末原「はいはい美味しいタコ焼きですよー」漫「もっとやる気出してくださいよ……」 (65)

    上埜公園にて

末原「……」ボーッ

  ミーンミンミンミンミンミーン・・・・・・

末原「……」ポケーッ

  ミーンミンミンミンミンミーン・・・・・・

末原「……」

実況『いいあたりーっ!!痛烈ーっ!!大きいーっ!!センターバックーっ!!』

末原「……」

実況『抜けたーっ!!ランナーホームイーン!!どうてーん!!』

末原「あ、追いついた」

実況『尽誠学園九回二死から追いつきましたーっ!』

末原「なんちゅう試合や……」

実況『このまま尽誠学園が逆転サヨナラか!はたまた水戸啓明が守り切り延長突入かーっ!』

漫「末原さんなにテレビで高校野球中継見てるんですか……ちゃんと仕事してくださいよ……」

末原「めんどくさい……」

漫「真面目に働かにゃうちら飯食えへんやないですか働かざる者食うガルベスですよ」

末原「べからずやろ……ハァしょうがないですね……」

漫「早く客寄せしてきてくださいよ……」

末原「はいはい美味しい美味しいタコ焼きですよー美味しいですよー」

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漫「なんですねんその気合の入ってない客引きは……石井一久だってもっとやる気出しますやろ……」

末原「だって脱力系タコ焼き屋ですから私たち」

漫「そんな謳い文句してませんから……うちらパフィーちゃうねん……」

末原「しかし暑いですね今日も」ダラダラ

あの夏の大会から7年……末原恭子と上重漫は二人でタコ焼きの移動販売をしていたのだ……
自動車を改造しタコ焼き販売カーで東京を回っていたのだった……

末原「あと10分休憩してもいいですか?」

漫「そう言いながら2時間近くも高校野球中継見てるやないですか……もうチャンネル変えますよ……」

末原「嫌です、私が本当に見たいのはこの次の試合の広島商業vs松山商業なんですから」

漫「なんですかそのザ・古豪って感じの組み合わせ……ホンマにチャンネル変えますで」ピッ!

末原「あ!ちょっと!」

睦月『副将戦終了!ついに残すは大将戦を残すのみです!』

漫「元高校生雀士なら高校野球やなくて高校麻雀にしてくださいよ見るのは」

末原「イヤや!!見たくない!!」

漫「末原さん……」

末原「ううう……」カタカタ

末原恭子はあの夏の大会が未だにトラウマなのであった……

漫「大丈夫ですよ末原さん……もう宮永咲はいませんよ……」

末原「で、でも……」

漫「デモもパレードもありませんよ、誰も末原さんを非難したりしませんから……」

睦月『現在トップは千葉県代表の輝日南高校!2位は長野県代表の鶴賀学園です!!』

末原「長野!?」ビクッ!

漫「清澄やないから大丈夫ですって!」

睦月『加治木監督率いる鶴賀学園は初出場ながら善戦してますね、ちなみに私の母校でもあります』

漫「ほら清澄やないでしょ?」

末原「そうみたいですね……」

漫「そないにいつまでも宮永咲の幻影に怯えててもしょうがないですよ、そろそろ末原さんも麻雀を再開したほうが……」

末原「けっこうです、私は漫ちゃんとともにこのタコ焼き屋【すえしげ亭】をビッグにさせたいんです」

漫「なに言うてるんですか元々就職に失敗したから嫌々やってる言うてたでしょうに……」

末原「そんなこと言ってませんけど」

漫「高校野球の試合が始まる前にはっきり言うてましたやろ……」

末原「漫ちゃんは良いですよね、この事業が失敗しても実家のお好み焼き屋を継げばいいだけなんですから」

漫「無理ですって言うてるでしょいつも……うち実家から勘当されてますって……」

末原「実家の金横領してんだし当然やろな」

漫「してへんわ!人聞きの悪いこと言わんといてくださいよ!バカ田大学に行ったから勘当されたんです!」

そう二人は姫松高校からバカ田大学に進学したのだった

末原「あんな恥ずかしいとこに進学したら親としては身内の恥やろな」

漫「末原さんの家族やってショックで四国のお遍路さんしてましたやん」

末原「私の家族だってそこまでショックは受けてませんよ!ってかその末原さんって言い方やめてくれませんか以前みたいに末原先輩と呼んで……」

漫「だって同級生やし」

末原「そういえば大学ダブったんやったな私」

漫「ハァしょうがないですね、そやったら今日からまた末原先輩呼びに回帰しますわ」

末原「なんて偉そうな言い方なんですか」

漫「実際うちが末原先輩を雇ってるんですけど……まぁいいですわ」

洋榎『しかし鶴賀ええちょーしやな、よっぽど監督の指導がええんやろな』

睦月『OGとしてそう言ってもらえると鼻が高いですね』

漫「あ!末原先輩見てください!愛宕先輩がテレビで解説してますよ!」

洋榎『なんや津山アナはオウンゴールかいな』

睦月『そのOGじゃありませんから……』

末原「人気プロ雀士ですからね、ほんと立派ですよ」

漫「愛宕絹恵さんなんてなでしこジャパンの守護神ですからね、ホンマすごい姉妹ですよ」

末原「私たちは全然すごくないですけどね」

漫「そんな卑屈にならんでくださいよ……うちらもこの事業を成功させて大金持ちになりましょうよ……」

睦月『輝日南高校と鶴賀学園のほかにも富山県代表の七森女子もまだまだ分かりません』

洋榎『相変わらず晩成は最下位やな』

漫「そういえば真瀬先輩はいまなにしてるんやろ、実家の会社の専務になったとか刑事になったとか風の噂で聞きましたけど」

末原「由子の進路なんてどうでもええわ」フンッ

漫「冷たいですね先輩……同じ夏の大会を戦った仲でしょうに……」

末原「同級生の現在とかあまり知りたくありませんから、漫ちゃんやって気持ちわかるでしょう……」

漫「たしかに同級生の近況とか聞くと我が身を振り返って切なくなりますね……」

末原「テンションも下がったところで今日の仕事はここでお開きですね」

漫「そんなわけないですやろ……さっさととっとと客を連れてきてくださいよ……」

末原「はいはいさっさとっとやな、美味しい美味しいタコ焼きやでー」

  ミーンミンミンミンミンミーン・・・・・・

末原「……」

優希「はいうまうまタコスとコーラだじぇ!」

末原「どうも、しかし暑いですね今日も」チャリン

優希「ホントだじょ!こんな暑いと売れるもんも売れないじぇ!」

  ミーンミンミンミンミンミーン・・・・・・

末原「ホンマに暑いな……」

末原「取りあえずタコス食べますか」モグ

末原「うん……なかなかイケますね」モグモグ

末原「コーラも……」ゴキュゴキュ

末原「ンマーイ!やはり夏の日はコーラに限りますね」

  ミーンミンミンミンミンミーン・・・・・・

末原「ふぅ……暑い……」

漫「なに一仕事終えたような顔してんねん!」パチコン!

末原「ギニヤ!!なんで殴るんですか!!」

漫「末原先輩が客になってどないするんですか!しかもライバル店やないですやん!あそこのタコスショップ!」

末原「別にいいじゃないですかみんな仲間ですよ」

漫「いつからそんな博愛主義に目覚めたんですか……敵に塩を送るようなマネはやめてください……」

末原「お腹すいたんですからしょうがないです」モグモグ

漫「しかもうちの分ないんですか……ホンマ気がきかないですね……」

末原「なんで私が後輩のためにおごらなければならないんですか」モグモグ

漫「せやから末原先輩は大学ダブってるからうちと同級生ですやん、ってか普通後輩にはおごるもんですって……」

末原「漫ちゃんだって一度ダブってるやん、ああもうしょうがないですねそろそろ本気出しますか」

漫「最初から出してくださいよ本気を……」ヤレヤレ

末原「その前に尽誠学園と水戸啓明の試合の結果を……」

漫「ダメですって!末原先輩呼び込みはもうええからタコ焼きを焼いてください!」

末原「最初から私に調理を任せれば良かったんですよまったく……」

漫「暑いから嫌だと最初に拒否したのは先輩やないですか……」

末原「こう見えてもタコ焼き作らせたら私の右に出る者はたいしていませんからね」

漫「多少はいるんですか……たしかに悔しいですがタコ焼きの腕はうちより末原先輩のほうが何枚も上手ですからね……」

末原「よし!美味しいタコ焼きをバンバン作りますよ!」

漫「よっしゃうちも本気で客を呼んだる!いらっしゃいいらっしゃい美味しいタコ焼きあるでー!本場大阪のタコ焼きやでー!!」

  ワイワイ ガヤガヤ ニシシシシシ チョーアツイヨー

漫「ホンマ美味いでー!本場仕込みのタコ焼きやでー!なんの奇を衒ってない超ストレートど真ん中のタコ焼きやでー!」パンパン!

末原「ヤクルト成瀬ばりのど真ん中ストレートやでー」ジャージャー

漫「めっちゃ打ちごろですやんそれ……」

子供「わぁタコ焼きだー美味しそー」

漫「(客や!)めっちゃ美味しいでーうちらのタコ焼きは!そんじょそこらのチェーン店とは格が違うで!」

子供「良い匂いー」

漫「焼くとこ見たいお嬢ちゃん?」

子供「見たい見たい!」キャッキャッ!

漫「よし!」ヒョイッ!

末原「……」ジュージュー

子供「わー!すごーい!!」キラキラ

末原「……」クイックイッ!

子供「タコさんくるくるー!」

漫「千枚通しでタコ焼きを回すテクニックが大事なんや!ちょっとでも回し方を間違えると焼き加減が偏ってしまうんや」

末原「……」ジュージュー!

子供「良い匂いー早く食べたいー」

末原「……」ハラハラ

漫「青のりかつお節を掛けて完成や!」

子供「わぁ!美味しそー!!」キャッキャッ!

末原「一丁アガリ!」

子供「すごーい!お姉ちゃんたち何者ー?」

漫「未来のビックタコ焼きスターやで」ニコニコ

末原「はいあげる」

子供「でもわたしお金持ってないよー?」

漫「かまへんかまへんサービスや!」

子供「本当!?やったァ!いただきまーす!!」パクッ

末原「この子供に美味しい美味しい言ってもらって……」ヒソヒソ

漫「周りにうちらのタコ焼き屋を宣伝ですね、これはイケまっせ大繁盛間違いなしや……」ヒソヒソ

子供「うわっ!!このタコ焼きマジぃ!!」

漫「は?」

子供「なにこのタコ焼き!変な味がするよ!」ペッ!

漫「変な味ってなに言うてるんや……」

子供「口ゆすがなきゃ!ウウーッ!!」スタタタタタタタッ!

漫「あ!ちょっと待ってや!ちょっと!」

  ザワザワ カワイソウ ヒドイミセダ ナンモカンモセイジガワルイ

漫「う……周りの視線がかなり厳しくなっとるやん……」

末原「なんやねんあの子供は……タコ焼きの味もわからないんですか……」ヤレヤレ

漫「末原先輩作り方間違えたんちゃいますか」

末原「そんなわけないでしょう、私のタコ焼きを作る技術はこの公園でも指折りですよ」

漫「この公園でタコ焼き作っとるのうちらだけですやん、どれどんな味かひとつ……」モッキュ

漫「うっ!!なんやこの味!たしかに変な味や!!」

末原「醤油味のどこが悪いんですか」

漫「醤油味?!なんでソースやないんですか普通タコ焼き言うたらソースですやん!!」

末原「醤油味をバカにするんですか?!ソースとは違う旨味があるじゃないですか醤油にも!」

漫「醤油も別に悪くありませんけどそれなら事前に言ってくださいよ……
  イカリングかと期待して食いついたのに玉ねぎのフライだったらショックですやろ……」

末原「とにかく私は徹底的にソースより醤油派ですからね!」

漫「頑固なとこだけは一流の職人ですね……」

  ミーンミンミンミンミンミーン・・・・・・

末原「しかし客来ませんね……」

漫「あの子供がネガティブキャンペーンをまき散らせたせいですよまったく……」

優希「まぁこんな日もあるってことだじぇ」モグモグ

漫「てかなんでタコス娘が今度はこっちに来てるんや!」

優希「私はタコとつくものはなんでもイケるんだじぇ」モグモグ

漫「それなら今度からカタオカからカタコカに改名したほうがええで」

末原「カタコカとか言いにくすぎですよ漫ちゃん……」

優希「お前こそ鰻に改名しろだじぇ、しかし相変わらず閑古鳥が鳴いてる店だじぇ、タコ焼き屋から焼き鳥屋に転向すべきだじぇ!」

漫「タコスショップやって人のこと言えへんやろ今日の客末原先輩だけやん……」

優希「うううケバブは売れるのになんでタコスは売れないんだじょ……」トボトボ

末原「気を落とさないでお互い頑張りましょう!……行ってしまいましたね」

漫「しかし焼き鳥屋も悪くあらへんな……」ブツブツ

末原「信念ブレブレですね……タコ焼きで天下とる言ったでしょ漫ちゃん……」

漫「この星の一等賞になりたいや粉モンでうちは!絶対にタコ焼き屋を成功させましょう末原先輩!」

末原「その前に客が来ないとダメなんですけど……」

漫「全然来ないですねホンマ……」

  ジジジジジジジジジジッ・・・・・・

末原「こんな暑い陽気ですからね……」

漫「アイス売ったほうがええかもしれないですね……」

黒服1「おい」

漫「あ!お客さんやな!まっとってや!今から焼くから……」

黒服1「てめぇら誰の許可とってここで商売しとるんじゃ、え」

漫「だ、誰の許可って言っても……た、たしかに役所に届けは出してませんけど……」

黒服2「役所の前に先に許可取るとこあるだろゴルァ!!」

漫「ひぃ!!東京特許許可局にですか……」

黒服1「ああ?!あんま調子こくんじゃねェぞ、え」

黒服2「東京特許きょきょきゃ……言えないんじゃバカヤロー!!」

漫「な、なんやこの黒い人たち……なにが言いたいんや……」オロオロ

末原「す、漫ちゃんこれはあれや極道がみかじめ料寄こせ言うてるんですよ……」カタカタ

漫「み、みかじめ料なんてそんな大金ありませんって……」プルプル

黒服3「なにこそこそ話してるんじゃこのタコがっ!!」

漫「う、うちらだけやなくてあのタコスショップも許可得てな……」

  シーン・・・・・・

漫「あ!いなくなってる!!」

末原「隙を見て逃げたみたいや!くそお!!」

黒服1「ガタガタうるせェんだボケゴルァ!!」

黒服3「ワシらの縄張りでなにやっとるんじゃ!!」

漫「す、すんまへん!あ、あの取りあえずタコ焼きでも食べて一息いれて……」

黒服2「そんなもんいらねェんじゃタコ!!」バリン!

末原「ああ私たちのタコ焼きが!」

???「おい待て」

黒服1「お、お嬢!?」

漫「だ、誰やあの女の人……」

???「……」

末原たちがヤクザに恫喝されているとそこに一人の女が近づいてきた……

???「あまり手荒いマネはやめろ」

黒服3「は、はいっ!」

末原「なんやあのグラサンの女は……」

漫「うちどっかで見たことがある気します……」

末原「私もです……」

???「それとお前」

黒服2「お、お嬢こいつら調子に乗りすぎっすよ!こうなったら徹底的に痛めつけ……」

???「食べ物を粗末にするんじゃねェ!!!」ドゴム!

黒服2「かはっ……」バタン……

漫「「ひぃ!!」」末原

なんと女は黒服の鳩尾に素早くパンチを繰り出したのだ……!

黒服2「かはっ!!かはっ!!かはっ!!」

???「落としたタコ焼き全部食えっ!!」ゲシッ!!

黒服2「は!はひぃ!!」ムシャムシャ!

そういうと男は落ちたタコ焼きを這いずりながら食べ始めた……

???「ふん」チラッ

漫「「ひぃぃぃぃ……」」末原 カタカタカタカタ

???「こいつらが迷惑掛けたな、すまなかった」

漫「そ、そんなことないですすすすすんまへんこっち……」ブルブル

末原「ううう……」カタカタ

???「なに怯えてるんだ、私たちは別に知らない仲ではないだろう」

漫「う、うちらお会いしたことありましたやろか……」ブルブル

???「そうかサングラスではわからないか、では……」スチャ

末原「め、眼鏡?」カタカタ

辻垣内「これなら分かるだろう」スチャ

漫「あ!あんたは!!」

辻垣内「やっと思い出したか、そう私は……」

漫「室戸会長!!」

辻垣内「誰だよっ!!私は辻垣内智葉だっ!!」

漫「辻垣内……あ!準決勝先鋒戦で対戦した!」

辻垣内「やっと思い出したか……」フンッ

漫「久方ぶりですねあの大会以来やから11年ぶりくらいですね」

辻垣内「7年ぶりだろなんだその中途半端な間違えかたは……」

末原「たしか辻垣内さんはプロになられたハズでは……」

辻垣内「その通りこう見えて私はプロのはしくれだ」

漫「それで辻垣内さんとあの黒服たちの関係は……」

辻垣内「あれは私の兄弟分だな」

漫「あ!兄弟やったんですか!お兄さんたちと仲良いですね」

末原「いやそういう意味やないと思いますよ漫ちゃん……」

漫「いやしかしホンマおおきに!いきなり黒服に囲まれてこのまま東京湾に沈められる思いましたわ」

辻垣内「仕事熱心な奴らなんだがちょっと暴走してしまったみたいだな」

漫「ホンマ次から気をつけてくださいよ」

末原「漫ちゃんあんまそういうことは言わないほうが……」

辻垣内「こう一緒にいるとあの夏の大会を思い出すようだよ」フフフ

漫「まさかうちが辻垣内さんに勝てるとは思いませんでしたわ」

黒服1「お前勝ってねェだろ!」

辻垣内「お前は黙ってろ!!そんなことより買ってほしいものがあるんだ」ガサゴソ

漫「買ってほしいもの?変な壺とかは勘弁してくださいよ……」

辻垣内「そんなしょうもないもんは押し付けん、はいこれだ」サッ

そう言うと辻垣内智葉はカバンからトイレットペーパーを3ロール出したのだ

漫「トイレットペッパーやないですか、ちょうどいいですわ家に無くてほしかったとこで……」

辻垣内「ひとつ3万だ」

漫「ささささささ3万!?」

辻垣内「……」

漫「……は!そういうことですかなんやねんもう!」

辻垣内「……」

漫「うちらが大阪人やからと冗談で言うてるんですね、大阪人が300円を300万円言うみたいなもんやな!で、このトイレットペッパーはいくら……」

辻垣内「私は冗談など言ってない、ひとつ3万だ」

漫「は?!こんなけったいなモンになんで3万も払わなあかんのや!おかしいですやん!」

末原「す、漫ちゃん……」

漫「こんなモンそこらへんの店いけば200円で買えますわ!なんやねんその法外な値段は!」

末原「漫ちゃん……」

漫「9万なんか払えんわ!!こっちかが火の車やと知っとるくせに意地の悪い奴やで!!こんな詐欺まがいのことしよって警察に……!」

末原「やめんか!!」パチコン!

漫「ギニヤ!!な、なんで末原先輩殴るんですか……」

辻垣内「買えないというのなら……わかってるんだろうな……」ギロリ

漫「ケツ拭けん言うんかい!その気になりゃ新聞紙でだって拭ける……」

末原「わ、わかりましたここから出ていきますのでどうか!い、行きますよ漫ちゃん!」ガシッ!

漫「ちょ!せ、先輩どうしたんですかこういう変な奴はすこし喝を入れなけりゃ……」

末原「喝入れるのは漫ちゃんのデコだけで間に合ってます!」バタン!

辻垣内「……」

末原「そ、そいじゃ失礼します!!」

  ブロロロロロロロロロ・・・・・・

辻垣内「……」

  ブロロロロロロロロロ・・・・・・

末原「ふぅ……危なかった……」

漫「なんで逃げたんですか!いくら昔のよしみや言うてもああいう傍若無人な振る舞いは……」

末原「なに言ってるんですかあいつら極道ですよ!あのまま盾突いてたら私たちホンマに東京湾の魚の餌にされてましたよ!」

漫「で、でも辻垣内さんはプロ雀士ですし……」

末原「プロ雀士や言うても極道やないということはありませんよ、プロ雀士の中には極道と通じてる人間もチラリホラリいると聞きますし……」

漫「ひ、ひぃ!つまりさっきのうちは極道に思いっきり喧嘩売ってた言うことですやん!なにやってんねんうち……」

末原「甲子園のライトスタンドで巨人応援するぐらい無謀な行為でしたよホント……」

漫「しかしなんでトイレットペッパーをあんな高値で売ろうとしたんですか?意味が分からないんですけど……」

末原「みかじめ料ですよ、直接金をみかじめ料として取ると警察に捕まりますからね
   トイレットペーパーを売るという建前でみかじめ料をせしめるのが今の極道のやり口ですよ」

漫「なんてせこいやり方やねん……さっさとっとああいう怖い人たちはいなくなってほしいで……」

末原「さっきから気になってるんですけどそのトイレットペッパーって言い方はなんですかトイレットペーパーやないんですか……」

漫「え、トイレットペッパーって言い方かっこいいですやん」

末原「トイレのちり紙にかっこいいもかっこよくないもないでしょう……」

  ブロロロロロロロロロ・・・・・・

漫「しかし次からはどこで販売したらええんやろ……うーん……」

末原「ここがダメなら東京以外でも売りましょう、埼玉なんてどうです?江の島とか湘南とか海に来てる人いっぱいいますよ」

漫「江の島も湘南も神奈川ですから……そもそも埼玉に海ないですやん……」

  ブロロロロロロロロロ・・・・・・

実況『さしーん!!広島商業またも0点に抑えました!!』

末原「土砂降りでもー心配事があってもー絶好調だとー言い放つよー♪」

漫「なんですねんその中畑清みたいな歌は……」

末原「しかし今からどうしましょうか、場所探すにしてももう昼をだいぶ過ぎてますし」

漫「取りあえずお腹すきません?うちは末原先輩と違うて昼なにも食べてまへんねん」

末原「いきなり嫌味ですか、ふん」プイッ

漫「機嫌損ねないでくださいよ……すんませんこっちも空腹でイライラしてましたわ……」

末原「私もです……漫ちゃんの分のタコスも買っておくべきでしたね……」

  ブロロロロロロロロロ・・・・・・

末原「しょうがない今日の仕事はここまででなにか食べにいきましょうか」

漫「よっしゃ飯や!そば食いに行きまひょ!鴨南蛮食べたい気分ですわ!」

末原「良いですね、では私は肉そばでも……」

漫「あ!!ちょっと待ってください!止めてください車!!」

末原「え?え?わ、わかりました!!」

  キキィ!!!!!

末原「どうしたんですか急に!危ないやないですか!」

漫「先輩あれですよあれ!」

末原「あ、あれは……」

漫「トーカズキッチンですよ!」

末原「北社長ですか?」

漫「それトーカ堂ですやん、ちゃいますよいま流行りのトーカズキッチンというレストランですよ」

末原「それがどないしたんですかあんなオシャレで高そうなとこ私らが入れるわけないでしょう」

漫「実はトーカズキッチンはタコ焼き専門店なんですよ」

末原「なんですて!」

漫「プロ雀士の龍門渕透華が副業でやってる店ですわ」

末原「またプロ雀士ですかどいつもこいつも……」ブツブツ

漫「しかも激安で色んなタコ焼きを提供してるみたいですよ」

末原「完全にライバル店やないですか……逃げますか」

漫「なに怖気づいてるんですか!行ってみましょう!あの店に!」

末原「なに言ってるんですかなんでわざわざ商売敵に……」

漫「島袋投げに行くんですよ!ライバルがどんな商売してるか視察ですよ!」

末原「それを言うなら手袋を投げるでしょう……しょうがないですねお昼はあそこにいましょか」

漫「よっしゃカチコミや!」

末原「極道みたいな言い方やめてくださいよ」バタン

漫「食らいつくすで!」バタン!

末原「普通にタコ焼き食べたいだけやろ漫ちゃん」スタスタ

  ウィーン

歩「いらっしゃいませ!」

末原「2人です」

歩「ではこちらのテーブル席におかけください」

末原「なかなかオシャレで瀟洒な店内の雰囲気やな……」スタッ

漫「さァなに食べまひょか!評判通り色んなタコ焼きありますよ!ウズラの卵やハム焼きやタコやエスカルゴ入りのタコ焼きなんかもありまっせ!」

末原「えらいはしゃいでますね……タコ入りのタコ焼きは普通やろ」

漫「しかもぜーんぶ300円!ホンマ安いですわこの店は!」

末原「手袋投げるとはなんだったんですか普通にワクワクしてるやないですかまったく……」

漫「うちはエビ入りのタコ焼きにしますわ、末原先輩は?」

末原「私はシンプルに普通のタコ焼きですかね」

漫「ほな店員呼びますね、あのすんまへん」

国広「ご注文お決まりでしょうか?」

漫「エビ入りタコ焼きとノーマルなタコ焼きで、あとコーラを二杯」

末原「あのすいません醤油味はありますか?」

国広「申し訳ございませんお客様、当店は醤油味のタコ焼きは出してはおりません」

末原「そうですか、チッ」

漫「そんな露骨に不機嫌にならないでくださいよ……」

国広「では少々お待ちください」トコトコ

漫「さてお手並み拝見と行きますかいな」フフフ

  10分後

漫「ハム!ハフハフ!!」

末原「うんなかなかイケますね……」モグモグ

漫「ハム!ハフハフ!!」

末原「えらいがっついてますね漫ちゃん……」

漫「食えるときにとことん食いだめとく主義ですから」モッキュモッキュ

末原「しかしなかなかトロリとして美味しいですねここのタコ焼き」モグモグ

漫「いやトローリ具合ではうちらのタコ焼きの圧勝ですわ」モッキュモッキュ

末原「ふぅ、あっと言う間に食べきってしまいましたよ」

漫「おかわり頼みましょう、あ、すんません!」

智紀「……」

漫「このタバスコ入りのロシアンルーレットタコ焼きを頼みますわ」

智紀「……」コクン

末原「ちょっと漫ちゃんなんですかその物騒な名前のタコ焼きは……」

漫「6個中1個に大量のタバスコが入ってるみたいですよ!面白そうですやん!食べてみまひょ!」

末原「イヤですよなんでそんな意味の無いことを……」

漫「うちら腐っても大阪人でっせ!笑いとってナンボでっしゃろ!」

末原「いったい誰を笑かそうとしてるんですか……あと実は私は大阪出身やなくて鳥取の倉吉出身ですし……」

漫「適当な嘘言わないでくださいよもう頼んでもうたし諦めてください」

末原「ハァ……」

智紀「お待ちどうさま……」カタン

漫「さァ来ましたよ先輩!どっちから食べますか?」

末原「私は後攻で……」

漫「ほなうちから……」モッキュ

末原「どうですか?」

漫「セーフ!!美味しいタコ焼きや!!」

末原「くっ!次は私かいな……これや!」モグ

漫「どないです?」

末原「……セーフです!」

漫「まぁまだまだやろな、次はこれや!」モッキュ

末原「どうです……」

漫「セーフやっ!!」

末原「くぅ……もう半分ですか……3分の1やから37パーセントの確率でタバスコ入りですね……」

漫「33パーですよ先輩……」

末原「これや!」モグ

漫「どうです?」

末原「……う”う”!!」

漫「タバスコですか?!」

末原「ナーンチャッテ!!とっても美味しいタコ焼きです!!」

漫「またセーフかいな……これでついに残すは2個やな……」

末原「泣いても笑ってもラストですね……」ゴクリ

漫「タバスコ地獄は末原先輩ですからね、うちは天国や!」モッキュ

末原「どうや!」

漫「アジジジジジジジジ!!!タバスコ食べてもうた!!」

末原「イエス!自分は間違ってなかったんや!!」

漫「ひぃぃぃぃぃ呼吸すら辛い!!タバスコ地獄やぁぁぁぁ!!」ジタバタ

末原「ハハハ!!面白いですよ漫ちゃん!」

漫「うちはリアクション芸人ちゃうわ!!ひぃぃぃぃぃ辛いぃぃぃぃぃ!!!」

末原「漫ちゃん最高に輝いてますよ、それでは最後の1個を私が」モグ

漫「どんどん辛くなってくぅぅぅぅぅぅぅ!!!」ジタバタ

末原「……かはっ!!なんですかこれ!めっちゃ辛いやん!!」

漫「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」ジタバタ

末原「ぴぃぃぃぃぃ!!な、なんで私のまでタバスコがっ!!かはっかはっ!!」

智紀「タバスコ1個サービスしといた……」クククッ

なんだかんだでトーカのタコ焼き屋さんを楽しむ二人であった

  1時間後

漫「ふぅ満腹や」ポンポン

末原「色んなタコ焼きがあって楽しかったですね」

漫「マグロ入りがなかなかでしたわ」ポンポン

末原「私はチーズ入りですね口の中でチーズがふわっととろけるのが最高でした」

漫「まぁうちらのタコ焼きに比べるとまだまだやな」シーシー

末原「そう言いながらガツガツ食べてやないですか」

漫「ただ食べてたんちゃいます、うちらのタコ焼きと比べてどこらへんが足りひんかチェックしてたんですわ」

末原「それで足りないとこはわかったんですか?」

漫「全部や!」

末原「大きくでましたね……」

漫「まだまだうちらのタコ焼きの足元にも及びませんよ」フフン

末原「あんだけ美味しそうに食べまくったあとやと説得力ありませんよ漫ちゃん」

漫「ホンマですって!こんなトローリ具合が足りないタコ焼きなんて大阪やとペケですよ!なぁホンマあかんでこのタコ焼き!」

歩「す、すいません!!」

漫「東京やとこんなでもウケるかもしれんけど大阪人の舌は騙せへんで!こんなもん大阪行けばいくらでも食えるで姉ちゃん!」

末原「漫ちゃんやめなさいって……」

漫「なぁうちはあんたらのこと思って忠告してるんやで、このままやとここのタコ焼き屋あかんでホンマ」

歩「うううすいません……」

漫「せやから謝ってほしいとちゃうねん、もっとタコ焼きにたいして真摯に向き合ってほしいんやとこっちがお願いしとる……」

末原「漫ちゃん!!」

純「ほういろいろ言ってくれるじゃねぇかよ」

歩「じゅ、純さん!」

純「歩はあっち行ってろ、俺が相手するから」

漫「えーっと誰や?」

純「オレはここのシェフの井上純だ」

漫「元ロッテの選手だった……」

純「その井上純じゃねぇ!!もうそのことは何百回も言われてるからうんざりだ!」

末原「言葉遣いはあれですがどう見たって女の人だから違いますよ漫ちゃん」

漫「ちゃいますか、たしかにあの井上純に比べたらイケメンやけど……」

末原「そっちやなくてザ・スパイダーズのほうですよ」

漫「ああそっちですか」

純「そっちでもねぇ!!てかそっちも男だろ!オレは女だ!!タコ焼きみたいな頭しやがって!!」

漫「してへんわ!!誰がタコヤキヘッドやねん!!」

末原「それでここのコックさんが私たちになんの用ですか?」

純「さっきからオレのタコ焼きを言いたい放題言ってくれてるみたいじゃねぇか、厨房までガンガン聞こえてるぜ」

漫「だってホンマですやん全然トローリ具合足りひんってこのタコ焼き!なに思ってこんな焼き方してるのかホワイやで!」

純「俺は大阪人の口に合わせて作ってるわけじゃないからな、ここは東京だ郷に入ったら郷に従いな大阪人さんよ」

漫「それがあかんねんタコ焼きは媚びたらあかんのや、こんなんやと大阪のほんまもんのタコ焼きが誤解されてまうわ!」

純「そんなのこっちの知ったこっちゃねぇんだよ、俺は大阪のためにタコ焼きを作ってるわけじゃないからな」

漫「それならそれでけっこうや、いつまでも二流のタコ焼きで満足するんやな」フフン

純「やたら自信家だなタコヤキ頭さんよ、俺より美味いタコ焼きが作れると本気で思ってるのか?」

漫「当たり前田の栗きんとんやん、タコ焼き焼かせたらうちらの右に出るもんなんてそうそうおまへんで」

純「この値段でか?」ニヤリ

漫「くっ!!それは……」

純「これだけ安価でここまで美味いタコ焼きが食えるのはこの店だけだぜ?龍門渕家の力で食材を安い値で手に入れられる術を持っているからな!」

漫「た、たしかにここのタコ焼きはやたら安いで……」

純「ほれ見ろ、今の時代は美味いだけじゃやっていけないんだよ、美味くで安い、その二つが揃ってる店が生き残っていくんだぜ」

漫「うぐ……」ギリッ!

純「まぁうちのマネをしようなんてバカな考えはよすんだなハハハ」トコトコ

漫「……っ!!」

漫「出来らあっ!」

純「いまなんていった?」

末原「よすんや漫ちゃん!」

漫「ええんや先輩!!」

漫「同じ値段でもっとうまいタコ焼きを食わせれる言うんたんや!!」

純「こりゃあおもしろいデコっぱちだぜ」

末原「いや漫ちゃんはタコ焼きのことになるとすぐムキになるんです
   すいません漫ちゃんのかわってあやまります!」

純「そうはいかないぜ大阪人さん」

  ザワザワ ナンダナンダ プンスコ ガヤガヤ

純「大勢の客の前でケチつけられたんだ」

純「こりゃあどうしてもうちと同じ値段でうまいタコ焼きを作ってもらおう」

漫「え!!同じ値段でタコ焼きを!?」

純「そうだこのタコヤキ頭とオレで……」

純「タコ焼きのデリシャスマッチだ!」

  ザワザワ ワーワー ダルイ ウルサイソコ 

純「いいなタコヤキ頭!勝負は二日後!場所はこの店だぜ!!」

漫「くっ……!!」

こうして井上純とのタコ焼き対決が決まったのだった……!

取りあえず今日はここまで
残りは明日投下しますお

  そば屋にて

漫「ハァァァァァァやってもたぁ……」

末原「なにがタコ焼きのデリシャスマッチですかそんなの漫ちゃん一人でやってくださいよ私知りませんからね」

漫「そんな冷たいこと言わんといてくださいようちと末原先輩は運命共同体でしょう!」

末原「漫ちゃんとは深い仲ですが一緒に破滅するのは御免ですよまったく……」

漫「うちはホンマタコ焼きのことになると変なスピッツ入ってしまいますから……」

末原「スイッチやろ入るのは……なんですかスピッツって……」

漫「小型犬ですよ知らんのですか末原先輩?」

末原「知ってますよスピッツぐらい!なんでそこでスピッツが出てくる言うたんです私は!」

漫「しかしここの鴨南蛮イケますね」ズルズル

末原「話しそらさないでくださいよ……」

漫「話~そらさないで~♪」

末原「DEEN歌わないでください、さっきタコ焼き大量に食べたのによく入りますね」ズルズル

漫「先輩も食ってますやん、てか先輩も一緒に考えてくださいよどうやったら勝てるか」ズルズル

末原「自分で蒔いた種ぐらい自分でなんとかしてくださいよ……」ズルズル

漫「とか言いつつ困ってるうちをほっとけないのが末原先輩ですやん」ズルズル

末原「まぁそんな簡単に見捨てるぐらいなら一緒になってへんからな漫ちゃんと」ズルズル

漫「しかしあそこより安く美味いタコ焼きを作るにはどないしよ」ズルズル

末原「新しいタコ焼きを生み出すしかないでしょうね」ズルズル

漫「新しいタコ焼きですか」ズルズル

末原「あそこは斬新なタコ焼きが多いですからね、こっちも他に類のないタコ焼きを考えるしかありません」ズルズル

漫「新しい言うてもあそこと同じ安さやないとあかんのでっせ、高級な食材は手に入れらへんしそう突飛なのはできませんよ」ズルズル

末原「チーズなんかどうやろ」

漫「先輩食べてましたやんあそこでチーズ入りのタコ焼き」ズルズル

末原「違いますよ中にチーズを入れるんやなくてチーズをタコ焼きに振りかけるんです
   トロリと溶けたチーズがソースの代わりになってなかなか美味しそうじゃありませんか?」

漫「ベチャーとしてて食べづらそうですね、まぁひとまず候補のひとつですな」ズルズル

末原「もしくは卵でとじるのなんてどうですか?」

漫「卵やとタコ焼きの生地と混ざってぐちゃぐちゃになりそうですな」ズルズル

末原「なら中に果物入れるのはどうです?焼きリンゴとか人気でしょ」

漫「食べたいとは全然思えませんね果物は、酢豚にパイナップルはいらんでしょ」ゴキュゴキュ

末原「たしかに酢豚のパイナポーはいらないですが……ってか漫ちゃんも考えてくださいよさっきから私ばっかりじゃないですかアイディア出してるの」

漫「こう見えて頭の中はタコ焼き一色ですよ、あ、そばの汁いらないならうちにください」サッ

末原「良いですけどちゃんと考えてくださいよ」

漫「大丈夫こう見えてうちはやるときゃやる女ですから」ゴキュゴキュ

末原「大丈夫なんですかホンマ……」

漫「ん!そうや蛸南蛮なんかどうです?!鴨南蛮ならぬ蛸南蛮!これイケるんちゃいますか?!」

末原「……まぁ取りあえずこれから家に帰って色々試してみましょう」

  次の日 アパートの部屋にて

漫「マズッ!!なんやねんこれ!!」

末原「やっぱらっきょ入りはダメですか……」

漫「もやし入りもダメやな……野菜系列は上手くいきませんわ……」

二人は昨夜からずっと彼女らが住んでいるボロアパートの一室で必死に新タコ焼きを考えていた

末原「暑い……私たちがタコ焼きになりそうですね……」ダラダラ

漫「ホンマにタコ焼き頭になってまう……クーラーほしいですね……」ダラダラ

末原「そんなお金ありませんよ扇風機で我慢してください……」ダラダラ

漫「風がぬるいから余計蒸し暑く感じますわ……」ダラダラ

末原「いっそのこと凍らせますか!アイスタコ焼きってことで!」

漫「そんなのただの冷凍食品の解凍前やないですか……」

末原「カレー風味なんてどうです?これなら子供とかにもウケそうですよ」

漫「あまり新鮮味がありませんな、もうどこかのタコ焼き屋がやってそうやカレー味」

末原「さっきから否定ばかりで全然考えようとしないやないですか漫ちゃん!もっと真剣にやってくださいよ!」

漫「うううすんません……そうややっぱ蛸南蛮に!」

末原「……いいです私が考えますから漫ちゃんはそれを試食してください」

漫「迷惑ばかりかけてすんません……」

その後も二人でアイディアを出し続けた……

末原「イカなんかどうです?」

漫「ちょっと普通すぎますよ……」

アイディアが浮かんでは作り食べアイディアが浮かんでは作り食べをひたすら繰り返し続けたのだ

漫「そうやタコ焼き寿司なんかどないやろシャリの上にタコ焼きを豪快に乗っけて……」

末原「却下です」

全然ダメなモノもあればあと少し惜しいとこまで行くモノもあるのだが……

末原「餃子みたいに中にひき肉詰めるのなんてどうでしょうか?」

漫「ええかもしれませんけどなにか決め手に欠けますね……」

末原「決め手言うてもな……」

漫「そうや中に豚の角煮入れるのどうですやろ!トローリとしたタコ焼きにさらにトローリとした角煮を入れるんですよ!」

末原「漫ちゃんにしては珍しくちゃんとした案ですがそれやと予算がオーバーですね……」

浮かんでは消え浮かんでは消え……数々のアイディアが鼻息の如く飛んで行くのだった……

末原「鰻……」チラッ

漫「だからうち鰻ちゃいますって!ってか鰻は高すぎますよ!」

末原「鰻のたれをかけるのは……いや美味しく無さそうやな」

言いようのない焦燥感だけがココロに増していくのだった……

末原「ああもうダメや!全然思い付きません!」バタン!

漫「先輩諦めないでくださいよ……」

末原「元々漫ちゃんの問題やろ漫ちゃんが自分で解決してください」ゴロン

漫「ううう末原先輩の助けが必要なんですよなんとか力になってください……」オロオロ

末原「……ホンマに私たちはこれでいいんでしょうか」

漫「なに言うてるんですか先輩……」

末原「このままタコ焼きを焼いててホンマにこの先やっていけるんでしょうか……」

漫「一緒にタコ焼きで成功しよう言うたでしょ!うちは絶対末原先輩と成り上がりますよ!」

末原「本気ですか漫ちゃん……」

漫「うちは常に本気ですよ!タコ焼きひとつで田園調布に家を建てるのがうちの夢ですよ!」

末原「漫ちゃんは前向きですね……」

漫「当然ですわ!ポジティブなのがうちの唯一の取柄ですからね!」

末原「そんなことないですよ漫ちゃんにはもっと良いところがたくさんあります」ムクッ


漫「え!どこですか?!」

末原「それは恥ずかしいから内緒です」フフン

漫「気になるやないですか教えてくださいよ~」

末原「メゲそうになる私を元気づけてくれるとことかですよ」ヌギヌギ

漫「なに着替えてるんですかどこか出掛けるんですか?」

末原「今日は日曜ですしサッカーでも見に行きましょう」

漫「え、考えないんですか明日ですよデリシャスマッチ!」

末原「いつまでもこんなモワッとした中にいたらホンマにゆでだこになってしまいますよ
   ちょっとサッカーでも見て気分転換でもしましょう漫ちゃん」

漫「ホンマは巨人の試合が見たいですがサッカーも良いですね、どこのチームを見に行くんですか?」

末原「そりゃ近場やし東京のクラブですよ、ほら早くしてください先に行っちゃいますよ」ガチャン」

漫「待ってくださいよ今着替えますから!」

末原「早くしないと試合が始まってしまいますよ」

漫「東京と言えばFC東京やろ東京ヴェルディやろか!どっちにしろ楽しみや!」ワクワク!

  味の素フィールド西が丘にて

漫「……」

末原「行け!そこや!行け!」

漫「……」

末原「どうですか漫ちゃん?なかなか空いててのんびり試合が見れるでしょう?」

漫「あの先輩……」

末原「しかもここ西が丘は観客席からピッチまでがめちゃくちゃ近いですからね、選手が間近で見れますから臨場感が凄いですよホンマ」

漫「いやだからあの末原先輩……」

末原「なんですかなんかスタジアムグルメでも食べたいんですか?残念ながらここはそんな種類は……」

漫「ちゃいますよ!うちは東京のチームの試合やと聞いたんですけど!」

末原「だから東京のクラブ言うたやないですか、東京武蔵野シティとヴァンラーレ八戸の試合ですよ」

漫「そんなチーム知らんわ!うちが見たい思ったんはFC東京と東京ヴェルディの試合ですわ!」

末原「J1の瓦斯の試合は昨日やし緑は今日讃岐での試合やから東京で見れる試合はここだけですよ」

漫「そやからと言って東京武蔵野なんちゃらとなんちゃら八戸の試合とかちょっとマニアックすぎますよ……」

末原「JFLなめたらあきませんよここには夢と希望と絶望が詰まってるんや」

漫「知りませんよそんなの……まさか町田ですら無いとは思いませんでしたよ……」

末原「イヤならいいんですよ帰っても」

漫「もちろん見ますよもう……」

  ワーワー ワイワイ ザワザワ ヴァーンラレ

末原「そこや!決めんかい!」

漫「なかなか熱い試合ですね……」

末原「どっちも昇格がかかってますからね」

GK「もっと寄せろー!裏とられんなー!」

漫「ゴールキーパーって試合中ずっとあんな大声で叫んでるんですね……」

末原「味方に指示を出すのもGKの役目ですからね、空いてるからよく選手の声が聞こえてくるでしょ?」

漫「そうですね、愛宕さんも試合中あんな感じで指示出してるんやろか」

絹恵≪サイドしっかり守備!走らんかーい!≫

絹恵≪そっちちゃうやろー!!集中集中!!≫

絹恵≪お姉ちゃんだーい好き!!≫

漫「てな感じで」

末原「最後なんか違いますがまぁたしかにそんな感じでしょうね……」

漫「うち愛宕さんのサッカーしてるとこ見たことないですねん、きっと麻雀してるときとはギャップが凄いんでしょうね」

末原「麻雀してるとき普段家でゴロゴロしてるときの小鍛冶プロぐらいギャップが凄いですよ」

漫「それはよっぽどですね……」

GK「ナイスカバー!」

末原「なかなかどっちのクラブも攻めあぐねてますね……」

漫「うちらのタコ焼きと同じ決め手に欠けた試合やな」

末原「いっそのことタコ焼きをサッカーボールみたいな模様にしますか」

漫「見た目が面白いだけでなんも面白くないですやろそれ、やっぱ蛸南蛮が良いと思うんですよ」

末原「いやにその蛸南蛮とやらにこだわりますね漫ちゃん……」

副審「!!」スタタタタタタッ!!

漫「しかし間近で見てわかりましたけどあの旗持ってる審判はえらい走ってますね」

末原「最終ラインを常にチェックしないといけませんからね副審は、ちょっとでも集中を切らすことができませんよ」

漫「大変やな審判も」

末原「普段テレビで見るだけではわからないことがスタジアムで直に見ることで色々わかるんやな」

漫「なるへそ」

末原「やっぱサッカーでも野球でもそうやけど熱気やバチバチとしたせめぎ合いを生で感じるのが一番ですよ」

漫「ほう……」

末原「現場で見てこそのスポーツ観戦ですね」

漫「……」

副審「!!」スタタタタタタタタッ!

漫「……」

末原「私はここと日立柏サッカー場が好きなんですよ選手にすごく近いですし」

漫「……は!!」

そのとき漫に電流走るっ……!!

漫「かはっ!かはっ!!そ、そうや!!」

末原「きゅ、急にどうしたんですか漫ちゃん……」

  ゴーーーーーール!!!!!

末原「あ!!漫ちゃんのせいでゴール見逃したやないですか!!」

漫「あ……あ……」

圧倒的閃きっ……!!

漫「そうやっ……これやっ……!!」

この土壇場で思いつくっ……!井上純をも倒す圧倒的秘策っ……!

漫「忘れていたっ……本当に大事なことをっ……!!」ポロポロ

末原「す、すいませんちょっと強く言い過ぎましたね……」

漫「ちゃうねん先輩!ついにひらめいたんですよ!」

末原「世界を救う方法ですか?」

漫「なんの話してるんですか……そうやないですよタコ焼き対決のことですよ!」

末原「え……」

  ゴーーーーーール!!!!!

末原「あ!また見逃してもうた!!」

漫「これで勝てるっ……あいつらをギャフンッ……言わせるっ……!」ポロポロ

末原「ど、どういう方法なんですか漫ちゃ……」

  ゴーーーーーール!!!!!

末原「あ!またや!わざとやってるやろ!!ンモー!!」  

漫「これで勝つんやっ……!!」ギリッ!

体調悪いから今日はここまでですお

  夜  アパートの部屋にて

末原「……」

漫「ううう寝れへん……」ゴロゴロ

末原「……」

明日に備え二人は早く布団に入った

末原「……」

漫「うううムシムシする……」ダラダラ

末原「……」

しかし緊張のせいか暑さのせいなのかなかなか寝付くことが出来なかった

末原「……」

末原はただじっと暗い天井を見つめていた

末原「……」

漫「ううう八戸のチャントが耳から離れへん……」

末原「漫ちゃん、明日私たち勝てるでしょうか……」

漫「せ、先輩起きてたんですか……静かだから寝てるのかと……」

末原「ずっと明日の試合のことばかり考えてました、ホンマに漫ちゃんの言うあの方法で良いんでしょうか」

漫「なに言ってるんですかうちらにはあの方法しかないんですよ!イチかバチかこれで行くしかないんや!」

末原「……」

漫「明日タコ焼き作るのは末原先輩がやってください」

末原「え……なんでですか漫ちゃん……」

漫「悔しいですがタコ焼きを作る腕はうちより末原先輩のほうが上です、あいつらに勝つためにお願いします!」

末原「くっ……」ポロポロ

漫「せ、先輩!?」

末原「うぐ……はぁぐ……」ポロポロ

漫「な、泣くほどイヤなんですかタコ焼き焼くの?!」

末原「ち、違います……」

漫「な、なら何故……」

末原「漫ちゃん……私はあの夏の大会からどこか抜け殻のようでした……」ギリッ……

漫「先輩……」

末原「なにをやっても身に入らず長続きせず……腑抜けのようになってました……」ポロポロ

漫「先輩泣かんでくださいよ……」

末原「だから勉強もろくに集中できずあんな代行と同じバカ田大学にしか入れなくて……」ポタポタ

漫「いや末原先輩は勉強しててもバカ田大学にしか……いやなんでないです」

末原「大学を出てもろくに働きもせずブラブラと……漫ちゃんが声をかけてくれなければ私は……」ポロポロ

漫「やっぱ末原先輩と一緒にいたいですから……」

末原「タコ焼き屋も最初はやる気が出ませんでした……しかし……」

漫「しかし?」

末原「今回の勝負で久々に沸々と熱いモノが沸き立ってくるんです……!」ギリッ!

漫「熱いモノですか……」

末原「あの夏以降忘れていた勝負の気持ちっ……生きてる感覚っ……!」

漫「……」

末原「まるで死人のようだった自分っ……で、でもまたあの夏のころのような自分に戻れるっ……」ポロポロ

漫「先輩……!」ジワッ

末原「勝って取り戻したいっ……昔の自分……輝いてたころの自分をっ……!!」ポロポロ

漫「勝ちましょう先輩……明日必ずっ……!」ポロポロ

末原「ひっぐはぁぐ……うぐ……」ボロボロ

漫「勝って成功しましょう……タコ焼きでっ……!」ポロポロ

末原「漫ちゃん……!」ポロポロ

漫「先輩……!」ポロポロ

末原「うぐ……」ポロポロ

明日の勝利を互いに誓い合ったのだった……!

  次の日 トーカズキッチンにて

国広「さぁ皆さんお待たせいたしました!タコ焼きデリシャスマッチの始まりです!」

  ワイワイ ガヤガヤ チョータベタイヨー ホーホッホッホッ

末原「とうとう来ましたね漫ちゃん……」

漫「絶対にうちらが勝つんや……!」

国広「果たして勝利するのは僕らのトーカズキッチンか?はたまた挑戦者のすえしげ亭か?」

漫「うちらに決まってるやろ!」

国広「司会はトーカズキッチンスタッフの僕国広一が担当させていただきます」

末原「司会者はあっち側ですか完全にアウェイですね……」

透華「おーほっほっほ!わたくしたちが負けるなんて万にひとつもありえませんわ!」

漫「あれが龍門渕透華やな……」

国広「ねぇ透華、司会なんかやりたくないよ僕」

透華「なに言ってますの一!司会を担当できるのはわたくしたちの中であなたしかいませんわ!」

国広「しょうがないなぁもう……」

透華「フフフ!あの末原さんたちに格の違いというモノをまじまじと見せつけてさしあげますわ!」

末原「後悔するのはそっちですよ龍門渕さん」

漫「大丈夫ですか先輩……」

末原「心配しなくて良いですよ漫ちゃん、緊張どころからむしろワクワクしてるぐらいです」

漫「先輩……」

末原「凡人の私がどこまで焼けるんか、少し楽しみです」

池田「龍門渕頑張れし!しししし!」

睦月「井上さん頑張って!」

桃子「変な人頑張れっす!」

ダヴァン「リューモンさん期待してマスヨ!」

はやり「お腹すいたよ~☆はやくはやりタコ焼き食べた~い☆」

国広「僕らのトーカズキッチンを応援しに大勢の方々が来ております!」

漫「見知った顔ばかりでっせ先輩……」

末原「やはり有名人気プロ雀士だけあって顔が広いですね……」

池田「いやになるぐらい食べまくるし!しししし!」

福路「今日は華菜が食べるわけではないのよ……」

亦野「頑張れ純くーん!」

栗巣「フレー!フレー!リュウモンブチー!!」メラメラ

国広「みんなの歓声のひとつひとつが僕らの力になります!」

漫「ホンマに圧倒的アウェイや……」

末原「周りはみんな敵だらけですね……」

国広「そしてもちろんすえしげ亭にも応援に駆け付けた人がいます!」

漫「ホンマでっか?!」

末原「どこですか!?洋榎ですか!由子ですか!絹ちゃんですか!もしかして代行……」

国広「もちろんこの人です!」

梅垣「おいっす、久しぶりやな」

漫「え、誰」

梅垣「あ?うちのこと忘れたんか上重」

漫「ちょっと存じ上げないんやけど……」

末原「漫ちゃんホンマに忘れたんですか……」

梅垣「このうちを忘れるとはええ度胸やな、眼鏡でおさげで楊枝くわえてる言うたらうちだけやろ」

漫「ええっと……」

末原「思い出せそうですか?」

漫「あ、室戸会長!」

梅垣「誰やねんそれ!あんたの麻雀部時代の先輩の梅垣や!」

漫「ああああ梅垣先輩!ご無沙汰してますっ!」ペコッ!

梅垣「あんだけ可愛がってやったのによう忘れれるな上重」

漫「で、でも眼鏡おさげペチャパイと梅垣先輩言いましたし……」

梅垣「ペチャパイやとは言うてへんやろ!末原よりはあるわ!楊枝だよ楊枝!」

末原「相変わらず楊枝くわえてるんですね」

梅垣「まぁ今日はワケあって楊枝やないけどな、ほれ上重やるよ」

そう言うと梅垣は漫に口にくわえていたモノを渡す

漫「プリッツやないですか、うちこれ好きですねん」

梅垣「一世一代の勝負をする上重にせめてもの餞別やな」

末原「ありがとうございます梅垣先輩」

漫「このプリッツ全然味がしないですね」ポリポリ

梅垣「そりゃチョコはうちが全部舐めとったしな」フフフ

漫「じゃあこれ舐め舐めしたポッキーですか!!ばっちぃの食わせないでくださいよ!!」

末原「相変わらずイタズラが好きですね先輩……」

国広「あのそろそろいいかな?」

梅垣「なんや人がせっかく旧交を温める最中やのに」

末原「先輩あとは対決のあとにでも……」

梅垣「しょうがないな、ほなまたあとでな、頑張れな二人とも」トコトコ

末原「またあとで」

漫「どないして梅垣先輩が応援しに来てくれたんやろか」

末原「風の噂では雀荘を荒らしては各地を回ってると聞きました、多分たまたまそこを通りかかったかしたんでしょう」

漫「自由気ままな生活でうらやましいで……」

国広「デリシャスマッチ開催の前にルールの説明を」

梅垣「そんなのええから早くせんかーい!!はよせんとパブロのチーズタルトが売り切れてまうんじゃい!」

国広「や、野次はやめてください……ルールは至って単純です審査員がタコ焼きを食しどちらのタコ焼きが美味しかったかで勝負が決まります」

梅垣「えらい露出の多い服着とんな姉ちゃーん!今度うちにもその服売ってる店紹介してくれやー!犬に着せるやさかい!」

  ドッ! アハハハハハハ! シシシシシシ!!

国広「ううう……うるさいのがいてやりづらいなぁ……」

漫「野次飛ばしてる梅垣先輩イキイキしてますね……」

末原「子供のころ毎日のように藤井寺球場で近鉄の選手を野次ってたみたいですよ」

漫「イヤな子供やなそれ……」

国広「では本日の審査員三名をご紹介します」

藤田「美味いタコ焼きを食わしてくれると聞いてきたぞ」

国広「まず一人目はまくりの女王ことプロ雀士の藤田靖子プロ!実は麻雀界では名の知れた食通とのことです!」

藤田「ほとんどカツ丼だけどな」

末原「龍門渕の息がかかってる人選やな……」ヒソヒソ

漫「ホンマ卑怯ですわ……」ヒソヒソ

透華「藤田プロお久しぶりですわ」

藤田「久しぶりだな、ところで衣はいるのか?」キョロキョロ

透華「申し訳ありませんわ、衣はいま宮永咲さんと海外を回ってますわ」

藤田「そうか、あいつもすっかり手の届かないところに行ってしまったな」

国広「そして二人目は麻雀界随一の毒舌家……いえ美食家である小禄心プロ!」

心「早く食わしてよタコ焼き!糞不味いタコ焼きだったら私は許さないだよ!」

透華「今日はお越しいただきありがとうございますわ」ペコリ

心「私を呼ぶほどだからきっと美味しいタコ焼き食べさせてくれるんでしょ?!不味かったらブログにボロカスに書いちゃうよ!」

国広「そして三人目は日本各地のグルメを食べて回る番組が大ヒットしてる桜井梨穂子さん!」

梨穂子「ずんいち~お腹すいたよ~」

透華「もうすぐ我がトーカズキッチンの美味しいタコ焼きがたくさん食べられますわ!」

梨穂子「早く食べたいよ~」ジュルジュル

透華「あの人が美味しく食べてる姿は良い宣伝になりますわ、これでトーカズキッチンもどんどん大きくなりましてよ!」

漫「完全にこっちが不利な状況やないですか!」

国広「審査員が美味しいと感じたのほうの札を挙げて数が多いほうが勝ちです、まぁすごく単純だね」

藤田「美味いタコ焼きを食わしてくれると聞いてきたぞ」

国広「まず一人目はまくりの女王ことプロ雀士の藤田靖子プロ!実は麻雀界では名の知れた食通とのことです!」

藤田「ほとんどカツ丼だけどな」

末原「龍門渕の息がかかってる人選やな……」ヒソヒソ

漫「ホンマ卑怯ですわ……」ヒソヒソ

透華「藤田プロお久しぶりですわ」

藤田「久しぶりだな、ところで衣はいるのか?」キョロキョロ

透華「申し訳ありませんわ、衣はいま宮永咲さんと海外を回ってますわ」

藤田「そうか、あいつもすっかり手の届かないところに行ってしまったな」

国広「そして二人目は麻雀界随一の毒舌家……いえ美食家である小禄心プロ!」

心「早く食わしてよタコ焼き!糞不味いタコ焼きだったら私は許さないだよ!」

透華「今日はお越しいただきありがとうございますわ」ペコリ

心「私を呼ぶほどだからきっと美味しいタコ焼き食べさせてくれるんでしょ?!不味かったらブログにボロカスに書いちゃうよ!」

国広「そして三人目は日本各地のグルメを食べて回る番組が大ヒットしてる桜井梨穂子さん!」

梨穂子「ずんいち~お腹すいたよ~」

透華「もうすぐ我がトーカズキッチンの美味しいタコ焼きがたくさん食べられますわ!」

梨穂子「早く食べたいよ~」ジュルジュル

透華「あの人が美味しく食べてる姿は良い宣伝になりますわ、これでトーカズキッチンもどんどん大きくなりましてよ!」

漫「完全にこっちが不利な状況やないですか!」

国広「審査員が美味しいと感じたほうの札を挙げて数が多いほうが勝ちです、まぁすごく単純だね」

漫「さァさっそく試合の開始や!」

純「その前に言っておくことがある」

末原「なんですか……」

純「この勝負!負けたほうが東京から出ていってもらう!」

漫「なんですて!」

末原「そんな急に言われましても……」

純「これはお遊びじゃない真剣勝負だ!負けたほうはそれ相応の報いを受けなければならないんだぜ」

漫「受けて立ってやろうやないか!うちらが負けたらあんたらも出てってもらうで!」

純「望むところだぜ!東京どころか関東からも出て行ってやるよ!」

国広「純くん落ち着いて……」

漫「取ったで言質!必ず約束は守ってもらうで!」

純「その言葉そっくりそっちに返すぜ!」

透華「純!喧嘩してないで早くタコ焼きを持ってきなさいですわ!」

純「ま、せいぜい頑張れよタコ焼き頭」スタスタ

漫「やかましいイカ焼き頭!」

末原「イカ焼き頭ってなんのひねりもないですね……」

国広「では先攻の純くんからタコ焼きを持ってきてください」

藤田「果たしてどんなタコ焼きが食えるのかな」

心「昨日からなにも食べてないよ私は!ちょっとぐらい美味しいぐらいでもペッだよ!」

梨穂子「た~こた~こたこやき~食べちゃうぞ~♪たこたこたこさ~んたこたこさ~ん♪」

純「舌がとろけるぜ」カラカラ

国広「トーカズキッチン渾身のタコ焼きの登場です!」

漫「なんやあのタコ焼き……」

末原「かつお節が……黒い?」

透華「おーほっほっほ!」

純「さぁどうぞ食べてください」ニヤリ

藤田「どれどれ」モグ

心「黒いかつお節なんて初めて見るよ!沖縄にもこんなのないよ!」ムシャ

梨穂子「いただきま~す!」パクン

純「どうですか?」ニヤニヤ

藤田「う、美味い!?なんだこのタコ焼き!?」モグモグ

心「噛んだ瞬間中の具がとけて舌に絡んで絶妙だよ!」ムシャムシャ

梨穂子「美味しいよ~」パクンパクン

藤田「いったいこのタコ焼きにはいったいなにが入ってるんだ?」モグモグ

純「フォアグラです」

心「フォアグラ?!フォアグラなんて初めてだよ!」

透華「ハンガリーから取り寄せてる高級フォアグラですわ、去年からこのためだけにハンガリーに工場を建てましたのよ」

藤田「これがフォアグラなのか、世界三大珍味というだけあってなかなかイケるな」モグモグ

梨穂子「いくらでも食べられそうだよ~」パクンパクン

透華「そしてこの黒いモノはかつお節ではなくトリュフですのよ」

藤田「なんとこれがトリュフなのか……」

純「黒トリュフを薄くスライスしてタコ焼きにまぶしてるんですよ」フフフ

透華「こちらはイタリアの工場から取り寄せてますわ」

梨穂子「イタリアのトリュフといえば最高級品だよ~」

藤田「残すのがもったいないな」モグモグ

純「そして最後にこのソース、実はキャビアなんだ」

藤田「キャビア!?」

透華「普通のソースの中にキャビアを混ぜてますのよ、いつものソースにキャビアの味が良いアクセントになってますわ」

梨穂子「なかなか変わった味だよ~」パクンパクン

心「贅沢すぎて小鍛冶ちゃんみたいに痛風になっちゃいそうだよ!」ムシャムシャ

藤田「至れり尽くせりのタコ焼きだな」モグモグ

梅垣「そんなのが300円で食えるわけないやろ!インチキや!」

純「ところがどっこい、これらの食材は自社工場で徹底的にコストをかけずに作ってるからそれほど高値にならずに済むんだぜ」

透華「これでもすべてハギヨシが食材のために世界中を奔走してるおかげですわ!おーほっほっほ!」

透華「おーほっほっほ!」

末原「たかがタコ焼きでそこまでやりますか……」

漫「されどタコ焼きですよ末原先輩」

末原「漫ちゃん……」

漫「それだけタコ焼きがみんなを魅了する言うことですよ」

藤田「美味い美味い」モグモグ

心「ンマ~イ!」ムシャムシャ!

梨穂子「止まらないよ~」パクンパクン

梅垣「龍門渕ー!うちもフォアグラみたいに美味いモン食わして太らせてくれやー!」

透華「シャーラップですわ!!」

純「どうだタコ焼き頭?俺の世界三大珍味焼きには勝てないだろう?」ニヤニヤ

漫「……」

純「国に帰るんだな、お前にも家族がいるだろう」

漫「ふふふ……」

純「な、なに笑ってるんだ……とうとう頭の中までタコ焼きに……」

漫「余裕でいられるのも今のうちや……最後に勝つのはうちらや……」ニヤリ

純「な……」

末原「そうですよ井上さん……」ニヤリ

純「う、うるさい!早くお前らのタコ焼きを持ってこい!」

漫「ここには無いで」

純「は!?」

透華「無いってどーゆーことですの!もしや投げ出す気……」

末原「勝負は投げ出してませんよ」

純「なら……!」

漫「タコ焼きは今から作るんや!」

透華「今から作る?!」

漫「先輩!」

末原「よっしゃ!」シャキーン!

そう言うと末原恭子は傍らのカバンからタコ焼き器を取り出した……!

末原「火つけますよ」

純「おいおい今から作るってマジかよ!」

透華「なんで事前に用意をしてませんの!非常識ですわ!」

漫「これがうちらのタコ焼きだからや!」ニヤリ!

純「なんだと……」

末原「漫ちゃん生地作ってください!私はタコ焼き器を暖めますんで!」

漫「よっしゃ!任せときや!」カシャカシャカシャカシャ!!

漫「出来ました!」

末原「タコ焼き器も良い感じになりました!さっそく生地を投入です!」

  ジュワワワワワアアアアア!!!

末原「よし!良い音です!」

透華「……」イライラ

漫「タコ切るでー紅ショウガも切るでー」ザックザック

純「ふん……」

末原「タコ焼き回して頭も回すで!」クルクル

透華「早く作ってくださいまし!ダラダラ時間を延ばすのはやめてほしいですわ!」

純「見ると普通のタコ焼きじゃないか、ふん、結局なにも思いつかなかったのかよ」

漫「そうあくまで”普通”のタコ焼きや」

純「そんなもん作って俺らに勝てると……」

漫「勝てるんや普通のタコ焼きで……」ニヤリ

純「いったいなにを言ってん……」

梨穂子「うわぁ美味しそうな匂いだよ~」

末原「……」ジュージュー!

藤田「音も心地いいな」フフフ

心「すごい手さばきだよ!」

純「え……」

漫「くくく……」

末原「タコ投入や!」サッサッ!

藤田「ほうタコ焼きはこんなふうに作るのか……」

末原「そしてさらに生地を投入や!」ジュワアアアアア!!

心「豪快だよ!」

末原「さらにタコ焼きをクルクルするで!」クルクルッ!

梨穂子「タコ焼きくるくるまわりんこ~♪」

なんと審査員たちは末原恭子のタコ焼き作りを食い入るように見ていたのだ……!

純「な……」

漫「タコ焼きはみんなで楽しむもんなんや」

末原「そいや!」ジュージュー!

漫「たしかにオシャレで高級感を売りにするタコ焼きもええかもしれへん、でも……」

藤田「やっぱタコ焼きってこうだよな」

心「子供のころ祭りの縁日で食べたの思い出したよ!」

漫「みんなでワクワクワイワイするのが一番なんやタコ焼きは、お好み焼きだって厨房から直接持ってくるより目の前で焼かれたほうが美味しいんや」

純「くっ……」

末原「普通のタコ焼きさせてーな」ジュージュー!

藤田「沖縄にも縁日ってあるんですね」

心「あるよ!沖縄バカにしてるね靖子ちゃん!」

漫「お酒だってそうや!一人で寂しく飲むより居酒屋で飲むほうが美味しいやろ!同じ酒やのに!」

末原「でも漫ちゃんお酒飲めないハズでは……」ジュージュー!

漫「いいとこなんですから黙っててください!つまりや!」

純「つ、つまり……」

漫「タコ焼きに高級感なんかいらんのや!庶民の食いもんは庶民の食いもんらしくするのが一番なんや!」

梅垣「よう言った上重!その通りや!」

末原「クルクル回すで!!」クルクルッ!

藤田「美味そうだな」ジュルリ

心「これすこやんの分も持って帰ってあげようよ!」

漫「その証拠があの審査員の笑顔や!タコ焼きを見る目がキラキラしてるで!」

梨穂子「手際が凄く良いよ~」

末原「もうすぐ焼けるで!」クルクルッ!

漫「どうやこれがタコ焼きや!味だけやない五感をフルに楽しむのがタコ焼きなんや!」ビシッ!

純「くぅ……」

漫(これがあの時サッカーを生観戦したときに気づいたことや!)

子供≪わぁ凄く美味しそう!!≫キラキラ!

漫(あの時の子供だって先輩がタコ焼き焼いてる姿を見て目を輝かしてたやないか!)

末原「……」ジュージュー!

漫(具を何にするかとやない!大事なのはタコ焼きに対する真摯な姿勢やった!)

末原「焼けたで……!」

藤田「おおお!」

漫(忘れてたで……一番大事なこと……)

末原「あとは青のりにかつお節にそしてマヨネーズや!」ドバドバッ!

心「かつお節がダンスしてるよ!」

末原「完成や!」

国広「うわぁ美味しそうだよこれ透華」

透華「こらはじめっ!!」

漫「ふふふ……」

梨穂子「いただきま~す」

漫「(勝ったな……)これがタコ焼きの神髄や、高級感を追及するのもええけどもうちょいとお客さんのことを考えることを……」

藤田「うわっ!マズ!なんだこれ!」

漫「は?」

心「うげっ!これホント変な味がするよ!」

漫「え?え?」

透華「どれどれ……」パクリ

藤田「思ってた味と違うぞこれ……」

透華「ほ、ほんとに変な味がしますわこれ!なんですのこれいったい!?」

漫「え、ちょっと待ってください、え?」

純「うわっ、たしかになんだこれ、普通のタコ焼きじゃねぇなこれ」

漫「いったいどんな味なんや……」モッキュモッキュ

歩「タコ焼きってこんな味でしたっけ……」

漫「うわっ!たしかに変な味や!ってかこれって末原先輩……」

末原「醤油味ですけどなにか?」

漫「醤油味?!なにやっとるんですか普通タコ焼きはソースでしょ!!」

末原「もう1回試したいと思いまして……」

漫「よりによってなんで今ここで試すんですか!おかしいやろ!」

末原「でも醤油味のタコ焼きも美味しいですよ!」

漫「美味しいかもしれませんけど醤油なら醤油で事前に言えって言ったやないですか!
  カレーかと思って食いついたのにハヤシやったらがっかりでしょう!」

末原「私はハヤシライスでも嬉しいですけどね」

心「クヌヒャーフラーッ!!ガッティンナラーン!!」ドタバタ!

国広「小禄プロが支離滅裂なことを口走りながら暴れてる……」

純「おそらく沖縄弁で罵詈雑言を浴びせてるんだな……」

漫「ああもうめちゃくちゃや!!」

こうして末原と漫は透華たちとのタコ焼き対決に敗れたのだった……

梨穂子「醤油味も美味しいよ~」モグモグ

        末原「はいはい美味しいタコ焼きですよー」漫「もっとやる気出してくださいよ……」  カン

以上です
読んでくれた人ダンケシェーン

寝るお

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