妹「私を彼女にすれば家でもえっちな事し放題だよ?」(16)

それが妹の最期の言葉でした

兄「はいはい、そうですね。 ほら、子供は外で遊んでなさい」

そう言って兄は、自分の部屋に入っていきます。

リビングに一人、妹は取り残されてしまいました。

正午を告げる時報の音が、虚しく部屋に鳴り響きます。

妹「まったく、兄ちゃんにだけはこの美貌が通用しないんだよな」

ヘアゴムを一つ手に取って、髪を右側にまとめて垂らす妹。

お気に入りのお洋服を身に纏い、これからお出かけに行くようです。

今日も良い日でありますように、なんてことを呟きながら、扉に手を伸ばしました。

扉を開けるとまず目に入ったのが、燦々と照らす太陽です。

眠たくなるような小春日和、どことなく草花たちも嬉しそう。

妹「さて、どこに行こうかな」

心の赴くままに、気の向くままに、歩を進めていく妹。

その足取りはとても軽く、思わずスキップをしてしまいそうです。
るんるん、らんらん。

ハミングしながら歩いているうちに、見知らぬ公園に辿り着いてしまいました。

周りを見渡してみても、人のいる様子はありません。

しめた、今この時間この公園は私の貸し切り状態だ、妹はそう考えました。

まず滑り台を坂から登り、階段を降ります。

その次はブランコ、二つ使っても怒られません。

登り棒、鉄棒、棒という棒を遊び尽くし、今度は雲梯に挑戦です。

雲梯に乗り上げ、慎重に前へ進んでいきます。

ちょうど半分を渡りきった頃、お空に大きな雲を見つけました。

妹「絶景かな、絶景かな」

あまりに空が大きいので、小さな悩みなど消えさってしまいそうです。

相も変わらず太陽は、この地球を照らしています。

その輝きを掴み取るかのように、妹は手を伸ばしました。

しかしそれに相反して、太陽は遠くなっていきます。

上ばかり眺めていたので、足を踏み外してしまったようです。

妹は地球を背中にして、空を見上げる形になりました。

綺麗な真昼の空が、次第に黒く塗り染められていきます。

公園の遊具は正しく遊びましょう、怪我をしてからじゃ遅いのですから。

妹「ん……」

気絶した妹が意識を取り戻したのは、もうすっかり日が落ちた夜中。

その顔は、とても楽しげなものではありませんでした。

それもそのはず、現在妹の置かれている状況は、数時間前と大いに異なっていたからです。

辺りを見回しても遊具のたくさんあった公園は無く、代わりに見えるのはテレビ、冷蔵庫、机に椅子など。

誰かのお部屋かな、真上から蛍光灯の光が差し込みます。

ぶるぶる、少し肌寒い。

昼間に着ていた洋服も、気がつけば全て無くなっていました。

とにかく外へ出ようと立ち上がろうとするも、上手く身体を動かすことができません。

しばらく奮闘していると、扉の開く音がしました。

音の出所に顔を向けると、小太りの男性が立っているのがわかります。

その男性は携帯電話を手に持ちながら、快活な声でこう言いました。

写真をばらまかれたくなかったら、大人しく俺の言うことを聞くんだな。

男が満面な笑顔なのに対し、妹の顔はみるみる強張っていきました。

窓の外から満月が、その様子を眺めています。

妹の小さな身体が、男の身体に隠れて見えなくなりました。

小さな悲鳴だけが、部屋の中に響き渡ります。

妹「兄ちゃん……」

薄れゆく意識の中で、妹は呟きました。

兄「こんなに遅くまで、どこをほっつき歩いていたんだ!」

怒られるのも至極当然、時計の針は長針短針共に12を指し示していました。

妹は俯いたまま、何も喋ろうとしません。

兄はその態度に心底怒り、思わず妹を殴ってしまいました。

しまった、そう思った頃にはもう遅く。

妹は悲しそうな目で兄を見つめた後、どこかに走りさり、やがて見えなくなってしまいました。

あれから十年の月日が経ちましたが、とうとう妹は姿を現しませんでした。

もう生きてはいないかもしれない、いや、確実にそうでありましょう。

兄にはもう一人の妹ができました、その子は妹に良く似ています。

「お兄ちゃん」

そう呼ばれる度に、妹のことを思い出してしまいます。

でもそれは、これからも背負い込まなければならない罰なのでしょう。

妹「お兄ちゃん、どうしたの?」

兄「ん……いや、何でもないよ」

人故に、感情だけは切って話せず。ならばせめて……一期一会の精神を忘れずに。

-fin-

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