穂乃果「屋上の星花火」 (101)

花陽「保健室の夢枕」
花陽「保健室の夢枕」 - SSまとめ速報
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これの続き。変な世界観なので読んでないと戸惑うかも

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物語の終わりは突然に

3016年7月17日(水)

穂乃果「うーー…っん! 気持ちいい!」

午前中の授業が終わって、教室を一番に飛び出して私が向かったのは屋上!
じりじりと照り付ける太陽と、そよそよと頬を撫でる風のコントラストが気持ちいい

穂乃果「いただきまーす!」

日陰に腰かけ、持ってきたパンにかぶりつくこの瞬間……あぁ、幸せぇ…
私はここから眺める空が大好きだ。吸い込まれそうな深い群青。透き通るような真っ白い雲。眩しく輝く太陽。
屋上の柵にとまっている小鳥が羽繕いしている様子をぼんやり眺めながら、むしゃむしゃとパンを頬張る。

テスト期間が終わり夏休みを1週間後に控えた今日この頃。
思い悩むことなんか何一つなくって、何でもかかってこい!っていう気分
なんというか…無敵って感じ?

穂乃果「夏休みだぁーーーーー!!!!」

空に向かって思い切り叫んでみる。ああ、夏よ、夏休みよ。
思う存分、隅から隅まで楽しんでやるから覚悟していろよ!

穂乃果の大声に驚いた先ほどの小鳥が柵の上から飛び立っていった。
それを何となく目で追っていくと、この爽やかな風景にはひどく不釣り合いな不気味な赤色の月が目に入った。

穂乃果「うーん…なんて言ったっけ、あれ。…りべる…りべろ…うん、思い出した! リベロンだっ! いやー今日もパンがうまい!」パクッ

ガチャッ

海未「やはり、ここにいましたか」

ことり「穂乃果ちゃん授業が終わった瞬間に走って行っちゃうんだもん…」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん! おーい、こっちこっち~! お弁当一緒に食べよー!」

ことり「うん! そういうと思ってちゃんと持ってきたんだ~」

穂乃果「おおっ、流石ことりちゃーん!」

ことり「えっへん」

海未「それより、先ほどの大声はなんですか? 下の階まで響いていましたよ?」

穂乃果「あはは…もうすぐ夏休みだなって思ったら嬉しくてつい…」

海未「はぁ…全く。気持ちはわからなくはないですが、もう高校生なんですから少しは押さえてください」

穂乃果「むぅ、気を付けます」

ことり「でも、そのおかげで穂乃果ちゃんがここにいるってわかったんだよ」

穂乃果「なぁんだ、じゃあプラマイゼロってことにしよう!」

海未「しません。ちゃんと反省してください!」

穂乃果「じょ、冗談だってー。…そんなことより早くお昼ご飯たべようよ!」

海未「全く…」

ことり「まあまあ。海未ちゃんも早く食べよ? …ことりの今日のお弁当は…じゃ~ん! 唐揚げです♪」

穂乃果「おお!おいしそう!」

ことり「…穂乃果ちゃんはまたパンだけ? ことりのおかずを分けてあげよう~」

穂乃果「ありがとう、ことりちゃん! 大好き!」

ことり「えへへ~わたしも~♪」

海未「むっ…またそうやって甘やかして…。穂乃果、私のも分けてあげます」

穂乃果「おっ? 海未ちゃんも穂乃果を甘やかしてくれるのかい?」

海未「私があげるのは主に野菜です」ヒョイヒョイ

穂乃果「のわぁ!? 何すんの、海未ちゃん! 台無しだよー!」

海未「台無しとは何ですか! 失礼ですよ! この野菜は親戚の野菜農家の人からいただいたもので、無農薬にこだわって丹精込めて作られたもので…」クドクド

穂乃果「うへぇ…またお説教…。ことりちゃん、卵焼きも貰っていい?」

ことり「うん、いいよ」

海未「聞いているのですか!!」

穂乃果「わ、わかってるよ! ちゃんと野菜も食べるって!……このことりちゃんの卵焼きで相殺して食べよう…」

……

ことり「それにしてもいい天気だね~」

海未「本当ですね。風が心地いいです」

穂乃果「空もきれいだね~……あ、そうだ! ほら、リベロン!」

ことり「りべろん?」

海未「何です、それ?」

穂乃果「おやおや、お二人さんご存じないのかね?」

ことり「う~ん…マカロンじゃなくて?」

穂乃果「ぶっぶー! 違います。マカロンではありません」

海未「バレーボールで守備を担当する…」

穂乃果「はい! それはリベロ!」

海未「穂乃果が答えてどうするんですか…」

穂乃果「あはは、つい…」

ことり「うーん…なんか聞いたことあるような、ないような…」

海未「私も心当たりないですね。穂乃果、正解を教えてください」

穂乃果「仕方ないなぁ。ほら、あれだよ! 最近現れたあの紅い月!」

ことり「…あれは確かリベロンっていう名前じゃなくて、リベリオンだよね?」

穂乃果「…あ、言われてみればそうだったような…」

海未「それでは、問題になってないじゃないですか…」

穂乃果「いやーはは…ちょっとど忘れしてたよ…。でも、リベリオンっていうよりリベロンって呼び方の方が可愛くて愛着わかない?」

ことり「わかる! りべろんろん♪」

穂乃果「だよね! じゃあ、これからはリベロンって呼ぼう!」

ことり「さんせーい!」

海未「り、リベロン…ですか? 私はリベリオンという呼び方の方がカッコいいと思うんですが…」

ことり「海未ちゃん、なんか言った?」

海未「い、いえ、何でもないです」

穂乃果「それよりも、お昼なのにあんなにはっきり見えるなんて! 隣のお月様は白く霞んじゃってるのにね」

海未「確かに…昼間でもこんなにはっきり見えるものなのですね」

ことり「赤いお月様と白いお月様、2つ並んで仲良し可愛いな~♪」

穂乃果「うんうん!きれいだよねー!」

海未「…二人ともよくそんな感想が持てますね。私はどうしてもあの紅い月は苦手です」

ことり「そういえば前にもにこちゃんが似たようなこと言ってたよ。不気味だって」

穂乃果「えー、海未ちゃんもにこちゃんもセンスがないんだよー」

ことり「穂乃果ちゃんはあの良さをわかってくれるんだね!」

穂乃果「もちろん! 大好きリベロン!」イェーイ

ことり「いぇーい!」

海未「…穂乃果、ことり。もしかして、リベリオ」

穂乃果「リベロン!」

海未「…」

海未「リベリ」

ことり「リベロン!」

海未「な、なんなんですか?」

ことり「『なんなんですか?』だって?」

穂乃果「ねぇー…リベロンなのに…ねぇ?」

ことり「リベロンなのにねぇ…?」

海未「…」

ことほの「リベロンなのにぃ…ねぇ?」

海未「ちょ…ちょっと! わかりました! わかりましたから…なんか…怖いので止めてください!」

穂乃果「わかればいいんだよ!」

ことり「だよ!」

海未「はぁ…全く…。それで…もしかして穂乃果とことりは、その…リベロン…がなぜ別名『叛逆の紅月』なんて呼ばれているのか知らないのですか?」

穂乃果「はんぎゃく…?」

ことり「あ…それもにこちゃんが言っていたけれど教えてくれなかったんだよね」

海未「穂乃果はともかくことりまで知らないとは…」

穂乃果「穂乃果はともかくって…」

海未「では、知っているのですか?」

穂乃果「知らないけどさぁ…。なんか今日海未ちゃん、穂乃果に厳しくない?」

海未「き…気のせいです」

穂乃果「むぅ…」プクー

私が膨れると海未ちゃんはちょっと慌てたようだった。

ことり「あはは…それでなんでなの?」

海未「…はい。…ちょっとショックを受けるかもしれませんが、この際なので教えておきましょう」

海未「…星喰というのをご存知ですか?」

穂乃果「どーせ穂乃果はバカだからわかりませんよーだ…」ブツブツ

穂乃果はいじけて皮肉っぽく返事をした。…もちろんほしくい?なんて聞いたこともない

ことり「え、えーと…ことりもあんまり詳しく知らないんだけれど…宇宙で一番大きな生物って言われている?」

海未「…そうです。星喰とはその名の通り惑星を捕食する超巨大生物のことです。ことりのいう通り現在確認されている生物で最大のもので、その大きさは地球とほぼ同等といわれています。そして、今あそこに見える紅い月…リベリオ…リベロンはまさしくその星喰そのものなのです」

海未「かつて大昔、この地球には今の月と『輝夜』と呼ばれる、合わせて2つの衛星がありました。しかし、あるとき星喰が現れて『輝夜』を一つ食べてしまったのです。星喰は『輝夜』を食べるとどこかに姿を消しました」

海未「それから長い年月が経ち、その事実も古い歴史として人々の記憶から失われかけていましたが、今こうしてその歴史が繰り返されようとしています。…簡単にいうと星喰が月を食べようとしているのです」

穂乃果「え…それじゃあ、お月様なくなっちゃうの…?」

海未「おそらくそうなるでしょう」

穂乃果「」

ことり「そ、それじゃあ、リベロンがお月様に近づいてきたのって仲良くなりたいからじゃなくって…」

海未「月を食べるためでしょう」

ことり「」

穂乃果「い、嫌だよ! 穂乃果、お月様大好きだからなくなっちゃったら寂しいよ~…」

ことり「ことりも…お月様がなくなるの嫌だな…」

穂乃果「海未ちゃん、なんとかしてよ!」

海未「そんな、私に言われても…」

ことり「海未ちゃん…おねがぁい…」

海未「うっ…いくらことりのお願いでも、無理なものは無理なんですぅー!」

穂乃果「最終兵器ことりちゃんのおねがぁい攻撃でも無理だなんて…」

ことり「そ…そんな…」

穂乃果「なんでこんなことに…全部、リベロンのせいだ。…リベロン! 宇宙に帰れー!!」

ことり「こんな思いをするくらいならあなた(月)と出逢わなければよかったのに…」オヨヨ

穂乃果「かえれ~…かえれ~…」

海未「お、落ち着いてください、2人とも! 私を置いていかないでください~!」

ふっふっふ、海未ちゃん困ってる困ってる。私にお説教ばっかりして…さっきの仕返しだよ♪
…とはいうものの、やっぱり衝撃的な事実だ。お月様がなくなっちゃうなんて…。寂しいな…。
何にせよリベロンのせいってのは間違いない。できることなら、本当にこのおまじないが効くといいんだけどなぁ。
あれ?そういえば、リベロン。以前見た時より一回り大きくなっているような…。気のせい…かな?


~放課後~

ことり「はぁ…」

ことりちゃん落ち込んでいるなぁ…。昼間の件はことりちゃんにはショックが強すぎたみたい。気持ちはわたしも痛いほどわかる。
何とかならないか午後の授業をいっぱい使って考えてみたけれどまったくいい案は浮かばなかった。そりゃそうだ、なんて言ったって相手は地球サイズの化け物だ。
授業中のそんな私たちの様子を海未ちゃんが心配そうな顔でずっと見ていた。

海未「ふ、二人とも! 今日の授業も終わり、これで夏休みまで残り6日ですよ、6日! 楽しみですねー、今年は何をしましょうか?」

海未ちゃんがぎこちない励ましを送ってくれている…

ことり「天体観測…したいなぁ…」

海未「い、いいですね~、天体観測!夏らしいですね!」

ことり「ことりの新しいお月様を見つけるんだ…」

海未「あ、あはは…見つかるといいですね…」

ことりちゃん重症だよ…。励ます海未ちゃんが流石に気の毒になってきた。
このままだと海未ちゃんもおかしくなっちゃいそうだから、そろそろフォローに入ってあげよう。

穂乃果「大丈夫だよ、ことりちゃん! きっとなんとかなるよ!」

海未「穂乃果…?」

ことり「…なんとかなるって?」

穂乃果「え…えーっと、それは…。ほ、ほら!まだお月様がなくなると決まったわけではないよ! 本当にリベロンはたまたまお月様の近くを通っただけかもしれないよ!」

海未「それはさすがに無理があるのでは…」ヒソヒソ

穂乃果「だ、だよねー」ヒソヒソ

ことり「うん…穂乃果ちゃんのいう通りかもしれない! リベロンはきっとそんなに悪い子じゃない!」

なんとかなった!

穂乃果「そうそう!リベロンはいいやつだよ、きっと!」

海未「そうですね!私も間違っていました。リベロン大好きです!」

ことり「あ、でも夏休みに天体観測するのは約束だよ?」

穂乃果「うん、やろうやろう!」

海未「それなら真姫が大きな望遠鏡を持っていると言っていたのでそれを借りましょうか?」

ことり「うん!それじゃあ折角だからμ'sのみんなも誘ってやろうよ!」

穂乃果「いいねー!みんなで天体観測大会!楽しみだ!」

ことり「それじゃあ日程は…あれ? 花陽ちゃんからメールだ」

穂乃果「穂乃果の所にもきている」

海未「私にもです」

ことり「μ'sのみんなに送っているみたいだね。なになに…『大事な話があるので部室に集まってください』…だって」

穂乃果「大事な話…? なんだろう?」

海未「とにかく一度部室に行ってみましょう」

~♪~♪~

穂乃果「あ、もうみんな集まってる」

部室に入るといつもの賑やかな部室と違って、空気が張り詰めていた。
いつになく真剣な表情をした花陽ちゃんの横には少し不安そうな凛ちゃんが並んでいた。
ふたりが演説者のように部室の奥に立ち、その前のテーブルには既に集まったメンバーが黙って座っていた。

絵里「これで全員集まったみたいね」

花陽「うん。みんな来てくれてありがとう。今日はメールでも書いたようにみんなに大事な話があります」

声のトーンには緊張が感じられ、それを察した全員が次の言葉を静かに待った。

花陽「…まず、これから話すことは、みんなを凄くびっくりさせちゃうと思うし、最初はとても信じられないことだと思う。ただ、こんなことを話せるのはみんなしかいないし、私と凛ちゃんだけじゃどうにもならなくて…」

なぜか今にも泣きだしてしまいそうな花陽ちゃん

凛「かよちん大丈夫…?」

花陽「うん、平気だよ。ごめんね、凛ちゃん?」

凛「ううん、謝るのは凛の方だよ…。こんなことお願いしちゃって…。本当は凛の口からみんなに説明するべきだったんだろうけど、凛にはうまくできそうもなくて…」

にこ「ちょっと、話が見えてこないんだけれど」

花陽「あっ、ご、ごめんなさい」

花陽ちゃんはそういうと、ふぅっと一呼吸いれて、きりっとした表情に切り替える

花陽「それじゃあ、言います」





花陽「今日から一週間後…ちょうど夏休みが始まる日。この地球は滅びます」

絵里「…今、なんて?」

長い沈黙の後、その場にいる全員の思考が追いつかない中、絵里ちゃんがかろうじて言葉を発した

花陽「一週間後の夏休みが始まる日にこの地球が滅びます」

ちきゅうがほろびる…? どういうこと?

絵里「…聞き間違いではなかったみたいね。地球が滅びるって」

ちきゅうが…地球が…ほろ…びる…? ほろび…滅び…

穂乃果「滅びる!? 地球が滅びるって言ったの!?」

花陽「ピャァ!? ……はい、そうです。地球が滅びるんです!」

なにそれ…いみわかんない…。真姫ちゃんじゃないけど…みんなそう思っているはずだ

にこ「…どういうこと?冗談じゃないの?」

凛「冗談じゃないよ!かよちんは嘘なんて絶対つかないんだもん!」

海未「そうは言っても…あまりにも突拍子もなさ過ぎて私も信じられません」

花陽「そう…ですよね。私も最初は信じられませんでした。…でも、本当なんです」

真姫「冗談…じゃないとしたら、何か根拠があるってこと?」

花陽ちゃんが黙ってうなずくと、凛ちゃんに目配せをする。凛ちゃんはそれに応じて大きな本を取り出した。

真姫「随分古い本ね。えーと…『人類の歴史』? …なんなの、これ?」

凛「この本は、凛が旧図書室の禁書エリアで見つけたんだ」

真姫「旧図書室? 禁書エリア? …そんなの聞いたことないんだけれど」

絵里「旧図書室ってこの間の…」

凛「うん、絵里ちゃんは知ってるよね? 細かい説明は難しいからしないけれど、旧図書室にはこの音ノ木坂の図書室に入りきらなくなった本やえつらんせーげん?のかかった本が集められているんだよ」

真姫「…ちょっと興味あるわね」

凛「また今度教えてあげるにゃ。…それでその中の一角に禁書エリアがあるんだけれど、そこでは特にえつらんせーげんが高い本を守るために中が迷路みたいに入り組んでいるの」

凛「凛は一度間違えて入っちゃって酷い目にあったんだけれど…そのときに気付かないうちに一冊だけそこから持ってきちゃったみたいで…。その本がこの『人類の歴史』だったんだ」

希「人類の歴史…ってタイトルはいたって普通みたいやけど?」

凛「うん…。最初はつまらなそうな本だなって思ったから枕にしてたんだけど…本の魔力…っていうやつかな? なんだか急に気になっちゃって読んでみたんだ」

希「それで、どんな内容だったん?」

凛「それは…見てもらった方が速いかも」

私たちはその本の…『人類の歴史』の周りに集まってページを開いた。

【人類の起源は猿人と呼ばれる直立二足歩行が可能になったサルである】

凛「最初の方は飛ばしていいよ」

【弥生時代になると大陸から日本に稲作が伝わり全国各地に広まった】

花陽「お米文化の到来…日本人の歴史はここから始まったと言っても過言ではないですね」

真姫「…花陽?…やっぱりふざけてるだけじゃないでしょうね?」

花陽「ご、ごめん…つい…」

【1192年 鎌倉幕府開設】

海未「武士の時代の始まりですね」

【1914年 第一次世界大戦勃発】

絵里「悲しい歴史だわ…」

【1999年7月 宇宙より飛来した惑星型超巨大生物によって2つの月のうち一つ『輝夜』が捕食される。新たに確認されたこの巨大生物を『星喰』種と名付け、個体名『ノストラダムス』と命名した。ノストラダムスは輝夜を捕食後、再び宇宙のどこかへ姿を消した。】

ことり「さっき海未ちゃんが話してくれた星喰のことも書いてあるね。個体名はノストラダムスっていうんだ」

海未「名前の由来は古い予言者の名前からきているみたいです。話によるとこの時の星喰の襲来も予知していたとか…」

穂乃果「ふーん…このノストラダムスってやつとリベロンは別の星喰なの?」

海未「そのようですね。リベロンは個体名『リベリオン』ということになります」

穂乃果「なるほど」

真姫「リベロンってなんなの?」

穂乃果「リベリオンの愛称だよ!」

真姫「そ、そう…」

絵里「この事件は輝夜祭の起源にもなったのよね。その昔は亡き輝夜へと思いを馳せて夜通しみんなで踊り続けていたらしいわ」

穂乃果「今でも夏祭りみたいで楽しいよね、輝夜祭! 毎年夏休みの始まる日に大きな花火をどかーんって! ああ、もう一週間後が待ちきれない!」

海未「ちょ、ちょっと、穂乃果!」

穂乃果「あ…」

さっきの花陽ちゃんの話では夏休みの始まるちょうど一週間後…つまりまさに、この輝夜祭の日に地球が滅びると言っていたのを思い出した。

花陽「…いえ、気にしなくていいです。続きを読んでいきましょう」

【2020年夏 2度目となる東京オリンピック開催】

にこ「2020年に2回目…か。えーと、今度のが何回目だっけ?」

凛「凛知ってるよ! えーとね……あれ?わかんなくなっちゃった…。とにかくたくさん!」

にこ「ズコー」

凛「あ、それがショーワのギャグってのは知ってるにゃ!」

【2264年 枯渇間近となった資源を巡って第三次世界大戦勃発】

希「二度あることは三度あるってこのことやね…」

真姫「人類史が180度変わったとも言えるほどの大事件ね」

絵里「ええ。でもそれと同時に長い闇の時代が幕を開けるのよ…」

【2516年 地球コア付近で新エネルギーの鉱脈を発見。新エネルギーは赤みを帯びたガス状の物質で、採掘中に爆発的に噴出し瞬く間に地球全土を覆った。このガスを吸った人間はその瞳が赤く染まり、超常的な能力を扱えるようになった】
【この能力はそれまでフィクションとして世に知られていた『魔法』と似た性質を持っていたため、自然とその呼び名が定着した。新エネルギーの登場によってエネルギー問題が解消され、冷戦状態だった第三次世界大戦が終わりを告げた。また、同時に科学の時代から魔法の時代へと移り変わる】

にこ「今からちょうど500年前のできごとなのね」

ことり「魔法のない時代ってなんだか想像できないな」

希「今のうちらからしたら科学の方が魔法みたいなものやね」

【2525年2月 国立音ノ木坂魔法学校が開設され、生徒の募集を始める。世界初の魔法専門学校として魔法時代の先陣を切る】

にこ「覚え方は、にっこにっこに~♪音ノ木伝説の始まりらぶにこ♪ ね」

真姫「…」イミワカンナイ

【2801年 音ノ木坂魔法学校に新図書室が増設される】

凛「あ! ほら、今ある図書室はこのときできたものなんだよ!」

海未「新図書室が200年前とは…。そろそろまた新しい図書室ができるのでは…?」

【3016年4月 音ノ木坂魔法学校に特殊魔法部隊『μ's』が設置される】

穂乃果「おお! μ's のことも書いてあるよ!」

絵里「えっ?」

にこ「わたしの活躍が書いてあるかもしれないわ! 探すのよ!」

真姫「…」

穂乃果「あ、にこちゃんのこと書いてあったよ!」

【3016年4月16日 矢澤にこ、身体測定にて3サイズをサバ読む】

にこ「ぬゎあによこの記事!? なんでこんなことまで…」

ことり「こっちに凛ちゃんの記事があるよ!」

【3016年4月20日 星空凛、宿題を忘れる。2日ぶり3回目】

凛「にゃはは…」

海未「全くあなたたちは…ろくなことをしてませんね…」

ことり「そういう海未ちゃんも♪」

【3016年4月20日 園田海未、野良猫に話しかけるも無視される】

海未「な、なんですかこれは…! 何かの間違いです!///」

絵里「これはさすがにおかしいわね…」

海未「そうですよね…おかしいですよね…。猫に話しかけるなんて…どうかしてますよね…」ドヨン

絵里「う、海未!? そういう意味じゃないのよ!?」

真姫「…この本の表紙、かなり古そうなものなのに、書かれている内容はつい3か月前のできごと。…しかも内容が本人しか知らないようなことまで…」

希「一体どういうこと?」

花陽「…それは最後まで読めばわかるよ」

【3016年6月10日 園田海未、西木野真姫、オトカクシを捕獲する】
【3016年6月10日 星喰『リベリオン』が地球周回軌道に出現する】

海未「随分最近…1か月ほど前のできごとですね」

真姫「…ちょうどこの日にリベリオンが現れたのね」

【3016年6月26日 星空凛、旧図書室禁書エリアに迷い込む】
【3016年6月26日 矢澤にこ、南ことり、空の散歩を楽しむ】

凛「この本を見つけた日だよ」

絵里「確か帰りに大きな虹をみたわね」

穂乃果「空の散歩って何のこと?」

ことにこ「さ、さあ~?」

【3016年7月13日8:50 小泉花陽、貧血で倒れる】

絵里「つい一週間前ね。時間までかかれているわ」

希「この日って確か…花陽ちゃんが鏡の世界へ行った日やね?」

花陽「そうです。そして、この日に凛ちゃんから地球が滅亡する話を聞いたんです」

【3016年7月17日15:26 小泉花陽、μ’s メンバーにメールを出す】

希「これは今日の日付…!? っていうか、ついさっきの出来事やん!」

ことり「時間まではっきり書かれているよ?」

真姫「今メールを見直したけど、受信時刻は確かに15:26になっていたわ」

穂乃果「ねぇ、これ見て!」

【3016年7月17日16:07 西木野真姫、小泉花陽のメールを見直す】

真姫「今の時刻…16:07…」

希「この本は未来に起こるできごとまで書いてあるってこと?」

花陽「うん、その通りだよ」

にこ「それじゃあ、にこにーの輝かしい未来までわかるってこと!? どれどれ…って、なぁんだ、あとこれだけ? 大して遠い未来まではわからないのね」

穂乃果「最後の記事は何かなーと? えーと、なになに………!?」

ことり「こ、これって…!!」

真姫「なるほど…そういうことね」



【3016年7月24日19:00 地球滅亡。以上が人類の歴史である】

今日は以上です

~3016年7月18日(木) 地球滅亡まであと6日~

昨日はほとんど眠ることができなかった。凛ちゃんが偶然見つけた『人類の歴史』という本は人類の未来の歴史まで書かれた言わば予言書であった。
初めはなにかの冗談かと思ったけれど、実際にその本に書かれていた未来が次々と現実のものとなったのを目撃する限り本物とみて間違いないだろう。
…そして、その『人類の歴史』最後の予言は6日後に地球が滅亡するという絶望的な内容であった。
しかし、この本が見つかったのは不幸中の幸いかもしれない。未来が分かるならば変えることができるかもしれない、と昨日はみんなで話していた。
だが、花陽ちゃんの話によると、『人類の歴史』に書かれた未来は絶対ならしい。つまり、未来を変えることは不可能ということだ。
もちろん、みんな納得いくはずがない。それが本当なら…地球滅亡を受け入れなければならない。
その後はミーティングをして解散ということになり、「何としても未来を変えて見せる!」とみんな意気込んで帰路へとついたのだった。
そして迎えた翌日…

絵里「…全滅ってわけね」

昨晩は、にこちゃん、真姫ちゃん、海未ちゃん、凛ちゃんの4人の未来が予言されていたのだが、全員その予言の回避に失敗したのだった。

にこ「な、なんでこうなったの…。私の計画は完ぺきだったのに…」

~~~

【3016年7月17日20:45 矢澤にこ、食器を割る】

にこ「こんなの余裕よ余裕!ようはお皿を使うのを避ければいいんでしょ? というわけで…じゃーん!今日は夕飯にピザを頼んじゃったにこ♪ もう、にこってばあったまいい~」


にこ(時刻は20:44…。予言の時間まであと1分ね。ご飯も食べ終わって片付けも全部済んだ…。この状態から皿を割るほうが難しいわ!にこにーの完全勝利よ!)

にこ「さあ、みんな。もうそろそろおもちゃ片付けて寝る支度しなさい」

こころあ「はーい」

こころ「じゃあわたしがおもちゃを片付けてるからここあは先に歯を磨いてきてね」

ここあ「うん、わかった!」ダダダッ

にこ「こらこら、そんなに走ったりしたら危な……」

にこ(…ん? …しまった! たしか洗面所のコップはガラス製! 食器っていうからお皿だと思ったけれどコップも広い意味では食器のうち…!!)

にこ(このままじゃ、予言通りにコップが割れてジ・エンドよ。くっ…間に合えっ!)ダッ

パキッ

にこ「ん? 何か足元で踏んだような…」

ここあ「あー! にこにーおもちゃのお皿踏んでるー!」

にこ「へ…? お皿…まさかおもちゃの…?やられたわ…」ガックリ

~~~


真姫「…洗面所で妹さんがコップを割ったとしても、それはにこちゃんが割ったことにはならなかったんじゃない?」

にこ「うっ確かに…。 で、でも、とっさのことでそこまで考えられなかったのよ! …ていうか、真姫も失敗したんでしょ?人のこと言えないじゃない!」

真姫「そ…それは…」

~~~

【3016年7月17日19:32 西木野真姫、ピアノを弾く】

真姫(何これ、ピアノを弾かなければいいんでしょ?それともまさか、ピアノを弾かないといけない状況にでもなるっていうの?そんなのありえないわ。余裕よ余裕!)フフン


真姫ママ「…というわけで、明日とっても難しい手術を受けるこの子がどうしても最後に真姫ちゃんのピアノを聴いて勇気をもらいたいんだって」

「おねえちゃん、僕ね…明日死んじゃうかもしれないんだ…。だったら最期におねえちゃんのピアノを聴きたいな…」

真姫(なにこれ…なんでそうなるの!?)

真姫「だ、大丈夫よ、元気出しなさい!あなたの手術をするの誰だかわかってるの?この天才マッキーのパパよ!成功するに決まっているわ!だからね、ピアノは手術が終わった後ゆっくりと…」

真姫パパ「明日の星座占いが最下位だった。もうだめかもしれない」

真姫ママ「パパは昔から星座占いの結果に重きを置いているのは知っているでしょ?1位だと実力の300%出せるけれど、最下位だと1%も出せないポンコツなのよ」

真姫「はぁーー!? なんでよりによってこんな重要な時に…!パパのバカ!!ヤブ医者!!ポンコツ!!でも好き!!」

「おねえちゃん、お願いだよ…。おねえちゃんのピアノを聴けたらがんばれる気がするんだ」

真姫「……」

~~~

希「これはしょうがないね」

ことり「さすが真姫ちゃんは優しいな~」

真姫「べ、別に! たまたまそこにピアノがあったから弾いただけなんだから!」

穂乃果「手術成功するといいね!」

真姫「…そうね」

絵里「それで、残りの凛と海未もダメだったみたいね…」

海未「うう…すいません。努力はしたのですが、思いもよらないアクシデントが起きまして…」

凛「凛もやっぱり駄目だったにゃ…」

花陽「これでわかってくれたかな? この『人類の歴史』の予言は絶対なんです。凛ちゃんと私で何度も試したけれど、今までに一度も結果は変わらなかった…。地球滅亡はこのままだと確実に起きてしまいます!」

絵里「そうは言っても…一体どうすればいいのかしら…」

真姫「でも、残り時間は6日しかないのよね…。正直地球滅亡って言われてもピンと来ないわ」

希「しかも、予言に書かれているのは【地球滅亡】だけやし…。具体的な原因すらわからんのは困るなぁ…」

花陽「この予言の怖いところは原因がわかっても防ぎようのないところなんだよね…」

海未「つまり、現時点での課題は2つですね。一つは地球滅亡の原因の究明。もう一つは絶対と言われる予言を覆す方法を見つけること」

ことり「どっちも一筋縄ではいきそうもないね…」

花陽「私と凛ちゃんで散々色々試したけれど、まだ何も手がかりが見つからないんだ…」

にこ「私も予言を回避しようとしたのに見事はめられたっていうか…一度経験しちゃうと、どうも自信がなくなるわね…」

凛「もう…だめなのかな…」

凛「本当にみんなあと6日で…。…そんなの、嫌だよ…。凛はまだ、死にたくないよぉ…」グスン

花陽「凛ちゃん…」

凛「…かよちんが死んじゃうのはもっと嫌だよぉ…」ウエーン

花陽「私も…凛ちゃんが死んじゃうのは嫌だよ…」ウルウル

ことり「ふ、ふたりとも泣かないでー…、きっと…きっと大丈夫だから…」

凛「本当…?ことりちゃんは、何かいいアイデアがあるってこと…?」

ことり「そ…それは…」

凛「…そうだよね、やっぱり気休めだよね。気休めじゃ…世界は救えない」

ことり「……っ!」

海未「凛、それは言いすぎです。ことりはあなたを心配して言ってくれたんですよ?」

凛「…ごめんね、ことりちゃん。凛、ちょっと頭がこんがらがってて…」

ことり「ううん…。凛ちゃんの気持ちはよくわかるから。きっとここにいるみんなも同じだよ」

鉛のように重たい空気が流れる。出口の見えないトンネルの中をさまよい続けているような…。
みんなどうしていいのかわからなかった。

ことり「これから一体どうすれば…」

海未「どうすれば…」

「どうすればいいの…?」




穂乃果「やるったらやる!!」

凛「ほ…穂乃果…ちゃん…?」

穂乃果「考えてたって仕方がないよ!…まずはとりあえずやってみよう!考えられること全部試そう!」

凛「無理だよ…。もう凛たちは何十回も試したのに…それでも結局未来は変わらなかった…」

穂乃果「だったら、何百回も試そうよ!まだ、試していないことだってたくさんあるでしょ?地球を滅亡なんか絶対させない!」

凛「…」

穂乃果「凛ちゃんがこの『人類の歴史』を気付かない間に持ってきちゃったのはきっとこれを見て、地球の危機をみんなに伝えて、それで地球を守れって意味なんだよ!」

凛「…!」

穂乃果「そして、凛ちゃんには私たちμ's がついている! μ's はこれまでどんな困難でも乗り越えてきた。今回もみんなで力を合わせればきっとなんとかなる!こんな悲しい未来だって変えられる!…えーい、こんなもの!!」

私は『人類の歴史』の最後の予言にペンで書き足してやった。


【3016年7月24日19:00 地球滅亡。以上が人類の歴史である】
【            は しない!!絶対に!!   】

凛「穂乃果ちゃん…」

海未「穂乃果のいう通りです。私たちは少し弱気になっていたみたいですね」

ことり「諦めないことの大切さ、穂乃果ちゃんに教わったんだよね!」

花陽「もう一度だけ…ううん、何度だって頑張るんだ!」

真姫「ま、別に私は最初から諦めたつもりはないんだけどね」

にこ「一度ダメだったからってなんだっていうのよ。まだまだこれからよ!」

希「ウチには視える…みんなの明るい未来が視えるんや!」

絵里「μ's には何かを変える力がある…。それが例え運命だったとしても!」

穂乃果「さあ、凛ちゃん。未来を私たちの手で切り開こう!」

凛「…うん…うん!」


その日からμ's による地球防衛計画は始まったのだった。決して簡単なことだとは思わないけれど、これは最初の一歩だよ!
まずは、『人類の歴史』に未来が予言されたメンバーはそれを何とか回避しようと努力した。
それ以外のメンバーは凛ちゃん主導の元、旧図書館の大量の本を調べて何か手がかりがないかを調べた。
…本当は禁書のエリアを調べるべきだと思ったんだけれど、凛ちゃん曰く、次に入ったら今度こそ一生出てくることができない、と断言されてしまったのであきらめた。
その日は大した手がかりも見つからずに調査は打ち切りとなった。
でも、まだまだ始まったばっかりだもんね。ファイトだよ!叶え、私たちの夢!

~3016年7月19日(金) 地球滅亡まであと5日~

穂乃果「にこちゃん、そのケガどうしたの?」

にこちゃんは頭に漫画みたいな大きなたんこぶを作って部室にやってきた。

にこ「…予言で【矢澤にこ、体育の授業でケガをする】って、書いてあったから授業を見学をしてたの。ちょっと油断してたら、ボールが飛んできてこのざまよ…」

絵里「…ごめんね?」←犯人

【3016年7月19日 絢瀬絵里、体育の授業でホームランを打つ】

にこ「別に…どうせ回避できやしないんだから…」

穂乃果「にこちゃん!未来は変えられるんだよ!?諦めちゃダメだよ!!」

希「そうやで、にこっち! にこっちはちゃんと本気で全力でボールを避けたん!?」

にこ「…あんたたち、ちょっと適当になってない?」

ガラッ!

海未「誰ですか!? 部室の看板を『地球防衛軍本部』に書き換えたのは!!」

穂乃果「海未ちゃん!?」

【7月19日 園田海未、怒る(20分ぶり本日17回目)】

にこ「なんだか予言まで適当になってるような…」

希「ていうか海未ちゃん怒りすぎやない?」

海未「穂乃果!あなたの仕業ですか?わたしがあれほど『ワールドセイバーズ』の方がいいと言ったのに!」

穂乃果「えぇ~!なにそれ、知らないよそんなの!」

希「あ、それ書いたのうちや」

海未「なんと、希の仕業でしたか。穂乃果、失礼しました」

穂乃果「もう!なんなのさ!毎回穂乃果のせいにばっかりして!…それにワールドセイバーズって何?海未ちゃん、センスないんじゃない?はっきり言ってダサいよ!」

海未「ださ…」ガーン

真姫「ちょっと凛!答案用紙をちゃんと見せなさい!!」

凛「にゃー!! 見なくてもわかってるんでしょ!?」

【7月19日 星空凛、英語の小テストで0点をとる】

真姫「あなた本当に勉強したの? …ていうか、昨日この予言見てたなら0点回避しようと努力しなさいよ!」

凛「だってどんなに勉強したって0点なんだよ!? 勉強なんてするわけないじゃん!!」

真姫「なによそれ!未来を切り開こうって昨日約束したじゃない!あの言葉は嘘だったの!?」

凛「わーん!かよちん助けてー!」


希(平和やなぁ……本当に地球は滅びるんやろうか)

~♪~♪~

絵里「それじゃあ、調査の報告会を始めるわよ。予言の回避を試みたグループと図書室で調べ物をしたグループに分かれたのよね。まずは予言の回避について報告をお願い」

希「今日予言があったのはウチとことりちゃんと花陽ちゃんだったね」

海未「私はことりの予言回避に協力しました」

花陽「私の予言は…今朝だったんだけれど…」

絵里「…結果は?」

花陽「ダメでした…」

絵里「そう…」

ことり「は、花陽ちゃんは頑張ったもんね?」

花陽「うぅ…ごめんなさい…朝気付いた時には…」

【7月19日7:13 小泉花陽、白米を食べる】

ことり「花陽ちゃんらしいね」

花陽「これはもはや条件反射なんです…。これだけは変えられる気がしません…」

希「あはは…まあしょうがないね。それじゃあ、ウチの報告やね!ウチの予言では…」

~~~

【7月19日12:15 東條希、ロイヤルストレートフラッシュをだす】

希(ロイヤルストレートフラッシュ? 確かに最近昼休みにポーカーするのがマイブームやけど…。今日はやらなければええんやな)

昼休み

モブ1「東條さん、今日もポーカーやんない?」

希「うーん…今日は遠慮しとこうかな」

モブ1「えー残念。東條さんいないとつまんないなぁ…。まあいっか、また今度ね!」

希(強引に誘われるのかと思ったけれどそういうわけでもないみたいやん。もしかして、大丈夫そう?)


モブ1「いえーい! 7連勝!今日はついてるわー!」

モブ2「えーまたー?イカサマしてるんじゃない?」

モブ3「確かモブ1は透視魔法が得意だっただろ!」

モブ1「そ、そんなのしてないって!…そんなに悔しかったら一度でも勝ってみなよ」

モブ2,3「ぐぬぬ…」

希(今やれば絶対ロイヤルストレートフラッシュが出せるんよね…。…い、いや、あかんあかん。落ち着け…)

モブ1「あーでも今日は本当に誰にも負ける気しないわー」

モブ2「くっ…東條さんがいれば…」チラッ

希(めっちゃこっち見てきとるし…でも、あかんあかん…ダメや…耐えるんや…世界のためや…)

モブ1「なんなら私に勝てたら焼肉奢っちゃおうかなー?」

モブ3「くっ東條…なんでこんなときにいてくれないんだ…?」チラッ

希(や…焼肉…!? ………いや、あかんで)

モブ1「さらに今ならこの期間限定アイテム『野生のちんすこう』くん人形までつけちゃおっと♪」

ガタンッ

モブ1「きたか」ニヤリ

モブ2、3「東條(さん)…」

希「ウチに任しとき!」

モブ1「いくら東條さんでも負けないよ!」


希「くらえロイヤルストレートフラッシュ!!!」

モブ1「あじゃぱーーーーー!!??」

希(んぎもちぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!!!)

~~~

にこ「最低ね…」

希「返す言葉もないわ…」

海未「ことりと私は…」

~~~

【7月19日 南ことり、ストーカーにあう】

ことり「ど、どうしよう…怖いよ…」

海未「これはなんとしても阻止しなくては…」


海未「ことり、大丈夫ですか? 誰かに付けられてませんか?」

海未「ことり!一緒にお昼を食べましょう!」

海未「ことり、着替えを用意しておきましたよ?ストーカーにとられてはいけないので!」

海未「ことり、トイレですか? ではドアの前で見張っておきますね」

海未「ちょっとことり!どこへ行くんですか?」

海未「ことり…こんな所にいたんですね? 私の目からは逃れられませんよ?」

海未「うふふ…ことり…」

「ことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことりことり」

~~~

にこ「あんたがストーカーしてどうすんのよ!」

海未「うぅ…だってことりのことが心配で…」

ことり「あはは…ちょっと怖かったけれど、私のためにやってくれたんだもんね? もう気にしてないよ」

海未「うぅ…ことりぃ!」ダキッ

ことり「ぴぃっ!?」ビクッ

にこ「やめなさい!ちょっとトラウマになってるじゃない!」ズビシッ

海未「あぅ…」

花陽「ほ、報告は以上です…」

絵里「それじゃあ、次は凛たちのグループね」

凛「凛たちは図書室で地球滅亡の原因の手がかりを探してきたから、それの報告をするね! それじゃあ…真姫ちゃんから!」

真姫「…ええっと…まず、私は過去の事例から生物が大量絶滅した規模の災害について調べてみたわ。隕石の衝突、大規模な地震や噴火、急激な気候の変動なんかがあったわ」

海未「もしそのような災害が起こるとして果たして防ぐことはできるのでしょうか…?」

真姫「正直かなり難しいと思うわ。準備する期間がもう少しあればあるいは可能かもしれないけれど、今回は時間がなさすぎる」

にこ「回避不可能な未来という意味では起きる可能性が高そうなのも事実よね…」

花陽「えっと…とりあえず私が調べたことも報告するね? …私が調べたのは過去にたくさんの人が亡くなった事例です。その主なものはききんによる食料不足や流行り病です」

花陽「さっき真姫ちゃんが挙げた災害に比べると規模は小さめですが、過去にないレベルのものになれば人類が滅亡する可能性も十分に考えられます」

真姫「食糧不足は今から1週間で起こるとは思えないけれど…新種のウイルスによる大規模感染の可能性は否定できないわね」

絵里「…私からもいいかしら? 私が人類滅亡ときいて最初に浮かんだものがあるの。……戦争よ」

絵里「科学の時代には半径数十kmを破壊しつくす核爆弾というものがあったと聞くわ。…これが第三次世界大戦で大量に使われたせいで人口は当時70%も減少したわ」

ことり「それじゃあ、その爆弾がもっとたくさん使われたとしたら…」

絵里「人類滅亡になりかねないわ。…でも、幸い科学の時代が終わるときに地球上の全ての核爆弾は解体されたわ。だから核爆弾によって世界が滅びることはもうないわ」

ことり「そっか…よかったぁ…」

絵里「…でもね、科学の代わりに生まれた魔法は時にそれ以上に危険な兵器となるのよ」

海未「…いわゆる禁術と呼ばれるものの類ですね」

絵里「ええ。禁術とは大きすぎる破壊力を持つため、使用を制限、あるいは禁止された魔法のことよ。その威力はさっき話した核爆弾よりもけた違いに大きいの」

海未「かつて心無いものが腕試しと称して南米の熱帯雨林を消滅させた事件もありましたね…」

絵里「これの怖いところは少しの才能を持つものが魔導書を手に入れることができれば扱えてしまうところね。力を持つものはその使い方に責任を持たなければいけないわ」

海未「そのとおりですね。折角の便利な力なのですから、人を傷つけるためではなく人を幸せにするためのものであってほしいものです」

希「でも、実際のところあと6日のうちに戦争が起こる可能性も十分考えられるよね?」

絵里「…そうね。悲しいことだけれど事実だわ。今の人類はみんなが核爆弾を抱えて生活しているようなものだから…」

花陽「そんな状態で戦争なんかしたら、地球が滅亡しちゃってもおかしくないよね…」

真姫「考えたくないけれど第四次世界大戦なんてことにもなりかねないわ」

絵里「人類が魔法を手にしてから初めての戦争ということになると、その規模も計り知れないし…」

にこ「ちょっと待って。このまま戦争が起きることを前提に話を進めていいわけ?」

凛「そ、そうだよ! 戦争で世界が終わるなんて…そんな悲しい話、もう止めにしよ?…誰か他の意見がある人はいないの?」

みんなは黙ってしまう。今話していることは所詮は机上の空論に過ぎないのだ。
そして、先行きのない不安に全員が飲まれてしまう。
私ももっとみんなのためになることが言えればいいんだけれど…、こういった難しい話はどうも苦手なんだよね…
だけど、せめて雰囲気を明るく取り持つくらいはしなきゃね! そう思ってふと気になっていたことをなんとなく話題に出してみる。

穂乃果「ねえ、この本って誰が書いたのかな?」

真姫「はぁ? そんなの……わかるわけないじゃない」

絵里「こんな不思議な本だものね…そもそも作者が存在しないかもしれないわね。不思議な魔法で突然できたとか?」

穂乃果「そうかもしれないけれど…この本は私たちμ'sに地球が滅亡する危機を教えるために現れた…そんな気がするんだよね。だって、そうじゃなかったらμ's のメンバーのこんなに細かい予言なんてわざわざ書かないと思うんだ。だとしたら、その起源を知ることって何かのヒントにならないかな?」

にこ「…穂乃果にしてはまともな意見じゃない」

穂乃果「ひどいっ!?」

絵里「でも本の起源っていわれても…凛は何か知らないかしら? その本を最初に見つけたのは凛なんでしょ?」

凛「えー…そんなこと言われても…。凛は禁書エリアに迷い込んだとき不思議な白猫さんに助けてもらったんだ。その白猫さんは凛が禁書エリアから連れ出そうとしたせいで消えちゃったんだけれど…」

凛「その後新図書室の方で目が覚めた時にいつの間にか手元にこの本があったんだよ」

絵里「目が覚めた時に手元に…?だとしたら、誰かが寝ている凛の手元に置いて行ったっていう可能性もあるんじゃない?」

凛「うーん…何となくだけれど凛にはわかるんだよ。この本は間違いなく禁書エリアにあった。多分、穂乃果ちゃんのいうとおり地球の危機をみんなに伝えるために凛についてきたんだよ」

ことり「ねぇ、もしかしたらなんだけれど…凛ちゃんの言っていた禁書エリアの白猫さんがこの本になっちゃった…とか?」

花陽「ホンニナッチャッタノォ!?」

凛「ことりちゃん…!きっとそうに違いないにゃ!あの時の白猫さんがまたこうして凛たちを助けてくれようとしているんだよ!」

希「ほほう、それはなかなかスピリチュアルな話やね! それじゃあ一度その線で色々と調べてみよか?」

凛「うん!」

意外にも私のひとことが調査の手助けになったみたい! 意外ってのは自分で言っててちょっと悲しいけど…
でも、本当にこの本が凛ちゃんの言っていた白猫さんの生まれ変わりなのかな?
本の表紙をそっと優しく撫でてみる。
すると、いままで気が付かなかったけれど表紙の隅に小さく何かが書かれているのを見つけた。
筆記体の…英語…かな? 何だか擦れているし…私には読めないや…

穂乃果「ねぇ、ことりちゃん。これってなんて書いてあるかわかる?」

ことり「うん? どれどれ~……!! これって…!」

穂乃果「なになに?なんて書いてあるの?」

ことり「R.Nostradamus …。この本を書いたのはノストラダムスなんだよ!」

穂乃果「えぇー!? ノストラダムス!? …って誰だっけ?どこかで聞いたような…」

ことり「さっき話していた星喰の名前の由来になった人…大昔の予言者の名前だよ!」

花陽「こ、こんな所に作者の名前が書かれていたなんて…全然気が付かなかったよ…」

凛「えぇー!! それじゃあ、あの白猫さんはそのノストラダムスっていうおじさんの仮の姿だったってこと!? …これは驚きだにゃ」

真姫「流石にそこまではわからないわよ…。ただ、この本があの大予言者が書いたものだっていうなら納得だわ。お手柄よ、穂乃果」

穂乃果「いやぁーそれほどでも…」ニコニコ

海未「穂乃果、見直しましたよ」

穂乃果「おお…海未ちゃんにまで褒められるなんて…明日は雨だなぁ」

絵里「とにかくよくやったわよ、穂乃果! これで調査も進展し…」

にこ「で、それがわかってどうすんのよ」

一同「……あ」

にこ「予言の回避の方法は? 地球滅亡の原因は? まさか、恐怖の大王が空からやってくるとでもいうんじゃないでしょうね?」

………


海未「結局あまり進展なしでしたね…」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん、そんなに落ち込まないで…」

穂乃果「…」ドヨーン

海未「そ、そうですよ! もしかしたらのちに何かの役に立つかもしれないじゃないですか!」

ことり「穂乃果ちゃんは十分頑張ったよ! 今日のMVPをことりがあげちゃうよ?」

穂乃果「うう…ありがとう…。でも結局なんの解決にもなってないんだよ…」

海未「…また、明日がんばればいいんですよ」

ことり「そうだよ、穂乃果ちゃん! …それじゃあ、またあした!」

海未「ええ、また。…穂乃果、きっと大丈夫ですよ。気にしないで。それでは私も…」

はぁ…。穂乃果にしてはよくやったと思うんだけれどなぁ。
でも、穂乃果が落ち込んでいたら元も子もないよね! また明日から頑張るぞ!
すっかり暗くなった夜空に向かって拳を突き上げる。

穂乃果「あれ…?リベロン…なんだかまた大きくなっているような…?」

~♪~♪~

「……お腹が空いた…」

私は暗闇の中を彷徨っていた。何が目的でこうしているのかはとうに忘れてしまった。ただひたすら彷徨い続けているのだ。
一体どれくらいの時間だろう。何時間…何日…いや、もっとだ。少なくとも数十年はこうしている気がする。
その間、何も口にしていない。さすがにもう限界だ。何でもいいから…喰べなくては…。
ふと、目の前にぼんやりとした小さな光が見えた。それは…今の私が一番求めているものだった。
ついに見つけた。あんまり大きくはないが、文句は言ってられない。ただ、喰べることができれば今は何でもよかった。

「まあるいお月様……いただきまーす…」

目の前にあったのは…月だった。比喩などではない。私はこの星を…月を知っていた。昔いちど喰べたことがあったからだ。
あの時の味は今でも覚えている。そんなにおいしくはなかった。背に腹は代えられないか…。
覚悟を決めて、月にかぶりつこうとしたその時…。ふと、横に目をやると、すぐそこに、それは鮮やかな青色のとっても綺麗なお星さまがあった。
…せっかく喰べるならこっちの方がいいかもしれないなぁ。そう思いなおすと私はゆっくりとその星へと近づいていった…

………

ちゅんちゅん

穂乃果「はっ!?」

……なんだ夢…か。…しかし、それにしては随分と鮮明だった。
夢の中で私は星喰となっていた。喰べるための星を探して宇宙をさまよった挙句、見つけたのは…月だった。
さらにその後、月を喰べようとした私の視界に飛び込んできたのは、そのすぐ隣の星…地球だった。
私はただの星喰ではなかった。最近、地球の側に現れた『リベリオン』そのものだったのだ。
そして、夢の中で、私は地球を……

穂乃果「…あれは本当に夢…?」

夢の中で見た光景は今でもはっきりと網膜に焼き付いていた。まるで本当に今の今まで体験してきたかのようだった。

「…夢に決まってるよ。だって、もしこれが現実だったとしたらこのままじゃ地球は滅びて………っ!!」

…いや、夢なんかじゃない。確信が持てた。だって、もうすぐ地球は滅びるんだ。
そして、その原因は…リベロンだ。
リベロンはお月様を喰べに来たんじゃない。地球を喰べるつもりなのだ!

穂乃果「…みんなに伝えなきゃ!」

~3016年7月20日(土) 地球滅亡まであと4日~


絵里「それじゃあ、りべろ…リベリオンが地球滅亡の原因だっていうの?」

穂乃果「リベロンでいいんだよ?」

今日は学校は休みだったけれどいつも通り部室に集まって調査をすることになっていた。
そこで今朝みた夢の話をみんなにした。

真姫「星喰『リベリオン』…どうして今まで気付かなかったのかしら」

海未「1999年の輝夜の前例がありましたので…今回もみんな月をターゲットだと思い込んでしまっているようですね」

にこ「どうりで最近あいつから嫌な気配がすると思ったのよね…。段々大きくなっていたみたいだし」

絵里「地球滅亡の原因はほぼ間違いなしってことでいいのかしら?」

夢の話なんてみんなにバカにされるんじゃないかと思ったけれど、筋が通っていたのでみんなもすぐにそれが正しいんじゃないかと賛成してくれた。

穂乃果「原因がわかったのは大きな一歩だけれど本番はここからだよ! 問題はどうやってリベロンを止めるかだよ」

ことり「リベロンを止める方法…」

凛「とりあえず、星喰に関する本をたくさん集めて来たよ!まずは敵のことを知るところからだよ!」

花陽「星喰に関する情報は1999年に現れた『ノストラダムス』以降は観測されてないので、かなり限られていますが…」

真姫「以前現れた星喰『ノストラダムス』の大きさはほとんど地球と同じサイズだったみたいね。今回も同じくらいと見て間違いないわ」

ことり「ノストラダムスの色はピンク色だって。写真も載ってるよ」

希「ほんとだ。綺麗な色やね」

にこ「他の写真は…げぇっ。ノストラダムスによる輝夜捕食の瞬間だって…」

絵里「輝夜が触手みたいなものに覆われているわね…」

真姫「きもちわるい…」

海未「この触手一本ですら街いくつ分かはあるということですね…」

花陽「そんなのを一体どうやって防げば…」

真姫「手っ取り早いのは物理的に破壊することよね」

凛「ええっ!? 壊しちゃうの!?」

ことり「ちょっと可哀想だよね…」

海未「でもそれこそ前に話した禁術クラスの魔法が必要になりそうですね…」

絵里「国に申請をすればメテオバスターと呼ばれる対隕石迎撃用の禁術なら使用許可が降りるわ」

真姫「でも、あれって直径数十キロくらいの隕石までしか効果がないんじゃないっけ? ないよりはましかもしれないけれど…さすがに火力が足りなさそうね」

にこ「他の禁術はないわけ?」

真姫「ないわけではない…と思うけれど…」

絵里「禁術はあくまで禁術よ。術者の命だけじゃなく周辺の生物すべての命を奪って発動条件を満たすようなものまであるの…。危険すぎるわ」

にこ「でも、やらなきゃ、やられる…でしょ? だったら、それにかけてみるべきだわ」

絵里「で、でも…」

希「…わかった。ウチとにこっちでその方面について調べてみよっか。…実はこうみえて結構詳しいんよ?」

絵里「…わかったわ。くれぐれも気を付けてね?」

希「りょーかい! さ、いくで」

にこ「…真姫、あなたもついてきなさい。色々知っているんでしょう?」

真姫「…仕方ないわね。希とにこちゃんだけじゃちょっと不安だったし。それじゃあ、後は頼んだわよ」

花陽「大丈夫かなぁ…」

絵里「禁術は最終手段よ。私たちは他の方法でなんとかならないか考えるの」

ことり「ねえ、思ったんだけれど…こんなに大きな問題、わたしたちだけじゃもうどうにもならないと思うんだ…」

絵里「国に報告する…ってこと?」

ことり「うん…。だめ…かな?」

絵里「そうね…。花陽はどう思う? あなたはこの問題を知った時に国に報告せずに私たちに報告した。その理由を聞かせてほしいわ」

花陽「う、うん…。…μ'sは私にとって身近な存在だったし…とても信頼しています。自惚れかもしれませんが、μ'sのみんなも私のことを信頼してくれていると思ったんです。」

ことり「自惚れなんかじゃないよ!私も花陽ちゃんのこと信頼している!」

花陽「えへへ、ありがとう…。でも、このことは国の人に話しても、信じてもらって、真面目に取り合ってくれるまでに時間がかかると思うの。残された短い時間じゃそれは賭けになるかなって…」

絵里「ええ、私もそう思うわ。…それに穂乃果も言っていたけれど、やっぱりこの本に書かれている内容、μ'sに関わる部分が多いのも少しひっかかるの。もう少しだけ私たちだけで調査をしてみない?」

ことり「…うん、わかった」

絵里「ありがとう、ことり」

μ'sに関わることが多い…か。そうだとしたら、μ'sにしかできないことが何かあるはずだ。それって一体なんなんだろう?

短いですが一旦ここまで
日付が変わる頃に更新予定

~♪~♪~

キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムの音が聞こえる。ここはどこだろう? あたりを見回してみる。見覚えがある…。
それもそのはず、ここは私の通っている学校、音ノ木坂魔法学校だからだ。
…なんだかひどく懐かしく感じるのは気のせいかな?
今は何時だろうか? 近くに時計がなかったので窓から空の様子を見てみる。空はとても紅かった。

「××ちゃーん! こんなところで何してんの?授業始まっちゃうよー」

「あ、待ってー!今行くー!」

私は名前も知らないその子に返事をしていつもの席についた。
間もなく授業が始まった。歴史の授業だ。

「それでは、前回の続きから話します。人類が魔法エネルギーの鉱脈を発見したところからですね。皆さんご存知の通り、魔法エネルギーの源は赤色のガス状の物質で、この地球上を覆っています。その密度は年々濃くなってまして、それは窓の外の空の色をみてわかる通りですね。今は真っ赤ですが、1000年前まではピンク、それより遥か以前はなんと青色をしていたそうですよ」

私は青かった空の色を知っている、と思ったが言わなかった。

「人類は魔法の力を手にしてとても喜びました。無限のエネルギーが手に入ったと思ったからです。しかし、それは間違っていました。魔法のエネルギーは地球のエネルギーそのものだったのです。そして、そのことに人類が気付いた時にはもう手遅れでした」

「地球はエネルギーを失ってしまい、とってもお腹が空きました。そこで、とうとう我慢ができなくなって近くにあった月を拾って食べました。人類のエゴが地球を星喰へと変えてしまったのです。地球は月を食べたお陰でしばらくの間は満足していました。しかし、愚かな人類は魔法を使うことをやめなかったので、またすぐにお腹を減らしました。そして近くにあった星はあっという間に食べつくしてしまいました」

「太陽まで食べてしまうと人類は地球の周りに小さな太陽を魔法で作りました。これを維持するのには莫大なエネルギーが必要で、そのためにはまたたくさんの星を食べる必要がありました。すぐに地球は広い宇宙へと旅立ちました」

「やがて、気の遠くなるような年月の後、宇宙中の星を食べつくしてしまい人類は途方に暮れました。そして、地球を星がまだたくさんあった時代までタイムスリップさせることを思いついたのでした」

「それからしばらくは順調だったのですが、今から1000年ほど前、この地球はかつての…過去の地球の近くをたまたま通りました。そのとき、過去の地球が持つ2つの月の一つ『輝夜』を食べました。そのとき人類は恐ろしいことに気が付いたのです。過去の地球を食べてしまったら自分たちの存在も消えてしまうのではないかと。いわゆる親殺しのパラドクスというやつですね」

「…そして1000年経った今日。今まさにその時が訪れようとしています。残念ながら、エネルギー不足のため地球を再び別の場所に移動させたりすることは叶いません。みなさん、どうか残りの3日心穏やかにお過ごしください…」

私は窓の外の紅い世界にぽっかりと浮かぶ青い星に目をやった。あの星の空はまだきっと青いのだろう。そして、その青空の下では私たちの遠い遠いご先祖様が暮らしているに違いない。
手元にあった歴史の教科書『人類の歴史』をぱらぱらとめくる。地球の空が青かった頃のできごとを調べて見た。
とても平和そうな時代だった。この頃の人類はのちに自分たち自信でその身を滅ぼすことになる未来など夢にも思っていないだろう。
せめて、今この瞬間、その事実を伝えることができたとしたら、そんな哀れな未来を変えることができるのだろうか?
そんなことをぼんやり考えていたら、いつの間にか最後のページまでめくってしまっていた。



【第856新宇宙歴6054年7月24日 地球滅亡。以上が人類の歴史である。】

………

穂乃果は目が覚ました。時計を見ると時刻は朝の4時前だ。
こんな時間に起きたのに頭はとても冷静で冴え渡っていた。
ベッドから出て、窓を開け空を仰ぐと、いまや月の数十倍以上大きくなったリベロン…いや、変わり果てた未来の地球の姿があった。

穂乃果「あなたの教えてくれたこと、決して無駄にはしないよ」

夢の中で穂乃果だった彼女も今こうして私のことを見上げているような、そんな気がした。

~3016年7月21日(日) 地球滅亡まであと3日~

海未「いくら穂乃果の話とはいえ、流石にそれは…」

真姫「確かによくできた話だとは思うけれど…」

昨日と同じように夢の話をしてみたけれど、今回はみんなの反応がいまいちだ。

穂乃果「みんなひどいよ!昨日は信じてくれたのに!…だいたい穂乃果がいたずらでこんな難しい話思いつくわけないじゃん!」

自分で言ってて悲しくなるが事実だから仕方ない。
ちなみに日曜日の今日も学校はお休みで、生徒会の二人は輝夜祭の準備で来られないそうだ。

海未「…確かにここ最近の穂乃果は何か不思議な力を手に入れたような冴え具合でしたし…あまり無碍にもできませんね」

真姫「…でもそれが本当だとしたら、リベリオンを破壊するっていう作戦はできないわね。未来の地球を破壊するんじゃ、本末転倒だからね」

にこ「折角大きな惑星でも破壊できそうな強力な禁術を見つけて来たのに…残念ね」

凛「未来の地球がそんなことになっちゃっているなんて…」

花陽「もし3日後に私たちの地球が生き残ることができたとしても、いつかは宇宙中の星を食べ尽くしちゃうなんて…それは宇宙全体にとってはあまりいいことではないのかも…」

ことり「そんなことになるくらいならいっそのことこのまま…」

穂乃果「ダメだよ!そんなことを考えちゃ!今はとにかく3日後の地球滅亡を止めることを考えなくちゃ!」

真姫「そうね、穂乃果の言う通りよ。……でもどうするの?また振り出しに戻ったみたいだけれど」

穂乃果「それはこれからみんなで考えるの!」

にこ「…忘れているみたいだから言っておくけれど、どんな手段を使って止めようとしても予言に書かれたことは一度も覆すことができなかったのよ?」

花陽「根本的な作戦を見直す必要があるのかも…」

ことり「難しいね…」

海未「あの、穂乃果。できれば一度リベロンが本当に未来の地球であることを確かめてみたいのですが…」

穂乃果「確かめる…?」

海未「ええ。リベロンを望遠鏡か何かで覗いてみれば、その表面の様子がわかるのではないですか?例えば…日本列島なんかが観測出来たら、そのことの証明になるのではないですか?」

穂乃果「ふむふむ…望遠鏡でねぇ…」

ことり「あ、真姫ちゃんの望遠鏡!」

真姫「ヴェェ!? なんでことりが知ってるのよ!」

ことり「海未ちゃんから聞いたんだよ。それで真姫ちゃんに望遠鏡を借りて夏休みにμ'sのみんなで天体観測しようって」

穂乃果「おお!そういえば、そんな話もしていたね!…というわけで、真姫ちゃん!望遠鏡貸して!」

真姫「別にいいけど…。リベロンは今地球の裏側よ? 見れるとしたら夜になるわ」

穂乃果「よーし、それじゃあ今夜はみんなで天体観測だー!!」

凛「楽しみだにゃー!」

海未「地球滅亡3日前にこんなにお気楽でいいのでしょうか…?」

穂乃果「こんな時だからこそだよ!…あっ、夜ってことは絵里ちゃんと希ちゃんも来られるよね!二人にも伝えてくる!」ダッ

真姫「相変わらず行動力あるわね…」

ことり「そこが穂乃果ちゃんのいいところだよ♪」

にこ「ま、とりあえず今日の所は私たちだけで予言を覆す方法について考えるとしましょ」

海未「今日の予言で名前が出ているのは…凛、花陽、ことり、にこ、絵里、希、真姫、それに私…穂乃果以外全員ですね」

凛「凛の予言はなにかにゃー? 頑張って未来を変えてやるー!」

にこ「私も負けてられないわね!」

真姫「私は一度望遠鏡をとりに家に帰るわ」

海未「一人で大丈夫ですか? 何か手伝えることがあるならお供しますが」

真姫「そうね…。機材を運ぶのに人手が欲しいかもしれないから、お願いできるかしら?」

海未「わかりました」

ことり「よし、それじゃあ、ことりも予言書をみてみよっと。…あ、花陽ちゃんが持ってたんだね。一緒に見せて~」

花陽「……おかしいんです」

ことり「ん?どうしたの?」

花陽「今、ここ数か月の予言を全部見返してみたんですが……ないんです」

ことり「?…なにが?」

花陽「穂乃果ちゃんに関する予言がひとつもないんです!」

~♪~♪~

穂乃果「おーい!絵里ちゃーん!希ちゃーん!」

絵里「あら、穂乃果?」

希「お、穂乃果ちゃんやん」

絵里ちゃんと希ちゃんは運動場にいました。他にも何人もの生徒や教員、さらには地域住民の人まで集まって何やら忙しそうに準備をしていました。

穂乃果「2人とも今は何してるの?」

絵里「今は輝夜祭の模擬店に貸し出す備品類のチェックをしていたところよ」

希「今年もいっぱい出すみたいよ?」

穂乃果「おおー!それは楽しみだ!」

輝夜祭とは霊夜祭、聖夜祭に並ぶ三大祭のひとつで、毎年夏休みの始まる日…つまり『輝夜』の命日に開かれている。
1999年7月。星喰ノストラダムスによって捕食されてしまった月の一つ『輝夜』を追悼する目的で開かれたのが起源で、今では全国的な規模で輝夜祭は開催されている。
模擬店の催しがあったり、みんなで盆踊りをしたり…とにかく色々な楽しいことがいっぱい!でも、そんな中でもメインイベントとなるのが、輝夜役、星喰役、地球役に分かれた人たちによる舞いの披露である。
この舞いっていうのは、いわゆる日本風ミュージカルみたいな? 太鼓や笛の音色に合わせてそれぞれの役の人が踊りながら物語が進行していくのだ。
ちなみにこの舞いの3つの役には毎年音ノ木坂の生徒が選ばれるんだけれど、その中でも輝夜役は輝夜姫なんて呼ばれてすっごく綺麗な着物を着られるんだよ!
そうそう、去年はにこちゃんが輝夜姫だったんだよね。にこちゃん綺麗だったな~

絵里「それで穂乃果は何か用事があってきたんじゃない?」

穂乃果「あ、そうだった」

ほのほのちかちか

絵里「なるほど…。それで天体観測ってわけね」

穂乃果「うん!…二人とも来れるよね?」

絵里「ええ。今日の作業は夕方には終わる予定だから大丈夫よ」

希「楽しみやね!…お、花火の予行練習が始まるみたいやね。穂乃果ちゃんも一緒にやっていく?」

穂乃果「え、いいの!?わーい!やってくやってく!」

輝夜祭のもう一つのメインイベントはフィナーレにみんなで夜空に向かって花火の魔法を打ち上げる花火大会である。
これは文字通り大会であり、花火の美しさや派手さや打ち上げる高さなどを競ってみんなが毎年試行錯誤している。
穂乃果はこの花火の魔法が昔から得意で去年は誰よりも高ーくど派手に打ち上げてみんなを驚かせてやったんだよね!へへーん。

「それじゃあ、準備はいいですかー?いきますよー!3…2…1…」

絵里「あ、そうだ、穂乃果!練習だからあんまり派手なのは…」

穂乃果「え?なんだって?よく聞こえな…」

「発射ーーーー!!!」

絵里ちゃんが何か言っていたような気がするけれど…。
掛け声に合わせて運動場の至る所から花火が上がっていくのを見たらそんなことはどうでもよくなってしまった。穂乃果も負けてられない!
青空に向かってオレンジ色の花火を打ち上げた。

~♪~♪~

海未「まったく、穂乃果は本番でもないのにあんなに大きな爆音を鳴らして! 近所のおばあさんが腰を抜かしていましたよ?」

穂乃果「だ、だってぇ…音を鳴らしちゃいけないなんて知らなかったんだもん…」

海未「だとしても、限度というものがあります!何もあんなに派手にしなくても…街中で噂になっていますよ?」

さっき穂乃果の打ち上げた花火は爆音とともに空に巨大なひまわりを咲かせた。
しばらくするとその花弁の一枚一枚が金色の鳥となって、「チチチチチッ」という鳴き声とともに街中の空へと羽ばたいていって、そして爆発。空を閃光で埋め尽くした。
去年からさらに改良を重ねてみんなを驚かせるために発明したものだ。確かにやりすぎだと言われても仕方ないだろう。

絵里「海未、そのへんにしてあげて。ちゃんと穂乃果に説明しなかった私の責任でもあるんだから…」

希「絵里ちが穂乃果ちゃんと一緒に先生にこってり絞られる所なんて…いいもん見させてもらったわ」ニシシ

絵里「もう!だいたい穂乃果を誘ったのは希なのになんで私があんな目に…」

希「ふふ、穂乃果ちゃんが来た時に閃いたんや。去年のチャンプを誘えば面白いもんが見られそうやって」

穂乃果「希ちゃん、穂乃果をはめたの!? ひどいっ!!」

希「ふふ、ごめんごめん」

絵里「全く…おかげで準備は夕方に終わる予定だったのに、こんなに暗くなっちゃったわ」

海未「天体観測の準備はもうできていますよ。みんなが屋上で待っているので早く行きましょう」


~屋上~

凛「あ、やっと来た!遅いよー!」

穂乃果「ごめんねーお待たせ」

にこ「昼間の爆音はやっぱり穂乃果の仕業だったのね。校舎の中にもガンガンに響いたわよ」

花陽「街の方でもかなり噂になっているとか…」

ことり「でも、すっごくきれいだったよ!」

真姫「まあ、当日は期待しているわ」

花陽「当日かぁ…できるといいけれど…」

そうだ、今年の輝夜祭の当日はまさに地球滅亡と予言されている日だ。今年はそれどころではないかもしれない。

絵里「それじゃあ、遅くなる前に始めましょうか?」

既に準備万端の状態の望遠鏡を指さして絵里ちゃんが言った。組み立てたのはおそらく真姫ちゃんだろう。

海未「リベロン…随分大きくなりましたね」

空はもはや3分の1ほどをリベロンが占めていた。
表面は赤色の濃いガスで覆われているためはっきりとは見えないが…大陸のようなものがぼんやりと見えるような気もする。

真姫「調整できたわ」

穂乃果「お、どれどれ? どんな感じだった?」

真姫「…自分の目で確かめてみなさい」

ドキドキしながら望遠鏡をのぞき込む。
濃いガスで覆われた向こう側。はっきりと…日本列島の形をとらえることができた。

海未「これは…実際に目の当たりにしてみても信じられませんね…。本当にあれが未来の地球だなんて…」

穂乃果「だから、私の言った通りだったでしょ?」

絵里「確かに全くその通りだったわね…」

真姫「しかも穂乃果は夢の中であの星の住人の一人として授業を受けて来たっていうんでしょ?」

希「穂乃果ちゃんは何かスピリチュアルパワーを持ってるんやないかな?」

穂乃果「うーん…私にもよくわからないけれど、そうなのかも?」

ここ2日間で見た夢は現実となった…というより、夢の中で穂乃果はリベロンになったり、リベロンに住む音ノ木坂の生徒になったり…
正夢とは違うような…意識が他人とリンクした、というのがいいのだろうか? とにかく何か特別な力を手に入れたような気がしていた。

花陽「そのことで、ひとつお話があります」

穂乃果「穂乃果の…特別な力のことで?」

花陽「はい。穂乃果ちゃんのみた夢もそうなんですけれど…それとは別にもうひとつ気になることがあるんです。さっきことりちゃんには話したんですが、この予言書…『人類の歴史』の中には穂乃果ちゃんに関する予言だけがひとつもなかったんです」

穂乃果「あ、やっぱりそうだったんだ」

海未「気付いていたのですか?」

穂乃果「うん、だけどたまたまかな~って思って。…でも、それって偶然穂乃果のことが書かれてなかっただけで、そんなに重要なことでもないんじゃないかな?」

花陽「ねえ、希ちゃん。さっき穂乃果ちゃんが花火を打ち上げた時に怒られたのって、絵里ちゃんと穂乃果ちゃんで間違いない?」

希「うん。それで間違いないよ」

花陽「それを聴いて確信したよ。この予言をみて」

希「ん?どれどれ…」


【7月21日11:52 東條希、教員に説教される】

希「え…?この時間に怒られたのは、絵里ちと穂乃果ちゃんだけやったはずなのに…。これは…まさか、未来が変わっている!?」

にこ「今までどれだけ頑張っても変えられなかったのに!?」

凛「希ちゃん、一体どんな魔法を使ったの!?」

花陽「ううん、この原因を作ったのは穂乃果ちゃんだよ」

穂乃果「え、穂乃果の? …穂乃果、何かしたっけ…?」

この時間に怒られたのは穂乃果と絵里ちゃんである。そして、その原因となったのは穂乃果が打ち上げた超弩級の花火だった

穂乃果「…もしかして、あの花火のこと?…本当は怒られるはずだった希ちゃんの代わりに穂乃果が怒られたってこと?」

花陽「多分そうです。希ちゃんは何か心当たりがあるんじゃないですか?」

希「…実は、あの時…花火をみんなで打ち上げるとき、ウチの花火の魔法は暴発しちゃったみたいで、かなり派手な音鳴らしちゃったんよね」

絵里「え、そうだったの? 全然気づかなかったけれど…」

希「うん。穂乃果ちゃんの花火が段違いにド派手でウチの花火には目が向かなかったみたいやね」

真姫「それじゃあ、本当だったらこの予言のとおり、希が怒られるはずだったってこと?」

穂乃果「それを私が…?」

花陽「はい。穂乃果ちゃんにはこの予言書の干渉を受けない特別な力があるんじゃないかな?」

穂乃果「私にそんな力が…」

にこ「もしその力が本当だとしたら…!」

ことり「地球の運命も変えられるかもしれない!」

真姫「…希望が見えて来たわね」

世界を救える…?私の手で…?

…嬉しい

穂乃果「うおおおおおおお!!!!」

…嬉しい!!

穂乃果「やってやるぞーーーー!!!」

夜空に煌めく星のひとつひとつが希望の光に見えた。

~3016年7月22日(月) 地球滅亡まであと2日~

~昼休み~

穂乃果「はぁー…」グデー

ことり「穂乃果ちゃんが溶けてる…」

海未「どうしたのですか? 昨日はあんなに世界を救うって意気込んでいたではないですか」

穂乃果「うん…。でもさ、だからこそ本当に穂乃果に未来を変える力があることを早く確かめたくて…。なんていうか確かめるまでは安心できない、みたいな?」

昨日の穂乃果の行動によって覆された予言書の未来。今日は穂乃果の未来を変える力が本物かどうかを放課後に検証することになっていた。

ことり「今日の予言はこの後の授業中の花陽ちゃんに関する予言を除いて、放課後しかないんだもん。仕方ないと思うよ?」

【7月22日13:29 小泉花陽、薬学の授業で調合に成功し、教師に称賛される】

海未「この時間は私たちは授業で運動場ですね」

穂乃果「…やっぱりさ、穂乃果だけこっそり授業を抜け出して花陽ちゃんの邪魔をするのがいいと思うな」

海未「授業をサボるのは私が認めませんよ」

ことり「それにせっかくいい予言がでているのを変えちゃうのは花陽ちゃんも可哀想だよ」

海未「大人しく放課後を待つべきです。放課後には私とことり、それに絵里と凛の予言も出ているのです。それで十分でしょう?」

穂乃果「まあ、それもそうだけどさー…」ハァー

ことり「穂乃果ちゃんやっぱり元気ないね…」

穂乃果「うー…だってさー、次の授業って…」

~運動場~

「えー、それでは今日は皆さんに2日後に迫った輝夜祭に向けて花火の魔法の練習をしてもらいます。もちろん、近隣の迷惑になりますので大きな音を鳴らさないように注意してくださいね。…くれぐれも昨日の誰かさんみたいなことにならないように」

先生はそういうと穂乃果の方をジトリと睨んできた。クラスのあちこちからはクスクスと笑い声が漏れている。…はあ、だから嫌だったんだよね。
昨日穂乃果がこっぴどく叱られたのは正にこの魔法学の先生である。穂乃果の打ち上げた爆音花火は街中に響き、今朝は学校中…いや、街中がこの話題で持ちきりだったのだ。

ことり「今朝は大変だったねぇ。まさか他校の子まで一目穂乃果ちゃんの姿をみようと校門まで押し寄せてくるとは思わなかったよね。学校内でも質問攻めだったし…穂乃果ちゃんヒーローみたいだったね♪」

海未「…あまりこういうことで有名になるのはどうかと思いますが…。実際かなりの苦情が寄せられたみたいで、学校側は気が気でないのでしょう。今日の授業を中止にしようという話が出たと噂も聞きました」

穂乃果「うう…またこの話…。反省してるんだからもう勘弁して欲しいよ…」

正直ここまで大事になるとは自分でも思わなかった。家でもお父さんとお母さんからお説教。近所のおばさんからも「元気なのはいいけど、ほどほどにね?」などと言われてしまった。
だけども本心は他校の知らない生徒に「本番も期待してます!」とか「私も負けないからね!」などと言われたときは、ちょっぴり喜びを感じてしまった。
そして、実は今も私が花火を打ち上げる授業であることを知った生徒たちが校舎の窓からこちらを覗いていることに気が付いていた。
何かまたとんでもないことをしでかしてくれるんじゃないのか。みんなの目はそんな期待によって輝いていた。
みんなが期待してくれている…。だったら、それに…

海未「期待に応えねば………などと思っているのではないでしょうね?」

その心は海未ちゃんによって見透かされてしまう。

穂乃果「そ、そんなことないよー」

海未「…もしまた問題を起こせば、またあの先生に叱られてしまいますよ?しかも、何度も念を押されたのにも関わらずの2度目の愚行。最悪停学なんてことにもなりかねません」

穂乃果「それは困る!」

海未「だったら、大人しくしててくださいね? …そもそもあなたにはそれ以上にやるべきことがあるでしょう?」

穂乃果「うん、わかってるよ」

予言の阻止。何よりもそれが優先だ。今は花火なんかに現を抜かしている場合じゃないのだ。

ことり「花火の魔法、久しぶりだな~。ちゃんと上手くできるかな?」

海未「ことりの去年の花火はとてもきれいでしたね」

穂乃果「あの白い鳩の花火だね!昨日の花火は実は去年のことりちゃんのリスペクトなんだよ!」

ことり「ほんとう?嬉しいな♪」

穂乃果「今年はどんなのにするの?」

ことり「それはね~…内緒です。ふふふ」

穂乃果「えー残念…。まあ、楽しみは当日にとっておこうか!」

ことり「穂乃果ちゃんはやっぱり昨日打ち上げたやつなのかな?」

穂乃果「ふふん、実はもっと凄いのを考えているんだよね」

海未「あれでも十分凄かったですが、まだ上があるんですか?」

ことり「それはすっごく楽しみだなぁ!」

穂乃果「うん、期待してて!」

今日の授業では昨日の予行練習と同じように先生の合図とともに全員で花火を打ち上げることになった。
再び先生が私のことを睨みつけてきた。ギクッとして慌てて目をそらす。
昨日は私が花火を打ち上げたことで未来が変わった。あれは本当に穂乃果の力によるものだったのだろうか?
あれはやっぱり偶然だったのではないか?…もしそうだったとしたらもはや運命にあらがう術はない。地球は滅びてしまう。
…いけない。ネガティブな思考を振り払った。先生が花火打ち上げのカウントダウンを始めた。そこでふと花陽ちゃんの予言のことを思い出した。

【7月22日13:29 小泉花陽、薬学の授業で調合に成功し、教師に称賛される】

今の時間は…13:28。花陽ちゃんは今まさに薬学室で薬を完成させようとしているのだろう。

「花火発射!!」

クラスのみんなが空に向けてまっすぐに花火の魔法を打ち上げていく。
穂乃果もそれらに合わせるように花火を打ち上げた。…しかし、穂乃果の打ち上げた花火はみんなと違って真上に向かってではなく、校舎の方に向けて打ち出された。
流れるような弧を描いて飛んで行ったそれはやがて校舎の壁にぶつかると、昨日に比べれば随分控えめであったが、パンッ!という音とともに弾けて小さな花をいくつか咲かせた。
校舎中の窓が開けられると、ワァ!という生徒たちの歓声と拍手が響いてきた。…しかし、それと同時に先生に首根っこを掴まれた私は悲劇の英雄よろしくずるずるとどこかへ引きずられていった。

~♪~♪~

散々と叱られて、私が解放されたのは放課後になってからだった。…なんとか停学にはならず、反省文10枚で済んだのは本当に運が良かった。
そんなことより部室へ行かなきゃ! …いや、反省はしてるんだよ?でも、今は地球の命運を握っているわけで…。うん、とにかく部室へ急ごう!

ガチャッ

穂乃果「ごめーん!みんな、おまた…せ…」

部室のドアを開けると、目の前に腕組みをして仁王立ちの海未ちゃんが……

穂乃果「う、海未ちゃん!?」

海未「ほーのーかー……」

穂乃果「ち、違うの!これにはちょっとしたわけがあって…」

2時間近く説教を受けて来た身としてはもうこれ以上の説教はごめんだ
だから、必死で弁解をしようとした。

海未「…」ガシッ

穂乃果「ヒィッ!?」

両肩を掴まれた。ごめん、お父さん、お母さん。地球が滅亡する前に私はここで死にます…

海未「よくぞ、やってくれました!あなたは最高です!」

穂乃果「ごめんなさ……えっ?」

ことり「穂乃果ちゃん、すごいよ!」

穂乃果「えーと…もしかして、褒められている?」

ことり「うん!穂乃果ちゃんはやっぱりヒーローだよ!」

穂乃果「あはは…ありがとう…。いや、ちょっと待って、どゆこと…?」

花陽「穂乃果ちゃんのお陰で、また未来が変わったんです!今日の午後の薬学の授業で、花陽は薬品の調合に成功して先生に褒められるって予言されてたのは知っているよね?」

~~~

【7月22日13:29 小泉花陽、薬学の授業で調合に成功し、教師に称賛される】

花陽(薬学の授業で成功して先生に褒められる…なら、絶対に失敗するような調合をしてみようかな? 目をつぶって…これとこれとこれ!…ねばねばした謎の半固形物質と何かの生物の内臓?…それから毒々しい色のきのこ…。これは失敗の予感!)

凛「かよちんがえっぐい調合してる…。凛はこっちのかよちんも………ぎりぎり好きにゃ」

真姫「…爆発しないことを祈るわ」

花陽「ふぇぇ…とりあえず鍋に入れて混ぜてみたけど、直視できないような色してるよぉ…」グチャグチャ

凛「お昼ごはん食べたあとにこれはキツいね…」

花陽「ふふ…でも、これで失敗するなら本望だよ…。だってそれは人類にとっては成功なんだから…ふふふ」

凛「かよちん、マッドサイエンティストみたい!」

真姫「何馬鹿なこと言ってるの…って、花陽!よく見て!」

花陽「そ、そんな…成功の反応が出てる…!?」

真姫「こんな反応、今まで見たことない…。もしかして、新薬!?」

凛「やっぱりかよちんは天才だにゃー!」

花陽「まさか成功しちゃうなんて…」

先生「小泉さん、何かできたんですか?」

花陽(まずい…このままじゃ予言どおり…。今回も回避できなかったんだね…)

ゴツンッ

花陽「何の音…?」

凛「あ、窓になんか当たったみたい」

パンッ!!!

花陽「ピャァッ!?」ビクゥ!

ガシャーン!!

真姫「ああっ!?花陽、鍋が…!!」

花陽「お、大きな音にびっくりしてひっくり返しちゃったよぉ…!!」

先生「あらあら、これは大変ね。すぐに片付けないと」

花陽「一体何の音だったの…?」

モブ「きゃー!高坂先輩が昨日に引き続きまたやってくれたわー!!」

モブ「ホント期待を裏切らない人だよね!」

モブ「さっすが高坂先輩!私たちにできないことを平然とやってのけるっ!そこに痺れる憧れるぅ!!」

凛「どうやら穂乃果ちゃんの花火の仕業みたいだね。昨日怒られたのに全く懲りてないなんて…。いいぞ、もっとやるにゃー!!」

花陽「そっか…穂乃果ちゃんが…」

真姫「ああ…せっかくの新薬が…もったいない…。もしかしたら、この先多くの人の命を救ったかもしれないのに…」

花陽「そっか、私失敗したんだ…。あれ、ということは…予言が外れたってこと!? 穂乃果ちゃんのおかげで…!!」

~~~

穂乃果「なるほど、そんなことがあったんだ」

花陽「穂乃果ちゃんは狙ってこれを?」

穂乃果「うーん…なんとなく! たまたま時計を見たら花陽ちゃんの予言通りの時間だったから、ものの試しにやってみたんだ」

凛「本当はただ目立ちたかっただけじゃないのー?」

穂乃果「ま、まあ、それもちょっとだけあるかな…」テヘッ

海未「とにもかくにも、お手柄ですよ!それに学校の圧力に屈せず反旗を翻す穂乃果の姿…カッコよかったです!なんていうか、学校のルールを破るのってワクワクしますよね!」

穂乃果「ね、ねぇ?なんか海未ちゃんの様子が変なんだけれど?」

凛「あー…それはさっきの授業で凛が作った『不真面目になる薬』を飲ませたからだよ!」

穂乃果「凛ちゃん天才だったか。これを海未ちゃんに飲ませれば、穂乃果が怒られることはもうないね!だから、後で分けて?」

凛「ラーメン一杯で手を打つにゃ」

穂乃果「その話乗った!」ガシッ

真姫「2人には『真面目になる薬』を処方してやりたい気分だわ」

穂乃果「でもさ、これで穂乃果に未来を変える力があるってわかったよね?」

花陽「うん!これで最初に話していた2つの課題、地球滅亡の原因と予言を覆す方法を達成できたね!」

凛「地球を救えるんだね!よかったにゃ~」

真姫「つまりまとめると、地球に迫るリベリオンを穂乃果が止めるってことね」

穂乃果「うん! ……え?」

ことり「そういえば、リベロンを止めるって…」

花陽「…どうやって?」

海未「禁術です!やはり禁術しかないでしょう!リベロンを粉々に打ち砕いてやりましょう!」

ことり「だ、だめだよぉ~!リベロンには地球と同じでたくさんの人が住んでるんだよ?」

海未「やられる前にやらなくてどうするんですか!…ここは私の伝家の宝刀ラブアローシュートの見せ場ですね。地球のためなら私は悪にでも染まってやりますよ…」ククク

穂乃果「う、海未ちゃんが本気でやばい…」

花陽「り、凛ちゃん!なんで海未ちゃんに変な薬飲ませちゃったのぉ!?」

凛「海未ちゃんは真面目なのが一番だって思い知らされたよ…」

穂乃果「残念だけど不真面目になる薬は封印しよう…」

ことり「でも、禁術以外であんなに大きなリベロンをどうにかする方法なんてあるのかな…?」

真姫「方法ならもうひとつだけあるわ。…空間転移よ」

凛「くうかんてんい…?」

ことり「それって…テレポーテーションのことだよね?」

花陽「もしかして…地球を…?」

真姫「地球の生物は太陽の軌道から外れたら生きていけないわ。もっともリベリオンみたいに疑似太陽を地球の周りに作れば話は別だけれど、それじゃあ結局この地球もエネルギー不足になってリベリオンと同じように星喰になる運命をたどるだけよ」

穂乃果「テレポートさせるのは、リベロン…?」

真姫「…」コクッ

ことり「でも、テレポーテーションの魔法は凄く難しいって聞いたことある…。それをリベロンみたいに大きなものに使うことなんてできるの…?」

海未「…禁術。…そうですよね?」

海未ちゃんはいつの間にか薬の効果が切れたみたいだった。

真姫「ええ。この前調べていて見つけたの。禁術の定義っていうのは破壊的な威力を持つものだけじゃないの。…発動するのに多大なる犠牲を伴うものも禁術に含まれるわ。超質量物質のテレポーテーションもそのひとつ」

花陽「多大なる犠牲って…?」

真姫「リベリオンの質量が地球と同じと考えると…そうね……1億人の命じゃ足りないくらいかも」

ことり「いち…おく…」

凛「そんなの…絶対ダメだよ!!」

海未「ですが…このまま何もしなければ、その数十倍の人が…いえ、人だけではありません。地球そのものがなくなってしまうんですよね…」

真姫「リベリオンは未来の地球。だから、地球がなくなった瞬間にタイムパラドクスが起きて、リベリオンも恐らく消滅してしまう。1億の犠牲で2つの星を救えるなら…」

花陽「犠牲に見合うだけの価値は…ある…のかな」

凛「でも…そんなのって…」

ことり「どちらかなんて…選べないよ」

禁術がなぜ禁じられているのかなんとなくわかった気がした。禁術を使用することで倫理に触れてしまうんだ。それは決して人が踏み込んでいい領域ではない。

穂乃果「ねえ、真姫ちゃん。例えばだけどさ、その禁術って…その…1億人の犠牲さえ用意できれば、穂乃果にも使えるのかな?」

凛「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「例えば…だよ」

凛ちゃんを宥めるように返事をした。ありがとう、凛ちゃん。凛ちゃんは止めてくれたんだよね?
この返事を聞いたらきっともう引き返せなくなる。未来の予言を変えることができるのは私だけ。
だから禁術を使うことができるのも私だけ。傷つくのは私だけで十分だ。

穂乃果「ねえ、真姫ちゃん?」

真姫「…」

頭のいい真姫ちゃんだ。気付いているのだろう。もし、真姫ちゃんがイエスと言ったら、穂乃果が禁術を使おうとすること。
だから、考えている。そのことに答えるべきか。
そして長い沈黙の後、決心したように口を開いた。そのときだった。

海未「…何か…別の方法を考えましょう」

~♪~♪~

すっかり暗くなった帰り道を私は幼馴染と二人で歩いている。
私が鼻歌を歌いながらかばんをぶんぶん振り回す後ろをしずしずと付いてくる海未ちゃん。見慣れたいつもの光景だった。
ただひとつ、今にも落ちてきそうな赤い月を除けば。

穂乃果「ねえ、海未ちゃん」

海未「…なんですか?」

穂乃果「月が綺麗ですね♪」

海未「…///!?…な、な、何を言ってるのですか、突然!」

穂乃果「あはは、海未ちゃん顔真っ赤!リベロンみたい!」

海未「もう…今はその冗談、笑えないですよ?」

穂乃果「ご、ごめん…。……この言葉さ、海未ちゃんが教えてくれたんだよ?」

海未「…懐かしいですね。もう随分前ですが、覚えていてくれたのですね」

穂乃果「うん!確か『私は親愛の意味を込めてあなたにこの言葉を送ります』…だっけ?」

海未「ほんと…今思い出しても恥ずかしいですよね…。当時の私はよくそんな臭い言葉を堂々と言えたものだと感心します」

穂乃果「えーでも穂乃果は嬉しかったけどなー」

海未「最初は意味も分かっていなかったじゃないですか!ぽかーんとした顔の穂乃果に私が意味を説明したんですよ?私はてっきり社会常識だと思っていたのですが」ジトー

穂乃果「そ、そうでした…。まあ、恥ずかしかったのはお互いさまってことで!」

海未「ふふ、そういうことにしておきましょうか」

しばらくは月を見ながら二人で歩いた。…と言っても見てるのはリベロンだ。本当の月はもはやリベロンの影に隠れて少しも見えない。

穂乃果「海未ちゃん、なんで止めてくれたの?」

さっき海未ちゃんが止めてくれなかったら、私は1億人の犠牲を伴って禁術を使い、リベロンをテレポートさせる計画を実行しようとしただろう。

海未「…あそこで止めなければ穂乃果がつらい思いをするのがわかったからです」

やっぱり気付いていたんだね。…仮に計画が上手くいったとしよう。でもその後、私は1億の命の重みを背負って生きていかなければならない。
そしたら、多分私はその命の重みに耐えることができず、自ら命を絶ってしまっただろう。

穂乃果「でも、その代わりに他のみんなが死んじゃうかもしれないよ?」

海未「そう…ですね。…それでも、やっぱり穂乃果のことを見捨てるなんて私にはできませんでした」

穂乃果「それじゃあ海未ちゃんは…穂乃果一人と他全人類で、穂乃果のことを選んでくれたってこと?」

ちょっといじわるなこと聞いちゃったかな…

海未「穂乃果…」

穂乃果「…?」

海未「私は穂乃果なら全人類を救ってくれると信じているんです。1億人の犠牲すらなく」

私は傲慢な自分を恥じた。海未ちゃんはどこまでも私のことを信じてくれていたんだ。

穂乃果「…でも、穂乃果はそんな方法…もう何も思いつかないよ」

海未「その時はその時です。だれも穂乃果を責めたりしません。あなたのやりたいようにやればいいんです」

穂乃果「穂乃果のやりたいように…?」

海未「そうです。穂乃果は好きなことをしているときが一番輝いているんです。その輝きこそが穂乃果の持つ不思議な魅力…もとい力の正体なんだと私は思います」

海未ちゃんは穂乃果以上に穂乃果のことを知っているんじゃないかと思う時がある。それはちょっぴり恥ずかしいけれどすっごく嬉しいことで…

穂乃果「ありがとう。…穂乃果、もう少しだけ頑張ってみるね!」

そう言い残すと、私は全力ダッシュで家まで帰った。なんだかそういう気分だった。

本日分終了
不思議な世界の日常みたいなのを目指していたのに何でこんなことになってるのか本当に謎

~♪~♪~

~3016年7月23日(火) 地球滅亡まであと1日~


夏休み前最後の登校日。今日は終業式と大掃除のみで、お昼までには全員が部室に集まることができた。

穂乃果「みんな、地球を救うための作戦を考えて来たんだけれど…聞いてくれるかな?」

みんなは黙って頷いてくれた。
昨日の晩、穂乃果は必死で考えた。考えて考えて考えて…そして、ひとつの作戦を思いついたのだ。

穂乃果「ありがとう。…昨日と一昨日、穂乃果の行動で未来が変わったのはみんなも知っているよね?そのとき、なんで未来は変わったと思う?」

花陽「穂乃果ちゃんが関わった未来の予言では、起こるはずだったことが起きませんでした。理由はわかりませんが穂乃果ちゃんには未来を変える力があるんだと思います」

穂乃果「うん、穂乃果もそう思っていたんだけれど…本当にそれだけかな?」

花陽「どういうこと…?」

真姫「…もしかして、何か他にも理由があったとか?」

穂乃果「うん。…これはあくまで予想なんだけれど、未来を変えたのは正確には穂乃果の力じゃなくて、穂乃果が打ち上げた花火なんじゃないかなって」

希「確かに、一回目のウチのときも二回目の花陽ちゃんのときも花火が影響しとったな」

花陽「それじゃあ、穂乃果ちゃんじゃなくても未来を変えることができるかもしれないってこと?」

真姫「あるいは、穂乃果と花火。二つの条件が必要って可能性も考えられるわね」

絵里「でも、今からそれを確かめている時間なんてほとんどないわよ?」

穂乃果「そうだよね…。でも、だったらどっちの条件も満たせばいいんじゃないかな?」

希「どっちの条件も満たす?」

穂乃果「例えば、穂乃果の合図でみんなが一斉に花火を打ち上げる…とか」

絵里「確かにそれならどっちの条件も満たせているわね…」

真姫「なるほど。穂乃果の言いたいことはわかったわ。それじゃあ、考えて来た作戦ってのを聞かせてちょうだい」

穂乃果「? 今言った通りだよ? 穂乃果の合図でみんなで花火を打ち上げるんだよ!」

凛「どうゆうこと…? 凛にもわかるように説明して欲しいにゃ…」

にこ「いや…私にもさっぱりわからなかったんだけれど…」

真姫「…ちゃんとわかるように説明してよね」

穂乃果「えー? …リベロンに私たちの花火を見せてあげよう!って思ったんだ。リベロンが未来の地球だったとしたら、毎年輝夜祭で打ち上げる花火のことを覚えてくれているんじゃないかな?」

穂乃果「リベロンはこの地球が昔の自分だってことに気付いていないから食べようとしている。なら、それを気付かせてあげればいいんだよ!そして、輝夜祭のきれいな花火を見たらきっと気付いてくれる!」

にこ「…なんていうか、穂乃果らしい作戦ね」

穂乃果「…だめ…かな?」

ことり「…ことりは賛成だよ!」

凛「凛もー!いっぱい花火を打ち上げればいいんだよねー?」

希「みんなの花火が世界を救う…か。…面白そうやん!」

絵里「ちょっと、遊びじゃないのよ?」

花陽「でも、他の大勢の人が死んじゃうような作戦よりは、花陽は穂乃果ちゃんの作戦に掛けてみたいな」

真姫「未来を変える力があるかもしれない穂乃果が考えた作戦。それならその作戦にも未来を変える力があるかもしれない」

にこ「まあ、どうせ死ぬんだとしたら、最期くらい派手に花火でも打ち上げてやりたいと思っていたのよね」

海未「私は穂乃果の考えた作戦を信じます」

穂乃果「絵里ちゃんは…どうかな?」

絵里「私は…私も穂乃果のこと信じているわ。…それに、こんなハラショーな作戦他に思いつかないわ!」

穂乃果「うん!ありがとう、みんな!」

穂乃果の考える作戦は真姫ちゃんや絵里ちゃんが考えるものに比べたら全然理論的じゃない…感情論だったけど…
でも、時に世界を重要な局面で動かしてきたのはいつでも人々の強い思いだったのではないだろうか?

凛「ねえねえ、作戦名とかつけようよ!」

穂乃果「おーいいねーそれっぽい!みんなで考えよう!」

海未「折角ならかっこいいのがいいですね。…例えば、『スターゲイザー』なんてどうでしょう?」

凛「とりあえず、海未ちゃんのは置いとくにゃ」

海未「えぇー!?何でですか!?普通に良くないですか!?」

ことり「『地球とリベロンの仲良し大作戦♪』とかどうかな?」

花陽「可愛くていいと思うな♪」

にこ「失敗した時シャレになんないけどね…」

ことり「失敗のことは考えちゃダメ! そういうにこちゃんは何かアイデアないの?」

にこ「え…わたし!?…そうね…『花火フォーユー』…とか?」

花陽「……嫌いじゃないです」

にこ「無理しないでいいわ…。褒めるところが思いつかなかったのよね…」

絵里「『スカーレッド&ラピスラズリー』ってのはどう?それぞれリベロンと地球の色から連想してみたの」

希「うーん…ちょっと長くない?」

絵里「そ、そうかしら…」

真姫「普通に『オペレーション・リベリオン』とかでいいんじゃない?」

希「真姫ちゃんは夢がないなー」

真姫「それじゃあ、希は何がいいと思うのよ?」

希「作戦名『サザンクロス』!意味は南十字星!」

真姫「南十字星?それとこの作戦何か意味あるの?」

希「特に意味はないで。こういうのは語感が大事なんや」

真姫「語感なら『オペレーション・リベリオン』もなかなかじゃない?」

希「おー、真姫ちゃんは自分の作戦名を押してくなー?」

真姫「べ、別にそんなんじゃないんだから!」

凛「にゃー…なかなか決まんないよー」

ことり「そういえば、穂乃果ちゃんは? この作戦を考えた穂乃果ちゃんが決めればいいんじゃないかな?」

穂乃果「うーん…穂乃果が決めていいの?」

にこ「まあ、穂乃果の意見ならみんな納得でしょ」

穂乃果「そっかぁ…それじゃあ実は穂乃果も考えていたんだけれど…『星花火』ってのはどうかな?」

絵里「星花火…いいじゃない!」

花陽「なんだかロマンティックな名前だね♪」

凛「みんな賛成みたいだね!」

穂乃果「よーし、それじゃあ作戦名『星花火』絶対成功させるぞー!!」

「オー!!」

星花火…。リベロンへのメッセージとしてはぴったりかもしれないね!

海未「穂乃果、よくこの作戦を…この答えを導いてくれましたね」

穂乃果「海未ちゃんのお陰だよ!穂乃果のやりたいように頑張れって、言ってくれたからこの作戦を思いついたんだ」

海未「穂乃果は昔から花火が大好きでしたからね。でも、まさかそれを地球を守るための作戦にまで使おうとするなんて…穂乃果には恐れ入りました」

穂乃果「えっへへー、もっと褒めていいんだよー?」

海未「穂乃果、偉いです!」ナデナデ

穂乃果「う、うわぁ///!?」

海未「い、嫌でしたか?」

穂乃果「う、ううん…てっきり調子に乗るな!って言われると思っていたから…ちょっとびっくりしただけ」

海未「今回は本当に頑張ったのですから、そんなこと言いませんよ?」

穂乃果「ふふ、ありがとう! ……さあ、みんな、残り時間はあと少ししかないよ!早速作戦開始だよ!」

ことり「え?今から?」

穂乃果「うん!今から全国に連絡するんだよ。今年の輝夜祭はいつもの何倍も派手に花火を打ち上げましょうって!」

花陽「ぜ、全国に!?」

穂乃果「そうだよ!穂乃果たちだけじゃ宇宙から見ても小さすぎてわからないと思うんだ。だから、全国のみんなにお願いして、それでみんなで同時に花火を打ち上げたら、きっと気付いてもらえるよ!」

にこ「全国で同時に花火を…?」

ことり「それってとっても素敵だね!」

海未「今までで一番大きなお祭りになりそうですね」

絵里「それじゃあ、全国に送る文面を考えてみましょうか?」

みんなで話し合ってこんな内容のメールを全国に送りました。


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突然のメール失礼します。私たちは音ノ木坂魔法学校の「μ's」というチームです。

今回はきたる輝夜祭のことで一つお願いがあって連絡させていただきました。

現在、星喰リベリオンが侵攻してきて、このままでは月がなくなってしまいます。私たちはこれを防ぐために何かできないかと考えました。

そこで思いついたのは、今年は輝夜祭で打ち上げる花火を例年以上の規模で行うことで、月にエールを送るというものです。

私たちの強い思いはきっと月まで届くと思います。

月からでも花火が見えるように全国にお願いをしています。皆さんにもご協力いただけないでしょうか?

ちなみに作戦名は「星花火」と言います。

7月24日の19時ちょうど。みなさんで盛大に花火を打ち上げましょう!

-----

私たちの思いがみんなに届きますように…。あとは祈るだけだ

~3016年7月24日(水)17:00 地球滅亡まであと2時間~

絵里「穂乃果ー!こっちよー!」

穂乃果「あ、よかったー…。やっと合流できたよ…」

輝夜祭は無事に開催されていた。会場は音ノ木坂学院の運動場だったのだが…普段とは比べ物にならない人ごみだったため悪戦苦闘しながら集合場所に行くと、そこには浴衣姿のμ'sのメンバーがいた。
『星花火』の実行される19時までの少しの時間は輝夜祭を見て回ることになっていた。…もしかしたら、これが最期になるかもしれないのだから。

絵里「よし、これで全員揃ったみたいね」

穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんがまだ来てないよ?」

絵里「ああ、そのことなら後でのお楽しみってことで♪」

穂乃果「…?」

凛「ねえねえ、早く屋台のお店を見に行こうよ!」

花陽「何食べようか迷っちゃうね。たこ焼きに焼きそば…タイ焼き、りんご飴…誘惑がいっぱいだよぉ…」

真姫「今日くらいは気にしないで全部食べたらいいじゃない」

凛「そうそう!とりあえず、まずはそこのわたがしを買うにゃ!」ダッ

花陽「ま、まってー!」

希「お、こっちにはお面が売ってるで」

にこ「お祭りと言ったらこれよね!」

絵里「どれも可愛いわね」

希「絵里ちはこの狐のお面が似合うんやない?」

絵里「え、そうかしら…?」

にこ「せっかくなんだからみんなひとつずつつけましょう?」

希「にこっちはこれがええんやない?」

にこ「ぬわぁんで、ひょっとこなのよ!にこにはもっとプリティーなのが似合うわ!」

絵里「ひょっとこ、とっても似合ってるわよ?」

にこ「それは喜んでいいのかしら…?」

いつも通りの賑やかなμ'sを見ていると、本当にあと数時間で地球が滅亡するなんて信じられない。
いや、みんなは必死にいつも通りを装おうとしているだけかもしれない。頭の上にはもうすぐそこまでリベロンが迫っているのが嫌でも見えるのだから。
地球が滅亡することを知っているのは私たちだけだが、道行く人も流石に不穏な空気を察しているようだった。

凛「ねえねえ、みんなで盆踊りに参加しようよ!」

希「ええな!こう見えて、ウチ得意なんよ?」

凛「おお!さっすが希隊長!…さあ、みんなでいっくにゃー!!」

真姫「…わたしはいいわ」

花陽「えぇ…真姫ちゃんも一緒にやろうよ?」

真姫「…いいの。みてる方が好きだから」

にこ「あれあれ~?真姫ちゃん、もしかしてできないとか~?」

真姫「…」ムスッ

にこ「な、なによ…もしかして図星だったの?」

真姫「別に…盆踊りなんてできなくたっていいでしょ…」

にこ「……ちょっと来なさい」グイッ

真姫「ちょ、ちょっと!どうする気!?」

にこ「にこがレクチャーしてあげるって言ってんのよ!」

真姫「レクチャーって…いきなり輪の中に入れることのどこがレクチャーなのよぉ!」

にこ「こーゆうのは体で覚えるもんなの!」

凛「ほらほら、真姫ちゃん!凛の動きを真似するといいにゃ!」

希「お、上手上手♪」

こんなふうに楽しく盆踊りをしていると、色々な不安が紛れるようだった。
やっぱりμ'sのみんなはすごいや。穂乃果なんて本当は何にもできなくて…

希「そろそろアレが始まる時間やね」

穂乃果「…アレ?」

花陽「輝夜の舞いですね!」

輝夜の舞い。輝夜、地球、星喰の3つの役に分かれた人が美しい着物を纏い、舞いを踊るのだ。この舞いには舞台のようにストーリーがある。
その概要は1999年に起きた星喰ノストラダムスによる輝夜の捕食をベースに作られたものだ。
恋人同士の地球と輝夜は長い年月幸せに暮らしていた。ところが、ある日突然現れた星喰によってその仲は切り裂かれてしまう。
そして輝夜の見事な舞いに惹かれた星喰はとうとう輝夜を連れ去ってしまうのだ。残された地球は輝夜のことを忘れられず、ずっとずっと輝夜のことを思って舞い続ける。…大体こんな感じだ。

花陽「去年の輝夜姫のにこちゃん、素敵だったなぁ…」

にこ「ふふん、みんなにこの美しさにくぎ付けだったわね」

凛「絵里ちゃんと希ちゃんも似合いそうだよね!…やろうと思わなかったの?」

希「ウチには輝夜姫は似合わんよ。星喰役ならやってみよかなって思ったんやけどね」

絵里「私たちは生徒会もあったから。それに、にこのはまり役っぷりは凄く評判よかったのよ?」

希「練習頑張ってたもんなぁ」

にこ「やるからには完璧に、よ」

穂乃果「輝夜姫…今年は誰がやるのかな?」

綺麗な笛の音色と太鼓の音を合図に舞いが始まり、姿を現した地球役の子と輝夜役の子。
それを見て私はびっくりした。なんと、輝夜役として現れたのは海未ちゃんだったからだ!

穂乃果「ええ!?海未ちゃん!?穂乃果何にも聞いてないよ!」

希「穂乃果ちゃんをびっくりさせようって内緒で練習してたみたいなんよ」

穂乃果「そうだったんだ…」

花陽「海未ちゃんすっごく綺麗です…!」

黄色い声援が方々から飛び交う。…相変わらず海未ちゃんは後輩から大人気だった。

地球役の女の子は確か隣のクラスの子だ。海未ちゃんに負けないくらい綺麗で、後輩からの人気もかなりあったはずだ。
その子と海未ちゃんは向かい合って艶やかな舞いを踊っている。二人の距離は時に唇が触れてしまいそうなほど近づいて…その度にまた黄色い声援が飛び交った。
それとは逆に穂乃果はなんだか少しもやもやした気分になってしまった。

そして、ついに本当に唇が触れてしまうんじゃないかと思われた、その瞬間。
どどん!と大きな太鼓の音とともに、笛の音は怪しい色に変化して、今までの雰囲気が一転する。
そして、現れたのは星喰役の女の子。…今度はなんとことりちゃんだった!

穂乃果「ことりちゃんまで!?」

希「ふふ、穂乃果ちゃんめっちゃ驚いとるなぁ。これはドッキリ作戦大成功やな」

穂乃果「本当にびっくりしたよ…」

ことりちゃんはさっきまでいい感じだった地球と輝夜を引き離してしまった。
今度は海未ちゃんとことりちゃんが向かい合って舞いを踊っている。なんだか二人とも楽しそうで、穂乃果だけ仲間はずれにされてしまったようで…ちょっぴり嫉妬。
だけど、内心少しほっとしている自分がいた。海未ちゃんが知らない子に取られちゃうような気がしたのだ。ことりちゃんなら…まあいっか
ことりちゃんの舞いはなんていうか…腰をくねくねさせるような動きで海未ちゃんを誘惑していて…うん、エッチだ

凛「うわぁ…なんだか、ことりちゃん凄いねぇ…///」

真姫「妖艶っていうのかしら」

にこ「ことりって意外とああいう役が似合うわよね…」

花陽「相手が海未ちゃんだからってこともあるかもね♪」

そして、ことりちゃんは海未ちゃんを連れ去っていった。本来なら、地球と輝夜の永遠の別れで悲しい場面のはずなのだが…海未ちゃんの表情は緩んでいて、それどころか少し嬉しそうで、どうみても駆け落ちにしか見えなかった。

舞台が終わってから二人と合流した。

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん!お疲れさま!」

海未「ありがとうございます」

ことり「ありがとう♪」

穂乃果「でも二人ばっかりずるいよー!ずっと内緒にしててさ。穂乃果だって出たかったのに…」

海未「それは…ごめんなさい…。内緒にしてたのは穂乃果を驚かせたかったからなんです」

ことり「それに…この時期は穂乃果ちゃんも花火の魔法の研究で忙しいかなって思ったから…」

穂乃果「あ、そっか…」

海未「穂乃果の花火には毎年多くの人が期待してくれているんですよ?私とことりでは花火の方で盛り上げることはできませんので、せめて何か役に立てればと思ったんです」

ことり「特に今年はちょっとした事件もあったし、楽しみにしてる人が多いって!」

穂乃果「ありがとう!穂乃果は花火を頑張るよ!今年のは本当に凄いんだから!」

そう、今年は何といっても『星花火』計画があるのだ。昨日のうちに企画書を提出して、輝夜祭のプログラムに無理を言ってねじ込んでもらったのだ。
私は花火に関することではちょっと顔が効くのは幸いだった。つまり、舞台は無事整っており、あとは本番を待つだけというわけだ。

穂乃果「それにしても、ことりちゃんが星喰役ってのはちょっと意外だったよ。やるなら地球役の方がよかったんじゃない?」

ことり「う~ん、でもそれだと最後に海未ちゃんを取られちゃうじゃん? だから、ことりは奪われるより奪う側に回ろうって思ったんだよ♪」

穂乃果「そ、そうなんだ…」

これ以上追及するのはよしておこう…

穂乃果「さあ、それじゃあみんな揃ったところでもう一度お祭りを見て回ろうよ? 海未ちゃんとことりちゃんはまだ回れてないんでしょ?」

ことり「いいね~♪ ことりはマカロンが食べたいな」

海未「マカロンの屋台なんてありましたっけ…?」

穂乃果「あはは、探してみよっか?」

そんな会話をしているときだった。それは起こった。

ウーーーーーーー………

地の底から響くような不吉なサイレンの音があたりにこだました。

「非常事態宣言。非常事態宣言。叛逆の紅月『リベリオン』が地球への侵攻を開始したと、政府が正式に発表しました。国民は現場の指示に従い避難を開始してください。なお、A級以上の魔法資格を持つ者は屯所に招集してください。繰り返しますーー」

~3016年7月24日(水)18:03 地球滅亡まであと57分~

~♪~♪~

辺りはとんでもない混乱に陥った。逃げ惑う人々。泣き叫ぶ子供。
空一面は紅く染まっていた。…それはすぐそこまで迫ったリベリオンの色だった。
世界滅亡直前の光景がまさに目の前に広がっていた。
…それにしても困った。政府がこんな放送をするなんて予想していなかった。輝夜祭が中断された今、『星花火』作戦の決行は絶望的となってしまった。

絵里「みなさん、落ち着いてください!避難場所までは私が誘導します!私の後についてきてください!」

絵里ちゃんは瞬時に現状を把握したようで、混乱した場の鎮静化につとめていた。

絵里「穂乃果!」

穂乃果「え、絵里ちゃん…どうしよう…」

絵里「私はみんなの誘導をしなきゃ…。だから、あとは頼んだわよ」

絵里ちゃんは穂乃果の頭をポンポンとすると、人ごみに消えていった。

希「ウチも生徒会として絵里ちのサポートに回るね。…穂乃果ちゃん、最後まで諦めちゃあかんよ」

穂乃果「希ちゃん…」

希ちゃんは絵里ちゃんと同じく混乱した人達の誘導へと向かった。

穂乃果「…大丈夫!絵里ちゃんと希ちゃんの分まで私たちで頑張ろう!」

ことり「そ…そうだね!みんなでがんばろ~!」

まだいける…まだ大丈夫…諦めちゃダメだ…

「ことり!」

ことり「お母さん!?」

理事長「よかった、見つかって…。それに西木野さんも」

真姫「わ、私も…?」

理事長「さっきの放送であったでしょう。A級以上の魔法資格者に招集がかかっているの。ことりと西木野さんはA級資格を持っているでしょう?」

ことり「で、でも…」

理事長「あなたたちには地球の存亡を掛けた国家プロジェクトに参加してもらうわ。地球のために今一番できることよ」

真姫「…わかりました」

ことり「わたしは…」

穂乃果「ことりちゃん、大丈夫だよ。いってきて」

ことり「…穂乃果ちゃん。…わかった。ことりも協力するね」

理事長「ありがとう。屯所までは私が連れて行くわ」

真姫「穂乃果。…この運命を変えられるのはあなただけよ。それを忘れないで…」

ことり「ことりも…自分のできることをやってくるね」

穂乃果「うん、行ってらっしゃい」

そうだ…自分にできること…私にしかできないことがきっとあるはず…

「うぇーーーーん!!!ママーー!!!」

凛「ちっちゃい子が泣いてる…。迷子なのかな…?」

花陽「大丈夫…? お母さんとはぐれちゃったの…?」

「…うん」グス

凛「ど、どうしよう…」

花陽「ねえ、穂乃果ちゃん。私はこの子のお母さんを探してきていいかな?」

凛「かよちんが行くなら凛も一緒に行くよ!」

穂乃果「うん、わかった。ぜひそうしてあげて!」

「おねえちゃんたち、ありがとう!」

花陽「絶対お母さんに会わせてあげるからね!」

凛「それじゃあ、行ってくるね!」

たった一人も見捨てない。そんな選択をしたのは私だよね。
…それにしても残るは穂乃果と海未ちゃん、それににこちゃんだけか…

にこ「…ねぇ、穂乃果。悪いんだけれど…妹たちの様子を見に行ってもいいかしら? …今のを見ていたら心配になっちゃって」

穂乃果「そっか…しょうがないよね…。わかったよ!」

にこ「悪いわね。……ちゃんとやり遂げるのよ?」

にこちゃんも行ってしまった…。

穂乃果「……」

海未「穂乃果…」

穂乃果「大丈夫、なんとか…なるよ。…きっと」

海未「わたしは最後までついてます」

穂乃果「ありがとう、海未ちゃ…」

「海未さん」

海未「…お母様」

海未母「お爺様がお呼びです。すぐに家へお戻りなさい」

海未「…お爺様が? 一体なぜ…?」

海未母「それは家に着いてから説明します」

海未「今ここで言ってください。そうでなければ、私は家に戻りません」

海未母「…」

海未ちゃんのお母さんは私の方をちらりと見た後、ため息をついた。

海未母「園田家に伝わる禁術を発動させよ、というご命令です。恐らくあの紅月を打ち滅ぼすお考えなのでしょう」

海未「…!! あれを発動させるというのですか? そんな…あれには多くの犠牲が…」

海未母「その通りです。…あれには園田家の血が多く必要になるのです。…それには私もお父様も…それに海未さんも含まれています」

穂乃果「…!!そんなの絶対ダメ!!行かせないよ!海未ちゃん!!」

海未母「穂乃果さん…。わかってください。これは園田家に生まれた者の使命なのです」

穂乃果「そんな…!それでも…」

海未「穂乃果…」

海未母「海未さん。今ここで立ち上がらなかったら、そこにいる穂乃果さんも死なせてしまうのですよ?」

海未「お母様…本気、なんですね?」

海未母「もちろんです」

海未「穂乃果……すいません」

穂乃果「…行っちゃ、やだよ…」

海未「…すいません」

私はひとりぼっちになってしまった。

~3016年7月24日(水)18:16 地球滅亡まであと44分~

~♪~♪~

「…」

私はなんて情けない人間なんだろう。仲間がいなければ何もできない。
みんなとはぐれた私は、慌ただしい喧騒を避け、公園のベンチにぽつんと座っていた。

私の立てた作戦『星花火』はこの大混乱の中ではもはや実行不可能だった。
μ'sのみんなは自分のやるべきことを見つけて、今もどこかで戦っているのに、私だけは何もすることができない。
悔しくて仕方がなかった。

「私はこれからどうすれば…」

ふと、前に人の気配を感じたので目線をあげてみた。

「こんなところでどうしたの?」

そこには私と同世代くらいの女の子が立っていた。音ノ木坂の制服を着ている。それは…この前夢の中に出て来た少女だった。

「私は…結局何も出来なかった…。地球のためにって色々頑張ったんだけれど…全部、無駄だったみたい」

「そっか…それはつらかったね」

「みんな、死んじゃうのかな…?」

「うん。死んじゃうね。あなたも…そして、わたしも」

「ごめんね…何もできなくて」

「まだ、諦めるのは早いよ。あなたは未来を変えるためにわざわざここまで来たんでしょ?」

「でも私一人じゃ何もできないよ…」

「一人なんかじゃないよ。仲間たちはどんなに遠く離れていても心は常にひとつ。ここにいるんだよ!」

「ここに…?」

私は胸のあたりをそっと触ってみた。

「うん!感じるでしょ?温かい気持ち」

「うん…感じるよ…!みんなの気持ち!」

「それならもう大丈夫だね!さあ、涙を拭いて?そんなにメソメソしてるの私らしくないよ!」

「ありがとう。私、ずっと忘れていた。でも、全部思い出したよ。何のためにここに来たのか」

「そっか、よかった!思い出してくれたんだね!」

「どうして忘れていたんだろう…こんなに大切なこと…」

「思い出したんなら問題ないよ!」

「あはは、それもそっか!」

「…私はあなた、あなたは私」

「地球と月、どんなに遠く離れても」

「今と未来、どんなに時間が離れても」

「「私たちはひとつ!!」」

眩しい光に包まれて、次に目を開けた時に目の前の少女は消えていた。

穂乃果「見つかったよ…答え」

~3016年7月24日(水)18:46 地球滅亡まであと14分~

~♪~♪~

さっきフラフラと歩いてきた道を今度は全力で走って、学校まで戻って来た。
輝夜祭の催し物は放置されたままで、既にほとんどの人が避難を終えているためか人はほとんどいなかった。
残っている人は、全てを悟ったような顔で空を見上げている者、泣いている者、あとは国の関係者くらいだった。
穂乃果はそのまま校舎に駆け込んで、屋上を目指した。


穂乃果「なんとか間に合ったかな…」

音ノ木坂の屋上はこの辺りでは一番高い場所だった。そして、何よりみんなとの思い出が一番たくさん詰まった場所だった。

時計は18:56を指していた。
全国のみんなは私たちが送ったメールに対して思った以上にたくさんの返事をくれた。
約束の時間まであと4分…。みんなは今でも覚えててくれているかな?
わからない…。でも、やるしかない。

目をつぶって心を落ち着ける…。頭の中でカウントダウンを始める…。

3分…

2分…

1分…

30秒…

どごぉぉん!!

そこで、凄まじい轟音が聞こえたので目を開けてみる。
屯所のある辺りからいくつもの巨大な光の塊が放出されており、それらは今まさにリベロンが伸ばしてきた黒い触手にぶつけられていた。

穂乃果「や、やめて!!それは…リベロンは、私たちなんだよ!!」

リベロンへの攻撃の手が緩められることはなかった。一方、リベロンにもさほど効果はないようだ。
それはまるで、過去の地球と未来の地球が戦争をしているように見えた。
これ以上見ていられない…!

穂乃果「この戦いを…終わらせる…!」

穂乃果は空に…リベロンに向かってオレンジ色の『星花火』を打ち上げた。

それは普通の花火だった。
ドーン!と音を鳴らして咲いたかと思うと、次の瞬間にはたちまち散ってしまう。

しかし、また次の瞬間には別の場所から…

オレンジ、白、青、緑、黄色、赤、ピンク、紫、水色

穂乃果が最初に打ち上げた花火に呼応するように、9色の花火が空を飾った。

穂乃果「どんなに離れていても、繋がっている…」

そして、今度は9色だけじゃない。もっとたくさんの…数えきれないくらいの色の花火が空一面を覆いつくしている!

穂乃果「みんな…覚えてくれていたんだ…」

思わず涙がこぼれそうになる…が、ぐっとこらえた

穂乃果「まだまだ! 泣いている場合じゃない!」

消えては打ち上げ、消えては打ち上げを繰り返した。
ひとつひとつは小さな普通の花火。でも、それが集まればこんなにも大きな素敵な花火になったよ!

穂乃果「届いていますか…? これが…これが『星花火』だよ!!」



『星花火』は一晩中途切れることなく続いた。
そして、ようやく地球上のみんなが魔力を使い果たして、空が晴れた時にはリベロンの姿はなくなっていた。

本日分終了
あとちょっとだけ続きます

~3016年7月25日(木)~

海未「穂乃果、起きてください」

穂乃果「うーん…もうちょっとだけ…」

海未「眠いのはわかりますが、こんなところで眠っていては体に悪いですよ?」

何だか体がじりじりと暑い…

穂乃果「…あれ? ここは…?」

海未「学校の屋上ですよ」

穂乃果「そっか…昨日はあのまま寝ちゃったのか」

時刻は正午を少し過ぎたあたりだった。

特に示し合わせたわけではなかったのだが、部室にはみんなが集まっていた

絵里「みんな無事だったみたいでなによりだわ」

希「あれだけの騒ぎだったのに怪我人もほとんど出なかったみたいで安心やね」

穂乃果「そっか!よかったよかった」

昨日までに起きたことは全部夢のようで、何だか実感がわかなかった

花陽「みんな、改めて…ありがとうございました! みんなに相談して本当によかったです」

凛「凛からも! 本当にありがとう!」

にこ「それを言うなら穂乃果にでしょ?」

穂乃果「えぇ? …穂乃果は、一人じゃなんにもできなかったよ。みんながいてくれたから最後まで頑張れたんだよ。だから!穂乃果からもみんなに、ありがとう!」

真姫「世界を救ったんだから、もっと胸を張ってもいいのに…。でも、そこが穂乃果のいいところなんだけれど」

穂乃果「みんなに感謝してるのは本当に本当なんだよ? だから、胸を張るならみんなも一緒だよ」

絵里「そうね。穂乃果の言葉、ありがたく受け止めましょう。みんな、とにかくお疲れさま。本当によく頑張ったわ」

花陽「あ、そういえば…全国からもたくさんメッセージが届いてました。μ'sありがとう!って」

海未「これは…すごい数ですね」

にこ「世界を救ったんですもの、当然といえば当然よね」

ことり「そのことなんだけれど、お母さんを通じてμ'sを表彰したいって話がきているらしいんだ」

にこ「それ本当!? ついににこもスターになれる日が…!」

穂乃果「せっかくなんだしみんなで受けようよ!それで、全国のみんなにも感謝の気持ちを伝えたいな。手伝ってくれてありがとう!って」

絵里「それはいい考えね!」

ことり「世界を救ったのは私たちだけじゃなくて、みんなのおかげだよって伝えることができればきっとみんなも喜んでくれるね!」

穂乃果「うんうん!」

ことり「それじゃあ、このことは私のほうから伝えておくね」

絵里「ええ、よろしくお願い」

海未「あの、一つ気になることがあるのですが…。あの本は…『人類の歴史』はどうなったのでしょうか?」

花陽「そ、そういえばすっかり忘れてた…」

凛「それなら凛が持ってるよ!」

そして、『人類の歴史』を見てみると…

希「最後のページの地球滅亡っていう出来事が…消えてる?」

真姫「未来が変わった影響ってことかしら」

海未「そして、昨日のページで最後だったはずなのに、新しくページが増えていますね。すべて真っ白ですが…」

凛「それじゃあ、もう未来のことはわからないのかぁ。ちょっと残念」

穂乃果「でも、そのほうがいいよ。だって、未来のことがわかっていたら面白くないもん!」

凛「うーん、それもそっか!」

花陽「この本は確かに私たちのことを助けてくれた。それだけは間違いないよ」

ことり「だけど…この本、結局なんだったんだろうね?」

真姫「…前に言おうと思ったんだけれど。…この本の作者のことで」

海未「ノストラダムスのことですか?」

真姫「ええ、この本の表紙…。『R.Nostradamus』って書いてあるわよね?」

ことり「前に穂乃果ちゃんが見つけたやつだね」

真姫「ノストラダムスの本名は『Michel de Nostredame』なの。だったとしたら、この『R』っておかしくないかしら?」

にこ「たまたまじゃないの?」

真姫「そんな適当なわけないでしょ」

にこ「むっ…じゃあ、何の意味があるっていうのよ?」

真姫「それは…わかんないけど」

希「うーん…R…か…」



穂乃果「リベリオン…」

穂乃果「Rebellion Nostradamus…だと思う」

海未「二つの星喰の名前ですか?」

穂乃果「うん。穂乃果が前に見た夢の話、覚えている? 穂乃果はリベロンの…未来の音ノ木坂の生徒として歴史の授業を受けていたんだけれど…その話によるとリベロンは1000年前に地球の近くを通っていて、そのときに輝夜を食べたらしいんだ」

海未「1000年前に輝夜を食べた星喰はノストラダムスだったはずでしたが…」

穂乃果「それから、ノストラダムスの色は確かピンク色だったよね? そしてリベロンの色は赤。この1000年の間に星を覆う赤色のガスが濃くなってピンク色から赤色の空に変わったんだよ」

穂乃果「つまり…ノストラダムスは1000年前のリベリオンだったんだ。そして、この本はきっと未来の地球「リベリオン=ノストラダムス」が私たちのために残してくれたものなんだよ。地球を助けてほしいっていうメッセージだったんだよ!」

希「なるほどなぁ…。なんていうか…スピリチュアル過ぎて言葉が出ないわ…」

ことり「でも、きっと穂乃果ちゃんのいう通りだよね」

海未「ええ、きっと。…この本に未来が書かれなくなったのも、もうその役目を果たしたからだと思います」

穂乃果「そうだよね。ちゃんと伝わったよ…あなたの気持ち…」

ありがとう

穂乃果「ねえ、凛ちゃん。この本、貰ってもいい?」

凛「? 別にいいけど…何に使うの?」

穂乃果「ふふ、それはね…こうするんだよ!」

【3016年7月25日(木) 地球は人類の手で守られた!】

穂乃果「これからの真っ白のページには私たちが未来を書いていこうと思うんだ!」

凛「あ、それいい!」

絵里「人類の新たな歴史はここから始まるってわけね!」

にこ「たまにはにこのことも書いてちょうだいね?」

穂乃果「うん!みんなのことも必ず書くよ!」

希「これからの人類の歴史がどうなっていくのか…楽しみやね」

どうなるかはわからない…でも、それはきっと今よりも、もっといいものになるはずだ。

絵里「そうだ、穂乃果。喜ぶのはこれくらいにして、まだ解決しなければならない問題がひとつあったんだわ」

にこ「なによ…せっかくのハッピーエンドが台無しじゃない」

絵里「まあまあ。大事な話だから」

穂乃果「大事な話?」

絵里「ええ。今回は地球滅亡を免れたわけだけれど…このままだと地球がどうなるかって話は前にしたわよね?」

穂乃果「このままだと地球がどうなるか…?」

絵里「あら、覚えてないの?しょうがないわね…。このままだと、地球はリベロンみたいになっちゃうっていう話よ」

穂乃果「地球がリベロンに…? ………あーーー!!? そういえばそうだった!!」

花陽「人類が魔力のエネルギーを使い過ぎたせいで地球はお腹が空いちゃって星喰になるっていう話だよね…」

穂乃果「どどどどうしよう!?」

絵里「まあ、慌てないで。未来は変えられる。…そうでしょう?」

穂乃果「あ、そうだよね…!よかったー…」

絵里「ええ、本当によかったわ。穂乃果がいてくれて♪」

穂乃果「うんうん!穂乃果がいてよかった……って、あれれ?」

絵里「というわけで、穂乃果。お願いね?」

穂乃果「あ、あのー…絵里さん? どういうことでしょうか…?」

絵里「だって未来を変えられるのは穂乃果の力でしょう? だったら、穂乃果に頑張ってもらわないとね!」

穂乃果「今度は地球が星喰にならないための方法を穂乃果が考えるってこと?」

絵里「そういうこと♪」

穂乃果「ええーー!?今度はどうすればいいのー!?」

絵里「やっぱり未来の地球で魔法を使いすぎてしまったのが原因よね…。これをどうにかするって考えると、社会の制度そのものを変える必要があると思うの。…とりあえず、穂乃果には未来の地球のリーダーシップをとれるような立派な人間になってもらわなくちゃね♪」

穂乃果「そんなの穂乃果一人でどうにかなる問題じゃないよー!!」

海未「大丈夫です!私たちがサポートしますから!」

ことり「穂乃果ちゃん、ファイトだよ!」

真姫「勉強なら少しは教えてあげるわよ?」

花陽「穂乃果ちゃんならきっとなんとかなります!」

凛「凛も応援してるにゃー!」

にこ「穂乃果も大変ね…まあ、頑張りなさい」

希「カードでは素敵な未来が待っているって出とるよ?」

絵里「というわけでそうね…手始めに穂乃果には次の生徒会長になってもらおうかしら?」

穂乃果「せ…生徒会長!?そ、そんないきなり…」

海未「穂乃果」

ことり「穂乃果ちゃん」

「「ファイトだよ!!」」

穂乃果「……よーし。もう、こうなったら全力でやり遂げて見せるしかないね!」

物語の始まりも突然である

~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~


「穂乃果ー!もうすぐ記者会見が始まりますよ?」

「準備はもうできた~?」

「あーもう少しだけ!今行くからちょっと待ってー!」

「きちんとしてきてくださいね?今日は大事な日なんですから」

私はデスクに向かっていつものように日記をつけていた。
その内容は、自分のこと、みんなのこと、身の回りで起きた何気ないできごと、歴史的な事件など、様々である。

「よし、書けたー!」

今日書いていたのは身の回りで起きたこと。だけど、これはきっと人類の歴史に残る重要なできごとになるはずだ。

「それじゃあ、いってきます!」

【3026年2月26日 高坂穂乃果、若きリーダーとしてスタートを切る!】

エピローグ

「ねえねえ、音ノ木坂の七不思議って知ってる?」

「もちろん知ってるよ!確か『音楽室の音泥棒』とか『図書室の迷い猫』とかだよね?」

「その通り。それじゃあ、7つめの不思議のことは…?」

「7つめ? そういえば7つめだけは聞いたことないかも」

「そう、7つめだけは長い間謎に包まれていたんだよね。…でも今回はなんとその7つめの不思議を手に入れてきました!」

「えっ!?本当に!?……ていうか、手に入れたって?」

「ふっふっふ…7つめの不思議ってのは実はこの本のことなのさ!」

「『人類の歴史』…? なにこの本?」

「それが詳しいことはよくわからないんだよね。わかるのは作者だけかなぁ」

「作者…?…この『K.Honoka』って人…どこかで聞いたことがあるような…」

「昔の偉い人ならしいよ?しかも、この音ノ木坂出身だって!なんでも世界的なリーダーだったとか…予言者だったとか…」

「予言者…?なんか胡散臭くない?大丈夫なのかな…この本…」

「いやー…それが実は私もまだ見てないんだよね。ちょっと怖くて…」

「えーそれって私も巻き添えってことじゃん!」

「そこを何とかお願い!一緒にみよう?」

「…まあ、私も中身が気になるからいいけれど」

「ありがとう!じゃあ開くね…」

「前書き…『この本を読んでくれている人に素敵な未来が訪れますように!』だって」

「内容は至って普通の歴史書みたいだけれど…」

「ちょ、ちょっと待って…この本…未来の出来事まで書いてあるよ!?」

「ほ、本当だ…しかも、最近起こったことは全部当たっている…」

「未来の予言書…ってことか。本物みたいだね…」

「…ねえ」

「…なに?」

「最後のページ…気にならない?」

「…気になるかも」

「…見てみようか?」

「…うん」

「い…いくよ…!」


そして最後のページには……


以上です
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月06日 (日) 14:01:54   ID: x9-ZdfSh

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