島風「駆逐艦?」龍驤「軽空母や!」 (42)


島風「あなた駆逐艦? よろしく!」


龍驤「………」ピクピク


提督「……え、えーと、こちら新しく着任した駆逐艦の島風だ」


島風「駆逐艦島風です。スピードなら誰にも負けません。速きこと、島風の如し、です!」


龍驤「ウ、ウチは秘書艦の龍驤や。よろし」


島風「え?! 秘書艦なの!? ちっちゃい駆逐艦なのにすごーい!!」


龍驤「………」ピキピキ


提督「し、島風。あのだな…龍驤は……」


龍驤「ウチはな…」


島風「え?」


龍驤「ウチは軽空母や!!!」


島風「あはは、そんなまさか…」


龍驤「……」


提督「……」


島風「…え?」


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ーーーー
ーーーー


提督「……というわけで、龍驤は軽空母だ。分かったか?」


島風「そうなんだー! ちっちゃいから全然気づかなかったよぅ。ごめんなさい!」


龍驤「ち、ちっちゃ……」ピクピク


提督「……島風は元々別の鎮守府にいたんだがな……ちょっと問題児でなぁ」ボソボソ


龍驤「そうみたいやな……」ボソボソ


提督「それで……悪いが俺は今日から出向でな……当面、教育を頼みたいんだが……」ボソボソ


龍驤「ええ?!」


島風「?」

龍驤「じゃ、じゃあ何でそんな時に着任したんや…」ボソボソ


提督「それは……」


提督「…………」


龍驤「………また、拾ったんか」


提督「すまない……」


龍驤「……ふぅ。あやまんなや。ウチには謝られる資格ないんやから」


龍驤「……よっしゃ! 分かった! まかしとき!」


提督「……ありがとう」


龍驤「よし、島風! 鎮守府を案内したるわ!」


島風「ほんと! じゃあ早く行こ!」ガシッ


龍驤「ちょっ」


島風「じゃ、行って来まーす!」バヒューンッ


龍驤「あかんてえええええぇぇぇぇぇぇ!!」


提督「…………龍驤、大丈夫かな」

島風「この鎮守府広ーい!!」バヒューンッ

龍驤「ちょ、止めてええぇぇぇぇ!!」


時雨「ん?」


暁「あら、新しい子?」


島風「あ」ピタッ


龍驤「あべしっ!」ビターンッ


島風「島風だよ! よろしくね!」


電「よろしくなのです!」


雷「よろしくね」

龍驤「あたた……」


夕立「龍驤さん大丈夫?」


龍驤「平気や……たくっ……忙しないやつやな……」



時雨「へ〜そんなに早いんだー」


島風「でしょでしょ! それでね〜」




龍驤「お、早速打ち解けてるやん。そっちの方は問題児やないんやな」


龍驤(となると………あっちやろうなぁ……)


龍驤(んまぁ…試してみるかぁ)


龍驤「おーい、みんな! 演習やるから集まってくれや!!」

ーーーー
ーー演習場


龍驤「ほな、AとBチームに分かれて模擬戦やるで!」


「「「はーい」」」


島風「うう、ムズムズしてきた! 早く戦いたい!」


龍驤「えーと、島風。ちょっと来てくれ」


島風「え?」


龍驤「島風、お前は来たばっかで連携とれんやろうから2人のバックアップに回るんや」ボソッ


島風「えーっ?! やだー!」


龍驤「やだー、やない! これは命令や!」


島風「うぅ………」


龍驤「ほな、頼むで!」


島風「………」

ーーーー
ーーーー


龍驤《じゃあ戦闘開始や! みんな、気張るんやで》


島風「………」


電「よし、がんばるのです!」


時雨「じゃあ龍驤さんの言った通り、島風はバックアップをお願い」


島風「………」


時雨「……島風?」


島風「あっ、うん。分かった……」


時雨「よし、じゃあ行くよ」


電「はいなのです」


島風「うん……」

電「……まだ敵影はないですね…」ザザッ


時雨「このまま進軍、続けて」


島風「………」イライラ


島風(遅いなぁ……バッと行って一気に片付ければ良いのに)



電「十二時方向に敵艦みゆ!」


時雨「よし、魚雷用意! 発射!」バシュッ


電「なのです!」バシュッ


島風「………」バシュッ


時雨「島風、ちょっと早いよ。ちゃんと合わせて!」


島風「みんなが遅いんだよ…」ボソッ

時雨「右から回り込むよ! 島風、距離を取りつつ援護をお願い!」ババッ


島風「うん………」


島風「………」


時雨「電、あまり突っ込み過ぎないで!」


電「はい!」



島風(遅いなぁ…………見ててイライラする…)


島風(あっ、今行けたのに……何で引くの!)


島風(ああっ……もう)


島風(…………)


島風「……行くよ。連装砲ちゃん」

夕立「うう……劣勢かもっ!」


時雨「このまま押して行くよ!」


電「なので………えっ?!」


島風「どいて!」


電「うあっ?!」


時雨「し、島風?!」


夕立「チャンス! 敵は乱れたっぽい!」


島風「ふふんっ。そんなの関係ないよ!」ビュンッ


夕立「は、速いっぽい?!」


島風「ほらっ! 行くよ!」


雷「うあっ?!」


暁「痛っ?!」


電「はわわ…す、凄いのです……2人を一瞬で」


島風「後、1人!」


夕立「し、正面から来るなんて! 当てて欲しいのっ!」バシュッ

島風「当たら………ないよっ!!」


夕立「え?!」


電「と、飛んだのです!」


島風「ほらっ、そこっ!」バシュッ


夕立「っ!?」タイハ


夕立「や、やられたっぽい……」


島風「ふふん、島風のかちー!!」


電「一瞬で……すごいのです」


時雨「…………」

時雨「ねぇ島風…………何で突っ込んで来たの? 打ち合わせと違うよ」


島風「え……あはは。倒せたから良いじゃん! 気にしない気にしな」


時雨「島風!!」


島風「な、何だよぅ。勝ったから良いじゃん……」ビクッ


時雨「……それ本気で言って――」







龍驤「はいはいっ! やめーや!」


時雨「龍驤……さん」


龍驤「皆お疲れや! 取り敢えず皆解散! 島風はうちと一緒にこいや」


時雨「……」


島風「………」

ーーーー
ーーーー


龍驤「偵察機で見とったで。ウチはバックアップに回れんちゅーたんやが……ありゃ、時雨がおこんのも無理ないで」


島風「だって……遅いんだもん…」


龍驤「遅いってなぁ……そりゃ速さも大事やがそれだけじゃ……」


島風「遅くちゃ……誰も助けられないよ…」ボソッ


龍驤「ん?」


島風「うるさいうるさーい!」ダッ


龍驤「あっ、待ちーや!!」


龍驤「………」


龍驤「誰も助けられないって言うたか……何かあるんやろか?」

ーーーー
ーーーー


龍驤「どこ行ったんや島風は…」キョロキョロッ


龍驤「ん? 何か食堂の方が騒がしいなぁ」


龍驤「何をやってるん」ガララッ



島風「んん〜!」モグモグ


「すげぇ! 新入りも完食まで後少しだ!」


赤城「やりますね……でも」ガシッ


赤城「んぐんぐ……ぷはぁ!」


「赤城さん完食! やっぱ早い!!」


赤城「ご馳走様です」


島風「そ、そんなぁ……」


龍驤「……何やってるんや」

赤城「あっ、龍驤さん。この娘凄いですね。ここまで詰め寄られた事は中々ないですよ」


龍驤「早食いか……まあ赤城が言うんなら凄いんやろなぁ」


島風「………」プルプル


龍驤「そ、そんな凹むなや。赤城は規格外やから…」


島風「う、うあああああん! 私の方が早いもんっ!」ダッ


龍驤「あっ、島風!」


赤城「あらあら……」

龍驤「はぁ……赤城も大人気ないで……」


赤城「勝負ですから。それに早さに関しての勝負で手抜きは失礼かと……」


龍驤「……演習、見てたんか」


赤城「ええ。久々に提督が拾ってきた新人が来たって聞いたんで。問題じ……面白そうな子ですね」


龍驤「オブラートに包まんでもええで。提督もえらいやつ連れてきたなぁ」


赤城「直感ですけど、速さに関して何かありますね。彼女は焦ってるように見えました」


龍驤「……その通りや。何か腹ん中に一物抱えてるなぁ」


赤城「それと、昔の誰かに似てますね」


龍驤「……せやな」


赤城「……蜂の怖さは、蜂に刺されないと本当に理解できない、でしたっけ」


龍驤「………できるなら、刺されんで理解した方がええに決まっとる」


赤城「なら……早めにどうにかしないと、ですね」


龍驤「うん……」

ーーーー
ーーーー


龍驤「あー、これから演習を……」


島風「………」


時雨「………」


電「あ、あの……」


龍驤「………」


龍驤(どうしたもんかなぁ………)


電「え……誰か来るのです!」


龍驤「ん?」


「む、なんだ貴様らは」


島風「お、大っきい……」


時雨「初めて見た……」


電「なのです……」

龍驤「何って演習や。今日はウチらがここを使用する筈やで」


「はっ。何を言っている。私達が使用する手筈だぞ」


龍驤「どういう事や……ちょっと連絡してみるで」カチャッ


龍驤「………龍驤や。ここの使用権なんやが」


龍驤「……ふんふん。そういう事か。しっかり頼むで」カチャッ


龍驤「ダブルブッキングらしいわ。すまんな。うちらが予約先だから、帰ってくれ」


「…………は?」


龍驤「せやから、うちらが先やから帰ってくれや」


「……ふっ、ふふふ。面白い事を言うじゃないか。どう見ても帰るのはお前らだろう」


龍驤「はぁ?」


「………そうだな。お前らは敷地内で的当てでもしてた方が有意義なんじゃないか」


龍驤「………」


「ちょ、ちょっと…」


「そこまで言わなくても……」


「いいや、ちょうど良い。身の程知らずには言わなきゃ分からないだろうしな」

「それとも、私達が相手になっても構わんが……」ガシャンッジャキッ


時雨「ひっ…」


島風「り、龍驤……」


電「……」プルプル


龍驤「……………」


龍驤「ふー、分かった分かった。ウチらが帰るわ。ほな、皆。帰るで」




「……ふん、意気地なしめ。つまらん奴だ」


「なんなら、私一人に勝てたら譲ってやってもいいぞ」






龍驤「…………あ?」


龍驤「今、あんた一人でウチら相手にするって言うたんか」


「ああ、そうだ」


「ちょっと……」


「何、後輩を教育してやろうと言うんだ」


「……」


龍驤「…………」


龍驤「……ふーん、なるほどなぁ」


龍驤「ええで、教育してくれや」


「ほぅ、殊勝な事だ」


島風「えっ…り、龍驤」


龍驤「ただし、ウチ一人で頼むわ」


「は?」


島風「え?!」

龍驤「だーかーら、あんたが1人なら。ウチも1人で相手したるよ」


「お、お前。舐めているのか…」


龍驤「い〜や。脳金ゴリラには四人いっぺんの教育は難しいと思ってなぁ。ウチ、優しいやろ」


「…………」ブチッ


「……後悔するなよ」


島風「龍驤っ! こ、殺されちゃうよ」


龍驤「……島風。よーく見とれよ。あいつはお前と同じや」


島風「え……」

ーーーー
ーーーー


時雨「え……」


島風「龍……驤……」


















「うぐっ………くっ……」ボロボロ


龍驤「だらしないなぁ……もうへばったんか」






電「凄いのです……」


「何だあいつは、本当に軽空母なのか……」





「この……」ガシャン


龍驤「まぁ、言い訳は沢山あるやろうなぁ」ドゴッ


「うがっ…」


龍驤「副砲積んどるとは思わんかった……インファイトしてくるとは思わんかった……」


「この……」


龍驤「ほらほら、艦載機もあるで。しっかり上みいや」


「う、うあああああああ!」ドゴッドゴッドゴッ

「うっ………あっ…………」バシャンッ


龍驤「まだ、話は終わってないで」グッ


「ううっ……」


龍驤「お前の偽装は立派や。お前の見かけで敵さんの大半はビビッちまうやろ」


龍驤「皆、正面から向かってこない。外側に逃げる奴しか相手にしてこなかったんやな」


龍驤「だから正面から向かって来る敵に対し射撃がおざなりやし、懐も甘い」


龍驤「懐に潜られても軽空母やから平気、ってまだ油断しとる」


龍驤「そら、あんたは強い。でも油断しすぎや。そりゃこうなるわ」


「ぐっ………こんな………油断しなきゃ……次こそ………は」


龍驤「……………はぁ……」







龍驤「ふざけんなや!!」


「っ」ビクッ

龍驤「何が次は、や! これが実戦なら次はないんやで!」


「……っ」


龍驤「戦場にはなぁ、なりふり構わず突っ込んでくる奴は必ずおる! そいつに足元すくわれた日には、もう遅い。お陀仏や!」


龍驤「そしたら、艦隊は瓦解する。お前の勝手な先行で仲間を危険に晒すんやで!! ほんま、勝手な事やな!」


島風「……っ」


龍驤「外野もなんや! お前ら仲間やろ! 何故、こいつをよく知りもしない相手にタイマンさせるんや?!」


「そ、それは…」


龍驤「こいつが負けるわけない、か? ボケが! 適当な推測で決めつけるなや!!」


龍驤「大方、今までもこいつのワガママに流され独断先行させてたんやろ! 丸わかりやで!」


「…っ」


龍驤「……その結果がこれや。ほんま、良いお仲間やな」


龍驤「外野もアンタもどうしようもない。まあ、こうなったら堪忍するんやな」ジャコンッ


「ひっ………やめ」


島風「龍驤っ!」




ドゴンッ

「あっ………ああ………」ブルブル


龍驤「ありゃ、弾切れか」


龍驤「………演習で良かったなぁ」


「」ガクッ


島風「……」ホッ


 ――お前の勝手な先行で仲間を危険に晒すんやで!! ほんま、勝手な事やな!


 島風「………」

ーーーー
ーーーー


ザザーン


龍驤「…………」


龍驤「今日は疲れたなぁ……」


龍驤「……………」


龍驤「……隠れてないで出てきいや」


島風「……」ビクッ


島風「………」トコトコ


龍驤「お疲れさん。今日は巻き込んですまんかったなぁ」


島風「う、うん……」


龍驤「………」


島風「……あ、あの」


龍驤「島風は蜂に刺さた事あるか?」

島風「えっ、蜂? ううん……」


龍驤「あいつらちっこいけどな、刺されるとごっつう痛いんや」


島風「………」


龍驤「ガキは蜂に刺されて初めて怖さんを知る。痛い目に合わなきゃ分からんのや」


龍驤「……ただな、蜂がいつも一匹とは限らない。刺されて腫れるだけとは限らない。刺されるのが自分だけとは限らないんや」


島風「………っ」


龍驤「あのごっつい奴は分かってなかったから、つい熱くなってしもうた。まぁ、あれは蜂の羽音程度やけど。分かってくれたら幸いや」


龍驤「本当なら、刺されんで痛みを理解できた方が何倍もええんやからな」

島風「……私ね、追いつけなかったんだ」


龍驤「追いつけなかった?」


島風「私が遅いから、助け……られなかったんだ」


龍驤「そっか……だから島風は」


島風「私がもっと早ければっ……あの、あの……子は……」グスッ


島風「私がっ……遅いせいでっ……」


龍驤「……」ギュッ


島風「……!」


龍驤「辛かったなぁ。痛かったんやな、島風」


島風「う、うう……」


龍驤「だけどもうええんや。島風は理解できたんだから。痛がる必要はないんや」


島風「うう……うわああああああん!」

ーーーー
ーーーー


龍驤「………」


提督「龍驤、ここにいたか」


龍驤「しーっ、提督」


提督「ん? ……あ」


島風「……」zzz


龍驤「泣き疲れてねてもうた」


提督「今日の事は赤城から聞いたよ。ご苦労だったな」


龍驤「まあ、大変やったな」


提督「赤城の奴、久しぶりにあの龍驤が見れたって興奮してたよ」


龍驤「なんや、直接見てたんか……」


島風「うぅん………あれ、ここは」


提督「よ、島風」

島風「提……督」


島風「あっ…」


龍驤「?」ヒザマクラー


島風「ご、ごめんなさい///」


龍驤「なんや、もうええのか」


島風「……///」


提督「なんか、雰囲気変わったなぁ」


島風「あ、あの……」


龍驤「ん?」


島風「り、りゅうじょ……龍驤さんっ。今まで迷惑かけてごめんなさい!」


龍驤「り、龍驤さんって。や、やめーや……」

島風「で、でも……」


提督「そうだぞ島風。龍驤も昔は島風以上に聞かん坊でなぁ…」


島風「え?」


提督「島風は昔の龍驤そっくりだよ。うんうん」


龍驤「む、昔は昔や///」


提督「特にあの…」


龍驤「島風行くで!///」ガシッ


島風「あっ…」


龍驤「全くもう、提督は…」テクテク


島風「………」


島風(昔………)


島風「あの……龍驤…さんも昔、蜂に……刺されたんですか」


龍驤「………ん」


龍驤「………」


龍驤「まぁ………昔にな」





ーー完ーー



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月10日 (木) 17:37:33   ID: xKN_unG3

乙!
おもしろかった

2 :  SS好きの774さん   2016年03月13日 (日) 13:33:58   ID: U86BXL4V

素敵な話です、続きが見たいです。龍譲が秘書艦の作品は良作が多いですね。

3 :  SS好きの774さん   2016年03月16日 (水) 10:54:00   ID: XOJa1Ro4

さすがは…一航戦旗艦経験艦すっげぇ(>.<)y-~
龍驤は…鳳翔さんにタメ口がきけて赤城と加賀を呼び捨てに出来る数少ない艦娘(-.-)y-~

4 :  SS好きの774さん   2016年03月17日 (木) 23:42:40   ID: NOQg3rxW

さすが元一航戦といわざるをえない

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