士官「碇・アスカ・ラングレー中佐!」アスカ「式波よ!」 (114)

破の十四年後設定(Qではない)


士官「はっ?」

アスカ「だから式波!あんた今あたしのこと碇って呼んだでしょ!?」

士官「はあ、そうですが?」

アスカ「あたしは式波・アスカ・ラングレー!二度と間違えないで!」

士官「は、ですが登録上は確かに性が碇と……」

アスカ「そんなことはどうでもいい!もう一度だけ言うわ!あたしは式波よ!アスカ・シキナミ!オゥケイ?」

士官「ですが規則では……」


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アスカ「あんた、あたしの下で働く気なんでしょ?」

士官「はあ、そう配属されていますが」

アスカ「なら二つ、覚えておきなさい。あたしの前で碇っていう名前を出さないこと!それと、規則を持ち出してあたしに命令しないこと!!」

アスカ「分かった!?」

士官「は、はっ!分かりました!」

アスカ「よろしい。……で、なに?」

士官「はい、日本よりいか……式波中佐宛に連絡がありましたので。確か向こうは、ミサト・カツラギ一佐とか……」

アスカ「……ミサトぉ?」

ミサト「はぁーい、シンジ君おっひさぁ!待たせちゃった?」

シンジ「いえ、別に。ミサトさんに合うように待ち合わせより三十分遅れて来ましたから」

ミサト「やーんシンちゃん相変わらずひどーい!」

シンジ「それでも十分待ちましたけどね」

ミサト「……すみません」

シンジ「それで、また折り入って会いたいなんて、どういう用件なんですか?」

シンジ「僕、子守りとかしなくちゃいけなくて忙しいの知ってますよね?」

ミサト「んー、それは分かってるんだけど、これはシンジ君にとっても大事なことだと思って。悪いわね」

シンジ「はあ」

ミサト「あのね、向こうとも掛け合ってみてようやくオーケーが貰えそうになったから」

シンジ「オーケー?」

ミサト「そうよ」

ミサト「二年ぶりにアスカがこっちに戻ってこれるかもしれないの」

シンジ「……アスカが?」

ミサト「そう。ね、大事な用件でしょ?シンジ君も、会いたいわよね?」

シンジ「……」

シンジ「僕は、あんまり会いたくありません」

ミサト「え?」

シンジ「だから、僕はアスカとは会いたくないって言ったんです」

ミサト「な、なんで?だってあなた達、その……夫婦でしょ?」

シンジ「別居中ですし、ほとんど離婚みたいなもんですよ」

ミサト「でも、あんた達何回もそう言って別れてはくっついての繰り返しじゃない」

シンジ「今度は本気なんですよ。……僕もアスカも」

ミサト「あんた達、なんだってそんないっつも険悪なのよ?」

シンジ「……」

ミサト「……あのね、シンジ君。向こうから聞いた話だと、アスカはもうすぐ中原の紛争地域でドンパチやらなきゃいけなくなるらしいのよ」

ミサト「それがどれくらい危険な事か、シンジ君にも分かるわよね?」

シンジ「……」

ミサト「いや、別にあたしはアスカが死ぬとか言ってるわけじゃないのよ?」

ミサト「あの子だってそりゃ、殺して死ぬようなタマじゃないし」

ミサト「でも、そういう事の前だから一度、こっちに帰ってきた方がいいんじゃないかって」

ミサト「あたしは今でもシンちゃんのこともアスカのことも家族同然だと思ってるの」

ミサト「だからアスカが日本にいた時に借りてた家もそのままにしてある」

ミサト「アスカにとって、いつでも帰ってこれる場所があればいいって思ってるから」

シンジ「……」

ミサト「もちろんシンジ君が嫌だって言うなら、無理に会えとは言いません。でも、これだけは伝えておきたかったの」

シンジ「そう……ですか」

アスカ「日本に立ち寄れぇ?」

士官「はぁ、そういう話でしたが」

アスカ「なんであんな国にわざわざ行かなきゃいけないのよ。あたし達がこれから何しなきゃいけないか分かってないの?」

士官「いえ、一佐の話ですと、だからこそ一度顔を見せて欲しいとのことで」

アスカ「ふん、嫌よ!」

アスカ「あたしね、日本って家が狭いから大っ嫌いなのよ」

士官「し、しかし……」

アスカ「とにかく却下。いいからあんた、持ち場に戻んなさい」

士官「は、はぁ」

シンジ「でも僕は、アスカには会いたくないんです」

ミサト「……ねえ、なんでそんなに嫌がるのよ?あたしに理由くらい、教えてくれないかしら?」

シンジ「……」

シンジ「アスカはもう何年もずっと、そうやって危険なことばかりやって……ユーロのエースパイロットとかって」

シンジ「僕達、もう子供まで出来たのにアスカは、いつ死ぬかも分からない危ない仕事を続けるんです。僕が何を言ったって聞きやしない」

シンジ「日本にもほとんど帰ってこないし、顔を合わせる度になんて言うか……優しくなくなっていくんですよ」

ミサト「……」

シンジ「アスカは、養育費とかは自分で払うから生活は好きにさせろって。ずっと向こう暮らしで自分勝手なことばっかり」

シンジ「何が空軍のエースだ!それがなんだって言うんだよ!僕達に心配ばかりかけて!」

シンジ「結婚記念日や子供達の誕生日だって一度として帰ってきてくれたことは無い!」

シンジ「一緒にいたってアスカは僕を傷つけるだけだ……」

シンジ「……だからもういいんですよ。アスカもそれを望んでた。それで、二人でもう会わないようにしようって決めたんです」

ミサト「……でも、シンジ君はそれでいいの?」

シンジ「構うもんか、アスカの責任なんですよ」

シンジ「アスカのお金で、多分子供たちが独り立ち出来るくらいの貯金はもう出来てるんです。少し足りなくても僕が内職すればなんとか」

シンジ「だから別にアスカが今死んだって僕達は生活にも困らない……」

ミサト「シンジ君!!」

シンジ「……」

アスカ「ヘロゥ、久しぶりね。あんたから電話してくるなんて珍しいじゃない。エコヒイキでエヴァに乗ってたパイロットさん」

レイ『そうね。多分これが2回目よ』

アスカ「ふん、どうやら元気してたみたいじゃない?」

レイ『お陰さまで』

アスカ「へっ、あたしはどーだっていいわ、あんたがなにしてようと。それで一体なんだってのよ、また急に」

レイ『……あなた、まだ乗ってるのね』

アスカ「なに、あんたもあたしに説教垂れようっての?」

レイ『別に。あなたがどうしようと興味ないもの』

アスカ「そう、お互い相変わらずってわけね」

レイ『ええ。でも……今でも私、あなたには地面に足をつけた幸せがあると思ってる』

アスカ「……はん、あんたに何が分かんのよ」

レイ『碇くんが悲しんでることだけよ』

アスカ「碇?ああ、バカシンジのことか。すっかり会ってないから忘れちゃってたわ。あいつが何?」

レイ『碇くん、あれから全然笑わなくなったのよ』

アスカ「だから何よ」

レイ『……』

レイ『あなた、このままじゃ長生き出来ずに死ぬわよ』

アスカ「それはどうも。別にあたしはそれでもいいわ」

アスカ「あたしは死ねる所で死ぬだけよ。他人は関係ない」

レイ『それはあなたの自分勝手』

アスカ「死に時くらい自分勝手に選ばせろっての!」

アスカ「大体、あいつは!あいつのせいであたしはやりたいこと何にもできない!」

アスカ「お酒も飲めない!テレビも見れない!」

アスカ「欲しがってたゲームも『子供の前でゲームをするな』だの!誰の稼ぎで暮らせてると思ってんのよ!」

アスカ「挙句の果てにあいつは、危ないからユーロの空軍をやめろなんて言ってきたのよ!あたしの居場所を奪おうとしたの!!」

アスカ「あたしはエース!ナンバーワンパイロットなの!あんな奴にその居場所を奪われてたまるもんか!」

レイ『だから、傷つけるの?』

アスカ「あいつがどうなろうと知った事じゃないわよ!」

レイ『私が言ってるのはあなた自身のことよ』

アスカ「あたしぃ?あたしがなによ!」

レイ『左目を失くしたと聞いたわ。右手にも大怪我を負ったことがあるはずよ』

レイ『あなたがエリートなら分からないはずがない』

レイ『あなたの今の居場所は、あなたを傷つけるだけ』

アスカ「あたしにとって、居場所っていうのはあるだけでありがたいもんなの」

レイ『なら、それが碇くんの隣であってもいいはずよ』

アスカ「……」

レイ『もう、切るわね。最後にこれだけ聞かせて』

レイ『あなたはどうしたいの?』

ミサト「……はぁ、難しいわね」

リツコ「あら、どうしたの?ため息なんかついちゃって」

ミサト「いや、何でもないのよ。こっちのことで、ちょっとね」

リツコ「当ててみましょうか。あの夫婦のことでしょ?」

ミサト「……敵わないわね、あんたには」

リツコ「能天気なあなたが悩むようなことだもの。それくらいしかないわ」

ミサト「そりゃどーも」

リツコ「面白そうじゃない。私にも聞かせてくれない?」

ミサト「面白そうって……あんたねぇ」

ミサト「……まあとにかく、あの二人色々と難しいのよ」

リツコ「ふふ。昔のあなたとリョウちゃんを思い出すようだわ」

ミサト「む、昔のことはどうでもいいのよ!」

ミサト「それより、あたしとしてはほら、二人がくっつくのには結構協力したし……あたし自身そうした方が二人とも幸せになれると思ってたから」

ミサト「だからいざ目の前でああやって険悪にされると結構コタえるのよね……。アスカもこっちに戻ってくる気はないみたいだし」

リツコ「大人の思惑に巻き込まれると大変ね」フフ

ミサト「どうしたもんかしらねぇ」

リツコ「この手の話も何回目かしらね。もうヨリを戻すのは無理だったりして」

ミサト「ちょっと!」

リツコ「ふふ、冗談よ」

リツコ「ところで、全然関係のない話になるんだけど」

ミサト「ん、なに?」

リツコ「近々、ユーロ空母の着艦式典を行う予定らしいわね」

ミサト「ユーロの?」

リツコ「ええ、碇司令の口利きでね。日本とユーロの友好の証として組まれたイベントよ」

リツコ「で、司令としてはどうせ式典をやるのならば特別な人達に来て欲しいみたいだわ?」

リツコ「そうね、例えば特例として、向こうの空軍のエースを招致する……とかね?」

ミサト「それって!」

リツコ「……式典の日が楽しみね」フフフ

マリ「おっ、ワンコ君久しぶり!悪いね、急に会えなんて無理言っちゃって」

シンジ「やあ、真希波……。ううん、いいんだ。今日は懐かしい人に会ってばっかりだよ」

マリ「うんうん、そこだ。ズバリそこでだよ。ね、ワンコ君」

マリ「どうせならもう一人の懐かしい人に会おうって気は、無いかにゃ〜?」

シンジ「なんだ、真希波もその話か……。折角会えたんだし、僕はもう少し楽しい話がしたいよ」

マリ「ふむ、姫の話はお好みでない、と」

シンジ「真希波も最近忙しいんでしょ?」

マリ「うんまあね。世界中を飛び回らされてるにゃ」

シンジ「世界中、か。たしか真希波が今所属してる……・、ヴィレ……だっけ?」

マリ「そうそう!ちなみにこれ、ちょ〜極秘だからにゃ?」

シンジ「はは……うん、そっか。真希波も色々大変だけど上手くやってんだね。僕もまあ何とかやりくりしてるよ」

マリ「子供三人を男手一つで育てるのは、そりゃー大変だろうね」

シンジ「まあ、お金は……アスカが出してくれてるし」

マリ「でもさ、聞いた話によると赤ちゃんの泣き声は産んだお母さんにしか聞き分けられないとか、母は特別だとか聞くよーん?」

マリ「一番わがままな時期だろうしね」

シンジ「うん、そうだね。一体何が欲しいのかさっぱり分からない時は困ったよ」

シンジ「それに……ちゃんとしたおっぱいもまともに飲ませてあげられてないし……」

マリ「ふーん、なーるほーどね」

マリ「……ところでさ、ワンコ君」

シンジ「え、な、なに、改まって?」

マリ「これは秘密なんだけど、実を言うとあたしね……レズなんだにゃ」

シンジ「……え!?//」

シンジ「ま、真希波……そ、それはどういう……」

マリ「レズよレズ。ガールズラブのこと。別に隠したい訳ではないんだけど」

シンジ「は、はは……あの……」

マリ「言っとくけどあたし、冗談でこんなこと言うほど不謹慎じゃないよん?で、そういうわけだから」

マリ「実は姫のこと、さ。ね、分かるでしょ?」

シンジ「そ、それって……もしかして?」

マリ「うん。だから、そういうこと。でね、姫とワンコ君がくっついたって聞いた時はあたしもそりゃ驚いたけど、二人が幸せならそれでいいと思ってたわけ」

シンジ「うん……」

マリ「でも、ずっと今のこの調子で二人が一緒にいないならさ」

マリ「ワンコ君にその気がないなら、どうかな?……姫のこと、あたしにくれないかな?」

シンジ「え!?」

シンジ「あ、アスカを、真希波に……?」

マリ「うん。だってさ、色々と人から話を聞いてると、ワンコ君はもう姫に愛想を尽かしてるらしいじゃん?」

マリ「あたしなら世界中回ってるから姫がユーロにいても結構一緒にいられる時間も多いし、長年やってきた仲だから幸せに出来る自信だってあるよん?」

マリ「ワンコ君も姫が嫌だって言うなら、ここはどうかな?その方がお互い、得をすることがあると思うんだけど?」

シンジ「そ、それは……そうかもしれないけど……でも」

マリ「ためらう必要ないよ?多分それは姫のためにもなることだし、もちろんあたし、姫にこの会話の事は言わないし」

マリ「今まで姫がワンコ君に払ってくれてた生活費とかはあたしの方からワンコ君に送る」

マリ「それ以外も不便なことがあればなんでも言って。それでワンコ君は別のお相手を探せばいいよ」

シンジ「う、うん……でも……」

シンジ「でもさ、それは……」

マリ「?」

シンジ「や、やっぱりダメだよ」

マリ「どうして?」

シンジ「だ、だってさ」

シンジ「そりゃアスカは僕のことを傷つけるだけだし、僕はアスカと一緒にいたいとは思わないし、アスカの話をしたいとも思わない。けど……」

シンジ「でも多分、その……やっぱり僕はアスカのこと、まだ好きじゃなくなったわけでもない、かな?……って思うから」

シンジ「それに、僕達の子供の母さんは……どうしたって世界でアスカだけなんだし」

マリ「……」

マリ「……なるほどぉ、そういうことか。じゃあワンコ君はやっぱり、今でも姫を待っているわけかぁ」

シンジ「……真希波、ごめん」

マリ「ん?あー、いやいや!ワンコ君の本当の気持ちが聞けて良かったにゃ」

マリ「それに多分ワンコ君が頷いてたらあたし、ぶん殴ってたし」

シンジ「えっ……」

マリ「冗談よん」

シンジ「は、ははは……」

マリ「さーってと、実はあたしなんだかんだ言ってそんなに暇じゃないし、そろそろ行こうかな」

シンジ「あれ、もう行っちゃうの?」

マリ「うん、まあ色々あってね、次はロンドンに飛ばなきゃなの。あ、それとこれはちょっとしたコネで手に入れた情報なんだけどね」

マリ「近々ユーロからこっちにお客さんが来るみたいだね。ゲンドウ君……じゃなかった、碇司令の意向とやらで」

シンジ「と、父さんの……?っていうかユーロって!」

マリ「じゃ、このことは他言無用で!ネルフのワンコ君」

アスカ「あたしはどうしたいの……か」

アスカ「……」ブルンブルン

アスカ「エコヒイキにこんな事言われるなんて、あたしもヤキが回ったかな」

カヲル「そうだね、回すべきなのは君たちの運命の歯車、と言うべきかな」

アスカ「は?何よいきなりくっさいこと言っ……って、うわぁ!!」

アスカ「あ、あんたいつの間に!?っていうか何してんのよこのスケコマシ!!」

カヲル「開口一番、随分と心外な言葉だね。僕はいつでもいたいところにいるのさ」

アスカ「ちょっとあんた、マジでおふざけのつもりなら人を呼ぶわよ」

カヲル「心配はいらない。僕自身は至って真面目だ」

アスカ「それは余計に危険ね……」

カヲル「君は本当に相変わらずだね」

アスカ「で、何しに来たのよ?まさかあんたがわざわざあたしに会いに来たってわけでもないだろうし」

カヲル「非常に不愉快な言い方だよ。僕が君に会いに来てはいけないのかい?」

カヲル「まぁ、その目的はシンジ君を幸せにすることにあるけれど」

アスカ「ほらやっぱり!バカシンジバカシンジって!気持ち悪いったらありゃしない!」

カヲル「そう角を立てないでほしいな。僕は何も君に災いを持たらしに来たわけじゃない」

アスカ「バカシンジの事を口に出されることが、あたしにとってはもう災いよ!」

カヲル「君はそうやって自分に嘘をついてまでシンジ君を嫌いなフリをしているつもりかい?」

アスカ「フリですって?あんたに何が分かんのよ!」

カヲル「昔のように呼ばないんだね。まだ彼と親しくなかった頃のあだ名……そう、ナナヒカリだったかな?」

アスカ「……っ!」

カヲル「君がシンジ君を意識してしまっていることは誰にだって分かる。彼女……綾波レイもそのくらいは見抜いているはずだ」

アスカ「くっ……!それで、何よ!あたしが昔の男を未だに忘れられないって馬鹿にしに来たわけ!?」

カヲル「君はどうしてそう悪い方に考えるのかな」

カヲル「僕はね、ただずっと考えていたんだ。シンジ君の幸せの形、幸せの在り方について」

カヲル「シンジ君の望む幸せの形と、そうでないものがある。その違いは何なのか、最初はこの僕でも分からなかった」

アスカ「回りくどい!率直に言いなさいよ!」

カヲル「つまり、シンジ君がどんなに幸せに過ごしていても、その隣に誰かがいない事を結局、彼は望まないということだ」

カヲル「でもそれは幸せの望まれる形であってシンジ君の幸せそのものを否定するわけじゃない」

カヲル「逆に言えば望まれる不幸もあるということだね」

アスカ「で?バカシンジの望む幸せがほしいって?ならあんたがあげればいいじゃない!やってみなさいよ!」

カヲル「それはとても魅力的な可能性だと思うよ。だけど今はその役目は君に任せよう、碇・アスカ・ラングレー」

アスカ「どいつもこいつも!その名前で呼ぶなっちゅーの!!」

カヲル「何故そこで怒るのか、僕には理解出来ないな。君はシンジ君のことが好きなんだろう?」

アスカ「な、なにを!」

カヲル「好き、つまり好意に値するという意味さ」

アスカ「言い直さなくていいわよ!これ以上バカシンジの話はやめて!」

カヲル「シンジ君と君の幸せを両立することは、難しいことではないと思っていたけどね」

カヲル「だけどそれはどうやら、見た目以上に難解なものらしい。……君たちはずっとそうだ」

アスカ「知った風な口きかないで!あいつが死にたいっていうなら殺してやる!あたしがあいつにしてやれることはそれくらいよ!」

カヲル「運命を仕組まれた子供たち。君たちの生き方は時に不可解なほど歪だ。僕が君に言ってやれる言葉もなさそうだね」

カヲル「……僕の役目は、君を日本に招致することさ」

アスカ「招致……ですって?」

カヲル「もうすぐ正式に通達が来るよ。ユーロ空軍エース、碇・アスカ・ラングレー中佐に」

数日後

シンジ「ユーロ空母の着艦式典!?」

ミサト「そうよ。世間でも話題になっている頃でしょう?これで晴れて、正式にアスカが来日することが決まったわ」

ミサト「アスカは日本の血が混じっているし、実際に日本でパイロットをしていた事もある」

ミサト「その上、若きユーロの空軍エースと来れば、日本とユーロの友好式典のゲストとしてはこれ以上ない人選ってわけね」

シンジ「じゃあやっぱり……アスカは来るんですね」

シンジ(真希波が言っていたのはこの事だったのか)

ミサト「これはね、実は碇司令の意向でもあるの」

シンジ「やっぱりそうなんですか!?」

ミサト「やっぱり?」

シンジ「あ、いや、あの。つまりどういうことですか!?」

ミサト「いやー、あたしにも司令の考えはちょーっち理解出来ないわね」

シンジ「父さんが……一体どうして」

ミサト「とにかく、これでシンジ君も腹を括らなきゃいけなくなったでしょ」

シンジ「……」

ミサト「まだふんぎりがつかないの?」

シンジ「僕は!……僕は、アスカとは会いませんって」

ミサト「よく考えなさいシンジ君。あなたがどうするかは自分で考え、自分で決める」

ミサト「あえて幸せにならない道を選択する自由もあるわ。でもね……」

ミサト「あなた達の幸せは、あなた達だけの幸せじゃないの。あなた達が不幸になる事で悲しむ人もいるのよ?」

シンジ「それは……分かってますけど。でも僕はアスカと一緒にいて、幸せになれるとは思えないんです」

ミサト「それでもシンジ君の気持ちはもうはっきりしてる。……そうでしょ?」

シンジ「……」

シンジ「僕だって、二年会わなかったくらいでアスカの事を好きじゃなくなるわけがないですよ。でもこれは僕達二人で決めたことなんです」

ミサト「男なんて決まり事を破ってナンボよ」

シンジ「はは、加持さんですか……」

シンジ「僕も、それくらい吹っ切る事が出来たら……」

ミサト「……」

ミサト「なら、アスカがあなたに会いに来たら、あなたは会ってくれる?」

シンジ「……え?」

ミサト「シンジ君の方から積極的に会いに行こうという気になれないのは分かったわ」

ミサト「それなら、アスカがシンジ君に会いたいと思って会いに来てくれた時……」

ミサト「あなたは会ってくれるかしら?」

シンジ「ミサトさん……」

シンジ「無理ですよ、あのアスカが僕に会いに来てくれるはずがない。アスカは……僕達より自分の地位と名誉を優先したんです」

ミサト「でもそれが無理じゃなかったら、会ってあげようって気はあるの?」

シンジ「それは……もしそうなったら、僕だって会いたいですけど」

ミサト「なら決まりね。式典の日のひとさんまるまる時に、第三新東京駅のターミナル。あなたはそこに、アスカを迎えに来なさい」

シンジ「アスカを……」

ミサト「だから、その時までにあなたは自分の気持ちにふんぎりをつけておいて。後はこっちで何とかするわ」

ミサト「アスカともう一度関係を戻したいなら、あなた自身の気持ちに答えを見つけることはとても大事よ」

シンジ「僕の気持ち……」

シンジ「僕の気持ちは……はっきりしているはずなのに」

アスカ「……」

アスカ(二年ぶりの日本か。こんな形であそこに戻ることになるなんて)

加持「やあ、お嬢さん。海を見つめてどうかしましたかね?」

アスカ「!」

アスカ「あんた、確か……日本の海洋研究所で」

加持「ああ、覚えていてくれたのか。俺は加持リョウジ。まあなんだ、ネルフの雑用係みたいなもんさ」

アスカ「ふん、あっそ。で、その加持先輩がどういったご用件かしら?」

加持「おいおい、ご挨拶だな。麗しいレディが海を眺めて恋しそうな顔をしていたら、声をかけてやるのが男ってもんさ」

アスカ「恋しそうな顔……ね。あんた、それで口説いてるつもりならやめときなさいよ」

アスカ「あたし、これでも既婚者だから。それにアラフォーのオッサンには興味ないの」

加持「いやぁ、はは!これはまた手厳しいな。一回り年下の子供と思って侮ってたら、案外大人の女性らしい」

加持「ふむ、まあじゃあそのオッサンは手短に仕事を済ませるかな」

アスカ「そうしてもらえると助かるわ」

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


加持「君を日本に輸送するに当たっての手引きを伝えるよう言われていてね」

アスカ「手引き?」

加持「ああ」

加持「君をシンジ君の元まで送る手引きについて言伝を預かってる」

アスカ「バカシンジ?なんでバカシンジが……」

加持「もともとはそういう計画だからさ」

アスカ「な!それ、どういう意味よ!計画って誰の?」

加持「黒幕の名前は言えないな。俺も首がかかってるもんでね」

アスカ「そんな奴の言うことを信用しろっての?」

加持「信用しろとまでは言わないさ。こっちはお願いする立場だ。なあ、シンジ君に会ってやってくれないか?」

アスカ「なんで……どいつもこいつもバカシンジの名前ばっか」

加持「シンジ君が会いたがっている、君と」

アスカ「……!」

加持「式典の日、彼は訳あって第三新東京駅にまでしか来られないが、君に会いに来てくれるだろう。多分もうすぐ葛城から、その連絡が来ると思う」

アスカ「ミサトから?じゃあ、黒幕ってのはやっぱりミサト?」

加持「いやぁ、残念ながらもっと上だよ。碇中佐でも安易には逆らえないくらいのね」

アスカ「……」

加持「とにかくだ。君が自分からシンジ君に会いに行ってやろうって気になれない事は聞いた話で大体分かっている」

加持「だがシンジ君は君に会いたいと思ってその日、第三新東京駅にまで来てくれると言っているんだ」

加持「どうだろう、君も彼の気持ちに応えてやってくれないか?」

アスカ「……」

加持「君の気持ちは案外、はっきりしてるもんだと思うがね」

アスカ「あたしの……気持ちか」

アスカ「あたしの……気持ちか」

加持「深く考えることはないさ。面倒臭いことは俺たちオッサンオバサンに丸投げすればいい」

加持「君はただ、自分のしたいことを選び取りさえすればいいんだ」

アスカ「バカシンジがあたしに会いたいって、そう言ったのね?」

加持「ああ、その通りだ」

アスカ「なら、あたしは絶対に会いたくない」

加持「……」

アスカ「……だから、あたしはあいつに会ってそのことをしっかりと伝えてやるわ。二度とこんな真似はさせないでって」

加持「……そうか。感謝するよ」

アスカ「勘違いしないで。あたしはあのバカにもう一度言ってやるだけよ」

アスカ「あんたバカぁ?ってね」

リツコ「大体手はずは整っているのね?」

日向「はい、一応は……」

青葉「しかし何だって言うんです?確かセレモニーの日だって聞いてますけど、こんな大仰な」

マヤ「そもそもこれ、ネルフ主導でやるような事なんですか?民間で問題になるんじゃ」

リツコ「あなた達は余計な事を心配する必要はないのよ。それにこれはネルフじゃなきゃ出来ないことだわ」

日向「俺たちの仕事も下火になってきたかと思っていたが、まさかこんな事をやらさらるとはな」

青葉「人員不足なら当日は俺たちも出向かなきゃいけませんかね」

マヤ「えぇ!そうなんですか?」

リツコ「人手が足りなくなれば、当然そういった事態も考えられるわね」

日向「突然のセレモニーってだけでも驚きなのにな」

青葉「俺たちの仕事はこんなもんばっかりか」

マヤ「はぁ、一体なんだってこんなことを……」

リツコ(……さて、これでお膳立ては済んだわね)

リツコ(後はあなた達次第よ)

式典当日

ジリリリリリ……

パチッ

シンジ「……」

シンジ「一応朝早くに目覚ましをセットしておいたけど」

シンジ「眠れるわけ……ないじゃないか」

シンジ「子供達はまだ寝てるだろうし」

シンジ「二年ぶりにアスカと……」

シンジ「アスカが僕に会いたいって……本当かな?もしそうなら……」

シンジ「ダメだ、どうしても顔が綻んじゃうよ。やっぱり嬉しいんだ、僕」

シンジ「アスカなんて、ガサツでわがままで馬鹿力で、夜の相手だって気分次第で振り回すし」

シンジ「自分勝手で声が大きくて高慢ちきで、すぐに態度に出るし、手が出るし、実は良いところなんて無いんじゃないだろうか」

シンジ「……でも、お弁当を美味しそうに食べてくれるし、たまに僕に優しくしてくれることもあるし、実は案外繊細なところもあるし」

シンジ「本当は良いところも沢山あるんだ。それは分かってる」

シンジ「……分かってるけど」

シンジ「うーん、やっぱり一生一人は……寂しいよね」

シンジ「もしアスカが来てくれたら、ちゃんと伝えよう。僕の気持ちは変わっていないけれど」

シンジ「はぁ、どうすればいいんだ。もう会わないって決めてたのに……」

カヲル「船旅は順調だね」

アスカ「まさかあんたと一緒に風を浴びることになるとはね。遊覧航海にしたって趣味が悪いわ」

カヲル「君の目のくまを見ると、その憎まれ口への見方も少し好意的になるよ」

アスカ「な!」

カヲル「昨日は眠れなかったのかい?」

アスカ「……ちっ」

カヲル「出来れば僕もシンジ君に会いたい。だから君の気持ちはよく分かる」

アスカ「ふん!あたしはそういうんじゃないわよ。あいつに久々に言いたいことを言ってやれるからウズウズしてたってだけ」

カヲル「そうかい。まあ一応君の本心として受け取っておこう」

アスカ「一応は余計!」

加持「やあ、お二人さん。少しは打ち解けてくれたかな?」

アスカ「誰がこんな奴と!」

カヲル「彼女の好意を得るのは少し難しいようだ」

加持「ははは、ま、男女なんてのはそんなもんさ」

加持「どうやら予定より少し進行が遅れているらしい。問題ないとは思うが……まあゆっくりしててくれ」

ミサト「予定より一時間ほど遅れる?」

リツコ「着艦予定時刻が十時だから、実際には十一時ということになるわね」

ミサト「ギリギリ、想定の範囲内ってところね」

リツコ「セレモニー開始は正午。それまでにアスカを会場から抜け出させる必要があるわ」

ミサト「本当にそんなことして大丈夫なんでしょうね?」

リツコ「さあ?それは私に聞かれても」

ミサト「……」

ミサト「大体、何だってのよこの大掛かりな準備は」

ミサト「まーた変な陰謀論とかが流行るわよ」

リツコ「実際に陰謀だから致し方なしよ」

ミサト「ま、それもそうか」

リツコ「お膳立ては済んでいる。このまま問題が無ければ、司令の望む筋書き通りになるはずよ?」

ミサト「碇司令……か。そこだけが不安だったりすんのよねぇ」

リツコ「それに関しては私にも何とも言えないわね」

シンジ「まだ待ち合わせ四時間前……か」

シンジ「流石にまだ出発する必要はないよね」

ピンポーン

シンジ「ん?誰だろう」スタスタ

シンジ「はーい?」ガチャ

マリ「ハーイ!ワンコ君、どうもー!」

シンジ「うわっ!ま、真希波!ハーイって、どうしたのさ」

マリ「どうしたもこうしたもないよ!ワンコ君が一向に家を出る気配がないから様子を見に来たんだって」

シンジ「えぇ!?だってまだ四時間もあるし……」

マリ「四時間しかだよ!人生何があるか分かんないじゃん」

マリ「女の子と待ち合わせをするなら何時間でも前に着こうって気概じゃなきゃダメだぞ、ワンコ君」

シンジ「でも、僕には子供の世話もあるし……」

マリ「おお!子供!そうか、子供の世話!」

シンジ「う、うん」

マリ「にゃ!あたしがやるよそれ!ワンコ君の代わりに」

シンジ「えぇ!?そんな、だ、大丈夫なの?」

マリ「だいじょーぶだいじょーぶ。こう見えても、子守には自身があるんだよね〜」

マリ「それに、ワンコ君と姫の愛の結晶なんて、見ておかないと損ってもんだよ」

シンジ「愛の結晶って……やめてよそんな、恥ずかしい」

マリ「間違ったことは言ってないよーん?さってと、それじゃあお邪魔しちゃおっかな」

シンジ「ち、ちょっと、本当に大丈夫なんだよね!?」

マリ「だから心配無用だって!そんなことよりほら、ワンコ君はさっさと姫を迎えに行く!善は急げってね」

シンジ「えぇ……じゃあ、本当に任せたよ?」

マリ「さぁ、可愛い子供たちよ!!しっあわっせは~!」

シンジ「だ、大丈夫かなぁ……」

加持「じゃあ確認しておこう。現場についたら、俺たちが君をシンジ君の元まで案内する」

加持「入った情報によると、一部車両の通行止めと、諸事情による第三新東京駅の利用停止のせいで、会場周辺には大規模の渋滞が予想されるらしい」

アスカ「通行止め?利用停止?なんでまたそんな……しかもこんな日に限って」

加持「こんな日だからこそ、だよ。とにかく、あんまり悠長にはしていられない。艦の進行にもかなり遅れが出てきてる」

加持「時間通りに君を送り届けるには、なるべくスムーズに事を進める必要があるんだ。分かるな?」

カヲル「最短経路、というわけだね」

加持「その通りだ。恐らく車は使えないだろうから列車で向かうことになるが、さっきも言ったように生憎と第三新東京駅は利用停止になってる」

アスカ「運がないわね」

加持「一つ手前の駅で降りて……後は徒歩で行くしかないか」

アスカ「徒歩って……ちょっと本当に大丈夫なの?」

加持「全くもって未知ってところだな。だが、まあ何とかなるだろうって気分だ」

アスカ「なんかすっごい不安になってきたんだけど……」

ケンスケ「やあ、遅れてごめん」

トウジ「おお、ケンスケ。ひっさしぶりやなぁ!」

ヒカリ「相田君!久しぶり」

ケンスケ「ああ、トウジも委員長も元気そうだね。それにしても開始時刻までにはまだかなりあるっていうのにすごい人だかりだなぁ」

ヒカリ「まあ、結構話題になってたイベントだから」

トウジ「わざわざ空母を見たいなんて変わりもんが、ケンスケ以外にこないにいるとはなぁ」

ケンスケ「まあ、お祭り気分で来ている人もいるさ。それにしても、すごい渋滞だったな」

トウジ「ああ。こりゃ無理して電車で来といて正解だったわ。車道の方はもう、ギュウギュウやったからなぁ」

ヒカリ「なんでも、直通道路が通行止めになったんですって」

ケンスケ「通行止め?それもよりによってこんな日にかい?」

トウジ「やっかいなことしよるなぁ。まあ、そのお陰でワシらは少しスペースに余裕を持てとるっちゅうわけやけどな」

ヒカリ「碇君と綾波さんはやっぱり来ないのね」

ケンスケ「ああ、誘いはしたんだけどな……。二人とも、何だか今日は用事があるとかではぐらかされちゃって」

トウジ「ま、シンジの方はしゃーないか。なんてったって、学生時代からの女房がおるからなぁ」

ヒカリ「アスカ……そういえば全然会ってないわね」

ケンスケ「それどころじゃないってことかもな。最近は物騒だし。あ、確かあの二人と言えば、君たちもめでたいんだってな?」

トウジ「ん?あ、ああ。まあな」

ヒカリ「うん。まだ分かっただけっていう段階なんだけど」

ケンスケ「思ってたより結構遅かったよな。でもほんと、おめでたいよ」

トウジ「お前も早う誰かつくりぃや」

ケンスケ「簡単に言ってくれるよ、君たちみたいな人種は……」

ヒカリ「相田君はまだ趣味に打ち込んでるの?」

ケンスケ「ま、そういう訳かな。趣味の人を目指してるんでね」

トウジ「ふん、まあええけどな。さてと、ワシは飲み物でも取ってくるか」

リツコ「まずいわね」

ミサト「どうしたの?」

リツコ「エンジントラブルらしいわ。予定よりも更に遅れがでてる」

リツコ「セレモニーの開始時刻自体、予定よりも延期されるかもって」

ミサト「ちょっと、それって!」

リツコ「艦上のことだから、私達にはどうしようもないわね」

ミサト「シンジ君がそんな事を知っているはずもないし……」

ミサト「あたし、この事をあの子に伝えて、待ち合わせ時刻がズレるかもって言ってみるわ」

ゲンドウ『いや、その必要はない』

ミサト「司令!?」

ゲンドウ『葛城一佐。君は黙って見ていたまえ』

ミサト「司令!一体これはどういう事なのか、説明していただけませんか!あなたは一体何をしようとしているんです!?」

ゲンドウ『私の意図を知る必要もない。君はただ私の言ったことを実行し、その結末を見届ければいい』

ミサト「どういうことですか!?」

ゲンドウ『まつりに余計な茶々は不要、ということだ』

ゲンドウ『赤城博士、後は予定通りに頼めるな?』

リツコ「分かっています」

ゲンドウ『よし。では以上だ』

ミサト「……」

ミサト「リツコ、あんたと司令がどんな事を企んでるのか知らないけど」

ミサト「あたし、今回のことであの二人が傷つくようなことがもしあったら、この職場やめてやるから」

リツコ「そう。なら、そうならないようお互い最善を尽くさなきゃね」

シンジ「待ち合わせ時刻、二時間半前。来てしまった」

シンジ「でも、誰もいない。確か利用停止だって。駅に入って大丈夫だったんだろうか」

シンジ「いつもは考えられないくらい、人がいない」

シンジ「静かだな……ここで僕はアスカを待つのか」

シンジ「早く来ないかな」

シンジ「……ちゃんと来てくれるよね。もう待ちぼうけはごめんだ」

シンジ「もし来なかったら、僕はどうするんだろう」

シンジ「僕は……僕はアスカと会って。そしたら抱きしめてあげよう」

シンジ「向こうが何か言ってくる前に、僕の言いたいことを全部言ってやろう」

シンジ「そして最後に、アスカの気持ちを聞いてあげよう」

シンジ「アスカは……なんて言ってくるだろう」

シンジ「きっと、開口一番に『あんたバカぁ?』って言ってくるだろうな」

シンジ「それで、アスカのことだからもしかしたらお腹を小突くくらいの事はしてくるかもしれない」

シンジ「……うん、大丈夫だ。僕はまだ待てる」

加持「やあ参ったな、いよいよって感じの遅延だ。どうなってやがる!」

アスカ「なんかあったわけ?」

カヲル「エンジントラブルってことらしいね」

加持「ユーロの空母がそう簡単にエンジントラブルになってたまるか!」

アスカ「ちょっと、どういうことよ」

加持「……ああ、大丈夫だ。君が心配することは何もない。大丈夫、きっと何とかなるさ」

カヲル「二百年前の人間はみんなこんな感じだったんだろうね」

アスカ「もう、こんな時に限って情けない艦ねぇ!これだから海軍は!」

加持「お、おいおい、あんまりはしゃぎすぎないでくれよ?こっちはアウェーなんだ」

アスカ「いいのよこれくらい!ビシッと言ってやらなきゃ」

カヲル(……日本語は通じてないと思うけどね)

アナウンス『誠に申し訳ありません。開始時刻の延期を、お知らせ致します』

ケンスケ「延期?こんな重要なイベントで?」

トウジ「おいおい、どないなっとるんや!」

ヒカリ「なんか通行止めだったり、第三新東京駅の利用停止だったり、嫌な感じね」

ケンスケ「こういう日に限ってトラブル続きってのは、どうにも気持ち悪いね」

トウジ「おーい、早うせいやー!」

ヒカリ「そういえば今回のイベント、ユーロと日本の友好記念だって……」

ヒカリ「ユーロって言えばアスカよね。何か関係があったり……」

ヒカリ「って、そんな訳ないか」

シンジ「待ち合わせ時刻まで、あと一時間半……」

シンジ「こう誰もいないと暇だな」

冬月「そうか、ならば俺が少し付き合ってやろう」

シンジ「!」

シンジ「あ、あなたは確か……」

冬月「ネルフ副司令の冬月だ。君は碇の息子だな?」

シンジ「は、はい……。でも一体なんでこんなところに」

冬月「碇の奴の茶番に付き合わされてな。いつも、雑務を押し付けられるのはこっちだから迷惑しているよ」

シンジ「父さんがそんなことを……。ごめんなさい」

冬月「……」

冬月「ふっ、何を言っている。老人の軽い冗談だよ」

冬月「君には待ち人がいるのだろう?」

シンジ「知っているんですね」

冬月「ああ。相手は君と同じく使徒から世界を救ったユーロの英雄、式波アスカ……いや、今は碇アスカか」

シンジ「そう言われると、なんかこそばゆいですね」

冬月「君達が恥じることは何もない。ただ、そう。強いていえばもう少しだけ、大人達のわがままに付き合ってほしいというわけだな」

シンジ「僕達も、もう充分大人ですから」

冬月「……そうか。ならば今度、一緒に将棋を打ってみるのも面白いかもしれんな」

シンジ「将棋……ですか?」

冬月「ああ。飛車角金は落としてやるが、子供には打てない将棋というものがある」

シンジ「子供には打てない……」

冬月「君を見ていると、ユイ君の面影を感じる。そういう意味では、式波君はむしろ碇の方に似ていると言えるかもしれんな」

シンジ「アスカが父さんに?」

冬月「どちらかといえば、程度だがね。碇に比べればあんなのは全然マシだ。あいつは俺でも持て余す奴だからな」

シンジ「父さんと、アスカか」

加持「よし、予定より大分遅れちまったがようやっと到着だ」

加持「遅延騒動のせいもあってか外が騒がしいな。降りる準備はいいか?」

アスカ「一応オーケー」

カヲル「ふむ、じゃあ僕はここでお別れだね」

加持「おっと、君はここまでだったか」

カヲル「これ以上は役目を与えられていない。僕も適当な時間にここを降りることにするよ」

アスカ「そう。じゃあスケコマシ、あんたもせいぜい元気でね」

カヲル「……二番目の少女、シンジ君をよろしくお願いするよ」

アスカ「……どうだか!あんたの言うあいつの幸せのことなんかあたしは知らないし!」

カヲル「うん、君はそれでいい。その方がシンジ君も喜ぶだろう」

加持「さ、本当にもう話してる時間はないんだ。行くぞ」

アスカ「了解よ」

リツコ「私たちの仕事も終わりが見えてきたわね」

ミサト「……どういうこと?」

リツコ「そのままの意味よ」

ミサト「そうじゃないわよ!こんな時間じゃ、もう待ち合わせには間に合わないわ!」

ミサト「それに車両は渋滞!第三新東京駅は利用停止ときたわ!これじゃ逆立ちしたって無理じゃない!」

ミサト「あの大掛かりなまさか作業はこの為だったの!?」

リツコ「……ええ、その通りよ」

リツコ「もうすぐ、直通道路の封鎖は解除されるわ」

ミサト「っ!やっぱりあたし、シンジ君に!」

リツコ「ミサト、軽率に行動するのはあなたの悪い癖よ」

ミサト「あんた、どの口が言うのよ!」

リツコ「あなたがあの二人を信頼しているとでも言う気なら、少し黙って見ていなさい」

ミサト「……っ!」

アスカ「ねえ、もう予定の一時間前を切ってるわよ。これじゃ間に合わないんじゃ……」

加持「くっそ、どうなってやがる!これじゃあどうしたって、第三新東京駅に着くのに2時間はかかるぞ」

加持「こんな時に通行止めで渋滞だなんて、タイミングが悪すぎる」

加持「とにかく、通りに出よう」

アスカ「……」

アスカ「ねえ、もういいわよ。諦めましょう」

加持「なっ。おいおい、ここに来て何を言い出すんだよ」

アスカ「無理よ。……やっぱり無理なのよ」

アスカ「うん、バカシンジにもう一回会おうなんて、あたしが甘かった。もう会わないようにしようって決めた事なのにね」

加持「アスカ、それは……」

アスカ「いいのよ!だってこんな、わざとみたいにトラブルが積み重なって!要はあたしがバカシンジと会うなってことなのよ!」

アスカ「そこまでするなら、こっちだって願い下げよ……。バカシンジなんかに会わなくたって、一人は怖くないのに……」

加持「……」

加持「……アスカ。こういう時、俺が君にかけてやれる言葉は、残念ながら何もない」

アスカ「そうよ!何もないのよ!バカシンジとあたしの間にも何もないのよ!やっぱり会うべきじゃないのよ」

加持「だが、君のその複雑な気持ちに答えをくらるとしたら、それはシンジ君の言葉だけだ」

アスカ「なんで、どいつもこいつも……あたしはバカシンジなんかに会いたくないのに」

加持「君がここに来て彼に会うのが恐くなって尻込みしてしまう気持ちは分かる。だけどそれは、誰だって同じだ。きっと、シンジ君でも」

加持「人と人の間の壁ってのは、案外ぶ厚いもんだ。そしてそれは、トゲだらけで触れる者を傷つける」

加持「だから、他人といるより一人の方が怖くはないだろう。……でもな」

加持「君がそれを理解していながら一度でも、シンジ君と居ることを願ったのならそれは……紛れもない君の幸せになる」

アスカ「……」

アスカ「……だってどっちにしたって、もう無理じゃない」

加持「シンジ君は待っていてくれるさ。例え日が暮れたとしても」

加持「さ、行こう」

グワワン!キキィィィィィィ!!

加持「ん?おいおい、なんだあの車危なっかしいな……っておい、あれ」

バタン

ゲンドウ「……」ザッ

加持「い、碇司令……?」

アスカ(碇司令?それって確か、バカシンジのパパ……)

ゲンドウ「予定より少し遅れてしまったか」

加持「し、司令、こりゃあ一体どういう?」

ゲンドウ「どういう事でもない。私はこのセレモニーに参加するためにやって来ただけだ」

加持「そ、そうですか、そりゃあ」

ゲンドウ「そしてこれは私の独り言だが」

ゲンドウ「私の乗ってきた車は有事の際に特権として、封鎖車両でも通行することが出来るようになっている」

アスカ「!」

ゲンドウ「私はこのセレモニーに参加するので帰りは遅くなる。その前にあの車は一度第三新東京に戻すつもりだ」

加持「司令……それって」

ゲンドウ「もしそれに乗じて、替えようのない急ぎの用で私の車に乗りたい者がいるのなら、特別に許可しよう」

アスカ「じゃあ……!」

ゲンドウ「……独り言だと言っただろう。それ以上の意味はない」スタスタ

加持「……」

加持「はあ、全くとんだサプライズだよ。こんなの俺でも聞いてなかったぞ」

加持「……アスカ、あとは一人で行けるな?」

アスカ「……うん」

アスカ「分かった。じゃあ行ってくるわね。ここまでわざわざありがとう……加持さん」タタタッ

加持「……『加持さん』か。どうにも慣れないね、こりゃ」

ゲンドウ「後は頼んだぞ、冬月、レイ」

バタン

アスカ「第三新東京まで最高スピードでお願い!」

レイ「ええ、そうね」

アスカ「……って、エコヒイキ!?」

冬月「だからな、あいつは本当に毎回俺を巻き込んで困らせるんだ」

冬月「全くあいつといると、寿命がいくらあっても足りんよ」

シンジ「そ、それは本当に……父がいつもすみません」

冬月「ああ、いや。すまん、また碇への愚痴になってしまっていたか。どうにもな、こういう所は俺も直らんか」

冬月「ふむ、こんな時間まで話し込んでしまったか」

シンジ「あっ、本当だ。約束の時間まで、あと二十分……」

冬月「もうそろそろ俺も退場する時間か」

冬月「なあ、碇の息子。俺には分からないんだが……」

冬月「好きな女を追いかけ続ける事、というのは人を変えるものだと思うか?」

シンジ「好きな女?」

冬月「そうだ。君もあいつの息子なら、碇の奴の気持ちが分かるんじゃないかと思ってな」

シンジ「さあ、どうでしょう。冬月さんに分からないなら、僕にも分かりませんよ……」

シンジ「さあ、父さんのことは僕にもあまり……。冬月さんに分からないなら、僕にも分かりませんよ……」

冬月「……そうか。まあ、君らのような世代はこれから、苦労してそれを学んでいくというのも一興かもしれんな」

冬月「出来れば俺の目の黒い内に、その答えを教えてくれないか?」

シンジ「頑張ってみます」

冬月「そうか、頼まれてくれるか。じゃあ、俺はそろそろ行こうと思うよ」

シンジ「行く?」

冬月「ああ。邪魔をするなと碇に念押しされてるんでな。もうすぐ到着するだろう」

シンジ「……来て、くれますよね」

冬月「……」

冬月「さっきの言葉は撤回だな」

冬月「君もやはり、ユイ君より碇の奴に似ているよ」

冬月(……となると、尚更厄介だがなぁ)

ゴーゴー

アスカ「……」

レイ「……」

アスカ「……ひ、久しぶりね、エコヒイキ」

レイ「そうね」

アスカ「……この車、本当に速いのね」

レイ「ええ」

アスカ「……」

レイ「……」

アスカ「……ち、ちょっと、なんか喋りなさいよ」

レイ「なんか?」

アスカ「ほら、二年もご無沙汰だったじゃない!積もる話とか!」

レイ「この前電話した時はそんな雰囲気じゃなかったわ」

アスカ「あれは……あたしもその、ピリピリしてたから」

レイ「そう」

アスカ「……」

レイ「……」

アスカ「だから!そうじゃなくてよ!話続けなさいよ、気まずいでしょ!」

レイ「そう?」

アスカ「そうよ!相変わらずブスッとしちゃって!」

レイ「……でも私、分かった事もあるわ」

アスカ「分かったこと?」

レイ「あなたには、ちゃんとした幸せがあるってこと」

アスカ「またその話?あんたに何が分かるっての!」

レイ「分からなくていい」

レイ「でも私は、ずっと考えてたもの」

アスカ「……何よ」

レイ「十四年前からずっと」

レイ「碇くんや、あなたや六号機の人や八号機の人や、赤城博士や碇司令や」

レイ「それ以外の多くの人との思い出」

レイ「今でもずっと心に残ってる。心が……ポカポカしてる」

レイ「きっとそれが、幸せって事だと思うから。だからあなたにも、そんな居場所があるべきだって思う」

アスカ「……」

アスカ「ふん、あんたの口からそんな言葉を聞く日が来るとはね」

レイ「あなたにも、碇くんといることでそんな思い出が出来るんじゃないの?」

アスカ「別に。あんな奴といた所で気分が腐るだけ」

アスカ「それにこれは、あたし達で選んだ道だから。今更幸せとかなんとか言って言い訳なんて出来ない」

レイ「この期に及んで、あなたはまだ迷ってるのね」

アスカ「そう、あたしはずっと迷ってる。弱いやつよ。独りは怖くないのに。寂しくもないはずなのに。今もまだ迷ってる」

レイ「他人との思い出がそうさせるのよ」

アスカ「そうよ。だから思うの、バカシンジやあんたやコネメガネやミサトや、そういう奴らになんか絶対会わなきゃ良かったって」

レイ「それはあなたが、その人達のことを好きだから?」

アスカ「…………」

レイ「……」

アスカ「……………………」

レイ「そう、嬉しいわ」

アスカ「まだ何も言ってないでしょ!」

レイ「言わないから勝手に思われるのよ」

アスカ「ちっ!好きにしなさいよ!」

レイ「もうすぐ着くわ、準備して」

アスカ「……」

レイ「心配ないわ。会えば自然に言葉は出てくるもの」

レイ「私達みたいに」

アスカ「あたし、多分優しい言葉なんてかけられないわよ」

レイ「自然と出てきた言葉があなたの気持ちよ」

アスカ「……あんた、変わったわね」

レイ「……」

レイ「いいえ、変わってないわ」

キキィィィ、ガタン

レイ「……ついたわよ」

アスカ「ここから先は1人で行けってことでしょ?」

レイ「……」

バタン

アスカ「一応、礼だけは言っておくわ。じゃあね!」

バタン

レイ「……はぁ」

レイ「今日はラーメンが食べたいわね」

シンジ(冬月さん、行っちゃった)

シンジ「……」

シンジ(……あ、もう時間、過ぎてるや)

シンジ(アスカ、来ないな)

シンジ「……はぁ」

シンジ(本当に静かだな。時間が止まったみたいだ……)

シンジ(まるで一人ぼっちになってしまったみたいな)

シンジ(アスカは来るのだろうか。来てくれるのだろうか)

シンジ(待てば待つほど、来てくれなかった時の虚しさは大きいんだよなぁ)

シンジ「……」

シンジ「…………!」

アスカ「バァーカシィーンジィー!!」タッタッタ

シンジ「あ、アスカァ!!」

アスカ「はぁ、はぁ」タッタッタ

アスカ「はぁ……はぁ……はぁ」タッタット

シンジ「あ、アスカ……」

アスカ「はぁ、はぁ……」

アスカ「……待ったわけ?」

シンジ「……そうだね、二年ほど」

アスカ「ふん」スクッ

シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「あ……」

アスカ「……」ギュッ

シンジ「!」

シンジ(しまった、先手を打たれた)

シンジ(落ち着こう、とにかくここはこれまで言いたかった事を)

シンジ「あの……」

アスカ「喋らないで」

シンジ「……っ」

アスカ「何も、考えないで……」

シンジ「……」アセ

シンジ(何も考えないでってそりゃ無理だよ!むしろ考えまくるよ!)

シンジ(どうするどうするどうするどうすればいい?)

シンジ(せめてリハーサルくらいすれば良かった。っていうか今どういう状況だっけ?)

シンジ(何でこんな所に、というか周りはこんなに静かでなんで僕達二人しかいないの。いやそもそも……)

シンジ(僕は、何がしたかったんだ……?)

アスカ「……」ギュゥゥゥ

シンジ「……んぁ?」

アスカ「……」ギュゥゥゥ

シンジ「ちょっ、く、苦し……苦しい」

アスカ「……」ギュゥゥゥ

シンジ「ストップ!アスカ、ストップお願い!背骨……折れる!」

アスカ「……ふん」パッ

シンジ「ぷはぁ……ゼェ、ゼェ」

アスカ「あんたにはこれくらいがお似合いよ」

シンジ「はぁ、相変わらずキツいなぁ」

アスカ「……。言いたいことがあんなら聞いてあげるわよ」

シンジ「むっ。そっちこそ、なんか言うことがあるんじゃないの?言っていいよ」

アスカ「そう。じゃあはっきり言うけど……」

シンジ「あっ、ま、待って!」

アスカ「何よ、折角あたしが覚悟を決めて言ってやろうと思ってんのに」

シンジ「やっぱり……僕の方から言う。言わせてください」

アスカ「……。なら早くして」

シンジ「う、うん。あの、僕達さ……本当に色々あったよね」

シンジ「世界を救うためにエヴァに乗っていたなんて、出会い方からして飛び抜けててさ」

シンジ「その、それから今まで。まあアスカといて楽しいばっかりじゃなかったっていうか、正直キツいことの方が多かったけど」

シンジ「アスカはどう?僕といて、そんなに悪くなかったって思うかな」

アスカ「最低」

シンジ「……」

アスカ「……よりはマシってくらい」

シンジ「そ、そっか。うん、ありがと」

シンジ「でさ、僕達今までずっと、一緒になったり離れたり、はっきりしなくて大変だったよね」

シンジ「だからさ、僕達多分、近づきすぎても離れすぎても辛いんだよ。なら……その」

シンジ「どっちにしたって辛いなら、一緒にいて、一緒に辛くなった方が楽かな……って、僕は思ったんだけど」

アスカ「…………」

シンジ「あの……お互いに間違ってた所もあるし。だからそれを直しながらさ、もう一度やり直せないかな」

アスカ「……」

シンジ「……」

アスカ「……ガキシンジ」

シンジ「……へ?」

アスカ「ガキ!バカガキ!」

シンジ「な!」

アスカ「やり直す?無理よ!ガキ!」

シンジ「なんで!」

アスカ「あんたがガキだから!」

シンジ「何言ってんだよ!じゃあアスカだってガキだよ!」

アスカ「うっさいガキシンジ!あんたはガキだからガキシンジなのよ!」

シンジ「そ、そんな無茶苦茶な……」

アスカ「……やっぱり、あたし達お互いに違う生き方をするべきよ」

シンジ「!」

アスカ「あたしとあんたは、それぞれ交わらない別々の道を行くの。それじゃダメなの?」

シンジ「それは……」

アスカ「やっぱりあたし、あんたとは生きられない」

アスカ「だって、あんたのせいで夜も一人で眠れなくなるのはいや。孤独が怖くなるのはいや。自分に自信が持てなくなるのはいや!」

シンジ「……自分勝手。分からずや」

アスカ「それでいい。ミサトがしつこいし、あんたがあたしのこと好きだって言うからあんたと結婚したけどさ」

シンジ「ち、ちょっと待ってよ、僕がアスカの事好きだから結婚したって?」

アスカ「そうよ?」

シンジ「何言ってんだよ!アスカが僕のことを好きだったんじゃないか!だから結婚したんだろ?」

アスカ「は?何言ってんの?なんであんたみたいなバカガキを好きになんのよ!あんたが好きだっていうから!」

シンジ「違うよ!アスカが好きだったんだよ!」

アスカ「違う!あんたが好きだった!」

シンジ「アスカが好き!」

アスカ「バカシンジが好きなのよ!」

シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ・アスカ「「はっ!」」

シンジ「こ、これは違うよ!そういう事じゃないからね!勘違いしないでよ!」

アスカ「あ、あんたの方こそ勘違いすんじゃないわよ!今のは別にあたしがあんたに……とかそういうんじゃないんだから!」

シンジ「そんなの、僕だって分かってるよ!でさ、そんな事を言いたいんじゃなくて!」

アスカ「そ、そうよ!とにかく、やっぱりあたしとあんたは別れるべきなのよ!」

シンジ「嫌だよ!!」

アスカ「……!」

シンジ「……あ、あれ?いや、うん。嫌だけど……」

シンジ(なんだろう、今……咄嗟に口をついて)

アスカ「あ、あんた……」

シンジ「だ、だから、嫌なんだよ!どういう言葉で取り繕ってもアスカと離れたくない!……ってこと」

シンジ「これが今の僕の気持ち。……悪い?」

アスカ「……でも、だって」

アスカ「あたし、わがままいっぱい言うわよ」

シンジ「まあそれくらいなら」

アスカ「あんたに迷惑かけるし、幸せにしてやれないと思う」

シンジ「努力はしてほしい……けど」

アスカ「あんたとか、子供とかに優しくもできないかも」

シンジ「そこは出来れば直してほしいかな」

アスカ「それに、結構早死にするかも」

シンジ「正直、それはやめてほしい」

アスカ「……。なら」

アスカ「キスして」

アナウンス『長らくお待たせ致しました。これより記念式典を開始致します』

ケンスケ「おっ、なんだようやっとかぁ」

トウジ「全く、待たせよってからに」

ヒカリ「まあまあ、無事に始まっただけ良かったじゃない」

アナウンス『えーそれでは、まずこの式典の開催に当たって、特別ゲストのご紹介がございます』

ゲンドウ『皆さん、本日はお集まり頂きありがとう』

ゲンドウ『開催延期に伴い、自己紹介は割愛させて頂く。今回、日本とユーロの友好という記念すべき式典において、二人の特別なゲストを招致している』

トウジ「特別なゲストぉ?」

ケンスケ「俳優とか、或いは親善大使とかか?」

ヒカリ「超有名人とか来たりするのかしら」

ゲンドウ『ご紹介しよう。ユーロ空軍の若き英雄、式波・アスカ・ラングレー氏と……』

ゲンドウ『私の息子だ』

ピッ

アスカ『……。なら』

アスカ『キスして』

ケンスケ「ぶっ!!」

ヒカリ「ひっ!!」

トウジ「な、なんやアレ、センセと……式波?ど、どないなっとるんや……」

リツコ「あら、ロマンチックね」

ミサト「え!?ちょ、なによこれ!?はぁ!?」ヘタヘタ

リツコ「シンジ君とアスカが大画面に映し出されているわね。なかなかの演出だわ」

ミサト「車両封鎖、駅の人払い……もしかして、この為?」

リツコ「ふふ、気が抜けたって表情ね」


冬月「……全く、碇の奴め」

冬月「派手な舞台を用意してやりたいだと?これじゃまるでさらし者だぞ」

マリ「よーしよし、いい子だね。っばぁ〜」

テレビ『特別ゲストのご紹介を……』

マリ「ん?」

テレビ『……なら、キスして』

マリ「ぶーーっ!!!」


加持「いやぁっはは!サプライズはあれだけじゃなかったのか!」

カヲル「そう、それでいい。彼からのこのギフトをシンジ君も喜んでくれるかな」

シンジ「アスカ……」

チュッ

アスカ「んむっ……」

シンジ「……」

アスカ「……はぁ」

シンジ「……これで、どうかな」

アスカ「……まあ、そこそこね」

アスカ「ねぇ、きっと今頃世間はセレモニーとやらに夢中よ?」

アスカ「こんな所にいるのはあたし達だけ」

シンジ「うん、そうだね」

シンジ「まるで、世界中の時間が止まったみたいだ」

アスカ「ここにはあたし達しかいない」

アスカ「……だからあたしもあんたといたい」

シンジ「アスカ……」

アスカ「あたしも本当はバカシンジと一緒にいたい」

アスカ「朝も昼も夜も、一瞬だって離れたくない。一秒も逃がさずにあんたといたい」

シンジ「ん、僕もだよ」

アスカ「バカシンジ、好き」

シンジ「僕はもっと好きさ」

アスカ「あたしはもっともっと好き」

シンジ「僕はもっともっともっと好きだよ」

アスカ「……そう、なら本当に好きなのね」

シンジ「うん……」

アスカ「じゃあ、これからもずっと……一緒にいてあげる、バカシンジ」

シンジ「アスカに言われなくたって」

アスカ『ずっと……一緒にいてあげる、バカシンジ』

シンジ『アスカに言われなくたって』

ヒカリ「きゃああああああ!」

大衆「おおおおおおおおおお!!!」

大衆「ぴーぴー!!」パチパチ

ケンスケ「こっちが恥ずかしいな」

トウジ「なんやこれぇ……なんか寒気がぁ」


青葉「なんだ、何か向こうの方が騒がしいな」

日向「何か、楽しいことでもあったのかねぇ」

マヤ「この仕事、いつ終わるんですか」

ミサト「きゃああああああ、シンちゃんかっくいいーー!!アスカも可愛いわよーーん!!」

リツコ「いい歳してはしゃぎ回って……」

リツコ「で、どうする?ネルフをやめるのかしら?」

ミサト「……むぅ、それはまた次の機会に」

リツコ「そう、お気に召したようでよかったわ」

リツコ「マヤ、作戦終了よ。無事成功したわ、お疲れ様」


ゴーゴー

レイ「友好……。ユーロと日本」

レイ「二番目の子と、碇くん」

レイ「……碇司令と碇くん」

アスカ「……じゃあ、あたしもそろそろ戻ろっかな」

シンジ「え?戻るって?」

アスカ「会場よ。というか、ユーロに帰らないと」

シンジ「はぁ!?なんだよ、結局帰っちゃうの!?」

アスカ「そりゃあ、これからどうするにしたって一度は帰らないと。荷物のことだってあるし」

シンジ「ちょ、ちょっと待ってよ」ギュッ

アスカ「……なに?」

シンジ「今日くらい、いいじゃないか。久しぶりに子供たちにだって会わせたいし」

シンジ「僕も、その……溜まってるし」

アスカ「それ今言うことぉ?」

シンジ「……まあ、そうだけど」

アスカ「最低」

シンジ「しょうがないだろ、男なんだから!」

アスカ「ふん!どーだか」

アスカ「……いい?あんた、あたしと一緒にいる気なら覚悟しなさいよ?」

シンジ「今までの経験でもうそれは充分分かってるって」

アスカ「そう、いいわ。じゃああんたの家まで連れてって、バカシンジ」

シンジ「うん。じゃあ、行こうか!」

ミサト「じゃあ結局、この一連のイベントは全部碇司令の企画した親バカ大作戦だったってわけ?」

リツコ「つまりはそういうことね。ネルフも世間もすっかり巻き込まされたというわけ」

ミサト「はぁ。かつては使徒を相手に世界を救っていたあたし達が、かたなしね」

リツコ「なかなか感動的なシナリオじゃない?」

ミサト「感動もいいけど、次はあたし達にもちゃんと説明が欲しいわね」

リツコ「残念、これは超A級機密事項よ。そう簡単には漏らせないことになってるの」

ミサト「それって職権乱用なんじゃ……」

リツコ「男なんて決まり事を破ってナンボよ」

ミサト「……」

ミサト「ほんと、あんたには敵わないわね」

ミサト「まあでも、久しぶりに二人の笑顔が見れたし、よしとするかな」

後日、ネルフ本部

シンジ「ここに来るのも久々だな」

アスカ「あたし、すっかり勝手も忘れちゃったわ」

シンジ「それにしても、なんなんだろうね。外に出る度に街の人達から面白いものを見るような目で見られるのは」

アスカ「あんたもやっぱり感じてた?てっきり二年ぶりの感覚に慣れてないだけかと思ってたんだけど」

シンジ「うん。なんか、こそばゆいよね。ああいう目で見られると……えっと、司令室はっと」

ピッ

ウィーン

シンジ「……父さんと会うのも何年ぶりかな」

アスカ(バカシンジのパパか……あの時)

アスカ(あれってやっぱり、そういうことよね。あたしもやっぱり、お礼とか言ったほうがいいかな)

ガッシャン、ウィーン

シンジ「さて、と……おっと!」

レイ「あら」

アスカ「!」

シンジ「あ、綾波!」

レイ「碇くん、久しぶり……」

シンジ「わっ!本当に綾波だ!こんな所で会えるなんて、嬉しいよ!」

シンジ「っていうか綾波、なんていうかまた凄く大人っぽくなったよね!」

レイ「そう?」

シンジ「うん!服装とか、顔つきとかさ!凄い可愛いよ!」

アスカ(……)

レイ「……嬉しいわ。碇くんにそう言ってもらえて」

シンジ「ね、また今度さ、どっかで一緒にご飯食べようよ!僕お弁当作っていくからさ!」

アスカ(…………)

レイ「そうね、私もあまり暇じゃないから、時間が出来たら連絡するわ」

シンジ「うん!楽しみにしておくね!本当に良かったよ、まさかこんな所で会えて!」

レイ「ええ。じゃあ私、そろそろ行かなきゃだから」

シンジ「あっ、うん。ごめん引き止めちゃって」

レイ「いいの、私も嬉しかったから」

シンジ「じゃあね」

レイ「ええ、さよなら。……二号機の人も」

アスカ「……ふん!」

シンジ「あ、アスカ、ちゃんと挨拶くらいしなよ!」

アスカ「うっさい!なによ、二人の世界に入っちゃってさ、嫌らしい感じ!」

シンジ「なんだよ、いいだろ別に。久しぶりの再会なんだし!アスカは何も思わないの?」

アスカ(あたしとこいつはあの日にもう会ってんのよ)

レイ「……」クス

レイ(二番目の子。碇くんをよろしく)

アスカ(あんたもそれ?ほんとどいつもこいつも)

レイ(今度はもうちょっと、話しやすい場面で会えるといいわね)

アスカ(そうね、まあ期待しといてやるわ。ほら、もう行きなさいよ)

シンジ「ねえ、ちょっと!」

アスカ「あ?何よ?」

シンジ「今、アスカと綾波こそ二人だけの世界に入らなかった?」

アスカ「は?何いきなり言っちゃってんのよ」

シンジ「目線だけで会話してた気がする」

アスカ「ふん、あんたには関係ない!イーッだ!」

シンジ「なっ!あ、ちょっ、じゃあね綾波!あっ、ねぇアスカってば!」

ウィーン

ゲンドウ「……」

シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「あの、父さん……」

ゲンドウ「……」

シンジ「なんで、マスクつけてるの?」

ゲンドウ「……いや、問題ない」

冬月(言えるわけないか。どうしても顔がニヤつくから口元を隠してる、なんてな)

ゲンドウ「シンジ、私は忙しい。分かるな?」

ゲンドウ「言いたいことがあるなら手短にすませろ」

シンジ「……」

シンジ「僕は、父さんが何を考えているのか、未だによく分からない」

シンジ「僕が小さい頃の父さんは……今の僕にとってのアスカみたいなものだった」

シンジ「僕を傷つけて、どんなに期待しても父さんは会いに来てもくれない。僕と会っても優しくしてくれない」

ゲンドウ「……」

アスカ「……」

シンジ「そんな父さんが正直嫌だった。父さんに見て欲しかったからこそ、なおさら……」

シンジ「でも父さんは父さんで、僕の父親だ。それは多分、変わらない事実だから」

シンジ「今回のこと、父さんがどういうつもりで企画したにせよ、嬉しかった。だからさ」

シンジ「今度は僕達の子供……父さんにとっての孫を連れてここに来るよ」

ゲンドウ「……そうか」

ゲンドウ「言いたいことが終わったのなら帰りなさい」

シンジ「……」

冬月「碇、お前は……」

ゲンドウ「冬月、合いの手は不要だ」

冬月「……」

アスカ「……」

アスカ「あ、あの、なんと呼べばいいのか……し、司令。多分、まともにお話するのは初めてだと思います」

アスカ「その……この前はどうもありがとうございました」

ゲンドウ「……あれは特例だ。他意はない」

ゲンドウ「お前達元エヴァンゲリオンパイロットに私情を挟んだこともない」

アスカ「……はい」

ゲンドウ「家族の特権だ」

アスカ「!」

シンジ「と、父さん!」

ゲンドウ「シンジ、もう行け」

シンジ「……うん、分かった。じゃあ、また必ず会いに来るから」

シンジ「その時、もう一度聞かせてよ。今の言葉」

ウィーン、ピシャン

ゲンドウ「シンジ、家族を大切にしなさい」

冬月(家族……か。その中にお前やユイ君の事は含まれているのか?)

冬月(なあ、碇……やはりお前は変わったのか?)

ゲンドウ「冬月先生」

冬月「!」

ゲンドウ「子は親に似るものですね」

冬月「……ああ、全くだよ」

マリ「ほいほーい、どうも」

ピッ

マリ「姫とワンコ君も無事に仲良く出来たみたいだねー、ちょっと妬いちゃうにゃ」

マリ「にしても、ヴィレから依頼されてたあれ」

マリ「ロンドンなんかに行って何するのかと思ってたんだけど……セレモニーのエンジントラブルって」

マリ「あれ、間違いなくあたしがやらされた奴だよね」

マリ「今のヴィレもなんだかなぁ。ネルフが丸くなっちゃってから本当、ゲンドウ君へのただの嫌がらせみたいなことしかしたがらないし」

マリ「今回は問題なかったけど、あたしもそろそろ身の振り方を考えないとにゃ〜」

更に後日

シンジ「は!?行くってどういうこと!?」

アスカ「だーからぁ!向こうからお呼びがかかったから飛ばされるって言ってんの」

シンジ「だってあそこ、確か紛争地域なんでしょ!?危ないよ!」

アスカ「危ないのが恐くて軍人やってらんないわよ!」

シンジ「僕達はどうすんだよ!」

アスカ「待ってて!」

シンジ「まだ待たせるの!?」

アスカ「……」

アスカ「あたしだってもうあんたとは離れたくない。だから、なるべく早く帰ってくる」

アスカ「ね?もう少し、待ってなさいよ」

シンジ「……。じゃあ、これ」スッ

アスカ「!」

アスカ「これ、あたしが欲しがってたゲーム……」

シンジ「向こうに行ってる間貸しておくから、絶対返してよ」

シンジ「……そしたらさ、一緒にやろう?」

アスカ「馬鹿ね」

アスカ「こんなものがなくたって、あたしはちゃんと帰ってくるわよ。なんたってあたしはエースパイロットなんだから」

シンジ「それもあるし、アスカがまた変な気を起こして帰ってこないなんて事がないようにしてんだよ」

アスカ「あっそ。信頼がなくなったもんね」

シンジ「当たり前だよ」

アスカ「……」

アスカ「戻ってくるわよ、本当に」

シンジ「うん、待ってる」

アスカ「じゃあ、子供たちのこと宜しく頼んだから」

シンジ「うん」

ミサト「え?なーにぃ?どっちが好きだったか?」

シンジ『そうですよ!僕とアスカ、どっちがきっかけで結婚したのかミサトさん、覚えてますよね!?』

ミサト「は、なーによいきなり。夫婦喧嘩ぁ?」

シンジ『そんなんじゃないですって!アスカったら僕の方が好きだったから仕方なく結婚してやったみたいな口ぶりなんですよ!』

シンジ『アスカが僕の事を好きだったからなの、ミサトさん覚えてますよね!僕、ミサトさんから聞いたんですから!』

ミサト「え?あー、そんな事もあったかしらねぇ……」

ミサト「あ、いや……たしか」

シンジ「アスカが僕の事、好き!?」

ミサト「そうよー、間違いないわ。アスカの性格であの態度ならもうあれは完璧に脈ありよー!」

シンジ「そ、そうかなぁ」

ミサト「あとは、シンジ君が一押しすればアスカなんてイチコロ!」


アスカ「はぁ!?何言ってんのよ、バカシンジがあたしのこと好きなはずないじゃない!!」

ミサト「そんなことないわよー、あの子って結構内向的だけど、もうアレね。うん、ほんとあれよ、気がある感じ。そう、それ」

アスカ「そ、そーおぉ?」

ミサト「アスカがちょっとアプローチをかければ、シンジ君なんてよゆーよゆー」


ミサト「あぁ……」

シンジ『しかもアスカは、あの日もアスカじゃなくて僕の方が会いたいって言うから来てやったって言ってるんですよ!』

シンジ『僕がミサトさんから聞いた話だとアスカが僕に会いたいからってことだったのに!!』

シンジ『ミサトさぁん!!』

ミサト「あ、あ〜、ごめーん、ちょーっち急ぎの用事が出来ちゃったから、もう切るわ!」

シンジ『なっ!あの!』

ミサト「んじゃーねぃ!」

ピッ

ミサト「ふぅ、危ねぇ。あ、加持くーん!」

加持「おう、待たせたな葛城」

ミサト「あたしが待つなんて珍しい経験、あんた以外じゃ出来ないわよ」

加持「はは、こりゃまた」

ミサト「しかし、そうよねぇ。考えてみれば、うん。どっちかが好き!ってならなきゃダメなのよねぇ」

加持「ん?なんの話だ?」

ミサト「こっちの話よ、例えばね?加持くんがあたしのこと好きじゃなかったら、あたし達こうして付き合ってないわけだし」

加持「はぁ?何言ってるんだよ、葛城が俺のことを好きだったんだろ?」

ミサト「ちょっ!やめてよぉ!あんたがあたしの事を好きだったって……ん?」

ミサト「まさかぁ!!?」


リツコ「……っくしゅん!」

マヤ「あれ。先輩、風邪ですか?」

リツコ「いえ、体調は正常のはずよ。おかしいわね」

青葉「最近冷えますからね」

日向「体調には気をつけないと、ってね」


終劇

>シンジ「僕も、その……溜まってるし」

>アスカ「それ今言うことぉ?」

>シンジ「……まあ、そうだけど」

>アスカ「最低」

>シンジ「しょうがないだろ、男なんだから!」

やばい、これ生放送されてると思ったら、変な笑いが出たわww

キャラ崩壊激しかったので没にしたネタ

シンジ「と、いうわけで今日は父さんも呼んで打ち上げパーティを開きます」

アスカ「打ち上げぇ?」

カヲル「面白そうだね」

レイ「ポカポカするかしら」

マリ「お!ならあたし歌っちゃおっかなー!」

ミサト「いいわね~!パーッといきまひょぉ~」

シンジ「ミサトさん、もう開けたんですか」

カヲル「来る前に一本飲んできたらしいね」

ゲンドウ「……問題ない」

シンジ「はい、というわけで皆さん、今日は僕達の可愛い子供をご紹介したいと思いまーす!」

マリ「おぉ~!!」パチパチ

レイ「碇くんの子供……」

カヲル「実に興味深いね」

シンジ「一番上の子供はもう大体の事はできるんだ。ほら、こっちにおいで」

子供「」トテトテ

シンジ「はい、じゃあまずは簡単に、お喋り出来るところから見せようか」

シンジ「ね、僕はだれ?」

子供「んーと」

シンジ「うんうん」ワクワク

子供「ママ!」

レイ「!」

アスカ「!?」

マリ「???」

シンジ「……んぁ!?」

シンジ「ねえ、僕だよ?こっちの赤色のおばちゃんじゃないよ?」

アスカ「誰が赤色のおばちゃんよ!!」

子供「おばちゃん怖い」

アスカ「っ!!」グサッ

シンジ「ね、僕はさ、ママじゃないでしょ?ほら、もう一回言ってごらん?」

子供「ママ!」

シンジ「……」

シンジ(僕ってそんなに男らしくないのかな頼りないのかなやっぱりダメダメなのかなみんなそう思って僕と接してきたのかな情けないやつなのかなダメなヤツだ子供にまでこんなこと言われるなんて僕はどうしようもないやつだ)ウツウツ

アスカ「……ったく、しょうがないわねぇ」

アスカ「やっぱり子供ってのはかっこいい背中に憧れるもんよ。ほら、あたしは誰かしら?」

子供「赤いおばちゃん」

アスカ「……」

アスカ「ぬおおおおお!!あんたのせいで変な呼び方で定まっちゃったじゃない!!」ゲシッ

シンジ「……」ガクガク

レイ「じゃあ、私は?」

子供「……!」ピコーン

子供「青いお」

アスカ「ねえさん!!」

レイ「!」ビク

アスカ「ね、おねえさんよね!?そう言おうとしたのよね!?」

子供「……」ビクビク

マリ「ひーめー、そんなに脅かしちゃダメだって。やはりここはあたしが」

マリ「ねぇ可愛いぼうや、あたしは誰かにゃ?」

子供「……」

子供「ばーば」

マリ「……」ピキッ

マリ「ほ、ほほほほほ。この歳で冗談も言えるなんてユーモラスな子だにゃ」ギリギリ

アスカ「ちょ、ちょっとコネメガネ!お、落ち着きなさいってばほらそんな歯ぎしりすると歯が全部おれて本当にばーばみたいになるわよ!」

カヲル「やれやれ、リリンというのはたかだか呼び名という記号だけで一喜一憂するのかい。理解に及ばないよ」

カヲル「ほら、坊や。僕のことは誰なのか、一応聞いておこうかな?」

子供「……」

子供「……パパ!」

カヲル「!」キュン

アスカ「!?」

シンジ「!?!?」

マリ「!!?・」

レイ「……」ゾワゾワ

ゲンドウ「!!!!!!!?????」

カヲル「僕が、パパ?」キュン

カヲル「シンジ君がママで、僕がパパ?」キュンキュン

アスカ「あ、あんたまさか……。え、嘘……あたし相手を間違えたかしら?それともまさか、勘違いしてた……?」

アスカ「これって、だってあれよね……。ドラマとかでよくある……」

シンジ「え!?ち、ちょっと待って!!なんか勘違いされてない!?」

レイ「碇くん……あなたって……」ゾッ

マリ「ワンコ君……・」

ゲンドウ「し、シンジ……」

シンジ「こ、これは何かの間違いであって、ち、違うからね!?アスカ!?もしもーし!!アスカってば!!」

シンジ「綾波!これはあの、そう!疲れてるんだよ僕達、はは!やだなぁ!」

シンジ「か、カヲル君も何とか言ってやってよ!!なんで真希波はそんなに嬉しそうなんだよ!!父さん、誤解だってば!!」

シンジ「ねえ、誰か訂正してよぉ!!」

ミサト「うぃ~いいひゃないのぉ、わーかいんだからぁ」ヒック

子供「パパとママ」

カヲル「!」キュン

アスカ「……」ガーン

シンジ「う、うわああああああああああ!!」

シンジ「アスカぁ、ちゃんと教え直しておくから許してよぉ」

アスカ「……気持ち悪い」

シンジ「ひどいよぉ、こんなのってないよ!!」

カヲル「……シンジ君」キュンキュン

ゲンドウ「……もういい」

ゲンドウ「茶番はこれくらいにしよう。一番重要な質問が残っている」

みんな「!」

ゲンドウ「私は誰か、言ってみたまえ」

子供「……」

みんな「ゴクリ」

子供「……じーじ」

ゲンドウ「!」

ゲンドウ「……シンジ」

シンジ「は、はい」

ゲンドウ「これを受け取れ」

シンジ「……これ、封筒?」ペラッ

シンジ「うわっ、すごい額!!」

ゲンドウ「洋服や正装のスーツは一番いいものを買いなさい」

ゲンドウ「毎日美味しいものを食べさせるように」

ゲンドウ「なんなら幼稚園の送り迎えはネルフで護衛させよう」

レイ「碇司令、よかったですね」ポカポカ

ゲンドウ「ありがとう、レイ」ポカポカ

アスカ「じゃ、これで解散」

シンジ「え」

アスカ「さようなら、元同級生の碇シンジ君!!」

シンジ「え?な、何言ってんだよ、さようならって……。アスカはここに住んでるだろ?ねえ、嘘だよね?」

アスカ「パパがいらっしゃるんだからあたしはご不要でしょ!!」

シンジ「え、ちょ、ちょっと待ってよ!!僕の言い分を聞いてよぉ!!」

カヲル「そう言われては仕方ない、僕がパパになってあげよう」

マリ「・・」

レイ「碇くん、軽蔑したわ。さよなら」

シンジ「あ、綾波ぃ!!」

ミサト「んー、みんなもう帰るのぉ?」

ミサト「いいわねぇ、若いって……うぇっぷ」

ミサト「おげろろろろろろろ」

シンジ「ミサトさぁん!!何吐いてんですかぁ!!ここ僕の部屋ですよ!!?」

カヲル「いい歳をして飲み過ぎたようだ。それよりシンジ君」

シンジ「か、カヲル君!カヲル君からも何か言ってやってよ!アスカ、ああ見えて思い込むと止まらないんだよ」

カヲル「もう彼女のことはいいじゃないか。このまま二人で……」

ゲンドウ「シンジ、子育て頑張りなさい」ポカポカ

シンジ「ひ、ひどいよ……うわああああああああああ!!」


ちなみに夜眠る時だけは何故か赤いおばちゃんの胸の中が一番安心する子供たちなのでした。

ターミナル生放送の録画は二人が倦怠期に入る度にミサトさんが再生して二人を発狂させました。

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