に行くんですかー?」

 「い、いいじゃない。

  ちょっとくらい」


 初美にジト目で見られる。

 石戸霞。高校三年生にして男の子と出かけるのは初めてだ。

 ノリで言ってしまった『お礼』は、大人のお姉さんとしては今更断れない。


 「お礼として一回デートするだけ、だから」

 「それならいいんですけどー」


 初美の目が厳しいものになる。


 「わかってますよねー?」

 「……うん」


 初美はそれだけ言って、厳しい視線をやめた。

 いつもの霞をからかう表情に変わる。


 「お金を渡されちゃったりしないでくださいよー」

 「そんなことないわよっ!?」

 「いやー、今の霞ちゃんならありますよー。

  大人びた化粧に制服姿、清楚系の黒髪ロング。

  下手をしたら声をかけられちゃうかも」

 「それは……嫌ね……」


 妙に生々しい内容が嫌だった。

 東京では『援助交際』なるものが流行っていると聞く。

 女子校で仕入れた知識ながら、清楚系の黒髪ロングは狙われやすいらしい。

 むしろ女子側が声をかけられるのを望んで清楚系にしているとも聞く。

 男に縁のない霞には怖い話だ。


 「大丈夫よっ!

  お姉さんらしくリードしてくるだけだから!」

 「この上なく心配ですねー」

 「じゃあ、行ってきます」


 初美に手を振りながらホテルを後にする。

 霞がいなくなった後、初美は呆然といなくなった場所を見つめていた。


 「本当に、わかってますか?」


 その問いに答えるものは誰もいない。


 ……
 …


 待ち合わせ場所に着いたのは一時間前。

 早く着きすぎるにも程がある。

 ベンチにタオルを敷いて、その上から座る。


 「(一時間)」


 さて、困ったものだ。

 昨日の夜から時間が長く感じて仕方ないのに、こんな場所で一時間も待てるだろうか。

 キョロキョロと周りを見回してみると、他にも何人か待ち合わせをしている人がいる。

 そこそこ有名な待ち合わせ場所を選んでくれたようだ。

 こうやってドキドキしながら誰かを待つのは初めての経験。

 恋愛感情ではないはずだけれども、異性との付き合いというだけでこんなにも変わるものか。


 「ま、まぁお姉さんだから」


 早く来すぎたことに自分で言い訳をする。

 まだかまだかと時計を見てみても、進んでいるのは1分か2分。

 ため息を一つ吐いて、周りの様子をもう一度確認。


 「(みんな落ち着いてる……)」


 同じような人たちが多いが、霞のように落ち着きがない人は少ないのではないか。

 もちろん、霞が見ている視点なので本当にそうかは限らない。

 やはりみんな異性とのデートなんて慣れっこなのが普通なのかもしれない。


 「(私が早めに経験しておくのは悪いことじゃないわよね。

  お姉さんだし)」


 頭の中に浮かんだ初美に向かって言う。

 そうだ、これは正当な理由があるデートだ。

 決して浮ついた気持ちではない。


 「ねぇ、ねぇ」

 「?」

 「お姉さん一人?」

 「わ、私かしら?」


 金髪が見えたので一瞬見間違えたが、声も顔も全く違う人に話しかけられていた。

 これはいわゆるナンパではないか。


 「お姉さん綺麗だし、よかったらナンパしよっかなって」

 「ちょ、直球ですね」

 「そういうもんじゃん?」


 なるほど。都会の若い人は進んでいる。

 しかしこれは同時にチャンスなのかもしれない、と感じた。



 ――霞は大人びているように見えて、様々なものに憧れている。

 それは幼い頃から自分を締め付けていた環境に依存する。

 厳しいお勤め、修行。

 姫様の代わりとなるための心構え。

 お家のために人生を捧げる覚悟。

 ありとあらゆるものに縛られてきた。

 それ故に、単純な少女漫画のようなシチュエーションに憧れているのだ。

 いざとなれば護身術を使おう。などと物騒な考えも持っている。


 この状況、このナンパ男に無理矢理されそうになったところで須賀さんが助けに来てくれる。

 そんなことがあったらいいのに。






 「ちょい待って。

  その人、俺の予約があるんだよね」





 ――!?


 霞の心臓が破裂しそうなほどに鼓動する。


 待ち焦がれた男の子の声。


 思わず時間を確認するが、まだ集合時間より30分ほど早い。


 本当に漫画のようなシチュエーションに胸の高まりが抑えきれない。


 でも、喧嘩になるようなら……。


 「マジかー。

  さすがにこんな美人はお手つきだよなー」


 しかし男はサラッとどこかに行ってしまった。

 漫画ならばここは無理矢理にしようとして、須賀さんに助けてもらうような場面なのに。


 「やけにあっさり引いたわね」

 「そりゃこれだけ人の多いところで危ない真似は出来ませんよ」


 ――なるほど、確かにそうだ。

 先ほどまで高まった熱が急激に冷めていく。

 助けてくれたというだけで十分なのに、上下する感情の前に自分自身に呆れてしまう。


 「それでも、須賀さんも危ないでしょう」

 「そりゃこっちのセリフですよ。

  俺が危ない分にはいいんです」

 「えっ」


 サラッと言ってのけるセリフは、少し反則なのではないか。


 ……
 …



 「今日は来てくれてありがとうございます」

 「ううん。

  私が言い出したことだから」


 どことなくぎこちない形になってしまう。

 あれだけ脳裏に浮かべていた京太郎が目の前にいると緊張してしまうようだ。


 「いやァ、正直もうちょっと早く来てたんですけど……」

 「えっ?」

 「その、石戸さんだって自信がなくて……」


 京太郎が都合が悪そうに頭を掻く。


 「どういうこと?」

 「その、巫女服のイメージが強すぎたんで。

  制服で来るとは思いませんでした」

 「ああ、なるほど」


 霞自信、巫女服のイメージが強いのは自覚している。

 京太郎の前で永水女子の制服を見せたことがないし、そう思われるのも仕方ない。


 「(そういえば……)」


 京太郎は制服ではない、私服でここに来ている。

 前日までの雰囲気と違って、より気合を入れたような格好だ。

 シャツはよくありそうなものだが、ジーンズには気合を入れていそう。

 もし声をかけられていなかったら、霞も見分けがつかなかったかもしれない。


 「でも、助けてくれたわよね?」

 「俺、人の顔を覚えることに自信あるんですよ。

  石戸さんがあんな風にされているの、絶対に嫌だったんです」


 ドキッと心臓が鳴ったのを感じた。

 一挙一動で動揺させるのは卑怯じゃないか。


 「須賀さんって」

 「?」

 「もしかして、たらし?」

 「へっ?」

 「ふふっ、女性経験が多そうね」


 急に態度を変え、お姉さんぶる霞。

 もちろん本気で言っているわけではない。

 ここまで(本人が意図していないところとはいえ)リードされっぱなしなので、年上の余裕を見せ付けたいのだ。


 「そうかな?

  これくらい普通じゃないですか?」

 「そ、そう?」

 「霞さん的にはダメっすか?」


 しかし知識も実践もない霞に反撃など出来るわけがない。

 真顔でクエスションマークを出されてしまえば、たじたじと引き下がる。


 「じょ、冗談よ」

 「良かったー。

  俺、初っ端から石戸さんにそう思われたらどうしようかと……」


 先ほどまでの様子からは嘘のように少年っぽさを前面に出す京太郎。

 そのギャップに少しの母性本能を覚える。


 「もう、しっかりして。

  エスコートしてくれるんでしょう?」

 「はいっ!」


 そんなギャップを意識しながらも、年上の振る舞いをすることでなんとか自分を抑える。

 大したことがない普通の会話でもこれだ。

 やっぱり霞は男慣れしていないようだ。


 ……
 …



 「石戸さんってどこか行きたいところあります?」

 「そうねぇ」

 「一応計画は練ってきているんですけど、行きたいところがあるなら優先しますよ」

 「それはありがたいわ。

  普段が鹿児島だから、東京には憧れているの」

 「あー、わかります!

  長野も田舎だから東京ってなんか怖いイメージありますよね!」


 京太郎はさり気ない会話にも肯定して、決して否定しない。

 そこまで親しくない人には当然とも言えるが、女の子扱いを受けている霞は少しずつ調子を上げていく。


 「東京スカイツリー。東京タワーみたいな名所とか。

  六本木ヒルズとか、代々木公園とか……。

  国立美術館なんてのも定番ですよ」

 「須賀さんって、女の子と出かけるのに慣れているのかしら?」

 「慣れてるっちゃ慣れてるのかなァ。

  図書館ばっかり付き合わされているけど」


 他の女の子の匂いに、ほんの少しだけ不機嫌になった。

 自分から他の女の話題を出しておいてこれだ。


 「でも、こうしてちゃんとデートするのは石戸さんが初めてですよ」


 ……そのあとにフォローされるとテンションの乱高下が忙しい。

 意識していなかったはずなのに、一擧一足に意識してしまう。


 「あの、東京に来たら行きたい場所があったの」

 「よしっ! そこに行きましょう!」

 「やっぱりデートの定番といえば『美術館』よね!」


 美術館なら大人っぽいだろう、という霞の考え。


 「すごい!

  石戸さんって絵画とか詳しいんですか!?」

 「ま、まぁ」

 「すごいですね!

  俺、全然わかんないですけど、石戸さんと行ってみたいです!」


 純粋な京太郎の眼差し。

 まるで子供のようにキラキラと霞を尊敬している。

 霞が汗をたらりと流す。

 ずっと修行ばかりしてきた霞に、絵画なんてわかるはずもないのであった。


 ……
 …



 「うーん、やっぱり美術ってわかんないや」

 「須賀さんは絵を描いたりはしないの?」

 「俺、外で遊んでばっかでそういうことはしないっすねー。

  石戸さんはどうです?」

 「私は……平均的な女の子レベル、かしら?」

 「あっ、女の子ってそういうの得意なイメージありますよね!」


 そんなに大したものは描けないが、褒めてもらえて少し誇らしい。

 実際に美術館に入った時にはどうなるかと思ったが、意外なことにスムーズに進んでいた。

 美術について詳しく聞かれるのかと思いきや、飾られた芸術を話のタネに観光するだけ。

 肩を張っていた分拍子抜けというか、かなり助かっている。

 何より、楽しい。


 「そ、そんなに期待されても困るわよ」

 「デフォルメされたキャラの絵とか描きます?」

 「それくらいなら……」

 「なんかかわいいですね!」

 「!」


 『かわいい』

 男性から言われることはなかったが、そのような言葉は聞き慣れていた。

 しかし今のは容姿を褒められた訳でもなく、霞がたまにやることを褒められた感覚。

 それも、絵を描く。ちょっとしたキャラ絵を描く行為をかわいいと言われたのが、とても嬉しかった。


 「石戸さん?」

 「……なんでもないわ」


 ちょっとうつむいて、体勢を整える。

 少し褒められたくらいで動揺しすぎではないか。


 「俺、美術館って全くわからなかったけど、石戸さんと来たら楽しいです」


 京太郎がボソッと言ったその言葉。

 それは霞にとっても同じ感情。

 本当は高尚な美術なんてわからない。

 ただ、隣にいる彼といることが楽しい。

 それに、自分でも地雷を踏んだとわかっている美術館でこれだけ楽しませてくれるのが嬉しい。


 ――これが、普通の女子高生の楽しみ



 「須賀さん、ありがとう」

 「?」

 「私もとっても楽しいわ」


 今日初めて、霞は心からの笑顔を向けた。

 安易に心を許さないような警戒も何もなく、本当に心の底からの笑顔。

 それはきっと、永水女子の誰にも見せたことがない表情。


 「最近、ちょっと疲れててね」

 「そうなんですか?

  愚痴なら聞きますよ」


 ふと、声を漏らしてしまう。

 彼はそれに反応し、ちゃんと返してくれる。


 「じゃあファミレスにでも行きますか!」


 彼のその一言で移動することになった。

 少し、吐き出したいものもあった。


 ……
 …


 「やっぱりファミレスは学生には手ごろですよね」

 「そう、かしら?

  私はあまり来たことがないの」

 「あれ、そうなんですか」

 「うん。

  ……その話になるんだけれど、ね」


 この話を出来るのは、京太郎がそこまで親しくない仲で、かつ他人というには近い『友達』だったからだ。

 恋人や親友には出来ない。

 初美や巴には絶対に出来ない。

 今日だからこそ出来る、微妙な距離感。


 「その、私たちは守らなければいけない人がいるの。

  その人のために、命さえ投げ出す必要がある」

 「い、命?」


 いきなり出てきた物騒な話に引いているのかもしれないが、もう止まらない。


 「そのために毎日修行。

  青春も全部その人のために費やす。

  私、今は永水女子にいるんだけれども、それまでは別のところにいたの。

  その人が……、私を必要としたから転校した。

  それまでの友達とも、会えなくなって」


 今まで目を背けていた闇が見えてきた。

 目を背けなければ耐えられなかった。

 彼女はまだ高校三年生なのだ。


 「みんなのまとめ役、なんて言っておいてこのザマよ。

  まだまだ精神が未熟な証拠ね……」


 これ以上はまずい、と判断して話を切る。

 唐突すぎただろうか、引かれてしまっただろうか。

 考えれば考えるほど憂鬱になる。

 あんなに楽しいデートだったのに、自分が漏らしてしまっただけでこの空気。

 京太郎はあんなに盛り上げてくれたのに、霞にはできない。

 ああ、泣いてしまいたい。


 「そんなこと、ないです」


 京太郎はまっすぐ霞を見据えた。

 視線が交差する。お互いに目を離さない。


 「俺、石戸さんのこと詳しくないんで、何も言えないです。

  でも、今の石戸さんが痛々しくて見ていられない。

  一つだけ、いいですか」


 京太郎が息を吸い込み、軽く吐き出す。






 「石戸さんは頑張っているじゃないですか。

  もっと自分のために生きてもいんじゃないですか」






 霞の胸に楔が刺さった。

 京太郎の言っていることはとても無責任。

 神代本家と霞の関係を知らないから言える言葉。

 だからこそ、京太郎の本心。何も飾らずに、ただ霞に伝えたい言葉。



 「自分の、幸せ」



 ――それは許されてもいいのだろうか。


続く


 4

 【夕焼け】


 あまり遅くならないように、ファミレスで時間を潰して解散することになった。

 他にも見てみたい場所はたくさんあったけれど、『それは友達と行った方が楽しめますよ』なんて言われてしまう。

 細やかな気遣いが大人っぽい。悔しい。

 最後には『またいつでも愚痴を聞きますよ』なんて言われてしまった。


 「ずーいぶんお楽しみだったみたいですねー」

 「そう、かしら?」

 「さっきから百面相してますよー」

 「あ、あらあら」


 自覚はなかった。

 気づけば1日のデートの振り返りばかりをしていたようだ。

 人混みに気を使って前を歩いてくれただとか、変な視線から守るように立ってくれただとか。

 きっと自意識過剰だ。そこまでやってくれているなんて思わない。

 しかし一度気にしてしまえば、『もしかしたら』という思いが霞の胸から消えていかない。


 「楽しかったですかー?」

 「そうね。

  とっても有意義なお話が出来たわ」

 「お話?」

 「それくらいしか、しなかったわよ」


 嘘だ。

 今まで思いつめていた愚痴を聞いてもらった。

 自分が選んだ美術館でも、話を盛り上げてくれた。


 「そもそも、会って3回目よ。

  それくらいしかないじゃない」

 「今時の若者は即ハボって聞きますよー」

 「ちょっと初美ちゃん!」

 「そういうことはなかったですよねー?」

 「もう……。

  あるわけないでしょ」

 「そうですか」


 初美の瞳に、薄暗い炎が灯っている。

 それが嘘のように消えた。……霞は気づかなかったようだ。


 「それにしても霞ちゃん。

  即ハボの意味なんてわかるんですかー?」

 「えっ」

 「エロエロですよー。

  これだから痴女は……」

 「初美ちゃんにだけは言われたくないわよ!

  そもそも言い出したのも……」

 「霞ちゃんは男性慣れしていないんですから」


 霞のツッコミを無理やり切る。

 いつものように語尾を伸ばさない喋り方。


 「気をつけなきゃダメですよ」

 「そう、ね」

 「これから姫様のための麻雀があるんです。

  忘れちゃダメですよー」

 「忘れてないわよ」

 「何か、変なことを聞かれませんでしたか?」

 「……逆に、麻雀の話なんて全くしなかったわ」


 これは本当だ。

 触りだけ話して、それで終わり。

 麻雀のインターハイで知り合ったというのに、そのことについては全く話さなかった。

 不自然な話だ。

 彼が麻雀が弱いから、話せることがなかっただけかもしれない。


 「そうなんですかー?」

 「ううん。

  それ以外、いっぱい楽しい話を教えてくれたもの」

 「そうですか」


 話が途切れる。

 親友とは思えない、微妙な距離感。

 霞は初美の態度に困惑する。

 初美は霞をじっと見据える。


 「霞ちゃんが辛い思いをするのは、よくないのです」

 「……」

 「清澄高校に手心を加えちゃいけませんよー」

 「それは別問題よ」


 霞の中で須賀京太郎=清澄高校の図式は非常に薄い。

 それが試合を左右することはないだろう。

 むしろ――


 「負けないわ」


 彼の近くにいる女の子に、負けたくなかった。


 ……
 …



 『清澄高校』


 激戦を制し、勝ち残ったのは彼のいる高校だった。

 手を抜いたつもりはない。

 それどころか、普段使わないオカルトまで使っての惜敗。


 「(悔しい)」


 巴と春に祓ってもらいながら、一人頭の中で考える。

 どうすれば勝てたのか。

 負けたくないと思っての真剣勝負は初めてかもしれない。


 今まではただ、守りについていれば良かった。

 麻雀も人生も、ただ守りに入っていれば良かった。

 ただ、いざ『攻撃モード』に入った結果がこれだ。


 「今日は本当にごめんなさいね。

  力及ばずで……」

 「それを言うなら私たちもですよー」


 みんなで反省会。

 インターハイ決勝を取るための『姫様ローテーション』もうまくいかず、次の個人戦まで時間が空いてしまう。

 みんなの曇る表情。

 自然と誰も喋らなくなり、運ばれた蕎麦を食べるのに集中する。


 「そうだ!」


 そんな時には、みんなのまとめ役のお仕事。


 「個人戦までの四日間、海水浴と温泉にでも行きましょうか」


 まるで『あの人』のように、暗い雰囲気なんか出させない。


 「泳ぎならおまかせですよー」

 「よかった」


 個人戦が残っている二人にも気を使わせない。

 そうだ、麻雀から離れてリラックスして、最高の環境で『姫様』が戦えればそれでいい。

 個人戦でさえ勝たせてしまえば、六女仙の目標は達成できるのだから。


 「(4日間……)」


 海水浴と温泉に行っても、まだ時間がある。

 そうなればみんなで東京観光をするのがいいだろうか。

 個人戦の対戦相手の牌譜を見直さなければいけないだろうか。

 ただ、どんなに見直しても神様が降りている状態の姫様に意味はあるのだろうか。


 空いた、時間


 ……
 …



 夜、寝る前に寝室を出て、電話をできる場所まで移動する。

 深呼吸を何度もして、呼吸を整える。

 意を決してコール。


 『もしもし』

 「あ、須賀さん?

  今大丈夫かしら」

 『平気っす。

  寝る前にボケーっとしていただけですよ』


 彼の声を聞いてほっとする。

 なんでこうも胸が温かくなるのだろうか。


 『どうしました?』

 「いえ、その……」


 困った。うまい理由が思いつかない。

 
 「こ、声が聞きたくて?」

 『ブホッ』

 「あっ、違うの違うの!」


 言いたいことは間違ってはいないのだけれども、誤解を招く。

 まるで恋人みたいなやりとりではないか。


 「その、今日負けちゃったから、また愚痴を聞いてもらえる?」

 『い、いいんですか?

  一応こっち、勝った側なんですよ』

 「あら、須賀くんは私に勝ったのかしら?」

 「……そういえば勝ってないですね」


 『むしろ負けっぱなしだな』なんて言われたけれど、よくわからない。


 「私は守る麻雀が得意なの」

 『ふむ』

 「でも今日は攻撃に転じてみたんだけれども、負けちゃった。

  ふふっ、清澄の大将さん。強いわね」

 『あいつなんてただのぽんこつですけどね』


 彼の声から親しい感じが出ていて気に入らない。

 胸をムカッとさせて続きを話す。


 「もう、最後の最後にあんな上がりなんて」

 『確かに、性格悪いっすよねー!

  接戦の接戦でボール回しでタイムアップ! みたいな!』

 「もちろん、そうすることが相手への全力だっていうのはわかるわよ」

 『わかります!

  でも感情は別なんですよね』

 「そうなのよ」


 点数で勝っているのだから最速で上がって終わらせる。

 麻雀の定石でしかないが、大会のあの場でやれる度胸は並ではない。


 『石戸さんって感情豊かですよね』

 「それ、褒めているのかしら?」

 『もちろんですよ。

  俺、話しててすごく楽しくて』


 カアっと頬が赤くなる。

 それは霞の方も同じだった。

 同時に、こんなに感情豊かになる相手も京太郎だけなのだ。


 「でも、これから個人戦まで暇になっちゃったわ」

 『石戸さんも個人戦に出るんですか?』

 「私は姫様の付き添いよ。

  みんなで海や温泉なんかに行こうと思っているの」

 『おおう……』

 「……何かエッチなこと考えた?」

 『考えてないっす! 考えてないっす!』

 「もう……」


 これだから男の子は、と思いながらも不快感はなかった。

 むしろ彼より上の立場になってからかえたことが嬉しい。


 『そ、その、石戸さん』

 「なにかしら?」

 『個人戦までの数日間、また遊びに行きませんか?』


 彼の言葉に頭がフリーズする。

 一瞬反応できなくて彼をあせらせる。


 『あっ、無理ならいいんです!

  あの時楽しかったから、また遊べたらなって!』

 「い、いえ、無理じゃないわ!

  もちろんOKよ」

 『よ、良かったァー。

  怒らせたかと思った……』

 「もう、そんなことで怒りませんよ」


 電話口でもわかる焦りに、可愛らしさを覚える。


 「清澄の試合はいいのかしら?」

 『合間合間に、って感じですね』

 「わかったわ。

  それじゃあ、また連絡してね」

 『はい!』


 ――今度は彼から電話が来る。

 その事実がとても嬉しい。

 思わず顔がにやけてしまう。

 いけない、帰るまでにはいつもの『石戸霞』に戻さないと。


 ――そう思って寝室に向かう途中に、巴がいた。

 ドキリと心臓がなる。


 「あっ、霞さん。

  外に出て行ったから心配して待っていたんです」

 「そ、そう。心配させてごめんなさいね」

 「いえ!

  その、霞さん……」


 言いづらそうに巴が顔を俯かせる。

 霞の心音が止まらない。


 「ちょっとだけ、羨ましいです」


 その時の巴は、今まで見たことがないような悪戯顔。

 人生で初めて霞に勝ったと言わんばかりの笑顔。

 それに対して、いつもと逆に顔を真っ赤にして反論することしか出来なかった。



 ――もう一つの気配には、誰も気づかなかった。


 ……
 …



 結局、全てが終わるまで細かい時間を見つけては二人で逢瀬を続けた。


 「今日は巫女服なんですね」

 「ううっ、まさか須賀さんと会うとは思わなかったのよ」

 「試合の時に巫女服だったのには理由があるんですか?」

 「ふふっ、麻雀をやる時には神聖な格好じゃないといけないのよ」

 「『オカルト』でしたっけ?」

 「そうね。

  詳しくは話せないけれども、私たちはそれに深く関わっている。

  ……こんなことを言って、信じてくれる?」

 「そりゃ信じますよ。

  目の前で何度も見ていますから」

 「ふふっ、ありがとう」


 今年のインターハイというオカルトが全面的に出てきている時代。

 すんなりと『オカルト』を受け入れてもらえたのが嬉しかった。


 「石戸さんって制服も似合ってましたけど、巫女服も凄く似合いますね」

 「そ、そうかしら」

 「この黒髪ロング!

  櫛で梳いても止まらなそうで綺麗です」

 「う、ううっ」


 今までストレートヘアーなことに感謝したことはなかったけれども、この瞬間大好きになった。


 「さ、触っちゃダメよ」

 「触りませんよ!?

  そんな、女の子の髪の毛においそれと触るなんて……」

 「あら、わかっているじゃない」

 「石戸さんのほんわかな雰囲気に落ち着いた髪型が揃って、とっても綺麗に見えるんだなァ」

 「ほ、褒めすぎじゃない!?」

 「あー、今のは素です……」


 京太郎も漏らすつもりはなかったのか、恥ずかしそうに頬を掻く。

 だが本当に恥ずかしいのは褒められている霞だ。

 そんなこと、言われたことはない。

 女の子同士で褒める時にはどこか褒めなきゃいけないと言う考えがある。

 もし京太郎に下心があったとしても、今の言葉がとても嬉しい。


 「(……でも)」


 内心、このままではいけないことに気づいていた。

 いずれ鹿児島に帰ってしまえば、彼も長野に帰るだろう。

 霞はもう二度とその地から離れることはないかもしれない。


 「(でも、今だけは……)」


 全てを忘れて、楽しみたい。

 こんな風に普通の女の子として楽しむ事なんて、考えたこともなかったから。


 ……
 …



 団体戦が終わって、個人戦が終われば二人の奇妙な関係は終わる。

 ほんの少しのきっかけで知り合って、話していてとっても楽しいから何度も遊んだ。

 彼と彼女の関係は友達? 親友? 恋人?

 きっと彼ら自身にもよくわかっていない。


 「(もうすぐ、終わる)」


 霞はカレンダーの日付を見て呆然とする。

 彼にも彼の日程がある。もう会うことは出来ないだろう。

 とても楽しかった。それだけに考えたくない。


 「(ダメね。ちゃんと切り替えないと)」


 ちゃんと切り替えて、霧島神宮の『石戸霞』に戻る。

 そうすることで昔のようにお勤めをして、姫様のために尽くす。

 自分の命全てを姫様のために費やすには、心なんて不要だ。


 「(私は、石戸霞)」


 鏡を見て、自分に言い聞かせる。

 少しずつ疎遠にしていけば心の傷も浅いはず。

 霞は恋をしているのだろうか。

 今までに経験がないから、それすらもわからない。


 「(わたし、は――)」



 ――携帯の着信音。

 体がびくりと反応して、急いで着信を見る。


 『須賀京太郎』


 その文字が霞の心をぐちゃぐちゃに織り混ぜる。

 今までに意識していたものが全て霧散していくのを感じる。


 「も、もしもし!」

 『あっ、石戸さん。

  京太郎っす。今時間ありますか?』

 「うん、大丈夫」


 高鳴る鼓動を抑えつつ、動揺を知られないように努める。


 『もう直ぐ、インターハイも終わりですね』

 「そう、ね」

 『俺、石戸さんと知り合えて良かった』

 「わ、わたしも」

 『それで、相談なんですけど……』


 一瞬間が空く。

 京太郎が大きく息を吸い込んで、次の言葉を言った。


 『地元に帰った後も、電話しませんか?』


 胸が高鳴る。

 ただ一言、それだけで救われた。


 「ええ、もちろんよ」

 『ありがとうございます!』

 「だって、私たち友達でしょう?」

 『はい!』


 恋人ではない。それはダメだ。


 『明日、見送りますね』

 「わざわざありがとう」


 その日はそれだけ言って電話を切った。

 通話を終わらせた後、ボフッと枕に顔を突っ伏す。

 霞の顔がにやけている。

 そのにやけを一生懸命抑えようとしているが、すぐには収まりそうになかった。


 ……
 …



 「それじゃ、石戸さん。

  また何かあったら電話してください」

 「そうね」

 「愚痴ならいつでも聞きますから!」

 「も、もう。それは忘れて?」


 場を和ませる軽いジョークのように言ってくれたようだが、他の誰かに聞かれたら大問題だ。

 しかし、何かあったら連絡できる。それだけでとてもうれしい。


 「京ちゃん、石戸さんと仲よかったんだ」

 「おう、咲。インターハイ中に、な」

 「ふーん」


 特に興味もなさそうに彼の近くを歩いているのは宮永咲。

 少し話して、すぐに他の清澄勢のところに向かってしまった。

 しかし、それが霞の心を濁らせる。


 『京ちゃん』 『咲』


 なんだかとっても悔しい。


 「もう、『京太郎さん』ったら、女の子は名前で呼ぶのね」

 「うぐっ!?

  いや確かに同年代は名前で呼ぶけど……」

 「これだけ仲が良くなったんだから、私のことも名前で呼んで?」

 「えっ、いいんですか?」

 「……うん」


 緊張の一瞬。

 先ほど当てつけのように名前呼びした時の熱も治まっていない。






 「霞さん」




 


 今度こそ心臓が破裂したかと思った。


 「なんだか恥ずかしいっすね」

 「京太郎さんには慣れていることじゃないの?」

 「そんな別に……」

 「ふふっ」


 少しリードを取れて、嬉しい。


 「あと、これからはこっちの携帯電話からかけるわ」

 「こっち?」

 「私用なの。

  前のは事情があって使えなくなるから……」

 「わかりました!」

 「その、京太郎さん」


 息を吸い込む。

 そうだ。初めて会った時からずっと言いたかった。


 「ありがとうございます」

 「へっ?」

 「あなたのおかげで、たくさんの楽しみを知りました」


 敬語になるのは、尊敬の証。

 どこかむず痒くてその場で別れを告げてしまったけれど、後悔はしていない。

 彼に会えて、本当に良かった。


 ……
 …


 「霞ちゃん、もういいんですか?」

 「ええ、小蒔ちゃん」

 「えへへ。霞ちゃんとこんなに仲良くなっていたなんて意外です」

 「ふふっ、私も意外だわ」


 思えば、小蒔が彼と出会ったことが全ての始まりだった。

 そう思えば、小蒔に感謝しないといけないかもしれない。


 「私も全国でいろんな人と知り合えました」

 「そうね。

  小蒔ちゃんもたくさんの友達が出来たみたいね」

 「離れ離れになっちゃいますけど、ずっと友達です」


 小蒔は嬉しそうに何人もの名前を挙げていく。

 その笑顔のまま、告げた。


 「霞ちゃんとは、ずっと一緒ですよね?」



 ――本来なら何も悪意のないその言葉が、霞の楔となる。

続く


 5

 [霞色]


 鹿児島に帰り、彼がいない世界は霞色だ。

 麻雀も終わり、あとは高校生活を済ませればお家の手伝いをすることになるだろう。

 結婚相手が決まっているのならば、大学に行かせてくれることもないだろう。

 考えれば考えるほど憂鬱になっていく。


 「霞ちゃん、元気がないですよー」

 「初美ちゃん」


 そんな中、いつもと同じように初美が絡んでくる。

 インターハイが終わっても彼女は変わらない。

 永水を卒業したら、地元に戻るのだろうか。


 「ほら、私たちも3年じゃない。

  卒業後のことを考えちゃって」

 「あー、それはありますねー」


 初美がふむ、と考える仕草をする。


 「でも霞ちゃんならまだマシですよー?

  私なんて悪石島に逆戻りですから」

 「そうなの?」

 「別名、キングオブ何もない島!

  あんなところに隔離されたら死んじゃいますよー」

 「ああ、総人口70人くらいって聞いたわ」

 「それでも、巫女さんが必要ですからねー」


 はぁ、とため息を吐く初美を見る。

 初美のアクティブな性格を考えれば、大変な環境だろう。

 ほとんどが観光客の相手とはいえ、気が滅入るのではないか。


 「私は、どうなるのかしらね」

 「全く聞いてないんですかー?」

 「両親からは何も……。

  本家からは……」


 本家、というよりはお祖母さんから聞いた話。

 石戸霞の血は神代小蒔に最も近く、神代小蒔を守るための身代わりになる。


 『生きた天倪』


 幼い記憶の中でさらりと言われた言葉を思い出し、ゾッとする。

 違和感。

 今まで感じたことがないモノ。

 当たり前のように受け入れていたモノ。


 ・天倪
 古代、祓(はらえ)に際して幼児のかたわらに置き、形代(かたしろ)として凶事を移し負わせた人形。
 後世は練絹(ねりぎぬ)で縫い綿を入れて、幼児のはうような形に作り、幼児の枕頭においてお守りとした這子(ほうこ)をいうようになった。


 「霞ちゃん、顔色が悪いですよー?」

 「そ、そうかしら」


 今まで、それを苦に思ったことなどなかった。

 そうなるように、ずっと修行してきた。

 人のまま天倪になるとは、どういったことだろう。



 これは、とてつもない、ことではないか?



 代わりに『恐ろしいもの』を降ろすとは、どういうことだろう。


 「震えてますよー!?」

 「大丈夫、大丈夫だから」


 姫様を後々から祓って貰う。

 ダメだった時には、私が代わりになる。

 良くないものや、『恐ろしいもの』は私が背負う。


 ――私は、人間なのかしら。


 ただの人形、形代であれば良かった。

 須賀京太郎に会わなければ良かった。

 そうすれば、こんな悩みを抱くこともなかったのに。


 ……
 …



 夏休みの間は学校こそないが、修行の期間。

 高校生活を送っている方が楽かもしれない。

 寝るまでの間にほんの少しだけ時間がある。


 「(電話、かけてみようかしら)」


 手に握ったままの携帯電話。

 東京に行った時のような余計な機能は持たされていない。

 ガラケーの通話機能とメールだけが出来る私用のものだ。


 京太郎の番号を見て悶々とする。

 コールしても出なかったらどうしよう。

 忙しくて会話できなかったらどうしよう。

 もう遅いし、迷惑だったらどうしよう。


 様々な考えが浮かぶ中、霞はただ『わがまま』を取った。


 『もしもし、霞さん?』

 「京太郎さん。

  良かったらお話しできないかなって」

 『大歓迎です!』


 胸をほっと撫で下ろす。

 拒絶されなくて良かったという思いだけが胸を埋め尽くす。


 「そっちはどう?」

 『いやー、全国であれだけ活躍したのもあって、大盛り上がりですよ』

 「ふふっ。

  清澄高校、すごかったものね」

 『部員も今年から入ろうか迷ってくれてる人も多いですし、来年は期待できそうです!』

 「やっぱり女性が多いのかしら?」

 『うー、うちの部員目当ての野郎も来るんですけど、ここまで結果を残してると逆に尻込みしちゃうみたいで』

 「京太郎さん的には嬉しい?」

 『複雑ですね。

  来年は俺も団体戦に出られるかな!? って言うのと、お前ら女性陣に色目使うんじゃねー! っていう二つありまして』

 「ふんふむ」


 それは、京太郎が少なからず想う人が清澄にいる、ということだろうか。

 霞自身も気づかないうちにしかめ面をする。


 『今年が奇跡だったんで、来年以降はまったりやるそうですよ』

 「そうなの?」

 『顧問もいないし、部員数も増えたら対処出来ませんからね。

  ある程度諦めていた方が後々トラブルを起こさないって新部長と決めました』

 「諦め」

 『そうじゃないと、胸が苦しくなりますから』

 「そう、よね」


 京太郎がそういうことを言っただけで、霞はホッとした。

 少し胸の中が整理できる。


 『でも、ただではやられませんよ!』

 「え?」

 『今年は予選落ちで清澄の名に泥を塗っちゃいましたが、来年はもっと頑張る予定です!』

 「泥をって……」


 霞は考える。

 清澄高校というただの公立高校で負けたのならば、それほど気にする必要はないのではないかと。

 ただ、来年以降の新入部員のことを考えると彼の立ち位置が危ないかもしれないことはなんとなく考えついた。


 「京太郎さんは、強いわね」

 『そんなことないです。

  負けた時スッゲー落ち込んで、慰めてもらったくらい情けないです』

 「……誰に慰めてもらったのかしら?」

 『同じ麻雀部の原村和ですね。

  軽く声をかけてくれただけでも人って落ち着きますね』

 「ふーん……」


 この胸のモヤモヤはなんだろう。

 友達が元気になって、うれしいはずなのに。

 原村、和。

 確かアイドルのような扱いすら受けているインターミドル覇者だ。

 インターハイでも大活躍していた。

 自分の胸をじっと見つめる。


 ――勝ってる!

 初めて自分の胸を好意的に見れたかもしれない。


 「女の子との会話中に他の女の子の名前を出すのは良くないわよ?」

 『ひでー!?

  聞かれたから答えただけじゃないっすか!?』

 「ふふっ、女の子は理不尽なの」


 ちょっとした優越感を抱いてからかう。

 京太郎の反応も理想的で、楽しくなる。


 「ねぇ、京太郎さん」

 『はい』

 「京太郎さんはさっき『どうしようもないことは諦める』って言ったわよね」

 『そうっすね』

 「京太郎さんが今一番欲しいもの、実現したいことを想像してみて」

 『……』


 何を想像したのだろうか。

 来年の麻雀の結果、あたりが妥当か。


 「どうしようもない状況まで追い詰められて

  もう諦めるしかないと言われて

  それを諦められる?」

 『諦めないです』


 即答。

 霞はあまりの早さにびっくりしてしまった。


 『絶対に、諦めないです』

 「そう、よかった」

 『あっ、落ち込んでると思いました?』

 「ふふっ、余計な気遣いだったかしら」


 嘘だ。

 これは霞本人がどうあればいいかを考えるための質問だ。

 利用してしまったことを後悔する。


 『ありがとうございます!』

 「いえいえ」


 それでも、少し気が上を向いたようだ。

 京太郎と会話しているだけで胸が温かくなる。


 「それじゃ、明日も早いから……」

 『結構長い時間話しちゃいましたね』

 「いきなりかけてごめんなさいね」

 『いえ! いつでも!』

 「それじゃあ京太郎さん。

  お休みなさい」

 『はい、お休みなさい』


 最近、考えてしまって眠れないことが増えた。

 しかし、今日はよく眠れそうだ。

 疲れていたのか、布団に入ってからすぐに意識が落ちた。


 ……
 …


 石戸霞の朝は早い。

 今は永水女子にいるから実家の手伝いをすることはないが、それでもやることはたくさんある。

 朝からご飯の準備を整え、学校に行く前には瞑想。

 霞に与えられた『天倪』の役割として、自然と『恐ろしいもの』が体に入りやすい。

 乱れた精神ではそれを御し切ることもできない。

 そもそも入ってこさせないために、しっかりと修行する。


 「ふぅ……」


 本家の修行はともかく、気遣いをするのが大変だ。

 他の六女仙もそうだが、分家として本家に仕えている以上は立場を弁える必要がある。


 「あっ、霞さん。おはようございます」

 「おはよう。巴ちゃん」


 同じく修行している巴と合流する。

 巴と春は祓い人。

 小蒔や霞が神様を降ろした際に、体を清める役割を持つ。

 霞にとってはなくてはならない半身だ。


 「東京でエンジョイした分、修行が厳しいですね」

 「そうね……。

  やっぱり日常的にこなしていると気づかないものね」


 どうしても楽をしてしまう。

 朝早く起きる必要がないだけでも相当楽で、そこから自由に行動してもいい。


 霞たちにとっては夏休みといえば修行の日々でしかなかった。

 あの東京での数日間こそが、本来の女子高生の夏休みなのかなどと考える。


 「霞さん?」

 「?」

 「いや、とっても疲れているようなので……」

 「そう、かしら」


 巴が心配してくれている。

 しかし霞の心の中には『普通の女子高生』の生活。


 「(ダメダメ。こんなことを考えていたら負けちゃう)」


 自分が悪神に負けてしまえば、巴や春に迷惑をかける。

 それ以上に、小蒔にも影響を及ぼす可能性があるのだ。


 「(私がしっかりしないといけないんだから)」

 「霞さーん?」

 「巴ちゃんは大丈夫?」

 「私は平気です!

  もう体が戻りました!」

 「そ、そう……」


 周りを見渡せば、初美と巴は特に問題なさそうだ。

 春は元からサボり癖こそあるが、要領よくやっているだろう。

 中等部の二人のことはよく分からない。

 小蒔は霞たちの知るところではない。


 「(もしかして、夏休みボケをしているのって)」


 自分だけかもしれない、などと思って焦る。

 早く元の生活に馴染まなければ、と思っても体がうまくいかない。


 「霞」

 「お祖母様!?」


 それでも懸命に修行を続けていると、声をかけられる。

 今一番会いたくない相手だ。

 霞の宿命を告げた相手であり、厳しい師匠でもある。

 決して悪い人ではないし、尊敬しているのだが、今は心に準備が出来ていない。


 「修行に身が入っていないようですね」

 「申し訳ありません……」


 案の定叱られる。

 もっとも、この人に褒められたことなど一度もない。

 むしろ実家関連での修行で褒められたことなど一度もないのではないだろうか。


 「心」

 「?」

 「あなたの心に迷いが見られます」

 「!」


 やはり年季が違う。

 この人の前では何も隠せない。

 霞は京太郎との関係も漏れているのではないかと不安になる。

 彼とはただの友達、そう言って理解してもらえるだろうか。


 「霞」

 「はい」

 「詳しくは知りません。

  けど、その葛藤はあなたには不要なもの。

  あるべき姿に成りなさい」

 「……」

 「『霞』と」

 「はい」


 まるで暗示にでもかけられたかのように、心を無にして頷いた。

 その瞬間、世界が霞色に染まった。


 ……
 …


 霞色の世界の中で、呆然とする。

 1日修行を通しても悩みは晴れない。

 あの時の祖母の言葉が離れない。

 人間としてではなく、人形として、天倪として生きる未来。

 ずっと前から定められて、そのために作られた人格。

 色のないボヤけた世界で、じっと携帯を見つめていた。


 ――着信


 ほんの数コールだけ躊躇して、それを受け取る。


 「もしもし、京太郎さん」

 『あっ、霞さん!

  今大丈夫ですか?』

 「ええ、平気よ」


 その瞬間、世界に色が戻る。

 ボヤけていない、そこにある現実。

 今見ている光景は霞だけのものだ。


 『なんか元気なさそうで……』

 「そうね……。

  ちょっと色々とあって」

 『何かあれば聞きますよ』


 思えば、ここで吐き出してしまえばいいのかもしれない。

 全てを吐き出して、諦めて、人形に戻ればいい。


 「京太郎さんは、『霞』ってわかる?」

 『カスミ、ですか?』

 「そう、私の名前の漢字の話」

 『えっと、ボヤけている。そういう意味でしたっけ?』

 「そう。

  夕焼けの空、『沈み行くもの』と言ってね。

  『不吉』なんて意味があるの」

 『えっ、でも『カスミ』なんてよくある名前じゃ……』

 「それは『香る』『澄む』と名付ける場合の話。

  私は身代わりにされる存在」


 ――ああ、私は何を言っているのだろう。

 霞はいきなりこんな話をしだした自分に後悔する。

 こんな自虐、いきなり話されたってわかるはずがない。


 「ご、ごめんなさい。

  いきなりナイーブな話をしてしまって」

 『……いえ、そんなことないです』


 彼が羨ましい。

 彼は霞の中で中心だ。

 京太郎とは日本の中心で輝く健康男子の意味を持つ。

 たかが名前とも言うが、今の霞にとっては些細なことでもコンプレックスになっていた。


 『その、霞さん、今日電話した理由なんですが』

 「あ、ああ。ごめんなさい。

  なにかしら」

 『実はこの夏休み、家族旅行で鹿児島に行く予定なんです。

  一日だけでも会えないかなって……』

 「……!」


 現金なことに、胸が高鳴る。

 先ほどまでの悩みが吹き飛んでしまったようだ。


 『空いている日ってありますか?』

 「えっと、……この日なら空いているわ」

 『やった!

  その日なら鹿児島にいます!』

 「え、ええ」


 彼の誘いを拒絶しなければいけない。

 これ以上彼に浸かってはいけない。

 こんな麻薬のような中毒性、抜けられなくなる。

 そう分かっていても、デートの日付を決めていて楽しくなる。

 どんなに辛くても、その日まで頑張れる。


 『霞さん。おやすみなさい』

 「ええ、おやすみなさい」


 ――でも、抜け出せる気がしない。

 少し話して、楽しくて、本当にそれから始まったのに。

 彼が来るのが楽しみで仕方ない。

 今度はどこに行こうか、鹿児島を案内しようか。


 ああ、まずは制服でも巫女服でもない私服を用意しなければいけない。


 「か、買いに行かないと!」


 ――どうやら、忙しくなりそうだ。

続く


 6

 [幸福]


 京太郎とのデートの日まで、霞はそれをみんなに話さなかった。

 いくら夏休みが修行の日々とはいえ、普通の休日もある。

 その日が偶然京太郎の鹿児島滞在の日と重なったのは奇跡的だし、大事にしたい。


 だが、誰にもそれを言わないということは、誰にも相談できないということだった。


 「(どうしよう……)」


 洋服箪笥の前でウンウン唸る。

 例えば永水に来る前の友達だったり、六女仙が関係なければ相談することもできる。

 だが、姫様の意向で永水女子に来てからはそんな友達は作っていない。

 電話で相談することも考えたが、色々とリスクが大きい。


 「(そもそも、洋服の種類が少ないのよ……)」


 霞が着たいのは『今時の子』が着ているような『普通の服』だ。

 だが、いかんせん自分に合う服というものがなかなか見つからないし、オーダーメイドはお高い。

 お小遣いと相談して少しは買い揃えるにしても、今までのものがあまり役に立たないのは泣きたくなった。


 「(前は制服と巫女服で誤魔化したけれど……)」


 巫女服は嫌だ。

 せっかくそう言ったしがらみを全て忘れて遊ぶことができるのに。

 何より、デートに巫女服という発想自体おかしい。

 では制服。これは前にも使った手法だ。

 しかし個人的な旅行で来ている京太郎は制服ではなく私服を着ているだろう。

 私服の男性と制服の女性。

 どんなに頑張っても『そういう関係』に見られそうだ。


 「(じゃあどんな関係に見られたいのかしら)」


 霞は一人考える。

 おそらくはかっこいい私服で来てくれる彼に合わせられる格好。

 男と女が何の障害もなくただ遊ぶ、そんなデート。

 それは一般的には恋人同士と言うのではないか。


 「(わー! わー!)」


 夜中に叫び出さずに枕に顔を突っ伏して堪える。

 堪えることができたのは、ひとえにデートに邪魔を入れたくないという乙女の思考そのものだ。


 「(私と京太郎さんが、二人で歩く)」


 前と違って私服で歩く。

 鹿児島を案内してもいいし、京太郎の行きたいところに行ってもいい。


 「(私服で、手をつないで)」


 霞の乙女な思考が外側に漏れ出す。

 今までは隠してきた(本人的には)つもりの乙女な夢。


 好きな人と手をつないでデートをしたい。

 好きな人に引っ張って行ってもらいたい。

 好きな人に敬語で喋ってさん付けで呼びたい。


 たくさんの夢を、今まで隠してきた。(最も、初美にはバレバレだったようだが)


 「(さん付けは、できてる)」


 こちらの方が年上なので敬語ではない。

 残り二つはほぼ同意義。


 「(手をつないで……)」


 考えるだけで頭が破裂しそうだ。

 京太郎の長身から、つまり上から大きな掌を差し伸べられたら胸がキュンとなりそうだ。

 むしろ、考えているだけで悶えている。

 枕を抱きしめて布団の上でゴロンゴロンと転がり回る。


 ――今の霞を見て、『みんなのまとめ役』なんて思う人はいないだろう


 「やっぱり、私……」


 自分の気持ちを再確認する。

 薄々気づいていたつもりだが、やっぱり間違いなさそうだ。


 「京太郎さんのことが好き、なの、かも」


 ボンっと音を立てて顔が真っ赤になる。

 今まで自覚していなかった部分に気づき、冷静でいられない。


 ――そっか、みんなこういう気持ちなんだ


 恋する乙女に憧れていた。

 それは決して許されることではなかった。

 永水に来る前、友達の家で読ませてもらった少女漫画。

 自分の家で買うことはできないから、謝りながらも読み漁った。

 その主人公の女の子が抱く『恋する気持ち』に憧れた。

 どんな気持ちなのか、想像もつかなかったけれど、今ならわかる。


 「これで一人前の乙女、よね」


 ずっと憧れていた『普通の女の子』になれて嬉しい。

 自分に課せられた使命なんかなんのその、恋する乙女の前にはないも同然だ。

 ――いや、意識しないうちに考えないようにしているのだろう。


 「京太郎さん」


 名前を呼ぶ。

 胸が温かくなる。


 「京太郎さん」


 姿を思い浮かべる。

 心臓がドキドキする。


 嬉しくて、温かくて、切ない思い。

 デートの日が来るまで耐えられるか、別の意味で心配になってきた。


 「それどころじゃないわ!」


 自分の気持ちを自覚したのならばすることがある。

 京太郎とのデートを成功させることだ。

 そのためには、まずは服。


 「少し時間を作って買いに行きましょう」


 お小遣いとお年玉を使えばなんとかなるはず。

 なるべく可愛いけれど、露出は少ないものにしたい。

 彼が露出が多いものが好みだったら失敗だけれど、はしたない女だと思われたくない。

 ――さてそうなると、一つ問題が出てくる。


 「下着はどうしましょう……」


 石戸霞。

 間違ってはいないが、どこかずれている。


 ……
 …


 朝早く起きるのは得意だ。

 いつも早くから起きて修行しているのだから、デート前ならばもっと時間を持って起きられる。

 修行のためとはいえ日常的になっていて得をした、などと考える余裕もある。

 起きて入念にシャワーを浴びて、時間をかけて身だしなみを整える。


 「結局、これにして……」


 わざわざ買ってきて、この日のために準備した服装。

 少しでも彼の好きな服装だったらいいな、などと思う。


 待ち合わせ場所には早く着く。

 家にいてもソワソワしてやることがないか、バレて厄介なことになるかだ。

 少しでも家にいる時間を短くするというのはよく考えたものだろう。


 「前みたいに、早く来てくれたら……」


 そんな気持ちが湧いてくる。

 京太郎にも京太郎の予定があるだろう。

 それも、前と違って旅行中だ。長野からわざわざ鹿児島まで来ている。

 そんな余裕はないだろうから、今は待つ時間を楽しもう。


 「あれ、霞さん?」

 「きょ、京太郎さん!?」

 「まだ一時間も前なのに……」

 「ふふっ、来ちゃいました」


 少し敬語が入るのは、自分の好みだ。

 『男の人を立てる女の子』に憧れているからだ。


 「俺も時間があったんで来たんです。

  早く会えて良かった」

 「そ、そう?」

 「はい!

  すっごく楽しみにしてました」

 「わ、私も」


 前と違って余裕を持てない。

 おっとりとした口調も、お姉さんのような立ち振る舞いもできない。


 「霞さん?」

 「は、はい」

 「いや、様子がおかしくて」

 「き、気にしないで。

  楽しくてこうなってるんです!」

 「そ、そうですか」


 なんだこれは。恥ずかしい。

 二人とも顔を真っ赤にして俯く。

 お互いに純情。一歩を踏み出せない。


 「か、霞さん」

 「は、はい」

 「今日は動物園に行こうと思うんですが、いいですか?」

 「もちろんよ!」

 「良かった」


 京太郎がホッとしたように頷く。


 「その、霞さん」

 「?」

 「その私服、すっごく似合ってます」

 「!?」

 「俺、そんな風に露出が少ないおしとやかな格好が好きで……。

  って俺の好みとかどうでもいいですよね!?」

 「そ、そんなことないわよ!?

  とっても嬉しいわ!」

 「ど、どういたしまして?」


 こうして二人とも混乱の極致に至る。

 京太郎は言っている通り露出の少ない格好が好みのようで、デレデレとだらしなく顔を緩ませる。

 そんな表情も今の霞にとっては格好良く見えるらしく、はうぅっと顔を俯かせる。


 「じゃあ、行きますか」

 「はい」


 霞がチラチラと京太郎の手を見ながら、自分の手に視線を向けてアピールする。

 京太郎は顔を赤くしてぽりぽりと頭を掻いたあと、右手を差し出した。


 「手、繋ぎましょうか」

 「……はい!」


 暖かくて、大きくて、ゴツゴツとしている男の手。

 霞には経験のない新しいものをどんどん与えてくれる。

 夢が叶って、霞はこっそりはにかんだ。


 ……
 …


 「わぁぁ」

 「霞さんって動物好きなんですか?」

 「ひ、人並みよ」


 某動物園に来てチケットを二人分。

 霞が払おうと思った時には京太郎が出してくれていた。

 むくれて反抗しようとするも、ギュッと手を強く握られて黙ってしまう。


 「俺も好きなんです。

  家でカピバラ飼ってるくらい」

 「カピバラって……」

 「あそこにいるやつですよ」


 見慣れない動物がのしのしと歩いている。


 「あれ?」

 「そう、あれです。

  大きいですけど、ネズミなんですよ」

 「ネズミ?」

 「地球で一番大きなネズミがカピバラです。

  見た目もモコモコしてて可愛いでしょ」

 「……」


 じーっとカピバラを見つめる。

 カピバラは霞のことなど気にしないようにのしのしと歩いている。


 「見た目がモコモコしてるけど毛がすっごく硬いんですよ」

 「へぇ……」

 「ほらほら、霞さんも!」

 「触っても大丈夫?」

 「ちゃんと洗って消毒出来ますから!」


 元気よくカピバラを撫でる京太郎。随分と慣れているらしい。

 恐る恐る触ってみると、視覚から得られる情報とは違う手触り。


 「ゴワゴワしてる……」

 「でしょ! もふもふはしてないんですよねー」

 「でも……」

 「?」

 「かわいい……」


 言ってからハッとする。

 ニヤニヤと霞を見る京太郎。


 「もう! 京太郎さんったら!」

 「へへっ」


 悪戯を成功させたように喜ぶ。

 そういう反応をされると嬉しいやら、困ってしまうやら。

 言わされたことに悔しいのは間違い無いのだが、それ以上に喜んでいる京太郎がかわいい。


 「どんな風に飼うのかしら?」

 「あー、カピバラの飼育ってめちゃくちゃ大変なんですよ。

  家に専用のプール無いとダメだし」

 「家にプールがあるの!?」

 「親も好きなんですよねぇ。

  めっちゃ金かかってるらしいんですけど」


 それは一般家庭では無いのでは無いか。

 とはいえ、霞も一般家庭では無い。

 似ているとは言い難いが、少しでも近い気がしてホッとする。


 一通り動物を見て、ベンチに座る。


 「そろそろご飯にします?」

 「そ、その、お弁当を作ってきたの……」

 「マジっすか!?」

 「あんまり自信は無いんだけれど……」

 「霞さんの手料理ってだけでめっちゃ嬉しいです!」


 気合こそ入れたが、実力が伴っているとは限らない。

 元気よく食べ始める京太郎を凝視する。


 「めっちゃうまいっす!」

 「よかった……」


 霞が胸を撫で下ろす。

 今日一番の懸念事項がなくなったと言っても過言では無い。

 ダメになっていないか、美味しくなかったらどうしようなどとずっと考えていたのだ。


 「このタコさんウインナーかわいいですね」

 「あら、京太郎さんはそういうのが好み?」

 「いえ、このために切り込みを入れている霞さんがかわいいんです」

 「!?」


 先ほどまでの純情さは何処へやら、嬉しそうにからかってくる。

 一気に距離が縮まった気がして嬉しいが、心臓が持ちそうにない。


 「……霞さん」

 「はい」

 「実は今回、霞さんに会いに来たのには理由があるんです」

 「……」


 なんとなく、察してはいた。

 ここまで話しかけてくれて会いに来てくれる。

 自意識過剰でなくても期待はするものだ。


 「まず、一つ嘘をつきました」

 「えっ?」

 「家族旅行なんかじゃないです。

  自分のお金で霞さんに会いに来たんです」

 「!」

 「だから霞さんの休みの日ならいつでも良かったんです。

  たまたま、じゃないんです」

 「……うん」


 霞のためにそこまでしてくれることが、嬉しい。

 ずっと待っていた『王子様』のようだ。


 「それで、会いに行こうって思ったのは理由があって」

 「……」


 京太郎の言葉を待つ。


 「『霞』って言葉は、決して悪い意味じゃないんですよって伝えたかったんです!」

 「……えっ」


 京太郎から繰り出されたのは、予想外の言葉。


 「電話で言ってましたよね。

  いろいろと悪い意味があるって」

 「それは、そうだけど」

 「俺、あれから調べたんです。

  あんまり勉強は得意じゃないんで、間違ってるかもしれないんですけど」


 一拍置いて、吐き出す。


 「まず、『親切』って意味がありました。

  咲を一緒に探してくれた霞さん。

  『無邪気』って意味もあります。

  かわいいものが好きな霞さん。

  それに、『幸福』って意味もあるんです。

  両親はそれを願ってつけたのかもしれません。

  最後に、『清い心』」


 一気に吐き出す京太郎。

 霞はその勢いに押されて何も言えない。


 「こんなにいっぱい良い意味があるんです。

  自分を卑下しないでください」

 「……ううっ」


 涙がこぼれる。

 自分のことを、そんな風に考えてくれた人なんていなかった。

 コンプレックスを肯定してくれた。






 「俺は、そんな霞さんが好きなんです」

 「……はい」




 


 涙が止まらない。

 これだけ気を遣ってくれているのだから期待はしていた。

 だが、そんな期待以上に自分のことを理解してくれていた。


 「わ、私も!」


 それ以上は言えなかった。

 涙が流れて、嗚咽が溢れた。

 悲しかったんじゃない。喜びが胸を満たしていた。


 ――私は、他の人の身代わりなんかじゃない!

 ――でも、でも!



 霞を渦巻く状況は子供の恋愛感情が通るものではない。


 「京太郎さんが、好きです」


 そんな大人の理由に負けたくないと、精一杯の笑顔で京太郎に応えた。


 ……
 …


 京太郎と霞は恋人になった。

 簡単に会うことは出来ないし、両親に認めてもらうのも大変かもしれない。

 でも、諦めなければなんとかなると自分に言い聞かせる。

 それから少しの時間、とても幸せだった。

 手をつないでデートの続きをして、霞が憧れていた恋人割引のスイーツを食べたりした。

 携帯の写メで自撮りして、二人で分け合った。

 何気ない一つ一つの遊びが、京太郎といるだけで輝いて見えた。

 思い切って腕を組んでみると、京太郎が顔を真っ赤にする。

 胸が押し付けられていることに気づいて、霞もまた顔をも真っ赤にした。


 ――彼が好きなら、この大きい胸も嫌いじゃない


 京太郎が帰るときには、胸が切なくなった。

 それでも、また会えると信じて手を振った。

 京太郎に渡してもらった『霞』の『良い言葉』のメモを見るだけで、心が落ち着いた。


 「夢みたい……」


 小さな頃から夢を見て、夢のままにしておこうと隠し続けていた想いが叶った。

 それだけで十分幸せなのだ。


 ……
 …



 「霞ちゃん」


 悪石の巫女が、それを見ていた。

 瞳に静かに灯る暗い炎。


 「私たちの本家がどうなのか、わかっていますかー?」


 それは初美の意思ではない。

 もっと大きなものの流れにいる。


 「私たちだって、霞ちゃんと同じなんです」


 悪意があるわけではない。

 彼女とは親友だ。

 小さな頃から六女仙として、同じ年の女の子として生きてきた。


 「なんで霞ちゃんだけ……っ!!」


 彼女が歪んだ嫉妬を浮かべるのは、決して悪ではない。

続く


 7

 [不吉]


 それからの数日間、霞にとって夢のような毎日が続いた。

 京太郎は長野に帰ってしまったのだが、気軽に電話をしてくれる。

 何より、『自分には彼氏がいる』という安心感が霞を整えた。

 毎日の早起きや修行も昔と同じようにこなすことができた。


 「(認めて、もらわなきゃ)」


 そう、霞の心にあるのはその一筋だ。

 ここで恋に現を抜かして修行を疎かにするようでは理解してもらえない。

 そんなことは霞もわかっている。

 今すぐにでも誰かに漏れてしまえば、彼と会うことを禁じられるのは容易に想像できる。

 隠れて、なんとか光を掴む。

 今の自分になら出来ると、言い聞かせるように必死に修行した。


 「少し、マシになったようですね」

 「お祖母様」


 声をかけられるが、以前と違って覇気のこもった声で返す。


 「あなたに決められた使命。

  そのことを忘れてはいけません」

 「はい」


 嘘はついていない。

 霞にとって京太郎はかけがえのない全てだ。

 かといって、今まで十年以上姫様のために生きてきたことも事実。

 叶うのならば、どちらも守りたいと思うのは傲慢ではない。


 「その身は姫様のために」

 「はい」


 天倪としての役目も果たしてみせる。

 ただ一つ、隣に京太郎がいればいい。

 それだけ許してくれれば、この身を捧げたって構わない。


 京太郎も小蒔も、六女仙もみんな大事。

 そのために今、霞が出来ること。


 一人前の巫女になること!


 全てはそこからだ。

 京太郎には待たせてしまうかもしれないが、一緒になるためには説得は必要だ。

 きっと大丈夫。

 話せばわかってくれる。

 そんな霞の一筋の思いを胸に抱いて修行する。

 それしか霞にできることはなかったのだ。


 祖母はじいっと霞のことを見据える。

 その長く生きた眼力は、若い娘の考えることなどお見通しと言わんばかりだ。


 「お祖母様?」

 「本日、伝えておく事項があります」


 ――空気が変わった。

 人の身にて一切の拒絶を許さないほどの圧力。

 どれだけ生きて、どれだけ修行すればこの極致にたどり着けるのか、霞にはわからない。


 「霞の婚約者と会わせます」

 「……えっ」


 たった一言で、霞の希望は打ち砕かれた。


 「霞ももう高校卒業ですね。

  石戸の血を引くものとして、神主を迎え入れる必要があります」

 「そう、ですね」

 「相手の血筋、性格は考慮してあります。

  もちろん、専門の大学の出身者です。

  貴女の娘が神代の天倪となるように、この地を支えるのです」


 ――なんだそれは


 霞は叫びだしそうになるのを必死に抑えた。

 わかっていた、ずっと前からわかっていたことだ。

 自分には自由意志なんてない。

 神代の分家として、姫様に最も近い血を持つものとしての義務がある。

 両親から直接言われたことはないが、噂話で婚約者がいると聞いたことはある。

 その時は『自分たちからアタックしなくていいなんて楽ですよー』なんて励まされた覚えがある。

 けど、けど!


 ――このタイミングはないでしょう!


 霞にだって色々と準備はあった。

 駄目もとだって、やってみるべきことはあった。

 何にせよ霞から行動して、本気であることを伝える意思はあったのだ。


 ――私には恋人がいる。


 そう言おうと思った瞬間に、気づいてしまった。

 霞に一切合切何も言わせないこのタイミングで婚約者に合わせようとした理由。

 ハッとして顔を上げる。

 修行している振りすらも保っていられない。

 お婆さんを見据えると、ゾッとするような暗い眼差しをこちらに向けていた。


 「六女仙から報告がありました」


 それはまた、霞を絶望に落とす一言。


 「貴方が男性と密会し、親密な関係になっていると」


 六女仙で、彼との関係を知っているもの。

 恋人同士になったことを知っているものは、霞視点ではいないはず。

 そこそこ親しいことを知っているものは、霞の知る限り二人。


 「霞、それは許されないことです」


 初美と、巴。


 「年若い貴女には残酷なことでしょう。

  しかし、物事には必ず理由がある。

  貴女にも理解するときがやってきます」


 初美も巴も親友だ。

 同い年で、小さな頃から親しい。


 「見合いの日付は学校が始まる頃に伝えます」


 情報が漏れてしまった原因が、その二人に裏切られた。


 「以後、私用の携帯電話は没収します。

  休みが終わるまでは通常通り修行するように。

  最後に――」


 トドメとばかりに、釘を刺された。


 「――姫様には、何も教えてはいけません」


 それが役目なのだと、純粋でなければいけないのだと語っていた。

 それ以上何かを言っていた気がするが、もう何も聞き入れることが出来なかった。


 ……
 …


 電気が付いていない自室で呆然と寝転がる。

 夜でもないし、眠気は全く来ない。

 泣きはらした目で、鏡を見る。


 「(酷い顔……)」


 何度洗っても涙が落ちず、自室での待機を命じられた。

 もちろん、携帯は没収されている。

 今までならば少し時間があれば京太郎と連絡を取ろうと考えもしたが、それも出来ない。

 せめて寝てしまえば少しはマシにもなるかもしれないが、それも出来ない。


 「今、しなければならないこと」


 あの後、祖母は呪いのように『霞』と連呼した。

 呪いの名前として名付けられた『霞』を聞くたびに機械のように使命をこなそうと身が起き上がる。

 どんな精神状態でもやらなければならないことが浮かんでくる。


 「姫様に気づかれないように」


 こんな泣きはらした顔ではとても会えない。

 全てが小蒔のせいだと怒りを与えられる性格ならば良かった。

 だが、『そんなことはできないように教育されている』

 小蒔のために天倪になった、八つ当たりかもしれないが、そのせいで京太郎との仲を引き裂かれた。

 ――それでも姫様には傷を与えてはいけない。


 楔が霞の胸の内を蝕む。

 自然と化粧道具を取り出し、涙の跡を隠し始めた。

 この化粧道具も京太郎に会う前に用意した、ちょっとお高いものだと考えるとまた涙が出てくる。

 何度も化粧を使って、涙が出てこなくなるまで繰り返す。


 「私は、石戸霞」


 自分に言い聞かせる。

 今まではこれで全て解決していた。

 ――でも、もう無理だ。

 一度でも『普通の女の子』を知ってしまった。

 何も知らなければ、大丈夫だった。

 知ってしまった以上、もう元には戻れない。


 コンコン


 霞の部屋をノックする音がする。

 幸い、化粧は済んでいる。バレることはないはずだ。


 「どうぞ」

 「霞さん、入りますー」


 入ってきたのは巫女服姿の巴。

 先ほどまで一緒に修行していたはずだ。

 まだ修行の終わりの時間ではないはずだが、と霞は考える。


 「今日は早いのね?」

 「それを言ったら霞さんもじゃないですか。

  なんでか『霞についているように』って言われちゃって」


 ここで霞は理解する。

 要するに、祖母がよこした見張りというわけだ。


 「わざわざ悪いわね」

 「それより、霞さんが体調悪いみたいで」

 「そう、もう大丈夫よ」


 見た目は平然としてみせるが、巴とは長い付き合いだ。

 訝しげな目でこちらを見ているのがわかる。


 「『大丈夫』」

 「……そうですか」


 語尾を強く言えば、『詮索するな』の合図。

 それがわかる程度には長い付き合いだ。

 巴は一つため息を吐いた。


 「霞さんはいつだって自分で背負いこんじゃうんですから」

 「そうね、そうかもしれないわ」

 「……?」


 巴が感じているのは、拒絶ではない。

 まるで柳が和ぐかのように無抵抗な感覚。

 今の霞と会話しても、流されてしまっている。


 「それが私の役目だから」

 「『みんなの役目』ですよ?」


 巴が訂正する。

 巴としてはいつも背負いこんでしまう霞のことを心配しているだけだ。


 ――だがここに不幸な行き違いが存在する。


 「(巴ちゃんか、初美ちゃんか)」


 ――密告したのは、どちらだ。


 祖母が言っていることが本当かどうかはわからないが、可能性が高いのは二人だ。

 祖母に何も言えず、姫様にも何も言えず、霞が怒りを向けられる相手はこの二人しか残っていない。

 霞の視線にはかつて親友を見るような慈母の眼差しはない。


 「お待たせですー」

 「ハッちゃんまで」

 「あらあら」


 考えているうちに初美もやってくる。

 どうやら、霞の考えていることは当たりらしい。


 「初美ちゃんまで、どうしたの?」

 「どーしたもこーしたもないですよー!

  霞ちゃんが修行で体調を崩したって」

 「あら、心配かけてごめんなさいね」

 「もっと謝ってくださいねー!」


 ふんす、と胸を張るのはいつも通りの初美だ。

 二人の態度から犯人を捜すのは難しそうだ。


 「……そういえば霞さん」

 「何かしら?」

 「その、高校卒業したらすぐに結婚するって」

 「……」

 「えっ、本当ですか!?」


 言いづらそうに俯く巴に、本気で驚いている素振りを見せる初美。


 「休みが終わるまで体調を崩されたら困るから、私たちに付き添いの命が出ました」

 「命令って言い過ぎですよー。

  面倒ですねー」


 祖母がつけたのだろうか。

 言外に六女仙を見張りにつけると伝えている。


 「ふふっ、二人ともよろしくね」

 「えっと、霞さん……」

 「何かしら?」


 巴も初美も、少し暗い顔をしてこちらを見ている。

 ――何を今更


 「『大丈夫』よ」


 無表情で、それだけ伝えた。


 ……
 …


 それはもう夏も終わる頃の話だった。

 夏休みが終わるまでの数日間、霞は『石戸霞』として過ごした。

 京太郎と出会う前に戻ったどころではない。

 巫女としてのお手本のように、人形のように完璧にこなした。

 そこには人間としての感情は挟まない。

 挟んでしまえば、壊れてしまうから。


 「ちょっと、疲れたわね」


 夏休みが終わり、高校に戻る準備をする。

 修行漬けだった毎日から解放される分少しはマシになるだろうか。

 実家に戻って荷物を整理していると、一枚のメモを見つけた。


 『清い心』


 ――それは京太郎が残したメモ。

 霞の良い言葉の意味を集めた手書きのメモだ。


 「あ……」


 それを見た瞬間、崩れ落ちた。

 この数日間抱え込んでいた心労が全て襲いかかる。


 ――ずっと誰かが側にいて監視されていた

 ――携帯電話は取り上げられていた

 ――もし、携帯に京太郎から電話がかかってきたらどうしようと、考えないようにしていた


 「ダメ、またあの時の私に戻っちゃう」


 このメモを見れば京太郎の恋人である石戸霞に戻ってしまう。

 そうなればもう耐えられない。

 仮面を被ってでも何もなかったことにして生きていかねば、霞が壊れてしまう。


 「……?」


 ふと、メモを裏返してみた。

 メモは彼が使っていた電話番号が記載されていた。


 「――!!」


 それは、一つの光明。

 もしかしたら助けを呼べるかもしれない。

 それだけを考えて実家の電話へと走る。

 実家の電話は昔ながらの黒電話だ。趣味でもなければ使っている人はいないだろう。


 「(京太郎さん……)」


 深く考えてした行動ではなかった。

 とにかく京太郎と話したい、その一面だけが体を動かしていた。


 『もしもし、どなたですか?』

 「あっ、京太郎さん……。

  霞、石戸霞です」

 『あれ、霞さん?』


 受話器から聞こえてきたのは前と変わらぬ彼の声。

 こちらの状況が全くわからないからこそ、彼は変わらない。

 その変わらなさに霞は安心を覚える。


 「ごめんなさい。

  その、携帯の使いすぎで取り上げられちゃって」

 『あー、だから繋がらなかったんですね。

  電話のしすぎで怒られちゃいました?』

 「そんなところね」

 『それは、俺のせいです。ごめんなさい』

 「ううん」


 咄嗟に出た嘘にしては悪いものではない。

 助けを求めるように電話したはずなのに、京太郎には知らせたくなかった。


 「その、京太郎さんの声が聞きたくて」

 『マジっすか。

  それ言われると一番嬉しいっす!』

 「え、へへ」


 いつもと変わらない会話。

 彼と話しているとなんでも楽しい。


 「もし良ければ、家から電話してもいいですか?」

 『こっちは全然問題ないですよー』

 「よかった」


 今後、電話できることがあるかどうかもわからない。

 それでもその可能性に期待したかった。


 「京太郎さんは何をしてました?」

 『俺は鹿児島旅行に行ったことを両親に問い詰められて……』

 「えっ」

 『めっちゃかわいい彼女が出来たって自慢してやりましたよ!

  ほら、あの携帯で撮った写真!』

 「は、恥ずかしいわ」

 『ごめんなさい、両親に見せるなんて重すぎますよね?』

 「そんなことない!

  光栄よ……」


 重いのはこちらの事情だ。

 京太郎になんて伝えればいいのかわからないのだ。


 『めっちゃ可愛くて優しくて、でもちょっとドジなこともあるって自慢しました!』

 「もう! ひどいわ!」

 『へっへー。

  そんなドジなところも可愛いんですけどね』

 「か、かわっ!?」

 『そんなところです!』

 「きゅ、急にデレられても……」

 『普通の人が見たら霞さんって美人タイプだと思うんですけど、個人的に可愛いタイプだと思うんですよね』

 「ふぇっ」

 『まぁそれは俺だけが知ってればいいんですけどね!』


 京太郎はやけに上機嫌なようで、それからもずっと霞のことを褒め続けた。

 霞が顔を真っ赤にして止めようとするが、京太郎は止めはしない。


 『その、元気でました?』

 「えっ?」

 『最初の声が元気なさそうだったんで、また思い悩んでるのかなって』

 「……京太郎さんにはかなわないわ」


 負けだ。

 惚れた方が負けというが、ここまで見抜かれるならば幸せだ。


 「『大丈夫』よ」

 『あっ、それ嘘ですね』

 「えっ?」

 『勘です』


 胸がドキッとする。

 初美や巴に何度も言い続けた言葉をバッサリ切られて呆然とする。


 『無理しないでください。

  何かあったら俺がいます。

  その、俺で出来ることならなんでもしますから』

 「京太郎さん……」


 こうしてただ話をしているだけで霞がどれだけ救われているか、京太郎はわかっているのだろうか。

 電話越しに泣きそうになるが、もっと楽しい話をしていたいのだ。


 『なんなら、もっと楽しい話をしますよ!』

 「ふふっ、じゃあお願いしようかしら」

 『じゃあ、あの話から――』


 それから1時間ほど、彼は沢山の楽しい話を聞かせてくれた。

 霞のことを思ってか女性の話は出さなかったが、それでも彼は沢山の話題を持っていた。

 男友達と馬鹿をやった話などは女の子の霞には理解できない話だ。

 そんな他愛もない話がとてもうれしい。


 「ちょっと話しすぎちゃったわね」

 『もう夜も遅いですしね』

 「またこちらから電話するわ」

 『はい。おやすみなさい、霞さん』

 「おやすみなさい。京太郎さん」


 そうして霞は受話器を置く。

 胸に手を当てて先ほどの会話を思い出す。


 ――とても楽しい


 どんなに辛くても、こうして彼が話してくれるだけで辛さが飛んで行ってしまいそうだ。


 もう直ぐ手放さなければいけないものだとは、考えないようにしていた。


 ……
 …


 実家で一時間以上も電話を占領していれば誰かに気づかれるのが当前。

 霞はそのことに気づかなかった。

 いや、あまりに辛くて、楽しくて気づけなかったのだ。


 「……」

 「……」


 切ったはずの受話器の前でじっと胸に手を当てている霞。

 そしてそれを見る霞の両親。


 両親は霞に何も言わず、お互いに頷く。

 そう、彼らにはやることが出来たのだから――

続く

今日このスレ知ったけど面白くて引き込まれるね
>>55見るに過去作があるみたいだけどどこで見れます?

>>225

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 8

 [儚い]


 久しぶりに持った通学バッグが重く感じる。

 夏休みボケと言うべきか、霞が精神的に参ってしまっていると言うべきか。

 学校までの足取りも重い。


 「(それでも、行かないと)」


 親にも祖母にも気づかれてはいけない。

 京太郎と唯一連絡できたあの黒電話が霞の最後の砦。

 昨日はタイミングが良かったけれど、親がいるときに見られてしまえばそれすらも出来なくなる。


 「(せめて、ギリギリまで)」


 京太郎にも説明しなければいけないと言うのに、それも嫌だ。

 京太郎には何も知られずに終わらせたいという霞のワガママ。

 人として不義理ではあっても、理屈で抑えられる心ではない。


 「霞さん」

 「あら、巴ちゃん」


 『偶然』のように霞と遭遇する巴。

 これも命令されてやっているのかと思うと気持ちが暗く沈む。


 「学校生活も久しぶりですね!」

 「ええ、そうね」

 「霞さんは勉強も得意だからいいですよね……」

 「そんなことないわよ。

  巴ちゃんだって成績悪いわけじゃないでしょう?」

 「ううっ、苦手というか嫌いというか」

 「私だって好きなわけじゃないわよ?」

 「ハッちゃんよりかは得意なんですが……」

 「ダメな見本じゃない」

 「そうですね……」


 初美は性格通りと言うべきか、勉強が嫌いと公言している。

 もちろん、ある程度の学力は求められているために最低限のものは持っている。

 しかし、うまくギリギリのところでやりくりするのが上手いのだ。


 「でも、要領いいですよね……」

 「そうね。

  最低限のことだけしちゃうタイプだから」

 「私なんて要領悪いから……」

 「そうかしら?」


 霞からすれば料理がうまく出来るような巴の方が羨ましい。

 『みんなのまとめ役』としての仮面を被っていない時の霞は基本的に天然だ。

 要領が良いのではなく、頭を使ったり試行回数を稼ぐのが霞だ。

 そんな霞からすれば、料理という特技を持つ巴のことが羨ましい。


 「まずは夏休みの宿題とか」

 「ああ、大変だったわねぇ」

 「あー!」


 聞き慣れた声。

 薄墨初美がこちらに向かって走ってくる。


 「なんでそんな話をしているんですかー!」

 「だって、夏休みの宿題は重要でしょう?」

 「二人ともちゃんとやったんですかー?」

 「それは、ねぇ」

 「やりましたよ」


 霞はコツコツと、巴は序盤になるべく終わらせるタイプだ。

 もちろん初美は……。


 「まさか初美ちゃん」

 「終わってないです」

 「なんでドヤ顔!?」

 「一応終わる寸前には頑張ったんですよー!」


 そう、夏休み最後の週にラストスパートをかけるタイプだ。

 だがそのタイプがちゃんと終わらせてくるはずもなく……。


 「見せてくださいよー」

 「だーめ。

  初美ちゃんは毎回そうじゃない」

 「ぶー、いいですよー。

  巴ちゃんに見せてもらいますから」

 「わ、私!?」

 「巴ちゃん、ダメよ。

  そうやっていつも押し込まれて宿題を見せているんでしょう?」

 「わー! なぜ知ってるんですかー!?」

 「巴ちゃんがいつも愚痴っているから……」

 「私、断りきれなくて……」


 巴は押しが弱い。

 どんなに叱っても、結局は初美に宿題を見せてしまうだろう。

 霞もそのことはわかっているからこれ以上は言及しない。


 「ほどほどにね」

 「これで最後ですよー!」

 「最後……」

 「そっか。学校生活も最後だもんね」

 「そうなんですよー」


 最後の学校生活という単語に心が揺れる。

 『石戸霞』の仮面が外れそうになるが、必死に抑える。


 「最後くらい、ちゃんとやりましょうね」

 「ぐえー」

 「ははは……」


 まぁ、そんなことを言いつつも霞も初美に宿題を見せてしまうのだろう。


 ――さて、表面上は取り繕えただろうか。


 ……
 …


 始業式が終わり、今日は少しのホームルームで1日が終わる。

 今回、宿題の回収は一部のものだけで、大体は最初の授業の時に回収するらしい。


 「抜かりないですよー」

 「本当にねぇ」


 初美は始業式に回収する分の宿題だけは終わらせてあり、残りを巴と初美に見せてもらっている状況だ。


 「修行漬けに麻雀漬けで宿題する暇なんてないですよー」

 「あら、私たちはちゃんと終わらせてきたわよ?」

 「私も今終わらせるからいいんですー」

 「ハッちゃんはずるい」

 「そうね、ずるいわ」

 「チッチッチ。

  これは『賢い』と言うんですよー」


 サラサラと手を動かしながら器用に口も動かしている初美。

 巴は提出する宿題をまとめている。


 「霞さんの分も集めますね」

 「そうね。お願いするわ」


 わざわざ霞の鞄から宿題を取り出してくれる巴に礼を言う。

 夏休みが終わり、ただ普通の毎日が戻ってくる。

 まだ初日なのに、体が馴染み始める。

 宿題に集中し始める初美を横目に、霞と巴が話し出す。


 「しかし永水女子は宿題が多すぎますね」

 「それはあるわね」

 「霞さんはこっちに来るのが一番遅かったですから。

  その辺り少し大変だったんじゃないですか?」

 「そうねぇ。

  結構慌ただしくて大変だったわ」


 巴と話していると今までの日々を思い出す。

 祖母に言われてお役目を教わり、修行の日々。

 六女仙として数えられて姫様のために尽くす。


 「なんだか遠い昔のよう」

 「そんなに前じゃないですよ」

 「あら、そうかしら。

  インターハイの出来事も結構前に感じるわ」

 「それは、そうですね」


 霞にとってはインターハイでの出来事以上に衝撃的な出来事が会った。

 それが須賀京太郎との出会い。そして交流。

 霞にとっては今までとは違った明るい毎日。

 それらを思い出すと、それ以外の記憶がどうしても薄くなってしまうのだ。


 「いろいろとありましたね」

 「そうね」

 「そうですよー。

  私と霞ちゃんの100本勝負だってありました」

 「ああ、そんなこともあったわね」

 「今度は負けませんよー」

 「そんなことを言っても、初美ちゃんはじゃんけんも弱いし」

 「もう最初にチョキは出しませんよー!」

 「ハッちゃん、この前それを言って別のでも負けてたよね」

 「ぐぬぬ……。

  この前の勝負でもほとんど五分でしたから!」

 「今度は膝枕してもらえるといいね」

 「また私の膝枕が景品なのかしら?

  もう、前みたいに私が勝った時はどうするの」

 「霞ちゃんが勝つことなんてないですよー」

 「言うわね……」


 霞が軽く腕まくりをする。


 「じゃあまずは腕相撲で勝負しましょうか」

 「また力勝負ですかー!?

  卑怯です!」

 「じゃあ麻雀?」

 「ここには三人しかいないですし」

 「麻雀から離れた勝負がしたいですよー。

  それに、お互いの手の内がわかりすぎてて不毛です」

 「それはあるわね」


 身内とのオカルト合戦。

 神を下ろして対決するわけにもいくまい。


 「高校生活が終わったら、こんなこともなくなるんですかねー」

 「そうかもしれませんね」

 「そう、ね」


 和やかに話す二人に対して、霞は一瞬躊躇する。

 自分の中で忘れようとして封じ込めているものが出てきてしまう。


 「大人になったら遊ぶことも少なくなるって言いますし」

 「私たちも遊んでいるというより、他のことで一緒にいることが多いですけどね」

 「そういえばそうですね……」

 「それでも」


 霞が言葉を区切る。


 「やっぱり何かが変わるのかしら」

 「お家の集まりでもないと会えなくなったりしそうですね」

 「お仕事の関係なんて嫌ですよー」

 「なってみないとわからないけどね」


 各々が思い浮かべる将来。

 二人にとっては家を継ぐことが当たり前の思考。


 ――本当に、そうなるのかしら


 霞は考える。

 二人の思考はかつての自分。

 家の元で何の疑問も持たずに生きてきた自分。

 もし、彼女らの言うように家のためだけに生きることが前提ならば……。


 ――『天倪』である私は、生きていないかもしれない


 例えば姫様に降りる天災を自分の身に変える。

 神代のために、依り代となる。

 自分が自分でなくなってしまう要素は多くある。


 そのことを考えると、とても胸が寂しくなった。


 「(だから、一緒にいるべきなのかしら)」


 彼女らは役目を果たしただけ。

 霞と京太郎の関係について密告したのも、『仕方ないこと』

 自分に言い聞かせるように何度も思い返しても、暗い感情が抜け落ちることはなかった。


 ……
 …


 学校も終わり、帰宅時間になる。

 早く帰れるというだけで学生は心沸き立つ。

 周りにも『どこに遊びに行こう』などという話が盛り上がっている。

 だが、霞には関係のない話だ。

 もう直ぐ婚約者と会わせられる霞に自由時間はほとんどない。

 常に六女仙の誰かが側にいる。

 表向きは『大事な石戸の跡継ぎを守る為』だとは言う。

 それを言えば『身代わり』が大事だと言うのも皮肉な話だ


 「あれ……?」


 授業が終わり、帰る時間になっても二人が来ない。

 キョロキョロと周りを見回してみてもどこにもいない。


 「(先生に呼ばれたのかしら?)」


 先ほど教師に呼ばれて何かを話していたのを思い出す。

 僅かな時間。


 「(帰りましょう)」


 ほんの少しの、抵抗。


 「(『私は』誰かと一緒にいろなんて言われていないわ)」


 子供のような反抗心。

 どちらにせよ家に帰るだけならば怒られることもあるまい。

 自分の部屋でしか自分の時間が取れないなどと言うのも窮屈だ。

 ほんの少し歩いて、自分を見つめ直すのも悪くない。


 ……
 …


 石戸霞は鹿児島で育った。

 他の土地に連れられることはほとんどない。

 旅行などと言ってどこかに行くこともなかった。

 例えば、『オカルト』を介して他の土地に行くことはある。

 だが、その土地柄に触れるといったことはない。


 「(東京、暑かったわね)」


 麻雀のインターハイ。

 東京に宿泊したことは霞にとって大きな経験をもたらした。

 知らないことをたくさん知ることができた。


 「(コンクリートジャングルに、満員電車)」


 東京名物というには些か美しいものではないが、霞にとって貴重な経験だ。


 「(ここにある景色と真逆ね)」


 山の中を歩いて思う。


 「(たくさんの人がいた)」


 街中を歩くだけで人の波。

 ナンパしてくる人もいた。


 「私、知らないことだらけ」


 それらは六女仙のまとめ役として生きていた経験だけでは決して知ることができない。

 そして、何よりも――



 「京太郎さん……!!」


 もっとも大切な人と、出会うことができた。

 


 姫様を助けてくれたこと。

 そのことでちょっと警戒していたこと。

 宮永咲を一緒に探すことになったこと。

 なぜかデートをする流れになったこと。

 ナンパから助けてくれたこと。

 背伸びして美術館に行きたいと言って、盛り上げてくれたこと――。


 「(たくさん、たくさんある)」


 電話して何気ない話をしてくれたこと。

 ファミレスで愚痴を聞いてくれたこと。

 名前呼びをしてくれたこと。

 家に帰っても、連絡をしてくれたこと。

 鹿児島にまで来てくれたこと。


 『最後に、清い心』


 ――こんな自分を、褒めてくれたこと。


 短い時間だったのに凝縮されすぎていて、どれもが霞にとって色鮮やかな思い出だ。


 「やだ、やだよぉ……!」


 足を止め、子供のように泣き出した。


 彼以外の人と一緒になるなんて考えられない。

 身代わりになって死んでしまって、彼に会えなくなるなんて嫌だ。

 手のひらで顔を覆い、涙を拭ってもキリがない。


 「(ハンカチ……)」


 鞄の中からハンカチを取り出そうとする。

 今日の鞄はやけに重く感じる。

 霞の心が曇っていて、精神的に辛いからだろうか?


 「……えっ?」


 ハンカチを取り出そうと小物入れを漁ると、そこには一冊の手帳が入っていた。

 見覚えのない、コンビニで売っているような手帳だ。

 ただ、霞はそんなものを買った記憶はない。


 「?」


 誰かが間違って入れてしまったのか。

 中身を見てみると、何やら文章が書いてある。


 『霞へ』


 手帳に似合わない、達筆な書き方。

 同年代の女性が書くようなものではない。


 『自分の生きたいように生きなさい』


 その一文のためだけに、何度か書き直したような跡がある。

 霞の心臓が高鳴る。


 『両親より』


 最後に加えられた一文で、霞は悟った。

 手帳に貼ってある付箋のページに行くと、そこには霞用に作られた銀行口座が書いてあった。


 「……!?」


 声が出ない。

 慌てて周りを見回しても、田舎道には誰もいない。


 メモ帳に書いてある通りにバッグを漁ってみると、霞が見たこともないような多額の現金が入っていた。


 「これっ……て……」


 胸の高鳴りは収まらない。

 期待して、いいのだろうか?


 そんな不安と裏腹に、霞の足は既に動き出していた――。


 ……
 …


 鹿児島から長野までは遠い。

 それも学校帰りに行くとなれば相当限られる。

 とにかく駅に行って電車に乗り、霞はそこから考える。


 様々な理屈が頭の中でぐるぐると回る。

 いきなり押しかけて否定されないだろうか。

 京太郎に迷惑をかけるし、住む場所だって考えていない。

 こんな重い考えをしていて、理解してくれるだなんて思えない。

 霞がいなくなったことで両親にかかる迷惑だって計り知れない。

 六女仙はどうなるのか、姫様はどうなるのか――。

 問題は山積みだし、霞が考えたところでどうにかなるものではない。


 しかし、両親の言葉を思い出す。

 『自分の生きたいように生きる』

 両親が何を思ってそれを書いてくれたのか、霞には見当もつかない。

 親の心子知らず、とはよく言ったものだ。

 だが、厄介払いをされたわけではないはずだ。


 「(私の、生き方)」


 もっと素直に考える。

 今一番やりたいことは何だろうか。


 「(京太郎さんに会いたい)」


 そうだ。結局のところそれだけだ。

 京太郎が霞を受け入れるかどうか、それは霞がいくら考えたってわからない。

 今はただ霞が自分の気持ちに素直に行動するだけだ。


 「(背中を押してもらえたから)」


 他ならぬ両親に、霞の心を変えてくれた京太郎に――

 もし、京太郎に否定されたのならばその時はその時だ。

 一目会えただけでも幸せなのだと言い聞かせる。


 「(六女仙、は――)」


 ズキリ、と胸が痛む。

 頭の中でゆっくりと考える。

 ――六女仙とは、たくさんの思い出がある。

 一緒に修行し、姫様のために生きて、麻雀インターハイに参加して、他にもたくさんだ。


 たくさんの不安を胸に抱えて景色を眺める。

 流れゆく鹿児島の景色。


 「(六女仙のためじゃない。

   私は私のために生きる)」


 一度解き放たれた心が戻ることはない。

 もう霞は外の世界を知ってしまったのだ。

 どんなに考えても、この足を止める気はない。


 「(これが最後になるかもしれない)」


 気づけば新幹線に乗っての移動。1日だけではつかなそうだ。 

 それでも、ほんの少しだけでも彼がいる長野に近づきたい。

 電車に揺られる景色を見て、もう二度と見ることは出来ない覚悟を決める。


 「(それでも、あなたに会えるなら――)」


 ただ一つの想いとともに、霞は向かう。

続く


 9

 [清い心]


 鹿児島から長野までの長い距離。

 最初は不安でいっぱいだった霞も、時間をかけることで覚悟することが出来た。

 全てを敵に回す覚悟。

 皮肉にも、それは巫女としての修行で培われた精神力によるものだった。


 「(京太郎さんが私を受け入れてくれたなら)」


 もちろん、彼に迷惑をかけることだけはしたくない。

 でも、少しのわがままを言ってしまうかもしれないな、などと笑う。


 親から受け取った手帳を愛しげに開く。


 『自分の生きたいように生きなさい』


 この一文を書くのに、両親がどれだけの覚悟を決めたのかわからない。

 だが、霞はこの一文から溢れ出る『愛』を感じた。

 手帳を胸に抱く。


 「(父上、母上)」


 もう見られないかもしれない両親の顔を思い浮かべる。


 「お父さん、お母さん」


 常に厳格だった父と、優しくもあり厳しくもあった母。

 名前にコンプレックスを持っていた霞は親の愛情に不安を覚えたこともあった。

 でも、今はもう大丈夫。


 「私の名前は『霞』」


 ぼそりと呟いて、自分に言い聞かせる。

 両親がつけてくれて、京太郎が教えてくれたたくさんの意味。

 両親は『幸福』を願ってつけてくれたのか、『清い心』を願ってつけたのか。

 後半ならば困ってしまう。


 「私、悪い子になっちゃった」


 嬉しそうに霞は笑った。

 長野まではあと少しだ。


 ……
 …


 長野に着いたのはいいが、京太郎の家がわからない。

 そもそもいきなり押しかけていいものか、どう事情を説明していいかもわからない。


 「こ、公衆電話……」


 携帯は没収されている。

 公衆電話を探すしても見つからない。


 「もう、清澄高校まで行っちゃおうかしら」


 ふんふむ、と頷く。

 これは案外妙案かもしれない。

 授業が終わって一緒に帰るところを想像するだけで楽しい。


 「……そんなことを考えながら着いちゃったんだけど」


 恋する乙女は一直線。

 細かいことを考える前に行動するのは今までの霞にはない傾向だ。

 そんな自分も嫌いじゃないと、誇らしくなる。


 「(他の学校の生徒を入れてもらえるかしら?)」


 校門の前にまでたどり着く。

 下校時間と重なっているため。何人かの生徒が帰っていくのを見られる。


 「(やってみるしかないわね)」


 ここまで来たら行動あるのみだ。

 思い切って警備員さんに話しかけて麻雀部とのコンタクトを試みる。


 「あの、永水女子から来た石戸霞と申します。

  清澄高校麻雀部さんに用があるのですが……」

 「あら、うちに何か用があるのかしら?」


 警備員と話していると、後ろから女性の声がした。

 振り返ってみると見覚えのある女子高生。


 「あら、あなたは……」

 「久しぶりね、石戸霞さん?」


 清澄高校麻雀部部長、竹井久。


 「私も引退したから元関係者だけどね」

 「お久しぶりです」

 「おひさー」


 手をフラフラと振りながら軽く近づいてくる。

 そうやって誰かと親しんで様々な人脈を築いているのは彼女の強みだろう。


 「何、愛しの彼に会いに来たのかしら?」

 「い、愛しの……!?」

 「純情ねぇ」


 京太郎の比ではない悪戯顔。

 初美と親しい霞にはわかる。

 あれは面白いおもちゃを見つけた顔だ。


 「そ、そんな竹井さんは男性経験が豊富なんですか?」

 「いいっ!?」

 「?」

 「そ、そうねー?

  私くらいともなれば男が寄ってくるしー?」

 「あら、それなら今度いろいろと教えて欲しいわ!

  そ、その、デートの時どうしたらいいか、とか」

 「(と、とんでもない嘘をついちゃった!?)」


 焦り始める久に気づかずに、『普通の女の子』を教えてもらえると思って嬉しそうな霞。

 若干の温度差はあるものの、霞の目的は達することが出来そうだ。


 「……あっ」

 「どうしたの?」

 「ううっ」


 そこで霞は大事なことに気づいてしまう。


 「(こ、こんな格好で京太郎さんに会えないわ……)」


 両親公認の家出のような形で飛び出してきた霞。

 恋人に会いに行くには心もとない。


 「そ、その、失礼ですが……」

 「なにー?

  同年齢なんだからタメ口でいいわよ」

 「それなら……。

  その、少し身だしなみを整えるものを借りられれば……」


 顔を真っ赤にしながら懇願する。

 最初は呆然としていた久だが、頭で理解が追いついてくるとニヤニヤと霞を見直した。


 「彼氏に会うんだもんねー」

 「ううっ」

 「(なにこれかわいい。胸も大きいし反則じゃない)」


 京太郎の方も含めて一通りからかうことに決めたが、しっかりと身だしなみを整える手伝いをするあたりはしっかりしている。

 霞は準備を整えて、京太郎へ会いに行くことにした。


 ……
 …


 「ほら須賀君、特別ゲストを連れてきたわよー」

 「霞さん!?」

 「きょ、京太郎さん……」


 麻雀部にたどり着くとずっと会いたかった金髪の少年。

 前に見たときと変わっていない。

 それだけで霞の心は温かくなる。


 「どうしたんですか?

  言ってくれれば予定を合わせたり迎えに行ったりするのに」

 「そ、その……」


 どうしよう。

 最初に何を言うかなんて決めてなかった。


 「きょ、京太郎さんに会いたくて」


 結局思いの丈をそのまま伝えることにする。

 それを聞いて京太郎は顔を真っ赤にするし、言ってしまった霞も顔を真っ赤にする。

 少し冷静になって横を見てみれば目の前でラブシーンを見せられた女性陣も顔を赤くしている。


 「まぁまぁ、何やら話したいこともあるだろうし、二人でゆっくり話しなさいな」

 「ちょっと、部長!?」

 「元部長、でしょ?

  鍵は自分で返しておいてねー」

 「えっ、えっ!?」

 「ほら、女性陣は私と一緒にケーキバイキングにでも行きましょう?

  須賀君は愛しの彼女がいるみたいだし!」


 そう言いながら霞にウインクする久。

 どうやら、彼女なりに霞に何かがあったことを察知したらしい。


 「……ありがとう」

 「何のことやら。これは貸しよー」


 最初に会った時のように手をフラフラと振りながら撤退する久。

 『今日の麻雀部は中止じゃな』などと理解を示すまこ。

 何が何やらわかっていないうちに引きずられていく一年生三人組。


 「あー、気を遣わせちゃったみたいですね」

 「そ、そうね」


 ついに京太郎と二人きり、それも他の誰もいない空間にいることによって緊張する。


 「その、麻雀の練習中だったらごめんなさい」

 「霞さんが来るなら霞さん優先ですよ!

  か、か、彼女ですから」

 「そ、そうよね。

  か、彼女だもん」


 自信を持って言い直す。

 うん、京太郎の彼女なんだから優先してもらってもいいはずだと、言い聞かせる。


 「……何かありましたね」

 「……うん」

 「霞さんの話、聞かせてください」


 そう言って京太郎は霞をベッドに腰掛ける。

 京太郎は向かい合って椅子にでも座ろうと思ったところを、霞がギュッと袖を掴む。

 最初は固まっていたが、男としての覚悟を決めたようで霞の隣に座る。


 「……」

 「……」


 部室に静寂が訪れる。

 ベッドの上で若い男女が二人並んで座っている。

 京太郎としては気が気でない。

 だが、これから様々なことを話さなければならない霞にとっても心労だ。


 「家出してきちゃった」

 「……えっ!?」


 やっとの思いで口に出した言葉は、やはり京太郎を驚かせたようだった。


 「前にも話したと思うけれど、私はお家のために人生を捧げる義務があったの」

 「……聞きました」

 「それでね。

  京太郎さんと会っていることがバレちゃって……」


 バレた経緯を思い出し、胸が詰まる。

 六女仙に、誰かに裏切られたと考えるだけで辛いものだ。


 「霞さん。ゆっくりで大丈夫ですよ」

 「ありがとう」


 普段ならば『大丈夫』と言っていただろうが、京太郎の前では言わない。

 思う存分甘やかしてもらう。


 「祖母が決めていた許嫁がいたの」

 「えっ!?」

 「実は家の電話から京太郎さんに通話していた時にはほとんどの行動を制限されていて……」

 「あ、だから携帯が使えなかったんですね」

 「うん。

  常に誰かが私の側についている状況で、もう京太郎さんに会えない状況だった」


 あの時のことを思い出すだけで胸が詰まる。


 「それでも、どうしても会いたくて……」


 顔を伏せる。

 京太郎の顔を見ることができない。

 こんな重い女、どう思われているだろうかと不安になる。


 「両親に後押しされて、会いに来ました」

 「……」


 それでも、霞は折れない。

 しっかりと顔を上げ、京太郎を真っ直ぐ見据える。

 京太郎もまた、霞を真っ直ぐと見返す。


 「私は全てを捨てて、何も残っていません。

  もし、重い女と思われたなら拒絶してください。

  それでも、良いというならば、私でよければ……」


 霞がそこから先の言葉を言うことは出来なかった。

 京太郎が霞に抱きついて霞の顔を胸に抱き寄せたからだ。


 「……!!」

 「いいに決まってるじゃないですか、そんなの」

 「きょ、京太郎さ」

 「ここまで想われて、突き放せる奴なんて男じゃない。

  どんなことをしたって一緒にいます。

  霞さんが覚悟を決めてここまで来てくれた。それなら――」


 「ずっと一緒にいよう」

 「はい……っ!」


 霞が想像していたよりもがっしりとした京太郎の腕の中。

 ゴツゴツしていて感触がいいとは言えないはずだが、霞はとても心地よかった。


 「京太郎さん、もう少し、このままで――」

 「霞さんが満足するまで、いつまでも」

 「ふふっ、そんなこと言ったらずっと満足しないわよ」

 「それは、困っちゃいますね」

 「困るの?」

 「困らないですけど、家に説明しないといけないですし」

 「あっ……」


 霞の顔が真っ赤になる。

 これから京太郎の家に向かうのだろうか。

 それとも――


 ――今腰掛けているベッドの感触


 「きょ、京太郎さんが望むなら!」

 「いやいやいや!

  そ、その、いくらなんでもこの勢いじゃダメです」

 「う、うう」

 「事情が事情なんですから、ちゃんと責任取りますから」

 「責任、取ってくれるの?」

 「うぐっ……。

  そ、それはもちろんです」

 「……嬉しいわっ!」


 やっと霞が笑顔になって京太郎に抱きつき返した。


 「わわっ」

 「京太郎さん、いい匂い」

 「(こっちのセリフだよチクショー!

  やわらけー! なんだこれやわらけー! 反則だろ!

  耐えろ! 耐えろぉー!!)」

 「私、幸せです」

 「(俺も幸せです)」


 霞の女性的な匂いと至高の肢体を全身で味わう京太郎。

 下半身に血液が集まるのを感じるが、必死に耐える。


 「(さすがに、この件が片付くまではっ!)」


 須賀京太郎。今まで生きてきて一番の精神力を発揮しているようだ。

 霞が満足するまで、京太郎にとっての天国と地獄は続いた……。


 ……
 …



 京太郎の家に帰る。

 霞はそれだけで胸がときめいた。

 チラチラと横目でアピールしたら手までつないでくれた。

 霞は今、幸せだ。


 だが京太郎は、親を前にして人生最大の窮地に陥っていた。

 京太郎の父も母も硬さは少なく、割と緩い性格をしている。

 それは京太郎のコミュニケーション能力からも見て取れる。

 中流・上流階級ゆえの余裕とも言えるだろうか。

 だが、そんな両親が氷の目線で京太郎を見据える。

 負けじと京太郎も睨み返すが、本物の眼光の前に萎縮する。


 それでもなんとか事情を説明。

 固まった空気を崩すべく、京太郎が自分の意見を述べる。


 「俺、石戸霞さんと一緒になる。

  もしかしたらその神代一族が何かしてくるかもしれない。

  親父たちに迷惑をかけるなら家を出るから……」


 ――ぶん殴られた。

 京太郎も小さな頃に殴られたことはあるが、ここまで本気で殴られたことはなかった。

 霞が大慌てで京太郎に駆け寄るが、京太郎の母は何事もなかったかのように治療用具を用意している。


 「どうぞ」

 「あっ、はい……」

 「これでポイント稼げるわね」

 「そ、そんな……」


 自分の息子が派手に吹っ飛んでおいてにっこりと霞に笑いかける。

 それどころか友好的な態度に霞は困惑する。

 殴られるようなことを言ったならば、本当に叱られるべきは自分であると霞は思う。


 「その年で自立してどうするつもりだ」


 京太郎は殴られてなお、父親を睨み返す。

 その程度の覚悟じゃない。


 「高校はどうする。

  今から働くのか。

  それで本当に彼女に対して責任は取れるのか、考えたのか」

 「考えたよ!」

 「それなら、するべきことがあるだろう」

 「何をすればいいんだよ!!」


 もう一発殴るのか、父親が構える。

 京太郎はあえて受けようと歯を食いしばる。


 ――京太郎にとっての両親は尊敬の対象だ。

 何不自由なくここまで暮らせてきたのは両親のおかげだと思っている。

 だからこそ勘当される覚悟もあったし、こんな親不孝をするならば抵抗せずに殴られる気だった。



 だが、父親の手のひらは京太郎の頭に乗せられる。

 撫で方を知らないようで、ぐしゃぐしゃと雑に京太郎の頭を撫でられる。


 「親に迷惑をかけなさい」

 「……!!」

 「まずは自分の恋人を匿ってくれと相談しなさい。

  話はそこからだろう」

 「でも、それじゃ迷惑が……」

 「子供が親に迷惑をかけるのは当たり前だ」


 そう断言して父親は座り直した。


 「石戸霞さん。

  こんな親心もわからない馬鹿でよろしければ、よろしくお願いします」

 「は、はい。

  い、いえ、でもご迷惑が……」

 「馬鹿息子を貰ってくれるならば、君も私たちの娘だ。

  存分に迷惑をかければいい」

 「そんな……!」

 「それに、そう頼まれているんだ」

 「えっ?」


 全て読めていたと言わんばかりに笑う父親。

 母親は嬉しそうに霞に笑いかける。


 「君の両親から、よろしく頼むと連絡はもらっているよ」

 「……!!」

 「言っただろう。

  子供は素直に親に迷惑をかければいい。

  それを受け止めるのが親の仕事だ」


 霞がポロポロと涙を流す。

 京太郎が慌てて近くに寄る。


 「もし、神代一族が何かするようなら……」

 「なぁに、アテはあるさ。

  それなりに大きい家であるつもりだ。

  それでもダメなら海外にでも送ろう。

  京太郎、わかっているな」

 「……うん。

  十分見つめ直したつもりだし、覚悟だってしてるよ」

 「それならいい。

  堅苦しいのは終わりー。母さん、飯」

 「はぁい。

  霞ちゃん! 一緒にご飯作りましょ!」

 「は、はい!」

 「嬉しいわー!

  私ね、娘とこうやって一緒に料理するのが夢だったの!」


 京太郎の母親も随分とコミュニケーション能力が高いようで、霞をグイグイと引っ張っていく。

 霞は急展開についていけなくなりつつも、ただ感謝の言葉を述べた。


 「ありがとう、ございます」

 「いえいえー!」


 そんな霞を見送りつつ、京太郎も見つめ直す。


 「海外、か」


 その可能性があるのならばと、覚悟を決めた。

続く


 10

 [灰]


 いい意味で京太郎と霞は相手を尊重できる人間である。

 辛い思いをしても我慢し、相手を優先できる。

 だがそれは会うことの少ない恋人同士だったから、という点もある。


 「京太郎さん!」

 「ううっ」


 急激に接近し、お互いの悪いところを見る関係になる前に同じ住居で暮らす。

 それは思った以上に大変なことだ。

 要するに、霞は今怒っている。


 「せ、せめて隠して下さい!」

 「ゴメンなさい……」


 それは数日後、京太郎の部屋を掃除しに入った時の話だった。

 学校に通わなければならない京太郎と違い、霞は須賀家で家事手伝いをしている。

 霞の両親からは『何とか高校だけでも卒業してほしい』と言われているが、今はまだどうにかなる状況ではない。

 少しでも家で出来ることをしよう、と善意で行動した結果だった。


 「こ、この女の人の本……」

 「やめて、そんなにマジマジと見ないで!?」


 喧嘩の要因(と言っても、一方的に霞が怒っているだけだが)は、京太郎の部屋に出しっぱなしだったHな本の存在だった。

 京太郎はまだ15歳。そういった本を購入することはできない。

 だが正常な男子高校生の性欲はそんな理屈で抑えられるものではない。

 さらに言えば、京太郎には『頼れる年上の兄貴分』がいた。

 今まで友人同士でなんとか入手出来たら儲け物だったそれを、堂々と購入して京太郎にプレゼントしてくれる兄貴分(19歳)。

 内容はエスカレートし、京太郎の好みの本はたくさんある。


 「むー」

 「うぐぐ……」


 ぷっくり頬を膨らませて怒る霞。

 京太郎はそれを見て少し微笑ましいと思うが、霞本人は真剣に怒っている。


 「た、確かに男性はそういうものが必要だって聞くけれど」

 「はい……そうなんです……」


 実際、京太郎は悪くない。

 強いて言うならば年頃の女性と同居するにあたって配慮が出来なかったくらいだが、なんの心の準備もないまま同居と相まった状態では情状酌量の余地もあるだろう。

 霞もそれは理解している。

 理解しているが、感情は制御しきれない。

 今まで自分だけを見てくれていると思っていた京太郎の側面。


 「(ううっ、やっぱり『そういうこと』をしてあげた方が……)」


 霞の思考が変な方向に向かっていく。

 男にどんな理由があろうと、こういう状況では女が有利だ。

 そのうち女も慣れていくのだろうが、いかんせん霞には経験値がない。


 「きょ、京太郎さんもこういうことしたいんですか?」

 「霞さん!?」


 したくない男などいない。

 それをわかっていて、霞は京太郎を問い詰める。


 「したい、ですけど……。

  今はダメです」

 「……」


 じっと京太郎を見据える。

 京太郎もその点に関してだけは譲れないようで、しっかり見返してくる。


 「……ごめんなさい。

  私が勝手に掃除しようとしたのに」

 「そんなことないです。

  俺の配慮が足りなさすぎました」


 結局、霞は京太郎に甘えたかっただけなのだ。

 問い詰めても、喧嘩しても、困らせてもいい。

 霞にはそんな相手がいなかった。

 それを受け止めてくれる京太郎に甘えているだけである。


 「じゃ、じゃあ、私は夕飯の準備をしてきます」

 「あっ、はい」


 霞自身がそれに気づいて立ち去ろうとする。

 京太郎にしても純情シャイボーイには程があるが、状況が状況であることが彼を躊躇させている。


 ――人様の娘を誑かせて家出させて速攻で手を出しました。

 そんな体目当ての行動を取れない京太郎だからこそ、霞も好きになったのだろう。


 「夕食の準備と言っても、は、裸エプロンはしませんからね!」

 「!?」


 ――なお、先ほどの本はそういう本だ。

 須賀京太郎。家庭的で露出の少ない女性に憧れる男の子である。


 ……
 …


 そうして霞は何気ない日常を過ごした。

 修行にもいかず、学校にもいかない日々。

 霞にとってそんなほんわかとした日常は初めてだった。

 朝起きて京太郎の母親とともに朝食を作り、京太郎にお弁当を持たせて見送る。

 洗濯などの家事を手伝い、カピバラと戯れる。

 お昼には京太郎の母親と一緒にお昼寝をした。

 今までに一度もしたこともない経験に包まれていく。


 「(幸せ……)」


 何事もなく日常を過ごせることがどれだけ幸せか悟った。

 帰ってきた京太郎と少しデートをすることもあった。

 京太郎を迎えに清澄高校まで出向くこともあった。

 それらを一般的な高校生の恋愛関係というかはともかく、霞は幸せだった。


 ――それらが一時的な回避にしかならいことは、霞本人が悟っている。


 「(迷惑をかけると言っても、このままじゃいけない)」


 ここまで何も手を出してきていないことが奇跡だと感じる。

 霧島神宮が意外と『石戸霞』に価値を見出していないというのであれば、こんなに楽なことはない。

 だが、そんな簡単な話ではないはずだ。

 責任を問われているであろう両親のことを考えると胸が痛んだ。

 それに、六女仙のこともある。


 「霞さん?」

 「はい」

 「何か考え事してた?」

 「……ええ」


 公園での散歩デート中、気遣ってくれる京太郎。

 鹿児島でのように『大丈夫』とは言わず、素直に返答する。


 「おそらくは、何かが起きる、と思います」

 「何か?」

 「ええ」


 いかに霧島神宮といえど人攫いのような真似は出来ないと思いたい。

 だが、人間を天倪に仕立て上げるような集団だ。

 何をしてきても不思議ではない。


 「安心してください、霞さん!」

 「?」

 「両親と色々と相談しているんです。

  きっと何とかなりますよ」

 「そう、かしら」


 気を遣ってくれているのはわかるが、さすがに不安は晴れない。

 京太郎と須賀家も何かを考えているようだが、果たして……。



 「霞ちゃん」


 ――聞き慣れた声が霞の耳を刺激する。

 いずれは来るとわかっていた。

 思った以上に待ってくれた方だ。

 


 「あれ、確か……」

 「薄墨初美と申します」

 「永水の……」

 「……」


 京太郎が霞の一歩前に出る。

 あまり警戒していないように見えるのは、相手の見た目が小さな子供に見えるからだろうか。

 しかし今の霞からすれば、その小さな体はまるで巨人のように大きく見える。


 「初美、ちゃん」

 「久しぶり、というほど離れていたわけじゃないですねー」

 「ええ、そうね」


 初美の目に暗い炎が宿っている。

 いつも霞を弄って遊ぶ活発な初美ではない。

 『悪石の巫女』としての薄墨初美がそこにいる。


 「霞さん」

 「京太郎さん、少し待って」

 「……はい」

 「いい心がけですー」


 手を引いて帰ろうとする京太郎を制して前に出る。

 このまま逃げ続けるだけではいけないと気づいている。


 「まさか、こんなことになるなんて思いませんでしたよー」

 「そうね。

  私もそう思うわ」

 「単刀直入に言いますよー。

  今ならまだ間に合います。帰りましょう」

 「お断りします」


 断言。

 初美が辛うじて優しく言ったその言葉を一刀両断。


 「……どうなるか、わかっているんですか」

 「知らないわ」

 「霞ちゃんにしてはワガママですね」

 「そうね。

  私、ワガママになっちゃった」


 会話をしているようでしていない。

 初美が少しずつ言葉に怒りを込めているのに対して、霞はあまりにも無防備だ。


 「……あなたの両親が、どうなるかわかっているんですか?」

 「……知らないわ」


 ほんの少しの躊躇。

 ズキリと胸が傷んだが、それを吐き捨てた。


 「――ッ!

  あなたはっ、自分が何を言っているのかわかっているんですか!」


 ついに初美が堪えられなくなって激情する。

 日が落ちて夜になろうとする公園に初美の声が響き渡る。


 「自分を育ててくれた両親に対して、なんてことを!」

 「……」


 躊躇は、ない。

 迷いはとうに、捨てている。


 「それは私と私の両親の問題でしょう」

 「!!」


 信じられない、といったように目を見開く初美。


 「最初に裏切ったのは、あなたたちなんだから」


 霞もまた、瞳に暗い炎を宿す。

 そうだ、何も話し合うこともできずに一方的に押し付けてきたのは本家のせいだ。

 霞には霞なりの考えが、希望があった。

 それを擦り合わせることができれば、あるいは天倪という宿命を受け入れることはできた。


 「『姫様の代わりに死ね』と、言われました」

 「それは私たちだって同じです!」

 「同じ?」

 「そうです。

  六女仙が姫様を支えていく。

  ずっと前からそうだったじゃないですか」


 初美の炎が増していく。

 それに対して霞は自分の心が急激に冷めていくのを感じた。


 「それは、誰が決めたの」

 「今まで私たちと、姫様と一緒にいたのはなんだったんですか!」

 「……楽しかったわよ」

 「それなら何で!」

 「――ッ!」


 その言葉が霞の逆鱗に触れる。

 『それならなんで』――こちらの台詞だと。


 「それならなんで!

  私を裏切ったの!!」

 「!?」

 「少しだけ時間が欲しかっただけなのに、話し合うことも出来なかった!

  先に裏切ったのはあなたじゃない!」

 「私が裏切った!?

  私たちから離れていったのは霞ちゃんです!」

 「あのことがなければ!」


 ――密告さえされていなければ!


 「もう少し時間はあったかもしれないのに!

  全部初美ちゃんのせいよ!」

 「ふざけないでください!」

 「ふざけてなんかいないわ!

  何もなかった、何も出来なかった、誰も味方がいなかった――!!」


 響く、慟哭


 「私の気持ちはあなたにはわからない!」

 「わかるわけないですよ!

  自分だけ逃げようとする霞ちゃんの気持ちなんて!」

 「逃げ、る?」

 「使命を課されているのは私たちだって同じです!

  婚約者がいるのだって私たちだって同じです!


  何で、何で霞ちゃんだけ!」


 その言葉に対し、霞が自嘲めいた笑みを浮かべる。


 「だから、裏切ったの?」

 「!?」

 「嫉妬して、裏切った?」

 「――なっ!!」

 「……帰って」


 静かに告げた。

 もうこれ以上話すことはないと突き放した。


 「もう、終わりね」

 「……そうですね。

  こんなわからずやなんて思いませんでしたよ」

 「それはお互い様」


 初美とこのように言い争いをしたのは初めてだ。

 いつも、弄られても楽しく返していた。

 お互い、楽しかった。

 今、致命的な亀裂が入ってしまったのを感じた。


 「日本にいる限り、あなたに幸せは訪れない」

 「!」


 その言葉に反応して今まで沈黙を保っていた京太郎が霞の前に出る。


 「どういうことだ」

 「あら、いたんですか。

  自分の彼女があれだけ黒いところを見せられて幻滅しましたか?」

 「そんなことで幻滅なんてしない」


 キッパリと言い切る京太郎。

 それは幸運にも、ここ数日間で霞と何度か軽い言い争い―当人たちにしてみれば、だ。横から見れば仲積むまじく見える―をしていたからだろう。

 理不尽な怒りに耐えることもまた、恋人関係の一つ。

 それより、この言葉に動揺していたのは霞だった。


 「人を天倪に仕立て上げるような本家が諦めるわけないじゃないですか」

 「!」

 「――しきたりを破れば、どんなことが起きるかわかりません。

  すぐに連れ戻されますよー。

  あなたたちには何もできない」

 「……そっか」


 言うだけ言ってせいせいした、とばかりに身を翻す初美。


 「逃げ切れるものなら逃げてみてください」

 「ああ、やってやるさ」


 自信満々に言い放つ京太郎に対して、自嘲めいた笑みで答える初美。


 「……」


 最後に初美は京太郎をじっと見つめた。

 その時の初美が何を思ったのか、京太郎たちには誰もわからない。

 それはほんの少しの時間で、初美は逃げるように去っていった。


 ――初美が見えなくなった瞬間、霞が手に持っていたカバンを落とした。


 「私、私……っ!!」

 「霞さん!?」


 全身を震わせ、怯えるように竦む霞。

 震えてしゃがみ込んでしまった霞に必死に声をかける。


 「わた、し」

 「どうしたんですか!?」

 「京太郎、さん」 


 霞の声は震えて弱々しくなっていく。


 「私、初美ちゃんになんてことを――っ!!」


 それは、後悔。

 先ほどまで憎んですらいて、暗い言い争いをしていた相手。

 しかし初美は紛れもなく霞の親友なのだ。


 小さな頃から一緒にいた。

 大人しかった霞に対して活発だった初美。

 何事も率先してくれていたおかげで助かった。

 辛いお役目もまた、初美や他の六女仙がいた。


 ――例え裏切られたと思っていても、初美ならばと耐えられた。


 しかし今の霞は、初美に罵声を浴びせ、両親すら切り捨てた。

 自分のしたことに恐怖し、自分の醜い部分を露出させた。

 そんな醜い自分が耐えられず、あまつさえそれを京太郎の前で見せてしまった。


 「私、なんて醜くて、汚いの!」

 「そんなことないです!」

 「いや!」


 京太郎の気遣いも跳ね除ける。

 今の霞は混乱状態の極みにあった。


 「霞さん!」

 「いや、来ないで……。

  私、京太郎さんの隣にいる資格なんてない」

 「……そんな資格、いりませんよ」


 ヒステリックに喚く霞の手を無理やり引いてその場から動く。


 「とにかくここを移動しましょう。

  危ないですから」

 「……」

 「霞さん」

 「……」


 京太郎の呼びかけには答えないが、手を引かれるがままに移動する。

 抵抗する気力もないのだ。


 ……
 …


 「今迎えを呼びましたから」

 「……」

 「ああ、俺が話しているだけなんで聞いていてくれればいいですよ」

 「……」

 「そんな気にすることないって。

  いや、俺が言えることじゃないですけど、喧嘩したらそんなもんじゃないですか」


 むしろ手より口が出た方がマシ、と言いかけてやめる京太郎。


 「俺だって友達と大喧嘩したことありますし。

  ははっ、霞さんが家に来た時に親父にぶん殴られたり怒鳴られたりも最近じゃん」

 「……」

 「大丈夫です。

  俺が保証します」

 「……何が、わかるの」

 「?」

 「京太郎さんに、何がわかるの」


 言ってはいけないと思いつつも当たり散らしてしまう。

 今まで感情の発散をしたことがなかったが故に、止まることはない。

 それをしてしまえば京太郎に嫌われるかもしれないとわかっていても止まらなかった。


 「私と初美ちゃんの関係、わからないじゃない」

 「……そう、ですね」

 「わからないじゃない。

  何も、知らないじゃない」

 「霞さんの言う通りです。

  ――だからもっと、、もっと話をしましょう」


 顔を上げる霞に、京太郎は笑いかけた。

 なぜそこまでしてくれるのか、霞にはわからなかった。


 言ってはいけないと思いつつも当たり散らしてしまう。

 今まで感情の発散をしたことがなかったが故に、止まることはない。

 それをしてしまえば京太郎に嫌われるかもしれないとわかっていても止まらなかった。


 「私と初美ちゃんの関係、わからないじゃない」

 「……そう、ですね」

 「わからないじゃない。

  何も、知らないじゃない」

 「霞さんの言う通りです。

  ――だからもっと、、もっと話をしましょう」


 顔を上げる霞に、京太郎は笑いかけた。

 なぜそこまでしてくれるのか、霞にはわからなかった。

続く

残り二話


 11

 [朝焼け]


 こんなにしても、受け止めてくれる。

 今の霞は錯乱状態で、京太郎のことすらも信じられない。


 「何で、何で私にそこまでしてくれるの?」

 「……」

 「そんな、ありえない。

  だって、私そんな風にしてもらえる人間じゃない」

 「俺だって、そんな大層な人間じゃないです」

 「……」

 「……カッコ悪いけど、俺は霞さんの思っているようなかっこいい奴じゃない」


 あはは、なんて軽口を叩いて笑う。

 霞はそれを受け止められず、俯く。


 「だって、色々としてくれたじゃない。

  すごく気遣ってくれて、嬉しかった」

 「いやいや、俺だって下心ありますよ」


 サラッと言ってのける。

 自分を卑下するようにではなく、認めるように言った。


 「霞さんと出会って、仲良くなりたくて……。

  恥ずかしいけど、めっちゃ頑張ってました」

 「そう、なの?」

 「そうです。

  周りの人にどうすればいいか聞いて回りました」


 京太郎も言っていて恥ずかしくなってきたのか、顔を逸らす。


 「麻雀部のみんなにはすっごく言いにくかった。

  だって時期が時期ですよ、みんな全国に来てるのに、俺だけデートですよ」

 「……」

 「でも、好きになったから仕方ないじゃないですか」

 「なん、で」

 「……神代さんを守ろうとする霞さんが、格好良かった」

 「……っ!?」

 「男の俺にも物怖じせず、神代さんのために話しかけてきて、心配しているのがわかった。

  少し怖がっているのもわかった。

  それでも、霞さんは話しかけてきたじゃないですか。

  そんな行動、友人思いじゃないとできません」

 「ああ……」

 「そんな霞さんが、……すごく可愛くて、電話番号聞いたときには舞い上がっちゃって。

  あれから酷かったんです。

  その、麻雀部の人にどうしたら喜んでもらえるか聞いて、部長に叱られました。

  『全国に来てるのよ!』って」


 霞の脳裏に浮かぶのは、嬉しそうに笑ってからかってきた竹井久の姿。


 「でも、女性が喜ぶことを色々と教えてくれました」


 あの時会った彼女は、何を思っていたのだろう。


 「次に、その、霞さんは知らないんですけど俺の友人がいまして。

  それがもう何でもできる人なんですよ。

  その人から女性への立ち振る舞いを勉強して、一緒にデートコースを考えました」


 霞の知らない、京太郎の努力。


 「そんな風に色々と叱られて、助けてもらって、霞さんと一緒にいました」

 「そう、だったの」

 「……やっぱり、幻滅しちゃいましたかね」

 「そんなことないわ」


 顔を上げる。

 少しだけ、楽になった。


 「私、やっぱり京太郎さんと一緒にいられて幸せよ」

 「へへっ」


 京太郎もやっと霞が笑ったと、嬉しそうに笑った。

 二人して笑いあって、足を止める。


 「それに、俺は薄墨さんたちが裏切ったとは……」


 ――京太郎がそれ以上言う前に、霞が目を見開いた。

 京太郎の後ろに見えた、数人の男たち。

 明らかに堅気の姿ではない!


 「京太郎さん、逃げてっ!」

 「えっ?」


 京太郎を突き飛ばし、『恐ろしいものを受け入れる』

 それは永水で修行していた時のように、麻雀をしていた時のように。


 ――でも、それはいつもと違った。


 「(神様が怒って……いる……っ!)」


 麻雀という遊戯におろすことが出来たあの時とは全く違う。

 しきたりを破ったせいなのか、霞にはわからない。


 「霞さん!」

 「逃げ、て」


 辛うじて口から漏らす言葉は京太郎の安否。

 もし、神様が恨んでいるのが霞だけならば良い。

 しかし、供物である霞を奪った相手すらも憎んでいるならば――


 「逃げるわけないじゃないですか。

  あと少しなんです!」


 そう言って霞に近づこうとする京太郎。

 しかし、霞の周囲に近づかせないように強風が吹いている。

 天候が変わり、ごく一部に暴風雨が巻き起こる。

 荒れすさぶ鬼神のようだ。

 一瞬にして濡れ鼠になってしまうが、そんなことを考えている暇はない。


 「おい、こんなの聞いてねーぞ!」


 京太郎の後ろから聞こえる男たちの悲鳴。

 その時初めて、京太郎は手足が痺れ始めていることに気づく。

 振り返れば男たちが昏倒して意識を失っている。


 「逃げて、逃げてください……!」


 霞は涙を流しながら京太郎に訴える。

 もはや制御出来るとは思っていないが、神様に必死に抑える。


 『神』を受け入れるということは『天倪』である人形だからできたことだ。

 『人間』としての感情を受け入れた今、神が及ぼす影響をモロに受ける。


 「憎い」


 「羨ましい」


 「嫉妬」


 「なんで私だけ」


 「天倪」


 だんだんと意識を失っていき、霞の中に秘められた負の意識が呼び起こされる。

 発される言葉は途切れ途切れだが、単語はしっかり聞こえる。


 「うるせー! 黙ってそこで待ってろ!」


 痺れる手足を無理やり動かし、強風の中を突き進む。

 男たちが昏倒したのに京太郎だけが動けていた。

 京太郎は一瞬だけそのことを考えたが、そんなことはどうでもよかった。

 どうせ考えても正確な理由なんてわからない。それならば――

-

 「霞さんが助けて欲しいって言ってるって、そういうことにしますからね!」


 霞に近づくたびに意識が薄れていく。

 先ほどまでは指先程度の痺れだったのに手首まで動かなくなる。

 顔の筋肉が硬直する。

 まともに表情を作れない。

 手首から肘まで動けなくなる。

 肩だけでも使って強風から顔を塞ぎ、それでも前に進む。

 もう風の勢いも感じない。

 雨の水滴も感じない。

 目蓋が落ちてくる。

 それは困る。だって――




 「霞さんが見えなくなるだろ!」


 ――まだ足は動く!


 


 意識が飛ぶ寸前に霞に抱きつく。

 すると先ほどまでの現象が嘘のように止んで、霞の中に収束する。

 収束していった力の流れは、少しずつ霞の外へ霧散した。


 「……おちつく」


 霞はぼそりと呟いた。

 先ほどまでは神様に乱され、憎しみの塊になっていた。

 そんな気持ちが嘘のように落ち着いていた。


 「かみさまも、おちついたのかな」


 こんなに爽やかな気分になったのはいつぶりだろうか。

 京太郎と出会ってからは波乱万丈の毎日で、落ち着く暇なんてなかった。

 京太郎と一緒にいるときも、ドキドキハラハラ。

 乙女の心が霞の心を乱し続けていた。


 「おとうさん、おかあさん」


 天倪としての使命を請け負う前にこんな気持ちになったことがある。

 母親に抱きしめられてゆっくりと眠った時と同じだ。


 「そっか」


 気象が荒ぶる神様も、彼にとっては変わらない。

 もしかしたら彼の名字の由来が関係あるのかもしれない。

 暴風雨を起こし、子供のように泣き払い、狂暴な一面を見せた荒れすさぶ神様。

 そんな神様が落ち着く、と言った地の名前だ。


 本来ならば神様をおろした後に祓わなければいけないはずなのに、霞の中から神の力を感じない。

 これが彼の『オカルト』だとしたら、荒神様は彼に会いに来たのかもしれない。


 「だめですよ」


 しかし、それを否定する。

 彼は『オカルト』なんて持ってない。


 「京太郎さんは、私の彼氏です!」 


 ただの、霞の彼氏だと。

 舌をべーっと出して、子供のように嫌がった。

 それを見届けたのか、霞の中から神様が残り滓も消えていく。

 気のせいかもしれない。神様が笑った気がした。


 ……
 …


 「京太郎さん、大丈夫ですか?」

 「『大丈夫』ですー」

 「嘘ね」

 「うげっ!?」

 「ふふっ、お返し」

 「かなわないなぁ……」


 霞が膝枕をしながら京太郎と話す。

 お互い、憑き物が取れたように笑っていた。


 「霞さんは大丈夫なんですか?」

 「うーん、ダメかも」

 「えっ、どこか悪いとこあるんですか!?」


 強いて言えば、胸の痛みとか。

 そんなことを考えたけれども、さすがに言葉に出す勇気はない。


 「さて、どうしましょう……」

 「ああ、その、霞さんが薄墨さんと話している時に友人を呼びました。

  そのうち来ると思うんです」

 「あら、そうなの?」

 「はい、……そのまま逃げましょうか」

 「逃げるって、どこへ?」

 「海外です」


 京太郎がきっぱりと言い切った。

 海外、という言葉を聞いても実感が来ない。

 霞は一度も行ったことがないのだから。


 「フランスにツテがあるんですよ」

 「そうなの?」

 「中学の頃、ハンドボールの強化合宿で行ったことがあるんです」

 「……でも、海外まで追いかけてきたら」

 「それは大丈夫ですよ」

 「なぜ?」


 京太郎は笑う。

 霞は困惑して、京太郎のほっぺたを突く。


 「もう、教えて?」

 「薄墨さんが言ってたじゃないですか。

  『日本にいる限り』って」

 「それは……」

 「あれ、ヒントだと思うんです。

  薄墨さんの立場を考えて、霞さんのためにできた唯一の……」


 霞が目を見開く。


 「そんな、偶然よ」

 「だって、あの場で薄墨さんは霞さんを取り押さえようとしなかったじゃないですか」

 「それは、力勝負ではかなわないから」

 「もしさっきの男たちと一緒に来てたなら、間をおかずに油断させて襲ってくると思うんです。

  こうして歩いてあの場所を離れるだけ余裕があったってことが答えじゃないですか」

 「……すごく都合の良い考えね」

 「良いじゃないですか。

  都合の悪いことを考えても仕方ないでしょ」

 「私、あの子と喧嘩しちゃったのよ?」

 「喧嘩したら仲直りすれば良いじゃないですか。

  俺たちみたいに」

 「……もう、会えないかもしれないのよ」

 「もしかしたら会えるかもしれないじゃないですか」

 「強情ね」

 「結構、自信はあるんですよ。

  霞さんのために眼力鍛えましたから!」

 「……そうね。そう思うことにするわ」

 「あっ、納得してない!」

 「そんなことを言われても……」

 「こういうことはポジティブに考えるんですよ!

  霞さんの友達は裏切ってない!」

 「じゃあ、私たちの関係はどうやって知ったのかしら?」

 「それは簡単です。

  霞さん言ってたじゃないですか、東京行き用の携帯電話を渡されたって」

 「あっ……。

  でも、お祖母様が」

 「その人の言ってたことは霞さんを追い詰めるための嘘ってことにしましょう!」

 「それは、ちょっと都合が良すぎない?」

 「だって知る術がないんですから、嘘でいいんです!」

 「……」

 「霞さんの両親だって応援してくれて、わざわざ鞄に仕込んでくれたんでしょ?」

 「それは……」


 霞にも一つだけ気になる点がある。

 そう、カバンの中に仕込まれた手帳。

 両親が予め知っていたとしても、いつ仕込んだのだろう。

 家にいる時に、こっそり?

 あるいは……。


 「巴ちゃん……」


 京太郎と会っていることを、『羨ましい』と笑っていた彼女を思い出す。

 あの子が裏切ったなんて思いたくない。

 そして、手帳を仕込めるタイミングは……。


 「宿題を、渡した時」


 巴は霞に『宿題を渡してくれ』と言わず、自分で霞の鞄を開けて取って行った。

 彼女の性格を考えると不自然な行動だったのだけれども、気に留めたことはなかった。


 「そのあと、私がここまで来れたのは」


 思い返してみると不自然な点が幾つかある。

 担任に呼ばれたにしろ、『二人同時にいなくなった』からこそ霞はここまで逃げてこられた。


 「……」

 「俺が薄墨さんたちを知らないから好き勝手言ってるんですけどね」

 「ホントよ」

 「あいたっ」


 京太郎の頭をコツンと叩く。

 『そんな都合の良い考え』――そう思う。

 でも、それが現実だったらどれだけ良いか。


 「もう会うこともないのなら、好き勝手に想像してもいい」

 「そうそう!

  霞さんにとって、永水の人たちとの思い出もたくさんあると思います。

  だって、そうじゃなければあんな風に神代さんを守れませんから」

 「……もう」


 先ほどの情熱的な告白を思い返して、霞は顔を赤くした。

 全く、卑怯だ。

 ――そんな風に言われたら、そう思いたくなるじゃない。


 「ああ、車が来ました」

 「車?」

 「友人、というか師匠のです」


 京太郎が嬉しそうに駆け寄ると、そこには黒塗りの高級車があった。

 霞にとって車の判別などつくはずもないが、相当なお金持ちであることは間違いない。


 「すみません、京太郎君。

  遅くなりました」

 「いえいえ!

  来てくれただけでも嬉しいです!」

 「ふふっ、来ますよ。

  『プライベートなお友達』ですから」

 「プライベートなのにこんな車使っていいんすか?」

 「ええ、有休を申請したところ、派手にやれと」

 「そ、そうですか」


 京太郎が嬉しそうに語りかける相手は黒髪を持つ美麗な男性。


 「その人は?」

 「俺の友達です」

 「ええ、友達です。

  ……では、こちらに」

 「ありがとうございます」

 「そ、その、ご迷惑をおかけして……」

 「いいんですよ。

  迷惑かけろって、言われたから」


 京太郎が父親に説教された日のことを思い出す。


 「ふふっ、京太郎君は変わりましたね」

 「そうですか?」

 「ええ」


 京太郎と出会って霞が変わったように、霞と会って京太郎もまた変わっていた。

 そのことを霞が知るべくもないが、男性は嬉しそうに笑った。


 「じゃあハギヨシさん、お願いします」

 「ええ、朝一の便でフランスへ」

 「霞さん」


 京太郎が先に乗り込み、霞の手を引く。


 「日本でなくても、ついてきてくれますか?」


 真剣な表情で霞に問いかける。

 それを見て、霞は微笑んだ。


 「どこまでも着いていきます」
 

 京太郎の手を引いて、車の中へ入っていった。


 ……
 …


 一夜明ける。

 まだまだ暗く、夜が開けていないうちに空港に着く。

 霞にとって飛行機は未知の乗り物だ。

 少し怖い思いをしながらも、京太郎に手を引かれて乗り込んだ。


 「……落ちませんよね?」

 「大丈夫ですって」


 そわそわと周りを見回す霞を見て笑う京太郎。

 また一つ、霞は知らなかったことを覚えた。


 「でも、まだまだお空は霞んでいますよ」

 「霞さんってインターハイに来た時は飛行機使わなかったんですか?」

 「ええ、私はオカルトで移動できたから」

 「そりゃまた……便利っすね」

 「でもね。

  昨日から、そういうものが感じられなくなったの」

 「えっ!?」


 飛行機の椅子に座ってじっとしながら俯く。

 京太郎に抱きしめられて荒神を抑えて以来、何も感じないのだ。


 「自分で神を降ろすことは勿論、他人の気も感じない」

 「それは……なんといったらいいか」

 「いえ、嬉しいのよ」


 霞が顔を上げて京太郎を見上げる。


 「確かにここまで生きてきたものは失ったけれど、それ以上に得たものがあるから」

 「……俺?」

 「ふふっ」


 霞は恥ずかしくなって顔を逸らす。

 『景色がいいから』なんて理由で窓際の席に座らされている。

 逃げるように外の景色を眺めてみると、曇った霞色の空が見えた。


 「……実はもう一つ、意味があるんです」

 「え?」

 「『霞』って意味。

  綺麗な『朝焼け』って」

 「ああ」


 いきなり何を言うかと思えば、霞にとっては懐かしい話だ。


 「霞さん、『沈み行くもの』って言ってたじゃないですか」

 「そうね」

 「沈んだ太陽はまた昇る。

  霞さんのことですよ!」

 「……ふふっ、詩的ね」

 「あっ、馬鹿にしてるでしょ!」


 なんだかかわいらしくて霞は笑った。


 「やった! 笑った!」

 「もう……」


 照れてまた顔を逸らして外を見る。

 外を見ようとしたところで、京太郎に顔を固定される。


 ――飛行機が飛び立つ。




 「――」


 唇が重なった。


 



 霞は外を見ることは出来なかったが、霞色の空はすでに朝焼けを見せた。


 飛行機が高く上がるにつれ、雲をつき渡って澄み渡る空へ。


 沈んで、霞んで、澄んで、登って、新たな世界へと。


 まるで祝福するかのように、お天道様が光り輝いていた。

 

続く

霞「...という物語考えたんだけど売れるかしら?」
はっちゃん「やめるですよー」
というオチのどんでん返しとか?


 12

 [霞]


 世界三大料理の一つに数えられるフランス料理。

 しかし現在では女性の就職率も高く、家庭料理としてその姿を見ることは少ない。

 冷凍食品が横行し、レストランでの味が主となる。

 そんな中、フランスにはない料理を作る人妻がいた。


 「海ぶどう美味しいです!」

 「そう、それならよかった」


 名前は、須賀霞。

 ――あれから十年。

 霞と京太郎は様々な経験を積み、結婚した。

 数年前に子供も産まれ、順調な人生を歩んでいた。


 「いつもありがとうございます!」

 「ううん、夫の家から送られてきたものだし……」


 そして霞の前にいるのは雀明華。

 かつて日本に留学し、高校インターハイに出場した雀士だ。

 霞より一つ下の年齢ながらも当時の欧州選手権で『風神』と呼ばれていた世界ランカーだ。

 奇しくも『神』の異名を持つ彼女と霞が出会ったのは運命だったのかもしれない。


 ――最も、同じ大会に出場したから仲良くなったというわけではない。

 日本にいた時は何の関わりもなかった。

 10年前にフランスに逃亡し、その先で夫がハンドボールの道を再開した。

 中学の時はイマイチ伸びきらないプレイヤーだったそうだが、切磋琢磨する人が多く、守るべきものが出来たおかげかその芽は開花する。

 今ではフランスの強豪チームでハンドボールのプロプレイヤーとして生活している。

 そんな彼は東洋人としての人気も高い。

 京太郎を迎えに行った際にサインが欲しいとねだっている彼女と出会ったのがキッカケだ。


 「京太郎と霞ちゃんと知り合いになれて良かったです!

  京太郎は格好いいし! 霞ちゃんは優しい!」

 「あらあら……」


 自分のことを褒められた以上に、夫のことを褒められているのが嬉しい。

 しかしまぁ、ただでさえ女性ファンも多く魅力的な女性が多いフランスだ。


 「いつもありがとう!」


 明華が霞を抱きしめる。

 日本に比べ、海外は親愛の表現として抱きしめるのは普通だ。

 霞はどうしても慣れないので異性との接触は避けているが、こうして親しい間柄と抱きしめ合うことにはいい加減慣れている。

 ――問題があるとすれば、それをいいことに京太郎を抱きしめる明華である。

 鼻の下を伸ばす旦那の頬を引っ張ったことは一度や二度ではない。


 「今日は帰ってくるんですか?」

 「ふふっ、今日は帰ってこれるみたいなの」

 「それは良かったです!」


 こんなにほんわかしている彼女が10年前から世界ランカーとして戦っているのが信じられない。

 昔の霞ならば彼女の特異性にも気づくことが出来ただろうが、今はもう何も感じないのだから。


 「明華ちゃんは一番身近なファンね」

 「あのハードなプレイにソフトなタッチ、みんなの憧れですよ」

 「ハンドボールの話よね……?」


 京太郎本人も気づかないうちに既成事実を作られるのではないかと気が気ではない。

 旦那が浮気するとは思っていないが、何が起こるかわからない。


 「かかさまー!」

 「あら、娘がお昼寝から起きちゃったみたい」


 旦那との間に授かった一人娘がいる。

 目の前にいる明華が一時期間違った時代劇にハマっていた際に覚え込まされた愛称だ。

 別に嫌というわけではないが、かわいらしくて笑ってしまう。


 「ととさまは?」

 「そうね。

  いい子にしてたらもう少しで帰ってくるわ」

 「うん! いい子にしてる!」

 「えらいえらい」

 「みょんふぁ褒めて!」

 「かわいい!」

 「くるしいよー!」


 明華が娘を抱きしめる。

 母の抱擁以上に強く抱きしめているせいか、少し苦しそうな表情を見せる。


 「私も子供欲しいです」

 「だ、ダメよ。

  京太郎さんは渡さないから」


 じーっと霞と娘のことを見つめる明華。

 あまり褒められた話をしているわけではないのに変に許してしまう。

 霞は明華のほんわかオーラは卑怯だと思った。


 「明日は早いから夜には帰らないといけません……」

 「そうなの?」

 「それまでに京太郎が……」


 明華が最後まで言い終わる前に、家の扉が開いた。

 そこから現れたのは、10年前から大きく育った青年の姿。

 かつては高身長に体格が良くとも少年のような幼さが残っていたが、今はそれも消えている。

 ――最も、霞と娘と三人でいる時の彼は昔以上に子供っぽい部分を出していたりもする。


 「わっ」

 「この上から京太郎が抱きしめるならセーフです!」

 「セーフ、なのか……?」

 「もう、京太郎さん。やっていいですよ」

 「あっ、はい」


 二人を抱きしめる。


 「今度の試合も応援してます!」

 「ああ、明華さんも試合の方頑張ってください」


 それで満足したのか、明華はそのまま帰って行った。


 「何やら台風が過ぎ去ったみたいですね」

 「『風神』だからね」


 京太郎が荷物を下ろそうとしても娘が離れてくれないようだ。

 ダメ、と一言注意すると頬を膨らませて少し離れてくれた。


 「霞さん。

  ……今日、会いたいって人がいるんだ」

 「……?」

 「家に上げていいかな?」

 「京太郎さんがいいなら、私は構いませんけれど」

 「うん。……上がってください」


 玄関を開けてみて、霞は驚愕する。

 そこにはかつてと全く変わらない姿の親友がいた。

 

 「……『今度こそ』久しぶりですね、霞さん」

 「……初美ちゃん」


 唯一無二の親友と言っても過言ではない存在。

 10年前に日本に置いてきてしまった一つの後悔。

 様々な思いが霞の中に飛来する。

 


 「ほら、ととさまと遊ぼうな」

 「おきゃくさんとあそんじゃダメ?」

 「……」

 「お客さんは、かかさまと大事な話があるから、さ」

 「うん、まってるねー」


 嬉しそうに手を振る娘に対して、無表情を貫いていた初美も僅かに表情を崩して微笑んだ。

 京太郎は霞を見据え、微笑んだ。


 「ええ、わかっているわ」

 「……」


 霞はその視線に応える。

 初美がどんな話をしてきたとしても、霞はそれに応える覚悟があった。


 ……
 …



 「さて、何から話すべきですかね」

 「……」


 緊張が取れない。警戒も解かない。

 あの時のことがどういう真実であったにしても、霞にとっては苦い思い出だ。

 それに、娘を引き渡せと言ってくる可能性だってある。

 そんな相手を京太郎が招くとは思わないが、警戒をしておいて損はない。


 「そんなに構えないでください。

  私はただの号外です」

 「号外?」

 「今の神代、興味はありませんか?」


 ピクリと眉を動かす。

 興味がないといえば嘘になる。

 ここまで霞は逃避し、見ることをやめていた。

 それは決して悪いことではない。

 人間は忘れることによって耐えることが出来る。

 霞の両親、六女仙、姫様。

 様々な物を捨てて、霞はここにいる。


 「面倒くさいので先に言っておきます。

  霞さんにも娘さんにも興味はありません」

 「……そう」


 他人行儀のような敬語。

 見た目こそ変わらずとも、霞の知っている初美ではない。

 霞はその言葉に対しても素直に受け取れない自分がいることに気づく。

 あの時のように親友を疑って、お互いを貶し合う。そんなことはもうしたくない。

 そう思っていても、霞に持たされた重圧は過去の比ではない。

 あの時のように、ただ恋の感情に振り回される乙女ではなくなった。

 しっかり考え、何より大切な娘と家族を守ることこそが今の霞の重視するべきこと。


 「『あの日』に、巫女の力を失った時点で神代は霞さんから手を引いています」

 「!」

 「あの時の荒神は観測しました。

  その後、力を失ったこともわかっています。

  力を失った、『ただの海外在住の日本人女性』に手を出すことはリスクが大きすぎます。

  神代はそれを良しとしませんでした」

 「……そう」

 「一部では母体として連れ戻せ、等の意見が出ましたが、やはりリスクとリターンを考えて却下されました」


 背筋が寒くなる。

 まともな考えではない。


 「霞さんの婚約者は別の方に当てがわれました。

  誰かは……、そうですね。言えません。企業秘密です。

  霞さんの知っている人です」

 「……」

 「……ただ」


 少し溜めて、吐き出すように答えた。


 「その人と結婚した人は不幸になっていません。

  幸せな家庭を築いています、とだけ」

 「そう、それならよかった」


 誰と結婚したのか、気になるといえば気になる。

 しかし今の霞は知る権利もないと、自分でわかっていた。


 「元・六女仙はみんな結婚していろんな人生を歩んでいます。

  幸せになれた人となれなかった人はいます。

  婚約者とうまくいかない人はどうしてもいますから」

 「あら、そうなの」

 「まぁそれは霞さんには関係ないですよね。

  その人のお嫁さん適性がない、だとか相性が悪い、ってだけの話です」


 『関係がない』という言葉が少し刺さる。

 もっとも、言う通りなのだが。


 「ちなみに私は子沢山で夫を尻に敷いていますよ」

 「あら、おめでとうございます」

 「ありがとうございます」


 それが初美の夢だったことは知っている。

 素直に祝福したが、どうにも他人行儀が直らない。


 「ねぇ、腹の探り合いはやめないかしら?」

 「と、言いますと?」

 「そんな風に近況報告するだけのために来たわけじゃないでしょう」


 覚悟は出来ている。

 ただそれだけのために来たわけじゃない筈だ。


 「……近況報告も要件の一つですが、次に行きますね」

 「ええ、そうしてくれるとありがたいわ」

 「では覚悟して聞いてください。

  神代は『石戸霞の存在をなかったことにしました』

  これが一つ目の要件です」


 胸が痛んだ。

 あの時置いていったものが、捨てられてしまった感覚。

 ――置いていったのは自分なのに、なんて身勝手。


 「それって……」

 「もう面倒臭いからぶっちゃけると、『身内の恥をなくした』ってことですよ。

  霞さんにとっては喜ぶべきことですよ。

  逆に言うと追われることや執着されることは無くなりましたから。

  なんたって、『石戸霞は存在しない』ことになりましたからね」


 そう、それなら追われなくなったということは納得できる。


 「……姫様は?」

 「これを決めたのが姫様ですよ」

 「……そう」


 決定的な境を感じた。

 今まで、心の中にわずかに残っていたものが完全に断ち切れたのだ。

 だが、それは十年前に受け入れている。


 「これだけは伝えなければいけません。

  神代は『石戸霞を許さない』からこそ抹消し、追うのを辞めました。

  それは神代に属するもの、全員同じことです」

 「……そんなもの覚悟の上よ。

  『クソくらえ』よ」

 「随分と口が悪くなりましたね。

  石戸霞は許さない。それが最後に伝えるべき言葉です。

  それは私も変わりません。

  今後神代のものが石戸霞と関わることはありません。

  私も、巴ちゃんも、これが最後です」


 これで完全に関係が切れる。

 ずっと望んでいたことのはずなのに、ひどく悲しくてとてもつらい。

 十年、十年だ。

 彼方に追いやった故郷への思いが甦る。

 喧嘩をする前に仲が良かったことを思い出す。

 全ての人から恨まれて、それでもこの生活を選んだのだ。


 「わかったわ」


 表情一つ変えずに、言えたはずだ。

 さようなら、私の親友。







 「ああ、そう言えば

  貴女は須賀霞さんでしたね」





 


 初美が俯いて言葉を漏らした。

 ――何を、言っているのか、わからない。


 「すみません。

  旧知の親友に名前が似ていたもので、お宅を間違えて拝見してしまったようです」



 ――親……友……?



 「須賀さん、遅れましたが……初めましてっ!

  変な形で知り合いましたが……っ!

  これから、これから……


  これから仲良くしてくれると幸いですっ!!」


 初美ちゃんは泣いていた。

 気づけば私も泣いていた。

 二人とも立ち上がって、フラフラとよろける。

 


 「初美ちゃん……」

 「バカっ、バカですよー!

  私も霞ちゃんもっ! 大バカ者です!」

 「そうよ! 本当にそう!」

 「ごめんなさい。ごめんなさい!

  謝りますから、霞ちゃんも謝ってください!」

 「ごめんね、本当にごめんなさい!」

 「なんで最初に私に相談してくれなかったんですかっ!

  ……私はなんで、相談に乗ってあげられなかったんですか」

 「最初に初美ちゃんに相談しようと思ったのっ!

  でも、それも出来なくて!」

 「私だって、悔しかったんです!

  霞ちゃんにだけ王子様が現れて、私にはいなくて。

  親友だと思っていたのに相談すらしてくれなくてっ!

  あんな形で別れて終わりになんてしたくありませんでした!」

 「初美ちゃん、初美ちゃん!!」




 大人になったのに、子供に戻って抱き合って。

 二人して泣きじゃくって、あの時のように抱き合って。

 親友だと言い合って、小蒔ちゃんに仕えると決めたあの時のように。


 


 ……
 …



 「……あの時、私は霞ちゃんのことを見張っていました。

  巴ちゃんを先に行かせて、それに黙って二重尾行です」

 「巴ちゃんに見られていたのは覚えているわ」

 「でも、それを本家には伝えなかったんですよー……。

  とっても悔しくて、悲しくて、なんで霞ちゃんがモテるんだって思ってました。

  私にはないものをたくさん持っていましたから」

 「そう、なのかしら」

 「そうですよー!

  このおっぱいとか!」

 「ぁん!

  やめて!」

 「ふふーん、いい感じに開発されてますねー。

  ……でも、本家は最初から私たちのことなんて信じてなかったんですね。

  霞ちゃんに持たされていた携帯から調べられたんです」

 「!!」

 「私と巴ちゃんも、お互いに協力するなんてことはありませんでした。

  ただ巴ちゃんは私なんかと違って霞ちゃんに協力的だったと思います。

  霞ちゃんがいなくなったあの日、私は巴ちゃんに足止めをされてましたから」

 「巴ちゃん……」

 「……残念ながら今はまだ会えません。

  巴ちゃんも会いたがっていると思いますけれど、幸せな家庭を築いていますから」

 「それなら、それならよかった……」

 「私は巴ちゃんみたいに協力することも出来ずに、かといって神代に尽くすこともできなかった。

  ただ醜く嫉妬して、霞ちゃんに会いに行ったんです」

 「うん……」

 「そうしたら、裏切られたって言われて、何のことだかわからなくて」

 「ごめんなさい、ごめんなさい……っ!

  私、祖母から六女仙から密告があったって伝えられて……っ!!」
 
 「……なるほど、ですよー。

  やっぱり最初から私たちのことなんて信用されてなかったんですねー」

 「ごめんなさい!」

 「お互い様、ですよー。

  あの時は二人とも子供だったんです」

 「……そう、ね。子供だったわ」


 この10年間、様々な苦労をして生きてきた。

 その中で、かつての故郷を思い返したことは一度や二度ではない。

 あの時こそ忘れて幸せになれるとは思ったけれど、こうして年を重ねてみればまた違った考え方で当時を見返すことが出来る。


 「結局、みんな子供だったのよね」


 霞も、京太郎も、そして初美も含めてみんな子供だったのだ。

 今そこにある現状が全てだと思って、選択肢は0か1かでしかわからない。

 そして選ばれた選択肢は永遠だと思っていた。

 それは半分正しくて、半分間違っていたんだと思う。


 「霞ちゃん、後悔はしていますか?」

 「……全くしたことがないなんて嘘よ。

  初美ちゃんや姫様、両親のこと。たくさんの後悔があった」

 「霞ちゃんの両親はものすごく立場は悪くなりましたが、直接被害には合ってないです。

  そんなことをしても無意味でしたから。

  姫様のことは、あまり詳しく言えません。

  少し話せる範囲で言うと、霞ちゃんから自立したおかげで『恩返し』してくれたと思ってください」

 「姫様が?」

 「そうですよー。

  守られる立場ですが、同時に一番の発言力を持つのが姫様です。

  ……姫様が霞ちゃんの敵になんて、なるはずないじゃないですか。

  霞ちゃんがここに居られるのも、姫様のおかげです」

 「……そうね。

  私はたくさん迷惑をかけて、大切なものを置いてきてしまったわ」

 「……」

 「でもね。

  今の生活はとっても幸せよ。

  あの時、あの決断があったからこそ夫がいて、娘がいる。

  たくさん困らせちゃったけれど、本当に幸せ」

 「それなら良かったです」


 満足した、と席を立つ初美。


 「もう行くの?」

 「無理なスケジュールで来ているんですよー」

 「また、会える?」

 「もちろんです。今度は巴ちゃんも一緒に、三人で会いましょう」


 初美が笑った。

 霞も笑った。

 小さな頃、みんなで遊んだ時のように。


 ……
 …


 「かかさま、ないてるのー?」

 「もう、見ちゃダメよ」

 「ぎゅーっ!」

 「ありがとう、京太郎さん」

 「あっちから連絡が来た時はマジで焦ったんだけどね。

  よかったよかった」


 満足気にお茶を入れている京太郎。


 「もう、私がやりますって」

 「ダメですー。霞さんはゆっくりしててください」

 「もう……」


 時々、昔のように敬語で話されることがある。

 なかなか癖が抜けないらしいが、わざとやっているのではないだろうか。


 「ねむ……」

 「ほら、ベッドで寝なさい」

 「うん……」


 少し甘えて満足したのか、瞼を擦りながら眠りについた。

 京太郎が仕方なくベッドまで運ぶと、霞は外を見ていた。


 「見て、京太郎さん。

  星が綺麗」

 「本当だ!

  今日は晴れでしたし、澄み渡ってるね」

 「こうやって見られるものは、日本でもフランスでも変わらないんですね」

 「時差があっても、同じ地球だから」

 「そうね……」

 「霞さんは、今幸せですか?」

 「えっ!?」

 「その反応。

  もう冷めちゃった?」

 「ち、違います違います。

  その、言葉にすると恥ずかしいというか」

 「10年前はもっとストレートに表現してくれたのに」

 「わーっ!

  その、恥ずかしいじゃない」


 京太郎が星を見上げる。

 顔を赤くしながら、霞に口付ける。




 「言葉より、行動?」


 京太郎はイタズラが成功したように笑った。

 霞も満足そうに笑う。


 




 「私は、今までたくさんの幸せを京太郎さんからもらいました」

 「そんな、俺も」


 指を一本立てて京太郎の唇に当てる。

 まだ私が喋ってます、と言外に伝える。


 




 「今度は、私が京太郎さんを幸せにする番ですね」


 今度は霞から京太郎に口付けた。


 




 空はいずれ霞み、日を落とす。

 しかしまた日は上がり、澄み渡る。

 二人はただ、幸せそうに笑った。


 

 京太郎「霞色の空」 完
 ご愛読ありがとうございました

 残レスはごった煮の小ネタを投下予定。みやながけもやる


 小ネタ


 「京ちゃん、お菓子」

 「京、お世話して」

 「二人とも何を言っているんですか。

  自分でやってください」


 そんな京太郎の制止も聞かず、バチバチと睨み合っている。

 高校時代に何の関係もなかった三人ではあるが、なんやかんやあって大学で知り合いになって、よくわからないけれど京太郎の家に居座っている。

 照と白望。どちらも京太郎にとって庇護欲を擽られる存在であり、何かとお世話をすることが多い。

 京太郎自身がお節介焼きであり、誰かのお世話をすることが苦ではない。

 そんな彼がいつものように家に帰ったら、二人が当たり前のように家を占拠してお世話を要求してきている。


 「京ちゃんは私のお菓子係で忙しいから」

 「京は私のお世話係で忙しい」

 「……」

 「……」


 修羅場、という奴だろうか。なぜか京太郎は達観して考えた。

 この二人は自分のことを自動餌やりマシーンか何かと勘違いしていないかと不安になる。


 2/4

 「まぁまぁ、二人とも。

  なんだかよくわからないけど仲良くして」


 なんで自分が仲裁しているのだ、と納得はいかないが仲良くして欲しいことに違いはない。


 「京ちゃんは迷子の私を探してくれる」

 「京は歩くのが面倒臭い私をおんぶで運んでくれた」

 「!?

  きょ、京ちゃんはお菓子くれる」

 「京は耳かきしてくれた」

 「!!!?」

 「……ふっ」


 最後に自分の胸と照の胸を見比べて悪い笑みを浮かべる白望。

 ――シロさんがあんな顔で笑ったのは初めて見た、……悪い意味で。


 「ぐぬぬ……」

 「遺伝子の勝利。

  京、お世話して」


 完全勝利と言わんばかりに京太郎にお世話を要求する白望。


 「あのですね」

 「京ちゃん、こっち向いて」

 「?」


 白望に少しお説教をしようと考えたところ、後ろから照に声をかけられる。

 何事かと振り返ったところ、ポッキーを咥えた照が京太郎の方を見つめていた。


 3/4


 「……何やってんですか照さん」

 「んっ」

 「『んっ』、じゃないですよ……っ!?」


 呆れている京太郎の口に無理やりポッキーを入れる照。

 チョコ側を渡していることが照なりの親愛表現なのだが、気づくわけがない。

 そのままポッキーゲームのごとく突き進む照だったが、さすがに唇を触れ合わせるのは恥ずかしいのか余裕を持ってポッキーを折る。


 「私の勝ち」

 「……」

 「けほっ、何すか……」


 今度は照が完全勝利、と白望を見下ろす。

 それに対して白望は今までに見たことのないような不機嫌そうな顔を浮かべた。


 「京」

 「今度はなっ……!?」


 白望は躊躇せず、まるで捕食するかのように京太郎に口づけをした。

 何が起こっているのか全く判断できず、戸惑うばかりの京太郎。

 白望は無表情を貫いているようで、顔を真っ赤にしながら京太郎の口内を楽しむ。

 照は呆然とそれを見ていることしかできない。

 少しして、白望が口を離す。


 4/4


 「……勝ち」

 「むぐぐ!」


 間髪いれず照が京太郎を押し倒した。


 「京ちゃん、おかし!」

 「京、おせわ……」


 負けじと一緒に京太郎の上に乗っかる白望。


 「なんだこれぇぇぇーー!?」


 年上の女性に服を剥かれ始める。

 本当になぜこうなったのか、二人の嫉妬は続く……。

 京太郎「おせわがかり」

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 ※ 「みやながけ」の世界なので、「霞色の空」の霞さんとは一切関係がありません
    前作、みやながけのネタが使われています



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 426
 【平行世界を見た霞さん】


 石戸霞よ。

 今日はインターハイ。東京の夏は暑くてダメね。

 清澄高校に負けた後、私たちは少し気落ちしながらもホテルへの道を歩いていたわ。

 その時、清澄高校の人たちとすれ違ったの。


 「あら、永水の人」

 「ぅひ(永水のおっぱいさんだ!)」


 私と戦った宮永咲さんと、原村和さんだったわね。


 「どうも」

 「ああ、いえ……」


 宮永さんは気まずいのか、顔を真っ赤にしている。

 対局している時はあんなに堂々としていたのに、普段はこうなのねぇ。

 そしてその後ろにいた彼と、私は運命的な出会いをすることになる。


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           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \   「(ウヒョー、おっぱいでけー!)」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
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 その時の衝撃と言ったらもう……神代流護身術と神様の力を使って手刀で気絶させて拉致してしまおうかと思ったくらいよ。

 ーーこれが、一目惚れっ!!

 胸に刻み込まれた衝撃の前に私は動けなくなってしまったの。


 「ほらっ、京ちゃん!

  デレデレしないの!」

 「し、してねーし!?」

 「ふーん?

  でも人として失礼だと思うなー?

  そーだよねー?

  和ちゃんもそう思うよね?」

 「そうですね。

  さすがにそこまで露骨だと、私もフォローできませんよ?」

 「うげっ、のどかぁー。

  勘弁してくれぇー」

 「ふふっ、気をつけてくださいね」

 「さすが和ちゃん!

  常識の申し子!」

 「いや、これが普通の対応だと思いますが……」


 彼女たちが私とすれ違い、どこかに行ってしまうまで動くことができなかった。

 ああ、あの人と少しでも話せればよかったのに……。


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 その日の夜、私は夢を見た。

 長い、長い夢だった。

 夢の世界の私は厳しく躾けられ、人形の様な生き方をしていた。

 もちろんこの私も厳しく躾けられ、修行をしていることは違いない。

 非常に似通っていた彼女に、私は感情移入してしまった。

 そんな彼女を救い出してくれたのが、『須賀京太郎』その人だった。

 彼は彼なりに努力して仲良くなり、彼もまた日本にある様々なものを捨てて霞と共に生きることを選んだ。

 そんな物語を見た私はーー


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.         l::::: :::.l.    ャー‐ッ     /:::l:/::: :.l    「見つけたッ! 私の王子様ッ!!」
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 私が目が覚めてすぐ、夢の内容をノートに書き写した。

 詳細に書き写すことが出来て、自分の中の『オカルト』が目覚めた感覚がした。

 それからは夜に決まって、『平行世界』の自分の姿を見ることが出来るようになった。


 様々な世界で黒幕、薄い本要員、性格の悪い人になってしまっている私。

 なんで私は悪役ばかりなの!!!!! 姫様モノばかりじゃない!!!!!

 そんな私を見て絶望するとともに、そこから救い出してくれた王子様!!


 「初美ちゃん初美ちゃん!

  私、王子様を見つけたわ!」

 「何言ってんですかこいつ」

 「金髪で高身長で……ああっ!

  顔が直視できなかったの」

 「夢でも見てたんじゃないですかー。

  ってか何時だと思ってるんですか寝ろよ」

 「でも、私たちには婚約者がいるから結ばれることはないの……」

 「いや、外に出て婿を連れさらってこいって言われてるじゃないですかー……」

 「厳しい修行に耐える私、そんな私を救い出してくれる王子様……」

 「まぁ、修行は厳しいですよねー。

  特に頭のおかしくなってしまった人の対処は辛いものがありますね」


 イマイチ乗り気ではない初美ちゃんを尻目に、私は誓った。


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         /: : :从: : : : : |八人Nノ \: :l   ⌒|   |: : : : :!`丶     \
         /: : ://:/\ : 从   __,,.  \   ≦三≧ル^Y:.\|    \
       /: : :/ /:/  |: ∧l,r≦彡'´   ,       てノ| }|\: |
.      /:.:/   /:/   :|/〈∧てノ、、   ______   `` |_ノ  ‘:|    「なんでその結論になったんですか!
     //   ./:/    |\`∧    厂     `Y  人     |
.    /´    l:/    从: l ̄    〈__   -‐┘       |     せめて本人にアタックしてくださいよ!?」
            |      ‘:l    ≧=-  __  -=≦
                    |       |    ∨
                    . .-=≦___   __≧=- . .
                  / :  :    ` ´   :  ::  \
                 /   ::  :          :  ::    |
                --┤ Y::  : . . . . . . . . . .:  : Y   |‐―┐
                「 ̄ ̄ ̄ ̄\              l__, ┴― 1
                |            ー――――一        /|


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 「だって、恥ずかしいじゃない……」

 「今まさに友情が崩壊する寸前まで恥ずかしいことしてますよー……」

 「ううん、もう決めたの。

  お父さん、お母さん。私は自分の幸せのために生きます!」

 「いったい何があったんですかー!?」

 「私を救ってくれた京太郎さんのために一生を捧げるの……」

 「あれ、さっき一目惚れみたいな感じのこと言ってませんでしたっけ?」

 「うん、この世界ではそうね」

 「……」


       /::.::.::.::.::.::.::.::.::.::ヽ::.:\
      /::.::./::./::.::.ハ::|::.|::.:|::.:i::.:::.. _ _
   ≦::.:,.........|::/|::.:: | |::|::.|::.:|::.:|::|::.:f::.::.::.::.::≧
  /::.::.j/::.::.::.:|;__jヘハ| j/)/j/jハノ::|::.:|\:\::.\
. /::.//イ/|::.:::Yう心   う心ヽ |/::.:ハ:| ヽ::|\::}

// ./  |八:{:ハ弋zソ   弋zソノ j^V |:| j/  jノ
.   {  |:|   } ,,,  '    ,,,   /  ::|
     |:|  人   r―,    - '  .::|
     |:|    > ...   イ     ::|
     i:{      |   |      乂    「(ダメだ、もう手遅れですねー……)」
           イ     \_

       /  :  :. ̄` ´ ̄ ..: :  \
      __,   ::  :...............:  :
    ./V|  ヽ:          :ヽ   |__
    〈  \ |::          :./|__|_/|
    |\  \__       / ̄ ̄___/|
    |  \   |     ./  /T      |
    \  ハ  |     /  / |   / | /


 9/10


 こうして霞は小説家を目指して家を出た。

 その最中に趣味の同人誌即売会で白望と出会い、親交を深めた。

 そしてデビューするときには爽と出会い、奇妙な縁を持った。

 京太郎と初めて会話するのは一目惚れしてから十年後の話となる。

 その後、玄を妹分にした。


 様々な出来事があったけれども、京太郎と結ばれる未来ではなかったけれども。


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         |::::::|::::|::l:::|-|:::l:::/:::/:::/::::/ l::::|::|:::|l::|
         |::::::|::l:|::|八 !从{:::/:::/::::/--.l::::|::|:::|l::|
         |:::八从斧苧ミxl厶厶イ- 、从::::|:::|l::|
         |::::::::| |l^乂_ツ     斧ミv' 厶イ: 八|
         |:::: 人|l  、、     Vツ }/:::::::::/ ノ
         |::::::::::从      '  、、 /:::::::::/
         |::::::::::::::l\   `ー   ..イ::::::::/      「石戸霞は幸せです!」
.        八::::::::::: l    ┬‐=≦:::|::::::/
        -\:::::::|\   h\|:::::::|:::::′
.      ´ 〈 |∧::::|  \  ノl  l゙` |::::{
   /l   l   |: : }=|    \/  :|   |::::|\
.  / ll   l   |: : l:::|\    〉  :|: : :.\!
 /  l   l Lノ: : :l:::|: : \ ./   |: : : : :.\ |
./   ll   /   /ミ|    /    从    `゙丶
    リ  /     |:::〈   /   /         ,
   /〈 |     八::::l  /   /            ′
      l       }:::l ./    /           |
      | : : : . /::ノ/    /: : . .      . . : :,
  \  人: :./:://: : : : /.: : : : : : : : : : : : : : :./
 \ \{ Χ://\__/: :-‐=‐-: : : :___.. イ |

   \ \{::{`l≧====≦三三三三三l  |:::l:::| 〉


 10/10


 ・余談
  京太郎が咲がくっついた後ののどっち


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!:.i |: :.:| .:.:.i:.!:.:.:.|!.i! :l |:.:!:.:.:.:.:..i:.:.i ゙、! _/ハ:ハ/ |ィ;.:.,.-‐-、!:/.:.:.:.:.V/

i :|.| :.:.:i   i i_:|、!、:.:.! i:!、i:.:.:.:.:.:.i:.:.i _;彡';tr=、 ヾ、"' /ヽ |':.:.:.:.:.:.i:.:|:.:.:.:
. ! i:i!  | ..:i :i:.:.:i`iー>ト-!、丶:.:.:.:.:i:、^V i_;:::::::ヽ /      i: : : : :.:|:.:|:.:.:.:
 、:!:i、:.:.i:.:.:.:.|:.i:、:.7メ'f:::::::ヾー\:.:.:.:、`ヾ  <;;;:ン ′     ノ : : : :.:.:!:.|:.:.:.:   「私の乳房がなぜ二つあるかわかりますか!?
  ヾi 、:.\:.:\:.]〈  っ::::;:i    ̄`            _,∠|:|: : : : .:|:.|―-
    ヽ!:.i、`゙ー-r≧   >≠    ,      " "   /  |:! : : : :.:|:.!////     一つは咲さん、一つは須賀君のものです!」
     |:.|:.:.:.:.:.:.:\!  ,, ,,                /   i!: : : : : ::i:.i////
     |:.|: : : : :.:.:.i i       r== "ヽ      /   i: : : : : :.:i:.|////
     | |: : : : : :.:i:.:|\     ∨__ノ)   /    /: : : : : :.:i.:|////
     |:| : : : : :.:.|:イ |:::|l`ー-..、    ̄ ̄   /     / : : : : : :.:|/////
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        ,. . . -――- . . .、

      ,. :' : : : : : : : : : : : : : : : :>.、
    ./ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
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   /. . . . . . . .    / l: : : : : ト、 : : : : : :.
  ,' : : : : : : : : : : : : /  l . . . . l .',: : : : : : : :.
  ,' : : : : : : :l: :,i : : / U l: : : : :!  ',: : :l: : : : :.
  i: : : : : : : :l /{ : /-一' レl: : ノー-,: : l: : : : : i
  !: : : : ;、: :レ l〃⌒ヾ  l/ 〃 ヾ: :l : : : : : !
  ',: : f⌒\{  {l   l}    {l  l}Ⅵ : 、 : : !   「和ちゃん……?」
  ',: {      乂_ノ     乂ノ .l: : :} \ノ
   ',:乂_          `    .!ヘ:ノ
   ',: : : : 丶、 U   ,--、 u  ノ

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 カン!

 滾るシチュを貰えれば色々書きます。特になければ京咲とか京玄とか京照白とか京淡ネリとか

 >>449 >>451
 スレ内通貨は京咲

重い京玄オナシャス!


 1/7

 小ネタ


 「なんだこのー!」

 「ふん!」


 麻雀部で喧嘩している二人を見て頭を抱える。

 このサークルでの問題児、大星淡とネリー・ヴィルサラーゼだ。

 二人とも麻雀特待生ということで推薦を受けて大学に通っている。

 だが、そんな二人は致命的なほどに仲が悪かった……。


 「おい、須賀。

  早く止めてこいよ」

 「なんで俺が……」

 「あの二人が懐いているのお前くらいだろ」


 そんな二人は高圧的な発言を繰り返し、他の麻雀サークルの部員からは距離を置かれている。

 麻雀の卓上ではまるで魔物のように振る舞い、それ以外でも常に気を張り詰めている。

 二人に好意的に接しようとするのはコミュ力おばけこと須賀京太郎しかいなかった。


 「あっ、キョウタロウ!」

 「キョータロー聞いてよ!

  コイツさっき淡ちゃんの真似した!」

 「真似される程度の麻雀でしょ」

 「なんだとー!」


 喧嘩の内容は千差万別。

 よくもまぁくだらないことで喧嘩できるほどだ、というレベルだ。


 2/7


 「この前はきのことたけのこ、その前はポッキーとトッポだっけ」

 「あっ、思い出した!

  あの時の決着もまだついてないんだからね!」

 「ふん、今着いたじゃん」

 「一回勝負じゃないもん!

  雑魚が混じってたからいけないんだし!

  私直撃受けてない!」

 「コラッ!」


 その発言を聞いて京太郎は怒鳴った。

 先ほどまで卓についていた二人が萎縮している。


 「言っていいことと悪いことがあるだろ」

 「……ゴメンなさい」

 「俺に謝ってどうすんだ。

  あの二人に謝りなさい」

 「……うん」


 先ほどまでの不遜な態度は何処へやら、シュンとして落ち込む淡。

 落ち込んだ後は先ほどまでの態度が嘘のように対局相手に謝りに行った。

 京太郎自身理由はわかっていないが、淡は京太郎が叱ると素直に言うことを聞くのだ。


 「淡、素直なところはいいところなんだけどなぁ」

 「キョウタロウ。私が勝ったよ」

 「凄いじゃん。

  これで戦績は五分だっけ?」

 「私の方が少し勝ってる!」

 「あれ、五分だったような……?」


 3/7


 「なんでもいいから、私が勝ったから、何か頂戴」

 「なんで俺があげるんだよ。

  それに何も持ってないぞ」

 「うーん、なら……」


 先輩に謝罪している淡をチラ見する。

 そこでニヤリと笑ったかと思うと、京太郎に思い切り腰掛けた。


 「何やってんのお前」

 「いいからいいから」

 「?」


 ネリーに乗られても小動物に乗られているような気分でしかない。

 しかしネリーは嬉しそうに座り、淡の方向をずっと見ている。


 「あわっ!?」

 「ふふふ」

 「ああ……」


 何となく京太郎は理解した。

 淡は般若顔……というには可愛らしい顔だが、怒りを表に出した顔で走ってくる。


 「なんでコイツがキョータローに乗ってるの!」

 「『私が、麻雀に、勝ったから』」

 「むきーっ!

  もう一回、もう一回勝負!」

 「ネリーは無駄な手の内を晒さないよ。

  麻雀はお金のためにやってるの」

 「ヒキョーだ、ヒキョーだ!」

 「普通にやって勝っただけじゃん」


 だんだん淡が涙目になってくる。

 京太郎も呆れて、そろそろ助け舟を出そうかな、などと考え始める。


 4/7


 「ネリー、そんなことだと人に嫌われるよ」

 「……っ」


 少しキツい言い方だが、ネリーのことを友達だと思っているからこそ言わなければならない。

 ネリーもまた、淡と同様に友達がいない。

 数少ないコミュ力魔王の京太郎以外とは会話が成立しない。

 しかしなぜか京太郎の言うことは渋々聞くのだ。


 「……別に嫌われたっていいし」

 「よくないだろ。

  俺と淡くらいしか友達いないよね」

 「「こんなの友達じゃない!」」

 「……あー、もー面倒くせー!」


 いい加減面倒くさくなった京太郎が少し大きな声を出すと、二人とも小動物のように怯えた。

 それを見て罪悪感が浮かんだが、もう止まることはできない。


 「はい、仲直り!」

 「「……ゴメンナサイ」」

 「よろしい」


 明らかに不満タラタラだが、形だけでも仲直りだ。

 このいつ壊れてもおかしくない関係は、微妙な均衡で成り立っている。


 5/7


 ……
 …


 「…・…キョータロー、私のこと嫌いになってないかな」


 何かと高圧的な態度を取ってしまう淡に対して、友好的に接してくれたのは京太郎だけだ。

 彼だけには甘えるし、言われたことはしっかりやる。

 そもそも淡自体は誰かを嫌いたいのではなく、接し方がわからないだけなのだ。

 それに加えてネリーの挑発に乗ってしまう発言から距離を置かれてしまう。

 麻雀部に居場所はない。

 今の淡にとって、大学生活を送る上で京太郎の存在はなくてならない。

 それと同時に、ネリーの存在もまた淡にとっては欠かせない。


 「アイツ、次は絶対に負けない!」


 戦績は大体五分、……淡に言わせれば有利だそうだ。


 「今日もアイツ、キョータローにベタベタして……っ!」


 淡の唯一の居場所である京太郎にベタベタすることが気にくわない。

 その行動一つ一つが淡をイラつかせるためにやっていると思うと、ますますイラついてくる。


 「淡ちゃんは負けないのだーっ!」


 そう、なんだかんだ言いつつ『ネリー・ヴィルサラーゼ』の存在は大星淡にとって欠かせない存在だ。


 6/7


 ……
 …


 「……今日はアイツにやりすぎた」


 ネリーは一人反省する。

 いつもは京太郎に成敗される前にうまく撤収することが出来ているのに、今日はやりすぎてしまった。

 ネリーは淡に比べてその辺りの押し引きがうまい。要領がいいとも言うべきか。

 しかし今日は淡をからかいすぎ、京太郎に怒られてしまった。

 ネリーにしては珍しい失態だ。


 「別にキョウタロウに嫌われたっていいのに」


 京太郎にも、淡にも嫌われたっていい。

 ただ自分が強ければいいはずなのに、何かモヤモヤした気持ちが残る。


 「キョウタロウがアイツの胸ばっかり見てるから」


 そんなこと、自分には関係ないのに。

 それが気に食わなくて、京太郎の膝の上に乗ったんだ。

 妙にイライラする。ああ、今日は最悪だ。


 「負けない」


 大星淡には絶対に負けない。

 こちらもまた、ネリー・ヴィルサラーゼにとって『大星淡』の存在は欠かせない存在だった。


 7/7


 お互いに名前を呼び合わない仲。

 京太郎にとっては二人は友達。

 二人にとっては宿敵。

 では、二人にとっての京太郎は何かと聞いてみても答えは返ってこない。


 奇妙な三角関係、台風の目である当人の目から見てみるとーー


 「アイツら、仲良いだろ」


 との回答。


 「だってなんだかんだでずっと二人一緒にいるじゃん」


 ーー余談だがこの麻雀部、魔王と言えば『コミュ力の魔王』須賀京太郎を指している。

 二人の魔物を携える魔王の姿は、あながち間違っていないのかもしれない。


 カン!

つづくかない?

まったり書けるリクは消化していきます


 1/7

 小ネタ


 今日も今日とで麻雀部は平和ではない。

 淡とネリーがいつものように喧嘩をして、部員はいつものことと慣れている。

 あとは京太郎が来てくれれば二人を抑えることが出来るのだが、今日はやけに遅いようだ。


 「うーっす」

 「あっ、キョータロー!」


 京太郎が入ってきた途端に顔をにやけさせて空気を弛緩される淡。

 それに対してネリーは京太郎の方を見すらしない。


 「ちょい待て淡。

  俺、やることあるから」

 「何さー。

  こんなに待たせておいて」

 「いやお前……他の人と遊べよ」

 「むーっ!」


 京太郎はいい意味で淡を受け流すのがうまい。

 頬を膨らませる淡を尻目に抗議の課題を外に出す。


 2/7


 「勉強?」

 「牌譜の整理」

 「なんで今やるの!」

 「他にやることもないし」

 「麻雀打ちなよ!」

 「麻雀打つための勉強なの!」


 これで話はおしまい、と話を切る。

 それと同時に淡は膨れつらで京太郎から離れる。

 恨みがましい目で京太郎を見るが京太郎はどこ吹く風だ。


 「じー」

 「……」

 「じーっ!!」

 「口に出すな口に」


 構ってもらおうと様々な手段を講じるが全く歯が立たない。

 淡はこの手のやりとりで京太郎に勝てたことはない。


 3/7


 「(……そうだっ)」


 淡は名案が浮かんだ! と笑みを浮かべる。

 京太郎はそれに気づいていない。


 「(無理やりにでも抱きついちゃえば構ってくれるよね!)」


 物理的な妨害をすれば京太郎も逃げられまい。

 そろり、そろりと京太郎に気づかれないように近づく。


 ーー今だっ!!


 「キョータロー!」

 「うわっ!?」

 「淡ちゃんタックル!」


 遠慮なく飛び込まれた京太郎は淡を難なく支える。

 普通ならば押し倒されて大怪我になるところだが、京太郎は鍛え方が違った。

 完全に淡を受け止め、子供を持ち上げるように脇の下に手を差し込む。


 「……なんか思ってたのと違うっ!?」

 「何を考えてたんだ何を」

 「こう、タックルしてぎゅーって?

  何で子供を持ち上げるみたいに持たれてるのさ!」

 「危ないだろフツー……」


 テンション高めな淡に対し、あくまで冷静に返す。


 4/7


 「うりゃー!」

 「おいおい」


 無理やり京太郎に抱きつく淡。

 京太郎も観念したのか、淡になされるがままになる。


 「……あわっ」

 「どしたの」

 「にひひー!」

 「……」


 抱きつかれてここまで嬉しそうだと、京太郎も顔を赤らめる。

 しかも大きな胸が腕に当たっている。

 男の夢、役得でしかない。


 ーーしかしまぁ、それを快く思わない人間が一人いた。


 「なにそれ、子供みたい」

 「あわっ!?」

 「ふーん?」

 「べ、別にアンタには関係ないじゃん!」

 「そうだね。関係ないね」

 「むきーっ!」


 そしてまた騒がしい麻雀部の1日が始まる。

 淡とネリーが喧騒を始め、京太郎がそれを呆れながら見る。

 今日も平和だーー。


 5/7


 ……
 …


 そして、後日。

 今日は淡がいない。

 京太郎は先日出来なかった牌譜整理を行っている。


 ネリーは、いる。


 「~♪」

 「……」


 呑気に鼻歌を歌いながら牌譜の整理をしている京太郎。

 じっと京太郎を見つめるネリー。

 京太郎はそれに気づいていない。


 「私は子供じゃないし」


 京太郎に聞こえない程度に呟く。

 すぐに口を紡ぐが、ネリーはどんどん不機嫌になっていく。


 「(あいつ、くっついてた)」


 昨日のことを考えてさらにイラついた。

 自分が何で不機嫌になっているかわからず、さらに不機嫌になる。


 6/7


 「あいつみたいにすれば治るかな」


 そう考えるが、実行に移せない。

 気づけば昨日の淡のように京太郎の周りをウロウロするだけだ。

 決心もつかないし、何で自分がそんなことをしたいのかもわからない。


 「何だ、ネリー?」

 「何でもないよ」

 「?」


 自分の周りをぐるぐるまわられたら落ち着かないんだけどな、なんて返すもネリーには聞こえていない。

 ネリーは少し考え、結論を出した。


 「えい」

 「?」

 「それじゃ、今日は帰る」

 「おう」


 ほんの少し、触れあうようにぶつかった。

 京太郎が少し疑問に思う程度で、昨日の淡とは全く違う。

 しかしネリーは機嫌を直して外に出て行った。


 7/7


 「……ぶつかった」


 決してくっついたわけではない、と心に思い込む。

 先ほどまでの不機嫌さが嘘のように心が晴れやかだ。


 「ぶつかっただけ!」


 もう一度声に出してみるが変わらない。

 なんだか暖かい気持ちが胸を包み込んでいる。


 「えへへ」


 どうやら今日は、良い夢を見れそうだ。


 カン!

クロチャー次元もやるよ

無理だった
リクとクロチャー次元はまた後日

乙です
ユウチャーから男を落とす極意を仕込まれるクロチャーがみたいな


 1/5

 470
 小ネタ


 「キョウ、こっちこい」

 「なんですか爽先輩」

 「お前、なんとも思わねーの?」

 「何が?」

 「何がって……」


 なんやかんやで知り合って、よくわからないけれど恋を抱いた男の子。

 そういうことに全く興味がないように見せかけて、自分なりにアピールしている、つもりだ。

 しかしこの男、鈍感ではないが行かんせん女慣れしすぎている。


 「今のこの状況」

 「サークルで俺と爽先輩が他の麻雀部の人を待ってる」

 「正解」

 「何がおかしいんですか……」

 「別におかしくないし」


 実際には他の人たちにお願いして二人きりの状況を作ってもらったという内情がある。


 2/5


 しかし実際には爽にも原因はある。

 男慣れしていない爽からしたら一生懸命雰囲気を作ったつもりだろう。

 女友達にからかわれるなんて初めての経験で、勇気を振り絞って相談したのだ。

 だが、そんなピュアすぎる心は伝わらない。

 京太郎からすれば早く来ていた爽と部員を待っているだけなのだ。


 「不機嫌っすね」

 「なんでもねーし」

 「どうしろと」


 はぁ、とため息を吐く京太郎を見てますます不機嫌になる。

 理不尽だとわかっていても女心を理解しない京太郎に苛立ちが募る。


 「(こうなりゃいつも通り悪戯してやるか)」


 にひひと悪い笑みを浮かべる。

 そんな風にからかってばかりいるから女性として見られない……、そういうことには気づかない。


 「(誰がいいかなー?)」


 自分の傍にいるカムイを見渡す。

 はい、はいと手を上げて自己主張(しているような雰囲気を醸し出している)カムイ。

 京太郎は何か嫌な予感を覚える。ーーこういうときの爽はロクなことをしない。


 3/5


 「(後ろから触って驚かせてやるか)」


 そう考えていると。爽の考える前にカムイが動く。


 「(パウチ!?)」


 お前はダメだ。

 それはまずい。

 それは困る。

 そう考えていても爽の言うことは聞かないし、爽も止めるように指示は出さない。


 「(これマズイっしょ。

   パウチで発情されたら)」


 その後の展開を想像する。


 ーー急に発情した京太郎が爽を立たせる。

 そのまま壁に押し付けて、無理やりキスをする。

 抵抗しても男の腕力にはかなわなくて、一方的に責められ続ける。

 いやいやと口に出しながらも爽はーー


 4/5


 「そこはだめっ!」

 「!?」

 「まだ早いってー!!」

 「先輩!?」


 駆け出して部室を飛び出る。

 京太郎が静止するが、もう既に遅い。

 まるで風のようにどこかに行ってしまった。


 「……なんだよ、これ」


 一人残された京太郎は虚無感に浸される。

 爽は気づいていないが、京太郎はいきなり勃起するという状態に陥っていた。

 オカルトが見えない京太郎にとって、いきなり自分の息子が肥大化したのだ。

 男としては意思を持たない時に大きくなって困ることはそう少なくない。

 だが、その途端に爽がどこかに走っていかれれば急展開にも程がある。


 「なんだよ、これ……」


 二度目のつぶやき。

 とりあえず、動けない。

 一歩でも動いたら社会的に消えてしまう。

 なんとかポジションを整えようとするもそれも出来ない。


 「絶対になんかやったろ!」


 爽のオカルトに詳しくない京太郎でも察しはつく。


 5/5


 「ゆっくり、ゆっくり……」


 時間をかけて落ち着かせて、服がこすれないように慎重に動く。

 そのままトイレまで行ってしまえばなんとかなる。


 「おかず……」


 やっとの事でトイレまでたどり着いても、目に焼き付いているのは先ほどの光景。

 爽が京太郎から離れる時の、足、太もも、そしてたなびくスカート。



 ーー色々と終わった後に京太郎は後悔した。

 そして後日、爽はいつものように落ち着かないアプローチを続けるが、それを女性的に見てしまう京太郎が発見される。

 それを見て、パウチカムイはグッとガッツポーズをした(様に見えた)。


 カン

公共の場で男にパウチカムイって洒落にならない気がする


 1/7

 773
 【京穏で甘酸っぱいの】


 それは穏乃にとって初めての経験だった。

 麻雀部としてインターハイに出て、決勝戦が終わる。

 和に再会して目標を達成して、一息ついたときの話。


 「こちらが清澄麻雀部です」

 「……男っ!?」

 「憧は男の子が苦手でしたっけ?」

 「う、うん。

  いきなり慌ててごめんなさい」

 「和。俺はいない方がいいんじゃないか?」

 「そんな気にしないで大丈夫ですよ」

 「大丈夫です。しずに……、しず?」


 憧とは違って男に耐性がある(はずの)穏乃を見ると、なぜか扉に体を隠している。

 そうしながらもちょこんと頭を出してこちらの状況を伺っているようだ。

  /: :/: : /: : :/: : : : /: /   ヽ: : : : : : ヽ: : : : : :V: : :V: : : : :ヽ
  /: :/: : /: : :/ : : : /: :/    ヽ:、: : : : : i : : : : : : V: : V: : : : : ヽ
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 : // : /: : :ハハ:\:! {:{     }:レイ: :√}: : : : : i: }: : !: : : : : : : :ハ
. {:ハ: : l: : : ハハ: : i ̄{{     ̄/ ハ:ノ  !:!: : : :ハj : ;′: : : : : : : ハ
 Vハ: :ハ: : ハ〃rV/云       〒冗示ミ j:ハ: : /: : : ': : : : : : : : : : :}
    ∨ V: ハヾ{7///}      {7///} 〉 /:/ヽ: :/: : : : : : : : : : : }
        ハ:ハ 弋//ソ       弋//ソ イ: !  }:/: : : : : : : : : : :}: :}
       {: :ハ ,:,:,:,:,        ,:,:,:,:,  }: :} /: : : : : : : : : : : : ハ: }  「……」ジー
       |: :| !      ′       u }: jイ: : : : : : : : : : : : : :} }:j
       |: :| ヽ     、_,、_,        /}:.j ヽ: : :! : : : : : : : : : ! i:}
      l: :l   >    ヽ ノ      ´ト //  !: : j: : : : : : : : : : Ⅳ
      ヽ:ヽ   r≧....._  <..-‐: ̄//}  }: : ハ: : : : : : : : : :}
       ヽヘ   〉::::::::゙Y ̄::::::::::::::::::::彡::ヽ j: :ノ }: : : : : : : : : :}
      __ゝ.イ:ヾ===ハ====:::"//::::/::::::::<__: : : : : : :j

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.   /    ll:::::::::::::::::::::::::::《::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/     V:/
   ,     ll::::::::::::::::::::ー::《:: ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/      V


 2/7


 「何やってるんですか、穏乃」

 「わひゃぁ!?」

 「……どうしたの?」


 和と憧が心配そうに声をかけるも、穏乃はひっくり返るように驚く。

 京太郎に至っては何が起こっているのかわからない状態だ。


 「ま、また今度来ますー!」

 「ちょっと、しず!?」

 「あっ。はい」


 憧の腕を引っ張って逃げるようにどこかに行く。


 「なぁ、和。

  やっぱり俺邪魔だったんじゃないか」

 「いえ、須賀君も清澄の一員ですから、ちゃんと紹介しないと……」

 「和……」


 地味に京太郎が感動する。

 しかし、そんな和の心中はーー



           ,∠、  /            ヽ
            /   |: :/                  \へ
     / ̄¨ヽイ     |:/ / / /||:! ! | !         .|
     !:   〈〈:     /:{: ': ,': ':::|::|: l::l: l::l  ,ィ: ! l    ,!
     ∨   ノ¨ト==イ: :! l斗十ナナノ.:|: /::l. /十ト、l:     i〉
      ¨フ´/ !: : : :! 、トト、!ィチ^:丁:::}/ :::}'::::::!ノ :: !: l   リ
.     /: 〃 |: : : :|ミソ :::〈 l{::::::::| :::::::::::::::rf示、 ノ ノ/ /
     レイ ト、_|: : : :l ヽ  弋:zソ       !::::}l }イノイヽ
     |.: : :|: : : : .: |     ::::::::      ,  辷リ !:. :. :.:ト、 \
     |.: : :|: : : : .: ト、            :::::: |: : : : | ⌒   「(穏乃のアレはメスの顔ですね。
     / : : :|: : .: .:  lミ、Y       ‐ -    ノ: : :. :.|
.    /, : : : |: : .: .:  l   !  ヽ           イ|: : !:.|      いいネタになりそうです)」
   //   : :|: : : :  :ハ  |   `  . _ x<: : |: :!: : :|:. :!
.  //  . :/!: : : :   ∧. !       |  |: : : :.|: :!: :. :.、|
  //   . ::/∧: : .:   ∧`ヽ.      l ヽl、:: : |: :l : : : : ト
. //  . ::/厶 ヘ.:     ∧  \   `ヽ.  ヽl : l : : : : | ヽ
//   , <   \      \  \    ∨  `|: :. :. :.|   \


 3/7


 「ちょっとしず!

  挨拶もしないで逃げ出すなんて失礼じゃない!」

 「ううっ、そうなんだけどさ。

  なんか調子悪くて」

 「調子悪い?

  風邪でも……ああ、あんたは引かないか」

 「ひどいよ!」

 「んで、どんな感じなの?」

 「それが……あの男の人を見てから、胸がキューっと痛くなって」

 「……ん?」

 「見てると胸が痛くなるのに目を離せないんだ。

  ドキドキして、やっぱりこれ風邪かなぁ」

 「しず、それは」


.             xァ′ /       |                ヽ {__j__
           '   /   ′       / |     |      .         :, `丶 \
      /  / /    i |    i  | |     |     i |  i     :,    \ \
      /  /         | |  ‐-L_ | |     | j |i  | |  |         \ \
   .         |    |:八  人j ト八      i |斗匕|「 | |  |   l: .,        ヽ
      /     |    |  Ⅳj]xぅ妝斥 \    i/≫ぅ妝ミxV|  |   |: .′       ,
.      ′     八  :{  |  |坏´_)「:::ハ   \ ∨  _)「:::ハⅥ  |   |: .        ′
  ;           \乂_|  |八 rヘしi::::}     \   rヘしi::::} オ |  . .|: . i           ;
  |   i        l .⌒|  |   乂__/ソ          乂__/ソ |  |  . .|: . |       i   |
  |   |          | . . .|  |    ,,,      ,      ,,,   |  |  . .|: . |       |   |
  |   |         /:| . . .|  |\i                 |  |  . .|: . |       |   |  「恋の病よ!」
  |   |          | . . .|  |:::八     r'ア ̄`ヽ       /::|  |  . .|: . |       |   |
  |   |       i | . . :|  {::::::个:...   ∨     ノ    イ:::::}  |  . .|: . |       |   |
  |   |       | | . .八  V斗ri:i:i:〕ト       ィ:〔:i:i:iTV  八   .|: . |       |   |
  |   |       | | . . . :\ Vi:i:i:i:i:i:i:|. : j>--<. : .{: |:i:i:i:iV //   廴_|       |   |
  |   |     r七i| . . . . : |\i:i:i:i:i:i:i:|: . : . : . : . : . : . :|:i:i:i:/i:i/    // /i:\       |   |
  |   |     ∧ Ⅵ. . . . . :|:i:i:\i:i:i:i:|─-. : . : . : .-─|:/i:i:i:/    // /:i:i:i:i∧    |   |


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      /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ:\
    /: : : : : : : : ∧: : : : : : : : : : 、 : : :ヽ:ヽ
   / : : : : : : : : : / ヽ: : : }: : : : : : ヽ: : : ヘ: ヽ
  /: :/ : : : : / : /  ヽ: : :}: : : : : : :ヽヽ: : }: : :ヽ

  {: /: : : ト、ハ: /    '; :人: :_レ: : : ',V/: }: : : :ヘ
  {:ハ: : : :i: i`'ト:L__  vi:,レへ:{\: : : }:!: :/: : : : :ヘ

   ハ: : :ハ! V      レ   ` V: /:}:./: : : : : : ハ
    ヽ: ハ 三三      三三三 i:V: :.ハ: : : : : : : : :ヽ  「!?」
     V: } ww       ww   }: : : レi: : : : : : : :ハ:ヘ
       i:{     、_,、_,、_,    u イ: : :/ !: : : : : : : :ハ:i
      V>. 、_ ー―'  z≦  !:. :/  }: j : : : : : :} ヽ
        ヽヽ: ヽ {::::エニ彡:::::ニ:}_/l: :/  |:∧: : : : /:}
          _ゞくトニiiニニ-:´ノ::::レく   レ i: : : :ハi
        /::::::::::::ヽjj:::―::: ̄:::::::::::::::::ヽ   }: : / ノ
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 4/7


 「いい?

  それは女の子として正常な反応なの」

 「そうなの、かな?」

 「そうよ!

  年頃の女の子が恋愛に無頓着だなんてそんなオカルトありえないわ!」

 「えっ、憧と和も?」

 「……きょ、興味はあるし。

  私の話はいいの! それより、しずはあの男の人が気になるわけね」

 「う、うん」

 「キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!」

 「!?」ビクッ

 「安心しなさい」

.           . : : : : : : : : : : : : : : : :`丶、
          /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
        : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\ : : : ヽ
       / : : : : : : / : : : : : : |: : : :│ : : : : :__ノハ
.   /⌒Zコ\: : :| :i : : : : : |: : :i|∧: :| _: : : : : :│
  . : :.;ィ: :|: :i、:丶:| :|:¬ト:/ |: : :i| 匕i : : |.: : :|:│

 ' : : / :| : | : i \: :| :|: :/|厶イ : :八ィ伏 Y|│ : 八|  「私が恋愛のイロハを教えてあげるから!」

/: : :/  | : | : 〈\: :| :|ィi艾⌒|/   Vソ 小i/|/
: : :/  : : :|: : :.V⌒| :|乂::ソ    , 、::、: : | |   (\  _
: :/  /: : :| : : : .  | :| 、::、::          |: | |   }_,レ'´  }
:/  /: : : :|: : : : :.マ| :| 、   r  ¬   从: |  /    ̄ ̄}
:  /: : : : :|i : : : : : | :| ノ丶  、 _ノ  イ : i: |  ,     ̄ ̄}
i: /: : : : : 八: : : : : : :「\   ァ:-<|  |: ; : :| {      ̄}
| /: : : : :.://\: : :.ヽ|\ ー‐「〉: : :.|  |/i: : |//,'\   广¨
| : : : : : 〃  ⌒゙\ : : : : \  レ'⌒Y7   |: ://////\ノ\


    /:/ /: :/: : :イ\:// /    /:/ : : : : : ノ: : : : : : :

    {/ {: : {: : /ハ:ハ:\ {     /:/: : : : :ノ:ノ: : : : : : : :
      l  i: :ハ:/:!/7c=ミヽ   ノ/: : : :ノ:ノ:ノ: : : : : : : :/
      ∨ V:ハ ん///゙    zヒ三/ァ'-<: : : : : : //
          /:/ 辷:ソ     7C≧、ノ /: : /://: :
          /:/ ""        ん///ハ /ィイ彡: /:/:
        _{:ハ     ´      辷z:ソ ノ /:/⌒Yイ: : :    「う、うん……」
      /::/.{:{..\            ""   /:/   ノ/: ;/: :
    イ:::::::i....{{.../r\ ヽニ>     u  ,.、/:/..イ /:/'/: :
  /:::{:::::::i.....i{...{::{ヾ::ヽ.._.........―::::´:::/:/:::::::\:/ /: :

./::::::::::i:::::::{..........{::ヽ::\〃:::::::::::::::::::_z/:/:::::::::::::::∨: : :
:::::::::::::::::V:::::{..........{:::::ヽ:::《:====:":::/;イ::::::::::::::::::::ヽ: : :


 5/7


 自分の気持ちが恋なのかなんてわからない。

 今まで経験したことがない感情だ。

 それはとても緊張して、切なくて、嬉しくて、寂しい。

 でも、嫌なものじゃない。


 「好きなの、かなぁ」


 憧と違って男の人が苦手なんてことはないけど、あの人だけは別だった。

 いつも自分からガンガン行って話をして、振り回す。

 でも、まず思った感情は『恥じらい』だった。


 「やっぱりおかしいよ……」


 いつもと違う自分に振り回される。

 周りのみんなが変わっていくとき、穏乃はいつも取り残される側だった。


 ーーみんなこんな気持ちだったのかな?


 少しだけ、変わってしまっていくみんなが怖かった。

 でもきっとこんな気持ちなら、楽しかったんだろうな。


 6/7


 「女の子らしいって……」


 自分が女の子らしい、というものから外れていることは自覚している。

 それについて恥じらいなんて感じたことはなかった。

 しかし、今の自分の格好を見直して、急に羞恥心が湧いてきた。


 「わーっ!?」


 ーージャージ姿をあの人に見せちゃった!?


 ドタバタと部屋のものを漁り、阿知賀の制服を取り出し、着替える。

 先ほどまで着ていた服が恥ずかしい。

 着替えたのはいいけれど、そんな行動をとった自分がなんだか恥ずかしい。


    //|: : : : | : : // |:∧/  |/           |八∧/ \ |;ハ: : :| : : : |)〉
    |:| |: : : : | : /:   ≫去干气ト         ィ去干气≪   |: :/: : : : |\
    |:| |: : : : |: :|:::; 〃 んJ:::::::爿         トJ:::::::::::爿ヾ |:/: : : : :/ : ∧
    |:| ∨: : :乂{::::〈{  V辷七歹        V辷七歹  }〉/ : : : : /: : : :∧
.   乂 \{\: Ⅵ  とつ'⌒~ /////// `⌒とつ  /|: : //: : : : : :∧
         / `トh   /////////////////  ハl/Ⅳ: : : : : : : :∧
          { |: : :|ハ                     | ! : | }: : : : : : : : :∧
.        八|: : :l }       /~⌒^⌒^ヽ          j | : レ : : : : : : : : : ∧
        |: :从,_|      ´           `        厶イ : |: : : : : : : : : : : ∧  「うーっ!」
        |: :|  人                        人 : : : |: : : : : : : : : : : | }|
        |: :|   >                 <  |: : : :|: : : : : : : : : : : | ||
        |: :|       >          <     |: : : :|: : : : : : : : : : : | ||
        人_|       r=≦}___   T爪  {≧=ミ,   |: : : :|: : : : : : : : : : : | ||
                    |{      ̄`Y^Y´ ̄      }   | : : / : : : : : : : : : : /∥
     __          从  ー---〈 ∥---―=彡〈  ∧/ : : : : : : : : : : / /
   /     ̄¨ニ=- _幺  ー―===У===-一  r公=―=ニ¨ ̄ ̄  \:/


 だが、自分の中で暴れまわる感情に整理がつかない。

 この感情をしっかり考えることができるのは、もう少し時間がかかりそうだ。


 7/7


 ・余談

                         , : : ´: : : : : : : : : : : : : : : `丶、
                        /.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
                  / : / : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : : : : : : : ‘,
                 _,: : : :./: : : : : : : : : : : : : : : : ∨: : : : : : : : :‘,
                   /:/.: :.:./:/: : : :.:/: : : : : : : : : : ', ∨: : : : : : __ _:l
               /.:_/: : : :′ : : : : ′: : : |: : |: : : : :', ∨: : : : /ートミ 、
                 / /.′: : i: :|:.l: : |:.:| :|: : : :|: :!: : : : :', :l/: :.:|: : |: :|\\
.               |: ||: : : |: :Ll_: :|:.:| :|: : : :|', : ',: : : : : |: l: : /|: : l : |  \\
              |: | :|: : : :l|: :|:l|: `ト:| :|: : : :| ',.:斗-‐¬|: |/ :|: :| : |   ',: ヽ
                |: |.八: : ::l|: :|:|x=ミ. |八: :.:| \l\: : :|: lV/:|: : :|: :.|    i: : ',
            |: |   \:.l|: :|,《 _)_ハ  \ |     \|: | レ^| : : l: : |    |: : :|
              |: |:    ト|: :|:', 乂zリ    ` ≠===‐ |: | ´ l: : : |: : |    |: : :|
                |: |     |:|: :|: i                 |: |  |: : :.:|: :|    |: : :|  「穏乃を女の子にする計画よ!」
            |: |:    ,' |: :|叭    ′          |: |r‐':|: : : :l: : :|    |: : :|
              |: |     ,: 八 |: 込、    、__      |: l: : :| : : : | : !    |: : :|
.             | :|   ,':/ : : |: | : : >       . イ ||:/: :|: : :.:|: : !   :|: : :|
           /:|  // : : : l: |: : : : : : /=n<  __/〃ヽ /: : : : ハ: :.!  | : |
.          /:.:.:|  //: : : : : : |-――/  ,\_rく  /'   /: : : : /=ミ: !  :|: : :|
.            |: : :|  //: : : : : : :/   / /|   }∧     / : : : :/    `ヽ、 :|: : :|


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!:.i |: :.:| .:.:.i:.!:.:.:.|!.i! :l |:.:!:.:.:.:.:..i:.:.i ゙、! _/ハ:ハ/ |ィ;.:.,.-‐-、!:/.:.:.:.:.V/

i :|.| :.:.:i   i i_:|、!、:.:.! i:!、i:.:.:.:.:.:.i:.:.i _;彡';tr=、 ヾ、"' /ヽ |':.:.:.:.:.:.i:.:|:.:.:.:
. ! i:i!  | ..:i :i:.:.:i`iー>ト-!、丶:.:.:.:.:i:、^V i_;:::::::ヽ /      i: : : : :.:|:.:|:.:.:.:
 、:!:i、:.:.i:.:.:.:.|:.i:、:.7メ'f:::::::ヾー\:.:.:.:、`ヾ  <;;;:ン ′     ノ : : : :.:.:!:.|:.:.:.:
  ヾi 、:.\:.:\:.]〈  っ::::;:i    ̄`            _,∠|:|: : : : .:|:.|―-
    ヽ!:.i、`゙ー-r≧   >≠    ,      " "   /  |:! : : : :.:|:.!////   「任せてください!」
     |:.|:.:.:.:.:.:.:\!  ,, ,,                /   i!: : : : : ::i:.i////
     |:.|: : : : :.:.:.i i       r== "ヽ      /   i: : : : : :.:i:.|////
     | |: : : : : :.:i:.:|\     ∨__ノ)   /    /: : : : : :.:i.:|////
     |:| : : : : :.:.|:イ |:::|l`ー-..、    ̄ ̄   /     / : : : : : :.:|/////
      |.|: : : : : :.:|:∧ i:.:!i::::::::::::::`i ー-‐ '    ,..-‐:/: : : : : : :.:.i!/////


: : : : :/ : : : : : :| : : : :|.. : :. ゙、: . ゙、゙、. \
: : : : : |. : : : : :i |: : : :i:|. : : : ∧: :、.i. .i: : . ` 、
.: : : : : !: : : : : | |、: : :| | : : i | !: :|:| : |:、: : : : : : >
: : : : : :| : : |: i 「! ヽート!、: : リ  !: |ハ: ト : | ̄ ̄
.: : :,..-、|: : :i: :|: !゙、 _、!二゙、-| イ: リ ! |ヽ:|
: : / へ.゙、 :丶ヾヽ<´{::::i` ヽ! 1!|:/| :!ノ゙、リ

: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i
.: : 丶    \゙、        `> リ  `
ヽ: : :`┬ 、  ヾ          /      「(なんかスッゲー嫌な予感……)」
  i: ;ィノ    U     ,....-ィ /
,,:‐レリ    _       ̄ /
゛=!_    \ `ー-、_  _/
::::::゛== 、 \   / ̄ヽ、
::::::::::::::::::::::゛===-、    >

 カン!

京穏次元。シリーズになるかもしれない


 1/6

 478
 小ネタ グラビティクロチャー


 松実玄の朝は早い。

 何しろ自分の家から京太郎の家まで行かなければならない。

 まだ空も霞んでいて気温も寒い中、嬉しそうに準備する。


            /   . . . . . . . : : : : : : : : . . .   \
             ,  . . . . : : .:. .:..:.:.:.:.:.:. .:. .:.:.:.:.:..ヽ:. . :. ヽ
          /  . . . : .:.:.:.:.:.:.:′.:.:.:.:. i{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:..‘. ∧
            / :/ :/:/ ..:.:.:.:.:.:.:.| :.:.:.:.:.:. | :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨. ‘.. .
         / .イ ′:.:.:.:.:.:{:.:.:.:,| ...:.:.:.: {∧:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:. :. i
        ././ ′:!.:.|.......:小:.:.ハ__ .:.:.:.:iハ 斗:十:.ト:. .|:.:... i:. :
        i:.′} . :|. :! :.:.:斗{:.:「 丁i .:.:.:.ト:.V ヘ:.{\:.:.`!:.:.:. |: :|
        |′.′::l .:|.ト:. .::| ヽ 气{\:.:{ \  ヽ. \} :. : |: :{
            i . .:.|:八.:.|ヽ{  _    \   ,z≦ミ、| :.: :.!:. |!
            | : /|.::.:.:.::! ,ァ= =ミ     ´   `'^| :. : |:.小  「ー♪」
            |.:/ :! .:.:.:.ハ ′             /i/, | :. : |:.|i
            |:′:} .:.: :| ∨ /i     '       .:. :. :.!:. l: {
         ○: :′.:.:.ト. .           ,      八:.:..:}:. l:.‘
         /:.{: :| .:.:.:. {:: 込      `   ´   /}::.:.:./::. :!:. ‘
          /:;:.|:.::| .:.:.:. |:::::::个:.....       .イ::∨:.:.:/:/.:.′:∧
       i:/{:.! .:| .:.:.:. |:::::::/:::::::::ノ}≧ - ´ {入:/.:.:./i/:.:.′:. . ‘.

       |{∧{..:.i:.:{:.:.:‘:.:.::::::::/ 乂    / /:.:.:/V:.:.:.{:.:.:. . . ‘.
         .′..:.八:!ム:.七¨⌒}     >t_ん /:./「/:.:.: 厂 ̄ ≧ 、
         / . rヘ´ ヽ \  |   ∧   ∧'ィ斗v′:.:/       ヽ
.        / . :′       八_{ ̄≧ V__/イ´  {'リ:.:.:.:′      / }
       / . . {⌒ヽ       八  z__{ }___,  {.':.:.:./      /   |
      .′. .:|    \      《    ハ下  . /.:.:.:.′   ,    小
      / . . .:.{     ヽ   }  ∧__/ }ハ ≧7.:.:.:./     /     {:∧
.     / . ./..:.:}      . | く    /  }  ;:.:.:.:.:′ .′/     {:. .‘.
    / . ./..:.:.:.i      ∨ }    `≧-ヘ ∧ノ}:.:.:.:.{ . { .′     }:. . ‘.
  / . :/′:.:.:.}  ‘.     V|         ∨   |:ノ}:.:}  j /    /  {:.:. . ‘.


 そんな彼女は輝かしい笑顔を浮かべる。

 これから『好きな人』の家に向かうと考えるだけではにかんでしまう。

 少しだけ気合を入れた服を着て、ちょっとだけおめかしする。

 そんな彼女を見ればどこからどう見ても恋する乙女だ。


 2/6


 「おはようございまーす……」


 ガチャり、と渡された合鍵で京太郎の家に入る。

 声は最小限で、京太郎を起こさないように注意。

 手馴れた様子で荷物を置くと、京太郎の部屋に向かう。


 「えへへー」


 一人暮らしの京太郎に会うにはもう一つ扉を開けるだけだ。

 静かに扉を開けると、そこにはだらしなく口を開けて寝ている京太郎がいた。

          /      . . : : : : : : : : . . . .      \
         /    .: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .      ヽ

.        /    .:.:.:.:.:.:.: .:./.:.:.:.:.: .:.:.:.:.:.:.: .:.:.:.:.:.:.: .:.:.:.   ∧
.         /  /   .:.:.:.:.:.::.:.| .:.:.:.:.:.:.: .:.:.:.:.:.:.: .:.:.:.:.:.:.: .:.:.:.:.   .
       / ./  // .:.:.:|.:.::斗| .:.:.:.:.:.:.:.:i .:.!:.:.:.:.:.: .:.‘. .:.:.:.:.: .:.:.  .!
.        / | .:.!.!.:. .:.:.|:.::./|:.| .:.:.:.:.:.:.:..! .:!:.:.:.:.:.: .:.:‘. .:.:.:.:.:..; :.. .:

       ;. / .:.|.:.:!.! .:.:.:/!:./ |:.! .:.:.:.:.:.!:|l:.:ト:..!:!:!:.:.:.:.:‘. .:.:.:.:.:.; :.:. |
       |/! .:.:|.:.!!|:.:.:./ |/  !ハ .:.:.:.:..!:||:.:!|:.|:.!| .:.:.:.:‘. .:.:.:.:.:.; :.  |
       |i ! .:.:|.:.从:./x==ミリ ∨:.:.:||:.|:.:!|:.|:.!| .:.:.:.:‘. .:.:.:.:.:; :.:  |
       {;.| .:.:.!:.:.: |}|《 {h//}   ∨:.:|V x==ミ .:.:‘. .:.:.:.:.:; :.   |
        | .:.:.!:.:..:.:!.  Vrツ    \|  {h//} 》 l. .:.:.:.:..; :.::.  ;
        | .:.:,|:.:.::.:.:, :.:.:.:          Vrツ  /. .:.:.:.:.;. :..:  :
        `O:.|:.:.::.:...     '      :.:.:.:   /. .:.:.:.:.:;. :.: ; !
         |:.|:.!:.:.:.:八              ./. .:.:.:.:.:;. :.:. ; |    「ジー……」
      イ  !:.!:V:.:.:.:个 、            人. .:.:.:.;. :.:  ; |
    / l   /ト:.!:.V::.:.:.:.|  ト、 `  ̄    イ./. .:.:.:.:.;. :.: :.:. ;  !
.    ; ∧ l |:.リ:.:.:リ.:.:.:.:.! ∧ 、_ イ ´ ./. .:.:.:.:.;. :.: :.:. / ト、
.    ;  ∧! |:.:.:.:.:.:..fi___.!   ヽ ィ ´   ./. .:.:.:.:.;. :.::..: /   ヽ
.    ;    |jr-―二___ヽ / ` ´¨l   __/. .:/ノ. .:.:.:.:.:/     ∧
    ;    ',.!   ___.ヽ |≧--≦l_∠_ ヽ//. .:.:.:.:.:/  ,  '   |
   ;    !  ___ ヽ」'ノl__ノ l_______   ` 、:.:.:.//      .;
   ;    |   __ .ヽ」  / !\!,----     l:.:/ /     ∨
.   ,   7|   (__ノ!___/ .!  !、        !:ノ/      /
    ,  ! l::!      /:7`!  .! 〉-l      /ヽ       ./
.    ,  V≧ 、___/イ  !  ノ/ l::::::!     .j::/ |      ハ
    ,  V         !_/ V \.:!    l:イ .!       l
.    ,  /ト、____ イ!   !    ` ‐‐‐´  !、      /
     ,  !        V   l ヽ       / l      /


 そんな彼を少し見つめて満足すると、自分の本来の目的を思い出す。

 布団を蹴り飛ばしてしまっているのでその布団を掛け直した。


 3/6


 「(物音を立てないように……)」


 最新の注意を払いながら京太郎の部屋の掃除を始める。

 掃除と言っても散らかった物を元の場所に戻す程度の作業だ。

 それ以上は音が大きくなってしまうから控えることにしている。


 「(この漫画はここで、この服はここ)」


 大学生の一人暮らしともなるとどうしても部屋が汚くなってしまう。

 気軽に読み出した漫画は出しっぱなし、洗濯物は溜まってしまうし、埃も床に落ちたまま。

 玄は嫌な顔一つせずにそれらの片付けを始める。

 京太郎の服をまとめて洗濯するときは少し顔を赤らめながらも、テキパキと主婦のようにこなす。

 そして漫画を片付ける時にーー


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  .i::|. .|:::::::::::i:::::::::::::::i. ヽ /∨⌒レヽ、. i::i   ヾ:::::|  r弋r::::.....レヽ、i::ノ. i.:.::::::::::::::::::::::::::::::|
  |:|  i:::::::::::|:::::::::::::::| /  f毛::::ミゝ i  i::i     ヾ|  i ん:::::::::::ヽ  レ、. |.:.::::::::::::::::::::::::::::::|
   |  i::::::::::i:::::::::::::::| く  i:::::::::::::::::::ii   `       i i..:::::::::::::::::ii  ,ゝ i.:.:.:i:::::::::::::::::::::::::::|
     i::::::::ii::::::::::::::::| 丶とつ::::::::o:::リ    .....     とつ:::::::o::リ ノ .|.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::|

      |::::::|:|:::::::::::::::|i   ヾ;_.._._彡  ...::.:.::::::::::::::...    弋;.;_;_彡     .i:.:.:.:.::i:::::::::::::::::::::::::|   「!!」
      i::::|:|:::::::::::::::i.i     ....,,,,,;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.::.......      i|.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::|
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 昨日の京太郎の『おかず』を見つけてしまった。

 それを手にとってすぐにいつもの場所に片付けるも、やはり少し気になるようでもう一度取り出す。


 4/7


            '' _.――  ....
        / ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: `:..、..
     . '       .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
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   /::.:′. .: }::斗/L/!::.:.:. /::、i:.:.:.}......  ',
  /::.:′. .: }:  ヽ ,斗‐|-  .::| `ト-  | |.!
. /::. |:...:.:/|:.  ..:l\ ! ヽヽ .::l /! ..l | | l

. {: /.! :|.:.:..::|:.. ...:|.〒弐オ`\.l/〒テ...|./|.:i

...rぅ' ,|::.|::.:.|:;{.  ,.::| ト'::ィ;リ      トィリ .|:ノl:ノ
./:{ V:|::.|::.:.|´ii ..:::| `ー'     .゙-' |/
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.{i:{:: :ハ::.: 込{.::l :'.,l.      _ _  _,ノ./|.
.乂:/:.:∧::.:.V.i::ヽ_.::!ヾ=<>‐、‐ T´|..小{

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 その本を開く。

 恥ずかしいのか、少し見ては閉じて、少し見ては閉じての繰り返しだ。

 あまり時間をかけていられないのもあって、主要なシチュエーションだけ頭に入れる。


 「(きょ、京太郎君ってこういうのが好きなんだよね)」


 胸が大きくて、家庭的で優しい女の子。

 そんな子とのいちゃいちゃなシチュエーション。ーー前に見た本と同じだ。


 「(ううっ)」


 自分と京太郎がそんな関係だったらーー

 そう考えて頭が沸騰しそうになってやめる。

 そう、自分はこうしていられるだけで幸せなんだ。

 きっと彼にはもっといい人が現れる。


 5/7


 すぐに頭を切り替えて、今度は朝食の準備。

 お米を炊いて、お味噌汁を作って、卵焼きとウインターを用意する。

 その間にも京太郎の昼食用のお弁当を作っておく。

 慣れた手つきでそれだけすると、メモ帳に何かを書き込んでテーブルの上に置いておく。


 「あとはレンジでチンすれば平気だよね」


 洗濯物も干し終わり、簡単な部屋の掃除も終わり、作った物をテーブルに並べる。

 ーーその瞬間、隣の部屋で京太郎が起きる気配がした。


 「うん、時間は完璧!」


 やはり冷蔵庫に入れておいたものよりも温かいものを食べて欲しいものだ。

 今起きたならちょうどいい温度になっているはずだろう。

 テーブルの上に一式並べて準備完了。

 そして玄はーー

                    ____
               ,, :´ : : : : : `: ..
               ≦: : : : : : : : : : :\
          .  .ク:.:::.: : : : : : : : : : : :.ヽ
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          ′::::i::.. 从 :乂:.ヾ:::::ハ.i|≧ミ∧..`:|: : : :|: :
       |:: '::: i:. :..ノ灼茫  ヾ:i ^灼茫ミ...}::.:.|: : : :|: :.゚
       |::|l:::::i:.:.:.圦 vツ       vツノ |::...|: : : :|: : i
       |::|l::::ハ.:.:.} 、、、  ′   、、、 ,i::: : : : :|: : |  「お邪魔しましたー」
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       |::|l:{.i:::::.: 込.     ..ノ    .イ. }: :..:.: :...|: : |
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        /::j |:::::_≧=ー : 〕  .....{  j:.:/: : :.イ: : :.l: : |
       .{:::/ |::::.:.:广.../レ  〃ヽ  /: : :/:.:|: : :。.: : !
       .|::{ .从:..:|....┴ヘ. イー|. :/: : :/^`ア⌒ヽ:,
       .Ⅵ /::::ヾ/../ >..={_}=ー 〉...: : :/::/


 ーー京太郎に気付かれる前に、帰って行った。


 6/7

 ……
 …


: : : : :/ : : : : : :| : : : :|.. : :. ゙、: . ゙、゙、. \
: : : : : |. : : : : :i |: : : :i:|. : : : ∧: :、.i. .i: : . ` 、
.: : : : : !: : : : : | |、: : :| | : : i | !: :|:| : |:、: : : : : : >
: : : : : :| : : |: i 「! ヽート!、: : リ  !: |ハ: ト : | ̄ ̄
.: : :,..-、|: : :i: :|: !゙、 _、!二゙、-| イ: リ ! |ヽ:|
: : / へ.゙、 :丶ヾヽ<´{::::i` ヽ! 1!|:/| :!ノ゙、リ

: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i
.: : 丶    \゙、        `> リ  `
ヽ: : :`┬ 、  ヾ          /
  i: ;ィノ    U     ,....-ィ /    「……」
,,:‐レリ    _       ̄ /
゛=!_    \ `ー-、_  _/
::::::゛== 、 \   / ̄ヽ、
::::::::::::::::::::::゛===-、    >


 綺麗になった部屋と、完璧に作られている朝食と弁当を見て呆然とする。

 いつものことながら『何がどうしてこうなった』という話だ。

 犯人の目星はついている。うん、間違い無い。

 そうは思っていても目的がわからなすぎて逆に問い詰められない。

 ここで自分に気があると思えるならば楽なのだが、それならば何で帰ってしまうのかわからない。

 恩着せがましくアピールすることも無く、むしろ注意深く考えないと玄だと言うことに気づかなかったくらいだ。


 ーー本人アピールすらしない、それでは異性へのアピールにならないじゃないか。

 そこの一点を考えるだけでいくら京太郎でも玄に聞くことが出来ないのだ。


 「こう、せめて一緒にご飯食べたいなー……」


 年上の面倒見の良いお姉さんと一緒にご飯を食べるのは憧れだ。


 ーーだが悲しいかな。『私がいたらお邪魔だよね』と考える玄には伝わらないのだった。


 7/7

 ……
 …

 ・電話で

              , r ───-- 、
           r '´ : : : : : : : : : `ヽ、

         ./ : : : : : : : : : : : : : :\
        / : : : : : : : : : : : : ヽ : : : : : ヽ
       ./ : / : : / : : : : : :|: : : : : : :ハ: : :ヽ : ヽ :ヽ
      / : / : : : /: : : : :l: ::j: :|: : : : : | }: : : :ヽ: ::ヽ : ヽ

      / : :{ : : : ::{: : : : :ノ:ノ}:::ル: : : : リ、}::ハ: : ヾ,: ::}: : ハ
     .{ : : | : : : 」; 斗七´/.}:/.}: : : :リノ }`ト;、: :}:}:: l ; ;} }

     ! { : :! : : : :!: : :ノ':/`/' .j: : : ://  .リ |: 外|: :l: : ト|
     .|::l : ::| : : : |:/,r=≠ミ /: : ノ ' ,r=≠ミ/ |リ:: :| :ハ}
     .|::|: : :| : : : | 《{////゚} ´    .{//゚/}.ヾ|: : : :|/' '
     .|::| : ::|: : : ::| ヾゝ//ソ       リ゚/ソ∥!: : ::Y|
     .|::|: : :l: : : : |  , , ,      ,   , , ,  .j:::: : :|:|
     !:l : : :{: : : :{                l: : : :|::!
     }::l : : :l: : : ::{               .j : : :リ: |   「玄ちゃん。ちゃんと自分の香水の匂いがわかるようにした?」
     .}::i : : :l: : : ::ト、.     ⊂⊃    .ノ: : : ::j: :|

      l: 〉: : :〉: : : :V>、         rl'´リ: : : :/: リ
     .} :∧: : :W、: :ゝ、_.|_` ー __, ィr<、: |:/': : ::/ : /

     ノ : : :ヽ: : :ヽ:\ヽ   ̄ ` ヽ、{ _, r'  フ: ::/:: /
   / : : :r‐'ヽ: : : : ∧           /:/: : :∧、
 ,/': : : ::/  .∧: l: : ::ヽー-        ./: : : : :∧: : \
//: : : , r'ー-  ∧l: : : :ヽ   ー--  j: : : : ::/ ) 、::ヽ::ヽ

/./::/     `> 〉: : : : }         l: : : : /r'´  `ヽヽ:)
! {:/ヘ        ノ:,: : : : :ト--  ___, -{: : : : {     ハ V
 V ∧      ノ' .|: : : : :}   `ー-'´ ヽ、: : l:ゝ   /.}


              /:..:..:..:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ |:.:.:.ハ:.:.:.:j:.:.:.:.} ゚。:|\ :.:.:.:.:.|:..:。:..:..:..:.\
                /:..:..:..:/:.:.:.:.:.:.:.:/|__;.ム斗:./  |:.:.:.し:.:.;\_}:.:|__ ゚。.:.:.:.|:.:..゚。:..:..:\:.゚。
            /:..:..:..:/ :.i:.:.:.:i:.:/│:./  |:.′ |:.:.:.:.:.:./  Ⅵ   :。:.:.:|:.:.:..:。:..:..:..:}ⅵ
              /.......:.:.,:.:.:.:|:.:.:.:レ彡|:./三ミ:{、  | :.:.:.:./ 彡=リ三ミト、 :.:.|:.:.:.:.:゚:..:..:..:| リ
           /:..:..:.:.: ′:.:.|:.:./〃 リ   リヾ:、 :.:.:.:./.〃      ヾ:、リ .:.:.:.:i:..:..:..|
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          /:..:..:./ :|.:.:.:.:.:リ il{        }li l/ il{        }li | :.:.:.:.|:.:.:..:.∧
           /:..:./..:.:.:.|.:.:.:.:.:.|  ミト、     ィj/     ミト、     ィj/ | :.:.:.:.|:.:.:.:..:.∧
         j:./ .:..:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:|   ゞ=====彡       ゞ=====彡  │ :.:.:.|:.:.:.:.:..: ∧   「そんなことしないよぉ!?」
         イO/:.:..:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:|////////////////{ :.:.:.:.|:.:.:.:.:.:..:..∧
      /:..// .:..:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:|、         r――――― 、    ι  ノ :.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.. ∧
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 カン!

>>478>>507のミックス的な感じ


 1/6

 565
 【原村和(28)さんの場合】
 京和次元の京太郎とのどっち後日談


 原村和の朝は早い。

 何しろ自分の家から京太郎の家まで行かなければならない。

 婚約者のための朝食と昼食の準備が必要だ。


                  _ - ─-ュ..
                   ̄  ̄"`、ヽ、
               ___    ヽ `、                       __

             _, '": : : : : : : ``  、  ヾ'、 _____..--─'''` 、          _, - '": : : : : :``: : 、
             // ̄``ヽ: : : : :_, `--─'''''      __ヽ,,_ ~~'ゝ、     _, ': : : : : : : : : : : : : : : `ヽ_
         __, -――一‐-ァl‐'"´ ̄`゙゙゙''─-.._  ___yr一゙゙゙ヘ、_ ニ___ュヘ_  ., '゙´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ``ヽ
   _, -'乃フ       >'´  _,r゙ニニ=-、   `゙.ァ''"⌒゙`ー--..、_ヽヽj///, ''´: :: : : : : : : : : {:/: /: //: : : : : : : : : ',
  <´  | /    .j'フ'´    '´ -=ニ二勹ヽy-┘: : : : : : : : : :  ̄`¨゙'゙´ : : : : : : : : : : : : ,ィソへ 〃/イ: : : : : : : : :ト、     _ ャ.、
   ヽ、 '、     ヘl            ..l厂゙゙゙`ー'゙`h : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヾ``ヲュ,へ〃.}: :} ./: : : : :j: : ',   ..√r‐゙ !ャ'`ヽ
    ヽ       卜           ¦   , -'" ̄`` .ュ、: : : : : : : : : : : : : : : : : ノ : }ヾ゚τト.}.ノ`ノノ / / : : : : : : ',  ./  ヾ`゙ ゙゙Zニ}
     ヽ、       `            _,,..‐'_, -'"´ ̄´`''ー..、: : : : : : : : : : _ィ'´: : :,'::::``'゙.〃 //: :/ /: : : : : : : :,'  .〉     _..┘
       `ヽ、             _., ‐' ン'''"⌒ ー-、>   ..=== 、: : : _..rー''.7: : : : :/:::::    〃///: : : : : :/   /   .y‐'´
         `` ,.、_        , '7  /        ´`  , '"/ヾ¨´   /: : ,. '´         '"イ//: /:/: /  /    /
          _,': : : `  、___..,.'゙ |  亅           ,'/   ! ___,': .,'゙   ヾゝ. ´::ヽ、 才/_,/:/: :トヽ  /    /
       __. --─==''''''゙゙゙゙: : : : : l   |   .|           _〃  ,rニ二ニ___: :ノv=‐-_    :::_}i-=‐ヾ__/ : : iリ   /    /
    _,_-'": : : __, --ァ'゙ ̄ ̄ ̄: : '''、 l  |          /      ``.ヽ ̄    ` `ヾ: : : : : : : : : : : :<レ゙  厂"ヽ、_./
  , '" : : : 广フ : /: : : : : : : : : : : ヘ、│  |   ___     /       ___ヽ    _   ">へ、: : : : : : : `:‐v'"     ゙ヽ___
  l厂フ: : / ,'゙: /: : : : : : ; -‐'´: : : : `┤ ..|'': ̄´      ,′  _.. ‐''~~`    `゙'ヾ二_.., - '´  __/"=-v'`i'゙iヘヾニ二ゝ、   .〉--: : : :
   ゙厂ゞ / : : : : : : : /: : : : : : : : : : /l   |:.:.:.:.   __..........ト一."´  __, - ‐'''⌒`ヽ_____..-‐゙゙      `{ j .|     卜   {: : : : : : :
      ./ : : /: ;.ァ'゙: : : : : : : : : : 厂,へ_r一'' ̄ ̄  .  ____.., 一'         l             .゙j |        t'、: : ヽヽ: :
      {: }¨7: 厂ノ: : : : : √ ̄`ヾ`¨`'ヾ=-、__..=‐"~~ ̄ ̄ _ _,,           ,.゙               --──<二ノ  ̄ヽヽヽ-
      ∥ .レ゙ /: : : : :./     )'‐'ー、_  ̄' -__    ̄,rァ _ノ'´       , ゙____                          | .レ゙
         /: : :_ィ'二 -‐_'"./'゙゙’ _丿ヽ`゙゙''ー-.._ ``ヽ_ ,r'l宀--、____._ィ゙: :: : : : : : ヽ                      /

       _____rナ' ̄ __‐'゙´</    j゙ ¨ヾニ_   "゙'=-_  .し┘: : : : : : : : : : : : : : |: : : : : : ヽ、                    ヽ
    _√   `゙<二  ̄  j    丿       ゙゙''ー-.._,厂; :/: : : : : : : : : : : : : : :|: : : : : : : : ヽ、                    }
   ∠_ -一‐-.._  "^'''''''7    /      、``<  〉: :゙: ゙: : : /: : : : i: : : : : : : : |: : : : : : : 、: : i: ヽ、__________,,..---一 '"´
   j ./     `.ー--..../   _,'        ヘ   .`〈: : : : : : /: : : : : i: i: : : : : : : |: : : : : : : :ト、: i: : : : ヘ: : : ヽ: : : : ヾ
  _/           |    {        ヘ   亅: : : ; イ,ィ: : : : {: i : : : : : |: |: : : : : : : :| .ヽ:i: : : : ヘ: : : ヽ: : : : ヘ


 「……zzz」


 起きられるとは言っていない。


 2/6

 ……
 …


 「おはようございますっ!」


 元気よく声を張り上げて京太郎の家に入る。

 京太郎はすでにキッチンにいた。

 手馴れた様子で荷物を置くと、京太郎に話しかける。



 「ああ、おはよう和。

  テーブルの上に朝食用意してあるから。

  お昼ご飯は冷蔵庫雨の中にラップしてあるからレンジでチンしてくれよ。

  前に置いてった和の洗濯物は洗濯してしまってあるよ」

 「本当ですか!?

  須賀君の料理美味しいから好きですよ!」

 「いやー、さすがに和の料理には勝てないって。

  男の料理を食い慣れてないだけでしょ。

  んじゃ、行ってきます」

 「行ってらっしゃい!」


ヽ./ : : : : : : : : : : ,: : : : : : : : : : : : : : : ヽ    ヽ冫
:: |: : : : ::/::/: : : /」: : : /}: : : :}゙`「丁ヽハ:!:!: !:  }
-ィ: : : |_,'_,,|-‐''/ / / .}: : /.|: :|: |:::/. }:|:|:. リ !.|. ト.、   ,. ──‐、

: :ト、::ィ゙ |: ::|\/ //.  /: :/ !: :!/!/  !从:/|:.| !∧冫 //´ ̄ ̄ヽ',
: :|人小|ヽ:!.ィ爪沁ヽ. /./ /,.イ爪心ヽ.! イ/.//′   U     } }
: :l: : ヾ |/{:::::::::⊂. ′   ´ ! :::::ィ./ ト,ムノ:!            , ,' '
:γ⌒ⅵヽ弋二;;ノ       ゝ-.″ | }: : : :|         //
',:{ :::`    ::::::::::::::     、  ::::::::::  レ′ : :!.        { !
..',\     ::::::::::              ノ:   ::::!           U
: : :| `ー´\       ,. ,      / !:! !  !
: : :|.     ` 、          ./|: :. !:! !  ::!        ◯
: : :|         }`   .. __ , イ  |::|: |:|: :|  |
: :: }     ィ‐┤.        ├ .、|::|: |:|: :|  {


 何か忘れている様な気がする。


 3/6

 ……
 …

 キョロキョロと周りを見回してから京太郎のベッドに入り込む。


 「フォ━━━(゚∀゚).━━━ウ!!!」


 京太郎の匂いに包まれて幸せになる。


 「ハァッ! ハァッ!」


 動悸が荒く、ベッドに鼻を押し付ける様に匂いを嗅ぐ。

 異性の匂いとは魅力的なものだから仕方ない。うん。


 「あっ、化粧がついちゃいますね……」


 恋人に会うためにおめかしをしたのだ。

 そのためのセットが崩れてしまうし、ベッドについてしまっては取るのも大変だ。


           ,、  ─ -  _
    ┌::-/      ┌:Y´::7
    {::./     /   ヽ V:::}:::::}
    ,Y  1 l lj ! !V } Y'::`く

    く::! ィ, N升卅从卅代ノ;イト'
      `ヽN 〔厂 '  〔厂 l  | l
        i| '、       ノ  1 ト、
        /jj `ー  ニ ‐,´ l  | ヽヽ
     〃/  レ:´:.{  }:.:.:Y l| l V   「あっ……」
     V {  ト:;\i /::/ ∧ l {

      ハ l !\><:∧/  }  〉
      V 1Y    〉く   } | ./′
       Y{   /:::::i    j |'′
        | ヽ {::::::::l  〈  |
         |  {  {::::::::l  {  |


 今日は化粧をした(つもりだった)


 4/6

 ……
 …


 割り切って思いっきりベッドを堪能した後、和は部屋の掃除を開始する。

 と言っても『寝るためだけの場所』と京太郎が言っていた様に無駄なものがほとんどない。


 「それならエロ本捜索を開始ですね!」


 ベッドの下や本棚の裏などの捜索を開始する。

 婚約者の性的指向を知るのは悪いことではない、と判断する。


 「見つかりませんね。

  やはり今時はPCなんでしょうか」


 PCならなんとなく隠し場所を探すのは出来そうだが、さすがに人のPCを開けて探すのは気がひける。

 それというのも和自体がネット依存症なことと最低限の常識(今更)を持ち合わせているからだ。


 「それより、須賀君の持ってる漫画って面白いですね」


 あまり漫画を読むという習慣をつけたことはない。

 見たことがあるのはネットでよく切り抜かれているコラネタぐらいで、和は興味津々だ。


       / /  ./  ,ィ          ヽ ヽ_
        / /  ./  //   /!  |l!   .lY'::::::::::)
      ; i  くlハ //,ィ  / .|  リ! j  l }::::::::::l!
      |イl!  ' _`Vメ、 l  / __.! ./_l/__ ノ l::::::i='ヽ
      ゝゝ| ;´んィ:!`    =j/__ノノイ /¨T ヽヽ

      ||  l 弋_丿     'んィ:!.ヽ// ,'   !  } }
      ||  l 、、、     弋_丿 // .,ヘ  .!   j/  / ̄ \
      ||  l     '   、、、 // ./イ  |     |  ア  |
      || ::ゝ.    __     // ./. !   |      |  リ  .!
      ||  | l > ´‐-'   _イ//∥| l  |    <.  で  |
      |l!. l_L:;ノ:.ト!¨  T¨ェ:://.∥ll! l  |     .|  す  !
      l|-、 ヽ: : : :.l! ̄` |:.:.// /l!ll| .!   |     .!  ね .!
     /-、:::ヽ ヽ: : : l ̄ ̄l:.// /: :ヽ! .!   !    \__/
.    / | >ヽ ヽ:.:.:l    l;'///: :/\ .|   |
.     /  l . /ヽ:ヽ ';.:ヽ /:::////、   \  |
   人.. V    } :!:ヽV/'/l;;;_/  Y ..人 !
.  /  ヽl     l  ! [__] / .l     i/  ヽ|


 一作品を読み終わった頃、散らばった漫画で部屋が前より汚くなっていることに気づいた。


 5/6


 ……
 …


 「こ、このままではいけません!」


 予定を一つも実行していない。

 またいつも通りの1日で終わってしまう。

 とりあえず本を元あったところに戻し、最低限の体裁を整える。

 気づけば夕方になってしまったので、とりあえず晩御飯を作り始める。

 冷蔵庫には豊富に食料を買い込んである。

 こんな時のために京太郎と二人で買い物に行ったのだ。


 「私、公式で料理が得意なんですよ!」


 そんなことを叫びながらサクサクと工程をこなす。

 なんだかんだで料理が美味いのは本当のようで、手間をかけるのも苦と思っていないようだ。


 「でも、あまり重いものを食べるのも大変ですし」


 京太郎は家庭的な料理の方が好みだ。

 少し考えると、肉を取り出して常温で温め、その間にソースを作る。


 「市販のソースより美味しい自信がありますよ!」


 あとは野菜を切ってサラダを添える。

 今日は軽く生姜焼きだ。


          ,>─.:::.──- .ィ─-、._
    __┌.、/          \/:::::|
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    ヽ ! .{: :{:| | | 」|:.| :|: :ィ‐十ト|:|:} : : }:::::\
   / |/{ |.!.| {斤人|ヽj\| .レ゙リリル: :ノ::::ィレ′

   ヽ:::::.{',从|レィ==、   ィ==x .リ/:|」|

     ├┤| :沁 ::::::::    :::::::: ノ/: : !  「ドヤァ……」
     |:.:.|',| : :人    r─‐┐  ハ/  /:|
     |:.:.|::| : : |> , `.-- ' ,∠// /! :|
     |:.:.|::|   .:|ィ‐=_,,} ー  {.__//゙ /_.| i|
     |...:|::| ! :リ.|::::{_   __.//゙ / ヽ!|
     |:.:.|:.| ! / /_,ヽ.∠ィ'/ /─=||
     |:.:.|:.| / /─'、,..ィ‐-、_,..|:|  |_    ||


 料理が完成して、エプロンを脱いだ。


 6/6


 少ししたら京太郎が帰ってきたようだ。

 和は急いで『エプロンを着て』出迎える。


 「須賀君、おかえりなさい!」

 「おお、和。

  うちにいたんだ?」

 「はい」


 ーー知っている。知っているぞッ!

 私は須賀君がこう言う家庭的な女の子に憧れていることを知っていますッ!!


 京太郎は少し頬を赤らめながら、和に言われた通りにコートを脱ぐ。


 「生姜焼き?」

 「私の特製ソースです」

 「そりゃ楽しみだ!」


 子供のようにはしゃぐ京太郎。


 「やっぱり和はいい子だなぁ」

 「……うぇへへ」

 「?」


              -‐…‐-
         ´: : : : : : : : : : `` .
        /: : : : : : : : : : : : : : : : : :\ ___
     . : : ::/: : : : : : : : : : : : : : : : : : 〈i:i:〈

.     / : : :/ : : : :/ : : : : !: : |: : : : : : : :〈i:i:〉
    /:: : : : : : : : : ::∧: :/|:: ::|i: :|::| : : |: : ¨
   , : : : ||: : /!: / ∨|: :|i: :|::| : : |i: :|

.   ′: : :|: : :/ |/     |: ::八人| : : |i: :
.  ,: : : : : :|: Ⅵ斗ぅ气ト ムイ≫冬ト: :从/
  ′:: : : ::|: : | 乂rツ    ヒrツ.ムイ: ::|

  .: : : : : ::|: : |  ,.,.,.    、 ,.,. .′:: ::|    「(セェェェーーーフ!!)」
 ,:: : : : : : ::|: : |      、 ,    , : :|: : :|
./:: : : : : : :::|: : |: :} iト       イ: : :|: : :|
:: : : : : : : ::|: : |::j{   うr≦: : : |: : | : |

::: : : : : :/|: : |:\   {`ヽ〕iト ..,,__|: : :|
: : : : /i:i:i|: : |:i:i:i:\    }:i:i:i:i:i:i:i:i|: : :|


 ギリギリセーフなそんな二人。


 カン!

雑談してくれるとネタを思いつきやすい


 1/10

 468
 【みやながけでエイプリルフール】


 「京ちゃん、エイプリルフールだよ」

 「おおう。それ最初に言ったら意味がないんじゃないか?」

 「違うもん。

  いつも騙されるから今年は騙されないよっていう宣言なの!」

 「ああ、そういう……」


 お久しぶりです、須賀咲ちゃんです。

 京ちゃんにエイプリルフールで勝ったことがありません。須賀咲ちゃんです……。


 「じゃあ自分から嘘をつくのは諦めたんだ?」

 「今年はせめて引き分けが目標!」

 「ハードル低っ」


 ふーんだ。

 そんなこと言われても、毎年毎年京ちゃんの巧妙な嘘に騙されてたら学習するもん。


 「嘘は子供の教育に悪いんだからね!」

 「わかったわかった。

  今年は嘘をつかないよ」

 「……それが嘘だね?」

 「ほう?」


 京ちゃんが悪戯を思いついた少年のような笑みを浮かべている。

 全く、いつまでたっても子供なんだから、もー!


 2/10


 「その手は去年使ったでしょ!」

 「毎年引っかかる咲も咲だろ」

 「京ちゃんの手が悪質なんだよ!

  妙に手が込んでるし」

 「こういうのは全力を尽くさないと!」

 「もー!」


 どんなに言っても嬉しそうに返す京ちゃん。

 だめだこれ! 聞く耳持たないよ!

 そんなやり取りをしていたら勢いよく扉が開いた。



/`ヽ            .  - ─ ─-  .
 /`ヽ   . - ───<_人 _ : : : : : : : : :.┼  .
/  /´    __.rr.─‐┐ノ:´Y´ .: : : : : : : : :_ 人 _: \
し '   r<´  |ll:    | : : : : : : /. : : : : : :.`Y´. : : : ヽ
   } └ .─ ┴‐─ ┴,. : ://: : : : / : : : : :!: : : : : _人_

、 .斗 ‐‐─ァ── <:./: :/: /: /: : /: : : : :.:/:i: : : : :.`Y´
 > ´  ̄ フ./: : :/: : :.// :./_:/_:/:_: /. : : : : :/:/: : :! : : : ∧
___..斗< /: : :/i: : : :{: : /: /: /: : /`ヽ. :./:/: :i: :.! : : :/:∧
.       /: : /´:!: :.:从: :芹竿ミx.:|: : :./:/:`メ: :.! : :/:/:.∧
     /: : /!/ |: : : |人{弋 _メckj /:/:/. :ム:リ :/:/: /:.∧

.    /: : /人.N: : : |  ⌒ ー ''     「笊ckくj /:/:./: /:.∧
    /: : //: : ヽ!: : :.| """"        辷..ソXl|: : :/: /: /:.∧
.   /: : //__人_:j: : : |        ,   """ノリルイ⌒ `ヽ/:.∧
  /: : //: :.`Y´.|: : : ト、    、_       /. :i: :.:|      `マ}   「京ちゃん! 今年は騙されない!」
ー/: : //: _人_: :.j: : :.:|:.|\     ー '     . イ. :人_ |    i
∨`Ⅴ「ー`Y´─.! : : |:.|.  \    .  イ: :.!:.`Y´. ! ___ 人 ___
 \ \       !: : ::l:.|     ̄「:i: : : : :j: :.:|: : :l: :.:l   `Y´
   \ \    从: :.j:.|      |N\: : :l: : :!: :.リ:.:.リ    l
      ト、\   人: l:.|      } jト、 \j : リ: :/: :/
     | .\ \   ヽ j\ _ _j ハハ  ` <': :./
     |:::\\ \     \   ⌒ } i    `<}ト、
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          ,. . : ´: : : : : : : : : `: : . 、
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     /___,__: : : /: /__{:|: : :|: : : : : ヽ: ヽ
    ' __,./_/___/_/|:|__|--==: V : : : V: ::.

    /: :,: : : l : |: :|{ -| |-:l:| : : |l{,:-|--:|、|: : : :V: :
   ' : /:/: : : : |´八: { {: 从: : :{ \} 、}|:∧: : : | : |
  / イ|:l': : : :{: | ,ィチ雫ミ  \_:、 ィチ雫ミ: |: }: :| : |
     l'|: : : :∧{{ _)::刈      _):刈 V|/: /: : |
     |: : :,: :{人 弋zり     弋zり ノ'}: /}: ,: |  「(カモがネギ背負ってやってきた)」
     |: :∧:乂l}         ,         /イ ノ/}/
      l/ \叭                 ムイ://
           ゝ     ´`      イ}: /}'
            \>       </|/
            从 :|  `´  |: :/
             /⌒ |      |⌒\
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   /  /     |  ハ       |  | i 、 ヽ  \     \_
.   i  /     |  | |       |  | |、 i  ゙、 、 \_     _>
   |  i   | i  |  | |       |  ハ ハ _i!_ i   \ ヽ` ̄ ̄
   |  |   |+--|、_|! |   | i! ,/.ィ'|"i´ ハ  | i  ヾ 、 ヽ
   |  |   |.|ヽ |、_|王!ー  |./i .;"´/=、!/ | ! |   \ 、i      人
.   !. r|   i.|、!,,ィ'":::._iミi!  |/ /彳:::: r:!ヽ,| ,イ | 、_   \      `Y´
.   | |^!.  N 《 _、o;;;;i_ 丶、/ / ┴゜‐'"´ !イ | λ i` ー--ヽ
    ! | i、i、 ゙、  ` ̄ ̄   メ(        /^|イ `、|
   ノi \ヾi:.、、         i!      i ノリ   `
    |  ヽ__i                 |イ|/
    ヽ i、  i    ____....,     |/       「照さん、駅前の有名ケーキ屋でショートケーキ買ってあります。
      ヽ!、  i\   `ー-- ―'´  /、!
       i !i 、 \     ̄´  /!/       人   冷蔵庫にありますよ」
         |ハ,i、! 、 \      / ./.|       `Y´
         ト、! ゙、  `ー---'′ /|V


        . :´: : : : : : : : : : : : : : : : :` 、     イ
      /: : : : : : : : : / : : : : : : : : : : : : .    ニlニ

     /: : : : : : : : : : ,イ: : : : : : : : : : : : : ∧     |
    /: : : :/: : : | l: : :/ | : : : : |!: : |: :|: : : : : :,    イ
    ̄ ̄ ̄| : : : N: :/__:| : : : : ト、__|: :|: : :|: : :′
       i| : : : | ∨ 八:ト、: : | N: リ: : :|l : : |
.        八: : { l  ____ ` \| ___|/ | : 八: : |l
      /:リ \N '~⌒``     ´⌒``〕/ ;__: :八
.     /:/: : : :ハ """"  '  """" '// /: 〔、: :、
    .: /:__: : : :圦 lヽ  r    ┐  // /: : /): :\
    /: l l\\: : : :| .!     ノ  .:'_/ 厶 "/: ト、: :ヽ
    .'  |八 :\\__| .!>  __ . イ´ 、__フ‐<ヽ.: :| \:|
.     .′ V.rヽ _|___       |   /_〔 ̄ | V    〕  「ほんとっ!?」
        //.へ`ー-:.、Υ   八      l  |
        |{/´ ̄〕    !、___/ヽ    /' \
.         八   '′   l    /  ∧  〈 、   \
      /   \    .'.  /   /_   ∨´   \
     / -‐== /   ∧  / /   :_   :./⌒ヽ. >
    \............./    =- V / -‐=':._    ∨ヽ__/
      Υ⌒/    .′.:〔二〕´     :._    V´/
      |ニ/    :   ∧〔\    八    ∨
      |_V      .! :/ N'  \    个:、_/

        ,. . . -――- . . .、

      ,. :' : : : : : : : : : : : : : : : :>.、
    ./ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
   /: : : : : : : : : : : : : ,ィ: : : : : : : : : : : :ヽ

   /. . . . . . . .    / l: : : : : ト、 : : : : : :.
  ,' : : : : : : : : : : : : /  l . . . . l ',: : : : : : : :.
  ,' : : : : : : :l: :,i : : /   l: : : : :l  ',: : :l: : : : :.
  i: : : : : : : :l /{ : /   .レl: : :ノ .__ ',: :l: : : : : i
  !: : : : ;、: :レ l〃⌒ヾ  l/ 〃 ヾ: :l: : : : : :l
  ',: : f⌒\{  {l   l}    {l  l}Ⅵ: :、 : : !
  ',: {      乂_ノ     乂ノ l: : } \ノ  「あっ……」
   ',:乂_           `     !ヘ:ノ
   ',: : : : 丶、     ー-‐     j
    ヽ{\ : : ㍉        ,, イ
       `^≧|   ┬ァiフ¨
      ///∧   Kヽ、

     //////∧    }//> , 、
    / \//////∧ー―l///// }


 4/10


 心底嬉しそうにキッチンに向かうお姉ちゃん。

 綺麗な即堕ち2レスインハイチャンピオンだったね……。

 ぐぬぬ……、ああはなるまい。


 案の定、無表情のお姉ちゃんが帰ってくる。



                   _. : : : : : ̄: : : : : . _
                ,. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 、
              ,. :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :、 : \

             /: : /: : /: : : : : : : : : : : : : ヽ: :ヽ: : :ヽ
            ,:': : : :/: : /: :,: : : : : : : : : |: : : :.∨: :∨: : :.
             /: : : :/: : : ! : :|: : !: : : :{: : :{\ : : |: |: :|: : : :|
              .′|: : :|:l : : ||:_∧: |: : : : 、: :ヽ__Y: :|: |: :|: : : :|
          ,: : : |: : :|:l : : |{/ }从: : : :{ \:} 从:|:/: ': : : : |
          /: : :イ: : |∧: :|ィ汽雫 \: :| ィ汽雫、|: :/: : : : :|
           //  |: : :{: :从{ 乂::ソ   \ 乂::ソノ,':イ: : : : : :|
             |: : :|: : :∧      ,      /| : : : : : |  「……」
             |: : :|: : :{:∧            /: | : : : : : |
                从: :!: : :|: :个    ‘ ’    イ: : j: : :/: : ,
             ∨: : :|: :.:|: : :>,  -  <: ,: : / : イ: : /
                、∧:|: 从: :, -ノ     乂ヽ、,':/:j: :/
                _}- \¨¨´ 「       / /  /イ-、
             /ハ、      |-   ̄ -/     / / 、


 ちなみに、あれは怒っているのではないんです。

 ケーキがなかった虚無感に囚われて人生のすべてに絶望したような顔を浮かべているだけなんです。

 まったくもー、京ちゃんったら。

 でもまぁ、『京ちゃんの嘘』を考えるとーー


 5/10

     , ´   /  .' / .'  '        | l  | l |  |
   /    / '   |  | | l|  |    l | ,  } l |  |
 _/    イ /   l|  |_,∧_{  :.   ,-|-}-/、 ,  |  {   _   ___,-、 __
  ̄ ´   / /    {  |、{ l∧  {、   | }/イ/},イ /  l_、  { Y´ /  '   }- 、
      {〃   r∧ |ィ斧ミ从 、Ⅵ , イ斧ミ、 } /l|  l、r  ̄ {   {  |  / _ }、
      /    /{ 从{、 Vzリ  \Ⅵ/ Vzり /イ } / |   乂_人_/、_/   / \
       /   //从 l∧\       ,\        | /イ/   }==   ̄ ̄ ̄ ー く
     /  イ'  {/l∧ ∧      、        ,イ/j'  /             \
    ̄ ̄        ー∧         _,     从    ,                 \   「残念!
               ヽ 、    ` ¨  ̄   ィ }/    /     / '
                 ∧ \       / |/>  ,      /              ケーキはこっちにあります!」
                  {(从_|     --  ´ 「/// |  {
                  |/ ̄}}          |////|_ |
            _,.:<|///||          l/////` |
     _,.. -=<///// \//}         ,r-/////// |
  <//////////////////∧-- 、    {///////l{



     /: : : /.: :/: : ::j: :| ト :|.     |: : : :|: :|   _i: :∧: :|i: :
   /: : : : /.: : :|: : : :i: :| |.:/ `ヽ  |: : : |i: :|  '´ |:/  V .|::
  /: : : : : : !: : : :i: : : :|ヾ| , ィ, ニ、ヾ、 .|: : :八/ ,=ヾ,ニ、ヾ、 |::
/: : : : : : : : |.: : :八: : :| 〃 /少iハ ヾ|/ ミ、 /少L心 ヾ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|: : : : |:\{ !  {斗ニ刀:::::::::::::::::::::::::::{斗ニj匀
.       i: : : : |:::::::ハ  气l∪iリ:::::::::::::::::::::::::::气l∪ikリ

.       l: : : : |:::::::i l{',、 乂Zソ          乂ZZソ
       |: : : : |:::::::j         ,
        |: : : : |:::::::{
        |: : : : |::::::::ヽ      ,ィ⌒ー'⌒ヽ.
        |: : : /|: |:::::::::::> .   `-⌒ ⌒'‐′      . <   「ぐぬぬ……」
       |: : / 乂|:∧:::| 、::::≧=   ___   <---


 案の定だよ……。

 京ちゃんのつく嘘はいつもこう。

 人を不幸にする嘘はつかない。

 ちょっとイタズラするために口実みたいなもの。

 なんとも言えない気持ちになるけれど、結局ケーキはプレゼントしてもらえる。

 そのための手間は惜しまない。うぐぐ、卑怯だ。

 しかしお姉ちゃん、羨ましいなぁ。

 私にも何かないのかな。


 6/10


                ,.  ⌒ヽ、/⌒ 、-- 、
               /_,..-         ヽ  `  、
             / /´     /    ∨   \
                ,  ´      / ,'     :    、 ヽ
           /   ,    , / /|  |  :.  | | |    ∨
         _/   / /  |_|__'_|  |   _}_|_|_| |  | :
         ̄ ̄´/ イ '  { ´| |/__{  |: , ´/}/_}∧ |  | |
            / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | |

            / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{
            ´/イ }从lム     ; \     ,ノ /  \
                    | ∧          ∧,イ
                   Ⅵム    -  -    イ //     「?
                _ヽl\       //イ__
                |////} `  ー  ´「////|      咲の分はないぞ?」
                |////|  :.   / |/[__}/|
                ,...<////∧  ,     |/////> 、
          , <///////////\   ///////////> 、
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      /      /  /|   | |    ヽ       \
.       /  /  / / / |  |. |   | |   |   ', ヽ    ∧
     /  /  /./ / |  | |   | _|L.--|.,,,_  |  |   :l ',
     /  /  |  ト|_,r|''´|`:|   |  |\ | `ト| :|    | :|
    /   |   | ィ| |─ト :|ヽ  | / ̄V|  | :| |   |  |
    /   |   レ´| \|_\|  ト、. |::::彡三=、 :| ./ / /   !
   /彡イ |    ト| 彡 ─ヾ:\|::::\::::/,'⌒ヽ \/ / /   |、
.      |  ヽ  ゝ///;'⌒',ヽ:::::::::::::::::::::|:!::::::::::!:| ||イレ' |  ハ!
.      |   ト、 || | ';::::::::!:|::::::::::   ヾ、;;;;;;;ノ  |/ ハ  / |
.      |    ハ, \:::ヾ.;;;;;...'   ,          ハ /  /
.      | /ヘ ヽ..ハ                  ハ// /    「は?」
        /    \トハ      ー_,ア     ノ'´//
               |ゝ、           //イ/
              |人> ._       <:| / /
                \|\|  ー<   :|´
                     |        :|> 、
                   /|       /   \


 7/10


          /   /     |   | |   | |  :       l :l   |  |   :|   | |
       / /    |    |__ | |   | |  |  :   l :l:  /|  |   :|   | |
.      ///     |    |\ |‐\八 |  |  |    |__,l /-|‐ :リ   リ  | |
     /  /   - 、     :|   x===ミx|‐-|  |:`ー /x===ミノ//  /  :∧{
       /   |  :.八   _/ {::{:::刈`|  |  l:  /´{::{:::刈\,_|  イ  /ー―‐ ..__
.      / / :|  ::|/ \{^ヽ 乂辷ツ八 |\| /' 乂辷ソ ノ^l/ } :/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: `「⌒:.
.       //  /|  ::l、   :    ー‐   \{  | /  ー‐    j/ /}/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.
     / _,/:.:..|  ::| \ !           j/        ′/:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.
        / :.:.:.:.:{  ::|\ハ_,          ノ            ,___/{:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.∧
.    /:.:.:.:.:.:.:.::′ ::|:.:.|\圦                       / j/l/.:.:′:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.∧
.   /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:′_,ノ⌒ヽ::|  、    、      _  -‐'     /:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:/:.:.::/:.:
 /\:.:.:.:.:.:.:r‐ ' ´     ∨\/ ̄ )  ̄ ̄        /   /.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:/:.:.:./:.:.:
/:.:.:.:.:.:.\:.:.ノ  ----- 、  ∨/   / 、          /   ,/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:/:.:/:.:.:.:.:
:.:.:.:.:.:.:.:.:.: /        ‘,  ‘, ./、 \       /   /.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.://:.:.:.:.:.:.:.:  「それが嘘!
:.:.:.:/:.:.:.:.:.{   ---- 、   ‘,  } /:.:.:} ̄ \ ̄ ̄ ̄/ ̄ /:.{/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:-<⌒:.:.:.:.:
:.:./:.:.:.:.:./       ‘,  ‘,「l /⌒^\________/}/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´    \:.:.:.:.:   ちゃーんと咲の分も買ってあるよ!」
:/:.:.:.:.:.:.{: .    . :    ‘, 人U{:.:.:.:.:.:.:.|:\        /:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.―‐┐:/        \:.:
:.:.:.:.:.:.:.: }: : : :--:/\: . ノ:r/   / .: .:.:.:.:.|:.:.:.:\    ,/:.:.:. |:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./


               ___
         ,. : : : : : : : : : : : : : : .、

         /: : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ、
       .': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :、
      ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ

     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::.

     .': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :、: : :.
     {: : ,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :}: : l: 、
     |: :,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /): :|: : |、: :.
     |:∧: : : : : : : : : : : : : : : : : : : イ{∧:|:|: : | \〉
     }'  、: : : : : : : : : : : : : : : : l: / Ⅵ/∧: :!
       ∨:、: : : : : : : : : : : : :/イ  u |/  ∨   「あっ……」
          }:/\:|: : : : : : : : /    人
          /   -从-----イ{     イ
     _,.::―/:::::::::::::::::::::::::::≧≦--r---、

     /:/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://:/`ヽ
     ,::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ {::{  ,:∧
    /:{{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |::|/'  }
    {::|| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::|   |
    |::|| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::|   |
    |::|| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::|   |
    |:::ー====================_'_」::|   |
    ´ T T ―r――r、―――――‐ '     }


 8/10


 してやられた……。

 私が嫉妬した瞬間を狙うなんて卑怯だよ!


 「やりぃ、今年も俺の勝ち!」

 「こ、これは無効でしょ!」

 「誰も不幸になってない、理想的な嘘だろ?」

 「ぐぬぬ……」


 たった少しの会話の流れでさらりと嘘を混ぜて、思考の隙を突いてくる。

 これだけ警戒していたのに、京ちゃんにかなう気がしません……


 「あ、あれ、咲怒ってる?」

 「もー、怒ってないよ」

 「やりー!」

 「それが嘘」

 「……えっ?」


.   / :.:.:.|:.:.:.: /^l:.: : ||:.:.:.:.:.:.:| ヽ:.:.:.:.:.ハ:.:.:|:.:.:.:.:.:.ヽ:.::.:.::.
  /  .:.:.:.|:.:.:.:.|  :.: : ||:.:.:.:.:.:.:| |:.:.\ | :.:|:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.
  /  .....:.|:.:.:.:.| /: :.:|ト:.:.:.:.:.:.| |:./_\:/|:.:.:.:.:.:.:八:.:.:.:::
. /  .:.:.:.: |:.:.:.:.|  \||:.:\:.:.::. ィX笊竺心j:/|:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.|

/    イ从:.:.:| ィ/笊匁、 \:.:..   ノ{:::::::ハ |:.:r-x:.:.:.:.:.: |

ー    |:.:.:.\| i| ノ{:::::ハ      乂ー-ソ j/  V:.:.:.:.:|
      |:.:.:.:.:.:. 从乂ーソ               .:.:.:.:ハ|
      |:.:.:.:.:.:.∧      ′    ""     /:.:.:./
      |:.:.:.:.:.:.:.:ハ ""             厂:.:.:/j/    「今日の夜は、一回戦で済むと思わないでね!」
      |:.:.:八|:.:.八      r-,     /:.:.:.:/
      |:./  \:.:{\          /  |:.::/
      |:     \  >  .. _  イ   リ/
                  __]       {___
                _/三l       /三三三≧=-__
           _x<三ニ/´ /     /ニ三三三三三三三>

.         r≦三三ニニ/      /三三三三三三三>´
         /|三三三三ニ{____/ニ三三三三三三>´      \


 ちょっと卑怯だけど、こんな嘘でも引き分けにするんだから!


 9/10


 ・いつもの


          ,>─.:::.──- .ィ─-、._
    __┌.、/          \/:::::|
    |:::::::∨′  .: : : : : : :. : : :.  ',::::::::}
.   ,ゝ::::/ : : : : : : : : : : :ト、:: : : :  :∨::::゙i
    {::::/  ,.! ! !:.:.|:.| :| :| ', :!:!:}: : : ',;;;;ィ゙
    ヽ ! .{: :{:| | | 」|:.| :|: :ィ‐十ト|:|:} : : }:::::\
   / |/{ |.!.| {斤人|ヽj\| .レ゙リリル: :ノ::::ィレ′

   ヽ:::::.{',从|レィ==、   ィ==x .リ/:|」|

     ├┤| :沁 ::::::::    :::::::: ノ/: : !
     |:.:.|',| : :人    r─‐┐  ハ/  /:|
     |:.:.|::| : : |> , `.-- ' ,∠// /! :|   「咲さん! 私結婚することになりました!」
     |:.:.|::|   .:|ィ‐=_,,} ー  {.__//゙ /_.| i|
     |...:|::| ! :リ.|::::{_   __.//゙ / ヽ!|
     |:.:.|:.| ! / /_,ヽ.∠ィ'/ /─=||
     |:.:.|:.| / /─'、,..ィ‐-、_,..|:|  |_    ||
     |:.:.|:.i!:../. :::      .:. . |:∨ ゙<  小.
     |:.:.|:.{ !      :∨:: . ヽ`>、 ∨ |. )
     |.:.:| | {     .:::      :} ! :!
     |:..:|∧ ',: : . .: : . : i.     ..ノ|: | リ
     |:../ ヾ.\__, : : :人: : : : :,.イ〃.ノ/
     ゝ |  `ーイ:: ::::/:|:::::::::/゙_.∠.ィ゙/
      |  ::\.|_ :::/ ::! ::,ィ゙    {"
      ∧  ::::\ } : ::::: ::/    ∧


                  ,. : : : : :  ̄ ̄ ̄: : : .、
               ,. : ´: : : : : : : : : : : : : : : : :`ヽ、

              /: : : ,: /: :/: : : イ: :|: : ,: : : 、: :ヽ
             /: : : : /_/_:/:': ': : / |: _}_:/: :|: :.∨: : :.
           /: : : :.,ィ/://:l{: |: |: :.| }: /:/:}`: : : :|: : : :.

            /: :.//: :|: {:{:从:{从: :| /:イ:/:イ/ |: : :|: : : :.|
              {:/  ' : : {: |/' Ⅵ  \  / '   }: : :, : : : }
              {: :,: :从 ィ=ミ     ィ≠ミ/: : /-、: /
              |:/: : :{` :.:.:. '     :.:.:.:. ム: :/ Yl}ィァ
               ∧: :从     __   _   /:イ__///ア
               ∨  、   V  ノ 、 ヽイ: : ////  「おめでとう和ちゃん!
                   ` .   ....:::}  }'/ 〃- く
                ___   `T ´/:|    /, - }-、    和ちゃんのこと紹介してくれって言ってた男の人がいるんだけど、
                /:/::::::`ー-´l/::イ}   とイ-、 ノ、\
                 /:/:::::::/-/:/:.:八      / ∨ \ 断っておくね!」
               /{::{:::::::/ /:/:.:./  \'  /:.、  ∨__〉
              , Ⅵ::::,/:/:.:./   /__/::::/∧  ,
              {  {:.∨:イ:.:./    ∨二二 イ:::∧  :.
              | ∧:.}':.:./       \__,/  、 ,
                 Ⅵ 「 ̄}         乂        \
              | { |_」           \       ヽ
              | | /:.:.∧            |\         }
              | /:.:.:/:.:.:.、           |  \     ノ


 10/10


. /: : : : : : : |: : .:i:.|:.:.:.:i| |:.:.:.:.:.:.|!:.:|i:.:| 、:.:.゙、::、   ゙、゙、:::::::::::;::イ/:::::::::::::::i:::::
./ : : : |: : :i:.|:.:.:.:i:.|:.:.:.i| |:.:.:.:.:.:.:.|!:.| i:.:i 、:.:.:、:.、::.:.:.!:.:iヽ/:.:.:.|/:::::::::::::::::i::::
i: |: : : |: :.:|:.|:.:.:.:i|:|:.:.:.| ! |  ..:|i. | .i: i ゙、:.:.i.;A-‐ハ:.!:.:.:.:.:.:.:..!:::::::___|::::
!:.i |: :.:| .:.:.i:.!:.:.:.|!.i! :l |:.:!:.:.:.:.:..i:.:.i ゙、! _/ハ:ハ/ |ィ;.:.,.-‐-、!:/.:.:.:.:.V/

i :|.| :.:.:i   i i_:|、!、:.:.! i:!、i:.:.:.:.:.:.i:.:.i _;彡';tr=、 ヾ、"' /ヽ |':.:.:.:.:.:.i:.:|:.:.:.:
. ! i:i!  | ..:i :i:.:.:i`iー>ト-!、丶:.:.:.:.:i:、^V i_;:::::::ヽ /      i: : : : :.:|:.:|:.:.:.:
 、:!:i、:.:.i:.:.:.:.|:.i:、:.7メ'f:::::::ヾー\:.:.:.:、`ヾ  <;;;:ン ′     ノ : : : :.:.:!:.|:.:.:.:
  ヾi 、:.\:.:\:.]〈  っ::::;:i    ̄`            _,∠|:|: : : : .:|:.|―-
    ヽ!:.i、`゙ー-r≧   >≠    ,      " "   /  |:! : : : :.:|:.!////
     |:.|:.:.:.:.:.:.:\!  ,, ,,                /   i!: : : : : ::i:.i////  「さっきのは嘘です!!
     |:.|: : : : :.:.:.i i       r== "ヽ      /   i: : : : : :.:i:.|////
     | |: : : : : :.:i:.:|\     ∨__ノ)   /    /: : : : : :.:i.:|////   紹介してください!!!!!!!!」
     |:| : : : : :.:.|:イ |:::|l`ー-..、    ̄ ̄   /     / : : : : : :.:|/////
      |.|: : : : : :.:|:∧ i:.:!i::::::::::::::`i ー-‐ '    ,..-‐:/: : : : : : :.:.i!/////


        ,. . . -――- . . .、

      ,. :' : : : : : : : : : : : : : : : :>.、
    ./ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
   /: : : : : : : : : : : : : ,ィ: : : : : : : : : : : :ヽ

   /. . . . . . . .    / l: : : : : ト、 : : : : : :.
  ,' : : : : : : : : : : : : /  l . . . . l .',: : : : : : : :.
  ,' : : : : : : :l: :,i : : / U l: : : : :!  ',: : :l: : : : :.
  i: : : : : : : :l /{ : /-一' レl: : ノー-,: : l: : : : : i
  !: : : : ;、: :レ l〃⌒ヾ  l/ 〃 ヾ: :l : : : : : !
  ',: : f⌒\{  {l   l}    {l  l}Ⅵ : 、 : : !
  ',: {      乂_ノ     乂ノ .l: : :} \ノ
   ',:乂_          `    .!ヘ:ノ     「あっ、その、ごめん……」
   ',: : : : 丶、 U   ,--、 u  ノ

    ヽ{\ : : ㍉      ̄   ,, ''
       `^≧|   ┬ァiフ¨
      ///∧   Kヽ、

     //////∧    }//> , 、
    / \//////∧ー―l///// }


           ,∠、  /            ヽ
            /   |: :/                  \へ
     / ̄¨ヽイ     |:/ / / /||:! ! | !         .|
     !:   〈〈:     /:{: ': ,': ':::|::|: l::l: l::l  ,ィ: ! l    ,!
     ∨   ノ¨ト==イ: :! l斗十ナナノ.:|: /::l. /十ト、l:     i〉
      ¨フ´/ !: : : :! 、トト、!ィチ^:丁:::}/ :::}'::::::!ノ :: !: l   リ
.     /: 〃 |: : : :|ミソ :::〈 l{::::::::| :::::::::::::::rf示、 ノ ノ/ /
     レイ ト、_|: : : :l ヽ  弋:zソ       !::::}l }イノイヽ
     |.: : :|: : : : .: |     ::::::::      ,  辷リ !:. :. :.:ト、 \
     |.: : :|: : : : .: ト、            :::::: |: : : : | ⌒
     / : : :|: : .: .:  lミ、Y       ‐ -    ノ: : :. :.|    「……」
.    /, : : : |: : .: .:  l   !  ヽ           イ|: : !:.|
   //   : :|: : : :  :ハ  |   `  . _ x<: : |: :!: : :|:. :!
.  //  . :/!: : : :   ∧. !       |  |: : : :.|: :!: :. :.、|
  //   . ::/∧: : .:   ∧`ヽ.      l ヽl、:: : |: :l : : : : ト
. //  . ::/厶 ヘ.:     ∧  \   `ヽ.  ヽl : l : : : : | ヽ
//   , <   \      \  \    ∨  `|: :. :. :.|   \


 この後めちゃくちゃ謝罪した。


 カン!

京咲京咲京咲


 1/9

 604
 京照白


 講義が終わったので、急いで帰り支度。

 友人が呼び止める声が聞こえるが、そんなもの気にしない。

 サークルに参加しなければいけないはずだが、それも忘れた。

 だって急がないとーー


           -‐──‐-

       . ´          `ヽ、
      /
     /                 ,
   / /   /|    ト、        ′
 ∠._/   / i|    i \      〕
    〔  |/ 八〔\ .'   \   /
.     |∧ :| ┯:┯  V ┯:┯∧ /   j
    ' ∧|  乂ノ     乂ノ   ∨、   |
.     /:Ⅴ         ""  ノ   |  「京ちゃん、一緒に帰ろ」
    /::::入_           _  < / /| /
  /\ /∧ノ  へ ̄ ̄/  \リイ/ / 〔′
   ̄\\  r‐'   \/  //\ /
     \ヽーヽ └─ー/─'  \
      丶ー|   〉 〈   |  〈

           |  .〈∧/    !__/
           |        | |

           ,         _
          〃-‐‐-----‐'/´
       ,, - ''       ー '、
       ´             ヽ\
      /   /    |    |  ヽ \
    /   ,/     /|   l    _<
   ィ    /  十/┤  十ト l  ハ
     ̄|   {   示芸 \ |示芸!   }
      j   Y\|廴 リ    廴リ,!リ ノ
     /    廴          | }
      {/ヽ|\、, > ___ _-__,  イN/   「京は私と帰る予定だから」
           /  〉 | 〉、 "
         /`ヽ::ヽ〈 V/l::ハ
        ,'   |:::::ヽ「」/::::::ヽ,
        l    !:::::〈/ヽ〉:::::::::}
        └t-ィ:::::::::::::ヽ:::::::::イ


 ーーこういう争いが始まってしまうから


 2/9


 「ぐぬぬ……」

 「私の方が早かった。

  京、帰ろう」

 「いや帰りませんから。

  麻雀部ありますからね。

  っていうか二人も参加してくださいよ」


 にべもなくバッサリと断られてしまう。

 京ちゃん、照れてるのかな?

 きっと私と一緒にいたい口実だ。


 「京ちゃん、そんなに私と一緒にいたいなんて……」

 「……そうなの? 京」

 「だから部活に参加するだけ……」


 なにやら京ちゃんが言っているが気にしない。

 このまま腕を組んで一緒に歩いて女の子アピールをしよう。

 そう思った時に横を見ると敵の姿。


 3/9


      //ア    /  / イ   :ト、    \      \        \   \
.     // /     /  /  |    | \    \      \       \   \
.      /′i    /  /i   |    │  \      `ヽ      `ー- 、      Y⌒ヽ}
     {  |  ,:イ   :ハ`¨´`T´   |  、  \ト、  ヽ `ー- 、    \_   }
        |  | |  ト、ハ≫=zzz、   !   `¨´`¨´`¨´`¨´   |  |\    ヽ`ヽノ\
.      人  | |  |  代 {  __} \|    ィ=- ..,,__\ト、 j │ \    }     \
        \! 〉、 !  :. 乂_フ     ´下¨¨“_卞ゝ  jイ  ノ    ヽ  ノ      i
          /  ヽ ハ             弋  `フ ノ  j/`ヽ    j/       |
.           / /   / :.    ,      `¨¨´        ノ      ト、   ト、  }
         i  |  i :从                       /  ト、   | ヽ.  ; } /  「……」
         l 人  ト、  ト、    _          rー-イ  イ ! \ !   } / j/
         ∨  \! ∨V .>   `       イ {ス人jヽノ jノ    jノ  j/
               /.:.:/:.:.:./‐/ >、 _ ... イ     ゝ   ヽ
                 l.:.: ′:.:.|‐|    λ´            ` < _
.               人::|:.:.:/::|‐|     `ヽ   ィ´        / 7:.:.:. ’,
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               λ.:.::´:/.:.:}‐{                !   / , ':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: }
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  /: : : : : : !: : : :i: : : :|ヾ| , ィ, ニ、ヾ、 .|: : :八/ ,=ヾ,ニ、ヾ、 |::
/: : : : : : : : |.: : :八: : :| 〃 /少iハ ヾ|/ ミ、 /少L心 ヾ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|: : : : |:\{ !  {斗ニ刀:::::::::::::::::::::::::::{斗ニj匀
.       i: : : : |:::::::ハ  气l∪iリ:::::::::::::::::::::::::::气l∪ikリ

.       l: : : : |:::::::i l{',、 乂Zソ          乂ZZソ
       |: : : : |:::::::j         ,
        |: : : : |:::::::{
        |: : : : |::::::::ヽ      ,ィ⌒ー'⌒ヽ.
        |: : : /|: |:::::::::::> .   `-⌒ ⌒'‐′      . <   「ぐぬぬ……」
       |: : / 乂|:∧:::| 、::::≧=   ___   <---


 4/9


 だめだ。あれには勝てない。

 このまま京ちゃんの右腕を取ってしまえば、彼女は容赦なく左腕を取るだろう。

 そうすれば京ちゃんは私のことなど気にせず彼女の胸の感触を味わうに違いない。

 それは困る。

 自分の不利な分野で戦うのは良くない。


 ーーあれ、じゃあ私の有利な分野ってなんだろう。


 「京ちゃん、私は面倒見のいい良くできたお姉ちゃんだよ」

 「寝言ですか?」

 「うぐぐ」


 思った以上に辛辣に返されてしまう。

 ちょっと胸が痛んだ。……自覚はしてるもん。


 「いきなりなんなんですか」

 「だって……」

 「……」

 「なんでもない」


 彼女の方をチラリと見るが、彼女はこちらを一瞥もしない。

 ただだんまりとしているのに一方的に敵視しているのがなんだか悔しくて、話をなかったことにする。


 「照さんはなんか放って置けない感じですから、それとは違いますよ」

 「ほんと?」

 「(マジで放っておいたら何するかわからん)」

 「えへへ……」


 褒められてはいない気がするけど、こんな風に言われるだけで胸が温かくなる。


 5/9


 しかし、隣でだんまりな彼女が気になる。

 普段から口数が多い方ではないけれど、いったい何を考えているのか。

 麻雀ならわかるのに……。


 「……」

 「?」

 「ちょいタンマ」

 「!」


 何か嫌な予感がする。

 彼女の特異性が現れる前兆だ。

 すると彼女は何も言わず、私の手を引いて女子トイレに駆け込んだ。

 何が何だかわからない……。


       -─===‐-ミ
   ´.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: 、
/.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: \
.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: :ト、: .: .: .: .:`、
.: .: .: .: .: .: .: .: .|.: .: .: .:| \.: .: .: .: ',
.: .: .: .: .: .: .: : |.: .: .: .:|   \|.: .: : :.

.: .:|.: .::| |.: :‐/、|.: .: :l .:|   -‐.:|、.: .: ::.
.: .:|.: .::| |.: :/  |.: .:八ノ    ハ:.:|::. :.
.: 八.: :|┬─┬}/  ┬‐┬‐ .:.:|`ヽ}

.:/⌒ヽ} | :::::: |   三 | :::::|  .'.:.::|
.:{    '└─┘    ̄ └‐┘ l.: .:|
人_    u              j.: .:|
i.:.: .: .>      )‐┤    イ.l: ::'  「(女子トイレで女の子のいじめをするつもりかもしれない)」
i.: .: .:i .: : _;〕ト  _/| h ≦.:.:.|: 八/
ト、.: .:|/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/

| \{ .,_  \|     |/ ハ
  / ヽ >   |    ノ / ∧


 ーー結構怖かった。


 6/9


 「それ」

 「?」

 「化粧崩れてる」

 「!?」


 トイレまで来たと思うと、鏡の前でそれだけ言った。

 すると彼女はもう何も言うことはないとばかりにぼけっとした顔に戻った。


 「何で教えてくれたの?」

 「……」


 急いで化粧を直しながら、その答えを問う。

 だって京ちゃんにダメなところを見られている方が都合が良いと思う。


 「好きな人によく見てもらいたいのは、同じ」

 「!」

 「……それだけ」


 彼女はそれだけ言うと、顔を逸らした。

 少し見た限りだと頬を赤く染めている。


                    / / `ヽー、     ー、   `ー /´
               _ -‐ァ'/       ´⌒ヽ  、 ヽ、_ 彡 ´
              /⌒ィ'´ /            ',  \  ヽ
                /´ア´ /  / /       !   ',   ヽ
            ({ /  ノ  / /       ! l    \   、   \
             `Y ィ´   / /    i l  '.   、 ヽ.  ',_  `ー-
             / /    /イ/i{    j{ j  、      \ ヾ  ̄´
            , ィア,' イ  /`7~ヽ   ハ 八  (ヽ    ト、 }  ー、
           j/ / { { イzx、_エ、  j |~~、 ヽ Y`ヽ }! ソ \}⌒j

             ´ {  ヽハ、{i  佞i「ヽ. ハ{\{zュ.jYハ }  〉ハ    ヽ.
             ∨   ハ `  ̄   \{ ヽ `芒!リイ ノ /イ     ハ
              ヽ { j! !    、     } ヽ!  〈 /フ   j!  / リ  「……早く行こう」
               `ヘハ ト          j       /´j}   ハ ノ
                  `  \  ゚ `   /    / ノ j_ノ ´
             _ -=ニ7⌒ヽ __ .. イ    / `7=ュ。_

            イ  「ニニニ7   人j  ハ   〈  /ニニニ´⌒ヽ
           ´ i  ニニニ{  /l] `Y  ',   V /ニニ/    '.
               l  ニニニ、/!  [! (   '.   Vニニ7       }
      /     ハ  ニニニニニ|  マ、  ィハ    Vニ7        ′
     /       ',  ニニニニニ|  マ、ィ´  。    V       /


 ーーもしかして、すごくいい人かもしれない。


 7/9

 ……
 …

 「京ちゃん、お待たせ」

 「ああいや、別にいいっすよ」


 手持ち無沙汰にスマホを弄っていた京ちゃんがこちらに目を向ける。

 すると横にいた白望が京ちゃんに頭を預けた。


 「……何やってんですかシロさん」

 「京、お世話して」

 「いや自分で歩いてくださいよ……。

  部活まで運ぶとかめっちゃ白い目で見られるんですから」


           ___/ / /        \   \
           ⌒フ / ,  /   l 〈     \\ \
           /  / /  /  /| \      ∨ \ \
         /  / /  /-~/-| {  \~ー 、'   \ )
           〈 /   |  |八Ν__八{   | _\  ∨  l|′
          /    l|  l ァ┼ ┬ \N┬‐┬  | |  リ
        〃   / l|\_从 乂゚_ノ     乂゚ノノ}∧l/}
          八/ / ,八 入         、   ,,, ,′ ト、ノ  「大丈夫。今日は照の許可も出てる」
.             { /   }\__              ′ |
.            从  八{ 込、   ∠>  . イ^| }八
                ∨  \从_}> . __ イ 八jノ  )
                   / \__  Κj/
                    _/  //〉_∧ ‘,
               /:.∨ ,///   ∨ }: : ..
            . .:´: : : : :∨//\__//∨: : : : : `ト、

             /∨: : : : : : : :∨\:i:i:i/ {:.: : : : : :.:| \
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                                '――‐y'::::::::::::/ l::::!:::::::::::::::::!\:::::::::!::::::::::::l:::::::::::!
                       _  __        l::::::::::::/ ̄Ⅵ\:::::::::::厂 ̄\l:::::::::::/:::::::::::!
                        | γ´__`Y       |:::|:::::/ ニニ   \_,イニニニ  ∨:::/:::::::::::::!
                        |  し’/ /        |:::|:::::! |:::::|     |:::::::::|   l:::/:::::::::::::::|
                          乂ノ  し′      ∨》::l 乂ソ       乂_ン   ル’⌒):::::::::|
                     ◯  ◯          /::/            U   /:::::::::::|
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 8/9


 やられた。

 これが狙いだったみたい。

 とは言っても、借りを作ってしまった以上仕方ない。

 今回は何も言い返すことができない。

 白望はこっちを向いて笑った。


     /        /      ,                        \
    /      /       /|       |        ',      ',      ヽ
  γ/     /        /  .!        | \ヽ\   ',        ,      ヽ
  ./_    __/ /    /   _ !        | _  ヽヽ ヽ  ,         '      、 \
      ̄   〃    /~ ´`´ ',      |´`  ヽ~ 、 .!     ! ',\    ヽ\、
      / !/ {  〃          !     !    ヾ  ヽ|      |ヽ   ヽ、   }
       /  , ./ ! _ ≧==== ヽ! \  _|=====≦   ||l   | | |    ヽ, /
    ./      、{ ! ̄{::::o::::::}          {:::::o::::::::} ミ、| l    ' 〃      ',
   /     〃  |  弋::::::::ノ        弋::::::::::::ノ  〃 |  /  \       '
        //   .!                     /  ムイ    \    |
   !,'!   /, '     .|   ' '     '       ' '           ヽ      、ヾ |
   |!%  /,'  ,'    |                        {   、     ', ,/
    % |!'  !   '                       / .|       !
          l   ヽ       ,-‐-‐--,             ノ   ヽ    |   「……ふっ」
         ,!    ヽ       ̄ ̄          ィ--    |  ヾ  | |
          丶  {   |  、             イ  /l    '  | | / '
           \!  !  !     _   < |/! /   !   イ  / }/ /
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         ._        ヘ--!    ----―‐、
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     /   /三三>'"    V /  |      /三三三"      ヽ


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      :|...|....|┬─┬    ┬─┬ |............|:
      : |...ト..| 乂:::ノ     乂:::ノっ|............|:
    :i|...|....|                 |............|:
     :||...|..人     , _       人.......l..|:   「くそう、くそう……」
      八Λ.....>      _   .   <......../|/
      \|\_,ノ⌒ 〈___/ ⌒>‐-ミ:

      ;/ ̄ |:\ ∧ /  /:::::/  \;
       :/   |:::::::\ ∨_/:::::::::/   ハ:
      :/     \:::::::Χフ:::::::::/
     /        ̄/:Τ:< ̄        ',;
     ;\   |    〈::::∧:::〉       |  /:


 9/9


            --   >   ̄   ` 、  __
         /     ム __      `/    ヽ  _
        ム      >   | '' <  ,'  お  ,´ -- `
         >   ´  ..-||  ̄T  ニ二 !  .ん   |   ヽ
      /     Y:::。::|| i | -―― |   ぶ   | \
      ,         乂:::::||/ =-    /   し  |   ヽ
.      /          〃/      ̄!  て  |
     /      `      /  -‐ ''"/  ',   :  | ヽ
     l  !}            i/    ∧.  :  /  l
    ',           __  〃|    / 、___/ }  |    「いいから」
   / 、        Y:::。::|| //!   イ   /   ,'  !
 ̄ \   \        乂:::::|| 〃 イ/    '    /   、
\  \_ \          ||// /  /   /  ヽ
  \ ´   ヽ>x        /   ./!    / /ヽ 、
  /         \ ヽ  ー、 /    /     / /  ヾ  、
  /           ヽ / ー‐/ 〃  / /   ' .{/ヽ   } } !ヽ
. /            |!〃  !∥  / 从   | |!  l  j  リ }


                ,.  ⌒ヽ、/⌒ 、-- 、
               /_,..-         ヽ  `  、
             / /´     /    ∨   \
                ,  ´      / ,'     :    、 ヽ
           /   ,    , / /|  |  :.  | | |    ∨
         _/   / /  |_|__'_|  |   _}_|_|_| |  | :
         ̄ ̄´/ イ '  { ´| |/__{  |: , ´/}/_}∧ |  | |
            / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | |

            / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{
            ´/イ }从lム     ; \     ,ノ /  \   「……俺の意思は?」
                    | ∧ U         ∧,イ
                   Ⅵム    -  -    イ //
                _ヽl\       //イ__
                |////} `  ー  ´「////|
                |////|  :.   / |/[__}/|
                ,...<////∧  ,     |/////> 、
          , <///////////\   ///////////> 、
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 カン!

すぐにおせわはネタがあれば続く


 1/10

 625
 浮気チェック


 須賀咲ちゃんです。

 今日は久しぶりの女子会です。

 和ちゃんも優希ちゃんも年度末は忙しかったみたい。

 京ちゃんも大変だったみたいだし、専業主婦の私は応援するしかないんだよね。


 「いやー、年度末はしんどかったじょ」

 「本当ですよ。

  今年受け持つ生徒のことを考えなければいけませんし」

 「そっかぁ。

  和ちゃんって一年ごとに変わるんだもんね」

 「学生時代の一年間ってすごく長く感じたけど、今は短く感じるじょ」

 「そうですね……。

  他の職に就いた人よりは長く感じるかもしれませんが、それでもあっという間ですよ」

 「私なんかずーっと仕事尽くしだし、すぐに一年経っちゃうじょ。

  出会いもないし……」

 「あはは……」


 ジト目でこっちを見る優希ちゃん。

 優希ちゃんにそうやって見られる分にはいいんだけどね。

 その言葉を言うと横の人が……。


 「出会い、そうですよ春は出会いの季節ですよ」

 「えっ、なに?

  教え子に手を出したの?」

 「失礼な!

  仕事はちゃんとやってます!」

 「(仕事じゃなければ手を出すのかな……?)」

 「(というか小学生相手だじょ……)」

 「風評被害です!!!」

 「あ、うん……」


 いや、仕事はちゃんとやってるって知ってるんだけど、どうしてもね?


 2/10


 「この前(※1)も警察のお世話になってたし」

 「えっ、のどちゃん何やらかしたの」

 「明らかに誤解を招く言い方をやめてください!」

 「優希ちゃんは聞いてないんだ。

  子供を監視する不審者が出るって話があったんだけど、登下校を見守る和ちゃんだったって話」

 「ああ、そういう……」

 「ゆーきも納得しないでください!」

 「というか警察にはちゃんと説明できたかー?」

 「うん、私も着いて行ったんだけどね」
 

 ※1 みやながけ6スレ目 【地元の取り締まり強化】


 3/10

 ……
 …

 ・この前


        ,.. . -‐==:.:ニ二ニ:.:ミ.
       /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`:.:.、
      /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:才ァ
    ′.:.:.:. / ̄___ ̄`ヾア .-=ミーミ:.:.:.イ

    :.:.:.:.:.: / /.: -=ミ:.:ヽ/.:.:.:.:.:.:.:ヽ v.:.{
    }:.:.:.:.:.{. /.:./    V:.:.:.:.:./⌒ヾ:ハ}:./
   /⌒v.:.} }:.:.{ r ⌒,ゞ:.:.:才,`ヽ }才.ハ

   { ハ }才≠ ー- 彳  `ヽー "  ′}
   { }.} }:.{ i    r'    :}ハ    i ,
   ∨ヾ }:{ U    乂r- 、__.レノ    !/        「またあんたか……」
     \ 毛 `゙   , , ; ;_;_ ; ; ; , ,   イ′
      ',i 、   ,才" j,.に`ヽノ   /
     .才 .\   ゝ '"     ,  /\
    /. :{ ヽ ≫ , ,         ,/ }: : \ー- ..,
 . イ. : : :∧   \ >≠-i-i-≠彳  }: : : : }: : : : : : ー-. ..,_
: : : {: : : : : : \ー-  ..,_   }ノ  _,...才イ. : : : {: : : :ー- : : ..,_: ハ\
-‐: {: : : : : : : : .\     ̄ ̄   /. : : : : }: : : : : : : : : : : : : }: :.ヽ
: : : {: : : :_,.. -‐ーミヽ       ./--: 、: : : ′. : : : : : : : : : : ::}: : .∧


. /: : : : : : : |: : .:i:.|:.:.:.:i| |:.:.:.:.:.:.|!:.:|i:.:| 、:.:.゙、::、   ゙、゙、:::::::::::;::イ/:::::::::::::::i:::::
./ : : : |: : :i:.|:.:.:.:i:.|:.:.:.i| |:.:.:.:.:.:.:.|!:.| i:.:i 、:.:.:、:.、::.:.:.!:.:iヽ/:.:.:.|/:::::::::::::::::i::::
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!:.i |: :.:| .:.:.i:.!:.:.:.|!.i! :l |:.:!:.:.:.:.:..i:.:.i ゙、! _/ハ:ハ/ |ィ;.:.,.-‐-、!:/.:.:.:.:.V/

i :|.| :.:.:i   i i_:|、!、:.:.! i:!、i:.:.:.:.:.:.i:.:.i _;彡';tr=、 ヾ、"' /ヽ |':.:.:.:.:.:.i:.:|:.:.:.:
. ! i:i!  | ..:i :i:.:.:i`iー>ト-!、丶:.:.:.:.:i:、^V i_;:::::::ヽ /      i: : : : :.:|:.:|:.:.:.:
 、:!:i、:.:.i:.:.:.:.|:.i:、:.7メ'f:::::::ヾー\:.:.:.:、`ヾ  <;;;:ン ′     ノ : : : :.:.:!:.|:.:.:.:
  ヾi 、:.\:.:\:.]〈  っ::::;:i    ̄`            _,∠|:|: : : : .:|:.|―-   「誤解です!!!!!!」
    ヽ!:.i、`゙ー-r≧   >≠    ,      " "   /  |:! : : : :.:|:.!////
     |:.|:.:.:.:.:.:.:\!  ,, ,,                /   i!: : : : : ::i:.i////
     |:.|: : : : :.:.:.i i       r== "ヽ      /   i: : : : : :.:i:.|////
     | |: : : : : :.:i:.:|\     ∨__ノ)   /    /: : : : : :.:i.:|////
     |:| : : : : :.:.|:イ |:::|l`ー-..、    ̄ ̄   /     / : : : : : :.:|/////
      |.|: : : : : :.:|:∧ i:.:!i::::::::::::::`i ー-‐ '    ,..-‐:/: : : : : : :.:.i!/////


        ,. . . -――- . . .、

      ,. :' : : : : : : : : : : : : : : : :>.、
    ./ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
   /: : : : : : : : : : : : : ,ィ: : : : : : : : : : : :ヽ

   /. . . . . . . .    / l: : : : : ト、 : : : : : :.
  ,' : : : : : : : : : : : : /  l . . . . l .',: : : : : : : :.
  ,' : : : : : : :l: :,i : : / U l: : : : :!  ',: : :l: : : : :.
  i: : : : : : : :l /{ : /-一' レl: : ノー-,: : l: : : : : i
  !: : : : ;、: :レ l〃⌒ヾ  l/ 〃 ヾ: :l : : : : : !
  ',: : f⌒\{  {l   l}    {l  l}Ⅵ : 、 : : !   「また……?」
  ',: {      乂_ノ     乂ノ .l: : :} \ノ
   ',:乂_          `    .!ヘ:ノ
   ',: : : : 丶、 U   ,--、 u  ノ

    ヽ{\ : : ㍉      ̄   ,, ''
       `^≧|   ┬ァiフ¨
      ///∧   Kヽ、

     //////∧    }//> , 、
    / \//////∧ー―l///// }


 4/10


 ……
 …

 「そう何回も何をやらかしてるんだじぇ」

 「たまたま事件に巻き込まれることが多いだけです!

  私が何かしたわけじゃありません!」

 「さすがに親友……友達……知人が犯罪を起こしたなんて思ってないよ」

 「随分と格下げされてるじゃないですか宮永」

 「冗談はともかく、何でそんなに巻き込まれてるんだろうね」

 「江戸川コナン並の遭遇率だったり?」

 「実際変な事件に巻き込まれますね……。

  何もしてないのに生徒の親に不倫だ不倫だと騒がれたり」

 「それはこのおっぱいがいけないじょ」

 「ちょっとゆーき。やめてください」

 「確かに和ちゃんがいたら普通の人妻は不倫されないか心配になるよね。

  このおっぱい」

 「嫌味ですか。嫌味なんですか?」

 「(黙ってれば可愛いのに……)」

 「のどちゃんは高望みしすぎだからなー。

  咲ちゃんは不倫される心配はなくて安心だな」

 「京ちゃんが浮気?

  あはは、ないない。

  そんな度胸ないよー」

 「咲ちゃんもちゃんと浮気チェックやってるかー?

  スーツの中からいかがわしいお店の名刺が出てきたり、香水の匂いが漂ってたり!」

 「……そういえば気にしたことないかも」

 「もし変なことしてたら言うんだじぇ。

  私が成敗してやるからなー!」

 「……」


   / : : : : : : : /: |i: : : : : : : / : : /     | : : |\: : : :|: \: : ::∨: \
.  / : : : : : : : : : : : |i:: : : : : ::/ : : >ト .,   | : : |  |: : ∧ : : : : : :|: : : ::ヽ
.  .: : : / : : : :   | ::八 : : : : /{/,.斗=ミ.  |: : / |< ̄:|: : |:::∧: : : : :.
  ′: : : : : : : : : :|: : : : : : : / . ,ィ´ん):iト,   |/  .斗=ミ|::| : :Ⅳ ∧:: : :::|
 | : : : |i::∧: : : : :!: : : : :\{:| 〈  {h:::iノ }       ん)ト |/!/ |: :∧ : : |
  : : ::|i::|.∧ : :: :|:: : : : : : : :,  .乂こン        {h:iノ}  ゚: : :| : : | : : :/
.  \八|  |:: :::|: : : : : : : : :,   .,.,.,.      , 弋こソ {: : : ::|: : ノ }/
       |: :\! : : : : : : : : :,              ,.,.,  : : : : |/
       |: : : : : : : : : : : : : :,     ゝ    ,      } : : : |
       |: : : : ::|i: : : : : : : : :              イ : : :/    「(ちょっと焚き付けすぎた?)」

       |人:: : :|i: :|: : :|:::|i: :}>            イ: :|: : :
.           \八/\人八/}    ー┬‐ ≦: :人/|/
                 {^辷ー^ヽ/\/ヽア:/

.          ,r‐=ニニ二二二\           〈二ニニニニニニ┐ :/
.           /  -=ニニニニニニニ.\        ∧ニニニニニニニ.!∨ /
.       /      -=ニニニニニニ\ Y⌒Y⌒Y}ニニニニニニニj{. ∨


 5/10


 ……
 …


 別に優希ちゃんが言うことを間に受けてわけじゃないしー。

 ヘタレ京ちゃんが他の人に手を出すなんて考えただけで笑っちゃうよ。

 気にしてないもん。


 ……


 今、京ちゃんはいない。

 私は家事をすませないといけない。

 うん、何も間違ってないよね。

 スーツをかけ直したりするのもおかしくないもん。


 「変な名刺とかはないけど……!?」


 スーツを触った時に少し匂った。

 いつもの京ちゃんの匂いじゃない。

 女性ものの香水の匂いだ。

 おかしい、昨日帰ってきた時にはなかったはず。

 だっていつも帰ってきた時にはスーツを受け取ってクンカクンカスーハースーハーしてるもん!!!!


 つまり、休みの間に私の目を盗んでそういうお店に遊びに行ったり!?

 あるいは浮気したり!?

 ……。

 いや、違うでしょ、これ。

 私にはわかるもん。京ちゃんは浮気したりしないもん。


 6/10


 「でも浮気チェックはします!」


 というか、この匂いに覚えがある。

 ちょっと考えるけどイマイチ思い出せない。

 簡単なことのはずなのに思い出せないことってあるよね……。


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´      |i:/.:.:.:.:.:::::::.             /:::::i|::/.:.:.:.:.i|.:.:|   「咲、どうしたの?」
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:込、    ´ '      イ:::::::リ/.:.:.:.:.:八:i|
      i:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:|:::::::.....       /|::::::/.:.:.:./  :リ
      |.:.:.:.:.:.ト.:.:.:.:.|:::::::::::::>.、_     |:::::/.:.:./   ′

       八.:.:.:|.:| \:|:::::::::|i::_, く}        ト/.:/
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. /  .:.:.:.: |:.:.:.:.|  \||:.:\:.:.::. ィX笊竺心j:/|:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.|

/    イ从:.:.:| ィ/笊匁、 \:.:..   ノ{:::::::ハ |:.:r-x:.:.:.:.:.: |

ー    |:.:.:.\| i| ノ{:::::ハ      乂ー-ソ j/  V:.:.:.:.:|
      |:.:.:.:.:.:. 从乂ーソ               .:.:.:.:ハ|
      |:.:.:.:.:.:.∧      ′    ""     /:.:.:./
      |:.:.:.:.:.:.:.:ハ ""             厂:.:.:/j/   「京ちゃんのスーツから香水の匂いがしたから気になって……」
      |:.:.:八|:.:.八      r-,     /:.:.:.:/
      |:./  \:.:{\          /  |:.::/
      |:     \  >  .. _  イ   リ/
                  __]       {___
                _/三l       /三三三≧=-__
           _x<三ニ/´ /     /ニ三三三三三三三>

.         r≦三三ニニ/      /三三三三三三三>´
         /|三三三三ニ{____/ニ三三三三三三>´      \


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 ーーあれ?


 私がそれを言った途端、お姉ちゃんの顔を真っ青になった。

 そう思ったら今度は顔を真っ赤にする。


 「まさかお姉ちゃん!

  また無断で京ちゃんにくっついたの!?」

 「ち、違う……」

 「?」


 こうなったお姉ちゃんが嘘をつけないのは知っている。

 もじもじと可愛らしく体をくねらせるお姉ちゃん。くそう、かわいい。


 「あの、その」

 「なぁに、どしたの」


 お姉ちゃんはよ! なんか言って!


 8/10


       -─===‐-ミ
   ´.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: 、
/.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: \
.: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: :ト、: .: .: .: .:`、
.: .: .: .: .: .: .: .: .|.: .: .: .:| \.: .: .: .: ',
.: .: .: .: .: .: .: : |.: .: .: .:|   \|.: .: : :.

.: .:|.: .::| |.: :‐/、|.: .: :l .:|   -‐.:|、.: .: ::.
.: .:|.: .::| |.: :/  |.: .:八ノ    ハ:.:|::. :.
.: 八.: :|┬─┬}/  ┬‐┬‐ .:.:|`ヽ}

.:/⌒ヽ} | :::::: |   三 | :::::|  .'.:.::|
.:{    '└─┘    ̄ └‐┘ l.: .:|
人_    u              j.: .:|     「昨日、使いました……」
i.:.: .: .>      )‐┤    イ.l: ::'
i.: .: .:i .: : _;〕ト  _/| h ≦.:.:.|: 八/
ト、.: .:|/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/

| \{ .,_  \|     |/ ハ
  / ヽ >   |    ノ / ∧


               ___
         ,. : : : : : : : : : : : : : : .、

         /: : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ、
       .': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :、
      ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ

     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::.

     .': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :、: : :.
     {: : ,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :}: : l: 、
     |: :,: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /): :|: : |、: :.
     |:∧: : : : : : : : : : : : : : : : : : : イ{∧:|:|: : | \〉
     }'  、: : : : : : : : : : : : : : : : l: / Ⅵ/∧: :!
       ∨:、: : : : : : : : : : : : :/イ  u |/  ∨     「……」
          }:/\:|: : : : : : : : /    人
          /   -从-----イ{     イ
     _,.::―/:::::::::::::::::::::::::::≧≦--r---、

     /:/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://:/`ヽ
     ,::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ {::{  ,:∧
    /:{{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |::|/'  }
    {::|| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::|   |
    |::|| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::|   |
    |::|| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::|   |
    |:::ー====================_'_」::|   |
    ´ T T ―r――r、―――――‐ '     }


 9/10


 ……
 …

 とりあえず場の雰囲気的に何も言えなかったので解散!

 なんか前にも同じようなことがあった気がするよ!


 まったくもー。

 人の旦那さんで何してるの、もー。

 私じゃなかったら大変なことになってるんだからねー。


 ……京ちゃんのスーツ、ねぇ。

 下着は分けあったことあるけど、スーツはなかったなぁ。

 なるほど……。


    ∨: : ::/: : : : ::/: ; ≠/77─.-: /!: | !: : :‐ト l、!: : |: : : : ',: : : : : : |: :  ',
    ∨: /: : : : イ´: :/ // : : : : :/ : :! |: : : l l::!l:`:ト、: : : :! : : : : : | : : \
    ',::l: : : : : : l: : / /'  ,'⌒: / /:/  : : イ` !: |::∧|:\: | : : : : : l:!:l: : : : :
     ト、: : : : : j: / /   /: :/. ,':   l: ::/   リ レ  lヘ: : :|: : : : : :l:ト|: : : : ヽ
     | :!: : !: : V |_ 三!∠、  /   : :/--_./-   ヽ ',: :! : : : : :, :!  ヽ: : :\
      |: : l :| /{:::;、:::::::::::/ト     レ' イ::::::三::::ト、  ヽ:!: : : : :/::l       ̄
      ト、: ',:l ヽ 廴Y二!ニヽ .::::::::::::::.... 廴Y::ノ::イ` ゞ/:y: : :ノ:/: : !

.       ∧:',:!         :::::::::::::::::::::::    ̄ ̄   {イ: /:': : : :{
      :|  \   /////      '    /////⊂ レ イ:i 、: : ::
      :|   !:ト、                    ,'  /::/ \: ',
 |      ::|   ',:li:ヽ      `ー --         ノ: :{     \    「……んっ」
 ',     :|    l::li::::'.,                ノフ ヽ:',
  ',    :|     ::li:::::::ト              <{: /   丶
      :|   /∧::li::::::ヽ >       イ    `
   ',       // ',::::li::::::::\  ` - ´  ,'
    ',.    //  ∨:li::::::::::::\       {.、


 10/10


 ……
 …


                ,.  ⌒ヽ、/⌒ 、-- 、
               /_,..-         ヽ  `  、
             / /´     /    ∨   \
                ,  ´      / ,'     :    、 ヽ
           /   ,    , / /|  |  :.  | | |    ∨
         _/   / /  |_|__'_|  |   _}_|_|_| |  | :
         ̄ ̄´/ イ '  { ´| |/__{  |: , ´/}/_}∧ |  | |
            / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | |

            / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{
            ´/イ }从lム     ; \     ,ノ /  \  「今晩はうどん?」
                    | ∧           ∧,イ
                   Ⅵム    -  -    イ //
                _ヽl\       //イ__
                |////} `  ー  ´「////|
                |////|  :.   / |/[__}/|
                ,...<////∧  ,     |/////> 、
          , <///////////\   ///////////> 、
        , </////////////////}____{/////////////////> 、
      //////////////////////|    |////////////////////∧
       {/////////////////////∧  ,'//////////////////////}
       |//////////////////////∧ ////////////////////////|


            _,.......---............_
         ,. : ´: : : : : : : : : : : : : :` : : . 、
         /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
        . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
      ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .
     /: : : / : : : : : : : : : : : |: : : :ヽ: : : : : : : : : : :'
    .': : : /: : : : : :/: : : :/: :.| : : : : |: : : : : : : :、: : :.'.

    |: : : |: : : : : /: : : ,イ: : ,:|: : : : :ハ: : :l: :|: : : :V: : '.
    |: : : |: : : : 、|__/_}__/Nノ: : N、|_}_,:|: : : : | : : :'.
    |: : :ハ: |: : : ハ: / /:イ  }: :/:/ }: ∧:/: : : : ト、}: :.|
    {: : {-从: : :{/ ̄ テ雫ミ/イ /イ }イ雫}: : /:/:| リ\}

    八:{、:、__ \:lヽ  Vり         ヒり/:イ:/: :|      「今日は忙しかったの!
      `\}、: 、    /:/:/:/:/:/:/:/:/ ム:/:人: :{
     , --r--,\ ,-- 、_____  人: /  \〉      全部京ちゃんが悪い!!」
      /  |::| |::::::>  ____ソイ⌒∨
    {   ,::, {::::::::::::∧-,  r/:::::://|   }
    |   \、\::::::::::∨- /:::::://:/

    |     { 、、\:::::::∨/::::://:∧    |
    |     | \__>、_}'__>´/}   |
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 カン!

京霞もまだまだやるよ。別次元もやるよ


 1/8

 【ちょろい】


 ーー今日こそは言うぞ。絶対に言うぞ。


 須賀京太郎は大きく息を吸い込んだ。

 最近、照と白望に振り回されっぱなしだ。

 男性に人気のある二人に気に入られるのは、普通ならば喜んで受け入れよう。

 しかし、二人の甘え方は普通と少し違う。


 『京ちゃん、お菓子』

 『京、お世話』


 思い返されるのは自分の部屋でダラダラとお世話を要求する二人の姿。

 家に帰って苦手な料理を作り、ひな鳥のように口を開ける照にポッキーを食べさせ、動きたがらない白望を運ぶ。

 これはもう、男と女の関係と言うには程遠い。

 美少女二人に好かれているというのに、まったく嬉しくなくなってしまった。

 それに加えて二人の要求もどんどんエスカレートしてきている。

 やれ一緒に寝てだとか、お風呂で背中を流して欲しいだとか。


           ,  ⌒ ー   ̄ ̄  、
         /_,. -            \
        /´ /     /⌒\      ヽ
        , ´ ,         V     :.
       /  /  /  / /      | V : V |
     /-- ´' / /  / l|{     | l| | | {
        / イ  {  ':|_,斗| |  、_l__/_ィ  |l∧
         /  ,: ∧ | {∧{ {  、 /}/}/ } /∧|
       / イ / {∧{ 、__,.V {∨ 、_,/ イ}' `   「もうこれ完全に男として見られてないよね……」
       ̄´ V∨乂l      \    ムイ/
               从      '     八/
           -〈〈/\  v-っ  イ》く__
        /////∧\} > -- < |//}///> 、
       /////////\}     「/〈////////\
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 2/8


 そこで襲いかかるくらいの気概を見せれば違うのかもしれないが、母親の心境と化した京太郎はそんな気にもならない。

 本当にどうしてこうなった。それだけである。


 ちなみに余談ではあるがさすがにお風呂には入れないので、二人を無理やり押し込んだ。

 出てきたときには白望が勝ち誇った顔をしていたのをよく覚えている。




     /        /      ,                        \
    /      /       /|       |        ',      ',      ヽ
  γ/     /        /  .!        | \ヽ\   ',        ,      ヽ
  ./_    __/ /    /   _ !        | _  ヽヽ ヽ  ,         '      、 \
      ̄   〃    /~ ´`´ ',      |´`  ヽ~ 、 .!     ! ',\    ヽ\、
      / !/ {  〃          !     !    ヾ  ヽ|      |ヽ   ヽ、   }
       /  , ./ ! _ ≧==== ヽ! \  _|=====≦   ||l   | | |    ヽ, /
    ./      、{ ! ̄{::::o::::::}          {:::::o::::::::} ミ、| l    ' 〃      ',
   /     〃  |  弋::::::::ノ        弋::::::::::::ノ  〃 |  /  \       '
        //   .!                     /  ムイ    \    |
   !,'!   /, '     .|   ' '     '       ' '           ヽ      、ヾ |
   |!%  /,'  ,'    |                        {   、     ', ,/
    % |!'  !   '                       / .|       !
          l   ヽ       ,-‐-‐--,             ノ   ヽ    |   「……ふっ」
         ,!    ヽ       ̄ ̄          ィ--    |  ヾ  | |
          丶  {   |  、             イ  /l    '  | | / '
           \!  !  !     _   < |/! /   !   イ  / }/ /
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         ._        ヘ--!    ----―‐、
       /  <三三ニ>'" ', !  /|      ヽ--==ニ> ̄ ̄`ヽ
     /   /三三>'"    V /  |      /三三三"      ヽ


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       :
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   :/.......................|........ト、..............................ヽ:

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      :|...|....|┬─┬    ┬─┬ |............|:
      : |...ト..| 乂:::ノ     乂:::ノっ|............|:
    :i|...|....|                 |............|:
     :||...|..人     , _       人.......l..|:   「くそう、くそう……」
      八Λ.....>      _   .   <......../|/
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 3/8


 「(でも、それも今日までだ)」


 心を改めて厳しく当たる決意をする。

 せめて親鳥とひな鳥の関係を改善したい。

 あわよくば女の子の料理を味わいたい。

 聞いたところによれば照も白望も料理が出来るらしい。

 どうしても男の料理しか作れない自分よりかは遥かに上手いはず。

 年上のお姉さん……お姉さん? にそうして貰えるのは憧れだ。


 「(せめて当番制、いや週に一回でも……)」


 すでに心が負けていた。

 代わりに体を……なんてレベルにはとてもたどり着けそうになかった。

 というか、考えつきもしていない。


 ちなみに、京太郎の前ではない照はいつでもにこやかな人気者だ。ーー白望はそんなに変わらない。

 自分には向けてくれない笑顔を他の人に向ける照にちょっぴり心が折られている。


 4/8


 ・他の人に対する照の態度

                . . .-‐…‐-. . .
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            ′ー―ァ: :/: :从: : : ト--ミ: i: : : :|: : :'
          ′: : : ://⌒/ }: : :リ }: :ハ:|ト: : :i: : : ,
.         /: |l: : : |l ∨__|{  }: : / レ'  }| }: : i: : : :i
       /: :从: : 八《´んハ. j/ r==ミ /: ::/| . . .|

        // _ }ト: : :ハ 弋 ソ     :::::: 厶イ: |: . . |
      /^  / }|l: ≧ゝ} ::::::  ′__    /-' i: :|: . . |   「頑張ります! ブイっ!」
.      ' .i / / }: : ::::::人    f  ノ ./:::::: i: :|: : i |
.      i し' ./ .i} i: ::::i:::::>o。..   < i::::::::/::/: :/: |
    ノir―-ミ  |:∧:::八::::::::::r'ス´ / ゝ-、 :/}: / }/
   f入 `ー  〉 /'  V_ゝ/.〈 Ⅹ  /  i`/イ、_
   辷ーく  /   /   /  rヘ/__rヘ_/   |    ヽ
   { ̄`  入    i   /  | /:::| / .       /  ハ
.   Y   i 圦   |.  `> 1 /::::|l ∧ _彡  /
    ハ.  // ‘, 」:::/ /  |/::::::|l/ \    /     |
.   /八_//   ‘ {:::;′〈 .   |ト、/    〉__ i  \/
   《`ーイ:::   V:::{   ‘,   |i i/    /  | |    〉
   ヽ:::::::::::::..  L::i ..........ゝ. У_彡 .........| |   ./
      マ:::::::::::.   八:::::::::::::\く  L:::::::::::::| ′  {
     `マ::::::::.   :∧::::::::::  ヽ} ::::::::::::::::::::/   .j
       マ:::::::  }i :::i    Oj   :::::::::::    /



 ・京太郎に対する照の態度

           -‐──‐-

       . ´          `ヽ、
      /
     /                 ,
   / /   /|    ト、        ′
 ∠._/   / i|    i \      〕
    〔  |/ 八〔\ .'   \   /
.     |∧ :| ┯:┯  V ┯:┯∧ /   j
    ' ∧|  乂ノ     乂ノ   ∨、   |
.     /:Ⅴ         ""  ノ   |
    /::::入_           _  < / /| /  「京ちゃん、お菓子」
  /\ /∧ノ  へ ̄ ̄/  \リイ/ / 〔′
   ̄\\  r‐'   \/  //\ /
     \ヽーヽ └─ー/─'  \
      丶ー|   〉 〈   |  〈

           |  .〈∧/    !__/
           |        | |


 5/8


 ……
 …

 意を決して二人がいる部屋に入る。

 余談だが京太郎が一人暮らし。2LDKの部屋を借りている。割とお金持ちなのだ。

 家を占領されていることについてはもはや何も言うまい。


 「京ちゃん、お菓子」


 早速京太郎に気づいた照が声をかけてくる。


 「ダメです。もう少しで夕飯です」

 「京、ご飯」

 「ちょっと待ってください。もう少しで出来ますから」

 「運んで」

 「……はい」


 ーーダメだこれ! 負けてる!


 気づいたときには白望をお姫様抱っこでキッチンがある部屋に運んでいた。

 照が頬を膨らませていたがそちらに気を配っている余裕はない。

 本当はおんぶをすれば背中に胸が当たって幸せなのだが、それを素直に享受できないのが京太郎だった。


 ちなみに、お姫様抱っこされている白望の顔は真っ赤である。


 6/8


 「今日はチャーハンっす」

 「「いただきます」」


 男らしい荒々しい味付け。

 年頃の女の子が毎日のように食べるには向いていないはずだ。

 しかし美味しそうに食べる二人に心を許しそうになる自分がいる。


 ーーいかん! 今日こそは強く言うって決めたんだ!


 「あの、そのですね」


 あわよくばご飯を作って欲しい!

 しかしそう言って自分から離れて行ってしまったらどうしよう。

 強い葛藤。


 7/8

          〃-‐‐-----‐'/´
       ,, - ''       ー '、 
       ´             ヽ\
      /   /    |    |  ヽ \
    /   ,/     /|   l    _<
   ィ    /  十/┤  十ト l  ハ 
     ̄|   {   示芸 \ |示芸!   }
      j   Y\|廴 リ    廴リ,!リ ノ    「京、いつもありがとう」
     /    廴 ///   /// | }
      {/ヽ|\、, > ___ _-__,  イN/
           /  〉 | 〉、 "
         /`ヽ::ヽ〈 V/l::ハ
        ,'   |:::::ヽ「」/::::::ヽ,
        l    !:::::〈/ヽ〉:::::::::}
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           /: : 〃:/:/|:从-、}:、: : : :.|-从}-Ⅵ : : | : |: : |
         /: : ィ: : :{: |r----从\: : |, ---- ミ: : :,: :/: : ,
          ̄´  |: }从:{   ⌒Y   ∨  ⌒Y }: :/}/Y : ′
           |: : : :/   乂_ノ     乂_ノ /:イ  /: :,′
           |: : : { ////        ////r-: ': : /  「京ちゃん、美味しいよ」
              从: : 乂      ^ー(    イ: : :/: :/
            ∨: {:从{¨¨, ィ「 ̄ 7¨´、_: 从:イ: :/
               \|  / \ ∨^/  />/' }:/
                 / |乂\∨_,イイ/  }
               {/⌒ア `ー介 -‐´ {__〉
               {`ー∧ /:∧:.、  |- r'


               __  /⌒ヽ
                 ⌒\ ∨   ヽ___
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          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \  「……ま、いっか」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
                     ___|     |//////|
                   {|___ノ  __|[_]//∧_
                 /// |____|///////////> 、

                     ///// |   /////////////////> 、
               /////// { //////////////////////}
             //////////∨///////////////////////|



 ーーかわいいは正義。


 8/8


           ___/ / /        \   \
           ⌒フ / ,  /   l 〈     \\ \
           /  / /  /  /| \      ∨ \ \
         /  / /  /-~/-| {  \~ー 、'   \ )
           〈 /   |  |八Ν__八{   | _\  ∨  l|′
          /    l|  l ァ┼ ┬ \N┬‐┬  | |  リ
        〃   / l|\_从 乂゚_ノ     乂゚ノノ}∧l/}
          八/ / ,八 入         、   ,,, ,′ ト、ノ
.             { /   }\__              ′ |     「(京、ちょろい……)」
.            从  八{ 込、   ∠>  . イ^| }八
                ∨  \从_}> . __ イ 八jノ  )
                   / \__  Κj/
                    _/  //〉_∧ ‘,
               /:.∨ ,///   ∨ }: : ..
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    /             `、     :::∨::/           ∧


 カン!

なんか高ぶったので今日はもう一個
みやながけとか別次元のネタの細かい部分覚えてる人がいて嬉しい


 1/7

 583
 霞さんネタ


 石戸……いいえ、須賀霞です!

 今日も旦那さんを送り出して1日が始まるわ。

 私の旦那さんったら、とっても格好良くて優しくて、スポーツ万能で格好良くて優しいの!

 ああ、もっと聞いて欲しいけれど色々とやらなければいけないことがあるわね。


 「よしよし、いい子いい子」

 「かかさまー!」


 京太郎さんの高校卒業と同時に出産した我が娘。

 ふふっ、自分で言うのもなんだけれども私にそっくり。

 私のことを『かかさま』と言って懐いている姿が愛おしいの。


 「ほら、こっちにおいで」

 「ととさまー!」

 「あらあら」


 今度は京太郎さんが呼び出すと、娘は嬉しそうに抱きつく。

 あんな風に勢いをつけて抱きついても大丈夫なくらい、夫の体は丈夫です。

 現役のプロスポーツ選手なのよ! えっへん!


 2/7


 「おいで」

 「かかさま?」

 「あれ、そっちに行っちゃうの?」

 「ととさま?」

 「妬いちゃうわ。どっちがいい?」

 「うー! うー!」


 少し涙目になりながら私と京太郎さんに目線を向けている。

 ちょっと意地悪しちゃったけれど、可愛いだもん。

 娘は何か思いついたのか、私の袖を引っ張る。

 京太郎さんの袖も引っ張って、二人の間に挟まれる。


 「どっちも!」


 満面の笑顔を浮かべる娘ににやけが止まらない。

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          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \  「どっちもかわいい……」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
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               /////// { //////////////////////}
             //////////∨///////////////////////|



 3/7


 「えっ?」

 「霞さんもかわいいよー!」

 「わわわっ」


 京太郎さんが娘と私を一緒に抱きしめてきた。

 もう、いきなりなんてずるいわ!


 「どうしました?」

 「だって二人ともかわいいし」

 「か、かわっ!?」

 「霞さんかわいいかわいい」

 「も、もう。

  京太郎さんは甘えん坊ね」

 「甘えん坊なのは霞さんじゃないですか」


 ひゃぅ!?

 急に昔のような敬語に戻されるとドキッとするわね。


 「ととさま、おひげがいたいよー」

 「あれ、朝には剃ったんだけどなぁ」

 「だめ!」

 「そ、そんなぁ」

 「ふふっ、剃ってくればいいじゃないですか」

 「ううっ、行ってくるから待ってろー」

 「ととさまいってらっしゃい!」


 娘がかわいらしく手を振っている。

 もう、それじゃととさまがいつまでも見惚れて行けないでしょう。


 4/7


 「ふふっ、ととさまも形無しね」

 「かかさまはととさま、好き?」

 「もちろんよ」


 娘をギュッと抱きしめる。

 うーん、自分で言うのもなんだけれども胸が邪魔ね……。

 娘も苦しそうだわ。でも離さないの。


 「かかさまーぐえー」

 「あ、あら?」


 本当に息が出来なかったみたいで、すぐに解放してあげる。

 もう! みんな羨ましがるけれども、本当に邪魔なんだから!


 「ご、ごめんね?

  かかさまのこと嫌いにならないでね?」

 「?

  かかさますきだよ?」

 「ふふっ、いい子ね。

  おいで」

 「~♪」


 今度は娘から抱きついてくる。

 ふう、これなら安心ね。


 5/7


 「ととさま帰ってきたよー!」

 「ほら、ととさまが帰ってきたわ」

 「ととさまー!」


 娘が今度は自分から京太郎さんに頬を擦り合わせる。

 もう、京太郎さんったらにやけちゃって、妬けちゃうわ。


 「京太郎さんが羨ましいわ。

  私、思い切り抱きしめると胸が邪魔で……」

 「邪魔って……」

 「もう、人には羨ましがられるんですけど大変なんですからね」

 「そっかぁ。

  俺は好きなんだけどなぁ」

 「ひゃん!?」


 そう言って軽く私の胸を触る京太郎さん。


 「だ、ダメです!」

 「けちー」

 「けちー?」

 「情操教育に悪いわ!」

 「ととさま、かかさま、けんか?」

 「そんなことないよー。

  今晩仲良くする予定だからねー」

 「ちょっと! 京太郎さん!?」


 いきなり何を言っているの!?


 6/7


 「いやぁ、明華さんが預かってくれるっていうから、甘えようかと」

 「そんな、いきなり……」

 「霞さんの胸の良さをじっくりと、ね」

 「だ、ダメよダメよ。

  まだダメなんだから」

 「『まだ?』」

 「もう、意地悪しないで……」


 京太郎さんが娘の前で私を抱きしめて耳元に息を吹きかける。

 そんなことをされたら私……。

 で、でもダメよ。娘の前なんだから……。


 「仲良し?」

 「そうだよー。

  ととさまとかかさまは仲良しだよー」

 「も、もう」


 京太郎さんったら……。


 「仲良いよな?」

 「は、はい……」


 そう言って京太郎さんは私の頬にキスをした。

 も、もう。こんなの生殺しよっ!



 ーーその夜はお楽しみでした。


 7/7


 ……
 …

 ・みやながけ次元の霞


           ,  ':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ::::..ヽ
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.         l::::: :::.l.    ャー‐ッ     /:::l:/::: :.l   「やっぱりこの世界が一番おかずになるわ!!」
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               _ -‐ァ'/       ´⌒ヽ  、 ヽ、_ 彡 ´
              /⌒ィ'´ /            ',  \  ヽ
                /´ア´ /  / /       !   ',   ヽ
            ({ /  ノ  / /       ! l    \   、   \
             `Y ィ´   / /    i l  '.   、 ヽ.  ',_  `ー-
             / /    /イ/i{    j{ j  、      \ ヾ  ̄´
            , ィア,' イ  /`7~ヽ   ハ 八  (ヽ    ト、 }  ー、
           j/ / { { イzx、_エ、  j |~~、 ヽ Y`ヽ }! ソ \}⌒j

             ´ {  ヽハ、{i  佞i「ヽ. ハ{\{zュ.jYハ }  〉ハ    ヽ.
             ∨   ハ `  ̄   \{ ヽ `芒!リイ ノ /イ     ハ
              ヽ { j! !    、     } ヽ!  〈 /フ   j!  / リ  「盗み見しすぎるのは趣味が悪い……」
               `ヘハ ト U        j       /´j}   ハ ノ
                  `  \  ゚ `   /    / ノ j_ノ ´
             _ -=ニ7⌒ヽ __ .. イ    / `7=ュ。_

            イ  「ニニニ7   人j  ハ   〈  /ニニニ´⌒ヽ
           ´ i  ニニニ{  /l] `Y  ',   V /ニニ/    '.
               l  ニニニ、/!  [! (   '.   Vニニ7       }
      /     ハ  ニニニニニ|  マ、  ィハ    Vニ7        ′
     /       ',  ニニニニニ|  マ、ィ´  。    V       /


 カン!

 みやながけ次元
 てるてる次元
 あわあわ次元
 だるだる次元
 デジタル次元
 グラビティ次元
 京霞次元
 京穏次元

 京照白次元
 京淡ネリ次元

 手が足りないね……


 1/9

 【恋する穏乃の恋愛計画】


 あの人を見てから胸がドキドキする。

 それを憧に相談してから何やら雰囲気がおかしい。

 何やら和と一緒に楽しそうに話しているのを見かける。

 私も一緒に話そうと思っていたんだけれども、二人の剣幕に押されて何も言えない。


 「しずは素材はいいんだからね」

 「そうですよ。

  健康的な肉体に元気な性格、男の子にとっては魅力的なはずです」

 「えっ、えっ?」

 「普段ジャージしか着ないんだけど、制服は似合っているのよ」

 「そうです!

  女の子らしい格好も似合いますよ!」

 「うえぇぇぇ!?

  ぜったいにムリだよ!

  だいたい憧も和もそういう経験豊富なの!?」


 自分の知らないところでそういう経験が豊富だったとしたら、友達として少し悲しい。

 憧も和も、穏乃が知っている時代から随分見た目が変わっている。

 それが男の趣味だとしたら……、なんだか胸がモヤモヤする。


 2/9


          . :´ . : . : . : .`: .

        /: . : . : . : . : . : . :\
       /: . : . : . : . : . : . :ヽ: . \
      /: . : . : . : . : . : . : . :‘。: . ノ:。
     .′ : . : / : . : . : . :ト : . :‘./-‐゚。
     |__: . : . : .i: .|: . : . : .|: . : . : .| ゚,:}ヽ/:.‘。 :  ぃ
   /:.┼{ ―--..|:._|__ : //八: . : . :| 匕 }: . }: ゚: . }リ
 /: イ: .|∧ ミ . : |: .|: //フ7¬ }: . /| ィi爪㍉}:.:|:ハ /

/: ./ | : |: ∧\ : |: .|厶斗=ミ /イ 丿 |:il刈  :.:l/}/
 :./  : ..|: . ∧ . : |: .|斤:i:i:(_,      弋''ツ  |: |: .i  ( \    -‐ 、
: /  | : |: . : ∧: .ハ:卞::i:lil刈             |: |: .|   ヽ у´   ___}_
/    : . l: . : . ‘:,⌒!ム ゞ…″     `  :':':':゚|: |: .|   │ r  ̄     }
    |: . 。: . : . :∧ い  ゚:':':':     -┐   }: |i:∧    |    ――‐{   「私、世界一位だし?(なんのことかわからないけど)」
    | : ..。 . : . : ∧、vハ      ゝ __ ノ  / : |i: .‘    |       ー―{
   /: . : ゚: . : . : . ∧:vハ`   ..,,      /   } |i: . :;  ′     -- ′
.  /: . : . : 。: . : . : .:∧vハ__     ̄{ ̄: .|   }/}: . :.。 /\    }、
  ′: . : . : .。: . : . : . : .ⅵ\>―‐n: . :.{   / l: . : ∨/ / \  /:.入
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    ヽ!:.i、`゙ー-r≧   >≠    ,      " "   /  |:! : : : :.:|:.!////   「私と憧で(薄い本出演数)ナンバーワンツーフィニッシュです!」
     |:.|:.:.:.:.:.:.:\!  ,, ,,                /   i!: : : : : ::i:.i////
     |:.|: : : : :.:.:.i i       r== "ヽ      /   i: : : : : :.:i:.|////
     | |: : : : : :.:i:.:|\     ∨__ノ)   /    /: : : : : :.:i.:|////
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 : // : /: : :ハハ:\:! {:{     }:レイ: :√}: : : : : i: }: : !: : : : : : : :ハ
. {:ハ: : l: : : ハハ: : i ̄{{     ̄/ ハ:ノ  !:!: : : :ハj : ;′: : : : : : : ハ
 Vハ: :ハ: : ハ〃rV/云       〒冗示ミ j:ハ: : /: : : ': : : : : : : : : : :}
    ∨ V: ハヾ{7///}      {7///} 〉 /:/ヽ: :/: : : : : : : : : : : }
        ハ:ハ 弋//ソ       弋//ソ イ: !  }:/: : : : : : : : : : :}: :}
       {: :ハ ,:,:,:,:,        ,:,:,:,:,  }: :} /: : : : : : : : : : : : ハ: }
       |: :| !      ′       u }: jイ: : : : : : : : : : : : : :} }:j   「そ、そうなの?」
       |: :| ヽ     、_,、_,        /}:.j ヽ: : :! : : : : : : : : : ! i:}
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      ヽ:ヽ   r≧....._  <..-‐: ̄//}  }: : ハ: : : : : : : : : :}
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   ,     ll::::::::::::::::::::ー::《:: ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/      V


 3/9


 「そうなんだ……。

  二人とも男性経験豊富なんだ……」

 「(えっ、別に男となんて関わったことないけど)」

 「(大丈夫ですよ。私たちはナンバーワンツーですから)」

 「(そうよね! 少女漫画の知識なら負けないわ!)」

 「(薄い本もありますよ!)」

 「ううっ、私だけ仲間外れだったのかなぁ」

 「そんなことないわよ。

  穏乃もこれから知っていけばいいの」

 「で、でも、怖いよぉ」

 「怖いなんてことないわよ。

  女の子はいずれ経験することよ?(少女漫画的な意味で)」

 「そうです。

  好きな人が出来る事は何もおかしくないんです(薄い本的な意味で)」

 「二人ともそんなに詳しいの!?」

 「そりゃ、これくらいの年ならトーゼンでしょ?」

 「そうですね」

 「うー……」


 唸り声を上げて牽制する。

 やっぱりまだ怖い。

 自分の中のモヤモヤした気持ちが怖いんだ。


 4/9


 「そういう感情も全部ひっくるめていい経験になるの」

 「(憧は凄いですね。

  何人も経験してるんでしょうか?)」

 「別に悪いことじゃないんだから、自分の気持ちに素直に、ね?」

 「そうですよ。

  そうすればきっと、心に余裕を持てて気持ちよくなれます」

 「いっ!?(和ったら、もうそこまでヤッちゃってるの!?)」

 「?」

 「……うん」

 「「おおっ」」


    /:/ /: :/: : :イ\:// /    /:/ : : : : : ノ: : : : : : :

    {/ {: : {: : /ハ:ハ:\ {     /:/: : : : :ノ:ノ: : : : : : : :
      l  i: :ハ:/:!/7c=ミヽ   ノ/: : : :ノ:ノ:ノ: : : : : : : :/
      ∨ V:ハ ん///゙    zヒ三/ァ'-<: : : : : : //
          /:/ 辷:ソ     7C≧、ノ /: : /://: :
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        _{:ハ     ´      辷z:ソ ノ /:/⌒Yイ: : :
      /::/.{:{..\            ""   /:/   ノ/: ;/: :  「ちょっとだけ、がんばってみる」
    イ:::::::i....{{.../r\ ヽニ>     u  ,.、/:/..イ /:/'/: :
  /:::{:::::::i.....i{...{::{ヾ::ヽ.._.........―::::´:::/:/:::::::\:/ /: :

./::::::::::i:::::::{..........{::ヽ::\〃:::::::::::::::::::_z/:/:::::::::::::::∨: : :
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 5/9


 もしこれが、憧や和の言うような『恋』って感情なら、それは大事にしてみたい。

 今まで考えたこともなかったし、そういう思いがあると知っていても聞こえない振りをしてたんだ。


 ーーでも、私の親友である憧と和がここまで言うなら!

 ーーきっと、私のことを想って言ってくれているんだと思う!


 それはきっと、受け入れてもいいのかもしれない。

 モヤモヤは治らないし、あの人のことを考えると胸がキューっとする。


 「うー!」

 「しずったら恥ずかしがっちゃって」

 「ど、どうすればいいんだよぉ」

 「そうね、まずは服から買いに行こう!」

 「ふ、服?」

 「穏乃にも似合いそうな可愛らしい服がいいですね」

 「和のファッションだと大変なことになっちゃうでしょ」

 「憧ならどうします?」

 「女子高生なら制服デートもいいんじゃない?

  制服なんて女子高生時代にしか味わえないわよ」

 「(味わう……。やはり憧は手馴れてますね)」

 「?」

 「そ、その、ちょっと自分で考えてみる!」

 「あーっ! ちょっと、しず!」


 なんだかむず痒くて、その場を離れた。


 6/9


 ……
 …


 その時の私は何も考えずに飛び出したんだ。

 胸の中をよぎったのは、『自分で考えたものをあの人に見てもらいたい』という気持ち。

 でも、それが浅はかな考えだったと気付いたのは、服を買いに出かけてからだった。


 憧や和の言うことを素直に聞いておけばよかったー!

 とりあえず制服を着て出かけて、東京のいろんなお店に入ってみるけど何をしていいかわからない。

 店員さんに話しかけられても何のことかわからない。

 うー……。


 「あれ、高鴨さんじゃん」

 「!?」


 途方にくれている中、声をかけてくれたのはあの人だった。


                        _ , 、

                      /ィ--∨  :.- 、
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                   /_/  | / 从 :  ,-}/、 |l |
                    /   从 -rォⅥ /rォ- }イ {
                 _` ̄´ { {rI ゞ ,}' ゞ  } }∧
                  Y {{ |Y }  从∧  _    八{
                「l | || | | |    Ⅵ 、 ` ー` イ / '    「東京観光?」
                { ー '' ' | /^〉 「//}` ー ´r'-、
                    |       ' ノ_,」// |    |/()|
                 :.   /´ //////∧_ r '///>- 、
                   ∧ _人 イ///////∧-}//////////> 、
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 7/9


 「あ、は、はい!」

 「おー、俺と一緒だ!

  ……あっ、俺と一緒にいるのまずい?」


 気さくに話しかけてくれたことが嬉しいけれども、この前は逃げ出してしまったことを思い出す。

 それを気にしてか、わざわざ聞いてくれた。


 「大丈夫、です」

 「良かったー。お嬢様学校って聞いてたからさー。

  男と関わっちゃいけないとか思ったよ」

 「そ、そんなことないよ!?」

 「それなら良かった!」


 彼は心底安心したような笑顔を浮かべている。

 それを真正面から見据えることができずに顔を背けてしまう。

 うーっ、いつもの私ならこんなことないのに……。


 「高鴨、さん?」

 「あ、須賀さんはどうしてここに?」

 「俺はちょっと買い物ー。

  せっかく空いた日だから私服でも見ようかなって思ったんだよね」

 「……服?」

 「おう!

  東京で買おうかなーって」

                   __
            , .-‐: : : : : : : : :`: . .、

         /`7: : : /: : : : : : : : : :ハ: :\
        /: : /:´: : //: : : : : :/: :/ / ヽ: : ヽ
.       /: : : /:\: :/:!: : : /:_:/: :/ /  ヽ: : : ,
.       /: : : :{ヽ: : : ハ: : :/:ハ:≧ト、    V: : :}
     /: : : : :i: : : : : : ヘ: ハ /んバ`ー zィ:ノ:.ハ

     /: /: : : :V: : :'⌒!: N   辷ソ   f:゙ハ:.ノ
    /:/: : : : : ヽ: :{  {: {     ,,,,     ,ゞi ′
    /: : : : : : / \: ーi:{  u         ''l
   /:/: : : : : /:/   ヽ:ヘ:i       ⌒  丿  「……それ、私もついてっちゃだめ、かな?」
.  /:/: : : : : /i:/ _∠zヘ{`ヽ、  _ ィ:.j
 /:/i : : : : / レ/:::::::::::::ヽ:トz:::::《::7  }:/

./:/ !: : : :/ /:::::/:::::::::::::i:::::::::〃ト.―レ.、
.レ  !: : : :! /:::::/::::::::::::::::::::}::::::::::》:::::::::::::::ハ
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    ヽ: : V::::i:::::::::::::::::::\:ヘ:::::::}}::::::{::::::::::;
     \:/::::::::::::::::::::::::::::::::ノ::::::}}::::::{::::::::〈
        /:::::ヽ::::::::::::::::::::::::i::::::::ji:::::::}::::::::ノ
       /:::::::::ヽ::::::::::::::::::::::l::::::〃:::::j::::::::{


 8/9


                    _,.. -- 、__, 、___
              ⌒> ´  ´  ヽ  `ヽ、
                _,.   ´  ,  , 、   | 、 、 ヽ
                ̄7  / / 从  、 |  |  |  :.
                 /イ / /l/  | | | l}从}  |   {
               _/_ { 从ヽ、 { | |/ イ´∨}  :
                 ̄´ {∧ { ○ 从{  ○ }'⌒}、{
                 {从         r-く| \
                     叭   __   八}イ     「へっ?」
                   、 └―┘ ィ/∨
                  「¨>-- rく「 ̄ }

             , ------ ∨_」   :, ∨]/|ィ¨7ー-- 、
               ////////「//| ー- 」 }ヽ// ///////}
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    ´: : : : : : : : : : : / ヽ : : : : : :ヽ : : : : ヽ:/: ハ: : : : : ヽ

   /: : : : : : : /: : :/:/  ヽ: : : : :}:ハ: : : : : :V: :ハ : : : : : ヽ

   /: : : : : : : :ハ:_:{:{   i:イ: ̄:7ート、: : : : ': /: :}: : : : : : :ハ
   {:{: : : : : :ィl´V: :ハ:{   jノj:/j:ノ }:ハ: : : :!/: : }: : : : : : : : ,
.  {:{; : : : :/: :.{ ヽ:ヽゝ  ノノ  ノニzzj_ V: : }: : 〃: : : : : : : : :',
   iハ: : : : : N _三_       "ん/:心ヾ}: :N:ノ:/ : : : : : : : : : ハ
   ヽ ヽ:ト: i:ヽ〃ん/心      込//ソ "!: } V1: : : : : : : : : : :ハ
    ヽ ヽ\: ゝ弋//:ソ          ̄  }: } ノ } : : : : : : : : : : : '   「あっ、その、嫌なら……」
         {: :ハ   ̄   '      :':':':   }: }イ::::\: : : : : : : : : :!:',
       l: :.ハ :':':':  、__ ー一、   U :/::::::::::::::::::\: : : : : : }:.}

          !: :{::ヽ     (    )   イ:./:::::::::::::::::::::::::ヽ: : : : ハ:}
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      {::::::Vヘ:::::::::::::::::::ー=ハ彡::":::レ::::::::::::::::::::::;:´:::::::::::::∨ 〃
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         ハ::::::::::::ヘ::::::::::::::::::::{{:::::::::::::::::::::::::::Y:::::::::::::::::::::::/


 9/9

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.   /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:′_,ノ⌒ヽ::|  、    、      _  -‐'     /:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:/:.:.::/:.:
 /\:.:.:.:.:.:.:r‐ ' ´     ∨\/ ̄ )  ̄ ̄        /   /.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /:.:/:.:.:./:.:.:     二人で東京デートするか!」
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  /: :/ : : : : / : /  ヽ: : :}: : : : : : :ヽヽ: : }: : :ヽ

  {: /: : : ト、ハ: /    '; :人: :_レ: : : ',V/: }: : : :ヘ
  {:ハ: : : :i: i`'ト:L__  vi:,レへ:{\: : : }:!: :/: : : : :ヘ

   ハ: : :ハ! V      レ   ` V: /:}:./: : : : : : ハ
    ヽ: ハ 三三      三三三 i:V: :.ハ: : : : : : : : :ヽ
     V: } ww       ww   }: : : レi: : : : : : : :ハ:ヘ
       i:{     、_,、_,、_,    u イ: : :/ !: : : : : : : :ハ:i   「で、デートっ!?」
      V>. 、_ ー―'  z≦  !:. :/  }: j : : : : : :} ヽ
        ヽヽ: ヽ {::::エニ彡:::::ニ:}_/l: :/  |:∧: : : : /:}
          _ゞくトニiiニニ-:´ノ::::レく   レ i: : : :ハi
        /::::::::::::ヽjj:::―::: ̄:::::::::::::::::ヽ   }: : / ノ
        /:::i:::::::::::::《::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i   !: /
      j::::::!:::::::::::〃:::::::::::::::::::::/:::::::::::}  レ'
       l::::::V::::::::::ll::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::;
.      j:::::::{:::::::::::ll:::::::::::::::::::::/:::::::::::::::/


 続く

穏乃編はずっと前から待ってた人がいるみたいだから頑張りたい
クロチャー次元は難しすぎるからちょっと待って……


 1/10

 小ネタ 京照白


 小瀬川白望。私の倒すべき相手だーー


 「白望、勝負」

 「照、何言ってるの……」


 と思ったのはいいけれど、そもそも戦いになっていない。

 彼女は高校3年を最後に麻雀部を止めているし、麻雀で勝負をしても不毛だ。

 では学力……、白望はアレで頭がいい。

 きっと『オカルト』を使っているに違いない。

 大学のマークシート方式であの『オカルト』は反則だ。

 ーー彼女の性格からして、100点満点なんてことはしないだろうけど。


 私も頭は悪くない、はず。

 白糸台の頃から上の中は維持している。

 ではこの分野も引き分けとしよう。


 「そもそも何の勝負をするの……」

 「……女子力対決」

 「……」


 何とか捻り出した答えがそれだった。

 正直、自分でも何を言っているのかわからない。


 2/10


 「全く、何を言っているんですか」

 「京ちゃん、お菓子」

 「京、お茶」

 「ちょうど持ってきたところですよ」


 ちなみに、この会話は京ちゃんの家のリビングでしている。

 うん、お菓子もお茶も美味しい。


 「何の話をしているんですか?」

 「京ちゃん、これは女と女の勝負」

 「……(縄張り争いかな?)」

 「ダル……」


 言葉ではだるいだるいと言いつつも、白望は私を邪険にしたりしない。

 うん、白望も決着をつけたがっているはず。


 「女子力って何……?」

 「京ちゃん、女子力って何?」

 「それを男の俺に聞くんですか!?

  っていうか提案したの照さんじゃないですか」

 「高校時代、淡が何か言っていた気がするけど覚えていない」

 「いやほんと何の勝負するつもりだったんですか……。

  ほら、仲良くしてください」


 うう、京ちゃんに怒られてしまった。

 ?

 白望がこっちを見ている?


 3/10


 「料理を作れるとか、細かい気遣いができるとか……」

 「(!?

  料理を作ってもらえる!?)」

 「それなら出来る。

  お母さんと暮らしていたから料理は得意」

 「……私もそれなりに出来る」

 「それじゃこれは引き分け」

 「(実践しないの!?

  ここは作ってくれて俺が審査する流れじゃないの!?)」

 「あ、京ちゃん。

  今日の晩御飯はパスタがいい」

 「俺が作るんかい!」

          /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
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        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:込、    ´ '      イ:::::::リ/.:.:.:.:.:八:i|
      i:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:|:::::::.....       /|::::::/.:.:.:./  :リ
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       八.:.:.:|.:| \:|:::::::::|i::_, く}        ト/.:/
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      /            丶    、::::、   }:::}  }        、
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    /             `、     :::∨::/           ∧


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                 ⌒\ ∨   ヽ___
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            ///    /   |     |l |  :       ヽ
              /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .
          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \   「(かわいい! 許した!)」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
                     ___|     |//////|
                   {|___ノ  __|[_]//∧_
                 /// |____|///////////> 、

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               /////// { //////////////////////}
             //////////∨///////////////////////|



 4/10


 「白望、料理できるんだ」

 「あんまりダルがってるとお母さんに怒られるから」

 「今度食べたい」

 「照も作ってくるなら」

 「(なんでナチュラルに俺が省かれてるんですかねぇ)」

 「(京ちゃんは学食が好きなんだよね」

 「(って照は思っているかな)」


 ぐぬぬ、料理は自信があっただけに悔しい。

 所詮女子大生が作る料理だ。そこまで差はないと思う。


 「そ、それじゃ細かい気遣いは……」

 「んー」


 二人で京ちゃんを見る。

 京ちゃんにお世話してもらっている……。


 「それは二人とも問題ないんじゃないですか?

  その、お礼言ってくれますし」

 「本当!?」

 「ええ、本当ですよ」

 「えへへ……」

 「(京、ちょろすぎ……)」
 

 淡は匂いのつけ方とか細かい髪の毛の手入れのことを言っていた気がする。

 でも京ちゃんがOKなら大丈夫。


 5/10


 「他に何をすればいいの?」

 「胡桃が部屋着にも気は抜かないとか言ってた……」

 「……」


 今私たちが着ている服。

 私は普通の私服。

 白望はーー

                  , ―‐ ュ 、
              〃///////ハ

                  ///////////.ムz≠= ― ュ 、  ,. r≦三>、
             {//////////>’        ¨:.<//////∧
             ∨////////            ヽ//////}

               ゝ//// 〃    . -==≠=.ュ.、  丶 ////!
               ≠- "    〃  ..l 〈     \\  V//ソ
               ,'       ,' /  /| \      ∨ ヽ. ヾ'’
                }      l .-~/-| {  \~ー 、'    」
                  {       ム . Ν__八{   | _\  ∨  l|′
                   j     ,'.l ァ┼ ┬ \N┬‐┬  | |  リ
                 ,'     ,:'. 从 乂゚_ノ     乂゚ノノ}∧l/}
              {     ./ 入         、   ,,, ,′ ト、ノ
              ∨   ',..}\__              ′ |.j!    「……だる」
                 ヽ.    \ 込、   ∠>   .イ^| }八
                    \   \ . _}> . __ イ 八jノ  )
                 __ j:、:.    >ヘ Y∧∧|.j/
             Y´///////>:、   \ュ!ー─ イ 〆
                i///////.ヾ////二ニア ヾ r <///ヽ
                ∨///////ヘ///>"∠ 7レ'zゞ=、Y/∧
               ∨/////// Y>入___ イ ヽヽー '< ム
              ∨//////Y     / /   l l     \
                 Ⅳ////〃:     .ー'   ヽ>     丶
                |/////.八:.:.   .._ . . : : . . .  _   ..: :!
                |///////.ゝ..: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :./


 寝巻きのような格好だ。

 この分野なら勝てる!


 6/10

               __  /⌒ヽ
                 ⌒\ ∨   ヽ___
              _, ----`      ∨   `ヽ、
           /´               |     \
          / ____    /  l|     | :.     \
            ///    /   |     |l |  :       ヽ
              /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .
          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \   「(シロさんかわいいなぁ)」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
                     ___|     |//////|
                   {|___ノ  __|[_]//∧_
                 /// |____|///////////> 、

                     ///// |   /////////////////> 、
               /////// { //////////////////////}
             //////////∨///////////////////////|



     /: : : /.: :/: : ::j: :| ト :|.     |: : : :|: :|   _i: :∧: :|i: :
   /: : : : /.: : :|: : : :i: :| |.:/ `ヽ  |: : : |i: :|  '´ |:/  V .|::
  /: : : : : : !: : : :i: : : :|ヾ| , ィ, ニ、ヾ、 .|: : :八/ ,=ヾ,ニ、ヾ、 |::
/: : : : : : : : |.: : :八: : :| 〃 /少iハ ヾ|/ ミ、 /少L心 ヾ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|: : : : |:\{ !  {斗ニ刀:::::::::::::::::::::::::::{斗ニj匀
.       i: : : : |:::::::ハ  气l∪iリ:::::::::::::::::::::::::::气l∪ikリ

.       l: : : : |:::::::i l{',、 乂Zソ          乂ZZソ
       |: : : : |:::::::j         ,
        |: : : : |:::::::{
        |: : : : |::::::::ヽ      ,ィ⌒ー'⌒ヽ.
        |: : : /|: |:::::::::::> .   `-⌒ ⌒'‐′      . <   「ぐぬぬ……」
       |: : / 乂|:∧:::| 、::::≧=   ___   <---


 ーーひ、引き分けで!


 7/10


 大体、白望は卑怯だ。

 女性なら誰もが憧れる体型。

 むっちりさとビジュアルさを兼ね揃えている。

 この前、京ちゃんと私と白望でデートした時には相当気合を入れてきていた。


             ⌒ヽ
       ー=≡ミ_  \ー- 、
\ー―――‐イ   ∠二 _  ̄\ヽ   !
      -=_,,ニ二二     ヽ  )}  }
         _,, -‐‐ ヽ   ゝ   ノ、
                \       ヽ
/ /⌒    /       へ  .Y^ ,} ヽ、
  ノ  /  /            |   ',
/. /  /     /    ヽ       \_
  /  /  ./ / /     ハ       Y´
 /  ./-/─~./    /  |  /   ヽ`ヽ、
/  /: // ヽ ./   ./~─j  /     l\ ヽ
  / 芹苧豕メ/   /イ ´  j: /     rヽl  ゝ  )
 ノ  l 乂 ン ヽ} /  /苧豕ミ /   | l| |  ヽ、
 |  |      }/     弋ン アイ.   | l|、`   \    「京、早く行こう……」
\ト、!         {    ̄ ∧八 リ人ヽ)
\:.∧             / \ ∨ ヽ \
_ }ハ:.       ____     人   ヽ   ハ\
≧==ミl \  ´こ´   ∠ 斗)ノi|\).ノ  ) ノ     、__
:: :: :/       ‐=≦ハ{:: :: :: /__   }\     }::.
:: :: :,′      |_:: :: :: :: :〔_   \ }:: ‘:,  /:: :
‘:、:,′       { ` <:: :: :: /    丶}:: :l  ,′::.
/::{ ‐ -   __     / ‘:、 :: /、     ∨ :: /:: ::
:: :{        `  ′   ‘:,:: ::‘:,       rミ: : :: :: ::
、:: :{                  ‘:,:: ::‘:,    /:: ゝミ=‐-
:‘:, {                    ‘:、:: : トミ /:: :: :: |
:: ‘:,{                   ‘:、::   ヽ. :: :: :: :: |
::/::‘:、                     丶_:: :‘:,:: ::  |\
:′:: :‘:、       \::.  /     ィi〔 }:: : ‘:,:: :: |
:: :: :: ‘:、__       、:/   x≦二ニ}:: :: :‘:、::./
:: :: :: :: :寸ニ≧=‐   \ /二二二/:: :: ::  l
:: :: :: :: :: 寸二二ニ≧≦二二二ニ/:: :: :: ::/、

、:: :: :: ::   寸ニニニニ〉〈ニニア:: :: :: : /  〕iト
‘:, :: :: :: ::  : 寸ニニニ 〉〈ニ=/:: :: ::  /
_| \:: :: :: ::  : \ニニニニア´:: :: -=≦
_| }: ≧=- :: -=≦: 丶ニニア:: :: :: :: :{

_| [ ̄`ヽ:: :: :: :: :: ::〕iトミ:: :: :: :: :: {

_|  ‘: :: :: :: :: :: :: :: Oノ:: :: :: :: :: {____
_|   ‘,:: :: :: :: :: :: :: {:: :: :: :: :: :/:: :: : {
_|   ‘。:: :: :: :: :: :: :: O〉:: :: :: :: :/:: :: ::.{
  、   〉:: :: :: :: :: :/ ̄〕iトミ:: :: :: :: :: ::{
  \ ′:: :: :: :: ::         ‐-  :: :: :: {
      、:: :: :: ::/       :,       ‐- :/
        、::  :: /        :,             丶
       \::./            :,)       ,   。o≦
                  、          _/x≦二 /
〕ト、       、      \ ___   x≦ニニ,ア
   \      \---‐‐=≦ニ {Oヽ/斗r<}=}   _
     }ト        ヽ¨¨¨¨¨¨{{¨¨{ ̄  !_jニ斗<=
     /ニ=〕ト     丶 __{{__|_ 斗<ニニニニニ
    ,′二二=\    `ー‐- ミ =ミニニニ ,、二ニニ
    -=ニニニニ_〕、        寸∧ 、ニ /゚ノ__ト、二
  /ニニニニニ∨∧        マ} `¨¨¨¨¨´ {二

  -=ニ二二二二∨∧ 、     ∨ 、\   }} ,[∧Ⅴ!
/二二ニニニニニ ゝ- \\ \ {¨〕〕iト、ヽ ∨ , ハV=

二ニニニニニニニニニ込、丶ノゝ' }/|、 ´  V , ∧V
二二二ニニニニニニニニニア   \__|ノ   ∨ |〔
二二二ニニニニニニニニ/     `¨}¨ゝ--‐‐‐┐ニ

二ニニニニニニニニニ/         |ニニニニハ


 高身長の京ちゃんも相まって、完全に私が蚊帳の外だった。

 かと思えば女の子っぽい服装をしてきたり、今日みたいに寝巻きのような格好をしたり。

 きっとギャップで京ちゃんを籠絡する作戦だ。


 8/10

           _. . ----- . ._
        ,. : ´: : : : : : : : : : : ` : .、
      ,. :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
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     |: : : : : : : :l: : : : : :.|: : :|: : : |_ノ: :从:j
     |: :,: : : : : : ,: : : : : :|: : :|: : : | |: : | '
     |: :| : : : : : : : : : : : |: : :|: : : | |: : |
     |: :,: : : : : :/: : : : : ,: : : : : : :|ィ}: : ,     「……負けないもん」
     |: :{: : : : :/: : : : : /: : : :|: : :.| , : /
     |:/|: : : : ,: : : : : : {: : : :/: : //:イ_
     |' ,: : : /: | : : : : | ̄ /: イ /::/ /  ヽ

         \: {/、: : :.从 /   /::/ /    :.
       / }/{  \{     /::/ /       }
       {  |::|           /::/ /      |


 9/10


 ……
 …

 きっと今、照はそんなことを考えているに違いない。

 京も照も天然で、いい子達だから。

 そんな二人が眩しくて、羨ましくて仕方ない。

 本当にお似合いなのは二人なんじゃないかと思うことは一度や二度じゃない。


 麻雀を打たないのに麻雀部に行くと、照の横顔に見惚れている京がいる。

 そんな京を見たくないけれど、二人きりにするのが怖いから一緒に行く。

 憧れを抱かれている照が羨ましい。


                    / / `ヽー、     ー、   `ー /´
               _ -‐ァ'/       ´⌒ヽ  、 ヽ、_ 彡 ´
              /⌒ィ'´ /            ',  \  ヽ
                /´ア´ /  / /       !   ',   ヽ
            ({ /  ノ  / /       ! l    \   、   \
             `Y ィ´   / /    i l  '.   、 ヽ.  ',_  `ー-
             / /    /イ/i{    j{ j  、      \ ヾ  ̄´
            , ィア,' イ  /`7~ヽ   ハ 八  (ヽ    ト、 }  ー、
           j/ / { { イzx、_エ、  j |~~、 ヽ Y`ヽ }! ソ \}⌒j

             ´ {  ヽハ、{i  佞i「ヽ. ハ{\{zュ.jYハ }  〉ハ    ヽ.
             ∨   ハ `  ̄   \{ ヽ `芒!リイ ノ /イ     ハ
              ヽ { j! !    、     } ヽ!  〈 /フ   j!  / リ   「(変に考え込まなければよかったのに……)」
               `ヘハ ト          j       /´j}   ハ ノ
                  `  \  ゚ `   /    / ノ j_ノ ´
             _ -=ニ7⌒ヽ __ .. イ    / `7=ュ。_

            イ  「ニニニ7   人j  ハ   〈  /ニニニ´⌒ヽ
           ´ i  ニニニ{  /l] `Y  ',   V /ニニ/    '.
               l  ニニニ、/!  [! (   '.   Vニニ7       }
      /     ハ  ニニニニニ|  マ、  ィハ    Vニ7        ′
     /       ',  ニニニニニ|  マ、ィ´  。    V       /


 ーー何より、照は気づいていない。

 京が照の向こう側の誰かを見ていることを


 「もーいいじゃないっすか?」

 「京ちゃん?」

 「京?」


 10/10


                    /\-――‐- 、
              , --=7   丶      `ヽ
         /,             ヽ  ヽ
        ∠/       /      、 、  丶  i
        /       i     ! l.  l i.  i |
       /  ,/  ! !  l||   ! |、 ll !  |  ヽ、
      /_ -7 , | l ト、| |ヽ!  N , 斗 r  ,'_  ト--`  ←ちょろい
     ̄  //!  ! Nヽ!\|,//l/ l/! N ,ハ !|
       ´ / ,i丶 {=== l/ == =l/ ' ノ リ

        // l i `i           _/,、/   「俺からすれば二人とも美人で可愛いっすよ!」

        ´   {ハ!ヽ{    ′      /!}/ ′
              丶  ー ―‐ '  / |′
               \    /  |

                __ i ー '     ! __
          , ィ'´:.:/-‐ ´}     /  `Y´:.:.\
      , -‐'' ´:.:./:.:.:./― - 、   ,/__ /:.:.:.:.:.:/`丶、
      ハ:.:.:.i:.,:.:,′:.:i     `    ̄    /:.:.:.:.:../:.:.:.:.:.:.:.丶、
    /:.:.:.i:.:.:|,':.:i:.:.:.:.:!   ヽ  /   /:.:.:.:.:.:/:.:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:,.ヽ

     !:.:.:.:.ヽ:.{:.:.l:.:.:.:.:l.     i     /:.:.:.:.:.:/:.:./:.:.:.:.:.:./:.:.:.i

          〃-‐‐-----‐'/´
       ,, - ''       ー '、 
       ´             ヽ\
      /   /    |    |  ヽ \
    /   ,/     /|   l    _<   ←ちょろい
   ィ    /  十/┤  十ト l  ハ 
     ̄|   {   示芸 \ |示芸!   }
      j   Y\|廴 リ    廴リ,!リ ノ    「……」
     /    廴 ///   /// | }
      {/ヽ|\、, > ___ _-__,  イN/
           /  〉 | 〉、 "
         /`ヽ::ヽ〈 V/l::ハ
        ,'   |:::::ヽ「」/::::::ヽ,
        l    !:::::〈/ヽ〉:::::::::}
        └t-ィ:::::::::::::ヽ:::::::::イ

                 _. . : :―――: . .
             ,. : :´: : : : : : : : : : : : : : :` : 、

            /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
           .:' : : /:,: : : : : : : : : 、: : : : : : : ヽ : : ヽ
           /: : :/: :/:/: :, : : : : : : |: : :!: : : |: : ∨: :∧
          , : : /: :/:/ : / 、: : : : :.ト、: |:|:{: :|: : :.| : |: : .
           /: : 〃:/:/|:从-、}:、: : : :.|-从}-Ⅵ : : | : |: : |   ←ちょろい
         /: : ィ: : :{: |r----从\: : |, ---- ミ: : :,: :/: : ,
          ̄´  |: }从:{   ⌒Y   ∨  ⌒Y }: :/}/Y : ′
           |: : : :/   乂_ノ     乂_ノ /:イ  /: :,′
           |: : : { ////        ////r-: ': : /  「……うん!」
              从: : 乂      ^ー(    イ: : :/: :/
            ∨: {:从{¨¨, ィ「 ̄ 7¨´、_: 从:イ: :/
               \|  / \ ∨^/  />/' }:/
                 / |乂\∨_,イイ/  }
               {/⌒ア `ー介 -‐´ {__〉
               {`ー∧ /:∧:.、  |- r'

 カン!

毎日の楽しみなんて言われて嬉しい
でも>>1にある通り不定期(予定)だから毎日じゃなくなったらごめんね


 1/9

 京穏次元3
 【何の変哲もないデート】



 急にデートだなんて言われて混乱した。

 私はそんなつもりじゃなかったし、きっと彼もそこまで深く意識したつもりはなかったんだろう。

 こ、これくらい軽いほうが普通なのかな?


 「そこはデートじゃないよって言っていいんだぜ?」

 「えっ」

 「あー、ごめん。

  ちょっと厚かましかったかな」

 やっちゃった、と言わんばかりに頭を掻く須賀さん。

 違う、私もそう思わせたいわけじゃない!


 「そ、その、嫌なわけじゃないですよ!」

 「悪い悪い。

  割と馴れ馴れしくやっちゃうんだよね」

 「私も!

  結構相手に鬱陶しがられないかなーって」

 「俺はそっちのほうが楽だなー。

  和に聞いたんだ。高鴨さんって活発な人だって」

 「えっ!?」


 のどかぁー! 変なこと言ってないよね!?

 普段から変なことしか言ってないかも……。


 2/9


 「だから仲良くなれるかなって思って声かけたんだ」

 「そ、そうなんだ」

 「大会期間中くらいだし、仲良くしようぜ!」


 そう言って彼は笑いかけた。

 その顔を見るとなんだか胸が切なくなって、でも悪い気分じゃない。


 「こ、こちらこそ宜しくお願いします!」

 「んじゃ、行こう。

  高鴨さんは何か目的あったりする?」

 「特にないんだけど……」

 「それじゃ俺の目的に付き合ってくれないか?」

 「えっと、須賀さんは服を見るつもりなの?」

 「買うかどうかはわからないけどさ。

  商品見ながら世間話するのも楽しいよ」

      _/: :/: : .:/: : : : : : : : : : : : : : \
    //: : /: : : :′ : : : : : : : ハ: : : : : ::\

.  /.:.:/: : /: : : : |: : :./ }: : : :/  : : : : : : :ヽ\
  /: : : :′:イ: : : : ∧: / /:: :/  |.: .: .:.:|: : :|
. /: : : : :|: : :|八: : | ィ存斥く     jハ: : :|: : :|
/:: : : : : |: : : |: :\/r;....ハ    x=ミ !: :ノ.: .::|

: : : : : : .:/⌒ヽ: : |弋  ソ    r;..ハY: :|: : ハ
: : : : : .:∧   :: ::| ,,,     , V ソノ: ムイ     「うん、そうしよっか!」
: : : : : ,′ \ :.: ::.    r-    ''' 从 |
: : : : /    `ヾ: : :.     ノ   イ: .:.:|  _
: .: .:/      r::\:>...    <  |: : :八/ )r- 、
: : /       |/:::≧:::::不、    .: / /:::::::::\{)
: /       /:::::::::::::::::::\__]    / r-::::::::::::::::ヽ
/       .::::::::::::::::::::::::::::::\    ノ::::::::\:::::/

        ,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::厂:::::::::::::ヽ::::::Y
        |::::::\::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::|:::::ノ


 3/9


 ……
 …

 須賀さんが慣れたように服屋に入ると、幾つかジーンズを見繕っているみたい。

 私は基本的に街中で遊ぶなんてしないから、なんだか落ち着かない。

 きっと憧といたって落ち着かないと思うのに、隣にいるのは須賀さん。


 キョロキョロと周りと見て、須賀さんに目を映す。

 じっと須賀さんを見つめている自分が恥ずかしくて目を逸らす。

 ずっとそれの繰り返しだ。


 「やっぱ高校生の小遣いには高いよね」

 「服ってこんなにするんだ」

 「高鴨さんはあんまり見ないの?」

 「私は見ないかな……」


 言ってからすごく後悔した。

 『普通の女の子』だったらそういうものに興味があるのが当たり前だと思う。

 私服にもだらしない、なんてイメージを持たれたくない。

 でも彼の前では嘘をつきたくない。

 そんな悶々とした気持ちが自分の中で渦巻いている。


 4/9


 「もったいないなー。

  なんでも似合いそうなのに」

 「えっ」

 「あんまり気を悪くしないで欲しいんだけどさ。

  髪の毛すごく綺麗だし、どんなものも似合いそうだけど」

 「ーー!?」


 心臓が爆発したかと思った。

 彼がじっと私の髪の毛を見つめている。

 そういえば憧が髪は女の命って言ってた気がする。

 私は手入れなんて全然わからなくて、そのままポニーテールにしちゃってるだけだ。

 憧はそんな私に『こっちは手入れが大変だっていうのに』なんて文句を言ってたっけ。


 「そ、そうかな!?」

 「うん。普段から手入れしてる?」

 「え、えっと……」


 また質問。

 手入れなんてしていない。

 走り回るのに邪魔だから切っちゃおうかと思ったくらい。

 でも、手入れをしていないだらしない女の子だと思われたくない。

 その結果、なんとか口から出した言葉はーー


 「ひ、秘密」

 「えー、なんだよ教えてくれよー」

 「(わあぁぁっ!?)」


 彼も本気で聞こうと思っているわけではないのはわかる。

 でもなんだか気恥ずかしくて俯いてしまった。


 5/9


 「くせっ毛とか大変だって聞くよね」

 「私も憧……幼馴染から髪の手入れが大変だって聞いたなー」

 「俺の幼馴染もくせっ毛だよ。

  あんまりヘアアイロンとかかけてないみたいだし。

  まー、男の俺にはあんまり関係ないけどさ」


 それを聞いたら羨ましい、なんて言うのが普通の女の子なのかな。

 ううぅぅー! わかんない!


 「うーん、やっぱ値段的にもしっくりくるのがこないし、服はいいかな」

 「えっ、じゃあこれからどうするの?」

 「ファミレスでも行こうよ。

  ずっと立ちっぱなしで疲れただろうし、座ってダベろうぜ」


 ……ごめん、全く疲れてないや。

 山の中を走り回ってたことに比べたらずっと立ってるなんて疲れない。


 「足は全然大丈夫だよ?」

 「でも顔色ちょっと悪いよ」

 「えっ?」


 言われてみて少しフラっとする。

 体は疲れていないのに、なんだろう。


 「あんまり人多い場所慣れてないとか?」

 「あっ……」


 言われてみたらそうだ。

 体が丈夫だからといって、慣れない場所にずっといれば疲れるのかもしれない。


 6/9


 ーー普段から、そんな気遣いなんてされたことはない。

 憧だってみんなだって、私は常に元気だと思ってる。

 なんたって私本人ですらそう思っていた。

 でも、慣れていない時にはやっぱり疲れるんだな。


 彼がそれに気づいてくれた、という事実に気づいた。


 ーーうん、今は顔を真っ赤にしていると思う。

       ,. :´: : : : : : : : : : : : :`:ヽ、-.、

      /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ:\
    /: : : : : : : : ∧: : : : : : : : : : 、 : : :ヽ:ヽ
   / : : : : : : : : : / ヽ: : : }: : : : : : ヽ: : : ヘ: ヽ
  /: :/ : : : : / : /  ヽ: : :}: : : : : : :ヽヽ: : }: : :ヽ

  {: /: : : ト、ハ: /    '; :人: :_レ: : : ',V/: }: : : :ヘ
  {:ハ: : : :i: i`'ト:L__  vi:,レへ:{\: : : }:!: :/: : : : :ヘ

   ハ: : :ハ! V      レ   ` V: /:}:./: : : : : : ハ
    ヽ: ハ 三三      三三三 i:V: :.ハ: : : : : : : : :ヽ
     V: } ww       ww   }: : : レi: : : : : : : :ハ:ヘ
       i:{     、_,、_,、_,    u イ: : :/ !: : : : : : : :ハ:i  「(あう……)」
      V>. 、_ ー―'  z≦  !:. :/  }: j : : : : : :} ヽ
        ヽヽ: ヽ {::::エニ彡:::::ニ:}_/l: :/  |:∧: : : : /:}
          _ゞくトニiiニニ-:´ノ::::レく   レ i: : : :ハi
        /::::::::::::ヽjj:::―::: ̄:::::::::::::::::ヽ   }: : / ノ
        /:::i:::::::::::::《::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i   !: /
      j::::::!:::::::::::〃:::::::::::::::::::::/:::::::::::}  レ'
       l::::::V::::::::::ll::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::;
.      j:::::::{:::::::::::ll:::::::::::::::::::::/:::::::::::::::/


 今までに味わったことがない感覚。

 なんだろう。心地よくて、とてもうれしい。


 7/9


 ……
 …

 「適当にご飯頼んでドリンクバーにしよう」

 「えっと、それじゃ……」


 いろいろと頼んだ後に、いつものように頼んだことに気がつく。

 うう、憧だったら控えめに頼んだりするのかな?


 「いやー、高鴨さんは元気よくて喋ってて楽しいよ。

  知り合いになれてよかった」

 「うん、私もこんなに楽しいと思わなかった!

  その、あの時は逃げちゃってごめんなさい」

 「いや、あれは和との再会の場に俺がいたのが悪いから!」


 ケタケタと笑いながらポテトを摘んでいる。

 ふと、彼の呼び方に気がついた。


 「須賀さんって、和のこと『のどか』って呼んでるんだね」

 「うん」


 あんまり男性耐性がないはずの和が彼と仲がいいのが気になる。

 それに、なんだかもやもやする。

 私の体、どうしちゃったのかな。


 8/9


 「そ、それなら、私のことも穏乃って呼んでよ!」

 「いいの?」

 「そう呼んでくれたら嬉しいな!」

 「おっけー、穏乃」


 彼が何気なく口にした私の名前で、私の頭は茹で上がった。

 名前で呼ばれるだけでこんな風になるなんて、やっぱりおかしいよ!


 「それじゃ、穏乃も俺のことを名前で呼ばないとね」

 「えっ?」

 「俺の名前、わかる?」

 「わかるよ!」


 気づいたら私の中に入ってきた。

 忘れようと思っているわけじゃないけど、ずっと『京太郎』の名前が表に出てきていた。


 「きょ、京太郎?」

 「やっぱこれくらいの方が気楽でいいよね」

 「うん!」


 呼んだ瞬間に緊張で体が硬くなる。

 でもそれに負けないように元気を出す。

 だって、京太郎も私の元気を褒めてくれたんだもん。


 9/9


 ……
 …


 その日はそのまま帰って、ホテルに戻ってきた。

 和と憧は二人で出かけていて、なんだか『計画を考えるから待ってくださいね』なんて言っていた。

 なんの話だろう……。


 頭の中に、京太郎の言葉が蘇る。


 『穏乃』


 名前で呼ばれるなんて当たり前だったのに。


 『穏乃』


 たった一人に呼ばれただけでこんな風になってしまう。


 『穏乃』


 気づいたらニヤけが止まらない。


                    ___
                / ̄`ヽ ´         `
              /   /               \
          /    /   / : : / : : : : : : : . .    \
            / /  /  し'/ : : /: : : : : : :∧: : : : .   ヽ
          ′/ヽ:/ゝ,_/_: : /: : : : :/〃 ‘.:.|:| : : : |   ,
        /  ∧ :/ ´  ̄j: : : ハ、: : : ' /    }ハ| : : : |:...  ′          __
        . ′ {\:{ : : : ∧: : { リ\: :{ {    ノ | : : : |_|___j          / }
      /  . : |: : :|. .:|、:i} γ二ヽ \_/   ,斗/}:./j ̄` |      /  /
      :′ ..:.: : l: : :乂ノ \〃//;∧    ^^二ヾ  //.: : }ノ     ´    ′
     /   .:.: : :.:∨/ |: :i ⌒ 乂//ノ     /;ハ } :′:/:/__/    /
   .:′ . : : : : : :{  |: :|  ////// 乂/ノ 厶イノ/   、   /
   /  ..:: : : : : : : \_|: :|      -―- 、 // ∧r‐′    \/
.  /  . : : : : : : : :′ |: :ト、  /      \   //     、  \       「わあぁぁーっ!!」
  ′ ..:..: : : : : : : i    :.:| \ ゝ ___,,-----ノ   \   \   }
 |: | .:.: : : : : : : : :|   {:.:|⌒¨¨¨¨¨¨¨¨¨´           \    ヽ/ー―-
 |: | .: : : : : : : : :|: |   ∧}             { \     ‘,  ノ__       `ヽ
 | ハ: : : : : : : : : |: |   {                  \ ー―/ ̄    ー―-- イ
 |:|│: : : : : : : : |: |    ,                 ,.>― ′         ハ ハ
 リ |: : : : : : : : :.|リ   ′  ┬───‐…… ヾ´   ̄ ¨¨¨¨¨`  ., r、}ト.ノ lノ/
   乂: : : : : : : :{     }ー‐/ニニニニニ\ \}            `¨¨   {


 叫びを枕に埋めて押し殺す。

 それでもにやける顔は止まりそうになかった。


 続く

投下終了


 0

 ・京淡次元のおさらい
  本編完結済み 短編集

 大星淡
 調子に乗りすぎて高校生でぼっちになった
 大学生でもぼっちだったけど京太郎に話しかけられて何やかんやあってくっついた
 色々あったので献身的な頑張り屋さんになりました


 須賀京太郎
 持ち前のコミュ力で淡に話しかけたら懐かれる
 美少女に懐かれて京ちゃんも惚れてた
 淡に見合う男になりたくてハンドボールやってます。しかし成果は出ない




 前回
 淡が何か企んでいるようです。



     /                  \
 _人_ '                      ` 、  \
  Υ'/ /  /              ト、        丶
   / /  /         |    | | Χ     }
  .′   il  /   |  | \ | / `、  リ   |
  i | _|l__∧ト、八  |   メ´  ニニ  /   } |
  | |   ||  `>x、\|   斗チ芋ミ、∨   ,′j
  | |l   l|斗示芋ミ、    ''h!::::::::}  ,′    ,
  |l 八  И'h!::::::}      乂___ノ /     /   「キョータローのマネージャーとしてがんばるぞー!」

  ||  \| 乂__ノ       /i/i/ /     /l|

  .八   ゝ /i/i/i    i       / /  / / |
   ‘,\ ハ      r    ア  /l/ /  /:: |
     ト、  込、         _ノ   //  ,イ::: l|
     |l l\ \> .,_       /∨  /l|:  八_
 |ヽ.  八l_\ \-─=ー ァ--<  /   / 八 {  \ `ヽ
 | | ./ /´  ハ 〕     { 〉     ,′ /   ` ヽ  \∧
 | |/─、_ / |∨  __ Ⅴ__=|   /     〕\  \
 | | Y´ \\.ノ (`ヽ \\)     |  ,′         \ 丶


 1/8


 【あわあわ、がんばる】


 キョータローにおべんとーを作るんだ!

 でも、私料理したことないし……。

 今までは学食で食べたり、おかーさんが作ってくれてたんだもん。

 一人暮らしでも意外と料理しなくても大丈夫だったし。


 「料理かぁ」


 一般的な女の子ならお弁当くらい作れると思う。

 家にいて料理してあげて、一緒に食べるのも楽しそう!

 お弁当を作ってピクニックに行って、あーんしてあげるのもやってみたい!


 「とりあえずやってみればなんとかなるよね!」


 考えて何かするなんて私の性に合わないもん!

 それに、料理くらい簡単だし、ダイジョーブダイジョーブ!

 おかーさんのお手伝いでお米を研いだくらいはしたことあるもん!


 「えっと、お弁当の中身はどうしようかな」


                _, -──-  .,_
               '´         `丶、
            /              \

           ,          /         \
.           /     .   /            ヽ
           ′     / /              `、
.          .' /   /,     // /|   |       `
         i     . /    」_ ′/  |   | i|  . i
.         i |   j/,    /イ`メ、   |  小 ||   ト.!
          j .|  ∨/    / |/ ヽ  |  ァT丁l   | |
         ノ i|  V    j 抖竿ミ    ノ ノ ,ノイjノ   | i
___ ____彡' , i|  i| j   八|:x:x:    /ィ竿ミ 刈    | }
 ̄¨ え≠  / 八 i|/l   |  |        :x:x:/ ノ    | ′   「えっへっへー!」
 /  -‐ '    ハ  八  ト、  ヘ.__ `  厶 イ   ノ
/    __,.斗‐=≠衣  ヽ八\ 丶.__ソ  . イ(⌒ソ  イく
     jア¨¨^\   \   \ >-=≦廴_  ア /ノヘ\
  斗ァ'′     \   \   ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ
/圦 |       、\   ヽ   、∨tl  `ヽ . ∨ V\ i
 { `|           Vi:\  ハ  i } |    } i }  ∨,} }
≧=- |         辻_V\`i}  i } |  /} iハ}   辻ノ
   ノ          ¨〕V//リ  iノ ////V〔    ¨〕


 キョータローに喜んでもらうことを想像しただけで、なんか嬉しい!


 2/8


 「お米研いだ!」


 ネットで調べながら料理する。

 最初はそんなに手の凝ったものを作れないから、簡単なのを作る。

 昔の私だったら背伸びしたかもしれないけれど、今の私は違うもん。

 キョータローに喜んでもらうことが第一なんだからね!


 「炊飯して、だし巻き卵を作ってー」


 今までほとんど使ったことがない炊飯器のスイッチをオン!

 冷凍のミートボールを出して、電子レンジで解凍。


 「本当は色々と作ってあげたいけど……」


 作り方、わかんないんだもん。

 その代わり愛情をたっぷり詰めるからダイジョーブ!


 「って、あわー!?」


 そんなことをやっている間に出し巻き卵がうまく負けないくらい硬くなっちゃった。

 やばっ、これ焦げてる!?

 うー、おかーさんみたいにうまく撒けない!

 なんで写真とかで上がってるのはあんなに綺麗に巻けるんだろう……。


 「ちょっと形悪くなっちゃった……」


 ううー、もう一個作ろう……。


 3/8


 あれから何度かやったけれど、おかーさんみたいに綺麗に巻けなかった。

 ううーっ!


 それからそれから、ウインナーは欠かせないよね。

 タコさんウインナーなんて作ってみたいけれど、どうやって作るんだろ?



      ∧  ト、\ヽ   ヽ  〃⌒》
  /ハ/  } |ヽ , -‐ !  l    《
 ハ_」/   .|  | /Vり  l  |  __  o
ィチ∨_ ̄`|  l ィ巧ミ< |  | ⌒》   /
 |ァ豸坏| ソ ' i::::::} 〉| !   ヽ。  /
 l〈 {:::::::j レ'   -‐'' リ 八     /
 ト `  ̄     '  "" ノ ハゝニニ二!
 ヽ ""   ∧    ノ人\ヽ    |   「ウインナーってどれくらい焼けばいいんだろ?」
.\\ゝ    し'  /     } \\ <
\ \ ヽ ー- r i, --  / \ヽ! \ |

  \ } }-、  r‐/ /   \  ヽ!ヽ |
ヽ.  ト j !` ̄ / /      \  | }


 フライパンの上で転がしながら考える。

 あれー? 見た目が変わらないよ?

 試しに一個食べてみると、中の方が生焼けだったし。

 もうちょっとかな? ……もーちょっとかな?


 ……あっ! 焦げちゃった!


 3/8


 あれから何度かやったけれど、おかーさんみたいに綺麗に巻けなかった。

 ううーっ!


 それからそれから、ウインナーは欠かせないよね。

 タコさんウインナーなんて作ってみたいけれど、どうやって作るんだろ?



      ∧  ト、\ヽ   ヽ  〃⌒》
  /ハ/  } |ヽ , -‐ !  l    《
 ハ_」/   .|  | /Vり  l  |  __  o
ィチ∨_ ̄`|  l ィ巧ミ< |  | ⌒》   /
 |ァ豸坏| ソ ' i::::::} 〉| !   ヽ。  /
 l〈 {:::::::j レ'   -‐'' リ 八     /
 ト `  ̄     '  "" ノ ハゝニニ二!
 ヽ ""   ∧    ノ人\ヽ    |   「ウインナーってどれくらい焼けばいいんだろ?」
.\\ゝ    し'  /     } \\ <
\ \ ヽ ー- r i, --  / \ヽ! \ |

  \ } }-、  r‐/ /   \  ヽ!ヽ |
ヽ.  ト j !` ̄ / /      \  | }


 フライパンの上で転がしながら考える。

 あれー? 見た目が変わらないよ?

 試しに一個食べてみると、中の方が生焼けだったし。

 もうちょっとかな? ……もーちょっとかな?


 ……あっ! 焦げちゃった!


 4/8


 ……
 …

 その日の昼食。


 「よし、淡。

  学食いこーぜ」

 「う、うん」

 「?」


 一応持ってきたけれど、キョータローに言い出せない。

 ハンドボールを頑張ってもらえるようにって作ったのに、美味しくなかったら意味ないもん……。


 「……淡?

  なんか調子悪いの?」

 「えっ、なんで?」

 「エスパーだから、わかるんだって」

 「ー!

  もー! それやめてよハズカシー!」


 私が落ち込んでたらいつもそれ。

 ……でも、気づいてくれるのって嬉しいな。


 「実は、ね」

 「うん」

 「その」

 「……」

 「お、おべんと、作ってきたんだけど」

 「……!?」


 5/8

               __  /⌒ヽ
                 ⌒\ ∨   ヽ___
              _, ----`      ∨   `ヽ、
           /´               |     \
          / ____    /  l|     | :.     \
            ///    /   |     |l |  :       ヽ
              /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .
          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \   「あわいー!」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
                     ___|     |//////|
                   {|___ノ  __|[_]//∧_
                 /// |____|///////////> 、

                     ///// |   /////////////////> 、
               /////// { //////////////////////}
             //////////∨///////////////////////|




         /               ヽ \
            /   ./              :.
        /   ′ /|     :∧         ::.
.       / 7  | ./ !     | ∨    |    |
       ′ !   | / ̄`∨   |´ ̄Ⅵ    |     |
       |  |   r≠ミ、∨  | r≠ミx   |     |
       |  |  从 r':::::}!八  〃r'::::::}!》  |     |
       |  |  ハ弋)ソ   \{ 弋)ソ |   |     |  「あわっ?」
       {  |   :i ,,,  ,     ,,,, /  八   !
.        |   :}          /7 /     |
        八   人   v  フ   / /}    八
         \{\( >...       仏イ/    /:  \
.           /    ≧ー <    |/   /:    \
          /   厂 ̄ |      /   /:.      \
         //   /   /|    /   ∧::..       ::.
.      //'    /   ∧   //   /  \::.      |
.     // /   /   /\  / /   /    \::.    |
     l(  /   /   /  /   /   /        \:..   |


 ーーキョータローが抱きついてきた!?


 6/8


 「ちょっ、キョータロー!?」

 「お前ってやつはもー、本当に可愛いなー!」

 「や、やめっ。

  まだ早いでしょ!」

 「だって嬉しいし」

 「そ、それに、あんまり上手くできなかったから……」

 「淡が作ってくれたってだけでめっちゃ嬉しいよ」

 「ううっ、あんまり期待しないでね?」


 そう言ってキョータロー用のお弁当を渡す。

 目をキラキラさせながらお弁当を開けるキョータロー。

 うう、本当に上手くできなかったんだもん。


 「十分すげーじゃん!」

 「そ、そうかな」

 「うん。

  おっ、卵美味しい!」

 「良かった……」


 ホッと胸をなでおろす。

 ちょっと早めに起きて頑張った甲斐、あったかな?


 7/8


 「自分の弁当も作ったの?」

 「あ、こっちは……」

 「?」


 こっちは、最初の方に作ったやつ。

 たくさんの失敗した出し巻き卵と、焦げたウインナー。

 どっちも味付けをしていないから味がない。

 こっそり自分だけで食べようと思ったんだけど……。


 「……淡、頑張ってくれたんだな」

 「……うん」

 「俺も頑張るよ」


 みんなに見えないところ、机の下で私の手をギュッと掴んでくれた。

 そのまま優しく手を握られているのがなんだか恥ずかしくて、顔がニヤニヤしちゃう。


 「そっちも分けてもらっていいか?」

 「えっ、でもこっち味しないし、焦げてるし……」

 「いや、もう淡に作ってもらったってだけで美味しいから!

  うーん、うまい!」

                        ____
                      ´      `丶

                    /              \
                        /        \    ヽ
                 /   ,イ            ヽ    .
                     // |  |   ' ト、           .
                 j/  ;  |  | │:!∧     i    :
                /  i |¬|ト│ |八--:一   i    i
                .:   Ν 八八 Ⅴ´\ハ         |
               i:  Λ x= ミ \ル‐ =ミV:| │  i │
               | i  iハ   .       |.:| │  i │   「……えへー!」
               | i  i:  :. "       ""  ; :| .:|  i :.
               | i:. ∨込.  マ::::フ   / イ :リ  i  :.
               人八 ∨ 个ト  ,,_  <「∨ :/i   i  :.
                    /\[  |  __j_」   ∨∠:リ  リ   ::、
                /  リ jレ'´ 乂    У∨   ∧     \
                  /  /  /ー  --/ /  /⌒>、    \
                  / / /  /   广⌒゙ア  /  ///⌒\   \
            /     /   /  /   /  厶イ     ,  \ \
                 /   イ\   ,゙ /   __/   {//       |   \ \
             //  /イ 「\\_/  .:::´:::八 ∨ ′     | \      ヽ
              (/ ノ   人;::::\[__/ ::::::/::/ \∨{        人     ∨)_ノ
           \{    /   >::[_[\__;;;/    )У       〉   ト、 │
                 \__{ /::::::::几::::::\      〈          /|   |ハ |
                    [__∨::::::::∨| \::::::丶    込,,______ノ |  /  ∨
                   |__7 :::::::: ノ│  〈:::::::::|    〈 [_____________〕 |  ,   /


 ーー頑張って、良かった!


 8/8

 ……
 …


        /   /  //  . :〃  . :iト、|:. |             ヽ    ヽ  ヽ
      乂 .′ / ,イ .:/ !   . :i| |:. |\: .                  ハ
      .′ i`ーァ′/ ! .:i |   . : | |:. |  \: .  ヽ: .  ____ i-‐ ´   .
     .′  !/ . : ′| .:| |   . : | |:. |   \: .        ̄| ̄ ̄ `ヽ:
        /i|  :|. :|  | .:| |   . : ! |:. |_,,-‐====‐\   . : :|   . :|: . i
    j〃 . :i|  :|. :|‐===┼-  | : j   -‐     \: .    . : |   . :|: . |
    /  . :i|  :{. :!  \八  . : | jノ   , -‐ __,,.⊥   . : }   . :|: . 人
   ′ . : 八  Ⅵ ≫=ミ、 . : !     ≫≦Y⌒'マハ:、  . : .′ . :|: . : .\
   i . :i    . :\{ハ 《  )i:::::::ハ\{     ″{ .)::i::::::::::}::} 》 . : /  . :/!: . \: .\
   | . :|   . :i   '. ヾ い;::::::jj         八∨乂 _;ノ:ノ  . :/  . :  |: .    : .`ー-  「今度のキョータローの試合、チアで応援するね!」
   | . :|   . :| . :| . :l'.   V辷ク            ゞ゚-‐ '  . :/   . :/ . :|: .  .
   | . :|   . :| . :| . :|ハ               /    . :/   . :/ .:.:|: .    : .
   | . :|   . :| . :| . :| :.       ,        /  . . : .′ . / . : :|: .     : : . .
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           /   ,    , / /|  |  :.  | | |    ∨
         _/   / /  |_|__'_|  |   _}_|_|_| |  | :
         ̄ ̄´/ イ '  { ´| |/__{  |: , ´/}/_}∧ |  | |
            / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | |    「(淡のチア、だと……。

            / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{
            ´/イ }从lム     ; \     ,ノ /  \    でも他の人に見せたくない……。
                    | ∧          ∧,イ
                   Ⅵム    -  -    イ //        いやでも見たい。超見たい……)」
                _ヽl\       //イ__
                |////} `  ー  ´「////|
                |////|  :.   / |/[__}/|
                ,...<////∧  ,     |/////> 、
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 カン!

思えば過去作がわからない人がいると思った。前の続きです
スレタイがみやながけですらないのに続けていいのだろうか


 1/8


 【昼飯】
 京照白次元


 何気ない1日。

 それは京太郎にとって、いつもと変わらない1日になるはずだった。


 「京ちゃん、お昼食べよう」

 「京、ご飯……」

 「……」

 「……」

 「ほらほら、牽制し合わないでください。

  っていうかシロさんも俺の教室まで来るのは素早いですよね」


 二人を窘めて食堂まで行く。

 そこで三人で一緒にご飯を食べる。

 レディースランチを頼むのはどっちか、なんて争ったりもする。

 そのせいで京太郎はここ最近レディースランチしか食べていない。


 「(レディースランチ好きだし、毎回おかずが変わるけど、ちょっと量がな……)」


 もともとレディースランチは量が少ない。

 別のものを頼むことでカバーしていたが、さすがに毎日毎日だと気が滅入る。

 しかし今日は何かおかしい。

 二人とも、にらみ合ったまま動かない。


 「何してるんですか。

  早く行きましょう」

 「あう」

 「あっ……」


 面倒くさくなったら二人の手を引いて食堂に向かう。

 こうすれば二人とも文句を言わず、トテトテとついてくるのだ。


 ーー少し顔を赤らめながら


 2/8


 ……
 …

 「ほら、今日は何にします?」

 「えっとね……」

 「ん……」


 なぜだか今日はぎこちない。

 いつもなら二人して京太郎に何を頼むか競っているのだ。

 二人にしてみれば『京太郎に何かをしてもらっている』ことが重要である。

 それなのに、今日はどこか歯切りが悪い。

 京太郎も普段から『おせわやく』をしているだけに、そのあたりには敏感だ。


 「どうしたんですか?」

 「白望、良かったらこれ食べて」

 「!?」

 「……あリガとう」


 恥ずかしそうに白望にお弁当を渡す照。


 「照、これ食べて」

 「うん」

 「!?」


 それに対して白望もまたお弁当を渡す。

 普段の二人ならば考えられないことだ。

 京太郎は二人が料理をしているところなど見たことはない。

 何より京太郎のお世話が好きな二人。

 いったい何がどうなったのか。


 3/8


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 .:.:.:.:.:.:.:.:.イ.:.:i|::乂〃 Уソ             リ.:.:.:.:.:.:.:.:|

./.:.  '"   |i:.:.リ.:.:.:ハ ´""  ′        __/::}.:.:.:.:.:|:.:.|   「白望、食べよ」
´      |i:/.:.:.:.:.:::::::.             /:::::i|::/.:.:.:.:.i|.:.:|
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:込、    ´ '      イ:::::::リ/.:.:.:.:.:八:i|
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       八.:.:.:|.:| \:|:::::::::|i::_, く}        ト/.:/
       \{──<´ ̄  \\      |:イ \_
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    /             `、     :::∨::/           ∧


      //ア    /  / イ   :ト、    \      \        \   \
.     // /     /  /  |    | \    \      \       \   \
.      /′i    /  /i   |    │  \      `ヽ      `ー- 、      Y⌒ヽ}
     {  |  ,:イ   :ハ`¨´`T´   |  、  \ト、  ヽ `ー- 、    \_   }
         |  | |  ト、ハ≫=zzz、   !   `¨´`¨´`¨´`¨´   |  |\    ヽ`ヽノ\
.      人  | |  |  代 {  __} \|    ィ=- ..,,__\ト、 j │ \    }     \
         \! 〉、 !  :. 乂_フ     ´下¨¨“_卞ゝ  jイ  ノ    ヽ  ノ      i
           /  ヽ ハ             弋  `フ ノ  j/`ヽ    j/       |
.           / /   / :.    ,      `¨¨´        ノ      ト、   ト、  }
         i  |  i :从                       /  ト、   | ヽ.  ; } /   「うん」
         l 人  ト、  ト、    _          rー-イ  イ ! \ !   } / j/
         ∨  \! ∨V .>   `       イ {ス人jヽノ jノ    jノ  j/
               , ´∠ニニ>、 _ ... イ   /  \
                  / /ニニニニニ7   λ    /    /入
              /  {ニニニニニ7/「八.  /     //二\


                ,.  ⌒ヽ、/⌒ 、-- 、
               /_,..-         ヽ  `  、
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                ,  ´      / ,'     :    、 ヽ
           /   ,    , / /|  |  :.  | | |    ∨
         _/   / /  |_|__'_|  |   _}_|_|_| |  | :
         ̄ ̄´/ イ '  { ´| |/__{  |: , ´/}/_}∧ |  | |
            / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | |    「(あれ、俺のは?)」

            / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{
            ´/イ }从lム     ; \     ,ノ /  \
                    | ∧          ∧,イ
                   Ⅵム    -  -    イ //
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 4/8


 羨ましげに二人を見る京太郎。

 二人もじっと京太郎を見ている。


 「(これは、くれる雰囲気?)」

「……」

 「……」

 「(なんか言って!?)」


 ただじっと見られているだけで不安になる京太郎。

 京太郎としてはここで学食を買いに行くのはいくら何でも辛いものがある。

 さすがにこの雰囲気で何もないことはないとは思う。

 しかし、二人は何も喋れない。

 ここで『俺の分のお弁当はないんですか』なんて言えるほど肝は太くない。

 それに聞いたのに『ない』などと帰ってきたら泣く。本気で泣く。


 「し、白望」

 「いつも一番最初に京に声をかけるのは照でしょ……」

 「こういう時だけそういうのは卑怯!」

 「……お願い」

 「ぐぬぬ……」

 「(来るのか!? 来るのか!?)」


 苦節18年。

 ずっと夢見ていた女の子の手作りお弁当!


 5/8

                 _. . : :―――: . .
             ,. : :´: : : : : : : : : : : : : : :` : 、

            /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
           .:' : : /:,: : : : : : : : : 、: : : : : : : ヽ : : ヽ
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          , : : /: :/:/ : / 、: : : : :.ト、: |:|:{: :|: : :.| : |: : .
           /: : 〃:/:/|:从-、}:、: : : :.|-从}-Ⅵ : : | : |: : |
         /: : ィ: : :{: |r----从\: : |, ---- ミ: : :,: :/: : ,
          ̄´  |: }从:{   ⌒Y   ∨  ⌒Y }: :/}/Y : ′
           |: : : :/   乂_ノ     乂_ノ /:イ  /: :,′
           |: : : { ////        ////r-: ': : /  「京ちゃん、これ……」
              从: : 乂      ^ー(    イ: : :/: :/
            ∨: {:从{¨¨, ィ「 ̄ 7¨´、_: 从:イ: :/
               \|  / \ ∨^/  />/' }:/
                 / |乂\∨_,イイ/  }
               {/⌒ア `ー介 -‐´ {__〉
               {`ー∧ /:∧:.、  |- r'

          〃-‐‐-----‐'/´
       ,, - ''       ー '、 
       ´             ヽ\
      /   /    |    |  ヽ \
    /   ,/     /|   l    _<
   ィ    /  十/┤  十ト l  ハ 
     ̄|   {   示芸 \ |示芸!   }
      j   Y\|廴 リ    廴リ,!リ ノ    「京、私も……」
     /    廴 ///   /// | }
      {/ヽ|\、, > ___ _-__,  イN/
           /  〉 | 〉、 "
         /`ヽ::ヽ〈 V/l::ハ
        ,'   |:::::ヽ「」/::::::ヽ,
        l    !:::::〈/ヽ〉:::::::::}
        └t-ィ:::::::::::::ヽ:::::::::イ

               __  /⌒ヽ
                 ⌒\ ∨   ヽ___
              _, ----`      ∨   `ヽ、
           /´               |     \
          / ____    /  l|     | :.     \
            ///    /   |     |l |  :       ヽ
              /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .
          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \   「うおおぉぉーーっ!?」
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
                   人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
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             //////////∨///////////////////////|



 6/8


 恥ずかしそうに出されたお弁当。

 もうそれだけで京太郎はお腹いっぱいだ。


 「その、いつものお礼に……」

 「……自信作」

 「マジですか!

  俺、こういうのずっと憧れてたんです!

  女の子の手作りお弁当ってやつ!

  やったぁぁぁーー!」

 「そんなに喜んでくれるなんて……照れる」

 「……いいから早く食べる」

 「開けていいですか!?

  それじゃ、開けますよ」


 正直、京太郎はお弁当の見た目や味までは期待していなかった。

 女性にとっては失礼かもしれないが、普段の照や白望を見ていれば仕方ない。

 しかしーー


: : : : :/ : : : : : :| : : : :|.. : :. ゙、: . ゙、゙、. \
: : : : : |. : : : : :i |: : : :i:|. : : : ∧: :、.i. .i: : . ` 、
.: : : : : !: : : : : | |、: : :| | : : i | !: :|:| : |:、: : : : : : >
: : : : : :| : : |: i 「! ヽート!、: : リ  !: |ハ: ト : | ̄ ̄
.: : :,..-、|: : :i: :|: !゙、 _、!二゙、-| イ: リ ! |ヽ:|
: : / へ.゙、 :丶ヾヽ<´{::::i` ヽ! 1!|:/| :!ノ゙、リ

: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i
.: : 丶    \゙、        `> リ  `
ヽ: : :`┬ 、  ヾ          /
  i: ;ィノ    U     ,....-ィ /
,,:‐レリ    _       ̄ /     「(なにこれ、めっちゃすごい)」
゛=!_    \ `ー-、_  _/
::::::゛== 、 \   / ̄ヽ、
::::::::::::::::::::::゛===-、    >


 7/8


 まじまじと見てしまう。

 そこには、色鮮やかなお弁当。

 丁寧に分けられていて、食材同士が味を邪魔することもない。


 「凄過ぎませんか?」

 「照れる……」

 「もう、早く食べて」

 「それじゃお言葉に甘えて」


 照のお弁当を一口、白望のお弁当を一口。

 お弁当だからある程度は冷えてしまっているとはいえ、どちらもしっかり味付けされているのがわかる。

 京太郎も家が裕福なので舌はしっかりしている方だが、それを唸らせるだけのものだった。


 「二人とも、すっごく美味しいですよ、これ!」

 「す、少しお母さんと二人で住んでた時があったから」

 「……京のために頑張った」

 「!?」

 「あっ、白望ずるい。

  京ちゃん、私も頑張ったよ。褒めて」

 「ありがとうございます!

  ありがとうございます!」


 二人にお礼を言いながら貪るように食べる。

 照も白望も顔を真っ赤にして俯いてしまっている。

 少しして、誤魔化すように自分たちのお弁当を食べ始める


 「白望、これ美味しい」

 「……照もなかなかやる」

 「京ちゃんのために頑張ったもん」

 「もう遅い。

  それを先に言ったのは私」

 「ぐぬぬ……」


 8/8


 楽しそうに二人で食べさせあう。


 「照さん、口にご飯粒付いてますよ」

 「とって」

 「はいはい」

 「……」

 「シロさん、なんで自分でご飯粒つけてるんですか……?」

 「いいからとって」

 「わかりましたよー」


 普段ならば叱るところだが、今日は京太郎も機嫌がいい。

 存分に甘える二人を咎めることもなく、なんでも言うことを聞いてしまう。

 しかし、京太郎は思った。


     _ / ,  / //|     , | ,:  |  V  :.
     ` ̄ /  ' | |∧ |  / },l --|   |   |
       /,イ  { |-- 从 / /,ィrtォ、 , |   |
       /  ∧ |,ィtォ、∨ '  Vり {,イ /-、  }
      / イ{从{ Vり }/       |イ l) } 从
      ̄    Vr:l    '           //
          l叭    _      r ' /    「(二人とも、その気になればなんでもできるのかな?)」

             、  `ー`    イ  {
             \      /  |∧」
                ` r‐ ´「 ̄ ̄ ̄}
              「 } |    |///// ∧
               |/|_,ノ   /////////≧=-
           _//∧   「/////////////////≧=- 、
       -=≦/////〈 ∧_///////////////////////∧

     /////////////V∧/////////////////////////∧

      ///////////////\{///////////////////////// ∧
     ,'/////////////////|o//////////////////////////{
     {/////////////////{/////////////////|//////////|


 ーー少し、胸が痛くなった。


 カン!

ネタがない
>>669の次元からなんかリクがあればどうぞ


 0

 ・簡単なデジタル次元のおさらい
 なんやかんやあってくっついてます。
 のどっちはクソコテです。
 28歳にして電車男的な奇跡が起きました。


 原村和
 クソコテしてたらイケメンと結婚できた
 お見合い20連敗阻止! 人生の勝ち組!
 のどっちで検索するとのどっちスレという闇がグーグルトップにくるらしい


 須賀京太郎
 全次元で一番の聖人
 いったい今までにどんな経験をしたのか
 和が何をしていても達観している


                             ,.........-――-...._
  の ど っ ち を             r-...、_{>'´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:>.、  ,...-.、
                     j:.:.:./:.:.:.:.:./:./:.,:.:.:,:.:.:.:.:.┛┗:?´:::::::::|
  性 的 な 目 で             |::/;:.;:.:./:.:.:i:.:i:.:.l:i:.:l:.ハ:.l:..┓┏:::::}-:、::/
                       |//:.l:l:..|:./:.|:ハ:.|:.|:.:|:| |:.|:|:.:.?:::::人::::::}--
  見 な い で、下 さ、い … と. //il.:|:|:.:|:.l-t弋?:?:?弋ナj:.:}イ:::::|`t':?::

                    /|/::||::|:?{Yでぅ`  ´何リヽノ;イ/::::::|ト;:::::/:
                       `ヾ}:::\??,,亠’...:::::....亠’,,  | ̄|ー'::i'´::::
                     `ー|:j:/:|}   '      __jj:.:.|:.l|:l:l:?::::
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   |  |        |  |     フィ/ {   ,.-、{"{´--、   |\::ゝ  ,-‐ /
   |  |        |  | カタカタ  /.|  }  ̄ / ハ\ ̄   /  `rt二二≦ニ
   |  |        |  | カタカタ/  l ?ヽ_// / |  l`ー-´    //   介


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 【結婚式どうすんの?】(デジタル次元、のどっち乙女成分入り)


 原村和です。

 ふふふ、人生にも逆転満塁サヨナラホームランはあるんですよ?

 金髪イケメンのプロハドボール選手を捕まえましたから!

 私たちももうそろそろ結婚です。

 結婚となれば、友人たちにお誘いをかけなければいけませんね。


 「和。

  結婚式は身内だけで済ませる人もいるみたいだよ」

 「えっ?」

 「……なんでもない」


 須賀君がなんとなく意味深なことを言ってます。

 私の記憶が正しければ、須賀君はいつでも人気者。

 結婚式に誘う人だっていっぱいいるはずです。

 いきなり私を諭すように言うなんて、どうしたんでしょうか?


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ト、 ̄´: ',:.: : : : : : : :/ : :/: : |  !   ;
: :\: : : ヽ: : : : : : /  :./: : :.|  |   /   「……あっ」
: ||: :\: : : : : : : :/  : /: ::|: i|  | /
: ||: : : :\/\:/  : /: : /!: i|゙  |′
: ||: : : : .リ   /  : /: : //!:.:i|.  |
: ||: : : ::/__./  : /: : //=!:.:.|.  |


 ーー私、結婚式に呼ぶ友達いないと思われてます?


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 そ、それはいくらなんでも失礼です!

 確かにアドレス帳いっぱいの須賀君には敵いませんが、私にだって友達は……。

 と、友達は……。


           ,、  ─ -  _
    ┌::-/      ┌:Y´::7
    {::./     /   ヽ V:::}:::::}
    ,Y  1 l lj ! !V } Y'::`く

    く::! ィ, N升卅从卅代ノ;イト'
      `ヽN 〔厂 '  〔厂 l  | l
        i| '、       ノ  1 ト、
        /jj `ー  ニ ‐,´ l  | ヽヽ  「(ね、ネットの中になら……)」
     〃/  レ:´:.{  }:.:.:Y l| l V
     V {  ト:;\i /::/ ∧ l {

      ハ l !\><:∧/  }  〉
      V 1Y    〉く   } | ./′
       Y{   /:::::i    j |'′
        | ヽ {::::::::l  〈  |
         |  {  {::::::::l  {  |

 私にはのどっちスレの住民がいますから!!!!!!

 ちなみに、高校時代に親しかった友人とはそのまま疎遠になってます。

 もうあれから十年も経っていますからね。

 時の流れって残酷です。

 思えばこの十年間、友達との輪から外れて苦節を共にしたのはのどっちスレの住民でしかありえません。

 そう思えば、のどっちスレの住民こそ結婚式に出てもらう必要があるのでは?


. . . . . /. . . : :/: : :/: : : : : : : :ヽ: : : 、: . . 寸三ニ7
: : : : /. . : /:/: : /:!: : : : : : :.|: : :゙、: : :!: : . . 寸三}
: : : /. . ://! !: :,':.:.|: :.:|: : : : :!: : : :ヽ: :l:| . . . ゙ニ7
: : / . .:Ll-┼┼-l、: :|: : : :.!|ヽ,r|''T:ーt、: : : :├'ヾ、
: :,'. : :.´!.! |:∧ | l.| ! ,'|:.l: : :|| |: !:||: |: : :.l: : !  ヽ、

: :l{: : : :|!| i'  ヾ |! |/,'/|: :/|! |/|' |:./!|:.,イ: :.i!   i!
: :l|ヽ: : | ┳━┳━/' /:/./'┳━┳' イ:/,': : ,'|    ノ
: :.i!: :lヽl ┃//┃  /'´  ┃//┃ イ'l/: :,イリ
: : : : |  ‘ ━ ’        ‘ ━ ’ '://: |
: : : : |                 ,':´:!: : . .!   「いや、ねーよ」
: : : : L  """       '   """ |: : |: : . .l
: : : : ト.ヽ               イ: : l: : . ∧
: : : : |ヽ|ヽ      ⊿     .ィ´: !: : i: : . . .゙、
: : : : ト、l}  `   _    _ ....:チ: : :.,':λ: :!: : . . . ト、
: : : : ゙、/      7"/': : :.,': : :./:/ |: : !: : : . .ト、゙、

: : . : : lヽ      ,'-.、_: : /: : :./!,' .!: :.|:. : : . .l ヾ.
: : . . : :゙、:\   ∧:::::::::::-.:_//'   !: :.|: : : : . ! l:l
ヽ: . . . . ヽ、:`ヽ  ヽヽ::::::::::::|!`!    |: : !: : : : . | リ


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 あの人たちならのどっちの成り行きとばかりに10年間の過去ログを披露宴で流しかねません。

 い、いくらなんでも私の黒歴史を多数見られれば須賀君も呆れ果ててしまう可能性があります。

 というか、普通の人ならドン引きしますよね……。

 かといって須賀君のご友人たちに何も言わずに結婚するのも、須賀君に悪い気がします。

 ど、どうしたら……。


 「無理しなくていいんだよ?」

 「無理なんかしてません!」

 「あっ、ごめん。

  デリケートな部分だったよね」

 「大丈夫です!」


 生暖かい、まるで父親のようなーーあの忌々しい破顔した父親の顔を思い出すと腹が立ちますねーー笑みを浮かべる須賀君。

 やだ、須賀君かっこいい……。


 「私は私で呼びたい人がいますから!」

 「そ、そうなの?」

 「そうなんです!

  須賀君も友人は多いですよね!?」

 「まァ、確かに数十人いるけど」

 「(えっ、数十……!?)」

 「和?」

 「大丈夫です!

  私もアクティブ100人はいます!」

 「お、おう?」


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. /: : : : : : : |: : .:i:.|:.:.:.:i| |:.:.:.:.:.:.|!:.:|i:.:| 、:.:.゙、::、   ゙、゙、:::::::::::;::イ/:::::::::::::::i:::::
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    ヽ!:.i、`゙ー-r≧   >≠    ,      " "   /  |:! : : : :.:|:.!////
     |:.|:.:.:.:.:.:.:\!  ,, ,,                /   i!: : : : : ::i:.i////   「そのご友人全員呼んでください!
     |:.|: : : : :.:.:.i i       r== "ヽ      /   i: : : : : :.:i:.|////
     | |: : : : : :.:i:.:|\     ∨__ノ)   /    /: : : : : :.:i.:|////    絶対ですよ!!」
     |:| : : : : :.:.|:イ |:::|l`ー-..、    ̄ ̄   /     / : : : : : :.:|/////
      |.|: : : : : :.:|:∧ i:.:!i::::::::::::::`i ー-‐ '    ,..-‐:/: : : : : : :.:.i!/////


: : : : :/ : : : : : :| : : : :|.. : :. ゙、: . ゙、゙、. \
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: : : : : :| : : |: i 「! ヽート!、: : リ  !: |ハ: ト : | ̄ ̄
.: : :,..-、|: : :i: :|: !゙、 _、!二゙、-| イ: リ ! |ヽ:|
: : / へ.゙、 :丶ヾヽ<´{::::i` ヽ! 1!|:/| :!ノ゙、リ

: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i
.: : 丶    \゙、        `> リ  `
ヽ: : :`┬ 、  ヾ          /
  i: ;ィノ    U     ,....-ィ /     「俺は別にいいけど……」
,,:‐レリ    _       ̄ /
゛=!_    \ `ー-、_  _/
::::::゛== 、 \   / ̄ヽ、
::::::::::::::::::::::゛===-、    >


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 ……
 …

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 ……ということをやらかしたんですが、どうすればいいですか?


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 いやもう自分から落とし穴に落ちてるじゃないですかやだー


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 いつものことだろ


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 お相手のご友人数十人に対してのどっち一人……


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 でもほら、全盛期ののどっちなら10人くらいまで自演してたじゃん。いけるいける


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 のどっち全盛期懐かしいな……


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 変なこと思い出させないでくださいよ!?


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 つっても旦那さんに謝って身内だけですませるようにするしかなくね?


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 そ、そんな旦那さんなんて、まだ結婚していませんし……


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 のどっちのどっち、そこ乙女ポイント違うから


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 乙女のどっちノルマ達成


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 あああああああどうしましょう!!


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 見栄はるから……


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 すこやんでも呼べば?


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 さすがに?


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 のどっちの幸せを祈るにしては、それはやりすぎだろう


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 もうのどっちスレのオフ会会場にしようぜ


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 いいねいいね。そういえばこのスレでオフ会ってやったことないし


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 自演、アンチ、嵐渦巻くこのスレのオフ会とか10年前からは想像できないな……


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 そう言って酒のツマミに過去ログを晒すつもりでしょう!?


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 いや、そこまでは……


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 のどっちエグいこと考えるな……


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 うわぁ……ゲスい……


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 スクショ撮った。これ披露宴で出そう


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 なんでですか!!!!!!


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 お前らそろそろ許してやれよ


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 実際どうすんの


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 小学生から知り合いに片っ端から手紙送れ


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 さすがにのどっちにも少しはいるでしょ?


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 うう……いますけど……


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 聖人の旦那さんがそんなこと気にするとは思えないって


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 のどっちのダメなところもダメなところもよく知ってるわけだし


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 良いところはないんですか!?


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 オフ会の流れは?


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 ネトゲ婚とかなら珍しくないしな


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 俺は生放送してくれれば見るよー


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 いいね、生放送。気軽に見られる


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 ううっ、考えておきます


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 まぁオフ会やるとしたらちゃんとした人を集めような


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 ……
 …

    __,.ィ ̄ ̄`ヽ/ヽ__

      > ´ ̄  /   `   `、  、
、 -  ´    /   '     } ヽ ヽ\  \
 `  ̄ >'  /   ,: |    ∧/! |   } ヽ  ヽ
   /,ィ  / ' / /|   _/,.ム斗}-/  ハ   :.
  {/.'   ,| ,.|-}/-{ | / ,ィチ斧ミ }/ }  |    .
  /  イ/{ : ! ィ斧从}/   Vzソ ノ /イ ,:
<__  ´// 从{ Vソ /         / イ- 、  |
     {'{  { ,    '           /' ⌒ }  |
      从Ⅵ              /.: ノ  |  「そういや最近はネトゲ婚とかがあるらしいね。
       叭   v_ ̄ヽ      ,rー'   从
         、           イj   / /    ネットの知り合いを結婚式に呼ぶんだってさ」
            :.          < |'  /}/
            、__   ´    } イ从/
               |        |/
              「 ̄|     「 ̄ ̄ ̄ ̄}
              |//l|     |//////// 、
        ,. <// ∧      |//////////> 、


           ,∠、  /            ヽ
            /   |: :/                  \へ
     / ̄¨ヽイ     |:/ / / /||:! ! | !         .|
     !:   〈〈:     /:{: ': ,': ':::|::|: l::l: l::l  ,ィ: ! l    ,!
     ∨   ノ¨ト==イ: :! l斗十ナナノ.:|: /::l. /十ト、l:     i〉
      ¨フ´/ !: : : :! 、トト、!ィチ^:丁:::}/ :::}'::::::!ノ :: !: l   リ
.     /: 〃 |: : : :|ミソ :::〈 l{::::::::| :::::::::::::::rf示、 ノ ノ/ /
     レイ ト、_|: : : :l ヽ  弋:zソ       !::::}l }イノイヽ
     |.: : :|: : : : .: |     ::::::::      ,  辷リ !:. :. :.:ト、 \
     |.: : :|: : : : .: ト、            :::::: |: : : : | ⌒
     / : : :|: : .: .:  lミ、Y       ‐ -    ノ: : :. :.|
.    /, : : : |: : .: .:  l   !  ヽ           イ|: : !:.|  「スレの流れ見ましたね?」
   //   : :|: : : :  :ハ  |   `  . _ x<: : |: :!: : :|:. :!
.  //  . :/!: : : :   ∧. !       |  |: : : :.|: :!: :. :.、|
  //   . ::/∧: : .:   ∧`ヽ.      l ヽl、:: : |: :l : : : : ト
. //  . ::/厶 ヘ.:     ∧  \   `ヽ.  ヽl : l : : : : | ヽ
//   , <   \      \  \    ∨  `|: :. :. :.|   \


                ,.  ⌒ヽ、/⌒ 、-- 、
               /_,..-         ヽ  `  、
             / /´     /    ∨   \
                ,  ´      / ,'     :    、 ヽ
           /   ,    , / /|  |  :.  | | |    ∨
         _/   / /  |_|__'_|  |   _}_|_|_| |  | :
         ̄ ̄´/ イ '  { ´| |/__{  |: , ´/}/_}∧ |  | |
            / / , rⅥィ笊 从 {∨ /ィ笊_ヽ}/、 | |

            / イ ∧{ 从 Vり \∨' Vり /' / ∧{
            ´/イ }从lム     ; \     ,ノ /  \  「ミ、ミテナイヨー?」
                    | ∧ U         ∧,イ
                   Ⅵム    -  -    イ //
                _ヽl\       //イ__
                |////} `  ー  ´「////|
                |////|  :.   / |/[__}/|
                ,...<////∧  ,     |/////> 、
          , <///////////\   ///////////> 、
        , </////////////////}____{/////////////////> 、
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       {/////////////////////∧  ,'//////////////////////}
       |//////////////////////∧ ////////////////////////|

 カン!

 ここまで京咲なし……?
 引き続きシチュエーション募集してます


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 ・簡単なだるだる次元のおさらい
 なんやかんやあってくっついてます。
 好きな人のために少し変われた白望のお話


 小瀬川白望
 小さい頃、親戚の集まりで数回会った京太郎を引っ張ってあげていた
 引っ張ってあげた自分を好きになってもらったと思って姉さん女房やってます

 須賀京太郎
 だるがりな白望にいろいろしてもらうのが嬉しい
 いつもは弟のような扱いを受けているけど、実は主導権を握っているのはこっちかもしれない


 完結済


     \ー―――‐`         }
       \         --- 、 __ノ_⌒ヽ
      /⌒    /     /    Y^ ,
    ー=≠       /           |   ',
.   /     /      / /         \_
   /     /     / / /        /      Y´
.  /  / /   / _/_/イ_/,  、__/ ∧
  | /./ /   /´/|/´-l/   // /`^ヘ |   | l|
 八{ /  j/ ll ∧ :|芹苧豕 /l/苧豕, ∧|   | l|
   / イ / Ν/-、| | 乂_ソ}/   ヒソノ∧八 リノ

.     {  | \、_jノ        、   ,   ∨
     \八  厂〕ト       _  人  i|\)
        )/(\ノ/}>   ´ イi:i:ト、)ノ /   「……私がお世話してるって誰も信じてくれない」

            (\\\   爪 i:i:i:i:i:|∧
         ⊂ニ=---、__〉\:i:i:i:|  \
         /:i:i⊂ニニヽ \{\ |:i:i:i|   } ̄ |
.         /:i:i:i:i:i:iノ  {   \_,|:i:i:i:\     |
       / ̄て二...__......_   `゙<:i:i\  ノ
        |      ∨:i:i:i:i:i:> .     ̄ ̄ `ヽ
        |      ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:i:> .        ',
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 【みんなからどう見られてる?】


 白望はだるがりとはいえ、大学にも友達はいる。

 京太郎がいない時には何人かの話に巻き込まれることも少なくない。

 女子大生の話といえば、やはり恋愛話がメインとなるだろう。

 白望はそれが苦手だった。


 「シロの彼氏くんってすごいよねー。

  主導権を握って引っ張って行ってくれるなんて憧れだよー」

 「わかるわかるー。

  男の子に無理やり引っ張られるのっていいよねー!」

 「シロの彼氏くん、イケメンだし!」

 「うらやましー!」

 「……だる」


 ーー京太郎を引っ張っているのは私だ


 そうは思っても口に出さない。

 この前の風邪の一件で、本当に引っ張って行ってくれているのは京太郎だとわかっている。

 それでも、簡単には認めない。


 ーー恥ずかしいから


 京太郎を褒めてもらえるのは嬉しい。

 白望から見ても京太郎は格好いいと思う。

 だから好きでいてもらえるように、普段慣れない家事もできるようになった。


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 しかし、お世話してあげているのが白望だということは信じてもらえない。

 高校の友達、塞ですら全く信用してくれないのだ。


 「シロって面倒くさがりだし、色々としてもらってるのー?」

 「……」

 「ご飯作ってもらったりとかしてそう!」

 「……うん、してもらってる」

 「「きゃーっ!」」


 嘘だ。京太郎は料理が苦手だ。

 というより、手伝おうとしても手伝わせない。

 恥ずかしいし誰にも言わない。女の子としての魅力をアピールしている。

 それを悟られたくないから、対外的な『小瀬川白望』のキャラを通す。


 「シロと彼氏くん、並んで立ってたらカッコイイもんね」

 「ビジュアル系二人……美味しいです!」

 「……そう?」

 「おっ、食いつきますなー」

 「二人ともお似合いだよー」

 「……お似合い、かな」

 「やだー、シロかわいいー!」


          〃-‐‐-----‐'/´
       ,, - ''       ー '、 
       ´             ヽ\
      /   /    |    |  ヽ \
    /   ,/     /|   l    _<
   ィ    /  十/┤  十ト l  ハ   ヽ
     ̄|   {   示芸 \ |示芸!   }   〃
      j   Y\|廴 リ    廴リ,!リ ノ 
     /    廴 ///   /// | }    「ほんと?」
      {/ヽ|\、, > ___ _-__,  イN/
           /  〉 | 〉、 "
         /`ヽ::ヽ〈 V/l::ハ
        ,'   |:::::ヽ「」/::::::ヽ,
        l    !:::::〈/ヽ〉:::::::::}
        └t-ィ:::::::::::::ヽ:::::::::イ

 「ホントだよー!」

 「メスの顔をしていますなぁ!」


 ーーそう言われると、嬉しい。


 3/7



 「シロ姉!

  ご飯食べよう!」

 「ほら、彼氏くんが呼んでるよ」

 「熱々ですなぁ」

 「……だる」


 赤くなった顔を隠しながら京太郎の方に向かう。

 友達がニヤニヤしているが、反応したら負けだ。


 「彼氏の手作りお弁当かな?」

 「いいなー。羨ましいなー」

 「?

  弁当はシロ姉の……」


           ___/ / /        \   \
           ⌒フ / ,  /   l 〈     \\ \
           /  / /  /  /| \      ∨ \ \
         /  / /  /-~/-| {  \~ー 、'   \ )
           〈 /   |  |八Ν__八{   | _\  ∨  l|′
          /    l|  l ァ┼ ┬ \N┬‐┬  | |  リ
        〃   / l|\_从 乂゚_ノ     乂゚ノノ}∧l/}
          八/ / ,八 入         、   ,,, ,′ ト、ノ  「っ!!
.             { /   }\__              ′ |
.            从  八{ 込、   ∠>  . イ^| }八    京、行くよ……」
                ∨  \从_}> . __ イ 八jノ  )
                   / \__  Κj/
                    _/  //〉_∧ ‘,
               /:.∨ ,///   ∨ }: : ..
            . .:´: : : : :∨//\__//∨: : : : : `ト、

             /∨: : : : : : : :∨\:i:i:i/ {:.: : : : : :.:| \
          {  ∨: : : : : : : :\/:i∧\{:.: : : : : :.:|   ∧


 「えっ、どうしたの?」


 京太郎の手をとって逃げるようにその場を後にする。

 いつもの白望ならば考えられない俊敏さだ。

 それを見て、友人たちはニヤニヤしながら見送った。


 4/7


 ……
 …

 「今日のシロ姉の弁当は何かなー?」

 「……お弁当作るのだるい」

 「そう言いながら毎日作ってくれるシロ姉、最高!」

 「……さっさと食べる」


 全く、京は人の気持ちがわかっていない。

 いや、ここ最近はわかった上でからかっている気がする。生意気だ。


 「そういえばさっきはどうしたの?」

 「別に……」

 「俺が弁当作るみたいな話ししてたけど」


 余計なところだけ聞かれていた……。

 誤魔化すのもだるいけど、本当のことを話すのはもっとだるい。


 「俺、弁当なんて作れないよ?」

 「わかってるくせに」

 「えー、なにがー?」


 京が嬉しそうにこっちを見てくる。

 やっぱりわかっていて聞いている。


 性格悪い。

 卑怯。

 生意気。


 嫌い……ではない……。


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 「そんなにガツガツ食べない。

  ちゃんと噛んで食べる」

 「ダイジョーブだって!」

 「……はい、水筒」

 「水筒女子っていいよね。

  シロ姉そういうところしっかりしてるし」

 「……もう」

 「だってさー。嬉しいんだよ」

 「いつものことでしょ」

 「いつもやってくれるから、嬉しいんだよ」

 「……」

 「あっ、シロ姉照れてる」


 最近、京が調子に乗ってる気がする。

 これは姉として制裁を加えないといけないかもしれない。


 「……シロねぇ、何してんの?」

 「……」


 無言で頬をつねってみる。

 あんまり効いてないようだ。

 あまり強く捻ると痛いだろうから、やめておく。

 ダメだ。無理に相手する方がだるい……。


 ふと、京の頬に注目する。

 あっ……。


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      //ア    /  / イ   :ト、    \      \        \   \
.     // /     /  /  |    | \    \      \       \   \
.      /′i    /  /i   |    │  \      `ヽ      `ー- 、      Y⌒ヽ}
     {  |  ,:イ   :ハ`¨´`T´   |  、  \ト、  ヽ `ー- 、    \_   }
         |  | |  ト、ハ≫=zzz、   !   `¨´`¨´`¨´`¨´   |  |\    ヽ`ヽノ\
.      人  | |  |  代 {  __} \|    ィ=- ..,,__\ト、 j │ \    }     \
         \! 〉、 !  :. 乂_フ     ´下¨¨“_卞ゝ  jイ  ノ    ヽ  ノ      i
           /  ヽ ハ             弋  `フ ノ  j/`ヽ    j/       |
.           / /   / :.    ,      `¨¨´        ノ      ト、   ト、  }   「ご飯粒ついてる……」
         i  |  i :从                       /  ト、   | ヽ.  ; } /
         l 人  ト、  ト、    _          rー-イ  イ ! \ !   } / j/
         ∨  \! ∨V .>   `       イ {ス人jヽノ jノ    jノ  j/
               , ´∠ニニ>、 _ ... イ   /  \
                  / /ニニニニニ7   λ    /    /入
              /  {ニニニニニ7/「八.  /     //二\


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: : / へ.゙、 :丶ヾヽ<´{::::i` ヽ! 1!|:/| :!ノ゙、リ

: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i
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  i: ;ィノ    U     ,....-ィ /       「うえっ、マジ?」
,,:‐レリ    _       ̄ /
゛=!_    \ `ー-、_  _/
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 7/7


 やっぱり京はまだまだ子供。

 そっと指を使って取ってあげる。

 京も少し恥ずかしいのか、顔を赤くしている。

 やっぱり弟は姉にひれ伏していないとダメだと思う。


 そのまま、何気なくご飯粒を食べてしまった。


     //      ´   !       丶、        \      \
    / /    /     !  ',    ヽ  ヽ           \      \
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  '        ,'       !',,  ',       ` 、、 ヽ      ヽ       ヽ
  {l ,'      l      . l   ヽヽ       ヽヽ ヽ               \
   /  ,'    l      |  \  \ヽ"'' - ,,   ヽ~\     ヽ
          ! |    !|   \   < ~ "' 、 ',  ! ヽ     ,   \     ヽ
  ,' /!      .∧  __  ~ー  ヽ    <   ,,x≦ }ヾy、',   /            }
  ,'  l ,'!   l !l 、~  ',丶--    `   ̄彡ヤ"::o:::::}  }/ }/i /   \   ヽ ,'
  { ,'  !|   |! ∧ヾ __ ≦ ===ミ        弋:::::::::ノ      ./、     ヽ   |/
  、 . ! |   | | ∧ .|l ヤ:::::o::::}          ¨       ! }  \    ',
         、| |.∧ 、 廴::::::ソ                | /    ヽ   ,
          | 、∧           ,           |'   ヽ   ヽ  /
     |  |    ヽ ',   ///       ///    /   ',ヽヽ  }   「ーーっ!!」
     |    ',    ∧                      ,' } ヽ! /
       / \ヽ    、           ,-_‐、       イ ヽ! //
      ', ! ', 、ー    >               |
       丶 丶、  \     >        イ  .!__
              ̄      -|  `  ‐      | 八
                  / ヽ!         /   ヽ
                 /    \      イ      |::::<..
             ,, - ''"|       ` ヽ  / 、         l:::::::::::::::::::...<


 数瞬後、自分のしたことを理解して混乱する。

 もしかしたらここまで京の計算済みだったのかもしれない。

 そうだとすればずるい。


 ーーやっぱり京は、生意気だ。


 カン!

また弁当ネタですまない…
今まで出てるのもネタが浮かんだら投下します。クロチャーは苦戦してる

シチュエーションがあればどうぞ


 0

 ・あらすじ 1レスでわかるクロチャー次元

               __  /⌒ヽ
                 ⌒\ ∨   ヽ___
              _, ----`      ∨   `ヽ、
           /´               |     \
          / ____    /  l|     | :.     \
            ///    /   |     |l |  :       ヽ
              /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .
          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
         .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .
         }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .
           / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.
          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \   「胸が大きくて家庭的な女の子が好きです!」
               |                ノ ' }/イ/
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                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
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     〉: ,′ /: : / l: : /|:__:|:||: :|小、孑代汁仆|l|:. :||:   .:j|:.   〈
     く:. i  /: :.:,':.厶rj´|l : |从.:| ヽ \| ∨从|l|:. :|L _/⌒ヽ /
      |:. | :,'j: :.:.j|:.:||: :l 八_」_ \    ィf乏[うメ、|: :从: :/  ヽ.-r'
     L l :l | l: :|| 八,ィ圻圷、         {ト _jハ.}}:∧|:.:.:|    } ',
.      Ⅵ,| |:.从 { {{゙ {ト、_jハ        弋jy沙 /  i: :.:レi⌒jレ'´〉
       / 八::{:.:\  Vj沙′          ,,,,、   i: : :.:.:|:.:|:.:.|
        厶__/ \:.|ハ  ,,,、     '             ,′:.:.:.:|:.:|:.:.l
          | :.:.:l:.:ヽ',              /7 / : : l .:l:.:.l 「嘘、私のヒロイン力、高すぎ……?」
          |   ::l:.:.l八        r_ヽ     .イ/ /: : : ,′l.:. l
          |  ::l:.:.l:.:.:{丶.           ,.イ|'/ / : : :/ : :.l:.:.:l
          |  ::|:.:.|:.:.:ヽ:.:.:.:> .、_,. <  / / : :./ :.:.: :l:.:.:l
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