歩美「いつかまたここで」 (23)

灰原「あれから、私は……」
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の続編です。

歩美の心情を追いつつコナンとの再開までを書きます。



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コナン「悪いな、歩美。もうお別れだ」

歩美「どういう事なの?コナン君!?」

コナン「済まねぇな。もう会えないんだ。元気でな」

歩美「コナン君!待って!!」

灰原「ごめんなさい。吉田さん。私も……。もう会えないの」

歩美「哀ちゃんまで!どうして!?」

灰原「ごめんなさい。さようなら……」

歩美「待って!コナン君!哀ちゃん!私を置いて行かないで!」

歩美「待って……。コナン君……。哀ちゃんっ!!」




歩美「……ん」

朝。またあの夢を見た。

もう何度見たか分からない。

コナン君と哀ちゃんがいなくなってからずっと見るあの夢。

突然2人がいなくなってしまう、とても嫌な夢。

歩美「はぁ。朝から暗くなっちゃうなぁ」

もう見慣れた夢なのに、何度見ても気分の落ち込む夢。

あれから、もう10年も経つのに。

歩美「……暗くなってちゃいけないよね。お仕事行かなくちゃ」

気持ちを切り替えて、着替えて外に出る。

歩美「行って来まーす」

今日は大事な用事があるんだから、遅れずに行かないと。





改めまして、私の名前は吉田歩美。

とある芸能事務所で働く、俳優の卵。

まだまだ駆け出しの、ホントの未熟な新人。

小学6年生の時に仕事を始めて、今日まで何とか頑張ってきた。

……ある目的の為に。

人から見れば、とても子供っぽい……。くだらない目的。

でも、私にはとてもとても大事な事。

その為に私は芸能界に入った。

今日は、その目的の一部が叶えられそうなお仕事がある。

朝から暗い夢を見てしまったけど、頑張らなくちゃ。

芸能事務所。

歩美「おはようございます!」

マネージャー「おはよう、歩美ちゃん。今日も元気だね」

歩美「ありがとうございます!」

マネージャー「今日はインタビューの仕事が入ってたね。緊張してないかい?」

歩美「はい、大丈夫です!今日のお仕事、楽しみにしてたんです!」

社長「ほう、そりゃ頼もしいな」

歩美「あ、社長さん!おはようございます!」

社長「おはよう。いい元気だ。その調子なら、今日の仕事も大丈夫そうだな」

歩美「ありがとうございます。頑張ります!」

社長「うん。緊張しないでな。まだ時間があるから、奥で休んでなさい」

歩美「はい!ありがとうございます!」

マネージャー「ホント、明るくて素直で。良い子ですよね。あの子が来てから、何だか社内も明るくなった気がしますよ」

社長「ああ。本当にな」

マネージャー「それに……。こう言っては失礼ですけど、あの子が来てから社長も変わった気がしますよ。その……」

社長「言いたい事は分かる。あの子が来るまでは、入ってくる者は金儲けのコマにしか見てなかったのに、って言うんだろ?」

マネージャー「あ、言え。そんなつもりじゃ……」

社長「良いんだ。その通りだからな。今もその考えが変わった訳じゃない。でもな。あの子にだけはな。そう振る舞えねぇのさ」

マネージャー「社長……」

社長「あの子がこの事務所に面接に来た日、覚えてるか?」

マネージャー「ええ。今でもハッキリ覚えてますよ」

数年前。

少女「ありがとうございました」ペコッ

社長「……ったく。最近のガキは全然ダメだな。妙に親に仕込まれて知識ばっかあるだけのポンコツばかりでよ」

秘書「社長。聞こえますよ」

社長「かまやしねぇよ。使えねーもんに気ィ遣ってどうすんだ。金になんなきゃ意味がねーんだからな」

秘書「まあ、それはそうなんですけど」

社長「で、次のは?」

秘書「はい、こちらです」ヒラッ

社長「んー、吉田歩美。小学6年。演劇のレッスンやダンスの経験などは無し?ナメてんのか?今時小6まで何の勉強もしてねーなんざスタートが遅すぎるぜ」

秘書「はあ。一応希望者の面接は全て行う、未来のスターを発掘しようという企画ですから……」

社長「チッ、まあ良いや。テキトーにやってさっさと終わらせるぞ」

秘書「分かりました……。では呼んできます」

社長「ハァ。今回の企画は不発に終わりそうだな」

コンコン

社長「どうぞ……」ハァ

歩美「失礼します!」

社長(ほう、ルックスは今までのガキの中じゃ抜群じゃねぇか……)

本日はここまでです。
少しゆっくりめの更新になります。

灰原「あれから、私は……」 - SSまとめ速報
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前スレリンクが貼れてないみたいなので貼り直します。

社長(だが、可愛いだけのヤツなんざごまんといるからな。一発ガツンとやるか)

社長「じゃ、そこに座って」

歩美「はい!」

社長「えー、いきなり言いますが。この世界は甘くありません。厳しいし嫌な事だらけだし汚い事だらけです。自由も減ります、身体を壊すかも知れません。その覚悟はありますか?」

歩美「はい!」

社長(......!何だ、このガキ?何て真っ直ぐな眼をしてやがるんだ?こんな真っ直ぐな眼、久々見たぜ......)

社長(......だったら尚更諦めさせた方が良い。こんな汚い世界に入れて綺麗な眼を汚す事はない)

社長(.....?俺は何考えてるんだ?商売道具にしか過ぎないヤツに。とにかくさっさと終わらせよう。コイツの眼を見てると胸がざわつきやがる)

秘書(社長が狼狽えてる?でもこの子、確かに今までの子と違う......)

社長「んん。では、あなたは何故この世界に入りたいんですか?」

歩美「はい、それは......」

現在。

社長「あの時のあの子のセリフ、覚えてるか?」

マネージャー「勿論、忘れませんよ」

社長「あんなキラキラした眼をして、漫画みたいな事を堂々と言ってのけたんだ。あれにはやられちまったよ。あの時、決めたんだ。この子だけは汚しちゃいけないってな。でも、あの子の望みも叶えてやりたい。だから、やり方を変える事にしたのさ......」

マネージャー「ええ。それが分かったから、私も彼女について面倒を見る為にマネージャーになったんですから。私も影ながら協力しますよ」

歩美「あれ、何の話してるんですか?」

社長「あ!あ、いや。何でも無いんだ。それより、少し早いけどそろそろ行った方が良い。渋滞に巻き込まれない内にな」

歩美「はい!行ってきます!」

マネージャー「では、私も」

社長「ああ、頼む」

社長(......あれから、俺は汚い手段を使わなかった。あの子にだけは。でも、こうして仕事が来ている。みんなあの子の純粋さを感じてるんだ)

社長(あの時、あの子の志望動機を聞いて俺は不覚にも胸が熱くなった。俺にも人間らしい感情がまだあったと気付かせて貰ったよ)

社長(その恩返しに、あの子の望みは何としても叶えてやりたいもんだ......)

屋外、社用車内。

歩美「あの、さっき何の話してたんですか?」

マネージャー「ああ、歩美ちゃんが面接に来た日の話をね。あの日の歩美ちゃんの姿に、社長すっかりファンになっちゃったんだから」

歩美「もう、からかわないで下さい!恥ずかしいなあ」

マネージャー「ゴメンゴメン。でも、あの日の事......。叶うと良いね」

歩美「......ありがとうございます」

そっか、そんな事話してたんだ......。

あの日、この世界に何故入りたいのかと聞かれて私は......。こう言った。

「突然いなくなってしまった、大事な友達と好きな人が、どこにいても私を見てくれる様に」と。

本日はここまでです。
また後日。

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