兄「妹がこのままぱんつを穿かないと死ぬって本当ですか?」(86)

天使「はい。あなたの妹さんはぱんつ穿かない病にかかってしまったのです」

兄「ぱんつを穿けば助かるんですか?」

天使「いえ、このパンツを穿かなければもう助かりません」

兄「糞……早く穿かせないとっ」

天使「お兄さん、でも、この事は妹さんに内密にしてください」

兄「なぜですか?」

天使「それは……動揺すると更に病状が深刻化するからです」

兄「……わかりました」


はじめて書きます

妹「……」

兄「おい、妹、早くこのパンツを穿け」

妹「嫌」

兄「あのな、このままパンツを穿かずに居ると――」

 ――回想――

天使「動揺すると更に病状が深刻化するからです」

 ――――――

兄「お、女として、人間として駄目になるぞ」

妹「……うるさいな、人の勝手でしょ。それにスカート穿いてるんだし。めくれない限り見えないじゃない」

兄「めくれたらどうするんだよ。痴女だぞ」

妹「もう、うるさいっ。わたしはパンツ穿かないって決めたのっ」

兄「言っても、駄目か……」

妹「……」

兄「じゃあ、仕方ない実力行使だ!」

妹「死ねっ、変態」ゲジッ

兄「ぐはっ」

妹「お兄ちゃんって本当に弱いよね」

兄「……今、ま○こが丸出しだったぞ」

妹「殺す」

兄「や、やめろ。じゃあ、ぱんつ穿けよ!」

妹「それは嫌」

 夜

兄「ふふふ、寝てる間ならいいだろう」

妹「すぴーすぴー」

兄「よし、ぱんつok」

妹「すぴーすぴー」

兄「足にぱんつを通して――」

妹「死ねっ!」ゲシッ

兄「ぐはっ! な、なんで、起きて」

妹「お前の行動なんて丸わかりなんだよ。寝た振りしてただけに決まってんでしょ」

兄「ぐっ……」

 昼

兄「ふふふ、クーラーガンガンにしておけば流石に寒くてぱんつを穿くだろう」

妹「……」ヌクヌク

兄「こたつなんて出すんじゃねぇよ!」

妹「お兄ちゃんがクーラーガンガンにしてるからでしょ」

兄「……うう、そうだけど」

妹「はぁー、やっぱ、ぱんつなんていらないわ」

兄「変態だ……」

兄「おい、外に行くぞ」

妹「え? やだよ」

兄「いいから、外にいくぞ」

妹「……はぁ、わかったよ」

兄「(馬鹿め。外でスカートめくってやれば羞恥心でぱんつを穿くだろう)」

 外

兄「(まず、人が多いところに行ってと)」

妹「あ、今欲しい漫画があるから本屋行こうよ」

兄「ふふふ」

妹「? どうしたの?」

兄「おりゃあ!」メクリ

妹「きゃっ!」

兄「どうだ! これでぱんつ穿く気になっただろう!」

妹「うぅ……うぅ」

兄「な、泣くことないだろ?」

妹「うぅ……ぅう」

兄「泣くくらいならぱんつ穿けよ……」

通行人「ノーパン?」ザワザワ

通行人「変態カップル?」ザワザワ

妹「うぅ……うぅ」

通行人「鬼畜彼氏?」ザワザワ

兄「……」

妹「うぅ……うぅ」

兄「は、早く帰るぞ!」

 家

兄「わ、わかっただろ? ぱんつ穿いてなかったら、変態扱いだし、恥ずかしいだろ」

妹「……あれはお兄ちゃんが……めくったから」

兄「た、確かにそうだけど……風とか……そう! 階段とかエスカレーターだと丸見えだぞ!」

妹「……長いスカート穿く」

兄「いつの時代の人だよ……頼むからぱんつ穿いてくれ」

妹「……嫌」

兄「嫌って……あのなぁ、常識的におかしいんだぞ? お前の行動は」

妹「そんなの……知らない。穿きたくないんだもん」

兄「はぁ……」

兄「べつに妹が変態とか痴女とは思わない」

兄「何故なら前からぱんつを穿かなかったというわけじゃない」

兄「突如、ぱんつを穿かなくなったのだ」

兄「理由はぱんつ穿かない病。そんな病が存在するのかと最初は信じられなかったが」

兄「天使と名乗る女によると、あの病は天界ではよくある病気だが、人間界では珍しいらしい」

兄「天使とかいきなり言われてパニックになったが、魔法のような現象を何度か見せられ信じるしか無かった」

兄「それに妹が急にぱんつを穿かなくなったことも納得出来た」

兄「とにかく、このぱんつさえ穿かせればあいつの病気は治る」

 妹の部屋 夜

兄「ふふふ、またも寝てる間を狙われるとは思って無いだろ」

兄「さて、中に入って」ガチャッガチャッ

兄「あれ? 開かない……」ガチャガチャッ

兄「こ、こいつ、鍵かけてやがる!」

妹「うるっさい! 妹の部屋の中に入ろうとするなっ。変態!」

兄「……」

 翌日

兄「(無理矢理穿かすのは無理か……)」

兄「(じゃあ、仲良くなってぱんつを穿かせる作戦に切り替えるぞ)」

兄「よーし、今日はお兄ちゃんが遊んでやるぞ」

妹「はぁ? なに言ってるの? なんかきもいんだけど」

兄「うるさいな。ほら、お兄ちゃんとゲームするぞ」

妹「……ま、まぁ、やってもいいけどさ」

 ゲーム

兄「ま、負けた」

妹「お兄ちゃん弱過ぎ」

兄「も、もう一回だ!」

妹「べつにいいけど、ちょっとは頑張ってよね」

兄「あ……また、負けた」

妹「弱過ぎ、お兄ちゃん」

 夜

兄「今日は一緒に寝るか?」

妹「は? なに言ってんの?」

兄「いや、久しぶりに兄妹で一緒に寝ようぜ」

妹「きもっ」

兄「いいだろう? ダメか?」

妹「……そう言ってわたしが寝てる隙にパンツ穿かせる気でしょ」

兄「しないしない」

妹「……」

 ベッド

兄「ほら、ぱんつなんて一切持ってないだろ?」

妹「部屋のどっかに隠してる」

兄「無いって探してみろよ」

 30分後

妹「……」

兄「無いだろ?」

妹「……トランクス脱いで」

兄「は?」

妹「それわたしに穿かせる気でしょ」

兄「そ、そんな変態なことするかよ!」

妹「いいから脱いで!」

兄「あっ、ちょっと!」

妹「これで良し」

兄「うう、妹に見られた」

妹「わたしだって見られたんだからお相子でしょ……いや、わたし他の人にも見られたし」

兄「ごめんなさい! しかし、……トランクス無しでズボン穿くって、気持ち悪いな」

妹「え? そうでもないでしょ。すごく快適じゃん」

兄「……(ぱんつ穿かない病の奴はそう感じるのかもな)」

妹「早く腕まくらしてよ」

兄「……はいよ(なんだかんだ言いながらも……かわいいな)」

 3日後

妹「あー、また負けた。お兄ちゃんコンピュータに負けるとか弱過ぎだよ」

兄「お、おい。そろそろ、そこから――俺の膝から降りてくれないか?」

妹「なんで?」

兄「い、いやだって、お前ノーパンだし……その直に、ふ、触れて」

妹「直じゃないじゃん。お兄ちゃん、ズボン穿いてるし」

兄「そ、それでもなぁ」

妹「……意識してるんだぁ、きも」

兄「……そ、そう言うならどけよ。てか、ぱんつ穿けよ」

妹「どっちも嫌」

 ベッド

兄「お、おい、脚絡ませてくるなよっ」

妹「なんで?」

兄「だ、だから、お前、のーぱんだろ?」

妹「まだ意識してるの? 慣れてよ」

兄「な、慣れるわけないだろ」

妹「ふーん、慣れないってことは、わたしを女って意識してるの?」

兄「ち、違うに決まってんだろ」

妹「本当かな……じゃあ、確認」

兄「や、やめ!」

妹「……嘘つき、きもい」

兄「……」

兄「き、きもいだろ? だから、ぱんつ穿いてくれ」

妹「嫌」

兄「じゃあ、絡まってこないでくれ」

妹「それも嫌」

兄「……なんなんだよ」

妹「べつに。お兄ちゃんがきもいってだけでしょ?」

兄「じゃあ、俺、今日から自分の部屋で寝るから」

妹「え? なんで? ここで寝ればいいじゃん」

兄「だって、きもいだろ?」

妹「いいよ、もう。ここで寝なよ」ギュッ

兄「お、おい」

妹「べつにいいじゃん。妹に興奮したって」

兄「よ、よくないだろ」

妹「なんで?」

兄「え? そ、そりゃあ、身内に興奮するやつって変態だし……」

妹「変態でいいじゃん。わたしも変態だし」

兄「じ、自覚してんだな」

妹「兄妹揃って変態だね」

兄「……や、やっぱり、自分の部屋で」

妹「嫌」ギュッ

兄「……」

 朝

兄「結局、ここで寝てしまったが」

妹「すぴーすぴー」

兄「無防備だ。今ならぱんつ穿かせるの容易なんじゃないか?」

妹「すぴーすぴー」

兄「……」

妹「すぴーすぴー」

兄「もう少し様子見しとくか」

 昼間

妹「服買いに行きたい」

兄「え?」

妹「だめ?」

兄「いいよ。行くか」

妹「最近、優しいね」

兄「え?」

妹「昔は嫌だとか言ってたのに」

兄「あ、いや、はは。まぁ、たまには妹に優しくしないとな」

妹「……へへ」

 デパート

妹「これ……似合うかな」

兄「うーん、こっちの方が似合うな」

妹「ちょっと地味じゃない?」

兄「男はこういうのにグッと来るんだって」

妹「着てみる」

兄「おう」

妹「へへ」

兄「? なんか嬉しそうだな」

妹「うん」

 ――回想――

兄「はぁ……めんどくせ」

妹「この服、どうかな?」

兄「いいじゃね?」

妹「これは?」

兄「あー、いいと思う」

妹「……ちゃんと見てよ」

兄「あ、俺、ゲーム屋行ってくるわ。最新のゲーム出たんだよな」

妹「ちょっ、お兄ちゃんっ……はぁ」

 ――――――

兄「……」

妹「ど、どうかな?」

兄「おお、すっごく似合う」

妹「そ、そうかな」

兄「かわいい」

妹「え?」

兄「すっごくかわいいよ」

妹「……」

兄「どうした?」

妹「ううん、べっつにー。じゃあ、買ってくるね」

兄「おう」

妹「き、着替えてみました」

兄「マジかよ。トイレ行ったと思ったら、着替えてたのかよ」

妹「か、かわいいんでしょ?」

兄「かわいいよ。うん、すっごくかわいい」

妹「……ば、ばか」

兄「なんか、ふわふわしてて、こう抱き締めたくなるな」

妹「それって……微妙な褒め方」

兄「そうか?」ナデナデ

妹「あ……もう、頭撫でないでよ」

兄「嫌ならやめるけど」ナデナデ

妹「……べつに、嫌じゃないけど」

兄「かわいいなぁ」ナデナデ

妹「……ばかっ」

 夜 ベッド

兄「なぁ……もっと、離れようぜ」

妹「なんで?」

兄「い、いや、なんていうか」

妹「なんていうか?」

兄「……その……って、どこ触ってんだよ!」

妹「お兄ちゃんのえっち、こんなにして」

兄「お前の方がえっちだろっ」

妹「わたしはほら変態だし」

兄「……変態を認めないでくれ」

妹「お兄ちゃんはえっちだなぁ、きもいなぁ」ギュッ

兄「そ、そう思うなら、離れてくれよ……」

妹「ふとももあたりに固くて熱いものが」

兄「ご、ごめん! って、脚を絡まさないでくれ!」

妹「いいよ、当たったままで。もう、慣れたし」

兄「慣れないでくれ……」

妹「あ、でも、そういうことはしないでね」

兄「ん? そういうこと?」

妹「えっと……その、これを擦って」

兄「や、やらねぇよ! てか、触らなくていいから!」

妹「すぴーすぴー」

兄「寝ちゃってるな……」

妹「すぴーすぴー」

兄「全く警戒してないな……ぱんつ穿かせるぞ」

妹「すぴーすぴー」

兄「……出来るわけ、ないよな」

兄「どうして……こいつはぱんつを穿かなくなったのか」

兄「そういや、二週間くらい前だったっけ?」

兄「あん時は地震があって……妹がびびって、その、漏らしたんだよな……」

 ――回想――

 約二週間前

兄「……あ、ここはどこだ」

妹「お兄ちゃんっ! 起きて!」

兄「あれ? 妹」

妹「よ、よかったぁ……大丈夫? 身体、大丈夫?」

兄「え? あ、うん。全然」

妹「はぁ……良かったぁ」

兄「あれ? ここは?」

妹「よ、良かったぁ。生きてるぅ」

兄「なに、俺死にかけてたの!?」

妹「もう、お兄ちゃんったら、地震で倒れて来た棚の下敷きになった時はどうしようかと」

兄「ま、まじかよ」

妹「そうだよ。お兄ちゃん、いくら買ったばかりの薄型テレビが壊れそうになったからって」

兄「お、俺、テレビの為に死にかけたのか……で、テレビは無事か!」

妹「ううん、ダメだったよ……ほら」

兄「う、嘘だろ……まだ買ったばかりだって言うのにぃぃぃいいい!」

兄「はぁ……まじかよ」

妹「うん、まじだよ」

兄「あれ? なんか違和感。って! お前なんでノーパンなんだよ!」

妹「え? ちょ、ちょっと、見ないでよ! 変態!」

兄「み、見ないでよ! じゃなくて、ぱんつ穿けよ! スカートも!」

妹「う、うるさいなっ。地震が来て、そ、その怖くて漏らしたのっ」

兄「は、はぁ!? 嘘だろ!?」

妹「ほ、本当だよ……」

兄「……」

妹「な、なによ」

兄「い、いや、で、どこに漏らしたんだよ」

妹「も、もう、処理したからっ」

兄「処理したのになんでぱんつ穿いてないんだよ?」

妹「そ、それはお兄ちゃんがいつまで経っても起きないから、心配になって……その」

兄「……さっさと穿いてこいよ」

妹「う、うん」

 翌日

テレビ「(ニュース)」

妹「……」

兄「はぁ……昨日地震はすごかったらしいな……」
 
妹「……」ガタッ スタスタ

兄「……」

妹「あっ!」

兄「ん?」

妹「うっ」ペターン

兄「なに、こけてんだよ。ちゃんと前見て――って、なんでお前ノーパンなんだよ!」

妹「み、見ないでよ! 変態!」

兄「お、お、お前なぁ! ぱんつ穿けよ! なにノーパンになってんだよ!」

妹「べ、べつに! わたしの勝手でしょ!」

兄「勝手っって! そういう問題じゃないだろ!」

妹「――めたの」

兄「は?」

妹「目覚めたの……その、のーぱんに」

兄「はぁああああああああああ?」

 数日後――

兄「はぁ、あいつ、なに言っても聞かないし……」

天使「お困りのようですね」

兄「だ、誰だ! お前!」

天使「わたしは天使という者です。天界からあなたの妹さんを助ける為にやって参りました」

兄「……は、はぁ? て、天界?」

 ―回想終わり―

兄「……はぁ」

妹「すぴーすぴー」

兄「絶対、ぱんつ穿かせてみせるからな」ナデナデ

妹「すぴーすぴー」

 翌日 昼間

兄「次は……」

妹「にんじんだね」ギュッ

兄「……ああ。そうだな」

妹「~~♪」

兄「(仲はべつに悪くなかったけど、最近、妹と距離がかなり近くなった気がする)」

妹「これかなぁ。こっちの方が大きいかも」

兄「(ぱんつを穿かせる為に妹に色々気を使ったり、優しくしたけど……なんか罪悪感)」

妹「お兄ちゃんはどっちがいい?」

兄「え?」

妹「にんじん」

兄「あ、ああ、こっちでいいじゃないか?(もう時間も経ってるし……早くぱんつ穿かせないと)」

 帰り道

兄「……」

妹「お兄ちゃん、もうひとつの袋もつよ」

兄「あ、ああ、ありがと。こっちが軽いな」

妹「へへ、こういうとこ好きだなぁ」

兄「え?」

妹「わたしにも持たせてくれるとこ」

兄「あ、いや、普通、男がふたつとも持つもんだよな。ごめん」

妹「だから、いいんだって。男だから女に荷物を持たせないって感じじゃないのがいいの」

兄「え? ああ、そうなのか」

妹「わたしはね」

天使「こんにちわ」

兄「!」

妹「……」

兄「あ、こ、こんにちわ」

妹「こ、こんにちわ」

天使「兄さん? ちょっといいですか?」

兄「え? あ、はい。あ、ごめん、妹。俺、ちょっと」

妹「え?」

兄「あー、この人、知り合いなんだ。天使さんって言って」

妹「え?」

兄「だから天使さんだ」

天使「こんにちわ」

兄「あ、こいつ俺の妹です」

天使「この娘があなたの?」

兄「はい」

妹「……ど、どうも」

天使「初めまして、妹さん。天使です。お兄さんとはいつも仲良くさせて貰ってます」スス 

兄「は、はい、はは(そんなに近寄らなくても)」

妹「な……っ」

天使「どうぞ、よろしく」

妹「……」

天使「?」

兄「お、おい、妹」

妹「兄になにか用事でもあるんですか? 天使さん」

天使「はい。ちょっとした用事が」

妹「そう、ですか」チラッ

兄「?」

妹「わたしも一緒に行ってもいいですか?」

兄「だ、だめに決まってんだろ」

天使「それはちょっと困りますね。べつに大したことじゃないですよ。ちょっと世間話したいだけです」

妹「……兄とはどういう知り合いなんですか?」

兄「お、おい」

天使「わたし、お兄さんと同じ学校なんです。それで委員が一緒なんですよ。ね?」

兄「は、はい(そういう設定にするのか)」

妹「そう、ですか。それ、持って帰るから」

兄「あ、ご、ごめん」

妹「いいよ。早く帰ってきてね?」

兄「お、おう」

天使「あらあら、嫉妬深そうな妹さんですね」

兄「え?」

天使「ずっとわたしのこと睨んでましたよ」

兄「あ、いや、すみません」

天使「いえいえ、兄妹仲よろしくいいことです」

兄「そうですね」

天使「まだぱんつ穿かせてないみたいですね」

兄「はい」

天使「正直……そろそろ危ないですよ」

兄「え?」

兄「じゃ、じゃあ、妹は死ぬんですか?」

天使「見た限りではまだ大丈夫です」

兄「そ、そうですか」

天使「でも、時間が経ち過ぎています。そろそろ、穿かせないと危ないです」

兄「……」

天使「一刻も早くぱんつを穿かせてください」

兄「……はい」

 家

妹「おかえり」

兄「ただいま」

妹「……あの人と何の話だったの?」

兄「え? あー、委員会について話だよ」

妹「……」

兄「どうした?」

妹「お兄ちゃん、あの人と仲良いの?」

兄「え? ま、まぁな」

妹「……」

妹「どこで知り合ったの? どういう関係なの?」

兄「い、いや、だから、委員会の先輩後輩だって」

妹「本当に?」

兄「うん、本当に(嘘つくしかないよな……動揺させない為にも)」

妹「ふーん、なんかあの人危ない感じがするし、気をつけた方がいいよ」

兄「え? そ、そうか?」

兄「(こいつ、昔から鋭いからなぁ……天使さんが普通の人間じゃないことに気付いたか?)」

妹「うん、なんとなくね……それにムカつくし」

兄「ムカつくって……ちょっとしか会ってないのに、なんでムカついてんだよ」

妹「……な、なんでって」チラッ

兄「?」

妹「う、うっさい。早く料理作るよっ」

兄「あ、ああ」

 食事

妹「お兄ちゃん、はい、あーん」

兄「い、いいって。は、恥ずかしいだろ」

妹「だめ?」

兄「だめじゃないけど……」

妹「あーん」

兄「……あ、あーん」パクッ

妹「おいしい?」

兄「え? あ、ああ、おいしい」

妹「えへへ」

妹「じゃあ、次わたしね、はい、あーーー」

兄「え?」

妹「はーやーくぅ」

兄「あ、ああ、あーん」

妹「あーん」パクッ

兄「お、おいしいか?」

妹「うん、おいしい」

兄「そうか」

妹「次、お兄ちゃんね。あーん」

兄「ま、まだやるのかよ……」

妹「はーやーくぅ」

妹「……お兄ちゃん」ギュッ

兄「な、なに? 今、食事中だぞ」

妹「ちょっと、ぎゅっとしたくなっただけ……だめ?」

兄「え? い、いや、べつに」

妹「ありがとっ」ギュッ

兄「……」

妹「……お兄ちゃん」

兄「ん? なん――んっ」

妹「んっ」

兄「な、なにを!」

妹「なにをって、キスだけど」

兄「な、なにキスしてんだよ!」

妹「だめ?」

兄「だ、だめに決まってん――んっ」

妹「あむっ……ちゅぅ」

兄「ぷはっ……だ、だから、キスするなって!」

妹「へへ、照れちゃって、かわいい」

兄「あ、あのなぁ……っと!」

妹「あーあ、失敗しちゃった」

兄「だから、キスしようとするなっ」

妹「嫌?」

兄「そ、それは……その……嫌に決まって……る、ような、じゃないのような」

妹「へへ、この優柔不断」ギュッ

 リビング

兄「(そろそろ、やばいって話だし……もう仲良くなったし、俺の言うこと訊いてくれるかもしれない)」

兄「(キ、キスまでしたしな……そ、それくらい出来るくらい、俺を赦してくれたってことだろうし)」

兄「(……いいんだろうか。こんなやり方……でも、妹を死なすわけには)」

兄「な、なぁ、妹」

妹「? なに?」

兄「そ、そろそろ、その……ぱんつ穿かないか?」

妹「え?」

兄「い、いやな、そろそろ真冬だし。本格的に寒くなるだろう?」

妹「……」

兄「ちゃんとぱんつは穿かないとな」

妹「嫌」

兄「兄の一生のお願いだ! 土下座だってするぞ」

妹「……嫌って言ってるでしょ」

兄「なんで嫌なんだよ」

妹「それは……ぱんつ穿きたくないから」

兄「じゃ、じゃあ、一回だけ! 一回だけ穿いてくれ! すぐ脱いでくれていいから!」

妹「嫌」

兄「ちょっとだぞ? ちょっと穿くだけでいいんだ。一秒でいいから!」

妹「絶対嫌!」

兄「……なんでだよ」

妹「お兄ちゃん……今までなにも言わなかったのに、急になんでそんなこと言うの?」

兄「それは……だって、ぱんつ穿かないとおかしいだろ」

妹「……そうだけど、今まで言ってこなかったじゃん」

兄「そ、そうだけど、常識的にも道徳的にも色々おかしいだろ。今までは……その言わなかったけど」

妹「……なんで今になって言ってきたの?」

兄「え?」

妹「……わたしが、キスしたから……?」

兄「え? な、なに言って」

妹「お兄ちゃん……急に優しくなったよね」

兄「そ、そうか?」

妹「うん、前は全然構ってくれなかったのに、最近はすごく構ってくれて、優しくしてくれて」

兄「……」

妹「前からお兄ちゃんのこと嫌いじゃなかったけど、普通の兄妹くらいだったけど」

兄「……」

妹「一緒に居てくれて、構ってくれて、かわいいとか言ってくれて、頭撫でてくれて」

兄「……」

妹「キスだって……嫌がらないでくれて……」

兄「……」

妹「それって……全部、わたしにぱんつ穿かせる為にやったの……?」

兄「ち、違う」

妹「……じゃあ、なんで急にそんなこと言いだしたの? なんで今までなにも言わなかったの?」

兄「それは……」

妹「さっきの頼み方だと……そうにしか見えないよ」

兄「……それは……」

妹「それは?」

兄「……」

妹「否定……しないだね」

兄「……否定は、しない」

妹「そっか……そうだよね……」

兄「……」

妹「わたし……滑稽だった? ちょっと優しくして、構ってあげたらもうお兄ちゃんの虜になってさ」

妹「すごく、うまいよ。やり方。たぶん、これがぱんつのこと以外だったら、言うことなんでも聞いてたよ」

兄「……」

妹「部屋に戻るね」

兄「なんで、穿かないんだよ」

妹「……穿きたく、ないから」

兄「ふざけるなよ……穿きたくないから? そんな理由でぱんつ穿かないって言うのかよ」

妹「そう……だよ。わたしは、ぱんつだけは穿きたくないから」

兄「お前、わかってんのかよ。それがどういうことかって」

妹「……世間体が悪いのは知ってる。お兄ちゃんに迷惑だってのもわかってる」

兄「なら!」

妹「それでも、わたしは穿きたくないから」

兄「なんで……なんでわかんないんだよっ」

妹「え?」

兄「どうして、わかってくれないんだよ! それがお前を苦しめることだって、なんでわかんないんだよ!」

妹「……」

兄「俺がお前に優しくしたり、構ったりしたのは、そうだよ! 全部お前にぱんつを穿かせる為だよ!」

妹「……っ。そ、そう、なんだ」

兄「でもな、勘違いすんなよ?」

兄「べつに俺は世間体が悪いからとかそういう理由でぱんつを穿けって言ってるわけじゃねぇんだよ!」

妹「え?」

兄「全部お前の為なんだよ! お前に苦しい思いして欲しくないから言ってんだよ!」

妹「……どうして、そこまで……」

兄「なぁ、頼むよ……お願いだから! ぱんつ穿いてくれよ!」

兄「俺はお前が居ないと困るんだよ。居てくれないと嫌なんだよ……!」

妹「……そっか……そういうことだったんだ」

兄「兄の一生のお願いだ……ぱんつ、穿いてくれ」

妹「……嫌。穿かない、絶対に」

兄「こ、こんなに頼んでるのにダメなのか!?」

妹「ダメ。お兄ちゃんがそうならわたしは絶対ぱんつを穿かない」

兄「っ! もう、勝手にしろ!」

 翌日

兄「……」

妹「ごほっ……ごほっ……ずずー」

兄「……」

妹「ごほっ……ずずー」

兄「風邪か?」

妹「……」

兄「……」

 翌日

兄「お、おい、顔色悪いぞ」

妹「……ずずー」

兄「だ、大丈夫かよ」

妹「……ごほっ、ごほっ」

兄「病院行くぞ」ガシッ

妹「放して。触るな」バシッ

兄「……」

 夜

兄「体調が悪いんです」

天使「それはすごくやばいですね」

兄「や、やっぱり、ぱんつ穿かない病が原因なんですか?」

天使「はい、ぱんつ穿かない病の予兆というべきか。早くぱんつを穿かせないと手遅れになりますよ」

兄「糞……もう、なにがなんでも穿かせてみせる」

 夜 妹の部屋

兄「糞……鍵がかかってる」

兄「俺の部屋のベランダから妹のベランダに。……ペンチが必要だな」

 ベランダ

兄「ふぅ……なんとかいけた」

兄「このペンチで」

 ガンガンガンガンパリーン

兄「鍵を解除して」

 妹の部屋

妹「……はぁ……はぁ……」

兄「こいつ……こんなにも煩いのに起きないと思ったら……くそが!」

妹「……お、お兄ちゃん」

兄「いますぐ楽にしてやるからな」

妹「や、やめて」

兄「ぱんつを脚にかけて」

兄「それからもう片方の足も――手をどけろ」

妹「……」ギュッ

兄「わっ! くそ、放せっ。穿かせられないだろっ」

妹「お兄ちゃん、好き」

兄「は、放せよっ、早くしないとっ」

妹「大好きだよ」

兄「わ、わかったから放せっ」

妹「嫌……だって、穿かせようとするでしょ」

兄「当たり前だろっ! そうしないとお前は楽にならないんだよ!」

妹「そっか……だから、ずっと、穿かせようとしてんだね」

兄「そうだよ! だから、穿かせてくれよぉ……頼むよ」

妹「嫌……」

兄「なんで! なんでなんだよ! あのな、お前は知らないかもしれないけど」

兄「お前、ぱんつ穿かなかったら死ぬんだぞ!」

妹「……知ってる」

兄「それわかって……え?」

妹「知ってるよ……ぱんつ穿かなかったら、死ぬんでしょ」

兄「じゃ、じゃあ! なんで穿かないんだよ!」

妹「だって……そんなことしたら」

兄「なんだよ!」

妹「お兄ちゃん……死んじゃうんだもん……」

兄「は?」

妹「折角、生き返ったのに……死んじゃうんだもん……」

兄「な、なに……言って……」

妹「おにいちゃん……地震のとき、死んじゃったんだもん……わたしの所為で」

兄「え……?」

 ――回想――

妹「じ、地震だっ」

兄「お、おい! 早くテーブルの下に隠れろ!」

妹「いやぁああ! 怖い! た、助けて!」

 棚 ガタガタ

兄「この! 馬鹿!」ドンッ

妹「きゃっ!」

兄「っ……」

 棚 バタンッ

妹「お、お兄ちゃん?」

妹「お兄ちゃぁん!」

妹「お、起きてよっ、起きてよ! お兄ちゃん!」

 ――――――

兄「え……俺は薄型テレビを守る為に……しかも、死んでなんか無いはずなのに」

妹「違うよ、わたしを助けて死んだんだよ」

兄「……死んだ?」

妹「ごめんね……ごめんね、お兄ちゃん」

兄「俺が死んだ? じゃ、じゃあ、なんで生きてるんだ?」

妹「それは、天使のお陰」

兄「あいつの?」

妹「うん、お兄ちゃんを生き返らせる代わりに、ゲームしようだって」

兄「ゲーム?」

 ――回想――

妹「ゲーム?」

天使「はい。あなたはノーパンで約二週間過ごし」

天使「ぱんつを一度でも穿かなかったらお兄さんを完璧に生き返らせましょう」

妹「のーぱん!?」

天使「はい」

妹「わ、わかった」

天使「それから、これは等価交換でもありますので、約二週間後、あなたの命は無い。これはわかってますね?」

妹「……うん」

天使「これはゲームですからぱんつを一度でも穿いてしまうとこの条件は無かったことになります」

妹「わかってる」

天使「当然、妨害も用意させて貰います。ゲームですからね」

妹「……うん」

 ―――――

妹「妨害ってなんだろうって思ってたけど、お兄ちゃんだったんだね」

兄「あ、あいつ、それで……ぱんつ穿かない病なんて……ふざけやがってっ」

妹「お兄ちゃん、騙して……ごめんね」

兄「……」

妹「こんなばかみたいなことしてる妹をふつうに扱ってくれてありがとうね」

兄「……」

妹「でも、よかったぁ。お兄ちゃんがちゃんと生き返って」

兄「……」

妹「お兄ちゃん」

兄「なんだよ」

妹「わたしの代わりに生きてね」

兄「そうか、そうだな。代わりにな」

妹「ごめんね、一緒に生きていけなくて」

兄「そうだな、本当にごめんだ」

妹「もっと一緒に居たかったんだけどね」

兄「俺もだ」

妹「これ言うの……恥ずかしいんだけど、でも最後だから言うね」

兄「……」

妹「お兄ちゃんのこと、好きだったよ」

兄「俺も好きだよ」

妹「両想いだね」

兄「だな」

妹「もったいないなぁ……折角両想いなのに」

兄「そうだな、勿体ない」

妹「最後にキス……してもいい?」

兄「うん、いいぞ」

妹「んっ」

兄「……」

妹「へへ、これが限界かも……ちょっと、辛いし」

兄「そうか」

妹「もっと元気あったら、きついのお見舞い出来たんだけどね」

兄「そうだな」

妹「お兄ちゃん……ちょっと、淡泊だよ。酷いな、今生の別れだっていうのに」

兄「かもな」

妹「ちょっと眠たいし、寝て良い?」

兄「おう、寝ろ」

妹「へへ……頭撫でて」

兄「はいはい」

妹「へへ」ナデナデ

兄「気持ちいいか?」

妹「うん、でも……寝ちゃいそう」

兄「寝ろ寝ろ」

妹「うん……おやすみ、お兄ちゃん」

兄「おやすみ」

兄「約二週間、ありがとうな」

 朝

妹「はっ……お兄ちゃん?」

兄「……」

妹「お……兄ちゃん?」

兄「……」

妹「お兄ちゃん」ユサユサ

兄「……」

妹「起きてよ」ユサユサ

兄「……」

妹「もう朝だよ、お兄ちゃん」ユサユサ

兄「……」

妹「遅刻しちゃう」ユサユサ

兄「……」

妹「ほら、のーぱんになったよ」

兄「……」

妹「いつもみたいにぱんつ穿けよって言わないの?」

兄「……」

妹「頭撫でてよ、夜のじゃ足りなかったから」

兄「……」

妹「キスしよう? 今ならディープなのいけるから!」

兄「……」

妹「両想いなんだし、いっそのことえっちなことしちゃう?」

兄「……」

妹「ねぇ、好きって言ってよ」

兄「……」

妹「わたしはお兄ちゃんのこと好きです」

兄「……」

妹「付き合ってください」

兄「……」

妹「付き合うとかダメとか言ってよ。女の子が勇気出して告白したんだから」

兄「……」

妹「ホントにお兄ちゃんはヘタレだね」

兄「……」

妹「ひとりで生きて行くことすら出来ないんだから」

兄「……」

妹「本当になにやってくれてんの」

兄「……」

妹「何のためにお兄ちゃんを生き返らせたと思ってるの?」

兄「……」

妹「のーぱんになってまで、頑張ったのに」

兄「……」

妹「馬鹿みたいじゃん」

兄「……」

妹「本当馬鹿」

兄「……」

妹「このばかっ」

兄「……」

妹『それから、お兄ちゃんの葬儀が始まった』

妹『両親兄を無くしているわたしは親戚に預けられることになった』

妹『おばさんやおじさんもわたしを気遣ってくれる。うまくやっていけそうだ』

妹『あれから天使は現れない。天使に感謝するべきなのか、しないべきなのか迷うところでもあるけど』

妹『でも、感謝するべきかもしれない』

妹『あの約二週間があったから、わたしはお兄ちゃんとあそこまで仲良くなれた』

妹『わたしにとって辛い思い出でもあり、楽しかった思い出でもあるけれど』

妹『わたしは生きて行こうと思う』

妹『お兄ちゃんが生きていけないこれからの日々を』


                       おわり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom