加持「初めまして、碇シンジ君」 (770)

エヴァのもしもみたいな話です。


シンジ「...」ガチャッ ツーツー

電話音声「現在、東海地方を中心に緊急避難警告が出ております。すみやかにシェルターに...」

シンジ「だめだ、やっぱり繋がらない」

シンジ「こんな時に待ち合わせなんて...」ズズーン

シンジ「!?」

第三使徒「...」

シンジ「なんだあの化け物...!?」

シンジ(早く逃げないと...とりあえず最寄りのシェルターに)

?「うぉーい」

シンジ「?」

?「悪いな、少々準備に手間取ってな」

加持「初めまして、碇シンジ君。俺は加持リョウジ、よろしくな」

シンジ「あ、はいよろしくお願いします」

加持「と、悪いがまあこんな事態なんでね!早く乗ってくれ!」

シンジ「は、はい」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1455222302

シンジ「あ、あの化け物っていったいなんなんですか?」

加持「うーんまあ、俺たちの敵かな?」

加持「詳しい説明は後だ、とりあえずはあいつから逃げるぞ」

シンジ「わ、わかりました」

加持「もう少しで例の作戦が始まるからな、ちょいとスピード出すぞ!舌噛むなよ!」

シンジ「う、うわぁ!?」



〜ネルフ本部内・車両レール〜


ズズーン...

加持「どうやら間に合ったみたいだな」

シンジ「なんですか?今の音」

加持「爆弾をさっきの奴に使ったのさ。ま、足止めに過ぎんがね」

シンジ「そうなんですか...あの、加持さん」

加持「お近づきの印にリョウジでいいよ。なんだい?」

シンジ「リョウジさんは父さんと同じところにいるんですよね」

リョウジ「ん、まあそうだな。だが君のお父さんは俺なんかより遥かに偉いがね」

シンジ「人類を守る仕事、って先生から聞いてます」

リョウジ「そうだな、正確にはさっきの奴らから人々を守る仕事。それを実行するのがこの特務機関ネルフ、君のお父さんはその総司令さ」

シンジ「これから、父さんの所に行くんですよね」

リョウジ「そうだな、緊張するのかい?」

シンジ「そう...ですね、何年も会ってませんから」

シンジ「父さんは僕がまだ小さい頃に僕を先生の所に預けて、行っちゃったんです」

シンジ「だから、今更どんな顔して会えばいいのかわかんないんです」

シンジ「ごめんなさい、初対面なのにこんな話しちゃって」

リョウジ「...」

リョウジ「いや、いいさ。俺もこう見えて大人だ、君の悩みの相談相手くらいにはなれるよ」

リョウジ「緊張するのはわかるが、こういう時こそ落ち着いて話すのが大切さ」

シンジ「...はい」

リョウジ「ま、肩の力を抜いてがんばれよ」

シンジ「ありがとうございます...!」

リョウジ「そらついたぞ、こっちに来てくれ」

シンジ「はい」

?「時間通りね、リョウちゃん」

リョウジ「よおリッちゃん、少々手間取ったがまあ許容範囲さ」

?「相変わらず仕事の手際だけはいいのね」

リョウジ「褒め言葉として受け取っておくよ」

?「その子がサードチルドレンね」

リョウジ「ああ、三人目の適格者さ」

シンジ「は、初めまして碇シンジです」(サードチルドレンってなんだ...?)

リツコ「初めまして、私は技術一課E計画担当博士赤木リツコです」

リツコ「それじゃあいらっしゃい、お父さんに合わせる前に見せておきたいものがあるわ」

シンジ「は、はい」

リョウジ(...)

『総員、第一種戦闘配置!!』

リョウジ「おいでなすったか...初号機は?」

リツコ「初号機はB型装備で待機中、即時出撃可能よ」

リョウジ「そうか...」

シンジ(初号機...?)

リツコ「着いたわ、こっちよ」

〜初号機ケイジ内〜


シンジ「これは...ロボット!?」

リツコ「厳密にはそうじゃないわ、人の造り出した汎用人型決戦兵器」

リツコ「エヴァンゲリオン」

リツコ「我々人類の最後の希望、その初号機よ」

シンジ「これも、父が作ったんですか?」

?「そうだ」

シンジ「!?」

ゲンドウ「久しぶりだな、シンジ」

シンジ「父さん!!」

ゲンドウ「シンジ、お前がこれに乗ってあの化け物...使徒と戦うのだ」

シンジ「な...」

リョウジ「...」

シンジ「僕がこれでさっきのと戦えっていうの...?」

シンジ「そんなことできるわけないじゃないか!」

ゲンドウ「おまえが適任だ、いやお前じゃないと無理なんだ」

シンジ「わけがわからないよ!」

ゲンドウ「今はわからなくてもいい、出撃して戦え」

シンジ「今まで散々ほったらかしていたのに、今更こんなのって虫が良すぎるんだよ!!」

ゲンドウ「お前が乗らなければ人類全てが失われる、人類の存亡がお前にかかっている」

シンジ「何て言われても無理だよっ!!」

ゲンドウ「わかった...なら帰れ」

シンジ「ッ...!!」

ゲンドウ「冬月、レイを起こせ」

冬月「使えるのか?」

ゲンドウ「死んではいない」

リツコ「初号機のシステムを今すぐレイに書き換えて、再起動よ!」

シンジ「ううっ...」

リョウジ「シンジ君...」(あの親父もう少し言い方ってもんがあるんじゃないか...)

ガラガラ...


シンジ「...?」

?「...」

ゲンドウ「レイ、予備はダメだ。出撃だ」

レイ「はい」

レイ「うっ...くっ...」

シンジ「...」

シンジ「...ぐっ!」

リョウジ「シンジ君、レイはね君と同い年の女の子だ」

リョウジ「このエヴァンゲリオンに乗るための訓練で、これだけ傷ついている」

リョウジ「シンジ君、いきなりこんなとこに連れてこられてこいつに乗って戦えと言うのは理不尽なことだというのは充分承知してる」

リョウジ「だが、俺たちはこいつに乗ることができる君に希望を託すしかできないんだ...」

リョウジ「それに君は、このレイを戦いに出せるのかい?」

シンジ「...!!」



シンジ「...乗ります、これであいつと戦います」

リョウジ「ありがとうシンジ君、そしてすまない」

リョウジ「俺たちは君を全力でバックアップする、大船に乗ったつもりでいてくれ」

リツコ「私からも感謝するわシンジ君、こっちに来て」

シンジ「はい...」

ゲンドウ「...」

シンジ(父さん...)

〜初号機・エントリープラグ〜

シンジ(僕にしかできないこと...そのことで父さんが僕を必要とするなら...)

シンジ(やってやる...!)

日向「初号機!主電源接続!起動!」

青葉「ケイジ内圧力問題なし、いけます!」

マヤ「神経接続異常なし、初期コンタクトクリア!」

リツコ「すごい...シンクロ誤差0.3%以内よ」

リョウジ「さすが...と言ったところか」

リツコ「これなら今すぐ行けるわ!」

リョウジ「司令、よろしいですね」

ゲンドウ「かまわん、そのためのネルフとエヴァンゲリオンだ」

リョウジ「エヴァンゲリオン初号機、発進!」

〜第三新東京市・ジオフロント直上〜


第三使徒「...」

シンジ「...!」

リョウジ『シンジ君!聞こえるかい?』

シンジ「は、はい」

リョウジ『まずは歩くことだけを考えるんだ!そう思えばいい!』

シンジ「歩く...歩く...!」

初号機「...」ズズーン...

シンジ「動いた...!」

リョウジ『よーし上手いぞシンジ君!だがそのまま落ち着いてくれ』

リョウジ『相手の動きをよーく見るんだ、今はその距離感で良い』

シンジ「はい!」

第三使徒「...!」

シンジ「う、動いた!」

リョウジ『右に大きく前転だ!』

シンジ(右に前転...動けっ!」

リツコ「上手いわ!」

リョウジ『今のうちに接近だ!』

シンジ(接近...怖いけどこいつをやっつけるんだ...!)

シンジ「うおおおおお!!」

第三使徒「!!」

シンジ「なんだこの壁...?近づけない!!」

リツコ『やはりATフィールド!』

第三使徒「!!」

シンジ「うわっ!!」

リョウジ『まずい!避けろシンジ君!!」

シンジ「うわあああああああっ!!!」

リョウジ『シンジ君っ!!」

日向「初号機、左腕損傷!!」

シンジ(僕の腕じゃないのに痛い...なんだこれっ...!)

リョウジ『なんとかふりほどけないか!?』

第三使徒「!!!」キュピー

シンジ「うあああああ!!!!」

青葉「頭蓋に亀裂!!」

マヤ「神経断線!パルス逆流!!」

日向「モニター不能生死不明!初号機完全に沈黙!!」

リョウジ「作戦中止!パイロット保護を最優先!プラグ射出信号送信だ!」

マヤ「だめです!!受け付けません!!」

リョウジ「シンジ君っ...!」

初号機「...」

シンジ(僕は...負けちゃったのか?)

シンジ(嫌だっ...こんなところで、誰にも必要とされないまま死ぬのは!)

シンジ(父さんに認められるんだ...!)

シンジ(だからまだ死んじゃダメだっ!!)

初号機「...!」

マヤ「初号機再起動!」

リツコ「そんな!?ありえないわ!」

初号機「ウオオオオオオオ!!」

青葉「初号機、ATフィールド中和!破りました!!」

第三使徒「...!!!」

リョウジ「まずいっ!自爆する気か!?」

青葉「目標を中心に大規模な爆発を確認!」

日向「...初号機確認!パイロット生きてます!!」

リョウジ(やはり、彼女か...?)

ゲンドウ「...」ニタァ

これで一話分おわりです。書き溜めない上に遅筆ですけど完走するのでよければ見てね。

〜ネルフ本部・病室〜


シンジ「...はっ!?」

シンジ「ここは...病室?」

シンジ「僕は助かったの...?」ガチャッ

リョウジ「シンジ君!!」

シンジ「リョウジさん...」

リョウジ「良かった...いや君が目覚めたという連絡があってね、飛んできたんだ」

リョウジ「無事で良かった、本当に」

シンジ「ありがとうございます、心配かけてすみません」

リョウジ「いやいいんだ...こちらこそすまなかったな、いきなりあんなこと」

シンジ「いえ...大丈夫です」

リョウジ「そうか...」

シンジ「...」

リョウジ「...」

リョウジ「なぁシンジ君、これからは俺と住まないかい?」

シンジ「えっ?」

リョウジ「本部が君用に部屋を用意してあるんだが、そっちが良ければそれでいい」

リョウジ「だが、人は一人は寂しいもんさ。俺もこっちに来てからまだ日が浅くてね、心細いのさ」

シンジ「...いいんですか?」

リョウジ「こっちからお願いしてるのさ、良いも悪いも無い」

シンジ「じゃあ...お、お世話になります」

リョウジ「こちらこそ、よろしく」

リョウジ「そんじゃま早速俺たちの家に向かうわけだが、今夜はパーティだな」

シンジ「え?なんかあるんですか?」

リョウジ「君の歓迎会、さ」

シンジ「そんな!いいですよわざわざ」

リョウジ「なーにを言ってんだ?こういう時は、きっちりお祝いして楽しもうじゃないか!」

リョウジ「さぁ!そうと決まれば買い出しに行くぞ!」

シンジ「わっ!待ってくださいよぉ!」

リョウジ「早く来ないと置いてくぞー!」


リョウジ「と、そのまえに寄りたいとこあるんだが、いいかい?」

シンジ「構いませんよ」

リョウジ「ありがとう、そんじゃしばらくドライブといこうか」


〜第三新東京市・高台公園〜


シンジ「わぁ...綺麗な夕日ですね」

リョウジ「だろう?俺のお気に入りの場所さ」

リョウジ「そして下に見える街は、君かわ守った街だ」

リョウジ「この美しい景色も、みんなが幸せに暮らすこの街も、みな君が守ったのさ」

シンジ「...僕は必要とされてますか?」

リョウジ「もちろんだとも」

シンジ「エヴァのパイロットとして、ですよね」

リョウジ「...」


リョウジ「確かに君はエヴァのパイロットで、君にしかこの街は守れない、それを責任に感じるのもわかる。だが今目の前にいるシンジ君はただの俺の家族さ」

シンジ「リョウジさん...」

リョウジ「君の価値はエヴァだけじゃない、君を必要とする人がいることを知るのもまた人生さ」

シンジ「はい...はいっ!」

リョウジ「さ、もう日が暮れる。帰ってぱーっとやろうか!」

〜第三新東京市・加持自宅〜


リョウジ「いや〜誰かと食う飯ってのは良いな!」

シンジ「そうですね」

リョウジ「あ、シンジ君が通う学校の件なんだが」

リョウジ「明日からこの近くの第一中学校に通うことになってる」

シンジ「...はい」

リョウジ「学校は苦手かい?」

シンジ「好きでは...無いです」

リョウジ「そうか、まあ気を緩めてな。無理に楽しもうとする必要もないが、他人てのは悪いことばかりじゃないさ」

リョウジ「友達、できるといいな」

シンジ「...はい」

〜数日後・第一中学校〜



女生徒A「え、マジで!?あの転校生がこないだのロボットのパイロットなの!?」

女生徒B「そうらしいわよ〜」

女生徒C「聞いてみようよ!」

シンジ「...」

女生徒A「ねえ、碇君てなんでいまごろこの学校来たの?」

シンジ「えっ、なんでって...」

女生徒B「やっぱり、碇君てあのロボットのパイロットなんでしょ!?」

シンジ「そう...だけど」

女生徒たち「きゃー!やっぱり本当だったー!!」

男子生徒たち「マジかよー!やっぱあいつなんだってー!!」

シンジ「あ、あのえっと...」

?「.....」

?「おい、転校生ちょっとツラ貸せや」

シンジ「...?」

〜第一中学校・校舎裏〜


?「おらっ!!」ドゴッ

シンジ「うぐっ!!」

シンジ「なにすんだよっ!!」

トウジ「ワイは鈴原。鈴原トウジや々

トウジ「悪いな転校生、ワイはお前のこと殴らんと気がすまへんのや」

ケンスケ「おい!もうやめとけよ!あ、俺は相田ケンスケ」

ケンスケ「こいつの妹、この間の事件で怪我しちゃってさ」

トウジ「おまえのせいでな!」

シンジ「...!」

シンジ「怪我、ひどいの...?」

トウジ「...命に別状はないがな、今更善人面しよってもワイは許さへんで!!」

シンジ「...ごめん」

トウジ「謝って済むかいな!!」

ケンスケ「もうやめろよトウジ、悪いな碇」

トウジ「ふんっ!!」

シンジ「...」

〜ネルフ本部・エヴァ訓練施設〜


リョウジ「シンジ君、調子はどうだい?」

シンジ「あ、はい。大体思い通りに動かせるようになってきました」

リョウジ「そうか、飲み込みが早くて助かるよ」

シンジ「...あの、リョウジさん」

リョウジ「なんだ?」

シンジ「使徒が来た時って、みんなシェルターに逃げ込むんですよね」

リョウジ「ああ、市民が逃げられるようこっちは早めに警報を出してる」

シンジ「やっぱり、逃げ遅れる人とかもいるんですか」

リョウジ「まあ...緊急だからな、いるとは思うよ」

リョウジ「そうした犠牲を極力出さないようには努力してるんだがな」

シンジ「そうですよね...」

リョウジ「...なにか、あったのかい?」




シンジ「今日、学校で僕がこの間の戦闘の時に怪我させてしまった女の子のお兄さんが同じクラスにいたんです」

シンジ「それで、その人に殴られたんです」

シンジ「僕の、せいですよね」

リョウジ「そうか...」

リョウジ「怪我させてしまったことを言い訳することはできないが、君の責任じゃない」

リョウジ「あんなものが攻めて来たんだ、そういうこともあるさ」

リョウジ「むしろ責任は俺たちにある、君は気にすることはないよ」

シンジ「...はい」

リョウジ(子供が怪我か...)

リョウジ(俺は二度と酷いものを見たくないからここにいるんじゃないのか...!)

とりあえず書き溜めここまで。
結構長くなりそうですが遅筆で申し訳ないです。
あとでまた書くかも!

〜第一中学校・2-A〜


トウジ「...」ムスッ

シンジ「...」

シンジ(相変わらず鈴原君は怒ってるな...)

シンジ(パイロットであることがバレて変に目だっちゃったし...みんなにも話しかけづらいし)

シンジ(また友達、できないのかな)

ネルフ支給携帯『ピピピッ!』

シンジ「非常召集!?使徒が!!」

レイ「碇君、先行くから」

シンジ「あ、待ってよ綾波!」

生徒たち「「がんばれよ〜!」」
「「負けないでねー!」」


トウジ「じゃかましいわ!おのれらぁ!!」

ケンスケ(お前がうるさいよ...)





〜ネルフ本部・作戦司令室〜


青葉「目標を確認!現在進行中!!」

リョウジ「総員第一種戦闘配置!街の稼働率は!?」

日向「現在、第三新東京市兵装ビル及び対空迎撃システム48%稼働中!」

リョウジ(48か...無理も無い、前は15年だが今度は二週間で再来だもんな)

リョウジ「シンジ君!用意はいいかい?」

リョウジ「くれぐれも焦っちゃダメだ、冷静に訓練を思い出してな」

シンジ「はい!」

リョウジ「まずはライフルで様子を見るんだ、相手を見極める時間が欲しい」

リョウジ「そんじゃ行くぞ!初号機リフトオフ!!」

シンジ(今度こそ...!)




〜第三新東京市・第334地下避難所〜


ケンスケ「か〜っ!まただよ!!」

トウジ「どないしたんや?」

ケンスケ「外の様子!俺らにはなにも見せてくんないの!!」

トウジ「んなもんええやんけ!」

ケンスケ「は〜っ!一度でいいから見てみたいっ!」

ケンスケ「...なあトウジ」

トウジ「なんや?」

ケンスケ「ちょっと、トイレ行こうぜ」

トウジ「?まあええけど」






シンジ「...来たっ!!」

第四使徒「...」

シンジ「うおおおおおっ!!」ズガガガガガッ

第四使徒「...」

リョウジ「シンジ君!それだと爆煙で相手が見えなくなる!!」

第四使徒「...!」シュビビッ

シンジ「しまった!?うわあっ!!」

ケンスケ「おおっ!?」

トウジ「おまっ!?結構近くやないか!だから危ないいうたねん!!」

ケンスケ「ああっ!?」

トウジ「なんややられとるやないかあいつ!!」

ケンスケ「まだ大丈夫さ!...多分」




青葉「初号機、アンビリカルケーブル切断!」

リョウジ「シンジ君!予備電源に切り替わってる!あと4分強しか動けない!!」

リョウジ「今予備ケーブルの場所を...」

第四使徒「...」シュビビッ

シンジ「うわあああああっ!!」

ケンスケ「うひょおおおおお!?」

トウジ「いやあああああぁあぁ!?」

リョウジ「こいつは、ちとやばいな...」ズドーン

シンジ「いてて...早く立て直さないと...ん?」

ケンスケ「」

トウジ「」

シンジ「き、君たちなんでこんなとこに!?」

リョウジ「!?これは...シンジ君の同級生二人!?なんであんなところに!」

リョウジ「シンジ君!とりあえず二人が安全な場所に逃げられるまで持ちこたえられるか!?」

リツコ「無理よ!残り2分半しか時間がない、そんな余裕は無いわ!!」

シンジ「...!」

シンジ「おいっ!そこの二人!早くここまで来いっ!!」

マヤ「初号機、エントリープラグ射出!」

リツコ「なにを!?」

リョウジ「そうか...!上手いぞシンジ君!」



ケンスケ&トウジ「がぼぼぼぼぼ!?」

マヤ「神経回路に異常!」

リツコ「あたりまえだわ!異物を二人も入れるからよ!!」

リョウジ「リッちゃん、あの程度なら大丈夫か?」

リツコ「シンクロ自体に問題はないけれど、神経回路が伝わる速さに問題が生じるわ。今の状況だとその遅れが命取りになるわよ!」

リョウジ(このままでは無理、か...)

リョウジ「シンジ君!一度後退してケーブルを繋ぎ直して二人を降ろしてくれ!」

トウジ「下がれいうとるで、転校生!」

シンジ「...」

シンジ(守らなきゃ...僕が二人を、この街を!僕にしかできないんだっ!!)

リョウジ「ルートはD-4番を使って...」

シンジ「うおおおおおおっ!!」

リョウジ「シンジ君!?」

トウジ「なんでやぁ!?」

ケンスケ「」

第四使徒「...!!」ガガガガッ!

日向「初号機、プログナイフ装備!目標に接触!!」

シンジ「うああああああっ!!」

マヤ「予備電源終了まで、残り10!!」

「9、8、7、6、5、4、3、2、1...」


青葉「目標、完全に沈黙...同時に初号機も沈黙しました」

リョウジ「ふぅ...」

シンジ「はぁ...はぁ...」

トウジ「だ、大丈夫か碇...?」

シンジ「大丈夫...大丈夫だよ...大丈夫...」

〜ネルフ本部・加持執務室〜


リョウジ「シンジ君」

シンジ「すみません...」

リョウジ「...よくやった!」

シンジ「え...?」

リョウジ「エントリープラグに二人を入れる判断、見事だったよ」

リョウジ「お陰で二人は無事だ」

シンジ「あ、ありがとうございます」

リョウジ「だが...なんで命令通りにしなかったんだ?」

シンジ「すみません...二人を助けなきゃって思ったら、頭が真っ白になって...」

リョウジ「...そうか」

リョウジ「だがその判断で負けていたかもしれないんだ。それはわかるかい?」

シンジ「はい...」

リョウジ「次からは気をつけるようにな!」

シンジ「それだけですか...?」

リョウジ「?そうだけど?」

シンジ「僕、もっと怒られるかと...」

リョウジ「英雄に説教はしないさ。それにシンジ君は同じことを二度繰り返すようなバカじゃない、そうだろ?」

シンジ「...はい!」

リョウジ「いい返事だ。あ、それともうひとつ。入っといでー」

ケンスケ「碇...」

トウジ「...」


シンジ「相田と...鈴原」

ケンスケ「迷惑かけてごめんな...ほんとに一目エヴァと使徒ってのを見てみたかったんだ!」

トウジ「すまんかった、転校生」

碇「え?」

トウジ「お前が必死に戦ってる姿みてな、ワイなんもわかっとらんかったって気づいたんや」

トウジ「確かに妹は怪我してもうた、けど、それがお前のせいや言うんわ違う」

トウジ「殴ったりしてすまんかった!」

シンジ「そんな、いいよもう。大丈夫だから」

トウジ「碇...」

シンジ「その代わり妹さんのお見舞いに行ってもいいかな?」

トウジ「ああ...ああ!いつでも来ぃや!」

トウジ「ほんとはな、妹に言われとったんや。怪我したのは自分が悪い、むしろ街を守ってくれたパイロットのお兄ちゃんに感謝せいってな」

シンジ「...」ニコッ

トウジ「...」ニイッ

ケンスケ「素直じゃないなぁまったく」

トウジ「よ、余計なお世話じゃい!」

シンジ「あははっ!」

トウジ「わ、笑うなや!!」

リョウジ「ま、良かったじゃないか!俺はまだ仕事があるからシンジ君は先に帰っててくれ」

リョウジ「あとこれ、みんなでアイスでも買って帰んなさい!」チャリン

シンジ「わっ!いいんですか?」

リョウジ「ああ、使徒殲滅ご苦労!」

トウジ「あんさん、太っ腹やのう!」

ケンスケ「ありがとうございます!」

シンジ「じゃあ、先に帰ってますね!」

リョウジ「おう」


「なに買おうかのー!」
「俺はチョコモナカ!」
「僕はなんにしよっかな」


リョウジ(...良かったな、シンジ君)

〜第一中学校・教室〜




レイ「...」

シンジ「...」

シンジ(綾波レイ...僕よりも父さんに近い存在)

シンジ(父さんはどうして僕よりもあの子を...」

トウジ「...」

ケンスケ「碇く〜ん」

トウジ「なに綾波のこと情熱的な目で見とんのや」

シンジ「えっ!?そ、そんなことないよ!」

トウジ「も〜シンジはんてば照れちゃって〜」

ケンスケ「いや〜んな感じ」

シンジ「もう!からかわないでよぉ!」

トウジ・ケンスケ「wwwww」

シンジ(そんなんじゃないんだ、そんなんじゃ...)

〜第三新東京市・加持自宅〜


シンジ「リョウジさんの作るご飯て、全部美味しいですね」

リョウジ「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

シンジ「お仕事忙しいのに毎日すみません」

リョウジ「いや、いいんだ。食べることは数少ない人生の楽しみさ」

リョウジ「それに、俺の料理には美味さの秘密があるんだ」

シンジ「秘密?」

リョウジ「そう、今度の休みに見せてあげよう」

シンジ「あ、ありがとうございます。楽しみにしてます」

リョウジ「おう」

シンジ「...」

シンジ「あの、リョウジさん」

リョウジ「なんだい?」

シンジ「綾波レイって、どんな子ですか?」

リョウジ「気になるのかい?」

シンジ「...はい。僕よりも父さんに近い人ですから」

リョウジ「...彼女はファースト・チルドレン、エヴァに乗るために選ばれた最初の適格者、今は凍結されている零号機のパイロットだ」

シンジ「なんで凍結されたんですか?」

リョウジ「起動中の事故さ、レイとのシンクロテスト中に暴走しそのまま凍結処理された」

リョウジ「その時に、射出されたエントリープラグから自らレイを助け出したのが碇司令だよ」

シンジ「父さんが...?」

リョウジ「ああ、聞いた話だがね」

シンジ「...」

リョウジ「あの碇司令がなんで、って顔をしてるな」

シンジ「...はい」

リョウジ「俺にも、なぜ司令があそこまでレイを気にかけてるのかはわからないよ」

リョウジ「気になるなら、自分で聞いてみたらどうだい?」

シンジ「え?」

リョウジ「実はリッちゃんが渡しそびれたレイの更新カードを俺が預かっててな、俺は忙しいからよければ届けてやってくれないか?」

リョウジ「その時に色々聞いてみたらどうだ?」

シンジ「...わかりました」

リョウジ「シンジ君、女性から秘密を探る時は優しくするんだぞ?」

シンジ「僕はリョウジさんみたいに女の人をうまく扱ったりできませんよ」

リョウジ「はて?なんのことやら」

シンジ「...」

〜翌日・第三新東京市内綾波自宅前〜


シンジ(綾波、こんなとこに一人で住んでるのか)

シンジ(リョウジさんと住めてる僕って運がいいんだな...)

シンジ(チャイムが鳴らない...壊れてるのかな)

シンジ「ごめんくださーい」ガチャリ

シンジ「綾波ー?いないのか?」

シンジ(靴はある...いるのかな)

シンジ「碇だけど、入るよー?」

シンジ(殺風景な部屋だな...)

シンジ(メガネ?綾波ってメガネかけるのか?)

シンジ(G.ikari、父さんの?)ガタッ

レイ「...」

シンジ「綾...波...」

シンジ(にゅ、入浴中だったとは!?)

シンジ「ご、ごめん入浴中とは知らなくて勝手に...」

レイ「メガネ、触らないで」

シンジ「えっ、あっごめん!えっと」

シンジ「着替え終わるまで、待ってるよ!」

レイ「...」

シンジ(タイミング悪い...こんなんじゃ父さんの話どころじゃないかもな...)

シンジ(リョウジさんなら、こんな時どうするのかな)



リョウジ「はっくしょい!!」

マヤ「大丈夫ですか?」

リョウジ「ああ、ちょいと鼻がムズムズしてな」

リョウジ「そんなことより休憩だろ?俺とラウンジでお茶しない?」

マヤ「残念ながらまだ仕事があるので...」ササッ

リョウジ「ありゃ残念」






レイ「着替え、終わったわ」

シンジ「あ、うん」

レイ「...」

シンジ「えっと、新しいカードキーを届けにきただけなんだ。はいこれ」

レイ「ありがとう」

シンジ「...そのメガネ、勝手に触ってごめん。父さんのイニシャルが見えたから」

レイ「...私の一番大事なもの、あの人との絆」

シンジ「あの人、父さんとの?」

レイ「そう、碇司令との」

レイ「私を助けてくれた時に、もらったの」

シンジ「それって零号機起動事故の...?」

レイ「そう、良く知ってるのね」

シンジ「リョウジさんに聞いたんだ」

レイ「そう」ガチャリ

シンジ「あ、待ってよ」


シンジ「これから本部でしょ?僕もいいかな」

レイ「別に構わないわ」

シンジ「ありがとう」

シンジ「...」

レイ「...」

シンジ「綾波はなんで父さんと一緒にいるの?」

レイ「碇司令は私の全てだから」

シンジ「綾波には優しいんだ、父さん」

レイ「そうね、私に優しいのは碇司令だけ」

シンジ「そっか、羨ましいな」

レイ「どうして?」

シンジ「父さん、僕が一番いて欲しい時に側にいてくれなかったんだ」

シンジ「再開した時、嬉しい気持ちもあったけどやっぱり僕のことなんかは見てくれなかった」

シンジ「だから、エヴァに乗って父さんを見返してやりたいんだ」

レイ「そう」

シンジ「でも、やっぱりエヴァに乗って戦うのは怖いんだ」

シンジ「綾波はなんでエヴァに乗ってるの?」

レイ「絆、だから」

シンジ「父さんとの?」

レイ「みんなとの」

レイ「私はエヴァに乗ることしかできない、それしかないもの」

シンジ「!」

シンジ(僕と、同じだ...)

レイ「碇君て以外とお喋りなのね、こんなに人と話したの初めて」

シンジ「ごめんね、嫌だったかな。でも綾波って話しやすいからつい話し込んじゃった」

レイ「!」

レイ「そ、そう...」

ゲンドウ「これより零号機再起動実験を行う、準備は良いかレイ」

レイ「はい」

マヤ「パイロット接続、パルス、ハーモニクス共に正常」

マヤ「シンクロ率安定、問題なし」

シンジ「...」

シンジ(綾波...なぜそんなに父さんのこと...)

シンジ(でも、父さんに誰かに優しくする心があったなんて)

シンジ(僕は父さんにとって、本当にただのパイロットでしかないのかな)

マヤ「零号機、起動しました。続いて連動実験へと移ります」

冬月「碇、現在未確認飛行物体がこちらに接近している」

冬月「おそらく、使徒だ」

ゲンドウ「...実験中止、総員第一種警戒態勢」

ゲンドウ「初号機を今すぐ出撃させろ」

シンジ(また僕...か)

ゲンドウ「なにをしている、さっさと行け」

シンジ「はい」

シンジ(僕にはがんばれの一言すらなしか)

シンジ(でもいいんだ、今の僕にはエヴァに乗ることしかできない)

シンジ(この手で、リョウジさんや綾波を、この街を守るんだ)

リョウジ「シンジ君」

シンジ「はい」

リョウジ「がんばってな」

シンジ「...はいっ!」

青葉「目標、芦ノ湖上空を移動中」

日向「エヴァ初号機、発信準備完了!」

リョウジ「初号機発進だ!」

青葉「...!?目標内部に高エネルギー反応!!」

リョウジ「...まさか!?」

リョウジ「作戦中止だ!今すぐリフトを引き戻せ!!」

マヤ「ダメです!間に合いません!!」

リョウジ「シンジ!よけろっ!!」

シンジ「えっ?」

第五使徒「...」キュピーン!

シンジ「うっ、うわあああああ!?」

リョウジ「リフト戻せっ!早くするんだ!!」

青葉「目標沈黙!」

リョウジ「シンジは!?」

日向「脳波異常!心音微弱!!」

マヤ「初号機、第七ケイジへ回収!」

リョウジ「生命維持システム最大!心臓マッサージだ!!」

日向「パルス復活!」

リツコ「プラグ強制排出!LCL緊急排水!」

リョウジ「ケイジに降りる!リツコ!あとは頼むぞ!!」

シンジ「...」

リョウジ「シンジ君...!」

ゲンドウ「...」

〜ネルフ本部・作戦会議室〜


マヤ「これまでの情報によると、目標は一定距離に入った外敵を自動排除するものと見られます」

リョウジ「...A.Tフィールドは?」

青葉「健在、肉眼で確認できるほど強いものが展開されています」

リョウジ「まるで無敵だな、そんで例の掘削機は?」

日向「現在ネルフ本部へ進行中、第二装甲板まで掘削終了」

日向「到達予想時刻は明日午前零時六分五十四です」

リョウジ「あと10時間ちょいねぇ...」

リョウジ「シンジ君は?」

リツコ「身体的外傷はなし、今はまだ薬で眠ってるわ」

リツコ「初号機は胸部装甲を換装中、零号機は再起動に問題はなし。でもまだフィードバックに誤差があるわ」

リョウジ「過激なことには耐えない、か」

リョウジ(シンジ君が身体を張って得た敵の情報、最大限に活かすさ)

リョウジ「済まないが俺の執務室に電話を十台、それと回線をできるだけ回してくれ」

日向「わかりましたけど、なにをするつもりですか?」

リョウジ「なーに、俺なりに使徒と戦うのさ」


〜ネルフ本部・加持執務室〜

リョウジ「ああそうだ!戦自の実験用陽電子砲をこっちに回せ!責任は全てネルフ作戦本部の加持リョウジにな!!」

リョウジ「こちらはネルフ作戦本部の加持リョウジだ!例の放送、18時から全国に頼むよ!ああわかってる責任者は全てネルフ作戦本部の加持にな!!」ガチャッ

リョウジ「さーて、これで準備は完了だ!」

リョウジ(シンジ君、レイ、後は頼むぞ)

シンジ「...はっ!?」

シンジ(また白い天井...怪我したのかな)

レイ「...起きたのね」

シンジ「綾波...」

レイ「明日午前零時より発動される作戦について伝えます」

レイ「碇、綾波共に本日十七時半よりケイジへ」

レイ「十八時初号機及び零号機起動、同五分より出動、同三十分双子山仮設基地に到着以降待機」

レイ「明朝日付変更と同時に、作戦スタート」

シンジ「...綾波や本部の人は大丈夫?」

綾波「ええ、傷ついたのは初号機とあなただけ」

シンジ「ならよかった...」

綾波「...自分よりも他人の心配、するのね」

シンジ「...僕のエヴァに乗る理由はみんなを守ることだから。それがないと怖くて乗れないよ」

レイ「...食事、ちゃんと食べてね。また後で」

シンジ「うん、ありがとう」

シンジ「...」

シンジ(...守ろう、僕は守れるんだ。これからも)

ラジオ「本日、午後十一時半より全国規模での停電が行われます。皆様のご協力を...」

ケンスケ「あー!やばいやばい!今のうちにカメラ充電しないとー!」

トウジ「こんな時に何言っとんのや!」

トウジ(...碇、綾波、がんばりや)


〜双子山・仮設基地〜

青葉「敵掘削機、17装甲板を突破!」

日向「本部到達まであと三時間五十五!」

リョウジ「いいかい?今回の作戦を説明する」

リョウジ「こいつが今回の要、ポジトロン・ライフル。こいつに日本中の電力をぶち込んであいたにぶち当てる」

リョウジ「間にあわせだが威力はお墨付きだ」

リョウジ「だが敵も黙っちゃ無い、そこでレイには防御を担当してもらう。この盾でな」

リョウジ「元はシャトルの底って間抜けな装備だが、電磁波でコーティングされてる。17秒間は奴の攻撃に耐える」

リョウジ「シンジ君は砲手、レイは盾を頼む」

シンジ「はい」

レイ「はい」

リョウジ「二人とも、万が一の時は逃げろ」

リョウジ「エヴァはA.Tフィールドがある、君達だけは安全だ」

リツコ「加持一尉!!」

リョウジ「赤木博士、現作戦指揮官は俺だ」

リツコ「.....」

リョウジ「大丈夫、シンジ君なら一発成功さ!緊張しすぎないようにな」

リョウジ「二人とも、後は頼むぞ」

二人「はい」

〜双子山仮設基地・パイロット待機所〜


シンジ「...」

レイ「...」

シンジ「もうすぐ、作戦だね」

レイ「そうね」

シンジ「加持さんの料理ってね、すごく美味しいんだ」

レイ「そう」

シンジ「これが終わったら、加持さんが料理の秘密を見せてくれるんだ」

シンジ「綾波もどうかな?」

レイ「私は...」

シンジ「きっと、綾波と一緒なら楽しいと思うんだ」

レイ「...わかったわ」

シンジ「じゃあ、約束ね」

シンジ「...時間だ、行こう」

シンジ「綾波」

レイ「なに?」

シンジ「また、後で」

レイ「...ええ」

日向「時間です」

リョウジ「シンジ君、日本中のエネルギーを君に託す」

シンジ「...はいっ!」

リョウジ「レイ、シンジ君を頼む」

レイ「はい」

リョウジ「それじゃ、作戦開始」

マヤ「冷却、陽電子共に順調!二次接続!」

青葉「全電力、変電所へ!すべて問題なし!」

リョウジ「安全装置解除、撃鉄おこせ!」

リョウジ「シンジ君、誤差修正は全てシステム任せだ。目標にロックが重なったら撃ってくれれば当たる」

シンジ「はいっ!」

『発射まで残り10、9、8、7、6...』

マヤ「目標に高エネルギー反応!」

リョウジ「気づかれたか!だが先に手を打てば!!」

リョウジ「...今だ撃てっ!!」

シンジ「っ!!」カチッ!

第五使徒「...!」

シンジ「あっ!?」

リョウジ「外したか...!」

第五使徒「...」

リョウジ「シンジっ!移動して時間を稼げ!!」

シンジ「はいっ!」

リョウジ「ヒューズ交換、重心冷却後二射目用意!」

マヤ「っ!目標に再びエネルギー反応!!」

リョウジ「やばい!早すぎるっ!!」

第五使徒「!!」キュピーン!

シンジ「うわあああああっ!?」

リョウジ「シンジっ!!」

零号機「...」

シンジ「綾波が盾になってっ...!」

リツコ「ダメよ!もう盾が持たない!!」

シンジ「綾波っ!!」

レイ「...!」

リョウジ「盾がっ!!」

ゲンドウ「レイ!!」

レイ「ああっ...!!」

シンジ「綾波っ!!」

シンジ(ダメだっ...誰も死んだらダメだ...!)

シンジ(綾波もリョウジさんも父さんもみんなもっ...守るんだ!!)

シンジ「うおおおおおおっ!!!」

初号機「...!」

シンジ「A.Tフィールド全開っ!!」

マヤ「今までにない強力なA.Tフィールドです!」

綾波「碇君...!?」

日向「二射目発射可能!」

リョウジ「レイ!ライフルを!!」

レイ「!」

レイ「...当たって!」ガチャッ!

第五使徒「!!!」

マヤ「目標命中!完全に沈黙しました!!」

リョウジ「レイ!シンジ君を!!」

レイ「碇君...!」

レイ「エントリープラグを開けないと...!」ジュウッ!

レイ「うっ!...熱い...!」

レイ(あの人も私を助けてくれた...私も碇君を...!)

レイ「開いてっ...!」ガチャリ

レイ「碇君っ!!」

シンジ「...」

レイ「碇君!!」

シンジ(...母さん?)

レイ「碇、君...」

シンジ「綾波...」

レイ「良かった...」

シンジ「綾波のそんな顔、初めて見た」

レイ「ごめんなさい...私」

シンジ「そういう時は、ごめんなさいじゃないよ」

シンジ「ありがとう、が良いんじゃないかな」

レイ「...ありがとう」

シンジ「...」ニコッ

レイ「!」(碇司令...)

レイ「立てる?」

シンジ「うん、ありがとう」

レイ「...」

シンジ「綾波、また後でって言ったろ」

レイ「...うん」

シンジ「約束通り、リョウジさんの秘密を見に行こう」

シンジ「きっと、エヴァに乗ること以外に僕たちが生きてる意味もあるよ」

シンジ「少なくとも僕は、綾波と出会えて良かったよ」

レイ「...」

レイ(私...私の生きる意味...)

リョウジ「シンジ君!レイっ!!」

シンジ「リョウジさん、僕やりましたよ」

リョウジ「ああ...ああっ!」

〜第三新東京市・加持農園〜

シンジ「加持農園...?」

リョウジ「ああ、ジオフロントの土地を少しばかり借りてね。自家菜園さ」

リョウジ「俺の料理が美味いのは、まあ俺の腕もあるがこの野菜達が美味いのさ」

リョウジ「何かを作るってのは、とっても良いことだ。生きてる楽しみの、これまた一つだな」

レイ「作る...」

レイ「私にも、作れますか?」

リョウジ「ああ、もちろんだとも」

リョウジ「俺一人だと管理が大変でな、良ければ二人とも手伝ってくれないか?」

シンジ「僕でよければ、やりたいです」

レイ「でも、何を作ればいいんですか?」

リョウジ「そうだな...レイにはトマトなんかが似合うかな」

レイ「とまと...」

リョウジ「そうさ、毎日水をやって我が子のように可愛がれば、君の瞳のような綺麗な実がなるぞ」

レイ「綺麗...」

シンジ「もう!リョウジさんはすぐそういうこと言って!」

リョウジ「ははっ、なんだヤキモチかい?」

シンジ「ちっ、違いますよっ!!」

レイ「ヤキモチ...餅を焼くの?」

リョウジ「そんなことより、シンジ君あの話をしたらどうだ?」

シンジ「は、はい」

レイ「話?」

シンジ「うん、あの、綾波」

シンジ「僕達と一緒に住んでみない?」

レイ「住む...?」

シンジ「うん、あの、前綾波の家に行った時思ったんだ」

シンジ「やっぱり一人は寂しいと、思うんだ」

シンジ「あっ!もちろん綾波がよければの話だけど...」

レイ「私なんかが、いいんですか?」

リョウジ「ああ、そりゃもちろん」

リョウジ「大勢のが楽しい、ウチは誰だっていつでもウェルカムさ」

綾波「ありがとう...ございます」

リョウジ「よし!そうと決まればまた歓迎パーティだな!」

シンジ「とか言ってお酒飲みたいだけでしょ?」

リョウジ「今日はたまの休みだ!そんぐらいいいだろ!!」

シンジ「2本までですよ」

リョウジ「こりゃまた手厳しい...」

レイ「...」

レイ(私、楽しいのね)

レイ(碇君と会ってから、初めてのことばかり)

レイ(楽しい、嬉しい、とまと、どれも初めて)

レイ(碇司令も、楽しいことってあるのかしら)

シンジ「おーい綾波ー!」

リョウジ「トマトならまた見せてやるかぞー」

レイ「...はいっ」

〜ネルフ本部・司令室〜


ゲンドウ「...そうか、加持君の所へ移るのか」

レイ「はい」

ゲンドウ「わかった。だが今まだ通り定期的に調整には来い」

レイ「はい」

ゲンドウ「...シンジもいるのか?」

レイ「はい」

ゲンドウ「そうか...食事にしよう」

レイ「はい」

レイ(碇司令との食事...美味しく無い)

レイ(お家での食事、とっても美味しい)

レイ(私も碇司令との食事、美味しくしたい)

レイ(私にもできるかな、綺麗なトマト)

〜第三新東京市・加持自宅〜

シンジ「どうですか?」

リョウジ「ほぉ〜!美味いじゃないか!」

リョウジ「こりゃ、俺の美味さもそのうち抜かれるな」

シンジ「そんなことないですよ!リョウジさんのご飯はほんとに美味しいです」

リョウジ「いや、そう言われると作りがいがあるねぇ」

シンジ「僕も、美味しいって言われるのすごく嬉しいです」

シンジ「レイ、どうかな?」

レイ「リョウジさんのもシンジ君のも、どっちも美味しい」

シンジ「そう、ならよかった!」

リョウジ(二人とも、いい顔するようになったな)

リョウジ(俺も、こんな笑顔できたんだな)

シンジ「リョウジさん?」

リョウジ「あ、ああすまない。ちょいと考え事をね」

リョウジ「そうだ、シンジ、レイ。俺今日からちょいと出張だから」

シンジ「あ、そうなんですか?」

リョウジ「ああ、今日は家のことよろしく頼むよ」

リョウジ「二人きりだ、今日はチャンスだぞ」

シンジ「な、なぁに言ってるんですか!?」

レイ「?」

リョウジ「じゃ、よろしく頼むよ」バタン

レイ「はい」

レイ「どうしたの?」

シンジ「な、なんでもないよ?」

〜第二東京市〜


リョウジ「はーったく、こんなパーティに俺達を呼ぶとは嫌味かね」

リツコ「ええ、確実に嫌がらせね」

時田「えー本日はご多忙のところ、我が重化学工業共同体の実演会にお越し頂き、誠にありがとうございます」

時田「皆様には後程、試運転をご覧になって頂きますが、そのまえになにか質問のある方がいらっしゃればどうぞ」

リツコ「はい」

時田「これは!ご高名な赤木リツコ博士、お越し頂き光栄です」

リツコ「質問をよろしいでしょうか」

時田「ええ、どうぞ?」

リツコ「先程のご説明ですと、内部に内燃機関を搭載とありますが」

時田「ええ、それが本機最大の特徴。連続150日間の作戦行動が保証されております」

リツコ「しかし、格闘戦を想定されている兵器にリアクターを内蔵するのは安全面から見てとても危険だと思いますが」

時田「五分も動けない兵器よりは、役に立つと思いますが?」

リツコ「遠隔操作では、緊急時の対処に遅れが生じますが」

時田「パイロットに負担をかけ、精神汚染を起こすよりはよっぽど人道的だと思いますが」

リョウジ「なーに言ったって無駄さリッちゃん」

リツコ「人的制御の問題もあります!」

時田「いざという時に制御不能に陥り、暴走を引き起こす危険極まりない兵器よりは、安全でしょう」

時田「全く手に負えない兵器というのはナンセンスです、ヒステリーを起こした女性と同じですよ。手に負えません!」

招待客「「あははははは!!」」

リツコ「...」ピキピキ

リョウジ「おっ!この酒美味いな!なんて奴だ?ラベルを拝借していこう」

リツコ「加持君!!」

リョウジ「まあそう熱くなるな、美人が台無しだぞ?」

リョウジ「ちょいとマイクを」


リョウジ「えー私からも質問よろしいでしょうか?」

時田「これはこれは、ネルフ本部作戦指揮官の加持リョウジ殿。なんでもどうぞ?」

リョウジ「それでは早速、使徒の持つ壁はいかがなさるおつもりで?」

時田「A.Tフィールドですか?それも時間の問題ですよ」

リョウジ(A.Tフィールドを知ってる、やはり極秘資料が漏れている...)

リョウジ「成る程、ではどういった方法で?」

時田「我がジェット・アローンは核動力で動いています。そこから生み出されるエネルギーに強固な装甲、破れぬものはありません」

リョウジ「核動力、ですか。ではもしジェット・アローンが大破し、その中の核燃料が漏れたら?」

時田「ご安心を、ジェット・アローンは負けることはありえません。それに有事に対してあらゆる対策が練ってあります」

リョウジ「ありえない、というのはどこからきてるんですかな?」

リョウジ「私どものエヴァはパイロットに負担をかけ、精神汚染を引き起こすかもしれませんが放射能を漏らすなんてことはありえません」

リョウジ「それにこちらは総員命をかけて奴らと戦ってるんです。遠隔操作とありますがなんですか?負ければ核燃料を漏らし自分たちは安全に避難ですか?」

時田「だから有事の際には...」

リョウジ「その方が人道的ではないと思いますが?我々はあの悲劇からやっとここまで復興した街をまた手放すのは嫌ですな」

時田「だからジェット・アローンは完璧です!奴らなぞに遅れを取ることはありません!!」

リョウジ「だからその保証がどこにあると?まったくヒステリーを起こした男の人のように手付かずになるのはごめんですよ」

時田「...!」ピキピキ

招待客「確かになぁ...」
「負けないと言う保証はどこにもない、なんせ奴らは人知を超えてる」
「有事の際とは言うが、燃料が漏れた ら奴らと戦うどころではない」

リツコ「リョウちゃん...」

リョウジ「あとで、キス一回な。リッちゃん」

時田「し、試運転に移ります!!」

〜第二東京市・JA試運転用滑走路〜

時田「これより、JAの起動テストを開始します。繰り返しになりますが、なんら!なんら危険はともないません!!」

時田「そちらから安全にご覧ください」

時田「それでは、歩行開始!JA起動!」

招待客「「おおー!!!」」

リョウジ「ほぉーちゃんと歩けてるじゃないか」

リツコ「...」

スタッフ「?変です!」

時田「どうした?」

スタッフ「リアクター内温度上昇!ポンプの出力が上がりません!」

リョウジ「おいおいなんだ?」

時田「いかん、動力閉鎖緊急停止」

スタッフ「ダメです!停止信号受信されず!」

時田「ば、馬鹿な...」

リョウジ「まさかほんとに...?」

スタッフ「こっちにきます!」

観客達「「うわああああっ!!」」ドンガラガッシャーン!

JA「...」

リョウジ「おいおいだから言わんこっちゃないんだ!」

リョウジ「作ったやつそっくりじゃねーか!」

スタッフ「内部圧力、危険域!」

スタッフ「このままでは、炉心融解の恐れあり!」

時田「信じられん...JAには本当にあらゆることに対処できるようにプログラムされているのに、ありえん...」

リョウジ「だが、実際に炉心融解の危機が迫ってるぞ!」

時田「だが、こうなれば自動停止を待つしか...」

リョウジ「ふざけんな!停止をおちおち待ってたら、その間に爆発するかもしれないんだぞ!」

時田「方法は全て試した、だが無理だ!」

リョウジ「システム全削除は?」

時田「そ、そんなことをしたらJA配備が白紙に...」

リョウジ「ふざけんなって言ってんだ!あんたは自分の面子と、セカンド・インパクトからここまで世界を復興させた人間達の努力を天秤にかけるのか!?」

リョウジ「おまえが今立ってる場所は誰が作った!?」

時田「...」

リョウジ「あの地獄を見なかったとは言わせないぞ...!もう人が苦しむ姿を見るのはうんざりだ」

時田「...だが私の権限ではそれを口外にできない、最高機密なんだ」

リョウジ「言え!」ジャキン

時田「じゅ、銃!?」

リョウジ「許可なんてもんはな、後から付いて来ればいいんだ!なんなら俺が今ここで出してやる!」

時田「...希望」
時田「パスワードは【希望】だ」

リョウジ「...あんたにしちゃいいセンスだ」

リョウジ「ここから先は俺の独断で行う、責任でもなんでも取ってやるからな!」


リョウジ「ああそうだ、第二東京に初号機を回してくれ」

リョウジ「よし、準備万端」

時田「本気ですか!?内部は既に汚染物質だらけだ、危険すぎる!」

リョウジ「一体誰のせいだ?」

時田「ぐっ...」

リョウジ「確かにプログラムが完璧に組まれていたことはわかった、それにさっきの俺のはあんたの嫌味への当て付けだ」

リョウジ「だが現にこうなってる、あんただって少なくとも奴らから人々を守りたいと思う気持ちがあるから、JAを開発したんだろ!?」

時田「...ああ」

リョウジ「今あんたにできるのは俺への協力、人々を守りたいなら協力してくれ」

時田「...頼む!JAを止めてくれ!!」

リョウジ「ああ、任された。これが終わったら、一杯行こうじゃないか」

リョウジ「もちろん、あんたの奢りでね」

リョウジ「シンジ、目標に俺を運んだらやつの背中を押さえつけて、なるべく時間を稼いでくれ」

シンジ「えっ...?リョウジさんが乗り込むんですか!?」

リョウジ「そうだ、それしか手段はない」

シンジ「危険すぎますよ!そんなの!」

リョウジ「大丈夫!君とレイを残して死んだりしないさ!」

リョウジ「日向君、俺がとりついたら君は安全高度まで飛んでくれ」

日向「いえ、万一のため近くを低空旋回してます。リョウジさんやシンジ君だけに危険な思いはさせられませんよ」

リョウジ「俺が女なら惚れてるよ、ありがとう」

リョウジ「そんじゃ、いっちょ奇跡を起こしに行きますか!」

日向「エヴァ初号機、切り離します!」

リョウジ「シンジ!全速力だ!!」

シンジ「はいっ!」

シンジ「...追いついたっ!」

リョウジ「よし!俺を降ろせ!!」

リョウジ「...無事取り付いたな」ガチャリ

リョウジ「凄まじい熱だな...」

リョウジ「えーっと、これか」

リョウジ「【希望】っと」ピーッ

リョウジ「エラー...!?まさか!」ピーッ

リョウジ「ダメか...!」

リョウジ「プログラムが書き換えられてるんだなこりゃ...!」

リョウジ「ならば...力づくでっ!」


スタッフ「炉心融解まで、残り40秒!」

シンジ「リョウジさん!!」

リョウジ「ふんぬおおおおおお!!!」

リョウジ「シンジ君!帰ったらシャワーと冷えたビール用意しといてくれ!!」

スタッフ「残り10!!」

時田「ダメか...!」

リョウジ「どりゃあああああ!!」ピーッ!!

スタッフ「制御棒、正常位置!!」

スタッフ「JA、厚木直前で停止!!」

時田「や、やった...!」

シンジ「や、やりましたよ!リョウジさん!!」

リョウジ「あぁ...なんとか、な」

リョウジ(しかしエラー...こりゃ用意されたハプニングだな)

リョウジ(JAを良く思わない奴らの仕業...)

リョウジ(ネルフ、か...)

リョウジ(司令の手はどこまで及んでる...?)

〜ネルフ本部・司令室〜


リツコ「初号機の回収は無事完了、汚染もなし」

リツコ「加持一尉の予定外の行動以外、全て予定通りです」

ゲンドウ「そうか」

リツコ(...まさか自力で止めるなんてね)


〜第三新東京市・加持自宅〜

リョウジ「いやぁ〜一仕事した後のビールはうんまいなぁ!!」

シンジ「...今日は何本飲んでもいいですよ」

リョウジ「おっ!わかってるねぇシンジ!」

レイ「リョウジさん、これ」

レイ「冷やしトマト」

リョウジ「おっ、美味そうだ!」

シンジ「レイ、またトマト?」

レイ「好きだもの」

リョウジ「おっシンジ、すまないな折角のレイとの休日を」

シンジ「リョウジさぁん!?」

リョウジ「あはははは!」

レイ「トマト、美味しい」

リョウジ(...俺も、守れたのかな)

リョウジ(君達の笑顔を)





ゲンドウ「例の荷物は?」
?「現在太平洋艦隊と共に、輸送中です」
ゲンドウ「そうか、明後日には届くな」
?「はい」
ゲンドウ「もしもの時は君だけでも脱出したまえ」
?「わかっております、それでは」

?「ねぇ!誰と話してんのよ!」
?「ん?ちょっち仕事の話」
?「それより、サード・チルドレンって男の子って話よ?」
?「ガキに興味なんかないわよ。あるのは加持先輩だけ!」
?「あはは...加持ね...」
?(8年ぶり...か)

〜第三新東京市・加持自宅〜

シンジ「また出張ですか?」

リョウジ「ああ、だが今回は来たかったら来てもいいぞ。どうする?」

シンジ「僕も、ですか?」

リョウジ「そう、レイもどうだい?」

レイ「シンジ君が行くなら行くわ。一人はつまらないもの」

シンジ「じゃあ、一緒に行こうか」

リョウジ「よし、決まりだな」

シンジ「でも、なんの出張なんです?」

リョウジ「太平洋で豪華なクルージング、と言いたいとこだが運搬中の弐号機とパイロットの受領に行く」

シンジ「弐号機が来るんですか!?」

リョウジ「そう、戦闘がまた楽になるぞ。彼らが良ければトウジ君やケンスケ君も誘っていいぞ」

シンジ「はい!楽しみですね!」

シンジ(弐号機パイロット...どんな子なんだろ。仲良くしたいな)

〜太平洋海上・太平洋艦隊〜

ケンスケ「空母が五!戦艦四!大艦隊だぁ〜!!」

トウジ「こんなんで喜ぶのお前だけや...」

シンジ「まあ、景色が綺麗でいいじゃない」

リョウジ「そうそう、綺麗な海は心を潤してくれるぞ」

リョウジ「シンジ君もわかってきたじゃないか」

シンジ「あ、ありがとうございます」

レイ「海...青くて広い」

トウジ「ワイは綺麗なお姉さんのがええわ...」

リョウジ「それには俺も完全同意さ」

?「加持さぁ〜〜〜ん・」

リョウジ「よう、久しぶりじゃないか」

?「もう!この船ノロすぎて嫌になる!加持さんと会うのがこんなに遅れたじゃない!!」

トウジ「なんやあのうるさい女」

ケンスケ「か、かわいい!」

リョウジ「元気だったか?背、随分と伸びたじゃないか」

?「まあね!他のところも、ちゃんと女らしくなったのよ・」

リョウジ「はは、そうかい」

シンジ「あの、この子が?」

リョウジ「ああ、弐号機パイロット。惣流・アスカ・ラングレーだ」

アスカ「それで、噂のサード・チルドレンはどれ?」

アスカ「まさかそこの田舎臭いジャージじゃないでしょうね?」

トウジ「な、なんやとぉ!?誰がジャージじゃワレ!!」

シンジ「まぁまぁトウジ!僕だよ」

シンジ「僕が初号機パイロット、碇シンジ。よろしく惣流さん」

アスカ「ふーん...冴えない顔してるわね」

シンジ「はは、良く言われるよ。でも惣流さんは明るくてかわいいね」

アスカ「んなっ!?」

シンジ「惣流さんが来てくれればきっと楽しくなるよ、これからよろしくね」

アスカ「よ、よろしく」

ケンスケ「シンジのやつ、いつのまにあんな流暢に女の子と...」

トウジ「あいつ綾波とも普通に話しよるからな...」

アスカ「そ、それでファーストは誰よ?まさかそこのダサメガネじゃないでしょうね?」

ケンスケ「はう!もっとお願いします!!」

トウジ「お前変やで」

レイ「私。綾波レイ」

アスカ「ふーん?なんだか暗いわね!」

レイ「ごめんなさい、あまり話すのが得意じゃなくて。でも仲良くしてほしい」

レイ「私、友達少ないから。惣流さんは友達になってくれる?」

アスカ「な、なってあげるわよ!よろしく!!」

アスカ(な、なんかやりにくい子達ね...)

トウジ「なあ、綾波ってこんなかわいかったか」

ケンスケ「いいや、俺も今たまげてるよ」

〜太平洋艦隊・艦内〜

リョウジ「いやはや、ドイツからの長旅お疲れ様でした」

艦長「いや礼には及ばんよ、こちらも久しぶりに子守ができて嬉しいよ」

リョウジ「それはなによりで。それではこれが海上非常用ソケットの使用許可書です」

艦長「ふん!大体この海の上であれを動かすことなどあるものか!」

リョウジ「万が一ということがありますよ。ご理解を」

艦長「その万一に備えて、太平洋艦隊が護衛している。いつから国連は宅配屋になったのかな?」

リョウジ「エヴァの重要度がそこから測り知れるじゃないですか。有事の際に敵に対処できるのはエヴァだけですよ」

リョウジ「まあ、有事に会ったことのない年だけ取った艦長なんかもいるかもしれませんが?」

艦長「ぐっ...」

リョウジ「それでは、この受領許可書にサイン...」

艦長「まだだ、弐号機及びそのパイロットはドイツ第三艦隊から...」

リョウジ「...は、新横須賀についてからでしょ?こちらで預かっときますよ」

艦長「...もう下がりたまえ」

シンジ(もう...負けず嫌いでこういうとこは子供なんだから)

ケンスケ(言い負かした...)

トウジ(かっこええ...)

レイ「海の上って、肌寒いわ」

?「全くいい歳して子供みたいなことしてんじゃないわよ」

シンジ「?」

アスカ「ミサト!」

リョウジ「葛城...?」

ミサト「...」

〜艦内・休憩室〜

リョウジ「...」

ミサト「...」

リョウジ「なんで、ここに?」

ミサト「...アスカの付き添い、ドイツ支部からの出張命令。あんたが去った後のアスカの保護役は私になったの」

リョウジ「そう、だったのか」

リョウジ「...八年ぶりかな」

ミサト「...覚えちゃないわよそんなの」

その他「.....」

シンジ「ねぇ、あの二人ってなんであんなにギスギスしてるの?」ボソッ

アスカ「私も良く知らないけど、あの二人昔付き合ってたみたいなのよ」ボソッ

トウジ「な、なんやて...あんなべっぴんさんと...」ボソッ

ケンスケ「羨ましい...」ボソッ

レイ「紅茶、美味しい」

リョウジ「...新しい人、見つけたかい?」

ミサト「...そんなのあんたに関係ないでしょ」

リョウジ「そう、だな」

ミサト「そ、そういえば碇君はエヴァをなんの訓練もなしにいきなり動かしたんですって?」

シンジ「え、なんで僕のことを?」

ミサト「あなたはこの界隈じゃ有名人よ?」

シンジ「そんな...偶然ですよ」

ミサト「それでもすごいわ、自信持ってね」

シンジ「あ、ありがとうございます!」

アスカ「...」

シンジ「そういえば、弐号機って何色なの?」

アスカ「...赤よ」

シンジ「へえ!赤かー!かっこいいね!」

アスカ「...でしょ?」

シンジ「惣流さんはセカンドだから、僕よりも早くエヴァに乗ってたんだよね」

アスカ「そうよ!子供の頃からエヴァに選ばれたエリートなのよ!」

シンジ「尊敬しちゃうな、僕なんて最近やっと慣れてきたくらいだから。レイも惣流さんもすごいや」

レイ「あ、ありがとう」

アスカ「...」

アスカ(なによ...初起動から動かしたことを自慢したりしないんだ...)

アスカ(こんなこと考えて嫌な奴だな、私)

アスカ(私には、エヴァしかないから)

ミサト「それじゃあ弐号機とアスカ、確かに届けましたよ。加持一尉」

リョウジ「ああ、確かに」

リョウジ(久しぶりの再開だってのにピリピリしてるな...)

リョウジ(俺のせい、だもんな)

シンジ「葛城さん、クールでかっこいい人ですね」

リョウジ「まあ、な」

リョウジ「...」

アスカ「ちょっと、ファーストとサード。こっち来なさいよ」

シンジ「え?なんかあるの?」

アスカ「いいから来なさいよ!」

レイ「あっ、紅茶...」

トウジ「なんやワイらはハブかいな!」

アスカ「凡人には関係ないことよ!」

トウジ「むかーっ!!」

ケンスケ「良い...良いっ!」

〜艦内・弐号機格納庫〜

シンジ「わー!弐号機ってこんな感じなんだ!」

レイ「目が四つ」

アスカ「ふふん!この弐号機はあんたらのテストタイプやプロトタイプとは違う!本物のエヴァンゲリオンなのよ!正式タイプのね!」

シンジ「へー!すごいなー!」

シンジ「僕の初号機はツノがあってかっこいいんだ!」

レイ「私の零号機は目がくりくりしてて、かわいい」

シンジ「確かに、零号機ってなんだかかわいいよね」

レイ「うん...///」

アスカ「...やっぱ調子狂うわね」



アスカ「兎に角!私の弐号機はあんたらのとは格が...」ズズーン

シンジ「爆発!?」

レイ「近いわ」

シンジ「甲板に出てみよう!」

レイ「あれ、使徒だと思うわ」

シンジ「リョウジさんに指示を貰ってくる!弐号機ってすぐ動かせる!?」

アスカ「心配御無用!まっかせなさーい!」

シンジ「わかった!」ダダッ

レイ「...」

アスカ「ほら!なにボーッとつったってんのよ!」

レイ「?」

アスカ「あんたもくんのよ!!」

シンジ「リョウジさん!使徒が!!」

リョウジ「ああ、肉眼でとらえてる。弐号機は?」

シンジ「もう惣流さんがエントリーの準備してるはずです!」

リョウジ「おうし!でかしたアスカ!」

艦長「ちょっと待て!弐号機とパイロットはうちの管轄だぞ!今すぐやめさせろ!」

リョウジ「んなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」

艦長「しかし!!」

ミサト「有事の際の指揮権は我々にあります。上から本施設及び艦隊指揮権所有の許可は得てあります」

ミサト「後で書類も郵送致しますので、ご安心を」

艦長「...了解した」

リョウジ「葛城...」

ミサト「あなたはあなたの役割を果たして。現場の指揮はあなたの仕事でしょ」

リョウジ「...ああ、ありがとな」

ミサト(目標は...私の手荷物ね)

ミサト(加持君が側にいる分、逃げれば疑われる...)

ミサト(保険をかけておいてよかったわね)

アスカ「じゃあシンクロ始めるわよ」

レイ「...バグだわ」

アスカ「ちっ!日本語で考えてるでしょ!仕方ないわね!」

アスカ「思考言語を日本語に!エヴァ弐号機、起動!」

弐号機「...!」

アスカ「...行くわよ、アスカ」


〜太平洋艦隊・甲板〜

リョウジ「弐号機!きたか!」

リョウジ「よしこのまま海中で目標を...」

副艦長「いいんですか?弐号機はB型装備のままですが」

リョウジ「...マジ?」

ミサト「加持君、私がドイツから持ってきた水中用装備が隣の艦に積まれてるわ」

リョウジ「ナイス!葛城!でもなんで最初から換装してこなかったんだ?」

ミサト「ドイツだと使えない装備なのよ。国境を越えれば何使っても自由だわ」


リョウジ「どこも上の人間は頭が硬いねぇ。アスカ!隣の艦に行って水中装備を...」

レイ「待って!使徒がこっちに接近してる」

リョウジ「レイも乗ってんのか!よし!まずは使徒からの攻撃を避けて...」

第6使徒「...!」

隣の艦「」アボーン

副艦長「...装備、海に沈んでってますね」

リョウジ「」

ミサト「あちゃー...」

アスカ「きゃああああ!!」

シンジ「弐号機がっ!」

リョウジ「引きずり込まれたか!」

アスカ「どうすんのよぉ!?」

レイ「...弐号機にプログナイフは?」

アスカ「二本ついてるわ!」

レイ「まず一本を使徒に刺して!」

アスカ「上等ォ!!」

アスカ「どりゃあ!!」

第6使徒「!!」

アスカ「離れた!!」

レイ「今のうちに底のライフルを拾いに!」

アスカ「でもあと50秒しか!」

レイ「間に合うわ!」

アスカ「わかった!!」


アスカ「ライフル拾ったわ!!」

レイ「さっきナイフを刺した時に口の中にコアが見えた。もう一本で口をこじ空けるしかないわ」

アスカ「わかった...!」

第6使徒「...!」

レイ「きた!」

アスカ「おりゃあああああ!!」

レイ「残り10秒!」

アスカ「こんのぉおおおおお!!」ゴバァ

レイ「開いた!撃って!!」

第6使徒「」

アスカ「やったの...?」

レイ「多分、大丈夫」

アスカ「ふぅ...あんたやるじゃん」

レイ「シンジ君の方が、すごいわ」

アスカ「ふーん、あいつがね」

アスカ「...暗いとか言ってごめんね。特別に、名前で呼んでもいいわよ」

レイ「...本当?」

アスカ「ほんとよ!私もレイって呼ぶから!!」

レイ「名前...友達っぽいね」

アスカ「そ、そうね!」

アスカ(...結構可愛い顔できんじゃない)



〜新横須賀港〜

リョウジ「二人とも、よくやったな」

アスカ「あったりまえよっ!」

レイ「...アスカが、頑張ったの」

アスカ「あんたの作戦あってじゃない!これだから日本人はすぐ謙遜して!」

シンジ「あはははは!」

アスカ「なんもしてないくせに笑ってんじゃないわよ!バカシンジ!」

シンジ「あ、はは...」

ミサト「二人ともお疲れ様」

アスカ「私の活躍見てくれた?」

ミサト「ええ、もちろんよ」

リョウジ「...」チラッ

リョウジ(なぜ今回の使徒は本部に来なかった...?)

リョウジ(都合よく運搬中だった弐号機...)

リョウジ(...葛城、なにかあるな)

〜ネルフ本部・司令室〜

ゲンドウ「...ご苦労だった」

ミサト「はい。弐号機の損傷、予備装備の損失などハプニングはありましたが、荷物には問題ありません」

ゲンドウ「それが無事ならそれでいい」

ミサト「ありがとうございます。硬化ベークライトで固めてありますが、生きています、間違いなく」

ゲンドウ「確かに、ご苦労。下がっていい」

ミサト「はい、それでは」

ミサト「...」

ミサト(司令に恩は売った...ネルフにも配属になった...)

ミサト(やっと、ここまで来たのね)

ミサト(...真実は間違いなくここにある)

ミサト(待ってて、お父さん)

〜第三新東京市・第一中学2-A〜

トウジ「なんやいけすかん女やったなぁ、あの弐号機のパイロット!」

ケンスケ「あの気が強そうなとこが良いんじゃない」

シンジ「僕は好きだよああいうタイプ」

レイ「...!」

レイ「シンジ君はああいう子が好きなのね」

シンジ「えっ!?あっ違うんだよレイ!」

ケンスケ「あーはいはい」

トウジ「一生やっとれ」

教師「おーいみんな席つけー」

教師「今日は転校生を紹介するぞ」

トウジ「んなっ!?」

ケンスケ「うほっ!!」

アスカ「惣流・アスカ・ラングレーです、よろしく!」

シンジ「わー賑やかになりそうだ」

レイ「...アスカ、友達」

アスカ「あー日本の学校の授業って暇ね〜」

シンジ「まあ僕もそう思うよ」

アスカ「レイ、一緒に帰りましょ」

レイ「!」

レイ「一緒に...帰る」

レイ「嬉しい」

ヒカリ「あの、私もいいかな?」

アスカ「ん?ヒカリ、だっけ?いいわよ!みんなで帰りましょ!」

ヒカリ「ありがと!綾波さんも、いいかな?」

レイ「...///」コクコク

アスカ「帰りにアイス買ってきましょー」

ヒカリ「今日暑いもんね」

レイ「トマト味...」

トウジ「外面ええのぉ」

ケンスケ「あの性格出さなきゃただのかわいい子だからねぇ」

シンジ「...」

シンジ(レイ、良かったね)



〜ネルフ本部・リツコ研究室〜

リツコ「...」カタカタ

ミサト「赤木博士」

リツコ「...ミサトね」

ミサト「...久しぶりね」

リツコ「ええ、何年ぶりかしら」

リツコ「あのあなたがネルフにね...」

ミサト「悪いけど、昔の私のままだと思われるのは困るわ」

ミサト「しばらくこっちに配属になったから、よろしく」

リツコ「ええ、こちらこそ」

ミサト「...なんて重っ苦しいのはやめましょ。落ち着いたらまた、飲みに付き合ってね」

リツコ「いいわよ、あんたこそ無理しすぎないようにね」

ミサト「ありがと!じゃね」

リツコ「...」

リツコ(何が目的なのかしらね)

リツコ(加持君に余計なことしなきゃいいんだけど)

〜第三新東京市・路上〜

アスカ「そ、私はミサトと住んでるの」

レイ「私は、リョウジさんとシンジ君と」

アスカ「むーっ!いいなぁ!加持さんと同居!!」

アスカ「シンジと住むのは嫌だけど、加持さんと住めるなら私もそっちがいいなぁ」

レイ「私は、葛城さんとも話してみたい」

アスカ「ミサトね〜...嫌いじゃないんだけどね」

ヒカリ「苦手なの?」

アスカ「うん、ちょっとね。あいつ、いっつもほんとの顔見せないし」

アスカ(それは、私も同じか)ビー!!ビー!!

アスカ「警報!!」

レイ「アスカ!!」

アスカ「...使徒ね」

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

日向「パターン青!使徒です!」

冬月「総員、第一種戦闘配置!」

リョウジ「零号機は修理中だ、今回はシンジ君とアスカでタッグを組んでもらうぞ!」

シンジ「はい!」

アスカ「こんなの私一人で十分よ!」

リョウジ「あの三角野郎のせいで迎撃システムはズタボロだ!目標が街に上陸する前に叩くぞ!」

アスカ「おっけー!任せといて!」

シンジ「僕が先に、って言いたいけど君が先に行きたいんだろ?」

アスカ「わかってんじゃない!」

シンジ「援護は任せて、...来たっ!」

第7使徒「...」

シンジ(...コアが見える...二つ?)

アスカ「どおりゃああああ!!」

第7使徒「...!」

青葉「目標、沈黙!」

アスカ「ふん!こんな奴一瞬よ!」

シンジ「惣流さん、念のためそいつから...」

第7使徒「...!」ギュルン!

アスカ「ふ、二つになった!?」

シンジ「アスカっ!早くそいつから離れて!」

アスカ「いやーぁ!!」

シンジ「くそっ!!」

〜ネルフ本部・映写室〜

マヤ「...と、本日午後3時58分15秒、使徒の攻撃により活動停止した弐号機を抱え、初号機パイロットの判断で初号機が撤退」

マヤ「午後4時3分を持って作戦遂行を断念、指揮権を国連第二方面軍に移譲」

リョウジ「いやはや...シンジの判断に助けられたよ」

シンジ「危ないと思ったんで、惣流さんが無事でよかったです」

アスカ「...ふん」

マヤ「同05、爆雷により目標を焼却。これにより目標の足止めに成功」

ミサト「再度進行まで5日ほど、あまり猶予はないわね」

リョウジ「おいおい...あまり追い詰めないでくれよ」

リョウジ「ま、とりあえず解散だ。俺はこれから大量の始末書とご対面なんでね」

リョウジ「悪いが葛城、三人を頼んでいいか?」

ミサト「わかったわ」

シンジ「ふぅー、さっきは無事で良かったね。でもあんなの相手にどうやって勝てばいいんだろ...」

アスカ「...あの」

シンジ「ん?」

アスカ「あ、ありが...」

ミサト「3人とも、ご飯これから?」

レイ「葛城さん」

アスカ「!」

アスカ「べ、別にあんたに助けてもらわなくても大丈夫だったわよっ!!」

シンジ「あはは、そっか。でも僕は君を助けたかったんだ」

シンジ「勝手なことしてごめんね」

アスカ「...ぷいっ」

ミサト(シンジ組んって意外と女の子の扱い上手なのね)

ミサト(...あいつ譲りか)

ミサト「まあとりあえずご飯でも食べましょう!ね?」

アスカ「はーい...」

レイ「みんなでご飯...!」

シンジ「あの、リョウジさんは?」

ミサト「あいつは今晩ご飯なんて食べてる場合じゃないわよ」

〜ネルフ本部・加持執務室〜

リツコ「これが各関係省からの損害賠償請求書、それとこっちが抗議文と国連からの請求書よ」

リョウジ「oh...」

リョウジ「責任者は責任取るためにいるってのはわかってるが、こいつは辛いな...」

リョウジ「こんなもん片付けながら作戦考えるなんて無理だよ〜...」

リツコ「そこで、加持君を救うナイスアイデアがあるわ」

リョウジ「おーっ!流石赤木博士!持つべきものは友だな!」

リツコ「残念、私のじゃないわ」

リョウジ「じゃあ誰の?」

リツコ「ミサトよ、これを困ってるあいつに渡してやれって」

リョウジ「葛城...」

〜ネルフ本部・食堂〜

アスカ「あんなの私一人で十分なのよ!ほんとにー!」

シンジ「はいはい」

レイ「美味しい...」

館内アナウンス「エヴァ初号機、及び弐号機パイロット両名は至急作戦会議室まで集合してください」

ミサト「ほら、お呼びよ!頑張ってね」

シンジ「はい」

アスカ「...」



シンジ「エヴァはまだ修理中なのになにするんだろうね?」

アスカ「知らないわよ」

シンジ「そっか、でも惣流さんは...」

アスカ「あんた、さっきどさくさで名前で呼んだでしょ」

シンジ「そうだね、必死だったから」

アスカ「特別に、アスカでいいわよ」

シンジ「わかったよ、アスカ。じゃあ僕もシンジって...」

アスカ「だめよ!あんたはバカシンジ!」

シンジ「わかったよ。でもあだ名で呼んでくれるなんて、より親密で嬉しいな」

アスカ「っ!?」

アスカ(ほんっと調子狂うわねー!)

リョウジ「おっ!二人とも来たな!」

シンジ「作戦てなにをするんです?」

リョウジ「今回の使徒なんだが、調べてみたところ二つの使徒がお互いを補い合ってることがわかった」

リョウジ「つまりは、二つのコアを同時に砕かないと倒せないってことだ」

リョウジ「そのために、エヴァ2機が完璧に動きを合わせなきゃならない」

リョウジ「そこで、二人にはここで5日間一緒に住んでもらう」

シンジ「はい」

アスカ「」

アスカ「か、加持さん!?私達年頃の男女なんですよ!?」

リョウジ「ああ、花の14歳だな」

アスカ「わ、私に変なことしてきたらどうするんですか!?」

シンジ「はは、確かにアスカは綺麗だけど、そんな野暮なことはしないよ」

リョウジ「そう!シンジはな、俺と同じで紳士だぞ?」

アスカ「でもー...」

リョウジ「大丈夫、一緒に起きて、寝て、食べて、生活リズムを合わせるのさ。それがユニゾンにつながる」

リョウジ「必要なものがあったらいつでも内線で伝えてくれ、持ってきてやる」

リョウジ「じゃ、明日の起床は7時だ!二人とも今日はゆっくり休めよ!」 ガチャ

シンジ「はい。あ、リョウジさん冷蔵庫に摘んでおいた野菜入ってるんでそれ使ってください」

リョウジ「おう、レイには俺から言っとくよ」

アスカ「あ、悪夢よ...」

シンジ「ごめんね、僕なんかが一緒だと嫌だと思うけど我慢してね」

アスカ「本当よ!あーあ!これが加持さんとだったらなー!」

シンジ「確かに、でもリョウジさんと一緒なんてドキドキして作戦どころじゃなくなると思うよ?」

アスカ「それもそうね...」

シンジ「でしょ?あ、シャワー先使う?」

アスカ「当たり前じゃない!私が先よ!!」

シンジ「わかった、待ってるよ」

アスカ「...言っとくけど、覗いたらただじゃおかないわよ」

シンジ「覗きたいのはやまやまだけど、どうにか我慢するよ」

アスカ「...」ガチャ

シンジ「...」

シンジ(ふ〜、やっぱ女の子と2人は緊張するな)

シンジ(レイとも、最初はこんなかんじだったな)

シンジ(人と話すのってこんなに楽しいんだな)

シンジ(...父さんとも、いつか楽しく話せるといいな)

〜翌朝〜

リョウジ「いいか?この音楽に合わせてダンスを覚えてもらうぞ」

シンジ「ダンス、ですか?」


リョウジ「そう、このダンスに合わせて攻撃するんだ。二人の動きを合わせて攻撃できるようにできてる」

アスカ「は、恥ずかしいですそんなの!」

リョウジ「そう言うな!使徒に勝つためだと思って頑張ってくれ!」

アスカ「加持さんが言うなら...」

シンジ「うーん、僕運動神経悪いんだけどなー」

アスカ「足ひっぱんないでよね!」

シンジ「頑張るよ」



シンジ「〜・」
アスカ「〜・」

リョウジ「アスカ!まだ照れが残ってるぞ!シンジ!アスカよりワンテンポ遅い!」

アスカ「もう!ちゃんと合わせてよ!」

シンジ「ごめん!運動するの久しぶりだから足が上手く動かなくて...」

アスカ「もう!私先にお昼行くから!」

シンジ「うん、僕も後で行くよ」

アスカ「ぷいっ!」

シンジ「...なんか、普通の女の子って感じでいいですね」

リョウジ「そうだな、等身大の女の子って感じだな」

シンジ「レイもそうだけど、こんなに色んな人と関わったことないから嬉しいんです」

シンジ「トウジやケンスケもいるし、ここに来てから辛いこともあったけど、来て良かったと思います」

リョウジ「...エヴァに乗ってもかい?」

シンジ「...はい」

リョウジ「そうか」

リョウジ「食堂のな、新作デザート。あれ美味いんだ」

リョウジ「アスカの分も頼んでやんな」

シンジ「あ、はい!ありがとうございます」

リョウジ「...」

リョウジ(大人になっても、結局俺は無力か)

〜ネルフ本部・共同部屋〜

アスカ「あ〜しんどいわー!」

アスカ「ん...なんかいい匂いする」

シンジ「あ?アスカ風呂出た?」

シンジ「これ、夜ご飯作ったんだ」

シンジ「いっつもスプーンとフォークで食べるもの食べててたから、箸使えないと思って」

シンジ「グラタン、好きかな?」

アスカ「...食べれなくないわよ」

シンジ「よかった!じゃあ食べようか」

シンジ「いただきます」

アスカ「...ます」

アスカ「...」モグモグ

アスカ(美味しい...)

アスカ(手作りって、やっぱ美味しいわね)

アスカ(ミサト、いっつもレトルトだから。仕事忙しいのわかってるけど)

アスカ「...」

アスカ「し、シンジ」

シンジ「ん?」モグモグ

アスカ「あ、明日は和食作りなさいよ」

シンジ「?いいけど箸だよ?」

アスカ「箸使えるようになりたいの」

アスカ「あと、作り方教えて欲しい」

シンジ「わかった、いいよ。でも何がいい?和食っていってもたくさんあるよ」

アスカ「なんか美味しくて日本らしくて、お酒のつまみになるようなやつ」

シンジ「うーん、わかった!考えとくね」

〜第三新東京市・加持自宅〜

リョウジ「今日は肉じゃがだぞー!」

レイ「美味しい」

レイ「...シンジ君とアスカ、どうですか?」

リョウジ「うーんまだまだだが、アスカもシンジも頑張ってるよ」

レイ「そう、ですか」

レイ「二人でいるんですよね」

リョウジ「そうだな、あと3日は一緒だ」

レイ「...シンジ君が、アスカみたいな子が好きって言ってたんです」

レイ「それ聞いたら、なんか胸がチクってするんです」

レイ「初めてなんです、こんな感じ」

リョウジ「...なるほど」

リョウジ「それは心配いらないよ、君くらいの子が必ずなる病気さ」

リョウジ「それに、シンジ君はおしとやかな子が好きかもしれないぞ?」

レイ「そ、そうですか///」

リョウジ「おう!」

レイ「あの、リョウジさん」

リョウジ「ん?」

レイ「これ、肉じゃが。作り方教えて欲しいんです」

レイ「私も、美味しいご飯作りたいんです」

リョウジ「...よし、わかった!明日は野菜摘みに行くか!」

〜ネルフ本部・共同部屋〜

シンジ「それで、最後に味見して濃さを調整して完成。わかった?」

アスカ「ふーん...これが肉じゃがってやつなのね」

シンジ「うん、アスカのいう美味しくて日本を代表する料理だよ」

アスカ「...こう?」

シンジ「ちがうちがう、箸はこうやって持つんだよ」

アスカ「こう?」

シンジ「そうそう!上手だよ」

アスカ「うーんなかなか難しいわね...」

シンジ「じゃあ、食べてみようか」

アスカ「いただきます」モグモグ

アスカ「...めちゃくちゃ美味しいわね」

アスカ「あんた、勉強もそこそこできて料理も上手いのになんでダンスだけ下手なのよ」

シンジ「あはは...昔からとろいんだよね」

アスカ「...明日は私が作るわ」

シンジ「ほんとに?大丈夫?」

アスカ「なめんじゃないわよ!あんたより美味しく作ってやるわ!」

シンジ「わかった、楽しみにしてるよ」

アスカ「ふんっ!」

〜第三新東京市・加持自宅〜

リョウジ「そう、それで最後に味見して味整えて完成だ」

レイ「...なるほど」メモメモ

レイ「肉じゃが作ってもらったら、嬉しいですか?」

リョウジ「そりゃ、君みたいな可愛い子に作ってもらえば嬉しいに決まってるさ」

レイ「...///」

リョウジ「料理ってのは、とても大切なもんだ」

リョウジ「生き物に感謝し、明日のために人は物を食べるのさ」

リョウジ「そして、料理にはもう一つ大事な役目がある」

レイ「?」

リョウジ「気持ちを伝えることさ」

リョウジ「料理は美味い、不味いは関係ない、気持ちがこもってればそれは料理と呼べるのさ」

レイ「気持ち...」

リョウジ「ああ、だから気持ちを込めて作るんだぞ」

レイ「...はい!」

リョウジ「ところで、誰に作ってあげるんだい?」





〜ネルフ本部・共同部屋〜

シンジ「ぶっは〜」ガチャ

シンジ「今日も疲れた〜あと1日しかないし、頑張らないと」

アスカ「シンジ...ってぎゃー!ちゃんと服着てから出てきなさいよ!」

シンジ「あっごめん。いつもの癖で」

アスカ「まったく...」

シンジ「...匂いはいいじゃない」

アスカ「味もいいわよっ」

シンジ「どれどれ...いただきます」モグモグ

シンジ「...うん!よくできてるよ、美味しい」

アスカ「でしょでしょ!」

シンジ「箸もちゃんと使えてるし、飲み込みが早いね」

アスカ「ふんっ!あったりまえじゃない!」

シンジ「アスカはダンスも上手いしね、僕も頑張らなきゃ」

アスカ「...ごめん、いっつも私ばっかり先走っちゃって」

アスカ「加持さんの前で恥かきたくないし、動き合わないのあんたのせいにばかりして」

シンジ「ううん、どってことないよ」

シンジ「僕こそアスカについてけなくてごめん」

シンジ「...それにしても、あの踊りちょっとポーズ恥ずかしいよなぁ!」

アスカ「確かに、お遊戯みたいよね!」

シンジ「...」ニコッ

アスカ「...」 プイッ



〜ネルフ本部・作戦室〜

シンジ「よっ!」
アスカ「はっ!」

リョウジ「いよいよ作戦は明日だが...」

リョウジ「二人とも、ほとんど完璧じゃないか」

シンジ「良かったです」

アスカ「あたりまえですっ!」

ミサト「これなら、明日もバッチいけるわよ」

リョウジ「おっ、今回の作戦考案者のご登場だ」

ミサト「加持君...わざわざ言わなくてもいいのに」

リョウジ「いや、俺が困ってる時に助けてくれたじゃないか」

シンジ「えっ!今回の作戦葛城さんのだったんですか?」

リョウジ「そうだ、いやぁ俺ならこんなすごい作戦は思いつけないよ」

ミサト「お役に立てて良かったわ」

アスカ「...ミサト」

アスカ「真ん中のポーズ、なんでこんなバカみたいなのよぉ!」

ミサト「いや〜ちょっちわかりやすい方がいいと思って!」

リョウジ(美的センスは、あの頃のまんまか)

リョウジ「よし!今日はもういいぞ。あとは部屋で休みながら細かい所を直してくれ」

リョウジ「二人とも、頑張れよ」

シンジ・アスカ「はい!」

〜ネルフ本部・共同部屋〜

アスカ「...これも美味しい」

シンジ「材料がほとんど同じだからね。肉じゃがはカレー粉いれればカレーにもできるんだ」

シンジ「味は和風になっちゃうけどね」

アスカ「...そういえばあんた、どうしてこんなに料理できんの?」

シンジ「ああ、母さんが死んでから父さんに違う家に預けられたんだ」

シンジ「そこで迷惑かけないようにと思って、家事とか手伝ってるうちに自然とね」

アスカ「ふーん...」

アスカ「偉いわね」

シンジ「そんなことないよ」

アスカ(私、全然手伝いなんてしなかった)

アスカ(ほんとにダメね、私。エヴァに乗ることだけしか考えてない)

アスカ(...カレー美味しいな)

シンジ「食べ終わったし、明日に備えて早く寝よっか」

アスカ「そうね」

シンジ「おやすみ、アスカ」

アスカ「おやすみ」

シンジ「...アスカ、明日は頑張ろうね」

アスカ「...うん」

シンジ「...」

シンジ(とは言ったものの、緊張してなかなか寝付けないな)

アスカ「...ママ」

シンジ「?」

アスカ「ママ...どうして私を見てくれなかったの...」

シンジ「...」

シンジ(ここに来る前は、僕はすごく不幸な奴だと思ってた)

シンジ(でもそうじゃない、こんな世界だ、みんなそれぞれ何かを抱えて生きているんだろうな)

シンジ(...母さん)

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

リョウジ「いいか!?武装ビルや防壁の場所は頭に叩き込んである通りだ!」

リョウジ「カウントスタートと同時に両機最大出力、ケーブル切断と同時に発進、いいな?」

シンジ「わかってます!」

アスカ「足引っ張るんじゃないわよ!」

シンジ「そっちこそね!」

リョウジ「カウントスタート...作戦開始!!」










アスカ「ふふ〜ん!」

シンジ「...」ニコッ

リョウジ「二人とも、良くやったな」

アスカ「じゃあ私はこれで!先帰るから!!」

シンジ「えっ?ああうん」

アスカ「また学校でね!加持さんもお疲れ様でした!それじゃっ!」

リョウジ「お、おう」

シンジ「なんなんですかね?」

〜第三新東京市・葛城自宅〜

ミサト「たっだいま〜」

ミサト「アスカ、今日の作戦お疲れ様...」

アスカ「おっかえりミサト!」

ミサト「アスカがこれ、作ったの?」

アスカ「そうよ!作戦終わってマッハで帰って準備したの!」

アスカ「ビールも冷やしといたわよ!ほら早く食べなさいよっ!」

ミサト「う、うんじゃあ、いただきます」モグモグ

ミサト「...うん!美味しいわ!!」

アスカ「でっしょー?バカシンジに教えてもらったの!今日は時間なかったから一人分だけど、今度たくさん作ってあげるわ!」

ミサト「ありがとうアスカ、おかげで疲れも吹っ飛んだわ!」

アスカ「ふっふーん!」

ミサト「...」

ミサト(砂糖と塩、間違えてるわよ)

ミサト(でも、このくらいの塩っ気のが疲れてる時に嬉しいわね)

ミサト(ありがと、アスカ)

アスカ(あっ、味見するの忘れた!)

アスカ(まあでも、シンジに作ってやった時は美味しいって言ってたし!大丈夫よね!)

〜ネルフ本部・司令室〜

レイ「どう、ですか?」

ゲンドウ「ああ、美味い」

レイ「良かった...」

レイ「誰かに作ってもらうって、やっぱり嬉しいですか?」

ゲンドウ「ああ」

レイ「リョウジさんがそう言ってたんです」

ゲンドウ「...」

レイ「この肉じゃがは、リョウジさんが教えてくれたんです」

ゲンドウ「...そうか」

レイ「...今度は、シンジ君も呼んで三人で食べませんか?」

ゲンドウ「いや、私は仕事が...」

レイ「...」

ゲンドウ「...!」

〜〜〜14年前〜〜〜

ユイ「はい、出来上がりましたよ」

ゲンドウ「おお、美味そうだ」

ゲンドウ「シンジは?」

ユイ「おっぱい飲んだあと、可愛い顔で寝てますよ」

ゲンドウ「そうか」

ゲンドウ「やっぱりユイの作る飯は美味い」

ユイ「あら、ありがとうございます」

ユイ「でも、褒めてもおかずはこれだけですよ?」

ゲンドウ「ははは、それは残念だ」




ゲンドウ「...わかった。時間を作れるようにしておく」

レイ「あ、ありがとうございます!」

ゲンドウ「ああ」

ゲンドウ「...」

ゲンドウ(ユイ...シンジ...)

すいません更新遅れました!書きます。

〜第二東京・ビル跡地〜

ミサト「やっぱりここもね」

ミサト「マルドゥック機関に繋がる108の企業の中で、106が偽物。そしてここが107つ目」

ミサト(エヴァパイロットを選出する委員会直属の諮問機関)

ミサト「...この裏にあるものはなに?」


〜第三新東京市・加持宅〜

トウジ「はー!まったく突然降ってくるんやもんなぁ」

ケンスケ「ほんと雨なんてまいっちゃうね、シンジの家が近くにあってよかったよ」

シンジ「風邪引く前に髪乾かそう」

リョウジ「おっ、みんなビチョ濡れだなぁ」

ケンスケ「リョウジさん!」

トウジ「相変わらずかっこええなぁ」

リョウジ「いや、君達もなかなか!水も滴るいい男ってな」

トウジ「ええこといいますわ兄さん!」

ケンスケ「ん...?リョウジさん、昇進されたんですか!?」

リョウジ「ん?おぉ、まあな」

シンジ「気づかなかった」

トウジ「んなもん気づくのお前だけやねん」

ケンスケ「そうと決まれば!」

ケンスケ「リョウジさん、昇進おめでとーう!!」

アスカ「おめでとー!!」

トウジ「おめでとさーん!!」

シンジ「おめでとうございます」

リョウジ「いやぁ嬉しいな!」

リョウジ「俺も、この仕事してた甲斐があるってもんだ」

ケンスケ「リョウジさん達はいっつも僕らを守ってくれてますから、このくらいさせてください!」

リョウジ「いや、本当に頑張ってるのはシンジやアスカさ」

シンジ「そんなことないです、リョウジさんがいなかったら僕らは戦えませんから」

アスカ「その通り!危険なのはみんな一緒よ」

リョウジ「...ありがとな、みんな」

ヒカリ「こ、こんばんわ!」

ケンスケ「お!委員長も来たんだ!」

アスカ「私が呼んだのよ!」

トウジ「い、委員長」

トウジ「わ、ワイの隣空いてるで。来たらどうや」

ヒカリ「えっ?あ、ありがと...」

トウジ「...///」

ヒカリ「...///」

アスカ「...?」

シンジ「葛城さんやリツコさんはこないんですか?あと、レイは?」

リョウジ「ん、一応声はかけたんだがな。仕事だろう」

リョウジ「レイはシンクロテストだって言ってたな」

シンジ「そうなんですか...残念だな」

〜ネルフ本部・初号機ケイジ〜

リツコ「どう?レイ、初号機の乗り心地は」

レイ「シンジ君の匂いが、します」

リツコ「シンクロ率は安定、いけるわね」

マヤ「...あれの完成、ですか」

リツコ「...よく思わないのもわかるわ。でも、備えは必要なのよ」

マヤ「...はい」

マヤ(こんなものを作ってまで...)

〜第三新東京市・加持宅〜

ミサト「...来てやったわよ」

リョウジ「...葛城、嬉しいよ」

アスカ「あー!ミサトこれたんだ!」

ミサト「ええ、アスカがどうしてもっていうからね」

ミサト「みんなも、久しぶり」

シンジ「お久しぶりです、葛城さん」

トウジ「あの時のべっぴんさんや!」

ヒカリ「...」

ケンスケ「カメラカメラ!!」




リョウジ「ぼぇ〜...」

ミサト「ったくなにやってんだか...」

リョウジ「ははっ...君と飲めるのが嬉しくてつい、ね」

ミサト「...もう」

ミサト「ほら、外の風当たりゃ治るわよ。肩貸してあげるから」

リョウジ「こりゃどーも...」

リョウジ「...」

ミサト「...あん時フラれたの、効いた?」

リョウジ「...ああ、使徒の一撃より効いたよ」

ミサト「...ごめんなさい」

リョウジ「...どってことないさ」

リョウジ「お互いキズを舐め合ってただけだもんな、俺たちは」

リョウジ「でも、お互いの過去を知ってるからこそ、俺たちの仕事には意味があると思ってるよ」

リョウジ「俺は使徒と戦ってる、あれを繰り返させないために」

リョウジ「君も形は違っても、俺と同じ気持ちだろう?」

ミサト「...そうね」

リョウジ「...葛城、無理すんなよ」

リョウジ「君の命は軽くない」

ミサト「...肝に命じとくわ」

〜翌日・第三新東京市・加持宅〜

シンジ「レイ、ちょっといいかな」

レイ「どうしたの?」

シンジ「レイ、父さんといつも何話してる?」

レイ「どうして?」

シンジ「昨日、リョウジさんの昇進祝いのパーティしたんだ。レイにも来てほしかったよ」

レイ「そうなんだ、楽しかった?」

シンジ「うん、楽しかったよ。そこに父さんもいたらなって」

レイ「...たしかに、そういう場なら話しやすいかもね」

シンジ「...うん」

レイ「...私とは、意味のある話なんかはしてないわ」

レイ「司令は私を見てくれてるようで、ずっと先を見てる気がするから」

レイ「でも、シンジ君なら大丈夫。シンジ君が思ってることを素直に全部話してみたらいいと思う」

シンジ「...わかった!ありがとう」

レイ「うん...!」

シンジ「...」プルルルル

シンジ「あ、碇シンジです。碇司令をお願いします」

シンジ「...」

ゲンドウ『シンジ、どうした?』ガチャッ

シンジ「父さん、明日行くでしょ?」

ゲンドウ『...ああ、そうだな』

シンジ「僕も行くから、11時に」

ゲンドウ『...わかった。待っている』ガチャッ

シンジ「...」



〜第三新東京市・共同墓地〜

シンジ「...」

ゲンドウ「...」

シンジ「僕は三年ぶり、父さんは?」

ゲンドウ「毎年来ている」

シンジ「そっか」

シンジ「母さんてどんな人だった?」

ゲンドウ「...優しくて、純粋だった。お前のようにな」

シンジ「...そうなんだ」

ゲンドウ「...シンジ、お前は繊細すぎる」

シンジ「えっ...?」

ゲンドウ「私も、そうだった」

ゲンドウ「それ故に、色々なものを犠牲にしてきた」

ゲンドウ「ユイも、その一つだ」

ゲンドウ「シンジ、お前はそうなるな」

ゲンドウ「...この墓も飾りだ。他の墓も遺体はほとんど埋まっていない」

ゲンドウ「全ては心の中だ、今はそれでいい」

シンジ「心の中...」

シンジ「...父さん、母さんとの一番の思い出ってなに?」

ゲンドウ「お前が、生まれたことだ」

ゲンドウ「...時間だ、私は仕事に戻る」

シンジ「うん...」

ゲンドウ「...」

シンジ「...父さんっ!今日は、父さんとこれてよかった」

ゲンドウ「...そうか」

シンジ「来年も、二人で来よう」

ゲンドウ「...そのつもりだ」

シンジ(母さん...父さんとこんなに話したのは初めてだよ)

シンジ(僕、頑張るね。母さん)

〜南極大陸・跡地〜

冬月「いかなる生命の存在を許さぬ南極...か」

冬月「いや、この世の地獄と言うべきか」

ゲンドウ「だが今、俺たちはここに立っている。科学という人の力でな」

冬月「...だが碇、その欲深さ、傲慢さがアレを引き起こしたのだ」

冬月「その結果が、今の世だよ」

ゲンドウ「...環境汚染も戦争も終わらない。一度地球全てがこうなるべきなのかもしれんな」

冬月「...例え地球が悲鳴をあげていたとしても、俺は人が繁栄しているままの世界を望むよ」ビーッ

アナウンス『現在、大気圏直上より未確認物体接近中!』

ゲンドウ「...きたか」

ゲンドウ「槍を手に入れた我々は少しばかりの猶予を手に入れたことになる」

ゲンドウ「奴らの残りも少ない」

冬月「あと、あと少しで叶うのだな」

ゲンドウ「ああ、すでにパーツは揃っている」

ゲンドウ「あとは"イレギュラー"が起こらなければ全て万端だ」

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

日向「衛星やり目標映像の取得を確認!モニターへ回します!」

リョウジ「うっは...こりゃまたデタラメな」

マヤ「落下エネルギーをそのまま武器にしています」

リョウジ「一発目は大ハズレ、次はこっち、そんで最後は...」

リツコ「ここね」

リョウジ「...司令と連絡は無理か?」

青葉「使徒の放つジャミングにより、依然連絡不能」

リョウジ「これしかない...か」

リツコ「全く大胆な作戦を毎回思い付くものね」

リョウジ「一番確率の高い方法だと思ったんだがな」

リツコ「...こんな作戦よりも初号機の保護を最優先にすべきよ」

リョウジ「いーやだめだ、奴は止める」

リツコ「エヴァが3機とも大破すれば、次の使徒への戦力はないのよ!?それに地下の...」

リョウジ「...地下の?」

リツコ「...なんでもないわ」

リツコ「ともかく、危険すぎるわ」

リョウジ「勝ってみせるさ」

リツコ「加持三佐!!」

リョウジ「...」

リツコ「...持ち場に戻るわ」

リョウジ(...地下か)

リョウジ「いいかい?こっちから常時落下地点の予想データを送る」

リョウジ「その地点を修正しつつ目標へ3機とも走ってくれ」

アスカ「...ほんとにできるんですか?こんなの」

リョウジ「...やるしかないんだ、すまないな」

シンジ(...落下地点はこことここが濃厚か)

シンジ「アスカ、レイ、準備はいい?」

レイ「いつでも」

アスカ「同じくぅ!」

リョウジ「それじゃあいいか?...作戦スター...」プツッ

アスカ「なに!?」

レイ「本部からの通信がないわ!」

シンジ「落下予測も受けられない...!」

アスカ「どどど、どうすんのよ!!」

シンジ「...アスカはロスト寸前のデータをなるべく思い出して走って!レイは駒ケ岳近辺まで直進!」

アスカ「わ、わかった!」
レイ「了解!」

シンジ(一体なにがどうなってるんだ...?)


リョウジ「な、なんだ!?」

マヤ「電子機器が動いてない...!?」

リツコ「正・副・予備の三つが同時に落ちるなんてありえないわ!!」

リョウジ「な、なんてこった...」

リョウジ「まさに絶体絶命...」

リョウジ「今回ばかりは死んだかもな...」

リョウジ(みんな...頼むぞ)

シンジ「アスカ!地図は思い出した!?」

アスカ「ダメ!私まだこっちきて日が浅いんだからぁ!!」

レイ「予想地点へは私が行く!」

シンジ「わかった!アスカはそのまま走って目標が見えたらそっちに全力疾走だよ!!」

アスカ「わかってるっちゅーの!!」

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

リョウジ「まったくどうなってんだ!この非常時に!!」

リツコ「物理的にあり得ない状況よ!」

マヤ「ダメです!すべての回線が遮断!使えるのは旧回線が二本のみです!」

リョウジ「セントラルドグマの維持を最優先だ!」

日向「ですが、それでは全館の生命維持に問題が...」

リョウジ「暑さくらい大丈夫だ!司令ならきっとそうするはずだ!」

日向「わかりました!」

リョウジ「...リッちゃん、今回のは」

リツコ「ええ...人為的なものね」

リョウジ「やっぱり、か...」ズズン!

青葉「衝撃波...!」

リョウジ「こいつぁ近いぞ...!」

リョウジ(外はどうなってる...!)

アスカ「見えた!!」

シンジ「レイ!!」

レイ「私は間に合わない!シンジ君は!?」

シンジ「僕は間に合う!うおおおお!!」

アスカ「もう!なんでこんな時に!!」

第8使徒「...」

シンジ「間に合ったっ!A.Tフィールド...全開っ!!」

初号機「...!」ピキーン!

第8使徒「!!」

シンジ「うぐっ...!重いっ!」

シンジ「レイっ!アスカっ!!」

レイ「あと少し!」

アスカ「男ならがんばんなさいよ!!」

シンジ「うあああああっ!!」ブチブチッ!

レイ「シンジ君!ついたわ!!」

シンジ「ぼ...僕がおさえるっ!レイがフィールドを破ってアスカがコアを!!」

レイ「わかったわ!」

アスカ「今来たわ...よおおおおっ!!」

レイ「残り15秒!」

アスカ「とっとと壊れなさい...よっ!!」

アスカ「これでっ!!」

第8使徒「...!」

レイ「残り3、2、1...!」

第8使徒「」

シンジ「はっ...あっ!ぐぅっ!!」

レイ「シンジ君!!」

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

マヤ「...回線回復!!」

日向「外は!?」

青葉「...パターン検出なし!使徒殲滅成功の模様!!」

リョウジ「いよっしゃあ!!」

リツコ「...今回ばかりは流石に覚悟したわ」



〜同時刻・セントラルドグマ〜

ミサト「...」カタカタカタ

ミサト「...なるほど、これが15年前の真実なのね」

ミサト「電源が復旧してきた、仕事は終わりね」

ミサト(加持くんなら、残りの電源はセントラルドグマの維持に当てると思ったわ)

ミサト(ここが吹き飛んでないあたり、使徒は無事殲滅したのね)

ミサト(ものすごい賭けだったけど、その甲斐あったわ)

ミサト(...待ってて、お父さん)

青葉「回線回復、碇司令と繋がります」

ゲンドウ『使徒はどうなった?』

リョウジ「殲滅成功しました。ですが、突然の停電により指揮系統は壊滅」

リョウジ「チルドレン各員は個々の判断で使徒殲滅に成功、ですが初号機パイロットが負傷、初号機大破、弐号機と零号機を小破させてしまいました」

リョウジ「申し訳ありません」

ゲンドウ『いや、ハプニングの中良くやってくれた。むしろこの程度なら幸運と呼べる』

ゲンドウ『パイロット諸君に、良くやったと伝えておいてくれ』

リョウジ「はい、わかりました」

ゲンドウ『あと、私が帰り次第君は赤木博士を連れて私の司令室まで来たまえ』

リョウジ「...了解しました」

〜ネルフ本部・総司令室〜

ゲンドウ「...やはり人為的なものか」

リツコ「はい、自然に起こるとは考え憎い事態であります」

リツコ「現在MAGIのバンクを洗うと共に、当時の署員の動向を調査しています」

ゲンドウ「続けたまえ。何か情報が取れ次第教えろ」

リツコ「はい..,」

リョウジ「..,」

リョウジ(葛城...これ以上は危ないぞ)

〜?????〜

?『.....』コポコポ...

?「目覚めたまえ」

?『...やっとかい?一体いくら待たせるつもりだい』

?「ネルフがエヴァを三体壊した、お前を送り込む理由ができた」

?「行きたまえ、そして契約を成すのだ」

?『...わかったよ、いよいよだね』

?(...さて、どう動くかな)


〜ネルフ本部・総司令室〜

冬月「先の仕組まれた停電...そのせいで初号機が大破、零号機と弐号機は小破した」

冬月「今使徒にこられてはマズイぞ碇」

ゲンドウ「...その件で委員会がこちらに新たなエヴァを送ってきた」

ゲンドウ「アメリカで製造していた参号機がこちらに配属されることになった」

冬月「あれだけ製造権を主張していたアメリカが手放したのか?」

ゲンドウ「おそらく委員会が買い叩いたのだろう」

ゲンドウ「それと問題はこちらにある、ゼーレが直接第二支部の四号機とそのチルドレンを送り込んできた」

冬月「裏があるな...停電騒動にはその狙いもあったか...?」

ゲンドウ「ああ、恐らくな」

冬月「参号機のパイロットは?」

ゲンドウ「その件は赤木博士に一任している」

〜ネルフ本部・病室〜

シンジ「はっ!?」

シンジ「...」

シンジ「もう何回目の病室かな...」

シンジ(もう二度とあんな作戦はごめんだよ...)

シンジ「...お腹減ったな」

シンジ「着替えて何か食べに行こう」ガチャッ

?「おっと」

シンジ「あっ、ごめんなさい!」

?「いや、部屋の前にいた僕が悪いのさ」

?「あ、よく見ると君が碇君?」

シンジ「そうだけど、なんで僕のこと?」

?「君は有名だからね、サード・チルドレンだろう?」

シンジ「そんな有名だなんて...君はなんでここに?」

?「ああ、今日付けでここに配属になったフィフス・チルドレンさ」

シンジ「フィフス...ってことは」

カヲル「そう、僕は渚カヲル。エヴァ四号機専属パイロットさ」

〜ネルフ本部・リツコ研究室〜

リョウジ「新たなエヴァの配属...か、チルドレンはどうするんだ?」

リツコ「その件だけど、四人目と五人めを使うわ」

リョウジ「ええ、四号機パイロットはすでに委員会から到着済みよ」

リョウジ「直接?マルドゥックは通してないのか?」

リツコ「ええ、委員会ご指名よ」

リョウジ「...四人目は?」

リツコ「この子よ」

リョウジ「はぁ...」

リョウジ「よりによってこの子か...」

リョウジ(また子供に無茶をさせるのか...)

シンジ「僕が寝てる間にそんなことになってたんだ」

カヲル「ああ、今使徒にこられたら困るからね。急いで配属されたのさ」

シンジ「初号機ボロボロにしちゃったからなぁ...ん、渚君がフィフスってことは四人目もいるの?」

カヲル「カヲルでいいよ。僕がフィフスだからね、四人目も決まってるさ」

シンジ「ふぅん...誰なんだろ...」

カヲル「...そうだ、君第一中学だろ?僕そこに転校なんだ」

カヲル「よければ連れてってくれない?」

シンジ「ああ、僕も...ってこんな時間!」

シンジ「急がないと遅刻だ!行こうカヲル君!」

カヲル「やれやれ、食後のダッシュは辛いね」

〜第一中学校・2-A〜

カヲル「渚カヲルです、よろしくね」

女子生徒たち「「きゃあああああ!!」」

トウジ「...」

ケンスケ「...」

トウジ「世の中不公平や」

女子A「ねえねえ!渚君てなんで今さらうちに来たの?」

カヲル「ああ、ちょっと家の都合でね」

女子B「なんの教科がすき?」

カヲル「国語かな」

女子生徒たち「「きゃああああ〜!」」

トウジ「初日からエライ人気やな〜」

ヒカリ「...」

トウジ「ん?委員長はあいつんとこ行かへんのか?」

ヒカリ「わ、私は鈴原の方がかっこいいと思うから...」

トウジ「えっ...?」

ヒカリ「あ!!な、なんでもないの!!」

トウジ「お、おう...」



アスカ「ちょっとシンジ!あんだがつれてきたあいつ誰なのよ!!」

シンジ「あ、カヲル君?フィフスだって。四号機のパイロット」

アスカ「ええええ!?あいつが!?」

ケンスケ「またしてもエヴァパイロット!?」

トウジ「ん?フィフスやって?フォースって誰なんや?」

シンジ「決まってるらしいよ、誰かはわからないけど。参号機に乗るんだって」

ケンスケ「どうせ俺は選ばれないんだろうな...」

放送『2-Aの鈴原君、鈴原君、至急校長室まで来てください』

ヒカリ「鈴原、またなにかしたの?」

トウジ「ん...身に覚えないんやけど、ちょい行ってくるわ」


〜第三新東京市・ミサト自宅〜

アスカ「だだいま〜」ガチャッ

カヲル「おかえり」

アスカ「...」

カヲル「?」

アスカ「な、なんであんたがここにいんのよ!!」

ミサト「あ?アスカ帰ったぁ〜?」

アスカ「どういうことよミサト!!」

ミサト「彼も今日からここに住むのよ!アスカだけ引き取るわけには行かないでしょ?」

カヲル「よろしくね、アスカ」

アスカ「っ〜!名前で呼ばないでよっ!!」ピシャッ

カヲル「ありゃ、部屋に篭ってしまった」

ミサト「...いよいよあなたの出番なのね」

カヲル「...先の作戦、ご苦労様です」

カヲル「僕と参、四号機は無事に配属です」

ミサト「そう、良かったわね。私は私で仕事をできたわ」

カヲル「...アスカってどんな子なんです?」

ミサト「ん〜なかなか気難しいわよ?」

カヲル「そう、ですか」

ほんと遅筆で申し訳ない。

〜?????〜

カヲル「無事ネルフに配属、サードは監視してるしファーストは何も知らないようだよ」

カヲル「あと葛城さんとも接触した。仕事はちゃんとこなしてるみたいよ」

?『うむ、ならばよい』

カヲル「けど、セカンドの扱いは難しいね。長らく引きこもってた僕には厳しいよ」

?『物事を荒立ててはいかん、マニュアル通りに敵は作らぬ人間でいたまえ』

カヲル「はいはい」



〜第三新東京市・ミサト宅〜

アスカ「ちょっとミサト!あの色白キモヒョロ男は!?」

ミサト「あら、先出てったわよ」

アスカ「あいつがこっからの登校の仕方教えろって行ったんじゃない!あーもーむかつく!!」

アスカ「私も行くわ!!」バタン!!

ミサト「...」

ミサト(彼が送り込まれたということは、奴らの残りも少ない)

ミサト(パズルのピースはあと少しね)

ミサト「しっかしあの二人大丈夫かしら...子守してる余裕ないのよね〜」

〜第一中学校・2-A〜

アスカ「あんたっ!なんで先行ってんのよ!てかこれんじゃないの一人で!」

カヲル「あっ、ごめん。急に行くとこできちゃって」

アスカ「そのせいでお昼買えなかったし!今日は購買じゃない!」

カヲル「購買?」

アスカ「学校の中でご飯買うのよ!どうせあんたもお弁当ないんだから一緒に来なさい!」

カヲル「わかった」

シンジ「アスカ、今日は一段とうるさいなぁ」

レイ「アスカは元気なとこがいいのよ、私にはない」

シンジ「そんなことない、レイも元気でいいじゃない」

レイ「そ、そう?」

ケンスケ(転校したい)

ヒカリ「...」

ケンスケ「あれ?そういやトウジは?」

トウジ「...」ガラッ

ヒカリ「すっ、鈴原!遅いじゃない遅刻手前よ?」

トウジ「あ、ああすまへんのう。寝坊してもうたわ」

シンジ「大丈夫?顔色悪いよ?」

トウジ「大丈夫や!心配かけてすまへん」

トウジ「...碇、放課後ちょっと付き合うてくれるか?」

シンジ「おっけー、付き合うよ。レイごめん今日は先帰ってて」

レイ「うん、わかった」

トウジ「一緒に下校とかええのぉ〜ワイもしてみたいわ〜」

レイ「///」

ケンスケ「トウジじゃ無理だよ」

トウジ「そんなんわからへんやろ!?」

カヲル「あはは」

トウジ「色男が笑うやな!余計傷つくわ!」

ヒカリ「...」

アスカ「...」



アスカ「ほら渚!ダッシュよダッシュ!!」

カヲル「そんなに急がねばならないのかい?」

アスカ「売り切れとの勝負よおおお!!」

シンジ「僕たちもお昼にしよっか」

レイ「うん」

トウジ「ワイも購買ダッシュや!!」

ヒカリ「...」

ヒカリ「鈴原って、いっつも購買よね」

シンジ「そうだね」

ヒカリ「碇くんのとこは、リョウジさん?」

シンジ「ううん、三人当番制」

ヒカリ「へー!偉いわね!」

レイ「ヒカリは?」

ヒカリ「わ、私は自分で作ってるの。お姉ちゃんと妹のも」

シンジ「すごいや!三人分なのにそんな手の込んだの!」

ヒカリ「えへへ、照れちゃうな...」

ヒカリ「あの、えっと、それでね!...鈴原にお弁当作ってあげようかなって」

アスカ「あら!もう焼けちゃうわねあいつ!ヒカリの手作りなんて」

ヒカリ「あ、アスカ!?戻るの早くない?」

アスカ「私の脚力はエヴァ並よ?もーはっきりいいなよ〜あいつのこと、好きなんでしょ?」

ヒカリ「う、うん...」

シンジ「やっぱり」

ヒカリ「き、気づいてた?」

レイ「最近様子がおかしいもの」

アスカ「もうバレバレ!そのことでそわそわしてたんだ!」

カヲル「好きってなんだい?」

アスカ「あんたは引っ込んでんのよ」

カヲル「...はい」

ヒカリ「それでね...明日、お弁当作ってあげようと思うんだけど」

アスカ「もうばっちぐーよ!」

レイ「素敵...」

アスカ「じゃあ、こういうのはどう?」ヒソヒソ

ケンスケ(使徒こないかなぁ)

〜第三新東京市・市立病院〜

トウジ「ここや」

シンジ「...妹さん、治りそう?」

トウジ「...ここじゃ無理や。正直」

シンジ「...」

トウジ「シンジ、お前を責めるなんて思って連れてきたんちゃう」

トウジ「どうしても、合うて欲しいんや」

シンジ「...わかった!」

トウジ「...治る見込みが無いことは秘密で頼む。じゃ入るで」ガチャッ

トウジ「おいす!サクラ元気しとったか?」

サクラ「あ!兄ちゃんや!」

トウジ「今日も笑顔が眩しなー!」

サクラ「もう!いい加減ほっぺくっつけるよやめてーや!」

サクラ「そっちの人は?」

トウジ「こいつはな、ワイの親友のシンジや」

トウジ「なんと!あのロボットのパイロットや!!」

シンジ「!」

サクラ「えっ、ほんまに!?」

トウジ「せやで!!」

シンジ「...」

トウジ「ああほんまや!」

シンジ「あ、あの」

サクラ「シンジさん、いつもウチらの街守ってくれてありがとうございます!」

シンジ「...!」

シンジ「...うぐっ、うっ」ポロポロ

トウジ「シンジ...」

サクラ「どうしたんや!?どっか痛いんか?」

サクラ「あっ!兄ちゃんが殴ったとこが痛いんやろ!」

トウジ「あれはもう許してもろた言うたやろー!」

サクラ「ほんまに?」

シンジ「うん...うん!もう大丈夫だよ!」

サクラ「ならよかった!」

トウジ「...サクラ、そろそろお別れや」

サクラ「うん、わかった」

サクラ「シンジさん、またロボットの話聞かせに来てや!」

シンジ「うん、また来るよ」

トウジ「じゃあ、静かにしとるんやで?」

トウジ「あと兄ちゃん、ちょっと忙しくなるからしばらく来これへん」

トウジ「ちゃんと先生の言うこと聞くんやで」

サクラ「うん!シンジさんも兄ちゃんもまたな!」

トウジ「おう!」

シンジ「ばいばい!」バタン

シンジ「...良い妹さんだね」

トウジ「...せやろ?自慢の妹や」

シンジ「うん。そういえばしばらくこれないって言ってたけど、僕代わりに来ようか?」

トウジ「え、ええんか?」

シンジ「大丈夫だよ」

トウジ「...そのことなんやけどな、シンジ」

トウジ「渚って、四号機に乗るんやろ?」

シンジ「うん、そうだよ。それでフィフス・チルドレンって...」

トウジ「参号機のパイロット、フォースにな」

トウジ「ワイ、選ばれたねん」

シンジ「...だからお見舞い、これなくなるんだね」

トウジ「...昨日ネルフの人来てな、妹を本部の病院に移送してくれるいうて引き受けたんや」

トウジ「シンジ、あの時殴ったりしてほんまに、ほんまにすまんかった」

トウジ「さっきのサクラの言葉、聞いたやろ」

トウジ「ワイもお前らみたいに、この街守りたいんや」

トウジ「一緒に、戦ってもええか?」

シンジ「もちろん...もちろんだよトウジ」

トウジ「...ありがとな」

トウジ「明後日、松代で起動実験あんのや」

トウジ「時期にバレることやけど、綾波は変な気回しそうで申し訳ないしケンスケは羨むだろうし、惣流はめんどくさそうやから黙っててくれへんか?」

トウジ「渚は...まあ新入り同士やから言うてもええか」

トウジ「委員長には、自分から言うわ。いつも迷惑かけとるからな」

トウジ「頼むわシンジ」

シンジ「うん、わかったよ」

トウジ「あっ、もうこんな時間や!じいさん怒るから帰るわ!」

トウジ「今日はほんまにありがとな!ほんじゃまた明日!」

シンジ「うん!明日!」

〜リョウジ宅〜

シンジ「...ってことだよね、おっけい」

レイ「うん」

レイ「明日は私が、作ってもいい?」

シンジ「僕が当番だけど、いいの?」

レイ「作りたいの、いい?」

シンジ「わかった、美味しいの期待してるよっ!」

レイ「頑張る...!」


〜ミサト宅〜

アスカ「ってことよ!わかった!?」

カヲル「そう何回も言われなくてもわかるさ」

アスカ「心配だから言ってんのよ...」

カヲル「それで、好きってなに?」

アスカ「またそれ...えっと!とりあえずヒカリは鈴原が好きでレイはバカシンジが好きなのよ!見てりゃわかんないの!?」

カヲル「うーん...中が良いとは違う?」

アスカ「うーんまあその上位版みたいなもんね」

カヲル「へー...アスカは好きってないの?」

アスカ「...あるのかわからない、ただの憧れっていうか背伸びっていうか」

アスカ「ともかく、レイやヒカリのとは違うわ」

カヲル「難しいなぁ、僕は?」

アスカ「...嫌いよ」

カヲル「嫌いねー」

アスカ(どーせ意味わかんないんでしょ。あんたが一番わかんないわよ)

カヲル(嫌いは知ってる)

カヲル(僕はこの世界が、運命が、自分の役目が嫌いなんだ)


〜ヒカリ自宅・キッチン〜

ヒカリ「男の子がよろこぶ!お肉たっぷりスタミナ弁当!これにしよっ!」

ヒカリ「あいつ野菜嫌いそうだから細かくしよっと」

ヒカリ(...食べてくれるかな)


〜第三新東京市・居酒屋〜

ミサト「...級に奢りで飲みに行こうなんて、どういう風の吹き回しかしら」

リョウジ「まあまあそう勘繰らずに、飲めよ」

ミサト「...」ゴクゴク

リョウジ「...んで、あのフィフスは何者なんだ?」

ミサト「やっぱりその話ね...」

ミサト「言っとくけど、詮索するだけ無駄よ。上の直属のチルドレンですもの」

ミサト「なにからなにまで抹消済みよ」

ミサト「私が知りたいくらいだわ...」

リョウジ「なら、フォースがあの子なのも仕組まれたことか?」

ミサト「...707を調べなさい」

リョウジ「707...第一中学校か」

ミサト「いい?昔の義理でここまでは教えてあげるけど、下手に首を突っ込むと死ぬわ」

ミサト「加持くん、気持ちはわかるけどあなたの使命は使徒殲滅でしょ?もう一度アレを繰り返さないとがあなたの仕事のはずよ」

リョウジ「...わかってるさ。けど俺は過去を忘れることができるほど器用じゃない」

リョウジ「知ってんだろ?俺の過去を。弟達をあんな風にした奴らを俺は許すことなどできないんだよ」

ミサト「...勝手にすれば。私は自分のやりたいようにするわ、それで例え死んでもね」

〜第一中学校・2-A〜

アスカ「...」キーンコーン

アスカ「ほら!みんなダッシュよ!」

シンジ「お、おー!」ドタドタ

トウジ「はっ!?あかんワインだけ置いてかれ...」

ヒカリ「鈴原っ!!」

ヒカリ「あの、これ良かったら...食べない?」

トウジ「え、ええんか?」

ヒカリ「うん、鈴原最近元気ないみたいだから...」

ヒカリ「これ食べて元気になってほしいなって」

トウジ「...おおきに、委員長!!」



シンジ「ふーなんとか二人にできたみたいだけど...」

シンジ「あれ?アスカとカヲル君は?」

レイ「...いない?」

シンジ「あれー?途中まで一緒にいたのに。まあいいか、空き教室探して食べよっか」

レイ「うん」

〜屋上〜

カヲル「あれ?シンジ君と綾波さんは置いてきていいの?」

アスカ「...」

カヲル「アスカ?」

アスカ「いいのよ、ヒカリと鈴原、レイとシンジ、セットで置いてきてやったんだから」

アスカ「あー私って超キューピッドじゃない」

アスカ「ほらこれ」

カヲル「?」

アスカ「弁当よ弁当。わたしが作ってやったのよ!ちったぁ喜べ!」

カヲル「あ、ありがとう」

カヲル「アスカって料理できるんだね」

アスカ「できない、これしか作れないのよ」

カヲル「ご飯と...これなに?」

アスカ「あんた肉じゃがも知らないの?」

カヲル「ごめん、僕こう料理らしい料理って食べたこと無いんだ」

カヲル「肉じゃがかぁ...食べてもいい?」

アスカ「そのために作ったんだから、いいのよ」

カヲル「じゃあ早速」

アスカ「ちゃんといただきますって言うのよ」

カヲル「いただきます」モグモグ

カヲル「...今まで食べてきた中で一番美味しいよ」

アスカ「そ、そう?」モグモグ

カヲル「うん、また作って欲しいな」モグモグ

アスカ「別にいいわよ」モグモグ

アスカ「...あんた、肉じゃがもしらないし好きとかわからないんでしょ?」

カヲル「恥ずかしながら」

アスカ「ここに来る前、どこいたのよ」

カヲル「えっと、第二東京?」

アスカ「なんで疑問形?」

カヲル「小っちゃいころからエヴァに乗る訓練とかばっかしてて、全然外とか出してもらえなかった」

カヲル「だから、知らないことばっかり」

アスカ「ふーん...親は?」

カヲル「いないよ」

アスカ「同じね」

カヲル「アスカも?」

アスカ「そう、育ての親はいるけどね」

カヲル「僕もいるよ、じいちゃんだけど」

アスカ「おじいさんに育ててもらったの?」

カヲル「まあ、そんな感じ」

カヲル「でも、こっち来て良かった」

カヲル「僕の知らないとこはこんな風になってたんだね」

アスカ「まあ世界は広いしね」

カヲル「...無くなっちゃったね」

アスカ「そんな顔しなくてもまた作ってやるわよ」

カヲル「ほんとに?じゃあ夜もこれがいいな」

カヲル「あんまり色んなもの食べたこと無い僕でも、葛城さんがくれるご飯は美味しく無いってわかるもん」

アスカ「まあミサトは家事壊滅だし...」

アスカ「つっても二連続は飽きるわね...あ、シンジはカレーにしてたわね」

カヲル「カレー?」

アスカ「そ、カレー」

アスカ「じゃあ帰りにカレー粉買って...」

アスカ(はっ!なんでこいつのためにこんなに親身になんてんのよ!!)

カヲル「アスカ?顔が弐号機と同じ色になってるよ?」

アスカ「う、うっさい!」

〜空き教室〜

シンジ「わー!すごいや!手が込んでるね」

レイ「頑張って作ったの、でもシンジ君より下手」

シンジ「そんなことないよ、僕こんなに綺麗にできないもん」

レイ「ありがとう...///」

シンジ「なんか、二人で食べるのもたまにはいいね」

レイ「そう、ね」

シンジ「これ、同じのリョウジさんにも持たせたの?」

レイ「うん、リョウジさんは少し多め」

シンジ「仕事先でこれ食べれるっていいな〜レイはきっと良いお嫁さんになれるよ」モグモグ

レイ「お嫁さん...」

レイ「誰の...?」

シンジ「誰、って...」

シンジ「レイの好きな人と、じゃない?」

レイ「そ、そう」

シンジ「う、うん?」

レイ「」

シンジ「レイ?大丈夫?顔が弐号機みたいな色になってるよ?」

レイ「な、なってない!零号機色だから!」

〜教室〜

トウジ「...」

ヒカリ「...」

ヒカリ「ど、どう?」

トウジ「あ?ああ、美味い」

ヒカリ「ほんとに?」

トウジ「す、すまへん!ほんまに美味い!!」

トウジ「今まで食った飯の中で一番や!」

ヒカリ「そ、そんなに?」

トウジ「ほんま!ナンバーワンやで!」

ヒカリ「よかった...///」

トウジ「せやけど、なんでワシにだけ?」

ヒカリ「そ、それは!その」

トウジ「その?」

ヒカリ「鈴原がす...」

トウジ「す?」

ヒカリ「...さ、最近元気ないみたいだったから、委員長として気遣ってあげないとって思って!」

トウジ「そ、そうなんか」

トウジ「でも、これからはワイにだけ作って欲しいわ」

ヒカリ「え?それって...」

トウジ「あのな、委員長」

トウジ「ワイ、明日ちょっと用事で学校休まなあかんねん」

トウジ「委員長、ワイの家知っとるか?」

ヒカリ「う、うん一応」

トウジ「無理なお願いなんやけど...明日もどうしても委員長の弁当食いたいんや!」

トウジ「その、朝学校来るついででええから持ってきてくれへんやろか」

ヒカリ「...うん!わかった!」

トウジ「ほんまか?ありがとうな!」

トウジ「あと、戻ってきたら委員長に言いたいことあんねん」

トウジ「聞いて、くれるか?」

ヒカリ「///」コクコク

トウジ「委員長?顔が弐号機みたいな色になっとるで?」

ヒカリ「な!?なってないわよっ!」

〜放課後・校庭〜

シンジ「ケンスケ!そっち行ったよ!」

ケンスケ「ばっちこい!」

トウジ「あー入ってもうたか!」

カヲル「相田くんて意外と運動神経いいんだね」

ケンスケ「ふふ!オタクだからと侮るな!」

シンジ「ふー!疲れた!放課後に残ってバスケなんて初めてだね」

トウジ「渚が来たから二対二でできるようになったからな」

カヲル「鈴原くん、バスケって楽しいね」

トウジ「せやろ!でも渚は的の狙いがまだまだ甘い!」

トウジ「ちょっと投げてみいや?」

カヲル「うん、えいっ!」バイン

カヲル「やっぱり入らないや...」

トウジ「ボールをこうやって持って、脇を締めて、あの四角の真ん中を狙うんや」

カヲル「四角...えいっ!」トスッ

カヲル「入った!」

トウジ「上手いやん!」

ケンスケ「...渚って不思議なやつだよな、あんなにかっこいいのになんか子供みたいっていうか」

シンジ「はは、そうだね」

ケンスケ「...なあ、四号機は渚だけど参号機のパイロットって決まってるのか?」

シンジ「えっ?...えっとわかんないや」

ケンスケ「はぁ、僕にならないかな...」

トウジ「...」

トウジ「なぁ渚」

カヲル「なんだい?」

トウジ「お前、エヴァに乗る訓練とか受けとるか?」

カヲル「うん、まあまあ」

トウジ「シンジにしか言っとらんし、みんなにはまだ秘密にしてほしいんやけど、実はワイがフォースやねん」

カヲル「あ、そうだったんだ!」

トウジ「声がでかいわ!...それで、ワイにその、操作とか教えて欲しいねん」

カヲル「うん、いいよ。鈴原君バスケ教えてくれたし」

トウジ「ほんまか!ありがとな」

トウジ「おーし!お前ら今日はワイがアイス奢ったるで!」

ケンスケ「マジで!?」

シンジ「珍しいね、明日は雪かも」

トウジ「シンジには奢らんぞワレ!」

カヲル「アイス?」

〜2-A〜

ヒカリ「なにしてるのかな?」

アスカ「んーなんかバスケしてるっぽいわよ」

レイ「相田君、意外と上手」

アスカ「ほんと、あいつ意外と動けんのね」

アスカ「...それでっ!どうだったわけ?」

ヒカリ「た、食べてくれた」

ヒカリ「でも、好きって言えなかった」

アスカ「まあそんなに焦らなくてもいいわよ!」

アスカ「...失礼を承知で聞くけど、あの熱血のどこがいいわけ?」

ヒカリ「や、優しい所」

アスカ「」

アスカ「レイは?」

レイ「?」

アスカ「んもう!折角あんたたちも二人にしてやったんじゃない!進展は?」

レイ「そ、その」

レイ「思い出し恥ずかしい...」

アスカ「...これまた失礼を承知で聞くけど、あの天然たらしのどこがいいわけ?」

レイ「や、優しい所」

アスカ「」

ヒカリ「アスカは?渚君とどうなの?」

アスカ「別にどうもこうも!あんなの好きになるわけないでしょ!」

レイ「仲よさそうに見えるわ」

アスカ「世話焼いてやってんのよ!あいつ子供みたいだから!」

ヒカリ「ふーん...」

アスカ「なによ」

ヒカリ「アスカって優しいわよね」

アスカ「ん、んなこたないわよ...」

〜第三新東京市・駄菓子屋〜

トウジ「くぅ〜!運動後のアイスはごっつ美味いわ!」

シンジ「ほんとだね」

ケンスケ「身に染みるなぁ」

カヲル「これはなんて味?」

シンジ「それはソーダだよ」

カヲル「ソーダね、ソーダソーダ」

カヲル「この味好きだなぁ」

カヲル(...好き?)

シンジ「カヲル君はソーダ味好きなんだ」

カヲル「あと肉じゃが味が好き」

トウジ「肉じゃが味?」

ケンスケ「へんてこな味だなぁ」

カヲル「肉じゃが味のアイスってないの?」

シンジ「そ、それは多分どこに行っても無いんじゃないかな?」

カヲル「そうかい...」

トウジ「ん、ワイんちこっちやからここでお別れやな」

ケンスケ「俺もここで帰るよ」

シンジ「そう、じゃあね」

カヲル「ばいばい」

トウジ「じゃあなー」

ケンスケ「ばい」

カヲル「ねえねえシンジ君」

シンジ「?」

カヲル「シンジ君て好きってある?」

シンジ「人?物?」

カヲル「全部」

シンジ「うーん...特にってのは無いけど、好きになりたいのは父さんかな」

カヲル「お父さん、碇司令?」

シンジ「うん」

カヲル「好きじゃ無いの?」

シンジ「うーん、嫌いじゃ無いんだ。でもやっぱりむずかしいんだ」

カヲル「ふーん...」

シンジ「あっ、僕んちここだから。また明日ね」

カヲル「ん、ばいばい」

カヲル「...」

カヲル(楽しいなぁ)

〜リョウジ宅〜

リョウジ「二人とも、明日は出張だから家のことよろしく頼むぞ」

レイ「はい」

シンジ「...」

リョウジ「...シンジ、ちょっと」

レイ「?」

リョウジ「明日のこと、知ってるのか?」

シンジ「はい...トウジから聞きました」

リョウジ「そうか...知ってるのは君だけかい?」

シンジ「僕と、カヲル君だけです」

リョウジ「そうか...すまない、君の友達まで巻き込んで」

シンジ「いえ、大丈夫です。トウジも妹のためにやる気でした」

リョウジ「そうか...明日は頼むぞ」

シンジ「はい」



〜ミサト宅〜

ミサト「アスカ上手になったじゃないの〜」

アスカ「まあね!」

カヲル「これがカレー?」

アスカ「そうよ」

ミサト「ありゃ?アスカ渚君のために〜?」

アスカ「別にそんなんじゃないわよ」

アスカ「あーあ、こんな男じゃなくて加持さんだったらなー!明日シンジんとこ行こうかしら」

ミサト「あら残念、あいつ明日は出張よ」

アスカ「なんの?」

ミサト「参号機の起動実験、松代で」

アスカ「ってことはフォースって決まってんの?」

カヲル「...!!」

カヲル「葛城さん葛城さん!聞いて聞いて!僕今日バスケしてシュートいっぱい決めたんだ!!」

ミサト「...そ、そうよかったわね?」

アスカ「...あんたなんか知ってるのね」

カヲル「...」

カヲル「し ら な い」

アスカ「棒読みじゃない!言いなさいよっ!!」

カヲル「あ、アスカ!僕ね!好きってできた!!」

アスカ「だ、誰よ!?」

カヲル「肉じゃがとソーダ味とカレー」

アスカ「...」

カヲル「...」

アスカ「ほんとにバカね」

〜翌朝〜

ヒカリ「...」ピンポーン

トウジ「はーい」ガチャ

ヒカリ「おはよ...」

トウジ「おう」

ヒカリ「はい、これ」

トウジ「...ほんまに来てくれたんやな」

トウジ「ありがとう」

ヒカリ「ううん、こちらこそ食べてくれてありがとう」

トウジ「...じゃあ、ワイ行くわ」

ヒカリ「うん...」

トウジ「...また明日」

ヒカリ「うん!...また明日!」

〜松代・ネルフ第二実験場〜

トウジ「さあ飯や飯。今日の楽しみはこれ一つやからな」

トウジ「...人形?」

トウジ「マスコット...これワイや」

トウジ「ほんま、手先は器用なんに色々不器用なやっちゃな」

トウジ「いただきます」

トウジ「今日も美味い」モグモグ

トウジ「...時間やな」

トウジ「行くか」

トウジ(ありがとな委員長)

『参号機、起動実験まであと10』

『主電源問題なし』

『左腕固定終了』

『初号機とのデータリンク問題なし』

リツコ「...思ったより順調だわ」

リツコ「これなら即実戦も可能ね」

リョウジ「そうかい」

リツコ「気のない返事ね、これも納入されればあなたのものよ」

リョウジ「...シンジやレイやアスカが危険な目に合っていいってわけじゃないが、また子供を危険な目に合わせることになるのがな」

リツコ「...今更だけど、あなたこの仕事向いてないわよ。優秀なのは認めるけど」

リョウジ「...」

〜第一中学校・2-A〜

アスカ「あーあ、つまんないのー」

カヲル「肉じゃが」

シンジ(...そろそろかな)

レイ「...そういえば、リョウジさんてなんの出張なの?」

アスカ「あれ?あんた聞いてないの?松代に参号機の起動実験だって」

ヒカリ「...」

アスカ「そういえば今日鈴原は?」

ヒカリ「なんか忙しいって...」

アスカ「そう...」

シンジ「...」

アスカ「まさかフォースって...!」プルルルル

『エントリープラグ固定、第一接続開始』

『グラフ正常、パルス送信』

『初期コンタクト問題なし』

リツコ「了解、作業を次へ進めて」

『絶対境界線、突破』

トウジ「...」

トウジ(なんや、変な感じやなぁ...)

トウジ(まあでも、これでワイも戦えるんや)

トウジ(待っときサクラ、委員長。かっこええとこ見せてやるで)

トウジ「...うっ!?」



リツコ「どうしたの!?」

『中枢神経に異常発生!』

リツコ「実験中止!回路切断!!」

『体内に高エネルギー反応!!』

リツコ「...まさか!?」

リョウジ「使徒か!?」

参号機「ガッ...」

トウジ(クソ...なにがどうなってんや...!)

?「グゥオオオオオオオオオ!!」

アスカ「松代で事故!?」

シンジ「!?」ガタッ

レイ「早く行かないと!!」

アスカ「シンジ!!」

アスカ「フォースは鈴原ね...!」

シンジ「...」コクッ

ケンスケ「うそだろ...?」

ヒカリ「鈴原...」

カヲル「...」

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

ゲンドウ「未確認移動物体は?」

青葉「本部へ接近中!」

日向「パターンオレンジ、以前使徒とは確認できず!」

ゲンドウ「...総員第一種戦闘配置!」

ゲンドウ「エヴァ全機発進、だが四号機は待機だ」

マヤ「待機...ですか?」

ゲンドウ「上からの命令だ、四号機の指揮権は依然委員会が所持している」

カヲル『待ってください!数が多い方が有利でしょう!?』

ゲンドウ「命令だ」

カヲル『...』

カヲル(老人どもが...!)

日向『全機緊急配置完了!』

アスカ「ちょっとなんであのアホは待機なのよ!!」

アスカ「それにシンジ!なんでいままで黙ってたのよ!!」

シンジ「トウジが言うなって...!」

レイ「...来るわ!」

青葉『野辺山で目標補足!主モニターに回します!』

参号機『...』

ゲンドウ「緊急停止信号発信、プラグ緊急射出!」

マヤ「ダメです!停止信号、及びプラグ排出コード認識されず!」

ゲンドウ「...パイロットは?」

日向「呼吸心拍ともにありますが、恐らく...」

ゲンドウ「...エヴァンゲリオン参号機は現時刻を持って破棄。目標を第9使徒と識別する」

青葉「しかし!!」

シンジ『父さん!!』

ゲンドウ「シンジ、アレはもう使徒だ。殲滅するしかない」

シンジ『まだ方法はあるはずだよ!僕はトウジを最後まで諦めない!!』

マヤ「シンジ君...」

ゲンドウ「...」



第9使徒「...」

アスカ「そんな...よりによって使徒に乗っ取られるなんて」

シンジ「アスカ!エントリープラグは見える?」

アスカ「...ええ、見える。なんとか接近して...」

第9使徒「...ググ」

アスカ「止まった...?」

第9使徒「...!!」

アスカ「きゃああああっ!!?」

シンジ「アスカ!?」

青葉「弐号機沈黙、目標零号機配置点へ移動!!」

ゲンドウ『レイ、接近戦は避けて目標を足止めしろ』

レイ「...了解」

ゲンドウ『お前はその間に接近しろ』

シンジ「言われなくても!」

シンジ「レイ!トウジが乗ってる!まだ撃つなっ!!」

ゲンドウ『レイ、撃て!』

レイ「...ダメ、できない!」

第9使徒「グアアッ!!」

レイ「あっ!?」

マヤ「零号機左腕に使徒進入!神経節に異常!!」

ゲンドウ「レイっ!」

ゲンドウ「何故戦わん!そいつは使徒だぞ!」

レイ『友達...大事な友達だから...!』

ゲンドウ「...零号機左腕を切断だ」

マヤ「しかし、神経接続を解除しないと!」

ゲンドウ「やれ!切断しろ!!」

マヤ「.....」

レイ「きゃあああああっ!!」

シンジ「レイっ!!」

マヤ「パイロット負傷...!」

シンジ『父さん!!なんで神経が繋がったまま!?』

ゲンドウ「お前がグズグズしているからだ、足止めするためにはそれしかなかった」

シンジ『...!』

ゲンドウ「やれ!シンジ!そいつは敵だ!!」

シンジ「トウジ!生きてるなら返事しろ!!トウジっ!!」

第9使徒「...」

シンジ「トウジいいいいいいっ!!」

第9使徒「...!!」

シンジ「がっ!?」

マヤ「生命維持に支障発生!」

冬月「いかん!シンクロ率を60%にカットしろ!」

ゲンドウ「待て!シンジ!何故戦わない!お前がやられてしまうぞ!!」

シンジ『トウジがっ...トウジが乗ってるんだ...!』

ゲンドウ「シンジ!大人になれ!奴を倒さねば我々に未来はないんだぞ!!」

シンジ『父さんには...わからないっ!友達はかけ替えないものなんだよ...!』

シンジ『僕はもう誰も見捨てたくない!全員...助ける!!』

ゲンドウ「...」

シンジ「トウジっ...!痛かったらごめんっ!!」

第9使徒「...!」

シンジ「おおおおおおおっ!!!」

トウジ『...シンジか?』

シンジ「トウジ!?トウジ!!」

トウジ『シンジ...ワイはもうダメや』

シンジ「そんなのダメだ!助ける!!」

トウジ『シンジ...!サクラと約束したやないか!...街を守ってくれるんやろ?』

シンジ「一緒に!一緒に守るって言っただろ!?」

トウジ『サクラをよろしく頼むわ...委員長に言っといてくれへんか?弁当美味かったって...』

シンジ「トウジっ!!」

トウジ『...』

シンジ「トウジ!しっかりしろ!そのくらい自分で言えよっ!!」

第9使徒「...グゥオオオオオオ!!」

シンジ「おおおおおっ!!」

マヤ「初号機、活動限界まで残り50秒!!」

ゲンドウ「...」

ゲンドウ「初号機のシンクロを全面カットしろ」

マヤ「カット...?ですか?」

ゲンドウ「ダミーに切換えろ」

マヤ「...!」

マヤ「シンジ君!早く鈴原君を助けて!!」

ゲンドウ「伊吹二尉!!」

マヤ「このままじゃ初号機は自立制御になって参号機を処理してしまうわ!それでいいの!?」

日向「...そうだ!シンジ君!このままなにもしなかったら彼も世界も失われてしまうぞ!?」

青葉「...シンジ君ならやれるぞ!使徒なんかに友達を持ってかれるんじゃない!!」

ネルフスタッフ達
「そうだ!頑張れ!!」
「負けるな!」
「頑張れー!シンジ君!!」
「やり切るんだ!!」

ゲンドウ「...」

マヤ「残り30よ!!」

シンジ「トウジイイイイイイッ!!」

第9使徒「ググッ...」

シンジ「早くっ!早く倒れてくれっ!!」

第9使徒「...グオオオオオオオッ!!」

シンジ「ああっ!?」

マヤ「残り10!」

ゲンドウ「切換えろ!このままではシンジが死ぬぞ!!」

マヤ「...ごめんシンジ君」カチッ

シンジ「活動限界!?」ガチャン

シンジ「違う...これは!!」

シンジ「父さんっ!!やったな!!」

シンジ「トウジっ!逃げろ!トウジ!!」バンバン

マヤ「...全神経ダミー直結」

青葉「感情組織の32.8が不鮮明、モニターできません...」

日向「...」

ゲンドウ「システム解放、攻撃開始」

初号機「...!」

シンジ「やめろおおおおおお!!」

初号機「グオッ!!」

第9使徒「!!」グチャッ

シンジ「ああっ!!」

カヲル「間に合ってくれ...!」

日向『四号機!?』

青葉『か、勝手に発進しています!』

カヲル「参号機は腕が潰れてる...!まずは初号機!」

シンジ「か、カヲル君...?」

カヲル「ごめんね、まずは君を止めさせてもらうよっ!」

四号機「ウオオオオッ!!」

初号機「ガッ...」

カヲル「伊吹二尉!今だ!ダミーを切って!」

マヤ『わ、わかったわ!』

第9使徒「ウググッ...」

カヲル「...鈴原くん!」

カヲル「神経接続が切れてることを願うよ...!」ゴキッ

第9使徒「」

シンジ「カヲル君...トウジは...トウジは...?」

カヲル「僕が止めた、無事かは...わからない」

シンジ「...」

シンジ(父さん...!)

マヤ「目標沈黙...パイロットは...?」

日向「...生存!パイロット心拍確認!」

青葉「よっしゃー!!」

マヤ「シンジ君!渚君!鈴原君は生きてるわ!!」

シンジ『ああ...よかったっ...!』

カヲル『...』

ゲンドウ「...伊吹二尉、今から総司令室へ来たまえ。命令無視、勝手な行動、これらは見過ごせるものではない」

マヤ「...はい」

日向「司令...!」

青葉「マヤちゃん...」

マヤ「いいの、私がやったことだから」

ネルフスタッフ達「.....」

冬月「...」

めちゃくちゃ間が開いてしまった...続き書きます。

〜ネルフ本部・緊急医務室〜

シンジ「トウジっ!!」ガチャッ

トウジ「...」

シンジ「トウジ...?」

トウジ「...zzz」

カヲル「眠ってるだけだよ、麻酔でね」

シンジ「良かった...ほんとに良かった...」

カヲル「...ごめんね、僕がもっと早く出ていれば...」

カヲル「僕の四号機の権利はちょっと複雑で、待機だったんだ。鈴原君が心配で出てきちゃったけどね」

シンジ「ううん...カヲル君のせいじゃない、僕が、僕がもっと早く行動に移していれば!」

カヲル「今自分を責めても仕方ない、鈴原君は助かったんだよ。それでいいと思う」

シンジ「...うん」

ネルフ職員「碇シンジ君、だね?」

シンジ「...はい」

ネルフ職員「司令が君をお呼びだ、至急総司令室へ」

シンジ「...」

ネルフ職員「それと、君はこっちだ」

カヲル「...老人達か」

〜松代・第二実験場〜

リョウジ「ん...はっ!?」

ミサト「加持...」

リョウジ「俺は...生きてるのか?」

ミサト「そうよ、リツコも無事。あんたより軽傷よ」

リョウジ「そうか...参号機は...!?」

ミサト「使徒として処理された、シンジ君と渚君にね」

リョウジ「鈴原君は...!?」

ミサト「無事よ、今は本部病院に移送されてるわ」

リョウジ「そうか...良かった...!」

ミサト「...」ニコッ

〜総司令室〜

ゲンドウ「...シンジ」

シンジ「...」

ゲンドウ「なぜ、私の命令を聞かなかった?あれは命令違反だ」

シンジ「...父さん、トウジは、参号機パイロットは僕の親友なんだ」

シンジ「だから、だからどうしてもできなかった。助けたかったんだ」

ゲンドウ「...命令違反として短期間の独房行きとする。行け、シンジ」

シンジ「...」

ゲンドウ「...お前に死なれたくなかった、ユイに顔向けできない」

ゲンドウ「酷いことをしたのは承知の上だ、だが我々の使命は使徒を殲滅することだ」

シンジ「...」ガチャッ

ゲンドウ「...」

ゲンドウ(ユイ...俺はどうしたらよかった)

〜?????〜

?『どういうつもりだ、お前の命令は待機だったはずだぞ』

カヲル「...鈴原君を助けたかったんだよ」

?『今四号機を失うのは得策ではない、勝手な行動は慎め』

カヲル「...」プクーッ

?『...まあ今回は参号機を失わずに済んだことで大目にみる、だが次は無いぞ』

カヲル「...四号機なんかより絶対鈴原君のが価値あるよ」

〜ネルフ本部・独房〜

ネルフ職員「では、君はしばらくここで生活することになる。食事の時間にまた来る」ガチャン

シンジ「...」

シンジ(暗い...)

シンジ(トウジ...大丈夫かな...)

シンジ(アスカやリョウジさん、リツコさんは...)

シンジ(レイ...)

シンジ「父さん...」

シンジ「分かり合えたと思ったのに...」

シンジ「...くそっ!!」

シンジ「やっぱり僕は無力だ...!」

マヤ「...隣で音聞こえた」

マヤ「誰だろう...」

マヤ(...暗くて嫌だな)

マヤ(あんなことしちゃったけど、後悔してない)

マヤ(だって仕方ないとは言えおかしいわ、まだ子供なのにあんな...)

マヤ(...なんで子供しか乗れないの...?使徒って、エヴァってなんなの...?)

〜第三新東京市・加持宅〜

リョウジ「ただいま...っと」ガチャリ

レイ「リョウジさん...!」

リョウジ「おう」

レイ「良かった...!」

リョウジ「心配かけてすまなかったな、軽く腕骨折したらだけですんだよ」

リョウジ「...レイも包帯だな」

レイ「軽く、脱臼しただけです」

リョウジ「そうか、無理するなよ」

レイ「...あの、シンジ君は」

リョウジ「...命令違反で独房行きだ」

レイ「...助けられたのに、違反なの?」

リョウジ「...俺たちの務めは使徒を倒すことだからな」

リョウジ「だが、俺はシンジ君のしたことは正解だと思ってるよ」

リョウジ「例え使徒が倒せなくても、友達を助けようとする方が人間として正解さ」

リョウジ「レイが気にすることじゃない、二人で美味い飯食って、早いとこ骨くっつけような!」

リョウジ「っと、片手だと料理し辛いな...」

レイ「二人で、片手づつ...とか」

リョウジ「...それだ!」

〜第三新東京市・葛城宅〜

カヲル「ただいま」ガチャリ

アスカ「...」

アスカ「なんであんただけ待機だったのよ」

カヲル「ごめん...シンジ君にも話したけど、四号機の権利はネルフじゃないとこが持ってて」

カヲル「でも、飛び出した。鈴原君が助けたかったから」

カヲル「ダメじゃないよね...?」

アスカ「...合ってるわよ」

アスカ「私もう寝るから、おやすみ」

カヲル「えっ...」

アスカ「...」

アスカ(ヒカリに鈴原のこと、どう言えばいいのよ...)

カヲル(ご飯...ないよ...)

〜第一中学校・2-A〜

アスカ「...」

カヲル「...」

アスカ「ヒカリ、学校来ないわね」

カヲル「鈴原君とこつきっきりだね」

アスカ「そりゃショックよね」

カヲル「確かに、アスカがいなくなったらやだなぁ」

アスカ「なんでよ」

カヲル「ご飯」

アスカ「...あんたほんとにバカね」

カヲル「...嘘だよ、僕がいつもこうだと思ってるだろ」

カヲル「世間知らずの僕だって、仲良い人が傷ついたら嫌だよ」

カヲル「間違ってる?」

アスカ「...あんたいちいち私に聞くのやめないよ。あんたが正しいと思ってるならそれが正しいのよ」

カヲル「...ふーん」

カヲル(...僕には自由なんてないのに)

ケンスケ「...」

ケンスケ(トウジはパイロットに選ばれてた)

ケンスケ(シンジも委員長も学校にこない)

ケンスケ(...そこにいる綾波も、あっちで話してる渚も惣流もエヴァに乗ってる)

ケンスケ「...綾波、その怪我大丈夫か?」

レイ「ええ、動かさなければ痛くない」

ケンスケ「それって、こないだの事故でか?」

レイ「そうだけど、なに?」

ケンスケ「いや、お大事にな」

レイ「ありがとう」

ケンスケ(そうだ、エヴァに乗るってのは危険なことで、シンジ達はその恐怖に耐えながら戦ってるんだ)

ケンスケ(トウジだって死にかけて...なのに俺は嫉妬したりして...)

ケンスケ(パイロットに選ばれない方が幸せなんだ)

ケンスケ(それでも...それでも俺はっ...!)

〜ネルフ本部・第一病棟〜

ヒカリ「...」

ヒカリ(鈴原、起きない...)

ヒカリ(絶対安静って言われてるけど、もう何日も眠ったまま)

ヒカリ(葛城さんが1日に少しだけ面会できるようにしてくれたけど...)

ヒカリ「またくるね、鈴原」ガチャ

トウジ「...」

サクラ「あっ!ヒカリさん、お兄ちゃんどうでした?」

ヒカリ「うん、まだ薬で寝てるみたい」

サクラ「そうですか...早く起きんかな...」

ヒカリ「ネルフの病院はすごいんだから!きっともうすぐ目が覚めるわよ」

サクラ「...うん!」

〜ネルフ本部・独房〜

シンジ(...もう何日目だろう)

シンジ(でもこんな時だからこそ、いろんなこと考えられるな...)

シンジ(僕は、僕はエヴァに乗らないほうがいいのかもしれない)

シンジ(アスカやレイみたいな強さが、僕にはない)

シンジ(僕は大事な時に正しい選択ができない、トウジだって、最初からちゃんと戦っていれば使徒を倒してトウジを傷つけないことだってできたかもしれない)

シンジ(そんなのは、優しさじゃないんだよな...)

シンジ(...ダメだ、気持ちを強く持つんだ)

シンジ(もう繰り返さない、後悔はしたくないんだ)

シンジ「...強くなるんだ、僕は」

シンジ(僕はもう逃げない、僕の手でみんなを助けるんだ)

シンジ「父さん...!」ビーッ!ビーッ!

シンジ「!?」

『現在、未確認物体接近中、繰り返す!現在...』

シンジ「...使徒だ」

冬月「目標は?」

青葉「現在侵攻中、駒ケ岳防衛戦突破!」

第10使徒「...!」ピキーン!

日向「18もある装甲板を一撃で突破!?なんてやつだ!」

リョウジ「地上迎撃は間に合わない!弐号機をジオフロント内、四号機を本部直援に回せ!」

リョウジ「アスカは目標が入った瞬間を狙い撃ち、渚君は援護だ!」

リョウジ「零号機は?」

リツコ「左腕の再生がまだよ」

リョウジ「レイも万全じゃないか...A.T.フィールド中和地点で待機させろ」

リョウジ「指令、緊急事態です。シンジを独房から出してください」

ゲンドウ「...初号機はダミーで起動だ」

リョウジ「...!?なぜですか!」

ゲンドウ「サードは今回の戦闘には出さない、赤木博士、ダミーの準備だ」

リツコ「...はい」

リツコ(やり方が極端なのよ、あなたは)

〜ネルフ本部・独房〜

シンジ「くそっ!なんで出してくれないんだ!?」

シンジ「僕じゃないと初号機が動かない!...まさかダミープラグで動かす気...!?」

シンジ「誰かっ!」ドゴーン!!

シンジ「うわっ!...音が近い、本部に攻撃が当たった!?」

シンジ「誰かっ!もう誰も傷つけさせないんだっ!!」

?「ドアから離れなさい」

シンジ「え?」

?「早く!!」

シンジ「は、はい!」バンッ!!

ミサト「ごっめーん!おまたせ!」

シンジ「葛城さん!!」

ミサト「さっきの攻撃で道が塞がれちゃってね!遅れちゃったのよ」

シンジ「あ、ありがとうございます!」

ミサト「いいのよ、さ!早いとこケイジに...」

マヤ「だ、誰かいるんですか!?」

ミサト「...あら?」



マヤ「あ、ありがとうございます葛城さん!」

ミサト「まさかマヤちゃんまでここに入れられてたなんて、指令も趣味が悪いわね」

シンジ「あの、やっぱり父さんが僕を出さなかったんですか...?」

ミサト「そうよ、今初号機はダミーで起動しようとしてるはずよ」

シンジ「ダメだ!あれでまた人が傷ついたら...!!」

ミサト「そのためにも、急ぎましょう」

〜???〜

トウジ(...ん?なんやここ...?)

トウジ(ワイは...死んだんか?)

トウジ(シンジ...?なんでそんな辛そうな顔しとるんや?)

トウジ(惣流...綾波...渚...?)

トウジ(ケンスケ、なんちゅう顔しとんのや)

トウジ(...サクラは、サクラはどうなった...?)

トウジ(...委員長)

第10使徒「...!」ズドーン!!

日向『目標ジオフロント内部に侵入!』

カヲル「来たっ!」

アスカ「おいでなすったわね!」

アスカ「カヲルっ!あたし一人で充分だからあんたは遠くから眺めてなさい!」

カヲル「はいはい、援護するよ」

アスカ(シンジは独房レイは怪我、鈴原はもちろん無理...)

アスカ(私とあいつがやられたら終わり...)

アスカ(私が守るのよ...!大丈夫アスカ、絶対やれるわ)

アスカ「私があいつを引きつける!あんたは射撃よ!」

カヲル「了解!」

〜ネルフ本部・通路〜

ミサト「私が来た道は運悪くさっきの攻撃で瓦礫の中。急ぐわよ」

シンジ「はい」

マヤ「は、はい」

マヤ「...あの葛城さん、使徒ってなんなんでしょうか...」

ミサト「...さあね、ここを攻めてくるってことは何か理由があるんでしょうけど」

マヤ「...私、前の戦闘で思ったんです。なんで使徒が、あんなのが攻めてきて」

マヤ「しかもなんで、シンジ君達みたいな子達が苦しい思いして戦ってるのかって...」

シンジ「マヤさん...」

ミサト「あなたは優しいのね」

ミサト「...私はね、セカンドインパクトの時にシンジ君達と同じくらいの歳だったわ」

ミサト「私はあの惨劇で、目の前で父を失ったの」

ミサト「私だけじゃない、数えきれないほどの人が死んだわ」

シンジ「セカンドインパクト...」

カヲル「くそっ!あいつめちゃくちゃ硬いよ!?」

アスカ「A.T.フィールドはエヴァ2体で中和してるのよ!?なのになんで!」

第10使徒「...」パタパタパタ...

アスカ(なに...?腕が伸びてる?)

第10使徒「...!」シュバッ!

アスカ「きゃああああああっ!!」

カヲル「アスカっ!!」

カヲル「こいつっ!!」

カヲル「アスカ!?アスカっ!!」

アスカ「...」

カヲル「くそっ!アスカのプラグ出して!早く!!」

日向『弐号機プラグ強制射出!』

カヲル「回収早く!!」

第10使徒「...!」シュバッ!

カヲル「ああっ!!」

リョウジ『渚君!!」

青葉『四号機、左腕切断!』

日向『弐号機プラグ回収完了!』

リョウジ『渚君!君も一旦引くんだ!!』

カヲル「ダメ!僕が引いたらヤバイんだろ!!」

リョウジ『だが!このままじゃ君が...』

カヲル「いいから早く初号機を!!」

リョウジ『...わかった!初号機は!?』

日向『探査針打ち込み完了!コンタクト』

リツコ『...パルス消失!ダミー起動せず!!』

日向『だ、ダメです!起動しません!』

リョウジ『そんな...!』

第10使徒「!」キュピン!!

カヲル『ああああああっ!!』

日向「四号機胸部装甲融解!パイロット生命反応微弱!!」

カヲル『...』

リョウジ「...四号機プラグ強制排出!回収急げ!」

リョウジ「...どうする!?」

ゲンドウ「...冬月、少し頼む」

第10使徒「!」キュピン!!

日向「最終装甲板融解!!」

リョウジ「まずい!メインシャフトまで捲られた!!」

零号機『...』ガコン

リョウジ「レイ!?」

リツコ「あれは...爆弾!?」

リョウジ「まさか...!レイやめろ!戻れっ!!」

レイ『...っ!』

第10使徒「!!」ズドオオオオオオ!!

リョウジ「レイっ!!!」

日向「...零号機沈黙、パイロット生死不明!」

リョウジ「...熱が引き次第回収班急げ!」

リョウジ(初号機...急いでくれ...!)

日向『ダミー拒絶!反応ありません!』

ゲンドウ「続けろ、もう一度108からやり直せ!』

ゲンドウ(何故だ、何故ダミーを拒絶する...!)

ゲンドウ「ダミーを...俺を拒絶するのだ!」

ゲンドウ「...ユイ」

ゲンドウ「俺は、使途を殲滅しなければならない」

ゲンドウ「だが、それでシンジを、お前との生きた証を失いたくないんだ」

ゲンドウ「俺はお前を取り戻したかった、そのためにネルフ総司令になり、ここまで来た」

ゲンドウ「...俺は不器用だ、シンジに何かすれば、逆に傷つけてしまうかもしれないと思っていた」

ゲンドウ「だが俺の前に現れたシンジは、強かった。俺などよりもずっと優しく、強い人間だったのだ」




ミサト「私はあの惨劇を起こした人間を、許すつもりはないわ」

シンジ「...授業だと大質量隕石の落下って」

ミサト「それは嘘よ。私はね、その真相を探るために、父の、死んでいったすべての人のためにネルフに入ったの」

ミサト「...優しいあなたなら、これを託してもいいかも知れない」

マヤ「これは?」

ミサト「私の血と涙の結晶の半分よ、これを貴方に預けるわ」

ミサト「貴方が戦う覚悟があれば、それを開きなさい。真実に近づけるわ」

ミサト「貴方を信用してるから渡す、もし怖くなったらあいつに、加持に渡しなさい」

マヤ「...わかりました!」

ミサト「あとシンジ君、これを加持に渡してほしいの」

シンジ「わ、わかりました」

ミサト「あいつをお願いね、シンジ君」

シンジ「は、はい?」

ミサト「さ、そこを右に真っ直ぐでケイジ、そこを左で発令所に戻れるわ」

ミサト「今の話は、ここだけの話にしてね。二人とも行ってらっしゃい」

シンジ「あ、ありがとうございました!」

マヤ「私、頑張ってみます...!」

ミサト「...ありがとう」

〜ネルフ本部・初号機ケイジ〜

ゲンドウ「...ユイ、私からシンジまで奪わないでくれ...!」

「大丈夫、あなたの言う通りあの子はと
ても強いわ」

ゲンドウ「...ユイ?」

「私がいつもついてる、だから安心して
いて」

ゲンドウ「...」

シンジ「父さんっ!!」

ゲンドウ「シンジ...なぜ...!?」

シンジ「父さん、僕を初号機に乗せて下さい!!」

ゲンドウ「...」

シンジ「もう、誰かを失うのは絶対に嫌なんだ!だからっ!」

ゲンドウ「...必ず、戻ってくるんだぞ」

シンジ「...」コクリ




ゲンドウ「ユイ、確かにシンジは大丈夫だな」

〜ネルフ本部・第一発令所〜

リョウジ「目標は!?」

青葉「現在メインシャフトに侵入し、セントラルドグマへ降下中!!」

リョウジ「まずい...!ここへ来るぞ!!総員退避だ!急げ!!!」

マヤ「大丈夫、シンジ君が来てくれるはずです!」

青葉「マヤちゃん!?なんでここに!」

リョウジ「シンジ君が...!?」

第10使徒「...」ドガアァアアア

リツコ「きゃあっ!?」

第10使徒「...」

リョウジ「...くっ!」

シンジ「あああああああっ!!」

第10使徒「!?」ドゴッ!!

リョウジ「初号機...シンジ君!!」







〜ネルフ本部・病棟〜

ヒカリ「ど、どうしよう...」

サクラ「兄ちゃん...」

ヒカリ(警報が鳴ったからサクラちゃんと鈴原ひっぱってきたけど...瓦礫で本部の方に行けない...)

トウジ「...」

ヒカリ「鈴原...私どうしたらいいの...」

シンジ「うおおおおおお!!」

第10使徒「!!」キュイン!

シンジ「があっ!!」

シンジ「左腕がっ...!」

ゲンドウ(シンジ...!)

シンジ「うあああああっ!!」ドガガガガ!

シンジ「マヤさんっ!5番のリニア上げてっ!!」

マヤ「わかった!!」

シンジ「...本部から遠ざけられた!!」

シンジ「うおおおおおおっ!!」ドゴッ!ドゴッ!

第10使徒「...!」

シンジ「お前らっ!なんでお前らはっ!!僕らの大事なものをっ!!!」

シンジ「いつもいつも!一体なんなんだよ!!」

シンジ「僕は!僕がみんなを!!この街を守るんだよっ!!!」

シンジ「いい加減くだばれ...」ピーッ

シンジ「...!」

マヤ「初号機...活動限界なの...?」

日向「そんな...」

青葉「頼りはもう初号機だけじゃないか...!」

第10使徒「...!」

リョウジ「シンジっ!!」








〜?????〜

「トウジ」

トウジ「...?」

「トウジ」

トウジ「誰や...?」

「サクラを、お願いね」

トウジ「...母ちゃん?」

『兄ちゃん...』『鈴原...!』

トウジ「サクラ...委員長」

トウジ「ワイはこんなとこでなにやっとんのや」

トウジ「この街を守るんやって、サクラと、シンジと約束したやんか」

トウジ「ワイかて一人前の男や」

トウジ「だから、力貸してぇな」

トウジ「...母ちゃん」

ヒカリ「鈴原...鈴原起きてよ...!」

サクラ「兄ちゃん!!」

トウジ「...なんやうっさいわい」

ヒカリ「鈴原...?」

トウジ「なに泣き目になっとんのや、ぶっさいくやのぉ」

ヒカリ「な、なによ!あんたなんかさっきまで死んだみたいに寝てたくせに!」

ヒカリ「寝てた...死んだみたいに...」

ヒカリ「鈴原ぁ...」

トウジ「泣くなや、ワイは生きとる。確かに生きとるんや」

トウジ「もう心配あらへん」ポンポン

ヒカリ「...うん」

サクラ「兄ちゃん...」

トウジ「サクラ...お前治ったんか?」

サクラ「せや!ここの人達ごっつ優しくてすぐ治ったんやで!」

サクラ「だから!またお家で一緒に暮らせるんや!」

トウジ「...そうか!ほんまに、ほんまに良かった!」

ヒカリ「自分だって泣いてるじゃない」

トウジ「うるさいわい!」

トウジ「...さて、ワシは行かなあかん」

ヒカリ「...どこに?まさか!」

トウジ「...親友のピンチやからな」

ヒカリ「ダメよ!また死んじゃうかもしれないのよ!?」

トウジ「その死にかけのワイを助けたのはシンジ達や、ワイだってあいつらを守りたいんや」

トウジ「...大丈夫!ワシは絶対に負けへん!母ちゃんにサクラ頼まれたんや!」

サクラ「母ちゃんに...?母ちゃんにおうたんか?」

トウジ「...さぁ、どやろな。でもそう言われた気がしたんや」

トウジ「サクラ、ワイは今から親友を、この街を助けてくる」

トウジ「だから、委員長とここでおとなしくしとるんやで」

サクラ「...わかった!気いつけてね!」

トウジ「流石ワイの妹や!出来がええのぉ〜」

トウジ「...委員長」

ヒカリ「...?」

トウジ「帰ったら、毎日弁当食わしてな」

ヒカリ「...うん」

トウジ「じゃあまたあとでな、サクラ、ヒカリ」

シンジ「動け!動け動け動けよ!!」

シンジ「今動かなかったら意味がないだろ!!もうダメだ!!嫌なんだよ!!」

シンジ「誰かが傷ついたりするのは!嫌なんだよっ!!」

シンジ「だから!動いてくれよ!!」

第10使徒「!!」キュピーン!!

シンジ「っ!?」




シンジ「...なんともない?」

シンジ「...!」

トウジ「すまへん、遅れてしもたな」

マヤ「エ、エヴァ参号機です!」

リツコ「なんですって!?」

リョウジ「鈴原君...!」

シンジ「トウジ...!?どうして!?」

トウジ「親友の大ピンチやからな、ヒーローは遅れて来るもんやろ?」

日向「た、助かったのか...?」

リツコ「けど、参号機は片腕の修理がまだよ!!」

シンジ「トウジ!片腕だけじゃ無理だよ!!」

トウジ「それでも、やらにゃあかんのや!」

第10使徒「...」

トウジ「おらあっ!!」ドゴッ!!

第10使徒「!!」

トウジ「ワイはなぁ!サクラがいけすかん男を連れてきてなぁ!!」

トウジ「そいつにウチのサクラはやらんって言うまではなぁ!死ぬわけにはいかへんのや!!」

トウジ「お前らかてな!生き残りたいとかなんか目的があんのかもしれんけどなぁ!!」

トウジ「俺だって負けるわけにはいかんのやぁ!!」

トウジ「うおおおおぉおぉらぁ!!」

参号機『ウオオオオオオオッ!!』

第10使徒「!!」

マヤ「参号機、活動限界まで60秒!」

トウジ「だあああありゃあああ!!」

シンジ「...このままじゃトウジが...!」

「いいのね?」

シンジ「...」

「もう、いいのね」

シンジ「前まではね、でも今は怖くない。僕の力は、初号機だけだから」

シンジ「この力で、みんなを守りたいんだ」

シンジ「父さんは心配するかもしれない、でも僕は初号機で、使徒と戦いたいんだ」

シンジ「だから、力を貸して、母さん」

初号機『...!』

マヤ「初号機、再起動!!」

リツコ「暴走!?」

リョウジ「いや、様子が前とは違う...あれはシンジだ」

マヤ「残り30!」

トウジ「ダメや...決定打が与えられへん...!」

第10使徒「...」

シンジ「トウジっ!」

トウジ「シンジ!?動けるんか!」

シンジ「僕があいつを押さえつける!トウジはコアを!!」

トウジ「...おう!」

シンジ「うおおおっ!」

第10使徒「!?」

シンジ「ここだっ!」

シンジ「トウジっ!!」

トウジ「どぉりゃぁあああぁ!!」

初号機『ヴォオオオォォオォ!!』
参号機『ヴォオオオォォオォ!!』

第10使徒「...!!」

第10使徒「.....」

第10使徒「」

マヤ「...参号機活動限界、と同時に使徒殲滅しました!」

青葉「よっしゃああああっ!!」

リョウジ「二人とも...!」

リツコ(目覚めたのね...彼女が)






ミサト「初号機の覚醒と解放、あとはいかり指令がどう出るかね」

ミサト「さてと、ゼーレが黙っちゃいないわねこれは」

ミサト「...いよいよ仕事も大詰めか」




〜ネルフ本部・病棟〜

トウジ「...」ニコッ

ヒカリ「怪我増やしてどうすんのよ...バカ」

トウジ「約束は守った、それでええやんか」

ヒカリ「もう二度と無茶しないでね?」

トウジ「...おう」

サクラ「お姉ちゃん顔赤いけど、どしたん?」

ヒカリ「えへへ...」

アスカ「...」

カヲル「...お、怒ってんの?」

アスカ「...違うわよ」

カヲル「じゃあ睨まないでよ...僕君と違って寝てないとなんだから」

アスカ「...あんたに」

カヲル「はい?」

アスカ「あんたになんか助けられたくなかったのよ!!」

アスカ「バカシンジにも...鈴原にすら...!!」

アスカ「っ!!」バタン

カヲル「...」

カヲル「見舞いにきたなら見舞ってよ...」

リョウジ「...」バタン

レイ「...リョウジさん」

リョウジ「バカっ!!!」

レイ「!」ビクッ

リョウジ「もう二度とあんなことするんじゃない!...怒鳴ってすまない」

リョウジ「お前はもう俺の家族だ...お前自身のことももちろん、お前が死んだら悲しむ人の事を考えるんだ...」

リョウジ「俺は...お前が死んだんじゃないかって...」

レイ「ごめんなさい...」

リョウジ「...いいんだ、自分を犠牲にしてみんなを守る。お前は優しい子だからな」ギュッ

レイ「...」

レイ(暖かい...)

レイ(私は...私の心は私だけのものなの...?)

レイ(私が、私が死んでも、代わりはいるもの...)



シンジ「...父さん」

ゲンドウ「シンジ...」

ゲンドウ「良く、やったな」

シンジ「...うん」

シンジ「父さん、心配してくれて...ありがとう」

シンジ「でも、僕は大丈夫。大丈夫だから」

シンジ「みんなだって、必死に戦ってるんだ、僕もやるよ」

シンジ「僕は、戦うって意味を知ったから」ニコッ

ゲンドウ「!」

ゲンドウ「...そうか」

ゲンドウ(私は...俺はどうしたらいい...)

ゲンドウ(シンジ...ユイ)

〜数週間後・葛城自宅〜

ミサト「...」

ミサト「さて、と」

ミサト(ここまできて、しくじるわけにはいかないわ)

ミサト「アスカ〜渚君〜」

アスカ「...」

カヲル「はーい」

ミサト「私、ちょっち長い出張に行くことになったから、あとお願いね」

カヲル「!...わかりました」

アスカ「...いつ帰るの?」

ミサト「...まだわからないわ」

ミサト「でも、大丈夫よ!お土産たくさん買ってくるからね!」

アスカ「...わかった」

アスカ「早く帰ってきなさいよね、このバカと二人とかいつまで耐えられるかわからないわよ」

ミサト「はいはい、じゃ、行ってくるわね」

ミサト「...アスカ、あなたは良くやってるわよ」

ミサト「エヴァに乗ること以外にも幸せがあること、忘れないでね」バタン

アスカ「ミサト...?」




カヲル「ちょっと待ってください」

ミサト「...渚君」

カヲル「すいません、アスカがいると話せないから」

ミサト「...いいわ」

カヲル「...いよいよ、行かれるんですね?」

ミサト「ええ、今までありがとう。あなたのお陰で色々情報を集められたわ」

カヲル「...僕とあなたの目的は似ているようで違う。本当に良いんですね?」

ミサト「どちらにせよ、アレを起こした連中を許すつもりはないわ」

ミサト「約束の時は近い、あなたがシンジ君達に勝ってしまえば、あなた達の勝ちよ」

ミサト「きっと、あなたには出来ないでしょうけどね。あなたは優しい、心のどこかで迷っているはずよ」

ミサト「あなたはもう人よ」

カヲル「...僕は人じゃないですよ、なりきれません」

ミサト「...人って、捨てたもんじゃないでしょ?」

カヲル「それは...否定しません」

カヲル(...僕や綾波さんのようなモノを生み出し、更に僕らを利用している奴らを許すつもりはない...!)

カヲル「...僕はやり遂げますよ」

ミサト「...そう」

〜ネルフ本部・通路〜

冬月「...」

冬月(全く...碇は何を考えている)

冬月(我らの目的はあれ一つのはずだぞ)

?「...」

リョウジ「副司令が拉致されただと!?」

ネルフ諜報員「今より二時間前、ジオフロント西区第8管区を最後に消息不明です」

リョウジ「うちの所内だろ!お前らはなにをやってた?」

ネルフ諜報員「身内に内報及び先導したものがいます」

ネルフ諜報員「葛城ミサト、この事件の首謀者と思われます」

リョウジ「...それで俺のとこに来たってことか」

リョウジ「昔の女に手を貸す趣味は無いよ、これでいいか?」

ネルフ諜報員「ご理解が早く、助かります。お連れしろ」

リョウジ(あのバカ...!)

〜?????〜

?『久しぶりだな、副司令殿』

冬月「...キール議長、全く手荒な真似をしますな」

キール『非礼を詫びるつもりはない、君と話をするには当然の処置だよ』

冬月「私の都合は御構い無し、ですか?」

キール『議題としている問題が急務なのでね』

ゼーレメンバー『左様』

冬月「委員会ではなく、ゼーレが直接お出ましとはな」

キール『...エヴァ零、弐、四号機の大破。参号機の小破、そして初号機の覚醒』

キール『碇の解任には十分な理由になる』

キール『初号機を特別視する理由は存じておるが、少々目に余るものがある』

キール『絶対的存在を手にして良いのは、本物の神だけだ』

キール『我々に具象化された神は不要なのだよ』

キール『碇の腹に逸物あるのはわかっている、はたして碇は君の信用に足る人物かな?』

冬月「...」

キール『よく考えたまえ、君が碇につくか、我々につくか』

キール『この意味のわからん男でもあるまい』

キール『正しい決断を期待しているよ、冬月先生』

冬月「...」

冬月(冬月先生...か)

冬月(私の決意は変わらんよ)

冬月(そうだろ?碇...!)

〜ネルフ本部・独房〜

リョウジ「...」

リョウジ(暗い所は苦手だ、あの時代を思い出す)

リョウジ(昼でも暗い、ずっと曇った空に、怖い顔の大人達)

リョウジ(...俺たちのいた廃ビルの壁)

リョウジ(弟や、仲間達のこと)

リョウジ(そんなことも、葛城といる時は忘れられていた)

リョウジ(あのまま、もしあの時のまま幸せに浸って入られたなら...俺たちは)

リョウジ「...俺もお前も、誰かを踏み台にして生き延びた」

リョウジ「俺たちは幸せになっちゃいけないんだな」

リョウジ「...それでも俺は」

冬月「...」ピーッ ガチャン

冬月「...?」

冬月「...君か」

ミサト「ご無沙汰です、生きてて安心しました」

冬月「私をさらっておいて助けるとは、理解に苦しむな」

ミサト「あなたに死なれたら夢見が悪いですから、それにあなたは正しい選択ができる人だと思っています」

冬月「君は...?」

ミサト「真実に近づきたいんです、あなたも一度は試したでしょう?」

冬月「...死ぬぞ」

ミサト「覚悟の上です、命を張ってでも成し遂げなければならないことですから」

冬月「...」

〜ネルフ本部・独房〜

ネルフ諜報員「ご協力、ありがとうございました」

リョウジ「もう、いいのか...?」

ネルフ諜報員「はい、副司令は無事に保護されました」

リョウジ「そう、か...」

リョウジ「...」

〜第三新東京市・加持宅〜

リョウジ「ただいま」

レイ「おかえりなさい」

シンジ「あっ!リョウジさん!」

シンジ「やっと帰ってきたんですね」

リョウジ「ああ、始末書の処理で忙しくてな」

シンジ「リョウジさん帰ってこなかったから渡せなかったんですけど、これ葛城さんがリョウジさんにって」

リョウジ「葛城が...?」

シンジ「はい」

リョウジ「...USBメモリ」

リョウジ「...音声ファイルと文書か」カタカタカタ

リョウジ「音声から聞いてみるか...」カチッ

『加持、私よ。多分これを聞いてる時はあなたに迷惑がかかった後ね、本当にごめんなさい。
あなたにこれをどう渡すか迷ったけれど、シンジ君に託すことに決めたわ。このデータは半分しか入ってない。もう半分は信頼するもう一人に預けておく、きっとあなたの力になれる人よ。
本当は私一人で追うつもりだったけれど、あなたや今を生きる人にも知る権利はある、だからこれをあなたに。これで一人でも多くの人間が救われる事を祈るわ。
...加持君、あなたはあなたの思うようにして、誰のためでもない、あなたのために。それがきっと、あなたの追い求める真実になるわ。 閲覧パスコードは、二人の最初の思い出の場所よ。それじゃあね』


リョウジ「...!」ガタッ

シンジ「りょ、リョウジさん!?こんな時間からどこに...」バタン

レイ「行っちゃった...」

〜第三新東京市・高台公園〜

ミサト「...」

ミサト「この街ともお別れね」

ミサト「...夜に見るここからの眺めは、やっぱ綺麗ね」

ミサト「あの時と同じ...」

ミサト「...そろそろ時間ね」

リョウジ「葛城!!」

ミサト「...加持?」

リョウジ「音声ファイル、開いたんだ。最初の思い出の場所、パスコードってここの住所だろ?」

リョウジ「君は意外とロマンチストだからな、きっと俺とのことを思い出しにここに来てると思ったんだ」

リョウジ「俺なら、絶対来ようと思うから」

ミサト「...あんたほんとにバカよ」

ミサト「あんたが来たら...決心が揺らぐじゃないの...」

リョウジ「葛城...」

ミサト「...加持君、私は行くわ。全ての決着をつけに」

リョウジ「...止めないよ」

ミサト「...じゃあね」

リョウジ「葛城」ギュッ

ミサト「!」

リョウジ「初めてここにきた時、まだ周りは殺風景な田舎町だったよな」

リョウジ「ビルだってあんなに建ってなかった」

リョウジ「...街も風景も俺たちも、みんな変わっちまったな」

リョウジ「けど、ここから見る景色は今も昔も変わっちゃいない。とっても綺麗だ」

リョウジ「君も、綺麗だ」

ミサト「加持君...」

リョウジ「俺の気持ちも、8年前から変わっちゃいない」

リョウジ「全部終わらせて、戻ってこい」

リョウジ「その時に、8年前に言えなかった言葉を言うよ、いってらっしゃい」

ミサト「...アスカと渚君のこと、たまに見に行ってあげてね」

リョウジ「ああ、もちろん」

ミサト「...行ってきます」

リョウジ「...」

リョウジ(葛城が遠ざかっていく)クルッ

リョウジ(振り返るな、前に進むんだ)

リョウジ「俺も、前へ進むんだ」

待ってくれてた方に感謝。
ほんとに遅筆ですが、最後まで書ききれるよう努めます。

〜ネルフ本部・データバンク〜

マヤ「...」カタカタカタ

マヤ「嘘...!?」

マヤ「葛城さんの言ってたことは本当だったのね、セカンドインパクトが人為的に起こされたなんて...」

マヤ「...あの地獄は、人のエゴによるものだったのね」ピーッ!

マヤ「誰!?」ジャキッ

リョウジ「...危なっかしいもん持ってるなおい」

マヤ「リョウジさん...」






〜ジオフロント内・地下空調制御室〜

リョウジ「この時間のここなら誰もいない」

リョウジ「...まさか半分の持ち主がマヤちゃんだったなんてね」

マヤ「ごめんなさい、早急にお話しするべきだったんでしょうけど、まず自分の目で確かめたくて...」

リョウジ「...中身は見せてもらった」

リョウジ「俺のとこには俺へのメッセージと15年前に葬られたはずの書類データ」

リョウジ「君の方には特級職員の偽造IDと15年前の映像と音声データか」

リョウジ「...君も知ったんだろ、15年前の真実を」

マヤ「...」

リョウジ「君はこれ以上巻き込まれることはない、あとは俺が..,」

マヤ「私も手伝います!」

マヤ「こんなこと知って、黙ってられません!私はコンピュータに詳しいですから、お役にきっと立ちます!」

リョウジ「...消されるかもしれないんだぞ」

マヤ「...それでもやらせてください」

リョウジ「...わかった、いいか、このことは口外無しだ。俺達三人だけの秘密だ」

リョウジ「俺たちの仕事は足りないパーツの穴埋め、この空欄がすべて埋まると葛城への連絡先が開示されるようになってる」

リョウジ「あまり時間はないと思うが、絶対に成功させるぞ」

マヤ「...はい!」

〜第三新東京市・葛城宅〜

カヲル「アスカ?起きてないの?もう8時だよ?」

アスカ「...」

カヲル「うぉい、今日は僕が弁当作ってやったじゃん」

アスカ「...あんたの作るご飯、まずいのよ」

カヲル「...一理ある」

アスカ「...疲れてんのよ、ほっといて」

カヲル「でも学校」

アスカ「私は大学出てんのよ!あんなのお遊びじゃない!!」

アスカ「...ともかく、私に構わないで」

カヲル「ふーん...」ヌギヌギ

アスカ「ばっ...!?なに急に脱ぎだしてんのよ!」

カヲル「僕も学校行くのやめた」

アスカ「な、なんでよ」

カヲル「アスカいないと楽しくないじゃん」

アスカ「...」

カヲル「?」

アスカ「...死ね馬鹿」

カヲル「」

〜第一中学校・2-A〜

シンジ「...もう全然いなくなっちゃったね」

トウジ「ほとんど疎開してもうたからな...」

トウジ(ケンスケのやつ、ワイがエヴァのパイロットって知ってから一度も顔出しとらん)

トウジ(...そんなええもんちゃうんやで、エヴァのパイロットは)

トウジ「...」

トウジ「なぁ、シンジ」

シンジ「なに?」

トウジ「使徒って、なんで攻めてくるんか考えたことあるか?」

シンジ「うん...漠然とは」

シンジ「この第三新東京市にしかこないんだし、なにか理由があるんでしょ」

トウジ「...ほんとに使徒って敵なんやろか」

シンジ「なにいってんだよ!みんなを傷つけてるじゃないか!トウジだって酷い目にあったろ!?」

トウジ「...せやな、サクラもあいつらのせいで怪我しよったしな」

トウジ「でも、ワイ最初に参号機に乗って、使徒に体乗っ取られた時にな」

トウジ「感じたんや、ぼやっとしてるもんやけど、使徒の必死さみたいなんが」

シンジ「必死...?」

トウジ「...こうしてる間にもワイらは戦争したり、地球を食いつぶしてるわけやろ」

トウジ「あいつらからしたら、ワイらの方が悪く写ってるんやないかって」

シンジ「...」

ヒカリ「鈴原ー!!」

トウジ「...ヒカリが呼んどる、すまんな変な話して」

シンジ「大丈夫だよ」

シンジ「...」

〜第一中学校・屋上〜

シンジ「カヲル君とアスカも来てないね...」

レイ「うん...」

シンジ「トウジに聞かれたんだけど、レイは使徒がなんで攻めてくるのか考えたことある?」

レイ「!...ない」

シンジ「そっか...やっぱりエヴァに関係あるのかなぁ」

レイ「...」

シンジ「でも、やっぱり敵だよね」

シンジ「トウジは使徒の肩持つようなこと言うんだけど、もう誰かを傷つけることは許さないから」

レイ「...」

シンジ「レイ?」

レイ「あ...ごめんなさい、ちょっとぼーっとしちゃって...」

シンジ「もう、もちろんレイだって僕が守るよ」

レイ「...うん」

レイ(私は...私の使命...)

レイ(私自信の願いは...)

〜第三新東京市・葛城宅〜

アスカ「...」

アスカ(いつのまにか寝ちゃってた...)ピロピロリン

アスカ「...?」

アスカ「ピアノの音?」

カヲル「ふふーん」ピロピロリン

カヲル「あ、おはよ」

アスカ「あんたそれなに?」

カヲル「電子ピアノ、葛城さんが買ってくれたの」

アスカ「あんた、ピアノなんか弾けたの?」

カヲル「うん、好きなんだ音楽って。こっち来てから忙しくてできなかったけど」

カヲル「これだけが昔から、僕に許された唯一の自由だったからね」

アスカ「...男のくせにキモっ」

カヲル「ひどいなぁ...」

アスカ「...あたしにも教えなさいよ」

カヲル「ん、いいけどなんで?」

アスカ「暇なのよっ!」

カヲル「学校休むからじゃん...」

カヲル「...じゃあ代わりにさ、僕にご飯教えてよ」

アスカ「...いいけど、私だってそんなに上手なわけじゃ」

カヲル「?アスカのご飯美味しいじゃない」

アスカ「...死ね」

カヲル「意味わかんない...」




アスカ「...そう、土より下にあったのは水から入れていいのよ。他は沸騰してからね」

カヲル「ふーん...すごいねアスカ」

アスカ「ピアノのがすごいわよ」

カヲル「アスカ、ピアノ上手かったよ。僕1日であんなに弾けなかったもん」

アスカ「まあ、私は天才だからね」

アスカ「...私は天才なはずなのに、シンクロ率が最近低いの」

アスカ「なんでいきなり下がるのよ...私はアレしかないのに」

アスカ「...なんでこんなことあんたに言わなきゃいけないのよ」

カヲル「...別にエヴァとかいいじゃん」

カヲル「アスカはさ、折角自由で才能もあって、いろんな事できるんでしょ」

カヲル「それって、羨ましいよ」

アスカ「...でもわたしはエヴァに乗れなくなったら、誰も私なんて見てくれなくなる」

カヲル「なんで?」

アスカ「なんでって...」

カヲル「僕はエヴァに乗ってるアスカよりも今のアスカのが好きだよ」

アスカ「...」

カヲル「あ、好きってこんな感じか」

アスカ「...動くな」

カヲル「ひっ!?」

カヲル(ぶ、ぶたれる...?それともグー...?)

アスカ「...」

カヲル「...?」

アスカ「...」ギュ

カヲル「...??」

アスカ「...!」ギュ !

カヲル「...???」

アスカ「...!!」ムギュー

カヲル「...」

アスカ「...」

カヲル「多分アスカの力じゃ、さすがに僕のお腹はちぎれないと思うんだけど...」

アスカ「...」バタン!!

カヲル「...部屋に篭っちゃったよ」

カヲル「これ肉じゃがどうすんの僕が全部いいの」

カヲル「...すごくいい匂いがした」

〜第三新東京市・相田宅〜

ケンスケ「...」

ケンスケ「トウジまで...」

ケンスケ「...もうエヴァのパイロット、決めないのかな」

ケンスケ「...」

ケンスケパパ「ケンスケ?学校行かないのか?」

ケンスケ「パパ...どうして俺はエヴァのパイロットに選ばれないの?」

ケンスケパパ「...ケンスケ、そんなことは二度と言うんじゃない」

ケンスケパパ「碇君や鈴原君は必死で戦ってるんだぞ」

ケンスケパパ「エヴァに乗らなくていいのは、幸せなことなんだ」

ケンスケパパ「それをしっかりわかって、碇君たちに感謝し、応援しなさい。それがお前にできることだ」

ケンスケ「...」

支援してくれた方ありがとうございます!待っていただいて感謝。

カヲル「アースカ」

アスカ「...」

カヲル「ねえってば...」

アスカ「...」ヴーヴー

アスカ「...ネルフの携帯!」

カヲル「使徒...!」

〜ネルフ本部・作戦司令室〜

リョウジ(来たか...)

リョウジ「目標は?」

青葉「現在、衛星軌道から動きません」

日向「妙ですね、接近するでも遠のくでもありません」

リョウジ「前のやつみたいに降りてくるか、それともそんなことをせずともここをぶっとばせるか...」

リョウジ「今は様子を見る、レイに長距離射撃させる、零号機をD-57に配置」

リョウジ「弐号機、参号機を零号機の援護に回す。狙い撃ちされそうなら守ってやってくれ」

アスカ『私がバックアップ...』

レイ『...アスカ、あなたの方が頼りになるから援護なんだと思う。私がミスしたら、お願いね』

アスカ『...ごめんね、気を使わせて。わかってるわ!任せて!』

レイ『...うん!』

リョウジ(ナイスフォローだレイ。...実際アスカはシンクロ率が落ちてる)

リョウジ(彼女のプライドを傷つけてしまうかとも思ったが、助かったよレイ)

リョウジ「初号機と四号機は本部待機、前回の二の舞はごめんだからな、慎重に行かせてもらう」

ゲンドウ「...四号機は今回の戦闘には出せない」

カヲル『な、なんで!?』

ゲンドウ「...上からの命令だ」

リョウジ(ゼーレ...四号機とあの子を今失うわけにはいかないからな)

リョウジ「カヲル君と四号機は待機だ、いいな」

シンジ『大丈夫だよ、僕達で必ず倒すから!』

カヲル『...そうだね』

カヲル『アスカ』

アスカ『...』

カヲル『気をつけてね』

アスカ『...うん』

零号機「...」ガシャン

レイ「...」

青葉『目標、未だ射程圏外』

アスカ「もう、さっさとこっちへ来なさいよ」

トウジ「そうあせんなや、まだどんなやつかもわからんのやで」

アスカ「じれったいわね...!」

第11使徒「...」ピカッ!!

アスカ「!」

トウジ「なんや!?」

アスカ「ああああああっ!!」

レイ「アスカっ!!」

リョウジ「今のは!?」

青葉「熱エネルギー無し!物理的な攻撃ではありません!」

マヤ「心理グラフに異常発生!精神汚染の危険あり!」

リツコ(どう言うこと...?)

アスカ「くそっ!!」ドゴッ!!

リョウジ「アスカ!闇雲に撃つな!!一旦下がれ!!」

リツコ「アスカは!?」

マヤ「精神汚染、危険域です!」

リツコ「まさか...使徒が人の心を探っているの...?」

トウジ(人の心を探る...?)









リョウジ「あの光の分析は!?」

マヤ「不明です!ですが、A.T.フィールドに近い性質のものだと...」

リツコ(使徒が盾としてではなく、心の触媒としてA.T.フィールドを使ってる...)

リツコ(ここにきてそんなタイプが出てくる意味は何...?)

リョウジ「ポジトロンライフルは!?」

青葉「前回のように日本電力全てではありませんが、今出せる最大火力です!」

日向「薬室内圧力最大!地球自転誤差修正0.03!」

リョウジ「撃てっ!!」

レイ「っ!」ドシュッ!!

第11使徒「...」ピキーン

青葉「...っダメです!この距離からA.T.フィールドを貫くには火力不足です!!」

リョウジ「アスカ!下がれ!!」

アスカ『嫌っ!ここが私の居場所なの!!エヴァに乗れない私に価値なんてないのよ!!!』

レイ『アスカ...』

シンジ『アスカっ!逃げて!!』

カヲル(バカ...!)

トウジ『アホ!んなことないわ!!死んだら元も子もないやろ!!』

リョウジ「鈴原君!?」

マヤ「参号機が弐号機の盾になっています!!」



アスカ(イヤだイヤだ、そんなこと思い出させないで!)

アスカ(今まで思い出さないようにしてたの!!)

アスカ(エヴァに乗るために頑張ってきたの!心を閉ざしてきたの!!)

アスカ(もう傷つかないために!!)

アスカ「だからっ!もうやめてええええええっ!!」

『本人が実験台になり、アレがあの結果か』

『あんな小さな子を残して自殺するとは、残酷なものだな』

「そんなこと言わないで!ママを悪く言わないで!!」

『アスカちゃん、今日はあなたの大好物を作ったのよ』

『好き嫌いしてるとあそこのお姉ちゃんに笑われますよ』

「やめて!あんなの私のママじゃない!!」

『あの歳でか、すごいな』

『やはりあの人の子だ、優秀だ』

「そう!私はすごいの!!だから見てママ!!私を見てよっ!!!」






アスカ「ママ...私ね、頑張ったんだよ...?」

『トウジ、行ってくるわね』

『大丈夫よ、心配ないわ』

「それが最後の言葉やった」

『トウジ、これからはじいちゃんの家でお世話になるんやで』

『父ちゃんはこれから研究室にずっといなきゃいけないんや、サクラをよろしく頼むで』

「おとん、サクラに怪我させてもうたんや」

『兄ちゃん!責めたらダメやで!』

『あのロボットはウチらを守ってくれたんやで!』

「せやな、ワイも今はサクラ達を守れるんやで」

マヤ「弐号機、生命維持二問題発生!パルス微弱!!」

マヤ「参号機も精神汚染が起こっています!」

リツコ「鈴原君も危険だわ!参号機が盾になってる間に弐号機を回収して!!」

青葉「ダメです!回収ポイントから遠すぎます!!」

リョウジ(零号機を空輸し狙撃...ダメだ、その間に撃たれる...)

シンジ『リョウジさん!僕を出して!使徒を倒せなくてもアスカを助け出すくらいはできるよ!!』

ゲンドウ「...ダメだ」

シンジ『父さん!!』

ゲンドウ「お前が浸食されれば、それこそ終わりだ!!」

ゲンドウ「なにか方法はある...!シンジ、今は耐えるんだ...!」ギリッ

シンジ『父さん...』

トウジ「...こんなもん思い出させて、なんのつもりや?」

第11使徒「...」

トウジ「なんで人間のことを知ろうとするんや!」

トウジ「ワイはな、お前らの仲間に触れたんや!」

トウジ「なんでここを攻めてくるんや!教えてくれ!!」

第11使徒「...!」

リョウジ「...光が弱まった?」

ゲンドウ「...レイ!ドグマを降りて槍を使え!」

リョウジ「!」

マヤ「!」

冬月「碇!まだ早すぎるぞ!それにそんなことをすれば老人達が黙っとらんぞ!!」

ゲンドウ「そんなことが問題ではない!衛星軌道上の使徒を殲滅する方法はこれだけだ」

ゲンドウ「今は弐号機と参号機パイロットの救出を最優先とする!」

ゲンドウ「問題など後からついて来れば良い、責任を負うのが我々の仕事のはずだ」

冬月「碇...」

ゲンドウ「シンジを出せ!両パイロットの救出に当たらせろ!」

青葉「...!?四号機、地上へ出ます!」

カヲル『アスカっ!!』

アスカ『...』

カヲル『アスカ!返事してくれよっ!!』バシュッ!

マヤ「四号機、弐号機エントリープラグを回収!」

シンジ『トウジっ!!』

日向「初号機、地上に出ます!」

シンジ『トウジ!大丈夫!?』

トウジ『...ワイは平気や』

シンジ『トウジ...!』



〜ネルフ本部・セントラルドグマ〜

?「...」

レイ「...」

零号機「...!」グッ

?「.....」

日向「零号機、地上に出ます!」

リョウジ(何も起こらない...エヴァとアダムの接触がインパクトのキーというのは...)

マヤ(嘘...欺瞞なのね)

零号機「...」

カヲル(...槍を使うのか)

シンジ(あれは...?あれで使徒を倒せるのか...?)

マヤ「カウントダウン5.4.3.2.1」

レイ「っ!!」

零号機「!」

トウジ(...すまん、わかりあえんかったな)

第11使徒「!」バシュ

青葉「...目標、消失」

冬月「...槍は?」

青葉「現在、月衛生軌道に移行」

冬月「回収は、不可能というわけだな」

ゲンドウ「...」

リョウジ(.....)


〜ネルフ本部・病棟〜

カヲル「...」

アスカ「...」

カヲル「君はたくさんの事を僕に教えてくれた」

アスカ「...」

カヲル「エヴァに乗らなくたって、とっても楽しかったじゃないか」

アスカ「...」

カヲル「僕は...僕はまた一人だっ...!」ポロポロッ

アスカ「...」

カヲル「この世界の全部がアスカのことを必要としなくても、僕はアスカが必要だよ」



カヲル「また来るね、アスカ」

シンジ「どう、だった?」

カヲル「...ダメだった」

カヲル「...僕は毎日来るよ、シンジ君もたまにきてあげてね」

カヲル「鈴原君は?」

シンジ「トウジは大丈夫、元気だよ」

カヲル「そっか...」

シンジ(また僕の大切な人を...!)

シンジ(使徒...!)

トウジ「...」

トウジ「お前らは、何なんや...?」

トウジ(絶対に理由があるはずなんや)

トウジ(何か...!)

〜?????〜

?『ロンギヌスの槍、回収は不可能だよ』

?『何故使用した?エヴァシリーズはまだ揃っていないのだぞ』

ゲンドウ「パイロットを救出し、使徒を殲滅するには使わざるをえませんでした」

?『善人ぶるのはやめたまえ、最近の君の行動は目に余るものがある』

?『四号機は特別だ、君の手荒な扱いで壊されてはいかん』

?『四号機は返してもらうぞ』

?『パイロットは続けて使いたまえ、役に立つかはわからんがね』

ゲンドウ「...わかりました」

?『今後こ君の行動次第では、君の席は無くなるぞ』

ゲンドウ「わかっています、では」

?『...』

?(タブリス、何を考えているのだ)

〜ネルフ本部・総司令室〜

シンジ「...」

ゲンドウ「...シンジか」

シンジ「どうしてもっと早く槍を使わなかったの?」

ゲンドウ「...あの槍は特別なものだ、使うべきか否か見極める時間が欲しかった」

シンジ「...そのせいでアスカはっ!」

シンジ「父さんは知ってるの!?毎回の襲撃で何人も人が死んでるし、生きてる人も疎開や毎日恐怖に怯えて暮らしてる!!」

シンジ「みんなを守るためにエヴァやネルフがあるんじゃないのかよ!!」

ゲンドウ「...すまなかった」

シンジ「...いいよ、もう」ガチャ

ゲンドウ「...」

ゲンドウ(もう少し、もう少しなのだ...)

ゲンドウ(槍はもう無い、あと少しでシンジ、お前を苦しみからすくってやれる)

シンジ「...」

シンジ「もう他人には頼れない...」

シンジ「僕がみんなを、全てを守らなきゃならないんだ...!」

〜ネルフ本部・地下空調整備室〜

リョウジ「司令は槍を使った...エヴァとアダムの接触でサードは起こらないこともわかった」

マヤ「ドイツ、アメリカ、中国が第5〜13号機の製造を開始しています」

マヤ「明らかに不自然です、こちらも中国から予備パーツを頂いているのに...」

リョウジ「残る使徒は恐らく2体...約束の時は近い、か」

リョウジ「悪いな、いっつも泥棒みたいな真似させて」

マヤ「いえ、私にできることならなんでも言ってください」

マヤ「あなたのためなら、私...」

マヤ「ごめんなさい、葛城さんがいますもんね」

リョウジ「...すまない、これぐらいしかできないが」

マヤ「いいんです、慰めならいりませんから」

リョウジ「...君は大人だな」

〜第三新東京市・第一中学校校庭〜

トウジ「...」

トウジ「ついに生徒どころか、先生までこんようになってもうたか...」

トウジ「もはや学校どころじゃないんやろな」

トウジ「...使徒ってあとどのくらいおんねん」

トウジ「...いや!迷ったらあかん!あいつらは敵なんや!サクラやみんなを傷つけて惣流をあんなんにして!」

トウジ「...でもあいつらがそこまでするワケってなんやねん」

ヒカリ「...鈴原?」

トウジ「ヒカリ...」




ヒカリ「まさかいるなんて思わなかった、鈴原が授業ないのに学校くるなんてねー」

トウジ「失礼やな!ワシは意外と勉強熱心なんじゃ!」

ヒカリ「うそばっかりー!ぼーっとしてただけじゃない」

トウジ「...見栄張っててもしゃーない、ここにいたらお前に会える気がしてきただけや」

トウジ「どうやら当たりやったな」

ヒカリ「鈴原...」

トウジ「ヒカリは疎開せんで大丈夫なんか?皆去ってしもうたし、これから何が起きるかわからんで」

ヒカリ「いいの、鈴原と離れちゃうの嫌だし」

ヒカリ「それに、あんたや碇君が守ってくれるから大丈夫よ」

トウジ「...せやな、がんばらへんとな」

トウジ「...」

トウジ「なぁ、ヒカリ」

ヒカリ「?」

トウジ「使徒って、なんで攻めてくるんやと思う?」

ヒカリ「なんでって...言われてみると理由はわかんないけど...」

トウジ「人間だって、なにもなしに人を襲ったりしないやろ?俺はなんか理由があると思ってんのや」

トウジ「このことシンジに言うたらな、攻めてくるんなら敵だって言われたんや」

ヒカリ「そうよ!実際鈴原だって、アスカだって...みんなあいつらのせいじゃない!」

トウジ「せやな、実際あいつらのせいでワイもみんなも傷ついとる」

トウジ「けど、攻めてくるからってやり返して本当の解決になるんか?」

トウジ「あと何体いるかも、いつ攻めてくるかもわからんし、人の考えを超えたやつもおる」

トウジ「そんなやつらといつまで戦えばええんや...?言葉もなにも伝わらへんけど、分かり合うことはできへんのか...」

ヒカリ「鈴原...やさしいね」

ヒカリ「アスカのお見舞い、行ったの」

ヒカリ「...酷かったわ」

ヒカリ「鈴原が考えてることもわかる、けど実際に傷つけられてることを忘れないで...」

ヒカリ「それに鈴原がいなくなっちゃったら、私...!」

トウジ「わかってる、心配せんでくれ」

ヒカリ「うん...」ムギュ

トウジ「...」

〜ネルフ本部・第一病棟〜

カヲル「おはようアスカ、今日もいい天気だね!」

アスカ「...」

カヲル「...あれから1ヶ月か」

カヲル「...今日はこんなのもってきたけど、着てみる?」

アスカ「...」

カヲル「...うん、かわいい」

カヲル「ネルフからのお給金、全部アスカに使っちゃってるなぁ」

カヲル「まぁ、自分に使うことないしね」

カヲル「次はリンゴ剥いてあげよっと」

カヲル「あ、昨日食べたよね。今日はメロンのがいいかな」

カヲル「ほらあーん」

アスカ「...」モグモグ...

カヲル「...うん、食べた食べた」

カヲル「看護師さんからあんまり食べさせちゃダメって言われてるけど、かわいいから仕方ないよね」

カヲル「はいもういっちょあーん」ガチャ

レイ「...渚君」

カヲル「あ、綾波さんお見舞いきてくれたの?」

レイ「うん...」





レイ「毎日、来てるのね」

カヲル「うん、だってアスカいないとつまんないんだもん」

レイ「その後、どう?」

カヲル「うーんモノは食べてくれるようになったけど、喋ったりはもちろん、こっち見てくれすらしないなぁ」

カヲル「良くなってるのかなぁ...早く話したいことたくさんあるのに」

レイ「そう...私にできることあったら言ってね」

カヲル「ありがとう、綾波さん来てくれるとアスカも喜んでる、ような気がするよ!」

レイ「なら、よかった...///」

カヲル「そういえばシンジ君は?」

レイ「また、シュミレーターにずっといるわ」

カヲル「またかー...前回みたいなやつ来たらどうしようもないのにね」

レイ「でも、備えるのは大事だと思う」

カヲル「...ねえねえ、君ってシンジ君のこと好きでしょ」

レイ「う、うん...」

カヲル「だよね!君もシンジ君からたくさんいろんな事教えてもらったんだろ?」

カヲル「君も小さい頃は施設だろ?僕もそうだったから、何も知らなくてさ」

カヲル「でも君はいいよね、碇司令がいたもんな」

レイ「...」

カヲル「僕もアスカからいろんな事知ったんだ、好きってこともね」


レイ「...」

レイ「碇司令は、本当は私のことなんて見てくれてなかった」

レイ「もっと違う、大きなものを見てたんだと思う」

レイ「でも人は与えられるばっかりじゃないわ」

レイ「私達でも、他人に与えたり、何かを作ることができるのよ」

カヲル「...それを知るために、僕らはヒトの形としてこの星に生き着いたのかもしれないね」

レイ「...」

カヲル「ねえ、好きの上ってないの?」

レイ「...愛してる、とか?本で読んだことあるわ」

カヲル「ふーん...」

カヲル「アスカ、愛してる」

カヲル「また来るね、おやすみ」

レイ「...///」

アスカ「.....」

〜ネルフ本部・地下訓練場〜

シンジ「はぁはぁ...」

日向「シンジ君、少し休んだらどうだ?」

青葉「もう6時間だ、そろそろ休んだほうがいい」

シンジ「...いえ、もう一度108からお願いします!」

青葉「...わかった」

シンジ(もっと...もっと強くなるんだ!)

初号機「...」

〜ネルフ本部・総司令室〜

リツコ「零、初、弐、参号機全ての修理が終わりました」

ゲンドウ「そうか」

リツコ「弐号機のコアの書き換え、本当にせずによろしいのですか?」

ゲンドウ「そのままにしておけ、その方が彼のためだ」

ゲンドウ「大事なものを失った悲しみは、君もわかるだろう」

リツコ「...母が死んだのは、あなたのせいですわ」

ゲンドウ「...今更責任から逃れようとは思わん」

ゲンドウ「君にも、本当にすまないと思っている」

リツコ「今更取り繕った所で、何にもなりませんわ」

リツコ「...あなたはユイさんのために何人の人を不幸にしてきたか...!」

リツコ「...失礼します」ガチャ

ゲンドウ「.....」

〜ネルフ本部・第一病棟〜

リョウジ「...」ガチャリ

アスカ「...」

リョウジ「アスカ、おはよう」

リョウジ「...」

リョウジ(何か刺激になればと思ってく来ているが、俺ごときじゃどうにもならないか...)

リョウジ「...アスカ、何度も言うが本当にすまなかった」

リョウジ「俺の作戦ミスで、こんなことに...」

リョウジ「俺がもっとうまくやれていれば、こんなことには...」

リョウジ「...いや、自分が許されたいだけだな」

リョウジ「俺にできるのは、見舞いに来てやることぐらいだ」

リョウジ(葛城...お前がいてくれれば...)

リョウジ「...いや、彼がいるか」

リョウジ「アスカ、俺は大人だ。しっかりと責任を果たすよ」

リョウジ「君は立派に戦った、俺も俺なりのやり方で奴らと戦うよ」

リョウジ「...じゃあな」

カヲル「あっ」ガチャリ

カヲル「...来てたんですね」

リョウジ「おっと、今帰ろうとした所さ」

カヲル「ありがとうございます、彼女もきっと喜んでますよ」

リョウジ「なら、いいんだけどな」

カヲル「...ここのスタッフの人も冷たいですね、ここの人たちをずっと守ってきたのはアスカ達なのに」

カヲル「もちろんリョウジさんやシンジ君達は定期的にきてくれますけど、他の人はまるっきり」

リョウジ「...」

カヲル「アスカがね、リョウジさんはかっこいい、あんたなんかと比べるだけ失礼よっていつも言ってました」

カヲル「だからリョウジさんが来ると嬉しいんだと思います、これからも来てくださいね」

リョウジ「...俺はちっともかっこよくなんてないよ」

リョウジ「ただの小狡い大人さ」

リョウジ「彼女に必要なのは、自分を対等に見てくれる人だよ」

リョウジ「これからも彼女の側にいてやってくれ」

カヲル「...はい」

〜ネルフ本部・出入口〜

シンジ「あれ?レイだ」

レイ「...シンジ君、今日は帰るの?」

シンジ「うん、流石に疲れてきたから。疲れすぎてても使徒来た時に実力を発揮できないしね」

レイ「そう...」

シンジ「...ごめんね、寂しかった?」

レイ「...うん」

シンジ「僕も本部に泊まりっきりだったし、リョウジさんは仕事が忙しいみたいだったもんな」

シンジ「今日は、一緒にご飯食べようか!」

レイ「...うん!」

シンジ「そうだ、ちょっと寄り道してこうよ」

レイ「?」

〜ジオフロント・加持農園〜

レイ「すごい...!治ったのね」

シンジ「前の使徒の攻撃で一回壊されちゃったんだけどね、訓練の合間にコツコツ治してたんだ」

シンジ「完全にやられちゃった所もあったけど、にんじんなんかは残ってたよ」

シンジ「やっぱり、何かを作るっていうのは落ち着くね」

レイ「リョウジさんの言ってたとおりね」

シンジ「...うん、こんな僕でも大事なものを見つけられた気がするよ」

レイ「...気じゃないと思うわ」

レイ「今シンジ君がいて、みんながいてくれるのが、私の全て」

レイ「...アスカもきっと元気になるわ」

シンジ「...そうだね」

シンジ「もう誰も傷つけさせないために、僕も頑張るよ」

レイ「...無理、しないでね」

シンジ「うん、大丈夫だよ」

シンジ「...帰ってゆっくりしようか」

レイ「...うん!」

〜第三新東京市・路上〜

リョウジ「...それで、その後の状況は?」

マヤ「葛城さんの資料からすると、残る使徒は2です」

マヤ「司令が槍を使えなくしたのはどういうことなんでしょうか...?」

リョウジ「恐らく、自分の目的のためにだろうな」

リョウジ「司令と副司令は明らかになにか隠してる、それはゼーレとは違うなにかをしようとしてることだろう」

リョウジ「各国のエヴァ建造も終盤に入ってきた、うかうかしてられなくなってきたな...!」

マヤ「そうですね...なんとか間にあわせせないと...!?」

マヤ「リョウジさん!!」

リョウジ「...」プルルルル

リョウジ「はい」

リョウジ「ああ、肉眼で確認してる」

リョウジ(12番目...!)

〜ネルフ本部・第一発令所〜

リョウジ「状況は?」ウィーン

リツコ「遅いわよ、何をしてたの?」

リョウジ「いやはや、少々気が緩んでてね」

マヤ「...」

リツコ「...目標は現在大涌谷上空、そのまま動かずよ」

青葉「現在零号機と初号機が迎撃位置へ移動、弐号機と参号機は援護のため後方に配置されています」

リョウジ「弐号機?パイロットは?」

リツコ「渚君よ」

リョウジ「...そうか」

リョウジ(コアの換装はされなかったはず...パーソナルもそのままでシンクロするとは)

リョウジ(委員会直属のパイロットだ、そのくらいで驚いてるようじゃダメだな)




日向「...動きませんねぇ」

青葉「まず攻撃手段がわからないことには、手の出しようが無い」

マヤ「こないだみたいな使徒だったら、もう手の施し様がないわね」

リツコ「...パターンが青からオレンジに周期的に変わってる?」

マヤ「マギは回答不能を提示しています」

リツコ(使徒も進化している...?この前の使徒も人の心を知ろうとしてる...)

リョウジ「レイ、しばらく様子見だ」

レイ『...いえ、来ます!』

第12使徒「...」ギュルン!

シンジ「動いたっ!」

シンジ「レイ!右に回避!トウジは僕の後ろへ!カヲル君はレイの護衛に回って!」

レイ「ぐっ!」

トウジ「綾波っ!」

カヲル「鈴原君、後ろ!」

第12使徒「...!」

トウジ「うおっ!?」

カヲル「まずい...こいつ、決まった形がないからどこからでも攻めてくるよ!」

トウジ「ライフルは効かへんぞ!」

シンジ「フィールドが硬すぎる...なら!」

シンジ「うおおっ!」

リョウジ『シンジ!不用意に近づくな!』

第12使徒「!!」ガキン!

シンジ「ぐっ!ナイフも弾かれたっ!」

トウジ「くそっ!避けるのに精一杯や!」

第12使徒「...!」

レイ「!」

シンジ「レイっ!!」

日向『目標、零号機と接触!侵蝕されて行きます!』

シンジ「レイっ!!」

シンジ「うわっ!?」

青葉『初号機も捕まりました!』

リョウジ『マズい!鈴原君、渚君!今すぐ逃げろ!!』

トウジ「...」

リョウジ『鈴原君!?なにをしてるんだ!』

トウジ(今回こそは、あいつらの真意がわかるかもしれへん...!)

トウジ「...!」

青葉『参号機、目標と接触!』

カヲル「みんなっ!!」

カヲル「プラグ射出信号は!?」

マヤ『ダメ!反応しない!』

リョウジ『渚君!君だけが頼りだ!プラグを手動で抜いてくれ!』

カヲル「ぐっ!そんなこと言われても、攻撃が激しすぎる...!」

カヲル(どうする...?)

〜???〜

レイ(...ここは?)

レイ「私はどうなったの...?」

レイ?「...」

レイ「あなたは、使徒...?」

レイ?「いいえ、あなた自身の心」

レイ「私の心...?」

レイ?「あなたは、寂しいんでしょ?」

レイ?「誰もあなたを見てくれない、所詮あなたは人形だものね」

レイ「...」

レイ?「代わりの効く人形、あなたは人じゃない、誰からも愛されないし愛することもできない出来損ない」

レイ?「人の心がわからない、だから誰からも見向きもされない」

レイ「...違う!私にはみんながいる!」

レイ?「そう思ってるのはあなただけ、みんなはそうは思ってないのよ」

レイ「違う!!リョウジさんもシンジ君もアスカも、みんな私のことを...」

レイ「碇司令も私を...」

レイ「.....」




シンジ「...」

シンジ?「...やあ」

シンジ「子供の頃の...僕?」

シンジ?「そう、僕は君。君の満たされない心そのもの」

シンジ?「子供の頃から親戚をたらい回しにされて、勉強を頑張ってもなにをしても褒めてもらえない」

シンジ「...」

シンジ「...それがどうした?」

シンジ?「今だってそう、父親に認めてもらいたいだけなんだろ?他人を助けたいなんて建前だ」

シンジ「違う!僕は...!」

シンジ?「強がるくせにすぐ助けを求める、ほんとは弱いのにそういうことするから傷つくのさ」

シンジ「...」




トウジ「...」

第12使徒「...」

トウジ「言っとくが、ワシには小細工しても無駄やぞ」

第12使徒「...みたいだね」

第12使徒「心に付け入る隙が無い、A.T.フィールドが硬すぎるんだ」

トウジ「A.T.フィールド...?」

第12使徒「そう、僕らにもある、心があるものには等しく存在している」

第12使徒「ただ君達は使い方がわからないだけさ」

第12使徒「君達は、生きようとする力が弱いからね」

トウジ「生きようとする力...?」

第12使徒「そう、僕は多分最後の方だろう、僕ら種族にはもう余裕がないんだよ」

第12使徒「僕らは、君たちと同じくこの星で生き残りたいんだ、この星で生き残れる種族は一つしか選ばれない」

トウジ「それが、お前らが攻めてくる理由なんか...?」

第12使徒「そう、君達種族はこの星を汚し過ぎている、このままじゃこの星は持たない」

第12使徒「だから、君達を滅ぼすしか道がないんだ」

トウジ「待ってくれ!手を取り合って生きていく未来はないんか...?」

トウジ「ワイは今までお前らを倒してきた!それにお前らの仲間とも触れ合った!」

トウジ「でもその度におもっとったんや!何かわけがあるんやないかって!殺し合うだけが道やないはずやろ!?」

第12使徒「...みんながそんな考えじゃない、間違いなく君達は同じ種族で争い合い、この星を潰す」

トウジ「...!」



レイ「確かに誰も認めてくれない、見向きもしてくれないかもしれない」

レイ「でも、これが私の生きる意味だと思う」

レイ?「...」

レイ「自分くらいは、私を認めてあげなくちゃ」



シンジ「...確かに僕は、僕のために生きてきたかもしれない」

シンジ「偽りの生活でも楽しかったんだ、人と触れ合うのは良いことだって思えたんだ」

シンジ?「...」

シンジ「例えそれが間違いだったとしても、僕は僕の思うままに進むよ」

シンジ「もう父さんや他人には流されない、僕自身のことは僕自身で決める」

シンジ「だから僕は...使徒を倒してみんなを、世界を幸せにして見せる」

シンジ?「...」

零号機「...」

日向「零号機フィールド反転!!」

マヤ「使徒を抑え込むつもりなの!?」

ゲンドウ「レイ!!」

リョウジ「レイ!機体を捨てて逃げろ!まだ間に合う!!」

レイ「ダメ...!」

レイ「私がいなくなったら、A.T.フィールドがなくなっちゃう...!」

レイ「...!」ガチャ

リツコ「モードD...まさか零号機ごと自爆するつもり!?」

ゲンドウ「レイっ!!」

シンジ「...はっ!?使徒は!?」

シンジ「レイっ!?なにを!!」



第12使徒「...時が来たみたいだ」

トウジ「...やっぱり相容れぬ存在なんやな、ワイ達は」

第12使徒「君達のことを理解できて良かった、僕はここまでにするよ」

トウジ「...ワシはお前らのせいで家族を傷つけられたんや」

トウジ「でも、すまんかった。ワイらも気付かないうちに、大事なものを壊してしまってたんやな」

第12使徒「...君のような人間に、出会えて良かったと思う。このまま僕が消えても、君を知ったことに価値があるかもしれない」

第12使徒「...さようなら」

トウジ「...次生まれて来るとすれば、同じ仲間に生まれてきてくれ」

トウジ「もっと早く、通じ合えていれば...」

第12使徒「...時期に時は来るが伝えておこう、彼は僕らと同じ種族だ」

トウジ「彼...?」

第12使徒「...」



カヲル「綾波さん!バカなことは...」

第12使徒『後を頼むよ』

カヲル『...僕は最後まで悩むと思う、君達と同じ使命を成すか、それとも...』

第12使徒『どちらにせよ、僕達の死を無駄にしないで欲しい』

カヲル『...わかった』

第12使徒『...』



リツコ「レイ!聞きなさい!!」

レイ『...』

リツコ「あなたも私達と同じなのよ!?変わりなんてない、あなたの心はあなただけのものだわ!!」

リツコ「誰のものでもない!あなたの好きにしていいのよ!!」

リツコ「...もう誰のいいなりにもならないでいい、私がそうさせないわ」ギロッ

ゲンドウ「...」

冬月「...」

レイ「...でも使徒が!」

マヤ「...?使徒の反応を消失...!」

日向「...本当だ!目標内部にエネルギー反応ありません!」

青葉「目標...沈黙...?」

リョウジ(どうなってる...?)

リョウジ(だが...残りはあとひとつ...)

〜ネルフ本部・ロッカールーム〜

シンジ「...」

トウジ「...」

シンジ「トウジ、前使徒はなんで攻めてくるんだって言ってただろ?」

トウジ「...おう」

シンジ「使徒と、話したような気がしたんだ」

シンジ「...やっぱり敵だよ、何があったって僕らが危険に晒されるのなら、倒さなければならない」

シンジ「使徒を倒すことが、エヴァに選ばれた僕らの使命なんだ」

トウジ「...敵敵言うけどな、あっちからしたらこっちが敵なんだって考えとことあるか?」

トウジ「...何も考えんと戦って一体なにになるんや」

シンジ「っ!!どうしてだよ!?あいつらのせいでどれだけの人が傷ついたんだよっ!!」

シンジ「あいつらが攻めてくるから戦ってるんだ!こっちは命がけでみんなを守ってんだよ!!」

シンジ「みんなを守るために頑張ってなにが悪いっ!トウジどうしちゃったんだよっ!?」

トウジ「...」ガチャッ

シンジ「...!」バンッ!!

〜ネルフ本部・病室〜

カヲル「...」

アスカ「...」

カヲル「僕はっ...!どうしたらいいんだ...」

カヲル「人の優しさを知ってしまったら、もう...けど彼らの思いは...!」

アスカ「...」

カヲル「アスカ...僕はどうしたらいい...?」ギュッ

カヲル「僕には君が全てだった、好きだ、君のおかげで人の心を知った、幸せも...」

カヲル「でも、僕は人である前に使徒なんだ、今更彼らを裏切ることも...」

トウジ「...」ガチャリ

カヲル「鈴原君...?」

トウジ「渚、ちょっとええか?」



〜ネルフ本部・医務室〜

リツコ「...お帰りなさい」

レイ「ただいま...です」

リツコ「もう、あんなことはやめてちょうだいね」

レイ「...」

リツコ「ごめんなさい、嫌ね、急に大人面して」

リツコ「...レイ、ちょっとついてらっしゃい」

レイ「...?」



シンジ「...」

シンジ(ブレるな、僕の使命はみんなを守ること)

シンジ(...よし!気を強く持とう)ヴーッヴーッ

シンジ「...携帯?リツコさん?」




リョウジ「...」

リョウジ「リっちゃんが動いた」

リョウジ「チャンスだ、俺達も行くぞ」

マヤ「...はい!」

〜ネルフ本部・総司令室〜

冬月「...いよいよあとひとつだな」

ゲンドウ「...」

冬月「...碇?」

ゲンドウ「あ、ああすまない」

冬月「碇、ここまで来て失態を犯しては困るぞ。気をしっかり持て」

ゲンドウ「ああ、わかっている」

冬月「.....」

〜ネルフ本部・病棟〜

トウジ「...あのやかましかったんが、ウソみたいやな」

カヲル「...そうだね」

アスカ「...」

トウジ「...なあ、惣流をこんなにされたお前にこんなこと聞くのも悪いんなけどな」

カヲル「...?」

トウジ「使徒って、ほんまに倒さなきゃいけないやつらなんかって思うんや」

カヲル「...」

トウジ「ワイは一度使徒と一体化しとるし、その時から思っとったんや」

トウジ「攻めてくるんは、何か理由があるんちゃうかって」

トウジ「それが、前の使徒との戦いで確信に変わった」

トウジ「聞いたんや、使徒にも心がある、ワイらと戦ってる理由があったんや」

トウジ「...シンジに言っても分かってもらえんかった。惣流を傷つけられてるお前にこんなこと言うのも失礼だと思っとるし、みんな命懸けで使徒と戦ってきたのもわかっとる」

トウジ「渚は...どう思う?」

カヲル「...鈴原君」

カヲル「僕は...」

〜ネルフ本部・地下LCLプラント入口〜

シンジ「...ここか?」

シンジ(リツコさんにここに来るよう言われたど、ここって僕の権限じゃ入れないよな)

リツコ「...シンジ君ね?」

レイ「...」

シンジ「リツコさん...レイも?」

リツコ「約束通り、一人ね」

シンジ「はい...一体どこに?」

リツコ「...あなたも、真実を知る必要があるわ」

リツコ「こっちよ」ピーッ!

リツコ「...?エラー?」

リョウジ「無駄だよ、俺のパスがないとな」

マヤ「...!」




シンジ「リョウジさんにマヤさん...?なんで」

リツコ「...ミサトね」

リツコ「いいわ、あなた達もいらっしゃい」

マヤ「先輩...ごめんなさい、私」

リツコ「いいのよ、あなたなりに考えたのでしょう?」

リツコ「...こっちよ」

〜ネルフ本部・地下人工進化研究所・跡地〜

シンジ「ここは...?」

レイ「...私のいたところ」

シンジ「レイが...?」

リツコ「そう、レイはここで育ったわ」

リョウジ「...こんな所じゃまるで監禁だ」

マヤ「一体何のために...?」

リツコ「...ごめんなさいね、レイ。もう見たくないでしょう」

レイ「大丈夫です...!シンジ君達がいてくれるから...」

リツコ「...奥に進むわよ」

〜ネルフ本部・地下エヴァ残骸廃棄場所〜

シンジ「これは、エヴァ?」

リツコ「そう、試作品の残骸よ」

リツコ「10年前、ここである実験が行われた」

リツコ「ヒトによる初号機へのダイレクト・エントリー実験」

リツコ「その被験者があなたの母、碇ユイさんよ」

シンジ「...母さんが?」

リツコ「そう、そして実験は失敗した」

リツコ「代わりに生まれたのが、レイよ」

レイ「...」

リョウジ「どういうことだ...?」

リツコ「...次がゴールよ」

〜ネルフ本部・地下LCLプラント〜

リョウジ「ここは...?」

マヤ「なんですか...これ」

リツコ「ダミープラグの元になるプラントよ」

シンジ「ダミープラグ...!」

レイ「...」

リツコ「そしてこれが、ダミーのコアになっている部分よ」ピッ

シンジ「!!」


リョウジ「これは...!?」

マヤ「うっ...」

シンジ「レイ...?」

レイ「...」

レイの器達「...」

リツコ「いいえ、レイはここにいるレイだけ、ここにいるのはダミーのためにいるだけの人形」

リツコ「...そして、レイのためのスペアパーツに過ぎない」

シンジ「そんな...レイは知ってたの...?」

レイ「...うん」

リツコ「...リョウちゃん、マヤ。あなた達は真実を追い求めているのでしょう?」

リョウジ「...」

リツコ「約束との時は近い、教えてあげるわ、真実を」





トウジ「...そうか」

カヲル「驚かないの...?」

トウジ「このあいだのやつだって意思疎通ができたんや、人と同じようなやつがいたっておかしくない」

トウジ「お前が、使徒か」

カヲル「...今まで騙していてごめん、僕は本来ネルフの上位組織であるゼーレから送り込まれた、君達の監視役だったんだ」

カヲル「そして最後の時まで、命令に従い続ける」

カヲル「僕はね、そのためだけに造られたんだよ」

トウジ「...」

カヲル「僕の身体は、複製品なんだ。そして心も別のもの、心も身体もなにひとつ僕だけのものじゃない」

カヲル「...もちろん他の使徒と戦うことに抵抗はあったさ、仲間を葬らないといけないんだからね」

カヲル「でも...僕に自由はなかった、僕の命はあいつらに握られてるようなものだから」

カヲル「そんな僕に、生きる理由を、楽しみを教えてくれたのがアスカだった」

カヲル「アスカは全てをくれたよ、会話の楽しさ、屋上の風邪の心地よさ、料理の美味しさ、施設で一人きりだった僕はなにもしらなかったから」

トウジ「渚...」






リツコ「...私達人類は、神を拾ったわ。そして喜んで利用しようとした」

リツコ「だからバチが当たったのね、それが15年前、忘れもしないセカンド・インパクト」

リツコ「折角手に入れた神も、それで消えてしまった」

リツコ「その神を復活させようとしたのが、地下の巨人アダム」



カヲル「...鈴原君も、地下の巨人に使徒が接触すればサード・インパクトが起きるのは知ってるだろ?」

トウジ「ああ、それを防ぐためにワイらはエヴァで戦ってきた」

カヲル「...僕に残された最後の自由は、使徒である僕の手によってサードを起こし、人を滅ぼすこと」

カヲル「僕は復讐してやりたかったんだ、僕のようなモノを作り出したあいつらに」

カヲル「それに、サードを達成することが、今まで消えてった仲間達への手向けになるはずだから」

カヲル「でもね...でもね鈴原君!」

カヲル「僕は人の温もりを知ってしまった!人としての生き方を知ってしまったんだ!!」

カヲル「生きるってことを知ってしまった、人を好きになってしまったんだ...」

カヲル「でも、僕は人である前に使徒なんだ、それに人の汚さだって知っている」

カヲル「地球を汚して、同族で争いあって、自分達のために僕のような存在を作る、そういう奴らだというのもわかってる」

カヲル「でも、僕の好きな人達も同時に失ってしまう、この日常を壊してしまう...!」

カヲル「...僕はどうすればいい...?」

トウジ「...」




リツコ「そのアダムを模して作られたのがエヴァ」

リツコ「...でも、それだけじゃ意味が無い、心が無くては動かない」

リツコ「本来神の無いエヴァには、人の魂が宿してある」

リツコ「シンジ君、あなたは、お母さんがどこにいるのか、もうわかっているはずよ」

シンジ「初号機...!」

リョウジ「エヴァにそんな秘密が...」

マヤ「コアって、そういうことだったんですね...」

リツコ「そう、だから初号機はシンジ君しか動かせない」

リツコ「恐らく、弐・参号機も同じよ。弐号機の魂は今閉じこもってしまってるようだけど」

リツコ「...そしてここにあるレイの器も同じ、魂がなければ意味がない、たった一つ、今のレイにある魂を守るための器に過ぎない」

リツコ「シンジ君、レイを作り出したのは碇司令よ」

リツコ「それだけじゃない、私の母を利用して殺したのも碇司令」

シンジ「父さんが...!?」

リツコ「...私の母、赤木ナオコはネルフの前任組織ゲヒルンで働いていた研究者だったの」

リツコ「ユイさんを失った後、あの人は母に泣きついて来たの。研究しかしていなかったし、夫に先立たれていた寂しさもあったんでしょうね、まんまと騙されてしまったわ」

リツコ「母は利用されているのを知ってた、けどそれでもいいと思ったのでしょうね」

リツコ「でも限界が来て、自殺してしまったわ」

シンジ「そんな...!」

リツコ「その後、あの男は私にも泣きついてきた...!」

リツコ「でも、私はあの人を好きになってしまったの、親子揃って大馬鹿者だわ」

リツコ「...でもね、私は母とは違う、途中であの人の目的に気がついたわ」

リツコ「あの人は、ユイさんを取り戻そうとしている」

シンジ「母さんを...?」

リツコ「そのために、私やネルフのみんな、シンジ君やレイまで利用しようとしているのよ...!」

マヤ「そんな...私たちは司令の野望のために今まで頑張ってきたんですか...?」

リョウジ「...男と女ってのは本当に理屈じゃ語れないな」






トウジ「...きっと使徒から見たら、ワシらのほうが悪なんやろうな」

トウジ「科学の発展だとかなんとか言って、地球を壊して、なんぼも争って、生きる価値なんてないのかもしれへん」

トウジ「...でもワイは人や、それでも人が好きや」

トウジ「せやけど、せやけどワイはお前らの事情も知ってしまった」

トウジ「渚...惣流のこと好きか?」

カヲル「...うん」

トウジ「ワイもヒカリが好きや」

トウジ「...使徒と人は分かり合えるんやって、お前と話してわかった」

トウジ「好きにしたらええ、ワイはお前の味方したる!」

トウジ「...それがお前らの事情を知ったワイの責任や」

アスカ「.....」

カヲル「僕はっ...!」



リツコ「レイは、碇ユイの遺伝子から作られたクローンなのよ」

リツコ「あの男が、自分の目的のために作ったね」

レイ「...」

シンジ「父さん...!」

リツコ「...だから壊しましょう、二度と器が取り換えられないように」ピッ

レイの器達「!」

マヤ「きゃあっ!!」

シンジ「!!」

リョウジ「リツコっ!?」

リョウジ「お前っ!何をしてるのかわかって...」

リツコ「レイ、これでもうあなたの命は一つよ」

リツコ「他の人間と同じ、死んだらそこで終わり」

リツコ「だから、もう無茶をするのは止めなさい」

リツコ「あなたに代わりなんていないわ、あなたはあなただけ」

リツコ「もう司令を見るのは止めなさい、これからは一人の人間として、誰のためでも無く自分のため」

リツコ「綾波レイとして自由に生きなさい」

レイ「赤木博士...」ポロポロッ

レイ「涙...?私泣いてる...」

リツコ「その涙が証拠よ」

リツコ「人との接し方がわからなかったら聞きに来なさい、勉強がわからなかったら教えてあげる、私でよければ話を聞いてあげる」

リツコ「それに、後ろをごらんなさい」

レイ「...?」

リツコ「あなたには家族がいるわ」

シンジ「レイっ...!」

リョウジ「...良かったな、レイ」

レイ「...ううっ」

リツコ「...」ギュッ

リツコ(母さん、女にはこういう生き方もできるのよ)

マヤ「先輩...」

リツコ「マヤ、あなただって誰かを愛してあげられるわ」

リツコ「...頑張ってね」

マヤ「...はい!」

〜ネルフ本部・弐号機エントリープラグ〜

カヲル「ありがとう鈴原君、アスカ運び出すの手伝ってくれて」

カヲル「アスカちょっと重いんだよねぇ、食べさせすぎたかなぁ」

トウジ『おまえ!起きとったら怒られるで...』

カヲル「...君は洞木さんに会いに行かなくてよかったの?」

トウジ『...ワイらはいつも繋がっとる、だから大丈夫や』

カヲル「いいね、そういうの」

トウジ『せやろ?』

カヲル「...本当に、ありがとう」

トウジ『友達やろ、当たり前や』ニコッ

カヲル「...うん」ニコッ

カヲル「ふーっ...」

カヲル「アスカ、もうすぐだからね」

カヲル「もう少しで、君を苦しみから解放してあげるから」

カヲル「...ちょっと揺れるけど我慢してね」

アスカ「...」

カヲル「ずっと一緒だよ」

カヲル「...行こうか、弐号機」




弐号機『.....!!』ギュイン!

~ネルフ本部・発令所~

日向「...なぁシゲル」

青葉「んぉ?」

日向「俺たち、今まで使途に勝ってきたよな」

青葉「ああ、まあ実際に戦ってきたのはシンジ君達だけどな」

日向「よくここまでこれたと思わないか?」

青葉「...毎日必死でよく考えてなかったけど、あんな得体の知れない連中に対してよく勝ってきたとは思うよ」

青葉「俺なんか、ここに座ってただけだけどな」

日向「つっても、この椅子座るのに倍率千倍だろ?自分で言っちゃうけど、よく採用されたと思うぜ」

青葉「ははっ、確かに。俺なんか漠然と大学通って、何もない日々に飽きて、偶然ここの求人見つけて、ここなら俺も世の中の役に立てるんじゃないかと思ってここまで来たけど」

青葉「...アスカちゃんもあんなことになったり、街の人達だってもちろん死人は出てる、責任感持たなきゃな」

日向「違いない」

冬月「...今こうして君達がコーヒーを飲めているのも、人の知恵のおかげだよ」

日向「副司令...」

冬月「...人は自分達ばかり楽になろうとしすぎて、バチが当たったのかもしれんな」

冬月「例えそうだとしても、今更滅びの道は望まんがな」

青葉「...絶対に守り切りましょうね、俺達の手に未来がかかって...」ドドン!!

日向「な、なんだ!?」ビーッ!!ビーッ!!

冬月「...」

青葉「警報!?使徒か!?」

~ネルフ本部・セントラルドグマ~

シンジ「!?」ビーッ!!ビーッ!!

リツコ「警報...」

リョウジ(いよいよ最後のおでましか...!)

マヤ「先輩!急がないと!」

リョウジ「俺達は発令所に戻る、レイとシンジはそこのリニアからケージに直行してくれ!」

シンジ「はい!」

レイ「...」

レイ(多分、あの人ね)



ゲンドウ「状況は?」

日向「現在確認中!」

青葉「...これは!?」

青葉「弐号機と参号機です!現在施設を破壊しつつドグマ方面へ移動中!」

冬月「パイロットは?」

日向「プラグ側からモニターを切られていますが、生体反応あり!恐らく専属パイロットだと思われます!」

ゲンドウ「弐号機パイロットは?」

青葉「...201病室に確認しましたが、姿が消えているそうです」

冬月「...あの少年か」

冬月「いよいよだな、碇」

ゲンドウ「ああ、我々の悲願まですんでのところまできている」



リョウジ「状況は!?」

日向「現在弐号機と参号機がドグマ内部を降下中!」

リョウジ「エヴァがなぜ...?」

青葉「パイロットはモニターされていませんが、恐らく3rdと5th、ですが病室から2ndの姿が消えています」

リョウジ(やはりあの少年が最後の...)

ゲンドウ「遅いぞ赤木博士、何をしていた?」

リツコ「...言い訳はしませんわ」

リツコ「停止信号は?」

日向「エヴァ側からロックされています!」

マヤ「エヴァの現在地とエヴァ二機の膨大なA.T.フィールドの影響でプラグへの干渉は不可能かと...」

ゲンドウ「...現時点を持ってエヴァ弐、及び参号機を目標として設定、零、初号機に追撃させろ」



シンジ「エヴァが目標...?なぜですか!?」

リョウジ『...事情はわからないが、エヴァの無断使用は重罪だ、二人は既に目標設定されている』

シンジ「まだわからないでしょ!?きっとなにかあるんですよ!!」

シンジ「僕らでなんとかしてみせます!レイ!行くよ!!」

レイ「うん...!」

シンジ(一体どうしたんだよっ...!)




トウジ「...長いなこの通路、最深部まで何メートルあんのや」

カヲル「急いでるんだけどねぇ、こっちとしては困るなぁ」

トウジ「長すぎて暇疲れしてきよったわ」

カヲル「このまま何事もないといいんだけど...」

シンジ「...っ!」

初号機『...』

トウジ「まあ何事も無いわけが...」

カヲル「無いよね...!」

ものすごい間を空けてしまった...保守ありがとうございます。また書いていきます。


シンジ「カヲル君っ!トウジ!なんでこんなことするんだよ!」

カヲル「...」

シンジ「みんなでここまで戦ってきたじゃないか!なのになぜ...」

カヲル「シンジ君、僕はね、使徒なんだ」

シンジ「何を言って...」

カヲル「今まで色んなのがいたろ?人型がいたっていいじゃないか」

カヲル「この地下に眠る巨人アダムと僕達使徒が接触すれば、サードインパクトが起こると言われてる」

カヲル「僕はね、人類を滅ぼしにきたんだよ」

シンジ「...カヲル君は今まで僕らを騙してたの?」

カヲル「...」

カヲル「...最初は騙すつもりでいたよ、僕の役目はネルフと碇司令の監視だった」

カヲル「でもね、僕には僕の目的があったんだ」

シンジ「目的...?」

カヲル「僕はね、人為的に作られた命なんだ」

カヲル「綾波さんと同じさ」

レイ「...」

カヲル「僕は使徒として造られた、人としての楽しみなんて何もなかったんだ」

カヲル「来る日も来る日もエヴァの操縦や基本的な会話の訓練なんかをやらされてね、話す人間と言ったら僕を造ったじいさん達だけ」

カヲル「待ち焦がれていたよ、外の世界に出ることを」

カヲル「でも、外に出たって僕の自由はない。あいつらのシナリオを辿ることが僕の役目」

カヲル「だから復讐してやろうと思ったんだ」

カヲル「誰の手でもない、使徒として、僕がサードインパクトを起こしてあいつらの悲願をめちゃめちゃにしてやろうってね」

シンジ「あいつらの悲願って...僕らは使徒から人類を守ることが目的じゃないの...?」

カヲル「...あいつらのことなんてどうでもいいんだよ、ただ僕は仕返しがしたいだけさ」

シンジ「待ってよ!そんなことで人類を滅ぼすの!?」

シンジ「楽しかったじゃないか!僕は少なくとも君といて、話して、楽しかった!」

シンジ「僕は君を親友だと思ってた!」

シンジ「使徒として生まれたからって、そんなことしなくていいじゃないか!君はもう人間だよ!」

カヲル「...!」

カヲル「確かにっ!確かに楽しかったさ!君達と過ごす日々、学校の帰りに遊んだりお菓子を買ったり!」

カヲル「くだらないことを話すことも、怒ることも、悲しむことも...全部僕には新鮮だった」

カヲル「僕は君達が好きだよ、だからね、思い留まったこともあったんだ」

カヲル「こんないい人達の世界を壊していいのか、ってね」

カヲル「でもいい人間ばかりでないこともわかったよ」

カヲル「...この街を守ってきたのはアスカなのに、アスカが壊れてしまったら皆、見向きもしなかった」

カヲル「確かにいい人間もいる、けど圧倒的に悪い人間の方が多いってことに気付いたんだ」

シンジ「...!」

シンジ(同じだ...少し前までの僕と同じ)

シンジ(人の温もりを知らない、人を憎むことしかできない...)

シンジ「っ!」

シンジ「僕は君と...戦いたくない!」

カヲル「...僕だって同じさ、戦いたくなんてないよ」

シンジ「なら!」

カヲル「...もう決めたんだよ!後には戻れない!」

シンジ「っ!!」ガキィン!

カヲル「...」

レイ「...あなたは自分に言い訳してるだけ、本当のあなたはそんなこと望んでないはずよ」

シンジ「レイ...」

レイ「大丈夫?」

シンジ「うん、ありがとう」

カヲル「...君は司令だっているし、シンジ君やリョウジさんだっているじゃないか!」

レイ「確かにそう、私には私を支えてくれる人がいたわ」

レイ「だから、その人達を守るために、あなた達を止めにきたのよ」

レイ「それに、渚君、鈴原君、あなた達だって守りたい人がいるでしょう?」

カヲル「...」

トウジ「ふん、んなこというたってワシはなんともないで」

トウジ「...確かにヒカリはごっつ大事や、けどそれ以上の覚悟決めてここにおんのや」

シンジ「トウジ...トウジはなんのためにここにいるんだよ...?」



トウジ「...シンジ、いまのこの世界見てみいや」

トウジ「人間は人間同士で傷つけあって、戦争を止めずに、今地球に残ってる資源をどんどん食い潰してる」

トウジ「そんな連中守るんに価値なんてあるんか?」

シンジ「...確かに言う通りだよ、けどいつか皆が手を取り合える日だって来るはず...」

トウジ「やかましいわ!それはいつだ!?明日か?一年後か百年後か!?」

トウジ「...確かにワイは人間や、お前の言う通りそれを信じていたい気持ちはある」

トウジ「けどな、渚だけやない、ワイは使徒の気持ちがわかってもうたんや」

トウジ「最初は恨んだ、妹や友達傷つけて、なんや理由もなしに攻めてくる敵だと思っとった」

トウジ「けど、あいつらだって必死に生きとったんや。ワイ達人間から地球を勝ち取るために」

トウジ「人間みたいに同族で争っとったり、木を倒してビルを建てたりしない、ワイらなんかよりずっと純粋なんやって」

トウジ「...だから渚に着くことにした、もうワイらは後には引かへん。せやろ渚ァ!」

カヲル「...そういうことだよ、悪いけど僕らは勝たせてもらう」

シンジ「そんな...!それこそ人どうしで争って...カヲル君とだって分かり合えていたのに...!」

レイ「シンジ君、今はそう思ってる時間はないわ」

レイ「...私だってずっとみんなと仲良くしていたい、けど今私達が負けたら、今までの犠牲やみんなの想いが無駄になる」

シンジ「...わかったよ」

トウジ「...来いやシンジィ!!」

シンジ(僕だって、父さんを、全部を恨んでた)

シンジ(確かに人は愚かで醜い種族かもしれない...けど)

シンジ「僕が二人を正して見せる...!」

カヲル「...!」ガキィン!

シンジ「ぐっ...!」

シンジ「カヲルっ...アスカは!アスカはどうするんだよっ!!」

シンジ「カヲル君は大事な人と、アスカともっと一緒にいたくないのかよ!」

カヲル「...一緒がいいよ、死ぬまで離れたくはないさ、けど僕決めたんだよ!」

カヲル「それに僕は自分の仲間を手に掛けて生き残ったっ!」

カヲル「使徒でありながら、彼らと対立し、自分だけのうのうの生きて、人の良さを知ってしまったんだ!」

カヲル「これは彼らへの罪滅ぼしでもあるんだっ!」

シンジ「ううっ...!それでも、アスカは君といたいかもしれないじゃないか!」ガキィン!




トウジ「...初めて会うた時は無愛想な女や思っとったが、なんやいつのまにか表情豊かになったな」

レイ「...シンジ君やリョウジさん達のおかげよ、それにあなたのおかげでもあるわ」

トウジ「...そら嬉しいのう」

レイ「でも、今この世界を、みんなが笑ってられる所を壊される訳にはいかないの!」

トウジ「視界が狭いわ!もっと地球規模で物事を見たれや!!」





リョウジ「状況は?」

日向「未だ不明、詳しいモニターはできませんが熱源は四つ、プラグからの生命反応も四機とも健在、弐号機には二つです」

青葉「予測ではあと少しで最深部...!」

リョウジ(...最後の使徒がまさかあの少年、それに鈴原君が加担しているとは予想外だった)

リョウジ「マヤちゃん、初号機と零号機の信号が消えた時は」

マヤ「わかってます、人類全滅よりはマシですからね」

リョウジ「...すまないな」

マヤ「...いいんです、あなたと一緒なら」

マヤ「葛城さんに怒られちゃいますね」

リョウジ「彼女も俺も今はそんな余裕ないさ」

マヤ「あら、付け入る隙アリ、ですか?」

リョウジ「...それは君の魅力次第だな」

リョウジ(葛城...お前はお前で上手くやれているのか...?)

カヲル「ああああっ!!」

シンジ「ぐっ!なんで僕らが殺しあう必要があるの!?」

カヲル「まだそんなことを!リリンを守る気があるんなら本気で来いよ!!」

トウジ「足場...!」

レイ「まずいわ...シンジ君!」

シンジ「わかった...よっ!」

カヲル「やっとやる気になったみたいだね!」

レイ「シンジ君!」

トウジ「行け渚っ!!」

カヲル「鈴原君...!」

トウジ「ここはワイで抑える!お前は先に行くんや!」

カヲル「...」コクリ

シンジ「渚っ!!」

トウジ「待てやオラァ!!」

シンジ「トウジっ...!」

トウジ「ここは通さへん言うとるやろ!!」



カヲル(もう少し...あと少しで!)

~セントラルドグマ・最深部~

カヲル「ここか...」

カヲル「...」ピッ


青葉「目標、最深部到達...」

日向「...ヘブンズドアが開いて行きます...!」

冬月「遂に使徒の侵入を許してしまったか」

ゲンドウ「シンジ...」

リョウジ「マヤちゃん...」

マヤ「...!」


カヲル「...アダム」

カヲル「我らの祖先、全ての始まり」

カヲル「残ったのは僕だけだ、共に行こう」

カヲル「...違う!?これは...リリス!」

カヲル「っ...!クソッ!!」

カヲル「老人ども!どこまで僕を馬鹿にすれば気が済む!」

アスカ「...」

カヲル「アスカ、ごめん...」

シンジ「カヲル、くん...」

レイ「...」

カヲル「...やあ、遅かったね」

シンジ「トウジは強いから、僕達の誰よりも」

シンジ「レイがいなかったら、ダメだったよ」

カヲル「...」

シンジ「人は一人じゃ生きていけないよ、協力しあっていかないと」

レイ「あなたも、わかっているはず」

カヲル「...シンジ君、僕を消してくれ」

シンジ「な!?何を言ってるんだよ!」

カヲル「僕はね、消える運命なんだ。初めからね」

カヲル「君達の勝ちだ、生き残るべきは君達だよ」

シンジ「分かり合えたんじゃないの!?僕は嫌だ!一緒に来てよ!!」

カヲル「君はなにもわかってない!なにも!!」

カヲル「僕を消さなければ本当に平和にはならないんだ!」

カヲル「僕が生まれてから、自由なんてなかった!自分の意思だとおもったことすら操られていたように思える!!」

カヲル「だから...だからせめて最期くらい選ばせてよ...」

レイ「渚君..,」

カヲル「綾波レイ、君は幸せ物だ。僕も早く、君達に出会っていれば結末は変わったかもしれない」

カヲル「どうか、お願いだ」

シンジ「...」

シンジ「僕には、できないよ」

カヲル「...!」

カヲル「本当に僕を友達だと思ってるなら...」

シンジ「そんなの関係ない!確かに君のことは知らない!けど、人を、友達を殺せないって言うのがおかしいの!?」

シンジ「君が死ぬっていうなら全力で止めてやるっ!僕は君の友達だから!!」

カヲル「...ありがとう」

カヲル「でも、さよならだ」カチッ

レイ「...まさか!?」

『Dモード起動180秒以内に退避してください」

レイ「自爆する気!?」

シンジ「カヲル君!!」

カヲル「鈴原君とアスカを連れて早く逃げて、今から行けば、心の壁が君達を守ってくれる」

カヲル「君達の壁はとても強いからね」

シンジ「やめろ!今すぐ止めるんだ!!」

カヲル「君が消してくれないのなら、自ら消えるよ。リリスと共にね」

カヲル「槍が無い今、リリスは奴らにとって重要なはず」

カヲル「これ以上好きにさせないよ、これが僕の復讐だ」

カヲル「さあ、早くプラグを開けてくれ」

レイ「...」ガコン

シンジ「レイ!!」

レイ「...これが彼の選んだ道なのよ」

シンジ「そんな...!」

カヲル「ありがとう、綾波さん」


レイ「本当に、いいのね」

カヲル「アスカをよろしくね」

レイ「...うん」

カヲル「お別れだ、アスカ。せめて君だけは...幸せになってね」

アスカ「...」

アスカ「嫌」

カヲル「アスカ...?」

アスカ「...嫌。私頑張ったの」

アスカ「あんたあたしのこと好きなんでしょ」


アスカ「あんたが死ぬなら私も死ぬ」

アスカ「...一緒にいてよ」ギュッ

カヲル「...」ギュッ

レイ「アスカ...」

シンジ「カヲル君...」

トウジ「...渚」

カヲル「鈴原君...」

トウジ「安心せい、止めに来たんやあらへん」

トウジ「シンジにボコボコにされて歩くのが精一杯や、あはは」

トウジ「...それがお前のけじめ言うんならワイは止めへん」

トウジ「よく考えや」

カヲル「...僕は」

カヲル「僕は死にたくない...!」ポロポロッ

アスカ「..,」ムギュムギュ

『Dモード中止、Aモードへ移行します』

レイ「よかった...」

トウジ「...最初から間違っとったんやな、ヒカリ」

シンジ「リョウジさん」

リョウジ『シンジ!状況は!?』

シンジ「使徒は、殲滅しました」




~ネルフ本部・第一司令室~

シンジ「リョウジさん」

カヲル「...」

青葉「渚君...」

シンジ「使途は、もういません」

リョウジ「ああ、よくやったな」

リョウジ「ここにいるのは人だけだ」

日向「ですが彼は使徒...」

アスカ「...」ギロッ

日向「あ、アスカちゃん...!」

アスカ「カヲルのこと悪く言わないでください」プンスカ

日向「こ、ごめん」

カヲル「いいんだよアスカ、そう思われても仕方ないんだ」

アスカ「...」ギュム

トウジ「こいつほんまに惣流か...?」

シンジ「べったりだね」

カヲル「皆さんお騒がせしてすみません、ですが、僕にはもう敵意はありません」

青葉「...そうは言うが、すぐに信じろと言うのも無理な話だぞ」

日向「実際、僕らは君のせいで滅びかけたんだぞ」

冬月「鈴原トウジ、渚カヲル両名はエヴァの私的占有、及びネルフへの反逆の罪に問われる。それ相応の覚悟はしてもらうぞ」

カヲル「わかっています、もちろん罰は受けるつもりです」

カヲル「...その前に、僕の話を聞いてください」

カヲル「碇司令、よろしいですね」

ゲンドウ「...ああ、話したまえ」



カヲル「まず、あなた方人類が使徒と呼ぶ者達の17番目の存在です」

カヲル「そして僕が最後、もう使徒は僕以外残っていません」

カヲル「僕は人類補完委員会、このネルフの上位組織に当たるゼーレから、ネルフの動向を探るために来ました」

青葉「スパイということか...?」

カヲル「そうです、僕は彼らによって、彼らの駒として生み出された人造人間です」

カヲル「...ですが、僕は彼らを良く思っていない」

カヲル「先に言っておくと、委員会の狙いはサードインパクトの誘発です」

日向「なっ!?」

青葉「待ってくれ、俺たちは使徒にサードインパクトを起こさせないための組織じゃなかったのか?」

カヲル「そうです、正確には『使徒によってサードインパクトが起こされるのを阻止する』ためのね」

カヲル「彼らは『人の手』でサードインパクトを起こそうとしている」

マヤ「なぜそんなことを...?サードインパクトが起きたら、人類は滅びるんでしょう?」

カヲル「そう、彼らは人類を滅ぼす気でいる。人類はすでに同種同士で争い、地球を汚し、とても罪深い存在だからと」

マヤ「そんな...私達はそんなことのために今まで戦ってきたの?」

青葉「狂ってる...」

カヲル「そう、彼らは理想という名の妄想に囚われたただのエゴイストだ」

リョウジ「...なら、何故使徒はこの地下の巨人を目指して来た?ただ人類を滅ぼすためか?」

カヲル「人類を滅ぼしにきたのは間違いない、僕達はこの地球上でのもう一つの可能性だった」

カヲル「いわば生存競争をしていた、とでもいいましょう」

日向「生存競争?奴らが?」

カヲル「...昔の話をしましょう」

カヲル「今から遥か昔の話です、地球にはまだ生命すら存在しなかった頃の」

カヲル「地球の今で言う南極の地点に、ある星が衝突した」

カヲル「その星に僕達の祖先である、アダムがいました」

カヲル「アダムは地球に僕達使徒の卵を産みました」

カヲル「そして、僕の仲間たちが活動しようという時に、今の日本、まさにこのジオフロントのある場所にもう一つの星が落ちた」

カヲル「僕達はこの星を白き月、アダムがいた星を白き月と呼んでいます」

カヲル「そしてこの白き月には、ここの地下に磔にされているリリスがいた」

カヲル「このリリスがあなた方、人類の祖先です」

リョウジ「俺達はリリスの子孫ということか...」

カヲル「そう、そして白き月の落下した衝撃により、僕達使途とアダムは活動を停止してしまった」

カヲル「その間にこの地球上でもっとも繁栄したのが、人類という種族だった」

カヲル「僕らは人類からこの地球上での生存権を獲得しに来たということです」

カヲル「そして人類は裏死海文書とロンギヌスの槍を見つけてしまった」

カヲル「裏死海文書にはアダムやロンギヌスの槍について、そして未来、使徒が攻めてくることが書かれていました」

カヲル「誰が、何のために作ったのかはわかりませんが、恐らくアダムと共に白き月に入っていたものでしょう」

カヲル「人類はアダムを探し、南極の下でアダムを見つけた」

カヲル「死海文書に書かれたことが本当だとすると、このままでは人類は滅亡します」

カヲル「ここでロンギヌスの槍を使い、アダムを卵の状態まで還元してしまおうとしました」

カヲル「...この代償として起きたのが、セカンド・インパクトです」

リョウジ「!」

リョウジ「...セカンド・インパクトは人が起こしたものだったっていうのか?」

カヲル「...はい」

リョウジ「...」ギリッ

カヲル「その時、アダムは砕け散り、魂と体が散り散りになってしまった」

カヲル「...その魂は、僕の中にあります」

日向「なんだって!?」

カヲル「僕は造られた身体にアダムの魂を入れられた存在なのです」

アスカ「...そんなこと言ったってあんたはあんたよ」

カヲル「わかってるよ、ありかとう」

トウジ・シンジ・レイ「...」

カヲル「そこで攻めてくるであろうこの第三新東京市とその地下の黒き月にジオフロントとエヴァ、迎撃都市を建造し、来るべき時まで待ち構えて使徒を全滅」

カヲル「使徒亡き後、人の手によって罪深き人類を裁く。これが委員会のシナリオです」

トウジ「...許せへんな」

シンジ「僕らはそのために使徒と殺しあってたなんて...」

カヲル「そして散り散りになったアダムの体、それを持っているのが...」チラッ

リョウジ「...碇ゲンドウ、あんただ」ジャキッ

シンジ「リョウジさん!?」

ゲンドウ「...」

青葉「どういうことですか...?」

リョウジ「葛城に聞いた、司令にアダムの還元された肉体を横流ししたと」

リョウジ「他にも色々調べさせてもらった、碇司令、あんたが何か企んでるのはわかってる」

リョウジ「...アレを起こした人間を許すつもりは無い、お聞かせ頂きましょうか」

リョウジ「真実を」

あれ両方白き月になってね?

ゲンドウ「...確かに、私はアダムを持っている」

リョウジ「...」

ゲンドウ「...私にはユイという妻がいた」

ゲンドウ「彼女は人を憎むことしか知らない私に、全てを、光をくれた」

ゲンドウ「当時ネルフの前身組織であったゲヒルンの所長だった私は、使徒襲来に対抗するため、アダムの分身を造り出そうというE計画を立案した」

ゲンドウ「そうして完成したのがエヴァだ」

ゲンドウ「初号機の起動実験時のテストパイロットが、ユイだった」

ゲンドウ「...ユイは、それきり戻ってはこなかった」

ゲンドウ「魂が初号機に取り込まれてしまった」

シンジ「母さん...」

冬月「...」

ゲンドウ「その後、私はゼーレにある計画を提唱した」

マヤ「人類補完計画...!」

ゲンドウ「そうだ」

ゲンドウ「フィフスが先程言った通り、人類を全て滅ぼし、その魂を新たな完全生命体として一つにする」

ゲンドウ「宗教的な老人達はすぐに了承したよ」

ゲンドウ「だが、私はそんなことには興味はない」

>>576 すいません誤字です...

またかなり間を空けてしまい本当に申し訳ありません...。保守してくださった方々本当にありがとう!
完結まで頑張りますので気長にお待ち頂ければ嬉しいです。

ゲンドウ「アダムとリリス、使徒の持つ生命の力と人の持つ知恵の力。その二つが交わる時、神のごとき力を手にすると言われている」

ゲンドウ「...私は、俺はもう一度会いたかったのだ、ユイに」

ゲンドウ「そのために、多くの者を犠牲にしてきたのは承知している」

ゲンドウ「パイロット諸君、共に戦ってきた者達、赤木君...レイ」

ゲンドウ「...すまなかったな、シンジ」

シンジ「父さん...」

ゲンドウ「俺は、お前を育てることを、お前の父親である事を放棄した。愛するユイとの子供であるお前を拒絶してしまった」

ゲンドウ「...だが決して、嫌っていたわけではない。人から疎まれ、憎まれることしか知らない俺に、ユイがいない俺に、父親が務まるとは思えなかった」

ゲンドウ「今更と思うだろうが、どうか聞いてほしい」

ゲンドウ「お前と再開し、言葉を交わし、お前は独りでも強く生きて来たのだとわかった」

ゲンドウ「...お前は俺より強い」

ゲンドウ「加持君、撃ちたければ撃ちたまえ」

ゲンドウ「私もまた、私欲のために犠牲を出したおろか者の一人だ」

ゲンドウ「あの老人共と同じくな」

シンジ「父さん!!」

シンジ「父さん...僕だって嫌ってない、確かに僕は捨てられたんだと、なんで僕には親がいないんだって、そう思ってたよ」

シンジ「でももう一度会えたじゃないか、ちゃんと話ができたでしょ!?」

シンジ「今更なんてない、遅かっただけならそれでいいじゃないか...」

ゲンドウ「...」

レイ「...確かにあなたは歪んでいるのかもしれない」

レイ「けれどあなたが望んでくれなければ、私はこうして生まれなかった」

レイ「なぜ私は生まれたのかわかれなかった、けれどたくさんの人と出会い、触れ合う機会をくださった」

レイ「碇司令、あなたはわたしにとっては、ただ一人の父親でした」

ゲンドウ「レイ...」

リョウジ「...シンジとレイのためです、銃は下ろします」

ゲンドウ「...」

リツコ「ダメよ」ガチャッ

リョウジ「リッちゃん...」

シンジ「リツコさん!」

リツコ「私は騙されない、その甘い言葉で一体何人不幸にしてきたんです?」

ゲンドウ「...そうだな」

ゲンドウ「...」 スッ

冬月「碇...何を!?」

ゲンドウ「これはもう、必要ない」グチャッ

リョウジ「!」

冬月「碇!!」

ゲンドウ「...すみません、冬月先生」

冬月「...お前のためではない、全てはユイ君のためにしてきたことだ」

冬月「それに、今更何をされても驚かんよ」

冬月「私はただ、お前についていくだけだ」

ゲンドウ「冬月先生...」

冬月「ユイ君のために、な」

ゲンドウ「...はい」

ゲンドウ「...赤木博士、これが私の答えだ」

ゲンドウ「信じてくれとは言わん、だが、これから私が成すことを見ていてほしい」

リツコ「...わかりましたわ」

リツコ「ですが忘れないでください、あなたが死ぬまで、きっちり見ていますから」

リツコ「もう一度道を外れた時は、おわかりでしょう」

リツコ「次は、許しませんわ」

ゲンドウ「...ありがとう」

シンジ「父さん...」

リョウジ「リッちゃん...いいのかい?」

リツコ「...ほんと女って嫌ね、つくづく自分を見下すわ」

リョウジ「そういう所に惹かれちまうのさ」

リョウジ「結局、男も女も、人間ってのはバカなのさ」

リツコ「...違いないわ」

トウジ「良かったのう、シンジ、綾波」

シンジ「...うん!」

カヲル「...」

カヲル「みなさん、いま一度僕の話を...」ビーッ!ビーッ!

リョウジ「警報?なんだ?」

マヤ「これは...ハッキング?」

日向「...サーバーに侵入者?マギにハッキング!?」

冬月「なんだと?」

青葉「マギとメインコンピュータに複数の侵入者!」

ゲンドウ「侵入を阻止、どこからだ?」

マヤ「...少なくとも三方向からの侵入!中国・ロシア・アメリカのマギタイプと推測!」

冬月「まずいぞ...!」

ゲンドウ「ああ、マギの占拠は本部のそれと同義だ」

カヲル「...流石は老人共、こういうことだけは得意だ」

カヲル「みなさん、今から僕が話すのは『これから』の話です」

カヲル「委員会の敵、使徒は僕を残し全て消えた」

カヲル「残る邪魔者は僕と、このネルフ」

トウジ「な、なんやと!?」

カヲル「僕を消さなければ、契約は完璧に成立しない。そして残りのエヴァが邪魔になる」

カヲル「真実を知った我々を、奴らが消しに来ないわけがない」

シンジ「そんな...じゃあそれって」

カヲル「そう、僕らの最後の敵は」

カヲル「...同じ人間だ」

マヤ「だめです!手数が違いすぎます!」

ゲンドウ「マギを開けろ、赤木博士、マギに対し第666プロテクトを」

リツコ「承知しました」

リツコ「マヤ、私はこっちに専念するから後、頼んだわよ」

マヤ「はい!」

青葉「国連よりメッセージ受信!」

ゲンドウ「特例、特務機関ネルフの法的保護の放棄、指揮権の日本政府への完全譲渡...!」

日向「くそっ!」

リョウジ「やることが汚ねえぞ...!」

ゲンドウ「...諸君、今赤木博士がマギにプロテクトを掛けている。これが成立すれば、以後48時間は外部侵攻不可能となる」

ゲンドウ「マギの占拠が不可能となると、恐らく」


ゲンドウ「本部の直接占拠に乗り出してくるだろう」

リツコ「...よし、これで終了ね」

リツコ「...母さん、私、母さんをずっと見下していたわ」

リツコ「馬鹿な男に騙されて、死んでしまって」

リツコ「ごめんなさい、わたしも馬鹿ね」

リツコ「

リツコ「でも、母さんは私を育ててくれたわ」

リツコ「私も、なにかを成さないとね」

リツコ「...ありがとう、またね、母さん」

リョウジ「用が済めば、口封じに、という事ですか...!」

ゲンドウ「そうだ。今真実を知るものはここにいる者たち、奴らにとって最後の障害は使徒ではなく人だよ」

マヤ「そんな...」

青葉「馬鹿げてやがる...!」

冬月「そして契約の最後の妨げ、エヴァンゲリオン」

冬月「人が自らを守るため作り出した偽りの神」

冬月「自ら造り出しておきながら、全く勝手な話だな」

ゲンドウ「...恐らく最優先目標はエヴァパイロットの抹殺だろう」

シンジ「そんな...!」

トウジ「渚、ほんまに人類滅ぼさんでよかったんかわからなくなるな」

カヲル「それでも、僕らの選んだ答えさ」

カヲル「けど、生きるべきは君達のような人だ」

カヲル「彼らの優しさは、本当の優しさとは違う」

カヲル「僕らの歩む道は自分で決めるべきさ、そうだろうアスカ」

アスカ「うん...」コクリ



『碇はマギに対して第666プロテクトを掛けた』

『この突破は容易では無い』

『...馬鹿な奴らだ、大人しくしておけば無駄な苦痛を味わわずに済むものを』

『彼らもすぐに救済されるだろう、我々の手によってな』






「...正式に命令が下った、本部施設に対地爆撃開始、待機部隊突入」

『了解』

「やれやれ...我らに楽な仕事はないな」

「まさかネルフがそんなことを企んでいたとは...」

「おい、お前もそろそろ待機しておけ。戦車の写真ばかり撮ってる暇は無いぞ」

リョウジ「まずいな...お前ら早くスーツに着替えて...」ドゴン!!

シンジ「うわっ!!」

トウジ「なんや!?」

マヤ「上空に爆撃機多数!今まで熱源なんてなかったのに!」

リョウジ「ステルス爆撃機だろう...そんなものまで持ち出してくるか」

青葉「第13~26カメラ、応答無し!」

日向「西館入り口多数爆破!侵入者あり!」

リョウジ「くそっ!!」

リョウジ『こちら作戦本部長の加持だ、現在ネルフ本部は何者かによる襲撃に遭っている!非常時防衛部隊は西館ルートの防衛にあたれ!訓練を受けている者も武装しろ!』

リョウジ『非戦闘員は本部まで下がれ!無理ならドグマまで後退しろ!余ってるなら武装しておけ!なお、これからの通信は敵に傍受される可能性があるため内線での定期連絡とする、以上!』

リョウジ「お前らも武装しておけ、緊急時戦術マニュアルをよく思い出しとけ」

マヤ「こ、ここまでくるんですか?」

リョウジ「なきにしもあらず、だ。なにせここの連中はまともな訓練は受けてないやつが多い」

リョウジ「奴らはプロ、なにもしなければ殺されるだけだ」

マヤ「...はい」



リョウジ「...ダメだ、回線が切られてるなこりゃ」

リョウジ「使える部隊は...どこも手一杯か。仕方ない、俺一人で...」

リツコ「私も行くわ」

リョウジ「リッちゃん...大丈夫か?」

リツコ「あら、私って射撃の腕、良いのよ?」

リョウジ「...頼りにしてるぜ、リッちゃん」

リョウジ「よし、これからエヴァのケージに向かう。本部職員しか知らないルートを通っていくが、念のため俺とリッちゃんが護衛につく」

リョウジ「いいか、絶対に俺たちから離れるなよ」

シンジ「わかりました」

レイ「同じく」

トウジ「了解!」

カヲル「わかりました」

アスカ「...怖い」

カヲル「大丈夫、リョウジさん達が守ってくれるさ」

リョウジ「ああ、絶対に君達を無事に送り届けて見せる」

リョウジ(もう何も失わない、この命に代えても守るさ)

リョウジ「よし、行くぞ」

ゲンドウ「シンジ、レイ、鈴原君、渚君、惣流君」

ゲンドウ「...気をつけて、行くんだぞ」

シンジ「うん!」

レイ「はい...!」

トウジ「もちろんですわ!」

カヲル「ここまで来て、死ぬ気は無いよ」

アスカ「...」ギュッ

ゲンドウ「...」ニヤッ

シンジ(父さんの笑顔...初めて見た)

レイ(似合わないわ)

トウジ(なんや気色悪いなぁ)

カヲル(変なの)

アスカ「...」クスッ

ゲンドウ「...加持君、赤木博士。子供達をよろしく頼む」

リョウジ「はっ!」

リツコ「言われずとも」

冬月「お前の笑った顔など、いつぶりか」

冬月「ユイ君は、良く笑っていたな」

ゲンドウ「ああ...」

ゲンドウ(ユイ、私の子供が、我々の希望となる)

ゲンドウ(シンジを、守ってやってくれ)

青葉「しかし、人のために働いてきた俺たちの末路がこんなもんだったとはな」ガチャガチャ

日向「あーあ!こんなことなら普通に就職するんだったよ全く」

マヤ「今更嘆いても仕方ないですよ、今まで人類に貢献してきたのは事実なんだし」

青葉「ああ、そうだな。正しいのは俺たちだよ」

青葉「...向こうはそう思っちゃないのがムカつくけどな」

日向「殺し合いなんてしたくないが、やらなきゃやられる」

日向「馬鹿な話だよほんとに」

マヤ「...生き物って、悲しいものですね」

青葉「...うん」

リョウジ「ここからケイジを目指す、まだ気づかれちゃいないはずだ」

リョウジ「足元、気をつけろよ」

シンジ「はい」

リツコ「そこを右に...」ドンドン!

「いたぞ!片付けろ!」

リョウジ「くそっ!!」ドンドン!

トウジ「うわっ!?」

リツコ「みんな!とにかく逃げて!」

シンジ「逃げろったって!?」

リョウジ「こっちだ!来い!!」

シンジ「うわっ!?」

「...」

「地下通路ルート20にて、目標と接触。恐らく専属搭乗者多数」

『最優先目標だ、特に5thは絶対に片付けろ』

「了解、引き続き捜索を続行する」

トウジ「はぁはぁ...ここどこや...?」

トウジ「...一人か」

トウジ「あちゃー...はぐれてもうた...」

トウジ「おとんがよく言うとったっけな、辛い時こそ気張れって」

トウジ「とりあえず進むしか...」

トウジ「...」

ネルフ職員「...」

トウジ「...なんでこうなるねん」

トウジ「さっきまで、ほんの少し前まで、今日は何食うかとか、明日はなにするかとか、そんなことを...!」

トウジ「これが人のすることかいな!」

トウジ「...カードキーと銃、借りてきます」

シンジ「...ううっ」

リョウジ「大丈夫か、シンジ」

シンジ「は、はい...でもみんなは」

リョウジ「はぐれちまったみたいだな...」

シンジ「そんな...大丈夫かな」

リョウジ「大丈夫、きっと無事さ」

リョウジ「...ここからだと俺の車を取りに行ける、立てるか?」

シンジ「はい、急ぎましょう!」

リツコ「...行ったわね」

リツコ「撃たれなかった?」

レイ「はい...あの、赤木博士は」

リツコ「大丈夫、準備は万全よ」

リツコ「白衣の背中に鉄板を入れておいたの」

リツコ「研究者たる者、常に先を見据えてないとね」

リツコ「さ、こっちよ」

レイ「はい!」

カヲル「...アスカ?」

カヲル「いない...!」

カヲル「くそっ!まずい!今のアスカじゃ見つかったら確実に殺される!」

カヲル(どこにいる!?アスカっ!!)

アスカ「...」

アスカ「私...生きてる...?」

アスカ「なんで...?また一人なの...?」

アスカ「もう嫌...一人ぼっちは嫌なの...」

アスカ「ママ...」

リョウジ「よし、この区画はまだ入られてないみたいだな」

リョウジ「道じゃないとこを進むが、ちょっと揺れるけど我慢してくれよ」

シンジ「はい」バタン

リョウジ「...ここを切り抜けたら、またドライブでも行きたいなぁ」

シンジ「みんなで!みんなで行きましょう!」

リョウジ「そうだな、あ、でもそれだともっとデカイ車借りないとな」

リョウジ「給料足りっかなぁ」

シンジ「ははっ節約しないとですね」

リョウジ「...なぁシンジ、ちょっとおっさんの話、していいか?」

シンジ「えっ?」

リョウジ「タバコ、吸っていいか?」

シンジ「え、あ、どうぞ」

リョウジ「ありがとう」カチッ

リョウジ「車ではあまり吸わないようにしてたんだけどな、臭いがなかなか抜けなくてね」

リョウジ「それじゃ、話、聞いてくれ」

シンジ「いいですけど、なんでこんな時に」

リョウジ「ふぅ...こんな時だからだよ。お前にはどうしても話しておきたいことなんだ」

シンジ「っ...!それじゃまるでドラマとかでこれから死にに行く人みたいですよ!」

リョウジ「シンジ、死っていうのはな、いつも身近に潜んでるもんさ」

リョウジ「いまの状態だってそうだし、使徒の襲来だってそうさ」

リョウジ「世の中には、いつも理不尽な驚異が突然襲い掛かってくる」

リョウジ「...俺の仲間も、それに巻き込まれちまった」

シンジ「仲間...?」

リョウジ「...俺にはね、少し下の弟と固い絆で結ばれた友達がいたんだ」

リョウジ「セカンドインパクトが起きた時、俺はちょうどシンジ達と同じくらいの歳だった」

リョウジ「世界中が大飢饉に襲われた。食うものがとにかくなくてね、数えきれない人が死んでった」

リョウジ「そんな時代だ、俺達みたいな親のいないガキは一斉に孤児院もとい収容所にぶちこまれた」

リョウジ「その中も外と同じさ、結局子供同士で食い物と寝床の奪い合いだ」

リョウジ「そんな生活にいよいよ嫌気がさした俺たちはとうとうそこを抜け出した」

リョウジ「その後は少し離れた廃ビルにみんなで住み着いてね、自分たちで自由なスペースを使えることが嬉しかったよ」

リョウジ「でも嬉しさや解放感なんて最初のうちだけ、すぐに生きるために必死にならざるを得なくなった」

リョウジ「当たり前だよな、孤児院の中ですら奪い合いだったものが外にあるはずもない」

リョウジ「そこで俺たちは近くの軍の食料庫から食い物をくすねるようになった」

リョウジ「毎回交代制でね、孤児院よりも良いものがたくさんあったよ。缶ジュースや菓子パン、お菓子もあった」

リョウジ「この時に初めて、大人は汚いんだって思ったよ。孤児院じゃパン屑や野菜屑のスープみたいなもんしか出てこなかったからな」

リョウジ「...その日はね、俺が当番だった。いつものように忍び込んで、適当に見繕ってすぐにとんずらするつもりだった」

リョウジ「いつもみたいに帰って、みんなで馬鹿な話をしながら食うつもりだったんだ」

リョウジ「でも俺は、缶を一つ落としちまったんだ」

リョウジ「その音でそこの警備兵に見つかった」

リョウジ「そこにいる奴ら全員にリンチにされたよ、『いつも忍び込んでるガキ達の仲間だな、居場所を吐け』って言われてね」

シンジ「言ったんですか...?」

リョウジ「...最初はとぼけたさ、すぐには言わなかったよ」

リョウジ「けどね、銃を突き付けられたんだ」

リョウジ「俺はね、俺は、死ぬのが怖かったんだ」

リョウジ「居場所を吐いた後、すぐに数人がトラックで向かってった。俺は見張りの奴をぶん殴って逃げたんだ」

リョウジ「必死に走って、戻ったらそこに生きてる奴はいなかった」

シンジ「...」

リョウジ「俺は仲間を売って、自分だけ生き残ったんだ」

リョウジ「...その後、俺は運良く遠くの親戚が見つかり、引き取られ、学校にも行かせてもらえた」

リョウジ「あいつらは俺のせいで死んだのに、俺だけが生きてることに耐えられなくなってね」

リョウジ「必死に勉強して、もうあんなことを繰り返させないために、俺たちのような子供が生まれないためにネルフに入ったんだ」

リョウジ「まさかそのネルフの上位組織がもう一度アレを起こそうとしてるとは思わなかったけどな」

リョウジ「ごめんな、こんな話して。どうしても話しておきたかったんだ」

シンジ「...いえ、大丈夫です。僕は、幸せ者なんだって思いましたから」

リョウジ「...いや、君の方が不幸さ」

リョウジ「俺は仲間達の死に恥じないため、自分を律するために戦ってきた」

リョウジ「もしかしたら、自分の罪の意識だけでここまで来たのかもしれない」

リョウジ「でも君は、エヴァに乗って、自分の命を危険に晒し、人類全ての命を背負って戦ってきた」

リョウジ「プレッシャーに感じてしまうかも知れないが、エヴァで戦うのは、君にしかできない、君にしか世界は救えないんだ」

リョウジ「絶対に勝つんだ、シンジ。勝ってみんなで今度こそ、幸せになろう」

シンジ「...はい!」

リョウジ「...よし、ここから少し歩けば着く。もう少しで初号機だ」

カヲル「はぁ...クソッ、どこにいるんだ...」

アスカ「いやっ!いやぁっ!!」

カヲル「アスカ!?」

戦自隊員「2ndを発見、排除する」

『了解、排除後残りの操縦者を捜索せよ』

戦自隊員「了解」

戦自隊員「悪く思うなよ、嬢ちゃん」

アスカ「いやっ!死ぬのはイヤ!!」

カヲル「アスカっ!!!」

戦自隊員「!?5thか!」バンッ!

カヲル「...!」ガキィン!

カヲル「アスカっ!僕の後ろに!」

アスカ「...!」

戦自隊員「ちっ...例の防壁か」

戦自隊員「化け物め...!」

カヲル「...どっちが化け物だよ」

カヲル「僕は人として生きる、壁はもう使わないって決めたんだ...なのに!」

カヲル「行くよ!アスカ!」


戦自隊員「...5thと2ndが合流、取り逃がしました。やはり目標は通常兵器での排除は困難かと思われます」

『了解、そいつらは泳がせろ、時期にアレが起動する』

戦自隊員「了解」


トウジ「...」

『E-20エリアは制圧完了、紫の奴は制圧下にある』

トウジ「無線拾って良かったわ...初号機は制圧下って...シンジは大丈夫なんか...?」

トウジ「幸い参号機はまだ平気みたいやし、急がな!」

トウジ「ああっくそっ!こんなことなら日頃からちゃんと地図頭に入れとくんやった!」

リョウジ「よし、この奥からケージに直通できる」

シンジ「早くしないと...!」

戦自隊員「いたぞ!3rdだ!撃てっ!!」

リョウジ「!?シンジ走れっ!」

シンジ「は、はい!」

リョウジ「うぐぁっ!?」ダンッ!




ガチャン



戦自隊員「目標を取り逃がした、追跡の是非を」

『そこは爆破予定地だ、速やかに撤退せよ』

戦自隊員「了解」

リツコ「...いないわね」

リツコ「こっちよ」

レイ「はい」

リツコ「...学校はどう?」

レイ「え?...とても楽しいです」

リツコ「そう...ごめんなさい、こんな時にする話じゃなかったわね」

リツコ「...その、レイ」

レイ「?」

リツコ「私のことお母さんだと思ってくれてもいいのよ」

レイ「?ごめんなさい、声が小さくてよく聞こえませんでした」

リツコ「...いいのよ、さぁ急ぎましょう!」

また長らくお待たせして申し訳ありませんでした。待ってくださっていた方々、本当にありがとうございます。
年内完結は厳しいですが、絶対に書き切りますのでもうしばしお付き合いして頂けたら嬉しいです。

シンジ「...!」

リョウジ「はぁ...うぐっ!」

シンジ「リョウジさんっ!」

リョウジ「大丈夫...擦り傷さ」

シンジ「でもっ...」

リョウジ「それより時間が無い...電源は生きてる、そこのリニアからケイジに直通できる」

リョウジ「早く乗るんだ」

シンジ「でも!そんな身体で!」

リョウジ「俺はここに残る、俺のことは気にすんな」

シンジ「そんな!一人で置いていけな...」

リョウジ「シンジ!!」ドンッ!!

シンジ「!」

リョウジ「...よく聴け、お前がここでやれなかったら、俺達はここで終わっちまう」

リョウジ「俺にはお前が行くまでここを守ることしかできない。けどお前には力がある、できるな?」

シンジ「...はい」グスッ

リョウジ「...いい子だ」

リョウジ「...今まで辛い思いをさせて本当にすまなかった」

リョウジ「これで最後にしよう、終わったらまたみんなで卓を囲んで飯を食おう」

シンジ「うぅっ...ぐっ...」

リョウジ「泣くな、男が泣いていいのはな、女にこっ酷くフられた時くらいだ」ポンポン

リョウジ「...頼んだぞ」

シンジ「リョウジさ...!」ガチャン


リョウジ「...行ったか」

リョウジ「うっ...」ドサッ

リョウジ「思ったよりも傷が深みみたいだな...」

リョウジ「いや、こんなとこで終われるか」

リョウジ「発令所まで持ってくれよ...!」

トウジ「...」

トウジ(ケイジまで辿り着いたはええんやけど、この近辺、あれだけいた兵士がぱったり途絶えとった)

トウジ(罠...?いや、今ワイに出来ることはコイツに乗ることだけや)

トウジ「...頼むで、ワイの参号機」

参号機『...』

戦自隊員「...そうか、了解」

戦自隊員「おい、そろそろ出番だ。動かせるようにしておけ」

戦自隊員「どれが出てくるかはわからん、マニュアル通りに進めろ」


「はっ!了解であります!」

トウジ「外は見回す限り敵だらけや...」

トウジ「せやけど、怖気付いてる暇はあらへん!」

トウジ「こちら参号機!ケイジまで辿り着いて今外に出ました!」

青葉『...鈴原くんか!良くやった!他のエヴァが出せるようになるまでとにかく外の敵を減らしてくれ!』

トウジ「了解!うっし!いっちょやったるで!」

『そこまでだよ』

トウジ「...!?」

『...久しぶりだね、トウジ』

トウジ「四号機...?その声...」

トウジ「ケンスケ...なんか?」

ケンスケ『...』

トウジ「ど、どうしてお前がここにおるんや!疎開したはずじゃ...」

ケンスケ『...トウジ、僕の話を聞いて』

ケンスケ『お前達は騙されてるんだ!お前も、碇達も!』

トウジ「なっ...!?」

ケンスケ『ネルフは世界を滅ぼそうとして計画してきたんだ!お前達はそのために今まで利用されて、戦わされてきたんだ!』

ケンスケ『トウジ達は今国家への反逆の罪に問われてる、でも今投降すれば命は保証される!』

ケンスケ『俺と来てくれ!トウジ!』

トウジ「何言っとるんや!人類滅ぼそうとしてんのはお前らや!」

ケンスケ『違う!これは国連の直々の命令による作戦なんだ!世界を滅ぼすのは碇司令なんだよ!』

トウジ「騙されとんのはお前らや!ワイは司令や渚から真実を聞いた!ケンスケ!お前こそ騙されとる!」

トウジ「ワシらで...人同士で戦う必要なんてもう無いんや!」

ケンスケ『...僕だって知ってる!渚は!渚カヲルは使徒だったんだろ!?』

ケンスケ『あいつらは敵だ!俺よりも敵の言うことを信じるのかよ!お前は!!』

トウジ「...こちら鈴原、四号機と会敵。すまへんがワイはこいつの相手せにゃなりまへん」

ケンスケ『トウジっ...!』

トウジ「ケンスケ...!」


「「このわからずやがぁ!!」」

青葉「...四号機だって!?」

マヤ「外にパターンオレンジが二つ!間違いありません!片方は四号機です!」

日向「そんな...エヴァまで出てくるなんて」

冬月(そのための四号機の接収か...老人どもめ)

冬月(使徒亡き後も人の駒としてエヴァを使うか、全く愚かな連中だな)

冬月「加持君と赤木君に連絡を、外だけでもどうにかせねば本部占拠は時間の問題だぞ」

マヤ「了解!」

冬月(エヴァさえ出せれば数で劣っていようと戦力はこちらに部がある)

冬月(...ここでアレを起こすつもりでなければな)

マヤ『リョウジさん!先輩!現在外で参号機と四号機が交戦中!鈴原君は四号機を抑えてるので、このままだと外の部隊を抑えきれません!』

リツコ「...なるほど、そのための接収。恐らく渚君の裏切りも予想しての戦力確保だったのかしらね」

リツコ「零号機はプロトタイプでありアダムコピー、リリスベースの初号機と違って儀式にも使えない。それで戦力として軽く見られていたのかしら」

リツコ「まだ細工はされてないない。みんなとは逸れてしまったけれど、間に合ってよかったわ。不幸中の幸いね」

リツコ「レイ、よく聞いて頂戴。今上では鈴原君が四号機を食い止めてるわ」

リツコ「あなたは本部の近くに出てもらって本部付近の地上部隊と航空部隊の殲滅に当たってもらいます」

レイ「わかりました」

リツコ「あなたと零号機なら必ずできるわ」

リツコ「...頑張ってね」

レイ「はい!」

リツコ「...あなたは人形なんかじゃない、機械でもない、人よ」

リツコ「必ず帰ってきなさい、何度でも私が調整してあげる」

リツコ「行ってらっしゃい、レイ」

レイ「...行ってきます!」

カヲル「...ダメだ、僕の力を持ってしても動かせない」

カヲル「こちら渚、なんとかエヴァまできたけど、弐号機は僕もアスカも動かせません」

ゲンドウ『...よく辿り着いた、今この施設の中で、エヴァの中が一番安全だ』

ゲンドウ『地底湖の深くに弐号機を隠す』

ゲンドウ『君達は生き残ることだけを考えたまえ、準備が出来次第手動でロックを外してくれ』

カヲル「...了解、感謝します」

カヲル(何故動かせない...?弐号機の心は閉ざされたままのはず)

カヲル(さっき心の壁を使った時も感じた、僕の使徒としての力が弱まってる気がする...そのせいか?)

カヲル(僕の人でありたいという心がそうさせている...?)

カヲル(どちらにせよ僕にできることは、アスカを守ってやれることだけか...みんな、ごめん)

アスカ「...ごめん、私のせいだよね、弐号機動かないの」

カヲル「ち、違うよ!アスカのせいじゃない」

カヲル「...エヴァにもね、僕達と同じように心があるんだ。ただの機械じゃない、その心を閉ざしてしまっているのさ」

アスカ「心...私のせいだね。私、弐号機にひどいことしたもの」

アスカ「私の価値を出すための人形としか思ってなかった、だからきっと怒っちゃったのね」

カヲル「アスカ...」

カヲル「大丈夫さ、みんながきっとやってくれる」

カヲル「僕達は彼らを信じて、生き残ろう」ギュッ

アスカ「...うん」

カヲル(僕がいる限り契約は成り立たない筈、そのためにも今は死ぬわけにはいかないんだ)

リョウジ「...弐号機は起動せず、か」

リョウジ(レイ、シンジ...頼むぞ)

戦自隊員「...」

リョウジ(それよりまずは自分の心配だが...)

リョウジ(ここから発令所まではあの通路は避けられない)

リョウジ(三人か...)

リョウジ(残りの弾は二発...一人は銃なしでどうにかするしかない)

リョウジ(...今行くしかない!)

またもかなり遅れてすみません。お待たせしました。また、場面が飛んだり...が多く読みにくい文になってしまい申し訳ありません。待ってくださった方々、今回もお待ちくださりありがとうございました。

トウジ「ぐぎぎぎ...」

ケンスケ『ほら見ろっ!いくら正式機と言っても、僕の四号機には敵わない!』

ケンスケ『四号機は内臓電源が他とは違う!そして僕は本部であらゆるシュミレーションをこなした!』

ケンスケ『そんな僕にそんなエヴァで...勝てるはずないだろっ!!』

トウジ(焦るな...冷静さを失うな、電源ケーブルを切られたら消耗戦でこっちが不利になる)

トウジ(電池切れが無いならその線で無力化は不可、止めるには機体をぶち壊すか...)

トウジ(...プラグを潰すか)

トウジ(ダメや、そんなこと...ダチ手にかけるなんてワシにはできへん)

トウジ(だが甘さを捨てへんと、あいつは完全に殺る気やで)

トウジ「...前々から思っとったがなぁ、お前考えが偏っとんちゃうか?」

ケンスケ『...』

トウジ「シュミレーション?練習がなんぼのもんじゃ!ホンモノのパイロットの底力見せたるわ!」

ケンスケ『...!』

ついに来た

細かいがシミュレーションな

青葉「地上迎撃部隊が全滅!このままじゃ増援を許すことになるぞ!」

日向「大丈夫だ!零号機が地上に出る!」

冬月「間に合ったか!」

ゲンドウ「...」


レイ『遅れてすみません、私は本部の守護に回ります』

マヤ「レイ...!」

ゲンドウ『...レイ』

レイ「碇司令?」

ゲンドウ『私は...俺はもうお前をユイと重ねたりはしない、お前はお前の思うようにしていい』

ゲンドウ『命令はこれだけだ』

レイ「...はい!」

レイ(お父さん、父親がいるってこういう感覚なのかしら)

レイ(リョウジさんとは違う、わかりたいけど、わからなかった気持ち)


ゲンドウ「もっと早くに気付けていれば、シンジを、シンジも愛せたのかも知れない」

ゲンドウ「いや、愛していたんだ。だが本当に、本当にわからなかった、傷つけることしか分からん哀れな男に、子が育てられるとは思わない」

ゲンドウ「...それも言い訳か、不器用なりに、努力しようとしなかった」

冬月「まったくだ、私はこんな男に何を期待したのだろうな」

冬月「ただ、ユイ君が君を本当に愛していたのは確かだよ。全く理解できんがね」

ゲンドウ「先生...」

冬月「これまでのことを清算するなら今だぞ、私もその片棒を担いだ身だ。一人の大人としてできることはするつもりだ」

ゲンドウ「...はい」

>>657 本当にお待たせしました。指摘感謝です!細かい所が甘くてすみません。


戦自隊員「一つ目が出てきた!他のは!?」

戦自隊員「紫は確保済み、赤は地底湖内にて発見」

戦自隊員「一番危険な紫は確保か、地底湖に機雷を投下して炙り出せ。黒いのは四番目が足止め出来ている」

戦自隊員「青いのは我々で止める、ケーブルを切りさえすれば時間を稼げばいい...とは言うがアレ相手に通常兵器が役に立つか」



戦自隊員「本部に伝えろ、こちらも目には目を、刃には刃をとなるかもしれん」

シンジ「はぁ...はぁ...」

シンジ「...」

戦自隊員「...了解、このままここの防衛を維持する」

シンジ(銃を持った人が...10人)

シンジ(僕を乗せないつもりなんだ...!畜生!ここまでこれたのに!初号機は目の前なのに!!)

シンジ(リョウジさんが命を削ってここまで連れてきてくれたんだ...!僕だって...!)

シンジ(逃げちゃダメだ...逃げちゃダメだ!)

シンジ「...」グッ

レイ「このっ!」

レイ「私は負けない!」

レイ「私は私の好きな人達を守るために!!」

零号機『...』

戦自隊員「やはり足止めにすらならんか」

戦自隊員「全部隊に連絡、間も無く時間だ。全隊安全な場所に集結せよ」

戦自隊員「了解」

レイ「...?敵が引いてく?」

青葉「...奴ら急に大人しくなりやがって」

マヤ「ジオフロント上空に大多数の熱源反応!」

青葉「まさか!」

日向「おいおい...」

冬月「N2兵器を対人使用とはな...」

ゲンドウ「総員衝撃に備えろ!」ズズーン

リョウジ(衝撃...!今だ!)ドンッ!ドンッ!

戦自隊員「!!」

戦自隊員「がはっ!?」

リョウジ「恨むなよ!」

戦自隊員「こいつ...!ナイフを取って!」ドンッ!

リョウジ「がっ!」カラン

戦自隊員「この野郎!!」


戦自隊員「表面温度の低下を確認」

戦自隊員「よし、後は待つだけだ」


青葉「...奴ら加減でもんを知らんのか!」

日向「ダメだ!今ので磁気が乱れてモニター出来ない!」

ゲンドウ「エヴァは?」

マヤ「零、参号機共に健在、パイロットの生命反応もあります」

マヤ「...恐らく四号機も健在かと」


トウジ「痛っつー...肌が焼けるみたいや」

ケンスケ『な、なんで...僕にはこんな作戦知らされてなかったぞ!四号機はA.T.フィールド中和してるんだ!ダメージはモロに...』

トウジ「...これでわかったやろ、お前も利用されてる。ワシら止めるための囮にされてたんや」

ケンスケ『違う!僕はエリートだ!委員会から直々に選ばれたんだぞ!!』

ケンスケ『パパだって喜んでた!だからっ!!』

トウジ「お前のおとんが喜ぶわけあるかい!!」

トウジ(今のでケーブルがイカれよった、今しかない...!)

トウジ「エヴァに乗れるんがそんな嬉しいんか!人と、ワシと戦うんがそんなに楽しいんか!」

トウジ「ワシらダチちゃうんかったんか!?そんなことでシンジや渚、ワシらのこと殺れる言うんか!」

ケンスケ『トウジや碇にはわからない!僕は!僕はお前たちが世界のために戦ってる時に指をくわえて見ていることしか出来なかった!』

ケンスケ『僕は選ばれた、使命を与えられたんだ!今度は僕も世界を守るヒーローに!だからネルフは敵だ!!』

トウジ「...こんの馬鹿野郎がっ!」

ケンスケ『うわあああああああっ!!」

『エヴァンゲリオン、人が作りし虚像の神」

『皮肉にも、我々の手駒が最後の妨げとなろうとは』

『やはり毒は、同じ毒を以って制すべきだな』

『アダムの身体も心も、槍すらも我れが手中ではない』

『計画は大きく逸れてしまったが、契約が切られたわけではない』



『この代償、払ってもらうぞ碇』

マヤ「ジオフロント内に新たな熱源反応!」

マヤ「パターンオレンジ...?これって...」

レイ「エヴァシリーズ...」

量産機『...』

冬月「やはり完成していたか」

ゲンドウ「実行部隊の我々の予備パーツまで使っていたんだ、驚くことではない」

ゲンドウ「しかしS2機関搭載型を全機投入してくるとは」

冬月「...こちらはエヴァを四機所有している、戦力差の保険と思いたいが」

ゲンドウ「あるいは、破滅を導くかだ」

冬月「やれやれ...この歳で今更、無に還ることは望まんよ」

ゲンドウ「レイ、聞こえるか」

レイ『はい』

ゲンドウ「それが、我々の最後の障害だ」

レイ『言われなくてもわかっています、必ず殲滅します』

ゲンドウ「...すまない、頼む」

レイ「...」ニコッ

レイ「ふーっ...」

レイ「鈴原君はもちろん、シンジ君もアスカも渚君もアテにできない...ううん、しない」

レイ「もう誰も傷つけさせない、私が守るもの」

レイ「残り3分半で9機...」

レイ「...!」グッ

また随分と間をあけまして...一年間ずっと追ってくれていた方々に本当に感謝です。この先の展開は決めているので、また近々投下できると思います。繰り返しになりますが、書ききりますので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

量産機『グルルル...』

トウジ「綾波ィ!!」

レイ『大丈夫だから!』

ケンスケ『ああっ!!』

トウジ「ううっ...」




レイ「残り2分...!」

カヲル「...」

アスカ「...」

カヲル(地底湖、水の中。静かだ)

カヲル(水の中は嫌いだ、あの頃を思い出す)

カヲル(全てが嫌だった、あの頃を)

「目が覚めたか」

「...」

「そこから出たまえ」

「...」トタトタ...

「...僕は?」

「お前は渚カヲル」

「それが僕の名前?」

「左様」

「僕の、僕としての?」

「左様」

「うわぁ...!」

カヲル「やっと名前がもらえたんだ僕!」

カヲル「ねえ、なんで僕は外に出ちゃいけないの?」

『そういう存在なのだ』

カヲル「この絵の中にいる子は元気に走ってるよ?僕は?」

『今はそこにいればいい』

カヲル「どうして!僕だって...」

『ならん。お前にはやるべき事がある』

カヲル「やるべき事?」

『時が来れば伝える。お前の知能はまだそれを理解するに至っておらん』

「カヲル様、お食事をお持ちしました」

カヲル「いらない」

「ですが、もう2日も何も...」

カヲル「いらないって、僕は君らとは違うんだからさ。君も知ってるんでしょ?」

「...ここに置いておきます」ガチャリ...バダン

カヲル「...食べなくても生きられるんだから意味ないでしょ、僕は人間じゃないんだからさ」

カヲル「...」

カヲル「..,」カチャ

カヲル「...」モグモグ

カヲル「...ほらね、何も知らなくたって美味しくないのはわかるよ」

カヲル(冷たい銀の食器、ドロドロのものをただ口に運ぶことの何が楽しいの)

カヲル「...この本、確か食事の描写があったよな」

カヲル「えっと、『暖かいご飯、お味噌汁、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、仕事が終わって家族みんなで食べる飯は美味しい』」

カヲル「ふーん...仕事して終わって家族と食べるご飯は美味しいんだ」

カヲル「なんもわかんないや」

カヲル「僕もじいさんの言う役割が終わってご飯食べたら美味しいのかなぁ」

カヲル「肉...はわかるけどじゃがってなに?」

『4フェーズに移行、目標を投影、対象を殲滅して下さい』

カヲル「...」カチャ

『目標を撃破、対処を増やします』

カヲル「...」カチャ





カヲル「お湯あったかいなぁ」

カヲル「風呂はいいねぇ、リリンの生み出したものにしては好きだよコレ」




カヲル「さて、と」


カヲル「...」ピロピロリン

カヲル「ベートーヴェン、"第九"」

カヲル「この曲は、"運命"」

カヲル「これはあんまり好きじゃないなぁ」

カヲル(...水の中、僕が作られた場所)

カヲル(嫌なことばかり思い出す)

カヲル(でも、音楽と風呂は好きだった)

カヲル(楽しく、自分で何かをする喜びがある、風呂は心の洗濯と言うけど、本当に心の汚れが流されていく気がした)

カヲル(本のことはわからなかったけど、好きって気持ち、ああいうことだったんだな)

カヲル(知ってたんだ、僕)ゴンッ...

アスカ「!」ビクッ

カヲル「音...?」

カヲル「何の...」ドドンッ!!

カヲル「つっ!見つかったか!?」

アスカ「嫌だ...怖いっ...!」

アスカ「嫌っ!死ぬのは嫌っ!助けて!出して!!」

カヲル「アスカっ!!」

アスカ「死ぬのは嫌死ぬのは嫌!もう私から何も取らないでよ!!」

アスカ「死ぬのは嫌!一人はもっと嫌あああああああぁあぁあっっ!!」



ケンスケ『くそっ!くそっ!くそっ!!』ガンガンガンッ!!

トウジ「...」

ケンスケ『お前らみたいな奴らにっ!世界がっ!!』

トウジ(何がシミュレーションや...取り乱してめちゃくちゃに殴ってくるだかやないかい!)

トウジ(いいか鈴原トウジ、今までの戦いを思い出せ)

トウジ(やられればこっちが死ぬ、死ねば悲しむ人がいる、ワイには絶対に守らなきゃアカンごっつ大事な人達がいる)

トウジ(守らなきゃいけないもん達が、その存在が俺の背中を押してくれる、力をくれる)

トウジ(パイロットのみんな、ネルフの人達...ヒカリ、サクラ...オカン)

トウジ(ケンスケ!!)

参号機『...!』

参号機『グッ...ガアアアァアァア!!』

ケンスケ『ひっ!?』

トウジ「ケンスケ!痛いけど男なら我慢しいや!!」グチャッ!

ケンスケ『うっ!?おえっ!!』

四号機『...』シーン

ケンスケ「う?っ...痛い...助けて...」

ケンスケ「パパ...ママ...」ガチャコン!

トウジ「ケンスケぇ!無事か!?」

ケンスケ「げほっ!...トウジ...」

トウジ「良かった...ほんま良かった...」

ケンスケ「なんで...俺は...あらゆる場面を想定して...必死に訓練したのになんで...」

トウジ「...背負うもんがあるからや」

トウジ「確かにお前はきちんとした訓練をめちゃくちゃ受けとって、めちゃめちゃ強くなってるわ」

トウジ「けどな、ワシはヒカリを、サクラを、みんなを、守りたい。守らなアカンから死ねない」

トウジ「そういう想いで戦ってきた、渚達使徒の想いも受け取った」

トウジ「せやから、みんながワシを強くしてくれたんや」

トウジ「...もちろん、守りたいもんにはお前もおるで、ケンスケ」



ケンスケ「トウジ...お前の言う通りだよ」

ケンスケ「パパは、俺がパイロットに選出された時喜んでた。いや喜んだふりしてくれてたんだ」

ケンスケ「14年も親子やってりゃわかる、お前もそうだろ?パパは俺がパイロットになりたいのわかってた」

ケンスケ「だから、精一杯涙をこらえて、送り出してくれたんだ」

ケンスケ「でも俺頑張ったんだぜ...今までなかったくらい頑張ったんだ」

ケンスケ「みんなを...世界を守れるヒーローになりたくて」

トウジ「...お前のその気持ちは何も間違ってあらへん。ワイらと同じ気持ちや」

トウジ「ただ、みんな必死で戦ってる。シンジも綾波も惣流も、お前が使徒だと言った渚も」

トウジ「あんなええやつらが、悪に加担すると思うか?それはお前が一番知ってるやろ」

ケンスケ「...うん」

トウジ「...ほなワイは行くわ。お前はそこにいたほうがええ、知っての通り本部はめちゃめちゃやからな」

ケンスケ「行くって...参号機はもう...」

トウジ「まだ動ける、ギリギリまでやったる」

トウジ「ほんで後は希望にバトンタッチや」

ケンスケ「トウジ...」

ケンスケ「トウジ!あいつらは、エヴァ量産機は...」

マヤ「零号機、参号機共に活動限界まで30秒」

レイ「ううっ!」

量産機『グヘェ...』

日向「残りは!?」

マヤ「5機です!」

青葉「っ...!万事休すか!」

マヤ「もういいわ!レイ逃げて!」

レイ『ダメ...!ここを守る人がいなくなる...!」

マヤ「でもそのままじゃ!」

量産機『グヒィ...』

レイ「あああああぁあぁっ!」

レイ「シンジ君...碇司令...みんな」

レイ「...ありがとう」ガコン...

マヤ「零号機、活動限界...」

日向「そんな...!」

青葉「クソッ!」

マヤ「...何これ、活動停止したエヴァシリーズが!」

マヤ「エヴァシリーズ再起動!」

青葉「トドメを刺すつもりか!?」

ゲンドウ「レイ!!」ガタッ!!

量産機『...』ベロベロベロン

レイ「っ...!」





量産機『...』ニヤッ

レイ「...!」 ドスドスッ!!





レイ「...?」

参号機『...』

トウジ『はぁ...はぁ...がはっ』

レイ「鈴原君...!?なにしてるの!」

トウジ『知らんのか...男はな、女守るためにおんねや』

トウジ『お前のこと前からほっとけなかったんや、サクラに、ワイの妹に似てるんや』

トウジ『ほっとくと危なっかしいというかなんというかそんな所がやな...』

レイ「もう話さないで!早く!早く逃げて!」

マヤ「そんな...内臓電源は切れてるはずなのに」

日向「暴走か!?」

青葉「いや...アレは気力だよ」

青葉「俺にはわかる、気力だけで立ってるんだ、彼は」

マヤ「鈴原君...」

カヲル(...ここは?)

カヲル(何もない...いや、花?)

カヲル(これは、ひまわり?)

カヲル(風が...心地いい。太陽が暖かい)

カヲル(向こうに誰かいる?)

カヲル(何かを話してる、ここがどこなのか...)ガシッ

カヲル「女の子?」

女の子「...」

カヲル「ごめん、ひまわりより背が低いからわからなかったよ」

カヲル「こんな所でなにをしてるんだい?」

女の子『 』

カヲル「ピクニック?お母さんと?」

女の子『 』

カヲル「そうなんだ、ここはとっても居心地がいいかららね。羨ましいな」

女の子『 』

カヲル「逸れてしまったのかい?それは困ったね...よし、一緒に探してあげるよ」

カヲル「...あ!あそこにいる人かい?」

カヲル「まって、おんぶしてあげる。君の背じゃひまわりで見えないもんね」

カヲル「ほら、どう?」

女の子『 !』

カヲル「あっ、ほら!あっちも気づいたみたいだよ」

カヲル「はい、まっすぐ行くんだよ。もう迷わないようにね」

女の子『 !』

カヲル「え?なんだい?聞こえないよ?」

女の子『...』タタッ

カヲル「行っちゃった...可愛い子だったなぁ」

「ママ...どこ行っちゃったの?」

『 ?』

「...」

『 』

『 ?』

「ピクニックに来たの」

『 ?』

「うん、ママと来たの」

『 』

「うん...とっても好きな場所なの。でもね、ママがいなくなっちゃったの」

『 ? 』

『 ?』

『 』

『 ?』

「ママ!」

『 ! 』

『 』

「うん、ありがとう、お兄ちゃん!」



「ママ!!」

『もう...どこにいたの?ママ探したのよ?』

ママ「ごめんなさい...でもね!お兄ちゃんが一緒に探してくれたの!」

『そうなの、良かったわね』

「うん!」

『あなたが私を見つけてくれたように、私も二度とあなたを見失わないわ』

「ママ...?」

『あなたのしたいことをするのよ、行ってらっしゃい』


『アスカちゃん』


「うん...行ってきます。ママ」

カヲル(あれ?今のは...?)

アスカ「...」

カヲル「あ、アスカっ!大丈夫!?」

アスカ「うん、もう大丈夫」

カヲル「アスカ...?」

アスカ「ありがとう、お兄ちゃん...」グスッ

カヲル「へ?今なんて...」

アスカ「ずっと、ずっとそこにいたのね」

アスカ「私を、ずっと見て、守ってくれてたのね」

アスカ「カヲル、飛ばすから舌噛まないでね」

カヲル「わ、わかった...?」



アスカ「それじゃ、行こっ!ママ!!」

弐号機『!!』ピキーン!!!

戦自隊員「...隊長!地底湖より熱源反応」

戦自隊員「赤いやつ!やったか!?」

弐号機『オオオオォオォォッ!!』ドオオオォォォ...

マヤ「...!エヴァ弐号機起動!アスカと渚君は無事です!生きてます!!」

青葉「よっしゃぁ!!」

日向「アスカちゃん!!」

カヲル「アスカ...戻ったんだね」グスッ

アスカ「...うん、おまたせ」

カヲル「おかえり、アスカ」

アスカ「...ただいまっ」

レイ『アスカ!!』

アスカ「レイ、ごめんね、心配かけちゃって」

レイ『よかった...本当によかった』

トウジ『なんやおっそい登場やな、もうちょいでお前の出番無くなるところやったで』

アスカ「満身創痍で何言ってんのよ...ごめんね、二人とも。ありがとう」

アスカ「私達があいつらのこと引き離すから、レイは鈴原担いで逃げて」

トウジ「渚、惣流、あいつらは復活できる。コアを潰さん限り無限に復活してきよる」

トウジ「コアさえ潰せれば...あとは頼むで!」

アスカ「了解、ありがとね」

カヲル「...」

アスカ「カヲル?」

カヲル「感じるんだ、あのエヴァ、恐らく僕のパーソナルのダミープラグで動いてる」

アスカ「ふーん、てことはあなたの偽物なんでしょ?」

カヲル「ああ、僕の凶暴性だけを再現した忌々しい連中だよ」

アスカ「そんなの違うー、優しくなきゃ嫌」

カヲル「いや、僕は優しいよ?」

アスカ「本当に?優しくしてくれる?」

カヲル「もちろんさ!」

アスカ「ふっふーん!」

カヲル(戻れば戻るでやっぱり、世話がやけるなぁ)フフッ

アスカ「ねぇ、私病み上がりだから上手く操縦桿握れないの」

アスカ「だから、私のこと膝に乗っけて?」

アスカ「そうすれば、カヲルが上から私の手握れるでしょ?」

カヲル「そ、それもそうだね」

カヲル「じゃあ、はいどうぞ」

アスカ「えへへ」

カヲル(重い...僕が入院中色々食べさせ過ぎたかな...)

アスカ「それじゃ、行きますか」

カヲル「うん!」

弐号機『...!』

量産機『ブゲリャ...!』グチャッ!

アスカ「erste...!」
カヲル「ねぇねぇそれ何語?どんな意味?」
アスカ「...はぁ」

自分で読み直して見ると、数字や文字の誤字など細かいミスが多すぎますね...気をつけます。
すごい遅筆な上に、クライマックスですが多分まだまだ終わりそうにないです。その分面白いものを描くよう努めるのでお付き合いお願いします。
また、すごく今更なのですがカップリングやキャラの生存などについてはこのSS自体が「もしここがこうだったらどうなってだろう?」という自分の妄想を文章化してるようなものなので、それらが苦手な方は読まない方が良いです。長文でお目汚し失礼しました。

リョウジ「っ...!」ギギギギ...

戦自隊員「貴様...!よくも部下を!」

リョウジ「非戦闘員を虐殺しておいて何を!?」

戦自隊員「貴様らこそ!ネルフとは我らの味方では無かったのか!?」

リョウジ「権力に踊らされるな!いつの時代も大切なことはすべて隠されている!」

リョウジ「何も知らずに鵜呑みにするんじゃあない!」

戦自隊員「逆賊が偉そうなことを!」ドゴッ

リョウジ「ぐっ...!」

リョウジ(失血が酷い...だが気を抜けば)

リョウジ「落ち着いてくれ...俺の話を聞いてっ...!」ドゴッ!

リョウジ「がはっ!?」

戦自隊員「私は、セカンド・インパクトで家族を失った!」

リョウジ(...)

戦自隊員「私は一人残された!だからこそもう一度アレを繰り返そうなどど!許せるわけがない!!」

リョウジ(前が、霞んで見えない)

リョウジ「...おれ、たちは」

リョウジ「あの地獄から...手を取り合って、ここま、で...」

リョウジ「家族...みんなを、殺したのは...お、れ」

リョウジ「あんたと同じ...わかり、分かり合おう。人同士で殺し合わなきゃいけないなんて、あの時だけで...」

リョウジ「食物があって、働けて、人として生きていられる...」

リョウジ「もう誰も死なせたくないから、俺たち戦ってるんだろ」

リョウジ(...)

リョウジ(よぉ、お前ら)パンパンッ!!

『』ニヤッ

リョウジ(迎えに、来てくれたのか)



(.....)ミーンミンミン...

リョウジ「...」

『兄ちゃん?』

リョウジ「...お前!?」

『どしたの?浮かない顔して』

リョウジ「だって、俺...」

『ほら、早くしないと兄ちゃんの分取っちゃうよ!』

『なんだよ、あの大食いなリョウジが飯抜きか?明日は雪じゃねーの!』

『はいバカ!年中夏なのに雪降るわけねーだろ!』

『あはははは!』

リョウジ「お前、ら...」

リョウジ「...馬鹿野郎!食うに決まってんだろ!」

リョウジ「違う違う、ここはこうやるんだよ」

『こう?』

リョウジ「そうそう、足よりも腰を意識するんだ」

『そっか、こう?』

リョウジ「そう、上手いぞ!」

『やった!...でも、ちょっとボロっちくなってきちゃった』

リョウジ「うーんそうだな、新しいの見繕ってくるか?」

『嫌だよ!このスケボー、パパとママが誕生日にくれたやつだから...』

リョウジ「...そうだよな、よし!明日は俺がこいつを直してやる日にしよう!」

『ほんと?ありがとう兄ちゃん!』

リョウジ「おう!」

『おいリョウジー、そろそろ時間だぜ』

リョウジ「お、やべえ!行かなきゃな」

『しくじんなよ~?』

リョウジ「何言ってんだよ、俺が一番盗み上手いだろ!」

『あはは!冗談だよ』

リョウジ「お前の分取ってこねーぞー」

『兄ちゃん、気をつけてね』

リョウジ「大丈夫、大人しくしてろよ」

ガチャン!!

リョウジ「...!」

『おい!そこにいるのはわかってるぞ!!』

『大人しく出て来い!!』

リョウジ「...」

『ガキか?』

『おい、こいつらじゃねえか?最近軍の食料庫荒らし回ってるやつらって』

『...おい、仲間はどこだ?』

リョウジ「...そんなのいねえよ、俺一人だよ」

『...』ドゴッ

リョウジ「うっ...!おえっ!?」

『おい、早いとこ言えよ?俺の機嫌損ねないうちにな』

『でないと、頭ぶち抜くぞ』

リョウジ「ひっ...!」

リョウジ「し、知らねえよぉ!」

『次は殺す』

リョウジ「...西区の廃ビル」

『よーし、お前ら準備しろ。お前はこいつ見張っとけ』

『お前は俺と留守番だ。仲良くやろうぜ?』

リョウジ「...!」ドゴッ!

『こいつっ!!』




リョウジ「みんなっ...!」ハァ...ハァ...

リョウジ「みんなっ!!」ガチャッ!

『』

『』

『』

リョウジ「みん、な...」

リョウジ「俺が、俺が居場所を吐いたから」

『兄ちゃん』

リョウジ「っ!生きてたのか!良かっ...」

『...』ボタボタッ

リョウジ「お前...!血が!!」

リョウジ「待ってろ!すぐに...」

『分かってるでしょ、兄ちゃん』

『僕らは、死んでるんだよ』

リョウジ「...ぐっ、ううぅ...」ポロポロ

リョウジ「俺が...俺が自分の命惜しさに裏切らなければっ...!」

『兄ちゃんのせいじゃないよ、兄ちゃんは自分なりに頑張ったんだよね』

『だから、まだ来ちゃだめだよ』

『僕らが生きたかった明日を、守るまでは』

『ありがとう...さよなら、兄ちゃん』

リョウジ「...ああ、ありがとな」





「ーーーーー」

リョウジ(誰だ...?)

「ーーーーーーー」

リョウジ(葛城...?)

「...まったく、無様ね」

リョウジ「...リッちゃん?」

リツコ「全く、私が来なかったら死んでたわよ」

戦自隊員「」

リョウジ「...そうか」


リツコ「肩を貸すわ、立てる?」

リョウジ「あぁ...大丈夫だ」

リツコ「さ、早いとこ発令所まで戻るわよ」

リョウジ「...リッちゃん、まだ俺に惚れてんのかい?」

リツコ「...馬鹿な男ね、あなたに死なれたらミサトに会わす顔が無くなるでしょう」

リョウジ「ははっ、冗談だよ...」

リョウジ「...」

戦自隊員「」

リョウジ(不幸になりたい人間なんていない)

リョウジ(みんな幸せになるために、生きてるんだよな)

リョウジ(なぁ、みんな。俺は、自分は幸せになっちゃいけない人間だと思ってたよ)

リョウジ(それは、間違いだな)

リョウジ(俺は、お前らの分まで目一杯幸せになる。そしてたくさんの人を幸せにしてやれるようにする)

リョウジ(だから、見ててくれ)

リョウジ(たくさん土産話を持って、また会いに行くよ)

リョウジ(いつか、必ず)

ゲンドウ「外の状況は?」

マヤ「弐号機とエヴァシリーズが交戦に入りました!」

ゲンドウ「初号機は?」

青葉「ルートがどれも断絶されています、護衛に向かったチームも返信なし・・・恐らく全滅かと」

ゲンドウ「・・・冬月先生、少し頼みます」

冬月「・・・ああ、ユイ君によろしくな」

アスカ「どぅおりゃあああああああああ!!」

量産機『』

カヲル「すごい気迫だね」

アスカ「あっ、えっと、違うの!これは掛け声っていうかその・・・」

カヲル「別に今更可愛い子ぶる必要ないでしょ・・・それよりアスカ!残り二分半!」

アスカ「わかってる!」

量産機『!!』

アスカ(こいつらパイロットがいらないかわりに動きが鈍い!これならっ!)

アスカ「可哀そうな作り物達!せめて、私達が葬ってあげるわ!」

アスカ「痛っ・・・!?」

アスカ(左手が動かない・・・!これじゃ反応が遅れる!)

カヲル「おりゃっ!」

弐号機『フンッ!!』

量産機『グギャ』

カヲル「こっち側は僕が受け持つ。アスカは右側に集中して」

カヲル「折角弐号機・・・お母さんがシンクロを許してくれてるんだ、僕も頑張らないとね」

アスカ「ママが私たちのこと認めてくれてるのね!」ニコニコ

カヲル「そ、そうだね」

カヲル(僕の分身達・・・僕という存在が戦うだけの傀儡を生み出してしまったか)

カヲル(いや、傀儡なのは僕も同じか。ただ、今の僕には自由意志、人のココロというものが確かに存在している)

カヲル「老人達の自分勝手にはもう付き合うことはできない、僕は一人のヒト、人間としてココロを振るう!」

シンジ「っ!」ビクッ

ゲンドウ「・・・」

シンジ「父さん・・・!」

ゲンドウ「良かった、生きていてくれたか」

シンジ「うん・・・リョウジさんが僕をここまで」

ゲンドウ「加持君は?」

シンジ「・・・」

ゲンドウ「そう、か」

ゲンドウ「・・・俺が、お前の、俺たちの活路を開く」

シンジ「でも父さん!敵があんなに・・・」

ゲンドウ「信じろ、信じてくれていればいい」

シンジ「・・・」コクリ

ゲンドウ「・・・」ガチャッ

ゲンドウ「・・・!」ダンッ!

戦自隊員「ぐあっ」

戦自隊「こいつっ!」

ゲンドウ「ユイ!」

初号機『・・・!』ガシャン!

戦自隊員達「がっ」グチャッ

シンジ「うわっ・・・」

シンジ(血・・・あの時と同じだ)

シンジ(僕が初めてここに、初号機の前に立ったあの時と)

シンジ「母さん・・・」

ゲンドウ「ユイ、ありがとう」

ゲンドウ「シンジ、こっちに来い」

シンジ「・・・」

ゲンドウ「・・・」ギュッ

シンジ「父さん・・・?」

ゲンドウ「お前が生まれた時も、こうして俺とユイでお前を抱きしめた」

ゲンドウ「母親を失い、父から突き放されたお前は」

ゲンドウ「・・・辛かっただろう、俺がさぞかし憎かっただろう」

ゲンドウ「ユイを失った俺は、お前を受け入れる余裕がなかったのだろう。俺は親の愛というものを知らなかった」

ゲンドウ「俺という奴が父親として、人間としてすら半人前の俺がお前に何かしてやれるはずがないと思っていた」

ゲンドウ「愛情というものは、ユイに理解させられていた筈なのにな」

ゲンドウ「愛とは誰かに分け与えてもらい、またそれを誰かに分け与えることだというのに」

シンジ「・・・」

シンジ「・・・」

シンジ「それは、言い訳だよ父さん」

シンジ「嫌いじゃなかった、嫌ってなんかいなかったんだよ、父さんのこと」

シンジ「僕は、ただ一緒にいてほしかっただけ、なんだよ」

ゲンドウ「シンジ・・・」

シンジ「僕も同じだよ、ただ現状を恨むだけで、何もしようとしなかった」

シンジ「けど僕も、父さんが母さんに教えてもらったように、みんなから色んなものをもらったんだ」

シンジ「最初は怖かったんだ、変わっていく自分が。こんな僕が、みんなからこんなに良くしてもらえる筈がないって」

シンジ「でも、みんなからもらった分、自分もなにかをあげればいい。そうだよね」

シンジ「父さん、母さん」






ゲンドウ『この子は、ここで生きていくのか』

ゲンドウ『この、地獄のような世界で』

ユイ『あら、この世界も悪くありませんわ』

ユイ『太陽があって月があって、私たちがいる星がある』

ユイ『自分がそう思えるなら、どこだって天国になるわ』

ゲンドウ『・・・そうだな』






ゲンドウ「・・・ユイが太陽ならば、お前はこの星自身だ」

ゲンドウ「そして、俺は月となりお前とユイの闇を照らそう」

ゲンドウ「ユイが俺の闇を照らしてくれたように」

ゲンドウ「今の世界が天国だとは決して思わん。だが小さな天国を作り、それを広めていくことはできよう」

ゲンドウ「シンジ、お前と俺たちでそれを作ろう」

ゲンドウ「ユイに、よろしくな」

シンジ「・・・うん、行ってくる」

シンジ「・・・父さん!帰ったら一緒に食事をしよう」

シンジ「レイや、NERVのみんなで」

ゲンドウ「・・・ああ、スケジュールを開けておこう」

シンジ「・・・」ニコッ


ゲンドウ(笑った顔が、お前によく似ているよ。ユイ)



シンジ「母さん」

シンジ「今まで僕を守ってくれていたんだね」

シンジ「母さんがいないのは、寂しかったよ」

シンジ「でも、今ならわかる。母さんが僕や父さんを置いて行ってしまってまでエヴァに残った訳が」

シンジ「僕も、この世界が、みんなのいるこの世界が好きなんだ」

シンジ「たとえ傷つけられても、争いあってしまっていても」

シンジ「それでも、この世界が好きなんだ」

シンジ「だから、母さん」

シンジ「僕に、力を貸して」

「あっちの状況は?」

『弐号機が例の機体と交戦中』

『本部は信号あり、恐らく耐えているかと』

「そろそろ、私達の出番ね」

「ケリをつけに行きましょう」

カヲル「はぁ・・・!」

[00:58]

カヲル「アスカ、ごめん。覚悟を決める時が来たみたいだ」

アスカ「・・・いいよ。ママとあんたと一緒なら恐くない」

アスカ「ううん、ごめんウソ。本当は生きていられるなら生きていたい」

アスカ「ママが、愛してくれる人がいなくなってから、ただただ認めてほしくて訓練して、勉強して、ただそれだけのために生きてきたけど」

アスカ「そこからは何も、なんにも得られなかった。本当に欲しいものと得られたものが違うって、ずっと気づかないままだったから」

アスカ「でも、もういいの。みんなを守るのが私たちの役目だもんね」

カヲル「・・・そうだね、その通りだ」

カヲル「君や皆と出会えて、本当に良かった。今の僕は、自らこの運命を受け止められる気がするんだ」

カヲル「君のおかげでね」

量産機『・・・』

カヲル「よいしょっと」ガチャン

『モードD、30秒後に自爆が決議されます』

アスカ「・・・」

カヲル「大丈夫、僕がついてるだろう?」

アスカ「うん・・・」

アスカ「でもね、恐い、恐いよぉ・・・」グスッ

カヲル「アスカ、もし生まれ変わってまた出会えたのなら」

カヲル「その時も、死ぬまで共に居ることを約束するよ」

アスカ「・・・」ギュッ

弐号機『・・・』

『自爆決議まで、5.4.3.2.1』

カヲル「アスカ、愛しているよ」

『・・・自爆が解除されました。通常モードへ移行』

カヲル「・・・何故!?」

アスカ「ママ・・・?」

弐号機『・・・』

カヲル「僕達に、それでも生きろと言うんですか?」

カヲル「全く・・・リリンは、これだから人間は」

カヲル「辞められないね!」

カヲル「アスカっ!」

アスカ「ママ!お願いっ!!」

[00:05]

カヲル「残り10秒間」

[00:04]

カヲル「だけれど、この瞬間に全てを」

[00:03]

アスカ「ママは私を守ってくれるために、ここに居てくれたんだものね」

[00:02]

アスカ「私も、皆を守りたいから」
カヲル「それが僕達の生まれた意味、そのために」

[00:01]

アスカ・カヲル「生きる」



シンジ「待たせて、ごめん」





アスカ「いっつも遅いのよ、アンタは」

カヲル「間に合ったんだから、そういうこと言っちゃダメだよ」

アスカ「・・・はい」

シンジ「二人は降りて、レイやトウジと合流して」

シンジ「あそこは安全な筈だから」

カヲル「わかった、ありがとう」

カヲル「・・・シンジ君、彼らはコアを潰さない限り何度でも復活する」

カヲル「けれど、僕たちや綾波さんが与えたダメージで、傷を治すまでの時間が長くなってる筈だ」

カヲル「できることはしたつもりだ、本当に」

カヲル「僕たちでは敵わなかったが、君ならできると信じているよ」

アスカ「負けんじゃないわよ」

カヲル「アスカ・・・もう少し言い方が」

シンジ「わかった、ありがとう」

量産機『・・・』

シンジ「お前たちが最後の敵か」

シンジ「本当に、最後なんだな」

シンジ「お前たちが・・・お前たちが・・・!」

シンジ「行くよ母さんっ!」

マヤ「弐号機活動停止・・・初号機が戦闘に入りました」

日向「・・・もし、もし初号機が負けたら俺達は」

青葉「おい!馬鹿なこと抜かすな!」

青葉「それより下の連中はどうなってやがる、こっちはそろそろ弾薬が足りなくなるぞ」

日向「万事休すか・・・」

冬月「・・・」ダンッ!

日向「副司令!」

冬月「全く、君達が弱気でどうする」

青葉「副指令!司令がいない今あなたが指揮を・・・」

冬月「指揮も何も、私達大人ができることはこのくらいだろう」

冬月「人を殺めたくはないが、止むをえまい」

冬月「それに、戦闘指揮は私の仕事ではないのでな」

リョウジ「・・・すみませんでした」

マヤ「リョウジさん・・・!」

リョウジ「やれやれ、五体満足で戻ってこれるとはな」

リツコ「あら、だれのおかげかしらね」

リョウジ「こんな時に意地悪言うな、しわが増えるぞ」

日向「その傷は・・・!?」

リョウジ「大丈夫、リッちゃんに応急処置はしてもらったからな」

マヤ「本当に・・・心配したんですからね」

リョウジ「すまない、外は?」

マヤ「初号機が戦闘中、零号機、弐号機は大破。参号機は中破、四号機は参号機が処理しパイロットに敵意はない模様です」

リョウジ「・・・赤木博士、頼みが」

トウジ「無事やったか!」

レイ「アスカ・・・!」

アスカ「レイ、心配かけてごめんね」

レイ「ううん・・・私も、心配かけたから」ギュッ

カヲル「相田君・・・」

ケンスケ「・・・わかってる、ごめん」

ケンスケ「俺もこんな形でお前たちと顔を会わせたくなかったよ」

カヲル「いいさ、もう一度話すことができただけでも幸運だよ」

トウジ「シンジは?」

カヲル「今戦ってるよ、僕らの分まで」

トウジ「そうか・・・クソ!見てるだけやなんて!」

カヲル「・・・」

カヲル(四号機・・・)

~首相官邸~


首相「全く・・・ネルフの目的がまさか人類を滅ぼす事だったとはな」

秘書「自らを憎むことのできる生物は、人間くらいでしょう」

首相「・・・違いない」

秘書「ネルフはどうなされるお積りで?」

首相「どうせドイツかアメリカあたりに買いたたかれるおがオチだ」

首相「旧東京と同じく15年は放棄だな」

秘書「承知いたしました・・・首相、お電話が」

首相「なんだこの忙しい時に、戦自の連中か?」

秘書「それが・・・」

首相「・・・?もしもし?誰だこんな時に」

首相「何?緊急?」

首相「・・・なんだと?」

首相「…なんだこの突拍子もない内容は」

秘書「諜報員からの匿名のタレコミですが…」

首相「15年前の真相…こんなことまでは聞いておらんぞ」

秘書「ですが、これがもし本当なら?」

首相「ネルフへの攻撃を撤回せねばなるまい」

首相「だが、命令は国連からだぞ?それに、誰が何の目的でこんなものを調べ、私に送ってきたというのだ」

秘書「このタイミングということは、ネルフへの攻撃を阻止したい何者か…ですかね」

首相「ここまで来た以上今更!どちらを信じるかは明白だな」

首相「私は政治家だぞ、日本国内に人類滅亡を企む機関が存在していたなどと世間に知れてみろ」

首相「今まで築いてきた面子が台無しだ」

首相「ネルフは殲滅、偽の報道を流して風化を待つ。これは決定事項だ」

「…国のトップがこれじゃあ、正しいも何もないわね。」

「まぁ、どこの国も同じか」

「けど、確かに情報は掴ませた」

「…あの事件の関係者は、根絶やしにしてやる」

(だから、もう少し耐えて…!)

リョウジ「MAGIへのハッキングは?」

リツコ「変わらないわ、666プロテクトが無ければ一瞬で情報を抜かれる状況よ」

リョウジ「…MAGIを使うことはできないか?」

リツコ「MAGIを解析されれば本部の陥落と同じなのよ!?一体何を…」

リョウジ「…この状況を解決できるかもしれない奴に、連絡が取りたい」

リョウジ「連絡先は俺が持ってる、今生き残ってる回線じゃあすぐに逆探知されて終わりだ」

リョウジ「だが、MAGIを使えれば…」

リツコ「…ミサトね」

リョウジ「君ならできないか?一瞬でいい、音声や映像なんていらない」

リョウジ「文を、暗号を数文字でいいんだ」

リツコ「…命取りになるかも知れないわ」

リョウジ「このままじゃどっちみち不味いことは変わらない」

リョウジ「この傷だ、俺の頭脳が正常に働いてる内に…」

カヲル「相田君、あいつらは四号機と同型機体なのかい?」

ケンスケ「いや、四号機が第四使徒のコアを元に造られたに対して、あいつらはまったく得体がしれないよ」

ケンスケ「ただヤバいのは、四号機のデータを元により完成度が上がってるS2機関を搭載してる」

ケンスケ「実質無限動力だよ、それに見たろ?さっきの回復力」

ケンスケ「シンジが強いのはわかるけど、初号機は所詮試作型。奴らは追加装備無しで自立飛行能力を備えてる」

ケンスケ「あの装備はよく分からないけど、あの大きさ…一撃でも致命傷になりかねないと思う」

カヲル「S2機関搭載型…ほとんど使徒と同じ存在ということか」

カヲル「なら、あの回復力の動力源は」

ケンスケ「…コアか!」

カヲル「感じるんだ、奴らから僕と同じ様な何かを」

カヲル「恐らく、ダミーのパーソナルは僕の人格を書き込んである」

カヲル「僕にも他の体が存在するからね、そいつらを使ったんだろう」

カヲル「けど、あの状況でダミーを抜くのは無理だろう」

ケンスケ「実質、コアの破壊しかないか…」

カヲル「相田君、四号機を動かしてくれないかな」

ケンスケ「できるけど、トウジとの戦闘で戦力には…」

カヲル「僕を、ドグマに降ろしてほしいんだ」

トウジ「お前、あそこに戻って何する気や?」

カヲル「僕ができる、最大限のことをしに行くんだよ」

カヲル「参号機も動かして欲しい、四号機で予備のケーブルを接続すればまだ動くだろう?」

トウジ「ええけど、俺はここで万が一に備えた方がええのとちゃうか?」

カヲル「君と相田君が必要なんだ。君達にしか頼めない、君達にならできることがある」

シンジ「はぁ…はぁ…」

シンジ(ケーブルを庇いながらじゃ、とてもじゃないけど倒せない…!)

シンジ(持久戦に持ち込まれれば、こっちばっかり消耗するだけだ)

シンジ(僕しか残ってないからこそ、無理はできない)

シンジ(けど、早くしないと皆が…!)

カヲル『シンジ君、そのまま戦っていても勝つことはできないのは分かってると思う』

シンジ「カヲル君!」

カヲル『そいつらは使徒だと考えていい、コアを潰すしか方法はないみたいだ』

シンジ「なら…!」

カヲル『待って!早まらないで聞いてほしい。そのまま時間を稼ぎ続けてくれればいいんだ』

シンジ「でも、このままじゃ埒が明かないよ!」

カヲル『僕が君に、奴らを倒す方法を齎す。だからもう少し、もう少しだけ耐えて!』

シンジ「…」コクッ

~ターミナルドグマに続く通路~

トウジ「…ここも派手にやられてるな」

ケンスケ「こんなはずじゃ、こんな作戦だなんて…」

カヲル「前に降りた時より暗い…ここに回してる電力なんてないだろうからね」

カヲル(…先が見えないくらいの暗闇だ)

カヲル(この闇に光を照らせるかは、僕にかかってる)

カヲル(僕の生としては、なかなか上々だったなぁ)

アスカ「みんな、行っちゃったね」

レイ「零号機と弐号機は、もう役目を果たしたから」

レイ「私達のために」

アスカ「…そうね、もう動かせないし、これ以上傷つけるのは可哀想だもんね」

レイ「…着いていかなくて、良かったの?」

アスカ「カヲルが…あいつが皆のために行ったんだもん」

アスカ「信じてるから、だから着いていかなくても大丈夫」

アスカ「私達ができるのは、信じることだけでしょ」

レイ「…そうだね」

レイ(シンジ君…)

レイ(私も信じる、私だけじゃない、皆があなたを、あなたいう存在を信じてる)

レイ(だから…)

首相「進展は?」

秘書「外はあと一機、本部施設も発令所以外はほぼ制圧と言って良いとのことです」

首相「なかなか粘るな…無駄だと言うのに」

首相「抵抗するだけ無駄だと思わんか。全く、最初から降伏しておけば無駄に死なずに済んだものを」

首相「そう思わんかね?」

秘書「全くその通り…」

内務省諜報員「首相!緊急事態…」ドンッ!

首相「なっ!?」

秘書「ひいっ!血が…!」

首相「何が起きて…」

「申し訳ありませんが、貴方の身柄を拘束させて頂きます」

首相「葛城…諜報員…!」

ミサト「外も私の部下が制圧しています」

ミサト「抵抗するだけ無駄ですよ、首相?」

秘書「ひぃ…抵抗なんてしませんから命だけは…」

首相「何故君が…?君は日本政府に忠実なスパイであったはずだが」

首相「君の腕と、日本のために働くという姿勢を買ってネルフに忍び込ませていた」

首相「まさか、忠実な飼い犬に手を噛まれることになるとは…!」

ミサト「残念でしたね、ハナから貴方の配下ではありませんよ」

ミサト「私は日本政府内務省とネルフ特別監査官、並びに国連上層部ゼーレ所属の三重スパイであったのですから」

首相「なっ…!?」

首相「では君は、上からの命令で私を…?」

首相「あれだけいい顔をしてきたというのに…あの耄碌どもが!」

ミサト「…救いようのないクズね」

ミサト「私が忠義を感じるのは日本でもネルフでも国連でもない、自分だけよ」

ミサト「あなたは、目的完遂のための最後のピースを持っている」

ミサト「米、英、露、仏、そして私のいたドイツ支部」

ミサト「人類保管委員会を洗っても存在すら出てこなかった」

ミサト「ドイツ支部はダミー情報だらけだったけど、この日本の本部のメインサーバーは違ったわ」

首相「…まさか、あの方達の居所を?」

ミサト「各国の同志達が場所を突き止めつつある、あとは最重要人物であるキール・ローレンツの居場所のみ」

首相「私がそんなことを知っているとでも?他の支部でも知るやつはいないと思うがね」

ミサト「国のトップが本部に探りを入れている国なんて、ここくらいよ」

ミサト「上へのゴマすりが上手い上に、本部がある国の首相ですものね、手掛かりくらいご存知ではないですか?」

ミサト「別に言わなくてもいいわよ」

ミサト「貴方の家族の家に、部下を向かわせていることは教えておきますが」

首相「貴様…!」

首相「…本気でやるつもりなのか?」

ミサト「無論です。私利私欲のために犠牲を出し続けてきたあなたを、今すぐ撃ち抜きたいくらいですから」

首相「…どうせ私の立場は失墜するだろう」

首相「君のせいでな!」

首相「言い訳するつもりは無いが、先程の資料のことや、彼らの目的なんて何も知らない」

首相「ただ、彼らとの関係を良好にし、国を守ってきたのは私なのだよ…!」

首相「…家族の安全は保証してくれ」

ミサト「…わかりました」



カヲル「…二人とも、僕の言うことを良く聞いてくれ」

カヲル「今この瞬間から、生きる、生きたいと思う気持ちを忘れないで欲しい」

カヲル「君達が守りたい者や、君達が造る未来のことを思い浮かべて」

カヲル「そうすれば、きっと大丈夫」

カヲル「エヴァと心の壁が、君達を守ってくれるよ」

ケンスケ「渚…?」

トウジ「お前は、何を…?」


カヲル「…リリス」

カヲル「リリス、ヒトの始祖たる者。僕達は元々違う星に行き着くべきだった」

カヲル「だが、僕も、綾波レイも、この星に根付いた姿は同じだった」

カヲル「けれど、僕は身体を失い、この星の生存権は君達が勝ち取った」

カヲル「悲しいとは思わないか?違う種の生物が争うことは仕方ないが、同じ種同士で争うことができてしまうことが」

カヲル「なまじ知性を持ってしまったが為に、すれ違い、お互いを勘違いし合う。長い歴史を生きてこれたのは知性の賜物かも知れないが、それが行き着く先は罪滅ぼしなのか?破滅なのか?」

カヲル「人は神にはなれない。いや、使徒と呼ばれる僕達だって同じだ。何かが他者の生命や生き方をどうこうしようなんて烏滸がましい事なんだよ」

カヲル「他者がいるから衝突し、悲しみが産まれていく…だが喜びや希望も、他者がいるから産まれていく」

カヲル「互いがあるから前に進んで行けるんだと、そう思わないかい?」

リリス『… 』

カヲル「僕は君達と手を取り合い、生きていくことを望んだ。だからこそ、君も君の子達のために想って欲しい」



カヲル「…ありがとう、それが君の答えなんだね」

レイ「!」

アスカ「レイ?」

レイ「渚君…それが貴方の望みなのね」





マヤ「ターミナルドグマより、強力なアンチATフィールドが発生!」

日向「音波、センサー、粒子全て不鮮明!モニターできません!」

青葉「…なんだ?大気圏外から高速で飛来する物体!」

トウジ「…なんや、この気持ちの悪い感じ」

ケンスケ「なんか、自分が自分でなくなるような…」

カヲル「大丈夫、心の壁が君達を守るよ」

カヲル「自分が自分であると認識するから、他者を他者と認識できる」

カヲル「相手を拒むんじゃない、受け入れるんだ、シンジ君」




シンジ「…ロンギヌスの槍?」

冬月「ロンギヌスの槍!?確かに、アレなら一方的にATフィールドを無力化できるが」

冬月「同時に、奴らの切り札にもなりうるぞ…」

ゲンドウ「…」



リツコ「…通信の準備、出来たわよ。良い?本当に少しの時間が命取りになるわ」

リョウジ「ありがとう…」

リョウジ(葛城、君は今何をしてる…?)

ミサト「…加持ね」ピピッ

ミサト(ネルフ本部は時間の問題、か)

ミサト「戦略自衛隊への命令は貴方が?」

首相「そんな訳があるかっ!私はただ経過報告を受けていただけだ!」

ミサト(すると、命令と指揮は国連が直っぽいし、撤回は無理そうね)

ミサト(加持君達はこれで助かるかもしれないけれど、司令達が実行に移すかどうか…それにエヴァシリーズをどうにかしなければ)

ミサト「ここまで来れたんだもの、後は踏ん張り次第ね」

リョウジ「…葛城か」ピピッ

リョウジ「…」

リツコ「…やっぱり、現戦力でのエヴァシリーズ殲滅は厳しいわね」

リョウジ「やっぱり、そうするしかないか…」

リョウジ「碇司令、提案があります」

ゲンドウ「…ネルフ本部の放棄か」

リョウジ「…はい」

ゲンドウ「確かに、我々が一時的に助かるにはそれしかないかもしれない」

ゲンドウ「だが、エヴァシリーズを放って置くわけにはいかない。アレをどうにかしなければどうにもならな…」

リョウジ「葛城監査官が、ゼーレ幹部の居所をほぼ突き止めています」

ゲンドウ「…なんだと?」

リョウジ「今連絡を受けました、彼女は信頼できます」

リョウジ「最早、根本的な癌を取り除く意外に道はないかと…」

ゲンドウ「だが、放っておけば戦自MAGIを占拠されることは避けなくてはならん」

リツコ「…MAGIに自律自爆を提案してみては?」

1年待っててくれた方本当に申し訳ございません…。正直展開に迷ってるので遅筆は変わらないと思いますが、完結まで頑張ります…。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月05日 (木) 05:18:56   ID: QKFDIm5o

はよぉ書いてーな

2 :  SS好きの774さん   2016年12月15日 (木) 10:10:08   ID: SMrbinDH

続きをお待ちしています。

3 :  SS好きの774さん   2017年03月19日 (日) 12:21:42   ID: RyUfCjA_

待ってましたよー

4 :  SS好きの774さん   2017年06月17日 (土) 23:52:22   ID: 8-FnDTCw

更新楽しみにしてます!

5 :  SS好きの774さん   2019年02月14日 (木) 23:09:08   ID: LH56G6G_

コレまだ終わってなかったんだ…SS速報から消えて、気になってたんだ!早く更新しないかな!

6 :  SS好きの774さん   2019年04月04日 (木) 22:21:22   ID: lF_FMrod

いつまでも待ってるやで

7 :  SS好きの774さん   2019年05月31日 (金) 01:58:52   ID: Rv84acvg

後もう少し、更新待ってます

8 :  SS好きの774さん   2019年08月01日 (木) 20:47:41   ID: yDEHFvv4

いつまでも待っとるで

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom