勇者「俺はヒーローになれなかった」 (136)

季節は冬の始まり。
木々の葉が枯れ落ち、森は景色すらも寒々しい。

勇者「……」

その森に1人の男が行き倒れていた。
彼は勇者。つい先日まで英雄として人間たちの希望を背負っていた男だが――

勇者(もう、いいや…)

今やその表情は希望を失い、まるで亡者のようだった。

勇者(このまま、死んでしまおう……)


勇者がこうなった原因は、つい先日の出来事にある…――



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踊り子「勇者♪」チュッ

勇者「あぁ…踊り子か」

旅の途中の休憩中、勇者はイタズラで昼寝から目を覚ました。
勇者と知り合った当初からアピールしてきた踊り子だが、ここ最近は特にそのアピールに大胆さが増していた。

勇者「そう簡単に、男のほっぺにキスするもんじゃないぞ」

硬派を気取ってたしなめてみるが、

踊り子「勇者にだけだも~ん♪」

甘えるように反抗されてしまうだけだ。

勇者(全く、困ったもんだ)

心の中で呟いてみるも、勇者の心臓は高鳴っていた。
それもそうだ。両親と早い内に死に別れた勇者は、娯楽の少ない田舎に住む祖父に引き取られ、剣一筋で生きてきた。
そんな勇者だから、田舎娘にはない派手さを持った美女にちょっかいを出されては、ほだされるのも仕方なかった。

騎士「ケッ、見せつけやがってよ~。いいないいな~」

僧侶「それくらいの娯楽は大目に見ましょう。娯楽の少ない旅ですから」

勇者「はは…」

剣の腕を見初められ、魔王討伐の旅を命じられたのがつい3ヶ月前。
騎士団より騎士が旅の供として同行し、各地で名をあげていた僧侶を仲間にし、そして最後に仲間にしたのが…

踊り子「勇者、飲み物ちょっと貰うわね~♪」

自ら志願してパーティーに入ってきた、踊り子だった。
男所帯に女1人というのも申し訳なくて断ったのだが、それでも強引に押し切られて今に至る。

勇者「それ、俺の飲みかけ…」

踊り子「知ってるぅ♪」ペロ

勇者「うぐ」ドキドキ

そして勇者は、その踊り子を意識するようになってきた。

騎士「おい見えてきたぜ、あれが魔王城だ」

勇者「あれが…――」

旅は終盤を迎えていた。
今まで制圧されてきた街を解放し、刺客として来た幹部達を倒し、旅は順調だった。
それだけに、最後の最後で何かあるんじゃないかと不安に思っていたが…。

僧侶「恐れていても仕方ありません。行きましょう」

勇者「そうだな」

意を決して、城に乗り込んだ。
しかし予想に反して、城内に魔物の気配はなかった。

騎士「どうなってやがる…?」

僧侶「魔王の周囲を固めているのでしょうかねぇ…?」

それでも緊張感は抜けず、慎重に足を進めていると…

踊り子「あ、あれは!」

勇者「ん? 何のことだ?」

踊り子「あれよあれ! ほら…」タタッ

踊り子がある方向に向けて走り出した。
追いかけようとした、その時…――

バッ

踊り子「きゃあっ!?」

勇者「!!」

黒い影が踊り子に襲いかかった。

そして…――

「よくぞ来たな勇者よ…クク、待ちわびたぞ」

勇者「何者だ!!」



魔王「我は魔王…――探していたのだろう、我を」

踊り子「う、ううぅ…」

勇者「魔王…!! 踊り子を放せ!!」

踊り子は魔王の腕に抱かれ、恐怖の為か身動きが取れなくなっている。
勇者は怒気を含んで魔王に言い放った。

魔王「覇気は一人前だな、勇者よ。だが、このままお前を殺すのもつまらん」

勇者「何だと…!」

魔王「遊戯といこうか」

そう言って魔王は、踊り子を捕まえたまま宙に浮かんだ。

魔王「追ってくるがいい、勇者よ!」

勇者「待て…――っ!!」

即座に魔王の後を追う。
しかし、この判断の早さは直後、仇となった。

勇者「…――っ」


――落ちている?


騎士「勇者!!」

僧侶「勇者さん!」


唐突に床に穴が開き、勇者はそこから急降下した。

ばしゃーん

勇者「ぶっ…!」

落ちた先は水場。濁った汚い水だが、床に叩きつけられるよりは大分マシか。
その汚い水場から出る――と同時、勇者は舌打ちした。

勇者「そういう罠か…」

周囲には魔物の気配。どいつもこいつも、殺気を隠そうともしていない。
これだけの数の魔物を、1人で相手しろということか。

勇者(脱いでいる時間は、くれそうにないな)

水を吸収した装備で戦うのは体が重いが、そう弱音も吐いていられない。
このまま戦うしかないなら、そうするだけだ。

勇者「さぁ来い!! 魔王の手先ども!!」

勇者が叫ぶと同時、魔物達は一斉に襲いかかってきた…――

勇者「ハァ、ハァ…」

戦闘開始から約30分後、全ての魔物を倒した勇者は急いでその場を後にした。
とにかく今は行動しないと、また何があるかわからない――

そう思った直後だった。

ゴゴゴ…

勇者「…っ!?」

突然、トゲの壁が迫ってきた。しかも結構なスピードで。

勇者(くそ、全力疾走でスタミナ節約もさせないってことか!!)

勇者は急いで壁から逃げる。
逃げる先に、曲がり角があった。

あそこまで行けばとりあえず大丈夫だろう…と思ったが。

ボフッ

勇者「うわっ!?」

疾走に全力を注いでいた勇者はトラップに気付かず、霧をもろに浴びた。
霧には毒性が含まれているのか、目と鼻に刺激を感じる。

勇者「くそ…!!」

涙と鼻水を袖で拭いながらも、勇者は走るスピードを緩めずに曲がり角を曲がった。
迫りくる壁は正面の壁にぶつかると、そのまま動きを止めた。

勇者「ハァハァ……ん?」

ほっとしたのも束の間、今度は向こうから気配がした。

「ンオオォォ…」

勇者「げ…」

わらわらとやってきたのは、アンテッドの群れだった。

勇者「ゼェ、ゼェ…」

狭い通路でアンテッドを切ったせいで腐った返り血をモロに浴び、心地が悪い。


しかも罠はそれで終わらなかった、


勇者「うわああぁぁ!?」

時には石像が吹く炎をギリギリでかわし、


勇者「ん…? ここ、さっきも……」

時には無限ループの道を歩かされ、


キイイィィン

勇者「うおおぉぉ……」

時には超音波の中を進まされた。




勇者「ハァ、ハァ……」

もう既に勇者はボロボロだった。
それでも諦めない…――全ては、魔王を倒す為。

勇者(踊り子…無事でいてくれ)


踊り子『私、踊り子って言います! 勇者様のパーティーで戦わせて下さい、お願いします!!』

踊り子『勇者、って呼んでもいいかしら? いいの!? やったぁ~!』

踊り子『凄い、凄ぉい! 幹部を倒しちゃうなんて、勇者かっこいいー!』

踊り子『グスッ…私なんて、勇者の足を引っ張っちゃってるわよね…』


勇者(踊り子…君は既に、俺の大事な仲間…いや、)


踊り子『ねぇ勇者』


勇者(俺は、君が…――)


踊り子『…――守って、くれる……?』


勇者(君が、好きなんだ…!!)

勇者「…!」

無意識に大きな扉を開けていた。
そしてそこにいたのは…――

魔王「よくぞここまでたどり着いたな…勇者よ」

勇者「魔王…!!」

魔王は尊大な態度で、玉座に座っていた。
そして、その側では…

踊り子「勇者ぁ!」

騎士「勇者…すまねぇ!」

僧侶「勇者さん!」

勇者「皆!」

仲間たちが囚われていた。
その姿を見て、勇者は憤怒する。

勇者「魔王、貴様!! 1対1の勝負なら受けてやる、正々堂々と戦え!!」

魔王「いいだろう…。かかってこい、勇者よ」

勇者「はあぁ――っ!!」

勇者は迷わずに駆けた。
まずは魔王を玉座から立たせる…――その勢いで斬りかかった。が…

魔王「喰らえ、暗黒魔法…――」

勇者「――っ!!」

回避できず、勇者は魔王の魔法をもろに喰らった。

勇者「ぐ…っ」

魔王「おやおや勇者よ、簡単に吹っ飛ばされたものだな」

勇者「俺はまだ、やられていない…!!」ヨロ…

魔王「なら、これはどうだ?」ドォン

勇者「うわああぁ――っ!!」

今度はかなりのダメージを喰らい、勇者は地面に伏した。
起き上がらなければ…だが、体が言うことを聞かない。

魔王「たった2発で終わりか。何ともつまらない戦いだった」

そう言って魔王はようやく立ち上がった。そして仲間たちに近づいていき…――

魔王「お前」クイッ

踊り子「――っ!!」

勇者「!!!」

魔王が踊り子の顎を引いた。
踊り子は怯え切った顔で硬直している。

魔王「我に逆らった者がどうなるか…――身をもって知らせてやるのもいいな」

踊り子「ひ……っ」

勇者「やめろ……!!」

体中が痛む。それでも立ち上がる。
そんなこと、絶対にさせやしない…!

勇者「やめろ、魔王おぉ――っ!!」

踊り子「勇者ぁ――っ!!」

その時だった。
踊り子の体を拘束していた鎖が弾け飛んだ。

踊り子はすぐさま勇者に駆け寄る。

勇者(踊り子…っ!!)

今の勇者を動かしているのは、踊り子への気持ちだった。
その踊り子が両手を広げ、こちらへ駆け寄ってくる。

勇者(踊り子、俺は…――っ)

踊り子「勇者ぁ…っ!!」


そして、2人の距離が数センチという所にまで来た時…


バキィ

勇者「――っ」


勇者の顔面を衝撃が襲った。
その衝撃で、勇者はその場に大の字に倒れた。

だが、勇者を襲った衝撃は物理的なものよりもむしろ――…

勇者「なん……で……」

踊り子「フ、フフ……」

勇者を見下ろして、見たことないような笑いを浮かべる踊り子に対しての方が大きかった。


踊り子「フフ…あはは、あははははははっ!!」

勇者(…――?)

今日はここまで。
宜しくお願いします。

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


いつも思うけど専ブラ使わんの? 便利よ

>>14
専ブラについて調べてみたのですが頭が悪くて理解できなかったので、使う第一歩が踏み出せず(´・ω・`)

もしWindowsならjane style使っとけばOK
一気にたくさんのスレの新着チェックできるし何より投下する時の手間が段違い
したらばの板は新規板登録しなきゃいけないけどググればすぐできる

勇者は必死に考えた。

罠だ。これは罠だ。
踊り子に扮した魔物が、俺を騙し討ちしたに違いない――

そうだよな、踊り子…――?


魔王「ハハハ…面白いものを見せてもらったぞ!! なぁ、踊り子?」

踊り子「はい、魔王様」クスクス

勇者「やめろ…その姿と声で、魔王を呼ぶな……」

踊り子「え? あ、もしかして…私が偽物だとか思ってる? 勇者~?」

勇者「何…だと?」

踊り子「本当、勇者ったら頭の方はパーなんだからぁ。そんな勇者の為にわかりやすく教えてあげるとぉ~…」



踊り子「私ね、魔王様の側室なんだぁ~♪」


勇者「………は?」

――意味がわからない。


踊り子「パーティーに入ったのも、魔王様からの命令っていうかぁ~」


――初めから、騙していたのか…?


踊り子「何ヶ月も魔王様に会えなかったのは寂しかったぁ」

魔王「悪い悪い。その分、たっぷり可愛がってやるからな」ナデナデ


――じゃあ、俺といた時の言葉もあの顔も…


魔王「感謝するぞ勇者。道中、我に反抗的だった幹部どもを倒してくれたのだからな」

踊り子「ま、それで勇者も名をあげられたんだから、いいわよねぇ」


――全部…――


踊り子「それにしても勇者ったらおっかしい~!! 必死な顔して罠を突っ切って行くんだもん、笑い堪えるの大変だったぁ!!」

魔王「お陰で体も臭くなったな、勇者」


勇者「全部…嘘だったのか……?」

踊り子「は? そうに決まってるじゃない、バッカじゃないの?」

魔王「本当に頭の悪い勇者だな」グリグリ

勇者「……!」


その時、頭を踏みつけてくる魔王のピアスに映った自分の顔は――

勇者「――っ」


負け犬の顔だった。

勇者「……殺せよ」

勇者はもう起き上がる気力もなかった。
ただでさえ体がボロボロだというのに、心も折られてしまった。
戦う余力なんて残されていない。このまま惨めな敗北者となってしまおう。

しかし…

魔王「我はお前を殺さん」

魔王は堂々と言った。

勇者「…? 囚人か、それとも奴隷か…? これ以上、俺に何しようってんだ……」

魔王「何もせん。お前はお役御免になるだけだ」

勇者「は……?」

勇者は事態が飲み込めずにいた。
そんな勇者に、魔王は――

魔王「これを見ろ」

懐に入っていた書を、高らかに広げて見せた。
難しい文章が目に入ってきて理解に遅れたが、勇者はあるものが目に入った。

勇者「その紋章は…我が国の……」

魔王「そう、お前の国の王と交わした文書だ」

勇者「……どういうことだ」

魔王「お前がノロノロ旅をしている間、我は人間の国の王たちと書をやりとりしていた」

初耳だ。訪れた国の王たちは、そんなこと一切…

魔王「そしてお前の国の王が最後だ。…我々は、和平の為に手を結ぶことにした」

勇者「……は?」

手を結ぶ? 和平の為に?
だったら、戦う必要なんてこれっぽっちも…――

魔王「お前の国の王は、和平交渉が決裂した時の保険にお前を旅立たせた。お前は知らなかったようだがな」

勇者「じゃあ…」

踊り子「そ。"勇者"はお役御免♪」

勇者「……!! 嘘をつくな!! そんなの、信じないぞ!!」

踊り子「信じないって言われても事実だもの…ねぇ~、騎士?」

勇者「え……?」

騎士「……」

騎士は気まずそうに勇者から視線をそらしていた。
そうだ、国の騎士団から派遣された騎士なら…。

勇者「嘘だろ騎士! そんなこと…――」

騎士「…事実だ」

勇者「!!!」

打ちのめされたような衝撃が勇者を打った。
騎士はそんな素振りを見せたこともなかった…つまり、ずっと騙していた…!?

踊り子「そういうワケだから、とっとと勇者をこの城から連れ出してくれない? くっさいのよ、さっきから」

騎士「……」

僧侶「……」

2人は拘束をとかれ、勇者の側に寄ってきた。

動けない勇者は2人に抱えられるが…納得していない。

勇者「み、認めない! 2人とも離せ、こんなの…――」

僧侶「もういいじゃないですか勇者さん」

同じく事情を知らないはずの僧侶が冷たくそう言い放った。

僧侶「いい加減気付いたらどうですか勇者さん。…貴方、魔王に遊ばれていたんですよ」

勇者「…遊ばれて、いた……?」

僧侶「丁度このタイミングで和平が決まるなんて、狙ったとしか思えない。…そうですよね?」

踊り子「流石僧侶、頭いい~♪」

勇者「じゃあ……」

魔王「そう恨むな、勇者よ」

魔王はフンッと鼻で笑った。

魔王「国に利用されるのも、我に遊ばれるのも、滑稽さはそう変わらん」

勇者「………」


これは悪夢、そう思いたかった。それでもその事実に、勇者の心は刺されていた。
あまりにも衝撃的なことが続き、勇者の心は痛みすら覚えない。

勇者(俺は…何だったんだ……)


ただ、虚無へと向かっていた…――

そして…

勇者「……」

人間と魔物の和平が決まってから、国は勇者に手の平を返した。
事情をろくに知らぬ者は勇者の存在が和平交渉の妨げであったと非難し、事情を知る者は勇者を嘲笑した。
勇者は逃げるように国を離れ、各地を転々としていた。

勇者(じいちゃん…)

育ての親にして、剣の師でもあった、今は亡き祖父。
祖父は「正しき道を進め」と教えてくれた。その教え通り、自分は正しい道を歩んできたはずだ。
なのに、自分が受けた仕打ちはこうだ。

もう世界に絶望した。
正しい道しか知らない自分は、こんな世界で生きていけやしない。

勇者(じいちゃん…俺、そっち行くよ…。末代で恥を晒して、ごめんな…)

勇者(俺、もう……)

勇者「………」



村娘「うぅ~さみさみ…。早く帰んなきゃあ」

村娘「…うん? ありは……」

村娘「!!」

村娘「て、大変だ! 男の人が倒れんよ! 村の人さ呼ばんと!!」

勇者「う…?」

目を覚ました時、木の天井が目に映った。
何だか体が暖かい。ここは……?

村娘「あー良かったぁ! 目ぇ覚ましたぁ!」

勇者「……?」

視線を横に移すと、勇者より少し年下くらいの女の子がいた。
質素な麻の服を着て、顔は化粧っ気がないのに真っ赤なほっぺ。
言葉の訛った、いかにもな田舎娘だ。

村娘「大丈夫だすか…? お粥あっためましょか?」

勇者「ここは……?」

村娘「あぁ、ここは私ん家だす! お客さん、森で倒れてたんすよ!」

勇者「俺は……」

村娘「体が冷えてたんで、お布団であっためますた! お粥作ったんで、体の芯からあったまってくだせ…」

勇者「……死んでも、良かったのに」

村娘「はぇ……?」

村娘はその言葉を聞いて、ポカンとしていた。

勇者「俺は、死んでも良かったんだ……」

もう1度、吐き捨てるように言った。八つ当たりに近い感情もあったかもしれない。
中途半端に助けられて、この先どうしろと言うのか。また惨めに生きていけというのか、こんな世界で。

勇者「どうして助けた…!! 俺にはもう何もない、生きてたって……」

ポン

勇者「……え?」

頭に手が置かれた。
勿論、村娘の手だ。

村娘「よしよし」

勇者「!!」

村娘はその手で、優しく勇者の頭を撫でた。

村娘「よっぽど、つらい思いしたんねぇ」

勇者「つら、い……?」

村娘「あたし馬鹿だから、上手い言葉は見つからないす。そんでも、大丈夫!」

村娘はそう言って、元気に立ち上がった。

村娘「あったかいもんお腹一杯食べたら、きっと元気になるす! 今、お粥持ってくるから待っててくだせぇ!」

勇者「あ……」

村娘はパタパタと部屋から出て行き、すぐに戻ってきた。

村娘「はい! うちの村で採れた米で作ったお粥だすよ! たんまり食べて元気になるす!」

そう言って、湯気の出ているお粥を、満面の笑顔で差し出してきた。

勇者「……」

正直、食欲はない。
だけど村娘の笑顔を見ると、断るのに罪悪感があって…。

勇者「…頂きます」

素直に食べることにした。
にこにこ笑顔の村娘に見守られながら、スプーンを口に運んだ。

勇者(…あったかい)

湯気があるから熱いのかと思ったが、食べやすいくらいの暖かさだ。
息で冷ますことなく、お粥を口に入れる。ちょっとだけ咀嚼して、飲み込んだ。

勇者(あ、美味い)

お粥は塩で薄く味付けされていた。
感動する程のものではないが、美味しい。
食欲の無かった胃袋は、そのお粥を拒まない。むしろ一口入れたことにより、もっともっとと欲して…。

勇者(俺、飢えてたんだな)

ふた口、三口と口に入れる。
食べるというのは命を繋ぐ行為であり、死にたいという願望と矛盾している。
だけど、手が止まらない。このお粥を、もっと食べたい。

勇者「…美味いよ」

村娘「良かったぁ…都会の人には物足りねぇかと思ったんだすけど…」

勇者「…美味い」

村娘「……お客さん?」

視界が濁った。湯気のせいかと思ったけど、違う。これは涙だ。自分は、泣いているのだ。

勇者「美味い…美味いよ……」

涙が止まらなかった。
体が内側から暖かくて、その温もりは自分を慰めてくれているようで…

村娘「よしよし」

頭を撫でてくれる手が、何よりも優しかった。

今日はここまで。
お粥食べたくなってきた。

>>16
情報ありがとうございます。時間ある時に使ってみます!(`・ω・´)

勇者「ありがとう…美味しかった」

村娘「それは何よりだす」

途中の号泣など気にしていないように、村娘はニコニコしていた。
この笑顔に癒されるけれど…それに甘えてはいけない。

勇者「俺はもう行くよ。本当にありがとう」

村娘「待ってくだせぇ」

勇者「? なに?」

村娘「お客さん、何かワケありの様子だったす。このままほっとけないす」

勇者「大丈夫…ちょっと自暴自棄になってただけだから」

村娘「死んでもいい…なんて、ちょっとの自暴自棄で言える言葉でねぇ。心配すよ」

勇者「…それで、俺をほっとかないでどうする気?」

村娘「力になるだすよ! あたしなんて大したことできねけど…あ、でも村の人達の力も借りれば……」

勇者「……」

都会の人間にはないお節介さだと思った。
田舎育ちの自分には、何だか懐かしい感覚で、それでいて今は心地がいい。

勇者「…ありがとう。でも本当、大丈夫だから」

村娘「けども…」

勇者「…俺は、勇者だよ」

村娘「!!」

このお節介焼きを諦めさせるには、素性を明かすしかないと思った。

勇者「信じなくてもいいけどね。勇者の件については、知ってるだろ?」

村娘「勇者…お客さんが……」

勇者「どこに行っても後暗い目で見られる。そんな日々に嫌気が差したんだ」

村娘「……」

勇者「そういうわけだから。それじゃ…」

村娘「すげ…」

勇者「え?」

村娘「本物の勇者様だす!! お顔さ見れて、感動したす!!」

勇者「!?」

村娘「勇者様は人々の為に戦ってくれた英雄す! そんな方に、とんだご無礼を失礼致しますたぁ!!」ハハー

勇者「あの!? 知ってるよな、勇者は結局必要とされてなかったわけで――」

村娘「和平が決まるまでの間、あたしらの心を勇気づけてくだすったのは勇者様だす」

勇者「っ!」

村娘「必要とされてなかったなんて、とんでもね。勇者様がおらんかったら、それこそ希望を失って死を選んでた人がいたはずっす。…あたしだって、勇者様に心を助けられた1人だす」

勇者「君が…?」

村娘「はい。この村は魔物の襲撃さ受けて大打撃を受けたことがあるす。…あたしの家族も、それで殺されますた」

勇者「!!」

村娘「あたしもしばらくは立ち直れなかったし、正直死んでしまいたいと思ったす…。でも、勇者様が…」

勇者「俺が……?」

村娘「勇者様が人々の為に戦ってくれていると知って、あたし…心からあったかくなって、いつしか元気を取り戻せただす! 勇者様はあたしの恩人で、英雄なんす!」

勇者「……!」


勇者(そう、だったんだ…)

正しい道を歩んでも報われないと思っていた。
自分が正しいと思った道は正しくなかったのかと、悩みもした。

だけど――

村娘「へへへ」ニコニコ

勇者(少なくとも、俺は、この子を――この子の心を、守れたんだ……)

それだけで勇者は、報われたような気がしたのだった。

村娘「勇者様…どこさ行っても後暗い目で見られると言ってますたよね?」

勇者「う、うん……」

村娘「だったら、この村に住んだらどうでしょ?」

勇者「え…っ?」

村娘「この村の人が、勇者様を悪く言ってるの聞いたことねっす。もし心配なら、勇者様の正体は内緒にしとくす」

勇者「……」

村娘「…嫌、だすか? まぁ、勇者様にとってはつまらない田舎だしょうけど…」

勇者「……嫌じゃない」

村娘「ほんとだすか!!」

勇者「うん。…あ、でもひとつ、お願いがある」

村娘「なんだすか? なんだすか?」

勇者「それは……」

勇者は知らずの内に、自然な笑顔を取り戻していた。

勇者「勇者"様"って呼び方しないで。呼び捨てとか、"さん"とかがいいな」

こうして勇者は、この村で生活を始めた。

勇者「よいしょ、っと」

村人A「おっ、勇者さ力持ちだなぁ! こりゃ牛車いらずだべ!」ハハハ

勇者「伊達に鍛えてませんよ! 力仕事なら任せて下さい!」

勇者は正体を隠さなかったが、それでも元々許容されていたのか、すぐに村に馴染んだ。
田舎育ちのお陰か、村での暮らしにも抵抗はない。それに元々、勇者として持て囃されていた頃の派手な生活には違和感があったのだ。

勇者(あぁ疲れた…。戦うのとは体力配分が全然違うな)

まだ完全に立ち直ったわけではないが、この時期は毎日雪かきに薪割りと忙しく、落ち込んでいる暇なんてない。


村娘「みなさーん」

勇者「村娘ちゃん。あ、もうこんな時間か」

村娘「村人さんの奥さん達と豚汁さ作ったす! 皆で食べてくだせぇ!」

村人A「おぉ豚汁かぁ! 食うべ食うべ!」

村人B「ふぅ~…体の芯からあったまるな!」

村娘「たっぷり食べてくだせぇ! 力仕事、いつもお疲れ様す!」

勇者「村娘ちゃんも。この時期は水仕事、辛いだろ」

村娘「何てことねっす! 田舎育ち16年は伊達じゃねんすよ!」フフン

村人A「何言うべ。うちのカカアに比べりゃ村娘なんぞ、まだまだヒヨッコだべ!」ハハ

勇者「まぁ、事実若いですからね」

この村は人同士の距離が近い。だから寂しさを感じる日なんてない。
自分はこの輪に受け入れられている。それが嬉しくて、幸せなんだと思う。

村人A「そろそろ切り上げるべー」

勇者「お疲れ様でーす」

今日は雪が降らなかったので、早めに仕事を切り上げることができた。

村娘「勇者さーん、今終わったんだすかー?」

勇者「あ、村娘ちゃん。うん、今終わったとこ」

村娘「はい。勇者さんの為に、防寒服さ作ったす」

勇者「おぉ! ありがとう、嬉しいわ」

村娘「都会のモンに比べたら、あんまいい出来じゃないんだすけど…」

勇者「どうだ? 似合うか?」

村娘「!!」

勇者「? どうした?」

村娘「いえ。…勇者様は何を着ても、素敵だなって」モジモジ

勇者「服の出来がいいからだよ。ありがたく着させてもらうから!」ニコッ

村娘「~っ…」

勇者「…? 村娘ちゃん、顔赤いな?」

村娘「さ、寒いからだす!」

勇者「そうだなぁ…俺も家に戻って風呂にするかな」

村娘「あ、うちで入ってくだせぇ! 丁度、風呂釜に水を貯めてたとこだす」

勇者「そうだな…その方が井戸水の節約になるし、有り難く頂くかな」

勇者「悪いね村娘ちゃん。風呂、先に頂いちゃって」ホカホカ

村娘「かまわねぇだすよ。こういうこと、よくあるんす」

勇者「それじゃあ俺は帰るから、村娘ちゃんもゆっくり暖まって」

村娘「あ、待って勇者さん。勇者さんの分のお食事も用意してっす」

勇者「流石に悪いよ、それは」

村娘「えぇんすよ、あたしも勇者さんと一緒のが楽しいだす」

勇者「そう言われたらね。じゃあ待ってるから、冷めない内に風呂入ってきな」

村娘「はい!」スタタ

勇者(…ん。この状況……)



村娘「ふぅ、気持ち良かったぁ」ホカホカ

勇者「なぁ村娘ちゃん」

村娘「どうしますた?」

勇者「男を家に上げて風呂に入るってさ…」

村娘「へぇ」

勇者「かなー…り、無防備だぜ。村娘ちゃん若いんだし、気ぃつけろよー」

村娘「」

村娘「な、ななな何言ってんすか勇者さんはあぁ!!」

勇者「ごめん、ごめん! けどもし俺がやらしい奴だったら、変なことになってたわけで…」

村娘「別に、えぇのに…」ボソッ

勇者「え?」

村娘「何でもねっす! それに、勇者さんば信用してんすからね!」

勇者「それは何より。これからも信頼に値する男でいます」

村娘「~っ…それよりもご飯だすよ!」プンプン

勇者(…? 怒ってる?)ポカーン

勇者(そして帰宅)

勇者(今日も村娘ちゃん、綺麗に布団敷いてくれてる)

勇者が外で仕事をしている間、村娘が勇者の家の家事をしてくれている。

勇者(まるで通い女房だなぁ)

そう思ってから、自分の考えに対して吹き出す。
村人皆で助けあっているこの村で、村娘が家事の世話をしてくれるのに特別な感情はない。
さっきも村娘は言っていたではないか、「こういうことはよくある」と。

勇者(思い上がりは良くないよな)

勇者として旅をしていた頃ならともかく、力しか取り柄のない今の自分に、女の子が惚れるわけがない。
村娘は優しくて親切で、なつっこいのだ。

勇者(…それに、結構可愛いよな)

どうにも都会の娘に比べると地味なせいで魅力に気付くのが遅れてしまったが、村娘の容姿は可愛らしい。
化粧をして綺麗な衣装を着れば、清楚な美少女になり得る要素は十分にある。

勇者(でも村娘ちゃんの場合、垢抜けない雰囲気もまた魅力なんだよな…)

勇者(って、駄目だ。女の子を好きになったら辛いだけだぞ)

勇者(それより、もう寝よう。布団ふかふかで気持ちいいな~)

>翌日


勇者(今日は暖かいから雪が溶けて氷が張ってるな…危ないから砂撒いたり割らないとな)

村娘「勇者さん、おはようさんです」

勇者「あ、おはよう。…あれ、雪で何か作ってるの?」

村娘「見てくんさい! あたしの好きな動物さ作りました!」

勇者「へぇ。可愛いネズミだね」

村娘「むうぅ~!」ポカポカ

勇者「え、なに、どうした?」

村娘「キツネだす!」

勇者「あ、あぁ。ごめんごめん…ククッ」

村娘「あーっ、勇者さん笑ったぁー!!」プンプン

勇者「ご、ごめ…あはは、あははははっ!!」

村娘「何なんだすかーっ!!」

勇者「い、いやぁ。ムキになる村娘ちゃん可愛いなって」クク…

村娘「!!!」ボッ

勇者「でも、ちょうどベタベタ雪で何か作りやすい感じになってるな。仕事終わったら、かまくらでも作るかな」

村娘「かまくら!! あたし、犬小屋くらいのなら作ったことあるけども…」

勇者「俺は力あるから、大きいの作れるよ。楽しみにしといて!」

村娘「楽しみだす! かまくら、かまくら♪」

勇者(怒ったと思ったら、こんなにハシャいじゃって…)

>そして


勇者「ふぅ、出来た」

夕方、勇者は大人が何人か入れそうなかまくらを作った。
休憩せずに集中して作ったせいか、体は汗だくだ。

村娘「勇者さーん、出来たんすねー!」

勇者「おう、我が雪の城へようこそ!」

村娘「七輪と炭を持ってきたす! 今日はここでご飯にしましょ!」

勇者「お、いいねー。村娘ちゃん張り切ってるね」

2人はかまくらの中に入ると、早速魚や餅を焼き始めた。
薄暗い中で明るい火に照らされた食べ物は美味しそうに見えて、お腹も鳴る。

村人A「お? かまくらで飯かー、美味そだな!」

村人B「匂いが漂ってくるなぁ。くぅ、腹減ってきたべ!」

村娘「良かったらご一緒にどうすかー?」

村人A「ほんなら、カカアと一緒にお邪魔させてもらうべ! 丁度、うちにホタテが一杯あるべ!」

村人B「おらも、うちから甘酒でも持ってくるだよ」

村娘「ほんなら、お待ちしてっすー!」

村人C「お、かまくらで食事会かぁ! ええなぁ!」

村人D「おし、うちから鍋持ってくるだ! 宴会だ宴会!」

勇者(何か、どんどん話が大きくなってるなぁ)

こうして村人のほとんどが集まり、かまくらの周囲で大宴会となったのだった。

村人A「カカッ、勇者さも飲まねが~?」

勇者「み、未成年なので」

村人B「関係ねぇべ、おらは15から親父に飲まされてただ!」

奥方A「こら! 勇者さんを困らせるでねの! ほら、酔っ払いはここさ集まって飲む!」

村人A「へいへ~い。おー、うちのカカアはおっかね」

奥方A「ごめんなさいねぇ、うちのダンナが」

勇者「いえいえ」

正直少し困っていたが、妻の尻に敷かれている村人たちに同情しながら笑う。
でも、奥方達も物言いはきついが、普段は旦那を支えている。きっと彼らは、信頼を築いている夫婦なのだ。

勇者「…いいもんだな」

村娘「何がすか?」

勇者「あ、いや。ここの村はほんと、皆仲良くていいな~って」

村娘「そっすね。でも都会の人から見たら、田舎モンは馴れ馴れしくていけねと聞いたんすけど」

勇者「その馴れ馴れしさが心地よくてね。俺はこの村が好きだよ」

村娘「良かったす。勇者さんもすっかり、この村の一員だすね」

勇者「そうだね」

雪が溶けたら農作物を育て、冬には雪をかいて。
この村でそんな毎日を繰り返しながら、年をとって死ぬのだろう。
そんな素朴で平凡でありふれた人生を送れることが、何だか幸せに思える。

勇者(やっぱ俺、勇者には向いてなかったんだな)

でもそれは口にしない。

村娘「勇者さん、お茶だす~。飲みやすい熱さにしてんすよ」

勇者「ありがとう」

自分に救われたと言ってくれる人もいるのだから。
だから、それは心に秘めておくだけ。

今日はここまで。
幸せそうで何より。

>翌日


勇者「へくしっ。…うー」

風邪を引いた。
かまくらの中はあったかいからと、汗だくのまま過ごしたツケか。

勇者(あー、皆に申し訳ない)

外は昨日と変わって雪。村は雪かきの人手を必要としているだろう。
けど頭がボケーっとして、協力できそうにない。

勇者(体調管理がなってないなぁ…。あぁ、自己嫌悪)

ガラッ、パタパタ

勇者「…ん?」

村娘「勇者さん、おはようさんだすー。どしたんすか、家に閉じこもって」

勇者「風邪引いた…ぶぇっくし!! 今日は雪かきできない、って皆に伝えてくれないかな?」ズズッ

村娘「風邪!? あちゃー、そりは大変だす!」

勇者「本当に申し訳ない。助け合っていかないといけないのに、風邪なんて引いちまって…」

村娘「何言ってんすか、風邪なんて誰でも引くだす。そんなことで自分を責めるなんて、おかしな勇者さんだすな」

勇者「そ、そっかな…? …へくしっ!」

村娘「そいじゃ、あたしが伝えてくるだす。ゆっくりしててくだせぇ」パタパタ

勇者(おかしな…か。何で俺、自分を責めてるんだろうな?)

勇者(……あ)


僧侶『風邪ですか…自己管理がなってませんね』

騎士『早く治せよ~。その分、旅が停滞しちまうからな』


勇者(そっか…あの頃は風邪引いたら、そういう風に言われたからな…。まぁ、魔王討伐の使命を背負っていた以上、仕方ないよな)

勇者(……何か、思い出しちまったなぁ)ゴホゴホ

最近は、あの頃の記憶が薄れてきていたというのに。
だけど熱のせいか、色んなことを思い出した。

騎士『かあぁーっ、また負けたぁーっ! 勇者、頼む! もう1本手合わせしてくれ!!』

豪快で負けず嫌いの騎士。
共に剣のことで語り合い、切磋琢磨してきた仲だった。


僧侶『保存食を作りましたよ。栄養はたっぷり入っています、これで力をつけて下さい』

クールで知的な僧侶。
彼の頭脳や、冷静な判断力はいつでも頼りになった。


そして――


踊り子『勇者、新しい舞を覚えたの! ねぇねぇ、見て!』

勇者『俺は舞のことはよくわからないから…』

踊り子『それでもいいの! だって勇者に見てもらいたいんだもん♪』

勇者『…俺なんかでいいの?』

踊り子『うん! 勇者は運動神経いいから、いつか一緒に踊れるといいなぁ』

勇者『…そうだな。旅が終わったら、踊りを教えてくれよ』

踊り子『!! 勿論よ勇者!』



勇者(――好きだったなぁ)

勇者「…ん……」

村娘「はぅ! す、すんません勇者さん、起こしちまいましたか!」

勇者「村娘…ちゃん……?」

いつの間にか寝てたらしい。
頭がひんやりする。これは…冷たいタオル?

勇者「看病…してくれたの……?」

村娘「勇者さん一人暮らしだもの、看病が必要だす。あ、勇者さんが寝てる間に、お医者様に見てもらったすよ!」

勇者「医者か…。全然気がつかなかったな」

村娘「はい、お水! お薬飲んで、もっかい寝るだす!」

勇者「ん……」ゴクリ

村娘「飲んだすね。あ、あたしはお粥作ってっすから。何かあれば呼んでくだせぇ」

勇者「…ずっと、この家にいてくれるの?」

村娘「えぇ。勇者さんば放っておけないだす!」

勇者「…そっか」

優しさがいつもより身にしみる。
風邪のせいで、心も弱っているみたいだ。

勇者「なら…。ずっと風邪引いてようかな……」

村娘「へっ?」

勇者「…すやー」

村娘「……?」

最初は長引くかと思ったが、3日目には大分体調も良くなってきた。
その間ほとんど寝ていて記憶があまりないが、部屋には村の人たちからのお見舞い品が沢山置かれていた。

勇者(今日から仕事に復帰するかなぁ)

村娘「おはようさんだす、勇者さん。顔色が大分良くなってきたすね!」

勇者「うん。村娘ちゃんのお陰だよ、ありがとう」

村娘「とんでもねぇす」

勇者「皆にも心配かけちまったしなぁ。今までの倍働くからな!」

村娘「無理して風邪ぶり返さないように注意だすよ~」

そう言いながら2人一緒に家を出た。
久々の外は、何だか様子が違って見えて――

勇者(…何か騒がしくない?)

村人A「た、大変だぁ!」

勇者「どうしたんですか?」

村人A「村周辺に魔物が現れ始めたべ!!」

勇者「…!?」


奥方B「ひゃああぁ――っ!」

村人A「この声は、Bんとこのカカアの声だべ!」

勇者「行ってみます!」ダッ

奥方B「ひ、ひいぃ…」

村人B「寄るな、この魔物め!」

村の中に侵入してきた魔物に、村人は怯えながらもクワを持って威嚇していた。

村人B「カカア、早く逃げるだ!」

奥方B「あんたを残して行けるかい!」

村人B「何言ってるだ、早くしねと…」

魔物「ガアァ――ッ!!」

村人B「!!!」


勇者「だああぁーっ!!」バキィ

魔物「ゴハッ!!」

村人B「!! ゆ、勇者さ!」

勇者「Bさん、クワを貸して!」

村人B「へ、へぇ!」

魔物「ガルル…ガアアァァッ!!」バッ

勇者「でりゃあぁ!!」ズシュッ

魔物「ガ……」パタッ

村人B「勇者さ、助かったべ!」

勇者「何で魔物が……」

和平が成立してから、人間と魔物は住処を「住み分け」することになったはずだ。
だから人間の村に魔物が入ってくるなど、ありえないことなのだが…。

しかし、考えている間もなかった。

村人A「て、大変だぁ――っ!!」

勇者「どうしました!」

村人A「また魔物が村に入ってきたべ! 女子供は家ん中さ避難させといたが…」

勇者「わかりました、皆さんも避難して下さい!」ダッ

村人A「勇者さ!?」


勇者が駆けつけると、10匹近くの魔物が村に侵入していた。
魔物達は勇者の姿を見つけると、一斉に襲いかかってくる。

勇者(久々の感覚だな…――)

まさかまた魔物と戦う日がやってくるとは思わなかった。
剣に比べてクワは戦闘に向かないが――

勇者「お前たちには、これで十分だ!!」

勇者は威勢よく、魔物達に立ち向かっていった。

勇者「…ふん」

あっという間に魔物を片付け、勇者は村中を見回った。
もう他に魔物が入ってきた様子はない。

村人A「た、助かった…べか?」

勇者「えぇ。ひとまずは、大丈夫の様です」

村人A「良かったべ~…勇者さがいなければ、どうなってたことか……」

村人達がぞろぞろと家の中から出てきた。
彼らは安堵の表情を浮かべ、勇者に駆け寄ってきた。

「ありがとう、勇者さん!」「勇者さんのお陰だす!」「勇者さは村の守り神だべ!」

勇者(あ、はは…参ったなこりゃ)

村娘「勇者さん!」ダッ

勇者「村娘ちゃん、無事で良かった」

村娘「怪我はないだすか! 病み上がりなのに…」アワワ

勇者「うん、大丈夫。雪かきよりも戦う方が楽なくらいだよ」アハハ

村娘「もー、勇者さんたら…」

村人A「んだけども、何で魔物が現れたんだべな?」

村人B「おっかねぇかったなぁ。これで済むと良いんだが……」

勇者「……」


そしてその日の正午、答えはやってきた。

兵「邪神が現れた」

村人A「じゃ、邪神!?」

国からやってきた兵の報せにより、村人たちがざわついた。
邪神とは――勇者も初めて名を聞く。

兵「その邪神は、魔物の国に突如現れた、魔王の反対勢力らしい。魔王も今までその存在を知らず、あちら側も困惑している」

村人B「その影響で村に魔物が現れたってのか!」

兵「国中の町村に兵が派遣される予定だ。だが、突然のことで国も混乱していてな…」

村人A「どうすんだべ~…せっかく平和になったと思ったのに、また昔に後戻りだべ」

村人B「そんで、国から何人の兵が来るんだべ?」

兵「この村には、5人と…」

村人A「5人!? たった5人だべか!?」

兵「規模的に、どうしても都会部を優先することになり…」

村人B「村から切り捨てようってのかぁ!」

兵「そういうわけでは……」

勇者「…俺が村を守りますよ」

兵「!! 貴方は……」

勇者の顔を知っているのか、兵は勇者の顔を見て驚きの表情を見せた。

勇者「俺の分の剣を持ってきて下さい。俺1人で、その5人の兵以上の仕事をしてみせますよ」

宣言通り、勇者は5人分以上の働きをした。

勇者「でりゃああぁぁ――っ!!」

魔物「ガハッ…」

たまに魔物が現れる村だったが、勇者の活躍により被害は出なかった。


勇者「…! 村娘ちゃん、家に隠れて」

村娘「どうしたんすか?」

勇者「魔物が近づいてきてる!」

村娘「!」

この小さな村の中、魔物の気配がすればすぐに察知できる程の勘を取り戻した。


勇者「よっこいしょ、っとおぉ!!」

村人A「お、おおぉ…そんな大岩を持ち上げるとは……」

勇者「よし…筋力アップ!」

村の守人となった勇者は、今までの仕事時間をトレーニングに費やせるようになった。


勇者「だあぁ!」バシッ

兵「くっ…流石勇者殿。5人がかりでも1本も取れないとは…」

勇者「もう1本行きますか。今度はちゃんと、俺の剣の動きを見て」

兵「はい!」

兵士たちに剣の稽古をつけながら、自身も剣を振る感覚を取り戻していた。

>夜


兵「今日もお疲れ様です、勇者殿!」

勇者「ん。俺は家にいるんで、何かあったらすぐ知らせて下さい」


村娘「あ、勇者さん。お帰りなせぇ」

勇者「ただいま。いい匂いするなぁ…」

村娘「今日はお肉だす。一杯、力をつけてくだせぇ」

勇者「悪いね村娘ちゃん、すっかり毎晩の夕飯支度までさせちゃって…」

村娘「何言ってるんだすか! 勇者さんはこの村を守ってくれてんだもの、これ位は当然だす!」

勇者「…何か、既婚男の気持ちがわかるわ」

村娘「え?」

勇者「こうやって世話を焼いてくれる奥さんがいるから、仕事に集中できるんだよな~」

村娘「お、おおおおお奥さん!? そ、そそそそんなら、あ、あ、あたし、勇者さんの奥さ」ガチガチ

グウウウゥゥゥ

勇者「腹減ったんで、頂きます」

村娘「………」

>その頃――


悪魔「ウケケ。人間共め恐怖してやがるな…。恐怖は邪神様にとっていい糧になる、もっともっと恐怖しろ!!」

1匹の悪魔が翼を広げ、地上を見下ろしていた。

悪魔「あんな腑抜けの魔王なんざ、とっとと隠居させてやんよ。時代は邪神様だぜェ!!」

コウモリ「悪魔様」バッサバッサ

悪魔「おう、人間社会の侵略は順調か?」

コウモリ「はい。しかしこの国で1件、被害を与えられていない村がありまして…」

悪魔「ハァ? 村だろ村! 村相手だからって手ェ抜いてんじゃねぇだろなぁ!!」

コウモリ「いえ。その村には兵士もたった5名しか派遣されていないにも関わらず、50名以上の魔物が狩られています」

悪魔「そんなにか…。そりゃきっと何かあるんだろうな」

悪魔は凶悪に笑った。

悪魔「こうなりゃ、俺自ら行くしかねぇみてぇだな…!!」

今日はここまで。
平穏なだけではいかないですね。

>深夜、村


勇者「Zzz…」

バタバタ

兵「勇者殿!」

勇者「ん…どうしたんですか」

安眠から起こされた勇者だったが、兵士の緊迫した様子に、すぐにスイッチを入れる。

兵「遠方の上空に魔物らしき影を確認! こちらの村に向かってきます!」

勇者「了解。急いで向かう」

勇者は急いで着替え、剣を持って家を飛び出した。

兵「あれです」

勇者「ん――」



悪魔「さぁ~て、挨拶に一発…」ゴオォ…

悪魔「爆炎ブッ放してやんよおおぉぉ!!」

ドゴォ――


勇者「はああぁ――っ!!」

悪魔「…へぇ~?」

高く跳躍した勇者は、悪魔の放った魔法を一刀両断した。
それを見た悪魔は面白そうに笑う。

悪魔「おいテメェ! 俺の魔法を斬るとは、只者じゃねぇなぁ~!?」

勇者「…」クイッ

悪魔「?」

勇者は「来い」と指で指示し、村の外へ出る。
悪魔は素直に、勇者の側に降りた。

勇者「村の皆の睡眠を邪魔するな」

悪魔「随分と余裕じゃ~ん? けどご心配なく、村ごとテメェを葬ってやるからよォ」ケケケ

勇者「させねぇよ…!!」

勇者は悪魔へと一直線に駆け、迷わず剣を振り下ろした。

悪魔「おっとォ!」ヒョイ

勇者(素早い!)

悪魔「今までの雑魚と同じに考えんなよぉ…喰らえッ!!」

勇者「!!」

高速の爪攻撃が勇者に襲いかかる。

勇者(回避? いや――)

回避すれば体制が崩れ、その隙を突かれる。
それよりも――

勇者「…――っ!」パシッ

悪魔「!!」

勇者は悪魔の手首を掴んで攻撃を止めた。

悪魔「…いでででっ!!!」

そして、一気にひねり上げた。

悪魔「クッ!!」バッ

勇者「…ちっ」

上空に逃げられた。これだから翼のある相手は面倒くさい。

悪魔「やるじゃねぇかよ、力自慢さんよォ!! なら、これはどうよ!!」

勇者「…っ!」

何発もの爆炎が悪魔から放たれた。
だが、恐るるに足りない。次々と切り裂き、剣でかき消す。

勇者「そんな攻撃じゃ俺は殺せないぞ…」

悪魔「そうみたいねぇ~。それじゃ、これは?」

勇者「!?」

勇者の周辺で爆音が轟いた。
地面の砂が舞い上がり、視界を遮る。

勇者(視覚を封じて攻撃を叩き込もうっていう魂胆か…だが!)

爆炎1発目。気配を察知し切る。
反対方向から続けて2発目。これも難なく切る。
3発目、4発目は同時に放たれた。それも見極めて切る。

勇者(5発目――来る)

構える、と同時――

悪魔「バァ♪ 爆炎かと思ったァ――ッ!? ざあぁんねぇん!!」バキィ

勇者「――っ!!」ドンッ

鋭い蹴りを腹に喰らい、勇者は木に体を打ち付けた。

悪魔「爆炎と俺じゃスピードは全然違うんだよなぁ。思い込みって怖いね~♪」

勇者(こいつ…!!)

痛みを堪えて、勇者は再び構えた。

悪魔「ヒャッハアァァ!!」バキィ

勇者「!!!」

悪魔「さっきより動きが鈍ってんぜえぇ!! 痛くて動けないのかな、ケケケケ!!」バキベキッ

勇者「――っ」

ドォン

勇者「…ッハァッ」

悪魔「おぉ~、神回避だねぇ。でもォ!!」ドゴォ

勇者「――っ!!!」

悪魔「回避した瞬間には隙が生まれますねー♪ その必死感がマジウケる~」

勇者(この野郎、意外と考えてやがる…!)

ダメージで余裕を失っているのは事実。
頭の中で落ち着けと自分に言い聞かせたところで、冷静な考えが浮かぶわけでもない。

勇者「…だったらぁ!!」ビュンッ

悪魔「おっ?」サッ

――捨て身でひたすら攻めるのみ!

悪魔「わ、ちょっ…」ササッ

スタミナ配分など気にしていないかのような剣の連続攻撃に、悪魔は回避するのが手一杯の様子だ。

悪魔「あークソ、これだからヤケクソになったバカはっ!!」バッ

勇者(よし――)


自分の隙が回避した瞬間に生まれるのなら――

勇者「おらぁ!!」ブンッ

悪魔「――」

この悪魔の隙は、空中に舞い上がっている最中に生まれる――

悪魔「――えっ?」


悪魔の腹には、勇者が投擲した剣がざっくりと刺さっていた。


勇者「翼を生やした魔物と戦うのは、お前が初めてじゃないんだよな…」

悪魔「ガハ…ッ!!」

悪魔は地面に倒れた。
勇者が悪魔の腹から剣を抜くと、血がどぼどぼ溢れ出した。

悪魔「ヘ、ヘヘ…ッ、見事じゃねぇか…!」

顔は血の気を失いながらも、悪魔は笑った。

悪魔「最後に教えてくれよ…テメーの名は何ていうんだオイ?」

勇者「……勇者だ」

悪魔「勇者……って、あぁ。あの勇者ね……」

何を思ったのか、悪魔は納得したように言った。

悪魔「世界には馬鹿ばっかかよ、お前程の奴を冷遇するなんて…ゲホッ」

勇者「……」

悪魔「あー、ここでリタイアは惜しいけど仕方ねぇな…。邪神様、万歳…ッ!」

勇者「……」

悪魔はそのまま動かなくなった。
だがこの強敵に勝利したというのに、勇者の気持ちはどこか重い。
それはこの悪魔が、敵として勇者に敬意を抱いてくれた為かもしれない。

勇者(…そんなことで喜びを感じたなら、俺はちょろい奴だよな)

兵「勇者殿ー!」

勇者「あぁ。終わりましたよ」

兵「しかし怪我をされていますね…。家に戻って治療をしましょう!」

勇者「はい」

その場を後にしながら、勇者は心の中で悪魔に言った。

――お前も、スゲェ奴だったよ。いい相手と戦えた、って久しぶりに思えた。

>翌朝


村娘「ほ、ほんなに強ぇ魔物が来たんだすか」

勇者「あー…お陰で寝不足」ボー

村娘「お怪我の具合はどうなんだすか!?」アワワ

勇者「大丈夫大丈夫。俺の体は叩いても切っても燃やしても壊れないから」

村娘「んなわけないだしょ」

勇者「それは冗談だけど大丈夫なのは本当。ありがとな、心配してくれて」

村娘「一杯栄養つけて、体ば休めてくだせぇ」

勇者「ん。あー、味噌汁うめぇ…」


<ガヤガヤ


勇者「…ん?」

村娘「外が騒がしいすね…」

勇者「もしかして魔物かも。行ってくる!」

村娘「お気をつけて!」

勇者「…うっ?」

外に出た勇者はすぐに異変に気付いた。
早朝だというのに空が薄暗い。暗雲の間を雷が鳴り響いている。

勇者(…やな空気だな。単に天気が悪いわけじゃなさそうだ)

兵「あ、あれは!!」

勇者「!!」

暗雲の隙間から影が現れた。

それは、正しく"不吉"を象徴するような、異形の存在――

その異形は雷を背に、村の上空へと降りてきた。
感じるのは本能的な"危険"と"恐怖"――そしてその異形ははっきりと、勇者を見ていた。

この不吉――間違いない。

勇者「――お前が、邪神か」

邪神「いかにも」

囁くような口調だったが、その声は脳に響いた。
ただ声を出すだけで、ここまで不吉なものを感じさせる生物がいたとは…。

邪神「我が腹心、悪魔を倒したそうだな」

勇者「…あぁ。先に仕掛けてきたのは向こうだ」

邪神「それは構わぬ。奴がお前より弱かっただけのこと――お前、名は何と言う」

勇者「勇者だ」

邪神「勇者――そうか、お前が勇者か。人間たちに翻弄され、魔王に弄ばれた哀れな者よ」

勇者「…同情はいらない」

邪神「勇者よ――私と手を組まぬか」

勇者「何を言ってやがる」

邪神「私は有能な者を側に置きたい。お前とて、お前を愚弄した者たちが憎いだろう?」

勇者「…そんなことはもう忘れた」

邪神「こんな寂れた村でお前は朽ちていくつもりか?」

勇者「…だったらどうする」

邪神「この村を滅ぼす…と言ったらどうする?」

勇者「………」

その言葉を聞いた村人たちの顔に絶望が浮かぶ。

勇者は表面的には冷静を装っていたが、内心で焦っていた。
この邪神の威圧感――それに世界の現状から考えて、邪神は、魔王と同等かそれ以上の力を持っているだろう。
そんな力の持ち主が村を襲えば――

勇者は考える。

勇者(お前を愚弄した者が憎いだろう…ね。助けたい、って思わなくなったのは事実だ)


そして、先の悪魔の言葉を思い出す。

悪魔『ヘ、ヘヘ…ッ、見事じゃねぇか…!』

悪魔『世界には馬鹿ばっかかよ、お前程の奴を冷遇するなんて…』


勇者(こいつらは、俺を愚弄した人間達とは違う…)


村人A「ゆ、勇者さ……」

村人B「ううぅ……」

勇者「……」

村人たちは懇願するような目で勇者を見る。
彼らとて、勇者が最悪な選択を迫られていることくらいわかっているだろう。

勇者「…心配いりませんよ」

勇者はそう言って村人たちに笑いかけた。
そう――勇者にとって大事なのは世界よりも……

勇者「俺は、この村が1番大事だから――」

村娘「勇者さん、駄目だす!!」

勇者(村娘ちゃん)

家から飛び出してきた村娘が、勇者に向かって叫んだ。

村娘「勇者さんは、人々の為に戦ってきたヒーローだす!!」

勇者(正確には、ヒーローになり損ねたんだけどな)

村娘「勇者さんの存在は希望なんす! 悪い奴の言葉に耳を傾けちゃ駄目だす!」

勇者(俺にはもう、何が希望で、何が悪いのかも判断はつかないよ)

村娘「勇者さんは…勇者さんは、ヒーローのままでいて――」

勇者「…村娘ちゃん、ごめん」

村娘「え――っ?」

勇者「邪神、こちらの条件を聞いてもらっていいか?」

邪神「言ってみろ」

勇者「ひとつ、俺は人間は殺せない。もうひとつ――この村にだけは手を出さないこと」

村娘「――っ!!」


邪神「――いいだろう」

勇者「ん。それならお前の下に行くよ、邪神」

勇者は邪神に手を伸ばす。
叫ぶ村娘に背を向けて。

村娘「何で! どうして勇者さん、そんな――」

――本当にごめんな、村娘ちゃん。


勇者「大事なものを守る為なら、堕ちてもいい」

村娘「!!」

――君はそんな俺が嫌いだろうから。


邪神「共に行こう、勇者よ…」

勇者「あぁ…」

――俺はもう、ここに戻らない。


村娘「勇者さあぁぁ――ん!!」


――大好きだよ、村娘ちゃん。

今日はここまで。
さーてどうなるか。

誤字指摘ありがとうございます。
体制→体勢です。失礼いたしました。

本日分投下致します。

勇者「そんで……」

神殿に招かれた勇者は、早速話を切り出した。

勇者「俺は何をすればいいんだ?」

邪神「気の早い。そんなに復讐したくてウズウズしているのか?」

勇者「そうじゃない。俺がお前と手を組んだ理由をもう忘れたか」

邪神「クク、すまない。こんな情報が入っていてな…」

勇者「どんな?」

邪神「魔王の国と人間の大国が手を組んで、近々私を倒しに来るそうだ」

勇者「へぇ」

邪神「そしてその連合軍を率いるのは…魔王だそうだ」

勇者「かつては城で敵を待つだけの身分だったのが、自分から敵を倒しに来る身分になったか」

邪神「我々は奴らが来るのを待つだけだ」

勇者「こちらからは仕掛けないのか?」

邪神「あぁ、正面から叩き潰してこそ、我々の力が本物であると証明される。…矮小な手を使うような小物と一緒にするな」

勇者「…」

魔王に聞かせてやりたくなるような皮肉。
邪神に比べると、あの魔王が小物に思えてくるのが不思議だ。

勇者「なぁ。この神殿に、悪魔並に強い奴はいるか?」

邪神「あぁ、いる。それがどうしたのだ?」

勇者「そいつら相手に修行したい。腕を上げるには実戦が1番だ」

邪神「ほう。向上心のあることだな。寂れた村で戦闘意欲が疼いていたのか?」

勇者「さてね。寝不足なんで、一眠りしてから修行させてもらう」

邪神「ふ。修行相手にはとびきりの実力者を用意しよう」

勇者「…そうだ邪神」

邪神「何だ」

勇者「お前の目的を聞くのを忘れていた。…お前は何の為に、世界に攻撃を仕掛けている?」

邪神「簡単な話だ。恐怖、絶望…その"感情"こそが、私の糧。だから世界を恐怖と絶望に包む、それだけだ」

勇者「わかった」

それだけ聞くと、勇者はそこを後にした。
心の中で邪神に「生きにくい体質だな」と声をかけて。

勇者(俺の糧は――さっき、捨てちまったけど)

それから勇者は、ひたすら修行にのめり込んだ。

勇者「ハァ、ハァ…おらあぁぁ――っ!!」

竜「やるな、人間よ…!」

考える時間があれば、考えてしまうから。
だから、そんな時間を作らないように。

勇者「ゼェッ…――Zzz」

竜「馬鹿みたく剣を振ってたと思ったら寝やがった」

自分の判断を後悔しているわけではない。

ただ…――


村娘『勇者さんは…勇者さんは、ヒーローのままでいて――』


勇者「!!!」ガバッ

竜「お、起きたか」

勇者「…もう1回やるぞ」

竜「またかよ」


裏切って開き直れる程、勇者の心は図太くなかった。

>数日後――


邪神「フフ…感じるぞ。強者の軍勢がこの神殿に、どんどん近づいてきている」

勇者「…魔王もいるか」

邪神「あぁ。軍勢で最も強い力の持ち主…あれが魔王だろう」

勇者「そうか……」

邪神「魔王と戦いたいか? 勇者よ…」

勇者「…どうでもいい」

邪神「そうか。だがどの道、お前は人間を斬ることはできない」

勇者「……」

邪神「魔王はお前がやれ、勇者。味わった屈辱を、倍にして返すのだ」

勇者「…わかった」

命令だから。そこに私的な感情は持ち込まない――

――はずだった。


ワアアァァ

勇者「――」

魔王「邪神についたという噂は、本当だったか…」

踊り子「……」

混戦の中、魔王を見つけた。側に踊り子を連れて。
その2人の姿を見た途端――


勇者「…――っ」



魔王『ハハハ…面白いものを見せてもらったぞ!! なぁ、踊り子?』

踊り子『はい、魔王様』クスクス


踊り子『それにしても勇者ったらおっかしい~!! 必死な顔して罠を突っ切って行くんだもん、笑い堪えるの大変だったぁ!!』

魔王『お陰で体も臭くなったな、勇者』


踊り子『そういうワケだから、とっとと勇者をこの城から連れ出してくれない? くっさいのよ、さっきから』


魔王『国に利用されるのも、我に遊ばれるのも、滑稽さはそう変わらん』



勇者「うわああぁ――っ!!」バッ

魔王「!!」

糸が切れたように、勇者は魔王に飛びかかった。

勇者「あああぁ――…っ!!」


これは命令、これは命令、これは命令、これは命令…――


踊り子「魔王様…くっ!」

踊り子は周囲の激戦の波に飲まれていった。
戦いの現状は勇者と魔王、1対1。

魔王「はぁっ!!」

勇者「!!」

魔王の拳が勇者の腹を打つ――が、

勇者「この程度かよ、魔王」

そのダメージは、戦いに支障ない。勇者は勢いを失うことなく魔王を挑発した。

魔王「この…っ、暗黒魔法!!」

勇者「オラァ!!」ズバッ

魔王「!! 斬…っ!?」

勇者「どうした…? まさか今のが本気とは言わねぇよな…?」

魔王「ク…!」シュッ

勇者「遅ぇ!!」バキィ

魔王「が…っ」


――あれ?


勇者(魔王って、こんなに手応えなかったか…?)

――あぁ、そうか


勇者「そういやお前は…罠で嵌めねぇと俺と戦えもしない、臆病者だったよなぁ」

あの時どうして自分は疑問に思わなかったのか。
あれは1対1の対等な戦いなんかじゃなかった。数々の罠で、自分は疲弊していたではないか。

勇者「は、ははは……」

魔王「……っ!?」

勇者「はははははははははははは!!!」

心の底から笑えてきた。
自分をコケにしたのは、この程度の奴だった。

勇者「……はぁーっ…」

そして笑いが収まると、今度は頭が冷えてきた。

勇者「――…す」


こんな奴に、自分はコケにされた――


勇者「殺す…ぶっ殺してやるよ魔王オォ!!」

魔王「!!!」


自分の味わった屈辱を、忘れる為に――!!

勇者「――」


その時ふと、あるものが目に入った。

それは魔王のピアス。あの時、自分の"負け犬"の顔を映し出した、あの忌まわしいピアス。

勇者「あ――」

そこに映った顔を見て、勇者の勢いは衰えた。

勇者(何て…邪悪な顔だ……)

信じられなかった。自分がこんな顔をするなんて。
しかしそこに映っていたのは確かに、"殺し"を楽しんでいる自分の顔で――

勇者「あ、ああぁ……」


"人間"の顔ではなかった。

今日はここまで。
さてどうなることか。

――別に、いいじゃないか。俺はそこまでのことをされたんだ。

勇者「あああぁ……」

――こいつらが、俺を"人間"でなくしたんだ。



勇者(――違う)

確かに自暴自棄になっていた時期はあった。
人間であるどころか、命すら放棄しようとしていた。

そんな自分が踏みとどまれたのは…――


村娘『あったかいもんお腹一杯食べたら、きっと元気になるす!』


勇者(…そうだ)

自分は今の今まで、生きてきた。
生きていこうと希望が沸いたのは、彼女のお陰で――


村娘『勇者様が人々の為に戦ってくれていると知って、あたし…心からあったかくなって、いつしか元気を取り戻せただす! 勇者様はあたしの恩人で、英雄なんす!』


勇者(…――駄目だよな、こんな俺じゃ)


その彼女は、自分に"人間"であることを望むはずだ。


勇者「…おい、魔王」

魔王「……っ?」




邪神「ほう…私の元にたどり着いたか」

魔王「……我が地位を奪おうという不届き者め。我が手で制裁を加えてやろう」

邪神「来い、矮小なる王よ。貴様を葬り、新たな絶望を味わわせてもらおう」


両者が戦闘態勢に入ると同時、溢れ出る魔力が空間を揺らした。
互いに魔力を主張し、威嚇し合う。

魔王「喰らえ――っ!!」

先に仕掛けたのは魔王だった。
暗黒魔法を連続で10発――いずれも、1擊で城ひとつを破壊できる程の威力だ。

邪神「ふん」

邪神はそこから動かぬまま、魔力でもってそれを打ち消した。

邪神「連続魔法とは、これくらいでないとな――」

邪神の周囲に魔力の球体が浮かぶ。その数は有に100を越える。

邪神「どうだ」

魔王「覇ぁっ!!」カァン

邪神「…ほう」

魔王の爪が球体を弾き、そして球体は軌道を変え邪神へ――


ドカアアァァン


魔王「やはり爆発魔法の類だったか…自身の技の味はどうだ」

邪神「悪くはない」

魔王「!!」

巨大な爆発だったにも関わらず、直撃した邪神は無傷だった。

魔王「くっ…暗黒魔法!!」

邪神「――」

また魔法が直撃した。しかし――

邪神「うむ。お前の魔法も悪くはない」

魔王「何だと…!!」

邪神がダメージを受けた様子は無かった。

魔王「この…っ!」

魔王は今度は爪を立て、邪神に向かっていった。
邪神が放つ魔法を回避し、打ち消し、邪神との距離を詰める。

魔王「ハアァッ!」

爪で空気を斬り、放つ真空斬。

邪神「――っ」

邪神は眉をひそめる。今度は、ダメージを与えたようだ。
手応えを感じた魔王は、一気に邪神の正面へと立った。

魔王「喰らえ!」

邪神「!!」

爪を胸に刺す。
このまま心臓を抉り取る――魔王はズブズブと深く爪を食い込ませた。

邪神「…っ」

魔王「痛みで声も出ないか?」

もうすぐ心臓に届く――勝ちを確信した魔王はニヤリと笑った。

邪神「――いや」

邪神は大きく口を開く。

邪神「痛みなど、感じない――」

魔王「っ!?」

突如、馬鹿でかい魔力を魔王は感じた。
当たってはまずい――本能的に察知はした。

だが、間に合わなかった。

魔王「――」

全身を焼き尽くすような魔力に、苦痛を感じたのは、ほんの一瞬だった。

邪神「お前が物理攻撃に転じたと同時、私は体内でお前に気付かれぬように魔力を貯めたのだよ」

邪神がそれを話し終わった時、既に魔王の肉体は消滅していた。

邪神「ふぅ」

魔力を治癒に当てる。確実に魔王を討つ為とはいえ、肉体にかなり負担をかけた。
あと数秒技を出すのが遅れていたら、こちらの負けだった。

邪神「…よし」

傷は塞いだ。かなりの魔力を消費したが。
しかし、これで敵将は討った。あとはこの程度の魔力でも、十分な相手ばかり――


勇者「なるほど。お前の戦い方はそんな感じか」

邪神「勇者。魔王にやられたのかと思ったが、無事だったのだな」

勇者「まぁね。それより、今の戦い見てわかった」

邪神「何をだ?」

勇者「お前と魔王の実力差はそんなに無い。魔王に先の戦いの疲れとダメージが残っていなかったら、勝敗は逆転していたかもしれない」

邪神「そこは私との勝負を焦った魔王の判断ミスだろうな」

勇者「で…俺は万全の状態の魔王よりも強い」

邪神「ほう」

勇者「だから…」

勇者は剣を抜き、邪神に向けた。

勇者「俺は多分――お前より強い」

時は少し前にさかのぼり…


勇者「…おい、魔王」

魔王「……っ?」

トドメを覚悟していたのか、急に動きを止めた勇者を、魔王は不思議そうに見た。

勇者「お前みたいな小物には興味も失せた。とっとと邪神の所まで行っちまえ」

魔王「…!? 馬鹿な、我を見逃すというのか?」

勇者「勘違いするな。お前を殺すのが、俺でなくて邪神になっただけだ」

魔王「……」

勇者「何だ」

魔王「何を企んでいる?」

勇者「知る必要はない。お前は、俺にいいように利用されてりゃいいんだよ」

魔王「…クッ」

屈辱的な様子ながら、魔王は勇者の言う通り邪神の居場所へと向かった。
魔王の"無様な負け犬"の姿を見ただけで、大分溜飲は下がった。

だが、見逃すだけでは意味がない。

勇者(邪神の力は未知――魔王との戦いを観察して力を測り、なおかつ力を消耗させられれば…)





邪神「私に挑むと言うのか、勇者」

勇者「…驚かないんだな? 裏切りは想定内か?」

邪神「何があろうと驚きはしない。やはり人間への情が戻ったか? 勇者よ」

勇者「そんなんじゃねーよ」

人間とか魔物とか、邪神の目的なんてどうでもいい。
だけど――

勇者「俺にも大事なものがあってね」

大事な人達を守る為に、自分は人間であることを捨てようとした。
だけどそれは間違いだった。
その道を突き進めば、その人達の“心”を守れない。

勇者「大事なものを守る為に、別の大事なものを捨てるのは違うって気付いたんだ」

邪神たちは自分を認めてくれた。自分が味わった屈辱を理解してくれた。だけど――

勇者「感謝はしている。…だけどやっぱ俺、人であることは捨てられない」

自分が語っているのは理想もしくは夢と呼ばれるものかもしれない。
だけどそれでいいじゃないか。理想や夢を追いかけて何が悪い。

勇者「守りたいもの守って、手に入れたいもの全部手に入れてやるよ…お前を倒してな!」

邪神「…何があったか知らんが、面白い。いいだろう、来い」

勇者(邪神は魔力を大分消耗している。倒すチャンスは今しかない)ダッ

邪神「喰らえ」

邪神は魔王に放ったものと同じ球体を勇者に向けて放つ。

勇者「だあぁっ!」

自分に向かってきた球体を1つ斬る――が、

ドカァン

勇者「!!」バッ

邪神「いい反応だ。よく回避したな」

勇者(斬ったら爆発するのか…だったら)

魔王のように球体を跳ね返すなんて芸当は自分にはできない。
だからひたすら回避――しながら、邪神に接近する!

勇者「おらあぁ――っ!!」

邪神「甘い」

勇者「!!」

切りかかろうとした時、球体が勇者に襲いかかった。
とっさにこれを回避する。少しかすって、軽く肌が焦げた。

邪神「お前は私に近づくことすらかなわん」

勇者(そう簡単に隙は与えてくれないか…なら俺の体力と邪神の魔力、どっちが先に尽きるかの持久戦だな)




勇者「なかなかタフだな」

邪神「お前もな…」

しばらく、一進一退の攻防が続いた。
勇者はひたすら接近と回避を繰り返し、未だ互いにダメージはない。

勇者(よくここまで粘れるもんだな、俺…けど油断してたらヤベェぞ)

肉体と魔法で戦う魔王より、魔法主体で戦う邪神の方が、相手としてはやりづらい。
それに魔法の質――回避よりも斬ることで防ぐことを得意とする勇者には、厄介な魔法を使われる。

勇者(けどやるしかねぇからな!!)

勇者「はあぁ…っ」

邪神「…」スッ

勇者「――っ」

接近した時、邪神が勇者に手を延ばした。
回避できない――とっさに勇者は防御の構えをとった。

ドカァン

邪神「…仕留めそこなったな」

勇者「が…っ」

魔法を喰らった勇者は、壁に全身を叩きつけられた。
先の戦いでの邪神の魔力消費と、とっさの判断で取った防御のお陰で、何とか命拾いした。

今日はここまで。
頑張れ勇者。

▲ ▼ ■
【0:97】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

ナンバーズ駄目運営終了

ハーレムカンパニー【何】空気【知名度死】例のSS死【降りキュア】

ダンジョン×プリンセス【終了】課金厨←何ゲー

ひつじ×クロニクル【婦女子シネ】←何本来の終わらんよ作家ゲー

【0:99】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑利根川後ろ後ろ

天界は展開でもギャグゴッチャニ転回

【0:100】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑ヌメロンドルべさんだ

毒抜けよ

【0:101】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

アノ同じ人には無理な物ですよ

大井の修道数点のN?師匠美化好きだな

【0:102】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

秋雲ちゃんのムーミンやで

二位妄想ンゴ著作権【告訴】課金要素邪魔やで

【0:103】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

何姑息なチャットフサギダト

ブルパの老後施設だからボイストレーニング大丈夫ですよ

【0:104】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

主他糞でもの殺し屋

凸透け

数名既に厨蝿でエロいダロ

【0:105】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑肉片エンドの

OPハンサム地下のウィルス対策消去方法消したいな

【0:106】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑姑ネキの萌え( ˘ω˘ )

須賀京太郎様死後の失敗しました

戦術敗北Ⅽ戦術敗北Ⅽ戦術敗北Ⅽ御祓い

【0:107】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑何

ハーレムカンパニー【何】空気【知名度死】例のSS死

DMM二位害虫駆除ゲー知ろよな

刀剣&ひつじ×クロニクル【婦女子シネ】←何本来の元ネタの路線クッサ

【0:108】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑あずまんが作者の

ロード永遠ダークネスンゴ終了ンゴ打ち切り確定理由生煮え

須賀京太郎様魔法解ける前にコンビニでディソードの棒だけ

↑TDN恩仇夢億ナガトチョコ町

イタコ一兆無機物の脳内秋雲艦これ370万人プリキュア東方髭コラ監督死んだんだ

【0:111】 勇者「俺はヒーローになれなかった」

↑ナンバーズ違い

善いく子等小父さんの主犯NANO

ゴーヤのラムネってな

勇者「く…」

とはいえ全身にダメージを受けたことには変わりない。
このまま有利な状況に持ち込めるか――

ビュンッ

勇者「!!!」サッ

しかし考える時間など与えられず、邪神から放たれた攻撃魔法をギリギリで回避した。
体が痛くて、重い。

邪神「喰らうがいい」

勇者「く…っ!!」

それでも、勇者は回避を続けた。
勝つ方法が見つからないにせよ、今は命を繋ぐことが最優先だ。

勇者(見苦しいもんだな。でも…)

潔く死ぬなんて選択肢はない。死にたくない。
だって自分は、勝つことを今だって諦めていない。

邪神「…諦めの悪いことだな」

勇者「そりゃ、どうも……っ!!」

会話しながらも放たれる攻撃をかわす。
こうしている内に邪神の魔力が尽きてくれれば――と思うが、なかなかそうはいかないようだ。

邪神「だが動きが鈍ってきたな…魔法を変えるか」

勇者「…っ!」

そう言って邪神の手に、長いヤリのようなものが現れた。
そしてその先端は――真っ直ぐ勇者を捉えている。

邪神「終わりだ」

勇者(早い!)

避けられないなら、防ぐ――勇者は即座に剣を構えた。



「ナイスガッツ、勇者」

勇者「…えっ!?」

勇者「!!!」ドサッ

勇者の体に何かが覆いかぶさってきた。
勢いよく乗っかってきたそいつのせいで、体は激しく地面に打ち付けられたが…。

騎士「よぉ!」

勇者「騎士…?」

自分の上に乗っているのは、紛れもなく、仲間だった騎士であった。
色々と思考が追いつかないが、事実なのは、騎士は自分を庇ってくれて――

僧侶「その体勢は色々とまずいんじゃないでしょうか、お2人さん」

騎士「変な誤解すんなや!」バッ

僧侶「まぁ何でもいいですけどね。勇者さん」パアァ

勇者「!」

傷が塞がり痛みが軽減される。これは、回復魔法だ。

僧侶「…図々しいことを願っているのは承知です。ですがもう、勇者さんしか頼れる方はいないのです」

騎士「頼む、勇者…邪神を倒してくれ!!」

勇者「……」

恐らく彼らも邪神を討つ為に来たのだ。
だけど魔王が敗れた今、他に希望がないのだろう。

勇者「言われなくてもやるよ」

無愛想にそう返事した。まだ彼らに愛想良くできる程、許せちゃいない。
それでも――

勇者「助かった、ありがとな」

これで、邪神に勝つ希望が見えた――!

邪神「ダメージを回復させた所で万全ではなかろう。体力は消費したままだ」

勇者「それでいい。回復魔法がそこまで万能だと、俺が卑怯すぎる」

邪神「脆弱な人間は、群れて初めて魔物と対等になる。その程度のことで文句を言う程、私は小さくない」

勇者「寛大なお心をどうも」

邪神がそう言うのなら、気にしない。
だけどこれ以上、誰の助けも借りる気はない。

勇者「決着つけるぞ、邪神!」


勇者は邪神に向かって駆けた。
邪神と距離を詰める戦法は、先ほど通り。

邪神「同じ方法では勝てんぞ、勇者よ」

そう言いながら邪神はまた、あの爆発する球体を生み出す。
邪神の方も同じ方法を取る様子だ。

勇者(好都合。思いついた戦法があるんだよな…――)

勇者は気にせず、邪神へと突っ込んでいく。

邪神「変わらんか…ならば塵となれ」

邪神が操る球体が、勇者に襲いかかろ――

勇者「うおおぉぉっ!!」

邪神「――!」

勇者は球体を斬ると同時、跳躍した。
宙に浮いた勇者はそのまま、爆風に飛ばされ――

邪神「――」

邪神との距離を一気に詰めた。
邪神はそのスピードに対応できず――

勇者「――終わりだ」

ずぶり。


邪神の喉に、深く剣を突き刺した。

邪神「――」

邪神は呆然と、己の喉に突き刺さる剣を凝視していた。

勇者(魔王よりも魔法能力は優れていたが、身体能力は劣っていたみたいだな)

勇者が剣を引き抜くと、邪神はその場に倒れた。
しかし邪神には自己治癒の力がある、トドメを刺さねば――そう思い勇者は剣を構え直した。

邪神"…見事だ、勇者よ"

と、邪神の声が頭に響いてきた。

邪神"お前こそ真の勇者。よくぞ、この私を打ち破った"

勇者「……」

邪神"最後に1つ、尋ねたい。お前の手に入れたいものとは、何だ? 地位か、名誉か――それとも勇者としての誇りか"

勇者「全部違う」

邪神"では?"

勇者「"勇者"であることなんて、とっくの昔に捨てた。俺が望むのは――」

勇者は邪神の胸に剣を突きたて――


勇者「人として生きていく道だ」

その心臓を貫いた。




王「よくぞやってくれた、勇者よ」

勇者「…どうも」

邪神を討った勇者は城に招かれ、英雄としてもてなされた。
だが賞賛の言葉も、人々の歓声も耳に入ってこない。

勇者(白々しいなオイ)

彼らは勇者が、邪神を討つ為に邪神の下へ潜り込んだ、と勘違いしてくれている。
とはいえ勇者も無駄に敵を作りたくないから、その誤解を解こうとは思わなかったが。

勇者「…じゃ、俺はもう行きますよ」

王「待て、どこへ行くのだ勇者よ」

勇者「すぐにでもやりたいことがあるんで」

褒美を受け取った勇者は、王からの言葉を途中で切り上げて立ち去った。

踊り子「勇者…」

勇者「…踊り子」

廊下の途中で踊り子と出くわした。
何やら、しおらしい表情を浮かべているが…。

勇者「…じゃあな」

踊り子「ま、待って勇者!」

勇者「君と話すことは何もないな」

踊り子「でも、勇者……」

勇者「勘弁してくれ」

例え謝罪の言葉だったとしても受け取りたくはない。
何より、踊り子と顔を合わせるだけで自分の中に湧き上がる、醜い感情に耐えられない。

勇者「今後、俺の前に現れるな。じゃあな」

踊り子「う……」

踊り子も魔王を失って弱気になっているのだろう。もしくは、心の底から悔いているのかもしれない。
今や“英雄”である勇者にしたかつての仕打ちが知られれば、彼女もこれから制裁を受けるだろう。
だとしても――

踊り子「う、ううぅ…」

すすり泣く踊り子の声にすら反応せず、勇者はそこから足早に立ち去った。

勇者(俺は…正しい道なんて歩けていない)

自分は没落した勇者から、本当の勇者として認められた。
だけど、歩んできた過程は以前より汚れている。

自分を受け入れてくれた邪神を裏切った。
人間と手を組み、"侵略者"である邪神を討とうとした魔王を利用した。
最愛の人を失い傷ついている踊り子を見捨てた。

勇者(…駄目だ。開き直れない)

勇者はその心残りをいつまでも抱えていくことになるだろう。
世界が勇者を認めようと、勇者は自分を認めることなんてできない。

勇者(…もうすぐ着く)

ずっと近くで勇者を見てくれていた彼女は、今の勇者をどう見てくれるか――

勇者(…怖いな)

いい予感はしなかった。それでも勇者は、彼女に会う為に足を進めた。

勇者(…何か懐かしいな、ここに来るのは)

心が温かいのは雪溶けの時期だからか。
とにかく勇者は、邪神の神殿を出て初めて、和やかな気持ちを取り戻した。

勇者(会いたいな)

迷わずに進む。
今、どうしているだろう。きっとここにいるはずだが…。

勇者「…あっ!!」

勇者は声を上げた。
すると彼女はビクッと肩を鳴らし、こちらに振り返り――

村娘「…勇者さん?」

勇者「…やぁ、村娘ちゃん。久しぶり」

勇者を見ても村娘は笑わない。
どうしたものかと、勇者は苦笑した。

村娘「勇者さん…話は聞いたす」

勇者「うん。倒したよ、邪神を」

村娘「…勇者さんは邪神を倒す為に、邪神の下に潜り込んだと言われてっすけど」

勇者「…」

やっぱり、村娘にはわかるか。

村娘「勇者さんは…この村の為に、本当に邪神についただす」

勇者「…うん」

言い訳するつもりはない。だって村娘の言う通りだ。

勇者「村を守る為とはいえ、俺は1度、人の道を捨てた。この村さえ守れれば世界がどうなっても良かったんだ」

村娘「…でも、心変わりしたんだすか?」

勇者「そんなとこだ」

心変わり――あの心境の変化は、その一言で済ませていいものか。
とも思ったが、反論しなかった。とにかく邪神についたけど、気持ちが変わって邪神を討ったのは事実だ。

勇者「俺は世界がもてはやすような英雄じゃない」

もっと汚くて、醜くて、卑怯な人間だ。

勇者「…ごめんな村娘ちゃん。君が抱いていた“ヒーロー”像を、俺は裏切った」

村娘「…」

勇者「やっぱ、こんな俺のことは嫌いになったよな…」

予想できていたとはいえ、少し悲しい。
嫌われてまで一緒にいるのは互いにとって望ましくないだろう。だからこの村から去ろうかと思うが…。

勇者「ひとつ言わせて、村娘ちゃん」

これだけは言いたくて。

勇者「俺――村娘ちゃんのこと、好きだよ」

村娘「!!」

勇者「それだけ。じゃあ…」

村娘「…待つだす」

勇者「ん?」

呼び止められて、足を止めた。

村娘「なして返事も待たずに行くんすか。…怖いんだすか、勇者さん」

勇者「…そりゃ怖いよ」

自分だって踊り子に冷たくしたけど、自分がされるのは怖い。だからその前に去ろうと思った。

村娘「勇者さんは臆病者だす」

村娘は目に涙を浮かべていた。
その涙は、何の涙か――

村娘「勇者さんがあたしのヒーローだったことは変わらんす。だけど、それだけでねぇ。…勇者さんは優しくて、働き者で…臆病で、傷つきやすい、普通の人だす」

勇者「…」

村娘「けどもう、勇者さんは…普通の人でねぇ」

流れる涙を見せまいとしているのか、村娘は顔を手で覆った。

村娘「勇者さんは世界中の英雄になったす…もう、あたしが独り占めできる人じゃねぇす! 世界が救われた嬉しさよりも、そっちの悲しさの方が大きい…あたし、そんなに心が汚いだす!!」

勇者「――」

今、村娘は何と――つまり彼女は、自分のことを――

村娘「――あたしも、勇者さんが好きす」

勇者「――!!」

勇者は頭が真っ白で、しばしボケッとしていた。
鼻をすすった村娘は、首を傾げる。

村娘「…どしたんだすか、勇者さん」

勇者「そっか…そうだったんだ……」

村娘「へ?」

勇者「…村娘ちゃん」

村娘「は、はい?」

勇者「………結婚して下さい」

村娘「!!?」

勇者「こんな弱くて、世界を裏切るような卑怯者の俺でも好きでいてくれると言うのなら…村娘ちゃんを幸せにする為に、頑張るから!」

村娘「ま、待って…そ、そんなん…」

勇者「……やっぱ、無理か?」

村娘「だ、だって…勇者さんはもう、世界の英雄で…あたしなんか…」

勇者「そんな事言わないで。俺は"英雄"なんかにとてもなれない。君がいて、ようやく"人間"でいられるだけの男だよ」

村娘「!」

勇者は村娘の手を握った。

勇者「…俺達の出会い、覚えているか? あの時の俺は生きる気力を失って、本当に駄目になっていた。そんな俺を救って、支えてくれたのは、村娘ちゃんじゃないか」

村娘「勇者さん…」

勇者「もう1度言う。…結婚しよう。俺は、村娘ちゃんじゃないと駄目だ」

村娘「え、ううぅ…」

勇者「村娘ちゃん?」

村娘「…浮気したら、許さんよ?」

勇者「しない。万が一したらチョン切ってくれていい」

村娘「あたし、尻に敷くすよ?」

勇者「俺は村娘ちゃんを守るよ」

村娘「…勇者さんっ!」ギュッ

勇者「っ」

村娘「その言葉、忘れんでね! あたし、勇者さんのお嫁さんになるだす!!」

勇者「…あぁ。幸せになろうな」ニコ

月日は流れていく。
人々は平和に慣れていき、戦いの記憶を過去に置いていく。

村娘「こらぁ、起きるす!」

勇者「うー…眠い」

村娘「もう村の人達は外に出てんよ! ほらほら、早く顔さ洗ってご飯食べて、雪かきしてくるす!」

勇者「うぇーい」

世界は平和になり、かつての英雄は、村で平凡に過ごしていた。

勇者「あー、何か今日はねみぃなー」フアー

村人A「毎晩張り切りすぎなんでねぇのー?」ハハ

勇者「!!! そ、そそそげなこたありゃーしませんがなー!」

村人A「勇者さは動揺したら訛るから、わかりやすいべ」

村人B「若ぇってええなー。はよ子供が見たいべ」

勇者「~っ…」

勇者「うー、さみさみ」

村娘「お疲れさんだす。お粥作ってっすよ」

勇者「この冷えた体には有り難い。頂きます」

村娘「お塩で味付けたす」

勇者「…塩粥食べたら思い出すな、君に拾われた時のこと」

村娘「あぁ…懐かしいだすなぁ」

勇者「これのお陰で今の俺があるんだなぁ」

村娘「んな大げさな」

勇者「大げさじゃないよ」

魔王との戦いを思い出す。
あの時、人間でなくなりかけていた自分を人に戻したのは――

勇者「この、内側から"温かい"って思える感じを思い出せたから、俺は戻ってこられた」

村娘「そうだすか」

村娘はニコニコと話を聞いてくれている。
彼女は今も昔も、自分に寄り添ってくれる良い妻だ。

勇者「平穏てのはいいもんだね」

村娘「そうだすなぁ」

勇者「"ヒーロー"が必要ない、平和な世界が理想なんだろうな」

村娘「違うすよ」

勇者「?」

村娘「この平穏な日々の中でも、毎日一生懸命働いてくれて…。んだから、勇者さんはあたしのヒーローだす」

勇者「…そうか」ニコ

村娘「そうだす」ニコ

世界が自分を忘れたとしても、これからも村娘と支えあって生きていくことができる。
それだけで、この平凡な日々が幸せだった。

勇者「お粥、お代わりしてもいい?」

村娘「ええよ。一杯食べて、心さぽかぽかにするだす!」


Fin

ご読了ありがとうございました。
男主人公モノはギャグ以外だと久しぶりです。


過去作こちらになります。
http://ponpon2323gongon.seesaa.net/

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