男「死んだはずの女がコーンポタージュの缶になって戻ってきた」(39)

飲み終わったコーンポタージュの中の粒を取ろうとして缶を振ったら頭に激突。打ちどころが悪かった…それが彼女の死因だ

男「・・・」

女「・・・来ちゃった」

男「いや、来ちゃったじゃねーよ・・・缶じゃねーか」

女「うん・・・」

男「えーおほん・・・お前は確かに死んだはずだ」

女「うん。男の目の前で死んじゃったよ」

男「・・・いや、何が起こったかわかんなかったよ」

女「そう?いやーテスト最終日だったから油断しちゃった。うっかりうっかり」

男「うっかりで死ぬなよ」

女「・・・で、今日はいつなのかな」

男「お前の葬式の四日後だ」

女「まじすか・・・」

男「こっちがまじすかだよ」

男「それにしてもなんだよそれ・・・ほとんど缶じゃねーか」

女「うん」

男「うんじゃねーよ!何で胴体が缶なのにそんなに平気そうなんだよ!」

女「いやーこれがさ、もともと缶だったみたいに違和感が無いんだよね」

男「なんでだよ!というか何で缶になってんだよ!」

女「・・・それなんだよねー」

男「なんだよ」

女「いやー私、俗にいう幽霊になっちゃったんだよ」

男「えっ」

女「ほら私さ、缶の中の粒が原因で死んだでしょ?それが未練として認められたらしくてさ」

男「誰にだよ」

女「神様だよ。でもね、未練を認める時って『未練の対象物』と『未練の対象者』が必要になるんだって」

男「・・・うん」

女「未練の対象物はこの缶な訳。でも対象者っていないわけよ」

男「・・・嫌な予感しかしないぞ」

女「・・・で、だ。対象者は死んだ時一番近くにいた男になったわけよ」

男「・・・おい」

女「それで缶だけ下界に送るのもあれだからってさ、神様が私と合体させちゃったのよ」

男「何でそんなフランクに俺ん家に幽霊缶送ってくるんだよ!」

女「私も幽霊缶なんかなりたくなかったよ!」

男「知らねーよ!」

女「期間は四十九日まででさ。それ以上たつと地縛霊になるらしいよ」

男「・・・地縛霊って・・・」

女「うん。男の家のだね」

男「ふざけんな!!」

女「というわけでどうかよろしくお願いします」

男「・・・しようがねえな。縛霊になられるのもあれだし協力してやるよ」

女「やったー!ありがとう男!」

男「・・・で、肝心の粒とやらはどこに」

女「だからこの缶だって!」

男「え?」

女「ん?」

男「お前の胴体?」

女「うん」

女「ちなみにあっさり取られるのもなんだしだいぶ手強い粒にしたらしいよ」

男「・・・つまりはさ、お前の胴体をほじくり回さなきゃいけないんだろ?」

女「何それやらしー・・・って、ええええええええええ!!!!」

男「アホが!かなりまずいじゃねーか!」

女「やだー!何で胴体にしちゃったのー!」

男「お前らが悪いんだ!」

女「神様ー!」

女「うっうっうっ」

男「で、取り出し口はどちらでしょう」

女「下のようです・・・」

男「ちくしょう・・・認めたくなかった」

女「うぅ・・・私、地縛霊になるのかな」

男「・・・安心しろ・・・俺が何とかしてお前を天に送ってやる」

女「その言葉さえいやらしく聞こえるよ!」

男「・・・今日から冬休みだし、時間はだいぶあるけどな」

女「でも男はバスケ部の練習、あるでしょ?」

男「・・・いいんだよ。バスケなんて」

女「・・・」

男「・・・よし!冬休み中にはお前を助けてやる!」

女「・・・うん!頼みますぜ!」

男「さて、まずは・・・」

女「うわああああああああ!!」

ブンブンブンブンブンブン

男「振る」

ブンブンブンブンブンブン

女「ぎゃああああああああ!!」

ブンブンブンブンブンブン

女「おうぇええええええええええ!!!」



男「ダメだった」

女「・・・言ったじゃん・・・手強いって・・・ オエ」

男「すまん」

男「ではかき回してみましょう」

女「うん・・・」


女「いたああああああああああああああい!!!」

男「うるせぇ」

女「やだああああああ!!いたいいいい!」

男「・・・まるで手応えがない」

女「うええぇええん!やめてよぉおおお!」


男「・・・ごめん」

女「仕方ないよ・・・」

男「おう・・・」

男「かき回してみたところ、どこに粒があるかわからなかった」

女「そっかぁ・・・」

男「・・・」

女「あ、この缶が少しでもかけたら私は貴方に取り付く悪霊となります」

男「まじかよ・・・」

女「この粒のようにしつこい悪霊となります」

男「・・・うん。切ろうとかもう思わないよ」

女「よろしい」

男「どうしたものか」

女「・・・」

男「何だよ」

女「・・・ちょっと嫌だけどさ、覗けば」

男「・・・いいのか?」

女「仕方ないよ・・・」

男「・・・ありがとう。じゃあちょっとライト持ってくる」

女「うん」

男「持って来た」

女「じゃあ、どうぞ」

男「おう・・・」


男「んー?」

女「うぅ・・・」

男「・・・見辛いなぁ・・・」

女「・・・どう?」

男「うん・・・よくわかんない。やっぱりだいぶ厳しい場所ようだ」

女「そっか・・・」

男「側面とか、上だったりとかかもな」

女「えぇー・・・」

女「んーやっぱり神様の言うとおり、手強いね」

男「だな・・・ん、もう午後9時か」

女「本当だ・・・時間はあるんだしさ、今日はもうやめにしようよ」

男「あぁ・・・今日は振ったり回したり、ごめんな」

女「いいっていいって」

ピピピピ

男「メールか・・・友か」

女「見ないの?」

男「・・・あぁ」

女「なんで?仲良かったじゃん」

男「・・・今は気まずいんだよ」

女「何でさー見ないなら私が見てやる!」

男「あっ!って携帯触れないだろお前」

女「え?」 パカ

男「触れるのか!」

女「まぁね・・・っと」

『今日は冬休み最初の部活だったぞ。明日もある。女ちゃんのこともあるし辛いだろうけど来てくれよ』

女「うわ!友くんのほとんど未読じゃん!」

女「部活こい、部活こい・・・やっぱり部活行ってないんだ」

男「・・・まあな」

女「10月からずっと・・・」

男「・・・」

女「・・・やっぱりあの時の骨折のせい?」

男「・・・」

女「ごめんね、私のせいで」

男「お前は悪くないって言ってるだろ?」

女「でも、あの事故から私を庇ったから・・・」

男「大体、あの時の骨折は全治二ヶ月だったんだ。10月にはとっくに治ってた」

女「・・・」

男「だからもう気にすんなって!ほら明日も弄り回すから!覚悟しとけ!」

女「・・・うん。じゃあねおやすみ」

男「おう・・・って消えたりしないんだな」

女「対象者からは離れられないので」

男「そうか」

男「・・・ふー」

男(今日は変な一日だった・・・確かに女が戻ってきたのは嬉しい。でも・・・)

女「ぐぅ・・・」

男(缶だとは・・・まだ正直実感は無い。というかあんな未練が許されるのか・・・)

男「・・・」 ピッピッ

男(本当だ・・・未読メール、かなり溜まっているよ)

男(・・・友には悪いけど・・・部活、辞めようかと思っているんだ)

男(・・・バスケ、好きだったんだけどな)

今日は寝ます

女「おはようー!」

男「・・・やっぱり夢じゃないんだな」

女「まぁね。というわけで今日もよろしく!」

男「おう・・・」

女「元気ないなぁ・・・ほらシャキッと!」

男「低血圧なんだって・・・」

女「あ、この会話よくやったね」

男「そうだな」

女「でももう・・・」

男「・・・ほら!やるぞ!」

女「お、おー!」

男「今日は水を入れて振ってみようとおもう」

女「お、おぅ・・・」

男「少々辛いだろうが我慢してくれ」

女「少々じゃないんだけど・・・分かったよ」


男「水を半分入れたぞ」

女「うぅ・・・お腹がちゃぽちゃぽいうよぉ・・・」

男「あ、口を塞いでいいか?」

女「・・・もう何でもいいから早く終わらせてよぉ」

男「お、おう」

男「いくぞー」

女「うん・・・」

ブンブンブンブンブンブン

女「うぅ・・・いっ・・・」

ブンブンブンブンブンブン

女「うぅううぅぅぅ・・・」

ブンブンブンブンブンブン

女「・・・いぃううう・・・」

男「・・・こんなもんか」

女「・・・早く出してよ」

男「おう、いくぞ」

ザー

女「・・・ぅう」

男「ダメだったなぁ・・・いけると思ったんだけど」

男「うーん・・・方法が尽きてきた」

女「早いな」

男「うん・・・どうするべきか」

ピピピピ

女「あら、いいタイミングにメール」

男「・・・女友か」

女「えっ?女友!?」

男「あぁ・・・今から会えないかだと」

女「行くの?」

男「用事もないしな・・・お前も行くか?」

女「うん!」

女友「・・・」

イラッシャイマセー

男「ごめんな、待たせたか?」

女友「ううん、呼んだのは私だし、平気よ」

女「女友ー!女友ー!」

男「ばか!」

女友「え?」

女「大丈夫だよ」

女友「男くん、どうかした?」

男「あ、いや、ごめん」

女友「?」

女「ほらね」

男(先に言え!)

女友「・・・ごめんね、急に呼び出したりして」

男「いや、用事もなかったし大丈夫だ」

女友「・・・女のことなんだけど」

男「女友、大丈夫か?・・・葬式の後、学校来てなかったし」

女友「・・・やっぱりまだ信じられないわ。女がもういないなんて」

男「そうだよな・・・辛いなら無理しなくてもいいからな」チラ

女「・・・」

女友「うん・・・少しずつ気持ちも整理されてるし大丈夫」

男「そうか・・・」

女友「・・・でね。前に女、悩んでたのよ」

男「うん」

女友「男くんが部活に行かなくなったこと」

男「・・・」

女友「夏休みはじめだっけ?女を庇って事故にあったの」

男「・・・あぁ」

女友「女、それにすっごく感謝してた。でもそれと同じくらい申し訳ないって思っててさ」

男「・・・」

女友「もしかしてその時の後遺症で出来ないんじゃ・・・とかよく言ってた」

男「・・・」

女友「女の親友として今日はそのことを聞きたかったの」

女「女友・・・」

男「・・・後遺症とか、そういうのは無いよ」

女友「うん・・・よかった」

男「・・・でもさ」

女友「・・・」

男「もう部活はやめようと思ってる」

女「!!」

女友「ど、どうして!?」

男「・・・もう、俺はバスケに飽きたんだ」

女友「・・・」

男「だからもういいんだ。わざわざごめんな」

女友「・・・嘘よ」

男「え?」

女友「私、知っているんだから。男くんがバスケ部を覗きに行っていること」

男「・・・!」

女友「・・・あまり追求とかはしないけどさ大丈夫ならバスケ、してほしい」

男「・・・」

女友「女もそれを望んでいると思う。だって女は」

女「わーわーわーわー!!!」

女友「・・・これは秘密なんだった」

男「?」

女友「あ・・・これ、お金。コーヒー分払っといてくれる?」

男「もう行くのか?」

女友「うん・・・じゃあまた今度ね」

男「うん、またな」

男「・・・」

女「女友・・・」

男「・・・」

女「バスケ、嫌いになったの?」

男「そういうのじゃないんだ」

女「じゃあなんで・・・」

男「最後、女がなんなんだろう」

女「! なななななんでもないよ!!」

男「そうか・・・」

女「うぅ」

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