作者「バカな読者のために、説明いっぱい入れよう」 (65)

編集者「先生! こないだの4コマ漫画『オチの意味が分からない』って苦情が殺到しましたよ!」

作者「えぇー? うそだろ?」

編集者「本当ですよ! 次からはもっと分かりやすい4コマ漫画をお願いします!」

作者「しょうがないな……分かったよ」

作者(あーあ……読者がバカだと苦労するなぁ)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456590487

・1コマ目 男「よっと」ピョンッ 女「身軽ねー」

・2コマ目 男「俺に飛び越えられない壁はないぜ!」

・3コマ目 外国人「ペラペーラ」 男「えと、あの、その……」

・4コマ目 男「言葉の壁は飛び越えられなかったよ……」



作者(これが今描いてる最中の、次に掲載される予定の4コマ漫画だ)

作者(物理的な壁は楽々飛び越えられる男でも、言葉の壁は飛び越えられなかったというのが笑いのポイント)

作者(だけどバカな読者だとそれを分かってくれないかもしれないから、説明をいっぱい入れないとな)

作者(まず1コマ目、男のセリフ『よっと』を掛け声じゃなく、船の『ヨット』だと勘違いするバカが出るかもしれない)

作者(ここはもっと分かりやすい別のセリフに差し替えよう)

作者(それと女のセリフ『身軽ねー』を、単に『体重が軽い』と思ってしまうバカがいるかもしれないから、ここも変えよう)

作者(男の運動神経がすごいことを分かりやすく説明するセリフにした方がいいだろう)

作者(あとは擬音の『ピョンッ』にも説明を入れておくか)

・1コマ目 男「この高い壁をジャンプで飛び越えるぞ!」ピョンッ ←ジャンプしたことを表す音です
      女「あなたって体重が軽い上に瞬発力もあるから、どんな高い壁だって飛び越えちゃうのね」

・2コマ目 男「俺に飛び越えられない壁はないぜ!」

・3コマ目 外国人「ペラペーラ」 男「えと、あの、その……」

・4コマ目 男「言葉の壁は飛び越えられなかったよ……」



作者(これでよし、と)

作者(2コマ目の『俺に飛び越えられない壁はないぜ!』というセリフはオチに繋がる重要なセリフだ)

作者(だからこのセリフは強調しといた方がいいだろう。バカな読者は繋がりに気づかないかもしれないからな)

作者(念のために『このセリフをよく覚えておいて下さい』と注釈もつけとこう)

・1コマ目 男「この高い壁をジャンプで飛び越えるぞ!」ピョンッ ←ジャンプしたことを表す音です
      女「あなたって体重が軽い上に瞬発力もあるから、どんな高い壁だって飛び越えちゃうのね」

・2コマ目 男「 俺 に 飛 び 越 え ら れ な い 壁 は な い ぜ ッ ! 」
      ※このセリフをよく覚えておいて下さい。

・3コマ目 外国人「ペラペーラ」 男「えと、あの、その……」

・4コマ目 男「言葉の壁は飛び越えられなかったよ……」



作者(うん、分かりやすくなった)

作者(3コマ目……まず外国人の『ペラペーラ』を本当に『ペラペーラ』と喋ってると勘違いするバカが出るおそれがある)

作者(これは外国語をしゃべってることを表すものだと説明を入れた方がいいだろう。外国語の種類は英語にしとくか)

作者(男の『えと、あの、その……』も、もっと分かりやすいセリフに変えよう)

作者(男が英語が分からなくて戸惑ってるってことが分からないバカがいないとも限らないからな)

・1コマ目 男「この高い壁をジャンプで飛び越えるぞ!」ピョンッ ←ジャンプしたことを表す音です
      女「あなたって体重が軽い上に瞬発力もあるから、どんな高い壁だって飛び越えちゃうのね」

・2コマ目 男「 俺 に 飛 び 越 え ら れ な い 壁 は な い ぜ ッ ! 」
      ※このセリフをよく覚えておいて下さい。

・3コマ目 外国人「ペラペーラ」
      ↑この『ペラペーラ』の部分は実際に『ペラペーラ』と発音してるわけではなく英語を喋っています。
       なぜペラペーラにしたかというと、作者が英語が得意ではないためです。
      男「すみません、私は英語が苦手なのであなたが何を言ってるのかさっぱり分かりません」

・4コマ目 男「言葉の壁は飛び越えられなかったよ……」



作者(ふう、これならバカにも伝わるだろう)

作者(オチの4コマ目、『言葉の壁』を『何かしらの言葉が書いてある壁』と思ってしまうバカがいるかもしれない)

作者(だから『言葉の壁』についてきっちり説明を入れておく必要があるな)

・1コマ目 男「この高い壁をジャンプで飛び越えるぞ!」ピョンッ ←ジャンプしたことを表す音です
      女「あなたって体重が軽い上に瞬発力もあるから、どんな高い壁だって飛び越えちゃうのね」

・2コマ目 男「 俺 に 飛 び 越 え ら れ な い 壁 は な い ぜ ッ ! 」
      ※このセリフをよく覚えておいて下さい。

・3コマ目 外国人「ペラペーラ」
      ↑この『ペラペーラ』の部分は実際に『ペラペーラ』と発音してるわけではなく英語を喋っています。
       なぜペラペーラにしたかというと、作者が英語が得意ではないためです。
      男「すみません、私は英語が苦手なのであなたが何を言ってるのかさっぱり分かりません」

・4コマ目 男「言葉の壁は飛び越えられなかったよ……」
      ※『言葉の壁』というのは物理的な壁があるという意味ではなく、
       言語によるコミュニケーションができない状態を比喩的に『壁』と表現したものです。



男(これなら物理的な壁と勘違いするバカは出ないだろう)

男(これで全てのコマに問題はなくなったはずだ!)

男(だけど待てよ? 世の中どんなバカがいるか分からないからな)

男(これでもこの4コマ漫画の意味が分からないとほざくバカがいるかもしれない)

男(ええい、ここまできたらこの4コマの意味と笑いどころも書いといてやるか! 俺って親切すぎる!)

・1コマ目 男「この高い壁をジャンプで飛び越えるぞ!」ピョンッ ←ジャンプしたことを表す音です
      女「あなたって体重が軽い上に瞬発力もあるから、どんな高い壁だって飛び越えちゃうのね」

・2コマ目 男「 俺 に 飛 び 越 え ら れ な い 壁 は な い ぜ ッ ! 」
      ※このセリフをよく覚えておいて下さい。

・3コマ目 外国人「ペラペーラ」
      ↑この『ペラペーラ』の部分は実際に『ペラペーラ』と発音してるわけではなく英語を喋っています。
       なぜペラペーラにしたかというと、作者が英語が得意ではないためです。
      男「すみません、私は英語が苦手なのであなたが何を言ってるのかさっぱり分かりません」

・4コマ目 男「言葉の壁は飛び越えられなかったよ……」
      ※『言葉の壁』というのは物理的な壁があるという意味ではなく、
       言語によるコミュニケーションができない状態を比喩的に『壁』と表現したものです。

<解説>
この4コマ漫画は石の壁やレンガの壁といった物理的な壁は軽々とジャンプで飛び越えることができる男が、
『言葉の壁(言語によるコミュニケーションができない状態)』は飛び越えられなかったというのが笑いどころです。



男(これでバッチリだ!)

男(あれこれ説明を付け加えたせいで、締め切りギリギリになっちゃったけど……)

男(これなら読者から『意味が分からない』『オチが分からない』なんて苦情は出ないはず!)

男(編集部からも『すごかったですよ先生!』『原稿料アップします!』だなんて言われるに違いない!)

……

編集者「……先生」

作者「おお、来たか! こないだの俺の漫画はどうだった? 大好評だったろ?」

編集者「こないだの先生の4コマ漫画、余りにも不評だったので先生の連載は打ち切らせていただきます」

作者「えぇーっ!? なんで!? どうして不評なんだよ!」

編集者「……説明しないと分からないんですか」







― 終 ―

<解説>
このSSは「読者はバカだから説明をいっぱいつけよう」と説明過剰な4コマ漫画を描いてしまった主人公が、
その過剰さが災いして連載を打ち切りになってしまうという物語です。

オチの『……説明しないと分からないんですか』というセリフは、
散々読者をバカにして余計な説明を付け加えてた主人公もまた、自分の漫画が不評だった理由が(説明がなければ)分からないバカだった、
ということを表したセリフであり、ここが笑いどころになっています。

なお、作中で登場した4コマ漫画は(たとえ説明が過剰じゃなくとも)はっきりいって面白いものではなく、
「これ説明過剰じゃなくても普通に打ち切りだったんじゃないの?」と疑問を抱く方もいるかもしれませんが、
主人公は漫画家としてそこそこの力量は持っていたと脳内補完しておいて下さい。

また、逆に「一作不評だったぐらいで即打ち切りってありえないだろ」とご指摘になりたい方もいるかもしれませんが、
なにぶんフィクションですので大げさなオチにさせていただきました。どうぞご了承ください。

他にも「なんで編集者は事前に内容をチェックしなかったの?」と思われる方もいるでしょうが、
それについては作中にあるように『締め切りギリギリ』だったので、チェックする時間がなかったためです。

さて、今回4コマ漫画を文章で表現していますが、それだと分かりにくかったという方もいると思いますので、
棒人間ではありますが4コマ漫画の画像を作ってみました。ぜひご覧下さい。

・通常バージョン
http://i.imgur.com/eUCk2zG.png
・説明過剰バージョン
http://i.imgur.com/YeyDrb3.png

これを見て「説明過剰バージョンの方が面白い」と思う方もいるかもしれませんが
あくまで『このSSの世界』では「説明過剰バージョンは打ち切りの原因になるほど大不評だった」という認識でお願いします。
念のため補足しておくとこの画像はイメージ図であり、このSSの主人公はきちんとした画力を持っているという設定です。

ちなみにこのやたら長い後書きですが、大真面目に解説しているわけではなく、
「このSS自体も説明多すぎだろ! ワッハッハ!」と皆さんに面白がってもらうのが狙いです。
よってこの後書きもSSの一部であるとご理解下さい。

以上で解説と補足を終わらせていただきます。

後半に「作者」ではなく「男」が物語りの改良を行っていると思うのですがこれにはどういった意味が込められているのでしょうか?
そもそも「男」とは4コマ漫画内のキャラクターという仮想的な存在であり自分の意志を持っているとは思えないのですが…

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