【左門くんはサモナー】左門くんはもう知らない【R-18】 (54)

需要不明の少年ジャンプ 左門くんはサモナーのR-18 SSです。
注意点として

・天使ヶ原さんがモブ姦されます
・名前有キャラが天使ヶ原さんと性的に絡む事はありません
・陵辱ではないですが、男の数が多めです
・原作にはいない悪魔が出てきます
・まだ書ききれてないのでエロシーン寸前まで投稿します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457069259

夕日がうっすら差し込み橙色に染まりつつある学校の廊下を、天使ヶ原桜は必死な表情で走っていた。
振り向けばゾンビか何かのように群がってくる男子高校生達の姿。
その視線は走ってはためくスカートから覗く脚や、乱れる髪から見える首筋に注がれていて
飢えにも似た、欲望まみれの表情を作っている。

「おんなだぁ……」
「また来た!?」

突如、教室のドアが開き新たな男の手が伸びてきた。
それを前傾姿勢でくぐり抜けると、勢い余って転びかける。
しかし、咄嗟に前方受け身気味に回転して立て直すと慣性のまま走り続けた。

(遅くなってる……! 今のうちに……!)

何故か追撃が鈍くなってるのに気づいた天使ヶ原は更にスピードを上げて引き離す。
一瞬見えた天使ヶ原のスカートの中に注視し過ぎて、男子らの足が鈍くなったとは気づかなかったようだった。



時は一時間ほど前へと巻き戻る。
放課後、テストを控えている天使ヶ原は嬉村笑美と共に図書室で勉強をしていた。

(なんだか今日は平和だったな……左門くんが何もしてこなかったし悪魔もこなかったし)

件の左門とは登校時にチラリと顔を合わせただけで、休み時間になってもどこかに消えては
授業ギリギリに戻ってきたりこなかったりを繰り返し、話すタイミングもちょっかいをかけられるシーンもなかった。
必然、左門を狙う悪魔に巻き込まれたりもしていない。

今日は良い日だなーと数学の教科書を見ながらそう考えて

(違う……! そうじゃない! 平和じゃなくてそれが当たり前!)

ガバッと頭を抱え自分に突っ込んだ。
所謂高校生の普通をどこかに置き忘れてしまったのに今更気づいたのだ。

「どした、てっしー? 頭でもいたいのかー?」
「ううん……環境に慣れすぎるのもよくないよね」

どういう意味なのかと疑問符を浮かべる笑美と、束の間の平和な時間に勉強を続ける天使ヶ原。
しかしそんな時も長くは続かなかった。
一瞬、生ぬるい風が全身を伝うようなドロリとした感覚に襲われたのだ。
暖かくて粘っこくて重いような、そんな風に空気そのものが変わった気がした。

「……!?」

錯覚というにはあまりに明確な変化に立ち上がり、最初に笑美を見つめる。
突然立ち上がった天使ヶ原に丸い目をして驚いているようだ。
以前のように魂を取られるとかそんな異常は見られない。
ふぅっと安心して

「……てっしーってさー、やっぱ可愛いねー」
「は……?」

親友からの言葉にぽかんと口を間抜けに開く。
笑美は立ち上がり、おもむろに抱きついてきた。

「え、ええ、え笑美、ととととつぜん何を」
「なんだよー親友だろーいつものことじゃん」
「そんなの笑美はした事なかったよ!」

べたべたと身体を押し付けるようにして肩とか腰に触れてくる。
力が強くて引き離そうとしても離せない。

「ちゅっ~」
「…………!!???」

挙句の果てにキスまでされてしまう。
初めてのキスが笑美!? と驚きで止まった後

「目を覚ませー!」
「むぐっ……!」

即座に手近の教科書を使い全力ではたいた。
全力のハリセンによって床へと笑美を張り付かせたまま、真っ赤な顔で息を荒げた。

「……はぁはぁ、どうなってるの……? 笑美はそういうキャラでも趣味でもないよね?」
「……うぅっ、てっしーの愛って…………は・げ・し・い……ガクッ……」
「うわああっ!」

介抱するのも忘れ、気絶した笑美から全力で逃げ出した。

(どうしよどうしよどうしよ笑美がおかしくなっちゃたよ!? これって絶対……)

混乱しながらも走っているとスマホから通話の着信音が流れだした。
すかさず取り出してから

「左門くんのせいだよね!」

通話先へと怒鳴った。

「おやおや酷いなあ。天使ヶ原さんは証拠も無しに僕が何かをしたと言うんだね。
 僕だって刺客の悪魔の被害者なのにね~」
「え、あ……ごめんね……私混乱しちゃって……」

平常時なら、左門の被害に合いまくりの天使ヶ原と言えど証拠無しに人のせいにはいきなりしまい。
元々そういう少女だ。
ただ親友のキャラぶれまくりの行動に理性も余裕もカツカツなのだ。

「……待ってよ。刺客の悪魔って言うんなら何か起きてるか知ってるでしょ!?
 突然笑美が私に、キ、……! じゃなくて……! 抱きついてきたんだよぉ!」
「ああ、わかってる。天使ヶ原さんも中庭のほうを見ればわかるよ」
「へ…………わあぁあぁあぁぁっ…………!?」

両手を頬にあてて絶叫する。あろうことか。
中庭の至る所でピンクのモザイクでもかかっているような十八歳未満禁止な光景が繰り広げられていたのだ。
放課後に残っていた生徒達が、男女で絡み合って性行為に耽っていた。

「あ、あわわわ……!!! さ、ささささ左門くん、なにこれ!?」
「これはシトリーという悪魔の仕業だよ。能力は愛とか性とか情欲とか……まあいいや。
 誰かれ構わず発情期の動物みたいにする下品な奴だね」
「そんな身も蓋もない……」

ちらりと中庭を見てみれば、愛と言うとおり付き合っている恋人同士もいるようだ。
ただそうではない組み合わせが大多数で、発情させるというのも間違いではないらしい。

(ベヒモス先輩みたいに、ああいう欲求を強くするのかな……)

何度もは見れず視線を逸らした。

「それでっ! どうしてこんなことになっちゃてるの!?」
「うん……僕がシトリーの攻撃を防いだのはいいんだけどね。
 まさか反動で学校全部に能力が広がっちゃうなんて誤算だったよ……」
「そうなんだ……私てっきりまた質の悪いイタズラでもしたのかと」
「……まあ狙ったんだけど」
「やっぱりお前のせいか……!」

案の定の左門である。

「へー天使ヶ原さんは悪魔の能力を防がずに僕だけやられてたらいいんだ?
 いいねいいね。そうやって生命を自分の好きに選択してるのは自分勝手な人間らしいよ。
 自己犠牲とか言い出す奴に限って、自分の番になったら逃げ出すもんさ」
「いやいやいや、そういう意味じゃないしどんだけ人間不信よ。
 大体左門くんが自分でやったって白状したでしょ」
「…………だってさ。使えると思ったんだ」
「っ……!」

低い声音が鏃となり鋭く尖り刺さるよう。
いつもとは違う響きに、出会って間もない頃のゾクッとした感覚が蘇る。

「勘違いさせちゃってると思うんだよ。
 天使ヶ原さんが悪魔に襲われても、僕がなんだかんだ言って助けるだろうってね。
 特にここ最近コメディ寄りでシリアス路線少ないしさぁ……」
「あ、そこ気にしてたんだ」

三話目までのドSクール左門くんはどこかに行ってしまって、今や悪魔の能力で
失敗するのび太君みたいなキャラ属性も付いているし、オチにすらよく使われる始末。
カッコいいシーンなどたまにしかなかったりする。

「うるさいよ。そりゃあ殺されちゃ困るけれど、シトリーの能力はいい機会なんだ。
 天使みたいにいい人で、学校の皆から愛される天使ヶ原さんが同級生に狙われるなんてさ」
「ひゃ…………ッ!!!」

中庭を見下ろすと、眼下にいる男女の生徒らは幸せそうに行為に耽っている。
それが先程の笑美みたいに自分に迫ってくるのを想像して、青ざめた顔でふらついた。
発情期の犬や猫ならうるさくじゃれつくで済むが、人間なら何が起きるか火を見るより明らかだ。

「む、む無理だよそんなの!? あ、あんなこと……!
 それに学校の皆を巻き込むなんて……!」
「またまたー。そうやっていい人ぶるんだから。大丈夫だって。
 ほら天使ヶ原さんだけはシトリーの影響を受けてないでしょ?
 不利じゃ無いように予め天使ヶ原さんには悪魔を憑けてたんだ。後ろをみてごらん」

「え、……わっ!?」

背後には豹の顔に逞しい人の身体を持つ悪魔がどっしりと立っていた。
身の丈は天使ヶ原よりずっと大きくいかにも悪魔らしい風体。

「そいつはフラウロスって言ってさ。悪魔の能力を防ぐ事ができるんだよ」
「そうなんだ……ありがとう、なのかな……なんかマッチポンプだけど…………」

とは言え、豹の口がゆがんで笑っているような表情をしているのが、人懐っこい猫のように
見えなくもなくて、なんとなく天使ヶ原も微笑んだ。

「たださ……

『猜疑心に満ちた愚かな人間が見たい……! 欲望に溺れる愚かな人間が見たい……!
 堕天した天使達のようにお前も悪魔にしてやろうか……!』

 ……っていう趣味の持ち主でね。僕も同意見だ」
「完全に左門くんサイドの悪魔……!! 味方ゼロじゃねえか!」
『マスターとはズッ友だ……!』

天使ヶ原はメキメキと音が鳴りそうなぐらい、スマホを握りしめ怒鳴った。
笑うというか嘲笑しているらしいフラウロスは天使ヶ原が堕落するのを見たいだけ。
天使が堕落する話しで一杯いける、そんなサモニズム溢れるフラウロスは欲望に
取り憑かれた人間が好きという意味で左門と話しが合うようだ。
猫好きなのも遠因なのか仲はよいらしい。

「それじゃゲームの時間だ。天使ヶ原さんが僕を探せたらシトリーの能力を解除してあげるよ。
 ほらほら、いつまでもそうしてていいのかい天使ヶ原さん?
 そろそろ誰かが君を見つける頃だよ?」
「ぅえぇっ……!?」

通話が切れる音に思わず周りを見渡せば、十数メートル先には相手がいないらしい数人の男子高校生。
にじり寄るように、天使ヶ原へと寄ってきている。

「女だ!」
「2-Bの天使の……」
「俺の愛を受け止めてくれ……!」
「ひぇぇぇ……!!」

悲鳴を上げ走り去ろうとしてから一瞬止まり、先生から預かっていた鍵で慌てながらも図書室を閉める。
そうして今度こそ走り出した。
男達の一人が図書室を開けようとして諦めると、天使ヶ原を追いかけるため走っていった。



(早く左門くんを見つけないと……!)

冒頭の危機を切り抜け、焦りながらも天使ヶ原は廊下を走っていた。
探索のために覗いた教室の大半には大抵誰もいないか、なんらかのカップリングが生まれていたりするだけ。
左門を探そうにも長くは見ていられなくて、天使ヶ原の頬が赤く染まるばかり。
もちろんゾンビ映画のごとく女を求めて徘徊している男子生徒に遭遇するのもしばしばである。

(どうすんだよもう! こんな状況で人探しなんてできるわけないだろ!)

生徒をやり過ごし、身を潜めながら胸中でぼやいた。
フラウロスが憑いている影響なのか、男子達よりも足が速かったり運動能力が上がってる。
疲れにくくもなってるが、肝心の左門は見つかっていない。

(力もちょっと強くなってるみたい。そういえば笑美を叩いて気絶させちゃってたけど大丈夫かな?
 ……でも怪我の功名かも。被害を減らすためにもせめて笑美が起きるまでに左門くんを探さなきゃ!)

『屋上だ』
「へ?」

決意を新たにして活を入れる天使ヶ原の背後でボソリとフラウロスが呟いた。

『……マスターと因縁浅からぬ場所なのだろう?』

言葉を追加してから姿を消す。

「……ヒント? 一応助けてくれてるみたいだし」

疑問を感じたが、こうしていてもしょうがないと思い屋上へと足を向ける。

「ってそんな都合よくいかないか……」

左門がよく勝手に開けてるためか、鍵がかかっていない屋上のドアを開く。
辿り着いたそこに左門はいなかった。
端っこのほうでやっぱり乳繰り合っている男女はいたが、そういうのは襲ってこないので
意識しないようにして、辺りや校庭を探す。
校庭でも例によって部活動中の男女が別の活動に励んでいるようだがやはりスルー。

『少女の身で性行為を見慣れてきている……これも堕天への道のり……』
「そんなんじゃないってば。もう…………あれ?」

一応返事をしつつ今度は体育館もチェックをすると何故か暗幕が窓全部にかかっているのが見える。
何かの行事があるわけでもないので在り得ないことだ。

「怪しい……左門くんは気にしなさそうだけど悪魔召喚って暗い所の方がそれっぽいかも……よし」

新たに向かう先を決め屋上から出ようとした所、扉が開かれ目の前に三人の男子生徒らが現れた。

「天使ヶ原、やらせろよ!」
「見つけたぞ……」
「愛させろ……!」
「ひえぇぇ……!」

ズボンの前を膨らませて欲望にギラギラと目を光らせている男達から後ずさる。
しかし逃げ場はない。屋上に避難はしごなんてものもないし、降ろす暇もない。
天使ヶ原は助けを求めるようにフラウロスを見るが、背景真っ黒でどす黒い笑みを浮かべるばかりであった。

(こいつ狙ってやがった!?)

驚きと騙されたショックで愕然となる天使ヶ原。
フラウロスは嘘つきでやはり味方ではないのだ。
屋上にヒントはあったかもしれないが、ただ逃げ道が少ない所へと誘導しただけ。
そもそも人間を騙して疑心暗鬼に陥れるのがフラウロスのデビルワークである。

「きゃっ……!」

腕を掴まれる。引っ張られるのに抵抗しようとするが反対の腕も別の男に囚われた。
力が多少上がっていても、男二人に敵うほどでもない。

「や、やめ……こんなことしちゃ、だ、ダメだよ」
「天使ヶ原とやれる……」

男の胸中に腕ごと抱きしめられるような形になる。
俯き顔を背け押しのけようとするが、別の男も抱きついてきて逃げる術が失われる。
興奮で荒くなった息が吹きかけられて、男二人の体温が嫌でも感じられる。

(い、いや……!? このままじゃ本当に……!?)

襲われる忌避感と恐怖。
嫌悪感が溢れだした瞬間

「「あつぅっ……!?」」

ドゥっと音を響かせて身体から炎が吹き上がった。

「な、なにこれっ……!?」

文字通り火柱となっていて、抱きつくなんてとても出来なくなった男らが何メートルも遠ざかる。
キャンプファイヤーを何倍にもしたかのような火力だが、天使ヶ原は熱を感じていないし服にも影響はない。
しかし男達は近寄る事もできず、服も若干焦げているようだ。

以前、南米で左門が悪魔の能力で火ダルマになっていた事はあった。
それよりも炎の勢いは激しくて、ここが室内であれば確実に火災が起きていただろう。
ただ、この場に最初からいた男女は行為に耽っていて、見向きもしていないようだ。

「もしかしなくても、悪魔の能力……!」

背後にいるフラウロスの豹面が、見てわかるぐらい渋面になっていて開いた口を歪めている。
天使ヶ原に憑いているせいで、守護とは別に能力が勝手に出てしまったようだ。
悪魔に炎を使う能力は多いがフラウロスのものは強力な部類になる。
炎は感情に反応しているのか、段々と落ち着いてくると勢いも弱まってきた。

「や、火傷しちゃうから、もうこないでね! ……もう! 左門くん見つけて絶対ヤキいれてやる!」

近寄れず呆然としている男らの包囲をささっと抜けて屋上から逃げ出す。
火の粉を散らしながらも天使ヶ原は体育館へと駆けて行った。

今度は捕まらずに体育館の正面口へとつく。
ドアを開くと真っ暗で、一瞬後ずさるが意を決して暗闇の中へと歩みを進めていく。

「わ……!? って貴方達……!?」

突如ライトが点く。
見れば十歩ほど離れた所に檻があり、そこには天使ヶ原桜ファンクラブの面々。
檻は鉄などではなく、黒くぬめりとした見たこと無い素材でできているようだ。

「もしかして左門くんに捕まっちゃったの!? 今出して……」
「来るな天使ヶ原! これは罠だ! 俺達は悪魔のせいでおかしくなってるんだ!」

中心にいた下呂が檻をぎゅっと握り締めて叫んだ。
額は汗塗れで憔悴していて、大きな声とは裏腹にとても元気がなさそうだ。
そして他の面々も同じく、とても疲れ果てた顔をしていた。
しかし瞳だけは爛々と鈍い輝きを放っている。

「天使ヶ原……やりたい……」
「きてくてぇ……愛させてくれぇ……」
「天使ヶ原、天使ヶ原……て、しがわらぁ……」

どう見てもシトリーの影響下にある何人かが檻の中から手を伸ばしてきて、思わず後ずさった。

「ちぇ、それ以上近づいたら檻が消えてたんだけどねぇ」
「左門くん!? ……なんでこんな事を!」

ファン達が囲まれた檻の向こうに、いつもどおりの左門が立っていた。
この事態を引き起こしてる事など感じさせない自然体で邪悪な笑みを浮かべている。

「なんでって……? 天使ヶ原さんがいい人だからに決まってるでしょ。
 いい加減天使ヶ原さんには地獄が似合う最悪な人間になってもらわないと。
 そう、こいつらがこうなってるのは天使ヶ原さんのせいだよ」
「そ……それで皆を巻き込むだなんて……私は怒ってるんだよ!」

身体から炎が巻き起こった。
ただ炎を出すつもりはなかったのか、慌てて手で払い消す。

「天使ヶ原が炎を……!」
「天使の炎……! まさかウリエル! やっぱり天使ヶ原は天使だったんだ!」
「お前ら気を張れ! 天使ヶ原に裁かれたくないだろ!」

(こいつら元気だな!!)

天使ヶ原桜ファンクラブに心中つい突っ込む。
炎を出したために、性愛で囚われていた何人かは神に祈るポーズで信仰を取り戻しているようだ。
ちなみにウリエルはキリスト教四大天使の一人で神の炎という意味があり、裁きを司っている。

「……懸念してた通り、天使ヶ原さんが周りの『欲』にも影響を与えちゃってるんだねぇ……」
「おかしいと思ってたんだ! 天使ヶ原が左門とよくいるのが!
 悪魔を召喚する左門を天使ヶ原が止めていたんだな!」

色々と突っ走る下呂。
左門からある程度話しを聞いているのだろう。
シトリーの事だけじゃなくて、天使対悪魔みたいな図が頭の中に浮かんでいるようだ。
天使ヶ原と左門がデキてるなんて噂があったせいもかなり大きいが。

「さて……こいつらはこう言ってるけどさ、天使ヶ原さんが僕を止めたいんなら
 檻の中をを抜けてこないといけないわけだ。でも覚悟したほうがいいよ。
 天使ヶ原さんの炎は感情の昂ぶりに左右される。
 敵全てを焼き尽くすまで止まらない。上手く行けば学校丸ごとだってイケる!」
「イケちゃダメだよ! 大体敵って……」

邪悪な哄笑をあげる左門に突っ込んだ所でファンクラブの面々を見て、固まった。
先程近づいたら檻が開くと言っていた。
そして彼らは幾らか元気になっているようだが、悪魔の引き出す欲求にはそうそう抵抗できない。
ファンクラブを作るほどの敬愛なり好感なりを持ち合わせている面々が
仮にも偶像への性愛を煽る悪魔の力に我慢できるものだろうか?

もし捕まってしまって、起こるだろう出来事に感情を抑えれなかったら
フラウロスの炎が彼らを敵とみなして焼き尽くしてしまう。
先程、行為中のカップルは火柱となった天使ヶ原に見向きもしなかった。
とするとファンクラブの生徒なら、焼かれながらも欲望をぶつけようとしかねない。

文字通り、死んででも欲求を叶えようとするのが悪魔の能力だ。
つまり天使ヶ原の感情と行動次第では、下呂達が死んでしまう可能性がある。
屋上でヤキを入れるとは宣言したものの檻越しに左門を炎で狙うなんて器用な事もできない。
八方塞がりだ。血の気が引き青ざめた顔の天使ヶ原は動けず立ち竦んだ。

「気づいたかい? 来てごらんよ。こいつらだって我慢してくれるかもしれないよ?
 ……僕としては天使ヶ原さんが作ったウェルダンステーキが見たいなぁ」
「ここここわい事言わないでよ! ……だ、大体! 左門くんを探せたら止めてくれるって言ったじゃん!」
「…………ゲームは隠れんぼじゃなくて鬼ごっこだから、勘違いしちゃダメだよ」
「絶対探せたらって言ったよ!」
「僕がルールブックだ!」

解除する気が全く無い左門に怒鳴っても事態は変わらない。
そんな天使ヶ原を応援するようにファンクラブの面々が立ち上がった。

「なんだかわからねぇけど、左門を捕まえるんだろ! 俺達に構わずやってくれ!」
「我慢すればいいんだろ!」
「きついがなんとか耐えてやる!」
「大丈夫! 避妊するからっ!!」
「信仰だ! 天使ヶ原を信仰し続ければこれくらい!」
「天使が俺達にはついているんだ!」

「もうダメなのがいる!?」

どたばたと問題のファンは周りに取り押さえられているが
十人ほどいる他のメンバーの中にまたいないとは限らない。

『その天使を汚してしまおうというわけだ』
「「「あぅふぅっ……」」」
「誘惑すんなーッ!」

新たに三人が悪魔の囁きに股間を抑えてうずくまった。
背徳の欲望が信仰を上回ってしまったようで、堕落した人間にフラウロスもにっこりだ。

「うぅ……」

天使ヶ原はもう完全に動けない。
このまま左門の所へ向かえば、まず間違いなくメンバーの誰かに襲われてしまう。
そうなれば他の男子らも欲望を止められまい。
集団という狂気は容易く個人を侵してしまう。

三十秒。一分。三分。
悩み逡巡してるうちに、正気を無くしかけて欲望ゾンビと化しているメンバーまで出てきている。

「そんなに悩むんなら天使ヶ原さんはもう帰っていいんだよ?」
「え……!?」

そこへ、胡散臭いくらいに優しい声音。

「天使ヶ原さんが帰った後、夜まではこのままでこいつらは檻の中。
 他の学校内の奴らにはたっぷり宴を楽しんでもらおう。
 なぁに天使ヶ原さんがいてもいてなくても結果は同じだった。
 だったらもう、いないならいないで構わないよ。明日には全部終わってるさ」
「………………っ」

満面の笑みに凶悪さを込めて言い放つ左門と、フラウロスが口を大きく歪めて牙を剥き出しにする。
つまりは、天使ヶ原桜ファンクラブのメンバーと学校の生徒達を見捨てろと言っているのだ。
忘れて布団でも被ってお前はゆっくり寝ていろと。
正に悪魔の誘惑。
ここまでの絵を最初から描いていたに違いない。

「い、いかないでくれぇ……!」
「すきなんだよぉ……!」
「くるしぃんだ……! てしがわらぁぁ……!」

それを聞いていた男子らが悪魔の檻から手を伸ばし騒ぎ出す。
口々に求め、欲して。されども与えられない。
矛先が定まらない淀んだ淫欲の衝動に、涙すら流し懇願する。
元はどれだけ信仰心に溢れていたとしても、こうなってはうすっぺらな紙切れ同然。
揺らいでいる天使ヶ原を前にして、信徒の彼らが悪魔の職能に耐えれるはずもない。

(ごめんなさい……)

そんな欲望にまみれた情けなくもみっともない男達の姿であったが
天使ヶ原の顔には憐憫の想いが溢れ出しそうになっていた。
左門の仕業であっても、彼らがここで苦しんでいるのは私のせいだと思ってしまう。

「…………お願い左門くん! 私が地獄に落ちてもなんでもいいから、皆を助けてあげて!」
「はぁっ…………ダメだって。それじゃあなんの意味もないよ。
 天使ヶ原さんには是非とも、こいつらを焼き払うなり見捨てるなりしてもらわないと」
「そう…………わかったよ……………………」

呆れたように溜息をつく頑なな左門の言葉に頷き俯いた。
目を瞑った表情には深い苦悩が浮かび、長い沈黙があった。

「…………………………左門くんなんて……! もう知らない!!!」

そして烈火のような叫びと共に、真っ直ぐに左門を射すくめた。
可愛げな少女とは思えないほど強く、凛とした、圧のある声の響き。
周りに炎がきらめき散って、瞳には真紅の決意が彩られる。

「…………っ、だったらどうするんだい? 天使ヶ原さんに嫌われるなら本望だ…………って!?」

一瞬、圧倒されたかのように口ごもる左門は驚きで最後まで続けられなかった。
天使ヶ原がジャンバースカートの制服を脱ぎ始めたのだ。
リボンを解きブラウスのボタンを外し、スカートのファスナーを下ろすと青の制服が床へと落ちる。
半裸の姿から覗かせるブラとショーツは白にほど近い薄桃色に刺繍のついた可愛らしいもの。

「「「「「おおおおっーーー!?」」」」」

その肢体は、信者の面々にはなによりも強烈な気付け薬となり、檻へとかぶり付く。
天使ヶ原は好色な視線に俯き怯みかけるが、恥ずかしげに男達へと向き直る。

ブラウスに下着とソックスだけを履いた格好の天使ヶ原は、性欲と情欲に満ちた視線を
意識してしまい、落ち着かないのか太腿を擦り合わせるようにしてそこはかとなく身体を隠す。
でもそうしてるだけではなく、ぎゅっと目を瞑ってから一歩踏み込む。
もう一歩、また一歩と歩みを進めて、檻の数メートル手前へと辿り着き目をゆっくりと開いた。

「……その、私なんかでいいんなら……いいよ……もう我慢しなくても…………」

ある地点を踏み越えた瞬間、檻が消え去って天使ヶ原へと男達が殺到した。
自己犠牲なんてヒロイックな気持ちはない。
けれども、そうしたかったのだ。
欲望の獣達が押し寄せてくる光景から天使ヶ原は最後まで目を逸らさなかった。
ちなみに下呂は欲望に抵抗してるうちに、周りに蹴倒され踏み潰されて失神していた。

ここまで
続きはエロ部分が終わったら投稿します。
書き忘れてましたが、以前から書いてたのでファンクラブの呼称が原作とは変わってます
しかし、左門くんでギャグはともかくエロを求めてる人はいるかなぁ

左門くんでエロ求めてる人はいるかもだけどモブレを求めてる人はいないんじゃねぇかなぁ

この文章力なら何書いても面白いよ
需要は知らん

一人だけ世界観がデストロ246の人はこの機会に処女を捨てられるんだろうか
無理か…

ちょっと想像もつかなかった趣旨のスレが出てきてしまった

>>11
なんという正論
エロの方向性が明後日とは

>>12
左門くんとネビロスがエロい事してるのを想像できなかったのが敗因か……

>>13
ヤーさん出るとジャンル変わるので……あっちレズしかないし

>>14
自分では大暴投というのには気づかないもんですね……

続き。ほぼエロのみです

「……ぅっ、んんぅっ……!? は、あぁっ……んむぅっ……!」
「…………はぁっっ……すげぇ俺、天使ヶ原とキスしてるっ! …………じゅっずずっ!」

すぐに一人の男が天使ヶ原を抱きすくめて、無理矢理に唇を奪い音を立てるほどに吸い付いた。
愛するというよりは貪られるような強引過ぎる求め。

(少女漫画とは……全然、んん……違う……それに……ち、からつよ……くて……
 くる、しぃ…………でも……これだけなら……)

けれども、天使ヶ原には少しの安心があった。
嫌という気持ちがあるにしろ、感情でフラウロスの炎を出してしまうことはなさそうだと。
こういった行為に対して天使ヶ原は免疫が全く無いし、漫画やドラマのような
ムードあるものを夢想してはいたが、覚悟していればなんとか我慢できた。
彼らの苦しみを少しでも和らげれるならば本望だった。

「んっ……むむっ……」

とは言え、まだまだ始まったばかり。
男の欲望など爪の一片も体験していない。

「ふぁ、あ、んんんんっ……!?」

舌が強く強く押し込まれ、口内にまで侵入してきた。
知識では知っていても自分がされるなんて想像もしていない交合。
入ってくる舌先から自分の舌を逃がそうとしても、ねぶるように口内を掻き回してくる。
男の唾液の味を無理矢理に味合わされる。

「てしがわらのおっぱいっ……!」
「ひ、っんんっ……!?」

別の男がブラウスごと胸を揉み始めた。
遠慮ない力でブラのフレームが歪み、痛いほどに手が食い込んできて
苦痛で漏れでた吐息が男に吸われる。

「ん、んんむぅっ…………」

呼吸しようと開いた唇を塞がれ、舌で舌を絡み取られた。
感じたことのないぬめりと軟質の肉の感触が無理矢理に伝わってくる。

「…………く、くるしぃってばっ! ……はぁはぁ、んむぅっ!?」

どうにか引き離した所で、また別の男が押し付けるようにキスをしてきた。
呼吸のタイミングが取れないほどの執拗な責めは、逃げるチャンスなどありはしない。

「すげぇエロい……」
「…………んっ!?」

誰かの手がショーツ越しに触れてきて、ビクッと身体が震えた。
撫でるように、でも力強くまさぐってくる指の動きは興奮を表しているようで
天使ヶ原を犯したくてしょうがないのというのが伝わってくる。
もちろんそうしたいのはその男だけではない。

「思ったよりでけぇやわらけぇ……それにてっしーいい匂いがする……」
「おっぱい……おっぱい……」

二人の男が力任せに引っ張ってブラウスごとブラが弾け飛んだ。
陽に焼けていない白い肌が曝け出されて、制服を着ている時の印象より大きな胸が男達をより興奮させる。
お椀状の乳房が骨張った男の手でぐちゃぐちゃに歪められて
薄くピンクがかった乳首がぎゅっと摘まれ弄られた。

(わけ、わかんなく……なりそう…………)

男達に囲まれて好き放題にされて。嵐に巻き込まれた船のよう。
自分がどうなっているのか、どうされているのかが掴めなかった。
それでも意思の糸を必死に手繰り寄せ、巻き取ろうとして。

「んん、ァっ……!?」

新たな刺激に襲われて頭の中が真っ白になってしまう。
ビクンと大きく電流でも受けたかのように身体が跳ねる。
でもされている事は何も変わっていない。
変わってしまったのは天使ヶ原自身だった。
ぬめった舌の感触。身体に触れている男の手。汗くさい男の体臭。熱すぎる体温と息遣い。
快とはとても言えないそれが、ひっくり返ったかのように心地いいものに変わってしまったのだ。

例えるなら愛おしい恋人と愛し合っているような安心感。
天使ヶ原には今までそういった経験は無いが、好きな誰かと触れ合っていれば
そう感じるのかもしれない幸福感が止めどなく湧き出てくる。
無遠慮に触れてくる男達の荒々しい手から、愛情が伝わってくるようだ。

(う、うそ!? こ、んなの…………!)

一瞬フラウロスの炎でも出してしまったと勘違いするぐらいに身体の奥が熱くなる。
どろりとしたものが内から融けて溢れ出しそう。
嫌だったはずなのにもっと触れてほしい。自分だって触れてみたい。
悪魔の欲望にも似た渇望を周りの男達に感じてしまう。

『ふん、我が力でそ奴らを焼いていればよかったものを……淫らに享楽を貪るがいい!』

これは、シトリーの情欲を司る能力が男達を介して伝染しているのだ。
フラウロスのマスターである左門ならともかくとして、能力を借りている程度の天使ヶ原には守護が足りていない。
能力に完全に侵されてはなくとも、影響は受けてしまう。
同じソロモン系列の悪魔の中でフラウロスよりシトリーのほうが格上というのもあるだろう。

豹の悪魔は男達と自身の色欲に襲われる天使ヶ原の姿を見てテンションを上げ、舌なめずりをしている。
左門のほうは煽ったりも得意の悪魔の解説をしたりもせず、あまり視線を向けていない。
企てが成功しているにも関わらず、どこかつまらなさそうにも見えた。

「感じてるぞ」
「俺が感じさせたんだ」
「俺だって。濡れてきてるぜ」

天使ヶ原を囲む男達は想いが伝わったとでも、本気で考えているに違いない。
でも、そう捉えられてもしょうがないだろう。

眉をひそめて耐えるようだった天使ヶ原の表情は、もう険しさを保てずにいた。
目尻が落ち、細めた瞳には涙が滲んでおり、力が入らないように開いた口からは甘く鼻にかかった吐息がこぼれる。
未知の感覚に蕩けてしまっていて、朱に染まった頬には艶めいた色香がある。
身体を隠すようにしていた腕は、今にも解けて開きそうだ。
周りの男達は天使ヶ原の見たことの無い表情や仕草に意気込み迫ろうとする。

「ま、待って……! はぁ、ん、はぁっ……私が、その……して、あげるから……!」

それを察して天使ヶ原がかろうじて制止する。
ただの人間ならそのまま欲望に流されてしまうだろうが、そうはならなかった。
あくまでも苦しむ彼らを癒やして、左門を止めたいのが目的なのだ。
しかし先程のように代わる代わる襲われては、悪魔の能力に抵抗も何もできない。
少しでも主導権を握ろうと苦し紛れの提案をする。

「なら俺が……」
「ふざけんな。次は俺だろ」
「天使ヶ原を一番愛してるのは俺なんだよ」

俺が。俺が。俺が。
悪魔の欲望に駆られた彼らは自身の欲望ばかりが表に出ている。
それだけ天使ヶ原を魅力的に感じていると言う事。
放っておけば喧嘩どころでは済まないだろう。

「喧嘩しないで。……貴方からしてあげるから。みんな待ってて……」

けれども天使ヶ原を困らせたくはないというくらいには信仰も愛情もあって、言われおとなしくなる。
天使ヶ原とファンクラブの面々以外ではこうはならないだろう。
ブラウスを脱ぎ、白の下着だけになると目の前にいた男を導いた。

「やった! ああ……すげぇ……天使ヶ原ってすげぇ抱き心地いいよぉ……
 スベスベしてて……ふわってしてて……すげぇすげぇよ」

男にいきなり抱き締められて、剥き出しの背中や下着ごと尻を撫で擦られる。
よほど感動しているのか語彙が少なく乱暴だ。

「はぁ……んっふっ、んっ……」

けれど、そうされるのが今の天使ヶ原には心地いいのだ。
自然と口から微笑みが漏れでている。
悪魔の誘惑は、天使ヶ原であっても幸せそうな笑顔を零してしまう。

「……っんっ……すげぇプルッてしてて……もっと……」
「……んむむぅっ……れろっ、んっ、ちゅ……」

キスをする男は唇を舐め挟むようにして感触に感動する。
応えた天使ヶ原のほうから舌を伸ばし、男の口内に挿し入れた。
遠慮がちに動くそれが湿った音を響かせて絡み合う。

(こんなの……おかしい、のに……きもち、い……)

抱擁しキスをしている様子は、ずっと前からの恋人のよう。
ただそれだけでは我慢できないのか、男のほうがジッパーを下ろし
張り詰めたモノをさらけ出して、天使ヶ原に握らせた。

「あ、男の子の……こんな堅いんだ…………」
「その、まま……! 握って……は、はやく……!」
「……ん、……ちゅっぷ、んむ……ちゅっ、んぉ……」

唇を重ねつつも、初めて触れる男のモノを言うとおりに握る。
想像で多分こうするんだろうと、蒸れた肉の塊を擦り始めた。

「あ、あ、おぉぅっ! 天使ヶ原が俺のちんこを……すげ、もっと……もっとしてくれ!」
「ん、ちゅっ、れろっ……こ、うかな……?」

(すっごいカチカチして熱い……気持ちよくなってくれてるのかな……?)

細い指が前後に動いて、先走りがぬちゃぬちゃと音をたてる。
慣れない感触だが抵抗感なんて、まるでない。
時折不規則に震えるそれが素肌に触れて熱とぬるぬるとした感覚を伝えてくるのを
どこか嬉しく思いながらも天使ヶ原は行為を続ける。

(ヌルヌルがいっぱい出てるよ……きっと気持ちいいんだ……)

テクニックなんて無い手コキなのに男ははぁっと荒い息をつき悶えている。
天使ヶ原とキスをしながら扱かれる快感が強すぎるのだ。
周りの男達も羨ましすぎる光景を前に、目を皿のようにして見つめている。
自分がされるのを想像しながら自慰を行うものもいた。

「ちゅぅっ、んぇ……ちゅ、じゅっ……」
「……あ、くそっ……もう……」

ぶるぶると男の身体が目に見えて震える。
もっと味わいたいのに、強すぎる興奮に抗えない。
柔らかな指が余りがちな皮を伸ばし、硬い幹が前後に扱かれ続けて。

「うあっ…………!」
「……んぅ!?」

信仰している天使ヶ原の奉仕に、わずかな時間で男は絶頂を迎えた。
天使ヶ原の手の中で一度大きく跳ね、密着していた身体に濃い液が振りかかる。
どうすればいいのかわからないまま、抱き合う姿勢で射精を受け止める。
脈動する肉の竿が出しきるまでずっと握ったままでいた。

「はぁっはあっ……すげぇよっ……てっしーうますぎ、きもちよすぎ……」
「うん……喜んでくれると私も嬉しいかも……」

その言葉に偽りは無い。
頬を赤くした天使ヶ原の微笑には男を満足させたという自負と、それ以上の喜びが垣間見えた。
もし天使ヶ原が恋人を作って結ばれれば、こんな顔で行為に及ぶのだろう。
腹と臍にへばりついた欲望と愛情の残滓にすら愛おしげな視線を向けている。

「つ、つぎは俺だろっ!」

そうしていると、射精したばかりで脱力してる男を押しのけて、後ろにいた一人が目の前に寄ってきた。
ズボンもトランクスもすでに脱いでいて、張り詰めたモノを見せつけるようだ。

「わかったよ……いいよ……」

ほころんだ笑顔のまま、抱きついてくる男に応じる姿は、ある意味で天使そのものだったかもしれない。
それが愛欲と欲望に満ちた淫らな天使であったとしても。

(……どうしよう…………止められないよ……こんなにいやらしいことしてるのに…………)

せがまれ、またキスをしながらもひとりごちる。
痛いほどに、けれども愛が感じられる強い抱擁。
さほど逞しいとは言えないファンの男なのに、ごつごつとした身体に抱かれていると
幸せすぎて、気持ちがよくて、このまま身を任せてしまいそうになる。
このまま気を緩めてしまえば、細い肢体は激流に流され世界の果ての滝へと堕とされてしまうだろう。
それでは左門とフラウロスの思う壺になってしまう。

(しっかりしなきゃ……! 左門くんを止めないと……!)

官能的な悦びを隠し切れないながらも決意を新たにして

「ん、ゃぅっ……!?」

繋がった口内からくぐもった声をあげてしまう。
じゅるじゅると音がするぐらいに舌を吸われたのだ。
ディープなキスは、まるで爬虫類が獲物を舌で絡め取るよう。
男がより天使ヶ原を味わおうと、涎を吸っては飲み込んだ。
上向きで斜めに向いた天使ヶ原の唇からは溢れた唾液がこぼれ落ち、喉を伝っていく。

「……はっ、あっ……んぅ、ぁはぁはぁっ……」

ようやく男が離れた時には唾液どころか酸素を奪われて息も絶え絶えになってしまう。
しかし赤みを増した表情には苦しさだけじゃなく、官能の色合いも濃く描かれていて
深いキスに感じていたというのがよくわかる。
そして、男の方もキスだけで終わるはずもない。

「きゃっ……!?」

頭と肩に手を乗せられ膝をつかされると、目の前には反り上がった男の象徴。

「口で……! てて、てっしー……! な、舐めてくれよっ!」
「な、なめて……?」

押し付けられたモノで顔が覆い隠され、先端から滲み出た粘着の液で汚される。
天使ヶ原にはあまり性の知識は無い。
セックスは知っていても、口で舐めるなんて行為はすぐにはわからなかった。
けれども、天使ヶ原が小首を傾げながらも言うとおりにする。

「こう、かな……ん、れろっ……」
「ふぉ、ぉっ……!」

先を舐めると男が素っ頓狂な高い声を上げた。
そのままエラが張った丸みのある亀頭へと何度も舌を這わせる。

「れぉっ……んぇ、れおっ……ちゅっ……」

目を瞑りながら、キスするように唇を触れさせる。
そのまま先の尿道を舐めれば、ツンとした味わったことのない感覚と獣染みた男の匂いが鼻腔に広がった。
男が気持ち良いのか何度も呻いて、天使ヶ原の髪に宛てられた手がプルプルと震える。

「あ、ああ、あ、きもち、きもちいいよ……てっしー……あ、あ、ああぁっ」

始まったばかりだというのに、欠片の余裕もない男の声。
フェラチオというには拙い奉仕であれど、天使ヶ原にしてもらうというだけで天にも昇る心地なのだろう。

(……私、すごくいやらしいことしちゃってるんでは…………?)

そんな自覚はあるのに、止めたいとは思えなかった。
それどころか気持ちよくなってくれているというのが伝わってきて、幸せとすら感じてしまう。
汗混じりの雄臭い匂いも塩味がある先走りも子供のような男の声も、興奮を高める要因にしかなっていない。

「ん、れぉっ……んん、ぇぉおぉっ、ぴちゃれろぉ……」
「ああ、ああっ! そ、れっ……いいぃ、いぃ、もっと! もっとして!
 てっしーの口の中ヌルヌルで柔らかくて……いいよ!」

両手で幹を握り、亀頭を咥えたまま上下に舌を触れさせる。
勝手に溢れてくる涎が潤滑油となってぬちゃぬちゃと粘膜が湿った音を響かせる。
れろれろといやらしく舌で余りがちの皮の中までを掻き回し、濃い味に微笑を浮かべた。
見下ろす男は気持ちよさと天使ヶ原の奉仕している姿にどんどん昇りつめていく。
握った手と口の中でモノがビクンビクンと跳ねようとしている最中

「あ、あぁ! もうっ……で、でるよっ!! てっしー飲んで!」
「んんっ……!? ん、んんぅっ……」

突然に射精に至った。
濃くて塊めいた液体が、エグみの持つ生臭さと苦味を伴って口中へ広がっていく。
舌先に何度も放たれるそれは酷い味わいなはずなのに、今の天使ヶ原には嫌悪感どころか悦びと深い満足感があった。
先程手コキをしていた時と同様に棒を握り、それどころか扱いて更に射精を促していく。

「ん、くっ……こくっ……ん……ん、ちゅちゅぅっ……」
「ぅああぁ……飲んでる……てっしーが吸って……きもちい……」

もう指示をされずとも自分から精液を呑み込んだ。
濃いそれを溢れていた涎と一緒に嚥下して、音を響かせて吸い出す。
肉棒が口の中で震えてまた精を吐き出すのを啜り取っていく。

(まだ、出てる……変な味なのに、美味しい……って思っちゃってるよ……)

瞳に少しの驚きとたっぷりの悦楽を浮かべながら、男が全てを出しきるまで唇を離さなかった。

「……ちゅ、んぅっ…………ちゅっぽっ……!」
「あぅっ! ……エロすぎるよぉてっしー…………こんなエロくて可愛いだなんて最高だよてっしー……」
「なんか褒められてる気がしないけど……喜んでくれてるんならよかった」

にっこりと見上げてくる天使ヶ原に、改めて男は胸を高鳴らせた。
しかし愛欲の天使は彼一人のものではないのだ。
天使ヶ原が次の男へと向き直って、また奉仕に励むのを見送って次の順番へと並び直した。



『おかしい……淫欲の影響下にある人間が規律正しく……?』

淫らな奉仕を行う天使ヶ原を見ていやらしく笑っていたフラウロスだったが、訝しげな顔を作る。
本来ならば天使ヶ原を取り合いになって骨肉の争いを繰り広げてもおかしくはない。
事実、学校にいる男女らはみな理性などなく性を貪っている。
天使ヶ原本人だって、シトリーの職能によって悦楽だけを求めるのが普通だろう。

あまりに穏やか過ぎる性交に思えた。悪魔のサバトとはとても言えない。
何かずれていると考えながらも、成功した目論見を自分から邪魔するわけにもいかず動けない。
左門のほうはもう背後を向いてじっとしているだけ。
舞台が始まっている今、脚本家と演出家が口出しする権利などもうないのだ。

「てっしーの、てっしーのおっぱい……!」
「やぁ、あっ……! んんぅっ……!」

次の男は真正面から、いきなり胸を両手で鷲掴みにした。
大きめの綺麗なお椀型をしたそれが手の形に無理矢理歪まされる。

「おっぱいって、おっぱいって、こんなに柔らかいんだ……!」

男はあまりに幸せな感触を味わい涙が出そうな笑顔で叫ぶ。
スフレチーズケーキのように、ふわっと溶け崩れそうなほど柔らかい胸へ指が沈み込む。
そのくせ、マシュマロがいっぱいに詰まっているかのように張りが押し返してくる。
揉みながら揺らすようにすれば手の中でぷるぷると弾けだしそうだ。

「はぁ、あぁ……そんな揺らさないで……んくぅっ、んんっ……!」

そして男を更に興奮させるのが天使ヶ原の表情。
うっすらと赤らんだ頬は男の手に合わせるかのごとく鮮やかに色づく。
男の凝視する視線に耐え切れないように逸らす瞳は感じるのを恥じらっているよう。
それでも堪え切れないように漏れでた吐息は抑えきれない熱を放っていた。

「ひゅっ……んぁっ……!」

(変な声……出ちゃってる……)

胸を触られるだけでピリピリとした痺れのような感覚が走る。
揉まれればゾクンっとした響きが身体の奥深くまで届いてきそう。
感じれば勝手に声が出てしまうというのを天使ヶ原は初めて知った。

「ひぅぅぅんっ……!?」

きゅっと二つの乳首が摘まれ捏ねられる。
ゾクゾクと全身が震えて、それに抗するように柔らかな腹がきゅっと締まった。
敏感過ぎて胸だけでいってしまいそうになるくらいだ。

「れろぉ……んじゅぅっ…………!」
「す、吸っちゃ……!? は、ぅんっ……! 口の中……ぁついっ……んぁぁぁっ……!」

ツンと主張している先端を口に含まれ音が鳴るほど吸われた。
気持ちよさが胸の先端に集中して飛び散ってしまいそう。
ぬめった舌で揉み込まれた乳首が、くすぐったさを何十倍にも強めた感覚に襲われる。
痕が残りそうなぐらい強く吸われれば、つい男の頭にすがりつくように抱きしめてしまう。

「はぁ……うめぇてっしーのおっぱい……が、がまんできないから……おおお、おっぱいでしてよっ!」
「おっぱいって……? ひゃぅっ……!?」

抱かれるように押し倒され、他の男達が順番待ち中に体育倉庫から持ってきたマットへ寝かされた。
仰向けになった胸が、勃起したモノで不意に突かれて声が出てしまう。
そのまま男は寝ている天使ヶ原に跨ると、双丘でモノを挟み込ませた。
余裕があるというほどでもないが、豊かな乳房はしっかりとそれを包みこんでいる。

(そ、そんな事までしちゃうんだ……!?)

想像の埒外な行為に天使ヶ原は驚愕するが、男が止まるはずもない。
ぎゅぎゅっと張りのある乳房を揉み込むようにしながら腰を使い始めた。

「ゃっ……んぁ! ……おっぱいぐちゃぐちゃになってるよ…………」

乱暴な胸への挿入でもじんじんとした疼きが快感を伝えてくる。
男の手で中央へと押し潰されて半球を保てなくなった乳房が、熱く硬すぎる肉棒へ塗り込められる。
激しく前後する亀頭の先からだらだらと汁が零れ、肌を汚していく。

「あぁ、すげー気持ちいい、おっぱいいい……にゅるにゅるですべすべで……
 パイズリできるぐらい大きいなんて……すげぇよてっしーの身体エロ過ぎるよ……!」

褒められてる気がしない言葉なのにぞくぞくぞくっと全身が震えた。
自分がそんな風に欲望の対象となっているのに興奮してしまうのだ。
女性の象徴である大切な乳房をエロ目的で使われてる事に幸福すら感じてしまう。
それを主張するように乳首が固くなって悦んでいるのが見ればすぐにわかった。

(……気持よくなってくれてるのが……すごく嬉しいかも…………
 それに暖かくて固いのがなんか安心する……)

眼前にある張り詰めたモノを見つめ、天使ヶ原の喉がこくりと動いた。

「うん……そんなにしちゃいたいなら私のおっぱい好きにしていいよ……
 私も手伝ってあげるから……おっぱいでいっぱい気持ちよくなって……」
「お、おおっおおお…………! てっしー最高だよ!」

男の両手の上に手を重ねた天使ヶ原も、男と同じくらいにいやらしく嬉しそうな表情をしている。
相手が喜んでくれているのが幸せで幸せでしょうがないのだ。

「くそ、ずりぃ……俺も……やりてぇ……」

その様子に周りの男達は興奮混じりに嫉妬して順番を心待ちにしている。

「ん……はげし……! ふぁっ……!」

それに気づかない天使ヶ原は、男が強く乳房を中央の肉棒へと圧迫してくるのを手伝った。
斜め上から激しく腰を振ってきてぬちゃぬちゃと汗と先走り液が混じる音が響いた。
男の体重がかかってくるのも心地が良い。
腰振りに夢中になって跳ね飛びそうなのをしっかりと抑えてあげると
乳内でずちゅ、ずちゅと肉と肉がいやらしい音を奏でる。

「なんか……恥ずかしいね……」
「でもいいよ、すごいいい……きもちよすぎるよ!」

照れ隠しに呟くが、男はただ幸せそうに応えてくれてまた嬉しくなってしまう。
その可愛らしい笑顔が男を更に喜ばせるのだ。

「あ、すご……あ、んんっ……あつい……よ……!」

腰振る動きが加速する。
まるでセックスしているかのように激しく乳で肉棒を擦り快楽を引き出していく。
好き放題に胸を揉みながら、縦横無尽に肉の塊を暴れさせる。
そんな激しい行為中でも二人の視線はずっと絡み合ったまま。
恋人だから受け入れる。そんな風に見えるぐらい繋がっているよう。

「そのまま……! そろそろ……イクから……!」

男のモノが谷間の中で心臓みたいにどくんどくんと震える。
重ねられた二人の両手が最後に強く押し付けてから

「で、でるっ……! ぅっ、あはぁぁっっ……!」
「ぅんんんっっっ…………! 」

ぴっちりと隙間のない双丘の間へ射精した。
びゅくっびゅくっびゅくっと柔い乳房へ叩きつけるような放出。
ドロドロの粘っこい液が白い肌に汚れた白を上塗りして征服していく。
その熱と匂いで天使ヶ原も身体を震わせ、感じているようだった。

「きもち……きもちいいよう…………」

男はよほど気持ちがいいのだろう。
噴き出る欲望を天使ヶ原の肌へと塗りこみながら動きを止めている。
だから天使ヶ原のほうが、前後互い違いに乳房を揺らし擦り押し付け、絞りとるように射精を助けていく。
十秒ほど経って終わった頃には、谷間の中は白濁したモノが溢れ出しそうになっていた。

「すごいよ……いっぱい出てる……イクって言うんだね……」
「…………てっしーのおかげだよ……エロ過ぎ……」

男は名残惜しそうに立ち上がろうとして、残滓のついた自身の肉棒を見た。

「ついでにお掃除をして……」
「ふざけんな! 順番守れよ」

更なる奉仕をせがもうとするが、即座に突っ込まれた。
他の男達も文句を言いながら詰め寄る。
天使ヶ原のほうに近寄るカモフラージュでもあったが。

「うう……くそ……だって、だってさぁ、てっしーともっとやりてぇんだよ。好きで好きで堪んねえだよ……」
「わわわっ……」

告白めいた言い訳に、真っ赤な顔の天使ヶ原がわたわたと手を宙に振って慌て始める。
今日は色々としているが、好きと言われたのは生まれてこのかた初めてなのだ。

「なおさらだ。俺だっててっしーが好きに決まってだろうが」
「俺もだよ! こんな可愛い天使なんて好きになるしかない!」
「教室で同じ空気吸えるだけでよかったけどさ……俺も大好きだ!」
「定例会議じゃ言えないが、毎日天使ヶ原でヌイてた。好きな女なら当たり前だろ」
「ちょ、ちょっと……あんまり言わないで…………」

一人の口火をきっかけに、天使ヶ原ファンクラブの面々が次々と告白してきて天使ヶ原が縮こまる。
シトリーの能力の影響とは違う、恥ずかしさと嬉しさが入り混じった感情。
情欲に流されてはいるが、やはり能力のかかりが甘いようだ。

「……みんないいか。誰が一番とかじゃない。
 てっしーに俺達がどれだけ愛してるか伝えてやろうぜ」
「はぁっん……! そ、こっ……ん、ああ、あぁっ!」

戸惑っている所、突然ショーツの中へと次の男の手が入り込んできた。
しどとに濡れているそこは容易く指を咥え込み、否が応でも愛を受け入れる準備ができている。
浅い所を擦られるだけで、男の腕にすがりつくようにガクガクと腰を震わせてしまっていた。

「てっしー! いいよな……!」
「その……だ、だめだよ……ゃっ、あっ……」

否定の言葉も弱い。
悪魔の能力に抵抗力があっても、すでに身体は出来上がっている。
捏ねられ混ぜられた肉の種は焼き上げられるのを待っているかのよう。
それに頭の何処かではわかっていたのかもしれない。
シトリーの情欲と愛情を受け止め、男達を満足させるには、奉仕だけでは足りないというのを。
そして足りないのは天使ヶ原も同じだ。

ショーツも脱がされて、身に纏っていた布地がなくなる。
まだ幼さを残す無毛の裂け目はトロトロになっていて、照明が反射するほどに濡れそぼっている。
経験もないのにうっすらと唇を開いていて、サーモンピンクの中が垣間見えている。
男達全員がそこへと視線を集中してくるのを感じ、天使ヶ原の顔が熟れた林檎のごとく真っ赤に染まった。

「恥ずかしいよ……」

でも、その恥ずかしさすら嬉しさに変換されてしまう。
愛すべき恋人達が、自分に夢中になって喜んでくれているというのが伝わってくる。
すぐに全裸の男がのしかかってきて、モノが天使ヶ原に触れた。
あまりに無防備なそこへと男が腰を推し進めてきて

「んぁあぁあぁっ……!!!」

正常位の態勢で一気に貫かれた。
硬すぎるモノが内に侵入してくる激感に、天使ヶ原は身も世もない嬌声をあげてしまう。

「う、そっ!? ふぁあ、あぁっ……!」

声に含まれる色は紛れも無い快感。
今までされていた行為の中で一番気持よくなってしまったのだ。
何かを考える余地もなく、頭の中まで快感一色に塗り潰される。

「すっげぇぇぇ……めちゃくちゃきもちぃぃっ……てっしーとセックスしてる……!」

天使ヶ原の初めてを奪った男は感嘆の声をあげた。
潤ったそこは、きゅんきゅんとした締め付けを持ちつつも柔らかい。
憧れの少女と繋がった快感は、それだけでイッてしまいそうになるほど。

「はぁっぅんっ……! あ、くぅんっ……! ああぅっ……!!」

男は抑えきれない情動と愛情をぶつけるように、腰を振り始めて
天使ヶ原は快感混じりの悲鳴をあげる。
一擦りする度に、蜜を垂れ流しぐちゅぐちゅと濁った音を響かせる。

「はいってるよ……おれのちんぽが……てっしーに……!!!」

突き入れる時は包み込みように、引き抜く時は名残惜しそうに纏わりつく。
男は天使ヶ原の腰をしっかりと抱き、自身の言葉に興奮を高めながら行為を繰り返していく。

「っくぁ……す、ご……こん、な……ひゃっ……ん……きもち……ぃい……ひっぅっ……」

そうしている男と同じように天使ヶ原も快感に翻弄されていた。
繋がっているのが怖いくらいに気持よくて、勝手に声が出てしまう。
初めては痛いとかそんな伝聞なんてまるで嘘のようだ。
熱くて硬い肉の竿が前後する度、内側で擦れ合う所が気持ちいい。

「あ、っ、ああっ……! ふぅぅ、んぅっ……!」
「てっしーめちゃめちゃエロい顔してやがる……」

感じ喘いでいる天使ヶ原の表情に、周りの男達は息と唾を何度も飲みこんだ。
赤くなった顔。涙で潤みきった瞳。嬌声と共に唇の端からこぼれ出る涎。
先程まで処女だったとは思えないくらい男に狂わされている。

「や、ぁっ……み、みない……ふぁっ……!」
「もっと見せてくれよてっしー……」

恥ずかしさで顔を隠そうとする腕を、別の男に握り止められるだけの事すら、肌が粟立つように気持ちいい。
太腿を撫でられたり髪や顔を弄られたりと、どこもかしこも敏感になってしまっていて
周りの男らに触れられるのが心地よかった。

「今は……俺のてっしーなんだよっ!」
「はぅぅっ……!」

独占浴に駆られた男に、子宮に届くくらい奥まで突かれて息が止まってしまう。
快感が強すぎて腹の内から溶けてしまいそう。
そんな感覚が全身に広がって、別の男達に触られる心地よさもまた増していく。
体中が快楽だけを生み出す何かへと変えられていく。

「だから……! てっしーの初めては……俺が……!」
「あっ! ああっ! はぁんっ……! ……んむっんん…………」

腰の振りが激しさを増す。
そのままのしかかってきて唇で唇を塞がれる。
上下で繋がったまま、身体の中深くでビクビクとモノが震え始める。
終わりが近い。天使ヶ原も絶頂へと昇りつめていく。

「イクよてっしー!」
「はぁぁぁぅっぅん……!」

男は叫びは共に膣内へと愛と欲望と証を解き放ち、天使ヶ原も同時に達した。
熱く、打ちつけてくるような奔流が中で広がっていくよう。
全てを吐き出さんとする男が腰をぐいぐいと押し付け、一番深い所での射精を続けていく。
子宮の中まで届かんとする濃いものを、天使ヶ原の中は絞りとるかのごとく締め付けて飲み込んでしまっていた。

「あ、ああぁっ……きもちいぃっ………………」
「ふぅっ、はぁっ、んんっ……わ、たしも……すごく……きもち、いいよ…………イっちゃった……」

天使ヶ原の表情は男と同じくらい幸せそうで抱擁したまま。
粘膜と粘膜とが、肌と肌とが、触れ合い擦れ合う歓喜で全身が満たされている。
快感という嵐が体の中を暴れまわっているかのよう。
もし見知らぬ誰かが見たとしたら、二人を愛しあう恋人同士だと思うだろう。
実態はどうあれ、シトリーの能力を受けた男女はこうなってしまう。

(みんな、こうだったんだ……こんなに幸せで気持よくて……ずるい……
 避妊するって言ってたのに……中で出されちゃってるのに……全然嫌じゃない。むしろ……)

けれども、抱き合いながら心中呟く天使ヶ原には複雑な感情が残っていた。
持ち前の強い意思力で悪魔の力に完全に支配されきってはいなかった。
もしも一人っきりで能力を受けたならば、フラウロスの守護が無くとも自身を律する事ができたろう。
しかし、幸せと喜びは皆で分かち合い大きくなっていくもの。
愛情と欲望を少女一人で受け止めるには、あまりにファンクラブの男達は多かった。

快楽の余韻に繋がったまま繋がったまましばらく経つ。
周りの男達が痺れを切らし、イッたばかりの男を引き離すと天使ヶ原を見ていきり立った。
快感で蕩けきった表情は、男を誘うかのような魔性があったに違いない。

(左門くんは私をこんな風にしたかったのかな……?)

そんな微かな疑問は言葉にはならず、左門の姿もこう囲まれていては見えない。
それ以上考える間もなく、思考も理性も男達の肉体によって塗り潰されていった。

「早く俺もしてぇ……ってあれ?」

そんな天使ヶ原に触れるにはまだ遠い、後列にいた一人が何かに脚を取られて立ち止まる。
足元には踏み倒されてボロボロになっている下呂がいて、ズルズルと這いずるように蠢いているのがゾンビっぽい。

「下呂も愛を確かめたいんだろ? てっしーが待ってるぞ!」
「……ううぅ……天使を汚すなぁ……」

ファンクラブ筆頭だけあって下呂はまだ欲望に飲み込まれてはいないようだ。

「やらなくてホントにいいのか? てっしーと愛しあうのがもう真理だろ」

愛欲が優先順位の一番となっている男は呆れた口調で呟いた。

「くぅっ……てっしーが……悪魔に負けるなんて」

男達に囲まれて性愛を貪り合う天使の姿に下呂の瞳がどんどん濁っていく。
神が堕落しては、教祖も教祖足り得ないだろう。

「俺だって……俺だって……! てっしーと愛し合いたい!」
「よしよし、でも俺が先だからな」

堕ちた教祖の肩を貸して立たせようとして

「また……ゲロを受け止めてもらいたい!」

続く言葉に動きを止めた。

「お前、去年からそんなもんに目覚めてたのかよ!」
「おぼぉおぉぉっ……」

生ゴミみたいにポイっと放り投げると、珍妙な悲鳴をあげてまた動かなくなった。
天使ヶ原ならやってくれるかもしれないが、周りの男達にはいい迷惑だ。
ファンクラブの中で悪魔に一番抵抗した下呂であったが、力尽きてしまい今夜彼が目覚めることはなかった。

「ひゃぁっんっ……! あ、あっ……また……出てるっ……!」

そんな出来事が後ろであっていたとも知らず、二人目が数分の交わりで天使ヶ原の中へと射精した。
ぴったりと腰を密着させて、思いの丈を注いでいく。
どれだけ出しているのか、結合部から精液が溢れ出てるほどだ。
その度に天使ヶ原の身体も痙攣するように震え、薄く脂肪の乗った下腹がきゅきゅっと中を締め付けているのが見て取れた。
一緒に絶頂を迎え、汗だくの白い肌はいやらしくぬめり、男の肌と小擦れあってはお互いに心地よさを分かち合う。
そうしてやっと身体を離したと思えば、すぐに次の男が愛情たっぷりに天使ヶ原とセックスを始める。

「なあ……もう我慢できねえよ……俺も今すぐてっしーとやりたい」

そんな流れを止めたのは、もう一人あとの順番にいた男だった。
天使ヶ原の痴態を三十分以上は見ているだけなのだ。
もう五分と持たないぐらい興奮だけが高まっているよう。

「じゃあ一緒にやろうぜ。てっしーいいだろ?」
「……え、一緒……? その、三人で……?」
「頼む……てっしーとやりたくてやりたくてしょうがないんだよ。ほら」

男二人から猛ったモノを眼前に見せつけられるときゅんっと子宮が疼く。
一人とするだけでも気持ちが良いのに、それが二人だとどうなることか。

「うん……私も一緒にしたいよ…………きゃっ、んんっ……!」

思わず口に出してしまうと、すぐに二人がのしかかってきた。

「すげぇ……! てっしーの中にずっぽりはいってめっちゃ濡れててきもちぃいぃっ!」
「うっ、ああっ……! は、げし……!」

一人目は脚を抱き抱えて正常位の体勢で挿入した。
処女を失って一時間も経っていないというのに、開かれた陰唇はきゅんきゅんとモノを締め付け手厚く歓迎する。
抽送する度に愛液が飛び散るほどに分泌されては、肉棒でかき混ぜられていく。

天使ヶ原に童貞を捧げたばかりの男は乱暴と言ってもいいくらいに腰を振り立てて
濡れた膣の柔らかさやヒダヒダに擦れる快感を堪能する。
天使ヶ原も、何度も中出しされ何度もイカされた肢体をしならせるようにして、男の欲望に応えた。
今も何度かイッているのか、開かれた脚先はたまに伸びきるように痙攣してしまっている。

「口んなかもぐちゃぐちゃしててあったかくていい……!」
「……んむっ! んぁっっ……ん、れろっ、ぶじゅじゅっ……んっんんぉっ!……」

二人は二人目は反対側から後頭部辺りを持ち上げるようにして、逆さまの形で唇へと挿入した。
肉棒を突っ込むだけでとろとろとした涎が溢れだし、湯だったぬくもりに包まれる。
その中でゆっくりと腰を動かせば、口元から零れるほどの唾液が潤滑油となってちゅぱちゅぱと舌が絡みついた。

肉竿の根本までも唾液にまみれるくらい口内へ入れれば、柔らかい喉の肉が微かに触れる。
それでも天使ヶ原は平気なのか、舌を這わせながら口元をすぼませ肉棒に吸い付く。
まだ慣れていないはずなのに、愛情たっぷりのフェラチオは十二分に男を悦ばせている。

「すげぇ……てっしーがあんなエロく…………」
「玩具みたいにされてて……またやりてぇ……」
「俺はなにしてもらおう……何でもしてくれるよな……」

子宮まで届きそうなぐらい激しく突かれながら、快感で打ち震える姿。
逆さまの口元へと肉竿が沈み込んでいき、涎を撒き散らちながらしゃぶっている淫らさ。
二人に挟まれるようにして犯される天使に、周りの男達も自分の番の期待を高めていく。
先走りを垂れ流しながら自分の出番を待ち望んでいた。

(あ、……はっ……やっぱり……どっちも気持ちいい……)

二つの大きく熱い塊で体内を擦られる快感。
愛情と欲望が二倍増しで入り混じってきて、全身の隅々が幸せで満たされていくよう。
体の中がそれでいっぱいになる度に、頭のなかが真っ白になるぐらい絶頂してしまう。
けれども余韻に浸る間なんて与えてもらえない。
つき捏ねられる肉棒によって新たな幸福が詰め込まれていく。

「ほらてっしー……舌止まってるよ、もっとぺろぺろして!」
「っおっ……! んぶぶぅっ……っふ、っふっ……ぅぶぅっっぅ……!」

何度もイっていて、おろそかになっている口内から更に快感を貪ろうと男は抽送を早めた。
指が一切引っかからないきめ細かな黒髪ごと頭を固定し、セックスするかのごとく口腔を犯し始める。
その行為は舐めようとする舌ごと押し潰すような暴虐だ。
肉棒が根本近くまで埋まり口蓋垂の先まで我が物顔で押し通る。
玉袋が逆さまになった鼻に押し付けられて、ただでさえしづらい呼吸がより遮られた。

「あ、あぁっ……てっしーは喉んなかまで天使だよっ!」

快楽に我を忘れ、意味不明な賛辞を叫びながら食道まで犯していく。
窮屈過ぎる喉肉を掘削し掻き分けながらみっちりと詰め込む。
激しいピストンによって、さらけ出された喉元が歪に膨らんではへこむほど。
今や、天使ヶ原の唇も舌も喉も射精のための道具でしかない。

(……っんんぅ! ……くるし、くて……息できなく……て……なのにわたし、イッてる……!
 キスしてる、よりも、きもちがよくて……幸せで……! もっとしてほしいって、思っちゃってる……!)

けれどもシトリーの能力に掌握されている身体は、拷問のごときイラマチオですら多幸感へと変えていた。
喉の中を突かれてえずきそうになっているのに、苦しさより気持ちよさが勝ってしまっている。
硬いモノで喉粘膜を擦られて、狭隘な食道が押し開かれてはぐぽぐぽと亀頭がハマりこむ。
丸みあるカリが喉に引っかかっては引き抜かれる時は、気持ちよさが腹の中まで貫き届きそうなほど強い。
喉を埋められる快楽に身悶えしながら酔いしれ、天使ヶ原は何度も絶頂を迎えてしまう。

「……てっしー! そんなに締め付けたら、もう……で、でるっ!」
「んんんっっんぉっ…………!!」

堪らず膣を犯していた男が先に射精した。
天使ヶ原がイくのに合わせて、膣内もきゅんきゅんとモノを絞りとり脈動と共に精液が叩き付けられる。
どくっどくっどくっどくっとポンプのごとく快感の証を吐き出していく。
膣内が白濁にまみれていき、べっとりとした白で上塗りされていく。
シトリーの影響下にある男の射精はあまりに多い。
溢れ出して結合部からこぼれてマットを汚し、それ以上の量を子宮まで注ぎ込んでいた。

「俺も、おれも……いくから……あぁっ、全部飲んでてっしー!」
「ん゛ごぁっ……! ぶぼぉっ……! んぉっ……んっぶぶぅっ…………!」

次いで口を犯していた男が肉棒を突き入れて放った。
天使ヶ原の唇が竿の根本までぴったりと密着し、先端は首の中まで入るほど深い。
もう一つ心臓があるかのよう喉部分が不気味に脈打つほどだ。
飲むというよりは胃に直接送り込んでいるように射精を続ける。
粘っこい液が喉に絡みつく傍から次の濃い塊が胃の中まで押し流していく。
天使ヶ原の体内をまるで精の貯蔵袋のように吐き出していく。
そうしながらも男は腰をわずかに揺らし、先端で喉の壁をこそぐようにしながら最後まで出しきっていた。

「「あ、はぁっ……きもち……かったぁ……」」

どれだけ快感を得ていたのか男達は法悦にひたりきった、だらしない表情で天使ヶ原の中から肉棒を抜き出した。
激しい抽送によってまだ開いている膣からは、愛液と混じって薄く濁った精液がとろりと零れる。
唇は摩擦で赤みが残り、涎と体液の混合物が垂れ落ち整った顔を汚していた。

「……っげほっけほっげほっ……! はぁーはぁーはぁー……んぅっ…………」

男二人に好き放題された天使ヶ原は息も絶え絶えというのに、うっすらと微笑む。
涙でいっぱいの瞳も酸欠で真っ赤になった頬も、苦しさというより絶頂の余韻を帯びているよう。
濡れた瞳は男を誘うような媚びた色を映しながらも、未だなお女神の慈愛を含んでいた。

「ふふふ……私もとてもよかったよ……みんなはどうしたいの……?」

身を起こして上目遣いに囁いた。
本物の淫魔より淫魔らしい甘く艶めかしい誘惑。
きっと、何でもしてくれて、何をしても受け入れてくれるに違いない。

「てっしー! てっしぃぃぃー!」
「俺も中出ししたい!」
「俺もパイズリしてくれ!」
「俺だって。あいつみたいに飲ませてやる!」
「次は俺の順番だろ! てっしーとやるのは俺だ!」

続々と詰め寄る男達を前にして、天使ヶ原はちろりと舌で唇を舐める。
その表情はあまりに淫らで、快楽に堕落しきった雌にしか見えなかった。

そうして数時間が経った。場には生臭い汗と精と肉の匂いが充満していた。
男達はヤリ過ぎで力尽きて気を失うように眠っており、中心には男達全員の
止めどない欲望を受け入れた少女も倒れ伏している。
微かに上下する裸の肢体に付着した欲望の残滓が、鈍く照明を照り返して起きた行為の激しさを表すよう。
サバト染みた性の狂宴が終わったのだ。

『どうだマスター! 少女を堕落させたぞ!』
「そうみたいだね」

喜色満面に勝ち鬨をあげるフラウロスは天使ヶ原達の狂宴が終わり、計画が完全に成功したと確信した。
今回の騒動と天使ヶ原を陥れる計画を立てたのは実はフラウロスのほうだった。

ソロモンの悪魔であるフラウロスは、同じくソロモンに属するシトリーの左門への襲撃を
知っており、以前から交流があった左門に伝えたのだ。
そして天使ヶ原桜という存在が、ネビロスを筆頭に悪魔連中から仏と噂になっている事と
合わせて、貶めたい堕落させたいと左門に計画を持ちかけたのだった。

『マスターも少女にでかい顔をされていた溜飲が下がっただろう?
 仏など呼ばれても人間なぞこんなもの』
「フラウロスの言うとおり。天使ヶ原さんも欲のある普通の人間みたいだね」

本願を成就させたというのに、左門は何かつまらなさそうな返事。
裸の天使ヶ原のほうにはあまり視線を向けず、手持ち無沙汰に魔法陣の紙を弄りながら

「たださぁ……あれってホントに気持ちいいの? よくわかんないんだけど」
『え』

わりととんでもないことを言い始めた。

「少しはドキッとしたんだけど、欲望って言われるとあんまりピンってこないって言うか。
 見てると暑苦しいし、臭いし、グロいし、なんかつまんない」
『待て待て待てマスター。マスターは我が計画の趣旨を理解して協力してくれたのでは』

どうでもよさそうに両手をあげながら言葉を続ける左門。
悪魔召喚師が悪魔の力を使って、少女を毒牙にかけたとはとても思えない感想に慌ててフラウロスは問うた。

「まあ天使ヶ原さんをギャフンって言わせれそうだからやってみようかなって」
『…………………………』

豹の顔なのに、見てわかるぐらい唖然とした表情になった。

『その……マスターは高校二年生であろう?』
「そうだけど、どういう意味?」

本当にわからないと言った返事を聞いて、フラウロスは頭を抱えて唸った。

(『しまった……! マスターが子供過ぎて、淫欲による堕落をよくわかっていない……!?』)

天使ヶ原を陥れようと画策したが、お互いの意識があまりに違っていたのだ。
フラウロスからすると乙女を堕落させて大満足なのだが、左門からすると
いまいち堕落させたとか欲望に溺れさせたとかそんな実感がないらしい。

「うーん、でも天使ヶ原さんは気持ちよかった? みたいだし計画成功だねーお疲れフラウロス」
『違う! 成功したが違うのだ! 我らにもそれ相応の矜持がなければ!』

フラウロスからすると人間を陥れて堕落させるからには、それを愉悦と感じる感性が
必要なわけで、マスターと堕落させた悦びを共有したかったのだ。
まさか、気の合うはずのマスターが性的な意味でここまでポンコツだったとは想像もしていなかったのだろう。
清純な少女を快楽に喘がせ、淫らな肉欲の虜にしても感じ入るものが特に無いだなんて。

天使ヶ原とファンクラブの面々との絡みにあまり反応がなかったのも、退屈だなぁとか思ってたりしてたのだ。
ちなみにフラウロスは天使や人間だけではなく、仲間の悪魔が天使から堕天した理由とかも
喜んで語るタイプなので、なかなかのボッチ系悪魔でもある。
悪魔であれど黒歴史を暴くのはタブーなのだ。

「ふ、ざけんなぁぁぁあーっ…………!!!」
『うそぉっ……!?』

と、大絶叫と共に意識を失っていたはずの天使ヶ原ががばっと立ち上がった。

「そんな軽い扱いすんなぁぁ!!!!」

裸で髪は乱れに乱れて、瞳は怒りで比喩抜きに真っ赤。
フラウロスの影響で炎が宙に幾つも舞う様は天使というより鬼女のよう。
とてもついさっきまで、男達を喜ばせていた少女には見えない。

「あーあ。どうやら天使ヶ原さんは堕落してなかったんだねぇ」
『待て待て待て、あれだけ犯し犯されて、すぐに立ち直って正気に戻るなど……』
「天使ヶ原さんは図太いから」
『そんな問題では…………』
「すっごくっ! 恥ずかしくて……! それに……それに! 初めてなのに……こんな……!」
「まあまあ、ああいう事があったからって天使ヶ原さんの価値が減るわけじゃないよ。
 そもそも天使ヶ原さんの身体にたいした価値はないしね」
『マスター……! 流石にそれはどうかと……!?』

とんだクズ発言にフラウロスが反論してる間もあろうか。
ブチっと血管とか堪忍袋の緒とかが切れたと同時、天使ヶ原の足元から炎が轟っと噴き上がった。
火線の尾を引きながら、ジェット噴射のごとき恐るべき勢いで跳びかかる。

「このっ……! クズ野郎ーーー!!!」

助走無しで5m以上を瞬時に飛び越える超人染みた跳躍。
左門は当然、フラウロスでも反応できず、全体重の乗った強烈なビンタが左門を張り倒した。
響く轟音。べちゃりと床にへばり付く左門。

「左門くんっ……!」

倒れた左門の首根っこをぐいっと掴み上げ、絞る。睨みつける。
はぁはぁと息を荒げて、これ以上ないくらい怒っているのが伝わってくる。

「タッチした! 隠れんぼも鬼ごっこも終わり! 今度という今度こそは絶対承知しないよ!
 お説教ぐらいじゃ済まさない、から…………ね……」

そこまで言い切って、力尽きたように崩れ落ちまた意識を失った。
フラウロスが守護を完全に消したのと、元々限界を通り越していたのだ。
脳震盪でも起こしたのか、しばらく呆けたように左門はぼぉっとしていたが、自身の胸元で
伏している天使ヶ原をゴロリとどかして床へと寝せた。
ぞんざいな扱いである。

『マスター大丈夫なのか!?』
「……まあまあ痛いけど、別に平気だよ」
『脚が生まれたての子鹿のようにガクガク震えてるぞ!?
 あと頬も形が変わるぐらい腫れてきてるではないか!』
「…………平気だってば」

左門は立ち上がろうとするが、完全に脚にきてへたりこむ。
絞られたネクタイだってぐんにゃりと曲がっている。

『それに我が炎の影響が……』
「だから大丈夫だって。はぁ……天使ヶ原さんはあんな目に合っても僕に敵意までは持ってなかったんだろうね」
『……ヌゥッ…………あれだけの目に合わされて、どんな心の持ち主なのだ……』
「気持ち悪いよね」
『堕落させれなかったか……』

フラウロスが天使ヶ原を見つめる瞳には畏怖と敗北感が浮かんでいた。
天使ヶ原は間違いなく怒っていたのだが、そこに敵意や殺意と言えるものはなかったのだ。

「念のため炎は効かないようにしてたけど、天使ヶ原さんが僕を焼殺したいぐらい
 憎んでれば、それはそれで面白かったのになあ」
『マスター、ならばもう少し相手に敬意をだな……』
「そんなのあるわけないじゃん。ネビロスじゃあるまいしさ。悪魔ってどいつもこいつも口うるさいね」

それは悪魔というか左門のせいなのだが、本人には余計なお世話だし言われて聞くような人間ではないのだ。

「……うるさいと言えば、天使ヶ原さんが起きたらお説教されるのかなぁ」
『言えた義理はこれっぽっちもないが、マスターは一度説教ぐらい受けるべきかと』
「それはヤダな~。でもこんな事もあろうかと用意してたのがあるんだよ。
 フラウロス、あれを持ってきてこっちで広げてくれ」
「……承知した」

まだ立つ事もできない左門が体育館の隅に置いていた大きな用紙を指し示す。
それには複雑な紋様の魔法陣が描かれている。

『これは……悪魔ではなく、神のたぐいだな』
「ふふっ……僕にとっては神も悪魔もたいして変わらないさ…………いつぅ……」

左門は冷笑を浮かべようとするが、いよいよ頬の腫れが大きくおたふく風邪の
ようになってしまっていて、カッコはつかない。

「あと立たせて。召喚できない」
『やはり大丈夫ではないのでは?』

フラウロスの肩を借り足ガクガクのまま、左門はギリシアのとある神を召喚した。

そして天使ヶ原は目覚めた。自宅自室のベッドの上で。
春の少しだけ肌寒い空気。カーテンから透けて見える陽光。チュンチュンと雀の鳴き声。
そんないつも通りの朝の光景。

「えっと……何かとんでもない事があったような…………」

けれども恥ずかしい気持ちとか、怒りたくなるような気持ちとか、色々な感情がついさっきまであった気がする。
なのにそれがなんなのかわからない。考えてもどんどんと消えていく。

「夢でも見たのかな……?」

立ち上がり自室を見渡すがなんの異常もない。
鏡で自身を確認しても、やはり変わりない。
なんとなくスマホで時間を確認すると、登校時間にもまだまだ余裕があるから焦る必要もない。

「あれ……? 昨日……じゃないよね……」

ただ、日付にだけ違和感を覚えた。一度見たかのような既視感があった。
まるで今日を二回繰り返しているみたいに。

「そんなわけ無いんだけど……気になる……あ、おはようブーやん」
『二度寝するでヤンス~』

もどかしい気分になりながらも、ブーシュヤンスタがひょっこりと現れると挨拶しながらも身構えた。
惰眠の能力はなんだかんだ言って朝には辛い。

「……ビーム出さないの?」
『ヤンス』

ただ能力は使われなかった。
肯定か否定なのかさっぱりわからないブーやんは置いといて、天使ヶ原は登校の準備に取り掛かる。
数十分後、朝の出来事にいちいちデジャブを感じながらも玄関を出ると

「おはよう天使ヶ原さん」
「うわっ……!? さ、左門くんっ? おはよう……ってその顔……」

ガーゼに覆われた頬をやたら腫らした左門が突然に現れた。

「ちょっと怪我しちゃってね」
「まるで殴られたみたいだけど……」

見てるだけで痛くなりそうな顔に、何故か手が熱くなるような感覚があった。
ただそれ以外は何も感じない。
時間が一日巻き戻る前に自分がやったなんて考え付くわけもない。

「やだなあ。僕を殴る奴なんていたら、生きたまま地獄に落としてやるよ」
「左門くんホントにできるからたちが悪いよね……それでどうしたの? いつも途中からなのに」
「確かめたい事があって、天使ヶ原さんに一刻も早く会いたかったんだ」
「え……?」

と、言われても別にドキドキしたりはしない。

「今度はなに企んでるの……? そういえばブーやんは何もしてこなかったし……」

とか返しちゃう関係だったりするし。

「ああ、アレはもう止めるよ。天使ヶ原さんにはあんまり通じないしね」
「ええっ……!?」
「ほらほら、遅刻しちゃうよ天使ヶ原さん」
「う、うん……」

嘘臭い笑顔の左門に驚きながらも連れ立って登校する。

「実はドッキリでベヒモス先輩が狙ったりしてるんじゃない?」
「しないよ。ああいう悪戯は子供っぽいからやめたんだ」
「へえ……? (寝言はブーやんのビーム受けてから言えばいいのに)そうなんだ」
「なに、その含みある空白」

道すがら警戒しながらも、本当に何も仕掛けてこない左門に混乱する。
毎日のように悪魔の能力を受けているので信じられないのだ。

「もしかして……! 顔を怪我しちゃって頭の中までおかしくなったんじゃ……?」
「天使ヶ原さんって普通に失礼な女だよね。[ピーーー]ばいいのに」
「だって……」

未だ納得しきれない天使ヶ原に、左門はさりげない風に言葉を続けた。

「……所で天使ヶ原さんって怒るのかな?」
「へっ……? 怒るって……別には今は怒ってないよ。
 いつも左門くんに嫌がらせされて怒ってはいるけど……」
「そうじゃなくて、もっとこう殺意とか、僕を焼き殺したくなるぐらいの怒り」
「怖いよ! 何したら焼き殺したりされたりするの!?」

いつもの笑みで、いつもとはまた違う不気味な発言にぞぞぞっと天使ヶ原は引いた。
ちなみに左門は、普通なら殺意抱かれるぐらいの嫌がらせはすでにやっている。

「例えみたいなもんだよ」
「わけわかんないけど私が怒ったとして、左門くんはどうしたいの? 怒られるの嫌でしょ」
「別に……なんとなく思っただけ」
「それが確かめたいことなの……?」

天使ヶ原はわけがわからないと首を傾げた。
いつもの胡散臭い笑顔の左門はガーゼ越しの頬に触れて、ずきりとした痛みを振り返る。

「……天使ヶ原さん。ちょっとここ叩いてみない?」
「……へ? やだよっ! 怪我してるじゃん! ホント左門くんどうしちゃったの……?
 …………ほら、なんか熱あるよ。病院行こうよ」

なんだかおかしい左門の額に触れると熱がある。
腫れたガーゼで気付かなかったが顔もどことなく赤い。

「いいってば。病院は嫌いなんだ」
「子供みたいな事言わないで。学校には連絡するから」

近くの病院の方向へと引っ張ると、嫌そうな顔でじたばたする左門だが
熱と体力クズが合わさってそのまま引っ張られていく。

(熱のせいでなんかおかしいんだね)

そう納得した天使ヶ原ではあったが、実際は熱の影響ではなくマジビンタされた事によって
少々ドM的な性的嗜好を左門が見出しつつあるとは、夢にも思わなかった。

終了

実際のとこ左門くんはエロ展開だけは拒否ると思います。


しかし恐らくこのSSが最初の左門SSになるのか...

乙でした。
R-18なのに設定も凝ってあってなかなか読み応えあった。さもサモ好きだからもっと流行れ。



最後、時間は一日巻き戻っててっしーの貞操は復活したっぽいが
サーモンの腫れた頬はわざとそのままにしたってことかな

ありがとう

本当にありがとう

ゲス野郎に召喚されたとはいえ神様だからな。問答無用で地獄にぶち込まなかっただけでも奇跡なんよ?

>>44
わりとSS書きやすいタイプの漫画だと思うんですけどねー
エロはあんまり向いてない感じはしますが

>>45
原作でかろうじて在り得なくもくもないぐらいの設定がエロにもいるかなぁと思います。流行れ!

>>46
左門くんだけは身体に何があっても戻れないという設定のつもりでした

>>47
どういたしましてー てっしーがエロくなるのが見たい

>>48
多分、神とか悪魔とかたいして区別のない世界かなーと思ってます。


次はネームドキャラとてっしーが絡める感じのエロを思いついたらまた書きたい
あとちょっと心残りなのが輪姦部分を結構省略したこと。
ホントは4Pとか連続フェラとか淫語奉仕とか考えてたけど
てっしー堕落したままエロを書ききれない所があるのと、SSで輪姦書くのが大変すぎた

わかる。そっち系のエロがてっしーには超似合う。
ただなんか左門ネビロスの二人がエロ似合わなすぎて流れが思いついてない感じ
きっと甘えエロを誘発できる悪魔とかもいると思うんだけど

俺はてしモブで全然構わんよ
乙でした、てっしーは淫魔


俺もこれで問題無いというか、
左門とてっしーよりかはモブレイプの方が何かそれっぽい

ところでネビロスさんの同僚にサタナキアとかいう悪魔がいて、
その方があらゆる女性を意のままに従わせる力を持ってるらしいですがネビロスさんこれで甘えエロどうっすかね

>>52
乙ありがとう。
淫魔と言えばサキュバスさんに頼み込まれて合コンとか参加するとエロいこと起きそう
悪い子が夜の街でつい開放的な気分になったりならなかったり

>>53
左門てっしーが二人でエロい事するよりは、てっしーが例え同情でもモブと絡むほうがキャラ壊れないと思う。大体左門くんのせい
色々ストーリーが考えれそうな悪魔だけどてっしーには効きにくそう
この場合ネビロスが自然にバブれる展開があればいけるかも

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