ウォッカ「兄貴、バレンタインの買い物に行ってきやす」ジン「ん?」 (47)

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――黒の組織のアジト・シューティングルーム――

ジン「……何だ、お前が女共へのチョコを用意するのか?」

ウォッカ「いえ、違いやすよ。バーボンの手伝いです」

ジン「バーボンの? あいつ、また何かやってんのか?」

ウォッカ「へい。実は……」


~20分前・組織のアジト・キッチン~

ゴソゴソ…ガタン

安室「必要な道具は、これで全部……と」ヨイショ

ウォッカ「バーボン、何やってんだ?」

安室「逆チョコ作りですよ」

ウォッカ「逆チョコ?」

安室「ええ。バイト先の同僚と、常連の女性客にね」

ウォッカ「……バレンタインは、女から男にチョコを渡すもんじゃねぇのか?」

安室「昔はそうでしたが、最近では男性から女性に贈ることも増えてるんですよ」

ウォッカ「へ~。……ところで、何を作るんだ?」

安室「ガトーショコラです」

安室「僕からのサービスとして提供しようと思いましてね」

ウォッカ「けど、店に来た女の客全員に出してたら大変じゃねーか?」

安室「いくら僕でも、さすがにそれは……先着50名にするつもりです」

ウォッカ「そうか。しかし、それでも随分な量だな」

ウォッカ「……俺にも、何か手伝えることは無ぇか?」

安室「え……良いんですか?」

ウォッカ「あぁ。今日は暇な方だしな」

安室「じゃあ、いくつか買ってきてほしいものがあるので、お願いします」ニコ

ウォッカ「おぅ!」

~回想終了~

ウォッカ「……っつーワケでして」

ジン「なるほど。じゃあ、早速調達に行くか」カタン

ウォッカ「え……兄貴も来てくれるんですかい?」パチクリ

ジン「50人分のケーキを焼くとなると、材料も随分な量だ」

ジン「お前一人で運ぶのは難しいだろう?」

ウォッカ「確かに……頼まれた買い物には、卵もありやすし」

ジン「ん? もうこんな時間か……早くしねぇと、店が混んじまうな。付いてこい」

ウォッカ「へい、兄貴!」

ちょっと切ります
続きは後ほど

――某イオン・バレンタイン特設コーナー前――

ワイワイガヤガヤ

ウォッカ「こないだのパスタ作りの時はスルーしたコーナーですけど」

ウォッカ「改めて見ると、すんげぇ熱気ですぜ……」ゲンナリ

ジン「バレンタインに賭ける女共の情熱を甘く見るな」

ジン「さっさと行くぞ」スタスタ

ウォッカ「えっ……兄貴、そっちの菓子コーナーに置いてあるのは、普通の板チョコですぜ?」

ウォッカ「菓子作りには、それ専用のチョコを使うんじゃあ……?」

ジン「あぁ、普通はな。……だが、板チョコでも十分美味いガトーショコラは作れる」

ジン「それに製菓用のは板チョコに比べると、やや高価だ」

ジン「板チョコを使えば、多少は原価率を下げることができる」

ウォッカ「なるほど……今回のはサービス品ってことは、材料費はたぶんバーボンの自腹……」

ウォッカ「仲間の懐事情も気遣うなんて、さすがですぜ! 兄貴!」

ジン「早く行くぞ。あんまりバーボンを待たせるのもいけねぇ」フッ

ウォッカ「へい!」

―― お菓子コーナー ――

ジン「ところで、バーボンが用意するケーキは50人分ってことだったが」

ジン「ホールだと何個焼くつもりなんだ?」

ウォッカ「ホール1個を6等分するつもりらしいですから、必要なのは9個ですね」

ウォッカ「それに、試作で1個作るって言ってたんで……全部で10個になりやす」

ジン「そうか……」フム

ジン「板チョコ1枚は、大体50gだ」

ジン「ガトーショコラ1個に使うチョコの量は200gだから……」

ウォッカ「ケーキ1個に付き4枚。10個だと、40枚ってわけですね」

ジン「あぁ。……今回は明治のにするか」スッ

ウォッカ「1枚38円って……この時期ならではの投げ売り価格ですかい……」

ポイポイポイ

ジン「よし、次だ。行くぞ」スタスタ

ウォッカ「へい」スタスタ



青子「か~いと♪ これ見てよ。お魚さんの形をしたチョコだってさ~♪」ウフ

快斗「だから何でそういう気色悪いモンを見つけてくるんだよ、オメーはっ!!」ヒィィィ

―― 製菓材料コーナー ――

ジン「次に必要なのは、ホットケーキミックスだな」

ウォッカ「相変わらず、ここは森永のが一番安いですね」スッ

ジン「あぁ。それと、粉砂糖を取ってくれ」

ウォッカ「粉砂糖? ケーキに入れるなら、普通ので十分なんじゃ……?」キョトン

ジン「生地に入れる分じゃねぇ。仕上げ用だ」

ウォッカ「あ、なるほど。そういうことですかい」ヒョイ

ジン「よし……あとは卵だな」

―― 卵コーナー ――

ウォッカ「ケーキ1個に必要な卵の量っていうと……3個ぐらいですかい?」

ジン「いや、今回は4個使う。だから全部で40個だ」

ウォッカ「じゃあ、この10個入りを4パックで良いですね」

ジン「ちゃんと大きさを見ろよ。MサイズとLサイズを間違えるな」

ウォッカ「分かってやす!」

ジン「フン……ついでに仕上げ用の生クリームも買っとくか」

ウォッカ「他に必要な物はありやすか?」

ジン「いや、今回はこれで全部だ。レジに行くぞ」

ウォッカ「あ……待って下せぇ、兄貴!」

――レジ――

女店員「お待たせしました。次の方、どうぞー♪」

ウォッカ「姉ちゃん。買ったやつは、またコレに入れてくれや」スッ

女店員「はい♪」

ピッピッピッ…ピピッ

女店員「合計で、1621円でーす♪」

ウォッカ「意外に安いっすね……」

ジン「支払いはコイツで頼む」スッ

女店員「はい♪」

ワオンッ!!

女店員「ありがとうございましたー♪」


ジン「バーボンに、これから戻るとメールしとけよ」

ウォッカ「へい!」

ガコ…ウィィィン

――組織のアジト・キッチン――

ガチャ

ウォッカ「待たせたな、バーボン」

安室「お帰りなさい。…………あれ? ジンも一緒だったんですか?」

ジン「こいつ一人に大量の荷物を運ばせるのは、心許なくてな」ガサ

安室「……わざわざ、ありがとうございます」

ジン「構わん。特に任務も無かったしな」

ジン「ウォッカ。材料を出して、エプロンを用意しろ」

ウォッカ「へい!」ガサ

【ガトーショコラ(20㎝の丸形1個分)】
板チョコ(ビターorミルク):200g
卵:4個
ホットケーキミックス:100g
粉砂糖:適量
生クリーム:適量


ウォッカ「兄貴、準備できやしたぜ!」

安室「僕もです」

ジン「まずは、チョコを細かくする作業からだ」

ジン「清潔なまな板に、ペーパータオルを敷いておく」スッ

ジン「こうすることで、チョコを刻んだ時にまな板が汚れるのを防げるんだ」

ジン「最初にチョコの溝に沿って、ある程度まで割っておき」パキッパキッ

ジン「それから包丁で細かく刻んでいくと良い」トントントントン

安室「ウォッカ。試作用のチョコはジンに任せて」

安室「僕達は、本番用のケーキに使うチョコを刻んでおきましょう」パキッパキッ

ウォッカ「そうだな」パキッパキッ

トントントントン


~20分経過~

ウォッカ「ふぅ~。これで全部か?」

安室「えぇ」

ジン「よし、次だ」

ジン「バーボン。卵を卵黄と卵白に分けろ」

安室「分かりました」カンカン、パコ…

ジン「ウォッカ、オーブンを180度に予熱しておけ。焼き上げの時間は30分だ」

ウォッカ「へい」ピッピッ…ピコ♪

ウィィィィン…

ジン「その間に、チョコを湯煎にかけて、固まりが無くなるまで溶かしていく」トロ…

安室「ジン。卵白はメレンゲにすれば良いんですか?」

ジン「あぁ、頼む。そっちの棚にハンドミキサーもあるぞ」

安室「はい」カタ

安室「……スイッチON、と」ギュイィィィィン

ウォッカ「おぉ~。すげぇ勢いで泡立ってくな」

ジン「ウォッカ、お前は粉の計量をしておけ」

ウォッカ「あ、分かりやした!」イソイソ

安室「卵黄は、解きほぐして机の上においてありますので」ギュィィン

ジン「あぁ」

ジン「チョコが完全に溶けたら、卵黄と混ぜ合わせる」トローリ…マゼマゼ

ギュィィィィン……カチ

安室「メレンゲ、できました。しっかり角も立ってますよ」

ジン「ご苦労だったな」

ジン「ここに、チョコと卵黄を加えて……」トローリ

ジン「泡を潰さねぇように、ゴムベラでサックリと混ぜ合わせる」マゼマゼ

ウォッカ「兄貴、粉の用意もできてやすぜ」

ジン「おぅ」

ジン「最後に、ホットケーキミックスを投入し」サラサラサラ

ジン「あとは、粉っぽさが無くなるまで混ぜれば……」マゼマゼ

ジン「生地の完成だ」

ジン「こいつを、オーブンシートを敷いた型に入れて」トローリ

ジン「2~3回軽く落とし、空気を抜いて」トン、トン

ジン「180度に温めたオーブンに入れる」ピッピッ…ピコ♪

ジン「あとは、焼き上がるのを待てば良い。簡単だろ?」

安室「えぇ、とても」

ウォッカ「たったこれだけの材料でガトーショコラが作れるなんて……さすがですぜ、兄貴!」

ジン「フッ……焼き上がるまでの間に、本番用の材料を全部量っちまうぞ」

ジン「お前ら、チョコを刻んだ時に全部一緒くたにしただろう」

ジン「これじゃあ一回分に必要な分量が分かんねーじゃねぇか」

ウォッカ「あ……いけね」

安室「……すみません」ハハ…

ジン「バーボン。今度は粉の計量を頼む」

安室「はい」

ジン「ウォッカは俺と一緒にチョコの計量と洗い物を担当だ」

ウォッカ「へい、兄貴!」


~30分後~

ピロリロリロリーン、ピロロローン♪

ウォッカ「お!」

安室「焼き上がりましたね」

ジン「ウォッカ。オーブンから取り出して、竹串でチェックだ」

ウォッカ「へい!」

プスッ、ソーッ…

ウォッカ「大丈夫ですね。……うーん、良い匂いですぜ」

ジン「粗熱が取れるまで、しばらく置いとけ」

ジン「あとは好みで粉砂糖を振りかけたり、生クリームを添えたりすれば完成だ」

ウォッカ「……しかし、ケーキ作りはバターが付きものだと思ってやしたけど」

ウォッカ「ホットケーキミックスを使うと、バター要らずなんですね」

安室「使う材料や、作る工程を減らす事ができて便利ですよね」

安室「それに、今回のレシピに一手間加えて、色々アレンジしてみるのも面白そうです」

ジン「あぁ。オレンジピールやラム酒なんかを加えても美味いぞ」

安室「あ、良いですねぇ。今度、プライベートで作る時に試してみますよ」

ジン「……好きにしろ」

ハハハ…

――2月15日・組織のアジト・廊下――

ウォッカ「よぉ、バーボン。逆チョコサービスは上手くいったか?」

安室「えぇ。それは問題無かったんですけど…………」

ウォッカ「ん? どうしたんだよ。随分浮かない顔だな」

安室「実は……」


~回想・2月14日・喫茶店『ポアロ』バックヤード~

梓「今日のケーキも大好評だったわね、安室君」フフッ

安室「常連さん達にも喜んで頂けたようで、僕も嬉しいですよ」


…カツカツカツ

マスター「あぁ、安室君。良かった、まだ帰ってなかったんだね」

梓「お疲れ様です♪」ペコ

安室「お疲れ様です、マスター。……僕に何か?」

マスター「今日の売り上げ、安室君のおかげでウチの過去最高を記録したんだよ」

マスター「また臨時ボーナス出すからね♪」

安室「ありがとうございます」ニコ

マスター「もちろん、梓ちゃんにも♪」

梓「ホントですか? やったぁ♪」

マスター「それと……安室君」

マスター「逆チョコサービスのケーキなんだけど、作り方を教えてもらえないかな?」

安室「あ、はい……良いですけど。マスターも自宅で作るんですか?」

マスター「いやぁ……実は、あのケーキをレギュラーメニューに加えさせてほしくてね」

マスター「オレンジのカップケーキ同様、ウチの看板デザートにしたいんだよ」

安室「は……はぁ、そうですか」

安室「構いませんよ。メニューが増えるのは良いことですし」

マスター「あ、そうそう」

安室「?」キョトン

マスター「ホワイトデーも何かしてくれるんじゃないかって期待してた常連さん、結構いたよ?」

マスター「来月も期待してるからね、安室君♪」ポン

安室「え゛………………」ヒク…

~回想終了~


安室「……とまぁ、僕がデザートメニュー考案担当になってしまってるみたいで……」

ウォッカ「まぁ良いじゃねーか。次も頑張れよ」ハハハ

安室(店を辞める時、引き留められて揉めそうで困るんですけどね……)フゥ

安室「……あれ? そういえば、今日はジンは来てないんですか?」

ウォッカ「えっ……? あ、そういや俺も兄貴の姿を見てねぇな」

ダダダダダ…

コルン「……おい」

キャンティ「ちょっと、あんた達! ベルモットがどこにいるか知らないかい!?」

ウォッカ「い、いや……知らねーけど」

安室「二人とも、どうしたんですか? そんな剣幕で……」

キャンティ「あいつ、ジンに妙なモンを食わせたらしくってねぇ」フン

コルン「一発殴らないと、気が済まない……」コキコキ

ウォッカ「えっ、姐御が?」

安室「やれやれ……彼女も色々と問題を起こしてくれますね」ハァ…

…カツカツカツカツ

ベルモット「あら。こんな所で、みんな揃ってどうしたの?」

キャンティ「見つけたよ、このバカ女!!」ガシッ! ギリギリ

ベルモット「ちょっ……何なのよ、キャンティ!?」

キャンティ「『何なの』じゃねぇ! 昨日あんたが渡した、不味いチョコケーキのせいで」

キャンティ「ジンがぶっ倒れちまったんだよ!!」

ベルモット「ええぇっ!?」

キャンティ「よくもジンに変なモン食わせてくれたねぇ! 今日という今日は……!!」

ベルモット「待ってよ、それなら私は濡れ衣よ!!」バッ

キャンティ「言い逃れかい? 見苦しいよ!」

ベルモット「本当に違うったら! 私が料理は不得手なの、貴方達だって知ってるでしょ?」

ベルモット「だからケーキはキールに作ってもらって、私はラッピングしただけよ!」

安室(……キールに!?)ギョッ

キャンティ「そんな言い訳が通じるとでも思ってんのかい!?」ギロッ

安室「…………いえ、キャンティ。ベルモットの言ってることは嘘じゃありません」

キャンティ「え?」ピタ

コルン「……どういうことだ?」

安室「貴方方はご存じなかったかもしれませんが…………キールの料理の腕は壊滅的なんです」

安室「しかも、見た目は良くても食べると……という、一番タチの悪いタイプですよ」

ウォッカ・キャンティ・コルン・ベルモット「「「「…………」」」」ヒク…

キャンティ「…………キールの奴~!」タタタ…

コルン「ターゲット、変更……」タッ

ベルモット「ちょっと、キール――――! どこなの、出てらっしゃ――――い!!」ダダッ

バタバタバタ…

ウォッカ・安室「「………………」」

ウォッカ「な、何だったんだ、一体……」

安室「彼らは放っておくとして……とりあえず、ジンのお見舞いに行きませんか?」

ウォッカ「そうだな……」


【おわり】

以上で完結です。ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございました
キールの料理下手は中の人ネタです…(古いけど)
ホワイトデーはネタが降ってくれば、また……

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