勇者「この美しき世界で」(129)


世界は美しいと思う。

悲しいことや、汚いこともあることは知っている。

でも、その中で。

明日を信じて生きている人達が居るこの世界が。

俺は、美しいと思う。



俺は、魔王を倒した。

仲間と別れ、隣に残ったのは。

少女「何やら寂しそうな顔をしているね?」

これから先、命をかけて守らなければいけない、一人の少女。

封印した魔王の、ただ一人の実妹。



勇者「気にすんなって、大したことじゃないさ」

少女「そうか?なら良いんだが」

考えなきゃならないことはいくらでもある。

少女「とりあえず、まずは住むところかなー?」


たしかに、少女がいた城は、先の魔王との戦いでボロボロになってしまったし。

それに、少女にとって悲しい思い出もあり過ぎる場所だからな。

少女「まあ、何とかなるだろうな。 我が国の領土は広大、大地はどこよりも肥沃だ。 ゆっくりと安住の地を探そうか」

まったく、頼りになる事だな。


どこまでも続く紺碧の空の下、少し荒れた街道歩く。

少女「うーむ、馬が欲しいな」

確かに移動手段が徒歩だけなのは厳しいな。

少女「やれやれ、計画的ではないな」

伏目がちに見上げられる。

この深紫の瞳にこんな風に見上げられる日が来るとは、思いもしなかった。

勇者「お前が馬に乗れるかどうかもわからんかったからなー」

少女「こう見えても由緒正しい王族の出自だからな。 馬術なんかは幼い頃からの嗜んでいたさ」

農家出身の俺とはえらい違いだな。

少女「まあ、国が滅び、民も居ない今、王だなんだと言っても少々滑稽かもしれないな」

畜生、こんな時にどう声をかければいいのかさっぱりわからん。


歩き続けて、日も沈んだ頃。

少女「随分と歩いたなぁ。こんなにも広いとは」

結局なんて声をかけて良いかもわからず、歩き続けてしまった。

少女「……なあ、どうしたんだ?昼過ぎからずっと苦虫を噛み潰したような顔をして」

勇者「そ、そんな事はないぜ?」

鋭いな、いや、俺が鈍いだけかもしれないのか?

少女「やれやれ」

少女は街道から外れ、草原の中に向かって歩き始めた。


少女「ほら」

両手を広げて空を仰ぎながら少女は笑った。

少女「せっかくの満天の星空だというのに、下を見ているなんて勿体ないぞ?」

無邪気な笑みを浮かべている少女。

その少女の白いワンピースが、風を拾い静かにたなびく。

少女「何をそんなに考えているかはわからんが、難しい考え事なんて勇者にはむいてないぞ?」

背の低い草が、静かな音を立てている。

少女「難しい事は私に任せておけ。 勇者は、ただ私の側にいてにっこり笑っていてくれればそれで良いんだ」

少女が、早く握り返せと言わんばかりに手をのこちらに差しのばす。

勇者「かなわないな、少女には」

本当に。

草原に一歩足を踏み入れると、脛のあたりまで伸びた草が少しくすぐったい。

少女「私を誰だと思っているんだ? 今は亡き魔術の王国の第一王女にして、封印された魔王の実妹だぞ? 勇者如き一捻りだ」

少女が一瞬身を屈めた。

少女「とうっ」

勇者「うぉっ!?」

飛び込んできやがった!?

避けたら怪我するよな。

仕方ない。


諦めて、せめて少女が怪我をしないように押し倒される。

勇者「いてて、無茶すんなよ?」

少女「無茶なものか。 勇者が私を受け止めないわけないだろう?」

悪戯っぽく笑う少女。

やれやれ、本当にこいつって奴は。

勇者「ったく、わかったからどいてくれ」

少女「断る。 今日はこのまま星空を眺めながら眠る事にした」

勇者「いやいや、どいてくれ。重たいし」

少女「ふんっ」

脇腹に鈍痛。 普通に殴りやがった。

少女「少女に思いと軽いは禁句だ。 わかったかい?」

これから先、先が思いやられるな。

過去に塔の魔女という作品はあります。

その作者かどうかは、証明するものがないので皆さんの判断に任せます。


おっぱい

勇者「っ!?」

足元から草をかき分けるような音が聞こえたかと思うと、人影が飛び出した。

少女「うりゃっ!!」

勇者「うわっ!?」

いきなりの出来事に情けない声が漏れる。

飛び出してきたのは体中に草を付けた少女だった。

少女「油断大敵だぞ、勇者様?」

勇者「何がしたんだよ、心配すたんだからな?


少女「その言葉が聞きたかったのさ」

まったく、本当に心配したんだからな……。

一つ二つ文句を言おうとして少女を見る。

しかし、頭に葉っぱを付けたまま、自信満々に満面の笑みを浮かべる少女を見たらそんな気も失せてしまった。

勇者「わかったからほら、動くな」

少女「なんだ、キスでもするつもりか? よし来い、どんと来い。 なんなら舌を入れたって良い。 いや、むしろ入れてくれ」

勇者「違うわ、頭の葉っぱを……」

少女「残念、もう遅い、ん」

頬に触れる柔らかい感触。

こ、こいつ、ほほ、本当にしやがった!?

勇者「おま、何するんだよ!?」

少女「ご馳走様、ほっぺで我慢してやったんだから良いだろう?」

どんな思考回路してるんだよまったく……。

こうしんしますよーおっぱい


少女「さて、そろそろさ出発しようか、済むなら良いところがあるんだ」

勇者「どんなところなんだ?」

少女「国境近くにある小さな村があったところだ。 確か小さいながらも領主の城もあったはずだぞ?」

国境といえば、隣の国は割とでかい国だったよな。

少女「さあ行こうか。私たちの愛の巣へ」

何言ってんだか。
ここからならだいたい昼過ぎくらいには着くはずだな。

何事もなければ、だけども。


街道を歩いていると、夏も終わりなのか秋虫の涼しげな鳴き声が聞こえてきた。

そう、つまり夕暮れだ。

勇者「なのに、なぜついてないんだろうなー?」

少女「ふしぎだなーなぜだろうなーわからないなー」

少女が明後日の方向に視線をそらしながら答えた。

勇者「誰だっけかなー?「私に任せろ」とか言って自信満々に先に歩いてた結果、道に迷ったのは?」

少女「仕方がないだろう?その村に行ったのは三歳くらいの時なのだから。 しっかり覚えていろというのは無理な話だぞ?」

少女は悪びれる様子もなく言った。

ただ、普通に迷ったのであれば仕方ないかと許せはするけれど。

勇者「なら近道を探して草原突っ切るなよ」

どうしてこんな無鉄砲なんだか……。

少女「こらこら、そんな顔は似合わないぞ?」

勇者「誰のせいだっつーの」

少女「まぁまぁ、ほら?村も見えてきたことだし……ん?」

勇者「どうした? て、村に明かりがついているな」

村の入り口の簡素な門のところには一対の篝火。

明かりが月や星くらいしかない周囲から、それはよく目立っていた。

勇者「村は無人のはずじゃなかったのか?」

少女「そのはずだ、兄さ、魔王がこの村の住人だけ生かしておく理由が無い」

勇者「と、いうことは」

少女「誰かが私に断りもなく入り込んでいるな。 しかもこんな辺境にこっそりと住み付くだなんて……」

背中の剣を意識する。

勇者「ろくな奴じゃあなさそうだ」

少女「あぁ、そういう事だ」

長い夜になるかもな。


村の入り口に人影はない。

だが、入り口の篝火には真新しい木切れが多くついさっきまでは人がいたような気配を感じる。

勇者「さて、ここからどうしようかね?」

辺境、しかも魔王が討伐されたという事も知れ渡ってはいないと言うのに、今場所にいる輩だ。

善良な市民という事もないだろう。

少女「……勇者。私に考えがある」

正面突破以外にも何かあるのだろうか。

少女「まあ、とりあえず私に話し尾を合わせてくれ。 それで多分上手くいくさ」

そういうと少女などんどん村に入っていった。

とりあえずおっぱい

更新しても良いですかー。

良いですねー。

しますよー。

少女「先ずは私に話を合わせていてくれ」

 そう言うと少女はどんどん村に入っていく。

勇者「お、おい!?」

 そんな事したら――。


中年「こんな夜遅くにどうなされましたかな? 旅の人」


 なんだコイツ? 農家みたいな格好している割に……

勇者「少女……こい、痛ぅっ!?」

 少女に脇腹を抓られた。

 話を合わせろってことか。

 というか、思い切り抓らなくてもいいだろ、絶対痣になってるぞこれ……。

>>34

ミスった気にしないでください



勇者「お、おい!?」

 そんな事したら――。


中年「こんな夜遅くにどうなされましたかな? 旅の人」


 なんだコイツ? 農家みたいな格好している割に……

勇者「少女……こい、痛ぅっ!?」

 少女に脇腹を抓られた。

 話を合わせろってことか。

 というか、思い切り抓らなくてもいいだろ、絶対痣になってるぞこれ……。

少女「すみません、私達は夫婦で各地を渡り歩いている商人なのですが、馬車の車輪が壊れてしまい……」

勇者「え?」

 今度は中年から見えないように小突かれる。

勇者「あ、あぁ、困り果てて歩いている内にこの村を見つけて」


中年「……ふむ、それは大変でしたね。 馬車は今どこに? 高額な物は積んでいませんか? 最近はこの辺りにも野盗が出るらしいので漁られるやも知れませんよ」

 案外親切じゃないか。 何でも疑うのは良くないな。


少女「ここから北、国境を越えて街道沿いに馬車は置いています。 なにぶん二人とも乗馬が苦手でして馬も繋いだままなんですが……。 野盗が出るんですね、恐ろしい」

 野盗がこの村を襲わないか心配だな……。

 夜が明けたら軽くぶっ飛ばしに行こうかな?

中年「馬……ですか?」

 中年はなんだか残念な顔をしている。 馬の心配までしてくれているのかな? 世の中捨てたもんじゃあないな。

少女「えぇ、あとは西の国の生地と果実くらいです」

 西の国の生地ねぇ……そんな高級品積んでいるなんて見栄張ってどーするつもりなんだろ?

 あ、そうか。

 元王族だもんなぁ。 自然と高級品が浮かんじまうのか。

 俺もがんばって稼がなきゃな。

中年「それはそれは……。 部品を用意しておきましょう。 今日はこの村に泊まって行って下さい。 空き家が在りますのでそこをお使い下さって結構です」


少女「……お気遣いありがとうございます」

 なんだか騙すのも気が引けるなぁ……。

勇者「あ、だったらこれを受け取って下さい」

 へそくりに金貨を何枚か持っていて良かった。

少女「……」

 少女が睨んでいる気がするな、へそくりをしていた事を黙っていたから怒ったかな?

 この村に長く住むんだ。 そんな痛い出費じゃないだろ。

中年「……こんな大金頂けませんよ。 気持ちだけで結構です。 さぁ、部屋に案内しますので着いてきて下さい」

 雰囲気が変わった?

 なんか嫌味みたいになっちまったかな? 後で少女に相談してみよう。

 案内された部屋は、古い建物なのは仕方がないが、作り自体はしっかりしていた。

勇者「少女……何してるんだ?」

 部屋に入るなり少女は扉や窓を調べていた。

 戸締まりをしているみたいだけど、そこまで必死にやらなくても大丈夫だと思うんだけど、心配性な奴だな。 


少女「どこかの誰かさんが余計な事しなければ、少なくとも今晩はここまで用心しなくても良かったんだけど……」

 少女が節目がちに睨んでいる。 この目で睨んでいるのは怒っているんじゃなく、呆れてる時だった筈だ。

勇者「何かしたか、俺?」

 金貨出したのが不味かったかな? あのおっさんもなんか雰囲気変わったし。

35 :  以下、名無しが深夜にお送りします 2013年06月25日 (火) 02:40:57 ID: uqwjdtzo

少女「あの中年を見て何か違和感を感じなかったい?」


 少女が溜め息をつきながら椅子に腰掛けた。

 戸締まりが終わったらしい。

勇者「違和感か……。 ん、そう言えばあの人昔は兵士か何かだったんじゃないかな。 足運びとか初対面の俺達を見る時の目つきとかがそんな感じがしたんだけど」
 聞かれてみて、改めて最初に見た中年の違和感の正体に気がつく。

勇者「でもそれが?」

少女「まだわからないのかい? さっき話に出た野盗。 あの中年がその野盗だよ」

勇者「えぇっ!? でも良い人そうな……」

少女「あんなあからさまに馬車の位置と積み荷を確認してただろ? 今頃何人かで在りもしない馬車を探してるんじゃないか?」

勇者「そんな風には見えなかったけどなぁ」

 金貨だって受け取らなかったし。

少女「でもそれだけなら今日はゆっくりできたんだ。 どっかの誰かさんがこれ見よがしに現金を持って居るなんて知らせてしまったから、多分待ちきれずに夜の内に襲ってくるんじゃあないか?」

 だから金貨を出した時少女は睨んでたのか。

少女「本当なら今夜は勇者と記念すべき初夜の筈だったんだぞ。 安全日だし不慣れな私達でも安心して事に至れたんだ」

勇者「ぶっ!? いきなり何言ってんだよお前は!!」

 真顔で少女が言う。

 恥とかそういった物がないんだろうか?

少女「ん? いや、勿論勇者との赤ちゃんは欲しいぞ? そりゃあもう二桁は欲しい。 だが、まだ生活の基盤も出来ていないのに赤ちゃんを作ったとしても辛い思いをさせてしまうだろう?」

 …………。

 少し照れだしたな。 照れ隠しに髪を手櫛で直しながら呟いてる。

 うん、可愛い。

少女「でも私は勇者に抱かれたい。 これでもかと言うほど愛し愛されたい。 足腰が立たなくなるくらい」

 …………。

 ちょ、寄らないで頼むから。

 そんな風に頬を染めて潤んだ瞳で見られたらやばいって。


少女「抱かれたいが子供は少し困る、しかし未経験故に避妊を失敗するかもしれない。 そんな初めての二人なのだからこそ、失敗しても大丈夫な安全日の今日は初体験に最適ではないかと思っていたのだ」

 あ、うん? 終わった?

 後半は耳を塞いでたからさっぱり聞こえなかったぜ。

 いや、本当に。

 ムラムラなんてしてないぜ?

 少ししか、うん。

少女「うん、いっぱい出し……」
 少女が大変な事を口走りかけたその時。

 ガタンッ。 と、大きな物音が外から聞こえた。


少女「だというのに、無粋な輩だ。 勇者、六人くらいだ。 一人でも大丈夫か?」

 どうやら外にはお客さんらしい。 正直この桃色な空気にも堪えられなかった所だ。

勇者「不埒な欲求不満は運動で払うのが一番だ、ちょっくら暴れてくるよ」

 暴れてやるぜ。

少女「早く片付けたら……朝までに何回かはできる……な?」

 何ができるかは分かんないけど取り敢えず、慎重に時間をかけて朝ぐらいまで闘おう。 そうしよう。

少女「やれやれ、愛しの君は世界まで救った筈なのに随分と……ヘタレだな」

 落胆みたいな溜め息を大げさにしやがって……。

勇者「取り敢えず部屋には近づけないつもりだ。 おとなしく部屋を戸締まりして待っててくれよ?」

少女「あぁ、いってらっしゃいのちゅーしてやろうか?」

 無視しよう。

 部屋を出て内側から閂をかけた音を確認して敵の大まかな位置を確認。 暗くてよく見えないが、どうやら正面にいるのは四人か。

 深く息を吸い込み集中する。
勇者「かかって来いやぁぁあああッ!!」

 吸い込んだ息を全て使い切るように雄叫びを上げた。

 『対人戦で大切なのは相手を気迫で圧倒する事だ』戦士が教えてくれた事だ。 相手が未熟ならこれだけでも戦闘がだいぶ楽になる、のだけれど……。


「囲んで殺るぞ」

「ならば陣形一だな」

「了解」


「いくぞ、かかれッ」


 夜盗の癖に随分と訓練されてるじゃねーか。 なら――。

勇者「~~」


 閃光の魔法を放つ。

 予め目を細めて置かなければ視覚を奪える程の明るさだ。



 は、混乱してやがるぜ。

勇者「こっちははっきり見えたぜ短剣に、戦棍に、長剣か。 夜盗にしちゃあ良い武器使ってんじゃねえか」

短剣「ぐぁっ!?」

長剣「コイツ、魔法を使うのか!?」

戦棍「ただの商人という話ではなかったのか!?」
?」

 目を押さえて距離を取る三人。
 さて、残り一人は。

勇者「んで、お前は毒針か。 えげつないな」

 頭上に向くて刃を寝かせて剣を振り上げる。 手応え有り、だ。

毒針「気付かれただと……ぐはっ」


 どうやら一発で毒針の奴の意識は奪えたようだ。 他の奴らはそろそろ視覚が戻るか?

勇者「残念ながら、俺って結構強いぜ?」

 世界を救えるくらいにはな。

長剣「嘗めるなよ、商人風情がぁッッ!!」

 長剣が振りかぶりながら突っ込んでくる。 怒りに任せてかと思いきや、踏み込み自体は鋭く無駄がない。

勇者「野盗にしとくには勿体ないな」

 突っ込んでくる長剣の左右後方には短剣と戦棍も機を窺うように追従。

 中々厄介な陣形だな。

勇者「でもまぁ、余裕だ」

とりあえずここまで。

おっぱい

更新します

おっぱい

 全身の無駄な力を抜く。 余計な力は剣筋を鈍らせる。

 必要な力を必要な箇所に使う。

 それが正しくできれば――。

 勇者「ッラァアア!!」


 隼が翔るが如きって奴だ。

長剣「ぬぐぁっ!?」
 
 先頭の長剣の脇腹に剣の腹を叩きつける。

短剣「うごっ!?」

 倒れ込んだ長剣の後ろから飛びかかって来た短剣を返す剣で叩き落とす。

戦棍「取ったぁッッ!!」

 戦棍の一撃が顔面に迫る。



勇者「当たらねえよっ」

 それを避け、懐に飛び込むと、空いている左拳を相手の顎に叩きつけた。

戦棍「が……」

 戦棍は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。


勇者「後二人居るって少女は言ってたよな。 この場に居ないって事は……少女狙いか!?」

 気づいたのと同時に、部屋から少女の声が聞こえた。


少女「お前ら!! 暖炉からだと!?」


 くそっ、部屋に入られたっ。


勇者「少女に何すんだてめぇ等っ!!」

 扉を閂ごと蹴破ると中には短剣を持った短髪の男と長髪の男が少女を襲おうとしてやがった。

少女「勇者!」

勇者「悪い、遅れた」

短髪「チッ、表の奴らしくじりやがったな」

長髪「ただの商人に遅れを取るなんて最低だな」

 短剣を構えながらこっちを睨む二人。

 隙だらけだ。

勇者「てめぇ等だって、すぐやられんだから、悪く言うなよ、なっ!!」

短髪「速……ぐぁ!?」

長髪「ぐはっ!?」

 手加減無しに全力でぶっ叩いてやった。

 死にはしないから良いだろう。

少女「流石だ、嬉しかったぞ」

勇者「あー待て待て、取り敢えず表の奴らとこいつ等縛っておこうぜ」

 抱き締めようと寄ってきた少女を制止して、野盗共を縛る。
 何にせよ少女が無事で良かった。

少女「こんな奴ら外に放り出せば良いだろう。 二人の空間にこいつ等は邪魔なだけだ」

 いやー、良かった。 こいつ等部屋に置いておかなきゃ大人の階段上る所だった。

勇者「それより、暖炉から入ってきたんだって?」

少女「あぁ、しかもこいつ等は一丁前に気配を消す技術まである。 最近の野盗は恐ろしいな」


勇者「この暖炉……ちょっとおかしくないか?」

 部屋に入った時は気にしていなかったが、部屋に対して明らかに大きいし不釣り合いに立派な作りの暖炉だ。


少女「これは……隠し通路か」

 散らばった薪の下には、蓋をされた大きな穴があった。 人が一人楽にはいれる程の穴の底には明らかに人為的な通路がある。


少女「これじゃあ初夜はお預けだな、やれやれだ」

 少女は、薪を一つ蹴飛ばして今日何度目かわからないため息を吐きながら呟いた。




勇者「結構深いんだな」

 隠し通路は割と長く続いていた。


 警戒していた罠等は特に無く、ただ地下特有の湿度の高さが不快なくらいだ。

少女「げぇ、壁に触ったら苔やら埃やらで手のひらが汚くなってしまったじゃないか……」

勇者「だからって俺の外套で拭うのは止めてくれないか? 汚れるんだけど」

 少女は俺の外套で丁寧に手を拭りやがった。 何しやがる、お気に入りなんだぞこれ。


少女「まぁまぁ、後で私を勇者の手で汚せばいいだろう?」


 何を言ってるのか俺にはさっぱりわからないな。



勇者「ん、出口みたいだ」

 突き当たりは梯子が架かっていた。

少女「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

勇者「絶対に離れんなよ?」


少女「あぁ、互いの髪が白髪交じりになってよぼよぼの老人になって死別する最後の時まで離れないぞ」

 あー……。

 うん、まぁいいか。

勇者「これは……教会か?」


 梯子が続いていたのは、なにやら聖堂みたいな所だった。

 僧侶の所の宗教によく似ている。

少女「いや、これは村の外れの城にある礼拝堂のようだ」

 結構な距離の隠し通路みたいだな。 いったい何の為に?


勇者「取り敢えずは探索だな。 ただ、あいつ等みたいな奴がいるかも知れないから気を付けていこう」


少女「人の所有地を許可なく改造するとは言語道断。 しかるべき報いを受けさせてやろう」

 地下道を作った事か。 それにしても目が本気だ。 怖い怖い。

聖堂を出ると割としっかりとした城だという事が分かる。 ただ、石造りの廊下は掃除がされていないのか埃っぽい。

少女「野盗め、掃除のやり方も分からないようだな」

 形の良い眉を顰めて少女は窓枠の埃を指で拭った。


勇者「先ずはどうするつもりだ?」


少女「ふむ、奥の別塔に結構な人数の気配がするな。 しかし、どれもかなり弱っているみたいだな」

勇者「なら行ってみるか」


 野盗がさらって来た人達か?

別塔には何の問題もなく着いた。

勇者「国はずれの村にしてはずいぶん立派な城だな」


少女「ここは国境だからな。 安穏と暮らし続ける事ができる程、世界は平和じゃないって事さ」

勇者「軍事的な拠点だったって事か」

 人間同士で世界を舞台に陣取り遊び、か。

勇者「本当に怖いのは人間、か」

 どうにもやるせないな。

勇者「誰か居るのか!?」

 別塔の入り口の扉を叩き切りながら叫ぶ。

少女「これは……」

 扉の先には、大勢の痩せこけた人間が虚ろな目で座っていた。


勇者「近隣の国だけじゃないな、農奴や貧民街の人たちばかりに見えるけど?」

少女「そのようだが、なんにせよ惨いな」

 こんな狭いところに押し込んでいたのか……。


勇者「助けに来たぞ」

 何が世界を救った勇者だ……。

 どう見たって救われちゃ居ないだろうが。

勇者「あんた達が、どうしてここに捕まっているかは後で良い。 取り敢えず」

 背の長剣に手をかける。

 扉を叩き切った時から、粘着質な殺気を感じていた。

勇者「そこで見てんだろ? 叩きのめしてやるから出て来やがれ」

 振り返り剣を構える。


 そこに立っていたのは身なりのそこそこに良い、貴族のような甲冑の男だった。

甲冑「族奴が……。 何処の国の間者かは知らぬが」


 甲冑の男が背の長剣を抜いた。

 研ぎ澄まされた刀身、華美な装飾の無い簡素な拵え。

勇者「随分と良い得物だな。 あんたがここの黒幕か?」

 人攫いして人身売買か。

 儲けてるんだろうな。

甲冑「黒幕……? とぼけている訳ではないようだが。 本当に単純に腕が立つだけの行商か?」


勇者「何を言っているのかよく分からねえけどまぁいいか」

 雰囲気的に見かけ倒しって事は無さそうだな。

勇者「外道の言葉なんざ聞くに及ばねぇ。 ぶっ飛ばしてやるからかかってこい」


甲冑「まぁいい、死ね」

勇者「ッ!?」

 速いっ!?


 言葉と同時に鋭い一撃が喉に迫る。

 身体を捻りその一撃を避けると、その勢いで蹴りを入れる。

甲冑越しに蹴りを入れてもダメージは期待できない。

 体勢を崩せりゃそれで良い。

 と、思ってたんだけどな。

甲冑「ん、どうした?」

 大木にでも蹴りを放ったような手応え。

勇者「随分と重てぇな、鉄でも食って育ったのかオイ」


 この蹴りは戦士直伝、戦士が使えばオーガだって沈むっつーのに。



甲冑「生憎だが、教えを守り菜食主義者だ、ぬんッ!!」


 蹴り足に振り下ろされる刃。

勇者「危ぶねっ!?」


 甲冑の男の腹を足場にして後ろに飛び退く。


勇者「お前んとこの神様は善良な行商の足を躊躇なくぶった斬る教えもあんのか!」

甲冑「あるさっ! 勇敢に敵を討ち滅ぼす戦女神の教えではな!」


 神様信じてる癖に随分な野郎だ。

 我らが慈愛の塊、僧侶さんの爪の垢でも飲ませてやりたいね。

また更新しまおっぱい

帰ってきたー!おっぱーい!

少しづつでも更新しますよー!

おっぱーい!

私はブラック企業を辞めたぞジョジョー!

チッ、コイツかなり強ぇ。

甲冑「貴様の剣は何かおかしいな、我流か?」

 何度か切り結ぶと甲冑が言った。

勇者「あ? 世界一の戦斧使いに稽古付けてもらったっつーのっ!!」

甲冑「まるで、人以外と戦う事を前提とした剣運びだな」

勇者「随分よく見てんじゃねーか」

 剣を握る手に力を込める。

勇者「っらぁ!!」

 切り結んだ相手の長剣を力任せに弾くと距離をとり構え直す。

甲冑「……大した膂力だな」


 今ので崩しきれないか。 そこらの国の師団長クラスよりよっぽどやるな。 

 異常に対人戦が上手いぞこいつ。


勇者「なんでテメェその腕で野盗なんかやってやがる」

甲冑「野盗……ね。 これから死ぬ貴様に話した所で意味はないだろう」


 甲冑越しだがわかる。

 コイツ、自分の勝利を確信して笑ってやがる。

 俺より自分の方が強いと思ってやがるのは若干腹立たしいが、問題なく倒せるか、と言えばそうでもないんだよな。

少女「いつまで遊んでいる。 君なら本気を出せば軽く捻れる筈だろう?」

 確かに全力で闘えばすぐに終わるだろう。 が、下手すれば殺してしまう。

 偽善だなんだかんだと言われるかも知れんが、なるべくなら人を殺したくない。

 この力は、人を守る為に磨いたのだから。

甲冑「軽く捻れる? やってみるが良いぞ見窄らしく浅ましい商人の小僧めがッ!!」

 好きに言いやがって。

勇者「なんだとこの野――」

少女「訂正しろ小悪党が。 言っておくが、私の旦那は世界一だ。 貴様のような凡愚が口汚く罵って良いと思ってるのか? 身の程を弁えろ見窄らしく浅ましい野盗擬きが」

 言い返す前に、少女の声が響いた。

 けして大きな声ではなかった。
 だが、良く通る澄んだ声。

 堂々たる威厳を帯びた、人の上に立つ者の声だった。

甲冑「ぬ……」

 甲冑もいきなりの少女の啖呵に呆気にとられてやがる。

少女「ちなみにダーリンの魔力を借りれば回復魔法くらいは私でも使える。 安心してぶっ飛ばせ」

 そいつは助かるな。
 というか、ダーリンて俺の事か? まぁ良いけどさ。


甲冑「小娘……物珍しい髪で高く売れると生かしておくつもりであったが……。 もう良い、この侮辱の代償、貴様の死の間際の後悔で払ってもらおうか」

 甲冑も正気に戻ったらしい。

 だが、刃を向ける先を間違えてやがるなこの野郎。

少女「ふん、やれるものならやってみろ!! なんなら……、もう一度言ってやろうか?」

 殺気を向けられて居るというのに少女はいっさい怯まない。

甲冑「小娘がぁ!!」

 少女に襲いかかる甲冑。

 あと数瞬で刃が振り下ろされるというのに、少女は微動だにせず、腕組みをしたまま甲冑を見据えていた。

少女「ふっ、私の旦那は世界一だ」

 俺の事をここまで信用してくれているんだ。

 刃が振り下ろされる数瞬という時間に。

勇者「照れるぜまったく」

 少女の前に立ち、甲冑の剣撃を受け止めるくらいには格好付けなくちゃな。

甲冑「速い!?」


勇者「んじゃ次はこっちの番だな」

 重傷くらいなら治せるらしいし。

勇者「ちょっとキツいの行くぞ?」

 切り結んだ甲冑の剣をいなし、体勢を崩す。

 その隙に最上段に剣を構え力を込め、刃を寝かせて振り下ろす。

甲冑「チィッ!!」

 甲冑はなんとか防ごうと剣を構えた。

勇者「無駄だっ!! オラァッ!!」

 振り下ろす剣に更に力を込める。

甲冑「なっ!?」

 金属音を立て砕ける剣と兜。

甲冑「あ、ぐぉ……」

勇者「残念ながら、ゴーレムだろうがぶった斬る剛剣だ。 あんたにゃ止められねえよ」

少女「世界を滅ぼせる程の腕前になってから出直すが良い」


 流石にそんなのが来たらひとりじゃ無理だ。

少女「?」

 ま、何があっても少女一人くらいなら守り通して見せるけどな。


勇者「コイツこのまんまじゃ障害残るかも知れん。 早いとこ回復してやろう」


少女「そうだったな、では魔力を分けてもらうぞ。 とうっ!!」

 少女が胸に飛び込んでくる。

少女「この体勢が一番魔力を分けて貰いやすいんだ。 勿論他意もあるがな! ついでに頭を撫で回しながら愛を呟いてくれれば完璧だ」

 こうも直球だと恥ずかしさを通り過ぎてなんか不思議な気分だな。

勇者「あー……よしよし」

少女「物足りないが、この愚か者一人回復する位なら大丈夫だろう」

 少女は「勇者の優しさに感謝しろ」とかなんとか言いながら甲冑に回復魔法をかけ始めた。

少女「起きろ凡愚、尋問の時間だ」

 少女が爪先で甲冑の脇腹を軽く蹴る。

甲冑「糞……まさかこんな所で……」

少女「愚痴を聞くつもりは無い。 貴様の目的と背後にどんな勢力があってこんな事をしている」

甲冑「……一つだけ聞かせろ、貴様等は何者だ? この実力、どこかの国の密偵なんだろ?」


 野盗の癖に何だか小難しい話をしだしたな。

 いや、実力的にもしかして――。

 いや、流石に……。

少女「私は今は無きこの国の第一王女、そして私の旦那である彼は救世の英雄、勇者だ」

甲冑「……なる程な。 勝てぬ訳だ」

少女「では貴様……なっ!?」

 甲冑が大量の吐血をした。

勇者「こいつ、毒を!?」

甲冑「勇者か……魔王無き今の世では貴様のような輩は疎ましいだけだな……ごふっ」

少女「死んだ……余程強力な毒だ。 野盗如きが扱える物ではないが……」


勇者「奥歯に致死の猛毒を仕込む……国の密偵なんかが良くやる手だけど」

 結局死なせちまった。

 どうすれば良かったんだ?

 思考に薄く靄がかかっていく。
少女「勇者……大丈夫か? 酷い顔色だ」

 少女が心配そうな顔で覗き込んでいる。

少女「いきなりぼーっとして、まさか……」

勇者「大丈夫だ、コイツを弔って、今日は休もう」

 畜生……。

目が覚めると、すぐ目の前に少女の端正な寝顔があった。

 安心しきったような表情で規則正しい寝息を立てている。


勇者「もう驚かねーぞ」

 艶のある黒髪をわしゃわしゃと撫で回す。

勇者「なんで一緒に寝てるんだ?」

少女「眠る瞬間まで、そして目が覚めた瞬間。 愛しい人の顔がある程幸福な事はないからな」

 こいつには照れという感情はないのだろうか?

少女「さ、今日は捕まって居た人達に話を聞いて、更に今後の生活を支援して、生活の基盤を整える下準備もしなければならない。 名残惜しいが、ベッドから出て活動を始めようか」

 そうだ、やる事はまだ山ほどあるしな。

まじですよー!おっぱい!



 一晩過ごしたのは領主の部屋だったらしい。

 荒らされていたのか調度品もなく、ベッドにはシーツしか無い。

 粗末な場所で寝る事は旅で慣れているとはいえ、良く熟睡できたと自分の疲労具合に感心してしまった。

 捕らえられていた人達は、城の元々兵舎だった建物で一晩過ごして貰った。

 使われて居なかったらしく少しかび臭かったのは申し訳ないが、纏まった寝具や相応の個室の数がそこしかなかったから仕方がない

少女「あー……邪魔するよ」

 兵舎に入り、捕らわれた人達を一瞥する。

 老若男女問わず居たが皆、痩せこけていた。

 いきなり現れた俺達を不安げな瞳で見つめている。

 上手い言葉が見つからない。 少女を見ると、彼女は何か難しそうな顔をしていた。

少女「魔王よりも……先に滅ぼすべき相手が居たねかもしれないな」

 少女はそう呟くと、囚われていた中で最年長であろう年老いた男性の前にたった。

少女「貴方達は今三つの扉の前にいます」

老人「あ……ぁ?」

少女「一つは、元の国へかえり、ここへ囚われる前と同じ生活をする」

老人「……ぃ……や……だ……もぅ……」

 老人はかすれ声で呟いた。

少女「一つは、今までの全てを捨て、新天地を目指す」

農娘「新天地なんてないわ……この世界はどこまで行っても悲しいくらい残酷だもの」

 部屋の隅でしゃがみ込んでいた農娘が嗚咽混じりに答えた

少女「一つは……」

 何でみんなこんな悲しい目をしてるんだよ……

農青年「俺達みたいなのは、どこに行ったって幸福なんてありゃしない、どうでも良いよ」

 違う。

 違うッッ!! 

勇者「俺達とこの村で生きよう!! 悲しいだけの世界にしてたまるかッッ!! 俺は絶対に守ってみせるから……みんなで笑おう……」


農青年「え……?」

少女「ふふん、一つは……、私達と共に生きよう。 かつてこの土地には民と共に生き、笑う良き国があったんだ」

農娘「それは……素敵ね」


きっと守る。

 守ってみせる。

少女「何難しい顔をしている? 皆で笑おうと誓ったばかりだろう」

勇者「あぁ、そうだな。 みんな、これからよろしく」


 よし、頑張ろう。

少女「さて、ここで暮らすに当たりどうしても必要な物が多々あるな」

 少女は、城の広間に捕らえられていた人達を集めると言った

勇者「わかった!!食いもんだ」

少女「二十点」

農娘「わかりました、畑と家畜です。 村で生きていく為に必要ですよね?」

 農娘が手を挙げて言った。
 雀斑が少しあり、濃い赤茶の髪は西方の国の生まれに多いんだよなー。

少女「農娘、正解っ!!。 いちいち買っていたら切りがないからね、第一そんなんじゃ生活破綻してしまうよ」

 うーん、確かに。

農青年「どちらも用意するには金がかかるんじゃ……」

老人「儂等はもともと農奴じゃ。 金などないぞい」


少女「そこが問題なのさ、 私と旦那の蓄えをでなんとか用意する事はできても、それじゃあ君達は場所を変えて農奴をやってるだけだ、それじゃあ意味がない」

 別に無償であげれば良いんじゃないか?

 でも少女の事だしな、何か考えがあるんだろうな。


農娘「勿論用意していただいた分は収穫の後に返します……。 ですがそういう事を仰っているわけでは無いのですよね」


少女「存外に頭が切れるじゃないか、その通りだよ」

勇者「つまりどういう事だよ」

少女「農奴の仕組みを知って居るかい?」

勇者「いや、うーん、こき使われて粗末でひもじい生活を送りながら農業に従じる人?」

 たぶんこんな感じか。

少女「なぜひもじく粗末な生活を送らねばならないんだ?」

 なる程、そういう事か。

勇者「生活の全てを使役する人間に任せている、からだな」

少女「さすがダーリンだ、ご名答」

少女「農奴の生活は良くも悪くも他者に依存した上で成り立っているんだ。 笑顔で居る為に自立は必要だと私は考えている」

農青年「現金化しろって事か?」
少女「それも手だ。 君達は作った農産物だけを食べて生きて行く訳ではないだろう? ならば農産物を何かに変えるノウハウを持つべきだ」

農娘「それが、自立?」

少女「期限は……うーんそうだな。 私の寿命が尽きるまでに、様々な形で返してくれ。 そして最後に一つ」

老人「……あんたらを敬えばよいかの……?」

少女「逆だ、ご老人」

勇者「みんなで仲良く、同じ立場で頑張ろうって事だ」

 これで良し。

少女「それじゃ、買い出し行ってくるよ」

 村の出口に立ち農娘達に手を振る。

勇者「取り合えずは当面の日用雑貨と苗、種、余裕があれば家畜か」

農娘「ありがとうございます、お気をつけて」

勇者「おう、そっちも頑張ってな」

 みんなは残って畑と大工仕事をするらしい。

老人「物心付いた頃よりやっていたのじゃ、任せておけ」

 老人は鍬を片手に張り切っていた。 怪我しないようにな。

勇者「さて、国越えて買い物かー」

少女「ん? まさか歩いていく気か?」

勇者「え? そのつもりだけど」

少女「馬車もないのにどうやって運ぶつもりだ? 君の転移魔法を使えばよいだろう」

 そういえばそうだな。

勇者「でも苦手なんだよな、アレ」

 魔王から逃げた時、全然違う所に飛んだし。

少女「何の為に私が居ると思っている。 私が調整してやるから問題ない」

 さすがは元魔女だ。 魔力は無くても魔法の類はお手の物か。

少女「さあ、後ろから優しく抱きしめてくれ。 それが一番やりやすい。 少し強めに抱きしめてくれれば尚良いな、具体的には君の筋肉質な身体を私が堪能できるくらいだ。 なんなら後ろから胸を揉みし抱いてくれても構わない、むしろ頼む、揉んでくれ」

 ……。

 揉むわけ無いだろう。

勇者「はぁ、これで良いか?」

 後ろから軽く抱き寄せる。 照れくさくて仕方ない。

少女「どうした? 私の背中に君の逞しい胸板をもっと感じさせてくれ」

勇者「……」

少女「? 早くしてくれ、あーたいへんだーこのままじゃしっぱいしてしまうなーたいへーんだー!」

 腕の中でバタバタと暴れながら棒読みで少女がごねている。

 あ、今甘い匂いがした。

 少女の黒髪から漂ってるんだろうなー。 女の子ってみんな良い匂いすんのかなー。

待っていてくれた人がいることに驚きが隠せません。


なんとも喜ばしいことなのですが、同時にひどく申し訳ないおもいでいっぱいです。

略して
ひどいおっぱいです


おっぱい!

更新しますよー

少女「こら! 現実逃避してないで早くぎゅっとしてくれ!」

 恥ずかしくないのかなー。 俺はもう顔面真っ赤なんだけどなー。
そう言えば魔王討伐の旅の途中に逢った物凄い筋肉質の魔人の男は全身真っ赤だったなー。

 戦士に迫ってボコボコにされてたなー。 魔ッスルって名前だったっけなー。

少女「……何とか言ってくれ、私だって、その、恥ずかしいんだぞ?」

勇者「っ!? あ、うん、ごめん今やる」

 視線を逸らしつぶやく少女。
 普段と違う一面にドキッとしてしまう。

 その気持ちを誤魔化す為に少女を抱き寄せた。

少女「ひゃあっ!?」

 え?

勇者「ごめん、俺なんか変な事しちまったかっ!?」

 少女のこんな声は初めて聞いた。

少女「いや……問題ない。 ただその、急に抱きしめられると……あの、何というか、あれだ。 胸が高鳴り過ぎる……から、うん」


 俯いている少女の長い黒髪の隙間から見える耳は真っ赤になっている。

勇者「そ、そうかー! うん、取り敢えず移動魔法しよっかなー」

140 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/04(水) 01:04:36 ID:ZHQUOvjo

少女「う、うん! そうしよう!よーし私張り切っちゃうぞー!」
勇者「よし、じゃあ! ~~」

 呪文を唱えて魔力を込める。

少女「あっしまっ――」

 
 光に包まれた瞬間、少女の口から不安になるような声が聞こえたのは気のせいだと信じよう、うん。


 多分。

>>117

コピペミス

少女「ひゃあっ!?」

 え?

勇者「ごめん、俺なんか変な事しちまったかっ!?」

 少女のこんな声は初めて聞いた。

少女「いや……問題ない。 ただその、急に抱きしめられると……あの、何というか、あれだ。 胸が高鳴り過ぎる……から、うん」


 俯いている少女の長い黒髪の隙間から見える耳は真っ赤になっている。

勇者「そ、そうかー! うん、取り敢えず移動魔法しよっかなー

少女「う、うん! そうしよう!よーし私張り切っちゃうぞー!」
勇者「よし、じゃあ! ~~」

 呪文を唱えて魔力を込める。

少女「あっしまっ――」

 
 光に包まれた瞬間、少女の口から不安になるような声が聞こえたのは気のせいだと信じよう、うん。


 多分。

勇者「お、割としっかり着いたな」

 無事に目的地、隣国の帝都の市場に着いた。

少女「ふふん、流石は私だろう? 惚れ直してくれ」

 うん、まぁ。

 勿論惚れているさ。

 恥ずかしくて言えないけどな。
勇者「善処するよ」


少女「それじゃあ買い物を済ませちゃおうか」

勇者「苗探してくるよ」

少女「じゃあ私は適当に食料品とか雑貨類を探してこよう。 昼にまたこの市場の広場に集まろうか」

勇者「あいよ」

またあとでおっぱいします!

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