土屋亜子「さくらに彼氏ができたらしい」 (44)

泉「は?」

亜子「いや、せやからさくらに彼氏ができたって噂やで」

泉「…………」

亜子「いずみ?」

泉「どこの誰?」

亜子「いや相手のことまでは知らんけど」

泉「暴き出してネットに個人情報流出させる」

亜子「いずみ!?」


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泉「住所・氏名・年齢・電話番号・メールアドレス・番組の感想、全部流出させる……!」

亜子「テレビの懸賞の応募要項!? どっちにしろやめーや!!」

泉「止めないで、これは私の宿命」

亜子「いやどんだけカッコ付けても犯罪は犯罪やから!」

泉「じゃあせめて全SNSを紐付けして昔の個人サイトのポエムとか晒す」

亜子「殺される方がマシなレベルやんそれ!!」

泉「さくらを騙して手籠めにした罪は殺人よりも重い……」

亜子「もうちょっと冷静になろ!?」

泉「亜子はなんでそんなに冷静なの……さくらが騙されてるんだよ……?」

亜子「いや騙されたって決まった訳じゃないし……アイドルとしてはどうかなって思うけど……」

泉「だってさくらは私達に大好きって言ってくれるんだよ? それなのに男に走るなんてこと有る筈がない……!!」

亜子「友達の好きを本気に受け取り過ぎやろ重すぎるわそんなん」

泉「いやだ……さくらの『好き』が、知らない男に向けられるなんて考えられない……」

亜子「何年もつるんできたけど知りたくなかった一面やわあ」

泉「でも相手の男を社会的に殺したらさくらは悲しむかもしれない……どうすればいいの?」

亜子「さくらの心配しかしないの本当に狂ってると思うで」

泉「それでこの事について社長にメールしたんだけど」

亜子「話早すぎるわ」

泉「殺していいって」

亜子「辞めようかなこの事務所」

泉「はいメールの画面」

亜子「泉も社長も誤字多過ぎやろどんだけテンパってるん」

泉「アイドルのスキャンダルを回避したい事務所の意向とさくらを守りたい私達の利害が一致したね」

亜子「自然に巻き込むのやめてや!」

泉「それで作戦はどうする?」

亜子「どうするっていうかアタシはいざという時にいずみを止めるだけやからね」

泉「まずは、か、か、彼氏……の正体を突き止める所からだね」

亜子「彼氏という存在に拒否反応が……」

泉「さくらの後を付けて暴き出そう」

亜子「友人が重犯罪に手を染めないか見張らな……」

泉「とりあえず作戦は明日の放課後、発覚を防ぐために詳細は口頭でのみ伝えるね」

亜子「罪の意識があるって分かっただけも良かった」

――――学校


さくら「イズミン! アコちゃん! 一緒に帰ろぉ♪」

泉「ごめんねさくら、私と亜子は別の用事があるから先に帰ってて」

さくら「そうなの? じゃあまた明日ね!」

亜子「また明日~」

泉「……」

亜子「……」

泉「理由も聞かないまますぐに帰った……やっぱり男の影が……」

亜子「疑心暗鬼すぎる……」

泉「とりあえずこっそり付いて行く作戦だね」

亜子「彼氏がいるなら放課後に会う可能性高いし」

泉「想像しただけで吐き気してきた……」

亜子「やめたら?」

泉「行く……」

亜子「はいはい」

・・・・


泉「さくらがコンビニに入っていく……」

亜子「買い物やないの」

泉「店員が彼氏かもしれない……やだ……」

亜子「想像力逞しいなあ……普通に立ち読みしてるだけやね」

泉「ということは待ち合わせ……?」

亜子「好きなん? 自傷行為みたいなの」

泉「あ、普通にお菓子買って出て来そう」

亜子「撤退や撤退」

亜子「男の気配はせんかったね」

泉「でもお釣り渡す時さくらの手に触った店員は少し許せない……」

亜子「ナイフ並みの攻撃力してるわ」

泉「要注意人物に追加、と……」

亜子「生きづらない? その性格」

泉「用心に越したことはないし……」

亜子「まあせやけども……」

・・・・


泉「今度はファーストフードのお店に」

亜子「止める人がおらんと買い食いしまくるんやな……」

泉「ちょっとくらい太ってるほうがさくらは可愛いよ」

亜子「アタシは?」

泉「アイドルなんだから体型は維持してね」

亜子「ちぇーっ」

亜子「ここも特に何もなし、やね」

泉「さくらの注文を2回も聞き直したあの店員、さくらの事が好きなんじゃ……」

亜子「男子中学生でもそこまでは考えんわ」

泉「要注意人物、と……」

亜子「友達としてどう対応するべきなんや……」

泉「尾行を続けるよ」

亜子「はあ……」

・・・・


泉「こ、今度はスポーツ用品店……」

亜子「なにそのこの世の終わりみたいな顔……」

泉「スポーツやってる彼氏に何か買ってプレゼントするんだ……いや……」

亜子「アタシらだって買い物するやん……ほら、さくらもシューズ選んでるみたいやで」

泉「男物……?」

亜子「女物!」

泉「あ、タオルも一緒に買ってる」

亜子「でも3枚やで」

泉「赤と青と黄色だ……」

亜子「さくら、もしかしてアタシらのために……」

泉「さくら……ありがとう……」

亜子「ほんまええ子やね……」

泉「さくらの処女になら人生を捧げてもいい……」

亜子「それは普通にやめて……」

・・・・


亜子「そろそろ罪悪感で胸が一杯やわー」

泉「やると決めた事は最後までやる、それがアイドルだと思う」

亜子「いいこと言ってもストーカー行為やんか……」

泉「あ、今度は神社に」

亜子「神社に彼氏はおらんやろ……」

泉「一応、ね」

亜子「……で、普通にお祈りしてるだけやない?」

泉「そうだね」

亜子「内容は気になるけど」

泉「念の為に付けておいた盗聴器をオンにするね」

亜子「聞かんかったことにするわ」

泉「恋愛成就のお願いはやめて恋愛成就のお願いはやめて恋愛成就のお願いはやめて……」

亜子「静かにして」

さくら『テストでいい点が取れますように♪ お小遣いがアップしますように♪』

亜子「可愛いなあ」

泉「可愛い」

さくら『それからぁ……ちょっとくらい買い食いしても太りませんように、えへへ♪』

亜子「ほんま可愛い」

泉「奇跡」

さくら『あとぉ……これが一番大事なお願いなんですけどぉ……』

泉「ヒッ!?」ブチッ

亜子「えっ、ちょっ、なんで切ったん!?」

泉「『彼氏と長続きしますように』みたいなお願いだったら死んじゃう……」

亜子「メンタル弱すぎやろ!!!」

泉「無理……体調悪い……」

亜子「言いだしっぺ!! しっかりしてや!!」

泉「あっ、さくらがこっち来そう」

亜子「逃げるで!!」

・・・・


泉「作戦を練り直さないと」

亜子「まだやるん!? 嘘やろ!?」

泉「だってさくらが……」

亜子「そんなこと言って肝心な所でビビッてるやん!」

亜子「クリスマスにわざわざアイドルのツイッター監視して更新ないと落ち込むファンよりタチ悪いわ!!」

泉「ごめん……」

亜子「ま、まあそんなに落ち込まれても困るし、あと少しだけ手伝ってもええけど……」

泉「やっぱり亜子は、一番の味方だね……」

亜子「照れるわ……」

泉「とりあえず、次は事務所で聴き込みだね」

亜子「せやな、噂の出処を辿るとか」

泉「それって?」

亜子「フリルドスクエアの……柚ちゃんやね」

――――翌日、事務所


柚「そうそう、『さくらちゃんって彼氏いるんでしょ?』って他の事務所の子に」

柚「そんな話聞いたこともないからビックリしちゃった」

泉「その人はどこで噂を聞いたの……?」

柚「別の人からの又聞きだって」

忍「あんまり良い噂じゃないし、吹聴しないようには言っておいたけど」

亜子「わざわざありがとなぁ」

穂乃香「根も葉もない噂を流すなんて酷いです」

亜子「ほんまやで」

泉「嫌がらせだったら許せない……」

あずき「……」

柚「あ、でも」

泉「?」

柚「さくらちゃんが男の人と歩いてるのは見たよ」

亜子「なっ!? ほんまに!?」

柚「うん、さっき事務所から公園の方に歩いていってたのとすれ違った」

泉「そんな……さくらが……嘘……」

亜子「いずみ、落ち着いて、そのスタンガンもカバンにしまって」

泉「ケリを付けなきゃ……さくらを守るために……」

亜子「ああ待って、目が怖いでいずみ! それじゃあお疲れ様!」

柚「おつかれ~」

穂乃香「いいんですか? こんなイタズラ」

柚「まあ嘘は言ってないからさ~♪」

忍「泉ちゃんって面白い子なんだね」

穂乃香「それにしても、さくらさんの噂は本当にどこから出て来たんでしょう」

あずき「……あのね」

忍「あずきちゃん、何か知ってるの?」

あずき「実は……」

――――公園


泉「さくら……私が守ってあげるからね……」

亜子「(メンタルやられ過ぎて死ぬんちゃうかな)」

泉「あ、あそこにいるのは……さくらと……!」

亜子「スーツの男の人が……ってあれプロデューサーやん!!」

泉「プロデューサーがさくらに手を出したってこと……?」

亜子「飛躍しすぎやろ!」

さくら「あれ? イズミンとアコちゃん?」

亜子「あっ気付かれた」

さくら「こんな所で何してるのぉ?」

泉「さくらが心配で……」

さくら「心配?」

亜子「いや、それはええねん、さくらは何してたん?」

さくら「さくらはねぇ、プロデューサーさんにお願いごとかなぁ」

亜子「なんの?」

さくら「えへへ……ちょっと恥ずかしいんだけど……」

さくら「最近、わたし達って別々のお仕事が多いでしょぉ?」

さくら「だから、今度は3人で一緒に歌ったり踊ったりしたいなあって思ったの」

さくら「昨日は神様にお願いしたんだけど、プロデューサーさんにもお願いしようかなって♪」

さくら「ね、アコちゃん、イズミン、また3人でステージに立とうよ!」

亜子「…………」

泉「…………」

さくら「あ、あれぇ?」

亜子「さくらはええ子やなあ……」ギュッ

泉「天使……いや天使さえ霞む……」ギュッ

さくら「あわわ、どぉしたの抱きついたりして」

亜子「アタシらもさくらと一緒に歌いたい……気持ちは一緒や……!」

さくら「ほんとぉ!? 良かったぁ!」

泉「当たり前だよ……さくらがいるから私達もアイドルやってるんだもん……」

さくら「えへへ……恥ずかしいよぉ」

・・・・


泉「さくらを疑ってしまったことが、今になっては恥ずかしいね」

亜子「ほんまやね」

泉「こんな天使が、ファンや友達を裏切る訳ないんだから」

亜子「アタシもそう思う」

さくら「2人とも何の話?」

泉「ううん、3人のライブに向けて頑張ろうって思ったの」

さくら「うん! みんなで頑張ろうね! 約束だよ!」



おわり

おまけ1


あずき「ごめんね泉ちゃん……噂は多分あずきのせいなの……」

あずき「さくらちゃんはいっつも泉ちゃん達に大事にされてて」

あずき「それがなんだか彼氏みたいだねって話をして」

亜子「それがいつの間にか伝言ゲームで変な噂になったんやね……」

泉「ということは、噂の彼氏の正体は私達だったってこと?」

穂乃香「そうなりますね」

泉「…………」

泉「悪い気はしないかも」

亜子「いずみ!?」

おまけ2


梨沙「アタシってよくパパと腕組んだりして歩くじゃない」

晴「へー」

梨沙「これ、もしかして彼氏と一緒に歩いてるって勘違いされちゃうかしら! ね、どう思う!?」

梨沙「隣にいるのはパパなんだけどさ~彼氏だなんて、そんな噂が広まったら、もう――」

晴「梨沙」

梨沙「なに?」

晴「お前がお父さんと腕を組んで歩いてる時はな」

晴「みんな『仲良い親子だな~』って思って見てる」

晴「現実を見ようぜ」

梨沙「うるっさいわね! アンタにはデリカシーとかないわけ!?」

晴「むしろオレと歩いてる方が彼氏って思われそうだな」

梨沙「それはないわよ、アンタそんなに可愛いんだから。男と見間違えるわけないでしょ」

晴「…………」

晴「カウンター喰らったなぁ~……」

おまけ3


亜子「さくらがくれたタオル、肌触りがええわ~」

さくら「ほんとぉ!? よかった!」

亜子「ほんまさくらはええ子やなぁ」

さくら「えっへへ♪」

亜子「いずみは、さくらがくれたタオル使わんの?」

泉「ああ、うん、今は神棚に飾ってあるから」

亜子「なんで飾るん!? 使いや!」



おわり

◆注意書き◆

このSSは、百合要素やキャラ崩壊があったと思います。
よってここで警告をしました、ごあんしんください。

読んでくれてありがとうございます。

◆過去作◆

西園寺琴歌「激論!朝までそれ可愛い」

姫川友紀「冬の朝にキャッチボールを」

~(中略)~

龍崎薫「ラブレター」

柳清良「パーティー」

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