海未「案の定腰をおかしくしてしまいました。」【ラブライブ!SS】 (43)

前作、海未「ティッシュ箱を投げつけられました。」【ラブライブ!SS】海未「ティッシュ箱を投げつけられました。」【ラブライブ!SS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454592465/)
の続編で、世界線とキャラ設定同じのつもりです。是非、そちらを読んだ後にお読みください。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455277635

海未「穂乃果〜、起きてください」

穂乃果「すぅ....すぅ....」


私たちは初めてのキスをして、しばらく抱き合っていました。

そしたら、そのまま穂乃果が寝てしまったのです。

ですが、力が抜けて全体重がのしかかってきているのに、全然重くないんです。

普段食いしん坊なのに、何だかんだでこのスタイルを保っていられるなんて、羨ましいですよね。

穂乃果なりに何か対策でもしているのでしょうか。


海未「穂乃果、穂乃果」

穂乃果「やぁ....」


背中をトントンしても、さっきよりも強く抱きしめてくるだけで、これは起きそうにないですね。

心地良さそうに寝ているところを、わざわざ起こすのも悪いですし。

だって、私が穂乃果の立場なら、好きな人に支えられながら、しかも抱きしめられながら寝ることができるなんて幸せすぎますから。


海未「でもどうしましょう。ベッドに横にしたら起きてしまいますかね」

穂乃果「うみ....にゃ....」

海未「あ....はわぁっ!?」


少し冷静になって、やっとというか、今更気づいたことがあります。

胸が....胸が....よく考えたら胸が....。

穂乃果も小さくないですし、まるで押し付けるように抱きついてきているので、少し動いただけで....。

ふにっと。

私も女の子ですが、柔らかい感触が自分の胸にも伝わってきて。

とりあえず考えないように努力しなければ。



海未「やはりベッドに―」

コンコン

海未「ん、はーい?」

ガチャ

雪穂「海未さん、ただいまです」

海未「え、ええ、お帰りなさい、雪穂」

雪穂「あれ?お姉ちゃん寝ちゃったんですか?」

海未「はい」

雪穂「抱き合いながら....ほ、本当にラブラブなんですね」


穂乃果の妹の雪穂は、おませさんな所もありますが、実際にこういうのを見ると顔が赤くなります。

手の甲を口元にやるのが穂乃果そっくりで、さすが姉妹という感じですかね。

まぁ、高校受験生で思春期真っ只中ですからね。

恋などにも興味があるのかもしれません。


海未「私も恥ずかしかったですよ?いままでは」

雪穂「恋って、そういうものじゃないんですか?」

海未「いいえ、それは本当の恋じゃないと思うんです。まだまだ―って、雪穂もそのうち分かりますよ」


知ったかぶりみたいになってしまいました。

でも、さっき分かったんです。

初めの初々しさも、ドキドキも、恋なんです。

が、こうやって触れ合って、更にお互いの心の底からの愛をぶつけ合うこと、これが恋の真骨頂なのではないかと。

そう、思ったんです。

伝わる体温、胸の鼓動、体重、香り、息、柔らかさ。

全てが自分のモノになったような気持ちで、穂乃果もそう思っていると思うと、嬉しくて、高まっていく気持ちでつい乱暴をしたくなるような。

でも結局は、優しくする、されるのが、1番の幸せかもしれないと考えたところで、一旦自分の中の考えが落ち着きます。


雪穂「お姉ちゃん、温かいですよね。そうやってぎゅっとされるの私も大好きで。昔から不思議なパワーでもあるんじゃないかって思うくらい、安心して」

海未「ですね。穂乃果は―」

雪穂「そんなお姉ちゃんが、最近はどこか遠くにお散歩しに行って、帰ってこないような....胸の中のお姉ちゃんがいた所にぽっかり穴があいちゃったような....そんな感じで。ちょっと、嫉妬しちゃいます」

海未「ぁ....」



姉と妹という関係。

幼なじみや親友という関係。

どちらもずっとそばにいて、お互いをよく知っている。

そんな家族が、慕っていた姉が、大好きな姉が、穂乃果というお姉さんが。

傍から見れば「ただの友達」の私に取られてしまった。

妹の私の家族愛では到底勝てない、自分の知らない愛に取られたと、そう思っているのではないでしょうか。

取られた、は流石に言い方が悪いですが、でも、こうして誰かを失い悲しむ人がいるのも事実です。

例えば穂乃果のことが好きな人が私以外にいたとして、私と穂乃果が結ばれてしまったのを見たら、凄く辛いでしょう。

今の雪穂になんて声をかければいいのかわからない。

わからないけど、なら。


海未「絶対に、大切にします。絶対に離しません。絶対に、独りぼっちにさせませんよ」

雪穂「っへへ、お姉ちゃんが海未さんを選んだんです。私がどうこう言う権利なんて、無いですよね。それに....」

海未「はい?」

雪穂「海未さんも、大切なお姉ちゃんですから」

海未「お姉ちゃん、ですか」

雪穂「はい。それで....えっと....」


何かを伝えようとモジモジしています。


海未「なんですか?お姉ちゃんなんですから、何でも言ってください」

雪穂「な、なら....。私も海未ちゃんって呼んでいいですか?中学生になってからは先輩意識があって呼べなくて....生意気ですかね....?」

海未「ん....それなら許可を得なくても、勝手に呼んでくれて良かったのですが....私たちに先輩後輩は関係ないですよ。気軽に呼んでください」

雪穂「っはい!」


普段冷静な雪穂の、自然な笑顔を見るのは久しぶりの気がしました。

不思議ですね、好きな人の妹とのこういう関係は。


穂乃果「へくちっ....ふぇっくちっ....ズビッ」

海未「あら?くしゃみが凄いですね」

穂乃果「ぅあれ、穂乃果....」

海未「ああ、起きましたね。そういえばくしゃみ、今朝からしてましたよね?」

穂乃果「くしゃみ....あれ、穂乃果寝てたの?」

雪穂「ふふ、お姉ちゃん今凄い体勢だよ?」



雪穂の言う通りです。

向かい合って抱き合ってるだけではなく、穂乃果は私の膝に乗り、脚を腰の方で組み、ガッチリとコアラのようにくっついてきていますから。


穂乃果「はわっ!」

海未「あだっ、いだだだだっ、腰がっ」

穂乃果「むぅぅぅぅ」

海未「いだいいだい!タイムタイムタイム!タイムですって!!!」

雪穂「あ....ご、ごめんなさい、ちょっと調子に―」

穂乃果「むむむぅぅぅぅ」

海未「ひぐぅっ」


雪穂の言葉に恥ずかしがった穂乃果は、腕と脚両方の力を入れてきて、私はとばっちりで地獄を見ました。


ゴキッ!!


― 5分後 ―


穂乃果「う、海未ちゃん、ゴメンねぇ?」

海未「いいですよ、別に」

穂乃果「ででっ、でもっ」

海未「本当に、大丈夫ですから」


案の定腰をおかしくしてしまいました。

穂乃果の部屋の床に寝転がって、痛くない大勢を保っています。


雪穂「元はと言えば私が....」

海未「大丈夫です、気にしてませんから。....少し穂乃果と2人きりにさせてもらえませんか?」

雪穂「あっ、はい、本当にすみませんでした」


部屋から追い出すような形になってしまいましたが、申し訳なさそうに謝ってくる雪穂は見たくありません。

元気な姿が見たいので、このまま同じようなやり取りをしても仕方がないですしね。

それに、穂乃果も同じで。



海未「穂乃果、このくらいの怪我はスポーツをしていればしょっちゅうですよ」

穂乃果「穂乃果なったことないもん」

海未「ひ、人によるんですよ」

穂乃果「本当に?」

海未「えっと....はい....」

穂乃果「で、でも、穂乃果がやっちゃったから....」

海未「なら、私が穂乃果を嫌いになるとでも?」

穂乃果「....ぅぅ....」


じんわり涙を浮かべている目をそらして、下を向いています。

恐らく図星で、多少心配をしていたみたいですね。


海未「はぁ、穂乃果」

穂乃果「なぁに?」

海未「私の横に寝転がってください」

穂乃果「え?....こ、こう?」

海未「そうです」


私は穂乃果を横に呼んで。

不器用なりに....。


穂乃果「んっ」

海未「....」

穂乃果「ぷはっ....は、は、はぁ、いきっ、いきなりっ!」

海未「穂乃果は、私にこんな事をされても、怪我くらいで嫌われると思うんですか?」


覚えたてのキスを、こんなに乱暴に使って。

その流れで、今の想いを伝えたのです。


海未「どうなんですか?」

穂乃果「ぷぅ....思わない」

海未「うふふ、そんなに膨れなくても」

穂乃果「海未ちゃんがずるいの」

海未「そんなことをした覚えはないですよ」

穂乃果「どの口が言うのさ。そんないきなり乱暴にされたら....穂乃果....」

海未「ん?」

穂乃果「ふん。海未ちゃんのえっち」



顔を赤らめて、穂乃果が何を言おうとしていたのかはわかりませんが、数日ぶりのえっち呼ばわりです。

ちょっとやりすぎましたかね。

私らしくないのにも、もう慣れてしまいました。

今は大好きな穂乃果の事しか見えていないので。


穂乃果「ね、ねぇ、そろそろ穂乃果の腰にある手をどけてくれないかな」

海未「あ....ごめんなさ―いだっ!!!」

穂乃果「え、あ、動くと痛むの!?大丈夫!?」

海未「ごめんなさい....いたた....」

穂乃果「えっと、こういう時はサロンパロスだよね!」


そう言って穂乃果は、近くに置いてあった箱を持ってきます。

ガサゴソと箱の中を探してる時に見えたものが、絆創膏や消毒液、包帯やハサミでした。

恐らく救急箱です。

その大きめの箱には、ドーンと大きな林檎のシールが貼ってあります。

しかも林檎の隣には、小さな注射器のシールが2つ。

穂乃果の趣味はシール集めで、普段は人に見せないし、ベタベタと貼り付けないので、ここに貼っているものは穂乃果的に価値が低いのでしょう。

なんだか凄く愛らしくて。


海未「ふふ、可愛いなぁ」

穂乃果「何か言った?」

海未「え?あ、いえ、何も」

穂乃果「でも語尾がおかしかったような気が」


少し敬語じゃなくするだけで、この有様です。

穂乃果みたいに、敬語と両方を使い分けることができるのは、いいなぁって思うことはあります。

小さい頃から、お稽古では、父と母はもちろん師匠なので、敬語を使うのに慣れてしまったんですね。

両親共に、お稽古以外では、のほほんとした優しい方々なのですが、昔から仲のいい穂乃果とことりや、年上の3年生以外のメンバーは、怖い人たちだと勘違いしているみたいです。

父はラーメンが好きなので、とりあえず凛とは仲良くなれそうなのですが。



穂乃果「まぁいいや。よぉーっし!始めるぞ〜」

海未「あぁ、湿布を貼ってくれるんですね。ありがとうございます」

穂乃果「それじゃうつ伏せになって、服を少し上げて」

海未「わかりました」

穂乃果「....わ、綺麗....」

海未「ん?」

穂乃果「な、何でもないよ。でも、そんなに油断しててもいいの?」

海未「どうしてです?湿布を貼るだけでしょうに」

穂乃果「ちっちっち」


何やら得意げな表情を浮かべています。

もしかして私今危ないのでは。


穂乃果「これ、凄く効くやつなんだから!」

海未「な、なんだ、そんな事―」

穂乃果「それっ」

海未「あっ....ひゃぁぁぁぁ」


ひんやり、すぅーっと。

気持ちよくて、つい声が出てしまいました。


穂乃果「へへん、どうどう?」

海未「これは....最高ですぅ」

穂乃果「よかったぁ。これで治るといいね」

海未「はいぃ」

穂乃果「けどさ、今日帰れる?うちも海未ちゃんの家も車ないし」

海未「....そうですね....歩くのは流石に痛いです」

穂乃果「....それ本当に平気なの?折れてない?」

海未「そんな事は無いです」

穂乃果「そうかなぁ....まぁ、今日はお泊まりしなよ。明日の朝早く起きて、教科書とか取りに帰れば大丈夫でしょ?」

海未「いいんですか?」

穂乃果「うん、お母さんがいつでも大歓迎って言ってたから」

海未「あ、それではお言葉に甘えて」



折れてはいませんし、安静にしていれば明日には治るでしょうから、泊めてもらうのが一番いいのかもしれません。

いつでも大歓迎なら、休日は毎日泊まりに来てもいいんですかね。

それはそれで迷惑になりそうで怖いのですが。


― 翌朝 ―


穂乃果「ふぇっくち」

海未「けほっ、けほっ」

穂乃果「海未ちゃん....ズビッ」

海未「けほっ....うぅ....」


穂乃果も海未ちゃんも風邪引いちゃった。

手袋をわざと忘れたりしてたからかな。

くしゃみも出てたから、海未ちゃんに移しちゃったよね、これ。


穂乃果「海未ちゃん、穂乃果が移しちゃったのかも....」

海未「最近、ずっと一緒でしたからね。けほっ」

穂乃果「ちゅうも―」


ああ、ちゅうが一番いけなかったのかも。

あの時誘ってたの穂乃果だったし、海未ちゃんに悪いことしちゃったなぁ。


穂乃果「くしゅんっ....うぅ、海未ちゃん、穂乃果多分お熱あるや。動けない」

海未「あぁ....げほっげほっ....」

穂乃果「これはお休みかなぁ」

海未「腰の次は頭と喉。辛いです」

穂乃果「こんなに早く移っちゃうものなんだね....」

海未「いえ、私が風邪をひくほど弱かったのが悪いんです」

穂乃果「それじゃぁ穂乃果も弱い子じゃん」

海未「弱い子でしょう」

穂乃果「えぇ....」

海未「私がいないとすぐ泣いてしまいますし」

穂乃果「つ、辛い時は泣かないとダメなんだよ!っていうかそういう弱いなの!?」



海未ちゃんだって、辛い時穂乃果の胸で泣くくせに。

そういえば小さい頃は海未ちゃん泣き虫で。

夏は蚊が腕や脚にとまるだけで、「ほのかぁ!ことりぃ!」って。

冬は足の霜焼けとか....って、それは本当に痛そうだった。

そんな海未ちゃんも今ではこんなにしっかりした女の子になっちゃった。

穂乃果も大人に近づけてるのかなぁ。


コンコン

海未「▲☆=¥!>♂×」


海未ちゃん、なんて言ったの....。


ガチャ

雪穂「お姉ちゃ....ん」

穂乃果「ズビッ」

海未「げほっ....うぅ....」

雪穂「え?昨日までなんともなかった気がするんだけど」

穂乃果「それがね、起きたらぁ....っくしゅん!....うぅ、起きたらこれでさ」

海未「人のおうちですが....私もう....無理です。動けません」

雪穂「2人とも熱ある感じ?」

穂乃果「うん....ってごめん、穂乃果も無理....ぁぅ」


お熱でクラクラしてて、上半身を起こしているのが辛くなりました。

久しぶりの風邪だけど、この間お休みしたばっかりなんだよなぁ。

仕方ないよね。


雪穂「えっと、ならお母さんに言っておくね?お父さんに言ったら心配して和菓子作れなくなっちゃうし。まったく、2人ともベタベタくっついてたから....」


へへ、言われちゃった。

早く治して元気にならないとね。

学校も行けないし、海未ちゃんともお出かけできないし。

はーあ、こんな事ならもっと早く気づいてお薬飲んだりしてればよかったなぁ。



海未「人のおうちで風邪で寝込んだのは初めてです....けほっ....私の父―お父様を呼んでおぶって―」

雪穂「ああ、いいですよ。うちとは昔から親戚のような感じなんですから、遠慮しないで寝ててください」

海未「でも、流石に家の人の迷惑になりませんか?」

穂乃果「あはは、うちのお母さんの事だから、逆に心配してお世話してくれると思うよ〜」

海未「そう....ですか」

雪穂「お姉ちゃんは別だと思うけどね」

穂乃果「えっ!?」

雪穂「だってついこの間お休みしたばっかりだもん。怒られるぞ〜」


クスクスと笑いながら怖いこと言うなぁ....。

自分でもわかってるよ。

風邪なんだから仕方ないじゃん。


穂乃果「ま、まぁ、お父さんならすごく優しくしてくれるよ」

海未「なら、ってあなた....」

穂乃果「本当だもん!和菓子屋さんなのに、穂乃果の好きな苺のムースとか、プリンとか作ってくれてね....えへ、えへへ....楽しみぃ♪」

海未「風邪を楽しんでどうするんです!」

穂乃果「う....ごめんなさ―くしゅっ!ふぇっくちっ」

雪穂「はぁ、もう寝た方がいいよ。私が責任持ってちゃんと伝えておくから。学校にも連絡しておくし」


少しツンデレさんなのかな。

でも本当にいい妹です。

面倒見もいいし、真姫ちゃんとかは容赦なく言ってきます。

「雪穂ちゃんの方がお姉ちゃんみたい」って。

あ〜ん、穂乃果がお姉ちゃんなのにぃ〜。


― (番外編)お昼休み ―


4時限目の退屈な英語の授業が終わって、お弁当を持って中庭に行く。

3年生だけど、退屈なものは退屈なの。

いつもお昼ご飯は部室で食べるんだけど、今日は風に当たりたくなった。

太陽がてっぺんに登ってるのに、冬だからちょっと寒いわね。


にこ「はぁ、お腹空いた」



自分で作ってきてるから、お昼休みのお楽しみにはならないけど、可愛くアレンジしたり、好きな物を入れたりできるからその時は楽しい。

ご飯はおにぎりにしてきたけど、そういえば花陽もちょくちょく部室で食べてるわね。

真姫と凛もセットで付いてくるから退屈しないの。

退屈しないからこそ、ひとりになりたい時だってあるわ。


にこ「たまには静かに過ごすのもいいかも」

にこ「休み時間は勉強からの開放感もあるし、時間も沢山取れる」

希「なぁにブツブツ言っとるん?」

にこ「....」


中庭の大きな木の下にあるベンチに座ってたら。

後ろから急に聞き覚えのある声が。


希「また元気ない?」

にこ「....」

希「生理?」

にこ「そういう話は厳禁よ」

希「にこっちがお返事してくれないからよ」

にこ「どうしてあんたがいんのよ」

希「廊下でことりちゃんとお話してたら見かけて、付いてきた」

にこ「もしかしてストーカー?」

希「あまりふざけたこと言うたらわしわし―」

にこ「あわわっ、冗談よ!!」


わしわしだけは勘弁。

あれ、ちょっと痛いのよね。


希「隣、いい?」

にこ「ん」

希「素っ気ないなぁ....」

にこ「それ何?」

希「これ?なんだと思う?」

にこ「お昼ご飯....でしょ」

希「いやいや、そこはお昼ご飯の何か言わんと」

にこ「じゃあ、極上カルビ焼―」

希「わーわーわーーーー!!!!」



近所のお弁当屋さんに売ってる、極上カルビ焼き肉丼って言おうとしたら、大きな声を出して顔を赤くしたわ。

意外と可愛いとこあるじゃない。


希「にこっちのアホ!」

にこ「そこまで言わなくても」

希「言うよ!パワフルな女の子って思われてしまうやん!!」

にこ「ギャップとか良いじゃない?お昼に丼モノ食べる女子高生の裏の顔は、スクールアイドルとして活動する美少女だ!みたいな」

希「しーっ!大きな声出さんといて!わしわしするよ!?」

にこ「ごめんごめん、ちょっとやり過ぎたかも。で、結局何だったの?」

希「もぅ....ちょっとワクワクしてたんやけどなぁ....」


少しガッカリした顔を見せる。

何か作ってきて自慢しようとしてたのかしら。

ハードルが上がっちゃった〜みたいな感じかしらね。


希「これ、サンドイッチ作ってきたん」

にこ「あら!?可愛いじゃない♡」

希「本当に?」

にこ「ええ、てっきり珍味とか出てくると思ってたけど、あんた可愛いもん作るのね」

希「えへへ、本当は自分でも自信あってな?にこっちに自慢したくてワクワクしてたんよ♪」


上半身だけピョンピョン跳ねてるように喜んでる。

こういう所、天然丸出しで可愛いわ。

胸は....見てるの辛いけど。


にこ「あんたさ、今みたいに自分のことを話したりした方がもっと可愛くなるわよ?」

希「え?」

にこ「前から思ってたんだけど、自分の話題を出さなくない?それ以外にもあんたが好きな物の話とかさ」

希「....にこっち、あんたじゃなくて、名前で読んで欲しいな」

にこ「ん....ごめん、気をつける」

希「いいんよ、ちょっとわがま―」

にこ「希、今思ってることを10個言ってみて?」

希「え、いきなり何?」

にこ「いいから」



私の急な無茶ぶりに、戸惑ってるけど。

たまには希の事も構ってあげないと。

この子、私達みたいな友達はいるけど、下手したら本当はぼっちなんじゃないかしら。

少人数の時は誰かの話に乗るけど、自分からは喋らないし、大人数の時は尚更見守るだけ。

さっきみたいに、例えば「隣いい?」みたいな、仲間に入れてもらう時とか、イタズラの時とかは別として。


希「えっと、どうすればいいん?」

にこ「何でもいいのよ。何でもいいからさ、まず3つは好きな物について話してみてよ」

希「好きな物?」

にこ「うん」

希「焼き肉が好きやから、いつかみんなで食べに行きたいなぁとか?」

にこ「次」

希「えっ、あ、えっと、実はこっそり金魚さん飼ってるんやけど、1匹で寂しそうやから、お友達を買いに行きたいなぁ」

にこ「はい次」

希「みんなの事をゆっくり占ってみたいかなぁ」

にこ「3つね。んじゃ、来月の海未の誕生日パーティは焼き肉にして、その時に希の占いの館を開きましょ。きっと大盛り上がりよ」

希「なんで?え?」

にこ「それで、金魚は今日の放課後にでも買いに行きましょ」

希「え!?いやぁ、悪いよ!放課後はにこっち忙しいやろ?」

にこ「気分よ、気分。久しぶりに希がやりたい事とか言ってくれたんだから」


私が忙しいって、希、あんたはお人好し過ぎるわよ。

このくらい強引じゃないと、ただやりたい事を妄想してるだけの可哀想な子になるわ。


にこ「ほら、あと7つは自由に思ってる事一気に言ってみて」

希「う、うん....さっき出た英語の宿題が苦手なところやった。穂むらに行って水ようかんを食べたい。今日は天気が良くて気持ちいいから、午後の体育が楽しみ」

にこ「あとは?」

希「急やったからあまり思いつかないなぁ」

にこ「そう。まぁ無茶ぶりだったからね。後で一緒に絵里に宿題教えてもらいましょ。そんでもって金魚買った帰りに穂むらに行きましょ」

希「な、何だかいつもと違う気がするんやけど....どうしたん?」

にこ「気まぐれよ。私だったら適当に、穂むらまんじゅう買いに行かない?みたいに誰か誘うけど、希ったらそういうの全然ないでしょう?穂むらの水ようかんが好きだったことも今知ったし」

希「そんなの教えたって誰も喜ばないし....」

にこ「ああもう、人の厚意は素直に受け取りなさい!」

希「う、うん....」

にこ「今日は絶対一緒に下校するからね。もし仮に逃げたりしたら逆にわしわしよ」



― 穂乃果の家 ―


暗い....ここは?

あそこに見えるのは....。


穂乃果「μ’sだ」


みんなの笑顔がキラキラ光って。

練習したり、スイーツを食べたり、お勉強したり。

「―おしまいにします!」


穂乃果「今なにか....」


忘れてる。

大事なことを忘れてる。

μ’s?学校は存続、ラブライブも....あれ。

3年生が卒業したら。

最近楽しくて。

考えることも忘れて―。

「μ’sは―」


穂乃果「っは!?」

海未「あら、起きました?」

穂乃果「はぁ、はぁ、夢....?」

海未「うなされていましたよ?熱のせいですかね」

穂乃果「た、多分ね....海未ちゃんは起きてたの?」

海未「私も先程起きたばかりです。まだ全然治ってませんが....けほっけほっ....」

穂乃果「....」


胸がモヤモヤする。

風邪でナーバスになってるのかな。


穂乃果「海未ちゃん....」

海未「....え?どうしました?」

穂乃果「海未....ちゃん」

海未「え、あの、辛いんですか?気持ち悪くなってしまったとか?頭痛ですか?」


心配して慌ててる。

なのに穂乃果は涙が....勝手に溢れ出て....。



穂乃果「海未ちゃん、ぎゅってして」

海未「は、はい。分かりました」

穂乃果「ひっく....ぅぐ....」

海未「怖い夢でも、見ましたか?」

穂乃果「....μ’s」

海未「μ’s?」

穂乃果「希ちゃんと絵里ちゃんとにこちゃんが卒業したら....お終いなんだよぅ」

海未「え?....あなた、今まで前向きに進んできたではありませんか。どうしていきなりそんなこと....」

穂乃果「分かんない、分かんないけど....悲しくなっちゃって」

海未「そう....ですか」

穂乃果「9人揃ってμ’sで、みんなで遊んだり歌ったり踊ったりするのが楽しくて、今が一番最高で、ずっとずっと気にしてなかったのに....急に胸が....頭が....いっぱいに―」

海未「本当は、感じていました。μ’sを始めると言ったあなたが、一番辛くて寂しいのではないかと。でも、「お終い」を忘れるくらいの力で、私たちを引っ張ってきてくれた」

穂乃果「けどやっぱり、寂しいよぅ....思い出して、いろんなものを思い出して。誰も来なかったファーストライブとか、合宿のこととか、全部。楽しくて、充実してた毎日を思い出しちゃって!ポジティブに考えていこうって頑張ってきてたのにぃ!」

海未「分かりますよ。そして、それでもあなたはお終いにする事が一番いいと思ってることも分かります。ですが、寂しい、そんな本音は当たり前です。吐き出していいんです」

穂乃果「μ’sも好きで、学校が、みんなが、海未ちゃんとこうしていることも、好きでたまらなくて。どうしようもないのに....はぁ....」

海未「....風邪で....弱気になってしまっているんですね」


きっとそう。

お終いにすると誓ってから、考えないようにしてて。

少ない時間の中で輝けるスクールアイドルに誇りを持って。

走り続けてきた。

泣いちゃうメンバーも慰めて、穂乃果はリーダーだから強くいなきゃって。

でも今は....風邪で寝込んで、少し変な夢を見ただけでこんなになってる。

けれど、今は大好きな海未ちゃんがいるから。


穂乃果「ふぅ....なんだか少し落ち着いたかも」

海未「なら、よかったです」


寂しさを忘れるには楽しいことや嬉しいことがないと無理。

お熱でクラクラする頭でいろんな事を考えて。

結局、一番に出てくるのは海未ちゃんで。


穂乃果「海未ちゃん、穂乃果汗びっしょりだぁ」

海未「熱で寝込んでいるのですから、仕方ありません」

穂乃果「海未ちゃんも汗びっしょりだね....首のところとか光って見える」

海未「恥ずかしいですよ」

穂乃果「えへへ、それでもいい匂い♡」



海未ちゃん、海未ちゃんの匂いを嗅ぐのが大好きなの。

それでもえっちな子って思わないでいてくれる海未ちゃんが好き。

好きな香りを嗅いでいると凄く安心して。

こんなことしてたら、いつまで経っても風邪が治らないかもしれないけど。

気づいたら昨日みたいな体勢になってた。


穂乃果「すぅぅ....はぁ....」

海未「どどっ、どうしてこんなに積極的にっ」


昨日よりも自分からグイグイと。

体が暑くて何も考えられないの。

多分本能で、海未ちゃんの匂いを嗅ぎたいって。

ぎゅってしてもらいながら、左肩に鼻を押し当てて。

もしかしたら鼻水が付いちゃってるかもしれないけど、止められなくて。


穂乃果「はぁ....はぁ....すぅぅぅ....はぁ....」

海未「ずるいですぅ....穂乃果だけ、そんなに....私はこんなにも恥ずかしいのに」


穂乃果も恥ずかしいよ。

昨日のちゅうよりも恥ずかしいかもしれない。

少しえっちなちゅうをしたからって、ドキドキに慣れるわけじゃないんだね。

穂乃果の心臓が、ドクンドクンって海未ちゃんの胸を叩いてる。

あまりにも変な気分になりすぎて、「すぅー、ふぅーっ、すぅー、ふぅーっ」って、イミワカンナイ呼吸になってる。


穂乃果「ふぅーっ....ぅむぅ....んむ」

海未「穂乃果....私もう....変な気持ちに....」


お熱で辛いけど、匂いを嗅いでた肩のところを、パジャマの上からはむはむしてる。

貸してる自分のパジャマなのに、何かしていないと辛くて、口をはむはむって。


穂乃果「海未....ひゃん....もっとぎゅってしてぇ」

海未「穂乃果....穂乃果ぁ....我慢できないです」

穂乃果「えぁ....?」


また海未ちゃんが強引にちゅうをしてくる。

昨日みたいにベロを入れてきて。

ぴちゃぴちゃ変な音が鳴るけど、気持ちよくて。

自分の体がぴくぴく....えっと....けいれん?してるのが分かるよ。

海未ちゃんばかり舌を吸ってきたりするから、穂乃果も頑張ってるのに、海未ちゃんが止まってくれなくて、力が入らなくなっちゃう。



穂乃果「んふぁ....ん....」

海未「んっ....」


長いよぉ....。

頭がとろとろになっちゃって、多分変な顔になってるかも。

お母さんもお父さんも下でお仕事してるのに....風邪で学校をお休みしてるのに....。

止まらない。

穂乃果だって女の子だから、変なところが濡れてきちゃったり、どんどん変な気分になる。

弱気が吹っ飛ぶくらい幸せ。

海未ちゃん好きぃ。

好き以上の言葉がわからないよ。

大好き、愛してる、かな。


穂乃果「ん....みひゃ....あぃひへぅ....んっ」

海未「はぁ....ん....はぁ....」


ちゅうしたままじゃ上手く喋れないよぅ。

愛してるって言いたいのに。

伝えたいのに。


穂乃果「んみひゃぁぁん....んむぅ」

海未「....はぁ....はぁ....どうしたんですか?」

穂乃果「っはぁ....はぁん....はぁ....海未ちゃん」

海未「す、凄い顔ですよ....穂乃果」


ちゅうを中断して、自分がどんな顔をしてるのかわからないけど。

頭はほぼ真っ白で、海未ちゃんしか見れない。

膝の上に乗ってるから海未ちゃんは見上げてくるけど、その顔に更にドキドキしちゃう。

あぁ、海未ちゃん。

下半身をクネクネしててバレてるかもしれないけど。

穂乃果もう耐えられないよ。

我慢出来ないよ。

周りが見えなくなっちゃうよ。

何も聞こえなくなっちゃうよ。

穂乃果....。



穂乃果「海未ちゃん....はぁ....ん〜っ、ぇい〜っ」


押し倒そうとしてるのに、穂乃果の体勢からじゃ無理で。

それ以前に、力を入れてるつもりなのに全然入ってなくて。

だんだんと体が後ろに倒れていく。

海未ちゃんもそのまま倒れてくる。

逆に押し倒された。


海未「穂乃果」

穂乃果「な....はぁ....ぁに?」


海未ちゃんも力があまり入らないのか、穂乃果の上にほとんどの重みが伝わってくる。

海未ちゃんが寝てたお布団と、海未ちゃん本人に挟まれて。

息が顔に、上からのしかかってくる。

好きな人の口の匂い。

何故か凄くいい匂いで、むしろ海未ちゃんの匂いが全部好きだから。

ゾクゾクしちゃう。

何もしてないのに、体がぴくぴくって。


穂乃果「海未ちゃん....きて....」

海未「穂乃果....」

穂乃果「我慢出来ない....もう....ダメ....」

海未「本当に、本当にいいんですか?」

穂乃果「うん....早く....早く....」


嬉しくて。

初めての階段を登ってるのを実感してて。

じわじわ涙が出てきちゃう。

呼吸が荒いのは相変わらずで。

遂に海未ちゃんの手が、穂乃果の胸の方に向かってきた。



― (番外編)放課後 ―


にこ「いやぁ、ペットショップ?久しぶりに来たわ」

希「お魚さん売ってるお店の隣には猫さんやわんちゃんがおるなぁ」

にこ「猫、可愛いわね」

希「猫さん派?」

にこ「ううん、断然犬派だけど」


なんでだろ、穂乃果が浮かんでくるのよね。

あの子、犬みたいに人懐こいし。

そういうのも含めて自然と犬派になっちゃうのかね。


にこ「って、見に来たのは金魚だったわね」

希「うん、けど別のところ見ててもええよ?」

にこ「何言ってんの。一緒に来たんだから最後まで付き合うわ」


当たり前よ、あんたのために来てるんだから。

魚はあまり見たことないけど。


にこ「ふぅん、金魚以外にも綺麗な魚がいっぱいいるのね」

希「亀さんもおるよ?」

にこ「何でもいるのね。クラゲとかは―」

希「それはおらんけど、にこっちクラゲさん好きなん?」

にこ「えぁ、ま、まぁね。ぷかぷか泳いでるのがちょっと可愛いかなぁって」

希「クラゲさんにも沢山種類あって綺麗なんよね」

にこ「うん....あ、希、この子可愛いんじゃない?」

希「どれどれ....って、にこっち、この らんちゅう っていう金魚さんは高級なんよ」

にこ「そうなの?お値段は....え?金魚ってこんなに高いもんなの!?」

希「金魚さんも生きとるの!」

にこ「あ、ごめん」


そうよね、生き物だもの。

一瞬お説教うけちゃった。



希「えっとね、大きいのやと10万円以上の値がつく子もいるみたい。小さい子なら1500円くらいかなぁ」

にこ「なんだか凄い金魚に見えてきたわ」

希「そうかなぁ、可愛いと思うけど」

にこ「他は....琉金?和蘭獅子頭?沢山種類があ―ええっ!?」

希「ん?」

にこ「希、このくらいが普通のお値段なの?」

希「そんなことはないけど、ウチは欲しいと思うよ?」

にこ「価値観の違いね....。希は金魚育ててどのくらいなの?」

希「そろそろ1年くらいやと思うよ。沢山お勉強して可愛がっとるよ」

にこ「ひとり暮らしだものね」

希「うん!帰ったらただいまって声かけるん。そしたらな、クルクル泳いでおかえり〜って♪」


普段見せないような、ニッコリ笑顔。

自分の伝いたいと思ったことを私と共有することが楽しいのね。

いつもは自分のこと全然話してくれないのに。

他人が大事で....他人の笑顔が好きなあんた。

たまにはさ、こういうのもいいでしょ。


にこ「あら?これ出目金よね?私黒いイメージしかなかったわ。目がクリッとしてて可愛いわね」

希「わぁ、可愛ええなぁ♡」

にこ「希はある程度決まったの?欲しい子」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


希「はぁ〜むっ」

にこ「うむ、美味しいわね」

希「うひのらいこううつ―」

にこ「口に物入れながら喋らない!」

希「ん....はぁ、美味しいなぁ」

にこ「まったく....あ、そういえば穂乃果休んでたわね」

希「うん。最近部活が無い日も多いし、会えないのはちょっと寂しいね」

にこ「そうね....卒業、迫ってるのに」

希「あれ、にこっちらしくないんやない?卒業の事話すの」

にこ「そうかもしれないけど、やっぱり気になるでしょ。高校生活が終わるんだから」

希「....出目ちゃんはどう思う〜?」

にこ「金魚に聞いたって答えてくれるわけないでしょうが」



穂むらの近くの公園で一休み。

部活がなかったから、まだ時間はある。

水ようかんを食べながら、そして希は片手に金魚。

結局出目金にしたみたいね。


希「ん....ふぅ....美味しかった」

にこ「そう。よかったわ」

希「....」

にこ「....」

希「....」

にこ「....希?」

希「んー?」

にこ「どうしたの?」

希「うんー....なぁにこっち」

にこ「何?」

希「今日は....ありがとうな....」

にこ「ぁ....」


優しい表情で。

私に寄りかかってきた。

シャンプーの甘い香りと一緒に....ふわりと、柔らかくて。

「ありがとう」だってさ。


にこ「何もしてな―」

希「ウチな」

にこ「ん」

希「こうやって誰かと、自分の欲しい物買いにお出かけするの、久しぶりだったんよ」

にこ「....そう」

希「なんだかお姉さんができて、遊んでもらってたみたいやった」

にこ「ばーか。私はみんなのにこにーお姉さんよ」


私も優しく答える。

....ふと、気になった。

こうして希と遊ぶ時間、会話して、それが楽しくて。

天然混じりの優しい女の子といると、自分まで優しくなれるような感じがする。

自分の妹みたいに可愛くて....守りたいとか、本当の希を知っているから庇護欲みたいなものが湧いてくるの。

この気持ちは何かに似てる。

そんな事が気になったの。



希「にこっちは優しいなぁ」

にこ「優しい?私が?」

希「うん。それに....楽しかったよ、今日」

にこ「少し買い物しただけだけどね」

希「にこっちと2人やったから楽しかったんよ」

にこ「そ....私たち、1年の頃から仲良かった....わよね?」

希「あまりお話したことはなかったけどね」


一番自分が自分らしくいれる時間。

そう、希とのこういう時間。

キャラ作りとか関係ない、そんなもの必要ない大切な親友との時間。

ゆったりと流れていく時間。

不思議だけど、好きだった穂乃果とでも、こんな想いはしなかったと思う。

その穂乃果との事....失恋の事も、希は知っている。

お互いがお互いの事を、よく知っている。


希「....にこっちは、ウチのこと沢山知ってるよね?」

にこ「え?」

希「だって、にこっちといるとな、いろんな事お喋りしてしまうん。スピリチュアルやなぁ」

にこ「なら、私といる時だけでもさ、これからもずっとお喋りさんになりなさいよ。あんた可愛いんだから」

希「またあんたって言ったぁ」

にこ「あぁ、ごめん、希」

希「まぁいいんやけど」

にこ「ふふ、どっちよ」

希「....名前の方がいいかなぁ」

にこ「わかったわ」



変わらずゆったりと流れていく。

私にとっての一番幸せになれる時間は、これなんじゃないかって。

何かあるとまだ、穂乃果の事を考えてしまうけど。

なんでだろう。

今はポケーっとベンチに座って、普段ぴょこぴょこ跳ねてる私とはまるで違う。

でも、これが一番好きな私。

アイドルも好きだし、キャラ作りも大好きだけど。

希との静かな時間の方が、お姉さんでいられる時間の方が、好きなの。

変化のない時間だけど、それだけ同じ時間で輝けるのは、スクールアイドルとは違うわね。

だからって、得るものがないわけでもない。

実際に今日だって....えっと、希がお喋りさんに....なったのかな。

正直わからないけど、このいい加減さとか、何も考えないでも通じ合えるみたいのが、居心地がいい。


希「にこっち....」

にこ「んー?」

希「本当にお喋りさんになってええの?」

にこ「うん、そのくらいがいいのよ」

希「お願いごととか、全部聞いてくれるん?」

にこ「聞くわよ。神様より手っ取り早いんじゃない?」

希「どうして....ウチにそんなにしてくれるん?」

にこ「どうしてって、親友、だからじゃないの?」

希「そっかぁ」

にこ「どうしたのよ」

希「えっへへ」

にこ「....ふふ、だからどうしたのよ」

希「―き」

にこ「なぁに?」

希「好き」

にこ「....」

希「か、カードが―」

にこ「好き....か」

希「....ん....」

にこ「ふぅん....そう」



少し顔が熱くなったのを感じたけど。

なんでだろう、本当に時間に変化がない。

胸の鼓動だって早くならない。

私は穂乃果が好きだった。

今は........。

ほんっと、よくわからないわね。


にこ「水ようかん、食べかけだけど....食べる?」

希「....あ....うん」

にこ「....」

希「太っちゃうかなぁ」

にこ「別に、私が気にならなければいいんじゃないの?」

希「え?」

にこ「私だったら、好きな人が気にしなければいいけど」

希「そういう問題なんかなぁ」

にこ「そうでしょ。それに、希が美味しそうにもの食べるの、好きだから」

希「っ....そ、そぉ」

にこ「....」

希「....ね、ねぇ」

にこ「そうねぇ」

希「にこっち?」

にこ「お喋りさんになるんだからさ、思ってること、全部言いなさいよ」

希「え....あの」

にこ「少なくともひとつ、あるでしょ?聞きたくて仕方がないこと」

希「ま、まぁ....お返事、聞きたいなぁ....とか」

にこ「うん....そうね」

希「にこっち....?」



穂乃果のことが好きで....失恋したばかりなのに。

未練も、まだあるのに。

....はぁ、本当に、本当にわけわかんない。

恋とか、そういうの、複雑で....いろんなこと考えなくちゃいけなくて。

考えれば考えるだけイミワカンナイ。

希といることが安心で、楽しくて、なぁんにも、なぁぁんにも考えなくてもお互いがありのままの自分でいれる。

恋とか....私にはまだよくわかんないよ。

けど。


にこ「こういうのも....いいのかもね」

希「うん??」

にこ「ほら、そろそろ寒くなってきたわ」

希「う、うん....寒いね」

にこ「希んち、早く行きましょ。金魚、紹介してよ」

希「えっ、今から?」

にこ「どうせ1人なんでしょ?今日はママも早く帰ってくるから、家のことは心配しなくていいのよ」

希「ママ?」

にこ「あ、うっさい!」

希「っふふ」

にこ「も、もう....んじゃ、行きましょ」

希「うん」

にこ「手袋は?」

希「最初から付けてなかったよ」

にこ「そう。....手、繋ぎましょうか」

希「....不器用さん」

にこ「な、なんか言った?」

希「なーんも言ってませんよ〜♪」

にこ「まったくもう....ふふっ」


希の手は温かい。

とっても、とっても温かい。

初めからこの時間自体が温かい。

青春も、ひとつじゃないんだなぁ。

苦い思い出で終わったと思ったけど。

また、作ればいいのね。



― 穂乃果の家 ―


海未「本当に、本当にいいんですか?」

穂乃果「うん....早く....早く....」


熱のせいで何も考えられなくなっているのかもしれない。

ただ、それは私も同じで。

トロトロになるまでキスをして。

穂乃果が体をクネクネと、下半身をモゾモゾさせてたのも、気づいていました。

そして私は穂乃果を優しく押し倒して。

真っ赤っかにとろける穂乃果の顔が近くて。

変な気持ちが収まるどころか高まってきて。

穂乃果を見ているだけでも気持ちが良い。

手が、勝手に動き出す。


海未「はぁ、はぁ、柔らかい....です」

穂乃果「あはぁ、はぁ....ちょっと、くすぐったいけど....はぁ」


私よりも少し大きい胸。

自分のを触るよりも柔らかくて、本人の反応も間近で見られて。

ただ服の上から触っているだけなのに、穂乃果の顔はまだまだとろけていく。

私自身も、目がぐるぐるして、次にどうしたらいいかわからないし、自分が今何をしているのかすら分からなくなりそうで。

本能で、ただ突き進むことしかできない。


海未「私もう....止まれなくなってしまいます....穂乃果....好きです....可愛いです....」

穂乃果「海未ちゃん....優しくしてね....?」

海未「服、自分で脱げますか?」

穂乃果「嫌....海未ちゃんが脱がして」

海未「私....が」



嬉しいです。

私があなたにこうして....。

測りきれない愛を感じます。

同時にこれ以上にない幸せも。

体の奥がキュンキュンして。

....Tシャツから脱がせます。

裾を掴んで、上にやればやるほど、綺麗な白い肌が顔を出す。

汗を沢山かいているのに、甘い匂いがします。

肩の方まで持っていくと、穂乃果が腕を頭上に伸ばしました。

背中も浮かせて、目も瞑って。

色っぽい表情が....本当に....可愛くて。


穂乃果「はぁ....はぁ....恥ずかしい....」

海未「まだ、まだです....」


今度はズボンを。

ゆっくりと、下ろしていく。

程よい肉付きの太ももが....最後に小さな足が....。

全部、全部綺麗で、可愛くて。

言葉にできない興奮に襲われる。

破廉恥だってわかっているのに、白い肌を舐めまわしたいと思ったり。

下着だけの穂乃果。

モジモジしながらも、まだ何かを求めてくる。

今日は水色で、白のフリルが付いています。

相変わらず私よりも女の子っぽい下着を着ているんですね。


穂乃果「はぁ....っはぁ、はぁ....」

海未「穂乃果」



次は、何をすればいいんですか。

あなたは今、何を求めているんですか。

下着を....脱がせればいいんですか。

って、もう、プルプルと震えながら、私の手はブラジャーを掴んでいる。

ダメ、早く見たい。

この布の下が見たい。


海未「....はぁ....はぁ....穂乃果ぁ」

穂乃果「....ふぇぇ....はぁぁ....見られてる....はぁぁ....」



穂乃果はとうとう顔を隠してしまった。

けど、我慢するのが辛くなってきました。

また暴走してしまう....。

だって。

薄いピンク色の....初めて見る....穂乃果の....。

また、暴走する。

制御できなくなる。

ごめんなさい穂乃果。

こんな破廉恥なものを見せられたら私....。


海未「穂乃果ぁ....ん....」

穂乃果「ふにゃぁ」


一瞬ゾクン、と。

....咥えてしまいました。

赤ちゃんみたいに。

我慢なんてできるわけがない。

好きな人と、こんな状況なんですから。

私は少し固くなっている胸の先を、優しく舌で転がします。


穂乃果「っはぁ....ふぅ....海未ちゃぁ....」


弱いのか、落ち着きがありません。

声が出そうなのを必死に我慢して、手の隙間からこぼれる「ふぅ、はふぅ」という息に、興奮が止まらなくて。

好きだから虐めたくなってしまう。

もっと、私が気持ちよくさせてあげたいって。

優しく噛んでみたり、舌の先で触れるか触れないかの所で触れたり。

そしたら。


穂乃果「海っ....ぁん....あっ」


今度は大きく、ビクンと体が痙攣しました。



穂乃果「はっ、はぁ....はぁっ、はぁ」

海未「すみません、やりすぎましたか?」

穂乃果「うう....ん....もっと....して欲しい」

海未「エッチな子ですね」

穂乃果「ぃやぁ、違うもん」

海未「ですが、もう顔は隠さないでください」

穂乃果「や、やぁ、恥ずかし」

海未「あなたの可愛い顔が見たいんです」

穂乃果「あぁぅ....」

海未「いいですか?もう隠さないでくださいね?」

穂乃果「ぅぅぅ」

海未「約束、です」

穂乃果「あっ....ぅん....はぁ、はぁ、恥ずかしいよぅ」


顔を横に向けて、目をキョロキョロさせていますが、約束と言ったら、素直に顔を隠すのはやめてくれました。

やはりこれがいい。

あなたの顔が見える。

それだけで胸の奥がきゅぅんってします。


海未「でも穂乃果」

穂乃果「な、なぁに?」

海未「こっちはもう....大変なことになっているんじゃないですか?」

穂乃果「ななっ、なってないっ!」

海未「あら?何が『なってない』なんですか?」

穂乃果「えぁ....うぅ....意地悪は嫌だよぅ」

海未「なっ、あ、あなたはずるいですぅ....。さぁ、腰、浮かせてください」

穂乃果「はぁ、はぁ、うん、はぁ....」


さっき舐めていた所が、よだれで少し光っているのが目の端に見えますが。

焦らしすぎて、濡れて染み出て跡ができているパンツを。

ゴクリと唾を飲みながら。

下ろしていきます。

目を瞑って、脱がし終えて。

ゆっくりと目を開けます。

大切な人の、大事な所を。

初めて、この目で....。



穂乃果「穂乃果、キレイじゃないからぁ、はぁ、あまりじっと見ないでぇ....はぁ、はぁ」


ちょこんと毛が生えていて、少し幼さも残る穂乃果の大切な場所。

やっぱりもうびしょびしょで、それを見て気づきましたが、私自身もパンツの中が気持ち悪いです。

恥ずかしいのは我慢できないみたいで、キュッと股を脚で隠そうとしてしまいます。

あぁ.....。

穂乃果ぁ。


海未「キス、しましょう」

穂乃果「うん....んっ」



まずはキスから。

当たり前になりつつあるディープキスをしながら、だんだんと、片手を穂乃果の首の後ろにやって、押し付けるように。

同時に私の背中に、穂乃果も腕を回してきます。

私は服を着たままですが。

そろそろ、いいですかね。

穂乃果の気も、キスにそれてきた頃です。

手を、そーっと。

下の方へ....。


穂乃果「ぅっ....んぅ」


女の子の、本当に本当に大事な所。

少し触れただけで、ピクンと体を震わせました。

それでも強引にキスを続けて、暴れようとする穂乃果を押さえ込みます。

そして、大切に....愛撫し続けます。


穂乃果「んふぅ、んうぅ....ふぅ....ぅんっ」


口が塞がれて苦しそうですが、体は正直で、舌はグイグイ入ってきて、腕の力も強くなります。

更に、触っている私の手も、さっき以上にネトネトに濡れていきます。

ですがそろそろキスはやめましょう。

本当に苦しそうです。



穂乃果「ぷは....ぁぅん....ぅ....ぁ....はぁ....ぅん」

海未「はぁ....はぁ....辛いですか?」

穂乃果「んっ....ふぐぅ....気持っ....ちぃよぉ」

海未「何ですか?聞こえませんよ?」

穂乃果「っはぁ、んっ.....気持ちい....よっ」

海未「よく言えました」

穂乃果「え....へへ....ぁん....んっ」



愛撫し始めてから、何分か経ちましたね。

だんだん、私の背中にある穂乃果の手が、爪を立ててきました。

足もピンと力が入ってきて、シーツが張っています。


穂乃果「海未ぁっ....ちゃん....もぅ....ぁっ」

海未「はい、いいですよ。穂乃果、顔、よく見せてください」

穂乃果「ぅん....はぁっ....ぁっ....ぁっ」


片手で横髪をどかして、前髪は左に寄せて、顔が良く見えるようにします。

涙と一緒に、我慢しきれなくなった声がほぼ漏れています。

私は優しく微笑みながら、穂乃果の顔を見守ります。

そして....。



穂乃果「海未ちゃん....ぁっ....海未ちゃん、ぃく....海未ちゃん....穂乃果もういくっ....ちゅうしてぇ、ちゅうしてぇっ」

海未「はい....ん」



少し虐めてみようと、キスは一瞬だけしました。

もう、背中に爪を立ててる手が、痛く感じるほどになってきました。

最後に、耳元で名前を囁きます。


海未「....穂乃果....」

穂乃果「海っ....あっああっ、い゛っ〜〜〜〜ぅっっ....ふわぁっ、はっ、はっ、はぁっ、はぁん....はぁ、はぁぁ」

海未「穂乃果....可愛いです....」

穂乃果「はぁ....ぁっ....ふぅ....ぁ....」


体が2回ほど少し飛び跳ねて、絶頂してしまいました。

腕も足も、あんなに入っていた力が抜けて、ピクピクと痙攣が止まらないみたいです。


海未「穂乃果、好きです。....チュ」

穂乃果「穂....乃果も....しゅき....」

海未「少し、休みましょうか」

穂乃果「う....ん、海未....ちゃんもいっ....しょにぃ」


絶頂したばかりの敏感になっている穂乃果を、今まで以上に優しく扱います。

そしてゆっくりと体を起こして、また抱きしめる。

背中は汗でベトベトで、髪の毛もまるで雨に濡れたみたいにびっしょりです。



海未「辛かったですか?」

穂乃果「ふぅ....良かっ....たぁ....」

海未「....私も....その....」

穂乃果「海....ちゃ....と................」

海未「ってあれ?穂乃果?」

穂乃果「....すぅ....」

海未「....ね、寝てしまいましたか....服、着させないとですね....」


私の番が回ってこなかったのはちょっぴり寂しいですが、もともと熱もあったので、また今度でいいですね。

また一つ、大人へ近づいた気分です。

そんな、大きな初めてを感じて。

しばらく穂乃果を抱きしめた後、服を着させてベッドに寝かせました。


穂乃果「くしゅんっ」


そして。

1日で風邪が治らなくて、ふたり揃って穂乃果のお母様に怒られてしまう朝、それはまた別のお話です。

おしまい。
最後まで読んでくれた方ありがとうございます。
※またまた続編は気が向いたら書きます。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom