モバP「トリップ装置?」 (54)

モバP「平行世界体感装置?」
モバP「精神安定装置?」

の続きです。
キャラ崩壊注意です。
アイドルの口調おかしかったらごめんなさい


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P「はぁぁ……」

P「家に帰ったのって、何日前だろ……今日も事務所で朝を迎えることになりそうなんだが」

P「ちょっと運動がてら散歩でもするかな」ヨイショッ

P「関節が軋むっ……」ピキピキ


テクテク


P「誰もいない社屋って、なんかすごい寂しい感じがするよなあ……あれ」

P「晶葉の研究室に電気が……」

P「ってか、晶葉の研究室ってなんだよ。ここは芸能プロダクションだぞオイ」

P「まあいいや。おーい、晶葉。またここに籠ってるのか?」

晶葉「……ん? Pか。おはよう」フワー

P「お、ここで寝てたのか」

晶葉「私としたことが、机に突っ伏して寝ていたようだな」

P「パソコンで何か見てたみたいだな。なにを見てたんだ?」ヒョイ

P「ん? 小説?」

晶葉「わ、わぁああ! み、見るな!」ディスプレイガシャーン

晶葉「フーッ、フーッ」

晶葉「み、見たか?」ギロッ

P「す、少しだけ……」

晶葉「何を、見た……」

P「小説みたいな……?」

晶葉「わしゅれろ」

P「えっ?」

晶葉「わ、忘れろ!」キーボードベキー

P「わかりましたごめんなさい」

晶葉「さて……乙女の秘密を暴いたPには、相応の罰を与えねばな……」

P「ば、罰って……」

晶葉「……」

晶葉「とはいえ、なんだ、あまりやってほしいことがないな」

晶葉「いつものとおり、私の発明品の斡旋でもしてもらおうかな」

P「また造ったのか……前回の精神安定装置から、二日くらいしか経ってないぞ」

晶葉「二日もあれば充分だ」

晶葉「前にも言っただろう、あまり時間がないんだ。後悔はしたくない」

P「そうか……で、今回は何を造ったんだ? このイヤホンみたいなやつだよな」


晶葉「いかにもな。それはトリップ装置だ」


P「トリップ装置?」

P「トリップって……旅の英語だよな」

晶葉「そうだ。t、r、i、p。トリップだ」

P「旅に出れるのか?」

晶葉「いや、そうじゃない。覚醒剤などの薬物から得られる強烈な快楽のほうのトリップだ。同じ綴りだからややこしいが、要するにアイドル達を手っ取り早くアヘ顔にでk」

P「却下だ」

晶葉「……」

晶葉「え? なんだって?」

P「却下だ」

晶葉「よくやった、って?」

P「却下! rejection!」

晶葉「却下……だと」

晶葉「なんてことだ……あとPよ、rejectionでわかりやすくなったと思っているのなら、一度病院へ行ったほうがいいと思うぞ」

P「お前こそ、却下だ、が、よくやったに聞こえるんなら、家でゆっくり休むことをお勧めするぞ」

晶葉「……」

P「……」

晶葉「私の説明の仕方がまずかったかもしれない。もう一度言いなおさせてくれ」

晶葉「この装置は、使用者が快楽だと感じることを、脳の中で音声だけで再現させてくれる装置だ。覚醒剤とは違って、装置そのものに依存性はなく、危険性もない」ハズダ

P「今ぼそっとはずだ、って付け加えたな?」

晶葉「ゴホン。私がこの装置を造ったのには理由がある。アイドル達の、娯楽のためだ」

晶葉「最近仕事が多くなってきて、自分の時間を取れないアイドル達も多々いるだろう。そういうアイドルのために、私はこの装置を造ったんだ」

P「まあ確かに、プライベートな時間があんまり取れてないアイドルもいるよな」

晶葉「Pが頑張って調整してくれているのはわかっているが、それでもウチのアイドルの大半は年頃の女子だ。やりたいことだって色々……まあ本当に色々とあるだろう」

晶葉「ウサミンなんかも、やりたいことは沢山あるけど、地球の重力がウサミン星と違いすぎて動くのがキツイ、みたいなことを言っていた」

P「菜々さんが年頃なのかどうかはさておいて、なんだか娯楽も必要なのかもしれないと思えてきた」

晶葉「そうだろう。ここで登場するのが、このトリップ装置だ」

P「トリップ装置って名前、変えない?」

晶葉「名前なんてどうでもいい。商品化するわけでもないのに、凝った名前を付けても仕方ない」

P「でもなぁ、なんだかなぁ……」

晶葉「それに、危険でないことはもう確認してある。私でな」

P「おい、そういうときは俺とか誰かを呼べって……」

晶葉「……この装置を使っているときの表情は、とても人様に見せられるようなものじゃない。恐らくな」

P「んなもん作るなよ……」

晶葉「とかく、これは安全な代物だ」

P「晶葉が安全というなら間違いはないんだろうが……」

晶葉「今回も、例によって精神に干渉するものじゃない。平行世界体感装置のようにはならないさ」

晶葉「イヤーワーム現象という現象がある。本人の意思に反し、頭の中で何度も同じ曲が延々と流れ続ける現象だ」

P「ああ、聞いたことあるな」

晶葉「あれは、認知機能が落ちているときに発生しやすいと言われている。寝る前に、音楽が頭から離れなくて眠れない、といった現象に陥る人がいい例だ。就寝前の、認知機能が落ちているときにそういった情報が流し込まれると、頭の中で繰り返されてしまうわけだ」

晶葉「このトリップ装置は、本人の意思と関係なく、『聞こえる』と判断されてしまうイヤーワームの特性に目を付けた。要は、アイドル達にとって心地のいい音声を聞かせることで、彼女達をねぎらおうというわけだ」

P「なるほどな。じゃあ、単にアイドルを眠らせて――単にアイドルを眠らせるってのもどうかって思うが――イヤホンで音声を聞かせるわけだ」

晶葉「そうではない。この装置は、まず使用者の認知機能を極限まで落とすことで、強制的にイヤーワーム現象を発生させることから始まる」

P「む?」

晶葉「そして、全身の感覚器を麻痺させるんだ。これは、医療分野でも行われている電気麻酔とほぼ同じ原理だ」

P「なんか急に不穏な言葉が」

晶葉「この状態で、体内の神経系にちょっとした刺激を送り込んでやる」

P「むむ?」

晶葉「人間が、産まれた時から体内に所持している基本的情報……まあいわゆる生殖に関する、快楽的な刺激を与えてやるんだ」

P「むむむ?」

晶葉「それをトリガーに、脳の中で快楽を中核とするイヤーワームが発生するようにした。わかりやすく言えば、この装置は、使用者によって適切な快感を得られる催眠装置なんだ」

晶葉「だが、この程度なら既に医療分野に取り入れられている。ここからがわたしのオリジナル――というか、開発段階に於いて意図せず得られた副産物的な要素なのだが」


晶葉「この装置は、触覚にも作用できるんだ」


P「むむむむ?」

晶葉「例えば、イヤーワーム現象で、好きな人間とデートし手を繋げる物語を使用者が組み立てたとしよう」

P「なにその具体的な例」

晶葉「……ゴホン。すると、実際に手を握ってもらえたという感触が得られたわけ……得られるわけだよ」

晶葉「この装置は、使用者の望む触覚的な刺激を受け取ることができる――つまり、視覚には作用しないものの快楽を得るために必要な要素は完備しているといっても過言ではないんだ」


P「なんかやばくね?」

晶葉「だが、きっとアイドル達は気に入ると思うぞ。それに、得られる触覚に関しては、原因が解明されている。感覚器への干渉は可逆的な反応だったというだけだ。奪うこともできれば、与えることもできる、といったふうにな。原因がわかれば安全機構を作るのも簡単だった。これで、使用者が苦痛に感じるような刺激は一切与えられない」

P「なるほどな……」

晶葉「頼む、P。協力してほしい。データが欲しいんだ」

P「随分と鬼気迫っているんだな……時間がない、そのことが、晶葉を焦らせているのか」ボソリ

P「……アイドルのパフォーマンスの向上につながるのなら、俺はやってみてもいいと思う。ただ、少しでも不調が出れば――その時は即刻使用を中止させる。いいな?」

晶葉「ああ、ありがとう、Pよ。そうと決まれば、早速使用者を選びたい。ひいては、無条件な選択としたいため、一番に出社してきたアイドルに協力を仰ぎたいと思う」

P「ああ。ただ、あくまで本人の意思を尊重する。これでいいか?」

晶葉「ああ、構わない。平行世界体感装置のように使用者のメンタルで左右されるものではないとはいえ、多少気が引けるものな」

P「ようやく遠慮ってのを覚えてきたな……」ボソリ

晶葉「今何か言ったか?」

P「……いや、なにも」

――

P「さて、またまた晶葉の奴は観葉植物の陰からこちらの様子を窺っているわけだが」

P「今日は誰が一番に来るのかなー」

ガチャ

?「おはようございますー」

P「お、この声は……」

?「Pはん、こないはよからお疲れ様どす~」

P「おう、おはよう。紗枝もこんなに早くからお疲れさん。今日の予定は十時からだから、もう少し時間があるよな」

紗枝「よう予定覚えてはりますなぁ、うち、自分のでさえちょっと曖昧やのに」

P「まあ、俺はプロデューサーだしな」

P「……」

P「なあ、紗枝。最近疲れてないか?」

紗枝「なんどすか、急に。……確かにお休みは最近いただいてまへんが……でも、頑張られへんことはありませんえ」

P「紗枝。実はここに、とても気持ちいいことができる機械がある」カバンゴソゴソ

紗枝「」

P「ぜひ、紗枝に使ってほしいんだが……」

紗枝「……」ツーン

P「あれ? どうした?」

紗枝「Pはん……いくらPはんとうちの仲言うたかて、言ってええこと悪いことありますえ」

P「ん……ん?」

晶葉「お困りの用ようだな、P」バサァ

紗枝「晶葉はん」

P「晶葉はんって言いにくくない?」

紗枝「」ツーン

晶葉「Pは黙っていろ。実はな、……」カクカクシカジカ



紗枝「そういうことやったんどすか……」

P「紗枝は何と勘違いしたんだ?」

紗枝「そ、それはおいといて……」

紗枝「うち、機械のことはようわからんのやけど、それでもええやろか?」

晶葉「ああ、構わない。なぁに、イヤホンを耳に入れて椅子に座っておくだけだ」

紗枝「それで、普段の疲れがとれるんどすかー」ホー

晶葉「疲れがとれる、というか、精神的に少し負担がとれる、というか」

紗枝「じゃあ、お借りしますー」

晶葉「準備ができたら、右耳のボタンを……」

P「ポチッとな」

紗枝「……」

紗枝「あれ、身体中の力が、抜け、て……」トロン

P「なんか開始一秒目で既にアイドルとして若干駄目な感じの顔になってるんだけど」

晶葉「こんなものだろう。だが、まだイヤーワーム現象は起こっていないはずだぞ」

紗枝「ぁ……Pはんの声が……」

P「え? 聞こえてんの俺の声?」

紗枝「どこどすかぁ……Pはーん」

P「……映像とかは見えないんだっけ」

晶葉「ああ、映像まで見せると、帰ってこれないアイドルが出てきそうだからな……」

紗枝「ぁん……っ、そんな耳元で……くすぐったいやん?///」

P「……」

P「これ、映像観れないほうがダメなんじゃない?」

晶葉「……ノーコメントだ」

紗枝「Pはん、そんな後ろから抱きしめはるなんて、そないなこと……」

晶葉「……随分好き勝手やってるようじゃないか、P?」

P「俺じゃないからな? それにしても紗枝の奴、随分顔が赤いけどこれは大丈夫なのか?」

晶葉「今彼女の頭の中では、恐らくだがPの甘い声が響き渡っているのだろう。それこそ、自分の思考が纏まらないくらいに」

紗枝「……ぁ、ど、どこに手ぇ入れてはるの……」

紗枝「ちょ、ほんと、そんな……ぇ?」

紗枝「やめはるんどすか……」シュン

晶葉「……状況が手に取るようにわかるな、Pよ?」

P「ん? ああ」

紗枝「え、そんな帯に手ぇかけて……」

紗枝「あ、あぁぁれぇぇ……///」クルクル

P「なんか粋なことやってるらしいな、俺」

晶葉「……」

紗枝「み、見んといてぇ……ぁ、や、ぁ……」

P「紗枝の顔、やばいくらい赤いけどほんと大丈夫? ポンコツになったりしない?」

晶葉「確かに、正直引くくらい赤いな……仕方ない、この辺で終わらせよう」ポチッ

紗枝「ぷ、Pはぁん……///」

紗枝「……ぇ? この声……ぇえっ!?」ガバッ

紗枝「」キョロキョロ

紗枝「よ、よかったぁ……」

P「お、お疲れ……どうだった?」ボソッ

紗枝「……っ」

紗枝「ほんに、気持ちのようなる機械どすなぁ……」

晶葉「感想をいただきたいのだが」

紗枝「か、感想……」

P「何か問題はなかったか?」

紗枝「っ!」

紗枝「よ、よかったぁ、とだけ言うときます……」タタタッ

P「あれ、行っちゃったな」

晶葉「まあ喜んでもらえたのならいいんだが」

晶葉「さて、他にもデータが欲しいな。次に入ってきたアイドルに……」

ガチャ

?「おはよう」

P「おっ、凛か。おはよう」

晶葉「早速出申し訳ないが……」カクカクシカジカ

凛「へえぇ、心の疲れがとれる装置?」

P「こういうのってプレゼン詐欺じゃない?」ヒソヒソ

晶葉「嘘も方便、ものも言いようだ。先ほどの実験で安全性はある程度保証されたわけだしな」ボソボソ

P「……そういうもんなのかなあ」

晶葉「ちょろい」

晶葉「それじゃあ、つけてくれ」ポチッ

凛「え、まだ心の準備、が、ぁ……」ヘニャン

P「そういや座らせるの忘れてたな」

晶葉「痛みも鈍化してるから痛くはないはずだ」

凛「あっ、P……お店来てくれたんだ……?」トロン

晶葉「またPか」

P「夢?の中くらい俺のこと忘れればいいのになあ」

晶葉「……」

凛「え? 今はダメだよ……ぁ、ちょっと、レジの中に入ってきちゃダメ……」

凛「もう、一緒に店番してくれるの……んっ」

凛「ちょっと……今お店にお客さんいるんだから」

凛「そんな……レジの陰に隠れて……」

P「……」

P「なんでみんなこんなんばっかなの?」

晶葉「完全に女の……いや、雌犬の顔だな」

P「どんどん顔赤くなっていくなぁ」

晶葉「これは無意識下の刺激――ようするに夢みたいなものなんだ。夢と現実では、時間の体感時間が違って、夢の方が長く感じるんだ」

P「へえぇ、じゃあこの会話の合間の一瞬の沈黙も、凛にとっては結構な時間が経ってるってことか」

晶葉「そういうことだ」

凛「ぉ、お客さん来てるのにぃ……っ」ガクガク

晶葉「さすがにこれ以上はやめておくか」ポチッ

凛「き、気付かれないようにって……い、いらっしゃいませぇ――って、え!?」ガバッ

凛「」キョロキョロ

P「おはよう、凛」ボソリ

凛「ひんっ!?」ビクッ

P「どうだった?」

凛「どうって……」

凛「……すごかったよ///」

晶葉「具体的には?」

凛「具体的には……言えないけど……ただ一つ言えるのはさ」

凛「すっごい疲れた」

P「あれ? これ駄目じゃね?」

晶葉「案ずるな。無事にトリップできただろう。成功だ」

凛「……ちょっと出てくる」トボトボ

ガチャ バタン

晶葉「さて……この辺で切り上げてもいいんだが」

晶葉「あと一人くらいで終わりにしよう」

ガチャ

ちひろ「おはようございます」

P「」

晶葉「」

ちひろ「どうしたんですか、二人とも?」

P「あぁ、いえ、おはようございます、ちひろさん……」

P「本当にこの人にやってもらうのか、晶葉?」ボソボソ

晶葉「そもそも頼んだとして許諾してくれるのか……? 一銭の足しにもならないことは切って捨てそうな感じだが……」ヒソヒソ

ちひろ「聞こえてますよ?」

ちひろ「私に何を頼もうとしていたんですか、Pさん」

P「……」

P「大したことではないんですが……晶葉が、気分のよくなる機械を造ったので、それをいろんな方たちに試してもらってるんです。あ、でもちひろさんは忙しいでしょうし、そんな……」

ちひろ「別に構いませんよ?」

P「えっ」

晶葉「い、幾ら払えばいい!?」

ちひろ「あなた達は私をなんだと思ってるんですか……お金なんて取らないですよ。別に私は守銭奴ではないので」

P「なんだと……」

ちひろ「……Pさんには、あとからスタドリ買ってもらいますね」

ちひろ「では、拝借」ヒョイ ポチッ

ちひろ「……」トロン

ちひろ「…………ね」

P「ね?」

ちひろ「か、……ね……ぉかね……かねっ! お金ぇっ!」

P「やっぱ守銭奴じゃねーか!」

晶葉「新しい反応だな。遺伝子レベルで金銭への執着が刻み込まれているのだな」メモメモ

ちひろ「お金が……こんなに……これで、私は……幸せに……これさえあれば……」パァアア

P「……」

P「そろそろやめない? 俺、ちひろさんを見る目変わっちゃうよ」

晶葉「ぁ、ああ、そうだな」

P「そういや、抜け出させるときなんか紗枝も凛も周りを見渡してたけど、あれは何か理由があるのか?」

晶葉「ん? ああ、あれか。いつでも現実に戻ってこれるよう、強制的に美城常務の声が流れるようにしてある」

P「やることがえげつねえ」

晶葉「もっとも、この装置はそんなことをしなくても一応はこっちに戻ってくるように設計してあるから心配はいらない。ということで、ポチッとな」

ちひろ「」ビクン

ちひろ「常務ゥゥゥゥ、私のおk……幸せをどこに持っていく気ですかァァァァ!」

ちひろ「許さないですよォォォォォォ……!」ガバッ

ちひろ「」キョロキョロ

ちひろ「……」

ちひろ「……なるほど」

ちひろ「人の夢と書いて儚い……なんだかよくわかった気がします」フッ…

P「目が座っている……」

晶葉「感想としてはどうだった?」

ちひろ「……おかねの声を聞いたのは初めてです」

P「常務に持ってかれそうになってましたね」

ちひろ「いえ、持っていかれました……喋る札束をごっそり……」トボトボ

ちひろ「はぁ……仕事しよ……」

晶葉「……まあトリップはしてたから成功だな」

P「これ成功なの?」

晶葉「ああ、金が喋るというのは少し修正しなければならないが、一定以上の収穫は得られたと判断して良――」

P「どうした?」


晶葉「ぁ……」




まゆ「どうした? じゃないですよぉ、Pさぁん」ニタアァァァ


まゆ「一応お声かけはしておきますが、言い値で買いますよぉ、全部、誰の手にもわたらないように」

晶葉「……生憎だが、金には困っていない」

まゆ「開発費用って、馬鹿にならないんじゃないですか?」

晶葉「……」

晶葉「欲しいのなら持っていっていい。理論が実証された今、もはやそれにはガラクタと同じ価値しかない」

まゆ「……なるほど、そうですか」

まゆ「では、回収させていただきますね」ゴソゴソ

まゆ「確かにいただきました」

―――――
―――
――

P「ふうぅ、やっとアイドルの送迎が終わったぁあ……書類の整理だけやっとかなくちゃな」

P「ちひろさんは終始目が濁ってたし、その分のフォローも夜のうちにやっとかないと」

P「……ん? 人影? 誰だこんな時間に……」

?「やっほー、元気してる?」

P「志希じゃないか、どうしたんだこんな時間に」

志希「その言葉、そっくりそのままキミにお返ししちゃうよ?」

P「俺はアイドルじゃないからなぁ……」

P「で、どうした、何か用か?」

志希「うんうん~。今日さ、晶葉ちゃんと面白いことしてたよね?」

P「面白いこと?」

志希「そうそう。朝からさ、紗枝ちゃんとか凛ちゃんに」

志希「あれって、どういう原理なのかな?って気になっちゃってさ~」

P「ああ、トリップ装置か。あれはな……」カクカクシカジカ

志希「ふ~ん。あたし、化学のほう得意だけど、そっちの方面は全然わかんないや、にゃはは」

志希「てっきり、何かおクスリでも使ってるのかな~なんて思っちゃったけど」

P「く、クスリ?」

晶葉「失礼な、変な薬なんかは使っていないぞ。れっきとしたイヤーワーム現象の応用だ」

志希「お、晶葉ちゃ~ん。会いたかったよ」

晶葉「奇遇だな。ちょうど私も会いたかったところなんだ」

志希「ねぇねぇ、ホントはあの装置、どんな原理なの?」

晶葉「……それに関しては、Pが説明した通りだ」


志希「それだけ?」


志希「それだけで、あんなにトロ~ンってなっちゃうものかな?」

晶葉「……何が言いたい?」

志希「隠してること、あるんじゃないかなって」

晶葉「……クスリは使っていない」

晶葉「そんなことより、協力してほしいことがある」

志希「んふふ~、晶葉ちゃんが、トリップ装置の原理を教えてくれたらね。あたしだってサイエンティストだよ、気になってもいいよね?」

P「……危険はないって言ったよな?」

晶葉「……その言葉に嘘はないぞ、P」

晶葉「ただ、拒絶されるかもしれないから言わなかっただけだ」

晶葉「志希よ、原理を明かせば私に協力してくれるんだな? なら明かそう、足踏みをしている場合ではないからな……」

晶葉「あのトリップ装置には、脳内の記憶領域内への干渉機能が備わっている。だからこそ、使用者が望む声なき声を再生することができる」

晶葉「……より実践的なデータを得るためには、こうするより他なかった。そもそもそうしなければ、この装置は完成しなかった。すまない、P」

P「もう一度確認する。危険はないんだな?」

晶葉「ああ。干渉機能とはいえ、脳の中に存在する記憶を読み取るだけだ。加工はしない。だからこそ安全だ」

志希「記憶をねぇ~、そんなことができちゃうんだ」

晶葉「これで、私に協力してくれるんだな?」

志希「ケミカルなトリックがあると思ったんだけどな~、残念」ガクッ

志希「でも、いいの? あたし、化けるほうのカガク専門だよ?」

晶葉「だからこそだ。詳しい話は後でする。私の研究室で待っていてくれ。くれぐれも、仲のものに勝手に触れるなよ」

志希「そこの領分はわかってるよ~」タッタッタ

晶葉「……」

晶葉「黙っていて、本当に悪かったと思っている」

P「……仕方なかった、そう言いたいか?」

晶葉「……ああ」

P「俺も晶葉と同じ立場ならそう思ったかもな。仕方なかったって」

晶葉「あの人はもう長くはない。焦りは禁物だとわかってはいる。それでも、最短距離を歩もうとしてしまう。信頼を裏切ってまでな」

P「信頼してくれてたから、言わなかった。そう解釈してもいいか?」

晶葉「……許して、くれるのか」

P「もう一度言おうか? 仕方なかった」

晶葉「……すまないな」

晶葉「失礼ついでに一つ、質問いいだろうか」

P「ああ」

晶葉「P、君は、寿命とは何だと思う?」

P「命のある長さのことだ」

晶葉「……そうだな。正しい」

晶葉「命のある長さ。死までの時間的な距離。その終着点にあるのは、肉体の死なのだろうか、それとも精神の死なのだろうか」

P「晶葉……」

晶葉「百年にも満たない人間の平均的な命の長さは、どちらの死によって終わりを告げるものなのだろうと私は思う」

晶葉「肉体が健康であれば、死なずにいられるのだろうか」

晶葉「精神が健康であれば、死なずにいられるのだろうか」

晶葉「……私は、あの人に、生きてほしい」

P「……こんな言葉を使うのは、卑怯なのかもしれないけど」

P「仕方のないことなんだ」

晶葉「それは、諦めか?」

P「いいや」

P「これは受容だ。人間は死ぬものだからな」

P「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね――俺の好きな作品に書いてある台詞だ。俺はその通りだと思う。晶葉、絶対に、生き返らせたりしようとするな」

晶葉「……わかっているつもりだ」

P「ならいい。さあ、もう行くといい。志希が待ってるんだろ。あんまり遅くまで付き合わせるんじゃないぞ」

晶葉「ああ。ではPも、仕事に励んでくれ――そうだ、一応確認なんだが」

P「ん?」

晶葉「……獅子座の星、レグルスという星を知っているか?」

P「……」

P「その名前の星は聞いたことなかったけど、レグルスって言葉は聞いたことあるぞ」

晶葉「言葉の意味は?」


P「小さな王、だ」


晶葉「博識だな。さすがは私の助手だ」

晶葉「では、また明日。次の発明品は、恐らく明後日くらいにはできるだろう。楽しみにしておいてくれ」

P「ああ。……あまり、思いつめるなよ」

晶葉「ありがとう、P。またよろしく頼む」タッタッタ…

P「……」シーン

P「今朝、研究室でちょっとだけ見えた小説のタイトル……」ボソリ

P「……、」

P「まあいいや、今はとにかく仕事やんなきゃな」




以上でトリップ装置の話は終わりです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
今さらですが、このシリーズ?には多少のオリジナル設定やキャラ崩壊を含みますので、今一度確認よろしくお願いいたします。
この話は、次作の『モバP「モテ装置?」』に続くと思います。
もしよろしければそちらの方でもよろしくお願いします。

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