武道家「この道場もおしまいだな……」魔法少女「たのもー!!」 (44)

道場

武道家「この道場もおしまいだな……」

武道家(師匠。この流派も俺で潰えてしまうようです)

武道家(数百年と続いてきた、由緒ある流派を守ることができず、申し訳ありません)

武道家「さてと、準備を始めるか」

「たのもー!!」

武道家「……!?」

魔法少女「ここに最強のぶどうかさんがいると聞いてやってきたっす!! オッス!!」

武道家「……」

魔法少女「どうやら、貴方のほかには誰もいないご様子です」

武道家「あの、なにか?」

魔法少女「ふふ。見ての通り、道場破りってやつっす。オッス」

武道家「君のその恰好は、どう見ても魔術師のような……」

魔法少女「流石っすね。外見だけで私を魔術師であることを見破るとは。その観察眼、合格っす」

武道家(なんなんだ、この子……?)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456844356

魔法少女「では、道場のほう、破らせていただくっす」

武道家「看板ならあげよう。持っていくと良い」

魔法少女「え?」

武道家「この道場はもうお終いなんだ。君がどうして道場破りにきたのかは知らないが、こちらとしては好都合だ」

魔法少女「おしまいって、なんでっすか」

武道家「ここで修行をしたいという者が3年以上、現れていない。そして、今後もここへ現れることはないだろう」

魔法少女「あれ? ってことは、貴方がひとりなのは練習後だからってわけじゃないんすか」

武道家「ずっと俺だけだ」

魔法少女「つまり、貴方が師範ということっすか」

武道家「一応な」

魔法少女「つまり、この道場で最強なんっすね」

武道家「俺しかいないからな」

魔法少女「では、私と勝負っす。私に勝つことができれば、道場の看板は残してあげるっす」

武道家「だから、看板はもう必要ないんだ。この土地も売却する予定だしな。土地ごと譲ってもいいぐらいだ」

魔法少女「それは師範付きっすか?」

武道家「俺はこの街から出るつもりだ。しばらくは旅でもしながら、今後のことを考えようかと思う」

魔法少女「師範はいなくなるっすか!?」

武道家「そうだ。この土地が欲しいなら、それなりの金が必要になるが……」

魔法少女「それじゃあ意味がないっすぅ!! 師匠になる人がいないと意味ないっすぅ!!」

武道家「どういうことだ」

魔法少女「私はこう見えても魔術師の卵っす」

武道家「既にそれは指摘したが。その制服は国の試験を合格した証のようなものだろう」

魔術師「えへへ、実はそうなんっすよぉ。結構、ギリギリだったんすけどぉ」

武道家「それがどうかしたのか」

魔術師「卵だけに魔術に関してはまだまだなんっすよ。強い魔術なんてまだまだ練習が必要っす」

武道家「だろうな」

魔術師「でも、私はすぐに強くなりたい!! このままでは、同級生たちに差をつけられていくばかり……」

魔術師「だから!! 手っ取り早く強くなる方法を考えたっす!!」

武道家「まさか、それでここへ?」

魔術師「卵とはいえ魔術師に勝利できるぶどうかさんに弟子入りすれば、きっと、すぐに強くなれるはずっす。結構、私って頭よくないっすかね。マジで」

武道家「武術ではなく、魔術を極めようとは考えないのか」

魔術師「だから、魔術はまだまだ時間がかかるんすよ」

武道家「君はあれか。武術ならば時間をかけずに極められる、そう思っているのか」

魔術師「そ、そういうわけじゃないっすけど、でも、魔術を勉強するよりは早く覚えられそうかなぁって」

武道家「……」

魔術師「それにどうしたって武術では魔術には――」

武道家「構えろ」

魔術師「へ?」

武道家「そこまで言われるのは心外だ。確かに武術は魔術に劣るかもしれん。だが、こちらにもプライドがある」

魔術師「あの……え……お、おこってるっすか?」

武道家「見てみたいのだろう。武術がどれほどのなのかを」

魔術師「よ、よーし!! やる気になったみたいっすね!! さぁー!! どっからでもかかってこいっすぅ!!」

武道家「……」

魔術師「私のことも甘くみないほうがいいっすよ。風ぐらいなら起こせるっすからぁ」キリッ

武道家「……」

魔術師「風よ!!」ゴォォォ!!!

武道家「はぁぁ!!!」ドゴォッ!!!

魔術師「ぐっほ!?」

武道家「ふぅー……」

魔術師「お……ほぉ……きくぅ……」

武道家「女子供だろうと、前に立つ者に容赦はするな。それが師の教えなんだ。悪いな」

魔術師「ぜん、ぜん、動きが……みえませんでしたぁ……」

武道家「武術も一朝一夕では極めることはできない。これで分かってくれたか」

魔術師「あ、あい……」

武道家「そうか。それを君に伝えられただけでも、今日までこの道場を開けていた甲斐があったというものだ」

魔術師「……」

武道家「俺はこれから荷造りをしなくてはならない。すまないが、もう帰ってくれるか」

魔術師「う、うす……今日は、かえるっす……」

武道家「訊ねてきてくれたことは感謝する。ありがとう」

魔術師「い、いえ、私もなんか、すみませんでした」

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


魔術師「うぅー……」

武道家「手加減はしたつもりだったが、そこまで痛むか?」

魔術師「いや、私が舐めただけっすから」

武道家「送っていこうか」

魔術師「いえ、大丈夫っす。問題ないっすから」

武道家「それなら、いいが。これからも精進してほしい。魔術師はいずれ皆、この国を支える者たちとなるんだからな」

魔術師「あざっす。なんかてれるっす」

武道家「気を付けて」

魔術師「はいっ。それでは!!」

武道家「元気な子だな。魔術師を志す者は皆、冷静というか落ち着きがあるというか、実年齢よりも大人びている印象があったが」

武道家「色んな魔術師がいるんだな。とはいえ、あれだけ若い魔術師ともなれば、きっと将来を約束されているんだろう」

武道家「羨ましいな……」

武道家(明日は掃除をしなければな)

武道家(今日は休もう……)

武道家「師匠。おやすみなさい」

翌日 道場

武道家「ふぅ……。随分とスッキリしてしまったな」

武道家(ここに居られるのも、あと数日か……)

武道家「さて、ゴミを捨てるか。そのあとは拭き掃除を――」

魔術師「オーッス!! おはようございまーっす!!」

武道家「……!?」

魔術師「お! ししょー、流石っすねぇ。これでも早起きしたんっすけど、もう道場にいるなんて。いやぁ、これ以上の早起きには私には無理っす。勘弁してほしいっすぅ」

武道家「君は……」

魔術師「さて、何からするっすか? 朝ごはんっすか? いや、この雰囲気はあれっすね。ズバリ、朝の清掃っすね。マジ、私、空気よめるっすから」

武道家「何のつもりだ?」

魔術師「はい?」

武道家「どうしてまたここへ来た? 道場破りは昨日、諦めたんじゃなかったのか」

魔術師「なにいってるんすか、ししょー。ししょーは私に勝ったじゃないっすか。だから、昨日から私は弟子っすよ。弟子」

武道家「弟子……? あのな、この道場はもう看板を下ろすと言っただろう」

魔術師「でも、ししょーには今、私という弟子がいるっす。看板はおろせないんじゃないっすか」

>>3
>>4
>>5
>>7
>>8

途中から魔術師表記になってたので訂正
レスあぼーん

武道家「俺はこの街から出るつもりだ。しばらくは旅でもしながら、今後のことを考えようかと思う」

魔法少女「師範はいなくなるっすか!?」

武道家「そうだ。この土地が欲しいなら、それなりの金が必要になるが……」

魔法少女「それじゃあ意味がないっすぅ!! 師匠になる人がいないと意味ないっすぅ!!」

武道家「どういうことだ」

魔法少女「私はこう見えても魔術師の卵っす」

武道家「既にそれは指摘したが。その制服は国の試験を合格した証のようなものだろう」

魔法少女「えへへ、実はそうなんっすよぉ。結構、ギリギリだったんすけどぉ」

武道家「それがどうかしたのか」

魔法少女「卵だけに魔術に関してはまだまだなんっすよ。強い魔術なんてまだまだ練習が必要っす」

武道家「だろうな」

魔法少女「でも、私はすぐに強くなりたい!! このままでは、同級生たちに差をつけられていくばかり……」

魔法少女「だから!! 手っ取り早く強くなる方法を考えたっす!!」

武道家「まさか、それでここへ?」

魔法少女「卵とはいえ魔術師に勝利できるぶどうかさんに弟子入りすれば、きっと、すぐに強くなれるはずっす。結構、私って頭よくないっすかね。マジで」

武道家「武術ではなく、魔術を極めようとは考えないのか」

魔法少女「だから、魔術はまだまだ時間がかかるんすよ」

武道家「君はあれか。武術ならば時間をかけずに極められる、そう思っているのか」

魔法少女「そ、そういうわけじゃないっすけど、でも、魔術を勉強するよりは早く覚えられそうかなぁって」

武道家「……」

魔法少女「それにどうしたって武術では魔術には――」

武道家「構えろ」

魔法少女「へ?」

武道家「そこまで言われるのは心外だ。確かに武術は魔術に劣るかもしれん。だが、こちらにもプライドがある」

魔法少女「あの……え……お、おこってるっすか?」

武道家「見てみたいのだろう。武術がどれほどのなのかを」

魔法少女「よ、よーし!! やる気になったみたいっすね!! さぁー!! どっからでもかかってこいっすぅ!!」

武道家「……」

魔法少女「私のことも甘くみないほうがいいっすよ。風ぐらいなら起こせるっすからぁ」キリッ

武道家「……」

魔法少女「風よ!!」ゴォォォ!!!

武道家「はぁぁ!!!」ドゴォッ!!!

魔法少女「ぐっほ!?」

武道家「ふぅー……」

魔法少女「お……ほぉ……きくぅ……」

武道家「女子供だろうと、前に立つ者に容赦はするな。それが師の教えなんだ。悪いな」

魔法少女「ぜん、ぜん、動きが……みえませんでしたぁ……」

武道家「武術も一朝一夕では極めることはできない。これで分かってくれたか」

魔法少女「あ、あい……」

武道家「そうか。それを君に伝えられただけでも、今日までこの道場を開けていた甲斐があったというものだ」

魔法少女「……」

武道家「俺はこれから荷造りをしなくてはならない。すまないが、もう帰ってくれるか」

魔法少女「う、うす……今日は、かえるっす……」

武道家「訊ねてきてくれたことは感謝する。ありがとう」

魔法少女「い、いえ、私もなんか、すみませんでした」

魔法少女「うぅー……」

武道家「手加減はしたつもりだったが、そこまで痛むか?」

魔法少女「いや、私が舐めただけっすから」

武道家「送っていこうか」

魔法少女「いえ、大丈夫っす。問題ないっすから」

武道家「それなら、いいが。これからも精進してほしい。魔術師はいずれ皆、この国を支える者たちとなるんだからな」

魔法少女「あざっす。なんかてれるっす」

武道家「気を付けて」

魔法少女「はいっ。それでは!!」

武道家「元気な子だな。魔術師を志す者は皆、冷静というか落ち着きがあるというか、実年齢よりも大人びている印象があったが」

武道家「色んな魔術師がいるんだな。とはいえ、あれだけ若い魔術師ともなれば、きっと将来を約束されているんだろう」

武道家「羨ましいな……」

武道家(明日は掃除をしなければな)

武道家(今日は休もう……)

武道家「師匠。おやすみなさい」

翌日 道場

武道家「ふぅ……。随分とスッキリしてしまったな」

武道家(ここに居られるのも、あと数日か……)

武道家「さて、ゴミを捨てるか。そのあとは拭き掃除を――」

魔法少女「オーッス!! おはようございまーっす!!」

武道家「……!?」

魔法少女「お! ししょー、流石っすねぇ。これでも早起きしたんっすけど、もう道場にいるなんて。いやぁ、これ以上の早起きには私には無理っす。勘弁してほしいっすぅ」

武道家「君は……」

魔法少女「さて、何からするっすか? 朝ごはんっすか? いや、この雰囲気はあれっすね。ズバリ、朝の清掃っすね。マジ、私、空気よめるっすから」

武道家「何のつもりだ?」

魔法少女「はい?」

武道家「どうしてまたここへ来た? 道場破りは昨日、諦めたんじゃなかったのか」

魔法少女「なにいってるんすか、ししょー。ししょーは私に勝ったじゃないっすか。だから、昨日から私は弟子っすよ。弟子」

武道家「弟子……? あのな、この道場はもう看板を下ろすと言っただろう」

魔法少女「でも、ししょーには今、私という弟子がいるっす。看板はおろせないんじゃないっすか」

武道家「弟子……?」

魔法少女「うっす!! 不束者ですが、よろしくおねがいしまっす!!」

武道家「残念だが、破門だ」

魔法少女「なんで!? なんでっすかぁ!? ししょー!?」

武道家「何度も言っている。この道場はもう終わりなんだ」

魔法少女「ちゃんと早起きもするっす!! ごはんもつくるっす!!」

武道家「そうじゃないんだ」

魔法少女「こ、これ以上、私に何を求めるつもりっすか……」

武道家「何も求めてはいない」

魔法少女「月謝っすか? 月謝はその、色々とアレなんで、体で払うっす」

武道家「それも関係ない。とにかく、弟子なんて今更……」

魔法少女「ししょー!! がんばるっすからぁ!! 弟子に弟子にしてください!! 破門はいやっす!!」

武道家「諦めてくれ」

魔法少女「えぇぇ!! ししょー!! 床掃除もするっすからぁ!! お風呂掃除もトイレ掃除だってやるっすぅ!!」

武道家「どこを掃除しても同じだ。弟子はとらない」

魔法少女「師範なら弟子のひとりぐらいいないと格好がつかないっすよ!!」

武道家「3年以上、弟子はいない。今更、恰好なんて気にしない」

魔法少女「まさか一日遅れで門前払い……! これでは私、殴られ損じゃないっすか……」

武道家「俺は君を弟子にするとは一言も言っていない」

魔法少女「でしー!! でしになりたいっす!! ししょー!!」

武道家「武術を習いたいなら、他のところへいけばいい。道場は別の場所にもある」

魔法少女「ふっ。分かってないみたいですね、ししょー」

武道家「なに?」

魔法少女「どうして私がここへ来たのか、わからないっすか」

武道家「何故だ?」

魔法少女「既に他の道場では丁重にお断りされたからっすよ」

武道家「……」

魔法少女「で、ここなら弟子にしてくれるだろうって言われてきたっす。しかも最強のぶどうかさんまでいると聞きました。そしてその噂は本当だった!! 私は運命だと思っているっす!!」

武道家「運命?」

魔法少女「ししょーの弟子になることは、きっと運命だったわけっす!! オッス!!」

武道家「悪いが帰ってくれ」

魔法少女「弟子になるまでここは動きません!! いや、武術を極めるまで動く気はないっす!!」

武道家「魔術の勉学はいいのか」

魔法少女「それはまだ時間があるっす。午前の講義まではあと1時間以上あるっすから」

武道家「復習なり予習なりすることは多いと思うが」

魔法少女「まずはししょーの弟子になる。これが今、すべきことっす」

武道家「……」

魔法少女「さぁ、ししょー!! 掃除するっすか。朝ごはん、つくるっすか。それとも、お風呂っすか」

武道家「出て行ってくれ」

魔法少女「いやっす」

武道家「頼む」

魔法少女「やー」

武道家「分かってくれ。弟子を取るだけの余裕なんてうちにはもうないんだ」

魔法少女「ししょーはつよい。十分、よゆうっす」

武道家「そういうことじゃないんだよ」

魔法少女「なら、どういうことっすか」

武道家「道場を存続させるためには金がいる。だが、見ての通り、ここには誰もいない」

魔法少女「私がいるっすー」

武道家「維持費も払えない。ここを手放す他、ないんだ。師匠が生きているときは多くの門下生がいたんだがな」

魔法少女「わかったす」

武道家「理解してくれたか」

魔法少女「この道場はなくなるっすね。それはとっても残念っす。でも、道場がなくなっても私は構わないっすよ!!」

武道家「は?」

魔法少女「これからは緑の草原と青の大空が私たちの道場っす!!」

武道家「……」

魔法少女「武術を極めるために必要なのは建物じゃないっす。ズバリ、ししょーという存在っす!!」

武道家「……」

魔法少女「と、いうわけで、やりましょう、ししょー!! オッス!! 私、がんばるっす!!」

武道家「そこまで本気なのか」

魔法少女「トーゼンっす!! 伊達に魔術師目指してないっすから!!」

武道家(しかし、俺はもう……)

魔法少女「さ、どんな雑用からやればいいっすか! その雑用が実は武術の基本になってるとかいうのは、私、大好きっす!!」

武道家「わかった。では、道場の掃除から始めてくれ。雑巾はそこにあるのを使ってくれ」

魔法少女「オッス!!」

武道家「講義の時間までに道場を綺麗にできなければ、破門にする」

魔法少女「うひー、きびしーっす! けど、私が本気になれば掃除なんて一瞬でおわるっす!!」

武道家「自信があるんだな」

魔法少女「みててください、ししょー!! おりゃー!!」キュッキュッ

武道家(どうしてここまで必死になるんだ……。魔術師の卵というだけで、安泰だろうに……)

魔法少女「うおー!!」

武道家(エリートの考えることはよくわからないが、こうして努力をしている子を見るのは嬉しく――)

魔法少女「くそぉ。思っていた以上に道場が広く、作業が進まない……。ここはとっておきの秘技を使うしかない」

魔法少女「風の魔術で十枚の雑巾を動かし、一気に終わらせる」ゴォォォ

魔法少女「舞え!! 我が雑巾たち!!」ゴォォォ!!!

武道家「……」

ベチャッ

魔法少女「ああん。失敗」

武道家「雑巾が至る所に張り付いただけだな」

魔法少女「ですね」

武道家「破門だ」

魔法少女「あー!! ししょー!! やだー!! ちょっとした魔術ジョークじゃないっすかぁ!!」

武道家「出て行ってくれ」

魔法少女「ちゃんと! ちゃんとやるっす!! 破門だけはやめてくださいっすぅ!!」

武道家「……」

魔法少女「うぅ……ししょー……」

武道家「講義の時間までには間に合うんだな」

魔法少女「それはもちろんっす」

武道家「さっさとやれ」

魔法少女「オッス!! 今度は手を抜かないっす!! 一擦りに魂を燃やすっす!!」

武道家「早くやれ」

魔法少女「はぁ……はぁ……これで……おわったぁ……」

武道家「まぁ、いいだろう」

魔法少女「う、うっす……」

武道家「時間はいいのか」

魔法少女「うお! もうこんな時間! ししょー!! 失礼するっす!!」

武道家「ああ。気を付けてな」

魔法少女「あざした!! いってきまーす!!」

武道家「……」

武道家(急いでいた割には丁寧に掃除をしてくれたな)

武道家(真面目な子だ……)

武道家「少し、心が痛むが……俺は……」

魔法少女「ししょー!!」

武道家「な……。まだいたのか」

魔法少女「夕方までには戻ってくるっす!! それじゃ!!」

武道家「夕方……?」

夕方

武道家「一通りの整理はできたな。あとは……」

魔法少女「ししょー!! しっしょー!!」

武道家「……」

魔法少女「ただいまっす!」

武道家「その大荷物はなんだ」

魔法少女「勿論、お泊りセットっす」

武道家「なに?」

魔法少女「今日よりも早く起床できない以上、もうここで寝泊まりするしかないと、私は考えたっす。マジで」

武道家「住み込む気か」

魔法少女「ダメっすか? 掃除したときに見たっすけど、なんかたくさん空き部屋があったんで、いけるかなーと勝手に思ったんですけど」

武道家「朝、道場はなくなると言っただろう」

魔法少女「寝るときぐらいは屋根のあるところがいいっす」

武道家「もういい。好きなところを使ってくれ。多くの空き部屋は門下生が寝起きするために作られたものだからな」

魔法少女「やたー!! さすが、ししょー!! ではでは、月がよく見える部屋にいくっすー」

空き部屋

魔法少女「この部屋にするっす!」

武道家「そうか」

魔法少女「よいっしょっと。さ、ししょー。まずはごはんっすね」

武道家「なんだと」

魔法少女「いや、お風呂が先っすかね、それともしゅ・ぎょ・う?」

武道家「君に食べさせるだけの食料はないぞ。俺も今は日雇いの仕事で食いつないでいるだけだからな」

魔法少女「マジっすか。ししょー、たいへんっすね」

武道家「ああ、大変なんだ。だから、君の食事はない」

魔法少女「なるほど。流石はししょー。今日食べる食事も自分の手で取ってこいということっすね。それも武術を極めるためには必要なことだと」

武道家「いや、そういうわけじゃ……」

魔法少女「了解っす!! これでも魔術師の端くれ!! 今晩のおかずぐらいはこの手で手に入れるっす!!」

武道家「おい!」

魔法少女「ししょーは先に食べててくださーい!!」

武道家「どこに行くつもりなんだ……」

武道家「む……」

武道家(そろそろ一時間か。まさか、本当に獣を捕えに……? いや、そんなことはするはずがない。というかできないはずだ)

武道家(魔術が使いこなせているとは思えないからな)

魔法少女「ししょー、ただいまっすー」

武道家「戻ってきたか」

魔法少女「いやぁ、野生の熊を素手で倒してみようかとおもったっすけど、まだ無理そうだったんでやめたっす」

武道家「それで、食料は?」

魔法少女「買ってきたっす!」

武道家「それはよかった。俺はもう食べ終わったから部屋に戻る」

魔法少女「ししょー。夜の個人レッスンはないっすか?」

武道家「明日は仕事なんだ。早めに休ませてもらう」

魔法少女「えー?」

武道家「ではな」

魔法少女「ししょー!! だったら、なんか指示だけでも出してほしいっすー!! こういう訓練したらいいよー、とか。これさえしとけばなんとかなるとかー。ししょー!!」

武道家(俺はもう誰かを指導する気なんてなれない……。そのうち、彼女のほうが愛想を尽かすだろう)

翌日 道場

武道家(この街で仕事をするのもあとわずかか。親方にはなんて言おうか……)

魔法少女「ししょー!」

武道家「……!?」ビクッ

魔法少女「おはようございます!! オッス!! 朝の清掃、ただいま鋭意実行中っす!!」ゴシゴシ

武道家「あ、ありがとう」

魔法少女「これが終わったら朝食にするっす!」

武道家「俺はこれから仕事に行く。一人で済ませてくれ」

魔法少女「こんな朝早くから仕事っすか!? ししょー、マジ、大変じゃないっすか」

武道家「君も講義はあるんだろう。遅れずに行けよ」

魔法少女「はぁーい!!」

武道家「……」

魔法少女「ししょー!! いってらっしゃーい!!」

武道家「ああ」

武道家(熱心だな……)

街 現場

親方「おう。野郎ども、昼飯にするぞ。しっかり食って、昼に備えろよ」

「「へーい」」

武道家「あの、親方」

親方「どうした、坊主。木材を運びすぎて腕がイカレちまったか? なら、足で運べ。ガハハハハ」

武道家「いえ、体はなんともありません。その、そろそろ、あの道場を売り払おうと思って」

親方「なに?」

武道家「話も進んでいます。近日中には、手放すつもりです。なので、もう……」

親方「なんだよ。そういうことか。日雇いじゃなく、正式に雇用してほしいってか。いいぜ、坊主なら大歓迎だ。なぁ、お前ら!」

「「うぃーっす」」

親方「大工屋としてはよ、坊主みてえな腕っぷしのつええやつが一匹ぐらいは欲しいんだ。わかるな」

武道家「すみません。俺、この街を出ようと思っています」

親方「おいおい。寝床を売り払って、自由気ままに渡り鳥生活かよ」

武道家「今後のことを考えたくなって」

親方「ま、坊主のやりたいようにやりゃあいいがな。別に俺は文句ねえよ」

武道家「すみません。急な話で」

親方「いいってことよ。ただな、坊主。やりたいことをやるのは構わねえが、後悔だけはすんなよ。後悔は一番、つまんねえからな」

武道家「はい」

親方「おっし。んじゃ、メシにすっかぁ。ガハハハハ」

同僚「なんだよ、辞めちまうのかよぉ」

武道家「悪い」

同僚「寂しくなるなぁ」

武道家「そうか?」

親方「しかぁし、もったないねえなぁ。ようやく、ものになってきたとおもったのによぉ」

同僚「やっぱあれか。道場にだーれもこなくなったからか」

武道家「……」

親方「まぁ、そりゃあしゃあねえわな。今の時代、武術よりも魔術だ。あのジジイの流派は時代に取り残されちまった、化石みてえなもんだ」

同僚「俺はカッコいいとおもうんすけどねぇ。指先から火の弾だしたり、氷をだしたりするよりは、自分の拳だけで戦うスタイル」

親方「脳みそまで筋肉になっちまってる俺たちは逆立ちしたって魔術なんてつかねえからなぁ」

武道家「実は、一人だけ弟子にしてほしいっていってきた女の子がいるんです」

親方「マジかよ、マジかよぉ」

同僚「女ってどんな!?」

親方「何歳だよぉ、どんなパンツはいてたんだよ、おい」

武道家「年齢はたぶん15、16歳ぐらいかと。下着は知らないです」

親方「ふざけんじゃねえぞ、このやろぉ!! 女と同じ建物にいるなら、やるこたぁ、5種類ぐれえしかねえだろうがよぉ!!」

同僚「ですよねー」

武道家「な、なにをするんですか」

親方「そりゃあ、まずは風呂を覗くだろ。そこで反応をみるわけだ。で、いけそうなら次のステップに進む」

武道家「はぁ……」

親方「家も女を落とすもの土台をみなきゃいけねえ。土台さえしっかりしてりゃあなにをしたって許されるもんだぁ」

同僚「なるほどぉ。親方の話はためになるなぁ」

親方「だろぉ。これでも800人の女を口説いてきたからな」

同僚「この前は600人じゃなかったでしたっけ」

親方「それはいいとしてだ、弟子がきたならもう少しこの街にいればいいんじゃねえのか?」

武道家「もう、いいんです。師匠から受け継いだ流派を守ることは、俺にはできなかったんですから。あの子だって、ずっと居るわけではないでしょうし……」

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