勇者「世界に復讐する」 (29)

少年A「へへっ! 立てよおい!」

少年B「やーいへっぽこ勇者! 剣も使えないなんてお前本当に勇者かよ!」

勇者「いてて……」

少年C「弱いお前が悪いんだぞ? まだスライムも倒したことないんだろー?」

勇者「だって外は危ないってママが言ってたもん! 魔物となんか戦っちゃダメって言ってたもん!」

少年A「ママだってー! うわーこいつマザコンだー!」

少年B「きもちわりー! 弱いだけじゃなくてマザコンとか最悪じゃん!」

少年C「弱くてマザコンの勇者を俺たちが鍛えてあげないとだな!」

勇者「…………」ビクッ

少年A「でもさー俺らがこんなに可愛がってあげてるのに勇者ちっとも強くなんねえよな?」

少年B「こりゃもっと厳しく可愛がってやらねえとダメだな?」

少年C「それもそうだなー」

少年A「じゃ……」

少年B「そういうことだから……」

少年C「頑張って強くなろうな、勇者」

勇者「なに……なにをするの……?」

少年C「…………」スッ

勇者「やめて…! やめてよぉー!!」

少年A「…………」ニィ

少年B「あはは、がんばーれー」

少年C「ほーらよっ」


ブォン!!


「あああああああああああ!!!!!」





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勇者「痛い……痛い……痛いよぉ……」

勇者「どうして……どうして僕がこんな目に合わなきゃいけないの……」

勇者「僕がなにをしたっていうの……」

勇者「ただ、勇者として生まれてきただけなのに……」

勇者「剣がうまく使えないだけなのに……どうして……」

勇者「痛い……痛いよぉ……」

勇者「誰か、助けてよぉ」

町人「…………」

少女「ママ、あの子大丈夫かな?」

町人「しっ…… あの子はダメな勇者なの。 近づいちゃいけないわ」

少女「ダメな勇者?」

町人「女神の加護があるなんて嘘っぱちのダメな子ってこと。 話したりしちゃだめよ?」

少女「でも……怪我してるよ?」

町人「もう見なくていいの! いいから来なさい!」グイッ


勇者「…………」

勇者「ダメな勇者…?」

勇者「ダメってなに…… 僕が何をしたっていうの……」

勇者「うっ……ひく……ママぁ…… ママぁ……!」

勇者「助けて……ママぁ……!」



【勇者:レベル99 】
HP:1 / 3
MP:9999 / 9999
攻撃力:2
防御力3
素早さ3





~十数年後~


母親「今日の晩御飯何が良い?」

勇者「え? あー…… じゃあハンバーグがいいな」

母親「ふふ、勇者は本当にそればっかり。 昔から大好きね」

勇者「そうかなぁ? だって僕お母さんの作るハンバーグが一番好きだからさ」

母親「全くもう…。 ねぇ勇者? 早く王様から旅のお許しが出ると良いわね」

勇者「……うん、そうだね。 でもその話もう100回くらいしたよ」

勇者「僕が早く強くなって旅にも出られるようになったら王様も認めてくれるよ!」

母親「えぇ……そうね」

勇者「だから今は僕に出来ることをやるんだ! 強くなって世界を救う勇者になるよ!」

母親「そうね……。 そのためにも力がつくようにおいしいハンバーグを作って待ってるわね」

勇者「うん、ありがとうお母さん。 いってきます」

母親「いってらっしゃい、気をつけてね」

母親「…………はぁ。」



勇者「998……999………1000!!」

勇者「はぁぁぁ~~!! 疲れたぁぁ!」バタン

勇者「もう腕パンパン…… 毎日こんなに素振りを続けてるのになんでうまくならないんだろ?」

勇者「はぁ……才能無さ過ぎるなぁ僕」

勇者「……って! 落ち込んでどうするんだ! 世界を救うために強くなるって! がんばるって決めたじゃないか!」

勇者「よし! 今日はあと素振りを500回やるぞー!」


ザッザッザッザ


勇者「ん? 兵隊さん?」

兵隊A「よー勇者」

兵隊B「今日も鍛錬御苦労さん」

勇者「えっと……?」

兵隊C「なんだよーあんなに可愛がってあげたのに忘れちゃったの勇者?」

勇者「あ! 君たちは! 少年Aくんたち!」

兵隊A「はは、もうその呼び方はやめろよ。 俺たち立派な兵士になれたんだからよ?」

勇者「そうなんだ…… 兵士になったんだね、おめでとう」

兵隊B「おうありがとよ」

兵隊A「勇者もすっかり女っぽくなったじゃねえの?」

勇者「へ? あぁ……でも別にそんなことより…… 女っぽくなるなんかより強くなりたいよ」

勇者「僕も兵隊くんたちみたいに……強くなれたら……」

兵隊B「あー……その……なんていうかよ」

兵隊A「ま、今日は久々に一緒に遊ぼうと思ってな?」

勇者「遊ぶって…?」

兵隊A「そりゃー男と女がやることなんてひとつっしょ」

勇者「……?」

兵隊B「そうセックス! って言いたいところなんだけど実はあんまり時間なくってさ」

勇者「……???」

兵隊C「あーもー説明すんのもめんどくせぇ!」

兵隊C「お前の身柄、拘束させてもらうわ」



勇者「え? な、なに? どういうこと?」

兵隊A「さぁー? 知らねえよ。 ただ国王直々のご命令が俺らに与えられたわけ。 逆らったらどうなるかくらいはポンコツ勇者ちゃんでも分かるよな?」

兵隊B「お前は何も言わずについてくりゃいいんだよ、勇者サマ」

勇者「ま、待ってよ!? 僕何も悪いことなんてしてないよ!?」

兵隊A「いいのいいの。 勇者ちゃんは安心して俺らに身を預けてくれればいいわけ」

勇者「ちょっと! 話はぐらかさないでよ!」

兵隊C「あーもーゴチャゴチャうるせぇなー」

勇者「へ…?」


ゲシッ!!


勇者「うぐっ!?」

兵隊C「いいからさっさと来いよ……」

勇者「げほっげほ……」

兵隊A「ヒュ~! Cちゃんやるー!」

兵隊B「女の子相手にも容赦ねえな! あははは」

兵隊C「さ、立てよ」ガシッ

勇者「ぐ、あぁぁ……!」

勇者(ま、まずい! 全く状況が掴めないけど! このままじゃ明らかにまずい!!)

勇者(逃げなきゃ!!)


勇者「ぺっ!!」

兵隊C「ぐあぁぁ!! 目に唾吐きやがったこいつ!!」パッ

勇者「……!!」ダッ

兵隊A「大丈夫かC!?」

兵隊B「おい! いいから! 勇者追うぞ! ミスったなんて王様にバレたら俺らの首がどうなるか分かったもんじゃねえ!」

兵隊C「あのやろう…… 捕まえたらぶっ殺してやる!!」




勇者「はぁ! はぁ! はぁ!!」


ガチャッ! バタン!!!


勇者「お母さん! 大変!!」

母親「勇者!? どうしてここに!?」

勇者「大変なのお母さん! 兵隊さんたちがいきなり僕を捕まえようとして!」

勇者「そ、それで僕慌てて逃げてきて!! あぁ、どうしよう! どうしたらいいの!?」

母親「あんた、まさか逃げてきたの!?」

勇者「う、うんだってあのままじゃ明らかに危なかったから……」

母親「…………」カタッ

母親「この大馬鹿やろう!!!」ビシャッ

勇者「……え?」ビチョビチョ

母親「あんたはどこまで私に迷惑をかける気なんだい!!」

勇者「え、なに…… どういうこと…?」

母親「はぁ…… もうどうしてこんなに私を困らせるかねぇこの子は…」

勇者「ちょっと……お母さん?」

母親「……!? お母さんなんて呼ぶなバカ娘!!」

母親「あんたのせいで私がどれだけ苦労してると思ってんの!! 毎日毎日町人に馬鹿にされて…もう私は耐えられないわ!」

母親「あんたさえいなければこんなことにはならなかったのよ! あんたさえいなければ!!」「

母親「勇者なんか産むんじゃなかったよ!! さっさと出て行って!」

勇者「え…… え……?」ポロポロ

母親「やっと厄介払い出来ると思ったのに…… なのに兵隊たちから逃げ出してくるなんて…… はぁぁー……もー……」

母親「さっさと失せろ!!」

勇者「……っ!?」ビクッ

母親「あんたのせいで私がお咎めを食らったらどうしてくれるんだい! ぶっ殺してやりたいわよ本当に!!」

勇者「へ……へ……?」

母親「あんたの顔なんかもう見たくないのよ!! さっさと出て行け!!」

勇者「………っ!!」ダッ



勇者「はぁ……はぁ!」

勇者「一体……なにがどうなって……」

勇者「お母さん……」ジワッ

勇者「お母さん……どうしてあんなこと言うの…… 全部嘘だよね……?」

勇者「ひっく…… もう訳が分からない……」ポロポロ

勇者「なんで…… こんなことになっちゃったんだろう……」


グルルルルルル……


勇者「へ……?」


「グルルルルル……」

勇者「オオカミ……魔物!?」

勇者「夢中で走ってたら町の外にまで来ちゃってたんだ…!」

勇者「ど、どうしよう! 剣もさっきのゴタゴタの中で持ってきてないし……」

「グルルル……」

勇者「戦わなきゃ…! 戦わないと殺されちゃう!」グッ

勇者「…………」

勇者「…………………」

勇者「……もう、いっか」ペタン

「グルルルル…?」

勇者「なんか、もうどうでもよくなっちゃった」

勇者「聞いて魔物さん。 僕ね? ただ勇者として…女神の加護を受けて生まれただけなのにさ? みんな勝手に僕に期待して」

勇者「僕が強くなれないと知ったらひどいことばっかりしてさ」

「グルル……」

勇者「今日なんかいきなり拘束するだの言われたり、お母さんからお茶かけられて……」

勇者「生むんじゃなかったなんて言われたり……ひっく……えぐ……」

勇者「僕が……一体何をしたっていうんだよぉ……うぅっ……」

「…………」

勇者「ごめんね魔物さん……もう私を食べていいよ…… おいしくなんかないかもしれないけど、もう私には帰る場所なんかないからさ……」

勇者「せめて、君のお腹を満たすくらいの役には立たせてよ」ゴシゴシ

「…………」






「哀れだな、勇者」

勇者「……へ?」


パァァァァァ!


勇者「わっ! 魔物が人間になった…!?」

「いつの時代も人の世は愚かなものだ。 そうは思わないか?」

「俺と共に来い勇者」

勇者「あなたは……?」

「俺か? 俺は……」



【魔王:レベル99】
HP:9999 / 9999
MP:9999 / 9999
攻撃力:9999
防御力:9999
素早さ:9999


勇者「魔王……?」

魔王「そうだ」

勇者「……ッ!!」チャキッ

魔王「…………」スッ

勇者「……え?」

魔王「剣を抜く前に名乗るのが筋ではないか?」ガシッ

勇者「……!?」

勇者(一体いつの間に!? 全く見えなかったし……剣がピクリとも動かない…!)

魔王「お前、名は?」

勇者「へ……?」

魔王「はぁ…。 聞こえなかったか? お前の名はなんというのだ?」

勇者「そんなこと…… 聞いて、どうするんですか」

魔王「なに?」

勇者「あなたが本当に魔王なら、僕は殺すべき存在です。 そんな相手の名を聞いてどうするんですか?」

魔王「……はぁ」


魔王「それは勇者としての最後の意地か?」

魔王「全く……実に面倒だ」

勇者「め、面倒…?」

魔王「あぁ、そうは思わないか?」

魔王「お前は勇者だろう? そんなことは分かっている。 そして今お前が置かれている状況もなんとなくだが見ていた」

勇者「な、え、見ていた?」

魔王「人間共の醜さに当てられ、そしてボロボロな勇者に正直俺はがっかりだ」

魔王「勇者として生まれ、魔王を倒せる唯一の存在がこんな年端もいかない少女で、ましてや人間から酷い扱いを受けて満身創痍だ」

勇者「ぐっ……」

魔王「心底がっかりだ。 勇者というのは名ばかりの存在だな」

勇者「うっ……ぐすっ……」

魔王「お前は勝手に勇者として祭り上げられ、育てられ期待され、裏切られた」

魔王「それなのにお前はまだ勇者としての自分を保とうと必死なのだぞ」

魔王「面倒だと思うだろう?」

勇者「…………」



魔王「私は面倒なことが嫌いだ」

魔王「お前は面倒なことは好きか?」

勇者「そんなこと急に言われても分からないです…。 でも……今の状況は少なくとも嫌い」

勇者「訳分からない状況で、お母さんには捨てられて、必死で逃げてきたら今度は目の前に自称魔王が来て、変なことまくし立てられて……」

勇者「悪い夢ならいいのにって……思います」

魔王「ふっ、正直な奴だ。 だがそれでいい」

魔王「俺は面倒事が嫌いだ。 どうやらお前も面倒が嫌いらしい」

魔王「なら俺と来い」

勇者「…………?」

魔王「勇者なんていう肩書きは捨てて」

魔王「お前を勇者だと知っている人間共から離れて」

魔王「これからはせいぜい好きなように楽しく適当に遊べ」スッ

勇者「…………」

勇者「……はい」ギュッ



魔王「…………」

勇者「…………」

勇者「え、えっと……?」

勇者(ど、どういうことかな!? 一緒に来いって言われて思わずはいって言っちゃったけど!?)

勇者(ぼ、僕に魔物になれってこと!?)

勇者(そんなのむりむり! そ、それともプロポーズかなにかだった!? え、魔王に!? それこそないよね!)

勇者(ていうかこの人本当に魔王なの!?)

勇者「…………」パクパク

魔王「……なんだ」

勇者「あ、あの僕は……

魔王「おい」

勇者「は、はい!?」

魔王「お前、なぜ女でありながら自分のことを僕などと言う?」

勇者「あ、えっと……それは僕は勇者だから」

勇者「勇者として生きるなら女としてではなく、戦いに身を粉にする男のようになれって……」

魔王「ほう、そうか」

魔王「実にくだらない考え方だな」

勇者「え…?」

魔王「なぜ勇者として、そして女として生まれているのに勇者であることしか肯定されていないのだ?」

勇者「…………」

魔王「お前は今日から勇者ではない。 魔王と共に生きる半端モノのただの女だ」

魔王「女なら自分のことは『私』と呼ぶべきだろう?」

勇者「私……」

魔王「男として、勇者としての自分はもういない。 ただしたいことを言えば俺が叶えてやる」

魔王「そうやって徐々に慣れていけばいいだろう?」

魔王「この世界に、もう勇者はいない」




勇者「……!」

勇者(あぁ、そうか、この人は)

勇者(僕に生きていいって言ってくれてるんだ)

勇者(勇者としての役割を十分に果たせず、捨てられた僕を……)

勇者(行き場のなくなった僕に不器用だけど手を差し伸べてくれてるんだ……)ポロポロ

魔王「はぁ……。 なぜ泣く?」

勇者「え、いや……だって」

勇者「お母さんだけが私の味方だと思ってたのに……そのお母さんにも裏切られたから……」

勇者「もう……私を必要としてくれる人も、私が頼っていい人もいなくなって……辛くって」

勇者「でも、あなたが僕…私を認めてくれてるから… だからなんか安心しちゃって……」

勇者「それに、勇者としてじゃない私を見てくれてることがなんだか嬉しくって…」

魔王「……そんな面倒なことを考えながら言ったのではないんだが」

勇者「ううん、いいんです。 ただ嬉しかったから」

勇者「お前は勇者なんだから頑張れって言われ続けてきたから。 なのに強くなれない自分が嫌で、重荷で……」

勇者「勇者に生まれた自分が嫌いでしょうがなくって……。 でもあなたにもう勇者はいないって言ってもらえたから、嬉しいんです」

魔王「そうか」ポン

勇者「………?」

魔王「メソメソしているよりそうやって笑っていた方が美しいぞ」

勇者「なっ、ぇ、あ!?」

魔王「一生とは限りあるものだ。 お前も今から楽しまなければ損をする」

勇者「……! そうですね、せっかくあなたに拾っていただいたんですし、楽しまないとですね」

魔王「そうだ。 お前はまずは、なにがしたい?」

勇者「えっと…… じゃあ……」

勇者「……復讐、したいです」


今日の更新終わります

これは書いたことないです
あとバトルとか殺伐系ではなくただ魔王と勇者がイチャイチャするSSを書きたかっただけです前振りなげぇめんどくさry

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月13日 (日) 23:26:53   ID: uBAhX0l3

まってるぞ

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