優「おねえちゃんというひと」 ・ 千早「姉という存在」 (27)

※2つのSSが短かったので1つのスレにしました。

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 優「おねえちゃんというひと」


ぼくにはおねえちゃんがいます。

おねえちゃんはおうたもじょうずで、なんでもできるすごい人です。

おかあさんやおとうさんのつぎくらいにすごい人かもしれません。

それにくらべてぼくはなにもできません。

ぼくはまるでだめなにんげんです。


「おねえちゃん、おうたうたって」

ぼくがそういうと、おねえちゃんはいつでもうたってくれます。

とてもじょうずで、ぼくはそれをきくのがだいすきです。

たまに「ゆうもいっしょにうたって」といわれます。


ぼくはそれがいやでした。

ぼくはおうたがうまくありません。

いつもおねえちゃんのようにうたえません。

でもうたわないとおねえちゃんはかなしそうなかおをします。

だからぼくはがまんしてうたいます。


おねえちゃんはぼくがうたうとすごくよろこびます。

でもぼくはちっともうれしくありません。

だからいつもそういわれないようにかみさまにおねがいしていました。


へやにむしがでたとき、おねえちゃんはなきながらぼくにおいだしてとたのみにきました。

ぼくはできませんでした。

ぼくもむしはこわかったです。

すると、おねえちゃんは「もういい、ゆうなんかだいっきらい」といいながらでていきました。

ぼくはそのことばをわすれることはありません。


おねえちゃんはよくぼくのてをひっぱってくれました。

ぼくはそれについていくのがすきでした。

でもおとうとでもおとこのこであるぼくがおねえちゃんのてをひっぱらないといけないのかな。

いつかそうできるようになりたいです。


でも、そんなぼくをひっぱってくれるおねえちゃんが、

おうたがうまいおねえちゃんが、

ぼくはだいすきです。

 優「おねえちゃんというひと」 おわり

 千早「姉という存在」


「優、私また歳を取ったよ」

墓前でそう話しかけたのは何度目だろうか。
もちろん返答はない。墓石に話しかけて返答をもらえるのは、恐らく超能力者か何かだ。
しかしそれ以降話すことが思いつかず、結局後は無言で手を合わせるだけだった。


「そろそろ行かなきゃ」
そう言って千早が立ち上がった。
立ち上がった状態で見ると、優の墓が昔に比べてずいぶん小さくなってしまったと感じる。
当然だがそれは墓が小さくなったわけではなく、自分が大きくなったからだが。


「じゃあ、また来るから」
そう言って数歩進んだところで、思い出したように立ち止まって振り返った。
「……ごめんね」
それだけ言うと、千早は再び振り返り墓地を後にした。


千早「遅くなりました」

P「気にするな、時間に余裕はある。さ、車に乗ってくれ」

千早「……」バタンッ

P「……」バタンッ

ブロロロ…


千早「……プロデューサー」

P「どうした? このタイミングで千早から話しかけてくるなんて珍しい」

千早「姉って、何でしょう?」

P「それは、家族で下から見れば年上の女性だろう。……なんでそこが気になったんだ?」


千早「私は、優に姉らしいことが出来なかったので……」

P「……」

千早「本当は誕生日も迎えたくないんです。歳を取るごとに、もう歳を取ることのない優を置き去りにしている感覚に襲われるから……」

P「……」


千早「あ、ごめんなさい。 これから事務所でみんなが祝ってくれるのに、こんなこと言ってしまって」

P「……妹みたいのなら事務所にいくらでもいるんだがなあ」

千早「? そうですね」


P「あいつらの姉ちゃんをやれば、姉って何なのかが少しはわかる。のかもしれないぞ」

千早「……そうかもしれませんね」

P「事務所的には千早よりも年上はいるが、如何せん姉っぽいのが少ないからな」

千早「……ふふ、そうですね」


P「……俺はなったことないから姉らしさとかよくわからないが、もしどうしても知りたかったらあいつらを教材にでもして勉強してくれ」

千早「教材なんて言っていいんですか?」

P「あー、ここだけの話にしといてくれ」


千早「……どうしましょう」

P「おい、どういうことだ」

千早「それをネタにして、みんなでプロデューサーに高いケーキ買ってもらうのも悪くないと思いまして」

P「そんなところで姉権力を使うんじゃない」


千早「冗談です。驚きましたか?」

P「はははっ、驚くわけないだろ?」

千早「プロデューサー、顔が笑っていません」

P「……」

千早「……」


P「もうすぐ事務所だぞ」

千早「……プロデューサー」

P「どうした?」

千早「やはり、歳を取るのにどこか後ろめたい気持ちがあることは変わりません」

P「そうか……」


千早「……それでも。事務所のみんなが祝ってくれるなら、今日は楽しみたいです」

P「そうか、それは良かった。……みんなも楽しみにしてるから、期待していいぞ」

千早「ええ、楽しみです」


P「よし、到着。車置いてくるから先行ってていいぞ」

千早「はい、あの……」

P「どうかしたか?」


千早「……実際には、もう無理ですけど」

千早「事務所の中だけでも……」

千早「今度こそ姉に、なれるように頑張ります」


P「……期待してるよ」

千早「では、先行ってます」

P「ああ」




P「……」

P「……お姉ちゃん、か」

P「そこまでずっと弟のことを思っているなら、十分お姉ちゃんになれてるよ」


 千早「姉という存在」 おわり


姉を持つ弟という存在である自分が、姉という人間に最初に持った感情は「憧れ」と「劣等感」でした。
それは今でも変わることはありません。

最後まで見ていただいてありがとうございました。

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