『拾われたフィアンマ』

………ロシア………


オッレルス｢……｣ｻﾞｸｻﾞｸ

オッレルス｢……おや｣ｻﾞｸ…

シルビア｢ん？ そっちにいたのか？｣ｻﾞｯｻﾞｯ

オッレルス｢ああ……｣

オッレルス｢でもアレイスターに先を越されたね｣ｻﾞｸ

シルビア｢やられてるってことか？｣

オッレルス｢そういうこと。右腕が切り落とされてる……｣

オッレルス｢しかもだいぶ時間が経ってるみたいだ｣

シルビア｢それ、生きてんのか？｣

オッレルス｢ぎりぎり、かな｣

オッレルス｢雪のせいかだいぶ体温は下がってきてるけどかろうじて息はある｣ｽｯ

シルビア｢……ふーん、まあ、自分で見りゃいいんだけど｣ｻﾞｯｻﾞｯ

オッレルス｢いや、君が聞いたんだろ｣

シルビア｢……ごめん｣ｻﾞｸｻﾞｸ

オッレルス｢ところでシルビア、その辺で腕見かけなかった？｣

シルビア｢腕？ そんなもん悪趣味なもん見てないよ｣

オッレルス｢右だよ？｣

シルビア｢いや、右も左も落ちてないって｣

シルビア｢そもそも腕の左右を区別できるほど腕単体は見慣れてないさ｣

オッレルス｢私だって見慣れてないよ｣

シルビア｢……右方のフィアンマはあのアレイスターとやりあったんだろ？｣ｻﾞｸｯ

オッレルス｢それしかありえないと私は思っているけど……｣ﾁﾗ

シルビア｢だったら、腕なんか残して行かないだろうよ｣

シルビア｢右腕なんてフィアンマにとって心臓以上に大事なもんだと言っても過言じゃない、彼のシンボル的存在だろう？｣ｽﾀｯ

シルビア｢私がアレイスターでも持ち帰るね｣

オッレルス｢……だろうね｣

シルビア｢にしても、だいぶ派手にやられてるねえ｣

オッレルス｢神の右席とは言ってもあのアレイスターに敵わないのは仕方がないだろうさ｣

シルビア｢かもしれないけど……｣

シルビア｢散々策略巡らせて、暴れ回った結果がこれってのはフィアンマも報われないね｣

オッレルス｢……どちらにしろ、私たちにとって必要不可欠な人材だということは変わりないから助けないって選択肢はないさ｣

オッレルス｢出来れば協力を取り付けてからがよかったんだけど、仕方がない｣

シルビア｢なんだー？ まるで使い道がなかったら助けない、みたいな言い方はらしくないねえ｣

シルビア｢どうせあの子供達みたいにフラっと助けるんだろう？｣

オッレルス｢……今回の場合はその時になってみないと何とも言えないよ｣

オッレルス｢彼は少しやり過ぎてたから、使い道が無かったら助けなかったかもしれない｣

シルビア｢さてさて、どうだか｣

オッレルス｢っと、無駄話はこの辺にしないと……｣

オッレルス｢彼に死なれては私たちがここまで来た意味がなくなる｣

シルビア｢本当にその通りだ。さっさと応急処置して帰るよ｣

オッレルス｢はいはい｣ｼｬｶﾞﾐ

オッレルス｢……とりあえず腕の止血しておけば大丈夫かな？｣

シルビア｢なんで私に聞くんだ？｣

オッレルス｢いや、止血しても死なれたりしたら困るし。腕があればくっつけりゃいいだけだったんだけどさ｣ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

シルビア｢それなら多分大丈夫だろうよ｣

オッレルス｢多分って信用ならないな……｣

シルビア｢いいからとっととやりな｣ｹﾞｼｹﾞｼ

オッレルス｢痛い痛い！！｣

オッレルス｢分かったから！ やりますから蹴るのやめて！！｣

シルビア｢……｣ｻﾞｸｯ

オッレルス｢はぁ、聖人の蹴りとか本当に勘弁なんだけど……｣

オッレルス｢……よし、これで大丈夫か｣ｽｯ

シルビア｢あとは体力が回復したら目覚めるだろうな｣

オッレルス｢まあ、そうだろうけどさ｣ﾁﾗ

シルビア｢何か？｣

オッレルス｢君が回復魔術かけた方が良かったんじゃないかと今更思ってね｣

シルビア｢ああ、それはやめた方がいいと思う｣

シルビア｢基本的に自分の回復しかしないから細かく回復魔術使うのは苦手なんだ｣

シルビア｢私は少しくらい雑な回復でも問題ないんでね｣

オッレルス｢……自分の体は大切にした方がいい｣

シルビア｢はははっ、こちとら生まれた時から聖人やってるんだ｣

シルビア｢アンタに体の心配されるほどヤワじゃないさ｣

オッレルス｢はぁ、自信過剰もいいけど本当に気をつけてくれよ？｣

シルビア｢ははっ、その心配はありがたく受け取っておくよ｣

オッレルス｢いや、シルビアが倒れたら誰も私にご飯を作ってくれないから｣

シルビア｢……それはご自分でどうぞ｣

オッレルス｢さってと、目的は達成できたし、そろそろ帰るかな｣ｽｯｸ

シルビア｢……フィアンマはどうするんだい？｣

オッレルス｢え？ 持っ……連れて帰るに決まってるだろう｣

オッレルス｢いくら止血したとはいえ、この極寒な地域に放置してたら死ぬし｣

オッレルス｢というか私もそろそろ凍え死にそうだし｣

シルビア｢じゃあなぜ放置したままなんだ？｣

オッレルス｢いや、そこはシルビアが回収してくれると……してくれないのか！？｣

シルビア｢……助けるって言ったのはアンタだ｣

シルビア｢それに女に力仕事を押し付けるのは少し引くなあ｣

オッレルス｢は、いや、私は回復したんだから回収は当然君の仕事だろう！｣

オッレルス｢確かに女であることは認めるけど、君は聖人だ。私の数倍力も体力もあるんだろう？｣

シルビア｢そうだね……なら譲歩してあげよう｣

シルビア｢ジャンケンで負けた方が抱えて帰るって条件でどうだい？｣ｸﾞｰ

オッレルス｢ふむ……平等な勝負を選んでくれたことだけは感謝しよう｣

オッレルス｢だけど、聖人さまがこんな優男に荷m、人運びを押し付けようとするのは納得が行かない……｣

オッレルス｢だから｣

オッレルス｢その勝負、受けようじゃないか｣

オッレルス｢さあ、ジャンケンだ！｣ｸﾞｯ

シルビア｢ふふふ、言ったな？｣

シルビア｢…………私の勝ちだ｣ｸｽｯ

シルビア｢最初はグー｣ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

オッレルス｢ジャンケン！｣

オッレルス｢ぽん！！｣ｸﾞ-

シルビア｢ふっ……｣ﾊﾟ-

オッレルス｢なっ、負けた……｣

シルビア｢だから私の勝ちだと言ったろう？｣


シルビア(……聖人がジャンケンで負けるなんてことは有り得ない)

シルビア(相手が出した手を0.01秒で判断し、自分の手を0.01秒で出す)

シルビア(相手から見たら同時だが、私から見たら後出し)

シルビア(……私にとってじゃんけんなんてものは平等な勝負ではないのさ)ｸｸｯ

シルビア(ネタバレはしないけど)

オッレルス｢……｣ﾌﾙﾌﾙ

シルビア｢負けた方が持つって約束だ｣ﾆﾋﾋ

オッレルス｢分かってる……｣

オッレルス｢だけど持つって言い方はどうかと思うよ｣

シルビア｢……じゃあ、連れて帰る、に訂正しておこう｣

オッレルス｢ああ……さっさと連れて帰ろう｣

オッレルス｢よっこらしょっと｣ﾄﾞｽｯ

シルビア｢布団干してるみたいじゃないか。そんな抱え方だと肩痛めるよ｣

オッレルス｢問題無い｣

オッレルス｢こう見えても私は肩を痛めたことはないんだ｣ﾄﾞﾔ

シルビア｢……まあいいや。途中で潰れても知らないからね｣

オッレルス｢でも……意識のない人間の体ってのは重たいな……｣ｽﾞﾘｽﾞﾘ

シルビア｢そんなの当然だ。新発見できて良かったねえ｣

オッレルス｢馬鹿にしたような言い方、気に食わないな……｣

シルビア｢そう聞こえたんなら悪かったね｣

オッレルス｢……どーも｣ｽﾞﾘｽﾞﾘ

シルビア｢……あんまり話してると体力消耗するよ｣

オッレルス｢………………｣ｽﾞﾘｽﾞﾘ

『肩凝り』

………オッレルス宅………


オッレルス｢いてて……｣ｻｽｻｽ

シルビア｢だから忠告したじゃないか｣

シルビア｢肩痛めるよってね｣

オッレルス｢……そんな警告をするくらいなら、君が運んでくれれば良かったんだ｣ｹｯ

シルビア｢ふーむ、いまさらそんなこと言うなんて男らしくないな……｣

シルビア｢仕方ない、そのお詫びとして、私が肩を刺す刺すしようか？｣

オッレルス｢待って、君のさすさすは普通のさすさすとニュアンスが違う気がするよ？｣

シルビア｢でも、せっかくアンタにベッドを譲ってやったのに……｣

シルビア｢あまり疲労回復の効果がなかったみたいでショックだ｣

オッレルス｢そんな文句を言うならフィアンマをソファーに寝かせれば良かっただろう｣ﾑ

シルビア｢いやいや、聖人的に怪我人を雑に扱うことはできないから｣

シルビア｢たとえ第三次世界大戦を起こした張本人とは言えどね｣

オッレルス｢はっ！｣

オッレルス｢なら私も肩を痛めている。雑に扱えないな｣ｸﾞｯ!

シルビア｢だからアンタは疲れてるだろうからベッドで寝れるよう考慮したんろ？｣

シルビア｢本当ならフィアンマにはアンタのベッドを貸すつもりだった｣

シルビア｢が、肩疲れてるであろう人間を放っては置けないから、フィアンマには私のベッドを貸して、私はソファーで寝たってわけだ｣


オッレルス｢……ソファーで寝るのは順番にしないか？｣

オッレルス｢君だけずっとソファーっていうのは不公平だろう？｣

シルビア｢ん？ その提案はありがたいんだけど、肩痛めてるんだろう？｣

オッレルス｢……凝ってるだけかもしれない｣ｸﾞﾙｸﾞﾙ

シルビア｢ふーん、あんなことをして肩凝りで済んでたら私でも驚愕もんだけど……｣

シルビア｢ふむ、チェックしてみるか｣

オッレルス｢え？｣

シルビア｢少しじっとしていろ｣ｶﾞｼ

オッレルス｢ええ？ ちょっと、シルビアさん？｣

シルビア｢……｣ｺﾞﾘｺﾞﾘ

オッレルス｢いでででででででで！！！！｣ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

シルビア｢ふーん……｣ﾊﾟｯ

オッレルス｢何？ 何がしたいんだ？｣

シルビア｢ただのチェックだよ｣ｺｷｺｷ

オッレルス｢……肩の骨が折れるかと思ったぞ｣ｶﾞｸｶﾞｸ

オッレルス｢……して、診断結果は？｣

シルビア｢本当にただ凝ってるだけだったよ｣

オッレルス｢いや、それは無い｣

オッレルス｢君のせいで確実に折れた。骨がボキッていった｣

シルビア｢そんな謙遜はいらないよ｣

オッレルス｢今のは誰がどう聞いても謙遜ではなかったけどね｣

シルビア｢どうやら私が思っていた以上にアンタは頑丈らしい。驚いたよ｣

オッレルス｢本当に凝ってるだけなのか？｣ｸﾞﾙｸﾞﾙ

シルビア｢ああ｣

シルビア｢だけど、だいぶ酷い凝りだからマッサージでもしてあげよう｣

オッレルス｢優しく頼むよ｣

シルビア｢心配しなくても、私のマッサージは効くって評判なんだ｣ｺﾞｷｺﾞｷｨｯ

オッレルス｢ちょ、え、待って｣

シルビア｢ほら、歯ぁ食いしばって耐えてみな！｣

オッレルス｢肩マッサージで歯を食いしばるってどういうことだ！｣

『フィアンマげらっぷ』

フィアンマ｢っ……｣ﾑｸ

フィアンマ｢いづっ……｣ﾋﾞｷﾞﾘｯ

フィアンマ｢……俺様の、右腕がない……｣

フィアンマ(そうか……俺様は確か、アレイスターに右腕を狩られ……反撃をしようとして……)ｸﾞｯ

フィアンマ(ダメだ、そこで意識が途切れている……)

フィアンマ｢いや、それよりここは、どこだ……？｣ｷｮﾛｷｮﾛ

フィアンマ(何者かがあんな所にいた俺様を見つけ、死なせずにとりあえずは安全な場所に運んできたということか)

フィアンマ(……ということは、相手は只者ではないだろうな)

フィアンマ(……聖なる右は、ほとんど使い物にならない……)ｼﾞｭｳﾝ

フィアンマ(さて、どうしたものか)

フィアンマ(良心で俺様を回収してくれたというのならありがたいが……)

フィアンマ(いや、まだ俺様はあいつみたいに人間を信じることはできないな)

フィアンマ(……だが、包帯が巻いてあるし、窓まである)

フィアンマ(ということは、監禁されているという線は薄いか？)ｽｯ

フィアンマ(……最悪拷問くらいならされると思っていたが、それは無さそうだな)

フィアンマ(まあ、そんなことがあったら返り討ちにするだけだが)


フィアンマ(で……建物的に学園都市ではないことは確かだな)ｷｮﾛｷｮﾛ

フィアンマ(日本式の建物でもないか)

フィアンマ(だがそれ以外は見当が付かない……と)ﾌｩ

ｺﾂｺﾂ…


フィアンマ(っ……足音！)ﾋﾞｸｯ

フィアンマ(攻撃……は止めておくべきか)

フィアンマ(一撃で仕留められなくて相手を逆上させても面倒だろうし……)

フィアンマ(今、俺様には右腕がないのだから、慎重に行動すべきだ)

フィアンマ(まあ、見張り役程度の敵なら腕なしの俺様でも一撃だろうが……)

フィアンマ(……とりあえずは寝たふりで様子を見るか！！)ﾊﾞｯ


ｽﾞｹｯ

フィアンマ｢んがっ！！｣ｺﾞﾂｯ

フィアンマ(いたた……右腕ないの忘れてたな)

フィアンマ(っと、まずい、ベッドに戻らなければ！)ｽｯ……ｸﾞﾗｯ

ｶﾞﾁｬ


オッレルス｢……｣ｼﾞｰ

フィアンマ｢あ……｣

フィアンマ(間に合わなかった！！)

オッレルス｢もう起きたんだ｣

オッレルス｢おはよう｣ﾆｺﾆｺ

フィアンマ｢……あ、ああ、おはよう｣ｱｾｱｾ

フィアンマ｢じゃない！ 貴様は何者だ？｣ｽﾞｻﾞｯ

フィアンマ｢いや、違うな。どこの組織だ？｣

オッレルス｢……命の恩人を貴様呼ばわり、か｣

フィアンマ｢……｣ｼﾞｯ

オッレルス｢まあいいや、警戒されるのは仕方が無いし｣

オッレルス｢開けた瞬間攻撃が来なかっただけ良かったのかな｣

フィアンマ｢答えろ｣ｷﾞﾛ

オッレルス｢……オッレルス｣

オッレルス｢あと一歩で魔神になるはずだった男、とでも思ってくれればいい｣

フィアンマ｢魔神……｣

フィアンマ(魔術を極めたことにより、神の領域まで到達した人間、だったか)

フィアンマ(確かに俺様が睨んでも全くひるまないかったし、言うだけの力は持ってるだろう)

フィアンマ(……その上なんだか俺様と似たような暗さを感じる)

オッレルス｢まあ、私のことはどうでもいいんだ｣

フィアンマ｢……少し興味が湧いたんだがな｣

オッレルス｢そうか？ あまり面白い話でもないんだけど……｣

フィアンマ｢面白そうだとは俺様も思ってはいない。ただの興味だ｣

オッレルス｢……まあ、どうしても聞きたいなら後でいくらでも教えてあげるよ｣

オッレルス｢とりあえず今は少し私の話を聞いてくれないか？｣

フィアンマ｢……いいだろう｣

フィアンマ(本当に魔神手前だとしたら、聖なる右のない俺様が勝てるかは微妙……)

フィアンマ(ということは、相手の言うことに従い、機を見て行動を起こすしかないか)ﾁﾗ

オッレルス｢……｣

フィアンマ｢なんだ？ 話すんじゃないのか？｣

フィアンマ｢腕組んで黙っていても何もわからないぞ｣

オッレルス｢ああ、ごめん。少し考え事してた｣

フィアンマ｢……？ 話さないのか？｣

オッレルス｢いや、今から話すけど、とりあえずそこに座ってくれないか？｣

オッレルス｢立ってると怪我にも響くだろうしさ｣

オッレルス｢お互いにね｣

フィアンマ(お互いに？)

フィアンマ｢……大したことない、が、確かに傷が痛むから座らせてもらおう｣ｽﾀ

オッレルス｢ふぅ、これでシルビア怒られなくて済む｣ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

フィアンマ｢何言ってるんだ｣

オッレルス｢……いや、私も座らせてもらうよ｣ｽﾞﾙｽﾞﾙ ｽﾀ

オッレルス｢そう言えば、君の自己紹介がまだだったね｣

フィアンマ｢はぁ、俺様の正体を知らない奴が俺様を回収するわけがないだろう｣

オッレルス｢いやいや、相手の事を知らずに傷ついてるからって理由だけで保護してしまうこともあると思うけど？｣

オッレルス｢上条当麻とかはそのいい例じゃないか｣

フィアンマ｢……だがお前は俺様のことを知っているよな？｣

フィアンマ｢魔神とか何とか言っているくらいだから魔術側の人間だろう｣

オッレルス｢そりゃあ、私はもちろん知ってるさ｣

オッレルス｢君のことを知っていて、その上で協力を仰ぐために君を保護したんだから｣

フィアンマ｢協力だと？｣ﾑｯ

オッレルス｢そう。私たちに協力してもらいたい｣

フィアンマ｢……ふむ、今、俺様は断れない状況なのだろうが、一応内容を聞かせてもらえるか？｣

フィアンマ｢流石に私が魔神になって世界を我が手中に収めるために協力しろ、などと言われたら全力で抵抗しなければならないからな｣

フィアンマ｢……俺様もそれくらいのことは許されるはずだ｣

オッレルス｢……それはないよ｣

オッレルス｢まあ、私が目的を話したら、自己紹介してくれるというのなら話してもいいけど？｣

フィアンマ｢そこまでして俺様に自己紹介させたいのか……？｣

オッレルス｢もちろん｣

オッレルス｢私たちが持っているのは君の情報であって君自身ではないからね｣

オッレルス｢君自身を知らないことには背中を預けることはできないだろう？｣

フィアンマ｢……そこは詳細を話すことと引き換えに協力を取り付けるところだろう｣

オッレルス｢別に私は協力を強要するつもりはないからそんなことする必要はないよ｣

オッレルス｢ただ、仮にも世界を救うとか豪語していた君ならこの話を断ることはないと思ってのことだけど｣

フィアンマ｢……魔神にもできないことがあるのか？｣ｸｸｯ

オッレルス｢私は魔神じゃないよ。魔神になりそこねた惨めな魔術師さ｣

オッレルス｢よし、じゃあここから話を始めるとしよう｣

オッレルス｢魔神もどきである私の敵は私の代わりに魔神になった隻眼のオティヌスだ｣

フィアンマ｢魔神になるチャンスを奪われたということか？｣

オッレルス｢いや、正しくは私が勝手に魔神になるチャンスに棒を振っている時に、彼女が魔神になったって形かな｣

フィアンマ｢ふむ……｣

オッレルス｢簡単に言えば、魔神のなりそこないVSれっきとした魔神という構図だね｣

フィアンマ｢……なぜその二人がVSになるんだ｣

フィアンマ｢オティヌスとかいう奴に魔神の座を……奪われたのが気に食わないというわけではなさそうだが｣

オッレルス｢ああ｣

オッレルス｢つい最近までは後悔してたけど、今は彼女のことも魔神のことも大して興味はないさ｣

オッレルス｢だけど、かつて自分が追っていたものが誰かに悪用されることだけは許せなくてね｣

オッレルス｢彼女が完成するのを阻止するためなら私は自分の力を失っても構わないって思うくらいには、ね｣

フィアンマ｢彼女が完成する？｣

オッレルス｢……彼女は既に魔神なんだけど、何らかの理由でまだ完全に力を発揮できる状態ではないらしい｣

オッレルス｢理由の予想はいくつかあるんだけどね｣

フィアンマ｢例えば？｣

オッレルス｢まだ予想の段階でしかないんだよ｣

オッレルス｢全く確証のない私の妄想に過ぎない情報で混乱させたくはないから今は言えない｣

フィアンマ｢そうか。それなら仕方がない｣

オッレルス｢まあ、とにかく彼女が魔神として完璧になる前に止める｣

フィアンマ｢……なぜオティヌスとやらが魔神の力を悪用すると言いきれる？｣

オッレルス｢あれ、君なら悪用する可能性があるだけで潰すって言うかと思ったけど……予想外だな｣ﾌ-ﾝ

オッレルス｢……魔神の力は言葉では表せないほどに強大だから魔神というものが存在するだけで不味いんだ｣

オッレルス｢そもそも魔神が持つ無限の力に世界の方が耐えられないかもしれないしね｣

フィアンマ｢ふむ、世界の方が崩れかねないほどの力なのか｣

オッレルス｢そう。私は魔神ではないから確かなことは分からないけど……｣

オッレルス｢仮に世界が崩れなかったとしても、魔神の持つ力は個人が自由に使えてもいいレベルを優に超えている｣

オッレルス｢……まあ、その点で言えば君も私も同じなんだけど｣

オッレルス｢魔神の場合は世界を破壊してしまうことさえ個人でできてしまうから危険なんだよ｣

フィアンマ｢なるほどな……｣

オッレルス｢ついでに言えば私と彼女は腐れ縁でね｣

オッレルス｢過去の悪事も数え切れないほど知っている｣

オッレルス｢だからこそ、彼女を知ってるからこそ、完全な魔神の力を得たら彼女は世界を壊しかねない、と私は言えるんだ｣

オッレルス｢彼女が世界を壊さないという可能性を信用できない｣

フィアンマ｢ふむ……確かにそうかもしれないが、やはりそれは俺様自身の目で確かめないとなんとも言えないな｣

オッレルス｢そうだね。一度自分で見てみた方がいいだろう｣

オッレルス｢百聞は一見にしかずって言うし｣

フィアンマ｢で、具体的に俺様はどうすればいいんだ？｣

オッレルス｢私と共に彼女の計画を破壊する｣

オッレルス｢具体的にはホルスの時代について推測でもいいから教えて欲しい｣

オッレルス｢もしかしたらオティヌスに対する切り札やら彼女の弱点やらの手掛かりが得られるかもしれない｣

フィアンマ｢ホルスの時代……か｣

フィアンマ(アレイスターが言っていたアレのことか)ﾌﾑ

フィアンマ(それこそ俺様の妄想に過ぎない確証も何もないものなのだが……)

フィアンマ｢他には？｣

オッレルス｢彼女の計画を阻止するには、取り巻きの魔術師も倒さないとならない｣

フィアンマ｢ふむ｣

オッレルス｢だから戦力としても力を貸して欲しい｣

フィアンマ｢それは構わないが、分かっているのか？｣

フィアンマ｢今の俺様は聖なる右……第三の腕は使えない｣

フィアンマ｢ある程度魔術は使えるが、魔神の取り巻きに敵うかは分からないものだぞ？｣

オッレルス｢そこは私に任せてくれて大丈夫だ｣

オッレルス｢君は魔術の才能の塊と言っても過言じゃないからね。少し学べば一気にできることが広がるはずだよ｣

フィアンマ｢……｣

オッレルス｢どうした？｣

フィアンマ｢俺様は神の右席だぞ？ 魔術程度、学び尽くしている｣ﾌﾝ

オッレルス｢……｣ｸﾂｸﾂ

フィアンマ｢何がおかしい｣

オッレルス｢いや、真面目な天才は違うなって思っただけさ｣

オッレルス｢神の右席っていう縛られた場所にいる人間が普通に魔術を学んでもさ、使える魔術がある程度レベルで止まるのは当然でしょ｣

フィアンマ｢そんなこと分かっている。その克服のために俺様は薄める原罪を取捨選択しているんだぞ｣

オッレルス｢ああ。知ってるよ｣

オッレルス｢……ただし、まあ、禁書目録があった時はそうでもなかったみたいだけどさ｣

フィアンマ｢何を言いたいんだ｣ﾑｯ

オッレルス｢不真面目な秀才は正攻法なんか使わない。それじゃあ天才には追いつけないから｣

オッレルス｢学問に王道なし、とかよく聞くけど、不真面目な子はそれに納得がいかず、王道を探し求めることに力を注いだ｣

フィアンマ｢その不真面目な子というのはお前か｣

オッレルス｢まあね。昔はすごく頭痛めながら本を読み漁ったもんだ｣

フィアンマ(結局努力家じゃないか)

とりあえずここまで

オッレルス｢そんなチートを調べ抜いた私が才能の塊である君に魔術を教えたら、ある程度なんてチャチなもんじゃない、十分戦力になるだろうさ｣

フィアンマ｢くくっ、俺様に魔術を教える、か｣

フィアンマ｢確かにそれなら俺様にも得があって悪くないな｣

オッレルス｢だろう？ Win-Winだ｣

フィアンマ｢ふっ、久々に愉快な気分だ｣

オッレルス｢それは良かった｣

フィアンマ｢ああ、俺様が真面目な天才か。おかしなことを言う男だ｣

オッレルス｢それは褒め言葉として受け取っていいのか？｣

フィアンマ｢さあな｣

オッレルス｢それじゃあ｣

オッレルス｢今度こそあの少年が守った世界を守れるよう、この私に協力してくれるかい？｣ｽｯ

フィアンマ｢っ……｣

フィアンマ｢……ふん、まだ協力すると決めたわけじゃない。オティヌスを見て決めるつもりだ｣

フィアンマ｢奴に危険を感じなかったら手切りだ｣

オッレルス｢もちろん｣

フィアンマ｢それでもいいなら……今は利害の一致ということで｣ｶﾞｼｯ

オッレルス｢よろしく、フィアンマ｣

フィアンマ｢ああ、短い間だがせいぜい俺様の足を引っ張らないよう気をつけろよ｣ﾌｯ

オッレルス｢よし、じゃあ約束を果たしてもらうとするか｣ｽｯｸ

フィアンマ｢約束……？ 何のことだ？｣

オッレルス｢自己紹介に決まってるだろう？｣

オッレルス｢忘れたとは言わせないよ｣

フィアンマ｢ああ……覚えていたのか｣

オッレルス｢当然だろう｣

フィアンマ｢……はぁ｣

オッレルス｢じゃあ私はシルビアを呼んでくるから少し待っていてくれ｣

フィアンマ｢ああ、分かったからさっさと行け｣

オッレルス｢くくっ、分かったよ｣

ｶﾞﾁｬｯ ﾊﾞﾀﾝ

フィアンマ｢……なぜ笑ってたんだ？ 何もおかしなことはないだろうに｣

フィアンマ｢いや、大したことではないか｣ﾌﾙﾌﾙ

フィアンマ(……魔神オティヌス……オティヌス……北欧神話の主神オーディンに対応してる、と考えるのが自然か)ﾌﾑ

フィアンマ(つまり北欧神話をベースにした魔術を主に使うのだろう)

フィアンマ(いや、魔神だから一概にそうとも言えないか……？)

フィアンマ(まあいい)

フィアンマ(それは奴からおいおい聞き出していくか)

フィアンマ(さてと、戻ってくるまで少し調整しておくとしよう……)ﾌｯ

『自己紹介』

ｶﾞﾁｬｯ

フィアンマ｢む……来たか｣ﾁﾗ

シルビア｢やあ、私がコイツの相棒……じゃないな。コイツを世話しているシルビアだ｣

フィアンマ｢ああ、そいつから聞いている。世話になったな｣

オッレルス｢コイツにそいつ……私にはオッレルスという名前があるからな？｣

シルビア｢はいはい｣

オッレルス｢今回は適当にあしらったって黙らないからな？｣

シルビア｢……｣ﾆｺ

オッレルス｢ごめんなさい｣

フィアンマ(なんだ……このノリは？)

シルビア｢ふーん、それにしても、あんなに出血してたのに脳には障害ナシか｣

オッレルス｢それは私の治癒のおかg｣

シルビア｢さすが、腐っても神の右席ってことかね｣

シルビア｢こんなにモヤシっぽくても生命力は人一倍あるんだねえ｣

フィアンマ｢むっ、俺様は腐ってない｣

フィアンマ｢すごい健全だ｣

シルビア｢……あ、ああ、そういうことね｣

シルビア｢でも腐るという単語の別の意味を知ってる時点で沼に片足入りかかってることは忘れない方がいい｣

フィアンマ｢……｣ｶﾞｸｶﾞｸ

オッレルス｢腐る？｣

シルビア｢なんでもないよ｣

オッレルス｢……でも、まあ、確かに私も驚いたよ｣

オッレルス｢腕落とされたってのにたった一日で目覚めるなんてね｣

オッレルス｢もちろん、話しておきたいこともあったから、早いに越したことはないんだけどさ｣

フィアンマ｢ふん、俺様はその辺の奴らとは地力が違う｣

オッレルス｢それは認めざるを得ないな。もう脱帽もんだ｣

シルビア｢……自己紹介するんじゃなかったのかい？｣

オッレルス｢ああ、すっかり忘れてた｣

フィアンマ(なぜせっかく忘れていたというのに掘り返すんだ……)ﾁﾗ

シルビア｢ふっ……｣ﾋﾟ-ｽ

フィアンマ(間違いなくこの女もこの男の影響を受けているな)ﾊｧ

オッレルス｢じゃあまずシルビアから頼むよ｣

シルビア｢ああ｣

シルビア｢私はシルビア。書類上ではイギリスに属している魔術師だね｣

フィアンマ｢まだ肩書きあるよな？｣

シルビア｢鋭いね。こんななりだけど聖人させてもらっているよ｣

フィアンマ｢くくっ｣

フィアンマ｢聖人連中はまともな格好している奴を探す方が難しいから、そんなに自分の格好を卑下しなくてもいいと思うぞ｣

シルビア｢卑下まではしてないけどな｣

オッレルス｢おお、シルビアが押されてるー？｣

シルビア｢少し黙ってろ｣

オッレルス｢はいはい……｣

シルビア｢聖人のついでと言ってはなんだが、王室派の近衛侍女ってのもやってる｣

フィアンマ｢ということはイギリス清教とも繋がりがあるということか｣

シルビア｢まあ、そうなるだろうけど、所属してる奴らと個人的に交流があるくらいさ｣

フィアンマ｢ふむ、なるほどな｣

フィアンマ｢じゃあ……次は俺様か｣

フィアンマ｢多少面倒だが、仕方無い｣

オッレルス｢え？｣

フィアンマ｢なんだ。俺様の邪魔をするなら例え魔神手前のお前でも許さんぞ｣

オッレルス｢いやいや、まだシルビアは名前と所属しか話してないじゃないか｣

フィアンマ｢しか？ 他に何か話すことでもあるのか？｣

オッレルス｢当たり前だろう？ まだ序盤だ｣

フィアンマ｢だから他に何を言うんだ。得意な魔術とかか？｣

オッレルス｢いやいや、そんなの作戦会議の時でいいよ。今は自分の好物とか趣味とかを紹介する時だ｣

シルビア｢いや、しないけど｣

オッレルス｢え？｣

シルビア｢しないと言ったんだ｣

オッレルス｢え、なんで｣

シルビア｢別にそんなことわざわざ話すようなことではないだろう？｣

オッレルス｢……私と初めて会った時は普通にしてくれたのに、時の流れって怖いな｣

フィアンマ｢そうなのか？｣

シルビア｢余計なことを……ああ、やったよ｣

フィアンマ｢ふむ……｣ｼﾞｰ

シルビア｢分かったよ。やればいいんだね？｣ﾊｧ

フィアンマ｢い、いや！ 俺様は別にやる必要などないと思っているが！｣

オッレルス｢正直に言えよ、フィアンマ｣

フィアンマ｢……少しは聞いてみたいという好奇心があるのも確かだ｣

オッレルス｢ぶっ！！｣

……………………

オッレルス｢突然魔術使ってくるとかどうしたんだ？ 危うく燃えるとこだったよ……｣

フィアンマ｢黙れ｣ｷﾞﾛ

オッレルス(せっかく心を開いてくれたかと思ってたけど、ぱーにしてしまったかな)

シルビア｢まあ、今のはアンタが悪いよ｣

オッレルス｢……分かってるから進めちゃってくれ｣

シルビア｢ああ。好物はイチゴで、趣味は……編み物だな｣

フィアンマ｢……イチゴか。やはり赤い食べ物は至高だな｣

フィアンマ｢俺様も嫌いじゃないぞ｣ｳﾝｳﾝ

シルビア｢そうかい？ 甘いものとかあまり好きじゃ無さそうだけど｣

フィアンマ｢色が好きなだけだ｣

シルビア｢あはは！ なるほどね｣

フィアンマ｢次は……貴様の番だな｣

オッレルス｢また貴様に戻ってるし……｣ｼｭﾝ

シルビア｢さっさと話せー｣

オッレルス｢ごほん、私はオッレルス。没落貴族だけど、今はただの魔術師さ｣

フィアンマ｢貴族らしさの欠片もないな｣

オッレルス｢それは自覚ありだよ｣

オッレルス｢まあ、ただの魔術師に貴族らしさなんていらないだろうし、これでいいかなって｣

フィアンマ｢……ふむ、確かにそんなのもありかもしれないな｣

オッレルス｢お、分かってるね。私はあまり縛られるのが好きじゃないんでね｣ﾁﾗ

シルビア｢私は別にここにいたいからいるわけで、縛られてるわけじゃないね｣

フィアンマ｢自由だな｣

シルビア｢いやいや、帰還命令無視してるだけさ｣

フィアンマ｢……ふっ、良かったな｣

オッレルス｢？｣

フィアンマ｢国の命令を無視できるほどにはお前は気に入られているらしい｣

オッレルス｢まさか、そんなわけ無いだろう？｣

オッレルス｢放っておいたら死にかねないからって言うんだからね｣

フィアンマ｢……そうかそうか｣

シルビア｢余計なことは言わないほうが身のためだって一応言っておこうかね｣

フィアンマ｢何も言うつもりはないさ｣ｸｸｯ

オッレルス｢なんだか気になる言い方だなあ……｣

フィアンマ｢気にすることはない｣

フィアンマ｢お前はいつも通りにしていればこの女は去らないだろうよ｣

オッレルス｢？？？｣

シルビア｢……｣

シルビア｢そう言えば、フィアンマがアンタのことをお前って呼んでたな｣

オッレルス｢あ、確かにそうだったかも｣

オッレルス｢話を強引に変えられたような気もするけど貴様呼びじゃなくなったならいいや｣

フィアンマ｢なっ！｣

フィアンマ｢……俺様は人を貴様呼びすることは少ないからお前のためだけに貴様呼びを意識していると疲れる｣

フィアンマ｢だから大人な俺様が広い心で許してやったというだけの話だ｣

オッレルス｢そうか｣

オッレルス｢じゃあまた貴様呼びされないよう注意しながら自己紹介進めようか｣

フィアンマ｢まだ続けるのか……｣

シルビア｢まあ、聞いてやれば満足するさ｣

フィアンマ｢はぁ……お前も大変だな｣

シルビア｢慣れっ子だよ｣

オッレルス｢私の好物は……強いて言うならステーキだね｣

オッレルス｢趣味はゲームだ｣

フィアンマ｢ゲーム？ ボードゲームか？｣

フィアンマ｢あまりやったことはないが｣

オッレルス｢私が好きなのはテレビゲームだね｣

フィアンマ｢テレビゲームか……やったことないな｣

オッレルス｢なら後でやってみたらいいよ。ゲーマーが増えるのはいいことだし｣

シルビア｢目を悪くしてもいいならやるといいよ｣

フィアンマ｢ふむ、やってみるか｣

シルビア｢私の話聞いてた？｣

フィアンマ｢当たり前だ。目が悪くなっても多少は魔術で補正かけられるから構わない｣

シルビア｢魔力の無駄遣いだねえ｣ﾊｧ

フィアンマ｢ふん、そんなの俺様の自由だろ｣

オッレルス｢最後はフィアンマの番だ｣

フィアンマ｢はぁ、本当にやる気か？｣

シルビア｢私たちがやってアンタだけやらないのはねえ？｣

オッレルス｢大丈夫だって。もう笑わないからさ｣

フィアンマ｢お前の発言は参考にならないからな……｣ﾊｧ

シルビア｢まあ、悪気があったわけじゃないんだ。本当は凄く甘い野郎だから飽きずに仲良くしてやってくれ｣

フィアンマ｢仲良く……か｣

シルビア｢同年代で同じ性別の奴と話すことがあまりないからテンション上がっちゃってんだよ｣

オッレルス｢なっ！ 何言ってるんだ！？｣

フィアンマ｢ふっ、面白い冗談を｣

フィアンマ｢俺様はお前たちと馴れ合うつもりは毛頭ないからな｣

シルビア｢さてさて、でも確かにアンタは人間嫌いしてそうだからねえ｣

シルビア｢オッレルスの人たらしが効くかどうか分からないな｣

オッレルス｢いや、別に私は人たらしなんかじゃないんだけどね｣

フィアンマ｢だろうな｣

フィアンマ｢人たらしが同年代と話すことがあまりないとかありえないだろうよ｣

フィアンマ｢俺様みたいな奴にも良くしてしまう激甘さに人間が寄ってくるだけだ｣ｹｯ

シルビア｢それを人たらしというんじゃないの？｣

フィアンマ｢ふん、そんなのは蜜に虫が集るようなことだ｣

フィアンマ｢甘い人間には平穏を求めるクソ野郎が虫のように集まるんだ｣

オッレルス｢わあ、すごい言われようだね。褒められてないのは確かかな｣

フィアンマ｢当たり前だ｣

フィアンマ｢最後にはクソみたいな人間にいいように使われるのがオチだ｣

フィアンマ｢まあ、それを否定する気はないがな｣

シルビア｢私がいるから問題ないさ｣

フィアンマ｢それはどうだか。あるコトは人を盲目にするらしい｣

シルビア｢よーし、後で外行こうか｣

フィアンマ｢いや、ここで構わないぞ｣

フィアンマ(コイツが見ている時に手を出したりはしないだろうしな)

シルビア｢了解｣ﾄﾝｯ

フィアンマ｢ぐはっ！｣ｽﾞﾄﾞｯ

オッレルス｢怪我人……だけど？｣

シルビア｢余計なことを言う奴は敵さ。敵は怪我している時にこそつついていかないとね｣

フィアンマ｢っ、甘く見ていた……｣ｼﾞﾝｼﾞﾝ

オッレルス｢先に言っておくべきだったか……シルビアは怒らせない方がいいよ｣

フィアンマ｢今更言われても困る｣

フィアンマ｢……よし、今度は人たらしじゃない俺様の自己紹介するか｣ﾀﾝｺﾌﾞ

オッレルス｢お、乗り気になったか！｣

フィアンマ｢無駄話に飽きただけだ｣

フィアンマ｢それにこれ以上話して痛い目に遭うのは勘弁だからな｣

シルビア｢それが得策だね｣

フィアンマ(思えば自己紹介というものは今までやったことがなかったな……)

フィアンマ(とりあえず名前、所属か)

フィアンマ｢俺様はフィアンマ、ローマ正教の神の右席で右を司っている｣

フィアンマ｢まあ、神の右席のリーダーみたいなものだ｣

シルビア(そう言えば、フィアンマも同年代との交流が少ないんだったか)

シルビア(上から下を見ているだけ。常に自分が上で同等の立場の人間はいない)

シルビア(ははあ、それを前提に考えれば、あの角を立てるような話し方にも納得だね)ﾊｧ

シルビア(ということは、まあ、人たらしにたらし込まれるのも時間の問題かね)

オッレルス｢ほほう、私の情報と一致してるけど、自分がリーダー格だと分かってたのか｣ﾌﾑﾌﾑ

フィアンマ｢いや、ただ他の三人が最終的な判断は俺様に委ねていただけだ｣

フィアンマ｢好きな物は……｣

フィアンマ｢……｣

オッレルス｢まさかの溜めが入るとは……｣

フィアンマ｢俺様が好きなものか……｣

シルビア｢別に食べ物にこだわる必要はないんだけどね｣

フィアンマ｢俺様が好きな物は特にはないな｣

オッレルス｢好きな物がないかー。人生の九割は損してるかな｣

フィアンマ｢き、九割だと？｣

フィアンマ｢基本的に出されるものは選り好みせず食べていたからな……｣

シルビア｢それはいいじゃないか。作る側としてはなんでも食べてくれることはありがたい｣

フィアンマ｢いや、そういうわけじゃなくて、食べ物に頓着しなかったというか、栄養になる物ならなんでも構わなかったというか……｣

フィアンマ｢食べ物を食べるという行為が俺様にとっては生きるための義務でしかないといったところか｣

フィアンマ｢歯磨きに好みなどないのと同じように食べ物にも好みがないのさ｣

シルビア｢あ、それは作る側に失礼だね。流石、トップ様は食べ物に困らないだけあるねえ｣

シルビア｢これは要矯正だ……｣

オッレルス｢あれ？ シルビア？｣ｻｯｻｯ

フィアンマ｢どうしたんだ？｣

オッレルス｢スイッチ入っちゃったみたいだね｣ﾊｧ

フィアンマ｢え？ 何のことだ｣

オッレルス｢いや、何でもないさ。気にしないで続けてくれ｣

フィアンマ｢そんなことを言われてもな……｣

フィアンマ｢いや、やるか……趣味も特にないな｣

フィアンマ｢強いて言うならある程度の難題を打破することか？｣

フィアンマ｢まあ、ある程度の難題とはいっても大体のことはサクッとできてしまうだろう？｣

フィアンマ｢だから、どうしたら人間は足の小指をタンスの角にぶつけないように歩けるようになるかなどを考えるくらいだったな｣

オッレルス｢そ、そんなにバカみたいなことを考えていたんだ｣ﾌﾙｴ

シルビア｢で、その結果はどうだったんだい？｣

フィアンマ｢下を見て歩く、だな｣

フィアンマ｢足以外を犠牲にするわけだがな。頭はぶつかるし、肩もぶつかる｣

オッレルス｢意味ないじゃないか｣

フィアンマ｢全てを求めることはできない。何かを求めるなら何かを諦めるべきなんだろう｣

シルビア｢なんだかカッコイイこと言っているみたいだけど、それに至るまで考えていたことが足の小指をいかにしてタンスにぶつけないようにするかっていうな……｣

フィアンマ｢あくまで一例だ。そんなに突っ込まれると困る｣

フィアンマ｢とりあえず、俺様の自己紹介はこの辺で終わりだ｣

オッレルス｢うん、ありがとう。等身大のフィアンマに少し近づけたような気がするよ｣

フィアンマ｢だから、馴れ合いはしないと言っただろう？｣

オッレルス｢じゃあ、いい情報をもらったよ、ということで｣

フィアンマ｢ふん｣

シルビア｢それじゃあ、怪我がある程度マシになるまではゆっくりしているといいよ｣

フィアンマ｢ああ。悪いな｣

シルビア｢私はこの赤髪野郎をギャフンと言わせるために夕飯作ってくるからさ｣

シルビア｢ということで買い物頼むよ！｣ﾋﾟﾗｯ

オッレルス｢はいはい、分かったよ｣

シルビア｢さっさと買ってくるように｣ｶﾞﾁｬ ﾊﾞﾀﾝ

オッレルス｢了解ー｣

『おつかい』

フィアンマ｢さっさと買い物に行かないのか？｣

フィアンマ｢居座られると邪魔なんだが｣ﾁﾗ

オッレルス｢ああ、ごめん｣

フィアンマ｢謝罪はいいからさっさと出てくれ｣

オッレルス｢少し付き合わないか？｣

フィアンマ｢……買い物にか？｣

オッレルス｢そうそう。街の案内も兼ねてさ｣

フィアンマ｢……荷物持ちはしないぞ｣

フィアンマ｢ただでさえ右が急に軽くなってとても歩きづらいんだからな｣

オッレルス｢それはのったと捉えていいのかな？｣

フィアンマ｢ああ。ここはまだ痛いが、外の風を浴びたい気分なんだ｣

オッレルス｢よし、じゃあ行くとしようか｣

………外………

フィアンマ｢ふう、久々に外へ出たような気分だ｣

オッレルス｢実際はつい一昨日まで激闘を繰り広げてたんだけどね｣

フィアンマ｢……そうだな｣

オッレルス｢……｣

オッレルス｢ところで、今日の夕食はグラタンらしいんだけど、苦手なものとかないか？｣

フィアンマ｢……生魚全般。だが、普通に食べることはできるぞ｣

フィアンマ｢さっきも言ったように俺様にとって食は義務だからな｣

オッレルス｢なるほどなるほど……私と同じか……｣

オッレルス｢違うものだったら積極的に食卓に出してもらおうと思ってたのに｣ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

フィアンマ｢……お前、見かけによらずSなのか？｣

オッレルス｢S？｣

オッレルス｢Sサイズは流石に小さいかな。身長は結構高いんだから｣

フィアンマ｢服の話じゃない｣

オッレルス｢あ、思い出した｣

フィアンマ｢……ん？｣

オッレルス｢シルビアが宣戦布告していたよ｣

フィアンマ｢俺様にか？｣

オッレルス｢食事を義務とは二度と言わせない、だと｣

フィアンマ｢ふむ、成功するといいな。俺様もこっそり応援しておいてやる｣

オッレルス｢いや、君に向けての発言だよ、フィアンマ？｣

フィアンマ｢分かってるさ。ただし味が美味しいから義務ではなくなるわけじゃないからな｣

オッレルス｢それくらいはシルビアも分かってるだろうよ｣

フィアンマ｢ふむ、どんな方法をとってくるか楽しみなものだ｣

オッレルス｢怪我の調子はどう？｣

オッレルス｢今更なんだけど、シルビアにどやされそうな気がしてきたな……｣

フィアンマ｢ふむ……まあ痛い。だが言葉にできる程度だから回復がよく効いているのだろうな｣

オッレルス｢だろうね｣

フィアンマ｢なんだ、自慢したかっただけなのか｣

オッレルス｢いや、ちゃんと効いてるか少し心配だっただけさ｣

フィアンマ｢……チートの子じゃないのか？｣

オッレルス｢回復魔術を人に使うことなんてあまりないからさ。チートの子でも経験が少ないことは苦手なんだよ｣

フィアンマ｢ふっ、チートの子が聞いて呆れるな｣

オッレルス｢効けばいいんだよ、効けば｣

フィアンマ｢適当なことを……｣

………スーパーマーケット………

オッレルス｢ついたついたっと……｣

フィアンマ｢ずいぶん近いな。これでは街の案内も何もないだろう｣ﾑｯ

オッレルス｢ただ単に話し相手が欲しかっただけだからね｣

フィアンマ｢っ、何度言えば分かる。俺様は馴れ合うつもりはないと｣

オッレルス｢フィアンマになくても私は友達になりたいと思ってるから、私が諦めるまでは勘弁して付き合ってくれよ｣

フィアンマ｢……確かにお前は人たらしの名がピッタリだな。相手に友達になりたいなど素面で言えることじゃない｣

フィアンマ｢ま、技術があろうと俺様と仲良くなるのは不可能だろうがな｣

フィアンマ｢俺様が求めるのは信頼関係であって、友情関係じゃないからな。ギブアンドテイクだ｣

オッレルス｢……そうか。じゃあとりあえず材料買おうか｣

フィアンマ｢ああ。俺様を唸らせるような料理を待っているぞ｣

移すのはここまでです。
今回のを投下します。

『休憩』

フィアンマ｢……はぁ、クタクタだ｣ﾍﾆｮｰ

オッレルス｢結局持たせちゃって申し訳ない｣

フィアンマ｢いや、いいんだ｣

フィアンマ｢流石に俺様だけ何も持っていないというのは良心が痛む｣

オッレルス｢良心とかあったんだ｣

オッレルス(上条当麻の影響……かな？)

フィアンマ｢……怒る気力も起きない｣

オッレルス｢そして体力もないね｣

フィアンマ｢……地味に刺さったぞ。そんなこと俺様が一番分かっている｣

オッレルス｢ははっ、ごめんごめん｣

シルビア｢お、買ってきてくれたか｣

シルビア｢って、フィアンマも連れて行ったのかい！？｣

オッレルス｢は、話し相手だよ。ははっ｣ｼﾞﾜｯ

シルビア｢……ご飯のあと会議だ｣ﾆｺﾆｺ

オッレルス｢お、うん、分かったよ｣ﾌﾙｴ

フィアンマ｢……俺様はお腹がすいたんだが｣ｸﾞｩ

シルビア｢一日中何も口にしてなかったんだから当然だろうよ｣

シルビア｢だけど私の計画のために後少し待ってくれ。お菓子や飲み物は勝手に漁ってくれていいからね｣

シルビア｢ただし夕飯の時食べきれないことのない程度に｣

フィアンマ｢……人の家の物を勝手に使うのは非常に気が引けるんだが｣

オッレルス｢そんなこと気にしなくてもいいんだけどなあ｣

オッレルス｢シルビアだって居候なんだし｣

フィアンマ｢そういえばそんなこと言っていたな｣ﾁﾗ

シルビア｢ふん、私はお金をちゃんと入れてるからひけ目を感じる必要性はないね｣

オッレルス｢まあいいや。私がコーヒーでも入れておこう｣

フィアンマ｢いや、俺様が自分で……｣

オッレルス｢入れ方わからないと思うんだけど。その上君は片腕だ｣

フィアンマ｢うっ……｣

オッレルス｢ギブアンドテイクの関係がいいんだろう？｣

オッレルス｢話し相手兼荷物持ちしてくれたお返しってことでどう？｣

フィアンマ｢……じゃあ頼む｣

………シルビアの部屋………


フィアンマ｢ふむ……ここはあの女の部屋だったのか｣ｽﾞｽﾞｯ

オッレルス｢そうそう｣ﾊﾟﾘﾊﾟﾘ

フィアンマ｢……居候だからか？｣

オッレルス｢そうじゃないよ｣

オッレルス｢シルビアは普段はあんな態度だけど、優しい時は本当に優しいんだよ｣

オッレルス｢今回は私も肩をやってたから、私のベッドじゃなくてシルビアのベッドを貸したらしい｣

フィアンマ｢そうなのか……｣

フィアンマ｢……｣ﾊﾟﾘﾊﾟﾘ

フィアンマ｢やはり聖人というのは総じてお人よしというか、人のために動くものばかりなんだな｣

フィアンマ｢俺様が知っている聖人もそんなバカだった｣

オッレルス｢聖人だから人のために動くってわけではなさそうだけどね｣

フィアンマ｢まあ、お前や上条当麻みたいなお人好しもいるくらいだしそうなんだろう｣

フィアンマ｢っていうか、なぜ居座るんだ。もう用件はないだろう？｣

オッレルス｢コーヒー持ってきたついでに話しているだけじゃないか｣

フィアンマ｢俺様は一人の方が好きなんだが｣

オッレルス｢私はこのクッキーが好きだから居座ってるんだよ｣

オッレルス｢帰って欲しければ帰るけど、クッキーも持っていくよ｣

フィアンマ｢……よし、話をしてやろうじゃないか｣

オッレルス｢え、そのクッキー気に入ったとか？｣

フィアンマ｢お腹がすいているんだと言わなかったか？ 別の食べ物をくれるならクッキーは持っていっても構わないがな｣

オッレルス｢本当にこだわりないなぁ｣

フィアンマ｢♪｣ﾊﾟﾘﾊﾟﾘﾊﾟﾘﾊﾟﾘ

今回の投下はここまでです。

オッレルス｢ああっ！ あんまり食べ過ぎちゃダメだからな？｣

フィアンマ｢まだ三枚しか食べてないぞ｣

オッレルス｢五枚までで｣

フィアンマ｢………………｣ﾑﾑ

フィアンマ｢……分かった。人の家でガタガタ文句を言うのも大人としてどうかと思うしな｣

オッレルス｢大人しく引いてくれてありがたいよ｣

フィアンマ｢追い出されても困るからな｣

オッレルス｢さすがにそこまではしないと思う｣

フィアンマ｢いや、あの女は間違いなくやるな｣

オッレルス(宣戦布告してからシルビアが目の敵にされてるなぁ)

オッレルス(そのおかげで話しやすくなっているような気がするんだけども)

フィアンマ｢目の敵になどはしていないさ｣

フィアンマ｢わざわざ知らない男にベッドを貸してくれるような女のことをそんな風に思える訳がないだろう？｣

オッレルス｢読まれた！？｣

フィアンマ｢今のは顔に出ていたと思うがな｣

フィアンマ｢ただ、俺様は感じたことを言っただけだ｣

フィアンマ｢むしろ、お前は追い出された事は無いのか？」

オッレルス｢追い出されたこと……はないな。一応私の家だし｣

オッレルス｢ただ……｣

………………………
…………

フィアンマ｢くくく、くくっ、それはひどいな｣

フィアンマ｢三角木馬……しかも痒み追加だと？｣

フィアンマ｢くくっ、さすが拷問専門のイギリス清教とつながりを持っているだけある｣

オッレルス｢そこまで笑うか……｣

フィアンマ｢まあ、お前のしたことを考えればそれくらいで許してもらえてむしろ幸運だったんじゃないか？｣

オッレルス｢……それもそうだね｣

フィアンマ｢普通はあまりの考えなしさ加減に呆れを通り越して笑えて来るんだろうが、当人はそうはいかないよな｣

オッレルス｢はあ、言うべきじゃなかったかもしれない……｣

フィアンマ｢いやいや、かなり面白い話だったぞ｣

フィアンマ｢たまには人の馬鹿を聞くのも悪くない｣ｸｸ

シルビア｢ご飯できたぞー｣

オッレルス｢あれ、もうそんな時間か｣

フィアンマ｢……行くか｣

今回の投下はここまでです。
乙ありです

間違ってたら申し訳ありませんが、
もしかしてフィアンマの人かな？

いやフィアンマの人ではないだろ。酉違うし文章構成とか書き方やら表現とかもここまで杜撰でつまんない文章は書かねぇよ

『ごはんグラタン』

シルビア｢きたきた｣

フィアンマ｢ずいぶん上機嫌だな｣

シルビア｢誰だって勝負の前は無理にでもテンションを上げるものさ｣ﾌｫｰ!

オッレルス｢それはやりすぎな感もある気がするけどね｣

シルビア｢とにかく、働かざる者食うべからず｣

シルビア｢運ぶの手伝ってちょうだい｣

フィアンマ｢……いいだろう｣ｽﾀｽﾀ

シルビア｢妙に素直だねえ｣

フィアンマ｢妙にとはなんだ、妙にとは！｣ﾑｶｯ

シルビア｢細かいことにいちいち突っかかってるとハゲるぞ｣ 

フィアンマ｢ハゲるっ！？｣ｱｾｱｾ

フィアンマ｢……き、気にせず準備しようか｣ｽｯ

オッレルス｢三人分並べるとか不思議な感じだね｣ｺﾄ

シルビア｢何言ってるんだい。あの時なんてもっといただろうよ｣

オッレルス｢ま、まあ、そうなんだけどね｣ｺﾄｯ

フィアンマ｢人身売買組織を壊したってやつか｣ｶﾁｬﾝ

シルビア｢ああ、聞いたのかい｣

フィアンマ｢まあな。爆笑なしには聞けない話だったぞ｣ｸｸｸ

シルビア｢え、あんたが爆笑とか想像できないんだけど｣

オッレルス｢目は蔑みに満ちていたよ｣ｶﾀﾝ

フィアンマ｢何がなんでも俺様を闇系キャラにしたいんだな｣ﾊｧ

オッレルス｢いや、少なからず闇あるでしょ｣

フィアンマ｢……客観的に見てどうなのかは知らない｣ﾌﾝ

シルビア｢……じ、じゃあそろそろ食べるとしようか｣ｸﾂｸﾂ

フィアンマ｢ああ。気に食わない話は即終了だ｣

オッレルス｢やった、シルビアのグラタンは美味いんだよなー｣

フィアンマ｢ふふふふふ、楽しみなものだ｣

ｽｯｽｯｽｯ

フィアンマ｢さて……｣ｶﾁｬﾝ

オッレルス｢十字切るんだね｣

フィアンマ｢一応ローマ正教徒だからな｣

オッレルス｢ふーん？｣ﾌﾙﾌﾙ

シルビア｢じゃあ召し上がれ｣

フィアンマ｢いただきます｣

オッレルス｢い、いただきます｣ﾌﾙﾌﾙ

オッレルス｢……にしても、もっと普通に笑ってくれていいんだけどね｣

フィアンマ｢いきなり話を戻すな。食べようと思っていたのに｣ｶﾁｬ

オッレルス｢食べながらでいいじゃないか｣

フィアンマ｢む……｣

オッレルス｢私の最近一番の話のネタなんだから｣

フィアンマ｢……俺様はヘラヘラ笑ってるわけにはいかない、それだけだ｣

シルビア｢あいつらが勝手に判断を仰いでいただけだ、とか言いながらリーダー足ろうとしていたってわけかな｣ﾊﾟｸﾊﾟｸ

フィアンマ｢いや、俺様に足りない威圧感を補うために、だ｣

フィアンマ｢聞くところによると、俺様はさわやかな美形だそうじゃないか｣

オッレルス｢……まあ、肯定はしたくないけどそうだね｣

フィアンマ｢肯定はしたくないって……だが、その事とまだ若いせいで威厳がなかった｣

フィアンマ｢決定的に欠けていた｣

フィアンマ｢つまり舐められた。これが15の頃だな｣

シルビア｢そりゃ舐められて当然だろ｣ﾊﾟｸﾊﾟｸ

オッレルス｢むしろその頃から神の右席に所属してたのかって驚きの方が大きいね｣

フィアンマ｢だからせめて不気味さくらいは滲み出せるくらいまで特訓したんだ｣

オッレルス｢……｣ﾌﾙﾌﾙ

シルビア｢くっ、それで舐められなくなったのかい？｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

フィアンマ｢まあな。俺様の求めていた右方のフィアンマの完成だ｣ｳﾎ-ﾝ!!

オッレルス｢う、うん……｣

シルビア｢今の発言を私は聞いていなかった。ああ、聞いてなかった｣

フィアンマ｢…………｣

フィアンマ｢食べるか｣ｶﾁｬ

オッレルス｢そ、そうだね｣

シルビア｢もう食べてるけどね｣ﾑｼｬﾑｼｬ

オッレルス｢うん｣

今回の投下はここまでです。
>>81 >>82さんの言うとおり違いますよー

フィアンマ｢……｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

オッレルス｢フィアンマがクッキー食べてる時も思ってたんだけどさ｣

シルビア｢何を？｣

オッレルス｢神の右席とはいってもお腹はすくんだなーって｣

フィアンマ｢ぐっ……｣ﾐｽﾞ

フィアンマ｢げほっ、ごほっ……｣

フィアンマ｢はぁ、何を言ってるんだ。俺様も一応人間だからな？｣

オッレルス｢まあ、こんな風にむせてるのを見たら疑いようもないよね｣

シルビア｢私の作ったものでむせるなんてね｣

フィアンマ｢一応言っておくがそいつのせいだからな｣

シルビア｢分かってるけどね｣

シルビア｢ところで、味はどうだい？｣

フィアンマ｢……｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ ｺﾞｸﾝ

フィアンマ｢……イギリスの料理は美味くないと聞いていたが、悪くないな｣

シルビア｢ほうー、よかったよかった｣

フィアンマ｢というか、味云々より会話しながらの食事が初めてだから不思議な気分だ｣

オッレルス｢寂しっ｣

フィアンマ｢べ、別にそんなことはない。今まで当然のことだったからな｣ﾌﾝ

フィアンマ｢……まあ、結論としてはやはり悪くない｣

シルビア｢……うーん、何様だって言い方だけど、これから攻略していくかね｣

フィアンマ｢俺様だ｣

シルビア｢黙れ｣

フィアンマ｢……｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ ｺﾞｸﾝ

シルビア｢……｣ﾊﾟｸﾊﾟｸ

オッレルス｢雰囲気悪くなったじゃないか｣

フィアンマ｢俺様は特に話すこともないから黙っていただけだが｣

フィアンマ｢基本的に食事の時に話すことは少ないからな｣

オッレルス｢なるほど。黙れって言われたから黙ったわけじゃないんだ｣

フィアンマ｢当たり前だろう？｣

フィアンマ｢俺様が人の言うことに従うわけが無い｣ﾌﾝ

オッレルス｢胸張って言うことじゃないかな｣

シルビア｢……｣

シルビア(飲み込むまで次を口に突っ込めないタイプなのか、フィアンマは)ｼﾞｰ

フィアンマ｢な、なんだか悪寒を感じるぞ｣ﾌﾞﾙｯ

オッレルス｢え、大丈夫？ やっぱり怪我の影響が出たかな｣

フィアンマ｢いや、問題ない｣

フィアンマ｢ただ、嫌な気配を感じただけだ｣

シルビア｢嫌な気配とか言うか｣

オッレルス｢分かってるならそんな目でじっと見ないであげてよ、シルビア｣

シルビア｢いや、フィアンマの食べ方が少し気になってただけなんだ｣

フィアンマ｢……？｣ﾊﾟｸﾊﾟｸ ｺﾞｸﾝ

フィアンマ｢なんだ？｣

シルビア｢いやいや、言うほどのことじゃないさ｣

フィアンマ｢なら言うな｣

シルビア｢……まあ、正論だね｣

………………………
……………

オッレルス｢ふぅ、ごちそうさまー｣

シルビア｢お粗末さまでしたー｣

フィアンマ｢え、早｣

オッレルス｢そんなことないって｣

シルビア｢アンタが話しすぎなんだろうよ｣ｸｸｸ

フィアンマ｢なっ、そんなわけ無いだろう｣ﾊﾟｸﾊﾟｸﾊﾟｸﾊﾟｸﾊﾟｸﾊﾟｸ ｺﾞｸﾝ

シルビア｢ま、実際、無駄に行儀良く食べてるから遅くなるんだろうけどさ｣

フィアンマ｢……確かにそれはあるかもしれない｣

シルビア｢いや、別にわざわざ行儀悪く食べる必要はないよ｣

フィアンマ｢分かってるが、ペースアップはしないとな｣

オッレルス｢変なところで素直だなぁ｣

フィアンマ｢……ふん、何を言ってるのやら｣ｽｯｸ

フィアンマ｢流しに運んでおけばいいか？｣ｶｼｬﾝ

シルビア｢あれ、テーブル上に置きっぱなしにして、それを私が注意するまでがこの食事の流れだと思ってたんだけど……｣

シルビア｢興醒めだね｣

フィアンマ｢……さっさと答えてくれないか｣

シルビア｢ああ、流しに置いてくれて大丈夫だ｣


オッレルス｢さってと、じゃあ私は給湯器オンにしてくるかな｣ｽﾀｽﾀ

シルビア｢どうする、シャワー？｣ﾁﾗ

フィアンマ｢あ、ああ。借りる｣

シルビア｢了解、了解｣

シルビア｢じゃあお湯になるまで待ってて｣

フィアンマ｢分かった｣

今回の投下はここまで。
乙ありです。

このオッレルスとシルビアは付き合ってさえいないのかな？

>>102
付き合う云々よりは家族というか、互いにいて当たり前の存在みたいな感じで書いてます。

次回の投下は日曜日の予定です。
遅くてすみません。

『努力と天才』

……………………

ｶﾞﾁｬ

シルビア｢寝てた？｣

オッレルス｢割とガッツリね｣

オッレルス｢なんだか親みたいで笑えてくるよ｣

オッレルス｢寝たあとの子供の顔を見るーみたいな？｣

シルビア｢いや、アンタみたいな父親は勘弁だね｣

オッレルス｢でもシルビアは向いてるんじゃない？｣

シルビア｢口説いてんの？｣

オッレルス｢ははっ、そんなわけ無いだろう。というか必要がないさ｣

シルビア｢どちらにしろ、私にゃ向いてないね｣

オッレルス｢そう？ 自由にのびのびと子供を育てていそうだけど｣

シルビア｢私は自分勝手でキレたら誰も手がつけられないからね｣

オッレルス｢ああ、なるほど｣

オッレルス｢シルビアをキレさせたら一家丸ごと滅亡か！｣ﾊﾟｧ

シルビア｢理解できて嬉しいのはわかるんだけど、滅亡って言いながらその表情はどうかと思うよ｣

オッレルス｢ならばやっぱり聖人には聖人をぶつけるしかないよね｣

シルビア｢そんなことしたら街が大変な事になる｣

オッレルス｢分かってるなら自制しましょう｣

シルビア｢できれば誰も苦労はしないさ｣

オッレルス｢大抵の人はできるよ｣

シルビア｢そんなわけ無いさ｣

シルビア｢仮に自分が最も大切につしている人を傷つけられたというシチュエーションがあったとしよう｣

シルビア｢その原因を諸悪の根源と言わんばかりの勢いで恨むのは当然だろう｣

シルビア｢それを刈り取る力があったら？｣

シルビア｢手を出さない人間はいないだろうさ。それこそ本当に人間なんかじゃあない｣

オッレルス｢かもしれないねって頷きそうになった自分が恐ろしい｣

オッレルス｢そんなことしたらあのオティヌスと大差なくなっちゃうだろう？｣

シルビア｢人間はそういうものだろうよ｣

オッレルス｢それにしても例えが具体的過ぎないか？｣

シルビア｢そんなことないさ。なんなら人名はめても良かったんだし｣

オッレルス｢そんなことしなくてもいいよ｣

オッレルス｢って、話を戻そう｣

シルビア｢えっと、フィアンマの件だったか｣

オッレルス｢そうそう。まあ魔術はぼちぼち使えるものを教えていくつもりだけど……？｣

シルビア｢ステルスの件は？｣

オッレルス｢それは同時進行かな｣

オッレルス｢フィアンマはわりと万能だから、やっぱり暗躍型がいいと思うんだよ｣

シルビア｢それは同感だ｣

シルビア｢だが、あの強大な力をオティヌスにバレないくらいまで隠すのは相当疲れないか？｣

オッレルス｢その辺はフィアンマ自身に試行錯誤してもらうしかないよ｣

シルビア｢いやー、でもその精度まで持ってくとなるとかなりの根気がいると思う｣

シルビア｢仮に神の右席であったとしてもね｣

シルビア｢正直私にゃ無理だね｣

オッレルス｢そこは多分心配いらないよ｣

シルビア｢何を根拠に｣

オッレルス｢さぁね、でもただの天才ってわけじゃなさそうだ｣

シルビア｢ふーん、アンタはずいぶんフィアンマを買ってるみたいだね｣

オッレルス｢え、嫉妬？｣ﾆﾔﾆﾔ

シルビア｢ハッ倒すよ？｣ｷﾞﾛ

オッレルス｢冗談だってば！！｣

オッレルス｢と、とりあえずステルスの魔術はフィアンマに任せるとして……｣

シルビア｢ふん｣

オッレルス｢……ちょっと機嫌直してくれよ｣

シルビア｢機嫌悪くなんかないさ｣

シルビア｢だからさっさと話してくれていいよ｣

オッレルス｢あ、ああ｣

オッレルス(わけがわからないよ)

シルビア｢ま、フィアンマが失敗したら連帯責任ってことでよろしく｣

オッレルス｢……いいよ｣

シルビア｢ん、えらく従順だね｣

オッレルス｢誰かが失敗したとしても、生きて帰ってこれたなら、連帯責任だろうとなんだろうと来いよって思うだろうよ｣

オッレルス｢すべての計画が成功しても連帯責任できない可能性があるんだからさ｣

シルビア｢なるほど、確かにそう考えると連帯責任でさえ奇跡に感じる不思議だ｣

オッレルス｢まあ、フィアンマは失敗したとしたらここには帰ってこないんじゃないかな、くらいには思ってるよ｣

シルビア｢それは真面目というより頑固というべきか｣

オッレルス｢あー、それはよくフィアンマを表してるかもしれないね｣

シルビア｢よく言うよ、まだ少ししか話してないってのにさ｣

オッレルス｢ふっ、舐めてもらっちゃ困る｣

オッレルス｢私は人間の性格を判断する目はあると自負してるから｣

シルビア｢それは……近寄りたくないな｣

オッレルス｢ひ、ひどい｣

シルビア｢ま、アンタがそこまで推すならそれでいいんじゃない？｣

シルビア｢常軌を逸する者同士通じるものはあるんだろうし｣

オッレルス｢えっと、シルビア？｣

オッレルス｢君も十分過ぎるほど常軌を逸しているからね？｣

シルビア｢そうだけど、私は正統派な常軌の逸し方だからね｣

オッレルス｢常軌を逸することに正統も異端もないでしょ｣

シルビア｢いやー、今までアンタらみたいな異端派は見たことなかったからね｣

シルビア｢それに私タイプはこっちの世界では割と有名だからまだ正統派かな｣

シルビア｢っと話がそれてしまったけど、とにかく私はアンタの考えを支持するよ｣

オッレルス｢ありがとう｣

シルビア｢ということはフィアンマは責任重大ってことかな｣

オッレルス｢うわ、趣味悪いなぁ｣

シルビア｢ただの事実さ｣

オッレルス｢まあそうなんだけど、本人には言わない方がいいと思うよ｣

シルビア｢そうかね？｣

オッレルス｢ああ。ある程度のプレッシャーならバネにもできるだろうけど、今回のはさすがにキツイだろうよ｣

シルビア｢ふーん｣

シルビア｢じゃあそのことは言わないってことでいいんだね｣

オッレルス｢ああ。まあ、勝手に察しちゃうかもしれないけどね｣

オッレルス｢でもその可能性までなくす必要はないかな｣

シルビア｢プレッシャーに気づいても、自己責任、ね｣

オッレルス｢さてと、それじゃあ私は寝るよ｣

シルビア｢ああ、そういえば交代するんだっけね｣

オッレルス｢うん。だからシルビアは私のベッドでどうぞ｣

シルビア｢ははっ、そりゃ悪いね｣

オッレルス｢別に私はここでテレビでも見ながらゴロゴロしてるからいいさ｣

シルビア｢ふーん？ でも睡眠はちゃんと取らないと明日に響くからな、と忠告をしておこう｣

オッレルス｢はいはい、分かってるって｣

シルビア｢……はぁ。じゃあ、おやすみ｣ｶﾞﾁｬ

オッレルス｢おやすみ、シルビア｣

今回の投下はここまで。

『茶番』

フィアンマ｢……｣

シルビア｢ってことで今日から魔術を学び直してもらいまーす｣

オッレルス｢担当になりました、オッレルスです｣

オッレルス｢時に厳しくあり、時に厳しくあれがモットーです｣

フィアンマ｢基本的に厳しいってことだな｣

オッレルス｢ゆとりの弊害を危険視する派なんでね｣

オッレルス｢神の右席だからって手を抜いたり、甘くはしないので、そこのとこ覚悟しておいてください｣ﾆｺ

フィアンマ｢……｣

シルビア｢副担当のシルビアだ｣

シルビア｢私はフィアンマのサポートを務めさせてもらうよ｣ｸﾞｯ

シルビア｢魔術的な点ではアンタには劣るので、その辺りは覚えておいてくれると助かる｣

フィアンマ｢俺様に勝るほどの知識を持ってる奴などそうそういないのだから問題ない｣

オッレルス｢ねえ、シルビア｣

シルビア｢何か？｣

オッレルス｢私のサポートはしてくれないのか？｣

シルビア｢助手的にサポートしてやる｣

オッレルス｢……じゃあ雑用係としてこき使わせてもらおうかな｣

シルビア｢ま、体力はアンタらの数倍あるからそうしてくれて結構だ｣

フィアンマ｢……｣ｼﾞﾄｰ

オッレルス｢あれ、私が悪者みたいだな……｣

フィアンマ｢なあ担当者、一つ質問をしたいんだがいいか？ ｣

オッレルス｢ん？ まだ途中なんだけど……まあいいや｣

オッレルス｢では、フィアンマくん、質問をどうぞ｣

フィアンマ｢これは何の茶番だ？｣

シルビア｢……やっぱりそう思うか｣ﾊｧ

シルビア｢安心してくれ。私も同感だ｣

オッレルス｢あ、え！？ なんでサラッと裏切ってるの！？｣

シルビア｢裏切りとは人聞きの悪いことを言わないで欲しい｣

シルビア｢さっきまでは優しさで付き合ってやってただけさ｣

フィアンマ｢……いや｣

フィアンマ｢おかしなことだと分かっておきながら乗ってしまったお前も同類だ｣

シルビア｢……｣

シルビア｢……｣ﾁﾗ

オッレルス｢……そういうこともあると思うよ｣ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

シルビア｢ちょ、ゴーグルズレるから｣ｶﾞｼｯ

オッレルス｢……本当は割と乗り気だったよね？｣

シルビア｢……｣

オッレルス｢大丈夫、一回裏切られたくらいじゃ私はシルビアを見捨てたりはしないさ｣

シルビア｢……そ、そうか｣

シルビア｢確かに正直に言えば乗り気だっt｣

オッレルス｢私がシルビアを見捨てることは私の死を意味するからね｣

フィアンマ｢……読めた｣

オッレルス｢……シルビアがいなかったら、私のご飯は誰が作るんだ！｣

シルビア｢……｣

オッレルス｢……｣ﾆｯ

フィアンマ｢……｣ｱﾁｬ-

フィアンマ(本当に言うとはな)

シルビア｢悪いがコイツの頭を冷やしてくるよ｣ﾆｯｺﾘ

フィアンマ｢……えっと、達者でな｣

オッレルス｢み、見捨てるの！？｣

フィアンマ(悪いが、誰だって自分の身が一番大事なのさ)ﾌｲｯ

オッレルス(目を逸らした！！)

シルビア｢グダグダ言ってないで行くよ｣ｸﾞｲｯ

オッレルス｢え？ ええ？｣ｽﾞﾙｽﾞﾙ

オッレルス｢魔術の講義はどうするのさ？｣ｽﾞﾙｽﾞﾙ

シルビア｢それよりも先に私の抗議を聞いてもらおうか｣

フィアンマ｢……俺様はその本でも読んで待っているからなるべく短めで頼む｣ﾊﾟﾗﾗ

シルビア｢五分で済む｣

オッレルス｢……も、もう、腹括ろう……｣

………………………
…………


オッレルス｢……じゃあ、改めてこの講義の意義でもサラッと説明させてもらおうかな｣

シルビア｢……｣

フィアンマ(危害は加えられなかったようだが微妙な空気だな)

フィアンマ｢具体的にどんなことを学ぶというのだ？｣

オッレルス｢うん、いい質問だね｣

オッレルス｢普通の魔術をより円滑に使用するための裏知識、その『右』にある力をどうするか｣

オッレルス｢あと、君の隠しきれないほどの力、気配を隠す方法ってところだよ｣

フィアンマ｢ふむ｣

オッレルス｢力の象徴である右腕を失って、弱体化したとはいえ、君の力はいまだ健在だからね｣

オッレルス｢簡単に言えば、隠密行動に向かないんだ｣

フィアンマ｢そうだな。前は隠れる必要などなかったが、今はそんなことも言ってられないか｣

シルビア｢グレムリンやオティヌスに動きを把握されるのは厄介だからねぇ｣

フィアンマ｢グレムリン？｣

オッレルス｢言って無かったかな……？｣

オッレルス｢オティヌスの協力者である魔術師の組織っていうか……｣

シルビア｢グレムリンという魔術結社のボスがオティヌスだ｣

オッレルス｢そうそう、そんな感じ｣

フィアンマ｢……聞いた事のない組織だな｣

オッレルス｢できたのは最近だから無理もない｣

オッレルス｢魔術を操る組織としては異質で、科学技術も交えているんだ｣

フィアンマ｢両サイドの垣根を超えているじゃないか｣

オッレルス｢まあ、成り立ちから考えれば不思議な事でもないよ｣

フィアンマ｢と言うと？｣

オッレルス｢第三次世界大戦の勝者である科学サイドを喰らわんとしている組織なのさ｣

オッレルス｢科学サイドの象徴である学園都市に対抗し、魔神オティヌスを立てるって形でね｣

フィアンマ｢第三次世界大戦か｣

シルビア｢ん？ 何か思うところでもあるのかい？｣

フィアンマ｢それは……まあ、ないわけではないな｣

オッレルス｢……そんな経緯で出来た組織なんだ、その構成員たちも手練ぞろいだろう｣

フィアンマ｢つまり、生半可な隠蔽じゃバレバレだってことか｣

シルビア｢そういうこと｣

シルビア｢理解が早くて助かる｣

フィアンマ｢なら、まず俺様が俺様を隠す術について学べということか｣

オッレルス｢……｣

フィアンマ｢なぜ黙る？｣

オッレルス｢正直に言うと、それに関して私たちができることは少ないんだよ｣

フィアンマ｢……まあ、隠れるのは存在感、魔力が大きければ大きいほど複雑になるからな｣

オッレルス｢……ああ｣

フィアンマ｢つまり、自分で何とかしろ、ということだろう？｣

シルビア｢……｣ﾁﾗ

オッレルス｢……そうなるね。私もサポートはするけど、自分に合った隠れ方は自分にしか分からないんだ｣

フィアンマ｢ふっ、分かった。何とかする｣

オッレルス｢うん……担当とか言っておきながらあまり力になれないのは申し訳ない｣

フィアンマ｢くくっ、申し訳ない、か｣

フィアンマ｢言い渋っていたのはそれが原因って訳だな｣

オッレルス｢あはは……そうなるね｣

シルビア｢オティヌスを騙す程の物はさすがにプレッシャーがかかるだろう？｣

フィアンマ｢……ふむ、俺様も舐められたものだ｣

フィアンマ｢その程度、プレッシャーでも何でもない。朝飯前とまでは言わないがな｣

オッレルス｢……予想通りの返答で安心したよ｣ﾌｯ

オッレルス｢期待していいってことかな｣

フィアンマ｢……もうその件は達成したものとして作戦を立ててもらっても構わない｣

フィアンマ｢助けてもらった恩くらいはしっかり返すべきだろう？｣

フィアンマ｢お前たちにも、奴にも｣

シルビア｢ははっ、こりゃ思った以上の逸材だねぇ｣

シルビア｢天才なお坊ちゃんかと思っていたけど、覚悟はあるみたいで安心したよ｣ｸﾂｸﾂ

オッレルス｢だから言ったじゃないか。やるって｣

シルビア｢だな。本当に心配なさそうだ｣

フィアンマ｢俺様はどれだけ戦力として見られていなかったんだ……｣ﾑｯ

フィアンマ｢……いや、遠回しの戦力外通告というのは思ったより傷つくな｣

フィアンマ｢どうやら俺様は自信を無くしていたらしい｣ｽﾞｰﾝ

オッレルス｢ええ、被害妄想激しくない？｣

シルビア｢喝入れる？ 喝入れる？｣

オッレルス｢いや、そっとしておくべきだろうね｣

シルビア｢……そうか｣

フィアンマ｢……すまない、少し取り乱してしまった｣

オッレルス(目が赤くなっているような気がとてもするけど、いじらないでおこう)

シルビア｢目、赤くない？｣

オッレルス(シルビアさん！？)

フィアンマ｢ん？ 赤くなっていたか｣

フィアンマ｢前髪が目に刺さってかゆかったから擦ったせいだろう｣

シルビア｢結膜炎になるからやりすぎはよしておいた方がいいね｣

フィアンマ｢そうだな、気を付けよう｣

オッレルス｢泣いてないんかい！！！｣

フィアンマ｢……隠すのは何とかすると言ったが、ズルい魔術に関しては頼む｣

シルビア｢基本的に教えるのは私じゃないから｣

シルビア｢オッレルスのほう見て頼んでやってくれ｣

フィアンマ｢……俺様が泣くわけがないだろう！｣

シルビア｢ただ誤解してただけだから、なぁ？｣

フィアンマ｢……仕方がない｣

フィアンマ｢ズルい魔術に関しては頼んだ｣

オッレルス｢分かってるよ｣

オッレルス｢本当に泣いてしまうくらいビシバシやるから覚悟してな｣

フィアンマ｢くくく、望むところだ｣

シルビア(……こういうのが仲がいいって言うのかねえ)

今回の投下はここまでです。
おつありです！

結婚は……でも公式では確かに妻って書いてありましたしね。

『髪が目にかかる理由』

フィアンマ｢……｣ｶﾘｶﾘ

フィアンマ｢……｣ﾁﾗ

フィアンマ｢……｣ｼﾞｰ

オッレルス｢……ん？ どうしたの？｣

オッレルス｢利き手じゃないから勉強できないとかいう言い訳はいらないからね｣

フィアンマ｢そうじゃないんだが……｣

フィアンマ｢というか、なぜ俺様の利き手を知っている！？｣

オッレルス｢勘だよ、勘｣

フィアンマ｢利き手が使えないと知っておきながら、文字を書かせるとは……｣

フィアンマ｢お前がナチュラルなSだということは間違いないな｣

オッレルス｢……？｣

オッレルス｢そんなことより、私のことをちらちら見てどうしたんだい？｣

フィアンマ｢そんなことなのか……まあいい｣

フィアンマ｢その前髪はなんとかならないのか？｣

フィアンマ｢目にかかっていて非常に気になるんだが｣

オッレルス｢……これ？｣ｽｯ

フィアンマ｢そうだ｣

オッレルス｢なんとかならないのか、とか言われてもね……｣

フィアンマ｢目に刺さるんじゃないのか？ 毛先が｣

オッレルス｢いや、その辺はちゃんと守ってるから大丈夫さ｣

オッレルス｢じゃないと眼球が傷だらけになるだろ？｣

フィアンマ｢つまり魔力を無駄に消費しているということだな？｣

オッレルス｢ま、まあそうなるね｣

フィアンマ｢その上視界も狭くなる｣

オッレルス｢う……」　

フィアンマ｢鬼太郎ヘアで格好良く見られたいわけでもないだろう？｣

オッレルス｢……｣

フィアンマ｢実際に格好良くないしな｣

オッレルス(正直なのはいいことだと思うけど、結構グッサリ来るぞ……)

フィアンマ｢いいことなど何もないと思うんだが｣

フィアンマ｢まさに百害あって一利なしだ｣

オッレルス｢……特に理由はないから勉強に戻ろうよ｣

フィアンマ｢ふむ、これは意図的に話をそらそうとしているな｣

オッレルス｢う……｣ｷﾞｸ

フィアンマ｢少し腹を割って話をしないか？｣

オッレルス｢……まだ今日の分終わってないだろう？｣

フィアンマ｢いいじゃないか｣

フィアンマ｢今のところ理解できないところはないし、順調に進んでいるだろう？｣

オッレルス｢え｣

オッレルス(すごい目がキラキラしている……)

オッレルス(話によっては私をイジる気満々じゃないか)ｺﾝﾜｸ

オッレルス｢……フィアンマからサボりを提案してくるなんてね｣

オッレルス｢シルビアが聞いたら何て言うかな……｣ﾁﾗ

フィアンマ｢ふん、こんなものはただの休憩だ｣

フィアンマ｢さすがにあの女も休憩を咎めたりはしないだろう？｣

オッレルス｢そりゃ、そうだけど……｣

フィアンマ｢勉強というのはずっとやり続けていても効率が悪くなるだけだ｣

オッレルス(確かに正論だから反論ができない！！)

フィアンマ｢丁度座学には飽きていたところだ｣ｽｯｸ

フィアンマ｢だから実践といかないか？｣ﾆﾔ

オッレルス｢……実践？｣

オッレルス｢髪の毛のことと関係があるようには思えないんだけど｣

フィアンマ｢ふふ、実は俺様なりにステルス用の魔術を組み上げてみたのさ｣

フィアンマ｢いわばプロトタイプだ｣

オッレルス｢へぇ、まだ大して経ってないのに｣

フィアンマ｢こういうものは早ければ早いほどいいはずだ｣

フィアンマ｢だから暇な時間はずっと思案していた｣

オッレルス｢暇な時間……もしかして私の講義中に……｣ﾕﾗｯ

フィアンマ｢いや、それは無い。教えを受ける立場の人間がそんな態度をとるわけがないだろう｣

オッレルス｢そっか。安心したよ｣

今回の投下はここまでです。
乙ありです！

フィアンマ｢まあ、お前の魔術話に混じった無駄話はすべて思案の時間にあてさせてもらったが｣

オッレルス｢｣

フィアンマ｢……作ったはいいが、まだ穴だらけな術式だ｣

フィアンマ｢だから、精度のチェックも兼ねて実践をしてみようという提案なんだが｣

オッレルス｢……で、髪との関連性の説明は？｣

フィアンマ｢かくれんぼで勝負だ｣ｸﾞｯ

オッレルス｢は？｣

フィアンマ｢分からないか？ ならもう一度言ってやる｣

フィアンマ｢かくれんぼだ｣

オッレルス｢いや、かくれんぼは分かるけど、一体何がしたいの？｣

オッレルス｢髪の毛のこととの関連性が全く掴めないよ……｣ｺﾝﾜｸ

フィアンマ｢俺様が全力ステルス使用で隠れるから、それをお前が全力で探す｣

オッレルス｢……関連性は？｣

フィアンマ｢本当に分からないのか？ 仕方が無い……｣

フィアンマ｢簡潔に言うと、俺様が勝ったらその髪の毛の秘密をお前が語る｣

オッレルス｢私が勝ったら？｣

フィアンマ｢座学タイム延長だ｣

オッレルス｢なるほどね｣

オッレルス｢でもそれって私には何の得もなくないか？｣

フィアンマ｢……それもそうだな｣

フィアンマ｢だが……魔術は組み立てても使ってみないと何もわからない｣

オッレルス｢頭の中でシミュレーションしてみても穴は分からない……｣

フィアンマ｢そういうことだ｣ﾌｯ

フィアンマ｢座学も飽きてはいたが、今までの知識とぴたりとハマって面白さはあった｣

オッレルス(あ、飽きていたんだ……でも面白いって言ってるしいいか)

フィアンマ｢だからこそ机上の勉強だけではなく実践をしてみるべきだと思うのさ｣

オッレルス｢それでステルスかくれんぼか｣

フィアンマ｢ああ。悪くないと思うが｣

オッレルス(全力で隠れるフィアンマを想像すると笑えるなぁ)

オッレルス｢分かった｣

オッレルス｢受けて立とうじゃないか｣

フィアンマ｢そうか｣

フィアンマ｢じゃあこれとこれを……｣ｽｯ

オッレルス｢アイマスクと耳栓？｣

フィアンマ｢ああ｣

フィアンマ｢それをしてかくれんぼだ｣

オッレルス｢え……？｣

フィアンマ｢俺様を見つけられるかな？｣

オッレルス｢見つけられるわけ無いだろ！！｣

フィアンマ｢いやいや……｣

フィアンマ｢確かにただの人間をその状態で探すのは酷だろうが俺様を探すのなら大したことはないはずだ｣

フィアンマ｢というか、さすがに気配まではまだ消せないのだから勘弁してもらいたい｣

オッレルス｢いや、無理だって｣

フィアンマ｢問題ない。俺様くらいなら分かるはずさ｣

フィアンマ｢聴覚も視覚も不要だ｣

オッレルス｢そうかな……？｣

フィアンマ｢まあ、一旦付けてみろ｣

フィアンマ｢で、十秒後、俺様の居ると思う方向を指さしてみてくれ｣

オッレルス｢……｣ｽﾁｬ

オッレルス(ずいぶん遮音性の高い耳栓だな……何も聞こえないや)

オッレルス(でも……なるほどね)

オッレルス(フィアンマが何もしなければ、魔力と異常なほどの存在感で、居場所は手に取るようにわかる)

オッレルス(……そろそろ十秒かな。今フィアンマのいる方向は……)

ｸﾙｯ ｽｯ

オッレルス｢見つけた｣ﾎﾟﾝ

フィアンマ｢正解だ｣

オッレルス｢……つまりこのかくれんぼ勝負はフィアンマのステルスの精度の方が上か、私の魔力感知スキルの方が上か、という勝負ってことだね｣ﾌﾌﾌ

フィアンマ｢そういうことだ。無理にとは言わないが、どうだ？｣

オッレルス｢分かったよ。私も少し羽を伸ばしたいと思っていたところだしね｣

オッレルス｢フィアンマの魔術チェックに付き合ってあげよう｣

フィアンマ｢よし、じゃあ俺様はこの部屋の中に隠れる｣

オッレルス｢え？ そんなに狭い範囲で大丈夫か？｣

オッレルス｢初めはこの街の中ならどこに隠れても見つけられると思うんだけど……｣

フィアンマ｢そこまで俺様の存在はバレバレか？｣

オッレルス｢君のステルス技術はまだ試作品段階だって言ってたから、そこまで期待はしてないんだ｣

フィアンマ｢ふむ、ならぎゃふんと言わせるという目的のためにもこの部屋の中に限定したい｣

フィアンマ｢壁は高めに設定する質なんでな｣

オッレルス｢……そこまで言うならいいけど、すぐ見つかっても文句は言わないでね｣

フィアンマ｢ああ、恨みっこ無しだ｣

オッレルス(プロトタイプとか言う割には自信満々なんだね……)

オッレルス(ま、機嫌を損ねても面倒だし、少し手を抜くか)

フィアンマ｢手加減は無用だからな｣

オッレルス｢な、あ、当たり前だよ｣

オッレルス｢本気で探さないと実践の意味がないもんね｣

フィアンマ｢ああ。分かってるならいいんだ｣

オッレルス(妙に鋭いな……)

オッレルス｢それじゃあ一分後に探し始めるってことでいいかな｣

フィアンマ｢制限時間は十分……スタートだ！！｣ﾀﾞｯ

今回の投下はここまで！！

オッレルス(……大体一分は経ったかな)ｷｮﾛｷｮﾛ

オッレルス(あ、きょろきょろしても意味ないんだった)

オッレルス｢……｣

オッレルス(今気づいたけど、この状態で部屋の中歩くのは危険だな……)

オッレルス(蝙蝠でも見習って障害物避けるのが一番いいかな)ﾏｼﾞｭﾂ

ｽﾀｽﾀ

オッレルス(それにしても全然捕捉できないな……)

オッレルス(まさに有言実行だね、見直しｔ――)ﾋﾟｸ

シルビア｢……何してるんだい？｣

オッレルス(近くに魔力反応！？)

オッレルス(前言撤回、相手を舐めてかかったのが間違いだったね)

オッレルス(バレバレだ！！)

オッレルス｢フィアンマみーっけ！！｣

シルビア｢……本当に何してるんだい？｣

オッレルス(あれ？ 何も反応がない)

シルビア｢って、耳栓してるし……｣ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

ﾐﾐｾﾝﾇｷｯ

オッレルス｢ふぁっ！？｣ｱｾｯ

シルビア｢何してるんだい？｣

オッレルス｢っ、シルビアか｣

シルビア｢そうだけど、アイマスクに耳栓つけて部屋の中を歩き回るなんてね｣

シルビア｢ついにおかしくなったかって心配したよ｣

オッレルス｢いや、ついにっておかしくないか｣

シルビア｢おっと、口が滑ったよ｣

オッレルス｢……聞かなかったことにしておくよ｣

シルビア｢ああ、それが互いのためになるよ｣

シルビア｢で、その奇怪な行動はどういう訳なのか、説明してもらえるんだよね｣

オッレルス｢かくれんぼしてたんだよ｣

シルビア｢アイマスク、耳栓付きなことは置いておくとして……｣

シルビア｢午前中は勉強だって言っていたじゃないか｣

オッレルス｢れっきとした勉強さ｣

シルビア｢……何が言いたいのかさっぱりなんだけど｣

オッレルス｢机の上での勉強じゃなくて実践だ｣

シルビア｢それとかくれんぼの関連性が分からないんだけど｣

オッレルス｢だよね、私もおんなじことを思ってた｣

シルビア｢だって、かくれんぼなんて遊びじゃないか｣

シルビア｢アイマスクと耳栓で難易度が跳ね上がってはいたけど｣

オッレルス｢確かに難易度は上がるけど、聴覚視覚が封じられていてもフィアンマを探すことはできる｣

シルビア｢まあ……魔力とか調べりゃいいもんねえ｣

オッレルス｢んで、魔力感知を阻害するステルスの魔術を構築したっていうからその荒探しに付き合ってるってこと｣

オッレルス｢かくれんぼという形でね｣

シルビア｢なるほどなるほど……｣

シルビア｢今のところどうだい？ フィアンマは見つかりそう？｣

オッレルス｢……感知できない｣

オッレルス｢このハンデを外して探さないと見つかりそうにないよ｣

シルビア｢へえ、じゃあ結構いい線いってるってわけか｣

オッレルス｢調子乗らせたら困るからこれは秘密で｣

シルビア｢……どっち向いてんのさ。私はこっちだよ｣ﾂﾝﾂﾝ

オッレルス｢ああ、ごめんごめん。アイマスクまで外すわけにはいかないからね｣

シルビア｢……くく、いや、これで気づかないなら一日中探しても見つからないと思うよ｣

オッレルス｢……？ 突然どうしたんだい？｣

オッレルス｢もしかしてフィアンマの居場所知ってるの？｣

シルビア｢まあね｣

オッレルス｢……ネタバレは駄目だから｣

シルビア｢はいはい、分かってるって｣

オッレルス｢じゃあそろそろ残り時間もあるし私は探索に戻るよ｣

シルビア｢そうかい？ じゃあ頑張ってね｣ｽﾀｽﾀ

オッレルス(耳栓付け直してっと……)

オッレルス(……ん？)

オッレルス(……シルビアはどこかへ行ったはずなのに人の体温がある……？)

オッレルス(……ふふふ)ｽﾝｽﾝ

オッレルス｢見つけたぁぁぁ！！｣ﾎﾟﾝｯ

フィアンマ｢へ！？｣ﾋﾞｸｩ

オッレルス｢こんなに近くにいたとはね……シルビアの言ってたことにも納得だよ｣

フィアンマ｢……こんなに早く見つかるとは｣

フィアンマ｢プロトタイプは失敗か……｣ｽﾞｰﾝ

オッレルス｢あはは、初めから成功するなんて滅多にあることじゃないしいいんじゃない？｣

オッレルス｢ほら、失敗は成功のもとってよく言うだろう？｣

フィアンマ｢……ならこの失敗から成功の糧を探してみるか｣

オッレルス｢その意気だね！」

フィアンマ｢単刀直入に聞く。なぜここに俺様がいると分かった？｣

オッレルス(においと体温だなんて言えない……)

オッレルス(変態だと思われるよ……)

フィアンマ｢どうした？ 理由がないという事は無いだろう？｣

オッレルス｢うーん｣

フィアンマ｢ささいなことでも言ってくれるとありがたいんだが｣

オッレルス(目が真っ直ぐすぎる……嘘言えないじゃん)

オッレルス｢えっとね、主に魔力の感知だけど、体温もあるかな｣

オッレルス｢近すぎたのが仇になったってことだ｣

フィアンマ｢やはり駄目か……｣

オッレルス｢いや、今回の場合、君が油断とか挑戦をせずに、遠くに隠れていたら多分私は見つけられなかったと思うよ｣

フィアンマ｢つまり戦略がまずかったということか｣

フィアンマ｢ふむむ……なかなか勉強になるな｣

オッレルス(君がこのことから何を学んだかは知らないけど、少しでも成長できたなら価値はあったんだろうね)

オッレルス(そして、少し隠してしまってゴメン)

オッレルス｢けど、それとこれとは話が別だ｣

フィアンマ｢……けど？｣

オッレルス｢私が勝ったんだから約束通り座学タイムだ｣

フィアンマ｢う……契約は契約だから仕方がないか……｣ｳｳｳ

今回の投下はここまでです！
乙ありです

いいね、おもしろい

…………………………


フィアンマ｢あー、もう午後になっているではないか｣ﾉﾋﾞｰ

フィアンマ｢今日の話はもう終わりだろう？｣

フィアンマ｢そういう契約だろうー？｣ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

オッレルス｢もう少しでキリのいいとこまで行けるから、そこまでは今日やっちゃおうよ｣

オッレルス｢中途半端なとこで終わらせると、思い出すのに苦労するだろうし｣

フィアンマ｢……それもそうだな｣ﾑﾑ

フィアンマ｢……ならば少し休憩ならいいか？｣

オッレルス｢休憩？ 別にいいけど……？｣

フィアンマ｢そうか、ならばお茶でも入れ……てくれないか｣

オッレルス｢はいよー｣ﾆﾔﾆﾔ

ｶﾞﾁｬ

シルビア｢お？ かくれんぼ終わったんだ｣

フィアンマ｢傷口をえぐるな｣

シルビア｢え、アンタが負けたの？｣

フィアンマ｢言わないでくれ。割と本気で泣きそうだったから｣

シルビア｢……おうおう、それは少しいじりたいなーと思うねえ｣

フィアンマ｢……｣ｼﾞｰ

シルビア｢……けど、ま、アンタの頑張りに免じて今日はやめておこうかね｣

フィアンマ｢ああ。そうしてくれ｣

シルビア｢ところでアイツはどうしたんだい？｣

シルビア｢まだお勉強の途中っぽいけど……｣

フィアンマ｢お茶入れてる｣

オッレルス｢なんか言った？｣ﾇｯ

フィアンマ｢うわっ、何なんだ！｣ﾋﾞｸｯ

オッレルス｢お茶入れたよ、ってシルビアもいるなら言ってくれればよかったのに｣

シルビア｢あー、お構いなく。勉強を邪魔するつもりはないんだ｣

フィアンマ｢いや、全然邪魔してくれて構わないぞ｣

オッレルス｢おいおい、そんなに向上心がなさそうなこと言わないでくれよ｣

フィアンマ｢確かに勉強もお前の話も嫌いではないが、ずっとやってると飽きるんだ｣

シルビア｢ははっ、らしいよ、担当さん？｣

オッレルス｢だからこそ休憩を許可してあげたんだよ｣

オッレルス｢実際私も優秀すぎる生徒を持つのは発見があって面白いけどさ｣

オッレルス｢むしろそっちの方が多いから教師失格なんじゃないかなーって思うから、精神面の休息が必要なのさ｣

シルビア｢……重いね｣

フィアンマ｢安心しろ。少なくとも俺様はお前のことを失格だと思って無い｣

フィアンマ｢今現在の話だがな｣

オッレルス｢素直に喜んでいいのか迷うなあ……｣

フィアンマ｢喜んでいいだろう？ 俺様が他人を認めることなどそうそうないのだから｣

フィアンマ｢むしろ、俺様に教えることができる時点でとてもすごいのだからな｣

シルビア｢随分上からだねえ｣

フィアンマ｢……む、そうだな。ただ飯ぐらいがそんな態度をとるものじゃないか｣

オッレルス｢そんな言葉、どこで覚えたんだ！？｣

フィアンマ｢え、この女だが……｣ｺﾝﾜｸ

オッレルス｢なぜフィアンマにただ飯ぐらいとか教えちゃってるの？｣

シルビア｢え、フィアンマに俺様はこの家ではどのような存在なんだ、って聞かれたから……｣

シルビア｢正直に答えただけさ｣

オッレルス｢言い方考えて欲しかったね｣

シルビア｢例えば？｣

オッレルス｢……穀潰し？｣

フィアンマ｢よーし、俺様のことを馬鹿にしているのはよく分かった｣ｶﾞﾀ

フィアンマ｢文字通り穀を潰してやる｣ｺﾞｵｵｫｫ

オッレルス｢ちょ、冗談だって、穀じゃなくて家燃えるから！！ それはやめて！！｣

シルビア｢おお｣

オッレルス｢シルビアも感心してる場合じゃないでしょ！！｣

オッレルス｢家焼けるんですが！｣

シルビア｢ん？ ああ、それは別に問題ないよ。私の家は別にちゃんとあるし｣

シルビア｢だいぶ帰ってないから掃除が大変だろうけどね｣

オッレルス｢シルビア冷たくないかい？｣

シルビア｢大丈夫だよ。フィアンマの炎でいい感じに温かい｣ﾎﾟｶﾎﾟｶ

オッレルス｢そういう意味じゃない！！｣

シルビア｢そっちの意味でも冷たくないさ。家がないなら私の家に来るといい｣

オッレルス｢もう私の家は諦めてるのかい！？｣

フィアンマ｢言いたいことはそれだけか？｣

オッレルス｢いやいや！！ ……そうだ！｣

フィアンマ｢まだ言いたいことがあるのか？ まあ、時間は腐るほどあるから聞いてやってもいいが｣

オッレルス｢その火力だと、私を焼くのと共に家も焼けてしまう、そうしたら君の住む場所もなくなる！！！｣

フィアンマ｢……それもそうだな｣ｼｭｳ

オッレルス｢ほっ……｣

オッレルス｢家が助かった……｣

シルビア｢家が助かったって言う辺り、あんなこと言いつつ意外と自信あることが窺えるね｣

オッレルス｢自信がなかったら魔神になれなくてもショックを受けたりなんてしないさ｣

オッレルス｢それにしてもフィアンマがあんなに怒るなんて予想外だったよ｣

シルビア｢え？ 怒った？｣

フィアンマ｢いや、さっきのは冗談だが｣

オッレルス｢は？｣

オッレルス｢いや、使ってた魔術的にも本気度の高さがよく分かったんだけど｣

シルビア｢え、フィアンマが怒ったって本気で言ってるのかい？｣

シルビア｢もし本当にアンタの言ったことで怒るのだとしたら、私がただ飯ぐらいの言葉を教えた時点で家壊されてるはずだ｣

オッレルス｢あ、確かに……言われてみればそうだね｣

オッレルス｢いや、でも分かりづらくないか？｣

フィアンマ｢分かりづらくないとお前が勘違いしないだろう？｣

フィアンマ｢そのためにあれくらいの火力を出したんだからな｣

オッレルス｢……でもまだあんまりコントロール利かないよね、あのレベルの魔術は｣

フィアンマ｢ああ。一歩間違えたら炭になっていたな｣

オッレルス｢だ、大惨事だ｣

フィアンマ｢だな｣

シルビア｢……さすがに私だって冗談じゃなかったら、実力行使してでも止めに入るけどね｣

オッレルス｢信用できないね｣

シルビア｢別にそう思ってくれても構わないさ｣

フィアンマ｢……俺様が穀潰しだとかただ飯ぐらいだとかいうのは、事実だからか結構刺さった、ということを一応伝えておく｣

オッレルス(……これは普通に傷ついてるじゃないか)

シルビア(それこそ冗談だっていうのに……本当に真面目な男だな)

フィアンマ｢そう思われていたなら、俺様も少しは改善しようと思うから、言ってくれて構わない｣

フィアンマ｢……あ、高圧的なのがダメなんだったか｣

オッレルス｢それは直さなくてもいいよ、フィアンマの味だからね｣

シルビア｢そうだねえ、フィアンマがへこへこしてるのはかなり違和感がある｣

フィアンマ｢…………｣

オッレルス｢あと、穀潰しとかいうのは冗談だからね｣

フィアンマ｢いや、事実だな｣

シルビア｢そんなことないと思うけどね｣

シルビア｢グレムリンと対峙した時に向けての対策をしているってわけだろう？｣

シルビア｢それなら働いてるってことと同義だと思うね、私は｣

フィアンマ｢なるほど｣

フィアンマ｢ということは俺様は穀潰しじゃないってことか｣ﾊﾟｱｱｱ

オッレルス(ナイスフォロー！！)

フィアンマ｢ふむふむ、やはり俺様ほどの人間が穀潰しと言われるわけがないか｣ﾌﾑﾌﾑ

オッレルス｢……そ、そうだね｣

シルビア｢そこは突っ込んでもいいだろ｣

今回の投下はここまで！
乙ありです！
>>168 ありがとうございます！！

シルビア｢そういえばずっと言おうと思ってたんだけど、もうお茶冷めちゃったんじゃないかい？｣

オッレルス｢あ｣

フィアンマ｢お疲れ様です、だな｣

オッレルス｢ま、ちょうどいいか。シルビアの分も入れてくるね｣

シルビア｢ああ、頼むよ｣

ｽﾀｽﾀ

フィアンマ｢……ん？ よく考えたら、私のご飯を誰が作るんだ、とか言っておきながらお茶入れることもあるんだな｣

シルビア｢そりゃね。ある程度のことは出来ることには出来るらしい｣

フィアンマ｢ふむ……｣

シルビア｢その辺りは見習ってもいいかもしれないねえ｣

フィアンマ｢お、俺様だって何もかも下の奴らに任せていた訳ではない！｣

シルビア｢へえ、それは詳しく聞いてみたいところだけど、まだ勉強時間だしやめておこうかね｣

フィアンマ｢なんだか着々と弱点が握られているような気がする……｣

シルビア｢それは気のせいだろうよ｣ﾌﾌｯ

オッレルス｢入れてきたよ｣ｽﾀｽﾀ

シルビア｢さてさて、お味はどうだかね｣

オッレルス｢いや、シルビアを満足させることはできないと思うよ｣ﾊﾊﾊ

フィアンマ｢なら、俺様の口にも合わないかもな｣

オッレルス｢さぁ？ それは飲んでから言うべきだと思うね｣ｺﾄ

フィアンマ｢くくっ、じゃあ味見といこうか｣ｶﾁｬ ｺｸｺｸ

オッレルス｢どうだい？｣ｺﾄ

シルビア｢ん、ありがと｣

フィアンマ｢……まあ、悪くはないな｣

オッレルス｢おおっ、ということは私のお茶入れ技術はローマ正教のメイド並ということか！！｣

フィアンマ｢いや、教皇だったぞ。俺様の世話役は｣

フィアンマ｢俺様の存在は出来るだけ隠蔽しておきたかったらしいからな｣

シルビア｢くくくっ、良かったじゃないか。教皇様並みだと｣

オッレルス｢え、あんまり嬉しくないのはなぜ？｣

フィアンマ｢いや、素直に喜ぶべきだ｣

フィアンマ｢奴の入れる茶は普通に美味い。ま、俺様がボコってしまったんだがな｣

オッレルス｢普通に美味いお茶入れてくれる人ボコったんだね｣

フィアンマ｢それとこれとは話が別だ｣ﾌﾝ

フィアンマ｢ところで、その前髪はどうしたんだ？ とても邪魔そうに見えるが｣

シルビア｢ぶぶっ！｣ﾌﾙﾌﾙ

オッレルス｢自然な話題転換を狙ったんだろうけど、全然ダメだからね？ ｣

オッレルス｢その上、前髪のことは君が負けたんだから話すつもりはないよ｣

シルビア｢……な、あのかくれんぼはそんなことを賭けていたのかい？｣ｸﾂｸﾂ

オッレルス｢そんなこととは失礼な。私にとっては最重要項目なんだけど？｣

フィアンマ｢いいだろう？｣

フィアンマ｢お前はズルをしたのだから｣

オッレルス｢ズルじゃないですー。たまたま体温を感じただけです｣

フィアンマ｢そんな子供みたいなことを言っていて恥ずかしくないのか？｣

フィアンマ｢俺様は見ていて可哀想に感じるぞ｣

オッレルス｢いや！ 負け惜しみをグチグチ言って、勝たないと得れないものをぶんどろうとする方が幼稚だよ｣

フィアンマ｢な、俺様を幼稚と言ったか……｣ｷﾞﾘｷﾞﾘ

シルビア｢はいはい、今度は本当に家燃やしそうだしここまでね｣

シルビア｢喧嘩するほど仲がいいとは言うけどアンタらは本気の喧嘩すると誰も止められなくなる｣

シルビア｢イライラしてるのは分かるけど、ま、ここは大人の寛容さで怒りを収めてやってくれ｣

フィアンマ｢む、そこまで頼まれたら断るわけにはいかないか｣

オッレルス｢別に怒ってないけどね｣

シルビア｢前髪のことは私から話すから｣

フィアンマ｢よし、早く話せ｣

オッレルス｢え！ シルビア！？｣

シルビア｢お茶のお供には最適な話だよ｣

オッレルス｢シルビアぁぁぁ！｣

シルビア｢この話をするにあたって頭に入れておいて欲しいことがある｣

シルビア｢今のオッレルスは自分で自分の前髪を切ることができない｣

フィアンマ｢……ふむ、俺様も苦手だな｣

フィアンマ｢だが、今の、という言い方は少し気になるな。まるで前はできたみたいじゃないか｣

シルビア｢その通り、前は出来たんだ｣

シルビア｢まあ、下手だったけどね｣

フィアンマ｢で、今は出来ないと。理解ができないんだが｣

オッレルス｢ちょ、なにしれっと語りますよーって空気にしちゃってるの？？｣

フィアンマ｢格好悪いぞ。もう腹をくくれ｣

オッレルス｢ええ、そんなことってありなのかい？｣

シルビア｢ま、お茶でも飲んで落ち着きな｣ｽｯ

オッレルス｢そ、そうだね｣ｺﾞｸｺﾞｸ

フィアンマ｢それで……何か原因があるんだろう？｣

シルビア｢ああ。その話は長くなるけどいいかな？｣

フィアンマ｢構わないぞ。休憩がいくら長引いても俺様は文句はない｣

オッレルス｢いや……それはそんな時間がかかる話じゃないよ｣

オッレルス｢それにあれはシルビアのせいだろう？｣

シルビア｢……ま、話そうじゃないか｣

オッレルス｢スルーされた？｣

フィアンマ｢……なんだかとても面白い話の予感だな｣

オッレルス｢面白くないから期待しない方がいいよ？｣

フィアンマ｢いや、俺様の勘は結構馬鹿にできないのでな｣ﾌﾌ

シルビア｢へえ、本当に鋭いじゃないか｣

オッレルス｢もう黙って下さい！！！｣

シルビア｢んじゃあ、そろそろ本題に入るとしようかね｣

フィアンマ｢とっておきを期待しているぞ｣

オッレルス｢……はあ｣

シルビア｢さっきも言った通り、コイツは下手だったけど髪を切る事は出来たんだよ。前はね｣

今回の投下はここまで！
乙ありです

…………ある日…………


シルビア｢だいぶ髪伸びてきてないかい？｣

オッレルス｢突然だね｣

オッレルス｢でもまだ目にかかるくらいだから気にすることもないさ｣

シルビア｢切らないのか？｣

オッレルス｢うーん、切りに行くの面倒だしなぁ｣

シルビア｢でも気になるだろう？ というか、私が気になる｣

オッレルス｢まあ、言われてみれば気になってくるけどね｣ｻﾜｻﾜ

オッレルス｢でもお小遣いもったいないし｣

シルビア｢……お小遣いはこういう時に使うものじゃない？｣

オッレルス｢いや。私のお金は趣味に使わせてもらうよ｣

シルビア｢そんな金の使い方で良く生きてこれたなあ……｣

オッレルス｢ま、そんなに言うなら切ってあげてもいいけどね｣

シルビア｢何様？｣

オッレルス｢め、目が怖いって｣

シルビア｢完全に無意識だったよ。なんて言ったんだい？｣

オッレルス｢……とりあえず自分で切るよ｣

シルビア｢……｣ﾊｧ

オッレルス｢何そのため息！｣

シルビア｢聞かないんだろうけど、一応言っておくよ｣

シルビア｢何度も失敗してるんだからいい加減学びな｣

シルビア｢っていない！？｣

オッレルス｢話の途中で逃げてきちゃったけど大丈夫かな……｣ﾁﾗ

オッレルス(鏡見ながら切れば問題ないだろう……)

オッレルス｢……｣ｼﾞｬｷｼﾞｬｷ

オッレルス｢この程度の事、少し練習をすればできるにきまっているよ｣ﾊﾟｯﾊﾟｯ

オッレルス｢こんな感じで、短くなったかな……｣ﾁﾗ

オッレルス｢――――！？！？｣

シルビア｢あー、手遅れだったね｣ﾊｱ

オッレルス｢完全に失敗した……｣ｽﾞｰﾝ

シルビア｢……言わんこっちゃない｣

シルビア｢だからはじめからケチらないで、髪を切りに行っていればよかったのに｣

オッレルス｢……ああ、よく分かったよ｣ｼｭﾝ

オッレルス｢切った髪の毛はもう帰ってこないってことが、さ｣

シルビア｢変な語りはいらないから、行ってきな｣

オッレルス｢はぁ……行ってくるよ｣ﾎﾞｳｼ

…………………


シルビア｢こんな風にいつも自分で切ってしくじっては床屋の世話になってたってわけさ｣

フィアンマ｢帽子が必要なレベルでしくじるのか……｣

フィアンマ｢俺様が言うのはどうかと思うが、少しは反省した方がいいと思うぞ｣

オッレルス｢分かってるさ、でも君も髪切るのは苦手だって言ってた気がするんだけど｣

フィアンマ｢ああ、言ったが？｣

オッレルス｢どれくらいできないんだ？｣

フィアンマ｢まあ、前髪を整えるくらいならわけないが？｣

オッレルス｢｣

シルビア｢普通、それだけできれば十分じゃない？｣

フィアンマ｢俺様は普通じゃないからな｣

シルビア｢あ、はい｣

フィアンマ｢話を戻すが、いつも床屋の世話になっているなら今回もそうすればいいだろう？｣

フィアンマ｢そうすれば万事解決じゃないか｣

シルビア｢まあそうなんだけどね……｣

フィアンマ｢何かあるのか？｣

シルビア｢子供を100人近く連れ帰ってきたって話は聞いてたはずだったね｣

フィアンマ｢それがどうかしたか？｣

シルビア｢一応反省してもらうためにお小遣いを減らしているのさ｣

フィアンマ｢あ、なるほど｣

フィアンマ｢つまり金がもったいないから切りに行こうとしないってことか｣

シルビア｢そういうことさ｣

オッレルス｢……その言い方だと私がお金を持っていないみたいじゃないか｣

フィアンマ｢事実なんだろう？｣

オッレルス｢いやいや、ある程度はあるよ｣

オッレルス｢でも使い方ってあるだろう？｣

フィアンマ｢なるほど、減らしたとはいえ、十分な金は渡しているんだな｣

シルビア｢そりゃそうさ。私はこいつの無駄遣いを減らして、貯金をするためだけに金の管理をしてるんだから｣

フィアンマ｢……はぁ｣ﾁﾗ

オッレルス｢なに！？ その俺様は失望したぞ、とか言いたそうな顔は！｣

フィアンマ｢なんだ、俺様の言いたいこと分かってるんじゃないか｣

フィアンマ｢それなら話は早い。いますぐ切りに行け｣ﾋﾞｼ

オッレルス｢それは嫌だ。お金がもったいないだろう？｣

フィアンマ｢……｣

シルビア｢そうは言うけど切らないと邪魔だしいろいろ行動に支障が出るだろう？｣

フィアンマ｢まさにその通りだな｣

フィアンマ｢だがずっと切らないわけにはいかないだろう？ 見た目も悪くなる｣

シルビア｢そうそう｣

シルビア｢だからあの時は……｣

今回の投下はここまで
乙ありです！

乙
あと酉ミスってるよー

>>202 指摘ありがとうございます！
パソコンでやってたから気づかなかった……

……………………


シルビア｢もうそろそろさすがに切らないとまずいんじゃないかい？｣

オッレルス｢……｣ﾀﾞﾗｰﾝ

オッレルス｢確かにここまでくると外に出ても人目を集めて嫌なんだよね｣

シルビア｢大丈夫だ。その髪型が視界に入ってくる方がよっぽど嫌だからな｣

オッレルス｢すごい辛辣な物言いだね｣

シルビア｢そりゃ、同居人が変な目で見られる奴だったら誰でも嫌じゃないか｣

オッレルス｢……私の居場所は無いのか｣

シルビア｢切ってくれば一気に居場所が増えるじゃないか｣

シルビア｢やったね｣ｸﾞｯ

オッレルス｢いや、親指突き出されても困るんだけど！｣

オッレルス｢……でもシルビアに嫌がられるのは少し寂しいな……｣

シルビア｢そ、そんなに本気で寂しそうな顔しないでくれないか？｣

シルビア｢なんだか私が悪いことしたみたいだろう！？｣

オッレルス｢……いや、シルビアは全く悪くないよ｣

オッレルス｢でもそんな目で見られるのは本当に寂しいから切ってくるよ｣

シルビア｢ようやくその気になったか！｣

オッレルス｢洗面所でね！！！！！｣

シルビア｢反省しろっつってんだろ！！｣

シルビア｢で、私の忠告を振り切り、切ってしまった結果がこれだよ？｣

シルビア｢だから反省しろって言ったじゃないか｣

オッレルス｢今回は行けると思った｣

シルビア｢などと意味不明な供述をしており、捜査は難航しています｣

シルビア｢はあ、とりあえずこの帽子でもかぶっておきな｣

オッレルス｢……ありがとう｣

シルビア｢……手に負えないくらい頑固だから困ったもんだよ｣

オッレルス｢あはは、自覚はあるんだけどね｣

シルビア｢自覚無かったら本当に対処できないから！！｣

シルビア｢……本当に切りにいかないのかい？｣

オッレルス｢だってお金もったいないし……｣

オッレルス｢しばらく外出るの我慢すればいいよ。刺客の人たちはシルビアが適当に追っ払ってくれればいいし｣

シルビア｢私に丸投げか！！｣

オッレルス｢いいじゃないか。インターフォンが鳴っても居留守を使うだけの簡単な仕事でしょ？｣

シルビア｢……今までにご丁寧にインターフォン押してくれた刺客がいたかっての｣

オッレルス｢う……｣

シルビア｢何度も窓やら屋根やらドアやらなんでも突き破ってきたろ？｣

シルビア｢その修繕費にいくらかかると思ってるんだい？｣

シルビア｢あんたが外に出ないことでそんな無駄なお金を使うのは勘弁だよ｣

シルビア｢私一人じゃ対処しきれない敵が来ないとも限らないし｣

オッレルス｢いや、でも私はいつも刺客とかち合ったら、インターホン押すようにって念を押しているんだけど……｣

オッレルス｢ボコしたあとに｣

シルビア｢それは伸びてて聞いてなかったんだろうさ｣

シルビア｢ともかく、髪整えて来るか、その髪型でも外出れるように腹くくるしかないよ｣

オッレルス｢そ、それは……｣

シルビア｢と言いたいところだが、今日は特別だ｣

オッレルス｢え？｣

シルビア｢私が切ってあげよう｣

オッレルス｢ああ！！ その手があったじゃないか！｣

オッレルス｢さすが、メイドの鏡だね｣

オッレルス｢でも……本当にいいのかい？｣

シルビア｢ああ｣

オッレルス｢やっぱりメイドさんだから、髪切ったりもできるんだね……｣

オッレルス｢ん？ ああ！！ それだったらはじめから言ってくれればよかったのに！！｣

シルビア｢それは無理な相談だね｣

オッレルス｢……なぜ？ まさか能ある鷹は爪を隠す、かい？｣

シルビア｢そんなたいそうな理由じゃないさ｣

シルビア｢髪切るのは最近まともに練習し始めたってだけだよ｣

シルビア｢さっきも言ったが、変な髪型は好きじゃないんだ｣

オッレルス｢それは……私の為に？｣

シルビア｢思い上がりはよしてほしいね。今さっき言ったじゃないか、変な髪型が好きじゃないと｣

オッレルス｢変な髪型……｣ｼｭﾝ

シルビア｢さあ、どうする？｣

シルビア｢ま、どうしても嫌って言うなら強制はしないけどね｣

オッレルス｢切ってもらうよ｣

オッレルス｢シルビアが練習してくれたんだから断るのは失礼だしさ｣

シルビア｢別に気にしないけどね｣

シルビア｢まあいいや、切るってんならハサミ貸しな｣

オッレルス｢はい｣ｽｯ

今回の投下はここまで。
乙ありです！

………………………


フィアンマ｢今度こそ解決じゃないか｣

オッレルス｢どうしてそう思うんだよ｣ｶﾀｶﾀ

フィアンマ｢また切ってもらえばいいだろう？｣

オッレルス｢！？！？｣ﾋﾞｸ

フィアンマ｢ん？ なぜそんな反応をするんだ？｣

フィアンマ｢もしや、とても下手だったりしたのか？｣

シルビア｢そんな事は無いはずだと思うけど？｣

オッレルス｢ああ……むしろすごい上手だったよ｣

フィアンマ｢ますます意味分からないぞ？｣

オッレルス｢……笑わないでくれるかな？｣

フィアンマ｢は？ ……まあ、そう言うなら笑わないようには気をつけるが……｣

オッレルス｢……怖いんだよ、シルビアのハサミ使いが｣

フィアンマ｢ハサミ使い？｣

オッレルス｢目をつむっていても刃先がまぶたに当たって怖いんだよ｣

オッレルス｢軽いトラウマかな？｣ｱﾊﾊ

シルビア｢ははは……はははははは……｣

フィアンマ｢なるほどな｣

オッレルス｢自分で切ろうにも刃先が目の近くにあると怖くて目をつむっちゃつんだよね｣

オッレルス｢そんなんだから魔神になれないんだって思われそうで、言いたくなかったんだよね｣ｱﾊﾊ……

フィアンマ｢そんなに思い悩むことはないだろうさ｣

フィアンマ｢誰でも苦手の一つや二つあるものだ｣

オッレルス｢そう言ってもらえると嬉しいよ｣

フィアンマ｢そして……｣ﾁﾗ

シルビア｢あ、やっぱり私か｣

フィアンマ｢もう少し練習して、トラウマを解消させてやるしかないだろうな｣

シルビア｢へぇ、意外とポジティブな言葉だね｣

フィアンマ｢ん？ 何のことだ？｣

シルビア｢いいや、何でもないよ｣

フィアンマ｢で、お前は｣

オッレルス｢え、私？｣

フィアンマ｢俺様が特別に切ってやる｣

フィアンマ｢俺様が全て人に任せっきりではないということの証明のために、な｣

オッレルス｢え、怖いんだけど｣

フィアンマ｢目を閉じていればいい｣

フィアンマ｢心配するな。人の髪の毛をいじる方が俺様自身の髪の毛をいじるより得意だからな｣

オッレルス｢うーん、それじゃあ頼むよ……｣

フィアンマ｢ふふふ、俺様の腕に恐れ、おののくといい｣

ﾁｮｷﾁｮｷﾁｮｷ……


フィアンマ｢どうだ。元の髪型が分からないから少し違うかもしれないが、悪くないだろう？｣ｶｶﾞﾐ

オッレルス｢おおっ！ 久々の感じだよ｣ｻﾜｻﾜ

オッレルス｢本当にありがとう！｣

フィアンマ｢ふむ、お気に召したようで何よりだ｣

オッレルス｢にしても、これで苦手って、どれだけ得意のハードル高いのさ｣

フィアンマ｢だからさっき言ったろう、俺様の髪を切るときは失敗しないように気を使わないとならないから苦手なんだ｣

フィアンマ｢だが、人の髪を切るときはその辺を気にしなくてもいいからやりやすい、ただそれだけの話だ｣ﾌﾌﾝ

オッレルス｢き、気にして欲しいな！｣

フィアンマ｢それは無理な相談だ｣

フィアンマ｢自由に切ることを制限されたら、そこまで自然な髪型にはできななっただろうよ｣

オッレルス｢……そっか、まあ、結果オーライってことにしておこうかな｣

シルビア｢ん、切り終わったのかい？｣

オッレルス｢ほら、見てごらんよ｣ｼﾞｬｰﾝ

シルビア｢おお、いい感じじゃないか｣

シルビア｢久々にスッキリしたんじゃない？｣

フィアンマ｢ふん、俺様の手にかかればこんなものさ｣

シルビア｢えらいえらい｣

フィアンマ｢おい、子供扱いするな｣ﾑｶｯ

オッレルス｢まあまあ、ムカついてもいいことはないよ｣

フィアンマ｢……それもそうだな｣

オッレルス｢それじゃあ、そろそろ続きやるかな……｣

フィアンマ｢続き？｣

オッレルス｢そう。座学タイム、終わってないだろう？｣

フィアンマ｢お、覚えていたのか｣ｽﾞ-ﾝ

シルビア｢っと、じゃあ私は邪魔しないよう、後片付けでもしておくよ｣

オッレルス｢ああ、シルビア、ごめんね｣

シルビア｢構わないよ。さっさと終わらせちゃいな｣

フィアンマ｢ああ……不幸だ｣

今回の投下はここまで！
おつありですー

『俺様の部屋』

オッレルス｢そういえばさ｣

フィアンマ｢なんだ｣ﾓﾐﾓﾐ

オッレルス｢あ、もう少し強めで｣

フィアンマ｢……少し待ってろ｣

フィアンマ｢凝りに凝ったお前の肩に丁度いいものを探してきてやる｣ｽﾀｽﾀ

フィアンマ｢俺様のか弱い手ではおまえの凝りをほぐす事は出来ない｣ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ

オッレルス｢ちょっと待って？｣

フィアンマ｢なんだ？｣

オッレルス｢なぜキッチンに向かったのか参考までに聞かせてもらおうかなって思ったんだけど｣

フィアンマ｢ああ、これを持ってくるためだ｣ﾒﾝﾎﾞｳ

オッレルス(何を伸ばす気だ！！)

フィアンマ｢はあ、確かに俺様がいるせいで、ベッドが使えないのも、それによって肩が凝るというのもよく分かる｣ﾎﾟｲ

オッレルス(それをそんなところに放っておいたらシルビアに締められるよ！！)

フィアンマ｢申し訳ないとも一応思っている｣

フィアンマ｢だが、肩を揉ませる必要はないだろう！！｣

オッレルス｢え？ それはつまり湿布でも貼っておけって意味？｣

フィアンマ｢お前……魔術があるだろう｣

オッレルス｢ああ、確かにあるね｣

フィアンマ｢面倒だというなら俺様が特別にやってやってもいいんだぞ｣

フィアンマ｢肩揉みよりははるかに楽だろうしな｣

オッレルス｢いやいや、それは駄目だよ｣

フィアンマ｢は？｣

オッレルス｢そんなことばかり言ってるから君は体力が無いんだ｣

フィアンマ｢面と向かってお前は体力が無いと言われるのは少しグサッと来る｣

オッレルス｢事実だろう？｣

フィアンマ｢……いや、そんなことはよく分かっているが……｣

フィアンマ｢…………｣

フィアンマ｢俺様の魔力は体力不足を補って余りあるんだから問題ないだろう？｣

オッレルス｢言うと思ったよ、予想通り｣

オッレルス｢フィアンマの体力不足は魔術の為に体力を犠牲にしているとかじゃないだろう？｣

フィアンマ｢そうだが……｣

フィアンマ｢体力などある程度あればいいはずだ｣

フィアンマ｢肉弾戦をするという訳でもあるまいし｣

フィアンマ｢俺様はあくまで魔術師なんだからな｣

オッレルス｢そんなこと知ってるよ。でも言い切れないじゃないか｣

オッレルス｢何事にも万が一は付きものだよ｣

オッレルス｢走って逃げなくちゃならない時だってあるかもしれない｣

フィアンマ｢う……｣

オッレルス｢だから少しずつでも体力つけようよ。なにもシルビア並みの体力おばけになれとは言わないからさ｣

フィアンマ｢……分かった。体を動かすのは好きではないが、理にかなっている｣

オッレルス｢うししし、そういってくれると思ってたよ｣

オッレルス｢それじゃあ手始めに肩揉みよろしくね｣

フィアンマ｢なるほどな｣ﾌﾞﾝ

オッレルス｢なっ！ 危ないな……｣ｽﾞｻﾞｯ

フィアンマ｢体よく俺様をこき使うための言葉だったんだな。信用した俺様が愚かだった｣

オッレルス｢ムカついたからといって魔術をすぐ使うのはやめてくれよ｣

フィアンマ｢安心しろ。家は破壊しないよう気を付けている｣

オッレルス｢出来れば私のことも破壊しないよう気を付けてほしい！！｣

フィアンマ｢よく考えたら分かることだったじゃないか……肩揉み程度で体力がつくわけないことくらい｣

フィアンマ｢俺様を馬鹿にするのもいい加減にしろよ｣

シルビア｢まあまあ、そんなにいきり立たなくてもいいんじゃないか？｣

フィアンマ｢なんだ？｣

シルビア｢うわ、声低すぎじゃないか……｣

フィアンマ｢ふん、俺様はイライラしているんだ｣

シルビア｢いったい何をしたってんだい？ なんなら私が仲裁しても……｣

オッレルス｢あはははは、体力をつけてもらおうと思って、肩揉みを頼んだんだけどね｣

オッレルス｢ごめん、そんなに怒るとは思って無かったんだ｣

フィアンマ｢……お、俺様も短気過ぎた｣

フィアンマ｢肩揉みごときで怒るべきでは無かったな。済まない｣

シルビア｢え？ 自己解決？｣

フィアンマ・オッレルス(この女・シルビアに仲裁をやらせるくらいなら俺様・私が折れる！！)

シルビア｢ま、それが大人としては一番正しい行動かね｣

オッレルス｢ははははは、私たちは仲良しだからね。些細なことで喧嘩したってすぐ仲直りさ｣

フィアンマ｢それは違う｣

シルビア｢ところでフィアンマに提案があるんだけど｣

フィアンマ｢俺様に提案？｣

シルビア｢そう。体力云々ってのにも役立ちそうな話なんだけどね｣

オッレルス｢ああ、あれね｣

フィアンマ｢な、なんだ？｣

シルビア｢フィアンマの部屋を作ろうと思うんだけど、どうだい？｣

フィアンマ｢……俺様の？｣

シルビア｢そう。ずっとリビングで勉強してるのもあれだろうし｣

シルビア｢あと、こいつの肩もそろそろ限界みたいだし｣

オッレルス｢あはは……｣

シルビア｢一人の空間も欲しいだろうしね｣

フィアンマ｢部屋の余りがあったのか？｣

シルビア｢まあ、一応｣

オッレルス｢あることにはあるんだけど、倉庫と化しているわけ｣

フィアンマ｢ああ……体力云々というのは片付けのことだったわけか｣

シルビア｢そういうことだ｣

シルビア｢どうだい？ やる？｣

フィアンマ｢……たまには体を動かそうと決めたばかりだからな｣

フィアンマ｢部屋獲得の為に少し本気を出させてもらおう｣

今回の投下はここまで！
乙ありです！

……………………

フィアンマ｢これは捨ててよし。これもこれもこれも……｣ﾎﾟｲﾎﾟｲ

オッレルス｢そのゲームはもう売ってないんだよ！！｣

シルビア｢な！ それはベストメイド賞の特集がある雑誌！！｣

フィアンマ｢……なあ、こんなこと言うのはあれだが、お前たち、物捨てられない人間だろ｣ﾊｱ

シルビア・オッレルス｢っ……｣ｷﾞｸ

フィアンマ｢……それにしてもメイドが断捨離できないなんてな｣ﾎﾟｲﾎﾟｲ

シルビア｢だ、誰でも苦手の一つや二つあるものだ｣

フィアンマ｢俺様のマネをして追及を逃れようとしても無駄だぞ｣

オッレルス｢……｣ｼﾞｰ

フィアンマ｢なぜこっちをじっと見ている……？｣ﾁﾗ

フィアンマ｢さっさとその抱えているゲームなどをよこせ｣

オッレルス｢嫌だね！ 捨てられるに決まってるし｣

フィアンマ｢おいおい、子供のわがままみたいなことを言われても困るぞ｣

フィアンマ｢俺様は保護者じゃないんだ。さっさと渡せ｣

フィアンマ｢お前は……｣ﾁﾗ

シルビア｢私も拒否だよ｣

フィアンマ｢……ならどうしろと言うのだ……｣ｱﾀﾏｶｶｴ

フィアンマ｢この山をどかさないと家具を入れることもできないんだぞ｣ｺﾝﾜｸ

フィアンマ｢……そうだ！｣ﾋﾗﾒｷ

フィアンマ｢どうしても捨てたくないものがあるなら自分の部屋へ持ち帰れ｣

フィアンマ｢それ以外は未練が残らないよう、俺様の炎で燃やし尽くす｣

フィアンマ｢これでどうだ？｣

シルビア｢……分かったよ。それでいい｣

オッレルス｢うん、私もそれでいい｣

フィアンマ｢じゃあさっさと持って行ってくれ｣

オッレルス｢はいはい｣ｶﾞｻｺﾞｿ

フィアンマ｢さて、そのうちに俺様はベッドの準備でもしてるか｣ｽﾀｽﾀ

フィアンマ(なぜ俺様があんなに睨まれないとならないんだ……)ﾊｧ

……………………………
…………

フィアンマ｢ようやく片付け終わったな……｣ﾉﾋﾞｰ

オッレルス｢私のゲームはその犠牲になったのか｣

シルビア｢私のコレクションも犠牲になった｣

フィアンマ｢そんなこと言ってももう遅いぞ。これから焼却してくるからな｣

オッレルス｢燃やしてるところ見てもいいかい？｣

オッレルス｢最後の別れがしたくてね｣

フィアンマ｢別にいいが……｣

シルビア｢私は耐えられなそうだからやめておくよ｣

フィアンマ｢そうか。俺様はどちらでも構わないがな｣ﾌﾝ

フィアンマ｢お前は大丈夫なのか？｣

フィアンマ｢外に行ってから、やっぱり燃やすなとか言われても困るぞ｣

オッレルス｢だ、大丈夫だよ……｣

フィアンマ｢本当か？｣

オッレルス｢心配いらないよ……多分｣

フィアンマ｢おい、俺様はお前に本気で暴れられたら、手も足も出ないんだぞ？｣

フィアンマ｢作業の邪魔をされたら困るんだ。一瞬で炭にしないと、有害なガスなどが出て困るしな｣

フィアンマ｢……絶対に邪魔をしないと命をかけて誓えるか？｣

オッレルス｢う……やっぱりやめておくよ。衝動的にやってしまいそうだし｣

フィアンマ｢そうか｣

フィアンマ(モノへの執着が凄すぎる気がするな……)ﾄﾞﾝﾋﾞｷ

フィアンマ｢燃やしてきた｣

オッレルス｢おお、お疲れー｣

フィアンマ｢意外とあっさりした反応だな｣

シルビア｢終わったことを嘆いても意味が無いからね｣

フィアンマ｢そうか。面倒な目に遭わなくて良かった｣

フィアンマ｢なにはともあれ片付いたということか……｣ﾊｧ

オッレルス｢そうだね｣

フィアンマ｢それじゃあ家具を運ぶとするか、面倒だが｣ｳｳ…

シルビア｢もう運んであるけど？｣

フィアンマ｢え？｣

オッレルス｢二、三個だし、すぐに終わったよ｣

フィアンマ｢え？｣

フィアンマ｢えっと……体力云々というのは無しになったのか？｣

オッレルス｢あ……忘れてた｣

シルビア｢……出すか？｣

オッレルス｢そうするしかないか……｣

フィアンマ｢ちょっと待て、わざわざ出す必要はないだろ！｣

フィアンマ｢そんなの徒労にすぎないだろう！！｣

シルビア｢いや、でもねえ……アンタの期待を裏切るのも可哀そうじゃないか｣

フィアンマ｢俺様は全然大丈夫だ。可哀そうじゃない｣

オッレルス｢うーん、まあ、フィアンマがそこまで言うのならいいか｣

フィアンマ｢ああ。それでいい｣

………………………


フィアンマ｢……ということで俺様専用の部屋を手に入れたわけだが｣ﾁﾗ

オッレルス｢あっ、フィアンマ帰って来ちゃったよ｣ﾄﾞｯﾁｬﾘ

シルビア｢まずいね……｣ﾄﾞｯﾁｬﾘ

フィアンマ｢ここはお前たちの倉庫じゃない！！！｣

今回の投下はここまでー
乙ありです！

『ゲームデー』

………フィアンマの部屋………

ｺﾝｺﾝ

フィアンマ｢……｣ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

ｺﾝｺﾝ

フィアンマ｢……｣ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

ｼｰﾝ

フィアンマ｢……やっと静まったか｣ﾊｧ

オッレルス｢ゲームしない？｣ﾊﾞｰﾝ

フィアンマ｢まだ来るのか……｣

オッレルス｢この前言ってただろ？ 俺様もゲームしてみたいなぁ、みたいなこと｣

フィアンマ｢確かにやってみたいとは言ったがTPOをわきまえるべきだろう？｣

オッレルス｢うーん……｣ｸﾋﾞｶｼｹﾞ

オッレルス｢もしかして、邪魔したかな？｣ﾋﾟｶｰﾝ

フィアンマ｢分かっているなら帰れ｣

オッレルス｢いや、分かってないよ｣

オッレルス｢ただ可能性の一つを挙げてみただけさ｣

フィアンマ｢そうか……なら、教えてやる｣

フィアンマ｢俺様は今復習しているんだ｣ﾊﾟﾗﾗﾗ

オッレルス｢いやいや、復習なんていらないでしょ｣

フィアンマ｢確かにそうかもしれないが、油断していると足元をすくわれる｣

フィアンマ｢まさに経験者は語る、だ。念には念をとも言うだろう？｣

オッレルス｢……でもたまには息抜きもしないとだろ？｣

フィアンマ｢……息抜きならついこの前かくれんぼした気がするが？｣

フィアンマ｢まあ、あれは息抜きと言えるかは微妙だがな｣

オッレルス｢いや、そうだけど｣

オッレルス｢それは今日じゃないでしょ？｣

オッレルス｢だから今日の息抜きはゲームってことでさ？｣

フィアンマ｢何度も息抜きをしていたらそれは息抜きではなくなるのではないか？｣

フィアンマ｢つまり、今日やるゲームは息抜きでもなんでもないただの遊びだ｣

オッレルス｢固いこと言ってないで一度やってみればいいんだよ｣ｽｯ

オッレルス｢シルビアが来たら面倒だからさー｣

フィアンマ｢……一体どんな関係なんだ、お前らは｣

フィアンマ｢親子なのか？｣

オッレルス｢いや、どう見てもそんなわけないじゃん｣

オッレルス｢年の差なんてほとんどないしさ｣

フィアンマ｢いや、例えに決まってるだろう、真に受けるな｣

フィアンマ｢それに年の差がほとんどないことくらい見ればわかる｣

フィアンマ｢だから……実際のところはどうなんだ？｣

オッレルス｢どちらかといえば親子っていうより……ね、うん｣

フィアンマ(はぐらかすか……)

オッレルス｢それよりゲームしない？｣

フィアンマ｢……俺様はゲームをする気はない｣ﾌﾝ

オッレルス｢……｣

オッレルス｢ははーん、ゲームやっても勝てないから、やらないって断固拒否の姿勢を貫くんだね｣ﾆﾔｧ

オッレルス｢いいよいいよ。言いふらしてやるから｣

オッレルス｢フィアンマはゲームでも勝てないってね｣

フィアンマ｢分かりやすい煽りだな……｣

フィアンマ｢そんなものに乗るのは一昔前の三流くらいだ｣

オッレルス｢ははは、やっぱりそうだよね……｣

今回の投下はここまで
乙ありですー！

フィアンマ｢ちなみに俺様は一昔前の三流だ｣ﾌｯ

オッレルス｢え｣

フィアンマ｢その挑発に乗ってやるって言っているんだ｣

オッレルス｢……へぇ、もしかしてゲームでも勝てないって所にムカついたのかな？｣

フィアンマ｢くくくっ、笑わせるな｣

フィアンマ｢その程度のことで俺様が憤るわけもないし、ゲームごときで負けるわけなどないだろう｣

フィアンマ｢最近はたまたま負けが続いているだけだ｣

オッレルス(なんだこれ、チョロすぎる)

オッレルス(こんな挑発に乗る奴なんて今どき三流でもありえないよ……)

オッレルス｢……じゃあ、Wiiにする？｣ﾎｲｯ

フィアンマ｢なんでもいい。お前を徹底的に叩きのめすことができるならな｣ﾊﾟｼｯ

フィアンマ｢……俺様を馬鹿にしたことを後悔するといい｣ｷﾞﾛ

オッレルス(うわー、少し煽りすぎたかもしれないな)

フィアンマ｢さあ、さっさと操作方法を教えろ｣ﾌﾞﾝｯ

フィアンマ｢早く教えないとさっきの挑発をそっくりそのままお前に返すぞ｣

フィアンマ｢ははーん、操作方法教えたら勝てなくなるから、教えないって断固拒否の姿勢を貫くんだなってな｣

オッレルス｢……分かった、操作方法は教えるよ｣

オッレルス｢ただし、負けた時の言い訳、恨みっこは無しだよ｣

フィアンマ｢いいだろう｣

オッレルス｢このボタンがアクセルでこっちがブレーキ｣

オッレルス｢スタートダッシュはこうする……｣ﾎﾟﾁｰ ｷﾞｭｰﾝ

フィアンマ｢失敗したが？｣

オッレルス｢タイミングだよ｣

フィアンマ｢ふむ……｣ｷﾞｭｰﾝ

オッレルス｢このブロックが頭上に出てきたときは……｣ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

オッレルス｢リモコンを振ってあげるとあまり減速しないで済むんだ｣

フィアンマ｢っ……タイミングが結構難しいな｣ﾌﾞﾝ

オッレルス｢そこはファイト、としか言いようがないね……｣

…………………………
…………

オッレルス｢これで操作は一通り教え終わったよ｣

フィアンマ｢そうか……ならば勝負と行こうじゃないか｣

オッレルス｢そんなに急で良いの？｣

フィアンマ｢体が感覚を忘れないうちに勝利を掴んでおかないとな｣

オッレルス｢……フィアンマがいいなら私も今日でいいんだけどね｣

フィアンマ｢ふふふ、俺様が勝ったらあの女とお前の関係を答えてもらうぞ｣

オッレルス｢なに勝手に決めてるんだよ。ま、負ける訳無いしそれでもいいけど｣

オッレルス｢でも私からもいいかな？｣

フィアンマ｢なんだ｣

オッレルス｢私が勝ったら、私の物置スペースを提供してくれ｣

フィアンマ｢……いいだろう｣

………………………

オッレルス｢よしっ、負けたかと思ったけどタッチの差で勝ったよ……｣ｸﾞｯ

オッレルス｢これで晴れて物置スペースを取り返すことができる｣

フィアンマ｢……｣ﾎﾞｰｾﾞﾝ

フィアンマ｢……俺様が、負けるだと？｣

フィアンマ｢もう……何回目だ……？ 勝負事で負けるのは｣ｳｳ

オッレルス｢そんなにショック受けなくてもいいって｣

オッレルス｢初心者にしては健闘したほうだと思うよ。焦ったし｣

フィアンマ｢たかがゲームだぞ？｣

オッレルス｢たかがゲーム、されどゲームだよ｣

オッレルス｢初心者がハンデもなしでそこそこ上手いはずの私を焦らせたんだからそんなに落ち込む必要はないよ｣

フィアンマ｢勝てなくては意味が無い｣

フィアンマ｢だから次は負けない｣ﾎﾟﾁ

オッレルス｢……も、燃えてるね……さすが火を司るだけあるね｣

フィアンマ｢それは関係ないな｣

フィアンマ｢とにかく、俺様は練習するから出ていけ｣

オッレルス｢え、物置……｣

フィアンマ｢それは魔術の講義の時にでも持って来い｣

オッレルス｢……そのWiiは私のなんだけど……｣

フィアンマ｢分かってる｣

フィアンマ｢だから俺様はついさっき自分用のWiiをポチッた｣

オッレルス｢え｣

フィアンマ｢む、言い方が悪かったか｣

フィアンマ｢自分用のを買った｣

オッレルス｢わざわざ？｣

フィアンマ｢ああ。今度こそお前を出し抜いてやる｣

フィアンマ｢首を洗って待ってるといい｣



オッレルス｢……一応言っておくけど、ソフトを買わないとゲームはできないからね｣



フィアンマ｢……追加ポチ確定か｣ｽﾞｰﾝ

今回の投下はここまで！
そろそろ話が進む予定。

『お空に浮かぶもの』

フィアンマ｢……設定できないな｣ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ…

ｶﾞﾁｬ

オッレルス｢フィアンマ！ 大変d｣

フィアンマ｢ノック。出直して来い｣

オッレルス｢……厳しいなぁ｣ﾊﾞﾀﾝ

フィアンマ｢おい……本当に出直すやつがあるか？｣

ｺﾝｺﾝ

オッレルス『開けてもいいかな？』

フィアンマ｢ああ｣

フィアンマ｢一度勝手に開けておいて何を言ってるんだとは思うがな｣

ｶﾞﾁｬ

オッレルス｢失礼するよ｣

フィアンマ｢ああ。何の用だ？｣

オッレルス｢大変な用はあるんだけど、その前にちょっとしたことを話しておくよ｣

フィアンマ｢そこは普通、大変な用とちょっとしたこと、どっちを先に聞きたい？ と聞くところだろう？｣

オッレルス｢その普通って考え方はどこから仕入れてきたの？｣

フィアンマ｢……そこは、多分常識の違いだ。スルーしてくれ｣

オッレルス｢……じゃあスルーして、ちょっとしたことについて話すとしよう｣

フィアンマ｢っていうか、ちょっとしたことでそこまで溜めるな｣

オッレルス｢はいはい……｣

オッレルス｢ついにグレムリンが動き出したんだよ｣

フィアンマ｢それは全然ちょっとしたことじゃないな｣

オッレルス｢そうかな？ 今までは表立った動きをしていなかっただけで、こそこそと準備はしていたんだし｣

フィアンマ｢それで？ 具体的にどんな動きがあったんだ？｣

オッレルス｢グレムリンの登場セレモニーみたいと言っても過言じゃないくらい大々的なものだった｣

オッレルス｢まあ、別に私たちが動くまでもないようなことなんだけどね｣

フィアンマ｢……前置きはもういいぞ｣ｳｰﾝ

オッレルス｢ああ、そうだね｣

オッレルス｢ラジオゾンデ要塞と仮称された空中移動要塞が現れた｣

フィアンマ｢ラジオゾンデ要塞？｣

フィアンマ｢空中移動要塞って、俺様の真似としか思えないようなことをするな｣

オッレルス｢確かに形状はそっくりだけど、用途が違う｣

フィアンマ｢そんなのは言われなくとも分かる｣

オッレルス｢グレムリンは上条当麻の有無を追っていたらしくてね｣

オッレルス｢それを誤魔化しつつもサーチ掛けるための物らしい｣

フィアンマ｢確かに用途が違うな｣

フィアンマ｢俺様はそんなちゃっちいことの為にそんなことはしない｣

オッレルス｢フィアンマのことはどうでもいいよ｣

フィアンマ｢……そうだな｣

フィアンマ｢ラジオゾンデ要塞？｣

フィアンマ｢空中移動要塞って、俺様の真似としか思えないようなことをするな｣

オッレルス｢確かに形状はそっくりだけど、用途が違う｣

フィアンマ｢そんなのは言われなくとも分かる｣

オッレルス｢グレムリンは上条当麻の有無を追っていたらしくてね｣

オッレルス｢それを誤魔化しつつもサーチ掛けるための物らしい｣

フィアンマ｢確かに用途が違うな｣

フィアンマ｢俺様はそんなちゃっちいことの為にそんなことはしない｣

オッレルス｢フィアンマのことはどうでもいいよ｣

フィアンマ｢……そうだな｣

フィアンマ｢で、結局落ちたのか？｣

オッレルス｢そんなわけないじゃないか。万が一そんなことが起こる寸前まで行ったら私だって動く｣

フィアンマ｢だろうな｣

オッレルス｢そもそも、私としても、グレムリンとしても、防がれる前提の物だったから｣

フィアンマ｢ふむ、そんな保証はないだろう？｣

オッレルス｢確かに確信を持っては言えないけど、多分誰かが阻止するのを見越しての行動だったはずだよ｣

オッレルス｢その証拠に……要塞の中の写真なんだけど｣ｽｯ

「Welcomehome，hero.｣ ｢FromﾞGREMLINﾞ｣

フィアンマ｢……上条当麻が生きているのも前提だったらしいな｣

オッレルス｢そうだね｣

今回の投下はここまで！！
おつありですー！

フィアンマ｢だが、よくそんなものの墜落を阻止できたな｣

フィアンマ｢そこへ行こうとしても撃墜術式が厄介だろう｣

オッレルス｢聞くところによると、イギリス清教の聖人が成層圏から落下することで到達したらしいよ｣

フィアンマ｢さすが聖人だな｣

フィアンマ｢俺様達普通の奴とは体のつくりが違う｣

オッレルス｢いや、フィアンマも普通とはだいぶ違うと思うよ｣

フィアンマ｢聖人ほど並外れた肉体は持ってない｣

オッレルス｢別の並外れたものを持ってるからイーブンだね｣

フィアンマ｢意味が分からないな｣

フィアンマ｢それにしてもなぜ動き出した時に言わなかったんだ？｣

フィアンマ｢事後報告されても正直困るんだが｣

オッレルス｢……今回の件は正直どうでもよかったからね｣

フィアンマ｢どうでもいい？ グレムリンの邪魔をするんじゃなかったのか？｣

オッレルス｢まあ……そうなんだけどさ｣

オッレルス｢今回はイギリス清教と学園都市のタッグで何とかしたらしいし、私たちが何でもかんでも出張る必要は全くないんだよ｣

オッレルス｢あまり派手に動くとイギリス清教やらローマ正教やらに目を付けられちゃうからね｣

オッレルス｢下手したら見つかる｣

フィアンマ｢なるほどな。確かに俺様も追われるのは苦手だ｣

フィアンマ｢だが、お前も追われていたんだな｣

オッレルス｢そりゃね。これでも魔神のなり損ないだから｣

オッレルス｢……ローマ正教にも追われてるよ｣

フィアンマ｢聞いたことが無いんだが｣

オッレルス｢そんな簡単に裏の組織は出せないでしょ｣

オッレルス｢フィアンマが私の存在を知ったら勝手に動きかねないだろうし、上はよく君の扱いを分かっているじゃないか｣

フィアンマ｢それを知った時どう動くかは、俺様が状況を見て判断する｣

フィアンマ｢俺様以外に決める権利なんかありはしないさ｣

オッレルス｢……本当によく扱いが分かってたみたいだね｣

フィアンマ｢え？｣

オッレルス｢じゃあ、もしローマ正教で魔神のなり損ないの魔術師を追っているって報告を受けたらどうする？｣

フィアンマ｢言うまでもないだろ？ 俺様が出るに決まってる｣

オッレルス｢やっぱりか｣

フィアンマ｢俺様は戦闘狂ではないが、強そうな相手が気になるのは当然だ｣

フィアンマ｢もちろん、部下の無駄な消耗を避けるため、という建前は用意するが｣

オッレルス｢さすがに全盛期のフィアンマとは私も戦いたくはないな……｣

フィアンマ｢そうか？ そんなの魔神に挑もうという男の言葉じゃないだろう？｣

オッレルス｢そうだけど、追手を追い返すためだけに命張るのは勘弁だよ｣

フィアンマ｢……俺様は戦ってみてもよかったかもしれないな｣

オッレルス｢と言うと？｣

フィアンマ｢お前と戦っていたら間違いなく自信を無くしていただろうということだ｣

フィアンマ｢この程度の男に苦戦しているようじゃ世界を救うことなんかできないだろう、と｣

オッレルス｢なるほど。この程度って言われるのはアレだけど、君の考えを変えるきっかけになるんだったらたたかってみてもよかったかもね｣

フィアンマ｢あくまでもifの話だが｣

オッレルス｢それもそうだね｣

オッレルス｢もし本当にぶつかってたら被害が想像できないね｣

フィアンマ｢……む、それもそうか｣ｳﾑﾑ

フィアンマ｢ところで、本題にはいつ入るんだ？｣

オッレルス｢あ、すっかり忘れてたよ｣

フィアンマ｢……はぁ、グレムリンが動き出したことを小さなこと、と切り捨てられるほどの大事なんだろう？｣

フィアンマ｢ふつう忘れないだろう……｣

オッレルス｢そ、そんな目で見る事は無いかと……｣

フィアンマ｢いいから言え｣

オッレルス｢またシルビアにおつかいを頼まれてね｣

フィアンマ｢そうか。何が重要なのか分からないが、いってらっしゃいだな｣

オッレルス｢え、その対応は冷たくない？｣

フィアンマ｢……いいからさっさと行ってこい｣

オッレルス｢…………そうだね、行ってくるよ｣

フィアンマ｢ああ、いってらっしゃいだ｣

ｶﾞﾁｬ

オッレルス｢……やっぱり、まだ言う必要はないかな……｣ﾌｩ

今回の投下はここまでです！
乙ありですー

『ジャパニーズ』

オッレルス｢へいき、ヘイキ、平気、兵器……｣ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

シルビア｢……何やってるんだい？｣

オッレルス｢日本語の勉強さ｣ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

シルビア｢日本語？ 話せなかったっけ？｣

オッレルス｢一応話せるんだけど……｣

シルビア｢じゃあなぜ？｣

オッレルス｢この前原石の件で学園都市に行ったとき思い知ったんだよ｣

オッレルス｢私の日本語はまだまだネイティブレベルではないとね｣

フィアンマ｢……んん？ 聞かせてもらったぞ｣ｶﾂｯ

オッレルス｢ん？ どうしたの？｣

フィアンマ｢それなら俺様が教えてやろうか？？？｣ﾆﾔﾆﾔ

フィアンマ｢これでも言語の習得は得意なもんでな｣

シルビア｢ああ、いいかもしれない｣

シルビア｢いつもと教師と生徒が逆転するわけだ｣

フィアンマ｢そういうことだ｣ﾌﾌﾌ

オッレルス｢じゃあ、お願いしようか｣

オッレルス｢フィアンマは上条当麻と戦ったことがあったんだしね｣

フィアンマ｢……まあ、そうだな｣ｳﾝ

オッレルス｢ということはそれなりに複雑な日本語を使って会話したってことだろう？｣

フィアンマ｢そ、そうだ｣

フィアンマ｢奴は日本人だからな……｣

オッレルス｢フィアンマは？｣

フィアンマ｢イタリア人だが……ってそんなことどうでもいいだろう！｣

オッレルス｢ごめんごめん、面白くなってつい｣ｱﾊﾊ

フィアンマ｢笑ってないで勉強をしろ！｣

オッレルス｢そ、そうだね。でもその前に……｣ﾆｺ

シルビア｢なぜこっちに微笑みかけてるのかな？｣

オッレルス｢シルビアは日本語できる？｣

シルビア｢……｣

シルビア｢道連れにする気かい？｣

オッレルス｢道連れだなんてそんな。ライバルがいた方がやる気出るかなって｣ﾆｺﾆｺ

フィアンマ｢ふむ、それはいい考えだな｣

シルビア｢ちょっと待って、本人は何も言ってないよ！？｣

フィアンマ｢そんなこと俺様は知らない。気にする必要性もない｣

フィアンマ｢教師というものは生徒の力を伸ばすのに最適な環境を整えてやるものだろう？｣

シルビア｢わ、私は日本語話せるんだけどね｣

フィアンマ｢流暢にか？ コイツ何言ってるんだ、と嘲笑されないくらいにか？｣

シルビア｢うっ……｣

フィアンマ｢安心しろ。俺様の特別日本語講座を受ければある程度複雑な会話もできる｣

フィアンマ｢魔術のことだろうと科学のことだろうと事足りるだろうさ｣

フィアンマ｢こいつのためにも手を貸してくれないか？｣

シルビア｢……わかったよ｣

フィアンマ｢ま、強制参加なんだがな｣ﾊﾊﾊ

オッレルス｢一緒に頑張ろうじゃないか、シルビア｣

シルビア｢まさか……｣

フィアンマ｢授業を始めるぞ。余計なものはしまえー｣ﾆﾔﾘ

シルビア｢ハメられた！！！｣

今回の投下はここまで！
乙ありですー！

『子供嫌い』

ﾁｭﾝﾁｭﾝ

フィアンマ｢……｣ﾑｸ

フィアンマ(……もうだいぶ日が昇っているな)

フィアンマ｢ふぁあ……｣

フィアンマ(どう考えても寝すぎた……)

フィアンマ｢えっと……十一時か｣

フィアンマ(まだ昼食には早いが、朝食を今食べると昼食に響くからな……)

フィアンマ｢とりあえず……顔でも洗って、目を覚ますとするか｣ﾇｯ

フィアンマ｢ついでに水でも飲もう……｣

ｶﾞﾁｬ

フィアンマ｢俺様が起きたぞーっと……｣ｺｿｯ

子供｢あれれ？ 知らないお兄ちゃんだ！！｣ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

フィアンマ(……まだ俺様は寝ているのか？)

子供｢ねえねえ、イケメンさんじゃない？｣

フィアンマ(……もしや、あの二人の子供とか……)

フィアンマ(いや、年齢から考えてそれはまずい)

子供｢あ！ もしかしてオッレルスが言ってたお兄ちゃんじゃないかな｣

フィアンマ(まさか、託児所を経営していたとか……)

フィアンマ(いや、そんな気配は全くなかった)

子供｢うおお、じゃあ言いに行かないと｣ﾄﾄﾄ…

フィアンマ｢何なんだ、一体……｣

フィアンマ｢おい、そこのガキ｣

子供｢ん？ どうしたんだ、兄ちゃん？｣

フィアンマ｢一体何者なんだ？｣

子供｢わたしはー、オッレルスとシルビア姉さんのお友達なんだよ｣

子供｢命の恩人でもあるぜ｣

フィアンマ(命の恩人……)

フィアンマ｢何をしに来たんだ？｣

子供｢質問攻めだなー｣

子供｢ちゃんと一つ一つ質問に答えてあげるのも大人としては重要なスキルよ｣

子供｢……遊びに来た！｣

フィアンマ(どういうことだか分からない……)

フィアンマ(頭の中が整理できない！！)

フィアンマ｢遊びに来たと言ったな？｣

子供｢うん｣

フィアンマ｢なら、また質問で済まないが、なぜここにいる？｣

フィアンマ｢奴らとワイワイ遊んでいればいいだろう？｣

子供｢ふたりはーいまラブラブしながらおかし作ってるんだぜ｣

子供｢うわ。ラブラブとか言っちゃっていいの。チクっちゃおうかな｣

子供｢ばっ、黙ってろよ！｣

子供｢どうしようかな。条件次第では。言うこと聞いたげる｣

フィアンマ｢……なら水は断念か｣ﾎﾞｿ

フィアンマ｢こういう時は部屋でおとなしくしているべきだ……｣ｶﾞﾁｬ

子供｢うわ、逃げないでよ、お兄ちゃん！｣ｸﾞｲ

子供｢もしかして、鬼ごっこしたいの？｣ｸﾞｲｸﾞｲ

子供｢ねえねえー｣ｸﾞｲｰ

フィアンマ｢……そんなに人数がいるのだから、お前たちだけで遊んでいるといい｣

フィアンマ｢俺様は忙しいからな｣

フィアンマ(主にゲームの練習とかな)

フィアンマ(いや、ステルスの研究もしているからな)

フィアンマ｢分かったな？｣

子供｢うわーい！ お兄ちゃんの部屋だー｣ﾀﾀﾀ

子供｢おお、セイリセイトンされてるね｣

子供｢掃除が行き届いてる｣

子供｢たぶんケッペキショウってやつだよ！｣

フィアンマ｢勝手に入るな……｣

子供｢いまさら言っても遅いもん｣

子供｢ねー、もう観念して遊ぼうよ｣

子供｢きゃはは！｣

フィアンマ｢…………｣

今回の投下はここまで。
英語だけでいいからできるようになりたい……

……………………………
……………

フィアンマ｢……もう勘弁してくれ｣ｽﾞﾘｽﾞﾘ

子供｢わー、お兄ちゃん待ってよー｣

子供｢削れるー｣

フィアンマ(削れるならその両手を離せばいいだろう……)

フィアンマ(本当に、振り払えるのもなら振り払いたいものだ……)

フィアンマ｢おい｣ｷﾞﾛ

オッレルス｢あ、おはよう｣ｺﾈｺﾈ

フィアンマ｢……おはよう｣

フィアンマ｢この状態を見てよく平然と挨拶出来るな｣

オッレルス｢この状態って……カウンターに隠れて見えないんだけど｣

フィアンマ｢ふむ、それは悪かったな｣

フィアンマ｢簡単に言えば、両足に子供がくっついてきてる｣

シルビア｢ははっ、それは面白いね｣ｸﾂｸﾂ

フィアンマ｢……ふざけてるのか？｣ﾑｶﾑｶ

シルビア｢ふざけてないさ｣

フィアンマ｢とにかく、仲睦まじくクッキーを作っているところ悪いが話を聞け｣

フィアンマ｢いや、話すまでもないか……？｣

オッレルス｢そんなにイライラしてどうしたんだよ｣

フィアンマ｢どうしたもこうしたもない｣

フィアンマ｢今、俺様はかつてないほどに対応に困っているんだ｣

オッレルス｢足元の子供たちの対応に？｣

フィアンマ｢ああ。流石に魔術で吹っ飛ばすのは気が引ける｣

フィアンマ｢もちろん、お前らがいいと言うなら爆散させてもいいのだが｣

オッレルス｢やめて！？ 冗談でもやめてください！｣

フィアンマ｢やはりそう言うか。俺様がホウレンソウを覚えていてよかったな｣

シルビア｢じゃあどんな対処したんだい？｣

シルビア｢嫌な予感しかしないんだよね｣

フィアンマ｢走って逃げた｣

フィアンマ｢だけど追いつかれてまとわりつかれたわけだ｣

オッレルス｢……見た目通りの運動神経なんだね……｣

フィアンマ｢言うな。俺様はあくまで魔術師なのだからそっちの技能を求められても困る｣

オッレルス｢だから体力は大事だよっていったのになぁ｣

フィアンマ｢身をもって感じたからもう言わないでくれ｣

シルビア｢まあ、状況は理解したよ｣

シルビア｢逃げられないし、爆散もやめるべきだと思ったからくっつけたまま来たと｣

フィアンマ｢そのとおりだ｣

フィアンマ｢子供の対処など俺様にはできない｣

シルビア｢適当に遊んでやれば満足するって｣

フィアンマ｢適当にってのが分からないんだが？｣

オッレルス｢……そっか、それもそうだ｣

オッレルス｢じゃあ私が対処しておくよ。シルビア、後は任せた｣

シルビア｢ふっ、了解｣

フィアンマ(……さて、どうするのやら)ﾌｩ

今回の投下はここまでです。
乙ありです！

オッレルス｢よし、今日は私と遊ぼう。このお兄ちゃんは結構人見知りだったらしい｣

子供｢えー、赤髪のお兄ちゃんと遊べって言ったのオッレルスじゃん｣ｽﾞﾘﾘｰ

子供｢そうだそうだ！｣

オッレルス｢まあ、大目に見てくれよ。私の確認不足だ｣

子供｢まあいいや。それなら人見知りの兄ちゃんと仲良くなる方法教えてよ｣

オッレルス｢え、知らなっ！｣

子供｢ええー、知らないの……｣

オッレルス｢まあ、アドバイスくらいなら……｣

フィアンマ｢仲睦まじくクッキー作ってたのに悪かったな｣

シルビア｢いやいや、構わないよ｣

シルビア｢アンタに代わりやってもらうんだからね｣

フィアンマ｢ふむ、俺様に料理をしろということか｣

シルビア｢正しくはお菓子作りだ｣

フィアンマ｢……手先が器用な自信はあるが、左手だけで何とかなるものか？｣

シルビア｢問題ないね。あとは伸ばして型抜きして、オーブンに突っ込むだけさ｣

フィアンマ｢ほぼ終わりじゃないか。余裕だな｣

シルビア｢まあ、そう言われればそうだけど、あまり大きい型ばっかり使ってたら数が少なくなるなるから、その辺は考えて欲しいねえ｣

フィアンマ｢言われるまでもない｣

ﾉﾊﾞｼﾉﾊﾞｼ

フィアンマ｢それにしても、魔神のなり損ないだとかなんとか言っておきながら子供と遊んだりもするんだな｣

シルビア｢普段の行動見てたら分からないかい？｣

シルビア｢そこまで意外に感じるようなことでもないと思うけど｣

フィアンマ｢そうだが……普段からそうだが、魔神手前みたいな威厳みたいなものがないだろ｣

シルビア｢うーん、それは魔神うんぬんっていう先入観みたいなものがあるからそう見えるだけじゃない？｣

シルビア｢魔神のなり損ないって要素が無かったら、ただの大馬鹿野郎だからね｣

フィアンマ｢ただの大馬鹿野郎か……辛辣な物言いだな｣

シルビア｢ん？ 前に聞いたんじゃなかったのかい？｣

フィアンマ｢何をだ｣

シルビア｢人身売買組織を壊滅……｣

フィアンマ｢ああ、それか。確かに大馬鹿野郎だな｣

シルビア｢だろう？ 大馬鹿野郎はまだまだ馬鹿な子供と波長が合うんだろうよ｣

フィアンマ｢なるほど、納得だ｣

シルビア｢ところで、生地薄すぎだと思うんだけど……｣

フィアンマ｢あ、悪いな｣

シルビア｢まとめてやり直しってことで｣

フィアンマ｢横暴だな｣

シルビア｢左手一本で生き抜けるよう訓練してやってるんだから感謝してくれてもいいはずなんだけどね｣

フィアンマ｢女は怖いと言うだけあるな｣

オッレルス｢ふう、疲れたー｣ﾉﾋﾞｰ

フィアンマ｢ん？ あの子供たちと遊んでいたのではないのか？｣

オッレルス｢寝ちゃったよ。そんなことより、フィアンマがクッキーづくりなんて異様な光景だね｣

フィアンマ｢おい待て、異様は少しニュアンスが違くないか？｣

オッレルス｢あはは、少し言いすぎだったかな｣

フィアンマ｢あと、寝ちゃったじゃなくて眠らせたの間違いだろう？｣

フィアンマ｢突然騒ぎ声が止んだからな｣

シルビア｢へえ、気づいてたんだ｣

フィアンマ｢俺様は騒がしい音には敏感なのさ｣

オッレルス｢ああ、言われてみれば神経質そうかもしれない｣

フィアンマ｢分かっているなら二度と子供の興味を俺様に向けさせないでくれ、切実に｣

オッレルス｢ごめんごめん｣

フィアンマ｢軽いな。そんな適当な謝罪で許すわけがないだろう｣

シルビア｢じゃあ、みんなで食べる予定だったクッキー先に食べちゃうってのはどう？｣

フィアンマ｢物で釣れるとでも？｣

シルビア｢釣れないとでも？｣

フィアンマ｢……許してやるしかないな｣

オッレルス｢おうおう、軽いなぁ｣

フィアンマ｢黙っていろ｣ﾓｸﾞｯﾓｸﾞﾓｸﾞ

乙ありですー！
今回の投下はここまで☆

『魔法少女』

オッレルス｢……マジカルカナミンか｣

シルビア｢ん？ まだ起きてたのかい？｣

オッレルス｢ああ。新シリーズが始まるって聞いたからね｣

シルビア｢新シリーズ？｣

オッレルス｢敵対組織や衣装が変わるんだよ｣

オッレルス｢とりあえずかかくこくらいはリアルタイムで見るべきだと思ってね｣

シルビア｢ふーん？｣ﾁﾗか

シルビア｢なんのアニメ？｣

オッレルス｢魔法少女ものだよ｣

シルビア｢魔法少女？｣

オッレルス｢最近流行りの女の子が不思議な力を手に入れて敵と戦うっていうタイプのアニメさ｣

シルビア｢へえ、魔術って考えてもいいね｣

オッレルス｢私たちの魔術もこれくらい自由度が高かったらなって思ってしまうよ｣

シルビア｢アンタのは普通よりはよっぽど自由度高いと思うけどね｣

オッレルス｢そうかな？｣

オッレルス｢仕留められない相手が少ないだけで、自由度はそんなにないよ｣

シルビア｢あーあ、世界の魔術師たちを敵に回したね。まあ、それでも問題ないのが憎いね｣

オッレルス｢家主に対してその言い草はいただけないね｣

シルビア｢ははっ、金の入れ具合から考えるとシェアハウスみたいな物だから対等じゃない？｣

シルビア｢それにしてもあんなに色々できるのに自由度はそんなにないって、本当に贅沢なもんだ｣

オッレルス｢いやー、実際レパートリーが多いだけだって｣

オッレルス｢このカナミンみたいに杖を一振りしただけでどんな魔術でも行使できるってすごく自由度高いと思わない？｣

オッレルス｢下準備も時間も霊装も不要。ただ杖を振るだけ｣

シルビア｢私はそこまで自由度高いのも問題じゃないかと思うけどね｣

オッレルス｢そう？｣

シルビア｢だって自由すぎると何をしたらいいのかって分からなくなりそうな気がする｣

オッレルス｢ああ……何でもできるが故の悩みってことかな｣

シルビア｢そんなところ｣

オッレルス｢あ、でもまずい問題が一つある｣

シルビア｢何？｣

オッレルス｢杖を奪われたらただの人間だ｣

オッレルス｢いつも杖に頼りっきりだから普通の、本当に普通の人払いやらその辺の物で魔術的記号を作って行使したりする即席の魔術も使えないと｣

シルビア｢うん、それは致命的だろうね｣

オッレルス｢そこで気づくことのできなかった仲間の大切さを知る、と｣

シルビア｢そんな編があったら難しくて子供が離れていきそうだが、大人には面白そうだね｣

オッレルス｢少なくとも私は見てみたいな｣

オッレルス｢うーん、やっぱりカナミンは大人も子供も一緒に見れる神アニメってことだね｣

シルビア｢その結論はどう考えてもおかしい｣

シルビア｢さっきのはあくまでもアンタの妄想でしょ？｣

オッレルス｢そうだけど、そんな妄想を繰り広げることができるほどよく練りこまれた設定には感激だよ｣

シルビア｢ふーん、まあ、そういう楽しみ方も悪くはないだろうけどもやっぱりアニメは子供向けじゃない？｣

オッレルス｢ファンの大きな友だちだってそれくらいは分かってるよ｣

オッレルス｢だけど、それでも、大人にも通用するじゃんって思うから見るわけであってね｣

オッレルス｢あ、終わっちゃった｣

シルビア｢みたいだね｣ﾁﾗ

オッレルス｢やっぱり初回からぶっ飛ばしてくるなぁ。魔術の理論も何もかも全然理解できないよ｣

オッレルス｢さすが過ぎて考察が捗るな｣

シルビア｢え、あんなにべらべら話しながらアニメの内容も聞いてたのかい？｣

オッレルス｢今更だよ。今日話した内容はいつも脳内にあるものだからただそれを垂れ流すだけでいいんだからね｣

シルビア｢お、恐るべしガチ勢｣

オッレルス｢ガチ勢なんかじゃないよ？｣

オッレルス｢本物のガチ勢はこんなものじゃないから｣ﾆｯｺﾘ

シルビア(私は人生の中で様々なオッレルスの表情を見てきたけど、この笑顔ほど怖いと思った表情はない)

シルビア(まさに『魔』そのものだった)

おつありですー
今日はここまでー！

『サンドウィッチ』

フィアンマ｢……腕ぷらーん｣

シルビア｢そんなあり得ない効果音を口に出してどうしたんだい？ 頭でもいためた？｣

フィアンマ｢おい、なぜさらっと毒舌を混ぜるんだ｣

シルビア｢ははっ、ごめん。アイツがいないと止めてくれる人がいないんでね｣

フィアンマ｢それくらいは自分で制御してくれ。おつかいに行かせたのはお前なのだから｣

シルビア｢責任の擦り付け合いはムカつくくらい嫌いだから先に言わせてもらうけどね｣

シルビア｢正確にはアンタのせいさ｣

フィアンマ｢言ったそばから責任転嫁とはいい性格の曲がりようだな｣

シルビア｢責任転嫁じゃないね。サラミを全部つまみ食いしたのはアンタだろう？｣

シルビア｢アイツはその尻拭いのため買い物に行ったんだ｣

フィアンマ｢なるほどな。確かに俺様は残っていたサラミをすべて食べた｣

フィアンマ｢たが、サラミがないだけで買いに行かせるのか？｣

シルビア｢素直に自分の非を認めるのはいいけど、話の移り変わりが早すぎやしないかい？｣

フィアンマ｢どうでもいい話題を続けるのは時間の無駄じゃないか｣

シルビア｢アンタの方が性格が曲がってるみたいだね……｣ﾎﾞｿ

フィアンマ｢何か言ったか？｣

シルビア｢いいや、何も｣

フィアンマ｢なら、サラミが必要な理由をさっさと答えろ｣

シルビア｢……サンドウィッチ食べたいって言ったの忘れた？｣

フィアンマ｢……｣

シルビア｢心当たりあったろ？｣

フィアンマ｢ピクニックうんぬんって話してる時か｣

シルビア｢そうそう｣

シルビア｢今日は暇だし適当なものを挟んでみようと思ったんだんだけど……｣

シルビア｢サラミを筆頭に挟めそうなものがほとんど無くてね｣

フィアンマ｢……悪かった｣

シルビア｢……謝ってんのに許さないってのは良くないか、反省してるのかは分からないけど｣

フィアンマ｢そうだな。許してもらえてうれしいぞ｣ｳﾝｳﾝ

シルビア｢それは謝る側の発言じゃないんだけどねえ｣

フィアンマ｢だからどうした？ 今更やっぱり許さないとか言い出すのは無しだぞ｣

シルビア｢許すなんて言ってないんだけど……まあいいや｣ﾊｧ

フィアンマ｢……今日はいつにもまして饒舌だな｣

シルビア｢いつもは二人で楽しそうに話してるから黙ってるだけだけどね｣

フィアンマ｢……嫉妬か？｣

シルビア｢コンクリで固めて海に捨てるよ？｣

フィアンマ｢本気でやりそうだから怖いな｣

シルビア｢それにしてもアイツ、帰ってくるのが遅いな……｣

フィアンマ｢道草でもしてるんだろうさ｣

フィアンマ｢男の独り歩きには口を挟むべきではないと思うが？｣

シルビア｢そうも言ってられないのさ｣

シルビア｢アイツには追手がたくさんいるからね｣

フィアンマ｢身を案じていると？｣

シルビア｢相手のね｣

フィアンマ｢だろうな。アイツの追手とは……ご苦労なこった｣

シルビア｢へぇ、あんなに自信満々なアンタでも人の実力は分かるんだね｣

フィアンマ｢別に自信満々ではないだろう｣

フィアンマ｢ただ……いや、その話は今するようなことではないか｣

シルビア｢ま、そうだね｣

フィアンマ｢あれ、思ったより興味なさそうだな｣

シルビア｢無理に聞きだすようなことはあまりしたくないから｣

フィアンマ｢へえ、俺様はお前のことを誤解していたようだ｣

シルビア｢……参考までに今までの私のイメージ像を教えてくれるかい？｣

フィアンマ｢体育会系｣

シルビア｢……部分的にはあってるけど、部分的には大外れだね｣

今回はここまで、おつありです

ｶﾞﾁｬ

オッレルス｢ただいまー｣

シルビア｢ん、帰ってきたみたいだね｣

フィアンマ｢杞憂だったようだな｣

シルビア｢ああ、そうみたいだ｣

オッレルス｢ふう、疲れた……｣ﾎﾞﾛ

フィアンマ｢お疲れだな……ってどうしたんだ？ 随分ボロボロだが｣

フィアンマ｢まさかシルビアの予想通りになったのか？｣

オッレルス｢シルビアの予想通り？｣

シルビア｢いや、そんなちゃっちいことじゃないよ｣

フィアンマ｢なん……だと……？｣

フィアンマ｢なら、一体何があったんだ｣

シルビア｢それは……｣

フィアンマ｢……それは？｣ｺﾞｸﾘ

オッレルス｢スーパーのお一人様一つまでのセールで争奪戦に巻き込まれちゃっただけだよ｣

フィアンマ｢は？｣

シルビア｢だから、おばさまたちは怖いから開店前につくように行けって言ったのにねえ｣

オッレルス｢あそこの開店は七時だから無理なんだって｣

シルビア｢いつも五時起きなのに無理って……｣

オッレルス｢日が昇るまでは外に出たくないんで｣ﾃﾍﾍ

シルビア｢はあ……それで、くだんの品は買えたの？｣

オッレルス｢ああ、そこは抜かりないよ｣

オッレルス｢ジャム、チーズ、パン、レタス、キュウリ、ハム、ベーコン、たまご、サラミ、生クリームなどなど……｣

シルビア｢うんうん、今日は買い忘れないみたいだね｣

オッレルス｢まあ、さすがに何回も三角木馬やってたら学習もするさ｣

シルビア｢いや、何回もやってないからね。記憶の捏造は良くない｣

オッレルス｢そうだったかな……衝撃的過ぎて頭の中に焼き付いてるからなんとも｣

シルビア｢……記念にもう一回行っておく？｣

オッレルス｢断固拒否｣

シルビア｢だろうね｣

フィアンマ｢俺様としては家庭でできる簡単三角木馬を見てみたかったりするんだがな｣

シルビア｢ならやってみる？｣

シルビア｢今回はアンタが悪いわけだしね｣

オッレルス｢お、それはいい案かもしれないね｣

フィアンマ｢……腕が痛いな。今日のところは遠慮させてもらう｣

オッレルス｢ノリ悪いのはあまりいいことではないと思うね｣

フィアンマ｢別にノリなどは俺様には必要ないものだ｣

フィアンマ｢むしろ、あったら行動が鈍る｣

シルビア｢あー、これじゃ言っても無駄だね｣

シルビア｢強制的にやろうとしても全力で抵抗されかねない｣

オッレルス｢むむむ、つまらないな｣

フィアンマ｢で、サンドウィッチはどうするんだ？｣

フィアンマ｢俺様はまだ朝ご飯も食べていないのだが｣

シルビア｢同じく｣

オッレルス｢そういえば私も食べてなかったような｣ｳｰﾝ

フィアンマ｢……｣

シルビア｢今日はブランチってことかな｣

オッレルス｢それがいい。ちょうど昼と朝の中間って時間だし｣

フィアンマ｢ブランチか、まあ、たまには悪くないか｣ｳﾝ

シルビア｢じゃあ、準備しようか｣

オッレルス｢はいはいー｣

シルビア｢はいは一回｣

フィアンマ｢はいはい｣

シルビア｢……｣ﾆｯｺﾘ

フィアンマ｢結局三角木馬の刑に処されたわけだが｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

オッレルス｢いまいち反応がないのがつまらないな｣

フィアンマ｢反応したらお前たちの思う壺じゃないか｣

オッレルス｢まあそうなんだけどさ｣

シルビア｢次はなんのサンドウィッチにする？｣

オッレルス｢激辛ソースをかけたサラミサンドウィッチで｣

フィアンマ｢サラミだけでいい｣

シルビア｢……レタスも挟んでおくよ｣ｸﾞｯ

フィアンマ｢もごっ……｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

シルビア｢で、アンタはこっちだよね｣ｽｯ

オッレルス｢お、ありがとう｣ﾊﾟｸ

フィアンマ(あれ、激辛じゃないな？)ﾓｸﾞﾓｸﾞ

オッレルス｢……｣ﾌﾙﾌﾙ

オッレルス｢お、おいしいね、これ｣

シルビア｢え？ 激辛ソース付きだけど｣

オッレルス｢それがいいんじゃないか｣

シルビア｢ふーん、ま、個人の嗜好に文句をつける気はないけど｣ﾓｸﾞﾓｸﾞ

シルビア｢あ、次からは全部激辛にするかい？｣

オッレルス｢い、いや、そんな気遣いは無用だよ｣

フィアンマ｢おい、大丈夫なのか？｣ﾎﾞｿ

オッレルス｢そんなわけないだろ、顔を見れば分かってくれるかと｣ﾋﾘﾋﾘ

オッレルス｢私はフィアンマ用に頼んだつもりだったんだけどね｣

フィアンマ｢くくく、俺様に変なものを食べさせようとした罰が当たったんだな｣

オッレルス｢本当にその通りだね。出来心だったんだけどな……｣

フィアンマ｢ふ、己の行いを悔い改めるんだな｣

オッレルス｢そうだね｣

オッレルス｢だけどまあ、簡易三角木馬に跨ってるフィアンマに言われても説得力ないけど｣

フィアンマ｢……そうだな｣

ここまでですー！
おつありです！！

『常に後手』

フィアンマ｢おい｣

オッレルス｢人のことをおい呼ばわりとは……倦怠期か何かなの？｣

フィアンマ｢俺様は慣れ合うつもりはないと言っただろう｣

オッレルス｢あれ、最近そういうこと言わなくなったと思ってたんだけど……？｣

オッレルス｢どうした？｣

フィアンマ｢とぼけるなよ……｣

フィアンマ｢お前は俺様と協力関係になろうとして、俺様を助けたんだよな？｣

オッレルス｢そうだけど……｣

フィアンマ｢協力関係とはいってもすべてを開示し合わないとならないわけではない｣

フィアンマ｢いや、すべて開示し合うようないびつな協力関係などは望んでいない｣

フィアンマ｢だが、最低限開示すべきものがあるだろう｣

オッレルス｢いったい何が言いたいんだ？｣

フィアンマ｢何か言っておく事は無いのか｣

オッレルス｢……｣

フィアンマ｢なるほど、言わないのか｣

フィアンマ｢くくっ、協力関係と言っておきながら、重要な情報の開示もしないとは笑わせてくれるな｣

オッレルス｢まさか……｣

フィアンマ｢ついさっきの話なんだが、暇だったからローマ正教の通信魔術を傍受していたんだ｣

フィアンマ｢そこである情報を得た。何だと思う？｣



オッレルス｢……グレムリンがキラウェア火山の噴火を促したことかな？｣

フィアンマ｢やっぱり隠していたんだな｣ﾊｧ

フィアンマ｢アイツや学園都市の者たち、明け色の陽射しのボスであるレイヴィニア＝バードウェイがこれを阻止するために奔走していたとかなんとかという噂もあるらしい｣

フィアンマ｢おい、グレムリンが動いていて、他の人間がそれを食い止めるべく動いているというのに俺様達は全く動かない｣

フィアンマ｢それって、どういうことなんだ？｣

フィアンマ｢納得のいく説明が欲しい所だ｣

フィアンマ｢ラジオゾンデの時もそうだったが、オティヌスを止めたいというのなら、動いて当然の局面じゃないのか？｣

フィアンマ｢もし、それができないのなら、俺様は個人で動かせてもらう｣

フィアンマ｢つまり手を切らせてもらう｣

オッレルス｢……今回も事後報告にしようと思ってたんだ｣

フィアンマ｢……なぜだ？｣

オッレルス｢フィアンマが聞いたら勝手に動き出す恐れがあったから｣

オッレルス｢それに私たちの状態はグレムリンと激突するのに万全な状態とはとても言えない｣

フィアンマ｢それは俺様のことを言っているのか？｣

オッレルス｢フィアンマだけじゃない、私もまだオティヌスの弱点を完全に見抜けているわけじゃないんだ｣

オッレルス｢要するに今動いても勝ち目はないんだよ｣

フィアンマ｢勝ち目がないから動かない、か｣

フィアンマ｢アイツが聞いたら笑うだろうな｣

オッレルス｢私は上条当麻については少し調べた程度しか知らないけど、多分そうなるだろうね｣

オッレルス｢でも、これは私たちの戦いだから譲れないところもあるんだよ｣

オッレルス｢無謀な戦いで、協力者を犠牲にするわけにはいかない｣

フィアンマ｢……なるほど？ 俺様達のことを考えてと言いたいわけか｣

オッレルス｢まあ、正しくはまだ時じゃないって言った方がいいんだけどね｣

オッレルス｢今回私たちが出て行ったとしても得はない戦いだった｣

オッレルス｢むしろ、今回出て行ったら今後非常に動きづらくなったかもしれない｣

フィアンマ｢詳しく話せ、と言いたいところだが、その前に少しいいか？」

オッレルス｢何かな？｣

フィアンマ｢契約に一つ条件を加えさせてもらう｣

オッレルス｢条件か｣

オッレルス｢今回のお詫びも込めてある程度のことなら受け入れるよ｣

フィアンマ｢グレムリン関連で得た情報は即共有｣

フィアンマ｢どんな些細なことでも、だ｣

オッレルス｢……共有ね｣

フィアンマ｢その情報をどうするか、どんな行動をするかは三人で判断する｣

フィアンマ｢俺様は勝手に動きそうだと、信用されていないらしい｣

フィアンマ｢だから、決めた行動以外を取ったらもうこの関係は無かったことにしていい｣

フィアンマ｢でないと、俺様はお前のことを信用することができないし、お前も同じだろう？｣

フィアンマ｢そういう条件でどうだ？｣

オッレルス｢信用してない……そう思われても仕方ないか｣

オッレルス｢ごめん、その条件のませてもらうよ｣

フィアンマ｢ふん、構わないさ。だが、これからは気を付けるんだな｣

フィアンマ｢お互いにな｣

オッレルス｢そうだね、フィアンマの協力が無くなると計画が崩壊するからなあ｣

オッレルス｢正直避けたいね｣

フィアンマ｢む？ 俺様に協力を強制はしないと言っていたじゃないか｣

オッレルス｢強制はしないけど、協力してくれることは確実だったからね｣

オッレルス｢対グレムリンの作戦は私たち三人で動く計画で立てていたよ｣

今日はここまで。
おつありですー

ＧＷは少し余裕できるかな……

フィアンマ｢立てていた、とはどういうことだ？｣

オッレルス｢そこは今回の噴火と関係あるところだから順を追って話すよ｣

オッレルス｢シルビアー、話し終わったよー｣

シルビア｢ふー、ようやく面倒な男どもの会話は終了したみたいだね｣ｽｯ

オッレルス｢ごめん、シルビア。少し待たせた｣

シルビア｢いや、気にしちゃいないよ。ごたごたは早めに解消しといた方が動きやすいでしょ｣

フィアンマ｢む、待たせていたのか。悪かったな｣

シルビア｢いいって。どうせコイツの心配性のせいでグダグダしてたんでしょ｣

シルビア｢ようやく情報解禁する気になったみたいだし、良かったよ｣

オッレルス｢……は、話すけど、いいかい？｣

シルビア｢話を逸らしたいみたいだね｣

フィアンマ｢もういい、いちいち突っ込んで面倒な事になるのは避けたいからな｣

シルビア｢そうだね｣

シルビア(ふーん、こっちも少しは協力ってもんが分かったのかな？)

オッレルス｢まず今回のグレムリンの動きについてだけど｣

オッレルス｢今回の噴火にはグレムリンの正規メンバーは関わっていない｣

フィアンマ｢は！？ どういうことだ！｣

シルビア｢……それは確実な情報かい？｣

オッレルス｢確実ではないけど、信憑性はとても高い｣

オッレルス｢間違いないと言ってもいいくらいだ｣

フィアンマ｢……何を根拠に？｣

オッレルス｢私が調べた限りじゃ、グレムリンの正規メンバーは皆、北欧神話関連の名前や種族なんだ｣

オッレルス｢多分戦い方などもそうなんだろうけど、それはあくまで予想でしかないから頭の片隅に置いておく程度でいい｣

シルビア｢へえ、そんなこと調べてたんだね｣

オッレルス｢オティヌスの弱点探しのついでだよ｣

フィアンマ｢つまり、今回動いたグレムリンのメンバーは非正規だったということか？｣

オッレルス｢そういうこと｣

オッレルス｢今回動いたのは二人｣ﾋﾟﾗﾘ

フィアンマ｢サンドリヨン、フランス語でシンデレラか｣

フィアンマ｢で、二人目は、サローニャ＝A＝イリヴィカ、北欧神話とは確かに関係なさそうだな｣

シルビア｢ん、経歴まで載ってるよ｣

フィアンマ｢仕事が細かいな｣

オッレルス｢まあ、説明する上で重要になりそうなところだったからね｣

フィアンマ｢……ふむ、確かにこの経歴から見ると、アレのあとにグレムリンに雇われたという説が一番ありえるな｣

シルビア｢足をへし折るとかえぐいねえ｣

フィアンマ｢アイツ対策なんだろうさ｣

シルビア｢なるほど、幻想殺しか｣ﾌﾑ

オッレルス｢まあ、その二人はグレムリンにとって使い捨ての駒にすぎなかったわけだ｣

オッレルス｢グレムリンもオティヌスにとってはただの駒なんだろうけど……｣

フィアンマ｢で、今回動けなかった詳しい理由を聞こうか｣

フィアンマ｢準備ができてない、時ではない、とはどういうことだ｣

フィアンマ｢少し状況を確認くらいしても良かったんじゃないか？｣

オッレルス｢それは簡単な話だ｣

オッレルス｢グレムリンの方に私たちの動きが勘付かれる危険があるのと……｣

フィアンマ｢のと？｣

シルビア｢なぜそこで溜めるかな｣

オッレルス｢今回動いたのは非正規メンバー｣

オッレルス｢私が止めたいのはグレムリン、ひいてはトップのオティヌスだ｣

オッレルス｢申し訳ないけど、被害を阻止したりするのはその目的の副産物にすぎない｣

オッレルス｢言いたいこと分かるかな｣

フィアンマ｢つまり、ここで非正規メンバーを止めたところで大した意味はないと言いたいのか｣

オッレルス｢そういうことさ｣

オッレルス｢大した意味はないとまでは言わないけど、根本的な解決にはつながらない｣

オッレルス｢食い止められる被害はできるだけ食い止めるつもりだけど、そのせいで目的を達成できなかったら本末転倒だと思ってるよ｣

シルビア｢そういうものかねえ……｣

シルビア｢火山をやったのってアメリカをどうこうするとか知らないけど、理由があるんでしょ？｣

シルビア｢それを食い止めるのはグレムリンの邪魔になるはずだけど｣

オッレルス｢だろうね、だけどグレムリンの中心を叩かないとイタチごっこだ｣

フィアンマ｢……言われてみればそうか｣

オッレルス｢でも安心してくれ｣

オッレルス｢今回の件でようやく奴らの尻尾を掴めた｣

フィアンマ｢な！ そうなのか！！｣

オッレルス｢ああ。今回の動きは確かに非正規メンバーのものだったけど、本当のメンバーも来ていたんだよ｣

オッレルス｢アメリカにね｣

フィアンマ｢ふむ、そこで何か情報を得れたということか｣

オッレルス｢うーん、まあ、そんなところ、かな｣

オッレルス｢具体的にはブリュンヒルド＝エイクトベルと、次狙われる場所だね｣

シルビア｢ブリュンヒルド……｣ﾋﾟｸ

フィアンマ｢なにか心当たりでもあるのか？｣

シルビア｢少しね。でもその前にグレムリンの方の話をしてくれ｣

オッレルス｢了解｣

ここまでです。
おつありですー！！

オッレルス｢まだ詳しくは分かってないんだけど、バゲージシティってところで学園都市の異能を凌駕する異能を確立するっていう催しが行われるらしい｣

オッレルス｢その名もナチュラルセレクター｣

フィアンマ｢それがどうしたんだ？｣

オッレルス｢そういえば、学園都市の協力機関が離反したってのは言ってなかったね｣

シルビア｢いや、それはニュースでもやってたよ。ほら、新聞でもね｣ｽｯ

オッレルス｢あ、本当だ｣

フィアンマ｢二七社がどうたらこうたらというやつか｣

オッレルス｢そうそう、その二七社こと反学園都市サイエンスガーディアンによって開かれるのが｣

フィアンマ｢ナチュラルセレクターか｣

シルビア｢……となるとその目的は対学園都市用の力を確保することなのかねえ？｣

フィアンマ｢ふーん、それはいいんだが、グレムリンとの関連性が見えてこないぞ｣

フィアンマ｢グレムリンのメンバーがナチュラルセレクターに参加したところで得るものなど無いだろうし｣

オッレルス｢違うよ。奴らは選手として参加するわけじゃない｣

シルビア｢じゃあ何として参加するんだい？｣

オッレルス｢サイエンスガーディアン側は学園都市の襲撃を恐れて、グレムリンの魔術師を用心棒に雇ったらしい｣

フィアンマ｢おいおい……詳しくは分からないとか言いながらほとんど情報は集まってるじゃないか｣

オッレルス｢いや、いちばん大事なところが全く分からないんだよ」

シルビア｢奴らの目的だね｣

オッレルス｢そう、グレムリンがバゲージシティで得られる利益が思い当たらない｣

フィアンマ｢またドカンと何かを起こすつもりなんじゃないか？｣

フィアンマ｢今までだってやることなすこと全て大事だったろう？｣

シルビア｢そうかもしれない……予想するだけ無駄だけど｣

フィアンマ｢そうだな。俺様には魔神の思考は分からない｣

シルビア｢他に情報がないのならブリュンヒr｣

オッレルス｢ちょっと待って、まだある｣

フィアンマ｢なんだ？｣

オッレルス｢上条当麻は学園都市に帰ってないらしい｣

フィアンマ｢なぜアイツの話がここで出てくる｣

オッレルス｢目的は何であれ、バゲージシティにグレムリンの正規メンバーが出てくることはまず間違いない｣

フィアンマ｢話が飛んだな｣

オッレルス｢だから今回は私たちも動くつもりなんだよ｣

オッレルス｢後手にばかり回っていたら勝ち目なんかないからね｣

シルビア｢お、やっとか｣

オッレルス｢その際に、上条当麻がバゲージシティに来たら、グレムリンの障害になる彼を倒すために出てくるかもしれないオティヌスとかちあえる可能性が高まるわけだ｣

フィアンマ｢なるほどな｣

フィアンマ｢しかし、俺様がどうこう言うのもあれだが、魔神に相対したら危険すぎないか？｣

オッレルス｢危険だからって止めるたまじゃないだろう、彼は。そして私たちも｣

フィアンマ｢それもそうか｣

オッレルス｢レイヴィニア＝バードウェイの情報だとそんな感じ……｣

フィアンマ｢ちょっと待て、あの女の情報ってどういうことだ！？｣

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

フィアンマ｢……む、こんな時間になんだ？｣

オッレルス｢ついたみたいだね｣

シルビア｢出てくるとするか｣ｽｯｸ

オッレルス｢うん、頼んだ｣

フィアンマ｢……なぜあの女とお前がつながっているんだ｣ﾑｯ

オッレルス｢計画を立てていたって言っただろう？｣

オッレルス｢つまりそういうことだ｣

フィアンマ｢まさか……｣

こんかいはここまで。
乙ありですー！
新約四巻を読み直しているけど、難しいなぁ……

レイヴィニア｢そのまさかさ｣ﾆﾔ

オッレルス｢よく来てくれたね｣

オッレルス｢おもてなしとかする時間はないんだけど我慢してほしい｣

レイヴィニア｢そんなことは構わないさ｣

シルビア｢飲み物はどうする？｣

レイヴィニア｢……コーヒー｣

シルビア｢じゃあ、ココアにでもしておこう｣

レイヴィニア｢……まあ、それでも別にいいんだけどな｣

フィアンマ｢……お前、強がっているのか？｣

レイヴィニア｢ば、馬鹿にするのはよしておくべきだと思うが？｣

フィアンマ｢そんなつもりはなかったんだがな。まあ、怒っているみたいだし、謝っておこう｣

フィアンマ｢悪かったな｣

フィアンマ｢つまり、お前も俺様達の協力者ってことなのか？｣

レイヴィニア｢正しくは噴火の後に得た情報、持っていた情報を一通り流してやったのと引き換えに、私がこの作戦に参加することを許可してもらったって形だな｣

フィアンマ｢情報は言えって言ったよな……｣ｿﾞｿﾞｿﾞ

オッレルス｢あはは……重要な情報から話していこうと思ってたんだけどね｣

フィアンマ｢……｣

オッレルス｢一通り話し終わってから話そうと思ってたんだけどね！｣

フィアンマ｢……｣

オッレルス｢隠す気はなかったから許してくれ！！｣ｶﾞﾊﾞｯ

フィアンマ｢別に。俺様だけ知らなかったのは少し思うところがあるが、それについて文句を言うほど子供じゃない｣

フィアンマ｢それより、時間がないならさっさと話を進めろ｣

オッレルス｢分かった。フィアンマがそう言ってくれるならさっさと話すとしようか｣

レイヴィニア｢まず、話させてもらってもいいか？｣

オッレルス｢そうだね、自己紹介のようなものも込でやってもらえるといいかな｣

レイヴィニア｢アイツがバゲージシティに向かうというのは絶対だ｣

オッレルス(私の言葉はガン無視か……)

レイヴィニア｢私が奴らをキラウェアの件に関わらせたせいで、アイツがバゲージシティに向かう羽目になった｣

フィアンマ｢おい、代名詞が多すぎて理解するのが面倒なんだが｣

レイヴィニア｢……私が学園都市の奴らをキラウェアの件に関わらせ、二十七社の離反を招いた事により、上条当麻がバゲージシティに向かう羽目になった｣

レイヴィニア｢そのことに何か思っているわけではないが、幻想殺しという使える人材をこんなところで私のせいで潰すのは惜しいと思う｣

レイヴィニア｢つまり……私の目的は上条当麻のリタイア｣

レイヴィニア｢その為に協力させてもらう｣

シルビア｢そ、そうかい、だけどバゲージシティの件に右手の彼が関わるのはもう阻止できそうにないけど？｣

レイヴィニア｢そこはアイツの不幸を信じるしかないな｣

フィアンマ｢なぜこっちを見るんだ｣

オッレルス｢私も見られてる気がする……｣

レイヴィニア｢ま、オティヌスが出てくるというのも間違いないだろう｣

レイヴィニア｢お前なら知ってるかもしれないが、アイツが持ってるのは幻想殺しだけじゃない｣

フィアンマ｢……｣

レイヴィニア｢幻想殺しじゃないもう一つの力が邪魔になるといって潰しにくるだろう｣

フィアンマ｢……なるほど、確かにあの力なら魔神にも拮抗し得るかもしれないな……｣

オッレルス｢ん？ 何か情報があったの？ 聞いた事ないけど、隠してたのかな｣ﾝﾝﾝ?

シルビア｢おい……真面目なところだからそういう発言はないと思うけどね｣

オッレルス｢……とにかく、オティヌスが現れると仮定して、私たちはどうすればいいんだい？｣

フィアンマ｢今回はオティヌスと戦う気はないんだろう？｣

オッレルス｢そうだね、賭けは避けたい｣

フィアンマ｢なら、オティヌスの情報を得て、アイツのフォローをしてやって、宣戦布告｣

シルビア｢アイツのフォローね｣

オッレルス｢まあ、そんなとこかな。それならレイヴィニアの目的もちゃんと達成？ できるだろうし｣

レイヴィニア｢ふむ、おおざっぱすぎる気もするけど、今回の目標はその三つで問題ないだろう｣

オッレルス｢ところで……宣戦布告ってのはいるのかな｣

三人｢必須！！｣

レイヴィニア｢じゃあ、オティヌス組とブリュンヒルド組で分けるとするかな｣

シルビア｢へ？ 分けるってどういうことだい？｣

フィアンマ｢そういえばブリュンヒルドとやらの話はまだ聞いてなかったな｣

レイヴィニア｢はあ……じゃあ、初めから話せばいいのか｣

オッレルス｢悪いな｣

フィアンマ｢まず、シルビアからブリュンヒルドの基本的な情報を聞きたいんだがいいか？｣

レイヴィニア｢ブリュンヒルドのことを知らないってことか？｣

フィアンマ｢自信はない｣

フィアンマ｢なら聞いた方がいい。私たちの間で認識のずれがあったら面倒だしな｣

シルビア｢じゃあ、さらっと説明するから、置いて行かれないように注意するんだよ｣

フィアンマ｢……それは注意してどうこうなる話じゃないからな｣

ここまでー！！
早くブリュンヒルドを投入したくてうずうず……

>>387
乙
最後のレスおそらくセリフミスかと

>>389
ああ！！ 指摘ありがとうございます。

フィアンマ｢なら聞いた方がいい。私たちの間で認識のずれがあったら面倒だしな｣

じゃなくて

レイヴィニア｢なら聞いた方がいい。私たちの間で認識のずれがあったら面倒だしな｣

でした……すみません。

『ワルキューレ奪還大作戦』

シルビア｢ブリュンヒルド＝エイクトベル、聖人だ｣

フィアンマ｢いきなり大きな情報来たな……｣

レイヴィニア｢この面子の中じゃ聖人と言っても大したことないさ｣

フィアンマ｢いや、この面子を標準として考えるのはおかしいだろう｣

レイヴィニア｢おかしくはないさ｣

レイヴィニア｢上手く言いくるめて協力してもらうつもりなんだから、この面子より大きく劣ってちゃ困るだろ？｣

シルビア｢は？ それはつまりあの少年を人質にして脅迫でもするつもりってことか……？｣ｶﾞﾀｯ

オッレルス｢落ち着け、シルビア｣ｸﾞｲ

シルビア｢……｣

シルビア｢分かったよ｣

レイヴィニア｢まさか。あの少年を使う気は毛頭ないさ｣

レイヴィニア｢そんな手を使ったら、もういい関係は築けないに決まってる｣

シルビア｢……なら、言いくるめるってどういうことなんだい？｣

レイヴィニア｢それは後で話すつもりさ。彼女の必要性、言いくるめ方含めてね｣

レイヴィニア｢それより……待ってるぞ？｣ｸｲｯ

フィアンマ｢……｣

シルビア｢あ、ああ……悪いね、説明しなきゃならないのに｣

フィアンマ｢いや、構わない。ペンと紙を用意していたからな｣ｽｯ

シルビア｢そうかい、じゃあ少しゆっくり話そうか｣

フィアンマ｢そうしてもらえると助かる｣ｽﾁｬ

シルビア｢彼女は聖人だけど、ワルキューレの特性を持ってるんだ｣

フィアンマ｢先天的な奴か？｣

シルビア｢ああ、そうだよ｣

フィアンマ｢二つ持ちなんてあり得るのか？｣

シルビア｢それが有り得ちゃうのさ｣

シルビア｢まあ、二つの力が拮抗してしまって、どちらの力も完全に失ってしまう時があるみたいだけどね｣

レイヴィニア｢その弱点のせいで、彼女は大変な目に遭ってきた……らしい｣

フィアンマ｢……ちょっと待て、ワルキューレの特性持ちの聖人｣

フィアンマ｢……聞いた事あるぞ！！｣

フィアンマ｢北欧系の魔術結社の奴らに潰された魔術結社の長だろう？｣

レイヴィニア｢なんだ、知ってたのか｣

フィアンマ｢あまり気分のいい話ではないからしっかりは覚えていなかっただけだ｣ｹｯ

オッレルス｢確かにあまりいい気はしないね……｣

レイヴィニア｢ということは主神の槍のことも知ってるか｣

フィアンマ｢何だったか……｣

フィアンマ｢イギリス清教の方から聞いた話だからよく覚えていないが、植物状態の少年を救うために作ろうとしたとかじゃなかったか？｣

フィアンマ｢その過程でイギリス清教に捕縛された、と聞いているが｣

オッレルス｢あ、そこまで知ってるなら問題ないか｣

オッレルス｢じゃあ、今回の裏作戦についての話を始めるとするかな｣

レイヴィニア｢だな｣

フィアンマ｢裏作戦？｣

フィアンマ｢それはブリュンヒルドを仲間に加える、ということか？｣

シルビア｢……なるほど、主神の槍は本来オーディンの持ち物だもんな｣

シルビア｢その作り方を知ってる彼女を仲間にすれば、対抗策が見えてくるかもしれないねえ｣

フィアンマ｢ああ、だが、俺様もコイツと同じく人質作戦はあまりやりたくないぞ？｣

オッレルス｢全然違うってば。さっきレイヴィニアも言ってたじゃないか｣

レイヴィニア｢それじゃあ、ここからは私が話そうか｣

フィアンマ｢……何が違うんだ｣

レイヴィニア｢全て｣

フィアンマ｢違うというならさっさと内容を話せ｣

レイヴィニア｢はあ、少しくらい待てないものか……｣

レイヴィニア｢せっかちな男は嫌われるぞ｣ｸｸｸ

今日はこんなところです。
乙ありです！！

フィアンマ｢おい、このガキムカつくんだが。少しボコしてもいいか？｣ｲﾗｲﾗ

レイヴィニア｢ガキとは失礼な。神の右席とか言ってるくせに、言葉がなってないな｣

レイヴィニア｢世界を救うとか寝言を言う前に、人間として必要最低限の物を身につけるんだな｣

フィアンマ｢お前、俺様にケンカ売ってると取っていいのか？｣

オッレルス｢あー、抑えて抑えて。見た目は少女だけど、私たちの協力者だから殴らないでくれよ｣

フィアンマ｢ちっ……｣ﾌﾝ

レイヴィニア｢話を始めてもいいか？｣

シルビア｢ああ、お構いなく｣

フィアンマ｢おい、私は悪くないみたいな態度を取るな｣ﾑｶｰ

レイヴィニア｢うるさいガキは放っておいて、まず私が盗ってきた情報を開示しよう｣

レイヴィニア｢持っているグレムリン関連の情報は開示したのち使い方を決めるというのが今回の決まりらしいからな｣

オッレルス｢じゃあ私は補足でもしようかな｣

シルビア｢なんでアンタはその情報を知ってるかな……｣

オッレルス｢レイヴィニアが協力を持ち掛けてきたとき、とりあえずってことで教えてもらったんだよ｣

シルビア｢へえ、さすが明け色の陽射し様は引っ提げてくる情報が違うねえ｣

オッレルス｢いや、まだどんな情報か聞いてないじゃないか｣

シルビア｢アンタがここまで公開しなかったってことは、それなりの情報なんだろうと容易に想像できるけどね｣

オッレルス｢う、まあ、確かにかなり使えそうな情報だったけど｣

オッレルス｢今まで言わなかったのはレイヴィニアが来てからの方が都合がいいと思ってただけのことだよ｣

シルビア｢ふーん｣

フィアンマ｢なあ、いい加減話さないか｣ｲﾗｲﾗｲﾗｲﾗ

レイヴィニア｢そうだな、少し溜めすぎたか｣

レイヴィニア｢グレムリンは今回バゲージシティの件だけでなく、ブリュンヒルドの脳内にある主神の槍の設計図も狙ってる｣

フィアンマ｢は？ つまり、同時に二つ事を起こそうとしているということか？｣

レイヴィニア｢その通り｣

レイヴィニア｢だから、どちらかの対策を放棄するわけにはいかない｣

フィアンマ｢主神の槍か……｣

フィアンマ｢オティヌスの弱点とやらをフォローする代物なのかもしれないな｣

オッレルス｢多分ね。だから設計図を盗まれることは避けたい｣

シルビア｢ってか脳内の設計図を奪うってどういうことだい？｣

オッレルス｢そりゃ直接だろうさ｣

シルビア｢……脳内を覗き見るってとこか｣

フィアンマ｢何を馬鹿なことを。そう簡単に頭の情報を抜き取ることができれば苦労しない｣

フィアンマ｢優秀な魔術師は精神面の防御も並大抵なものではないぞ？｣

レイヴィニア｢くくく、そうだろう｣

レイヴィニア｢だからここで弱点を使おうと奴らは思うわけだ｣

フィアンマ｢……例の少年か｣

レイヴィニア｢今、彼女は第三次世界大戦での活躍により、病院で療養中の少年と面会することを許されている｣

シルビア｢なるほどね｣

シルビア｢そこを襲撃して、ブリュンヒルドの余裕をなくしてから情報を盗み出すってわけか｣

シルビア｢すごくムカつく方法だ｣

オッレルス｢そうだね。それがあっちとしても一番確実性が高い方法だろうよ｣

オッレルス｢気に食わないけど｣

フィアンマ｢そこで援護して、俺様たちを信用させると共に設計図を渡さないようにすると｣

フィアンマ｢一石二鳥だな｣

レイヴィニア｢いや、一石三鳥さ｣

ここまで。
乙ありです。
フィアンマさんをデレさせたいです。

レイヴィニア｢襲撃者にはちゃんとグレムリンの情報を吐いてもらう｣

シルビア｢へえ、面白そうじゃないか｣

オッレルス｢簡単にまとめると、ブリュンヒルドの情報と少年を守りながら、刺客を撃退し、情報を吐かせ、信頼を得て、仲間にする｣

フィアンマ｢ぎっちぎちじゃないか｣

オッレルス｢本当にそうだね｣ｱﾊﾊ…

レイヴィニア｢どうかい？ この方法で仲間にしようという作戦だが、文句がある奴はいる？｣

シルビア｢いや。無理やりじゃないならいいと思うね｣

フィアンマ｢まあ、無理に仲間にする必要はないのだろう？ なら、それがベストだろうさ｣

オッレルス｢うーん、戦力はあるに越したことはないけどね｣

オッレルス｢双方の目的を達成することのできるいい作戦だろう｣

レイヴィニア｢で、話は戻るんだけど……｣ｸﾞｩ

フィアンマ｢……ぷっ｣

レイヴィニア｢……わ、笑うな！｣

オッレルス｢そ、そういえば夕飯の時間すぎてたね｣ﾌﾙﾌﾙ

シルビア｢じゃあ、話も一段落したところだし、ご飯にするか｣

フィアンマ｢賛成だ。さっきは笑ったが正直俺様もお腹が空いた｣

フィアンマ｢堅苦しい空気はどうにも苦手でな｣ﾊｧ

オッレルス｢休憩休憩っと……｣ﾀｯ

レイヴィニア｢……せ、世話をかけてしまったな｣

シルビア｢お互いさま、なんじゃないかい？｣

…………………………
…………

フィアンマ｢おいおい、明け色の陽射しのボスともあろうお方がこんなに好き嫌いをするってどういうことなんだ？｣

レイヴィニア｢うるさいうるさい！！ 結局全部食べさせただろう！｣ﾎﾟｶﾎﾟｶ

フィアンマ｢八つ当たりするな。野菜も食べられないクセに｣ｼｯｼｯ

オッレルス｢まあまあ、そう言ってやるなよ。一応食べたんだしさ｣

フィアンマ｢ふん、俺様が部下だったらこんな上司は願い下げだぞ？｣

フィアンマ｢いや、そんなもんじゃないな下克上を決意するレベルなんだが……｣

シルビア｢その辺にしときな。誰にだって苦手なものの一つや二つあるんだし｣

シルビア｢まあ、レイヴィニアは少し好き嫌いが激しすぎる気はするけど｣

レイヴィニア｢いやいや、許容範囲内だよ｣

フィアンマ｢それはお前の基準でだけだ｣

オッレルス｢さてと、腹ごしらえも終わったし話に戻るとしよう。ごちそうさま｣

フィアンマ｢ごちそうさまだ｣

シルビア｢何の話をしてたんだっけ、ごちそうさま｣

レイヴィニア｢え、語尾にごちそうさま付ける遊びをしているのか？｣

フィアンマ｢何を言ってるんだ？｣

フィアンマ｢おい、コイツは本当に大丈夫なのか？｣

オッレルス｢彼女の情報はほとんど私が集めてきた情報と合致しているから情報網は確かだと思うよ｣

オッレルス｢それにレイヴィニアの力はフィアンマも噂で聞いたことくらいはあるだろう？｣

フィアンマ｢ああ、ただ、噂とあまりにもかけ離れていたから心配になっただけだ｣

レイヴィニア｢その心配には及ばない。こう見えても大魔術結社のトップやってるからな｣ﾌﾌﾝ

フィアンマ｢そうか。なら足を引っ張るなよ｣

レイヴィニア｢そっちこそ｣

オッレルス｢会ってまだ大して経ってないのになぜこんなに仲悪いかな｣

シルビア｢別にいいんじゃない？ アイツは馴れ合うつもりはないって言ってるしさ｣

オッレルス｢うーん、仲良くしろとは言わないけど、連携できるくらいにはしておいて欲しい｣

レイヴィニア｢それこそ心配には及ばない。公私はきちんと分けてるんでね｣

フィアンマ｢ああ、そこは同意見だ｣

フィアンマ｢一応俺様はこの世界のプロだからな｣

今回はここまで。
乙ありです……

オッレルス｢まあそうだね。プロにはプロのプライドって物があるだろうし大丈夫かな｣

レイヴィニア｢さて、それじゃあ、話を戻すとしよう｣

フィアンマ｢どんな話だったか……｣

シルビア｢誰がどっちへ向かうかって話だよ｣

オッレルス｢一つ案を出させてもらっていいかな｣

レイヴィニア｢ああ、できれば理由まで説明してもらえるとありがたい｣

オッレルス｢もちろん、説明するつもりだ｣

オッレルス｢オティヌス、バゲージシティの方は私とフィアンマの二人、ブリュンヒルドの方はシルビアとレイヴィニアの二人って組み合わせなんだけど｣

フィアンマ｢ふむ、戦力は俺様達の方に寄ってる気がするが？｣

レイヴィニア｢ふーん、私が考えていた編成とまったく同じだ｣

オッレルス｢正直に言うけど、フィアンマは相手から情報を得るのには向いてない｣

シルビア｢ははっ、結構バッサリ言ったねえ｣

フィアンマ｢そんなことは言われなくても分かっている｣

オッレルス｢という理由もかなり大きいんだけどね｣

レイヴィニア｢だけど……なんだ？｣

オッレルス｢オティヌスと相対するのなら、やっぱり聖人とかのメジャーな力じゃなくて、聖なる右みたいなオティヌスでも対処に困るような力を持っていきたい｣

フィアンマ｢俺様はモノか？｣

シルビア｢その程度で拗ねてちゃ、アンタもガキ扱いされちゃうんじゃないかい？｣

フィアンマ｢む……拗ねてなどいない｣ﾌｲｯ

オッレルス｢ん？ 拗ねたならごめんよ？｣

フィアンマ｢だから拗ねてないと言ってるだろう！ 余計な話はやめて、さっさと続きを話せ｣

レイヴィニア｢くく、そう怒るなよ｣

シルビア｢はいはい、レイヴィニアもあまり煽らないでー｣

レイヴィニア｢むう……少し大人気なかったか｣

フィアンマ｢ふん……｣

オッレルス｢オティヌスと相対するとは言っても、少し相手を揺さぶって情報収集するために話をしたいだけなんだよ｣

オッレルス｢つまり、戦闘はできるだけ避けたい｣

フィアンマ｢まあ、無意味に死ぬのは勘弁だな｣

シルビア｢だからオティヌスが進んで戦いたいとは思わないであろう、アンタら二人組で行こうってわけか｣

オッレルス｢そうそう。申し訳ないんだけど、奴には単純な力や魔術のゴリ押しはほとんど意味が無い｣

オッレルス｢いや、ほとんど意味が無いどころじゃないな。全くの無意味なんだ｣

フィアンマ｢ま、そうだろうな。効いたら苦労なんかしない｣ﾌﾝ

シルビア｢こっちもバッサリ言うねえ｣

オッレルス｢そうじゃないと話が進まないからね｣

レイヴィニア｢で？ オティヌスの方は理解できたが、ブリュンヒルドの方へ私たちが行く理由は？｣

レイヴィニア｢まさか消去法とか言わないよな？｣

オッレルス｢こっちも理由はちゃんとあるから｣

オッレルス(皆プロとか言ってるのに血の気が多すぎるんだよな……)ﾊｱ

オッレルス｢まず、シルビアはブリュンヒルドと同じで聖人だ｣

オッレルス｢だから、フィアンマとかフィアンマとかフィアンマよりは話が通じやすいと思うんだ｣

フィアンマ｢お前まで俺様をバカにするのか？｣

オッレルス｢冗談だよ。少し空気が重すぎる気がしたからさ｣

レイヴィニア｢重いままでいいんじゃないか？｣

レイヴィニア｢重大な作戦の前のゆるんだ気持ちは命取りになりかねない｣

シルビア｢私もレイヴィニアに賛成だね｣

シルビア｢けじめはしっかりと……ね？｣

オッレルス｢そっか、じゃあ少し真面目に話そう｣

フィアンマ｢初めからそうしろ｣

オッレルス｢……レイヴィニアは相手との交渉が得意だろう？｣

レイヴィニア｢まあ、これでもボスやってるからな｣

レイヴィニア｢お前たちよりは得意だろう｣

オッレルス｢だよな……ブリュンヒルドを仲間に勧誘するなら、私たちよりレイヴィニアの方がはるかに向いている｣

フィアンマ｢意外と細かいところまで考えているんだな｣

オッレルス｢当然さ。命を預ける計画なんだから｣

オッレルス｢と、これがあの編成にした理由なんだけど、何か問題や質問でもあったら言ってくれ｣

オッレルス｢なかったらこれで決定にするけど｣

レイヴィニア｢異論はない｣

シルビア｢いいんじゃない？ 私もレイヴィニアとは話す機会が必要だと思ってたところだし｣

オッレルス｢フィアンマは？｣

フィアンマ｢そうだな……やはりオティヌスは一度見ておきたいところだしな。問題ない｣

オッレルス｢じゃあ各々最善を尽くして目標達成しよう｣

フィアンマ｢ふん、言われなくてもそのつもりだ｣

シルビア｢ま、ヘマはしないよう気を付けるよ｣

レイヴィニア｢……今回くらいは協力プレイかな？｣

オッレルス｢それじゃあ……作戦開始だ｣

ここまでー
乙ありです
空気的にも彼は本気で言ってるつもりなはずなんだよ！！

『作戦変更』

シルビア｢……まずは下見、ねえ｣

レイヴィニア｢何か不満でもあるのか？｣

シルビア｢いや、確かにどこから侵入するかとか考えるのにはうってつけだとは思うさ｣

シルビア｢だけど、いくらなんでもこれはないだろ｣

レイヴィニア｢見舞客に変装。何がおかしい？｣

シルビア｢私はまだいいけど、アンタは滲み出る違和感が隠しきれてないね｣

レイヴィニア｢そうか？ はたから見れば母……姉と妹が仲睦まじくお見舞いに来たようにしか見えないはずだ｣

シルビア｢本当にそう思うのなら一度自分の変装技術を見直した方がいいと思うけどね｣

シルビア｢だってこんなに視線が集まってる｣

看護師｢……｣ﾁﾗﾁﾗ

老人｢……｣ｼﾞｰ

レイヴィニア｢……べ、別にブリュンヒルドにバレなければいいだけだ｣ﾌﾝ

シルビア｢まあ、そうだけど｣

｢私がどうかしたのか？｣

シルビア(突然気配が現れた！？)ｽﾞｻﾞｯ

レイヴィニア｢ん？｣

ブリュンヒルド｢私がどうかしたか、と聞いたんだが？｣

レイヴィニア(ちっ、こんなところでかち合ってしまうとはな)

シルビア(だから病院に入るのはやめようと言ったのに……)

レイヴィニア｢はぁ……｣

レイヴィニア｢……とある筋からアンタがここにいるって聞いて来たのさ｣

レイヴィニア｢少し話が聞きたくてね｣

ブリュンヒルド｢……話すことなど無い｣

レイヴィニア｢……無理にとは言わないが一応自己紹介だけさせてもらおう｣

レイヴィニア｢明け色の陽射しのボスをやっている、レイヴィニア＝バードウェイだ｣

ブリュンヒルド｢レイヴィニア＝バードウェイ……｣

レイヴィニア｢証拠が見たいというのなら、まあ、適当なものを見せてやってもいいが｣

ブリュンヒルド｢……その必要はない｣

ブリュンヒルド｢だが、私がここにいるというのはイギリス清教からの情報というわけではないということなんだな？｣

レイヴィニア｢ああ。どこからの情報かってのは答えかねるが｣

ブリュンヒルド｢……どちらにしろ話すことなど無い｣

レイヴィニア｢別に構わんよ。さっきも言ったが無理に聞き出そうとはしてないしな｣

ブリュンヒルド｢……｣ｻﾞｯ

レイヴィニア｢それよりも急いだほうがいいんじゃないのか？｣

レイヴィニア｢その袋、あの少年が待っているんだろう？｣

ブリュンヒルド｢……お前、まさか｣

レイヴィニア｢だから私はそんな外道なことをしてまで無理やり話を聞こうとはしないさ｣

レイヴィニア｢だから、今日のところは帰らせてもらうよ。また来るけど｣

ブリュンヒルド｢……主神の槍か？｣

レイヴィニア｢さあね。それは私たちと話す気になったら言うよ｣

レイヴィニア｢それじゃあ、またすぐ会おう｣

ブリュンヒルド｢……｣

シルビア｢……うちのツレが悪いことをしたね｣

シルビア｢まあ、そのせいであの子を待たせるのも感心しないからさっさと……っ！！｣ﾀﾞﾝｯ

ｽﾞｶﾞｱｱｱｱｱﾝ

シルビア｢っぶないねえ｣ｽﾀｯ

ブリュンヒルド｢……あえて脅威を見逃すほど余裕はないのでな｣

ブリュンヒルド｢殺しはしないが、私たちに関わるのは諦めてもらう｣

レイヴィニア｢おいおい、こっちは戦闘しようと言ってるわけじゃなかったんだが｣

レイヴィニア｢穏便にしたかったけど、理解してくれなかったらしい｣ﾊｧ

シルビア｢はあ、これじゃあ穏便にって選択肢は無くなってしまったようだけど？｣ﾎﾞｿ

レイヴィニア｢仕方がないさ。そう仕向けたんだから｣ｺｿｯ

シルビア｢……は？｣

ここまでー。
乙ありです！

フィアンマさんのステルスって一端覧祭だったような……
間違ってたらすみません。

レイヴィニア｢アンタに関わるのを諦めるってのは無理な相談だ｣ｸﾙｯ

レイヴィニア｢こっちも組織背負ってきているんだから手ぶらで帰るわけにゃいかないのさ｣

レイヴィニア｢まあ、そっちが戦いたいと言うのならばそれでも全くこちらとしては問題ないんだがな｣

シルビア｢……はあ、無理だとは思うけど、一応言っておくよ｣

シルビア｢ソレを仕舞ってくれ。私たちに害意はない｣

ブリュンヒルド｢……｣ｼﾞｬﾘｯ

レイヴィニア｢交渉決裂、かな？｣

ﾄﾞｺﾞｵｵｵｵｵﾝ

ブリュンヒルド｢……｣ﾌﾞﾝｯ

レイヴィニア｢ちっ、いきなり本気か｣ﾀﾝ

シルビア｢おい！！｣

レイヴィニア｢……なんだ？｣ｸﾙｸﾙｯ

シルビア｢聖人に……｣ｶﾞｯ

レイヴィニア｢おい、何するつもりだ！ 待て！！｣

シルビア｢普通の魔術師が敵うわけないだろうが！！｣ﾀﾞｯ

レイヴィニア｢まだ早い！！！！｣


ブリュンヒルド｢……自分から来て逃げるとは……｣ｺﾞﾄﾞﾝ

ブリュンヒルド｢追うべきか否か……｣

シルビア『まあ、そのせいであの子を待たせるのは感心しないから』

ブリュンヒルド(……本当に害意があったのだろうか……)

ブリュンヒルド｢いや、しばらくは警戒するに越したことはないだろう｣

レイヴィニア｢はあ……さっきのは何のつもりだ？｣

シルビア｢戦線離脱さ｣

レイヴィニア｢あの言動は舐められていると認識してもいいんだよな？｣

レイヴィニア｢普通の魔術師が敵うわけないだろうが、だったか｣

シルビア｢私だってあんたの実力を低く見てるわけじゃないさ｣

シルビア｢だが、相手を刺激するのは下策中の下策だ｣

シルビア｢本当に信頼を得られなくなる｣

レイヴィニア｢……｣ﾊｧ

レイヴィニア｢私だってそれくらい分かっていたさ｣

シルビア｢ならあの局面で攻撃しようとするのが愚策だって分かるだろう？｣

レイヴィニア｢……少し休憩でもしようか｣

レイヴィニア｢この近くには明け色の陽射しの隠れ家の一つがある｣

シルビア｢……そうかい。だけどいいのか？｣

レイヴィニア｢ボスがいいと言ったらいいんだ｣

レイヴィニア｢それにここの隠れ家はあまり使わないから、今回消費してしまっての構わないさ｣

シルビア｢……建物を消費って表現は初めてだ｣

レイヴィニア｢ふん、大したことではないさ｣

レイヴィニア｢ただ、かなり強力な人払いが張ってあるから、はぐれ無いようについて来いよ？｣ｶﾂｯ

シルビア｢アンタの方が私を舐めてるんじゃないかい？｣ﾀｯ

レイヴィニア｢この辺まで来たら聞かれないか｣

シルビア｢人払いの効果圏内に入ったみたいだね｣ﾁﾗ

レイヴィニア｢あまりゆっくり話す時間はないから歩きながら話すが……｣

レイヴィニア｢さっきの戦闘は仕方が無いものだったんだ｣

シルビア｢仕向けたと言ってたじゃないか｣

レイヴィニア｢む、正確に言えば、ああなってしまったからには戦闘するようように仕向けなければならなかったのさ｣

シルビア｢……ああなってしまったからって？｣

シルビア｢彼女と接触してしまった以上、交渉か逃走しか選択肢はないだろう？｣

シルビア｢戦闘するように仕向けるなんてもってのほかじゃないのかい？｣

レイヴィニア｢それは違うな｣

レイヴィニア｢その作戦だと私たちとブリュンヒルドのことしか考えられていないことになる｣

レイヴィニア｢グレムリンはどうしたんだよ｣

シルビア｢っ……！！｣

レイヴィニア｢分かってもらえたかな？｣

レイヴィニア｢私たちがブリュンヒルドに接触したことはグレムリンにも当然知られている｣

レイヴィニア｢今日にでも攻め込もうと思っているんだ、何らかの形で監視しているのは当然だろう｣

レイヴィニア｢そんな監視網の中で不注意だったとはいえ、私たちはブリュンヒルドと接触してしまった｣

シルビア｢……ということは？｣

今日はここまでー。
乙ありです。

最近のマイブームは足音をｶﾂｶﾂと書くことです。

レイヴィニア｢逆の立場で考えてみれば簡単さ｣

レイヴィニア｢お前がグレムリンのトップだとしよう｣

レイヴィニア｢作戦当日の日中に私たちがブリュンヒルドに接触しているという報告を受けたらどうする？｣

シルビア｢……この作戦にどれだけの戦力を投入するかによるけど、私がオティヌスだったら主戦力はバゲージシティの方に送るはずだね｣

レイヴィニア｢だな。アイツはグレムリンにとって障害でしかないから私でもそうする｣

レイヴィニア｢二軍を動員する作戦で敵と接触しているターゲット｣

レイヴィニア｢どうする？｣

シルビア｢ただでさえ心配な作戦だ、これ以上の不安要素は除いておきたいだろうから様子見するだろうね｣

シルビア｢主戦力が来るまで待つか、私たちが去るのを待つか。この程度の作戦で無駄に兵力を削るのは避けたいだろ？｣

レイヴィニア｢そのとおりだ｣

レイヴィニア｢だが、私たちとしてはちょっとした凡ミスのせいで作戦を延期されてしまっては困る｣

レイヴィニア｢だからブリュンヒルドと本気の戦闘をする必要があったんだが……｣ﾊｧ

シルビア｢……なるほど、グレムリンの警戒を解くためにも、ブリュンヒルドとの交渉が決裂してしまったこと……｣

シルビア｢いや、ブリュンヒルドと敵対したってことをきちんと示す必要があったってことか｣

レイヴィニア｢ああ、だからこそブリュンヒルドの信頼を得れる可能性を捨ててでも攻撃を仕掛けなくちゃならなかった｣ﾌｩｰ

レイヴィニア｢……だってのにあの程度じゃグレムリンの警戒が解けるかは微妙だ｣

シルビア｢……｣

レイヴィニア｢ブリュンヒルドの信頼を捨てたってのに成功確率はかなり低いってのが現状だよ｣

シルビア｢う……そこまで考えていたとは……｣

シルビア｢それは申し訳なかったね｣ｳｳ…

レイヴィニア｢そんな思い詰めることはないさ。グレムリンはいつか必ずブリュンヒルドを狙って現れるんだからな｣

シルビア｢確信でもあるのかい？｣

レイヴィニア｢もちろんさ｣

レイヴィニア｢主神の槍の設計図ってのは早々簡単に見つけられるもんじゃない上に、奴らが喉から手が出るほど欲しがってるもんだ｣

レイヴィニア｢だから、相手方の指揮官さまがしばらく様子見を選ぶような賢いやつなら、私たちとグレムリンの我慢勝負になるだけさ｣

レイヴィニア｢ま、そんなことになったら男連中にどやされるかもしれないけどな｣ｸﾂｸﾂ

シルビア｢はぁ……相手が馬鹿なことを祈るばかりだ｣

レイヴィニア｢だな。そうでないと二人揃って三角木馬の刑さ｣

シルビア｢うっ、不吉なことは言うもんじゃないよ｣

レイヴィニア｢まあ、誰から見ても私たちとブリュンヒルドが仲間には見えない状況に持ち込めただけよかったとしよう｣

レイヴィニア｢ある程度の騒ぎも起せたし、後は本当にさっさと動いてくれることを祈るしかない｣

シルビア｢……とりあえず、今日明日で動いてくれた場合の作戦の確認でもするか｣

シルビア｢さっきのことで大幅な変更をしなくてはならないところもあるからね｣

レイヴィニア｢そうだな｣

レイヴィニア｢まず、ブリュンヒルドもグレムリンも私たちのことを警戒しているから、襲撃が始まるまでは病院に入ることもできないだろうな｣

シルビア｢やっぱりそうか……ブリュンヒルドにまで攻撃されるのは勘弁なんだけど｣

レイヴィニア｢そこは仕方がないさ。私たちがヘマしてしまったことへのツケだ｣

レイヴィニア｢だけど、こっちからブリュンヒルドに攻撃するのは絶対にするなよ？｣

シルビア｢それくらい分かってるさ｣

シルビア｢これ以上嫌われると本当に仲間になってくれなくなるだろうし｣

レイヴィニア｢一応言っておくが、現時点でも仲間になってもらえる確率は限りなく低いからな｣

シルビア｢……そこも何か対策が必要なんじゃないのかい？｣

レイヴィニア｢……あの男はここまで予測してあんなことを言っていたのかね？｣

シルビア｢え？｣

レイヴィニア｢いや、なんでもない。だが忘れてもらっては困る｣

レイヴィニア｢私は明け色の陽射しのボスをやっているんだぞ？｣

シルビア｢…………だから？｣

レイヴィニア｢交渉は魔術の次に得意ってわけだ｣

レイヴィニア｢ああなった後に信頼を得るのは面倒だろうが、何とか交渉するつもりさ｣

シルビア｢ふーん、まあ、そこまで自信満々なアンタに水を差すのもあれだし任せておくよ｣

シルビア｢私じゃ他に案は思いつかないし｣

レイヴィニア｢だろうな。私だって他の案は出てこないし｣

ここまでー！！
乙ありです！

レイヴィニア｢ところで……｣

シルビア｢なんだい？｣

レイヴィニア｢お前が嫌うような手段を使ってしまったことについては謝る｣

シルビア｢私が嫌う手段……｣

レイヴィニア｢一応、直接的にあの少年をどうこうするとは言わないように気を付けていた｣

レイヴィニア｢だが、結果的に少年を人質のように使うことでブリュンヒルドの奴を焚きつける結果になってしまっただろう？｣

シルビア｢ああ……そのことか｣

レイヴィニア｢後で作戦開始してからグチグチ言われても面倒だから、今のうちに文句なら言っておいてくれ｣

シルビア｢……ははっ、私は結構はっきり言うタイプだから、本当に文句があったら今まで黙ってるわけがないさ｣

シルビア｢アンタがこっそり放った起死回生の策も半分潰してしまったしね｣

シルビア｢ってことで、今回の件では私に文句を言う権利はないんだよ｣

レイヴィニア｢……そんなものか｣ｶﾂｯ

レイヴィニア｢着いたぞ｣

シルビア｢え、アパート？｣

レイヴィニア｢……の一室だ。さすがにこのサイズの建物をいくつも持っていると目立つからな｣ｶﾂｶﾂ

シルビア｢なんだ……驚かさないでほしいもんだね｣

シルビア｢いくら黄金系有数の強力な魔術結社とはいえ、たかが一組織がこのサイズの建物をいくつも保有するだけの財力を持っているなんて狂ってると思ったじゃないか｣ｽﾀｽﾀ

レイヴィニア｢いや、ウチの財産を使えばそれくらいは造作もない事だが、そんな無駄遣いする必要性もないのでな｣

シルビア｢うへえ、その金を魔術の為だけに使うとか私にはとてもじゃないけどできやしないね｣

レイヴィニア｢私だってそんな使い方をしているわけじゃない｣

レイヴィニア｢確かに、ほとんどは魔術や組織のために使っているが、妹と出かけたりする時には使ったりする｣ｶﾞﾁｬ

シルビア｢微笑ましいビジョンが浮かぶねえ。不器用な姉の手を引く妹か｣

レイヴィニア｢……入れないぞ？｣

シルビア｢そうしたいならご自由に。元々私はホテルに泊まるつもりだったし｣

レイヴィニア｢観光客か、お前は？｣

シルビア｢いいや、仕事で出張だよ｣

シルビア｢それも魔神を倒すお仕事さ｣

レイヴィニア｢ま、離れたら連携取るのも面倒だからさっきのは冗談だけど｣

シルビア｢だろうね。本気で言ってたとしたらプロの看板は下ろしてもらわなくちゃならなかったからね｣

レイヴィニア｢私情よりも仕事ってのがプロの基本だ。それくらいは守るよ｣

シルビア｢結構その辺は怪しい気がするけど？｣

レイヴィニア｢ふん、聖人相手にこんなことを言うのもなんだが今のうちに寝ておいた方がいいぞ｣

レイヴィニア｢これから忙しくなるから休む間もなくなる｣

シルビア｢ふーん、確かにそれは私に言うべきじゃないな｣

シルビア｢自分に対して言った方がいいんじゃないの？｣

レイヴィニア｢おいおい、二人とも休んでしまったら誰がグレムリンの動きを監視するんだよ｣

シルビア｢……キッチン借りるよ｣

レイヴィニア｢おい、休んだ方がいいと言ってるのに｣

シルビア｢なら先にアンタが休むといいよ｣

レイヴィニア｢だが……｣

シルビア｢私はこれでも二、三日の徹夜くらいなら問題ないからねえ｣

シルビア｢ただし、ご飯を食べた後でってことで｣

シルビア｢腹が減っては戦は出来ぬだからね｣

レイヴィニア｢聖人でもそこは変わらないか｣

シルビア｢いくら聖人だとはいえ、人間であることは変わらないからねえ｣

レイヴィニア｢分かった。じゃあご飯にしよう｣

レイヴィニア｢ただし！ 私の分は野菜少な目にしろよ！！！｣

シルビア｢さあー？ 成長期のお子様には野菜は必須ですから｣

レイヴィニア｢このぉ……！！｣

シルビア｢まあまあ、前のよりは食べやすくするからさ。そんなにいきり立つもんじゃないよ｣

レイヴィニア｢っ……絶対だからな｣

シルビア｢はいはい、約束約束｣

シルビア｢とりあえず私が作ってる間は病院周辺の監視は頼んだよ｣

レイヴィニア｢分かってる｣

シルビア｢魔術は禁止だよ｣

レイヴィニア｢自らバレるような真似はしないさ｣

シルビア｢ま、そこらへんは心配いらないか。それじゃあ任せたよ｣

レイヴィニア｢ああ｣

今日はここまでー。
おつありです！

……………………………

シルビア｢ふう、完成っと｣

レイヴィニア｢材料は大丈夫だったのか？｣

シルビア｢野菜も肉も新鮮な物ばっかりだったよ｣ｶﾁｬkﾁｬ

シルビア｢ただ、値段が高そうなものばっかりで驚いたけどねえ｣

レイヴィニア｢……食にはそれなりに金を使うように言ってある｣

レイヴィニア｢腐ったものでも食べて腹を壊しでもしたら魔術とか言ってられないからな｣

シルビア｢へえ、好き嫌いはするのに人にはそんなこと言ってるんだねえ｣

レイヴィニア｢う、うるさい！ 結局食べさせられるんだから文句を言われる筋合いはない！！｣

シルビア｢ふーん……なら、今日も野菜をいっぱい食べようか｣

レイヴィニア｢受けて立とう｣

レイヴィニア｢ん？ 野菜なのにおいしいじゃないか｣

シルビア｢だから言ったじゃないか。食べやすくするってね｣

シルビア｢少し手間がかかるからあまり作りたくはないんだけど｣

レイヴィニア｢うんうんこれならいくらでも野菜が食べられるな｣

シルビア｢大絶賛だねえ｣

シルビア｢そう言う感想を貰えると、作り甲斐があるってもんだ｣

シルビア｢ところで、あっちは何か異変あったかい？｣

レイヴィニア｢そうだな……大した事は無いが、ブリュンヒルドが何かを買いに外へ出て、袋を持って帰ってきたのが見えたな｣

シルビア｢それは……本当に大した事無いな｣