主人公「甘い理想論!」悪役「シビアな極論!」 (22)

男「よくさ、アニメとかで主人公の甘い理想論と悪役のシビアな極論が対立する場面あるじゃん」

女「あるね」

男「で、ネットを見ると悪役のいってることが『正論!』って持てはやされてることが多いんだよな」

女「そうなんだ?」

男「たとえば――」

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主人公『金よりも大切なものがある!』

悪役『この世で一番大切なものは金だ!』



主人公『俺はこの力で弱い人を守る!』

悪役『力とは弱い奴を蹂躙するためのものだ!』



主人公『ルールを守ってこその勝利だ!』

悪役『勝利のために手段は選ばん!』



男「こんな具合の対立があるとする」

女「ふむふむ」

男「当然、大抵の場合は主人公が勝つ……つまり主人公の主張が通るケースがほとんどなわけだけど」

男「ネットだと『悪役のが正しいのに!』なんて意見が結構見受けられるわけよ」

男「逆に主人公は『甘い』『青い』だの『現実を知らないから言える』だの酷評される」

男「これ……どうしてなんだと思う?」

女「うーん……そうねえ」

女「まず……悪役ってものに対する憧れってものがあるんじゃない?」

男「憧れ?」

女「人間って多かれ少なかれ、社会生活を営む上で自分を取り繕って生きてるわけじゃない」

女「あんた、人を殴りたくなるぐらいムカつくことってある?」

男「そりゃあるよ」

女「で、実際に殴る?」

男「殴るわけないだろ、警察沙汰になっちまうよ」

女「だよね」

女「だけど、物語に出てくる悪役はそこで実際に殴るだろうし」

女「なにより殴った後、自分の立場が危うくならないだけの武力や権力や影響力を持ってる」

女「ようするに、あんたができないことをいとも簡単にやってのけるわけ」

女「そういうところへの憧れがあるんじゃないのかな」

男「なるほどね……」

女「それと……今の話の繰り返しみたいになっちゃうけど」

女「理想論を唱える主人公を支持するのって、結構エネルギーがいると思うのよね」

男「エネルギー?」

女「さっきあんたがいった例を使わせてもらうけど――」

主人公『金よりも大切なものがある!』

悪役『この世で一番大切なものは金だ!』



女「このケースの場合、主人公に肩入れしながら読むと」

女「心の中でどうしても『そうはいっても現実問題、金って大事だよな』な感情が生まれてきちゃう」

女「一方、悪役に肩入れしながら読むと『言いにくいことをズバッと言ってくれた!』って気分になれる」

女「一言でいうと、悪役に肩入れする方が楽なのよ」

女「まとめると、悪役を支持する理由は『悪役への憧れ』と『楽だから』ってとこね」

女「それこそインターネットだって自分を取り繕う必要がほとんどない場所だし」

女「悪役を持ち上げる意見が多く出るのは当然といえば当然……ってとこじゃないかしら」

男「なるほどねえ……」

女「って、あたし専門家でもなんでもないから鵜呑みにしないでよ」

男「いや……なんとなく自分の中で整理ができただけでも収穫だよ。ありがとう」

女「どういたしまして」

男「でも、なんだか寂しいよなぁ……」

男「俺は主人公の甘い理想論って結構好きだから、そういうのが叩かれてるのを見ると辛くなるんだよ」

男「みんな、本音は『弱肉強食!』とか『金が全て!』とか思ってるのかな……って」

女「まあねえ」

女「でもさ、あんたみたいな人はなにもあんただけってわけじゃないだろうし」

女「悪役の極論を正論だっていってる人も、なにも100%そう思ってるわけじゃないだろうし」

女「あまり気にせず、そういう感性を持ってる自分をこれからも大切にしていきなさいよ」

男「うん……そうするよ」

女「ところでさ、頭を働かせたところで甘い物でも食べない?」

男「お、食べる食べる」

女「ジャーン! これ、あたしが作ったケーキ! 食べてみて!」

男「うん……」モグッ

男「…………!?」

女「どう?」

男「お、おいしいよ……」

男(ああ……悪役への『憧れ』と『楽をしたい』という感情がみるみる湧いてくる……)





― 終 ―

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