勇者「ついにここまできたか」(24)

今から何百年も先の世界のお話・・・いわゆる「魔法」が発見、研究される。

その結果機械だんだんは廃れ、エネルギーへの依存も無くなっていった。

しかしその折、産油国側と他の国々とで核戦争が勃発し荒廃の時代がやってくる。

世界各地でミュータントが発生し、地球の支配権が彼らに奪われたのだ。

動植物の変異体は「魔物」、それらを統べる人間の変異体の頂点は「魔王」と言われ恐れられた。

数で劣りこれ以上犠牲を出せない人類の対抗策は、リーダー「勇者」を中心とする少数精鋭のパーティーを魔王のもとへ派遣し殺害するというものだった・・・

勇者「この扉の先に魔王がいるのか・・・」

賢者「凄まじい魔力を感じます」

僧侶「油断なんてとてもできたものではないですね」

少年「・・・」

勇者「少年、君はここで俺らを待っててくれ」

少年「え・・・でも」

勇者「大丈夫、必ず戻ってくるから」

少年「・・・うん」

戦士「よし・・・さっさといこうぜ!」

ギィィ・・・バタン










少年(・・・長いなあ)



少年(・・・)



少年(少しだけ、少しだけなら・・・いいよね)ギィィ



少年「!!う、うそ・・・なんだよこれ・・・みんな、死んで、る」

魔王「ん?まだ残党がいたか。しかもそれが幼い子供とは笑わせる」ククク

少年「よくも、よくもやったなああ!!!」ダッ

魔王「ふん」

少年「ぐはっ」バタッ

魔王「そう死に急ぐな小僧。まあとりあえず俺の話を聞け」

少年「ァ・・・ウ」カヒューカヒュー

魔王「貴様には俺の代弁者になってもらう。内容はただ一つ、我ら・・・貴様らで言う『魔族』に戦意は無い。とはいっても考える頭のある者に限るがな」

魔王「歴史を知らぬものには分からぬだろうがな、最初に手を出してきたのは貴様ら人間なのだ。見慣れぬ異形の存在を畏れ蔑み排除しようとした」

魔王「だがミュータントたちは彼らの想像以上に強く賢く、瞬く間に人類は住処を失っていった」

魔王「ついでに言うなら、人類という共通の敵がいなければ我々ミュータント同士による異種間のコミュニティーも存在することは無かっただろう」

魔王「はっきり言って貴様らの自業自得だ・・・こちらとしても無作為に害を撒き散らす低脳な者には苦労しているのだよ」

魔王「まあ結局、貴様らが我らを倒したところで何の問題の解決にもならないのだ」

魔王「さあ、伝えるべきことは伝えたぞ少年よ」

少年「・・・」ゼーゼー

魔王「さて、どうやら俺の寿命もあと僅かなようだ。まったくそこの・・・勇者と言ったかな?死に際に自爆魔法を唱えるとは」

魔王「人間とやらは俺が死んでも第二第三の魔王が誕生するだけだということが分からぬからな」

魔王「そればかりか勇者自身が死んでしまえば貴様一人で国へ帰れんだろうに・・・やれやれといわざるを得ない」

魔王「では今から貴様を国に戻そう・・・と言いたいが、これでは対等でない。報酬としてこの俺の眼をくれてやろう」スッ

少年「ぐあああ!!!」グチョ

魔王「あとはこの眼帯を巻いて・・・これで終わりだ。死にかけたら外すといい。だが無為に外せば俺の魔力が貴様を蝕むだろう。まあせいぜい使いこなしてみろ」

魔王「さて少年よ、言伝はまかせたぞ」パシューン

男(朝か・・・懐かしい夢を見た)ムクリ

男(もうそろそろ朝飯の時間か・・・さて)


男「みんなおはよう」

「「「おはよう」」」


少年はもともと勇者一行にいたわけではなかった。

両親を魔物に殺害され一人さまよっていたところ、たまたま勇者たちと遭遇することになる。

そうして紆余曲折を経た末に同行することになったのだ。

魔王に言伝を任された少年ではあったが、勇者の住んでいた大集落とは生まれも育ちも違う。

魔王は彼も勇者と同じ集落の育ちと勘違いしたのだろう、少年は見知らぬ場所に転送されてしまった。

そうしてこれからどうしようかと悩んでいるところを、集落の孤児院的な施設に保護された。

孤児院というのは体のいい話で、真の狙いは戦争の捨て駒を生み出すことにある。

その最たる理由は無論、身寄りのいない子供は都合がいいということにある。

ここで育つ子供は戦いに明け暮れ、大人になったら戦死してゆくのだ。

そんな中、今でも言伝を果たせぬまま暮らす男であった。

男(えと・・・つぎは体育か)

友「おい男、今日こそ一本とってやるからな!」

男「ハッいくらでもかかってこいよ」


普段は学校のように授業があるのだが、その内容は実に好戦的なものだ。

例えばここでいう「体育」は戦闘訓練ほか救急救護、サバイバルの実践などである。

しかし仮にも男は勇者と共に旅路を歩んだ身、たいていのことは軽々とこなしてしまうのであった。

教官「次・・・友対男!」

友「覚悟しろ男・・・今日はまだ一回も負けてないぜ!」

男「おーやるじゃーん」

教官「じゃあいくぞ。ようい・・・はじめ!」

友「そおい!」ブン

男「えい」ドゥクシ

友「ぐっ!!」バタ

教官「勝者、男!」

男(そーいや俺ここで負けたことないなぁ)

友「・・・お前とやるとマジ自信なくすわ」ハア

男「気にすんなよ、お前総合成績トップじゃん」

友「『意欲・関心』以外カンストしてるお前には言われたくねーわ」

男「じゃーどーしろと」

友「せめてまじめになれ。そして俺に敗れろ」

男「無理言うなよ・・・あ、授業はじまるよん」

友「え?うわやべぇ早く行くぞ!」ダッ

男「へーい」スタスタ

教官「今日は皆さんに大事なお話があります」

エーナンダロ ザワザワ

教官「我々人類が魔王に虐げられてから長い年月がたちますが、未だに魔王殺害の報告を聞いたことがありません。その事態を重く受け止めた政府は先ほど、魔王抹殺の強化を発表しました」

教官「簡単に言えば魔王殺害の部隊を増やすのですが、いささか人数が足りません。そこで皆さんのような若い方にも協力してもらうことになりました」

ナ、ナンダッテー マジデー

教官「静かに。そしてですね・・・わが学び舎からも一部隊派遣することが決定しました」

教官「友君!」

友「は、はい!」

教官「是非君に『勇者』を務めてもらいたいのだが、どうだろう?」

友「・・・教官、俺やります、やらせてください!みんなの親を、友達を、恋人を奪った魔王をこの手で殺れるのなら本望です!」

教官「・・・わかった、頼んだぞ友。先生信じてるからな、だから、必ず戻って来い!」

教官「そして残りの隊員なんだが、それは友自信で選ぶといい。出発の準備ができたら知らせてくれ。わかったな?」

友「はい!」

キリーツ チュウモーク レー ザワザワ


友「おい男」

男「やったな友・・・おめでとー」

友「ああ。それでさ・・・ついて来ないか?」

男「あーごめんそれ無理」

友「・・・だよな、言ってみただけだ。・・・じゃあさ、約束しよう」

男「約束?」

友「ああ、約束だ。絶対、絶対にまた会おう」

男「・・・ああ、そうだな」

友「・・・よし、それじゃあまた明日、ってそれはノーカウントだからな?」タッタッタ

男「分かってるよ・・・またな」バイバイ

後日


友→勇者「みんな今までありがとう・・・絶対魔王のやつをぶっ殺して戻ってきてやるからな!」

戦士「うはww魔王の首持ち帰ってくるわwwww」

賢者「ふぅ・・・持ち帰るのは平和でしょう?」

僧侶「物騒なことを・・・それではお元気で」

ジャーナー

キャーユーシャサマカッコイイー



男(・・・さて、俺も準備するか)

魔王と会ったあの日から男はずっと考えていた。

魔王を倒しても諍いが無くならないのならどうすればいいのか。

無駄な血を流さずに済む方法はないのか。

魔王が嘘をついているとは思えないが、解決策も浮かばない。

より広くの人間に魔王の言葉を伝え、信じさせるにはどうすればいいだろう。

そんな中で思いついた、たった一つの案。

逃げでもあるし、賭けでもある。

なんでこんなことを思い浮かんだのか、自分でも分からない。

ただ、なんとなく、そこに答えがある気がした、それだけのこと。





男「一人旅の始まりだ」

あきた

とはいえ、全くの無策で旅立つというわけではない。

ただの男一人で「魔王倒しても無駄だぜ」と言っても耳を傾ける人はいない。

それはなぜか。伝える者が凡人だからか。いや、伝達方法によるものか。

他にも探せばいくつか理由が挙げられるが、この二点が大きいのではないか。

ならば「魔王」が「同時に多くの人間に伝える」ことができればいい。

そう考えた男は旅先に魔方陣を組みリンクさせ、魔王のフリをして同時伝達する方法を思いついたのだった。

俺「この描写は省くけど、説明がてら」


フィールド

男(・・・どこ行こう・・・さすがに無計画すぎたわ)

男(ここは天に身を任せて>>27にでも行くか)

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