男「それは偽善だ」女「それはどうかな?」(42)

幼心から母親に、言われ続けていたことがある。
それは、人間なら誰もが当たり前のように言うことで、当たり前のようにすることだ。

「人には優しくしなさい」

語源は違うかもだが、人の嫌がることはしてはいけない、や、思い遣りを持ちなさい。
なども、きっと同じ部類に入るだろう。

僕は、母親に言われた通りに人に優しく接してきた。
小学校高学年頃になると、自分のやってきた行いを積み立てるようにノートに書き込み、優しさ貯金などというくだらない貯金を積み重ねていた。

あの事件が起きるまでは

中学に上がって、少し経った時のことだった。
そろそろクラス内でのグループも確立し、そしてまた、地位も確立していた。

『オラッ! 食えよwww』

『……っ』

端的に言えば、いじめである。

そいつは、言ってしまえば根暗で、誰とも喋らなそうなタイプだった。

『一人早食い競争ードンドンパフー』

そいつは、いつもコッペパンを残すことから、コッペパンというあだ名がいじめグループからつけられていた。
初めは親切心だったのだろうか、それとも最初から憂さ晴らしで声をかけたのかはわからないが、気づくともうその関係が成り立っていた。
ボロ屋の床底をいつの間にかかじり尽くすシロアリ如くである。

いじめる側と>いじめられる側

それはどう見ていても気持ちの良いものではなく、いつも母親に言われた通りに、

僕は、いじめをやめさそうとした。

『嫌がってるだろ! やめろよなっ!』

結果、

『ああん?』

次は僕がいじめられた。

具体的に言うと、休み時間には消しゴムの欠片を投げられ、昼休みには消しゴムの欠片を投げられ、放課後は上履きに消しゴムのカスが大量に入っていたりなんかした。
他にももっと色々あったが、印象強かったのでこれを挙げる。

今となっては可愛らしいと思うぐらいだが、あの時はかなりくるものがあった。
なにせ中学なりたて一年生なのだ、無理もないだろう。

消しゴムマニアなら歓喜だろうが、僕は生憎文房具にはあまり興味もなかったから尚更効いた。

でも、僕はコッペパンを庇っていじめられるのだ、という半ば使命感にも似たものを背負っていたからか何とか我慢出来ていた。

ノートには、今日もコッペパンの代わりにいじめられた、ばかりしか書かなくなっていった。

そして徐々にエスカレートしていくいじめの中で、僕は少し妙なことに気がついた。

母親に言われた、「人には優しくしなさい」というのは、みんながそうじゃないのか? ということだ。

この状況になって数ヶ月、誰もその時の僕を助けようとしなかった。

人には優しく、そう言われてるのは、そうしてるのは僕だけ何じゃないか?

そう思い出した頃から、少しづつ僕は壊れて行った。

そして、中学一年の三学期、それは爆発した。

起爆剤は、とてもチンケなものだった。
僕がいじめられる最中、友達と仲良く話しているコッペパンを見て、我慢ならなくなったのである。

その頃になると、消しゴム本体を思いきり僕にぶつけていたいじめっ子達。

僕は、近くにある椅子の足を乱暴に持ち上げると、それを、彼らが僕にやるように……思いっきり投げた。
今まで累積したダメージに比べたら、椅子を投げられるぐらいはいいだろう、と今の僕なら思うが、あの時の僕は今まで貯めた優しさを全て吐き出すように人に暴虐を尽くした。

腹が立ったのだ。

どうしようもなく。

なにもしない周りの人間に対して。

そして僕の価値観は、そこで180℃変わった。

後の中学校生活は、ずっと仲良し学級とか言う体のいい名前の池沼養育クラスで過ごした。

それからの周りの僕を見る目はひどかった。
100善も、1害悪で吹き飛ぶのだ。

だからと言って僕は積極的に暴力やいじめに参加することもなく、暴言や叱咤することもなかった。
180℃変わったと言ってもそんなことをする意味がないことぐらいわかっていた。

ただ、僕は……。

人に優しくするのを、やめた。

徹底的に、だ。

だってそれは意味がないことだから。
無駄、もはや漢字で表すのも億劫なぐらいむだな行為だから。

「じゃあ君は人に優しくされる為に優しくしてきたの?」

なんてバカの一つ覚えな質問をするやつもいたっけ。
じゃあ仮に例えると土に水をやるとしよう。
でもその土には何の種もなく、本当にただの土。ついでに無農薬にしておいてやろう。
それに水をやり続けて意味があるのでしょうか?
ボケたじいさんの趣味じゃあるまいし無意味なことはやらない方がいいだろう?
つまりはそういうこと。

俺は昔その土には種があると信じていたから優しくもしていたし、嫌なことも我慢もできた。

でも、そんなものはどこにもなかった。

高校三年になってもその価値観は変わらず、僕には優しさなんてものは皆無だった。

そんな時である。

彼女と出会ったのは──

学校の、下校時のことである。

「あ、落としましたよー?」

不意に後ろからそんな声がし、僕としたことがハンカチでも落としたのかなとポケットを漁りながら振り返ると──

「落としましたよ、優しさ」ニコッ

わけのわからないことを満面の笑みで言う女の子がいた。

女「」ニコニコ

男「……?」

手にはなにも持っていないのに、何故か僕に渡す素振りを見せてくる。

訝しげにそれを見てるとその女の子は何を思ったのか「エネルギー弾!」とか言いながら、掌底を僕の胸辺りにかましてきた。

女「あっ、今のエネルギー弾は優しさ100%なのでライフポイントが減ることはありません。安心してね」

などとまたもわけのわからないことを言っている。

男「あの……」

めんどくさそうにこんな意味のわからない絡みに対する返答を求めたが、「でもその優しさ100%エネルギー弾でもバファ○ンの優しさには勝てない不思議……!」などと宣っている。

男「はあ……用がないならもういくよ」

踵を返し、正門に向かう足を再開させる。と、

女「私三年cの女! 三aの男君だよね!」

横を並歩しながら、屈み気味に僕の顔を伺ってくる。

男「そうだけど、なに?」

歩く速度も一切変えず、ただ帰るついでに聞く。

女「転校してきたんだけどさ、友達が全くいないの! だから友達になって!」

男「いいよ。じゃあね」

女「やったー! じゃあ手始めに一緒に帰りましょう」シュッシュッ

軽いフットワークを見せつつそう言う彼女を無視して置き去りにしていく。

女「友達になったのにいきなり置いてかないでよー!」

男「……」

女「男君ってばー!」

僕がすんなりokしたのにはわけがある。
恐らくどこかで僕の噂を耳にして、試しに来ているのだろう。

そう言う連中は過去に何人かいた。
大体は友達になろうだの、恋人になろうだの、そんな感じである。
そう言う奴らは自分の目的の為にあれこれ食い下がって来るので、否定せず受け入れたのに無視する。
これが一番いい。

噂と言うのは厄介で、中学時代にやったことが尾ヒレを付けて高校にまでやってきていたのだ。
最初の方は散々畏怖されてきたが、さすがに二年間半ほど何もなしとくれば、そんな噂話も消える。
だが、その二年半で逆に新たな噂が増えてしまった。

優しさ皆無の男、氷結の男、呼ばれ方は色々あるが、一貫してこうである。

「優しさがないやつ」

僕はとにかく優しさ、善意の行動を一切しないのだ。
目の前に本をたくさん持ってフラフラしてる眼鏡をかけた委員長がいようがスルー安定である。

それを不快に取るやつもいれば、面白く取るやつもいるようで。
中にはこの女の子みたいに僕に優しいことをさせる、勝負みたいなことをやってる人達もいるそうだ。

とは言っても僕はなにもしない。
前にも言ったが優しさがないからって逆に悪いことをするわけではない。

勿論呼ばれれば返事もするし、生きていく中で最低限なことは行っている。

ただ、無駄(優しい、善意)なことをしないだけだ。

最初は面白そうなので僕も構っていたが、最近はめんどくさいので無視することの方が多い。

女「男君お腹でも痛いの? バファ○ンいる?」

そんな僕を心配そうに見つめてくる。

男「……」

女「学校のトイレがまだ近いよ! カムバック出来るよ男君!」

第一印象は、優しさの押し寿司みたいな人
だった。

とりあえずここまでで
50ぐらいまでには終わると思います

そのときこっぺぱんを加えた少年が目の前を彼女らしき人といちゃつきながら通り過ぎた。
普段なら気にならないがこっぺぱんを加えている。
男「…こっぺぱん」

女「?」ひゅん

突如女が何かを投げてきた。
それは……消しゴムだった。






僕は爆発した。

僕は近くにいた女をつかみ、忌まわしいこっぺぱん野郎にむかってなげた。
あの消しゴムのように

コッペ野郎「!?」
彼女「!?」

僕は前回の爆発からおとなしくしていた。
でもそれはたとえるなら嵐の前の静けさ。



僕は爆発した。
大事なことなのでもう一度いう。

    僕は爆発した

ヽ`
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     ;;;;;;:::::;;;;;;;;;;:::::;;;;;;;;:::/;;;;;;:::::::::;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::;;:;;;;:::ヽ


女「待ってよ男君~」

男「……」

その後も何故かついてくるのをやめようとしない。
誰かと賭けでもやってるのだろうか?

男「」チラッ
女「ん?」ニコッ

そんな感じには見えないけど……。

男「ふぅ……あのさ、どんな噂を聞いたのかは知らないけど僕は」

女「あ、お荷物お持ちしますよ!」

おばあちゃん「すみませんねぇ」

男「って……」

さっき追い抜いたおばあちゃんが歩道橋を渡ろうとするや否や荷物持ちとは……。

男「……まあいいや。僕の家はこっちだから。じゃあな」

おばあちゃん「女の子にはちょっと重くないかい?」

女「若輩者パワー全開ですからだいじょぶだよおばあちゃん!」

おばあちゃん「あらまあ」フフフ

男「……」

ま、ちょうどいいか……。

おばあちゃんと一緒に歩道橋を登って行く彼女を少し眺めた後、そのまま直進、家路に急いだ。

あんなことをして何になるんだろう、とは思うが、別にやりたいやつはやればいいだろう。
偽善でお腹いっぱいになるのならそれも立派な趣味だ。
存分に満喫すればいい。僕はやらないけど。

信号をいくつか渡った時だった。

男「ん?」

女「」タッタッタッタッタ

右手側の反対車線の横断歩道前に、まるでロードワーク中であるかのような見事なその場駆け足を繰り広げておられる女の子がいた。
さっき女の子だ。

どう見てもこっちに渡って来る気満々だったが、特にこちらから用事もないのでそのまま見ないフリをする。

女「……クーン」

男「……」

女「……おことクーン」

男「……」

女「ヘイ!そこのnicegay!」

♂一同「」ピクッ

男「やめろ恥ずかしい」
女「やっと答えてくれた!」

女「さっきはごめんね~私事で」

男「いや、まあ……別にいいけど」

また再び一緒の下校。

テッシュ配りのおっさん「はあ~……」

男「……」

前方左手にやけに項垂れてるおっさんがいるな。僕の目にはただそれだけしか映らない。

でも、

女「どうしたんですか?」

彼女にはどう映ったのだろうか。

テッシュのおっさん「え? あ、あぁ……それがバイトに逃げられてさ……今日中にこの広告テッシュ捌かなきゃなんだけどみんな全然受け取ってくれなくて……」

女「それは困りましたね……」

テッシュおっさん「こんな禿げた怪しいおっさんが配ってもそりゃ受け取ってくれないよな……」

おっさんテッシュ「燃やしたのバレたら広告代弁償だし……どうすりゃいいんだ……」

女「あの、良かったら私も配りますよっ!」

おっさんのテッシュ「ほんとかい!? いや~君みたいな可愛い子が配ってくれたらきっとすぐだよ! ちゃんとバイト代も出すからさ!」

男「……」

おっさん「どうだい彼氏も!? 君は女の子の方担当でさ!」

女「男君……」

男「わかりました。手伝います」

おっさん「すまんね!」

女「ありがとう……男君!」

男「……気にするな」

女「明日開店となっておりま~す! よろしくお願いしま~す!」

リーマン「(おっ、可愛い女の子がテッシュ配ってる。貰うついでに柔肌ラッキータッチ狙うか……!)」

リーマン「」スッ

女「ありがとうございます!」ムギュッ

リーマン「なっ」

女「明日開店なので是非お願いします」ニコッ

リーマン「は、はい(まさかの手繋ぎゲットォォォォ!)」

リーマン「」ホクホク

リーマン2「(なんだあのホクホク顔は……こっちは安月給でギリギリやってんのによ……大手会社のやつはしねよ……)」

女「よろしくお願いしまーす」

リーマン2「(テッシュ配りか……いっぱいもらって生活費の足しにしよう)」

リーマン2「」スッ

女「ありがとうございます! 明日開店となっております!」ムギュッ

リーマン2「(なんて暖かい手なんだ……この不況にさらされてきた体に沁みやがる……!)」

リーマン2「ありがとう」

女「」ニコッ

リーマン2「(あんな可愛い子にお願いされたんじゃ行かないわけにも行かないか……どれ、どんな店か……)」チラッ

『夢の一時をあなたに ソープランド○○』

リーマン2「(ソープの広告だとっ……! あんな可愛い子が……。)」

リーマン2「(まさか! 居たりするのか……? 実際勤務の子が配るのは良くあると聞く……制服だが衣装というパターンも……)」

リーマン2「(ふっ、明日はホームランだぜ……!)」ホクホク

リーマン3「(あのリーマンのホクホク顔(ry」

男「よろしくお願いします」

残り1箱か……大体女が捌いてくれたな。
それにしてもあいつ何の広告かわかってんのか……?

まあいいや、おかげで早く終わりそうだ。

ここまで配れば後は女ってだけでもらってくれるだろう。

男「女さん。そう言えばうちバイトは許可制だから無断だとバレたらまずい。法被借りてきたから着た方がいいよ」

女「あ、そう言えばそうだったね! でも手伝いなら大丈夫なような……まあいっか! ありがと男君!」

手伝い? 何言ってるんだこいつは。
ま、ギリギリまで女子高生が配ってるっていうアドバンテージは出せた。
見つかってバイト代がお釈迦になったらそれこそ意味がないしな。

そうして僕達は、バイトを無事終えた。

おっさん「いや~本当に助かったよ! ありがとう!」

女「そんなことないですよ! 色々勉強させてもらいました」

男「じゃあ、これで。あの」

おっさん「ああバイト代ね! はい二人とも!」

男「どうも」

今月は色々買ったからピンチだったし助かった。
この厚みからいってそこそこ入ってるな……中を見るのが楽しみ

女「受け取れません」

おっさん「ん?」
男「え?」

女「そういうつもりで手伝ったわけじゃないので、これは受け取れません」

おっさん「いや~でも……受け取ってもらわないと気がすまないっていうか」

女「それでも、受け取れません……」

男「女さん、こういう時は黙って受け取っておくもんだよ」

女「……」

今確信した。
バカだ、こいつは。

おっさん「そこまでいいって言うなら……」

頑なに受け取ろうとしない女を見て、おっさんはその封筒をしまい始めようとする。

あの金は今まで女に所有権があった、だが女はそれを放棄した、つまりあの金の所有権はあのおっさんに戻るまでは中空をさ迷っていると仮定できる。

おっさん「今頃にしてはよく出来た子だね~」

おっさんが世辞を出し始めた。この世辞は恐らく金をしまう代わりに投げたもの、そう言うことで注意を女に反らし、金はなかったことにしてしまおうという算段だろう。

させるか……!

あの浮遊金、上手くやれば僕に転がる筈だ。
このシチュエーションでおっさんから体よくあの金を奪取出来る方法は……。

……、よし、これなら行ける。

男「全く女は遠慮ばっかりだな。おじさん、代わりに僕がもらっとくよ。こいつ直接お金を貰うのがあんまり好きじゃないらしくてさ。
今度そのお金でプレゼントでもするよ」

おっさん「あ、あぁ……。そうしてくれると助かるよ。俺も出銭をしまいこむのは恥ずかしくて困ってたとこさ」

よし……完璧に引き寄せた……。
そりゃ彼氏面してればあっちも断りは出来ないだろう。

懐にしまいかけた封筒を手にし、悠々と立ち去る。

男「じゃあ行こうか」

ここで声をかけないのも怪しまれるからな。

女「……」

しかし、彼女は黙って俯いたまま動かない。

男「ほら、行くぞ」

多少強引な形にはなったが、僕は彼女の手を引いてその場から離れた。

────

男「さっきは色々悪かったね」

女「……」

男「ほら、君の分」

女「いらないよ」

男「じゃあほんとに僕がもらうけどいいかな?」

女「……男君ってさ」

女「嫌なやつだよね」

ああ、言うと思っていた。
でも、事実はそうじゃないだろう?

男「何が嫌なのかな? まさかお金に汚いところ、なんて言うのかな?」

女「……」

男「まさかとは思うけどさ……」

お前みたいなのがいるから。

男「優しくないから嫌なやつ、なんて思ってないよね?」

あの日の俺みたいな勘違いバカが生まれるんだよ。

男「目の前に困ってるおばあちゃんがいようが僕は知ったことじゃない。君はやりたいからああしただけだろう?」

女「……」

男「テッシュ配りを手伝ったのはバイト代が出るって聞いたからだよ。無報酬ならやってないさ。それに働いたからお金をもらう、何てこと当たり前じゃないか」

男「このお金も君が貰わないと言い張ったから僕がもらった。さっき更に譲渡権を一度君に譲ろうとしたにも関わらず君は受け取らなかったよね?」

女「……」

男「じゃあもうこのお金に君の関与性はない。僕が受け取るのが気にくわないからおじさんに戻せ、も却下させてもらうよ。
そうしたかったのならさっき君はこのお金を受け取って戻しに行くべきだったね」

男「で、ここまで僕はこの国における犯罪行為、咎められる行為は一切してないわけだけど。それでも嫌なやつなのかな?」

女「……」

男「言い返せないよね? そりゃあそうだよね。僕は別に間違ったことしてるわけじゃないし」

男「人に優しくしなきゃいけない法律も必要性も皆無だしね」

男「君がどんな噂を聞いたは知らないけど僕はこういう人間だ。嫌なら関わらなければいいだけだよ。じゃあね」

女「……」

男「さっき勝手に彼氏面したり手を握ったことは謝らせてもらうよ。本当に心的ストレスになったのならば僕を訴えてくれて構わない。そういう法律だからね」

男「ああ後さ、君がやってること」

男「それは偽善だ」

そう言い残し、去ろうとしたその時だった──

女「それはどうかな?」

まるで、その一言を今まで待っていたような。
そんな感じの、笑みだった。

書くと思ったより量があることに気づきました。

ちょっと長くなりそうですが良ければお付き合いください

こんにちは>>1

>>18
僕に投げられた女は、いや爆発した僕に吹き飛ばされた女はコッペパン野郎もろとも>>19した。

すべてが爆風に飲み込まれるなか、爆発の中で僕爆発に巻き込まれ爆発したはずの女は、女は爆笑していた。
たぶん彼女も気づいたのだろう。

いや、僕が気づかせたのか…

女「私が優しくしたのに無視するから消しゴム投げて気づかせてあげようとしただけで爆発するとかwwww」

爆発の中女の笑い声は続けた。

女「私自身の優しさが私を爆発させるなんてwwww」

女「そんなの…」

女「そんなのって!!」

女「優しくした私がバカみたいじゃない!!!」

爆風は広がっていく、すでに東京は飲み込まれただろう。
誰のかもわからないあまたの断末魔が聞こえる。
でも僕の耳に一番はっきりと聞こえるのは女の言葉。

女「今なの信じない!!」

女「誰かのために優しく…自分のために優しく…」

女「そうすれば自分も幸せになれるって…」

男「それは偽善だ」

爆発の中で僕は答えた。
女はきづいているだろうがあえてもう一度いう。

大事なことだから

男「それは偽善だ」

僕を見据える女。
爆発は今どこまで広がっただろうか?

女「だってだって…」

男「もうわかってるだろ?」

男「優しいことがいいことなら突然爆発したりしたない」

男「さっき君のいったことは…」
何度でもいう
男「それは偽善だ」

その爆発の中、僕ら二人の対話に何かが割り込んできた。
この爆発の中そのみを保つことのできるなにが。

?「それはどうかな?」

その割り込んできた何かは姿を見せない。
女も驚きのあまり再び爆発しそうだ。

?「君たちに断末マッコイはきこえるかい?」

聞こえる。
断末魔は聞こえたと思ったら消滅、そして新たな断末魔がきこえる。
それの無限ループ。

?「断末魔はなぜ聞こえる?」

女「爆発に飲み込まれたから?」

おかしい
それならなぜ僕らは断末魔をあげない。

?「君たち気づかないかい?」

男「なぜなんだ」

?「答えは簡単さ」

?「君たちは守られているのさ」

?「やさしさにね」

優しさに守られる?
女がそれを聞いてほほえんだ。

なぜだろう、
あんなアホには答えが見つかったらしい。
僕は結構頭がいいのに…

?「そうだ女」

ショックだアホそうな女に負けた。
負けた
その三文字が僕に力を与える。

僕は爆発した
爆発の中で爆発の影響を受けずに爆発について考えながら

『爆発した』

            _ .. _
          /    \
        /, '⌒ l.r‐-、.`、

       / (   八   ) ヽ
       (   ー-'  `ー-'  ノ
        ー┐ (_八_)┌-'

           `ー┐┌┘
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