ハム蔵「たまには昔の話もしよう」 (149)

ハム蔵「ヂュイ!ヂュイ!ヂュイ!」プンプン

響「はい…はい…ごめんなさい…」

亜美「ひびきん、なんでハム蔵に怒られてんの?」


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真美「どうせまたハム蔵のご飯摘み食いしたりしたんでしょ?」

貴音「いえ、今回はトイレの電気を点けっぱなしにしたことを怒られているそうです」

亜美「ハム蔵、お母さんみたいだね…」

ハム蔵「ヂュヂュイ!ヂュイ!」

響「はい…それは…はい…あの…はい…」

真美「自分のペットに敬語で謝る飼い主ってひびきんくらいだよね…」

ハム蔵「ヂュヂュイ?」

響「うぅぅ…はいぃ…もう2度としません…えっぐ…」

亜美「泣き出しちゃったよ…」

ハム蔵「ヂュヂュイヂュイ…ヂュイヂュイヂュイ?」

響「うん…えっぐ…それは…ひっぐ…わかっ…わかって…わがっでまず…えっぐ…」

真美「あっ!これ多分『何も響ちゃんが憎くて言ってるんじゃないのよ?』って言われてるパターンだ」

貴音「詳しいですね?」

亜美「亜美たちがよくりっちゃんに言われるからね!」エッヘン

貴音「それは誇ることなのでしょうか…」

ハム蔵「ヂュイ…ヂュイヂュイ?」

響「うん…うん…ごめんね…えっぐ…えっぐ…」

亜美「どうやら終わったみたいだね」

真美「お説教は人間もハムスターも変わらないんだね」

貴音「面妖な…」

ハム蔵「ヂュイ…ヂュイヂュイ?」

響「うん…うん…ごめんね…えっぐ…えっぐ…」

亜美「どうやら終わったみたいだね」

真美「お説教は人間もハムスターも変わらないんだね」

貴音「面妖な…」

ハム蔵「ヂュイヂュイ!」

響「うん、そうだね…えへへ」

亜美「でもひびきんとハム蔵たちの関係って珍しいよね」

真美「そーだね、たまにどっちが飼い主なのかわかんなくなるよ」

響「飼い主は自分だぞ!」

亜美「でもハム蔵はどう思ってるのかわかんないよ?」

響「そ、そんな…ハム蔵!そうなのか!?」

ハム蔵「ヂュイ?」

真美「ねえ、ハム蔵。ハム蔵はさ、ひびきんのことちゃんと飼い主だと思ってる?」

ハム蔵「ヂュイ!」

響「は、ハム蔵〜!」

亜美「今のは亜美にも意味がわかったよ!」

真美「うん!『もちろん!』って自信満々に答えてたね!」

響「うわぁぁぁぁん!信じてたぞ、ハム蔵ぉぉぉお!」ギュゥッ

ハム蔵「ヂュ…ヂュイ…」

亜美「うあうあー!?ひびきん!ハム蔵が潰れちゃうよぉ!」

貴音「しかし、ハム蔵殿は真賢いですね…」

響「うん!ハム蔵は出会った時からめちゃくちゃ強いし賢いんだぞ!」

亜美「だろうね」

真美「ねぇねぇ、ひびきん。ひびきんはハム蔵とどうやって出会ったの?」

響「へ?自分とハム蔵の出会い?」

ハム蔵「ヂュイ?」

亜美「うん、知りたい!知りたい!」

貴音「亜美、真美、あまり人のぷらいべーとに踏み込むものでは…」

亜美「えぇー!?だって気になるよぉ!」

真美「そうだよ、ハム蔵みたいな賢いハムスターなんて中々いないんだよ?」

ハム蔵「ヂュイ!」エッヘン

亜美「それがなんでよりにもよって『765プロ一のアホの子』って言われてるひびきんのペットになったの?」

響「誰がアホの子だ!」

貴音「響、落ち着いてください。褒め言葉です」

響「全く褒められてるように感じないぞ…」

真美「でもひびきん、本当になんでなの?」

亜美「そうだよ。こんなに賢いハムスター、普通ならサーカスとかテレビ局に売り払われてるよ?」

響「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれたな!」

貴音「と言うことは何か事情があったのですね?」

響「あぁ!そりゃもう聞くも涙、語るも涙の大事情だぞ!」

ハム蔵「ヂュイ、ヂュイ」ウンウン

亜美「うあうあー!?余計に聞きたくなってきたよー!」

真美「ねぇねぇ、ひびきん!教えて教えて!」

響「ふっふっふーん!よーしわかった、心して聞くがいいぞ!」

亜美真美「「うん!」」

響「あれは…えっと…」

亜美「ん?」

響「…なんだっけ?」

亜美真美ハム蔵 ズコ-

貴音「忘れてしまったのですか?」

響「い、いや、そんなことはないぞ!自分がハム蔵を助けたのは覚えてるんだけど…」

亜美「ひびきんがハム蔵を?」

真美「逆じゃなくて?」

響「なんで逆なんだよ!」

貴音「どのように助けたのですか?」

響「うーん…そこがよく思い出せなくて…」

亜美「本当は逆だったんじゃないの?」

響「だから自分がハム蔵を助けたんだってば!」

真美「じゃあ何で詳しく覚えてないのさ?」

響「しょうがないだろ、あれは自分が小学一年生の時だったんだから…」

亜美「一年生!?」

真美「じゃあハム蔵ってもう10年近く生きてるの!?」

ハム蔵「ヂュイ!」コクコク

貴音「にわかには信じがたいことですが…」

亜美「ハム蔵ならあり得るって思っちゃうのが怖いよ…」

響「うぎゃー!?全然思い出せないぞー!」

真美「本当に何も思い出せないの?」

響「うーん…イリオモテヤマネコと闘ったような気はするんだけど…」

亜美「ひびきん…それ多分いつかの響チャレンジだよ…」

響「うぎゃー!何で思い出せないんだー!」

貴音「それではハム蔵殿に教えていただく、というのはいかがでしょう?」

真美「それだ!」

響「よーし、ハム蔵、あの時のこと覚えてる?」

ハム蔵「ヂュイ!」コクッ

響「じゃあ悪いんだけど、自分に思い出させてくれない?」

ハム蔵「…ヂュイ」フリフリ

亜美「えっ!?」

真美「ダメなの!?」

響「な、なんでだ、ハム蔵!?」

亜美「ひょっとして、ひびきんが助けたってのがやっぱりひびきんの勘違いで…」

真美「ハム蔵はひびきんが傷つかないように庇ってるんじゃ…」

響「ハム蔵!そうなのか?」

ハム蔵「ヂュイヂュイ」フルフル

亜美「違うんだ…」

響「じゃあ何で教えてくれないの?」

真美「ハム蔵〜、教えてよ〜」

ハム蔵「ヂュヂュイ」

響「『言いたくない』って…」

亜美「うあうあー!?気になって今夜は眠れないよぉ!」

響「そうだぞ、ハム蔵!」

真美「ハム蔵〜、教えてよ〜」

ハム蔵「ヂュヂュイ」

響「『言いたくない』って…」

亜美「うあうあー!?気になって今夜は眠れないよぉ!」

響「そうだぞ、ハム蔵!」

真美「ハム蔵、お願い!ひまわりのタネ買ってあげるから〜」

ハム蔵「ヂュイ…」

貴音「よしましょう」

亜美「お姫ちん!?」

真美「お姫ちんは気にならないの?」

貴音「確かに気にはなります…しかし、これは響の思い出であると同時にハム蔵殿の大切な思い出でもあります。言い出した私が言えることではありませんが…」

亜美「そっかぁ…」

真美「そーだね、ハム蔵にだって無闇に喋りたくないこともあるよね…」

貴音「えぇ、そうです。誰にでも、無闇に他人に語れない過去があるものです…」

響「うぅぅ…自分が覚えていたら良かったんだけど…」

亜美「まぁ、そこはひびきんだしね」

真美「そうだね、ちかたないね」

響「うぎゃー!それどういう意味だよー!」

貴音「まぁまぁ。話もひと段落したところですし、昼食でもどうでしょうか?最近近場にいい二十郎を見つけたのですが…」

亜美「いい二十郎って何なの…」

真美「もはや哲学だね…」

貴音「まぁまぁ。話もひと段落したところですし、昼食でもどうでしょうか?最近近場にいい二十郎を見つけたのですが…」

亜美「いい二十郎って何なの…」

真美「もはや哲学だね…」

貴音「いいえ!二十郎にはいい二十郎も悪い二十郎も存在するのです!そもそも…」

亜美「うあうあー!お姫ちんが語り出したら…」

ワイワイガヤガヤ

ハム蔵(出会い…か…)

ハム蔵(響ちゃんが覚えてないのも無理はないわな…なんせあれは…)

ハム蔵(10年以上も前の話なんだから…)

11年前

ハム蔵(当時の俺はとある人間に飼われていた…ある1人の少年に…)

少年「ここが今日からお前の家だよ!」

ハム蔵「ヂュイ!」

ハム蔵(今でこそ、名前も顔もよく思い出せないけれど、我ながらいい関係を築けていたと思う…いや、思っていた…)

少年「あーあ、君が人間だったなら良かったのになぁ…」

ハム蔵「ヂュイ?(どうして?)」

少年「だってそうしたらいつでも一緒にいられるし、言葉だって通じるだろ?そうしたらもっと仲良くなれるじゃないか!」

ハム蔵「ヂュイ!(なるほど!)」

ハム蔵(そこから俺は人間に近づけるように努力した…)

ハム蔵「ヂュイ!ヂュイ!ヂュイ!」グググググ

ハム蔵(そうして…血の滲むような努力の末、二足歩行ができるようになった時だった…)

ハム蔵「ヂュイ!(どうだ!)」エッヘン

少年「凄い!凄いよ!まさか僕がこの間言ったから?」

ハム蔵「ヂュイヂュイ!(そうだよ!)」コクコク

少年「凄いや!凄いや!君は凄く賢いし努力家なハムスターなんだね!僕、君と友達になれて嬉しいよ!」

ハム蔵「ヂュイヂュイ!(僕もだよ!)」

ハム蔵(しかし、そんな幸せは長くは続かなかった…)

少年の母親「えっ…何、そのハムスター…ハムスターのくせに人間みたいで気持ち悪い…」

少年の父親「サーカスに売れば多少は金になるんじゃないか?それかテレビ局とか…」

ハム蔵(少年は純粋だった、しかし、大人はそうではない。大人になればなるほど自分の常識を外れるものを排除したがる)

ハム蔵(そして、遂にその日はやってきた…)

ハム蔵「ヂュイ!ヂュイ!(嫌だ!嫌だよ!)」

少年「ごめんね…お父さんが、この旅行が終わったら君をテレビ局に売りつけるって言うんだ…」

ハム蔵「ヂュイ…(そんな…)」

少年「だから今日…旅行中に立ち寄ったこの島に君を逃す…そうすればお父さんは君を見つけられないから君は平和に暮らせる…」

ハム蔵「ヂュイヂュイ!(僕は君といたいよ!)」

少年「ははは…君は僕のために立ち上がってくれたのに…僕は君の言葉を理解することもできないのか…」

ハム蔵「ヂュヂュイ!(そんなこと関係ないよ!)」

少年「じゃあね、幸せに暮らすんだよ…」

ハム蔵「ヂュイ!ヂュイィィ!(待って!待ってよぉぉ!)」

ハム蔵(こうして俺はこの島に…沖縄のこの島に取り残された…そして…)

1年後

ハム蔵(沖縄の離島といういきなり過酷な環境に捨てられた俺は1年後には…)

猫「おい、テメー。ここは俺様のナワバリだにゃ!」

蛇「シュロロロロロ!関係ねーよ!今からここは俺様のナワバリだぁ!」

猫「何ぃ?」

蛇「なんだテメー?あっ?やんのか?」

猫「やってやんよ、つら貸せにゃ!」

ハム蔵「うっせぇんだよテメーらぁぁぁぁあ!」ドカッボキッ

猫「ふにゃ!?」

蛇「へぶし!?」

ハム蔵(めちゃくちゃ強くなっていた)

猫「にゃんだテメーは!?ネズミ風情が調子に乗りやが…」

蛇「バカ!止めろ!この方はただのネズミじゃねぇ!」

猫「あぁん?ただのネズミじゃないって…まさか!?」

蛇「あぁ…この毛並みに頬袋…そしてネズミにあるまじき二足歩行…この方は…」

猫「ここ1年で現れた『殺戮ハムスター』じゃねぇかぁぁぁあ!?」ダッ

蛇「すいませんでしたァァァァァア!!」シュルルルルルル

ハム蔵「…ハムスターでも二足歩行はしねーよ」

ハム蔵(沖縄の離島という様々な動物が生息する環境で生き残るために必死で俺は必死で戦っていた)

ハム蔵(そんな俺はいつしかあんな風に…『殺戮ハムスター』なんて物騒な名前で呼ばれるようになった…)

イリオモテヤマネコ「相変わらずやるじゃねーか…」

ハム蔵「今日は何のようだ…」

ハム蔵(あまりに強くなりすぎたせいか、こいつみたいに俺の力を利用しようとして付きまとってくるやつまで出てくる始末だ…)

イリオモテヤマネコ「こないだの件考えてくれたか?」

ハム蔵「こないだの件?」

イリオモテヤマネコ「あぁ、俺とお前が組めばこの島は俺たちのもんだ!殺戮ハムスター、俺に手を貸せ」

ハム蔵「前も言ったが、俺はそんなことに興味ねーんだよ。安心しろ、お前らが俺の邪魔しなきゃ俺からも邪魔はしねーからよ」ダッ

イリオモテヤマネコ「あっ、ちょっ、待てよ!」

ハム蔵(これ以上うるせーのは勘弁だ。俺はもう何にも関わりたくねーんだよ…)

少年『ごめんね…』

ハム蔵(そう、何にも…)

ハム蔵(おっと、ついしんみりしちまったな…やめだやめだ!こういう時は昼寝に限るぜ!おやすみっと!)

??「ひっぐ…えっぐ…」

ハム蔵(さぁ、寝よう寝よう)

??「うっぐ…あっぐ…」

ハム蔵(寝るったら寝るんだ)

??「びぇぇぇぇぇぇぇえん!?」

ハム蔵「うるせぇぇぇぇ!」

??「うゆ?」

ハム蔵「びーびーびーびーうっせーんだよ!なんだお前は!」

響「自分は我那覇響だぞ!小学校一年生だぞ!」

ハム蔵「いや、そういうことじゃねーんだよ」

響「君のお名前はなんていうんだ?」

ハム蔵「聞けよ、話を」

響「お名前聞いたら自分のお名前も言わなきゃいけないんだぞ!」

ハム蔵「お前が勝手に言ったんだろうが!」

響「でも自分が君に名前を言ったことには変わりないぞ?」

ハム蔵「いや、だから…ってちょっと待て!?お前、俺の言葉がわかんのか!?」

響「ん?わかるけど?」

ハム蔵「『わかるけど?』じゃねーよ!お前は人間で俺はハムスターだぞ!?」

響「そんなこと言われても自分昔から動物の言葉わかるし…」

ハム蔵「ハムスターだけじゃねーのかよ!?お前ひょっとしてすごい天才なんじゃ…」

響「そんなことよりお名前だぞ!」

ハム蔵「…なさそうだな」

響「ねーねー、教えてよー、お名前ー!」

ハム蔵「うるせぇなぁ、名前は…」

響「名前は?」

ハム蔵「…っ…ねぇよ名前なんて!」

響「え?君お名前ないの?」

ハム蔵「あぁ、ねぇんだよ。わかったらとっとと帰りな、俺は昼寝が…」

響「なら自分がつけてあげるぞ!」

ハム蔵「本当にお前は人の話を聞かねーな…」

響「えーっとねー、ハムスターだから…よし!君の名前は今日から『ハム蔵』だ!」

ハム蔵「ダッサ!?」

響「え?ダサい?」

ハム蔵「ダセーよ!なんだそのセンスの欠片もない名前は!」

響「そ、そんなに言わなくても…うぎゃぁぁぁぁぁぁあ!?」

ハム蔵「だぁぁぁぁあ!もう!悪かったよ、だから泣くな!な?」

響「うっぐ…えっぐ…」

ハム蔵「よ、よく考えたらセンスあるかもな、逆に」

響「あっぐ…逆に?」

ハム蔵「そうそう、逆に逆に」

響「えへへ…そっか…」

ハム蔵「喜怒哀楽が激しすぎるだろお前…」

響「ん?何か言ったか?」

ハム蔵「何でもねーよ」

ハム蔵(また泣かれても困るしな…ん?泣く?)

ハム蔵「そういやお前さっきも泣いてたな?」

響「な、泣いてないもん!」

ハム蔵「いや、その嘘は無理あるだろ。お前がえぐえぐうるせーから俺が話しかけたんだからよ」

響「うっ!?」

ハム蔵「何があったんだよ?俺で良けりゃ相談に乗るぜ?」

ハム蔵(これ以上泣かれたら敵わんからな…)

響「あ、あのね…」

カクカクシカジカナンクルナイサ-

ハム蔵「はぁ?かけっこが遅くてからかわれたぁ?」

響「『はぁ?』とはなんだよぉ!自分は真剣なんだぞ!」

ハム蔵「いや、俺たちの世界ならともかく人間の世界に足の速さなんて関係ねーだろ。なんだお前、誰かに食われんのか?」

響「そうじゃないけど…とにかく自分にとっては大切なことなの!」

ハム蔵「ならなんで泣いてんだよ?」

響「なんでって…」

ハム蔵「泣いたら足が速くなんのか?」

響「ならないけど…」

ハム蔵「ならなんで練習しねーんだよ?」

響「…練習なんかしたって速くなるわけないぞ、自分どん臭いし…」

ハム蔵「馬鹿野郎!」

響「ひぃ!?」

ハム蔵「あっ、あぁ…すまねぇ…だがなぁ、練習しねーとダメだ!」

響「でも…」

ハム蔵「確かに練習しても速くなんねーかもしれねー!でもなぁ!練習しねーと絶対に速くはならねーぞ?」

響「うぅぅ…」

ハム蔵「ほら、教えてやっから立ちな!」

響「えっ?ハム蔵、教えてくれるのか?」

ハム蔵「あぁ、人間もハムスターも、二足歩行でも四足歩行でも走るのに必要な基本は一緒だ。野生仕込みの走り方を教えてやるぜ!」

ハム蔵(これから毎日あそこで泣かれても迷惑だしな…)

響「えへへ…」

ハム蔵「なんだよ…」

響「ハム蔵って、ぶっきらぼうだけど優しいね!」

ハム蔵「…うるせぇよ」

ハム蔵(こうして俺とこいつの特訓が始まった…)

ハム蔵「なんだそのぶらんぶらんの腕は!?テメーの腕は飾りかぁ!?」

響「ふんぎぃぃぃぃい!」

ハム蔵「まず姿勢がなってねーんだよ!シャンと立てシャンと!」

響「シャンと?」

ハム蔵「背筋を伸ばすってことだよ!はい、ピシッ!」

響「ピシッ!」

ハム蔵「そう!その姿勢を忘れんなよ!」

ハム蔵(正直最初はふざけてんのかと思うくらいダメダメだった…)

響「うぉぉぉお!!」

ハム蔵(でもこいつは最初に泣くなと言われてからは一切泣かなかったし、弱音も文句も言わなかった)

そうして…

響「ハム蔵!ハム蔵!」

ハム蔵「おっ!どうだった?」

響「自分一番になれたぞ!」

ハム蔵「やるじゃねぇか!」

響「でしょでしょ!褒めて褒めて!」

ハム蔵「ふん、調子に乗るんじゃねぇよ。この俺様が教えてやってんだ、そんくらい当たり前だ」

響「ちぇー」

ハム蔵「だがまぁ…」

響「?」

ハム蔵「お前は1度も弱音を吐かなかった…そこだけは認めてやってもいい」

響 ウルッ

ハム蔵「!?」

響「ハム蔵ぉぉぉお!」ギュウッ

ハム蔵「うわぁ!?バカ!離せ!」

響「ひっぐ…えっぐ…うわぁぁぁん!?」

ハム蔵「足が速くなっても結局泣くのかよ!?」

響「りゃって…りゃって自分…本当にできなかったから…」

ハム蔵 イラッ

響「自分、ひっぐ、どん臭いから…」

ハム蔵「それ止めろ!」

響「へ?」

ハム蔵「どん臭いとか出来ないとか言ってるからそうなるんだ!自分を信じねーやつにできることなんて何もねーぞ!」

響「そんなこと言われても…」

ハム蔵「なら聞くがな、響!お前は自分で『自分は嫌な奴です』とか言ってるやつと友達になりてーか?」

響「そ、そんなの嫌だぞ!」

ハム蔵「そうだろ?なら自信を持て!まずはお前がお前を好きになるんだ!」

響「自分が…自分を…」

ハム蔵「あぁそうだ!実際できると信じたかけっこは一番になれたじゃないか!お前は凄いやつだ!」

響「自分が…凄い?」

ハム蔵「あぁ、お前は凄い!凄いぞ!」

響「そうだな!自分は凄いぞ!完璧だ!」

ハム蔵「いや、極端だなお前…」

響「えへへ〜、自分完璧だからな〜」

ハム蔵「いや、褒めてねーよ!」

ハム蔵(こうして響が泣くこともなくなり、俺には平和な日々が戻ってきた…ら良かったのだが…)

ハム蔵「はぁ?算数がわからなくてバカにされたぁ?」

響「びぇぇぇぇぇぇぇえん!?」

ハム蔵「…ったく、かしてみろバカ!」

ハム蔵(そんなこんなで、それからも響は俺のところにやってきた…)

ハム蔵「なんで繰り上がったら20が40になるんだよ!慌てずにゆっくり計算しろ!やればできるんだから!」

ハム蔵「あー、違う違う。いいか?書き順にはなんだかんだ意味があるんだよ。人間が書きやすいようにできてるんだ、だからこれは…」

ハム蔵「鍵盤ハーモニカは…お前手がちっちゃいもんなぁ…気合いだ!他のやつより手が小さいなら他のやつの倍動かせ!」

ハム蔵(結局俺は昼寝できなくなっていた。しかし、そんな日常を悪くないと思いだしていた…)

ハム蔵(そんなある日のことだった)

ハム蔵「一緒に暮らす?」

響「うん!今度の自分の誕生日に、あんまーがハム蔵を連れてきていいって言ってくれたんだー!」

ハム蔵「俺にお前のペットになれって言ってんのか?」

響「ううん、家族になってほしいんだ!」

ハム蔵「家族…」

響「今、自分とハム蔵は友達だけどそこから家族になれたら絶対もっと楽しいさー!」

ハム蔵「家族…ねぇ…」

響「ねぇ、ハム蔵!いいでしょ?」

ハム蔵「…」

響「ハム蔵?」

ハム蔵「悪い、ちょっと考えさせてくれ…」

響「う、うん!そうだな!ちょっと急だったもんね!よーく考えたらいいさぁ!」

ハム蔵「あぁ、それじゃあ今日は…」

響「どうだ?答え出たか?」

ハム蔵「ちょっとすぎるだろうが!」

ハム蔵(いつの間にか、あいつと共に過ごす時間を悪くないと思える自分がいた。それは事実だ…でも…)

少年『じゃあね…』

ハム蔵(そうだ、人間は裏切るんだ…いや、違うな、人間はやっぱり人間が大事なんだ。あの少年だって、俺よりも親の方が大切だったから俺の方を捨てたんだ…)

ハム蔵(だから俺は…)

イリオモテヤマネコ「へいへい、ハムスターの旦那ぁ」

ハム蔵「…何の用だ?」

イリオモテヤマネコ「例の件、考えてくれました?」

ハム蔵「だからそれは…」

イリオモテヤマネコ「小学生の女の子…」

ハム蔵「!?」

イリオモテヤマネコ「例の件、考えてくれました?」

ハム蔵「だからそれは…」

イリオモテヤマネコ「小学生の女の子…」

ハム蔵「!?」

イリオモテヤマネコ「最近えらく仲良しみたいで、いやはや殺戮ハムスターと呼ばれたお方らしくはありませんねぇ…」

ハム蔵「…何が言いたい?」

イリオモテヤマネコ「いえいえ、ただ仲良しの彼女が我々に襲われたらあなたはどうするのかなと思いましてね?」

ハム蔵「テメェ…」

イリオモテヤマネコ「まぁ、我々も仲間の仲間には手は出せないんですが…」

ハム蔵「わかったよ…」

イリオモテヤマネコ「ん?」

ハム蔵「協力してやるって言ってんだよ!」

イリオモテヤマネコ「にひひひ、すいませんねぇ…」

ハム蔵(これであいつの家族にはなれなくなっちまったな…)

ハム蔵(ははは、ちょうどいいじゃねーか。元々上手くいくわけなかったんだから…)

ハム蔵(そう、ちょうど良かったんだ…ちょうど…)

響「へ?」

ハム蔵「だから何度も言わせんなよ」

響「う、嘘でしょ?」

ハム蔵「嘘じゃねーよ。俺は『行かねー』って言ってんだよ」

響「な、なんで?」

ハム蔵「なんでって…」

響「じ、自分毎日ハム蔵のご飯用意するぞ?」

ハム蔵「そういう話じゃなくてな…」

響「もちろんハム蔵のご飯を横取りなんかしないし…」

ハム蔵「いや、それは当たり前だろ。お前人間としてのプライドねーのかよ」

響「あんまーは優しいぞ?にぃにもちょっと意地悪なところはあるけど悪いやつじゃないし…」

ハム蔵「だからそうじゃなくて…」

響「ならなんで…」

ハム蔵「…俺は野性がいいんだよ。そんで誰とも関わらずに生きていきてーんだ」

響「で、でも自分とは友達に…」

ハム蔵「友達?お前が一方的に俺んとこに来てただけだろ?」

響「えっ…」

ハム蔵「昼寝の時間はなくなるし、びーびー泣いてうるせーし」

響「は、ハム蔵?」

ハム蔵「そうそう、そのへんてこりんな名前もだ。とにかくお前は鬱陶しいんだよ、そんなやつと家族になんてなれねーな」

響「…そっか」

ハム蔵「…」

響「ごめんな…自分、ハム…君のこと全然考えてなかった…」

ハム蔵(なんで…)

響「そりゃ…嫌われるよね…えへへ…」

ハム蔵(なんで怒らねーんだよ…)

響「じゃ、じゃあね!バイバイ!」ダッ

ハム蔵「あっ…」

ハム蔵(その時のあいつは、泣いていないのに…いつもよりも悲しそうだった)

ハム蔵(でも、これで良かったんだよな…)

その日の夜

イリオモテヤマネコ「おや?お早いですね?」

ハム蔵「あぁ、約束通りテメーらの仲間になってやるよ。その代わり…」

イリオモテヤマネコ「えぇ、私たちからは彼女に危害を与えませんよ」

ハム蔵「あぁ…」

ハム蔵(そうだ、これで良かったんだ)

イリオモテヤマネコ「では…あなたには…」

ハム蔵(お前なら人間でも動物でも誰とでも仲良くできるさ…だから…)

イリオモテヤマネコ「ここで死んでもらいましょう!」

ハム蔵「は?」

イリオモテヤマネコ達 ズラッ

ハム蔵「おいおい、これはなんの冗談だ?」

イリオモテヤマネコ部下A「はっはっはっは!この島の制圧なんてお前があのガキと遊んでいる間に終わっているんだよ!」

ハム蔵「な、なんだと!?」

イリオモテヤマネコ部下B「すっかり腑抜けになっちまったな殺戮ハムスター!だがお前ほど名前を売ったやつが生きてるのは何かと都合が悪いんだ!」

ハム蔵「はっ!それで俺を殺そうってわけか?」

イリオモテヤマネコ部下A「あぁそうだ!」

イリオモテヤマネコ部下E「ぶっ殺してやんよ!」

ハム蔵「テメーら…かかってこいやオラァァァァァァア!?」

イリオモテヤマネコ達「にゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」

ハム蔵「うぉぉぉぉぉぉお!」

イリオモテヤマネコ部下A「ぐへっ!?」

イリオモテヤマネコ部下G「ふにゃ!?」

イリオモテヤマネコ「ふっ、さすがだな殺戮ハムスター。徐々に、だが確実に我が軍の数を減らしている」

ハム蔵「うららららららぁ!?」

イリオモテヤマネコ「しかし、それもいつまでもつかな?」

ハム蔵「うりゃぁぁぁぁあ!!」

イリオモテヤマネコ部下S「うわぁぁ!?」

ハム蔵(よし…こいつで最後…)

イリオモテヤマネコ部下J「貰ったぁぁぁぁぁぁぁあ!」

ハム蔵(しまった!?まだいたのか!でも1発くらいなら…)

響「危ない!ハム蔵!」ダッ

ハム蔵「えっ?」

イリオモテヤマネコ部下J「おらぁ!」バキッ

響「うわぁぁぁあ!?」

ハム蔵「響!テメェ!」バキッ

イリオモテヤマネコ部下J「ひでぶ!?」

ハム蔵「響!響!」

響「へへへ…ハム蔵…大丈夫?」

ハム蔵「大丈夫なのはテメーだ!大丈夫か!?」

響「うん…大丈…うぅぅ…」

ハム蔵「お前…頭打ってんじゃねーか!なんでこんなことを…」

響「あのね…イリオモテヤマネコ達が話してるの聞いたんだ…」

ハム蔵「!?」

響「ハム蔵…自分を守るために…」

ハム蔵「わかった!わかったからもう喋るな!」

響「だからね…自分もハム蔵を…」

ハム蔵「わかったから!」

響「自分…友達…だか…ら…」ガクッ

ハム蔵「響!?響!?」

イリオモテヤマネコ「ふぅ、部下を全員倒すとはやりますねぇ…」

ハム蔵「…おい」

イリオモテヤマネコ「しかし、あなたは満身創痍、それに加えてお荷物が増えてしまいました…」

ハム蔵「テメー、響が動物の言葉がわかるの知ってて喋ったな?」

イリオモテヤマネコ「さぁ、何のことやら?」

ハム蔵「許さねぇ…許さねぇぞ…」

イリオモテヤマネコ「しかし、そのお荷物を抱えたままでは…」

ハム蔵「お荷物?違うなぁ…この場合は…」

イリオモテヤマネコ(な、なんだ…?)

ハム蔵「逆鱗っていうんだぜ?」

イリオモテヤマネコ(雰囲気が変わった…)

ハム蔵「テメーは俺を怒らせた…」

イリオモテヤマネコ(こ、これはヤバい!?)

イリオモテヤマネコ「ま、待て、話し合おう殺戮ハムスター!」

ハム蔵「殺戮ハムスター?違うなぁ…俺の名前は…」

イリオモテヤマネコ「ひぃ!?」

ハム蔵「ハム蔵だぁぁぁぁあ!!」ズドォォォォオン

イリオモテヤマネコ「ぐわぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

ハム蔵「…さーて」

響「すぴー」

ハム蔵「この後どうすっかなぁ…」

しばらくして…

響「う、うぅぅん…」

ハム蔵「お、目が覚めたか?」

響「ハム蔵…あっ!?そうだ!イリオモテヤマネコ達は!」

ハム蔵「何言ってんだ?お前が全員追っ払ったじゃねーか」

響「へ?自分が?」

ハム蔵「あぁ、俺のピンチに颯爽と現れて…ありゃあシビれたね」

響「そうだっけ?」

ハム蔵「何言ってんだ、イリオモテヤマネコ達も恐れをなして逃げ出しちまったじゃねーか」

響「うーん、そう言われたらそうだった気も…」

ハム蔵「そうなんだよ。俺が言ってるんだから間違いねーよ」

響「うーん…そうだな!そう言われたらそんな気がしてきたぞ!」

ハム蔵「しかし、お前にはデカい借りができちまったな…」

響「そんな、友達を助けるのなんて当たり前だぞ!」

ハム蔵「いや、これはきっちり返さなきゃいけねぇ!とは言っても一回で返せるような借りでもねーし…」

響「いや、だから返さなくても…」

ハム蔵「こりゃあ泊まり込みで返していくしかねーな!」

響「へ?」

ハム蔵「つーわけで、よろしく頼むわ!響ちゃん」

響「うちに…来てくれるの?」

ハム蔵「あぁ」

響「本当に?」

ハム蔵「本当だ」

響「本当の本当に?」

ハム蔵「本当の本当だ」

響「…」

ハム蔵「おい、どうし…」

響「やったぁぁぁぁあ!」

ハム蔵「!?」

響「やった!やった!ハム蔵と自分は家族だ!家族だ!」

ハム蔵「あぁそうだな、よろしく頼むぜ」

響「あっ…でも、ハム蔵って名前はへんてこりんだから変えた方が…」

ハム蔵「いや、いい名前だよ!」

響「えっ?でもさっきは…」

ハム蔵「よーく考えたら逆にいい名前だなって思ってよ!お前ネーミングセンス抜群だな!」

響「そ、そうかな?」

ハム蔵「そうそう!自信持っていいよ!もうずっとそんな感じでいけばいいと思うわ!」

響「は、ハム蔵が言うならそうなのかもな…あははははは!」

ハム蔵「あははははは!」

響ハム蔵「「あはははははは!」」

ハム蔵(そうして俺は響ちゃんと一緒に暮らすようになった…)

響「…う」

ハム蔵(こう言うとみんなは『響ちゃんが助けたってのはやっぱり勘違いじゃん』って思うかもしれない…)

響「…ぞ…」

ハム蔵(でもそうじゃない、俺は確かに響ちゃんに助けられた…何故なら)

響「…ム…う…」

ハム蔵(ん?)

響「ハム蔵!」

ハム蔵「ヂュイ?」

響「もう!ボーッとしてないで行くぞ?」

ハム蔵「ヂュヂュイヂュイ?」

響「はぁ?」

亜美「ハム蔵なんて言ってるの?」

響「いや、『流石に飲食店に自分が行くのはまずいんじゃないか』って…」

ハム蔵(当たり前だろ…全く響ちゃんは…)

真美「はぁ?」

ハム蔵(えっ?)

亜美「もう!ハム蔵、お姫ちんの話聞いてなかったの?」

ハム蔵(話?)

貴音「この近くに動物と共に楽しめる二十郎がおーぷんしたのです」

響「だからハム蔵も行けるんだぞ!ハム蔵が食べれるラーメンもあるって!」

ハム蔵「ヂュイ…」

亜美「だからハム蔵も一緒に行こうよ!」

真美「真美達がハム蔵だけ仲間外れになんかするわけないっしょ?」

ハム蔵(あぁ、そうだった…この子たちは、そういう子たちだった)

響「ハム蔵?」

ハム蔵(俺はやっぱり響ちゃんに助けられた…何故なら…)

亜美「ほら、行こうよ、ハム蔵!」

ハム蔵(俺はこうしてまた人間を信じれるようになったし…)

貴音「はむすたー用のらぁめんと言うのもまた…」ジュルリ

真美「お姫ちん…それは流石に…」

ハム蔵(素敵な響ちゃんの周りにはやっぱり素敵な仲間がやってきて…)

響「じゃあ行くよ!ハム蔵!」

ハム蔵(こんなに素敵な毎日を貰っているのだから…)

終わり

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