美食家「貴様はラーメン屋ではない!」 (24)

店主「どうぞ、当店自慢のラーメンになります」

美食家「うむ」

美食家「……」ズルズルッ

美食家「……」ズズズッ…

店主「……」ゴクッ…

両手を握り締め、緊張の面持ちで美食家の食べる姿を眺める店主。

美食家「!」ピクッ

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美食家「ふむ、なかなかの味だ」

店主「……ありがとうございます!」

美食家「しかし」

美食家「貴様はラーメン屋ではない!」

店主「!」ガーン

店主「なぜです!? 私にはなにが足りないというのです!?」

美食家「たわけが……それを客に聞くか」

美食家「貴様に足りぬもの……それは自分自身で見つけるのだ!」

店主「はい……分かりました……!」

店主(私に……足りないもの……)

店主(私は自分のラーメンこそが最高のラーメンだと、究極のラーメンだと思っていた!)

店主(だが、あの美食家によって、その鼻はポッキリとへし折られた……)

店主(やり直そう……もう一度!)

店主「まずは……スープ」

店主(スープはラーメンの心臓部ともいえる最重要項目!)

店主(鶏ガラのダシの取り方……今のやり方が本当に最善といえるのだろうか?)

店主(いや、まだ改良の余地はあるはずだ!)

店主(こってりとあっさり……両方を同時に味わえるスープを作ってみせる!)

店主「次は……麺だ」

店主(これも今のままではダメだ。原材料の小麦粉から見直す必要がある!)

店主(すする時の滑らかさ、噛む時の歯ごたえ、飲み込む時の喉ごし)

店主(全てを最高の水準で満たす麺を目指す!)

店主「具はどうだろうか……」

店主(ウチのラーメンは、チャーシューとほうれん草のみのシンプルなスタイル)

店主(これを変えるつもりはない……が)

店主(今まで私は具を単なるオマケとして認識していた! これではダメだ!)

店主(麺とスープを引き立てる名脇役にしなければ!)

店主(どう具を配置するのがベストか、頭をひねるんだ!)

店主「そして、どんぶり!」

店主(これも、ただ単に高級品にすればいいというものではない)

店主(私のラーメンをより食欲をそそるものにさせてくれるどんぶりを選ぶんだ……!)

店主(大変だけど、一から出直しだ……!)



…………

………

……

客A「うめええええ!」

客B「ただでさえおいしかったのに、さらに正当進化したねえ!」

客C「すごい!」

店主「ありがとうございます」

店主(これというのも、美食家さんのおかげだ……)

店主(あとはあの人にこのラーメンを味わってもらわなければ!)

しばらくして、再び美食家が現れる。

美食家「成長ぶりを見せてもらおう」

店主「お待ちしておりました」

両手を腰につけ、丁寧にお辞儀をする店主。

美食家「!」ピクッ

美食家「駄目だ、食べるまでもない」

店主「な……!?」

美食家「やはり貴様はなにも分かっておらんのだな」

店主「分かりません! 私にはいったいなにが足りないというんです!?」

美食家「よかろう。教えてやろう!」

美食家「貴様にラーメン屋として足りないもの、それは――」

美食家「腕組みだ」

店主「あああ……私としたことが……!」ガクッ








おわり

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