男「ゆき、ここへ」(35)

左眼と引き換えに手に入れたもの。

右目の視力

直死の魔眼。

エターナル・フリーター。使用者は死ぬ。

目玉おやじ

御料の山の中腹に磐座と祠あり。
男は祠の前に立つと、勾玉の首輪を外して糸を切った。
勾玉が散る。
「さかのもりにもうす。われたおりゆきたるまよばいしもの」
群雲わきて日射し陰り、祠より光現れし。
光ひとひらの炎となりて宙を漂い、やがて一つの形を成す。
炎双頭の狗となりて男の前に在り。
「よばいし者、現世に在らば喰らいて去る」

「我現世に在らず。坂の間に間に立ちて在り」
男は答え、重ねて言った。
「坂の守に問う。鏡在れば御霊呼べしか」
双頭の狗が答える。
「鏡在りしも霊呼ぶ事能わず」
「剣持ちて参れ」

これはいい厨二

男懐より小刀を取りて言う。
「これに」
双頭の狗、小刀を認めて言う。
「おのが血を」
「依代に」
男は懐からヘアピンを取り出すと、小刀で左人差し指の指先を軽く刺し、ヘアピンに血を一滴垂らした。

雲が晴れた。
明るい日射しが戻り、男の前から双頭の狗は消えた。
ヘアピンも男の手から消えていた。
「……これで、鍵は開いたか」
鏡と小刀をその場に捨て、男は祠に背を向けた。
そして、振り返らずに山を下りた。

~学校

幼馴染「顔色、悪いわね」

男「んあ、ちょっとつかれてる。眠い」

幼「遊び過ぎ? 昨日は家にいなかったよね。夜中も」

男「遠出してた。帰ってきたのが朝方」

幼「なにやってんだか」

男「色々と」

幼「彼女でも出来た?」

男「んな暇無い」

幼「じゃ、何やってたのよ」

男「んー……、探し物?」

幼「語尾擧げるな。探し物って何よ? 遠出して買い物でも行ってたの?」

男「尋問は無しにしてくれ。眠いから寝る」

幼「寝るって、授業中に?」

男「ああ、何かあったら起こしてくれ」

幼「知るか」

男「……zzz」

幼「って、もう寝てるし」

男「zzz」

幼「ちょっと、起きなよ。授業始まるよ」

男「zzz」

幼「はぁ……」

幼「で、結局」

男「昼飯も食わずに一日爆睡して下校する訳だが」

幼「アンタだから許されるのよね。他の人がそんな真似したら、居残りでお説教と補習だよ」

男「ふーん。で、帰ってからも寝る訳だが」

幼「ダメ。数学で課題出てるから。ハイこれ」

男「お、ありがとう」

幼「ところでさ」

男「何だ?」

幼「遠出って、昨日どこに行ってたの?」

男「説明するのが面倒くさい所」

幼「面倒くさいって何よ。言いたくないってこと?」

男「いや、話が入り組んでて説明するのが難しいんだ」

幼「……」

男「……まぁ、場所は故郷の山だったんだけどね」

幼「? 何いってるの。アンタ生まれも育ちもこの町でしょう」

男「ああ、そう言う事になってる」

幼「なってるって何よ。違うとでも言うの?」

男「だから説明するのが面倒くさいっていったんだ。この話はここまで」

幼「……うん、わかった。でも」

男「でも、何?」

幼「いつか、言ってくれるんだよね? ちゃんと説明してくれるんだよね?」

男「事が納まったら、ちゃんと一から話してやるよ」

幼「それなら、いい。もう追求しないから」

男「オマエが物わかりのいい娘で良かったよ」

幼「伊達に長く付き合ってる訳じゃないからね」

幼「アンタが『ここまで』って言ったら、その気になるまで何があっても口を割らないのはよく知ってるから」

男「すまんね」

幼「ところで、晩ご飯は家に食べに来なさいよ」

男「いや、いい。おばさんに悪い」

幼「遠慮しないで。っていうか、来なさい。来なきゃダメ」

男「何故?」

幼「アンタ、帰ったらそのまま眠るつもりでしょ、ご飯食べずに。そうはさせない」

男「眠らしてくれ」

幼「ダメ。ちゃんとご飯食べなきゃ。だから家に来ること!」

男「嫌だと言ったら?」

幼「晩ご飯持って押し掛ける。叩き起こす」

男「判った。行くよ」

幼「よろしい。少し話したい事もあったからね」

男「ん?」

幼「あとで、ご飯食べ終わったら少し話があるの」

御料の山の麓の神社、炊事場にて

巫女「ちょっと皆様にお伺いします。おでんにロールキャベツは邪道ですか?」

巫女「私は、ソーセージよりはマシだと思っています」

巫女「ですが、おでんの中でタコさんウィンナーが泳いでいるのは可愛いと思います」

巫女「その点、ロールキャベツの閉鎖性は磯のアワビに通じる物があります」

巫女「秘めたる想い、と言う奴です」

巫女「ロールキャベツたる私は、タコさんウィンナーの活動的な姿に憧れつつも、じっと慎ましく生きています」

巫女「情熱的な挽肉の具を内に秘めつつも、キャベツでそれを覆い隠し、まるで野菜であるかのように慎ましく控えている」

巫女「今日の夕食は、そんなロールキャベツ入りのおでんです」

巫女「そろそろ、いい具合に火が通ってきました」

支援

幼馴染宅

男「おばさん、お邪魔します」

幼母「聞こえないなぁ、男ちゃん。もう一回言ってみて」

男「お母さん、お邪魔します」

幼母「ん? まだ聞こえないなぁ。もう一回」

男「お母さん、ただいま」

幼母「はい、よろしい。晩ご飯、いま用意してるからちょっと待っててね」

男「お母さん、出刃と笑顔が良く似合う」

あげとこう

がんばってくれ
つ支援

晩飯早くね?
ってか、sageろよ

男ときどき巫女さん(11才)

macだけど、半角カナ変換できるようにした

巫女「さて、ロールキャベツですが、お箸で分けられるくらい柔らかくなりました」

巫女「たっぷりと出汁をすって、熱々ジューシーなところをいただきます」

巫女「アチッ……すいません、猫舌なのです」

巫女「」フーフー

巫女「」ハフハフ

巫女「口の中で旨味をまとったキャベツがほどけて、スープをたっぷり含んだ挽肉と絡み合い、贅沢な味の競演を舌のうえで繰り広げます」

巫女「そして、おでんと言えば大根です」

巫女「芯まで薄飴色、しっかりと味が染みています」

巫女「煮崩れすること無くしっかりと形を保っています」

巫女「ですが、お箸で切り分けて口へ運ぶと」

巫女「舌で軽く押さえただけで、溶けるように形を崩し」

巫女「出汁と大根の味が溢れんばかりに、口の中いっぱいに広がります」

幼「あ? やっと来たわね。もう少しで迎えに行くところだったのよ」

男「ああ、すまん」

幼「仮眠でもとってたの?」

男「いや、これ」

幼「あ? これ数学の課題」

男「着替えてそれ片付けてからこっちに来た。オマエまだやってないだろ?」

幼「まだカバンから出してもいないわよ」

男「じゃ、それ写しちまえ。そんなもん真面目にやるのは時間の無駄だ」

幼「そんなもん、ってアンタ。課題は大事でしょ。成績に響く」

男「成績なんてシラン」

幼「ハア……、アンタはそうかもしれないけどね」


 (*・・*;)

男「ところで、非常に眠い訳だが」

幼「却下」

幼「それにしても、この課題を小一時間で片付けちゃうとはね」

幼「相変わらず、どんな頭してるんだか」

男「zzz」

幼「起きろ」ゲシッ

幼「学校であれだけ寝てたのに、まだ眠り足りないの?」

男「机で寝ても疲れがとれない」

幼「先にお風呂入る?」

男「湯船で眠ってしまいそうだ」

幼「じゃあ起きてなさい。コーヒーでも飲む?」

男「コーヒー飲むと眠くなるから、いい」


幼「アンタなあら、コーヒー飲み忘れたらカフェインの離脱症状が出るかもしれないわね」

男「なんだそれ? 中毒かよカフェインの」

幼「違うの?」

男「違う……と思いたい……」ウムム

幼「真面目に考え込むほどの事かなぁ。アンタやっぱり変」

男「…………」

幼「? 気に障った?」

男「…………」

幼「どうしたの? 何考えてるの?」

男「…………ん?」

幼「あ、戻ってきた」

幼「アンタ、いま、なにを、考えてたの?」




男「いや、ちょっとウトウトしただけだが」

幼「……はぐらかさないで」

男「ん?」

幼「アンタ最近、時々そうやって考え込むよね」

幼「完全に顔つきが変わっちゃうほど、何か考え込んじゃってる」

幼「アタシですら、いままで見たことも無いような表情で」

男「どんな顔だよ」

幼「ハッキリ言って、怖い。別人の顔」

幼「アンタのご両親が亡くなったときだって、そんな顔してなかったわ」

男「そうか」

幼「そうよ」

男「わかった。幼、飯を食ったあと、ちょっと話をしないか?」

幼「最初から、そのつもりよ」


 (*・・*;)ヤ,ヤバイ

酉キー忘れるとかもう、ヤル気あるのかと


巫女「このお社には、私一人しか居りません」

巫女「代々、このお社は一人の巫女が務める慣わしとなっています」

巫女「ですから、私もここに一人、暮らしています」

巫女「毎日のお務めも、季々節々の祭祈も、一人で執り行なっております」

巫女「この御料の山におわします神にお仕えする此の身であれば」

巫女「人里からは遠く、参拝に訪れる方も稀ではありますが」

巫女「季節を友と」

巫女「風を友と」

巫女「木々草花を友と」

巫女「時折姿を見せる山の生き物達を友として」

巫女「私は此処で、神に祈るのです」

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