モバP「かんきつ系なお隣さん」 (47)

ちゅんちゅん――


P「zzz」



??「おっはよー……あれ、まだ寝てる?」

??「つんつん。朝ですよー……」

P「………」

??「反応なし。熟睡中かぁ」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457435848

??「よーし、そうと決まれば顔に落書きだねっ」

??「水性ペン、水性ペンはどこかな~……あ、あった」

P「………」

??「さて、今日はなにを描こうかな? 喜多見画伯のあふれんばかりの才能が外に出たがっているぞぉー♪」


P「もう起きてるぞ。柚」

柚「………」


柚「おでこに描くだけならいい?」

P「ダメ」

柚「ちぇーっ」

P「まったく。朝に俺の寝床を襲いに来るのはやめろといつも言っているのに」

柚「なら、寝てる間は窓閉めとけばいいじゃん。そしたら、アタシが屋根づたいにお兄チャンの部屋に入れなくなるのに」

P「夏の夜は暑いからそれはイヤだ」

柚「もう、わがままだな~」

P「というか、まだ朝の6時じゃないか……いつもより30分も早いぞ」

柚「へへっ、今日はバド部の朝練があるんだ」

柚「というわけで、アタシもう時間だから学校行くね? さらばだーっ♪」シュタッ

P「あ、おいっ……」

柚「お兄チャンも、アイドルのお世話頑張ってねー!」

P「………」

P「そんなに急いでるなら、わざわざ隣の家の俺の部屋まで来なくていいのに」

P「おかげさまで、こっちも寝坊することはなさそうだけど……ふわぁ」

P「とりあえず、顔洗うか」

事務所


ちひろ「それじゃあ、今日もお隣の子に起こしてもらったんですか?」

P「ええ」

ちひろ「仲良しですね」

P「向こうからしたら、自分が生まれた頃から隣に住んでる兄ちゃんってイメージでしょうけど」

ちひろ「隣の家の屋根をつたってやって来るなんて、まるで漫画みたいじゃないですか」

P「昔は俺もやっていたんですけど、さすがに今はやらなくなりました」

ちひろ「もう大人ですもんね」

P「はい。……と言いつつ、いまだに実家暮らしでぬくぬくやってる身ではありますけど」

ちひろ「いいじゃないですか。生活費はきちんと払っているんですし」

ちひろ「家で楽をしているぶん、お仕事で頑張ってくれれば言うことありませんよ♪」

P「ははは、そうきたか」

ちひろ「というわけで、今日も彼女のプロデュース、よろしくお願いしますね」

P「言われずとも」

ガチャリ


忍「おはようございます!」

P「っと、うわさをすれば、だな。おはよう」

ちひろ「おはようございます、忍ちゃん」

忍「今日もがんばろっ! Pさん!」

P「朝から気合十分だな」

忍「もちろん! 目標のためにも、毎日全力でやらなきゃいけないからね」

P「その気持ちがあれば、結果もすぐに出るさ。よし、じゃあ今日のお仕事の確認するぞ」

忍「はい!」

ちひろ「うふふ。二人とも、頑張ってくださいね」

今さらですが独自設定ありなので注意してください

夕方


忍「ただいま。レッスン終わったよ」

P「ああ、おかえり。疲れただろ、そこにお菓子あるから食べるといい」

忍「やった! やっぱり疲れた体には甘いものが一番だよねっ」

忍「……あ、でも太らないかなぁ」

P「いっぱい動いてるんだから、少しくらいなら大丈夫だよ」

P「俺の知ってる子なんて、毎日好き放題食べてるけど全然太る気配ないし」

忍「それって、前に言ってたお隣さんのこと?」

P「ああ。思いつきでお菓子を大量に買って、飽きたら俺に押しつけてくるんだ」

忍「へえ。なんだか面白そうな子だね。一度会ってみたいかも」

P「忍の真面目さを、あいつにちょっとくらいわけてあげたいくらいだな……よし、俺も今日の作業終わった」

忍「それじゃ、一緒に帰る?」

P「そうしようか……あ、そうだ」

P「新しくできたラーメン屋に行きたいなと思ってたんだ。よかったら、一緒に来ないか」

忍「ラーメン? えっと……」

P「もちろん、俺が誘ったんだから俺のおごりだ」

忍「………」

忍「ゴチになります……へへ」

P「よし」

店員「お待たせしました! しょうゆと、塩大盛り、それと餃子です」

P「いただきまーす」

忍「いただきます」


P「うん、うまい」ズルズル

忍「もぐもぐ……ほんとだ、おいしい」

P「ここに来て正解だったな」

忍「うんっ」

忍「でも、本当にいいの? お金払ってもらっちゃって」

忍「先週も、その前も……Pさん、いつもおごってくれるけど」

P「高級料理店とかならともかく、ラーメンくらいいつでもおごってあげられるよ」

P「こっちは実家暮らしで楽してるんだから、このくらいはな」

忍「貧乏学生ですみません……」

P「気にすることないよ。青森からひとりで東京に出てきて、トップアイドル目指して頑張っているんだ。お金に余裕がないのも当然」

P「むしろ、そういう状況で頑張れる忍は本当にすごい。だから、こうしてたまにご飯奢るくらいはさせてくれないか」

忍「……ありがとう。Pさん」

忍「……アタシも、餃子頼んでいい?」

P「もちろん」

忍「えへへ……」

P「今度の土曜のことなんだけど」モグモグ

忍「土曜? えっと……確かアタシ、フリーだったよね」ズルズル

P「ああ。その日は俺も休みなんだ」

P「で、柚……例のお隣さんのバドミントンの試合があって、応援に来いって言われてるんだけど」

P「中学のグラウンドに、ひとりで行くのもちょっと気が引けてな……よかったら、付き合ってくれないか?」

忍「アタシがその子の応援に行くってこと?」

P「さっき、一度会いたいって言っていたから、ちょうどいいかなと思った」

P「その日の昼飯は俺が出すから、どうだ?」

忍「……でも、見ず知らずのアタシがいきなり来たら、その子に迷惑じゃないかな」

P「大丈夫大丈夫。あいつそういうタイプじゃないから。むしろ勝手に絡んでくるから気をつけたほうがいいぞ」

P「それに……放っておいたら、忍は休みの日も自主練だのなんだので身体を休めそうにないしな」

忍「あ……知ってたんだ」

P「夢を持つのは立派なことだし、それに向かってひたむきに努力できるのは偉い。でも、あんまりやりすぎて倒れでもしたら、誰も得しない結果になるから」

P「たまには、なんにも考えずに休む日も作ったほうがいい」

忍「………」

忍「そうだね。アイドルになれたことがうれしすぎて、最近ちょっと無理していたかも」

忍「土曜日、付き合うよ」

P「ありがとう。じゃあ、昼は何食べたいか決めといてくれ」

忍「わかった!」

忍「なに食べよっかなぁ~♪」

P「ははっ……」

帰宅後


P「ふう」


柚「着替え、終わった?」ヒョコ

P「終わった」

柚「それじゃ、お邪魔しまーす♪」ヒョイ

P「俺が帰るの、待ってたのか?」

柚「うん、なんとなく。部屋の電気ついたから、すぐ飛んできてあげたよ」

P「べつに飛んでこなくてもいいんだが」

柚「あっ、いいのかなーそんなこと言って? こんな美少女が毎日遊びに来てくれるというのにさ」

P「美少女の顔も、毎日見てると慣れちゃうもんだ」

柚「ああ、なるほど~。実はアタシも、毎朝お兄チャンの顔に落書きしようとするのは、お兄チャンの顔に飽きてるからなのかも」ウンウン

P「ひでー理由だ」

柚「なんてね、冗談だって……ん?」

柚「くんくんくん……これは、ニンニクの匂い」

柚「餃子……中華料理店? いやいや、これは……」

柚「ズバリ、ラーメン屋の匂いだよっ!」

P「犬かお前は」

柚「へへー♪」

P「褒めてないぞ」

柚「ひとりで食べてきたの?」

P「いや、担当しているアイドルの子と一緒に」

柚「ふーん……お兄チャン、今プロデュースしてるのひとりだけだよね?」

P「うん」

柚「この前も、その前も、アイドルの子と一緒に晩御飯食べたって言ってたけど……」

P「ああ、同じ子だな」

柚「ふーん」

P「どうかしたのか」

柚「………」

柚「うん、ずるい!」

P「え?」

柚「アタシもお兄チャンにおごってほしい! あとアイドルの子に会いたい!」

P「会いたいのか?」

柚「もちろん! だって面白そうだしっ♪」

柚「生のアイドルとお友達になれたりしたら、素敵じゃん?」

P「ほう、やはりそう思うか。俺の予想は当たっていたようだ」

柚「むむっ。お兄チャン、その思わせぶりなセリフはまさか!」

P「土曜のバドミントンの試合、その子も応援に来てくれることになったんだ」

柚「おおーっ! すごい! 絶対勝たなきゃっ」

P「ははは、俺の名采配に感謝するんだな」

柚「お兄チャンだいすきーっ♪」ギューッ

P「こらこら、抱きつくな。かわいいやつめ」

柚「うわ、ニンニク臭っ」

P「かわいくないやつめ」

P「しかし、こんなにはしゃがれたら、忍も喜ぶだろうな」

柚「へえ、忍って呼んでるんだ。仲良さそうだね」

P「信頼関係は大事だからな。二人三脚で仕事していくわけだし」

柚「ふうん……パートナーって感じかな?」

P「まあそんな感じ」

柚「だからご飯で釣ってるの?」

P「ちゃうわ」

柚「ジョーダン、ジョーダン♪」

柚「ま、それはそれとして。漫画持っていっていい?」

P「ああ、お好きにどうぞ」

柚「やたっ。じゃ、今度お返しに少女漫画貸してあげるね」

P「おう。自分で買う気はしないけど、少女漫画も読んでみると案外悪くないんだよな」

P「(おかげでこの前、忍と少女漫画トークもできたし)」

柚「それじゃ、また明日!」

P「ああ、おやすみ」

柚「おやすみーっ……っと、その前に」

P「ん?」

柚「……たまには、アタシもご飯に誘ってほしい、かな?」

柚「なーんてね。じゃあね!」シュタッ

P「あ、柚……」




P「……食い意地が張っているのか。それとも寂しがっているのか」

P「あるいは、両方か?」

P「両方だな。あいつの場合」

土曜日


ファイトー!
がんばれー!



忍「アタシ、バドミントンってよく知らないんだよね。遊びでテキトーにラケット振り回していたことはあるけど」

P「俺も詳しいルールとかはさっぱりだ。柚の練習に付き合って、軽いラリーをしたことがあるくらいだし」

P「昔は俺の方が上手だったのに、今じゃすっかり逆転しちゃってなあ。はは」

忍「……ほんとに、昔からの付き合いなんだね」

P「ああ。一緒にお風呂に入ったこともあるくらいだからな」

忍「ふふ。なんかいいね、そういうの」

P「やかましい妹みたいなもんだけどな……お、出てきた出てきた」

忍「あの前髪ぱっつんの子?」

P「そうだ」

P「がんばれよー!」



柚「!」フリフリ

忍「あ、こっちに手を振ってる……ええと」ペコリ

P「試合が終わったら、あいさつしようか」

柚「いえーい、勝ったー!」ハイタッチ

P「活躍してたなー」パシン

柚「でしょー? もっと褒めていいんだよ♪」

P「はいはい、よくやった」ヨシヨシ

柚「へへっ♪」

忍「(本当に兄妹みたい……)」


柚「それで、こっちがアイドルの子?」

P「ああ、そうだ。俺がプロデュースさせてもらっている――」

忍「工藤忍、16歳です。よろしくお願いします」

柚「喜多見柚、15歳! よろしくっ♪」

柚「わー、ほんとにカワイイ子だね!」

忍「か、かわいいだなんて……」

柚「かわいいよね? お兄チャン」

P「かわいいぞ。俺の自慢のアイドルだ」

忍「も、もうっ! Pさんまで……」

柚「おおっと! 名前呼びなんだ、お兄チャンのこと」

柚「ひょっとして、ラブラブ?」

忍「ら、ラブラブだなんて、そんなわけ……」アタフタ

P「こらこら、あんまり初対面の相手に畳み掛けるな。忍が困ってるだろう」

柚「あはは、ごめんごめん♪」

忍「は、話には聞いていたけど、元気な子だね……」

P「な? 言った通りだろ」

ファミレスに移動


柚「好きなところでいいって言うんなら、もっと高級なお店を選べばよかったのに」

忍「アタシには、ファミレスくらいがちょうどいいんだ。いろいろ食べられるし」

柚「もっとこう、満漢全席とか! イタリアンフルコースとか!」

忍「昼間からそんなには食べられないかなぁ」

忍「(Pさんの財布も心配だし)」

P「忍は空気を読めるいい子だな」

柚「このスーパジャンボパフェ食べていい?」

P「柚。忍を見てなにも感じないのか」

柚「アタシとお兄チャンは遠慮のいらない関係だからねっ」

P「こいつ……まあ、いいけど」

P「忍も、遠慮せず好きなもの頼んでいいからな」

忍「うん」

柚「ねえ忍チャン。あとでサインちょうだい?」

忍「さ、サイン?」

柚「そうそう、サイン。いやあ、本物のアイドルと一緒にファミレスなんて初めてだから、テンション上がっちゃうね!」

忍「あ、アイドル……ああ、そうだ。アタシ、アイドルなんだぁ」ホワホワ

忍「うんうん。もうサイン十枚でも百枚でも書くよ!」ニコニコ

柚「ひゃ、百枚はさすがに置き場所に困るかな……」

忍「アイドル、アイドル♪」

柚「……なんか急にキャラ変わってないかな?」

P「念願かなって、やっとのことでデビューしたのがつい最近だからな」

P「初対面の人にアイドル扱いされるのが、うれしくてたまらないんだろう」

柚「なるほど~」

柚「よっ、キュートなアイドル忍チャン!」

忍「へへ~♪」テレテレ

柚「トップアイドルまったなし!」

忍「やだ、そんなのまだまだ気が早いよ~♪」デレデレ

柚「あはは、なんだか面白い♪」

P「こらこら、遊ぶな」

柚「でもさでもさ、実際忍チャンカワイイじゃん。アタシはすぐに人気出ると思うけどな~」

P「そうできるように、俺も頑張りたいのは事実だけどな」

P「けど、いろいろ障害も多いし、難しいんだよ」

柚「そうなの?」

P「そうなの」

P「……それでも、俺はこの子を夢の舞台まで連れて行ってあげたいし、その約束もした。だからやれるだけはやる」

柚「………」

柚「お兄チャン、大人の目してるね」

P「え?」

柚「いつもと違って、かっこいいかも」フフッ

P「………」

P「ちなみに、いつもは?」

柚「忍チャン、ジュースくんできてあげようか?」

忍「ほわほわ~……はっ! あ、うん、お願い」

柚「はいはーい♪ じゃ、いってきまーす」

P「……人の話、聞けよ」

忍「……ほんと、元気な子だね。ふふっ」

P「相手してると、疲れるだろ」

忍「ううん、そんなことないよ。むしろ楽しいかな」

P「楽しい?」

忍「うん。仕事場以外で、こうやって歳の近い子とおしゃべりすることってあんまりないし」

忍「学校にも行ったり行かなかったりだから、なかなか踏み込んだトークってできないんだよね」

忍「その点、柚ちゃんはがんがん来るから……うん、楽しい」

P「……そうか」

P「なら、君と柚を会わせた俺の選択も間違っていな――」



柚「へいお待ち! 柚ちゃん印のスペシャルミックスジュースだよっ!」

忍「……すごい色してるんだけど」

柚「大丈夫、味はイケるから! たぶん」グッ

P「……間違ってなかった、よな?」

後日


P「さて、たまには部屋の整理でもするか」ガサゴソ


柚「やっほー♪ 遊びに来たよー」シュタッ

P「柚」

柚「アタシだけじゃないよ?」

忍「うわっとと……これ、ちょっと怖いね」ヒョイ

P「おいおい。忍にまでこの経路を教えたのか」

柚「うんっ♪」

忍「だ、ダメだった? やっぱりお隣さんにだけ許されたルートみたいな」

P「いや、そんな大層なもんじゃないからいいだけど」

P「というか、柚の家に遊びに来てたんだな」

忍「あ、うん。一度おいでよって誘われたから」

柚「話してて楽しいからねー」

P「そうか」

P「ただ、俺はこれから部屋の整理するから、1時間くらいは向こうにいてくれないか?」

柚「りょーかいっ」

忍「わかった」

柚の部屋


柚「せっかくだし、今日はうちでご飯食べていこうよ」

忍「いいの?」

柚「オッケーオッケー!」

忍「じゃあ、ごちそうになろうかな」

忍「……あ、この漫画。柚ちゃんも読んでるんだ」

柚「それ? 面白いよねっ」

柚「お兄チャンも、全巻借りて3日で読破してたもん」

忍「Pさんが? そういえば、読んだって言ってたかも」

忍「あれ、柚ちゃんが持っていたのを借りたんだ」

柚「漫画の貸し借りは基本だからね。そこの棚にまとめてあるのは、全部お兄チャンの所有物だよ」

忍「へえ~……あ、これ本屋で気になってたやつだ」

柚「借りたいなら、あとでお兄チャンに頼んでみたら? たぶんオーケーもらえるよ」

忍「そうしてみようかな」

柚「ま、とりあえず漫画の話は置いといて……お菓子片手に、忍ちゃんのアイドル活動のお話でも聞かせてもらおうかな~?」

忍「興味津々って感じだね」

柚「だって気になるじゃん。アタシ、アイドルの友達なんて他にいないし♪」

柚「面白そう!」

忍「……そっか。じゃあ、あとで柚ちゃんのお話も聞かせてよ」

柚「いいよー。面白い話がそこそこ溜まってるからねっ」

忍「それは楽しみかな。ふふ」

忍「――って感じで、最近初めてトレーナーさんにダンスを褒めてもらったの。あれはうれしかったなあ」

忍「やっとこの人に認めてもらえた! って感じで。もう本当に爽快だった」

忍「今までの努力は間違っていなかったんだなって実感できたから」

柚「ほうほう~……」

柚「楽しそうだけど、やっぱり大変なことも多いんだね。アイドルって」

忍「それは当然だよ。周りはみんなかわいい子ばっかりだし、その中で他の人とは違うものを見せなくちゃ、上に行けない世界なんだから」

柚「でも、忍チャンは頑張れるんだ」

忍「ずっと夢だったから。親にも反対されちゃったけど、それでも叶えたい夢だったから」

忍「……それに、今はアタシひとりじゃないからね」

柚「ひとりじゃない?」

忍「アタシのことをいつも見てくれて、一緒に走ってくれる人がいるから」

柚「……お兄チャンのこと?」

忍「うん!」

忍「アタシの夢を、初めて認めてくれた人。だから、アタシはあの人を信じられるし、この人のためにも頑張ろうって思えるんだ」

忍「なんていうのかな、夢が広がっていくような……アタシひとりの夢が、Pさんの夢とも重なって。そのうち、ファンの人とも重なっていったらいいなって、そう思うんだ」

柚「………」

忍「……なーんてね。大きなこと言う前に、まずはもっともっとファンを増やせって話か」ポリポリ

柚「……なんか、いいね。ホントに」

忍「え?」

柚「忍チャン、すっごい楽しそうっていうか、幸せそうっていうか……そんな顔してるよ」

柚「アイドルかぁ……アタシもなってみようかな、なんて」アハハ

忍「本当!?」

柚「わわっ!?」

忍「アイドル、一緒に頑張るっ?」ガシッ

柚「や、待って待って! 今のはなんていうか、思いつきで『それもいいかなあ』って感じで言っただけで」

忍「あ、そっか……ごめん。食いついちゃって」

柚「そもそもアタシ、あんまり前に出るタイプじゃないし」

忍「………へ?」

柚「なんで口ぽかーんと開けてるの?」

忍「いや。だって、前に出るタイプじゃないって幻聴が」

柚「幻聴?」

忍「……本当にそうなの?」

柚「そうだよ? 中心にいる誰かを、周りで盛り立てるタイプなんだ、アタシ」

忍「そ、そうなんだ」

忍「(こんなキャラなのに、ちょっと意外……)」

柚「ほんとほんと。割と肝心なところで積極的に行けなかったりもするし……」

柚「だから、アイドルは向いてないかな~、なんて」

忍「………」


忍「でも、それはアイドルをやらない理由にはならないよね」

柚「え?」

忍「向いているとか向いていないとか、できるとかできないとか……それって大事ではあるけど、でも」

忍「一番大事なのは、やるかやらないか、だから」

忍「それが、本当に好きなことなら……きっと、それが一番大事だから」

柚「やるか、やらないか………」

忍「………」ハッ

忍「ご、ごめん。なに勝手に熱くなっちゃってるんだろ、アタシ」アハハハ

忍「偉そうなこと言える立場でもないのに、勝手に自分の話と重ねちゃって……えへへ」

柚「………」

柚「かっこいいなぁ……」

忍「え?」

柚「………」

柚「………」



柚「よし、決めた!」

Pの部屋


P「よーし、模様替えで気分転換にはなったな」

P「あとは掃除機でホコリを――」


柚「お兄チャン!」ビュンッ

P「うわっ! 柚、掃除してるから待ってろって言ったのに」



柚「アタシアイドルになりたいっ!」

P「は、はあっ?」

忍「ゆ、柚ちゃん?」ヒョコ

柚「というわけで、今すぐスカウトヨロシクっ♪」

P「待て待て待て! 全然事情がわからんし、いきなりスカウトなんて」

柚「できないの? コネとかないの?」

P「俺にそこまでのコネはないぞ……一応、よさそうな子を見つけたら報告しろとは言われてるけど」

柚「じゃあそれ! それでいいからっ」

P「それでいいって、お前な……忍、こいつどうしたんだ?」

忍「いやあ……アタシの話を聞いてたら、急にアイドルやるって言い出して」

柚「ダメ?」

P「ダメというか、なんというか。まずもっとよく考えてだな」

柚「考えたよ?」

P「どのくらい」

柚「『…』が6つぶんくらい!」ニカッ

P「短っ!」

忍「……とりあえず、話聞いてあげたら?」

P「忍」

忍「ね?」

P「………」

P「仕方ないな。掃除終わったら、ちゃんと話すんだぞ」

柚「やたっ♪ これでアタシもアイドルだねっ!」

P「話を聞くだけだぞ、まだ」

忍「あははっ……本当、仲良しだね」

1ヶ月後


P「で、結局プロダクションに入れてしまったわけだが」

柚「くるくる~っ。どう忍チャン、決まってる?」

忍「うん、結構いい感じ!」

柚「でしょでしょ?」

P「しかも、あの後なんだかんだでさらに二人プロデュースすることに――」


あずき「ほらほら、穂乃香ちゃんもお色気大作戦! するする~っと服をはだけさせて」

穂乃香「きゃっ!? ちょ、ちょっと待ってください!」




P「一気に仕事量が増えたなあ」

ちひろ「まあ、それだけ上の人達に期待されているってことですよ」

ちひろ「私もできる限りはサポートしますから、頑張ってくださいね♪」

P「ありがとうございます」


P「……いっそ、4人まとめてユニット組ませてみるのもありか?」

その日の夜


柚「遊びに来たよー♪」

P「……はあ」

柚「あれ、どうしたの?」

P「アイドルになったんだから、もう気軽に男の部屋に入ってくるなと言わなかったか?」

柚「言ったね」

P「だったら」

柚「だから、毎日じゃなくて3日に1回にしたのに」

P「……もういいや」

柚「それよりさ、アタシ達4人でユニット組むってホント?」

P「ああ……一応、考えてはいる」

柚「面白そう! ていうか絶対面白いよ、それ!」

柚「どんな名前にするの?」

P「それはまだ決めてないな」

柚「そっかあ」

柚「あ、フリスク食べる?」ヒョイ

P「もらおう」

柚「どうぞー♪」

P「………」

P「フリスク………なにか思いつきそうな予感がする」

P「しかし、なんだかんだ頑張ってるな。お前も」

柚「もちろん! 自分でやるって言ったんだから」

P「最初はただの思いつきかと疑ったけど、信じて正解だったかもしれないな」

柚「そうそう、正解正解♪」


柚「……お兄チャン。アタシ、頑張るからねっ!」

柚「アイドル、楽しいし……それに」


柚「他の子に、盗られたくないしねっ♪」

P「盗られる? なにを」

柚「ヒミツ!」ニコニコ



おしまい

おまけ


とある日の朝


P「zzz」


柚「おはようございまーす……」ソロソロ

柚「おー、今日もよく寝てる♪」

柚「さてさて、今日はなにしよっかなぁ……」

P「くかー……」


柚「………」

柚「そういえば、昔はよく、寝ているお兄チャンの上にダイブしてたっけ」

柚「あの時より、だいぶ重くなっちゃったけど……思いきりいかなきゃ、大丈夫だよね」

柚「うん」

柚「へへっ♪ お兄チャン、起きろー♪」ダーイブ


ぐりっ


柚「……あ。なにか硬い物を踏んづけた感覚が」


P「おごぼぼぼぼ」チーン

柚「お、お兄チャン!?」

P「げっそり」

忍「大丈夫? なんだか元気ないみたいだけど」

穂乃香「体調が悪いようなら、無理はしないほうがいいですよ」

P「大丈夫大丈夫。ちょっと急所を襲撃されただけで……」

あずき「柚ちゃん、なにか知らない?」

柚「あ、あははは……ごめんなさい」



おまけおわり

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
こんな感じのギャルゲやりたいなーって思っただけです

まあ公式だとフリルドスクエアは忍と穂乃香のコンビから始まってるわけですが、細かいことは見逃してくださいなんでもしまむら
個人的に柚は屋根伝いに窓から侵入してきてほしいアイドルナンバーワン

過去作もよければ
モバP「先輩! なにしてんすか!」 心「え゛」(モバP「先輩! なにしてんすか!」 心「え゛」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439288105/))
モバP「なっちゃんと年越し」 鷹富士茄子「思い出話、追加注文です♪」 (モバP「なっちゃんと年越し」 鷹富士茄子「思い出話、追加注文です♪」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451298456/))

ちょっと早いけど忍ちゃん誕生日おめでとう

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom