【艦これ】空ヲ飛ンデミタイナ【戦後短編集】 (184)





そのいち「龍驤とヌ級」






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456003060




龍驤「フフフ……」

龍驤「ついにやったで!」

龍驤「これぞ燦然と輝くレシプロ機用の単発免許証!」

龍驤「艦載機の飛びよる姿見て、ウチもいつかはと思っとったんよな……」ホロリ

龍驤「思えば、早いもんやなぁ」



龍驤「終戦から、もう3年かぁ……」






カタッカタッ
プロロロロロロロロロロロ…


龍驤(ウチはこないだ、地方の観光会社にパイロットとして就職したんや)

龍驤(せやから、会社の所有するこの小型機が当面のウチの愛機)

龍驤(これから初めてのお客さんを乗せるんや)フフン

龍驤(いつか自分だけの飛行機を持つために、がんばるで!)グッ






社長「おーい龍驤ちゃん!この人が今日のお客さんだよ!」

社長「シンカイってところからいらっしゃった、ヌキュウさん!」

社長「陸のことが知りたいそうだから、よろしく頼むね!」



ヌ級「ヨ、ヨロシク……」ブルブル

ヌ級「オ願イ……シマス」ガタガタ

龍驤「……よ、よろしゅうな……」



龍驤(初めてのお客さん……深海棲艦かいな!!)ビシッ






龍驤(イヤイヤ、よー考えたら別におかしいことやあらへん……)ブンブンッ

龍驤(最近は深海の人らがぎょーさん観光に来るて、ニュースでもやっとるし)

龍驤(この人はちゃんと日本語(?)喋ってはる)

龍驤(せやし、ウチが元艦娘やてバレへんかったら問題は無いはずや……)ゴクリ



ヌ級「ド、ドウシタンデスカ?」ガタガタ

龍驤「い、いえいえ!何もあらへんですよ!」ビクッ

龍驤「早速乗ってくださいな!オホホホホ……!」

ヌ級「?」ブルブル






バタン!


龍驤(うぅ……狭いでぇ……)

龍驤(お客さんの頭がウチの肩にバシバシあたっとる……)


龍驤「お客さん、ほな行きますよー」

ヌ級「ハ、ハイ……」ブルブル

龍驤「?」

龍驤(どないしたんやろ、お客さん)

龍驤(えらい、震えとんなぁ……)






ま、ええか……


そう思って、ウチは会社のちっさい滑走路でセスナを滑らし始めたんや。

ウチとこの人乗せとっても、セスナっちゅうのはメチャクチャ軽い。

みるみる加速してって、操縦桿を引くのもあっちゅー間。

隣からアワ、ワ……って聞こえた気する。まぁ気のせいやろ。



十分スピードが乗ったとこで、ウチは操縦桿を手前に引いたんや。






浮遊感に包まれて、眼前の灰色が青色に変わるとき。

見えへん何かにいきなり空へ引っぱりあげられるような、そんな感じ。

これが、ウチはとても好き。



でもお客さん、なんかいきなり叫びだしたんや。



ヌ級「ヒィーーーーーーッ!!」

龍驤「!?」






龍驤「ど、どどどどないしたん!?」

ヌ級「ト、飛ンダ!本当ニ飛ンダッ!!」

ヌ級「イヤーーーッ!死ニタクナイーーーーーッ」

ヌ級「キャーーーーーーッ!!」ブンブンッ

龍驤「ちょちょ、暴れんとってお客さ……」


バシッ!


龍驤「オゥエッ!」

龍驤「あーもー、どうしよ!」グスッ






龍驤「……そうや!」ピキーン

龍驤「お客さん、このアメちゃん舐め!アメちゃん……」


……
…………
………………


龍驤「落ち着いた?」

ヌ級「ハ、ハイ……」シュン

龍驤「そか、よかった」ホッ

ヌ級「ス、スミマセンりゅーじょーサン……」

ヌ級「私、ハジメテ空ヲ飛ブモノデシテ……」






龍驤「ウチらがさっきまでいたとこ、もうあんなに小さくなってるで!」

ヌ級「……ス、凄イ!」ビクッ

ヌ級「ニンゲンノ飛行機、本当ニ凄イナァ……」

ヌ級「私達ハ生体艦載機ヲ飛バスコトハデキテモ」

ヌ級「私達自身ガ空ヲ飛ブコトハ、今マデデキナカッタ……」

龍驤「ウチと一緒やね!」

ヌ級「……イッショ?」

龍驤「あ」

龍驤「な、なんもでない、アハハハ……」

ヌ級「?」






龍驤「あぁー、やっぱりなぁ……」

龍驤「でも、ウチは気にしてへんで」

龍驤「誰にでも初めてのことなんか、いくらでもあるんやから!」ニコッ

ヌ級「ムム……面目ナイ」


龍驤「それより、大丈夫やったら下、見てみ?」

ヌ級「ハ、ハイ」

ヌ級「…………」オソルオソル






龍驤「ウチらがさっきまでいたとこ、もうあんなに小さくなってるで!」

ヌ級「……ス、凄イ!」ビクッ

ヌ級「ニンゲンノ飛行機、本当ニ凄イナァ……」

ヌ級「私達ハ生体艦載機ヲ飛バスコトハデキテモ」

ヌ級「私達自身ガ空ヲ飛ブコトハ、今マデデキナカッタ……」

龍驤「ウチと一緒やね!」

ヌ級「……イッショ?」

龍驤「あ」

龍驤「な、なんもでない、アハハハ……」

ヌ級「?」






ヌ級「私達ノ深海デハ今、地上ノ文化ヤ発明ヲ取リ入レル動キガ盛ンデス」

龍驤「ほぉーっ、そうなんや」

ヌ級「特ニ人気ガアルノハ食文化デ」

ヌ級「特ニ“ファミチキ”ヤ“スシ”ナンカノ地上食ハぽぴゅらーデス」

龍驤(ファ、ファミチキ……?)ガクッ

ヌ級「ソノ他ニモ、“カメラ”ヤ“コタツ”モ人気」

ヌ級「デモ、ダレモ飛行機ニハ乗リタガラナカッタンデス……」






龍驤「へぇ……それはなんでなん?」

ヌ級「私達ハ未知ノモノヲトテモ恐レマス」

ヌ級「以前ノ戦争モ、“ニンゲン”トイウ未知ノ存在」

ヌ級「ソノ未知ヘノ不安ヲ排除スルタメニ起コリマシタ」

龍驤「…………」

ヌ級「デスシ、陸ニ私達ガ上ガル事スラ」

ヌ級「当初ハセンセーションガ巻キ起コッタノデスガ……」






ヌ級「空ハ、ソレ以上ニ怖イ所デス」

ヌ級「水モ地面モ無イ、未知ノ領域」

ヌ級「誰モ行キタイトハ思ワナカッタ」

龍驤「なるほどなぁ……」



龍驤「ん?」

龍驤「そしたらお客さんはなんで……」






ヌ級「私ハ戦時中、軽空母トシテノ役割ヲ持ッテイマシタ」

ヌ級「ハジメハ何モ感ジマセンデシタガ……」

ヌ級「戦争ガ激化シテ仲間ガ次々ト逝キ」

ヌ級「辛サヲ覚エ始メタ頃……」

ヌ級「私ハ、自分自身ノ飛バシテイル艦載機ノコトヲ考エ始メマシタ」



ヌ級「コノ海デ争ウ私タチノ姿」

ヌ級「コノ子達ノ目ニハドウ映ルノダロウ……ト」






ヌ級「戦争ハ終ワッテシマイ、ソレヲ知ル術ハモウアリマセンガ」

ヌ級「私ノ空ヘノ興味ガ尽キルコトハ、アリマセンデシタ……」

ヌ級「オカゲデ、私ハ深海デモ少シ変ワリ者ダト思ワレテイマスネ」クスッ

龍驤「世知辛いんやなぁ……」ホロリ

龍驤(やっぱり思ってることは私と一緒なんや……)




龍驤(でも、ウチには理解者がいた)

龍驤(……せやったら、今度は私の番やね!)






龍驤「……そしたら、お客さん見てみホラ!」

ヌ級「……?」




ヌ級「ワァ…………!」パァァ






広大な田園を抜けたその先。

そこには、紺碧に染まる大海原が広がっていた。

大きく波を立て、水面のうねりが陽の光をはねて。



そこはかつて、彼女達艦娘と深海棲艦が激しく戦いあった場所。

今……そんな面影などどこにも無い。



ただ白波揺れる美しい碧色が、どこまでもどこまでも続いていた。






龍驤「どうやー?」

龍驤「あんたらの住んでるここ、空から見下ろしたことなんかあらへんやろーっ」

ヌ級「ハ、ハイ!」

ヌ級「トテモ……綺麗……」

龍驤「えへへ……」



龍驤「……確かに、今まで誰もせんかったことって」

龍驤「絶対躊躇してまうよね……よう分かる」






龍驤「でも、ウチら“ニンゲン”はそれを克服する度にな」

龍驤「新しい感動とか価値観とか、そんなんを見つけられたんや」

龍驤「はじめは変わり者と思われても……」

龍驤「そんな人たちが頑張ったおかげで、今の陸の世界は成り立ってるんよ」

ヌ級「カワリモノノ……オカゲ……」

龍驤「そっ!ウチもな、そんなニンゲンになってみたいんや!」






ヌ級「……私モ……」


ヌ級「……ナンダカ、カッコイイデスネ」クスッ

龍驤「そうやろ?」ニコッ




龍驤「……とはいっても、ウチはまず……」

龍驤「男、見つけなアカンのやけど……」シュン

ヌ級「ハハハ……」

龍驤「ははは……」


龍驤(友人の結婚報告が次々来るし)

龍驤(実は割とまじで焦ってんねんなぁ……)ホロリ






龍驤「……ま、いっか!」

龍驤「ほなお客さん、飛ばすでーっ!」

ヌ級「エッ?」

龍驤「今からウチの得意の宙返り、披露したるからなー!」

ヌ級「エ、チョッ、りゅうじょうサ……!」


ブォォォオォォォォォン!



ヌ級「アアアーーーーーッ!!」







その白いセスナは、青々と広がる空に気ままな白い軌跡を残していった。


ヌ級に芽生えた感情は、深海における今後の新たな感動や価値観。


それらの誕生を予感させた。



―――――――――fin―――――――――――




こういった短いお話を、ちょくちょくこのスレで書いていきます。
今夜も少し書きます。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

ファミチキの人か
金剛とか他にもあるならkwsk

今から再開します


>>35
ル級がコウチャガノミタイと言っているスレです。
このスレが終わるときぐらいに、一度関連作の誘導を書きだした方がよろしいでしょうか……?





そのに「初月とフルコース」







提督「大陸側の我が国に対する領空侵犯ですが、再び増加の傾向にあります」

長官「深海側への警戒に充てていたものを、徐々にこちらへ寄越しているのだ」

長官「今後は……」

提督「はい、それにつきましては……」

提督「―――……」

長官「―――……」




初月(う、うぅ……)






初月(僕たちと深海棲艦との戦争は終わった)

初月(だが……提督は軍からの強い要望があって、海軍に残ったんだ)

初月(階級は大将となり、今は周辺国に対する防衛の一翼を担っている)



初月(では……艤装を脱いだ僕が、今どうしているかと言えば……)

初月(ケッコンを受け入れ、“提督夫人”として過ごしている)

初月(それはとてもとても、幸せな日々)



初月(……だが、“夫人”故の困難も、時折待ち受けているんだ)






初月(僕は今、提督と首都の一流ホテルにやってきている)

初月(秋月姉さん、照月姉さんもそうだが……)

初月(貧しい生まれの僕たちは、生まれてこの方)

初月(煌びやかなホテルなどという所に来たことなど、あるはずがなかった)



初月(そして、その訪問の理由だが……)

初月(提督と司令長官、その他の幹部との会食に)



初月(僕は“提督夫人”として出席することになったんだ……)






提督「―――……」

少将「―――……」


初月(なんて重圧だ……僕なんかが来て、本当によかったのか)ガタガタ

初月(提督は……取り込み中かぁ)

初月(僕は今、慣れないドレス姿でテーブルに着いている)

初月(食事は、洋食のコース料理らしい……)

初月(こんなことになるなら、マナーの一つでも学んでおくべきだった……)ガクッ

初月(……とりあえず、ナプキンを膝にかけておこう……)






―――前菜―――


コト


初月(早速、料理が運ばれてきたぞ)

初月(なになに……)

初月(サーモンのカナッペに、蟹のゼリー寄せ、3種の茸のテリーヌ……)

初月(な、なんて……上品な見た目だっ)

初月(本当に僕なんかが食べていいのか?)


初月(しかも、フォークとナイフが4本も並んでいる)

初月(これには何の意味があるんだ……)






カチッ、カチャ…


初月「イタダキマス……」ボソッ

初月「…………」モグモグ

初月(お、美味しい……っ!)キラキラ



初月(これが最高級レストランの味かぁ……)

初月(僕は姉さん達に……合わす顔がないな……)ホロリ






給仕「あっ……」

初月「?」

給仕「……いえ、失礼致しました」

給仕「お使いになった食器を、お預かりします……」

初月「あ、ありがとう」



初月(使ったナイフとフォークは持って行ってしまうのか)

初月(勿体ないぞ……洗う分の水道代が増えるじゃないか……)ワナワナ

初月(それに……僕のナイフとフォークを見て、驚いていたな……)

初月(並んでいた内側から使ったが……もしかして駄目だったのか?)






―――サラダ―――


初月(おぉ、これなら大丈夫だぞっ)モグモグ

初月(このサラダ、何がかかっているんだ?)

初月(これも初めての味だな……うん、美味しいなぁ)ニコッ

初月「……」チラッ



提督「……」スッ

提督「……」モグモグ



初月(て、手馴れた感じだな)

初月(ズルいぞ提督……!)

初月(奴はマナーを理解しているというのか……)ガクッ






―――スープ―――


初月(たしか、これはポタージュというものだったな)フフン

初月「ん…………熱っ……ズズッ」

中将「……ゴホン」

提督「?」チラッ



初月「……ズズッ」

提督(あ、あわわ……音立ててる……)オロオロ




提督(お、教えてあげないt)

長官「それでだが、先ほどの……」

提督「は、はい、心得ておりますっ」ビクッ






―――魚介のメイン―――


初月(蒸しエビか、大きいなぁ……美味しそうだ)ウットリ

初月(しかし、殻つきだぞ)

初月(こ、困った……これは食べるのが難しそうだ)シュン

初月(鉄のボウルにレモンの入った水も一緒に出されたが……)

初月(これで指を洗えばいいのか?)ジーッ…



提督「!」

提督(ま、まずい!初月がフィンガーボウルの水を飲もうとしている!)






提督(こんなことになるとは思わず、作法を教えてあげなかった僕のせいだ……!)

提督(これ以上、恥をかかせるわけには……!)

提督(でも、今から教えには行けない……!)






提督(な、ならっ!)





提督「」ゴクゴクゴク



長官「」

中将「」

少将「」

初月「」






―――肉のメイン―――



長官「あっはっはっ、君は一体何をしているんだ!」ケラケラ

提督「……デ、デキゴコロデス」シュン

中将「あはははは……」




給仕「焼き加減は如何いたしましょうか?」

初月「“普通”で頼むよ」フフン


……
…………
………………






提督「」シュン

初月「提督、そう気を落とすな……」クスッ

初月「司令長官が大らかな方で良かったじゃないか」

提督「そうなんだけどさぁ……」



初月「……提督」

初月「……僕は、こういった食事もいいが……」

初月「やはり、お前や姉さん達と食べるご飯が一番だな」






提督「……僕もそう思いました」

初月「ははは……力がこもってないぞっ」

初月「帰ったら何か作るよ、何が良い?」

提督「…………」



提督「……オムライス!」ニコッ

初月「……お前、大人だろ?」クスッ






僕たちはまだまだ、分からないことや垢抜けないところがたくさんある。

でも、そのどこかで支え合って、不器用に生きていくことができる。

多少の恥や外聞なんて、僕にとってみればちっぽけなものだ。



今、笑うことができるかどうか。

提督といることで、僕にはそれができるんだ。

僕は今、紛れもなく幸せだ―――。



―――――――fin―――――――――



半分、体験談です(迫真)

次は明日書きます。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

再開します

提督がテーブルマナーを教えていなかったことについては、
もっとそれを提督が悔やむ話にしたかったので僕の力不足です……申し訳ありません。





「山城と宝くじ」







山城「―――♪」

扶桑「フフフ、山城……うれしそう……」

山城「ええ、もちろんです!」

山城「姉さまとこうやって“外”でお食事ができるなんて!」ニコッ






山城「それに、宝くじが当たるなんて……」

山城「私、夢にも思いませんでした!」パァァ

扶桑(ふふふ……)

扶桑(3000円の当たりで大喜びする山城、かわいいわぁ……)






山城(ここ最近の私は、何かが変わってきている)

山城(具体的には……どうとは言えないけれど……)

山城(とにかくおかしいことばかりが起こります)

山城(先ほどの宝くじだってそうだし)

山城(今の所、無事に外に出られていることも……)






ワイワイ ガヤガヤ


扶桑「ごちそうさま……」ニコッ

山城「美味しいラーメンでした」ニコッ

店主「まいどあり!」

店主「姉ちゃんたち綺麗だから、おじさんサービスしとくよ!」

扶桑「あら……お上手ですね……」フフ

山城(あ、あれ……?)






テクテク

山城「姉さま、評判通りの美味しいラーメン屋でしたね!」

扶桑「えぇ……店主の人もとてもいい人だわ……」



山城「……!」

扶桑「山城、どうしたの……?」

山城「姉さま……あ、青です……」ガタガタ

扶桑「青……?」

山城「信号が……」

山城「わ、私達が来た途端に、青に!」

扶桑「そういえば……そうね……」ニコッ





………………
…………
……


山城「無事に……家に着いた……」パクパク

山城「……」ペチッ

山城「……夢じゃないわ……」



山城「お外に干した洗濯物の下着も無事だし」

山城「帰りに買ったお惣菜も寄らずに綺麗にトレーに入ってる」



山城「……どういうことなの?」






バタンッ


雪風「扶桑さん、山城さん!」

雪風「雪風、遊びにきました!」

扶桑「あら……いらっしゃい」ニコッ

扶桑「今からお茶淹れるから……」

扶桑「私か山城のお部屋でゆっくりしてね……?」

雪風「はい!ありがとうございますっ!」






雪風「山城さーん!」

ガチャ

雪風「遊びにきま……」


プチプチプチ

山城「梱包材って本当にプチプチなるのね……」グスッ

山城「楽しいわ……」

山城「もっと早く……こんな楽しみが知りたかった……」ポロ…ポロ…

プチプチプチ



雪風「……」ジーッ






山城「……」カァーッ…

雪風「雪風はなにもみてません!」

山城「雪風……もういいのよ……」フフ…



山城「それより、来てくれてありがとうねっ」

雪風「はい!」ニコッ



すこしはなれますね

すみません

今から再開します

昨夜は救急病棟でイチゴ牛乳飲んでました、すみません

あと、この話のタイトルに“そのさん”を付け忘れてますね。

ごめんなさい……ぼくをしけいにしてください!




雪風「実は今日、鎮守府にいたときにかいていた……」ガサゴソ

雪風「ジャーン!」

雪風「日記をもってきちゃいました!」ニコニコ

山城「日記?」

雪風「はい!」

雪風「今の施設のお部屋をそうじしていたら、たまたま出てきたんです!」

山城「へぇー……そうなの」






雪風「山城さんたちのこともかいてありますので」

雪風「よみあげてみますね!」

山城「う……うん」ゴクリ


山城(なんて書かれてるのか……)

山城(結構気になるわ……)






雪風『1月1日』

雪風『新年をむかえました』

雪風『なので、今日はみんなで初もうでにいきました』

雪風『大きいじんじゃでしれえもみんなも、たくさんおいのりしました』

雪風『でもやましろさんはあたまをおさえていました』

雪風『なんでかわかりません』

雪風『あと、しれえがおぜんざいをごちそうしてくれました』

雪風『おいしかったです、ごちそうさまでした』


山城(懐かしいわ……)

山城(後ろの人が投げたお賽銭が、頭にたくさん当たったのよね……)ホロリ






雪風『2月4日』

雪風『今日はせつぶんの日でした』

雪風『みんなでおにが入ってこないよう、豆をまきました』

雪風『しれえがおにやくになってくれました』

雪風『グラーフさんとりゅうじょうさんがおもいきり豆をぶつけていましたが』

雪風『しれえはいたくなさそうでした』

雪風『しれえはすごいです』


山城(暗かったからなのかしら……)

山城(ぶつけられたのは何故か私なのよね)






雪風『3月3日』

雪風『きょうはひなまつりのひでした』

雪風『でも、おひな様はいませんでした』

雪風『そのかわりにあられとケーキをたべました』

雪風『ゆきかぜもときつかぜも、ケーキが大すきです』

雪風『ごちそうさまでした』


山城(ごめんなさい……!ごめんなさい……!)グスッ

山城(準備していたとき、お雛様を手に取ったら頭が勝手にとれたの……!)






雪風『4月10日』

雪風『今日はみんなでお花見に行きました』

雪風『ふそうさんやほうしょうさんの作ってくれたおべんとう』

雪風『おいしかったです』

雪風『でも、ろしあんるーれっとおにぎりはこわかったです』

雪風『ゆきかぜのおにぎりはこんぶでした』

雪風『やましろさん、かわいそう』

雪風『さくらきれいでした、来年も行きたいです』


山城(あの日は発案者の提督の部屋にカチ込んだわ……)






雪風『5月5日』

雪風『今日はこどもの日でした』

雪風『こいのぼりにかしわもち、ゆきかぜのすきな日です』

雪風『おふろはしょうぶゆという、この日だけのおふろでした』

雪風『大きな草がういていて、とてもげんきになったきがします』


山城「え……菖蒲なんて浮いてなかったわよ?」

雪風「いえ、ありました!」

山城「えっ……」


山城(その日は私が最後だったから……まさか)






雪風『6月16日』

雪風『ぜんぜん雨がやみません』

雪風『ときつかぜとテルテルボウズを作りました』

雪風『やましろさんのおへやが一ばん日の出にちかいと思ったので』

雪風『まどからテルテルかけました』

雪風『みんなでおでかけできますように』


山城(犯人はあなたたちだったのね……)

山城(窓が開きっ放しで、ベッドがずぶ濡れだったわ……)ガクッ






山城(うぅ……)

山城(最近、不幸を感じなかったから忘れかけてたけど……)

山城(やっぱり私は……)


山城(不幸だわ……)グスッ






雪風『7月20日』

雪風『うみの日らしいでした』

雪風『ひばんなので、やましろさんやときつかぜたちと』

雪風『ぎそうをぬいでかいすいよくをしました』

雪風『かぞくづれがけっこういました』

雪風『ゆきかぜたちも、かぞくみたいだったでしょうか』


山城(初日なのに、結構いたわね……そういえば)



すこしはなれます

書いてて思いましたが、雪風が日記を書くSSを以前に見ましたね……(白目)

あちらの作者様の作品とは無関係です、あしからず……

節分って4日だっけ?




雪風『8月13日』

雪風『今日はおはかまいりに行きました』

雪風『ゆきかぜのげんきなかおを』

雪風『おとうさんとおかあさんが見てくれました』

雪風『となりにいたおばあさんが』

雪風『おさがりのなつみかんとおかしをくれました』

雪風『ありがとうと言うと、おばあさんもニコニコでした』


山城(あれは頂きものだったのね)

山城(分けてもらった夏蜜柑、私のだけ腐ってたけど……)

山城(お菓子はおいしかったなぁ)



>>98
うわ2月3日ですね……

今回はこの手のミスが多く、申し訳ないです……




雪風『9月5日』

雪風『なつの大きぼ作戦がかんりょうしました』

雪風『グラーフさんやりゅうじょうさんのこう空こうげきと』

雪風『しえんでやましろさんやふそうさんが』

雪風『かんぽうしゃげきをしてくれたので心づよかったです』

雪風『でも、ぼうくうせいきとよばれたてきは』

雪風『なみだをながしながらうみにしずみました』

雪風『つぎに会うときは、かぞくのようになりたいです』


山城(次に会う時は……か)

山城(…………)






雪風『10月12日』

雪風『たいいくの日なので、うんどうかいです』

雪風『ときつかぜは同じしせつにいたときからおともだちです』

雪風『いっしょになかよくおべんとうたべました』

雪風『いつも食べてばかりですが、今日はとくにおなかがすきました』

雪風『やましろさんとふそうさんも、姉妹なかよくたべていました』

雪風『やましろさんが落としたおにぎりを、ふそうさんがえがおでたべてあげてました』

雪風『姉妹はすてきです』


山城(姉さま……)






雪風『11月11日』

雪風『あかしさんがナイショでくれたポッキーが、やましろさんにバレました』


山城「そりゃ本人が内緒でもらったんですって言っちゃったら……ねぇ?」

雪風「えへへ!」


雪風『でも、やましろさんはみんなにナイショにしていてくれるそうです』

雪風『とてもうれしかったので、ポッキーを分けてあげました』

雪風『やましろさんもよろこんでいました』

雪風『いっしょにナイショのかくしごと』

雪風『なんだか本当の姉妹のようです』


山城「…………」






雪風『12月30日』

雪風『ことしももうおわりそうですが』

雪風『やましろさんがぎっくりごしになりました』

雪風『たいへんなことなので、しっぷを買いに行きました』

雪風『マフラーがなくなったのでさむかったですが』

雪風『やましろさんがギュっとしてくれました』

雪風『とてもあたたかかった』

雪風『またもう一ど、してほしいです』



山城「…………」







雪風「と、この一冊はこれでおわりです!」

雪風「じゃあ、次ですが……」



ギュ



雪風「ひゃっ!」

山城「雪風……」

雪風「…………」








雪風「…………実は……」

雪風「今日はこれがしてほしくて……来ちゃいました……」

山城「…………そっか」




雪風「山城さん、あたたかいです」

山城「私もよ、雪風……」

雪風「…………」








山城「いつでも言ってね……」ニコッ

山城「私、あなたの本当のお姉ちゃんにはなれないけど」

山城「こうやって暖めあうことは、できるから」



雪風「…………はい!」グスッ






………………
…………
……




テクテク


雪風「お茶とお菓子をごちそうになって」

雪風「おまけにお見送りまでしてもらっちゃって……」

雪風「本当に、ありがとうございます!」

山城「ふふっ……」

山城「お茶を出してくれたのは、姉さまなのよ」クスッ






雪風「―――♪」


山城(……私には自慢の姉さまがいて)

山城(この子には肉親がいない……)

山城(これまで、私ばかりが不幸だと思い込んでいたけど)

山城(……きっと、そうじゃない)






山城(自分だけが幸せか不幸かは……どうでもいいことなのね)

山城(本当に幸せになれる人は、きっと……)



雪風「山城さん!」

山城「ん?」

雪風「一緒に宝くじ買ってみませんか?」

山城(……また宝くじ……)クスッ







雪風「当たったら、そのお金で……」

雪風「またみんなでご飯を食べたいです!」

山城「……いいわね」フフッ



山城「じゃあ……どっちがいい賞を当てるか、競争してみましょうか!」

雪風「はいっ!」ニコッ








この時の山城は、知りようもなかった。



自身の“不幸の戦艦山城”としての運命は……

艤装を降ろしたその日に、すでに幕を閉じていたことを。



……そして、一人の女性“山城”としての人生……


そのスタートは、すでに切られていたということを。



―――――――――――fin―――――――――――――




このお話はここまでです。

あとお話をひとつ書いて、このスレは終わりにしたいと思います。


意外と早いな

>>115
ありがとうございます

このスレの短編自体が以前のスレの艦娘中心となっているので、初めて読んでくださった方のために、
同じ世界観で今まで出ていない艦娘のお話を、また同じような短編集形式で書きたいと思っています。





そのよん「ル級とネッシー」








ザザーン…
ザザーン…



ル級「……コマッタな」

ヲ級「……困ったわね」








ル級(私ハ今……陸の言葉の堪能ナ幼馴染のヲ級トともに、イギリスにやってきてイル)


ル級(目的ハかつて、ニホンで友達になってレタた“コンゴウ”を探すためダ)

ル級(イギリスのハイランド地方に住ムという彼女ヲ探し……)

ル級(私達はインヴァネスとイウ街に上陸しタ)

ル級(その先ノ情報は観光ガテラ、現地で収集すルことニシテいた)

ル級(まァ……そこまではヨカった)







ル級(ヲ級の提案デ“ひっちはいく”トいうモノを繰り替えし)

ル級(情報にアタリを付けて、私達は湖のアル場所にヤッテキたのだガ……)



ル級(今しがタ、私達の財布が何者カに盗まレテしまったノダ)






ヲ級「だから言ったじゃないノ……」ハァ

ヲ級「ニンゲンも良い人ばかりじゃないから、野外での寝泊まりはやめようって……」

ル級「ウゥ……」

ル級「ダッテ、ホテルは食べテもイナイ食事代をセイキュウしてキたリ」

ル級「お金払わナイと真面目に働いテくれないから……いっそのことッテ……」

ヲ級(前者はアレだけど……チップのことは教えておいてあげるべきだったわ)






ヲ級「それにしても……」

ヲ級「今向かっている先に、本当にその彼女はいるのカナ」

ル級「分かラナイ……けど」



ル級「イルンじゃないかナ」

ヲ級「…………」

ル級「そんな予感がスル」フフッ

ヲ級「予感……か」クスッ






ヲ級「まぁいいわ……あなたの予感、信じてみる」ニコッ


ヲ級「ただ……もし万が一見つからなかったら、私達……」

ヲ級「このまま飢え死んでしまうわ……」




ル級「…………」

ル級「……ドウシヨウ……」ブルブル

ヲ級「え、えぇ……」ガタガタ






ヒュウ~…

バサッ!


ル級「ヴッ……!」

ヲ級(ル級の顔になにか飛んできた……)ピラッ


ヲ級「これは……チラシ?」

ル級「読めナイ、なんて書いてアルんだ?」

ヲ級「えーっと……」






―――ネッシーの目撃情報求む!―――


ネッシーとは、ここネス湖に住まう三畳紀からジュラ紀にかけて生息した首長竜プレシオサウルスの生き残りです。

目撃情報は数あれど、いずれも信憑性が低く、現在は未確認生物とされています。


ですが、我々“ネッシー愛好会”は必ず彼らがここに住んでいると確信しています。

今、我々はネッシーの詳細な目撃情報を求めています。

写真や実物の提供に対し、十分な報酬をお約束いたします。

皆様もネッシーの発見にご協力ください……。


ネッシー愛好会の連絡先は以下まで……






<Hahaha!ネッシーナンテバカゲテル!
<クレイジーダナハナシダ!Hahaha!





ル級「ねっしー……」

ヲ級「報酬……」



ル級「!」ニコッ

ヲ級「!」ニコッ



一旦ここまでにします

今日は休みなので、昼前か昼頃には書き終わると思います
よろしくお願い致します




ル級「フッフッフッ……」ニヤニヤ

ヲ級「水の中は、私達のテリトリーなのよ……」ニヤニヤ



ル級「ココに、お前のくれタきゃめらがある」スッ

ル級「こいつは深海でも使えるよう……」

ル級「ニホンの“よどばし”で買っタ防水カバーを被せてあるッ」

ル級「こいツでねっしーとやらを撮影すれば……!」

ヲ級「私達……報酬で助かるわ!」






ル級「そうト決まれバ!」

ヲ級「さっそく!」



ザッブーン!



通行人「た、大変だー!」

通行人「人が湖に入っていったぞー!」オロオロ


……
…………
………………






ネス湖はイギリス最大の淡水湖で、長さに対して幅の狭い非常に細長い湖である。

ここの水質は非常に濁っており、視界は非常に悪いといわれる。

だが、長い時間をかけて水中に適応した深海棲艦の二人だ。

彼女達がこの濁った水の中を進むことは、造作もないことだった。



ブクブク…


ル級『デハ、私ハコッチヲ探ス』

ヲ級『分カッタワ』






ル級『ニシテモ、コレガ陸ノ“ミズウミ”カ……』


ル級『塩ノ臭イガナイカラ、少シ生臭イナ』

ル級『魚モ見タコトノナイ種ガ多イ』

ル級『マダマダ、私ノ知ラナイコトバカリダナ……』


ゴボゴボ……


ル級『……ン?』






ゴボ…ゴボ…


地上に燦々と降り注ぐ陽の光も、この土気色に濁ったカーテンのはるか上に仰ぐ世界。

そんな狭く長い湖の底に突き刺さる、いくつものモノがそこにあった。



ル級『…………』

ル級『……マッタク』








ザッパーン!


ヲ級「ふぅっ!」

ヲ級「なかなか見つからないわね……」

ル級「あァ、そうだナ……」ガチャ…カチャン…

ヲ級「ん、なにしてるノ?」







ル級「底に沈んデタごみ、陸にあげテル」ポコン…

ル級「こんなモノが“家”にあっタラ」ガチャ…

ル級「中ニ住む奴、困ルだロ」カチャン…


ヲ級「…………」


……
…………
………………





ヲ級『コッチニモ結構アッタ』

ヲ級『ゴミ、今カラ上ゲニ行クワ』

ル級『分カッタ』コクリ


ブクブク…


ル級『サァ、モウヒトフンバリダ……!』グッ





………………
…………
……


ル級「“だすとぼっくす”が一杯になっテ来たナ」フフン

ヲ級「えぇ、そうね……」

ヲ級「…………」

ヲ級「私達、何か大事なこと忘れてない?」


ル級「………アッ、ソッカ」







ル級「そうだナ、そろソロ探索に戻ろウ」

ヲ級「……ん?」

ル級「どうシた?」



ヲ級「このゴミの形……」

ヲ級「チラシのネッシーの写真に似てない……?」







ル級「エッ」

ヲ級「ほら……これが首で、これが体で……」

ル級「…………」


ヲ級「……あまり考えたくないけど……」

ヲ級「ネッシーって今まで、はっきりした姿は誰にも見られてないのよね」

ル級「…………」

ヲ級「……ネッシーって」

ヲ級「本当はいないんじゃ……」





ル級「…………」

ル級「……イ、いるサ!」

ル級「ヲ級、ねっしーは絶対ニいるヨ!」

ヲ級「ル級……」

ル級「今からモウ一度行ってクル!」ダッ

ヲ級「あ、ちょっと!もう暗くなりはじめて……!」


ザップーン


ヲ級「あっ……」

ヲ級「…………」







ゴボゴボ……


ル級(ねっしーハ、イルサ!)

ル級(イルッテ言ウニンゲンガイルダカラ!)



ル級(デナキャ……)








ブク…ブク…


ル級(ニンゲンハ人ノモノヲ盗ルシ……)

ル級(他ノ生キ物ノ住ム湖ニ自分タチノゴミモ捨テル……)


ル級(……ソノ上、嘘モツク)


ル級(……深海ノミンナニ、ソンナ生キ物ダト思ワレテシマウ……!)








ル級(“コンゴウ”ノヨウナ人モ、陸ニハイルトイウ事ヲ……)

ル級(皆ニ信ジテ貰エナクナル!)


ル級(ソンナノ……)



ル級(私、イヤダヨ……!)ジワッ…




キュオオオオオオオオオン……


ル級「……!」ポロ…ポロ…







………………
…………
……


ヲ級「……考えても仕方ないか」ハァ…

ヲ級「もう少し、ル級に付き合ってあげ……」


ザッパーン!

ル級「ヲ級!ヲ級!!」

ヲ級「キャッ!!」ビクッ

ヲ級「ナニナニッ!?」

ル級「今カラ付イテキテッ!!」



ル級「“ねっしー”ガ、イタンダ!!」








ゴボ…ゴボ…


彼女達の目に映った“生き物”の後ろ姿。

体長5mはあるであろうそれは、土気色の澱んだ水の中を悠然と泳いでいた。

丸みを帯びた体に小さな尻尾、四枚のひれ。

そして、細く伸びた長い首に小さな頭が見えた……。



ル級『アイツダ!』

ヲ級『間違イナイワ……!』


ヲ級『アレハ……ネッシー!』







ヲ級『ル級、早クきゃめらヲッ』

ル級『モ、モウ少シ待ッテクレ』

ル級『アイツ多分……巣ニ向カッテル……』


ル級『ソコニハ、キットモットタクサンノ仲間ガ……!』

ヲ級『ソウカ……分カッタワ』

ヲ級『私達モ、追イカケマショウ!』






………………
…………
……


ヲ級『ワァ……!』

ル級『コレハ……!』



……ル級の予測は当たっていた。

行き付いた先は、湖底にできた大きな洞窟だった。








人間や深海棲艦の起こりよりもはるか昔……。

数える事、約1億5000万年前。

時間の止まったこの世界で、彼らは営みを繰り広げていた。


水草をかき分け、首を揺らし、ひれをあくせく動かす。

親が餌の魚を噛み砕いて、まだ小さい子供たちに分け与える。

つがいのネッシーが連れ添い、愛のあるひと時を過ごす。



それが、彼女達の目の前に広がる、光の差さない世界の真実だった。






………………
…………
……


ザザーン…
ザザーン…


ル級「…………」グーギュルルルル…

ヲ級「…………」グゥゥゥゥ…

ル級「……すまナイ、ヲ級……」

ヲ級「えぇ……いいのよ……」







ヲ級「私だって……あんな光景を見せつけられて……」

ヲ級「それを写真に撮って広めるなんてできないわ……」シュン

ル級「あァ……」

ル級「彼ラハ、静かに暮らシテいるんダ」


ル級「そレニ……もう“戦争”ハごめんダ」フフッ







ル級「ヲ級……短イ人生だッタが……」

ル級「楽しかった……」


バタンッ


ヲ級「ル級!」

ル級「アァ……コンゴウにモ、モウ一度会いたカッタな……」




ブォォォォン…
キキー…ッ


「ヘイ!そこの二人、なにしてるノー?」






ル級「!!」スクッ

ル級「コ、コンゴウ!!」

ヲ級「えっ!?」


「その声、マサカ……!」



金剛「ルキューっ!?」

金剛「なんでこんな所にいるんデース!?」






ル級「コンゴウ!コンゴウッ!」ダッ

ガバッ

金剛「オォーウ!なかなかのバァァニング“ハグ”ネ!」

ル級「お前ニ……会いに来たンダ!!」ジワッ…

金剛「!」

金剛「……そうだったデスか……」フフッ




ル級「モウ会えナイかト思っタ……!」グスッ

金剛「ふふふ……コンゴウはここにいマース……」ナデナデ






ヲ級「あ、あの……」

金剛「Oh!アナタは……確か、ヲキューさんデスネ!」

ヲ級「はい!……御存じなのですか?」

金剛「アナタのこと、ルキューからよく聞いてマシタ!」

ヲ級「ル級から……」ニコッ


金剛「あなたもルキューも、マイホームへいらっシャーイ!」






金剛「フォートオーガスタスのグランパのホームで!」

金剛「ジェリードイール(鰻ゼリー)とマーマイトを塗ったパンをたくさん食べて……」

金剛「一緒に紅茶を飲むデース!」

ル級「あぁ……私モ……」

ル級「コウチャガノミタイ……デース」グスッ

金剛「私の真似、ノーだからネ!」ムッ

ヲ級「あははは……っ」







陽はすっかり暮れ、彼女達はイギリス料理をこの上なく美味しく食べた。

友との再会を祝う、グランパを囲んだ暖かい食事。

変わらない水底の世界の、静かな食事。


どちらも、欠けていいものなどない。

そのことを、ル級は知ることができた。



――――――――――――fin――――――――――――――









さいごに「ヲ級と女性」









女性「……あはははっ!」

ヲ級「……信じてないでしょう」ムッ

女性「いやいやスマナイ、そうではないんだ」


女性「ただ、ヲ級とその友達のやっていることが面白くてなっ」クスッ

女性「マーマイトが美味いなんて、初めて聞いたんだっ」

ヲ級「ムム……ッ」








女性(それに、その金剛はおそらく私の知り合いだ……)フフ


女性「そんな話を聞いたら、私も久しぶりに外へ行ってみたくなったぞ」

ヲ級「ソト?」

女性「この国で言うところの、“外国”だな」

ヲ級「……そういえば」


ヲ級「ぐらーふは元々、この国の人じゃないんだったね」








女性「あぁ」

女性「私も、祖国に友達がいるんだ」

ヲ級「ヘェ……」

女性「……今、子供達は?」

ヲ級「外で仲良く遊んでるわ」フフッ

女性「ふふ、そうか」



女性「なぁヲ級……」

女性「私達も、近々“外”へ遊びに行かないか?」








ヲ級「え、でも……」

ヲ級「あとみらるが……」

女性「アトミラールとは、今でもよく出かけるんだ」クスッ

女性「たまには……子供を預けても大丈夫だろう」



女性「それに最近、パイロットになった友達から手紙も来た」スッ

女性「深海棲艦が初めて空を飛んだそうだ」

ヲ級「空を!?本当に!?」

女性「あぁ……」








女性「あなたもどうだ……空の旅は?」

ヲ級「エ、イヤ……私は……」オロオロ

女性「……怖いのか?」ニヤニヤ



ヲ級「コ、コワクナンカナイシ!」

女性「素に戻ってるぞ」








女性「大丈夫だ、私もついてる」フフッ

女性「何より……私が見てみたくなった」

女性「3人の秋月型とそのアトミラールが紡いでくれた」

女性「今の平和な外の世界をな……」ニコッ



ヲ級「……分カッタ」シュン

ヲ級「……私ダッテ……思ッタコトアルシ……」








ヲ級「一度ダケデモ……」




ヲ級「空ヲ飛ンデミタイナ」

ヲ級「……ッテネ」ニコッ



――――――――――――fin――――――――――――――




各話、以下のスレの戦後談、後日談となります


そのいち

【艦これ】グラーフ「もう赤身のスシは食べられないのか……」
【艦これ】グラーフ「もう赤身のスシは食べられないのか……」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453000246/)


そのに

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そのさん

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(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453609936/)


そのよん

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【艦これ】ル級「コウチャガノミタイネー」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454042478/)


さいごに

【艦これ】ヲ級「ファミチキクダサイ」
【艦これ】ヲ級「ファミチキクダサイ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453105658/)




今回は以前書いたSSの艦娘が中心の話となり、
初めて読まれる方に不親切な内容となってしまったことをお詫び申し上げます。
(書き込みミス、誤字脱字も相当ありました……すみません)

ただ、それだけ各話に思い入れがあったという事だけ、お伝えしておきます。


ここまで読んでいただいた方、楽しく書かせていただきありがとうございました。


また次も期待してる

>>177
ありがとうございます
頑張ります!

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