八幡「三つの謎?」 (237)

八幡「ふぁ…………三月も明日までか…………」

八幡(リビングのソファーで寝転がりながらあくびをし、カレンダーが目に付いた俺は一人呟いた)

カマクラ「ニャー」

八幡「おっと、一人じゃなかったな」

八幡(腹の上で寝そべっているカマクラの頭を撫でる。ここ最近俺に懐いているのは今この家には俺しか住んでいないのがわかっているからなのか?)

八幡(そう。うちの両親と小町は春休みを利用して、小町の高校合格と卒業祝を兼ねた旅行に行っているのだ。ちなみに俺は色々訳あって辞退した。カマクラの世話もあるし)

八幡「しかしあんまりだらけすぎてもな…………またゲームでもやりに……ん?」

八幡(テーブルの上に置いてあったスマホが鳴り始める。メールじゃない、着信だ)

八幡「…………由比ヶ浜? もしもし?」ピッ

結衣『ヒッキー助けて! 三つの謎を解くの手伝ってほしいの!』

八幡「…………三つの謎?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458541643

八幡(いきなりわけのわからないことを言われて戸惑う俺。しかし電話の向こうから聞こえた声にさらに驚愕する)

陽乃『はいはい、余計なこと言っちゃ駄目だよガハマちゃん…………ひゃっはろー比企谷くん』

八幡「雪ノ下さん…………」

陽乃『つれないなあ。陽乃、もしくはお姉ちゃんって呼んでくれていいんだゾっ』

八幡「状況がよく掴めないんですけど、何があったんですか?」

陽乃『むう、比企谷くんが冷たい…………ま、いいか。時間もないし簡単に説明しちゃうね』

八幡(時間がない? そういえばさっきの由比ヶ浜も余裕がなくいきなり助けを求めてきたな)

陽乃『うちの母親が雪乃ちゃんの一人暮らしに良い顔してないのは知ってるよね? それでこの前条件を出してきたの』

八幡「条件?」

陽乃『そう。三つの謎を提示してそれを解くこと。それが出来なければ一人暮らしは解消。出来たなら少なくとも高校生の間は現状維持で留学の話もしない』

八幡「はあ、なるほど。しかし何故その場に由比ヶ浜が?」

陽乃『ルールとしてネットの力を使ってはいけない、ただし助っ人はあり。ってなっててね。雪乃ちゃんはガハマちゃんに助けを求めたの』

八幡「で、次は俺に助けを求めたってわけですか」

陽乃『そーそー。雪乃ちゃんはだいぶ渋ってたけどね、さすがにタイムアップが近いし』

八幡「いつまでなんすか?」

陽乃『今年度中。つまり明日の夜まで』

八幡「はあっ? そんな切羽詰まってる状況で俺が役に立つんすか?」

陽乃『さあ? 悪いけど今回わたしは中立で見届け人なの。ガハマちゃんが比企谷くんに助けを求めてるからこうして説明をしてるだけで』

八幡「…………雪ノ下を手伝うって言った場合、俺はどうすればいいんですかね?」

陽乃『お、その気になったのかな? その場合はお泊まりの準備をして雪乃ちゃんのマンションに来てくれればいいよ』

八幡「お泊まり?」

陽乃『うん。悪いけど外部と連絡取れないように管理させてもらうから』

八幡(なるほど、こっそり携帯とかでヒントを得られないようにしているのか)

八幡「…………わかりました。俺に何が出来るかは知りませんが、あいつらに協力することにします」

陽乃『おお。雪乃ちゃんも喜ぶよ、今ちょっと疲れてるからねー』

八幡「それはどうですかね……あ、ひとつお願いいいですか?」

陽乃『何かな?』

八幡「えっと……」

八幡(少しして俺は雪ノ下のマンションに到着する。相変わらずデカいな)

八幡(インターホンを鳴らすと陽乃さんが応対し、俺はマンション内に入る)

陽乃「ようこそ比企谷くん。さ、上がって上がって」

八幡「お邪魔します」

八幡(玄関で出迎えてくれた陽乃さんに続いて家に入った。そこで身体検査を受ける)

陽乃「ごめんね、一応ルールだからさ」

八幡「わかってますよ。通信機器はスマホくらいです。預ければいいんですね?」

陽乃「うん。ロックは自分でちゃんとしといてね」

八幡(それらが済み、俺はリビングまで案内される。ソファーでは雪ノ下と由比ヶ浜がぐったりしていた)

結衣「あ、ヒッキー……来てくれたんだ……」

雪乃「ごめんなさい比企谷くん……私の問題に巻き込んでしまって…………」

八幡「お前が謝罪するなんて相当参ってるみたいだな…………こいつに癒やしてもらえ」

雪乃「え…………あっ!?」

八幡(抱えていたケージからカマクラを出し、雪ノ下の膝に乗せる。雪ノ下の目の色が変わってカマクラを撫で始めた。こうかはばつぐんだ!)

八幡「最悪明日の夜までってんならカマクラだけになっちまうからな。雪ノ下さんに許可もらって連れてきた」

結衣「え、小町ちゃんとかは?」

八幡「みんな揃って旅行中。俺は留守番だ」

八幡(普段ならここで雪ノ下から何らかの言葉が飛んでくるのだろうが、今はカマクラを撫でるのに夢中になっている)

結衣「でもヒッキーが来てくれたなら何とかなるかも。あたしじゃとても無理で」

八幡「というか何で雪ノ下は由比ヶ浜に助けを求めたんだ? 言うの申し訳ないがお前アホの子だろ」

結衣「ひどいし! 確かに役に立ってないけどさ…………」

雪乃「いえ、元々は私一人でやるつもりだったのよ。ただ精神的につらくて…………ごめんなさい由比ヶ浜さん」

八幡(カマクラを撫でながら雪ノ下が答える。まあ陽乃さんと二人きりというのもストレス溜まるだろうしな。他に呼べそうな友達もこいつにはいないし)

結衣「ううん! 頼ってくれて嬉しかった! また知らないとこでゆきのんが苦労するの嫌だもん!」

雪乃「…………ありがとう、由比ヶ浜さん」

八幡(キマシタワー、ってか)

八幡「で、謎って何なんだ?」

雪乃「ええ、これよ」

八幡(雪ノ下はテレビの脇から三つの四角いものを差し出してきた)

雪乃「これと」つ『神龍の謎』

雪乃「これと」つ『コンボイの謎』

雪乃「これよ」つ『アトランチスの謎』

八幡「ファミコンのゲームじゃねえか!?」






※このスレはおっさんホイホイです。ロンダルキアの苦労も知らないゆとりはそっとブラウザバックしやがってください
気が向いたら更新していきます

雪乃「今までこういったものにあまり触れてこなかったのだけれど、みんなこんな思いをしてまで頑張っていたのね…………」

八幡「いや、昨今のゲームとファミコンのゲームはまったく別物だと思うぞ…………で、どれかひとつでもクリアできたのか?」

雪乃「いえ、どれも。ある程度は進めるようになったのだけれど、ゴールが見えなくて」

八幡「あー、そういやクリアがないゲームとかもあるもんな…………雪ノ下さん、これらはどうやったらクリアとして認められるんですか?」

陽乃「ここにあるメモにまとめてあるよ、はい」

八幡「どうも。どれどれ…………」



・『神龍の謎』
 二回目の願いを叶え、タイトルのドラゴンを動かす

・『コンボイの謎』
 最終面のボスを倒す

・『アトランチスの謎』
 ファイナルステージで師匠を助ける



八幡「ふむ…………」

陽乃「それとこっちは操作方法とストーリーなんかをまとめたメモね」

八幡「ストーリーいるんすか? ってそうか。いきなり師匠とか言われてもわけわかりませんですしね」

陽乃「そゆことー。背景を知ってれば少しは感情移入できて苦痛も和らぐでしょ?」

八幡「それこのゲームが苦痛だって認めてますよね…………雪ノ下さんはこれクリアできるんですか?」

陽乃「今はまだ無理だと思う。練習しないとね」

八幡「さいですか。で、これ俺や由比ヶ浜の役割は何なんですかね。雪ノ下の代わりにクリアしてもいいんですか?」

陽乃「ううん、あくまでもクリアするのは雪乃ちゃん。ただ、アドバイスやお手本を見せるとかは認めているよ」

八幡「なるほど…………」

結衣「ヒッキーならもしかしたらあたしたちより上手くできるかもって思って…………他にこういうの得意そうな人って思い付かないし」

雪乃「でもこれはちょっとやそっとじゃクリアできないわよ。比企谷くんには来てもらって悪いのだけれど、明日までの行動が徒労に終わる可能性が高いわ」

八幡「まあやるだけやってみるか…………いや、やらなきゃいけないのは雪ノ下だけどな」

雪乃「ええ。ちなみに今は小休止といったところよ。順調でない限り一時間に一回は休憩を挟むようにしてるわ」

八幡「集中力の問題もあるしな…………一番調子良さそうなのはどれだ?」

雪乃「『コンボイの謎』かしらね。単純に難しいだけだから少しずつ進んではいるのだけれど…………」

結衣「でも今のペースじゃ間に合わないよ…………何面まであるのかわからないし」

雪乃「一応今までのプレイである程度のメモは取ってあるわ。良ければ参考にしてちょうだい」

八幡「お、おう」

八幡(雪ノ下が随分素直な対応をしてきて戸惑ってしまう。疲労と諦念が入り混じってしまっているのだろう。あとカマクラ効果か?)

八幡(ざっとそのメモ書きに目を通すと難所やポイントなどが書かれていた。しかしこんなのがまったく役に立たない箇所がこれらのゲームにはある。というかネットや攻略本なしでクリアしろって、雪ノ下の母ちゃんは一人暮らし止めさせる気マンマンじゃねえか)

八幡(別にそれ自体は俺にはあまり関わりのないことなのだが、公平な条件に見せて不公平を強いるこれはちょっと思うところがある)

八幡(友達を助っ人に呼んでいいと言ったものの、雪ノ下にはそういった友人がいないと踏んでの条件に違いない)

八幡「…………雪ノ下」

雪乃「何かしら?」

八幡「マックスコーヒーはあるか?」

雪乃「え?」

陽乃「あるよー。三本くらい冷蔵庫に入ってるよ」

八幡「よし、それを寄越せ。助け賃だ」

雪乃「え? え?」

八幡「俺が、お前を助けてやるよ」

八幡(そう啖呵を切り、早速マッ缶を一本もらって一気に飲み干す)

八幡「ぷはあ…………五臓六腑に染み渡るぜこの甘さ」

雪乃「というか何でうちの冷蔵庫にマックスコーヒーがあったのかしら」

陽乃「わたしが入れといたんだよ。雪乃ちゃんが比企谷くんに助けを求めたときに、あったら比企谷くん喜ぶかなって思ってて」

雪乃「余計なお世話よ…………」

結衣「まあまあゆきのん。結果的にはヒッキーも協力してくれるんだし」

八幡「んじゃまずは『コンボイの謎』からやるか」

八幡(俺は準備を始める。ニューファミコンか…………ソフトを挿して電源を入れるとタイトル画面が表示された)

八幡「雪ノ下、とりあえず俺がプレイするからカマクラをしっかり抱いとけ」

雪乃「え? ええ」

結衣「何で?」

八幡「ファミコンにとっての天敵が猫アタックだからだよ」

結衣「??」

八幡「要するに邪魔されないようにってことだ…………雪ノ下さん。これのクリアは最終面のボスを倒すだけでいいんですね?」

陽乃「うん、そうだよ?」

八幡「ロディマスコンボイを出したりしなくていいんですね?」

陽乃「ロ、ロディ……?」

八幡「んじゃ、始めるか」

八幡(俺はスタートボタンを押した)

まずはコンボイの謎から
ちなみに>>1は三つともクリアしました。コンボイの9面だけは友人に頼りましたが

あとこのスレはファミコンに限り雑談も大歓迎です

八幡「そういや雪ノ下はどの辺りまで行けたんだ?」メカクシ

雪乃「最高記録は七面だったかしら。地面が滑るところなのだけれど」メカクシ

結衣「残機なくなってたのにあんな難しいのなんて非道いよね!」メカクシ

八幡(いや、初心者がそこまで行けただけでもすげえと思う。まあ雪ノ下は器用だし何でもそつなくこなすからな…………しかし残機を気にするってことは……二面で陽乃さんに確認してみるか)

八幡「よし、行くか」

八幡(赤と青のフラッシュから目を守り終え、ゲームがスタートする)

八幡(そして二秒後、俺のウルトラマグナスは盛大に爆死した。うんうん、これぞ『コンボイの謎』の醍醐味!)

雪乃「ひ、比企谷くん、自信あり気に見せてそれはどうかと思うのだけれど…………」

八幡(雪ノ下は笑っていいのか呆れていいのかわからないと言った表情になる。ま、そりゃそうか。自分のその後の生活がかかっているしな)

八幡「気にすんな、様式美ってやつだ。では改めて…………」

八幡(再び俺のウルトラマグナスが発進する。まずは弾を一発撃つ。これにより体当たりしてくる戦闘機を撃墜)

八幡(その敵は人型にトランスフォームするが、点滅して判定がない間にすり抜け)

八幡(あとは延々とまっすぐに走り、戦車をジャンプでかわすだけだ。今回はパワーアップはいらない。ロディマスのアルファベットも無視)

結衣「あ、ヒッキー! まっすぐ飛んでる敵を倒すとアイテム落とすよ!」

八幡「ん、ああ、今回はいい」

結衣「え?」

八幡(あっという間にボスまでたどり着いた。というか手抜き感ハンパないよなこいつ…………目に弾を四発当てて一面クリア)

八幡(二面になったので、とりあえず目的を果たすか…………俺は次々とウルトラマグナスを爆死させていく)

結衣「ヒ、ヒッキー、何してるの? わざとやられてない?」

雪乃「あ、ゲームオーバーに…………」

八幡(画面にゲームオーバーが表示される。そこで俺はAとBのボタンを押しながらスタートボタンを押す。ウルトラマグナスは再び二面の地に降り立った)

八幡「覚えとけ雪ノ下、これがコンティニューな。残機なくなってもそのステージから再開できるから」

雪乃「えっ!?」

八幡(雪ノ下が驚きの表情になる。そりゃそうだ、これを知っていたら一度クリアした難関面をもう一度やらなければならない、なんてことがなくなるからな。もっと先まで進めることもできただろう)

雪乃「そ、そんな方法があったなんて…………」

八幡「ま、説明書には載ってない裏技だからな。知らないのも仕方ない」

八幡(ここで陽乃さんの様子を窺うが、特に何も言われない。裏技は有りのようだ。後々これは重要になる)

八幡「んじゃ、改めて進めるぞ。重要なとこだけ説明しながらいくから」

雪乃「……お願いするわ」

八幡「おう…………っと、早速バリアが出たか。幸先いいな」

八幡(敵をかわしつつしばらく二面を進める。目的の場所に近付き、俺は一旦立ち止まった)

八幡「ここ覚えとけ。ちょっと進むと赤い戦闘機が出てくるが」

雪乃「ええ」

八幡「弾を当てると人型になって逃げ出すんだが、それを倒すと」

結衣「倒すと?」

八幡「三面を飛ばして四面にワープできる」

雪乃「えっ?」

結衣「えっ?」

陽乃「えっ?」

八幡(おお。陽乃さんまで驚きの声があがった)

八幡「三面は難易度低いし点数稼ぎにはいいんだが、さっさとクリアしたい場合は倒しとくといい」

雪乃「わ、わかったわ」

八幡(俺が思うに二面が普通にクリアできるようになれば半分は攻略したようなものだ。さくさくと進めていく)

八幡(そしてやってきました、魔の九面)

八幡(ファミコン全盛期でまだインターネットなんかなかった時代、どれだけのプレイヤーを絶望の淵に追いやったことやら。散っていった先人達に合掌)

八幡「雪ノ下」

雪乃「何かしら?」

八幡「この面ではちゃんとプレイ中にアドバイスしてやるから安心しろ」

結衣「え、でも他のとこに比べて簡単に見えるけど」

雪乃「そうね、今までが大変だったからサービス面なんじゃないかしら。脅かさないでちょうだい比企谷くん」

八幡「………………」

結衣「ほら、もうゴールじゃん、ここでボス戦に…………あれ?」

雪乃「あら…………?」

八幡(ウルトラマグナスは再び九面のスタート地点に降り立つ。そしてまたもやゴールに向かって走り出した)

八幡(あっけなくゴールにたどり着いたが、当然のようにまた九面の最初に戻される)

結衣「あれ? あれ?」

雪乃「これは……もしかして正しいゴールが別にあるのかしら?」

八幡「違う…………ここまで上だったり下だったりで、いくつもの通り道があっただろ?」

雪乃「ええ。車状態でないと通れない道もあったわね。わざわざ行くこともないでしょうけど」

八幡「それらの正しいルートを通ってこないとゴールできないんだ」

雪乃「…………え」

結衣「そんな! 分かれ道いっぱいあったよ!」

八幡「これがこのゲームの最難関なところだ。無限コンティニューがあるとはいえ、何百通りのルートがあるうえにどれが正解でどれが不正解かはプレイ中にはわからない。しらみつぶしにやっていくしかないんだ」

結衣「い、いっこ目が合ってても次が違ったらいっこ目が正解してたかどうかわからないってことだよね」

八幡「そうだ」

雪乃「ひ、比企谷くん、あなたは正しいルートを知っているのかしら?」

八幡「知ってる。今からそのルートを通るぞ」

八幡(俺はウルトラマグナスを操作し、正しいルートを通っていく。ゴールに着いた瞬間、雪ノ下も由比ヶ浜もごくりと固唾を呑んだ)

八幡(画面が切り替わり、ボス戦になる。ボス自体は七面と似たようなものなので手早く倒した)

結衣「…………も、もしヒッキーがいなかったらって思うとぞっとするね……」

雪乃「ええ。今ほど比企谷くんと出会っていて良かったと思うことはないわ」

八幡「ゲームだぞ。複雑な気分だ…………」

八幡(まったく必要とされないよりはいいけど)

陽乃「というかこれってクリアさせる気ないんじゃないの? 開発スタッフもだけど雪乃ちゃんに対してのお母さんも」

八幡「でしょうね。むしろ雪ノ下を家に連れ戻せると確信しているかもしれません」

陽乃「うーん。やっぱり比企谷くんは雪ノ下家に対するイレギュラーな存在なんだねー」

八幡「たかだかゲームで何言ってるんですか」

八幡(陽乃さんと会話をしながらひょいひょいと足場を上っていく。八面の逆なだけだから楽なもんだ。そしてボス戦へ)

陽乃「何これ、ゾイド?」

八幡「違います。まあダイナザウラーなんて誰の記憶にもないと思いますが…………ちなみにこいつがラスボスですんで」

陽乃「えっ、そうなの?」

八幡「知らなかったんですか…………クリア判定できないじゃないですか」

陽乃「えっと、ラスボス倒したらメッセージ出てくるって…………」

八幡「全部日本語のローマ字表記という恐ろしいメッセージですね。あ、これです」

八幡(ボスを倒すと画面上でコンボイの顔が現れ、読むのも面倒くさいメッセージが表示される。読んでも仕方ないのでさっさとタイトル画面に戻った)

八幡「よし、雪ノ下。やってみろ」

雪乃「ええ」

八幡(俺の差し出したコントローラーを受け取り、場所を変わる。先ほどまで雪ノ下の膝で丸くなっていたカマクラが、今度は俺の膝で大人しくしていた)

結衣「ゆきのん、ファイト!」

雪乃「ええ、頑張るわ」

八幡(スタートし、軽快に動くウルトラマグナス。元々器用な上に俺というお手本、加えて無限コンティニューによる失敗できないというプレッシャーからの解放)

八幡(雪ノ下はあっさりと『コンボイの謎』をクリアしてしまった)

陽乃「おー、クリアしちゃった」

結衣「やったー!」パチパチパチ

八幡「ゲームは初心者だろうに、大したもんだ」パチパチパチ

雪乃「いえ、あなた達のおかげよ。ありがとう二人とも」

結衣「うーん、でもヒッキーが来たらあっさりクリアできたね。もっと早く呼べばよかったかなあ」

八幡「そうでもないぞ。今まで諦めずにちゃんとプレイしてたから思い通りに操作できたんだ。無駄ってわけじゃない」

結衣「あ、そっか」

八幡「で、どうする? 次のゲームいくか?」

雪乃「いえ、少し休憩しましょう。指も休めたいし」

八幡「あいよ」

別に攻略スレではないのでダイジェスト気味に
正直>>6でオチがついちゃってるしなwww
詳しくやってもいいけどダレそうだし

周囲がプレステ2とかを買ってる中でニューファミコンを選択した俺は先見性があると思う

アトランチスの謎は、無敵コマンド+ショートカットの裏技でクリアかな?

伯爵令嬢誘拐事件……(ボソッ

>>48
あれ、その二つって併用できたっけ?

八幡(一旦テレビの電源を落とし、全員でソファーに座る。対面に座った雪ノ下がカマクラをよこせと目力で訴えてきたので素直に譲ってやった)

陽乃「あ、そうそう、比企谷くん。ちょっと聞きたいんだけど」

八幡「何すか?」

八幡(隣に座っている陽乃さんが話し掛けてきた)

陽乃「さっき比企谷くんが言ってた、えっと、ロディ……」

八幡「ロディマスコンボイすか?」

陽乃「そうそう。それって何? クリアに関係あるの?」

八幡「ああ。時々アルファベットが書いてた赤いアイテムが出てきたの覚えてます?」

陽乃「うん。一面だとRだったっけ」

八幡「あれがいろんなとこにあるんですが、全部集めてクリアするとエンディングのメッセージが変わるんですよ。んでゲームを再開すると今度はロディマスコンボイというキャラクターを操作できます」

陽乃「へえ、何か変わるの?」

八幡「いえ、何も。性能も敵も一切変わりません。一応エンディングのメッセージが変わりますが、そんなに頑張って見るものでもないし」

陽乃「ふーん…………というかさ、何で比企谷くんはそんなにファミコンに詳しいの? これらってわたし達より年上だよ?」

八幡「…………」

陽乃「…………」

八幡「…………と、友達が持ってまして」

雪乃「あなた友達いないじゃない」

八幡「いるぞ親友が。戸塚とか彩加とか天使トツカエルとか。もう前世からのパートナーといっても差し支えないレベルだ」

結衣「ヒッキーキモい!」

雪乃「まあ理由はどうあれ助かっているのは事実ね。正直昔のゲームだから簡単だと思っていたわ…………」

八幡「むしろ昔のゲームは少ない容量でどう面白くするかに挑戦してるとこもあるからな。初代スーパーマリオなんてメール一通分くらいしかないし」

結衣「えっ、そうなの!?」

八幡「だから時々理不尽な難易度だったりわけわからんものだったりするんだが…………この三つもその類いに入れていいな。何の情報もなかったら普通はクリアできないぜ」

雪乃「ひ、比企谷くん。その、あなたは残り二つの謎を解けるのかしら?」

八幡「…………雪ノ下」

雪乃「……何かしら?」

八幡「奉仕部の理念を忘れちゃいけないぜ。解くのはあくまでもお前なんだ」

雪乃「! そう、だったわね」

八幡「まあ安心しろ。お前が諦めない限り、俺はお前を見捨てないから」

雪乃「…………ええ」

陽乃「おーおー見つめ合っちゃって。むしろ二人こそがパートナーって感じ」

雪乃「なっ! 何を言っているのよ姉さん!?」

陽乃「あははっ、雪乃ちゃん顔赤ーい」

雪乃「っ! こ、紅茶を淹れてきてあげるわ!」

八幡(雪ノ下はカマクラを隣の由比ヶ浜に預け、台所へと消えてしまう)

八幡「あいつ由比ヶ浜が猫苦手なのすっかり忘れてんな…………由比ヶ浜、こっちに寄越しな」

結衣「う、うん…………でもよかった。ゆきのんの元気が出て」

八幡「え、いつもと変わらなくね?」

結衣「ううん。ヒッキーが来る前はすっごく疲れてたの。たぶん心のほうも」

陽乃「正直雪乃ちゃんはほとんど諦めてたと思うよ。もし比企谷くんがゲーム得意でも二日でこれらをクリアできるはずがないって思ってたんじゃないかな」

八幡「じゃ、なんで呼ぶのを許可したんですかね。藁をもすがるってやつですか?」

陽乃「たぶん、この家に友達を招待するってのをやりたかったんじゃないかな。ガハマちゃんだけでなく比企谷くんにも。うちの実家ってちょっとあれだから」

八幡「………………」

結衣「ゆきのん…………」

陽乃「ゲームに関しては中立の立場なわたしだけどさ、一言姉として言わせてもらうね」

陽乃「二人とも、雪乃ちゃんをお願いね」

結衣「うん! ゆきのんはあたしの大親友だもん!」

八幡「まあ、手助けくらいなら…………」

雪乃「何恥ずかしい会話をしているのよ…………紅茶淹れてきたわ」

結衣「ありがとーゆきのん」

八幡「サンキュ」

陽乃「ありがと雪乃ちゃん」

八幡(全員に紅茶が配られ、雪ノ下も改めて座る)

雪乃「ねえ、比企谷くん」

八幡「あん?」

雪乃「あなたに『コンボイの謎』をレクチャーしてもらうまでは、私はもうほぼ諦めていたわ」

八幡「まあ、無理もないな」

雪乃「でもあなたのおかげで希望が見えた。私はこの希望を手放したくない。最後の最後まで私は諦めないから、よろしくね。あなたを頼りにしてるわ」

結衣「ゆきのん…………」

陽乃「雪乃ちゃん…………」

八幡「感動的なセリフなんだろうがせめて俺の顔を見ろ。カマクラから目線を外せ。撫でたくてソワソワしてる腕を落ち着かせろ」

八幡(俺はツッコミを入れつつカマクラを雪ノ下の膝に乗せてやった)

ちょっとインターバル

>>54
なんでホームズが好きとはいえ必死になってクリアしたんだろうな当時の俺は
もうちょっとマシなゲームはいくらでもあったろうに

あと今更注意書き
ゲームクリアの仕方などは基本的に>>1の主観と経験から書いてます。もっと簡単な方法とかあるかもしれませんが、ご容赦ください

八幡(さて、もうすぐ夕方か)

八幡「雪ノ下、その気になれば残り二つも今日中にクリアできると思うがどうする?」

雪乃「…………正直少し疲れているわね。二つともというのはキツいかもしれないわ」

八幡「まあそうだな。今までの疲れもあるだろうし」

雪乃「でも明日に回すのも怖いわ。どちらかだけでもクリアしておきたいのだけれど」

八幡「だな。どちらをクリアしておく?」

雪乃「簡単な方を今日にして残り一つを明日じっくりやりたいわ。あなたの主観で構わないのだけれど、どちらがクリアしやすいかしら?」

八幡「クリアしやすい、ってんなら『アトランチスの謎』の方だろうな。運が絡む要素はあまりないし、ある程度の腕前があればあと必要なのは情報だ」

雪乃「なら、そうね…………あと少ししたら『アトランチスの謎』をプレイして、クリアしたら夕食にしましょう。そして早めに就寝して、明日『神龍の謎』をクリアという流れでいいかしら?」

結衣「うん、おっけーだよ!」

八幡「それだと俺が泊まる流れなんだがいいのか?」

雪乃「むしろあなたにいなくなられると困るわ。泊まっていってちょうだい」

陽乃「おー雪乃ちゃん大胆! 男子に向かって泊まっていけだなんて!」

雪乃「なっ! へ、変な意味に捉えないでちょうだい! 比企谷くんも勘違いしないでほしいわ!」

八幡「しねえっつうの。毛布の一枚でも貸してくれりゃ玄関でも風呂場でも大丈夫だから」

雪乃「さすがにそんなところでは寝かせられないわよ。申し訳ないけれどソファーでいいかしら? 広げてベッドタイプにもなるものよ」

八幡「充分だ」

八幡(そこで一旦会話を打ち切り、テーブルの上にあった『アトランチスの謎』のメモと説明書を手に取る)

八幡「………………」

八幡(これは無理だ)

八幡(顔や態度に出さないものの、俺は苛立ちと怒りを覚えた。この説明書には本当に必要最低限の操作方法しか書いていない)

八幡(それでも雪ノ下は早々に投げ出したりせず、これだけのメモを残している。どの扉がどこへワープするものなのか、アイテムの効果や入手場所など。実にたいしたものだ)

八幡「雪ノ下」

雪乃「何かしら?」

八幡「夕飯はお前が作るのか?」

雪乃「え? ええ、そのつもりよ」

八幡「よし、六時半までに終わらすぞ。支度もあるだろうしな」

八幡(俺はそう宣言した。いや、別に雪ノ下の料理が楽しみってわけじゃないんだからね)

次回からアトランチスを攻略
が、今ソフトを捜索中。どこやったかな……見つけ次第プレイして書きためします

コンボイの謎 後に出た小話
メガトロン「過去に介入したら部下が超攻撃翌力あがってた」
コンボイ「ああ!だから、ウルトラマグナスが一撃で消し飛んでたのか」

結衣「え、あと三時間もないよ?」

八幡「充分だ。それに今日はちょっとだらけてしまっててな、まともにメシを食ってないんだ」

雪乃「まるで普段はだらけていないように聞こえるのだけれど…………でもいいわ、お礼代わりに腕によりをかけて作ってあげる」

陽乃「ふふ、恩を売って雪乃ちゃんの手料理を催促するなんて比企谷くんもやるねえ」

八幡「そんなんじゃないですよ、やめてください」

結衣「! で、でもゆきのんも疲れてるし、なんだったらあたしが作ってあげるよ!」

八幡(ほらきた! 雪ノ下が疲れてるって言うから釘をさす意味でも雪ノ下に作るように言ったのに!)

雪乃「そ、それには及ばないわ。さ、そろそろ始めましょうか」アタフタ

陽乃「だねー、ほらほら、ガハマちゃんも準備手伝って」アタフタ

八幡(おお、陽乃さんまで慌ててる。ひょっとしてもう被害に遭ったのか?)

結衣「??」

八幡「んじゃ軽くおさらいしとくか。このゲームは大西洋に突如現れたアトランチスという島で、行方不明になった冒険家の師匠を探しに行くゲームだ。島を巡って師匠を見つけ出せばクリアとなる」

結衣「師匠生きてたんだね。自力脱出とかしなかったのかな?」

八幡「その辺は適当な作りだからな…………ピーチ姫を真似したんじゃね? マリオを超える大作ってキャッチコピーもあったみたいだし」

陽乃「実際ステージ数は多いよね。いくつまであるの?」

八幡「100ステージで構成されてます。一画面に収まる程度のステージもありますし、通常の方法では行くことのできないステージもありますが」

八幡(厳密にいえばファイナルと裏ファイナルをわけて101ステージとも考えられるがな)

雪乃「予想はしていたけれど多いわね…………」

八幡「で、よくありがちな順番にステージクリアしていくってわけではなく、いろんなとこにあるワープ扉を経由してファイナルステージを目指すんだ。前後の数字のステージは必ずしも繋がってなく、また、数字が高いほど難易度が高いことになってる」

雪乃「それなのよね。どこにワープしていいのかわからないから延々とさ迷っているのよ」

八幡「ルートは一つってわけじゃないし、アイテム取りながらになるとそれこそいろんなルートがある。本来はそういうのを楽しみながらやるゲームなんだが…………今回は時間もないし最短ルートで行こう」

雪乃「どのくらいのステージ数なのかしら?」

八幡「10ステージで行けるルートにする。難易度は少し高いが残機減ってもいい方法でやるから」

雪乃「よくわからないけど、今回ばかりはあなたに従うわ」

八幡「よし、まずは俺がお手本を見せる。つっても極端に上手い訳じゃない。ただゴールへの道筋を知っているだけのことだが」

雪乃「ええ、お願い」

八幡「そんじゃスタートだ」

八幡(主人公であるウィンが気球から飛び降りる。さあ、冒険開始だ!)

 ~ 1ST ZONE ~

八幡「ここは特に説明はいらないな? 難しいとこもないし」

雪乃「ええ。どちらのワープを使えばいいかだけわかればいいわ」

八幡「…………ちなみにここはワープ扉が三つある」

雪乃「えっ…………2と11だけではないの?」

八幡「確か33だったかな? そこへのワープもあるんだ。まあ今回は使わないから気にしなくていい」

八幡(バタパットの攻撃をかわしながら右へ右へと進む。ゾーン2への扉を通り越してさらに右へ)

雪乃「あら。ということは11へ?」

八幡「ああ」

八幡(ゾーン11へワープする閉まっている扉の前まで来て、俺は一旦止まった)

八幡「雪ノ下、ボン自爆…………自分の爆弾に巻き込まれるとミスなのは知っているか?」

雪乃「ええ。無敵になるアイテムを取っていても駄目なのよね」

八幡「ああ。だけどボンでやられても画面外に消えるまではミスじゃないんだ。判定は残ってる」

結衣「どーいうこと?」

八幡「やられてもワープ扉に触れればミスにならずにワープできるんだ。今見せてやる」

八幡(俺はゾーン11への扉にボンを投げ、そこにウィンの身体を重ねた。爆発と同時にワープする)

 ~ 11TH ZONE ~

八幡「爆発に巻き込まれたが、同時に開いた扉に触れたのでこんなふうにちゃんとワープできる」

結衣「でもそれ何かの役に立つの?」

八幡「立つ。ここで証明する」

結衣「あれ? でもここ行き止まりのとこじゃなかったっけ」

雪乃「そうね。宝箱が二つあるだけよ」

八幡(ついでに取っとくか。俺は二つ目の宝箱を取った後、ボンを投げる。窪みの中のため、当然目の前の壁に当たってボンは足元に落ちた)

結衣「ヒッキー! 早く逃げないと爆弾が!」

雪乃「あ、やられ…………え?」

八幡(ウィンが爆発に巻き込まれ、画面下部に落ちていく)

八幡(そして次のゾーンへ)

 ~ 52TH ZONE ~

結衣「え、え、あれ?」

雪乃「今、何が起きたのかしら…………?」

八幡「今爆発した足元にな、見えないワープ扉があるんだ。画面外に出てミスになる前にその扉に触れたからワープしたってわけさ」

結衣「え、ええー…………」

雪乃「これを作った人は何を考えているのかしら…………」

八幡「まあこのゲームは攻略本ありきのゲームだからな…………なしでクリアしようとすると途方もない労力がかかる」

八幡(そんな話をしながらもウィンはぴょんぴょん橋を跳んでどんどん左へと進む。ついでにタイマーをゲット)

雪乃「それは制限時間の減りが遅くなるアイテムでいいのよね?」

八幡「ああ。広いとこで迷ったりすると結構時間食うしな…………っと、ここだ」

八幡(俺はワープ扉の目の前の橋の上で止まる)

結衣「あれ? 入らないの?」

雪乃「まさか…………」

八幡「ああ。ここだ」

八幡(橋の端っこで爆発するようにボンを投げ、その上に重なる。当然爆発に巻き込まれ、落下)

八幡(そしてワープ)

 ~ 91TH ZONE ~

結衣「もう言葉もないよ…………」

雪乃「普通は見つけられないわよね…………あら、ずいぶん小さな部屋ね」

八幡「ああ。宝箱があるだけの通過点だ」

八幡(自由落下すると次のゾーンに入ってしまうので右に逸れる。そして宝箱を二つとも取り、改めて目の前のワープ扉へ)

 ~ 95TH ZONE ~

雪乃「ずいぶん敵が多いわね、ここ」

八幡「ああ」

八幡(ここは少々面倒くさい。三種類の敵が同時に出てくるのがうざったいのだ)

八幡(スペシャルボムか無敵があれば楽なんだがな。俺は敵をうまくかわしつつ右へ。宝箱を取りつつワープ扉に入る)

 ~ 93TH ZONE ~

雪乃「え?」

結衣「あ、あれ? 閉じ込められちゃってない?」

八幡「安心しろ。ちゃんと隠し扉がある」

八幡(宝箱を取り、所定の場所に向かってボンを投げる。爆発すると閉じた扉が現れたのでもう一度ボンを投げた)

雪乃「ば、爆発で出てくる扉なんかあるの…………?」

八幡「え? ああ、そこから知らなかったのか…………結構いろんなとこにあるぞ」

雪乃「わかるわけないじゃない…………」

八幡「ゲーム慣れしてれば気付くかもしれないが、お前には厳しいかもしれんな……」

八幡(ウィンは開いたワープ扉に飛び込む)

 ~ 96TH ZONE ~

八幡「ここは狭い通路でのダキーラとオーヨー…………ミイラとサソリが鬱陶しい。ジャンプできないから倒していくが、制限時間に注意だな」

雪乃「ミイラは爆弾一発では倒せないものね。タイマーを取っておいて正解ね」

八幡「まあお前の時は心配しなくていいが」

雪乃「え?」

八幡「よし、見えた。ワープ扉だ」

八幡(右端まで来ると扉がある。一応宝箱を取ってからワープ扉へ飛び込んだ)

 ~ 98TH ZONE ~

雪乃「そういえばそこに見えるアイテムは何なのかしら? 効果がさっぱりなのだけれど」

八幡「ああ、あれはマイクで声を出すと敵の動きが止まるっていうアイテムだ」

結衣「え、マイク? そんなアイテムもあるの?」

八幡「違えよ。昔のファミコンには2P用コントローラーにマイクが付いてたんだ。ニューファミコンではマイクコマンドがあるが…………今回は必要ない」

雪乃「それにしてもずいぶん高い足場ね。間に落ちたらどうするのかしら」

八幡「どうにもならん。落ちたら自爆してやり直すしかない」

雪乃「えっ」

八幡「思いっきりジャンプすれば次の足場に届く。それを九本分繰り返すんだ」

八幡(ウィンはぴょんぴょんと足場から足場へと飛び移っていく)

雪乃「途中で失敗したらやり直しなのね…………」

八幡「そうだ。んで最後。下に扉があるが、普通に降りると向こう側の穴に落ちてしまうから小さいジャンプをしながら降りること」

結衣「ほっとして油断したらとんでもないことになるね…………」

八幡(ウィンはワープ扉へ入った)

 ~ 99TH ZONE ~

八幡「さて、ここは左右が繋がっていて、途中に隠し扉がある。若干左からの方が早い」

八幡(ダキーラの集団をボンで倒しつつ、もしくはジャンプでかわしつつ進んでいく)

雪乃「結構ミイラが多いのね…………ミイラは頑丈で、爆弾三発当てないとならないのが大変だわ」

八幡「まあ雪ノ下はそこはあまり気にしなくていい」

雪乃「?」

八幡(しばらく進むと、1マスだけ地面が窪んでいる箇所があった)

結衣「もしかしてあそこに隠し扉?」

八幡「正解」

八幡(俺はボンを投げて隠し扉を出し、もう一度投げて開いたワープ扉に突入した)

 ~ FINAL ZONE ~

結衣「わ、もうファイナルだって!」

雪乃「なんだか簡単なゲームに見えてしまうわね…………もちろんそんなことないのはわかっているけれども」

八幡「…………」ピッ

八幡(俺は一旦ポーズをかけ、指や腕を伸ばしてストレッチをする)

結衣「ど、どしたのヒッキー?」

八幡(由比ヶ浜の言葉には返さず、深呼吸をしてポーズを解除した。いざ!)

八幡「ってうおおおお!」

八幡(ジャンプのタイミングをミスった! とっさにしゃがんで火の玉を交わす)

雪乃「な、何よこれ…………」

八幡(高速でザヴィーラから吐き出される火の玉に雪ノ下が茫然とした声をもらす)

八幡(まあ初見じゃ無理もないか…………何とかタイミングを見計らって引き返した)

八幡「ふう…………うし、もう一度だ」

八幡(いざ! 俺はウィンを進める)

八幡(ジャンプ、しゃがみ、ジャンプ、ジャンプ)

八幡「見えた! 師匠…………あっ!」

八幡(ザヴィーラの火の玉に当たり、ウィンがやられてしまった。次こそは…………)

雪乃「ひ、比企谷くん」

結衣「ヒッキー……」

八幡(二人の言葉を無視し、集中する)

八幡(ジャンプ、しゃがみ、ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ、行けっ!)

八幡(ザヴィーラの火の玉が当たる直前に空中に浮いていたダイヤを取った)

八幡「っしゃ!」

八幡(石像になっていた師匠が復活し、『congratulation』の文字が出る。俺はコントローラーを手放してガッツポーズをした)

陽乃「え、えっと、それでクリアなのかな?」

八幡「ええ。これ以上何もないです。物足りないでしょうけど」

雪乃「あ、あの、比企谷くん。さすがに最後のあれはちょっと…………」

八幡「ああ、安心しろって。無敵になってれば楽勝だから」

雪乃「なるほど。どこかのステージで星を取るのね。ならそのルートを…………」

八幡「あ、ちょっと待ってくれ。緊張が解けたらトイレ行きたくなった」

雪乃「はあ……行ってらっしゃい」

無敵なしクリアなんて挑戦するもんじゃないぞ
あれは凄まじい集中力と根気を必要とするから
次回はゆきのんが頑張る

八幡(トイレから戻るとすでに雪ノ下がコントローラーを持ってスタンバイしていた)

雪乃「では始めるわよ。何かあったらアドバイスをちょうだい」

八幡「あ、ちょっと待ってくれ」

雪乃「え、何かしら?」

八幡(俺は雪ノ下の隣に座り、2P用コントローラーを目の前に用意する)

雪乃「比企谷くん?」

八幡「雪ノ下、コントローラーを貸してくれ」

雪乃「え? ええ」スッ

八幡(さて、問題は陽乃さんだが…………多分大丈夫だろう。中立の立場とは言ったが、心情的には雪ノ下側のはずだ。そもそもこの勝負自体が圧倒的に雪ノ下に不利だしな)ピッピッピッピッ

八幡(屁理屈だとわかってはいても、言いくるめられてくれるはずだ。強く反対はしてこないだろう)ピッピッピッピッ

八幡「雪ノ下、セレクトボタンと上を押しておいてくれ。んで、俺が合図したらスタートするんだ」スッ

雪乃「? わかったわ。何か意味があるのね?」

八幡「ああ…………よし、いいぞ」

八幡(俺の合図を聞いて雪ノ下がスタートボタンを押す)

雪乃「あ、あら? 比企谷くん、これは…………」

八幡「それな、穴に落ちてもボン自爆してもなくならないから安心しろ」

八幡(俺は陽乃さんの方に振り向く)

八幡「裏技は禁止されてませんよね? 指定されたのは『雪ノ下自身がプレイしてクリア条件を満たすこと』だけだったはずですから」

陽乃「んー…………かなりグレーゾーンだと思うけど」

八幡「黒でないならセーフでしょう? ちゃんと跳んだ跳ねたのアクションはしているわけですし」

陽乃「まあセーフかな。というか、わたしもこのゲームよく知らないし、何が起こってるのかわからないや」

八幡「どうも」

八幡(そんな会話をしている間も雪ノ下はすいすいと俺のお手本をなぞって先に進んでいく。むしろ俺よりもテンポがいい)

八幡(…………当たり前か。今雪ノ下のウィンは無敵状態なのだから)

結衣「ヒ、ヒッキー。何したの? 何が起こってるの?」

八幡「ああ。何かバグが起きたみたいだな」

八幡(俺はカマクラを膝に乗せつつソファーに座り、由比ヶ浜に答える)

結衣「バグ?」

八幡「適当にコントローラーをいじっていたら『無敵状態になれてミスしてもなくならないアイテム』を所持してるらしいぜ」

八幡(由比ヶ浜はしばらくポカンとしていたが、ニパッと笑顔になる)

結衣「すごいねヒッキーは」

八幡「さて、何のことだかわかんねえな。な、カマクラ」

カマクラ「ニャー」ゴロゴロ

八幡(カマクラの身体をさすってやると気持ち良さげに喉を鳴らす。それを聞いた雪ノ下がゾーン95で穴から落ちた)

八幡「…………おい。ゲームに集中しろよ」

雪乃「わ、わかってるわよ。ちょっと失敗しただけじゃない」

八幡「無敵状態ならミスるようなとこじゃないだろ。あとで思う存分撫でられるから」

雪乃「くっ……」

八幡(本来なら面倒くさいゾーン96も無敵状態のおかげで手早くクリア。難関らしい難関はゾーン98の連続ジャンプくらいのものだが、プレッシャーもかかっていない雪ノ下は一回で突破)

八幡(ゾーン99を通り、いよいよファイナルゾーンへ!)

八幡(って言ってもザヴィーラの火の玉が効かない以上、まっすぐ進んでダイヤを取るだけなのだが。雪ノ下はあっさりと師匠を助け出した)

陽乃「おー、これで『アトランチスの謎』もクリアだね」

雪乃「なんていうか、こんなに簡単でいいのかしら…………?」

八幡「ま、今回は緊急避難ってやつだ。納得いかないなら落ち着いてからまた暇な時に真っ当にプレイしてみるんだな」

雪乃「ええ、そうするわ。それじゃ、夕御飯の支度をするわね」

八幡「そういや外出とかも禁止なんだろ? 食材とかあんのか?」

陽乃「それは大丈夫だよ。今はスーパーも配達してくれる時代だからねー」

八幡「ますます専業主婦が楽になりますね…………まあ俺はタイムセールとかも狙うし実物を見ながら買いたいからあまりそういう配達とかは使わないと思いますが」

陽乃「変なとこでしっかりしてるねえ。どう、お姉さんの主夫になる? 楽させてあげるよー」

雪乃「なっ!?」

結衣「えっ!?」

八幡「なりませんよ」

陽乃「むう、比企谷くんが冷たい…………雪乃ちゃん、慰めてー」

雪乃「くっつかないでちょうだい。食事の支度ができないわ」

陽乃「あ、手伝う?」

雪乃「大丈夫よ。その代わり片付けをしておいてちょうだい」

陽乃「はーい」

八幡(陽乃さんがゲーム機を片付け始めたので、俺達も手伝う。カマクラはソファーの隅っこで大人しくしていた)

『アトランチスの謎』もクリア
無敵になれる裏技は正直バランスブレイカーです。使うと面白くないよマジで

『神龍の謎』を>>1がクリアしたら『神龍の謎』編に入ります
時間かかるようなら小話を挟みますので

雪乃「そういえば比企谷くん、猫のご飯なんてうちにはないのだけれど」

八幡「ああ、エサと皿は持ってきたから大丈夫だ」

八幡(俺はキッチンから顔を覗かせた雪ノ下に返事をする)

結衣「え、お皿も?」

八幡「ああ。カマクラはこの器じゃないと気が進まんらしい。だから買い換えてもずっと同じ種類になってる」

陽乃「へえ、好みがはっきりしてるんだね」

雪乃「ならもう用意してあげてちょうだい。こっちはあと十分ちょっとでできるわ」

八幡「あいよ」

八幡(俺は持ってきたカバンからカマクラ用のミルクとエサを取り出し、器に移す)

カマクラ「ニャー」トテトテ

八幡「ああ、待て。せっかくだから一緒に食べ始めようぜ」

カマクラ「ニャー」ピタッ

八幡(俺が手を出して制止すると、カマクラはエサの前で待機する)

結衣「うわっ! すごっ! ヒッキーの言葉わかるの!?」

八幡「まあちょっとした意思疎通くらいなら…………いや、たいしたことじゃないからいちいち駆け寄ってくんなよ雪ノ下」

八幡(雪ノ下はちらちらとこっちを見ながらキッチンに戻る)

八幡「てかお前んとこの犬は? ちょっとはわかるだろ?」

結衣「いやー、あんまり…………ほら、サブレってそんなに頭良くないから」

八幡(果たして頭良くないのはどっちなんですかね? なんてのは思ってても口にしない)

八幡(しばらくするとテーブルに豪勢な四人分の食事が並んだ)

結衣「うわー、今日のは特に美味しそう!」

雪乃「そ、そうかしら? いつも通りのつもりだったのだけれど」

陽乃「んっふっふー、雪乃ちゃんてば比企谷くんがいるもんだから張り切っちゃったんだねー」

雪乃「なっ! ち、違うわよ! 比企谷くんも変なふうに捉えないでちょうだい!」

八幡「何も言ってねえだろうが…………わかってるよ、ゲームクリアのお礼のつもりなんだろ?」

雪乃「そ、そうよ。貸し借りを作るのは気分が良くないからよ」

陽乃「むー、素直じゃないなあ」

結衣「あ、あはは……」

雪乃「それじゃ、いただきましょう」

陽乃「だね、いっただっきまーす」

結衣「いただきまーす」

八幡「いただきます。カマクラ、食べようぜ…………いや、だから釘付けになんなよ」

八幡(エサを食べ始めたカマクラの方にすごい勢いで振り向いて注視する雪ノ下にツッコむ)

雪乃「と、ところで比企谷くん。料理の味は、どうかしら? 薄かったりとか濃かったりとか…………」

八幡「え? ああ、いや、美味いぞ。さすが雪ノ下だなって感じだ」

雪乃「そ、そう。なら良かったわ」

陽乃「んふふー。よかったね雪乃ちゃん。比企谷くんに手料理を褒めてもらって」

雪乃「な、な……!」

八幡「そういや陽乃さんは料理するんですか? さっき手伝うとか言ってましたけど」

陽乃「おおう、なんというスルー能力…………うん、人並みにはできるよー」

八幡「あなたの人並みって絶対世間一般とは基準が違いそうですけどね」

八幡(そんな雑談をしながら俺達は雪ノ下の料理に舌鼓をうつ)

八幡(しばらくして綺麗に平らげ、手を合わせて御馳走様をした)

八幡「いや、本当に旨かったな。俺の中の料理が上手い女子ランキングベストスリーに入るわこれ」

雪乃「あら、トップではないのね?」

八幡「おいおい、小町を超えようなんざ身の程知らずにもほどがあるぜ」

結衣「え、小町ちゃんてそんなに料理できたっけ?」

雪乃「違うわ由比ヶ浜さん。この男は妹の手料理というだけでものすごい補正がかかっているだけよ」

八幡「いやいや、身内贔屓ってだけじゃないぜ。なんてったって愛情っていうスパイスがたっぷり詰まってるからな」

陽乃「あれー、それなら雪乃ちゃんも……むぐっ…………」

雪乃「もう姉さんは黙っていてちょうだい!」

八幡(いきなり雪ノ下が陽乃さんの口を手で塞いだ。どうしたんだ?)

結衣「あたしももうちょっと頑張らないとなあ…………」

八幡「由比ヶ浜はそれ以前の問題だからな…………いいか、被害者を出すなよ? 味見はちゃんと自分でしろ」

結衣「えー、でも自分の料理を自分で確認するのってどうなの?」

八幡「いや、お前は舌は普通なんだから自分で食べられるなら他人も食べられるってことだから」

結衣「むー……」

八幡(由比ヶ浜は少しむくれるが反論はしてこない。思い当たることがあるのだろう)

雪乃「でも、久々に食事が美味しく感じられたわ。比企谷くんのおかげね」

八幡「あん? 何でだ?」

雪乃「昼まではそれどころではなかったからよ。余裕もなくてゲームのことで頭がいっぱいだったもの」

結衣「そうだね……陽乃さんが用意してくれたのも上の空で食べてたし…………」

陽乃「うんうん、やっぱり比企谷くんは頼りになる男の子だねえ」

八幡「いや、たかがゲームですからね。それにあと一本残ってるからな、あんま気を抜くなよ雪ノ下」

雪乃「ええ」

八幡(そしてしばらく休んだあと、明日のために早めに就寝することになった)

八幡(カマクラの寝床で少し揉めたが、カマクラ自身に好きなところを選ばせた結果、俺のソファーのすぐそばを選択した)

八幡「だからって俺を睨むなよ。猫ってあんまり構い過ぎると嫌われるぞ」

雪乃「くっ……わかったわ。おやすみなさい」

結衣「おやすみヒッキー」

陽乃「また明日ねー」

八幡(女性三人は奥の部屋に引っ込む。俺も明かりを消し、ソファーに横になった)

八幡「しかしまさかファミコンゲームで呼び出されるとはな…………奇妙なこともあるもんだ」

八幡(俺は一人ごちる。そして残り一つの謎を考え始めた)

八幡(『神龍の謎』)

八幡(果たしてあれが雪ノ下にクリアできるだろうか)

八幡「…………できる限りのサポートはしてやんねえとな」

カマクラ「ニャー」

八幡(俺の呟きが聞こえたかカマクラが反応する。手を伸ばして軽く撫でてやり、お休みの挨拶をして俺は眠りについた)

『神龍の謎』ってこんなに難しかったかな…………昔は二回に一回はクリアできたはずなのに
攻略サイトとかに頼るつもりはないので、プレイはもうちょっと先になりそう。いるとは思えないけど待っててくれてる方々には申し訳ないです

八幡(ん…………)

八幡(眠りが浅い時に人の気配を感じ、俺は覚醒する。ベッドの感触がいつもと違うような気がしたが、すぐに雪ノ下の家に泊まっているのを思い出した)

雪乃「ふふ…………」

八幡「…………」

八幡(そっと目を開けると、すぐ傍らで丸くなって寝ているカマクラをじっと見つめる雪ノ下の姿があった。怖えよ!)

八幡(壁に掛けてある時計を見ると早朝といってもいい時間だったが、昨晩早く寝たことを考えればもう起きてもいいだろう。俺はわざとらしく身じろぎして呻く)

八幡「ううん…………ふぁあ……」

八幡(わざとらしくあくびをしながら腕を伸ばす。その隙に雪ノ下はささっと離れて身繕いをした)

八幡「んん…………ああ、おはよう雪ノ下。早いな」

雪乃「おはよう比企谷くん。私も今しがた目が覚めたところよ」

八幡(嘘だっ!! きっちり普段着に着替えてんじゃねえか…………)

八幡「ん、ならもう起きるか。よっと」

八幡(俺が身体を起こすと同時にカマクラも目を覚ましたか、ぐうっと伸びをする。だから怖いよ雪ノ下さんのその目)

カマクラ「ニャー」

八幡「ん、腹が減ったのか。待ってろ、すぐに用意してやっから」

カマクラ「ニャ」

雪乃「ほ、本当に意思の疎通ができるのね」

八幡「長く飼ってりゃ多少はな」

雪乃「くっ……どうしてこのマンションはペット禁止していないのにうちの親は認めてくれないのかしら…………」

八幡「まあ色々事情があるんだろ」

八幡(たぶん年末年始とかにすら帰ってこなくなりそうだからじゃねえかなあ?)

八幡(俺はソファーから立ち上がり、カマクラのエサを用意してから着替える。その間に雪ノ下は朝食の準備を始めた)

結衣「ヒッキーおはよー」

陽乃「おはよう比企谷くん」

八幡「おはよう由比ヶ浜。おはようございます雪ノ下さん」

八幡(しばらくすると二人が起きてくる。俺の存在をちゃんと覚えていたようで私服に着替えており、パジャマ姿でばったりみたいな展開はなかった)

八幡(雪ノ下が用意してくれた朝食を取り、少し休憩したあと、雪ノ下が立ち上がる)

雪乃「さて。では残り一つの謎をクリアしてしまいましょうか」

八幡「あいよ」

結衣「ゆきのん、ヒッキー、ファイト!」

八幡(俺達はテレビの電源を付け、ニューファミコンを接続し、カセットをはめる)

八幡(さあ、『神龍の謎』、攻略開始だ!)

八幡「とりあえず軽くおさらいしとこうか。このゲームは原作と同じようにドラゴンボールを集めながら進んでいくアクションゲームだ。これの難しいところはスーパーマリオとかでいう制限時間と悟空の体力が同じという点にある」

雪乃「敵の攻撃に当たるのはもちろん、何をしなくても時間と共に体力が減っていくのよね」

八幡「原作においての大食らいという設定を生かそうとしたんだろうが…………回復手段がホイポイカプセルからランダムに出るアイテムしかない、というのが鬼畜仕様なんだよな」

雪乃「次のステージに行っても回復しなかったのには驚いたわ…………」

八幡「ああ。だからいろんなところにあるカプセルの場所を知っておくのが重要だが、回復アイテムが出るとは限らないのがキツい」

結衣「ホントつらいよね。単純に難しいんじゃないんだもん。敵も強いし」

八幡「ところで雪ノ下はどこまで行けたんだ?」

雪乃「ええと、なんて言ったかしら? あのウサギのところまで行けたのだけれど、人参を探しているうちにやられてしまったわ」

八幡「ああ。兎人参化のとこか」

雪乃「でもそこまで行ってもまだ一回目の神龍が出ないのよね…………」

八幡「そこの次のステージクリアで一回目が出るけどな…………そうそう、先に言っておくが」

雪乃「何かしら?」

八幡「このゲームには昨日の二つみたいな裏技は存在しない。本当に実力と運だけでクリアするしかないぞ」

雪乃「…………そう。でも元々は裏技などに頼らないでクリアするべきものなのでしょう? ならば頑張るしかないわ。覚悟はできてるもの」

結衣「で、でもコンティニューできるからいつかはクリアできるよね!?」

八幡「…………」

結衣「ヒッキー?」

八幡「このゲーム、後半になるとコンティニューしても特定の場所まで戻される仕様なんだ」

結衣「ええー!?」

八幡「理由はあとで言うが、コンティニューしたらむしろクリアが難しくなる。ゲームオーバーになったら最初からやり直した方がいい」

雪乃「あの、聞くのが少し怖いのだけれど…………比企谷くんはこれをクリアしたことはあるのかしら?」

八幡「ある…………五回に一回クリアできるかどうかというレベルだがな」

結衣「え、ヒ、ヒッキーでも?」

八幡「運に左右されるからな……こればっかりは祈りながらやるしかない。とりあえず俺が行けるとこまでやってみるから」

雪乃「ええ」

八幡(緊張した面持ちの二人の視線を受けながら、俺は電源を付けてスタートボタンを押した)

『神龍の謎』挑戦スタート
何回かに分けての投下になると思います

 ~その1 かめせんにん との であい~


八幡「さて、ストーリーや会話はめんどくさいから飛ばすぞ。最初のステージは特に難しいところはない。操作に慣れつつアイテムを回収していくのが目的だな」

雪乃「スタート時の体力は100だけれど最大は150でいいのよね?」

八幡「ああ、基本はそうだ。そして肉で20、ケーキで100回復する。ちなみにそれ以外に回復手段はない」

陽乃「恐ろしいゲームだねえ…………」

八幡「んで通常マップ画面とボス戦画面では色んな違いがある。まずは如意棒をなるべく早めに取っておくこと。マップ画面では攻撃力が倍だからな」

結衣「ボス戦では違うの?」

八幡「ボスは何回攻撃を当てたか、しか判定がないみたいでな。攻撃力はどれも変わらん。例えば今から戦うこの山賊熊は十発当てれば倒せる」

結衣「あ、ジャンプキックの繰り返しで攻撃交わしつつ倒せるんだよね」

八幡「それでもいいし、タイミング覚えてればこんなふうに倒すことも可能だ」

八幡(画面内の悟空はジャンプをせずヒット&アウェイを繰り返し、無傷で山賊熊を倒す)

結衣「ほえー…………」

八幡(由比ヶ浜が呆けたような感心したような声をあげた)

八幡「これが出来るようになれば二回目の山賊熊も無傷で行ける。あっちは蜂が飛んでてジャンプキックがしにくいからな」

八幡(そう説明しながらカプセルを各所で回収しつつスムーズに進んでいく。蜂付きの山賊熊もクリア)

八幡「敵を全部倒さなきゃならない箇所もあるが、そうでないところはカプセル狙いで弱い敵だけ倒しとけばいい。この辺もそうだ」

雪乃「わかったわ」

八幡(亀を見つけ、まっすぐ進んで亀仙人と出会う。これでステージ1をクリアだ)

八幡「それとかめはめ波についてだが、赤い甲羅を取るとスーパーかめはめ波に変わるのは知ってるか?」

雪乃「ええ。威力も上がっているのよね」

八幡「ああ。ただし、それ以降通常の甲羅では残数が増えない。弾数が少ないようならスーパーにするのはやめておいたほうがいい」

雪乃「了解したわ」

八幡(ちなみに現状は15。充分といえるだろう)

八幡「んじゃ、次のステージだ」

 ~その2 ウーロン あらわる~


八幡「ここはちょっとした手順はあるが、そこまで難しくもない。さくさく行こう」

八幡(村人からの説明をスキップし、最初の家に入る)

雪乃「えと、鍵が必要なのよね? 適当にプレイしていたら出てきたのだけれど、あれがないと奥の方の家に入れなかったし」

八幡「ああ。人型の中に隠れてるウーロンを三回見つければ鍵を落として行くんだ。同じとこでもまた見つかるから、ここを何度も出入りしてさっさと見つけとくといい」

雪乃「そうなのね。いろんな家をうろうろしてしまったわ」

八幡「で、無事に鍵をゲットしたらカプセルを回収だ。出入り口が二つある家は違うところから入ることによって二回分ゲット出来る」

結衣「わ、ホントだ!」

八幡「かめはめ波集めには知っておいた方がいい。んでハンマーおじさんを倒してウーロンの屋敷へ、っと」

雪乃「ここはただ壺の中からウーロンを探すだけでいいのよね?」

八幡「そうだ。ナイフが飛び出すトラップもあるがわかっててもどうなるもんでもないし、無視して探しまくる方がいい」

八幡(やがてウーロンを見つけてステージ2をクリア。次は最初の難関だな)

 ~その3 さばく の とうぞく ヤムチャ~


八幡「さて、初心者には最初の難関だ。ここにはドラゴンボールきってのイケメンで強さと人柄も兼ね備え、ただ欠点として運が悪いヤムチャさんが登場する」

結衣「あれ、そんなキャラだっけ?」

陽乃「全然違うよ。負けてばっかりだしむしろネタ枠じゃない」

八幡「いえ、天下一武道会では優勝者や神様と当たる運の無さなので仕方ありません。サイバイマンに負けたのもクリリンを庇っての行動なわけで、むしろその優しさに注目すべきです」

陽乃「おおう、なんというリスペクト」

八幡「そのクリリンも最後までヤムチャのことは『さん』付けで呼んでます。同じようなポジションの天津飯には『カネ持ってないか?』なんて言う始末だというのに」

八幡「そして自分たちを殺したベジータと同居するような度量」

八幡「さらに、セルにトランクスが殺された時にベジータが怒ったことをトランクスに伝えたのもヤムチャだ。しかも『お前が殺されて相当頭にきたんだろうな』なんてコメント付きで。この一言で父親の愛情に触れてこられなかったトランクスがどれだけ救われたことか。この役割は誰がやっても不自然だ。まさにヤムチャの人柄が出た一幕といえる」

結衣「へー、ヤムチャってすっごいいいキャラクターなんだね!」

八幡(俺の熱論に由比ヶ浜が感心したような声をあげる)

雪乃「騙されては駄目よ由比ヶ浜さん。ヤムチャはいろんな女の子と浮気したりドラゴンボールの願いで恋人のネックレスを要求しようとしたダメ男よ」

八幡「雪ノ下」

雪乃「何かしら?」

八幡「あの可愛いプーアルが懐いていて献身的なキャラクターだぞ」

雪乃「ま、まあ彼にも良いところはそれなりにあるようね」

陽乃「雪乃ちゃん!? うう、比企谷くんのヤムチャ推しが強すぎる。比企谷くんは子荻ちゃんかっ!?」

八幡(そんなヤムチャ談義をしているうちにスキップしなかったストーリー会話が終わり、マップ画面になる。俺はコントローラーを掴み直した)

八幡「マップ画面ではそんなに指摘事項はない。ヤムチャとプーアルは飛行扱いだからジャンプ体当たりですぐに倒せるしな」

雪乃「初めはその体当たりを知らなかったのよね…………というかY軸とZ軸の関係が明らかにおかしいじゃない」

結衣「ぜっとじく?」

陽乃「ガハマちゃん、高二でそれを理解していないのはマズいよ……」

八幡「あれだ、要するにえーと、縦の軸?」

雪乃「高さよ…………」

八幡「ま、まあしょせんファミコンの処理能力ってことだ。それよりこのステージはそれなりにカプセルの隠し部屋があるがわかりにくい。ちゃんと見とけよ」

雪乃「…………ええ」

八幡(俺は各所にある部屋に入り、ドラゴンボールや鍵を回収する。そして一回目のヤムチャ戦へ)

八幡「このゲームのヤムチャは攻撃力がハンパなく高い。出来れば一発ももらわずにいくこと。注意点は二つだ。低いジャンプの後に攻撃が来るからその時は離れる。それと攻撃モーションが終わってもしばらく判定が残ってるから不用意に近付かないことだ」

雪乃「そうだったのね。なんかダメージを受けたからおかしいと思ったのよ」

八幡「これを知ってればだいぶヤムチャとの戦いは楽になるはずだぜ」

八幡(そういっている間にヤムチャを撃破。残りのカプセルとボールを回収して二回目のヤムチャ戦へ。といってもやることは変わらないんだがな)

結衣「おー、無傷で倒しちゃった。ゆきのんはここで何回もやられちゃったのに」

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん」

八幡「初心者に立ちはだかる最初の難関だからな。ここで挫折したプレイヤーも多かったみたいだし」

八幡(さて、次のステージだ)

四回くらいに分けて投下します
次回は一度目の神龍呼び出しまで

 ~その4 フライパン やま の ぎゅうまおう~


八幡「このステージはそんなに難しくない。むしろヤムチャさんステージが難しすぎるくらいなんだがな」

陽乃「またさん付けで呼んでる…………」

雪乃「ええ。ただここも鍵を見つけるのだけは苦労したわね。扉が開いてなくて引き返していろんな部屋をさまよったもの」

八幡「ああ、鍵の出現場所は特定の部屋のどこかって決まってるんだ。火が消えたあと、出現するとこを何度も出入りしてりゃそのうちあるから。お、見つけた」

八幡(火消しイベントのあとに部屋を出入りしているとすぐに鍵を取ることができた)

八幡「で、おなじみのカプセル回収。ここは変な隠し部屋とかはないからな。取り終わったら牛魔王戦だ」

八幡(てっぺんまで登り、建物に入るとボス戦になる)

八幡「こいつは基本は最初の山賊と似たようなもんだ。武器が投げ斧に変わってて、体力は15発分。こっちの体力に余裕があるならごり押しでいい」

雪乃「余裕がないならジャンプキックを使えばいいのね」

八幡(現状悟空の体力は130。接近してひたすら如意棒を当てて倒す。さあ、次のステージだ)

 ~その5 ウサギ だん~


八幡「このステージは大まかに言えばブルマがニンジンにされてしまい、そのニンジンを回収しつつ進んでラストの兎人参化と戦う、というわけだが…………雪ノ下はここでゲームオーバーになったんだよな確か。ボスにやられたのか?」

雪乃「いえ、ニンジンが三つしか見つからなかったのよ。探し回っているうちにカプセルも尽きて体力切れになったわ」

八幡「あー、それはあれだ。間違ってニンジンの部屋を一回出ちゃったんだな。カプセルと同じで部屋を出るとニンジンは消えちまって二度と出てこないんだ」

結衣「え、ど、どうすればいいの?」

八幡「どうにもならない。コンティニューするかリセットするかだな。まあそこさえ気をつければボス戦までは簡単だ。カプセルもそこそこあるし」

雪乃「そうだったのね。気を付けるわ」

八幡「あと如意棒はボス戦で必須だ。パンチやジャンプキックを当てるとこちらがニンジンにされてゲームオーバーになる」

雪乃「もしカプセルから出なかったらそれも詰みなの?」

八幡「いや、ボスの部屋に用意されてる。ちょっと取りに行くのがめんどくさいが」

結衣「あ、ホントだ。右上にある」

八幡(ニンジンとカプセルを回収してボスの部屋に入ると、由比ヶ浜が目ざとく見つける)

八幡「もちろん普通に当たってもアウトだが、如意棒もしくはかめはめ波の攻撃六回で倒せる。跳ね回りはじめたら足場の下にいれば安全だ」

八幡(さっさと倒すこともできるが、雪ノ下への解説のため、少し時間をかけて倒す)

 ~その6 ピラフ だいおう の やぼう~


八幡「ここは難易度自体はそんなに高くないが、少し長い。あと罠が多いから無駄な攻撃を食らわないように気をつけてくれ」

雪乃「わかったわ」

八幡「それと2D画面ステージが何回かあるが、バトルはない。ボスキャラはマップ画面で戦うから…………お、出た」

八幡(序盤のカプセル隠し部屋で赤甲羅が出る。弾数は27。充分すぎるな)

八幡「んでこの橋を渡ったとこに中ボスっぽいのがいて、そいつを倒すと開く扉に入ったら一回目の2D画面ステージになるんだが」

雪乃「ええ」

八幡「ここに隠し通路があってそのステージを飛ばせる」

雪乃「えっ」

結衣「えっ」

陽乃「えっ」

八幡(おお。昨日の再現みたいだ)

八幡「で、泳いで越えるとここに出るわけだが、あそこの階段に入ると二回目の2D画面ステージだ」

陽乃「あ、右上にいるのがピラフだね?」

八幡「そうです。目の前の壁を破壊すると逃げていきますが、それを繰り返して追い詰めていくわけです」

八幡(俺の操作する悟空はひょいひょいと罠をかわして進んでいく)

八幡(次の階もさっさと通り抜け、またもや2D画面ステージへ)

結衣「あ、さっきと部屋の造りが違うんだね」

八幡「ああ。あと一回この部屋があるが、そこを越えればボスだ」

八幡(特筆すべきこともなく、カプセルを集めつつボスまでたどり着く)

八幡「体力は100あるな…………ならごり押しで行くか」

雪乃「あら、次のステージのためにも体力は減らない方がいいのではないの?」

八幡「ああ、ここに限っては構わない。それより落とし穴があるから敵に押されて落ちないようにな。下の階からやり直させられる」

雪乃「ええ」

八幡(ここまで如意棒が出なかったのでパンチ連打で倒し、奥の開いた扉に入る)

八幡「で、ここで一度目の神龍が出て、願いを聞いてくるんだ」

陽乃「あ、四択なんだ。てか神龍ショボっ!」

八幡「30年前のゲームにクオリティを求めないでくださいよ。で、四択の願いなんだが」

1.タイトルのドラゴンをうごかす

2.みらいをみる

3.パワーUPする

4.ギャルのパンティがほしい

雪乃「あら、一番目の願いって……?」

八幡「そうだな。提示されたクリア条件の願いだ。二回目に神龍を呼び出した時にもこの願いはあるからその時にこれを選択するんだ」

陽乃「四番目は原作再現のネタ枠だとして……選ぶのは三番?」

八幡「はい、これを選択すると体力上限が250になります」

結衣「すごいじゃん!」

八幡「ただし、一度コンティニューすると上限が150に戻ってしまう。150だと上級者でもクリアは厳しいんだ。これがコンティニューするくらいなら最初からやり直した方がいい理由だ」

雪乃「ここからはもう失敗できないのね…………」

八幡「そしてここから先は前半に比べて回復アイテムが手に入れづらい。より慎重に、なおかつ時間をかけないように進むんだ」

陽乃「はあ……なんだか聞けば聞くほど比企谷くんがいなかったらどうにもなんなかったね、これ。いくら何でも無茶な条件だよお母さんてば…………」

八幡「まあ…………俺もたまたま最近レトロゲーの動画とかを見るのにハマってましてね。まさかこんな形で役に立つとは思いませんでしたが…………じゃ、続き行くぞ」

雪乃「ええ」

ちなみにみらいをみるにするとステージ11まで飛ばすことができます
体力は据え置きですが

次回から後半に入ります

 ~その7 カンフー たいかい 1かいせん~


八幡「簡単に説明すると、悟空がカンフー大会に出て優勝を目指すシナリオだ。原作における天下一武道会みたいなもんだな」

結衣「1回戦ってことは何回も戦うの?」

八幡「ああ。決勝は4回戦目だ。マップ画面の雑魚を全員倒すと奥の扉が開いてボス戦になる」

雪乃「あら、1回戦の相手はクリリンなのね」

八幡「そうだ。こいつはかめはめ波を撃ったりこっちがジャンプすると向こうもジャンプする。なので肉弾戦になるな」

雪乃「攻略法とかあるのかしら?」

八幡「ごり押ししてもいいが、最初に何回かジャンプするとしばらく動きを止めるタイミングがある。そこからパンチ連打すると体力の減少が抑えられるぞ」

結衣「あ。あっさり倒しちゃった」

八幡「まだ1回戦だしな。少しずつ雑魚も強くなっていくから」

雪乃「というかなんでカンフー大会に雑魚戦があるのかしら…………?」

八幡「このゲームに関してのツッコミは受け付けてない」

 ~その8 カンフー たいかい 2かいせん~


結衣「あ、今度は雑魚が棒みたいな武器を持ってる」

八幡「攻撃力も上がっててパンチ一発じゃ倒せなくなってるからな。油断せずにいくぞ。あとここはカプセル隠し部屋がある」

雪乃「そんなところに…………」

八幡「ん、肉か。充分だな。で、ここの対戦相手はメタリック軍曹だ」

陽乃「いやいや、どういうチョイスなの? 電池切れするようなロボットじゃなくてもっとふさわしいキャラいるでしょうに」

八幡「開発者の趣味なんじゃないですかね? まあデカブツで飛び道具ありってのはゲーム的においしいんじゃないでしょうか」

雪乃「ミサイルやロケットパンチなんてとてもカンフーとは思えないのだけれど…………」

八幡「安心しろ。思わなかったやつなんていないから。こいつは攻撃回数も少ないし、もう前に出てひたすら殴るだけでいい。体力も余裕あるだろうしな」

八幡(一発だけ攻撃を食らってしまったが、あっさり撃破。さあ、次はいよいよ…………)

 ~その9 カンフー たいかい じゅんけっしょう~


八幡「ここからさらに雑魚が強くなる。階段のところならほとんど攻撃されないのでうまく利用するんだ。階段のないところはかめはめ波を使ってもいい」

雪乃「あら、本当ね。一方的に倒したわ」

八幡「で、ここの隠し部屋のカプセルを回収して…………このステージの敵は手ごわいからな。油断せずに心してかかれよ」

雪乃「わ、わかったわ」

陽乃「…………いや、ヤムチャじゃん!?」

八幡「そうです。ドラゴンボール界ナンバーワンのシブい男、荒野のナイスガイでみんなのアイドル、ヤムチャさんです!」

雪乃「…………以前と何か変わっているのかしら?」

八幡「いや、何も。低いジャンプしてきたときだけ逃げてれば楽勝だから」

結衣「ええー…………」

八幡(ノーダメージでヤムチャを撃破)

 ~その10 カンフー たいかい けっしょう~


結衣「いよいよ決勝戦だね!」

雪乃「その前にやっぱり雑魚がいるのね」

八幡「ここも階段なら攻撃されにくい。が、弾数に余裕があるならかめはめ波を使ってしまってもいい」

八幡(俺はうまく位置取りをして、スーパーかめはめ波とパンチで雑魚を倒した)

八幡「で、ここのボスはちょっと特殊でな。普通に攻撃しても倒せない」

陽乃「え、ブヨン? じゃあもしかして…………」

八幡「はい。下の床を壊して迂回して右上まで行って壁を壊します。すると……」

結衣「え、あれ? 動かなくなったよ。倒したの?」

八幡「ああ。外の寒さがブヨンを凍らせたんだ。さっきのマップからして全然寒そうじゃなかったというツッコミは受け付けてない」

陽乃「まあ雑魚を蹴散らさないと奥に進めないって時点でカンフー大会でもなんでもないしね」

八幡「まあこのカンフー大会はおまけみたいなもんですし。で、次のステージからが本番だと思ってくれ。並み居る上級者もこのへんから脱落していくから」

雪乃「ええ。勉強させてもらうわよ」

八幡(俺は次のステージへと進む)

 ~その11 トニンジンカ の ふくしゅう~


八幡「さて、再びドラゴンボール集めの旅に出た悟空は宇宙へ行くわけだが」

雪乃「ちょっと待ちなさい」

八幡「ツッコミは聞かない。んで月に到着するが、息が出来ないのでマップ上で酸素ボンベを取りながら進むことになる。データ的に言うなら体力の減る早さが倍になり、ボンベを取ると5回復する」

結衣「5かあ……あんま嬉しくないね」

八幡「それでもないよりは全然マシだ。なぜならこのステージから先は敵がカプセルを落としにくくなるからな。おまけに体力は150から始まる」

結衣「あっ、ホントだ。さっきまで200くらいあったのに」

八幡「ちゃんと上限は250になっているけどな」

雪乃「今まで以上にカプセルのある隠し部屋が重要になるのね」

八幡「ああ。んでちょっと進むと兎人参化と再会して中ボスのクリリアンと戦うわけだが、マップ画面なのでこんな具合にスーパーかめはめ波一発で終わる」

結衣「えっ、そんなあっさり?」

八幡「スーパーかめはめ波はパンチ20発分の威力があるからな。普通のかめはめ波でも何発かで倒せる。で、ボンベとカプセルを回収しながら進んでいくと、再び兎人参化との対決だ」

雪乃「ここもちゃんと如意棒が用意されてるのね」

八幡「ああ。足場がないが、中央部で相手のジャンプをくぐりながら攻撃してればそんなに難しくない」

八幡(兎人参化を倒し、ステージクリア)

なんか冗長になってきた
あと1、2回で終わらす

 ~その12 セブンアイランド~


八幡「何度も言うが、ここから先はコンティニューしてもステージ11に戻される。気をつけろよ」

雪乃「ええ」

結衣「なんか見たことない敵ばっかだね」

八幡「オリジナリティといえばそれまでだが、もうちょっと別のとこで頑張ってほしいよな…………で、あそこの家に入ると水中での中ボス戦になり、勝つとセブンアイランドに渡るための情報がもらえるんだが」

雪乃「そうなのね」

八幡「別にそれがなくても先に進める」

雪乃「えっ」

結衣「えっ」

陽乃「えっ」

八幡(またもやシンクロニシティ)

八幡「ここに行くと中ボス、バブラーとの対戦だが、こいつも倒す必要はない。左上の出口に行くだけでいい。ノーダメージは不可能だが、相手の上に乗って頭上の足場を壊して……こうすれば素早く行ける」

雪乃「ブヨンとかと同じように倒せないボスなのね」

八幡「いや、こいつは頑張れば倒せる。ただ意味がないだけだ…………で、ここからセブンアイランドな」

結衣「ホントにカプセル出ないんだね。ヒッキー大丈夫?」

八幡「上級者もだいたいここで挫折するからな、何とも言えんが…………」

八幡(残り体力は100を切ってる。少し厳しいか?)

八幡「ここは島から島へ渡っていくステージだが、橋の上でもたつくと時々水中に引きずり込まれて無駄な中ボス戦になる。ジャンプを駆使してなるべく早く渡るんだ」

雪乃「わかったわ」

八幡「で、カプセル隠し部屋を探索…………よし!」

八幡(ケーキが出て俺はガッツポーズをする。だいぶ楽になったな)

八幡「で、ここで情報を得て、一番右下の敵を倒すと鍵が手に入る。これであのボス部屋に入れるようになった」

結衣「ここのボスはどんなのなの?」

八幡「さっき出てきたバブラーの色違いだ。本当に色が違うだけで他は何も変わらん」

雪乃「あら、ということは…………」

八幡「ああ。左上から抜ければクリアだ」

八幡(悟空は一発だけ攻撃を食らい、ステージを抜ける。セブンアイランド、クリアだ)

 ~その13 ジャングル おう ビンボ~


八幡「ここは難易度はそんなに高くないが、カプセルが少ない。弱い敵を倒してカプセルが出るのを祈りながら進むことになる」

雪乃「どこまで運任せなのよ…………」

八幡「他二つの謎と違って、知っててもどうにもならん部分があるからなこのゲームは…………あ、この川の中の中ボスは水面に上がれば戦闘しなくていいから」

雪乃「それはありがたいわね」

八幡「で、あの建物に入ると亀仙人がいて、ヤムチャさんステージであったような鍵探しイベントが発生するわけだが」

陽乃「またナチュラルにさん付けしてる……」

八幡「今回はスルーする。あの鍵探しイベントは時間食って地味に体力減るからな」

結衣「え、大丈夫なの? どっかに入れなくなるんじゃ…………」

八幡「ボスのとこに行けなくなる。が、そばにいる門番を倒せばいいから大丈夫だ」

雪乃「スーパーかめはめ波で簡単に倒せるというわけね」

八幡「そうだ。で、この先に行くとビンボとのバトルになる」

結衣「わ、なにここ」

八幡「この足場から下に落ちたら即ゲームオーバーだから気をつけるようにな。で、ビンボは蔦を上下に伝わって悟空と横軸が合ったら止まって弓矢を打ってくる」

八幡(少しだけ動き回って雪ノ下のために解説してやる)

八幡「慣れれば簡単なんだが、とりあえず下に落ちないこととビンボの矢を食らわないことを第一に考えるんだ。他のとこのボスみたいにパンチ連打のごり押しができないからな」

雪乃「ええ」

八幡(遠くに現れたときにはかめはめ波を当て、目の前のときは攻撃前のパンチと去り際へのジャンプキックを与えていく。ほどなくしてビンボを撃破した)

八幡(さあて、いよいよか。体力は100。行けるか…………?)

 ~その14 コンペイ とう~


八幡「さて、ラストステージだ」

雪乃「え、ここが?」

八幡「ああ。狭い塔を登っていくから雑魚を倒すのが面倒くさい。カプセル目的でない限り無視して先に進んでいい」

雪乃「倒さなければ行けない敵はいないのかしら?」

八幡「一番最初の門番と最後の将軍、それと途中の2D画面になる中ボスだな。先に言っておくと、中ボスはクリリン、バブラー、牛魔王だ」

結衣「え、なんでこんなとこに?」

八幡「まあ容量の問題なんだろうが…………無理やり理由付けするなら、このステージは機械の敵ばかりだから洗脳でもされたんじゃねえか?」

八幡(最初の門番はスーパーかめはめ波で吹っ飛ばす。楽でいいなあ)

八幡「カプセルの隠し部屋は最初の方にしかない上に罠があったりする。どうするかは現在体力との相談だ」

雪乃「いくつくらいあれば安心なのかしら?」

八幡「もちろん多いほどいいが…………120もあればいいんじゃねえかな」

八幡「! しまったっ……!」

八幡(罠のある部屋を勘違いしていた。隠し部屋入口のトラバサミを食らってしまった上にカプセルの中身は点数。最悪だ)

結衣「ヒ、ヒッキー、大丈夫?」

八幡「ん、ああ。大丈夫だ。ボスまでは行けると思う」

八幡(バブラーにダメージを食らうのは仕方ない。牛魔王は無傷で倒し、将軍のところまでやってくる。体力は50)

八幡「将軍はスーパーかめはめ波で倒せる。で、この上のところに入ればラスボスだ」

八幡(俺は一旦スタートボタンを押し、雪ノ下に解説をする)

八幡「ラスボスの体力は30発分。後ろに下がられると攻撃が届かないから、最初はありったけかめはめ波を撃て。なくなったら接近してひたすらパンチしろ」

雪乃「それが手っ取り早い攻略法なのね」

八幡「ああ。この体力だとやられるかもしれないがな……んじゃ、行くぜ」

八幡(ポーズを解除し、俺はボス部屋に突入する)

八幡(先ほど雪ノ下に解説したことを実践し、延々とボスに攻撃を仕掛ける。もう何発当てたか覚えていない。まだか。まだなのか?)

八幡(残り体力が一桁になった瞬間、ボスが吹っ飛び、悟空が喜びのジャンプをした)

八幡「っしゃ!」

雪乃「クリア、したのね…………!」

八幡「ああ。あとはもう一回神龍が出てきて願いを聞いてくる。そこで『タイトルのドラゴンをうごかす』を選べばお前の親が提示したクリア条件を満たす」

雪乃「ええ、必ずクリアしてみせるわ」

八幡「よし、じゃあここで電源切るぞ。実際に動かすのは自分で願いを叶えてみせろ」

雪乃「そうね。それこそまさに私が望んだ奉仕部の理念よ」

結衣「ゆきのん、頑張ってね」

雪乃「ありがとう由比ヶ浜さん。でもその前に少し休憩しましょう。みんな熱くなっていて、部屋が少し暑いわ」

八幡(そう言って雪ノ下はベランダのドアを開ける。爽やかに吹いてくる風が心地いい)

八幡(思ったより疲れたのか、雪ノ下の淹れてくれた紅茶がやけに美味く感じられた)

雪乃「さて、やりましょうか」

八幡(しばらく休憩したあと、雪ノ下がテレビの前に座り、コントローラーを掴む)

八幡「雪ノ下、頑張れ」

結衣「ゆきのん、頑張って」

陽乃「雪乃ちゃん、ファイト」

カマクラ「ニャー」

八幡(みんなの応援を一身に受け、雪ノ下は電源を入れた)

次回はゆきのんのプレイをダイジェストで
そのあとエピローグ書いて終わります

八幡(雪ノ下の操作する悟空は軽やかにマップを進んでいく。とても初心者の動きとは思えない)

八幡(鬼門であるヤムチャさんステージも難なくクリアし、ウサギ団ステージまでやってきた)

雪乃「そういえばあのぴょんぴょん先に行ってるウサギに追い付いて触れたらやっぱりニンジンになるのかしら?」

八幡「いや、特に何もない。ただ追い越して先に行くとボス部屋に入れない。あいつが入るのを待つことになる」

結衣「ここでやっつけられれば楽なのにねー」

八幡(そんな雑談をしつつもニンジンを集め、無事にステージクリア。ここからは雪ノ下にとっては未プレイゾーン。緊張しなければいいが…………)

八幡(しかしそんな心配は杞憂だったようだ。ピラフ城をあっさり攻略し、カンフー大会も順調に進んでいく)

八幡(しかし事件は月のステージで起こった)

雪乃「くっ!」

結衣「あっ!?」

八幡(兎人参化に近付こうととして段差を降りた瞬間、相手が突然動き始めたのだ。それでも多少の距離はあったのだが、焦った雪ノ下は攻撃ボタンを押してしまったようだ。つまりジャンプキックが出て足先が当たり、人参にされてしまった)

結衣「ああ……」

雪乃「…………」

八幡「……雪ノ下さん。ゲームオーバーになったところまで俺が進めて、そこから雪ノ下がやるってのは駄目なんですかね?」

陽乃「さすがにそれはアウトだね。『アトランチスの謎』の比企谷くんが操作してた裏技もタイトル画面だからギリギリグレーゾーンなんだし」

八幡(くっ……雪ノ下の気力が保つか?)

雪乃「大丈夫よ」

八幡「雪ノ下…………」

雪乃「昨日の朝までの私がどれだけ絶望に苛まれながらやっていたと思っているのかしら? それに比べればこのくらい何てことないわ」

八幡「…………そうか」

雪乃「ええ、あなたが見せてくれた光があるもの。希望という名の、光が」

八幡「雪ノ下…………頑張れ」

雪乃「ええ、見ててちょうだい」

八幡(そう言って雪ノ下はコンティニューでなく、初めからのスタートを選択しようとする。俺はそれにストップをかけた)

八幡「ちょっと待て雪ノ下。一回電源を入れ直してプレイするんだ」

雪乃「あら、なぜかしら?」

八幡「乱数の問題だと思うんだが、電源を入れて最初の隠し部屋のカプセルの中身は肉、如意棒、甲羅、敵と決まってるんだ。それを取った方がいい」

雪乃「…………確かにランダムよりはその方がいいわね」

陽乃「いや、比企谷くん詳しすぎでしょ…………なんなの? ファミコンの謎博士なの?」

八幡「まあどうでもいいじゃないですか。雪ノ下、慎重になりすぎないようにな」

雪乃「ええ」

八幡(雪ノ下は再び悟空を操作し、ステージを進んでいく。さっきの言葉は強がりでも何でもないようで、すいすいとクリアしていった)

八幡(スーパーかめはめ波も20発以上持ったまま、先ほどやられた月のステージをクリア。セブンアイランドへ進む)

八幡「! 何だと!?」

結衣「わ! ケーキとお肉が出た!」

八幡(雑魚二人をパンチで同時にやっつけるとカプセルが出てきたのだが、中身がすごい。これは、行ける!)

八幡(体力200を超えたままステージ13へ。余計なダメージを食らわなければこの先回復がなくてもクリアできるかもしれないが、初めてのステージでそれはキツいか…………って、また肉!?)

結衣「すごいすごいゆきのん! すごいよ!」

八幡(有り余る体力を目にしてクリアが現実味を帯びてきた。由比ヶ浜が興奮しっぱなしだ。俺も陽乃さんも画面を凝視している。暢気なのはソファーの隅っこであくびをしているカマクラぐらいのものだ)

八幡(ビンボとのバトルも、足を踏み外すようなミスはせず、無事にクリア。コンペイ塔には即死イベントはない。よっぽどのことがない限り行けるだろう)

八幡(それでも雪ノ下は慢心することなく、俺が見せたお手本を忠実になぞっていく。そして将軍をスーパーかめはめ波で吹っ飛ばした時点で体力は140あまり)

八幡「行け、雪ノ下」

雪乃「ええ」

八幡(ボス部屋に突入し、かめはめ波を連射。弾数が尽きると近付いてパンチ連打。そして)

結衣「! やった!」

八幡(ボスが、吹っ飛んだ。雪ノ下が大きく息を吐く。その表情は達成感に満ち溢れていた)

八幡「あとは願いを叶えてもらうだけだな」

雪乃「ええ。間違って他の願いを選ばないようにしなくちゃね。エンディングも堪能させてもらうわ」

八幡(軽口を叩く雪ノ下に苦笑しながら俺も安堵のため息をついた。思った以上に俺も緊張していたらしい)

八幡(まあ肩の荷が下りたかな、なんて思っている俺の視界の端に何かが通り抜けた)

八幡(…………虫?)

八幡(さっきベランダ開けた時に入ってきたか? ニューファミコン本体の方に飛んでいく。ま、気にするようなものでも…………)

八幡(……!!!)

八幡(気付いた時には)

八幡(遅かった)

八幡(ソファーの)

八幡(カマクラが)

八幡(ファミコンの方に向かって)

八幡(飛びかかって)




「ダメーーーーーーーー!!!!」


八幡(由比ヶ浜がカマクラに腕を伸ばして掴み、抱き寄せる。そのままソファーに倒れ込んだ)

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん! 大丈夫!?」

結衣「あたしは平気! 早く!」

八幡「雪ノ下! エンディングなんかいつでも見れる! 選択してタイトル画面までセレクトスキップしろ!」

雪乃「わ、わかったわ!」

八幡(雪ノ下がコントローラーを操作し、タイトル画面でドラゴンが動き回る。これで間違いなくクリアだ)

雪乃「由比ヶ浜さん、怪我はない!?」

八幡「すまん由比ヶ浜! 俺がちゃんと見てなかったから!」

結衣「ううん。大丈夫だよ。えへへ、こう言っちゃなんだけど、あたしも役に立ててよかったなぁ」

雪乃「…………馬鹿ね。私は由比ヶ浜さんが応援してくれるだけでとても嬉しかったのよ。役に立ってないだなんて思わないで」

結衣「ゆきのん…………」

八幡(カマクラは自分が何かしてしまったと感じたのか少ししょんぼりしている。俺は由比ヶ浜からカマクラを受け取り、気にするなというように頭を撫でてやった)

陽乃「さて、雪乃ちゃん。オールクリアおめでとう」パチパチ

八幡(落ち着いたところで陽乃さんが拍手をする。俺もそれに倣った)

八幡「そうだな。おめでとう雪ノ下」パチパチ

結衣「やったねゆきのん!」パチパチ

雪乃「比企谷くんと由比ヶ浜さんのおかげよ。ありがとう二人とも」

陽乃「じゃ、見届け人として早速報告するね」

八幡(陽乃さんは部屋の隅っこに行き、置いてある荷物からスマホを取り出して電話をかける。俺はチラチラと見てくる雪ノ下の膝にカマクラを乗せてやった)

陽乃「うん……うん…………そう……間違いなく…………ロディマス…………ケーキ…………」

八幡(会話の端々にゲームの単語が聞こえてくる。クリアへの過程を説明しているのだろう)

八幡(さっきの件で情が移ったか、おっかなびっくりカマクラに触る由比ヶ浜を眺めているうちに陽乃さんの通話が終わった)

陽乃「雪乃ちゃんおめでとう。留学の件も白紙になったし一人暮らしも継続だよ」

結衣「やったねゆきのん!」

八幡「良かったな雪ノ下」

雪乃「本当にありがとう二人とも…………何度お礼を言っても足りないくらいだわ」

陽乃「うんうん。美しい友情だねえ。あっ、愛情も混じってるかな?」

雪乃「な、何を言っているの姉さん!?」

結衣「そ、そうですよ! 何で…………」

八幡「…………いや、混じってるかもな」

雪乃・結衣「「!!?」」

陽乃「おやおや?」

八幡「周りから見たらそれくらい仲がいいからなお前らは。もう同性婚しちまったらどうだ?」

結衣「っっっ、ヒッキーのバカ!」

雪乃「はあ……たまに頼りになると思ったらこれだものね…………」

八幡「? 何だよ?」

陽乃「あははっ! よし、じゃあ家の中に篭もってて鬱憤も溜まってるでしょ。ペット可のいい食事どころ知ってるから食べに行こう。お祝いにお姉さんが奢ってあげちゃうぞ!」

雪乃「…………そうね。たまには甘えましょうか」

結衣「あたし達もいいんですか?」

陽乃「おっけおっけ。さ、準備してレッツゴー!」

八幡(俺は行くとは行ってないんだが…………まあたまにはいいか)

八幡(荷物をまとめ、カマクラをケージに入れて四人で雪ノ下のマンションを出た)

八幡(そう、雪ノ下のマンションだ。明日には引き払わなければならなかったかもしれない、そしてあと一年雪ノ下が暮らすマンション)

八幡(…………良かったな、雪ノ下)

ゆきのんは無事にあと一年ここで暮らせることになりました
次回で伏線回収とエピローグを投下します
特定のカップリングがありますので、そういうのが苦手な方はここで読むのを止めてください

大志「へー、じゃあ雪ノ下さんは無事現状維持になったんすね」ピッピッ

八幡「ああ。メシ食ってる時に聞いた話だとあっちの親御さんはすげえ驚いてたらしいぞ」

大志「そりゃそうっすよ。どれかひとつクリアするだけでも大変なゲームばっかじゃないっすか…………どうぞ」

八幡「おう」ピッピッ

八幡(大志がパスワードを入れ終え、今度は俺が入力し始める)

大志「と、ところでお兄さん」

八幡「あん?」ピッピッ

大志「こ、この勝負、俺が勝ったら今度は比企谷さんも一緒にうちに連れてきてください!」

八幡「…………いいぜ」

大志「マジっすか!? 頑張るっす!」

八幡(俺は入力途中のパスワードを一旦消し、別のパスワードを入れ直す)

八幡「んじゃやるぞ」

大志「うっす…………って体力999!?」

八幡「身体能力も最大で、暴発しないよう余計な技は覚えさせてないガチキャラだ。タオタイラーも倒してる」ピコピコ

大志「ちょっ、そんなに俺と比企谷さんを会わせたくないんすか!? 自分は姉ちゃんとくっついてるくせに!」ピコピコ

八幡「うるせえ! 小町も川崎も俺のもんだ! お前にはやらん!」ピコピコ

大志「くっ、いまだに姉ちゃんを名前で呼べないヘタレのくせにっ…………」ピコピコ

八幡「何か言ったかコラァ!」ピコピコバシバシッ

大志「なっ!? 今のタイミングでニキキャクが入るなんて……」ピコピコ

八幡「もちろん負けたら小町のことは諦めてもらうぞ。俺と川崎が付き合ってんのを小町に言うのもなしだ。連絡取り合おうとするしな」ピコピコ

大志「そんな!」ピコピコ

八幡「リスクもなしに勝負ができると思うなよ」ピコピコ

大志「ぐううっ!」ピコピコ

沙希「…………」ドン

八幡・大志「「あっ」」

八幡(ブー、という音と共に画面がフリーズした。こ、これは猫リセットと双璧を成すファミコンの天敵っ)

八幡「母ちゃんの掃除機アタック!」

沙希「誰が母ちゃんだっての…………あんた達うるさい。もう少し静かにしな」

八幡「いいとこだったのに邪魔すんなー」ブーブー

京華「そーだそーだー」ブーブー

八幡(あぐらをかいている俺の足の間に座っている妹が俺と一緒に文句を言う。つられて同じように大志の足の間に座っていた下の弟も抗議し始めた)

沙希「うるさい。ごはん抜きにするよ」

八幡「さて、格ゲーなんて殺伐としたものはやめてなんか別のゲームでもするか」

大志「そうっすね。たまにはヤスを逮捕でもしますか?」

沙希「はあ…………」

八幡(手のひらを返した俺達の態度に呆れたようなため息をついた川崎は、掃除機を持って別の部屋に移った)

大志「そういや今日は夕飯うちで食っていくんすか?」

八幡「あー、どうすっかな。まだ俺んちは準備もしてないだろうから連絡しないとならんし」

川崎父「ただいまー…………お、八幡くん来てたのか」

大志「あ、父ちゃんお帰り」

八幡「お帰りなさいですお父さん」

川崎父「君にお父さんと言われる筋合いはない!」

大志「まだ言ってんの父ちゃん…………お兄さんはちゃんと父ちゃんの出した条件をクリアしたじゃん。最後の火の鳥タイムアタック勝負でも勝ってたし」

川崎父「うるさい! あんなの卑怯だ! 太古3のあんなとこで鏡が出るなんて…………!」

八幡「もうあれですよね。お父さんは俺が川崎と付き合うことよりもゲームに負けたことの方が悔しい感じですね」

川崎父「そんなことはない! 私は娘を愛しているぞ!」

八幡「残念でしたー。俺の方が川崎を愛していますー」

川崎父「いまだに名前呼びもできんヘタレが何を言っているのかね?」

八幡「ぐっ……親子揃って同じことを…………い、言えますよそれくらい。もうのろけちゃうまであります」

川崎父「ほう。なら言ってみたまえ」

八幡(交際相手の父親と子供みたいな言い合いをする高校生がここにいる。俺だ)

八幡「お、俺は、沙希が、好きだっ」

八幡(どうだ! 言ってやったぞ!)

京華「はーちゃんうしろー」

八幡「あん?」クル

沙希「////」

八幡「…………!!」

川崎父「はっはっは、若い者はいいねえ。八幡くん、今日は泊まっていったらどうだ?」

八幡「いや、それはちょっと」

大志「他の女子の家にお泊まりしといてうちには泊まれないって言うんすか?」

八幡「なっ、大志、てめっ!」

川崎父「どういうことかね八幡くん? やはり沙希との交際を認めるわけにはいかんようだな…………」

八幡「いやいや、やましいことなんかこれっぽっちもないですって! 俺は川崎ひとすじですから!」

沙希「あうう…………////」

川崎父「それによくよく考えたらゲームが上手かったからといって役に立つわけでもないからな」

大志「自分から出した条件に何を言ってんのさ…………」

川崎父「そのゲームが得意という点で人の役に立ったことがあるのなら今度こそ沙希との交際を認めよう。これ以上文句は言わん」

八幡「…………マジっすか?」

川崎父「ああ、もっともそんなことが起こればの話だがな」

大志「やったっすねお兄さん」

八幡「おうよ」

八幡(大志とハイタッチを交わす。そのあと雪ノ下家であったことを川崎のお父さんに話した)

川崎父「ぐっ……そんなことが…………ファミコンを子ども達に与えたのは失敗だったか…………」

八幡「いや、でもお父さんがファミコンとたくさんのソフトで遊ばせてくれたからこそ一人の女の子が救われたんですよ。いいことじゃないですか」

川崎父「ぐぬぬ…………まあいい。それよりまた実家からソフトが発掘された。超能力育成ソフト『マインドシーカー』だ!」

八幡「うわあ。クソゲー臭がプンプンします」ワクワク

大志「早くやってみるっすよ」ワクワク

川崎父「よし。沙希、メシできたら呼んでくれ」

沙希「はいはい。母さんが買い物から帰ってきたら作るから。比企谷も食べていくんでいいんだね?」

八幡「おう、よろしく」

八幡(確かネットでレトロゲームの動画を見て、それを戸塚に話していたら川崎が話し掛けてきたんだよな。『う、うちにファミコンあるよ』って)

八幡(そんで遊ばせてもらいにきてるうちになんだかんだ家族とも仲良くなった。特に大志は共通のゲームの会話ができるのが嬉しいようだ。川崎家は正直裕福ではないから最新のゲーム機とかを持っていないらしい)

八幡(川崎とも教室では話さないものの予備校やメールではやりとりも増えて、単純な俺は段々と惹かれていった。いや、仕方ないだろ。雪ノ下や由比ヶ浜と違ってめっちゃよくしてくれるし。まああの二人も最近は軟化しているが)

八幡(でもまさか川崎から告白してくるなんて夢にも思わなかった。すでに食事や弁当で胃袋をつかまれていた俺は迷うことなく二つ返事で答えたけど)

八幡(俺に彼女ができるなんてなあ……恥ずかしいから川崎家の面々と戸塚以外には今のところ秘密にしている)

八幡(俺はレトロゲームで彼女ができました、なんてな)

八幡「三つの謎?」

     ~ 完 ~

こんなくだらねーSSに時間を取らせてしまってすいませんでした。唐突にサキサキエンドになったのは俺が好きだからなだけです
何か質問や批判があれば受け付けます

あといつもの

100レス以内にサクッと終わらせようと思ってたのにどうしてこうなった…………

元々は「サキサキんちってゲーム機とかあんのかな? 八幡とゲームで遊んだりとかできねえかなあ」からスタートしました。なのでまず八沙希が前提だったんです(笑)一応それっぽい伏線は仕込みましたが
唐突にサキサキものになった以外は概ね好評っぽくてほっとしてます
あとファミコンわかる人結構いるのな

>>215
一応好感度が上がる機械スレではくっついたんで…

依頼出してきます。沙希ュバスも更新遅れてますがよろしく

>>228
>>1
>八幡「しかしあんまりだらけすぎてもな…………またゲームでもやりに……ん?」
ああ、この「やりに」ってのが伏線なんだw

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月10日 (日) 02:21:53   ID: DZbZlwD3

これ、俺ガイルでやる必要ないよな?
ファミコン世代だから楽しめたけどさ

2 :  SS好きの774さん   2016年04月12日 (火) 20:03:23   ID: vdfQr2Ox

そんなこと言ったらそもそもssを作る意味までなくなるぞ。

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom