女「Change The World」(133)

女「・・・相変わらずね。ニートさん」

男「また来たのか」

女「来ないと死ぬくせに」

男「別に生きていけるよ・・・犬とかじゃあるまいし」

女「犬だってご主人様のいうこと聞くし」

男「別にお前は俺の主人でもないじゃん・・・ただの隣人だろ」

女「まあね」

女「ん、昼ご飯食べた?」

男「うん・・・皿置いといた」

女「さんきゅ」

男「・・・」

女「あのさ、あたしが学校行っている間って何しているの?」

男「・・・寝てる」

女「テレビも無いのに・・・暇じゃない?」

男「だって・・・音楽聞きたくないし」

女「あっそ・・・」

女「・・・あ、お母さんから手紙来てた」

男「・・・ん」

女「お金はあたしが管理するから」

男「・・・別に使わないしいいのに」

女「ダメ!お母さんから頼まれているのよ?馬鹿息子をよろしく~って」

男「・・・なんでこいつなんだ」

女「お母さん同士が仲が良いんだって。言ってたじゃない?」

男「いや・・・それにしたって同い年の・・・高校二年生に頼むのは酷じゃね・・・?」

女「そう思うなら働きなさいよ」

男「えー」

女「・・・んじゃまた明日」

男「ん・・・」

女「早く寝なさいよ?」

男「お前は母ちゃんかよ」

女「あんたのせいじゃない・・・」

男「はいはいさよならさよなら」

女「・・・あ、星が綺麗」

男「こっからは見えないし」

女「見たかったら出ればいいじゃない」

男「・・・」

『男くんはとっても歌が上手ね!』


『男くんすごーい!』


『歌手になれるんじゃない!?』


『ね、ね!これ歌ってよ!』


『わぁー!』


『感動しちゃったー!』

ガバッ

男「・・・」ハァハァ

男「また・・・あの夢・・・」

男「俺を・・・褒めないでくれよ・・・」

男「・・・お前らのせいで・・・」

女「んじゃあ私は学校に行ってくるわ」

男「はいよ」

女「ちゃんと昼も食べるのよ?」

男「はいはい」

女「冷蔵庫にあるのを温めてね・・・あとストーブつけたら換気してよ?」

男「へいへい」

女「それじゃあ・・・あ、今日はちょっと遅くなるかも」

男「はいはいさよなら」

女「寝てばかりじゃダメよ?じゃあね」

友「女ちゃんおはよー」

女「おはよう」

友「ちょっと寝坊しちゃった」

女「それでそんなにすごい格好なのね」

友「えっ!?変になってる?」

女「寝癖も襟もスカートもすごいわよ」

友「えぇえー!!直さなきゃ!」

女「髪はやってあげるわ」

友「ありがとー」

友「えぇー今日も遊べないの?」

女「うん・・・バイトもあるし、あいつもいるし」

友「そっかーごめんね・・・そういや女ちゃんと男さんってどんな関係なの?彼氏?」

女「そんなんじゃ無いわよ・・・」

友「そうなの?・・・でもどうして高校にも行かないの?」

女「・・・あいつも高校受験はしていたのよ」

『というわけで二者面談だけど・・・男くんは進路、何か希望はあるの?』


『まだ決まってないの?・・・ちょっとしたアドバイスだけど、音楽系とか興味ない?』


『先生、男くんには歌の才能があると思うの・・・本当よ!お世辞じゃ無いって』


『え?歌手は恥ずかしい?歌手とかだけじゃなくても、音楽の道はいっぱいあるのよ?』


『うん、一つの選択肢としてでいいから・・・考えてみて』

『え?音楽系の学校?』


『まぁ確かに男は歌が上手いしね・・・お母さんは反対しないよ』


『ただ・・・だいぶ道は厳しいんじゃない?ああいう業界はシビアよ?』


『歌手じゃないの?いろいろな職業はあるって?・・・具体的には決めてないの?』


『そうなの・・・もう少し調べてからお父さんには相談しなさいね』

『ただいまー・・・男、まだ起きていたのか』


『ん?相談?いいぞ・・・』


『・・・音楽系の学校なぁ』


『・・・男、言っておくが夢だけじゃ飯は食えないんだぞ?そこらへんは分かっているのか?』


『・・・そうか。男が頑張るって言うなら俺は反対しないよ・・・』


『それにしても歌手か・・・え、歌手じゃないのか?』

『・・・二回目だけど男くん、進路は固まってきた?』


『・・・まだ具体的な学校は決めてないの?・・・そうなの?ちょっと待ってね』


『はい!パンフレット!男くんのために集めておいたの!』


『ここ?ここはとても有名ね。だいぶ難関だけどここから沢山の有名人が出てるのよ!』


『オペラ歌手の○○も作曲家の△△もここ出身よ』


『・・・持って行っていいから、しっかり決めておきなさいよ!相談にはいつでものるからね』

『おっす!男、お前進路決まった?』


『えっ□□高校!?すげー!!あれじゃん!わわわーって人のところじゃん!』


『でもあそこ東京だろ?遠いな・・・』


『大丈夫!友達出来なくても俺が友達だって!』


『でもお前歌上手いもんな!こんどサインくれよ!』


『え?有名になったら自慢するんだよ!』

『・・・受験番号143番、男さん』


『声楽科希望でしたね?・・・では今から実技試験に入ります』


『今渡した楽譜の曲を歌ってください。伴奏はこちらでします』


『・・・試験終了です。続いて筆記試験、面接と続くので指定の教室でお待ちください』

『・・・よし、じゃあいってくる』


『一人でいいよ!恥ずかしいし・・・』


『お母さん達は車で待ってて』


『合格発表は・・・あった!』


『143・・・143・・・』


『・・・嘘だろ』


『番号、無いじゃん』

男(お前なんて必要ないと言われた気がした。少なくともあの学校には不要な人間で)

男(難関校故に受かる人の方が少ない学校だ。留年する人も少なくない)

男(でも俺は一回の打撃で崩れてしまって・・・いらないと言われたことがあまりにも辛かった)

ザラザラザラ

男「・・・」ゴク

男「・・・!!」


ザー

男「・・・」

男「また死ねなかった」

友「・・・落ちるのって辛いよね」

女「あんたここ受かったじゃない」

友「私、中学は私立受けたんだ・・・でもダメだったの」

女「そうだったの・・・あ、昼終わっちゃう」

友「えぇー!?まだご飯食べてない!」

女「早く食べなさいよ!」

女「・・・ただいま」

男「おかえり」

女「珍しく起きてるのね」

男「さっきまで寝てたから」

女「なんだ・・・夜シチューでいい?」

男「うん・・・っへくし」

女「風邪?」

男「そうかも・・・トイレで寝てたし」

女「また?なんであんたはトイレで寝るのよ」

男「・・・知らね」

女「ちょっとというかかなり変だから治しなさいよ・・・」

男「・・・考えとく」

女「・・・」

男「・・・」

女「少しは手伝うとかないの?」

男「考えとく」

女「うまくできた」

男「・・・ずっと思ってたんだけど」

女「ん?」

男「バイトってなにしてるの?」

女「!!!・・・別に普通よ」

男「普通って何だよ」

女「普通は普通よ!」

男「何か知らないけど怒るなよ・・・」

女「・・・あんたもバイトでもすれば?」

男「・・・いや、いい」

女「あっそ・・・」

女「んー宿題やらなきゃ」

男「そうか」

女「というわけでさよなら」

男「おー」

女「また明日来るから」

男「へいへい」


女「・・・危なかった」

『というわけで、浪人してまで頑張っているというあなたのためにお母様から月3万で頼まれた女です』

『え・・・あ、はぁ・・・』

『男だっけ・・・よろしく。あ、お金は毎月あんたのとこの使っていいと言われたわ』

『あ・・・うん』

『ということで・・・』♪~♪~

『あ、ごめん携帯』

『う、』

『?』

『ぅえぇえええぇえ・・・』

『えええええ!!?』

『ごめん・・・音楽聞くとトラウマで・・・』

『・・・分かった。電話音にするわ』

『申し訳ない・・・あ、服は洗濯しておくから・・・』

『・・・いいわよ別に。一人暮らし、大変だけどお互い頑張りましょうね』

『・・・うん』

『あ、毎回ご飯時に来るから・・・』

『・・・ごめん、料理出来なくて』

『これから覚えたらいいじゃない』

『・・・うん』

男「・・・」

女「朝ですよニートさん」

男「・・・ふーん」

女「なにそれ。ご飯出来たから」

男(懐かしい夢みた・・・)

女「・・・ねぇ」

男「なに」

女「今から普通の学校に来る気とか、ない?」

男「・・・」

女「・・・まぁ嫌だろうけど」

女「・・・ねぇ、あんた眠れないの?」

男「え?」

女「・・・ゴミ捨てしたとき、睡眠薬の空箱があったから」

男(やば・・・隠すの忘れた)

女「その副作用でずっと寝てたりってわけなのかなって・・・」

男「いや、平気・・・」

女「・・・本当に?」

男「うん」

女「そう・・・ならいいけど」

男「・・・あれ、学校は?」

女「・・・今日は土曜日です」

男「あぁ・・・そうなんだ」

女「・・・」

男「じゃあ寝るわ」

女「えっ?・・・あぁ、不眠症では無いわねこいつ・・・」

女「なら・・・」

女(やっぱり・・・)

女「・・・」

ピピピピ

女「ん、メール」

女「・・・あの人か」

女「・・・今から、会えますか」

女「・・・」



男「・・・んぁ」

男「腹減った・・・ん?」

『出掛けてきます。冷蔵庫のパスタを温めて食べてください』

男「・・・」

男「・・・」

女「ただいま」

男「・・・バイト?」

女「・・・ん、急に入っちゃって」

男「そう・・・」

女「あ、皿洗ってくれたんだ。ありがとう」

男「・・・」

女「なによ」

男「腹減った」

女「はいはい」

女「日曜日ですニートさん」

男「そですか」

女「・・・というわけでバイトに行きます」

男「・・・うん」

女「お昼は冷蔵庫です」

男「・・・はい」

女「・・・じゃあね」

男「・・・ん」

友「服見にいこーっと・・・ん?」


女「~~~」

中年「~~~」


友「?お父さんとかな?仲いいなぁ」


中年「~~~」

女「・・・」

ギュ


友「!?手を繋いで・・・?あれは・・・」

友「女ちゃんが・・・信じたくないけど・・・けれども・・・・」

寝ます。タイトルの曲を知っている人がいたら嬉しい

一応エリック・クラプトンの方

女「・・・」

男「あのさ、手が滑っただけなんだ」

女「・・・まぁ、皿くらいいつでも買えるわよ」

男「・・・ん」

女「片付けするからちょっとどいてて」

男「・・・」

女「・・・っっ!」

女「手切っちゃった・・・あとで絆創膏貰おう」

女「確かこの棚に絆創膏が・・・」ゴソゴソ

女「あった・・・まだあってよかった」

女「・・・?何この大量の箱」

女「睡眠薬・・・こんなに沢山・・・」

女「やっぱり・・・?」



女「まぁでも・・・あいつは死なないわよ。いや、死ねないわ」

女「そういう弱い人間だもの・・・ね」

女「じゃあ帰るわ」

男「うん」

女「あ、明日は豪雪らしいわ。冷やさないで寝なさいよ」

男「はいよ」

女「・・・寒くて死なないでね」

男「!!」

女「・・・今日は星が見えないわ」



男「あいつ・・・気付いて・・・?」

『・・・男くん?』


『男でいいんだけど』


『そう。なら男、あなた浪人して頑張っているんだって?』


『はぁ?なにそれ』


『あなたのお母さんから聞いたの!!・・・でも、この部屋には勉強道具どころか筆記用具さえ無いんだけど』


『ボールペンならあるよ』


『そういうことじゃないの!!』

『あなた浪人のために一人暮らししてんじゃないの!?』


『・・・浪人したら家族と気まずくなったから』


『・・・はいこれ』


『なにこれ』


『あたしも知らないわよ・・・気まずくなったお母さんから』


『・・・あ、金』


『預かります』


『えぇー・・・』

『そういうあんたはなんで一人暮らしなのさ』


『!!・・・何だっていいじゃない』


『いや、この年で一人暮らしなんてまだ早いだろ?』


『・・・あんたには関係ないわよ』


『でも俺も言ったし』


『関係ないってば!!』


『えっ?泣いて・・・?』


『・・・あたし帰る』


『あっ!・・・金置いてったし』

男「・・・また前の夢か」

男「あれから二年・・・もう余裕も無いよ」

男「・・・」


ガサガサ・・・ザラザラザラ

『死なないでね』


男「・・・今日は辞めておこう」

女「この世界には太陽ってものがあること覚えてる?引きこもりニートさん」

男「・・・俺にとってはお前が太陽みたいなものだよ」

女「えっ?」

男「嫌でも朝に来るから」

女「・・・それ最高にクサい台詞に聞こえるからやめた方がいいわよ」

男「?」

女「というわけで朝よ」

男「・・・うん」

女「雪が凄いから今日は学校が無いの」

男「学生さんは大変ですね」

女「・・・その自虐ネタ辞めた方がいいわよ」

男「・・・ニートさんニートさんいってくる奴に言われたくねーよ」

女「・・・バイト先に連絡してくる」

バタン

男「・・・お前も嫌なことから逃げるんじゃん」

男「・・・寒」

女「・・・」

男「・・・あのさ、なんで俺の部屋にいるの」

女「暖房節約よ」

男「わけわかんね」

女「一人でいるより暖かくなるからいいじゃない」

男「・・・腹減った」

女「はいはい」

女「じゃあね」

男「うん」

女「・・・あ、星がでてる」

男「・・・ふーん」

女「午後から晴れてたものね・・・綺麗」

男「・・・」

女「あんたにも見せてあげたいわ」

男「じゃあ取ってきてよ」

女「・・・出て来いってことよ」

男「いやだよ」

『えぇおとこくんおちたの?』

『しかもにねんもにーと?はははいみわかんない』


「何なんだよ・・・」


『ははははちょうしにのりやがって』

『せんせいがっかりよおとこくんには』


「・・・お前らが」


『おとこ?なにしているの?』

『だからゆめみるなといっただろ』


「・・・お前らが褒めたからだろ!!お前らのせいだろ!!俺をこんなのにしやがって!!」


『・・・人のせいにするのねニートさん』

男「!!」ガバッ

男「・・・」ハァハァ

男「死のう死のう死のう死のう死のう死のう死のう死のう死のう死のう死のう」

ザラザラザラザラザラザラザラザラザラ

ガリ

男「・・・!!」


ザー

男「・・・」ハァハァ

男「なんで俺を死なせてくれないんだよ・・・」

女「おはよう。今日は晴れているわ」

男「・・・ん」

女「というわけで洗濯機回していくから干しておいてくれない?」

男「・・・ん」

女「・・・じゃあよろしくね」

男「・・・ん」

女「・・・へんなの」

女「おはよう」

友「!・・・おはよ」

女「あー流石に三連休明けはちょっと辛いわね」

友「・・・そだね」

女「?どうかした」

友「何でもないよ」

女「体調悪いとか!?」

友「何でも無いって!・・・大丈夫だから・・・」

女「う、うん・・・」

友「・・・ね、今日は遊べる?」

女「昨日のかわりにバイト入っちゃったから・・・ごめん!」

友「そっか・・・ごめんね」

女「ううんこっちこそごめん」

友「・・・あのさ!」

女「?」

友「っ・・・、・・・なんでもない」

女「そう?」

友(言えないよ・・・)

男「・・・モスバーガーってどんなのだっけ・・・」

ピンポーン

男「んぁ?なんか頼んでたっけ?」

ピンポーン

男「ぅあーい」

ガチャ

友「・・・こんにちは」

男「・・・?」

男「あのー・・・部屋間違えてますよ?」

友「間違えていません」

男「もしかして・・・隣の女さんの部屋と勘違いしていませんか?」

友「女ちゃんは友達ですが・・・」

男「やっぱり」

友「でも、私はあなたに用があって来たんです」

男「・・・え?」

友「・・・女ちゃんのことで話があります」

女「・・・」

中年「女ちゃん、かな?」

女「あ・・・中年さんですか?」

中年「おぉ・・・写真より可愛いねぇ」

女「ありがとうございます」

中年「敬語はやめてよー今は恋人なんだから」

女「ふふ、分かった」

中年「じゃあまずは・・・ごはんでも食べようか」

女「うん」

男「・・・本当かよ」

友「私見たんです・・・実際に」

男「っ・・・」

友「今日もバイトだって・・・!」

男「!!」

友「だから・・・お願いです!私と一緒に女ちゃんをとめてください!!」

男「・・・どこで見たんだ?」

友「隣町の駅前です!」

男「・・・連れて行ってくれる?」

友「はい!」

女「奢ってもらっちゃってごめんね」

中年「いいんだよ。女ちゃんが美味しそうにしてくれたから」

女「ありがとう」

中年「・・・」

女「どうかした?」

中年「そろそろ・・・いい?」

女「・・・いいよ」

男「・・・っ」

友「早く!」

男「眩しくて・・・うまく・・・」

友「もう!しっかりしてよ!」

男「分かってるよ・・・」

友「この間はここら辺で見たの・・・」

男「・・・手分けして探そうか」

友「うん!」

中年「ここら辺のでいいかな?」

女「うん、いいよ」

中年「どこだっけ~」

ピピピピ

女「・・・ちょっと待ってね」パカ

女「友!?十三件も・・・!」ピ

女「もしもし?」

『女ちゃん!どこにいるの!?』

女「いや・・・バイトだけど」

『~!!女ちゃんのばか!!』

ブツッ

女「??」

中年「大丈夫?」

女「うん。見つかった?」

中年「うん、じゃあ入ろうか」

男「!女ー!!」

女「男!?何でここに?」

男「この馬鹿野郎!!」

女「えっ?えっ?」

中年「・・・誰?」

男「!!」バシン

中年「何するんだ君!!」

男「うるせぇクソ野郎!クソ野郎!」バシ

女「男!!」

男「クソ野郎!」バシン

『なんだ?』

『警察呼ぶか?』

女「あんたの腕力が無くて良かったわ」

男「・・・衰えただけだよ」

女「掠り傷も無かったから警察も厳重注意で済まされたし」

男「・・・あの糞おやじ、捕まれば良かったのに」

女「やめてよ。大事なお客様なんだから」

男「・・・なんで俺、言わなかったんだろ」

女「・・・それよりもなんであたしの場所が分かったの?」

男「・・・友さんに聞いたんだよ」

女「そっか。・・・家に着いたよ」

女「ただいま」

男「・・・なんであんなことしてんだよ」

女「バイトよ」

男「あんなことしてまで金が欲しいのかよ!!」

女「・・・仕方ないじゃない」

男「・・・わけわかんねぇよ」

女「・・・」

男「帰れよ」

女「えっ?でも」

男「帰れって言ってんだよ!!」

女「・・・分かった。じゃあね」

男「・・・」

男「なんでだよ・・・」

『・・・おと・・・おか・・・なぐ・・・いで』


『・・・いた・・・にす・・・の』


『・・・やめ・・・いや・・・いた』


『・・・うう・・・ぅあ・・・いや』


『・・・わた・・・けが・・・きた・・・』


『・・・もう・・・にた・・・いよ』

女「・・・おはよう」

男「・・・」

女「ごはん、作って来たから」

男「・・・」

女「食べなきゃ・・・だめだよ」

男「・・・」

女「・・・あたしもう行くね。じゃあね」

男「・・・」


男「・・・」

女「・・・友、昨日はごめん」

友「ううん、いいの」

女「・・・」

友「もうあんなことしちゃダメだからね」

女「・・・」

友「・・・ほら、先生来ちゃうよ?」

女「・・・うん」

『・・おとうさ・・おかあさ・・なぐら・・いで』


『・・いたっ・・にする・・の』


『・・やめて・・いやっ・・いたい』


『・・ううぅ・・ぅああ・・いやぁ』


『・・わたし・・けがれ・・きたな・・』


『・・もうい・・にたい・・たいよ』

女「・・・ただいま」

男「っ!・・・」

女「ごめん、起こしちゃった?」

男「・・・」

女「・・・んじゃ、ご飯つくるから」

男「・・・」

女「・・・」

男「・・・」

女「出来たわよ。じゃあ帰るね」

男「・・・」

女「・・・」バタン

『お父さん!お母さんを殴らないで!』


『痛っ!な、何するのよ!?』


『!?やめて!嫌よ・・・!!痛い!』


『ううぅっ!・・・ぅああぁ・・・いやぁああぁああ!!!』


『・・・私、汚れちゃったよ・・・きたないよぉ・・・』


『・・もう嫌だよぉ・・・死にたい・・・死にたいよぉ・・・』

男「・・・」

女「・・・おはよう」

男「・・・」

女「今日はとても寒いわよ」

男「・・・」

女「・・・朝ごはんつくるわ」

男「・・・おい」

女「え?」

男「・・・」

ガシャン

女「痛っ・・・何するの?」

男「動くな」

女「!」

プチプチ・・・

女「い、嫌・・・」

男「・・・」

女「やめてよ・・・やめて・・・」

男「・・・」

男「・・・」

女「お願いします・・・やめてください・・・」

男「なぁ」

女「っ・・・はい」

男「この傷、何だよ」

女「っ!!」

男「尋常じゃ無いんだけど」

女「・・・」

男「なぁ、何だよ?」

女「・・・、・・・それは」

女「・・・」

男「・・・父親」

女「!!!」

男「・・・暴力、虐待」

女「・・・いや・・・いやぁ・・・」

男「なぁ?」

女「いやぁあああぁあ!うぁああああ!!」

男「・・・女」

女「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

男「女!!」

女「ごめんなさいお願いしますやめてくださいごめんなさい」

男「女」

女「・・・うわぁああああぁあああん!!」

女「・・・ごめんなさい、取り乱して」

男「こちらこそごめん・・・いきなり」

女「ううん・・・この傷よね」

男「無理には聞かないから」

女「・・・大丈夫、話すわ」

男「うん」

女「その前にまず学校に連絡して来るわ」

男「休むの?」

女「・・・だいぶ長くなるわよ」

女「・・・まずあたしと父は血が繋がっていないの。十歳の時に母が再婚したの」

男「・・・うん」

女「最初は優しかったわ。休みの日には遊んてくれたりして。でも次第に変わっていったの」

男「・・・」

女「仕事でストレスがたまると浴びるようにお酒を飲むようになった。それが増えていって・・・最後には立派なアルコール中毒になったわ」

男「・・・」

女「あたしが十二歳になった頃、父は母に暴力を奮うようになったわ。十三歳になる頃にはあたしにも奮いだしたわ」

男「っ・・・」

女「でもその後はすごく優しくなるの。だから母も離婚なんてしなかった」

男「・・・」

女「私は何度も誰かに相談しようとした。でも・・・出来なかった。そんなことしたら殺されるかもって思って」

男「・・・」

女「・・・十四歳の春。父はパチンコでぼろ負けをして帰ってきた。母を何度も殴っていた」

女「お母さんが死んじゃうと思ってとめたの。そしたら・・・」

女「無理矢理・・・何度も・・・」

男「・・・」

女「・・・行為をする度爪で深く引っかかれるの。その時の父はすごく嬉しそうで・・・異常性癖って奴だと思う」

男「・・・っ」

女「これはその時の消えない傷なの。きっと一生残るわ」

男「・・・ごめん、そんなことをきいて」

女「ううん。いいの」

男「・・・今も、続いているのか?」

女「ううん。だってもう父はいないから」

男「え?」

女「その後、正気になった父は何度も謝った・・・そしてその夜自殺したわ」

男「!!」

女「もともと真面目な人だったから。ずっと自分を責めていたんだと思う。そしてこれをきっかけに・・・」

男「・・・」

女「その後は母と気まずくなってしまったの。だから家を出てきた」

男「え・・・」

女「・・・仕送りなんて来ないわ。だからああやって稼ぐしかなかった」

男「そんな・・・でも俺の母さんが!」

女「・・・これをみて」

男「これは・・・?」

女「・・・あなたのお母さんからあたし宛の手紙」

男「・・・」

『女ちゃん
今までありがとうございました。男のためにももうお手伝いは大丈夫です。
これからもうちの息子をよろしくお願いします』

男「!!これは・・・」

女「去年きた手紙よ」

男「じゃあ・・・じゃあ」

女「えぇ」

男「お前は・・・なんで」

女「・・・」

女「・・・あたしはさ」

男「・・・うん」

女「あんたの手伝いに依存しているんだと思う」

男「・・・え?」

女「あんたの手伝いをしなきゃダメだって思う内に」

女「あんたがいないとダメになっちゃったんだよ・・・」

男「そんな・・・」

女「・・・あたし、もう汚れちゃったから。いらない人間だって思ってたから。」

女「だから必要とされて嬉しかったんだよ・・・あんたの手伝いも、援交も」

女「そんなエゴで・・・離れられなくなっちゃった」

男「結局・・・お前に依存していた俺のせいじゃん」

女「違うよ・・・男のせいじゃないよ」

男「俺がちゃんとしなかったから・・・だから・・・お前も・・・」

女「違うって!男!」

男「・・・ごめん、ごめん・・・」

女「男!」

男「・・・ごめん、ごめん」

女「男・・・」

『・・・あんたのせいだよ』

「・・・ごめん」

『・・・あんたがいたからだめになっちゃった』

「ごめん」

『あんたのせいであんなことしなくちゃいけなくなった』

「ごめん!」

『ねぇ、どうしてくれるのよ?』

「ごめんなさい!!」

男「・・・ごめんなさい」

男「俺が死ねば」

男「あいつは・・・」

ガシャ
ザラザラザラザラザラザラ

男「ごめんなさい」

ゴク

男「あ・・・」

男「」

女「おはよう・・・まだ起きてないの?」

女「・・・?いない・・・」

女「またトイレで寝てるし・・・」

女「ちょっと・・・起きなさいよ」

女「朝ですよー」

女「・・・男?」

女「ちょっとどうしたの?」

女「ねぇ!!男!!」

女「ねぇ!!!」

男「う・・・うぅ」

女「男!!」

男「う・・・ゲホッゲホえほ!!」

コロコロカラコロ

男「うぇ・・・」

女「!!」

男「・・・なんで」

女「え?」

男「何で起こしたんだよ・・・!!」

男「やっと死ねると思ったのに!!」

女「男・・・!」

男「くそ・・・」

女「・・・っ!」

グイッ

男「!?」バタン

女「・・・」

男「何すんだよ・・・」

グイ

男「!くび・・・!?」ググググ

女「・・・」

女「そんなに・・・」ググググ

男「・・・っ!・・・っ!」

女「そんなに死にたいならあたしが殺してやるわよ!!」

男「~~~!!」パクパク

女「だから勝手に死のうとしないでよ・・・!」ググググ

男「~!!」バン

女「・・・」

男「ゲホッ・・・何すんだよ」

女「・・・あんたがいないとダメなの・・・」

男「・・・」

女「・・・ごめん」

男「・・・」

女「・・・」

男「・・・」

女「あの、さ」

男「え?」

女「もう、逃げちゃおうか」

ガタンゴトン…ガタンゴトン

女「ふふ、見つかったら怒られちゃうよね」

男「そしたら俺も一緒に怒られてやるよ」

女「本当?怖いのよ、先生」

男「平気だよ」

女「ふふ・・・」

男「・・・太陽ってさ」

女「ん?」

男「太陽ってこんなに明るかったんだな」

女「・・・うん」

男「・・・家に帰ったらまた忘れるかも」

女「・・・あたしがさ、あんたの太陽になるよ」

男「え?」

女「・・・あんたが忘れられないようにさ」

男「・・・自分で言うのか?」

女「ふふ」

男「・・・お前は、離れてから気付くものにならないで欲しいよ」

女「ん・・・大丈夫」

男「うん」

ガタンゴトン…

女「どこに行く?」

男「・・・海に行こう」

女「冬だよ?」

男「ん・・・」

女「・・・うん。海に行こうか」

男「うん」

女「ふふ、何年ぶりだろ」

男「どれくらいで着くかな」

女「さぁ・・・一番高い切符だから、どこまで行っても大丈夫ね」

男「うん・・・」

ガタンゴトン…

女「それにしても誰もいないわね」

男「平日の昼間だからね」

女「ふふ、貸し切りみたい」

男「静かでいいね」

女「うん・・・」

男「・・・あ、海」

女「本当だ!」

男「次で降りようか」

女「うん」

男「知らない駅に降りた」

女「ここ、どこなんだろ」

男「分からないけど・・・行こうか」

女「うん・・・ん」

男「え?」

女「手」

男「・・・ん」

ギュ

男「行こう」

男「・・・誰もいない」

女「静かだね」

男「うん・・・」

女「あたし達しかいないみたいだよ」

男「・・・だな」

女「こっちはあまり雪が降ってないんだね」

男「うん・・・あっちより暖かい」

女「ふふ、違う県なのかも」

男「うん」

女「・・・あ」

男「海だ・・・」

女「・・・晴れてるから、青いね」

男「太陽のおかげだね」

女「・・・うん」

男「・・・」

女「近づかないの?」

男「行くよ・・・砂で歩きにくい」

女「ふふ」

男「波が無いね」

女「穏やかだね」

男「・・・」

男「・・・あの、さ」

女「ん?」

男「・・・ありがとう」

女「ふふ、何が?」

男「・・・全部だよ」

女「そう・・・」

男「生きて、海が見られてよかった」

女「・・・また夏に来て海に入ればいいわ」

男「うん」

女「水着、買わなくちゃ」

男「・・・夏が楽しみだ」

女「ん・・・」

男「夏までには何かをしていたいな・・・」

女「一緒に頑張りましょう」

男「うん・・・」

女「・・・あのさ、あたし一度でいいからあんたの歌聞きたいんだ」

男「・・・」

女「慣れたらで、いいから」

男「・・・うん。頑張るよ」

女「ふふ、また楽しみが増えた」

男「・・・王様でも目指そうかな」

女「何言ってるのよ」

男「そしてお金なんて無い国にする」

女「困っちゃうじゃない」

男「愛がすべての国にする」

女「ふふ、それじゃ何も買えないわよ」

男「いいんだよ」

女「変なの」

男「・・・そうしたら女もあんなことしなくてよかったのに」

女「・・・」

男「なんてね」

男「腹減った」

女「んじゃご飯つく・・・れないんだ」

男「どこかに店は無いかな」

女「んー探しに行く?」

男「空腹には抗えないもんな」

女「うん」

男「・・・いくか」

男「店どころか家も見当たらなかった」

女「海の家はあるのにね」

男「・・・腹減った」

女「あ、そういえばお弁当作ったんだった」

男「えっ」

女「ごめんごめん」

男「・・・ありがとう」

女「ふふ、食べましょう」

女「・・・今頃みんな勉強中かな」

男「・・・みんな何のために急ぐんだろうな」

女「時間に追いつけないからじゃない?」

男「・・・急がなくてもこんなに時間はゆっくり進むのに」

女「・・・みんな早く未来に行きたいのよ」

男「そっか・・・」

女「・・・今日は未来より今を見ていたいよ」

男「うん。誰も怒らないよ」

女「ふふ、先生には怒られるかも」

男「暗くなってきたな」

女「うん」

~♪~♪~♪

女「あっ」

~♪~♪~♪

女「町内放送・・・?男、大丈夫?」

男「うん」

~♪~♪~♪

男「綺麗な音楽だね」

女「・・・ふふ、そうね」

~♪…

女「終わった」

男「五時を知らせる放送みたいだ」

女「もうそんな時間か・・・」

女「真っ暗になる前に海に入っちゃお!」

男「えっ俺も?」

女「うん・・・ひゃー冷たい!!」

男「うわわ冷たっ」

女「ふふ・・・」

男「巻き添えにしやがって・・・一回離して」

女「・・・いやよ」

男「・・・」

女「・・・」

男「もう二度離れないから」

女「うん」

男「真っ暗だ」

女「ね・・・あ、星」

男「・・・久しぶりに見たな」

女「ね?綺麗でしょ?」

男「・・・うん。今まで見なかったのは損だな」

女「ふふ・・・」

男「こんなに沢山あると一つくらい落ちてきそうだ」

女「・・・落ちてきたら元にもどしにいくわ」

男「・・・うん。頼んだよ」

女「やだ、あんたも行くのよ?」

男「・・・うん」

男「・・・」

女「・・・」

男「・・・嬉しかった」

女「え?」

男「俺も自分がいらない人間だって思っていたから。お前が俺のこと、必要としてくれて」

女「・・・うん」

男「・・・これから俺が一人でも大丈夫になっても、そばにいて欲しい」

女「・・・言われなくても一生いるよ」

男「お前の依存は治らないかもな」

女「一人でも大丈夫になるって言ってたじゃない」

男「・・・なら平気かな」

女「うん」

女「・・・唇だけは、まだだから」

男「え?」

女「・・・あんたに、あげる」

男「・・・うん」



女「・・・ふふ、嬉しい」

男「・・・これ照れるな」

女「・・・ね」

男「一瞬なのにな」

女「そういうものなのかしら」

男「へへ」

女「ふふ」

男「・・・俺さ、やっぱり音楽の道に進みたい」

女「本当?」

男「うん・・・要らないと言われても、なんか頑張れそうな気がするんだ」

女「ふふ、楽しみ」

男「・・・ありがとう」

女「ううん・・・今日は未来から逃げてきたつもりなのに大分未来について話しちゃった」

男「無意識のうちに先に進みたがるものなんだよ」

女「・・・うん」

男「・・・」

女「・・・」

男「バイト、始めようかな」

女「・・・うん」

男「募集してないかな」

女「じゃあ、あたしもあんたと一緒に始める」

男「・・・うん」

女「学校から近いところがいいな」

男「・・・」

女「一生懸命働いたら、またいつかここに来よう」

男「・・・うん」

女「・・・約束」

男「・・・約束」

女「・・・ね、最後に一つだけ先から逃げていい?」

男「・・・うん」

女「男に、歌って欲しいんだ」

男「・・・いいよ」

女「やった!あたしがファン一号だから」

男「うん・・・リクエストは?」

女「うーん・・・」


女「change the world」

女「わかる?ふーんふーんふんふんって曲」

男「うん。わかった」

女「世界を変える・・・か」

男「・・・今までのことは変えられないけど、これからのことならいくらでも変えられるよ」

女「ふふ、今日はあたし達変なことばっかり言ってるね」

男「何てったって逃げてきたからね」

女「ふふ」

男「へへ」

男「・・・ごほん」

女「わー」

男「それでは、この世界を変えることは出来ないかもしれない。でも、俺という人間の世界を変えてくれた人。そして俺のファン一号である女さんに捧げます」

女「・・・ふふ、やっぱり今日は変ね」

男「明日からは現実を見るからさ、今日だけは変なことときれいごと、言わせてよ」

女「・・・うん」

男「・・・では」



男「change the world」


おわり

現実逃避してもいいだろ・・・と思いました


参考:『change the world』エリック・クラプトン

どこかでも言ったと思うけど
この曲は本当にいい曲なのでぜひ聞いてくれ

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