【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3― (1000)

カミラ「カムイ、ルーナとベルカに王城へ行ってもらったわ」

カムイ「はい、ありがとうございます。少しすればマクベスさんもこちらにやってくるでしょう。もっとも、本来ノートルディアにいるべき私達がここにいることで色々勘ぐってきそうですが」

ゼロ「仕方無い。突然賢者に飛ばされて、レオン様の自宅に戻ったらすでに戦闘状態だった。そう言う以外に方法はないんだからな」

オーディン「しかし、もう少し早くたどり着けていれば、使用人も幾人か助けられたかもしれないって考えるとな……」

カムイ「そこは考えても仕方ありません。こんなに後手後手に回っていながら、レオンさんとサクラさん達が助かっただけでも奇跡なんですから」

エリーゼ「そうだよね、でも本当に間に合ってよかった。だけど、サクラ大丈夫かな?」

カミラ「大丈夫、レオンが一緒にいてくれているわ。それにあの子たちも、見知った顔のほうが安心できるはずよ」

カムイ「はい、サクラさん達のことはレオンさんにお任せしておきましょう。それが今できる私たちの最善でしょうから」

モズメ「せやな……、ところでカムイ様」

カムイ「なんですか、モズメさん。なにか気になることでもありましたか?」

モズメ「えっと、それなんやけど」

アクア「…………」ギューッ

カムイ「ああ、アクアさんですか。仕方ないですよ、無茶をしたことは確かですから」

カミラ「うふふっ、腰に巻きついてまるで恋人に甘えているみたいね」

カムイ「私もアクアさんも女性ですから、その例えはおかしいですよカミラ姉さん」

カミラ「そうかしら? でもさすがにシャーロッテに支えられて戻ってきた時は、私も心配したのよ?」

カムイ「油断していたとしか言いようがありません、心配をかけたようです」

カミラ「ええ、でも無事でよかったわ」

カムイ「はい。それにしても傷が癒えているのに、アクアさんは大げさですよ。もう大丈――」

アクア「………」ググッ

カムイ「いたっ、ちょっと、アクアさん痛いです」

アクア「……心配したのよ」

カムイ「…はい、すみません。アクアさん」

アクア「……」

カムイ「……」ナデナデ

アクア「……」

カムイ「……心配してくれて、ありがとうございます。アクアさん」

アクア「………」





「……ばか」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456839703

 このスレは、『カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?』の続きとなっています。

 最初の1スレ:カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?
 カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438528779/)

 所々にエロ番外のある2スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443780147/)

 個人妄想全開の暗夜ルートになっています。
 オリジナルで生きていたキャラクターが死んでしまったり、死んでしまったキャラクターが生き残ったりという状況が起きます。
 ご了承のほどお願いします。

 主人公のタイプは
 体   【02】大きい
 髪型  【05】ロング・セクシーの中間
 髪飾り 【04】ブラックリボン
 髪色  【21】黒
 顔   【04】優しい
 顔の特徴【04】横キズ
 口調  【私~です】

 長所短所には個人趣味の物を入れ込んでいます。 

 長所  心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
 短所  盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】

 ※時々、番外編を挟むことがあります。
 番外の場合は『◇◆◇◆◇』を付けています。

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアB+
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC+
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリC+
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB+
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB
(返り討ちにあっています)
スズカゼC+
(イベントは起きていません)
アシュラC
(イベントは起きていません)

●異性間支援の状況

・アクア×ゼロC
・ジョーカー×フローラB
・ラズワルド×リリス 消滅
・ゼロ×リリス 消滅
・ラズワルド×ルーナC
・ラズワルド×エリーゼC
・レオン×サクラB
・レオン×カザハナC
・オーディン×ニュクスC
・サイラス×エルフィC
・モズメ×ハロルドC

●同性間支援の状況(男)

・ジョーカー×ハロルドC
・レオン×ツバキB
・ギュンター×サイラスC

●同性間支援の状況(女)

・フェリシア×ルーナA
・フェリシア×エルフィC
・フローラ×エルフィC
・ピエリ×リリス 消滅
・ピエリ×カミラC
・エルフィ×モズメC

支援会話発生確定の組み合わせ
・ギュンター×ニュクス
・リンカ×ピエリ
・シャーロッテ×モズメ

 今日はスレ立てのみで、本篇は明日でおねがいします。
 


信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸―

アクア「……」

カムイ「……」

アクア「……」スッ

カムイ「落ち着きましたか?」

アクア「なんのことを言っているかわからないわ」

カムイ「ふふっ、元気そうでなによりです。まだ、ルーナさんとベルカさんが城から戻ってくるには時間がかかりそうですね」

アクア「そうね」

カムイ「では、今のうちに私たちの知っている情報をできる限り共有しておくべきでしょう。ルーナさんとベルカさんにはカミラ姉さんが。レオンさんとサクラさん達には私から話をしておきますので」

カミラ「ええ、構わないわ。じゃあ、まずは何から開くべきかしら?」

カムイ「やはり、ノートルディア襲撃に関してでしょうか。今回の一件はこれが始まりでもありますから……まずはアシュラさん」

アシュラ「なんだい、カムイ様よ?」

カムイ「あなたは言っていましたよね、あのノートルディアに現れた襲撃者たちのことをフウマと」

アシュラ「ああ、武装は白夜の物を使ってたが、攻撃の方法とかを見る限りじゃ、フウマ公国の者たちで間違いなねえ。しかし、同盟関係の暗夜が現状支配してるノートルディアを何の利益もなしに襲うとは思えねえ」

カムイ「わかりました。それでは、スズカゼさん」

スズカゼ「はい、カムイ様」

カムイ「スズカゼさんがどうしてノートルディアにいたのか、その経緯を説明していただけませんか?」

スズカゼ「わかりました。カムイ様と前にお会いしたのは国境での戦いですが、カムイ様に敗れた後、私たちは白夜へと戻る予定でした」

アクア「では、なぜあなたが今ノートルディアにいるの?」

スズカゼ「……帰還の際に、私たちは待ち伏せしていたフウマ公国の船と鉢合わせになり、私とカゲロウさんは捕らわれの身となってしまったのです」

カムイ「……カゲロウさんは?」

スズカゼ「私が船に乗せられる前までは無事でしたが、今どうなっているかはさすがにわかりません。本来なら私が残るべきだったのでしょうが、彼らはそれを選ばせてはくれませんでしたので」

カミラ「人質ということね」

スズカゼ「ええ、私は駄目な男ですね。カゲロウさんを救えず、カムイ様には牙を剥いたのですから」

カムイ「もう終わったことです。それにカゲロウさんが殺されているかどうかはまだわかりませんから、今は無事であることを祈りましょう。それで、この計画はフウマが主導したものなのですか?」

スズカゼ「いえ、この計画はフウマの独断行動ではないということは間違いないでしょう」

アシュラ「へっ、あいつらがむざむざ暗夜を捨てるなんてことするわけないからな。この戦争で優位に立ってるのは暗夜だ、それを裏切る意味はどこにもねえ」

カムイ「つまり、今回のノートルディア襲撃は暗夜を裏切るに値する何かかではないとすると――」

アクア「同盟関係を表すための行動ということになるわね」

エリーゼ「表すための行動。どういうこと?」

カミラ「私はあなたにこれからも従っていくという意思表示といえばいいわね。エリーゼだって、頼みごとを聞いてくれる人は信用できるでしょう?」

エリーゼ「うん。えっ、でも、それじゃ……」

カムイ「そうですね。今回のノートルディア襲撃は暗夜側が仕組んだもの、ということになります」

スズカゼ「はい、聞いた限りでは暗夜から直々に命令を受けたとのことです。私も俄かには信じられません、支配地域にあるノートルディアをその支配している国が襲撃するように命令する。ノートルディアでことを起こすメリットはほとんどないはずなのに」

エリーゼ「どうして……なんで、こんなことするの?」

カムイ「フウマの目的は私ともう一人の要人、賢者様の暗殺にあったようですから。ある意味、私を殺すためといっても過言ではありませんね」

エリーゼ「カムイおねえちゃん何も悪いことしてないのに、どうして命を狙われなくちゃいけないのかな?」

カムイ「こういうこともあるということですよ。だからエリーゼさんが気に病むことはありませんよ」

エリーゼ「だって、おかしいよ。おねえちゃん、戦いたくないほとたちとも戦ってきて、傷ついてるはずなのに……」

カムイ「エリーゼさん、ありがとうございます」ナデナデ

エリーゼ「カムイおねえちゃん……辛くないの?」

カムイ「辛くないと言えば嘘になりますよ。でも、それを嘘にはできません。それが私にできる唯一のことなんですから。でも心配してくれてありがとうございます」

エリーゼ「えへへ」

カムイ「それで、スズカゼさんは、ノートルディアにやってきたということですね?」

スズカゼ「はい、あとは皆さんが知っているように」

カミラ「カムイを傷つけたのよね?」

スズカゼ「……その通りです」

カミラ「ふふっ、正直なところは認めてあげるわ。あとで、ちょっと部屋に来なさい?」

カムイ「カミラ姉さん、あまり変なことはしないでくださいね」

カミラ「大丈夫よ、アクアと一緒に色々としてあげるだけだから、ね?」

アクア「そうね、この頃腕が少し鈍ってしまって加減ができないかもしれないけど、スズカゼなら大丈夫よ」

スズカゼ「……お手柔らかにお願いします」

カミラ「それで、カムイ。あなたは賢者様からどんな話をされたのかしら?」

カムイ「出来れば聞いたことを全て話したいところなのですが、まだ私の中でほぐせていないことがあって……」

アクア「なら、理解できているものだけでいいわ。あなた自身が理解できていないことを口にされても混乱を招くだけよ」

カムイ「すみませんがそうさせてもらいます。そう考えると、わかったことは一つだけでしょうか」

カミラ「それはなにかしら?」

カムイ「今回の件も含めて、私を殺すことは目標達成の足置きでしかなかったということです」

アクア「目標達成の足置き?」

カムイ「そのままの意味です。シュヴァリエから始まった……いいえ実際はもっと前からの出来事。その目的は私ではなくレオンさんで、私を殺すことはその過程の目標にすぎなかっただけということ」

カミラ「……話は聞いているわ、ゾーラが色々と手を回していたそうね」

カムイ「はい。その目的が昔のレオンさんに戻ってもらおうというものであるということ、私はレオンさんを変えてしまった元凶のように思われていたようです。でも、いつの間にかサクラさん達がその原因にされていた。だから、私達がいない間にサクラさんたちを殺してしまおうと、ゾーラさんは動いたようです」

カミラ「すべてが運良く重なったということ?」

エリーゼ「じゃあ、フウマ公国に命令を出したのはゾーラってこと?」

カムイ「残念ですが、今回の件はゾーラさんの手によるものではないでしょう」

エリーゼ「だってカムイおねえちゃんもレオンおにいちゃんにも悪いことしたんだよ、どうしてゾーラじゃないって言えるの?」

カミラ「確かに動機としても間違ってないとは思うわ。でも、ゾーラが行うにはリスクが高すぎることがあるのよ」

エリーゼ「え?」

カムイ「エリーゼさん、悪いことをしたからと言っても、ゾーラさんにできることは限られています。さすがに、ゾーラさんのような一介の宮廷魔術師にフウマ公国を動かす力はありません。仮にゾーラさんがお父様に化けて親書を書いたとしても、確認を何度か取るはずですから、それを隠し続けることはできないでしょう」

カミラ「お父様の名を語って、親書を送るなんてこと、立派な反逆行為に他ならない。昔のレオンに戻ってもらいたいと考えてるなら、迂闊にお父様の神経を逆撫でするようなことはできないはずよ」

エリーゼ「そっか……」

カムイ「エリーゼさんの考える通り、ゾーラさんが犯人だったならこれ以上悩まずに済むのかもしれません。実際、ノートルディア以外のことはすべてゾーラさんの行動で説明がつきますからね。でも、今回ばかりはそう簡単に決めるわけにもいきません」

エリーゼ「でも、それじゃ一体誰なのかな? 国に命令できるって、すごい人だよね?」

カミラ「ええ、そうね……」

 ガタッ

アクア「カミラ?」

カムイ「どうしました、カミラ姉さん」

カミラ「いえ、もしかしたらルーナとベルカが戻ってくる頃かと思って、一度玄関に行ってみようかと思って」

カムイ「そうですか。なら、私も行きますよ。二人が戻ってきているとしたら、マクベスさんも一緒に来ているはずですから」

エリーゼ「なら、あたしも一緒に――」

カムイ「エリーゼさんはここで待っていてください」

エリーゼ「えー! あたしもおねえちゃんたちと一緒に行きたいのに……」

カミラ「ふふっ、うれしい言葉だけど今はちょっと待っていてくれないかしら」

エリーゼ「むーっ、二人だけでずるい」

カムイ「エリーゼさん」

エリーゼ「ううっ、わかったよ。あたしここで待ってるね。でも、何もなかったらすぐに戻ってきてね、約束だよ!」

カミラ「ええ、もちろんよ。可愛いエリーゼの頼みだもの」

カムイ「それでは、行きましょうか。カミラ姉さん」

 ガチャッ バタン

エリーゼ「……カミラおねえちゃんどうしたのかな。なんだか、すごくつらそうな顔してた……」

アクア「大丈夫よ、カムイが一緒にいてくれてる。だから心配いらないわ」

エリーゼ「うん、アクアおねえちゃん」

アクア「なに?」

エリーゼ「すこしギュってしてもいい、かな?」

アクア「ええ、いいわよ」

エリーゼ「ありがとう。……アクアおねえちゃん、温かい……」

アクア「……ふふっ、少し疲れてるのよ。今はゆっくり休んだほうがいいわ」

エリーゼ「うん、ありがとう」

 スゥ スゥ

アクア「……カミラ」

アクア(あなたは察したのよね)

(フウマに命令を出したのが誰かということを……)

今日はここまでで 
 
 エリーゼの真実を見抜く純粋さってのは一体なんなんだろうか?

 
 次あたりから、展開安価をしようと思いますので、参加していただけたら幸いです。

―レオン邸『レオン執務室』―

レオン「……どうだい?」

サクラ「はい、少し前から呼吸は安定し始めてますから、あとは目が覚めるのを待つだけですね」

レオン「そうか、よかった」

サクラ「でも驚きました、レオンさんと一緒にカムイ姉様が来てくれたときには何が起きたのかわかりませんでしたから」

レオン「僕も驚いてる。でも、そのおかげでサクラ王女たちを守り通せたから」

サクラ「ふふっ、何言ってるんですか。レオンさんが王城から急いで戻ってきてくれたから、カザハナさんを失わないで済んだんです」

レオン「……ごめん。あのとき、僕はサクラ王女たちに言葉を掛けてもらうまで、どうすればいいかもわからなかった。勝手にもう駄目だと思い込んで、それで」

サクラ「……本当は私達が気付くべきことだったんです。屋敷の異変にもう少し早く気付いていたら、使用人の皆さんが死んでしまうことはなかったと思いますから」

レオン「それはわからないよ」

サクラ「でも、だからこそ、私たちは生き続けなくちゃいけないって思うんです。使用人さんたちの分も……」

レオン「サクラ王女」

サクラ「グスッ……大丈夫です」

レオン「涙声じゃないか」

サクラ「……泣かないって決めたんです。だから、グスッ……大丈夫です。それに、カザハナさんが起きて私が泣いてたら、困らせちゃうじゃないですか」

レオン「そんなことないよ。カザハナはサクラ王女のことで困っているなんて思ってない。むしろ、前まではカザハナに振り回されていたんじゃないかな?」

サクラ「そんなこと……」

レオン「いや、カザハナのことだ。いろいろとサクラ王女を振り回していたに決まってるよ。だって、僕にもいろいろと無茶なことを言ってきたんだからね。ここに来て早々にお風呂に入れろとか、正直捕虜の立場をわかってないって思った」

サクラ「ふふっ、レオンさん。カザハナさんのことになると色々と口に出しますね」

レオン「こ、これはその、一応あいつとは色々話してるから」

サクラ「ふふっ、そういうことにさせてもらいますね」

レオン「……それにしてもゾーラの奴、僕の幻影を使ってカザハナに近づいたとか」

サクラ「……ひどいですよね」

レオン「言語チャームも使ったらしいからね。カザハナが僕の言うことを聞いていたのも、案外それが原因なのかもしれない」

サクラ「それは違うと思います」

レオン「どうしてそう言えるんだい?」

サクラ「乙女の勘です!」

レオン「乙女って、サクラ王女は面白いことを言うんだね。現にカザハナはゾーラのチャームに……」

サクラ「もう、レオンさんはそういうところのデリカシーがないと思います!」

レオン「え、サクラ王女?」

サクラ「……本当にレオンさんのことが嫌いだったら。カザハナさん私を連れて暗夜から脱出しようとしてたと思います」

レオン「……たしかに、カザハナならやりかねない気がしなくもないよ。あいつ、無駄に行動力はあるからね」

サクラ「だから、カザハナさんがレオンさんのことが嫌いなんてことあるわけありません!」

レオン「……ははっ」

サクラ「な、なんですか」

レオン「いや……やっぱりサクラ王女は強い人だと思ってね」

サクラ「そんなこと……ううん、ありがとうございます」

レオン「……サクラ王女も歩むつもりなんだよね?」

サクラ「はい。もう待ち続けるだけじゃいけないって、そう思うんです」

レオン「……」

レオン「行ってきなよ」

サクラ「レオンさん」

レオン「外にツバキが待機してる。カムイ姉さんに話してくるべきだよ」

サクラ「でも……」

レオン「カザハナのことは僕に任せてほしい」

サクラ「はい、お願いします」

レオン「ああ」

 ガチャ バタン

レオン「……カザハナ」

レオン「君は僕のことを信じてくれた。だからなんだろうね、ゾーラのチャームが僕に効かなかったのは」

カザハナ「……」

レオン「あの時、僕の心にあったのは楽になりたいって思いだった。全部投げ出して、全てを捨てて、何もできない僕になりたかったからかもしれない。そうすれば、もう頑張らなくてもいいんじゃないかって」

カザハナ「……」

レオン「いくら考えても、みんなが納得するような答えを用意できないから苛立って、カザハナにあたってさ。そんな僕に君は声を掛けてくれた。信じてるって、ちゃんと言葉にしてくれた」

レオン「感謝してるよカザハナ。僕が今ここにいられるのは、君が僕を信じてくれたからだ。だから僕も皆を信じてみるよ。姉さんの前で何でもできる自分を信じることはもうやめて、今ある自分のことをね」

レオン「だって、君が信じてくれた僕は、みんなを信じる僕でもあるんだ。だから――

 ギュッ

レオン「!」

カザハナ「……だいじょうぶ……だよ」

レオン「……カザハナ、大丈夫なのか!?」

カザハナ「うん……」

レオン「すまない、僕が気づいていれば……」

 ギュウッ

レオン「いたたたっ、な、なにするんだ!」

カザハナ「謝らないでよ……」

レオン「……ごめん」

カザハナ「……ねぇ、レオン王子」

レオン「なんだい」

カザハナ「……こわかった」

レオン「うん」

カザハナ「自分が消えちゃうって、こんなに怖いことなんて知らなかった」

レオン「……ああ」

カザハナ「もう、みんなに会えなくなるんじゃないかって、ううっ、ううううう」

レオン「もう大丈夫、大丈夫だから……」

カザハナ「……うん、わかってる。わかってるけど、震えが止まらないの。はは、ど、どうしたらいいのかな。こんな風に震えてたら、またサクラに心配かけちゃうよ」

レオン「……僕の手をもっと、力強く握ってもいいよ」

カザハナ「でも、今さっき痛いって」

レオン「いいから」

カザハナ「……んっ」

レオン「―――っ!!!」

カザハナ「はは、レオン王子、すごく痛そうな顔してるよ?」

レオン「痛いからね」

カザハナ「誤魔化さないんだね。でも、なんだか気が楽になったかな」

レオン「そう、手を差し出した甲斐があってよかったよ」

カザハナ「ねえ、レオン王子」

レオン「なんだい?」

カザハナ「似合ってるって言ってくれないかな? その、確認したいから……」

レオン「……わかったよ」

レオン「……」

レオン「似合ってるよ、カザハナ」

カザハナ「……」

レオン「……」

カザハナ「えへへ、全然ドキドキしないや。やっぱり、勘違いだったんだね……」

レオン「カザハナ……」

カザハナ「よかったじゃん、あたしなんかに好きになられても、レオン王子困っちゃうでしょ?」

レオン「たしかに、そうかもしれないし。そもそもカザハナも困るだろ?」

カザハナ「えへへ、どうかなー?」

レオン「調子が戻ってきたようだね」

カザハナ「う、うるさいわね。これでも心細いんだから……」

レオン「はは、ごめんごめん。でも、安心したよ。ありがとうカザハナ、ちゃんと戻ってきてくれて」

カザハナ「……あのさ、レオン王子」

レオン「?」

カザハナ「そのさ……、あたしが眠るまで、手握ってくれないかなって?」

レオン「……お安い御用さ、だからゆっくり休んでほしい」

カザハナ「うん、ありがとう……レオン王子」

 スゥ スゥ

レオン「…カザハナ……僕の方こそ、お礼を言わないといけない」

「ありがとう」

―レオン邸『玄関外』―

カムイ「……雨、止みませんね」

カミラ「そうね、ルーナとベルカは大丈夫かしら?」

カムイ「びしょ濡れでしょうけどね」

カミラ「……そうね、お風呂に一緒に入ってあげたいわ」

カムイ「……」

カミラ「……」

カムイ「カミラ姉さん」

カミラ「……」

カムイ「周りには私たちしかいませんよ」

カミラ「そう、ありがとう」

カムイ「……あまり賢くなりたくはないものですね。私もあまり信じたくはないことですから」

カミラ「ええ……。でも、状況を見る限りだとフウマにノートルディアを襲撃するように命令を出したのはお父様よ」

カムイ「ええ、しかも、かなり前から準備をしていたはずです。舞踏会のその日に襲撃させたのも、私を向かわせるためだったんでしょう。そして、ゾーラさんがことを起こせる状況を作り上げた、私達がここにいるのはイレギュラーなことなのかもしれません」

カミラ「……お父様はレオンのことも見捨てたということなの?」

カムイ「本当はサクラさん達が死んでしまうか、もしくはレオンさんがサクラさん達を見捨てる選択をするというのがお父様の考えた道筋だったのかもしれません」

カミラ「でも、そんなことをして意味があるとは思えないわ」

カムイ「……多分意味があるのでしょう。現実的な価値ではなくて、もっとどす黒いものとしての価値が」

カミラ「……カムイ、賢者様から他に聞いたことと関係があるみたいね……」

カムイ「賢者様は悪意が更なる悪意を生み出すために暗躍していると言っていました」

カミラ「悪意が悪意を生み出すため?」

カムイ「はい、ゾーラさんはその悪意の種に利用されたんでしょう。もしも、ここでゾーラさんがレオンさんとサクラさん達を殺していたら、カミラ姉さんはそれを許せましたか?」

カミラ「……許せないわ」

カムイ「そして、現在も私達にはお父様に対する疑惑の悪意が渦巻いています」

カミラ「……これもその悪意の策略だというの」

カムイ「わかりません。ですが、ことの真相は探るべきだと思っています。その結果によって進むべき道を選ばなくてはなりませんから」

カミラ「進むべき道?」

カムイ「はい、ですから私はお父様に話を聞きに行こうと思っています」

カミラ「待って、そんなことをしたら……」

カムイ「はい、わかっています。正直、命懸けであることは確かですから、その時は私一人で行かせてもらいますので」

カミラ「だめよ」

カムイ「そう言われても、私は――」

カミラ「早とちりしないで、私も一緒に行くと言ってるの。可愛い妹に一人でそんなことをさせるつもりはないわ。それに言ったでしょ、お姉ちゃんに頼りなさいって」

カムイ「いいんですか? 危険なことに変わりはありませんよ」

カミラ「もちろんよ、私の可愛いカムイのためだもの。それにレオンやエリーゼ、それにアクアのことも守らないといけない。正直、どうなるかはわからないけど、ここで引き下がるくらいなら私はみんなのお姉ちゃんをやめるつもりよ」

カムイ「……わかりました。それじゃ、頼りにさせてもらいますね。カミラ姉さん」

カミラ「ええ、任せて頂戴」

カムイ「一つ気になったのですが、マークス兄さんは守らなくてもいいのですか?」

カミラ「マークスお兄様は守られるのはあまり好きじゃないわ。それにお父様のことを一番尊敬してるから」

カムイ「いずれ、マークス兄さんにも話さなくてはいけない時が来るでしょう。その時まで待つしかありません」

カミラ「そうね」

 タタタタタタタタッ

カムイ「?」

サクラ「はぁ、はぁ、はぁ……」

カムイ「サクラさん? どうしたんですか、ま、まさか、カザハナさんに何か!?」

サクラ「い、いえ、違います!」

カミラ「あらあら、そんなに息を荒げてどうしたのかしら?」

サクラ「え、えっとその……」

カムイ「?」

サクラ「あの、カムイ姉様」

カムイ「はい、どうしましたかサクラさん?」

サクラ「……その、無理なお願いかも知れないんですけど――」

「私たちも姉様に付いて行ってもいいでしょうか?」

◆◆◆◆◆◆
―ミューズ公国・アミュージア―

ガロン「ふっ、到着したようだな。マークスここまでの護衛御苦労であった」

マークス「いいえ」

ガロン「さてマークスよ、ノートルディアの件、すでに解決していることだろう。今お前が戻る必要はない」

マークス「しかし、カムイ達の無事を――」

ガロン「マークスよ、しばらく、このアミュージアにて我の護衛に付け」

マークス「なにを!?」

ガンズ「それはいい、マークス王子も一緒となれば我々も心強いというもの!」

ゲパルトP「マークス王子の力添えがあれば、私たちも安心というものです」

ゲパルトS「兄さんの言う通りだよ。マークス王子がいれば心強いからね」

ガロン「みろ、皆お前がここに残ることに賛成している」

マークス「ですが、父上」

ガロン「カムイなら大丈夫だ。それともお前はカムイがこの程度で倒れ朽ちる人間だと思っている、そういうことか?」

マークス「そんなことは……」

ガロン「では、我の命令に従うがいい。お前がカムイを信じているというならばな」

マークス「……わかりました、父上」

ガロン「ふっ、では行くとしよう」

マークス「……」

マークス(父上)

(あなたには、一体何が見えているのですか……)

 今日はここまでで

 日付は変わったけど、アクアさん誕生日おめでとう。
 みんなでズンドコズンドコする誕生日会だったんじゃないかな。
 アクアと女カムイはどうして結婚できないのか……解せぬ

 次の展開に関しての安価を行いたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
・カムイと話をすることになるキャラクター

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ

 >>30>>31

・夜、カムイが部屋に呼ぶ人物
 ツバキ
 アシュラ
 スズカゼ

 >>32

 このような形でお願いいたします。

 

ルーナ

乙!
アクアも含めて、同性婚の候補は王族全員で良かった気がする……

アクアネキでお願いします!

アシュラ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディアに続く街道―

アクア「もうすぐ、ディアのようね」

カムイ「はい、問題なくここに来れたのはよかったです」

エリーゼ「うんそうだね、でもマクベスはどうしてサクラ王女たちの同行を許してくれたんだろ?」

カムイ「単純ですよ。マクベスさんには誰が狙われたのか、明確なことは言っていませんから」

エリーゼ「え、どういうこと?」

カミラ「単純な話よ。マクベスにはゾーラがレオンを襲ったとは伝えていないわ。謎の集団に襲われたとだけしか告げていない、そもそもゾーラがいたことさえもね」

カムイ「ゾーラさんのことを伝えるか考えましたが、かえって話がややこしくなりそうだったので。レオンさんのチャームの一件も、マクベスさんが取り除いてくれたようですから、レオンさんを狙う何者かが王国に潜伏している可能性を考えているのでしょう」

レオン「その言い方だと、まるでマクベスが僕のことを気にかけているみたいじゃないか?」

カムイ「それは気に掛けるでしょう。マークス兄さんとお父様がいないあの場所の責任を持つことになるのはマクベスさんですから。大きな問題は起きない方が賢明です」

レオン「なら、どうしてサクラ王女たちを僕達に同行させたんだい? 王国に残すと思うけどね」

カムイ「今、マクベスさんはレオンさんかそれともサクラさんが狙われたのかわかっていない状況です。レオンさんに関しては認識は変わっていないと思いますが、マクベスさんの中でサクラさんの興味はそれなりに上がっているはずですよ」

エリーゼ「サクラ、可哀そう」

カミラ「そうね、マクベスに目を付けられるなんて。おぞましいわ」

カムイ「二人とも言いたい放題ですね」

レオン「まぁ、マクベスだからね」

アクア「仕方ないわ」

カムイ「すでに多くの反乱が鎮圧された今、サクラさんという白夜の王族の価値は無いに等しい、そう思っていた矢先レオンさんの自宅が何者かに襲われた。その敵は誰だと思いますか?」

エリーゼ「うーん、普通に考えたら白夜の人たち?」

カムイ「正解ですよ、エリーゼさん」

エリーゼ「わーい、やったー」

カムイ「王国のしかも王族の自宅を襲撃するという出来事ですから、その印象もかなり強いものでしょう。結果として、今サクラさん達の利用価値が再熱しているというわけです」

レオン「でも、だからといって、サクラ王女たちを僕達に同行させるには理由が足りないよ」

カムイ「そこからは私の考えを少し加えさせてもらいました。まるでサクラ王女がそこにいるかのように警備を厳重にして、サクラ王女たちには別の場所にいてもらうという単純な案ですが、これはマクベスさんの考えている図式の中では最善手でしょう。なにせ、この計画の立案者は私なんですから」

レオン「……なるほどね。もしも何かあったとしても、カムイ姉さんがすべての罪を背負ってくれる。そういうわけだね」

カムイ「はい、マクベスさんにしては不祥事の助け船という感じで、いろいろと言い訳できそうな案を出させてもらいました。ですからマクベスさんには少しの間いなくなった犯人捜しをしていてもらいましょう」

アクア「カムイ、これからどうするつもりなの?」

カムイ「まずはお父様が向かったとされるミューズ公国に向かいます。ディアから船に乗って一気に向かうことにしますから」

アクア「そう……。その、カムイ」

カムイ「なんですか?」

アクア「傷はもう大丈夫なの」

カムイ「この前の傷はもう塞がったじゃないですか。アクアさんがギュっとしてくれていたからかもしれませんね」

アクア「……からかってるの?」

エリーゼ「アクアおねえちゃん、すごい顔してる」

カミラ「ええ、本当、初めて会った時から色々と顔を変えるようになったわね」

アクア「カミラも茶化さないで頂戴」

カミラ「ふふっ、ごめんなさい」

アクア「カムイ、何度も言うけど」

カムイ「わかっています。無茶はやめます。でも、アクアさんも無茶はしないでくださいね」

アクア「わかっているわ。あなたじゃないもの」

カムイ「手厳しいですね」

エリーゼ「あっ、見て見て、町が見えてきたよ。でもなんだか不思議な感じがする」

カミラ「そうね。王都に飛ばされちゃったから、なんだか不思議な気持ちになるわ」

カムイ「では、私は着いてすぐに兵の皆さんと話をしてきます。いろいろとありますから皆さんは自由にしててください」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・港街ディア『宿舎』―

カムイ「そういうわけですので、お手数ですがノートルディアに待機している方々に伝えていただけますか?」

暗夜兵「はい、わかりました。しかし、七重の塔からカムイ王女が戻られないと聞いて、私は……」

カムイ「心配を掛けたようです。でも大丈夫ですよ。ところで、マークス兄さんは? この町の防衛にあたっていたはずですが」

暗夜兵「はい、先日こちらにガロン王様がいらっしゃいまして……。カムイ様に何かあったかもしれないというのに、マークス王子を連れてミューズ公国に向かわれて」

カムイ「そうですか。すみませんがミューズ公国に向かうために船を一隻お借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」

暗夜兵「分かりました。ですが生憎今はノートルディアに船を出しておりまして、夕刻に一隻戻ってくる予定となっております。ですから、出立は明朝になるかと……」

カムイ「構いません。それにミューズ公国は思ったよりも近い距離にありますし、お父様に報告のために向かうようなものですから、あとの手続きは私の方が引き継ぎますので、あなたの仕事に戻ってください」

暗夜兵「それでは、失礼いたします」

 ガチャ バタン

カムイ「……お父様はマークス兄さんを連れていったということですか」

カムイ(駄目ですね。疑惑が浮かぶと何か嫌なものしか感じないというのは、また何かがうごめいていると思うと気が落ち着きませんね)

カムイ(はぁ、悪意を産む悪意ですか。終わらない負の連鎖に私は皆を巻き込んでいるだけなのかもしれませんね……)

 ガチャ

???「カムイ様、入るわよ」

カムイ「……」

???「……カムイ様?」

カムイ「……」

???「カムイ様!」

カムイ「えっ、あれ、ルーナさん? どうしましたか?」

ルーナ「どうしましたかじゃないでしょ? 兵士が出て行ったから話が終わったと思って、あたしがわざわざ来たって言うのに呆けてるなんて」

カムイ「すみません、全く気付きませんでした」

ルーナ「本当に大丈夫?」

カムイ「はい、いろいろと考えてばかりだからかもしれません」

ルーナ「あたしが言うのもあれだけど、少しカムイ様は気分転換した方がいい気がする」

カムイ「気分転換ですか?」

ルーナ「そっ、どうせ今日中にディアを出られるわけじゃないんでしょ?」

カムイ「そうですね。船は早くても明日と言われましたから、今日一日は皆さんにも休んでいただくべきでしょうね」

ルーナ「それにカムイ様自身も含めなさいって言ってるの。まったく、そうやっていつまでも糸を張り詰めてちゃ、身も心も持たないわ」

カムイ「……ふふっ」

ルーナ「な、なんで笑うわけ!?」

カムイ「ごめんなさい、なんだかおかしくなってしまって。ルーナさん、なんだかんだで面倒見のいい人ですよね」

ルーナ「ち、違うわよ。あ、あんたの調子が悪かったら、いろいろと今後苦労するかもしれないって、思っただけで」

カムイ「ふふっ、顔真っ赤にして可愛いですね」

ルーナ「赤くしてないわよ!///」

カムイ「でもそうですね……たしかに、いろいろと考え込みすぎていたのかもしれません。今回はすべてが後手後手でしたから」

ルーナ「はいはい、そういう辛気臭い話はやめよ。そうだ、カムイ様」

カムイ「はい、なんでしょうか?」

ルーナ「気分転換も兼ねて、あたしの買い物手伝ってよ、ね?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ルーナ「うーん、このマグカップも可愛いけど、やっぱりこの壺も安くていいわね」

カムイ「ルーナさん?」

ルーナ「なによ、カムイ様。今あたし選ぶので忙しいんだから」

カムイ「いえ、もうマグカップは十個目くらいなんですけど。それに壺って、水でも貯めるんですか?」

ルーナ「はぁ、そんなことに使うわけないでしょ? それにマグカップは色々と使い道があるんだから」

カムイ「使い道ですか?」

ルーナ「そうそう、たとえばドジなメイドの訓練用とかにね」

カムイ「……ふふっ、そういえばフェリシアさんと一緒にいることが結構ありますよね、ルーナさんは」

ルーナ「そういうこと、あたしの買ったマグカップ、ほとんど壊されちゃったわ。でもいいの、また買えばいいから」

カムイ「豪快な考えですね」

ルーナ「まあね、お金で買えるものはなんでも買いたいの。逆に買えないものはこんな風に扱えない」

カムイ「買えないものですか?」

ルーナ「そっ、思想とか決意とかそういうのもそうだけど、なにより人の命とかってお金じゃ買えない。いくらお金を積んだって帰ってくるものじゃないから」

カムイ「……ルーナさん」

ルーナ「カムイ様だってお金で買えないんだから、ちゃんと自分のことを考えた方がいいってこと。カムイ様が倒れたら、あたしたち居場所を無くしちゃうかもしれないから。だから、カムイ様も自分のこと大切にしなさいよね」

カムイ「そうですね。私はまだ倒れるわけにはいかないんですよね」

ルーナ「まだって何よ、いつか倒れるみたいないいかじゃない」

カムイ「それはそうですよ、生きてるんですから」

ルーナ「そういう意見は求めてないんだけど、少しは考えなさいよ」

カムイ「……あの、ルーナさん」

ルーナ「なに?」

カムイ「本当に心配してくれてるんですね」

ルーナ「当り前でしょ! って、あ……////」

カムイ「ふふっ、ありがとうございます」

ルーナ「ああ、もう、恥ずかしいわね、本当に」

カムイ「それにしてもノートルディアの件が解決したからでしょうか、前に来た時よりは人の気配が多くありますね」

ルーナ「……ねぇ、カムイ様」

カムイ「なんですか、ルーナさん」

ルーナ「あたしがエスコートしてあげるからさ、その……」

カムイ「?」

ルーナ「今の間だけあたしに全部任せてくれない? カムイ様のこと」

カムイ「……でも、それでは」

ルーナ「いいじゃん、力になるって言ったけど、こっちから頼む形だっていいじゃない? それとも、信用してない?」

カムイ「それは意地悪な返しですよ。その答えに私はそんなことありませんって返すしかないじゃないですか」

ルーナ「なら決まりね」

カムイ「……ふふ、それじゃそうさせてもらいます」

ルーナ「ええ、それじゃ握るわね。それじゃ、リラックスしていいわよ」

カムイ「はい……。世界がルーナさんだけになっちゃいました。久し振りですね、こんなに回りを見ないで過ごすのは、すこし怖い気もします」

ルーナ「安心しなさい。あたしがちゃんと連れてってあげるから」

カムイ「どこまで連れてってくれるんですか?」

ルーナ「そうね、まずは近場の洋服屋さんまで。次は、めぼしい場所にどんどん行くから」

カムイ「ふふっ、荷物の量もあるんですからちゃんと考えてくださいね?」

ルーナ「大丈夫、ちゃんと考えてるから。それじゃ行くわよ、カムイ様」

カムイ「ふふっ、わかりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―港町ディア・宿舎―

アクア「それで、こんなに物があるわけね」

カムイ「はい、ルーナさんの買い物ってすごいんですよ。安いものなら何でもって感じで、そのおかげで結局途中から私も持ち物運びの手伝いをすることになってしまいました」

アクア「結局休めてないじゃない」

カムイ「肉体的にはそうかもしれませんけど、精神的には結構休めましたよ。ずっと、難しいことを考え続けていたからかもしれませんから、ルーナさんに叱られてしまいました。自分のことも考えなさいって」

アクア「私も言っているつもりだったけど」

カムイ「はは、そうかもしれませんね。でも、なんだか久しぶりだったので、すこし緊張してました」

アクア「?」

カムイ「こうやって、あまり気配を探らないで誰かに手を持ってもらって歩いたのは、とても久しぶりだったんです。なんだか思い出すだけで少し照れくさく感じてしまうんですよ」

アクア「……そう」

 テトテトテト ポスッ

カムイ「どうかしましたか、アクアさん?」

アクア「なんでもないわ」

カムイ「いや、なんでもないなら、どうして私の隣に?」

アクア「気にしないで。そう、気にしないでいいわ」

カムイ「そうですか」

アクア「……」

カムイ「……ふふっ」

アクア「そんなにおかしかったかしら?」

カムイ「いいえ、違いますよ。こうして隣に座ってもらっていると、あの日のことを思い出して……」

アクア「…約束をしたこと?」

カムイ「はい、私の答えを隣で見てくれるって、アクアさんと約束したことです」

アクア「そうね、それほど時間が経っていないのに、昔のことみたいに感じるわ。あなたと白夜で出会って、私は白夜に残った。でも、行きついた先は暗夜の地で、再びあなたに出会ったのよね」

カムイ「ええ、ニュクスさんにアクアさんがお願いしたことで、私たちはもう一度めぐり合えたんですね」

アクア「その点は、ニュクスに感謝しないといけないわね」

カムイ「でも、約束のことが本当に昔のことだって思えたらいいんですけど、そういうわけにはいきませんよね」

アクア「……カムイ」

カムイ「すみません、アクアさんには隣で見ていてほしいと言っておきながら、こうやってその約束を昔のことだと思いたいだなんて」

アクア「そうかもしれないけど、今くらいは休んでもいいはずよ」

カムイ「どうしてですか」

アクア「だって、この約束は私とカムイの間だけの約束よ」

カムイ「……約束した本人の前で休むんですか?」

アクア「ええ」

カムイ「ふふっ、アクアさんはなんだか面白いことを言うんですね」

アクア「そんなことないわ。だって、悩み続けてあなたが倒れてしまったら、私はその答えを見ることができないもの」

カムイ「それもそうですね。ふふっ、すこし厄介な人と約束をしてしまったのかもしれませんね」

アクア「言ってくれるわね。でもいいわ、厄介でも構わないから」

カムイ「開き直られてしまっては、私も打つ手がありませんね。まったく、アクアさんは思ったよりも力技が好きな人ですよね」

アクア「ふふっ……困ったわね。否定しようと思ったけど、結構そうかもしれないわ」

カムイ「そうなんですか?」

アクア「今考えると、そうかもしれないわ。だって――」

 ポスッ

アクア「?」

カムイ「スゥスゥ……」

アクア「……本当に疲れていたのね。寝顔はなんだか子供みたいなのに、ずっとそうやって休み続けていられたらいいのに、あなたはそれを望まないんでしょう?」

カムイ「スゥスゥ」

アクア「私もそうかもしれないわ。だって、私はあなたの答えを見る以上に、あなたの道の支えになりたいって思っているんだから」

アクア(カムイ、もしかしたら私は、あなたが答えを見つける前に……)

アクア「……そうなっても、あなたは許してくれるかしら、カムイ……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―宿舎『一階ラウンジ』―

アシュラ「へぇ、白夜がそんなことになってるとはな。戦争で劣勢ってことは知っていたけど、まさかそこまで狂い始めてるなんてな」

スズカゼ「ええ、正直なところ。私も事実として受けとめたくはないことですが。あそこにいてはそれを認めないことの方が至難の業かもしれませんので」

アシュラ「そうか、戦争は狂気の集合体ってこともかもしれねえな。でもよかったのか? 俺はまだ素性もいまいちわかってねえ奴なんだぜ?」

スズカゼ「普通なら警戒するところですが、カムイ様が信頼された方ですので。あの人の人を見る目は確かですから、こうして話をさせていただきました」

アシュラ「なるほどな。なんだかんだで、カムイ様は皆をまとめられてるから大したもんだよ。しかし、カムイ様って目が見えないんだろ? どうやって人の顔を覚えてるんだ?」

スズカゼ「……」

アシュラ「なんで押し黙るんだよ?」

スズカゼ「いいえ、実は――」

 ゴーン ゴーン ゴーン

アシュラ「ん、もう時間か。続きを聞きたいところだけど、また今度になりそうだな」

スズカゼ「どちらかに向かわれるのですか?」

アシュラ「ああ、夜になったら来るように言われてな」

スズカゼ「そうですか、どちらの方から?」

アシュラ「ああ、カムイ様だよ」

スズカゼ「あっ」

アシュラ「ん、あってなんだ?」

スズカゼ「いいえ、なんでもありませんよ。私は一度哨戒に出ようと思います」

アシュラ「仕事気質だなあんたもよぉ」

スズカゼ「二度もカムイ様に救われた命ですから」

アシュラ「そうかい、それじゃ、俺はちょっくら、カムイ様に会いに行ってくるとするさ」

スズカゼ「はい、どうかお気をつけて」ヒュン

アシュラ「……なんで気をつけねえといけないんだ?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 コンコンコンッ

アシュラ「カムイ様、俺だ」

カムイ『アシュラさんですね。どうぞ、入ってください』

アシュラ「ああ、失礼させてもらうぜ」

 ガチャ バタン

カムイ「夜分にお呼び出ししてすみません、アシュラさん」

アシュラ「なに、気にすんな。それにカムイ様もなんだかんだで俺の素性が気になってはいるんだろう?」

カムイ「そうですが、まずはお礼を言わせてください。ノートルディアでアクアさんを助けてくれたこと、そして一緒に戦ってくれたことに」

アシュラ「いいさ。それにアクア様を助けたのは、あくまで俺に理由があってのことだ」

カムイ「理由ですか?」

アシュラ「ああ、まぁ、話せって言うんなら――」

カムイ「いいえ、無理に言うことではありませんから。アクアさんに対して敵意があるというわけではなさそうですので、それはいずれアクアさんに直に伝えてあげてください」

アシュラ「……本当に変わってるな。あんたは」

カムイ「そうでもないですよ」

アシュラ「それで、気になってるのは俺がどういった理由で助けに回ったのか、ってこところだろう?」

カムイ「はい、あなたはノートルディア襲撃犯の正体をフウマ公国と断定していました。それに彼らの技と戦術を熟知していたようですので」

アシュラ「……そうだな。こればっかりは言わせるんだろう?」

カムイ「はい、今後のこともあります。特にフウマに関しては色々と考えなくてはいけませんから」

アシュラ「……今の俺はしがない盗賊団の頭だよ」

カムイ「それより前はなんだったのですか?」

アシュラ「……コウガ公国っていう国があったことは知ってるかい?」

カムイ「いいえ、残念ですが」

アシュラ「俺はもともとそこの王家に仕える忍だった。王家に忠誠を誓って戦うことに誇りも感じてた。でもな、それをフウマが壊しちまったんだよ」

カムイ「……コウガを滅ぼしたというのですか?」

アシュラ「ああ、俺はそこから逃げてきた負け犬さ。そして、今じゃ盗賊ときた。転落人生まっしぐらっていってもいいだろうな」

カムイ「……」

アシュラ「だから、眼の前にフウマの野郎どもがいて我慢できなくなったんだよ。でも、そんな国にも命を掛けて仕えてる忍がいるってことを見てると、俺も命を掛けるべきだったのかもしれないって思わねえわけじゃない」

アシュラ「でも、結局逃げて来て、人から物を奪って命をつなぐコソ泥になっちまった。そう考えると国に忠誠を誓って戦って死んだあの野郎のほうが、ある意味真っ当な人生を歩んでるかもしれねえ」

カムイ「だったら、ここからアシュラさんの思う真っ当な道に向かってみませんか?」

アシュラ「今からか?」

カムイ「ええ、今からです。と言ってもアシュラさんにもアシュラさんなりに戦う理由があるでしょう。それを教えてくれませんか?」

アシュラ「……いいのかよ? 今から言う言葉は完全な暗夜の同盟関係に対する反逆発言だと思うぜ」

カムイ「構いませんよ。なにせ、あなたの独り言なんですから」

アシュラ「……本当にとぼけるのが得意だな」

カムイ「そうでしょうか?」

アシュラ「まぁ、そうだな。俺の目的は一つだけ、叶うんならフウマの公王に引導を渡してやりたいってことくらいだな。それで俺の怨みは終わる」

カムイ「……」

アシュラ「まぁ、これくらいさ」

カムイ「わかりました。色々と考えさせてもらいます。その夢が叶う様に」

アシュラ「……そうかい」

カムイ「それでアシュラさんは今後も私達についてこられますか?」

アシュラ「おいおい、独り言させてから聞くってのは、少しばかり卑怯ってもんだぜ?」

カムイ「ふふっ、何のことですか? それでアシュラさんはどうしますか、ここで私達から離脱しても何ら問題はありませんよ?」

アシュラ「はぁ、なんだかすげえ奴に手を貸しちまったが、まあいい最低でも夢が叶うまではいさせてもらうさ。よろしく頼むぜ」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

アシュラ(そういや結局、スズカゼは何に気をつけるように言ってたんだ? 確かに色々と食えない女だが、別段何かおかしいところがあるようには……)

アシュラ「まあいいか。それじゃ、俺はここらで――」

カムイ「ふふっ」

 ガチャン!

アシュラ「? 何で鍵を閉め……」

アシュラ(!? なんだ、このよくわからない雰囲気は!?)

カムイ「何を言ってるんですか、まだ終わってませんよ」

アシュラ「え、何が終わってないって」

カムイ「やっぱり仲間になってくれた人の顔は覚えたいので」ポキポキ

アシュラ「!?」

カムイ「初めての人を触るのは本当に久々ですから、なんだか指をほぐすのも楽しくなりますね。いつもよりいっぱいほぐしちゃいますよ」クニクニ

アシュラ(なんだあれ、めちゃくちゃほぐしてやが――はっ!)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

スズカゼ『あっ』

スズカゼ『どうかお気をつけて』

アシュラ(あいつが言ってたのはこのことか!?)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^

アシュラ「ちっ!」 ダッ

 シュオオオンッ

竜状態・カムイ『させません』

 ガシッ シュオンッ

アシュラ「りゅ、竜にもなれるのかよ」

カムイ「はい。ふふっ、捕まえましたよ、アシュラさん?」

アシュラ「な、何をする気だ?」

カムイ「大丈夫です。痛くしませんから、私の淫靡手に任せてください」

アシュラ「い、淫靡手って、ないをい、や、やめ――」

カムイ「ふふっ、それじゃ、アシュラさん、いっぱい触ってあげますから―――」

「アシュラさんの顔の形、私に教えてくださいね?」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアB+→B++
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC+
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリC+
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB+
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB→B+
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB
(返り討ちにあっています)
スズカゼC+
(イベントは起きていません)
アシュラC→C+
(イベントは起きていません)

 今日はここまでで

 はたしてアシュラは顔に性感帯はあるのか?

 そして最新のDLCが来るー! とりあえず待たせたと渡されたエリートの書の利用価値がやっぱりわからん。
 
 つまりDLCが来たってことは、可愛いリリスの出番が増えるってことですよね、わかってますから、もう2000円チャージしましたから。
 ……リリスの出番増えるんですよね(懇願)




 次の展開の安価を決めたいと思います。参加していただけると幸いです

◇◆◇◆◇
・カムイと話をすることになるキャラクター

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ

 >>54

・船で話をしてるキャラクターの組み合わせ
 
 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ

 >>55>>56

・船でカムイに呼ばれることになるキャラクター
 スズカゼ
 ツバキ

 >>57

シャーロッテ

乙 エルフィ
>>1は海外版の動画等を調べてたりする?
言ってることが結構違うから面白かった

レオン

スズカゼ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・暗夜海域―

アシュラ「……はぁ」

スズカゼ「おや、アシュラさん。とてもお疲れのようですね」

アシュラ「おい、スズカゼ」

スズカゼ「はい、なんでしょうか?」

アシュラ「お前、なんであの時教えなかった?」

スズカゼ「さて、何のことでしょうか?」

アシュラ「とぼけるんじゃねえよ。カムイ様のことだ」

スズカゼ「ああ、そういうことでしたか。いえ、楽しみを奪ってはいけないと思いまして」

アシュラ「楽しみとかじゃねえよ。この歳で、ささやかれながら顔を触られるなんて思ってもいなかったんだからよ」

スズカゼ「そうですか、でも久々に良い体験ができたと思いますよ」

アシュラ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「んっ、アシュラさん、思ったよりも顎が角ばっているんですね……。ふふっ、彫りも深くて渋いお顔なんでしょうね?」

アシュラ「あっ、ぐくっ、カムイ様」

カムイ「火照ってますよ?」

アシュラ「恥ずかしいからに決まってるだろ!?」

カムイ「どうして恥ずかしいんですか、こうやって顔を触られることくらいあると思いますけど」

アシュラ「お、女に触られるのは久しぶりなんだよ」

カムイ「そうなんですか。ふふっ、ではどうですか、久しぶりに女性の手に触れられて。あっ、ちょっと、うれしそうですね」

アシュラ「そ、そんなことは……」

カムイ「ふふっ、結構アシュラさんは恥ずかしいことがあるとお顔に出るんですね。口元が気持ちよさそうにピクピクってしてますし、やっぱり触れてるとわかります」

アシュラ「?」

カムイ「アシュラさんは、久し振りに人に触られて感じてるって……」

アシュラ「うっ……///」

カムイ「ふふっ、気まずそうにしてるんですか?」

アシュラ「目が見えないのに、どうしてわかんだよ」

カムイ「そういうものだということですよ。ふふっ、アシュラさんの顔、大体わかってきましたよ」

アシュラ「そうかい、なら、もうこれで終わりにしていいだろ?」

カムイ「……はい。でも、ここはまだ触ってませんよね?」ツゥー

アシュラ「え……んぐっ!」

カムイ「ふふ」ニヤッ

アシュラ(な、なんて声をあげてるんだ俺は!? でも、なんだ今の、一体どこを触られて――)

 ピトッ シュッシュッシュ

アシュラ「あっ、ぐぐっ、んんっ!」

カムイ「アシュラさんはここが感じちゃう人なんですね。ふふっ、喉仏を扱くとドクドクって喉が返事を返してくれます」

アシュラ「ぐっ、こ、これは、だめだ、カムイ様」

カムイ「なにがダメなんですか? こんなに喉仏が興奮してるのに、なにがダメなんですか?」

アシュラ「くあっっっ」

カムイ「ふふっ、もっといっぱい扱いてほしいですか? アシュラさんのお顔の気持ち良いところ……」

アシュラ「ふぐぅあ」

カムイ「可愛いですよ、アシュラさん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アシュラ「思い出しただけでも顔が赤くなって仕方ねえ」

スズカゼ「そうですか。色々と触られてしまったようですね?」

アシュラ「ああ、知りたくもねえ自分の感じる場所を見せつけられたからな」

スズカゼ「ですが、アシュラさんは個室ですよね?」

アシュラ「ああ、っていうかあれを人目でとかはさすがに勘弁だ」

スズカゼ「ちなみに私は人のいる前で探られました」

アシュラ「そうか……」

スズカゼ「ええ、見られながらというのも中々に恥ずかしいものですよ」

アシュラ「俺なら腹を切るか迷うかもしれねえな」

アシュラ「……」サスサス

アシュラ(やっぱり自分で触っても気持ち良くなんてならねえな)

スズカゼ「……ふっ」

アシュラ「な、なんだ? 何か言いたいことでもあんのか?」

スズカゼ「いいえ、アシュラさんはのどが弱点のようですから」

アシュラ「こ、これはだな……」

スズカゼ「わからないわけはありませんよ。あの触られる感覚を思い出したいというのは。しかし、自分で触っても全く何も感じないものなんですよね」

アシュラ「……たしかにな」

スズカゼ「アシュラさんの弱点は喉で間違いない、そういうことですね」

アシュラ「てめ、嵌めやがったな……」

スズカゼ「ふふっ、忍者は情報戦にもそれなりに長けていないといけませんのでね」

アシュラ「けっ」

スズカゼ「しばらくは海を眺めて過ごしてください、それでは失礼しますねアシュラさん」

アシュラ「……ちょっと待ちな」

スズカゼ「なんでしょうか?」

アシュラ「言い忘れてたことがあった、おまえさん昼過ぎになったら、部屋に来るようにだとよ」

スズカゼ「あなたの部屋にですか?」

アシュラ「ちげえよ」

スズカゼ「では……一体」

アシュラ「カムイ様のだよ」

スズカゼ「……」

アシュラ「以上、俺は海でも眺めてるからよ……まっ、がんばんな」

スズカゼ「そうさせてもらいます」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―ミューズ行きの船『前部甲板』―

エルフィ「……」

エルフィ「……」ググッ

エルフィ「……どうしよう」

レオン「サクラ王女のことはエリーゼに任せておけばいいとして……ん?」

エルフィ「……あっ、レオン様」

レオン「……やぁ、エルフィ」

エルフィ「……風が気持ちいいですね。戦いに行くという理由以外で船に乗るのは久しぶりですから、いいものですね」

レオン「そうだね……ところで、エルフィ」

エルフィ「はい、なんでしょうか?」

レオン「なぜ、そんな階段から顔を出しているだけの状態になっているんだ?」

エルフィ「……鎧が引っ掛かって通れないんです」

レオン「なんで、こんな時まで鎧なんて着てるんだ」

エルフィ「何時でもエリーゼ様をお守りできるようにです」

レオン「ここで突っかかってたら守れないじゃないか」

エルフィ「……そうですね」

レオン「そもそも登れないのに、どうやって船室に入ったって言うんだ?」

エルフィ「後部甲板に大きな荷物を入れるための場所があったので。そこから入らせていただきました」


レオン「エルフィの姿が見えないって、エリーゼが少し慌ててたのはそのためみたいだね」

エルフィ「はい、それで先ほど、サクラ王女と歩いてるエリーゼ様を見かけたので、追いかけたのですが」

レオン「少しだけ船が揺れたような気もするけど」

エルフィ「歩くと遅いから転がりながら追いかけました。安心してください、誰も巻き込んでませんから」

レオン「……なにからツッコメばいいのかわからないけど、とりあえずその鎧をどうにかしたらどうだい?」

エルフィ「……いえ、やはりまだ職務中ですから」ググッ メキメキッ

レオン「うん、わかったから無理やり通って段を破壊しようとするのはやめようか?」

エルフィ「……エリーゼ様に追いつけなくなってしまいます」

レオン「大丈夫だよ。それにエリーゼのことを一番見ていてくれてるのはエルフィ、君だろう? たぶん、サクラ王女と一緒に君のことを探しているんだと思うよ」

エルフィ「そうなんですか?」

レオン「ああ、それに今さっきエリーゼがサクラ王女を探しに来た時も、君のことを口にしていたからね」

エルフィ「エリーゼ……あ、すみません」

レオン「どうしたんだい、何か謝るところでもあったのかい?」

エルフィ「いつもの癖で、エリーゼと呼んでしまったので」

レオン「別に構わないよ」

エルフィ「でも今は職務の最中ですから」

レオン「……気にしないでいい。それにエリーゼは子供っぽいからそんなこと気にしないだろうしね」

エルフィ「……ふふっ」

レオン「なんだい、いきなり笑って……」

エルフィ「いいえ、レオン様はエリーゼの言っている通りの方だと思って。変なところで優しいってよく言ってますから」

レオン「……エリーゼ、言ってくれるじゃないか。あいつはいつもそうだ、何かわからないことがあったよく僕に聞いてくる。自分で考えてもいいと思うんだけどね」

エルフィ「ふふっ、エリーゼは人懐っこいですから、レオン様への愛情表現だと思いますよ」

レオン「はぁ、歩く辞書のように思われてるだけかもしれないけどね」

エルフィ「一緒に優しさも持ってますよ?」

レオン「からかうのは感心しないよ」

エルフィ「いいえ、だって、こんな風に私の話を聞いてくれてますから。それにレオン様がいなかったら、たぶんここの階段は破損してたと思います」

レオン「そうならなかったのを優しさって言うのは少し無理がある気がするけどね」

エルフィ「そうですか?」

レオン「はぁ、エリーゼの親友だけあるよエルフィは、僕は振り回されてばかりだ」

エルフィ「レオン様はどちらかと言うと振り回される立場にいるような気が」

レオン「それ、どういう意味かな?」

エルフィ「えっと……ごめんなさい」

レオン「まぁいいよ、それじゃ一度下に降りて、君が上がれそうな階段を一緒に探してあげるから」

エルフィ「いいんですか?」

レオン「ああ」

レオン(それに見ていなかったら通れそうもない階段をまた登りそうだからね……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―船『後部甲板』―

カムイ「今日の夕刻にはミューズ公国に到着できそうですね」

カムイ(到着したらすぐにお父様にお会いしないといけませんが、話してくれるとは思えませんね。いろいろと危険な交渉になると考えた方がいいかもしれません)

カムイ「こうなる可能性があるなら、皆さんに残ってもらうべきだったかもしれません」

シャーロッテ「そんなことしても、みんな付いて来ると思うけど?」

カムイ「! シャーロッテさん?」

シャーロッテ「となり失礼するわ。たくっ、いい男が全然乗ってないわ」

カムイ「さすがに急に準備してもらった船ですから」

シャーロッテ「はいはい。かわりに向こうで物色させてらう予定だから別に構わないけど」

カムイ「ふふっ、いつもどおりですね」

シャーロッテ「立ち直りが早いのが取り柄だから。新しい男を見つけるのと同じ、どんどん切り替えていかないとね」

カムイ「たくましいですね、シャーロッテさんは」

シャーロッテ「女性に向かって逞しいって言うのはどうなのよ?」

カムイ「たしかにそうですね、ごめんなさい」

シャーロッテ「まったく……。話を戻すけど、みんなあんたを守るために後を追いかけるに決まってる。それくらい、みんなあんたのこと信じてるんだから」

カムイ「……そうでしょうか?」

シャーロッテ「そうよ。それに私としてはお金持ちとのパイプを失うわけにはいかないからね」

カムイ「……私よりもいいパイプはあるかもしれませんよ?」

シャーロッテ「王族の王女よりもいいパイプってなによ?」

カムイ「そうですね、マクベスさんとかガンズさんとかどうですか。いろいろと顔は広いですよ?」

シャーロッテ「中々に煽りの効いたチョイスだな、おい」

カムイ「ふふっ」

シャーロッテ「はぁ、いつもどおりで安心したわ」

カムイ「……全部竜石が肩代わりしてくれてますから」

シャーロッテ「まったく、調子いいわね。でも、みんながあんたのことちゃんと信頼してるのは間違いないから」

カムイ「……どうしてそんなに強く言いきれるんですか?」

シャーロッテ「……正直、今の状況だけでもカムイ様のことを信頼できない人は、もうこの隊列からいなくなってるはずだから」

カムイ「……」

シャーロッテ「王様から遠まわしに邪魔だと言われてるようにノートルディアに向かわされて、次には正当防衛とはいえど王宮の魔法使いを一人殺してる。そして、マクベスには嘘も吐いて捕虜の所有権を勝ち取ったりとか。これ、普通なら方針を疑って離反してる奴がいても不思議じゃないから」

カムイ「……それは」

シャーロッテ「自覚しなさいよ。もしかしたら、まだ人は増えるかもしれないけどさ。今ここにいるみんなはあんたのこと、ちゃんと信頼して命張って付いて来てるんだからさ」

カムイ「シャーロッテさん、なんだか男らしいですよね」

シャーロッテ「だからさ、それ褒めてないから。もっと、可愛いですねぇとか~そういうのでお願いしますぅ。きゃは」

カムイ「可愛いですよ。特にここらへんとか」ムニュ

シャーロッテ「ひんっ! ちょ、ここ甲板だから、人の目ある場所だから!」

カムイ「いいえ、こんなに助言してもらったんですから。いっぱいお礼したいんですよ」

シャーロッテ「やっ、腰に手、まわさ……ふぁぁああん」

カムイ「波の音よりよく聞こえますよ。シャーロッテさんの声」

シャーロッテ「んあっ……」

カムイ「お凸、ふふっ、汗、ちょっと出てきちゃいましたか?」

シャーロッテ「て、てめ、さわ――」
 
ピトッ

シャーロッテ「――――っ!!!!!!!!!」

カムイ「ふふっ、顔がとっても熱いですよ。耳まで、真っ赤になってるんじゃないですか」フニフニ

シャーロッテ「んやっ、んんんっ」

カムイ「やっぱり、とっても熱くなってます。シャーロッテさん、とっても可愛い」

シャーロッテ「やっ、やめ、やめっ……やめろつってんだろうがぁぁぁ!!!!」バッ!

タタタタタタッ

カムイ「あっ……もっと、お礼させてくださいよ」

シャーロッテ「この色情狂、パイタッチ女が! 王族がこんなんじゃ、暗夜王国もどうなるかわかったもんじゃねえよ!」

カムイ「その言い方じゃ、私以外のみんなもおかしいってことになっちゃうじゃないですか!」

シャーロッテ「それ、カムイ様の所為なんで」

カムイ「なんでですか?」

シャーロッテ「自分の胸に聞けっての!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

―船『カムイの部屋』―

 コンコン

スズカゼ「カムイ様、スズカゼです」

カムイ「スズカゼさんですか、どうぞ入ってください」

スズカゼ「失礼いたします」

 ガチャ

カムイ「すみません、ゆっくりしていたところをお呼び出しして」

スズカゼ「いいえ、それよりもアシュラさんとは共闘関係を築けたということですね」

カムイ「はい、アシュラさんにスズカゼさんへ伝言を頼んだのですが、どうやらお二人とも既に話し合う仲だったんですね。あいつかって、アシュラさんが零してましたから」

スズカゼ「はは、そうですか」

カムイ「帰り際に、スズカゼさんのことでぶつくさと言っていましたよ。何かあったんですか?」

スズカゼ(なるほど、教えなかったことで色々と苦労されたみたいですね、アシュラさんは……)

カムイ「アシュラさんとスズカゼさん、こんなに早く打ち解けているのは、やはり同業者だからでしょうか?」

スズカゼ「そうかもしれませんね。それに、あの方もカムイ様にお仕えすることを悪く思っているわけではないようですから」

カムイ「そうですか、スズカゼさんがそう言ってくれるなら大丈夫ですね」

スズカゼ「それで、私を呼んだのは?」

カムイ「……聞きたいことがありましたので」

スズカゼ「聞きたいことですか?」

カムイ「はい、リョウマさんはあの戦いの後、どうしようとしていたのか……ということです」

スズカゼ「……私の憶測でよろしければ」

カムイ「構いません」

スズカゼ「………カムイ様を連れて帰らないと決める前から、リョウマ様は白夜のことを考えていたと思います」

カムイ「白夜のことですか」

スズカゼ「はい、現在の白夜の情勢はわかりません。ですが、私が知る限り王族の権限はすでに形にもなっていませんので」

カムイ「そうですか」

スズカゼ「またシュヴァリエの反乱が失敗に終わったことで、リョウマ様の求心力も下がっていると思われます」

カムイ「……まったく援護もなかった、目に見えた失敗の反乱の結果だとしてもですか?」

スズカゼ「ここだけの話ですが、リョウマ様は援護の重要性を説いていました。しかし、国にリョウマ様がいない間、仕切っていたのは好戦家でしたので」

カムイ「……その者たちにリョウマさんは裏切られたも同然の形ではないですか」

スズカゼ「はい、……それにリョウマ様の存在を疎ましく思っている者もいます。中には、采配を振るわぬリョウマ様は売国奴だと陰で囁く者たちも」

カムイ「……」

スズカゼ「……多分、今リョウマ様の立場は王国の現最高権力者と呼ぶことは難しいものとなっていると思われます。最悪の場合、ユキムラ様と同じように幽閉されている可能性も否定できません」

カムイ「……そうですか」

スズカゼ「リョウマ様は民のことを考えておられました。混乱を抑えるために、反逆者の烙印を受けた非戦闘民を送り出してしまったことを悔やんでおられましたから、リョウマ様が残った白夜の民を犠牲にするような選択をすることはないと思います」

カムイ「民あっての国、というわけですね」

スズカゼ「はい。もしもあの時、カムイ様がリョウマ様の求める人であったなら、今あなたは白夜でリョウマ様と歩んでいたのかもしれません」

カムイ「……そうかもしれませんね。ですが、それを求めて歩む私はここにはいません」

スズカゼ「そうでしたね。申し訳ありません、出すぎた発言でした」

カムイ「いいえ、気にしないでください。それにスズカゼさんもできれば話したくないことでしょうから」

スズカゼ「……カムイ様は今回の件をどう考えていらっしゃるのですか?」

カムイ「ぱっと見ただけではお父様が私を嵌めようとしていると見えますが、実際この事柄は悪意を産むためだけの工程なのかもしれません」

スズカゼ「悪意を生み出す工程ですか?」

カムイ「はい。これは憶測でしかありません。それにここまで采配できるとなると、相手は預言者の類としか思えません」

スズカゼ「世界を悪意で満たそうとする預言者ですか、相手にしたくないものですね」

カムイ「そうですね。すみません呼び出してしまって、話は以上です」

スズカゼ「そうですか、わかりました」

カムイ「……」

スズカゼ「……」

カムイ「……?」

スズカゼ「……」

カムイ「えっと、スズカゼさん。お話は終わりましたよ?」

スズカゼ「はい、そうですね」

カムイ「もう、戻っていただいても大丈夫ですよ?」

スズカゼ「えっ?」

カムイ「えっ?」

スズカゼ「……本当に何もないのですか?」

カムイ「そうですけど。どうしたんですか、スズカゼさん」

スズカゼ「いえ、その……」

カムイ「?」

スズカゼ「な、なんでもありません。それでは、失礼します」

カムイ「……もしかして、触られる、そう思ったんですか?」

スズカゼ「いえ、そんなことは」

カムイ「ふふっ、なんだかんだで、スズカゼさんは好きものなんですね」ピトッ

スズカゼ「っ!」

カムイ「動かないでください、後ろから少しだけ触ってあげますから……」

スズカゼ「……か、カムイ様」

カムイ「ふふっ、スズカゼさんの耳、先がとっても感じるんですよね?」クニフニ

スズカゼ「かっ、んぐっ、ふくっ」

カムイ「女性にこんな風に責められてるのに、なんだかスズカゼさん、とっても嬉しそうですね。もしかして、そういう趣味なんですか?」

スズカゼ「これは、ち、ちがいます」

カムイ「そうですか、なら、もっと触っても大丈夫ですよね?」

スズカゼ「……そ、それは」

カムイ「ふふっ、スズカゼさんの気持ちのいい場所、もう私の指が触れるだけでフルフル震えてますよ」

スズカゼ「はっ、くっ、うああっ」

カムイ「ふふっ、それじゃしてもらえると思ってたスズカゼさんに」

「たっぷりとして差し上げますから、ね?」

◆◆◆◆◆◆
―ミューズ公国・アミュージア付近の森林―

 ガサガサ ガサガサ ザッ

???「あれ、おかしいな。こっちであってたと思ったのに、それじゃ向こうか?」

 ガサササッ ガササササッ バッ

???「マジかよ、こんなところで迷子とかどうしたらいいんだ? 峰に帰ろうにもここがどこかもわかんねえし」

???「なんか、目印になるものは……ねえか。これじゃ何時まで経っても帰れねえな。とりあえず、適当に飯でも手に入れて……ん?」

???「なんか向こうが明るいな。明るいってことは誰かいるってことだよな」

???「よし、とりあえず、誰かに道を聞いてみるしかねえな。適当に聞いてれば誰かしらが教えてくれるはずだし、それにここで一人野宿っていうのはなぁ」

???「さてと、とりあえずあそこに行くことにすっか」

「それに、あとのことはあそこに着いてからでも、別に構わねえしな」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアB++
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC+
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリC+
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB+
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB+
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB→B+
(返り討ちにあっています)
スズカゼC+→B
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

海外版は見たことないんですが、いろいろと変わってるのか。
何が変わってるのか気になるなぁ

次にやる番外を考えています。
フォレオ×エポニーヌとか、ミタマ×ディーアとか、かむいとまきゅべすとか。
番外今まで重いのが多かったので、軽いのにしたいなと思う。

◆◆◆◆◆◆
―ミューズ公国・アミュージアの港―

カムイ「どうにか夜までには間に合いましたね」

アクア「ええ、そうね。とりあえずはどこを目指すべきなのかしら?」

レオン「そうだね、いつも父上が利用している別荘があるから、まずはそこに向かうことにしよう」

エリーゼ「あー、見て見てあそこの人とってもきれいな服着てる!」

カミラ「あれは踊り子の衣装ね。よくデモンストレーションで広場を歩くことがあるから、その宣伝かもしれないわ」

カムイ「そうなんですか、どんな衣装なのか見れないのが残念ですね」

アクア「カムイ……」

カムイ「アクアさんが気に掛けることじゃありませんよ」

エリーゼ「でもすごく色っぽいよね、お臍も出してるし、うーん、あたしもあんな風になれるのかな?」

カムイ「ふふっ、エリーゼがそんな格好を始めたら、エルフィさんが黙ってなさそうですけどね。でも、色っぽさよりも力強さがウリな人がうちにはいますよね」

カミラ「……そうね」チラッ

リンカ「カ、カミラ、なんであたしを見るんだ!」

カミラ「……そういえばリンカはずっとその格好だけど寒くないの?」

リンカ「あたしは炎の部族の人間だ。こんな寒さ、故郷に比べたら何でもないさ」

カミラ「そう。でも、カムイの言うとおり色気というより、漢って感じがするわね」ジィー

リンカ「なっ、どこを見ながら言っているんだ!」

エリーゼ「リンカ強そう……。でもあたし腹筋ほしくないかな。だって、可愛くないんだもん」

リンカ「ふっ、カワイイと言われるために鍛錬を積んでるわけじゃないからな。これはあたしの強さの証みたいな――」

カムイ「でも、リンカさんもカワイイところありますよ。少しだけ肩を貸してくれないかって、頼ってくれたときはすごく可愛かったですよ?」

リンカ「な、何言ってるんだ! か、からかうのはやめろ/////」

カミラ「それに恥ずかしいって思った時はすぐに真っ赤になるのも可愛いわ。ふふっ、抱きしめてあげたくなるくらいよ」

エリーゼ「ほんとだー、トマトみたいに真っ赤になってる~」

アクア「そうね、意地を張ってしまうところとかも、可愛いリンカの一面だもの」

リンカ「可愛い可愛いって、あたしは――」

カムイ「……リンカワイイ」ボソッ

リンカ「!?」

アクア「リンカワイイ、リンカワイイ」

リンカ「なっ、アクアまでなにを」

エリーゼ「えへへ~、リンカワイイ!」

カミラ「ふふっ、リンカワイイ」

リンカ「……お、お前らいい加減に!」

『リンカワイイ、リンカワイイ、リンカワイイ』

リンカ「……」

リンカ「……////」

リンカ「/////////」プルプルプルプル

リンカ(もう、や、やめてくれ……)

レオン「馬鹿なことやってないで、早く行くよ。父上と一緒にマークス兄さんもいるはずだからね」

カムイ「そうですね。それにまだ宿泊施設を見つけているわけではありませんから、その点も交渉してみることにしましょう」

エリーゼ「ふかふかのお布団があるといいなぁ。そうだ、あたしサクラと一緒の部屋がいい! いっぱいお話したいから」

カムイ「ふふっ、わかりました。でも、お父様に理解していただかないといけませんから」

エリーゼ「そ、そうだよね。ごめん……」

カミラ「……ともかく、早く別荘に向かいましょう? ここで待っていても時間がすぎるだけだもの」

カムイ「はい、それでは皆さん行くとしましょうか。リンカさんも、そこで赤くなるのは一度おしまいにしてください」

リンカ「だ、誰の所為でこんなになってると思って――ん?」

エリーゼ「? リンカ、どうしたのー?」

リンカ「いや、誰かに見られていたような気がして……」

カミラ「それはそうよ。あれだけ盛り上がって、しかもリンカはカワイイもの」

リンカ「カミラ、それ以上言うと容赦しないぞ」

カミラ「あら怖い」

リンカ(気の所為……か?)

タタタタタタッ

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア郊外・別荘『マークスの部屋』―

マークス「……私はここで何をやっているのだ」

マークス(いや、父上から護衛を頼まれている以上、それに従うことに間違いはない。だが、せめてカムイの無事を確かめてからでも遅くはなかったはずだ)

マークス「……いかん。父上にも何か考えがあってこうしているはずだ。私はそれについて行けばいい、それを父上も望まれている。昔からそうだったではないか」

マークス(……少し素振りでもするか。疲れているから、こう疑問が浮かんでしまうのやもしれん)
 
マークス「よし」

 チャキッ
 
マークス「はっ!」ブンッ

マークス「ふんっ!」ブンッ

 ブンッ ブンッ ブンッ

マークス(……カムイ、お前は無事なのか?)

 コンコンコン

マークス「誰だ?」

暗夜兵「夜分に失礼いたします、マークス王子。警備の者です」

マークス「どうした?」

暗夜兵「はい、賊と思われるものが敷地内に入り込んだ次第で……」

 ガチャ

マークス「賊?」

暗夜兵「はい、その色々と手を焼いていまして、それにこのままでは尋問している者が先に何かしかねないので」

マークス「わかった、案内を頼む」

暗夜兵「わかりました、こちらです」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

???「だから言ってんじゃんか、間違って入り込んだだけだって。それより、その肉うまそうだな、俺にも分けてくれよ。ちょっとだけでいいから」

暗夜兵「うるさい。貴様、ここがガロン王様の――」

???「だから知らなかったって言ってんだろ。俺だって、別に入り込みたくて入ったわけじゃねえし」

暗夜兵「そんなことを言っていながら、本当は――」

???「そもそも、ガロン王様って誰だよ。俺そんな奴知らねえし」

暗夜兵「貴様、我らが暗夜の王、ガロン王様を侮辱するのか!」

暗夜兵『こちらの部屋です』

マークス『わかった、お前は警備に戻れ』

 ガチャ

マークス「何事だ?」

暗夜兵「マークス王子、すみません御休息のところお呼びしまして」

マークス「別に構わん。父上もガンズたちも外に出ている最中、ここの責任は私にある。賊が侵入したと聞いたが」

暗夜兵「はい、あちらがその賊です」

???「ん?」

マークス「……これは」

???「な、なんだよ」

マークス「……珍しいこともあるものだ。このような人里にガルーがいるとはな」

暗夜兵「ガルー? ガルーと言えばカイエン峰に住むという獣人の!?」

マークス「ああ、しかし、人里に下りてくることは滅多にないらしい。こいつはとんだ変わり者ということだろう」

暗夜兵「いえ、マークス王子。ガルーといってももしかしたら何者かに手なずけられている者かもしれません、ここは……」

???「だからちげーって言ってるだろ。うう、正直もう腹が減って死にそうなんだよ。そこの干し肉少しくれよ」

暗夜兵「まだ自分の立場がわかっていないのか、この!」グッ

???「……」ニヤッ

 ガシッ

???「?」

暗夜兵「! マークス王子」

マークス「慎め、騎士としての誇りがあるならな」

暗夜兵「しかし、こいつの態度。我々を侮辱しているとしか!」

マークス「そうかもしれん。だが、もともと国を持たない獣人。文明と文化を持つ我々が、先に手を出してどうする?」

暗夜兵「……ですが!」

マークス「この者の所持品は?」

暗夜兵「それが蝙蝠の死骸や毛玉、それに割れた皿や石のようなものがあるだけで、これと言ったものは何もありませんでした」

暗夜兵「マークス王子、だとしても、こいつはガロン王様を侮辱しました。容赦することは――」

 ドゴッ

マークス「少し落ち着く必要がありそうだな?」

暗夜兵「ぐほっ……」ドサッ

マークス「この者の尋問は私が引き受ける。お前はその男を営倉にぶち込んでおけ」

暗夜兵「わかりました、マークス王子」

 ズッ
 
 ズズッ

 ズズズッ

暗夜兵「それでは後のことはよろしくお願いいたします」

 ガチャ バタン

???「……」

マークス「……今止めていなければ、あの兵士を攻撃していただろう?」

???「ああ、さすがに攻撃されたら黙ってられねえからよ。それに俺が戻らなかったら色々とみんなに迷惑かけちまうしな、ここで死ぬ気なんてさらさらねえ」

マークス「そうか。つまりこの石がなくても人を殺すのは容易いということだな」

???「……なんだよ、ばれてたのかよ。もしも戦いになったら石拾ってだだーんって変身してやろうかと思ってたんだ。目の前で俺が変身したら、あのおっさん顔真っ青にしたんじゃねえかな? ガクガク震えてさ」

マークス「ふっ、たしかにお前がいきなり姿を変えれば、あいつは数秒の間動けずにいたことだろう。その間に私がお前を斬り殺していたかもしれんがな」

???「すげえ自信だな、あんた」

マークス「自信なくして剣を振るうことはできない。ただそれだけのことだ」

???「で、早く俺を開放してくれよ。ただ迷い込んだだけなんだって、別にそのガロン王様だっけ? そいつを狙ってるとか、そんなんじゃねえからさ」

マークス「お前の言っていることは間違いではないだろうが、そういうわけにはいかん。たとえどんなことであろうとも、報告をしなくてはいけないからな」

???「報告はそっちの事情だろ、俺には関係ねえよ」

マークス「こちらにはこちらのルールがある。今ここはお前たちの住む共同体の中ではない。ここにいる以上、こちらのルールに従ってもらうのが筋というものだ」

???「融通利かねえ、あんた頑固だな」

マークス「そうだな。しかし、残念だ。質問に答えるならば、そこの干し肉をくれてやろうと思ったのだが」

???「えっ……」フルフルフル

マークス(尻尾を揺らしている。なんとも単純なやつだ)

???「べ、別に欲しくねえし。誰がそんなもの食べたいって言うかよ」

マークス「そうか……」

???「でもよ、食べてもらいたいってんなら、もらっても――」

マークス「いや、食べたくないというのならそれでいい。このまま尋問に移らせてもらう」

???「……ぐっ、……く、くれ」

マークス「む、なんだ? 何か言ったか?」

???「だぁああああ、くれ、くれったらくれ、いや、むしろください! 森の中ずっと歩きっぱなしで、腹が減り過ぎてるんだよ」

マークス「そうか、では私の尋問にちゃんと答えてくれるということでいいか?」

???「答えてやる! いえ、答えます、むしろ喜んで!」

マークス「そうか、それでは尋問に移るが、質問に答える度に干し肉を一つずつ渡すことにしよう、それでいいか?」

???「どうでもいい、どうでもいいから、早く尋問始めてくれ、もう我慢できないんだよぉ!」

マークス「わかった。協力的で助かるぞ。では、始めるにあたって一つ目を進呈しよう」ガシッ

???「ハッ、ハッ、ハッ」

マークス(……ガルーは種類的には狼だと聞いているが、これはどちらかと言うと犬の類だな)

???「は、早くくれよ。ここでおあずけなんていう生き地獄は勘弁だからな……」

マークス「そうだな」ポイッ

???「はむっ、がつがつ、くぅ~、空っぽの胃袋に沁み入る肉の味、うめえええええ」

マークス「……ふっ、あまり私は好きではないのだが。気に入ったようでなによりだ」

???「はぁ~うまかった。それで何から聞きたいんだよ? ちゃんと答えるぜ」

マークス「そうだな。まずはお前の名前から聞かせてもらおうか?」

???「名前か、たしかに何も言ってなかったしな、ずっとお前呼びされるものなんか癪だし」

フランネル「俺はフランネルってんだ。ささ、質問に答えたんだからさっさと次の干し肉、渡してくれよ」

マークス「そうか、ではフランネル。約束の干し肉だ」ポイ

フランネル「ワオォォン!」ハムッ

マークス(……父上ならば即座に切り捨てたのだろうか? それを出来ない私は、やはり父上のようにはなれないということなのだろうか……)

フランネル「ん? なんか怖い顔してんな」

マークス「よく言われることだ。なれているさ」

フランネル「そうか、なら笑えばいいじゃん、こうやってさ」ニカッ

マークス「ふっ、なるほどな。では参考にさせてもらうとしよう」

フランネル「参考にって、いや、べつに嬉しくなんてねえからな」フリフリフリ

マークス「色々と忙しいやつだ。尻尾を振りながら、否定をするというのは中々に見ていて面白いぞ」

フランエル「いや、これはちげえから、尻尾が運動したがってるだけだからな」バシバシバシ

マークス「そういうことにしておこう。では、次の質問だが――」

 ガチャ!

暗夜兵「マークス王子!」

マークス「む、何をそんなに慌てている? 今は尋問の最中だ、少しは――」

暗夜兵「ご無事です、生きておられました!」

マークス「?」

暗夜兵「し、失礼いたしました。カムイ王女様です、ただいまカムイ王女様が当館にいらっしゃいました」

マークス「! それは本当か!?」

暗夜兵「は、はい。御姉弟もご一緒です」

マークス「そうか、わかった。中に通しておいてくれ、すぐに私も向かう」

暗夜兵「わかりました!」

 バタンッ

マークス「……ふっ」

フランネル「なんだよ、急に嬉しそうに」

マークス「そうだな、うれしいというのは確かなことだ」

フランネル「なんなら俺の尋問は中断してもいいぜ」

マークス「それは……」

フランネル「逃げたりしねえよ。ちゃんと全部答えるって約束したからさ」

マークス「……そうか」

フランネル「代わりと言ったらなんだけど、その干し肉今全部くれねえか? 待たされてる間、腹が減って仕方無いからよ」

マークス「ふっ、それもそうだな」ドサッ

フランネル「話がわかって助かるぜ。うっひょー、こんなにもらっちまったぜ」

マークス「私が戻るまで、ここで大人しくしているようにな」

フランネル「まかせとけって、干し肉食いながら気長に待っててやるからさ」

マークス「ふっ、任せておくとしよう、ではな」

 ガチャ バタン

 カッ カッ カッ

マークス(カムイ無事でよかった。しかし、どうしてここに来る必要があった?)

マークス(ノートルディア鎮圧の件を父上へ報告に来たのか? それとも――)

(何か、父上に聞かねばならないことがあるということなのか……)

今日はここまでで
 次回で前篇が終わります。
 フランネルとマークスはこんな柔らかい会話をしてそうなイメージがあった。

 ヒノカはカムイスキーすぎるな(全世界共通認識)

 サントラ4/27か、表紙は安定のアクアさん。とりあえず買わないと
 

◆◆◆◆◆◆
―ミューズ公国・アミュージア郊外『別荘』―

マークス「そうか、虹の賢者に」

カムイ「はい、ですが賢者様が……」

マークス「賢者のことは残念ではあるが、お前が無事でよかった。それで、ここにはノートルディアの件の報告に来たのか?」

マークス(それだけなら、何の問題もないが)

カムイ「いいえ、それだけでしたら皆さんと一緒にお話をする場を設けます。先にありがとうございます、私たちをここに泊まらせていただいて」

マークス「構わんさ。父上がいない今、ここに誰を泊めるかを決めるのは私だ。それが家族とお前の仲間達ならば断る理由もない」

カムイ「ふふっ、そう言ってもらえてうれしいです。このところ、本当の意味でゆっくりと休むことはできませんでしたから。久々にとても柔らかい布団で夜を越せそうです」

マークス「そうか……。それで話というのはなんだ」

カムイ「……マークス兄さん、今私達にサクラさんたちが随伴していることはご存知ですね」

マークス「ああ、わかっている。先ほどエリーゼと歩いているのを見掛けた。目を合わせたら、逸らされてしまったがな」

カムイ「それはマークス兄さんの雰囲気によるものでしょうね。いつも難しいことを考えているような顔をしていますから」

マークス「厳しい評価だな。だが、どうしてサクラ王女がここにいる? ウィンダムで何かあったのか?」

カムイ「……レオンさんの屋敷が襲撃を受けました」

マークス「なに、それは何時のことだ!?」

カムイ「ちょうど、お父様がウィンダムを出てミューズ公国へと出立された日の夜、私たちが賢者様の助力で奇跡的に間に合った形です。ですが、レオンさんに仕えていた召使の方々は全員殺されてしまいました」

マークス「………ノートルディアの襲撃は囮、本当は白夜がサクラ王女を取り戻そうとしていたということか?」

カムイ「ふふっ、マークス兄さんもこれだけの情報なら、そう考えるのも当然だと思います。現にマクベスさんがそう思っていてくれたからこそ、ここにサクラさん達を連れてくることができたんですから」

マークス「それはマクベスに偽りの報告をしたということか」

カムイ「教える必要のない真実を省いただけです。今、すべてをマクベスさんにオープンするのは問題が多いと考えてのことです。そして、それを教えることは今後一切ないでしょう」

マークス「それを私には教えるというのか」

カムイ「ここまで言っておきながら真実は自分の目でということは言えませんし、それにマークス兄さんなら聞いてから物事を考えてくれると思っています。突発的ではない視点で考えてくれると」

マークス「……」

カムイ「……」

マークス「いいだろう。カムイ、何があった?」

カムイ「はい――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

マークス「……」

カムイ「以上が現在の知っている情報です」

マークス「……まさか、そんなことがあり得るというのか、そんなことが!」

カムイ「……エリーゼさんはわかりませんが。レオンさんにカミラ姉さん、いいえ私について来てくれている皆のほとんどはこの示し合わせが誰によって引き起こされているか、見当をつけています」

マークス「だが、ノートルディアでお前はあの捕虜と戦い、そして――」

カムイ「確かにスズカゼさんが嘘をついていると仮定すれば、ノートルディアの件はそれで済みますが。とても舞踏会の催しに合わせて攻めてくるなど至難の業です。ですが、ノートルディアの一団がフウマ公国の人間であることをアシュラさんが証明しています」

マークス「そのアシュラというものが、白夜と繋がっているという可能性は」

カムイ「なら、私を殺していたでしょう。あそこで、私たちに味方をする理由はありませんし、一度部屋に話を聞くためにお呼びしたときにでも、私を殺していたはずですから」

マークス「……」

カムイ「……それに、ノートルディアとレオンさんを襲撃したのが同一組織なら、そう考えても良かったんですが。いえ、そうですね同一組織ではあります。問題は白夜ではなく暗夜のという点ですが」

マークス「ゾーラは、どうしてこのようなことを」

カムイ「ゾーラさんにはゾーラさんの信じるレオンさんの姿があった。それに対する執着の末でしょう」

マークス「……執着か」

カムイ「最初、ノートルディア襲撃はシュヴァリエの件から続くものかと思っていましたが。さすがにゾーラさんに一国を動かす力はありません、たとえ変装がどんなにうまくても、国一つを動かすとなればその対象も絞られます」

マークス「……つまり、カムイはこの一連の流れすべてに父上が関わっている可能性がある。そう思っているということか?」

カムイ「はい、というよりも、この状況で国を巻き込んで細工をできること、そして具体的な条件提示で相手を納得させられる人物、あらゆる人間に指示を出してそれに従わせることのできる人は、私が知る限りお父様を置いて他にいませんから」

マークス「……」

カムイ「すべてがゾーラさん一人が行った理想への追求と呼ぶには難しいものがあります。それにレオンさんへ言伝をするようにゾーラさんに指示したのもお父様だと聞いています」

マークス「……だが」

カムイ「はい、ここまでは私の憶測にすぎません。だからこそ、お父様に聞かなくてはならないんですよ」

マークス「……そうか、ならばその時に私も同席させてもらう」

カムイ「兄さん?」

マークス「それが条件だ。だから、一人で父上に聞くことを許すつもりはない。私が隣にいる時だけにしろ」

カムイ「……ありがとうございます、兄さん」

 ギュッ

マークス「カムイ?」

カムイ「マークス兄さんの手、久しぶりに触りました。ふふっ、なんだかとても懐かしく感じます」

マークス「そうかもしれないな」

カムイ「……少し、手が熱いですね」

マークス「少しくすぐったいぞ」

カムイ「ふふっ、ごめんなさい」

 スッ

カムイ「ありがとうございます。私の話を聞いてくれて」

マークス「妹の話を聞くのも兄の役目だ。父上は明日、アミュージアで行われるショーを楽しまれる予定だ」

カムイ「ショーですか?」

マークス「ああ、ショーが終わった頃ならば父上の機嫌もよいだろう。ただ、あまりにも直接的に聞かないようにな」

カムイ「はい、流石にそんなつもりはありませんよ。でもショーですか、ちょっと残念ですね」

マークス「なにがだ?」

カムイ「だって、私は目が見えませんから。どんなものなんでしょうか?」

マークス「そうだな、とても可憐なものだ。だが見るだけではなくて聞く楽しみもある」

カムイ「聞く楽しみ、ですか?」

マークス「ああ、踊りと歌があるからな、父上はララという歌姫を気に入っている、彼女の歌声は確かによいものだ。もっとも――」

カムイ「?」

マークス「カムイには、もっと聞き慣れている歌姫がいるだろうからな」

カムイ「ふふっ、そうですね。とても強くて、私を支えてくれる歌姫さんがいますね」

マークス「カムイがララに耳を奪われるようなことがあったら、その歌姫は癇癪を起してしまうかもしれんな」

カムイ「それはないと思いますよ」

「……たぶん」

◆◆◆◆◆◆
―別荘『カムイの部屋前』―

カムイ「すっかり周りは暗くなってしまいましたね」

カムイ「お父様への話は今と同じくらいか、もしくはそれよりも後になってしまいそうですね……ん?」

カムイ(誰かが私の部屋の前にいる?)

???「あ、待ってて正解だったみたいだねー」

カムイ「その声は、ツバキさんですか?」

ツバキ「こんばんはー、カムイ様」

カムイ「どうしたんですか、こんな時間に。このところ落ち着いて眠れる事もなかったんですから、今日はゆっくり休んで――」

ツバキ「うん、確かにそうするべきだとは思うんだけどね。ちょっと、さ」

カムイ「?」

ツバキ「ここで話すのはなんです、カムイ様の部屋にお邪魔してもいいかな?」

カムイ「他の人には聞かれたくない話、ですか?」

ツバキ「そうですね」

カムイ「わかりました、どうぞ」

 ガチャ バタン

ツバキ「ふぅ、ありがとう、カムイ様」

カムイ「いいえ、それで話とは?」

ツバキ「カムイ様の妹、エリーゼ様のことなんだけど」

カムイ「エリーゼさんですか?」

ツバキ「うん、ちょっとね」

カムイ「……もしかして、ツバキさん、エリーゼさんに好意を抱いているんですか。それでその相談を私に……」

ツバキ「それはないかなー。だって、俺はエリーゼ様のことよく知らないし、彼女はサクラ様といることがほとんどだからねー」

カムイ「では、どうしたんですか?」

ツバキ「あまり、エリーゼ様のこと、子供だって思わない方がいいとおもってね」

カムイ「それはどういう――」

ツバキ「エリーゼ様も気づいてるよ」

カムイ「……」

ツバキ「今回の事にガロンが関わってるってことにさ」

カムイ「どうしてそんなことが言えるんですか?」

ツバキ「……少し前にサクラ様のお部屋に言ったんですけど――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

サクラ「エリーゼさん、あの何かあったんですか」

エリーゼ「え、な、なんのことかな?」

サクラ「あの、なんだか、ウィンダムを出てから無理に笑ってるような気がして、その……」

エリーゼ「そ、そんなことないよ。あたし、サクラと一緒にいられて楽しいよ。だから、そんなこと、そんなことない……よ」

サクラ「でも、エリーゼさん泣いてます……」

エリーゼ「あれ、なんでかな、えへへ、おかしいよね。今、今ここに皆いるのに、おとうさまもおにいちゃんもおねえちゃんもみんな揃ってるのに、揃ってるのに……」

サクラ「…どうしたんですか、私でよければ話を聞かせてくれませんか?」

エリーゼ「……サクラ?」

サクラ「……」コクリッ

エリーゼ「あのね、レオンおにいちゃんもカミラおねえちゃんもカムイおねえちゃんも、あたしはまだわかってないってそう思ってくれてる気がするの。でも、無理だよ。だって、どう考えても、こんなにいっぱい人を動かせる人なんて、おとうさまくらいしか知らないもん」

サクラ「……」

エリーゼ「サクラ、あたしどうすればいいのかな? もう、知らない振りなんて続けられないよ……」

サクラ「エリーゼさん……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「そうだったんですか」

ツバキ「うん、とても悩んでたみたいだから」

カムイ「……エリーゼさんがいる前で話すべきではなかったのかもしれませんね」

ツバキ「そうやって仲間外れにされるのは、エリーゼ様は嫌がると思うけど?」

カムイ「……ですが」

ツバキ「カムイ様はサクラ様のことも信じてるんですよね?」

カムイ「はい」

ツバキ「だったらエリーゼ様のことも同じように信じてあげないといけませんよー。エリーゼ様に辛い現実を見せないように出来る限りするっていうのはやさしさかもしれないけど、この問題はいずれ全員に話さないといけなくなることだよね?」

カムイ「……」

ツバキ「いきなり全てを提示されても、すぐに決断なんてできないって俺は思うよー。それに、ガロンはエリーゼ様の父親なんだ。親のことを仲間外れのまま一方的に話を進められることの方が、エリーゼ様にとって辛いことだと思うからね」

カムイ「……ツバキさんの言う通りかもしれませんね」

カムイ「私はいつの間にかエリーゼさんを一人にしていたのかもしれませんね。近くにいても、その心に気を掛けてあげられなければ、いないのと何も変わりませんよね」

ツバキ「うんうん、そういうことだよー」

カムイ「なら、今すぐにでも私は――」

ツバキ「って言うと思ってた。けどその必要は今はないかなー」

カムイ「どうしてですか? 今、ツバキさんは――」

ツバキ「それはねー」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^

サクラ「エリーゼさん、大丈夫ですよ」

エリーゼ「サクラぁ」グスッ

サクラ「大丈夫、だってエリーゼさんは私に話してくれたから、もう知らないって装う必要はないんですよ?」

エリーゼ「でも……」

サクラ「皆さんはエリーゼさんのこと嫌いになったりしません。だって、私はエリーゼさんのこと、もっと好きになれましたから」

エリーゼ「ううっ、サクラぁ」

サクラ「大丈夫ですよ、それに今は私がここにいます。ありのままのエリーゼさんを知ってる私がいます、だから安心してほしいんです」

エリーゼ「う、うん。サクラ、その、ぎゅってしてほしい」

サクラ「ぎゅ、ですか?」

エリーゼ「だ、だめかな?」

サクラ「そ、その恥ずかしいですけど」

 ギュッ

エリーゼ「……サクラ温かい」

サクラ「エリーゼさんも温かいです」

エリーゼ「……本当なら」

サクラ「?」

エリーゼ「こんな戦争が無かったら、あたしとサクラはもっと違う形で出会えてたのかな?」

サクラ「……そうかもしれません。でも、今私とエリーゼさんが出会えてることは、この戦争で数少ないいいことの一つなんですよ」

エリーゼ「……サクラって、そういう風に考えられるんだね」

サクラ「……へ、変ですか?」

エリーゼ「ううん、サクラのそういうところ大好きだよ」

サクラ「ふふっ、私もエリーゼさんのこと大好きです」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「そうですか……サクラさんに先を越されてしまいましたね」

ツバキ「もしかして悔しかったりするのかな??」

カムイ「ちょっぴり悔しいですね。でも、エリーゼさんにとってサクラさんは近い存在だったのかもしれませんね。私やカミラ姉さん、アクアさんも含めてエリーゼに抱いている印象がすべて同じだったのかもしれません」

ツバキ「という話なんで、話をするなら明日以降のほうがいいですよ」

カムイ「ありがとうございます、ツバキさん。エリーゼさんのためにこんなに動いてくれて」

ツバキ「いえいえ、それにどちらかと言うとサクラ様のためでもありますから。エリーゼ様が悲しんでいると、サクラ様も色々と抱えそうですから」

カムイ「……そうですか。いろいろとすみませんでした」

ツバキ「それじゃ、俺はこの辺で失礼しますね。この話をしたかっただけなのでー。それじゃー」

 ガチャ バタン

カムイ「エリーゼさんのことは気に掛けてあげないといけませんね」

◆◆◆◆◆◆
―別荘『カムイの部屋』―

 コンコン

アクア「カムイ、起きてる?」

カムイ「アクアさん? どうかしましたか?」

アクア「いえ、別に……その、少し話がしたいってそう思って」

カムイ「そうですか? どうぞ、こちらに」

アクア「ええ、ふふっ、柔らかい布団ね。久し振りだわ、こんなに柔らかいものは」

カムイ「そうですね、横になったらすぐに眠れちゃうような気がします」

アクア「……明日、ガロンに話をしに行くつもりなの?」

カムイ「はい、真実が掴めるかどうかは分かりませんが、ショーの終わった後に聞いてみようと思います。だから今日はもう考えることはおしまいです」

アクア「そう」

カムイ「それにショーというのは生まれて初めてですから、少し楽しみではありますよ」

アクア「でもあなたは」

カムイ「はい、でもマークス兄さんが歌を楽しめばいいって、そう言ってくれました」

アクア「ふふっ、マークスらしいことを言うのね」

カムイ「はい。でも、私が楽しめるのは気配の動きと耳から拾える音だけですから、間違ってないと思います」

アクア「あなたらしい答えね」

カムイ「ふふっ、ショーの後に色々とありますから、聞き納めになってしまわないといいんですけどね」

アクア「縁起でもないことは言わないでほしいわ」

カムイ「たしかにそうですね。これは失言でした。でも――」

アクア「?」

カムイ「……明日の夜、すべてが変わってしまうような、そんな気がしているんです。それが少し怖いんですよ」

アクア「そう……ねえカムイ、子守唄歌ってあげる」

カムイ「え、どうしたんですか突然?」

アクア「ふふっ、怖いって言ってる大きな子供がいるから、あやしたくなってしまうのよ」

カムイ「大きな子供って私のことですか?」

アクア「他に誰がいるの?」

カムイ「この頃はアクアさんが私に甘えていたのに、その言い方はおかしいですよ」

アクア「あれはあなたが約束を破っただけのことよ」

カムイ「うっ」

アクア「油断していたとか、そんな言葉は聞きたくないわ。ちゃんとしなさい」

カムイ「ぐぐっ」

アクア「そういうことよ」

カムイ「言い返せませんね」

アクア「なら素直に私の子守唄を聞きながら今日は眠りなさい」

カムイ「ふふっ、分かりました。こんなにアクアさんに睨みつけられたら従わないといけませんからね」

アクア「ひどい言われようね」

カムイ「ふふっ」

 ポフッ

アクア「それじゃ……」

アクア「♪~ ♪~ ♪~」

カムイ(……心地良い)

アクア「♪~ ♪~」

カムイ(……)

アクア「♪~」

カムイ「スゥスゥ」

アクア(カムイ、あなたのその言葉は間違いじゃないかもしれないわ)

アクア(でも変わるんじゃないわ、明日で終わらせてみせる――)

(この白夜と暗夜の戦争、そしてあなたが苦しみ続けるこの戦いを)

◇◇◇◇◇◇
―アミュージアのどこか―

クマゲラ「……」

 サッ

白夜兵「クマゲラ様」

クマゲラ「遅かったな。それで首尾は?」

白夜兵「はい、明日シティホールにて大きな催しがあるという話。特等席でガロンがそれを鑑賞する予定だそうです」

クマゲラ「ほう、そうか。これは俺たちにも運が向いて来たということかもしれないな」

白夜兵「すべての明りの場所は調べ済み、そして配置図の模写がこちらです」

クマゲラ「ああ、船がないとほとんど水だけって場所なのか」グビッ グビッ グビッ

クマゲラ「ふぅ、こっちは一発限りの大勝負だからな。準備はするが、それ以降のことでとやかく言うことは何もねえ。全員、役割はわかってるだろうな?」

白夜兵「はい、それと港を偵察していたものから、今日の夕暮れに船が来航したと」

クマゲラ「ほう、ってことは援軍ってことだな。まったく、幾人連れてくる気なんだろうな、暗夜はよぉ。それで誰が来たかはわかってるのか?」

白夜兵「はい……その」

クマゲラ「なんだ言い淀んで、どちらにせよ明日には戦うことになる。出し惜しみすることじゃない」

白夜兵「わかりました。その現れたのはカムイ王女が率いる部隊のようでした……」

クマゲラ「……そうか」

 ゴトッ

クマゲラ「一番手強そうなのが来ちまったってことだな。正直ガロン意外は王子が面倒くらいに思ってたが、これは予想外なことだな」グビッ グビ ッグビッ

白夜兵「クマゲラ様」

クマゲラ「ふぅ~、だが、相手にどんな奴が増えようとやることを変えるつもりはねえ。予想以上に激しい戦いになるはずだ、全員に気合を入れるように伝えておけ。俺はもう少し夜風を浴びることにする」

白夜兵「はっ、では」サッ

クマゲラ「炎の靡きは悪魔でも鉢合わせたいらしい。ふっ、それも一興だ」

クマゲラ「どうやら願いは叶ったそういうことだ。これで最後の力比べができる――」

「最後の真剣勝負が命がけでも問題ないだろう、どんなことでも全力で……そうだろう、リンカ」



 第十六章 前篇 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアB++
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC+
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリC+
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB+
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB+
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC→C+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB+
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 黒い踊り子、ご期待ください。

 透魔王国というワードは×でもハイドラって単語はセーフだと思っている。
 ハイドラでアウトなら、もう所々で何人か姿が消えてる気がする。
 それに泡になって消える呪い、あれは一度王国をのぞいたら発生するタイプなのか今でもわからない。

 公式DLCの泡沫の記憶の無犠牲クリア報酬に翼盾の書とか来てくれないかな。
 近接射撃の書もいいけど、翼盾が一番ほしい。
 
 次にやる番外を決めたいと思います。参加していただけると幸いです

◇◆◇◆◇

・フォレオ×エポニーヌ
・かむいとまきゅべす
・ディーア×ミタマ
・ピエリリス
・ヒノカ×カムイ(女編)R18

 先に4回名前の挙がったものにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア『シティホール』―

カムイ「ここがアミュージアのシティホールですか。たくさん人がいるんですね」

カミラ「そうね、多く人が来ているのはお父様がここにいるのも理由の一つかもしれないわ。お父様が来られた日だけは多くの人が歌劇を楽しむことができる日になっているの。しかも無料でね」

カムイ「すごいですね」

カミラ「ふふっ、でもステージ近くの船の席を借りられるのは、ちゃんとしたチケットを持っている人だけよ。無料の人のためにはテラスを提供する形になっているわ」

カムイ「なるほど、でもこの熱気ですから、皆さんとても楽しみにしているんでしょうね」

カミラ「……そうね」

カムイ「カミラ姉さん?」

カミラ「いいえ、ごめんなさい。ショーが終わった後のことを思うとね……」

カムイ「……仕方ありませんよ。それにお父様に戦いを挑みに行くわけではないんですから」

カミラ「……それもそうね」

???「ふむ、暗夜の来賓があったと聞いて来てみたが、お前たちか」

カムイ「!」

カミラ「!」

ガロン「カミラ、そしてカムイよ」

カミラ「お父様……」

カムイ「……」

ガロン「ふっ、その様子ではノートルディアの件、うまく収められたようだな」

カムイ「はい、お父様」

ガロン「そうかそうか、ノートルディアを襲った白夜の者たちも馬鹿なものだな。今さらあのような場所を襲って何になるというのか」

カムイ「確かに意味があるようには思えませんでしたね。その点ではあのような命令を下したのはとても愚かな人なのでしょうね」

カミラ「!」

ガロン「くっくっくっ……、くーっはっはっは。その通りだカムイよ、所詮人間とはそういうものだ」

カムイ「?」

ガロン「今宵は気分がいい。お前の報告も今日という日を彩る一つの華といってもいいだろう。任務御苦労であった、ゆっくり栄喜を養うがよい」

 タッ タッ タッ

カムイ「……」

カミラ「カムイ、心臓が止まるかと思ったわ。話はショーの後にするはずでしょ?」

カムイ「確かにお父様がその命令を出したかもしれませんが、それをあくまで実行したのはフウマの公王ですから」

カミラ「そうね。でも、まだ準備もできていないのよ……」

カムイ「……それもそうですね」

カミラ「それに、ここであなたに何かあったら……」

カムイ「エリーゼさんのことですよね?」

カミラ「ええ、あの子も気づいていたなんて思ってなかった。だから、エリーゼに話をする前にあなたに何かあったりしたらあの子はもっと悲しむことになる」

カムイ「……」

カミラ「だからカムイ、ショーが終わったらまずはエリーゼと話をしましょう? それからお父様にみんなで話をしに行くべきよ」

カムイ「カミラ姉さん……」

カミラ「カムイを一人ぼっちで行かせるつもりもないけど、それと同じくらいエリーゼを一人ぼっちにはできないわ」

カムイ「……確かにその通りですね。ずっと、エリーゼさんにはさびしい思いをさせてきましたから」

カミラ「ええ。でもずっと放っていたなんて、私おねえちゃん失格ね」

カムイ「私もですよ。おねえちゃん失格ですね」

レオン「ねえ、二人とも。お姉ちゃん失格ってなんだか意味深なフレーズは、ちょっと控えてくれないかな?」

マークス「ああ、その通りだ。それに、そんなことを言ったら私とレオンも兄失格といえるだろう」

カミラ「ふふっ、そうかもしれないわね」

カムイ「……確かに失格ですね。いえ、大失格です」

マークス「そこまでいうことはないだろう、カムイ」

カムイ「いえ、マークス兄さん。今の流れなら、兄失格ではなく、おにいちゃん失格というべきところですよ」

レオン「えっ、駄目出しってそこなの?」

カムイ「エリーゼさんにとって、私たちはおにいちゃんおねえちゃんなんですから。そこは言うべきところでしょう。レオンさんも例外じゃありませんよ」

レオン「エリーゼのことを気づいてあげられなかったことは、確かに僕も悪いはずだよ」

カムイ「レオンさん」

レオン「でも、その言い方をするかは別の問題だから。暗夜の王族が揃っておにいちゃん失格とか、おねえちゃん失格とか言い合ってるところなんて。正直、どうかしてるよ」

カムイ「レオンさんに怒られてしまいました。やっぱり、私はおねえちゃん失格ですね」

レオン「……」

カミラ「そうね、私たちおねえちゃん失格ね」

レオン「……」

アクア「レオン?」

アクア(怒っているのかしら?)

レオン「……いな」ボソッ

アクア「え?」

レオン「………おねえちゃん失格、なんか、いいな」ボソッ

アクア「!?」

エリーゼ「あ、カムイおねえちゃん」

サクラ「エ、エリーゼさん。走ったら危ないですよ」

エリーゼ「えい、えへへ~」ガシッ

カムイ「ふふっ、どうしたんですか、エリーゼさん。そんなに慌てて」

エリーゼ「え、えっとね。今日のショー、サクラ達と一緒に見てもいいかな?」

カムイ「サクラさん達とですか。別に構いませんよ」

エリーゼ「わーい! ありがとう、お姉ちゃん!」

サクラ「ありがとうございます、カムイ姉様」

カムイ「いいえ、気にしないでください。でもそうですね、サクラさん達というと」

カザハナ「あたしとツバキだよ」

レオン「なんだ、カザハナか」

カザハナ「なんだとはなによ。あたしがサクラを守るのは変わらないんだからね」

レオン「それにしては……飲み物とか、お菓子とかいろいろ持ってるけど、どうしたんだいそれ?」

サクラ「え、えっと、それ私のです」

エリーゼ「サクラ、大丈夫って言いながらずっとお菓子を見ててね。すごく食べたそうにしてたから、買ってあげたんだ―」

カムイ「そうですか、サクラさんは食いしん坊なんですね」

レオン「たしかに、甘いものには目がないみたいだからさ」

カザハナ「そうだね、白夜でも休日食べ歩くことが良くあったんだよ。その度に警護してたけど、いっぱい食べるからねサクラは」

サクラ「は、恥ずかしいです//」

カザハナ「そうだ、レオン王子もあたしたちと一緒に来てよ。どうせ一緒に見る人なんていないでしょ?」

レオン「そんなことないけど」

カザハナ「……いいからいいから」

レオン「ちょっよ、手を掴まないでくれるかな?」

カザハナ「それに、あたしたちはレオン王子の捕虜なんだから、ちゃんと責任を持って見ててくれないと」

レオン「……はぁ、捕虜に縛られるなんて僕も焼きが回ったかな」

カザハナ「で、一緒に見てくれるの? くれないの?」

サクラ「れ、レオンさん。よかったら、一緒に……」

エリーゼ「そうだよ、レオンおにいちゃんも一緒に見ようよ? ねー?」

レオン「おい、エリーゼも引っ張らないでよ。あーもう、わかった、わかったから!」

カムイ「ふふっ、それじゃサクラさん、レオンさんのことよろしくお願いしますね?」

サクラ「え、えっと、私の方が見守られる立場なんですけど……」

カムイ「ふふっ、ではいっぱいレオンさんに守られてくださいね」

サクラ「もう、姉様、言い方が何だか意地悪です」

レオン「それじゃ、姉さん僕はサクラ王女達と一緒に見ることにするから」

カムイ「はい」

エリーゼ「それじゃいこう、あたし中央の席のチケット持ってるから、サクラ楽しみにしてね」

カザハナ「あっ、レオン王子。ちょっと持つの辛いから、少し持ってよ」

レオン「わかったよ。はぁ、これじゃ立場が逆じゃないか」

カムイ「ふふっ、とっても仲良しですね」

マークス「そうだな……。それにやはりレオンも柔らかくなった。これも色々なことがあったおかげかもしれない」

カムイ「全てが楽しいことというわけではありませんけど、確かにその通りでしょうね」

マークス「ああ、そうだな。結局、白夜であろうと暗夜であろうとお互い人間であることに変わりはない、当たり前のことを私は忘れていたのかもしれないな」

カムイ「ふふっ」

マークス「どうした?」

カムイ「いいえ、なんでもありませんよ」

マークス「……そうか」

カミラ「ふふっ、カムイと何を話しているのかしら?」

マークス「なに、他愛もない話だ」

カムイ「そうです、他愛もない話ですよ」

カミラ「あら、面白くないわね? お姉ちゃんも今度混ぜてほしいわ」

カムイ「はい、また今度で」

カミラ「ふふっ、そういえばアクアはどこに行ったのかしら?」

カムイ「あれ、さっきまでいた筈なんですが……」

マークス「もしかしたらエリーゼと一緒に向かったのかもしれん」

カムイ「そうかもしれませんね。できれば一緒に見たかったんですけど」

カミラ「なんだか残念だわ」

カムイ「何がですか?」

カミラ「だって、カムイはアクアと一緒に鑑賞したかったのよね?」

カムイ「はい、そうですね」

カミラ「それって、お姉ちゃんよりもって意味でもあるのよね?」

カムイ「ふふっ、そうかもしれません」

カミラ「どうしましょう、カムイのお姉ちゃんとしての私の立場が危うくなってる気がするわ」

カムイ「何言ってるんですか、私のお姉さんはカミラ姉さんだけですよ」

カミラ「カムイ、なんていい子なの。お姉ちゃんとっても嬉しいわ」

マークス「さて、我々もそろそろ向かうとしよう。折角のショーだ、楽しまないのは催してくれたアミュージアの者たちにも失礼だからな」

カムイ「それもそうですね。ところで、お父様はどちらで見られることになっていうんですか?」

マークス「ステージ正面にある特別来賓席だ。万が一に備えて兵達も控えているから、問題はないはずだ」

カムイ「一番いい席ですね」

カミラ「このショーもお父様のために開かれているのだから当然のことよ。さ、カムイ、私たちも向かうことにしましょう?」

カムイ「ええ、わかりました」

カムイ(それにしても、アクアさんは一体どこに行ってしまったんでしょうか?)

◇◇◇◇◇◇
―オペラ劇場『楽屋』―

踊り子「それじゃみんな、そろそろ本番よ。今日は暗夜のガロン王様が来てるんだから、気合い入れていくわよ。特にララ!」

ララ「は、はい」

踊り子「ガロン王様はあんたの歌声に期待してるんだから、ドジ踏まないようにね」

ララ「わ、わかってますよ。問題なんて何もないですから」

踊り子「それじゃ、先に行きなさいよ。最初にララが歌い始めないと私たちも出られないんだからね」

ララ「わかってます。それじゃ、先に行ってきますね」ガチャ

 ガンッ

ララ「?」

 ガンガンッ

ララ「えっ?」

踊り子「どうしたの、立てつけが悪いの?」

ララ「あ、開かないんです! どうして、早くいかないといけないのにっ!」ガンガンッ

踊り子「ちょっとかして、何これ!? まったく、開かない……」

踊り子「どうするの、ガロン王様が来ているのにショーができないなんて!」

ララ「開いて、開いてください! お願いだからぁ!」

 ガンガンガンガンッ

踊り子『誰か、誰かここを開けて! 誰かー!!!」

???「ごめんなさい」

 タタタタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クマゲラ「全員位置に付いたか?」

白夜兵「はい、現在天井から明かりを狙う者たちの準備は整っています。海上のゴンドラにも数名忍ばせておりますが」

クマゲラ「なに、片目を隠して半日過ごしてきたんだ、暗闇に対応するのはこちらが早い。そのうちにガロンに矢を浴びせられれば、こちらの勝ちよ」

白夜兵「はい、成功しますかね」

クマゲラ「わからねえ。わからねえが、ここまで来たら、突き進む以外に道はねえからよ。合図は伝達してある通りにな」

白夜兵「はっ、それでは私も第二案のために動くことにいたします。では、クマゲラ様」

クマゲラ「ああ、お互い気張っていこうや。あばよ」

白夜兵「はい、さようならです」サッ

クマゲラ「……」

クマゲラ(さて、ここに俺達がいる理由が戦争を終わらせるためのなのか、それともただ死ぬためだけなのか、確かめさせてもらおうじゃねえか)

クマゲラ(合図は単純、最初の踊り子が現れた時……)

クマゲラ(聞いた話ならララって言うガロンのお気に入りが一番手を務めるらしいが……。そのララが出てきた瞬間なら、ガロンの意識も少しはそっちに向くはずだ)

クマゲラ(そこを狙えば、勝機はこちらにある)

 ワーーーー

クマゲラ「……あれが、ララか?」

クマゲラ(黒い衣装、暗夜の特徴的な色合いってやつか)

クマゲラ「大舞台のところ悪いが、それもここで終わりだ」

白夜弓兵「……来たぞ」

白夜弓兵「…よし、全員弓を構えろ。しくじるなよ……」

白夜弓兵「……今だ!」

 ヒュン ヒュン ヒュン

 バシッ ガコッ バチャンッ

 ナンダ! イキナリアカリガキエタ!? ナニモミエナイゾ!

クマゲラ(第一段階はうまく決まったな、あとは……)



ゴンドラに隠れていた弓兵「よし、全員構えろ!」

 ザッ ザッ ザッ

弓兵「特別来賓席を狙え! 無理に狙う必要はない、矢をたらふく撃ち込んでやればいい!」

弓兵「よし、全員射―――」

 ザブンッ!

弓兵「!? なんだ、いきなり揺れ――!?」

弓兵「これでは、狙いが……おい、どうした、何を見て」

弓兵「……な、なんだあれ」

弓兵「ステージで何が……こ、これは――」




クマゲラ「一体、なんだこれは……」

 バシャ バシャンッ 

「水が踊ってやがる」

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア・シティホールへと続く街道―

 シュタッ シュタッ

フランネル「たくっ、一言くらい何か掛けてくれてもいいじゃねえかよ~」

フランネル「いきなりもう自由だからとか言われてもよぉ、勢いのままマークスがどこに行ったか聞いちまったぜ」

フランネル「しかし、なんで皆屋根を飛んで移動しないんだ? 道は混んでて歩き辛いったらないのによ」

フランネル「まぁ、どうでもいいか。おっ、あれがシティホールか」

フランネル「だけど、なんだあれ、すっげえ暗くなってるけど……、まぁいっか」

「何が起きてるのかは、着いてからのお楽しみってことだな」

今日はここまで

 次回番外はフォレオ×エポニーヌです。

 泡沫の記憶編の『これは私の憶えている、或る世界の話』の私がリリスなんじゃないかなと思い始めている。

◇◆◇◆◇









「フォレオ、少しいいか」
「はい、なんでしょうか、マークス叔父様」

 猫のように体動くとはまさにこのことだろう。天井の梁で身を顰めながらのんびりフォレオを観察……もとい見守っていると、本日のランダムイベントが起きていた。それだけであたしの体は自然と高揚していく。
 マークス王はあれでまだ妃がいないので、父さんが仕えているレオン王子が少しばかり心配だと小言を漏らしていた。でも、それはね違うの、そう違うのよ。みんなにはわからないだけ、そう溢れ出る情熱があるのよ。 

『……』
『あのマークス叔父様?』
『すまない、もう少し待っていてくれはしないだろうか』
『……マークス叔父様』

 熱く交わされる視線、誰も見ていない王城の一角で二人はひっそりと耽る。弟の子供に親情を越えた愛情を覚えた王、その小さい体をギュッと包み込んで放さない!

『マ、マークス叔父様』
『今は、名前で呼んでくれないか、フォレオ』
『……マークス』

 そして、次第に高揚した二人は静かに手を絡めあい、そして……

『今日、私の部屋に来ないか、お前と一緒に過ごしたい』
『……はい』

 顔赤らめるフォレオとマークス王、互いに求め会いたい二人!

「うふふ、うふふふふふ……」

 絡めた手を放せない、二人だけの世界――

「!!!!」

 思わず天井の壁を手で叩く。あまりの興奮に体が衝動を欲しがっていた。それくらいに背徳的なものだ。あんなに可愛いフォレオを堅物といわれるマークス王が柔らかい顔して抱きしめているなんて、それだけでカオのにやけがさらに加速するというもの、そしてそれを半ば容認してくれているフォレオはあたしにとってオアシスに他ならない。

「本当に、最高だわ」

 緩み切っている。それくらいフォレオは可愛い。可愛いからこそ、フォレオは総受け、それがあたしのジャスティス。

◇◆◇◆◇










「エポニーヌ、エポニーヌ。いませんか?」

 フォレオの呼ぶ声が聞こえて、あたしは静かに天井から下へと降りる。
 何度も義賊として悪徳貴族の屋敷に出入りしていたから、大理石の床も音なく降りるのも朝飯前、そしてフォレオの背後を取るのも朝飯前だった。

「……」

 しかし、フォレオのなんという女の子らしさ! これで男だと言うのだからレオン王子の遺伝子はすごいと思わざるを得ない。
 ……レオン王子の遺伝子というのは、これも中々に背徳的な発言かもしれない。

「うふふふふ」
「きゃっ、エポニーヌ。なんでいつも背後ばかり取るんです?」
「あ、あれ、なんでばれちゃったの?!」
「それは、その、エポニーヌの笑い声が聞こえたから……」

 なんだか気まずそうにフォレオが零す。
 そ、そうよね、いきなり背後にデュフフって笑ってる女がいたら不気味だろうし、しかもそれが自身の臣下ということになれば……

「ご、ごめんなさい。えっと、その、ちょっとね、フォレオのこと考えてたらね?」
「………」

 どうやら選択肢を誤ったようね、見えないようにしているけど、あたしは心底動揺していた。
 親に寝具下に広がる埋蔵金を机に置かれていた時と同じくらいに動揺していた。
 混乱しているからかもしれない、あまりにも大好きなので特製の袋にしまって大切に保管しているお宝『僕を箱庭に閉じ込めて~縛られた劣情~』の主役ってフォレオみたい本のは攻めタイプだけどと考え、再び口元がにやけた。
 多分昨日の夜、読んでいたこともその原因かもしれない。
 けれど仕方ない、なにせ昨日は今日のために色々と準備するものがあったのだ。
 特製の袋ももう一つ準備していたから、あたしもそれなりに気合が入っていたのかもしれない。
 仕事終わりにビールを飲む男がいるように、仕事終わりにお宝を拝む女がいてもおかしくない。

◇◆◇◆◇









「あ、あの、エポニーヌ」
「ひゃい、はっ、な、なに、フォレオ?」
「ちょっと街に出たいのですが、付いて来てくれますか?」
「もちろんよ、だってあたしはフォレオを守るのが仕事だからね。それでどこにいくの?」

 そう言ってあたしはフォレオの手を取ってあげる。この頃はこうやって手を取るのも、すごくすんなりできるようになった。
 それにしてもフォレオの手ってすごく柔らかいのよね、これで男の……さすがにこの考えは自重しておかないといけないわね。

「えっと、今日の会議なんですけど、その無くなっちゃったみたいで、えっと、時間が空いてしまったので、交易街で新しい布地などがあるかみたいんです」
「わかったわ。それじゃ、オフェリアも――」

 と、そこで口を閉ざした。危ない危ない、ここで口を開いたらまずかった。あたしがここにいる理由を思い出していなかったら、危なかった。

「って思ったけど、オフェリアは今日用事があるって言ってたわ」
「そうなんですか?」
「うんうん。あたしだけじゃ物足りないかもしれないけど」
「そ、そんなこと……ないですよ」

 ああ、無理して言ってくれるなんて、フォレオなんて良い子なの!
 でもそうよね、変に笑ってるあたしといるよりは、女の子らしいオフェリアとかソレイユと一緒にいた方がフォレオも楽しいだろうし、というかマークス王、会議中止ってどういうことよ。少しは空気読みなさいっての、おかげで計画が狂っちゃったじゃないの。

「えっと、その、それじゃお願いしますねエポニーヌ」
「ええ、任せておいて。あっ、でも一度家に寄っていいかな?」

 この際だから、いろいろと準備をしておくのも悪くないわよね?

◇◆◇◆◇











 交易街は思った以上に人でごたごたしていた。家から物を回収してから来たとき、時刻は昼を終えて少し経った頃、市場は活気に包まれていた。
 あたしも活気に包まれていた。

「おっ、フォレオちゃん!」
「あ、こんにちは」
「へっへ~、見てくれよこれ、特注品の布地だ。暗夜の査定回でA級認定とった商品だ」
「あ、ほんとだ。触り心地が全然違いますね」
「だろ? フォレオちゃんなら気に入ると思ってね」

 フォレオに気さくに話しかける男の店主、その眼鏡の下にあるとても穏やかな表情……でもそれは仮初、すべては綿密に計算された誘惑の罠。

『お、おじさん、何を』
『へへっ、この布地欲しいんだろ。わかってるって、おじさんはフォレオのことよく知ってるんだからよ』

 眼鏡の下に隠れた本性が露になる。布地という魅惑の素材にフォレオは顔を赤らめながらも、そのズボンに手を添える。

『わかってるじゃねえか、おじさん物わかりのいい子は大好きだからなぁ』
『こ、これでその布地をくれるんですよね?』
『もちろんだ。もちろんさ……』

 店主の下衆な笑み。でも、それは何故だかすぐに息をひそめた。さっきまでの獣のような印象とは違う彼の姿に、フォレオの心は揺れてしまう。
 揺れ揺れて、喉がごくりと鳴った。

『フォレオ、俺は不器用だ、こんな風に物でしかお前を繋ぎとめられない。我慢できなくなっちまった、すまねえ』

 静かにフォレオの手をベルトから放す。それにフォレオは顔を赤らめていく。

『俺はこれから自首するさ。こんな風にあんたを傷つけた俺がいたら、ここの雰囲気も悪くなっちまうからさ。本当はよ、この布地で俺とお前のペアルック、作って欲しかったんだ』

 そう言う彼の優しいまなざし、それにフォレオは―――

「うふふ、うふふふふふ、禁断のペアルック。俺とお前の見えない証、みたいな?」

◇◆◇◆◇







「そっちのお嬢ちゃんは相変わらずだなー。そうやって変に笑わなけりゃ、結構可愛いのによぉ」

 そんな言葉にあたしは夢の国から強制送還される。あはは、結構悲しい発言。でも仕方無い、だってそこにユートピアがあるんだから。
 しかし、少しの間は夢の国に戻れそうもない、そう思った。

「やっぱり、フォレオちゃんは本当に可愛いな。もしも女だったら嫁に欲しいくらいだぜ」

 嫁嫁嫁嫁、俺の嫁、すぐに片道切符は頂いた。

「ぼ、僕だって男なんですよ、そ、それに……」

 と、フォレオがあたしをチラチラと見てくる。女のあたしより男のフォレオのほうが可愛い発言で傷付いてると思ってくれたのかもしれない。

「気にしないでいいから、それにフォレオのほうが、あたしよりずっと可愛いのは確かよ。だから店主のおじさんの発言間違ってないから」
「そ、そういうことじゃないんですけど」
「はっはっはっは、まったく世の中ってのはわからねえもんだ。それでこの布地は今日にでも発送しておくからよ、頑張れよフォレオちゃん」
「ん、なに? フォレオ誰かに服を作ってあげる予定なの?」
「あ、えっとその……はい」

 また気まずそうにフォレオが言う。ああ、もしかしてあれかな、プレッシャーとか感じてるのかもしれない。
 ここは、ほぐしてあげないといけないわね。

「大丈夫」
「エポニーヌ?」
「あたし、フォレオの作るお洋服とか小物、とっても良く出来てるし素敵だって思ってるわ。それにフォレオが気持ちを込めて作ったものなんだから、もらう人はとっても幸せ者。あたしだったら嬉しくなっちゃうから」
「……」

◇◆◇◆◇






 あ、あれ? どうして、そんな目を丸くしてあたしを見やがりますか?

「あはははっ、お前ら面白いコンビだよ。本当にさ」

 店主が豪快に笑う。気づけばフォレオは顔を赤くして下を向いてしまった。
 確かに人が往来するこんな場所で注目されるようなことがあったら、こうなっても仕方ないか。っていうか、これあたしの所為じゃないか。

「え、えっとフォレオ。その……」
「つ、次行きましょう」

 駆け足でフォレオは先に行ってしまう。

「あたし、もしかしてまた間違えちゃったのかな……」

 少しだけあたし自身のテンションが下がっているのがわかる。
 でも、仕方無いよねと思いつつ、フォレオの後を追った。

◇◆◇◆◇




 そこからしばらくはフォレオに連れられて街道を歩いていた。話は時々するけど、なんというか少しだけ気まずい雰囲気があった。
 そして、あることに気づく。

「……」

 フォレオは気づいていないようだけど、妙な気配が点々とあるのがわかる。
 しかも、この舐めまわすような感じ、あたしはよく知っている。

「エポニーヌ?」

 数は二人から三人と言ったところ、このまま街道を進んで逃げ切るというのは難しそうだった。市場も来た時よりは混雑の度合いは低くなっているから、目的によってはここでことを起こされる可能性があった。

(誘拐なら、そう簡単にはさせないけど、暗殺となれば話は別ね)

 そして、こちらはほぼ丸腰だった。フォレオも魔道書を持っていないようだから、身を守るすべは体術くらい。それも相手に通用するかはわからない、となると……
 静かにフォレオの手を握る。突然握られてびっくりしたのか、何もしゃべらなくなった。気まずい中でやることでもないけど、こっちは使命があるから仕方ない。
 周囲を見回して、その路地裏に静かに駆け込んだ。

「えっ、エポニーヌ? いきなりどうしたんですか!?」
「ちょっと、黙って付いて来て」

 路地裏に入ってすぐに走り始めた。少しだけ距離をもらえたけど、それはすぐに近づいてくるだろうと考えてまた路地を曲がる。曲がってすぐに目についた半開きの扉を見つけるとそこに入り込んで扉を内側から閉めた。

「エポニ――んっ」
「フォレオ静かに」

 フォレオの口を手で静かに塞ぐと、理解したようにフォレオが静かになる。そして扉越しに聞こえてくるのは予想通り三人ほどの足音だった。

『向こうに行ったはずだ!』
『くそ、あの王子のオカマ息子だけなら楽だと思ったのによ』
『勘の鋭い臣下がいなけりゃ今頃……』

◇◆◇◆◇










 流石に今はスイッチが入らない。
 フォレオの命が掛っているというのはもう認めなくてはならない事実であるからだ。自然とフォレオを抱き寄せる。
 ここにいるということを確認したいというようにだ。

『しかし、すぐにいなくなったりするのか? もしかしてどこかに入り込んだんじゃ……』

 心臓が跳ね上がる。さっさと走り抜けなさいよと心で悪態を吐く。吐いたって今の状況が改善されるわけでもない。

『たしかにな。ここら辺、結構空き家があるからな。どこかに潜り込んでても不思議じゃねえ』
『それじゃ、手当たり次第に開けて行くとしようか、見たところあの二人は丸腰だからな』

 最悪の展開だった。自然と手に力が入る。久しぶりの絶体絶命、しかもよりもよってこの日にかと。

「エポニーヌ……」

 か細い声が聞こえる。それは不安になるに決まっている。今の会話はフォレオの耳にも届いているはずだから。

「ごめん、あたしがもうちょっと、早く機転を利かせられれば」
「そ、そんなこと、僕が買い物に行こうとしなければこんなことにならなかったはずですから」
「いやいや、あたしはフォレオの臣下なんだから、付いて行くの事だから。もしもの時は、あたしが食い止めるから、フォレオはさっきの店主さんの場所まで逃げてね」

 あの店主ならフォレオを守ってくれるだろう。ああ、すごくいい材料が揃ってるのに、まったく想像が捗らない。
 そのことからもあたし自身結構焦っているのだと理解した。
 と、そこで壁一枚隔てた隣から音が響いた。賊が部屋を調べ始めたらしい。しかもよりによって隣からとか、運が悪いにもほどがある。

◇◆◇◆◇









「そんな、エポニーヌを置いてなんていけません」
「そんなこと言われても、あたしの使命はフォレオを守ることなんだから、臣下よりも先に主君が死んだなんてこと、あたし絶対に嫌だから」
「僕だって、エポニーヌが死ぬなんて……、そんなこと」

 やっぱりフォレオはやさしいいい子ね。こんなあたしのことを心配してくれてるんだから、なおさら死なせるわけにはいかない。
 隣の部屋で大きな音が響いた。どうやら調べが済んだみたいで、ぶっきらぼうな足音がついにあたしたちの隠れている扉の前で止まる。

「!!!!」

 息が自然止まってしまう。背中を流れる冷汗の感触と、ドキドキと脈打つ鼓動は言い訳できないほどに恐怖を感じていた。
 それを紛らわせるようにフォレオをしっかりと抱き寄せる。視線は扉だけに向けたままに、ドアノブの回転が始まる。

「エポニーヌ」
「……大丈夫」

 顔は見ないでそうあやす。
 なにも大丈夫なわけがない、あたしが止めたところでフォレオが店主の元にちゃんと辿りつけるかもどうかわからないのだ。
 これなら無理をしてでもソレイユかオフェリアを連れてくるべきだったのかもしれない。今となっては後の祭りだけど。
 回転が止まった。木製の効果音に合わせて扉が開いて行く。
 にじり寄る足音が部屋に一歩入ってきた。もう、一刻の猶予もないと動こうとした時だった。

「兄貴! 向こうに一つだけ鍵の掛った扉がありやした!」
「なんだと!? どこだ!」
「こっちです!」

 踏み込んできた足が踵を返して立ち去っていく。そして少ししてあたりから気配が消えた。そう、確かに消えた。
 これはチャンスだと、すぐにフォレオの手を取ってそこから飛び出す。飛び出して一気に来た道を掛け抜けた。

◇◆◇◆◇










 賊との距離はそう遠くはないはずだからと、急いで大通りに戻る。
 人混みは少しばかり戻っていたので、そこに混ざり込む様にして入り、少しして流れから抜けると近くにある椅子に腰かけた。
 久しぶりの緊急事態にも相まって心臓がバクバクと音を立てていた。座って息を落ち着かせようとしてみるが、これが中々うまくいかない。
 フォレオも顔を真っ赤にしていた。そりゃ、走り回ったから当然だよねと、周囲をもう一度確認する。
 妙な気配は感じない、どうやら撒けたようだと溜息を洩らして、同時に頭を下げた。

「フォレオごめん!」
「な、なにがですか……、エポニーヌ」
「その、危険な目に会わせちゃって。はは、なんかあたしがいるとフォレオに迷惑がいっぱい掛っちゃうね」
「そ、そんなことありません。だって、エポニーヌがいてくれたから僕はこうして無事なんです。ありがとうございます、エポニーヌ」

 そう言ってくれた。正直、うれしいことだった。臣下としてこれほどに嬉しい言葉はないかもしれない。あっ、やばい、顔が熱くなってきた。

「な、なんだか恥ずかしいわ。その、こうやって褒められるとね……」

 自然と笑顔になってしまう。ああ、どうしよう、こうやって友達に素直に感謝されるというのは、恥ずかしい反面とてもうれしいのだ。
 しかし、このままではいけないと視線を向ければ、フォレオは顔を真っ赤にしてそこにいた。中々熱引かないのかなと、御凸に手を当てると、きゃっ、と可愛らしい声があがる。
 困ったことに、本当に可愛いかった。

◇◆◇◆◇







「え、エポニーヌ」
「……熱があるってわけじゃないみたいね。よかった、これで熱になってたら皆になんて言われるか……」
「みんな、みんながどうしたんですか?」

 そう言ってくる。そういえば、こっちはそれなりに意識していたというのに、フォレオはあまり気にしている様子はなかったなと思う。
 いろいろと物事に追われている身なのかもしれない。そう考えると、ある意味本人が忘れているというのは一番のサプライズ要素かもしれない。
 そんなことを思った。
 日の位置を見る。そろそろいい時間だと私は腰を上げた。いっぱい走った所為で崩れた襟やマントを正す。
 なんだか見られている気がして、振り向けばフォレオがこっちを見ていた。

「あ、いや、その……ごめんなさい」

 なんだかだいぶ慌てているけど、一体何を謝っているのか全く分からなかった。
 ここの憲兵に賊のことを伝えてさっさと王都に戻ろうと、再びフォレオの手を取る。

「流石に賊がまた狙ってこないとは限らないから、街を出るまではね?」
「は、はい……」

 しっかりとフォレオも手を握り返してくれた。
 やっぱりフォレオの手は温かくて柔らかいなんて思いながら、あたしは静かに帰路を急ぐことにした。

◇◆◇◆◇










 王都に戻ったところでたどり着いたのはフォレオの屋敷である。今日一日の終着地はここであった。
 というよりも襲撃事件があったわけだから、王都についてさよならというわけにもいかないし、ここにフォレオと一緒に来ることが今日の目的でもあったのだ。

「ありがとうございました、エポニーヌ。色々と助けてくれて」
「いいからいいから、主君を守るのが臣下の勤めなんだからさ」
「僕はエポニーヌと……その一緒に出かけられるだけでもうれしかったから……」

 そうモジモジと言ってくれる。仕草の一つ一つが何だか可愛らしい、だからフォレオは総受けなのよね。
 そして最後の仕上げに入ることにする。

「それより、フォレオ」
「なんですか、エポニーヌ?」
「本当はここからが本番なんだ」

 そうしてもう一度フォレオの手を取って走り始める。フォレオの屋敷の入口の鍵は掛っておらず、それを静かに開ける。
 その出来事にフォレオはとても驚いているようだったけど、そのまま入ったところで止まって踵を返した。
 屋敷の大きなエントランスの中、多くの装飾がなされたその空間を見てフォレオはぱちくりと瞬きし、少ししてあたしを見つめる。

「これは、一体」
「あはは、なんだか騒がしい一日になったし、その色々と迷惑かけちゃったけど、うん、せーの!」

 あたしの言葉を合図に一斉に破裂音が木霊して、色鮮やかな紙吹雪が宙を舞うと、みんながこぞって顔を出し始める。
 その光景にフォレオはまたもや混乱しているようだった。

◇◆◇◆◇









「え、ええっ」
「ははっ、本当に忘れてたんだフォレオ。てっきりオフェリアとソレイユが来られないって聞いたときに察してるかと思ったたんだけど」

 あたしの発言でようやく今日が何の日か理解したようで、フォレオの顔がだんだんと驚きと喜びが沁み渡り始める。

「今日って僕の誕生日だったんですね、すっかり忘れてました。えっと、もしかして皆さん、僕のために準備してくれたんですか?」
「そういうこと、ふふっ、でも予定の会議が無くなっちゃったから、少しだけハラハラな一日になっちゃったけど、とりあえず」

 あたしは腰の物入れに入れた物を取りだす。一度、家に寄って回収したそれ、お気に入りの特性袋に入れたそれ。

「エポニーヌ、いいんですか?」
「良いんですかって当たり前、むしろあたしからいつもありがとうってことで。気に入ってくれるとうれしいけど」
「そんな、気に入らないなんてことないですよ。ありがとうエポニーヌ、えっと中身は何かな?」

 と、フォレオはいきなり開けようとする。まて、なんで他の皆のは開けないのにあたしのだけ開けようとするのよ!
 さすがにそれは恥ずかしいので、フォレオを止めると、少しだけ不満そうに顔を膨らませた。
 いっぱい怒っているのかもしれないけど、どう見ても可愛くて総受けです。本当にありがとうございました。

「そ、その恥ずかしいから。パーティーが終わった後にしてよ」
「……そ、それもそうでした。ごめんなさい」
「そ、そうよ。それに、まだちゃんと言ってなかったからね」
「?」
「えっと、フォレオ、誕生日おめでとう」

 あたしは少しだけ気恥しく思いながら、フォレオににこりとほほ笑んだ……。
 大丈夫、いつものイヤラシイ笑顔じゃないはず、これで大丈夫だと思う。

「ふふっ、ふふふふふふふ」

 フォレオの返答はありがとうとかではなく、可愛らしい笑い声だった。

◇◆◇◆◇








 フォレオの誕生日会は無事に終わってあたしは帰路についた。
 母さんであるリリスはすでに眠っているようで、父さんは例の交易街の件で遅くなるとレオン王子言っていた。
 それとレオン王子に息子を守ってくれてありがとうと褒められた。
 いや、問題が起きないようにするのが臣下としての務めなのかもしれないから、正直喜ぶかどうか悩んだ。
 でも、今日は色々と疲れていた。疲れていたから、自然と体は部屋へと向かう。部屋の寝具の下には母さんからも認められている私の宝物がある。
 そしてお気に入り『僕を箱庭に閉じ込めて~縛られた劣情~』の入った袋を取り出す。
 今日一日で色々なことがあった、あったからこそ今のあたしの頭の中は新しい夢の国への片道切符で多いに溢れている。
 疲れ切った体に入れるビールの一杯と同じで、我慢できないと袋を開いた。
 まずは、囚われのフォレオ、しかしその美貌にやられた賊が争い始めて――っていうシチュで行こう!
 そして勢いよく中身を取り出した。






『奇麗な編み物写し絵本』

◇◆◇◆◇









 はて?

 こんなもの、あたしのお宝にあっただろうか?

『奇麗な編み物写し絵本』

 いやいや、そもそもあたしこんな可愛い裁縫しないし。

 そうか疲れているのか、うん、久々の絶体絶命に気が動転しているだけ。

 頬を叩いて、目を思いっきり一度瞑る。

 そして本をもう一度見る。

『奇麗な編み物写し絵本』

 どうやらこれは間違いなく編み物の本のようだ。

 っていうか、これはフォレオのために準備したプレゼントだ。

 それがここにある。

『奇麗な編み物写し絵本』

 特製の袋に入ってここにある。

 そういえば昨日、この本とお宝を同じ袋に入れていた。

 で、今、ここにあるのは編み物の本。

 じゃあ、あの会場で渡した袋。

 あの特性袋の中身は―――




『僕を箱庭に閉じ込めて~縛られた劣情~』




 つまり……



 これは……



 なるほど……



 そういうことにな――



「いやああああああああああああああ!!!!!」

 
 その日、あたしは久しぶりに大きな悲鳴を上げ、夜は更けていった。



~フォレオ誕生日番外おわり~

 今日はフォレオの誕生日。誕生日おめでとうフォレオ。

 次にやる番外フォレオ×エポニーヌ番外のアバン的な形で、誕生日番外って言うことになります。
 フォレオとエポニーヌの異性だけど同性友達みたいな関係、結構好き
 
 本篇は明日ということで

 明日は第十六章の続きで、フォレエポの番外本篇はもう少し後になります。

 あとエロかどうかですが、今のところは非エロの予定ですのでよろしくおねがいします。

◆◆◆◆◆◆
―シティホール・オペラ劇場―

バシャン

『 闇へと 進み行く』

『虚ろな白亜の王座 己を すべてを欺いて』

『紡ぐ理 黒曜 鈍く 崩れ落ちて』

『光去り行く 黄昏』

『独り思う』

 ヒュオオオオオオッ
 
ガロン「ぐうあああっ……ぐっ、ぐおおおあああああああああ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「この歌は……まさか」ガタッ
 
 ザブンッ

カムイ「あっ」

 ガシッ

カミラ「カムイ、いきなり立っては危険よ。揺れが収まるまでは下手に動かない方がいいわ」

カムイ「す、すみませんカミラ姉さん。あの先ほどの歌は……」

カミラ「ええ、聞いたことがあるのは確かよ。偶然だと思いたいところだけど……」

カムイ「一体何が起きているんですか?」

カミラ「さっぱりよ。灯りが消えて、いきなり水が荒れ始めたわ。暗くて何が起きているのかも理解できそうにないわ。でも、普通じゃないことは確かよ」

カムイ「とてもよくないことが起きている気がします」

カミラ「ええ、よくないことが起きているのは間違いないけど、このままじゃどうすることもできない」

マークス「カムイ、カミラ。大丈夫か、ぐっ」

カムイ「はい、なんとか、それにしてもアミュージアのショーは何とも過激なんですね」

マークス「過激では片づけられん、まずは何が起きているのかを把握しないことには―――」

「ぐおあああああああああっ!!!!!!」

カミラ「!?」

マークス「これは、父上の声!? くそ、灯りは、灯りはまだ戻らないのか!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガロン「ぐあああっ、ぐうぉおおお」ガタガタガタ

暗夜兵「ガロン王様、お気を確かに!」

暗夜兵「あの歌姫が歌い始めた途端に苦しみ始めた。何かしらの呪いでもかかっているんじゃないのか?」

暗夜兵「くっ、誰でもいい、あの歌姫を―――」

ガロン「ぐうううおおおおおあああ……はぁはぁはぁっ……っ!」ガタリッ

 チャキ

暗夜兵「ガロン王様、立ちあがっては危険です!」

ガロン「ヤメロォ」

 タッ タッ タッ

ガロン「ソノミミザワリナウタヲ……

 スッ

ガロン「イマスグ、ヤメロオオオオオオオオ!!!!!!」

 ブンッ

暗夜兵(ベルヴェルクをステージに向かって投げた!?)

 グルングルングルン

???「!!!!」

 ドガッ

???「きゃああっ!!!!」

 ドサッ

 ザブンッ ザブンッ

 ザブンッ

 ………

暗夜兵「す、すごい! この距離から投擲して当てるなんて! 流石はガロン王様だ!」

暗夜兵「おい、会場では何が起きている! 早く灯りの復旧を……」

 ボッ ボッ ボッ
 ボボボボボッ

暗夜兵「あの歌姫、運が良いやつだ。棒の部分が当たって生きてやがる」

暗夜兵「だが、あの攻撃を受けたんだそう早く動けるわけもない。早く下にいる兵に指示―――」

 パシュッ

 ドスッ

 ドサリッ

暗夜兵「!? なっ、一体どこから……!!!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カミラ「灯りが戻ったようね」

カムイ「水面も穏やかになったみたいです。ですがさっきの大きな音は一体」

カミラ「!」

???「……」ヨロヨロヨロ

カミラ「カムイ、ステージ奥に歌姫が逃げるようよ。でも、負傷しているみたい」

カムイ「分かりました。ここで待っているわけにはいきません、早くあの歌姫を―――この気配は……?」

カミラ「えっ?」

マークス「な、これは!?」

 ザザザザザッ

カミラ「弓兵!?」

白夜弓兵「最後の機会だ! 弓を構えろ!」

 チャキチャキチャキチャキ

 キリキリキリキリキリキリ――

マークス「白夜の弓兵!? くっ、忍びこんでいたというのか!?」

カミラ「一体何を狙っているというの、二階に向けて弓を向けて……まさか」

マークス(……まさか、あの射線の先は!)

ガロン「……はぁ、はぁ……」

マークス「父上!」

カミラ「お父様!!!!」

白夜弓兵「ガロン、数々の侵略行為、その報いをここで受けるがいい!」

ガロン「……」ニヤ

白夜弓兵「そう笑っていられるのも今のうちだ、お前の死を持ってこの戦争を終わりにさせてもらう!」

マークス「やめろぉぉぉ!!!!」

 チャキッ ダッ

カミラ「マークスお兄様、一人じゃ危ないわ!」

カムイ「くっ、カミラ姉さん、歌姫は後です。今は、マークス兄さんを!」

カミラ「わかっているわ」

マークス「うおおおおおおおっ」

 タッ タッ
 
 ブンッ ザシュッ

白夜弓兵「ぐおおあっ」バシャンッ

マークス「はぁはぁはぁ……、父上に手を出すな!!!!」

ガロン「……」

マークス「父上!!!!」

ガロン「……」チラッ

マークス「今、今すぐ助けに……」

ガロン「       」ボソッ

マークス「え?」

白夜弓兵「放て!!!!!!!」

 バシュバシュバシュバシュ

マークス「なっ……」

 ザシュザクッ ドスドスドスッ

ガロン「……こふっ」ポタタタタタ

 ズササッ

ガロン「くくっ……」ポタビチャリッ

 ドサッ

マークス「父上……」

白夜弓兵「やった、やったぞ! ガロンを蜂の巣にしてやった!」

白夜弓兵「ああ、しかし、あの悪魔がそう簡単に死ぬとは思えない。もう一射、全員構――」

マークス「うおおおおおおおおおっ」

 タタタタッ ダッ

マークス「はああああああっ!」ザシュッ

白夜弓兵「ぐあああっ」バシャン!

マークス「貴様ら、よくも父上を……許さん!!!!」

白夜弓兵「ちっ、暗夜王さえやれれば問題なかったが、これでは仕方あるまい。全員、暗夜兵の排除を許可する。容赦するな!」

白夜弓兵「いくら暗夜の王子といえど、こううまく動けなければ、戦えまい!!!!」

 パシュッ

 サッ

マークス「ひれ伏せ!!!!」ダンッ

 ドサッ

 ヒュンッ

 キィン

マークス「くっ!」

白夜弓兵「よし、このまま撃ち殺してしまえ!」

白夜弓兵「もらっ―――」

 タタタタタタタッ ダッ

マークス「な、なんだ!?」

白夜弓兵「!!!! 新手か」

???「なんかわからねえけど、ピンチっぽいし、これでどうだっと!」

 シュオオオオンッ

???「おらよっと!!!!!」ドゴンッ

 ビチャ バシャンッ

マークス「い、一体何が……」

???「ふー。おっ、やっと見つけたぜ」

マークス「誰だ、お前は」

???「え、ああ、この姿じゃわからねえか、俺だよ俺、フランネルだよ」

マークス「なっ」

 シュオオオンッ

フランネル「へっへーどうよ、これが本当のガルーの力ってやつさ」

マークス「……そうか、これがお前の本当の姿ということか……」

フランネル「まぁな、で、これはなんのお祭りなんだよ」

マークス「祭りではない、奇襲を掛けられたのだ」

フランネル「そうか、あのよ、いろいろしてもらったからってわけじゃないけど、マークスがどうしてもって言うなら手伝ってやってもいいんだぜ?」

マークス「……そうか。ならば手伝ってもらおう。やりたいように奴らを切り刻め、容赦する必要はない」

フランネル「そっか、それじゃ、言葉に甘えさせてもらうぜ。ワオオオオオオオン」

 ザシュッ ドサッ

カミラ「マークスお兄様!」

マークス「カミラ、カムイ」

カムイ「一人で戦われるのは危険ですよ」

マークス「すまない、だが……父上が、くそ、私がいながら」

カムイ「まだ死んだと決まったわけではありません。ですが、早く誰かを治療に向かわせないと、手遅れになってしまいます」

マークス「わかっている、だが……」

カムイ「どうしたんですか?」

マークス「……」

ガロン『      』

マークス「いや、なんでもない。すまない、気が動転しているようだ」


レオン「マークス兄さん、姉さん達も。無事だったんだね!」

カムイ「レオンさん! エリーゼさんとサクラさん達は?」

レオン「ツバキに指示を出して、すぐに逃げてもらった。ここにいさせるわけにはいかないからね。それで父上は……」

マークス「特別来賓席にまだいるはずだ。しかし、あのような攻撃を受けて、まともに動けるとは思えない。そもそも生きているのかどうかすら」

カミラ「ええ。かなりの矢を受けてしまっていたわ。とてもじゃないけど、生きていたとして今までのような生活が送れるとは思えない。でもまだ――」

マークス「しかし、一体何があったというんだ。あの歌姫が現れた途端……まさか、あれも白夜の差し金か!?」

カムイ「わかりませんが、まずあの歌姫を捉えるべきでしょう。それに、続々とやってきたみたいですね……」

???「そういうことだ」

 ザッ

クマゲラ「ふっ、飛んだ邪魔が入ったが、概ね計画通りと言ったところだな」

レオン「邪魔? すべてお前たちがやったことだろう!? よくも父上を……」

クマゲラ「そう騒ぐな若いの。俺はクマゲラ、この戦争を終わらせる可能性に賭けるために、ガロンの首を貰い受けに来た」

リンカ「なっ」

 ダッ

カムイ「リンカさん?」

リンカ「クマじい……」

クマゲラ「久しぶりだなリンカ、里を抜ける前に顔を合わせて以来だな、元気そうでなによりだ……」

リンカ「クマじい、なんであんたがここにいるんだ!」

クマゲラ「言っただろう。戦争を終わらせる可能性に賭けるためにガロンの首を貰い受けに来たとな。ここでお前達が何もしないというのなら、これ以上の戦闘はせん。ガロンの首を白夜に持ち帰らせてもらう。そしてこの戦争を終わらせる」

マークス「ふざけるな。このような卑怯な手口、許されると思っているのか」

クマゲラ「暗夜の王子マークス、お前は白夜の立場にあったとして、その騎士道とやらで今の状況を打開できると本気で思っているのか?」

マークス「なに」

クマゲラ「確かにこのような暗殺という手口、好むものではない。正々堂々と力でお前達に打ち勝ち、白夜の勝利としたいが。生憎、そのようなものに洒落こめるほど、こちらは余裕などないのでな。だが、最後くらいはお前達と妥協なしの力比べをさせてもらうことするか」グビグビグビグビ

 ポイッ   ポチャン

カムイ「最後の力比べですか。もう小細工はない、そういうことですね?」

クマゲラ「ああ、強いやつが生き残る。単純明快な、ガロンの考えそのものだろう?」

マークス「父のあり方をわかったようなことを言うな! 貴様は、私が直々に――」

 サッ

リンカ「……」

マークス「下がれ、いくらカムイに仕える者の知り合いであろうとも――」

リンカ「勘違いするんじゃないよ。止めるつもりはない、だけど、あたしもクマじいと最後の力比べをさせてもらいたいだけだ」

マークス「勝手にするがいい、私も私の要領で戦わせてもらう」

クマゲラ「……ふっ、まだわずかな時間しか過ぎていないというのに、その身に力が宿ったというのか?」

リンカ「クマじい、手加減はいらない。全力であたしも行かせてもらうだけだ。だって、それがあたしだって知ってるだろ?」

クマゲラ「そうだな」

白夜兵「クマゲラ様、―――」

クマゲラ「ふっ、そうか。もう気にする必要はないということだな。よし、全員武器を抜け」

 チャキ チャキ チャキ カチャ

マークス「カムイ、私はこれからお前の指示に従おう」

カムイ「わかりました、私とカミラ姉さんは歌姫を追います。早くしないと見失ってしまいますから」

マークス「ああ、残りの敵のことは任せておけ。このような行い、必ず後悔させてくれる」

 タタタタタタタッ

フランネル「ふぃー、んじゃ俺もマークスについてくぜ」

カムイ「あなたは?」

フランネル「俺はフランネル、よろしくなっ」

カムイ「はい、よろしくおねがいします」

マークス「フランネル、お前は好きに戦うといい」

フランネル「へっへーそう言ってくれると思ったぜ」

リンカ「あたしの邪魔をするんじゃないぞ」

フランネル「なんだ、おまえ。そんな格好で寒くないのか? 変わってんな」

リンカ「……」

マークス「無駄口はそこまでだ」

クマゲラ「へっ、三人か、こりゃ中々歯ごたえのある力比べになりそうだぜ」

 クルクルクルクル パシッ

カムイ「それでは皆さん、戦闘を開始してください」

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア・シティホール『エントランス』―

カザハナ「ツバキ、こっちよ」

ツバキ「ああ、サクラ様、こちらに」

サクラ「はい、エリーゼさん……あれ?」

カザハナ「サクラ、どうしたの?」

サクラ「ど、どうしましょう、エリーゼさんとはぐれてしまったみたいなんです」

ツバキ「ええっ、一体どこで!?」

カザハナ「この人込みの中で探すなんて、ちょっと難しいわよ」

サクラ「エリーゼさん、どこですか! 返事をしてください!」

 エリーゼサン!

エリーゼ「サクラ、ごめん。でもあたし、ここでじっとなんてしてられないよ!」

 タタタタタタッ

エリーゼ「おとうさま」

エリーゼ(待ってて、今から今からあたしが助けに行くから! だから、だから、無事でいて)


―特別来賓席―


ガロン「………」

ガロン「……」ドロ

ガロン「…」ドロドロ

 ムクリッ

ガロン「……タリヌ」ドロドロ

暗夜兵「」

 ズズズッ ズズズッ

 バリッ グチッ バキャッ

 バリバリ ボリボリ

ガロン「……クハハハ」

ガロン「マッテイレバ、エサガクル。マッテイヨウデハナイカ……」

「コノデクトオナジケツゾクノニクガクルノヲナ……」

 今日はここまでで

 歌を歌ってしれっと帰ってくるアクアさんの強かさよりも、全く気付かない主人公たちのほうがやっぱり凄い気がする。
 SDのデータが吹き飛んで初回暗夜と初回白夜のデータが消えていることに気が付いた。絆の暗夜祭までにどうにかしないと。
 フォレエポのエロか、純愛かそれとも凌辱的なものなのか。どっちのイメージかな?

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 次の戦闘に参加しないキャラクター
・サクラ、カザハナ、ツバキ、エリーゼ、アクア

 次の戦闘で固定になるチーム
・チームマークス(マークス、フランネル、リンカ)

○カムイ、カミラと一緒に戦うチーム

・チーム盾魔法(レオン、エルフィ)
・チーム孫と祖父+(ギュンター、ニュクス、サイラス)
・チーム城塞コンビ+(フローラ、ジョーカー、ブノワ)
・チーム暗夜ガールズ(ピエリ、フェリシア、ルーナ)
・チーム移動迎撃(ゼロ、ベルカ、シャーロッテ、ラズワルド)
・チーム元白夜(アシュラ、スズカゼ、モズメ)
・チーム不運の魔道書(ハロルド、オーディン)

 先に三回名前の挙がったチームにしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

◆◆◆◆◆◆
―シティホール『オペラ劇場』―

 タタタタッ グラグラッ

ピエリ「えいっ! やあっ!」

 サッ

白夜侍「遅い!!」

 ダッ ブンッ

 キィン

白夜侍「!?」

カミラ「うふふ、女の子に手を出すなんていい度胸ね、あなた。」

白夜侍「ならば、戦場に出てこなければいいことだ、ここに出てきて性別も何もあったものではない!」

カミラ「確かにそのとおりねっ!」ブンッ

白夜侍「ちっ」

 サッ

 ザッ

白夜弓兵「よし、これで、どうだ!」
 
 パシュッ

ルーナ「甘いわ。フェリシア、今!」

フェリシア「はい、それっ!」フッ

 ザシュシュ

白夜弓兵「ぐおおっ」ドサッ バチャン

白夜侍「くっ、だが今なら!!!!」

 ダッ!

白夜侍「喰らえええええ!」

カムイ「そうは行きませんよ」サッ
 
 キィン ギギギッ ガキィン ザシュッ

白夜侍「ぐっ、む、無念だ……」ドサッ ポチャンッ

カムイ「ふぅ、これではステージ奥に向かうのも一苦労ですね」

カミラ「そうね、いきなり飛んでいきたいところだけど。蜂の巣にされかねないわ」

ルーナ「さすがに泳いでなんて真似はできないし、それにここの水結構冷たいわよ」

ピエリ「でも血がいっぱい広がっててなんだかすごくきれいなの! ピエリこういう赤いお水のお風呂入ってみたいの」

フェリシア「それは、やめた方が……」

ピエリ「なんでなの、体中返り血みたいでとってもきれいなはずなの」

カミラ「ふふっ、そうね。今度、ここにいるみんなで一緒に入りましょ?」

ピエリ「わーい、カミラ様。約束なの!」

カムイ「そうですね、その時はアクアさんも混ぜてあげたいですね」

カミラ「ええ、そうね」

ルーナ「そういえばアクアは大丈夫なの、姿を見てないけど」

カムイ「多分、民間人の避難誘導に向かったのかもしれません。闘うことがすべてというわけではありませんから」

ピエリ「なら安心なの。それより、あの歌姫を捕まえて、えいってしてやるの! 黒い衣装を赤く染め上げてあげるのよ」

カミラ「ふふっ、張り切るのはいいけど。そこは私とカムイに任せて頂戴」

ピエリ「なんでなの? ピエリ敵なら容赦しないって決めてるの」

カミラ「駄目よ、あの歌姫へのお仕置きはカムイと私のお仕事だもの」

ピエリ「そうなの?」

カムイ「はい、考えただけでも腕が鳴りますよ」

フェリシア「はわわわ、カムイ様その厭らしい指のほぐし方はやめてください。はしたないですぅ」

ルーナ「思わず髪の毛押さえちゃったじゃない。敵だとしても、同情を禁じ得ないわ」

カミラ「あら、ルーナは髪の毛を触られると感じちゃうのかしら。ふふっ、いいこと聞いちゃったわ」

ルーナ「いや、違う、違うから! ああ、もうっ! カムイ様、その指の動きやめなさいよ」

カムイ「無理ですね」

ルーナ「即答……。でも、なら早くしないとあの歌姫、攻撃を受けてよろよろだったけど、流石に足止めされてる間に逃げられる可能性があるんだから」

カムイ「ええ、皆さんステージの奥に向かいましょう」

カムイ(あの歌姫……、私の予想がもしも当たっていたとしたら――)

 タタタタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ブンッ キィン
 
 キィン ガキィン

フランネル「おらっ、せいやっ!」ブンブン

 サッ ササッ

クマゲラ「でりゃああああ」ドゴッ

フランネル「いてえ、おっさん、すげえな」

クマゲラ「ふっ、こうやって化けるものは白夜にもいる。向こうは俊敏だが、おまえはどちらかという力が強いやつのようだな、その分も少し鈍い見切るのも容易いだけのことだ」ドゴンッ

フランネル「おわっと。あぶねえあぶねえ」サッ

 ダッ

リンカ「クマじい!!!!」ブンッ

クマゲラ「甘いぞ、リンカ」ギィン

リンカ「ぐっ、くぅ!!!!」

クマゲラ「ふっ、確かに少しばかりは力をあげたようだが。まだ俺のほうが上だ!」ブンッ

 サッ

白夜鬼人「クマゲラ様に続け! 暗夜に白夜の底力を見せつけろ!」

 ザッ

白夜鬼人「!?」

マークス「そこをどけ、雑魚に用はない」

白夜鬼人「くらえええっ」ブンッ

マークス「はあっ!!!」ブンッ

 ザシュッ

 ドサッ

マークス「次は誰だ」

リンカ「すごい」

フランネル「すっげぇな、マークス! 俺も負けてられねえっ。おら、もう一回だ」シュオオオオン

 ダッ

白夜鬼人「でかい……だが、図体だけなら!」

フランネル「ワオオオオォォォン!!!」ザッ グルグル ブンッ

白夜鬼人「ぐぎゃ――」グチャ ボチャンッ

クマゲラ「一撃か、いい戦い方だ」

フランネル「殺すなら一撃のほうがいいだろ。それに相手も苦しまなくて済むしな」

クマゲラ「はははははっ、これは面白いことを言うな。確かにこれなら死ぬのに痛みはなさそうだ」

マークス「命は惜しくない、そういうことか」

クマゲラ「言っただろう。わずかな可能性に賭けているとな。そのために命を賭けない通りはない」

フランネル「なんだか、カッコいいなおっさん」

クマゲラ「ふっ、敵に褒められるというのも癪だが。若いものにそう言われるのは悪くないものだ」

フランネル「いいのかよ、そんな風に褒めてよ。俺、褒められたからって手加減出来ねえぜ」

クマゲラ「望むところだ。かかって来い」

フランネル「そんじゃ行かせてもらうぜ!」ダッ

マークス「フランネル、私もこちらから仕掛ける」

フランネル「任せとけって」

クマゲラ「はっはっは、面白いやつらだ。遊んでやるさ」

フランネル「逃がさないぜ、おっさん!」

マークス「そこだ!」

 サッ キィン

マークス「くっ…」

フランネル「動きいいな、おっさん」

クマゲラ「ふっ、若いものに早々負けるつもりはないさ。これでもお前たちより歳は喰っているからな」

フランネル「もう一度仕掛けるしかねえな」

マークス「ああ」

リンカ「……」

リンカ(やはり、強いなクマじいは。マークスもフランネルもまだ有効打を与えられてない……。こんなので本当に……)

クマゲラ「リンカ、お前だけそこで燻っててどうする。俺との力比べ、勝つつもりなんだろう? 難しいこと考えるのはお前には似合わない。わかってるだろ?」

リンカ「……たしかに。あたしは考えるのは苦手な方だからな」

クマゲラ「なら、さっさと向かって来い、考えなんてのは後でいい。俺はな、最後の最後でお前と本気の力比べができることが楽しくて仕方がない。失望させるんじゃねえ」

リンカ「……やっぱり、クマじいは変わらないな。本当にさ」

クマゲラ「ふっ、お前と力比べができることもそうだが、再び会えたこともうれしいことだ。お前が一族をやめると言ったあの日、もう二度と会うことはないと思っていたからな」

リンカ「あたしが生きていたことは、予想外だったのか。それはそれで、なんだか複雑になるな」

クマゲラ「そうだな。しかし、だからかもしれないな。力比べで負ける度に悔しそうにしてたこと、今でもよく思い出せる。昔は負ける度に半べそを搔いていたか?」

リンカ「は、恥ずかしい話をするな!」

フランネル「ははっ、おっさんと……リンカだっけ? お前ら仲いいな。そんなに仲がいいのに、なんで戦い合うんだよ? 仲良くすればいいじゃん」

クマゲラ「すでに二三人屠っておいてよく言うが、そうだな。そうなればよかったのかもしれないが、今ここにその可能性はない。俺とリンカの間柄など、戦いの場には意味の無いことだ」

リンカ「ああ、改めて言うことでも、それに意味があるわけでもないことだからな。ただ、最後くらいあたしはクマじいに勝ちたい。ただそれだけだ」

マークス「そうか」チャキッ

フランネル「へへっ、なんだか熱いなお前、でもそういうの嫌いじゃないぜ」

リンカ「……マークス、フランネル。すまないが援護に回ってもらえるか? クマじいはあたしの手で倒したい」

マークス「……」

リンカ「駄目か?」

マークス「ふっ、よかろう。リンカ、お前の戦い見せてもらうぞ」

フランネル「いいぜ、でもしくったら、俺が攻撃するからな」

リンカ「ああ、わかっている。それじゃいくぞ、クマじい……!!!」
 
 ダッ

クマゲラ「……」

クマゲラ(そう、それでいい。王子はこんなことに乗ってくるかどうかわからなかったが、これでこの会場の戦力はほとんど俺達だけに集中した。あとは向こうに任せよう)

◇◇◇◇◇◇
―オペラ劇場『特別通路前』―

 タタタタタタッ

暗夜兵「ガロン王様は!?」

暗夜兵「わからない、だが話によると矢で撃たれたと聞いている。このまま進めばガロン王様のいる来賓席に行ける。救護の必要もあるはずだ。すでに数名が向かったはずだが、安心はできない。俺たちも向かうことにしよう」

暗夜兵「ああ、くそ、こんなときにガンズ様やゲパルトたちはどこに……」

 サッ

暗夜兵「誰――」

 ブンッ

 ザシュッ

暗夜兵「なっ!?」

 タタタタタッ

白夜侍「どけ」

 ザシュッ

 ゴロンッ

 ドサッ

暗夜兵「」

 ガチャッ

白夜侍「ふぅ、ここまでこれたぞ。特別来賓席までの順路は!?」

白夜侍「はい、この先をあがった先です。暗夜兵はいるかもしれないが、気にすることはない。さっさと走り抜けるぞ!」

 タタタタタタッ

白夜兵「しかし、なんですかね。とても静かですよ」

白夜侍「クマゲラ様が注意を引いてくれたからだろう。ここにはあまり敵がいる気配はしない、これが最後の機会だ。ガロンは体に何十本もの矢を受けたと聞いている、そう簡単には動けないだろう」

白夜侍「これで動けたら化け物の類だけどな」

白夜侍「まったくだ。しかし、クマゲラ様はいつの間にあのような歌姫を忍ばせていたのか。監視していた者の話だと、歌が始まったとたんに苦しみ始めたと」

白夜侍「ああ、一体どうやってたのかは知らない呪詛か何かかもしれないが、あれのおかげでガロンを狙いやすい場所まで誘導させることができたんだ。あとは――」

白夜侍「ああ、これが最後の仕上げだ……」

「ガロンの首を落とし、この戦争を終わらせてくれる」

今日はここまでで

 フォレエポは純愛!
  
 今ずっと待ってるんだけど、配信は日付変更と共にじゃないのか……。
 早く色々な書をください、私のカワイイモブたちがお腹をすかせて待ってるんです!

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア・シティホール『オペラ劇場』―

 ブンッ キィン カキィン

クマゲラ「!」サッ

マークス「奴が下がった、今だリンカ!」

リンカ「ああっ、喰らえっ!」

 ブンッ

クマゲラ「勢いがいいが、まだまだ振り切れていないな、リンカ」

リンカ「くそっ」ブンッ

 スッ

クマゲラ「脇ががら空きだ!」ダッ ブンッ

 カキィン

フランネル「おっと、させねえぜ」

リンカ「すまない」

フランネル「気にすんな。それじゃ、俺も行くぜ!」

 ダッ ブンッ

クマゲラ「ふっ、当たらんわ」

 ダッ

クマゲラ「!」

リンカ「これなら、どうだ。クマじい!!!!」ブンッ

 キィン 

クマゲラ「むっ……やるが、だが、まだまだだ!」

 ギギギッ キィン

リンカ「!」

クマゲラ「でやああああっ」ブンッ

 ザシュッ

リンカ「あぐっ……」フラッ

クラゲラ「くらぇ!!!!」

リンカ「!!!!」

 キィン ブンッ

マークス「……」

クマゲラ「中々に良い所に入ってくる。さすがと言ったところだな」

リンカ「はぁはぁ、……ぐっ……」ポタポタタッ

リンカ(思ったよりも深い……、動くだけで体に針が刺さるみたいに、くそ……)

マークス「大丈夫か」

リンカ「ああ、大丈夫……だ」ポタタッ

フランネル「って、血が出てんじゃねえか」

クマゲラ「ふっ、もう終わりか。所詮、お前の成長はこの程度ということだ」

リンカ「はぁ、はぁ……」

リンカ(この程度……か。あたしの力はこの程度、そういうことなのか……、結局ここで止まってそれで終わりだなんて)

リンカ「……」

マークス「……リンカ。決めるのはお前だ。闘わないというのならその武器を置き今すぐここを離れろ」

リンカ「マークス……」

マークス「戦意を喪失したお前が、ここにいてもできることは何もない。闘うことを望まないのならば……。今すぐにでもな」

リンカ「……」

リンカ「……そんなことできるわけないだろ……こんな無様な終わり方……で」

 スタッ

フランネル「おいおい、何やってんだよ。それ以上動いたら、傷広がっちまうぞ」

リンカ「ああ、そうだな。凄く痛くて困るくらいだ」ポタタッ

フランネル「はぁ、なら休んでろよ」

クマゲラ「リンカ、もう終わりだ。その傷ついた体で何ができる?」

リンカ(……いつもあんたはそう言って、あたしがこれ以上怪我をしないように取り計らってくれたな)

クマゲラ『今日はこれで終わりだ。これ以上やって大怪我でもしたら、族長にどやされちまうからよ。はっはっは』

リンカ(敵になっても本当に、クマじいは変わってない。でも、あたしは変わりたい……変わるために、だからここであんたと戦ってるんだ……)

マークス「それがお前の答えということだな?」

リンカ「ああ、マークス。これがあたしの答えだ」チャキッ

マークス「……」

フランネル「ほんとにいいのかよ?」

リンカ「ああ、フランネルもそんなしょげた顔をしないでくれないか」

フランネル「でもよ……」

リンカ「ここで終わったら、前のあたしのままだ。ずっとずっと、あたしは成長できないまま生きてくことになる、だったらここで死んだ方がマシだ」

リンカ(……体中の血が熱くなってる。こんな感覚は初めてだ。死ぬかもしれないとわかっているのに、体が熱くなる……)

 ググッ

リンカ(体に力が入り込んでくる。本当にここで逃げるくらいなら死んでしまったほうがいい、それでいい)

マークス「……リンカ、指示を」

フランネル「マークス!? いいのかよ、こんな怪我してんのにさ」

マークス「確かにな。だが、リンカの瞳に宿るものはここを節目にしている。どちらにせよ、ここで負ければリンカは道を閉ざすことになる。ならその挑戦を支えるのも悪くはない。全力でサポートする」

リンカ「ああ、任せたよ」

マークス「心得た」

フランネル「はぁ、リンカが諦めてくれたら、このおっさんと戦えるのによ。だけど俺もマークスと一緒だからな」

リンカ「わかってるさ……それじゃ、いくぞ!」

 ダッ

クマゲラ(……死んだ方がマシか、ふっ、なんともリンカらしい考えだ。その答えの覚悟見せてもらおうか)

クマゲラ「さぁ、来いっ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「……」

カミラ「カムイ、どうしたの?」

カムイ「いえ、敵の会場にいる人数が思ったよりも少ない気がして」

ルーナ「そうかしら、暗殺ならこれくらいで事足りてるはずだけど。現にそうされちゃったわけだし」

カミラ「……大丈夫と信じるしかないわ。それに、あの現場にはまだ多くの兵士がいるはず、すでに応急処置は始まってるはずよ。あたしたちのするべきことは、この会場の安全確保なんだから」

ルーナ「それもそうよね。あ、フェリシア、そこ少し崩れてるから気を付けなさい!」

フェリシア「あっ、本当です。ありがとうございます、ルーナさん」

ルーナ「ふふん、あんたのドジは百も承知だから、戦闘以外だと普通に歩いてても転びそうだからね」

フェリシア「ひ、ひどいですぅ。そんなこと、あっ」カッ 

 パシッ

ピエリ「危ないの。注意しないとだめなのよ」

フェリシア「あ、ありがとうございます。ピエリさん」

ピエリ「気にしないの。こんなのと一緒に仕事してたのリリスはすごいの。多分、いっぱい後片付けさせられたはずなの」

フェリシア「そ、そんなことは」

カムイ「ふふっ、そうかもしれませんね」

フェリシア「カ、カムイ様、ううっ、確かに何度か手伝ってもらいましたけど」

ピエリ「やっぱりなの。フェリシア、とってもダメな子なの。ピエリがご主人様じゃなくてよかったの、だってそんな粗相ばっかりしてる子、見つけたらとりあえず、えいってしたくなっちゃうの」

フェリシア「え、えええ~~~」

ルーナ「ふふっ、なら今度ピエリもあたしといっしょにフェリシアのメイド修行に付き合ってみない? この子、あたしの買い込んだカップ全部割っちゃったんだから」

フェリシア「ル、ルーナさぁん! ひどいですぅ、あれは二人の秘密、秘密だって言ったじゃないですかぁ!」

ルーナ「ああ、そうだったわね。ごめんごめん、今度いっぱいカップ持ってきてあげるから」

フェリシア「そんなに必要ありませんよ、この頃は割っちゃう回数も減ってきましたから」

カミラ「本来なら割らないのが普通だと思うけど、ふふっ、ドジな子ね」

フェリシア「ふええぇ、カミラ様まで……」

カムイ「まぁ、フェリシアさんからドジという個性を抜いたら、兵士としての腕しか残りませんからね」

フェリシア「カムイ様の中で私の比率ってどうなっているんですか……」

ピエリ「ピエリはフェリシアの95%くらいはドジで出来てるって思ってるの」

フェリシア「そんな、ひどいで―――! ピエリさん!」サッ

 ヒュン キィン

白夜侍「!? なっ」

ピエリ「えっ!?」

フェリシア「てやぁ!!!」ザシュッ
 
白夜侍「む、無念……」ドサッ

フェリシア「ふぅ、間に合いましたぁ。大丈夫でしたか、ピエリさん」

ピエリ「だ、大丈夫なの……すごいの」

フェリシア「え?」

ピエリ「すごいすごいの、フェリシアすごいのよ」ガシッ

フェリシア「ええっ、な、何がですか!」

ピエリ「フェリシア、理解してないなんておかしいの。どうして、こんなの隠してたの。ピエリに意地悪してたの?」

フェリシア「そ、そんな。だって、私なのに、こんな風に戦闘ばっかりうまくて、みんなからメイドから兵士に転職したらって言われるくらいで……」

カミラ「そうね、今の動きでメイドの仕事ができてるなら、問題ないけど戦闘の時だけなら、そう言われても仕方ないわ」

フェリシア「カミラ様まで……、ううっ、メイドとしての肩身が狭いです」

ルーナ「ちょっと、何言ってんのよ。あたしがちゃんと練習手伝ってるんだから、そんなことで諦められちゃ困るんだから」

フェリシア「ルーナさん……」

ピエリ「そうなの? 練習したらフェリシアも、ドジしない完璧メイドになれちゃうの?」

ルーナ「……あんまり上達しないのよね、これが」

ピエリ「やっぱりなの」

フェリシア「そ、そんなこと言われても……あっ! それっ」サッ フッ

 キィン カラン

白夜弓兵「!? 撃ち落とされた!?」

フェリシア「はわわ、敵がいっぱいいますよ」

ルーナ「もう、なんだかメイドじゃない方がいい気がしてきたわ」

ピエリ「これ宝の持ち腐れなの。ピエリと一緒にえいえいおーした方が、フェリシア返り血で奇麗になれるはずなの」

フェリシア「だ、駄目ですよ。返り血浴びないようにしてるんですから……」

カミラ「結構、凄まじいこと言ってるわね。あの子」

カムイ「ええ、フェリシアさん。戦闘中に返り血を浴びないように動いてるみたいですから。戦闘センスはかなり高いと思います」

カミラ「そう。今度お茶会に招待してあげようかしら、ピエリもルーナも一緒にね」

カムイ「いいと思います。そのためには、あのステージにいる人たちをどうにかして、逃げたあの人を追わないといけませんから」

カミラ「そうね……。ねぇ、カムイ」

カムイ「はい?」

カミラ「そのお茶会、アクアとあなたも呼んでいいかしら?」

カムイ「……もちろんですよ。きっと、そこに私もアクアさんもいます。だから、そんな不安そうな顔をしないでください」

カミラ「……ごめんなさい。それに気の所為かも知れないものね?」

カムイ「ええ、ですから、行きましょう」

カムイ「一体なにが起きているのかを確かめるために――」

◇◇◇◇◇◇
―オペラ劇場『特別通路』―

白夜侍「……どういうことだ?」

白夜侍「まったく敵の気配がしない。もう、ここに入り込んで少しは経ったというのに……」

白夜侍「まさか、逃げられたのでは?」

白夜弓兵「馬鹿な、まだ会場が混乱しているというのに、そんな簡単に抜け出せるわけがない」

白夜侍「ではなんだこの静けさは。我々の足音以外なにも聞こえないぞ」

白夜侍「……どちらにせよ、もう少しで特別来賓席だ。あれほどの矢を受けて動けるわけがない。もしくは助からないと踏んで王を見捨てて逃げ出したのかもしれないぞ」

白夜弓兵「そんなことありえるのか?」

白夜侍「案外、ガロンも人望がないのかもしれない。そうならば、この先の戦いも楽というものだ」

白夜侍「まったくだな。これでリョウマ王子に最高の土産を持って帰れるってわけだ」

白夜侍「ああ、それもこれもクマゲラ様たちのおかげだ、全員気を引き締めていくぞ」

白夜侍(ここを上がり切れば、来賓席のある階層だ。ついに追い詰めたぞガロン……)

 グチャ

白夜侍「」スッ

 ピタッ

白夜侍「……」

 グチュ パキッ

白夜侍「な、何の音だ、これ……」

白夜弓兵「特別来賓席からみたいだな」

 ポキッ バキッ グチュリ

白夜侍「な、なんだ。何が起きている!?」

白夜弓兵「なんか、魔術的なことでもしてるんじゃないのか」

白夜侍「そんなこと――」

 バタンッ ドチャッ ズゥー ベチャリッ

白夜侍「!?」

白夜侍「なにか、出てきた? いや放り投げられてきたのか……」

白夜弓兵「……」タッ タッ

白夜侍「お、おい!」

白夜弓兵「……うっ」

 ココポ プツツ

白夜弓兵(こ、これは人間なのか!? それに、これは暗夜の兵装……、一体何が起こって……)

白夜侍「おい、これは」

白夜弓兵「……とてつもなく嫌な予感がするが、ここまで来て引き下がるわけにはいかないだろ」

 カチャ スッ

白夜侍「……そうだな。ここまで来て、引き返すことはできないからな」チャキ

 チャキッ グッ

白夜侍(幸い扉は開きっぱなしだ……中は……)

白夜侍「……」チラッ

 ビチャ ブチリッ

白夜侍(なんだこれは、まるで大根おろしのように床に広がってるこれは……。まさか肉? 兵装も転がってる……みたところ暗夜のも、まさかこれは人間のなれの果てだと言うのか!? くっ……他には……)

 ピタリ

???「…………」ユラユラ

白夜侍「……誰かがいる。影だけだが、たぶんガロンだ」

白夜侍「他には?」

白夜侍「大根おろしみたいになった仏が何個かある。正直何人かわからん……」

白夜侍(だが、あれほどの矢を受けたというのに、なぜ奴は立っていられる。横になっているのならまだしも立っているだと?)

白夜侍(あいつは体中まんべんなく、大げさに言えば覆い隠されるほどの矢を受けたというのに……)

 トントンッ

白夜侍「!?」

白夜侍「もう俺たちは準備出来てるぞ。どうするんだ」

白夜侍「……不安要素はあるが。目の前にあるのは最初で最後のチャンスに他ならない。ここで、決めるぞ」

白夜弓兵「後ろから援護する。奴の立ち位置は?」

白夜侍「暗幕を締め切っているが、椅子の前に立っている。頭は丸見えだ」

白夜弓兵「了解、ならその頭を俺が最初に打ち抜く。避けられたら、あとは任せる」

白夜侍「ああ、任せておけ」

白夜侍「よし、左右に展開。合図をしたら飛び込む、足もとはかなり滑りやすいはずだ。転んで無様なところ見せつけるなよ」

白夜侍「そりゃ確かに笑い話だ。ガロン暗殺時に転んだ男として、将来名を残すことになるからな」

白夜弓兵「未来の英雄さん方、さっさと始めよう。俺はもう準備できた。この距離なら外さねえからさ」

白夜侍「よし、お前が放ったと同時に俺たちは行く。ちゃんと仕留めてくれよ」

白夜弓兵「任せておけって……それじゃ、いくぞ」

 キリキリキリキリキリ

 スッ

白夜弓兵「……」

白夜侍「……」チャキッ

白夜侍「……」ササッ チャキッ

白夜侍「……」コクリッ

白夜弓兵「!」サッ

 パシュッ――

白夜侍「!!!!」タタタタッ

 チャキッ

白夜侍「ガロン、その命貰ったぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ブンッ

◆◆◆◆◆◆
―オペラ劇場『特別通路前』―

エリーゼ「はぁはぁ、んくっ、はぁはぁ。ここにおとうさまが、あっ……」

暗夜兵「」

エリーゼ「もう、死んじゃってる……。兵隊さんがやられてるってことは、もう誰かが向かっちゃってるってことだよね……」

エリーゼ(この先にもしかしたら白夜の兵士がいるかもしれない。もしも、見つかったらどうなるかわからない。けど……)

 ガチャ

エリーゼ(ここで、立ち止まってられないよ。レオンおにいちゃんのこともカムイおねえちゃんのこともあるよ、でもお父様はお父様だから。だから、間に合ってお願いだから)

 タタタタタッ

エリーゼ「はぁはぁ、まだまだ」

エリーゼ(ううっ、いつも馬に乗ってたから、全然早く走れない。もっと、もっと早く早く!)

 タタタタタッ

 ドタドタドタ

エリーゼ「!」

エリーゼ(上の階から音がする。この上って特別来賓席のある場所……)

エリーゼ「お父様!」

 タタタタタタッ

エリーゼ「うっ、な、なにこの、ごほごほっ」

エリーゼ(呼吸が、辛い……何のにおいなの、これ……)

 ナ、ナンナンダ、ナンナンンダキサマハ!!!!!

 ブンッ ザシュッ

 ドサリッ
 
 ゴロンゴロンゴロン ゴロゴロゴロゴロ

 ゴテンッ

エリーゼ「っっ!!!」

エリーゼ(く、首……向こうから転がって……それにこのひどい臭いも同じ方角から……なにが起きて――)

 ベチャ ベチャ

エリーゼ(な、何か、何かがこっちに来てる……)

 ベチャ ベチャ 

エリーゼ(こ、怖くて……か、体が動かない……)

エリーゼ「だ、誰……」

???「クククッ、ハーッハッハッハァ……」

 ガシッ ドロ バチャ

エリーゼ「お、お父―――さ……ま?」

 バチャ ドロドロドロドロ

???「ヨウヤクキタカ」

「マチクタビレタゾ、デクノチヲヒクムスメヨ……」

今日はここまでで

 白夜侍って書いてて思ったが、なんか、ギター侍を思い出す。

 DLCの報酬、私使い道を見出せない……。ルナでやってもノーマルでやっても報酬変わらないとかね……
 DLCで開示される他の設定が気になるところ、透魔の呪いに関しては一応アンサー出たのでよかった(だとしても、やっぱり解せない部分がある)

 白夜絆祭よかった。とりあえず、フォレオと結婚して話しかけると、すっごくニヤニヤできるから試して損はないレベル。
 皆のお勧めは何かな?
 カンナとアシュラの会話が何とも家族らしくてよかった。
 
 フォレエポの番外はこの十六章が終わった頃だと思います。




 DLC後編でリリス来てくれますよね?(小声)

◆◆◆◆◆◆
―シティホール・オペラ劇場―

クマゲラ(ふむ、まさかここまで違うとはな)

リンカ「っ! はあああっ!」

 キィン ガキィッ サッ

クマゲラ「はぁ、はぁ、ぐっ」

リンカ「はぁはぁ、動きが鈍くなっているぞ、クマじい」

クマゲラ「ふっ、動きが鈍くなっているか……」

クマゲラ(気づいてないのか、頭に血が上っているせいか、それとも……)

リンカ「そこだ!」ブンッ

 ザシュッ

クマゲラ「ぐおおおぉっ……、ま、まだまだあああ」

 ダッ ググッ ブンッ

マークス「そうはさせんぞ」

 キィン

フランネル「おっさん行くぜ!」シュオォォン

 ダッ ドゴンッ
 
 サッ スタッ

フランネル「避けられちまったか、でも関係ねえけどな、リンカ!」

リンカ「ああっ!!!」

 ダッ

クマゲラ(ここまで誰かに身を任せて戦っているとはな。村にいた頃のリンカからは考えられない姿だな)

リンカ「クマじい!!!!!」

クマゲラ(それもこれも、ここに至ったことが起因しているのか。いや、そんなこと考えたところでしょうのないことか)

クマゲラ(しかしなんだろうか、この悔しさのようなものは……)

クマゲラ(ただ、こうして力比べができるだけでも良いと思っていたのに。こうも心に感じるものがあるとは)

クマゲラ(リンカ、お前の成長を見ているというのに、どうしてかそれを悔しく感じてしまうのは、なぜだ?)

クマゲラ「……はぁ、はぁ」ポタタタタッ

リンカ「はぁ、はぁ、……んぐっ」ポタタタ

クマゲラ「ふっ、最初は成長していないと思っていたが、俺の目もしばらくしない内に曇っちまったってことかもしれねえな」

リンカ「まだ、勝負は終わってないのに、何を言い出すんだ」

クマゲラ「……たしかにそうだな」チャキ

リンカ「……」

リンカ(もう、体がふらふらしてる。してるのに、なんでだろうな。全然止まる気になれない、頭に血が上ってるのに、それがありのままに思える)

リンカ「ははっ」

クマゲラ「?」

リンカ「いや、やっぱりあたしにはちゃんと炎の血が流れてるんだなって思ってな。クマじいと戦ってると、ずっと忘れてたこの感触を思い出せるよ」

クマゲラ「……リンカ、お前の血は一族の中で最も濃いだろうからな。それを感じられるなたお前も未だに部族の一人ということだろう」

リンカ「……なぁ、クマじい」

クマゲラ「なんだ?」

リンカ「血のことでずっと悩んでたって言ったら、クマじいは笑ってくれたか?」

クマゲラ「……」

リンカ「ずっと、ずっと、あたしは族長の娘としてふさわしいように振舞ってきた。でも、あたしにはそれほどの力はない、孤高であろうしても一体何が正しいことなのかもわからなかった。意固地に一人で戦って、その結果あたしは暗夜に一度捕らえられてる」

クマゲラ「そうだな、お前のそういうあり方は話に上がっていたからな」

リンカ「やっぱり、そうなのか……」

クマゲラ「ああ、それを矯正するのが俺の役目だった。だが、答えはお前自身が見つけるものだと、俺はそう考えていた」

リンカ「……あたしもそう思ってた。でも、あいつに会ってすべてが変わった。おかしい話だろ、敵であるあたしを臣下にして、あまつさえ友達になろうとか言ってくるおかしな奴なんだ」

クマゲラ「あの暗夜の王女か、確かカムイと言ったか?」

リンカ「ああ、あいつは多くの人を従えて動いてる。あたしもその一人だ。だからわかるんだ、あたしにはまだ自分一人で答えを見つけられるほどの力はないってさ」

リンカ「あいつはこれからあたしたち、いや、もっと多くの物を背負ってくことになる。あたしはずっとそのことを考えてなかった。族長の娘として一族の今後を背負っていくことの意味を、考えたこそさえなかったんだ。そんなあたしに一人で答えを見つける力があるわけなかったんだよ」

クマゲラ「ならば、見つける必要はない、そういうことか」

リンカ「それは違うさ」

クマゲラ「……なにが違うというのか?」

リンカ「どうあがいても今のあたしに皆を引っ張るのは無理だ。だからあたしは支えてもらいながらそれを見つけることに決めた。あたしはずっと一人で大丈夫だって、肩肘張ってきただけのただの餓鬼だったから、それも含めてあたしは人をまとめられる自分になれるまで、力を合わせていくんだ。それが今のあたしの答えだよ、クマじい」

クマゲラ(自分の弱さを認めることなど、リンカからは想像できないが……。あの強い瞳にあるのは、もう誤魔化さないという決心か……)

リンカ「だから、ここでそれをあんたに見せつけてやる!」

 ダッ

クマゲラ(……ああ、そうか)

クマゲラ「……なるほど、そういうことだったか」チャキッ

クマゲラ(この悔しさの正体、それは単純だ。なんだ、リンカの事ばかりに目を向けていて、俺自身のことをすっかり忘れていたとはな………)

リンカ「でやあああああああっ!!!!!!」

 ブンッ

クマゲラ(単純だな、リンカにこの選択肢を選ばせることのできた者に対して、俺は人知れず嫉妬していたのかもしれん)

 キィン ザシュッ

リンカ「!!!!!」

クマゲラ(そんな簡単なものだったとはな。リンカは俺が見ていなければ成長できぬと、どこかで決めつけていた。それが俺の負ける単純な理由なのかもしれん)

クマゲラ「ぐおおっ」ガクッ

リンカ「はぁはぁはぁ、クマじい」

クマゲラ「はは、これで初めての勝ち星だなリンカ……」

リンカ「ああ、うれしいよ。クマじい」

クマゲラ「子供みたいに喜びやがって……まったく、その笑い顔は変わらねえな」

リンカ「それで、この勝負はあたしの勝ち、それでいいんだろ?」

クマゲラ「そうだな、俺の負けだ、リンカ。この勝負はな……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ザシュッ ブシャッ

白夜侍「ぐあああっ」ドサッ

カムイ「これで会場内は最後でしょうか?」
 
カミラ「そのようね。向こうも決着がついたみたいだから」

ピエリ「……それじゃ早く追いかけないといけないの。結構時間が経っちゃったから逃げられちゃうかもしれないのよ」

カムイ「ええ、会場のことはひとまず他の方に任せて後を追いましょう」

 タタタタタタッ

ルーナ「だけど、どこに向かったか当てがあるわけ? このステージの先は関係者用の場所のはずだから、関係者用の出入り口がいくつかあるかもしれないし」

フェリシア「はわわ、どこにいったかわからないと困りますよぉ」

カムイ「そうですね、総当たりになりかねませんが。ここは……」

 ドンドンドン ドンドンドン!

ピエリ「なんか音がするの……」

ルーナ「本当ね。あとなんか声も聞こえない?」

 ダレカー ダレカタスケテ ココカラダシテクダサイー!!!!

カミラ「あの角の先みたいね。行ってみましょう」

ピエリ「ピエリが先に行く、もしかしたら敵かもしれないの」

ルーナ「いや、たぶん違うと思うわよ」

ピエリ「ルーナはおバカさんなの。どこから敵が来てもおかしくない状況なのに。そんな風に構えてるなんておかしな話なの」

ルーナ「な、言ってくれるじゃないの! だったらあたしが先に行くから、ピエリは後から来なさい」

ピエリ「駄目なの、ピエリが先に行くの!」

ルーナ「ちょ、待ちなさいよ!」

フェリシア「はわわ、二人とも確認しないで行くなんて危ないですよぉ!」

カミラ「フェリシアが戦闘態勢に入ってないってことは大丈夫ってことかしら?」

カムイ「カミラ姉さん……」

カミラ「ふふっ、フェリシアもよく見ると可愛い子よね。今度のお風呂とっても楽しみだわ」

カムイ「でも、結構大きなお風呂を準備しないといけませんね。ルーナさん、ピエリさん、私にカミラ姉さん、フェリシアさん」

カミラ「あとアクアもよ」

カムイ「そうでしたね。でも、お風呂にこれだけの人数が入ったらすごい光景になりそうです。なんだか、もみくちゃになってしまう気がします」

カミラ「そう? 私にとっては夢のような世界――」

ピエリ「カムイ様、カミラ様、ちょっと来てなの! なんかおかしなことになってる場所があるの!」

 タタタタタタッ

カムイ「どうしました?」

カミラ「おかしなことって……これは確かにおかしいわね」

カムイ「……これは何か物が置いてるあるみたいですが、松の木でしょうか?」

 ドンドンドン 

カムイ「!?」

 ダレカ、ダレカイルンデスカ!? ココカラダシテクダサイ!

カミラ「いいかしら?」

カムイ「はい、お願いします」

ルーナ「それにしても松の木って、一体どこから持ってきたのかしら? 扉を抑えつけるならもっと簡単な物でもいいと思うけど」

カミラ「ピエリ、ルーナ詮索しないで手伝うの。これ結構重たいの!」

ルーナ「ほんと、結構重たいわねこれ。これを置いた奴って力自慢に違いないわ」

 ズズッ ズズズッ

 ガチャッ

踊り子「はぁ~、よかった。ありがとう、おかげで助かったわ」

ルーナ「気にしないで、それより何してたのよ。見たところ、あんたたち今日のショーに出る子たちじゃないの?」

踊り子「そ、そうだった。もうかなり時間過ぎてて、でも誰も来てくれなかったから一体何が起きたのか」

ララ「あ、あの。舞台は、ショーはどうなったんですか!?」

カムイ「あなたは?」

ララ「私、ララっていいます。その、ガロン王様に指名されて、歌を披露することになっていたんですけど、こんなことになって、あの、どう申し開きをすればいいのか」

カミラ「……残念だけど、ショーは中止よ。今はそれどころではないの」

踊り子「え、どういうこと?」

ピエリ「白夜の暗殺者が攻めてきたの。だからこことっても危険な場所になってるの」

ララ「えっ、そんなことが起きていたんですか……」

踊り子「まさか、そんなことになってるなんて」

カムイ「ほとぼりが冷めるまではここで待っていただいた方がいいと思います。ピエリさん、フェリシアさんはここに残って彼女たちの護衛をしてください。会場の安全が確認されるまでおねがいします」

カミラ「少し聞きたいことがあるのだけど、ここから外に出られる出入り口はどこにあるのかしら? そこから暗殺者が逃げたかもしれないから」

踊り子「ここはすべて一つの出入り口しかない形だから、この通路を進んだ先にある場所からしか外に出れないはずよ」

カミラ「そう、わかったわ。ピエリ、フェリシア、少しの間この子たちのこと任せたわよ」

フェリシア「はい、任せてください」

ピエリ「わかったの、変な奴が来たらえいってするの!」

カムイ「ルーナさんは私達と一緒に。それと、皆さん一つお聞きしてもいいですか?」

踊り子「いいけど、一体何?」

カムイ「あの、ここには今日ショーに出る予定だった方たちが全員集まっているのでしょうか、誰か外に出たまま戻っていない人などは?」

踊り子「今日はガロン王様への催しだったから、全員参加になってたから。それに、ここには全員いるから、誰かが戻ってきてないってこともないわ」

カムイ「そうですか、わかりました。では、しばらくの間はこちらで待機していてください」

カミラ「どうだったかしら?」

カムイ「あそこに今日出る予定だった方たちは全員いたそうですから、やはりあの歌姫は外部の人間ということでしょう」

カミラ「そう、わかったわ。ともかく、先を急ぎましょう。ルーナ先行して頂戴」

ルーナ「任せといて! それじゃ、行くわよ」

 タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

リンカ「……ううっ」

フランネル「大丈夫か、リンカはさ。出血は止まったみたいだけどさ」

マークス「ああ、気を失っているが大丈夫だ。応急処置も済ませてある。問題はない」

クマゲラ「……それで俺をこれから殺すのか?」

マークス「その前に、答えてもらおうか」チャキッ

クマゲラ「なんのことだ?」

マークス「ごまかせると思うな。先の言葉、この勝負はという意味、あれは一体なんだ?」

クマゲラ「はは、聞こえちまったか。まぁ別に隠すことでもないから白状してやるさ、実を言えば俺たちはただの陽動だってだけの話だ」

フランネル「そうなのか、今さっき小細工なしって言ってたのに卑怯だぞ」

クマゲラ「俺達が小細工するわけじゃねえからな。それに、今さら急いだところで遅いだろうよ。もう特別来賓席には突撃部隊が向かってる。あの攻撃を受けたガロンが対抗できることもあるまい。痛みなく首を取ってもらえるはずだ」

マークス「貴様っ!」

クマゲラ「悪く思わないでくれよ、これでも俺たちは必死なんでな。ここで死ぬつもりで釣りあげるのが俺たちの目的なんだからよ。見事にのってくれて助かったよ、王子さんよ?」

マークス「くっ……フランネル。その男を見ておけ、私は父上の元に向かう!」

 ダッ

クマゲラ「間に合うか、いや間に合ってなるものか。ここまで、ここまで来てそんなことが起きるか……」

フランネル「おっさん自らが、ガロンだっけ、そいつを倒せばよかったんじゃねえのか」

クマゲラ「けっ、俺みたいなのは、手を振って目を引き付けるだけでいいのさ。それに、こんなに簡単で豪快な栄誉は必要なやつにあげるべき手柄だかなら」

フランネル「へぇ、そういうこと考えてんのかあんた。いいなそれ」

クマゲラ「しかし、あの王子には悪いことをした。誰だって自分の親の死に目なんてのは見たくもねえものだからな」

フランネル「なんか、おっさん敵なのか味方なのかわかんねえな」

クマゲラ「違わねえな。だが、これで戦争が終わるなら、あとであの王子に八つ裂きにされてもいい。それで気持ちが晴れるならよ」

 タタタタタッ

マークス「はぁはぁ、父上。」

 バサッ フワッ

マークス「むっ?」

マークス(なんだ、来賓席から何か飛び出してきた)

マークス(敵か? いや、それにしては小柄だ。少女くらいの一体なにが―――」

エリーゼ「」

マークス「なっ、エリーゼ!?」

マークス(なぜ、エリーゼが特別来賓席から、サクラ王女たちとともに避難したはずではなかったのか!? このままでは!!!!)

マークス「うおおおおおおおぉぉぉ!!!!!」

マークス(間に合ってくれ。頼むっ!!!!)

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア・シティホール郊外―

 ポタ ポタタッ

???「はぁはぁ、ううっ」

???(あと、少しだった。少しだったのに、こんな形で阻止されるなんて……)

???「うあっ……はぁはぁ」ジワジワ

???(……これで終わりね……。結局私には終わらせることなんてできなかった)

???「あと、あと少しで、泉の場所につける。ふふっ、あなたはもう気づいてるはずよね。あのシュヴァリエの地で歌ったものをそのまま歌ってしまったんだから。もう、誤魔化しきれないもの」

???(……もう、あなたの近くにいることは)

 ヒタッ ヒタッ ヒタッ

???「……湖、ここまで来れば……」

 ピチャン ピチャン

 タタタタタタタッ

ルーナ「カムイ様、カミラ様あそこよ!」

???「!」

カミラ「見つけたわ、カムイ!」

カムイ「止まってください!」

 ピチャン

???「っ!」

???「ユールラリーユレリー」

 バシャン バシャシャシャ 

ルーナ「水がいきなり暴れて、ちょっと何よこれ!」

カミラ「これじゃ、近づけない」

???「……」

 ピチャン ピチャン

カムイ「待ってください!」

???「……」ピタッ

カミラ「そんな布で顔を隠すのはよしなさい。アクア」

ルーナ「え、カミラ様、何言って……」

???「………」

 ファサ…… 

ルーナ「えっ!?」

カミラ「……信じたくないけど、本当にあなただったのね…アクア」

アクア「……ええ、そうよ」

カムイ「……アクアさん」

アクア「カムイ、ごめんなさい。こんなことになってしまって」

カミラ「なんでこんなことをしたのか、理由を教えて頂戴。あの白夜兵もあなたの差し金だとでも言うの?」

アクア「……そう思ってもらっても構わないわ。どのみち、そう考えるしかない状況だもの」

カミラ「勝手なこと言わないで、アクアちゃんと話して頂戴、そうじゃないとわかることもわからないわ」

アクア「いいえ、もう、だめよ。私はガロン暗殺の首謀者でしかないわ。そんな私を匿ってもいいことなんて何もないわ。最悪、反逆者にされて殺されてしまう」

カムイ「まだそうと決まったわけじゃないです。アクアさん、何があったのか教えてください。貴女が私を支えてくれたように、私もあなたを支えたいんです、だから――」

アクア「……カムイ。あなたはやさしいのね」

カムイ「私のことは関係ありません。早くこちらに――」

アクア「でも、これは私が招いたこと。それに皆を巻き込むことはできないわ。だから――」

「ごめんなさい、カムイ」

今日はここまでで

 設定で水を通り抜けて透魔に至れるのはカムイとアクアだけなんだって。

 あと二回くらいで今回の章が終わります。
 各キャラクターの上級職に関することですが、次の休息時間でおおむねすべてのキャラクターがどれになるかを安価で選んでいただく形になると思います。

 エルフィ親のミタマが筋肉筋肉してて、やはり筋肉は偉大だなって思った。あとミドリコの劇薬印にされるカゲロウの作品。

 絆の暗夜祭、ここで皆が選択してくれた組み合わせがあるといいな。
 

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア・シティホール郊外―

アクア「♪~ ♪~」

 シュオオオオンッ

ルーナ「なんか、水がすごく暴れ始めてるんだけど」

カミラ「アクア、何をするつもり!?」

アクア「……」

カムイ「聞く耳持たずですか。なら、力づくでもどうにかするしかありません」

 ダッ

カムイ(うねっていても、ただの水ならこのまま突っ切ればいい!)

 ザシュンッ 

カムイ「っ!!!」ポタポタ

カミラ「カムイ!」

カムイ「大丈夫です……っ!」ポタポタタッ

カムイ(なんですかこの水は……まるで刃のよう。切断されるとまではいきませんが、こんなものに飛び込んだらただでは済みませんね)

アクア「♪~ ♪~」

 バシャンッ

ルーナ「カムイ様……なら、これで!」チャキッ ブンッ

 ヒューンッ キィン

 クルクルクルクル ガサッッ

カミラ「向こうに飛んでってしまったわね」

ルーナ「ちょっと、なんてことするのよ! あれ結構高かったのに! ……それにこれじゃ、何投げても届かないじゃないの!」

カムイ「……そうかもしれません。でも、ここで何も知ることもできずに終わるわけにはいきません」

カミラ「でも、どうするの。あの中に入り込むなんて、最悪死んでしまうかもしれないわ」

カムイ「……私はアクアさんを引き留めるなら命を掛けてもいいと思ってます」

カミラ「スパって言ってくれるわね。やっぱり少し妬いちゃうわ」

ルーナ「でも、だからって……」

カムイ「ルーナさん、私はずっとアクアさんに守られてきたんです。そして、ここでもしもアクアさんと別れることになったら、守られたまま終わってしまうことになります。ルーナさんはそんなこと許せないでしょう?」

ルーナ「……それは当然よ。貸しだけ作られて、返せる相手がいなくなるなんて、そんなの許せないわ」

カムイ「ええ、私はアクアさんに勝ち逃げされたくなどありません。今回も静かに何かをして、本当ならうまく行くと踏んでいたのでしょうから。でも、それは失敗した。そして私達に見つかってしまった。だから、もう終わりだとそう思っているんです」

 チャキ

カムイ「そんなこと許しません。アクアさんとは交わした約束があるんです。その約束を守ってもらわないといけませんから」

カミラ「……ふふっ、約束を破るのはいけないことね。やっぱりお仕置きしてあげないといけないわ」

ルーナ「たしかに約束は守ってもらわないとね。それで、どうするの。あれに気合いで突っ込むなんていう、そんな作戦だったら承知しないわよ」

カムイ「すみませんが、そういうことになります」

ルーナ「へっ?」

カムイ「流石に段取りなんて言うものを準備するには時間がありませんから。もうやるべきことは決まっています」

カミラ「だけど近づけたとして、アクアは説得に応じる状態とは思えないわ」

カムイ「そうでしょうね、だからこうやって刃を振り回してる。そうすれば諦めてくれると思いこんでいます。だから、その考えを壊してあげようと思います。これを使って」

 パシッ

カミラ「それは竜石、まさか……とは思うけど」

カムイ「そのまさかです」

ルーナ「そのまさかですって……かなり危険じゃない。その方法」

カムイ「人の体では無理でも、竜になった私なら、あのがむしゃらな水の中を越えられるかもしれません。もちろん一発勝負ですし、無傷なんて調子のいい結果になるとは思っていません。それに、結構乱暴なことをしようとしてますから。終わったらアクアさんに嫌われてしまうかもしれません」

カミラ「だけどチャンスは今しかないんだもの、それだけで十分すぎることよ。カムイ、私達がするべきことを教えて頂戴、しっかり遂行してあげる」

ルーナ「カミラ様の言う通りよ。ささっと、やってアクアを確保するわよ」

カムイ「はい。一カ所だけでいいです、カミラ姉さんとルーナさんで攻撃を当ててください。波の動きも一度動けば少し弱まるみたいですから、そのわずかな隙を突いてみます」

カミラ「わかったわ。水も暴れ方が変わってきたみたい。感じ的に時間は無さそうよ」

カムイ「はい、では行きますよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シティホール・オペラ劇場『会場』―



 タタタタタッ

マークス「くっ」

エリーゼ「」





 ダキッ ドサッ

マークス「くっ……はぁはぁはぁ」

エリーゼ「……」

マークス「エリーゼ!」

マークス(体中血だらけではないか。ま、まさか、もうすでに!?)

エリーゼ「はぁ……はぁ……んんっ」

マークス「……息はある。うなされているだけか……、外傷もない……。これはすべて付着しているだけの血か……」

マークス(エリーゼ、父上を治療するために向かってくれていたのか。しかし、そのエリーゼがなぜ気を失って放り出されてきた。白夜の突撃部隊が生かした? いや、生かすのであれば、こんな風に外に投げる必要もない、その場に置いてくれば済むことだ。一体、何が起きている――)

 バタンッ

マークス「!?」

ガンズ「へっ、なんだ、もう片付いちまったのか。急いで戻ってきたって言うのによ」

ゲパルトP「本当ですね。もう、敵と思える者もいないようです」

ゲパルトS「えー、魔法でぶっ飛ばせると思ってたのに。なんだか拍子抜けだよ」

マークス「ガンズ、ゲパルト! 今までどこにいた」

ガンズ「これはこれはマークス王子、御苦労さまです」

マークス「あいさつはいい、貴様らこの緊急事態に一体どこで何をしていた!?」

ガンズ「我々は外周警備に回されていたのですよ。ガロン王様から直々に命令されましてね。しかし、避難する客に道を塞がれ、到着が遅れたというわけです。しかし、やはりマークス王子、白夜の襲撃者も軽く撃退するとはさすがですな」

マークス「……だが、父上が……」

ガンズ「? ガロン王様がどうかなされましたかな」

マークス「父上は重症を負っているはずだ。今すぐ、特別来賓席に――」

ガンズ「……?」

ゲパルトP「マークス王子、あなたが何を言っているのか私には理解できません」

マークス「言っているだろう! 父上が――」

ガンズ「おやおや、あまりの状況に混乱されているのですか? たしかに、ここで狙われるということはあまり考えていなかった故かもしれませんが。その発言は父であるガロン王様に失礼というもの。慎まれた方がよろしいかと」

マークス「な、何を言って――」

???「ガンズ、どうした?」

マークス「えっ?」

ガロン「……マークスよ、何を慌てている」

マークス「ち、父上」

ガロン「ふっ、どうした。まるで我がここにいることが信じられないというような顔だな?」

マークス(なにが何が起きている。私は幻でも見ているのか!?)

ガロン「ふむ、マークスよ。騒ぎを起こした者たちは片付いたようだな。我の命を狙うとは、つくづくおろかな連中よ」

マークス「父上、お怪我は」

ガロン「怪我? 怪我とはなんだマークス」

マークス「先ほどの白夜の攻撃で、父上は……体に矢を」

ガロン「ふっ、あのような下劣な攻撃が我に当たるわけはないだろう?」

マークス「しかし、父上はあの時……」

ガロン「くどいぞ、マークス。それとも何か、我が無傷であること、それが不満であるのか?」

マークス「……いいえ。そんなことは、ご無事で何よりです父上……」

ガロン「そうか、ふっ、どうやら敵に生き残りがいるようではないか」

ガンズ「ほんとだな。ガロン王様、ここは私にお任せを」

ガロン「そうせくな……。まだ、逃れられたとホッとしているものたちがいるかもしれん。ガンズよ、あの捕虜とこの会場の関係者をすべてここに集めよ」

ガンズ「わかりました。ゲパルト兄弟、聞いた通りだ」

ゲパルトP「わかりました。行きますよ、弟よ」

ゲパルトS「兄さん、わかったよ。はぁ、人を殺せると思ったのになぁ」

 タタタタタタッ

マークス「父上、一体何をするつもりなのですか?」

ガロン「お前が気にすることではない。マークス、お前も来るがいい、エリーゼは他の者に任せておくがいい」

 スタスタ スタスタ

マークス「父上……」

エリーゼ「……はぁはぁ……ん、んんっ……お父様……」

マークス「エリーゼ……」

マークス(父上は特別来賓席にいたはずなのに、なぜエリーゼと一緒に降りてこられなかった。あのとき矢を受けた父上は一体何だったのだ? それに、まるで父上はエリーゼのことなど気にしてすらいなかった。エリーゼが特別来賓席に向かったはずなのに、なぜだ?)

マークス「何がどうなっているというんだ……」

 ガチャッ

 タタタタタッ

サクラ「はぁはぁ……エリーゼさん! どこですかー!」

カザハナ「サクラ、まだ安全って決まったわけじゃないのよ! ああ、もうっ、先に行かないでってば!」

ツバキ「仕方ないよ。エリーゼ王女がどこにいるのか分からないから。ん、あれってマークス王子じゃないかな?」

カザハナ「あっ、見て、マークス王子のところ!」

エリーゼ「……」

サクラ「エリーゼさん!」

 タタタタッ

マークス「サクラ王女たちか」

サクラ「ごめんなさい、私達が見失ったばっかりに……、あの、エリーゼさんは……」

マークス「大丈夫だ。こんなに血で汚れているが、外傷はない。気を失っているだけだ」

サクラ「そ、そうですか。よかった……」

カザハナ「ふぅ、見失った時はどうなるかと思ったけど……」

マークス「いや、エリーゼも考えて行動していた。それを止めることをサクラ王女たちに頼むのは酷というものだ。それより、エリーゼのことを頼めるか?」

サクラ「はい、もちろんです。カザハナさん」

カザハナ「わかったわ。えっと、マークス王子」

マークス「すまない」

 スッ ビチャ

カザハナ「血でびちゃびちゃじゃない」

マークス「すまない、服を汚してしまうだろうが我慢してほしい」

カザハナ「いいよ、そんなこと気にしないから。服は替えが利くし、もし汚れてもレオン王子に用意してもらうから」

サクラ「カザハナさん……」

マークス「ふっ、レオンも大きなものを抱えることになったようだな」

カザハナ「……それってどういう意味?」

マークス「ふっ、どういう意味かは自分で考えるといい」

カザハナ「なんか納得いかないけど、まぁいっか」

サクラ「私たちは昨日のお屋敷に戻っていますね。ここにいては迷惑になると思いますから」

マークス「ああ、護衛にエリーゼの臣下たちも連れて行くといい」

ツバキ「助かりますー。それじゃ、サクラ様、カザハナ行こうか?」

カザハナ「ええ、そうね」

サクラ「それじゃ、マークスさん。私たちはこれで……」

マークス「ああ……。エリーゼのこと、よろしく頼んだぞ」

サクラ「はい」

 タタタタタタッ

マークス「……父上の後を追わなくては……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―アミュージア・シティホール郊外の泉―

アクア(……カムイ。もうそんなことしなくてもいいのよ)

アクア(これは私が招いた結果なんだから、それをあなたが取り繕う必要なんてない。私の読みが甘かっただけ)

アクア「♪~ ♪~」

アクア(だから、もう、私を助けようとするのはやめて……)

カミラ「それっ!!!!」シュオオンッ

ルーナ「えいっ!」ブンッ

 ボワッ キィン! バシャンッ

カミラ「カムイ!」

ルーナ「カムイ様、今よ!!!!」

カムイ「はい!!!!」

 ダッ バシャンッ

 ザシュザシュ 

カムイ「ぐうっ、ここからです。アクアさん!」シュオオオオンッ

カムイ・竜状態「グオオオオオオッ!!!」

アクア「♪~」

 バシャン ビチャン

カミラ「! 回復が早い!?」

ルーナ「うそ、意図的に変えた!? ちょっと、何やってんのよ、あんた!!!」

アクア(本当に何をやってるのかしらね。カムイをこの戦いから救うために動いたのに、こうしてカムイを傷つけているなんて)

アクア(出会って、助けあってきたのに……こうして私自身がカムイを傷つける側になる。これも、あいつの筋書きだとすれば。私も踊らされているだけなのかもしれない)

アクア「♪~」
 
 ズオオオ バシャ

カムイ・竜状態「ッ!!!! グオオオオッ!」

アクア(カムイ……)

カムイ『私と一緒に手を汚してくれますか?』

アクア(……ごめんなさい。私はあなたと一緒に戦うということを選べなかった。すべて自分でどうにかできると、あなたを救えるとそう思ってしまったから) 

カムイ・竜状態「グオオオオオオッ!!!!」

アクア(だから、もう私はあなたと手を取って進むことはできないの。あなたの隣で、いつか見つける光景を見ようって決めてたのに……ごめんね……)

アクア「♪~ ♪~」ポタッ ポタッ


 シュオオオオオオオオオオッ

カミラ「泉が光ってる!?」

ルーナ「なんなのよ、これ!?」

カムイ・竜状態(……アクアさん)

アクア『だって、カムイの信頼できる人になりたいもの』

カムイ・竜状態(シュヴァリエの一件の後に、あなたはそう言ってくれましたよね? そうなりたいって私自身に言ってくれましたよね?)

 ググッ

カムイ・竜状態(アクアさん、どうして私がこんなに必死にあなたを繋ぎとめようとしてるか分かりますか? どうして、あなたの言葉を覚えているのかわかりますか?)

 グググッ

カムイ・竜状態(私はあなたに見てもらいたいんです、いずれ至る私の選択の結果を。そしてその言葉が理想じゃないってことを知ってもらいたいんです、だから――)

カムイ・竜状態「グオオオオオオオオオオオオオオツ!」
 
 ググググッ

 ザシュ バシュッ!!!

カムイ・竜状態(アクアさん、今だけ痛いのを我慢してください)

カムイ・竜状態「グオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!」

 グググググッ バシャンッ

 ダッ ブンッ

 ガシッ

アクア「ぐっ……あっ」

アクア(!? 水を、抜けられた!? だめ、歌を続けないと――)

 グググッ

アクア「あっ、ぐううっ、あああっ」

アクア(喉を、これじゃ、声が出せ……ない)

 シュオオオオオ……

カミラ「水が治まり始めてる」

ルーナ「光も弱くなってきたみたい。カムイ様、すごい信念ね」

 ………

アクア(道が……消え……る。だめ、もう力が……入らない)

 バシャンッ!

 ゴポゴポゴポゴポ……

 コポコポコポ……

カミラ「………」

ルーナ「………」

カミラ「……」

ルーナ「って、二人とも沈んじゃってるんだけど!」

カミラ「本当ね……早く助けに行きましょう」

ルーナ「わかってる。でも、どうや―――」

 タッ バシャン

ルーナ「直接ってことね。カミラ様の恰好ならすぐ行けるけど……、この装備のままじゃ、あたしは沈んでくだけになっちゃうわ」ポイポイポイッ

ルーナ「よし、いくわよ!」

 タッ バシャン

アクア(……ここは、水の中……。そう、阻止されてしまったのね。あなたに)

カムイ・竜状態「……」

アクア(カムイ……)

カムイ・竜状態「……」

アクア(あの時みたいね……。あなたが初めて暴走した時のよう……)

カムイ・竜状態「……」

アクア(私の首をあなたが掴んで。そんなあなたに私は、まだあなたのことを知りたいの、あなたと別れるのはとても嫌なのって……)

カムイ・竜状態「……」

アクア(…おねがい、だから戻ってきてって、そう言ったのよね)

カムイ・竜状態「……」パリンッ ポロポロポロポロッ

アクア(……あなたは戻ってきてくれた。でも、私は……)

カムイ「……」

アクア(………あなたにとっての信頼できる人になれなかった。私はあなたを先に裏切ってしまったから)

 スゥ……

カムイ「……」

アクア(……カムイ……ごめん……なさ……い)コポポポ

カムイ「……」ギュッ

アクア(…………)コポ………コポポ 

アクア「………」




カムイ「……」スッ 




 コポコポコポコポコポ………



アクア(……)



(………ん…あたたかい…)

今日はここまでで

 次でこの章は終わりになります。
 
 透魔に行ったら呪いに掛るが、未だに禁止ワードがわからない。そこらへんもDLCでわかるととてもうれしいんだけど、果たして。
 カムイは元から呪いに掛ってた可能性(透魔生まれ的な意味で)
 
 泡沫の記憶編ってカンナの父親母親が子世代の誰かだったりすると、かなり修羅場になりそうな物語だなって思った。
 早く水曜日と木曜日にならないかな。

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア・シティホール『オペラ劇場』―

 ざわざわ…… ざわざわ……

フェリシア「よかった、会場はもう安全なんですね」

ピエリ「みたいなの。白夜兵の姿もないし、暗夜の兵がいっぱいだから、きっと大丈夫になったのよ」

フェリシア「はい、あとはカムイ様にカミラ様、ルーナさんが戻ってくればもう大丈夫ですね」

ピエリ「なの、ちゃんと命令通りにこの子たち護衛できたの、終わったらカミラ様からご褒美においしいケーキ御馳走してもらいたいの!」

フェリシア「なんだか、子供っぽいんですね。ピエリさんって」

ピエリ「子供じゃないの、ピエリはピエリなの。フェリシアがドジでも戦闘のエキスパートでもフェリシアなのと変わらないの」

フェリシア「ピエリさん。でも、何かおかしい気がするんです」

ピエリ「?」

フェリシア「だって、もう戦闘が終わってるなら。踊り子さん達は避難してもいいはずなのに、なんで、会場に呼ばれるのかなって……」

ピエリ「フェリシアは心配性なの」

フェリシア「でも……」

踊り子「ステージがめちゃくちゃね。これじゃしばらくの間はショーもできそうにないわ」

ララ「でも、みんな無事だったんですから」

踊り子「たしかに、その通りね。劇場が直るまでは暇つぶしを見つけないといけないけど」

ララ「えへへ、そうですね。あっ……」

ララ(あれは、ガロン王様?)

ガロン「これで全員か?」

ガンズ「はい、ガロン王様。すでに劇場の舞台管理者などは避難していたようですが、奥の控え室に歌姫たちが残っていたと」

ガロン「ほぅ?」

ガンズ「先ほど、マークス王子の臣下であるピエリから兵が聞いて来た話によると、歌姫たちは扉が開けられずに避難ができなかったと」

ガロン「そうか……なるほど。そういう風にしたということか、中々に頭を働かせるではないか……」

マークス「……」

レオン「マークス兄さん」

マークス「レオンか、他の者たちは?」

レオン「大丈夫、みんな大きな怪我はなかったから、今はシティホールの外で避難してきた人たちの誘導をしてもらってる。父上も無事だったみたいだね」

マークス「あ、ああ」

レオン「……ねぇ、父上は瀕死の重傷のはずじゃなかったの。まるでそんなことなかったみたいにみえるけど

マークス「わからない、私も何が何やらわからないのだ。来賓席からエリーゼが落ちてきて、父上が無傷であったことも、不可解過ぎて理解ができん」

レオン「……。それでこれは一体何事?」

マークス「父上が残っている者たちを集めている、何か考えがあってのことだ」

レオン「……考えって言っても、この状況はまるで……」

マークス「……」

クマゲラ「……むっ?」

 カツ カツ カツ

ガロン「お前か、暗殺を企てた愚か者というのは……」

クマゲラ「だったらどうした? 愚か者なりに工夫を凝らしたことを褒めてくれるとでもいうのか?」

ガロン「口は達者なようだ。では本題に入らせてもらおうか……あの歌姫はどこだ?」

クマゲラ「なんのことだ。あいつは俺たちの計画とは何も関係の無い赤の他人。当たるなら余所を当たれ」

ガンズ「ガロン王様に向かってなんたる暴言、未だに命が繋がっているのがガロン王様の配慮があってのことだとわからないとは。やはり白夜は野蛮人の集まりということだ」

暗夜兵「ハハハハハ」

クマゲラ「知らんものは知らん」

ガンズ「さっさと白状しろ! てめえは負けた、ならこちらの言う通りするってのが筋ってもんだろうがよぉ!!!!」 ブンッ ドガッ

クマゲラ「ぐおっ、ぐうっ」

ガンズ「力が無い負けたやつはな、こうやって力ある者に支配されなきゃいけねえ。しかも野蛮人と来れば、奴隷として扱われるだけでも涙ものの処置だって言うのになぁ。それも暗殺の首謀であるのにも関わらず、こんなに長生き出来てんだ。最高だろぉ?」

クマゲラ「……これなら死んだ方がマシというものだ。しかしお前、自分の顔を水面や写し身で見たことがないようだ」

ガンズ「なに……?」

クマゲラ「これほど見なりとあり方が理想的な野蛮人など、広いこの世を探しても、そうそう見つからないだろう。死に行く前にとんでもない記念物を見られるとは思わなかったからな」

ガンズ「なっ――」

 ハハハッ オイワラウナヨ デモ タシカニ アハハハ

ガンズ「上等だ、てめえ。おらっ、おらああああっ!!!!」ドゴッ ゴスッ

クマゲラ「ぐっ、ぐふっ」

ガンズ「死ね、死ね、死ねえええええっ!!!!」

ガロン「ガンズ、もうよい」

ガンズ「ですが、こいつはガロン王様を軽んじておられます。このままではガロン王様の御心が……」

ガロン「ふっ、この男はとても強情なようだ。そして、お前に殺されるように仕向けている。そういうことだ」

ガンズ「? いったいそれはどういうことで」

ガロン「ふっ、決まっているだろう。ここにまだ、奴の仲間がいるからに他ならない。そう、周到に仕組まれていたことだとするならな」

ガンズ「なるほど、それを見越して会場の関係者をここに集めたということですか、流石はガロン王様」

ガロン「くくっ、ガンズよ。あの者たちをここに連れて来るがいい」

ガンズ「はっ」

クマゲラ「ガロン、何をするつもりだ! この暗殺の実行部隊は、もう俺しか残っていないといっているだろう!」

ガロン「往生際が悪いな、お前も。ガンズの言うとおり、やはり野蛮人だ。自身の思ったとおりに事が運ぶと思っている……」

クマゲラ「なんだと……」

ガロン「認めたほうがいい、お前がどのように言葉を連ねようと、懇願してそれを示そうとも。答えなど何の意味も持たぬとな」

クマゲラ「ガロン、何を言って――」

ガロン「おらっ、さっさとくるんだよ!」

踊り子「ちょっと、乱暴しないで……あっ!!!」

 ドサッ

踊り子「いつつっ……あっ」

ガロン「……」

踊り子「が、ガロン王様。え、えっと……わ、わたしたちは、その、ずっと控室で――」

ガロン「そうか、それは難儀であったな。辛かったであろう?」

踊り子「は、はい……それで――」

ガロン「仲間が戦っていたというのに、動けなかったというのはな?」ジャキッ

クマゲラ「!?」

踊り子「え、な、なにを言っているんですか、が、ガロン王様―」

ガロン「理解する必要はない、そう言うものだと受け入れよ」グッ

クマゲラ「てめえ!!!!! やめろおおおおお!!!!」

 ザシュンッ

 パシャッ

踊り子「あ、あえ………なんれ……わたし――あ、あれ、お腹、中身、あぇ、いみ、わか――」

 ドサッ ゴトリッ

レオン「!!!!!」

マークス「なっ……」

踊り子「」

 キャアアアアアアアア

ガロン「協力者が分からぬのなら仕方のないことだ。そうだろう、野蛮人」

クマゲラ「てめえ、それでも人間か。こんな、こんなことして一体何になる!?」

ガロン「貴様が答えを出さないからだ。あの者たちの中にいるはずの協力者を庇う。それとも、この娘がそうであったか? いや違うな。そうだろう、野蛮人?」ニヤッ

クマゲラ「この、悪魔め……」

ガロン「くーはっはっはっは。いいぞ、その顔、どうにもならないことに抗おうとするその顔、実に下らぬいいものだ」

マークス「父上! なぜ、なぜあの娘を。この者たちは、ピエリに連れられてここにやってきた、それをなぜ!?」

ガロン「マークス、疑いある者を手に掛けることに何をためらう? この娘たちはあの歌姫と、いやすでに白夜と繋がっていたのかもしれん。その可能性がある以上、ここで皆殺しにしておくことこそが、後顧の憂いなく物事を進められるというものだ」

マークス「本気で言っておられるのですか、父上……」

ガロン「ああ。そうだ、マークス。お前も手を貸すがよい。向こうに、安全だと思って安堵していた暗殺者の仲間が大勢いる。それを全て斬ってくるがよい」

マークス「なっ……無辜の民を斬れと、そう仰るのですか……」

ガロン「無辜ではない。すでに疑いがある以上、それは切り捨てなければならない存在、ただそれだけのことだ。それとも、我の命令に従えぬか? マークスよ」

マークス「それは……」

ガロン「……もうよい。ガンズ、他のものと協力し、あやつらを斬り伏せよ」

ガンズ「分かりました。イイ女ばっかりだが、ガロン王様の命令とあっちゃ仕方ねえよなぁ。おい、ゲパルト兄弟、付いてこい。たっぷり殺してイイそうだからよ」

ゲパルトP「暗夜に手を出す愚か者ですから、容赦はいらなそうですね」

ゲパルトS「別にどうでもいいよ、殺していいなら子供でも女でも構わないからさ。どんな声で叫ぶのかな、やっぱり歌姫とかだと叫びもすごかったりするのかな?」

ガンズ「ああ、楽しみなこった。それじゃ、マークス王子に代わって、我々に任せてもらいましょう。がーっはっはっは」

ガロン「ガンズよ、この男も連れて行くといい。守ろうとしているものが目の前で殺される様を見せつけてやるといい」

クマゲラ「てめえ、こんな、こんなことが許されると思っているのか! くそ、これが、これが暗夜……いや貴様のやり方か! ガロン!!!」

ガンズ「黙って歩け、この野蛮人が!」ドスッ

クマゲラ「ぐあっ、あああ……」ポタタ

マークス「……」

マークス(これが、これが正義だと言うのか……)

踊り子「いや、放して!」

踊り子「来ないで、こないでえええ!!!! やめて、こんなのおかしい、間違ってる。こんな、こんなことぉ!!!」

ガンズ「がーっはっはっは。叫んだって意味なんてねえのに、どうして叫ぶのか、意味がわからねえなぁ」

マークス(この行為に正義などあるのか。無辜と言ってもいい、そんな者たちを手に掛けるこんな行為に……)

ガンズ「おら、野蛮人のおっさん特等席だ。ちゃんと見ておけよ、お前の仲間がだれかは知らねえが、ここで死んでく様をなぁ」

ゲパルトP「ええ、では最初はガンズ様にお渡しします」

ガンズ「おっ、そうか。なら、一番いいのを殺したいとなぁ。いい声で鳴く奴をよ、がーっはっはっはっは」

マークス(こんな、こんな光景の先に、死んだ者が報われる結果が……あるというのですか……父上)

ガンズ「おっ、おお?」

ララ「ひっ」

ガンズ「これはこれはガロン王様のお気に入りのララではないか。まさか、ガロン王様に気にいられるようにしていたのは、この暗殺のためだったということか。そうに違いないならお前が協力者の可能性は高いなぁ?」

ララ「きゃあああっ。いや、放して、放してえええ、いやあああ」

ガンズ「ははっ、いい声で鳴くじゃねえか。死ぬ時はどんな声か気になって仕方がねえな、っと!」ザシュッ ビチャアッ

ララ「ぐっ、きゃああああ。ううっ、いたい、いたいよぉおおお。お母さん、おかぁさん……ヒグっ ううっ」

ガンズ「おいおい、ちょっと腕が切れただけだろ。まったく、そんなに叫ぶとは、同情を引いて命乞いか。野蛮人の仲間らしい行動だ」

クマゲラ「てめえ、そいつは関係ねえ! 殺すなら俺だけにしろ!」

ガンズ「ガロン王様の言うとおり協力者が誰か答えればよかったんだよ。それとも何か、今になって白状する気にでもなったか」

クマゲラ「知らぬものは――」

ガロン『答えなど何の意味も持たぬとな』

クマゲラ(くっ、こういうことか、ガロン。俺が、いや、俺達が答えられるわけなどないと、すでに見抜いていたというのか。なら、この行為は、この虐殺は、ただそうしたいがためにしているというのか!?)

ガンズ「けっ、やっぱり答えられねえってことか。ならしょうがねえよな」ググッ

ララ「あぐっ、いやあ。足で、腕踏まな――痛い、痛いいいいっ!!!!!」

ガンズ「ははっ、いい声だ。最高だなおい、もっと、もっと鳴けよ。ガロン王様の耳に届くくらいになぁ!」グググッ

ララ「いや、あぐ、おれ、折れ、折れちゃう、折れちゃうから、いや、いやああああああぁあ」

 ボギッ

ララ「っっああああああああああ!!!!!!!!!」

ガンズ「けっ、弱い腕だ。俺の体重も支えられねえとか。まぁ、仕方ねえか、がーっはっはっは!!!」

ララ「ひぐっ、うえええええん。死にたくない、死にたくないよ。こんなの、こんなのあんまりだよぉ」

ガンズ「そうか、死にたくないか。でも残念だが、それは無理な相談だ」

ララ「誰か、誰か、助け……て。だれかぁ」

ガンズ「もう、お前のショーは終わりだ。あとで、団体さんと地獄で合流しな!」

ララ「だれ……か」

ガンズ「おりゃああああああ!!!!」

 ブンッ ドスッ!!!!


ララ「……え」

 ポタッ ポタタッ

クマゲラ「ぐっ……ぐううううううっ」

ガンズ「……何の真似だ、野蛮人よぉ?」

クマゲラ「大丈夫か、娘」

ララ「……な、なんで」

クマゲラ「すまん。俺の力では、少し時間を稼ぐしかできそうにない。すまなかった、俺たちの所為でお前たちを巻き込む形となってしまった」

ガンズ「何話してんだ、この野蛮人が」ブンッ ズビシャ

クマゲラ「ぐっ、はぁはぁ。まったく、こんな死に方は予想外だ。いい歳したおっさんに助けられるなど、お前も災難だな」

ララ「……なんで、……助けて、くれ、るの?」

クマゲラ「……助けてなどいない。まだ、死の中にいるからな。だが、あと少し時間を持たせられれば、良さそうだ」チラッ

ララ「……え?」

クマゲラ「ふっ、今ここは悪魔ばかりしかいないようだが。少なからず、考えの違う者たちもいるようだ、大丈夫だ、こんなことを言うのはなんだが、俺を信じろ」

ガンズ「はっ、なるほど。やはりその娘が協力者だったということか。ようやく答えを出したがもう遅いなぁ。ここにいる奴らは皆殺しだ。そうしねえと、見せしめにならないからな」

クマゲラ「ああ、そうだな。できるものならやってみるといい。もっとも、そのような弱弱しい攻撃では、女子を殺すこともかなわんだろうがな」

ガンズ「そうか…よほど死にたいようだ……。なら、要望に応えてやるとするか。死ね」ブンッ

 ザシュッ ブシャアアアッ

 ゴロンゴロンゴロン…ポチャン

 ピクピクッ ドサリッ 

ララ「……あ、あああああああああ」

ガンズ「けっ、口に気を付ければ、少しは長生きできたのにな。待たせテすまないな、すぐに野蛮人の元に送ってやるよ」

ララ「……」

ガンズ「それじゃあな!!!!」

 キィン 

 ゴトリッ

ガンズ「っ!!!!! な、なんだ。何が起きやがった!」

ガロン「……なんの真似だ? 一介の兵がする冗談にしては、少しばかり行き過ぎているぞ?」

ピエリ「……フェリシア、ナイスなの!」クルクルクル チャキ

フェリシア「……間一髪でしたけど、何とかなりましたね」クルクルクル カチャ

マークス「ピエリ、何をしている!」

ピエリ「ピエリ、会場が安全になってるって思えないの。だから言われた通りに命令を遂行してるの」

フェリシア「はい、カムイ様から安全が確保できるまで、この人たちを護衛するように言われてるんです。命令には従わないといけませんから」

ガンズ「てめえら、こっちはガロン王様からの命令で動いてるんだぞ、それに刃向うことがどういうことか……」

ピエリ「ピエリたちはカムイ様の命令に従ってるの。ガンズと何も変わらないのよ」

ガロン「ほう、我の命令に従えない。そう言うか、一介の兵士という身でありながら」

マークス「ピエリ、今すぐに武器をおけ。」

ピエリ「マークス様ごめんなの、ピエリその命令には従えないのよ」

マークス「なっ……」

ピエリ「ピエリ、確かに殺すのは大好きなの。だから敵を殺すのは問題ないの、でもこれはなんかおかしいって思うの」

フェリシア「そうですよぉ。この人たち、ずっと閉じ込められてたんです。それに、もしも暗殺者の仲間だったとしても、一緒に戦わないで留まっていた理由がわかりません」

ピエリ「それにピエリはガロン王様から命令受けてないの。今はカムイ様からの命令しかないの。だから、カムイ様がもういいって言うまで、命令に従い続けるの。カムイ様の命令に従うようにってマークス様がそう言ったの」

マークス「ピエリ……」

ガロン「……そうか、なら、そのカムイが戻ってくるまで守っていればよい、無論生き残れるとは思えんがな。ガンズ、構わん。二人を含めて殺してしまうがいい」

ガンズ「わかりました。けっ、同じく軍にこんな反逆の種があるとはな」

ピエリ「反逆じゃないの。ピエリ、命令に従ってるだけなのよ」

ガンズ「そうか、なら、そのふざけた命令を出したカムイ王女を呪うんだなぁ!!!!」

 ダッ ブンッ

ピエリ「っ!!! 甘――、きゃうっ!!!」ボンッ

ゲパルトS「はいはい、横がお留守だよ!」

フェリシア「ピエリさん。っ!!!」キィン

ゲパルトP「ふむ、なるほど。強いですね。私の攻撃を受け避け切るとは。ですが、勝てるとは思わないことです」

フェリシア「……ううっ」

ガンズ「おらおら!!!! 三人で一気に叩きのめすぞ!!! 相手は二人なんだからよ、力で押し殺しちまえ!!!」

ピエリ(ま、まずいのこのままじゃ、押し切られちゃうの!)

フェリシア(やっぱり、無理しちゃったのかもしれません、ごめんなさい、カムイ様)

ガンズ「おら、おらおら!!!! これでもくら―――」

 シュオオオオンッ!!! 

ガンズ「ぐおっ!!!! こ、この魔法は……」

ガロン「何の真似だ……レオン」

レオン「……」

マークス「レオン……」

レオン「……僕もピエリ達と同じ意見なだけだ。姉さんが、今この子たちを護衛するように言っているなら、僕もそれに従う。ただそれだけのことだよ」

ガロン「……親に刃向うというのか?」

レオン「命令は絶対。指揮官に従うのは当然のことだって、そして指揮官以外の言葉に従う意味はない、そう父上は教えてくれた。なら、僕のやっていることは間違えじゃないよね?」

ガロン「……ガンズ。構わん、やれ」

マークス「なっ、父上!?」

ガロン「その減らず口、すぐに聞けないようにしてやろう。親に逆らうような者にはな」

レオン「……」

ピエリ「……レオン様。頭おかしいの」

レオン「どうしてそう思うんだい?」

ピエリ「だって、ピエリとフェリシアなら一介の兵士で済むのに、レオン様が同じようなことしたら、いろいろと問題になっちゃうの。レオン様王族なの、これ結構危ないことだと思うのよ」

レオン「確かにそうかもね」

フェリシア「ごめんなさい、巻き込んじゃったみたいで……」

レオン「別にいいよ。それに、ここで虐殺が起きたら、また色々と振り出しに戻りかねないからね。そうしないためにも色々としないといけなかった。ただそれだけだよ」

ピエリ「……やっぱり、レオン様はおバカさんなの」

レオン「……確かにそうかもしれない」

ピエリ「ドジなフェリシアに、おバカなレオン様、それにピエリで凸凹トリオなの!」

フェリシア「ドジのって、ひどいです」

レオン「……ピエリ、後で筆記で勝負しようか?」

ピエリ「お断りなの」

ガンズ「ごちゃごちゃ、話してんじゃねえ。ガロン王様からのお墨付きだからな、容赦なく行かせてもらうぜ。うおおおりゃあああ!!!!」

レオン(どちらにせよ、ガンズたちを殺すわけにはいかない。誰かを殺してしまったら、もう何もかも戻せなくなる。だから、慎重に――)

ガンズ「がーっはっはっは、死ね!!!!! レオン王子!!!」ブンッ

レオン(馬鹿正直な攻撃だ、これなら……)

ガンズ「へっ、これでもくら――」

 タタタタタッ スタッ

???「邪魔です」ドゴンッ

ガンズ「ぐ、ぐおおおおおおおおっ」ボチャン

ゲパルトS「ガンズ様!? あーあー、血の池に落ちちゃった。すごく健康に悪そう」

ゲパルトP「とりあえず、拾い上げないといけませんね」

 タタタタタッ

カムイ「……なにかはわかりませんが蹴り飛ばしてしまいました」

レオン「カムイ姉さん!」

ピエリ「カムイ様、やっと来たの!」

フェリシア「カムイ様、遅いですぅ」

カムイ「すみません、いろいろと手こずってしまったので……。それよりも……」

 ヒイイイッ ウエエエエン

踊り子「」

ララ「ううっ、うううううっ」

カムイ「一体これはどういうことですか? お父様」

ガロン「カムイか、この状況を把握してわからないというのか?」

カムイ「ええ、これぽっちもわかりません。ここにいる方々は関係ないことを確認しています」

ガロン「そうとどうして言い切れる?」

カムイ「暗殺者の仲間だとして、なぜここに残る必要があるのですか? それにもしも彼女達が暗殺者なら、このタイミングを見逃したりはしませんよ」

ガロン「なに?」

カムイ「今まさにこの状況が暗殺に相応しいタイミングですから、お父様が目の前にいて、優位だと思い込んでいる気の抜けた兵しかいないこの状況、逆に危ないとは思わないのですか?」

ガンズ「ぷはぁ、カムイ王女、てめえもガロン王様を――」

カムイ「黙っていてください、あなたの話に耳を傾けるつもりはありません」

ガンズ「なっ、カムイ王――」

カムイ「黙れと言っているのがわかりませんか、この脳筋」

ガンズ「なっ……」

カムイ「……」

ガンズ「ちっ」

ピエリ「な、なんかカムイ様、とっても怖いの……」

フェリシア「そ、そうですねぇ」

ガロン「ふっ、ならば、カムイよ。お前はその逃げた歌姫を捕まえてきたか、その首を持ってきたということだろう? 我とて、その証明さえされれば、ここにいる者たちへの疑いも晴れよう」

カムイ「……」

ガロン「さぁ、カムイよ。その証拠を見せよ」

カムイ「すみませんが、その歌姫は取り逃がしてしまいました」

ガロン「なに?」

カムイ「はい、シティホール外まで追いかけましたが、途中で湖で不思議な力を使われてしまい、その合間に逃げられてしまったのです」

ガロン「……では、証拠はないと?」

カムイ「はい、ですが。私が取り逃がしたという証明はあります。そして、取り逃がしたという失態の罰を受ける覚悟も」カタッ スッ

ガロン「……そうか」

カムイ「はい、ここで彼女らが受けるべき罰はありません。なぜなら、私が唯一歌姫を追いかけて、それを取り逃がしてしまったのですから」

ガロン「………」

カムイ「……」

ガロン「ガンズよ。カムイの首を跳ねよ」

レオン「!!!!父上、それは」

ガロン「ふっ、自身からそう言っているのだ。そうしてやるべきだろう、ガンズやれ」

ガンズ「わかりました。へへっ」

カムイ「……」

マークス「……カムイ」

カムイ「……」

ガンズ「どうだ、今から死ぬ気分はよ?」

カムイ「……」

ガンズ「怯えて言葉も出ねえか。やっぱりただの女って――」

カムイ「やるなら、さっさとやったらどうですか?」

ガンズ「けっ、なら望み通りに、殺してやるよ!!!!!」

マークス「……駄目だ」

カムイ「……」

マークス「カムイ!!!!」

ガンズ「おらあああっ!!!!」

 チャキ

マークス「ジークフリート!!!!」ブォンッ ザシュツ

 キィンン!!!

ガンズ「なっ!? 何しやがる!?」

ガロン「マークス、何の真似だ」

マークス「はぁ、はぁ」

カムイ「……マークス兄さん?」

ガロン「……答えよ、マークス。なぜ水を差した?」

マークス「……私は……」

ガロン「…………興が削がれたな」

カムイ「……」

ガロン「カムイ、此度の件の失態を不問とする」

カムイ「お父様……」

ガロン「お前が取り逃がしたという歌姫の件、我は信じることにしよう。お前のその身を犠牲にしてもよいという姿勢、それを買ってのことだ」

カムイ「では、ここにいる方々は」

ガロン「我の知るところではない。だが、今回の件でアミュージアはそれ相応の立場になるだろう。少なからず属国として、此度の戦争に加担してもらうことになる」

カムイ「……わかりました」

ガロン「……ふん、ではな」

 カツ カツ カツ

カムイ「……あっ」フラッ

 ガシッ

カムイ「んっ」

マークス「カムイ、大丈夫か?」

カムイ「マークス兄さん。はい、何とか」

マークス「嘘をつくな。体中傷だらけではないか。一体何があった?」

カムイ「マークス兄さんこそ、どうして、お父様の命令に背いたんですか?」

マークス「…………すまない」

カムイ「ふふっ、答えが出ないのに、衝動で動いてしまったんですか? なんだか、いつものマークス兄さんらしくないですね」

マークス「ああ、そうかもしれない……」

カムイ「……歌姫の方たちは」

マークス「一人殺されてしまった。私はそれを見ているしか……」

カムイ「……」

ララ「ううっ、ううううっ」

フェリシア「大丈夫ですよ、すぐにすぐに治りますから」

ピエリ「皆、もう安心なの。だから怯えないでほしいの」

カムイ「……なんだか、何もかもが変わってしまったみたいです」

レオン「カムイ姉さん! 大丈夫かい?」

カムイ「レオンさん。すみません、いろいろといない間にご迷惑をおかけしたようで」

レオン「それはもういいよ」

カムイ「それにしても、レオンさんまでピエリさんたちと一緒にいるなんて、一体何が起きたのかと思いましたよ」

レオン「……僕なりに考えてのことだよ」

カムイ「?」

レオン「あの中に、例の歌姫がいないことは予想がついてた。僕に予想がつくんだ、父上だってわかってる。それを知ってて父上は処刑を実行しようとした。そしたら、また周辺諸国に問題を広げる種になってしまう。それに――」

カムイ「それに?」

レオン「姉さんなら、死んでもこんなことをさせないようにするって思ったから。だから、僕もそれに倣うことにしたんだ。操り人形のまま、過してたら守りたいものも守れないって、もう僕は知ってるから」

カムイ「レオンさん……」

 シュオオオオンッ

マークス「な、この光は!?」

レオン「僕のブリュンヒルデが?」

カムイ「私の夜刀神に反応してる? これは――!」

賢者『じゃがいずれ、お前さんと共に歩む暗夜の勇者が現れる。その時、『夜刀神』は姿を変えることじゃろう。長き夜に一つの終わりを迎える存在。『夜刀神・長夜』へと』

カムイ「これが、賢者様の言っていたこと……なんですか」

 シュオンン キラキラッ

マークス「形が変わった?」

レオン「今のは一体なんだったんだ?」

カムイ「ふふっ、勇者というからどんな人かと思っていましたけど、何とも近い場所にいる……ものです……ね。まさか、レオンさんが、勇者だなんて……」

 カランッ

マークス「カムイ?」

カムイ「スー スー」

レオン「大丈夫、眠っただけみたいだ」

マークス「そうか……よかった」

レオン「僕が勇者ね。マークス兄さんももしかしたら勇者なのかもしれない」

マークス「勇者か……さぁ、それはどうだろうな。レオン、カムイのことをよろしく頼む。私は後から屋敷に向かうことにする」
 
レオン「ああ、わかったよ」

マークス「……」

 チャキッ

マークス(暴虐をずっと最後まで見続けていただけの私が勇者のわけあるまい。そんな私にお前は何を望む?)

(長く従い続けることだけに尽くしてきた私に、一体何を求めているのだ? ジークフリートよ………)


第十六章 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアB++
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC+→B
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリC+→B
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB+→B++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB+→B++
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC→C+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB+
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC
(イベントは起きていません)

今日はここまで

 やっぱり、透魔王国の呪いの真実は難しそうだ。

 次はフォレエポ番外と支援イベントのみになると思います

 この章で、このSSでの仲間陣営のキャラクターはすべて出揃いました。今後仲間に加わるキャラクターはいません。
 休憩時間の合間に一定のキャラクターの職を決めていこうと思いますのでよろしくお願いします。
 
 十七章から所々で『指針選択肢』というものを始めたいと思います。
 この物語におけるラストに関係してくる形にしようと思いますので、よろしくおねがいします。

 これから先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。


◇◆◇◆◇

支援会話発生確定の組み合わせ
・ギュンター×ニュクス
・リンカ×ピエリ
・シャーロッテ×モズメ
・ピエリ×ルーナ
・フェリシア×ピエリ
・レオン×エルフィ

◇◆◇◆◇

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 >>241>>242

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行します)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

1アクア×ゼロ C
2ラズワルド×ルーナ B
3ラズワルド×エリーゼ C
4オーディン×ニュクス C
5サイラス×エルフィ C
6モズメ×ハロルド C
7ブノワ×フローラ B
8エリーゼ×ハロルド B
9レオン×サクラ C
10レオン×カザハナ C

 この中から一つ>>243
(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

1ジョーカー×ハロルド C  
2フェリシア×エルフィ B
3フローラ×エルフィ C
4エルフィ×モズメ C
5アクア×リンカ B
6ベルカ×エリーゼ C
7シャーロッテ×カミラ C

 この中から一つ>>244

(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)

このような形でよろしくお願いいたします。

ベルカ

スズカゼ

ラズワルド×エリーゼでよろしく。


ラズワルド×エリーゼで!

◇◆◇◆◇
―北の城塞・書庫―

ニュクス「……」

ニュクス「んー……くーっ」

ニュクス「あ、あと少し……」フルフル

ニュクス「うー、ううううっ……」

ニュクス「……煩わしいわね」

ギュンター「おや、ニュクス様」

ニュクス「あら、ギュンター。珍しいわね、あなたがここに来るなんて」

ギュンター「まるで、この書庫に昔から住んでいたように言われるのですな」

ニュクス「……そうね、ごめんなさい」

ギュンター「いえいえ、馴染んでいただけているのであれば幸いですので。それよりいかがされましたか?」

ニュクス「いいえ、なんでもないわ」

ギュンター「そうですか。私も昔はよくここで書物を取り、カムイ様に読み聞かせた物です」

ニュクス「そう、ギュンターはどんなふうに本を読んであげたの?」

ギュンター「そうですな。あるときは世界を救う勇者のように、ある時は世界を不幸に陥れる悪魔のように。ある時は、世界の状況に関係なく奔放に生きる若者のように。そのような感じでしょうな」

ニュクス「ふふっ、とても楽しそうな読み聞かせね」

ギュンター「そう言ってもらえると幸いですな。おお、この本は……」

 ガサリッ

『恋するリザイア』

ニュクス「……ギュンター、そんなものを読むの?」

ギュンター「ふむ、目が曇っていたようですな。もう少し若ければ、こういった本に手を出してもよいのですが。どうやら見当違いだったようです」

ニュクス「え、えっと、その本だけど、あとで戻して置いてあげるから、そこに置いておいといてもらっていいわよ」

ギュンター「よろしいのですか」

ニュクス「ええ、それくらいできるから」

ギュンター「そうですか、ではよろしく頼みましたぞ」

ニュクス「ええ……」

ギュンター「では、私はこれで失礼いたします」

ニュクス「え、あなたは本を探しに来たのではないの?」

ギュンター「もしかしたら自室にあるかもしれません故、それにニュクス様も作業の最中のようですから」

ニュクス「……そう。わかったわ」

ギュンター「はい、では……」

 カツ カツ カツ

ニュクス「……」チラッ

ニュクス「……」ペラッ ペラッ

ニュクス「……やっぱり、いいわね。これ」

【ニュクスとギュンターの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・訓練所―

リンカ「はっ! せいっ!」

ピエリ「ジーッ」

リンカ「たあっ!」

ピエリ「ジーッ」

リンカ「……」

ピエリ「ジーッ」

リンカ「なんだ?」

ピエリ「?」

リンカ「お前のことだ! ピエリ」

ピエリ「あっ、ピエリのことだったの? 誰かほかの人いるかと思ったの」

リンカ「今、ここにはあたしとお前しかいないだろうが」

ピエリ「それもそうなの」

リンカ「それで、何の用だ。さっきから人のことをジロジロと見て、用があるなら言え」

ピエリ「ん、特に用事はないの。ただ、ここに来たらリンカが訓練してたの。だから見てるの」

リンカ「気が散るから、どっかに行け」

ピエリ「何でピエリがどこかに行かなくちゃいけないの? 訓練所はみんなで使うところなの」

リンカ「……なら、あたしが出て行くぞ」

ピエリ「なら、ピエリも一緒に行くの」

リンカ「なんで付いてくる?」

ピエリ「ピエリの勝手なの」

リンカ「だから付いてくるなっていってるだろう!」

ピエリ「……ふぇ」

リンカ「え?」

ピエリ「びええええええん!!!!!」

リンカ「な、なんでいきなり泣き出す!?」

ピエリ「ふええええん」

リンカ「な、泣くな。ああもう、どうしろというんだ」

ピエリ「ふええええええん!!!!」

リンカ「わかった、もう一緒にいてもいい。だからいいかげん泣きやめ!」

ピエリ「ぐすっ、本当に、本当にピエリいてもいいの?」

リンカ「ああ」

ピエリ「やったの! ピエリ、うれしいの」

リンカ「といっても、あたしは訓練しかすることがない。見ていても退屈なだけだぞ」

ピエリ「かまわないの。早く始めるの、ピエリそれ見てるだけでいいの」

リンカ「はぁ、わかったよ……」

リンカ(今後は見つからないような場所で訓練しないと)

【ピエリとリンカの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・地下街―

シャーロッテ「どうよ。この品揃え」

モズメ「すごいところやなぁ。あたいの地元にこんなもんあらへんよ。あっ、あれなんやろ、いろいろ目移りしてまう」

シャーロッテ「……」

モズメ「あ、このコート。つなぎ目が見えないように工夫しとるんか、でもこれじゃ布結構使い過ぎやないかな? 外歩くのに、こんなにいろいろ付けなくてもええやん」

シャーロッテ「ふふっ」

モズメ「え、なんで笑うん?」

シャーロッテ「いや、なんて言うか。丸々田舎娘だなって思ってね」

モズメ「ひ、ひどいわぁ。確かに国も違うし、国でも田舎もんやったけど……」

シャーロッテ「ふふっ、だからかもしれないわ。昔の私に少し似てるなぁって」

モズメ「えっ、そうなん?」

シャーロッテ「初めてウィンダムの地下街に来た時はね。すごいって思ったんだから。まぁ、表に市場がないって言うのはある意味、衝撃的なことだったけど。それを差し引いても色々な物が置いてあってね」

モズメ「そうなん。なんだか今のシャーロッテさんからは想像できひん」

シャーロッテ「まぁ、夢見る少女じゃいられないってだけのこと。あと、モズメってよくわからない感想を抱くわね」

モズメ「えっと、なんのこと?」

シャーロッテ「だって、服とか装飾見たら、普通は可愛いとか奇麗とか、そう言うと思うのに。布が多いとか、こんなにいらないとか」

モズメ「……色々とあたいの見てきたものと違いすぎるからかもしれへんよ。あたいの住んでた場所もそうやけど、都やない村とかはどれだけすべての物を使うかってことばっかりやったから。正直おしゃれっていうのもわからへん」

シャーロッテ「でも、ちゃんとお洒落してるじゃない?」

モズメ「え? ど、どこ?」

シャーロッテ「その髪飾り」

モズメ「あっ……。これは、お洒落っていうか。その、あたいらしさって言うものやから」

シャーロッテ「馬鹿ね、お洒落ていうのは私らしさを示すものなのよ」

モズメ「え、そうなん?」

シャーロッテ「ふふっ、そういうこと」

モズメ「ようわからへんわ」

シャーロッテ「じゃあ、私が少し教えてあげるわ」

モズメ「え、ええの?」

シャーロッテ「ええ、任せておきなさい」

【シャーロッテとモズメの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・城下町―

ルーナ「はっ、えいっ!」

ノスフェラトゥ「ぐおおおおおおおおおおぉ」ドサッ

ルーナ「はぁ、毎度毎度切りがないわね、これじゃ」

ピエリ「えい、えいなの!」

ノスフェラトゥ「グギっ、ぐげああああ」ドサッ

ピエリ「うん、返り血いっぱい浴びられたの。とっても気持ちがいいのよ」

ルーナ「はぁ、しかもよりにもよってピエリと一緒なんて、どういう因果よ。はぁ、こういう仕事なら一人のほうが気楽なんだけど」

ピエリ「ルーナ、こっちは片付いたの」

ルーナ「こっちも片付いたわよ。それにしても、あんたまた返り血でびちゃびちゃじゃないの」

ピエリ「いっぱい殺したから当たり前なの。でもノスフェラトゥの血って緑色だから、ちょっとだけ苦手なの」

ルーナ「はぁ、苦手ならそんな風に返り血が当たらないようにすればいいじゃない。大ぶりで敵を倒してたらそうなっても仕方ないんだから」

ピエリ「えへへ、それじゃこのまま帰るの。

ルーナ「ちょっと待ちなさい。えっと、あったあった、はいこれ」

ピエリ「? これなんなの?」

ルーナ「見ればわかるでしょ、拭くものよ拭くもの……。さすがにその格好はまずいわ。衛兵になんか言われるのいやでしょ?」

ピエリ「ピエリ気にしないの」

ルーナ「いいから、拭きなさい」

ピエリ「ううっ、ルーナ何だか厳しいの。わかったの」フキフキッ

ルーナ「はぁ、それにしても、あんたってどうしてそんなに返り血に拘るのよ?」

ピエリ「?」

ルーナ「いや、敵を殺したいってのはその、わからないわけじゃないけど、血みどろになりたいって言うのが良くわからないから。それにノスフェラトゥの血が苦手って言うのもなんか、血みどろになりたいっていうのとは、違う気がするし」

ピエリ「ルーナの言ってること、よくわからないの。それよりも早く帰って甘いお菓子を食べるの」

ルーナ「はいはい、わかったわよ」

ルーナ「……何かあるとは思うんだけどね……」

【ルーナとピエリの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞・廊下―

フェリシア「きゃあああああっ」

 ガシャンッ

フェリシア「ああ、またやってしまいました。ど、どうしよう。ま、まずは拭いて、えっと、ひゃああ、砂糖の入れ物も倒しちゃっ、きゃああああっ」

ピエリ「あっ、フェリシアなの。フェリシア廊下を汚す遊びしてるの?」

フェリシア「ピ、ピエリさん!? ちがいます、遊んでるんじゃないんです、遊んでるんじゃないんですぅ」

ピエリ「あはは、フェリシア。慌てて楽しいの。でも、よかったの、もしもピエリに掛ってたらえいって、やっちゃってたの」

フェリシア「え、えいですか?」

ピエリ「そうなの、えいっなの!」

フェリシア「よくわかりませんけど、今はちょっと片付けをしないといけないので……」

ピエリ「ピエリも手伝うの。これでもお掃除はできる方なのよ」

フェリシア「あ、危ないですよぉ。すぐに箒をもってき、きゃあああっ」ゴテンッ

 ゴンッ ガシャンッ!

フェリシア「ああっ、飾り物が。ど、どうしましょう」

ピエリ「フェリシア、ちょっと落ち着くの」

フェリシア「す、すぐに何とかしないと。はわわわわっ!!!!」

 ドガッ ゴトンッ!
 
ピエリ「今度は絵が落ちたの」

フェリシア「はわわわ、ど、どどど、どうし、どうしましょう!!!」

ピエリ「なんだか見ててとっても不憫な子なの。フェリシア、そこで待ってるの、箒とかピエリが持ってきてあげるの」

フェリシア「で、でも、そんなことお客様に」

ピエリ「任せておくの。それに、その方が被害が広がらなくて済むってピエリ思うの。今度は天井が落ちてくるかもしれないから、じっとしてて欲しいの」

フェリシア「…わかりましたぁ」

ピエリ「……いい子なの! 安心するのまたこんなことがあったら、ピエリがサポートしてあげるのよ」

フェリシア「次、次はありませんからぁ!」

【ピエリとフェリシアの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・演習場―

エルフィ「……今日はこれくらいでいいかしら?」

レオン「何をしているんだい、エルフィ。もう演習の時間は終わりのはずだよ」

エルフィ「あ、レオン様。残って訓練をしていました」

レオン「そうか、それは頼もしいことだね」

エルフィ「そういうレオン様はどうしてこちらに?」

レオン「ああ、戦術学を少し学んでいてね。それで気分転換に歩いていただけだよ。でも、一人で訓練をしているエルフィはすごいね」

エルフィ「そんなことありません。私は訓練くらいしかできることがありません、ただそうしてるだけですから。その、レオン様のように考えたりするのは苦手なので」

レオン「そうか」

エルフィ「はい―――」

 グゥー

レオン「?」

エルフィ「あっ、すみません////」

レオン「もしかして、何も食べずに訓練を?」

エルフィ「はい、訓練をしてるとあっという間に時間がすぎるので、こうやって一息付いてると思い出したように鳴ってしまって」

レオン「そうか、それならどうかな。これから食堂にでも行かないか?」

エルフィ「ご一緒にですか?」

レオン「ああ、別に畏まることじゃないよ、僕と君は仲間なんだから。こういったところで主従関係云々は肩が張って仕方無いからね」

エルフィ「ですが……」

レオン「それに、僕と一緒だから、少し変わったメニューも出てくると思うよ」

エルフィ「……え、えっと、ならそうさせてもらいますね」

レオン「ああ、それじゃ行こうか?」

エルフィ「はい、ふふっ、どんな料理が出るのかとっても楽しみです」

【レオンとエルフィの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎近くの小さな路地―

ベルカ「……」

ベルカ「……」

スズカゼ「ベルカさん」

ベルカ「……」

スズカゼ「ベルカさん?」

ベルカ「聞こえてるわ、それでなに?」

スズカゼ「いえ、何をしているのかと思いまして」

ベルカ「……」

 ニャー ニャー

スズカゼ「これは子猫ですか。可愛らしいですね」

ベルカ「……ええ」

スズカゼ「ふふっ、よく懐いているようですね」

ベルカ「……でも、連れて帰るわけにはいかないわ。それじゃ」スタッ

 ニャー ニャー ゴロゴロゴロ

スズカゼ「どうやら本格的に気に入られたようですね。ベルカさんの足元を離れてくれそうにありません」

ベルカ「……」

 テトテト

ベルカ「……ん」チラッ

 ナーォ

ベルカ「……だめだから」

 ナーォ 

スズカゼ「言うことを聞いてくれそうにはありませんね」

ベルカ「……こんな風に近づいてくるのは初めて、でもどうすればいいのかわからないわ」

スズカゼ「見たところ親猫もいないようですから、このまま放っておいても長くは持たないかもしれません」

ベルカ「……」

スズカゼ「そうですね、ではこういたしましょう。この子猫を私が飼いましょう」

ベルカ「そう、それはいい考えね」

スズカゼ「ええ、ですがベルカさんの事を気に入っているみたいですから、時折様子を見に来ていただけませんか? それに動物と触れ合うことはいい気分転換になります。ずっと任務のことばかり考えているというのも、精神に負担を掛けてしまいますし、子猫にとってもそれが良いと思いますから」

ベルカ「……そう……わかったわ」

スズカゼ「はい、よろしくお願いしますね」

【スズカゼとベルカの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・市街地―

エリーゼ「……」

エリーゼ「……」

エリーゼ「全然わからないよぉ」

ラズワルド「あれ、エリーゼ様?」

エリーゼ「あっ、ラズワルド……」

ラズワルド「どうしたんですか、こんな場所に一人で。いつもだったら誰かと一緒ですよね?」

エリーゼ「え、えっとね。何でもないの、そう、なんでもないの」

ラズワルド「いいえ、こんなところで一人で難しい顔してるのに、なんでもないって言うのはないですよ。それにエリーゼ様は笑ってる方が可愛いんですから」

エリーゼ「……それなの」

ラズワルド「え?」

エリーゼ「それで悩んでるの。あたし、こんな見た目だからよく可愛いって」

ラズワルド「はい、そうですね。エリーゼ様は可愛いですよ」

エリーゼ「ありがと、でもね、本当は綺麗って言われたいんだ。カミラおねえちゃんもアクアおねえちゃんも美人で綺麗だから、あたしもああなれたらなって。前、アクアおねえちゃんとニュクスを一緒に追いかけた時、二人ともなんだか大人な雰囲気なカフェにいたから」

ラズワルド「なるほどね。そこで過ごせば、大人らしく綺麗になれるって思ったってことだね」

エリーゼ「えへへ、あたし、ここのケーキ大好きなんだ。おいしくて、でも、食べてるとね。やっぱり可愛いって言われちゃって。どうやったら大人らしい綺麗な人になれるのかなって……」

ラズワルド「ははっ」

エリーゼ「あーっ!!! ラズワルド笑った、ひどい!」

ラズワルド「ごめんごめん。なんだか僕と似てるなって、思って」

エリーゼ「えー、どこが似てるの。あたしとラズワルド性別も違うのに」

ラズワルド「いや、その、僕も女性にモテようと頑張ってるんだけどね。からっきしうまくいかないから。おかしいよね、いろいろとおいしい場所知ってるのに誰も付いて来てくれないんだよね」

エリーゼ「……はぁ、なんだかうまくいかないね」

ラズワルド「そうだね、でも、めげずに頑張っていかないと。ここまでの思いも無駄にしちゃうから。僕はどんなことがあっても女の人に声を掛け続けるよ」

エリーゼ「なんだか、ラズワルドに話したら元気になちゃった。ありがとう」

ラズワルド「あはは、エリーゼ様も美人で綺麗な大人になれるといいね」

エリーゼ「うん、でも、何かいい方法ないかな? 何でもいいんだけど」

ラズワルド「そうですね、ざっと見た眼を変えるのもいいかもしれないよ。こう、いつものエリーゼ様じゃないって言う感じの」

エリーゼ「いつものあたしじゃない?」

ラズワルド「そういうこと。いきなり体つきとかを変えるなんてことは出来ないからさ。そういうのもありじゃないかなって」

エリーゼ「……わかった、ありがとうラズワルド」

ラズワルド「いえいえ、それじゃ、このまま一緒にお茶でも――」

エリーゼ「それは遠慮しとくね! それじゃ!」

 タタタタタタッ

ラズワルド「………それはないよぉ」

【ラズワルドとエリーゼの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞・ホール―

リンカ「アクア」

アクア「リンカ、ふふっ、その顔を見る限り答えが出たみたいね?」

リンカ「ああ、お前の意見のおかげでな」

アクア「そう」

リンカ「あたしはやっぱり自分を切り替えるなんてことはできないみたいだ。その時その時、得た物を大切にしていきたい。それがあたしなんだって思えたからさ。その自分で言うのものなんだけどあたしは単純だから、この時この顔って言うような器用なことはできそうにない」

アクア「ふふっ、確かにそうかもしれないわね、言ったでしょう、リンカには難しいことだって」

リンカ「そうだな。でも、お前がそう言ってくれてよかったこともある」

アクア「?」

リンカ「お前とこうしていっぱい話せたことさ。その、正直に言えばお前のことを何も感じない人形のような奴だって思っていた」

アクア「……そう。たしかに間違ってはいないと思うわ」

リンカ「いや、今ではそんなことを思ってたことが恥ずかしくさえ感じてる。アクアはちゃんと人のことを心配してくれる。だから、すまない。そんな風にお前を見ていたことを許してくれ」

アクア「そんな、謝ることなんて何もないわ」

リンカ「……そうやってあたしに言ってくれる。それだけでもアクアが優しい証拠にはなるからな」

アクア「……困ったわね。あなたに切り返しとか言っておいて、私も全然できてないわ」

リンカ「ははっ、なら結局は同じってことかもな」

アクア「同じにしないで頂戴……。少なくとも、リンカよりはできるつもりよ?」

リンカ「はは、その返し方はいつものアクアらしいよ」

アクア「……そうかもしれないわね。リンカが最初、私に話しかけてきた時は、こんな対応だったものね」

リンカ「ああ、ぶっきらぼうな感じだった。でも、そうじゃないアクアもいるってことはもう知ってるからな」

アクア「そう、そう言ってもらえると嬉しいわ」

リンカ「そうか、それじゃ腕相撲をしよう」

アクア「………唐突ね?」

リンカ「ああ、その友情の証みたいなものだ。打ち解けたほうがいいと言ったのはアクアで、こうやって打ち解けられた最初の相手もアクアなんだ。だから、こうやって力比べがしたい。その、友達みたいにな///」

アクア「そう、ふふっ、顔を赤くして可愛いわね」

リンカ「ちゃ、茶化さないでくれないか!」

アクア「ふふっ、ごめんなさい。だけど手加減はお願いね?」

リンカ「ああ、任せてくれ」

 ギュッ

アクア「それじゃ1、2の3で開始でいいのかしら?」

リンカ「ああ。まぁ、そのなんだ。これからもよろしく頼む、アクア」

アクア「ええ、私の方こそよろしくね、リンカ」

リンカ「それじゃ、行くぞ。1、2の3―――!!!!」

【リンカとアクアの支援がAになりました】

今日は支援イベントだけで次にフォレエポ番外です

 ゲームの支援回収してる時を思い出した。

 ここにある組み合わせがもしかしたらあるかもしれないから、暗夜の絆祭りは楽しみである。
 
 リリスがリリスしてるところ見たい。リリスにお慈悲を……ください
 
 次の更新は明後日だと思います。

―フォレエポ番外―
◇◆◇◆◇









「エポニーヌ、大丈夫ですか!」

 フォレオの声が前から響く。大丈夫大丈夫と答えながら、あたしは後方の気配を警戒しながら進む。
 あたしたちは天蓋の森を駆け巡る。フォレオの馬が駆けた後を縫うように進んでいた。

「それにしても、どうしてこんなにノスフェラトゥがいるんでしょうか。報告書にはそんなこと何も書かれていなかったのに」
「さすがに魔物に聞くわけにはいかないけど、相当運がないわよこの状態」
「ごめんなさい、エポニーヌ。僕が森を抜けようと考えなければ、こんなことに……」
「フォレオ、そういうのはこういう窮地を脱してからにして、じゃないと結構まずいから」

 真後ろに目を向ける。湿地と幾本に伸びた自然の足止めが織りなす塹壕のような地形を、奴らは気にすることなく走ってくる。
 とてもではないが、野生のノスフェラトゥとは思えない。パワーが違うし、何よりもその見た目が異様だ。
 少し前、フォレオの誕生日に賊に追われたことを思い出す。正直、いろいろと辻褄が合いそうで、それとなしにフォレオに聞いた。

「ねぇ、フォレオ。今回の仕事ってフリージアへの来訪だけど、それって公じゃなかったはずよね?」

 あたしの問いかけに、フォレオは頷きを返してくれる。
 オッケーオッケー、ってことはもうこの件を知っている大臣か、貴族の誰かの差し金だってことくらいは理解できた。
 フォレオの父さんであるレオン王子は、この頃新しい政策に乗り出している。あたしにしてみればそれは正直どうでもいい話だけど、それを面白く思っていない連中もいるはず、これはそう言った奴らの嫌がらせなんだろう。
 まったく、そんなことに頭の回転使ってられないって思いながら後ろを振り向けば、大木をなぎ倒して迫る巨体が複数見えた。

◇◆◇◆◇







「本当、フォレオって人気者よね」
「あ、あんな人たちに人気なんて、全然嬉しくありません」
『でも、その、追いかけられるのは悪くないです……』

 すぐに脳内フィルターにテキストが入り込む。いやはや、まだ余裕からか、すぐに空想が始まっちゃう。

『まってくれぃ、まってくれぃ、フォレオ~』
『まってくれよぉ~』

 仮面の下に隠れる無邪気な顔、フォレオを追って走り抜けてきた彼らの体はとてつもない、興奮に満ち溢れている。
 それを見ながらフォレオは少しだけ、うれしくもあり恥ずかしくもあり、果敢に一生懸命に追いかけてくる彼ら、捕まりたい、でもこのまま追いかけっこを楽しみたい。森逃げ込んだフォレオというウサギを追って、男たちは汗を輝かせて走っていく……

「うふふ、うふふふふ。フォレオと一緒にいると捗っちゃうわ」 
「え、エポニーヌ。な、なにを想像していたんですか?」
「なんでもないの気にしないで。でも、これ流石にまずいわね」

 空想の中の無邪気なノスフェラトゥにサヨナラ告げて、今はわっしわっしと迫りくる現実と再び向き合うことになる。
 森はもうわずかになっているけど、これを連れてフリージアに行くというのは得策じゃなかった。フォレオが魔物を連れてきた、うん、魔物と書いてケモノと読めば、これも中々にいい響きね。

「エポニーヌ、このままフリージアまで逃げて助けを求めましょう。そうすれば――」
「いや、それはできないわ」
「な、なんでですか。このままじゃ」
「いい、フォレオ。あたしがここであいつら引き付けるから、その間にフリージアに行って、事情を話して人を連れて来て頂戴」
「なにを言ってるんですか。それじゃまるで、囮になるって」

 いや、その通りなんだけどね。まったく、今にも世界が終るみたいな顔されても困る。
 心配してくれるのはありがたいけど、ここでフォレオを株を落とすわけにもいかない。
 臣下は主のために尽くすべきだけど、主は人のために尽くすべきなわけ。その人にあたしを含んでいいのは、戦闘意外の間だけ、それくらいわかってると思うんだけど。

◇◆◇◆◇








「エポニーヌが戦うなら僕も戦います。二人で力を合わせれば――」
「それはもう試したでしょ、最初に『ノスフェラトゥならどうにかなりそうですね。エポニーヌ一緒に攻撃して、終わりにしましょう』って」
「そ、それは……でも!」
「流石にこれは普通の魔物退治みたいに行かない。一人が一人っていう力じゃないわ。確かに相手が一人か二人ならそれでいいけど、どう見ても七八はいるんだから、二人いても互いが互いの足を引っ張ることになるわ」
「……僕は、足手まといだって言うんですか?」

 そのフォレオの言葉はとても震えていた。震えていたけど、森での戦いにフォレオが慣れているなんて思えないし、そもそもあたしの中でのフォレオのイメージって言うのは、本を読みながら可愛い服を着て、可愛らしく笑ってるイメージだ。
 森の中を駆け巡るようなイメージはない。
 決めつけかもしれないけど、フォレオにはこの森の中で馬の能力を最大限に引き出す力はまだない、それがあたしの答えだった。

「ええ、フォレオがいたら足手まとい。だから、さっさとフリージアまでイって」
「エポニーヌ……」
「このままあれを引き連れてフリージアについても、すぐに戦闘ができるわけじゃない。確実に村に被害が出る。そういうことも計算してるはず。だから、それを崩すにはここであたしが時間稼ぎするくらいしかないの」

 あたしはかなり強い口調でそう捲くし立てる。
 フォレオの握る拳が少しだけ力強くなって、その泣きそうな目があたしを見貫く。
 あー、これは悔し涙かな。そうだよね、臣下から足手まといなんて言われたら、それは悔しいに決まってるよね。
 だけど、フォレオならわかってくれるよね?

◇◆◇◆◇








 その願いが通じたのか、フォレオは一度だけ鼻をすすって涙を拭って凛々しい顔立ちになる。うん、やっぱりフォレオはいい子だって思う、あたしがフォレオの立場だったら、たぶん絶対に曲げない気がするから。

「エポニーヌ、命令を一ついいですか」
「なに? フォレオ」

 あたしも臣下としてのあたしになる。フォレオの友人という関係に釘を打って、上から主のために何でもこなす人形の自分を張り付ける。
 空想も全部シャットアウト、ただ命令遂行のためにこの身を削る。
 父さんがレオン王子のためならばどんな危険なことも、どんな些細なことも見逃さないように尽くしてるように、あたしも今だけはその姿になる。

「僕が戻ってくるまで、絶対に生き残ってください。いいですね?」
「ええ、わかったわ」

 間も開けずにあたしは答えて馬に取り付けた弓を取る。
 魔物など想定していなかったから威力はそれほどもないけど、ここは一つ決めておきたいことがあった。

「ねぇ、フォレオ」
「なんですか、エポニーヌ」
「あれを全部倒しちゃっても構わないんでしょ?」

 うん、うん、一回言ってみたかのよねこれ。

「……だめです」
「えっ、なんで、なんで駄目なの!?」
「……倒すのは僕と僕が連れてくるフリージアの人たちの仕事です。だから、全部倒したりしたら許しません。それに、その台詞もできればいい直してほしいです」

 あはは、なんだか面白いこと言ってくれるわね。台詞を言い直すって言われてもね。それじゃ、いつもどおりにすればいいかと、あたしは弓に矢を掛け器用に手綱を握る。臣下らしく、主の命令に従うことを決める。

「フォレオのご命令とあらば」

 そうしてあたしは矢を射った。

◇◆◇◆◇







~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 怒涛とはまさにこの事かもしれない。木々が軋んで地が裂けて、目の間に見えている光景が目まぐるしく変わっていく。
 こんなに激しい戦闘は何分久しぶりで、体中の全神経が研ぎ澄まされていく。
 運が良かったことはこのノスフェラトゥにフォレオを狙うように仕向けられているわけじゃなく、ただ見掛けた奴を殺すだけだったということだ。それをここに置いて行くとか、邪魔をしたい連中はなりふり構っていられないって感じだとは思った。
 木を使って相手の動きを止めようにも、その木をぶち倒してやってくるのだから、全く役にも立たない話で、倒れた木に木が倒れこちらの使える機動路が次々に潰されていく。重みで湿地特有のヌチヌチとした音が鼓膜にこびりつく。
 森の形が変わるということはないが、この披露知らずの魔物たちに手でもつかまれた日には、そのまま四肢を思いっきり引きちぎられそうである。四体同時に手足を掴まれえ引っ張られたら――

「ううっ、あまり想像するものじゃないわね。最悪のシナリオなんて」

 頭の片隅に浮かんだ最低な最後をどこかに追いやる。
 今は一瞬で命が消えかねない、そんな相手と戦っている。
 一発喰らえば生きていても、動けるわけもなくなる。そういうレベルの敵だ。
 腐れ富豪とか、そこらへんの賊を相手にしてるのとはわけが違う。
 馬に指示を出しながら、なぎ倒された大木をとび越え、降りると同時に矢を射る。
 しかし何本何本刺さっても、相手の行動が衰える気配はない。なによりこちらの矢の損耗が著しく、そろそろ本格的に逃げるくらいしかできなくなりそうだった。
 フォレオがフリージアについて仲間を呼んでくるまで残りわずかかもしれない。というか、時間がどれくらいたったのかもわからない。
 まだ実はフォレオと別れてからあまり時間は経っていないのかもしれない。そう考えると今の状況は非常にまずかった。

「これが正念場ってやつね」

◇◆◇◆◇








 今後、楽しいことを思い浮かべられるかどうかの瀬戸際で、あたしはもう一度弓を力強く握って、馬で駆けだす。
 すでに四方を囲まれていたから同逃げようにもどこかで攻撃を避けなければならないこと、馬の速度を上げる。この子もそろそろ限界だ。
 風切りの音が耳に入るより、こちらに向かってくる奴らの足音のほうがはるかに大きい。
 心臓の鼓動はミスはできないと急かしてくる。いやいや、あたしの心臓今は落ち着いてよと息を深く吸い込んで吐けば、少しだけ鼓動は納まった。
 今ならいける。弓に矢を掛けて、目の前に佇むノスフェラトゥの仮面の穴めがけて矢を射る。奇麗な直線を描いて飛んで行ったそれは確かに仮面の隙間へと入り込んだ。
 当たった!
 流石に目は痛むらしい、ノスフェラトゥが足を止めた。それを見越して一気に駆け抜けた。
 残りの矢の数は二つくらい、こんな感じで使うくらいしか方法が見当たらない。

「はぁ、はぁ、さすがに気張るわ。帰ったら、いっぱい本読まないと」

 やる気を注ぐ意味をこめてもう一度矢を掛ける。次はどこの奴を怯ませるべきか、すぐに決めて走り出さないとすぐにタコ殴りにされてしまうことだ。
 集中して周りを見て、でも、どうしてもだが、あと二本射った先に生存のビジョンが浮かばなかった。

「これは、駄目かしら……」

 自然とあきらめの言葉が漏れて、それを否定するように顔を叩く。主君の命令には忠実たれと決めたばかりになんという失態か、もっとしっかりしないといけない。フォレオの命令を遂行しないといけないんだから。
 それに、まだ希望がないわけじゃないのだ。フォレオが約束通り敵を倒しに戻ってきてくれる可能性だってある。というか、それ以外に生き残れる道がない。

「なら、最後まで信じて闘うまでよねっ」

◇◆◇◆◇







 決めた相手にめがけて矢を放つ、同じように仮面の覗き穴へとめがけてうち、それを食らった奴は一度動きが鈍る。
 その横を通り過ぎて再度距離を取った。
 残り一本、できる限り引きつけてから放つことにする。あとはもう、フォレオが間に合うまで、逃げ続けることしかできないのだから、今の間だけでも馬を少し休ませる。
 弓は構えた、最後に狙うのは一番右端、木々がほとんどなぎ倒されていて、足止めできればそこを軽く越えて逃げ始めることができる。
 覚悟は決まった。よし――、そうして矢を構えて。

「エポニーヌ!!!! どこですか!!!!」

 荒々しいノスフェラトゥの呼吸と、ヌチヌチした湿地の音だけだったこの場所に久しぶりにさえ感じられる声が木霊して、あたしは一瞬体を止めた。
 声に含まれた必死な物、あたしを探す声。まだ、ノスフェラトゥの位置に変化はない。声を出すなら今だ。

「フォレオ、こっち!」

 かなり頑張って声を出した。次第にノスフェラトゥの背後に松明の灯りと、多くの馬の音が聞こえる。屈強な男たちを連れてフォレオがやってきたようだった。

「……うふふ」

 少しだけ気が緩んだ。

「エポニーヌ、早くこちらへ!」
「ええ!」

 力強く矢を射る。先ほどから狙っていた右端の個体の仮面にめがけて一射、それと同時に馬の手綱を握り走り始める。
 矢は予定通りに仮面の中に入り込む、そしてうめき声をあげてそれが動きを止めた。
 チャンスだと、一気に右へと馬を送りこむ。ここを通り切ればそれで終わり。あとは合流して矢でももらって、あのノスフェラトゥを倒せばいい。
 そして、フォレオが屈強な男たちに揉みくちゃにされるのを―――

◇◆◇◆◇








 そう、気が抜けていた。

 約束通り、フォレオが来るまで生き残れたし、あんなに仲間がいる。
 ホッとしてしまう。たぶん父さんは合流するまでは気を抜かない、だって仲間が来たと、仲間と合流できたでは意味が全く違う。
 あたしは仲間が来てくれた状態であって、合流できたわけじゃない。あのとき、あたしは屈強な男たちを連れてきてくれたフォレオに気を向けるのではなくて、未だ目の前にある危機に対して目を向けるべきだったのだ。
 多分これは、経験の差だ。
 単純なそれだけの差、父さんはそれを体験している。
 そしてあたしはそれを体験していない。

「エポニーヌ!!!!! 駄目で―――」

 フォレオの声が途切れていきなり視界がぐにゃりと歪む。
 体全体に広がる猛烈な破裂音と、骨が砕けるような音。空中を浮かんでいるあたし、眼前が赤く染まって、少ししてから何度も倒れた大木の間を転がった。
 何が起きたのかもわからなかった。呼吸もこの間だけは止まっていた。世界が赤いままでも、あたしの体は呼吸を再開するように一気に空気を吐き出して、眼の前に赤が広がる。
 ぼんやりとした思考の中で周囲を見渡すと、今さっきまであたしが乗っていた馬をノスフェラトゥが大群で殴りつけている姿が見える。
 声は聞こえない、でも飛び散る臓器とか、体液とか、脚とかが、飛び散る光景が今のあたし自身に繋がる気がした。

「――――っ!!!!!」

 ようやく体が今の状況を理解して、あたしの体中を痛みで苦しめていく。
 動かせる範囲で体を見た。左から殴られたらしく、左腕はくっついているけどあらぬ方角を向いている。脇腹は殴られた衝撃と先ほどなんども打ちつけられた痛みで裂けている。中身は……奇跡的に出ていないみたいだ。
 足は両足とも痛みで動かない、たぶん折れてる。そりゃそうだ。受け身も何も取れず、こうやって無様に死にかけているのだから。

◇◆◇◆◇








 そこでようやく、気を緩めた結果だと気が付いた。多分、気が抜けて右端の奴の後ろに他のノスフェラトゥが回り込んでいたことに気付かなかったのかもしれない、高い授業料だなって思った。
 耳はようやく聞こえ始めた。口と鼻の奥に広がる鉄の味だけが、今感じられる唯一の安らぎな気がした。
 馬をバラバラにするのに飽きたのか、奴らの視線があたしに注がれる。まずいとか、やばいとか、そう言うのはなかった。
 あるのは、一応暫定で任務はこなせてよかったという安心感だった。フォレオは生きてるし、あたしはフォレオが来るまでは生きてた。敵は片づけなかったし、あとはフォレオとみんなが何とかしてくれる。
 足音が聞こえてくる。あたしが殺されても、問題はない。フォレオには新しい臣下が来るはずだ。
 代わりはいくらでもいる。でも、母さんと父さんには謝り切れないかな。親不孝者だね、これじゃ。
 力強く握られた手が見えた。あたしをズタズタにする拳、その拳でノスフェラトゥは友情を語り合うのかしら? それもそれで悪くないか。
 あげられた拳が振り下ろされるのを待った。

◇◆◇◆◇








 でも、それは来なかった。
 赤い世界に幾つもの魔法の閃光が走る。すごい数だ、来てくれた全員がやってくれているのかと思ったけど違う。これはあたしの知っている光だ。
 あたしの前に誰かが立ち、その服を揺らして詠唱を続けている。
 ああ、この服は知ってる。知ってるけど、こんな前に出てきたら駄目だよ。これで死んじゃったら、いや、もうそれもなさそう。
 目に見えてノスフェラトゥはその動きを鈍くしている。物量の前に力だけしか振えないノスフェラトゥが太刀打ちできるわけがない。その数はどんどん減っていき、やがて、姿さえ見えなくなった。
 うつ伏せの体が静かに起こされる。赤い世界に泣いた顔が見えた。

「―――っ!!」

 何言ってるのかわからないけど、大丈夫とだけは口を動かして伝える。たぶん、大丈夫。
 それよりもフォレオは大丈夫なのか、心配になった。フォレオは血を見るのが苦手なのに、今のあたしはまさに血達磨っていってもいい状態だ。まぁ、手足があるから達磨ではないだろうけど。
 少しだけ動く右手でフォレオの服を摘む、もう大丈夫だからと伝えるように。そしたらフォレオがあたしの胸に顔をうずめる。心臓が何だかドクドクと高鳴った。ああ、死にそうになっているということを今さらになって体が理解し始めたのかもしれない。
 フォレオはまだあたしの胸に顔をうずめたまま震えている。
 なんだろう、これすごく可愛い。
 死んでたらこれを見られなかったと思うと、生きてみる価値はあるものだと、すぐにあたしの意識は溶け込んでいく。
 どうやら、今はここまでのようだった。

◇◆◇◆◇








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 天蓋の森で意識が途切れて、次に目覚めた時、あたしは見知らぬ天井を見上げていた。
 首を動かしてここがどこかと確認してみるが、まったく見当が付かない。
 そして体を起こしたところで、痛みがあたしを襲って、思わず叫び声をあげてしまった。
 痛いというものじゃない、叫び声で済ませられたのが奇跡とさえ思えるもので、その声を聞いたのか、扉が開いた。

「エポニーヌ!」
「あ、フォレ――」

 そして、扉が開いたと同時に抱きついて来たフォレオによって、もう一度悲鳴を上げることになった。

「ご、ごめんなさい。その――」
「いや、別にいいよ。えっと、ここってどこ? それであたしは……」

 記憶の片隅にある散々たる失態を思い出して、あたしは深くため息を漏らすことになった。まさに気を抜いた結果、命があるのが奇跡的。

「ああ、無様に殺されかけたんだっけ」
「そんな軽く言わないでください。本当に死んでしまったかと思ったんですから、本当に……」

 今にも泣きそうな顔でフォレオが言ってくれる。ああ、やっぱり可愛い。そう言えば可愛いといえば――

「ねぇ、フォレオ」
「はい、なんですか?」
「あたしが倒れた時、何かしてくれたりした?」

 なにかものすごく可愛らしいフォレオを目撃した気がするのだけど、それが何だったのか全く思い出せない。
 すごく、すごく可愛い何かがあって、生きてみる価値はあるとさえ思えたことだった気がする。
 そう思いながらフォレオを見てみると、顔を赤くして俯きながら指をモジモジと動かしてる。
 なにこれ、やっぱり可愛い。

「え、えっと、な、なんでもないですよ。エポニーヌが気にすることじゃありませんから」

 全否定とは、よほどのことがあったということね。ああ、悩ましい。悩ましいわ。

◇◆◇◆◇













 と、そこで再び扉が開く。誰が入ってきたのかと顔を向けると。

「フォレオ」
「お、お父様」

 なんと、レオン王子の登場だった。姿勢を正そうとして、また悲鳴をあたしは上げた。

「いや、無理に姿勢を正さなくてもいいよ」
「お父様、どうしてここに?」
「ああ、フリージアから使いがあって、お前達がノスフェラトゥに襲われたって聞いて駆け付けた。本当に無事でよかったよ」
「そんな、お父様」
『お前が傷つくと僕も傷付いてしまうからね。それくらいフォレオ、僕は君のことを愛しているんだ』
『お父様……』

 父から子へと向けられる言葉。そこにあるのは親愛という感情、でもフォレオはそれだけじゃ物たりない。
 もっと抱きしめて、もっと囁いてほしい。抱いてはいけない遺伝子のジレンマに、フォレオの心はゆらり揺れていく。
 いつか、父の神器を受け継いだ時に、この思いを―――

「うふ、うふふ、いつつつつっ!!!!」

 親子の感動的シーンを台無しにするあたしの痛みの叫びに、レオン王子がこちらを向いた。

「ご、ごめんなさい」
「何を謝るんだい? むしろエポニーヌ、僕は君に感謝してる」

 そう言ってレオン王子があたしの手を優しく掴んでくれる。あたしは困惑した。

「えっと、感謝って」
「ありがとう、フォレオを守ってくれて。それに、君のした判断でフリージアへの被害もなく済んだ。村長のフローラが感謝していたよ。さすがに準備もなしでは被害を抑えられなかったとね」
「えっと、あたしはただフォレオの安全を優先しただけで、それに最後がダメダメだったから」

◇◆◇◆◇








 乾いた笑いが漏れる。これであたしが外を眺めて、作業している男と男いいわあ!みたいな空想に励めていたら、たぶん満点……とまではいかないけど八割は成功として終えられていた。
 自分自身も生き残れてこその成功で、あたしは確かに生き残れたけど、これは成功と呼ぶにはあまりにもお粗末な結果である。

「たぶん父さんに笑われるわね。最後の最後で気を抜いて怪我するなんて」
「そうかな、ゼロはあれでも君のことをよく気にかけてるよ」
「え、そうなの?」
「それに、この前君が持ってきた情報をゼロが調べ上げてるところだ。今回の件といい前回の件といい、君は巻き込まれているにすぎないのかもしれない。すまない、僕たちがもっとしっかりしていれば」

 そう言ってくれる。なんていうか、こういうところをフォレオは継いでいるのかもしれないなんて思った。

「でも、そう言うものから守るために臣下がいるんだから、今回のことをレオン王子が気に掛けることないわ。あたしにできる最大限でやった結果だし、次はもっとうまくやれるようにするから」
「……ふっ、わかったよ。これからもフォレオのこと、よろしく頼むね」

 と、そこでレオン王子の肩をフォレオが叩いているのに気が付いた。なんだかおもしろくなさそうな顔をしている。

「はは、ごめんよフォレオ」
「……」

 未だにその視線の色は崩れない。なんだか、これはまるでヤキモチを焼いているみたいにも見える。
 まさか、これは……

◇◆◇◆◇







『……』

 こんな風にヤキモチを焼くなんていけないのに、そう思いながらもフォレオの心は止まらない。
 その手を放して、すぐに僕の手を掴んでほしい。でも、口に出しては言えない、そんなこと言えない。

『ふふっ、馬鹿だなフォレオは』
『あ、お父様……』
『わかってる、こうしたかったんだよね?』

 そんなフォレオの心を察して、温かい手が触れる。絡みあう手、芽生えた心の共鳴、親と子、許されないけど許されたい。
 深みに嵌っていく二人、でもそれは愛という絡まった糸。遺伝子レベルで繋がった二人の甘い甘い家族としての絆!

「うふふ、うふふふふふ」

 仕事に従事し過ぎてたからか、空想が捗る捗る。今なら体の痛みもどうにかできるかもと思って態勢を変えようとした。
 激痛、やはり良くなるはずはなかった。

「エポニーヌ、しばらく安静にしてくださいよ。さすがに動こうなんて無茶ですから」
「ええ、そうすることにするわ」

 できる限りの笑みでお返しして、あたしはすぐにレオン王子に目を向けた。そろそろ戻る時間だろうと思ったからだ。その意図をレオン王子は汲み取ってくれた。

「それじゃ、僕はフローラと話があるから失礼するよ。それと、明日だけど今回のことについての君の意見を聞かせてくれるかい?」
「はい、むしろお願いしたいくらいよ」

 あたしはすぐにそう答え、それを聞いてレオン王子は静かに去っていった。

◇◆◇◆◇










 再び二人っきりになって、あたしの心は幾分かほぐれ始める。
 やっぱり、慣れ親しんでる人といる時が一番気が楽になれるもので、あたしは静かに体を横にする。起きたばっかりだけど、全然体は休みたがっているみたいだった。

「エポニーヌ……」

 と、そこでフォレオが声を掛けてくる。椅子に座ってあたしを見下ろす姿はまるで天使のようで、なんだか一層よく眠れる気がしてきた。

「なに、フォレオ?」
「エポニーヌは、僕に何かしてもらいたいことってありますか?」
「してもらいたいこと……ねぇ」

 考えてみる、してもらいたいこと、シてもらいたいこと。
 いろいろ考えてみたけど、今は純粋に眠りたかった。なら、とあたしは手を静かに伸ばす。

「なら、あたしが眠るまで手を握ってて欲しいかな」
「えっ」
「その、フォレオのことちゃんと守り切れたっていう証拠みたいなものだから。これで実はあたしは死んでて、その中の夢を見てるだけとか、そんなのだったら嫌だし」
「……それでエポニーヌが安心できるのなら、喜んで」

 そう言ってフォレオの手があたしの手に重なる。
 とても温かいし、やっぱり知ってるフォレオの手だ。
 ここにフォレオはいる。安心できる、ちゃんとした形としてある。
 臣下としての仕事はどうやらちゃんと全うできたみたいだ。
 で、安心するとすぐに眠気が襲ってくる。
 あたしもなんだかんだで単純で、意識が溶け落ちて行く。
 あんなあとで眠ることが怖くなるかと思ったけど、フォレオに握られた手空伝わる温かさは心地良くて、落ちていくというよりふわふわと浮いているような心地よさがあった。
 その心地よさに身を任せてあたしは眠りに着いて―――

◇◆◇◆◇









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「え、それだけなんですか?」

 フリージアから王国の医院に移されて、面会できるとわかってすぐに父さんと母さんがやってきた。
 そして、覚えてる限りのことを聞かせたところ、母さんであるリリスが漏らした感想がそれだった。

「それだけって、一体何を期待してるのよ」
「……」

 正直、黙って聞いていた父さんのほうに珍しく好感が持てた。というか、あたしがフリージアで目を覚ましたあたりの話になったところから、二人の顔は対照的だった。
 父さんはなんだか複雑そうに話を聞いていた。特に手を握るくだりの時は、なんだか鬼気迫るものがあって、これは一体何事かと一瞬だけ身構えたくらいである。
 一方の母さんは話が進むたびに前のめりになって、鼻息が若干荒くなって、最後の手を握るという話あたりで、ぐっと拳を握っていたけど、それで終わりと聞いて一気にテンションが下がったようだった。

「これって、もしかして何もないままに終わる流れなんでしょうか」
「俺はそれでも構わないぜ。なに、そう言うのは当の本人同士が決めることだ。そう、決めることだ、だからエポニーヌはまだまだ俺達の元にいるべきってことだ」
「ふふっ、ゼロさん。遠まわしに娘は誰にもやらんって言ってるのが丸わかりですよ?」

 二人で楽しそうに話をしているけど、あたしには何のことだかさっぱりわからない。
 だから不思議そうな顔をしているあたしに、母さんがずいっと近づいてくる。その迫力は、星竜のの状態で近づかれた時の感じに似ている。

「お母さん心配です。エポニーヌはこんなに可愛いのに、全く色恋の話を聞かないから……」
「色恋って、お母さんはあたしとフォレオをどういう風に見てるのよ」

 その言葉に母さんは、とても怖い顔をし始めた。なんだろう、なんだかブレスが飛んで来そうな気配すらある。
 一方の父さんは余裕の表情だった。むしろ上機嫌で、静かに口を開く。

「そうさ、本人の問題に口を出―――」

 一瞬だけ病室に光が走って、気付けば父さんが地に倒れていて、ふわふわと竜状態の母さんが浮かんでいた。
 何が起きたのかはわからないけど、父さんは倒れ、母さんは竜になったのだということだけは理解できる。

◇◆◇◆◇









(エポニーヌ。ずっと気になっていたことがあるんです)
「な、なに、母さん」
(エポニーヌ、エポニーヌにとってフォレオくんって、何なんですか?)
「ど、どういう意味?」
(ちゃんと答えて、結構重要なことなんですから、母さんの立場からするとすごくすごく重要なことなんです!)

 真剣な母さんの瞳に嘘をつけそうになかった。そ、そうよねここまで来て隠し続けるのもあれだし、それに母さんには知っておいてもらったほうがいいのかもしれない。
 あたしがフォレオをどう見ているのかということを。

「え、えっと、その見てるとこうね、ドキドキするのよ」
(うんうん、そうね)
「こう、ほわほわして来るとね、自然と頭の中に色々浮かんでね」
(うんうん)
「そこには男の人に連れられながら顔を赤らめるフォレオの姿が浮かんで」
(う、うん?)
「顔を赤らめながら、指を絡めあうフォレオが可愛くて可愛くて、うふ、うふふ、うふふふふふ」
(……はぁ、やっぱりエポニーヌにはまだ早いってことなのかな……)

 親の心配どこ吹く風で、あたしは空想の中にもぐりこむ。
 今夜は、いろいろと捗りそうだだと、あたしは鼻息を荒くするのだった。


 フォレエポ番外 前篇 おわり

今日はここまでで

 フォレエポ番外 後編は休息時間が終わった頃を予定。

 基本的に子世代で番外をする時は戦争終結後になると思います。
 別スレはあまり考えてないので。その、そんな感じでおねがいします。
 
 リリスは人妻でも可愛い、未亡人でも可愛い、未婚でも可愛い。
 DLCでリリスが現れた時、涙がこぼれた。信じてよかった。

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 支援イベントのキャラクター

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>279>>280
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行します)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

・エリーゼ×ハロルド B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス C
・サイラス×エルフィ C
・モズメ×ハロルド C
・レオン×サクラ C
・レオン×カザハナ C
・ギュンター×ニュクス C
・ベルカ×スズカゼ C
・レオン×エルフィ C
・アクア×ゼロ C

 この中から一つ>>281
(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

・レオン×ツバキ B
・フェリシア×エルフィ B
・フローラ×エルフィ C
・エルフィ×モズメ C
・ベルカ×エリーゼ C
・シャーロッテ×カミラ C
・シャーロッテ×モズメ C
・ギュンター×サイラス C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C

 この中から一つ>>282
(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)

このような形でよろしくお願いいたします。

アクア

ルーナ

まだ埋まってないのか...連投になるけどオデンニュクス
ダメなら一個下で

シャーロッテ×モズメ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・カミラ邸―

ルーナ「さて、朝の見回りも終わったし、部屋に戻って――」

アクア「……あら、ルーナ。おはよう」

ルーナ「おはよっ、アク、ってなにそれ!?」

アクア「え?」

ルーナ「え?じゃないわ。頭は何よ」

アクア「ああ、これのこと?」

ルーナ「それなに、今から祭りにでも繰り出すとか? だったらあたしも連れて行きなさいよね」

アクア「いいえ、違うわ。それにお祭りとかはあまり好きじゃないから」

ルーナ「え、そ、そうなの」

アクア「ええ」

ルーナ「じゃあ、その頭はなんなのよ。そんな愉快な格好してる理由って何よ」

アクア「これはただの寝癖よ」

ルーナ「え?」

アクア「寝癖よ」

ルーナ「寝癖って、そんな炎みたいなのってあり?」

アクア「仕方無いわ。私もできればこうならないようにしたいけど、もう諦めてるわ」

ルーナ「……そう。意図的にやったわけじゃんにしても、すごい癖っ毛ね」

アクア「ええ、今から直してくるから。朝から色々とごめんなさい」

ルーナ「……待ちなさいよ」

アクア「?」

ルーナ「あたしがどうにかしてあげるわ」

アクア「え?」

ルーナ「勘違いしないでよ。別にあんたがその、困ってるから助けようよとかそういうんじゃないから。ただ、その寝癖をあたしが倒したいだけだから」

アクア「……ふふっ、寝癖を倒すなんて、面白いことを言うのね。自分で言うのもあれだけど私の寝癖、かなり手強いと思うわ」

ルーナ「上等よ。買い込んて全く使うことなかった寝癖直しを使ういい機会だし、それじゃ今すぐにでもあたしの部屋に来て頂戴。すぐにその炎を清流の流れに変えてあげる」

アクア「……なんだか嫌な予感がするわね」

ルーナ「なによ、不満なわけ? このあたしが直々にやってあげるって言ってるのよ」

アクア「……」

アクア(下手に断って問題になるのもあれね)

アクア「わかったわ。それじゃ、お願いしてみようかしら」

ルーナ「えへへ、そうこなくっちゃ」

【アクアとルーナの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞・中庭―

オーディン「えっと、ここってどうするんだ?」

ニュクス「そこは……小規模な爆発を複数起こしたいって言う考えのようだから、ここの術式を当てなさい」

オーディン「おお、なるほど。ふんふん、なるほどな。魔法をネーミングで選んでいたから基礎を疎かにしていたってことか」

ニュクス「よくそんなので魔法を繰り出せるわね」

オーディン「ふっ、なんたって俺は選ばれし戦士。マジックパワーの申し子、この身は闇夜の祝福でできているからな」

ニュクス「魔力の申し子ね……」

オーディン「ん、ニュクス?」

ニュクス「なんでもない……わけじゃないわね。こうやって呪術や魔法を一から構築してると昔を思い出して仕方無いから、歳ね……」

オーディン「………」

ニュクス「ねえ、オーディンは魔法をどう思ってる?」

オーディン「魔法をどう思ってるって、そうだな、単純にカッコいい」

ニュクス「くすっ」

オーディン「な、笑うところじゃないだろ。俺は本気で答えてる。呪術の呪文とか、手から放たれる雷なんてもう最高だ」

ニュクス「そう……」

オーディン「ニュクスはどうなんだ?」

ニュクス「……昔は好きだったのかもしれないわ」

オーディン「昔は?」

ニュクス「ええ、私は生まれついて魔法の素養が強かった。最初のうちはこうやって何かを起こしたりすることは素直に楽しかった。たぶん、そんなことをできる自分をカッコいいとさえ思っていたのかもしれない」

ニュクス「だけど、途中から魔法を使う理由が変わってしまったわ。あのとき、私が考えていたことは。魔法を作り上げることじゃなくて、どれだけ大きな力を振えるかということだったかもしれないわ」

オーディン「……」

ニュクス「挙句に私が辿った末路は、今のこの姿。大きな失敗は過ちの繰り返しでなるっていう生き証人ともいえるわね。だから、そうやって無邪気に被害を出すことばかりに走っていた頃の私は、たぶん魔法が好きだった」

オーディン「なら、今はどうなんだ? こうして俺を手伝ってくれてるけどさ」

ニュクス「今は……どうかしらね? 少なくともまだ教えられるくらいだから嫌いじゃないことは確かよ。でも、咎を背負うのは私であって魔法じゃないわ」

オーディン「なんだよその言い方、なんだかかっこいいな」

ニュクス「ふふっ、カッコいいんじゃないわ。事実を言ってるだけ。さぁ、無駄話はここまで、貴方の魔法早く完成するといいわね。みんなが驚くくらいすごいものを作るんでしょう?」

オーディン「……ああ、もちろんだ。っていうわけで、ここはどうすりゃいいんだ?」

ニュクス「ここはね―――」

【オーディンとニュクスの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞・モズメの部屋―

シャーロッテ「それじゃ始めるわよ」

モズメ「よろしゅうおねがいします」

シャーロッテ「ふふっ、それじゃ、まずなんだけど。その何時も付けてる花飾り、ちょっと取ってもらえるかしら?」

モズメ「え、これ取るん?」

シャーロッテ「そうそう、それ取らなきゃ始まらないから」

モズメ「わかった。これでええ?」

シャーロッテ「それでいいの、ふふっ、やっぱり思ったとおり、こうなっちゃうとモズメって感じじゃなくなっちゃうわね」

モズメ「え、そうなん」

シャーロッテ「ふふっ、それになんだか自信がない感じもするし」

モズメ「そ、それはすこしあるかもしれへん。なんか、いつもの自分やなくて少し思うこともあるんよ」

シャーロッテ「ふふっ、そう言うものよ。特にモズメはずっと髪飾りだけしてきたから、それがない状態で過ごすのになれてないのかもしれないわ。無意識だけど外に溢れてるモズメっていうチャームポイントなんだから」

モズメ「それがあたいらしさってことなん?」

シャーロッテ「理解が早いわね」

モズメ「そんな単純なことなん? おしゃれって奇麗になりたいとか、可愛くなりたいとか、そういうものやないん?」

シャーロッテ「ふふっ、そういうのもあるけど第一は私らしさのアピールって言うのが私の自論。どんな服に着替えても装いを変えても、最初に見つけた私らしさっていうのはどこかについてくるものよ」

モズメ「ふふっ、そう考えるとなんやかお洒落に対する考えが変わる気がするわ」

シャーロッテ「そう言ってもらえるとうれしいわ。それじゃ、今度はそれを踏まえてモズメに色々な格好してもらおうかしら」

モズメ「そ、それとこれとは話が別や!」

シャーロッテ「ふふっ、任せなさい。化粧もばっちり決めてあげるから、舞踏会の時よりもさらに奇麗にしてあげるわよ」

モズメ「お、お手柔らかに頼むで?」

【シャーロッテとモズメの支援がBになりました】

◆◆◆◆◆◆
―ミューズ公国・アミュージア郊外・別荘―

エリーゼ「……んっ、うううっ」

サクラ「……」

 ガチャ

マークス「エリーゼ」

サクラ「あ、マークスさん……えっと」

マークス「いや、畏まらなくてもよい。それでエリーゼの様子は?」

サクラ「はい、その命に別条はないと思います、でも先ほどかずっと魘されてるみたいで、熱も少し出てきたみたいで」

マークス「そうか……。」

エリーゼ「うっ、ううううん。お父様……」

サクラ「大丈夫ですよ、エリーゼさん」

マークス「……サクラ王女、もうしばらくの間、エリーゼのことをよろしく頼めるか?」

サクラ「い、いいんですか。私は白夜の人間で、今回の事件は――」

マークス「私はサクラ王女が今回の一件に関わっているとは思っていない。それに、もしも何か事を起こすのなら、ここでなくとももっと前にことは起こせていたはずだ。それに今はエリーゼの近くにサクラ王女のような方にいてもらいたい。あの時、エリーゼを心配してきてくれたとき、任せても大丈夫だと感じられた」

サクラ「そんな、私はただ無我夢中で」

マークス「それほどまでにエリーゼを心配してくれているだけでも、サクラ王女に任せる理由になる。頼めるか?」

サクラ「はい、わかりました」

マークス「ああ、すまないがよろしく頼む、ベッドはもう一つあるのを使うといい、それではな……」

 ガチャ バタン

マークス「……」

マークス(父上はエリーゼが苦しんでいるというのに、もうウィンダムへと向かってしまった。身を案じて向かってくれたエリーゼの様子を一目見にきてくれてからでもよかったはずではないのか……)

 タ タ タ

レオン「マークス兄さん」

マークス「レオンか」

レオン「どうかしたの? すごく悩んでるみたいだけど」

マークス「いや、なんでもない。エリーゼは少し熱があるがおおむね大丈夫だ、カムイの容体は?」

レオン「こっちも同じで命に別条はないよ。ただ体中傷だらけだった。多分、例の歌姫を追って攻撃を受けたんだと思う」

マークス「そうか……。カムイはその歌姫を取り逃がしてしまったというが……」

レオン「僕は嘘だと思う」

マークス「なぜ、そう思う?」

レオン「……単純な話、姉さんと一緒に後を追ったはずのルーナとカミラ姉さんは、先に別荘に戻ってた。あのカミラ姉さんがカムイ姉さんを放っておいて、先に帰るなんて普通ならあり得ないよ」

マークス「……だとすれば、その歌姫の正体というのは……」

レオン「……サクラ王女に確認した。戻った時にすでにいたのはカミラ姉さんとルーナ、それに……アクアだ」

 ドクンッ

マークス「……なんだと?」

マークス(アクアが、エリーゼとサクラ王女たちがここに来る前からすでにいた? まて、あの会場の場で、アクアは一体どこで何をしていた!? 私は、ショーが始まってからアクアの姿を見ていない……)

マークス「……」

レオン「マークス兄さん」

マークス「レオン、お前はどう思っている」

レオン「ごめん、兄さん」

マークス「何を謝っているレオン?」

レオン「……僕はこの件についてここから先を追及することはしない。そう考えてる」

マークス「なぜだ、父上の命が奪われかけた出来事があったというのに!?」

レオン「そうだね」

マークス「レオン、父上が。父上が死に掛けたんだぞ、なぜ、なぜそのようなことをいえる!!!!」

レオン「……僕はもう自分で決めることにしただけだよ。そして、わからないことに対して答えを出すには時間を掛けることにした」

マークス「何を言っている。レオン」

レオン「……ねぇ、マークス兄さんは本当に父上が、あの矢をすべて避け切れていたって思ってるの?」

マークス「……」

レオン「とてもじゃないけど僕は信じられない。それにもしも避け切ったことが事実なら、すぐにでも会場に降りて来るよ。小賢しい真似をした白夜の暗殺者を直々に殺すために」

マークス「父上を殺すために突入した部隊がいたとクマゲラは言っていた……それと戦っていたのではないのか?」

レオン「そう、その話なんだけど。あの後、来賓席を見に行ったらゲルみたいな塊がいくつか転がってた。予想が正しければ多分、白夜の突撃部隊と友軍だと思う。おかしい話なんだ、あの来賓席には暗夜の兵士はいた、それが一人も生きていない。そして、とても普通とは思えない死に方をしてた」

マークス「まさか、友軍を父上が殺したと、そう考えているのか」

レオン「正直、その答えを出すには情報が足りない、エリーゼは多分それを見てるはずだよ。あの来賓席で何が起きていたのかも、それに父上に何が起こったのかもね」

マークス「……」

レオン「だから僕は全てがわかるまでは動けないし、動くつもりもない。すぐに答えを出しちゃいけない問題だって、僕はそう考えてる」

マークス「アクアが、あの歌姫という可能性が高いとしてもか?」

レオン「……そうだよ、兄さん。たとえそうだとしても、すべてが繋がるまで、僕は動かない。そう決めたんだ」

マークス「……アクアの休んでいる部屋はどこだ?」

レオン「……カミラ姉さんの部屋だよ」

マークス「わかった……」

レオン「……」

マークス「止めないのか?」

レオン「僕は待つことを選んだ。けど、それを兄さんにまで強要できない……」

マークス「……私の剣が異なる見解に至るかもしれないとわかっていてか……」

レオン「ああ、でも……僕は兄さんを信じてる。今が我慢してでも待たなくちゃいけない時だって、理解してることをね」

マークス「……」

 タッ タッ タッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カミラ「……まったく、アクアは本当にお姉ちゃんを困らせる妹ね」スッ ペタペタッ

アクア「……」

カミラ「ふふっ、よく眠ってる。苦しんでいる様子はないみたいだから、今は大丈夫みたいね……」

カミラ「……ねぇ、アクア。貴女はなにを知っているの? 一時の気の迷いとか、そんな理由でこんなことをするわけないことくらいわかってるわ。多分、カムイのために貴女は動いたのよね」

アクア「んっ、……ん……」

カミラ「でも、そう言うことなら今度は私にも相談してほしいわ。カムイの力にもなりたいけど、何よりアクアのために私も何かしてあげたいから。でも、いつもの貴女なら大丈夫よって、言うだけかもしれないけど」

カミラ(……あの時、カムイが自分の身を守ることに専念したら、ここにもう貴女はいなかった。でも、その拒絶を跳ね除けてまで抱きしめに行ったのよね、カムイは)

カミラ「ふふっ、やっぱり妬けちゃうわ」

 コンコン

カミラ「あら誰かしら?」

 ガチャ

マークス「カミラ」

カミラ「マークスお兄様、どうしたのかしら?」

マークス「アクアの様子は?」

カミラ「まだ眠っているわ」

マークス「そうか、なら起きてもらうことにしよう」

 チャキッ

 スッ

カミラ「………」

マークス「何の真似だ」

カミラ「お兄様こそ、その剣を握った手でアクアに何をしようとしてるのかしら?」

マークス「カミラ、私は今すぐにでもアクアに聞かなくてはいけないことがある。ただそれだけだ」

カミラ「そう、でも駄目よ。今アクアは疲れているもの。大丈夫、目覚めてもどこかに行ったりしないわ」

マークス「なぜ、そう言い切れる? アクアが何をしたのか、知っているのだろうカミラ!」

カミラ「……」

マークス「そこをどけ、退かぬというのなら――」

カミラ「ねえ、お兄様。アクアはお兄様にとっても妹よね?」

マークス「そうだ、だからこそ――」

カミラ「なら、今だけでもいい。その剣を納めて頂戴。じゃないと、さすがに私もお兄様を蹴り飛ばして扉を閉めなくちゃいけなくなるから」

マークス「……カミラ、お前は知っているはずだ。知っていてなぜ庇う?」

カミラ「わからないわ、お兄様」

マークス「恍ける場所ではないぞ、カミラ」

カミラ「とぼけてなんてないの。私は何も知らない、本当に何も知らないのよ。今起きてることも、何がこれを引き寄せる原因になったのかも、兄妹達ががなにを思っているのかも、私は何も知らない。駄目なお姉ちゃん、いつも重要な時に役に立てない、そんな女なの」

マークス「……」

カミラ「ねえ、マークスお兄様は知っているの?」

マークス「なんのことだ?」

カミラ「決まってるわ、家族のことよ。お父様のこと私のこと、レオンのことエリーゼのこと、アクアのこと、そしてカムイのことも。何でも知っているなら確かに私はここに立っている意味がないわ。だって、知らない私より知っているお兄様のほうが正しいとわかるから」

マークス「……」

カミラ「でも、もしマークスお兄様もわかっていないのなら。ここは引いて頂戴」

マークス「カミラ……」

カミラ「私は嫌よ、まだ知らないこと教えてもらってないこともたくさんある妹が、ここでいなくなってしまうなんてこと。そして何よりも、マークスお兄様に家族の誰かを殺させたくなんてないわ」

マークス「………」

カミラ「………」

 パッ

マークス「……すまない」

カミラ「いいの気にしないで。それにしてもよかったわ、マークスお兄様と喧嘩しても勝てる気がしないもの」

マークス「いや、どうだろうな……。もしかしたら、今の気持ちのままに剣を握ったとして、私はカミラに勝てたかどうかはわからない」

カミラ「珍しいわね。お兄様が、そんなふうに泣きごとを言うなんて、明日は矢でも降るのかしら?」

マークス「酷い言われようだが、私にも悩みはある。いつもは口に出さないだけだ」

カミラ「そう、なら、妹の私が聞いてあげるてもいいけど」

マークス「いや、すでに聞いてもらったようなものかもしれん。このような形でしか吐露できない、この性格も考えものかもしれないな」

カミラ「そんなことないわ。だって、マークスお兄様は後継ぎ、そう言う風になるのも仕方ないかもしれないわ」

マークス「そうか……しかし、今考えるとぞっとするものがあるな」

カミラ「?」

マークス「いや、もしも、ここにカミラがいてくれなかったとしたら、私はアクアに何をしていたのかわからない……」

カミラ「ふふっ、眠っている妹を襲うなんて本当にひどい趣味ね?」

マークス「茶化すところではない」

カミラ「ふふっ、ごめんなさい。だけど、次はみんなでこの部屋に来る必要があるわ」

マークス「みんな?」

カミラ「ええ、家族みんなで。それで妹の悩みを聞いてあげるの。渋るかもしれないけど、アクアは良い子だから。きっと話してくれるって信じてるわ」

マークス「そうだな……」

カミラ「それにマークスお兄様が事に及んでいたら、もう一人の妹が黙って無かったはずよ。あの子、アクアのことをとても大切にしてるから」

マークス「……そうか。すまなかった、今日はゆっくり休むといい」

カミラ「あら、もう行くの?」

マークス「ああ、私も待つことにする。すべてが揃ってからでなければ、この問題は解決しないだろうからな」

 カッ カッ カッ

カミラ「カムイは自室で寝てるから、様子を見てあげて」

マークス「ああ、そうさせてもらうことにする。それではな……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「………」

マークス「ふっ、眠る姿はいつまでも変わらないものだな」

カムイ「……」

マークス「お前は本当に、いつか暗夜一の騎士となれるのかもしれない。その強さも、そしてあり方もな」

マークス「カムイ、私はあの時、お前を守ることを躊躇してしまった。父上の前に首を差し出すお前をすぐに助けようと動けなかった」

マークス「家族を守りたいと言っておきながら、私は家族に家族が殺されることを容認しようとしていた。どうしてか、それが正しいことだと思っていた」

マークス「私は父上の背中を見て育ってきた。父上の進む先にある正義を信じて今も戦っている。そう、だからこそ戦うことに意味があるとそう信じてきた」

 グッ

マークス「だが、アミュージアの件に私は正義を見出せない……。疑う余地など無いはずの無辜の民を切り捨てたあの行為、あの先に何があるのか見通せない。いずれ、このままではまた国内で反乱の芽が生まれる。白夜との戦いに勝てたとしても、戦火は収まらないと思えてしまう」

マークス「カムイ、お前の目指す先にあるのは、どのような正義なのだ? 父上の目指す正義とは異なる刃だとしても、そこに……」


「身を窶すほどの正義があるというのか……」


 休息時間0 おわり

 今日はここまで、この頃誤字脱字多くて申し訳ないです。
  
 暗夜編はアクアの知っている情報を兄妹で共有しておく方が良いんじゃないかという意味でこんな話になっています。
 泡になっちゃう呪いのNGワードは明確な答えがDLCでなかったので、個人的なさじ加減になると思います。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ルーナ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ

 カムイが話しをする人物 >>296

◇◆◇◆◇
 
・アクア
・エリーゼ

 カムイが見舞いに行く相手 >>297

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

・エリーゼ×ハロルド B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス B
・サイラス×エルフィ C
・モズメ×ハロルド C
・レオン×サクラ C
・レオン×カザハナ C
・ギュンター×ニュクス C
・ベルカ×スズカゼ C
・レオン×エルフィ C
・アクア×ゼロ C

 この中から一つ>>298
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

・レオン×ツバキ B
・フェリシア×エルフィ B
・シャーロッテ×モズメ B
・フローラ×エルフィ C
・エルフィ×モズメ C
・ベルカ×エリーゼ C
・シャーロッテ×カミラ C
・ギュンター×サイラス C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C
・アクア×ルーナ C

 この中から一つ>>299

このような形でよろしくお願いいたします。


最近、特に面白いよ!

296なら、フェリシア
297なら、エリーゼで!

乙です
うーん アクアがこれから核心に迫った話をするなら…先に話した方がいいのはアクアかな

アクアで
ずれたらレオンサクラ

レオン×カザハナかな

ベルカ×エリーゼ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・庭園―

カザハナ「へぇ、暗夜ってこういう花が咲いてるんだ」

レオン「カザハナ、何をしてるんだい?」

カザハナ「あっ、レオン王子、見ればわかるでしょ? 庭園を見てるの」

レオン「庭園。カザハナには花を見る趣味でもあったのかい?」

カザハナ「ええ、花は全般的に好きだから。でもその言い方まるで、似合わないって言ってるみたいに聞こえるんだけど」

レオン「そうだね、どちらかと言うと剣を振り回してるイメージのほうが強いし、花を愛でるっていうイメージだとサクラ王女のほうが似合ってるからかもしれない」

カザハナ「た、たしかにあたしが奇麗って言ってるよりは、サクラのほうが似合ってると思うけど」

レオン「自覚はあるんだね」

カザハナ「それどういう意味よ」

レオン「そう言う意味だけど」

カザハナ「はいはい、レオン王子からしたら、あたしにそんなイメージ無くても仕方ないわよね」

レオン「ごめんごめん。それでやっぱり、白夜の花とは違うかい?」

カザハナ「うん、なんて言うかどれもこれも小さいのばっかりだなって思ってさ。月の光で育つ花ばっかりだからかな?」

レオン「そうだね、暗夜には日の光っていう概念があまりないから、大きく育つような花はないよ。それぞれ、必要最低限な力で咲く花ばかりだから」

カザハナ「そうなんだ。なんだか暗夜の人ってそういう部分だけは損してる気がする。白夜はね、木にいっぱい花をつけるものもあるんだよ」

レオン「こっちの薔薇みたいなものかい?」

カザハナ「確かに薔薇園は奇麗だったけど、あれとはまた違う感じなんだ。なんて言うかね、こうどーんって言う感じのものなんだ」

レオン「どーんって、表現が何だか可愛らしいけど」

カザハナ「か、かか可愛いって、いきなり変なこと言わないでよ。調子狂うから」

レオン「ごめんごめん」

カザハナ「もう……でも、すこし嬉しかったから許してあげる」

レオン「なにか、言ったかい?」

カザハナ「ううん、なんでもないから、気にしない気にしない」

【レオンとカザハナの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―

エリーゼ「ベルカー!」

ベルカ「……」

エリーゼ「ああ、いたいた。ねぇベルカ!」

ベルカ「……」

エリーゼ「あれ? ベルカ?」

ベルカ「聞こえてる。何か用、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、じゃっじゃーん」

ベルカ「……すごいケーキね」

エリーゼ「すごいでしょ、ベルカと一緒に食べるの楽しみだったから、奮発したんだよ! えへへ~」

ベルカ「……そう」

エリーゼ「それじゃ、これがベルカの分」ズイッ

ベルカ「……こんなに!?」

エリーゼ「え、これくらいぺろりってあたし食べちゃうよ」

ベルカ「こんな量食べたことなんてないから、どうなるかわからないわ」

エリーゼ「そ、そうなんだ。それじゃ、ベルカにとっては初めてのことになるのかな。えへへ、なんだか嬉しいな。それじゃ、これスプーン」

ベルカ「……カミラ様のお茶会をよく見てるけどこんな量は出ないわ」

エリーゼ「え、そうなの!? あたしが行く時はいつもお菓子とかケーキがいっぱいあるよ! あたしの好きなの用意してくれるから、おねえちゃん大好き」

ベルカ「そう」

エリーゼ「それじゃ、ベルカ召し上がれ」

ベルカ「…………」

エリーゼ「ど、どう?」

ベルカ「……甘い」

エリーゼ「それはケーキだから当たり前だよ。それで味のことなんだけど」

ベルカ「……甘いわ」

エリーゼ「えっと、味は――― !?」

 ヒョイ パクッ
 ヒョィ パクッ
 ヒョイ パクッ

エリーゼ(すごい勢いで食べてる!?)

ベルカ「甘い……甘い……うん、甘いわ」

エリーゼ「えへへ、気に入ってもらえたのかな」

ベルカ「そうね、甘かったわ」チラッ

エリーゼ「えっと、もう少しいる?」

ベルカ「……もらえるなら」

エリーゼ「うん、それじゃ、半分いいよー」

ベルカ「……」

 ヒョイ パクッ
 ヒョイ パクッ

エリーゼ(終始無表情で食べてるけど、これっておしいってことだよね。あとは、足りないのは笑顔なんだけど、うーん、もっとおいしいケーキを持ってこれれば、ベルカは笑ってくれるのかな?)

【エリーゼとベルカの支援がBになりました】

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア郊外・別荘『カムイの部屋』―

フェリシア「失礼しますぅ~。カムイ様は、まだ眠ってらっしゃるんですね」

フェリシア「……はふぅ、昨日はよく考えると結構危険なことをしていたんだなって思います。でも、カムイ様の命令にはちゃんと従うのが従者としての務めですから、うんうん」

フェリシア「……」ペタペタ

フェリシア「お顔に傷残っちゃってます。カムイ様も女の子なんですから」

 ナデナデ

カムイ「ん……」

フェリシア「!」

カムイ「ん、んんっ……誰、ですか?」

フェリシア「フェリシアです、カムイ様」

カムイ「フェリシアさんですか……。すみません、昨日は……っ!!」

フェリシア「まだ完治してるわけじゃないんですから、安静にしてください」

カムイ「ふふっ、確かにもう少しの間は横になっていた方がよさそうですね……」

フェリシア「はい、今日くらいは私の言うことをちゃんと聞いてくださいね?」

カムイ「そうですね……。あの、フェリシアさん」

フェリシア「なんですか。カムイ様」

カムイ「ありがとうございます」

フェリシア「ふええええ、わ、私お礼を言われるようなことなんて何もしてませんよ?」

カムイ「してますよ。昨日の会場で、踊り子さんたちを守るために戦ってくれてたじゃないですか」

フェリシア「それは……」

カムイ「本当は私が早くに戻っているべきだったんです。そうできなかったから、フェリシアさん達も危険にさらしてしまいました。ごめんなさい」

フェリシア「カムイ様」

カムイ「なんですか?」

フェリシア「その言葉だけは撤回してほしいです」

カムイ「え?」

フェリシア「私、確かにメイドとしてダメなところがありますよ。料理も洗濯もお掃除もダメダメで、どんなに頑張っても要領よくこなせません。こんな私がカムイ様に仕えている意味があるのかなって、思わないわけじゃないんです」

フェリシア「でも、私、カムイ様に仕えるっていう心は誰にも負けないつもりなんです。だから、カムイ様にそうやってお荷物のように言われるのは、すごく悲しくて……その」

カムイ「……」

フェリシア「私、戦闘だけはうまくできます。あの場で私にはカムイ様との約束を守る力があったから、ピエリさんと一緒に戦ってたんです。カムイ様から受けた命令を遂行するのが従者のお仕事で、誇りを持って従事しました」

カムイ「……」

フェリシア「だから……」

カムイ「フェリシアさん」

フェリシア「だから……私だって、カムイ様のお役にもっと立ちたいです。カムイ様が困ってることがあったら助けたいです。でも、不器用でおっちょこちょいだから、戦闘の時くらいしか……」

カムイ「そんなことありません」

フェリシア「カムイ様」

カムイ「ふふっ、まさか、フェリシアさんからダメ出しを受けるとは思ってもいませんでした。ギュンターさんがいたらフェリシアさん、何か言われていたかもしれませんね」

フェリシア「…そ、そうですね。はうう、お皿を割った時よりもいっぱい怒られちゃう気がします」

カムイ「でも、フェリシアさんの本音が聞けて、少しだけ嬉しいです」

フェリシア「カムイ様」

カムイ「だから、改めて言わせてもらいますね」

フェリシア「?」

カムイ「フェリシアさん、踊り子の方たちを守ってくれてありがとうございます。これからもよろしくおねがいします」

フェリシア「は、はい。えへへ、カムイ様に褒められてしまいました」

カムイ「そんなにうれしいんですか?」

フェリシア「はい、主に褒められて喜ばない従者なんていませんよ、えへへ」

カムイ「そうですか……。フェリシアさん、それじゃ着替えを手伝っていただけますか?」

フェリシア「はい、任せてください!」

フェリシア(もっと、もっと、カムイ様に頼りにされる、そんなメイドになっていきたいです。それが、あの日、怯えてるカムイ様の手を握った私の、最初の誓なんですから)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フェリシア「本当にここまでで大丈夫ですか?」

カムイ「はい。ありがとうございます、フェリシアさん。ここからはできれば私だけで訪ねたいので、すみませんけど」

フェリシア「いいえ、それでは私はこれで失礼しますね、カムイ様」

 カ カ カ

カムイ「………っ!!」

カムイ(流石に寝て起きてどうにかなるというものではないということですか……)

カムイ「ふふっ、さすがに強硬手段に出たくらいはありますね」

 コンコンコン

 ガチャ

ルーナ「誰? まだアクアは眠って――、ってカムイ様」

カムイ「ルーナさん、おはようございます」

ルーナ「いや、もうこんにちはって時間よ? まぁ、その様子だと、今さっき起きたばっかりって感じみたいだけどね。体のほうは大丈夫なの?」

カムイ「はは、何とかここまで来るには回復してますよ。ジンジン痛みますけどね」

ルーナ「まぁ、あんな風に入り込んだらそうなっても仕方ないわ。とりあえず、本当の意味で大事はなさそうね」

カムイ「はい……。アクアさんの様子はどうですか」

ルーナ「立ち話もなんだし、中に入った方がいいわ。それにカムイ様としても、まだ公に出したくない話でしょ?」

カムイ「その通りです」

ルーナ「それじゃ、入った入った」

 バタン

カムイ「……」

カムイ(アクアさんの心臓の音、確かに聞こえますね。よかった、生きていてくれて)

ルーナ「そんな耳澄ませなくったって、アクアはちゃんと生きてるわよ」

カムイ「そうですか。それで、カミラ姉さんは?」

ルーナ「カミラ様はエリーゼ様のところよ」

カムイ「え、エリーゼさんに何かあったんですか?」

ルーナ「そっか、カムイ様はエリーゼ様に起きたことを知らないのよね?」

カムイ「知りません、初耳ですから、一体なにがあったんですか?」

ルーナ「えっとね、私も詳しいことはさすがにわからないけど、特別来賓席から落ちてきたって聞いたわ」

カムイ「どうして、そんな場所から。あのとき、すでに避難していたのではなかったんですか?」

ルーナ「ガロン王様を助けに行ったんだと思うわ。でも薄情なものよね、その父さんはエリーゼ様のことを心配に思ってもいないなんて、自分の娘が一大事だって言うのにもうウィンダムに向かったって言うんだから……」

カムイ「エリーゼさん……」

ルーナ「ふふっ、心配って顔してる」

カムイ「当り前ですよ」

ルーナ「それじゃ、このあと行ってきなさいよ。ちょうど、カミラ様も一緒にいるはずだから」

カムイ「はい、そうさせてもらいます」

ルーナ「でも、カムイ様が来てくれてちょうど良かったわ」

カムイ「?」

ルーナ「いや、ついさっきまでアクアの汗を拭いててあげてたんだけど、替えの服を準備してなかったから……」

カムイ「ああ、そう言うことですか。なら、すぐに取りに行ってあげてください、その間は私が見ておきますから」

ルーナ「ええ、ありがとう」

 ガチャ バタンッ

カムイ「……アクアさん」

 ナデナデ

カムイ「今度は私があなたを助ける番になってしまいましたね。こうやって交互に助けあって、なんだか不思議な関係ですね」

カムイ「お互いに国を入れ替わるようにして生きて来て、そして出会って、どちらかが窮地に陥ってたら手を差し伸べて、周りから見たらなんだか空回ってる二人に見えていたのかもしれません」

カムイ「でも、私はいつもアクアさんのために動いていたわけじゃありません。私は私のためだけに、動いてばかりでしたから……」

カムイ「そんな私をアクアさんはいつも、いつも支えてくれてて、今回初めて私はアクアさんのために行動して、そしてどうにか一つ恩返しができました。まだ、あなたに返さないといけない恩はたくさんあります。ですから――」

 スッ

カムイ「!」

アクア「カムイ……」

カムイ「アクアさん」

アクア「……どうして、あなたはそんなに私を繋ぎとめようとするの?」

カムイ「……」

アクア「……私が失敗したこと、あなたなら理解しているはずなのにどうして? 私を守ることがどういうことになるのか、わかっているのになんで……」

カムイ「決まってますよ、あなたが必要だからです」

アクア「……え」

カムイ「あなたを守りたいから、そう言うと思っていましたか?」

アクア「カムイ……」

カムイ「アクアさん、私はあなたの力を欲しています。あなたが知っていることは、必ず私が目指す場所に繋がっているはずなんです。私はあなたを信じると決めて、引き止めたんですから」

アクア「……そんなに体中を傷つけてまで、私を繋ぎとめる意味があるって、言ってくれるの?」

カムイ「…こんなもの些細なものですよ。それに私の顔にはもともと大きな傷があるんですから、今さら一つ二つ付いたところで――」

 バサッ ギュッ

アクア「……」

カムイ「アクアさん?」

アクア「あなたは、馬鹿よ。大馬鹿よ……」

カムイ「ふふっ、そうですね。私は馬鹿ですよ。最初は一人で何もかもできると舞い上がってましたから」

アクア「知ってるわ」

カムイ「それで大きな失敗をして、そしてそこを助けてもらったからかもしれません。アクアさんを巻き込みたくないなんて、そんなことを思っていたんです」

アクア「……」

カムイ「やっぱり、どこかで私はあなたのことを守りたい、そんなことばかり考えていました」

アクア「だから、私を引き止めたの?」

カムイ「言っているじゃないですか私にはあなたが必要だって。それがわかったから、私はアクアさんを捕まえにいったんです」

アクア「……あなたには多くの仲間がいるわ。私がいなくても……そこにたどり着けるかもしれないわ」

カムイ「ええ、います。私にはもったいないくらいの大切でとても心強い仲間達が。でも、その中にアクアさんもいないとダメなんです。それでこそ、私はそこにたどり着けると信じています」

アクア「……」

カムイ「アクアさん。貴女は私にとっての信頼できる人にもうなっているんです。私にはあなたが必要です」

アクア「カムイ……」

カムイ「なんですか?」

アクア「……体の傷、見せてもらってもいい?」

カムイ「はい、いいですよ」

アクア「……本当に馬鹿よ。こんなに体中傷だらけにして……」

カムイ「やったのはアクアさんですよ? あんなに拒絶されるなんて思ってませんでしたから」

アクア「当り前よ。それを突破してきたあなたはやっぱり馬鹿よ。人の気持ちも知らないで」

カムイ「アクアさんこそ、私の気持ちも知らないで」

アクア「知っているわ。私のことをとても信頼してくれてる。そうでしょ?」

カムイ「うっ、卑怯ですね。この流れだと反論できないじゃないですか」

アクア「ええ、そういうものよ。それと、抱きしめさせて」

 ギュー
 
 ドクンッ ドクンッ

アクア「……カムイの心臓の音、ちゃんと聞こえる」

カムイ「はい、アクアさんの心臓の音も、ちゃんと聞こえますよ」

アクア「……カムイ、私もあなたのことを信頼しているわ」

カムイ「はい」

アクア「もう、私一人では戦い続けられない。私の戦いは昨日で終わるはずだったから、この命に代えても……」

カムイ「なら、私の命も連れて行ってください。あなたの戦いに私も加わります。ですから、アクアさんも私の戦いに加わってください」

アクア「……ええ。カムイ」

カムイ「なんですか?」

アクア「ありがとう……私を繋ぎとめてくれて……。私を信じてくれて……」

カムイ「いいえ、私の方もですよ、アクアさん。ありがとうございます、今までずっと私を助けてくれて……、」

アクア「カムイ……」

アクア(貴女が私を信じてくれた分だけ、私もあなたを信じるわ。だから、今は少しだけ、このままで……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーナ「んーっ……服持って戻ってきたけど……」

「凄く入りずらいわね、これ……」

 休息時間1 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアB++→A
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB→B+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB++
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB+
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC
(イベントは起きていません)

 今日はここまで

 アクアとカムイがここでAになるのは仕様で、ここからB++でイベントが始まっているキャラクターはAになり始めます。
 Aは後に起きることに関わってくるようにしたいと思っています。
 
 安価で次の展開を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 ジョーカー
 ギュンター
 フローラ
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ

 カムイが話しをする人物 >>312

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

・レオン×カザハナ B
・エリーゼ×ハロルド B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス B
・サイラス×エルフィ C
・モズメ×ハロルド C
・レオン×サクラ C
・ギュンター×ニュクス C
・ベルカ×スズカゼ C
・レオン×エルフィ C
・アクア×ゼロ C

 この中から一つ>>313
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

・ベルカ×エリーゼ B
・レオン×ツバキ B
・フェリシア×エルフィ B
・シャーロッテ×モズメ B
・フローラ×エルフィ C
・エルフィ×モズメ C
・シャーロッテ×カミラ C
・ギュンター×サイラス C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C
・アクア×ルーナ C

 この中から一つ>>314

このような形でよろしくお願いいたします。

レオン

ベルカ×スズカゼでお願いします

ギュンター×サイラスでよろしく。

◇◆◇◆◇
―北の城塞・中庭―

ベルカ「……」

 ニャーニャー

ベルカ「……」

スズカゼ「ふふっ、やはり子猫にとってはベルカさんといる時間が一番落ち着くみたいですね。私と一緒の時はこんなにすり寄ってくることはありませんから」

ベルカ「そう……。でもここからどうすればいいのかわからないわ」

スズカゼ「そうですね、まずは撫でてあげるのが一番いいと思います」

ベルカ「な……撫でる!?」チラッ

スズカゼ「はい、動物との触れ合いですから。ベルカさんもドラゴンの首を撫でてあげているでしょう? あのような感じで撫でてあげると喜んでくれるはずです」

ベルカ「それは、そうだけど」チラッ

 ニャー?

ベルカ「……別物すぎるわ」

スズカゼ「大きさというのは些細な問題です。ベルカさんに懐いているという意味では、ドラゴンもこの子猫も変わりませんよ」

ベルカ「……そういうもの?」

スズカゼ「そういうものです。そうですね、ベルカさんは相手の姿だけで、依頼の良し悪しを決めたりはしないでしょう」

ベルカ「ええ、依頼は依頼。相手の姿なんて関係ないわ、できることはできる、できないことはできないただそれだけのことだから」

スズカゼ「それと同じと考えていただければ、いいかもしれません」

ベルカ「……確かにそうかもしれないわね」

スズカゼ「では、触れてあげてください」

ベルカ「ええ……」

ベルカ「……」

 ピトッ

ベルカ「……こ、こう?」ナデナデ

スズカゼ「はい、お上手ですよ。ふふっ、子猫もとても気持ちよさそうです」

ベルカ「そう見える?」

スズカゼ「ええ、その子用に餌を買っておきましたので、今取りに行ってきます。少しの間よろしくお願いしますね」

ベルカ「わかったわ」

ベルカ「……」ナデナデ
 
 ニャー

ベルカ「……」ナデナデ
 
 ゴロゴロゴロゴロ

ベルカ「ふふっ、スズカゼの言うとおり悪くないのかもしれない。こういうのも……」ナデナデ

【スズカゼとベルカの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞・訓練場―

ギュンター「それでは始めるぞ、サイラス」

サイラス「ああ、よろしくお願いするよ、ギュンター」

ギュンタ―「では行くぞ!」

~~~~~~~~~~

ギュンター「でえぃ!」

 キィン カランカランッ

サイラス「しまった!」

ギュンター「でやぁ!」
 
 ガキィン

 ドサッ

サイラス「いつっっ……」

ギュンター「ふむ、踏みこみは良いが、詰めが甘いな。サイラス」

サイラス「くっそー、今のはいい感じに決まったと思ったんだけど」

ギュンター「ふっ、これでもお前よりは長く生きているのでな。そう簡単に負けてやるつもりなどない」

サイラス「しかし、本当にギュンターは強いよ」

ギュンター「強いか。しかし、私もお前と同じ騎士になりたての頃はこうはいかなかった。毎日鍛錬を積んで、ようやく今のこの姿だ。とてもではないが強いというわけではない」

サイラス「いや、そんなことはない。ここまでギュンターはカムイのことを守ってきたじゃないか。それだけでも、ギュンターが強いこととの証明になる」

ギュンター「ほう、自身を持っていうのだな?」

サイラス「ああ、前に言ったはずさ。俺の中にあるカッコいい男はギュンターだってさ。それに、騎士としても俺はギュンターのようになりたい、そう考えている」

ギュンター「……サイラス。お前は勘違いしていることがあるようだ」

サイラス「?」

ギュンター「確かに私のことを憧れや目標に思うことは自由だ。しかし、サイラス、お前は私ではない。そうだな?」

サイラス「それは、当たり前だ」

ギュンター「なら、サイラス。お前が目指すべきものは私の模倣ではなく、サイラスという騎士であるべきだ」

サイラス「ギュンター」

ギュンター「ふっ、少しだけ思っていた。今手合わせしたとき、どこかで見たことある動きだとな。しかし、これではっきりした、お前の動きは私の動きに似ている。サイラス、カムイ様を今後守っていくことになるのはお前自身、その意味をもう一度考えてくるといい」

サイラス「……わかった。すまない、ギュンター」

ギュンター「なに、これは私の好奇心。模倣ではなく、お前そのものがどう戦うのか、それが気になっているだけのことだ。次の手合わせ、楽しみにしているぞ」

サイラス「ああ、約束する。次は俺としての戦い方で、ギュンターと手合わせすると」

ギュンター「うむ」

【ギュンターとサイラスの支援がBになりました】

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア郊外・別荘『エリーゼの部屋』―

エリーゼ「すぅ……すぅ」

サクラ「昨日より、良くなったみたいです。呼吸もすごく緩やかになりましたから、このままいけば明日には熱も引くと思いますよ」

カミラ「そう、ありがとうサクラ王女。エリーゼのことをずっと見ててくれて」

サクラ「いいえ、気にしないでください。私も皆さんのお役に立ててうれしいですし、エリーゼさんのこととても心配でしたから」

カミラ「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいわ。本当、エリーゼもいい友達ができたって思えるわ」

サクラ「そんな風に言われると、なんだか照れてしまいます」

カミラ「照れてる顔も可愛いわ」

サクラ「ううっ、恥ずかしいです」

カミラ「でも、もう一度改めてお礼を言わせて、ありがとうサクラ王女」

サクラ「えへへ、ありがとうございます。こんな風に誰かの力になれて、私……とって……も……」

 ポスッ

カミラ「サクラ王女?」

サクラ「すぅ……すぅ」

カミラ「……昨日からずっと見てくれてたのよね。本当にこんな小さい体で頑張っちゃって、エリーゼと同じでとっても優しい子ね」ナデナデ

 ガチャ

カムイ「カミラ姉さん?」

カミラ「あらカムイ、もう体のほうは大丈夫なの?」

カムイ「まだ完全とは言えませんけど、さすがに私が休んでいるわけにもいきませんから。サクラさんもいらっしゃるんですか?」

カミラ「ええ、ここにいるわ」

サクラ「すぅ……すぅ」

カミラ「さっき眠ったところ。昨日の夜から、ずっとエリーゼのことを見てくれていたから、相当無茶していて、エリーゼの容体が本格的に落ち着いたから、緊張の糸が切れたのかもしれないわ」

カムイ「……ふふっ、サクラさんはどんな寝顔をしているんでしょうか」

カミラ「サクラ王女もエリーゼも可愛い寝顔よ。エリーゼも順調に回復に向かってる。この子がいっぱい頑張ってくれたおかげね。今度、サクラ王女もお茶会に誘ってあげたいわ」

カムイ「サクラさんも喜んでくれますよ、きっと」

カミラ「そうだとうれしいわ。来て早々なんだけど、カムイ少しだけ席を外すわね。私の膝の上で寝かせてあげるのも悪くないけど。今はゆっくりと休ませてあげたいから」

カムイ「はい、ここは私に任せてください。サクラさんのこと、よろしくお願いします」

カミラ「ええ、それじゃよろしくね」

 ガチャ バタンッ

カムイ「……」ペタペタ

エリーゼ「……」

カムイ「……エリーゼさんはノートルディアの件も理解していてお父様を助けに行ったんですよね」

カムイ「本当に、エリーゼさんは家族のことを思っているんですね。ずっと、ずっと、あなたのことを子供と思ってきた私たちのほうが、どちらかと言えば子供なのかもしれません」

カムイ「私達がエリーゼさんを子供だって思っているから、エリーゼさんは子供であろうとしていて、私たちはそれに甘んじてきた。でも、エリーゼさんは皆のためにそうすることを選べる素晴らしい人です」

カムイ「エリーゼさんの姿に私たちはずっと救われてきました。無邪気で子供らしいエリーゼさんがいて、今が戦火の中であることを忘れられる。サクラさんと一緒に話してる姿は、白夜と暗夜の戦争のことを少しだけ搔き消してくれます」

カムイ「………でも、エリーゼさんはそれを演じていたんですよね。あの日、レオンさんが襲撃を受けた日に、誰がこれを引き起こしたかということの話から今までの間、いや、もしかしたらもっと前からなのかもしれません……」

 ナデナデ

カムイ「でも、もうそんな風にしなくてもいいんですよ。私はエリーゼさんがありのままでいてくれることが一番うれしいことなんです」

カムイ「エリーゼさん、目を覚ましたらいっぱいお話をしましょう。ありのままのエリーゼさんと私はお話がしたいです。辛いことがあったら言ってください、悩んでいることがあったら言ってください」

エリーゼ「……」

カムイ「……自分で解決できないことがあったら、私たちを頼ってください。エリーゼさん大切な仲間で、なによりも私の可愛い妹なんですから……」

カムイ「エリーゼさん、貴女が見た光景が辛いものだとしても、それを私達がちゃんと受け止めます。一人ぼっちになんてさせません。みんなで貴女のことをちゃんと守り切ってみせますから」

エリーゼ「……」

カムイ「って、眠っている相手に言うべきことじゃありませんでしたね……。面と向かって言うべきなのに、やっぱり私は駄目なおねえちゃんですね」

エリーゼ「……」

エリーゼ(そんなことないよ、カムイおねえちゃん)

エリーゼ(ありがとう、そう言う風に言ってくれて。一人ぼっちにしないって言ってくれて、あたしすごくうれしいよ)

エリーゼ(でも、やっぱりちゃんと言ってほしいから、今日だけはズルしてもいいよね……)

エリーゼ(ちゃんと、言ってもらえたら、あたしきっと大丈夫だから……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「……」

カムイ(アクアさんの知っている秘密と、エリーゼさんが知っていること、それらがどういう風に繋がるのかはさすがにわかりませんけど。明日にはどうにか話の場を立てられるかもしれません)

カムイ「これからどうなっていくんでしょうか?」

レオン「あれ? カムイ姉さん」

カムイ「ああ、レオンさん。どうしました?」

レオン「いや、どうしましたかじゃないよ。昨日の今日でもう出歩くなんて……体の傷は大丈夫なの?」

カムイ「すみません、ずっと横になっているわけにもいかなかったので、いろいろと聞いておかなければいけないこともありましたから。体のほうは心配しないでください、これでも――っっ!!」

レオン「はぁ、いろいろと姉さんは無茶をしすぎてる。自己管理はしっかりとしてもらわないと」

カムイ「無茶をしないといけないこともありますから、だけど確かに昨日は無茶をたくさんしましたね。この体中の傷なんて、その証拠ですから」

レオン「……無茶をしてるっていう自覚があるなら部屋に戻って休むべきだと、僕は思うけど?」

カムイ「痛いところを付かれてしまいましたね。確かにレオンさんの言う通りです、これからすぐに部屋に戻りま……っ!!」

レオン「まったく、ほら手を貸して」

カムイ「?」

レオン「部屋に行くまで支えてあげるよ。さすがに痛みに顔を歪めながら、向かわせるなんてできないからね」

カムイ「そうですか、それじゃお願いできますか」

レオン「うん、まかせて」

 カ カ カ

カムイ「ふふっ、こうやって肩を任せて一緒に歩くのはなんだか初めてのことですね」

レオン「そうかもしれない。出会った時には盲目だっていうのに、いろいろとこなせるくらいになってたから。僕たちができることなんてあまりなかったしね」

カムイ「でも、私も皆さんに何かしてあげていたわけではないですね。私は自分に対してわがままに生きてきましたから、自分がそうしたいからそうして来たようなものですから」

レオン「だからこそだよ、こういう時くらいは力を貸すよ。これくらいにだったら僕にだってできることだからね」

カムイ「ふふっ、そう言えばレオンさんの悩み。まだ聞いてませんでした」

レオン「……いや、あれはもういいよ。あのとき、僕は姉さんに甘えられたんだから、ずっと甘えてるわけになんていかないよ」

カムイ「あの時しか甘えてないじゃないですか。ずっとっていうのは、こうやってベッタリ寄り添うくらいの状況を毎日続けてるくらいじゃないと」

レオン「ちょっと、姉さんひっつかないでよ」

カムイ「ふふっ、恥ずかしいんですか?」

レオン「さ、さすがにこういうところでは」

カムイ「なら、二人っきりなら恥ずかしくないですか?」

レオン「からかうのもいい加減にしてくれないかな?」

カムイ「そうですね、ごめんなさい」

レオン「……なんだかやけに素直だね。いつもの姉さんだったら、もっと僕のことを弄ってくると思ったんだけど」

カムイ「いえ、その……できれば私にもっと甘えてほしいなって思ってるんです」

レオン「どういうことかな? いまいちよくわからないんだけど」

カムイ「あの時だけじゃ、私の気が済まないんです。ずっと、レオンさんに私は辛い思いをさせてきました、それが一度だけで帳消しというのは」

レオン「姉さん達が来てくれたおかげで、僕もサクラ王女たちも生きていられた。それだけでも十分すぎることだよ」

カムイ「レオンさんにとってはそうかもしれなくても、私にとっては足りないということです」

レオン「……わがままだね」

カムイ「はい、わがままな性格ですから」

レオン「はぁ、僕が何を言っても引かないつもりだよね」

カムイ「ええ、そう簡単に引くつもりはありませんよ。レオンさんが私に甘えてくれるまで、ずっとこうやってからみついてあげてもいいくらいです」

レオン「それは困るかな」

カムイ「ふふっ、なら早く甘えてください」

レオン「はぁ……わかったよ。それじゃ、姉さん」

カムイ「はい、なんですか?」

レオン「明日の朝、僕を起こしに来てくれるかな?」

カムイ「起こしにですか?」

レオン「ああ、それが僕のお願い。だめ……かな?」

カムイ「いいえ、駄目じゃありませんよ。それでは、明日レオンさんを起こしに行きますね。あ、私が行くよりも先に起きてはいけませんよ?」

レオン「わかってるよ。ちゃんと起こしに来てくれるのを待ってるからさ。でもできる限り早くでお願いするよ」

カムイ「はい、お姉ちゃんにまかせてくださいね、レオンさん」

レオン「うん、よろしくね姉さん」

レオン(はぁ、どうにかなった……。姉さんのこういうところは少しだけ考えものかもしれない)

レオン(でも……こういうことでも、なんだか甘えられてる気がして)

(少しだけ、嬉しく思ってるのもたしかなんだ……)



休息時間2 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+→B
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB++
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB+
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 エリーゼは人一倍家族のために何かができる子だから、こうやって皆が不安にならないように偽ることもできる強い子だと思います。
 レオンは一度認めたとしても、そのあとはそれを表に出さないタイプな気がしたので、こうなった感じです。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 >>327>>328

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行します)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

・ベルカ×スズカゼ B
・レオン×カザハナ B
・エリーゼ×ハロルド B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス B
・サイラス×エルフィ C
・モズメ×ハロルド C
・レオン×サクラ C
・ギュンター×ニュクス C
・レオン×エルフィ C
・アクア×ゼロ C

 この中から一つ>>329

(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

・ギュンター×サイラス B
・ベルカ×エリーゼ B
・レオン×ツバキ B
・フェリシア×エルフィ B
・シャーロッテ×モズメ B
・フローラ×エルフィ C
・エルフィ×モズメ C
・シャーロッテ×カミラ C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C
・アクア×ルーナ C

 この中から一つ>>330

(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)

このような形でよろしくお願いいたします。

オデン

乙、そろそろ動くか
安価はアクア

レオン×カザハナ

レオン×カザハナ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・小さな湖―

オーディン「うおおおおおっ、キタキタキタキタ。今こそ真の力を覚醒すべきとき、必殺スプラッシュオブジアース!!!!!」ブンッ

 チャ チャ チャ チャポン

オーディン「ふっ、今日も歴史が塗り変えられた。着実な力の伸びを感じるっ!」

アクア「ねぇ、何をしているのかしら?」

オーディン「おわっ!? あ、アクア様……一体ここで何を?」

アクア「湖に向かって叫び声をあげてる人影を見掛けたから、何かと思ってきただけよ」

オーディン「ふっ、叫び声というのは違うな」

アクア「え?」

オーディン「俺は漆黒のオーディン、言霊の一つ一つには力が息づいている。それをさらに言語かすることにより、俺はさらなる力を得る」

アクア「つまり、叫び声をあげて力を高めようとしていたということね」

オーディン「さすがはアクア様だ。すぐに俺の言っていることを理解してくれる」

アクア「あまり理解したいわけではないんだけど。それで、その手に握っているのは何かしら?」

オーディン「ふっ、気付いてしまったか」

アクア「石ね……これも何かを高める呪術的な意味合いがあるのかしら?」

オーディン「いいえ、これをこう持ってですね。いくぞっ、闇の深淵より生れし畏怖すべき力よ、今こそ顔をのぞかせるがいい……! くらえっ、シンドラルゲーター・シンスメッソル!!!!」ブンッ

 チャ チャ チャ チャ チャポン

オーディン「ふっ、また歴史を塗り替えちまったな」

アクア「……ふふっ、水切りなんて、オーディンはやっぱり子供っぽいわ」

オーディン「この深淵の力を覗いてそう言うものは多い。だが、アクア様もいずれは……?」

 カチャ ゴソゴソ

オーディン「あの、アクア様?」

アクア「これでもないわね、これでも……」

オーディン「何をしてるんですか?」

アクア「……この石でいいわね」パシッ

オーディン「ふっ、深淵の力を得た俺にいきなり挑戦するとは、アクア様も無謀なことをされ――」

アクア「……えいっ」ブンッ

 チャッ   チャッ      チャチャチャッ チャッ  チャチャチャチャッ  チャチャポンッ

オーディン「……」

アクア「……いつもより少なかったわね。ふふっ」

オーディン「えぇ………」

【アクアとオーディンの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞・食品管理室―

フローラ「……思ったよりも食品の減り方が早くなってるわね。このところでここに住む方も増えてきましたから仕方無いともいえますけど」

フローラ「仕入量の変更と備蓄を少し追加しておく必要がありますね。馬と荷車の準備をしないと……」

エルフィ「フローラ」

フローラ「エルフィさん、こんにちは。今日もこちらにおいでになっていたんですね」

エルフィ「ええ、この前いっぱい御馳走してもらったから、そのお礼に何か手伝えないかなって」

フローラ「そんな、大丈夫ですよ。そのお心遣いだけで十分嬉しいですから、今日ものんびりしていってください」

エルフィ「そ、そう……?」

フローラ「どうかしましたか?」

エルフィ「その手に持ってるのは?」

フローラ「はい、この頃ここに住まわれている方々も増えてきまして、今までの食料の備蓄では量が足りなくなり始めているようなので。仕入量の変更手続きと、ここ数日分の物を買いに行くところなんです」

エルフィ「なら、その手伝いをさせてくれない?」

フローラ「……いえ、お客様にそんなことを頼ませるわけにはいきませんから」

エルフィ「でも……」

フローラ「ふふっ、エルフィさんは本当に優しい御方ですね。でも、これも私の仕事ですので」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フローラ「え、馬は全部出ているんですか?」

メイド「いるにはいるんですが、荷車を引けるような子は今いなくて……」

フローラ「そう。仕方ないけど定期量の変更手続きを完了させるだけにしましょう。少しの間、皆さんの食事の量を減らさなくてはいけないのは残念ですけど」

エルフィ「それは駄目」

フローラ「!? エルフィさん、いたんですか?」

エルフィ「ええ、フローラごはんの量が減るなんて駄目よ。みんな倒れてしまうから」

フローラ「でも、運べないのでは仕方ないわ。さすがに荷車を押す力なんて……」

エルフィ「……わたしが荷車を引いて町に行けば」

フローラ「いや、流石にエルフィさんでも荷車を動かすのは……」

 ググッ ゴトンゴトン

フローラ「動いた!?」

エルフィ「この上に色々載せても動かす自信はあるわ」

フローラ「ですが……」

エルフィ「その、わたしは力仕事しかできないから、これがフローラのためになるなら任せてもらいたいの」

フローラ「……」

エルフィ「……あの」

フローラ「ふふっ、そうですね。ではお願いできますかエルフィさん」

エルフィ「ええ、それじゃすぐに向かいましょう」

フローラ「いえ、さすがに荷車を今から引いて町に向かっても市場には間に合いませんから、馬で向かって荷車もそこで借りましょう。それと、あの、よろしければなんですが」

エルフィ「なに、フローラ?」

フローラ「お借りした荷車をお返しする際にも、一緒に同行していただけますか? 引ける馬はしばらくいないようですから」

エルフィ「ええ、わかったわ」

【フローラとエルフィの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオン邸―

レオン「カザハナ、これを」

カザハナ「なにこれ、本?」

レオン「僕の部屋にあった画集だよ。主に花とかを写したものでね、この前花を見るのは好きだって言ってたから、どうかなと思ってさ」

カザハナ「へぇ、そんな本があるんだ。ありがと、それじゃちょっと見てみるわね……えっ!?」

レオン「?」

カザハナ「……」

レオン「もしかして、本を間違えていたかい?」

カザハナ「いや、その花の本で間違ってないんだけど。その、すごく描き込んでるって思って……この花とか、この花も。花びら一枚一枚実物みたい」

レオン「花の画集だから当然じゃないかな。もしかして白夜だとこういうものはないのかい?」

カザハナ「いやあるよ。あるけど、こういうのじゃなくてなんて言うか絵!っていうのが多いから、実物を知らないとあまり伝わってこない事が多くて」

レオン「へぇ、白夜の芸術文化はそういうものなんだね」

カザハナ「そうなんだよね。確かに見てて楽しいんだけど、こういう風にまんまそれっ!みたいなのはないから……あっ」

レオン「……」

カザハナ「……そっか、暗夜の人から見ても、やっぱりこんなに奇麗なんだね……。なんだかうれしい」

レオン「ははっ」

カザハナ「な、なんでいきなり笑うのよ!」

レオン「ごめん、予想通りの場所で止まったから可笑しくてね」

カザハナ「……あたしのことわかってるって言われてるみたいで、ちょっと気持ち悪いんだけど」

レオン「僕はカザハナのこと、少しくらい理解してるつもりだよ」

カザハナ「へっ?」

レオン「それくらい一緒にいたんだ。それに主君と名前が同じ花が好きって言うのも、カザハナらしい気がするからね」

カザハナ「……もしかして、写ってる画集を見つけてくれたの?」

レオン「さか、どうだろうね。僕の主観で選んだけど、好みじゃなかった?」

カザハナ「そんなことないよ。でも……そうだ、レオン王子」

レオン「なんだい?」

カザハナ「その、もしよかったらなんだけど、今度一緒に見に行かない?」

レオン「……今は戦いの最中だけど?」

カザハナ「戦いが終わったらに決まってるでしょ? それにここまでしてもらってそれで終わりじゃ、あたしが納得いかないの。だからレオン王子には実物をどーんって見せてあげるんだから!」

レオン「ふふっ」

カザハナ「な、なんで笑うの!?」

レオン「いや、桜を前にしたら、君は僕に奇麗だって言うまで色々と小言を言ってきそうだなって思ってね」

カザハナ「なっ、あたしだって静かにすることくらいできるし……。それにレオン王子にも実物を見てもらいたいって言うのは本音だから。ここまであたしたちを支えてくれたんだから、そのあたしからのお礼って考えてくれないかな?」

レオン「お礼か……」

カザハナ「なに、なんか文句あるの?」

レオン「いや、何もないよ。むしろ喜んでその申し出は受けようかな。その約束が果たされた時はもう争いは終わってる。君たちも白夜に戻れているはずだからね」

カザハナ「レオン王子……うん、きっとそうなってるよ」

レオン「でも、カザハナに僕を驚かせることのできるものが準備できるのかは、わからないけどね」

カザハナ「最後の最後で余計なこといわないでよ! 見てなさい、レオン王子が思わず、おおっ!って言っちゃうくらいの桜を見せつけてやるんだから!」

レオン「ああ、楽しみにしてるよ、カザハナ」

カザハナ「……ありがと、レオン王子」

【レオンとカザハナの支援がAになりました】

疲労が酷いので今日は支援だけで
 
 明日、疲労が回復してたら本篇進めます。

 サクラとレオンの支援ですが、調べ直したところ指摘通りBでした。表記ミス、もうしわけありません。

 ちなみに水切りの世界記録は88、意味わからんなぁ


◆◆◆◆◆◆
―アミュージア郊外・別荘『エリーゼの部屋』―

 クルクルクル シュルルッ

カミラ「終わったわよ、エリーゼ。いつも通りの髪型にできたと思うけど、どうかしら?」

エリーゼ「うん、大丈夫だよ。ごめんなさい、いつもなら自分でやるんだけど……」

カミラ「気にしないでいいわ。それにエリーゼの髪を結ぶのは久しぶりだもの、私も嬉しいわ」

エリーゼ「ありがとー」

サクラ「エリーゼさん、だいじょうぶですか? まだ安静にしてても……」

エリーゼ「ううん、サクラが一緒にいてくれたから、もう大丈夫になっちゃった。えへへ、ありがとうサクラ!」

カミラ「ふふっ、でも心配したのよ、エリーゼ。突然、来賓席から落ちてきたって聞いたから」

エリーゼ「ごめんなさい……」

カミラ「謝ることじゃないわ。それに、エリーゼが無事なら何の問題もないもの。ささ、今日はおねえちゃんが運んであげるわね」

エリーゼ「え、運ぶって、わわっ!」

カミラ「ふふっ、こうやってよ?」

サクラ「お姫様だっこ。ふふっ、エリーゼさん、とっても可愛いですよ」

エリーゼ「さ、サクラまで……、カミラおねえちゃん、大丈夫、大丈夫だから!」

カミラ「そうはいかないわ。私なりのおねえちゃんとしてのしたいことなの、だめ?」

エリーゼ「だ、だめじゃないよ。えへへ、手まわしてもいい?」

カミラ「ええ」

 ギュッ

エリーゼ「えへへ~。それじゃ……行ってくるね、サクラ」

サクラ「はい、その、頑張ってください」

エリーゼ「うん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―別荘『アクアの部屋』―

 コンコン ガチャ

マークス「失礼する。皆集まっているのか?」

レオン「ああ、もう来てるよ」

カムイ「マークス兄さんが最後ですね」

マークス「そうか。……アクア、エリーゼ共に体はもう大丈夫なのか?」

エリーゼ「うん、心配掛けちゃってごめん」

アクア「私も迷惑を掛けたわ、ごめんなさい」

マークス「なに、気にすることはない。それよりも早速だが、本題に入ってもいいだろうか?」

アクア「……ええ、いいわ」

マークス「まずは確認しなければならない。アクア、お前は未だに白夜と繋がりを持っているのか?」

アクア「いいえ、繋がりは持っていないわ。あの日、私は私で、白夜は白夜でことを起こしていた。私がしたことは踊り子と歌姫を外に出られないようにしたことと、ステージで歌を披露したこと。彼女たちを外に出られないようにしたのは、私の個人的な行動に巻き込みたくなかったから。それも空回りに終わってしまったけど」

マークス「つまりクマゲラは惚けていたというわけではないということか……。次だ、アクアお前の目的は暗夜を壊滅させることなのか?」

アクア「いいえ、そんな大それたことをしようとは思っていないわ。それに、今ガロンが倒れたとしても、この戦争で白夜の勝利が決まるわけじゃない。それにガロンに何かあったらマークス、あなたがその遺志を継ぐのでしょう?」

マークス「ああ、その通りになるだろう」

アクア「それに私が暗夜を壊滅させるつもりだったら、今すぐにでも事を起してるはずだから」

レオン「……なるほどね、今ここには暗夜王族全てが集まってる。父上に何かがあった後、すべてを話すと僕たちを集めて一網打尽にすることができる。さすがに跡取りである王族をすべて失ったら、暗夜の混乱は計り知れないだろうし、力量バランスも崩れかねない」

アクア「ええ、自分の命を犠牲にしてでもそうするわ。それでこの戦いが終わりを迎えるなら」

カムイ「でも、その言い方を聞く限り、それが行われてもこの戦いは終わらない、そういうことですよね?」

アクア「……ええ」

マークス「それがわれわれに隠してきた事、ということか?」

アクア「そうなるわ。今まで隠してきたのは信じてもらえない可能性があるからもある。だけど、なにより……私はあなた達のことを全面的に信用してきたわけじゃなかったから」

カミラ「!!!」

アクア「ごめんなさい。みんなに信じてるって言われても、私にはその確証がなかった。そう言った人たちに空想や妄想の類とも思える話をするわけにはいかなかったの」

マークス「……いや、謝ることはない」

アクア「マークス?」

マークス「私は父上の件にお前が絡んでいると聞いて過ちを犯そうとしていた。すべてを聞いてからでもな、お前をもう一度家族として迎えておきながら、結局私は……」

アクア「いいえ、それが普通なのよ。そうでなくてはいけない。だって、言われたとおりに物事を信じるだけなら、そこに人間なんていないようなもの。それはただの操り人形でしかないわ」

カミラ「アクア……」

エリーゼ「アクアおねえちゃん」

アクア「ごめんなさい、でも今はみんなのことを信じてる。私のことをここまで生かしてくれたことは、私を信じて話を聞きたいからだって思っているから。それに……」

カムイ「?」

アクア「私のことを繋ぎとめてくれる人がいる。その人のために私は戦うって決めたから」

カミラ「ふふっ、妬いちゃうわね。こんなに熱々なコメントをされちゃうと、なんだか二人とも取られちゃった気分だわ」

レオン「カミラ姉さん、茶化すところじゃないよ」

カミラ「いいじゃない、少しは空気を緩くするのも。それに、ここからが本番ということよね?」

アクア「ええ、でも私の話の前に聞きたいことがエリーゼにあるわ」

エリーゼ「あ、あたしに聞きたいこと?」

アクア「ええ、エリーゼは特別来賓席に行ったのよね?」

エリーゼ「……うん」

アクア「その時、ガロンはどうなっていたの?」

エリーゼ「……っ!」

アクア「……」

エリーゼ「あ、あたし……」

 ギュッ

エリーゼ「えっ……」

カミラ「大丈夫よ、エリーゼ」

エリーゼ「カミラおねえちゃん……」

 ギュッ

カムイ「私達が傍にいます。安心してください」

エリーゼ「カムイおねえちゃん……うん、ありがとう」

アクア「エリーゼ……」

エリーゼ「ううん、大丈夫だよアクアおねえちゃん。あたしが知ってること、みんなに伝えないといけないから……」

レオン「それでエリーゼ、何があったんだ、あの場所で……」

エリーゼ「……あたしおとうさまが心配で、サクラ達に黙って来賓席に向かったの。それで来賓席に着いたとき、もうおとうさまはおとうさまの姿じゃなかった……」

カミラ「お父様の姿じゃない……?」

エリーゼ「うん、体中がね、なんだかドロドロしてた。ヘドロみたいな変なのになってて、王冠を付けてるからおとうさまなのかなって思えたくらいの。そんなのがいるだけだった」

マークス「……」

エリーゼ「それで体に光ってる眼みたいなのがあって……あたしそれに食べられちゃうところだったんだと思う」

レオン「……まさか、あの場所に転がってたゲルみたいなのは……」

エリーゼ「あたしが着いたときに、首を飛ばされちゃった白夜の兵隊さんがいたの、それを取り込むみたいにして体に入れてた。多分……食べられてたらあたしもそうなってたと思う。首を掴まれて引き寄せられて、すごく怖かった。体中ドロドロしたのに包み込まれて、もうダメだって思った」

マークス「そんな、そんなことが……」

エリーゼ「あたしだって信じたくない、信じたくないよ。でも、最後に助けてもらったから……」

マークス「助けられた?一体誰に……まさか白夜の者か?」

エリーゼ「ううん、おとうさまがね、エリーゼのことちゃんと守ってくれたんだ」

マークス「父上が?」

エリーゼ「うん。あのドロドロはね、竜の血がどうとか言ってたの。たぶん、あたしにもある竜族としての血がほしかったんだって思う。だからあたしでもレオンおにいちゃんでも、カミラおねえちゃんでも、マークスおにいちゃんでも誰でも良かったんだと思う。ドロドロにつかまれて、食べられそうになった時ね。エリーゼっておとうさまが呼んでくれたの……」

カミラ「お父様が?」

エリーゼ「うん、最初はただ名前を呼ばれただけかもしれないって思った。動きも取れないから、名前を呼んで怯えさせてから食べるのかなって。でもね、目が揺れてたんだ」

マークス「目?」

エリーゼ「体にあった目じゃなくて、本当のおとうさまの目がね。あたしのこと見てくれてたんだ。それでね、言ってくれたの、手を出すなって。そしたら変な声が聞こえたの。おとうさまの声じゃない、すごく変な声」

カムイ「お父様ではない、変な声ですか?」

エリーゼ「うん。そいつを早く取り込めって、まだこの場にいたいだろう、願いを叶えたいだろうって……」

アクア「……」

エリーゼ「おとうさまそれに抗ってた。とっても辛そうにしてた、だからおとうさまが苦しまないで済むなら、取り込まれてもいいって思った。だって、あたしがここで取り込まれたら苦しみが晴れるならって……。でも、おとうさま、言うんだ」

「わしは己の力で得たものにしか興味はない。ましてや我が子の命を犠牲にしてまで得るものはない。もう、わしの子たちをお前の駒として差し出すつもりはない……」

エリーゼ「それを聞いてたら体が宙に浮いて、劇場の天井が見えたの。おとうさまがあたしを助けるために外へ投げてくれたんだって思う」

カミラ「どうしてそう思えたの?」

エリーゼ「声が聞こえたの」

マークス「父上のか?」

エリーゼ「うん、最後まで忘れていたことを許してくれ、愛しいわしの子たちって。レオンおにいちゃんもカミラおねえちゃんも、マークスおにいちゃんにもね、おとうさまは謝りたかったはずだから。だからね、あたし心でお返事したの。みんな、おとうさまのこと大好きだから、心配しなくてもいいんだよって……」

レオン「エリーゼ……」

エリーゼ「そしたらね、おとうさま笑ってくれたの。ドロドロしててもね、わかるの、嬉しそうに笑ってるって。でもすぐに消えちゃって、もういなくなっちゃったんだって思ったら、目の前が真っ白になって、気がついたらここにいたんだ」

マークス「父上……」

エリーゼ「おとうさまはあれに操られてたんじゃないかなって思うの、あの変な声の奴に……」

カムイ「……変な声の奴ですか。アクアさん、エリーゼさんが見たお父様の姿とは一体何なんですか?」

アクア「……」

カムイ「アクアさん?」

アクア「もしかしたら、ガロンは私が消してしまったのかもしれない……」

マークス「アクア、何を言っている?」

アクア「それは……っ!」

 ドクンッ ドクンッ

アクア「うっ、うううっ!!!」

 ドサッ

カムイ「アクアさん!? どうしたんですか」

レオン「アクア!?」

アクア「はぁ……ぐっ、ううううああああっ」

 シュオンッ

カミラ「!? アクア、体が」

マークス「な、なにが起こっている!?」

アクア「……はぁ、はぁ……ううっ」

レオン(なんだこれは、アクアの体をまるで蝕む様に広がっているこの禍々しい物は……)

カムイ「アクアさん、しっかりしてください! アクアさん!」

アクア「……ふふっ、あなたの目が見えてたら、もっと心配されるところ――っ、だったわね」

カムイ「今でも十分心配してます。手を取ってください。辛かったら思いっきり握ってくれても構いませんから」

アクア「んっ、くっ、うううっ」ギュッ

カムイ(腕と足、頭の部分の気配靄が掛ってますね。まるで、そこだけ消えて行くかのよう……)

アクア「はぁ……はぁ……。んっ、はぁ、はぁ……」

エリーゼ「アクアおねえちゃん、大丈夫なの?」

アクア「ええ、ありがとうエリーゼ……。こんなに遅くに来るなんて思っていなかったから、気を失っている間にもう終えているのかと思っていたけど……」

マークス「一体何を言っているんだ。それにお前がガロンを消してしまったというのは……」

アクア「……あの時、私はガロンを正気に戻すために力を使った。今の現象はその代償として私が受ける呪い。みんなに気付かれない様にしてきたけど、流石に今回は予想外だったわ」

カミラ「まさか、シュヴァリエの時も?」

アクア「ええ、あの時はみんなカムイを心配してくれたからどうにかできたけど、今回はそうもいかなかったみたい」

レオン「アクアは父上を正気に戻すために、あんなことを?」

アクア「もしかしたらガロンをこちらに戻すことができるかもしれないそう考えた。ガロンが正気に戻れば、戦争の方針も変わるかもしれない、それに呪縛が解けることですべてが終わるかもしれない、そう考えた」

アクア「だけど、ガロンはその体のほとんどを蝕まれていた。私が呼び起したのは、わずかに残ったガロンの全てでそれは失われてしまった。私が、殺してしまったようなものなの……」

 ギュッ

アクア「!」

エリーゼ「アクアおねえちゃんの所為じゃない!」

アクア「エリーゼ?」

エリーゼ「だって、アクアおねえちゃんはおとうさまのこと助けようとしてくれたんでしょ。だから、おねえちゃんが悪いわけないよ!」

アクア「でも……私は……」

カミラ「エリーゼの言う通りよ、アクア」

アクア「カミラ」

カミラ「あなたはお父様を殺そうとしていたわけじゃない、助けようとしてくれていた。だから感謝はするけど責めるつもりはないわ」

レオン「そうだね」

アクア「レオン……」

レオン「それにもしも父上が操られていたって言うなら、ノートルディアの件もすべてに説明がつく。意味の無い行為のその意味がね。それをアクアが証明してくれた、そういうことになる。ただそれだけだよ」

アクア「……あなたらしい考えね」

マークス「……」

アクア「マークス」

マークス「アクア、お前の知っていることをできる限りでいい、われわれに話してくれ。もしも、お前の言葉が真実だとすれば、父上が言ってくれた言葉の意味を、私は理解することができるはずだ……だから頼む、アクア……」

アクア「……みんな、ありがとう」

カムイ「アクアさん」

アクア「カムイ……、こうして口にできるのはあなたのおかげよ。ありがとう」

カムイ「いいえ、これはアクアさんが紡いだことです、私は少しだけ押してあげただけですから。だから、私にも教えてください、あなたの知っていることを……」

アクア「ええ……」





マークス「ではアクア、教えてほしい。今、父上は何者になってしまったのかを……」

アクア「……ねぇ、みんなガロンが信仰している者のこと、覚えてる?」

カミラ「お父様が信仰している物?」

エリーゼ「え、おとうさまが?」

レオン「あっ……もしかして、異形神ハイドラのことを言っているのかい?」

マークス「なぜ、そのような物の名前を……!」

カムイ「アクアさん、まさか……」

アクア「……」

マークス「アクア……」

「異形神ハイドラは空想の神ではなく、この世に存在する者だというのか?」

今日はここまでで

 ガロンは元々子煩悩だったことを考えると、こういう風に家族を思っている描写があっても良かった気がするという感じの流れです。
 暗夜は今まで過ごしてきたカムイが兄妹との絆をはぐくむより、今まで離れていたアクアが絆を強めることのほうが良い気がしたので、こういう形になりました。 

 次でアクアの説明が終わります。
 そろそろ、クラスチェンジの案を出そうと思いますので、よろしくお願いいたします。
 

カムイ「異形神ハイドラ……それが、エリーゼさんの聞いた変な声の正体ということですか……」

マークス「しかし、なぜ父上はそのような者に……。かつての父上を知る限り神託になど縋るような、そんな人間ではなかった。少なくとも、己の儀を持って戦っていた」

アクア「ええ、ガロンの話はよくお母様から聞かされていたから、そのことはわかっているつもりよ」

マークス「シェンメイから?」

アクア「ええ、ガロンが私のお母様を愛していたことは知っていて、お母様もよくガロンのことを口にしていた。自分の信じた道にこそ、目指すべき場所があると信じているそんな人だって。そう考えれば、神託に縋る姿なんてあまりにもかけ離れた姿とは思えない?」

カミラ「そうね。お父様の権限は確かに絶対、でもそれはお父様の判断に基づいて行われていたわ。あんな風に神託で物事を決めるような方ではなかったはずだもの」

アクア「私にもガロンがなぜ取り込まれていったのか、そこまではわからない。そこにはガロンが何を望んでいたのかが関係していて、その願いの隙間に付け込まれたのよ」

マークス「……父上は暗夜王国の繁栄を望まれていた。それを利用されたというのか……」

レオン「いや、もしかしたら理想は違っていたのかもしれないよ」

マークス「それはどういう意味だ、レオン」

レオン「暗夜王国の繁栄っていうのは僕たち、いや暗夜王国に住む者たちに対して示されるもので、本当に父上がしようとしていたこととは違うのかもしれない」

マークス「父上が示していたのは、王としての使命ということか……」

レオン「うん、そういうこと。暗夜と白夜の戦争は繁栄をもたらす、いわば皆が剣を持って戦うための理由を父上が僕達に課していた形だったのかもしれないからね」

カミラ「そうね。多くの民はそれに賛同して、その結果今の暗夜王国があるもの。それにお父様は結果さえ出せばそれを認めてくれる、それに賛同して属国になった小国も少なくないわ」

エリーゼ「でも、あたしが生まれるより前は、そんな事あまりしてなかったんでしょ? どうして国を大きくし始めたの?」

マークス「……唐突な発表だったことは覚えている」

エリーゼ「え、どういうこと?」

マークス「軍備の拡張などの話も何もなかった頃、突然父上が国を大きくするために他国を束ねると発言した。真意は定かではないが、暗夜の繁栄のためというのは確かに掲げられていた。豊穣の大地を手に入れ、その大地に新たに根付くわれわれ暗夜が繁栄していくと……」

カムイ「それが暗夜王国の拡張の始まり、ということですか」

マークス「ああ、その頃は白夜との小競り合いも落ち着きを迎えつつあったはずだ」

エリーゼ「え、そうなの!?」

マークス「無限渓谷がその停戦ラインとして機能し始めたのがその頃だ。互いの接触を出来る限り避けるためにな」

カムイ「そう言えば、最初にお父様から受けた任務は放棄された城砦の偵察でしたね。すでにあの頃から……」

アクア「すべてではないけど、恐らくはね。今まで緊張状態で止まっていた状況を崩して、本格的に戦争を再開させるのが奴の最初の目的だったのかもしれない。カムイはこの長く続いていた均衡を崩すために送られて、そして殺されかけた」

カムイ「でも私はお母様のおかげで死なずに済んだ。怒りに身を任せた結果だとしても、お母様のおかげで生きながらえたことは確かです。だとすれば、これもハイドラの筋書き通りだったということでしょうか?」

アクア「……いいえ、たぶん筋書きとは違うはずよ」

カムイ「……そうなんですか?」

マークス「なぜそんなことが言える?」

アクア「本当ならカムイとミコトを殺すことで白夜と暗夜、双方の人々に悪意を植え付けることがすべてだったはず。私が白夜で生きていることは完全に予想外だったはずよ」

カミラ「でも白夜の女王とカムイが一緒に死ぬことで、暗夜と白夜双方に悪意を与えることになるの?」

アクア「あの日、あなた達はどういった経緯で白夜平原にやってきたのかしら?」

エリーゼ「カムイおねえちゃんが白夜にいるって聞いて、助けるために……あっ」

マーカス「まさか、われわれに白夜に対する憎しみを芽生えさせるためだけに、このようなことを!?」

アクア「私はそう考えてる。もしもカムイが暴走したままでそれを止めることができなかったら、破壊を続けて息絶えていたはずよ。暗夜からすれば、カムイが白夜で死んだということはそれだけでも憎しみの対象となる。そして白夜にとっては暗夜にいたことにより狂ってしまったカムイと我が子を信じて命を散らしたミコト、暗夜に人生を狂わされた二人の仇を討つお膳立てが出来上がる。もう、誰も止めることもない戦争が始まる、たぶんこんなに長くは続かない戦いになるはずだったのよ」

レオン「……白夜が攻撃してきたとしても、すぐに暗夜が押しつぶしていただろうね。国力はこちらの方が遥かに上だったし、なにより姉さんを殺されて僕たちは黙っているつもりはないよ」

カムイ「同時にガングレリで白夜を守っていた結界も解けた……。話に聞いていた結界は悪意を持ったものではなく、ハイドラに扇動された悪意を近づけないためのものだったんですね」

アクア「ええ、それがあったおかげで白夜は長い間、悪意との大規模な接触を避けられてきた。それを崩す機会を伺っていたのよ。何年もかけてね」

カムイ「……用意周到というレベルではありませんね、この執念深さは。凄まじい愛情にも感じられますね」

レオン「重すぎるから遠慮したい愛情だけどね。それでこの執念の果てにハイドラは何を望んでいるって言うんだい?」

アクア「……世界の破壊よ」

レオン「世界の破壊って……」

アクア「それが唯一の望み」

マークス「そんな望みに意味があるというのか?」

アクア「そうね、私もこの望みに意味があるなんて思えない。でも、向こうは本気でそれを成し遂げようとしてる。どんな理由だとしても、強き願いの前に弱き願いは砕かれることになるわ。私が踏み出せないでいる間に、ガロンを取り込まれてしまったように……」

カミラ「アクア……」

アクア「もしも、前の私なら、多分これ以上は何もなかったわ。ガロンを取り戻す術も仲間もすべて失って、そのまま消え去るはずだった。でも、今は違う。みんながいてくれるから、私の心はもう踏み出せているから」

マークス「ふっ」

アクア「?」

マークス「アクアはこれほどまでに強くなっていたのだなと思ってな……」

アクア「いいえ、強くなったんじゃないわ、支えられているだけよ。もう一人じゃない。そう思っているから……」

マークス「そうか……」

アクア「私から言えることはこれだけよ……」

マークス「わかった。カミラ、レオン、エリーゼ。お前たちの意見を聞かせてほしい」

カムイ「私からは聞かないんですか、マークス兄さん」

マークス「ふっ、お前の答えは決まっているのだろう」

カムイ「ええ、私はアクアさんを信じます。それが私の道なんですから……」

マークス「……カミラお前はどう考えている?」

カミラ「……今まで暗夜王国や白夜王国のことを考えて戦ったことなんて無かったと言ったら、お兄様はどう思う?」

マークス「……」

カミラ「私が戦ってきた理由はいつも自分のためだけ、だから明確な意思は持っていなかったと言ってもいいわ」

マークス「そうか」

カミラ「でも、今自分のため以外にその理由があるとするなら……。えいっ」ギュー

アクア「え、カ、カミラ。いきなり何!?」

カムイ「わふっ、カミラ姉さん、いきなりすぎますよ」

カミラ「ごめんなさい、でもこれくらいでしか私はみんなにお姉ちゃんらしく振舞えないから、自分のためじゃなくてあなた達のために戦えるお姉ちゃん。それが私の戦う理由」

マークス「カミラ……」

カミラ「マークスお兄様、私の戦う理由はこれだけよ。政治とかそういう問題よりも、守りたい可愛い妹たちのために私は戦う。それがお父様と戦う道に繋がったとしてもね」

カムイ「カミラ姉さん……」

アクア「カミラ……」

カミラ「ふふっ、そんな顔しないでほしいわ。それとも、少し頼りない?」

アクア「そんなことないわ」

カミラ「ねえ、私ができることはこれくらい、こんなお姉ちゃんでもあなた達の傍にいていいかしら?」

アクア「もちろんよ、カミラ」

マークス「……それがカミラの答えということでいいのだな?」

カミラ「ええ、マークスお兄様……」

マークス「……エリーゼお前はどう考えている?」

エリーゼ「……あたしも政治とかそういうことはよくわからない。白夜を侵略することもね、今の今まで興味なんてなかった。あたしは子供だから皆に守られて、知らないうちにすべてが終わるってずっと思ってたから」

マークス「……」

エリーゼ「でも、それじゃもういけないって思う。サクラと友達になって、サクラがね、本当のあたしを認めてくれた。だから何時までも子供だって思われてることに甘えていられないってそう思って。あたし、この戦争を終わらせたい、サクラの帰る場所をおとうさまに壊させたくない。おとうさまの姿で悪いことなんて絶対にさせない……させたくない。だから……」

 タタタタタッ ギュッ

アクア「エリーゼ……」

エリーゼ「あたしもみんなと一緒に戦う!」

カムイ「エリーゼさん……背伸びし過ぎかもしれませんよ?」

エリーゼ「背伸びって、おねえちゃんひどいよぉ。あたし、頑張ったのに……」

カミラ「ふふっ、エリーゼはもう大人になれてるのかもしれないわ。私達がエリーゼのことを抑えつけていたのかもしれないわね」

エリーゼ「そんなことないよ。あたし、まだ子供だよ。だけど、みんなと一緒ならちゃんと大人になれる、そんな気がするんだ」

カムイ「……大丈夫です、私達がちゃんと支えます。エリーゼさんが大人になれるように、エリーゼさんが戦い続けられるように、みんなで支えていきますから」

エリーゼ「ありがとう、カムイおねえちゃん」

マークス「……」

レオン「……」

 タ タ タ ボスンッ

アクア「レオン?」

カミラ「あらあら」

エリーゼ「レオンおにいちゃん……」

カムイ「レオンさん」

レオン「なんだい、僕がここに座るのが変に見えるのかい?」

マークス「何も言わずに座れば、そう思われるのも仕方ないかもしれないな」

レオン「ははっ、確かにそうかもね」

レオン「……僕はずっとね、姉さんのために戦ってきた。姉さんの言われたこと、頼まれたことに忠実にそれを成し遂げようとしてきた。どんなにつらくても、どんなに難しくても……。弱さは見せられないって。でもそれを変えてくれた人たちがいる、素直にならないといけないことを教えてくれた人がいる」

カムイ「……」

レオン「それを奴は奪おうとした。奪って、僕たちの悪意を父上に向けさせようとしていた。それを僕は許すことはできない。そして、ここまで一緒に過ごしてきた時間が、そんな破壊で終わるなんてことを僕は容認できない」

マークス「……レオン」

レオン「僕は父上と戦うことになっても別に構わない。父上はもういない、今いるのは父上を操っている異形神だけなんだから……」

マークス「後悔はしない、そうだな?」

レオン「ああ」

カムイ「レオンさん」ギュッ

レオン「うわっ////」

カミラ「ふふっ、レオン」ギュッ

レオン「ちょ、カミラ姉さんまで!?」

エリーゼ「レオンおにいちゃーん!!!」ギュッ

レオン「もう、暑苦しい!!!!」

アクア「ふふっ……」

レオン「アクアも見てるだけじゃなくて、みんなをどうにかしてよ!」

アクア「いいえ、思ったよりもレオンは嬉しそうだから……ね?」

マークス「そうだな……」

カムイ「マークス兄さん」

マークス「……」

カムイ「マークス兄さんは、どう考えていますか?」

マークス「……私は父上のことを未だに信じている」

カムイ「……」

マークス「しかし、今の父上に信じていた父上の面影を見ることが出来ない。父上の信じた正義はその場その場で姿形を変えるようなものではなく、どんなものにさえ曲がることのないものであり、同時に繁栄をもたらす何かしらの兆しがあった」

マークス「今、その兆しは見えない。そして、その父上の正義に付け込み破滅をもたらそうという存在を私も許すわけにはいかない」

カミラ「マークスお兄様」

マークス「だからこそ、私は知りたい。父上が掲げた理想を父上が成し遂げようとしたことが一体何であったのかを……」

 カ カ カ スッ

カムイ「……マークス兄さん?」

マークス「カムイ、私は正義を見出せなければ剣を振えない、そんな男だ。父上の正義を見限った今、私の手元に正義はない。だからこそ、カムイ。その正義を私が得られるまで、お前の正義に身を寄せさせてほしい」

カムイ「……私の正義にですか?」

マークス「ああ。今、私にとって見出せる正義はお前の進む道だけだ。そして、私が私としての正義を得られた時。私はお前を支える剣となれるはずだ」

カムイ「……はい、マークス兄さん」

エリーゼ「あー、マークスおにいちゃんだけずるい。あたしもカムイおねえちゃんを支える!」スッ

カミラ「そうね、お兄様だけにカッコいいところを一人占めにさせたくないわ」スッ

レオン「同感だね。それに、正義の無い今の兄さんには荷が重すぎるよ。それに僕たちは一人で戦っていけるわけじゃないんだから」スッ

マークス「お前たち……ありがとう」

アクア「マークス……」スッ

マークス「アクア……」

アクア「ありがとう、私の話に耳を傾けてくれて……」

マークス「気にすることはないさ。こちらこそ感謝しているのだからな」

アクア「私の方が感謝すべきことよ……」

マークス「いやこちらも……」

カミラ「はいはい、二人ともそこまでよ。もう、時間も時間なんだから」

カムイ「もう夜になっていたんですか、今日はここまでにしましょう。明日から王都に向けて動くことになりますから」

エリーゼ「あ、なら今日はみんなこの部屋で寝ようよ!」

レオン「この部屋でって、どうやって寝るんだ? たしかにベッドは大きいけど、今のままだと寝れて四人くらいじゃないかな?」

エリーゼ「えっとね、確かベッドのここら辺に……あった、これをえいっ」

 ガチャ ガチャ

アクア「え?」

カミラ「ベッドが横に広くなったわね」

エリーゼ「えへへ、この前サクラと一緒に見つけたんだ。こんなに大きいと何人もベッドの上に乗れるから、こうやっていっぱい集まって寝るための仕掛けってことだよね?」

アクア「……これってあれよね」

カミラ「そうね、このベッド全部の部屋に備えられてるのかしら?」

カムイ「これでみんなで寝れますね。あっ、アクアさんは中心ですよ」

アクア「え、私が?」

エリーゼ「じゃあ、あたしはアクアおねえちゃんの右隣!」

カミラ「ふふっ、それじゃ私はエリーゼの隣にするわ」

カムイ「じゃあ私は、アクアさんの左隣で、残りはレオンさんとマークス兄さんですね」

レオン「……兄さん」

マークス「なんだレオン?」

レオン「これはじゃんけんだよね?」

マークス「いや、じゃんけんの必要もない」

レオン「え?」

マークス「カムイ、レオンをお前の横に寝かせてやれ」

カムイ「構いませんよ。ふふっ、お姉ちゃんに甘えてもいいんですよ?」

レオン「いや、流石に一緒の布団で甘えるって言うのは、その……」

カミラ「あらあら、レオンは何を考えているのかしら?」

レオン「なんでもない、なんでもないから! そ、それじゃ失礼するよ姉さん」

カムイ「はい、どうぞ」

マークス「ではカミラ、横を失礼するぞ」

カミラ「ええ、どうぞマークスお兄様、どうかしらみんなで眠るのは?」

マークス「少し恥ずかしいものだな。全員いい歳だからかもしれない」

カムイ「ふふ、でもこうやってみんなで眠るのは初めてなんですよね」

アクア「私もそうかもしれないわ」

エリーゼ「だったら、今日が初体験なんだね! えへへ、なんだかうれしいな」

レオン「はぁ、エリーゼははしゃぎ過ぎだよ、ガキはこれだから」

カムイ「そんなことを言うと私が抱きついてあげちゃいますよ?」

レオン「そ、それはやめてくれないかな。嬉しい提案だけど……」

カミラ「ふふっ、顔を真っ赤にして可愛いわね」

マークス「では灯を落とすぞ」

エリーゼ「わっ、真っ暗になっちゃった」

カミラ「大丈夫よ、私が傍にいるわ」

エリーゼ「えへへ、カミラおねえちゃん温かい」

カミラ「ふふっ、マークスお兄様もどう?」

マークス「やったらお前は本気で叩くだろう?」

カミラ「ええ、本気で殴っちゃうかもしれないわ」

カムイ「レオンさん、私は一向に構いませんよ?」

レオン「いややらない、やらないからね!?」

カムイ「そうですか……」

アクア「それじゃ……」ギュッ

カムイ「? アクアさん?」

アクア「駄目かしら?」

カムイ「いいえ。もっと抱きしめてもいいんですよ?」

アクア「そう、なら」ギューーーー

カムイ「ぐっ!?」

アクア「どうしたの?」

カムイ「いえ、思ったより力があったので……」

アクア「そう……」

カムイ「でも、大丈夫ですよ。耐えられそうですから……? アクアさん?」

アクア「スー スー」

エリーゼ「寝ちゃった?」

カムイ「そうみたいです。ずっと緊張していたはずですから、安心したんでしょうね。このまま休ませてあげましょう」

カミラ「ええ、そうね」

アクア「……、みんな……、ありがとう……」

カムイ「……それは私たちの台詞ですよ、アクアさん」

「打ち明けてくれて、ありがとうございます……」

休息時間3 おわり

今日はここまでで 次かその次でこのアミュージアでの休息時間が終わリを迎えます。

 暗夜兄妹の絆はここくらいで完全に連なるくらいになったほうがいいと思っての流れになっています。

 この話の最中地雷原を進む様に言葉選びをアクアはしていたと思うと、不憫でならない。
 
 呪いのNGワードをいろいろ探したけど、やっぱり『透魔王国』くらいしかNGワードが思い当たらない。
 ハイドラって言っても消えないし、敵は別にいる発言も大丈夫だし、透魔王国を『あの国』って表現しても大丈夫なわけで、そう考えるとシェンメイはかなりストレートに口にしたんじゃないだろうか?

 クラスチェンジはアミュージアの休息が終わった次から始める予定で、次回の終わりに各キャラクターのクラスチェンジ職種を出したいと思います。
 王族やフランネルなどはほぼ固定になりますので、よろしくおねがいします。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 >>368>>369

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行します)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

・レオン×サクラ B
・ベルカ×スズカゼ B
・エリーゼ×ハロルド B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス B
・サイラス×エルフィ C
・モズメ×ハロルド C
・ギュンター×ニュクス C
・レオン×エルフィ C
・アクア×ゼロ C
・オーディン×アクア C

 この中から一つ>>370

(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

・ギュンター×サイラス B
・ベルカ×エリーゼ B
・レオン×ツバキ B
・フェリシア×エルフィ B
・シャーロッテ×モズメ B
・フローラ×エルフィ B
・エルフィ×モズメ C
・シャーロッテ×カミラ C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C
・アクア×ルーナ C

 この中から一つ>>371

(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)

このような形でよろしくお願いいたします。

ルーナ

ハロルド


本編には満足できなかったし、これを見て満たされる
安価はラズで

あーオデンアクアに変更でお願いします

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・市場―

ルーナ「きゃ、きゃああああっ」

 ドサドサドサッ

ルーナ「……さすがに買い過ぎちゃったわね。かといって兵舎までは結構距離あるし……仕方ないから馬でも借りて……」

ハロルド「おや、ルーナくん。こんなところでどうしたのかね?」

ルーナ「……」

ハロルド「な、なんだね。そのまずいというような顔は」

ルーナ「大丈夫だから」

ハロルド「いきなりどうしたんだ。私はまだ何も言っていないぞ」

ルーナ「困ってるなら手伝おうって言おうとしてるでしょう。あたしにはわかるんだから」

ハロルド「やはり困っているようだね」

ルーナ「いや、困ってない、困ってないから。えっと、これはこう持って、これも…よし! これでOK」

 ガサガサ ドサッ バリンッ

ルーナ「………あっ」

ハロルド「……」

ルーナ「なんてことしてくれるのよ!」

ハロルド「わ、私のせいなのか!?」

ルーナ「……そうね、今のはあたしの所為よね。ごめん、ちょっとこんがらがってた」

ハロルド「しかし私が申し出る前に断っていたのは……」

ルーナ「色々あんたについては、耳にしてるからね。とんでもない不運の持ち主、親切の空回りとか」

ハロルド「そ、そうか……」

ルーナ「で、でも。その、手伝ってくれようとしてくれたことは感謝してるから。まぁ、化粧瓶一本まるまる割れちゃったけど……」

ハロルド「すまなかった」

ルーナ「だから謝らないでって言ってんでしょ……。物ならまた買えばいいだけのことだし」

ハロルド「そうか、なら君の兵舎まで荷物を運んであげよう」

ルーナ「えっ? でも……」

ハロルド「困っている人は放っておけないのでね。それはルーナくんでも変わらない。ではその荷物を……む?」ガサゴソ

ルーナ「どうしたの?」

ハロルド「……いや、ルーナくんはこのような臭いのするものを使うのかと思ってな」

ルーナ「え、さっきの化粧瓶の残りじゃない、何言って……うえっ! なにこれ、くさっ!!!」

ハロルド「やはり、私の勘違いではなかったようだ」

ルーナ「うえぇ、あの露天商、展示品だけ使える奴にしてたのね! 許せない! ちょっと、シメテくるから、ここで荷物見てて!!!」

ハロルド「あ、ああ、気をつけて行ってくるんだぞ」

ルーナ「わかってるって!」タタタタタッ

ハロルド「さて、荷物を見ているだけなら私にでも……ん?」

 ナンカスゴクスッパイニオイガスルワ アノヒトジャナイ? オフロハイッテナイノカシラ?

ハロルド「……うむむ」

【ルーナとハロルドの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・小さな湖―

オーディン「よしこれに決めたぜ、この禍々しい形、これこそ、俺の力を極限にまで高める原石――」

アクア「駄目ね」

オーディン「ええっ、この形、カッコいいじゃないですか!」

アクア「……オーディン、水切りにそんな歪な形をした石なんて使わないわ。もっとこう薄くて丸い石を……」

オーディン「い、いいじゃないですか。俺はこの石に決めてるんです」

アクア「それじゃただ湖に石を投げているのと変わらないわ。そういうのはもっと気落ちした時とかにやりなさい」

オーディン「気落ちした時って、アクア様にもそんな時があるんですか?」

アクア「あら、私としてはオーディンの方こそ、そんな気落ちする時があるのか疑問だけど?」

オーディン「ひどい言われようだ」

アクア「ごめんなさい、あなたってそういう悩みとかあまりなさそうに見えるから」

オーディン「俺にだって悩みの一つや二つはありますよ。まぁ、この頃気落ちすることは少ないですけど。それにここに来てるのは別に気落ちしてたからってわけじゃないんで」

アクア「そう、そうよね。ごめんなさい」

オーディン「いいや、謝ることなんてないですよ。それに悩みはあるよりはない方がいいって思います」

アクア「そう、たしかにそうね」ブンッ

 チャ チャチャチャッ チャチャチャチャッ チャチャチャポンッ

アクア「中々全盛期には届かないものね。オーディンもやるんでしょ?」

オーディン「え、はい……やっぱりこの石じゃ難しいですよね?」

アクア「お勧めはしないわ。私はこの石ならオーディンでもそれなりな数を叩きだせると思うけど」

オーディン「……その、やってみます」

アクア「あと、少し入射角が高すぎるから、そこも直すといいわよ。それだけで二三回は変わるから」

オーディン「これくらいですか?」

アクア「そう、そんな感じ……ふふっ」

オーディン「え、なんか俺おかしかったですか?」

アクア「いいえ……。こんな風に誰かと水切り遊びなんてすることなかったから、なんだか嬉しくて」

オーディン「……アクア様?」

アクア「さぁ、それじゃオーディン。言われたとおりにやってみて、きっと前よりうまくできるはずだから」

オーディン「よし、それじゃ行きますよ。必殺―――」

アクア「そういうのは普通にできようになってからないしておきなさい。肩に無駄な力が入ってるから」

オーディン「……はい」

【オーディンとアクアの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・街道―

フローラ「この前はありがとう、荷車を運んでくれて助かったわ」

エルフィ「気にしないで。わたしにできるのはこれくらい、フローラの役に立てただけでもうれしいから」

フローラ「そう、いろいろとありがとう」

エルフィ「……ねぇ、フローラ」

フローラ「なに、エルフィさん」

エルフィ「わたしはフローラの役に立てたかしら?」

フローラ「え?」

エルフィ「最初、手伝いを申し出た時にフローラはとても心配そうな顔をしてたから」

フローラ「あっ……」

エルフィ「……」

フローラ「そうね、正直不安しかなかったわ。あなたはやさしい人だけど、まっすぐにしか考えられない人みたいだから」

エルフィ「……そうかもしれないわ。この前、瓶の蓋があかないからわたしが開けようとして壊しちゃって、怒られたことがあるから……」

フローラ「たしかに、最初に手伝ってくれたお皿運びもいっぱい割ってくれたわね。しかも落としたわけじゃなくて、持ったまま」

エルフィ「ごめんなさい」

フローラ「別に気にしてないわ。だって、あなたがやさしいことはもうわかってるし、それになんだか妹に似てるなって思うから」

エルフィ「フェリシアのこと?」

フローラ「ええ、とってもドジでおっちょこちょい、でも何事にもまっすぐに向かってく、あなたみたいに体が強いわけじゃないけど。そのあり方はとってもまっすぐでとても素敵、そんな自慢の妹」

エルフィ「……ふふっ」

フローラ「?」

エルフィ「フローラはフェリシアのこと大切に思ってるのね」

フローラ「……ええ、大切な妹だから。最初はね、あなたがフェリシアのことを許してないかもしれない、そう思ったから食事を振舞ったの。あなたは妹のことを本当は許してないって、そう思ってた」

エルフィ「……そう」

フローラ「ごめんなさい、こういうことはきっちりしておきたいのよ。あなたはとても優しい人だからいうんじゃないの。私はこういう人間だって言うことは伝えておきたかった。幻滅したわよね?」

エルフィ「ふふっ、そんなことないわ。むしろ、妹思いのいいお姉さんだって思う。私がエリーゼ様を守るために戦ってるのと同じ、フローラはフェリシアを守るお姉さんとして戦ってるのね」

フローラ「そ、そういう言い方は卑怯よ……恥ずかしいじゃない////」

エルフィ「ふふっ、ねぇ、これからも力仕事で困ったことがあったら頼ってほしい、わたしはあなたの力になりたい心に変わりはないから……」

フローラ「ではお願いする度に私は料理を振舞いますね。今度はちゃんと感謝の気持ちをこめて、それでいいかしら?」

エルフィ「ええ、楽しみにしてる」

フローラ「はい」

【フローラとエルフィの支援がAになりました】

◆◆◆◆◆◆
―アミュージア郊外・別荘―

 チュンチュン チュン……

カムイ「ん……朝ですか」
 
 ギュッ

カムイ「?」

アクア「すぅすぅ、んんっ」

カムイ「ふふっ、まだ皆さんは眠っているみたいですね……。あれ、マークス兄さんの気配だけない?」

カムイ(朝の鍛錬でしょうか? 少し様子を見に行って見ましょう)

 ガサガサゴソゴソ

 ガチャ バタン

カムイ「少し肌寒いですね……。まだみんな眠っているのか、すごく静かですし……」

 ガヤガヤ

カムイ「……ん?」

マークス「オペラ劇場で加勢してくれた事、感謝するぞ」

フランネル「別に気にすんなって、それに戦うのは好きだからよ」

カムイ「この声はマークス兄さんと、誰でしょうか聞いたことはある声なのですが……」

マークス「われわれはこれからウィンダムに戻ることになる」

フランネル「えー、もう帰っちまうのか?」

マークス「ああ、お前には少なからず助けられた、礼を言うぞ、フランネル」

フランネル「へへっ、戦うのは好きだから気にしないでいいぜ。でもここでお別れってのはなんだかな」

マークス「お前にはお前の住む場所がある、そこに帰るべきだ。今回の件、突発的とはいえ行動を共にできたことは嬉しいが、この先の戦いにお前を巻き込むというわけにはいかない」

フランネル「でもよ……」

カムイ「おはようございます、マークス兄さん」

マークス「カムイか、おはよう。よく眠れたか?」

カムイ「はい、昨日はぐっすり眠れました」

マークス「そうか」

フランネル「おっ、この前はお互い色々大変だったな。」

カムイ「……すみません、どちら様でしたか」

フランネル「ええ、ひでえよそれ、ちゃんと名前言ったじゃんか」

カムイ「すみません、声は覚えているのですが、名前を忘れてしまいまして」

フランネル「そっか、まあ、そういうこともあるし、俺はフランネル、改めてよろしくなっ」

カムイ「フランネルさんですね。ふふっ、なんだか獣みたいな匂いのする方ですね。この前、オペラ劇場で加勢してくれて、ありがとうございます」

フランネル「な、なんだよ。今日は朝からお礼ばっかりで、なんだか変な気分だ」

カムイ「嫌でしたか」

フランネル「そうじゃねえし、ただ、なんか落ち着かないって言うかよ……」

カムイ(? フランネルさんの御尻で何かがすごく揺れてる気がしますが……)

マークス「ふっ、フランネルは照れているだけのようだから、気にすることはない」

フランネル「ち、ちげーし! これは尻尾の体操してるだけ、してるだけだからな」

カムイ「それで、一体何の話をしていたんですか?」

マークス「ああ、フランネルにわれわれはこれからウィンダムへと戻るという話をしていてな」

カムイ「なるほど……」チラッ

フランネル「な、なんだよあんた。目を瞑ったままで……」

カムイ「すみません、あまり見せたくないものを隠しているだけですから」

フランネル「何言ってんだ?」

マークス「……フランネル。カムイは盲目だ」

フランネル「えっ? はぁ、なんでこんなに動けんだ、嘘じゃねえのか?」

カムイ「ははっ、久しぶりにそんな感想を聞きましたよ。でもフランネルさんの気配はもう捉えてますから、その興味津々に揺れてる尻尾とか」

フランネル「べ、べつに興味なんてねーし! でも、その、本当かどうかは確かめたい気もするけどよ」

カムイ「ふふっ、なんだか面白いですね。素直じゃないのに、素直というか。いいですよ、あまりいいものではありませんけど」パチッ

フランネル「……」

カムイ「こういうことなので、すみません。気色の悪いものをお見せして」

フランネル「……いや、気色悪くなんてねえよ」

カムイ「?」

フランネル「逆にすげえよ。そんなの本当に気にしてないって伝わってきてさ」

カムイ「……ふふっ、フランネルさんは変わっているんですね?」

フランネル「変わってるって、俺よりカムイのほうがすっげえ変わってると思うけどな」

マークス「確かに、私もそれには同意しなくてはならないな」

カムイ「マークス兄さん、ひどいですね」

マークス「ふっ、すまん」

カムイ「はぁ、ところでですが、フランネルさん」

フランネル「なんだ?」

カムイ「あなたはこれからどうされますか?」

フランネル「これからって、そりゃ、ここでお別れってことだからな。べ、別に名残惜しいなんて思ってねえからな!」

カムイ「……そうですか。よろしければ私達と一緒に来ませんかと、頼もうと思っていたのですが」

フランネル「え?」

マークス「カムイ?」

カムイ「マークス兄さん、これからのことを考えても戦力はあっても問題ありませんよ。それに……」

フランネル「? なんだ、俺の顔になんか付いてるか?」

カムイ「なにか問題を起こすと思いますか?」ボソッ

マークス「無害とまではいかないが、問題はないだろう。それにフランネルの力は確かなものだ」

フランネル「ってことは……」

カムイ「ですが、名残惜しくもない人たちといてもあまりいいこともありませんね。すみません、不躾なお願いを頼もうとしていたみたいです」

フランネル「いや、ちょ、ちょっとまてよ!」

カムイ「どうしたんですか?」

フランネル「え、えっと、そのどうしてもって言うなら、俺はお前に付いて行ってもいいぜ?」

カムイ「……」

フランネル「へへっ」

カムイ「マークス兄さん」

マークス「どうした、カムイ?」

フランネル「そうそう、俺がついて行くのが―――」

カムイ「もうお別れの挨拶は―――」

フランネル「だーーーーーー、連れてってください。おねがいします、なんでもするからよぉ!」

カムイ「ん? 今何でもするって言いましたよね?」

マークス「……あ」

フランネル「あ、ああ。ガルーは嘘は付かねえからよ!」

カムイ「そうですか、素晴らしいですね。嘘は吐かないというのは素晴らしい心がけです」コキコキッ

フランネル「カムイ、なに指ほぐしてんだ?」

カムイ「私は目が見えないので、皆さんがどういう顔をしているのかわからないので、触って確かめるんです」グニグニ

フランネル「へぇ、触るだけでわかんのかよ」

カムイ「はい」ニコッ

フランネル「もしかして触らせてやれば、一緒に付いてっていいってことか?そう言うことか!?」

カムイ「まぁ、そういうことになりますね」

フランネル「なら、さっさと触ってくれていいんだぜ」

マークス「おい、フランネル」

フランネル「なんだよ、マークスは俺が加わるのに反対だって言うのかよ」

マークス「……そう言うことではない、ないが……」

マークス(内心複雑だ。見えないところでならいざ知らず、こうして目の前で妹が人の顔を触る姿を眺めるのは、何度見ても馴れるものではない……)

フランネル「マークス、眉間にすげえ皺寄ってんぞ……ぅっ!!!」グイッ

カムイ「ふふっ、今は私のほうを見てくれないと」

フランネル「お、おう、すまねえ」

カムイ「素直でいいですね。それじゃ、早速……」ピトリッ

フランネル「……ん、なんか落ち着かねえな」

カムイ「最初はそういうものですよ。へぇ、ガルーというのはこんなに毛深いところがあるんですね」ファサファサ

フランネル「ははっ、くすぐったいぜ」

カムイ「…これは?」

フランネル「ああ、ちょっとした傷跡だよ。正直カムイのに比べたら全然すごくもないけどな」

カムイ「傷跡ですごいと言われるのはなんだか新鮮ですよ」

フランネル「そうか、俺はカッコいいって思うけどな。でも、カムイは女だからやっぱり無い方がいいのかもな」

カムイ「そうかもしれませんね。まぁ、顔にこんな傷がありますから、結婚というと――」

 ザッ!

マークス「カムイ、結婚する相手がいるのか!?」

カムイ「いえ、いませんよ。それに今はそんなことしている場合じゃ無いですから」

マークス「そうか……」ホッ

カムイ「でも、戦争が終わるまでにいい人が見つかれば、終わった後に結婚するのもいいかもしれませんね」

フランネル「そうか、相手が好きならすぐさまって感じでもいいんじゃねえか?」

カムイ「フランネルさんは直球なんですね、ちょっと耳に触れますね?」サワサワッ

フランネル「!?」

カムイ(ここですか、ふむ……人なら耳たぶくらいの場所のはずですが……やはりガルー、人とは違うということですね)

フランネル「き、気安く……触る、ひゃうっ!」

カムイ「あれ、嘘は吐かないんですよね? フランネルさんなんでもしていいって、言ってくれたんですから」

フランネル「あ、あれは……」

カムイ「ガルーは嘘を付かない、そうですよね」フニフニ

フランネル「ぐっ……す、好きにしろっ、んくぁ」

カムイ「はい、そうさせてもらいます。あっ、なんだかフニフニしてて、んっ、毛深い根元がなんだかとっても固くて、ふふっ、あ、ぴくりって動いて、可愛いですね」

フランネル「あ、あふっ、ほあああっ」

カムイ「ふふっ、どうしたんですか。そんなに大きく尻尾を揺らして、触られるのが嬉しいんですか?」

フランネル「ち、ちげ、ちげーえ、ちがあああああっ」

マークス(今まで以上に高速で動いているな……)

カムイ「そうですか。なら、喜んでもらえるまでいっぱい触ってあげますね。んっ、先端がヒクヒクしてて、なんだか変な感じです。毛の一本一本が触って欲しいって言ってるみたいですよ?」

フランネル「お、おい、顔を理解するために触るんじゃねえのか、さっきから耳っ、ばっかじゃ……」

カムイ「耳も顔の一部ですよ。それにフランネルさんにとっては、とっても敏感な場所みたいですから……とくに、こことか」チョン

フランネル「ほあんっ!」

カムイ「先端も毛深いんですね。ふふっ、でも、なんだか、先端を摘むと全体が躍動してるみたい。こんなに敏感なのに、中に入れたらどうなっちゃうんでしょうね?」

フランネル「な、なかって!?」

カムイ「ふふ、失礼しますね」クニッ

フランネル「!!!!!! くぁっ」

カムイ「あ、やっぱり人の耳とは違うんですね。中も毛深くて、少しくすぐったいです」

フランネル「はぁ、はぁ、カムイ。も、もう――」

カムイ「だめですよ、まだまだフランネルさんのこと、知りたいんですから。ふふっ、穴の入口に指が触れちゃいますね」

フランネル「……ううううう」

カムイ「体中がフルフル震えてますね。そんなに気持ちいいんですか、耳の穴……」

フランネル「はうっ、くうっ、う、ううううううう」

カムイ「ふふっ、でも、ここま―――」

フランネル「わおおおおおおおん!」ガバッ

カムイ「きゃっ」ドサッ

フランネル「わおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

マークス「カムイに何をする!」ドゴッ

フランネル「がっ、いててててっ」

マークス「カムイ、大丈夫か?」

カムイ「え、えっと、はい、特には何も……」

マークス「そうか……。フランネル、私の妹に手を出そうとするとは、覚悟はできているのだろうな?」

フランネル「ど、どう考えても誘ってんだろ、これ!」

マークス「誘ってなどいない。カムイなりのスキンシップだ。今まで見るのはなれないと思っていたが、お前のように勘違いをしてしまう輩がいると考えれば、やはり監視しておくべきということかもしれないな」

フランネル「俺、俺が悪いのか。っていうか、今のをされるがままって、どんだけされたい男たちが集まってんだよ」

カムイ「されたい男たちって?」

マークス「カムイ、気にすることはない。フランネル、今回はこれで済ませてやろう。だが、次もしもこのような行為に及んだのであれば」チャキッ

マークス「ジークフリートで斬り伏す」

カムイ「いえ、私が悪ふざけしてしまっただけですから。ごめんなさい、フランネルさん」

フランネル「こ、今度は毛繕いくらいにしてくれよな」

カムイ「はい、そうさせてもらいます。そして、これからよろしくお願いします」スッ

フランネル「……付いて行っていいのか?」

カムイ「はい、フランネルさんのお顔、触らせてもらいましたから、フランネルさんがよろしければ、私について来てもらえますか?」

フランネル「おう! いっぱい戦わせてもらうからな!」

カムイ「ええ、期待しています。それじゃ、皆さんを起こしに戻りましょうか」

「アミュージアを発つ、準備を始めないといけませんから……」

休息時間4 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB++
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB+
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC→C+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで
 次でアミュージア休憩編終わりで、その次から準備時間に入ります。
 準備期間中に、クラスチェンジを行っていこうと思います。

 ここから各種キャラクターのクラスチェンジ可能職種をあげていきますので、後々の安価の参考にしていただけると幸いです
 またキャラクター支援がA同士の方々は、その分なれるものが少しだけ増えて、固定もできる限り減らした感じですので、よろしくおねがいします。

―対の存在―
アクア=歌姫(固定)

―城塞の人々―
ジョーカー=パラディン、バトラー
ギュンター=グレートナイト、パラディン
フェリシア=ブレイブヒーロー、ボウナイト、メイド、ストラテジスト
フローラ=メイド、ブレイブヒーロー、ボウナイト、ソーサラー、ダークナイト、ジェネラル、グレートナイト

―暗夜第一王子マークス―
マークス=パラディン、グレートナイト
ラズワルド=ボウナイト、ブレイブヒーロー
ピエリ=パラディン、グレートナイト、ドラゴンナイト

―暗夜第二王子レオン―
レオン=ダークナイト、ストラテジスト、ソーサラー
オーディン=ソーサラー、ダークナイト
ゼロ=アドベンチャラー、ボウナイト

―暗夜第一王女カミラ―
カミラ=レヴナントナイト、パラディン、ダークナイト
ルーナ=ブレイブヒーロー、ボウナイト、メイド
ベルカ=ドラゴンマスター、バーサーカー

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼ=ストラテジスト、メイド
ハロルド=ブレイブヒーロー、バーサーカー
エルフィ=ジェネラル、グレートナイト、メイド、ボウナイト、ブレイブヒーロー

―白夜第二王女サクラ―
サクラ=戦巫女(固定)
カザハナ=剣聖、メイド、ダークナイト
ツバキ=剣聖、バトラー、聖天馬武者(乗ってるのはダークファルコン)

―カムイに力を貸すもの―
サイラス=パラディン、ボウナイト、ブレイブヒーロー、グレートナイト
ニュクス=ソーサラー、ダークナイト、アドベンチャラー
モズメ=兵法者、弓聖、大商人
リンカ=鍛冶、修羅、聖天馬武者(乗ってる馬はダークファルコン)
ブノワ=ジェネラル、グレートナイト、ブレイブヒーロー
シャーロッテ=バーサーカー、メイド、ストラテジスト、メイド
スズカゼ=上忍、剣聖、絡繰師
アシュラ=上忍、アドベンチャラー、ボウナイト、ブレイブヒーロー
フランネル=ルーガルー(固定)

 こんな感じになっていますので、よろしくおねがいします。

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間』―

リョウマ「………」

上級武将「結局、アミュージアに向かった火の部族からの音沙汰はなし。白夜の戦力は弱弱しくなり続け、今では無限渓谷付近に本格的な陣を暗夜は備えつつある。ここからどうやって挽回しようというのですかな? リョウマ王子?」

リョウマ「……」

上級武将「まったく、これでは情報を信じ向かった彼の者たちが報われませんな。リョウマ王子が加われば、このような形には――」

リョウマ「言うことがあるなら、はっきりと言え」

上級武将「……」

リョウマ「……」

上級武将「結論から言わせていただきます。リョウマ王子、あなたは白夜を守る気があるのですか?」

上級武将「此度のアミュージア襲撃、本来ならば第一王子であるあなた自身も赴くべきことであるというのに」

上級武将「まったくですな。臆病風に吹かれたのか、はたまた死にたくないのか、どちらにせよ。ガロンがアミュージアに現れるという情報、それを信じて最後の賭けに出るのも悪くはなかったでしょうに」

リョウマ「……最後の賭けか、ならばお前たちもその最後の賭けとやらに参加するべきではなかったか?」

上級武将「王子が向かうとあらば、われわれも重い腰を上げたでしょう。しかし、あなたは懐疑的にこの件を不穏に見た。それは自身の保身が故の行為ではないのか、さすがは親族が暗夜へと寝返っただけのことはある。ミコト様の温情が報われませ―――」

 シャキンッ

上級武将「ひっ!」

サイゾウ「……」

上級武将「き、貴様、リョウマ王子の影!?」

上級武将「ぐっ、このようなことを、してただで、ぐぇっ!」

サイゾウ「今の言葉、リョウマ様、そしてミコト女王に対するもの言い。殺される覚悟あってのことであろう?」

上級武将「ぐっ、や、やめっ――」

サイゾウ「覚悟無き暴言の数々、その身の卑しさ、己の行い悔やむなら落ちた地獄で悔いるがいい!!!」グッ

リョウマ「よせ、サイゾウ」

サイゾウ「!」

上級武将「あっ、ああああっ」ジワワワッ

サイゾウ「……御意」カシュッ

上級武将「がはっ、ぐおっ、はぁはぁ」

上級武将「きょ、今日のところはここまでにしておく、リョウマ王子、此度の件の責任、その所在はいずれはっきりとさせていただくぞ!」

 タタタタッ

リョウマ「……サイゾウ、なぜ動いた。彼らは白夜に属する武将だ。俺たちの倒すべき敵ではない」

サイゾウ「……本気でそう考えているのですか」

リョウマ「ああ、あの者たちも戦争が本格化する前までは、このようになっていなかった。あの者たちを罰してはならん」

サイゾウ「リョウマ様……」

リョウマ「すまん、少し外に出てくる」

サイゾウ「………御意」

 カタッ

リョウマ(……クマゲラも帰ってくることはないだろう。それは覚悟していたつもりだった……)

リョウマ「……」

 ヒュオオオオ

リョウマ(もう、都にも明かりはまばら、かつての姿など絵に描いた餅にもならない。もう、あの頃の白夜は戻ってこないことはわかっているつもりだというのに、俺は……)

 カツンッ

リョウマ「誰だ?」

タクミ「……僕だよ、リョウマ兄さん」

リョウマ「……タクミか」

タクミ「……」

リョウマ「……どうした?」

タクミ「……」

リョウマ「……用がなければ失礼するぞ」

 ト ト ト

タクミ「どうして、クマゲラたちの案に賛同しなかったんだ」

リョウマ「……」

タクミ「あのとき、リョウマ兄さんが声をあげてくれさえすれば、もっと多くの兵を送れたかもしれないのに」

リョウマ「……俺が声を上げれば、皆が従ってくれたということか?」

タクミ「ああ、ガロンを始末できれば、この戦況を変えることができたかもしれない! なのに、どうして、どうして兵を出すと言わなかったんだ!」

リョウマ「……」

タクミ「やっぱりあいつが、あいつが向こうにいるからなのか!? あいつと鉢合わせになって斬ることになるのが怖いから進まない、進むことができないっていうのか!?」

リョウマ「カムイのことを言っているのか……?」

タクミ「ああ、シュヴァリエの反乱の時、兄さんとヒノカ姉さんはあいつを取り戻すために向かった。あいつは裏切り者だ、裏切り者なのにどうして、そんなに気を掛ける!? あいつはもう敵のはずなのに!」

リョウマ「……そうだな。確かに俺はあの時、カムイを取り戻すことを一つの目標としていた、だが、あいつを連れ戻すことはしなかった」

タクミ「まさか、兄さんよりも強かったって言うのか!?」

リョウマ「いや、逆だ」

タクミ「え?」

リョウマ「タクミ、お前が思っているよりもカムイは弱弱しい人間だ。お前が見せつけられたカムイの人間性は偽りの強さでしかない。だからこそ、俺はあいつを連れ戻すことをやめることにした。あの時のカムイに、白夜での居場所などないと気が付いたからだ」

タクミ「なんだよそれは、まるで捕らえられる寸前まであいつを追いこんでたような言い方じゃないか。連れ戻せるならなんで連れ戻さなかったんだ兄さん! あいつをあいつを皆の前で――」

リョウマ「……見せしめの様に処刑するか?」

タクミ「ああ、そうするさ。それだけで、白夜に溜まった欝憤の少しは晴れる。そうすれば、僕たちの支持だって――」

リョウマ「……カムイを殺すことで、俺たちに対する皆の目が変わる。そう言いたいのか?」

タクミ「ああ、そうだ……あいつは裏切り者だ、白夜をめちゃくちゃにしたすべての元凶でしかない。サクラが暗夜に捕らわれたのも、僕たちが王族の支持が通用しなくなっているのも、全部あいつの所為だ!」

リョウマ「……」

タクミ「あいつがここにやって来て全てが変わった。すべてがめちゃくちゃになった。暗夜がしたことをあいつは理解したはずだ! それなのに、あいつは暗夜側に付いた。それを今さらになって守る必要なんてない」

リョウマ「そうか、なら、カムイを連れて帰ってこなかった俺の判断は間違っていなかったと言うことかもしれないな」

タクミ「なんだって、生かしたって言うのか兄さん! あんな、疫病神を、なんで!?」

リョウマ「タクミ、お前は今の白夜の現状がカムイ一人によって引き起こされた事態だと思っているのか?」

タクミ「何が言いたいんだ、リョウマ兄さん」

リョウマ「……そのままの意味だ。今の現状をカムイ一人が引き寄せた事だとし、その身に背負わせる。そんなことが可能だと本気で思っているのかと聞いている」

タクミ「それは……」

リョウマ「俺の不甲斐無さがこの状況を引き出した考えている。あの日、俺は一度白夜の人間たちを暗夜に送った。俺自身で決めるべきことだったと今では思う。あの時、俺は民を信じた。信じ、そしてこの悪意の増長に加担した」

タクミ「あれは仕方無かった。あのまま、あのまま放っておいたら」

リョウマ「放っておいたら、俺たちの命が危なかった、か?」

タクミ「ああ、あの時の白夜はおかしかった。だから仕方無かったんだ」

リョウマ「……仕方無かった。そんな言葉で逃げられるほど、俺の下した決断は軽いものではない。むしろ、間違った決断だった」

タクミ「ちがう、リョウマ兄さんがやったことは間違ってなんていない!」

リョウマ「……」

タクミ「……ごめん、頭に血が上ってるみたいだ」

リョウマ「……タクミ」

タクミ「失礼するよ……」

 タタタタタッ

リョウマ「……後悔は口に出さない方がいいというが、確かにその通りなのかもしれないな……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

タクミ「………」

タクミ(くそっ、なんで、なんでここにあいつはいないのに、あいつは僕たちを惑わしてくる!?)

タクミ(ヒノカ姉さんも、リョウマ兄さんも、僕さえも、どうしてこんなにも振り回されないといけないんだ)

 クエエエエッ

タクミ「! なんだ、お前か……」

 クエエエエッ

タクミ「……ヒノカ姉さんはまだ来てないのか?」

???「そのようですね。いやはや、タクミ様が来てくださっているというのに……」

タクミ「アサマ……」

アサマ「すみません。こんな夜分にヒノカ様のために時間を割いていただいているというのに、主と来たら……」

タクミ「いや別に構わないよ。それに僕に弓を習いたいって頼られた時は、それなりに嬉しかったからさ」

アサマ「そうですか。しかし、ヒノカ様に頼られて喜ばれるとは、タクミ様にも中々、弄りがいのあるところがあるのですね」

タクミ「弄りがいのあるって、そう言う言い方はやめてほしいね。それで、ヒノカ姉さんは?」

セツナ「まだ部屋だと思う」

タクミ「! セツナ、いつの間に!?」

セツナ「驚かせちゃった、ごめんなさい……。でも、タクミ様に気付かれないなら、他の奴に近づくのなんて、もっと簡単そう」

タクミ「……それで、姉さんはまだ部屋にいるっていうのかい?」

セツナ「多分……。この頃は訓練が終わるとすぐに眠るだけしかしてないから。ここに来てなかったら、大抵部屋にいるはず……」

タクミ「…そう。この頃の調子はどうなんだい? ちゃんとご飯は食べてる?」

セツナ「うん、一緒にご飯食べてるから大丈夫……」

タクミ「そう、でも今日は訓練できるのかな。もしも疲れてるなら、休みにしてもいいんだけど」

セツナ「それも含めて、確認してくるから待ってて……」

 タタタタタッ

タクミ「セツナはこの頃、姉さんに付き添ってばかりみたいだけど」

アサマ「そうですね。今まではセツナがどこかに行ったのをヒノカ様が探しに行くというのが日常的でしたが……」

タクミ「……なぁ、アサマ」

アサマ「なんですか?」

タクミ「ヒノカ姉さんは立ち直れた。そう考えていいのか?」

アサマ「……そうですね。ずっと夢を見て魘されてばかりだったヒノカ様が、こうしてあなたに弓の手ほどきをしてもらえるようになったのを見る限りでは、立ち直ったと考えてもいいでしょう」

タクミ「……」

アサマ「ですが、タクミ様も納得しているというわけではないないようですね」

タクミ「……塞ぎ込んでいた頃に比べたら、全然マシになったのはたしかだよ。でも、今のヒノカ姉さんは……」

アサマ「だとしても、私が仕えるヒノカ様に変わりはありません。ちゃんとお守りしますからご安心ください、タクミ様」

タクミ「アサマ……」

アサマ「……どんなに中身が変わってしまったとしても、私はヒノカ様の臣下なのですからね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

セツナ「……えっと、ここだよね……」

 コンコン

セツナ「ヒノカ様~、訓練の時間です」

 ………

セツナ「ヒノカ様?」

 スーッ

セツナ「ヒノカ様、いないんですかー?」

ヒノカ「………セツナか?」

セツナ「はい、タクミ様がお待ちです。もしかして疲れてますか?」

ヒノカ「………」

セツナ「あの、ヒノカ様。優れないのなら今日はやめておき――」

ヒノカ「セツナ……」

セツナ「はい、なんです――」

 トスッ ドサリッ

 ギュッ

ヒノカ「……ああ、この感触、セツナなんだな」

セツナ「はい、そうですよ。ヒノカ様」

ヒノカ「あはは、そうだよな。お前もアサマもいなくなったりしない、そうだよな? 私を置いて行ったりはしない、そうだよな?」

セツナ「……はい。私はヒノカ様を置いて行ったりなんてしませんよ……」

 ナデナデ

ヒノカ「セツナ、あむっ」

セツナ「んっ」

ヒノカ「はぁ、んっ、んんっ」

セツナ「……」

セツナ(どんどんひどくなってる……。前は抱きしめるだけだったけど、今はこうやって……ヒノカ様は私が存在してることを確かめてくる……。もう、見るだけじゃヒノカ様は安心できない……)

ヒノカ「セツナ……んっ、はぁ、セツナのことを強く感じる」

セツナ「私も、ヒノカ様のこと強く感じます……」

セツナ(アサマはもう察してるから、こうやって二人きりになるような場所で会わないようにしてるみたい……。そうだよね、こんなヒノカ様の姿なんて、アサマは見たくないに決まってる……。どんなにヒノカ様のことを信じてても……)

ヒノカ「ふふっ、セツナ」ギュ

セツナ「ヒノカ様、嬉しいけど、支度をしてください。タクミ様が待ってますから……」

ヒノカ「そうだな、タクミを待たせるわけにもいかない。待っててくれ、すぐに支度を終えるからな」

 ゴソゴソッ シュルルッ 

セツナ「ヒノカ様、これを」

ヒノカ「ああ、すまない。ふふっ、やはりこの服でないといけない。戦場に出た時、カムイに気づいてもらえないかもしれないからな」

セツナ「……」

ヒノカ「ふふっ、もう誰も殺させなんてしない。逆にこちらが敵を殺しきってしまえばいいんだ」

セツナ「……」

ヒノカ「私から奪おうとする奴らは一人残らず殺してしまえばいいんだ。なんで気付かなかったのか、暗夜の人間を一人残らず殺してしまえば……無理に戦わされているカムイも戻ってきてくれる。捕らわれているサクラも、アクアも、白夜も平和なあの頃に戻る。……私の望みがすべて叶う。みんな帰ってきてくれる」

セツナ「……ヒノカ様」

ヒノカ「なんだ? セツナ」

セツナ「いえ、呼んだだけです……」

ヒノカ「呼んだだけか、セツナがそんなことを言うのは珍しいな。昔は私に助けを求める時くらいしか、名前を呼ばなかったというのに」

セツナ「……そうでしたね」

ヒノカ「すまないな遅くなって。さぁ、タクミの元に向かうとしようか」

セツナ「はい、ヒノカ様」

 タッ タッ タッ

ヒノカ「月が奇麗だな、セツナ」

セツナ「そうですね……。すごくまるくて、大きいです」

ヒノカ「ああ。そうだな。セツナ手を繋いでもいいか?」

セツナ「いいですよ……」

ヒノカ「ありがとう……。ふふっ気持ちがいいなセツナの手は、触っていると心がとても落ち着く……」

セツナ「えへへ、褒められちゃった……」

ヒノカ「ああ、あの日お前が支えてくれなかったら私は、もう立ち上がれなくなっていたかもしれないからな……」

セツナ「……」

ヒノカ「どうした、セツナ?」

セツナ「なんでもありませんよ、ヒノカ様」

セツナ(本当は立ち上がって欲しいなんて思ってもなかった……。ヒノカ様はもう十分に傷ついたのに、どうして立ち上がるのかわからない。こんな風に壊れかけるくらいなら、ずっと倒れてて欲しかった)

セツナ(そうすれば、私とアサマで暗夜の奴らを皆殺しにするだけでよかったのに。カムイ様は命令だからちゃんと助けるけど、それ以外の奴らは皆殺しにして、終わったらヒノカ様は元に戻る、そう考えてたのに。もう、それは望めないのかな……)

ヒノカ「だから、セツナには感謝しているんだ。こんな風に面と向かって言うのはなんだか恥ずかしい気もするが、これは本心だからな」

セツナ「ありがとうございます、ヒノカ様……」

セツナ(だから、もう一緒に落ちていくしかないのかもしれない。そこに、戻ってきてほしいヒノカ様がいなかったとしても……)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・クラーケンシュタイン『王の間』―

マクベス「よ、よろしいのですか?」

ガロン「ああ、お前の案に必要とされるゾーラが行方を眩ませている以上、よもや選ぶべき策は決まっている」

マクベス「しかし、うまく行く保証は……」

ガロン「レオンの出した案は白夜の目を引き付けるかもしれん。奴が白夜の王族をどう使おうとしているのかなど知ったことではない。だが、それが成功しようとしなかろうと、白夜の者に掛ける慈悲はない。成功しようとしなかろうと力で押しつぶせばいいだけのこと、余興で相手を煽るのも悪くはないだろう」

マクベス「承知しましたガロン王様。次にですが、未だに白夜侵攻に加わろうとしない部族集落の件はいかがいたしましょう?」

ガロン「部族集落か……」

マクベス「はい」

ガロン「よもや待つこともない、従わぬ部族の村は焼き討ちにせよ。白夜の戦いに加わることもない者たちなど必要ない」

マクベス「わかりました、一度だけ勧告を促し、拒否次第集落を焼き打ちするよう指示を出しておきます。まぁ、もっとも、一つか二つ焼き討ちにあえば、他の者たちはすぐにでも手のひらを返してくることでしょうが」

ガロン「そうだろうな。くくくっ」

マクベス「他の準備のほうも滞りなく進んでいますので、ご安心ください」

ガロン「うむ、白夜への侵攻は記念すべき日となる。そしてそれは暗夜の空が白夜を覆う日であるべき、そうは思わぬか、マクベス?」

マクベス「暗夜が白夜を覆う……なるほど、たしかに素晴らしい日になることでしょう。白夜を今から暗夜が染め上げることを天が示されているようにさえ感じられる絶妙な演出となりますな」

ガロン「うむ、マクベスよ、それまでに準備を整えるようにせよ。白夜を蹂躙する門出にふさわしい、その日までにな」

マクベス「承知しました。入れ替わりまでは二週間ほど時間があります故、必ず仕上げて見せましょう」

ガロン「話は以上だ……。マクベス、お前の働きに期待しているぞ」

マクベス「はっ、もったいなきお言葉でございます。それでは失礼いたします、ガロン王様」

 カ カ カ 
 ギィ バタン

ガロン「ふっ、ガロンはもういないというのに、哀れな男だ……」

ガロン「カムイたちはもう気づいたか? だが、どうでもよいこと、どちらにせよそんなことは問題にすらなりえんのだからな」

 ガタッ

ガロン「準備は整う。白夜は時間の問題、とても愉快なことだ……」

 バッ

ガロン「さぁ、カムイよ。ここからどう動き我を楽しませる? どうやってこの状況を変えていく? どう足掻き、その顔をどんな絶望に滲ませる?」

「終わりまでの時間、貴様が紡ぐ夢物語、その果てにお前が黒く染まり上がるのを楽しみにしているぞ。くくくっ、はーっはっはっはっは!」

 休息時間 おわり

今日はここまでで、これにて休息時間は終わりです。
 
 戦争期間を考えてみると一番長い闘いは暗夜、次に透魔、一番短いのが白夜かなという感じになっています。
 空の入れ替わりは、感覚的に暗夜はアミュージア~フウマの間、白夜はちょうどガロンとラストバトルをしてる間くらいで考えています。
 そしてこの暗夜編では透魔王国に行くことはありません。
 ヒノカは崩れていくと、そこにいるという証拠を得ようとする依存系になっていく気がしたので、セツナとこんな形になりました。

 次から準備期間になりますので、クラスチェンジ安価を始めていこうと思いますので、よろしくお願いします。
 準備期間の終了と共にフォレエポの番外を挟もうと思っています。
 
 安価で次の展開を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 星海にてカムイに話しかける人物

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>404


◇◆◇◆◇
次のキャラクター達の職を決めたいと思います。

エリーゼ『ストラテジスト、メイド』

 >>405

ハロルド『ブレイブヒーロー、バーサーカー』

 >>406

エルフィ『ジェネラル、グレートナイト、メイド』

 >>407

ニュクス『ソーサラー、ダークナイト、アドベンチャラー』

 >>408

アシュラ『上忍、アドベンチャラー』

 >>409

このような形でお願いします。

ガチ百合ヤッター!
ルーナ


ストラテジスト

乙でしたー
ハロルドさんはブレヒでお願いします

>>1が今度はセツナヒノカのR18書くってマジ?
Gナイト

白夜がどろどろしてきてウレシイ…ウレシイ…
アシュラもクラスチェンジするのかすでに上級職だと
ニュクスはソーサラーで宜しく

カボチャのランタンにヒノカの頭をねじ込み、尻に矢を放ち
敵にぶつけようとしていた家臣がいるらしい

上忍

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・クラーケンシュタイン―

カムイ「ようやく戻ってこれましたが……」

 ガヤガヤ ざわざわ……

エリーゼ「なんだか、お城の中が騒がしいね……」

カミラ「そうね、一体何があったのかしら?」

アクア「……そういえば、ここまでの街道で幾度か兵士の隊列とすれ違ったから、それと関係がありそうね」

マークス「うむ……それにあまり良いことが起きているというわけではなさそうだ」

レオン「たしかにお祭りとかそういう意味合いじゃないのは間違いなさそうだね」

カムイ「ここで話していても仕方ありません。まずはお父様にお会いして、何が起きているのかを確認した方がよさそうですね」

マクベス「こちらにおられましたか、カムイ王女」

 カッ カッ カッ

カムイ「マクベスさん」

マクベス「よくぞ戻られました、ミューズ公国での件、私も耳にしております」

カムイ「ええ、色々とありましたので。それで私達が出ている間、ウィンダムでは何かありましたか?」

マクベス「いいえ、これといったことは起きてはおりません。レオン王子を襲撃した者たちにぞくするものなども現れませんでした」

カムイ「どうやら杞憂で終わったということですか。結果的に何もなかったことは良いことかもしれません」

マクベス「たしかに、その通りですな」

カムイ「ところで、この騒ぎはいったい?」

マクベス「はい、先日ガロン王様からお触れが出たのです」

カムイ「お父様からですか?」

マクベス「はい、といっても誰もが予想していたことではありますゆえ、驚きもないとは思いますが―――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「白夜への侵攻を二週間後に?」

マクベス「はい。現在この侵攻に非協力的な部族に最後の交渉を行っているところです。現在準備、もしくは出立した兵たちはその役目を担っています」

カムイ「反対部族を無理やりに参加させるということですか?」

マクベス「ええ、同時にこれは暗夜の甘い汁だけを啜ろうという部族を排除する意味も込められているのでしょう」

マークス「排除だと?」

マクベス「はい、マークス王子にもお分かりになるはずだ。ただ与えられることに甘んじている者たちに明日などないということを。これは未来の暗夜王国に住まう志を持った民を決める道でもあるわけです」

レオン「しかし、ミューズ公国の属国化による混乱はまだ解消されていない。そんな中で、このようなことを行えば……」

マクベス「たしかにレオン王子の言われることも分かります。現在、白夜への攻勢は着々と進みつつありますが、こうして反対、もしくは加担せずと考えている部族がいることには、まだ暗夜がまとまり切っていないともいえるでしょうな」

レオン「そうだ。まだ状況は良いと言えるわけじゃない」

マクベス「ふっ、状況ですか。たしかにそうかもしれませんな。ですが、ガロン王様はここで踏み出さぬ者たちに栄光はないと、そう考えておられるのですよ」

カムイ「踏み出さぬ者たち、ですか?」

マクベス「ええ、踏み出さずその場で待っているだけの者たちも甘く暮らせるのなら、別に私たち軍人が動く必要などありません。ガロン王様はそういった方々を嫌悪されておられるようだ。与えられるときは喜び、与えられなくなったら文句だけを零す、そんな者たちを」

カミラ「そうね、でも侵攻をはじめにはまだ、早い気もするけど?」

マクベス「いいえ、この侵攻そのものは急というわけではありません、カミラ王女。現に反乱は終わり、白夜への侵攻準備も整いつつあったのですから、白夜に新しい策を練らせるよりも前に、攻撃を仕掛けることの方が重要でしょう。今回のようにミューズ公国に向かわれたガロン王様狙った暗殺など、こういった事柄が頻発しないための措置としても、この侵攻開始は間違っていないこと。逆に侵攻を開始することによって、ミューズ公国のような被害を防ぐこともできるでしょう」

エリーゼ「被害を防ぐ? 何の被害を防ぐの?」

マクベス「今回の暗殺はミューズ公国が手引きした事ではないでしょう。来る者たちに平等に門を開くのも良いことですが、それが結果としてこの属国化を産むきっかけともなった。侵入した白夜の者に十分な武装や計画を精査する時間を与えた以上、すべてを許すというのは虫がよすぎること、ミューズ公国は白夜によって、暗夜の属国になったと言っても過言ではない国と言えるわけです。そういった可能性を消すという意味でもこの侵攻は急というわけではないのですよ」

カムイ「マクベスさんの意見はわかりました」

マクベス「ご理解いただければ幸い、もっともこれはガロン王様直々のお触れということを忘れないようにお願いいたします」

カムイ「はい。ということは私たちはこれから、侵攻に協力的でない部族と交渉することになるのですか?」

マクベス「いいえ、カムイ王女。あなた方にはそのような仕事はありません。あなた方にはこの白夜侵攻における先行作戦、その重要事項をになっていただくことになります」

カムイ「重要事項ですか?」

マクベス「ええ、カムイ王女。私はあなたの能力をそれなりに評価しております。ノートルディアでの件、そしてミューズ公国でのガロン王様の暗殺を食い止めたことも聞いております。もっとも、その暗殺者を取り逃すという醜態をさらされたようですが。ガロン王様が無事にお戻りになられたという点で十分に釣り合います」

レオン「一言多い奴だ。それで、姉さんが担うことになる役割、先行作戦っていうのは一体何になったんだい?」

マクベス「そうでした。その点を説明する必要がありましたな。まずはレオン王子」

レオン「なんだい、マクベス」

マクベス「ガロン王様は、レオン王子があげた作戦案に賛同されています」

レオン「え、父上が?」

マクベス「はい、現在上がっている作戦の中では、価値があるということです」

レオン「だが、お前のは案があるじゃないか」

マクベス「残念ながら、私の案はゾーラがいて初めて成り立つことでしたので、その本人が行方知れずとなれば、白夜の要人を誘き出すといったはできるものではありません。かと言って、多くの案は作戦とは名ばかりの脳筋案ですので」

レオン「お前はそれでいいのか?」

マクベス「いいですか、私の案は実現不可能である以上、今はレオン王子の案が支持されている、ただそれだけのこと。ですから、此度の先行作戦のレオン王子の采配には期待しております」

レオン「……わかった」

カムイ「……ところでマクベスさん。部族への交渉はどのように行っているのですか?」

マクベス「簡単なことです。協力を拒む部族の者たちに最終勧告を、それで従わなければ村ごと焼き打ちにする。ガロン王様からはそう仰せつかっております」

マークス「……」

マクベス「もっとも、一つか二つ集落が焼かれれば、多くの部族は手のひらを返すように方針を変えるでしょうがね」

カムイ「恐怖で縛るということですか?」

マクベス「さぁ、どうでしょうか。どちらにせよ、多くの時間は掛らないでしょう。ですから、カムイ王女たちには先行作戦のことをかんがえてもらいたいわけです」

カムイ「準備に励めということですね」

マクベス「その通りです」

マクベス「カムイ王女、この先行作戦に当たり私からも様々な支援をできるようにとり図ろうと考えています」

カムイ「支援ですか?」

マクベス「はい。すでに白夜の交戦戦力は多くはないでしょうが、多くが先鋭を引き連れていることでしょう。カムイ王女、あなたの部隊は確かに強いが、多くの物の準備は整ってないように思えます。たとえば………」チラッ

エリーゼ「え、な、なんであたしを見るの!」ムスー

マクベス「エリーゼ王女、あなたも戦場に出るならば杖を振っているばかりではいけないということです。杖の素養があるならば、それに何かもう一つ強みを持つべきではありませんかな?」

エリーゼ「強み?」

マクベス「ええ。無論、守られるだけでいたいというならばそれでも構わないことですが」

エリーゼ「うっ、そんなのいやだよ。あたしだって、みんなのこと守りたい」

マクベス「でしたら、何かを見つけるといいでしょう。もっとも、先行作戦まではあとわずかですが……」

カムイ「え、侵攻は二週間後ではないのですか?」

マクベス「確かに、暗夜の本隊が白夜へと侵攻を開始するのは二週間後です。ですが、カムイ王女が担当されるのは先行作戦、本隊よりも先にこうどうすることになります」

カムイ「……なるほど、だからわずかなんですね」

マクベス「私も物資でしたら多くを調達できますが、物を扱う人間の質までは準備できませんので。こればかりは、それぞれの力次第ということになります」

カムイ「それはそうでしょう。質は各々でどうにかするしかありませんから。ですが、物資援助の件は頼らせていただきます。こちらも十分に装備が整っているというわけではありませんから」

マクベス「ええ、必要な物は早めにリストアップしていただくとよいでしょう。先行作戦の内容については私よりも、立案者であるレオン王子が詳しいと思いますので、直接お聞きください。また、数日後に最終会議がありますので、その際にはレオン王子には出席していただきますが、よろしいですかな?」

レオン「ああ、そのつもりだよ」

マクベス「頼もしいお言葉です。他には何かありますかな?」

カミラ「一つだけ気になることがあるのだけど?」

マクベス「なんですか、カミラ王女?」

カミラ「いえ、急じゃないというのはわかったけど、なぜに二週間後なのかと思って……」

マクベス「おや、カミラ様はご存じでないのですか。王族である以上、この世界のことに少なからず理解があると思っておりましたが」

カムイ「二週間後ですか」

マクベス「ああ、カムイ王女には見ることのできないものですから、考えられなくても問題ありませんよ」

カムイ「視覚的な出来事でもあるのですか?」

マクベス「はい」

マークス「二週間後……空の入れ替わりか?」

エリーゼ「え、なにそれ?」

マクベス「さすがはマークス王子、よくご存知ですな。そう、数十年に一度起きるといわれる空の入れ替わりが二週間後に迫っております」

カムイ「空が入れ替わるのですか?」

マクベス「ええ、その日、白夜の空は暗夜に、暗夜の空は白夜へと変化します。白夜を暗夜が侵略することを示唆する素晴らしい日ということです」

アクア「……そう、もう、そんな時間が過ぎていたのね」

マクベス「おおっ、アクア王女もご存知でしたか」

アクア「ええ、聞いたことはあったから……」

カムイ「アクアさん?」

アクア「なんでもないわ、気にしないで頂戴」

マクベス「その日に侵攻を開始するこの計画に、変更はありえないということです」

カムイ「では、私たちの先行作戦は何時頃に?」

マクベス「はい、空の入れ替わりより一週間前には白夜へと向かっていただくことになります。白夜の地で暗夜の空を見られるというのも中々のものでしょうな」

カムイ「確かにそうかもしれませんね。争うために向かっているということに目を瞑ればですが」

マクベス「観光というわけではありません。こちらもできうる限りの支援をしますので、この一週間は準備に励んでいただくようお願いいたします」

カムイ「はい、わかりました。支援の内容は出来る限り早く送らせていただきますので」

マクベス「よろしくおねがいします。では、失礼いたします」

 タッ タッ タッ

カムイ「……空が入れ替わる……ですか。そんな不思議な現象があるんですね」

カミラ「そうね。私たちは見たことのない光景だから、どんなものか楽しみではあるけど。見たことがあるとすればギュンターくらいかしら?」

マークス「しかし、二週間後には白夜への侵攻が始めるとなると、父上を止めるのは至難の業だ。しかも、あと一週間でわれわれは白夜へと向かうことになる。部族集落の件は、私も手を回せるかもしれないが。この侵攻作戦だけはそう言うわけにもいかないだろう。かといって奴の侵攻を止めなければ……」

レオン「白夜は文字通り滅ぼされるだろうね。あえて、白夜が滅ぼされてから奴を叩くことはできるかもしれないけど……

エリーゼ「あたし嫌だよ。サクラの帰る場所がなくなってから動くなんて、絶対嫌だよ」

レオン「僕だってごめんだよ。そんなことを許すわけにはいかない」

カミラ「かと言って、今の状況だといい案は浮かばないわ。多くの人と話をして意見を募ればいいかもしれないけど……」

 ガヤガヤ ザワザワ

カミラ「あまり他の人がいる可能性のある場所で話すべきことでもないわ」

レオン「たしかにね。誰にも邪魔されずに話せる場所があればいいんだけど……」

カミラ「だけど、そんな場所が果たしてあるのかしら?」

カムイ「部外者に邪魔されず話ができる場所……ですか」

(となると、あそこしかありませんよね……)

今日はここまでで
 
 クラスチェンジの内容によってマクベスさんは馬を持ってきたり、メイド服を持ってきたりと忙しくなる。
 
 ところでセツナヒノカのR-18、興味あるかい?

◆◆◆◆◆◆
―北の城塞『貴賓室』―

カムイ「……ふぅ」

カムイ(あと一週間で私たちは白夜に向かうことになりますが、それまでに私達がするべきことを決めないといけない。本来ならもう少し時間があってもいいような気がしますが、すでに向こうはこちらの動きに気づいているということかもしれませんね)

 ガタッ

カムイ(お父様の姿を借りているハイドラは、世界に破壊を齎すために行動している。後手後手な今の状況を変えないといけません)

カムイ「しかし、誰にも邪魔されずに話ができる場所というと……。やはりここしかありませんね」

 パッ
 シュオオオオオンッ

カムイ「リリスさんが私に託してくれた星海、ここくらいしかありませんね」

カムイ「……それにしても、ギュンターさんたちを招いてから、いくつか建物が増えたような気もしますね。でも、ここでなら悪だくみができそうです」

 シュオオオオンッ

カムイ「?」

???「悪だくみが出来る場所って、あんまりよくない言い方よ、カムイ様」

カムイ「あれ、ルーナさん?」

ルーナ「こんにちは、カムイ様。って他の誰もいないわけ?」

カムイ「はい、と言っても、ここを利用してるのはルーナさん達とギュンターさん達くらいなものですから、こういう日もありますよ」

ルーナ「そう? いつもならオーディンかラズワルド、ギュンターかフェリシアがいたりするんだけど」

カムイ「ふふっ、そうですか。なら本当に今日のような日は珍しいんですね」

ルーナ「カムイ様が所有者なのに、あまり内情を知らないって言うのも問題だと思うけど。まぁ、貴賓室にここへの入口を設けておくくらいだから、あまり気にしてなかったのかもしれないけどさ」

カムイ「たしかにそうかもしれません。ところで、ルーナさんはここには何を?」

ルーナ「えっと、剣の訓練にね。ほら、ここって外より時間の進みが早いみたいだから。いっぱい訓練したい時は、ここに来てやらせてもらってたんだけど、だめだった?」

カムイ「いいえ、そんなことはありませんよ。むしろ、そういう使い方もあると、今初めて思ったくらいです」

ルーナ「そういう使い方って訓練のこと?」

カムイ「はい。一週間後に私たちは白夜に向かうことになっています」

ルーナ「それって、白夜侵攻を始めるってこと?」

カムイ「はい、そうなります。いろいろとありますが、こちらに残された時間は少ないので、ここで皆さんに訓練に励んでもらうのも一つの手かと思いまして」

ルーナ「なるほどね。ふふっ、あたしのおかげで戦力アップができたって感じじゃない。感謝しなさいよね」

カムイ「そうですね……」

ルーナ「なによ、あたしの案に何か言いたいわけ?」

カムイ「いいえ、そう言うわけではありませんよ。ルーナさんの考えは必ず役に立ちますから」

ルーナ「じゃあ、なんでそんな顔してるのよ」

カムイ「少しだけ思うことがあるだけです」

ルーナ「やっぱり悩んでるじゃない。前も言ったでしょ、辛かったりしたらあたしがちゃんと引っ張ってあげるって。その、カムイ様の目の代わりにもなってあげるって……」

カムイ「そうでしたね。でも、それは見えるものではありませんから」

ルーナ「見えないものなの?」

カムイ「はい、これは私自身が決めなくてはいけない道で、それをルーナさんに選んでいただくわけにはいきません。手を引いてもらうのはその定めた道の中であってほしいですから。それに目的地がわからないのに連れて行ってくださいと言われても、困る話でしょう?」

ルーナ「たしかにそうかもね……。目的地がわからないか……」

カムイ「? ルーナさん、どうしたんですか?」

ルーナ「……ねぇ、カムイ様。アミュージアでのことなんだけど……」

カムイ「……正確にはアクアさんのことですよね?」

ルーナ「ええ。その、何があったのかなって。今回のことはカミラ様もまだ話してくれなくて。その、別に話してもらえないのが悔しいとかそういうわけじゃないの。ただ、その……なんだか、落ち着かないって言うか」

カムイ「落ち着かない、ですか?」

ルーナ「うん、落ち着かない。アクアが歌を歌って湖の水が光り輝いてた光景を見てからね。こう、なんかモヤモヤするっていうか」

カムイ「……もしかして、アクアさんに恋でもしましたか? 確かに気配だけでも幻想的な出来事が起きていたことは察していましたが」

ルーナ「な、何言っての!?」

カムイ「ふふっ、冗談ですよ。それで、何に対してモヤモヤしているんですか?」

ルーナ「……初めてここにラズワルドにオーディン、それとあたしがきた時のこと覚えてる?」

カムイ「たしか、私がオーディンさんを……」

ルーナ「そういうところじゃないから。その、あたしたちがした話のこと……」

カムイ「たしか皆さんの目的でしたね」

ルーナ「そう、使命とか約束、多くは話せないけどあたしたちが教えられることを教えたわね?」

カムイ「はい、確か神器を巡り合わせるというものでしたか? 今の夜刀神の状態がその一歩であるといいのですが……」

ルーナ「……」

カムイ「ルーナさん?」

ルーナ「ねぇ、カムイ様は約束の先に何かあるって思う?」

カムイ「約束の先……ですか?」

ルーナ「そう、約束、目的、使命の先。あたしたちは神器を巡り合わせるためにここに来たわ。それが約束であたしたちの目的で使命だって……ずっと思ってきた」

カムイ「思ってきたとは、どういう意味ですか?」

ルーナ「ねぇ、カムイ様。この神器がすべて巡り合った時に何が起きるかわかる?」

カムイ「いいえ、まだ何も。ですが、それがルーナさんたちの目的なんですよね?」

ルーナ「ええ、だけど、その約束と使命の先がわからないことに、今さらになって気づいたのよ。この巡り合いの果てに、一体何が起きるのか、あたしは覚えてない……」

カムイ「知らないではなくてですか?」

ルーナ「……ええ」

ルーナ「ラズワルドやオーディンは気づいてないのかもしれない。いや、本当はそんなことないのかもしれない。あたしも気にしないでいたから。でもね、あのアクアの歌を聞いてから、使命の先のことを考えると、暗い穴みたいなのにぶち当たるの。そこにあるべきものが、ぽっかりなくなってるような、そんな気持ちになって……」

カムイ「そこにあるべきもの……ですか」

ルーナ「そしたらこの頃思うようになって、あたしたちは何かを忘れてる。何かを取り上げられちゃってるんじゃないかって。でもそんなこと二人には言えない。変に不安にさせるようなことできなくて、でも不安になって……」

カムイ「ここに来たのは、剣の訓練ではなくて、気を紛らわせるためだったんですね」

ルーナ「誰もいないって思ってきたのに、もうカムイ様がいたから声を掛けて、ちょっと失敗しちゃったかもしれない」

カムイ「ルーナさん」

ルーナ「……どうしてだろうね。神器を巡り合わせるって使命があるのに、それをしなくちゃいけないのに、でも最初に心に刻んだことがなくなってるみたいで。あたし、こんなことでいいのかなって思うと、どうすればいいのかもわからなくって……」

カムイ「ルーナさん……」

 ギュッ

ルーナ「カムイ様?」

カムイ「……前、あなたに手を引いてもらえた時、私はあなたにすべてを任せました。とても不思議な体験ができたと思います。あなたが私の手を引いてくれるだけの世界でも、あなたは私を守ってくれるとそう言ってくれました。だから、私もあなたを引っ張ってあげたいと思ってます」

ルーナ「な、なに恥ずかしいこと言って」

カムイ「私は本気です。それに、このままの状態のあなたを放っておくという選択肢は、私にはありませんよ」

ルーナ「……」

カムイ「今だけは、私にすべてを預けてくれますか?」

ルーナ「全部は預けられないわ。だって、それじゃ、あたしだけが甘えたみたいになっちゃうから……」

カムイ「それじゃ、少しだけでもいいですよ」

ルーナ「……うん。ちょっとだけ、お願いできる?」

カムイ「はい。ルーナさんが心に刻んだ事っていうことに、心当たりはあるんですか?」

ルーナ「それがあったことも以前に、何も覚えてないの。でもね、本当にあたしたちが願っていたことがあったのかもしれない気はしてる。でも、もう見えなくなっちゃって、そう考えると、あたしたちは使命だけを全うすればいいだけなのか。それで、あたしたちがここに来た意味が報われるのかもわからなくて……

ルーナ「ずっと違和感がなかったの。神器巡り合わせることがあたしたちの約束だって。でも、あの歌を聞いてから、そうじゃなかったんじゃないかって。でも全く思い出せなくて、あたしたちがここまで来たことは覚えてるのに、今の使命がその時に誓ったことだったはずなのに、あたしには空白があるのがわかる。これはあたしたちの本当の使命じゃないって……」

カムイ「……ルーナさん」

ルーナ「意味がわからないことを言ってるってわかってる。わかってるけど……」

カムイ「あなたが本当に心に願ったことを使命だとするなら。今、ルーナさんの今の使命は、忘れている使命に至るための手段なのかもしれません」

ルーナ「使命に至るための手段……」

カムイ「……使命を全うするには手段が必要です。それは家族を養うための仕事だったり、誰かを守るために剣を振るうことだったり、いろいろあります。もしもルーナさんの言っている通り、本当の使命があったとするなら、今掲げている使命は、本来それに向かうための手段だったのかもしれません」

ルーナ「あたしは……その手段を、今は使命だと思っているってこと?」

カムイ「ルーナさんの話が信じるであればそうなるかもしれません。それをルーナさんが忘れているのかはわかりませんけど」

ルーナ「それじゃ、あたしたちの使命はなんだったていうの?」

カムイ「それは私にもわかりません。あなたがそれを失ったことにも、何か原因があるとするなら……それには何かがあるのでしょう。どう足掻いても、避けられない強大な何かが……」

ルーナ「……それじゃ、あたしは結局それに負けたってことよね?」

カムイ「ルーナさん……」

ルーナ「だってそうでしょ? こうして苦しんでるあたしが何よりの証拠よ。結局、あたしたちが来たことに意味なんてなかったのかもしれない」

カムイ「そう決め付けるには、まだ早いです」

ルーナ「なんでよっ」

カムイ「決まっています。あなた達の使命はまだ出来上がっていないんですから。ここでそれを放り投げる選択肢を選ばせるつもりもありません」

ルーナ「こんな状態でも戦えって、カムイ様は言うわけ?」

カムイ「はい、だって今はあなたの手を取っているのは私ですから。私はあなたを引っ張ってでも再び立たせなくてはいけません。それが少しでも頼られた私のするべきことですから」

ルーナ「ちょ、ちょっと強引すぎない?」

カムイ「ルーナさんは落ち込んでいるのは似合いませんから。楽しそうに笑って、いつも強気で、いっぱい買い物をする。そんな一人の女の子のほうが似合ってます」

ルーナ「女の子じゃなくて、女性って言ってもらいたいんだけど……」

カムイ「ふふっ、少しだけ調子が戻ってきましたね……」

ルーナ「……それもそうかもしれないわね。ここで挫けたら負けっぱなしってことになっちゃうから」

カムイ「はい、そういうことになります。負けのまま、ここで戦いの手を下しますか?」

ルーナ「そんなのごめんよ。あたしは負けるのが嫌なの」

カムイ「ふふっ」

ルーナ「でも、ありがとう。その、あたしが守ってあげるって言ったのに、こんな風に支えてくれて」

カムイ「支えてなんていませんよ。少しだけ力添えしただけ、ここからはルーナさん自身で歩かないといけませんよ?」

ルーナ「それもそうね。ささっ、その握ってる手を放してくれない?」

カムイ「はい、わかりました」

 パッ

ルーナ「でも、ある意味、すでに黒星ってことよね、この状態って……」

カムイ「確かにそうなりますけど。まだ勝負が終わったというわけでもありませんよ」

ルーナ「あたりまえよ、必ず今の使命は全うして見せるわ。そして神器を巡り合わせて、その先にあったはずの本当の使命をあたし自身で見つけてみせるわ。それでどうにかできれば、あたしたちの逆転勝ちなんだから」

カムイ「たしかに、そうなるんでしょうね」

ルーナ「だけど、あたしにはもう一つ使命が出来ちゃったみたい」

カムイ「もう一つですか?」

ルーナ「そっ、ちょっとだけ貸しを作っちゃったから、それを取り返すっていう使命がね」

カムイ「……ふふっ、そうですか。そのお返し、ちょっとだけ楽しみにしてますね」

ルーナ「ええ、覚悟しておきなさいよ」

「あたしに新しい使命を与えたんだから、安いものじゃすませないんだからね」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナB++→A
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
シャーロッテB+
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 これは例の呪いに関する個人的な掘り下げの話です。
 覚醒三人組がどうして使命を失ったかということに関するものになります。
 ハイドラの呪いの媒体ですが透魔王国の水ではないかと思っています。水分はさすがに体内への侵入を防ぐのが厳しいものなので、体に入ることで呪いに蝕まれるという感じ。
 この呪いには使命に至るため行う手段が、使命であるよう思わせる精神支配に似た作用があるんじゃないかと思っての形です
 アクアの傍にいることでそれを忘れないというのは、そう言った精神支配を除外できる歌とハイドラの竜石があるからなのかなとおもった。

 そんな感じです。
 次回で準備期間1が終わります。

 

  

◆◆◆◆◆◆
―王都ウィンダム・エリーゼの屋敷―

エリーゼ「……もう一つの強みか」

エリーゼ(もう一つの強み、あたしにできることってなんだろう。誰かに聞いて、いや、だめ、これはあたしでどうにか決めないと……)

エリーゼ「どうしよう……」

ハロルド「エリーゼ様、どうしされました?」

エリーゼ「わわっ、ハロルド!? いつからそこに?」

ハロルド「先ほどから、座られたまま難しい顔をされていましたので、お声掛けをした次第です」

エリーゼ「あ、ありがとう。でも大丈夫だから、気にしないで」

エルフィ「そうは見えないわ」

エリーゼ「え、エルフィもいたんだ……」

エルフィ「ええ、ハロルドと一緒にね。どうしたのエリーゼ、城から戻って来てからずっと悩んでるみたいだけど……」

エリーゼ「……」

ハロルド「エリーゼ様。私たちではお役に立てませんか?」

エリーゼ「そ、そんなことないよ……。ハロルドとエルフィにはいつも助けられてる。助けられてるから……」

ハロルド「なら、いつもどおりに私たちを頼っていただきたい。お悩みなら、このハロルドも一緒に悩みますので」

エルフィ「わたしも一緒に悩むわ。エリーゼが悩んでると、訓練にも集中できなくなっちゃうから」

エリーゼ「……ごめんね、二人とも」

ハロルド「いいえ、気になさることはありません」

エルフィ「それで、何を悩んでいたの?」

エリーゼ「えっとね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハロルド「ふむ、もう一つの強みですか」

エルフィ「そんなものがなくても大丈夫、わたしがエリーゼを守ってみせるから」

ハロルド「エルフィくんの言うとおり。どんな敵がこようともエリーゼ様のことは守り切らせてもらいますよ」

エリーゼ「……二人の言葉は嬉しいけど、もう、それじゃいけない気がするの」

ハロルド「エリーゼ様?

エルフィ「……エリーゼ」

エリーゼ「ずっとね、二人に守ってもらえてた。すごく感謝してるよ、こんなに長くカムイおねえちゃんと一緒に旅を続けられたのは、二人がいてくれたから。でもね、もう守られてるだけじゃダメだって、そう思ったの」

エルフィ「……どうして、そう思ったの」

エリーゼ「……あたしね、戦わないといけない。もう守られだけの立場でいられない、いちゃいけないって思ってるから」

ハロルド「戦わないといけないというのは、白夜との戦いを差しておられるのですか?」

エリーゼ「……そうならないようにするために、あたしは戦わないといけないの」

エルフィ「そうならないため? エリーゼ、わたしたちの戦ってる相手は白夜ではないの?」

エリーゼ「……うん、そうなんだよ。ずっと意識したことなんてなかった、あたしは戦うことの意味を考えたことなんてなかったの…」

エリーゼ「あたしはずっと守られてきた。戦争してる意味とかそういうのからずっと守られてきた。あたしは守られてるだけでいいって少しだけ思ってたの」

エルフィ「……」

エリーゼ「でもね。それだけじゃいけないって思うようになったんだ。このままじゃいけないって、みんなと一緒に戦いたいって。もう、心にはあるんだ、あたしが戦う理由、でも、心だけで守れるのは自分だけで、エルフィのこともハロルドのことも、ほかの皆のことも守れるようになりたいって思って……」

ハロルド「私たちのこともですか?」

エリーゼ「うん、だって二人ともあたしの大好きな臣下で友達で、仲間だから。仲間は助けあうものだっていうし、何よりも二人が戦ってる中で、理由もないあたしは、仲間になれてないような気がして……」

エルフィ「エリーゼ……」

エリーゼ「だから、それを示せる強みがほしいの。あたしもハロルドとエルフィのいる同じ場所で戦えるって思える物が……」

ハロルド「そうでしたか。エリーゼ様、先ほどは少し出すぎたことを言いました。お許しください」

エリーゼ「は、ハロルド、頭をあげてよ」

ハロルド「……私はどこかであなたをただ守るべき存在と考えていたのかもしれません。……エリーゼ様は私たちのことを仲間だと言ってくれているのに……」

エリーゼ「……ううん。私もずっと守られることに甘えてたから、お相子だよ。だから、これ以上気にしたら駄目だからね」

ハロルド「はい、エリーゼ様」

エルフィ「……エリーゼ」

エリーゼ「エルフィ、ごめんね。子供のころからずっと一緒だったのに、ずっとあたし甘えてばっかりで」

エルフィ「ううん、わたしのほうこそごめんなさい。あなたが甘えてくれることに、どこか溺れていたのかもしれないから。でもエリーゼ、あなたを守ることはわたしたちの使命だから、それだけは永遠に変わらないことよ」

エリーゼ「うん……。えへへ、こうして話せて本当に良かったかもしれない。もしかしたら、こうやって話せないまま、時間になっちゃったかもしれないから」

ハロルド「時間ですか? まだ昼を過ぎたくらいだと思いますが……」

エリーゼ「えっと、今の時間じゃなくて。その、一週間後に始まるの。白夜への作戦が……」

エルフィ「……そう、ついに始まるのね」

エリーゼ「うん、でもね白夜侵攻のために、行くことになるかはわからないの」

ハロルド「それが、先ほど言っていた、そうならないようにするためという意味なのですか?」

エリーゼ「うん」コクリッ

エルフィ「そうならないようにするためって、どういう意味なの、エリーゼ」

エリーゼ「……二人は暗夜の兵士なんだよね」

エルフィ「……そうね」

ハロルド「はい、そうなります」

エリーゼ「……あのね、今の暗夜と敵対することになるかもしれないって言ったら、二人はどうする?」

ハロルド「エリーゼ様!?」

エリーゼ「あはは、ハロルド、すっごく驚いてる」

ハロルド「いや、いきなりそのようなことを言われたら、こうもなります。冗談でもそのようなことは……」

エリーゼ「……」

ハロルド「……冗談ではないのですね?」

エリーゼ「あたしの選ぶ道はそれを避けられない道だと思う。暗夜の王族が言うことじゃないってわかってる」

エルフィ「……それはしなくてはいけないことなの?」

エリーゼ「うん、あたしはそう考えてる。ごめんね、こんなこと言って。だからね、今のことであたしのことが信用できなくなっても――」

 ググッ

エリーゼ「え、エルフィ?」

エルフィ「わたしはいつでもエリーゼの味方。それは何を選んでも変わらないことよ」

エリーゼ「何を選んでも?」

エルフィ「ええ。わたしがエリーゼの臣下になったのは暗夜のためじゃない、思想のためでもない、生活のためでもない。ただあなたを守るためよ」

エリーゼ「エルフィ……」

エルフィ「だからエリーゼが選んだ道をわたしは付いて行く、それがどんな道でもそれをあなたが選んだのなら、その道が続く限りわたしはあなたの盾になる。それがここまで体を鍛え上げてきたわたしの信念だから」

エリーゼ「道が間違ってるかもしれないのに?」

エルフィ「わたしの道はエリーゼを守る道ただ一つ、だから気にしないで。エリーゼが迷い道に入っても、わたしは傍にいてあげるから……」

エリーゼ「ありがとう、エルフィ」

ハロルド「エリーゼ様……」

エリーゼ「ハロルド……」

ハロルド「私は正義の味方です」

エリーゼ「うん、ハロルドは正義の味方だもんね。やっぱり、許せないよね……」

ハロルド「エリーゼ様、私の正しさを覚えていますか?」

エリーゼ「え、えっと、誰よりも朝早く目覚めて、見回りをする。迷子がいたら親を探してあげて、動けない人がいたらその人の足の代わりになる、他にもいろいろあるよね?」

ハロルド「はい。私はそう言う方たちの正義の味方でありたい、そう思っています。ですが、そういった人々の正義の味方である前に、私は主君であるエリーゼ様の正義の味方でありたい、そう考えています」

エリーゼ「あ、あたしの正義の味方?」

ハロルド「はい、エリーゼ様が悩んでいれば、一緒に悩み。エリーゼ様が泣いていれば一緒に泣き、エリーゼ様が戦っていれば助太刀し、エリーゼ様が道を歩まれるのならその道を共に歩む、そんな正義の味方でありたいのです」

ハロルド「私はエリーゼ様と共にあります。あなたを守るという正義の炎は、いかなる道でも燃え尽きることはありません。あなたという主君に出会え、共に闘えることを私は誇りに思っています」

エリーゼ「ハロルド……」

エルフィ「エリーゼ、わたしもハロルドもあなたのためには命を賭けるわ。それくらいあなたは尊くて同時にわたしたちにとって大切な仲間だから」

ハロルド「これから力を合わせていきましょう。どんな苦難も力を合わせて乗り切っていけるはずです」

エリーゼ「エルフィ、ハロルド……」

ハロルド「ですから、共に闘いましょう」スッ

エルフィ「あなたが信じた道の先に向かって」スッ

エリーゼ「……うん!」
 
 ガシッ

エリーゼ「二人とも、ありがとう!」










 パラパラパラパラ

ハロルド「ではこれなんてどうですか、エリーゼ様。新しく暗器に手を出されてみては?」

エリーゼ「うーん、やっぱり馬に乗ったままでいたい」

ハロルド「そうですか、となると魔法を手掛けてみるのが良いかもしれません。その、私は魔法はからっきしなので、教えることはできませんが」

エルフィ「わたしも魔法は全然わからないわ」

エリーゼ「そうなんだ、でもそうだよね。あたし魔法には興味があったから、うん、魔法を覚えてみるよ!」

ハロルド「はい、これで新しい強みへと近づけましたね。エリーゼ様」

エリーゼ「うん! あれ……エルフィどうしたの?」

エルフィ「……このままじゃまずいわね」

エリーゼ「え、何がまずいの?」

エルフィ「だって、馬に乗ってるエリーゼが前戦に出るようになったら、わたしの速度じゃ追いつけない」

ハロルド「ふむ、ではエルフィくんも馬に乗ってみるのはどうだ?」

エルフィ「わたしが?」

ハロルド「ああ、重装甲の騎馬は存在する。そうするのも間違ってはいないはずだ」

エルフィ「でも、そんな簡単に準備できるかしら。そのわたしに装備が乗るのよ?」

エリーゼ「大丈夫だよ、どんなものでも準備してみせるって、マクベス言ってたから。こういう時はいっぱい頼っちゃお?」

エルフィ「……そう、ならエリーゼ様、こんな感じの要望なんですけど」

エリーゼ「うん、エルフィはこれでおわりで。ハロルドはなにかないの?」

ハロルド「わ、私ですか……。その色々と考えてはいるのですが。しっくりくるのがこれくらいなものでして……」

エリーゼ「これ、ぶれいぶひーろーの装備だよね? えへへ、ヒーローを選ぶのはハロルドらしいね」

ハロルド「たしかにそうかもしれません。装備が来ても強くなれるかは自分次第ですからね」

エリーゼ「うう、マクベスもそう言ってたけど、そうだよね。すぐに強くなれるわけじゃないよね……」

エルフィ「そうね、わたしの体も積み重ねで出来上がってきたものだから。その言葉には同意するわ」

エリーゼ「うん、それじゃカムイおねえちゃんに渡してくるね!」

 タタタタタタッ

 ガチャ バタン

エルフィ「必ず守り切る」

ハロルド「ああ、勿論だ」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・クラーケンシュタイン『マクベスの部屋』―

マクベス「………」

『すっごく強い馬』
『ブレイブヒーローの装備』
『魔法の書』
『黒羽のローブ』
『忍装束』

マクベス「あまり難しいものがなくて助かりますが……このすっごく強い馬って一体何に対して強い馬なんでしょうかねえ?」

マクベス「いろいろとありますが、こちらで準備をすると言った手前、できる限り応えないといけないというのは癪ですが……」

マクベス(しかし、今ここにいたって言えばこの支出は当然のことでしょうな。フウマ公国を経由していくとはいえ、あのイズモ公国が簡単に道を開くとは思えませんのでね)

マクベス「白夜の空が暗夜に変わるときまでに、イズモ公国を占領しなけばいけない。まぁ、カムイ王女にはそれくらいやってもらわなければ困ります。そのためにレオン王子の案を採用したのですからねぇ」

マクベス「ふぅ、一息入れましょう。今日はおいしい紅茶を準備しましたから。さて、ふむふむ、お湯はこれくらいの熱さにして、ポットを置いて、よし……あとは注げば――」

 コンコン

上級大将「失礼します、マクベス様。こちらの件なのですが」

 コンコン

上級大将「マクベス様、この件に関して上から報告せよと……」

 コンコン

上級大将「マクベス様、作戦の最終確認の日程なのですが……」

マクベス「……」

マクベス「……紅茶が冷めてしまいましたね……」

「はぁ………」


準備期間1 おわり


○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(ルーガルー)

今日はここまでで、この準備期間中にマクベスは紅茶を飲むことができるのか……

 ルーガルーはまちがいマーナガルムだ、すまん。

 準備期間中は王族を中心に話がある形になります。他のキャラクターはあってもA支援同士であるくらいです。

 カンナからお母さんと呼ばれている違う世界の自分を凝視するリリスとかいう電波を受信した。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
・カムイが話をする人物

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>451

◇◆◇◆◇
・次のキャラクターの職を決めたいと思います。

 カミラ『レヴナントナイト、パラディン』

 >>452

 ルーナ『ブレイブヒーロー、ボウナイト、メイド』

>>453

 ベルカ『ドラゴンマスター、バーサーカー』

>>454

 サイラス『パラディン、ボウナイト、ブレイブヒーロー、グレートナイト』

>>455

 スズカゼ『上忍、剣聖、絡繰師』

>>456

 このような形でお願いします。

 
 


その電波は毒電波だ 食べられないよ

451ならレヴナントナイト
452だったらブレイブヒーロー

451はクラスチェンジではなくキャラ安価
全部下に一つずれるのかな? シャーロッテ

では、カミラさんはレブナントナイトで。

ルーナはブレイブヒーローで!

ベルカならドラゴンマスターかな

ボウナイト

◆◆◆◆◆◆
―星海・マイルーム―
(カムイ達が白夜に向かうまであと6日……)

レオン「―――以上が、僕の考えていた先行作戦の内容だよ」

マークス「なるほど、フウマ公国と連携しての進軍で白夜の戦力を北と南に分散、手薄になった包囲網を本隊が突破しテンジン砦までのルートを構築。しかしこれは建前、本当はその陰でサクラ王女たちを白夜に返し、会談を準備してもらう手筈だったということか」

カミラ「ふふっ、建前だけなら侵略作戦だけど、本当の目的を考えれば、これは和平のための作戦ね。レオンにここまで思われてるなんて、サクラ王女たちに、おねえちゃんちょっと妬いちゃうわ」

レオン「真面目に考えたからね。それなりにはさ」

エリーゼ「ねぇねぇ、レオンおにいちゃんってサクラのこと好きなの?」

レオン「な、なんでそうなるんだ!?」

エリーゼ「だってレオンおにいちゃん、この作戦ってアクアおねえちゃんから話を聞く前にすでに考えてたんだよね? これはすきすきだからにきまってるよ!」

レオン「……ちがうよ。僕はサクラ王女たちを白夜にちゃんと返すって決めてた。別に会談なんていうのは二の次でね。ただそれだけだのことだから」

エリーゼ「……えっと、それって」

カムイ「エリーゼさん、確かにとても追求したくなる内容ではありますけど、今はやめておきましょう」

カムイ「ここの時間の流れは確かに違いますけど、今はレオンさんの作戦内容から私達にできることを見つける時間ですから」

エリーゼ「うん、そうだよね。ごめん、おねえちゃん」

レオン「僕には謝らないのかい?」

エリーゼ「なんで?」

レオン「……」

エリーゼ「だけど本当にすごい場所だよね。貴賓室からいきなり広い場所に出たからびっくりしちゃったよ」

カミラ「確かリリスが残してくれたと言ってたわね」

カムイ「はい。すみません、今まで黙っていて」

マークス「構わない。今はこうして誰の目を気にすることなく話ができるからな。われわれのしている話は、本来ならばあってはならないことだ」

アクア「そうね……。暗夜王の子供たちが集まってする話題ではないもの」

マークス「ああ。だが、それでも色々と考えなくてはならん。このまま、流されるわけにはいかない」

レオン「実際問題アクアの言ってることは間違ってないからね。僕たちは反逆を企ててるわけだから……」

カムイ「それで、今の作戦ですが……」

マークス「レオン、お前はこの筋書き通りに事を進めるのか?」

レオン「そんなこと、もうできるわけがないよ。かつての父上なら、降参した白夜に興味を失う可能性が少しはあったかもしれない、でも今の父上は父上じゃないんだ。希望的観測で事は進められない」

アクア「そうね、白夜が停戦や降伏という結論を出そうとも、あいつは白夜を蹂躙する。会談が実現するしないに関わらずやることは変わらないはず」

レオン「それにフウマ公国の件もあるからね……」

カミラ「そうね、今まで気にしてはいなかったけど、今回の件で目の上のたんこぶくらい印象が上がったわ」

レオン「ああ、話を聞く限りだと、この国は暗夜に忠誠を誓っているから指示に従ったんじゃないように思える」

カムイ「そう考えてもいいでしょう。あそこにいた兵たちの多くは、私たちを倒すことで無事に帰れると思っていたようですから……」

レオン「兵を消耗品のように使う指揮官が王なんていう国が忠誠なんてありえない。たぶん、暗夜から得られる恩恵に縋りたいだけだ」

マークス「寄生虫のような国ということだな」

エリーゼ「寄生虫のような国って、なんだかすごい言葉だね」

アクア「どちらにせよ。フウマに協力を仰ぐということをレオンは考えていないのね?」

レオン「ああ。多分父上がまだ生き残っていたとしても、この国は何かをしでかす場所としか思ってないからね」

カムイ「今は暗夜が優勢ですが、もしも今の状況が間逆であったなら、すぐに手のひらを返して白夜につきそうなイメージを私も持っています」

マークス「それを白夜が許すかはわからないがな。どちらにせよ、用心するに越したことはないということだ」

カムイ「しかし、もうマクベスさんはこの作戦を入れて本体の動きを考えているんでしょうね」

レオン「多分そうだろうね。あいつが考えた案は消えてなくなったけど、本隊がすべきことは何も変わってないはずだから」

カムイ「この先行作戦ですが、私たちはどこまでをこなすことを想定して考えているんでしょうか?」

レオン「白夜についてからの日にちを考えて、たぶんイズモ公国に僕達が陣を敷くまでは見ているはずだけど、今回僕達はその通りに動いちゃいけない……」

カムイ「……そうですね。どうにかして、この白夜侵攻を止める方法を見つけなければいけませんから」

マークス「しかし、今からできることと言われると、そんなものほとんど思い浮かばないがな」

カミラ「そうね。反乱を起こすにも私たちだけではどうにもならないわ」

エリーゼ「でもでも、戦争に参加したくないっていう部族の人たちはいるんでしょ? だったら、その人たちに話をして……」

レオン「確かにそういった方法もあるけど。今起こしたところで、うまく行くはずがない。僕達が声を掛けて集められる部族の数は極端に少ない。それに、僕たちに付くよりも父上に付く方にメリットがあると考える奴らもいるはずだ。だから、自然と決起するように仕向ける算段をしないといけない」

マークス「……自然と決起するようにか。すでに配下を回して、多くの部族村に今は従うように促してはいるが、生半可なことで決起など起きはしないだろう」

カミラ「そうね、お父様の武力は絶対的で畏怖の存在と言ってもいいわ。その印象が消えない限り、決起なんて考えないんじゃないかしら?」

エリーゼ「やっぱり、駄目なのかな? このまま白夜が壊されるのを見てるしかないのかな?」

カムイ「……一度暗夜に戻って事を起こすというは?」

レオン「え?」

カムイ「いえ、単純な話です。私たちは一度白夜に向かいますが、ちょうど入れ替わる日にもう一度暗夜に戻るんです。本隊が出払っている状態なら、王都は残っている守備隊だけになるはずですよ」

レオン「……そうしたいのは山々だけど、それは無理だよ」

カムイ「どうしてですか?」

レオン「監視の目が強すぎる。白夜に向かったはずの僕達が戻ってきたら不審に思われるのは間違いない。それに暗夜で反乱を起こすにしてもディアからウィンダムまでは距離がある。出払った少しの間は守備も疎かになるかもしれないけど、僕達が辿りつく頃には元通りになってると思うよ」

カムイ「そうですか……」

エリーゼ「あの時みたいに一気にウィンダムまでいければいいのに」

カミラ「あの時?」

エリーゼ「ほら、七重の塔の時みたいに。こう、びゅーんって!」

カミラ「そうね。それなら問題ないけど。賢者様だからこそできたことだもの、私たちでできるかはわからないわ」

カムイ「あの時空移動のことですか? たしかにそれができれば、どんな場所からでも戻ってくることはできますが……」

レオン「時空移動ね……」

カムイ「ですが、正直白夜侵攻を今から止めることはまずできませんので、王都を抑えるのが一番現実的なんでしょう。タイミングさえ合えば、決起した部族と協力してウィンダムを落とせるはずです。それに、ウィンダムを落とせれば、間接的に白夜への侵攻も止められるかもしれませんから」

エリーゼ「え、どうしてウィンダムを落とすと、白夜への侵攻が止められるの?」

マークス「そうだな。エリーゼ、お前がノスフェラトゥを倒すために出掛けていたとしよう」

エリーゼ「えっと、うん」

マークス「いつもお前の元には家から必要な物が送られてくる。それは途切れることなく確かに送られているから、お前は気にすることもなくどんどんノスフェラトゥを倒していけた。ところがだ……、突然物資供給が途絶えたとしたらどうする?」

エリーゼ「え、えっと、ノスフェラトゥを追い掛けるのをやめて家に帰ってみようと思うよ」

マークス「そうだな。だが、その家がノスフェラトゥに取られていたとしたら?」

エリーゼ「ど、どうしよう!? あたし、敵に挟まれて立ち往生してるよ!」

マークス「そのエリーゼを暗夜に変え、元々追いかけていたノスフェラトゥを白夜、家を抑えていたのをわれわれと考えればいい」

エリーゼ「……あ、あー!!」

カムイ「本隊はあまりにも強力ですが、それら全員の士気と行動を維持するには大量の物資が必要ですからね。今の状況を見るに、それが断たれるという心配はしていないでしょう」

エリーゼ「でも、それをするには……」

カムイ「はい、私達がいる場所はそれをこなすには絶望的な場所です。とてもではありませんが、間に合いません」

レオン「ここまで戻ってくるのに最低でも五日以上かかるし、本隊が無限渓谷を越えてからじゃないと僕たちの戦力でどうにかなるとは思えない」

カムイ「かと言って、兵力を分散して暗夜に残していくというのも難しいでしょう。そもそも、その行動事態を怪しまれるかもしれませんから」

マークス「だが現状、これが一番ベストかもしれない。何よりも、私も同胞を多く斬り倒したくはない」

レオン「そうだね。これが成功して、白夜との戦いができない限界値になれば……」

カムイ「本隊も離反を始めるでしょう。ガロンが何者であろうとも、この戦いの先に何も見出せないと誰かが思えば、それは広がっていくはずです」

レオン「その最初の杭をどうにかしないといけないんだけどね。どちらにせよ、この距離の問題を解決しない限り、次のステージには上がれそうにないよ」

カムイ「そうですね……」

カムイ(時空移動ですか、そんな書物があればいいのですが)

(そんなものがひょいと出てくるなんてことありませんよね……)

今日はここまで

 白夜でレオンが渡してくれたワープの書、デメリットが一家しか使えないと使用した場所に戻るだけってすごいよね。

エリーゼ「でも、あたしたちがおとうさまと戦うって部族の人たちに広がっても、一緒に戦ってくれるのかな?」

アクア「エリーゼ、あまりいい話ではないけど、その心配はいらないはずよ」

エリーゼ「え、そうなの?」

アクア「ええ、ここまでの暗夜、いいえガロンが積み重ねてきたことへの不満は大きいはず。決起に至る動機や大義名分をガロンから提供しているのが現状と言ってもいいかもしれない」

レオン「それに今回の焼き打ちは大きく行われてる。昨日で少なくとも二つの集落が焼き討ちされたらしいからね」

カムイ「二つですか……」

レオン「ああ、それも比較的に大きな集落だよ。たぶん、マクベスがそうしたんだろうね」

カムイ「マクベスさんが? でもどうして大きな集落を?」

レオン「部族への粛清に時間を掛けたくないってことかもしれないね。小さな部族の村を焼き打ちにしても弱い印象のままだけど、大きな集落が一つでも焼き討ちされれば……」

カムイ「なるほど、脅しではないという表現になるわけですね」

レオン「無理にでも従わせて二週間後の作戦に間に合わせなくちゃいけないから、マクベスも相当手を回してるだろうね。それに結果、その恐怖や怒りの矛先が、未だに終わらない戦争の所為、落ちない白夜の所為になればいいだけの話だし、白夜と戦争が終わった先には豊穣の大地が待ってるとなれば、自然と戦争に参加していたことに意味ができる。それがマクベスの考えている道なのかもしれない」

カムイ「ですが、今、その恐怖や怒りは暗夜に向いていると考えていいんですね?」

レオン「そうだね。いきなりこの事態の責任を白夜になんて向けられない。昨日まで自身の生活を維持するので手いっぱいだった人間達には特にね。それに白夜と暗夜の戦いはずっと続いて来たから、すべての原因として白夜に敵意を向けるには時間が経ち過ぎてるよ」

アクア「現に部族を縛り付けてるのは暗夜王国、そしてシュヴァリエ反乱の鎮圧と前線を押し上げていることから白夜の脅威は確実に低下してる。恐怖や怒りに支配されて、白夜を滅ぼすことが自分たちの身を守る術になると、多くの人々が思わないうちに行動を起こさないといけない」

カムイ「時期もギリギリということですね。しかし部族の方たちが前線に送られたとしても、あまり戦力になるとは思えませんが……」

レオン「力に覚えのある部族は少なからず送られるだろうけど、ほとんどは補給線の確保や補助に送られることになると思う。戦闘力としてではなく労働力として使うことをマクベスは考えているだろうからね」

カムイ「決起を促せれば、本当に補給行動を止めることができるかもしれないということですね……」

レオン「だけど、どうやって部族とコンタクトをとるんだい? それに父上に賛同している者たちもいるわけだし、それも――」

カムイ「その点は心配いりませんよ」

レオン「姉さん、それは……」

カミラ「どういうことかしら?」

カムイ「その点はすでに抑えてあるということです。ギュンターさん、フローラさん」

 ガチャッ

フローラ「はい、カムイ様」

ギュンター「いかがされましたか、カムイ様」

カムイ「前々から調べていただいていたものを皆さんに」

ギュンター「承知しました。フローラお前はエリーゼ様とアクア様、レオン様へ」

フローラ「はい。エリーゼ様、どうぞ」

エリーゼ「う、うん。えっと、これってなに?」

アクア「名前がいっぱい書かれているけど」

レオン「これは貴族の家の名前?」

マークス「……こちらは部族の物のようだが」

カミラ「部族がどの貴族の下に付いているのかも調べ上げてるのね。でも、こんな人数全員を調べ上げる機会なんてあったかしら?」

カムイ「一度だけありましたよ。王都ウィンダムに部族の長も貴族の長も関係なく集まった時が……」

レオン「……まさか、あの式典!?」

アクア「……もしかして、あの会場でギュンターやフローラが給仕を務めていたのって」

ギュンター「さて、何のことですかな? 私の仕事はカムイ様のお役に立つこと、それだけですので」

フローラ「ええ、カムイ様のご命令通りに事を成すのが、私たちの務めですから」

マークス「すでに、その頃から準備をしていたのか?」

カムイ「正直この計画のために集めたわけではありませんよ。結果的にこうなってしまったというだけのことですから」

アクア「……色々探っていたのね」

カムイ「貴族についてはギュンターさんに、部族についてはフローラさんにお願いして、いろいろまとめて頂きました。どういった経緯でこの暗夜王国の一部になったのか、そして今どういった形で暗夜についているのか。気になることを。二人にはとても感謝してまよ」

ギュンター「ありがたきお言葉」

フローラ「恐縮です、カムイ様」

マークス「……だが、カムイよ。このすべての部族に声を掛けるというわけではないのだろう?」

カムイ「はい。共存ではなく自己の繁栄だけを望む、先ほど話に上がったフウマ公国のような部族と言えばいいでしょう。こういった場所には何かを言うことはありません。最後の最後でどちらにつけばいいのかだけを考える存在になるでしょうから」

レオン「敵とすら見ていないんだね」

カムイ「ええ。それにこうしてここまで生きてこられた以上、そうすることがその部族の処世術ともいえますから。そのあり方は間違っているわけではありませんし、そこで生きている民は何も悪いことはしてませんから。変わりゆく中で、族長にはゆっくり悩んでもらいましょう」

レオン「……それで、姉さんはこの件を誰に話すつもりなんだい?」

カムイ「それには心当たりがあります。あの人なら私の話を聞いてくれると思っていますから」

レオン「信用できるの?」

カムイ「はい」

エリーゼ「ねぇねぇ、あの人って誰なの?」

カムイ「エリーゼさんも会ったことのある人ですから、安心してください。ね、フローラさん」

フローラ「そうですね、エリーゼ様もお会いしたことのある方だと思います」

エリーゼ「フローラも知ってる人なんだ、一体誰なんだろ?」

レオン「姉さんが信頼してるっていうのならもう言うことはないよ。僕は時空転移について少しだけ探してみることにする」

カムイ「何か心当たりがあるんですか?」

レオン「少しだけね。それに僕は作戦の最終確認をマクベスに任されてるから、大きく動くわけにはいかない。だから、煮詰める部分は煮詰めておいてほしい」

カムイ「はい、時間の許す限り煮詰めておきます。部族との話は私がつけておきますので、レオンさんはレオンさんのするべきことをしてください」

レオン「ああ、それじゃ後のことは任せたよ、姉さん」

カムイ「はい。任せてください」

◆◆◆◆◆◆
―北の城塞・中庭―

カムイ「……ふぅ、ようやく一息ですね」

カムイ「………」

カムイ「ふふっ、平和ですねぇ」

シャーロッテ「なに、婆さんみたいなこと言ってんのよ」

カムイ「あ、シャーロッテさん。どうしてこちらに?」

シャーロッテ「決まってるでしょ、ここにレオン王子とマークス王子が来てるって聞いて、ちょうどお昼時を狙って来たのよ」

カムイ「お昼時、そうですか、外ではそれくらいしか時間が経っていなかったんですね。それでどうだったんですか?」

シャーロッテ「ふふっ、さっき城門で挨拶と可愛さアピールしてきたところよ。今日もいい天気ですねぇ、あっ、お弁当持ってきたんですけどどうですか? いいえ~、シャーロッテの作ったお弁当食べてもらえてとっても嬉しいですぅ~、てへへ。こんな感じで渡してきたわ」

カムイ「ふふっ、いつも大変ですね」

シャーロッテ「男が求める理想の女を演じるの疲れるから、こうやって何も気にせず話せるカムイ様といると気が楽でいいわ」

カムイ「シャーロッテさんはそのままでも十分魅力的だと思いますよ。特に、その体つきとか……」ソーッ

 ペシッ

カムイ「いたたっ」

シャーロッテ「ねぇ、カムイ様。少しボディータッチ過剰だと思うんですけど」

カムイ「そ、そうでしょうか?」

シャーロッテ「会う度会う度触られる私の身にもなれってんだよ。正直、カムイ様にその気があるようにも感じられるんですけど……」

カムイ「その気? それってどんな気ですか?」

シャーロッテ「それは……まぁいいわ。っていうか、カムイ様ってもしかして恋愛経験ないんじゃないですか?」

カムイ「……無いですね。生まれてこの方」

シャーロッテ「ということは初恋も?」

カムイ「初恋ですか……。あ、ギュンターさんが昔読んでくれた本の王子様には憧れを抱いたことはありますよ」

シャーロッテ「……その歳で初恋もまだとか、カムイ様色々と損してますね」

カムイ「その、私は目が見えませんから」

シャーロッテ「目が見えないのは理由にならないと思うけど」

カムイ「ですよね……」

シャーロッテ「それじゃそれじゃ、マークス王子とレオン王子には何か感じないんですかぁ?」

カムイ「なにがですか?」

シャーロッテ(うわぁ、すでに何も感じてないオーラがすごい……)

シャーロッテ「だってぇ、兄弟だと思ってたら実は違ってたんですよね」

カムイ「確かに私は暗夜の王族ではなかったわけですから」

シャーロッテ「そうなったら、やっぱり見る目が変わったりするんじゃないですか?」

カムイ「見る目ですか……そう言われると……」

シャーロッテ「そうですよ、今まで血の繋がりがあると思ってた兄と弟が、ただの異性になっちゃうんですから……」

カムイ「そうですね。こんな私が姉や妹でいていいのかどうか。そもそも呼ばれていいのかどうかと思うことはあります。でもマークス兄さんもレオンさんも大切な家族であることは変わらないことですから」

シャーロッテ「……いい答えだど、私の求めてた答えと違うわ」

カムイ「ふふっ、シャーロッテさんはどんな答えを期待してたんですか」

シャーロッテ「そうね。実は気になってるんですとか、どちらかを選ぶなんて私にはできません、みたいなのをね」

カムイ「そうなんですか?」

シャーロッテ「ええ、まぁ、カムイ様が興味ないって言ってくれるなら、競争率下がってありがたいんだけどね。玉の輿を考えたら、すごく二人とも魅力的だから」

カムイ「私に言ってもいいんですか、そんなこと」

シャーロッテ「カムイ様は他言しないって信じてるから、問題ないわ」

カムイ「そんなに信頼されてるんですか、私」

シャーロッテ「私の中では結構高いわよ」

カムイ「まだそれほど長く一緒にはいませんよ?」

シャーロッテ「時間の長さだけで信頼とかが決まるなら、結婚なんて一緒に過ごしてきた奴の勝ちになっちまうだろ」

カムイ「そうかもしれませんね。それにしても恋愛ですか、あまり考えたことはありませんでしたね」

シャーロッテ「ふふっ、なら少し練習してみる?」

カムイ「練習、何をですか?」

シャーロッテ「決まってんだろ、恋の練習だよ」

カムイ「恋って練習できるものなんですか?」

シャーロッテ「まぁ、擬似的な恋愛ごっこみたいなものだから。それに、今さっきまでずっと会議だったんでしょ? 少しは肩の力を抜かないとね」

カムイ「それもそうですね」

シャーロッテ「それじゃ、始めるわよ。……好きです、カムイ様」

カムイ「そうですか」

シャーロッテ「……」

カムイ「……」

シャーロッテ「……」

カムイ「……」

シャーロッテ「何か続けて言えよ」

カムイ「え、何か言わないといけないんですか?」

シャーロッテ「当り前だよ、短すぎるだろ。もっとさ、私もです、ずっとずっと思っていましたとか、付け加えることあるでしょ?」

カムイ「すみません、実戦経験のないことには慎重になる性質でして」

シャーロッテ「それじゃ、今度は逆で。カムイ様から私に告白してみてよ」

カムイ「私からですか?」

シャーロッテ「そう、私が言葉を返すから、二回は続けてよね」

カムイ「はい、わかりました。えっと、シャーロッテさん、あなたのことが好きです」

シャーロッテ「か、カムイ様、そんな、私なんかのどこに惹かれたんですか……私はこんな女なんですよぉ?」

カムイ「それは………」

シャーロッテ「………」

カムイ「えっとですね……」

シャーロッテ「……」

カムイ「………うーん」

シャーロッテ「……え、ないの?」

カムイ「いいえ、違います。あ、ありました。ありましたよ、シャーロッテさんに惹かれるところですよね」

シャーロッテ「どこなんですかぁ?」

カムイ「それは、体を触るとすっごく可愛く鳴いてくれるところです」

シャーロッテ「……」

カムイ「……」

シャーロッテ「流石に凹むわ。完全に愛がないやつよね、それって」

カムイ「すみません、私にはどうやらこの行為は難易度が高かったみたいです」

シャーロッテ「いや、私が予想していた以上に、カムイ様がおかしかっただけですから。とりあえず、これはもう止めましょう?」

カムイ「はい、そうですね」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB+→B++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 次回で準備期間2は終わりになります。
 あの子は鳴き声がいいんですとうれしそうに言うのがうちのカムイです。
 
 フォレエポの次にやろうと思う番外編の一覧(次の番外編安価の参考にどうぞ)
 
・ヒノカ×セツナ(R18)
・リリスの多世界観察記
・カムイとまきゅべす
・ミタマ×ディーア
・ゴーレムな一日

 こんな感じです。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『カミラの屋敷』―

ルーナ「……いいよね?」

カミラ「ええ、何かになりなさいって強制するつもりもなかったもの。ルーナがなりたいものを選んでくれてむしろ嬉しいわ」

ルーナ「えへへ、まぁ、騎馬兵にも興味はあったけど、この戦い方にも結構愛着湧いてるから。それになんと言っても名声よ、名声。ふふっ、あたしが誰よりも強いって示す絶好の機会じゃない?」

ベルカ「その装備に身を包んだからって、名声が得られるわけじゃないわ」

ルーナ「わ、わかってるわよそんなこと」

ベルカ「本当に?」

ルーナ「ふふん、見てなさいよ。この戦いが終わった時にはあたしの名前を知らない奴が一人もいないくらい、有名になってやるんだから」

ベルカ「そう、私にはわからないわ。与えられた任務を確実にこなせればそれだけでいいと思うけど」

ルーナ「ベルカとあたしは違うのよ。ふーんだ」

カミラ「ふふっ、それでベルカも、このまま竜騎兵でいいのね?」

ベルカ「ええ、私にはこの戦い方が合ってる。それに私が竜を降りるとカミラ様に迷惑が掛るかもしれないから」

カミラ「私に迷惑が掛る……一体どういうことかしら?」

ベルカ「ルーナがカミラ様の竜に乗りかねないわ」

ルーナ「はぁ、なによそれ!?」

ベルカ「なによって言われても、事実よね?」

ルーナ「どこがどう事実なのよ!?」

ベルカ「あなた、あまり足が速いわけじゃない。私と一緒の時は、いつも竜に乗せろって言ってるわ」

ルーナ「うっ……。し、仕方無いじゃない、最前線まで遠いことの方が多いし、っていうか空飛んでる竜より早く走れるわけないでしょ」

ベルカ「そう、最初は遅れるんじゃないわよって、言ってたのに、今では乗せてっていうのも面白いわ」

ルーナ「ぐぬぬぬっ」

カミラ「ふふっ」

ベルカ「カミラ様?」

カミラ「ごめんなさい。二人とも仲がいいから、嬉しくなっただけよ」

ルーナ「どう見たらそう解釈できるのよ」

カミラ「ベルカがこうやってあなたとじゃれ合ってるのを見てるとね。今はこう言葉を返してくれるけど、私が雇った当時のベルカなら、ずっと無言のままでルーナの言葉に耳を貸さなかったと思うわ」

ルーナ「え、そうなの」

ベルカ「……昔の話よ。それにあなたは私の相棒、最低限の意思疎通はしないと」

ルーナ「最低限って何よ!」

ベルカ「……だって、あなたは精神的に脆いところがあるから……」

ルーナ「せ、精神的に脆い!? あ、あたしのどこが精神的に脆いって言うのよ」

ベルカ「そうね。あなた初めて会った時、私に色々と『抜かしてあげる』とか『カミラ様の一番になるのはあたしだから、覚悟しておきなさいよ』とか、そんなことを言ってきた」

カミラ「ここで初めて顔合わせしたとき、暗がりから現れたベルカに驚きながらね」

ルーナ「カミラ様が覚えてるのはともかく、あんたもよく覚えてるわね」

ベルカ「そういうあなたもね」

ルーナ「そ、それで、それがどうしたのよ。あんた結局、何も言い返さなかったじゃない」

ベルカ「ええ、私は言葉を返さなかった。理由はまだルーナのことを私は信用してなかったから、それすら口に出す必要もなかっただけよ」

ルーナ「そ、そう……」

ベルカ「それで、私が無言なままでいたら、すごく焦り始めた」

ルーナ「あ、焦ってないから」クルクルクル

ベルカ「挙動不審に髪の毛を触り始めてた。そう、今みたいに」

ルーナ「……そうよ、焦った、焦ってたわよ、文句ある!?」

カミラ「ふふっ、ルーナにとっては自己紹介のつもりだったのかもしれないけど、ベルカにはそれが理解できてなかったみたいね」

ベルカ「わかるはずないわ。それにあんな高圧的な自己紹介は自己紹介とは言わないわ」

ルーナ「め、めげそう」

ベルカ「それから、こそこそと私の様子を窺ってたみたいだけど……」

ルーナ「うっ……」

ベルカ「あれはなぜ?」

ルーナ「わ、わかってて聞いてるでしょ……」

ベルカ「さぁ、どうかしら?」

ルーナ「……いじわる」

カミラ「ふふっ、このままじゃベルカの一人勝ちになっちゃうわね」

ルーナ「ううっ」

カミラ「だから、そんなルーナにいいことを教えてあげる」

ルーナ「いいことって何よ?」

カミラ「そうね、ベルカが唯一失敗した任務の話なんてどうかしら?」

ベルカ「カミラ様!?」

ルーナ「ベルカが失敗した任務の話?」

カミラ「ええ、私の配下になってから唯一失敗しちゃった任務のことよ、聞きたい?」

ルーナ「任務を完璧にこなすベルカの失敗ね、すっごい興味あるわ」

ベルカ「カミラ様、失敗した任務の話なんてしないで」アセアセ

ルーナ「ベルカが慌てるところなんてあまり見たことないから新鮮ね。いったいどんな任務よ」

カミラ「ふふっ、それはね。新しく来た子と仲良くなりなさいっていう任務だったの」

ルーナ「新しく来た子と仲良くなりなさい?」

ベルカ「……」

ルーナ「新しく来た子、それって、もしかして、あたしのこと?」

カミラ「ええ、そうよ」

ルーナ「でも、初対面の時にそんな感じしなかったけど」

カミラ「それを見てたから出した任務だったのよ。二人ともあんまりいい雰囲気じゃなかったから、ルーナからじゃなくてベルカから歩み寄ってもらおうって、そんな命令を出したの」

ルーナ「なによそれ、こそこそしながら話しかけるタイミングを窺ってたあたしの苦労はなんだったのよ。でも、結局話しかけられたことなかったわね」

ベルカ「……それは」

カミラ「この子ね。その任務の所為で熱を出して倒れちゃったのよ」

ルーナ「はぁ、なによそれ!?」

ベルカ「どう話し掛ければいいのかわからなかった。私はいつも話しかけられて答えることばかりだったから……」

カミラ「ええ、そんなことがあったから私が二人の間に入って話をするようにしたの」

ルーナ「なるほどね。でも、なんで倒れたりしたのよ。別にあんたなら気にしないと思うけど」

ベルカ「……任務をこなせなければ、私に意味なんてないわ。任務をこなせる腕があって初めて私はベルカになれる。任務ができない私に居場所なんてない、自分が無価値に思えてどうにかしないといけないって考えていて、気付いたら倒れていた」

ルーナ「そう、ベルカにとって任務ってそれだけ大事なものってことね……」

ベルカ「ええ」

カミラ「……ねぇ、二人とも」

ルーナ「なに、カミラ様?」

ベルカ「カミラ様?」

カミラ「私はルーナもベルカも本質的には似てるって思ってるわ。見た目も考えていることも違う、でもその根本にある脆さは二人に共通することだから」

ベルカ「私も脆い、そう言ってるの?」

カミラ「ええ、ルーナが一番に固執するように、ベルカは任務に固執してる。形は違うけど、一つのことを支えに生きていることに変わりはないわ。私が、私の手で救える子たちを救うことに固執してるように……」

ルーナ「救える子たち……あたしたちのこと?」

カミラ「ええ。可愛くて強いだけなら、私はあなた達を臣下にはしなかった。そこに、私が見てもわかる脆さがあって、それを私でも癒せると思ったから私はあなた達を臣下として招いたの」

ベルカ「……私たちはカミラ様にとって脆さを補う存在だった、そういうこと?」

カミラ「……今までは気づいてなかったわ。でも、エリーゼやカムイ、アクアたちのことをおねえちゃんとして守っているというより、私はみんなを助けられているっていう実感欲しいだけだって、この頃になって気づいたのよ。私は結局、自分の脆さを誰かに優しくしたりすることで埋めてるだけだってことにもね……」

ルーナ「カミラ様……」

カミラ「あなた達に優しくして癒すことで私は優越感も得ていた。私にも誰かを救えるっていう事実がほしかっただけかもしれない」

ルーナ・ベルカ「……」

カミラ「ごめんなさい、二人とも私の言葉を信じて臣下になってくれたのに、失望させるようなことを言って」

ルーナ「……それがどうしたのよ」

カミラ「え?」

ルーナ「……それがどうしたのかって言ってるの」

カミラ「ルーナ?」

ベルカ「そうね、私もルーナと同じ意見よ」

ルーナ「珍しく考えが合ったわね」

ベルカ「本当にね」

ルーナ「えへへ。それに、今のカミラ様を見てると、あたしたちとやっぱり同じなんだなって思えたから、なんだかほっとしたかな?」

カミラ「どうして、ほっとするのよ……」

ルーナ「その、カミラ様ってとっても綺麗で、とっても強いし、みんなに好かれてる。胸だって大きいし、ご褒美に抱きしめてくれるといい匂いもするし」

カミラ「……ふふっ、ありがとう」

ルーナ「……だから、雲の上の人見たいに思ってた。どんなに手を伸ばしても届かない人に少し思ってたから」

カミラ「ルーナ……」

ルーナ「でも、今のカミラ様、ちょっとだけ落ち込んでる時のあたしに似てたから、カミラ様にも脆い部分があるんだなって、そう思えたから。なんだかほっとしてるの」

カミラ「ルーナは落ち込んでる自分の顔をよく見てるものね」

ベルカ「そうね、それは任務の時に見てたから。鏡の前でいきなり笑顔になったり、なんだか忙しなかったけどね」

ルーナ「ちょ、なんで二人とも知ってるのよ。っていうか、ベルカにも見られてたのね、恥ずかしいわ」

ベルカ「ええ。でも大丈夫、今後はそんなことしないわ」

ルーナ「見てたこと認めるのね……」

ベルカ「ええ。でも構わないでしょ、前のことだから……。カミラ様」

カミラ「なに、ベルカ」

ベルカ「私があなたを殺しにきたあの日、私のことを救えるかもしれない、あなたはそう思った」

カミラ「ええ、その通りよ。ごめんなさい」

ベルカ「……そう思って私の新しい雇い主になってくれたとしても、それは問題じゃない。少なくとも私はそう思ってる」

カミラ「ベルカ……」

ベルカ「あなたは現在の雇い主、そして今ここまで生きて来てあなたを越える雇い主が現れるかどうかわからない。始まりがお金のやり取りだけだった私に、自分のことをこんなに話してくれる。信頼してくれる人は見つかりそうもない。だから、私たちを雇ったことを謝ってほしくない」

ルーナ「そういうこと、だからもう困った顔しないでいいのよ、カミラ様」

カミラ「……二人がそう言ってくれるなら、そうなのかもしれないわ」

ベルカ「だから、もう一度命令を出してほしい」

カミラ「命令?」

ベルカ「ええ、あの日、失敗した任務はここで清算したい。そして新しい任務を、カミラ様が私たちを必要としてる、そんな任務を」

ルーナ「ふふん、どんな任務でも、あたしは一番を目指すだけだから。それにしてもベルカは本当に任務のことばっかりね」

ベルカ「そういうあなたは、一番になることだけね?」

 ………

ルーナ・ベルカ『ふふっ』

カミラ(……この二人と一緒なら、私は……)

ルーナ「そういうわけだから、カミラ様」ザッ

ベルカ「命令を」ザッ

カミラ(……守るために戦っていける。この先をずっと……戦いが終わるその日まで……)

カミラ「……まずはベルカ、任務を与えるわね」

ベルカ「はい、カミラ様」

カミラ「新しい臣下の子と仲良くして頂戴」

ベルカ「ええ、わかったわ。それじゃ、ルーナ」スッ

ルーナ「な、なんか気恥しいわ。カミラ様にも見られてるし。それになんだか改まってっていうのもあるから」

ベルカ「こうしないと、カミラ様は私達が救われてるって思えない」

ルーナ「……確かにそうかも。ふふっ、私達の絆を見せつけて、カミラ様を救ってあげないとね」

ベルカ「ええ、それじゃ、ルーナ」

ルーナ「うん、今後ともよろしく頼むわ、ベルカ」ギュッ

ベルカ「時々竜にも乗せてあげるわ」

ルーナ「できればいつも乗せなさいよ。戦場を移動するの結構大変なんだから」

ベルカ「そう、それじゃいつもあなたを乗せて移動してる私が一番、そういうことでいい?」

ルーナ「……やっぱりあんたって、結構意地悪よね」

ベルカ「そう、そういうことだから」

ルーナ「はいはい」パッ

ベルカ「カミラ様、任務完了したわ」

カミラ「ふふっ、よくできました」

ルーナ「褒められたわね、ベルカ!」

ベルカ「ええ、それじゃ新しい任務を」

ルーナ「ちょっとは喜びなさいよ、カミラ様が褒めてくれるのに」

ベルカ「確かにそうね」フフッ

ルーナ「わ、笑った……ベルかが笑った!?」

ベルカ「なんだかおかしかったから、それに……」

カミラ「?」

ベルカ「私とルーナが手を取り合ってカミラ様が救われるなら、それはすごくいいことだと思うから」

ルーナ「う、うわ、終わった後で言う!?」

ベルカ「?」

ルーナ「自覚なしなのね。でも確かに、こうして手を取り合うだけでカミラ様が救われるなんて、いいことに決まってる」

カミラ「……んっ」

 ギュッ ギュッ

ベルカ「!?」

ルーナ「え、カミラ様?」

カミラ「……二人とも、ありがとう」

ベルカ「……主の願いを叶えるのも、私たちの任務だから」ギュッ

ルーナ「そういうこと、だから気にしないでよ、カミラ様」ギュウッ

カミラ「……わかったわ。ごめんなさい、感極まっちゃって」

ベルカ「構わないわ」

ルーナ「それじゃ、私達に新しい任務。お願いね」



カミラ「ええ……。ベルカ、ルーナ、新しい任務を与えるわ」

ルーナ・ベルカ『はい、カミラ様』

カミラ「この先にどんなことがあっても私に付いて来なさい」

カミラ「どんなことがあっても、私の信じた道に付き添いなさい」

カミラ「そして戦いが終わるまでその剣を振ってちょうだい……」

カミラ「これが、二人への新しい命令よ」


ルーナ・ベルカ『わかりました。カミラ様の望む通りに……』

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『マクベスの部屋』―

マクベス「まったく、おかしなものはあまりないと思った矢先にこれですか……」

『ブレイブヒーローの装備』
『竜騎兵追加装甲、追加武装』
『ティーカップと紅茶セット』
『今日から始める狩人道』
『攻守絡繰大全』

マクベス「なぜティーカップと紅茶セット。カミラ王女は白夜にピクニック行くつもりなのでしょうか? 臣下のほうがよほど真面目に戦いのことを考えていますねぇ」

マクベス「しかし、この攻守絡繰大全。これは中々に興味深いチョイスですな。将来、白夜の絡繰部隊との戦闘に備えてということかもしれません。どうにかして調達してみせましょう」

マクベス(この調子ならば先行作戦までに準備するべきものはまとまりそうですね。いろいろと問題に思っていたことも起きずに来ていますから、侵攻作戦の成功はゆるぎないことでしょう)

マクベス「……集落への訪問を大きなものからにしましたが、功を制しました。燃え盛る様に大型集落焼き打ちの話題は広がり、今では部族の使者が直接王都に来るようにまでなった。あとは民の感情のはけ口として白夜を台頭させることができれば、ガロン王様の侵略支配の後顧の憂いも少なくなる」

マクベス「暗夜の未来は明るいものになりますねえ。くくくっ」

マクベス「さて……」キョロキョロ

 タタタタッ

 ガチャ

 キョロキョロ

 バタン

マクベス「前回は冷めてしまいましたが、今回は大丈夫、それに夜も深くなりました。先日飲めなかった温かい紅茶を楽しむことに――」

 コンコン

マクベス「……はぁ、誰ですか?」

???『失礼します、マクベス様。城門防衛隊隊長からの使いの者です。白夜侵攻の際における王都防衛に関する資料をお渡しに参りました』

マクベス「こんな夜分に、はぁ、仕方ありませんねぇ。これが終わればどうせ飲めますし、今日の最後の仕事としましょうか。どうぞ、入ってください」

???『はい』

 ガチャ バタン

 スッ

メイド「こんばんは、マクベス様」

マクベス「礼儀の作法など不要です。その資料、すぐに拝見いたしますので」

メイド「はい、こちらになります」

マクベス「失礼しますよ……。ふむ、ふむふむ」

メイド「……」

マクベス「なるほど……」

メイド「……?」

マクベス「どうしました、意外そうな顔をして?」

メイド「いえ、ポットがあったので」

マクベス「ああ、あれは私が飲もうと準備していたものです。こんな感じに良いタイミングで案件が来るので、最高の状態で飲むことはあまりできませんが」

メイド「そうなんですか……」

マクベス「なんですか、飲みたいのですか?」

メイド「いえ、そのようなことは……」

マクベス「では、なぜ?」

メイド「その、よろしければ、私がお立ていたします。マクベス様は多くの作業をこなされておりますので」

マクベス「そう言ってもらえるのはありがたいですが、あなたは防衛隊長の付き人でしょう?」

メイド「いいえ、私は準備期間中、城で雇われているだけのメイドに過ぎません。気づいたことは進言を、ご命令あらばどのようなことでも仰せつかるように言われておりますので」

マクベス「なるほど。それで気づいたことが放置されていた紅茶だったわけですか」

メイド「はい」

マクベス「……」

メイド「……」

マクベス「まぁ、いいでしょう。私もできれば温かいものが飲みたいので、立てておいてください。その間に資料への目通しは終わるはずですから」

メイド「わかりました。それでは……」

 カチャカチャ
 
 コトッ
 
 サラサラサラ

メイド「……♪」

マクベス「……ふむ」

マクベス(よい香りですね、これは仕事も捗るというも……ん? これは……)

 コポコポコポ
 
 カチャ
 
 スッ
 
 コトッ

メイド「マクベス様、紅茶の準備が整いました」

マクベス「……」

メイド「マクベス様?」

マクベス「……」

メイド「あの、私なにか間違ったことを」

 ガタッ

メイド「! そ、その、すみま――」

マクベス「……防衛隊長、ここは前回駄目だと言ったところですよ!? さすがに二度も同じものを渡してくるとは、我慢なりませんね」

メイド「え、えっと、あの、マクベス様、紅茶の準備が……」

マクベス「ああ、そうでしたね。立てていただいてもらって恐縮ですが、私はこの件を直接防衛隊長に尋ねなければいけませんので。その紅茶はあなたに差し上げます。高級品ですからよく味わって飲んでください」

メイド「そ、そんな私になんて……」

マクベス「気になさらず、飲み終わり次第、戻って休むように。明日も色々と作業があるはずですからね。それでは……」

 ガチャ バタン

メイド「……」

 ススッ

メイド「……あっ」

「本当においしい……」

 準備期間2 おわり

○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)

今日はここまで 
 暗夜のために夜通し働くマクベスさんであった。
 カミラたちの関係はこんな感じなんじゃないかなっていう、流れです。

 今日、下腹部に謎の鈍痛が走って、戦々恐々としていた。

 というわけで、次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
 
◇◆◇◆◇
・カムイが話をする人物

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>501

◇◆◇◆◇
・次のキャラクターの職を決めたいと思います。

 レオン『ダークナイト、ストラテジスト、ソーサラー』

 >>502

 オーディン『ソーサラー、ダークナイト』

 >>503

 ゼロ『アドベンチャラー、ボウナイト』

 >>504

 カザハナ『剣聖、メイド、ダークナイト』

 >>505

 ツバキ『剣聖、バトラー、聖天馬武者(ダークファルコン)』

 >>506

 このような形でお願いします。

乙でした
メイドさんを気遣うマクベス優しいな
そしてやっぱり紅茶は飲めないのか
安価は>>501ならギュンターで
>>502ならソーサラー

一侍女にもへりくだって対応する上、紅茶を下げ渡す軍師の鑑
ストラテジスト

このマクベスは味方になっても違和感なさそう
ダークナイトでお願いします

ゼロ ボウナイト

メイド

バッキーにはバトラーとして働いてもらいましょうかね某サッカー漫画より。よろしくm(__)m

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『レオンの屋敷』―
(カムイ達が白夜に向かうまで残り5日……)

ゼロ「以上で報告は終わります、レオン様」

レオン「ありがとう。僕たちの先行作戦に同伴する者たちはこちらで選別して構わないということになったみたいだね」

ゼロ「はい、先行作戦についてはカムイ様にすべて任せるべきとのことでしょう。まぁ、成功しようとしないとどちらでも構わないと零していましたがね」

レオン「まぁ、そうなるだろうね。僕の作戦が選ばれたのは、敵の戦力分散を狙ってのことだ。マクベスからすれば、白夜の戦力が二分割される可能性のある作戦を押す気持ちもわからなくはないし。なにより、父上がこれを選んだというお墨付きもあるわけだから」

オーディン「それで、こちらが本隊の白夜侵攻ルート資料です、レオン様」

レオン「うん……白夜南部は本当に僕達に一任しているみたいだね。残りの戦力は無限渓谷を通って白夜領に向かう形だね。これは物量戦だから補給路さえ確保できれば、犠牲が出ようとも白夜の侵略は完了するはずだよ」

オーディン「まぁ、脳筋な作戦にしか見えませんけど。これじゃ、敵の命を刈りとるだけで意味があるようには……」

レオン「そういった作戦を組んでいるということだよ。この侵略は新しい土地を求めて行われるようなものじゃない、少なくとも僕はそう見ている」

ゼロ「……そうですか。レオン様がそういうのなら、多分そうなんでしょうね」

オーディン「たしかに、レオン様がそう考えてるのなら、何の問題もない」

レオン「二人ともやけに素直だな」

ゼロ「当り前ですよ、俺たちはレオン様の臣下ですからね。レオン様が死ねと言ったら死にますし、誰かを殺れというのなら殺る。そういうものなんでね」

オーディン「ええ、でもできれば『星空の輝きを搔き消すような暗黒結晶を探して来い』とか、『光り輝く湖を探し出せ』とか、そういう壮大な命令がいいんですけどね」

レオン「……ふっ、僕が聞こうとしてたことを。お前たちは先に答えてしまうんだね。どうやって切り出すべきか悩んでいたって言うのにさ」

ゼロ「主君の手を煩わせないのも、一つの奉仕なんで。それとも、気持ちのイイ奉仕をしてもらいたいということですか?」

レオン「それは遠慮しておくよ。僕にそっちの趣味はないからね」

ゼロ「そうですか、でも気が変わったら言ってください。最高の絶頂を体験させてあげますから」

オーディン「ゼロは相変わらずだな。よくそんなことをレオン様に言える」

ゼロ「俺としては、お前のそのややこしい言い回しのほうが不思議でならないがな」

オーディン「ややこしい言い回しって、これは選ばれし者が紡ぐ神秘の――」

ゼロ「その言い回しのことだ。まぁ、レオン様も特に気にしてる様子はないから、口を出さないでいたんだがな」

オーディン「も、もしかしてレオン様、すごく気にしてました?」

レオン「そうだね、グラビティ・マスターという名前で呼ばれることにだけは、少しもの申したかったくらいかな」

オーディン「ええ、カッコいいじゃないですか。重力を自在に操る暗黒騎士、レオン様の雰囲気にもぴったりですよ!」

レオン「そうか、うん、オーディンがそう思って名前を付けてくれたのだとしたら、それを否定するのはよくないことだね」

オーディン「レオン様……おれ、すっごい嬉しいです!」

レオン「ああ。でも、僕はダークナイトをやめることにするから」

オーディン「……え? レオン様、今なんて……」

レオン「言った通りだよ。僕はダークナイトをやめるって」

オーディン「え、ええ? えええええ!? なんですかそれ、聞いてない聞いてないですよ。ゼロ、お前もだよな?」

ゼロ「いや、俺は知ってたぞ。昨日、お前がいないうちに話があってな、今回の白夜侵攻に合わせて、武器や役職に関する話があった。俺もすでに要望は出してある。つまり、お前だけ何も決まってないってことだ」

オーディン「俺だけ仲間外れかよ……。でも、馬を下りただけですよね。だとすれば、もしかして魔法特化の役職に、流石はレオン様だ。これならグラビティ・マスターは継続でき―――」

レオン「作戦会議の通達もあるから、ストラテジストにしたよ」

オーディン「す、ストラテジスト、暗黒要素が皆無じゃないですか!!!!」ガクッ

ゼロ「なんだ、レオン様の選ばれたことに文句でもあるのか?」

レオン「オーディン、僕はブリュンヒルデを手放すつもりはないよ」

オーディン「ちがうんですよ。ダークでナイト! その姿だからこそ香る暗い印象。さらに重力を操るという付加価値。そしてレオン様という絶妙さ。だからこそのグラビティ・マスターだったのにぃ!!!」

レオン「オーディン……」

オーディン「こうなったら、俺がダークナイトになるしかない!」

レオン「え、オーディン?」

オーディン「レオン様、俺に暗黒騎士装備を一式頂けませんか」

レオン「えっと、それでいいのかい?」

オーディン「……主君が手放した道を臣下が追いかけ者にする。漆黒のオーディンはグラビティ・マスターの力を継承し、さらなる高みへと」

ゼロ「ふっ、面白いやつだ。お前にレオン様の後釜が務まるとは全く思えないがな」

オーディン「これでも俺は真剣だ。ふふっ、レオン様もいつか気づくはずだ、あの時グラビティ・マスターの道から外れたことがどれほどの痛手なのか」

レオン「つまり……、オーディンは暗黒騎士の装備を頼んでおけばいい、そう言うことでいいんだね」

オーディン「はい、おねがいします。これで、漆黒のダークナイト・オーディンの輝かしい戦いが幕をあげることになる!」

ゼロ「ああ、そうだな。それよりレオン様、もう一つの件についてよろしいですか?」

レオン「そうだね、僕もその件が気になっていたからね。お願いできるかな、ゼロ、オーディン」

オーディン「あっ、はい。わかりました」

ゼロ「レオン様の求めている魔法書、おもに転移魔法の書物ですが、一つ確認が取れました。暗夜王国の大書庫に寄贈されているものがあるそうです」

オーディン「すでに下見は済ませてありますから、命令があればすぐにでも取りに行けますよ」

レオン「そうか、本当にあったんだね。もしかしたらと思って、探してもらったけど」

ゼロ「はい、とっていも中身までは確認できていませんので、解析はレオン様にお任せすることになりますが」

レオン「……なぁ、二人とも」

オーディン「なんですか、レオン様」

レオン「また改まって聞くのもどうかと思ってる。だけど、もう一度だけ確認させてほしい。君たちは僕が父上を倒して戦争を終わらせる。そんなことを掲げているとしても、付いて来てくれるのかい?」

ゼロ「……本当に改まってですね。そんな別れを切り出す恋人みたいな顔をして言うことじゃありません」

オーディン「ゼロの言う通りですよ。俺たちに何度も同じことを言わせるなんて、あんまりレオン様らしくないですから」

レオン「少しは不安になるよ。僕に付いて来ることがどういうことなのか、僕が一番わかっている。僕の向かう道の失敗は確実に死が待っている。死ぬよりも辛い目に会うことも覚悟しなくてはいけない。そんな場所に、二人を無理やり連れて行くなんてことは……」

ゼロ「レオン様、俺にとって死ぬよりも辛いことは、あなたについていけないことだけです」

レオン「ゼロ」

ゼロ「俺はあなたに救われてここにいる。あなたと出会わなければ、俺はあの場所で世界を怨み死んでいくことしかできなかった。俺に居場所を与えてくれた唯一の存在、それがレオン様だ。そのレオン様が命を掛けてことを動かしているのを、黙って見るどころか離反するという選択肢は、俺の人生にはありません。あるなら、レオン様を守り切って死ぬことくらいです」

レオン「……今の言葉は頂けないね」

ゼロ「今の言葉?」

レオン「ゼロ、僕は君をここまで生かしてきた。それはいつかくるその命を投げ出す日を迎えさせるためじゃない。君に僕の臣下として働いてもらうためだ。君の任務はなんだい、ゼロ」

ゼロ「……ふっ、決まっています。レオン様の命令に従い、その通りに遂行することです」

レオン「ああ、そうだ。僕はまだお前に僕を守って死ぬように命令を出した覚えはない。勝手に自分の役割を決めるのは、君の主義に反するんじゃないかな?」

ゼロ「……そうですね。出すぎたことを言いました。申し訳ありません」

レオン「……だけど、その言葉を僕は信用している。それだけは言っておくとするよ。僕が与えた居場所にゼロにはいてもらいたいからね」

ゼロ「……ありがとうございます。レオン様」

オーディン「………」

レオン「オーディン?」

オーディン「いや、その、やっぱりゼロとレオン様の間にはすごく堅い絆があるんだなって思って……その、俺はまだそんな長い間、レオン様と一緒にいるわけじゃないので、その……」

レオン「もしかして、不安に思っているのかい?」

オーディン「……えっと、そうですね」

レオン「そうか、ならそれは間違いだオーディン」

オーディン「間違いですか?」

レオン「ああ。お前が僕の元に来た時、いろいろと変な命令を出したことは覚えているか?」

オーディン「おかしな命令……。いやいや、あれはおかしな命令じゃないですよ。むしろ最高でした!」

レオン「……そうかい? でも、僕は嫌がらせのような命令をお前に出した。正直、僕はお前を臣下にするのが嫌だったんだ。父上が決めたことでも、僕はお前と初対面で信用なんてしていなかった。だから無理難題を押しつけて逃げ出させようとしてた」

オーディン「そうだったんですか……」

レオン「でも、お前は僕の言ったとおりの物を持ってきた。と言っても、お前の言い回しと根拠に納得してしまっていただけかもしれないけどね」

オーディン「あはは。でも、俺は楽しかったし、何よりもレオン様にもそういった物があるような気がして、だから最初は次の任務が楽しみでしたよ。今度はどんな内容なのかって……」

レオン「僕は無理難題な任務を与え続けた。でもそれが、僕が君を信用していった証拠になるんだよ」

オーディン「え?」

レオン「僕はね、信用してない相手にそんな毎度のように任務を与えたりしない。正直、お前が僕の指定したものを取ってきて、どう説明するのかが楽しみになっていたのかもしれない。同時に、無理難題を軽くこなして次の任務を催促する姿は、僕には好意的に見えた」

オーディン「レオン様」

レオン「いいかい、オーディン。僕とゼロの絆は強い。だけど、君と僕の間にある絆も同じくらいに強いんだ。そしてそんな二人だからこそ、僕はカムイ姉さんについて行くように指示を出した。最も信頼している二人になら、姉さんのことを任せられる、そう思っていたから」

オーディン「身に余る光栄です、レオン様」

レオン「オーディン、これで安心してくれたかな?」

オーディン「はい。その不安になってた俺が情けないです。レオン様は俺のことを、こんなに思ってくれていたのに、俺は……」

レオン「そこまでだよ、オーディン。ここから先は、もう振り返る場所じゃないんだ。そして、振り返らないからこそ、二人には魔法書の探索をまかせた。あの質問は、どちらかと言うと二人に確認するためじゃなくて、僕自身が二人を信用しているのかを確かめるための行為だったのかもしれない。すまない」

オーディン「なら、もう心配いりませんよ。俺はレオン様について行きます。俺の必殺技で、あらゆる敵を蹴散らしてみせますよ」

ゼロ「俺もな。レオン様、あなたの行く道、そこを共に歩いていけること、光栄に思っていますよ」

レオン「二人とも、ありがとう」

レオン「それじゃ二人とも、今日の夜のうちにその書物を持ってこれるかい?」

ゼロ「お安いご用です、レオン様」

オーディン「ええ、任せてください、必ずお持ちいたします。あ、漆黒のダークナイト・オーディンになるための装備、ちゃんとおねがいしますよ」

レオン「漆黒とダークか、なんだか面白い組み合わせだよね」

オーディン「漆黒とダーク……。漆黒に暗黒が重なり、禍々しさによって生み出された凄まじい魔力が世界を圧倒する、くっ、静まれ俺の右腕……」

ゼロ「おい、ふざけてないでさっさと行くぞ」ガシッ

オーディン「うわっ、ちょ、ちょっとまて。まだ最後の決め台詞が終わってないんだよ」

ゼロ「はいはい、それは仕事をこなしてからにしておけ。安心しろ、俺も一緒だ、すぐにレオン様の前でイかせてやるからよ」

 ガチャ バタン

レオン「……ゼロ、オーディン。二人がいてくれたから僕はいつも安心できていたんだよ」

レオン「共に歩んでいくか……」

レオン(この先は暗い暗闇であることは間違いない。だけど、そんな暗闇でも一緒に向かってくれる人たちがいれば、歩み続けることができる)

レオン「この暗夜よりも暗い、そんな場所だったとしてもさ」

レオン「さてと、あとは作戦会議用の資料をまとめて……」

 コンコンコン

レオン「? 誰だい?」

カザハナ『レオン王子、あたしなんだけど……』

レオン「カザハナ? 何か用かい?」

カザハナ『ちょっと、大事な話があって、その入ってもいいかな?』

レオン「別に構わないよ」

カザハナ『そ、そう。……落ち着けあたし、いつも通りに入ればいいのよ』

レオン「なにをブツブツ言っているんだい」

カザハナ『し、失礼するわよ』

 ガチャ バタン

カザハナ「……レオン王子」

レオン「あ、ごめん、少しだけ待ってくれないかな。えっと、この資料をまとめてと、すまないね、お待たせしたよカザハ……ナ?」

カザハナ「……」フリフリ

レオン「……なんだいその格好は」

カザハナ「み、見てわからない?」

レオン「その、メイド服だね」

カザハナ「そう、メイド服よ」

レオン「うん、別に着ても構わないけど。それを僕に見せに来ただけかい?」

カザハナ「そ、その当たらずも遠からじ的な……」

レオン「見せに来たのはまちがってないのか。それでカザハナがメイド服を着てここに来たもう一つの目的はなんなんだい?」

カザハナ「えっと、その、あのね」

レオン「うん」

カザハナ「あ、あたしにも奉仕をさせてほしい!」

レオン「ぶっ!!!」

カザハナ「うわ、ちょっと大丈夫!?」

レオン「げほげほ、いきなり何を言い出すんだ?」

カザハナ「え、だってメイドって奉仕系のお仕事なんでしょ? こう、家を奇麗にしたりとか、帰ってきた主の服を畳んであげるとか」

レオン「……な、なるほどね、そういうことか、僕はてっきり///」

カザハナ「あれ、レオン王子。どうしたの、顔赤いけど」

レオン「なんでもない、ちょっと熱くなってきただけだから」

カザハナ「そう?」

レオン「でも突然なんでそんなことを? 別にカザハナはそんなことをする必要はないよ。サクラ王女もツバキも名実ともに捕虜なんだから」

カザハナ「……やっぱり、そう言うと思ってあたしが来て正解だったわね」

レオン「え?」

カザハナ「レオン王子、あたしたちも戦いに参加するつもりよ。もう、ずっと後ろに下がってるつもりはないわ」

レオン「何を言って、君たちは捕虜なんだよ。僕たちと一緒に戦うということは、暗夜の側になるって意味になる。カムイ姉さんに同行しているだけとは意味が違ってくる!」

カザハナ「……わかってるわ。でも、あたしたち三人で決めたことだから」

レオン「サクラ王女もツバキもか?」

カザハナ「ええ、確かに白夜に帰りたい気持ちはある。でも、今の白夜がその帰りたかった場所じゃないことは、あたしたちは理解してる」

レオン「なら、そこが元に戻るまで、待っていてくれればいい。君たちが戦う必要なんて――」

カザハナ「そうやってレオン王子に甘えてるだけは嫌なの……」

レオン「……カザハナ?」

カザハナ「あたしたちは確かに捕虜だよ。レオン王子に守られてるから安心できる。でもね、今からレオン王子が戦っていくのはあたしたちの知ってる白夜じゃないんだよ」

レオン「カザハナ」

カザハナ「白夜のことをレオン王子や他の皆に任せて、あたしたちはそれを眺めているだけなんてできるわけないよ。皆に守られてるだけで、戦いが終わるまで何もしないなんて……。そんなの嫌だよ」

レオン「……僕はサクラ王女と君たちに戦ってほしくなんてないんだ。その敵がどちらであろうとね。だけど……君たちはその手が汚れても構わないって、僕に言っている」

カザハナ「うん、だって、もうあたしたちの命はあの日からレオン王子の物だから。そして助けてもらって、もう守りたい人になったから。暗夜の王子だとかそういうことじゃなくて、ずっとあたしたちのことを守ってくれたレオン王子の力になりたいから、あたしたちは戦うことに決めた。だから、おねがい、あたしたちも一緒に戦わせて、この通りだから!」

レオン「……はぁ、カザハナだけだったら。いろいろと文句を言って送り返そうかと思ったけど……。その様子だと、扉の向こうにはサクラ王女とツバキもいるんでしょ?」

 ガタッ!!!

レオン「入ってきなよ、二人とも」

 ガチャ

サクラ「……レオンさん」

ツバキ「あはは、ばれちゃったかー」

レオン「サクラ王女」

サクラ「レオンさん。あの日、レオンさんが言ってくれたように、もう止まっているわけにはいかないって。そして、姉様にすべてを託すわけにはいかないってそう思うんです」

レオン「……それが白夜と戦うことになったとしてもかい?」

サクラ「……はい。今の白夜がどうなってるのかはわかりません。でも、だから戦うんじゃないんです。この戦争が終わって、二つの国に平和が訪れてほしいから。そして、レオンさんのことを支えたいから、私は戦います」

レオン「サクラ王女……、ツバキもそうなのかい?」

ツバキ「俺はサクラ様の力になりたいからねー。サクラ様が戦ってるのに、武器も持たずに戦わない、そんなことはできない。主君のために戦うのが臣下の誉れだからさ」

レオン「……本当にサクラ王女は臣下に恵まれてる。そう思うよ」

カザハナ「そのサクラに支えたいって言わせてるんだから、レオン王子も中々に恵まれてるわよ」

レオン「そうだね。うるさい奴も一人付いてくるみたいだけどさ」

カザハナ「うわ、その言い方ひどくない?」

レオン「ごめんごめん。でも、どうやら曲げるつもりはないみたいだね?」

サクラ「はい、もう逃げないって決めましたから」

ツバキ「うんうん、そう言うわけだからレオン様も観念してくださいね」

レオン「……はぁ、君たちには敵わないね」

レオン「わかった、君たちが戦いに参加することを許可するよ」

カザハナ「レオン王子、ありがとう!」ダキッ

レオン「わわっ、いきなり抱きつかないでくれないかい!?」

カザハナ「えへへ。いいじゃん、減るものじゃないし。それで、あたしたちはこれから暗夜軍に入ることになるわけ?」

レオン「いや、その必要はない。いやむしろ、そうしない方がいい形になるよ」

ツバキ「え、どういうこと?」

レオン「それについては少しの間だけ待ってて欲しい。あと数日で、僕たちは白夜に向かうことになる。その時はサクラ王女たちを、大事な交渉材料として連れて行くことになってる」

サクラ「交渉材料ですか?」

レオン「ああ、だけど言えることがあるとすると、僕たちは白夜と戦争するために向かうわけじゃないということくらいかもしれない」

カザハナ「どういう意味よ、それ?」

レオン「そのままの意味だよ。だからお願いできるかな、向こうに着くまではこのことについてはこれ以上詮索しないって」

サクラ「……はい、わかりました」

ツバキ「了解ー」

カザハナ「うん、わかったよ」

レオン「ありがとう、みんな。それじゃ、君たちの装備についてだけど、なにか―――」

カザハナ「それなんだけど、もう決まってるから大丈夫だよ」

レオン「え?」

カザハナ「サクラはこのままで、あたしはメイド、ツバキはバトラー。そんな感じになってるから」

レオン「……まさか、その格好はそれを示すために?」

カザハナ「言ったでしょ、ご奉仕したいって。だから、この恰好で来たんだよ? 大丈夫、レオン王子の傷、あたしが癒してあげるから」

レオン「……」

「すごく心配になってきたよ……」

今日はここまで
 
 メイドはすぐに礼をするけど、バトラーは時間を掛けて礼をする。
 レオンストラテジストのこれじゃないかんはすごいっすねえ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『カムイの部屋』―
(カムイ達が白夜に向かうまであと4日……)

カムイ「……それは本当ですか、ギュンターさん」

ギュンター「はい、先ほどレオン様から資料を受け取りました。先行作戦でカムイ様に与えられる権限についての資料といういうことです」

カムイ「たしかにそれもありますが、問題はそこではありませんよ」

ギュンター「そうでしたな。いやはや、世の中ない物の方が珍しいと言うことかもしれません」

カムイ「はい、転移の魔法書。本当に存在するなんて……」

ギュンター「すでに、どのように使うものかをレオン様が調べ済みとのことですので、実行に関する資料も承っております。どうやら問題点があるようでしたので、そのことについてはカムイ様に伝えるようにと」

カムイ「そうですか。一体どのような問題なんですか?」

ギュンター「はい、その問題点ですが―――」

~~~~~~~~~~~~~

ギュンター「以上がその問題点ということになります」

カムイ「そうですか、わかりました」

ギュンター「如何されますか?」

カムイ「いえ、確かにそれは問題点かもしれませんが、私達に都合のいいものかもしれません。白夜にいて暗夜本隊の動きを掴めない、私達にとっては……」

ギュンター「なるほど、カムイ様はそう考えられるのですな」

カムイ「ええ、確かに単体で使えることにこしたことはありませんが、今の私達にはむしろ好都合な使用手順ということです。これで私たちは最適のタイミングで暗夜に戻ってこれるのですから」

ギュンター「ふふっ、いろいろと考えられているのですな」

カムイ「ええ、考えないといけませんから。私の戦いについて来てくれる人たちのためにも……。でも、こうしてギュンターさんから長く話を聞かされるのは久しぶりのことですね」

ギュンター「ふむ、そうでしたかな?」

カムイ「ええ、それに結局恋愛小説の続きは聞かせてもらっていませんから」

ギュンター「恋愛小説ですか、そうですな。確かにまだすべてを読み聞かせてはいませんでした」

カムイ「はい、とは言っても今はそれを読んでいただく時間はありませんから、気にしないでください」

ギュンター「そうですか。しかし、そう言われると少しばかり物悲しい気持ちになります」

カムイ「え、どうしてですか?」

ギュンター「すみません。昔のことに思いを馳せてしまっただけのこと、お気になさらず」

カムイ「そういうわけにもいきませんよ。ギュンターさんには色々とお世話になっているんですから、何かあるのでしたら私に話してください」

ギュンター「……わかりました。恥ずかしながら、カムイ様に色々なことを読み聞かせていたのを思い出していたのです」

カムイ「読み聞かせていたことですか?」

ギュンター「はい。私にとってカムイ様とのコミュニケーションでもありましたからな。カムイ様はお話をいつも楽しそうに聞き、学問であるならばよく質問してくださいました」

カムイ「そうですね。私の大半の知識はギュンターさんが教えてくれたことですから。今の私の根底はギュンターさんが大きく関わっていると言っても過言じゃありませんから」

ギュンター「……ですが、私が仕え始めた頃のカムイ様には暗闇しかしらぬ幼子でした。物音に怯えるあなたはとても弱弱しかったことを覚えています」

カムイ「そんなに弱弱しかったんですね、私は」

ギュンター「はい。いろいろと考えました。そこで私はカムイ様に物語を読んであげることにしたのです。最初は興味を示しませんでしたが、あなたは少しずつ私の話に耳を傾けるようになっていきました。それがとてもうれしかったことでもあります」

カムイ「ええ、ギュンターさんの話は私に色々な世界をくれました。空というものが広く大きいことも、馬に乗って走る草原はとても気持ちがいいことも。ギュンターさんの音色はいつだって私をそこに連れて行ってくれる、そんな温かみのあるものでした」

ギュンター「ふっ、そう言ってもらえると頑張って役作りをしたのは無駄ではなかったということですな」

カムイ「ええ、今の私があるのはギュンターさんのおかげなんですから」

ギュンター「我が身に余る光栄です、カムイ様。ですが、それは私の力だけでできるものではありません」

カムイ「?」

ギュンター「重要なのは、私の言葉を聞いたカムイ様が考え、それに対して憧れを抱いたこと。言うなればカムイ様がそうあろうと望まれたからこそ、今のカムイ様があるということです」

カムイ「ギュンターさん」

ギュンター「私がしたことは手助けと言えることです。どんなに知識を得ようとも、考えを聞かされようとも、そこから動くのはご自身の意思、カムイ様はその意思を選ばれた。選ばれたからこそ、今のカムイ様がおられるのです」

カムイ「な、なんだか照れてしまいますね。その、ギュンターさんに褒められることはあまりありませんから///」

ギュンター「はは、そうやって照れている姿と言うのは珍しいものですな。昔は私の言葉に笑顔を返してくれたものですが」

カムイ「もう、からかわないでください。私だってここまで育ってきたんですから……」

ギュンター「ははは、すみません。何分歳な物ですので、昔を思い出してしまうようです」

カムイ「……でも、私はギュンターさんのおかげだって思ってますよ。だって、わからなければわかるまで触ればいいと教えてくれたのは、ギュンターさんでしたから」

ギュンター「……むっ?」

カムイ「最初に顔を触らせてくれたのもギュンターさんでした。私がギュンターさんの顔を覚えたいと言って、覚えられるまで触っていいですよと言ってくれましたから」

ギュンター「そ、そうでしたかな?」

カムイ「はい。私に人の顔を触る大切さを教えてくれたのはギュンターさんです」

ギュンター「………」

カムイ「だから思うんです」

ギュンター「?」

カムイ「私の手がエロハンドと呼ばれているのはギュンターさんのおかげなんですから、ギュンターさんはエロハンドの生みの親ということになりますよね」

ギュンター「……私が、エロハンドの生みの親ですか」

カムイ「はい、なんだかうれしいですね、私とギュンターさんの絆の産物といってもいいんですから。エロハンドの私とエロの伝道師ギュンターさんですね」

ギュンター「え、エロの伝道師……とは」

カムイ「ギュンターさんは輪郭を触る方法とか、傷の見分け方とか、髪の触り方とか、全部教えてくれたじゃないですか。私はそれを基本にしてるんです。そして私の手がエロハンドと呼ばれてる以上、ギュンターさんはエロの伝道師というわけです」

ギュンター「……カムイ様」

カムイ「ギュンターさんに教えて頂いたことは私にとってはかけがえのない財産ですから、感謝しています」

ギュンター「できれば、その感謝言葉だけを頂きたかったのですが……、まあいいでしょう、この歳でエロの伝道師というのはいささか問題がありますが……」

カムイ「ですから、物事が落ち着いたら。私に恋愛小説の伝授をお願いしますね、ギュンターさん」

ギュンター「……善処いたしましょう」

カムイ「ふふっ、それで例の件、明日には間に合いますか?」

ギュンター「例の件……。それならばご心配なく、すでに多くの部族は侵攻の準備に入っている頃合い、なによりも彼らは前もって準備をしていた頃でしょう。使いも二日前に送らせておりますので、予定では明日にでもこちらに来ていただけると思います」

カムイ「そうですか。ありがとうございますギュンターさん。このまま進めば、明日の話ですべてが決まります。わずかな時間しかありませんが、私の目的とその先にある流れを伝えておく必要がありますので、そして転移魔法に関することも……すべて託さなければいけませんから」

ギュンター「カムイ様は信じているのですな」

カムイ「ええ、約束があるからというだけではありませんよ。だって、私に付いて来てくれるフェリシアさんとフローラさんのお父様なんでですから……。私について来てくれと言ってくれたあの人を、心の底から信じている。だからこそ、ここに来ていただくんです」

カムイ「私たちの進むべき道を知ってもらうために……」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『マクベスの部屋前』―

マクベス「………」

 コンコンコン

マクベス「ん……」

メイド『マクベス様、物資申請書類をお持ちいたしました』

マクベス「……むっ、ううっ、私としたことが。くっ、眠っていたのですか……。すみませんが、少々お待ちください」

メイド『はい』

マクベス「はぁ、さすがに目を通す資料が多くなると、体に負担が掛るということでしょうか。しかし、ここで全てを終えておけば、後の問題は少なく済みますからね。頑張らなければ」

 ガタッ

マクベス「お待たせしました。どうぞ、入ってください」

メイド『はい、失礼いたします』

 ガチャ

マクベス「おや、この前の方ですか。あの後はすぐに戻って休まれましたかな?」

メイド「はい。その節はありがとうございます、マクベス様」スッ

マクベス「そう言った礼儀作法はいりませんよ。たしか物資申請の書類でしたか、拝見させていただきましょう」

メイド「はい、こちらになります」

 テトテトテト

マクベス「?」

メイド「その、お疲れのようですので。紅茶をお入れしようと思って、その入らなかったでしょうか?」

マクベス「そうですか、たしかにこの前は飲めませんでしたな」

メイド「その、とてもおいしかったです。ありがとうございます、マクベス様」

マクベス「いいえ、気にされることはありませんよ。私が飲めなかった以上、代わりに飲んでもらったにすぎません」

メイド「そうですか。それで、今回は……」

マクベス「そうですね、目を覚ますのにはちょうどいいでしょうから、お願いできますか?」

メイド「わかりました、少々お待ちくださいませ」

 カパッ サラサラ

マクベス「さて、今回の物資申請書類……ですか」

マクベス(おかしなものが無いとよいのですが……)

マクベス「では……」

『ストラテジストの装備』
『漆黒の暗闇を思わせるダークナイト装備』
『一発で敵をイかせる弓なりテクニック』
『新品のバトラー装備』
『新品のメイド装備』
『シャイニングボウ』

マクベス「ふむ、普通な物が多いですが。この漆黒の暗闇を思わせるダークナイト装備とは一体なんですかね?」

マクベス(漆黒と暗闇とダーク、黒が三つも重なっているではありませんか。もはや黒装束くらいしか選べるものがありませんよ)

マクベス「しかし、一発で敵をイかせる弓なりテクニックは置いておいて、シャイニングボウですか。カムイ王女の仲間には魔力に精通した弓使いなどいたでしょうか? それに新品のバトラー服とメイド服というのも、あれ以上にメイドとバトラーが増えるというのは、戦力的にどうなのでしょうか?」

マクベス「まぁ、カムイ王女なりに考えていることもあるのでしょうから、そこまで詮索することは出来ませんが。今回の作戦が暗夜にもたらす栄光は確かなものですからね」

マクベス「しかし……」

メイド「……♪」

マクベス(この部屋に私以外が滞在しているというのも珍しいことですね。確かにこの頃は作戦の影響もあって、多く訪れる者はいますが。こうして、何かをして待っている者はこのメイドが初めてでしょう)

マクベス「? あなた」

メイド「……はい、なんでしょうか、マクベス様」

マクベス「それでは紅茶の量が少ないと思いますよ」

メイド「そうでしょうか? 一杯分ならばこの量で十分と思いますが……」

マクベス「一杯分、今ここには私とあなたがいるでしょう。ならば二杯分準備しなさい」

メイド「え?」

マクベス「なに、進んで用意してくれるあなたへの褒美のようなものです。あなたのように資料を持ってくる者他にもいますが、皆仏頂面で待っているばかりの者たちばかりですのでね」

メイド「その、よろしいんですか?」

マクベス「ええ、お気になさらず。それにあと数日後には、ここをあけることになりますのでね。それまでにこの紅茶はすべて使い切りたいと思っていますから。私一人では、すべてを使い切れそうにもありませんので、その手伝いをしていただけると助かります」

メイド「……わかりました」

 カパ サラ

メイド「おいしいものを立てますので、お待ちください」

マクベス「ええ、お願いします」




メイド「……」

 カチャ
 
 スッ

メイド「こちらです、マクベス様」

マクベス「ふむ、よい香りです……」

メイド「ありがとうございます」

マクベス「……ところで、なぜあなたは立ったままでいるのですかな?」

メイド「え?」

マクベス「そこに椅子があるでしょう。気にせず使ってもらって構いません」

メイド「ですが、私はただのメイドですから」

マクベス「私が良いと言っているのです。それとも、私の命令を聞けないということですか?」

メイド「……その、失礼しますね」

マクベス「素直でよろしい。ふぅ、しかし、こうして紅茶を飲むのも久しぶりというものです」

メイド「そうなんですか」

マクベス「ええ。ですが、私の立場上そうなることも止むなしというものです。この作戦には暗夜の今後が掛っているのですから。気を抜ける作業ではありませんよ」

メイド「大変ですね」

マクベス「ふっ、これも暗夜王国、そしてガロン王様のためと思えば辛いものではありませんよ。私はこの自分の立場に誇りを持っていますからね」

メイド「……誇りですか?」

マクベス「ええ、何せガロン王様の進む先には繁栄が約束されています。それに全力でお仕えするのが軍師たる私の役目であり使命ということです。くくくっ、いずれガロン王様はこの世の全てを手に入れられる。それに力添え出来ることは、光栄の極みですからねえ。ですから、あなたがこうして紅茶を作ってくれたことには感謝しています。これで、まだ頑張れるというものですから」

メイド「……そう言ってもらえると、とてもうれしいです」

マクベス「では、ありがたく頂きますよ」クイッ

 バタン!!!!

ガンズ「おい、マクベスはいるか!?」

マクベス「なんですか騒々しい」カチャ

メイド「あっ……」

ガンズ「なんだいるじゃねえか。いるなら好都合だ。おい、今回の白夜侵攻の件、どうなってやがる!?」

マクベス「白夜侵攻の件……。ああ、あなたの配属先についてですか、それを私に言うのはお門違いというものです。これはガロン王様が直々に振られた采配、私に文句を言ったところでどうにかなることではありません」

ガンズ「けっ、どうだかな。俺の台頭を恐れて、お前が根回ししたんじゃねえのか?」

マクベス「……だとしたら何か問題でも?」

ガンズ「なに?」

マクベス「私が根回しすることで、あなたが送られるということは、あなたに対して回りがそう見ているということの証明。ガンズ、あなたも暗夜王国に仕える軍人である以上、決まりに従う義務がある、違いますか?」

ガンズ「けっ、気に入らねえな」

マクベス「気に入らないなら別にそれでも構いませんよ。ですが、ガロン王様の決定に泥を塗るような行為はやめていただきたい」

ガンズ「……だが、俺は……」

マクベス「はぁ、わかりました。私がガロン王様に案を提出しましょう。最初はガロン王様の采配に従っていただけるのであれば、その後にあなたの配属先を変更することは可能でしょうから……」

ガンズ「ああ、俺は暴力を振るえればそれでいいんでな。その資料は今すぐ作れるだろ?」

マクベス「……わかりました。ここでは準備が不足していますので、議会室であなたの要望をまとめさせていただきましょう。それでいいですね?」

ガンズ「ああ、おらいくぞ!」

マクベス「はぁ、まったく。少しばかり部屋を閉めなくてはいけませんね」ガサッ

メイド「……」

マクベス「すみませんが、この部屋はしばらく閉めますので、外へ出ていただけますか?」

メイド「はい」

マクベス「……ふっ、そんな顔をする必要はありませんよ。今回は十分に香りを楽しめましたので。少しは仕事へのやる気が出たというものです」

メイド「その、向かうのは飲んでからでもよろしいのでは?」

マクベス「ガンズは無頼漢ですので、すぐに行かなければいけません。そのお心遣いだけで十分というものです」

メイド「その……今度も立てに来てもいいですか?」

マクベス「立てに来るだけではいけませんね」

メイド「そうですか」

マクベス「ちゃんと作戦に関わる仕事で訪れてください。さすがに貴重な人員を私の紅茶係に使うことはできませんので」

メイド「……はい」

マクベス「ええ、今日のように資料を持って来て、私が確認している間に時間がありましたら立ててください。それが時間のうまい使い方というものです」

メイド「わかりました」

マクベス「では、この資料を物資管理部に送っておいてください。カムイ王女たちのものたど言えばすぐに通してもらえますので」

メイド「はい。それでは、マクベス様」

マクベス「はい」

「また、お会いしましょう」

 準備期間3 おわり

○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB+→B++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで
 
 カムイ達がしていることを考えると、マクベスが不憫に思えてくる不思議。

 あと二回の準備期間を経て第十八章に入ります。そこから『指針選択肢』がスタートします。
 指針選択肢については、準備期間終了時に説明を入れる予定です。
 
 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
・カムイが話をする人物

 アクア
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

>>542

◇◆◇◆◇
・次のキャラクターの職を決めたいと思います。

 マークス『パラディン、グレートナイト』

 >>543

 ラズワルド『ボウナイト、ブレイブヒーロー』

 >>544

 ピエリ『パラディン、グレートナイト、ドラゴンマスター』

 >>545

 ブノワ『ジェネラル、グレートナイト、ブレイブヒーロー』

 >>546

 シャーロッテ『バーサーカー、メイド、ストラテジスト』

 >>547

 このような形でお願いいたします。


>>542ならフローラ

>>543ならパラディンで

パラディン

ボウナイト


おう楽しそうじゃないかマクベス君

>>545ならパラディン
>>546ならジェネラル

ブノワならジェネラルだな

素直にバーサーカーで

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―
(カムイ達が白夜に向かうまで、あと3日……)

 パカラ パカラ パカラ ヒヒーン

???「カムイ殿」

カムイ「すみません、突然お呼び出ししてしまって。ですが来ていただいてうれしいです、クーリアさん」

クーリア「いいえ、お気になさらず。それに久しぶりに娘たちの様子を見に来るいい機会でもありましたから。フローラとフェリシアは元気にやっていますか?」

カムイ「はい、いつも頼りにさせてもらってます」

クーリア「それは良かった」

カムイ「ふふっ、ではこちらへどうぞ。積もる話は中の中でしましょう」

クーリア「中の中ですか?」

カムイ「はい、中の中です」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―星海・マイルーム―

カムイ「どうぞ、入ってください」

クーリア「ええ、失礼いたしますよ。しかし、ここに来るのはとても久しぶりですね」

カムイ「はい、あの時以来ですからね」

クーリア「たしかに、まさか、あの時はこのように話を聞きにあなたに会いに来る関係になるとは思いませんでしたからな」

カムイ「ふふっ、たしかにそうですね。こうやって秘密のお話をする間柄になるなんて」

クーリア「ははっ、カムイ殿は変わりませんな」

フェリシア「お待ちしてました、父さん!」

フローラ「お疲れ様です、父さん」

クーリア「ちゃんと務めを果たしているようでなによりです。とくにフェリシアもよく出来ているようですね」

フェリシア「もうっ、ひどいですぅ。私だってお勤めできるますからぁ!」

フローラ「そうね、準備中にお皿を三枚くらい割ってたけど」

フェリシア「ふええぇ、姉さんひどいですぅ」

クーリア「ふっ、そうですか。しかし、それもフェリシアらしさというものですよ。久しぶりに抱きしめてもいいかね?」

フェリシア「はい、いいですよぉ」

フローラ「ふふっ、父さんも娘が恋しくなることがあるんですね」

クーリア「当り前です。二人は私の娘なのですからね。失礼しますよ」

 ギューーー

フェリシア「はわわっ、あったかいですぅ」

フローラ「……その、少し恥ずかしいですね。カムイ様に見られているのもありますが、この歳になって父さんに抱きしめられるとなると……」

カムイ「ふふっ、二人もやっぱり父さんが恋しいんですね」

フローラ「カムイ様……。ささっ、父さん、もうこれくらいにしてください」

フェリシア「私はもう少しこのままでいたいです……」

クーリア「ははっ、フェリシアは相変わらずですね。しかし、私も二人に会いに来ただけではありませんから、今はここまでにしましょう」

フェリシア「はい、父さん」

 パッ

 ズズッ

フローラ「どうぞ、こちらに御掛けになってください」

クーリア「ああ、失礼させてもらいます。では、カムイ殿話を始めましょう。あなたが私をここに呼んだその理由をお聞かせ願えますかな?」

カムイ「そうですね、どこから話すべきでしょうか?」

クーリア「ふっ、私から質問させたいようですね」

カムイ「ええ、こちらから話してもいいのですが、クーリアさんが何を予想してここに来たのか、それも少し気になります」

クーリア「なるほど、では質問させていただきます。カムイ殿は私に何を望まれているのですか?」

カムイ「望んでいることですか。それは単純なことです、クーリアさんに協力を頼みたいということです」

クーリア「協力ですか?」

カムイ「はい、現在、お父様の命令で始まった侵略に参加しない部族に対しての焼き払いで、多くの部族がこの戦いに参加しつつあります」

クーリア「ええ、焼き払いの効果は顕著に出ています。現在ではほぼすべての部族が参加の流れを汲んでいることでしょう」

カムイ「……でも、それはまだすべてではないということは知っています」

クーリア「はい、と言っても大きな集落ではなく小さい場所ばかりです。どれも我々と同じかそれ以下の規模ですが」

カムイ「クーリアさん、そう言った方々をあなたの協力者として召集することはできますか?」

クーリア「協力者ですか?」

カムイ「はい、それもちゃんとあなたの言葉に従ってくれるという確証の取れる人たちとして」

クーリア「……私が伝えることに意味があると、カムイ殿はおっしゃるのですね?」

カムイ「ええ、そもそも私が何かを言ったところで、その部族の方々は動きませんから、シュヴァリエ反乱を鎮圧した功績を使って、暗夜王族として認められる道を選んだ女として、部族に名が広がっている私では、誰も力を貸してはくれないでしょう。それに今から私自身が説得に回れるような時間もありません」

クーリア「……時間はないということですか」

カムイ「はい、もう直、私たちは白夜へと向かうことになります。空の入れ替わる日、その作戦よりも先に行われる先行作戦を行うことになっていますので」

クーリア「……いや、時間があろうとあなたに部族を納得させる力はありません。ただ光だけを見ていたものが、その光に陰りを見た以上、あなたという本当の姿はもう見えることのないものですから」

カムイ「手厳しいですね、クーリアさんは」

クーリア「当然です。それに、あなたもそれは重々理解している。だからこそ、私にあなたの言葉を言わせるつもりなのでしょう? 私が言うのとあなたが言うのでは、他の部族の方々が受け取る意味が激変する。求めるものが我々部族から見たものに変わるのですから」

カムイ「そこまで読まれていました。やっぱり、クーリアさんを信じて正解でした」

クーリア「いいえ、まだ信じるには早いですよ、カムイ殿」

カムイ「……まだ早いですか?」

クーリア「ええ、私はあなたを信用しています。だからこそ、そのあなたの望みに応えたいとは思います。ですが、今のままではカムイ殿の目的が不明瞭です。それを曝け出していただかなくてはね」

カムイ「ふふっ、そうですね。次の質問ということですか」

クーリア「はい、あなたの目的、少なくとも私に部族の協力者を集わせるに価することを教えていただきたい」

カムイ「……私たちはお父様、いえ現在の暗夜を変えて戦いを終わらせようと考えています」

クーリア「……ガロン王を倒す、そう言っているのですか?」

カムイ「当たらずとも遠からじですね。現在、暗夜は一つになろうとしています。恐怖の扇動ですが、今の不満が白夜へと向えばそれも容易に達成できるでしょう。白夜が滅びないから戦わされている。白夜を滅ぼせばこんな暮らしを終わらせることができる。戦いから解放される、そう考える方角に誘導していくでしょうから」

クーリア「極論ですが、すでにそう思っている者たちはいるでしょう」

カムイ「……本来ならば、攻め滅ぼす必要はないほどに戦力差がある状態になっています。交渉のテーブルを作れば、多くの土地を得ることも可能でしょう。ですが……」

クーリア「それをガロン王は許していないということですか?」

カムイ「お父様もそうですが……。それよりも、上層部にいる貴族や軍族が侵略戦闘を欲しているというのが現状だと思います」

クーリア「ガロン王に忠誠を誓う者たちですか?」

カムイ「忠誠心があるかは問題ではありませんよ。ただ、そこに得られる土地があるなら、そこを自分のものとする。もはや勝利の見えているこの戦いに、そのような方々が手を出さない理由はありませんから。多分、それが新しい争いの火種になると思います」

クーリア「新しい争いの火種ですか」

カムイ「この戦いで得をするのは上層部の方たちです。白夜を倒せば豊かな土地が手に入ると部族の方々を鼓舞しても、戦いが終わった時、そこを牛耳るのはそう言った方々ばかりでしょう。結局、今回の戦いで部族の方々で得をする人はいません。むしろ、自分たちの立場を変えるには根本的に物事を覆す以外に方法がないと、思う者たちも現れるはずです」

クーリア「……大規模な反乱をあなたは予想されているのですか?」

カムイ「流石にそれが起きるかはわかりません。でも、可能性はあります。暗夜王国が拡張していく最中にそれが起これば、この大陸全土で戦いが起きるでしょう。結局、白夜を滅ぼしたことで、暗夜の戦火が身を潜めるというわけではないんです。だったら、その未来をなくすために私達がするべきことは、その芽を摘むこと……」

クーリア「それが、あなたの語る戦いを終わらせるということですか?」

カムイ「ええ。絵空事のように思えるかもしれませんが……」

クーリア「……ですが、あなたの目には絵空事を語っているとは思えない輝きがあります。それがこのまま進んだ先に起こりえることを確信してるようにさえ見えるのです」

カムイ「冗談でこのようなことは言えません。それに今私が話しているのは、すべてにおいて重要な役割を頼むことになる人なんですから」

クーリア「そうですか。私は思った以上にあなたに信頼されているのですね」

カムイ「はい、クーリアさんには色々と頼らせてもらっています。あの日、白夜から連れてこられたスズメさんたちを受け入れてくれたことも含めて、私はフリージアの皆さんのことを信頼しているんですから」

クーリア「そこまで言っていただけるとは……カムイ殿の目指すべきもの、しかと聞かせていただきました」

カムイ「……はい」

クーリア「ふっ、もともとあなたに仕えるつもりではありましたが、語られる言葉に感じる重み、あなたを信じる心が一層引き締まるようです」

カムイ「クーリアさん、では……」

クーリア「ええ、最後の質問をさせてもらいますよ。カムイ殿、私達フリージアの民がするべきことを教えてくださいますかな?」

カムイ「はい。フローラさん」

フローラ「はい、父さんこれを……」

 スッ

クーリア「これは……魔法書の資料ですか。一体何をするためのものですか?」

カムイ「それは転移魔法の書に関するものです」

クーリア「転移魔法ですか。かなり古い貴重な物のようですね」

カムイ「はい、少しばかり仕様が特殊なのですが、今の私たちにはそれが有利に働きます」

クーリア「ふむ、二つの魔方陣を使い共鳴させることで、使用できるようになるというもののようですが、有利に働くというのは……」

カムイ「正直、この戦いはタイミングが重要になります。遅過ぎても、早過ぎても失敗してしまう。だからこそ、暗夜がどうなっているのかを知る術が必要でした」

クーリア「共鳴反応……なるほど、そう考えると便利な仕様ともいえますね」

カムイ「はい。トントン拍子にものが揃ったような状態ですから、でも、そのチャンスを逃すわけにはいきません」

クーリア「わかりました。で、この魔方陣はどこに描くことにしますか?」

カムイ「それはここですよ」

クーリア「……ここ?」キョキョロ

カムイ「すみません、外のここです。すでにフリージアの皆さんに、王都防衛の際に私の住む城塞を守っていただくよう作戦指示を出させていただきましたので」

クーリア「ふっ、私が協力しないという可能性は考えていなかったようですね」

カムイ「はい、私はすべてを使ってでも手繰り寄せるつもりでいますから」

クーリア「そうですか、やはりカムイ殿は豪快な御方だ。わかりました、こちらで合図を送りますので、それまでにカムイ殿も魔方陣をさせておいてくださいね」

カムイ「はい、もちろんそのつもりです」

クーリア「それで、これだけですか?」

カムイ「いえ、私達に随伴して頂く方々をフリージアから選出しようと思っていまして」

クーリア「なるほど、ではそれはすぐに解決します」

カムイ「?」

クーリア「すでに村の者たちには何かしら動きがあるかもしれないと伝えてあります。それにスズメたちはカムイ殿に同行することを強く望まれていましたので、今回の随伴の件を快く引き受けてくれるでしょう」

カムイ「スズメさんたちがですか?」

クーリア「ええ、今では多くが戦闘をできるほどに力をつけています。あなたのお役に立てる日が来ると信じていたのでしょう。ですから、先行作戦には彼らを連れて行ってあげてください」

カムイ「はい、わかりました。私からは他に言うことはありませんよ」

クーリア「その、私から一つよろしいですかな?」

カムイ「はい、なんでしょうか?」

クーリア「この戦いで暗夜を変えることができたとしても、新しく暗夜を束ね、率いていくことになるのは一体誰なのですか? カムイ様がそうなられないことはわかっております」

カムイ「……その時が来たとき、新しい暗夜を束ね導いていける人は、私の知る限り一人しかいません。クーリアさんの言うとおり、私では駄目です。私が指導者として暗夜を導くことは、むしろ新しい火種になりかねませんから」

クーリア「その方のことを信じているということですね」

カムイ「はい。同時に私が思う一番の形だからともいえます。今、その方は私に剣を預けてくれています。自分の貫くべき正義を探す間だけ、私の目指す正義に力を添えると」

クーリア「……貫くべき正義ですか」

カムイ「はい、私の貫く正義が戦いを終わらせることだとするなら、それは暗夜を救うことにはつながりません。私は戦いの終結を望み、そのために暗夜を変えようとしています。だから暗夜王国に光を差すことも、その通過点に過ぎません。だから、私の目指す場所とは違う形で、その人に新しく貫くことのできる正義を見つけてもらいたいんです」

クーリア「なるほど……」

カムイ「すみません。このような私に付くという、こんな選択をさせてしまって」

クーリア「いいえ。それに、カムイ殿が世界を救う勇者というのはあながち間違いではないのかもしれないと思えましたので」

カムイ「?」

クーリア「あなたが掲げてることは、おとぎ話に出てくる勇者と何ら変わりません。彼らに見えていたのは世界を救うという大義であって、存在している国を救うことではありませんから、そんなあなただからこそ、私は信じることをやめられないのかもしれません」

カムイ「……クーリアさん」

クーリア「まずは暗夜のことを考えましょう。ですが、あなたの戦いはそのあともまだ続くようです。その道がどのような道であるかは私には想像もつきませんが」

カムイ「私にも想像はできません。光の見えない暗闇の中をもがきながら進み続ける。それが私の選んだ道で、私が苦悩すべき課題なんですから。考えられないのら、ここに来てはいけないんです。敵国の王女である私に優しくしてくれた白夜の皆さんを裏切って、ただ流されるためだけに、暗夜を選ぶことなんてしてはいけないんですから」

クーリア「カムイ殿……」

カムイ「私は変えたいです。このまま、白夜が滅び、暗夜で新しい火種が溢れる世界、その訪れを。それを止めるためにもがき苦しむことになっても」

クーリア「……ならば、その戦いに私は手を貸し続けましょう」

カムイ「クーリアさん」

クーリア「暗夜の変革の先がさらに光に満ちているのなら、それを手助けすることに悪いことはありません。その目標を目指すために、私はあなたへの助力を続けましょう」

カムイ「ふふっ、そう言ってもらえるととてもうれしいです」

「ありがとうございます、クーリアさん」

今日はここまで

 白夜の土地は豊かだけど、この戦争で暗夜が勝って奪ったところで根本的に貴族とかのテリトリーが増えるだけというのが、このカムイの考えです。
 つまり、暗夜革命します

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『マークスの執務室』―

マークス「そうか、地方部族の件、どうにか間に合ったようだな」

ラズワルド「はい、結構苦労しましたよ。本当、久々に走り回っていた気がしますから」

ピエリ「でもマークス様の書状のおかげで、みんなすぐに言うこと聞いてくれたから、とっても楽だったの。それに、みんなマークス様によろしくって言ってたのよ」

ラズワルド「うん、多くの人から慕われてる。さすがはマークス様だね」

マークス「そうか、皆話を聞き入れてくれたか……。しかし、これで否応なしに、彼らも戦火に飲まれることとなってしまったな」

ラズワルド「マークス様?」

マークス「本来ならばこうならないように務めるのが、われわれ軍であり国をまとめ上げる王族であるべきだというのにな。すでに、どんな形であれ戦うことを避けられない状態になっている」

ピエリ「マークス様は、地方部族の人たちが心配なの?」

マークス「地方部族だけではないさ。だが、力なき者たちを守ること、それが力を持つものの本来あるべき姿だと私は考えている」

ピエリ「なら、簡単なの」

マークス「簡単? 何を言っているのだピエリ」

ピエリ「マークス様は堅物なの。そう考えてるなら、そうすればいいだけの話なの。マークス様は守るために戦うのが一番なのよ」

マークス「守るために戦うか……」

ピエリ「守るために戦うことなら、ピエリのほうがマークス様よりわかってるつもりなの。でも、ピエリは駄目な形で理解しちゃったから」

マークス「駄目な形というのは……!」

ラズワルド「もしかして、リリスのこと?」

ピエリ「うん。今ならわかるの、リリスが言ってたこと。憎しみとか恨みとかで戦っちゃいけないって。ピエリ、人を殺すのは好きなの。リリスはそれがピエリらしさって言ってくれた。でも、あの時だけはピエリのことをリリスは止めてくれたの。ピエリあの時、楽しいから殺すんじゃなくて、憎いから殺そうとしてたの」

マークス「……ピエリ」

ピエリ「たぶん、あのままシュヴァリエの兵隊をいっぱい殺しちゃってたら、ここにピエリはいなかったはずなの」

ラズワルド「それは、死んじゃってたってこと?」

ピエリ「ううん、違うの。単純にマークス様の臣下じゃなくなってたかもしれないってことなの」

マークス「私の臣下でなくなっていたというのか?」

ピエリ「うん。ピエリ、そうなってたらカムイ様のことを恨んでたと思うの。そして白夜との戦いに慎重になってる人も嫌いになって、マークス様のことも見限ってたと思うの。だって、リリスが死んじゃった原因は白夜にあるのにどうして殺さないのか、理解できなかったはずなの」

ラズワルド「ピエリ……」

ピエリ「だから、ピエリは白夜の人間をいっぱい殺せる機会が多そうな、ガロン王様に付いてたかもしれないの。ガロン王様の敵は暗夜の敵で、ピエリにとってはリリスが死んじゃった原因で、憎い存在でしかないの。殺しても殺しても足りない、そういう奴らに見えてたはずだから。多分、アミュージアで、踊り子の皆を殺せってガロン王様が言ったら、それに従って八つ裂きにしてたはずなの。リリスが味わったものよりもっと苦しい殺し方をしてたはずなのよ」

ラズワルド「でも、それをしなかったよね。ピエリはさ」

ピエリ「うん、だって、リリスと交わした約束はカムイ様を守ることなの。カムイ様を守るってことは、カムイ様との約束も守らないといけない。それにカムイ様、ピエリのこと信頼してくれてるの。その思ってくれてる心も守っていきたいの」

マークス「信頼されているという、その心も守るか」

ピエリ「そうなの。カムイ様、シュヴァリエの後、リリスに会いに来てくれて、ピエリに頭を下げてくれたの。ピエリが守るって言って守れなかった。ピエリがどうにかしないといけないことだったのに、カムイ様ピエリに気を使ってくれたの。その時にね、カムイ様のこと守っていこうって決めたの。ピエリはリリスとの約束も、カムイ様との約束も、カムイ様もみんな守るの。それがピエリの守る戦いなの」

マークス「……ピエリの見つけた守るための戦いということか……」

ピエリ「そうなの。だから、マークス様も単純に考えて、守るための戦いを始めるといいの!」

マークス「……ふっ」

ラズワルド「……ははっ」

ピエリ「え、二人ともなんで笑うの!? ピエリおかしなこと言ってたの?」

マークス「いや、まだ私が臣下としてピエリを置いた時とは、偉い違いなのでな」

ラズワルド「そうだね、僕も初めて会った時。血の匂いがするの、ラズワルドも人をいっぱいえいえいしてきたの?って言われたから。そう考えると、本当に変わったよね」

ピエリ「二人とも酷いの。ピエリもちゃんと成長してるの。その証拠にお胸も大きくなってるのよ」ユサユサ

ラズワルド「ちょっと、いきなりゆさゆさしないでよ。僕だけならともかく、今はマークス様の前じゃないか」

ピエリ「男の人はこういうの見ると喜ぶって聞いたから、実践してみただけなの」

マークス「ちなみに尋ねるが、それは誰からの教えだ?」

ピエリ「カミラ様から聞いたの」

マークス「カミラ、私の臣下になんということを教えているんだ……」

ラズワルド「でも、カミラ様はまさにゆさゆさって感じですよね。あの服装も相成って、その、とっても……」

マークス「確かにその通りだ。そしてラズワルド、お前がいつもカミラのどこを見ているのかも理解できた」

ラズワルド「あっ……」

ピエリ「えへへー。やっぱりラズワルドも男の子なの」

ラズワルド「と、ともかく、ピエリは変わったよね。本当にさ」

マークス「無理矢理な軌道修正だな」

ラズワルド「このまま胸談義に華を咲かせてるわけにいきませんから」

マークス「それもそうだな。しかし、ピエリが戦う理由を持っていること、それを私は嬉しく思う。それが守るためということもな」

ラズワルド「守るために戦うか、僕もそれはいいことだと思うよ」

ピエリ「褒められてピエリ嬉しいの。だから二人も守りたいものを見つけるといいの。力がぐんぐん湧いてくるようになるの」

マークス「守るべきものか……。かつての父上も、何かを守るために剣を振っていたのだろうか」

ラズワルド「マークス様?」

マークス「……ラズワルド、ピエリ。お前達に聞きたいことがある」

ピエリ「なんなの、マークス様?」

マークス「こんな私に、お前たちはどうして付いて来てくれる?」

ピエリ「マークス様、何おかしなこと言ってるの? ピエリもラズワルドもマークス様の臣下なの。カムイ様の傍にいるのも最初にマークス様から命令があったからなの」

ラズワルド「それに僕らは今でマークス様の剣であり盾でもあります。あなたの命令に従い、共にいくことに疑問を思ったことなんてありませんよ」

マークス「そうか、お前たちのことを逆に混乱させてしまったようだ。すまないな」

ピエリ「気にすることないの。ピエリ、お話なら聞けるの。困ってるなら話してほしいのよ」

マークス「……はぁ、私は駄目な主君だな。こうして、臣下に気を遣わせているとは……」

ラズワルド「主君が困ってる時に手を差し伸べるのも、僕たち臣下の仕事ですから」

マークス「言ってくれるな、ラズワルド……」

ラズワルド「ご、ごめんなさい。でも、僕たちはマークス様のことが心配ですから」

ピエリ「そうなの。マークス様も守りたいの、だからピエリに教えてほしいの」

マークス「……」

マークス「すまないな、おまえたち……」

マークス「……今、私の手に正義はない」

ラズワルド「正義ですか?」

マークス「ああ、ピエリが守ることを戦いの理由としているように、私は己の中にある正義をその糧としている。言うなれば、正義がなければ私は行動できない、そんな男だ」

ピエリ「なんだか、難しい話なの。マークス様は今までどんな正義を信じてきたの?」

マークス「それは……父上の持つ正義だ」

ラズワルド「ガロン王様の正義ですか」

マークス「ああ、父上の目指す先には暗夜の繁栄があった。侵略戦争は暗夜のために行われることであり、私も暗夜の王族であり父の息子である以上、すべてが暗夜の繁栄につながるという正義、それを信じてきた。だが、その考えもアミュージアの一件やあることで砕けてしまった。この戦いの果てに、暗夜の繁栄を見ることが出来ないくらいに」

ピエリ「……マークス様は新しい正義をすぐに見つけられないの?」

マークス「……ああ、そして今は違う正義に剣を預けているにすぎない。今の私は暗夜第一王子の肩書を持っているだけだ。そんな私にお前達がついて来てくれるのはなぜだろうと、考えてしまってな」

ラズワルド「そうだったんですか」

マークス「ああ。王子という立場にありながら、このような弱音を吐くことなど本来あってはならないと思っている。お前たちも少し思うことがあるだろう」

ピエリ「たしかにあるの」

ラズワルド「僕も思うことはありますね」

マークス「そうか、二人とも遠慮なく言ってくれてもいい。肩書だけの男への別れの言葉でも構わな――」

 ギュッ

マークス「なっ、ピエリいきなり何を……」

ピエリ「マークス様、一人で頑張りすぎなの」

ラズワルド「そうですよ。マークス様」

マークス「お前は抱きついてこないのか?」

ラズワルド「可愛い女の子になら。でも、ピエリの言う通りですマークス様。あなたの正義が砕けている今だからこそ、僕たちはあなたの力になりたいのに、一方的に弱さだけ見せて、別れのあいさつなんて、そんなこと許しませんから」

ピエリ「そうなの、マークス様の正義はまだ見つかってないだけで、これから見つかるものなの。でも、その見つける道にピエリたちを巻き込まないようにしてるのは大きな間違いなの。マークス様一人だけじゃ見つけられるはずないの。ピエリにとってリリスがいたみたいに、マークス様にもそんな人がいるべきなの」

ラズワルド「ええ、あなたにとっての正義はあなただけが見出すものです。でもそれを見つけるために力を貸してもらうことは、何も恥ずかしいことじゃありませんから。僕だってナンパの成功確率を上げるために、日夜色々な意見を聞いてますから」

ピエリ「でも、ずっと負け越しなの。ラズワルド、女の子ひっかけるの下手くそなの」

ラズワルド「そうなんだよね……。いろいろと試してるのに、全くうまくいかない、どうしてかな?」

マークス「……お前はすべてにおいて軽すぎる、それが問題だろう」

ラズワルド「そ、そんなことは……ないと思いますけど……」

ピエリ「えへへー。思い当たる節がある顔してるの。でも、ならマークス様は堅く考えすぎってピエリは言ってあげるの」

マークス「堅く考えすぎか……」

ラズワルド「マークス様、僕はあなたの臣下です。臣下である以上、あなたが僕をいらないというのであれば、それに従うつもりです。それがマークス様のためになるなら」

マークス「……ラズワルド」

ラズワルド「でも、それはあなたが悩むことをやめた後にしてください。マークス様が悩みを抱えたままなんてことになったら、僕もナンパしてる場合じゃなくなりますから。少しでも気になったことって、色々と普段の生活に影響するので」

ピエリ「ピエリも同じなの。マークス様がお悩み解決してあげたいの。でも、臣下をやめろって言ってほしくないの。言われたら泣いた拍子にラズワルドのことえいってしちゃうの」

ラズワルド「な、なんでぼくがえいっされなくちゃいけないの?」

ピエリ「ピエリが本気で悲しんでるってマークス様に教えるためなの、だからラズワルドの犠牲は仕方ないの」

ラズワルド「ひどい、ひどすぎる」

マークス「ふっ、全く、お前達がそういうところを直してくれればな」

ピエリ「堅物なマークス様には言われたくないの」

ラズワルド「それについてはピエリに賛成だね。マークス様も疲れたり甘えたい時があったら、素直になってもいいと思いますよ」

マークス「素直にか……。ふっ、素直になったところで、周りからは変な目で見られることになりそうだが」

ピエリ「素直なマークス様、見てみたいの」

ラズワルド「たしかに、少しだけ興味があるね」

マークス「それを見せるには、まだまだ時間がかかりそうだ。ピエリ、そろそろ抱きつくのは終わりにしろ」

ピエリ「はーい」パッ

マークス「こっちは色々と覚悟を決めていたというのに、お前たちは私の予想を裏切る。本当に困った臣下だ」

ラズワルド「へへ、堅物なマークス様には予想できないだけですよ」

マークス「確かに、そうかもしれないな……。私が見るべき正義は、暗夜の繁栄よりも少し前のことでいいのかもしれない。それを見つけていくさ」

ピエリ「うん、それがいいの!」

ラズワルド「だけど、マークス様は。剣を下しているわけじゃないんですよね? そうじゃないと、僕たちを走らせて色々と手まわしをさせていた意味がありませんから」

マークス「ああ。正直、お前たちを巻き込むべきではないと考えていただけにすぎない。お前たちを正義の無い私の戦いに巻き込むわけにもいかないと考えていた」

ピエリ「本当に堅物さんなの。頭モミモミしてあげちゃうの」

マークス「ふっ、私の堅物は筋金入りだ。だが、お前達がついて来てくれるのなら。それもいつか解れるのかもしれない」

ラズワルド「マークス様……」

マークス「ラズワルド、ピエリ」

ラズワルド「はい、マークス様」

ピエリ「はーい、マークス様」

マークス「お前たちにはこれから先も働いてもらうことになる。私が正義を見つけた先も、それはたぶん途方もない時間かもしれない。道中で辛き戦いもあるだろう。だとしても、私はお前たちと共に戦っていきたいと考えている。だから頼む、お前たちの力を私に貸してほしい」

ピエリ「少し素直になったの!」

ラズワルド「すごい、すごい進化ですよ。マークス様!」

マークス「……酷い言われようだ」

ピエリ「えへへー。でも、マークス様がピエリのこと頼ってくれてとっても嬉しいの。こうやって、マークス様自身のことでお願いされるのは初めてなの。それにピエリ守るものが増えてうれしくなっちゃうの」

ラズワルド「すみません。でも、マークス様、あなたの正義、その貫きの先に僕も付いていきます。僕が要られる限りはずっと、支えさせてもらいます」

マークス「ふっ、死ぬまで私の元にいるというのか?」

ラズワルド「はは、そう思ってもらっても構いませんよ。その頃には、もっと素直になったマークス様を見られるかもしれませんからね」

マークス「そう簡単ではないだろうがな」

ラズワルド「はい、気長に待たせてもらいますね」

マークス(……だが、そんな日が来るのも悪くないことかもしれない)

(お前たち二人に遠慮することなく、自分のことを伝えられる。そんな日々がな……)

今日はここまで
 
 ピエリは成長していく、心も胸も……

 クーリアの発言は、その心の目ってことでひとつ……
(次回の番外、二つ作るから許してや……)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

カムイ「クーリアさんもフリージアに戻られましたし、もうやることはほとんど終わりましたね」

カムイ(今日でほとんどの準備は終わりました、明日で残りを済ませてディアへと向かうことになりそうですね……)

 キィィ

カムイ(あれ、扉が半開きになってる? 珍しいこともありますね)

 ガチャ

???「……スゥ」

カムイ「この気配、フローラさんですか?」

フローラ「……スゥ…スゥ」

カムイ「フローラさん?」ユサユサ

フローラ「ん、んんっ……あ、カムイ様……」

カムイ「眠るなら自室でのほうがいいですよ? ここで眠っていたら風邪を引いてしまうかもしれませんから」

フローラ「……」

カムイ「フローラさん?」

フローラ「え、カムイ様。え、私、し、しし、失礼しました!」ガタッ

カムイ「何を謝ってるんですか?」

フローラ「申し訳ありません、そのこんな恥ずかしい姿をお見せして、主君の目の前で寝呆けてしまうなんて……///」

カムイ「ふふっ、そんなことですか」

フローラ「そんなことじゃないですよ。はぁ、こんな風に寝落ちしてしまうなんて……、穴があったら入りたい気分です」

カムイ「そんなに恥ずかしがることじゃありませんよ。誰だって疲れ果ててしまったら、眠りたくなることもありますから。それに今日はクーリアさんも来ていたんです。それもあって、いつもより頑張っていたのかもしれませんよ?」

フローラ「そんなことは……」

カムイ「ふふっ、フローラさんがクーリアさんに抱きしめられてる時、うれしそうな感じがしましたよ?」

フローラ「やめてください、その今考えるととても恥ずかしいんですから……。でも、カムイ様の言うとおり、久しぶりに父さんに会えると気張っていたところがあるかもしれません」

カムイ「なら、仕方無いですよ。でも、ここで眠るのはいけませんよ、フローラさんの部屋まで一緒について行ってあげますから」

フローラ「いえ、私一人で戻れますので、そのような気遣いは」

カムイ「いいんですよ。私がしたいだけですから。それに少しだけフラフラしてるようにも見えます。根を詰め過ぎてフローラさんが倒れたりしたら大変です」

フローラ「そうですね。色々と仕事ができなくなると問題ですからね」

カムイ「ふふっ」

フローラ「な、なんで笑うんですか、カムイ様」

カムイ「フローラさんはそういう言葉を返すんだなって思いまして。自分よりも仕事のことを気にされてるみたいですから」

フローラ「ふふっ、私は仕事をしている時が一番落ち着いていられる性分だからかもしれません」

カムイ「ここで疲れ果ててたのも、もしかして戸締りの確認などをしていたからですか?」

フローラ「ええ、でもお恥ずかしい話です。確認をしてる最中に眠りこけてしまったんですから」

カムイ「それはもう過ぎた話です、次からどうにかすればいいんですよ。それじゃ、フローラさんの部屋に向かいましょうか?」

フローラ「はい」

 カ カ カ

カムイ「でも、いつもはそんなことがないフローラさんが眠りこけちゃうくらいに、今日は色々とありましたね」

フローラ「カムイ様、たしかにこんな姿を見られたのは久しぶりなことかもしれませんけど、蒸し返さないでほしいです」

カムイ「ふふっ、すみません。でもそんなに疲れているなら、ここは主として何かして差し上げるべきかもしれませんね」

フローラ「いえ、そのお心遣いだけで大丈夫ですよ」

カムイ「そうですか? あ、確かここら辺がフローラさんのお部屋でしたね。たしか、ここでしたか」ガチャ

フローラ「時々思うんですけど、カムイ様はどうやって私の部屋を探し当てているんですか?」

カムイ「ここの地図は頭に入っていますし、皆さんの部屋は覚えておきたい場所でもありますから」

フローラ「ふふっ、そうですか」

カムイ「はい、それでは中にどうぞ、フローラさん」

フローラ「普通は逆のような気がしますけど」

 カ カ カ

フローラ「すみません、部屋まで付いて来てもらってしまって」

カムイ「気にしないでください、主として少なからずお返ししたいというだけの話ですから」

フローラ「そうですか?」

カムイ「いえいえ、お気になさらずに」バタンッ ガチャ

フローラ「!? なんで鍵を掛けているんですか!?」

カムイ「いえ、もしかしたら誰かが来るかもしれませんから」

フローラ「カムイ様はなんでお帰りにならないんですか?」

カムイ「やっぱり、フローラさんの疲れを癒してあげたいと思いまして、それにちょっとやってみたいということがあったので、それを試してみたくなったんです」

フローラ「やってみたいことですか?」

カムイ「はい、ちょっと失礼しますね。ベッドはここですね。ふふっ、はー、くんくん、フローラさんの香りがします」

フローラ「そ、そういうのはやめてください///」

カムイ「ふふ、ごめんなさい。えっと、場所はここでいいですね。はい、フローラさん」ポンポン

フローラ「?」

カムイ「ふふっ」ポンポン

フローラ「あの、カムイ様」

カムイ「なんですか?」ポンポン

フローラ「その、膝を叩いて何をしているんですか?」

カムイ「えっと、これじゃわかりませんか? おかしいですね、私はこのポンポンという音だけでカミラ姉さんが何をしてくれるかわかったんですけど」

フローラ「すみませんが、私にはわからないので」

カムイ「はい、膝まくらというやつですよ」

フローラ「ひ、膝まくら……ですか」

カムイ「はい、昔カミラ姉さんによくしてもらっていたので、誰かにやってあげたいなと思っていたんです。カミラ姉さんの膝上がとても気持ち良かったことを覚えていますから」

フローラ「は、はぁ……」

カムイ「そういうわけですから、こちらへどうぞ」ポンポン

フローラ「……あ、あの」

カムイ「ふふっ」ニコニコ

フローラ「……」

フローラ(断れる流れではありませんね……。仕方ありません、ここは大人しく従いましょう……)

カムイ「ふふ、フローラさん、ここに頭を乗せてくださいね?」

フローラ「はい、わかりました。では、その、失礼しますね」ポスッ

カムイ「んっ、すこし膝上がくすぐったいですね」

フローラ「……ん」

カムイ「その、どうですか?」

フローラ「温かいです、カムイ様の膝上……」

フローラ(それに、なんだかいい匂いがする。これがカムイ様の匂いなんでしょうか……)

カムイ「そうですか、よかったです。硬いとか、冷たいとか言われたらどうしようかと思いましたよ。あと、やっぱりフローラさんも少しひんやりしてますね」

フローラ「そ、その冷たいようでしたら……」

カムイ「いいえ、全然大丈夫ですよ。それよりも、少し触らせてくださいね」

フローラ「え?」

カムイ「……」ナデナデ

フローラ「カムイ様?」

カムイ「いつもありがとうございます、フローラさん。今日も夜遅くまで見回りをしてくれて、でも、無理をしてはいけませんよ?」

フローラ「そんなことは……」

カムイ「知ってるんですよ。いつも夜遅くまでフローラさんが働いていること。だから、今日もって言ったんですから」

フローラ「その、臣下として当然のことですから、気にしないでください」

カムイ「ふふっ、そういうと思ってました。でも、今日はいっぱい撫で撫でさせてください」ナデナデ

フローラ「ん、カムイ様」

カムイ「フローラさんはいつも気張ってるのか、誰かに甘えようとしないことが多いので、私としては少し心配なんです」

フローラ「心配ですか?」

カムイ「はい、だからその、少しくらいは私に甘えてくれてもいいんですよ?」

フローラ「……甘えると言われましても……。その」

カムイ「はい、わかってます。だから今日は私からいつも仕事をしてくれてることに感謝をこめて、フローラさんに膝枕をしてあげたくなったわけです」

フローラ「ふふっ、強引ですね。カムイ様は……」

カムイ「はい、だからフローラさんが甘えてくれるまで、頭をいっぱい撫で撫でしてあげますから」

フローラ「もう」

フローラ(でも、頭を撫でられるのは久しぶりね。それに、こんな風にやわらかく頭を撫でられるのは嫌いじゃないから……)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『マクベスの部屋』―

 ペラ ペラッ トントン パサッ

マクベス「……カムイ王女たちの準備はほぼ整ったようですね。それにしても、マークス王子には少なからず感謝しなければ。自主的に必要な物を整えてくれたようですから、おかげでこちらの侵攻計画書に少なからずの時間を使えましたからねえ」

 コンコン

マクベス「誰ですか?」

メイド『私です、マクベス様。書類をお渡しに参りました』

マクベス「そうですか、入りなさい」
 
 ガチャ

メイド「失礼いたします、マクベス様」ペコリ

マクベス「ふむ、ではその資料をこちらに」

メイド「はい、こちらです」

マクベス「ええ、ありがとう。とは言っても、これは変更点なしのようですから確認することもありません。ようやく、体を休められそうです」

メイド「マクベス様のお仕事も、これで一段落したということでしょうか?」

マクベス「一段落ですか。確かにそう言えますが、明日からはこれとは比べ物にならない量の書類と戦うことになりますからね。ここで休めないことには体がもちません」

メイド「そうなんですね。とりあえず、今日までのお仕事お疲れ様です」

マクベス「ええ、あなたも」

メイド「はい、マクベス様」

マクベス「……」

メイド「……」

マクベス「……?」

メイド「……?」

マクベス「……で、あなたは、なぜ、ここに残られているのですか?」

メイド「はい、マクベス様から何か仕事がないかと待っているのですが……」

マクベス「良い心掛けです。しかし、先ほど言ったように明日からの仕事はありますが、今日するべきことはありません。それに、このように休み時間を得られたのは、献身的にあなたが私の仕事を手伝ってくれたおかげというもの、感謝しますよ」

メイド「そうですか……」

マクベス「? 何か不満ですかな?」

メイド「いえ、その書類をもう一度返しに行く必要があると思っていたので、紅茶の準備を始めずに待っていたんですけど」

マクベス「あなたもおかしな人ですねぇ。私の元に来る大半の者は、要件が終わればささっと帰っていく者たちばかりだというのに」

メイド「他の人は見る目がないんですね。マクベス様はとても真面目でいらっしゃるのに」

マクベス「ふっ、お世辞を言っても何も出ませんよ?」

メイド「お世辞じゃありません。事実を言っているだけです、マクベス様」

マクベス「ふっ、あなたはとてもお世辞がうまいようだ。その言葉、受け取っておくことにしましょう」

メイド「はい。それでは紅茶を立てますね」

マクベス「? 別にもう大丈夫ですよ。明日も仕事があります。だから戻って――」

メイド「少々お待ちください、マクベス様」

 タタタタタッ

 カパ サラサラサラ

メイド「……♪~ ♪~」

マクベス(はぁ、何が楽しいのか全く分かりませんが、この香りは落ちつきますねえ)

マクベス(しかしカムイ王女がフリージアの者たちを徴用するのは予定の範囲内でしたが、その者たちを同時に北の城塞の守備に回させるとは。やはり、フリージアの者たちには戦ってほしくないという意思の表れといえますな。先行作戦も元々はフウマ公国に助力を願う形でしたから、フリージアの者たちを巻き込む可能性は少ないと考えてのことかもしれませんが)

マクベス(それよりも、明日からは残りの地方部族の配置を精査しなければなりません。残念ながら人数が増えたからと言ってそれが戦力となるとは限りませんし、何よりもガンズの問題があります)

メイド「……♪」

マクベス(ふっ、鼻歌交じりとは、紅茶を入れるのが好きなようですね。まぁ、気晴らしになっているのなら良いでしょう)

マクベス(さて、ガンズの件、どうにかガロン王様に了承を頂けましたが……一体誰と交代するべきなのか……。前線に配置されている軍や貴族の関係者は戦果を求めています。簡単には頷かないでしょうから、ここは白夜との前線戦闘で戦果の低かった者たちを当てるという方針を出すのが一番ですかね?)

マクベス(そうすれば前線の士気向上も見込めます。もっとも、入れ替えの話をあげた時点で、多くから反感を頂くことになるでしょうが。しかし、ガロン王様ではなく、私に向いて終わるのならば安いもの。ガンズは傍で暴れている頼りになりますが、見えない所に置くには問題のある人材ですからね)

マクベス「さて、明日からも大変なことになりそうですねぇ」

メイド「あの、マクベス様」

マクベス「?」

メイド「紅茶の準備ができました。どうぞ」

 カチャッ

マクベス「おお、ありがとうございます。ふむ、やはり良い香りですね。ところで――」

メイド「大丈夫です。私の分も立てさせていただきました」カチャ

マクベス「ふっ、そうですか。それで茶葉のほうは?」

メイド「今回でちょうど使い切れたところです。マクベス様の計算通りですよ」

マクベス「そうですか、それは良いことです。しかしあなたもこちらの言葉を予想していたようで、おかげで出鼻を挫かれた思いです」

メイド「マクベス様に言われたことですから」

マクベス「なるほど。しかし、あなたの立てたばかりの紅茶を飲むのは、今日が初めてかもしれませんねえ」

メイド「そうかもしれません。いつもマクベス様が飲まれようとするときに、何かしらありましたから」

マクベス「ええ、冷めた物ばかりでしたので、今日はゆっくり味あわせていただきますよ」

メイド「はい」

マクベス「では……」クイッ








 ズズッ

マクベス「ふむ、おいしいですよ」

メイド「ありがとうございます」

マクベス「ふっ、まぁ冷めていた時から味は良かったので心配はしていませんでしたが」

メイド「ふふっ、そう言ってもらえるととてもうれしいです、マクベス様」

マクベス「まぁ、私が買った高級茶葉を使っているのですから、当然と言えば当然でしょう」

メイド「そうかもしれませんね。では、私も……」ズズッ

マクベス「どうですかな?」

メイド「はい、おいしいです」

マクベス「そうですか、それはよかった。しかし仕事の合間にこのような紅茶を飲めるとは思ってもいませんでした。感謝していますよ」

メイド「そこまで言われると、照れてしまいます」

マクベス「ええ、本当に……んっ、くあぁぁぁ……」

メイド「マクベス様?」

マクベス「すみません、やはり体が疲れてしまっているようで……」

メイド「そうでしたか。私もすぐに戻らせていただきます」

マクベス「ええ……そうする……ように、してください」

メイド「あの、大丈夫でしょうか?」

マクベス「まぁ、これくらいならば……」

メイド「そのまま歩かれては危険です、マクベス様の寝室はどちらですか? そこまで――」

 クタッ

マクベス「………」

メイド「マクベス様?」

マクベス「………スー……スー」

 カタッ テトテトテト カチャ コトッ

メイド(カップはここにまとめて。たしか数日前来たとき、ここから肩掛けを出されていたはず)

 ガチャ 

メイド(ありました。手頃なのを、これでいいでしょう)

 パシッ バタンッ

マクベス「……スー……スー」

メイド「マクベス様、失礼いたしますね」

 ファサー スッ

マクベス「……スー……スー」

メイド「……また明日から、お仕事でこの部屋を訪れさせていただきます」

メイド「ですから、次は私の入れた紅茶を最後まで飲んでくださいね」

「マクベス様……おやすみなさい……」

 準備期間4 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラC→C+
(すこしは他人に甘えてもいいんのではないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)

今日はここまで

 マクベスとメイドはこの先も所々に出てきます。
 サントラの発売近いヤッター

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
・次のキャラクター職を決めたいと思います。

 ジョーカー『パラディン・バトラー』

 >>589

 ギュンター『グレートナイト、パラディン』

 >>590

 フェリシア『ブレイブヒーロー、ボウナイト、メイド、ストラテジスト』

 >>591

 フローラ『メイド、ブレイブヒーロー、ボウナイト、ソーサラー、ダークナイト、ジェネラル、グレートナイト』

 >>592

 リンカ『鍛冶、修羅、聖天馬武者(ダークファルコン)』
 
 >>593

 モズメ『兵法者、弓聖、大商人』

 >>594

 このような形でお願いします。

マクベス生存ルートktkr?
あえてパラディン


準備期間はこれで終わりかな?そろそろ佳境って感じか
ギュンターならGナイト、フェリシアなら勇者で

ストラデジストでお願いします

ジェネラル

メイドかわいいな、さすが白夜の軍師とは格が違う
フローラはゲーム的にはジェネラルが強いしそれで
薬カウンターとかいう鬼畜

あ、聖ダークファルコン武者で

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・共同墓地―
(カムイ達が白夜に向かうまで、残り2日……)

 ガサガサッ スッ ポサッ

ピエリ「ん、少しの間、ここには来れなくなっちゃうの。お水もお花も少しの間変えてあげられないこと、許してほしいのよ」

ピエリ「だからね、今日はとってもきれいなお花持ってきたの。じゃーん!」バサッ

ピエリ「ピエリと同じ色の花なの。ピンク色は髪の先を意識してるの。これが少しの間のピエリの代わりなの」

ピエリ「……だから、我慢して欲しいのよ……リリス」

 カタッ

ピエリ「? 誰なの?」

カミラ「ふふっ、やっぱりここにいたのね。ピエリ」

ピエリ「カミラ様、どうしたの? ここにカミラ様が来る用事なんて……あっ、わかったの!」

カミラ「?」

ピエリ「カミラ様もリリスに出発のあいさつしに来てくれたの。ピエリとっても嬉しいの! 早くこっちに来るのよ」

カミラ「……ふふっ、そうね。それじゃ、そうさせてもらおうかしら?」

ピエリ「うん、リリスもきっと喜んでくれるの! ピエリの横に立って、一緒にあいさつするの」

カミラ「ええ。うふふっ、うれしいのはわかるけど、そんなに強く引っ張らないで、どこにも行ったりしないわ」

ピエリ「ごめんなさいなの、でもうれしいのは本当なの!」

カミラ「ふふっ、ありがとう」

ピエリ「リリス、ピエリいっぱい頑張ってくるの。カムイ様もだけど、ピエリはピエリのことを知ってる皆のこと守るために戦うの。リリスが教えてくれたことだから、絶対に忘れたりしないの」

カミラ「……ふふっ、本当にピエリはリリスに色々な物をもらってるのね」

ピエリ「うん、そうなの。時々ね、こういうことがあったのってリリスに話に来てたの。だけど、しばらくこれなくなっちゃうから、挨拶しに来たの」

カミラ「そうだったの……」

ピエリ「リリス、少しの間、ピエリここに来れないの。許してほしいのよ……」

ピエリ「リリスが許してくれるか心配なの……」

カミラ「大丈夫よ、ピエリ」

ピエリ「大丈夫なの?」

カミラ「ええ、ピエリはリリスとの約束を守るんでしょ? なら、これ以上謝って、リリスを困らせちゃいけないわ。あなたのこと、リリスはきっと信じてるもの」

ピエリ「カミラ様……ありがとうなの!」ギュッ

カミラ「あらあら、ふふっ、ピエリは甘えん坊さんね」

ピエリ「えへへ、カミラ様もリリスと同じでピエリの大好きな人なの。匂いもすごくいいの」

カミラ「うふふっ、でも、あなたと出会った時はこんな関係になるとは思わなかったわ」

ピエリ「こんな関係?」

カミラ「そう、こんな関係よ」ギュウッ

ピエリ「ん、カミラ様温かいの」

カミラ「ええ、ピエリもとても温かいわ。あなたにお母さんと言われた時は、こうやって抱きしめてあげられなかったわね……」

ピエリ「カミラ様が気にすることじゃない、あれはピエリがいけないの。ピエリ、カミラ様がいっぱい甘えさせてくれるから、お母さんって呼んでただけなの……。本当にお母さんだって思ってたわけじゃないの、ごめんなさいなの」

カミラ「いいわ、私もあなたに甘えられることに優越感を覚えていたのは確かだから。結局、口に出した時には、あなたを少し傷つけてしまったもの」

ピエリ「……でもカミラ様、ピエリと一緒に待ってくれるって言ったの。それに、ここでリリスに行ってきますって一緒に言ってくれてる。約束守ってくれてて嬉しいの」

カミラ「ふふっ、ありがとう。ピエリのこと、私も頑張って守るわね」

ピエリ「だ、駄目なの」

カミラ「え?」

ピエリ「ピエリが守るの。カミラ様は素直にピエリに守られるべきなのよ」

カミラ「……それは頂けないわ」

ピエリ「うー、どうしてなの。ピエリの力信用してないの? そんな、そんなこと言われたらピエリ、ピエリぃ……」

カミラ「ピエリの力は信用しているわ。あなたが誰かを守るために戦ってることは、見ていればわかることだもの」

ピエリ「だったら、なんでそんなこと言うの?」

カミラ「だって言ったじゃない。私もあなたと一緒にずっと待ってあげるって、だから私もあなたを守る。守り守られるそんな関係が一番いい。もちろん、私のわがままかもしれないけど」

ピエリ「……守り守られる関係。なんだかいい響きなの。ピエリわかったの。あ、そうなの」ガサゴソ

カミラ「ピエリ?」

ピエリ「あったの、カミラ様にこれあげるの!」

カミラ「これは……リボン?」

ピエリ「ピエリとお揃いのリボンなの。カミラ様もリリスと同じくらい大切な人だから、その印なの!」

カミラ「そう、ピエリとお揃いね。でも、私には少し似合わないかもしれないわ」

ピエリ「そんなことないの。ここをこうして、こうするの。最後にリボンで止めて、完成なの!」

カミラ「ピエリは誰でも可愛くできちゃう天才ね。ありがとう」

ピエリ「カミラ様に褒められて、ピエリ嬉しいの」

カミラ「ふふっ」

ピエリ「えへへ……。リリス、もう行くの。今度帰ってきた時は、もっときれいで大きなお花を持って来てあげる。だから楽しみに待っててほしいのよ」

カミラ「どれくらい大きな花になるのかしら?」

ピエリ「両手じゃ抱えられないくらい持ってくるの! その時はカミラ様にも手伝ってほしいのよ」

カミラ「あまりに多すぎるとリリスが見えなくなっちゃうわよ?」

ピエリ「確かにそうなの。うん、少し数を減らすことにするの。それじゃリリス、ピエリはもう行くの!」

カミラ「そう、それじゃ一緒に行きましょう。私も向かうところだったから」

ピエリ「うん。えへへ、カミラ様の手暖かくて、なんだかお家に帰るみたいな気持ちになるの」

カミラ「ふふっ。でも今から出掛けるんだから、出かける気持ちが正解ね」

ピエリ「うん、それじゃ城塞に向かうの!」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・騎馬訓練場―

 バサバサバサ

 ヒヒーン

リンカ「ふっ、いいぞ。これならどこまでも飛んで行けそうな気分だ!」

 ヒヒーン

リンカ「そうか、お前も感じるか。あたしにも伝わってくるぞ。お前の熱い鼓動がな、あたしの馬にお前は相応しい、よし、もう一度―――」

アクア「……」

リンカ「あ、アクア!?」

 バサバサバサ
 スタッ

リンカ「えっと、これは、その……」

アクア「続けて」

リンカ「つ、続けるか! というかいつからそこにいたんだ」

アクア「そうね。ごほん、『体が熱くなってきた。ふっ、このままではお前を燃え尽きさせてしまうかもしれない。な、お前もわかるのかこの』」

リンカ「だあああああああ!!!!!」

アクア「まだ続きがあるけど」

リンカ「いい、むしろ今すぐ記憶の片隅に追いやって、忘れろ!」

アクア「ふふっ、それはできない相談ね。ダークファルコンに乗って空を駆けるリンカの顔、とても輝いていたもの。まさに腕白な子供って感じだったわ」

リンカ「くっ、なんだか一番見られたくない奴に見られてしまった気がする」

アクア「ふふっ、でも見に来なかったらあなた、少ししてから大慌てだったはずよ。興奮して今日のことを忘れてるみたいだから」

リンカ「? 今日のこと?」

アクア「やっぱり忘れているのね。でも、この数日間は馬の調子を見ていたから、忘れていたのかもしれないけど」

リンカ「? 今日、一体何があるんだ?」

アクア「はぁ、忘れたの。今日は城塞に集合してディアに向かう予定の日よ?」

リンカ「……そ、そうだったのか!?」

アクア「やっぱり忘れていたのね。本当に一つのことばかりなのね。周りのみんなは準備を終えてもう向かったって言うのに」

リンカ「ぐぐっ、面目ない」

アクア「まぁ、私はあなたのことをそれなりにわかってるつもりだから、こうして顔を出したんだけど。心配損じゃなくて良かったわ」

リンカ「よくない、よくないぞ!」

アクア「ふふっ、ごめんなさい。支度は済んでいるのかしら?」

リンカ「ああ、と言っても持って行くものはほとんどない。唯一あるのはこれくらいさ」

 ゴトッ

アクア「それは……?」

リンカ「ああ、アミュージアで戦ったクマじいのひょうたんだよ。あたしが倒れてる間に死んだって聞いて、遺留品をマークスが集めておいてくれたみたいだからさ」

アクア「リンカ……」

リンカ「そんな顔をするなアクア。もともとクマじいは暗殺が成功しない場合は死ぬつもりでアミュージアに来てた。それをあたしたちがとやかく言うことはできないんだから」

リンカ「クマじいはあたしの選んだ道を認めてくれたんだ。それなのに、あたしがクマじいの進んだ道を否定することなんてできない。否定したところで、心が変わるような人じゃないことくらいわかっていた。だけどあたしは得られる物を大事にしていきたい、だからあの時あそこで進むことを選んだ。その心があったからあたしはクマじいを斬ることができたんだと思う」

アクア「……そう、リンカは強いわね」

リンカ「な、いきなり何を言うんだ」

アクア「いいえ、本心よ。だって、あなたは自分の選んだ道に素直に準ずることができる。迷っていたとしても、必ずその選択を自分で容認できる。切り返しなんてしないで、ちゃんと選び切ることができるから」

リンカ「そうかもしれないけど、実際あたしは不器用だ。あの時はマークスやフランネルがいてくれたから、その道に進めただけさ。あたしは誰かに支えられてないと、選ぶこともできない弱いままだからな」

アクア「その割には、とても自信に満ちた顔ね?」

リンカ「ああ、もう誤魔化したりはしないからな。あたしは支えられながらそこに近づいて行くことに決めた。いずれ、あたしが誰かを導けるようになるまでは。一人では何もできない自分を受け入れて、成長していくしかないってわかっているからな」

アクア「自分を受け入れて成長していく……か。前までのリンカなら絶対に言わなそうな言葉ね」

リンカ「たしかにそうかもしれない。言われたりしたら、すぐに臍を曲げていたかもしれない。あたしはそういう人間だからな」

アクア「ふふっ、今少し臍を曲げてるわね」

リンカ「少しだけな。認めているから尚更、そういう言葉には敏感になる」

アクア「ふふっ、頭に血が昇りやすいのも変わらないわね。さっきの馬との対話はそのもっともな証明だもの」

リンカ「だ、だから、それは忘れろと言っているだろう!////」

アクア「赤くなって可愛いものね。でも、これだけならもう準備はできているってことよね?」

リンカ「ああ、もうこれ以上持って行くものはないからな。アクアの方は大丈夫なのか?」

アクア「ええ、すでに下準備は済ませているから問題ないわ」

リンカ「そうか、それじゃ、ささっと行くとしよう」

アクア「ええ、そうね」

リンカ「よし、アクア」スッ

 バサバサバサ

アクア「え?」

リンカ「ここまで来てくれた礼だ。乗ってくれ」

アクア「そんな、別に構わないわ。そんなに遅れてるわけじゃないもの」

リンカ「なに、気にするな。それにアクアには色々と世話になってる、そのお礼だ」

アクア「……そう。なんだかとても暑そうね」

リンカ「ふっ、当たり前だ。あたしとこいつは熱い鼓動で繋がっているからな!」

アクア「ふふっ、もう頭に血が上っているのかしら?」

リンカ「どっちでもいいことだ。そういうわけだから、アクア乗ってくれ」

アクア「……その、大丈夫かしら?」

リンカ「何がだ?」

アクア「その、その子はあなた以外が乗ることになれているのかわからないから。暴れるかもしれないわ」

リンカ「大丈夫だ、あたしを信用」

アクア「みんなに支えられる道を選んだのに?」

リンカ「うっ、痛いところを突いてくる。アクアらしいと言えばアクアらしいが……」

アクア「ふふっ、リンカのことは少なからずわかってるつもりだからね。でも、せっかくの好意を無駄にするつもりもないわ」

リンカ「最初から素直にそう言えばいいだろう」

アクア「たしかにそうね。それじゃ、失礼するわね」

 ヒヒーン

リンカ「……いつもよりうれしそうにしてる、だと……!?」

アクア「あら、そうなの? 見る目があるわねこの子。よしよし……」サワサワ

 ヒヒーン

リンカ「な、納得いかないっ!」

アクア「ふふっ、それじゃ北の城塞までおねがいね、リンカ?」

リンカ「この敗北感は納得いかないけど、あたしの提案だからな。よし、いくぞっ!」

 バッ
 
 ヒヒーン

 バサバサバサバサ

 今日はここまでで

 今は支援会話がAに達している者たちの話になります。
 次はフェリシア×ルーナとフローラ×エルフィと本篇をちょこっとになります。
 次の次でこの準備期間は終わりになる予定です。
 弓聖モズメがいるのといないので暗夜編の難易度が激変するよね(大抵のボスはモズメが処理していた)

 サントラ大きくてとてもよかったです。とりあえず裏表紙の、リョウマとマークスがめちゃくちゃ怖くて、アクアのチラリズムがとてもよかった。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

フェリシア「ふぅ、よいしょ。これで終わりましたぁ。ふふっ、最初の頃と比べたら物で溢れちゃいました。これもルーナさんと仲良くなってからですね」

 ガチャガチャ

フェリシア「でも、こんなにいっぱい買いこんでますけど、一人で使うにしても多すぎますし、ルーナさんって浪費癖のある人なんでしょうか?」

ルーナ「浪費癖があって悪かったわね」

フェリシア「ひゃああああっ!!!」

 ガシャン

ルーナ「ちょ、ちょっと何落としてるのよ!」

フェリシア「ルーナさんが脅かすからですよぉ。はうううぅ、また片づけないと……」

ルーナ「はぁ、これじゃいつまで経っても成長できないわね」

フェリシア「はううぅ、でもどうしたんですか。待ち合わせ場所は大広間のはずですけど……」

ルーナ「いいじゃない別に、それとも何? 見て回っちゃいけないって言いたいわけ?」

フェリシア「そ、そういう意味じゃなくて。その、なんでこちらに?」

ルーナ「別に、たまたまよ。べ、別にもしかしたらフェリシアがいるかなーとか、そんなことを思って来たわけじゃないんだからね!」

フェリシア「ごめんなさい、私がいたら迷惑でしたよね……」

ルーナ「いや、べ、別にそんなことないから! ……それに、あたしがあげた食器とか、まだあるのか気になってたし。結構な数あげたと思うからね」

フェリシア「はい、まだたくさん残ってますよ。それに、こうやってちゃんと陳列したんです」

ルーナ「へぇ、本当。すごく片付いてるわね」

フェリシア「頑張りました。でも、途中で何個か落としちゃって……」

ルーナ「はぁ、整理中に落としたら整理にならないでしょ。まったく、フェリシアはドジなんだから……。そこにあるのも戻すんでしょ、ちょっと貸しなさい」

フェリシア「え、はい、どうぞ」

ルーナ「あたしの家の食器、すごく減っちゃったんだからね。これ以上修行前に壊されたらたまらないわ」

フェリシア「ふふっ」

ルーナ「な、なによ?」

フェリシア「やっぱりルーナさんはやさしい人なんだなって」

ルーナ「はぁ!? い、いきなり何言い出すのよ!」

フェリシア「だって、私ダメダメで最初はルーナさんに呆れられちゃうって思ったから」

ルーナ「何言ってんのよ。ワザとじゃないんだから、呆れることなんてないわよ。その、フェリシアが一生懸命メイド修行してるのは、素直に応援したいことだからね///」

フェリシア「……嬉しいですっ! ルーナさん」

ルーナ「というわけで、これから長い戦いに出るわけだから、一つ修業の成果を見せてもらおうかしら」ガタッ

フェリシア「え?」

ルーナ「ふふ、そこからあたしのいる場所まで紅茶を淹れて運びなさい。ふふっ、大丈夫、フェリシアにならできるはずよ。きっとね」

フェリシア「……はい、がんばりますね!」

~~~~~~~~~~~~~~

 ゴトッ ガサッ ググッ スポッ

エルフィ「うん、これで終わり。フローラ、こっちは入れられたわ」

フローラ「ありがとうエルフィ。これでやるべきことはおわりね。ごめんなさい、最後の最後に手伝ってもらって」

エルフィ「構わないわ。それにフローラの役に立ててうれしいもの」

フローラ「そう言ってもらえると助かるわ。でも、不思議なものね」

エルフィ「?」

フローラ「いいえ、あなたと出会って、ここでこうして話して、今は気軽にお願いを頼める仲になっている。こんなことになるなんて正直想像できなかったもの」

エルフィ「たしかにそうね。でもわたしとフローラが出会えた結果が今の関係なら、それだけで十分よ」

フローラ「もともとは妹を庇うために近づいたっていうのに?」

エルフィ「ええ。フローラがそう思ってくれなかったらわたしとの交流はなかったはず。寂しいけど、わたしはフローラのことを行軍する一人の仲間程度にしか考えていなかったはずだもの」

フローラ「……たしかに、私もここまで話をしてなかったら、前線を支えてる仲間くらいの印象しか持ってなかったかもしれないわね」

エルフィ「ふふっ、そうかもしれないわ」

エルフィ「わたしは仲間を守る盾だから、その立ち位置に間違えなんてないもの。私がいる限り、そう簡単に敵を通したりはしないわ」

フローラ「そう、今度からは私もそこにいるようになるけど、いいかしら?」

エルフィ「え?」

フローラ「私も前線に出るわ。あなたと同じ盾としてね」

エルフィ「本気なの……?」

フローラ「ええ」

エルフィ「鎧は重たいわよ」

フローラ「大丈夫よ」

エルフィ「熱いわよ」

フローラ「……大丈夫よ」

エルフィ「すごく蒸れるわよ」

フローラ「ふふ、いろいろと心配してくれてありがとう、エルフィ。でももう決めたことだから、流石に曲げるつもりはないから、よろしくね」

エルフィ「わかったわ。でもそれならわたしももっと強くならないといけないわ。一緒に前線を支えてくれる仲間が増えるんだから」

フローラ「これ以上どう強くなるっていうのよ」

エルフィ「毎日の腕立て腹筋をまず100回ずつ増やすわ。あとは……」

フローラ「大変ね。でも、そんなエルフィと一緒に戦えるのなら心強いわ」

エルフィ「そう言ってもらえると嬉しい。でもちゃんとあなたのことも守らせて、わたしの体は誰かを守ることにしか使えないから」

フローラ「さっきまで私の手伝いをしてくれたわ。守るだけじゃない、手伝うことだってできるはずよ」

エルフィ「そうね」

フローラ「それじゃ、食堂に行きましょう。少ししか時間はないけど、手伝ってくれたお礼に何か作ってあげる」

エルフィ「うん、お腹すいちゃった」

フローラ「ええ、わかってるわ」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『王の間』―

ガロン「そうか、カムイ達はディアへと向かったか」

マクベス「はい。明日の船の到着より先に着いて置きたいのでしょう。白夜に着いてからフウマ公国と協力の下、イズモ公国の制圧を開始しなくてはいけません。とはいっても、成功するかどうかはわかりませんが」

ガロン「ふっ、別に構わんことだ。もう使えぬ駒を利用するには丁度いいことよ」

マクベス「ガロン王様、使えぬ駒とは一体……」

ガロン「もはや用済みの駒は手元に置いておく必要もないこと。マクベス、お前もそれはわかっているだろう?」

マクベス「なるほど、そういうことでしたら。彼らは最後の最後に良い機会を得られるということでしょうな」

ガロン「ああ。それよりマクベス、本陣の動き組み上がりつつあるのだろうな?」

マクベス「はい、王都防衛についてですがガロン王様の指示通り、できうる限り裂かせていただきました。少なからず手薄ともいえますが、今の白夜に山や海を越えてウィンダムを落としに来る戦力はないと思われます」

ガロン「ああ、白夜にこのウィンダムを落とせる力などありはしない。それは誰が見ても明らかなこと、くくくっ」

マクベス「ですが、白夜の戦力の分散はかなり厳しいものになると予想されています。それを見越してのガロン王様の采配、マクベス感服いたしております」

ガロン「ふっ、白夜へ至る道は一つである以上、こちらの戦力の足並みを揃えなくてはならん。守るべき前線が少なくなれば、白夜は王都までの重要通過点に兵を置く。これは分散して叩くことは叶わない」

マクベス「はい。平原などで大規模な戦闘を仕掛けてくることはあまりないと予想しております。向こうもこちらの騎馬に対しての対処には出ていることでしょう。ですから、カムイ王女たちがイズモ公国を抑え、テンジン砦までの道を確保してもらえれば、ありがたいのですが」

ガロン「ふっ、そうならなかった場合のことを考えるのもお前の役割だ、マクベス」

マクベス「承知いたしております、ガロン王様。とは言っても、今こちらの戦力を考えれば勝つことは容易いのが現状というもの」

ガロン「ふっ、そうだな。どれだけ被害が出ようとも、白夜の滅亡は免れない。そうでなくてはならないのだからな……」

マクベス「ガロン王様?」

ガロン「話は以上だ。マクベスよ、作戦の決行までの時間は刻一刻と迫っている。戻り、策を煮詰めよ」

マクベス「はい、では失礼いたします」

 ガチャ バタン

マクベス「ガロン王様は王都防衛はすでにお考えでないということですか。まぁ、現在の状況を考えればそれも納得というもの。ガロン王様の目指されている場所は、私たちでは到底たどり着けない境地ですからね」

マクベス(しかし、そうでなくてはならないとは、どういう意味でしょうか。私にはこの現在の状況が勝ち戦ということくらいしか、思い当たる節がありません。ガロン王様には何が見えているのでしょうか?)

 タ タ タ

マクベス「む?」

ゲパルトP「マクベス様」

マクベス「ゲパルトですか、一体なんのようですか?」

ゲパルトP「ガンズ様からお話がありました。私たちもいずれは戦場に行けるようになると、マクベス様が取り計らってくれたと聞いております」

マクベス「許しをくれたのはガロン王様です。私の一存で変えられることではありませんからねえ、お礼を申し上げるべきはガロン王様に対してですよ」

ゲパルトP「そうしたか。ですが、ガンズ様の取次にマクベス様が対応してくれたおかげです。私も、暗夜王国のためにこの剣を振るえることを誇りに思っておりますので」

マクベス「……あなたのような人材がガンズの部下だというのがあまり信じがたいことではありますね。王城騎士にでもなっていればその忠誠心を認められたかもしれませんよ?」

ゲパルトP「その言葉は、弟に言ってあげてほしい言葉です」

マクベス「あなたの弟には残念ながらこの言葉はかけられませんね。あなたの前で悪いですが、彼は暴力主義者といっても過言ではありませんので」

ゲパルトP[たしかにそうかもしれません。ですが、弟もマクベス様に感謝しておられました。これでいっぱい魔法を使って人を八つ裂きにできると。庭を掛け回る犬のように」

マクベス「はぁ、自らの弟を犬と表現するあたり、あなたもあなたですね。しかし、ガンズとあなた方が優秀な戦力であることに間違いはありません。それを後方で燻らせているだけというのは、惜しいというもの。使える戦力は、それにあった場所にあるべきですからねぇ」

ゲパルトP「そう言って頂けるならば、私もこの剣を振ってきた甲斐があるというものです。前線に着き次第、この件で暗夜の敵を斬り伏せ続けて見せましょう」

マクベス「ふっ、その自信はとても良いものです、そして暗夜の繁栄はこの先にある未来ではあります。だからこそ、気をつけるところは気をつけるべきでしょう」

ゲパルトP「気をつけるとは?」

マクベス「追い詰められた白夜は先鋭を揃えていることでしょうから、気を抜けば途中で倒れることもあります。勝ち戦とはいえ、兵士が死なない戦などありません。闘いがある以上、兵が死ぬことは避けて通れない道ですからねえ」

ゲパルトP「……」

マクベス「なにか?」

ゲパルトP「その、マクベス様は真面目な方だと思いまして」

マクベス「ふっ、兵がいなければ戦いはでき無いというだけの話です。あなたは優秀な兵士ですからね、死ぬ場所は戦場である必要もありません」

ゲパルトP「ではどこでしょうか?」

マクベス「決まっています。ガロン王様が導き反映した暗夜王国の、そうですね自室などがいいでしょう」

ゲパルトP「かなり先のことになりそうですね、その自室が死に場所になるまでは……」

マクベス「ええ、そうです。ガロン王様の戦いが終わるまで、私たちは戦い続けるのですから。あなたもその歯車の一つ、簡単に壊れてもらっては困るのですよ」

ゲパルトP「なるほど、わかりました」

マクベス「では、長話も終わりです。あなたはあなたのするべきことに戻るといいでしょう。待っている間にあなたができる勤めと言うのはそういうものですからねぇ」

ゲパルトP「はい、それでは失礼いたします」

 タタタタタタッ

マクベス「……さて、私も戻って資料をまとめるとしましょう……」

「もう、時間は残っていませんからねぇ……」

今日はここまで

 明日でこの準備期間が終わります。

 兵士が死ぬ場所は戦場である必要もないと説くマクベスさん。
 

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港街ディア『宿舎』―
(カムイ達が白夜へ向かう当日)

カザハナ「ど、どうかな?」

レオン「………だめだね」

カザハナ「だ、だめ?」

レオン「ああ、少し渋みがある。適量をまだわかってないみたいだね」

カザハナ「そっか、うまく淹れられた気がするんだけど、やっぱり難しいね。形だけ真似してすぐにできるものじゃないか」

レオン「当り前さ。たとえば、いきなりカザハナの真似をして刀を握った人間が、すぐに君と同じ力を得るわけじゃない。そういうことと同じことだよ」

カザハナ「それもそうだね。ふふっ、よぉし、それじゃこれからもがんばっていつかレオン王子に認められる紅茶を淹れられるようにならないとね」

レオン「上昇志向なのはいいけど、しばらくはそういう練習に時間は割けない。さて、どこでその腕をあげていくのかな?」

カザハナ「へへー、あたし努力だけは怠らないつもりだから。それに色々と教えてくれる人も見つけられたからね」

レオン「教えてくれる人?」

カザハナ「うん、カムイ様のメイドさんがね。教えてあげるって言ってくれたから、時間があったら教えてもらう予定なんだ」

レオン「カムイ姉さんのメイドかね……。カザハナに教えるのは相当苦労するだろうけどね」

カザハナ「なによその言い方!! レオン王子がびっくりするくらいおいしいの淹れてみせるんだから!」

レオン「はいはい、期待してるよ……」

~~~~~~~~~~~~~

ジョーカー「それで、その役目を引き受けたってことか。なんというか物好きなことだ」

フローラ「いいじゃない。それにジョーカーとギュンターだって、私達が来た時はちゃんと支えてくれたでしょ?」

ジョーカー「それはお前がカムイ様に仕える人間だったからだ」

フローラ「そう、なら今はどうなの?」

ジョーカー「……そうだな。カムイ様に仕える人間であることは変わらない。前にも言ったはずだ、俺はお前を信用している。それ以上の答えを求めるのは野暮ってもんだ」

フローラ「そうね、ごめんなさい、野暮なことを聞いてしまって」

ジョーカー「気にするな。どちらにせよ、俺達が戦う理由はこの先変わらない、それが俺たちの関係でもあるんだからな。ただ……」

フローラ「?」

ジョーカー「その役目で必要な物とかがあれば遠慮なく言え、準備くらいは手伝ってやる。仕事に支障が出ないように仲間を支えるのも、カムイ様のためになる」

フローラ「ふふっ、ありがとうジョーカー。それじゃ、私たちも最後の準備に取り掛かりましょう。もうそろそろ船が着くはずだから」

ジョーカー「ああ……」

 ガチャ バタン

ジョーカー「さてと、最後に紅茶でも淹れるか、暗夜で紅茶を淹れるのはしばらく先になるかもしれないからな……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―港町ディア・宿舎『貴賓室』―

 カーン カーン カーン

カムイ「この音は……」

アクア「ええ、どうやら船が到着したみたいね」

カムイ「そのようですね。ではクーリアさん、北の城塞の守りの方、よろしくお願いしますね」

クーリア「ええ、受け取るべきものも受け取りましたから、これよりウィンダムへ残りの者たちを引き連れて向かおうと思います。スズメ、カムイ殿のことお任せしましたよ」

スズメ「はい……といっても私たちは守られる側かもしれませんから」

クーリア「謙遜されることはないです。スズメたちも力を確かに付けてきましたからね」

スズメ「確かにそうでしたね。クーリアさん達が授けてくれた力、必ず誰かを守るために使わせていただきます」

クーリア「ええ。そう言っていただけるととてもうれしいですよ」

スズメ「あの…クーリア様。一つよろしいでしょうか?」

クーリア「なんですか?」

スズメ「その、少しばかり寂しくなりますので、抱擁してもよろしいですか?」

クーリア「はは、別に構いませんよ。スズメも思ったより寂しがり屋なのですね」

スズメ「はい、それでは失礼して」ダキッ ギュッ

クーリア「ふふっ、もう一人娘が増えたような、そんな気分ですよ」

スズメ「娘ですか、それでもいいです。ありがとうございますクーリア様」パッ

スズメ「それではカムイ様、私は皆さんを船に案内しておきますね」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

スズメ「では、クーリア様。またいずれ、お会いしましょう」

クーリア「ええ」

 ガチャ バタン

アクア「とてもいい人ね……」

クーリア「ええ、白夜から無理やり連れてこられた方々が、こうしてまだ生きていられるのも彼女のおかげですよ」

アクア「ふふっ」

クーリア「?」

アクア「彼女はクーリアのおかげだと思っている気がするわ」

クーリア「ふっ、私は場所を提供したに過ぎませんよ。場所があっても、そこに根付き強く生きていけるかを決めるのは、そこにいる人々次第なのですからね」

カムイ「その人たち次第ですか」

クーリア「ええ、そういうことです。ですからカムイ様、あなたもその場所から目指す道筋、それを考えるべきなのかもしれません」

カムイ「それはどういう意味ですか?」

クーリア「私たちはあなたの目標のために忠実に動きましょう。ですがあなたはその目標までの道筋に含むべきものがあるのかもしれません」

カムイ「含むべきもの……ですか?」

クーリア「ええ、あなたが目指す目標の道中にあるものが、現実という事実なのか、それとも理想という儚い夢のようなものなのか」

カムイ「理想と現実ですか……」

クーリア「ええ、目標はあなたの道行く先にあります。それを使命と呼んでもいいでしょう。ですが、その過程はあなたの信じる道そのものになります。それは従う私達にとって大きな影響を持ち得ないかも知れませんが、あなたにはそれ相応の影響を与えることになると思いますので」

カムイ「何事にも心を持ってということですね」

クーリア「はい。あなたならその信じた道を進めると信じていますので。余計なことかもしれませんが」

カムイ「いえ、そんなことはありませんよ。むしろありがとうございます、クーリアさん」

クーリア「では、私はこれより残りの者を連れてウィンダムへと向かいます。カムイ殿、その時にまたお会いしましょう」

カムイ「ええ、その時にまた……」

 ガチャ バタン

アクア「カムイの目標ね……」

カムイ「目標は既に立っていますよ。この戦いを終わらせることですから。でも、クーリアさんはその過程について言っていましたね。その過程はあなたの信じる道そのものになる……ですか」

アクア「クーリアも手厳しいことを言うのね」

カムイ「それが私に課せられた責任でもありますから。私達は倒すべき敵について多くを知りませんから。この戦いの終着点がそこだとするなら、その過程がどんなものなのかは予想もできないことです」

アクア「カムイ、その―――」

カムイ「謝るのは無しですよ。アクアさんは教えられることをすべて教えてくれたんですから、ここで謝られても困ります。それにアクアさんに比べたら、これから私たちが欺き続けることになるのは、私について来てくれた人たち以外のすべての人たちになるでしょうから」

アクア「え?」

カムイ「アクアさんが私達に話すことを躊躇したことと同じですよ。誰も目に見えない敵を信じたりしません。私達は大義名分を片手に戦っていくことになります。私たちの戦いは本当の目標を誰にでもわかる大義名分に隠しているんですよ。誰にも理解されないまま、世界が平和になった時にさえも明かされることはないんですから」

アクア「……そうね」

カムイ「だけど、ハイドラを倒すことが結果的にこの長い戦いの終わりに繋がるのなら。それは素晴らしいことです。だから、私はその目標を目指さずにはいられません」

アクア「カムイはなんだかんだで夢を持っているのね」

カムイ「はい、私は動くのが遅すぎました。その結果、助けたい人達を幾人か失ってしまいました。理想を語るなら、私は多くの人を助けていきたいです。でも、それを最後まで持っていけるかどうかはわかりません。目標を目指すために、理想を折る時があるかもしれません。私には葛藤があまりにも少なすぎますから」

 ゴソッ

アクア「竜石ね」

カムイ「私の悩みを吸い取ってくれるこれは、私に色々な決断をくださせるかもしれません。愛する人や弱き人を救う理想より、いずれ至る戦いの終わった世を求めて現実的な方法を選ぶかもしれません。それが最後の最後で私にどういった結果をもたらすのか、考えると怖いことですけど……」

アクア「大丈夫よ。あなたの理想はそう簡単に砕けたりしないわ。それに現実的な判断をあなたがしても、私たちはあなたを見捨てたりしない。それがここに私やみんながいる理由だもの」

カムイ「……ありがとうございます、アクアさん。こんなにたくさんの人たちに囲まれて私は幸せ者です。だから、守っていきたいです。そして、ここにいない守りたい愛する人たちのことも……」

アクア「白夜の皆のことね?」

カムイ「リョウマさん、ヒノカさん。それにタクミさんも同じです。サクラさんのためもありますけど、なにより私にとっては大切な人たちに変わりはありません。だから、白夜との戦争もどうにかして終わらせたいんですよ」

アクア「……何か考えているのね」

カムイ「はい、でもそれは暗夜での目的が果たされたときに、改めて教えたいと思ってます。今はまだ準備もできていないことですから」

アクア「そう、あなたがまだ話をするべきじゃないと思っているのなら、それで構わないわ。あなたが私たちを導いてくれるなら、その時に道を示してほしいから」

カムイ「そう言ってもらえると、助かります。アクアさん」

アクア「そろそろ行きましょう。積み荷を乗せるのはもう終わったはずだから」

カムイ「はい……あっ」ポロッ

 カツンッ カランカランッ コロコロコロッ コロンッ

アクア「駄目よ、竜石を落としては。そう簡単に割れるものではないけど」

カムイ「すみません。その取っていただいてもいいですか?」

アクア「仕方無いわね。あったわ………!」

カムイ「?」

アクア「………」

カムイ「アクアさん、どうしました?もしかして、竜石が割れてしまったんですか!?」

アクア「……いいえ、なんでもないわ。はい、今度は落とさないようにしなさい」

カムイ「はい。アクアさんから頂いた大切なものですから、肌身離さずを心掛けないといけませんね」

アクア「ええ」



アクア「ねぇ、カムイ……」

カムイ「はい、なんですか?」

アクア「……いいえ、なんでもないわ。それじゃ行きましょう、みんな待ちわびているはずだから」

カムイ「ええ、それじゃ行きましょうか」

 ガチャ

アクア(……部屋が少し暗かったからよね……。きっとそう、悪意や悩みが暴走の原因なら、この頃のカムイにそれはあまりなかったはず)

アクア(多分、今のは私の勘違いよ。気の所為に決まってる……)

(竜石が少し黒ずんでいたように感じたのは、きっと……)
 
 バタンッ

◇◇◇◇◇◇
―白夜・フウマ公国『地下牢』―

???「……」

 カッ カッ カッ

???「調子はどうだ? 白夜のクノイチ、いや、カゲロウと呼ぶべきか?」

カゲロウ「……」

???「ふっ、未だに強情なものだ。これほど辱められ痛めつけられても弱音すら吐かずに持っているとはな。しかし、白夜も馬鹿揃いだ、こんな忍一人見限ってしまえばいいものを。それを必死に奪還しに来るとはな」

カゲロウ「なに!?」

???「ふっ、流石にこう言う話題には反応するか。あのとき、捕らえたもう一人も貴様を助けるために身を出した。貴様は見た目も淫靡だが、そのあり方も男を狂わせているのかもしれないな。我が国に挑み、無駄に死んで行く白夜の者たちはまさにその証明、先日も三人ほど殺してやった」

カゲロウ「コタロウ……貴様」

コタロウ「貴様にはまだ生きていてもらう。少しすれば暗夜より白夜侵攻の先行部隊が到着する。長旅で溜まっている暗夜の男どもに、貴様を差し出し、少しばかり好感を得ておこうと思っているからな。喜べここの男たちを喜ばせることばかりの日々に、ようやく終わりを告げられるのだからな。もっとも、白夜の男ではなく、暗夜の男たちの道具になるだけの話だがな?」

カゲロウ「くっ、殺せ!」

コタロウ「ははっ、威勢がいい。そういう態度を崩さないから貴様はとてもいい。強き女を堕とすのは楽しいことだからな。さぁ、今日もまだ満足していない男たちがいる。その相手をして、無力さを噛みしめるといい」

 ガチャ

男「ふへへ、今日も色々と楽しませてもうぜ、カゲロウちゃんよぉ」

男「ああ、さてと、そのスケベな体で今日はどうしてもらおうかな?」

カゲロウ「さ、触るな!」

男「けっ、こんなにやってんのにまだまだ堕ちてねえのか。まぁ、まだまだ楽しめるから嬉しいけどよ」

コタロウ「あまりやりすぎるなよ。明日には違う奴の女になるかもしれないからな」

男「わかってますよ。それじゃ今日が入れ収めってことかよ? いっぱい楽しませてもらわなくちゃな……」

カゲロウ「ぐぅっ! あっ、んんんああああっ!!!」

コタロウ「さっさと堕ちれば楽になれるというのに、強情な女だ」

 ガチャン

忍「コタロウ様」

コタロウ「どうした、お前もしに来たか?」

忍「いいえ、どうやら白夜の部隊が接近しつつあるようです。と言ってもこの夜に攻めてくることはないでしょう。ですが、明日には多くがこちらに向けてやってくるかと」

コタロウ「そうか。邪魔が入ってしまったようだ」

男「なんだよ、俺はもう始める気満々だったのによぉ」

コタロウ「うろたえるな。どうせ相手は白夜の雑魚共。軽く片づけられる。それが終わった後、存分に楽しめばいい」

男「あんたの先行作戦の部隊が来る前に片づけられれば、楽しんでいいってことだな」

コタロウ「ああ、先に使って構わん。さぁ、持ち場に戻れ」

 タタタタタッ

カゲロウ「……くっ」

コタロウ「そういえば、先行作戦を負かされているのは王女だと聞いている」

カゲロウ「なに?」

コタロウ「ああ、その王女が好きものならば、女でももらってくれるだろう。男の後は女の相手をすることになると考えれば、面白い人生を送っているといえるな」

カゲロウ「……その王女は」

コタロウ「ああ、カムイと言ったか」

カゲロウ「………」

コタロウ「ふっ、捨て子の王女という話だが、腐っても暗夜王族。媚を売っておいて損はない。明日を楽しみにしておくことだカゲロウよ。ふはははははっ」

 バタンッ ガチャッ!

カゲロウ「……」

カゲロウ「そうか、カムイ様は生きておられるのか……」

カゲロウ(……カムイ様。もしも叶うなら、あなたに礼を言いたい。あの日、あの国境戦の戦いで私を生かしてくれたことを。そのおかげで、リョウマ様とサイゾウを白夜に帰すことができたのだから……)

カゲロウ(だとすれば、こうしてフウマを攻めているのはお前なんだろう。私のことなど捨て置いて構わないというのにな……)

―フウマ公国・近辺の森―

 ササッ ザッ

忍「ここから先は奴らの領域です。夜に抜けるのは難しいと思われます」

サイゾウ「わかった。始まる前、こちらの手数を減らすわけにはいくまい。ここにて明日を待つ」

忍「わかりました。他の者にもそう伝達いたします」

 シュッ

サイゾウ「……カゲロウ、スズカゼ。お前たちはまだ生きていると俺は信じている」

サイゾウ「お前たちを助けだして初めて、俺はもう一度リョウマ様に仕えられると考えている……いや、違うなお前たちを助けだしてこそ、俺はこのサイゾウの名を紡げる」

サイゾウ「だから覚悟しておけ、コタロウお前にはあらゆる借りを返してやる。行ってきた罪の数だけ、もだえ苦しで逝け……」

「それがお前に許される、唯一の権利なのだからな……」

 

 準備期間 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラC→C+
(すこしは他人に甘えてもいいんのではないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキC+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

今日の本篇はここまで

 これにて準備期間は終わりになります。

 次の第十七章から時折発生する『指針選択肢』について説明したいと思います。

 現在、カムイには二つの指針が存在しています。
 一つは『理想的』
 一つは『現実的』

 表向きにはどちらがそれであるかは書きませんが、選択肢的にどちらをさしているかわかりやすくしようと思います。

 指針選択肢が発生した場合は
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『私は……』
 1、マクベスさんを斬る
 2、マクベスさんを抱きしめる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※ご覧頂いている選択肢は開発中の物です。本篇とは一切関係ありません※

 このような感じの安価の選択肢を出す形になります。
 基本的に先に『3回先に選ばれた』選択肢を選ぶ形になると思います。

 ある章までにどちらの選択肢が多かったかによって、EDが分岐する形になるのでよろしくお願いします。

 
 ここから、フォレエポ番外の最後
 

◇◆◇◆◇









 天蓋の森の出来事から早二週間経った。例のちょっかいを出してきた何者かは未だに特定できていないけど、それも秒読みの段階に入っている。
 あたしはというと、どうにか歩けるまでに回復して、ようやく医院を出られたところ。久々に仰ぐ空は何とも格別なもので、すぐさま物色するようにキョロキョロと周囲を見回す。すぐに見つかった、剣を眺めながら話し合ってる男二人組の姿がある。あーだこーだと言い愛していて、退院した直後でいいものが見れた。

「ふふっ、うふふっ」

 二人は表向きにはとても仲の悪い二人組、剣の趣味も反りもあわない。でも、実はこうやって二人で出掛けちゃうような仲。

『この剣にしよう』
『えっ、でもそれ夫婦剣じゃないか』
『だからこそだ。なぁ、もうそろそろ、誤解を解かないか?』

 残った手で彼の手を撫でる。ゴツゴツとした手の甲の感触、いつも訓練の時にぶつかりあう、なまめかしい汗が脳裏をよぎる。だめだ、ここで、ここでそんな風にされたら。

『俺はお前と同じ剣を握って、同じように駆け回りたい。もう、俺たちを引き裂くような偽りに終止符を打とう』
『だ、だめだ』
『どうしてだ……』
『お、俺は今のままがいいんだ。お前と切磋琢磨してると、いつでも力が湧きあがる。でも、今の関係を壊してしまったら、俺は、俺は……』

 不安な面持ちで見つめる熱い視線、二人がここまで続けてきた偽りを崩した時、何が起こるのか。でも、そんな恐ろしいことにさえ彼は――

「エポニーヌ!」
「へっ、あ、フォレオ……」
「あっ、じゃないですよ……。さっきから足を突然止めたので、どうしたのかと思いました」

 妄想が静かに去って、眼の前に主だけが映り込む。フォレオは、あたしが退院しただけだというのに、すごくおめかしした格好をしていた。なんていうか、誰がどう見ても女の子にしか見えない、そんな格好である。これは世の男どもが放っておかないわねと、口の中に生まれた唾液を呑み込んだ。

「ご、ごめんなさい、久しぶりに外に出たから、ちょっと町の光景に夢中になってたみたい」
「そうですか、その、ごめんなさい」
「え、なんでフォレオが謝るのよ。あたしがヘマしただけなんだから、フォレオが気にすることじゃないわ」
「エポニーヌがそう言ってくれるのなら」

◇◆◇◆◇







 フォレオが笑う。うんうん、フォレオはやっぱり笑っても可愛いし、なにより主君にはできる限り安心していてもらいたいのも確かだ。
 まだ体の傷がふさがって少ししか時間が経ってないこともあるし、観察空想シテるところを体が痛んでると取られて、心配されるのも嫌な話だ。今日は少し自粛しようとしていると、手にサワサワと触れる感触。顔をあげれば、少しだけうつむいてあたしの手に指を這わせるフォレオがいる。

「フォレオ? どうしたの?」
「そ、その、手を……繋いでもいいですか?」
「へ?」
「いえ、その……まだエポニーヌは完全に治ったというわけじゃないから、その。いやなら……いいんですけど」

 ああ、これは気を使われているということだろう。別に気にする必要もないのに、それに殴られる寸前に邪な妄想してたっていう最悪の落ち度があたしにはあるのに。でも、ここは主君の意向を尊重してあげるべきね。

「それじゃ、おねがいできるかしら?」
「は、はい。その失礼しますね」

 そう言ってあたしはフォレオの手を待った。
 二秒経った。四秒経った……。

「はぁはぁ……」

 十秒経った。遅い遅すぎると心で愚痴る。一体何をシているフォレオぅ、その悩ましい動きはジークベルトにしてあげて、そうすればあたしとしてはすっごくニヤニヤできるはずだから。

「大丈夫、大丈夫です。ふ、深い意味はないんですから……」

 なにやらブツブツとフォレオが自問自答しているけど、さっきから手を艶めかしく触られて、若干恥ずかしさを覚えてきた。

 フォレオもお忍びでここに来てる。少し変装してる。可愛い変装、だからこそ、こうやって道の端で動かずにいると人の目に晒される。観察するのは好きだけど、観察される側になるのは正直苦手だ。
 そうして、プラス十五秒、計二十五秒という大層な時間を掛けて、フォレオはあたしの手を握ってくれた。その間、あたしたちを見て『なんだかあの子たち、女の子同士なのに雰囲気良いわね』と零している声を聞いた。
 ああ、そうか、フォレオって男の子なのよねと、そこでふと思い出した。

「ごめんなさい」
「いや、なんで謝るのよ。周りに見られて恥ずかしいなら無理しなくてもよかったのに」
「ま、周りですか?」

◇◆◇◆◇







 その言葉でようやく周りの興味の視線を受けていることに気づいたようで、フォレオの顔が染まる。
 紅潮した顔を隠していやんいやん、それを見た周りの男たちに走る衝撃、なんて可憐なんだ、一体どこの人なんだろう。そして彼らは知るの、フォレオが第二王子レオンのご子息だということを。でも、諦めきれない。身分の差なんて些細なこと、男たちは再び可憐な花に出会うために心を固めた!

「そして始まるのね、地下街から王城への愛の群像劇が……。うふふっ、うふふふふふ」
「エ、エポニーヌ……涎が」
「へっ、うわあああああ。ごめん、ごめんね。ああもう、これじゃフォレオにまた迷惑かけちゃうじゃない」
「ふふっ、そのここにいるのは少し恥ずかしいですから、ちょっと移動しましょう」
「ええ、賛成よ」

 そこで申し訳程度にフォレオの手に力が入った。
 何をそんなに力を入れる必要があるのか、あたしには理解できなかったけど、なにか熱意的な物を感じて、少しだけフォレオの男の子っぽい所を見れた気がした。

「ところで、エポニーヌ」
「ん、なに?」
「さっきの地下街から王城への愛の群像劇っていうのは……」
「あー、き、気にしないでいいわ。もしかしたらそんなこともどこかであったのかなって思っただけって言うか、まぁ、そんな感じよ」
「どんな感じなんですか……」

 そしてあたしはフォレオに導かれるまま、人気のない方角へと自然に進んでいくのであった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ようやく、何かしらことが動いているとあたしにも気づけてきた。
 まだフォレオ、正確にはレオン王子の政策に対して異議を唱えている連中が捕まっていないことは知っていたけど、多分それ関連であたしの知らない何かが動いているのだろうと、少しだけ理解できた。
 多分、フォレオは囮か何かなのだろう、そしてあたしがいるのは足手まといを入れることで、狙わせる効率を高くするため。まぁ、足手まといっていうのは少し傷つくけど実際そうなわけで、あたしは何も言わずにただフォレオの進む通りに周りを観察していた。
 最初に襲われた交易の街、あの寂れた街の一角に似ている。王都ウィンダムといえど、こんな場所は数多くある。貧困街ほどとは言わないけど、ここら辺一体は昼間人もいないし、なにより家屋とは名ばかりの空き家ばかりがある。
 相手も必死になっているのならなりふり構っていられないはず。そう言った連中を根こそぎ捉えるつもりなのだろう、現に……ちらほらと家屋から気配を感じた。

◇◆◇◆◇







「あの、エポニーヌ」
「なに、フォレオ」
「……その、ごめんなさい」
「だから、何をあやまってるのよ」

 あたしはできる限りとぼけたままでいる。というか、ここでとぼけておかないといけない。家屋の中から父さんが見ていようものなら、何を言われるかわかったものではない。だから、あえて恍ける。たぶん、万全を喫した作戦だから、大丈夫だとは思うけど、あたしも少しだけ体の調子を確認する。走れないという最悪のアドバンテージに目をつぶれば、それなりに動けるとは思う。フォレオを守るためにできることは、相手の足止めくらいなものだが、それで別に構わない。
 相手が何をしでかしてくるのか、少しだけ興味があるというのも事実で、あたしは再び視線を張り巡らせたところだった。
 握られた手に力が籠り、足が止まる。

「……」

 先を歩くフォレオの視線の先に、これまた種も仕掛けもなさそうな黒装束が六人、ただぱっと見ただけでわかるほどに持っている雰囲気から手慣れであることは予想できる。

「暗夜王国王子レオンの子息、フォレオだな」
「だったらなんだというんですか?」

 フォレオも予想はしていたらしく、声に震えはなかったけど、あたしの手を強く握りしめている。
 やっぱり、怖いものは怖いよねと、あたしは腰に忍ばせておいたナイフに手を添える。最初に現れた盗人とはちがう奴らだ。捕まえるなら今すぐなのだろうけど、今動かれて自決でもされてはかなわないというのが、今回の作戦の方針なのだろう。
 捕まった後は、男の尋問官にイロイロとイイことされるに違いない。

「そうか、では取りかからせてもらう」
「女は?」
「殺して構わん。あの男らしくもない子息は足を斬り落としてもいい、すぐに逃げられぬようにな……。だが、持ち帰れないと思ったのならば、すぐに殺せ」

 見せびらかすように出てくる出てくる。小剣大剣、フォレオは何かを持っているようには見えない、本当に丸腰だ。
 あたしは臣下として役目を果たすために、心の切り替えに入る。この血の一滴に至るまで、主君を守りぬくのがあたしの勤め。心を入れ替え、ナイフを取り出そうとした時、それをフォレオに止められた。

「エポニーヌ……僕に任せてください」

◇◆◇◆◇






 フォレオはとても凛々しくそう言ってくれる。今のあたしができることは足を止めて戦闘することだけで、実質生存は考えていない。でも、フォレオの目には二人とも生き残れる算段があるようだった。というよりも、未だに姿を現さない他の皆のことを考えれば、たぶんそうしないと作戦が成功しないのだろう。

「……わかったわ」
「……ありがとうございます」

 そうしてフォレオが静かに腕を捲って、次の瞬間にあたしをお姫様だっこした。ってあたし……お姫様だっこされてる!?

「エポニーヌ、首に手を回してください」
「え、ええ」

 言われるがままにそうすると、フォレオは来た道とは違う路地へと足を進める。どうやら、逃げるというのが今回の作戦における重要点らしかった。
 少し遅れて黒装束のかけ足が聞こえてくる。フォレオはというと、あたしをもって走っているのに、なんら気にしていないような雰囲気だ。あたしの中のフォレオのイメージじゃないわ。

「な、なんでこんなに走れるの!?」
「ちょっと、魔法で一時的に身体能力をあげてるだけですよ。その、いつもはこんな風にエポニーヌを抱きあげられませんから」
「ドーピングってことね」
「そ、そう言われるのはなんだか、でも、お父様が手伝ってくれたんですよ。僕にいっぱい教えてくれたんです」
「お、教える……父から子へ、教える。どんな濃厚な時間だったのかしら?」

 そんな時間を考えるという戦いの後の楽しみが増えたところで、あたしはすぐに後ろを確認する。どうやら敵は数人に分かれたようだった。こちらを追い掛けてきているのは二人、残りの四人がどこへ行ったかはわからなかった。

「どうやら、敵さん別れたみたいね」
「そうですか、予定通りですね」

 フォレオの声には安堵が生まれていた。
 次の路地を曲がる。曲がったところで追い掛けてきた二人の動きに再び変化が生じる。
 どうやら、先に見えている路地から仲間が現れ挟撃する算段でもあったのかもしれない。それが来ないということに、罠に嵌められたのが自分たちだと気付いたらしく、少し焦りにも似たものが見え隠れしていた。
 そんな追手を気にせず、フォレオの足は大きな広場へと向かう横道へと入る。そこに多くの暗夜軍兵士が待っているのがわかった。

◇◆◇◆◇







「エポニーヌ、すみません、こんな長時間引っ張り回すようなことを」
「別に構わないわ。それよりも、こんなことフォレオにさせちゃうあたしが問題よね」
「そんなことありませんよ、それに僕はエポニーヌをこうして抱えられて、その、とっても嬉しいんですから」
「それってどういう意味?」
「そ、それは――」

 疲れてきたのか、顔を真っ赤にしてフォレオが何かを言おうとしていた。それを聞こうと一瞬だけ態勢を戻したとき、少しだけ数歩先に見える地面に目が向く。
 うすぼんやりと見える輝き、最初は金貨の類かと思った。よくもまぁ、落ちてるものだと感心しちゃう。
 だけどマジマジと見てみると、それは何か法則性を持ていて、だんだんと色を帯び始めている。
 円形の輪郭に幾つもの記号文字、そしてその光の正体が、魔法関連の物であると私はどうにか察する。どうやら、罠に嵌められたのは私たちの方らしい。
 フォレオはそれに気づいていない。まだ作戦は終わってないのにと思いながら、この前の私自身を思い出す。フォレオは多分、予想していないから気付けない。このままいけば、あの地面に彫り隠されている魔方陣へ二人でゴールインしかねない。どんなものだかわからないし、これをフォレオが仕掛けたとは思えない。先に見える暗夜の兵士たちも私と同じようにその地面の変化に気づいているようだった。
躊躇せず、一気に体に力を入れると、フォレオの顔が少しだけ曇り、追手の声が色めく、魔方陣の仕掛け主もすぐに判明した。万々歳ね。

「フォレオ、ここまでありがと」
「え、エポニーヌ?」
「ちょっと痛いけど、我慢してよね!」

 そう言って一気に全体重を掛けてフォレオの腕から逃れる。すでに魔方陣のテリトリーに入り込んでいた。
 地面がぼんやりと光を放ち始め、ようやくフォレオもその仕掛けに気が付いて、慌てて足を止めようとしていた。止めたら駄目なのにねと、あたしは両足に力を込める。
 脇腹の傷口が開く感触があった。さすがに完全完治しているわけじゃないから仕方ないわと心で言い訳し、そのままフォレオを一本背負いの方式で投げる。
 フォレオの運動エネルギーはまだ全然相殺されていないから、私の力でもそれなりにいい距離が稼げた。魔法陣の外側に落ちたフォレオと目が合う。
 ああ、また泣きそうな顔してると、安心させるようにあたしは微笑んで、眼の前を黒い光が包みこんだ。

◇◆◇◆◇








「ぐっ……いったあぁ」

 よく声が響く場所だと思った。目の前が真っ暗になって、少ししてから視界が開ける。
 さっき無理した拍子に開いた傷口の痛さに、思わず声が漏れた。漏れて反響した声に、ここがまるで違う場所だということはすぐに理解ができる。
 まぁ理解できたところで、もういろいろとお手上げなんだけど。

「なんだい? オカマの子息じゃないじゃないか!?」
「み、みたいだな」

 高飛車な女の声と、胡散臭い男の声がして見れば、そこには場所に似合わない清楚なドレスを着た貴婦人と、この場所に似合うみすぼらしい恰好をした男が一人ずついた。これが貿易の街からフォレオを狙っていた黒幕なのだろう。
 予定通りならここにフォレオがいてナニかをするつもりだったのだろうけど、その予定が狂って怒り心頭って言った感じかしら?

「そういう感じね」
「だまりなさい!」

 どうやら小言一つにも反応してしまうくらい、頭に血が上ってるらしく、華やか格好に似合わない拳であたしの顔面を殴る。地味に痛かった、こんなのでフォレオが殴られてたら大変だわ。

「ど、どうする、この娘」
「しらないわ。ああもう、議会に間に合わせるには、ここであのオカマの子息で揺するくらいしないといけないっていうのに。どうして、こんなクソガキが来るのよ!」
「きゃっ」
「可愛い声で鳴いてんじゃないわよ。ああ、そう、あんたね。いろいろと私たちの邪魔をしてた、乳臭いガキっていうのは」
「……だとしたらなによ」
「そう、なら使えないわけじゃないわね……。あの子息はあなたにアツアツみたいだもの」

 アツアツ――ってなによ?

「? なに言ってんの?」
「……あはははははっ、これは傑作だわ。乳臭いだけかと思ったら、脳みそはもっとお子様じゃない。ふふっ、もしかしてあの子、問題を解決したところをあなたに見せたかったのかもしれないわね。あんな見た目をしてるのにねぇ」

 見た目、フォレオが気にしていることだけど、それよりも女が口にしていることの意味の方があたしは気になっていた。
 アツアツとか、解決したところをあたしに見せたかったのだとか、まるでフォレオがあたしにいろいろと思っていることがあるみたいな言い方で、主君と臣下の関係を壊されるような、そんな気がしてならなかったのだ。

◇◆◇◆◇






「勝手なこと言わないでよ。あたしに好かれる要素なんてないわ」
「そうね、普通の男なら、あんたみたいに乳臭いガキに興味なんて持たないわ……でも、変態さんなら興味を持つかもねぇ」

 貴婦人の言葉にもう一人いた男がデヘヘと笑う。その手には縄が持たれている。
 さて、ナニをしようとしているのか色々と考える。縄を使ったシチュエーションと言えば、お気に入りの籠シリーズでよく使われた、ぶら下げからの濃厚な絡みだけど。

「ふふっ、その何も入ってない頭で何を考えているのかは知らないけど、大丈夫よ、すぐに汚させたりしないわ。ただ、可愛い可愛いあなたの危険をオカマちゃんに知らせてあげるだけだから」

 これはよくある、こいつの命が……という奴だろう。なら、あたしが死ぬことでそれは解決できそうだと思った矢先、口の中に布を押し込まれる。ゲヘラと笑う男が入れた布、口内に少し入り込んだ指はめちゃくちゃ気持ち悪くて吐きかけた。

「ふへへ、涎だ。レロレロ」
「!!!!!」

 目の前で付着したあたしの唾液をおいしそうに舐めとる男の姿に、自然と背筋が凍った。そのまま後ろ手を取られて釣り上げられると、手首を縛られて金具に吊るされるようになる。ちょうど、つま先を伸ばしてどうにか立てるという距離に、足がフルフルと震えて、そんなあたしの姿に、男はとても興奮しているようだった。脇腹の開いた傷からあふれ出た血が衣服を汚していくと、それを見て男は服に手を伸ばしてきた。

「ひ、ひひゃ!」
「あははっ、なんだいなんだい、可愛い声を上げて、無理やりされるのが好きなのかい。そんなに体を揺すってさ」

 男と話をすることが苦手なあたしにとってすれば、厭らしく嘗め回すような手で触れられるのは嫌悪を越える。すぐにでも蹴り飛ばしてやりたいと足に力を入れようとすると、脇腹の痛みがそれを止める。さらに広がった服の血染みに男の熱い視線が降り注ぐ。

「はぁはぁ、なぁ、もっと、もっといたぶりてええ」
「元々はオマカ子息をそうする予定だったのに、本当節操なしなダメ男ね」

 ダメ男と言われても、その手は体を弄ることを止めない。
 首筋から胸、腰に伸びた手は傷口の周りを撫でまわし、その度に体に走る痛みに息が漏れた。
 感じてる、そう感じてる。快感ではなくて痛みのほうだけど。
 めちゃくちゃ痛くて、声にならない衝撃だけが体を支配していた。爪が傷の輪郭に触れたて漏れた嗚咽に男が喜びの声を上げた。

◇◆◇◆◇







「はぁはぁ、傷口広くして、そこに、はひぃ、はひっひ、す、すごくきもちぃぃぃんだろうなぁあああ」
「どーどーどー。今はやめときなさいよ。晴れ姿を焼き付けできたら、好きにして構わないから。まずはその貧相な体を隠してる布切れ、ひん?いちゃいな」
「あああああ、早く。早くやりたいなぁ。げへへ」

 触っていた指が容赦なく胸元に掛かり、力任せに服を引きちぎる。胸が乱暴に揺れて、さすがの恥ずかしさに頭を垂れた。痛みで体中が敏感になっているから、仕方ないとしても、その、主張してるのを見られるのはすごく嫌だ。

「はははっ、なになに、傷口触られて感じちゃったの? この男といいコンビになれそうね」
「ひひはふ!!!!」
「ふふっ、あなたが変態なら、オカマちゃんも変態さんでしょうね。傷口弄られて感じちゃう、そんなドMなんだから」
「ふぐっ、ーーーっ!!! っ!!!」

 服の肩掛けを破り捨て、そのまま母さんに編んでもらった三つ編も無理やり解かれる。
 下ろした髪の毛が前に垂れて乳房を隠して、髪の先端が触れた時、少し甘い声が漏れた。そのタイミングに男が爪を立ててスカートに手を伸ばしていたので、男の顔が嬉しく歪む。
なんていうタイミングで声出してんのよ、あたしは……

「なんだいなんだい、やっぱり無理矢理が好きなんじゃないか」
「ほ、ほれはひはう、ひはふは!」
「まぁ、違おうと違わないと別にかまわないわよ。だって、焼き付けが終わればあんたは用済みなんだもの。記憶の片隅に、無理やりされるのが好きな乳臭い淫乱がいたことくらいは覚えておいてあげる」

 言われたい放題であると、最後にスカートが音を立てて引き裂かれる。まだ生え際くらいなあたしのそこを見せないように太ももを摺り寄せる。そうして恥ずかしさに悩んでいるあたしを男と女はとても楽しそうに見つめていた。片方は欲情を含め、片方は加虐性を含めて。

「いいわ、必死さが伝わってきて。まるで生きてるみたいに見えるはずよ、もうその頃には死んじゃってるだろうけどね」
「なぁなぁ、は、はやく、してくれよぉ、もう、おれ、こいつで、がまんする、からよぉ」
「はいはい、でも、安心しなさいよ。最後にあのオカマちゃんも食べさせてあげるから……。ふふっ、二人揃っておんなじ男に汚されて死んでくなんて、本当にお似合いね」

 何がお似合いだ。ここで死ぬことが似合うのはあたしだけで十分、そもそもフォレオだって、その焼き付けが終わった後にあたしが生きているなんて思わないはずだし、レオン王子は政をちゃんとやり遂げるはず。
 結局、あたしが死んでもフォレオが死ぬことはあり得ないし、あんたたちの勝ちになるわけがないのよ。

◇◆◇◆◇






 そんな風に思っていると、男の手が静かに忍び寄ってきた。

「ちょっと我慢しなさいっていってるじゃない」
「ちょ、ちょっと、ちょっとだけ、みてえんだ。こいつの、ここ。ど、どんなかんじなのかさぁ」

 力を入れていた太ももに手を入れてくる。この先にあるのは何かわかって、その事実にあたしは体中が凍って、純粋に恐怖した。
 い、嫌だ。素直にそう思った。

「ひやっ! ひやああああ!!!」」
「? 何慌ててんのさ。これからいっぱいいっぱい可愛がってもらえるんだからさ。いまさら見られるくらいどうってことないでしょう? そうだ、御開帳したものを送ってあげるわね。オカマちゃんも喜んでくれるわ。もしかしたら夜のオカズにしてくれるかも。女冥利に尽きるわねぇ」

 関係なかった。見せたいとか見せないとかじゃなくて、ここを開かれたら負けたような気持ちになるってわかっていた。だって、ここはこの歳になって見せびらかすようなものじゃない、なにより、こんな男に見てもらいたい場所じゃない。触れてほしくもない、触れてもらうなら……大切な人がいい。

『エポニーヌ』

 頭に少しだけ駆け抜けた聞きなれたあたしを呼ぶ声が聞こえた。主君として見てきた人のいつもの呼び掛ける声が聞こえて、それにさっきまで女が言っていたことが重なっていく。アツアツだとか、お似合いだとか……。
 でも、今のあたしは死ぬよりも嫌なことがあって、それは、この体を弄りまわされることだと気が付いた。
 それが何でなのか、だんだんとわかってきて、心の中にあるあたしの線引きが少しだけ崩れ始めた。いつか母さんに聞かれたことを思い出す。
 フォレオの事をどう考えているのかという言葉。守るべき主君で、あたしに妄想を提供してくれて、気軽に話せて、手を握りあっても全然怖くなくて……あたしの頭にずっといるそんな人……

「じ、じたばたしても、いみないんだなぁ。そ、それじゃ――」

 もう裏モモにまで達した奴の手の力に逆らえない。脇腹の傷も完全に開いて、今では血を垂れ流している。死のうと思っても死ねない。フォレオが生きてることは多分唯一の誇れることだけど、それ以上に今さらここに来てフォレオが色々とあたしを見ていてくれたのかもしれないと思うと、情けなくなって、気づいたら涙がこぼれていた。

◇◆◇◆◇






「ふふっ、涙まで流しちゃって、これはいい画が出来そうだよ。ほら、さっさと開いちまいな」

 女の言葉に男の力がジワリと加えられていく。閉じていた足が開いていく、見せたくない触れさせたくないそこを守ってくれるものは何もなかった。

(いやよ……フォレオ。あたし、まだ、あなたのそばにいたいのに……)

 望みを口にしたらいけないと思いながらも、あたしはその言葉を思うしかなかった。こう思ったら臣下失格だってことはわかってるけど、思わずにはいられなかった。最後に、そう願っても罰は当たらないはずだから……

(フォレオ……助けて)

 男の手が最後の仕上げに入ろうとしたときに、女が魔法書を静かに広げてあたしに向けてくる。あれが焼き付けという行為なのかもしれない。こんな恥ずかしい姿を取られてボロボロに犯されて終わるのが、あたしの人生。そして、素直になるのが遅すぎたあたしの人生。思えば、そうだったかもしれないと内心で諦めたように笑う。頭の中が暗くなって、もう何も考えたくなくなって、ぼんやりと頭を垂れた。
 そして、大きな音が響いた。

「!? な、なによ、あんたた――」

 それは大きな物音だった。垂れた視線の先をごろんごろんと軽快に何かが横切っていく。黒い髪と驚いたままの表情、血の軌跡を描いたそれが貴婦人の生首だと気付いたときには、足に手を入れていた男が振り返って狼狽して、すぐに何やら奇声を上げる。ぼうぼうと燃え盛る炎が視界にちらつき、男がのたうちまわってやがて動かなくなった。
 何が起きたのかなんてわからなかったし、さっきまでの流れに頭が動くことを拒んでる。脇腹の傷口からドクドクと血が流れ出ているから、多分出血も相成って、考えられないのかもしれない。

「エポニーヌ!!!」

 視界にフォレオが映った。

「フォ……レオ?」
「すぐにほどきます、待っててください!」

 手がすんなりと自由になって、あたしはへたりとその場に座り込む。体中を触られたことを思い出しても、それに戦々恐々とすることはなかった。だって、今はちがうことにしか意識が向かない。

◇◆◇◆◇







「エポニーヌ、ごめんなさい。僕が、僕がもっとしっかりしていれば……」

 謝る彼にあたしは静かに縋りついた。脇腹の血がフォレオの服に触れている。でももう気にしてなんていられなかった。

「フォレオ、助けてくれて、ありがとう……」
「エポニーヌ、あなたが無事で本当によかった」

 優しく抱きしめ返してくれた。さっきの男に触られていた時とは比べ物にならないくらいに、心が温まっていく。少しだけそこが疼いてしまった。だからかもしれない、あたしの口はこんなことを零していく。

「ねぇフォレオ……」
「なんですか、エポニーヌ……」
「フォレオにとって、あたしはどんな人?」
「え?」
「あたし、フォレオのこと、ずっと主君としてみてきた。守るべき人として見てきたから。ねぇ、フォレオ、フォレオもあたしの事、臣下としてしかみてないのかな?」
「そ、それは……」

 フォレオが顔を赤くしている。ああ、やっぱり可愛い。でも、それはすぐに潜んですぐに真剣なまなざしを含んであたしを見つめて、そしてぎゅっと抱きしめてくれた。

「僕は……エポニーヌの事、一人の女性として見ています。その、えっと」
「うん」
「僕はエポニーヌに見てもらえるならなんだってします。だって、あなたは僕にとってとても大切な人ですから」
「ふふっ、ありがとう、フォレオ」
「はい。えっと、エポニーヌの方は……僕の事、どう思っているんですか?」

 質問を返されてしまって、あたしは答えようとするけど、体の力がドンドン抜けていることを察した。だから、言葉にできない方法で返すしかないわねと、静かに顔をフォレオに向けて―――触れた。
 柔らかいフォレオの感触と、なんだか父さんの叫び声を聞いた気がした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「う、うそ。あたし、フォレオにそんなことしてたの////」
「は、はい。そ、その覚えてないんですか?」

 え、あたしどれだけ乙女してるのよ。
 死にかけて告白して、眠る前にキッス!?とか、中々にお目に掛かれないシチュエーションじゃないと、あたしは脇腹の傷を摩りながら零した。

◇◆◇◆◇






 フォレオを狙った事件はこれにて終結して、あたしは星海に来ている。
 ここだと傷の治りは早いし、何より今回の件であたしの功績というのは、ぐんぐん上ってしまったという話だ。興味はない話だけど、ほとぼりが冷めるまでは安静にしておけと言われたのである。そして今日、色々な処理を終えてフォレオが顔を見せに来た。
 一番気になっていたあたしが転送された場所について聞いてみたら、真下の地下街の一角だということで、魔法の痕跡からどうにか探ったと言っていた。というより、あたしが言っていた地下街を通ってという話から連想したとフォレオは言っていたけど。
 で、そんな話が終わった直後に『そ、そのエポニーヌ。あれは僕の告白にOKしてくれたという意味でいいんでしょうか』と切り出され、話を聞いて顔を真っ赤にしていたというわけだ。

「あたしあの時かなり切羽詰まってたから、そんな大胆なことまでしていたなんて!?」
「そんな、それじゃ僕の告白はどうなるんですか?」
「い、いや、その覚えてるわよ。フォレオからその、告白されたことは、ちゃんと」

 たぶん。
 裸にされて色々とあった思い出したくないことというのは脳裏をすぐに駆け巡るのだが、幸せの絶頂というのは思いのほか忘れやすいのはなぜなのかと悩んでいると、フォレオの手があたしの指に触れた。

「フォレオ?」
「……エポニーヌがずっと僕のことを臣下として見てくれていたことが最初はうれしかったんです。僕のことを見た目で嫌わなかった、それでいて気軽に話しかけてくれる女の子は、最初エポニーヌしかいませんでした」
「ふふっ、初めて出会った時からフォレオは可愛かったし、なにより主君を守るのは臣下の役目って父さんに口酸っぱく言われたもの。そういえば、あの現場に父さんもいたのよね?」
「はい、ゼロさんもいましたよ。その、終わった後、色々と僕は責められましたけど」
「え、責められた!? 父さんにフォレオが責められた、うふ、うふふふ、どんな感じに攻められたの!?」

 あたしの質問にフォレオはいつも通りの可愛らしい笑みを浮かべて、しっかりと言った。

「エポニーヌはやらんと言われたので、エポニーヌの事を僕にくださいって折れるまで交渉させてもらいました」

◇◆◇◆◇






 しっかりと男らしい部分も含めて、フォレオはあたしに父さんには話をつけてあると言ってきた。顔が熱くなってきて、深呼吸するあたしを見て、フォレオがクスクスと笑う。
 その顔は何時ものようにとても可愛らしくて、そのカオ反則と口に出したいくらいのものだった。

「フォレオ、すごく強引よ」
「僕だって男の子ですから、それに好きな子から告白のお返しを貰ってるんです。必死になってもいいじゃないですか。それとも、やっぱり意外でしたか?」
「まぁね。あたしの中のイメージだったら、父さんに押し切られちゃう気がしてたから……。父さんに押し切られるフォレオね、うふふ、これもなかなかいいわね」

 と、空想に潜りそうになったあたしを、フォレオが静かに止めてきた。

「あ、あの、僕にもう一度エポニーヌの答えを聞かせてくれませんか?」
「フォレオ」
「僕は怖いんです。エポニーヌが誰かの下に行ってしまうんじゃないかって、そんなことになったら、僕はこの先生きていけません」
「そんな大げさよ」
「大袈裟じゃありません。だって、僕にとってはエポニーヌ以外に愛するべき大切な人はいないんですから」

 もう、あたしに対して愛していると告げることに抵抗はないようで、スラスラと恥ずかしい台詞を連発するフォレオに、あたしは何とも歯痒い気持ちになっていた。
 可愛くて嫉妬もする、でも男らしいところもある。改めて見ると、フォレオがこういった顔を見せてくれるのはあたしだけなのかもしれないと思うと、胸の奥がキュンっとした。だから、もうこれ以上待たせちゃいけないと、決めて動く。

「あの、エポニーヌ……」
「ごめんなさい、フォレオのこと少し待たせちゃったみたいだから。その、飾り気はないかもしれないけど。フォレオ、あたしもあなたが好きよ」
「エポニーヌ……」
「ずっと、あなたに仕え続けるだけって思ってたから、こんな風にフォレオのことを思う日が来るなんて思ってなかったの。でも、この前、あたしが触れてほしい人のことを考えたら、頭に浮かんだのはフォレオだけだった」
「触れてほしいって、え、エポニーヌ////」
「ふふっ、だからもう一度させてもらうわね」

 そう言って体を起こすとフォレオを静かに抱き寄せて、その唇を奪ってあげる。前みたいなおぼろげさは無くて、むしろちゃんと広がる感触とその味を少しの間だけ堪能する。

◇◆◇◆◇






「はぁ、んんっ、エポニーヌ」
「うふふっ、これでいいでしょ? 続きは体が治ったらにしましょう? フォレオの可愛いところもそうだけど、あたしのことも全部見てほしいから……」
「は、はい……うれしいです」
「うふふっ………」
「でも、エポニーヌはすごいです。僕なんて、話をするというだけで心臓がはじけてしまいそうなのに、全然エポニーヌはそんな感じがしなくて……」

 そう、感じないわよね、今まさに火山の噴火の如く頭から煙を出したいほどに心臓がフル稼働しているとしても。
 だけど、キスをしただけでもこれなのだから、実際にその、することになったらどうなるのかはさっぱりわからなかった。というか、このままだと突入しかねない気配を感じ取る。
 それはフォレオも同じようで、ここは約束した手前なのか、どうにかして意識を逸らす話題を見つけようとしている。そして、持ってきた小物入れを見つけてその中から、ポットを取り出してきた。

「そ、そのリリスさんから飲み物を頂いてたんです。よかったら一緒に飲みませんか?」
「母さんが?」
「はい、その今日はゼロさんと用事があるとかで、その顔を見に行けないと、僕に渡してくれて。美味しい水だそうです」
「おいしい水ねぇ」
「はい、ちょっと待っててくださいね」

 そう言ってフォレオは食器棚へと向かう。まぁ、娘を思いやっておいしいものを見つけてきてくれたのかもしれないと考えれば、納得のいくことね。ただ、母さんはすでに前の頃からフォレオとあたしのことを気にかけてくれていたわけで、この状況を考えたら、もう少し違うものを送ってくるんじゃないかなって思った矢先である。
 ガシャンと不吉な音が響いた。

「え、なに!?」

 食器棚の方角から大きな音が響く、何事かと目を凝らせば、そこにはポットの中身を落として何だかフラフラしているフォレオの姿が見える。
 すごく嫌な予感がして、少しだけ鼻を利かせると、なにやら甘ったるいような、そうでないような香りが漂ってきて、それだけで体に火が灯ったかのような温かみ。体全体が敏感になっていくような、そんなものを感じた。

「ま、まさか、これって……」

 好奇心というわけではない、むしろ現在の状況を調べるためには必要だと、布団の中に手を伸ばしたところで、真横に誰かの気配があった。
 見た、フォレオぅ……じゃないか。

◇◆◇◆◇






「ど、どうしたの?」

 あたしは笑顔を浮かべられている気がしない。だって、フォレオは顔を真っ赤にして、鼻息も荒いし、なによりその手つきはあたしの指から肩に伸びて、静かに胸元に伸びているのだ。そして悔しいことに、それで体がビクリビクリとしてしまい、下半身にジュワリと感じる蜜の気配もあった。
 間違いない、媚薬だ。しかも香りだけでも効果のある超強力なやつ。美味しい水というのは母さんにとっての美味しい展開を連れてくる水の事だったのだ。

「エポ、ニーヌ……」
「だ、だめよフォレオ。今日はダメよ、まだ、愛を確かめ合うには早い時間よ」
「エポニーヌ、あむっ、辛いんです、エポニーヌが目の前にいるのに、手を出さないでいるなんて」
「ちょ、落ち着いて、今日はやめましょう。外に出れば、気持ちが和らぐかもしれないわ」
「外でするんですか。エポニーヌは変態さんですね。でも、それもいいかもしれません。ここは星海、誰もいないけど誰か来るかもしれないそんなスリルをエポニーヌと共感したいです」

 だめね。お猿さんだ。可愛いお猿さんになっている。
 どこに逃げてもフォレオは追っかけてきそうである。そして今のあたしに彼を止める力は何処にもない。あるはずもない、そしてわかったけど、あたしの狼狽する姿を見ているフォレオはどこか楽しげで、これはひょっとしてS気というやつなのかもしれない。
 そして、あたしもこうやってフォレオに迫られて体が準備に入り始めていた。体は熱いし、触られただけで電気が通ったみたいにピリリッとするしで、もう何が何だか分からなくなった。
 そしてついに、フォレオがあたしを押し倒すと時を同じくして、私の体も見事に出来上がってしまった。

「エポニーヌ、いっぱいいっぱいしていいですか?」

 フォレオは言葉を返せばすぐにでもかぶりついてきそうな野獣の眼光を秘めていた。
 断っても押し切られることは明白、そしてあたしも地平線の先に見えるそのふくらみに興味をそそられていた。
 二人揃って、母さんの美味しい水にされてしまったのだ。もはや激流に身を任せることにこそ心理があると言わんばかりだった。
 だから、あたしはフォレオの求めることに応えるように、その体に手をまわした。

「フォレオ、とってもイイこと、ふたりでしていきましょう。どっちがどっちかわからなくなっちゃうまで……ね?」

 それがその日の、あたしの最後の記憶であった。

◇◆◇◆◇






~~~~~~~~~~~~~~~

「ふふっ、エポニーヌ…えへへ」

 エポニーヌと結ばれて、僕は幸せの絶頂期だった。外の世界では数日しか経ってなかったけど、エポニーヌの体が完全に回復するまでの間、僕はずっと付き添って、その色々とありました。
 エポニーヌに思いを告げても、やっぱりと主従を優先されるかもしれない恐怖はあったけど、それは杞憂に終わったのだから。
 王城の中を半ばスキップ気分で進む、今日はエポニーヌのお家に行く、リリスさんやゼロさんに改めて挨拶をするために。
 でも、エポニーヌと名前を口ずさむだけでもとてもうれしくて、緩んでしまった顔が中々戻らない。でも仕方ありません、だって、今でも目を瞑ると……あの日のエポニーヌを思い出してしまうから。

『フォレオ、とってもイイこと、ふたりでしていきましょう。どっちがどっちかわからなくなっちゃうまで……ね?』
「あううっ、エポニーヌに会いたくなってしまいますね……。その色々とイイことをしたくなってしまいます」
「えらくご機嫌だね、フォレオ」
「あ、ジークベルト。そ、そんなこと……」
「ははっ。誤魔化さなくてもいい、君がエポニーヌに思いを寄せていたことは多くの者が知っていたことだ。逆にそれに気づいていなかった彼女も、ある意味すごいとは思うけどね」
「そこが可愛いんです。でも、時々見せてくれる弱さを守ってあげたいって思いますから」
「白昼から惚気話とは、フォレオはエポニーヌを愛しているんだね」
「あっ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんですけど……」
「いや、別に構わないよ。とりあえず、結ばれてよかった。おめでとうフォレオ」
「はい、ジークベルト」

 ジークベルトにこうして祝福してもらえることはとてもうれしいことで、僕はすかさずこんなことを口にしていた。

「ジークベルトにはいないんですか?」
「? いないのかと言うのは?」
「えっと、その、僕にとってはエポニーヌですけど、ジークベルトにもそういう方がいるのかなって」

 僕の言葉にジークベルトは少しだけ思案するように顔を悩ませていく。その眉間による皺の感じは、マークス叔父さんにそっくりだと思った。僕もいつかエポニーヌとの間に子供を産むことになったら、どっちに似るのかな、なんてことを考えて。その答えよりも先にジークベルトが口を開いた。

「……残念だけど、今は思い浮かばないな」
「そうなんですか」
「ははっ、婚約に関する話は多く来てるけどね。まだ私は未熟な身だから、すべて断らせてもらっている」
「ジークベルトらしいですね」
「ところどころでその堅物なところも、父母譲りだと言われるよ。それじゃ、私は向かうところがあるので失礼する」
「はい、行ってらっしゃい。ジークベルト」

 ジークベルトが姿を消したところで、僕は天井を見上げた。今呼んだら彼女は来てくれるだろうか、多分今さっきのつぶやきも聞かれてるかもしれない。そのことで何か言われるかもしれないけど、それでも別にいいですよねと、僕は口を開く。

「エポニーヌ!」

 僕の言葉は静かに響いて、どこかに誰かが降りた足音が響いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~

 これは違う世界の話




 一人の主君とその臣下が結ばれた話




 If(もしも)の一つ
 

 フォレオエポニーヌif おわり

今日はここまで
 
 次の本篇から時折行われる指針選択肢の説明は>>634を参照ください

 番外がいつもどおりすごい文量です。エロは無しですが。
 主従関係は好きなので、今後も所々主従系で番外をやりたいなとおもった。

 というわけで次にやる番外を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
・ヒノカ×セツナ(R18)
・リリスの多世界観察記
・カムイとまきゅべす
・ミタマ×ディーア
・ゴーレムな一日
・この番外で書かなかったフォレエポの濡れ場(R18)

 今回は瞳の件があるので二つで。
 先に3回名前が挙がったのを二つでよろしくおねがいします。

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国領・フウマ公国周辺地域―

アクア「そろそろ、フウマ公国の領内だと思うのだけど」

マークス「ああ、すでにかなりの距離を歩いた、しかし……」

エリーゼ「誰もいないね?」

カミラ「ええ、カムイも歩いて疲れてるって言うのに」

カムイ「どうやら、出迎えなどはないということですか」

レオン「みたいだね。父上から連絡は行っているはずだけどサービス悪いね、まったく」

カムイ「まぁ、到着の日をを厳密に教えているわけではないでしょうから。仕方ないと言えば仕方ないと思います」

レオン「ところでフウマ公国に関して姉さんはどうするつもりなんだい?」

カムイ「私たちの意向に従うかどうかを聞くしかないのが現状です。私達に付くのか、それとも異形神側につくのか。できれば、カゲロウさんの身柄を押さえてから、その場を作り上げたいところですが……」

レオン「そのカゲロウっていう奴のことは知らないけど、姉さんに判断を委ねるよ。だけど、無茶はしないようにね」

カムイ「はい、それではフウマに向かいましょう」



カムイ(しかし、あまりにも静かすぎますね。私たちを見張っているような気配もありませんし、何か事が起きているのやもしれません……)

 サッ

カムイ「?」

アシュラ「……なぁ、カムイ様よ」

カムイ「アシュラさんですか」

アシュラ「ああ、そうだ」

カムイ「……わかっていますよ。あなたの目的についてですよね」

アシュラ「そうかい、なら先に言わせてもらうが、この国の公王を味方につけるとその分リスクが増える。自国の繁栄のためにならなんでもするような連中だ、従ったふりして、後ろから斬り捨てられるかもしれないからよ」

カムイ「ええ、そうですね。だから言葉を変えてその公王に質問を与えるつもりです。それでどちらが有利かをすぐに察するでしょう。ノートルディア襲撃の際も、ここの王は強いものに巻かれる選択をしたんですから、こちらはその強いものに巻かれるように言葉を紡ぐだけです」

アシュラ「……そうかい。だけど、それであんたは大丈夫なのかい?」

カムイ「大丈夫なのかと言うと?」

アシュラ「紛いなりにも相手に突き詰めた選択をさせる。そうであるように見せびらかすんだ、相当性格の悪い選択だ。あんた自身、それに押しつぶされる可能性だってある」

カムイ「アシュラさんなりに私を心配してくれているんですね?」

アシュラ「まぁな。あんたが俺に復讐の機会を与えてくれることに間違いはない。何よりもあんたは俺を信じてくれた。なら、少しは労っても罰はあたらない……だろ?」

カムイ「そうですね。でしたら心配してくれたついでに、私が合図を出すまでは絶対に動かないとだけ約束してくれますか?」

アシュラ「……ああ、わかったよ。ここまでこれたのはあんたのおかげだからな」

カムイ「ありがとうございます。あと、すみませんがスズカゼさんを呼んでいただけますか?」

アシュラ「ああ、わかったよ」

 タタタタタタッ

カムイ「先周りできることに越したことはありませんからね」

◇◇◇◇◇◇
―フウマ公国『洞窟』―

 サッ

サイゾウ「……潜り込めたようだな」

上忍「はい、陽動は見事に決まったようです。あとは、捕虜から聞き出した情報の通りならここに……」

サイゾウ「フウマ公王とカゲロウがいるということか。よし、気取られないようにいくぞ」

上忍「御意」

サイゾウ(しかし、なにが国か。表に多くの構えを持たず、暗き森と洞窟に巣食う、まるで寄生虫そのものだ)

上忍「……サイゾウ様」

サイゾウ「どうした?」

上忍「……あれを」

サイゾウ「……」

 カタカタカタカタ

サイゾウ「絡繰人形か……人間はいないが、ネズミを仕留めるのは造作もない、そういうことか」

上忍「どうしますか、我ら二人だけでどうにかできるかもしれませんが……」

サイゾウ「いや、気付かれることになりかねない。しかしここでおめおめ戻ることもできん。そこでだ、お前は上に戻り、戦闘をできる限り継続させよ」

上忍「!? では、サイゾウ様は」

サイゾウ「なに、逆にここで二人は気付かれる。俺一人で行く、ヘマをするつもりはない。上での戦闘が終われば、この洞窟を多くの者たちとともに目指せ。だが逆に戦闘が終わらず、長き時間俺が戻らなければ退却し、王都へ戻れ。これが俺からの命令だ」

上忍「……御意」

 サッ

サイゾウ「……この先にフウマ公王がいるのなら、俺は……」

 カツッ

サイゾウ(足音……奥から来ているようだ。ここは……)サッ

 カツン カツン

フウマ兵「どうやら、白夜の攻撃は抑えられているようです、コタロウ様」

コタロウ「そうか。さすがに暗夜王国が無限渓谷付近に陣を構えているこの状況では、この国を落とす力も無いということか。ふっ、こちらは先行部隊と合流しない限り、手など出すことも無いというのに。あんな女一人助けるために、人を出すなど酔狂なことだ」

フウマ兵「まったくもって。しかし、大丈夫でしたか? 暗夜の先行部隊がすでに到着しているかもしれません。案内などを向かわせておくべきだったのでは?」

コタロウ「ふっ、放っておいても問題あるまい。それにこちらが攻撃を受けていると察すれば、すぐに剣を抜いて戦ってくれるはずだ」

サイゾウ(暗夜の先行部隊……暗夜の大攻勢が近いと言うのか!?)

コタロウ「この先、どのように動くかは知らんが、我々が大きく出る幕はない。暗夜に従い動き、甘味だけを得ればいい、そうでなくては兵を無駄に送った意味がなくなるからな。ガロン王も何を考えているかわかないが、それがフウマ公国を大きくすることに繋がるなら一兵士の命など捨て置くものだ……」

フウマ兵「ふっ、アジロギたちも運が悪かった」

コタロウ「そうだな……。くく、はははははっ」

フウマ兵「? どうかしましたか?」

コタロウ「面白い奴がいたことを思い出してな」

フウマ兵「面白い奴ですか?」

コタロウ「ああ、私の野望に口を挟んだ馬鹿な男のことだ。忍としての誇りがあるなら、そのような下衆な行いは改め再び誇りと共に歩めとな。単身ここにやってきた馬鹿であったか。四代目サイゾウ哀れな老いぼれだった」

サイゾウ(四代目、まさか、こいつが……)チャキッ

コタロウ「私が『わかった忍の誇りを忘れるところであった、すまない。貴様のおかげで目を覚ますことができた。ありがとう』と言葉を返したら、満足そうにしていた。しかし、あんな無防備な背中を見せられてはな。腰の刀や、手に持つ手裏剣が軽くなるというものだろう?」

フウマ兵「たしかに、そんな背中を見せられては、我が剣の鞘も心躍ることです」

コタロウ「ああ、その通りだ。そんな無防備な背中を見せられては―――」

サイゾウ「こうしてしまいたくなるか……」

コタロウ「!」サッ

 ブンッ ブンッ

フウマ兵「なっ、ぐぎゃ……がっ、ぐああああっ」ドサリッ

コタロウ「……ほぅ」

 スタッ ザッ

サイゾウ「……」

コタロウ「ふむ、一人紛れ込んでいたか。ふっ、白夜の忍とはいえ、ここまで入り込んでくるとはな。となると、上での大規模な戦闘は囮ということか」

サイゾウ「……どうやら部下は無防備な背中だったようだな」

コタロウ「ああ、無防備な背中では殺されても仕方がない」

サイゾウ「……貴様が、フウマ公国の王だな」

コタロウ「ふっ、だとしたらなんだ?」

サイゾウ「……貴様が」

コタロウ「?」

サイゾウ「貴様が四代目サイゾウを……父を殺したのか……」

コタロウ「四代目、父? ……ははっ!」

サイゾウ「何がおかしい!?」

コタロウ「いやいや、まさかこんな所であの老いぼれの息子に会うことになるとはな……。なるほど、この攻撃にも事情があったということか……」

サイゾウ「俺の質問に答えろ!」

コタロウ「ふっ、ああ、殺した。それがどうした? 私の野望に感づいただけならば別になにも問題はない、しかしそれを説得しにくるとはさすがに思ってもいなかった。ふっ、忍の道に生きる者、同じ誇りを胸に抱いているとでも思っていたのか……。夢を見るなら寝て見ろと教わらなかったようだ」

サイゾウ「貴様!!!!」

コタロウ「ああ、そしていつぞやかコソ泥が入り込んだこともあった。ふっ、取り逃がしてしまった部下の話では目を一つ潰してやったと言っていたが……貴様は右目を失っているようだ。もしもその時のコソ泥だとしたら、大層苦しかっただろう。サイゾウなどという名前があろうとも、弱い者は弱いと理解することになったのだからな」

サイゾウ「サイゾウの名を侮辱することは許さん……」

コタロウ「大丈夫だ、それもここで終わる。貴様がサイゾウであろうとなかろうと、いずれ白夜は暗夜の手に落ちる。その時は王家、そしてそれに仕える者たち全てを晒し首にしてやろう。そして、広大な大地を得る。フウマ王国を作り上げるためにな」

サイゾウ「ふっ、貴様も夢は寝てみるものだと、親から教わらなかったようだ。貴様の夢はここで覚める夢。次に見る夢は地獄の底で苦しみ続けるものだけだ」

コタロウ「ははっ、これを見ても私の夢を覚ますと、そう言えるか?」パチンッ

 ガタッ ガタンッ 

 ザザッ ザッ

 チャキッ カチャ シャキンッ

フウマ兵一同「………」

サイゾウ「……ちっ」

コタロウ「貴様の腕があろうとも、この量はさばき切れないだろう。すぐに先に逝った仲間の後追わせてやる」

サイゾウ「なに!?」

コタロウ「心配するな。あの上物の女、カゲロウはまだ生かしているさ。無論、すぐに暗夜の供物にさせてもらうがな。しかし、カゲロウも罪作りな女だ、もう一人を死地に追いやるような選択を選ばせるとはな」

サイゾウ(だとすれば、スズカゼ、お前はもうここにいないというのか……)

コタロウ「あの男も、すでに暗夜の地で死に伏せていることだろう。安心しろ貴様もすぐに送ってやる、間抜けな父と仲間の元へな」

サイゾウ「ならば………」

 ギュッ
 
サイゾウ「貴様も道連れだ!!!!」ブンッ

 サッ

コタロウ「外れだ。やはり、名前は強さの証明になりはしないということだ」

サイゾウ「くっ」ダッ

コタロウ「逃がすな。奴を殺し、それを白夜の者たちに晒し戦意を削ぎ、皆殺しにするのだからな」

サイゾウ「くっ……」チャキッ

 バラバラバラ

コタロウ「まきびしか。洒落たことを、しかし無駄なことだ……」

サイゾウ(少しの時間稼ぎはできたが、このままでは……)

 タタタタタッ

フウマ上忍「見つけたぞ」「この洞窟は俺たちの庭だ、出口までたどり着けると思うな!」

サイゾウ(地の利は奴らにある以上、これ以上の戦闘は……くそ、あと、あと一歩まで来たというのに!)

 ザッ

フウマ剣聖「通すか!」チャキッ

サイゾウ「先回りか、面白い!」ダッ

フウマ剣聖「でやあああああ!」ブンッ

フウマ上忍「せいっ!」「はっ!!」シュンッ

 キィン
 
 グササッ

フウマ剣聖「ぐあっ、な、俺じゃ……」

フウマ上忍「邪魔だ」ドガッ

フウマ剣聖「かふっ」ドサッ

フウマ上忍「けっ、避けられるのが悪いんだよ」「そんなの放っておけ、奴を逃がすな!」

サイゾウ「……これがフウマの忍か。性根が腐っているだけでは言葉が足りないほどの外道ばかりか」

 タタタタッ

サイゾウ「よし、ここを抜ければ!」

 ザザッ

サイゾウ「!」ザッ

コタロウ「ふっ、御苦労、よく逃げてきた。ここまで先回りしていたが、たどり着けないと思っていが、弟子は師を越えるの通りあの老いぼれよりはやるようだな」

サイゾウ「……ちっ」

コタロウ「だがそれもここまで、所詮は誇り等という古いものに縛られている貴様ではその誇りすら守れない。守るならば、ここに来るべきなどではなかったのだからな」

サイゾウ「何が言いたい!」

コタロウ「ふっ、目にも見えない物を信じることに何の意味があるか。見えないならば示す必要もないことに執着して何になるのか。私の野望を邪魔することもなければ、その誇りを抱いても構わないが邪魔をするなら話は別だ。ここで貴様は死ぬ、だから守り切れないと言っているのだ」

サイゾウ「……ならば、ここで一対一で勝負しろ!」

コタロウ「ははっ、だから貴様らは馬鹿ということだ。前の私なら乗ってやったがな、一体一と言わず一体十でな」

 ザザザザザッ タタタタッ

サイゾウ「……貴様に忍としての、いや人間としての誇りはないというのか」

コタロウ「言っただろう、そんな誇りを信じる必要もない。現実には現実の結果だけが付き纏う。くく、本来仲間を思うのなら私の相手などせず、牢を探し出し、救出すればいいだけのこと。それをしないのは、貴様が自分の叶えたいことを理解しているからだ。その結果に準じた結果が、今のこの状況なだけだ。正々堂々などという考えは貴様の取決め、私の取決めではない。それとも、仕切り直すか? なら、その横道から上に上がり戻るがいい。もっとも、ここで逃げる腰ぬけにやられるような私ではないがな」

 カツンカツンッ

サイゾウ(……上からの足音か。戻っても結局は袋小路、ならば―――)

サイゾウ「刺し違えてでも、貴様を屠るまで!!!!」ダッ

コタロウ「父子揃って馬鹿の阿呆だな。構わん、奴を殺れ!!!!」

 ダッ

サイゾウ「うおおおおおおおおおっ!!!!!」

 パカラパカラパカラ

 バシッ!!!!!

サイゾウ「な、なにっ!?」

コタロウ「!?」

???「ふぅ、どうにか確保したの」

???「上出来です、ピエリさん。早くこちらへ!」

コタロウ「何者だ!?」ザッ

サイゾウ「な、何が起きて……」

ピエリ「あ、この人右目に傷があるの。カムイ様と片目だけお揃いなの!」

コタロウ「なに!?」

サイゾウ「貴様、今なんと――」

ピエリ「カムイ様とお揃いって言ったの」

???「たしかに、ある意味お揃いかもしれませんね」

 ザッ ザッ

サイゾウ「き、貴様はカムイ!?」

カムイ「……お久しぶりですね、サイゾウさん……。それで、これは一体何が起きているんですか?」

◆◆◆◆◆◆

カムイ(どうやら、最悪な時に来てしまったようですね……)

コタロウ「! こ、これは暗夜王国の方々。その者は現在、我が国に攻撃を仕掛けてきている白夜の忍、すぐに殺していただきましょうか?」

カムイ「そうでしたか。てっきり、フウマ公国の関係者が追い詰められているのかと思いましたよ」

コタロウ「残念ながら、助けたのが敵と言うのはそそっかしい御方だ。申し遅れました、私はフウマ公国公王のコタロウと申します。さぁ、すぐにその者を始末し、公国を襲っている白夜軍の殲滅に手をお貸しください」

カムイ「……ええ、先行作戦のためならそうしましょう……」

コタロウ「はい」

カムイ「ですが、私達は先行作戦のために来たわけではありません」

 チャキッ
 
 パラッ

 ガシャンガシャン ガチャン

カムイの仲間達『………』

サイゾウ「これは、一体……」

コタロウ「な、何のつもりか……」

カムイ「単純な話です、コタロウさん。私達の側に付きませんか?」

コタロウ「何を言い出しますか。私達は元から暗夜の側についています」

カムイ「ちがいます、私たちの側に付きませんかと聞いているんです。暗夜でもなく、お父様でもなく、私たちの側に……」

コタロウ「なに?」

カムイ「ええ、暗夜ではない、私たちの側です」

コタロウ「……ははははははっ。なるほど、ガロン王の目は節穴ではなかったということだ。よもや、白夜に味方しようという発言、白夜軍との戦闘で戦死されたと報告せざるを得ない。そうでしょう、カムイ様、いや、カムイ」

カムイ「それは、私たちの側には付かない。そういう意味ですか?」

コタロウ「ふっ、貴様のような小娘の側について何の意味がある、何の得がある? 一体どんな夢を見ているのか知らないがガロン王は私に約束してくれた、この戦いが終わり白夜を支配した後に、広大な地を与えると。現に戦争は暗夜が有利、その現実を理解できないままに謀反を起こすとは。前にノートルディアに派兵し、現れたカムイ王女を殺す指示は納得の行くこと。私の野望に百害あって一利なしだな。せっかく生かしてきた土産も無駄になってしまった」

カムイ「土産?」

コタロウ「貴様のためにと色々と手を凝らしていたというのに。こうなってしまえば仕方ないこと、おい」

フウマ兵「はっ」

コタロウ「よもや、あの女は不要だ。上で戦っている者たちには悪いが、殺せ。なに、新しい楽しみは目の前の者たちになるだけだ。暗夜の王族だった者たちが、こんなにもいるのだからな……」

フウマ兵「わかりました。その、少し楽しんでも問題は?」

コタロウ「ああ、好きしておけ。どうやら、お前で最後のようだからな」

フウマ兵「へへっ、それでは」タタタタタッ

カムイ「……カゲロウさんですか」

コタロウ「なんだ知り合いだったか、ならば殺さずに見せびらかすのも良かったことかもしれないな。ふっ、だが、安心しろ。男は皆殺しだが、女は出来るかぎり生かしてやる。晴れあるフウマ王国が誕生したときに、よい仕事を与えてやるためにな。全員、戦闘準備だ」

 サッ シュンシュンシュン

コタロウ「ははっ、ここは私達にとっては慣れ親しんだ庭も同然、その思い上がりをこの巣の中で苦しみながら後悔するがいい」シュンッ

カムイ「……わざわざ一網打尽を見送りとは、相当な自信ですね」

サイゾウ「くっ! コタロウ!」

 ダッ

サイゾウ「逃げるか!」

カムイ「待ってください、サイゾウさん」スッ

サイゾウ「止めるか! 力づくでも通させてもらう!」ジャキッ

スズカゼ「やめてください、兄さん!」

サイゾウ「スズカゼ!? 無事だったのか」

スズカゼ「はい。……兄さん、武器を納めてください。今は兄さんと私達が争う理由はありません」

サイゾウ「……お前は暗夜に付いた。そういうことか」

スズカゼ「いいえ、カムイ様に付いたというべきです。兄さん今は協力して事に当たるべき、私はそう考えています」

サイゾウ「ふっ、俺はその女を信用していない」

スズカゼ「私が無事なのはカムイ様のおかげです。兄さん、ここにはまだカゲロウさんが捕まっているんです。すぐに救出しましょう」

サイゾウ「……スズカゼ」

スズカゼ「カゲロウさんを助け出して、共にこの窮地を乗り切りましょう。兄さん」

サイゾウ「……悪いが、それはできない」

スズカゼ「なぜですか、兄さん!」

サイゾウ「上では俺の部下が戦っている。ここに向かう俺について来た者たちだ。奴らの命を考えれば、俺は任務を優先する。俺たちの目的は第一がフウマ公王の始末、カゲロウの救出はその次にすべきことだ」

スズカゼ「兄さん……」

サイゾウ「スズカゼ、俺は任務に忠実に振舞わせてもらう。そこでだ、カムイ」

カムイ「……なんですか」

サイゾウ「お前がコタロウを倒すことを最優先に考えるのならば、今の間だけ共闘してやろう。お前の命令にも従ってやる。今の間だけ、お前の側に付こう」

スズカゼ「カゲロウさんを見殺しにするんですか、兄さん!」

サイゾウ「奴の言葉が真実かはわからない。カゲロウが生きているという保証はどこにもない以上、俺はコタロウを倒し、それからカゲロウを見つけ出す。それが今の俺が考えた現実的な行動だ」

スズカゼ「……そう、ですか……」

サイゾウ「さぁ、カムイどうする?」

スズカゼ「………カムイ様。あなたの判断に従いましょう。私はあなたについて行くと決めたのですから」

カムイ「…………」

サイゾウ「………」

カムイ(カゲロウさんが生きているかどうかは確かにわかりません。コタロウさんを一刻も早く倒し、敵の指揮を挫いてから探索するのも手でしょう)

スズカゼ「………」

カムイ(ただ、まだカゲロウさんが生きているのだとしたら。すぐにでも助けに行かないといけない。白夜にいた時、私を支えてくれたあの人を救うことに間違いなんてありはしない……)

カムイ「………」

 ――私は………―――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 1.サイゾウと共にコタロウの撃破を優先する

 2.生きていると思われるカゲロウの救出を優先する
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 先に3回選ばれた道へと………


―2.生きていると思われるカゲロウの救出を優先する ―



カムイ(カゲロウさんが生きている可能性が少しでもあるのなら、それを見捨てるわけにはいきません)

サイゾウ「……カムイ」

カムイ「サイゾウさん、私はカゲロウさんが生きていると信じています。ですから、あなたの案に乗ることはできません……」

サイゾウ「……では別行動だ、俺は俺のやり方で動かせてもらう。加勢は不要だ」

カムイ「いえ、私たちもカゲロウさんを見つけ次第、あなたに加勢させてもらいます。今倒すべき敵は同じですからね」

サイゾウ「……勝手にしろ」サッ

スズカゼ「兄さん……」

カムイ「心配いりません。サイゾウさんもカゲロウさんを助けたいと思っているはずです。カゲロウさんを助け出した後に、サイゾウさんを援護すればいいだけのことですから」

スズカゼ「……カムイ様。ありがとうございます」

カムイ「礼には及びませんよ。私も助けられるならカゲロウさんのことを助けだしたい、その心は変わりません」

 チャキッ

カムイ「皆さん、二手に分かれます。サイゾウさんと行動を共にするというわけではありませんが、カゲロウさんを救出するチームと、洞窟内のフウマ兵を倒すチーム。同時に進行し、敵を討ちます」

仲間一同「……」コクリッ

カムイ「……では、始めましょう」

「私たちの戦争を……」

朝はここまで

 こんな感じで指針選択肢をやっていこうと思います。何時もの更新の時間が更新の時間なので、あれなのですが。よろしくお願いします。
 1だとゲストサイゾウの動かす権利がこちらにありコタロウを倒すだけ。
 2だとサイゾウ勝手に動く+コタロウ撃破前までにカゲロウの奪還が勝利条件に入るというそんな感じを想像してます。

 #FEのチケット来た、カナリノベストポジション楽しみである

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

 カムイ固定メンバー(スズカゼ・アクア)

◇◆◇◆◇
 カムイと共に動く、救出チームを編成します。

・救出の機動力(パラディン)
 
 ピエリ
 ジョーカー
 マークス

 >>682

・後方支援指揮ユニット(ストラテジスト)

 フェリシア
 レオン
 エリーゼ

 >>683
 
・攻撃を受け止める盾役(グレートナイトorジェネラル)

 ギュンター
 フローラ
 エルフィ
 ブノワ

 >>684

・援護および攻撃担当2名(歩兵限定)

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 モズメ
 ルーナ
 ハロルド
 ニュクス
 フランネル
 シャーロッテ

 >>685
 >>686

 このような感じで、被った場合はズレるという感じでお願いいたします。
 

ピエリ

エリーぜ

エルフィ

歩兵じゃないかもだけどツバキ

個人的にはツバキ&ルーナがみたい

カザハナ

~~~~~~~~~~~~~~

ピエリ「でもどうするの。助ける人の居場所がわからないと、どこ行っていいかわからなくなっちゃうの」

スズカゼ「その点は心配いりません。ノートルディアへと連れていかれる間に、いろいろと見ておきましたので。どうやらフウマはこの洞窟に多くの隠し通路を設けているようですから。それをこちらも使わせてもらいましょう」

カムイ「そこを使って向かうというのがスズカゼさんの案ということです」

エリーゼ「スズカゼ、すごい。そんなことも調べてたんだ。捕まって、連れてこられる間なんて少ししかないはずなのに……」

スズカゼ「あの戦いで生きて戻たら、カゲロウさんを救おうと思っていましたから。ですが、こんな大勢で助けに行くとは思ってもいませんでした」

ツバキ「気にすることなんてないよー。それにフウマが動いたおかげで色々こっちもあったから、その借りは返しておきたいんだよねー」

カザハナ「うん。本当に死ぬかと思ったんだから、そのお礼はたっぷりしてあげるつもりよ」

アクア「頼もしいわね。あとカムイ、この洞窟から少なからず竜脈を感じるわ」

カムイ「本当ですか?」

アクア「ええ、調べてみないことには何とも言えないけど、フウマも想定できないことが起きるかもしれないわ」

カムイ「なら、フウマの度肝を抜いてあげましょう。庭を知り尽くしていればいるほど、混乱するでしょうから」

アクア「ええ」

アシュラ「それで、残りは陽動と攻撃に回るってことでいいのか?」

カムイ「ええ、アシュラさんも含めて残りの方たちはフウマ兵の相手をお願いします。サイゾウさんの件もあります。進軍するようにお願いできますか?」

アシュラ「ああ、それで聞いておくが、コタロウを見つけたらやっちまっても構わないんだろ?」

カムイ「ええ、構いません。ただ……」

アシュラ「なんだ?」

カムイ「死なないようにしてください。このようなところで、私は仲間を失いたくはありませんから」

アシュラ「……それは、ここに来た時のお返しか?」

カムイ「私の約束に従ってくれた仲間を心配しても罰は当たりませんから」

アシュラ「ああ、わかったよ。それじゃ、先走っていったあの忍を追い掛けるさ。あいつは俺以上に無茶をしそうだからな」

スズカゼ「すみません、アシュラさん。兄さんの事、よろしくお願いします」

アシュラ「へ、兄さんって、え?」

スズカゼ「カムイ様、こちらです」

カムイ「はい」

 タタタタタタッ

アシュラ「ははっ、お願いされちまったら仕方ねえか」

アシュラ(……不思議なもんだ。復讐を果たせるっていう心よりも、あいつらのために戦えることの方が嬉しく感じるなんてな……)

アシュラ「それじゃ、行くとするか……」チャキッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 パラカッ パカラッ
 
エルフィ「何かいるわ。人形みたいだけど」ジャキ

絡繰人形「……」カタッ キリキリキリ パシュッ

エルフィ「この程度、どうってことない。スズカゼ。あれ、お願いできる?」

スズカゼ「任せてください」

スズカゼ(あれはとても古い物のようですね。なら、動力部は胸元ではなく側面、この距離なら……)

スズカゼ「もらいました!」カタラッ バシュッ

 ガキィン!

絡繰人形「……」バラバラバラ カランッ

エリーゼ「うわっ、一回でバラバラになっちゃった!」

ツバキ「ははっ、本当だ。でも……」

カザハナ「すっごい不気味だよね、この人形。暗夜にいる間に可愛い人形結構見て来たから、こういうのを可愛いと思ってたと思うと、なんだかね……」

アクア「まぁ、文化が違うから、感性も大きく違ってくるはずよ」

カムイ「しかし、すごいですね。今のは弓でしょうか? それに中から丸い何かが飛び出たようですけど」

ピエリ「ギザギザな円盤なの。これで相手を切り刻むとすごく血でドバドバになりそうなの!」

スズカゼ「ええ、遠距離ならば弓を、近接ではあの刃を攻撃に使ってくるということです。白夜にも配備されているでしょうが、ここのは幾分か古い物のようです」

ピエリ「すごいの。スズカゼは物知りだから、すぐに答えてくれるの。絡繰博士みたいなのよ」

スズカゼ「知っていることを言っているだけですよ。それに……」

スズカゼ(暗夜の軍師が書物を用意してくれたからこそ、こうしてすぐに処理が出来るわけですから、感謝するべきは軍師になのでしょう)

エリーゼ「でも、もう行き止まりみたいだよ」

カムイ「そうですね。スズカゼさん。ここでいいんですか?」

スズカゼ「はい、その先の岩に何でもいいので、ものを当ててください」

カザハナ「わかったわ。そーれっと!」ブンッ

 キィン バタンッ

エリーゼ「わっ、岩が剥がれて、奥に続く道が出てきた!」

 タタタタタッ

フウマ兵「き、貴様らカムイの―――」

ツバキ「はい、お疲れ様ー」ザシュッ

 ドサッ

フウマ兵「やるようだ。 ならば!」ダッ チャキッ

ツバキ「居合い……か」

フウマ兵「この閉所で避けられると思うな! くらえええっ!!!」

ツバキ(動きを合わせて、ここは――)

エリーゼ「ツバキあぶないっ、えーい!!!」ブンッ シュオオオオオオッ

 フオオオオオンッ

フウマ兵「なっ、か、からだが!? 動かなく!?」

 タッ

カザハナ「それじゃ、お疲れ様っと!」ブンッ ザシュッ

 ドサッ

エリーゼ「やったー、あたしの魔法、決められたよ! ツバキも無事だし、えへへ、うまく言ったね!」

ツバキ「うん、そうだね。でも助けてもらわなくても大丈夫だったかな」

エリーゼ「えー、今の危なかったよ。だって、敵の動きすごく早かったもん」

ツバキ「ははっ、全部見えてたんで大丈夫だったはずですよ。エリーゼ様」

エリーゼ「そ、そう……お節介だったかな……」シュン

カザハナ「ご、ごめんねエリーゼ王女。ツバキってこういう感じだから、その、元気出してよ!」

エルフィ「ツバキ、この戦いが終わったら、あなたををリンゴにしてあげる」

ツバキ「人はリンゴにはならないよー」

エルフィ「……訂正するわ。つぶれたリンゴみたいにしてあげる」

ツバキ「えーっと、冗談、だよね?」

エルフィ「……」

カザハナ(この顔、真面目につぶれたリンゴみたいにする気ね……)

カムイ「お楽しみのとこ悪いんですが、通り過ぎた場所から敵の増援が来ているようです」

ツバキ「それは大変だねー。カザハナ、この先の敵、ちゃちゃっとやっちゃおっか?」

カザハナ「わかったわ。早くカゲロウを助け出して、サクラと合流したいからね。一気に行くわよ」ダッ

ツバキ「ははっ、それじゃ俺も行くよー」ダッ

ピエリ「二人とも危ないの! ピエリも加勢するのよ!」パカラッ

 キィン キィン ズシャ バシュッ
 
 ソレー ナノー コレデー グワアアアアア

エリーゼ「す、すごいっ。どんどん倒してる。ピエリもすごいけど、ツバキもカザハナもすごい……」

エルフィ「……」モミモミ

エルフィ(少しだけ、筋力が落ちたかもしれないわね……)

エルフィ「もっと、鍛えないと」

エリーゼ「エルフィ、なにしてるの?」

エルフィ「なんでもないわ。それよりもスズカゼ、エリーゼ様を連れて先の広間に行ってくれる?」

スズカゼ「はい、私が先行しますのでエリーゼ様は続いてください」

エリーゼ「エルフィはどうするの」

エルフィ「わたしは盾です。ここでできる限り敵を引きつけるのが私の役目ですから。大丈夫、すぐに追いつくから」

エリーゼ「……うん、わかった。絶対、倒れちゃ駄目だからね」

エルフィ「はい」

スズカゼ「では、向かいましょう」

 パカラパカラ カシャンカシャン

エルフィ「カムイ様とアクア様も先へ」

カムイ「はい、わかりました。アクアさん、こちらの奥に?」

アクア「ええ、流れは感じるから。多分ね」

エルフィ「何の話をしてるんですか?」

アクア「この先に竜脈があるみたいなの。もしかしたら敵の増援をどうにかできるかもしれないわ」

エルフィ「わかったわ。なら、わたしが受け止めてる間に探ってきて。もしも意味がなさそうなら」

カムイ「すぐに戻って援護しますよ。一人になんてさせませんから」

エルフィ「そう、なら、任せたわ」ジャキッ

カムイ「はい」

 タタタタタッ

フウマ兵「そこか!」ブンッ

エルフィ「!」

 キィン

エルフィ「効かないわ。そんな攻撃」

ツバキ「うん、制圧完了だねー」

カザハナ「なんていうか、仲間の命なんて気にしてない戦い方ね。連携なんて稀だったし」

ピエリ「同士打ちしてるのも何人かいたの。みんなバラバラだったから、倒しやすかったのよ」

ツバキ「まぁ、弱いならそれにこしたことはないけどねー」

 パカラ パカラ カシャン カシャン

スズカゼ「すでに制圧済みですか。みなさん、さすがですね」

ピエリ「えへへー。ピエリ達に任せればすぐに解決なの!」

カザハナ「まあ、伊達にサクラの臣下はやってないからね」

ツバキ「そうそう、とっても楽勝でしたよー」

 スッ

エリーゼ「! みんな、向こうから何か来るみたいだよ!」

カザハナ「もう新しい増援!? 休む暇もないじゃない」

ツバキ「はいはい、弱音は吐かないでいくよー」

ピエリ「でもすごいの、エリーゼ様、あんな遠くのよく見えたの」

エリーゼ「うん、だって、気付かなかったら攻撃されてたかもしれないから。あたしもみんなのこと守りたいから……」

ピエリ「すごくいいことだと思うのよ。闘うのなら守るための方が力が湧いてくるの。エリーゼ様もそうなるといいの!」

エリーゼ「ピエリ……うん、あたしもそう思う!」

ピエリ「えへへー、それじゃ御手本見せるために、ピエリいっぱい頑張っちゃうの! そうなの、さっきエリーゼ様の補助に変な事言ったツバキは、あとでえいっしとくから心配いらないの」

カザハナ「ツバキ、人気者ね」

ツバキ「ええ……」

 タタタタッ

カムイ「アクアさん、竜脈の反応は!?」

アクア「こっちよ」

エリーゼ「カムイおねえちゃん!」

カムイ「エリーゼさん、少しの間だけここに敵が入るのを防いでください。おねがいします!」

エリーゼ「わ、わかったよ! えっと、みんな、その……」

ピエリ「大丈夫なの。エリーゼ様」

カザハナ「そうね。ちょっかい出せないように、いっぱい投げつけてあげるんだから」

ツバキ「そういうことだから、抜けてここに来れると思わないでほしいね。敵さんにはさ。だから、命令くれるかなー」

エリーゼ「みんな……、ここに一人も入れないようにして。カムイおねえちゃんの指示が出るまでは絶対だからね!」




アクア「見つけたわ。ここね……洞窟全体に広がってるみたい……」

カムイ「どうですか?」

アクア「……そう、少しだけわかったけど、みんなをちゃんとこの広場に集めないといけないわ。目の前にもそれなりに変化が起きるみたいだから……」

カムイ「目の前にもですか」

アクア「ええ、だから今は使えない。エルフィが孤立することになりかねないわ」

カムイ「わかりました。スズカゼさん」

スズカゼ「はい」

カムイ「エルフィさんの援護に向かうので、同行してください」

スズカゼ「はい。わかりました」


エルフィ「はぁ、はぁ……」

エルフィ(数が多い……)

フウマ兵「これでっ!!!」ブンッ

エルフィ「っ!」

 キィン

フウマ兵「でやぁあああ!」ダッ

エルフィ「てやっ!」ザシュンッ ドサッ

フウマ兵「しぶといな。しかし、このまま力切れになれば、好きにできそうだ。結構よさげな顔してるし、鎧の形も何ともいえねえからな」

エルフィ「いっぱいリンゴみたいになりたいのがいるみたいね?」

フウマ兵「けっ、顔を林檎みたいに真っ赤にするのは、お前のほうさ。どんな顔で鳴くのか、楽しみで仕方ねえ」

エルフィ「……そう、なら先につぶれたリンゴにしてあげる」ググッ

フウマ兵「できるもんならな!」ダッ ダッ

エルフィ(二人同時。一人を盾で受けてそのまま潰して、あと一人はを槍で……)

フウマ兵「こっちだ!」

エルフィ「そこね!」

 キィン バシンッ ザクッ

フウマ兵「げひゃっ……」

フウマ兵「俺のほうに運があったみたいだな。このまま行かせて――」ダッ

エルフィ「そこよ!」

フウマ兵「ってのは嘘だ」サッ

 スカッ

エルフィ(しまった、下に!!!)

フウマ兵「けけっ、馬さえどうにかしちまえばこっちのもんだ! 馬ごと倒れろ!」

エルフィ(こんなところで、死ぬわけにはいかないのに……エリーゼ……)

フウマ兵「くらええええっ―――」

エルフィ「っ……」

 ヒュンッ ザシュ

フウマ兵「ギッ」

エルフィ「?」

フウマ兵「ぎゃああああ、目が、目があああ」ジタバタ

フウマ兵「がああっ、いてええ、あちいぃ、うがああああ」ジタバタ

エルフィ「……えいっ」

 ザシュ クタッ

エルフィ「どうにかなったけど、一体何が起きて………」

 ダッ チャキッ

フウマ兵「安心するには、まだ早いぞ!」

 タタタタタッ

エルフィ「その程度なら!」

フウマ兵「その馬の足、切り取って―――」

カムイ「どうでもいいですが、防御がガバガバですよ」バシッ

エルフィ「え?」

フウマ兵「なっ」

カムイ「はあああっ」バシンッ

 ゴロゴロゴロゴロ パタリッ

カムイ「ふう、流石はエルフィさんです。ちゃんと私が戻ってくるまで持たせてくれましたから」

エルフィ「か、カムイ様?」

スズカゼ「どうにか間に合ったようでなによりです、エルフィさん」

エルフィ「スズカゼまで……」

カムイ「すみませんが、すぐにこの先の広場へ移動します。これ以上、こんな下衆たちを正面に見る時間はありませんから」

エルフィ「そうわかったわ。でも、わたしの後ろにカムイ様がいないと動きません」

カムイ「そこは譲らないんですね。先ほど、少し辛そうに感じましたが……」

エルフィ「ええ、たとえどんな時でも、ここは譲れないわ。だって、これがわたしの戦う理由だもの」

カムイ「はい、わかりました。スズカゼさん、後方から援護を。広場まで退きます」

エリーゼ「あっ、カムイおねえちゃんたちが来たよ、アクアおねえちゃん!」

アクア「広間の中央に入ったら教えて頂戴。それと、カザハナごめんなさい。こんな役目を頼むことになって」

カザハナ「構わないよ。それにその話が確かなら、この先に敵がいないとは限らないし、なによりアクア様に何かあったら、カムイ様が黙ってないからね」

アクア「そ、そうかしら……///」

カザハナ「なんで顔赤くしてるの?」

アクア「集中しているだけよ。そう、集中しているだけだから。それより、カザハナも備えておきなさい」

カザハナ「ええ、わかってる……」

アクア(カムイが黙ってないって。仲間が傷ついたらそれは黙ってないとは思うわ。そういう意味に決まってるから。でも……)

アクア「本当にそうなら、少し……嬉しいと思っているということかしら……」

カザハナ「アクア様?」

アクア「なんでもないわ。そろそろのはずだから、準備をして」

カザハナ「わかったわ」チャキッ

 パカラパカラ タタタタッ

カムイ「エリーゼさん!」

エリーゼ「今だよ、アクアお姉ちゃん!」 

アクア「ええ。竜脈よ……私に応えて」ググッ

 ピカッ シュオン

 フオオオオオオオンッ!

 シュインッ

 ドワアアアアンッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 キィン キィン ザシュ

 ドサッ

 キィン キィン

 サッ

サイゾウ「ちっ……」

フウマ兵「ふっ、一人で二人を相手にしようとは愚の骨頂」

サイゾウ「ふっ、その一人に多く仲間をやられているようでは、お前たちの力の低さはわかるというものだ」

フウマ兵「結果的に勝てばそれでいい話だ。死んだ者たちは弱かっただけの話、最後に立っている者にこそ価値がある」

サイゾウ「ずっと何もせずに見ているだけの癖にか?」

フウマ兵「その口すぐに聞けぬよう、その身を地に伏してやろう!」ダッ

フウマ兵「ああ、少しへばってる今、我々の攻撃避けられるか!?」

サイゾウ「なんどやろうと同じことだ。二人まとめて返り討ちに――」

 ゴゴゴゴゴゴッ

サイゾウ「なっ、この揺れは!?」

フウマ兵「な、なにが――」

フウマ兵「ん、地面になにか―――」

 ズガンッ ズガンッ

フウマ兵「グピッ!!!!」グチャリッ

フウマ兵「ゲピッ!!!!」ベチャッ

サイゾウ「!? 地中から柱が……これもフウマの仕掛け……ではないな。こいつらも困惑していたことを考えれば……」

 ゴゴゴゴゴ

 ズズズズッ

サイゾウ(幾本か地中に戻ったか。また次あったとしても、地面を見れば柱の出る場所を察することはできそうだ)

サイゾウ「……何が起きているかは分からない。しかし、奴らにとっては予想外なことに間違いない。これに乗じて、奴に追い付かせてもらおう」

サイゾウ(……カゲロウ)

サイゾウ(任務という事項を使い、お前を優先しない俺を怨んでも構わない。たとえ、お前が生きていることがわかっていたとしても、俺は……)

(目の前にあるこの機会を、逃すことができないだろうからな……)

今日はここまで

 フウマ公国のイメージが完全に黒犬傭兵団になっている。
 リンゴとえいっを選べるキャンペーン。私はもちろん、えいっのあとリンゴで。

 ドリームキャッチャーとってもいい曲なのに残念や。そして味の絨毯爆撃も……。
 ディア魔女いろは、キリアVer(フル)に期待せざるを得ないのだ。



 次回の番外は『リリスの多世界観察記』と『カムイとまきゅべす』の二つに決まりました。
 安価に参加してくれてありがとうございます。
 
 最後に『カムイとまきゅべす』のカムイの性別を今回決めたいと思います。

 先に3回上ったほうにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

~~~~~~~~~~~~~~~

 ゴゴゴゴゴゴ ズズズズ

カザハナ「か、壁が動いちゃった……」

 バシュンッ ガゴンッ

エリーゼ「こっちは二つとも道が塞がれたよ!」

 ゴンゴンゴンッ!

スズカゼ「悔しそうな音が聞こえますね」

ツバキ「はは。本当だね。まぁ、開けるつもりはないけどさー」

アクア「どうやら先に敵はいないみたい。それにこの洞窟内部も全体的に形が変わったはずよ」

カムイ「すごいですね。頭に地図が入っている敵は、地形の変化で混乱しているでしょうね」

ピエリ「それじゃ、ピエリが先に様子見るの」

カザハナ「ちょっと、一人じゃ危ないって。敵は多くいるんだからさ」

ピエリ「なら、カザハナも一緒に来るの」ガシッ

カザハナ「え?」

ピエリ「今、ここの出口は一つしかないの。入口抑えられたら大変だから、二人で先制しちゃうのよ!」

カザハナ「きゃ。ちょっと、服ひっぱらなっ、きゃあああっ。ほどけるほどけちゃうから。わかったわかったから、せめて馬に乗せてよ!」

ピエリ「駄目なの」

カザハナ「なんでっ!?」

ピエリ「ここは助けるカゲロウって人と、リリスだけの特等席なのよ」

カザハナ「ひ、ひどい……。ああ、ヒモが取れちゃうううう、取れちゃうからぁぁぁーーー!」

 パカラ パカラ

 
 テキ、テキナンデ!? 

 ヤツケルノー!

エルフィ「ふふっ。それじゃエリーゼ、わたしたちも援護に向かいましょう」

エリーゼ「うん、早くツバキも行こう。今度もちゃんとフォローするからね」

ツバキ「いやー。そういうのは大丈――」

エルフィ「……」

ツバキ「エリーゼ様、頼りにしてるよー」

エリーゼ「やったー。任せてね、ツバキ!」

スズカゼ「ふふっ、ツバキさんも、エリーゼ様には敵いませんね」

ツバキ「いや、さすがにリンゴみたいにされたくはないし、なによりエルフィの指の動きが怖いからさー」

エルフィ「……」コキッ コキコキッ

スズカゼ「たしかに、そうかもしれません」

エリーゼ「大丈夫、ツバキの行動に迷惑なんて掛けないから……。だから、その、ちゃんと見てるってことは覚えててくれるとうれしいな」

ツバキ「わかったよ、エリーゼ様のこと信じるからねー」

エリーゼ「うん、まかせて!」

エルフィ「ふふっ、ツバキが素直になって嬉しい。リンゴにしなくて済むなら、すごくいいことだもの」

ツバキ「エルフィは言い方が少し怖いけどね。それじゃ行こうか、ピエリとカザハナだけじゃ、心配だからね」

エリーゼ「うん、それじゃ。いくよー!!!」

 タタタタタッ

アクア「……はぁ、はぁ。少し疲れが出るわね。竜脈を動かすのは、すこし骨が折れるわ」

 ガシッ

アクア「?」

カムイ「さぁ、アクアさん、私たちも次の場所に向かいますよ」

アクア「ちょ、ちょっとなにしてるのよ」

カムイ「今疲れたって言ったじゃないですか。だからこうやって抱えているんです」

アクア「気遣ってもらえるのは嬉しいけど、その恥ずかしいからやめてくれないかしら?」

カムイ「いいえ、やめませんよ」

アクア「ど、どうして…」

カムイ「エリーゼさんには指揮系統を任せていますし、私には竜脈がどういったものかわかりません。この中で竜脈を自在に操ることができるのは、アクアさんだけなんですから」

アクア「た、確かにそうかもしれないけど」

カムイ「それに、アクアさんはずっと一人で苦しんできたんですから。あまり傷ついてほしくないんです」

アクア「な、何を言って。そんなことを言ったら私もあなたに傷ついてほしくないわ。前も言ったはずよ」

カムイ「はい、だから一緒に行動しましょう?」

アクア「え、ええ。わかったわ」

カムイ「ありがとうございます」

アクア「……お礼は言わないで、私達は互いに助け合うって決めた。そうでしょ?」

カムイ「それもそうでしたね」

アクア「それじゃ、次の竜脈の場所に向かいましょう」

カムイ「はい」

 タタタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アシュラ「ほらよっ!!」ブンッ ザシュッ

フウマ兵「ぐあああっ」ドサッ

フウマ兵「くそ、一体どこから現れた!」

フウマ兵「ちくしょう、こっちから回り込めれば、たやすく倒せるというのに。なんだ、この壁は!?」

 ワーワー ガヤガヤ

 サッ

アシュラ「突然、道がふさがれたりと不思議なことがあったが、これもカムイ様が何かしたってことか。まぁ、危うく挟まれかけたけどよ」

アシュラ(それにしても、アジロギだったか。あいつが報われねえな。命令通りに事を運んだって言うのによ。正直あいつみたいな奴らがわんさかいるかと思ったが、術も使えねえ、フウマ流の切り込みもしてこねえときた。使える札を先に切りまくって来たって感じの陣容だ)

 チョンチョン

アシュラ「?」

サクラ「あ、あの大丈夫ですか」

アシュラ「問題ないですよ。それに、敵さんの慌てる姿を見てられるくらいには落ち着いてるんで。それより、サクラ様の臣下は全員カムイ様に付いて行きましたが……」

サクラ「私が指示を出しましたから、カムイ姉様のお役に立ってくださいって。それに守られてるだけじゃいけないって私も思いますから」

アシュラ「そうか。まだ俺がコウガの民だった頃は、サクラ様は生まれて間もない頃でした。話を聞いた時はいずれ白夜に行ってみたいと思ってたくらいですよ。しかし少ししてフウマに滅ぼされてしまいましたが……」

サクラ「え、コウガは未曾有の大災害で国としての基盤を維持できなかったと……」

アシュラ「……そうか、表向きにはそう処理されたのか。まったく、でも確かにコウガは滅んでるんだから、どんなことになってても仕方ないってことか」

サクラ「?」

アシュラ「いいえ、サクラ様が聞いて楽しい話ではないんで……。そう考えると、都合のいいように変えられる物が、コタロウの求めるものってことかもしれないな」

サクラ「都合のいいように変えられる物……ですか?」

アシュラ「ああ、ここにいる奴らなんていい例ですよ。ノートルディアで戦った奴のほうが歯ごたえも志もあった。何より誇りも。あの時戦ったあいつは愛国者だろう。こんな国、いやあんな野郎に命を捧げるような作戦に身を投じた。俺が屠ったのも何かの縁だったのかもしれない」

サクラ「志は心の強さだって、私は思います」

アシュラ「へぇ」

サクラ「な、なんですか?」

アシュラ「いや、こんなに若いもんだから。意見を口にしてくるとは思わなかったので、少しだけ関心したんですよ」

サクラ「前までの私なら、そうだったかもしれません。でも、私もカムイ姉様やレオンさん、たくさんの人に支えられてここまで来れたから、私もその分皆さんの役に立ちたいって思うんです」

アシュラ「なるほどね。見た目に反してとても強い人だ、サクラ様は」

サクラ「……強くなれただけですよ」

アシュラ「そうかい、カムイ様は本当に不思議な人だな――」

フウマ兵「そこの陰か!」ダッ ブンッ

 スッ バチン

サクラ「キャアッ!」

アシュラ「ちっ、サクラ様は下がりな、ここは――」

フウマ兵「遅い、その小娘を殺し――」

???「女の子に向かって、なにやってんだコラっ!!!!」ダッ

 クルクルクル ザシュンッ

フウマ兵「がはぁ」ドサッ ドササッ

シャーロッテ「サクラ様、大丈夫? ああもう、もう少し後ろにいなさいよ」

サクラ「ご、ごめんなさい。シャーロッテさん」

シャーロッテ「謝るのはもういいわ。ちょっと怪我してるし、サクラ様駄目じゃないですか?」

アシュラ「ああ、少し怪我を――」

アシュラ「っていうかおめえだよおめえ!」

アシュラ「な、なんだよ。っていうか、お前なんかいつもと違くねえか?」

シャーロッテ「なんだよじゃねえよ、女の子守ってこその男だろうが、何突っ立ってんだよ、ええ?」

アシュラ「……すまん」

シャーロッテ「まったく、ほら、サクラ様、傷口の手当するから。まったく、話をするのは別に構わないけど、心配してるこっちの身にもなりなさいよ」

サクラ「え?」

シャーロッテ「カザハナに頼まれてんの。サクラ様のこと」

サクラ「カザハナさんがですか」

シャーロッテ「まぁね。それにサクラ様みたいな可愛い子が傷つくところなんて見たくないからね。はい、あとは傷薬つけて、包帯捲いて。うんうん、これで傷もなく治るはずよ」

サクラ「あ、ありがとうございます」

シャーロッテ「気にしない気にしない。それにしてもここの男どもは駄目だわ。見る目見る目厭らしいし、少しだけコロっとしてあげると、無防備に突っ込んでくるし。なんていうか、あれね。盛りの付いたサルみたいな奴らばっかりだわ」

アシュラ「そりゃ、そんな胸元強調してる格好してたらな」

シャーロッテ「てへへ、オンナの武器は有効に使わないといけないから。どう?」バインッ

サクラ「女の武器……」

サクラ「……」スッ

 ペタペタ

シャーロッテ(何度も触ってる。小動物見たいでやっぱり可愛いわね)

シャーロッテ「大丈夫、サクラももう少しした大きくなるから、ね?」

サクラ「な、なんでもないです。何でもないですから。そ、それより、早くこの戦いを終わらせましょう?」

シャーロッテ「そうね。サクラ様が胸を大きくする運動を心置きなくできるように、早くこの戦いを終わらせないと」

サクラ「シャーロッテさん!!!!」

アシュラ「それじゃ、俺は左を攻めに行くぜ。白夜の王女のために尽くすのも悪くないからな」

サクラ「あ、アシュラさんまで!!!」

シャーロッテ「じゃあ、私は右に行くわ。それと、私の素の振る舞い、誰かに話したらシバクから、そのつもりでいろよな」

アシュラ「へいへい。それじゃ、いくぞ!」

シャーロッテ「ええ、一人残らずぶっ飛ばしてやるわ。サクラ様の胸のためにもにね!」

サクラ「だから、なんでそうなるんですか!」

シャーロッテ「よっしー、いくぞーっ!」

サクラ「もうっ、待ってください、シャーロッテさん、アシュラさん!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

コタロウ「これは、一体どうなっているというんだ!?」

フウマ兵「わ、わかりません。突然地中から――」

コタロウ「見ればわかる! それを何とかしろと言っているんだ! 道が変化してはこちらの手もうまくはいかないというのに……」

コタロウ(くそ、頭に入っている分、こちらが不利になるとは思ってもいなかった。すでにほとんどの者たちがバラバラに動き始めている以上、孤立撃破の可能性もあり得る。何たる様だ!)

フウマ兵「このままでは危険かと、上で戦っている者たちに応援を要請しますか?」

コタロウ「できるならばそうする。だが、白夜の兵の攻撃を抑えている状況でそんなものは呼び寄せられはしない。それに、そもそも地上への道が残っているのかすらわからない状態。ここにいる戦力で、どうにかする以外に道はない」

フウマ兵「そ、そんな。複雑に形が変わったこの洞窟内では我々の力も出しきれるものでは……」

コタロウ「フウマはここで終わる国ではない。必ずこの戦争を越えて繁栄する。それ以外の道などあってはならない、ならないはずだ」

コタロウ(そうだ、そんなことがあってなるものか。ガロン王から頂いた託は、この戦争が終わって初めて意味を持つ。そこまで、私は生き残らなければならないのだ。このような公国、いや小国ではなくもっと多くの人間を支配し、運用できる大国の王となるために。フウマという国ではない、私という人間が管理運営する、私にとっての王国を……)

コタロウ「よし、できる限り固まって動くように指示を出せ、地面の形状から柱が出てくる場所は大抵予測がつく、揺れに合わせてその場から遠ざかるように心得よ。そして、できる限り待ち伏せに徹するように指示を出せ!」

フウマ兵「わ、わかりました!」

 タタタタタタッ

コタロウ「……先行作戦に参加するだけ、あとは恩恵を得るだけだったといものを……。くそっ」

コタロウ(しかし、なぜこのようなことに……。ガロン王に逆らうなどという愚かな選択を取る。普通ならば考えられない愚行。明らかに戦力の差もあるというこの中で、何故……)

コタロウ「ガロン王に短き間といえど仕えてきた私でさえ、それがわかるというのに。愚かな王女たちだ……。それを蹴散らせれば、もう、この先に暗雲などない。繁栄という晴天が残るだけなのだからな」

コタロウ「………」

コタロウ(だが、なんだ。この不安は。この言い知れぬ不安はなんだ? 私は……)

(私は一体何を恐れているというのか……)

今日はここまでで
 
 フウマ公国の洞窟は竜脈で変化する多機能要塞だけど、コタロウは竜の血を引いてないという不思議な場所だよなぁ。

 マクベス番外は女性でエロにする予定はないです。マクベスはエロと言うより苦労担当やから。

◇◇◇◇◇◇
―フウマ公国・洞窟内部『地下牢』-

フウマ兵「へへっ、んくあああぁああっ……」

カゲロウ「……んんっ、うううっ、ハァ……ハァ……」

フウマ「おら、何休んでんだよ」ガシッ

カゲロウ「うぐっ……」

フウマ兵「へへっ、もうばてたのか。今日までの時間を考えたら、まだまだ持ちそうなのによ。ええ?」

カゲロウ「フーッ……フーッ」

フウマ兵「あははははっ、すまねえすまねえ、猿轡をつけられてたら、まともに話もできないよなぁ? しかし、薬を少しは使わないと濡れもしねえとか。どんな訓練積んでんだ、それとも心を開いた相手にしか正直にならない体って奴か? おら、どうなんだよ?」

 カポッ カチャンッ……

カゲロウ「はぁ……はぁ……ぐっ」

フウマ兵「いいねぇ、その目はすげえそそられる。やっぱり強い女手のはいいな、男の絶対的な力で心が折れるまで壊してやりたくなるよ、まだまだ壊れねえから、正直しぶとくて面白言っちゃ面白いけどな」

カゲロウ「………」

フウマ兵「しかし、残念だ。もう楽しみ時間もあとわずかってところだからな。お前もそう思うだろ、なぁ?」

 ドゴォン…… パララッ

フウマ兵「ちっ、楽しめてあと一回ってところか? 最後の相手が俺みたいな下衆ってどんな気持ちなんだよ?」

カゲロウ「……ただ不快なだけだ……」

フウマ兵「そうかい、そうかい。しかし、あの暗夜の王女とその部下は馬鹿な奴らさ。この俺たちの庭のような場所で、攻撃を仕掛けてくるなんてなぁ? そのおかげで、お前も今から殺されちまうって言うのによ」

カゲロウ「? 何を……言っている」

フウマ兵「お前はここで終わるんだよ。いろいろと楽しませてもらったが要済みってことだ。おもちゃの後釜には暗夜の裏切り物がごまんと来てくれる。俺達フウマ公国、いやガロン王っていう存在を裏切って、一体何がしたいんだか。理解できねえよな、本当によぉ」

カゲロウ「……ふ」

フウマ兵「?」

カゲロウ「ふっ、ふふっ」

フウマ兵「てめえ、何笑ってやがる!?」

カゲロウ「いや、この状況をそういう風に考えているということに、思わず苦笑してしまっただけのことだ」

フウマ兵「そういう風だと? 何言ってんだてめえは、暗夜の王女たちがガロン王を裏切っている、現に俺達が攻撃されてることがその証明だ。間違いないだろうが!」

カゲロウ「本当にそうだと言える保証はない。もしかしたら、これが先行部隊の本当の目的の可能性もないわけではない。そうだろう?」

フウマ兵「本当の目的? 意味わからないこと言ってんじゃねえ!」

カゲロウ「そうか、わからないというのならわかりやすく答えてよう。単純にガロンに捨てられたのはお前たちかもしれないというだけのことだ」

フウマ兵「な、なにを――」

カゲロウ「お前の言う通りガロン、いや暗夜王国はとても強大だ。力での支配力はとても高く、お前達が従うように多くの場所もそれに従うことだろう」

フウマ兵「そうだろうが、だからこそ、あの王女たちは馬鹿だと――」

カゲロウ「しかし、そう考えればこんなところで反逆する意味が王女にあると思えるか?」

フウマ兵「……」

カゲロウ「そのような選択、普通はしないだろう。伊達や酔狂でお前達に刃を向けたわけではないとするなら……、それがガロン命令通りの動きであったとしてもおかしくはない」

フウマ兵「お、俺達が切り捨てられた側だって言いたいのか、てめえは!?」

カゲロウ「………」

フウマ兵「答えやがれ!」ドスッ

カゲロウ「ぐっ……ゲホッゲホッ……。なんだ、切り捨てられていないと、捕虜である私に言ってほしいのか?」

フウマ兵「舐めやがって、最後に一回楽しもうかと思っていたが止めだ……」カシッ スーーッ チャキ

「その強気の面がどこまで本気か試してやるよ」

 ブンッ

 ザシュッ

カゲロウ「があああああっっ!!!!!」

 ポタ ポタタ

フウマ兵「なんだよ、まだ腕を少し切っただけじゃねえか。へへっ、いい叫び声だ、しびれるよぉ。女の叫び声ってのはすげえ気持ちがいい」

カゲロウ「ぐっ……くううっ」ポタポタポタ

フウマ兵「次はどこにするか。安心しろ、すぐに殺したりはしねえからよ。へへっ、涙と鼻水垂らして『やめてください、お願いします』って言うまで、いたぶってやる」

カゲロウ「……ふっ、そうしたところで助けるのか」

フウマ兵「いいや。言っただろ、てめえはここで死ぬ。こんな風にされながらな!」ザシュッ

カゲロウ「っ!!!!!!!!」

フウマ兵「おっ、今度は我慢したか。すげえなぁ、刃が半分くらい刺さってるって言うのによ」ズズッ バチュ 

カゲロウ「っっ!!!!」

フウマ兵「あーあ、きれいな肌がズタズタだなぁ、おい!」ザシュ

カゲロウ「っっっ!!!!!! フーッ……ハーッ」

 ポタタタタッ

フウマ兵「気に入らねえな。もっと赤い声で鳴けよ、つまらねえ」

カゲロウ「……元から面白味のない女だ。お前を喜ばせるようには出来ていない」

フウマ兵「ああ? お前自分の立場わかってんのかよ、空気読めよ、こら」ドゴッ

カゲロウ「うぐぁ……」

フウマ兵「はぁ、もう少し人数がいる時にこうすればよかったぜ。変わり変わりに顔面殴ってく遊び、したかったぜ!」ドゴッ

カゲロウ「んぐっ、あぁ……」

フウマ兵「おらおら、どうしたんだよ? さっきみたいに言ってみろよ。捨てられたのはお前たちだってよぉ?」ガシッ グググッ

カゲロウ「くっ……」

フウマ兵「へへっ、言ったら言ったでもっと殴ってやるよ。人の言う通りにしたら、ご褒美をくれないといけないからなぁ」

カゲロウ「……自分で考えろ。この下衆が」

フウマ兵「そうかい、なら、ご褒美だ」

 ドスッ

カゲロウ「うぐぐっ、おえええぇ……」

フウマ兵「あーあ、吐き出しやがった。気持ちわりい」

カゲロウ「はぁ、はぁ……」

フウマ兵「たく、部屋汚しやがって、おい、聞いてんのかくそ女。俺を動揺させるためにそんな戯言こぼしやがって……、その体にお返ししねえとなぁ!」

 ドスッ バキッ ドガッ

カゲロウ「ぐ………ああぁ……」グッタリッ

フウマ兵「へへっ、いいな体中痣だらけになってよぉ。個人的にさっきより色っぽく見えるぜ。へへっ、俺の殴り傷でいっぱい満たしてやったからか、すげぇイイ気分だよ」

カゲロウ「……はぁ……はぁ……うぅ……」

フウマ兵「あーあー、顔が腫れて美人が台無しだ。まだ少し美人な感じもするけど、前ほどじゃねえな」

カゲロウ「……」

フウマ兵「反応しねえとかつまらねえ。もう飽きたわ。だからよぉ……」シャキンッ カランカランッ

カゲロウ「……」

カゲロウ(リョウマ様、サイゾウ、スズカゼ……。私は、どうやらここまでのようだ……)

フウマ兵「貴様は地獄から見ているがいい。我らのフウマ公国が繁栄していく姿を、そして貴様の戯言が、ただの妄言だったということをな!!!!!」チャキッ

カゲロウ(すまない……)スッ

フウマ兵「しねえええええええええ!!!!!!!」


 ブンッ



 ズビシャ………


 ゴロン
  ゴロン
   ゴロン
   
 カランッ
  カラカラ
   チャキンッ


 ドサリッ
  ドクドク……

「はー………、はー………」

フウマ兵「」

カゲロウ「……」

「……地獄から私たちを見るのは、あなたの方ですよ……」

 クルクルクル チャキンッ カチャン

◆◆◆◆◆◆

カゲロウ「……」

カザハナ「ひどい……。こんなことするなんて……」

エルフイ「すぐに外さないと。ツバキ、彼女を支えて!」

ツバキ「ああ、支えたよ」

エルフィ「よし、いくわよ。ふんっ!」

 バキィ ガシャンガシャンッ……

 ドサッ

カザハナ「体中青痣だらけ……ううっ、見るに堪えないよ、こんなの……」

エリーゼ「! えいっ!」

 シュオンッ カラララッ

エリーゼ「これで応急措置はできたと思うから……」

カザハナ「ありがとう、エリーゼ王女」

エリーゼ「ううん、あたしにできることだから……。でも、ひどいよ、こんなの……」

カザハナ「うん……」

エリーゼ「どうしてこんなことするの? この人、ただ捕まってただけなのに、どうして、こんなにされないといけないのかな……」

カザハナ「……大丈夫。あたし達がここにいるから、もうカゲロウは酷いことされたりしないから。だから、エリーゼ王女も元気を出してよ、ね?」

エリーゼ「ありがとうカザハナ。カゲロウまっててね、すぐにちゃんとした場所で休めるようにするから」

カザハナ「そうだね、カゲロウがゆっくり休めるように頑張ろう」

エリーゼ「うん!」

カムイ「ピエリさん」

ピエリ「任せてなの。ピエリ、カゲロウのことちゃんと守ってみせるから、だから早く乗せてあげるの。ピエリが後ろから支えるのよ」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

カゲロウ「……うぅ」

カムイ「カゲロウさん!」

カゲロウ「……まだ、地獄ではないのか……。……?」

カムイ「……」

カゲロウ「いや、地獄か。カムイ様をまた見ることになるとは……」

 ピトッ

カムイ「……地獄じゃありませんよ。カゲロウさん」

カゲロウ「……そう……か。地獄ではないか……」

カムイ「はい、お久しぶりです、カゲロウさん」

カゲロウ「……こんな無様な姿ですまぬ、カムイ様」

カムイ「目が見えない私には関係ありませんよ……。顔、腫れていますね」

カゲロウ「……相手がこれほど簡単に逆上するとは思っていなかった。もう少し我慢をするものと思っていたが、敵を甲斐被りすぎた」

スズカゼ「カゲロウさん……」

カゲロウ「……スズカゼ、お前も生きていたのか……」

スズカゼ「はい、カムイ様に暗夜の地で命を救っていただきました。それと兄さんも今この洞窟の内部で戦っています」

カゲロウ「サイゾウもか……。ふふっ、私達はカムイ様と不思議な縁で繋がっているのかもしれない。こうして幾度も助けてもらっているからな…」

スズカゼ「たしかに、そうかもしれませんね」

カムイ「オ二人が気負いすることじゃありませんよ。それに私はカゲロウさんのことを助けられて、とてもうれしいんですから……」

カゲロウ「カムイ様……かたじけない」

カムイ「今はあまりしゃべらないでください。すぐに、安全な場所に運びますから」

カゲロウ「………」

カムイ「カゲロウさん?」

カゲロウ「スゥ……スゥ……」

エリーゼ「眠っちゃったみたいだね」

アクア「緊張の糸が解けたのね。こんな場所にずっと一人で耐えてきたんだもの。カムイに会えてホッとしたのかもしれないわ」

エリーゼ「うん!」

カムイ「んっしょっ……ピエリさん、カゲロウさんを」

ピエリ「うん、任せてなの。裸のままじじゃ可哀そうなの、毛布でクルクルしてあげるの」

カムイ「………」

カムイ(もしも、私達がここに来ていなかったら。今私が切り殺した奴の代わりに、カゲロウさんが血の海に倒れていたということなのでしょうか……)

アクア「カムイ?」

カムイ「…カゲロウさんを救えてよかったと思っていたんです」

アクア「……ええ。たぶん、カゲロウのことを探しに動かなかったら……」

カムイ「それはもういいでしょう。今はカゲロウさんを助けられたという嬉しい結果があるんですから、それだけで十分です」

アクア「そう、でももう一つ終わらせなければいけないことがあるわ」

カムイ「はい。皆さん、これよりフウマ公国公王を倒しに向かいます」

◆◆◆◆◆◆
―フウマ公国・洞窟『コタロウの玉座』―

 ダンッ!

コタロウ「なぜだ、なぜ抑えられない!」

フウマ兵「もはや対抗できるほどの兵力がない状態です! ここは引くべきですコタロウ様!」

コタロウ「く、くそっ!!!! いつか倍返しにしてやる、あの暗夜の王女共め!」ガタッ

コタロウ「いくぞ、ここで待ち続け死ぬことに意味などない。北上し、暗夜の陣営への合流を目指――」

???「そうはさせん!」シュシュシュッ

 キキィン

 スタッ

サイゾウ「……」

コタロウ「ほぅ……ここまでやってきたか。一人でよく頑張ったものだな?」

サイゾウ「貴様の部下はあらかた始末した。残りはお前たちだけだ」

コタロウ「ふっ、何を強気になっている。こちらは三人、貴様一人で私の命を取れると思わないことだ……」チャキッ

フウマ兵「……」チャキ

フウマ兵「……」カチャッ

サイゾウ「三人だろうと関係はない。お前さえ仕留めればそれでいいことだ」

コタロウ「……」

コタロウ(さぁ、来るがいい。私の宣言通り、三人だと信じて入り込んでこい。左右に、未だ息をひそめる部下がいるこの部屋にな。貴様のような若造に抑えられまい。この私を殺したいというその誘惑、それを私は利用させてもらう。一人死のうと構わん。貴様を殺した後、私は暗夜に合流するだけ、だから飛び込んでくるがいい)

サイゾウ「フウマ公国公王コタロウ……。その首、五代目サイゾウが貰い受ける!!!!」チャキッ ダッ

コタロウ(ふっ、あの老人そっくりだ。そのまっすぐに攻めてくる姿勢、褒めてやる。殺すのが容易いという意味でな!)

サイゾウ「うおおおおおおっ!!!!!」

コタロウ「殺れ!!!!」

 ザザザザッ

サイゾウ(コタロウを合わせ五人か、だが―)

コタロウ(飛び込んでこい、飛びこみ私を殺して見せよ。もっとも、その目が最後の最後で歪むところを私が見るという終わり以外、道はないというのにな! 結局、貴様は一人では復讐も碌に果たせないと、死にながらに悔いることだ!)

サイゾウ「でやあああっ!!!!」

コタロウ「終わりだ、この若―――」

???「自殺行為はもう少し歳とってからにしておけ」ガシッ ブンッ

サイゾウ「な、なに!」

 ズサーッ スタッ

サイゾウ「何奴!」

アシュラ「通りすがりの忍だよ。同じくこの公王に用事のあるな」

コタロウ「ちっ、あと少しだったものを……よくも邪魔をしてくれたな……貴様」

アシュラ「ああ、邪魔させてもらったさ。そしてようやく、あんたの前に立てた。長かったぜ」

コタロウ「? 貴様の顔は初めて見るが?」

アシュラ「そうだろうな……」

 タタタタタッ

サイゾウ「……むっ?」

サクラ「アシュラさん、一人で先に行かないでくださ――あっ」

サイゾウ「!? さ、サクラ王女、どうしてこちらに暗夜で捕まっているのでは!?」

サクラ「え、えっとその、これには事情があって……」

シャーロッテ「サクラ様ー、先に行かないでくださいよぉ。って、どうやらここがゴールみたいね……」

コタロウ「ちっ、すでにここまで多くの侵攻を許していたか」

アシュラ「ああ、残念だがこの洞窟に残ってんのはあんたらくらいなもんだ」

コタロウ「貴様、一体何者だ? なぜ私の前に立つ?」

アシュラ「コウガの生き残り、そういえば少しは理解できるよな?」

コタロウ「コウガ……なんだ、あの国の生き残りか。多くの時間が過ぎたというのに仇討とは無駄なことを。貴様のような者たちを何人も見てきたが、どれもこれも願いを叶えられなかったな」

アシュラ「あんたがいるってことはそういうことだろうな……」

コタロウ「ふっ、コウガは少しばかりの土地だったが、有効に使わせてもらった。後始末も自然災害の類とするだけで、フウマに疑惑の目も向けられなかったからな……」

サクラ「ど、どういうことですか!」

コタロウ「そちらに見えるのは白夜の王女か、なるほど暗夜の王女が白夜に付いたというのはほぼ確定的ということか。くくっ、その顔はコウガの終焉を未曾有の大災害が襲ったからだと教わってきたと言ったところか。確かにコウガの土地はすでに不毛、当然だ。すべて私が焼き払ってやったのだからな」

サクラ「どうしてそんなことを」

コタロウ「ふっ、元から大国である白夜にはわからないこと。白夜の王女に、私の野望が理解できてなるものか」

サクラ「……」

アシュラ「だから言ったろ、聞いて楽しい話のわけがないってな」

コタロウ「それで、貴様はどうするというのだ?」

アシュラ「なにがだ?」

コタロウ「私を倒してどうする? コウガの再建でもしようというのか? 無駄なこと、コウガの王族はすべて軒並み処刑してやった。王族のいない国など樹立する価値もない、貴様の願いなど何の形にもなりはしないのだ」

アシュラ「……そうだな。いずれコウガを再建するのも悪くない。もちろん、あんたを倒してからだけどな」

コタロウ「言ってくれるな。このフウマ公国、いずれは王国となるフウマの王、コタロウに対して」

アシュラ「へっ、あんたの王国はすぐに不満がたまって終わるだろうさ。そんな終わり方するよりは、ここでその野望を終わらせてやるのが一番いいことさ」チャキッ

 サッ チャキッ

サイゾウ「あれは俺の獲物だ…」

アシュラ「そうかもしれねえが、さっきみたいな真似はするもんじゃない」

サイゾウ「相打ちで構わん」

アシュラ「それはだめだ。あんたのことをスズカゼから頼まれてるからな」

サイゾウ「スズカゼ……余計なことを」

アシュラ「そういうわけだから、あんたをここで死なせるつもりはない。共闘ってわけじゃねえが、少しは気を使ってくれると助かるが」

サイゾウ「……なら、お前達が俺に合わせろ」

シャーロッテ「おい、助けに来たんだから、少しは協力しなさいよ。協調性なさすぎじゃないの?」

サイゾウ「助けに来たのはお前たちの勝手だろう?」

シャーロッテ「なに、その言い方。すげぇムカつくんですけど」

サクラ「シャーロッテさん、落ち着いてください。それよりも今は――」

シャーロッテ「わかってる。とりあえず、あそこにいるやつら一人残らずぶっ飛してあげる」

アシュラ「はは、その意見に賛成だ。さすがにこれ以上立ち話してても、なんにも変わらねえからな」チャキッ

サイゾウ「ふっ、うるさい女だ……」

シャーロッテ「アンタ、あとで殴りますねぇ?」

サイゾウ「殴られるつもりはない……だが、お前の意見には賛成させてもらう」チャキッ

コタロウ「ふっ、そう簡単に殺せると思うなよ……全員、構えろ!」チャキッ




サイゾウ「安心しろ。簡単に殺すつもりなど最初からない。お前にくれてやるのは――」

「殺してほしいと思わずにはいられない、そんな殺し方だ……」

今日はここまでで

 カゲロウさんの救出完了です。
 次かその次で十七章前篇が終わります。先に戦闘を終わらせるスタイル。
 この頃ミスが多くて申し訳ない。

 そしてエリーゼ×カザハナというものに、興味津津な私。

 SS速報の仕様が変わりますが、たぶん現在のままなら向こうには送られないと思われます。
 今後、エロ番外が選ばれた場合は、その時限定でスレを向こうに立てる形になるかもしれませんね。

◆◆◆◆◆◆

 ダッ

フウマ兵「そこの女から殺してやる!」

シャーロッテ「きゃあ、怖いですぅ……」フルフル

フウマ兵「ケッ、今さら怖がったところで遅いんだよ。あの世でシクシク震えてやがれ!」ブンッ

 キィン

フウマ兵「へっ?」

シャーロッテ「てへへ、逆にシクシクしててくださいねぇ?」

 ドガッ バキッ
 
 ドサッ

フウマ兵「がっ……な…、こいつ印象が……どうなって……」

 タタタタッ ピョン クルクル

シャーロッテ「えーい!!」ブンッ
 
 ズビシャ

フウマ兵「ぐぎゃあああああ……」ドサッ ドササッ

シャーロッテ「ふぅ……、ちょろいわ」

サイゾウ「……」

シャーロッテ「な、なによ」

サイゾウ「いや、お前の外見に騙されて狙ってきた敵が哀れに思えてな」

シャーロッテ「哀れねぇ。女なら簡単だって思ってホイホイ来ちゃうような奴に同情なんてしないけど。まぁ、私のことを可愛いって思って声を掛けてくれるなら別だけどぉ?」

サイゾウ「ふっ、ならばお前に声を掛けられるのも、哀れと言えるかもしれんな」

シャーロッテ「なんですって~!!」

 タタタッ シュバッ

フウマ兵「言い争っているとはいい度胸だ。その慢心が命取――」

シャーロッテ「割り込んでくるんじゃねえよ!!」ポイッ グサッ

フウマ兵「がっ、なぜ……」ドサリッ

サイゾウ「ふっ、囮としては申し分ない働きだ。お前がキーキー騒ぐだけで、敵が向こうからやってきてくれる」

シャーロッテ「好きでやってねえから。つーか、あんたが色々と突っ込んでくるのが原因なのよ!」

サイゾウ「答えているのはお前の勝手だろう? 戦いに集中したいなら真面目に応える必要などない」

シャーロッテ「あんた、私をからかってんでしょ!?」

サイゾウ「さあな」



フウマ兵「コタロウ様、どうしますか? すでに使えぬ二人が死にましたが?」

コタロウ「使えない奴らめ」

フウマ兵「我ら三人で相手をするのも良いですが、敵の後続到着の可能性を考える限り、ここで戦うのは得策ではないかと」

コタロウ「……そのようだ。ちっ、止むをえまい、ここを出る。お前たちは私のために道を作れ」

フウマ兵「わかりました」ザッ

フウマ兵「ええ、コタロウ様のご命令とあれば……」カランコロン

アシュラ「お楽しみのところ悪いがお二人さん、後回しにしてもらえるか?」

シャーロッテ「楽しんでねえよ」

サイゾウ「……」

シャーロッテ「って、いきなり黙って、いったいなによ……」

 カツン カツン カツン
 カランコロン カランコロン

フウマ上忍男「敵ながら見事なものだ。ここまでコタロウ様を追い詰めるとはな」カチャ

サイゾウ「貴様らが弱いだけに過ぎん」

シャーロッテ「そーそー。無防備に向かってくるから倒しやすったし」

フウマ上忍「ふっ、そうか……無防備な者たちばかりではそう言われても仕方無いというもの」

フウマ絡繰師女「でも、死んだ奴なんてどうでもいいわ。それで相手は三人、いや、奥に隠れてるのもいるから四人? 攻撃してくるかはわからないけど。それじゃ、どう料理してあげようかしら……」

シャーロッテ「料理なら台所とかでやりなさいよ。こちとら、あんたの料理になるつもりなんて更々ないし、一人じゃ手間暇かかるくらい私達は新鮮よ」

フウマ絡繰師「ふふ、一人なんて言ってないわ」ザッ カラン

フウマ絡繰師『もう一人、いるんだから』ザッ コロン

シャーロッテ「ちょ、なにそれ? 同じ奴が二人とか……」

サイゾウ「写し身か……。このような術を使える者がこのフウマにもいるとはな」

フウマ上忍「……我らはコタロウ様を守る陰なり。ここでコタロウ様に死んでもらうわけにはいかない」

フウマ絡繰師「コタロウ様、安心してください」

フウマ絡繰師『道は作り上げますから、その隙に……』

コタロウ「ああ、任せるぞ。その命で道を作れ、私が生き残るためにな……」

サイゾウ「貴様たちはその男に仕え、命を掛ける意味があると思っているのか?」

フウマ上忍「戯言を。我が仕える主はこの世でただの一人。ただそれだけのこと……」

アシュラ「それがあんたらを犠牲に生き残ろうって魂胆だとしてもか?」

フウマ絡繰師「それがいいんじゃない。コタロウ様の身勝手だけど力強いところ、私はとても好きだから」

シャーロッテ「駄目男に引っかかる性質ね、あんた」

フウマ絡繰師『ふふっ、駄目男だなんて失礼な人。コタロウ様への侮辱はコタロウ様の生還で帳消しにしてあげる…』カラコロッ

アシュラ「そうかい、なら……」

 ガシュッ ブンッ

アシュラ「さきにあんたを倒すまでだ!」ダッ

 キィン

アシュラ「ちっ」

コタロウ「ぐっ、あとは任せたぞ」タタタタッ

フウマ上忍「御意」

アシュラ「……邪魔してくれるなよ」

フウマ上忍「貴様の相手は我だ。弱きコウガの生き残りよ」

アシュラ「そのコウガの生き残りを含んだ軍勢にここまで追い込まれてるけどな」

フウマ上忍「ふっ、口数の減らない奴だ。その心にある仇討の炎と共に、コウガの民の元へと送ってくれる!」

アシュラ「それはありがてえ話だ。でも、今は遠慮させてもらうぜ」

フウマ上忍「ほう、なぜだ? 仇討が貴様の最後の戦い、ここがその終着点だろう?」

アシュラ「たしかにな。だが、俺は復讐の先を見出してるんでね。それに行きつくために、仇討の炎は使わせてもらう」

フウマ上忍「力にするだけということが、しかし、そんなもので我を破れると思うなよ」

アシュラ「へっ、仇討の炎は結局仇討で終わりだ。あんたの王に対する忠誠心は確かに高いだろうさ。でもな、この先にあるものを信じる力は、あんたよりは持ってるつもりだよ」

フウマ上忍「……そうか。ならば我の炎とどちらが強きものか、見せつけてもらおう。コウガの民よ!!!」

 ダッ

 キィン
  カランコロン
 バシュッ

シャーロッテ「ちっ、はええな、おい……」

フウマ絡繰師「ふふっ、どうしたの? 大振りばかりでまったく当てられないなんて、見た眼だけの女は醜いわよ?」

シャーロッテ「そういうあんたも、相当見た目だけの女に見えるけどね」

フウマ絡繰師「ふふっ、私は醜いわ。そんな私でも役に立てることを小太郎様は示してくれたわ。体で、行動で、そしてこの命で、コタロウ様に尽くせることができるのはとても素晴らしいことよ」

シャーロッテ「そう、それならあんたは対価をもらってるんでしょ? あんな男に従ってるんだから」

フウマ絡繰師「ええ、もらっているわ。コタロウ様に服従するっていう、素晴らしいご褒美をね」

シャーロッテ「……あんたマゾね」

フウマ絡繰師「コタロウ様が喜んでくれるなら、なんだってしてあげたい。そういう気持ち、女のあなたになら少しは理解できると思うけど?」

シャーロッテ「喜んでくれるならねぇ。確かにそうかもしれないけど、あんたのはどう見ても一方通行で共感できないわ。むしろ、男を虜にして手に入れるのが女の力の見せ所でしょ? 今の話を聞いてると、あんたはただ使われてるだけじゃないの」

フウマ絡繰師「ええ、使われてるわ。それで私の心は満たされるの。こうして、女として認められることの素晴らしさは、なかなかに極上なものよ」

シャーロッテ「……女として認められるって、自分から女らしくしようとしてないてめーにそれを言う資格はないわ」

フウマ絡繰師「あなたみたいにここの男たちを誘惑する人になら、私の気持ちを理解できると思ったんだけど……残念ね。利用しようとする女から利用される女に堕ちていくこの甘美さ、それに触れてもらえると思ったのにね……」

シャーロッテ「……それは甘美さじゃないわ。ただ、考えるのをやめてるだけ、生きてるだけの人形よ」

フウマ絡繰師「だったら操ってもらえばいいの。そして今の私を操ってくれるのはコタロウ様。だから私は、命まで賭けられるの。すべて、コタロウ様のために!」

シャーロッテ「そう、あんたは壊されちゃってるってことね。あんたが元々はどんな奴だったかは知らないけど、同情するわ。だから、その操り糸、全部叩き斬ってあげるから」ダッ

フウマ絡繰師『できるものなら、ね!」ダッ

フウマ絡繰師『やあっ、せいっ!!!!』

 サッ スッ

サイゾウ「……ふむ」

フウマ絡繰師『避けてばかりじゃ、私は倒せないわよ? もっとも、この間にコタロウ様はもう逃げていますから、問題ありませんけど……』

サイゾウ「……哀れな女だ」

フウマ絡繰師『なにが? なにが哀れ? 主君に伝えることこそが臣下の本望、それはあなたが一番よくわかっていることだと思うけど?」

サイゾウ「……本望、確かにその通りだ。主君の願いに応え、主君のために動き、主君のために結果を出す。それを求めなければ、わざわざ誰かの部下になろうなどとは思わない」

フウマ絡繰師『だとしたら、私のしていることは本望そのもの。あなたと何も変わらない。それでもあなたが私を哀れだというなら、あなたも同じように哀れな存在ということなるわ。ふふっ、忍としての誇りなんて物を口にしておきながら、結局は――』

サイゾウ「ふっ、誇りか……確かに俺の持つ誇りは仲間を助けるものではない。そういう意味ではお前のあり方やその行動は、誇りと言えるかもしれん。だが、お前の戦う意思はお前が決めたことではない以上、そこに本望も誇りもあるわけがない」

フウマ絡繰師『命令をこなすことに何の問題があるというの?』

サイゾウ「ふっ、誇りとは命令に従うことだけで生まれるものではない。そこに自身があるかどうかこそが重要になる。コタロウの命令に従事するお前には、その姿が見えない……。そう言っているんだ」

フウマ絡繰師『うふふふっ、そんな確認しようの無いもので、私が哀れと』

サイゾウ「お前たちは捨て石にされた。そこに主従としての信頼は皆無だろう。お前はコタロウから信頼されてなどいない。それが貴様と俺との違いだ」

フウマ絡繰師『それがどうした? 主君にとって私達はただの駒。蓄えた的を的確に消費することに、何の問題があるんですか?』

サイゾウ「……貴様は助かるつもりはないんだろう?」

フウマ絡繰師『ええ、ここで死ねと命令を受けたんですから、ならばここで死ぬ以外にすることなどありません』

サイゾウ「それは駒として優秀なのではない。処理するのに手間がかからないだけのことだ。貴様には信念も誇りも、熱き使命への情熱もない。ただ言われたことこなす木偶人形の姿があるだけだ」

フウマ絡繰師『コタロウ様の命令は私のすべて、それを他人に否定されるつもりはない!』

サイゾウ「……ならば、その形だけの使命。ここで終わらせてやる。そして、後にお前の元へと送ってやろう、その操り主もな……」

 チャキッ ダッ

シャーロッテ「でやああっ!!!!」ブンッ

 ガキィン

フウマ絡繰師「ぐっ……まだ、まだあああっ!!!」

フウマ絡繰師『私は、コタロウ様のために!!』

 カランコロン
 バシュッ キィン

 サッ

サイゾウ「ぬんっ!!!」キィン

フウマ絡繰師『くっ、うううっ、ああああああっ!!!!』コロンッ キィン

フウマ絡繰師「いやああああっ!!!!」

 ブンッ カキィン

 バキッ

フウマ絡繰師「なっ――」

 ガシッ

シャーロッテ「……大丈夫、あんたを壊した男はすぐに送ってあげるわ。でも、地獄に落ちようが天国に逝こうが、あんな男に走るのだけはやめておきなさいよ」

フウマ絡繰師「うぐぐっ、うああああっ!!!!!」ググッ

シャーロッテ(武器もないのに。最後まで命令通りに男の望みのままに、自分はなくても動き続けるなんて、まるで死人と変わらない……)

シャーロッテ「だから、ここで終わり。そんなのつまらないし、なにより虚しいじゃないの。女に生まれたなら、ちゃんと幸せになリたいに決まってるんだから」

 ドスッ

フウマ絡繰師「あっ、ああああっ、ぐああああっ……」ドサッ

 ザッ バシュッ

フウマ絡繰師『こ、これで!!!!』ダッ

サイゾウ「……甘い!」ガシッ ブンッ ドガッ

フウマ絡繰師『ぐぎゃ、うう、ま、まだ……』

 ドスリッ

フウマ絡繰師『あ―――』

サイゾウ「……」

 ポタ ポタタタッ

サイゾウ「俺は命のある限り、主君に従い付いて行く。そしてお前と同じような結末を向けることになったとしても、それは主君のために誇りを持つ」

フウマ絡繰師『ぐ、わ、私はは命令をかく……じつに……』

サイゾウ「お前はそれを育てることができなかった。あいつの所為でな……」

フウマ絡繰師『カハッ……』ドサリッ


フウマ絡繰師「がっ、こ、コタロウ、様……。私、命令通りに、し、死ねまし……た……」
フウマ絡繰師『がっ、こ、コタロウ、様……。私、命令通りに、し、死ねまし……た……』

 シュオオオンッ

フウマ絡繰師「うふっ、うふふふふっ……私、役に立てまし……た……」

フウマ絡繰師「ゴホ……ウフ…ッフフフ」

フウマ絡繰師「フフッ―――」

「………」

フウマ上忍「せやあああああっ!!!!」クルクル ブンッ
 
 サッ

アシュラ「へへっ、やるなあんた。だが、負けるつもりはねえよ。もうあんたたちへの仇討に固執してないんでな」クル ザシュッ

フウマ上忍「くっ。だが、まだ、まだ時間を稼がねば、そうでなければ……コタロウ様に示しがつかん」

アシュラ「……その忠誠心は認めるぜ。だが、俺はコタロウを見逃すつもりはない」

フウマ上忍「ふっ、仇討は新しい道を照らす炎に変えたのではなかったのか?」

アシュラ「ああ、変えたよ。だからこそ俺がこの先で力になろうと決めてる奴のために、俺はあいつを討つ。それが俺の決めた仇討の炎を糧にして進む新しい道なんだよ!」ダッ

 キィン

    キイン

キィン

 ガシッ

  キキィン

ズシャ

フウマ上忍「ぐあっ、くっ、う、ううううっ」ポタタタッ

アシュラ「……あんたもあのノートルディアで戦った奴も、仕える奴を間違えてやがる。もっといい国に仕えてれば、よかったのによ」

フウマ上忍「黙れ、我の主君はコタロウ様だけ。コタロウ様だけだああああああ!!!!」

アシュラ「それもそうだ。だから、悪く思わないでくれよ……」タタタタタッ

フウマ上忍「うおおおおおおおっ!!!!」

 バシュッ プシュウウ……

 ポタポタ ドサリッ

フウマ上忍「コ、コタロウ様……もうしわけ、ござい……ま……」

「」

~~~~~~~~~~~~~~~

 タタタタタッ

コタロウ「はぁはぁ……。まだ出口ではないのか!?」

 ダンッ

コタロウ「くっ、ここも!」

コタロウ「ここもか!?」

コタロウ「くそ、どうなっている! このままでは追いつかれてしまうというのに!」

コタロウ(くそ、なぜこんなことになった。このようなことになぜ陥る!? 私はガロン王に従いついて来ただけだというのに!)

コタロウ「くっ、それもこれも――」

カムイ「私が来たから……ですか?」

コタロウ「!?」

 タタタタタッ

カムイ「……コタロウさん」

コタロウ「か、カムイ。そうだ、貴様だ、貴様がここに現れなければ、私はこのような醜態を晒さずに済んだ。なぜ邪魔をする、この私の野望を、貴様のような小娘に!」ダッ

カムイ「!」チャキッ

 シュシュシュンッ

 グサグサッ

コタロウ「!?」

カムイ「?」

サイゾウ「逃げられると思うなよ、コタロウ」サッ

カムイ「その声は、サイゾウさん?」

サイゾウ「どけ、そいつは俺の獲物だ。これだけは譲る気はしない」

カムイ「……」

サイゾウ「……」

カムイ「わかりました。サイゾウさんにお任せしますね……」チャキッ サッ

サイゾウ「あの二人は始末した。せっかく作った時間も変化した地形の前では役に立たなかったようだな」

コタロウ「ふっ、な、何を言い出す。まだだ、まだ終わらない。私は逃げ延びる。そして暗夜の陣営と合流し、必ず王国を得てみせるのだ」

サイゾウ「……それは、俺を倒せたときに吐き出す言葉だ。戦わずに逃げ切れると思わないことだ」

コタロウ「くっ、調子に乗るな若造! この私の野望、それは誰にも止められはしない! お前にもそこの王女にも、そしてガロン王さえも! 私のフウマ王国の野望を止められると思うな!!!」ダッ

サイゾウ「なら、その野望。ここで散らしてくれる。五代目サイゾウ、参る!!」ダッ

コタロウ「でやああああっ」ダッ サッ ブンッ

コタロウ(大丈夫だ、ここさえ、ここさえ越えて生き残れば。ここでの件をすべてガロン王に報告し、そして、私は、私は――)

サイゾウ「……」

コタロウ「ははは、怖気づいて動けなくなったか! 死ね、五代目サイゾウ! あの日の四代目のように、私に指一本触れることもできず、無様に死んでいくがいい!!!!」

サイゾウ「……」チャキッ

コタロウ「その命、もらった!!!」ブンッ

サイゾウ「!」

 サッ

 チャキッ  ググッ

サイゾウ「爆ぜ散れ…!」ダッ

 グサッ ビチャ ガシッ ブチャア…… 

コタロウ「が……な……」

 ポタポタポタ

 クルクルクル スチャ

サイゾウ「指一本…触れたぞ?」

 ガクッ

コタロウ「そんな、私の、私の野望が……」ボタボタ

コタロウ「私の、フウマ王国、が……。こんな、こんな半ばで……」

カムイ「……」

コタロウ「ぐっ、まさか、ガロン王は……この私さえも……見捨てたというのか……おまえたちは、本当はガロン王の命令で……私達を排除するために……」

カムイ「それだけはお父様のために言わせてもらいます。私達は私達の目指す者のために剣を握りました。ですから、私たちの行動にお父様は関わっていません」

コタロウ「ならば貴様は、一体何を、しようと……して……」

カムイ「この長き戦いを終わらせること、それが私の目的であり、私たちの戦争なんです……」

コタロウ「……は、はは。そんなものに、私は敗れたというのか……」

「私のフウマ王国……よ……」ドサリッ

今日はここまでで

 シャーロッテは女性の味方的で女性を傷つける男には容赦しないイメージ。
 設定資料集にある絡繰師のモブ女性Verとか使ってみたい。あの戦闘終了後の乗り方はすごく色っぽいよね。

 次でこの章の前篇が終わります
 

◆◆◆◆◆◆
―白夜・フウマ公国『洞窟内部』―

サイゾウ「……終わったか。父上の仇を取ることができた……」

カムイ「……そうですね」

サイゾウ「礼は言わんぞ。俺は俺のために戦っただけに過ぎないからな」

カムイ「はい、むしろお礼を言わなくてはいけないのは私のほうです。ありがとうございます、サイゾウさん」

サイゾウ「ふん……」

 タタタタタッ

アクア「カムイ、大丈夫?」

ピエリ「カムイ様、大丈夫なの?」

カムイ「アクアさんにピエリさん。はい、私は大丈夫ですよ」

アクア「そう、よかったわ……。それと、そこに倒れてるのはコタロウね……」

ピエリ「そうみたいなの、でもこれ死んじゃってるの。床一面、すっごく血みどろなのよ。本当に血の池って感じがするの」

カムイ「はい、こちらの方もすべて片付きましたから。それよりピエリさん、カゲロウさんの容体は……」

ピエリ「大丈夫なの。こうして後ろから抱えてるから、落ちる心配もないのよ。それに、カゲロウのポカポカして来たから、何とかなると思うの」

サイゾウ「生きていたのか、カゲロウは……」

カムイ「はい、地下牢に閉じ込められていました……」

サイゾウ「……顔を見ても、いいだろうか?」

カムイ「はい、確認してあげてください」

サイゾウ「……」タタタッ

カゲロウ「スゥ……スゥ……」

サイゾウ「……」

ピエリ「今は眠ってる。すごく傷つけられてたの……。痛めつけてのはカムイ様が殺したから、もう大丈夫なの」

サイゾウ「そうか」スッ

 クシャ ナデナデ

サイゾウ「カゲロウ……こんなになるまで、お前は耐えてきたというのか……。あの日、リョウマ様と俺を逃がすためと別れ、スズカゼがいなくなったあとも、お前はずっとここで……」

カゲロウ「ん……スゥ……スゥ」

サイゾウ「お前を切り捨てた俺が言えたことではないかもしれない。だが、言わせてくれ。お前が無事で良かった。一緒にリョウマ様の元に帰ろう。お前のことをリョウマ様も心配していた、今のリョウマ様には嬉しい報告になるはずだからな……」

カムイ「……ふふっ」

サイゾウ「な、なんだ……」

カムイ「いえ、やっぱり心配だったんですね」

サイゾウ「……だとしても、俺は任務を……いや、復讐を優先した。その時点で俺はカゲロウを見捨てている。お前達がコタロウを倒すことより、カゲロウを助けることを優先したからこそ、カゲロウはここにいる。俺ではカゲロウを救うことはできなかった」

カムイ「でも、サイゾウさんがカゲロウさんのことを心配に思っていたことは事実ですから、そこは否定しないでください」

サイゾウ「……それもそうだな。共闘に関しては言うことはないが、カゲロウが助かったことに対しては礼を言いたい。ありがとう」

カムイ「ありがとうございます。カゲロウさんが目覚めたら、ちゃんと話しかけてあげてくださいね」

サイゾウ「ああ、そのつもりだ……」

 タタタタッ パカラパカラ

アシュラ「ん、おう、どうやら終わらせてきたみたいだな……」

サイゾウ「……よかったのか?」

アシュラ「ああ、俺が止めを刺そうと、あんたが刺そうと結果は変わらねえ。それに若い奴にはちゃんとした形での終わり方ってのも必要だからな」

サイゾウ「そうか……」

シャーロッテ「むしろ、逆にやられてたらどうしようかと思ったくらいだけどね~」

サイゾウ「お前に心配される筋合いはない」

シャーロッテ「ちょ、少しくらいうれしそうに思えって――っつ!!」

サクラ「シャーロッテさん、まだ傷口が塞がってるわけじゃないんですから、できる限り安静にしてください」

シャーロッテ「さ、サクラ様……」

サクラ「私のことを心配してくれるのは嬉しいですけど、私だってシャーロッテさんのことを心配してるんです、だから……」

シャーロッテ「……わかりました。ごめんね、サクラ様……。治療、お願いできる?」

サクラ「はい、任せてください。あと、サイゾウさんもこちらに」

サイゾウ「?」

サクラ「少し怪我をしてるじゃないですか、すぐに応急処置をしてあげますね」

サイゾウ「サクラ様、大丈夫です。この程度の傷ならば、どうということは……」

サクラ「少しの傷でも放っておくのは危険です。小さな傷が原因でということは、例え話じゃなかったりするんですよ。だから、シャーロッテさんの横に腰掛けてください」

サイゾウ「しかし、お手を煩わせるわけには……うおっ」ドサッ

シャーロッテ「いいから座りなさいって。サクラ様を困らせてんじゃねーよ」

サイゾウ「お前、見た目以上の怪力だな」

シャーロッテ「はいはい、あんたに知られたところで痛くも痒くもないから。それじゃ、サクラ様、お願いね」

サクラ「はい、えいっ!」シャラン

サイゾウ「……ありがとうございます、サクラ様」ペコリッ

シャーロッテ「なになに、サクラ様に治療されて照れてるわけ? あんがい初なところあるわね」

サイゾウ「お前と違いサクラ様は白夜の王族だ。それに、お前よりとても女性らしい方でもある」

シャーロッテ「だから、なんで私を引き合いに出すんだよ、てめーは」

サイゾウ「ふっ、簡単な比較対象だからかもしれんな」

シャーロッテ「うう、言い返せないのが悔しいところね……」

サクラ「最後に包帯を巻きますから、少し待っててくださいね。ふふっ」

シャーロッテ「ちょっと、サクラ様もなんで笑ってんのよ」

サクラ「ごめんなさい、なんだかとても仲が良さそうなので……。少しだけ嬉しくなってしまって」

シャーロッテ「仲がいいって……はぁ、からかわれてるだけだっつーの」

サイゾウ「ようやく気が付いたか」

シャーロッテ「最初から気づいてるわよ。でも、まぁ、殺し合いするよりはかは何倍もましなのは確かだけど…」

サイゾウ「……たしかに、そうかもしれないな」

 タタタタタッ

サイゾウ「?」

スズカゼ「兄さん……」

サイゾウ「スズカゼか……」

スズカゼ「はい、その、兄さん……父上のことは」

サイゾウ「お前が気にすることじゃない。それにお前の選択はカゲロウを救ったと言ってもいい。俺は一人で抱えてきた復讐を果たしたに過ぎない」

スズカゼ「……」

サイゾウ「だが、フウマ公国のことはすまなかった。誰にも、お前にさえも告げずに黙ってきたことを、許せとは言わない」

スズカゼ「いいえ。兄さんには兄さんの考えがあったはずです。そして、その復讐が終わりを告げたからと言って、それを抉るつもりはありません」

サイゾウ「そうか……」

スズカゼ「はい。ですが、何時か話して頂ける日が来たのなら、その時は……」

サイゾウ「その日が来るのならな。お前はカムイに付いているのだろう、ならばいずれは刃を交えることになるはずだ」

スズカゼ「それは……確かにそうかもしれませんね」

サイゾウ「ああ、お前はカムイに仕え、俺はリョウマ様に仕えている。その意味を忘れないことだ」

スズカゼ「……はい、兄さん」

カムイ「……サイゾウさん。傷のほうはもう大丈夫そうですか?」

サイゾウ「ああ、それよりもカムイ、俺はお前に聞かなければならないことがある」

カムイ「はい、なんでしょう?」

サイゾウ「今回のフウマへの攻撃行為、暗夜の方針に従ったわけではないと言っていたが……あれは事実か?」

カムイ「先ほど、コタロウさんに言ったとおりです。今回の件は私の独断、お父様の命令ではありません」

サイゾウ「もう一つ、お前は戦いを終わらせるためと言っていた。あの言葉はどういう意味だ」

カムイ「……そのままの意味ですよ、サイゾウさん。私はこの長く続いて来た戦いを終わらせるために戦っています」

サイゾウ「戦いを終わらせるだと?」

カムイ「はい、ですからサイゾウさんの……。いえ、白夜の敵になるつもりはありません。私にとっての敵はそういう国家というわけではありませんから」

サイゾウ「では、お前にとっての敵とはなんだ?」

カムイ「争いを続けようとする悪意、それが私の敵です」

サイゾウ「なんだそれは……」

カムイ「今私が言えることはこれだけです。空論のようなことと思っていただいて構いません。ですが、私はそれが倒すべき敵たと思っています」

サイゾウ「……そうか。えらく大きな敵のようだな。悪意というのは、俺の持っていた復讐の心すら、それに含まれるかもしれないというのにな」

カムイ「そうかもしれませんが。それはもう消えてなくなったでしょう……。ですから、サイゾウさんと私達が戦う理由はありません」

サイゾウ「……ふっ」

カムイ「ところで、サイゾウさんはフウマ公国に一人で来られたわけではないんですよね?」

サイゾウ「ああ、未だに地上で戦っている仲間達がいる……」

カムイ「では、すみませんが、その方たちに戦闘を終了するように伝えてくれませんか? そして私達は攻撃をしない限り、手を出さないと伝えていただけると助かります」

サイゾウ「……注文が多いな」

カムイ「ここでこれ以上の戦闘をしたいわけではありません。それに、サイゾウさんについて来てくれた方々と戦いたくはありませんから」

サイゾウ「……わかった、いいだろう」

カムイ「ありがとうございます、スズカゼさん」

サイゾウ「勘違いするな。お前に貸しを作りたくないというだけのこと、これで今回の協力関係は終わりだという意味も含めてその願いに答えるだけだ」

カムイ「つれないですね。もう少し、優しくしても罰は当たりませんよ」

サイゾウ「……優しくすることはできん。お前がまだ敵であることに変わりはない。お前の願いが戦いを終わらせることであったとしても、それを易々と信じることはできないからな」

カムイ「……それもそうですね。すこし欲張りなことを言いました、ごめんなさい」

サイゾウ「……俺は表に出る。お前たちは少ししてから出てくるといい」

 スタッ

サイゾウ「サクラ様、お気遣いありがとうございました」

サクラ「いいえ、これが私のできることですから。その、よろしくお願いします」

サイゾウ「一度交わした約束は、最後まで通すのが筋というものです。では……」

 タタタタタッ

カムイ「……皆さん、倒した方々の遺体を埋めましょう。このまま野晒しにしたままというのは、いささか悲しすぎますから」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 バサッ バサッ ポンポン

アシュラ「ふぅ、これで最後だな。……これがカムイ様の選んだ道ってことか……」

アシュラ(前までの俺なら、こんなことせずにコウガの皆に報告してたんだろうが、それを後回しにしてるなんてよ。なんだか信じられねえな)

アシュラ「本当に、燻ってたものがなくなっちまった感じがする。なのに、もう燃えてる何かがあるなんてな……」

 カツン カツン

カムイ「アシュラさん」

アシュラ「カムイ様、向こうのほうは終わったのか?」

カムイ「はい、スズメさん達にも手伝ってもらいましたので。多くの敵を倒してしましたから……」

アシュラ「そうかい……」

カムイ「結局、私がしたことは相手を地獄に追い込むようなことでしたね」

アシュラ「そうだな。フウマの人間に多くの事情を話したわけじゃねえし、ある意味騙し討ちって言われても仕方ないかもな」

カムイ「そうですね……。でも、だから私はその分、目的を成し遂げなくてはいけないと思っています。こうして、剣を振るった以上、私にはその義務があるのかもしれません」

アシュラ「なるほどな」

カムイ「ところで、アシュラさんはこれからどうされますか? あなたの戦いはここで終わったようですから……」

アシュラ「たしかに長く夢見てきた仇討も終わって、コウガの無念は晴らせた。でも思ったより喜びなんてものもなくてな」

カムイ「達成できたのに?」

アシュラ「ああ、というよりも仇討に関して言えば、もう火は燻ってすらいなかったのかもしれない。ずっと、それを糧に生きてきたから、それがなくなったらどうなるか、不安だったってことかもしれねえ。だけど、今は新しいことにこの身を捧げようっていう、新しい火がある」

カムイ「……新しい火、コウガの再建などですか?」

アシュラ「ははっ、残念だがそれはもう少し後の目標だ。今はそれよりも前にこの命を費やしたいことがある。正直これは俺の夢じゃないが、ただ、力になりたくてよ」

カムイ「力ですか。一体誰の力になるんですか?」

アシュラ「ははっ、あんたに決まってんだろカムイ様よ」

カムイ「……え、私ですか?」

アシュラ「当り前だろ。ここまで過ごして来て、俺には他に力になりたいなんて思った奴はいねえからな」

カムイ「ですが、もう戦う必要はないんですよ?」

アシュラ「たしかにな。だけど、俺はあんたに付いて行くことに決めた。というより、あんたの道に力を貸したくなったっていったほうがいい」

カムイ「……本気ですか? 私に仕える義理はないのにどうして……」

アシュラ「確かに義理はない、単純に俺はあんたの力になりたいってだけのことだからな。カムイ様、俺はあんたの進む道の先にあるものを見てみたいと思ってるし、その手伝いもしたい。ここにいる、あんたを信じてる他の皆のようにさ……」

カムイ「アシュラさん……」

アシュラ「カムイ様。この俺をあんたの本当の意味での臣下として連れて行ってくれねえか。無理にとは言わねえさ、あんたが俺に戦いを強要しないっていうなら、それで構わねえからよ」

カムイ「……そんなわけないですよ。仲間が多くいてくれることに異論はありませんから」

アシュラ「そうかい。なら、命令をくれないかカムイ様。俺があんたの臣下となったことを示す、そんな感じの奴をさ」

カムイ「それもそうですね。では、アシュラさん」

アシュラ「ああ、なんだ?」

カムイ「これより、あなたを私の部隊員として正式に迎えます。そして、命令を、この戦いで死なないでください。それが私が出す唯一の命令です」

アシュラ「……へへっ、難しい命令だな。だが、そういう命令なら喜んで受けさせてもらうさ」

カムイ「はい、これからよろしくお願いしますねアシュラさん」スッ

アシュラ「ああ、こちらこそ。改めてよろしく頼むぜ」スッ

 ギュッ

カムイ「では、そろそろ行きましょう。みなさん、もう洞窟を出る準備を整えていますから……」

アシュラ「ああ、わかったよ。……それにしても、明日は我が身かもしれねえな……」

カムイ「そうですね……。でも、アシュラさんはこの戦いが終わるまで、倒れるつもりはないんでしょう?」

アシュラ「そのつもりさ……ちゃんと命令も受けたからな。簡単に死ぬつもりはねえよ」

カムイ「そうですか、それはよかったです」

アシュラ「それじゃ、行こうぜ。ここにいても、もう何も生まれやしねえからな………」

カムイ「はい……」

 タタタタタッ

◇◇◇◇◇◇
―白夜・イズモ公国『王の間』―

 シュオオンッ
 
イザナ「やっとここに来るっていうことだね」

イザナ「この戦いが始まってから、いつかは運命を背負った人が来ると思ってたけど、こんなに見通せない未来を持った人は初めてだよ」

イザナ「本当に不透明、揺れる水面みたいにわからないなんて、ボクの経験上じゃこれが初めてかもしれない」

 ガタッ

イザナ「……だけど、ボクはキミに会って話をしてみたいかな。キミを知れば、この不透明な未来を少しだけ見渡せるかもしれない」

イザナ「それが悪いことなのか良いことなのかはわからないけど、少しだけキミに助言することができる気がするから」

イザナ「悪い未来ならそれをよくするために、良い未来ならそれにつなげるために……」

「キミが目指していること、その力になれるのなら……ね」


 第十七章 前篇 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC→C+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキC+→B
(イベントは起きていません)
カザハナC→C+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 フウマ公国ってどういう国なのかわからず仕舞いだけど、表に城を持っているとは思えない。

 戦闘で上がるのはBまでということでお願いします。Bから上はカムイとの話安価で上がっていく感じになっています。

 
 
 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。


◇◆◇◆◇
 カムイと話をする人物
(今回のカムイと一緒に動いたキャラクターのみ)

・ピエリ
・エルフィ
・スズカゼ
・エリーゼ
・カザハナ
・ツバキ
・アクア

 >>762


◇◆◇◆◇
 発生する仲間間支援
(前回の安価内容の組み合わせとコタロウ戦の組のみ)

 異性間支援

・エリーゼ×ツバキ
・エルフィ×ツバキ
・ピエリ×ツバキ
・カザハナ×ツバキ
・アシュラ×シャーロッテ
・アシュラ×サクラ

 >>763
 >>764

・エリーゼ×エルフィ
・エリーゼ×カザハナ
・エルフィ×カザハナ
・ピエリ×エリーゼ
・ピエリ×エルフィ
・ピエリ×カザハナ
・シャーロッテ×サクラ

 >>765
>>766

 このような感じでよろしくお願いします。



フウマ公国は桜が沢山咲いている平和な国だというのに

エリーゼ

カザハナで

ツバキで

エルフィ

>>754
ありがとうございます、スズカゼさん
→サイゾウさんだな

支援これ組み合わせを選択するんじゃないのか?
ピエリエルフィ、あるいはピエリ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―

ピエリ「あっ、エルフィなの! 今日もいっぱい敵の攻撃受け止めててすごかったの!」

エルフィ「ピエリ。わたしは皆の盾だから、あれくらいこなせないといけないわ」

ピエリ「だとしてもすごいの。だけど、エルフィは何時も攻撃を受け止めてばかりであまり攻撃してないの。だからちょっとお馬鹿さんなの」

エルフィ「お馬鹿さんって、どういうこと?」

ピエリ「だって、攻撃される前に相手を殺しちゃえば受け止める必要なんてなくなるの。ピエリ、攻撃されたくないから敵を見つけたら、すぐにえいってしちゃうの。だからエルフィも敵を見つけたら、えいってするの。そのほうが楽なのよ」

エルフィ「ピエリはそう思ってるのかもしれないけど、相手の命を奪うことがわたしの目的じゃないから」

ピエリ「よくわからないの。相手が殺しに来てるなら殺すのが戦場なの。しなかったら殺されちゃうの。だからエルフィの言ってること、ちょっとおかしいのよ」

エルフィ「ピエリからすればそうかもしれない。でも、わたしは誰かを殺したくて戦場に立ってるわけじゃないわ。誰かを守るために戦ってるから」

ピエリ「守るためなら、敵を先に殺しちゃうの。敵が死んじゃえば、ピエリも他のみんなも危険にならないの。だから戦場にいるのに殺すためじゃないっておかしいと思うの」

エルフィ「そうね。でも、それで構わないわ。守ることに敵を殺そうとする意志は関係ないことだから」

ピエリ「……殺そうとする意志は関係ないの? ピエリよくわからないの」

エルフィ「ええ。少なくともわたしはそう思ってるわ」

ピエリ「難しい話なの。エルフィの戦い方を見てれば、それがわかるようになるの?」

(エルフィとピエリの支援がCになりました)

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオンの屋敷―

ツバキ「うんうん、今日も完璧に決まってる」

カザハナ「ツバキは変わらないね」

ツバキ「ん、どうしたんのかな、カザハナ?」

カザハナ「いや、ツバキはどういう状況でも変わらないなって思って」

ツバキ「そうだねー。いつでも完璧にって志があるからかもしれないね」

カザハナ「むっ、その言い方、あたしにはそれが無いみたいに聞こえるんだけど。まぁ、確かにそうかもしれないけどさ」

ツバキ「まぁ、これは俺にとっての処方術みたいなものだからねー」

カザハナ「処方術って……何時も完璧なように努める事のほうが、よっぽど負担になると思うんだけど」

ツバキ「そうかな?」

カザハナ「あたしはそう思うけど。それに、ここは白夜じゃないし、あたしとサクラ様はツバキの失敗を知ってるんだから、ここで肩張っても意味ないと思うんだけど」

ツバキ「うっ、そ、その話を出してくる? もうすっかり忘れてると思ってたんだけど……」

カザハナ「うーん、たしかにあれだけだったらすぐに忘れたかもしれないけど……。ほら、ツバキって天馬隊の女の子たちから人気だったでしょ?」

ツバキ「それほどでもないよー。でも、どうしてそれが忘れなかったことに繋がるのかな?」

カザハナ「あたし、みんなからツバキの相棒だってことで色々と声を掛けられるから、眉目秀麗で完璧なツバキさんとか言われると、その度に落馬のことが脳裏を過っちゃって」

ツバキ「あー、そういうことだったんだね」

カザハナ「だから、ここにはツバキに幻想を抱いてる人たちはいないんだから、気を抜いて過ごしてもいいんじゃないかなって、そう思ったんだけど」

ツバキ「うーん、そうかもしれないけど……」

カザハナ「はぁ、ツバキって結構意固地だよね。まぁ、ツバキがその方が楽ならそれでいいけど。それじゃ、あたしは部屋に戻るね」

ツバキ「う、うん……。意固地か……。そんな風に言われたのは、初めてかもしれないなぁ……」

(カザハナとツバキの支援がCになりました)

◇◆◇◆◇
―マイキャッスル―

アシュラ「……」

サクラ「あ、アシュラさん」

アシュラ「ん、サクラ様。どうしました?」

サクラ「いえ、その……」

アシュラ「ふっ、一人でいるのが気になったっていうことですか?」

サクラ「えっと、その、はい」

アシュラ「こんな風に気を使わせてしまって申し訳ありません」

サクラ「い、いいえ、気にしないでください。それよりどうしたんですか?」

アシュラ「……色々と考えていることがありましてね。俺の復讐は終わりを迎えて、新しい戦いが始まろうとしてる。それを思うと、少しだけ昔のことを思い出してしまうんですよ」

サクラ「そうなんですか」

アシュラ「ええ、まぁ、サクラ様に聞かせられるような話じゃありません。正直、こうしてサクラ様に声を掛けてもらっていますが、俺みたいなのとは話をしない方がいい」

サクラ「そんなことありません。アシュラさんは私たちの仲間じゃないですか」

アシュラ「しかしですね」

サクラ「それに、その畏まった言い方もしないで大丈夫ですよ。私も含めてみんなカムイ姉様の力になりたくて、ここに集まっていて、そこに立場は関係ありません。だから、私に話をする時は楽に話してほしいんです」

アシュラ「サクラ様……しかし、すぐにはできませんよ」

サクラ「なら、これからそうしていきましょう。すぐに変われるわけじゃありませんから……」

アシュラ「……わかりました。サクラ様の頼みを断る理由はありませんから。まぁ、少しぎこちなくなってしまうかもしれませんけど」

サクラ「はい、ありがとうございます」

(アシュラとサクラの支援がCになりました)

◇◆◇◆◇
―イズモ公国『茶菓子店』―

サクラ「うーん……」

エルフィ「ん、あれはサクラ様?」

サクラ「やっぱりこしあんでしょうか。でもつぶあんの感じもおいしそうですし……、ま、迷ってしまいます」

エルフィ「サクラ様」

サクラ「あ、えっと、エルフィさんですよね?」

エルフィ「はい、エリーゼ様に仕えさせてもらっています」

サクラ「エリーゼさんがよく話してくれます。力持ちのとっても優しい人だって」

エルフィ「ふふっ、それでどうしたんですか? お店の前にずっと立ちっぱなしですけど……」

サクラ「あ、えっとそのですね……」

エルフィ「これはなんのお店なんですか?」

サクラ「えっと、和菓子です。久しぶりに見たら、その、食べたくなってしまって……」

エルフィ「そうなんですか。でも、これがお菓子……。そう見えないものもありますね」

サクラ「見て楽しめたりするんです。その、食べてしまうのが勿体ないって時々思っちゃいます」

エルフィ「たしかにそうですね。それで、サクラ様はどれを?」

サクラ「おまんじゅうです、これですね」

エルフィ「……白いですね」

サクラ「はい、でも中にいっぱいあんこが入ってて、とっても甘いんですよ」

エルフィ「なんだかとってもおいしそう。見てたらお腹空いて来ちゃった……」

サクラ「その、良かったら一緒に食べませんか?」

エルフィ「いいの?」

サクラ「はい、でも、一つだけお願いがあって、その半分半分で分け合いっこしませんか? 二つ種類どちらも食べたいので、その……///」

エルフィ「構わないわ。それにサクラ様が食べたいものに便乗させてもらっているのはわたしのほうだもの」

サクラ「あ、ありがとうございます。あの、おまんじゅうのこしあんとつぶあんを一つずつください。うふふっ、久しぶりに食べるからとっても楽しみです」

エルフィ「ふふっ」

サクラ「エルフィさん?」

エルフィ「ううん、なんでもないわ。その、ここで食べてっていいのかしら?」

サクラ「はい、ここで食べていきましょう。おいしくて、エルフィさんびっくりしちゃいますから」

エルフィ「それは楽しみね」

サクラ「はい」

(サクラとエルフィの支援がCになりました)

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国国境付近―

 ザッ ザッ ザッ

カムイ「あの、いいんですか?」

サイゾウ「何がだ?」

カムイ「サイゾウさん、部下の方たちと離れてこちらに随伴されているので……」

サイゾウ「カゲロウのこともある。それにお前たちのことを完全に信用しているというわけではないからな」

カムイ「監視ということですか」

サイゾウ「そういうことだ」

エリーゼ「少しは信用しても……」

カムイ「いいんですよ、エリーゼさん。それに敵国の人間を警戒しない方が不自然なことです。フウマでの一件は私達とサイゾウさんたちとの利害が一致した結果。ただそれだけのことですから」

エリーゼ「でも……」

カムイ「大丈夫ですよ。だって、私には皆さんがいます、エリーゼさんもその中の一人ですからね」ナデナデ

エリーゼ「んっ、えへへ、くすぐったいよ」

カムイ「ふふっ。それでサイゾウさん、この先がイズモ公国になるんですよね?」

サイゾウ「ああ、門までは案内してやるが、それ以降のことはお前たちで何とかしろ」

カムイ「もちろんそのつもりですよ。ですが、私達が入国を拒否されてしまった場合は、すみませんがカゲロウさんのことをよろしくお願いします。さすがにまた野宿をさせるわけにはいきませんから」

サイゾウ「……ふむ」

カムイ「?」

サイゾウ「いや、カゲロウを盾にイズモに入れるよう脅しを掛けてくるかと思っていたからな」

カムイ「そこまで信用されてなかったんですね」

サイゾウ「敵国の人間を警戒しないことに越したことはない、そうだろう?」

カムイ「それもそうですね」

サイゾウ「……門はもうすぐだ、付いてくるといい」

カムイ「はい」

カムイ「しかし、歩き続けですから、少し疲れてきましたね……」

 クイクイッ

カムイ「?」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、大丈夫?」

カムイ「エリーゼさん、ええ、大丈夫ですよ」

エリーゼ「嘘は駄目だよ、さっき疲れたって言ったの聞こえたんだからね」

カムイ「ふふっ、聞かれちゃいましたか。ですが、もう少しでイズモ公国に着くので……」

エリーゼ「なら、少しの間だけでも、あたしの馬に乗って。ここまでカムイおねえちゃんずっと歩きっぱなしだったんだから。これからイズの人とも話をしないといけないと思うから、少しだけでも休んでおいた方がいいよ」

カムイ「……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらってもいいですか?」

エリーゼ「うん、それじゃ降りるから、ちょっとまってね。よいしょっと、はいどうぞ!」スタッ

カムイ「ええ、それじゃ失礼しますね。よいしょっと、ふぅ」

エリーゼ「もう、ため息漏らして、なんだかおばあちゃんみたいだよ」

カムイ「自然と出てしまうんですよね、もう歳なのかもしれません」

エリーゼ「カムイおねえちゃん奇麗でかっこいいのに、そんなこと言っちゃ駄目だよ」

カムイ「ふふっ、ごめんなさい。……あれ、エリーゼさん?」

エリーゼ「んしょ、……えいっ!」ボスッ

カムイ「わわっ……エリーゼさん」

エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃんの膝上、あったかい」

カムイ「……ふふっ、本当は私の膝上に乗りたかったんですね」

エリーゼ「その、ごめんなさい」

カムイ「ふふっ、謝らなくても大丈夫ですよ」

エリーゼ「えへへ。あのね、カムイおねえちゃん。さっきみたいに頭撫で撫でしてくれるかな?」

カムイ「ええ、わかりました。馬に乗せてくれたお礼に撫でてあげますね」ナデナデ

エリーゼ「んんっ、えへへ~。なんだか、初めてカムイおねえちゃんと会った時のこと思い出しちゃった」

カムイ「初めて会った時のことですか?」

エリーゼ「うん、あの時、いっぱい顔を触られたからびっくりしたんだよ?」

カムイ「そうでしたね。でも、エリーゼさんが来てくれた時は本当にうれしかったんですよ」

エリーゼ「え、どうして?」

カムイ「その、私より年下の人と会うのは初めてでしたし、なによりおねえちゃんってエリーゼさんはすぐに呼んでくれましたから。今は姉さんって気軽に呼んでくれるレオンさんも、最初は私のことを警戒してました」

エリーゼ「たしかにそうかも、レオンおにいちゃん、昔みたいに跡目争いが始まるのかもしれないって言ってた。昔はお母さん同士で争いが絶えなかったって……」

カムイ「だからこそ、レオンさんの警戒は仕方ないと思います。私がお父様の隠し子として出てきたということは、それを利用して跡目を狙おうとする人間がいるかもしれない。そう考えるのが当たり前、そんな環境で育ってきたんですから」

エリーゼ「……カムイおねえちゃん」

カムイ「だから、エリーゼさんが私に話しかけてくれて、すぐに仲良くなってくれたことはとてもうれしかったんですよ」

エリーゼ「えへへ、ありがとうおねえちゃん。でも……」

カムイ「どうしたんですか?」

エリーゼ「あのね、あたしがカムイおねえちゃんに話しかけたのはね……その……」

カムイ「……」

エリーゼ「ううん、なんでもないよ。ごめんね」

カムイ「エリーゼさん?」

エリーゼ「えへへ、あ、見て、なんか門みたいなのが見えてきたよ。あれがイズモ公国なのかな?」

カムイ「そうですか。ということはあと少しの距離ですね。ここからは自分で歩きますから」

エリーゼ「うん、それじゃ、降りるね」スタッ

 スタッ

エリーゼ「えへへ、少し休めたかな?」

カムイ「はい、エリーゼさんのおかげです。ありがとうございます」

エリーゼ「うん」

カムイ「あと、エリーゼさん」

エリーゼ「なに、カムイおねえちゃん」

カムイ「私はエリーゼさんと仲良くなれてよかったと持っています。それは永遠に変わりませんよ」

エリーゼ「……おねえちゃん」

カムイ「……さぁ、馬に乗ってください。大丈夫、何か困ったことがあったら言ってください」

エリーゼ「うん、ありがとう」スタッ



カムイ(さて、イズモ公国ですか。ここの王は一体どんな方なんでしょうか?)

カムイ(やはり、とても真面目な方と考えるべきでしょうか。できれば、こちらの話に耳を傾けてくれるといいんですが……)

◆◆◆◆◆◆
―イズモ公国『来賓の間』―

???「うん、いいよいいよ~」

カムイ「えっ?」

???「どうしたのかな~」

カムイ「いえ、その、何か思うことはないんですか。その……」

イザナ「好きに呼んでもらっていいよ~。イザナでもイザナさんでも、イザナ様でも。とりあえず、ボクはキミたちが滞在することに文句はないからね~」

カムイ「い、イザナさん。本当にいいんですか?」

イザナ「うん、いいよいいよ~」

カムイ「……」

アクア「これは予想外ね。もっと、いろいろと話が必要だと思っていたのだけど」

カムイ「はい、いろいろと交渉方法を考えていただけに、その腑に落ちないというか……」

カミラ「もしかして罠ということはないかしら? イザナ公王の態度はとてもじゃないけど、一国の王には見えないわ……」

カムイ「まさか、誰かが幻術の類で化けている可能性が? 私は気配でしか相手を察せませんよ」

イザナ「ははっ、ボクはいつもこんな感じだよ。そんなに信用できないなら、ここはボクの顔を触って確かめてみるかい?」

カムイ「!」ガタッ

イザナ「カムイ王女は目が見えないみたいだけど、なら直接触って確かめてみるしかないと思ってね~」

カムイ「たしかに、ここは本人確認はするべきところ、そのよろしいんですね?」ワキワキ

イザナ「うん、それでボクが本物だって、わかるならお安い御用だよ~」

カムイ「では、お言葉に甘え――」

 ダッ

 グイイッ

イザナ「あれ、キミは…」

カムイ「え、アクアさん? どうして、イザナさんの隣に?」

アクア「カムイが確かめる必要はないわ。えっと――」グイグイッ

イザナ「いたっ、ちょっと、優しくしてくれないかな~」

アクア「……変な術が掛ってるようには見えないわね」ググッ

イザナ「え、あれー、あのー、少しくらい優しく……いたっ」

カムイ「ちょっと、アクアさん。なんで先に触ってるんですか」

アクア「あなたに任せていたら長くなるでしょう?」

カムイ「そんな、イザナさんを鳴かせ――いえ、イザナさんの顔を覚えようと思ったんですよ」

アクア「そう、でも私が調べたから、もうする必要はないわ」

イザナ「も、もう放して……」

アクア「あ、ごめんなさい」パッ

イザナ「ううっ、キミは結構強引なんだね~」

アクア「ええ」

カムイ「はぁ、触りたかったです」

カミラ「カムイ、アクアの気持ちもわかってあげなさい」

カムイ「え、なんのことですか?」

カミラ「ふふっ」

カムイ「?」

イザナ「それじゃ、ボクの本人証明もできたってことで。あ、そうそう、先に断っておくけど、この国の中で戦闘行為は厳禁だからね。腰に下げたりとかは構わないけど、振り回したらだめだよ~」

カムイ「はい、わかりました……」

イザナ「なんだか、きょとんってしてるけど?」

カムイ「その、あまりにもあっさりと事が運んでしまったので……」

イザナ「まぁ、普通はこんなにあっさり話を進めたりはしないよ。ましてやキミたちは暗夜の人間、白夜王国の支配が済んだら、すぐに全土に手を伸ばすと思うからね~」

カムイ「……やはり、そう思われますか」

イザナ「うん、ボクが白夜の人間をここに入れてることも、とっくに気づいてることだろうし、いずれはそれをダシに侵略されるのは簡単に考えられるからね~」

カムイ「では、なぜ私たちを受け入れてくれるんですか?」

アクア「あくまでも通行路としてここを開いている。そう暗夜に取り繕いたいから?」

イザナ「そう考えてもらっても構わないよ。でも、本音を言うとボクはね、カムイ王女だったから、ここに入れてあげたんだ~」

カムイ「私だから、ですか?」

イザナ「そうそう、これが暴力しかすることがない無頼漢だったり、見るからに胡散臭そうな人だったら、そう簡単に入れたりしないよ。通行路にも、通す相手を選ぶ権利くらいはあるからね~」

カムイ「私は通すに値する、ということですか?」

イザナ「……それをここで見極めるのがボクの仕事、そう言ってもいいかな~」

カミラ「それはどういうことかしら?」

イザナ「そのままの意味かな。カムイ王女、キミはボクに頼み事がまだあるみたいだね」

カムイ「……はい」

イザナ「うん、それじゃ明日の夜、その話のためにボクの部屋まで来てくれないかな。部屋の前までは誰か付いて来てもいいけど、部屋にはキミ一人だけで来てもらえるとうれしいな~」

アクア「……カムイ一人で?」

イザナ「そう、それがボクの出す唯一の条件だよ」

カミラ「あら、先にこちらの要望を受け取って、それから要求を出すなんて意地悪ね」

イザナ「意地悪をしてるつもりはないよ~。ただ、ボクの要求はそれだけだから、大丈夫大丈夫、取って食べたりなんてしないよ~。ボクはカムイ王女とお話がしたいだけなんだ。駄目かい?」

カムイ「その条件に従えば、ここでの滞在、それに私の話も聞いてくれるということですね?」

イザナ「もちろん」

カムイ「では、明日の夜に、イザナさんのお部屋に向かいます」

イザナ「うんうん。そうこなくっちゃ、カムイ王女とお話楽しみだね~。あと、今ここでは、空の入れ替わりに合わせてお祭りもやってるから、いろいろと見て回るといいかもよ」

カムイ「お祭りですか」

イザナ「うん、こんな時にって思うかもしれないけど。こんな時だからこそ、戦争っていうのを少しの間だけ忘れるのも悪くないってボクは思ってるからね~」

カムイ「たしかにそうかもしれませんね」

イザナ「そういうわけだからカムイ王女、明日の夜はよろしくね~」

カムイ「はい、わかりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エリーゼ「空の入れ替わりのお祭りだって、一体どんなことするのかな?」

レオン「あまり楽しむっていう時期ではないのは確かだけどね。空の入れ替わりの日には暗夜の大攻勢が始まるし、僕たちも動くことになるんだから」

エリーゼ「もう、レオンおにいちゃんは堅物なんだから」

マークス「レオンの言いたいこともわからなくはないが、先のことを考えてここで一度気を休めるべきだろう。われわれがすべきことを考えれば、心にも休息は必要だ」

レオン「それもそうかもしれないね。でも、途中から僕は作業に入ることになる。それよりも、まずはイザナ公王から許可を得ないといけない」

カムイ「その点は私が何とかしてみせますよ」

カミラ「そうね。さすがに一対一で話を持ちかけられたんだもの。ここはカムイに任せるしかないわ。少し不安なこともあるけど……」

アクア「カムイ、今からでも遅くはないわ。イザナに話をして――」

カムイ「大丈夫ですよ。それに、ここまで来て新しい条件を提示するのはイザナさんに不信感を与えかねませんし、それにあの話の感じでは、私の話というよりも私自身に興味があるように感じましたから」

アクア「……それが問題なのよ」ボソッ

カムイ「どうしたんですか、アクアさん?」

アクア「……なんでもないわ。それに、あなたはそう簡単に方針を曲げるような人じゃないから、私が何を言っても変えるつもりはないんでしょう?」

カムイ「ええ、今はこれ以上の手はないと思いますから」

アクア「そう。でも、部屋の前までは一緒に行って、外で待っているくらいはいいでしょう? それに、あなたはまだここの構造を把握してるわけじゃないんだから。行きと帰りの道案内は必要よ」

エリーゼ「アクアおねえちゃん、なんだかお母さんみたいだね」

カミラ「ふふっ、お母さんとは少し違う気もするけどね」

エリーゼ「?」

カムイ「ふふっ、それではその役目をお願いできますか、アクアさん」

アクア「私でいいの?」

カムイ「アクアさんが提案してくれたんです、断る理由はありませんよ。それにアクアさんが傍にいてくれるのはとても心強いですから」

アクア「……そう、そう言ってもらえると嬉しいわ」

マークス「では、カムイ。イザナ公王との話はお前に委ねる。といっても、あまり心配はしていないがな」

カムイ「少しは心配してくれてもいいんですよ?」

マークス「ふっ、心配しろと言われても、不安を感じさせない顔立ちでいられてはな」

レオン「まぁ、それがカムイ姉さんだからね。それじゃ、僕は交渉までに場所を探し出しておくよ」

カムイ「はい、その点はレオンさんにお任せします。さすがにこちらの準備は空の入れ替わりまでには終わらせないといけませんから」

レオン「わかってるよ」

エリーゼ「ねぇねぇ、明日はみんなで一緒にお祭り回ろうよ! 白夜のお祭りって暗夜のお祭りと何が違うのかな?」

カミラ「ふふっ、確かにそれもいいわね。カムイ、明日イザナ公王の部屋に行くまでの間、一緒にどうかしら?」

カムイ「いいですよ。そうなると、レオンさんは今日中に場所の目星を付けないといけませんね」

レオン「いや、僕はいいよ。みんなで楽しんで――」

カムイ「だめですよ」ギュッ

レオン「ちょ、腕に抱きつかないでよ姉さん。みんなも見てないで、どうにかしてよ!」

マークス「ふっ、そう言いながらも少しだけ嬉しそうなところが、なんともレオンらしい」

カミラ「ええ、本当に。ふふっ、お姉ちゃんも抱きついちゃおうかしら?」

エリーゼ「あー、カムイおねえちゃんにギュってされて、ずるいー!」

アクア「本当ね……」

カムイ「そういうわけですから、レオンさん。今日中にお願いできますか?」

レオン「ああもう、わかったよ。今日のうちにできる限り調べてみる。だから、もう離れてくれないかな? 正直、恥ずかしいから」

カムイ「はい、約束ですからね?」パッ

カミラ「それじゃ、私は行くところがあるから、これでね」

カムイ「行くところですか?」

カミラ「ええ、それじゃあね」

 タッ タッ タッ

レオン「僕は場所探しを始めることにするよ」

カムイ「はい、お願いします」

レオン「わかってる。報告期待しといてよね」

 タッ タッ タッ

エリーゼ「あたし、サクラに会いに行ってくるね。明日の回れたら一緒にお祭り回りたいから、誘ってみる!」

カムイ「そうですね。サクラさんも一緒に回れるなら、その方がいいですから」

エリーゼ「うん、それじゃ行ってくるね!」

 タッ タッ タッ

マークス「私は少し町を回ってくることにする。カムイは自由に過ごすといい」

カムイ「はい、そうさせてもらいます」

マークス「ではな」

 タッ タッ タッ

アクア「私は宛てられた部屋で休むことにするわ」

カムイ「はい、明日の夜はよろしくお願いします」

アクア「ううん、私がお願いした側なんだから、むしろ受けてくれてありがとう、カムイ。今日はずっと部屋にいるつもりだから、何かあったら声を掛けて頂戴」

カムイ「はい、わかりました」

アクア「それじゃ、またね」

 タッ タッ タッ

カムイ「……自由時間ということですか……」

(さて、どうしましょうか……)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB→B+
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまで

 カムイの顔タッチを阻止するアクア。
 この十七章と番外二つで今回のスレは終わるかもしれません。
 
 15日のエンタキングダムたのしかった。とりあえず、噛んだ。
 光の戯曲で始まりGive me!!とか幻じゃない世界とかとてもよかった。
 ペンライト付き座席のペンライトがまさかのキンブレ(可変11色)、avexすごい。

 ここからの展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

・レオン×サクラ B
・ベルカ×スズカゼ B
・エリーゼ×ハロルド B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス B
・アクア×オーディン B

・サイラス×エルフィ C
・モズメ×ハロルド C
・ギュンター×ニュクス C
・レオン×エルフィ C
・アクア×ゼロ C
・オーディン×アクア C
・ツバキ×カザハナ C
・アシュラ×サクラ C
・ルーナ×ハロルド C

 この中から一つ>>789
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

・ギュンター×サイラス B
・ベルカ×エリーゼ B
・レオン×ツバキ B
・フェリシア×エルフィ B
・シャーロッテ×モズメ B

・エルフィ×モズメ C
・シャーロッテ×カミラ C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C
・アクア×ルーナ C
・ピエリ×エルフィ C
・サクラ×エルフィ C

 この中から一つ>>790

◇◆◇◆◇
・カムイが話しかける兄妹を二人

 マークス
 レオン
 カミラ
 エリーゼ
 アクア

 >>791>>792

 
 このような感じでお願いします。

レオンとサクラで

レオンとツバキ

アクア

レオンがシスコンすぎる
カミラさんと迷うとこだけどここはエリーゼかな

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオンの屋敷―

サクラ「レオンさん」

レオン「サクラ王女、姉さんとは話ができたみたいだね」

サクラ「はい。レオンさんのおかげで、ありがとうございます」

レオン「いや、僕は何もしてないよ。サクラ王女がそうありたいと思って行動した結果なんだからさ」

サクラ「いいえ、そんなことないです。ここまでレオンさんは私たちのことを守ってくれました」

レオン「守ったか……。正直にいえば、僕はそう思ってないんだ」

サクラ「え?」

レオン「本当のことを言えば、僕は君たちに戦う道を選んでほしくはなかった。最後まで守っていけたらと思っていたからさ」

サクラ「うふふっ、そうだったんですか」

レオン「サクラ王女?」

サクラ「いいえ、その、そう思っていただけていたことがとても嬉しくて……。最初は捕虜として一緒にいただけなのに、今はこうして話し合える仲間になれたことが嬉しいんです」

レオン「サクラ王女は僕のことを仲間だと思ってくれてるんだね」

サクラ「当り前です、いろいろと支えてくれたレオンさんは私の大切な仲間ですから。その、レオンさんは違うんですか?」

レオン「そんな心配そうな顔をしないでくれるかな?」

サクラ「ご、ごめんなさい」

レオン「心配しないでサクラ王女。僕も君と同じ気持だよ。君はもちろん、カザハナもツバキも大切な仲間だって思ってるよ」

サクラ「レオンさん……」

レオン「だけど、君たちを守るっていう僕の戦いが終わったわけじゃない。でも、今はただ守るだけの君たちじゃなくて、共に闘ってくれる仲間として守っていきたいって思ってる」

サクラ「えへへ、そう言ってもらえると、とってもうれしいです。ありがとうございます、レオンさん」

レオン「いや、本当は僕の方がお礼を言わないといけない立場なんだ」

サクラ「え?」

レオン「僕は心のどこかで君のあり方に甘えていたから……。最初、暗夜に来た君は弱弱しい言動が多かった。でも、今の君はとても強い心を持って、自分で歩み始めてる。それを見て、僕も歩き出せたんだ。だから、僕もお礼を言いたい、ありがとうサクラ王女」

サクラ「そ、そんな、なんだか照れちゃいます」

レオン「サクラ王女、一緒に戦っていこう。それが僕たちの進むべき道だと思えるから。この戦いを終わらせるために……」

サクラ「はい、私もそのつもりです。一緒に力を合わせていきましょう」

レオン「ああ」

【レオンとサクラの支援がAになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオンの屋敷―

 キィン
  キィン!

レオン「せいっ!」

 カキィン

ツバキ「中々ですよー。でも、それっと!」

 ギィン パシッ ドサッ

レオン「ぐっ!?」

 チャキッ

ツバキ「はい、おしまいっと」

レオン「僕の負けみたいだね……。認めたくはないけど、ツバキのほうが剣の腕は上のようだね」

ツバキ「ありがとうございますー。でも、レオン王子の上達はすごく早いですよー」

レオン「ツバキのアドバイスがあったからだよ。……最初は捕虜にアドバイスを受けるなんて、苦痛でしかなかったけどね」

ツバキ「まぁ、俺も最初はレオン王子にちょっかいを出すために声を掛けたようなものですからねー。体の軸がぶれてるところとか」

レオン「その話はやめてくれないかな……」

ツバキ「あははっ」

レオン「……だけど、ツバキと手合わせする日が本当に来るなんて思ってもなかった」

ツバキ「それは俺も同じだよ。なんだか不思議だね。最初はお互い敵同士って割り切ってるはずだったのに、今じゃこうして一緒に模擬刀片手に手合わせしてるなんてね」

レオン「いや、不思議なことでもないよ。僕とツバキが過ごしてきた時間は確かに存在してる。それを不思議なことだと割り切ることを僕はしたくない。ここまで君が僕にくれたアドバイスはちゃんと僕の力になってるんだからさ」

ツバキ「レオン王子、なんだか恥ずかしいことを言うんだねー」

レオン「た、確かにそうかもしれない。でも、ツバキ、君が僕を見てちょっかいを出してくれなかったら、こうして手合わせをすることはなかったと思う。最初のきっかけは君が作ったんだよ」

ツバキ「うーん、俺がちょっかい出したからか。確かにこれは不思議なことじゃないかもねー」

レオン「そういうことだよ。ツバキ、また気が向いた時に僕の鍛錬相手になってくれるかい?」

ツバキ「いいですよー。レオン王子の上達の早さは見てても面白いけど、こうやって実際に手合わせした方が楽しいですからー」

レオン「楽しいか……。なら、その楽しいって思いを続けられるように鍛錬を積んでいくよ。それじゃ、もう一回やろうか?」

ツバキ「了解ー。手加減は一切しませんから、そのつもりで」

レオン「ああ、わかってる。それじゃ、ツバキ……手合わせを再開しよう」

ツバキ「はい、レオン王子」

【レオンとツバキの支援がAになりました】

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『来賓棟』―

エリーゼ「そっか、サクラちょっと外に出てるんだね」

カザハナ「うん、ごめんね。わざわざ来てもらったのにさ」

エリーゼ「ううん」

カザハナ「よかったら部屋で待ってる? サクラ様なら少しすれば戻ってくると思うし、もしよかったらあたしがサクラ様に話しておくけど」

エリーゼ「ありがとうカザハナ。でも、できればあたしから直接伝えたいの、その、うれしい提案なんだけど、ごめんなさい」

カザハナ「別に謝らなくてもいいから、それにその考え方は嫌いじゃないよ。ふふっ、こういうことって自分の口から伝えたいことだもんね」

エリーゼ「カザハナ……ありがとう!」

カザハナ「えへへ。一応サクラ様が帰ってきたら、エリーゼ王女が探してたって言っておいてあげるね」

エリーゼ「うん」

カザハナ「それじゃね」

 パタンッ

エリーゼ「うーん、サクラが帰ってくるまでどうしようかな?」

カムイ「エリーゼさん」

エリーゼ「わっ、カムイおねえちゃん。どうしてここに?」

カムイ「エリーゼさんのことが気になったので。どうやらサクラさんは外出中みたいですね」

エリーゼ「うん、でも仕方無いよ。サクラにもサクラの用事があるから……」

カムイ「そうですか。では、サクラさんが戻ってくるまで一緒にいてもいいですか?」

エリーゼ「えっ、いいの? カムイおねえちゃん何かすることがあるんじゃ……」

カムイ「ふふっ、エリーゼさんと一緒にいることが、今したいことですから」

エリーゼ「えへへ、うれしい」ガシッ

カムイ「ふふっ、入口に休める場所がありましたから、そこでサクラさんが戻ってくるのを待ちましょう」

エリーゼ「うん……。ねぇ、カムイおねえちゃん」

カムイ「はい、なんですか?」

エリーゼ「さっきのこと……なんだけど」

カムイ「さっきのことですか?」

エリーゼ「うん。イズモに来る前に話したよね、昔のこと初めて会った時のこと……。カムイおねえちゃんは嬉しかったって言ってくれたよね?」

カムイ「はい」

エリーゼ「そう言われてね。あたし、すごくもやもやしてて、そのね……」

カムイ「エリーゼさん、無理に話さなくても大丈夫ですよ?」

エリーゼ「そ、それじゃ駄目な気がするの。そのね……ずっと、ずっと思ってきたことだから……。その、聞いてくれる?」

カムイ「はい、もちろんですよ」

エリーゼ「……あたしね。カムイおねえちゃんに嘘を吐いてるんだ……」

カムイ「嘘ですか?」

エリーゼ「うん……最初に会って仲良くなったのはね。純粋に仲良くなりたかったからじゃなくて……。あたしのことを思ってほしいっていう、そんな考えだったの……」

エリーゼ「あたしのお母様が死んじゃった時、ずっとお父様のことを呼んでた。近くにあたしがいるのにだよ……。それがすごく悲しかった。お母様に愛されてないって思って、あたしは誰かの特別になれないことがとっても怖くなって……それで、カムイおねえちゃんに思ってもらいたいくて、安心したくて……」

カムイ「そうだったんですか」

エリーゼ「うん……。家族を大事に思ってるのは多分それなんだと思う。あたしはみんなよりも恵まれてるのはわかってる。兄弟同士の殺し合いもなかった身なのに……」

カムイ「……だとしても、エリーゼさんが願ってはいけないなんてことはありませんよ」

エリーゼ「そ、そうなのかな?」

カムイ「当り前ですよ。それにエリーゼさんがどんな理由であれ、私と仲良くしてくれたことは嬉しいことですから」

エリーゼ「……カムイおねえちゃんはやさしいね。あたし、こんなにわがままなのに」

カムイ「エリーゼさんはお母様を愛していたんですよね?」

エリーゼ「うん、あたしねお母様のこと大好きだったから、だから……あたしの名前を呼んでほしかった」

カムイ「エリーゼさん」

エリーゼ「ごめんね、こんな暗い話、カムイおねえちゃんとはもっと楽しいことを話したいのに……」

カムイ「じゃあ、これで暗い話はおしまいですね」

エリーゼ「いいの、あたしずっと嘘吐いてきたんだよ?」

カムイ「はい。こうやってエリーゼさんが私に打ち明けてくれたことは、とてもうれしいことですから」

エリーゼ「ほんと?」

カムイ「ええ。私はエリーゼさんのことを大切に思ってますから」

エリーゼ「嫌いになったりしないの?」

カムイ「ふふっ、エリーゼさんを形作る新しい顔が見られたんです。そういった面も含めてエリーゼさんなんですから、嫌いになったりしませんよ」

エリーゼ「カムイおねえちゃん……」

カムイ「まぁ、実は私のことなんて大っきらいだったという話だったら、かなり凹んでいたと思います……」

エリーゼ「そんな、むしろ逆だよ! 大大大好きだよ!」

カムイ「ふふっ、何個も壁を飛んじゃいましたね。エリーゼさんの気持ち、すごく伝わりましたよ」ナデナデ

エリーゼ「んっ、えへへ。やっぱりカムイおねえちゃんに撫でてもらえると取っても落ち着く……」

カムイ「私もあなたといる時はとても穏やかな気持ちになれます。それに、私が人の顔を触るのは顔を覚えるためという表向きの目的と、いい声で鳴いてもらいたいという裏の目的があるんですから。エリーゼさんと同じようなものですよ。だから気にしないでください」

エリーゼ「カムイおねえちゃん。それ、みんな知ってると思う……」

カムイ「え、そうなんですか。困りましたね、エリーゼさんに安心してもらおうと思ったんですけど……。では、うーん」

 ギュッ

カムイ「?」

エリーゼ「もう大丈夫だよ。カムイおねえちゃん。こんなに支えてもらえて、あたしとっても嬉しいから……」

カムイ「ふふっ、エリーゼさんがそういうのなら」

エリーゼ「うん。あのね、あたしカムイおねえちゃんと本当の意味で仲良くなりたい。その、今さらかもしれないけど、昔の時みたいじゃなくて――」

カムイ「……それは大丈夫ですよ」

エリーゼ「え?」

カムイ「だって、もう私達はこうして共に過ごしていますし、お互いに思った事を遠慮せず口に出せてるんです。もう、前のことなんて関係ありませんよ」

エリーゼ「そ、そうなのかな?」

カムイ「ええ、気を許していない相手に自分の本心は告げられません。エリーゼさんは私のことを信じてくれているから伝えてくれた。それだけで私はエリーゼさんとの絆を強く感じられますから」

エリーゼ「……ありがとう、カムイおねえちゃん」

カムイ「ふふっ、今度は色々と楽しいことを話しましょう?」

エリーゼ「うん、楽しい話、いっぱいしようね……」

カムイ「はい」ナデナデ

~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国・来賓棟『アクアの部屋』―

カムイ「たしか、ここの部屋でしたか。えっと、入口に松の木の装飾があるとか。松の木ってどんな形をしているのか分かりませんけど……」サワサワ

カムイ(……木ですよね、たぶん)

 コンコン

 ガチャ

アクア「あらカムイ、どうしたの?」

カムイ「アクアさんとお話をしようと思いまして……」

アクア「そう」

カムイ「駄目でしたか?」

アクア「いいえ、そんなことないわ。どうぞ」

カムイ「はい、失礼しますね。結構な広さがあるみたいですけど……」

アクア「ええ、それに日の光もよく入ってくるから、とても気持ちがいいわ」

カムイ「そうですか。とてもいい部屋なんですね」

アクア「先に座ってて、お茶の準備をするから」

カムイ「すみません……それにしても、さっきは驚きましたよ」

アクア「?」

カムイ「アクアさん、私よりも先にイザナさんの顔を触りに行ったじゃないですか」

アクア「ええ、そうね。だって、あなたに任せていたら時間が掛ってしまうでしょう?」

カムイ「手厳しいですね、アクアさんは」

アクア「そうでもないと思うけど。……はい、お茶よ」

カムイ「ありがとうございます。それにしても、こうやってお茶を出してもらってのんびりしてると、もう戦いは終わったものだと思いたくなります」

アクア「そうね、でも現実はそういうわけじゃないわ」

カムイ「確かにその通りですね……」

アクア「でも、あなたと話してるとなんだか、安心できるのは確かね」

カムイ「ええ、なんだかこうして長い間過ごしてきたような気がしてきます。ふふっ、まるで夫婦みたいですよね……」

アクア「夫婦って……」

カムイ「ふふっ、でも女同士で夫婦なんておかしな話ですね。それに、アクアさんはとっても強い方ですから結婚相手は尻に敷かれてしまうかもしれませんね」

アクア「……そう、そんなことを言うのね?」

カムイ「あ、あれ、怒ってますか?」

アクア「ええ、少し……」

 ピトッ

カムイ「? アクアさん?」

アクア「……ねぇ、カムイは自分の顔を触られたことはあるの?」

カムイ「逆にですか、あまりないですね。そもそも、アクアさんも含めてほとんどの人は目が見えていますから、別に触る必要もないはずですし」

アクア「そう、でも触っちゃいけないわけではないでしょう?」ペタッ

カムイ「え、えっと……」

アクア「……ふふっ、少しだけ怯えてるわ」

カムイ「いえ、そんなことありませんよ」

アクア「そう、なら遠慮はいらないわね?」グニッ

カムイ「い、いたっ」

アクア「……」グニニッ

カムイ「うっ、あ、アクアさん、痛いっ、です」

アクア「え、えっと。大丈夫、もう痛くしないから」ギニャッ

カムイ「はうっ……その、サワサワするだけにしてください……ううっ、ほっぺが、痛いです……」グググッ

アクア「………そ、そうね。それじゃ」サワサワ

カムイ「んっ、はぁ……。ふふっ、くすぐったいです」

アクア「そう、ふふっ、こうやって顔を触るのって、何とも不思議な気持ちになるわ」サワサワ

カムイ「んっ、アクアさんの手、私の耳ばっかり触ってますね、んんっ……」

アクア「……耳、弱いの?」

カムイ「どうでしょうか、こんなに長く触られるのは初めてですから、一概には――」

アクア「そう、ならこれでどうかしら?」

クニクニクニ コリコリ

カムイ「はぁっ、ひうっ……アクアさん、先っぽを、そんな執拗に、責めちゃ……」

アクア「ちょっと、変な声を出さないで」

カムイ「んっ、無理、です……。はぁ、私が触ってるとき、みんなこんな感じ……んんっ、だったんですね……んあっ。やっ、耳の穴にアクアさんの指が触れて――」

アクア「……えいっ」グニッ

カムイ「ひゃうっ、アクアさ……ん、んんっ、いや、耳、全部いじらないで……」

アクア「……」

 クニクニ

カムイ「はぁ、はぁ……。んっんんんっ」

アクア「……ふふっ」クニクニニ

カムイ「んあっ、はううっ、だめっです、アクアさん……」

アクア「ふふっ、ふふふっ」コリコリ

カムイ「いやっ、あっ、んんんっ、ア、アクアさっ、ふやああっ」

アクア「!」

アクア(私は一体…)チラッ

カムイ「んっ、はぁはぁ……あくあしゃん……」

アクア(……これ以上はいけない気がする。カムイもそうだけど、私もなにか踏み外しそうになってる気が……)

アクア「……カムイ。こ、これでおしまいだから、えっと、ごめんなさい」パッ
 
カムイ「はぁ……はぁ……んっ、耳が熱いです……」クタリッ

アクア「カムイ、その、大丈夫?」

カムイ「え、ええ。ふふっ、アクアさんって責め立ててくるタイプなんですね。アクアさんに弱みを握られてしまいました……」

アクア「弱みって……」

カムイ「自分では気づかないことですよ。自分の弱いところというのは誰かに指摘されないとわからないものですから」

アクア「……ねぇ、カムイ」

カムイ「どうしましたか?」

アクア「その……ううん。何でもないわ」

カムイ「また触りたいと言ってくるのかと思ってました。ふふっ、私と同じで人の顔を触って鳴かせるのが癖になってしまいましたか?」

アクア「あ、あなたとは違うわ。一緒にしないで頂戴」

カムイ「怒られちゃいました……」

アクア「……」ギュ ギュ

アクア(だけどカムイの耳、とっても柔らかかった……それに―――)

カムイ『いやっ、あっ、んんんっ、ア、アクアさっ、ふやああっ』

アクア(……カムイの声が耳にこびり付いて離れないというか……)

カムイ「どうしたんですか? アクアさん」

アクア「いいえ……なんでも無いわ」

カムイ「そうですか。ふふっ、明日のお祭り楽しみですね。アクアさん、みんなでいっぱい回りましょう。戦いの前の一休みですから……」

アクア「ええ」

カムイ「それに、この少しの間くらいはいいですよね」

「終わるかまだわからない、戦いのことを忘れても……」

今日はここまでで

 日付過ぎたけどセツナ誕生日おめでとう。
 
 レオンはサクラ隊全員と支援Aになったわけで、愛されてるなぁと思った。

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『祭り会場』―

 ワーワー ワーワー

露店商人「さぁさぁ。一生に一度、いやいや運が悪けりゃ見ることもできない空の入れ替わり。それを祝ってのこの祭典!楽しまないと一生後悔するお祭りだぞー!」

露店商人「入れ替わりを見るなら肴も欲しい、そんな御仁にぴったりの美酒に花より団子なうら若き乙女に甘味を一式にしてこの価格!! 入れ替わり記念の大盤振る舞い、買わなきゃ損だ! 買った買ったー!!!」

エリーゼ「うわー、すごい賑やかだね」

マークス「ああ、これほどまでに活気があるとはな」

カミラ「ええ、参加者皆が楽しそうにしてるわ」

露店商人「おおっ、そこの可愛らしい嬢ちゃんよ」

エリーゼ「え、もしかして、あたし?」

露店商人「あったりまえよ。こんな可憐で可愛い子、そうそういないねぇ。空の入れ替わりを生きてるうちに運良く見られるなんてこの奇跡、そんな最高潮な運だめしにクジなんてどうだ? なんたって当店はハズレなしだ!」

カミラ「ふふっ、面白そうじゃない。エリーゼ、やってみたらどうかしら?」

エリーゼ「え、やってもいいの!?」

マークス「ああ。代金は気にするほどでもない。この祭りを一番楽しみにしていたのはエリーゼだ。だから好きなだけ楽しむといい」

エリーゼ「わーい、ありがとうマークスおにいちゃん!」

レオン「はぁ、くじができるだけなのにそんなに喜ぶなんて、本当にガキだね。エリーゼは」

カミラ「そんなこと言って、場所探しを手早く済ませて明日に備えられるように頑張ってたのは誰だったかしら?」

レオン「ちょ、なんで知って――」

エリーゼ「えへへ、レオンおにいちゃんもやっぱり楽しみだったんだね」

レオン「ち、ちがうから。僕はただカムイ姉さんの要望に応えようとしただけ、ただそれだけだから」

カムイ「ふふっ、でも昨日の夜には私の元に予定地を教えに来てくれましたね。資料もそうですが、ちゃんと概要まで説明してくれて、本当にありがとうございました」

レオン「ね、姉さん。なんでこのタイミングで言うんだい!?」

カムイ「なんでですか? レオンさんがとっても頑張ってくれたってことを、みんなに教えてるだけじゃないですか」

レオン「姉さん、絶対わかってやってるよね」

サクラ「ふふっ、やっぱりレオンさんもまだまだ素直になれないんですね」

レオン「さ、サクラ王女、君まで……」

サクラ「ごめんなさい、焦ってるレオンさんがなんだか可愛く思えてしまったので」

レオン「か、可愛いって……これでも僕は男なんだけど」

サクラ「でも、男性の中にも可愛い人はいると思いますよ?」

レオン「それは納得がいかないというか……」

カミラ「レオンは可愛いもの、サクラの言葉は間違ってないわ。ふふっ、カムイのために頑張ってくれてありがとう」ナデナデ

レオン「恥ずかしいから撫でるのはやめてくれないかな…」

カミラ「ふふっ、ムキになって、なおさら可愛いわ」ナデナデ

レオン「はぁ…」

サクラ「ふふっ、それじゃエリーゼさん、早く回しちゃいましょう」

エリーゼ「うん。あっ、そうだ。なら、サクラも一緒に回してよ」

サクラ「え、でもそれじゃ、二人分になったり…」

露店商人「あっはっは、面白いことを言うねえ。大丈夫大丈夫、クジは一個で一回分だからな。二人で回そうが、三人で回そうが、出てきたクジが一個なら一回分だよ」

アクア「だそうよ、サクラ」

サクラ「それなら、えっと、いいですか?」

エリーゼ「うん、サクラはあたしの手に手を重ねてね」

サクラ「は、はい! えっと、当たりますかね?」

アクア「そうね、はずれは無しなんだから、何かは当たるはずよ」

カミラ「ふふっ、アクアらしいけど、そこは素敵な物が当たるって言ってあげるべきじゃない?」

アクア「そう?」

マークス「しかし、その現実的な考えはアクアらしいとも言えるな。はずれは無しということは、何かしらもらえるということだろう」

エリーゼ「よーし、ならアクアおねえちゃんを驚かせるために一番の当てよう、サクラ!」

サクラ「は、はい!」

露天商人「よーし、いい心意気だ。ちなみにこのクジは一等、二等、三等、四等、五等の五種類、一番すごいのは一等だからな!」

サクラ「い、一等ですね。わかりました……」

露店商人「それじゃ、はじ――」

アクア「ところで、店主さん」

露店商人「なんだい?」

アクア「これ、あたりはちゃんと入ってるのよね?」

露店商人「あ、あのお嬢さん、何をいきなり、入ってなきゃクジにならないよ」

カミラ「そうよ、アクア。それにそれを言ったら元も子もなくなるじゃない」

アクア「私は知ってるのよ」

カミラ「?」

アクア「こういうくじは最終日になるまであたりを入れないということを、先に挑戦する人たちはあたりの入ってないはずれ無しを引かされ続ける、そういう――」

???「それはちょっといただけない発言ね」

アクア「!」

 テトテトテト

露店商人「あっ、元締め……」

???「ふふっ、いい感じじゃない。それにお客様と会話が弾んでるのもすごくいいわ」

露店商人「ええ、こんな感じに絡まれるのも、なんだか久しぶりで嬉しいもんですよ」

???「ええ、だけどこんな言い合いもお客様がいてこそね。さてと、こんにちわ。なんだか、私たちの商売に文句を言ってるみたいだけど、暗夜王国の人たちっていうのは、こんなことでも疑うのかしら?」

アクア「私はよく割ることを口にしてるだけよ」

???「ふふっ、なるほどね。そこの二人にアタリなしのクジを引かせたくないってことね。ふふっ、なんだかお姉さんみたい」

エリーゼ「おねえちゃんみたいじゃなくて、おねえちゃんなんだよ!」

サクラ「はい、アクア姉様は私達にとって姉様に間違いありませんから」

???「そう、二人は素直でとっても可愛らしいわね」

アクア「悪かったわね、素直じゃなくて」

???「まぁ、そういうことで疑われるのもこういう商売には付きものだからね。ふふっ、なんだか気持ちがいいわ」

アクア「?」

???「ごめんなさい。こうやってお客様とお話をするのはとても久しぶりなのよ。こういうお祭りは不謹慎だってことで、やらせてもらえなかったから」

アクア「そうなの?」

???「ええ、どこもかしこも戦争中なのにって顔ばっかしてね。快くOKしてくれたイザナ公王には感謝してる。ああ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はアンナ、この露天の元締めよ」

アクア「元締めがわざわざ出向いてくるものなの?」

アンナ「ふふっ、鋭い指摘をありがとう。普通なら見るだけで声なんてそうは掛けないわ。実はね、あなた達のこと、この国に来てからずっと見てたの。それで話し掛けるタイミングを探ってた矢先にあなたが事を起してくれたから、ある意味感謝してる。ありがとね」

アクア「え、どういう意味?」

アンナ「ふふっ。秘密。それにしても、本当に暗夜王族御一行様なのね、それにあなたは話に聞いてる捕まった白夜の王女様でしょ?」

サクラ「は、はい。えっと、なんで、私たちのこと……」

アンナ「暗夜王族も白夜王族も有名人でしょ。知らないならそれはもぐりってレベルじゃないと思うんだけど。まぁ、それは置いて、クジが回してほしいって思ってるから、回してあげて」

エリーゼ「あ、そうだった…。えっと、あたりはちゃんと入ってるんだよね?」

アンナ「ええ、もちろんよ。アンナ商会主催の露店で嘘はご法度。そのかわり、一日のアタリの数は制限させてもらってるの。というか、そういう案内表示があるはずだけど」

アクア「…あるわね」ジーッ

露店商人「へへっ、ちゃんとそこに案内は出してるからな。結構お嬢さんが言ってくるから、言い終わったところで見せつけようと思ってたんだけどねぇ。いやー流石はアンナ大将、出鼻を挫かれちまいました」

アンナ「女性のことを大将なんていうものじゃないわ。相手によっては殴られても文句を言えないわよ?」

露店商人「へへっ、まあ殴られたいっちゃ、殴られたいねぇ」

アンナ「まったく。まぁ、そういうわけ、もしよかったら今日のアタリを確認してから回すのもありよ?」

カミラ「今日のあたり…これね。一等が四つあるみたいだけど、当たったらどれか一つを選ぶ形式みたい」

レオン「へぇ~…!!!!」

マークス「む、レオンどうかしたのか?」

レオン(合体技大全…これがあれば夢の合体攻撃ができるっていうことなのか!?)

レオン「が、合体技…。いや、さすがに、でも…」

マークス「ふっ、レオンは合体技に興味があるのか」

レオン「ほ、ほら、力の増幅ができたら便利だし、戦略の幅も広がるからね」

マークス「ふっ、なるほどな。私のジークフリートとレオンのブリュンヒルデの合体攻撃か、少し考えてみるのも悪くない」

レオン「そ、そうだね。あははっ」

カミラ「あら、この高級入浴剤白夜編っていうのはなにかしら?」

アンナ「白夜の秘境、そこにある温泉の感じを味わえる入浴剤よ、効能が美容に特化してる場所を選りすぐって集めた一級品よ」

カミラ「そう、少し欲しくなるわね。白夜の温泉というのは聞いたことがあるけど、今はそうそう触れられそうにないもの」

アンナ「ふふっ、ほしくなったらクジを回してね」

カミラ「あらあら、商売上手ね」

アンナ「ええ、これでも根っからの商人だから。稼げるときにいっぱい稼がないと」

アクア「ねぇ、アンナ」

アンナ「どうしたのかしら?」

アクア「……このもふもふっていうのは?」

アンナ「それは着替え一式よ。そのサイズが品きりだから、着られる人は限られてるのが難点なんだけど。でも、とっても触り心地の良い付け狐耳と、もふもふで抱いて寝るのにも一肌脱げる付けしっぽがそれぞれ一つずつ付いてくるの。普通に買うと値の張る商品だけど、まぁ、その手のマニアじゃないと買わない逸品かしらね」

アクア「そう……実物は見れるの?」

アンナ「ええ、そっちのショーケースに別々に実物を展示してるわ。展示品もあるから触れてみてね。欲しくなったらクジを回してもらえると嬉しいわ」

アクア「そう…カムイ、少しショーケースを見て来るわね」

カムイ「ふふっ、アクアさんも試してみたくなりましたか?」

アクアそんなわけないわ。ただ、どういうものかを確かめたいだけ、それだけよ」タタタッ

サクラ「えっと、私たちも見てきますか?」

エリーゼ「大丈夫、あたりでもはずれでも、みんなと一緒にお祭りを回れることがとっても嬉しいから。だからこのまま回しちゃお」

サクラ「なんだかエリーゼさんらしいですね、でも、その考えはとっても素敵だと思います」

アンナ「ふふっ、うれしいことを言ってくれちゃって、そう思ってくれるならこのお祭りを開いた意味も出てくるってものよ。それじゃ、張り切って回しちゃって」

エリーゼ「うん、それじゃいくよ、サクラ!」

サクラ「はい!」

エリーゼ・サクラ『せーのっ! それっ!!!!』

 ガラガラガラ
  ガラガラガラ
   ガラガラガラ
     カカンッ
     コロコロコロコロ

 ピッカピカ

アンナ「……」

露店商人「……」

アンナ「……え、うそ」

露店商人「ははっ、こりゃ嬢ちゃんたちに運命の女神も微笑んじまったってことだな」ガタッ

 カランカランッ
  カランカランッ

露店商人「大当たり~、大当たりが出たぞ~~~!!!」

 ナニ オオアタリダト! 

サクラ「え、えええええええっ!!!!」

エリーゼ「う、うそっ。わーーーい!! 当たった、大当たりがあたったよー!!!」

マークス「本当に当たりを引くとはな。しかし、金色の玉とは分かりやすいものだ」

アンナ「…まさか、こんなに早く一等が一つ出るなんて。でも、これで当たりが出ると評判のってことで、お客様が寄ってくるかもしれないわね」

露店商人「まったくですよ。さぁさぁ、二人の嬢ちゃんの友情が最高の結果を引き寄せたぞー! 出ました出ました一等賞! 出ました出ました、一等の金た――」

アンナ「それ以上はやめなさい」ドゴッ

露店商人「がっ、いてて、なんで止めるんだよ」

アンナ「一等だけにしなさい。そういうことするから時折お客が離れるんだから……」

露店商人「意味を理解して赤くなった顔を見るのが……。あっ、なんでもありません、その拳を解いてくださいアンナ大将」

エリーゼ「えっと、なんのこと?」

アンナ「ううん、気にしないでいいわ」

サクラ「えっと、金色の玉……、金の玉……、金……はうっ////」

エリーゼ「サクラ、なんで顔を赤くしてるの? もしかして具合悪かったとか!?」

サクラ「な、なんでもありませんよ。それより、商品を確認しに行きましょう」

エリーゼ「うん、そうだね。えっと、たしか残ってるのは一個だけだから――」

サクラ「あ、これですね。えっと『一日限定着物無制限貸出と高級琴』ですか?」

エリーゼ「『一日限定着物無制限貸出』ってなに?」

アンナ「ふふっ、簡単な話。私達、アンナ商会が所有してる着物を無料で貸し出してあげるサービスよ。どれも一品ものだから、普通に買ったり借りたりてもそれなりに掛かるものばっかりよ」

サクラ「す、すごいですね……」

エリーゼ「着物って、サクラが着てるもののことだよね?」

サクラ「あと、高級琴ですか」

エリーゼ「コトってなに?」

サクラ「えっと、白夜の楽器ですよ。えっと、あ、これです」

エリーゼ「わー、あたしが弾くバイオリンより大きいね…」

サクラ「エリーゼさんも、楽器を弾かれるんですか?」

エリーゼ「うん、楽器の一つくらい演奏できるようになりなさいって。王族の嗜みって言われたからやり始めたんだけど、今は弾くだけでもとっても楽しいんだ」

サクラ「そうなんですか。ふふっ、私も琴の手ほどきは受けていました。やってるうちに弾くことがたのしくなるんですよね。でも。暗夜にいる間は弾く機会がなかったので、なんだか懐かしい気持ちになります」

エリーゼ「……ねぇ、サクラ。これにしよう」

サクラ「はい、いいですよ。エリーゼさんが最初に声を掛けてもらったんですから、この高級琴はエリーゼさんが――」

エリーゼ「ううん、あたしは着物が着れるだけでいいから。あのね、この琴はサクラにもらってほしいんだ」

サクラ「え…、いいんですか?」

エリーゼ「うん。それにサクラの演奏、もしよかった聞かせてもらいたくて。そ、それでね、あたしのバイオリンもサクラに聞いてほしくて、えっと、その…」

サクラ「エリーゼさん」

エリーゼ「その、二人でいつか聞かせ合いしたい。…駄目かな?」

サクラ「いいえ、とっても嬉しいです」

エリーゼ「それじゃ…」

サクラ「はい、いつか時間ができた時に聞かせ合いをしましょうね、エリーゼさん」

エリーゼ「うん、サクラありがとー!」

アンナ「うふふっ、どうやら欲しい商品は決まったみたいね」

エリーゼ「うん、この賞品にするー!」

アンナ「ふふっ、わかったわ。それで着物を着るのは……」

エリーゼ「えっとね、おにいちゃんおねえちゃん達に、あたしとサクラで!」

サクラ「え、私もいいんですか?」

エリーゼ「うん、いいよね?」

アンナ「ええ、無制限って書いたんだから気にしないで大丈夫。それに、サクラ王女の着てるのは確かに着物だけど。こういう時くらいは年頃な女の子にに似合う着物も悪くないわよ。勢いでかんざしも買ってくれたら嬉しいわ」

サクラ「え、えっと。今はそんなに持ち合わせがないので……」

アンナ「そう、なら気長に待たせてもらうわ。それじゃ、こっちは準備に入るから、少し待っててね」タタタタッ

マークス「ふっ、なんだかんだで行商人だな。しかしエリーゼ、私たちもよかったのか?」

エリーゼ「うん、それとも嫌だった?」

マークス「そんなことはない。独自の文化は争いに関係はない、少なくとも私はそう思っている。だから、お前が心配することはないぞ」ナデナデ

エリーゼ「えへへ、ありがとう。マークスおにいちゃん」

サクラ「マークスさんにそう言ってもらえると、とてもうれしいです」

マークス「サクラ王女、なに礼には及ばん。しかし、私に似合うのだろうか? 何とも言えない格好になってしまうのではないかと、少々不安だ」

エリーゼ「えへへ、着物楽しみだね」

サクラ「はい、では他の皆さんにもお伝えしないといけませんね」

エリーゼ「うん、あっ、カムイおねえちゃんだ。カムイおねえちゃーん!」タタタタッ

カムイ「あ、エリーゼさん。くじの結果はどうでしたか?」

エリーゼ「えへへ、一等だったよ!」

カムイ「ほ、本当ですか。すごいです、さすがはエリーゼさんとサクラさんですね」

サクラ「ありがとうございます。えっと、それで姉様はこちらで何を…」

カムイ「はい。それが…少し、問題が起きてまして…」

アクア「…」

カミラ「ねぇ、アクア。エリーゼたちのくじも終わったみたいだから…ね?」

アクア「ええ、そうね」ジーッ

エリーゼ「? あれは――」

『一等賞品、モフモフしっぽ体験コーナー』

 ユラ~

アクア「…」ユラ~

 ユラ~ 

アクア「…」ユラ~

エリーゼ「えっと、なんであのしっぽ揺れてるの?」

レオン「真下にある絡繰が動かしてるだけだよ。触ってみたけど、確かにもふもふしてた。うん、とってもよかったよ」

エリーゼ「そ、そうなんだ。で、アクアおねえちゃんはなにしてるの?」

カムイ「その一度触ってからあのままで、終わりにしようと踵を返してはいるんですが、すぐまた戻るという奇行を繰り返していて…」

サクラ「なんだか、猫がねこじゃらしの動きに反応してるみたいです」

 ユラ~

アクア「…」パシッ サワサワ スッ

 ユラ~

アクア「うん、これくらいで――」
 
 クルッ タタタ…

 ユラ~

 クツッ テトテト

アクア「ふふっ」サワサワ

マークス「……根を生やしているわけではないが、なんともアクアらしからぬ光景だな」

カミラ「でも、アクアにも体が言うことを聞かないくらいに興味津々な物があるのね……。ふふっ、可愛いところをまた見つけちゃったわね

 サワサワ モフモフ

アクア「……ちょっと、欲しいわ」ボソッ

アンナ「欲しいなら、クジを回さないと」

アクア「え、ちがうわ。今のはそう、空耳よ」

アンナ「そう、それは残念ね。とりあえず、こっちの準備ができたから声を掛けに来たんだけど、大丈夫かしら?」

アクア「え、何の準備」

カムイ「ふふっ、エリーゼさん達が一等を引いたそうです。それで、皆さんに着物をということで」

アクア「そう、すごいわね。エリーゼ」ナデナデ

エリーゼ「うん、えへへ」

アンナ「それじゃ、男性陣はこちら、女性陣はこちらから入って。すごくいいのをチョイスしてあげたから、楽しみにしてて頂戴」

カムイ「はい、わかりました。アクアさん、行きましょう」

アクア「え、ええ……」チラッ チラッ

カムイ「ふふっ、着物に着替えたら、一緒にくじを引きましょう?」

アクア「別に大丈夫よ」

カムイ「なら、一緒にくじを引いてくれますか? くじっていうのがどういうものなのか試してみたいので」

アクア「そ、そういうことならいいわ。手伝ってあげる」

カムイ「ありがとうございます。それじゃ行きましょうか」

 テトテトテト

アンナ「うふふっ、戦争中だか何だか知らないけど、今こそ稼ぎ時のチャンスだから張り切っていかないとね」

アンナ「さすがに、祭りで稼げるのなんて今回ばっかりだろうし、なにより――」

「本当の売り物のこともあるわけだから、サービスはきちんとしないと……ね?」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB+→B++
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+
(イベントは起きていません)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまで

 アンナくじはハズレなしだから、良心的です。
 しっぽにあわせて動くアクアは間違いなく可愛い

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◆◇◆◇

・カムイが話しかける人物

 レオン
 エリーゼ
 カミラ
 マークス
 サクラ
 アンナ

 >>825>>826

 このような形でよろしくお願いします。

中の人ネタはなかったか
覚醒組がこんなところにもと驚く展開がちょっと見たかった
サクラ

カミラ

◆◆◆◆◆◆
―イズモ公国・着物倉―

サクラ「わぁ、こ、こんなに素敵な物を着てもいいんですか?」

アンナ「言ったでしょう、無制限で貸し出してあげるって。ふふっ、巫女装束も似合ってるけど、その格好も素敵よ」

サクラ「ありがとうございます。えっと、他の皆さんは?」

アンナ「男性陣のほうが少し手間取ってるわね。ふふっ、よかったら手伝いに行ってあげたら?」

サクラ「さ、さすがに恥ずかしいですよ///」

アンナ「ふふっ、それもそうね。あ、誰か終わったみたいよ」

サクラ「誰でしょうか?」

カムイ「その声はサクラさんですね…」パサッ

サクラ「あっ、カムイ姉様、どうです…か」

カムイ「ど、どうでしょうか? その自分では確認の仕様がないので似合っているかどうかも……」

サクラ「……」

カムイ「えっと、サクラさん?」

サクラ「ひゃ、ひゃい! ご、ごめんなさい」

カムイ「もしかして謝るほどに似合ってませんでしたか…」

サクラ「いえ、そのとっても綺麗で、言葉を失ってしまって……」

カムイ「ふふっ、ありがとうございます。でも、なんだか歩きづらいものですね……」

サクラ「そうですね、歩幅もいつものようにはいきませんから、それは慣れていくしかないと思います。カムイ姉様、髪をあげてるから、なんだか大人っぽいです」

アンナ「ええ、元のままもいいかと思ったけど、あげてみてこれはいいって思って、それにこの方が着物特有のうなじの魅力が上がるからね」

カムイ「そうですか。ありがとうございます」

アンナ「そう言ってもらえてうれしいわ。それよりも、女性三人はどうしたのよ。アクアさんだったかしら、着付け出来るからって任せちゃったけど…」

カムイ「たしかに、少し遅いですね」

アンナ「何か問題でも起きたのかしら、ちょっと見てくるから二人はここで待ってて頂戴」
 
サクラ「はい、わかりました。それにしてもカムイ姉様本当に綺麗です」

カムイ「そうですか。うーん、ちょっとお返しの言葉をあげられないのが残念ですね。目が見えているなら、サクラさんが恥ずかしくなるくらいまで見て、真っ赤になるまで感想を述べてあげたくなるんですが」

サクラ「もう、カムイ姉様だめですよ。今のカムイ姉様はすごく美しいんですから、そういうことを言っちゃ駄目です」

カムイ「…言っちゃ駄目と言われましても」

サクラ「駄目です。はぁ、私もカムイ姉様みたいに、大人っぽい女性になりたいです」

カムイ「大人っぽいというと、私はカミラ姉さんを思い浮かべますね。あの体を何度か触ったことがありますし、それなりに体の形は覚えていますので」

サクラ「……カミラさんは確かに大人の女性って感じですよね。その胸も大きいですし」

カムイ「やっぱり、サクラさんも胸は大きい方がいいんですか?」

サクラ「え、えっと……できればカムイ姉様くらい欲しいです…」

カムイ「私くらいですか。ふむ」サスサス

サクラ「姉様、は、はしたないですよ!」

カムイ「いえ、サクラさんが私くらいと言ったので……。そうですね、あと二年もすれば同じくらいになるかもしれませんよ」

サクラ「そ、そうでしょうか?」

カムイ「ふふっ、私も数年前まではそんなになかったんです。だから、サクラさんも順調に大きくなりますよ」

サクラ「そ、そうだといいんですけど」

カムイ「……でも、出来ればもっと平和な時にこうして着物を身につけたかったですね。争いが終わって、誰もが気軽に話し合えるようになった時だったらと、少しばかり思ってしまいます」

サクラ「カムイ姉様……」

カムイ「サクラさんは、ここにあと誰がいてほしいって思いますか?」

サクラ「…ここにですか」

カムイ「はい、私達の他にいてほしい人です」

サクラ「…家族のみんなにいてほしい、そう思っています。たぶん、カムイ姉様の着物姿を見たらリョウマ兄様もタクミ兄様も、ヒノカ姉様もとても喜んでくれるはずです」

カムイ「こうして暗夜に付いた私が、白夜の文化に触れてることは逆に問題になったりしないんですか?」

サクラ「マークスさんが言ってました。文化は争いに関係はないって。私も素晴らしいものはどんな時でも素晴らしいもので、争いは関係ないって素直に思えるんです」

カムイ「確かにそうかもしれませんね」

サクラ「はい、だから私は姉様に白夜の文化を知ってもらいたいです。暗夜で育ってきた時間を上塗りするためじゃなくて、姉様に触れて知ってほしいんです。私が育ってきた白夜のことを…」

カムイ「サクラさん…」

サクラ「ふふっ、その最初が着物っていうのはなんだかいいものですね。こんなに奇麗な姉様をしばらくの間独り占めできるなんて、夢のようですから」

カムイ「サクラさんに独り占めされちゃうというのは、なんだか嬉しいものですね。もっと独り占めしてもいいんですよ?」

サクラ「えっと、それじゃ今だけ寄り添ってもいいですか?」

カムイ「はい、どうぞ」

サクラ「じゃ、じゃあ。失礼して」ピトッ

カムイ「……」

サクラ「……カムイ姉様の匂いがします」スンスン

カムイ「それは私ですからね」

サクラ「それもそうですね。んっ、なんだか気恥しくなってきました」

カムイ「なら、もうやめますか?」

サクラ「いいえ、今は……もう少し、このままで……」

カムイ「はい、わかりました」

サクラ「うふふっ、姉様」スリスリ

カムイ「なんだか、今日のサクラさんは甘えん坊さんですね」

サクラ「私も、カムイ姉様の妹ですから…。もっと、こんな時間が欲しいです。姉様と二人きりで、過ごせる時間が……」

カムイ「サクラさん」

サクラ「えへへ、それはちょっと我儘過ぎますよね。そろそろアンナさんが戻ってくるかもしれませんから、これくらいに――」

カムイ「うふふっ」

サクラ「?」

カムイ「甘えてくるサクラさんの香り、少し好みに思いました」

サクラ「はうっ、カ、カムイ姉様///」

カムイ「私のほうは、サクラさんのその香りを独り占めしてたみたいです。お互い、独り占めな関係ですね……」

サクラ「も、もう……。でも、なんだか、ちょっとだけうれしいです。あの、やっぱり、もう少し独り占めしてもいいですか?」

カムイ「ええ、いいですよ。私ももう少しサクラさんを独り占めしますね」スンスン

サクラ「は、はい」スンスン

 タタタタッ

アンナ「ごめんなさいね。ちょっと、帯選びで時間が――」

サクラ「んっ、カムイ姉様」スンスン

カムイ「サクラさん」スンスン

アンナ「……」

アンナ「なんというか、声を掛け辛いわね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マークス「ふむ、これが白夜の着物というものか。少しばかり勝手が違うが、中々のものだな」

レオン「そうだね。なんだか不思議な気持ちだよ」

サクラ「ふふっ、二人ともお似合いです。だけど、髪の毛が……」

レオン「まぁ、こればっかりはちょっとね」

アンナ「そうなのよね。染め上げるのもいいけど、染めたらそう簡単に戻らないっていう難点があるから、少しの間だけ色が変わる染め具を作るのもありかもしれないわ」

レオン「少しの間だけ染めてどうするんだい?」

アンナ「もしかしたら役に立つかもしれないからね。一瞬だけ着替えてもらう事態が起きるかもしれないし、お手軽さは商売の友達だもの」

マークス「まあいい。それよりも他の三人はまだか?」

アンナ「慌てない慌てない。女性を待つのも、男の嗜みよ」

マークス「確かにそうかもしれないが――」

 パサッ

カミラ「ふふっ、待たせちゃったかしら?」

エリーゼ「えへへ、どうかな?」

アクア「エリーゼ、そんなに走っては駄目よ。転んだりしたら……」

エリーゼ「大丈夫だよ!あっ、おにいちゃん、おねえちゃん、カッコいいしとってもきれいだよ!」

マークス「ふっ、エリーゼはとても可愛らしくなっているな」

エリーゼ「うー、そこは綺麗って言ってよ! おにいちゃん乙女心がわかってないー!」

マークス「ははっ、すまん。それにしてもエリーゼは髪を下ろしたんだな」

エリーゼ「うん、この方が似合うってアクアが言ってくれたの! えへへ、どうかなサクラ!」クルクル

サクラ「はい、とっても似合ってますよ!」

エリーゼ「ありがとー。サクラもすっごく似合ってる、桜の模様がとっても素敵だよ!」

アクア「本当ね……。サクラらしさが際立ってる気がするわ」

カミラ「ええ、本当にね」

レオン「……あれ? カミラ姉さん、なんか胸が小さくなってるような」

カミラ「そうね、ちょっとボリューム減っちゃったかしら」

アンナ「ごめんなさい、さすがにカミラ様の悩殺武器を完全奉納できる着物がなかったから」

カミラ「別に構わないわ。エリーゼが当ててくれた賞品だもの、ちゃんと着れるようになるならしょうがないことよ」

エリーゼ「カミラおねえちゃん、痛くなかった?」

カミラ「ええ、むしろ少し癖になっちゃったかも。グイッてされるの」

アンナ「暗夜の王族さんは変わってる人ばっかりね。だけど喜んでもらえてうれしいわ」

カミラ「でも着物っていうのも面白いものね」

アンナ「ふふっ、気に入ってくれたならお買い上げしてもらっても構わないわよ」

カミラ「そうね、考えておいてあげる」

カムイ「カミラ姉さん」

カミラ「あら、カムイ。ふふっ、いつもとは違うカムイも、とっても素敵よ」

カムイ「ありがとうございます。カミラ姉さんも素敵な姿なんでしょうね」

カミラ「ええ、さらしをぎゅうぎゅうにしてるから胸元のボリューム減っちゃってるけど」

カムイ「そうですね……」ガ゙シッ

カミラ「あんっ」

サクラ「カムイ姉様、いきなり何をしてうんですか。皆さんの前で、マークスさんやレオンさんもいるのに――」オロオロ

マークス「ほどほどにしておくんだぞ」

レオン「姉さんは、まったく…」

エリーゼ「あはは、カミラおねえちゃんとカムイおねえちゃん楽しそう」

サクラ「……え?」

アクア「サクラ、気にしないほうがいいわ。あれがあの二人のあいさつみたいなものだもの」

サクラ「そ、そうなんですか……」

アクア「ええ、だから、卑猥には――」

カミラ「あっ、んふっ、んあっ」

カムイ「ふむ、抑えられてるからか、服の上からでもすごく張りがありますね」

カミラ「もう、大胆よ、カムイ……」

サクラ「え、えっと、アクア姉様」

アクア「…サクラ、先に行きましょう?」

サクラ「そ、そうですね」

レオン「僕たちも先に行くよ」

マークス「そうだな。カムイ、カミラ先に出て待っているぞ」

エリーゼ「おねえちゃん、すぐに追いかけてきてね」

サクラ「エ、エリーゼさんも全然動じないんですね」

エリーゼ「?」

サクラ「な、なんでもありません」

 タタタタッ

カミラ「もうっ、いけないコね。こんなにいっぱい触るなんて…」

カムイ「流石に何度も何度もやってることですから。でも確かに少し小さくなってますね」

カミラ「ええ、これだとあの子くらいかしら?」

カムイ「あの子? 一体誰のことですか?」

カミラ「ふふっ、昨日確かめに行ったの。男のほうに怪訝な目をされたけど、あの白夜の忍のところにね」

カムイ「……もしかしてカゲロウさんに会いに?」

カミラ「ええ、フウマの男たちを思わず八つ裂きにしてたけど、カゲロウの傷を見てやってよかったって思えたわ。あの子、体中痛めつけられていたもの。それで、ちょうど着替えの時間だったみたいだから、私が着替えさせてあげたの」

カムイ「そうだったんですか」

カミラ「ふふっ、カムイが言ってた通り、カゲロウってすごいものを持ってるのね。でも、まだまだおねえちゃんのほうが大きかったから安心したわ」

カムイ「本当はそれを調べるために行ったんですね。なんで私に声を掛けてくれなかったんですか!」

カミラ「…さすがに相手は白夜の忍よ。私はともかく、あなたに何か危害を加えないとは限らないし、何よりも隣にあなたがいたら嫉妬してしまうから」

カムイ「え?」

カミラ「……あなたのことをカゲロウは心配していたわ」

カムイ「カゲロウさんがですか?」

カミラ「ええ、またあの時のように無茶をして助けに来たんじゃないかって。カムイ、カゲロウを助けるのはこれで二度目なの?」

カムイ「国境防壁での戦いではないとすると……多分、モズメさんを助けた時のことを言っているのかもしれません」

カミラ「モズメを助けた時?」

カムイ「はい、あの時の私は自分の命のことは眼中になくて、ただ我武者羅にその場にカゲロウさん達を無視してモズメさんを助けに行きましたから、今回も私がそのように動いたと思っているのかもしれません」

カミラ「ふふっ、そういうことね」

カムイ「それよりも、カミラ姉さん。さっき嫉妬してしまうって言っていましたけど……」

カミラ「……」

カムイ「あの、どういう意味でしょうか?」

カミラ「……その、笑わないでくれる?」

カムイ「はい」

カミラ「嫉妬のことだけど……カムイが私達といなかった時の話をされること、ただそれだけなのよ」

カムイ「え……」

カミラ「ふふっ、驚いた?」

カムイ「はい……」

カミラ「…カムイが私の手の届かないところにいた頃の話。無事に帰ってきただけでもいいはずなのに、そういう話をされると胸が痛むのよ。切ない痛みじゃなくて、もっとドロッとしたもの。思っちゃいけないけど、それを私はカムイの中にある汚れだと未だに思っているのかもしれない」

カムイ「汚れですか……」

カミラ「だからヒノカ王女が私に向かって叫んでいたことは理解できるの。もしもあなたが白夜についてしまったとしたら、私は……あなたの心から白夜を消し去るために戦う道を選んだはずだから。私は、あなたが暗夜を選んでくれたことで救われたにすぎないって……」

カムイ「カミラ姉さん」

カミラ「カムイ、あなたが私たちの元に戻ってきてくれたことは嬉しかった。こうしてあなたのために戦えることもね。だけど、私の心にはそういったものが未だにある。こうして白夜の着物に袖を通して笑っていられるのは、あなたが傍にいてくれるから…」

カムイ「……」

カミラ「私はあなたを取り戻すためなら悪魔にだってなれるはずよ。だって、私は……」

カムイ「私のおねえちゃんだから…ですよね?」

カミラ「…ええ、それだけが私があなたの傍にいられる理由だから。カムイも私がおねえちゃんじゃなかったら、傍にいてくれはしないでしょう? 本当は嫉妬深い、こんな私となんて…」

カムイ「カミラ姉さん、それは違いますよ」

カミラ「え?」

カムイ「私はカミラ姉さんだから傍にいてほしいと思っています。姉さんっていう付加価値があるから、私は一緒にいたいわけじゃないんですよ?」

カミラ「……なんだかそう言われると複雑な気持ちになるわ。おねえちゃん、どうしていいかわからなくなっちゃう。今まで、あなたのおねえちゃんとして接してきて、それがカムイとの繋がりだったんだもの」

カムイ「ふふっ、カミラ姉さんでもわからなくなっちゃうことがあるんですね」

カミラ「そうよ。カムイにおねえちゃんじゃない私でもいいって言われても、どう接すればいいのか。ああ、こまったわね、全然わからないわ」

カムイ「それはこれから見つけていきましょう。いろいろと探すなら、まだまだ時間はいくらでもあります。ここで終わりなんてことはあるわけないんですよ」

カミラ「……カムイ」

カムイ「大丈夫ですよ、私はちゃんと傍にいますから」

カミラ「そう…なら、安心ね」

カムイ「はい。それじゃ皆さんが待ってますから、そろそろ行きましょう?」

カミラ「ええ」

カミラ(ふふっ、おねえちゃんじゃない私ね。そんなことを考えたこともなかった……)

カミラ「あなたは新しい可能性をいっぱい示してくれるのね。ずっと、あなたのおねえちゃんであることに甘えてた私にも……」

「ありがとう、カムイ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ワーッ ワーッ!

カムイ「…」

露店商人「お、坊主! どうだい、この飴細工! おいしい、そしてなによりこんなにカッコいい、これは買うしかないねぇ!」

カムイ「…」

子供「お母さん、あれ、あれ欲しい!」

母「ふふっ、いいわよ」

カムイ「…」

露店商人「ははっ、よかったな。お袋さんに買ってもらえてよぉ!」

子供「うん! お母さん大好き!」

母「もう、こんなときだけ調子いいんだから、ふふっ」

カムイ「…」

アクア「それじゃ、クジに行きましょう、カムイ」

カムイ「…」

アクア「カムイ?」

カムイ「あ、はい。どうしました、アクアさん?」

アクア「それはこっちの台詞よ。どうしたの。ぼーっとして、何か考えているみたいだけど?」

カムイ「その、あの日もこんなお祭りだったと思い出してしまって…」

アクア「あの日?」

カムイ「お母様が私を皆さんに紹介しようとしてくれた日です。本当ならあの後にアクアさんやお母様、リョウマさんたちと一緒にお祭りを見て回れたのかもしれないと思って…」

アクア「…カムイ」

カムイ「だから、こうして皆さんと回れるのはなんだかとも楽しいです。目が見えない私にも、皆さんが楽しんでる声が聞こえる度に、楽しい気持ちを共有できる気がしますから」

 バチャンッ

エリーゼ「わっ、破れちゃった。これむずかしいよぉ!」

露店商人「ははっ、嬢ちゃんは大きなのを狙い過ぎなんだよ。こっちのちっちゃくてかわいらしいのをだね」

 パパッ

サクラ「はい、エリーゼさん」

エリーゼ「さ、サクラすごーい!」

サクラ「えへへ」

カミラ「うふふっ、やっぱりサクラはこういうお祭りを知りつくしてるのね。おしいものもいっぱい知ってるみたいだから」

エリーゼ「うんうん、今さっき水飴だっけ、あれもぺろりって食べちゃってたし」

サクラ「あ、甘いものは別腹なだけで、いつもこんなに食べたりは――」

 ザッ ザッ

露店商人「おおっと、見たところ暗夜の御方みたいだね。どうだい、輪投げやってみないかい?」

マークス「ふむ、輪投げ?」

露店商人「ええ、このわっかを投げて賞品を完全に通ったら獲得できるっていう遊戯さ」

マークス「なるほど。よし、やらせてもらおうか」

レオン「なら、僕もやろうかな」

露店商人「お二人さん、毎度あり!」

マークス「ふっ、手加減はしないぞ」

レオン「兄さん相手に手加減なんてできるわけないから。それでどういう勝負にする?」

マークス「ここは単純に獲得できた賞品の数としよう」

レオン「わかったよ。それっ。よし、まずは一つ」

マークス「ふっ、では、私も。ふっ、上々だ」

レオン「まぁ、最初はこんな感じだろうからね。それじゃ次、いくよ!」

マークス「望むところだ!」

アクア「ふふっ、みんなとても楽しそう」

カムイ「ええ」

アクア「なら、カムイも楽しまないといけないわ。今日の夜のこともあるから、今はいっぱいね?」

カムイ「たしかに、その通りですね」

アクア「ふふっ、約束通りカムイのクジに付き合ってあげるわ」

カムイ「助かります。ところで、アクアさんは何が欲しいんですか?」

アクア「え?」

カムイ「ふふっ、アクアさんの欲しいものを取ってあげたいんですよ」ギュッ

アクア「そ、そんな私は別に……」

カムイ「アクアさんは何が欲しいんですか?」

アクア「そ、その無理はしないでいいのよ?」

カムイ「ええ、頑張ってみるだけですから、ね?」

アクア「そ、そう……それじゃ」

 ソーッ

アクア「これよ」

カムイ「ふふっ、私は目が見えませんから。ちゃんと声に出して教えてください」

アクア「わ、わかってるのに?」

カムイ「いいえ、アクアさんが欲しい物なんて、私には皆目見当が付きませんよ」

アクア「いじわる……」

カムイ「さぁ、何が欲しいんですか、アクアさん」

アクア「……ふもふ」

カムイ「もっとはっきりお願いします」

アクア「ううっ、一等のもふもふが欲しいわ///」

カムイ「はい、わかりました」

アクア「取ってくれるんでしょう?」

カムイ「さすがに絶対という保証はできませんけど…」

 ガシッ

カムイ「あれ?」

アクア「ふふっ、人に言わせておいて自分はできないなんて虫が良すぎる…そう思わない?」グググッ

カムイ「あ、アクアさん、腕の力が……」

アクア「うふふっ。わかってるでしょ、ねぇ?」

カムイ「はぁ……わかりました。取れるまで頑張ってみます」

アクア「ええ、期待してるわ」

◆◆◆◆◆◆
―イズモ公国・イザナ公王の屋敷―

 ギシッ ギシィ……

カムイ「はぁ、結構散財してしまいましたね。やはり、エリーゼさんとサクラさんの幸運には敵いません」

アクア「ええ、そうね」スリスリ

カムイ「ふふっ」

アクア「な、なに……」

カムイ「でも、アクアさんが喜んでくれて、とてもうれしいです」

アクア「その、ありがとう。でも、その、結構使ったってしまったみたいだけど……」

カムイ「いいんですよ。少しの間、私が個人的にお買い物ができなくなっただけですし、アンナさんはすごく喜んでいたみたいですけど」

アクア「ええ、いいお客様って言ってたわね、あなたのこと」

カムイ「ふふっ、そうでしょうね。それにしても今日だけで、一生分のお祭りを楽しんだ気分です」

アクア「まだ一生分じゃないわ。この先、戦いが終わったらまた皆と一緒に、またお祭りに行きましょう? 今度は私がカムイの欲しいものを当ててみせるわ」

カムイ「ふふっ、期待してますよ」

 ギシィ ギシィ

カムイ「だけど、その話はここまでみたいですね」

アクア「……そのようね」

 ピタッ

巫女「…」ペコリッ

巫女「カムイ様にそちらはアクア様でいらっしゃいますね。本日のお祭りはお楽しみいただけたようで何よりです」

カムイ「はい、アンナ商会の方々も感謝してましたよ」

巫女「そのお言葉はイザナ様へお願いいたします。それと申し訳ありませんが、アクア様は二人のお話が終わるまでこちらの控えの間にて、お待ちくださいますよう、お願いいたします」

カムイ「ふふっ、思ったよりも早くお別れになっちゃいましたね」

アクア「カムイ…」

カムイ「大丈夫ですよ。ここまで付いて来てくれただけでも、うれしいですから」

アクア「そう、なら私は控えの間で待ってるわ」

カムイ「いえ、もしかしたら遅くなるかもしれませんから、先に戻られても大丈夫ですよ?」

アクア「それはできないわ。それにこれを一人で持って帰るのはちょっと恥ずかしいもの」モフモフ

カムイ「なら、すみませんがお話が終わるまで待っててください」

アクア「ええ、それじゃ」

 ガチャ バタンッ

巫女「それでは、カムイ様。こちらへどうぞ、ご案内いたします」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

 テトテトテト

カムイ「……」

巫女「イザナ様、カムイ様をお連れいたしました……」

イザナ「うん、それじゃ中に入れてもらえるかな?」

巫女「はい。どうぞ、カムイ様」

カムイ「え、ええ」

 テト テト テト

イザナ「案内ありがとう。それじゃ、二人きりで話がしたいから、キミは下がっていいよ」

巫女「はい、失礼いたします。それでは…」

カムイ「イザナさん」 

イザナ「やぁ、カムイ王女。一日ぶりだね、お祭りはどうだったかな?」

カムイ「はい、とても楽しかったですよ。多くの露店があって、みんなさんのいい気分転換になったと思います」

イザナ「別に気にしないでい―よ。キミたちが来なかったとしても空の入れ替わりを祝うつもりではいたから、それに丁度よくキミ達が来ただけにすぎないよ~」

カムイ「そうですか」

イザナ「まぁ、立ち話もなんだから、ちゃちゃっと座って」

カムイ「はい、それで――」

イザナ「うん、わかってるよ。カムイ王女、キミがここに来た本当の理由、それを教えてくれるかな?」

カムイ「……すぐに本題に入られるんですね」

イザナ「うん、ボクも本来ならこういう風にキミに縋る発言はしたくないんだよね~。いつもなら相手のことを占たりして調べてから色々と質問するんだけど」

カムイ「なぜそうしないんですか」

イザナ「……」

カムイ「……イザナさん?」

イザナ「あはは、ボクもこんなことは初めてでさ…。キミの未来はまるで靄が掛ってるみたいに見通せなくてね~。だからこうやって直接お話をってことで」

カムイ「見通せないですか」

イザナ「うん、ほんと困っちゃうよね~。それでまぁ、苦肉の策だけどこうやって一人で来てもらったんだ~」

カムイ「そうですか……。では見極めるというのは」

イザナ「うん、ぶつけ本番だよ。カムイ王女の答えによっては、すぐにでも出て行ってもらうことになるかもしれないけどさ~」

カムイ「…そうなっても仕方ないですよね」

イザナ「以外に素直だね」

カムイ「ええ、イザナさんには協力してもらいたいので」

イザナ「そう、それじゃ、話に入ろう。キミの目的、このイズモ公国でしようとしていることを教えてくれるかな?」

カムイ「はい。といっても、これはイズモ公国へというよりも、イザナさんへのお願いです」

イザナ「ボクへのお願い?」

カムイ「はい、私があなたに臨むことはただ一つだけ――」

「暗夜に攻め込むための橋頭保として、私と同盟を結んでほしい、ただそれだけなんです」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラB++→A
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB++
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB+→B++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

 今日はここまでで

 イザナとイズモがごっちゃになり始めてきた。
 あと3、4回くらいで、この章が終わり、その次に番外に入る予定です。

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『イザナ公王の屋敷』―

イザナ「暗夜に攻め込むための橋頭保をボクにお願いしてるけど、キミは自分の立場を理解して言ってるのかな?」

カムイ「もちろんですよ。暗夜の王女という立場でこの言葉を紡ぐ意味も理解しています」

イザナ「……そう。ボクにもキミが仰いでいる旗を仰いでほしい、そういうことみたいだね~」

カムイ「そういうことになります。どのような方法で攻め入るのかも今から――」

イザナ「いや、それは別に必要ないかな~」

カムイ「そうですか?」

イザナ「うん、ボクはキミが描く作戦なんてものに興味はない、あるのはキミという人間の本質だけだから。カムイ王女、キミは何を求めて戦っているのかな?」

カムイ「……何を求めてですか?」

イザナ「うん、まさか道端に落ちていた紙に書いてあったからなんてことはないよね?」

カムイ「目が見えないのでそれはないですよ」

イザナ「あれれ、そう返してくるのかい? そんな風にふざけられる立場じゃないと思うけどね~」

カムイ「ふふっ、人の目が見えないとわかっていながら、指摘してくるのもどうかと思いますよ?」

イザナ「……たしかにそうかもね~」

カムイ「それにしても、イザナさんは気配が読み辛い人ですね。ほわほわしてるというか、本当に軽い雰囲気があって」

イザナ「それがボクの武器でもあるからね~。こんな風に軽い装いをしてると、つい枷が外れて本当の品質が露呈したりする。そういう気抜けを選別するにはもってこいだから」

カムイ「なら、私はその気抜けですか?」

イザナ「そうなるかはキミ次第だよ~。それで、キミは何を求めて戦っているのかな?」

カムイ「この争いの終結です」

イザナ「……争いの終結か、それはキミの目標だよね?」

カムイ「ええ、そうですね」

イザナ「それは、ボクの問いに対する答えになってないから、駄目だね~」

カムイ「え?」

イザナ「カムイ王女、ボクの問いかけはキミの目標じゃない、キミが求めてるものなんだから」

カムイ「私の求めているものですか?」

イザナ「うんうん。少し気になってるんだけど、カムイ王女はどうしてそんなに頑ななのかなって思ってね」

カムイ「私が頑なですか?」

イザナ「うん、それが原因かな、キミの未来が不透明にしか見えないのは。表向きにキミは多くの人に分け隔てなく接しているけど……。キミ自身は何かを大きく望んでいるわけではないみたいだからね」

カムイ「…それはどういう意味ですか?」

イザナ「…カムイ王女。その目標は皆の共通目標であって、キミのキミために掲げているものじゃないように感じるからね」

カムイ「私自身の目標じゃないというんですか?」

イザナ「うん、キミは自分の心に対してあまり素直じゃないからね。多くの人にって言う思いは大いに結構だけど、それで苦しむことになるのは最終的にキミかもしれない」

カムイ「何が言いたいんですか?」

イザナ「ははっ、少しだけキミがわかってきた気がするよ……。カムイ王女、キミは自分を押し殺してるみたいだね。それも意図的か、それとも作為的なのかはわからないけど」

カムイ「それを言ったら、私について来てくれる皆さんのほうが――」

イザナ「それはないことくらい、キミ自身もわかってるはずだよ。ここにいるキミの仲間達は、キミが示す道を信じて付いて来てくれるんだからね」

カムイ「それは……」

イザナ「信じてくれる相手を失望させたくはないっていう気持ちはわかるよ~。だけど、今のまま戦い続ければ受け入れられない正義にキミが壊されかねない。キミは正義がなんであるかは重々承知しているようだけど、承知していて理解していてもそれを受け止められるかまではわからないようにね」

カムイ「…だとしても今の私にはこれしかありません。ここに来て、何もしないという選択肢はないんです」

イザナ「…はぁ、困ったね。気抜けじゃなくて腑抜けのほうだったかな。これじゃ、キミについて来たみんなも腑抜けってことで間違いなさそうだね~」

カムイ「私が腑抜けといわれるのは構いませんが、ほかの――」

イザナ「みんなはって言いたいみたいだけど。ボクから見てキミが腑抜けなら、下のみんなも腑抜け同然だよ~」

カムイ「……」

イザナ「カムイ王女、キミはまだキミのための戦いを始めているわけじゃない。目標はあるけど、それはキミの求めるものに向かっている戦いかはわからない。もちろん、キミがそのままでいいって言うならそれでもいいけどさ」

カムイ「…それは」

イザナ「カムイ王女。ボクはキミの可能性に期待してた。だけど今のままじゃ同盟を結ぶには至れない」

カムイ「私の可能性ですか……」

イザナ「カムイ王女、今のキミにある可能性はその目標だけみたいだからね。残念だけど、その可能性に興味はないからね~」

カムイ「どうしてですか?」

イザナ「そうだね~。強いていうなら、単純に面白くないからかな~」

カムイ「……え?」

イザナ「聞こえなかったかな。面白くないからだよ~」

カムイ「そ、そんな理由で……」

イザナ「あははっ。ボクは面白いことのほうが好きだからね~。キミがボクを満足させる可能性を示してくれるなら同盟を結ぶよ、すぐにでも」

カムイ「さっきまで私のことをなじるようなことをさんざん言っておきながら、この軽さはどうかと思いますが」

イザナ「そう、軽く感じるならそれは勘違いだ。すぐに改めた方がいいよ~」

カムイ「?」

イザナ「カムイ王女、ボクは面白い回答を期待してるんじゃない。ボクがキミの不透明な未来をもう一度占う、そう思ってくれるような答えを期待してるんだ。つまり、ここでキミが少しでも変わること、それがボクの出す同盟の条件かな」

カムイ「私が変わること……ですか」

イザナ「うんうん。その、自分を殺して従事するキミの未来は不透明のまま、その可能性が少しでも変わるならね?」

カムイ「……自分を殺しているですか」

カムイ(私は……私にはそんな自覚はありません……。だから……)

イザナ「さぁ、どうかな? 答えが出せないようなら、この同盟の話はお流れになるけど?」

カムイ「……イザナさん。あなたは私が目標のために動いているだけと言いましたね?」

イザナ「うん、だってそうにしか見えないからね~」

カムイ「……だとしたら、多分そうなんでしょう。イザナさんは私なんかよりももっと多い人を見てきたんでしょうから。どんなに繕っても、あなたには見透かされている。だから、それに対する反論や否定をするつもりはありません」

イザナ「そうかい、それじゃ――」

カムイ「ですが、その不透明な未来を私は信じるつもりはありません。それはあなたが見ただけの未来ですから」

イザナ「……へぇ、そうボクの占いは気にしないってことね」

カムイ「はい。私はあなたに可能性ある未来を占ってもらうために来たわけじゃありません。ただ、現実的に必要なことをあなたに頼むために来たに過ぎないんですから。だけど、私自身、求めることがあるとするなら」

イザナ「するなら?」

カムイ「……それを私は見つけてみようと思います」

イザナ「……」

カムイ「……」

イザナ「……ははっ」

カムイ「駄目でしたか?」

イザナ「いや、そう少しでも思ってくれたならよかったよ~。これで罵倒だけで済まされたらどうしようかと」

カムイ「答えにもなっていないと思いますけど」

イザナ「大丈夫大丈夫、今キミに答えが出せるなんて思ってないからね~」

カムイ「……ひどいですね」

イザナ「事実だからしょうがないさ。カムイ王女、キミがそれを求めることを決められただけでも、いいことだよ。まぁ、ボクの占いにケチをつけられたから、少し傷付いたけどね~」

カムイ「イザナさん、す、すみませんでした」

イザナ「いいよいいよ。だけど、キミはいずれその求めるものを見つけられるはずだよ。それじゃ約束通り、ボクもキミの同盟に加わるとするかな~」

カムイ「こんな答えでいいんですか?」

イザナ「うん。十分すぎるくらいだよ。キミの戦いに力添え、少なからずさせてもらうからさ~」

カムイ「……ありがとうございます」

イザナ「うん、それじゃ、ボクがするべきこと、教えてくれるかな?」

カムイ「はい……これを――」

イザナ「はいはーい。……あははっ、こんな作戦を思いつくなんで、カムイ王女は豪快な人だねぇ」

カムイ「女性に豪快っていうのはどうかと思いますけど。それにこれは私の発案というわけでは」

イザナ「そうなんだ~。でも採用したのはキミなんだ。こんな豪快な人だからみんなキミを信じてくれてるんだろうね~。あははははっ」

イザナ(豪快というよりは強引な印象はあるけどね~)

イザナ「明日にでも、この場所を使えるようにしておくよ」

カムイ「はい……その占わないんですか?」

イザナ「すぐには占わないよ。これでも色々と準備が必要だからね~」

カムイ「不透明な未来が変わっていないといけないのではないのですか?」

イザナ「……ボクが見るのはもしもの未来だからね~。不透明さもその一つさ」

カムイ「え?」

イザナ「ははっ」

カムイ「……食えない人ですね、イザナさんは。こんな風に人をいじめて、あまつさえ悩ませるなんて」

イザナ「ごめんね~」

カムイ「でも、イザナさんの見る未来が少しでも変わっているといですね」

イザナ「そうだといいね。……それじゃ、お連れさんと戻ってゆっくり休むといいよ~」

カムイ「はい、それでは失礼しますね」

イザナ「うん、今後ともよろしくね~」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 コンコンコン

カムイ「アクアさん」

アクア「スゥー……スゥー」

カムイ「……ふふっ、眠ってしまったんですね。起きてください、アクアさ――」

アクア「んっ、んー」サワサワ

カムイ「ふふっ、モフモフを抱きしめてるんですか。なんだか、とっても気持ち良さそう」サラサラ

アクア「んっ、ふふっ、カムイ……モフモフ」

カムイ「私はそんなモフモフじゃないんですけどね……」

カムイ(私が求めるべきことですか……。理想、現実、そして目標となること。それだけでいいと思っていたけど……)

イザナ『だけど、今のまま戦い続ければ受け入れられない正義にキミが壊されかねない』

カムイ(受け入れられない正義に私が壊される……ですか)

カムイ「受け入れられない正義とはどういうものでしょうか? 人によって形を変える月のように正義も形は違うことくらい、私も――」

イザナ『承知していて理解していても、それを受け止められるかまではわからないようにね』

カムイ「……理解していても、それを受け止められるかはわからない……か」

 モゾモゾ

アクア「んっ、んー。んっ……?」

カムイ「アクアさん、お目覚めですか?」

アクア「カムイ……しっぽ、モフモフ……は?」サワサワ

カムイ「ふふっ、寝ぼけてるんですか?」

アクア「……あ、え、えっと……ごめんなさい。私――」

カムイ「いいんですよ。今日は一日中、いっぱい回りましたから。立てますか?」

アクア「え、ええ。それで、イザナ公王との話は」

カムイ「はい、同盟を結んでいただけることになりました」

アクア「そう、それは良かったわ」

カムイ「ええ、明日からは作業に入ることになると思います。忙しくなりますね」

アクア「……なにかあったの?」

カムイ「流石に疲れただけですよ。私もすぐに眠りたい気分ですから」

アクア「そう」

カムイ「さぁ、行きましょう。尻尾は私が持ちますので……」

アクア「……半分」

カムイ「?」

アクア「半分は私に持たせて」

カムイ「……はい、どうぞ」フワッ

アクア「ありがとう……。ねぇ、カムイ」

カムイ「どうかしました?」

アクア「……私はどんなあなたでも信じているから、自信を持ちなさい。あの胡散臭い公王に何を言われたかは知らないけど、あなたが自信の無い振舞いをすれば、それはみんなに不安を与えることになるわ」

カムイ「アクアさんには見抜かれちゃいますね…」

アクア「当り前よ。私に隠し事なんて、十年早いわ」

カムイ「精神年齢はアクアさんの方が上ですからね。たしかにそうかもしれません」

アクア「だから、その……」

カムイ「?」

アクア「私にはその、相談してほしいというか……」

カムイ「はい、そうですね。お互いに支え合うって決めましたから」

アクア「そ、そう。そういうことよ。あなたが私にそう言ってくれたのに、隠すなんてどうかしてるわ」

カムイ「…ごめんなさい」

アクア「いいのよ。それで何があったの?」

カムイ「イザナさんに、私は自分を殺し過ぎてると指摘されて。それはいずれ、私を壊す原因になると」

アクア「壊す原因ね……」

カムイ「受け入れられない正義の前にと言っていました。私にはそれがどういうものなのか……」

アクア「……大丈夫」

カムイ「アクアさん」

アクア「そんなものにあなたは負けないわ。だって、あなたがしようとしていることが間違っているなんてことあるわけないもの」

カムイ「目標だけはそうなのかもしれません。でも、イザナさんは私自身が求めるものが無いことを言っていました」

アクア「あなた自身の?」

カムイ「困ってしまいますね、本当に。私は答えを出せませんでしたから、ただ見つけていきますとだけ」

アクア「…見つけられるわ」

カムイ「そうでしょうか?」

アクア「そこは肯定的な言葉を返してほしいわね」

カムイ「そうですね。こればっかりは、アクアさんを頼るわけにもいきませんから……。私自身が見つける私だけの望みを……」

アクア「それが見つかったら、教えてね?」

カムイ「はい……ところで、アクアさん」

アクア「なに?」

カムイ「そのしっぽを撫でながら、私のことをモフモフと言ってましたけど……。どんな夢を見ていたんですか?」

アクア「……つ、つまらない夢よ」

カムイ「それにしては、とてもうれしそうな声を出してましたけど」

アクア「き、気の所為ね。ほら、早く行きましょう。明日からはのんびりなんて出来ないんだから」

 タタタタッ

カムイ「ちょっと、アクアさん、待ってくださいよ」

「アクアさーん」

今日はここまでで
 
 アクセサリーにしっぽはあるのに耳がないのは少しおかしいと時々思う。

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国―

 カーッ ズズッ スーッ

レオン「……よし、ニュクス、オーディン。確認してもらえるかな?」

ニュクス「ええ、わかったわ。……こちらは問題ないわ」

オーディン「こっちも問題なしです、レオン様」

レオン「そう。それじゃ残りはあと少しだね。引き続きよろしく頼むね」

ニュクス「任せてちょうだい。それにしても、本当に大きな魔方陣ね。これほど練り込まれているだけあって、芸術にも思えるわ」

オーディン「ああ、ここまで大きいものを描いていると、世界を滅ぼそうとする破壊者に対抗すべく何かを召喚している気分になってくる。世界救済の戦い、今現れる破壊の化身を前に俺達は最後の切り札を発動する。ズガガガッガッバシューン! 出でよ、世界を再生し力――あいてっ」

ニュクス「遊びはそこまでにしなさい」

オーディン「いいとこで止めないでくれないか。俺は大真面目なんだ、わかっているのか、おい!」

ニュクス「はぁ……。あなたって本当に例えがどうかしていると思うわ。子供でもそんなこと考えたりしないわよ」

オーディン「えー。だってこんなに大きなもの描いてるんだぜ? わくわくしないほうがおかしいって」

ニュクス「私は子供じゃないわ。それに私たちの中で、こんなにワクワクするのはあなたぐらいなものよ。ねぇ、レオン?」

レオン「……」

ニュクス「レオン……。とりあえず、中心にブリュンヒルデを置く必要はないから、さっさと懐にしまっておきなさい」

レオン「…そ、そうだね」

ニュクス「……男ってどうしてこうも子供な部分があるのかしら?」

???「そういうお前は見た眼も子供だと思うがな」

 スタッ

ニュクス「大きなお世話よ。それよりも、ゼロ。そこに立たないでくれないかしら? 作業の邪魔よ」

ゼロ「なんだ、ナニを立てない方がいいんだ? わからないからちゃんと教えてくれよ。くくくっ」

ニュクス「ナニって、ゼロあなたのことに決まっているでしょ? 役に立たない枯れ木だって言うなら、そのままでも別に構わないけど?」

ゼロ「言ってくれるねぇ、枯れ木かどうか確かめてみるか?」

オーディン「おい、ニュクスの言う通りだ。ゼロ、今くらいはちょっかいを出すのはやめろ。今、俺とニュクスは奇跡の準備の真っ最中だ」

ゼロ「ほぉ、あつい関係だな。どんな情熱的な奇跡を描くって言うんだ?」

レオン「ゼロ、報告することがあるなら早くしてほしい。それに、こちらの準備も最終段階に入ってるから、ニュクスの邪魔は極力しないでくれないかな。遊ぶならオーディンに頼むよ」

オーディン「ちょ、俺の扱いひどくないですか?」

レオン「ふっ、漆黒のダークナイトであるオーディンだからこそだよ。お前なら大丈夫さ、僕の無理難題についてこれたお前なら…必ず」

オーディン「レオン様……そうでした、俺は漆黒のダークナイト・オーディン。どんな攻めにも屈するはつもりはない! さぁ、ゼロ、俺をからかうだけからかうがいい! 俺の必殺技、アウェイキング・ヴァンダーですべて受け止めてみせる」

ニュクス(いい感じにあしらわれてるような気がするけど、彼は嬉しそうだから問題ないわね……)

ゼロ「……」

ニュクス(こっちは、とても面白くなさそうな顔をしてるけど)

ゼロ「まぁ、からかうのはいつでもできるんで、まずは報告が優先だな」

ニュクス「素直に最初からそうしなさい。オーディン、その漆黒のダークナイトさを表すポーズはもうやめなさい」

オーディン「ふっ、このポーズに気づくとは、やはりお前も選ばれしも――」

ニュクス「そっちまで線を伸ばすから、ちゃんと目印になって頂戴」

オーディン「はい」

ニュクス「素直でいい子ね。それじゃ行くわよ……」

 スーーーーーッ

オーディン「……さすがだな。狂い無き軌跡が俺の描いた紋章に辿りつく、そしてこの世界を救う神聖騎士天使が降臨する」

ニュクス「……」

オーディン「眩き朝焼けにも似た閃光を前に、暗黒神はその姿を――」バッ!

ニュクス「オーティン、動かないでちょうだい」

オーディン「あ、はい」

ニュクス「まったく……線が進むたびに喜んで、本当に子供ね」

オーディン「仕方無いだろ。ワクワクしちまうんだから!」

ニュクス「ふふっ」

 ワイワイ ガヤガヤ

レオン「思ったよりも仲がいいみたいだな、あの二人は」

ゼロ「そうみたいですねぇ」

レオン「それで、ここに駐留してる白夜の者たちの動きはどうだった?」

ゼロ「耳にしたくらいのことしかありませんが」

レオン「構わない、少しでも情報は欲しい。それがわかるだけでも十分すぎるからね」

ゼロ「ありがとうございます。レオン様」

ゼロ「フウマ公国を攻撃した部隊のほとんどがイズモ公国に残っています。そしてわずかながらの人数が数日前に、この国を出ています。おそらく白夜王都に向かったものと……」

レオン「だろうね。さすがに暗夜の軍勢が来たことは王都に伝えるべき内容だ。暗夜の大攻勢が始まることも、彼らは知ったわけだからね」

ゼロ「あのサイゾウという男はここに残っているようです。ここに残っている者たちの目的は俺たち監視、もしくは足止めのためと考えた方がいいかもしれません」

レオン「その気になれば、イズモ公国を出た直後に戦闘になりかねないけど、この中でことを起こさないと信じたいね」

ゼロ「信じらますか?」

レオン「……フウマで共闘したとはいえ、敵であることに変わりはないよ。捕らえられていた捕虜をこちらが助けたとしてもそれは変わらないからね。だけど、少しくらいは信じてみるしかない。姉さんもそれを望むだろうし、なにより少ししたらこちらから接触することになるはずだ。姉さんと一緒にね」

ゼロ「そうですか。レオン様も丸くなられましたね」

レオン「な、何をいきなり」

ゼロ「いや、前までのレオン様なら絶対に信じてみるなんて言わなかったでしょうから。敵は敵、信用する必要はないと切り捨てたでしょう」

レオン「僕だって成長する、ただそれだけのことだよ!」

ゼロ「カムイ様の影響か、それとも白夜の姫君たちの影響か、はたしてどっちですかね?」

レオン「ゼロ!」

ゼロ「くくっ、冗談です。あと…少しばかり不穏な話が一つ」

レオン「不穏な話?」

ゼロ「ここにいる白夜の部隊の話では、このフウマ公国への攻撃は満場一致で決まったことではなかったと……」

レオン「あの作戦自体が、半ば強硬的に行われたということか……。たしかあの忍、サイゾウはリョウマ王子の臣下、そうだよね?」

ゼロ「はい。フウマ公国の攻撃目的が公王の暗殺、それによって白夜に忍びよる可能性のある脅威を排除するというのは間違いなさそうです。ですが、俺はそれ以外に何かあるように感じます」

レオン「白夜の内情について僕たちは推測しかできない立場だけど、それだけ聞いてもあまりいい状態ではないみたいだ。最悪の可能性はごまんとあるけど、今現在思いつく最悪の展開なんて言うのは、思った以上に早く白夜が暗夜の侵攻に屈することくらいだ」

ゼロ「死ぬ気で踏ん張ってくれるとは思います。テンジン砦の周辺は最終防衛の要で地の利も白夜にある、いわば庭です」

レオン「適した配置で臨めば、長く持ちこたえることはできるだろうね。というよりも、僕たちは白夜に踏ん張ってもらわないと困るんだ。こっちが事を起しても、そこに白夜がなかったら、流石に崩れ落ちてしまうかもしれない。正直これは分の悪い勝負だよ」

ゼロ「でしょうね。前までのレオン様なら、こんな賭けには乗らなかったはずです」

レオン「まったくだね。もっと綿密に計算して、犠牲を限りなく抑えられるように案を練っただろうね」

ゼロ「それが変わったのも、カムイ様と白夜の姫君たちのおかげですか?」

レオン「どうしてまた引っ張り出すかな!?」

ニュクス「盛り上がってるところ悪いけど、形が出来上がったから、全体図を確認しに行きましょう?」

ゼロ「なんだ、まだ報告が終わってないのに、横槍を入れてくるとはな?」

ニュクス「もう終わっていたと思うけど? レオンもそんなことで動揺してたら、ゼロに好きにされるだけよ?」

レオン「……善処するよ」

オーディン「それよりも、早く見に行きましょうよー。どんな風に仕上がっているのか、気になって気になって仕方無いんですから!」ソワソワ

ニュクス「ほら、こんなにそわそわしてる大きな子供がいるから、ね?」

ゼロ「大人ぶった小さい子供もいるけどな?」

ニュクス「………」

レオン「よし、まずは確認に向かおうか」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

オーディン「ああ、この禍々しくも面妖な渦に世界の命運が掛ってる思うと……くっ、静まれ俺の右腕、がぁ! だめだ、暗黒十字星の力が、暴走するっ!!!!」

レオン「うん、これで大丈夫だ」

ゼロ「へぇ、こりゃ中々にでかいもんだな」

ニュクス「……んっ!!!」ピョン ピョン

ニュクス(見えない)

オーディン「よし、ニュクス」

ニュクス「なにかしら、オーディ――」

オーディン「任せておけ、貴様の悩み。俺が解決してやる」ヒョイ

ニュクス「ちょっ!!!!////」

オーディン「どうだ、これでよく見えるだろう。俺とニュクス、レオン様で作り上げた魔方陣が!」

ニュクス「く、屈辱よ……でも、本当に大きいものができてるわね」

レオン「ああ、二人の力のおかげだよ。ありがとう」

オーディン「へへっ、当り前ですよ。」

ニュクス「まぁ、頼まれたからにはちゃんとこなさないといけないから。礼には及ばないわ」

ゼロ「ふっ、結局は見た目通りか、いくら大人ぶっていようと、そうしてもらわないと確認もできないなんてな」

ニュクス「そうかもしれないわ。その見た目でオーディンより、子供染みた振る舞いしかできない、あなたと一緒にしてもらいたくないけど」

ゼロ「………」

レオン「よし、確認は終わったから降りようか」

今日はここまで
 
 ニュクスが思い描く大人の自分というのは、どんな姿なんだろうかと時々考えてしまう。

レオン「……もう空の色が変わり始めてるみたいだね」

 タタタタタッ

カムイ「レオンさん。魔方陣の準備はどうでしょうか?」

レオン「姉さん、こっちの方は終わったよ」

カムイ「そうですか、どうにか間にあったようで良かったです」

レオン「まぁ、今回は結構初めての試みだったからね。ニュクスとオーディンに手伝ってもらってどうにか間にあったってところかな」

カムイ「それじゃ、行きましょうか? これから皆で空の入れ替わりを見ようって思っているんです」

レオン「なるほどね。なら少し急いだ方がいいかもよ、だんだんと暗くなり始めてるから」

カムイ「え、そうなんですか。それじゃ急がないといけませんね。早く行きましょう、ニュクスさん達も、あちらに席を取ってありますから」

ニュクス「そうね。ゆっくりと眺めるのも悪くないわね」

カムイ「はい。見れないのがとても残念です。空が黒く染め上げられていくところはとても綺麗なんでしょうね」

レオン「今でも十分奇麗だから、これからはもっときれいに見えるだろうね」

カムイ「うらやましいです。でも白夜の空がそうなっているということは、今暗夜の空は逆に明るくなっているんですね……。神秘的な光景でしょうけど、向こうでは侵攻の始まりとして扱われると考えるとなんだか複雑ですね」

アクア「仕方ないわ。それに、この空の入れ替わりを祭事にしているのは、多分だけどここくらいのはずよ」

レオン「アクアの推測通りだろうね。白夜も暗夜もお祭りをしてる場合でもないだろうから」

アクア「ええ、私もこんな風にこの日を迎えるとは思っていなかったから」

レオン「確かに、でも、僕たちの戦いもこの空の入れ替わりで始まる。今日くらい、のんびりと空を眺めるのも悪くないよ」

カムイ「たしかにそうですね。それじゃ、そろそろ向かいましょう。皆さん、とくにレオンさんをお待ちの方がいますから」

レオン「僕を待ってる人?」

カムイ「はい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カザハナ「あー、レオン王子。こっちこっち!」

サクラ「レオンさん、ここです」

ツバキ「レオン様、こっちですよー」

レオン「本当に一人分席が空いてるよ……」

カムイ「ふふっ、引っ張りだこですね」

レオン「はぁ、サクラとツバキはともかく、なんでうるさそうなカザハナも一緒なんだい?」

カザハナ「ちょっと、あたしだって、静かにする時くらい静かにできるから」

レオン「そうかな? 空の色が本格的に変わり始めてきたら、騒ぎ出しそうな印象しかないんだけど」

サクラ「たしかにそうですね」

ツバキ「そうだねー。子供みたいに騒いでそうだからねー」

カザハナ「え、あたしってそんな印象なの?」

レオン「まぁ、僕よりも長く過ごしてる二人が言うんだから、そうなんだろうね」

カザハナ「うー。どちらにせよ、ここがレオン王子の特等席なんだから、さっさと座る!」

レオン「ちょ、引っ張ら、うわぁ」ドサッ

アクア「それじゃカムイ、私たちも座りましょう」

カムイ「はい。よいしょっと」

アクア「座る時に声を出さない方がいいわよ。お年寄りみたいだから」

カムイ「それもそうですね。よいしょっと」

アクア「……ワザと言ってるでしょ?」

カムイ「ふふっ、ばれちゃいましたか」

アクア「当り前よ。それにしても、本当にこの日をこんな気持ちで迎えることになるなんてね」

カムイ「?」

アクア「多分ね、この日を前のまま迎えたら、私は不安を抱き続けていたはずよ。もうどうにもできないほどの不安をね」

カムイ「そうなんですか?」

アクア「ええ、でも今はそんな気持ちはないわ。むしろ、私がしっかりして、あなたを支えないといけないもの」

カムイ「あははっ、その、面目ないです」

アクア「ふふっ。謝るのは駄目よ。私が支えてあげる代わりに、あなたはあなたの見つけるべきものを見つけないといけないんだから」

カムイ「アクアさんには敵いませんね。その支えてあげるっていう自信満々の発言とか」

アクア「ふふっ、自身は持ちたいもの。あなたのことだから」

カムイ「なんだか、恥ずかしいですね。そう言われると」

アクア「顔を赤くして、照れているのかしら」

カムイ「ち、ちがいま――」

 ワー ワー

カムイ「!!!!」

アクア「あと少しで変わるみたい」

カムイ「そうみたいですね……」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『公衆演説広場』―

マクベス「ふむ、空が明るくなり始めたようですね。ということは、そろそろ空の入れ替わりが始まるということですか」

マクベス(しばらくは城を離れる故、いろいろと準備に手間取りましたが。どうにかこうにか間に合いましたので、良かったというもの。次は白夜攻略の橋頭保を白夜平原に構築する作業の指揮を取らなくては……)

 タタタタタタッ

マクベス「?」

メイド「マクベス様、こちらにおられましたか。そろそろ、お時間です」

マクベス「あなたですか。確かにそのようですね」

メイド「はい、ご案内いたしますので。こちらへどうぞ」

 カッ カッ カッ

マクベス「それにしても、今日まで色々とありがとうございます」

メイド「いえ、マクベス様にお仕いできた時間、とても充実した時間でした」

マクベス「ふむ、そうですか」

メイド「……あの」

マクベス「どうされました? そのような不思議な顔をして」

メイド「いえ、いつもならお世辞は結構と言われますので、その不思議に思いまして」

マクベス「あなたは準備に関して最後まで献身的に手伝ってくれましたので。そんなあなたにそう言ってもらえたのです。否定する気は起きませんよ」

メイド「……」

マクベス「それに、ここ数年ここまで働いてくれる方は中々いませんでしたからね。助かったのも確かです」

メイド「そ、そうですか……」

マクベス「どうしましたか、気分が優れませんか?」

メイド「いえ、なんでもありません。なんでもありませんので、心配していただきありがとうございます」

マクベス「そうですか。今回であなたの仕事も終わりですので、最後の最後で体調を崩されでもしたら〆が悪いので、気をつけるようにお願いしますよ」

メイド「ふふっ」

マクベス「む、なんですか?」

メイド「体調を崩すつもりはありません。それに、これが最後の仕事というわけではありませんから」

マクベス「それはどういう意味ですかな?」

メイド「はい、こちらを」カサッ

マクベス「これは、異動書のようですが……」

メイド「異動の提案をさせていただきました」

マクベス「なるほど、新しい職務を見つけに行く姿勢は素晴らしいもの。同じことの繰り返しは、心を蝕みます」

メイド「そう言っていただけると自信が持てます。とは言っても、することは変わりません」

マクベス「まぁ、あなたはメイドですから、仕える相手が変わるだけのこ――」

メイド「いえ、仕える相手も変わりません。私はこれからもマクベス様に仕えることにしましたので」

マクベス「……話が読めませんね」

メイド「ふふっ、マクベス様でも読めないことがあるんですね」

マクベス「……ええ、理由が全く分かりませんので」

メイド「マクベス様に仕えたいだけのことです。マクベス様にはお付きの方がおられなかったようなので、そこに志願させていただきました」

マクベス「……永久空欄にしていたのは、召使など必要ないという意味です。勘違いしないでほしいですねぇ」

メイド「働き過ぎて眠りに入られてしまうのに、部下や召使が必要ないというのは些か無理をし過ぎていると思います。少しでもその負担が解消されるように、お手伝いいたします」

マクベス「変わり者ですね。たとえ空欄とはいえ、私の世話を引き受ける人間などいないと思っていましたが」

メイド「皆さんは見る目がないんですね。マクベス様はとても真面目な方だというのに。マクベス様は一度たりとも、私にそういったことを命令しませんでしたから」

マクベス「そういったことですか。私も男ですから、いずれそうなるかもしれませんよ?」

メイド「ふふっ、そうやって人を遠ざけるのもマクベス様らしいです。でもご安心ください、どんな命令にも私は従わせていただきます。マクベス様のお力になれるのならば」

マクベス「はぁ、勝手にしなさい。と言っても、やることは今後も変わりません。暗夜の勝利のために行動する、ただそれだけのことです」

メイド「はい、マクベス様」

マクベス「そろそろ、式典が始まる頃でしょう。あなたも、ガロン王様のお言葉を胸に刻む様に」

メイド「はい、ご命令のままに」

マクベス「良い返事です」

ゲパルトP「マクベス様、お疲れ様です」

マクベス「ゲパルトですか、大きな混乱はないようですね」

ゲパルトP「はい。すでに王都防衛と侵攻部隊の組分けは済んでいますので、あとは空の入れ替わりを待つばかりですから」

マクベス「そうですか。出立時に問題が起きることがないのは良いことです」

ゲパルトP「はい、これもマクベス様の配慮のおかげです」

マクベス「なに、離れる前の一仕事ですので、ミスするつもりはありませんので」

ゲパルトP「そうですか……さすがはマクベス様です」

マクベス「まぁ、当然のことです」

ゲパルトP「それと、マクベス様。あの時のことを弟と話し合いました。あなたのいう、死ぬべき場所は戦場である必要はないという話です。あれは後続を育てるという意味も含まれているのでしょう?」

マクベス「ふっ、その通りです。優秀な兵士は優秀な光景を育て上げるという使命があります。それが終わった後は、ゆっくりと死んでいけばいいだけのこと、長く戦い生き残ってきた人間はそれだけで価値が宿るものなのですからね。そしてゲパルト、お前は愛国心を持っているからこそ、そうした最後を迎えなければいけないのですよ」

ゲパルトP「そんな、私の持つ愛国心など、マクベス様に比べれば、赤子も同然でしょう」

マクベス「ふっ、当然です。簡単に並ばれては軍師の肩書もさびれてしまいますからねぇ。ですが、すでに基礎はあるのです、問題はないでしょう」

ゲパルトP「ははっ、残念ですが弟には愛国心はないようですので」

マクベス「そうですな。あなたの弟が愛国心に目覚めることはないでしょう。ですが、それを蔑む必要はありません」

ゲパルトP「暗夜に仕えるものである以上、愛国心は必要ではないのですか?」

マクベス「良いですか、愛国心を持つものと持たないものがいることは仕方のないことです。それを変えることに躍起になる必要はありません。なぜなら、それをまとめ上げることのできる主君がいればいいだけのことなのですから。その主君によって国は繁栄する、そうガロン王様のような主君によってです」

ゲパルトP「では、弟にそのままであれと告げたことは、間違いではなかったということですね」

マクベス「残念ですが、間違っているかは私達が決めることではありません」

ゲパルトP「?」

マクベス「残念ですが、間違っているかどうかというのを決めるのは、その場で加担している人間では無いのですよ。その物事に参加していない人間だけが、その物事が間違っているかを精査できるのです。こうして戦いっている以上、私達はどちらが間違っているかということを考える立場にはいないということを、肝に銘じておいた方が良いでしょう。ガロン王様に仕え戦っているということは、そういうことですからねぇ」

メイド「それは、あまりにも――」

マクベス「くくくっ、それを認められて初めて自身の道に倒錯できるのですよ。後悔はしないが反省はしているというように。物事を見直すことはできても間違いを認めることなどできはしないのです。その道に足を踏み入れた時、すでにそんな権利はなくなっている。そう考えるべきです」

メイド「難しいです」

マクベス「あなた方にはまだ理解できないことです。ですが、それが理解できた時には、自分の死すら容認できるようになるでしょう」

ゲパルトP「それを知るには、まだまだ月日が必要ですね。ふっ、マクベス様はポンポンと新しい課題を突きつけてきますね」

マクベス「私は課題など突きつけませんよ。あくまでも、突きつけるのは命令だけです。暗夜を勝利に導く命令だけ、それを肝に銘じておくように」

 ワー ワー

マクベス「む、よく見ると空がとても明るくなっていますね。私は壇上に上がります、あなたは持ち場で待機するように」

メイド「はい、わかりました。式典が終わり次第、こちらでお待ちしております」

マクベス「わかりました。ゲパルト、あなたはガンズと共に立つのですから、早く向かうように」

ゲパルトP「承知しました。マクベス様の新しい命令が、ガンズ様の元に早く届くことを期待してます」

マクベス「ええ、それでは行くとしましょうか」

マクベス(暗夜の新しい繁栄の歴史、ガロン王様の行きつく暗夜王国の行く末に……)

~~~~~~~~~~~~~~~~

ガロン「……変わったようだな」

マクベス「はい、ガロン王様。すでに空は照らされております」

ガロン「うむ」ザッ

 カッ カッ カッ

 バサッ

 ワーー ワー!
 ガロンオウサマ、ガロンオウサマー!

ガロン「ふっ」

マクベス「この軍勢を抑えることなど、今の白夜には無理でしょう」

ガロン「ああ、その通りだ。恐れるものなど、何もない。そう思わずにはいられまい」

マクベス「ええ、その通りでございます。ガロン王様」

ガロン「……くくくっ」

 スッ

ガロン「皆の者、時は来た」

ガロン「暗夜に広がるみすぼらしい大地で長き時間を耐え抜いてきた。それは何のためであったのか、土地に順応するためか? それとも変わらない現実を受け入れるためか? 粛々と生きながらえるためか?」

ガロン「それらは全ては、愚かであり、ひ弱であり、軟弱な思考の生み出す逃げ道に他ならん。我ら暗夜の民がここまで繁栄した、それは強き力を得るためだ」

 バッ

ガロン「見上げよ、この空を! この太陽の輝きを、照らしやせた土地を豊穣の大地へと変えるこの輝きを! 今日それを始めて目にする者たちもいるだろう。この世には、この輝きが存在し、それを受け止める者たちがいる」

ガロン「この輝きは誰のものか? のうのうと生き、豊穣なる大地を分け与えることのない、白夜の民か?」

ガロン「くくくっ、それは大きな間違いだ。この暗夜王国に生き、そして従う者たちに与えられるべき輝きである!」

ガロン「今こそ、豊穣なる大地に我らが進出する時。今、白夜は暗夜の、そして暗夜には白夜の空が覆っている。それがなぜかわかるか?」

 ソレハ、イレカワリノエイキョウデ――

ガロン「そう考えてもいいだろう。だが、これは我らにある正義を示すものとわしは考える。白夜の大地、豊穣なる大地を得るという正義を」

ガロン「この正義は神が与えたものではない……。我々が長き時間を掛け、積み重ねてきた力、それが示す正義だ。空は示している、白夜を暗夜の物にせよと、白夜の大地は暗夜に支配されることを望んでいる。白夜の大地は我ら暗夜王国に管理運営されて初めて、その存在価値を得る。そしてそれは行動によってのみ、得られる実体である!」

ガロン「手を出さず、ただ傍観している者が得られるのは仮初だけ、いずれ崩れ果てて行くことだろう。己が力で掴むものにこそ、意味は生まれる。だからこそ、暗夜の民よ――」

 グッ バッ

ガロン「力を示せ、富を得るために」

ガロン「力を示せ、幸福を得るために」

ガロン「力を示せ、己が求める最大の悦楽のために」

ガロン「力を示せ、この暗夜王国の王、ガロンに忠誠を誓う者として!!!!」

 ワーーー

 ガロンオウサマー!!!!
 ガロンオウサマ、バンザーイ!
 バンザーイ! バンザーイ!!!

マクベス「ガロン王様、そして暗夜王国に繁栄と栄光を!!!!!」

 アンヤオウコク、ガロンオウササマニ、ハンエイトエイコウヲー!!!!!

ガロン「白夜を滅ぼし、すべてを我が物にする。我が道に従い歩み行く者たちよ、武器を取り身を投じよ。その手ですべてを手に入れるために!」

 ワーーーーー!!!!! ガロンオウサマ!!!!

ガロン「……」

ガロン(くくくっ……はーっはっはっはっは!!!!)

ガロン(醜く愚かな人間どもだ)

 ガロンオウサマー!!!

ガロン(お前達にはありもしないだろう、この暗夜という国を思う心も、ガロンという男を思う心も。信じているのはお前達の望む、自分自身の幸せだけだろうに)

 ビャクヤヲホロボシ、アンヤニハンエイヲ!

ガロン(だが、それで一向に構いはしない。お前たちのような下劣な人間のことなど、もう理解しているからな。踊れ、殺し合っていけ)

ガロン(我が掌の上で血みどろになりながら、その欲望に身を染めて倒錯していくがいい)

(いずれ至る、お前たちの最後の時へとな………)

 第十七章 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます))
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB++
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 この頃、迷走気味でもうしわけない。

 ガロンの演説、そしてマクベスの主君理論。

 このスレでの本篇更新はここまでです。

 番外の「カムイとまきゅべす」
    「リリスの多世界観察記」
 で、今回のスレは終わると思います。
 
 二つの番外が終わった後は、この中からどれかをやろうと思います。

『ミタマ×ディーア』
『ソレイユ×ジークベルト×オフェリア』
『ヒナタ×ツバキ』
『ヒノカ×セツナ』

 こんな感じでよろしくおねがいします。

◇◆◇◆◇






【カムイとまきゅべす】

「……」

 何とも抜け殻みたいな娘だとマクベスは思った。
 これくらいの餓鬼というのはやれ大きな声で騒ぎ、落ち着きなく走り回ったり、物を壊したりしそうなほどにわんぱくだと。
 だから、全く騒がず、無駄に静かで、何にも興味を示さない姿はとても異様で、思わず凝視してしまったほどである。
 そんな少女の横にはガロンの姿があったので恐る恐る隠し子ですかと聞くと、動じることなく白夜王の娘だと答え、この娘をここに住まわせるよう指示を出した。
 その指示にマクベスは言葉を失い落胆した。
 この一ヶ月という時間を掛けて奇麗に磨き上げた城塞は、どうやらこの娘の御家になるらしい。
 この城塞を訓練場として用いれば、多くの兵士を育成できそうだ。場所の無駄遣いではないのか、そんなことを思ったところで、ガロンがこんなことを零す。

「この娘には秘めたる力がある。その力を封じる結界として、この城を使わざるを得ない。マクベス、此度の準備よくぞこなしてくれた、礼を言うぞ」
 
 その言葉の後半を耳にしてマクベスは目に見えて喜んでいた。隅の隅、それこそ重箱の隅を突く様な執拗さで整備をした甲斐があったと。
 バカと鋏はなんとやら、ガロンは子供のように手放しに喜ぶマクベスを心で嘲笑し、それをマクベスは好意的に捉える。
 まったく持って噛み合わないが、マクベスは幸せだった。

◇◆◇◆◇





 だから、すぐにカムイの教育係に宛てられたことで、目に見えてテンションが下がっていた。

「カムイよ…、この男に従うのだ。わかったな?」

 その言葉に頷き、フラフラフワフワとした足取りでマクベスの下に歩いてくる少女。その目に生気はなく、どうやら幻術の類でここまで連れてこられたのだとマクベスは理科した。
 こうしなければ秘めたる力が暴走してしまうのかもしれない、そうならないようにこの対処なのだろう。

「その娘の記憶は奪ってある。マクベスよ、この娘を暗夜王族に相応しい、そんな人間に仕立て上げよ」

 そんな指示を含み笑いでガロンは出し、マクベスは確かに頷いた。
 ガロンの命令に従ってきたマクベス、そしていずれは軍師として傍に立つ日を夢見る彼にとって指示の内容など二の次で、どんな指示も全力で挑む次第だったのだから。
 ぼんやりとした顔のままに立ちつくしているカムイを見下ろす。
 この少女を暗夜の王族。その地位にふさわしい人間に育て上げていく。
 新たなる使命にマクベスは心を躍らせていく。必ずや、カムイを暗夜王女として育て上げてみせると……

◇◆◇◆◇






「と、承ったは良いものの、子育てなどしたことがない」
 
 城塞の図書館で一人マクベスは愚痴を肴に文献を読み漁る。
 初めての育児、物心から生まれる自分への興味、可憐なプリンセスプルンプルン、参考書からおとぎ話の絵本に至るまで、色々な本に目を通す。
 ガロン曰く、カムイは何も知らない状態だという。人間的にすることはわかっていても、自分がいったい何者なのかを知らないというわけであった。
 難易度が高すぎますよ、なんですかこれは。
 最初は軽い気持ちだった、力で躾ければいいと思っていたが、本に目を通す度にその考えを改めていく必要があった。
 愛情の欠如が生む終わらない反抗期という言葉が最もマクベスを苦しめた。最初の予定、力で締めあげるを使えなくなった。なら、甘やかすならどうだ、鞭でなければアメちゃんあげるの精神で、そうすれば問題ないだろうと。
 しかし、甘やかしすぎると自分は特別な存在(痛い的な意味で)だと思いこんでしまうかもしれないと参考書に書かれていた。
 反抗期カムイと自称選ばれし者カムイ、どちらもノーサンキューである。
 万が一にもそんな姿をガロンに見せてしまっては、暗夜王国、ガロンに仕える軍師の道など掻き消える。というか、確実に処刑される。
 そう考えて、マクベスはやったこともない子育てという問題に真面目に取り組んでいた。

◇◆◇◆◇






 思えば暗夜軍に身を置いてからというもの、仕事仕事の毎日で碌に出会いもなかった。いや、あるにはあったがそれをすべて捨ててきたのだ。
 あの強く気高いガロン王に仕えるためにと、粉骨砕身の思いでここまで来た。そして受け取った命令が子育てになるとは、世の中全く予想がつかないし、ついていたとしても拒否権はなかった。

「はぁ、しかし、これもガロン王様、そして暗夜王国の未来のため。暗夜王族として恥ずかしくない王女に仕立て上げなくては!」

 気持ちを新たに参考書へと視線を落としたところ、マントをクイクイと引っ張られる。
 見れば棒立ちのままにマクベスを見つめる二つの瞳があった。虚ろというわけではないが、かといって何を求めているか全くわからない、そんな瞳。マクベスの悩みの種、カムイである。

「どうしました、カムイ王女?」

 ここにマクベスが住み込み始めて十日が経ち、そんな中でカムイは城塞の中を歩き回っていた。
 いくら記憶を失っていようとも、そんな自由に歩けるものなのか。マクベスの手伝いとして宛がわれたメイドたちも、ずっと軟禁生活を送ることになるんでしょうねと話していたのだ。この状況は誰かメイドがカムイを可哀そうに思って、鍵を解き放ったのかもしれないと。
 残念だがそれは違う。なぜなら、これこそが本を読み漁ったマクベスの政策であるからだ。

◇◆◇◆◇







 ここに来てから数日の間は一つの部屋にカムイを軟禁していたのだが、閉じ込めているだけでは考えが偏る危険性がある。すぐに部屋から解き放ち、城塞内を自由に歩かせるようにしたのだ。しかし、これでは甘やかしになってしまうと思うだろう。だが、マクベスは違った。
 城塞内部ならどこに行こうが許したが、決して城塞の外へと出すことはなかった。これによって自由とは与えられたものの中で創意工夫するものだと諭す、マクベスの粋な計らいであった。
 この飴と鞭政策が功を制したのかマクベスに用事があるとき、カムイはマントを引っ張り意思表示を行うようになった。口数はまだ少ないが、将来行われるであろう社交界などのことを考えれば、こうして自分の意見を発信する基礎が出来上がったことはとても素晴らしきことである。マクベスは用意した紅茶を一口飲んで彼女と向き合い、目と目を合わせて話をする。
 これもまた彼女を立派な王女にするための気配り、人と話をする時は目線を合わせること。それこそが王族に求められる疎通力に繋がる、そうマクベスは考えていた。
 

◇◆◇◆◇







 しかし、その気配りに背を向けるように、カムイは目線を逸らす。まだまだ目を合わせて話をするには時間が掛りそうだとため息を漏らしたところで、マクベスの膝の上に重みが加わった。

「?」
「……」

 そこにはちょこんと鎮座ましましているカムイの姿があり、足をぶらぶらさせながら、チラチラとマクベスの様子を伺っている。その居心地の悪さに彼の口は開いた。

「あの、カムイ王女。私は仕事中です、要件がなければ――」
「……いなく、……なったほうが、いい?」

 カウンターである。か細いカウンターだというのに、その攻撃力は高かった。
 このカウンターを突き放すべきか否かの選択肢に、マクベスは大いに悩んだ。決してか細く懇願する声の所為ではない。
 ここは突き放して我慢ということを覚えさせるべきか、受け入れてカムイから信頼という目に見えないものを獲得するべきなのか?
 マクベスは考えた。どちらがいいのかと、どちらの方が拗らせない方角なのかと。
 しかし、幼少期の子供というのは感情の機微が激しく、マクベスの考えている合間に、今言ったことの返答が来ないことで不安を爆発させる。

『あなたに言葉を返すのも面倒くさいんですよ。返す言葉ないということはそういうことだとわからないのですかねぇ?』

 そう、マクベスは言いたいのではないか。そう考えた瞬間に、カムイのか細い声が漏れ出す。

◇◆◇◆◇







「……やっぱり……ここから(図書館)いなく……なったほうが…」
「いえ、それは困ります」
「……え」
「だから困ります。ここから(城塞)いなくなられたら私が本当に困りますから、そのようなことを言うのはやめて頂けませんか、冗談でも怖いので」

 考えていた選択肢を放り投げ、即座に言葉を突っ込む。二人の間に噛み合わないものがあったとしても、その言葉はマクベスにとって死活問題な発言なのだ。
 いなくなったらガロンに大目玉を食らうことになる。いや、悪ければ処刑されるやもしれない。というか間違いなくされる。磔かギロチンか好きなものを選ばせてくれるだろう。ガロンの温かい配慮には罪人の涙も止まらないだろう。ちっともうれしくないが。

「……なら、いいよ……ね?」
 
 その言葉を了承と受け取ったカムイは、顔色を変えることなく膝上を堪能し始める。その一連の流れを見ながら、実は嵌められたのではないかという不安のようなものがマクベスの体を通り抜ける。
 こやつ、思ったよりも狡猾なのではないか? 実は洗脳なんてされていないし、記憶も失ってないのではないか?
 そう考えたがガロンが掛ってると言ったのだ、掛っているに決まっていると考えるのをやめた。

◇◆◇◆◇







 視界を若干遮る後頭部を仕方がないと諦め、マクベスは再び資料に視線を向ける。
 それを真似するようにカムイもぼんやりとそれを眺める。二人の関係を他人が見たら、そのアンバランスさに苦笑か笑いか、はたまた慄きか、最悪事件性を感じ取るかもしれない。しかし、当の二人にそれは関係の無いことだった。
 しかし、少ししてから膝が揺れ始め、見ればカムイがもじもじとしていることにマクベスは気づく。だんだんと揺れが大きくなっていく、その揺れで本が読み辛い。読み辛いから鬱陶しく思うようになる。さらに時折、チラッと顔を確認してくるのが気に障った。

「なんですか、言いたいことがあるなら、ちゃんと言いなさい。目と目が合うだけで意思疎通は出来ませんよ」
 
 目と目があったら相思相愛。そんな馬鹿げた格言を否定するようにマクベスは啖呵を切った。その言葉にカムイの小さな体がフルフルと震え始める。
 だけど、マクベスの言ったことはもっともだと子供心に理解して、震えている体に力を入れると、唇をキュッと締めてから力を解き放つように弱弱しい声を漏らした。

◇◆◇◆◇







「……名前……」
「?」
「……名前、名前……呼んでも、いい?」

 マクベスは二つ驚いていた。
 一つはこう直接的にカムイがお願いをしてきたことだ。名前を呼んでもいいかという簡単なものだが、カムイは今まで意思表示はしてきたが、こうやって口に願いを紡ぐことはなかった。素晴らしい成長といえた。思わず自分自身を称えてしまうくらいに。
 そしてもう一つはその内容であった。相手の名前を呼ぶのに許しを請うというのはなんとも不思議な行為で、何よりカムイは後々、今とは逆にそう言った言葉を掛けられる側になっていくという真実がどうもにも可笑しかったのである。

「お、おかし……かった?」
「いえいえ、なるほどなるほど。たしかに、私だけがカムイ王女と呼ぶだけというのは不思議な気もしてきますからねぇ。いいでしょう、私の名前を呼ぶことを許可しましょう」
「……ほんと?」
「ええ。私の名前はマクベスだということは知っていますね?」
「……しってる」
「では、呼んでいただけますかな?」
「……うん」

 どこか嬉しそうに見えたのは気のせいでしょうと、マクベスは考えてまずは膝上からカムイを下ろす。そして目線を合わせてみると、カムイはクネクネと体をもじもじさせ始める。
 緊張しているのだろう、こうやって自分から要望を言っておいてなんだが、面と向かって呼ぶというのは中々に恥ずかしいものなのだ。
 でも、やるしかないと一度大きく深呼吸、すぉーという音が静かな部屋に響き渡る。
 小さき体に力をこめて、言わせてもらおうその名前。

「ま……ま……」

 カムイの意を決した一声は、確かに放たれた……

「ま、まきゅべす……!!!!」

 噛んだということに目をつぶれば……

◇◆◇◆◇







 マクベスは詰めが甘いと頭を垂れた。最後の最後でどうして決められないのかと、これでは将来もどこかで間違いをしかねませんねと、静かに顔をあげる。
 噛んだことで落ち込んでいるやもしれないと、機嫌を損なわれても問題だからフォローしてあげるとしましょう。そんな気持ちを織り交ぜて、再び顔をあげようとしたときである。

「まきゅべす」

 また噛んだ。さすがに顔をあげた。

「まきゅべす」

 慣れ親しんだ語句を並べるような軽快さを感じた。
 もしかして噛んでない?

「まきゅべす、まきゅべす」

 あまりの軽快さに、さすがのマクベスも気が付いた。
 こいつわざとだ!

「カムイ王女! 私の名前はマクベス、まきゅべすではなくは、マ・ク・ベ・ス!」
「……マクベス」
「そうですよ、やればでき――」
「でも……まきゅべすのほうが……かわいい」
「か、かわ、可愛いって、人の話を聞きなさいカムイ王女」
「まきゅべす……かお赤い。わたしと……おそろい。ふふっ」

 それしてカムイはとてもうれしそうにまきゅべすに寄って頬を腹部に当ててスリスリしてくる。体にたまった怒りの矛先をどうするべきかまきゅべすは大いに悩んだ。こう甘えるようなことをしてくるということは信頼されているということだろう。
 だが、それを差し引いてもここは躾るべきかもしれない、しかし、さっきまでその一言を言うために頑張ったことを否定するのもどうかと考える。
 視線を下ろせば、うれしそうなカムイ、心を見れば名前訂正の署名活動をしている自分の後ろ姿と、それにこぞって書き込みをする自分自身の姿が見える。
 あまりにもそれが虚しく思えて、怒りの署名は活動を停止し「今回は名前を呼ぶようになったのですから良しとしましょう」とまきゅべすは結論付ける。

◇◆◇◆◇








「まきゅべす……」
「はいはい、わかりました。ですが、すぐにでもちゃんとした名前で呼ぶようお願いしますよ」
「……」

 返事はない。まきゅべすの教えが聞いているとするなら、それには従わないということになる。
 だが、内心彼は余裕の面持ちだった。

(なに、少し経てば自然と治っていくことでしょう。それにこの私の威厳ある姿、そして品格を目の当たりにしていくうちに、いくら子供であろうともまきゅべすなんていう呼び方をしていることに恥ずかしさを覚えていくはず。そしていずれはマクベス様と呼ぶようになるに違いありません)

 そう夢想する。その夢想の中で彼は軍師になっていた。夢を見るのにお金はいらない、努力もいらないというからこそ、すぐに成り立つ夢想であるが故、彼はそれを疑わなかった、そして――

「まきゅべす、まきゅべす。えほん、プルンプルンよんでー」
「はぁ、わかりました。カムイ王女はこの本が好きですねぇ。では、『大きな胸の御姫様、プリンセスプルンプルンは――』」

 半年が経った頃、まきゅべすと呼ばれることに抵抗を失い。

「マクベス様、マクベス様」
(あ、私のことですか……)

 マクベスと呼ばれることに違和感を感じるようになっていったが、もう後の祭りである。
 まきゅべすと呼ばれることを彼は気にしなくなり、カムイがそう呼ぶことも咎めなくなった。
 そんな関係が作られ始めて、カムイとまきゅべすが過ごす城塞は思った以上に静かで快適であった。王女としての教育も順調にこなし、まきゅべすは出世街道を邁進していると信じていた。

 だが、まきゅべすは知らなかった。

 そこに忍びよる、影があるということを……

 今日はここまでで
  
 カムイとまきゅべすはこんな話で、あと二、三回続く感じ。
 三つくらい考えて、ロリカムイに振り回されるマクベスという感じになった。

 この一週間くらいは番外編だけです。新スレは、エロ番外をやるかどうかで決まるかもしれません 
 今月の26日で発売から一年ですね。そろそろ資料集の情報とか来るのかな。とりあえずリリスページマシマシだといいな。

◇◆◇◆◇






 予期せぬ出来事というのは突然来るから予期せぬ出来事なのである。
 暗夜の朝は朝というには結構暗い、朝と昼はほとんど同じような明るさだ。そんな今日、マクベスの体は激しく揺れていた。
 ブンブンブンブン、グワグワグワグワ。そんな効果音を奏でかねないくらいに、彼の首は縦横無尽に駆け巡り、やがて、気持ち悪さに意識が芽生えた。最悪の芽生えである。
 何事か? こんな激しいモーニングコール、確かに毎朝決まった時間に起こすようにメイドに頼んでいますが、この乱雑さお灸を据えるべきですねぇ。
 首をゆすっていたものが誰かを確認するために体中が覚醒していく。すると胸部に確かな重みを感じた。誰かが乗っている。誰だ。

「まきゅべす、おきてー」

 カムイだ、声だけでわかる。
 一体何をしているのか、人の部屋に入って、しかも眠っている人間の上に乗っかるとはマクベスは瞳を開く、果たしてそこにカムイがいた。

◇◆◇◆◇






「あっ、まきゅべす、やっとおきた……」
「やっと起きたではありません。なんですか、あんな無理やり首を振り振りと、モーニングコールはもっと優しくし――」
「そんなことよりはやくして、みんなあわててる」

 起きたばかりで頭も働かないというのに、カムイは早くと急かしてくる。何を急かしているのか分からないが、寝間着姿のままにマクベスは部屋を出ることになった。朝だというのに確かに城内は世話しない、あっちをメイド、こっちをメイドと、かつてないほどの慌ただしさである。
 そんな中を仮面もしてない、万灯してない、頭は海藻昆布のようなウェーブで決めたマクベスはあるいている。まさに寝起きという感じであった。

「あ、マクベス様。おはようございます」

 メイドの一人にあいさつされ、ようやく頭が動き始める。色々と聞くことがあった。
 なぜ今日は起こしに来なかったのか、なぜカムイが起こしに来たのか、なんで引っ張られてきたのか、その他諸々etc……
 それを聞かなければ寝間着姿で連れてこられたことと釣り合わない、ここまでした理由がそれほどのものだとは思わないが。

「さぁ、説明してもらいましょうか!」
「本日、ガロン王様がお越しになるということです」
「承知しました」

 メイドに承知しましたというほどに、マクベスの頭は真っ白になっていた。

◇◆◇◆◇





「お父様が来るの?」
「ええ、そうです。ガロン王様がいらっしゃるのです」

 いつもどおりの服装に身を包み、マクベスは誰が来るのかをわかっていなかったカムイに誰が来たのかを告げていた。
 ガロンがやってくると聞いてカムイは内心不安であった。今思えば、ガロンという父がいることは聞いていたが、こうして会うのは記憶を失ってから始めてなのである。

「大丈夫です。この半年間、私があなたを教育してきたのですから」

 自身を持てとマクベスはいう。大丈夫、今日まで学んできた通りにすればいいのだと。カムイはその言葉に元気良く頷いて、静かに城門が開くのを待つ。そして、重々しく門が声をあげ始めた。
 今日だけはメイドたちも全員整列して待っている。マクベスが帰って来る時はいないことすらあるのに、でもそれは仕方無かったマクベスとガロンでは月とすっぽんと言ってもいいくらい権力とか大きさが違うのだから。マクベスもそれは理解している。
 だが、全てのメイドがパリパリ新品の服に身を包んでいることに、些か疎外感を感じる。
 いやいや、ガロン王様以外の者からの忠誠など不要だ、そう不要なんだ。
 内心に生まれた悔しさにサヨナラを告げて、マクベスは門の奥へと瞳を向けた。

◇◆◇◆◇





 大きな体躯に堀の深い顔、見据えるような眼から温かみを感じられない。
 策を巡らせ覇道を歩む覇王という者を体現すれば、このような男が生まれてくるのだろう。
 暗夜王国の王、ガロンは不敵な笑みを浮かべたままにその姿を露にした。

『よくおいでくださいました、ガロン王様』

 その姿に怖れ戦いたメイドたちが揃って礼をする。その視線から逃れるように行われた一糸乱れぬ深々とした礼は、訓練された兵士に負けるとも劣らない。
 おかしい、これほどの統率のとれた行動、私は見たことがないとマクベスは思わずコメントを零し、同時に部下に恵まれない悲しみが掛け抜ける。
 そんなマクベスとは打って変わって、その身に尊敬と畏敬の念を受けるガロンは一歩一歩進み始め、やがてマクベスの眼前に迫った。そのスケールの大きさに、マクベスの背筋が生き物のようにピンッとなった。

「うむ、もてなし感謝する。マクベス突然の訪問だというのにこの纏まり様、流石だな」
「おおっ、勿体無きお言葉、この身に余る光栄でございます」

 深々と礼をする。不安を払拭するほどにガロンの言葉はマクベスの心を浄化する。先ほどの自身を持てというカムイへの言葉が、実は自分自身を鼓舞するためのものだったのだが、それはいらない呪いだったと。
 マクベスの顔色がよくなったことは、隣のカムイにも伝わり彼女の心にも少しだけ余裕ができた。

◇◆◇◆◇



「……久しぶりだな。我が子よ」
「お、お父様」

 マクベスの教え通り、ガロンの瞳をちゃんと見て、カムイは小さくお辞儀をした。

「会いに来てくれてうれしいです、お父様」 
「ほぉ、前はこのようなことも言えなかったというのに、成長したのだな。とてもうれしく思うぞ」

 ガロンはどこか上機嫌に、まるで本当の我が子を褒めるようにその頭を優しく撫でる。怖いくらいに順調な流れであった。
 ガロンの望む王族としての形にマクベスはできる限りカムイを誘導できたらしい。やれ、これで違うだの言われた日には、どうしようかと思っていたから、ここに来て安堵の息をようやく漏らせた。
 どうやら、ガロンは思った以上にカムイと会うのを楽しみにしていたらしい。ならば、それをできる限りサポートするのが私の役目とやる気を見せる。

「ガロン王様、本日はカムイ王女の鍛錬の姿など見られては?」
「ふむ。ではカムイがどのような鍛錬に励んでいるのか、見せてもらうとしよう」
「はい、承知しました、ガロン王様」

 ガロン王様と呼ぶ言葉にも好感のアクセントが入り始める。
 このまま、名教育者マクベスとしてガロンに覚えてもらおうという魂胆である。さすがは軍師を目指す男、いろいろな肩書を求めてしまう抜け目のない行動だった。

◇◆◇◆◇






「カムイよ、昨日はどんな鍛錬をしたのだ?」

 ガロンも休日を楽しむ叔父のように朗らかな顔をしている。
 実の息子たちよりも愛情を注いでいるかのよう、まるでカムイこそが実の子であるかのような振舞いに、メイドたちも若干困惑している。
 だが、少しだけ察せる事情もあった。跡取りの問題で妾の争いが絶えなかったのは暗夜王国の王族関連に仕えているものはよく知っている。
 表面上は気にしいていないように見えても、実は相当気にして疲れていたのかもしれない。
 なら、今日くらいは休日のように楽しんでもらおう。メイドたちはそう考えた。だって、こんなにも仲睦まじく話をしているのだから。

「きのうはね、まほうの訓練をして、さいごにご褒美に絵本よんでもらったの」
「そうかそうか」
 
 快い返答を返すガロンに、カムイも自然と笑顔になっていく。
 この場に広がる爽やかな清涼感に似たものがあった。
 突然の訪問だから、どうなるかと思ったが案外どうにかなるもの、マクベスは安堵の息を再び漏らした。

「その絵本は、誰に読んでもらったのだ?」
「うん、まきゅべすに読んでもらったの!」

 すごくうれしそうに語る。これにはガロンも爽やかな笑顔を浮かべこう答えるのではないだろうか。

『そうか、まきゅべすに読んでもらったのか。楽しいお話だったのだろう? よし、今度はわしがじかに読み聞かせてやろう』
『うれしい、お父様』
『はははっ』

 一同はそんな見ることがそうはできないだろうガロンの表情を期待して、一斉に視線を向けた。




「――――」

 まるで般若のような形相だった。

◇◆◇◆◇





 瞬きをする。全員同時に、ここ一番の統率の取れた行動であった。
 すると、般若は消え去っている。まるで刹那の夢であったかのように、ガロンの顔は般若ではなく、先ほどと同じ優しいおじさん風になっていた。
 その周りの変化にカムイが顔をあげる、優しい目をしたガロンがいる。やはり見間違えだ。

「お父様どうしたの?」
「なんでもないぞ、カムイ。それで今日の朝は何をしていたのだ?」

 マクベスも気の所為だったと安堵の息を漏らした。メイドたちも安堵の息をもらして、再び二人の様子を確認する作業に戻る。

「うん、えっとね、いつもはメイドさんが起こしてるんだけど、忙しいから私が起こしてあげることにしたんだ。はじめてのお仕事って言われたから、すごく緊張したけど、ちゃんとまきゅべすを起こしてあげられたの」
 
 今日の朝のことを話す。ガロンの来訪ということで手が足りない中、それをどうにかするためにマクベスを起こしに行った。
 一人で仕事をこなせたことを嬉しそうに報告してくる。その笑顔はとても眩しい。
 そうだ、こんな笑顔を目の前にして、あんな般若表情ができるわけがない。やはりあれは幻であったのだ。現に今のガロンの顔は健やかなはずだ。
 もう一度、一同はガロンに視線を向けた。

◇◆◇◆◇





「―――」

 疑いようのない般若顔、殺意の波動がヒシヒシと伝わってくるが、そのカムイの頭を撫でる手だけには温もりがあった。
 正確には自身の顔を見せないようにするために撫でているのだが、その手は本当に優しい手つきである。
 すべての優しさは撫でる手に委ねた。そして震えるもう片方の手、そのあり方が語っている。
 今から、誰かを折檻すると。

「で、ではガロン王様。昼食は楽しみにしていてください」
 
 最初に動いたのは厨房担当のメイドたちであった。上文を手早く読み上げて、そそくさと撤退する。
 それをガロンは止めなかった、当たりはここではない。

「で、では、私達は備品の整備に、も、戻らせていただきます」

 次に備品整備の者たちが蜘蛛の子を散らす勢いでホールから姿を消す。それもガロンは呼び止めなかった。
 いったい誰? 残るメイドはモーニング担当と来賓担当だけである。
 この中に、ガロンの機嫌を損ねた原因がいるとすればそれは誰なのか。たぶん、今の会話の中にヒントがある。
 そう、最も許せないことが起きたのは2回目のカムイの発言の時だ。あの中に問題の人物がいたということだろう、マクベスは犯人を捜す。
 あの中の登場人物の中であやしい者、それは一人しかありえなかった。
 仮にもカムイは王女である。そんな王女に対して物事を頼んだという点、それがガロンには許せなかったのだ。
 だから、マクベスは静かに指を突きつけた。

◇◆◇◆◇





「モーニングコール担当のメイド。そうあなたしかありえない」
「な、わ、私は、私はカムイ様に初めてのお仕事を、頼んだだけで――」
「ええ、わかっていますガロン王様の突然の来訪に、戸惑っていたことは。ですが、それでも、自身の職務は終えるべきだったのです。これはあなた自身が生んだ、あなた自身の間違い、ただそれだけのことです」

 マクベスはそう言い切った。
 ガロンの折檻がどういうものかはわからない、わからないが、このメイドはもう駄目だろうと思いながら。 

「マクベス……」

 覇気を含んだガロンの声が聞こえた。メイドはすでに震えている。震えているが、そんなこと知ったことではないといわんばかりにマクベスは爽やかにガロンに向き直った。
 自分でないとわかった瞬間に人は安心安堵するもので、マクベスの中にあった疑惑は晴れ渡っている。もうこのメイドをどうにでもして構いませんと、晴れやかな顔さえ浮かべていた。

「そうか、流石だなマクベスよ」
「こんなもの朝飯までございます、ガロン王様」
「ならば褒美をくれてやろう。向こうの部屋でな」

 どうやら、ガロン直々に褒美をくれるらしい。どんな褒美だろうか、こうして犯人を見つけ出したのだ。それに見合ったものであるに違いない。

◇◆◇◆◇






「そこのモーニングコール担当のメイドよ」
「は、はいいいいいぃぃ、ななな、なんでしょうか、ガロン王様!!!!!」
「ここで待っていろ。他の者はカムイと共に来賓席で待っていろ」

 哀れなメイドにいたわりの言葉をあげることもできず。カムイは手を引かれて、他のメイドと共にその場を後にする。
 毎度は今にも泣きそうな面持ちで、ガロンに連れられて行くマクベスの姿を恨めしそうに睨んでいた。
 殺されたら化けて呪ってやるぅ。失意の波動を放射しながら、メイドは自分の最後を想像していた。この重苦しい空気の中で死んで行くのだろうと。
 そこで、息苦しく感じた殺意の波動がだんだんと離れていることに気が付く。何があったのかはわからない、メイドはキョロキョロと視線を動かす。動かして、それがだんだんと二人と共に扉へと向かっていることを突き止めた。
 ガロンから漏れ出る波動がなぜ弱くなったのか?
 答えは単純、彼がメイドから離れていったからである。
 ではなぜ離れていったのか、それはあの殺意の波動をぶちまける相手が決まったからということだろう。

◇◆◇◆◇






 それは誰なのか、メイドは少しだけ考えた。
 最初の幻に見えたガロンの悪魔的表情が真実だったとすれば、すでにその時には問題発言があったということになる。
 そう、最初のカムイとガロンの会話である。
 その時カムイが口にした語句の中で、おかしなもの。
 絵本を読んでもらった事について話し始めて、ガロンは何を訪ねたのか。彼は誰に読んでもらったのかを聞いていた。
 その言葉に対するカムイ様の答えは確か――

『うん、まきゅべすに読んでもらったの!』
「……?」

 困った事にメイドには何もおかしなところが思いあたらなかった。
 まきゅべすとカムイ様が呼ぶことには何の問題もないわけで、そもそも半年間もそう呼ばれていたのだから。
 仕方ない、メイドはこの事件が迷宮入りしたことを察して考えるのをやめた。
 やがて遠ざかった殺意の波動にマクベスが包まれていくのをマジマジと見ながら、扉が閉じたと同時に響く心地よい重低音と金切り声にスカッとした気持ちになった。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「さて、御昼の準備しないといけませんね」
「……わ、私も手伝う!」
「カムイ様、大丈夫ですよ。私達でなんとかしますから――」
「お、お父様とまきゅべすに作ってあげたいの。だ、だめかな?」
(下からのおねだり目線、大いにアリです。それに、自分の子供の手料理となれば、ガロン王様の機嫌も回復すること間違いなしですね)
「わかりました。ちょっとだけお手伝いしてくださいね」
「うん、ありがとう。とってもおいしいご飯作ってみせるから、まっててねお父様、まきゅべす!」

 二人の知らぬ場所で、第二ステージの準備は着々と進みつつあるのだった。

 今日はここまで

 まきゅべす、可哀そうに。理由もわからないまま波動に飲み込まれるなんて…

◇◆◇◆◇



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『自分の胸に聞くがいい、この褒美の訳をな』

 わからないし、思い当たる節がありません、などとマクベスは言えなかった。実際何も思い当たる節などないのだが、その場は、申し訳ありませんガロン王様と言わなければならぬ。
 拳一つ分宙に浮いたまま、しかも拳に腹を支えられた姿勢では胃液が逆流しかねないとすぐに繕うと、足が地面に接する。地面に足がついていることがこんなにも幸せなことだとは思わなかった。腹を押さえながら部屋を出て、ニヤニヤ笑うメイドと共にガロンの後を追う。
 実際、二十分もの時間が過ぎていた。ガロンという鬼に睨みつけられるのは、さすがに堪えた。世の中には睨みつけられるのがご褒美というのもあるが、彼はマゾヒズムではなくどちらかというとSで、マクベスだからMというわけではないのである。

「マクベス様、大丈夫でしょうか?」
「嬉しそうな笑みを浮かべて何が、大丈夫でしょうか?ですか!?」
「では、言い換えますね。ざまあみやがれ、こんにゃろう。私を犯人に仕立て上げて、なに事件解決って顔してんの、意味わかんないです」

 メイドとしての品格など先ほどの恨みで消し飛んだのか、モーニングコールをこいつに頼むことはもうないだろうと、マクベスは何度も頷いた。

◇◆◇◆◇






「お父様ー、まきゅべすー」

 と、そこで奥から間の抜けた声が響いて来る。
 見やればカムイだ。ガロンの表情が見る見るうちに休日のおじさんの顔になっていく、孫を見ると怒りも消え去るのかもしれない。
 しかし、先ほどマクベス折檻に使用した右腕だけはフルフルと震えている。どうやら怒りは収まっていない、だがマクベスはもう気にしないことにした。もうどうにでもなれと思えば、悲惨な運命も受け入れやすくなる。
 殴られても死ななければいいと考えれば、殴られることも悪くないと思えてくる。

「どうした、カムイよ?」
「だって、お父様もまきゅべすも、来てくれないから……」
「そうか、すまなかったなカムイよ」
「ううん。あれ、まきゅべす。なんだかとってもやつれてるよ?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
「ううん、まきゅべす、つかれてるとき、少しだけ肩がへにゃってしてるんだよ? まきゅべすだって、つかれるときくらいあるはずだから、そんなうそつかないでよ……」

 どうやら思った以上にカムイはマクベスのことを観察しているようで、そんな癖があるのかと彼自身、少し恥ずかしく思う。

「そうでしたか、カムイ王女は観察力も高くなっているようです。くっくっく、とても素晴らしい成長ですねぇ」
「えへへ」

◇◆◇◆◇




 マクベスに褒められて上機嫌のカムイであるが、それに比例してガロンの右腕の振動も高まっていく。それを見てカムイがすっと手を伸ばす。
 その震える右手に手が触れると、その振えが嘘のように消えていく、まるで今際の夢であった。

「お父様も、つかれてるの?」
「ふむ。そうかもしれんな」
「お父様とまきゅべすも無理しちゃだめだよ」

 ガロンの右手を優しく摩る。
 それを横目に見ながらマクベスは、本当にガロンがカムイと過ごすのを楽しみにしているのだとようやく察した。理由はどうでもいい、これで怒りが静まり悲惨な運命が少しでも緩和できるなら安いもの、そもそも自分の活躍をアピールしようとしたのが間違いだったのだとマクベスは察する。

(今日はカムイ王女の成長をガロン王様は確認しに来られたのだ。それに、カムイ王女が結果として暗夜王族としてふさわしい者になればいいだけのこと、途中経過ばかりを見せつけたところで、何の意味もないというのに、ガロン王様が来られたことで、少々舞い上がっていました。反省しなければなりません)

 主役はカムイ王女であるというのに、自分を前に出し過ぎていたことを反省し、マクベスは心機一転の面持ちで顔をあげる。

◇◆◇◆◇






 ここから先は、問題なく過ごせるだろう、そんな淡い期待を抱き仮面と髪を整える。その足並みは軽いもので、ガロンとカムイの元に歩み寄る。

「ガロン王様、カムイ王女。そろそろ御昼食の時間にございます」
「うむ、そうか。カムイよ、我と一緒に食べるとするか?」
「うん! まきゅべすも一緒に食べよ?」
「ありがとうございます。ガロン王様、私も同席してよろしいでしょうか?」

 ガロンの右手は震えていないし、その顔は穏やかであり、カムイがそう望んでいるのだ、同席を許可すると告げる。
 予想通り、カムイの肉体的接触(健全)によってガロンの怒りは抑え込まれているらしいと。これを持ってすれば今日は越えられる、マクベスの中に希望の光が改めて灯ったその時。

「あのね、今日の御昼ごはん、私もちょっと手伝ったんだ」
「ほう、そうか。カムイはすでに調理もできるほどになっているのか」
「えへへ、とってもおいしそうなのできたから、まきゅべすとお父様にもたべてもらいたいの!」
「そうかそうか」
『……え?』

 これにはマクベスとモーニング担当メイド二人が疑問の声をあげ、前方から聞こえる多数の駆け足に不安が加速した。

◇◆◇◆◇






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 二人の不安を煽るように現れたメイドたちに連れられ、通された食堂はどよめいた。そんな中、すでに死に装束ともいえる真っ青な雪化粧を施した厨房担当のメイドがマクベス包丁を手渡そうとしている。その剣で好きにしてくださいと言っているようだった。
 まて、早まるな。まずは状況を説明するようにと、マクベスは詰め寄った。涙を流しながら、そのメイドはごめんなさいを皮切りに厨房へとマクベスを案内する。
 その瞬間、マクベスの目から涙がこぼれた。その燦々たる光景にではない、入った瞬間に目と鼻に一気に感じた刺激の所為である。鼻に突き刺さる刺激、目をこすりたくなるような痒みに保護のためと瞳に潤いが延々と供給されていく。
 これは一体なんなのですか!?思わず、言わずにはいられない。

「カムイ様が手伝ってくれた御食事の影響です」
「食事、食事ってなんですか!? ここは魔女の工房ですか、この粘膜を刺激するようなむせかえる臭い、修業時代を思い出してしまいますよ!」
「うっ、頭痛い。きもちわるっ……」
「ちょっと、モーニングメイド。勝手に外に出ないでください」
「だ、だって、これあれですよ。人が行動できる範囲の臭いじゃないですよ。このままじゃガロン様ではなく、カムイ様に殺されてしまいます!」

◇◆◇◆◇






 メイドの言うことはもっともである。こんなもの出せるわけがない……。なにせ盛り付けしたら、皿が解けるのではないかと思えるほどの激臭である。
 この刺激の大本はどれなのかとマクベスは見まわす。それは果たして見つけられた。何時もならシチューかスープを作りあげている頼もしい大鍋。今はその蓋が閉じている。
 だというのに、この漂う刺激臭を隠し切れずにいる。

「あ、あれですか……」

 恐る恐る指させば、厨房勤務のメイドたちが静かにうなずいた。そして開けた瞬間に死傷者が出ると誰もが覚悟する。
 特に至近距離では最悪死も免れないだろうと、なぜなら行動開始とともに隣接している者を高確率で滅殺するとそれは予告しているからだ。とてもではないが、開けないでそのまま廃棄処理すべきというのが自然な判断である。

「厨房担当、カムイ様には何とお伝えしたのですか?」
「は、はい。か、カムイ様には最後の仕上げをしますからとお伝えしました。最後の仕上げって言っても何をすればいいのか全然わかりません!」
「誰にもわかりませんよ。まずは誰があれを開けるかということですが……。私はここで死ぬわけにはまいりません」
「腰ぬけですね」
「あなた、メイドとしての品格失い過ぎですよ?」
「私を犯人に仕立て上げたあなたに言われたくないです」

◇◆◇◆◇






 しかし、マクベスはここで倒れるわけにはいかないのだ。なにせ、あのテーブルで一緒にご飯を食べることになっているのだから。今、食堂ではガロンとカムイが待っており、ゆっくりと昼食の最終準備が始まっている。

「それで、この鍋の中身は何なんですか?」
「煮込みハンバーグです」
「……元煮込みハンバーグですか」

 蓋を開けなくても『元』と言いきれてしまう。とりあえず、十字判定の即死トラップを解除する担当を決めなくてはいけないので、メイドたちに決めさせる。
 厨房担当はできる限りの悪あがきをさせるためにも必要であったので、蓋を開けさせるわけにはいかなかった。その結果としてモーニング、来賓、備品担当の中から一人、人柱を差し出す流れと相成る。

「ふふっ、一度死にかけたこの身に、怖いものなどありません」
「今日の運勢は上昇、上昇傾向、だから大丈夫大丈夫。きっと大丈夫」
「お母さん、お父さん、私に力をください、今、今一度でいいので、顔も知らないけど、助けてください!」

 三者三様に辞世の句を読んで挑んだ結果。

「え、なんで私なんですか。ありえない、だって、今さっき死に掛けたばっかりなんですよ? ちょ、やめ、離して、離してー」

 モーニングに決まった。

◇◆◇◆◇






 モーニングは素朴なカチーフを頭に被り、その口は忍の覆面を付けた。
 だが、目には何もつけていない。眼鏡くらいつければいいのにと思うが、それは仕様上出来ない相談で、どちらか選べと言われたモーニングは泣きそうな顔のままに口を選んだのだった。
 わずか5mという距離をモーニングは進む。一歩進むたびに目から涙が溢れ、なんでこんなことになっていのかと自身を呪う。逃げ出そうとしても、すでに退路は封鎖されている。一同が見せる圧倒的な統率力を前に成す術などなかったのだ。
 死んだら化けて全員呪い殺してやる。マクベス単体を怨む予定が、同僚全員に対してになった。
 足に力を入れ、床を踏みしめどうにか目の前にまで進んだ。もう視界は涙で滲んで取っ手も見えない、モーニングは手を静かに振い始める。手さぐりに手を振い、そしてそれを掴んだ。いや、掴んでしまった。あとは上にあげるだけと手筈も整ってしまった。
 深呼吸をしたいけど、この目の前で深呼吸などすればすぐに倒れることになる。立ち往生は望めない、もう覚悟を決めていくしかない。毒を食らわば皿までと考えれば、まだ準備中の位置である。そう考えればまだ大丈夫なはずだと、彼女は少し楽観的に考えて、ここ偽りの余裕が生まれた。
 そして、その余裕のままに蓋を開けたのだった。

◇◆◇◆◇






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふむ、遅かったが、何か問題でもあったのかマクベス?」
「いえ、なにも問題などございません。それよりも、カムイ王女とガロン王様との昼食に遅れてしまい申し訳ありません」
「なに、問題はない。カムイから聞いている。今は魔法を先行しているそうだな?」
「はい、いずれは剣を握られることになるかもしれませんが、まずは物事を覚えることに力を注ぐべきと考えました故」
「まきゅべす、おしえるのとってもじょうずなんだー」
「くくくっ、そうか。さすがはマクベス、頼りになる。それで、カムイよ、魔法の勉学とは――」

 ガロンとカムイの談話を眺めるマクベスの顔はいつものままであった……が、内心はとてもドキドキを繰り返している。
 先ほどの遭遇戦でモーニングはご退場となったのだから。たぶん死んではいないが、数日はベッドから出られないだろう。何せ、蓋を開けてすぐに逃げ出して吐いて倒れたのだから。そんな香りをはなっていた代物を、今からここにいる三人は食すことになるのである。
 料理の順番は決まっていた。
 まず、パンが来る。
 次にスープが来る。
 そして元煮込みハンバーグが来る。
 その後のことなどマクベスには心底どうでもいい。
 デザートはカムイの大好きなものにしてあるらしいが、そこまで行けるかどうかなのである。

◇◆◇◆◇






 あれをカムイが試しに食べたとは思えない。たぶん、絵本で見た食べ物を似せようとしたのかもしれない。
 あんな五色に輝いた物質は早々お目にかかれない代物で、カムイがマクベスとガロンに食べてもらいたい一心で、手伝いをしたのだろう。
 それを食べないという選択肢はない。いや、カムイのためではない自身のためである。

(……あとは厨房担当にすべてを託すしかありません。どうにか食べきれるものにしてくれるはずです。そう、絶対に)

 カムイの手伝った料理を食べ残すというのがどれほどの反逆的行為か、わからないわけではない。ガロンを目の前に食べられませんとは言えないし、残すのもご法度となると、もう飲み込むしかない。そして、マクベスが食べきれないとなると、メイドたちの運命もおのずと決まる。
 メイドたちはマクベスと運命共同体という状態でもあった。そう考えると、責任という重しで胃が痛くなる。
 そんな彼をいたわることもなく、昼食の始まりを告げるためにワインが注がれていく。カムイにはまだ早いということかブドウ果汁ジュースが置かれた。

「では、カムイの成長を祝して、乾杯といこう」
「ええ、カムイ王女の健やかなる成長に乾杯」
「かんぱーい!」

◇◆◇◆◇





 穏やかに始まった昼食、カムイとガロンは置かれた食材に次々に手を伸ばしていくが、マクベスはじっとじっと耐えていた。
 出来れば出来たてで、安全な物を口に含みたい。ワインももう少し飲みたいが、それはできない。
 なぜならスープとワインは流し込むための最終手段残しておく必要があるからだ。
 パンは口の中をリセットするのに利用するために二枚ほどキープする。
 彼なりに考えた完璧な作戦であった。

「ふむ、カムイの手伝った料理というのはまだか?」
「も、もうそろそろでございます。ガロン王様」
 
 もうそろそろと言っているが、そんなの願い下げである。むしろ来ないでほしいとさえ思っている。
 もし来たとしても、食べられるレベルに変貌していれば問題ないのだからとマクベスは言い聞かせる。
 大丈夫、厨房担当はどうにかしてみせますと今にも倒れそうな顔で言っていた。期待と切望を織り交ぜながら、彼は待った。
 そして。

「お待たせいたしました」

 カタカタという音ともに配膳台が入室してくる。
 その声はとても穏やかで、何かを口に付けているような雰囲気はない。その配膳台が横付けされると、丁寧に一つ一つが配られる。
 そして、最後にマクベスへの配膳が終わったところで一枚紙が手渡された。見やれば、軽やかな笑みを浮かべる厨房担当の姿がある。

◇◆◇◆◇






「どうやら、頑張ってくれたようですね」
「出来る限り頑張りました、マクベス様も頑張ってくださいね」

 小声でマクベスが語りかけると、メイドは激励の言葉を零した。
 これならもう大丈夫だろうと、マクベスはスープを堪能し始める。全部というわけではない三分の一ほど、適度に塩気の利いた優しい味、パンも食べた。ワインも飲んだ。とても満たされた気持ちになる。

「まきゅべす、いっぱい食べ始めたね」

 今まで食べていなかったマクベスにカムイがそう言葉を掛けるが、慌てることなく彼は言葉を返す。

「ええ、少しお二人がお話している姿に見惚れていましたので、食べてないことを今思い出してしまいました」
「そうか、くくくっ。だがもう気にすることはない、カムイの料理も来たのだ。腹いっぱい食べようではないか」
 
 そうしてガロンが静かに蓋へと手を伸ばし、カムイもそれに手を伸ばす。マクベスも余裕の面持ちで手を伸ばした。
 いったいどんなものが入っているのかという期待に、刺激臭がしなくなったことでの安心感、それらがマクベスに余裕を与えている。
 金属と金属が触れ合う音を皮切りに静かにそれを持ち上げると、そこには虹色の輝きを放つ異形物体があった。

◇◆◇◆◇




 

 あの刺激臭はない、刺激臭はないがマクベスは小首を傾げた。
 おかしい、あの時見たのは五色の輝き、今は虹色の輝き、二色も追加されている。

「うわぁ、きれい」

 それをカムイは輝いた瞳で。

「ふむ、始めてみる色だ」

 ガロンは訝しげな瞳で。

「……」

 マクベスは光を失った瞳で数秒眺めると、そのまま食堂を静かに見まわした。もうすでに誰もいなくなっている逃げ足だけは早いようだ。
 そのまま手渡された紙切れを静かに開いた。なにか、攻略のヒントが隠されているのかと思った。何か、何かあるのだと。
 藁にも縋る思いで開いた紙は―――

『臭いを消すのが精いっぱいでした。頑張れまきゅべす』

 ついにメイドにまでまきゅべすと呼ばれるようになったが、もうそんなことはどうでもよかった。
 さきの言葉は確かに激励で、私達の頑張りに答えろと言っているようである。
 溢れ出てきた汗を抑えつつ、その用意された元煮込みハンバーグにナイフとフォークを突き立てる。
 刺さると肉汁とは思えないものがあふれ出てきた。確かにあれを無臭化できるという点は素晴らしいが、これは食べて平気なのか?
 マクベスの疑問は膨れ上がるばかり、だが退くことを許されないのは彼が一番理解しているのだった。

今日はここまで

 あと一回で、カムイとまきゅべす終わり。

 主従崩壊して素になるメイドって、なんかいいよね

◇◆◇◆◇




 

「では、食べさせてもらうとしよう」

 戦端を切ったのはガロンであった。その顔に不安などどこにもない、マクベスと同じ動きでハンバーグにナイフを突き立てていく姿に動揺はない。断面から溢れ出る異形の肉汁を前に慄くこともない、フォークで突き刺し口まで運ぶ、その作業工程全てがスムーズである。
 それをマクベスは固唾を呑んで見守る。マクベスとて死にたくはない。死にたくはないからと躊躇していた。結果的に仕える主君に毒味をさせているという状況なのにである。
 そして、ガロンはそれを口の中に入れた。頬張った。頬は確かにハンバーグを噛みしめるために動き、やがて喉が躍動してハンバーグは胃袋へと吸い込まれる。

「………カムイ」
「お父様、その、ど、どう……かな?」

 カムイの不安げな瞳を受けながらガロンはその頭に手を添えた。優しい優しいおじいちゃんの手である。

「手伝いを果たしたようだな」

 そう彼女を評価し、再び切り分けたハンバーグを口に運ぶ、さも美味しそうにだ。
 これにはマクベスも驚いた。まさか、このような見た眼であるというのに、普通に食べられるというのか?と。

◇◆◇◆◇




 

 この異形物体に対してフォークが二回も進むということは、ガロンの舌は食べられると判断したということである。
 マクベスはまじまじとそのハンバーグの一切れを見つめた。断面から漏れ出る異形の肉汁に、元は肉だったのかわからなくなっている気泡の数々、とてもではないがおいしそうではない。
 だが、もしかするとカムイの行ったことに厨房長の臭い消しが合わさり、奇跡的ケミストリーが引き起こされたのかもしれない。

「マクベスも食べてみよ」

 最後の一押しにガロンの言葉が入った。これはもう食べないわけにはいかないし、マクベス自身もその味に非常に興味があった。純粋な美味に対する興味である。
 究極の料理に対面している錯覚に心が躍っていたことも確かだ。

「はい、ではカムイ王女、私も食べさせていただきますよ」
「うん!」

 カムイ王女に頂きます、マクベスはそれを口に放り込む。
 口の中に広がる苦々しく嘔吐感を催す激しい辛味に、一噛みすれば広がる異臭とマーガリンのような舌触り。そして喉を通る時に押し寄せ絡まる七色ソースの輝きが、あらゆる器官に痛烈なダメージを与える。

◇◆◇◆◇




 
「ごふっ、ごほごほごほごほごほっ!!!」
 
 むせる。
 むせて仕方がないが、何か違った。そう、これはむせているのではない。五回むせる、吐き出しそうのサイン。
 そのサインをワイン一口で胃まで付き落として、マクベスは背中に発生した脂汗に驚きを隠せないかった。
 なんだこれは、これを二切れもおいしそうに食べるって、ガロン王様はどうなっているのか? 体が死んでるんじゃないのか?
 そんな不謹慎なことを思ってしまう。
 やはり見た目の通り、普通の人間が食うには異形物体である。
 これが流行る頃にはあらゆる文化が消滅している頃ではないだろうか。食が消えるときに文化は消滅するというから、これは遥か先の未来の食べ物なのだろう。

「うまいだろう、カムイの手伝った料理は?」
 
 オブラートに包んで糞不味いし、口の中が臭くって叶わんし、なんでこれを数十回と噛むことができるのか意味が分かりません。できればそう叫びたかった。できるはずもないことだけど。
 まだ一切れしか消費していないそれを見ながら『か、変わった味ですが。はい、お、おいしいんじゃないですか?』とできる限り繋げられる言葉を繋いで沈黙する。

◇◆◇◆◇




 

 ガロンは別段苦しんでいる様子はない、マクベスは自分の味覚を疑った。スープを口に少し含み、パンをかじってリフレッシュし、端を少しだけ食べる。
 口の中という平和を暴徒が荒らすに荒らしていく。歯の表面を、口内の粘膜を、舌に通っている神経を、そして口蓋垂(こうがいすい)の先端に損傷を与えて胃へと南下していく。その間、マクベスは膝を抓る。
 内部の痛みと外部の痛みに耐え抜いて、ようやく息を落ち着かせる。
 思ったよりもこれは凄まじい攻撃力ですねぇ。
 残っている物資を見ながら攻略方を考える。
 元煮込みハンバーグは残り約110グラムで、全身が七色ソースに包まれている。
 これを食した直後より、激臭、激痛、さらには異様な舌触りに加え、体が拒絶反応を発し始める。
 後遺症はこれから起きることなので、もう気にしない。数日間は寝込むことになる覚悟で挑む。
 それに食べ切らなければ命はない、ただ食べたところで命が繋がるかもわからない。残念ながらメイドが現在いないこともあって、追加の料理やおかわりが来ることはなく、残っているアシストはスープがスプーン五杯分、ワインが二口分、そしてパンが一切れだけである。
 計算してみたが、一切れ一切れ消化するためにアシストすれば切れてしまうのは明白だった。作戦プロットの段階で、決死作戦に決まっている状態だった。

◇◆◇◆◇




 

 マクベスは大きく息を吸った。吸って、フォークとナイフに手を掛け、ハンバーグを均一に切り分けて合計五切れとする。
 そして、ナイフを置いて右手にフォーク、左手の届く範囲にスープにワイン、そしてパンを置いて準備を整えた。
 肩の力を抜いて少しだけ呼吸を整える。パンを一切れちぎって食べてお口リセット。

(では……行かせていただきましょう)

 フォークが最初の一切れ目を捉え、ゆっくりと口に運ばれ、それはやがて口の中へと入り込んだ。今日のハンバーグは横に幅があるタイプで、飲み込むにも一度噛む工程を求められ、マクベスは自爆スイッチを押すようにそれを噛みしめる。
 バチュッという破裂音と共に口に広がる強烈な悪寒、それが周囲に爆発的に広がろうというところで、ワインを流し込む。目から涙が零れたが、間髪入れずに二切れ目を同じ方法で処理する。
 ワインのアルコールはそれなりに強いというのに、まったく酔いが回る気配もなく、三切れ目にフォークを刺す。
 気を休められない、休めたらフォークが止まってしまうからと、マクベスは死に物狂いで食べ続ける。

「……あむ……ううううっ」

 そんな可愛らしいうめき声が彼の耳に届いたが、気にすることなく掻き込み続けた。一噛みしたらスープを一口というテンポで突き進み、スープがなくなった頃にそのハンバーグは最後の一切れとなっていた。かなりの奮戦である。

◇◆◇◆◇




 

(あ、あと一切れ……)

 残っているのはパンだけである。喉が渇くチョイスだが、仕方ないとマクベスは左手にパンを握る。
 残り一切れとなった異形物質をフォークで拘束し、持ちあげれば滴り始めるねっとりとした七色ソース。明かりに照らされてテラテラと光る様は何とも言えない危険さを醸し出すが。それを臆することなくマクベスは口で受け止める。
 噛みしめる度にあふれ出る汁。口の中に広がる最後の搾りたては、圧倒的な刺激と味で口内を染め上げようと迫り始める。
 口内の陥落は時間の問題だと誰もが目をつぶる中、その瞬間に何かが少しばかり開いた口に送られた。
 パンである。

(私の計算が確かならば、これで!)

 口の中に入り込んだシミ一つないパン、無防備なその存在はすぐにその搾りたてに染め上げられ始める。
 広がろうとしていた香りや味がパンをシミパンに変えていく、口の中の被害が和らいでいくのをマクベスは確かに感じた。パン吸収作戦が完全な形で成功した瞬間である。
 間髪入れずにシミパンをマクベスは飲み込み、異形物質も胃へと落ちていく、やがてパンもハンバーグも姿を消した。
 勝利したとマクベスはフォークを置く。胃に落ちるまでにハンバーグは彼の食道にダメージを与えていったが、その顔は晴れ晴れとしている。

◇◆◇◆◇




 

「ほう、マクベス。わしよりも早く食べきるとはな」
「ええ、熱いうちに食べるべきですからねぇ」
「くくくっ、正直に言えば良い、カムイの料理がおいしかったとな」
「どうやら、ガロン王様にはごまかせないようですねぇ」
「ふはははっ、幸せ者だな。今日は夕暮れには戻らなくてはならん。だから、こうしてカムイが手を加えてくれた料理を食べられたこと、うれしく思うぞ」
「いえいえ」

 彼は安堵の息を漏らした。たぶん、明日は熱を出すだろうが、今日を越えられるなら何の問題もない。ここにマクベスは自身の命が繋がったことを確信する。
 この後はカムイの鍛錬をガロンに見てもらうだけ、もうゴールは見えたも同然、ゆったりと背もたれに身を任せたところである。
 クイクイッ……と、彼のマントを引っ張る何かがいた。マクベスは静かに振り向く。カムイだ。

「……ま、まきゅべすぅ……」

 今にも泣きそうな顔でカムイがマクベスを見上げている。
 その口元には七色ソースがあった。あるがそれを取ることも忘れて、カムイは助けてという顔でマクベスに懇願の眼差しを向けていた。
 何から助け手と言っているのかと視線をさらに下ろすと、そこにはお皿がある。
 それは何のサインですか?

◇◆◇◆◇




 

「か、カムイ王女?」
「どうしたのだカムイ?」
 
 二人に見下ろされたカムイは身構えるが、勇気を振り絞るようにその体をフルフルと震えさせて、手に持ったお皿を静かにマクベスに手渡してくる。

「そ、その、お、おなかいっぱいで、食べられない……ま、まきゅべす、食べて……くれない……かな?」
 
 カムイは震える声でそう言った。その言葉にマクベスは今さらになって、カムイにこれが食べられるわけがないと察したのである。
 そして口元にある七色ソースは、これを一口か一齧りはしたという証拠だろう。更に顔色も先ほどと比べてとても悪く、この味に衝撃を受けたことが察せられる。
 というか、マクベス自身またこれを食べるなど許容できるものではない。本当に死んでしまう。どうにかして回避しようとする。

「か、カムイ王女。う、うれしいのですが――」

 カムイ王女と同じくお腹がいっぱいでと伝えようとしたとき、鋭き閃光の眼光が彼を射抜く。

「ふむ、マクベスよ。カムイがお前に食べてほしいと言っている。それを食べないとお前は言うのか?」

 先ほどまでの余裕はどこかへ消え去る。
 そこは、わしが食べようって言ってくださいよぉ!と心の中で咆哮するが、それが声に乗って出てくることはない。そして、カムイは今にも泣きそうな顔でマクベスを見上げたまま、マクベスは見事な袋小路に佇んでいる。

◇◆◇◆◇





 
 そんな顔をされても、作った物くらい食べてくださいよ、本当に。
 しかし、異形物質はもうマクベスが食べる以外に処理の方法がなくなっていた。思わず腹部に手を添えて優しく撫でる。
 ポンポンや、あと少し頑張れるかと。無論答えなど帰って来ない。わずかながらの現実逃避を経て、ちらりとカムイを見る。

「ううっ、ひぐっ、まきゅべすぅ……」

 もう涙は眼尻に溜まっていた。ドレスの裾を力強く握って、縋るような声には謝罪の念さえ感じられる。
 父親の前でこういった姿を見せることが恥ずかしいのかもしれない。こうして判断を渋っている間にカムイが泣き出せば、ガロンの機嫌が損なわれる。

「……はぁ」

 マクベスは覚悟を決める。

「ガロン王様、よろしいのですね? このカムイ王女が手伝ったお料理を、この私……マクベスが食しても」
「ああ、構わん」
「では、ありがたく頂きましょう」
「まきゅべす……」

 心配そうな顔のカムイにマクベスは頷きを返し、その手にフォークとナイフを持つ。お皿に乗った予想100gを前に、胃液が逆流しそうになる。

「……いただきます」

 そして、マクベスは四切れに切ったそれを口に含み、一口噛んだところである。
 視界が白く染まり、やがて目が回り始めると、体中の力が抜けて、そのまま椅子から転げ落ちた。

◇◆◇◆◇





 

「ま、まきゅべす! まきゅべす、しっかりして、まきゅべす!!」
 
 その音とカムイの叫びに厨房で待機していたメイドたちが様子を確認しにやってくる。
 そして、顔を真っ青にして倒れているマクベスの姿に仰天し、すぐさま介抱に入る。
 寄り添うカムイに揺られながらも、マクベスはピクリとも動くことはなかった。そして、胃の中身を出さなかったのは彼の唯一の踏ん張りである。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 視界の明滅よりも体中から溢れる汗が気になった。意識が静かに覚醒すると、見慣れた自室の天井が顔を見せる。
 目覚めるとそれなりに疲れも抜けるというが胃の中もそうだが、何より近くの鏡に映るいつも以上に顔色の悪い自分に思わず、マクベスは思わず苦笑を洩らした。
 倒れる寸前の記憶を精査していくと、押しつけられた100gのハンバーグの一切れを口にしたところで途切れている。

「……どうやら、敗北したようですね」

 虫の息のままにそう零して、マクベスは静かに天井を眺める。
 そしてすぐに思い浮かんだのはガロンの顔である。
 倒れている間に何があったのかは知らないが、すぐに釈明しなければならないと体が動き始めていた。

「ううっ、いけません。こんなところで、倒れているわけ……には……」

◇◆◇◆◇





 

 布団を押しのけて立ちあがろうと両足に力を込めるが、あまり力が入らずとてもふらふらする。
 ノートルディアの風土病もこのような物でしたかと、ぼやけた頭で考えながら、机に置かれた仮面に手を伸ばしたところで、誰かが部屋へと入ってくる。
 チャプチャプという水の音に、持ち運ぶのに力む可愛らしい声。入ってくるために背中を使って扉を開けたようで、マクベスがベッドから出ていることに気づいて驚くままに近寄ってくる。

「まきゅべす、だめだよ。まだ、ちゃんとねむってないと、ぜったいあんせーだって、メイドさんがいってたんだから……」
「し、しかし、ガロン王様が……」
「お父様、もう帰っちゃった……」
「そ、そうでしたか……」

 すでにガロンは帰った。その言葉を聞いてマクベスの全身から一気に力が抜けていく。色々と頑張ったが、結果がこれではと内心ため息が漏れる。
 呆れたのか、それとも時間になったからなのか、ガロンは帰っていった。だが、寝ている間に色々なことが起きているのかもしれない、恐る恐る彼はカムイに尋ねる。

「カムイ王女、誰か……その……メイドの中で処罰されてしまった者は……」
「ううん、みんな大丈夫だよ」
「そうですか……」

 その言葉に安堵の息が漏れる。
 メイドたちに落ち度はなかったのだから、ここで誰かが死ぬことになったとすればそれは自身の無能さの所為である。
 モーニングだけはそれに含めないが。

◇◆◇◆◇





 

「うん、だからもう、ベッドに戻って。まきゅべすいっぱい無理したんだから……」

 小さい手に引き攣られてベッドに戻る。
 カムイ自身にあまり力がないから絞りきれていないタオル故に、マクベスの額は水で濡れ濡れになるが、それを叱りつけるつもりはなかった。
 彼女が入室してからしばらくの間、沈黙が部屋の中を包み込んでいく。マクベスは自分から話を切り出すつもりはなかった。何か言いたいことがあるなら言えばいい、わかってないなら体の調子が戻ってから教えればいいと。
 そして、しばらく経った頃に、ようやくマクベスの服がクイクイと引っ張られる。

「……」
「なんですか?」
「……」
「黙っていてはわかりませんよ?」

 いつかの時のコミュニケーションのようにマクベスは言葉を述べ、カムイはそれに答えを出すために唇に力を入れた。そして、マクベスの服をカムイが力強く握った時、その頬に伝うものがあった。

「ごめん……なさいぃ」
「……」
「ごめんなさいぃ、ごめんなさいぃ」

◇◆◇◆◇





 

 ボロボロとポロポロと涙が静かに溢れていく。溢れた涙は首筋にまで達してドレスにまで届くが、その涙をマクベスは拭ったりしない。ただただカムイの言葉を待つことに徹する。
 それはカムイが自分に非があったことを理解していて、それを伝えようと頑張っているからだ。その頑張りに手を差し伸べることをマクベスはよしとしなかったし、カムイもマクベスが何も言ってくれないことに、信頼のようなものを感じていた。私の言葉を待ってくれていることに応えたくて、涙を拭い言葉を紡ぐ。意思を伝えることに、カムイはまっすぐに向き合っていくことを選んだ。

「わたし、まきゅべすとお父様によろこんでほしくて、ひぐっ、でも、わからないのに、できるって、へんなふうに、あんなに、あんなにま――」
「そこまでよいです。カムイ王女」

 と、カムイの言葉はマクベスの言葉に止められる。
 ぬっという動きで静かに出てきた手が彼女の頭を優しく撫でた。マクベスの顔は今も悪いままであるが、その手はカムイにとって最も優しく感じられるものだった。

「あなたが私やガロン王様のために役に立ちたいと頑張ったこと、そこに問題はありません。だから、あの料理ができてしまったことを否定する必要はないのですよ」
「で、でも、あれを食べたからまきゅべすは……」
「いえいえ、ガロン王様も食べておられたのですから、私の体が弱いだけでしょう。ですが、今度からはちゃんと味見をしてください。そうでなければ、使った物資が報われませんので」
「……まきゅべす、ごめんね。私、もっと、ちゃんとできるようになるから。だから……私を一人にしないでぇ」

◇◆◇◆◇







 マクベスの手に抱きついてカムイはそう弁解し、望みを漏らした。一人にはなりたくないと彼女は零す。ガロンが帰ったのは自分に失望したからと考えているのかもしれない。王女だなんたと接してきたが、やはり実際は繋がりを求める子供なのだろうと。まったく、子供というのはとマクベスは苦笑しながら、でも確かな言葉を返す。

「カムイ王女、私はそう簡単にあなたの元を離れたりはしませんよ」
「まきゅべす……」
「心配は無用です。あなたが立派な暗夜王国の王族となれるまで、私はあなたの教育係。まずは先ほどの件、ちゃんと謝れたのはとても良いことです、よくがんばりましたね。そして次に、ちゃんとできるようになると言いましたが、当然のことですよ。これから先、カムイ王女にはできないことなどあってはならないのですから。そうなれるように、この私が全力でサポートするのです。だからカムイ王女、あなたの元を私はそう簡単に離れたりはいたしません」
「ほ、ほんとぉ?」
「ええ、ですから涙を拭って、はぁ、鼻水まで出して、王女とは思えま――」
 
 心地よい重みがマクベスの腹部に乗っかる。視界に映るのはカムイの頭の天辺で、どうやら乗られているらしいとマクベスは気が付いた。

「まきゅべす……わたしがんばるから……」
「ええ、そうでなくては」
「うん、えへへ、まきゅべすの胸の音が聞こえる。ドックン、ドックンって」
「しなかったら死んでいるでしょうが! まぁ、あれを食べた時は本当に死に掛けましたけどねぇ」
「まきゅべす、ひどい」
「ひどいというのは、あなたのほうですよ。あの時、お腹いっぱいになどなっていなかったんでしょう?」
「そ、そんなこと……」

◇◆◇◆◇






 と、愛らしい腹の虫が鳴くと、カムイはみるみる顔を赤くして、それを隠すように布団に顔を埋める。

「くっくっく、カムイ王女は嘘が下手ですねぇ」
「ううっ、まきゅべすの意地悪……」
 
 そう言いながらもカムイはどこか嬉しそうで、もぞもぞと少しばかり動いていたが、やがて静かに寝息を立て始める。
 ご飯を食べるべきだと思ったが、マクベスも再び襲ってきた睡魔にその身を委ねることにする。
 その手は自然と上で眠るカムイの頭を撫でて、静かに瞳を閉じる。
 腹部に感じる心地よい重さと、眠りのリズムを聞いているうちにマクベスの意識もまどろんでいく。しかし、そんな中でもマクベスは思うのである。
 必ずカムイ王女を立派に育て上げて、軍師となりガロンのために尽くせる立場になってみせると。それが彼がカムイに尽くす理由なのだから。

 カムイの思いとマクベスの思い、互いに噛み合わない思いの関係。でも、それは確かに今は繋がっている。

 いずれ至る、戦争と、そのあらゆる路の果てに、片方の影が地に伏す未来が待ち受けていようとも、それは確かに繋がっているのだから。









 これは違う世界の話

 カムイにまきゅべすと呼ばれたマクベスの始まりの話。

 if(もしも)のひとつ……


 カムイとまきゅべす おわり

 今日はここまで

 どんな道を進んでも、マクベスは死んでしまうんや


 次はリリスの多世界観察記。

◇◆◇◆◇






―リリスの多世界観察記1―

『リリス、ごはん持ってきたの!』
 
 昼下がりの神殿に声が木霊し、それを聞いて転寝していた青い竜の瞼がピクリと動く。嬉しそうに動く背鰭の動きに、入り込んできたピエリさんも上機嫌を隠さないまま、その眼前に歩み寄っていく。

『ピエリさん、いつもありがとうございます』
『気にしないでいいの。今日もとってもおいしいの作ってきたの。リリスの口に合うと思うのよ。それじゃ、今日も食べさせてあげるの!」
『や、やっぱり恥ずかしいですよ。そのピエリさんだけしかいないってわかってても――」

 青い頬に薄く走る赤模様、どうやら私の頬は薄いらしい。そんな私の仕草にピエリさんはまたも上機嫌に笑みを零して、作りたての肉汁滴るステーキをナイフで食べやすい大きさに切り揃えていく。星海越しに見ても感じられそうなその見た目に、思わず喉が鳴ってしまう。
 鳴ってしまうのです。

「いいなー。ピエリさんに気に入られてる私…」

 神殿の片隅に自身の星海を置き、ぼっち観察している私はそう愚痴る。

◇◆◇◆◇





 星海の奥には、フォークに突き刺さったステーキにふーふーっと息を掛けて冷ましているピエリさんと、それをぷかぷかと浮かびながら待っている他の世界の私がいる。なんですかこれは、いつまでも独り身でいる私に対する当てつけですか?
 手元に準備した湯通し大根を頬張り、別世界の私を恨めしそうに睨みつける。

『はい、リリス。まだ熱いかもしれないから、気を付けて食べるのよ』
『はい、ピエリさん』
『それじゃ、あ~んしてあげる。あ~んなの!』
『ピ、ピエリさん……。あ、あ~んっ』

 見ているだけでもパクッという音が聞こえるくらいに、大きく口を開けて食べる私。そして竜の顔にはそれほど表情を作るための筋肉はないというのに、見るだけでわかるほどの幸福さが溢れてる。

『ん~~、とってもおいしいです、ピエリさん!』
『当たり前なの。リリスにおいしいもの食べさせてあげたかったの、人をえいっするより頑張っちゃったのよ。まだまだあるから、いっぱい食べさせてあげるの! あ~んなの」
『あ~ん』

◇◆◇◆◇





 あ~んあ~んのエンドレス、私は齧るよ大根を。という具合に負けじと湯通し大根を齧りつつ、そっちがステーキソースならこっちは味噌ですと心で叫んで、虚しさだけが込み上げてきた。

「はぁ、妬ましいですねぇ」

 本気を出していいなら今すぐそっちの世界に行って、二人に向かって茶々を入れたいところですけど、それはモロー協定に定められた『他人がいる場での互いの接触を禁ずる』という仕来たりの為に叶わない。
 可能になるとすれば、ピエリさんが立ち去って周囲に近づく人間がいなくなった時くらいである。それまで延々とイチャイチャする二人を見続けることになるので、大根の辛い味にしかめっ面を張り付ける以外にできることがないのだ。

『ふふっ、今日もいっぱい食べてくれてピエリとっても嬉しいの!』
『だって、ピエリさんのごはんはとってもおいしいから。ピエリさんの旦那さんになる人は、とっても幸せですね』
『えへへー、リリス褒めすぎなのよ』

◇◆◇◆◇





 何度か見てきたやり取りであるから、私は内心飽き飽きしていた。この後は最後に二人でお茶を飲むのである。
 ピエリさんは結構な貴族の出で、おいしい紅茶などを用意するのは御茶の子さいさいらしく、毎々選りすぐりの紅茶を準備して私の元を訪れているようで、今日もごそごそと包みから物を取り出している。

『ふふっ、それじゃ今日の紅茶なの!』
『いつもピエリさんが持ってきてくれる紅茶、楽しみにしてるんです。今日はどんな味なんだろうって、えへへ』
『ピエリとってもうれしいの。すぐに準備するから、待っててなの!』

 いつもなら茶葉入れとカップ、熱湯の入った魔法瓶を取り出して支度を始める。別に見る必要もないかと視線を逸らそうとして――
 ……あれは何?
 取り出した物の中に、見慣れない小さな紙包みがあった。本当に小さいもので向こうの私もそれはなんなんですかと聞いている。

『今回の紅茶は、お砂糖入れた方がおいしいと思うの。ピエリがおいしいって言うから間違いないのよ』
『へぇ、そうなんですか。わざわざありがとうございます』
『気にしなくてもいいの、それじゃ始めるの!』

◇◆◇◆◇





 作業を始めるピエリさん。
 砂糖ですか、確かにピエリさんの用意する紅茶は全体的にそのままで楽しめる物が多い。だからこうして何かを入れるのは結構珍しいと思った。
 だけど、今度はカップが足りない。
 いつもならピエリさんは二つカップを持ってくるのに、今日に限って一つだけでそれは向こうの私のためにピエリさんが何時も用意しているものだった。

『あれ、ピエリさんのカップが足りませんよ?』
『あ、料理に夢中で忘れちゃったの……』
『そうだったんですか、案外おっちょこちょいなんですね』

 クスリと私自身も釣られて笑う。思ったよりもおっちょこちょいなところもあるんですねと苦笑しながら、唇を尖らせて誤魔化すだろうピエリさんを予想して最後の大根を齧る。
 案の定、ピエリさんは対面する向こうの私から視線を逸らす。ちょうどそれは私の観察視点の真正面、大根もぐもぐ食べながら、どんな顔かと覗きこんで――

『うー、失敗しちゃったの』

 文字に起こせば問題ないけど、その淡泊な音色、何よりも尖ってなどいない唇に芸術品と言えるレベルにまで素面と視線が合って、私は固まった。

◇◆◇◆◇





 思わず足を組み直した。対面する私は未だにぷかぷかしているだけで、ごめんなさい機嫌直してくださいという言う。
 ピエリさんは指摘されてご立腹と言うようにはまったく見えない。そう言われたことでニコニコ笑顔で、視線が戻った顔はいつも通りだったからだ。
 ピエリさんが紅茶作りを始めると、漂い始めたであろうその香りに踊る向こうの私の姿がある。そして私の視線は、ピエリさんに釘付けであった。

『最後にこれでとってもおいしくなるの』

 手にした紙包みを開くとサーッと入れる。その時の顔もやっぱり真顔だった。
 要所要所に切り込んでくる真顔ピエリさんと、紅茶が楽しみなようでくるくると浮かび漂っている私との温度差に、よもや気が気でなかった。

『はい、できたの!』
『ありがとうございます、ピエリさん』
『えへへ、熱いけど気を付けて飲むのよ』

 そこは熱いから気を付けてでは?
 頭の中に疑問が生じたが、今見えている光景を止める術はないので、手早く準備したエルフィさん特製搾りたて果汁ドリンクを片手に鑑賞を再開する。
 何かの間違いと思うのなら、今すぐに見るのをやめればいいんですけど、私の興味は膨らむばかりで、星海を見る目はすでに皿だった。

◇◆◇◆◇





 用意された紅茶を向こうの私がペロリと舐める。やはり熱かったようで片目を思わず瞑る、それにピエリさんがふーっふーっと息を掛ける。何時もなら中睦まじく感じるそれも、今ではさっさと飲むの!と催促しているだけにしか見えない。

『うん、おいしいです、ピエリさん』
『えへへ、そう言ってもらえてとっても嬉しいの』
『うふふっ、んっ、私好みの味です。それに、ふーっふーっしてもらいましたから、すごく飲み易くなりました』
『なら、もっとふーっふーっしてあげるの。ピエリ、リリスの好きな味はわかってるから、任せてほしいのよ』
『ピエリさん…』

 いつもと変わらない光景だけに、私は固唾を呑んで見守っていた。ピエリさんが何だかそわそわし始めていることに、向こうの私は気づいてない。その視線がカップに向く度に、ピエリさんは舌舐めずりを繰り返していることに。
 まるで美味しい獲物を前にした獣みたいじゃないですか……

◇◆◇◆◇





 とそこで、ピエリさんが静かに袋から一冊の本を取り出していることに気づいた。
 第三者視線の私から見ても気づかれないような動き、対面の私に見抜けるはずがないでしょう。
 とりあえず、視点をそこに寄せてみる。それは青い本で、表紙には竜が描かれているようで、さらに拡大して題名を確認しようとしたところ。
 ポタリっという音が神殿の中に静かに発せられた。

『すぅ~……すぅ~……』

 そこを見てみれば、くたりと伸びた私の姿があった。先ほど飲んでいた紅茶はまだ残っていて、それを確認してピエリさんがゆらりと動く。近づいて、その額に手が触れた。撫でられて私が可愛い鳴き声を上げている。その愛くるしい自分の姿、そして鳴き声が気持ち良さそうで、内心うらやましく思った。
 鋭い眼光を放つピエリさんを見るまでは。

『うふふ、ぐっすり眠ってるの。さすがは大きな竜でも自然と安眠させられるお薬なのよ。えへへ、リリス、ピエリドラゴンマスターになりたいの』

◇◆◇◆◇





 ドラゴンマスターになりたいとピエリさんは零す。
 いや、ドラゴンマスターになるのに、なんで向こうの私が眠らされなくてはならないのか? 確かに普通にしている場合、ピエリさんはドラゴンマスターになる人と交流できないし、もし私と交流したとしてもロッドナイトかあってもペガサスナイトなわけで、ドラゴン系統とは無縁なのにと思いつつ、先ほどピエリさんが取り出していた本が偶然視界に入る。
 向こうの私が伸びていたことで一瞬忘れていたから、すぐに題名を目が追ってしまう。

【暗夜式・竜の躾マニュアル『従順で頼もしい、竜騎兵の竜に育てる調教術メス編』】

 そして追ったことを激しく後悔した。

『えっと、リリスは雌の竜だから、この本で合ってるはずなの』
「何が合ってるんですか?」

 ペラペラとページを捲りながら、ピエリさんは片手でうつ伏せに眠っている私を仰向けに変える。白いもちもちポンポンが白日の下に晒され、別の世界の私とはいえ、なんだか恥ずかしい姿だと顔が赤くなってしまう。

◇◆◇◆◇




『えーっと…あ、あったの。竜の睡眠時に以下の行動を繰り返すことによって、自然と竜はあなたに肉体支配されることを望むようになります。この睡眠学習で竜との絆を深めていきましょう、って書いてあるの! 流石はカミラ様が渡してくれた資料なの、これでリリスとの絆が深まるの!』
「かなり歪んだ絆ですよね、それ。それよりも、カミラ様。なんて本を渡しているんですか……」
 
 私のツッコミも虚しく、星海に映るピエリさんは本をその場に置いて、クタリと眠り続ける私のお腹に手を這わせる。

『きゅうっ……』
『えへへ、リリスは竜としては小さいけど、ピエリならきっと乗りこなせるはずなの』
 
 どうやら、ピエリさんは私を騎乗用ドラゴンに調教しようとしているらしい。
 いや、それがわかったところでもう止める術などないので、飲み干した果汁ドリンクを床に置く。星海に映る眠っている私の鳴き声にだんだんと色が付き始め、聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。

◇◆◇◆◇





『リリスの鳴き声、可愛いの。眠っててこんなに可愛いなら、起きてる時ならもっともっと可愛く鳴いてくれるはずなの。でも、今はお預けなのよ』
 
 手だけでは満足できないとピエリさんはお腹に頬ずりまで始める。

『ふにゅぅ、リリスのポンポン、モチモチしててとっても気持ちがいいのぉ』

 ああ、私のお腹が弄ばれている。それを見ながら自分のお腹に触れてみた。触れてみたけど、やっぱり竜状態のようにはいかないということですね。
 まぁ、無駄なお肉が付いていないことは良いことかもしれませんと思う。
 そして、ピエリさんの手が静かに下降していくのを確認して、二本目の果汁ドリンクを取り出す。

『これから毎日睡眠学習して、リリスはピエリのドラゴンになって、一緒に戦場を飛び回るの。それで、いっぱい活躍出来た時はイイコトしてあげる。飴と鞭を使い分けるのが、いい関係を築くコツって、この本に書いてあったの。だから、リリスぅ……んふふっ』

 未だにスヤァと眠る私、下降するピエリさんの手、それを追うように私は視線を近づけた。

『リリス、初めての睡眠学習、始めちゃうの……』

 ピエリさんの口から甘い熱と言葉が漏れ、その勢いのままに私に覆い被さった。そして、目に悪いとわかっていながら私は接眼レベルにまで星界に近づいて。







【見せられないよ! byモロー】

 その瞬間、星界にモロー印の検閲スタンプが現れた。

◇◆◇◆◇






「ちょ、ここからが本番じゃないですか!!!」

 星界に向けてそう激を飛ばす。いいところで止められるというのは精神衛生上よくないというのに、これでは生殺しではないか。星界貯めてある資源をすべて差し出してもいいから、今すぐ再会するべきだ。
 しかし、私の声援むなしく、星界に復旧の兆しはない。星界のモローさんいわく、お茶の間に放送できないラインを越えてしまったということだ。
 気合を入れて開けた果汁ドリンクはまだ一口も飲んでいない、肴は消えてしまったから。
 ただ、わかったことはあの世界のピエリさんが道を踏み外してしまったということである。まだ証拠はないじゃないかというが、実際問題が起きてなかったらモロー検閲は消えてなくなるだ。すでに二分が経過してもそれは外れない、つまりそういうことです。

「……事の真相は、あとで向こうの私に聞けばいいだけですし。はぁ、この果汁ドリンクは誰かにあげましょうか?」

 そして私は星界を手に取って、よく話をしている私の星界を映す。
 どうやら一人だけのようで、何やらガサゴソと作業をしているようで、周囲に誰かがいる気配もない。
 今見たことを話したいという思いもあって、私はその世界に間髪入れずに潜りこむのでした。

今日はここまで

 あと一回でリリスの多世界観察記は終わりになります。

 ピエリの行った睡眠学習に興味のある方は星界モロー検閲にご相談ください。

◇◆◇◆◇





「どうにか、終わりました……」
「こんにちは、私!」
「きゃっ! い、いきなり来ないでくださいよ、私」
 
 案の定何かしら準備をしていたようで、私の侵入に気づいていなかったようだ。これでも入ってから少しの間、様子を伺っていたんですけど、それに気づかなかったということは相当集中していたということ。

「いいえ、なんだか世話しなくて準備に励んでいる様子だったので、差し入れをと思いまして。はい」
「そ、そうでしたか。その、ありがとうございます」

 どうやら先ほどまでしていた準備は終わったようで、差し出した果汁ドリンクを受け取るとチュルチュル啜り始める。前会ったのは一週間前で、その時はガバーッと飲んでいたというのに。まぁ、作業で疲れているからでしょうと思い立って、手ごろな場所に腰を下ろすと、私は竜に返信する。訪問する側が竜になるという暗黙の了解のためである。

「それで、一体どうしたんですか?」
「一体というと?」
「決まっています。私のことです、本当に差し入れをするためだけに来たというわけではないんでしょう?」
「……よくわかってますねぇ」
「これでも私のことですから。そんな親切心だけで来るなんて思いませんよ」

◇◆◇◆◇






 私の事とはいえ、なんだかそう言われると性格の悪い女だなぁと思ってしまう。でも、ここにこうして来たのは労いのためではないわけで、その通りかもしれませんと半ば認めながら、私は先ほどの出来事について掻い摘んで口にする。ピエリさんの睡眠学習のこと。

「なるほど」

 すべて聞いたここの私はうんうんと頷いて。

「私の一人があのシリアルキラーの犠牲になったということですね」
「うわっ、ピエリさんに対して酷くないですか?」
「事実ですから。それに出来ればピエリさんにあまり近づきたくないありませんし、そこの犠牲者である私と私は別人ですから。いいじゃないですか、最悪、ピエリさんに物理的に殺される世界もあるんですから」

 さらっと別世界の私がピエリさんに殺されると言った。それはなんだか初めて聞くことで、仲間のみんなが別世界でどういった関係を築いているのかということばかりに興味がある私にとって、なんだか興味の沸いてくる内容でした。

「よかったら覗いてみますか?」
「え、何をですか?」
「他の世界の私が、ピエリさんに殺されてしまう記録です」

◇◆◇◆◇





 何というかすごい提案である。でも、少しだけ思うことがあった。

「それってモロー検閲的に大丈夫なんですか? その……チョメチョメ関係に対してすごく厳しいのに」

 こうして会話で話を聞いている分にはいいが、そういった夜伽事情だったりは検閲の対象になるらしく、ピエリさんの睡眠学習のように覗き見ることができなくなる。モローはスケベにとても厳しい御方なのです。

「少し待ってください。確か別世界の出来事を途中記録として残して……はい、これですね」

 彼女の持つ星界にぼんやりと文字が浮かんで、そこには『白夜王国・アミュージア戦』と書かれていた。ガロンを暗殺するためにカムイ様がミューズ王国で戦闘をした記録ということでしょうか。
 しかし、違う世界の私とはいえ、人が死ぬところを映すなんて行為、スケベに厳しいモローが許すとは――

「映りました」
「モロー、こっちはいいんですか?」

◇◆◇◆◇





 星界にその時の様子が映し出されていく。最初の問答が始まってまずはゾーラが宙を待って絶命し、マークス様に率いられてピエリさんとラズワルドさんが現れる。
 そこで隣に目をやると、ここの私が真剣な眼差しで見つめ始める。プカプカ浮かびながら見つめるだけの私に比べて、なんとも真面目である。
 しかし、先ほどのゾーラが消し飛んだあたりが見せられるラインということなんでしょう。

(ということは、私が死ぬ場面も軽いものなんでしょう。さすがに行為が始まるとスタンプを送り込むモロー検閲に引っかからなかった記録なわけですからね)

 物語が動き始める。最初は攻めに徹していたカムイ様一行も、ガロンの圧倒的力を前に突破を決意、ここまでは特に何も変わりない。そして、見やればこの世界の私がいた。カムイ様に付かず離れずの距離を維持して、常に周りを警戒しているようだった。

『カムイ様、先にお進みください』
『ええ、リリスも後からちゃんと来るんだよ』

 どうやら、ここのカムイ様は姐御タイプのようです。

◇◆◇◆◇





 背を向けてステージ奥へと走り出すカムイ様、そこへステージ左から馬の駆け足が迫る。無邪気に笑いながら突き進んでくるピエリさんがいた。

『カムイ様、逃がさないの! ラズワルド、通路の敵を抑えてほしいのよ』
『うん、わかったよ、ピエリ』

 横の私が少し揺れた。どうやら、この先の展開を知っているから身構えていると見えます。
 ラズワルドさんがピエリに迫ろうとするリンカさんの攻撃を受け止めて、その隙にピエリさんの馬がステージを駆け巡る。その手にお気に入りの小槍を構え、無防備な背中を見せるカムイ様に迫っていく。

『!!!』

 咄嗟に身をその無防備な背中の前に差し出す。私もそうすると思う。この命の意味を考えたら、それ以外の選択肢などあるわけない。そして、その槍は確かにその世界の私の体を貫いた。

『……っ!』

 赤い水滴がポタリ、ポタリとステージに垂れ始め、それと時を同じくしてカムイ様はステージ奥へと消えていく。声を出さずに身を差し出したのは、心配させないための配慮だと思う。
 そして槍が刺さったまま、私が床に仰向けに倒れる。呼吸の音は弱く、ぴくりと眉が動く度に悲痛が顔全体を染め上げていく。正直言って痛々しい。
 おかしい、なぜ検閲が発生しない。モローは何をやっているんですか?

◇◆◇◆◇





『お馬鹿さんなの。カムイ様は殺さないように言われてるのに、割って入ってくるから思いっきり刺しちゃったの。ピエリの前に戦えないのに出てくるなんて、お間抜けさんなのよ』

 馬から降りたピエリさんの足が、倒れている私の腹に乗る。苦しい痛みに私の顔が歪んだ。そのまま、槍を掴んで力強く引き抜くと、傷口から吹き出し始めた血液が、厩舎係として愛用してきた使用人服を赤く染め上げていく。
 抜かれた槍の矛先は、再び倒れている私の腹部に向けられる。その時のピエリさんの顔は抜いた際に噴出した血で汚れていて、同時にそれが嬉しくてたまらないと無邪気な笑顔を張り付けていた。

『えへへ、本当にお馬鹿さんなの!』

 笑顔のままに、再び槍を腹部に刺す。足は乗せたまま。刺しては体重を掛けて抜く、刺しては思いっきり抉るように槍を抜き取る。まるで畑を耕すみたいに、私の腹部がめちゃくちゃになっていくその様に、正直言葉が出なかった。

◇◆◇◆◇






『あ……うぐっ……か、かむっ、いっ……様……』
『なかなか死ななくて面白いの! でも、もう終わりなのよ』

 そう言って、ピエリさんはちょうど胸の合間に槍を思いっ切り突き刺して、そのまま臍の辺りまで一気に斬り下す。一瞬、そこの私の口から血潮が吹き出し、まるで華みたいだなんて私は思った。そして、そこの私はピクリピクリと痙攣を続けるだけになった。
 それを見たピエリさんは、刺す度に痙攣する私で遊び始め、所構わず槍を突き立てていく。

『血がビュービュー出て、中身もボロボロ出てくるの!』

 槍を使って解剖するように、私の中身がズタボロになってその場に広がり始める。その光景に周りの仲間も、敵軍も、ラズワルドさんでさえ言葉を失ってる有様だった。

『うふふふ、面白いの。えいっ! えいっ!』

 もはや顔と手と足以外の中身を曝け出された私の開きを前に、ピエリさんはとても楽しそうに笑っている。その槍に付いた血を顔中に塗りたくって、両頬に手を当てると無邪気な笑みを浮かべた。

『返り血で、ピエリとっても綺麗になったの。…八つ裂きにしたら楽しくて奇麗になれてとってもお得なの! うふふっ、うふふふふふふふっ』

 そして記録は途切れた。

「ね、すごいでしょう?」
「モローはりょならーなんですねぇ」

 私の中のモローがエロ嫌いから、ドの付く畜生になった瞬間だった。

◇◆◇◆◇





「というわけで、シリアルキラーのピエリさんと仲良くなれる人なんて一握りですから、普通の人なら合わずに一生を終えるはずです」

 記録を見せ終えてここの私は力説するように語る。
 まぁ、確かにこれだけ見ればそうかもしれないけど、敵である私に情けを掛ける必要もないし、自身の欲望の通りに殺しても問題ないと思っているから、あまり同意できることではなかった。それに――

「一週間前まで、こんなにピエリさんの事嫌ってなかった気がするんですけど?」

 ここの私がピエリさん嫌いというのは初耳なのである。確かにピエリさんのことを話題に出したことはあまりなかったし、雰囲気的に知っているくらいの印象だったと思う。それについてここの私は、今まで隠していたというが中々に納得はいかない……。いかないけれど、それを聞いて話がこじれるのもあれだった。

(はぁ、ピエリさんのことで話をしようかと思いましたが、私自身ピエリさんが嫌いというわけじゃないし、うーん)

 色々と何を話そうか考えて、考えて先ほど記録に映っていたある人物が頭を過った。

「そういえば、この前ラズワルドさんがですね」

 先ほどの記録の中で、ピエリさんの戦いぶりに言葉を失っていたラズワルドさんの話をすることにした。

◇◆◇◆◇





「ラズワルドさんですか?」

 どうやら、ラズワルドさんに関しては嫌悪感を示さない様子。ピエリさんの相棒だからみたいなことを言われたらどうしようかと思っていたので、スムーズに話を進める。
 ラズワルドさんと言われて思い浮かぶのは、やはり話題である。

「また街に繰り出して、こっぴどく女性に振られてました。もう負け戦績だけだったら連敗名誉勲章とか授与されちゃうくらいだと思いますよ」
「そ、そうですね」

 なんだか歯切れの悪い返答をしてくる。前までは、このまま行けば最も軽い男ナンバーワンも夢じゃありませんね!と愉快そうに返してきたのに。もしかして、あれかな。ちょっとボリューム足りなかったかなと、私は言葉を繋げた。

「すべての世界のラズワルドさんを合わせれば、訪問と戦闘カンスト間違いなしですよ」
「……あの、戦闘は」
「…そうでしたね。戦闘は連戦連敗を繰り返してるんですから」
「そ、そうですね……。ラズワルドさんは、その懲りない方ですから」

◇◆◇◆◇





 そう言って、ここの私はなんだかよそよそしくし始める。
 もしかして、さっきの映像で気が真言っているのかもしれません。私は一回目だけど、二回目見ると気づきたくないことに気づいてしまうのかもしれない。だから、ラズワルドさんのことをもう少ししゃべることにする。まぁ、気を紛らわせるような話題をと。

「でも、懲りないけど、ちゃんと結婚できるんですよね。カミラ様とかエリーゼ様とか、あっ、ピエリさんもそうですね」

 適当に見たことのあるカップルを口に出していく。あんなに浮気癖がありそうな人と結婚してしまうあたり、何か惹かれるものがあるのかもしれないけど、私はそういうのを感じたことがないから不思議で仕方無いのだ。

「はぁ、私には理解できません。確かに目と目を合わせて話をすればとは言いますけど、とても結婚するには――」

 不安が多い人ですよねと、繋げようとした。
 私はそうしようとしたけど。

「ラ、ラズワルドさんのことを、悪く言わないでください!!!!!」

 神殿の中に響き渡ったその宣言に、見事にかき消されたのでした。

◇◆◇◆◇





「え?」

 思わず間抜けな声を漏らしてしまう。視線を向ければ顔を真っ赤にして仁王立ちする私の姿があった。平たく言えば、ご立腹である。

「うううううっ、なんなんですか、なんなんですか!? 私のラズワルドさんの悪口を言うためにここに来たって言うんですか!?」
「え、ちょっとまって、え、なに、なんで怒ってるんですか!? って、なんで泣きそうになってるんです私!」

 感極まって涙を溜め始めたここの私に、私は酷く混乱していた。
 本当に何なんですか、この状態は!?

「ううっ、ひどい、ひどいです……。みんな、ラズワルドさんの良いところわかってくれない……ただのチャライだけの人だって、そんなこと、そんなこと、そんなことないのに……」

 そう胸の前に手を重ねて私が言ってくる。え、なにその少女らしい仕草は、それじゃまるでラズワルドさんに恋してるみたいで……、いやいや御冗談を。私は一週間前の彼女の言動を呟く。

「一週間前まで『ラズワルドさんって、本当に馬鹿ですよね』って話し合ってましたよね?」
「知りません。そんな人いません。諦めてください」
「そうですか、そうですか。とりあえず、果汁ドリンク返せ、この雌竜!」

◇◆◇◆◇






 見事な否定三段活用を前に私は気が立っていた。彼女は飲みかけの果汁ドリンクを手渡して来て――

「というわけで協力してください」
「どういうわけ!?」
「き、決まってます。私にアドバイスをしてほしいんです!」
「何について?」
 
 恐る恐る尋ねると彼女は頬を真っ赤に染めて、何かを取り出し私に見せる。小さな箱、大きさはちょうど手に収まるくらいの箱である。

「そ、その、ラズワルドさんにこれをお渡しする方法についてです」

 そして開かれる蓋。きらびやかな光が私の眼前に広がった!

「なっ、ゆ、指輪だと……。しかも結構値が張りそうじゃないですか」

 中にはキラキラ輝くリング、しかもペアで彫り込みも済んでいるというもの。今、見えないところでラズワルドさんが誰かとゴールインしてたら報われないなと素直に思った。
 しかし、いつも神殿勤務のタダ飯喰らい、お父様が差し向けるおちょくり兵団の相手くらいでしか役に立ててない私に、こんな指輪を買う御金なんてあるのでしょうか?

◇◆◇◆◇





 確かに小判は持ってますけど、あれは星界ないのお店で売られたものを横流、いえ神殿に寄贈してもらってるだけで、とてもじゃないが足りない。だから、その疑問は口に出た。

「これ、どうやって買ったんですか?」
「はい、カムイ様の全財産の八割を叩かせていただきました」
「なんで、ここ撤去されてないの!?」
「もしも撤去したら、今回で十冊目になるゴーレム視線で盗撮っ!コレクションの件をばらすと脅しましたから」
「カムイ様も大概ですねー」

 コレクションが守られるなら八割も安いと判断したということでしょう。全く持ってカムイ様はカムイ様である。そして指輪の謎は無事に解けた。

「……私、あの人の唯一になりたいんです。ラズワルドさんが他の人にうつつを抜かす前に、どうにかして、どうにかして……」

 必死にそう零した。確かに愛する人の視線を自分だけに向けてほしいというのは本望だろう。残念ながら私にそんな人はいない、強いてあげるならカムイ様に良く頭を撫でてもらいたいということくらいでしょうか?

◇◆◇◆◇





 恋に恋する乙女ではなく、一人の人に恋する乙女になっている私を見て、何とも複雑な気持ちになる。だけど――

「あ、あの、一つ聞いてもいいですか?」
「な、なんですか?」
「えっと、ラズワルドさんのどこに、その……惹かれたんですか?」

 これは聞いておかなくてはいけなかった。

「正直、私から見てラズワルドさんは、チャラくて浮気要素全開です。友人という意味では別に問題ないんですけど、その恋心を抱くには……」

 私の持っているラズワルドさんの外部印象を簡潔に伝える。それに対する私の答えは、ため息から始まった。

「……はぁ。可愛そうな人ですね、ラズワルドさんの優しさに気づけないなんて、この世に生まれたことを間違えています」
「え、なんで私は私に憐れみを含めた眼を向けられなくちゃいけないんですか?」
「聞いてください、ラズワルドさんは、こんな私でも一人の女の子として見てくれるんです」
「だって見た目女の子じゃないですか、私たち」
「それに、私が淹れた紅茶を飲んで、すごくうれしそうに笑ってくれるんです。その笑顔がとっても、とーっても輝いてて、それを私以外の人に向けてほしくなくて、でも、優しいラズワルドさんの事だから、あの笑顔を誰にでも向けちゃうはずなんです」
「まぁ、ラズワルドさんですから。私は靡くことなんてありませんけど」
「はぁ、本当にあなたはダメダメです。今までこんな私と話してたなんて、恥ずかしい気持ちになってしまいます」

 酷い言われようだった。 

◇◆◇◆◇





 だけど、その顔に唐突に不安が混じり始めた。

「この頃、ラズワルドさんピエリさんの昔のことを知ったらしいんです」
「あー」

 私の知る限り、多くの世界でラズワルドさんとピエリさんのご婚約の報告がある。それはピエリさんの過去に関する傷口を埋めたのがラズワルドさんであるからだ。まったく、とんだ女たらしですね。

「ピエリさんは相棒という立場で料理も得意でおっぱいも大きい。胃袋と性癖を掴まれるのも時間の問題……もうぐずぐずしてられないんです」
 
 どうやらかなり動揺しているらしい。でもそれは仕方無いことかもしれない、ここの私はラズワルドさんを愛しているのだから。だけど、もしも恋に破れてもピエリさんを恨んだりしないだろう、だって、私のことは私が一番知ってるんだから。

「もしも、ラズワルドさんとピエリさんの間にソレイユが生まれることになったら、ソレイユには将来酷い恋愛をしてもらうつもりです。レオン様のご子息であるフォレオを嗾けて」

 前言撤回、私は私について何も知らなかった。

◇◆◇◆◇





 将来生まれてくる子供の人生を狂わせてやるという宣言。ドン引きもので、そんなドン引き発言をする爽やかなここの私。
 そして、ピエリさんが嫌いだという理由もすぐにわかってしまった。単純に恋敵である。

「というわけで、将来の暗夜王国、引いては王族の未来のためにも私にアドバイスをよこしなさい」
「それ、お願いする態度じゃないよね? ね?」
「だって、このままだと今さっきお見せしたことを、ピエリさんにしちゃいそうです。いなくなれば危機感もなくなりますし」

 さっきお見せしたことと言われて、中身をぶちまけられた私の姿が脳裏を過る。

「それはやめてください。さすがにそんなことになったらラズワルドさん、苦悩の末に自殺しますよ!?」

 あのラズワルドさんでも、ピエリさんの死因に自分が関わっていると知ったら、相当思いつめることになるだろう。

「大丈夫です、犯人はセノウかカザックのどちらかになりますから。どちらかの戦闘時、どさくさに紛れてヤります。それで相棒を失った悲しみに暮れるラズワルドさんを、私が優しく癒して差し上げるんです。もちろん、私とラズワルドさんが結ばれて夫の相棒の地位、もちろん肉体的な意味も含めて確立できたら、報告に行きますよ。元相棒のピエリさんって!」
「屈託のない笑顔って、こんなに怖いものだったんですねー」

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 私は内心戦々恐々としていた。私の中に、こんな化け物染みた思考が眠っているということに。それを知ってしまった今、いずれ取り込まれ染め上げられてしまうのではないかと、気が気でなくなってしまう。

「取り込まれたら、どんな色に染まるかわかりませんね」
「そんな、ラズワルドさんを取りこんで、染め上げてしまえなんて。背徳的だけど、実力行使ならそれしかないって思っちゃうじゃないですか」

 いやんいやんと首を振る私を見て、一体誰の遺伝子だろうと少しだけ考えた。

「間違いなくお父様の血ね」

 色濃い遺伝子は色濃いままだったようです。
 しかし、そのどす黒い感情を差し引いても、こうして誰かに恋をしている私のことを、応援したくなるから不思議なことで、つまり私はアドバイスすることに決めたのでした。

「まぁ、確かにこうやって結婚したいっていう相手を見つけている私も珍しいですから、ラズワルドさんには申し訳ないけど、私の幸せに協力させてもらいます」
「ありがとうございます、私。とっても嬉しいです」

 そうお礼を言う顔にこそ、屈託のない笑みという言葉を使いたかった。

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「でも、なんでラズワルドさんに対して申し訳ない気持ちになるんですか?」
「最悪の事態になった場合、今生きてるピエリさんか、将来生まれるソレイユに申し訳ないって意味に決まってるじゃないですか」
「ふふっ、ソレイユは私とラズワルドさんの子供ですよ。何を言ってるんですか~」

 何を言ってるんだ、この私は。

「えへへ、ソレイユが大きくなったら、親子で竜になってプカプカ浮きながら、ラズワルドさんにどっちがどっちでしょー?して困らせてあげたいなぁ。でも、ラズワルドさんは私のことをすぐ見抜いてくれるんです。なんでって聞くと、リリスの尾鰭はソレイユの尾鰭と違って癖があるからとか、そんなことを言ってくれて、ああ、もう、恥ずかしいこと言わせないでくださいよぉ、もう!」

 すでに生まれるソレイユと一緒に星竜に変身する夢を浮かべるここの私を見て、簡単だけど健全なアドバイスをしてさっさと戻ろうと考えた。

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「その夢物語は置いておいて、私が思うに歯の浮くような台詞などは必要ないと思います。ラズワルドさんはきちんと思いを伝えれば、応えてくれる方だと思いますから」

 これは全体的に仲間界隈の告白を見ての私の推察で、なんだかんだ言って誤魔化したりしたら、誤魔化すのは良くないといわれるし、フリをしても勘違いされたりするのがこの世界。女性から告白される男性というのは中々に少ないけど、直球ストレートな表現こそが活路を見出すと、私は考えている。

「そ、そうでしょうか」

 先ほどのテンションは何処へ行ったのか、指をクネクネさせて私をここの私が縋るような目で見ている。そんな不安な背中を押すのもアドバイスの一つなのです。

「ふふっ、臆病な気持ちになるのもわかります。けど、こうして手を拱いている間に、ラズワルドさんが違う人に興味を示してしまうかもしれませんよ?」
「そ、それは困ります! 私、私はラズワルドさんじゃないと、駄目なんです」
「だったら、もう飾るための言葉なんていらないんですよ。それとも、あなたのラズワルドさんへの思いはそんなものなんですか!?」

 プカプカ浮いている竜状態の私が発する言葉、正直説得力があるのかわからなくて、若干締まらない。

◇◆◇◆◇





「そう…ですね、そうですよね。こんなところでウジウジしてるんだったら、この思いをぶつけちゃえばいいんですよね!」
 
 どうやら、私の言葉は届いたようで、ようやく彼女の心に灯が灯る。それに合わせて、私は声を立てた。

「そうそう!」
「はい、考えた言葉なんて要りません。素の私で行きます!」
「うんうん!」
「私の望むことを、ラズワルドさんに伝えてみせます!」
「そうです!」
「私という紅茶にあなたというミルクを入れてほしいって」
「それはわざと言ってるんですか?」
「?」

 どうやらこれは無自覚らしい。そのプロポーズは……、いや、ラズワルドさんなら多分ちゃんとした意味で受け取ってくれるはずだと、何も言わないことにした。
 そして、少しの間だけここの私が出掛けたと思うと、なんと夜にラズワルドさんに会う約束をしてきたという。だけど、不安だと彼女が漏らすので、一緒に話をした。不安なこととかは全部ここで流していくべき、プロポーズが成功して、この世界の暗夜の不安の種をできる限りなくしてほしいという私の願いだった。

◇◆◇◆◇





 夕日が沈み始めた頃になって、ここの私はすっきりした顔になっていた。

「それじゃ、そろそろ戻ってください。今からラズワルドさんに会いに行ってきますから」
「そうですか、本当に今日告白するんですね。食事に誘うくらいでもいいと思うんですけど」
「いいえ、こうして話をしてもらって、アドバイスまで頂いたんです。あとは私がやるだけのことですから」
「そう、うまく行くのを願ってますよ」

 そして私は自分の世界に戻る準備に入った。餞別にと果汁ドリンクは置いて行くことにして、フワフワと浮遊を始める。離陸準備は整った。

「結果は報告しに行きますから」
「別にいいですよ。時間が経ったらこちらから覗きに行きますし」
「でも、結ばれたら多分ここにいる事自体、少なくなりますよ?」
「さすがに何回かは戻ってくることがあるでしょう? 運が良ければこちらから赴きますので、気にしないでください」
「そうですか、それじゃ、頑張ってきますね、私!」
「ええ、気を付けて」

 そう握り拳を強くした私が私に笑顔を零す。それを見届けて、私は元の場所に戻ってきた。

◇◆◇◆◇





 そして最後に、彼女の星界を覗き見る。
 そこには顔を赤くしながら震える手に、さまざまな思いをいっぱい詰め込んだ小さい箱を持って待ち合わせ場所を目指すあの私と、すでに待ち合わせ場所でポケットに忍ばせた小さい箱を出しては確認、出しては確認しているラズワルドさんの姿。
 それを見て思わず苦笑してしまうが、これ以上見るのは無粋だと思って視線を逸らし、私は人間の姿に戻った。

「はぁ、みんな人生エンジョイして、楽しそうですねぇ」

 そんな言葉と共に扉を開いて外に出る。
 夜の星界は数えきれない星界の輝きで溢れていて、それを見上げながら私は色々と考える。
 今度は堅物な私の場所に行こうか、それとも勉強熱心な私の元に行こうか、それとも外部から観察しようか。
 色々な世界の色々な私を観察して過ごすのが、今の私の楽しみなのだから。

「ふふっ、今度はどこにいこうかな?」

 私は今度の予定を決めながら、のんびりと星界の輝きを眺めるのでした。




―リリスの多世界観察記1 おわり―

 これにてこのスレでの更新は終わりです。

 リリスとの支援がBまでいったラズワルドにゾッコンなリリスの話。
 1ということは2があるということですが、それはまだ先の話。
 
 今回のスレも読んでいただきありがとうございました。少ししたら、新スレを立てようと思います。
 
 最後に次やる番外を決めたいと思います。

『ミタマ×ディーア』
『ソレイユ×ジークベルト×オフェリア』
『ヒナタ×ツバキ』
『ヒノカ×セツナ』

 先に3回あがったものにしようと思いますので、よろしくお願いいたします。

 新しいスレを立てました。

【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466084140/)

 次も見ていただければ幸いです。

 次回の健全番外は『ソレイユ×ジークベルト×オフェリア』になりました。











 ガチスケベしたくなりました。
 埋めも兼ねて、最後の>>1000のものをやりたいと思います。
 このスケベ番外はR板のほうで行います。
 
・ピエリ×リリス(ふたなリリス)
・ヒノカ×セツナ(ガチレズ)
・ツバキ×ヒナタ(ガチホモ)
・ミタマ×ディーア(睡眠)
・カムイ♀×アクア(酷いことされる)

 イメージはこのような感じになります。
 それでは、新スレでまたお会いしましょう。

やっぱり僕王道を往く、ガチレズですか…
リンクは張ってくれよなー頼むよー

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