シンジ「ねえアスカ」アスカ「んー」 (46)

シンアス注意。
あんまり甘くないです。

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「今日のレポート課題もう終わった?」

アスカ「あったりまえでしょあんな程度。あたしを誰だと思ってんのよ」

シンジ「確か、身近な友人について、だったよね。誰にしたの?」

アスカ「ヒカリ」

シンジ「……ふーん。で、簡単に終わった?」

アスカ「そりゃもう、あたしにかかればちょちょいのちょいよ。あ、言っておくけど見せたげないからね」

シンジ「他人のを見たってしょうがないよ。それよりさ、僕アスカの事書いてもいいかな」

アスカ「はあ?なんであたしなのよ。あんたは適当に三バカトリオでお互いのおバカな所を書きあってなさいよ」

シンジ「アスカの事じゃダメなの?」

アスカ「嫌よ、アンタの身近な友達だなんて思われたくないもの」


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シンジ「へえ、そう。じゃああと一人誰にしようかな」

アスカ「だから適当に三バ……あと一人?」

シンジ「うん。身近な友人「3人」について書かなきゃいけないんだよね。あ、もちろんアスカなら知ってたよね」

アスカ「え」

シンジ「あーあ、トウジとケンスケとあと1人誰かな~」

アスカ「……や、やーだシンちゃ~ん!それならここにほら、このあたしがいるじゃない!もう、みずみずしいんだからぁ~」

シンジ「でもアスカさっき嫌だって言ってたよね」

アスカ「昔のことは引きずらない主義なの!気分が変わったのよ。ほら、あたしの事書いていいからさ。ね、だからあたしも……」

シンジ「あ、いいや。明日綾波に頼もう!」

アスカ「このバカシンジ!!」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「何見てるの?」

アスカ「日本映画。チャンネル回してたら面白そうなのあったから」

シンジ「ふーん。あ、これ有名なホラー映画だね」

アスカ「日本にもホラーの文化はあるのねぇ。ジャパニーズホラーってどんなものなのかしら」

テレビ「ズーン」

テレビ「ワーキャー」

アスカ「……」

テレビ「デデーン」

テレビ「キャアアアアアア」

アスカ「……」

テレビ「ボァアアアアア」

テレビ「ガガーン!!」

アスカ「……」

アスカ「ねえシンジ」

シンジ「?」

アスカ「あんたなんか見たい番組あるんじゃない?」

シンジ「へ?今は別にないけど」

アスカ「遠慮しなくていいわよ。このあたしが許すって言ってんのよ、好きな番組に変えていいわよ」

シンジ「いいよ、アスカこれ見てなよ」

アスカ「だから、遠慮しなくていいって言ってんの!これだから日本人は。ほら、何が見たいの」

シンジ「本当に大丈夫だって!それに僕そろそろ夕食の準備しなくちゃだし」

アスカ「ち、ちょっと、どこに行くのよ」

シンジ「どこって、台所だけど」

アスカ「い、いいからここにいなさい」

シンジ「……アスカ、もしかして怖いの?」

アスカ「何も言わないで」

シンジ「怖いなら他のにすればいいのに」

アスカ「うっさい!何も言わないでここにいてって言ってるでしょ!」

シンジ「でもご飯は?」

アスカ「……いらない」

シンジ(はあ……ミサトさんにコンビニで買って来てもらうようメールで頼まなきゃ)

アスカ「だ、大体、日本のホラーなんて怖くないわよ……ユーロにはもっと凄いのが……」ブツブツ

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「お茶飲む?」

アスカ「飲まない」

シンジ「……」

シンジ「ねえ惣流アスカラングレー」

アスカ「なに」

シンジ「お風呂溜まったよ」

アスカ「今ゲームで忙しい」

シンジ「……」

シンジ「ねえ式波アスカラングレー」

アスカ「だからなによ」

シンジ「あ、これでも一応返事するんだね」

アスカ「は?」

シンジ「だからさ、惣流でも式波でもちゃんと返事してくれるんだと思って」

アスカ「何言ってんの、当たり前でしょぉ?時代は移り変わってんのよ?新しいエヴァンゲリオンが誕生して、今の時代には惣流と式波、二人のアスカがいるんだから。あたしもそれに適応していかなきゃいけないのは当然よ」

シンジ「意外と意識高いんだね」

アスカ「あんたが意識低すぎんのよ!確かに演じられたあたしではあったけど、式波アスカだって歴としたあたしって事になってんだから!」

アスカ「全国のファンのハートを離さない為には、ニーズに応えるための多少のサービス精神は必要なのよ」

シンジ「ファンって……なんかアイドルみたいだね」

アスカ「みたいじゃないわよ!!今のあたし達なんてアイドルそのものでしょ!どーもそこんところあんたとか優等生みたいなのは自覚が足りないのよね」

アスカ「『僕のせいなんだ……』だの『そう……良かったわね』だの言ってればそれね役割を終えた気になっちゃってさ」

アスカ「優等生なんてそれだけ言ってれば人気投票もヒロインとしての役所なんもかんもぜーんぶ持って行っちゃって、もーむーかーつーくー!!」

アスカ「あたしが色んな所でサービスサービスして頑張ったって結局あいつが美味しい所全部持ってちゃって誰もあたしを見てくれないし、ほんともうやってらんないわよねー」

シンジ「ま、まあ、綾波が人気出るのは仕方ないと思うよ」

アスカ「は?どういう意味よ」

シンジ「だってほら……綾波は可愛いしさ」

アスカ「なによそれ、このあたしは可愛くないっていうの!あんた喧嘩売ってんの!?」

シンジ「そうじゃなくてさ、ほら。アスカはなんていうか、かわいいっていうよりこわいいっていうか」

アスカ「あー、やっぱり喧嘩売ってるわね、このバカシンジ!!」

シンジ「ち、違うよ。アスカにももちろん良いところはあるけどさ、それは飽くまでも綾波とは違うところであってっていうことで」

アスカ「なによ、都合よくまとめようとしちゃってさ。じゃあアンタはどっちなのよ」

シンジ「え?」

アスカ「アンタは、あたしとあの優等生。詰まるところどっち派なわけってのよ?」

シンジ「えぇ、そんな急に言われても……」

アスカ「急にもじゅうはちもないわよ!男ならしゃっきりはっきり!怒らないし喜ばないから正直に言ってみなさい」

シンジ「そんな事言われても比べられないよ。アスカも綾波も、どっちも大切じゃダメなの?」

アスカ「どぉっちも大切ぅ?」

アスカ「……あーはいはい、そういう答えね。ふーん、ありがちなやつね」

アスカ「ふむ、シンジはどっちも大して好きじゃない、と」

シンジ「な、なんでそうなるんだよ」

アスカ「あんたがそう言ったんじゃない。どっちも大好きって言葉、そういう風に受け取れるわよ」

シンジ「べ、別に僕は!」

アスカ「あぁいいからいいから。ま、どーせそんな答えだろうと思ってたし」

シンジ「じゃあ……」

シンジ「じゃあアスカは即答出来るんだね?」

アスカ「……何をよ?」

シンジ「だから!アスカは、僕と加地さんって言われたらどっち派か選べるのかって聞いてるんだ!」

アスカ「は?加地さんだけど?」

シンジ「なんで僕は今勝ち目のない戦に挑んだんだろう」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「暇だからしりとりしない?」

アスカ「今そんな気分じゃない」

シンジ「いつもはアスカから暇つぶしに突き合わせる癖に」

アスカ「人間にはその時の気分ってもんがあんよ」

シンジ「よく言うよ、いつもはあんなに構ってちゃんじゃないか」

アスカ「勝手に誤解を招きそうなこと言わないで!」

シンジ「でも本当のことじゃないか」

アスカ「覚悟しなさいよ、それ以上言う気なら」

シンジ「ら、乱暴はよくないよ、落ち着いて!」

アスカ「手をあげるつもりはないわよ、さすがにね」

シンジ「ねえアスカ、いいかな?」

アスカ「何よ突然、まあいいけど」

シンジ「どうもありがとね。何だかんだ付き合ってくれて」

アスカ「……ばか」

シンジ「……」ニコ

シンジ「勝った」

アスカ「……え?」

シンジ「しりとり、僕の勝ちだね」

アスカ「ちょっ、はぁ!?なっ、だって今!」

シンジ「うん、今のは流石にちょっとフェアじゃなかったからさ。もう一度、改めて言うね」

シンジ「ありがと、アスカ」

アスカ「……」

アスカ「こンの……」

アスカ「大バカがあああああああああ!!!」バチコーン

シンジ「な、なんでこうなるの!?」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「アスカってさ、貰ったら嬉しいプレゼントとかある?」

アスカ「プレゼントぉ?」

シンジ「うん、誕生日とかでさ」

アスカ「誕生日ねぇ……って、なんでそんなこと聞くのよ。あたしの誕生日、まだ先よ」

シンジ「いやさ、綾波の誕生日に何かプレゼントしたいんだけど、女の子ってそういう時何を貰えば喜ぶのかとか分からなくて」

アスカ「あぁやぁなぁみぃぃぃぃ!?」

シンジ「わっ、なんだよそんなに顔を近づけて。なんか怖いよアスカ」

アスカ「……はぁ」

アスカ「ったく、なんでそこであたしに聞くかなぁこいつは本当に」

アスカ「ミサトにでも聞けばいいじゃない」

シンジ「まあ後で聞いてみようとは思うけど、やっぱり同じ年代の女の子としてさ、ここはアスカに一つ、ご教授お願いしたいなぁと」

アスカ「もーめんどくさいわねぇ。あの優等生なんてどうせ何あげたって変わんないわよ」

アスカ「プレゼントされたのがダイヤの指輪だろうと中古のエロ本だろうと『くれるならもらうわ、ありがとう』とか何とかですませてくださるわよ」

シンジ「そんなことないよ、こういう時にどうするかは大事だって加地さんは言ってたし」

アスカ「ほおん、バカシンジの癖に加地さんを語るとは、偉そうなこと言うじゃない。じゃあどうなのよ」

シンジ「どう?」

アスカ「だから、あんたの気持ちはどうなのって」

シンジ「気持ち?」

アスカ「あーもう、ったくじれったいわねぇ!あんたの優等生に対する気持ちはどぉおなのってんのよ!好きなの!?」

シンジ「だ、だからなんでそうなるんだよ」

アスカ「あんたバカぁ?あんたの気持ちが一番大事でしょーが!気持ちの篭ってないプレゼントなんていくらあのお気に入られの優等生でも喜んでくれないわよ!ほんっとにお子様なんだから」

アスカ「で、優等生のこと、ちゃんと好きだって思ってるわけ?」

シンジ「え……まあ、うん。そりゃね」ボソボソ

アスカ「……好きなの、あいつのこと?」

シンジ「うん」

アスカ「……そう。なら……」

シンジ「なんか、お母さんって感じで」

アスカ「……」

アスカ「……は?」

シンジ「え?」

アスカ「今なんて?」

シンジ「だから、なんかお母さんみたいな感じがして綾波といると心が暖かくなるかなって」

アスカ「お母さん……?」

シンジ「う、うん」

アスカ「……はぁ。あたしがバカだったわね」

シンジ「え?なにが?」

アスカ「ううん、何でもないのよ。今回ばかりは私が悪かったわ」

シンジ「アスカが何を言ってるのかよく分からないよ」

アスカ「もうその事はいいのよ。で、あの優等生がお母さんみたいで好き、と。……あ、じゃあちなみにあたしの事はどうなの?」

シンジ「アスカのこと?なんでアスカが出てくるの?」

アスカ「いいから、ほら。どうよ、あたしのこと好き?好きよね?」

シンジ「え、まあ……うん」

アスカ「歯切れ悪いわね、はっきりしなさいよ!好きなの!?それとも好きなの!!?」

シンジ「わ、う、うん!好き!……です……」

アスカ「よろしい。で、どんな感じで?まさかお母さんみたいだなんて言わないわよね?」

シンジ「まさか、アスカは全然全くお母さんではないよ、これっぽっちも」

アスカ「ふんふん、なるほど?」

シンジ「そう、なんて言うか、どっちかって言うと妹って感じだよね」

アスカ「……は?」

シンジ「うん、双子の妹。わがまま言うしがさつだし、でも何故か憎めないし。綾波といると心が暖かくなるけど、アスカだと安心するって感じかな、ずっと一緒にいるからかなぁ?」

アスカ「妹……?」

シンジ「綾波がお母さんでアスカが妹で……うーんミサトさんが奥さんかなぁ。あ、どっちかっていうと旦那さんか、あはは」

アスカ「……お母さんだぁ妹だぁ?」ブツブツ

シンジ「ね、どうかな。そういう想像をしてみるのも面白い……あ、アスカ?」

アスカ「褒め言葉になってないのよこのバァァァァカシンジ!!!」バコーン

シンジ「痛ったああああああああ!!!っていうか結局プレゼントのアイデア何も聞けてないじゃん!!」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「もうすぐバレンタインだね」

アスカ「そういえばそうねぇ。日本では女の子が好きな相手にチョコを渡すイベントなんだっけ?」

アスカ「何というか、女の子って限定してる辺りが島国特有の男女差別を感じるイベントよね」

シンジ「アスカはチョコあげたりするの?」

アスカ「まあ適当にね。ヒカリとかに友チョコあげて、あとは加地さんと……まあ同じパイロットのよしみとしてあんたとフィフスと鈴原くらいにもくれてやるわ」

シンジ「え!?アスカがチョコくれるの!?僕に!?」

アスカ「な、何よそんなに驚いて。あんたはあたしを何だと思ってんのよ」

シンジ「いや、なんて言うかさ。アスカがくれるってなんか意外だったから。それにちょっと嬉しいなって」

アスカ「あんたねぇ~、女の子からの義理チョコほどかっなしいもんはないのよ。『少なくともあんたの事はそういう目で見れません』っていうメッセージと同じなんだから」

シンジ「アスカの本命は……やっぱり加地さん?」

アスカ「そりゃそうよ。女はね、本命は一本一筋って決まってんの。あんたと加地さんだったら当然一択即決で加地さんに本命を渡すわ」

シンジ「僕と比べないでよ」

アスカ「まーでも、あんたもあたしからチョコ貰えて嬉しいってくらいは感じるのね」

シンジ「そ、そりゃそうだよ。僕だって男だもん!女の子からチョコ貰えたら嬉しいよ!」

アスカ「女の子から、ねぇ。そういう言い方あんまり喜ばれないから気をつけなさいよ」

シンジ「?」

アスカ「まあともかく、そういう事ならいいじゃない。ヒカリはクラスの男子全員に配るらしいし、あんたならファーストとミサトからもまず貰えるでしょ」

アスカ「あんた意外と女受けいいし、他にも学校とかネルフとかで貰えるかもよ」

シンジ「うーん、綾波はともかくさ、委員長とミサトさんの分って数に含まるかなぁ」

アスカ「つまんないこと気にすんのね。そもそも数を気にしてること自体ナンセンスだけど」

シンジ「そうかな、バレンタインにチョコを何個もらえるかって、男のロマンみたいなものだと思うけど」

アスカ「でもどうせ最後に選べる相手は1人なのよ。いつかはその選んだ相手に自分の全部を尽くしてあげなきゃいけないんだから。その相手から貰えたかどうか、大事なのって結局そこだけだと思うわよ、あたしは」

アスカ「数を気にしてるのなんて、結局世界で無敵のシンジ様に憧れて体を捧げる女が何人いるのかっていう都合のいい妄想を捗らせるための自分勝手な願望でしかないわけじゃない」

シンジ「む、まあ言われてみれば」

アスカ「ほんと男ってそういう短絡的で目先の事しか考えてないわよね」

シンジ「アスカってさ、たまにすごく本質をついたような事言うから、僕驚いちゃうんだよね」

アスカ「だからあんたはあたしの事なんだと思ってんのよ」

加地じゃなくて加持な

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「月が綺麗だねってどういう意味?」

アスカ「月ぃ?」

シンジ「いや、月が綺麗だねっていう言葉、どういう意味なんだろうと思って」

アスカ「は?月が綺麗?何それ、そのまんまじゃないの?難しい日本語だったかしら?」

シンジ「そうじゃなくてさ、ううん、今日カヲル君にいきなりそんな事を言われたんだ。月なんて出てないのに」

アスカ「はあ?出てない月が綺麗も何も無いじゃない。やっぱ頭おかしいんじゃない、あのホモ」

シンジ「だからそうじゃなくてさ、なんか深い意味があるんだと思うんだよ。外国とかでさ、なんかそういうの知らないかなアスカ」

アスカ「知らないわよ、聞いたことなーい。大体意味の伝わらないようなこと言って何がしたいのよ」

シンジ「うん……まあそれはそうだけど」

アスカ「ま、意味があるとしてもあのホモの事だし、おおかた『君を愛してる』とか何とか、そんな所じゃないかしらね」

シンジ「えー!そ、それはないと思うけど、カヲル君は男の子だよ?」

アスカ「バカねぇ、だからホモなんじゃない」

シンジ「ほ、ホモって……カヲル君は別にそんなんじゃ」

アスカ「あーはいはい、どうも。まあどっちにしろそういうメッセージの伝え方って詰まんないのよね、面白くない。言葉ならちゃんと自分で意味を伝えられなきゃ」

アスカ「気持ちの伝達手段としては一番効果のあるものなんだからさ。あたしならこうするわよ」スクッ

シンジ「わ、どうしたのいきなり立ち上がったりして」

アスカ「Du bist mein Alles」

シンジ「?何それ、もしかしてドイツ語?僕分かんないんだけど……」

アスカ「ご名答。『世界で一番あんたが嫌い』って意味よ」

シンジ「うわぁ、さすがに容赦がないや」

>>10
oh sorry
変換に任せてたらミスってた

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「何読んでるの?」

アスカ「雑誌よ雑誌」

アスカ「女を磨いて男を落とすための攻略法よ」

シンジ「う、なんかあんまり聞きたくなかったな……」

シンジ「……ふーん、まあでもなんか意外だね」

アスカ「あ、こら何勝手に覗き込んでんのよ」

シンジ「あぁごめん。でもさ、なんかそこに載ってる男の人、加持さんっぽくなかったから」

アスカ「なんで加持さんが出てくんのよ、そこで」

シンジ「え、だってアスカの落としたい相手って言ったらやっぱり加持さんかなーって思ったからさ」

シンジ「でもその雑誌に載ってる人とかってなんかさ、加持さんみたいな深い魅力?みたいなのあんまりなさそうな感じだし」

アスカ「あんたが加持さんを語るんじゃないわよ、気持ち悪い」

シンジ「あ、うん……ごめん」

アスカ「……」

アスカ「まあでも、あたしもちょっと思ってんのよね」

シンジ「え?」

アスカ「加持さんくらいの男ならさ、なんかあたしじゃ合ってないのかなって」

シンジ「えーっと?」

アスカ「だから、あたしじゃ加持さんには相応しくないのかなってこと」

アスカ「あたし、別に料理は出来ないし、偉そうな事は言ってもお洒落とか実はあんまり分かんない。そりゃ頭はよくて誰もが羨む容姿でおまけにエリートパイロットではあるけど、女としてはまだまだよね。胸だって全然」

アスカ「あたし、女らしさとかそういうの嫌い。大ッ嫌い。……だけど、それじゃ加持さんには釣り合わないかなってちょっと思ったりするわけよ」

シンジ「う、うーん。僕は別にそんなことはないと思うけどなぁ」

アスカ「……あんたの言葉、どうも気持ちが篭ってない気がすんのよね」

シンジ「そうかな。僕から見ればアスカってすごい魅力的で女の子っぽいと思うよ」

シンジさんがドイツ語ペラペラだったらなぁ……

アスカ「女の子じゃダメなのよ。あたしは1人の女になりたいの。ガキどものオカズにしかなれないような内は全然ダメなのよ」

シンジ「わっ、ご、ごめん……」

アスカ「なんであんたが謝んのよ。で、とにかくさ、加地さんって大人ですごいカッコいい男じゃない?だからさ、たまに。たまーによ?」

アスカ「加地さんが相手してくれない時とかさ、その……ミサトといる時とか、あたしじゃまだまだ、ぜーんぜん釣り合わない女だなって思うわけ」

シンジ「ふーん、なんか難しいね」

アスカ「難しくないわよ、あんたがバカなだけでしょ、バカシンジ」

シンジ「そ、そうかな……。でも僕なんかから見るとさ、加地さんとアスカって結構行けてると思うよ!なんか応援したくなっちゃうっていうか」

アスカ「これは意外ね、あんた、そういう所にも一応関心はあったんだ」

シンジ「その言い方、何か傷つくな」

アスカ「無敵のシンジ様に応援して頂けるとは光栄ですわ。気の利いた文句の一つも言ってくれるんでしょうね」

シンジ「というと?」

アスカ「んもう、結局これじゃない!あたしのどういう所に、加地さんと釣り合う魅力があるのかって聞いてんのよ」

シンジ「どういう所っていうか……。アスカは加地さんのことが好きなんだからそれで充分だと僕は思うけど……」

アスカ「はぁ、あんたって本当つっっっまんない男ねぇ。こりゃファーストも無愛想になるわけよ」

シンジ「あ、綾波は関係ないだろ!」

アスカ「おや、顔が真っ赤でいらっしゃる」

シンジ「やめてよ!!」

アスカ「……」

アスカ「ねえ、シンジ?」

シンジ「……なんだよ」

アスカ「あたし、あんたのこと好きよ」

シンジ「!?」

アスカ「あんたのことが、好き」

シンジ「あ、アスカ、なにを急に……」

アスカ「あんたのこと考えると頭がおかしくなりそうなくらい好き」

シンジ「ちょっと、悪い冗談はやめてよ!」

アスカ「死にたくなるくらい好き」

シンジ「あ、アスカってばぁ!僕が悪かったなら謝るから!」

アスカ「あんたのこと世界一嫌いになるくらい好き」

シンジ「冗談はやめてよ……怖いよアスカ……」

アスカ「好き、好き、好き。だーーーい好き!」

シンジ「…………」

アスカ「……」

アスカ「……ふぅ、ちょっとすっきりしたわ。ほら、なーに黙り込んでんのよ、たかがあたしの冗談くらいでビビっちゃってさ、なっさけないの」

アスカ「そんなんだから人形女の相手も満足に出来ないのよ。男なら冗談を本気にさせるくらいの度量を持ちなさいよ」

シンジ「……アスカはまたそうやってすぐ僕で遊ぶんだ」

シンジ「アスカは僕なんてどうでもいいんでしょ」

アスカ「なーにー?拗ねてんの?」

アスカ「いいじゃなーい、あんたみたいな死ぬほど詰まんない男、遊びに使うくらいしか取り得ないもの」

シンジ「うっ……」

アスカ「ほら言い返せない」

シンジ「ごめん」

アスカ「口喧嘩はあたしの勝ちね、これでイーブンよバカシンジ」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「夫婦ってどういうものなの?」

アスカ「夫婦だぁ?」

シンジ「うん」

アスカ「あんたさぁ、ちったぁ物を聞く相手考えたらどうなのかしらね」

シンジ「え、ごめん……」

アスカ「気持ち悪いから謝んないで」

アスカ「で、なに?夫婦がどうかですって?」

シンジ「うん」

アスカ「なんでそんなこと聞くの」

シンジ「クラスのみんなが僕とアスカのこと夫婦って呼ぶから」

アスカ「なによ、気にしてんの?」

シンジ「まあ、そりゃあ」

アスカ「あんなの無視よ無視。他人からどう言われたって気にしなければ済む話じゃない。ああ言うのは殆どが嫉妬だか日頃の憂さ晴らしだかの感情をあたし達にぶつけてるだけなんだから」

シンジ「アスカだって最初は恥ずかしがってた癖に」

アスカ「あんたの事を恥ずかしいとは思えるくらいの男だと勘違いしてたからよ」

シンジ「むっ……」

アスカ「そもそも夫婦なんてねぇ、本当は茶化しで呼べるほど軽々しい関係じゃないのよ。ほとんど呪いよあんなの」

アスカ「一つ屋根の下に暮らして、一緒にご飯食べて」

シンジ「うん」

アスカ「仲が良いだけじゃなく、関係が深くなれば喧嘩も多くなるのよ。お互いが噛み合うまで多少は苦労もするし、分かりあった後もお互いが嫌になって離れたくなる事が何度もあるんだから」

シンジ「なるほど」

アスカ「でも結局は一緒にいなきゃいけないのよね。お互い気兼ねなく名前を呼びあって、時には助け合いもするし。そりゃ、たまに周りから冷やかされる事もあるだろうけど」

シンジ「うーん」

アスカ「それに、同じ部屋で寝ることもあったり……キスだってしてるのよ」

シンジ「ふーん」

シンジ「なんだ、僕達とそっくりだね」アハハ

アスカ「あら、言われてみればそうね。……ん?」

シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「あ……」カーッ

アスカ「……」カーッ

シンジ「あ、その、これは別に……!」

アスカ「あんたってさ、いつも言ってるけどほんとにほんとにバカぁ!?もうバカでしょ、このバカ!」

シンジ「返す言葉もありません……」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「これは一体なに……」

アスカ「何って、おチョコよおチョコ。バレンタインでしょ。あんた、欲しがってたじゃない」

シンジ「いや、でもさ……」

シンジ「この量はおかしくない?」ゴッソリ

アスカ「なーによ、あんた一杯欲しいって言ってたじゃない」

シンジ「1人からこんなに貰ってもむしろ虚しいよ。しかもなんか、全部形がいびつ……」

アスカ「あー!あー!文句言った!あたしのチョコに文句言ったー!ひっどーい!さいてー!エッチ痴漢変態信じらんない!!」

シンジ「さらっと言いがかりはやめてよ!」

シンジ「というかさ、ほんとに僕がたくさん欲しいって言ったからこんなに作ってくれたの?」

アスカ「な……。も、もちろんそうよー?このあたしがシンジ様のことを思って作ってあげたのよ、ほら嬉しいでしょ」

シンジ「……」ジッ

アスカ「……な、何よ」

シンジ「……」ジーッ

アスカ「……」

アスカ「……」プイッ

シンジ「嘘だ」

アスカ「はぁ!?」

アスカ「何よ急に!あたしのチョコが満足出来ないからって変な所に言いがかりつけないでよ!」

シンジ「今目をそらしたよね」

アスカ「なんであんたと見つめ合わなきゃいけないのよ」

シンジ「……アスカさ、加持さんへのチョコの失敗作を僕に押し付けたでしょ」

アスカ「ギクッ」

シンジ「やっぱりそうだ」

シンジ「いつもは僕に気持ちが篭ってないとかなんとか言うくせに。アスカだって同じじゃないか」

アスカ「あんたに気持ちを篭める義理はない!」

シンジ「酷いよ!僕だってちゃんとしたアスカのチョコが欲しいよ!!」

アスカ「文句言うなら捨てなさいよ!貰えるだけありがたいとも思わないで!」

シンジ「いいじゃないか、一年に一度くらい僕にも優しくしてくれたって!いつもこんな役ばっかり!」

アスカ「あたしの本当の気持ちを手に入れるのはとっっっても難しいのよ!あんたみたいな奴が努力もせずに手元に持ってくるのは無理なの!」

シンジ「なんだよ……なんだよそれ」

アスカ「いらないなら捨てなさいな。その代わり、2度とあたしから貰えるなんて思わないでよ」スタスタ

シンジ「あ、アスカ!」

シンジ「……なんだよ」

シンジ「なんだよなんだよ!なんなんだよ!!いつもわがままばっかり、嫌なこと僕に押し付けて面倒臭いこと僕にやらせて!」

シンジ「アスカ僕には何も返してくれない!何も言って来ないじゃないか!」

アスカ「ふん」ガラガラピシャッ

シンジ「アスカから貰ったチョコなんて嬉しくないよ……」

シンジ「……」

シンジ「嬉しくないよこんなの。パクっ」モグモグ

シンジ「……味がしない。形もグロテスクだ」

シンジ「パクっ」モグモグ

シンジ「なにこれ、塩と砂糖間違えたな」

シンジ「パクっ」モグモグ

シンジ「うわっ中になにか入ってる。ムチュムチュして気持ち悪いな……」

…………

シンジ「うっ、結構食べたけどまだこんなに」

シンジ「……あれ?なんかこれだけ、やけに形が綺麗だな」

シンジ「それになんか、甘い匂いだ。まさか……パクッ」モグモグ

シンジ「……美味しい」

シンジ「でもなんで1個だけ?加持さんの分、間違えて入れちゃったのかな?」

シンジ「それともなんだかんだ、アスカが日頃、感謝してくれてたってことかな」

シンジ「それにしてもこれじゃちょっと分かりにくすぎるな」

シンジ「……本当の気持ちを手に入れるのは難しい、か」

シンジ「……まさかね、だってあのアスカだよ?」

シンジ「はぁ……。パクっ」モグモグ

シンジ「……不味い」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「アスカって本当に加持さんのこと好きなの?」

アスカ「今度はまた大きく出たわね。無粋な質問すぎて正直ひいたわよ」

シンジ「ご、ごめん。たださ……」

シンジ「委員長とトウジの事とか見てるとさ、好きな相手にはアスカみたいに『好き好き!愛してる!』っていう感じよりは照れ隠ししたり、好きじゃないフリをしたりするのが普通かなって思っちゃうんだけど」

アスカ「大層なご口舌ね。あんたの恋愛観なんて死ぬほど興味ないんだけど」

シンジ「じゃあアスカは恥ずかしかったりしないの?」

アスカ「あったり前でしょ。加持さんを好きな事が恥ずかしいはずないじゃない。後ろめたさを感じるような恋愛って変よ」

アスカ「まあ?あの2人に気を使って言うならば、あたしは少し大人な恋をしているわけ」

シンジ「大人な恋……」

アスカ「そ。本当の自分をしっかりとさらけ出して、本心をありのままに相手に伝える。これぞアダルティな恋ってもんよ。あんたも少しは見習ってほしいわね」

シンジ「へえ……なんかいいね、それ。グッと来るよ」

アスカ「あんたでもそういう風に思うのね」

シンジ「うん。僕もさ、アスカみたいに自分の気持ちを正直に、隠さずに言えたらいいなあってたまに思うんだ」

アスカ「ま、あんたの場合はそういうのが多すぎて1人で勝手に潰れそうになってるものね」

シンジ「そんなことはないけど……。あ、でもアスカに対しては割と言いたいこと言ってるしやりたい事やれてると思うんだよね。自分に正直にさ。そういう意味では、安心なんだよねアスカが相手だと」

アスカ「……うわ」

アスカ「あんたってさ、ほんと……うっそ、まーじぃ?って時あるわよね。なんて言うか、他人の気持ちが分からなすぎというか、結構ナチュラルに人が傷つく事言うのよね」

シンジ「アスカの気持ちを分かれって言うのはちょっと無理があるかな……」

アスカ「特にそういう所よね、このバカは」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「なんか最近いつも帰り遅いね。どうしたの?」

アスカ「別に。あんたと違って忙しいってだけよ」

シンジ「よく分かんないけど、あんまりはしゃぎすぎるとミサトさんが心配するよ」

アスカ「私のことを心配ね、どうだか」

シンジ「ミサトさん、ああ見えて繊細だから。僕達の保護者っていう事についても結構悩んでるみたいだし」

アスカ「大人になると好きでもない他人のことまでいちいち考えてやらなきゃならないなんて、大変ねー」

シンジ「好きでもない?それ、ミサトさんのこと?」

アスカ「そうよー。ううん、というより無理やり理由づけしてやりたくも無いことヘラヘラ笑いながらやっちゃってる不潔な大人ども全般ね」

シンジ「ミサトさんは案外、家族みたいなこの生活楽しんでくれてるんじゃないかな」

アスカ「好きでもないやつと家族ごっこは一番気持ち悪い」

シンジ「アスカがそう思えるのは家族がいるからだよ。ミサトさんとか僕は……こういうのに憧れてもずっと出来なかったから」

アスカ「楽しくもない生活の中でも自分の欲求が満たされてると思って幸せだと思い込みたいのね。嫌悪感に塗れた自分が哀れじゃないって信じたいのよ」

シンジ「ミサトさんが僕達のこと嫌いだって言いたいの?」

アスカ「さあ?でもあたしだったら楽しくないわねー、よりにもよって義理でもないバカシンジの世話を無償でしてやらなきゃいけないなんて、考えただけで吐きそう。それをやりながらもヘラヘラ笑っていられるミサトの事を見てるともっと吐きそう」

シンジ「アスカ、なんか怒ってる?」

アスカ「あら、あんたにはそう見える?」

シンジ「見えるっていうかさ、怒ってるでしょ。何かあったの?言ってくれなきゃ分かんないよ」

アスカ「ねえ、上手く丸めようとしないでよ」

シンジ「は?」

アスカ「あんたさ、例えば裏で誰かがあたしの悪口言ってても同じような対応とんでしょ?」

シンジ「あの……」

アスカ「ね、そうよね?『嫌なことがあったなら言ってよ。力になりたいんだ』とかさ」

アスカ「とりあえず目の前の他人のためにいいカッコしておきたいと。最低限、自分が嫌われないためだけに」

シンジ「何言ってるんだよ急に。熱でもあるの?」

アスカ「はぐらかさないでよ!あんた、他人のために怒ったことないでしょ!?」

シンジ「……」

アスカ「ほら、やっぱり言い返せな……」

シンジ「あるよ」

アスカ「……!」

シンジ「僕だってあるよ。ミサトさんとか綾波とか。トウジとかケンスケとか委員長とか、誰かの悪口言われて不愉快になったことくらい」

シンジ「アスカの事でも」

シンジ「でもさ、アスカがそういうこと言っても怒る気になれないよ」

アスカ「どういう意味、あんたあたしを下に見てるっての?」

シンジ「だってアスカ、本当は自分のこと言ってるだけじゃない」

アスカ「何を……!」

シンジ「自分の嫌な所を他人に重ねて、自分に置き換えて悪口言ってるだけじゃないか。そういうアスカの独りよがりに僕を巻き込んでるだけじゃないか」

アスカ「……っ」

シンジ「アスカ僕の事が嫌いなんでしょ?自分を見てるみたいでイライラするんでしょ。自分の嫌な所がそのまま映ってるみたいで嫌なんだ。本当は自分が一番嫌いなんだ」

シンジ「自分の代わりにするために他人を嫌いになってるの?性格悪いよね」

アスカ「黙っていれば随分言ってくれるじゃない。他人に自分の母親の影を勝手に重ねてコーフンしてる気持ち悪いマザコンの癖に!」

シンジ「アスカだって同じだろ。どうせ未だに夢の中にお母さんが出てくるんでしょ」

アスカ「な、なにを……」

シンジ「アスカさ、最近遅いの、まさか夜遊びとかしてるわけじゃないよね。やめた方がいいよ、『天国で』お母さんが見てるかも……」

アスカ「っ!!」

バチン!!

シンジ「……」

アスカ「……さいってー」

シンジ「…………」

アスカ「あんたとは絶交」

シンジ「……なにが」

アスカ「もう話しかけないでっての」

シンジ「無理だよ……。一緒に暮らしてるんだもの」

アスカ「じゃああたしが出てくから」

シンジ「待ってよ!」ガシッ

アスカ「……何よ」

シンジ「ここにいなよ。アスカは僕の事を馬鹿にしてればいいよ」

アスカ「あんたはどうすんの?」

シンジ「……僕、謝らないよ」

アスカ「なら代わりに何してくれんのよ」

シンジ「ん……これから毎日、アスカのためにご飯作ってあげるよ」

アスカ「……」

アスカ「言ったわね。1日でも欠かしたら酷いわよ」

シンジ「今だって充分酷い」

アスカ「生意気言うな、バカシンジ」

違和感が

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「アスカさ、最近帰りが遅いの、訓練してたからなんだ」

アスカ「……誰から聞いたの」

シンジ「リツコさん」

アスカ「……」ハァ

アスカ「ったぁ〜く、結局バカシンジにもバレるのね」

シンジ「僕、ちょっと勘違いしてたから。アスカの事だからさ、遊んだりしてるもんだと思ってた」

アスカ「ろくに訓練せずとも高いシンクロ率をたたき出せるシンジ様が羨ましいですわ」

シンジ「なんだよ、根に持ってるの?シンクロテストの事」

アスカ「あたしはあんたなんかに負けてらんないのよ」

シンジ「そう。なら、僕もこれからは負けないよ。アスカにだけは負けない」

アスカ「……何よ、ちょっと男らしくなった?」

シンジ「こういうのは、本当は僕みたいなのの仕事だからね」

アスカ「ナマ言ってんじゃないわよ、男女差別ぅ!」

シンジ「ちょっと違うよ、強いていうならアスカ差別で碇シンジ差別かな」

アスカ「む……何よ、本当に言うようになったわね」

シンジ「僕、少しだけ分かった気がすんだよ。アスカがあすこまでエヴァに執着する理由」

シンジ「エヴァに乗って結果を出せば、なんて言うか気持ちいいんだ。すごく気分が良いんだよ、この頃」

アスカ「ふーん、そりゃおめでとさん」

シンジ「アスカがさ、意外と努力家で口だけでエヴァに執着してるんじゃないっていうのが分かったからさ。これからもアスカにはエヴァに乗って一緒に戦ってほしいんだ」

アスカ「別に、努力なんて褒められる事じゃないわよ。(……あたしはあんたやファーストと違って、死ぬほど努力しなきゃエヴァにも乗れなかったし誰からも見てもらえなかったってだけなんだから)」

シンジ「うん、努力は売りにならない。僕が個人的に、努力してるアスカのことが好きなだけだよ」

アスカ「なっ……ちょ、あ、あんた本当にどうしちゃったの?なんか、背筋がゾワゾワしてきたんだけど」

シンジ「そういうこと言わなくてもいいと思うんだけど」

シンジ「でさ、まあ僕が勘違いしてちょっとアスカに酷いこと言ったからさ、そのことで」

アスカ「悪いと思ったならごめんなさいでしょ」

シンジ「言えないよ、あの時アスカに謝らないって約束したから」

アスカ「シンちゃんがからかい甲斐がなくなってつまんなーい!」

シンジ「アスカ、これからは二人で気持ち良くなろうね」

アスカ「誤解を招くからその表現はやめなさいな」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「使徒、来ないね」

アスカ「そうね」

シンジ「なんか、暇だね」

アスカ「暇って……あんたねぇ、ちょっと調子が良いからって不謹慎よ?」

シンジ「でも、いざこうして何もないまま家にいるとさ、することなくて退屈じゃない?」

アスカ「テレビでも見れば」

シンジ「リモコンが電池切れなんだよね」

アスカ「信じられないわね……じゃ、本でも読んでなさいよ」

シンジ「読みかけをトウジに貸してる」

アスカ「あのおバカ、本なんて読むんだ。日本語を喋るマントヒヒかなにかかと思ってたわ」

アスカ「じゃ、ゲームでもやったら?」

シンジ「1人じゃ出来ないよ」

アスカ「自分対自分でいいじゃない」

シンジ「それゲームになってないよ」

アスカ「あーんもうったくいちいちうっさいわねぇ!なにかに付けて文句言うならなんで聞くのよ!」

シンジ「アスカがいるから」

アスカ「一人で考えられないのかしら、シンジちゃんは?」

シンジ「二人いるなら二人で考えた方がいいじゃない」

アスカ「今のところ考えてるのはあたしだけなんですけど?」

シンジ「ねえ、ていうかさ、アスカはさっきから一人で何やってんの?」

アスカ「見てわかるでしょ」

シンジ「まあ、大体予想はつくけど」

アスカ「悪意を感じる言葉ね」

シンジ「だってさ……まさかアスカ、織物やってるの?」

アスカ「あによ、文句あんの」

シンジ「いや、なんか……不思議だなと思って。っていうか、それマフラーだよね?遅くない?」

アスカ「遅くないわよ、来年もつけてもらうんだから」

シンジ「へ、へぇ……。ていうか、プレゼント用なんだ」

アスカ「ったり前でしょうが、自分用ならさっさと買うわよ、おバカねぇ」

シンジ「ふーん。あ、もしかして加持さん?」

アスカ「そんな所。心を込めて織り込まないと」

シンジ「アスカってさ。意外と女の子っぽいところもあるよね」

アスカ「しっつれいな奴ねぇ!どうしたらそういう無神経な言葉が出てくるのかしら!」

シンジ「怒る割には普段、そういう所僕には全然見せてくれないんだよなぁ」

アスカ「あんたは女らしさってもんに自分の願望を押し付けてんのよ。あんたみたいな根暗野郎が気づける位のそれはもう女らしさじゃなくて媚びよ、こ!び!」

シンジ「そ、そうかなぁ……。僕ぁ綾波とかからさ、そういう所感じる事あるけど……あれは媚びてるっていうのとは違うんじゃないかなぁ、って思うんだけど」

アスカ「ひぇ〜、あんたってばほんと、マジもんの大バカなのね、これは驚いたわ。あんなの媚びも媚び媚び、模範解答みたいなものじゃない」

シンジ「えぇ!?そうなの?女の子の媚びってああいうのを言うのかなぁ?」

アスカ「あったりまえの「あ」の字よ!誰かに気に入られる優等生であるために主体性のない人形を演じる。他者への媚びの行き着く先のそのものじゃない!まあ?あんたにも似たような所があるから気づけないのも仕方ないんでしょうけど」

シンジ「主体性の無い……人形か」

アスカ「そうよ。一人の人間として生きていくためなら誰かに薄ら笑いの媚び諂いなんてする必要ないのに。誰も一個の人間なのに、そうやって無理やり他人に合わせようとして行く事で、おかしな集合人格が生まれるのよ」

シンジ「な、なんか大げさだね」

アスカ「大げさなことないわよ!みんなが一つになったら、あんたもあたしも消えちゃうのよ?人間にはわざわざ手足に目耳と鼻の穴が二つもあって、その上口でも呼吸が出来るんだから。本来一人で生きていくにしたって贅沢すぎるくらいのもんがあるってーのに、何をしてそこまで他人に媚びたいのかしら」

シンジ「過激だね……。僕はさ、ほら、アスカみたいに強くはないし。一人でなんて生きていけないからさ、誰かと一緒にいたいって思うよ」

アスカ「バカ、それが一番の矛盾なのよ。人間は一人で生きていけないから。そういう理由で他人を必要とするって、結局自分以外の誰かは自分の利益のために生きているっていう考え方って事じゃない!エゴよ!」

アスカ「そうじゃないでしょ。誰もが自分のために、自分の足で歩いてる。それが集まって結果的に他人になってるのよ。自分のためにならない人間のことも少しは認めなさいよ!なんでシンジ様のためにあたし達が生きて、この世界が形作られなきゃいけないのよ!」

シンジ「そ、そこまで言ってないだろ!」

アスカ「似たような事よ!あたしは、あんたやファーストやミサトともし、一つになるような事があったとしたら、そんなの世界で一人きりになって生きていく方がマシだと思うわ」

シンジ「…………」

アスカ「あたしは自分の為になるよう誰かに良い面なんてしない。ミサトもあんたもヒカリも、みんな結局自分のためになるように誰かに優しくするじゃない。……だから嬉しくないのよ、誰に優しくされても。気持ち悪いの」

シンジ「じ、じゃあ……」

シンジ「僕らは何のために他人に優しくするのさ」

アスカ「他人のためよ!」

シンジ「そんなのおかしいよ!だってアスカさっき、自分一人で生きていけるって!」

アスカ「……そうよ。優しくする必要がないのに、相手に優しくしたって何も良いことがなくても優しくする。本当に誰かのためを思ってるなら、例えばその相手に殺されそうになっても、ね……」

シンジ「……アスカ」

アスカ「なんか、ガラにもなくあんたと話してたら疲れちゃった。あたし、これ織らないとだから」

シンジ「……」

シンジ「じゃあ、折角誰かのために織ったそのマフラーも、アスカは何も返してくれるものが無くてもいいの?」

アスカ「見返り目当てにプレゼント送るほどがめつくないわよ」

シンジ「そんなの……虚しいだけじゃないか。アスカがそれをあげて、相手もお返しに何かをあげる。媚びとかご機嫌伺いとかさ、そういうのじゃなくて、まごころをこめて。人間が二人いたらそうやって生きていくべきだと僕は思う」

アスカ「へえ。じゃあいいじゃない。あんたがそう思うなら、そうやって生きていくべきよ」

シンジ「……だからさ」

アスカ「じゃ、これあげるから。あんたに」

シンジ「アスカが……って、え?」

アスカ「よーく考えなさいよ。あんたがまごころを込めてあたしに返してくれるんでしょ?あたしの心が動くようなもの、返してみせなさいよ」

シンジ「ええ、そんないきなり……い、いいの?というか加持さんには」

アスカ「あら、加持さんにあげるなんてあたし一言も言ってないわよ」

シンジ「むっ」

アスカ「ま、加持さんにはまたいくらでも織ればいいわよ。ここのところ暇なようですし?」

シンジ「まあ……そっか。あの……」

アスカ「?」

シンジ「……だ、大事にするね」

アスカ「顔が全く嬉しそうじゃないわよ」

シンジ「て、照れてるんだよ!」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「もうすぐさ、父の日なんだけど。父さんに何かプレゼントするべきか悩んでるんだ」

アスカ「あら、日本の父の日って遅いのね。ドイツは一ヶ月前よ」

シンジ「そっちにも父の日自体はあるんだね。あのさ、普段アスカはどんなものあげてるの?」

アスカ「どんなもの?っていうか、別に。こっちは世のお父様がたが勝手に盛り上がるだけだしね。1回靴下あげたことあったけど、数週間後には臭くなってたんじゃない?」

シンジ「……あ、あはは。僕はどうしようかな。ネクタイとかでいいかな?」

アスカ「だからなんであたしに聞くのよ。意味わかんない」

シンジ「え、あー、うん。こういうの、僕やったことないから。どうしたらいいのか分かんなくて」

アスカ「えーっと?やったことないからあたしに聞くの?」

シンジ「まあ、そうかな」

アスカ「あんたにとって誰かへのプレゼントって、自転車教習と同じレベルなのね。じゃ、手紙とかにしといたら」

シンジ「て、手紙?」

アスカ「そうよ。あんたみたいなのでもさ、流石に言葉で伝えればしっかり伝わるだろうから」

シンジ「で、でもさ、なんか手紙って言われてもピンと来ないし。父さんも僕からの手紙なんて喜んでくれるかどうか」

アスカ「はぁ?別に喜んでくれる必要ないじゃない。プレゼントなんて自己満足くらいがちょうどいいのよ。喜んでほしい願望なんて重い」

シンジ「いや、それは流石にどうかな……」

アスカ「自分の気持ちが一番伝えられるものを渡して、相手が喜んでくれたと思い込めばいいのよ!」

シンジ「アスカのそういう所、僕には真似できないんだよなぁ……」

アスカ「あ、今喧嘩売ったわね!」

シンジ「ち、違くてさ!なんていうか、父さんの厄介にならないくらいのさ、適当なものが」

アスカ「まーた適当とか言ってっから、あんたはさぁ。要するにあれでしょ?喜んでくれなくていいから怒られない位の無難なもんはないかってことでしょ?はっきり聞きなさいよ」

シンジ「だって父さんに何渡したって、大して喜んでくれないだろうし。どうせなら嫌がられない物がいいじゃない」

アスカ「んーそかそか、じゃあゴミ箱でも送ってあげたら?」

シンジ「ご、ゴミ箱ぉ?なんかプレゼントとして酷くない?」

アスカ「えー、大事よゴミ箱?要らないもの見つけたらパーッと拾ってポイッて捨てられるもん。少なくとも嫌がられはしないって」

シンジ「う、うーん……アスカの感性っていまいち分かんないんだよなぁ」

アスカ「人の感性なんて十人いたら十通り、そんなもんよ。分かったら自分で考えなさいな」

シンジ「変な所で突き放すというか、冷たいよねアスカ」

アスカ「ふん、あたしに優しくして欲しいってか」

シンジ「まあそりゃあ、そうしてもらえると僕は嬉しいけど」

アスカ「あんたはそのためにあたしに優しくしてるっちゅーわけでしょ?」

シンジ「む……アスカってさ、俗に言う面倒くさい女の子だよね」

アスカ「あぁ?あんですってぇ?誰が面倒くさいってーのよ!このっ……えーっと……シンジっ!」

シンジ「僕の名前とバカを混同しないでよ……。だってさ、アスカなんか……深読みしすぎというか。別に他人に優しくするのにそこまで勘繰る必要ないと思うんだけど。なんかさ、それだけに限った事じゃないけど考えすぎじゃない?」

アスカ「ふん、本当は図星を突かれて参ってる癖に」

シンジ「アスカが優しくしてくれたら、僕だって」

アスカ「なによ」

シンジ「僕だって、何だろう。なんていうか……変われるっていうか」

アスカ「全然意味わかんないけど」

シンジ「だからこう、綾波の時みたいに、成長出来る……みたいな?」

アスカ「……はぁ?なーによそれ、きっしょくわるぅ」

シンジ「う……」

アスカ「……」

アスカ「ねえ、シンジ?別にあたしはね、あんたに優しくしてやってもいいんだけど」

シンジ「えっ?」

アスカ「でもそれってさ、アンタの事を好きになってあげるって事なのよね」

シンジ「す、好きになって……?」

アスカ「詰まるところあんた次第よ。ねえ、あんたはどうなの?世界の果から果までをあたしへの気持ちで満たせる?」

シンジ「あ、アスカ何をいって」

アスカ「空気読んで」

シンジ「あ、え……う、うん」

アスカ「あたしだけを見れる?あたしだけを想える?あたしだけであんたの世界を満たせる?」

シンジ「えっ……あ、いや、あの。そ、それはちょっと、難しいんじゃないかなぁ?」

アスカ「……」ジトー

シンジ「あ、いや、だってほら、この世に二人きりってわけじゃないから、それで生きていくのは難しいしさ!」

アスカ「ふん、適当なこと言っちゃって。別にあんたに期待なんてしてなかったわよ」

シンジ「し、質問が無茶だよ!僕が嘘でうんって言ったって怒るくせに」

アスカ「本心で言いなさいよ!というか、なに。じゃあ世界であんたとあたしの二人きりとかいう世も末のどん末の状態でなら出来ると?」ズイッ

シンジ「うっ……ま、まあそれなら(近い近い)」

アスカ「言ったわねぇ?その言葉に、嘘偽りはないんでしょうねぇ?」ズイズイ

シンジ「うっ……あの」

シンジ「な、ないです!アスカだけを見るから、あの、だから!」

アスカ「ふんっ。あっそ、じゃあその時になったらあんたに優しくしてあげる。で、なに?」

シンジ「あーっと……」

シンジ「き、キスしてもいいかな」アハハ

アスカ「……」


シンジ「殴られた」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「今日はご飯作りたくないから、適当に買ってすませてよ」

アスカ「は?何よ急に。家事はあんたの仕事じゃない」

シンジ「したくないんだ」

アスカ「し、したくないって、どうすんのよ?洗濯とか、掃除とかも」

シンジ「今度やるよ」

アスカ「にしたって、ご飯も作らないってのはどーなのよ。あたし達を飢え死にさせる気?」

シンジ「うるさいな!したくないって言ってるじゃないか!!何でもかんでも僕にやらせないでよ!!」

アスカ「ちょっ……な、なによ」

シンジ「買い食いが嫌なら自分で作ってよ、僕の分はいらないから」

アスカ「あ、あんたねぇ……そんな不貞腐れたみたいにうずくまっちゃって」

シンジ「怖いんだよ。みんないなくなるんだ。綾波もカヲル君もトウジもケンスケも……」

アスカ「あ、綾波って、ファーストはいるじゃない?三バカも別に、死んだわけじゃないし……フィフスの件は、まあ気の毒だとは思うけど」

シンジ「今の綾波は綾波じゃないんだ……綾波じゃないんだよ……。なんで……アスカはそんなに普通でいられるの?」

アスカ「そりゃ、あたしは別にその中の誰がいなくなろうとショックじゃないもの。今でもこうしてエヴァには乗れてるわけだし、シンクロ率も悪くないしね」

シンジ「自分の事しか頭にないんだね、アスカは……」

アスカ「……」

アスカ「ど、どーしたのよシンちゃん。ほら、うじうじ気持ち悪く腐ってないで、散歩でも行ってきたら?」

シンジ「やめてよ、僕はもういいんだ。エヴァにだって乗れなくていい。別にこのまま死ねるんだったらそれだって……。だから構わないでよ」

アスカ「……大概、あんたも面倒くさいじゃない」ボソッ

アスカ「で、ショックを受けたからまたあの腐りシンジに戻るっての?」

シンジ「アスカはいなくなったのが僕でもそうやって平気な顔してるんでしょ。なら僕のこと、放っておいてよ」

アスカ「まあ、究極的にはそうありたいわね?」

シンジ「僕はダメなんだ……エヴァに乗ったって良いことなんてない。エヴァに乗ってもダメだったんなら、もうダメなんだ。無理なんだよ。僕には……助けてよ、誰か助けて」

アスカ「……」

アスカ「元の鞘だとは思ってたけど、結局あんたはそうなのね」

シンジ「助けて、助けてよ。アスカ、助けてよ」

アスカ「……」

シンジ「ずっと側にいてくれるだけでいいんだ。だから助けて……僕を裏切らないでよ、僕の前からいなくならないで」

シンジ「ねえ、アスカはずっとそばにいてくれるよね?」

アスカ「……はぁ?無理に決まってんじゃん。ってか、あんたみたいなのの近くにいるのは数分でもごめんなのよね本当は」

シンジ「なんでそんな酷いこと言うんだよ。アスカじゃなきゃダメなんだ。アスカなら僕の気持ち、分かるだろ?ね、だからアスカじゃなきゃダメなんだよ、そばにいてよ」

アスカ「分からなくもないから尚更嫌なのよ」ボソッ

シンジ「綾波やカヲル君がいなくなってから、心の中に大きな穴が空いたみたいで、辛いんだ。苦しいんだよ!だからアスカにその穴を埋めて欲しいんだよ!ねえ!」

アスカ「死んでも嫌よ。というか無理な話」

シンジ「なんで!?なんでそんな事言うんだよ!僕はこんなにアスカのこと大切に思ってるのに!」

アスカ「じゃあやめなさいよ、大切に思うの。どうぞ?」

シンジ「な、何言ってんだよ、そんなの……」

アスカ「そもそもどのくらい大切なのあたしのこと?ミサトくらい?フィフスくらい?それとも、まさかあのファーストくらい大切だなんて光栄な言葉まで頂けるのかしら?」

シンジ「く、比べられないよ。そんなんじゃないんだ!僕のことを助けてほしいんだ!ねえ助けてよ!!」

アスカ「とりあえず立ちなさいよ!」グイッ

シンジ「……っ」

アスカ「ほら、台所でご飯つくって!あたしのために毎日作ってくれるんでしょ?それともなに、レディとの約束を破るっての?」

シンジ「助けてよ……」

アスカ「あたしの事は助けてくれないのに?」

シンジ「助けたじゃないか……何度も」

アスカ「……」

アスカ「……ねえ、バレンタインのチョコさ、あんた食べたのよね?あたしの手編みのマフラー、あげたわよね?」

シンジ「……」

アスカ「返してくれるんじゃないの?結構待ってるんだけど、あたし?」

シンジ「……」

アスカ「……ご飯出来たら呼んで」

シンジ「ま、待って」ガシッ

アスカ「なに」

シンジ「その……まだ、アスカの本当の気持ちが良く分かんなくて、だから……」

アスカ「ふん」パシッ

アスカ「あんたのそういう所一番嫌いなのよ」

シンジ「……」


ミサト「ただいま」

シンジ「……おかえりなさい」

ミサト「ん、ただいまシンちゃん……」

ミサト「と、とりあえず、まずは灯りをつけて」

ミサト「ご飯、今日は私が作ろうかしら?シンちゃんは……その、最近色々あったから疲れてるだろうし」

シンジ「アスカが作れって言うんで」

ミサト「……」

ミサト「そっか。そうね、やっぱりあなたが作った方がいいかもしれない」

シンジ「そう……ですか」

ミサト「シンちゃんは、ほら。アスカからバースデーまで貰ったんでしょ?」

シンジ「……バースデー?」

ミサト「あれ、気づいてなかったの?ほら、なんだっけ?アスカが結構苦労して織ってた……えりまき?」

シンジ「マフラーの事ですか?でもあれ、加持さんのために織ってたんじゃ」

ミサト「か、加持ぃ?うーん……そりゃアスカの事だからそういう事もあるかもしれないけど、時期的にはシンジ君のバースデー用だと思うのよね」

シンジ「でも僕の誕生日にはくれませんでしたよ」

ミサト「うん、まあアスカはああいうのあんまり上手くないし、飽きっぽいから。完成するのが遅くなっちゃったのよ」

シンジ「……そっか」

ミサト「ね、アスカもシンジ君のために、苦労してプレゼント考えたんだから、今日はシンジ君が作ってあげてくれない?その……大変だとは思うけど」

シンジ「でも、アスカってそういう考え方あんまり好きじゃないと思うんですよ」

ミサト「あらー、アスカは関係ないわよ。シンジ君がこれを聞いてどうしたいかが大事なんだから」

シンジ「……」

シンジ「そう、ですね……分かりました。今日は僕が作ります。遅くなっちゃったけど」

ミサト「ん、グッジョブよ」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「ご飯、出来たよ」

ガラガラ

アスカ「ったく遅っそいわねぇ、いつまで待たせんのよ!トロい男は嫌われるわよ」

シンジ「作ってあげるだけ感謝してよ、僕だって色々あるのに」

アスカ「あーはいはい、どうもどうもシンジ様。で、今日は何なの?」

シンジ「カツカレー」

アスカ「なんか随分重いわね」

シンジ「僕も、元気つけなきゃと思って」

アスカ「……そう」

シンジ「立ち直るには時間がかかると思うけど、これからもご飯だけは作るようにするから」

アスカ「……そう」

アスカ「ね、シンジ?あたしね、あんたの為に慰めの言葉をかけてやる事とか絶対やりたくないししないわよ」

アスカ「でも、その、約束だから。あんたがあたしにご飯作ってくれる限り、あんたのそばにいてあんたの事馬鹿にしてあげるから、そこは安心しなさいよね」

シンジ「……もしかして、気遣ってくれてる?」

アスカ「別に……」

シンジ「どうせなら、いつもこれくらいのテンションでいてほしいんだけど」

アスカ「う、うっさいバカシンジ!」

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「結局僕ら今どういう状況だっけ」

アスカ「そうねぇ」

アスカ「最後の使徒がいなくなって、世界が平和になって、あたし達がエヴァに乗ることもなくなって」

シンジ「なんだかんだ僕達一緒に住んでるよね」

アスカ「ミサトが良いって言うし、あたしは他に頼れる宛もないから」

シンジ「ドイツに帰らなくていいの?」

アスカ「少なくとも帰りたいとは思わないわ。今でもたまに電話はかかってくるけどね」

シンジ「そっか、じゃあまだしばらくはずっと一緒かな?」

アスカ「あんたがそうしたいならね」

シンジ「ふーん」

シンジ「じゃあ結婚する?」

アスカ「……あんた、結婚の意味分かって言ってる?」

シンジ「そりゃ分かってるけど。どうせ一緒にいるんだし、してもしなくても大して変わらないじゃない」

アスカ「それはあんたがあたしと一緒にいたいっていう意思表示と取ってもいいのかしら?」

シンジ「まあ、僕から頼んだことだから」

アスカ「……あんたは嬉しいの?」

シンジ「そりゃ、男としては嬉しいよ」

アスカ「シンジとしては?」

シンジ「んー……ま、それなりに、かな」タハハ

アスカ「信じられない返事ねぇ、あんたからプロポってきた癖に」

シンジ「結婚なんて、そんなにロマンが無いことなのかなってちょっと思って」

アスカ「あたしと一緒じゃロマンが無いってか」

シンジ「ロマンなんか無くっていいよ、僕は」

アスカ「……けっ、いっちょ前にいきがっちゃって。ほんとはファーストの方が良かったりすんじゃないの、あんた?」

シンジ「アスカこそ加持さんの方が良いんじゃないの?」

アスカ「加持さんの話はやめてってば……」

シンジ「ちぇっ、都合の良い時だけさ。僕に対しては未だに綾波だのカヲル君だの言ってくるくせに」

アスカ「……」プイッ

シンジ「……」

アスカ「……なら、条件」

シンジ「?」

アスカ「いい?あんたはこれから、あたしに1日も欠かさず毎日ご飯作ること」

シンジ「だからそれ、今と何も変わってないんじゃ……」

アスカ「あんたバカぁ?それが一番大事なのよ!」

シンジ「わ、分かったよ」

シンジ「じゃあ……これからも僕、アスカの為にご飯をつくるよ」

アスカ「♪」

終わり

鋼鉄1とか終局の続きとかの影響がかなり混ざってるからアスカが余裕あり過ぎかもしれない
違和感があったらごみん

ちょっとオマケ

シンジ「ねえアスカ」

アスカ「んー」

シンジ「ほら、アスカの事書いたレポート、出来たよ」

アスカ「どれ、見せてみなさいよ。いやらしいこと書いてないか見てあげる」パシッ

シンジ「書かないよ、そんなこと」

アスカ「ふんふん、ふーん」ペラペラ

アスカ「あんた結構、細かい事まで覚えてんのねー。あたしもうこんな事忘れちゃったわよ」ペラペラ

シンジ「命をかけて戦ってた時のことなのに、よく簡単に忘れられるね」

アスカ「過去は引きずらない主義なのよ」

シンジ「そういう問題じゃないと思うけど」

アスカ「あっ!ちょっと何よこれ!あんたさぁ、こういう恥ずかしい所まで書くのやめなさいよ〜!」

シンジ「何が?」

アスカ「こういうのとか!これとかもう、有り得ないから却下!ここ全部無し!」クシャッ

シンジ「あ!何すんだよ!課題の文字数に足りなくなっちゃうじゃないか!」

アスカ「じゃあ書き直しなさいよ!」

シンジ「なんでアスカにそんな事言われなきゃいけないんだよ」

アスカ「なんでもよ!あたしの許可を得てあんたは書けてんのよ!」

シンジ「僕は別に綾波で良かったのに」ボソッ

アスカ「何か言った!?」

シンジ「別に」

アスカ「……とにかく、この部分まるまるカット。適当なのに書き換えなさい」ペラペラ

シンジ「分かったよ。あーあ、やっぱり綾波に頼めば良かった」

アスカ「男がいちいち過ぎたこと言わないの!」ペラペラ

アスカ「……てか何よこれ〜!?思い出した、あんた『じゃあ結婚する?』とか何とか言ってたわよね!思い出してムカムカしてきたわ!」

シンジ「良いじゃない別に。恥ずかしがるような事じゃないんでしょ」

アスカ「恥ずかしがってなんかいないわよ!あんたの中途半端で心の篭ってない感じが気に入らないってのよ!」

シンジ「勝手に決めつけないでよ!僕だって精一杯気の効くセリフ言ったんだから!」

アスカ「精一杯!?あれが!?このアスカ様に対しての!?」

シンジ「そうだよ!アスカと一緒にいる分にはあれくらいで充分でしょ」

アスカ「ぬわんですってぇ〜!!?言ったわねこのバカシンジ!!もうあたしこの家から出て行くわよ!!」

アスカ「むぐぐぅ。その気になれば下宿先くらい……!」

シンジ「強がらないでここにいなよ。いてほしいんだよ」

アスカ「……ふん!馬鹿!最低よ!」

シンジ「ね、アスカがいるとさ、安心すんだよ。どんなに辛い事があっても、アスカが僕の事を馬鹿にするっていう関係は……ずっと変わらないでしょ?」

アスカ「そんなの分かんないわよ。あんたよりずーーっと魅力的な男が現れたら、見向きもしなくなるかも」

シンジ「じゃあ、今のところ僕より魅力的な人はいないってことかな」

アスカ「調子に乗っちゃってさ!そんなのいくらでもいるってのよ……」

シンジ「……」

シンジ「まだ加持さんのこと、引きずってるの?」

アスカ「……」

シンジ「まだ、駄目……なんだ」

アスカ「……別に、そんなんじゃないわよ」

シンジ「僕、待つよ。待つから。アスカの気持ちの整理がつくまで」

アスカ「だから、そんなんじゃないって。あんたが気にすることじゃ……ないんだから」

シンジ「気にするよ、僕が気にしたいんだよ」

アスカ「……」

シンジ「今度の日曜日さ、どっか行こうよ。公園かなんかさ」

シンジ「僕、アスカがくれたマフラーつけていくから。本当は、加持さんにあげるはずだったんだろうけど」

アスカ「……」

アスカ「三文芝居打たないで。あんたが気づいてるの、ここに書いてあるから」

シンジ「あ、あれ、そうだっけ」

アスカ「はぁ……あんたって」

アスカ「ほんっとにバカね」

終劇

初投稿だったけど読んでくれた人はどうもです
あと1レスが長くなり過ぎたかも、ごめん

おつ
中々良かった

みずみずしいの使い方おかしくない?

>>41
ごめんみずくさいだった
何を勘違いしてたんだろ

おつ
面白かった

あ、一応補足
途中で出てきたDu bist mein AIlesの本当の意味は「あなたは私の全て」っていう意味ね

乙!面白かったよ

乙。良かった
しかし改めてエヴァのキャラは面倒くさいと思ったわ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月18日 (月) 20:03:45   ID: ZEm-9ZuS

嘘だ!Du bist mein AIlesをGoogle翻訳にかけたらあなたは私の全てですって出たよ!
激甘じゃないか!最高だよ!もっと僕にLASを見せてよ!

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