理樹「真人が……留年…!?」 (60)

理樹部屋

理樹(今日の夜、いつも通り5人でだべろうかと思っているとドアから思いつめた顔で恭介が入ってきた)

恭介「…………………」

理樹(いつもの何を考えてるか分からない不敵な笑みが消えているということは恐ろしくまずい事が起きたんだろう。思わず4人で顔を見つめあった)

謙吾「ど、どうしたんだ恭介?あまり表情が乏しくないじゃないか…」

理樹(謙吾が先陣を切った)

恭介「そうだな…今から言うことは冗談じゃない」

鈴「いきなり何を?」

理樹(コタツに座らずその姿勢のまま僕らを見つめると、深呼吸してはっきり言った)




恭介「………真人が留年する!!」

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理樹・謙吾・鈴「「「な、なんだってーーー!?」」」

恭介「ああ……こいつは俺が職員室に寄った時に偶然耳にした時のことだ…」




職員室

教師『悪いわね棗くん。重たかったでしょ?』

恭介『いえいえ先生にはいつもお世話になっていますから。それではこれで…』

『~にしてもこの井ノ原という奴は卒業出来るんですかね…』

恭介『ん?』

『ああ、そうですね…』

『成績もダメ、授業態度も悪い、出席日数も足りない。これじゃ多分……いや、ここままでは確実に留年だな。当たり前っちゃ当たり前ですが』

恭介『!!』


恭介「そう言ったのはお前らの担任だった…」

理樹「うっ…確かにそう言われれば言い返せない!」

理樹(そんな絶望的な宣告を受けて当の本人は……)

真人「……留年ってなんだ?」

理樹(恭介と謙吾と一緒にずっこけた。効果音を付けるなら『ズコー!』になっていただろう)




真人「なっ、なにぃ!?それじゃあ理樹達は卒業する時に俺だけ一年ここに残るってことかよっ!!」

恭介「そうなるな…」

鈴「そんなことになったら卒業式なのにめちゃくちゃ気まずくなるな」

理樹「真人本人のことも気遣ってあげなよ!?」

謙吾「ううむ…非常にまずいな…」

恭介「ああ。真人が勉強面でかなりアレなことは知っていたが…いや、まあ素行で言えば半ば俺のせいでもあるんだが」

真人「ど、どうすりゃいいんだ俺はーー!?」

理樹「でも本格的に留年が決まるにはまだ時間はある。こうなったら解決策を探るしかないよ!」

恭介「その通りだ理樹!早速作戦を練ろう。作戦名、その名もオペレーション・レスキュー真人!!」

真人「お前ら……ありがとうよ…!!」

作戦その1

恭介「さて諸君。留年を回避するならまず成績をどうにかするしかない」

謙吾「真人、特に危ない教科は?」

真人「保険と体育以外は全部赤点だぜ!」

理樹「威張って言うことじゃないよ…」

恭介「そこで俺にいい考えがある」






次の日



職員室前

理樹(まだ完全に日が出ていないほどの早朝に僕らは職員室にいた)

理樹「やっぱりまずいよ恭介…」

恭介「どうした?」

理樹「真人の成績を全部書き換えるなんて無茶だよ……っ!」

謙吾「だがしかしそれしか方法はあるまい…」

真人「大丈夫だ安心しろって理樹っ!」

鈴「なせばなる」

理樹「みんななんでそう落ち着いていられるのさ!これって何かの法に引っかかるんじゃないの?」

理樹(僕の心配とは裏腹に恭介はもう職員室の扉のピッキングに取り掛かっていた)

恭介「バレるのが心配なのかい?ならそれは杞憂に終わるぜ。なんたってこんな事もあろうかと3年間の間に学校の警備システムは全て把握しておいたからな」

謙吾「現に最初に扉を破ってから今に至るまでに用務員が来たか?」

理樹「いやいやいや、そういう事じゃなくて…」

カチッ

恭介「よし空いた!」

理樹(当たり前だけど職員室は真っ暗だった。みんながそばにいると分かってはいても、いつもとは違う学校の一面に身体がぞわっとした)

理樹「で、電気…」

鈴「ここだ」

パチッパチッ

理樹(鈴が一気にすべての蛍光灯を点けた)

恭介「お前らの担任のはそこだ」

理樹(恭介は窓際の一番右の席を指差しどんどん進んでいった)

恭介「えーっと…」

謙吾「俺も手伝おう」

鈴「あたしもやる」

理樹(遠慮なく引き出しを開けていく恭介達。やる事が冗談じみてるから良かったものの、彼らがもし悪事に手を染めようものなら……考えたくない)

真人「おっ、先生机に携帯忘れてってるぞ」

鈴「お前も手伝えっ」

真人「へいへい…」






ゴソゴソ

謙吾「………ん?おっ、見つけたぞ!」

恭介「でかしたぞ謙吾!」

理樹(そう言うと恭介はどこから取り出したのか修正ペンと赤ペンを両手に装備した)

恭介「どれどれ……ははあ、ひっでえ成績だな」

真人「う、うるせえな…ちゃっちゃとやってくれよ」

恭介「しかし留年するほどの成績ではないと思うんだがな…補習は受けているようだし」

理樹「それだけ先生の評価が悪かったんじゃない?ほら、いつだったか火星がどうのこうのとか言ってたし」

謙吾「一理あるな」

恭介「なにはともあれ修正しとけば問題ない。どれ、担任が違和感を感じないよう慎重に…」

理樹(と、修正ペンのフタを開けたその時だった)


担任「こんな朝早くからすいませんね…」

用務員「なに、年寄りは早起きでさ。先生こそこんな早くから…」

担任「いやはや携帯を忘れてってしまいまして」


恭介「まずい!しゃがめ!」

理樹(それはちょうど僕らが漁っているデスクの持ち主の声だった。職員室のすぐそばまで来ているらしい)


用務員「おやもう電気が付いている。誰か先客がいたのかもしれませんな」

担任「正面扉は閉まっていたのに?変な話ですがとりあえず開けてくださってありがとうございました」

用務員「いえいえ、それじゃごゆっくり」


理樹「どどどどうしよう…っ!」

恭介「チッ…あと一歩ってところだったが今はここは引くしかない…」





ザッ

担任「よし、あったあった……おや、なんで成績表が机の上に?」

食堂

理樹(食堂も誰1人座っていない。いつもは必ず騒がしいここも完全に僕らだけの貸切と化していた)

恭介「ミッション失敗だ……」

理樹(先生の死角から上手く抜け出した。とはいえ、状況は振り出しに戻っただけだった)

真人「どうしたものかねぇ…」

謙吾「ううむ。今のできっと不審がって成績表は厳重に保管しただろう…同じ手がもう一度通るかどうかは運次第だ」

理樹「なにか別の案を探さなきゃね…」

ガラガラッ

理樹(後ろの方から売店のシャッターが開いた。朝のパンはこんな朝から売っているのか)

鈴「とりあえずお腹減った」

恭介「よしよし、それじゃあ、とりあえず朝飯買ってこような。腹を満たせば良い案も浮かぶだろうし……ハッ!」

理樹(その時恭介に電流が走った。お腹を満たさなくても良い案が思いついたようだ)

恭介「そうだ!なんだ簡単な事じゃねーか!そんなに評価が悪いってんなら良くすればいいんだよ」

作戦その2



教室

先生「さあお前ら席に着けー……って…なにをやっているんだ井ノ原?」

真人「へい。先生が椅子に座るのを待っているんでゲス」

先生「ゲ、ゲス?」

真人「ささ、どーぞゲス」

謙吾「その調子だ真人…!」

理樹(その案というのは見ての通りかなり単純なものだった。そう、平たく言ってしまえば先生に媚を売る作戦だ)

先生「あ、ああ…」

サッ

理樹(先生がイスに腰掛けようとすると絶妙なタイミングで前に押して座ってもらっていた。その姿はさながら貴族の執事のようだった)

真人「チョークはこちらに揃えてあり、赤、黄、白から選べますゲス」

先生「あ…ありがとう…?」

鈴「アホだな」

理樹「………………」

キーンコーン

理樹(授業が終わっても真人のおもてなしは留まるところを知らなかった)

「起立!礼!」

先生「それじゃまた…」

先生「……ん?私のスリッパがいつの間にか消えている…!?」

真人「ただいまここに!」

理樹(ササッと真人が先生の元に駆け寄って跪いた)

先生「なんだ井ノ原が隠していたのか?」

真人「とんでもないゲス!そろそろスリッパも履くには肌寒いだろうと思ってこうして懐で温めてたゲス」

先生「気持ち悪いわ!」

理樹(本能寺の変さえ知らない癖にこういう無駄な知識だけは知ってるんだなあ…かなり時代錯誤だけど)







廊下

恭介「どうだ、上手くいってるか?」

理樹(恭介が様子を見に来た)

謙吾「いまのところは流石真人といったところだ。順調に心を掴んでいっている」

理樹「ど、どうかな…」

真人「まっ、本気を出せばこんなもんよゲス」

鈴「まだ変な語尾が直ってないぞ」

理樹(そんなことを話していると噂の先生がこちらを通りかかった)

先生「む…い、井ノ原か…」

理樹(さっきから態度がおかしいのが怖いのか真人に対して萎縮気味だ)

真人「あっ!先生お仕事頑張ってくださいッス!」

先生「そ、そうだな…」

真人「いやぁ、先生の今日の教えも素晴らしいッス!」

先生「どうも私の目にはお前は必死に寝ないようにと頑張っていただけに見えたけどな…」

真人「お腹減ってないっスか?俺特製マッスル…」

先生「いらん!」

理樹(凄いぞ!やってることがことごとく空振りしてる!)

先生「じゃあこの辺で…」

真人「ウス!今度は携帯置いて帰らないように気をつけて!」

先生「……………今、なんて言った?」

恭介「あっ」

謙吾「ば、ばか!」

理樹「あぁ…やっちゃった…」

鈴「?」

真人「へっ?」

先生「なんで私が携帯を忘れて行ったことを知っているんだと言っているんだ!!」

真人「げっ!!」

理樹(今までの真人は空振っているとはいえ、おおむね悪くない印象を与えていたはずだった。そう、たった今までは)

真人「やっべえ逃げろ!」

先生「こらー!待てーー!!!」

理樹(哀れなり真人。墓穴を掘った彼はその穴をそこから逃げることで強引に埋めようとしていた)







昼休み

食堂

真人「ふぅ…なんとか逃げ切ったぜ…」

謙吾「逃げ切ったぜ。じゃない!俺と恭介がなんとか先生を強引に誤魔化したから良かったもののそうでなければ今頃お前の留年は揺るぎないものになっていたぞ!」

真人「悪いな…」

恭介「今度もダメだったか。さてどうするかな…」

理樹(結局お昼ご飯の時間だけでは次の案は出なかった)

裏庭

理樹「うーん……」

「や、どうかしたかい少年?」

理樹「その声は!」

理樹(後ろから声がした。来ヶ谷さんだ)

来ヶ谷「こんな所で悩める理樹君を見つけるとはな。どうだ、差し支えないならお姉さんに相談してみるというのは」

理樹(来ヶ谷さんはどう考えても暇潰しがしたくてウズウズしている感じの顔だった。しかし、5人で考えても思いつかないなら頼ってみてもいいかもしれない)

理樹「じゃあお願い出来る?」

来ヶ谷「我が事務所で聞こう」






……………………………

理樹(中庭の木陰に案内された)

理樹(こじんまりとした木製のテーブルと椅子は前に来た時と全く変わっていない。テーブルにはコーヒーとしおりが挟んである本が3冊ほどあった。1日で読んでいるところから確かに退屈していたんだろう)

来ヶ谷「で、何が理樹君の眉毛を歪める原因となっているんだ?」

理樹「実は………」

理樹「…………という訳なんだけど…」

来ヶ谷「………………それだけか?」

理樹「えっ?」

来ヶ谷「いや、例えば他にも障害があるとかそういうんじゃなく本当にただ内申が悪いだけなのかと…な」

理樹「つまり?」

来ヶ谷「成績が悪いなら勉強してみてはどうだろう」

理樹「!!!」

理樹(そうか、その手があったか!)

理樹「あ、ありがとう来ヶ谷さん!まさに目から鱗だよ!」

理樹(感激のあまり思わず彼女の両手を握る)

来ヶ谷「うむ。私も役に立てて嬉しいよ」

理樹(その言葉とは裏腹に若干呆れているような目をされてしまったけど)




教室

理樹「という訳で勉強すればいいんじゃないかな!」

謙吾「ふっ…また来ヶ谷に助けられたな」

恭介「な、なるほど…コロンブスの卵とはこのことだ!」

鈴「真人があまりに馬鹿すぎて思いつかなかったな」

真人「べ、勉強か……」

理樹「悲観してる場合じゃないよ真人!幸運にも次の小テストまでまだ2日ある!満点取ればきっと先生も考えを見直してくれるよ!」

謙吾「それだ!そうと決まれば早速今日は勉強大会だ!!」

「「「おーーー!!」」」

真人「い、嫌だあああぁぁぁぁああ!!」

アニメかコンシューマ版だと担任の先生の声遊佐だったな…

>>23
今調べたけどエルゴプラクシーのビンセント役の人かよ!

寝落ちしてシメるの忘れてた
多分今日終わる!また夜に更新するぜ(∵)



理樹部屋

カリカリカリ…

恭介「で、なんでここがこうなるか分かるか?」

真人「うんとだな……」

真人「………………ぐぅ」

鈴「寝るなボケ!」

ガシッ

真人「ちょぎぃっ!?」

理樹(それからと言うもの僕らはかつてないほど真人に勉強を教えようと努めた。いつもなら、教えてる最中にいつの間にか目を開けたまま寝てたり、頭痛に苦しめられて勉強どころじゃなくなったりと最後には諦めムードで終わるけど今回は違う。文字通りこれには真人の命運がかかっているんだ!)

謙吾「ほら真人!この列の問題が全て解けたらこのカツサンドが食えるぞ!」

真人「マジで!?」

理樹(この様に恭介は教える係、鈴は集中力が切れたら蹴る係、謙吾は餌で釣る係となっている。僕は真人が勉強するノートを写させてあげたり、その餌などを買いに行く係だった)

恭介「よし!今までならここでダウンしているところだが順調に解けているじゃないかっ!やはりお前でもやれば出来る。じゃあ次だ。『紀元前四三年の三頭政治を行った三人を答えよ』

真人「え、えっと……オクタビアヌスと…アントニウス…?」

恭介「そう!流石真人だ、やっぱり出来るじゃないか!ここまできたらもうテストは半分出来たも同然だ!」

真人「よっしゃ!オクタビアヌスとアントニウスだな!」

恭介「で、残る1人は!?」

真人「うーん……うーんと………マサトヌス?」

鈴「なんでお前が登場しとるんじゃー!」

ゲシッゲシッ

真人「うっ!うっ!ごめんなさい!」

恭介「なるほど。一見するとだまされてしまうほど自然な回答だ。「ヌス」とか「ウス」とかつければそれっぽく見えてしまう、世界史の盲点をついた名回答だ!」

理樹「それ感心してる場合なのかな……」

理樹(そんなこんなで猛勉強が丸2日続いた)

……………………………………


…………………






食堂

恭介「鉄砲を伝えたのは?」

真人「ぽ…ぽるとがる……」

謙吾「茶の湯を大成した人物は?」

真人「り……きゅう……」

謙吾「パーフェクトだ!」

理樹(身体に直接刻むように世界中の歴史という歴史を真人の脳に叩き込んだ。もはやどんな範囲からどんな問題が来ようとも真人は100%正解を示すだろう)

クド「リ、リキ…真人さんはいったい…」

理樹「あっ、おはようクド。今日は早いね」

クド「というか皆さんの方こそ早すぎます!もしかして寝ていないんですか!?」

恭介「まあな。実は人間の脳はいくら勉強しても眠ってしまえば50%しか完全には覚えていられないらしい。そこで『なら眠らず覚えとけばいいんじゃね?』との結論が出てな…」

クド「わふー!?発想が斜め上過ぎですっ!」

教室

真人「……………………」

担任「では早速テストを始める!」

理樹(そして遂にこの時がやってきた。周りから不満の声があちらこちらから挙がる。しかし僕ら4人はいずれも動じず、むしろ勝利を確信していた)

担任「ほら喋るなー」

真人「……………………」

理樹(白紙のプリントが生徒たちに配られていく。それが全員に行き渡ると先生は静かに時計を見て制限時間は5分と告げ、手を挙げた。ミッションスタートだ!)

ガクンッ

理樹(と、同時に隣から物凄い倒れる音が聞こえた)

真人「んごー…」

理樹(真人が…ヨダレを垂らして寝ていた…)

理樹「ちょっと真人っ!?」

先生「こらそこ、既にテストは始まってるぞっ」

理樹「あ…ごめんなさい…」

理樹(ヤバいって!きっと勉強を詰め込みすぎて倒れてしまったんだろう。もはや両手を枕にする余裕も無い寝かただった)

謙吾「……っ!」

理樹(前の席にいるん謙吾が僕の方を向いて『なんとかして真人を起こせ』というハンドシグナルを送ってきた)

理樹(こうなった真人に何が効くのかなんて想像がつかない。しかし行動を起こさないわけにもいかない。ええいままよ!)

理樹「南無三!」

ブスッ

理樹(シャーペンで真人の脇腹を突いた。これは痛いぞ!)

真人「ぐぅ…」

理樹「馬鹿な…!」

鈴「理樹、私に任せろ…っ」

理樹「えっ?」

理樹(真人の後ろの席にいる鈴が無言で鞄の中から『ある物』を取り出した)

理樹「そっ、それは『カツサンド』!」

理樹(更に内輪も取り出してその匂いをパタパタと真人の鼻に注いだ。これならいける!)

真人「ふが………」

鈴「さあ起きろ真人…」

真人「ふっ………」

真人「ふへへ…そんなに食えねえよ…っ」

鈴「なにィ!?」

先生「ん?どうした棗」

鈴「…い、いや何でもない。」

理樹(こりゃ相当だ…流石にガタが来てしまっていたか!)

鈴「仕方がない…理樹、何かみんなの気をそらしてくれ」

理樹「ええっ?」

鈴「早くしろっ」

理樹(意図がつかめない。しかし鈴の眼は策があると訴えかけていた。これに賭けるしかない。この際、羞恥心は捨てろ!)

ガタッ

理樹(両手を机に叩きつけ、窓を指差し叫んだ)

理樹「あーーー!!グラウンドから巨大なタケノコがにょきにょきと生えてるーーー!?」

理樹(すかさず謙吾も援護に入った)

謙吾「ほっ、本当だーーー!!なんと巨大でたくましいタケノコなんだーーー!!」

ザワザワ

「なんだってー!」

「どこだどこだ!?」

先生「す、座るんだお前たち!」

理樹(と、みんなが席を立った瞬間に鈴が真人めがけて回し蹴りをかました)

鈴「うりゃっ!」

ドゴォッ

真人「ったぁ!?」

理樹「ナイス鈴!」

真人「ハッ!そ、そうだ…俺はテストの最中で……」

理樹(みんなが先生になだめられて席に戻ってやっと真人の意識が戻った)

理樹「さあ早く答えを!」

真人「お、おう……!」

先生「はいそこまで。ペンを置いて前の奴に渡せー」

真人「なっ………」

理樹「……………」

謙吾「……………」

鈴「……………」

理樹(誰1人口を開けなかった)

理樹(無慈悲にも集められていくテストプリント。先生はこの全てを回収しきると職員室の自分のデスクに戻って成績をつけていくだろう。そして真人の努力も報われず、決定的な留年の烙印が……)

鈴「待ってくれ!」

理樹(チリンと悲鳴のような音が鳴った。鈴が立ち上がったのだ。周りのみんなはまた何かおっぱじめる気か?と興味津々に注目する)

先生「どうした鈴?」

鈴「その……そのテストの点数をつける前に1つ話を聞いてほしい」

先生「うん?」

鈴「真人は…めちゃくちゃ馬鹿でいつも自分の筋肉のことしか考えてないようなアホだ」

鈴「だが、本当はそれ以上に気配りが出来る器もデカい馬鹿なんだ!」

真人「鈴………」

鈴「卒業の時、真人も一緒に行けなかったら私も、みんな寂しい……だからもう一回考え直してくれ!」

理樹(滅多なことで折れないあの鈴が頭を下げた)

先生「なにを言って…」

「井ノ原くんが留年…?」

「マジかよ……」

理樹(途端にざわめき始めるクラスのみんな。彼らも留年する程成績が悪いとは思っていなかったんだろう)

訂正

理樹(無慈悲にも集められていくテストプリント。先生はこの全てを回収しきると職員室の自分のデスクに戻って成績をつけていくだろう。そして真人の努力も報われず、決定的な留年の烙印が……)

鈴「待ってくれ!」

理樹(チリンと悲鳴のような音が鳴った。鈴が立ち上がったのだ。周りのみんなはまた何かおっぱじめる気か?と興味津々に注目する)

先生「どうした棗?」

鈴「その……そのテストの点数をつける前に1つ話を聞いてほしい」

先生「うん?」

鈴「真人は…めちゃくちゃ馬鹿でいつも自分の筋肉のことしか考えてないようなアホだ」

鈴「だが、本当はそれ以上に気配りが出来る器もデカい馬鹿なんだ!」

真人「鈴………」

鈴「卒業の時、真人も一緒に行けなかったら私も、みんな寂しい……だからもう一回考え直してくれ!」

理樹(滅多なことで折れないあの鈴が頭を下げた)

先生「なにを言って…」

「井ノ原くんが留年…?」

「マジかよ……」

理樹(途端にざわめき始めるクラスのみんな。彼らも留年する程成績が悪いとは思っていなかったんだろう)

小毬「どうか私からもお願いします!」

理樹「こっ、小毬さん!?」

理樹(話を聞いて小毬さんも続いた)

小毬「真人くんは頑張り屋だからきっともっと勉強したらいい点数取れると思う…だからこれで何が決まるのかは知らないけどもうちょっとゆっくり考えてもいいと思いますのですっ」

真人「小毬…」

謙吾「奴は唯一俺がライバルと認めた男!こんな留年なんかで埋もれさせるにはもったいないとは思わないんですか!」

「そーだそーだ!」

「お前がいない来年なんてこれから何を見て暇つぶしすればいいんだ!」

真人「お前ら…!」

先生「いやだからその……」

理樹(その後もどんどん真人を応援する人たちが先生に異議を申し立てた。やっぱりみんな真人が好きなんだ!)

来ヶ谷「ふふ…真人くんは愛されているな」

理樹(この空気なら押し切れる!そんな時だった)

真人「いや、やっぱりダメだ」

理樹「えっ?」

真人「すまねえみんな…やっぱり俺は残るよ」

ザワザワ…

謙吾「い、いったいどうしたんだ真人?」

鈴「もう一年いたいのか?」

真人「いや、そうじゃない。そうじゃあないんだけどよ…なんかこういうのは違うと思うんだ」

理樹「違うって?」

真人「確かにみんなが引き止めてくれるのは嬉しい。だが、やっぱりそういう処分を受けるってのは俺が怠けてたからなんだよ」

真人「だのにいざ危ないって立場になったらみんなの助けを借りるってのはなんつーか納得いかねえ。これは俺が受けるべき罰ってやつなんだよきっと」

理樹「真人………」

真人「だからさ、今から努力はするがそれでも落ちたらそりゃ俺の落ち度だ。みんなには申し訳ねえが俺はそれを受け入れるよ」

理樹「真人……!君って人は!」

理樹(留年したらどんな未来が待ち受けているか分からない。それを回避出来るかもしれないというところを真人は自分の精神のためにあえて断ち切った。こんなのなかなか出来ることじゃない)

謙吾「そうか……覚悟を決めるのか…」

真人「おう…」

理樹(謙吾が真人に右手を差し出した)

謙吾「握手を。友情の証を。もしひとつのことに絶望したとしても、だ。人間、やれることなんて、いくらだってある。それを覚えておいてくれ」

理樹(それを真人は力強く握り返した。熱い漢の絆だった)

パチパチパチ…!!

理樹(それに感化されたのかみんな思い思いに真人へ別れの言葉を告げた。今ここで留年になるとかそんな訳じゃないのにお菓子やら手紙をわざわざ用意して手渡ししていった。泣いている人もいる)

「白い光の中に~山なみは萌えて~」

「「遙かな空の果てまでも~君は飛び立つ~」」

「「「限り無く青い空に心ふるわせ~~!」」」

理樹(最後は歌の合唱となった。室内の興奮は最骨頂に達していた)

真人「うっ……そ、そんなんで泣くかよ……うぐぅ…!」

理樹「ぐすっ……1年違ってもずっと友達だからね真人…!」

先生「…………いやだから…お前らなんの話をしているんだ…留年だと?」

理樹(と、先生のその一言で教室がしんと静かになった)

理樹「えっ?」

先生「なんで井ノ原が留年なんかするんだ?そんなの俺だって初めて聞かされたぞ」

謙吾「…………どういうことだ?恭介は確かに言っていたぞ!」

理樹(恭介が言っていた情報をそっくり先生に伝えた)

担任「ああそのことか!それは別の井ノ原だ。ほら、髪を染めたりタバコが見つかってちょっと騒ぎになった奴いたろ?そいつだ」

理樹「えっ」

担任「だいたい担任を受け持ってる私が井ノ原に対してそんなよそよそしい言い方すると思うか?」

謙吾「た、確かに…」

担任「そりゃテストの点数も両方とも同じぐらいダメだが出席は直枝とほとんど変わらなかったろ?修学旅行の時は免除してあるし」

理樹(そう言われれば真人が連続で休んだことなどなかった。というか丈夫な分、むしろ僕より休んでないんじゃないだろうか)

担任「誰が言ったか知らないが留年なんて狙ってやらない限りそうそうなるもんじゃない」

真人「てことは………」

担任「まあだからと言ってこのままでいい訳じゃないがここから更に体育の成績が悪くなったりしない限りはちゃんと進学出来るだろう」

クド「わふー!それを聞いて安心したのです!」

真人「やったぁぁあああ!!うおおおぉお安心して逆に筋肉が震えてるぜ!!」

理樹「よーし!今日はとことん筋肉祭りだ!」

真人「おっ、ノリノリだなぁ理樹!よっしゃ早速行くぜ!筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!!」

謙吾「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!」

クド「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!」

西園「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!」

鈴「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!」

小毬「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!」

来ヶ谷「筋肉イェイイェーイ!筋肉イェイイェーイ!」

「「「筋肉イェイイェーイ!!筋肉イェイイェーイ!!筋肉イェイイェーイ!!筋肉イェイイェーイ!!」」」

理樹(その後、次の授業が始まるまで筋肉センセーションは続いた)

………………………………………………


……………………………







休み時間

ガラッ

理樹(昼休み。僕らが廊下に出るより早く恭介が後ろの窓からロープを使って入ってきた)

スタッ

恭介「お前ら!テストはどうだったんだ!?」

謙吾「あっ、恭介!そうだお前に1つ言いたいことがある!」

鈴「どうしたもこうしたも全部バカ兄貴の勘違いで真人は留年なんかする訳じゃなかった。おかげでめちゃくちゃ恥ずいこと言ったんだぞ!」

理樹(さっきの感動の反動で今回の事件の原因となった恭介には逆に怒りの炎が向けられた)

恭介「なっ…そりゃマジかよ!?……ま、真人……!」

真人「やめな2人とも。別にいいじゃねえか。なんだかんだで良い方に転んだんだからよ。それに今日のことでみんなの友情を再確認出来たんだしさ」

ひとりが辛いから2つの手をつないだ

理樹「うんっ、僕もそれでいいと思うな!」

ふたりじゃ寂しいから輪になって手をつないだ

謙吾「ふっ……それもそうだな。今回は真人に教えられてばかりだ」

ジャンパー!準備はもういいかいさあ幾千の星に今のみこまれていくんだ

鈴「しょーがない。許してやるか」

高く飛べ 高く空へ 高く蹴れ 高く声を上げ

真人「今日からリトルバスターズは新たな節目を迎える!」

いつか挫けたその日はもう遠く

真人「俺たちはもうリトルじゃない、筋肉の繊維並みに硬く、しなやかな絆で結ばれたそう……」

きみの声すぐ近く 涙もすぐ近く

真人「筋肉バスターズだ!」

これから始まる 希望という名の未来を

恭介「なんて素晴らしい名前なんだ!流石真人、筋肉だけにニクいねぇ!」

理樹「それじゃ真人を胴上げだー!!」

その足は歩き出す さらなる未来へと

「「「わっしょい!わっしょい!わっしょい!わっしょい!」」」

理樹(やはりリトル……いや、筋肉バスターズは最高だ!)






終わり



♪Little Busters! -Little Jumper Ver ※JASRAC承諾待ち

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