【アイマス】愛煙家の小鳥さん (93)


紡ぐ煙が月を隠す

蛍光灯の明かりを頼りに

ブロック塀の下を猫が歩く

ぽつりぽつり、街明かりと喧騒

口元の黒子に煙草を咥えて

彼女は一人、夜風に触れた




 愛煙家の小鳥さん



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456935007


燦々と照る太陽は未だ衰えを知らず

照り返す熱に、遠く地面が揺らぐ

風をよく通す薄いシャツの中を

つー、と一滴汗が伝った

「おはようございます」

返事の代わりに帰ってくるのは

籠った空気の蒸し暑さ

誰もいない事務所を横切り

古く重たい窓を開け放つ


ギシリという音と引き換えに

入ってきたのは蝉時雨

それとやはり蒸し暑い、夏の空気

じわじわと鉄を焼く様な日差し

外では排気ガスが見えそうなくらいに

ぬるいタクシーとバスが列を成す


直したばかりのエアコンを回すと

無音の事務所に僅かばかりの色が灯る

冷たい風の真下に陣取り

額に張り付く髪を乾かす

「まだまだ夏……ね…」

お尻に触れる事務机の冷たさが気持ちいい


冷気の誘惑を振り払って

更に蒸した更衣室に足を運ぶ

ネジの弛んだドアノブをガチャリと回し

窓のない部屋の電気をつけると

巻き上がった塵がキラキラと光る


汗の染みたシャツはじとりと湿り

体から剥がれると冷たく感じた

小さなポーチからタオルハンカチを取り出し

腕、脇、胸元、首元と汗を拭っていく

「タオルがいくつあっても……足りないわね…」

腕を通した制服のシャツはひんやりと心地よかったが

ハイソックスを履く頃にはもう既に湿っていた


ネクタイを締めて更衣室から出ると

丁度目の前にある鏡と目が合う

少し髪を整え、笑う

「今日も一日、がんばるぞ」

小さく自分に、言い聞かせた

まだ書き終えてませんが
宜しければお付き合いください


ぎしり、灰色の事務椅子に座り作業にかかる

デスクの右奥には昨晩のコーヒーの残り

「……後で洗わなきゃ」

くるりと手元で黒いペンを回す


右の箱から左の箱に移し替える作業

[未]の箱から[済]の箱に、淡々、黙々と

目を通して、判を押して、記入して、調べて

たまに伸びをして、また目を通す

繰り返し、繰り返し



エアコンがようやく効いてきた頃
小休止と思い、コーヒマグを持って給湯室へ
すると

とん、とん、とん

誰か、階段を昇ってくる音がする



毎日の密かな楽しみ
誰だろうか、耳を澄ませる

とん、とん、とん

一段飛ばしのこのリズム
真ちゃんかしら

「おはようございます」

ふふっ、正解



「おはよう、真ちゃん」

給湯室から頭を出し、迎える

「おはようございます、小鳥さん」

薄めのシャツに浮かぶタンクトップの跡
真の髪を滴る汗が外の気温を表していた

「汗すごいわね……走ってきたの?」

「いえ、自転車です。それでもこれだけ汗かいちゃって」

「ほんとすごい暑さね…今、麦茶入れるわね」


給湯室のテーブルに少し体重を預けて
真は麦茶を一気に飲み干す

「やっとエアコンが効いてきたの」
「外に比べたら天国ですよ」

そんな会話をしながら、真は二杯目の麦茶も飲み干す



そして、三杯目
ふぅ、と一息つき、会話が途切れる
静寂の重なるエアコンの音
不意に、小鳥が切り出す

「ねぇ、真ちゃん」

「……いい?」


小鳥は胸元に手を当てた
豊満な胸が少し歪む

「ここで、ですか…?」

真の声には驚きと戸惑いが

「ちょっと……疲れちゃって……」

真に甘えるように、小鳥は声を吐く

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)



そんな小鳥に対し
眉と唇を三角にとがらせて
真はぴしゃりと注意する

「駄目ですよ、ちゃんと外で吸ってください」

「あら、やっぱり?」

小鳥は胸元の煙草に手を当て、
子供っぽく笑った


屋上に出ると直射日光が目に刺さった
ジリジリと肌の焼ける感触
コンクリートの床から昇る熱
柵にもたれると少しだけ、風が通って涼しかった


窮屈な胸ポケットから取り出したのは
ソフトタイプの煙草と100円ライター
それと少し膨らんだ携帯灰皿
煙草とライターはどちらも昨晩丁度切らしたので
通勤時にコンビニエンスで購入したもの


煙草がまだあるからとライターを買い
オイルがまだあるからと煙草を買い
両方なくなっても結局は煙草を吸う
ただのニコチン中毒者
駄目なオトナだなぁ
ここに出入りする若者たちを想い、鑑みる


綺麗に整えた爪で銀紙をはぎ
片側をとんとん、と叩くと
紙巻きタバコが一本、徐々に出てくる
出てきた一本をそのまま咥えて引き抜くと
慣れた手つきで火を点けた


口内に煙を導き、留める
その後肺に、紫煙を流し込む
肺中に煙を充満させると

「…………ふへぇ……」

そんな間抜けな声とともに煙を吐いた


「そんなに美味しいんですかね」

いつの間にか真も屋上に上がってきていた
春香と雪歩が来たので、留守番を任せてきました
そう、真は涼しい顔で言う
柔らかな黒髪をむわっとしたビル風が揺らす
さっきまでの汗は引き、シャツも乾いている
しかしその鼻梁には既に玉の汗が滲んでいた


「美味しくはないわよ」
「でも吸うんですか」
「そう、吸うの」

真も柵に寄りかかり
こんこんと湧く紫煙の出処を見つめる


「止めないんですか?」
「え?」
「煙草」

薄く笑みを浮かべて、真は煙草を吸うジェスチャーをする
言ったところで小鳥が煙草を止めることは無い
そうわかっていながら、からかう様に聞いた


「美味しくないんでしょう?」
「そうね、でも吸いたくなるの」
「美味しくないのに?」
「そう、美味しくないのに」

そう言うと小鳥はまた、煙を吸い込んだ

「変、かしら?」
「いいえ、全然」

吐いた煙は日の熱で蒸発するかのように
すぐに細かく霧散した


真は小鳥に肩を重ねるように、擦り寄った
風下に居る真の顔に、火種で燻された煙が掛かりそうになる

「煙草、嫌いなんじゃなかった?」

先ほどの給湯室でのやり取りを思い出す

「別に嫌いじゃないですよ。匂いも、煙も」
「さっきのはマナーとして、です」
「あと」

真は1つ、付け加える

「キスが不味いってだけですから」


からかう様にして小鳥は聞く

「煙草味のキスは嫌?」
「美味しくはないですからね。でも……」
「でも?」

小鳥にはその答えがわかっていた
私の煙草と同じ

「美味しくないけど、また、したくなるんです」

私と、同じ


「変、ですかね?」
「ううん」

ふー、と空に煙を吐いてから、小鳥は強調するように言った

「全然、変じゃない」

にこりと笑いかけた小鳥に
真も少し、照れて笑った


続きは明日、というか今日の日中にでもあげます。


事務所に戻ると、先程よりも騒々しさが増していた
テレビの前のソファでは亜美と真美が携帯ゲーム機で火花を散らし
その騒音をものともせず、向かい側では美希が寝息を立てる

給湯室には雪歩と春香
そしてその二人に接待される伊織とやよいが椅子を並べていた
紅茶の甘い臭いが鼻孔を擽る

応接間では貴音と響があずさに編み物を教わっていた
マフラーをするにはだいぶ早い気もするが
あずささんのペースならきっとちょうど良いのだろう


そして事務所の一番奥
直射日光をもろに受ける事務机群では
律子とプロデューサーがコーヒーマグを片手に文字を打ち込んでいた

「お疲れ様です。律子さん、プロデューサーさん」

声を掛けると二人とも、画面から目を離しこちらに微笑む
律子さんは伸びを一つ
「また煙草ですか?」と少し眉を困らせる
白のブラウスを肘まで捲って
珍しく出している素足を組み替えた

あ……すいませんミスです……

>>33
×応接間では貴音と響があずさに編み物を教わっていた
○応接間では貴音が響とあずさに編み物を教わっていた


プロデューサーさんは涼し気な白のワイシャツに、これまた涼し気な青色のネクタイ
エアコンが効いて室温は心地良いものの
直射日光に当てられた背中と腕は、少し汗ばんでいるように見えた。
数枚を束ねたA4用紙をパラパラとめくり、手帳と重ねる


「お疲れさまです、小鳥さん」
「お疲れ様です……今日の撮影の確認ですか?」
「はい、今日はいくつか重なってるので」

小鳥の背後に掛けられたホワイトボード
端から端まで黒のペンで予定が書きこまれる


「あの、プロデューサーさん」ふと、思い立つ
「真ちゃんの送り迎え、私が行きましょうか?」

その時間は、小鳥も手が空いていた
何より、撮影現場が事務所の近くなのでその方が効率的だ

「本当ですか?助かります」

プロデューサーさんは手帳に矢印を書きこんだ



私と真ちゃんが付き合っていることは、まだ誰も知らない


埃っぽさの混じる社用車のエアコン
握りこぶし程の大きさに開けた窓の隙間から
吐いた吐息がゆるりと逃げる
耳に触れるのはハザードの点滅音
フロントガラスの向こう側で
信号は赤に変わり、わらわらと人が歩き出す


「お疲れ様」

空いたドアに声をかける
助手席に置いていた荷物を後部座席に
すし詰め状態の灰皿には、あと何本か入るだろう

「また律子さんに怒られますよ」

そう言って真は灰皿を押し込む
埃と煙草の匂いだけが、車内には残った


「ただでさえ街中何処へ行っても禁煙なのに」

どこから出したのか、小鳥は煙草のソフトケースを振り、出てきた一本を咥える

「車の中でまで吸えなくなったら、堪らないわよ」

コンビニで買ったガスライターの音
また一息、煙を吐いてから
小鳥は右にウインカーを出した


「ダメな大人ですね」
「ダメな大人じゃ駄目かしら?」
「駄目だと思いますよ」
「ふふっ……そうね」

火の点った煙草を加えたまま

「私もそう思うわ」

小鳥は鈍く、微笑んだ


ガチャリと鍵を回す音がして
暗闇の部屋に明かりが灯る

「ごめんね、散らかってるけど」
「たまには散らかってない部屋に案内してくださいよ」

脱いだ靴を並べながら、真は小鳥をからかった
ふと玄関を見ると、黒のパンプス
隣には一回り小さな白黒のスニーカーがある
小鳥はその光景が、何とも言えず、好きだった


「綺麗な方だと思いますけどね」

コンビニの袋をちゃぶ台に置いてから、真は部屋を見渡す
独り暮らし用の小さなテレビ、ふかふかのベッド、DVDの詰まった棚
床には数冊、アイドル雑誌
息を吸うと、女性の香り。甘い香り。

「ボクの部屋なんてもっとひどいですよ」
「あんまり見回さないでもらえると助かるわ……」

小鳥は冷蔵庫にビールをしまいながら、渋く笑った


しばらくして、機械的なメロディが鳴る
テレビの中では芸人が押すな押すなと喚いていた
ベッドに座る小鳥は、向かいの床に胡坐を掻いている真に言う

「先、お風呂どうぞ」
「ありがとうございます。今日は朝から早く体を流したくって……」
「汗っかきだものね、真ちゃん」
「そうなんですよね……新陳代謝が良いのも困りものです」

眉頭を少し持ち上げて、真は右の頬を掻いた


流れるシャワーの音を背に、サンダルを履いてベランダに出る
ガラス戸を閉めると水の音は聞こえなくなった
代わりに背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
日はとっくのとうに沈んでおり、気温は少し、涼しい
金属の手すりに肘を着くと、そこもやはり、ひやりと素肌に染みた

>>49
×背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
○背負うのはカーテン越しの仄かな灯り


小鳥は一本煙草を咥えて火を点けた
安ライターの明かりに照らされる口元と手の平
空に煙を吹きかけると、東の空に月が出ている事がわかった
目を凝らせば見えるいくつかの星
東京の空にも、星は見える
いつか聞いた歌が、頭に流れた


手すりに体重を預け、凭れる
咥えた煙草が、じじじと燃える

やはりベランダのある部屋にして正解だった
賃貸なので室内で煙草を吸う事を躊躇う
そういう理由もあるにはあるが
やはり空の下で吸う煙草はうまい
小鳥はそう思っていた


月夜の下、夏空の下、灰色の空の下
それと、恋人の隣
"どこで吸おうと味など変わらない"
そう言う人もいるだろう
だが、私はそうは思わない


からから、戸の開く音
「お風呂、上がりましたよ」
濡れた頭に返事をする
「あら、早いのね」
吸い込んだ煙をゆっくりと吐く


ほら、ね?こんなにも煙草が美味しい

今日はここまで


お風呂から上がり、下だけ履いて冷蔵庫を開ける
火照った体に涼しい風
青白い光が目に刺さる
卵、味噌、マヨネーズ、ソース
最低限の食料と、扉裏の籠に詰まった缶ビール
我ながら"女子力"というものを思い知る


銀の缶を一つ抓んで、柔らかな灯りの灯る部屋へ
部屋では真が片膝を立ててテレビを見ていた

「はしたないですよ、小鳥さん」
「着替え、忘れちゃって」

片眉を上げる真を横目に、小鳥は引き出しを開けた

「見たいなら見ていいのよ」
「見ませんよ」
「残念」

半袖のTシャツを一枚、頭からかぶった

test


特に何か祝い事という訳でもないが
自然と二人、杯をぶつける
それは片方が未成年で、杯に注がれているのが果汁100%だとしても変わらない
更に言えば、片方が杯に注がず、缶のまま口をつけていたとしても

「今日もお疲れ様」
「お疲れさまです。小鳥さん」


火照った身体に冷たい炭酸を流し込む
喉に炭酸の刺激を感じながら、缶の上半分を一度に開ける
胃に落ちていく、喉越しの快感

「ふぁああああ……」

間抜けな声が肺から抜ける


「ボクも早く大人になりたいです」
「飲みたいの?」
「あんまり美味しそうに飲むから。小鳥さんが」
「そうね、美味しいし、気持ちいいわ」

そう言ってまた、一口含む
最初の一口目とはまた違う味わい
舌の上で炭酸を踊らせる


「いいですね」
「大人になる、なんて直ぐよ」
「そうですか?」
「なりたくなくても、ならざるを得ないの」

缶を持つ手の人差し指を
小鳥は真に向けて言う
減った中身がたぷたぷと鳴る

「こんな大人になっちゃダメよ?」
「気をつけますよ。それがどんな大人を指すかわかりませんが」

真は小鳥の方を見ぬままに
オレンジジュースを啜って笑った

「ボクはまだ子供ですから」


静かな宴は滔々と続き
時計の針が天辺を指す頃には小鳥の頬も紅くなっていた
机の上には酒の肴の乾きものと、空いた缶が一つ二つ
そして今、もう一つ缶が空になろうとしていた
後ろ手に体重を預け、缶を煽る小鳥の隣で
真が「ご馳走様でした」と手を合わせる
ご飯粒一つ残らない弁当の容器をコンビニ袋にまた詰めて
ついでに机の上のゴミも拾って、真は袋の口を結んだ


「真ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
「ついでにこの空き缶も……」
「そのくらいは自分でやってください」

ぴしゃりと言われ、小鳥は照れ笑いと共に少し、肩をすくめた


三つ空き缶を潰して、やおら立ち上がり廊下の台所へ
台所では真が洗いものをしていた
一度真を通り過ぎ、缶を三つ、ゴミ袋に投げてから
疼いた本能の赴くまま、真の背中に抱きついた
真の肩に顎を乗せて、ゴロゴロと猫のように首筋に頬を擦りつける


「重いですよ、小鳥さん」
「真ちゃん……良い匂い……」
「小鳥さんはお酒くさいですよ」
「酔っ払いだもの」
「はいはい」
「適当にあしらわないでください。きずつきます」
「面倒臭い大人ですね」


小鳥の相手をしつつも真は手を休めない
自分の汚した食器とコップ
それと小鳥の朝食に使われたであろう食器も一緒に洗う

「あんまりため込んじゃダメですよ」
「面倒なんだもの」
「面倒でも、です」
「うー」
「噛まないでください、小鳥さん」


水切り籠が食器で一杯になると真は蛇口を締め、手を振り水を切った
そして仕返しとばかりに、濡れた手で小鳥の頬をなぞった

「ひゃぅ!?」

変な声が出た。恥ずかしい

「ほら、戻りますよ。小鳥さん」

うーうーと唸る小鳥を引きずって、真はずるずるとリビングに戻った

たぶん夜にまた来ます


真は背中にへばりつく小鳥をごろんとベッドに投げる
小鳥は抵抗することなく、整った布団の上に、仰向けに転がった

「ありがと、真ちゃん」

小鳥は横になったまま、真に両手を伸ばした


頬を赤らめて
口元を少し尖らせて
真の瞳をじっと、見つめて

真の影が小鳥に重なる
小鳥の潤んだ瞳だけが暗がりの中ゆるりと光る

「悪い大人、ですね」

誘われるままに
真はギシリとベットに乗った


小鳥の頬を指の甲で撫でる
さらりと、柔らかな髪の毛が指に触れる
こちらを誘う艶やかな唇を、真は唇で塞いだ
小鳥の腕が真の首の後ろに回される
ぎゅっと抱きしめると、真の細い身体は柔らかく、暖かかった
唇の感触を確かめるように、何度も向きを、傾きを変える


舌を侵入させ、歯並びをなぞる
口蓋をくすぐる、舌の裏を撫でる
舌を絡め、舌を吸い、舌を噛む
口の周りが互いの唾液に塗れることも気にせずに
目を閉じたまま、互いを貪った


小鳥のシャツの裾から、真は手を入れる
素肌をなぞって上へ、上へ
腕の動きに重なって、ずるり、ずるりと服がはだける
時々びくりと小鳥が反応したが、真は唇を離さなかった
互いの鼻息が荒くなる
睫毛が当たって、くすぐったい


柔らかく乳房を揉むと、小鳥は唇の隙間から声を漏らした
Tシャツ一枚に守られていた胸は、今はもう蛍光灯の下に晒される
真の手の中で遊ばれる胸は、手の動きに合わせて形を変える
徐々に硬くなってきた先端の紅色を抓まれて、ぞくりと背中を震わせる


唇を離すと蕩けた小鳥の瞳と目が合った
べたつく口の周りを拭うのは躊躇われた
躊躇われたから、舌で舐めとった
混ざった互いの唾液の味
化粧水か乳液か、少し苦く小鳥の味が混じる


すん、と小鳥の腕の付け根に鼻を近づけ、舐める
甘酸っぱい匂いが鼻孔にへばりつき
真の舌の先を汗の塩気が刺激する
羞恥心からか、小鳥は懸命に真の頭をどかそうとする
漏れる声、上擦る声
真は更に昂ぶりを覚えた


べろん、べろんと小鳥の体中を味わう
その度に小鳥は僅かに息を漏らし、肌の表面を震わせた
さらりとした肌の感触
チクチクと感じる剃り残した体毛
どくりどくりと反応する鼓動
徐々に下に、下に

真は小鳥の下着の中に、手を入れた


蒸せ返るショーツの中で、真の掌をチクチクと刺激する
多少の手入れはしているとはいえ、グラビア撮影の予定もないため
手入れの度合いはアイドルである真ほどではないようだ
性器の表には僅かに液が染み出る
真は生暖かいそれを掬って、小鳥の恥部全体に擦りつけた
小鳥の溝に真の細い指はぬぷりと嵌り、レールの上を往復するように刺激する
擦れば擦るほど潤滑液が分泌され、引くつく肛門を伝い、液がショーツの背側にまで垂れる


小鳥が声を抑えられなくなった頃
真も我慢の限界を迎え、小鳥の顔に頭を寄せた
「入れますよ」と一言耳元で囁き、十分な潤滑液を纏った中指を小鳥に咥えさせ始める
第一関節、第二関節と奥へ進んでいくたびに小鳥の中が締まり、蠢く
小鳥の中は暖かく、冷えた真の指先には火傷するほどに熱く感じられた


真は指を曲げ、腹側を押す
小鳥は切なく、短く、声を紡ぐ
中を広げるように、ぐるりぐるりと指をまわすと
空いた隙間からどろりと白く濁った液が零れる

呆けた顔で、互いを見つめる
交わす吐息は熱を帯びる

湿った部屋の中
汗と性の混じった匂い

短く息を漏らして
小鳥は達した




夜風に少し肌寒さを感じて、真はうたた寝から覚めた
視界の端でカーテンが揺れる
シーツを一枚纏った肢体の凹凸を
青白い月明りが影で表す
涼しさを覚える薄暗い部屋に小鳥の姿は無い
ベランダのガラス戸が少し、開いていた


カラカラと戸を引くと、小鳥がこちらを振り向いた
「起こしちゃった?」
ベランダの柵に肘を着いたまま、口元の黒子を少し持ち上げる

右手に挟んだ煙草から
ゆらりゆらりと煙が漏れる
青黒い空を、灰色で隠す


真も隣に肘を着く
素肌にそのまま羽織ったパーカーは、少し真には大きかった
地面の温さと月の涼しさの混じった、夜の風
今の二人には涼しく感じられた

「ちょっと、口が寂しくなっちゃって」

小鳥の咥えた煙草の先端が赤く燃える
溜息とも取れる様な吐息を、煙と共に吐いた

「ダメな大人よね」

そう言って小鳥は、自嘲気味に笑みを吐く


「未成年の女の子を自宅に連れ込んで、性行為。酒に溺れて、煙草に逃げる」

一つ一つの言葉を噛みしめる様に
悔いるように、小鳥は呟く
瞳は何処か、遠くの空を見つめたまま

「ダメね、私」

そう言ってまた、細く煙を吐いた
そんな小鳥の横顔を、真は何も言わずに見つめていた


「嫌でしょ?煙草臭い彼女なんっ……」

そんな小鳥の唇を
真は食むように、奪った

愛をぶつける様なキスではなく
愛を確かめる様な、優しいキスを


最後に小鳥の黒子を舐めて
真はゆっくりと顔を離した

「好きですよ、小鳥さん」

月に濡れた真の唇
優しく柔らかく、微笑んだ




ゆらりゆらりと流れる雲から
漏れた月明りが真を照らす

「ありがとう、真ちゃん」

白い頬に僅かに灯った紅
小鳥の涙を指で掬った

「私も真ちゃんの事、大好きよ」

狭いベランダ、柵に肘を掛けて
あなたと私二人きり

「大好きよ……」

二人を、ぬるい夜風が擽った
二つ影が重なって、ぼやけた月に浮かんだ


 おわり

少し直してpixivにあげました
良かったらどうぞ

「愛煙家の小鳥さん」
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6602518

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom