まどか「とろけるバレンタインデー」 (130)

まどマギの百合物です
2回くらいに分けて投下する予定です

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まどか「え、みんなでチョコ作り?」

さやか「うん。あたしたち、チョコ作りとかしたことなくてさ」

さやか「まどかもないようなら、一緒にどうかなって思って誘ってみたんだけど……」

まどか「作ったことないわけじゃないけど、みんなでやるのって楽しそうだし……」

まどか「わたしも、みんなと一緒にチョコ作りしてみようかな」

さやか「ありがと。まどかならきっとそう言ってくれると思ってたよ」

まどか「急にチョコ作ろうって言い出したのって、バレンタインが近いから?」

さやか「一応、そのつもり。あと1週間ちょいくらいだからね」

さやか「何か予定があるわけじゃないなら、今日これからマミさんの家行くけど…どうする?」

まどか「今日はー…特に何も予定はないかな」

さやか「それじゃまどかも参加、と。マミさんにメールしておかなきゃ」

さやか「……これでよし。マミさんたちが材料のチョコ買いに行ってるから」

さやか「あたしたちは少しゆっくりマミさんの家に向かおう」

まどか「さやかちゃん、みんなでチョコ作りって言ってたけど」

まどか「具体的には誰が参加するの?」

さやか「んーと、あたしとまどか、マミさん、杏子になぎさ。これで全員かな」

さやか「……杏子となぎさは食べる係になりそうだけどさ」

まどか「ふーん……」

さやか「……一緒にやりたかったの?あいつと」

まどか「へっ……?」

さやか「そりゃわかるよ、これで全員って言ったあとにあいつの席に視線向けてるんだから」

まどか「そ、そうだった……?」

さやか「期待しても無駄だって。あいつが来るわけないんだから」

まどか「で、でも声をかけるくらい……」

さやか「今さら声かけたところで何も変わらないと思うし、とっくに帰っちゃってるよ」

まどか「……そう、なんだ」

さやか「少しゆっくりとは言ったけど、あんまり遅くなるのも悪いしそろそろ支度して向かおう」

まどか「う、うん……」

――マミの家――

マミ「いらっしゃい、2人とも」

さやか「遅くなってすいません」

マミ「いいのよ、気にしなくても。私たちもついさっき帰ってきたばかりだから」

まどか「マミさん、今日はよろしくお願いします」

マミ「私の方こそよろしくね、鹿目さん。さぁ、上がってちょうだい」

さやか「おじゃましまーす」

杏子「お、さやかにまどか。おせーぞ」

なぎさ「2人とも、少し遅刻なのです」

さやか「ごめんごめん、ゆっくりしすぎたよ」

まどか「杏子ちゃんとなぎさちゃんもチョコ、作るの?」

杏子「んー…簡単な奴だけどな。作らずに食べてるとマミがうるせーからな」

なぎさ「なぎさも作るより食べるだけがよかったのです」

まどか「あはは……」

マミ「みんな、準備できたかしら?」

まどか「えっと…はい、大丈夫です」

さやか「そう言えば、今日は何を作るんですか?」

マミ「簡単なレシピをいくつか用意したから、今日はこれを1人ひとつずつ作ってみましょう」

さやか「どれも大変そう……」

マミ「心配しなくても大丈夫よ、私がちゃんと教えるわ」

マミ「それに、慣れてしまえば自分1人で作れるものばかりだから安心して」

さやか「わ、わかりました」

マミ「それじゃ、始めましょう」

まどか「は、はい!」

――――――

マミ「さぁみんな、チョコができあがったわよ」

さやか「待ってました!どうかなぁ、あたしのチョコ」

杏子「さやかのはコレか。……形はアレだけど、味は問題ないな」

さやか「杏子だって人のこと言えない形でしょうが」

マミ「形が悪いのは始めてなんだから仕方ないわ。何度もやれば上手になるわ」

なぎさ「なぎさのチョコはどうなのです?」

マミ「なぎさちゃんも鹿目さんも、上手くできてるわ」

なぎさ「やったー!マミに褒められたのです!」

まどか「よかったぁ……」

さやか「そう言えば、みんなはバレンタインチョコを誰に贈るつもり?」

杏子「誰って、お前らに配るくらいしかないだろ」

さやか「ん、杏子にはそういう期待してないから大丈夫だよ」

杏子「ケンカ売ってんのか?」

さやか「マミさんたちはどうです?」

マミ「うーん…私もみんなと、クラスの友達に渡す友チョコだけかしらね」

なぎさ「なぎさは誰にあげるとかよくわからないのです……」

さやか「何だ、本命作る人が誰もいないなんて華がないなぁ」

マミ「そう言われても気になる人なんて、今はいないし……」

さやか「まどかは誰か気になる…本命渡そうかなーって考えるような人、いる?」

まどか「わ、わたしは……」

さやか「どうなの?いるの?」

まどか「え、えっと、その……」

さやか「その反応は…いるんだ?いるんでしょ?」

さやか「誰に渡すの?教えてよ、まどか」

杏子「無理やり聞き出そうとしてんじゃねぇよ」

なぎさ「さやかはデリカシーがないのです。まどかに先を越されても仕方ないのです」

さやか「何だとー!?」

マミ「でも、鹿目さんが私たち以外に渡そうとする人なんて1人しかいないじゃない」

さやか「えっ!?マミさん、わかるんですか!?」

マミ「本命というわけではないんでしょうけど、暁美さんよ」

さやか「あっ…あー、あいつかー」

杏子「そうなのか?まどか」

まどか「え…と……」

マミ「……鹿目さん?」

まどか「……あっ、う、うん。ほむらちゃんにもチョコ、渡そうかなって」

杏子「渡すのはいいけど…受け取ってくれるかね、あいつ」

なぎさ「まどかはほむらのことが好きなのです?」

まどか「べっ…別に深い意味はないんだけどほむらちゃんともっと……」

さやか「まどかは何であんな奴が気になるのか、あたしにはわかんないなぁ」

杏子「アタシもほむらとはあんまり話したりしないしな」

まどか「わたしは…ほむらちゃんのこと、気になるし…もっと仲良くなりたいから」

マミ「あら。じゃあ本命っていうのは案外的外れというわけでもないのね」

まどか「そ、そんなことは……」

さやか「そもそも、まどかはあいつのことが気になるような何かがあったわけなの?」

まどか「気になる何かというか…いつもわたしのことを気にかけてくれてるみたいだし……」

まどか「わたしを気にかけてるのに、普段はいつもひとりぼっちで……」

まどか「態度とかじゃよくわからないけど、本当は寂しいって思ってるはずだから」

杏子「まどかもほむらのこと、ずいぶん気にかけてるみたいだな」

まどか「……うん。少しそっけなかったりするけど、わたしは…ほむらちゃんが側にいてほしいな」

さやか「まどかがそこまで言ってる以上、あたしも反対するつもりはないんだけど……」

マミ「美樹さんは反対なの?鹿目さんが暁美さんと仲良くなるのが」

さやか「反対というわけじゃないんですけど……」

なぎさ「さやかはまどかを取られそうになって嫉妬してるのです」

さやか「ばっ、ちゃうわ!」

マミ「あらあら、昼ドラ展開?」

さやか「だから違いますって!」

杏子「自分が気に食わない相手だからって、まどかにそれを強要するのはよくないぞ」

さやか「そ、それは絶対にないって言い切れない……」

まどか「わたしだけあげるのも寂しいし、さやかちゃんもあげてみたらどうかな?」

さやか「……あたしはいいよ。やっぱりあいつのこと、あんまり良く思ってないし」

さやか「理由はよくわからないんだけど…どうしても危ない、怪しい奴って印象持っちゃってるから」

まどか「そっか……」

さやか「まぁ、あいつもまどかにだけは割と好意的だし…そんな何かする、なんてことないと思うけど」

さやか「もし万が一何かされたらすぐあたしや杏子に言うんだよ?」

まどか「し、心配しなくても大丈夫だよ」

なぎさ「誰かと仲良くするのはいいことだってマミが言ってました。まどか、がんばるのです!」

まどか「うん。ありがとう、なぎさちゃん」

マミ「……さて。今日の第1回チョコ教室も無事終了したし、みんなもそろそろ帰りなさい」

さやか「……げ、外だいぶ暗くなっちゃってるなぁ」

杏子「今から帰るのも面倒だな……。マミ、1泊させてもらえないか?」

マミ「明日がお休みだったら考えたけど、学校があるからダメよ」

杏子「んだよ、ケチだな。仕方ない、さっさと帰るぞ、さやか」

マミ「そうそう。今日作ったチョコ、忘れずに持って帰ってね」

まどか「あ、そうだった……。今日はありがとうございました、マミさん」

マミ「また一緒に作りましょうね」

さやか「それじゃマミさん、おじゃましましたー」

――――――

杏子「そんじゃまどか、アタシたちはここで」

まどか「うん。2人とも、またね」

さやか「ほんとに家まで送らなくて大丈夫?」

まどか「平気だってば。もう、子供じゃないんだから」

さやか「ごめんごめん。じゃ、またね。まどか」

まどか「ばいばーい」

まどか「……わたしも早く帰らなくちゃ」

まどか(今日のチョコ作り、楽しかったな……。みんなでチョコを作って……)

まどか(……楽しかった、けど…ほむらちゃんと一緒にやってみたかったな)

まどか(ほむらちゃんにも参加してもらいたかったというか、むしろ2人きりで……)

まどか(……やっぱり、わたし…ほむらちゃんが、好きなんだ)

まどか(だって…こんなにもほむらちゃんのことが気になっちゃうんだもん)

まどか(本命がどうのって話のときも、頭にぱっと浮かんだのはほむらちゃんで……)

まどか(渡す相手なんていないって…すぐに否定できなったし……)

まどか(ほむらちゃん……。どことなく不思議で、わからないことだらけで)

まどか(転校生のわたしを、1番最初に気にかけてくれた子……)

まどか(……まさかあのあと思いっきり抱きしめられるなんて考えもしなかったけど)

まどか(でも、あれがあったからほむらちゃんを意識するようになったのかもしれない……)

まどか(最初のうちは、あれは何だったんだろうって感じで意識してたはずなのに)

まどか(いつからか、仲良くなりたい。一緒にいたい。そんな風に思うようになっちゃって……)

まどか(……ほむらちゃんに、特別な好意を持つようになっちゃったんだよね)

まどか(ほむらちゃんはわたしのこと、どう思ってるかはわからないけど…わたしは、ほむらちゃんが……)

まどか「……いつかは言える…よね、きっと。ほむらちゃんに……」

ほむら「私が何か?」

まどか「……えっ?ほっ…ほむら、ちゃん!?」

ほむら「こんな時間に1人で歩いていたから声をかけたのだけど、迷惑だったかしら?」

まどか「う、ううん。そんなことないよ、ありがとう」

ほむら「そう。それより、何か私のことを言ってなかった?」

まどか「なっ、何でもない!何でもないよっ!」

ほむら「……なら、私の聞き間違いかしらね。ごめんなさい」

まどか「そ、そうだよ。わたしの独り言を聞き間違えたんじゃないかな」

まどか(うぅ…ごめんね、ほむらちゃん。ほんとはほむらちゃんのこと、言ってたんだよ……)

ほむら「まどかはこんな時間まで一体何をしていたの?」

まどか「あっ…えっとね、さやかちゃんたちとチョコ作りの練習をしてたんだ」

ほむら「チョコ作り?」

まどか「うん。ほら、もうすぐバレンタインでしょ?」

ほむら「……あぁ、そうだったわね」

まどか「そうだったって…忘れてたの?」

ほむら「いいえ、忘れていたわけではないわ。ただ、あまり興味がないから覚えてないだけ」

まどか「興味がないって……?」

ほむら「貰えそうな相手も、渡すつもりの相手もいないから」

まどか「だ、誰もいないの?渡したい人」

ほむら「……渡したかった人なら、いたわ。受け取ってもらえるはずもないけれど」

まどか「そんなことないよっ!」

ほむら「えっ……?」

まどか「……ご、ごめんね、大きな声出しちゃって。でも、受け取ってもらえないなんてこと、ないよ」

まどか「ほむらちゃんがその人のことを思って作ったチョコなら、きっと喜んでもらえるはずだよ」

ほむら「なら、あなたは私の……」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「……いえ、何でもない。気が向いたら作ってみるわ」

まどか「う、うん。それなんだけど……」

ほむら「何?」

まどか「……い、いや、やっぱりやめとくよ。ごめんね」

ほむら「そう。……それより、本格的に暗くなる前に帰った方がいいんじゃないかしら」

まどか「あ…うん、そうだね。ほむらちゃんは?」

ほむら「これから夕飯の買い物に行こうと思ってたのだけど、こうも暗いとまどかが少し心配ね」

ほむら「私が家まで送っていくわ」

まどか「だ、大丈夫だよ、そんなことしてもらわなくても」

ほむら「気にしないで。私がやりたいからしてることだから」

まどか「……あれ?ほむらちゃん、わたしの家の場所、知ってる?」

ほむら「以前、まどかの家まで一緒に帰ったことがあったじゃない」

まどか「そう…だったっけ……。じゃあ、家までお願いするね」

ほむら「えぇ。任せなさい」

まどか「……」

ほむら「……」

まどか(ど、どうしよう。せっかくほむらちゃんと2人きりなのに、何も話せなくなっちゃった……)

まどか(……わ、わたしはただこうして一緒に帰れるってだけでも嬉しいけど、それじゃダメだよね)

まどか(何かほむらちゃんと話が続くような話題を……)

ほむら「……ねぇ、まどか」

まどか「な、何?」

ほむら「最近、どう?」

まどか「どうって……?」

ほむら「頭が痛んだり、宙に浮くような感覚に陥ったりはしていない?」

まどか「う、うん。そんなことないけど……」

ほむら「そう、ならいいの。バレンタインに気を取られるのはいいけど、体調には気を付けるのよ」

まどか「あ、ありがとう」

まどか(何だったんだろう、今の質問。何か意味があるのかな)

まどか(よくわかんないけど…きっとただ単純に体調の心配してくれたんだよね)

ほむら「……日が落ちてだいぶ冷え込んできたけど、寒くない?」

まどか「わたしは平気だよ。ほむらちゃんこそ、大丈夫?」

ほむら「えぇ、心配ないわ。風邪をひいてしまう前に早く帰りましょう」

――――――

まどか「送ってくれてありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「気にしないでと言ったはずよ」

まどか「寒かったし、少し上がっていかない?あったかいココアでも出すけど……」

ほむら「そうしたいところだけど、遠慮するわ。その気持ちだけで十分よ」

まどか「……あ、そうだ。じゃあこれ、送ってくれたお礼にあげるよ」

ほむら「これは…チョコレート?」

まどか「うん。今日、みんなで作ったチョコなんだけど……」

まどか「わたしのだけじゃなくて、さやかちゃんたちのも入って……」

ほむら「いらないわ」

まどか「えっ……?も、もしかしてチョコ、嫌いだった?」

ほむら「……チョコは別に嫌いじゃないわ」

まどか「それなら、どうして……?」

ほむら「嫌いではないけど、そのチョコは受け取る気にならないの。ごめんなさい」

ほむら「でも、まどかが悪いというわけではないから。安心して」

まどか「そうなんだ……」

ほむら「えぇ。じゃ、無事に送り届けられたし、私はこれで」

まどか「う、うん。またね、ほむらちゃん」

まどか「……」

まどか「このチョコは受け取る気にならない、かぁ……」

まどか「どういうことなんだろう。これだけ受け取れないなんて」

まどか「チョコが嫌いってわけでも、わたしが悪いわけでもない……」

まどか「だけど受け取れないって…わけわかんないよ、ほむらちゃん……」

まどか(……何となく、欲しそうな目をしてたような気もするけど)

まどか「……でも、ちゃんとしたのならきっと受け取ってくれるよね」

まどか「ほ、本命の前になっちゃうけど…ほむらちゃんにチョコ、作ってあげようかな」

ほむら「……」

ほむら(……駄目だわ。思ったよりダメージが大きい)

ほむら(なりふり構ってないであのチョコ、受け取ればよかったわ……)

ほむら(でも、私が欲しい、食べたいのはまどかの作ったチョコで……)

ほむら(それ以外の…美樹さやかだの何だのが作ったものなんていらない。食べたくもない)

ほむら(見た感じ誰がどれを作ったかなんてわからないだろうし……)

ほむら(全部食べるつもりでなければ、結局まどかのチョコは食べられないのよね……)

ほむら(……やっぱり私、まどかに本命を貰って…好きと言ってもらいたい)

ほむら(だけど、それは叶わぬ夢。今のまどかにとっての私は、好意に値するわけないもの)

ほむら(本命がもらえないのなら、せめてまどかの作ったチョコが食べたかったけれど)

ほむら(まどかから義理でさえも貰えるかは怪しいところだし……)

ほむら(あれを受け取らなかった以上、諦めるしかないのかしらね……)

ほむら(……さっき、まどかには気が向いたら作ってみるとは言ったけど)

ほむら(私のチョコなんて…受け取ってもらえるわけ、ないじゃない)

ほむら(だって、私の…私からまどかへのチョコは……)

ほむら(……本命、なんだから)

ほむら「……帰りましょう。帰って、早く寝てしまえば…この感情も収まるはず」

――翌日 昼休み――

さやか「やっと昼休みかぁ。今日の授業も疲れたねぇ」

まどか(どうしよう、いつ渡そうかな……。お昼食べてからの方が……)

さやか「さーって。まどか、杏子、お昼にしよー」

杏子「昼メシにするのはいいけど、今日は時間なかったから弁当持ってきてないだろ」

さやか「……あ、そうだったね。お昼は購買で買うつもりだったんだ」

杏子「忘れてたのかよ……。昼メシ抜きになるところじゃねぇか」

さやか「あはは、ごめんごめん」

杏子「そういうわけだから、アタシたちは購買行ってくる」

まどか「う、うん……」

さやか「……それよりも、今日はまどかから甘い匂いがしてるような」

さやか「もしかして、何かお菓子でも持ってたりする?」

まどか「えっ?う、ううん。別に何も持ってないけど」

さやか「あれー……?じゃあ何だろ……?」

杏子「いいから、購買行くぞ」

さやか「……ま、いいか。もし何か持ってるんだったら、あとでわけてねー」

まどか「い、いってらっしゃーい……」

まどか「……よし。それじゃわたしも……」

まどか「ほむらちゃん、教室出ていっちゃったし…早く追いかけなきゃ」

ほむら(さて、今日はどこで時間を潰そうかしら……)

ほむら(どうせ何を食べるわけでもないし、適当に……)

まどか「ま、待ってっ…ほむらちゃんっ」

ほむら「……まどか?私に何か?」

まどか「う、うん。ほむらちゃんって、お昼まだだよね……?」

ほむら「まだというか、別に食べるつもりは……」

ほむら「……いえ、そうね。これからお昼にするつもりよ」

まどか「そ、そうだよね。教室出ていくところ、見てたんだし……」

ほむら「それより、私に声をかけたということは何か用かしら?」

まどか「……あ、あのね。もし、ほむらちゃんがよかったら、なんだけど」

まどか「お昼、一緒に食べないかなって……」

ほむら「美樹さやかと佐倉杏子はいいの?」

まどか「2人にはちょっと悪いけど、今日はほむらちゃんと一緒がいいな」

ほむら「そう……」

まどか「……ダメかな?」

ほむら「……私は構わないわ」

まどか「ほ、ほんとっ?ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「別にお礼なんて。それで、どこでお昼にするのかしら?」

まどか「どうしようかな……。教室だとさやかちゃんたちが戻ってきちゃうし」

ほむら「……だったら、いい場所を知ってるわ」

まどか「いい場所?」

ほむら「えぇ。案内するわ」

ほむら「……着いたわ。ここよ」

まどか「へぇー……。学校にこんな場所、あったんだ……」

ほむら「本来は自習スペースか何かなんだろうけど、私が勝手に使ってるだけよ」

まどか「え、い、いいの?」

ほむら「いいの。どうせ誰も使ってないし、誰も来ないだろうから」

まどか「うぅん…なら、いいのかな……」

ほむら「……さぁ、お昼にしましょうか」

まどか「そうだね。……それじゃ、いただきます」

ほむら「……まどかのお弁当は美味しそうね」

まどか「そういうほむらちゃんは…お昼、食べないの?」

ほむら「食べないことはないけど、どうせ数分あれば終わってしまうから」

まどか「ほむらちゃん、一体何を食べてるの……?」

ほむら「カロ○ーメイトを1箱。それで終わりよ」

まどか「えぇー……。大丈夫なの?それだけで」

ほむら「今までそれで何も問題なかったもの。それに……」

まどか「それに…何?」

ほむら「……いえ。何でも」

まどか(ほむらちゃん、お弁当じゃなかったんだ……)

まどか(何だかわたしだけお弁当食べてるのも悪い気がするし、ここは……)

まどか「……ほ、ほむらちゃんって甘いのとしょっぱいの、どっちが好き?」

ほむら「いきなり、何の話かしら……?」

まどか「い、いいから答えてほしいな」

ほむら「何だかわからないけど…そうね、甘い方が好みかしら」

まどか「あ、そうなんだ。わたしも甘い方が好きで……」

まどか「ほむらちゃんと好み、一緒なんだね」

ほむら「それはいいけど、一体何の話なの?」

まどか「えと、ね…ほむらちゃんはどっちの玉子焼きが好きなのかなって……」

ほむら「……玉子焼きの話だったのね。確かに甘い玉子焼き、好きよ」

まどか「じゃあ…ほむらちゃんにこの玉子焼き、あげるね」

ほむら「いいの……?」

まどか「うん。わたしだけお弁当食べてるのも悪いし……」

ほむら「それなら…お言葉に甘えて頂くわ」

まどか「……ど、どうかな?うちの玉子焼き」

ほむら「……美味しいわ」

まどか「そ、そっか、よかった。何ならもうひとつ食べる?」

ほむら「いえ、もう十分よ」

まどか「もういいの?遠慮しなくてもいいのに」

ほむら「……まどかがよくても、私が気にしてしまうから」

まどか「玉子焼き、毎日入れてもらってるから…また食べたくなったら言ってね」

まどか「ほむらちゃんになら、いつでも分けてあげるよ」

ほむら「……ありがとう」

まどか「ごちそうさまー。おいしかったー」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん、ほんとにそれだけで大丈夫?」

ほむら「えぇ。心配しなくても大丈夫よ」

まどか「太ってるどころかわたしよりも細いんだから、もう少し食べた方がいいと思うよ」

ほむら「そういうわけではないのだけど……」

まどか「……ね、ねぇ。ほむらちゃんはまだ、お腹いっぱいでもないよね?」

ほむら「それはまぁ……」

まどか「……実は今日、ほむらちゃんに声をかけたのは…このチョコを渡したかったからなの」

ほむら「チョコ……?バレンタインにはまだ早いけれど……」

まどか「そ、そうじゃなくて…ほら、昨日はチョコを受け取ってくれなかったから」

まどか「ほむらちゃん、いらないって言ってたけど欲しそうに見えたから作ってきたんだ」

ほむら「そうなの……」

まどか「昨日は何で受け取ってくれなかったのかはわからないけど、今日のは受け取ってくれる?」

ほむら「……勿論よ。ありがとう、わざわざ私の為に」

まどか「えへへ、よかった。……じゃあ、さっそく食べてみてよ」

ほむら「それじゃ、頂くわ」

まどか「……どう、かな。自分ではうまくできたと思うんだけど」

ほむら「これ、まどかが作ったのよね……?とても美味しいわ」

まどか「ほ、ほんと?よかったぁ……」

ほむら「えぇ。これなら、バレンタインも大丈夫そうね」

まどか「そ…それ、なんだけど…ほむらちゃんにお願いがあるの」

ほむら「お願い?私に?」

まどか「う、うん。バレンタインまでの間、わたしの練習で作ったチョコ、食べてもらえないかな……?」

まどか「……ほ、ほら。練習だとしても食べてくれる人がいた方が張り合いがあるっていうか」

ほむら「私は構わないけど…どうして私に?美樹さやかたちに頼めばいいんじゃ……」

まどか「わたしは…ほむらちゃんにお願いしたいな。ほむらちゃんなら、正直な意見をくれると思うし」

ほむら「……私でよければチョコの練習相手、引き受けるわ」

まどか「え…ほ、ほんと?」

ほむら「本当だけど…まどかは私が断ると思っていたの?」

まどか「ご、ごめんね。まさかOKしてくれるとは思ってなくて、むしろダメ元で頼んでみようって……」

まどか「……その、ほむらちゃんはどうして引き受けてくれたの?」

ほむら「別に深い意味はないわ。ただ、まどかの力になりたかっただけ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「私は…練習相手だったとしてもまどかのチョコが貰えるのなら……」

まどか「チョコが…どうかしたの?」

ほむら「……いいえ。何でも」

まどか「そう……?」

ほむら「……もうすぐ昼休みも終わるし、教室に戻りましょう」

まどか「そう…だね。もうそんなに経ってたんだ……」

ほむら「えぇ。何だかあっという間だったわ」

まどか「わたしも…ほむらちゃんと2人きりだったから……」

まどか「……ご、ごめん、何でもない。教室、戻ろっか」

ほむら「まどかは先に戻って。私はあとから行くわ」

ほむら「2人一緒だと、また美樹さやかあたりと面倒なことになるだろうから」

まどか「わ、わかった。じゃあ…お先に失礼するよ」

まどか「練習相手、引き受けてくれて本当にありがとう。明日から、よろしくね」

まどか「……それじゃ、またねっ!」

ほむら「……まどかはもう行ったわよね」

ほむら「練習の相手、か……」

ほむら「まどかの力になりたいとは言ったけど、まさか練習台だなんて……」

ほむら「……でも、仕方ないわね。今の私はまどかの友達かどうかも怪しいもの」

ほむら「今日貰ったお礼のチョコと、練習のチョコ。バレンタインとは特に関係無いものだけど……」

ほむら「それでも、まどかからチョコが貰えるんだから。これで…十分よ」

ほむら「……バレンタインチョコ、か。そう言えば昨日、気が向いたら作ってみるなんて言ったわね」

ほむら「作ったところで、私の渡したい相手は……」

ほむら「……私もそろそろ教室に戻らないと」

まどか「えへへ……」

まどか(やった……。わたしのチョコ、ほむらちゃんに渡せた。受け取ってもらえた……)

まどか(勘違いでなければ、喜んでくれてたよね……)

まどか(それに、明日からもほむらちゃんにチョコを……)

まどか(……で、でもこれはあくまで練習。本番までにもっとうまく作れるようにならなくちゃ)

まどか(今よりも、もっともっとうまくなって、それでほむらちゃんに……)

まどか(……ほむらちゃんに、好きだって…伝えたい。そのためにも)

まどか「明日からも、がんばろう。わたしの想いが届くように……!」

――数日後 マミの家――

マミ「……うん。美樹さんも佐倉さんも上手くできてると思うわ。大丈夫よ」

さやか「そ、そうですか。よかった……」

杏子「今まで作ることなんてなかったからな……」

なぎさ「マミ!なぎさのチョコはどうなのです?」

マミ「そ、そうね。よくできてると思うけど、チョコにチーズを入れるのは……」

なぎさ「いいのです。なぎさはなぎさが食べたいものを作るのです」

マミ「え、えぇ……」

さやか「でも驚いたなぁ。まどか、すっごい上手になってるんだもん」

まどか「え?そ、そうかな……?」

マミ「そうよ。最初のときよりもずっと上手にできてると思うわ」

まどか「マミさんにそう言ってもらえると…少し、自信になるかも」

なぎさ「これなら、きっとほむらと仲良くなれるはずなのです!」

まどか「そう…かな。ありがとう、なぎさちゃん」

さやか「……別にあいつに渡すからって、そんな張り切らなくてもいいのに」

杏子「まだそれをうだうだ言ってんのか……」

さやか「だってさー……」

マミ「鹿目さんはもっと違うチョコを作ってみてもいいかもしれないわね」

まどか「違うチョコというと……?」

マミ「生チョコとかトリュフチョコとか…作ってみない?」

まどか「わたしに作れるかなぁ……」

さやか「まどかの腕なら大丈夫だって。バレンタイン、楽しみにしてるよ」

なぎさ「なぎさはチーズチョコがほしいのです!」

まどか「あ、あはは……。余裕があったらやってみるね……」

杏子「ほむらの方はともかく、アタシたちのは無理に手の込んだものじゃなくていいからな」

まどか「それじゃ、わたしはそろそろ帰りますね」

さやか「まどか、もう帰るの?」

まどか「うん。暗くなる前に帰ろうかなって」

杏子「その方がいいかもな。アタシたちは…どうする?」

さやか「あたしはもう少しマミさんと喋ってから帰るつもりだけど」

杏子「んじゃ、そうすっか。まどか、気を付けてな」

まどか「ありがとう。じゃあ、またね」

マミ「鹿目さん、また明日」

まどか「ふぅ……」

まどか(暗くなってきたし、早く帰らないと……)

まどか(……もうすぐなんだよね。バレンタイン)

まどか(あれから毎日ほむらちゃんにチョコを作ってあげてるけど……)

まどか(最初の頃と比べて、だいぶ上達した…はず)

まどか(この分なら…きっと大丈夫。わたしの気持ちが伝わるかはともかく……)

まどか(ほむらちゃんに渡すチョコの心配はしなくてもよさそう)

まどか(わたしのチョコ、喜んでくれるといいな……)

まどか「よし。早く帰って明日の分を……」

まどか「あれ……?あそこにいるの、ほむらちゃん……?」

ほむら「……」

ほむら(明日は金曜日……。バレンタイン前の、最後の学校……)

ほむら(まどかから練習という名目で貰っていたチョコも、明日が最後……)

ほむら(私がチョコを貰えていたのは練習に付き合っていたから……)

ほむら(……まどかがどうしてチョコの練習なんて言い出したのかはわからない)

ほむら(ただ、その練習の成果となるチョコを…私は貰えないのよね)

ほむら(……誰にどういうチョコを渡すのかはわからないけど、私も…欲しかった)

ほむら「まどかからの…練習じゃない、バレンタインチョコ……」

まどか「ほむらちゃーん」

ほむら「えっ……?ま、まどか……?」

まどか「やっぱりほむらちゃんだ。奇遇だね、こんなところで」

ほむら「そ、そうね……」

まどか「ほむらちゃんはどこかからの帰り?」

ほむら「えぇ、ショッピングモールに寄った帰りよ。まどかは?」

まどか「わたしはマミさん家からの帰りなんだ」

ほむら「……その様子を見る限り、楽しかったみたいね」

まどか「うん、またみんなでチョコを作ったんだ」

まどか「わたしが上手になってて、みんなすごく驚いてたよ」

ほむら「そう……」

ほむら(やっぱり、私といるときよりも楽しそうね……)

ほむら(……それもそうよね。練習に付き合ってるだけの私よりも、大勢の友達といた方が……)

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……あぁ、ごめんなさい。それじゃ、私はこれで」

まどか「あ…ま、待って」

ほむら「……どうしたの?まだ、何か?」

まどか「えっと…用、というわけじゃないんだけど」

まどか「この前みたいに…家まで送ってくれないかな……?」

ほむら「あの日は…暗い中まどかが1人で歩いていたからで、今日はまだそんなに暗くは……」

まどか「わかってるんだけど、何だかほむらちゃんと一緒に帰りたいなって……」

ほむら「……そう言われると断れないわね。わかった、送っていくわ」

まどか「えへへ…ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「じゃあ、行きましょう」

まどか「う、うんっ」

ほむら「……それで、私と話していたいってことだったわね」

まどか「ごめんね、子供のわがままみたいなこと言っちゃって」

ほむら「別に、構わないわ。私も…嫌ではないから」

まどか「そっか。なら、よかった……」

ほむら「……」

まどか(一緒に帰るのはいいけど…会話、途切れちゃった……)

まどか(……わたしの方から話題、振ってあげようかな)

まどか「ね、ねぇ。ほむらちゃん」

ほむら「何?」

まどか「ほむらちゃん、この前チョコは嫌いじゃないって言ってたけど……」

まどか「好きなチョコってあったりする?」

ほむら「……ごめんなさい、どういう意味かしら?」

まどか「えっと…ほら、一口にチョコって言ってもいろいろあるでしょ?」

まどか「その中で好きなものってあるのかなって思って」

ほむら「……そうね、生チョコなんかは割と好きよ」

まどか「ほむらちゃん、生チョコが好きなんだ」

ほむら「えぇ。でも…どうしてそんなことを……?」

まどか「バレンタインが近いし…ほむらちゃんとそういう話がしたいなって」

ほむら「そう……」

まどか「ほむらちゃんはバレンタイン、どうするの?」

ほむら「……どうしたものかしらね。この間は気が向いたら作るなんて言ってたけど」

まどか「まだ決まってないの?」

ほむら「えぇ。でも…きっと特に何もしないんじゃないかしら」

まどか「ど、どうして?」

ほむら「……何だか気が向かなくて」

まどか「渡したい相手、いるんじゃないの?」

ほむら「確かにいることはいるのだけど…でも、いいの」

まどか「だ、ダメだよ。そんな簡単に諦めちゃ……」

ほむら「……別に諦めたわけじゃないわ。ただ、渡したい相手の人は私のこと…あまり知らないだろうから」

ほむら「知らない私からいきなりバレンタインチョコを渡されても、きっと困らせてしまうだけだもの」

ほむら「だから…いいのよ」

まどか「そう…なんだ……」

ほむら「私のことなんだから。まどかは気にしないで」

まどか「でも……」

ほむら「……その人が貰ってくれるか、喜んでくれるかどうかもわからないもの」

ほむら「他に渡したい相手なんていないし、誰かのついでに作るというわけでもないし」

ほむら「もしかしたら迷惑になるんじゃないかと思うと、どうしても作る気が起きなくて……」

まどか「そっか……」

ほむら「……まどかは渡す相手、いるのよね」

まどか「う、うん。さやかちゃん、杏子ちゃん、マミさん、なぎさちゃん。それと……」

ほむら「それと……?」

まどか「……な、何でもない、ごめんね」

ほむら「別に謝ることはないわ」

まどか「そ、そうかな」

ほむら「ふふっ、まどからしいわね」

まどか「あはは……」

ほむら「……さぁ、のんびり歩いてないで、行きましょう」

まどか「う、うん」

――――――

ほむら「……それじゃ、私はこれで」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん。わたしのわがままだったのに、送ってくれて」

ほむら「別に嫌ではないし、構わないと言ったはずよ」

まどか「そうだとしても…ありがとう」

ほむら「……ありがたく受け取らせてもらうわ」

まどか「じゃあ…またね」

ほむら「えぇ。さようなら」

まどか「……」

まどか「ほむらちゃん、本当にあれでよかったのかな……」

まどか「相手の人にバレンタインチョコ…渡したかったはずなのに……」

まどか「……チョコを渡したい相手はその人1人だけ、なんだよね」

まどか「誰、なんだろう……。ほむらちゃんが渡したい相手って……」

まどか(もし、もしその相手がわたしだったとしたら…すごく嬉しいけど……)

まどか(……でも、そんなわけ…ないよね。ほむらちゃんにとって、わたしなんて……)

まどか「それよりも、ほむらちゃんの好きなチョコが聞けたんだし…挑戦してみないと」

まどか「ほむらちゃんのためにも…がんばらないと……!」

ほむら「はぁ……」

ほむら(これで…よかったはず、よね……)

ほむら(いくら私がまどかのことを想って、愛しているとしても…それは私の一方的な気持ち)

ほむら(今のまどかに私からチョコを贈ったところで、まどかの迷惑にしかならないもの……)

ほむら(それに、まどかも私にチョコをくれるというわけでもないだろうし……)

ほむら(練習のチョコを貰っていたはずなのに…それだけじゃ嫌で、特別が欲しくて……)

ほむら(……少し、まどかと関わりすぎたかしら。こんなことを考えるようになってしまうなんて)

ほむら(まどかにとっての私は、名前を知ってる程度の変なクラスメイト。ただ、それだけ……)

ほむら(だから…私の言葉に間違いはない。ないはず、なのに……)

ほむら(どうしてこんなに…眩暈がする程、苦しいのかしら……)

今回はここまで
次回投下は15日夜を予定しています

期待

乙です

バレンタインくるかなって期待してた
後半もたのしみ、乙

内容よりタイトルの方が思い浮かばなくて困った

次から本文

――翌日 昼休み――

さやか「よーし。お昼にするかー」

杏子「ん、そうするか。まどかはどうする?」

まどか「えっと、その、今日も……」

さやか「えー、今日もなのー?最近ちょっと付き合い悪いよー」

まどか「ご、ごめんね」

杏子「そう言うなって。まどかにも予定があるんだろうしさ」

まどか「……それじゃ、わたし…行くね」

杏子「またあとでな」

さやか「……まどか、ここ最近は昼休みになると弁当持ってどこかに行ってるけど」

さやか「一体どこで何をしてるのやら……」

杏子「誰かと昼メシ食べてるんじゃないのか?マミとかさ」

さやか「だったらあたしたちに秘密にしてる理由がわかんないし……」

杏子「なら、案外ほむらとだったりしてな」

さやか「む……。そう、なのかなぁ……?」

杏子「ほむらと仲良くなりたいって言ってたし、ないとは限らないだろ?」

さやか「それは…まぁ……」

杏子「この前も言っただろ?お前が気に食わない相手でも、それをまどかに強要するなって」

杏子「まどかは、ほむらと仲良くなりたいって思ってるんだからさ」

さやか「……そう、だよね。何も悪いことをしようとしてるわけじゃないんだし」

さやか「まどかの思うようにさせてあげよっか」

杏子「だな。……まどかを気にかけるのもいいけど、アタシたちも昼メシにしようか」

さやか「そうしよっか。んじゃ、いっただっきまー……」

マミ「2人とも、ちょっといいかしら?」

さやか「す……?あれ、マミさん。どうしたんです?」

マミ「実は……」

まどか「失礼しまーす」

ほむら「……」

まどか「……ほむらちゃん?」

ほむら「ん…あぁ、まどか……。来てたのね」

まどか「今来たところだけど…何だかぼんやりしてなかった?」

ほむら「大したことじゃないから。気にしなくても大丈夫よ」

まどか「そう?じゃあ、お昼にしよっか」

ほむら「……えぇ、そうしましょう」

まどか「いただきまーす」

ほむら「……」

まどか「あむ…あれ、ほむらちゃん…お昼は?」

ほむら「今日はもう食べてしまったの。考え事をしていたら、いつの間にか……」

まどか「そっかぁ……。今日は玉子焼き、いる?」

ほむら「いえ、今日は遠慮しておくわ」

まどか「最後まで残しておくから、食べたくなったら言ってね」

ほむら「わかったわ……」

ほむら(……本当は持ってくるの忘れたのよね。心配させたくないから言わないけど)

まどか「ふー……。ごちそうさまー」

ほむら「今日も美味しそうなお弁当だったわね」

まどか「本当によかったの?玉子焼き、食べなくても」

ほむら「今日は…いいのよ」

ほむら(……今更だけど、貰った方がよかったかしら)

まどか「それで、今日のチョコなんだけど……」

ほむら「……っ」

ほむら(これが…最後になるのよね。まどかから貰える、最後の……)

まどか「あ、あのね。今日のチョコ…今までのと少し違うものを作ってきたんだ」

ほむら「違うもの……?」

まどか「……昨日、ほむらちゃんに好きなチョコが何か、聞いたでしょ?」

ほむら「えぇ。そんなことを聞かれたけど……」

ほむら「……もしかして、これって」

まどか「うん。わたし、がんばってみたから…受け取ってくれると嬉しいな」

ほむら(……これを受け取ってしまったら、もう2度とこんな風には過ごせない)

ほむら(だとしても、私にできるのは…まどかの、最後のチョコを貰うことだけ……)

ほむら(……練習のチョコではあったけど、嬉しかったわ。まどか)

ほむら「……ありがとう。とても嬉しいわ」

まどか「さっそくで悪いけど、食べてみてよ。うまくできたか不安だし……」

ほむら「それじゃ食べてみるわね……」

まどか「……ど、どうかな?」

ほむら「えぇ、美味しいわ。今までで、1番……」

まどか「ほむらちゃんに喜んでもらえて、よかった……」

ほむら「でも、どうして今日はこれを……?」

まどか「えっと…ほむらちゃん、今日までわたしの練習に付き合ってくれたでしょ?」

まどか「そのお礼というわけじゃないけど…普段のより気持ちを込めて作ってみたんだ」

ほむら「そうだったの……」

まどか「……ほむらちゃん、今日までありがとう。おかげですごく上達できたよ」

ほむら「私は…何もしてないわ。まどかが頑張った結果だもの」

まどか「……今日が最後なんだよね。ほむらちゃんにチョコを食べてもらうの」

ほむら「バレンタインは日曜日だから、そういうことになってしまうわね」

まどか「何だか…寂しいな。今日まで毎日、お昼休みにほむらちゃんと一緒にいたから……」

ほむら「……」

まどか「お昼休み、もうすぐ終わっちゃうね……」

ほむら「そうね……」

まどか「……ほむらちゃんは、バレンタインチョコを作ったりするのって…嫌い?」

ほむら「いえ、そんなことないわ。昨日はあんなことを言ってしまったけど……」

ほむら「何も私はそういうことをするのが嫌というわけではないの」

まどか「そっ…そう、なんだ……」

ほむら「えぇ。それがどうかした?」

まどか「……ね、ねぇ。ほむらちゃん、14日に何か予定とかって…ある?」

ほむら「特に何の予定もないわ」

まどか「じゃあ…ほむらちゃんがよかったら、なんだけど……」

まどか「わたしと2人で、チョコ…作ってみない……?」

ほむら「……え?」

まどか「あ…その、嫌なら断ってくれても、全然いいんだけど……」

まどか「でも、わたしはほむらちゃんと一緒に…何かバレンタインらしいこと、してみたいなって」

ほむら「まどかは美樹さやかたちとバレンタインをするんじゃ……?」

まどか「そうだけど…わたしはほむらちゃんとが、いいな。ほむらちゃんとチョコ、作ってみたい」

まどか「せっかくほむらちゃんとこうしてお話したりお昼を食べたりできたのに、これでおしまいじゃ…寂しいよ」

ほむら(……私がバレンタインチョコを、本命を渡したいのは…あなただと言うのに)

ほむら(その本命を渡せない私を、バレンタイン当日にチョコ作りに誘うなんて……)

ほむら(……まどかはどういうつもりで私を誘ったのかはわからないけど、それもいいかもしれないわね)

ほむら(例え、まどかにチョコを渡せないとしても…一緒にチョコ作りができるんだから)

まどか「……や、やっぱりダメだった?」

ほむら「……いえ、そんなことないわ。せっかくのお誘いだし、私でよければ喜んで」

まどか「あ…ありがとう、ほむらちゃんっ!」

ほむら「お礼なんて……。私の方こそ、誘ってくれてありがとう」

ほむら「14日、今から楽しみにしてるわね」

まどか「うん、わたしもだよ。……っと、お昼休み終わっちゃうんだった」

まどか「場所とか時間はまたあとで話そっか」

ほむら「なら、放課後にまたここで」

まどか「わかった。それじゃ…またあとでね」

ほむら「えぇ。またあとで」

――――――

まどか「……」

まどか(14日…バレンタインデーに、ほむらちゃんと……)

まどか「うぇへへ……」

さやか「まどか。まーどかってば」

まどか「……えっ?さ、さやかちゃん、何?」

さやか「何じゃないよ。教室戻ってきてからずっと様子が変だし」

杏子「ニヤニヤしてたけど、何かあったのか?」

まどか「べ、別に何もないよ。それにニヤニヤしてなんか……」

さやか「まぁそれは置いといて。さっきマミさんが来たんだけどさ」

さやか「14日のバレンタイン、マミさんの家でいいよね?」

まどか「あ…それ、なんだけど……」

まどか「実はわたし、14日に予定があって、みんなと一緒には……」

さやか「予定って…もしかして、あいつの……?」

まどか「う、うん。ほむらちゃんと一緒に……」

さやか「……まどかが自分でそう決めたのなら、仕方ない」

杏子「そういうことなら、14日はアタシたちだけでやるか」

さやか「そうするしかないね。マミさんにはあとであたしたちから言っておくよ」

まどか「ごめんね、誘ってもらったのに」

杏子「気にしなくてもいいって。……ほむらと仲良くなれるといいな」

まどか「……うん。ありがとう、杏子ちゃん」

杏子「頑張れよ、まどか。……んじゃ、アタシたちはそろそろ席戻るか」

さやか「あ、そだね。まどか、また……」

まどか「でも…ほむらちゃん、わたしのこと……」

さやか「……うん?」

まどか「……あ、ううん、何でも。またあとでね」

まどか(14日…バレンタインデーに、ほむらちゃん…好きな人とチョコを作って、それで……)

まどか(ほむらちゃんに、わたしの気持ちを伝えるためにも…がんばらなくちゃ)

――2月14日――

ほむら「さぁ、上がって」

まどか「うん。おじゃましまーす」

ほむら「わざわざ私の家まで来てもらってごめんなさい」

まどか「ううん。それより、迎えに来てくれてありがとう」

ほむら「まどかは私の家の場所、わからないのだから。迎えに行くのは当然よ」

まどか「せっかくアドレス交換したんだし、メールで場所を教えてくれるだけでよかったのに」

ほむら「そういうわけにもいかないわ。私の家がいいと言ったのは私なんだから」

まどか「ほむらちゃんはどうしてわたしの家じゃなくて自分の家がよかったの?」

ほむら「それは……」

まどか「あれ、聞いちゃダメだった?」

ほむら「いえ、そうじゃないのだけど……」

ほむら「……まどかと2人がよかったの。誰にも…あなたのご家族にも邪魔されないように」

まどか「……そ、そう、なんだ。そんな風に思ってくれるのは…嬉しい、かな」

まどか「ほむらちゃんは…この家に1人で住んでるんだよね……」

ほむら「えぇ、そうよ」

まどか(じゃあ…今、わたしとほむらちゃんは2人きりってことだよね……)

まどか(誰かに邪魔されることもないし…これは絶好のチャンスかも)

ほむら「まどか……?どうかしたの?」

まどか「あっ…う、ううん。何でもないよ」

ほむら「そう。ならいいのだけど」

まどか「……そ、それじゃ早速始めよっか」

ほむら「まだ来たばかりじゃない。休まなくて大丈夫?」

まどか「そんなに疲れてないから大丈夫。それに、早くほむらちゃんとチョコを作りたいし」

ほむら「……ふふっ、わかったわ。キッチンに案内するわね」

まどか「……ほむらちゃん、準備できた?」

ほむら「えぇ。エプロンがよく似合ってるわね」

まどか「そ、そうかな。ほむらちゃんも似合ってるよ」

ほむら「ありがとう。まぁ、材料も含めて準備らしい準備はまどかがしてくれたのだけど」

ほむら「本当によかったの?私は何も用意しなくても」

まどか「うん。ほむらちゃんを誘ったのはわたしの方だもん」

ほむら「……まぁ、仮にあれこれ用意しておいてと言われてもきっとわからなかったと思うわ」

まどか「あはは……」

ほむら「私、チョコを作るのは今日が初めてなの。まどか、今日はよろしくお願いするわ」

まどか「わかった。よろしくね、ほむらちゃん」

ほむら「調理を始める前に私は髪を纏めた方がいいわね」

まどか「ぁ……」

ほむら「……これでよし、と。どうかしら、まどか?」

まどか「えと…いつもと違う髪型もすごく似合って素敵だと思うよ」

まどか「あ、ありがとう、まどか。でも私が聞きたいのは髪型のことじゃなくて……」

まどか「……も、もちろん身だしなみも完璧だから大丈夫。ごめんね、変なこと言っちゃって」

ほむら「別に、変じゃないわ。私もまどかに髪型を褒められて…嬉しかったわ」

まどか「……じ、じゃあよかった…のかな」

ほむら「それじゃ、始めましょうか」

>>93訂正


ほむら「調理を始める前に私は髪を纏めた方がいいわね」

まどか「ぁ……」

ほむら「……これでよし、と。どうかしら、まどか?」

まどか「えと…いつもと違う髪型もすごく似合って素敵だと思うよ」

まどか「あ、ありがとう、まどか。でも私が聞きたいのは髪型のことじゃなくて……」

まどか「……も、もちろん身だしなみも完璧だから大丈夫。ごめんね、変なこと言っちゃって」

ほむら「別に、変じゃないわ。私もまどかに髪型を褒められて…嬉しかったわ」

まどか「……じ、じゃあよかった…のかな」

ほむら「えぇ。さぁ、始めましょうか」

まどか「材料よし、器具よし。それじゃ、始めよっか」

ほむら「一応パソコンで材料や手順は調べてみたけれど……」

まどか「え、そうだったの?」

ほむら「ただ…私の理解が悪いのか調べ方が悪いのか、あまり参考にならなかったのよ」

まどか「ほむらちゃんの理解が悪いことないと思うし…見たところの情報が悪かったのかも」

ほむら「そう…かもしれないわね。大まかな手順は大丈夫だから、細かいところはお願いするわ」

まどか「任せてよ。まずは…このチョコを刻んで細かくしよう」

ほむら「わかったわ」

まどか「……よし。わたしも始めなきゃ」

ほむら「……まどか、こんな感じかしら?」

まどか「うん、そんな感じで大丈夫なんだけど……」

ほむら「何か不手際でもあった?」

まどか「不手際というか…包丁の持ち方とか切り方とか、いろいろ危ないよ」

ほむら「そう言われても、普段料理なんてしないから……」

ほむら「どうしたらいいのか、教えてもらえる?」

まどか「えっと、ちょっと失礼するね。まず右手は……」

ほむら「ちょっ……」

まどか「それで、左手はこう。わかった?」

ほむら「わかった、けど…自然に手を握られたから少し驚いたわ」

まどか「……あ、ご、ごめん!急に触っちゃって……!」

まどか「口じゃうまく説明できなかったからなんだけど…嫌だったよね……?」

ほむら「いえ。まどかなら別に構わないわ」

まどか「ほむらちゃん…もしかして照れてる?」

ほむら「……照れてなんかいないわ」

まどか「えー、そう?」

ほむら「……ほら、残りも早く刻んでしまいましょう」

――――――

まどか「ふうっ……。これで全部終わったかな」

ほむら「えぇ。あとはチョコが固まればできあがりかしらね」

まどか「楽しみだなぁ。うまくできてるといいけど……」

ほむら「まどかは心配しなくても大丈夫よ。練習のチョコ、とても美味しかったから」

ほむら「むしろ、心配しなきゃいけないのは私の方じゃないかしら……」

まどか「だ、大丈夫だよ。見てた限り何も失敗はしてなかったと思うし」

ほむら「ならいいのだけど……」

まどか「ほむらちゃん、今日はありがとう。一緒にチョコ作りをしてくれて」

ほむら「お礼なんていいの。私も…思っていた以上に楽しかったわ」

まどか「そっか。だったらほむらちゃんを誘ってよかったよ」

ほむら「何から何までまどかに頼りきりでごめんなさい。調べたはずなのだけど……」

まどか「ううん、いいの。わたしもほむらちゃんに頼られて、少し嬉しかったから」

ほむら「そう……」

まどか「……な、なんて、変なこと言っちゃったね。別のこと話そっか」

ほむら「別のことと言われても、何を話したものかしら……」

まどか「……ほむらちゃんは今日作ったチョコ、どうするつもりなの?」

ほむら「どうするって……?」

まどか「ほ、ほら。ほむらちゃん、渡したい相手がいるけど渡せないって言ってたから」

まどか「受け取ってくれるか、喜んでくれるかわからないからって」

ほむら「確かに、あのときはそう言ってたわね。その考えは今も変わってないわ」

ほむら「この…私のチョコはその人に渡しちゃいけない、渡しては駄目なものだから」

まどか「やっぱり渡さないの……?」

ほむら「……えぇ。これを渡しても、相手を困らせてしまうだけ」

ほむら「そうなのだとしたら…私は身を引くわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「もう……。そんな悲しそうな顔しないで、私は…大丈夫よ」

まどか「だって…そんなの、やっぱり悲しいよ。ほむらちゃんは渡したいって思ってるはずなのに……」

ほむら「私はその人が幸せでいてくれたのなら、それでいい。自分で決めたことだから」

ほむら「このチョコはその人の幸せを願って、女神様にでも捧げるわ」

まどか「……あ、そ、そう…なんだ」

ほむら「まどか?」

まどか「う、ううん。大丈夫、何でもないから……」

まどか(やっぱり…わたしにくれるわけ、ないよね。大事なチョコなんだと思うし……)

まどか(……ほむらちゃんはわたしのことなんて…何とも思ってないんだろうな)

まどか(でも…わたしは、ほむらちゃんのことっ……)

ほむら「だけど、どうせ渡せずに捧げるのなら普通に作るんじゃなくて」

ほむら「おまじないでもかけておけばよかったかしらね」

まどか「おまじないって?」

ほむら「チョコ作りの材料や手順を調べているとき偶然見つけたものなんだけど……」

ほむら「何でもチョコに自分の血や髪なんかを混ぜるって……」

まどか「うわぁ……。それもうおまじないなんてかわいいものじゃないよ、怖いよ……」

ほむら「私のチョコは渡すつもりはないし、血の一滴、髪の一本でも混ぜてから……」

まどか「そ、そんなことしちゃダメだよ!騙されてるだけだって!」

ほむら「そうなのかしら……?」

まどか「いくらおまじないでも、普通そんなこと絶対しないよ……」

ほむら「普段しないからおまじないなんだと思うけど…でも、まどかが言うのならやめておくわ」

まどか「その方がいいよ。いくらほむらちゃんが…相手の人に渡す気がないって言っても……」

まどか「相手のことを想って、血と髪の入ったチョコを捧げられた女神様がかわいそうだもん」

ほむら「……ふふっ。それもそうね」

まどか「……でも、わたしは…食べられないとしても、ほむらちゃんのなら」

ほむら「えっ……?」

まどか「あ…な、何でもない。そ、それよりももっと違う話しようよ」

ほむら「そうね。気分の悪い話をしてごめんなさい」

まどか(な、何だろ。今、ほむらちゃんのならって…気のせい、だよね……)

――――――

ほむら「……それじゃ、取り出すわね」

まどか「う、うん。お願い……」

ほむら「……私のチョコ、思ったよりも上手くできてるみたいね」

まどか「わたしのも、綺麗にできあがってる。よかったぁ……」

ほむら「当たり前じゃない。今日の為にずっと練習してきたんだもの」

ほむら「それを私が食べるわけにはいかないけど、見た感じ今までよりもずっと上手くできてるわ」

まどか「えへへ…ありがとう。ほむらちゃんも初めて作ったとは思えないくらい上手だよ」

ほむら「あとはラッピングをするだけね。早く終わらせてしまいましょう」

まどか「そ、そうだね」

ほむら「……こんな感じでどうかしら?」

まどか「わたしは…すごくいいと思うよ。貰って嬉しくなるような感じで」

ほむら「ありがとう、まどか。ラッピングまでつきっきりで教えてくれて」

まどか「気にしないでよ。わたしがやりたくてやってたんだから」

ほむら「でも、まどかの方は全然進んでないみたいじゃない」

まどか「いいの。わたしのは、ほむらちゃんのが終わったあとでって思ってたし」

ほむら「私は随分と時間かかっちゃったけど、まどかは大丈夫なの?」

まどか「大丈夫だよ。練習で何度もやったことだし、それに…その方が……」

ほむら「それに…何?」

まどか「……あ、何でもないよ。わたしもこれ、すぐに終わらせちゃうね」

まどか「全部終わってるほむらちゃんを付き合わせちゃうのも悪いし、先に向こうで待っててよ」

ほむら「そう……?じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわね」

まどか「すぐ行くから、ちょっとだけ待っててね」

まどか「……ほむらちゃん、行った…よね。よし、それじゃあ……」

まどか(ラッピングの前に、デコレーション…と言ってもチョコペンでひと言書き込んでおしまいだけど)

まどか(でも、そのひと言でこのチョコは…ほむらちゃんへの本命になるんだよね……)

まどか(……もう、後には引けない。ここまでやったんだから、ちゃんとほむらちゃんに伝えなきゃ)

まどか「あんまり時間かけてられないし、急がないと……」

まどか「……これで、よし。ラッピングも問題なし」

まどか「ついに…完成した……。完成、しちゃった……」

まどか「わたしからほむらちゃんへの、本命……」

まどか「これを持って、ほむらちゃんにわたしの気持ちを……」

まどか(わたし、これから告白するんだよね。わたしの、好きな人に……)

まどか(告白なんて生まれて初めてで…すごくドキドキして、頭の中も真っ白だけど……)

まどか「あとはもう…わたしがやるだけ、だよね……」

まどか「……行こう。ほむらちゃん、待ってるんだから」

まどか「お、お待たせ。待たせちゃってごめんね」

ほむら「そんなことないわ。それで、終わったのかしら?」

まどか「……うん。無事に完成したよ」

ほむら「そう。無事にできあがったのなら何よりよ」

まどか「あ…ありがとう、ほむらちゃん……」

まどか(……告白するにしたって、本当ならもっといい方法とかあるんだろうけど)

まどか(今のわたしにはあれこれ考える余裕なんてどこにもないし、それに……)

まどか(今を逃したら、こんなチャンスはもう2度とないんだから)

まどか(渡さなくちゃ。わたしの想いを、今、ここで……!)

ほむら「まどかもチョコ作り終えたのよね。帰るにはまだ早いだろうし、何をしたら……」

まどか「あっ…あの、ほむらちゃんっ!」

ほむら「まどか?」

まどか「こ、これ…受け取ってくれないかな……?」

ほむら「これって、今日作ったチョコじゃない。どうして私に?」

まどか「どうしてって…ほむらちゃんに受け取ってもらいたかったから……」

ほむら「……ありがとう、凄く嬉しいわ。大事に頂くわね」

まどか「それ…今、開けてみて」

ほむら「今……?いいの?」

まどか「いいっていうか、そうじゃないと意味がないっていうか……」

ほむら「……じゃ、開けるわね。でも一緒に作ったんだから、中身はわかって……?」

まどか「……」

ほむら「あら……?さっきはこんな文字、なかったはずよね……?」

まどか「さっき、キッチンに1人で残ったときに書いたの」

ほむら「そうだったの……。でも、どうして『だいすき』だなんて……」

まどか「それがわたしの…ほむらちゃんへの気持ちだから」

ほむら「私への気持ちってことは…私のこと、友達だと……?」

まどか「……ううん、違う。わたしの気持ちは…友情じゃない、もっと特別なものだから」

ほむら「もっと特別なもの……?」

まどか「そのチョコは、わたしからほむらちゃんへの……」

まどか「……本命チョコなんだ」

ほむら「……えっ?ほん、めい?」

まどか「うん。本命チョコにだいすきって書く理由なんて、ひとつだけだよ……?」

ほむら「……待って、待ちなさい、まどか。あなた、私のことっ……」

まどか「好き、だよ。ほむらちゃんのこと、大好きだよ」

ほむら「ほ…本当なの……?本当に、私のことが……?」

まどか「本当だよ。わたしの、ほむらちゃんへの好きは…特別な好きだから……」

ほむら「特別な…好き……」

まどか「……いきなりこんなこと言われても、わけわかんないよね」

ほむら「正直、とても驚いて…まだ頭が理解できてないわ……」

まどか「だ、だよね……」

ほむら「……まどかはどうして私のことを?」

まどか「最初のうちは…どうしてわたしのことを気にかけてくれるのかなって思う程度だったの」

まどか「でも、次第にほむらちゃんと仲良くなりたい、一緒にいたいって思うようになっちゃって……」

まどか「気が付いたときにはもう、ほむらちゃんに恋心を抱いてたんだ……」

ほむら「そう……」

まどか「本当は…告白するつもりなんてなかったの。女の子同士だし、迷惑になると思ったから」

まどか「以前にさやかちゃんたちとバレンタインとか、本命チョコの話をしたんだけど」

まどか「そのときにぱっと頭に浮かんだのは、ほむらちゃんの顔で……」

まどか「……渡す相手なんていないってすぐ否定できないくらいに…ほむらちゃんのことを好きになっちゃってたんだ」

ほむら「……」

まどか「ほむら、ちゃん。わたしは、ほむらちゃんが…好き、だよ」

ほむら「……嘘じゃ、ないのよね?夢じゃ…ないのよね?」

まどか「もちろんだよ。こんな嘘、言うわけないもん……」

ほむら「ふふっ……。それも…そう、よね…っ……」

まどか「ほ、ほむらちゃん?何で泣いて……」

ほむら「……あ、あれ?おかしい、わね。私、どうして……」

まどか「ま、まさか泣くほど嫌だったりなんて……」

ほむら「そんなわけ、ないわ。だって私は…嬉しいんだもの」

まどか「えっ……?」

ほむら「嬉しいはず…なのに、どうして…涙が出るのかしら……」

まどか「ほむらちゃん、嬉しいって……」

ほむら「……えぇ。私、まどかに告白されたことが…とても嬉しいの」

ほむら「まどかから本命を貰って、好きって言ってもらえたことが……」

まどか「そ、その…わたしからしておいてこんなこと言うのも変だけど、どうして?」

ほむら「……私はね、まどかのことが…ずっと、好きだったの」

ほむら「ずっと、ずっと前から……」

まどか「ほむらちゃんも、わたしのことを……?」

ほむら「まどかのことを…特別な意味で好きだってことはわかってたわ」

ほむら「だけど、私の気持ちをまどかに伝えるわけには…いかなかったの」

まどか「どうして……?」

ほむら「女同士だっていうのもあるけど、まどかが私を好きだなんて思わなかったから……」

ほむら「私の一方的な好意を伝えたところで、困らせるだけ。迷惑になるだけ」

ほむら「だから…ずっと胸の内に秘めてきたの……」

まどか「そうだったんだ……」

ほむら「……それに、以前は今ほど仲が良かったわけじゃなかったから」

ほむら「まどかにとっての私は、名前を知ってる程度の変なクラスメイトなんだと……」

ほむら「私のことなんて、何とも思ってないんだろうって……」

まどか「変なクラスメイトなんて…思ったこともないよ」

まどか「だって、ほむらちゃんは1番最初にわたしを気にしてくれた人だもん」

ほむら「まどかに告白された今だからこそ、そうだとわかったけれど」

ほむら「あの頃の私はそう思っていたの……」

ほむら「昔は…本当に、私が気にかける程度の仲だったはずなのに」

ほむら「気が付けば、随分と仲良くなってたのよね……」

まどか「毎日…ほむらちゃんと一緒だったもんね」

ほむら「……以前、話したでしょう?バレンタイン、迷惑になるから渡さないって」

まどか「うん。……あの相手って、もしかして?」

ほむら「えぇ、まどかよ。まどかに本命を渡して、告白したいとは考えていたわ」

ほむら「あのときは諦めたわけじゃないと言ってたけど…まどかにその気なんてあるわけがないって、諦めたの」

ほむら「勿論諦めきれるわけなんてなかった。でも、諦めるしかないって……」

ほむら「そんな気持ちがせめぎ合って、苦しくて…辛かった……」

まどか「……ほむらちゃん、ごめんね。わたしのことが好きなのに、それに気づいてあげられなくて」

まどか「バレンタインの練習に付き合わせたり、今日もほむらちゃんを誘ったりして……」

まどか「わたし、ほむらちゃんに辛い思いをさせちゃったよね……」

ほむら「……いえ、もういいの。だって、まどかに告白してもらったんだから」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……まどか、告白してくれてありがとう。とても嬉しいわ」

ほむら「でも、ひとつだけ確認させて。私たち、ここ数日で仲良くなったとは思うけど」

ほむら「きっとまどかは私のこと、よく知らないと思うの」

ほむら「それでも…私を選んでくれる……?」

まどか「……うんっ、もちろんだよ」

まどか「確かにまだ知らないこともあるけど、それはこれから知っていけばいいんだから」

まどか「わたしは、ほむらちゃんのことを。ほむらちゃんは、わたしのことを……」

ほむら「……えぇ。そうね」

まどか「それに、これは何の根拠もない勘みたいなものなんだけど」

まどか「わたしたち、お互いのことをすぐにわかり合えるような気がするんだ」

ほむら「そうなのだとしたら…何も心配することはないのよね」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。わたしたち、これで付き合えたんだよね?」

まどか「わたしの側に、ずっといてくれるよね……?」

ほむら「当然じゃない。私はまどかのこと…好きなんだもの」

ほむら「……大好きよ。まどか」

まどか「やっ…わたし、ほむらちゃんとほんとに……!」

まどか「ほむらちゃんと恋人になれて…すごく、嬉しいよっ……!」

ほむら「私もよ。まどかと想い合えて、恋人として付き合えて……」

ほむら「……って、何だか照れちゃうわね」

まどか「えへへ…そう、だね」

ほむら(まどか……。やっと、掴まえた……)

ほむら(もう2度と…絶対に離さないわ。例え、あなたに離せと言われても……)

ほむら(だって、まどかはもう私だけのものなんだから……)

まどか「……大好きだよ、ほむらちゃん。これからは、ずっと一緒だよ」

ほむら「……ふふっ。勿論」

まどか「ありがとう……。ね、わたしのバレンタインチョコ、食べてみてよ」

ほむら「そうね。せっかくだし、まどか…食べさせてくれる?」

まどか「……も、もう。仕方ないんだから」

ほむら(あんなに遠かったはずのまどかが、今は心も身体も私のもの……)

ほむら(好きよ、愛してるわ。私の、私だけのまどか……)

まどか「ほむらちゃん。はい、あーん……」

ほむら「あーん……」

ほむら(これからはずっと、永遠にまどかと一緒……)

ほむら(ずっと、ずっと……)


Fin

これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

乙乙
これはいい激甘

乙!
甘くて良いまどほむでした

乙でした

読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
バレンタインは毎年書いていたので過去作品も読んでいただけると嬉しいです

・次回予告

まどか「デレデレさせたい」

まどか「あの子がほしい」(仮)

タイトル未定 たぶん本編もの

ほむら「バトルメイド暁美」


予告以外にも詰まってるのがあるので早く書いておきたい
またどこかで見かけたらよろしくお願いします

おつ!

反逆世界でこれ悪魔ほむ?

乙でした
ごちそうさまです

乙乙!過去作も読んでみるよ

>>125
いつも乙です
デレデレさせたいが面白そう

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