【安価有り】京太郎「いろんな人。いろんな生き方」 (460)

当スレのルール
1、短編集みたいな感じにします。
2、ひとつ書いたら次の話はどうするかの安価をします。
安価の際は、
・どのキャラ(複数可) ・そのキャラ(たち)との関係性 ・そのキャラ(たち)と何をするか(ある程度具体的に書いてくれると嬉しい) ・ジャンル
を書いてください。
3、批判するくらいなら帰って、どうぞ。
4、飽きたら終わり宣言します

ではよろしくお願いします
最初は例題として自分で書きます

義姉弟(京太郎は養子)
ころねぇころねぇと慕う京太郎、二人は仲の良い姉弟だったが……?
今度こそ純愛もの書きたい

基本投下方法は書いた所から順次投下とします。
投下終了の合図は出しません、二時間越しで投下するかもしれません。
その辺りはご了承ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454859669

初めて会ったのは京太郎が8の頃、酷く狼狽したような顔を向けてきたのは今でも記憶に残るものだ。

これから家族になる……と説明しても、どうして良いか分からないような表情。

時間が解決してくれるだろう、と衣は考えた。衣が精一杯のフォローをしてやれば良いとも思っていた。

京太郎の両親は、衣の目の前で暴走運転をした車と正面からぶつかった。

今でも忘れられない記憶の二つ目だ。目の前になにかが、ポタッ、と落ちた。

御守りのような形をした物のなかに、小学生くらいの男の子と両親が笑顔で写っている。

足が震えた。どうして良いか分からなかった。

周りで騒ぎが起こったが、衣はただその場に硬直し、写真を眺める続ける。

なんとなく身体が動いて、それを手に取る。

するとハギヨシが「各機関への連絡は済ませました。家までお送り致します」と告げてきた。

その声でようやく我にかえることができた。ハギヨシはいつもの優しい微笑みを浮かべていた。

それがまだ若かった衣にはとても安心できるもので、普段はあまりしない、手を握るという行為を無意識に行ってしまう。

家に帰ると、「それでは事情説明もありますので、私は一度現場に戻らせていただきます」ととーかに説明して、すぐにハギヨシは来た道を戻って行ってしまった。

先ほどまであった安心感が消えてしまい、急に不安にかられてしまう。

それを悟ったのか、とーかが衣の手を引いて部屋まで連れていってくれる。

「衣、大変でしたわね。もう大丈夫ですから、安心して良いですわよ」

ベッドに寝かされて、ギュッと手を握られる。
やはり不安は消し飛んだ。すぐそばにいるとーかを感じることができた。

目が覚めると外は闇に染まっており、とーかも既にいなくなっていた。
左手に何かが握られていることに気付き、パッと開く。
笑顔があった。あぁ……持ってきてしまったんだった……となんとなく罪悪感のようなものを感じてしまう。

その御守りを見て、衣はあることに気付いた。
もしかして、テレビで報道されているかもしれない、と。
そう思いテレビのスイッチを付ける。

だが、そんなことをしなければ良かったとすぐに後悔する。

「昨日、車を走行中の乗用車に暴走した車が正面衝突する事故が発生しました。車を運転していたのは前原正一41歳、無職の男で、アルコール反応が検出されており、現行犯逮捕されました。警察の取り調べで、男は「よく覚えていない」と証言しているとのことです。乗用車に乗っていた須賀練太郎、京夫妻は病院に搬送されましたが間もなく死亡が確認されました。次のニュースです」

そんな声と共に、男女の顔写真が出ていて、それは衣の左手に握られている写真の、三人の内の二人であることはすぐに分かった。

こんな呆気の無いものか、と思った。
幸せそうにしている親子三人が、あんな一瞬で、唐突で、理不尽なもので、消えてしまったのか。

衣の両親も既に他界してしまっている。
だがここまでの理不尽なものではなかった。
病気ならば、仕方がない。
それでも、世界にはまだこんな理不尽な死がいくらでも起こっている、ということに、また恐怖心が目覚めた。

もしかしたら、透華やハギヨシも……父と母のように……いなくなってしまうのかと……。

テレビを消して、布団を頭から被る。
そんなことはあり得ないと何度も心のなかで呟いた。

寝て忘れよう。夢の世界に逃げ込んでさえしまえば、こんな恐怖から解放される。

だがつい先ほどまで眠りについていた衣にはまるで眠気が襲ってこない。

どころか、あの一瞬が瞼の裏に焼きついてしまっていた。
目をつむれば、ブレーキの音、鉄が轟音と共に弾ける瞬間、そして……目の前に表れる幸せそうな家族。

結局、そんな悪夢のような夜を布団を被ってやり過ごすことになってしまう。

日が上り始めてようやくベッドから飛び降りる。

この御守りはすぐに返そう。
この男の子が持つべきものだ。

まだ朝は早いが、ハギヨシはすぐに捕まえることができた。

事情を伝えると、ニコリと笑って、「お任せください」とだけ言われて、御守りを引き受けてくれた。

テレビを消して、布団を頭から被る。
そんなことはあり得ないと何度も心のなかで呟いた。

寝て忘れよう。夢の世界に逃げ込んでさえしまえば、こんな恐怖から解放される。

だがつい先ほどまで眠りについていた衣にはまるで眠気が襲ってこない。

どころか、あの一瞬が瞼の裏に焼きついてしまっていた。
目をつむれば、ブレーキの音、鉄が轟音と共に弾ける瞬間、そして……目の前に表れる幸せそうな家族。

結局、そんな悪夢のような夜を布団を被ってやり過ごすことになってしまう。

日が上り始めてようやくベッドから飛び降りる。

この御守りはすぐに返そう。
この男の子が持つべきものだ。

まだ朝は早いが、ハギヨシはすぐに捕まえることができた。

事情を伝えると、ニコリと笑って、「お任せください」とだけ言われて、御守りを引き受けてくれた。

その日も次の日もまだ悪夢は続いたが、三日もすれば徐々に苦しみも忘れて行き、一週間もすればもとの日常が戻ってきた。

ハギヨシからの報告では、無事に御守りを渡してくれたらしい。

それで衣は満足してしまう。結局、どこまでいっても自分には関係の無いことだ。
人の不幸まで抱えようとしても、共倒れになることが多い。顔も知らない他者の重荷を背負って生きようとは、思えない。

もちろん幼少期の衣にそこまでの打算があった訳では無いが、とにかく一日も早く忘れることにした。

そして一月も経った頃。
最近は相変わらず散歩を楽しんでいた。

気分転換になるし、なによりも外に出るのが楽しい。

ずっと閉じ込められていたから、余計にそう思うのだろう。

少し前までは気分が乗らなかったのだが、出歩けるまでには快復していた。

いつものように、今日も散歩コースを少しだけ変えてみた。
少しの変化が、衣には壮大な冒険に見える。

だが、その少し、を変えた、それだけなのに、衣はいつの間にか人生の分岐点に立ってしまっていた。

「あ……」

目の前を男の子が通り過ぎる。
くすんだ金色の頭髪は、その幼い顔には若干不馴れなように見えて、目を引かれた。

そしてすぐに思い出す。

あの髪の色にあの顔。
写真の子だ。

何て偶然なのだろう。

そしてあの子はどこへ行くのだろう?

ただの好奇心だったが、理由はそれだけで十分だ。
すぐに衣は男の子の背中を追い始める。

十分ほど走ってたどり着いた場所は……。

あの事故現場だった。

「………………」

ようやく忘れそうになっていた記憶がまた呼び起こされそうになる。

轟音、悲鳴、ざわめき……。

慌てて頭を振って意識の外に追い出した。

男の子を探すと、一角に供えられた花束をじっと眺めている。

今何を考えここにいて、何を思っているのか。

横顔からは何も分からない。

ただ、その光景を眺めている自分が俗物のような気がして、恥ずかしくなってきた。

町行く人も、その一点を眺める男の子をチラチラと伺っては通り過ぎて行く。

見ただけでなんとなくその男の子がどういう存在なのかに感付いたのだろう。

視線に可哀想なものを見るような雰囲気を感じて、衣もこんな目を向けていたのかな? と後ろめたくもなった。

ハギヨシさん19歳とか本当かよ……てっきり20後半くらいかと思ってたのに……

ハギヨシさん19歳とか本当ですかい……てっきり20後半くらいかと思ってたのに……

京太郎8歳のときはまだ11歳か12歳
先代ハギヨシで脳内補完しませう

そういえば衣の両親は公式で六年前に事故で、となっていますが、もっと昔に病気でと変更しています。

時系列的には
九年前 天江夫妻 病死
七年前 須賀夫妻 事故死

>>16
瞬間移動の理由が明かされたようだ

その時、向こうの方から大人の男が三人、男の子のいる方に歩いて来るのが見えた。

なんとなくこの場にそぐわないような、笑い声が聞こえてくる。

「俺も見たかったなー」

「お、ここか。けっこう派手な事故だったんだってな」

「いやー、あれはかなりの迫力だったぜ。もう映画さながらって感じ。すげー興奮したし」

「おめーそういえば生で見てたんだっけ。羨ましいなぁ、動画とか撮っとけよwww」

「無理言うなwww」

「にしてもトロくせぇよなぁ? 俺だったらこう、相手がこっち側入ってくんの見えたらそっこーハンドル切ってかわしてるわwww」

「どーせ事故られた方もよそ見とかしてたんじゃねぇの?」

「もしかしたらエロいことしてたりしてな!」

「ばーかwwwwww」

「まぁ避けらんなかった時点でどっちもどっちっしょ」

勝手なことを、こんな事故現場で、笑いながら話している。

人が二人も死んだというのに、何故あんなにも人の不幸を馬鹿にしてまで笑ってられるのだろう?

衣はまず、不思議に感じた。

まるで自分とは違う生き物のように感じられた。

次いで沸き上がって来たのは怒りだった。

死人に鞭をうつかの如く罵倒し、しかもそれを両親を亡くした男の子の前で堂々と行った。

身体が前に動き出そうとする。

だが肩を軽く掴まれて、すぐに停止した。

「衣様、危険ですので私が代わりを務めます。後ろにお下がりください」

ハギヨシはそう言って男たちの歩みを遮った。

「すいません、このような所で不快になるようなことを大声で話されるのは如何なものかと思われます。人が亡くなられてる事故の現場ですよ?」

「あ? なんだお前は?」

「失礼致しました。私は萩原と申します。あなた方の言動を見兼ねて、止めていただく為に参りました」

「な、なんだよ……事故った人の関係者?」

「いえ、私はただの目撃者です」

「なら関係ねーだろ!」

「……確かに関係はありませんが、目に余ったもので。仮にあなた方の大切な方が同じように事故を起こされて亡くなられた場合も、あなた方はそうやって笑うのでしょうか? 友人が飲酒運転者と事故を起こして、あなた方は友人を散々貶しますか? トロい奴だ、死んだのはあいつが悪い、そう言って笑うのでしょうか?」

「あ、あぁ? な、なんだよ……」

「チッ……行こうぜ……」

ばつが悪そうに男たちは通り過ぎて行ってしまう。
ハギヨシはいつもの笑顔だった。

「申し訳ありません、ああいう形になってしまって」

「ん……いや……ハギヨシ、ありがとう」

素直に礼をする。
正直な話、ハギヨシの態度を見ていると大分頭が冷えてスッキリした。

ああいうのは特になにも考えてないだけの奴らで、逆上させると面倒になる。

ハギヨシのような冷静な対応をするのが一番良いのだろう。

ハギヨシから視線をはずして男の子を見ると、男の子もこちらを見ていた。

何故か酷く狼狽したような表情をしている。

すぐに思い至った。ハギヨシがいたからだ。

「こんにちは。衣は、天江衣だぞ! お前は?」

「え?」

努めて明るく自己紹介をしたつもりだったのだが、すっとんきょうな声をあげられてしまった。

すぐに「す、須賀、京太郎です……」と返してはくれたが、第一声が空振りに終わってしまったせいでなんと話の取っ掛かりを失ってしまう。

「……あの……もしかして、僕を捕まえに来たんですか……?」

「捕まえ?」

どう切り出そうか困っている衣にお構い無く、警戒するように呟く京太郎。

だが、どういう意味かは分からない。

捕まえるとは、穏やかでは無い発言だ。
何者かに追われているかのようでもある。

「いや、衣は京太郎を捕まえるつもりはないぞ。というより、捕まえるとはどういう意味だ?」

「ちがうんですか……あ、えっと……なんでもないです……僕、行きますね……」

「待て、それでは衣が気になるだろ! ちゃんと事情を説明しろ!」

「う…………」

つい怒鳴り声をあげてしまい、京太郎は身体を震わせる。

「その……ぼ、僕……逃げてきたんです……おじさんの家から……」

おじさんの家から逃げてきた……そこから察するに、両親を亡くし、親戚の家に預けられたが、ここまで逃げてきた……ということで良いのだろうか?

「なんで逃げたんだ?」

「……か、カピーと、一緒に住めなくなるって……僕の、最後の家族なのに……おかーさんもおとーさんもいなくなって……カピーもいなくなっちゃうのは、絶対に嫌だから……だから……今から、カピーを助けにいくの……」

最後の家族……。
話し方からペットのことであることは容易に想像が着いた。

なるほど……ようやく合点がいった。
親戚の家ではそのペットは預かれず、保健所などに連れていかれてしまったのだろう。

京太郎は残った家族とも引き離され、それに耐えられずに飛び出し、単身連れ戻しに行く……ということなのだろう。

ジャンルはどんなのが書けるの?

>>23
うまい下手は置いといて書けと言われればなんでも書けると思うんだ

話が分かり納得すると共に、京太郎のことを他人とは思えなくなっている自分に気が付く。

京太郎にとってのカピーは、衣にとってのとーかやハギヨシなのだろう。

衣だって二人がいなくなるのは嫌だ。

だが……一人だけでは、衣も京太郎もなにもできない。
どこまでいっても無力だ。

………………。
今の衣になら、京太郎を救うことができる。

もちろん衣だけの力じゃない。

とーかに全面的に頼ることになる。

でも、衣なら、今目の前で孤独に戦おうとしてる京太郎を助けられる。

とーかが衣に手を差し延ばしてくれたように、京太郎を引っ張ることができる。

心のなかでとーかに、とーか、ごめん、と謝罪し、ハギヨシを見る。

「ハギヨシ。お願いしたいことがある」

「畏まりました。カピーさんは、私が預からせていただいていますので、後程そちらで」

「なに?」

全てを理解しているかのような笑顔。

それを見て、やられた……と思った。

出会った頃から何かあるたびに先回りしてきたものだが、この件に関しても予め何とかしていたらしい。

「本日衣様が須賀さんに出会うことがなかったとしても、後日私に須賀さんのことで確認をし、現状を知っていずれこうなるだろうと思っていました。偶然出会うことはあまり考えていませんでしたが、お役にたてたようで何よりです」

白々しい顔をしてよくも言ったものである。

息子よりも随分狸なハギヨシには、毎度驚かされる。

しかし、次の一言でハギヨシの驚く顔を見てやろう、と悪戯心を燃やした。

「ならば、もうひとつ頼みがある。京太郎を龍門渕で引き取ってあげることはできないか?」

「はい、お嬢様には許可を得ていますので大丈夫ですよ。衣のやりたいことをして構わない、それがお嬢様のお言葉です」

それを聞いて、一生ハギヨシには勝てないな、と確信する。

「と、言うわけだ京太郎。もろろろの手続きはあると思うが、今日から京太郎は衣たちの家族だぞ!」

「諸々、です衣様」

余計なことを言うな、と照れ隠しのようにハギヨシを睨む。

京太郎はぽかんとした顔をしていた。

「え? ど、どういうことですか……?」

「カピーとやらと離れたく無いのだろう。ならば、一人と一匹まとめて面倒を見ると言っているのだぞ!」

「…………な、なんでですか……? 僕とあなたは、全然関係無いのに……」

「衣にも、京太郎と似た経験をした覚えがある。差異こそあるが、それでも今ここで京太郎を見捨てることなど、衣にはできん」

胸を張って、堂々と胸中を伝える。

やかて京太郎は、泣きながら「よろしくお願いします」と頭を下げてきたのだった。

それから今日まで、長い年月が経った。

最初の頃、京太郎は非常に大人しく従順であった。

大人しすぎるくらい大人しく、とーかと二人でちょっかいをかけまくった。

そうやって過ごすうちに本当の兄妹のようになっていったのだ。

京太郎は本当に優しい男になった。

誰に似たのか気配り上手で、誰に教えられたのか頭がよく、誰に鍛えられたのかスポーツも一通りできるようになっていた。

いやハギヨシ以外にそんなことするやつはいないのだが。

そうやって互いに成長していくに連れ、あることが気になった。

京太郎が衣ととーかに少しずつ距離を起き始めたことだ。

最初はまったく気付かなかったが、最近京太郎が近くにいないことを不審に思い、とーかが追い詰めた。

京太郎の供述は、「元々まったく無関係の人間なのに面倒を見てもらい、その上二人の生活の邪魔になりたくない。二人の役に立つ為に生きたいから、気にしないでほしい」というもので、この時とーかと衣だけではなく、珍しいことに二代目ハギヨシまで京太郎を叱った。

二代目ハギヨシとは、先代ハギヨシの息子だ。
今のハギヨシが成長し、これからのとーかと衣の執事となった。
それに伴って先代ハギヨシはとーかの父上と母上の方の執事として行ってしまった。

京太郎とは近い年齢の同姓とあって、かなり良好な関係だったし、こっちのハギヨシも何事にも動じず、常に笑顔を崩さない人物だった為、京太郎だけではなく三人揃って驚いてしまう。

「京太郎くん。元々他人であることは否定しようの無い事実です。では今はどうなのですか? 今も衣様、透華お嬢様とは他人なのですか? お二人は京太郎くんのことをどう見ているか、お考えにはなられていないのですか? 京太郎くんを本当の家族のように愛してくれたお二人を、京太郎くんは今でも心のなかでは赤の他人だと、そう考えているのですか?」

静かに、でも烈火のごとく責め立てるハギヨシに、衣の怒りは萎縮してしまう。

とーかも同じだったようで、ハギヨシを宥めようとしたとき。

「不安なんですよ!!!」

京太郎が、今まで聞いたことも無い大声で叫んだ。

「俺は一度人生のドン底に叩き落とされました……いきなり両親が死んで、もう会えないと伝えられ、何がなんだか分かんないうちにカピーとも引き離されて顔も見たことの無い親戚の家に預けられて……滅茶苦茶居心地悪くて、寂しくて、でも泣いて迷惑かける訳にもいかなくて……。そんなところを、ころねぇととーかねぇに助けられて……。俺、すごい幸せでした……。最初は戸惑ったけど、二人は俺のこと他人とか可哀想な子とかじゃなく、当たり前の存在として受け入れてくれて、ハギヨシも、萩原さんも、俺に同情的な視線を向けないで、ずっと普通でいてくれた……」

今にも泣きだしそうな顔で、京太郎はポツポツと呟く。

初めて京太郎の心に触れたような気がした。

「でも、自分が幸せになればなるほど、本当にここにいて良いのかって……。俺が幸せになることで誰かを不幸にしてないか……その誰かが、とーかねぇところねぇじゃないか……もしそうなら、そんなの絶対嫌だから……」

「だから……私たちから距離を取ろうとしたんですの?」

「……。俺は、絶対二人に恩を返す。その為に、俺は今ここにいるんだと思ってる。二人に言われればなんだってする……。もし、俺が邪魔になってるなら、ここから出てい」

パンッ、と乾いた音が響く。

とーかが、京太郎の頬を叩いた。

「……私たちが、一度でも京太郎のことを邪魔者扱いしましたか? 京太郎。私も衣も、あの時からあなたのことを、弟と思っています。心から、あなたを迎え入れました。なのに、私たちが気にしていないことをなんで気にしていますの? 京太郎はお馬鹿ですか? あなたはもう龍門渕京太郎、私の立派な弟ですのよ?」

「え……いや、その……」

「衣、あなたからも言っておあげなさい」

一瞬戸惑ったが、それでも衣だって京太郎によそよそしく接せられて、傷ついている。

遠慮なく……と思いながらも手加減をして、とーかとは反対の頬を叩いた。

「京太郎は本当に馬鹿だ。血の繋がりだけが関係の全てでは無いだろう。なら衣は、ハギヨシとも、あまり血の繋がりがないとーかとも赤の他人だな。でも、そんなもの気持ちひとつだ。例えどんな関係だろうと、その人間が認めたならどんなものにだってなれるんだぞ」

とーかも、ハギヨシも、頷いてくれた。

それに後押しをされるように、情けなくて、ヘタレで、優しくて、可愛い弟に、正面から堂々と想いをつたえる。

「改めて言う。京太郎は衣の弟だ。だから、寂しくなったら甘えて良いし、相談があるならいつでも聞いてほしい。それは衣の願いでもある。さぁ……衣は、京太郎を家族として、全面的に受け入れているぞ。とーかもハギヨシも同じだ。あとは京太郎次第だぞ。どうする?」

「………………。悪い、ころねぇ、とーかねぇ、ハギヨシ……迷惑かけた……」

その謝罪で、ようやく緊張が解けた。

「本当ですわよまったく! 良いですこと? 今後また馬鹿なことを考えたら、まず私のところに来なさい。すぐに張り倒してさしあげますから!」

「その前にハギヨシに相談して優しく叱ってもらうことにする……」

「おや? また同じようなことで悩まれましたら、今度は僕もパーで叩くことになるかも知れませんよ?」

「ハギヨシ! その時は私も呼びなさい!」

「衣もだぞ!」

色々言い合ったせいで後から気恥ずかしくなってきた。

三人で顔を赤くしていると、ハギヨシにクスクスと笑われてしまう。

照れ隠しにとーかと結託して京太郎を追いかけ回し、いつもの一日が終わっていった。

その日以来京太郎の態度は以前よりも軟化し、ようやく心の底から家族になれたと実感できたのだった。

ん、あれ。
なんか勘違いしてた。
龍門渕の人達って2年だった……なんで変な勘違いしてたんだろ

それから更に日が経って、現在に至る。

あれから家には人が増えた。

一、智紀、純、歩。

メイドとして、友人として仲良くしてくれる四人。

そして今日、京太郎が龍門渕高校に入学した。

一年離ればなれだったが、また京太郎と同じ高校に通えることになった。

部活で一緒になれないのは残念だが、京太郎もそれは仕方がないことだと受け入れてくれる。

トーカの部活方針は「弱いものはいらないですわ!」で、京太郎はその弱いものに含まれている。

トーカはそんなつもりは無かったのだが、始めにそういうことで前麻雀部を追い出していたりするから、今更身内だと言うだけで京太郎を入れることはできないらしい。

ずっと二人で、途中から五人体制で京太郎に麻雀を教えてきたのだが、京太郎には決定的になにかが足りなかった。

持ち前の勤勉さで牌効率や、捨て牌を見て危険牌を察知することはできるようになっていた。

だが、ひたすらに運が悪い。

誰かがテンパイすれば当たり牌を掴まされ、テンパイしてもツモれず、安全牌を量産し、挙げ句ロンされる。

和了できないこともないが、それ以上に他家に和了されれば負けて必然、三位以下率が8割を越え、何事も諦めないと奮闘していた京太郎も意気消沈してしまった。

麻雀は運の要素が強いゲームだ。

技術で詰めれる範囲もあるが、それでも高が知れている。

あれこれと手を尽くしたが、結局入学には間に合わずに終わってしまった。

衣たちが高校に入学して、麻雀部を占拠してからは家でも麻雀をやることが多くなり、京太郎は「俺はみんなの足引っ張っちまうから、一人で勉強してるよ」と言って、パソコンに向かってしまう。

衣は凄く腹が立った。

牌に愛された子と呼ばれている衣は、どんな苦労もせずに望んだ結果が訪れる。

だが絶対に衣たちに追い付くと意気込み、何年も何年も努力を続けてきた京太郎には、一片も微笑まない。

衣への愛の少しでも京太郎に向けば……。

そう思わずにはいられない。

入学して間もなく京太郎は有名になった。

先代から続くハギヨシの英才教育のおかげで文武両道である京太郎は、すぐに色んな局面で頭を出したのだ。

当たり前のように学年一位を取り、部活動に取り組む奴らを尻目に異様な記録を叩き出したりと、とにかく学校を賑わせた。

一時期、瞬間移動疑惑が浮上し、その裏で微笑みを浮かべる人物を想像して衣たちは苦笑する。

そんなわけで京太郎の周りには人が集まり、社交的な性格の京太郎は受け、衣たちはとりあえず安堵した。

麻雀部の仲間には入れられなかったが、それでも京太郎は寂しくないだろうと。

「それにしても、京太郎って昔からああだったのか? 少なくともオレが知ってる中学ん時はあまり目立たなかった気がするんだけど」

「中学の時はあまり本気では無かったからな。ハギヨシの教育方針だ、基本的に目立たず当たり前のように何事もするように教育されている。ハギヨシ程ではないが京太郎も凄いぞ?」

恐れ入ります、というように頭を下げるハギヨシ。

「じゃあなんで高校ではいきなり目立つようなことしだしたのかな?」

「……いや……龍門渕の名前に泥塗る訳にもいかないだろ? 中学ん時は成績とか張り出されなかったし、体育の時も適度に手を抜いてたからさ」

なるほどな……と純と一は納得した。

龍門渕高校は年五回ある定期試験の結果を張り出して、周りの向上心を煽るようにしている。

更にその上位5名には学食が無料、校内販売三万円まで無料などの特典もある。

トーカもずっと上位に居続けている。

衣も京太郎の行動の理由に納得がいった。

しかしトーカは「私より目立つなんてぇ……!」と息を荒げ、京太郎は苦笑いでハギヨシの後ろに隠れる。

トーカも悪目立ちならしているぞ、とは言わないのが優しさだ。

それから少しして……。

相変わらず京太郎は学年一位を取り続け、学校の空気も落ち着いて来た頃。

最近京太郎が側にいない。

以前のようなよそよそしさではなく、気軽に出かけるような雰囲気なので、それほど深くは考えていなかった。

学校の行きは一緒なのだが、昼食をよく抜けるようになったり、放課後一人の時間はどこかに出掛けていて夕食前には帰ってくる。

時折夕食前に帰らないこともあった。

理由を聞いてみても、「ちょっとな」という具合にはぐらかされる。

友人と遊んでいるのだろう、とは思うのだが……今までずっと側にいた京太郎がいなくなって、寂しく感じている。

いい加減弟離れしなければな……と思うよりも、

「今日も京太郎はいませんの!? んもぉ! 昼食くらい付き合いなさい!!」

というトーカのジタバタしたヒステリーを宥めるのに力を使うことになる。

だが、もし……悪い友人や、その……恋人との逢瀬だったら……。

そう思うと、何故か胸がチクりと傷む。

いくら弟が取られるのが嫌でも、流石にこれでは嫉妬深すぎるな……。

いずれトーカ共々、京太郎から離れても安心できるようになれたら良い、そう思う。

………………。

と、思ったその日に、京太郎の背中を追いかけている放課後。

トーカの制止を振り切って来たのであとで何を言われるか分かったものではないが、気になるものは気になる。

これは恐らく姉としての義務だ。

弟が好い人に恵まれたならばそれもまた良し……そうでないのならば……。

そんな黒い感情沸き立つ中、京太郎を影から見守ること数分……。

一人の女子生徒が近付いてきて、何かを話してから京太郎と歩き出してしまった。

なんとなく想像していたこととはいえ……かなり来るものがあった。

やはり色を知る歳というやつか京太郎……。

恋人の逢瀬を覗き見るのも気が引けるが……まだ……まだもしかしたら、勘違いという可能性はある。

京太郎がだま……騙されてるだけかも……。ハギヨシの教育を受けたとは言え、恋愛ごとまでは指南されてないだろうし……。

そう答えをだして、尾行を続けることにした。

それにしてもあの女生徒……どこかで見たことがあるような……。

どこでだったか……と考えながら、たどり着いた先は……。

その女生徒の自宅のようだ。

つまりこれはあれだ。デートだ。

姉である衣も未体験のそれを、京太郎は一足早く体験している。

それも随分前から。

…………帰ろう。

今はこれ以上深入りできないし、弟の幸せを祝福できない家族でいたくはない。

気が沈ませながら、来た道を引き返す。

家に戻るとトーカがまず怒りながら出迎え、しかしすぐに顔色を変えた。

「ど、どうしましたの衣? 何かありましたの?」

「なんでもないぞ。少し、疲れただけだ」

自分でも分かるほどに不自然に笑って、心配するトーカの横を通り過ぎて自室に引きこもる。

何故こんなにもつまらないのだろう?

京太郎だって年頃だ。

カッコいいし優しい京太郎は同年代のみならず年上にも年下にも好感を抱かれるだろう。

そんなことは分かっていたはずなのに、どうしてもつまらない。

恋人ができたならば言えば良い。

こそこそと隠れて付き合う必要はない。

未だに馬鹿げたことで悩んでいるのだろうか。

馬鹿者め。……京太郎の馬鹿。

子供みたいだ。今の衣は。

京太郎が取られたから、拗ねて周囲の気を引こうとしている。

……本当の馬鹿はどっちだ……。

自分が情けなくなって、ベッドから降りようとした時、先ほどの京太郎と女生徒の姿を思い出す。

…………そういえば……どこかで、見たことがあるような……。

どこだったか……。

『弱い! まるで相手にもならんぞ! それで龍門渕の看板を背負おうとは、まるでお話にもならん!」

『……………………』

『く…………くそ……』

『強すぎる…………』

…………あ。

「あぁぁぁ!?」

短編とか大嘘じゃん早く安価したい

そうだ……思い出した。

あの日、前龍門渕麻雀部員を叩きのめしたあの日の一人。

……な、何故京太郎が、そんな人間と……?

ま、まさか……。

『天江さんたちには本当酷いことされたんだよねー。ねぇ、弟なら同罪だよね? どうしてくれんの?』

『返す言葉もありません……』

『あ、じゃあこれから私が呼んだら来てよ。あいつらから君を奪えば少しは自分のしたことの重さに気付いてくれると思うし。もしそうでなくても、君ってしょーらいゆーぼーだし?』

『分かりました……ころねぇ達のしたことは俺が償います……』

こ、こういうことなのかー!?

な、なんてことだ……今すぐ京太郎を連れ戻さなければ!

…………いやいや……落ち着いて考えてみろ……。

京太郎が大人しく言うことを聞く理由がない……。

……もしかして……。

『もし断ったら……天江さんがどんな目にあうか分かってるよね?』

『! こ、ころねぇには手を出さないでくれ! なんでもするから!』

『フフフ……あのもちもちの頬っぺたをもちもちしまくってかっちかちになるところなんて、私も見たくないから……賢明ね』

『く、クソォ……!』

なんという、ことだぁ……!

衣の……衣のせいで……。

ケータイ電話を取り出して、京太郎に電話をかける。

頼む……繋がってくれ……!

『もしもし? ころねぇ? どうかした?』

出た! 無事だった!

電話の向こうからジャラジャラという音が聞こえる。

な、なんの音だ……?

「京太郎! 無事か!?」

『え? なにが?』

「酷いことされていないか!?」

『酷いことされてないかって? あーまぁ酷いことはされてるな』
『だれだれ、天江さん? どうかしたの?』
『酷いことって須賀くんが弱いのが悪いんじゃん! アハハ!』
『天江さんって、龍門渕の?』

後ろがやけに騒がしい。

なんだ? どういう状況だ?

『もうあと500点しかないんだから勘弁してくれよ……』
『断る! さぁ最後まで置いてけー!』

京太郎の500点という発言とジャラジャラという音……この二つが繋がり、察しがついた。

「……京太郎。麻雀をしているのか?」

『え? あ、あー……う、うん、まぁ』
『おっ、なんか問い詰められてるねー。浮気がバレたのかなー?』
『う、浮気なんてしてないから! というかころねぇとはそんなんじゃないって!』
『あーやー』

ピッ。

通話を切る。

なるほどな。隠れて女子と逢い引きしていると思えば、女子に囲まれて麻雀を楽しんでいるということか。

衣たちというものがありながら、他のところで楽しくやっていたと。

もう知らん。

京太郎とは絶交だ。

何もかもどうでもよくなって、ベッドの中に再び戻る。

俺はころたんの良さの半分も出せないにわかなんだ……

辞書を片手に言葉を漁って見たけどころたんを御すること叶わず……

言葉が難解すぎて再現不可能也……

「衣ー! 出てきなさい!」

「無駄だろ、こうなったら意地でも出てこねーぞ」

「うるさいですわー! そんなこと私が一番よく知っています!!」

「あはは……そりゃそうだよね。おーい、衣ー?」

扉の向こうで衣をつついて引きずり出そうとする三人が騒いでいる。

だが耳を手で塞ぐ。今はこうしていたい。

そうしていると、やがて諦めたかのように三人は去っていった。

これでようやくゆっくりできる。

夢のなかへ逃避しよう……とした時。

「ころねぇ? さっきの電話なんだったんだ? 入るぞー?」

いつの間に帰ってきたのか、ガチャガチャ……と京太郎が中に入ってこようとする。

「あれ、鍵かかってるな……珍しい。おーい、ころねぇ?」

「煩い! あっち行け!」

「ええっ!? ちょ、なに怒ってんだよ? とりあえずいったん開けろって!」

「京太郎などを心配した衣の間違いだった!」

「し、心配? なんのことだ? そういや電話でも……悪い、なんかしたのか俺? ちゃんと謝るから、出てきてくれよ」

ふん……! 今一番顔を見たくない相手に、易々と籠城を崩すとは思わんことだ……!

「もう京太郎なんか知らん! どっか行ってしまえ!」

ガタン……と音がなる。

口から出してしまってから、言い過ぎたか……? と不安になってくる。

まったく本心では無いその言葉を、京太郎がどう受け止めるかまでは分からない。

暫しの沈黙、早鳴る心臓の音と共に京太郎の反応を待った。

「…………そ、そうか。……うん、分かった。悪かった、ころねぇ」

声からでも容易に分かる、京太郎を傷付けてしまった。

……本当に京太郎がいなくなったらどうしよう。

「京太郎!」

跳び跳ねるように起き上がり、慌てて扉を開ける。

「あ……」

「今のは言い過ぎた! すまん!」

呆けている京太郎に構わず謝罪をして頭を下げる。

「あ、いや……うん、俺もなんかよくわからんけどごめん。とりあえずちゃんと話そうぜ。ころねぇは、ちゃんと俺の話聞いてくれるだろ?」

「う……うむ……」

良かった……引き留めることができた。

京太郎相手に、嘘でもあんなことを言った自分を戒める。

あ…………部屋に京太郎を入れてしまった……。

どんなに固い決心でも、京太郎を相手にするとどうにも柔らかく解かれてしまう。

「……それで、えーと……俺、ころねぇになんかした? 悪い、まったく覚えになくて」

…………。

なんて答えれば良いんだこれは……?

どう答えても衣が悪い気がする。

『京太郎を他の奴に取られたと思って嫌だった』

『隠し事をされたのが嫌だった』

…………ま、まるで子供のそれではないか!

それに……それらが本心では無いような感覚がある。

……衣は結局なにが気に入らなかった?

確かに京太郎が隠れて女子と仲良くしていたというのは、気に食わない。

弟を取られた……いや、そうじゃない、のか。

人のものに手を出すな……衣は、そう考え……?

いや、それはどういう意味だ……?

「ころねぇ! 顔が赤くなってるぞ!? 熱でもあるのか!?」

普段考えないようなことを考え込んだ為、頭が熱くなっていた。

思考がまとまらない。

衣は自分が怒っていた原因が分からない。

そこまで、怒るようなことが無い……普通は……。

京太郎……。

「…………ころねぇ?」

「京太郎。衣はな……」

この感情は嫉妬だ。

なにが嫌だ?

衣の知らぬところで京太郎が他の女と触れあっているのが嫌だと思った。

どうしてほしい?

ずっと側にいてほしい。

家族として?

……もっと深く。今のままではダメだ。

そうか……衣は……。

「衣は、嫉妬深い女だ」

「嫉妬深い……?」

「……初めて京太郎に出会った時、衣は京太郎に同情した。衣は京太郎を哀れんだ。……でも京太郎は強かった。カピーの為に頑張ろうとした。無理だと分かっていただろう。それでも、両親を亡くしてすぐに京太郎は残った家族を取り戻そうと動き出した。衣は立ち直るのに一年近くも要してしまったから、凄いと思ったんだぞ」

「……カピーもいなくなってたら、俺だってそのくらいかかってたかも知れないけどさ……あん時は、カピーだけでも守りたくて、必死なだけだったぞ?」

「それでも、凄いことだ。……京太郎、衣たちと距離を置こうとした時のことを覚えているか?」

「あぁ、もちろん」

「あの時、衣は京太郎の見当違いに腹をたてた。と、同時にすごく嬉しかった。京太郎は、見当違いにしろ衣たちの幸せを第一に考えてくれていたのだと」

「……当たり前だろ、そんなの。恩人でもあるし、その……俺の新しい家族でもあったんだから……」

「……うむ。そうだな。うむ……。で、だ……。衣は、京太郎を良き弟だと。そう思っていた」

「俺も、良い姉さんだと思っているよ」

「…………それじゃ、ダメだったんだ」

「え?」

顔を伏せる。

今、京太郎の目を見ていたくない。

「…………今日、衣は京太郎が何をしているのか気になり、放課後に後をつけた。京太郎は龍門渕の女子と仲良く家へ入って行った」

「……あー……うん、そうだな」

「その時な。衣は……中で京太郎とそいつが何をしているのか……想像して嫌な気持ちになった。京太郎の膝の上に座っているのか、とか、京太郎に頭を撫でられているのか、とか……そう考えるだけで、気分が悪くなって……」

「ん…? …あ、うん。うん……」

「電話したときには杞憂だと分かったが、今度は京太郎が衣の知らない女に囲まれて遊んでいることが分かって、もっと嫌な気分になった」

「………………」

「それで、今……ようやく分かった……」

心臓の音がうるさい。

今から大事なことを伝える。

平常心を保てない。

口が乾いていて、痛い。

怖い……拒絶されたら……怖い……。

でも、これから先何度も訪れるだろう苦しみを味わいたくもない……。

一言……それだけだ。

「……京太郎……。衣は……京太郎が……」

好きだ。

「大好きだ!!」

言った! 伝えることができた!

心臓の音が更に加速する。

京太郎の答えが気になる。

なんて返してくる。早く……。

「………………え?」

え?

「な、なんだ……?」

「…………あ…………。あああそうか! なるほど!」

………………な、なんだこの反応は。

いったいどういうことなんだ。

「…………ま、まさか……途中までなんのことかサッパリだったとでも言うのか京太郎は……?」

「………………」

「目の前で顔を赤らめた女が恥ずかしい告白をしているのを受けながら、なんのことだか分からんと聞き流していたとでも!?」

「き、聞き流してはいないぞ!? なんのことだかサッパリだったのは、その……当たりだけど……」

こ、こいつ……!

「いやだって分かりづらかったぞ実際!? 膝の上に乗せるとか頭を撫でるとか!」

「……? 恋人がすることにこれ以上のこと……ま、まさか……ベッドで添い寝……? へ、変態!」

「いやいや待て待て……そんなこと言ったらころねぇ、膝の上に乗ったりしてくるし、頭撫で撫でを要求したりしてくるし、ベッドに潜り込んだりしてくるだろ!?」

「それは家族のスキンシップだぞ!」

「そりゃ、まぁ……そうだが……」

「家族以外とするのは、ダメだ!」

「…………う、うーん……」

困ったように唸る。

なにが分からないと言うのだろうか……。

衣には見当がつかない。

「恋人には他になにかすることがあるのか?」

「……あー……いやその……。そ、そうだよな! うんそうだよ! 全部恋人とするにはちょっと変態だよな!」

「そうだぞ! 変な京太郎だ!」

しかし、ようやく誤解が解けたところで、そろそろ答えが欲しい。

「で、だ。京太郎。衣は想いを言葉にしたぞ。それになんと答える?」

「…………それは、その……ころねぇの気持ちは嬉しいんだけど……」

…………これは、断りの常套句か。

なんともベタな奴だ。

……しかし、甘んじて受け入れよう……。

「とーかねぇが何をしでかすか分からないし、でもこらねぇの気持ちを蔑ろにするのは嫌だ……ど、どうすれば良いんだ俺は……!」

「なに? トーカ? 何故そこでトーカが出てくるんだ?」

「え? あ……いや……」

「話せ。隠すのは許さんぞ」

「…………うぐ……。と……とーかねぇと……俺が婚約してる、ってのは、ころねぇは知ってるか……?」

……………………。

…………コンヤク。

婚約? 結婚の約束?

「……………………………………。は?」

「やっぱり知らなかったか……俺がこの家に来て数年経った頃に、父さんと母さん……あ、龍門渕のな? 二人と会って、ちょっと色々あってさ……。大分気に入られたみたいで、将来はとーかねぇと二人で龍門渕を助けてくれ、だとかいう話になって……とーかねぇが、「ならいっそ結婚してしまえば良いですわ!」とか言い出して、いやでも姉弟じゃんとか言っても関係無い、と論破? されて……とーかねぇがノリ気なら、俺もとーかねぇのことは好きだし、良いかな……とか……いやでもころねぇのことも同じくらいに好きだぞ!?」

次から次へと聞かされる新事実に、衣は頭がクラクラしてきた。

さっきまでの考えすぎてのものではない。

怒りだ。トーカへの……裏切者への怒りだ……!

「京太郎! ならば衣と生涯を供にしよう! トーカは卑怯者だ!」

「い、いや……それはそれでかなりまずいような……!」

「な、ならばこれでどうだ!?」

こうなればいっそ、もう仕方がない……!

この年で母になるのは怖いが、早い者勝ちだ!

京太郎も衣を好いているのならば問題ない!!

チュッ……。

「うっぷ……!?」

「……!!! ぷふ……こ、これで……京太郎との間に子ができる……それでも京太郎は衣と離れられるか!?」

「……こどっ……んええ!? あっ……そ、そうか……は、ハギヨシさんか……! いや、ちょっと待てころねぇ! これはちが」

ガチャ……。

扉が何者かによって開かれる。

そこには、鬼のような顔をしたトーカと、困ったように微笑むハギヨシが立っていた。

「衣ぉ……京太郎ぉ……?」

「とーかねぇ! いや、待ってくれ! 色々勘違いなんだって!」

だが、もう引く気は無い!

徹底的に戦うぞ!

「トーカ! ずるいぞトーカは! 衣に内緒でそんな約束をするなんて!」

「なにがですの!? 早い者の勝ちに決まっていますわ!」

「なら衣の勝ちだ! もう京太郎との間に子供ができたからな!!」

ピキッ……と空気が割れる音が聞こえたような気がする。

「……なん、ですって……ぇ!?」

「キスだ! 子を作るための儀式はもう終えた!」

「そ、そんな……京太郎!!」

「「あっ」」

何かに気づいたように、京太郎とハギヨシが同時に声を上げた。

それも気にせずにトーカは京太郎に食らい付く。

「なら私とも子供を作りなさい! それで互角ですわ!」

「それは衣が許さん! 京太郎と夫婦になるのは衣だ!!」

「は、ハギヨシ! 助けてくれ!」

「…………すいません……京太郎くん、僕にはどうにもなりません……」

その後、京太郎とトーカと衣が三人でもみくちゃにされて、やがて疲れたのか三人ともそのまま寝てしまった。

ハギヨシは全員を並べて寝かせて布団をかけ、仲良く寄り添うように眠る三人を見て、退室していった。

……それから少し時間が経った別の場所……

「……そうですか。いつかそうなるとは思っていましたが、京太郎には悪いことをしてしまいましたね」

「ふふ……。そうなるとは思っていました。京太郎は良い子でしたからね。御主人様と奥様が京太郎を気に入り、お嬢様と婚約されるであろうことも、7割くらいで考えていました」

「……ええ、衣様もよく京太郎を気にかけていましたからね。初めての可愛い弟……その可愛い弟が段々と成長して行き、やがてその想いも変化していく……というようになるのではないか、と」

「…………何れお二人が衝突することも。お二人共我が強いですからね」

「あぁ、そのことですか。衣様は自分からはしないと思いますが、お嬢様は結果の為ならなんでもするお方です。衣様もそれに対抗するためなら必ずやふ思いましたので、保険として……」

「手のひらの上だなんて、そんな風に言われるのは少し嫌ですね……私は三人のことを常に考えていますので。もちろん君のことも、ね」

「それでは、またなにかありましたらいつでも連絡をしてくださいね。君もはやく一人前になれるように、日々努力を怠らないように」

ガチャン……ツー、ツー、ツー……

衣の章、カンッ!!!

なっが……終わりました。

純愛……? まぁいっか。

次に書くの安価……なんだけれども、一発決めで良いかな。

>>1を参考に安価取ってください。
よくわからなかったら安価下にします

↓1

あわあわと王道的な青春ラブコメもの

>>79
あわあわとの関係は?

関係が来なかったら↓1
来たらそれでやるよー

いつまでに来なかったらかわからないけど

池田と妹達
池田とは友人、妹達には懐かれてる
誕生日ドッキリ
ギャグ

みたいな感じで書けばいいのかな

>>82
↓1までにだね。
それでやろう。
妹たちとか懐かしい……

あっ……うん、二つ共やります(ニッコリ

池田の誕生日って確か2月後半だし、良い時期だな……

これ対象って誰なんだろうね。

さて……まず俺の状況から説明する。

にゃーにゃーと騒がしい三姉妹に馬乗りされ、更に俺に乗っている状態にも関わらず跳び跳ねたり鳩尾に蹴りを入れてきたりと遠慮容赦が無い。

それでも俺はまだ四歳の子供たちの暴挙に、反撃することもできない。

本気の反撃なんて最初から選択肢に無いのだが、必殺の擽り攻撃を見事なコンビネーションでガードされてカウンター擽りを10分間されれば、この嵐が過ぎ去ってくれるのを待ちつつ耐えるしかないと諦めても良いだろう。

「ぐえっ! ぐええっ!」

「京にーちゃん、走って走ってー!」

「この状況でどう走れと!? せめて馬のポーズにさせてくれよそれなら!?」

「えー? それだと二人しか乗れないし!」

「えっなに、俺ここからどう走れば良いのマジで!?」

緋奈ちゃんの非現実的な無茶ぶりを拒否ると、菜沙ちゃんが不満をぶつけてくる。

ブリッジしながら走れば良いのかな? 屍人かな?

いや子供とはいえ三人も乗せてそれは無理無理!

「京にーちゃん! 三人担いで走れば良いし!」

「だったらとりあえず降りてくれ!! 身動きが取れねーんだよ!」

「降りると京にーちゃん逃げるし!」

「京にーちゃん逃げるとつまんないし!」

「だから京にーちゃんの上にいるし!」

「くそぅこの絶妙なコンビネーション腹立つなぁ!!」

早く助けてくれ華菜ぁ~!

「ご飯できたし~……って緋菜! 菜沙! 城奈! 京太郎が嫌がってるし! さっさと降りれし!」

華菜の怒りの鉄槌がようやく降り下ろされた……これでたすかっ

「あんまり京太郎に引っ付いてると子供ができちゃうかも知れないから離れるし!」

「だぁぁぁ!!! お前までか! お前までなのか!? 最近来てないからたまには遊びに来いつって呼び出した結果がこれなのかお前!? お前ら四人して俺で遊ぶ気満々か!」

「そんなことないしー?」

「ないしー!」

あーったく………。

華菜とは中学時代に知り合った友人だ。

特に特別なエピソードもなく、席が隣になって、一緒に遊ぶようになって……そんな程度だ。

そういった縁で昔から三姉妹と遊んでいたのだが、そのせいなのか割と向こうの遠慮がない。

生まれた頃から遊んでくれているお兄ちゃん相手ならこんなもんなのかな、とか思うけど子供って本当遠慮なんてしないんだ。

何をするにも全力全開。

そのうち死んじゃうんじゃないかなって、ほぼ毎日来てたところをここ一週間敬遠してみたら、ついに今日呼び出しを喰らって逃げないように三姉妹固めにされたと言うわけだ。

もうね、俺の体はボロボロだよ……。

華菜とは高校が別になったので、会うと言えば放課後の暇な時間になるのだが、最近華菜は麻雀部に入ったとかで俺が遊びに来ても三姉妹しかいないことが多い。

その場合は俺が飯を作って三姉妹と遊びながら華菜を待つことになるのだが、一週間前に「探さないでください」という書き置きを残したのは記憶に新しい。

後からメールで、「すまん……三姉妹相手にするには体力と知略が足りないから回復させてください……し に そ う」と送っているのでまぁ特に問題は無かったのだが……。

まぁ別に本当に疲れはてたってだけが理由でも無いのだが、理由はどうあれ一週間放っておいた三姉妹の方はフラストレーションがたまっていたのか、いつもよりも攻撃が過激過ぎて回復した分全部持っていかれそうだった。

楽しいんだけどね? 楽しいけど疲れは溜まるからね? ね?

「お腹一杯だしー!」

「ごちそうさまだし!」

「あーったく城奈、ご飯粒ついてるぞー……ほら」

「ありがとうだし!」

「あー! 城奈ばっかずるいし!」

「そーだそーだ! 緋菜のご飯粒も取るし!」

「ついてねーもんどうやって取るんだよ!」

「……京太郎、私の頬にもご飯粒ついてるし?」

「ついてねーし」

とまぁ長い付き合いで、こうやって五人で食卓を囲むことがかなり多い。

周りからよく付き合ってるだろとかからかわれるが、もちろんそんな事実はない。

からかわれる度に否定するのも面倒なので、華菜と二人して「あーはいはいそうですねー」と適当にあしらっていたら誰も話題に出さなくなった。

あいつらは付き合いたてのカップルじゃなくてもう熟された夫婦のような雰囲気がある、とか噂されていたみたいだが……。

自分自身、付き合う通り越して子育て真っ最中の夫婦みたいな感じだぞこれ、とか理解しているんだが、なんかもう当たり前になっちまってるからどうでも良いや……。

「京太郎、今日はどうするー?」

「んー? あー……明日休みだし泊まってくかなぁ」

「泊まってくし! 朝まで遊ぶし!」

「お前ら10時くらいが限界だけどなー」

「今日は11時まで起きてるし!」

「城奈は12時!」

「あーはいはい早く大人になろうなー」

三人の頭を撫でてやると、何故か三人に体当たりされてやっぱりもみくちゃにされる。

「京にーちゃんの癖に生意気だし!」

「京にーちゃんの癖に大人ぶるなし!」

「京にーちゃん一緒にゲームやるし!」

「分かった分かったから離せいでででででで!!」

で。

「くー…………」

現在九時半、三姉妹轟沈。

「ったく……暴れるだけ暴れたらぐーすか寝やがって……」

「一週間京太郎が来なくて寂しそうだったから許してあげてほしいし」

「いや怒ってはいないから。慕われてんのは分かるしな」

俺と自分の前にお茶を置いて座る。

礼を言ってゴクリと一口。

程よい暖かさで、芯から身体を温めてくれた。

「……私もちょっとだけ寂しかったし」

「お、なんだよ華菜がデレるなんて珍しいな?」

「たまにはデレておかないと華菜ちゃんの良さを忘れるかもしれないし!」

「ははっ。どーよ、最近は? つっても毎日メールしてるからそっちのことは知ってるけどさ」

「中々難しいなやっぱり。でも優しい先輩が教えてくれるから、頑張ってるし!」

「でもやたら厳しい人もいんだろ?」

「う……思い出したくないし……」

華菜とは同学年設定?
それとも別の何か(委員会とか)で席が隣に?

「なんだそりゃ? ま、頑張ってんなら良いさ。麻雀ねぇ……俺も麻雀部入ろうかな? なんか部員募集してたみたいだし」

「それだと京太郎家来れなくなるからダメだし!」

「げー、なんだよおい、自分は入っておいて俺には入るなってかー?」

「そもそも京太郎麻雀全然できないじゃん!」

「う……やめろよ本当のこというの……っつーか三人とも寝てんだから静かに静かに」

「あっ……う、うん……ごめんだし……」

「……んまー、確かに麻雀弱いくせに麻雀部入っても迷惑かなー……三人も寂しがるし、やめとくか」

咲! 始まる前にカン!

「それが良いし。んじゃゲームでもやるかー?」

「おう。ファルコンパンチ?」

「パーティー?」

「パーティーは明日みんなでやろうぜ。カートで」

「京太郎わざと後ろに張り付いて逆転狙いしかしないから嫌だし!」

結局麻雀ゲームをやることにして、二人であーだこーだ言いながら12時くらいには寝た。

朝。

緋菜核爆弾が投下され、幸せな夢から残酷な現実へ引き戻された。

あまりの衝撃に遂には声も出すことができなかった。

「…………ご……ごほ……お、くぅ……ぐぐ……」

「京にーちゃん、おはようだしー……! 騒がずゆっくりと起きるし……!」

何故かヒソヒソと喋る緋菜、ほか二人に引き摺られて居間に連れていかれる。

「死ぬわ……!!!」

小声で叫ぶなんて矛盾のようなことをさせられるが、三人ともまったく聞いちゃいない。

「京にーちゃん、今日は何の日?」

「え? 今日? あー……華菜の誕生日だな、まぁ」

「そうだし! ねーちゃんの誕生日だし!」

「華菜ねーちゃん、京にーちゃんに祝われるの楽しみにしてるし!」

「で。京にーちゃんなんか用意してるし?」

……まぁ、用意してないこともない。

つーか一週間の間が空いたのも、それを準備していたというのもある。

「一応。たいしたもんじゃねーけどな」

「京にーちゃんのことだから本当にたいしたこと無いものだし!」

「おい! 少しくらい俺を立てろよ!」

「そんなかいしょーなしの京にーちゃんの為に、菜沙たちが誕生日プレゼントを考えたし!」

「誕生日プレゼントを? なんだ?」

「ドッキリだし!」

ドッキリ? いつのまにか自分の乗ってるタクシーに幽霊がいただとか、いきなり横断歩道で全員が伏せたりする、あれか?

「緋菜たちだけじゃできないし……」

「だから……京にーちゃんにお願いするし!」

「で、結局俺なのね……良いけどさぁ」

「じゃあドッキリの説明するし!」

ということで作戦会議が始まる。

作戦の内容はこうだ。

1、誕生日のお祝い。そこで俺が華菜に告白する

2、緋菜たちが「京にーちゃん!? 私たちのことは遊びだったの!?」と声を上げる

3、俺が「お前たちのことも愛していた……だけどやっぱり華菜しかいないんだ!」と言う

4、「あんなことまでしたのに!?」と緋菜たちが言う

5、華菜の反応を見てから「ドッキリ大成功」

うん……。

「お前らこれテレビかなんかで見ただろ……」

「そうだし!」

「……あのな、にーちゃんこの作戦お前らが声を上げた瞬間に終わる気がすんねん……。というかあんなことってお前ら分かってんのか……? いや分かってられても困るんだけど教育的に……」

「わかんないし! わかんないけどテレビでは成功してたからいけるし!」

「どこから来るのかその自信。やっても良いけど、多分ソッコー気付かれて鼻で笑われると思うんだけどなぁ……まぁお前らがそれで良いなら手伝うぜ」

「ありがとうだし!」

「はくしんのえんぎに期待するし!」

「頑張るし!」

「始まる前から終わってるんだよなぁ……」

>>97
同学年設定だよ
友人になる設定が思い付かなかったから悪いね☆

どっちかというと華菜の年齢が一つ下がった方です

とうとうボーキサイト使いきった
心が折れた……

それはそうと多分安価の人が望んでた結果には案の定ならない気がするんだ

でも池田可愛いし良いよね

そんなこんなで、誕生日プレゼントという名の悪巧みに参加させられることになった。

お腹空いたー、とうるさい三姉妹に軽く朝食を作ってやり、時計を見る。

まだ五時半か……なんでこんな時間に文字通りたたき起こされてんの俺……。

華菜もまだ寝ている時間だ。

というか俺も眠い。

……だが二度寝すれば昼まで起きれない自信があるし、それよりも三姉妹に袋叩きにされるのは明白だ……。

大人しくマリオカートをヤラナイカという無条件降服を提案し、見事受け入れてもらうことに成功した。

まぁ降服するのは俺なんだが。

すごいなー日本語って。後ろ向きに前向きなこといっておけば割と言葉の上では格好がつく。

などとくだらないことを考えながら、順当に12位を勝ち取ることに成功した。

ハッキリ言ってまだ四歳という年齢には、できないことが多すぎるくらいに多い。

甲羅を持った誰かの前にわざと現れても走るのに夢中で攻撃しないし、バナナをわざと踏んでやってもそれを笑いながら川に落ちて行く。

CPUの足止めをしてやろうと動くと何故か嬉々として攻撃を受けに来る始末だ。

攻撃を嬉々として受けに来るというのは誇張?

少なくとも笑いながら今正に甲羅を撃った俺の目の前に飛び込んで来て吹っ飛ばされたり、笑いながらスターを使った俺に後ろから体当たりをしてくるようなプレイをされたら俺には狂気しか感じない。

まぁもっとも、三人とも純粋にゲームを楽しんでいる子供でしかないからこそ、わざと負けて優越感を満たしてやろうという汚い大人の視線で見ている俺には異常に感じられるのだろう。

そんな悪夢のデスサーキットを続けていると、流石に騒がしかったのか華菜が起きてきた。

「んー……なにしてるしー……?」

「っと、おはよ。悪い、うるさかったか」

「大丈夫だし……」

寝ているのか起きているのかという感じで、フラフラしている。

三姉妹共朝の挨拶も適当に俺をいたぶるのを楽しむことに戻っていく。

この子達の将来に一抹の不安を抱きながら、いったんゲームを抜けて華菜の手伝いにいく。

「ご飯出来てるから顔洗って出直しな」

「……なんで起きて早々追い出されそうになってるし……分かったし……」

寝惚けているからかツッコミにキレはない。

だらだらと顔を洗っている華菜に声をかけながら、味噌汁を温め直す。

配膳もして、未だにボーッとしている華菜を椅子に座らせる。

「ほら、しゃっきりしろって。熱いから気を付けろよ?」

「猫舌に熱い味噌汁とか殺す気だし……」

「なにいってんだか……」

もそもそと食事を始める。

予約してあるケーキはあとで取りに行って、プレゼントも用意はしてある、と。

「部活の先輩たちも来るんだっけ。何時に来るんだ?」

「10時くらいに遊びに行く予定だし。たぶん一時過ぎにはみんな連れて来るから、ちょっとだけ三人を頼むし!」

「おー。帰ってきた時に俺が屍になってたら骨は拾っておくれや……」

「任せろし。……妹たちを犯罪者にするわけにはいかないから、バレないように埋めないと……」

「おいぃ?」

買い出しにも行かないとなぁ。

十人分か……でも全員女子らしいし、まぁ大丈夫かな。

実は少しだけ華菜の先輩に興味があるので、今から楽しみだ。

「あ、言っておくけど京太郎は皆と話すの禁止だし! 何するか分かったもんじゃないし!」

「なんもしねぇよ! んなもんお前が一番よくしってんだろ!」

冗談だし、とけらけら笑っている華菜にデコピンをしてやる。

少しゆっくりして(地獄のデスサーキット再び)。

「んじゃ気を付けてな。なんかあったら電話しろよー」

「そっちも変なやつに絡まれたら身体を売って三人を守るしー」

「俺はいったい何をされるんですかねぇ……」

笑いあって、俺は三人と一緒に買い物にスーパーへ向かう。

三人は外出するときはふざけたりすることは控える。

去年、五人で公園に遊びに行ったときに注意した俺の言うことを聞かずに走り回って車の前に飛び出し、寸前で庇った俺が軽く怪我をしてしまうという事故が起こった。

本当にただのかすり傷だったのだが、これでもかという程に三人が泣きまくってしまった。

それがトラウマになってしまったのか、外に出るときのこいつらは周りを凄い気にしながら動くようになっている。

幼い子供にトラウマを植え付けた張本人になってしまったことに軽く罪悪感を覚えたが、それのお陰で無茶をしなくなったので、まぁこれはこれでいいのかな……と納得することにした。

ただ歩くときに俺を囲んで服を摘まんでくるので、とてつもなく歩きにくい。

何を作ろうかな……。

鉄板どころで唐揚げ、ハンバーグ……サラダ系……手巻き寿司ってのも良いな。

鍋料理か……誕生日っぽくは無い気がするけど、でも安定してるよな。

あー、焼肉も良い。肉と野菜買えばみんなで焼いて食べるだけだ。

…………うーん……。

人数もいるし焼肉で良いか。

買うものさえ決まれば買い物はさっさと終わる。

軽く諭吉が二枚羽ばたいたが、年一回だし一週間頑張ったし構わんだろう。俺って素敵。

こんなの書いてるから短編詐欺になるんだな……

もっと短くした方が良いかな?

そっちの方が良さそうなら巻いて書く

今のペースで続くなら今のまま 書けなくなってきたら短くすればええねん

>>117
書けるんだけど、こんなところわざわざ見たいのかなと書いてて疑問に思った。
買い物のシーンとか遊んでるシーンとか、本筋のドッキリとはまったく関係無いからさ

むしろドッキリに本筋としての需要はあるのだろうか(疑いの眼差し)
ドッキリをメインに書くならもっと勢い任せなギャグタッチでないと

>>120
おかしいな、今も割とギャグメインで頑張ってるのに……

「うし、じゃ緋菜はこれ持ってな。城奈はこれ、奈沙はこっちな」

「わかったし」

「よゆーだし」

「まかせるし」

軽いものを袋に別けて三姉妹に手伝いを頼む。

子供の頃から親の手伝いをするようにしつけておけば、優しい子に育ってくれる、そう信じてる。

一度池田家に戻り、荷物を置いて今度は俺だけまた外出だ。

「よっと……よし、じゃあ俺ケーキ屋行ってくるから、少しだけ留守番頼んだぞー。知らない人が来たら開けちゃダメだからなー?」

少し眠そうにしてる三人に言って、家を出て鍵をかける。

鍵をしっかりとかけたのを確認。

あの様子だと帰る頃にはお昼寝してそうだな。

時間通りに着くと、すぐに店員さんが受け付けてくれ、注文通りの品を手渡される。

実は手違いで……なんていうベタな展開は漫画の中だけで十分だな、うん。

帰り道、ドッキリについて軽く構想を練ることにした。

くだらないことこそ手を抜かないのが須賀流だ。

まず、みんなで焼肉を食べる。

ローソクの火を消して、全員でおめでとう、と言いながらプレゼントを渡す(もしかしたら先に向こうは渡すかもしれないが、俺だけそれで対応する分にも問題はないだろう)。

そして、プレゼントを渡したときに……全員の前で告白させられるのかぁ……!

いや……予めドッキリをすることは伝えておく。そうだ、そうしよう。

とにかく、告白をする。なんて言おうか。

『誕生日おめでとう華菜。それと、もうひとつ言いたいことがあるんだ。……最近自分の気持ちに気づいたんだ、華菜、聞いてくれ。実は、俺……お前のこと好きだったんだ!』

無難だがこんなところだろう。

最近気付いたということを伝えることによって、割とリアルになる。

そこで、三姉妹の誰かがこう言うのだろう。

『私とのことは遊びだったの!?』

………………言うか? 四歳だぞ? 無理だろ。

あんなことが分からない以上、最初の案は応用が利かないだろうし……。

『私にも同じこと言ったし!』

こ、これか? いや、四歳だぞ!? 無理だろ!?

『京にーちゃん、緋菜と結婚するって言ってたし! 嘘だったし!?』

これだ! 凄いこれだ! 絶対これが良い!

俺が『それは……すまん』みたいにフォローすることによって……。

いや、明らかにふざけてるだけだろ。

バレバレだわこれ。無理無理。

……まぁ……バレても良いのか……。

子供の考えと理解してくれるだろう。うん。

で、目の前で何が起こってるか分からない華菜が何かアホなことを言ってくれればドッキリ大成功だな。

……これ本当に大丈夫か?

俺がなぶられるだけで済むなら良いんだが……。

考えても仕方ないか。困ったら電波が来ましたとでも叫んでおこう。

脳内作戦会議を終えて家に着くと、案の定三姉妹はお昼寝タイムだった。

まったくこっちは真剣だというのに呑気なものだ。

現在時刻11時半、あと一時間半もある。

暇潰しにサラダでも作るか。ベジタリアンな人がいてもあれだし。

エプロンをつけて早速取りかかる。

……………………

………………

…………

……

「ただいまー? 京太郎ー?」

「お邪魔します」

………………

「あれ、誰もいないし? ……緋菜たちは寝てるし。京太郎ー?」

「よし、完成っと!」

我ながら改心の出来だ。

なんか凝りすぎてなんでこうなったって感じだけど……ね、年一回だし……。

「京太郎ー?」

「ん……声? あぁ、帰ってきたのか……集中してて気付かなかった。おー、ここにいるぞー」

「台所にいたし。あ、先輩たちは居間で休んでてください!」

華菜が台所まで入ってきて、俺の作ったサラダたちを見て何故か顔をひきつらせる。

まったく失礼な奴だ。

「なんだよ?」

「なんだよ、ってこっちの台詞だし!」

「上手く作れてんだろ、ラフレシア」

「なんでこんなものを作った! 言え!」

「見た目はこんなだけどただのサラダだよ! ちょっと凝ったもの作りたかったんだよ!」

「はぁ……京太郎って時々分からんくなるし……」

「あ、先輩たち来たのか。じゃあちょっと挨拶しとくか」

「そうするし!」

華菜と二人で居間へ。

「あっ……初めまして。華菜の友人で須賀京太郎って言います。よろしくお願いします」ニッコリ

五人の女性がこちらに視線を向けてきた。

なんとなく、戸惑ってるような空気を感じる。

あれ、外した?

「あ……初めまして、福路美穂子です。華菜の先輩で……風越女子麻雀部の部長をしています。華菜ともいつも仲良くしてもらっています、よろしくお願いします」

一番初めに切り出したのは何故か片目を閉じている美人さんだった。

この人が部長か……確かに雰囲気がある。

「あー、久保貴子だ。麻雀部のコーチを勤めている。よろしく」

「あぁ、あなたが。よろしくお願いします。まさか大人の方もいらっしゃるとは……」

「あまり気にしなくて良い。今日も何故か池田に誘われただけだからな。それよりもあなたがとはどういうことだ?」

「あー……。いえ、よく華菜に話を聞かされるもので。とても厳しいけどちゃんと教えてくれる良い教師に恵まれた、と」

嘘だった。実際は鬼コーチだとか厳しすぎる人だとか無理難題を押し付けようとしてくるだとか、この人に関しては愚痴だらけである。

ただ久保さんはそれを聞いて

「ふっ……そんな風に思ってたのか池田ァ?」

「は、はひ!」

と若干嬉しそうにしているのでこれでよかった気がする。

俺が自ら不和に繋がることをいうこともないし、普段愚痴だらけだったのに家にまで招くのは、華菜も華菜で認めたりそれなりに好いているのだろう。

「私は深堀純代。よろしく」

どっしり構えている感じのある女性に挨拶された。

なんだろうこの安心感。

山のフ○ウかな?

……いや女性相手に考えることでもなかった。そこまで大きくねーし。

内心で土下座しながら、あとの二人に目をやる。

二人とも少し引き気味な所を見ると、あまり男性が得意では無いのだと推測できた。

どちらもどう声をかけて良いか分からなさそうだったので、こちらからフォローしてあげる。

「あ、緊張しなくても大丈夫ですよ。と言っても苦手なものは苦手かな? なんなら胸に詰め物してきますか? それともメイクした方が良いかな」

我ながら馬鹿なことを言ってるとも思うが、心の底から男性を嫌っているので無い限りは近寄ることが大切だ。

大抵は男がどういうものか分かっていない、か普通にコミュニケーションが苦手か、人見知りかの三種類に分類されて、他の人たちと一緒に華菜の誕生日を祝ってくれている辺りコミュニケーション能力が低いということも無いだろうし、人見知りということも無さそうだ。

なら後は俺という人間を知ってもらって、その上で近付いて行けるかどうかを当人たちに測らせれば良い。

…………なんていう駆け引きは、適当なこと言って笑ってもらえれば仲良くできそうとか考えてる俺には無縁な話なんだが。

とにかく二人は笑ってくれているので、結果的には正解だろう。

「い、いえ……ふふ、そんなことしなくても大丈夫です。すいません、あまり男性と話したことがないので……私は吉留未春です。よろしくお願いします」

「私は文堂星夏です。よろしくお願いします」

とりあえず場の雰囲気は少し柔らかくなった気がした。

うんうん、やっぱり女性には……笑顔です……が一番だな。

「それよりお腹減ったし! 早くご飯食べたいし!」

「はいはい。用意してくるからちょっと待ってろって」

まずは堂々の自信作、ラフレシアサラダを机に並べる。

見た目の評価は最悪だった。

「おい須賀ァ……なんだこれは」

「ラフレシアの形に作った普通のサラダです。この真ん中の部分を作るのに苦労したんですよ!」

「ざ、斬新な見た目ですね……」

唯一純代さんと美穂子さんは引かないでいてくれている。

というか美穂子さんが笑顔。

「須賀くん、凄いですね! こんなの作れるなんて……羨ましいなぁ」

興味深そうに皿を回してじっくり観察している美穂子さん本当天使。

芸術は大衆に理解されなくても、一握りの理解者さえいれば良いのさ……。

遠巻きにラフレシアを見ている人たちは放っておいて、せっせと肉と野菜とキノコを焼き始める。

「どうぞ食べてみてください」

そう促してみると、美穂子さんは一口食べてくれた。

「美味しい……ちょっと酸味が強いけど、くどいような感じじゃなくて、食べやすいですね!」

もうなんでも良いや美穂子さんマジ女神。

その後みんなで焼肉を楽しみ、割と好評だったラフレシアサラダたったりと、ワイワイし始める。

「そう言えば、華菜ちゃんと須賀くんって……付き合ったりとかは考えてないの? 凄い仲よさそうに思うんだけど、華菜ちゃんはいつも有り得ないって言ってて……」

唐突な情報戦を開始させたのは未春さんだった。

チィ……電撃戦か……!

女子というのは恋バナが好きだというのは聞いていたが、ぶっこんできやがったぜ……。

まぁ普通に否定するだけなんですけどねー………………あれ?

告白ドッキリ→ここ(華菜が聞いている)で否定したら後の告白が胡散臭くなる→否定できない→誤魔化すしかない

なんだとォォォーーー!? な、な、なんってこったァァァー!!!

こ、この俺がいつの間にか大ピンチの崖に立たされてるなんて思っても見なかったぜェェェーーー!!

ジョジョごっこして現実逃避してる場合でもないって……マジどうしよう詰んだ……。

「……はは、華菜は照れ屋だから……」

い、言った!! ダメな方向に傾いた気がするけど、まだ否定も肯定もしてないぞ俺!

いや、こうなったらいっそ突き抜けよう……ドッキリ大成功に望みを託して……。

「な、なに言ってるし!?」

「おいおい……まったく、鈍感だとは思ってたけどここまでとはな……」

「ちょちょ……き、京太郎!?」

「とまぁ、こんな感じです」

ある程度押したところで未春さんに微笑みかける。

それっぽく見せて想像はご自由にの法則だ……!

困ったようにしている未春さんを相手に、俺は勝ちを確信した。

勝った!!! 第三部完!!!

負けフラグ立ててんじゃねーよ俺!!!

「ダメよ須賀くん! 華菜だって女の子なんだからちゃんと言ってあげないと!」

な、んだと……!? 女神からの援護射撃ィ!?

昨日の友は今日の敵だってのかよクソッタレェ!

「いずれ、時が来れば言うつもりです……やっぱりロマンチックに決めたいですから……」

これもう修復不可能!

だが良いのさ……戦術というのは先の先を読みきった方が

「え、京にーちゃんねーちゃんのこと好きなの!?」

「本当に!?」

「知らなかったし!!」

伏兵! 伏兵! ワレキョーチャン! ワレキョーチャン!

つーかだからお前らがそういう反応しちゃダメなんだってば!

「お、なんだ眠いのか三姉妹。ケーキは明日食べような……?(副音声:ややこしくなるから黙ってろ喋るならケーキの命は無い)」

「あっ……」

「ご、ごめんだし……」

伏兵殲滅セリ。何かを感じ取った三姉妹は顔を伏せる。

いや……まずい、他の人たちが話し出してしまう!

話を終わらせなければ……。

「さて、そろそろケーキ持ってきますね!」

強制終了……俺の……勝ちだ!

そそくさとケーキを取りに行く俺。

居間の方でヒソヒソと聞こえるが、俺には関係無いもんね。

ローソクをつけて、火を灯す。

まだ明るいからあれだが、それなりに見映えは良い。

「うーしやっちまえ華菜」

「ふぅー……」

「誕生日おめでとう!」

「ありがとうだし! これからももっと麻雀頑張るし!」

みんなで誕生日プレゼントを手渡した。

俺は一番最後にする。

三姉妹に目配せすると、頷きで返してくる。

やるしかねぇ……やってやんぜ!!!

(後日、よくよく考えたら俺だけ赤っ恥かかされるだけのプレゼントだよなと京太郎は語る)

「華菜、俺からはこれな。大したもんじゃないけど、大切に使ってやってくれ。……それと、もうひとつ、話がある……」

ドッキリだと分かってんのに緊張してきた……。

人数が多すぎて俺の低い文才じゃ処理できないしこれ面白いのかな……わっかんねー

「華菜……俺、最近になって気づいたんだ。……お前のことが、好きだって! 俺と付き合ってくれ!」

オーライ、第一段階は終わりだ。

「え…………それ、本当だし……?」

「あぁ。お前の知り合いの前でこんなことすんのもあれかとは思ったんだが(ドッキリの証人は多い方が)良いかなって……悪い」

「……嬉しいし……実は私も、京太郎のことが」

バンッ! 緋菜が立ち上がる。

さぁ来い緋菜! かましてやれ!

「京にーちゃん! 緋菜とはいちやづけの関係だったし!?」

あいたたたぁ……。

「それを言うなら一夜限りの関係だろうでそうさその通り一夜限りの関係だ悪いな緋菜ァ!」

ナイスフォロー俺! いや無理だから!

「……どういうことだし?」

「……悪い華菜。でも、気づいたんだ、俺お前が一番だって!」

「意味分からんし! 四歳相手になにした!?」

それね!! いや分かってんよ俺だって!!

「何ってそりゃ……その……なんか言えないことだよ!」

うわぁって視線を周りから向けられている。

あれ……なにこの罰ゲーム。

美穂子さんは可哀想なものを見るような視線を向けられる。

「奈沙とのことも遊びだったし!? 今は無理だけどおっきくなったらお嫁さんにしてくれるって言ってたのも嘘だったし!?」

「あぁそうさ! 俺はお前らを弄んだクソ野郎だ!!!! それでもよければ華菜、付き合ってくれ!!!」

150%無理だよ!!!

…………いや……まぁ……目的は達成したし……あとは華菜の反応を見

「………………許せないし……京太郎のこと……信じてたのに……」

………………えっ!?

なんか信じちゃってるのこれ!?

いやーないないないない嘘だろ有り得ないって!

俺とお前のゆゆうじょうパパワーはどうしたんだよ!?

いやそれ以前の問題なんだけどね!

「……やっぱりダメか。……あーあ、俺お前のことけっこ

言い終わる前にスッと立ち上がる華菜。

「え。おい? 華菜?」

話も聞かずに台所へ向かう華菜。

え、なにこの状況。

華菜を追って行くと……。

「…………落ち着け。いや待て。それは止めろ。悪かった、冗談が過ぎた。つまりその、ドッキリなんだこれは」

「……今更そんな嘘信じるわけないし……! 京太郎……信じてたのに!!」

ナイフを持って襲いかかってくる華菜を必死に押し止める。

クソッ! なんでこんなことに!

「か、華菜!」

「なにを馬鹿なことをしているんだ池田ァ!」

「信じてたのにぃ!!!」

「うぉぁ!!」

なんだってんだ……クソ……なんでこんなことになってんだよ!!!

「華菜! やめ」

……――あ……?

刺され…………。

ん……? あれ?

痛くない……?

「…………ップ……」

クスクス……。

「……これは……まさか……!!!」

引っ込むナイフ!?

「ドッキリ! 大成功だし!」

「ひ、緋菜!? 奈沙!? 城奈!?」

「誕生日プレゼントは、京にーちゃんが本気で慌ててる姿だし!」

「おっかしいなとは思ったんだよ普通信じないだろこんなことよぉ!! クッソ嵌めやがって!」

「皆もわざわざ付き合ってくれてありがとうだし!」

「ご、ごめんね須賀くん。華菜が今日だけだからどうしてもって……」

「た、たち悪すぎますって……あーもー本当びっくりしたなぁ! もーケーキ食べましょうケーキ!」

照れ隠しするように、ケーキを切り分ける。

「京にーちゃん、ごめんだし!」

「全部ねーちゃんが考えたんだし!」

「奈沙たちは悪くないし!」

「あ! 自分たちだけ逃げるなんてずるいし!」

「荷担したんだからみんな同罪! 俺も華菜引っ掻けるのに荷担したから同罪! 悔しいなぁ!!!」

笑いながらそう言ってやった。

つられて皆が笑いだす。

まったく哀れなピエロだぜ……。

汚れ役くらい引き受けてやるのが男の甲斐性ってやつよ……。

「よーし、じゃあケーキを食べ終わったら麻雀やるぞ」

「ええ、ここでですか!?」

久保さんがどこから取り出したのか麻雀牌をドカッと机にのせる。

それを見て未春さんが抗議の声をあげたが、一睨みされて黙ってしまう。

「俺麻雀凄い弱いですよ?」

「弱音をいう前に強くなる努力をしろ須賀ァ!」

「んな無茶な……」

そうやって、麻雀をしたりゲームをしながら、華菜の誕生日を皆で楽しむのだった。

…………余談だが、余りにも弱すぎた俺を鍛えるという名目で久保さんにみっちりとしごかれ、三姉妹の物理的攻撃を受けて肉体的にも精神的にも殺されたが、京太郎は今日も元気です。

華菜と三姉妹の章、カンッ!!!

すまん、これ風越出さない方が綺麗に纏まった感
生かしきれてないのバレバレだったよ

次はあわあわだけど、その前にその次にやるやつ安価しとく
↓1で、書き方は>>1とか他の人の参照で

>>145
それだけじゃダメなので>>1を見てね

再安価↓1

エイスリンほのぼの了解ー

恋愛とか書かれてなかったら基本的にそういう感じにはしないので、ほのぼの夢気分やろう

中々よかった
安価は間に合わず


投下終りのタイミングがようわからんからレスし辛いな

私は麻雀が好きだ。

強い人と戦って、その相手に勝つのが好きだ。

テルと一緒にどこまでもかけ上がって行きたいと子供の頃から思っていた。

サキも強くて、二人を相手にしている時は楽しくて、悔しくて、いつまでも打ち続けていたかった。

でも、一人だけ……そんな楽しい日々を邪魔する存在がいた。

幼馴染みのサキ、テルと……もう一人、キョウタロー。

四人で麻雀をしても毎回一番下で、やる気もなくてすぐ飽きて外に飛び出して行く。

テルとサキもキョウタローについていって、私一人だけ置き去りにされた。

キョウタローが憎かった。

サキとテルはこのまま麻雀を続けていれば、絶対に有名になれるのに、そんな二人の足を引っ張ってばかり。

神様も呪った。

ここにキョウタローさえいなければ……と。

自分の感性の王道は嫌われてる状態から好きになっていくことらしい

>>149
すまんね
今度から安価は何時までに制にしようかと思う

>>151
やっぱりいる?
投下終了宣言すると書いた所から次々投下するのに不便かなと
じゃあこれからは投下終了したら最後に〆って打つことにするよ

でも、ある時キョウタローは遠くに行ってしまった。

ようやく邪魔者がいなくなった。

でも、テルもサキも、つまらない、という理由で麻雀をやらなくなった。

私は唐突に灰色の世界に落とされた。

テルとサキとは、そのあとも友人としての付き合いはあった。

だけど、中学を卒業した照は何故か東京へ行ってしまい、サキともいつしか疎遠になってしまった。

納得ができない。

キョウタローはもういないのに、常にキョウタローの影を感じる。

程無くして、テルが今何をしているのかは分かった。

【白糸台の大型新人、宮永照! その道を遮るものは無し!】

なんで? どうして?

なんでテルはそんなところで麻雀をしているの?

訳がわからない。

テルに何があったのかは分からないが、ひどく裏切られたような気分になった。

そして、私はテルが麻雀を再開した理由が知りたくて、白糸台に進学することを決めた。

〆忘れた

カンってあったし〆は要らなかったと思うとか言ってみたり

>>158
いや違いんだそのときの投下終わりに〆って書くって

書いた端から投下してるからさ、分かりにくかろうと

ごめんよ、ちょっと展開に悩んでるから今日は更新できないと思う

「よぉ、淡! 久しぶり!」

白糸台に入学し、麻雀部の扉を叩いた時、私はすべてを理解した。

こいつか。こいつが、テルが麻雀をやる理由なのか。

「キョウタロー……なんでここに?」

「それはこっちの台詞だっての! いやそっちもか? 俺は親の転勤でこっち来ててさ! あ、照もいるぜ! 照が東京来るって聞いたときも驚いたが淡も来るとはなぁ! あ、でも咲一人で大丈夫かな? あいつももう高一だし、流石に大丈夫か!」

相変わらずペラペラとお喋りだ。

昔から全然変わってない。

「知らない」

「あれ、咲とはあんま遊んでねぇのか? 可哀想に……とうとう友人0人か……清澄行くつってたけど、向こうでも友人できねぇだろうなぁ……」

冷たくあしらっても、お構い無しだ。

それなら強く拒絶してやれば良い。

「……話しかけないでくれない?」

「嫌われてるなぁ。そう邪険にすんなよ! 幼馴染みだろ~?」

まるでショックを受けた気配もない……というか、嫌ってること……知ってた?

「京太郎。そろそろ始めるよ」

「あ、うん分かった。んじゃまた後でな!」

テルに声をかけられてキョウタローが離れていく。

テルはこっちを見てくれなかった。

それでも良い。振り向かせてやれば良いだけ。

あれからもっと強くなった。テルには勝てないと思うけど、その辺の人に負ける気なんて一切無い。

仮入部についての説明や、部のルールについて聞かされ、早速対局をすることになる。

とは言っても仮入部員三人と二年生の対局で、その辺りに強そうな人は一人もいない。

レギュラーっぽいメンバーは別のところでやるのだろう。

その二年生にしてもキョウタローとなればまったく相手にもならない。

「こんな弱い人たちじゃつまらない。テルたちが相手してよ」

ムッとした雰囲気を見せた人たちがいるが、そんなのは気にならない。

だって本当に果てしなくつまらないんだもん。

「おっと、今年はずいぶん活きの良いのが来たな。おいお前、名前は?」

「大星淡。あのさ、この対局で勝ったらこれからはそっちでやらせてくれない? その方が全員のためになるから」

「なに?」

「弱い人たちが私とやってもつまらないだろうし、私もつまらない、テルとなら丁度良い対局できるし」

そう言うと京太郎が苦笑いしながら、声をかけてきた人と私の間に割り込んできた。

「部長、こいつ昔っから怖いもの知らずでなまじ実力があるから割りと周り見下すような態度取るやつなんで……まぁイラッとする気持ちは分かるんで許してやってください」

あ、この人が部長なんだ。

そういえば雑誌で見たことあるような気が……。

部長は少し考えてから、「まぁ良い」と呟いた。

「そこまで言うなら、そうだな……京太郎よりも上になってみろ。京太郎は二年以上で最弱の実力者だ。こいつに苦戦するようなら話にならんぞ?」

「なんで言うんですかそれ! 俺だって頑張るときは頑張りますよ!?」

「ふふ……。それで、大星? 二年の京太郎を倒せばまぁ実力的には足りると判断できるが?」

キョウタローより上?

昔からずっとそうだったし、今更考えることも無い。

「ただし、京太郎よりも下だった場合は、それなりに覚悟してもらうぞ」

「覚悟? ……別に良いけど、なに?」

「そうだな……。もし仮に負けた場合は、麻雀部への入部を認めない、とかな」

「…………(別にキョウタローに負ける可能性何て無い)良いよ。絶対負けないし」


逃げられないように投下しちゃった

「そうか。京太郎、お前も同じ条件で戦え。一年生にも勝てないようなら、先はないぞ」

「うへぇ……まぁそりゃそうなんですけどねぇ……まぁ良いっすよ。可哀想な後輩を見捨てないって信じてますから……」

「言ってろ」

勝てば、入部してテルと麻雀ができる上にキョウタローまで追い出せる……?

退部が冗談にしても、勝てば良いだけなら簡単だ。

「ま、三人ともよろしくな! 最初は負けても仕方ないけど、下手でも頑張れば上手くなれるから、一緒に頑張ろうぜー!」

「はい!」

そんな甘いことをキョウタローは他の二人に言った。

「どんなに頑張っても、勝つための才能が無い人はいくらやっても無駄だよ」

私はキョウタローに反抗するように、目を合わせないでそういってやる。

やはり嫌悪感の含んだ視線を向けられたが、才能が無ければいくら頑張ろうと勝てない。

そんなの麻雀に限らず、すべての物事はそうなっている。

キョウタローは私にもテルにもサキにも絶対に勝てない、そう決まっている。

何故なら才能が無いから。

「……淡。認めるよ、お前は確かに強かったな。だけど、そう言う風にだけは言うなよ」

「弱い人はいつまで経っても弱いからね。努力しても無駄だって分かってるんだから、諦めて自分に合ったこと探せば」
「……お前、黙れよ」

キョウタローに睨まれて、思わず息を飲む。

キョウタローが怒ったのを初めて見た……。

少しだけ怖かったけど、でも当たり前のことを言ってるだけだ。

私はなにも悪くない。

だから睨み返してやる。

「…………っふぅ。ま、気楽にやろう気楽に。部長も言ってたけど、俺一番下手だからさ!」

視線をはずしてまた笑う。

苛立ちが込み上げてくる。

……むかつく。

弱いくせに、偉そうに!

ボコボコにして自分から麻雀部を出ていきたくなるようにしてやる……!

対局が始まった、親は私。手を開けると既にテンパイ。

3-6の両面待ちのダブルリーチで跳ね満確定だ。

「ダブルリーチ!」

宣言すると、二人は驚いたけどキョウタローだけは苦笑いしていた。

昔に何度もこんなことがあったから、驚きが少ないのだろう。

…………………………。

流局になった。なんで?

3も6も影も形も見えなかった。

それに、ずっと変な感覚を感じる。

オカルト持ちがいる……? 牌を止められてるのかな……?

私以外はノーテンで一本場、今回も形の良いイーシャンテン。

でも、嫌な感じが続いた。

……なんとなく、自分の手が死んでるような……そんな気配……。

次順、テンパイにはなったが……和了れる気がしない。

ふと、キョウタローと目があう。

すぐにそらされたが、何となく私は思った。

……キョウタローが、何かしている?


普通に青春してれば短編に成れたのに私ってほんと馬鹿

自分の中のあわあわは生意気な子供ってイメージだけど、これって生意気っていうよりうっとーしいガキって感じになってるな

全国のあわあわ好きに、ごめんなさい

リーチはかけずに、別の形を目指してみることにした。

満貫手を捨てて手変わりをしようとするなんて変な話だけど、今はそれが最良な気がした。

そうすると、ふと嫌な気配が消えた。

またキョウタローと目があった。

今度は目をそらさなかった。

そしてキョウタローが私の当たり牌だった八を捨てる。

やっぱりだ……キョウタローが私に何かしている!

私の和了れる牌を抱え込んでるんだ!

それなら安手でも良い!

このまま形を変えて和了る!

「おっと、その牌だ。チートイのみ一本場の2700」

「え……」

キョウタローにロンされた……?

…………ありえない。

絶対にありえない!!

すぐに取り返してキョウタローを最下位に叩き落としてやる!

そう意気込んだが、そのあとどんなに攻めようとしても上手くいかなかった。

手は悪くないのに、和了れない。

和了り回避して安手和了っても、決定打に欠ける。

そうやって場はゆっくりとした動きで南四局まで進んでしまった。

4000ロンで逆転……手は……。

………出来てる…満貫確定白中待ち…………。

…………………………また、目があった。

見られてる。

昔にあれだけ威張り散らして、さっきもあんなに大きなこと言って、それなのに、まるで手が届かない。

なんで? どうしてこんなに差があるの?

嘘だよ。キョウタローはずっと弱いままだった筈なのに。

多分。

キョウタローは私の牌を持っている。

キョウタローの目を見れば分かる。

……負ける。安い手で和了っても、逆転できない。

……ここまで追いかけて来たのに……テルとまた麻雀がしたかったから……なのに……またキョウタローに……。

邪魔され……――

タンッ

………………キョウタローが捨てたのは、白。

…………あ。

あぁぁぁぁあぁあ!!!!!!!!

「京ちゃん!!!」

「ぅ……」

テルが、キョウタローの肩を掴んだ。

その声には怒気が含まれていて、ハッと我にかえる。

「あ…………うあ……」

何も言えない。

私はキョウタローの白の意味が分かってしまったから。

情けをかけられた。手加減された。わざと和了れる牌を捨てられた。

立ち上がって、部室を飛び出す。

敗北感が、思考を埋め尽くした。

「淡!」

そんな声も、私の耳には聞こえては来なかった。

「……京太郎、どういうつもりだ?」

「…………すいません部長。なんか可哀想になっちまって……」

「まったく……確かに端から見てても少し可哀想に思ったが、あれだけ伸びきった鼻は早いうちにへし折ってやった方が良い」

「……京ちゃんは昔から淡に甘い。でも、あれはダメ。淡が分からない筈がないし、二人のためにもならない」

「悪い照……泣きそうな顔してるあいつ見てたらつい……俺も始まる前からちょっと狡いことしてたし、罪悪感が……」

「気持ちは分かる。……京ちゃんは淡のことが好きだもんね?」

「はは、やめろよ。にしても部長、マジであいつの入部認めないつもりですか?」

「いや、あれはちょっと勢いを削いでやろうと思ってだな……」

「あはは、あれくらいじゃ削げないですよあいつは。おっと、二人ともおつかれさん! これで俺がロンされるから、残念だけど俺が四位だな。これから一緒に頑張ろうな!」

「あ、は、はい!」

「……なんにしても、部室に顔を出しにくいかもしれないな……」

「なら俺が声かけときますよー。任せといてください!」

「京ちゃん一人で大丈夫?」

「照じゃないんだからへーきへーき。照も、淡のこと許してやれよ? 別に俺はなんとも思ってないし、俺があいつのこと甘やかしすぎたのが原因でもあるんだから」

「……うん。許すから、お菓子つくって」

「うへぇ……このテンションで作らされるのかよ……りょーかい」


すまんね

京太郎に負けた次の日。

登校しなければ遅刻する時間なのに、私は布団から出られないでいた。

昨日の敗北を、未だに認められない。

キョウタローは弱い。

部長の人も同じことを言っていた。

そのキョウタローに負けた……キョウタロー以下……。

嘘だ。キョウタローは強かった。

何をしても手も足も出ない。

私はずっとそう思いながら、あの対局を終わらせた。

………………。

「うあーー!!! 遅刻するー!!!」

布団をぶっとばして、私は飛び起きた。

もう悩むだけ悩んだ。

負けたまま終わるのは嫌だから。

私はいつだってそうやって強くなった。

キョウタローにも、すぐに勝ってやる。

麻雀部に入れなかったのは残念だけど、同じ学校なら機会はいつでもある。

いつまでもいじけているのは、性に合わない!

「よ、淡おはよう。いつくるかって待ってたけどお前遅すぎな。寝坊……って感じでもねぇか」

もうすぐ学校に着く、そのくらいの所で、何故かキョウタローに遭遇した。

ずっと待ってたかのような発言。

「……なに? 嫌味でも言いに来たの?」

「なんでんなことすんだよ? 慰めに来たに決まってんだろ?」

「それが嫌味じゃん!」

「…………それもそうか。なら嫌味っぽいこと言ってやるかぁ」

ニヤッと笑って、すぐに真面目な顔を作って私を見た。

「なぁ淡、なんで俺なんかに負けたと思う? 部長も言ってたけど、俺は麻雀部で一番下手だ。多分お前も普通にしてたら俺なんて相手にもならなかったと思うぜ。そんな俺がお前に勝てた理由……分かるか?」

「……分かんない」

「そうか。……でもお前はすぐに気が付いたよな? お前の手に必要な牌を、俺が全部握り潰してるって」

「……うん」

「当然お前の手は進まないし和了れない。俺に邪魔されて手が進まず焦る。そして一層俺を排除しようとする」

キョウタローの言ってることは全てあの時の私の精神状態に一致していた。

和了れない。キョウタローに邪魔されていることに気付いて苛立ち、潰そうと動く。でも手は進まずどうしていいか分からなくなる。

……オカルト。キョウタローも、何かを持っているんだ。

「俺はな、お前が高い手を張ってることが始まった瞬間に分かってたんだ。これは種明かしな?」

苦笑いしながら、気まずそうにキョウタローは自分のオカルトについて話始めた。

「俺は満貫以上の手を作っている人間がいると、何となく気配を察することができんだ。そして俺の手には何故か、そいつが欲しがっている牌が集まってくる。そいつの邪魔をしろと言わんばかりにな。危機察知と他者の邪魔、それが俺のオカルトだ。お前は俺のそれに手を潰され続けたんだよ」

なにそれ……そんなの、ズルい。

無敵過ぎる。

高い手になったら自動的にキョウタローに邪魔されるってことじゃん。

勝てるわけ…………あれ?

「じゃあ、なんでキョウタローは、一番弱いって言われてるの?」

「……それが一番問題なんだよなぁ……。実はその俺のオカルトって、俺に対して敵意とか悪意とか殺意とか……まぁそういう負の感情を向けている人にしか反応しないらしいんだ。俺のことを敵と認識すればするほど俺のオカルトにハマるけど、相手にしなかったりついでに殺す相手みたいに対応されると、まったくと言って良いほどに勝てなくなるんだよなぁ。まぁ相手の危険牌握ってんのに気付けないなら死ぬだけだ」

敵意……。

『私はキョウタローに反抗するようにそう言ってやる。』

悪意……。

『ボコボコにして自分から麻雀部を出ていきたくなるようにしてやる……!』

殺意……。

『すぐに取り返してキョウタローを最下位に叩き落としてやる!』

キョウタローの種明かしを聞いて、笑いが込み上げて来た。

「なにそれ……勝とう勝とうと頑張れば頑張るほど、キョウタローに足下を掬われるの? そっか……一番弱いってそういうことなんだ。相手にしなければ相手にもならない。皆キョウタローの攻略法を知ってたから……」

「まぁな。ったく、相手に嫌われれば強くなるオカルトって、本当ひでぇもんだよな? だから麻雀でも連戦連敗……」

「でも、昔は違ったよ?」

キョウタローの瞳が、揺れ動いた。

踏み込んではいけないところに踏み込んだような、そんな気がして、しまった……と視線を外す。

「まぁ……なんつーのかな……俺もまぁ……色々あったんだよ……うん……」

「…………ごめん」

「良いって。……あ、昨日は怒ってごめんな? ちょっとイラついちまってさ」

昨日……。

『黙れよ』

うっ……あの時のキョウタローを思い出して、恐怖心が甦った。

あの時は反抗してて気付かなかったけど、凄い怖かったな……。

「……俺にもお前みたいな時期が少しあってさ。なんか昔の自分が目の前にいるような気になってつい。女の子に向けるようなもんでもなかったなと今さら反省だ」

「別に良いよ。私も……調子に乗ってた」

「うんそれは否定できない事実だな。もう天狗だったよ昨日のお前、はは!」

「む……! ふん! 昨日は負けたけど、もうキョウタローになんて絶対負けないし!!」

「……だろうな。正直お前、かなりヤバかったよ。普通に部長たちに張り合っていけるレベルだった。……羨ましいよ」

……キョウタローが、目の前にいる私を見ている筈なのに凄く遠くのものを見るような目をしている。

そっか。キョウタローは、勝てないんだ。

どんなに足掻いても、勝てなくて、当たり前のように勝てる私が羨ましいんだ。

キョウタローのことが分かってしまえば、誰もキョウタローには負けないだろう。

「……キョウタローは、そんな変なオカルトを持ってて、全然勝てないのに……なんで麻雀なんてやってるの?」

「え? ……あぁ、そうだよな。お前からすれば俺はそういう風に見えるよな。……うん、そうだよな。俺は変なやつだ、勝てない麻雀を続けて負けまくって、それでもやめない変なやつだよな」

驚いてから、苦笑いして、そしてキョウタローは笑った。

凄く印象的な笑顔を私に向けてくれた。

「でもさ、好きだから仕方無いんだよ。どんなに負けようが、どんな麻雀をしようが、今俺は皆と麻雀をするのが堪らなく好きなんだから。好きって、そういうものだろ?」

好きって、そういうもの。

…………相手に嫌われてようが、そんなの自分が好きなら関係ない?

……生意気。

でも、今初めて私はキョウタローをしっかり見た気がした。

邪魔者だとずっと思ってたキョウタローが、今はなんとなく……心地良い存在に思えた。

多分一時の気の迷いなんだろうけど。

でも、麻雀を好きだ、と笑いながら堂々と言うキョウタローは、不思議と魅力的に映った。

……どんなものでも、好きになってしまったなら仕方ない……か……。

私はしばらく忘れていた気持ちを思い出したような気がして、少し胸が暖かくなった。

「っと、臭いこと言ってる場合じゃないな。もう遅刻は確定してるんだけど、サボると部長と照にあとで虐められるから早く行こうぜ。あ、部長からの伝言な。『これから厳しくしごいてやるから覚悟しておけ』。というわけで、これからよろしくな淡!」

いきなりキョウタローが駆け出す。

あっ、と私もその背中を追いかけた。

……そっか、入部認められたんだ。良かった。

…………もう、絶対負けない。

キョウタローにも、テルにも、あの部長にも、誰にも!!

キョウタローを追いかけながら、私は自分が自然と笑顔になっていることに気付いて、そうしたのがキョウタローだというのがムカついて、キョウタローに飛び蹴りをしてやった。

自分のなかに芽生えたものに気づくのは、もう少し先の話だ。

淡の章、カンッ!!!

これ青春ラブコメで合ってる?
大丈夫? 物足りない?
でもこのまま書くと短編じゃなくて長編になっちゃう。

多分このあとは淡が京太郎に対して何かしらの感情を抱いて照たちと対峙して最終的に京太郎とラブコメするようん。

次回はほのぼのエイスリン、なんだけど遠い親戚って京ちゃんは何者なんだろう……まぁ良いや

でその次に書くの安価、そんなに安価取ろうとする人いないだろうけど時間安価にするよ。

初めてだから15時に一番近い人が次の安価で、もしその安価がダメならその次に近い人にしようかしらね。
15時00分00秒00
が目安ね。
それじゃあ安価よろしくー

乙 青春やねー!

>>206
これが、青春……そうか……


初対面
互いの父親同士が酒の席で意気投合、お見合いをさせられた
純愛

迫り来るアラフォー供の魔手から京太郎を守るうたたん
関係は師弟
ラブコメ

遂に咲と結ばれた京太郎であったが数年後咲を亡くしてしまうその深い悲しみから京太郎の心は壊れてしまいなんと照のことを咲と思い込み愛してしまう京太郎の愛を受けられるならと咲のふりをし続ける照だが京太郎が自分のことを咲と呼ぶ度に京太郎が本当に愛しているのは自分ではないという事実と妹への罪悪感に苦悩する照の悲愛物語

え、なにこれは(呆然)
どうせ見てる人なんていないでしょーペッペレぺーとか思ってたのに……

一番近いのは>>209だね前後含めると
これどう判定すればいいか分からないけど15時に一番近いのだからこれでいいか

個人的に>>211
が凄い気になる貴様鬼才だな?
スレ立てはよ

んっ?
コンマって99まであるなら>>210か?
ごめん間違えた

あー……勘違いのお詫びにどっちも似通ってるし>>209>>210を合わせて


初対面後に師弟
互いの父親同士が意気投合してお見合い、咏が一目惚れして師弟になるがアラフォーたちが迫り来る
純愛コメディー

ってことにするよ
してもいいよね?
ダメ?

私的には全く問題ない!

>>217
感謝

少し長くなりそうだけど、とりあえずほのぼのをお楽しみにー

あれよく考えたら宮守って女子高じゃん……
私ってほんと勘違い多すぎる馬鹿……
にわかだってバレちゃう……

宮守女子の教師になって早3年。

最初こそ女子高に配属されて浮かれていたものの、現実の忙しさに追われてそんなことを思う暇も無くあっという間にここまで来た。

26にもなって恋人の一人も出来ないことに残念な気持ちもあるが、女子高で働いているとどうにも彼女を作ったりする気分にはなれない。

ませた子供が誘惑のようなことをしてくることもあるが、そもそも生徒に手を出すのも論外だし、マジでこのまま40、50と過ぎて行くのかも知れないと思うといい加減真剣に考えるべきかと悩む。

そんな心内の葛藤はともかくとして、本日も新しい子供たちが希望や夢を抱いて(自分の時はそんなこと考えたことも無かったけど綺麗な言い方をした方が心機一転した気になれる)、ここ宮守女子高校に入学してくる。

当たり前と言えば当たり前だが、右を見ても左を見ても女子だらけだ。

そんな女子を見ていると、一人の女生徒と目があった。

「あ」

「ア」

思わず声を上げてしまう。

周りの注目を集めて、さっと視線を逸らした……が、向こうはお構い無しにニコニコとこちらに走ってきた。

いや、なんでここにいるんだ?

『京お兄ちゃん! 久しぶり!』

俺の困惑もぶっ飛ばして抱きつこうとしてきた。

流石にここでそれは不味いと思い、後ろに避ける。

『おっと。あー……おう。……いや、なんでここにいるんだ?』

『なんで? ここに入学したからだよ?』

『マジかよ…いやそれこそなんでなんだが……いつから日本に来てたんだ?』

『去年だよ! パパに着いていくことになったの!』

『あぁ、なるほど……今度挨拶にいかねぇとなぁ。あぁエイスリン、一応ここでは先生って呼べよ?』

『あ、そっか……ごめんなさい! えーと……京太郎先生?』

「『日本だと』須賀先生『だな』」

「スガセンセイ! 『分かったよ!』」

『自分の教室は分かるか? そろそろ時間だぞ』

『大丈夫だよ! これからよろしくね!』

エイスリンは相変わらず元気な子だった。

小さい頃から変わらないその調子に、思わず笑顔になってしまうのはエイスリンの長所だ。

彼女と話すと元気を貰い、周りも花が咲いたように笑顔にさせる。

それに今のエイスリンはとても可愛くなっている。

昔の……いや……。

頭を掻いて、未来ある若者に少々の嫉妬をしつつ、エイスリンの高校生活が幸せなものになるように願った。

「おや、須賀先生。浮いた話も聞かないと思ってたけど、早速生徒に粉かけかい?」

「そんなんじゃ無いですよ! 遠縁の親戚の子ですから!」

「へぇ……彼女、どこの?」

「ニュージランドですよ……。……父親の兄の嫁さんの妹の子供なんです」

「随分流暢に話していたね?」

「まぁ……もう昔の話です。さて、俺たちも行きましょう」

あまり掘り返されたくない過去の為、熊倉先生との会話を切り上げる。

熊倉先生は、割と鋭いところがあるので勘繰られた気がしないでもないけどまぁ問題無い。

それから一週間、少し慌ただしい時間が過ぎていった。

今年の生徒も元気が良すぎて、アラサーのおっさんにはけっこう厳しいものだ。

ただひとつ気になったことがあった。

『スガセンセイ!』

エイスリンがよく俺のところに来る。

普通この時期はクラスメートと仲を深める時期なのだが、エイスリンは意志疎通を取るのが難しいらしい。

教師として一人の生徒に構うわけにもいかないのだけど、俺が唯一エイスリンと会話できることを知っている他の教師陣はあまりこちらに関わりたくないらしい。

『エイスリン……また来たのか?』

『ダメだった?』

『そうではないけど、この時期に友人関係でコケると後が辛いぞ?』

『……どうせ話せないもん』

『そりゃそうだが……というかそれじゃ授業も分からないんじゃないか?』

『分からないよ! でも全部ノートに書いて帰ったらパパかママに聞いてるの!』

『……日本語勉強しておけよ……「あの人たちもけっこう適当だしなぁ」ゆっくり教えてやるから、まぁ頑張れ』

『うん! お願いします!』

なつかれているのは悪くないのだが、若干気分が悪くなるのを感じてしまう。

エイスリンは悪くないのだ、俺が悪い。

……さて。エイスリンに日本語を教えてやるとは言ったがどうしてやったものか。

少し考えて、思いついたことがあった。

『エイスリン、絵はまだ好きか?』

『絵? うん! 家で描いてるよ!』

『そうか。……なら、こういうのはどうだ?』

俺は意志疎通をとるための裏技を思い付いて、エイスリンに伝えた。

次の日、クラスメートの子がエイスリンの絵を見てエイスリンが何を考えてるか当てるゲームみたいなのをしているのを見て、まぁこういうのも有りか……と苦笑いした。

エイスリンは楽しそうにしてるから、個人的にはなんでもよかった。

「おや。なるほど、そういう手を使ったのかい」

「うお……妖怪……! っと……熊倉先生……」

「失礼だねぇ。……時に須賀先生」

「なんですか?」

「とある生徒から麻雀部を作りたいから顧問になってくれ、と頼まれてるんだけど、副顧問をやってみないかい?」

「なんですかそれ……顧問に一人いれば十分でしょ?」

「まぁそうなんだけどね、教える人間は何人いても良いだろう?」

「俺の腕が欲しいって言えば良いのになぁ、性格悪いんだもん」

「ふふふっ……けっこう本気みたいだからね。まだ三人だけど、三人とも結構やるよ?」

「麻雀……麻雀ねぇ。まぁ良いですけどね……もう数年触れてませんし、昔みたいに打てるとは思いませんけど」

「良いよ別に。忘れてるだけなら思い出すさ」

言いくるめられて、結局新しく作られた麻雀部の副顧問になることを承認してしまった。

とてつもなく面倒なきもするけど、副顧問だし適当で良いだろうと思っていたりする。

汚い大人にいつのまにか自分もなってしまったんだな……。

そんなこんなで、今。

三人の生徒を前に俺はため息をついた。

「鹿倉胡桃です! よろしくお願いします!」

小さい。小学生……?

ふんすっと鼻を鳴らして意気込みは伝わるが、可愛さが強調されるだけな気がする。

真面目そうな雰囲気はあるので好印象だ。

「臼沢塞です。よろしくお願いします」

こちらも不思議な雰囲気はあるものの、やる気は十分に感じられた。

だがもう一人……。

「ほら、シロも!」

「だる……」

ソファでだるーんと寝転がる女子がいるのだ。

確か名前は小瀬川白望だったか……常にだるそうにしてる彼女が麻雀部とは……。

「えーと、須賀京太郎だ。副顧問として教えられることは教えていくからよろしく」

無難な挨拶をしておいた。

「じゃあ早速須賀先生、彼女たちと一局打って、その実力を直に確かめてもらっても良いかな?」

「本当に早速ですね! というか全自動卓入れたんですか……」

「私用の物をね。使ってないものだよ」

このお化けはやるとなったら容赦ないから怖いよ……。

まぁ今の子の実力を知るには打ってみるのが一番なのは間違いない。

鹿倉と臼沢はすでにやる気十分の表情だったが、小瀬川だけはだらだらとした動きだった。

久しぶりの麻雀だが……昔の感覚なんてすっかり忘れたし、案外ズタボロにされそうだなぁ、なんてまったり思考で考えていたのだが……。

「そうそう三人とも。須賀先生はあのグランドマスターと呼ばれた小鍛治プロに何度も土を付けたことがある物凄く強い打ち手だから、気を引き締めてかかるようにね」

「テメェこの妖怪ババア!! ハードル上げてんじゃねぇぞコラ!!」

「お、化けの皮が剥がれたね。だけど本当のことじゃないかい」

三人は目をぱちくりさせて俺を凝視していた。

感情に乏しい小瀬川ですら驚いたような顔をしている。

「え、でも熊倉先生……小鍛冶プロで国内無敗じゃ……?」

「そりゃ公式戦じゃないし、須賀先生も学生の時だったからねぇ」

「ぐぐぐ……クソ、これだから妖怪ババアは嫌いなんだよ! 言うなよそれ!」

生徒がいるのについ感情的になってしまう。

いかん落ち着け俺……。

「京太郎はよく健夜に付きまとわれて、その度に泣きそうになってたよねぇ」

「仕方ねぇだろ! あいつマジで怖ぇんだよ! 一回負かしてやったらもう殺す勢いで迫り来るんだぜ!? 結局俺が卒業する頃には本気でぶち殺されるかってくらい点棒むしられたしな!!」

クッソー……! 最初からこのつもりだったな……!

三人とも小鍛冶の名に引っ張られて、俺を尊敬するような視線を向けてきてるし……。

「い、いやお前ら、昔の話だからな? もう数年牌には触れてないから、絶対弱くなってるからな? もう始めようか! 妖怪ババア! あとで覚えとけよ!」

「最近物忘れが酷くてねぇ……」

ど、どの口が……!

相手にしてるとペース握られっぱなしになるから、もう無視して始めることにした。


エイスリン関係ねぇぇぇぇぇぇ


教師だと一人にかかりっきりになるわけにもいかんしな
宮守を地名ととれば両親どっちかの出身にしちゃって実家に帰省で遭遇とかやりようあったかもね

>>233
あっ…………
…………さ、最初から知ってたし……こ、こっちの方が(以下略

二回も安価詐欺するのも流石にあれかな……
書き直した方が良いかね……?

対局を始めてすぐ、妙な感覚に身体を縛られているような気配を感じた。

それはまだ弱々しいがハッキリと感じられるもので、その重りを課している人物が臼沢だと言うことが分かった。

へぇ……こりゃなかなか……なるほど、いったんの敵を俺一人に絞るってことか。

続いて対面に座る鹿倉を見る。

こちらの動きを見逃さないよう、まるで監視のごとき威圧感を……いやなんか可愛いからそんな感じには見えないけど、とにかくなんかそんな感じのを放っている。

俺のテンパイ気配をスルーする気はないらしい。

そして一番底知れないのは、小瀬川だった。

まるでこちらを気にしていない素振りを見せながら、こちらに気を許す気配は微塵もない。

熊倉先生の狙い通り、三人に包囲網を作られていた。

半端なことをすると即座に喰われるだろう。

だが、そんな中でも頭に血が上っていくような、懐かしい感覚が込み上げてくる。

…………っていかんいかん、今日が初めての女生徒相手になに本気になりそうになってんだよ俺……。

すぐにクールダウンして、冷静に場を動かしていく。

それに、しばらくぶりなのに感覚を覚えていることに驚いた。

さてと……分かってはいるが三人に狙われていると非常にやりにくい。

確実に手を作ってきている鹿倉と小瀬川、臼沢はこちらを楽させる気が一切無い。

こちらの手は既に作ったが、鹿倉と小瀬川は気付いている。

ロン期待は臼沢かと言われるとそうでもない。

こちらのテンパイ気配には気付いていない(というよりテンパイすると思っていないのだろうか)臼沢も、危険牌を投げるような素人では無いと言うことだ。

さて……数順後にはツモれそうではある、が……小瀬川が何かを狙っている。

ツモ番をずらして来そうだな……っと。

ああ……なるほど、そういうことね……。

今引いてきた牌を加えて、テンパイを崩す。

俺の捨てた牌を凝視して、硬直した小瀬川。

山に手を伸ばさず、じっくりと何かを考えている。

「……チー」

少しだけ躊躇を感じられたその鳴きに、内心の葛藤を見てとれた。

そりゃそうだ、その牌を喰えば手が遅くなる。

それよりも俺の邪魔を優先したかったのだろうが……ん?

鹿倉から先程よりも強いテンパイ気配を感じた。

なるほど、こっちがメインか。

小瀬川のアシストで俺よりも手が早くなったような気配もある。

自分では無理と悟って擬似的な味方である鹿倉を手助けした……何も考えてないようで、しっかりと考えているその行動に、余計に気分が高揚してきた。

自分に抗おうとするものは徹底的に叩き潰す。

それが本来の俺の闘牌スタイルだった。

どんな時にも空気を読まず、常に周りを叩きのめそうとする。

それ故その気概を知っているものからはチーム対個人戦を自然と強いられるも、そんなものも意に介さず捩じ伏せてきた。

そのせいで恨みを買ったり(小鍛冶とか小鍛冶とか小鍛冶とか)、相手を泣かせることも多かった。

それを考えて、自分を押さえ付ける。

あくまで俺は彼女たちの足場になってやるべき存在だ、主役では無い。

彼女たちの成長を手助けしてやる為に、ゆっくりと教えていくべき立場の俺がテンション上げて叩き潰すのは大きな間違いであるのは明らかだ。

「須賀先生、随分甘いんだね? 今回は三人に上の存在が如何に強大かを教えてもらおうと思ってたんだけど」

「黙ってろ妖怪」

背後から俺を惑わそうとする悪魔が語りかけてくるが、そんな言葉に耳を貸してやる気はない。

折られてから再起する人間は等しく強大な力を手にいれる。

負けの味を深く噛み締めて、負けたくない為に強くなろうとするからだ。

だが、俺のスタイルはその過程にはまるでそぐわない。

俺が本気で潰そうとした場合、それはもう折るではなく消し去ることになる。

俺と闘い、牌を置いた者を俺は何人も知っている。

それを知って尚、妖怪は俺にそれをすることを求めている。

それでも再起してくれると期待しているのか、あるいはそれくらいで辞めるのならば始めから期待しないということなのか……。

と、俺は向けられた視線に気づいた。

三人が、俺を見ている。

強い意思を感じた。どんな目にあっても良い、という意思のような……。

そこで、最初に妖怪が何をしたのかを思い出す。

そうか……それで俺が小鍛冶を倒したことがあることを放言したのか。

いや、放言ではなかった。この状況を意図してのものだ。

チッ……本当に気にさわる妖怪ババアだ……。

その時、部室の扉が開けられた。

『スガセンセイ? いる?』

「エイスリン?」

なぜか、エイスリンが立っていた。

「ああ、来たね。私が彼女を招待したんだよ。なかなか伝わらなくて苦心したものだけど、面白い遊びがあるからついておいで、ってね。須賀先生を餌にしたらすぐに食いついたよ」

『何してるの?』

妖怪の発言にイラッとしたが、エイスリンがニコニコと寄ってきたので怒りの矛を収める。

二人はポカンとしていたが、鹿倉だけは何となく嬉しそうな顔をしていた。

『麻雀だよ。昔に見ていたことがあるけど、覚えてないかな?』

『あ、知ってるよ! パパがたまにやってたやつだよね!』

『うん。興味あるのか?』

『よく分からないけど、面白いの?』

『うーん……覚えたら面白くなるかも?』

「……何語?」

エイスリンと話していると、不意に小瀬川が口を挟んできた。

そりゃ気になるか。

「あーすまん、こいつはエイスリン・ウィッシュアートだ。ニュージーランドから日本に移り住んできて、今年からここに通うことになったんだよ。俺の……まぁ親戚で、日本語は喋れないけど、読み書きは……まぁそれなり? なのかな……? 自信無いけど、まぁそんな感じだから、よろしくしてあげてくれ」

「喋れないんじゃよろしくできないような気が……」

「臼沢、そんな時はボディーランゲージだ」

自分でいってて無茶だよなぁとは思うが、これを機にこいつらとも仲良くなってくれると嬉しい。

三人もそれぞれエイスリンに自己紹介をして、エイスリンは俺の横に椅子を持ってきてちょこんと座った。

「……さてと……まぁ若干空気は弛んだけど再開するか。それと悪い、俺今から凄い大人げないことするけど、全部この妖怪が悪いから、悪く思わないでくれよ。って言ってもお前らも覚悟してるって感じだろうが、泣きたくなったらとりあえず俺の胸に飛び込んでこい?」

臼沢と鹿倉は苦笑いで言外に拒否、小瀬川は「だる……」と返事を返してきた。

ちょっと泣きそうだったけどまぁ良いさ。……セクハラになるのかなこれ。

そんな社会への恐怖を感じつつ、麻雀を再開させる。

改めて場を見る。このまま行けば鹿倉の場だ。

だから、それを潰しにかかる。

「……ん、カン」

牌を四つ倒して、嶺上牌を引く。

やっぱりね……。

手から一つだして、それも小瀬川に鳴かせてやることにした。

「…………チー」

俺にはその牌を鳴く小瀬川が悔しそうにしているように見えた。

俺がわざと鳴かせていることに気づいたのだろう。

だが鳴かなければならない。

小瀬川が今考えることは、さっさと鹿倉に和了ってもらうことだけだ。

最近本当一日が短く感じる
忙しさにかまけてたらもうこんなに日が進んでるもんだ
歳かね……

明日か明後日には続きを投下するよ

鹿倉は数順でツモるだろう……だが、邪魔ならいくらでもできる。

というより、俺の手がそう成りたいと強く主張している。

それならば……それを尊重してやる。

「ポンッ」

鹿倉から鳴き、牌を捨てる。

そして小瀬川が……テンパッた? 引き戻した?

それにこれは……なるほど、これが狙いだったのか!?

次に引く牌……それを加カンすれば、俺は和了れる……だがその牌は……。

小瀬川の牌だ……!

頭に血が上っていく。それを止める気はない。

さっきのはフェイク? それとも鳴かされてることが嫌だったのか?

何にしても一度回してからしぶとく俺を邪魔して来るとは……。

なかなか気に障る……!!

ハイテンションなまでに気分が盛り上がり、それは最頂点に達した。

この場の俺の手は死んだ。さっさと流してやることにする。

「! ロンです!」

その宣言と同時に12000点を鹿倉に差し出す。

「え……?」

「裏乗って跳ねたぜ。良かったな? 鹿倉?」

「ま、まだ見せてないのに……」

「見なくても分かる。そういうものなんだから」

今多分俺凄い顔してる気がする。

なんせ相当腸煮え繰り返っているから。

平常心なんてぶっ飛んで、ただ相手を消し飛ばすことだけが俺の思考を埋め尽くしている。

ついでに俺の邪魔をしやがった二人の……生徒もまとめて消し炭にしてやる。

そんな悪意が渦巻く。

次局、開幕テンパイ。

鹿倉の落とした白がドンピシャの地和だった、だが俺はあえてそれを蹴る。

これこそが、俺が絶好調に成った合図だった。

『? なんで? 今のじゃないの?』

『これで良いんだよ。俺のオカルトは、これで完成なんだから』

そう、初手役満和了を蹴ることで、場が俺のものになる。

勝負は一瞬だ。

「さぁ……役満縛りの時間だ。決まるのは一瞬だから、ちゃんと自分の手を見極めろよ……?」

役満縛り……これからこの卓が終わるまで、役満以外での和了を出来なくする超々高火力場になる。

一部小鍛治とかいう例外もあるが、基本的にこの強制縛りプレイから逃れる術はない。

それから手の不自然さに翻弄されてしまった三人は程無くして全員仲良くぶっ飛んでいったのだった。

がっくりと項垂れる三人(小瀬川は無表情だが)。

正直なところ、このオカルトはそこまで強いものではない。

というのも、全員が役満でしか和了出来なくなるわけだが、その全員にはもちろん自分も含まれている。

俺のオカルトについて理解さえできれば、そして俺のオカルトが動いたのが分かれば、あとは役満に向かうだけの運ゲーになる。

運の強さで負けるつもりは無いが、だからこそ小鍛治のような例外にはむしろ自分の首を絞めることになってしまうのだ。

ちなみにあの開幕役満で和了すると、俺は和了ができなくなる。

ソースは俺。

しかも発動するためにその場に32000点以上持ってる他家、自分が子のときでないと駄目など、飛ばし逃げもできないオカルトだ。

これで何度俺が苦しめられたことか……。

ん? あれ?
……あれ?
なんか間違えてるね。
地和って子の時に一番はじめの牌での和了だっけ?
テヘペロ脳内補完よろしく

役満なんて一回しか和了ったことないもんねん……(言い訳)

『すごい!! 京太郎すごいよ!』

『ん? あー……まぁ、そりゃな?』

『麻雀って、良く分からないけど、面白そうだね!』

意気消沈している三人とは対照的に、楽しそうに跳び跳ねているエイスリン。

そんなエイスリンを見て、冷水をかけられたように冷めていく思考。

「……熊倉先生。彼女たちについてある程度は分かりました。若干小瀬川が難しそうですけど、磨けば光る子たちだと思います」

「そうみたいだね。……うん、ありがとう須賀先生」

「いえ。にしても、やっぱり俺も歳ですねぇ、あの頃のようには全然打てる気がしないです」

そういって、麻雀牌を捲って遊んでるエイスリンを見た。

そんなエイスリンに笑顔で相手をする二人、エイスリンも必死に絵を描いて意思疏通をしている。

「…………小鍛治も今はあんまり表に出てこないし、俺もまだいつでも現役で行ける気になってましたけど…………。もう時代は俺らじゃなくて、彼女たち、なんでしょうね……」

「京太郎、君は誰かに物を教えるのは得意だよね。もちろん君もかなりの腕があるにしろ、あの健夜を強くしたのは君の指導力が優れていたからだよ」

「チッ……回りくどい人だな、ったく……。時間はかかるかも知れないけど、できる限りの手は尽くすよ」

「ありがとう。流石頼られると断れない京太郎だね」

「便利屋扱いしてんなよババア。……あと二人か……そもそも麻雀部が無い学校だったし、この学校に麻雀やりたがる奴がいるもんかね……ま、適当に探してみるか」

「ん? 一人はもういるじゃない」

「は?」

妖怪がエイスリンを指差す。

エイスリンは何を言われているか分からず、首を傾げていた。

「……いやいやいや、こいつまるっきり初心者だし、第一麻雀やりたがってる訳でも無いだろ?」

『なに?』

『いや……エイスリン、麻雀なんてやりたいと思うか?』

『やって良いの!?』

『うわーすげーやりたそー』

驚きの好反応に、力が抜けてしまう。

……熊倉先生はそれが分かっていたかのように、俺を見て笑っていた。

それから、俺が後ろでレクチャーしながら四人での対局を開始した。

当たり前だが、エイスリンはなにも知らなかった。

覚えるのに一ヶ月はかかるな……。

そう軽く見積もりをたてて、時間はまだあるとゆっくりやっていくことにした。

部活も終わり、だるだるしている小瀬川を鹿倉と臼沢がなんとかかんとか引きずっていった。

帰るのがダルいとか本当わっかんねー……。

……ただ、あの三人の中で一番ヤバそうなのも、あいつなんだよなぁ。

やる気があればすごい勢いで化けそうなだけに残念な限りだ。

さて、部活も終わって明日の準備も終わっているので帰るだけ。

…………だったのだが、何故かエイスリンを隣に乗せて車を走らせている俺がいた。

エイスリンが一緒に帰りたいと言い出したのが原因だ。

教師たるもの生徒一人を特別扱いするわけにはいかないんだがなぁ……。

そんなことを考えていると、お見通しとばかりに熊倉先生に「彼女と君の事情は伝わってるし、気にする必要もないと思うけどね」と言ってきたものだから、悪霊を振り切る勢いでエイスリンと車に乗り込んだのだった。

『エイスリン、どうだった?』

『難しいけど楽しかったよ! 日本語は全然分かんないけど、京お兄ちゃんもいるしね!』

『そうか。麻雀はけっこう難しいところもあるけど、覚えてしまえば誰にでもできるから、ゆっくり覚えていこう』

『京お兄ちゃんみたいに打てるかな?』

『俺みたいになる必要は無いさ。エイスリンにはエイスリンの打ち方がある筈だから、自然に打てるようになればいい』

『……うん! 分かった!』

元気な返事に、まったくネガティブさを感じない。

日本語もあまり分からず、慣れない土地で、それでも笑顔は絶やさない。あるものを楽しもうとしている。

こういうところが愛される秘訣なんだな……羨ましいもんだ。

エイスリンに言われる通りに走ると、大きめの一軒家があった。

『ありがとう京お兄ちゃん! これからもよろしくね!』

『おう。頑張れよ』

『頑張る!』

筋肉ムキムキなエイスリンが力こぶしを作っている絵をバッと見せてくる。

画力は高いし腕だけ筋肉ムキムキでアンバランス、そんな絵に新しいホラーの形を見いだした。

『エイスリンはいつまでもかわいいエイスリンでいてください……』

『? 分かったよ!』

明らかに分かってなさそうだが、元気な返事をして車から降りるエイスリン。

そんなエイスリンを見送って、これからの部活動についてなどを考えながら、エイスリンに俺の知るすべてを教えてやろう、そう誓うのだった。

エイスリンの章、カンッ!!

あーダメだー完全に安価詐欺やんエイスリンなんていなかった、いいね?

安価とってくれた人ごめんよ……
書いてるとすぐドロドロしたものが書きたくなる悪癖をどうにかしたい

次回は咏さんだね


さて、その次の書くやつ安価だーわーい

安価は今日の10時に一番近いので。
もし人いなかったら18時に変更するよ

早い(確信)

コメント全然無いから期待も見てる人も無いと思ってました、嬉しいです(KONAMI

透華か……なるほどな(ゲス顔

>>283
そういうテンプレ?パターンが多いので裏をかいて京太郎が逆に驚くとかでも
真の一流は自身で出来なければ本当の善し悪しは分からないので、最低限は叩き込まれるとかなんとか

>>284
あっ……
まだ書いてない物語の先読みとはやるねぇ……
だが! 私は! ストーリーを! 変えない!

展開予想大いにけっこう!
むしろもっとやれ!

前回のはなしになんか違和感あるなと思って見直してみたら、キャラが「俺のオカルト」って言ってるからだったわ
能力を「オカルト」っていうの、和の台詞を受けてのメタ表現だよね?

>>288
そだよー
原作ではそんな感じで、漠然としたものをそんオカとか言ってたりしたけど、どこかにはこんなそういうものを総じてオカルトと認識してる勢もいるかなってのと上位陣プレイヤーやその関係者は能力とは言わずにオカルトだのスタンドだの波紋だの言ってる勢もいるかなと

……と、言うより、俺の能力(キリッ)って書くより俺のオカルト(キリッ)って書いた方が咲っぽいなと……

今さらだけど人和と地和間違えたのが速やか早急にくたばりたい……
穴空いてないかな……

「麻雀は好き?」

「はい? あぁ、やっぱり気になるんですねそういうの」

自己紹介の次にその一言を選んだ自分を殴りたい、そう思う今日この頃。

目の前にいるのは私より少し歳が下の、鈍い金色の髪をした男、須賀京太郎。

向かい合って、着物を着た女とスーツを着た男が、互いに身体を堅くさせてなんとも言えない空気に沈黙すること数分。

ようやく絞り出した言葉はそれだった。

緊張しているのもそうだが、それよりも何よりも初めて体験するような大変な事態が自分に起きていた。

「(…………凄い、好み……)」

外見は相当遊んでそうなのに、女慣れしてない感じがまた良い……。

どうして良いか分からず困っているのがよく伝わってくる苦笑いもすごくいい。

お見合いの話を持ち掛けられた時は本当に面倒だったけど、父親にこんなことで感謝する日が来るとは思ってもみなかった。

「麻雀はあんまり得意ではないんですよね……知り合いと遊ぶことはあるんですけど、ほぼ負けてますし。三尋木さんには絶対に勝てないと思いますよ」

「ふーん、そうなんだ。まー下手な人でも頑張れば強くなれるのが麻雀だし、大丈夫じゃねー?」

「そうなんですか? プロの人からそう言われると、なんとなく頑張れそうな気になってきますね……ありがとうございます」

「いやほらというか、結婚を前提に弟子にでもなる?」

「はい?」

内心の動揺がつい口に出てしまった。

ここで獲物を逃がすのは有り得ない。

変人認定されて断られるのだけは避けないといけない。

「いやほら……これってお見合いな訳だしさぁ、結婚するんだよねぃ? それならまぁ、とりあえず対面的には師弟ってことにして、何れ……って?」

「え? あの……これって形だけのお見合いなんじゃないんですか? 親父からはそう聞かされてるんですけど……」

「えっ」

「普通にお見合いって形だけ作って、そちらから断られる筈だから気にするな……って言われてたんですよ。違うんですか?」

……なるほど。そう考えても仕方ねーのか。

父親同士が勝手に作った見合いの場、こちらの父は気に入ったなら好きにしろとか言ってたけど、須賀の方はそうではないらしい。

ほとんど可能性は無いと分かっていて、息子を送り出して来たのだろう。

だからといって私のやることに変更は無い。

「っていうことは私はぬか喜びって訳か? ……そーかそーか」

無知な青年の罪悪感を刺激してやる、まずは戦いの基本は格闘、ジャブの連打だ。

そして弱ったところを強打で打ち抜く……麻雀だとあんまり取らねー戦術だけど、恋愛ごとは慎重にと知り合いのアラサーズも言っていた。

「私は須賀のこと気に入ってて、ここに来てくれたってことはそういうことかと期待してたんだけどねぃ。わっかんねー」

もちろん嘘だが、一目惚れしましただと効果は薄い。

「ま……須賀は知らなかったみてーだし、勝手に勘違いした私が悪かったんだよねぃ。気にしなくて良いぜぃ京ちゃん、知らなかったんならしゃーねーし。わっかんねーすべてがわっかんねー」

勝てそうな戦いは勝つためにどんな手でも使う。

麻雀打ちにとっては当然のことだった。

「それ、本当ですか? ……そうでしたか……すみません、三尋木さん……俺……」

断る流れ! ここを横入りして断ち切り勢いを削ぐ!

「三尋木さんのことまだよく知らないから、まずは師弟から、ゆっくりお互いのことを知っていきましょう。愛想つかされるかも知れないですけど、長い目で見てやってください。これからよろしくお願いします」

横入りするタイミングを図っていると、まさかのOKを出されて面食らってしまった。

「え……良いの?」

「はい。……実は俺も、少しだけ、そういうのを期待してたんです。三尋木さんはその……有名人で、可愛くて、俺なんて相手にしてくれないだろうな、っては思ってたんですけどね? でも、理由は分からないですけど、俺のこと気に入ってくれてるって言われたら、そりゃ、むしろこっちからお願いしたいことですし……って言っても、まだ俺のこと良くは知らないだろうし、もっと知ってからの方が良いかなと。三尋木さんに後悔なんてさせたくないんで」

し…………。

紳士……!

「良いぜぃ! それならこれから師匠としてバシバシ鍛えてやる!」

「はい! 師匠!」

こうしてお見合いとはまるで呼べないようなものも終わり、何故か麻雀の師弟関係を築くことになったのだった。

さて、なんやかんやとあって結局京太郎とひとつ屋根のしたで暮らすことになった。

…………須賀の方はまったくそうなると思ってなかったのかあたふたしていたが、こっちのはむしろ大歓迎という風にあっという間にここまできてしまった。

行動を起こすと早いのは知っていたけど、ここまでするかねぇ……。

目の前で呆然とした様子で座っている京太郎に申し訳なさを感じてしまう。

「あー……悪い京太郎。何れ結婚するかもしれないなら今のうちから経験しとけ、ってまぁ無理な話だよねぃ……」

「あ、いえ……なんか……うん、流石だなって。……びっくりはしてますけど、でも……ちょっとだけワクワクしてます」

なんて健気な弟子だろう……まだ一日目だが、これからの日々に思いを巡らせキーンコーン

「あれ、お客さん? 咏さんのお父さんですかね?」

「……父さん? いや、そんな筈は無い……と思うけど……わっかんねー、ちと見てくるよ」

「あ、はい」

なんだか嫌な予感がした。勝負師の勘というか、とにかくここに来てはいけない人間が来訪した、そんな

廊下に出てインターホンのモニターを付ける。

……………………す……。

すこやん……!!!

今もっともここに来てほしくない存在が、画面越しにこちらを笑顔で見つめてきていた。

いや、すこやんだけじゃない……。

その後ろにははやりんまでいやがる。

というか……二人の目が軽く濁ってる気が……。

ダメだ、京太郎に近付けさせると何をするか分からん。

幸いこのインターホンは外からは見られてるか分からないし、ここは居留守を

「あ、咏ちゃん? 遊びにきたよー」

「はっやりーん☆」

『うわきつ……ハッ!?』

声を出してしまった……くっ、はやりんめ……!!

『……えーと……まだ誰にも言ってないはずなんだけど、なんで引っ越したって知ってんの?』

「それは咏ちゃんが幸せになるって聞いたらもう飛んでくるよー」

「ハピハピはっやりーん☆ 咏ちゃんあーけーてー☆」

はやりんが壊れてるってことは間違いない……この二人、敵だ!

しかもあわよくば京太郎を掠めとる気満々!

開けたら嫉妬に狂った醜女が解き放たれる!

ここはなんとか追いかえ「咏さん? 大丈夫ですか?」

き、京太郎ぉ……! 最悪なタイミングだ……!


咏と京太郎は四歳差の予定

んいや違うよ
咏の原作年齢から四つしたね

だから京ちゃん20歳だね

ヤンデレな女の子を書いてるとき私は唯一輝ける気がするけどヤンデレっていうか怖い

「あ、もしかして……小鍛治プロに瑞原プロですか? あ、俺は全然大丈夫なんで気にしないでください」

と、友達が遊びに来たと思ってやがる!

いや友達かも知れんけど腹のなかドッロドロの悪魔たちだから!

……と、ここで言う訳にもいかない。

京太郎は人の気も知らずにニコニコと笑っている。

……仕方ない……城門は破られても二匹のアラサーは通す気は無いぜぃ。

「お邪魔します」

「こんにちは☆」

「初めまして! 俺は今日から咏さんの弟子になりました、須賀京太郎です! よろしくお願いします!」

さっっっっっ……わやか!

あぁ……すこやんとはやりんがなんか浄化されてる。

「お二人とも咏さんの友人なんですね! 至らない弟子で、麻雀も下手くそですけど、頑張りますね!」

「咏ちゃん、この子お持ち帰りしてもいい?」
「ダメに決まってんだろ」
「安心してちゃんと育てるから」
「なに仕込む気だ!」
「はやりなら男性アイドル雀士として立派に育てるよ?」
「絶対にダメ! 京太郎は将来私と結婚するんだからねぃ!」

「あ、お茶入れてきますね!」

早々に三人で取っ組み合いを始めたものの、まるで仲睦まじいものを見るような、慈愛の籠った瞳で見られ、パタパタと台所まで走っていく。

「……いったん落ち着けよ二人とも。人の幸せが妬ましいのは分かるけど、邪魔するやつは馬に蹴られるぜ」

「余裕のある人は違うねー☆ 上から目線とか、羨ましいなー☆」

「実際上からの目線だしな。百歩譲ってこれからって時に邪魔してくんならまー分からんでもないけど、もう出来上がっちまってるもんにうだうだ言ってくんのは本気で無いと思うぜー?」

二人の目は相変わらず濁っているものの、あくまで主導権を握っているのはこちらだ。

このまま叩きだしちまえばそれで終わり、アラフォー二人を仕留められたら逃げ切り勝ち組だ。

「一目惚れの初恋なんだ、マジで邪魔しないでくれ。こんなの、これから先あるかどうかもわかんねー、ならここで決めさせてくれよ」

これが頭の悪いハーレム物の修羅場ならここで一悶着が起こるだろう。

だが……これはそんな話じゃない。

結婚できない女が結婚できる女に嫉妬して起こした暴動……。

つまり、情に頼っちまうって選択肢が有効打になる話だ。

なんせすこやんもはやりんも京太郎に対してなんの思い入れも無い。

すこやん、はやりんとは友人だ。

嫉妬に狂った女ってのはこえーけど、友人がこんなに切実にお願いしてて、しかもこの先無いっつー想像に難くない例え話まで合わされば、自然と矛先を納めるしかなくなるわけだ。

計画通り、すこやんとはやりんは正気を取り戻したようで、目を見合わせて気まずそうにしている。

そこで京太郎がお茶とお菓子を持って戻ってきた。

「ん? どうかしたんですか、咏さん。お二人とも元気がなさそうですけど」

「いや、なんでもねーぜ。ほら、お茶でも飲んで頭冷やしてくれ」

「大丈夫ですか? はい、冷たいお茶ですよ。体調が悪かったら言ってくださいね」ニッコリ

「う、うん……」ポッ

「あ、ありかとう☆」ポッ

おいちょっと待て、なんで笑顔で優しくお茶を差し出されただけで目をハートにさせて顔赤くしてんだ?

そこまで飢えてるの? なんなの?

そしてなにその「私決心しましたこの人と結婚します」みたいな面は。

「須賀くん、結婚してください。一生食べるのには困らせませんから」

「京太郎くん、私と結婚しなさい? 牌のお姉さん独り占めだよー?」

「え? え?」

ち………………。

「チョロすぎんだろォォォォ!!!!」


また一週間……三日に一回くらいのペース保ちたいんだけどね
他のSS書いてたら遅れちまった
咏さんの口調合ってます?

悪いね……なるべく早く透華編投下するからまっ何点?

ごめん……ごめん……ゲーム発売しちゃって……つい……つい……

朝のシリーズ七時くらいに更新しまーす

あっいぇぇ
忘れてた今から書くんで許してくださいなんでもしますから


初対面後に師弟
互いの父親同士が意気投合してお見合い、咏が一目惚れして師弟になるがアラフォーたちが迫り来る
純愛コメディー


今更気づいたけどはやりんの「私と結婚しなさい」じゃなくて「私と結婚しない?」ですわこれ


「違うよ! これは仕方ないことなんだよ! 私たちだって出逢い欲しいもん!」

「そうだよ! こんな明らかに優良株なの咏さんだけ占有するなんてずるいよ!」

好き勝手なことを言ってくれる二人の目は真剣そのものだった。

つーかこっちが引くレベルでマジなもんだから、なんか悪いことしてるような気分になってくる。

いや全然これっぽっちも悪くはないのだが。

「ふざけんなっての! 京太郎に先に粉かけたのは私だ! 後から惚れたって私のこと退ける権利なんざねーぜぃ!」

「そんなの横暴だよ!」

「誰にも平等にチャンスがあるべきだって思うな☆」

「皆さん落ち着いてください!!!」

京太郎がいきなり大声で、言い争う二人と私の間に割ってきた。

「……小鍛治さん、お気持ちは嬉しいんですが、小鍛治さんはまだ俺のことを知りませんよね? そんな状態で俺のことを好きだ、というのは一時の感情に流されています。……俺、小鍛治さんのこと、心の底から尊敬しているので、その場の勢いでそんなこと、言わないでください!」

「ぐ……ぅぅ……」

「焦るのは分かります……でも、小鍛治さんだってこんなに魅力的な女性なんですから、絶対にいい人が現れます。……もしそんな人が現れなかったら、俺がなんとかします。だから、どうか自分を見失わないでください」

「す、須賀くん……!」

「瑞原さん。瑞原さんは、みんなのお姉さんです。みんな瑞原さんのこと大好きです。……俺も瑞原さんのこと、ファンとして応援しています。俺が一人占めするわけにはいきません」

「京太郎くん……」

「瑞原さんも、とっても綺麗で可愛くて、絶対いい人が放っておきません。だから、俺みたいな男で妥協しないでください。いつまでも、みんなが大好きなはやりんでいてください」

京太郎に諭されて、はやりんもすこやんも俯いてしまった。

ナイス京太郎、と思いつつも、やっぱり二人のことは気になってしまう。

と思ったら、二人はほぼ同時に、とてつもなく明るい笑顔(私には悪魔の微笑みにしか見えなかった。言質取った! みたいなそういう)で、京太郎に詰め寄った。

「じゃあはやりがアラフォーになってもお相手見つからなかったら、京太郎くんにお願いしようかな☆」

「私も、その時はお願いするね、須賀くん」

「はい! 俺でよければなんでもします!!」

今の会話、一見するとありがちな光景に思えるが、実は京太郎とアラフォー二人の間に意見の齟齬が発生している。

京太郎は「はい! 俺でよければ(お相手を見つけるために)なんでもします!」と言っているのだが、二人には「はい! 俺でよければ(お二人共嫁にするために)なんでもします!」という不思議脳内変換が発動している。

もちろん既に三人で取っ組みあいの喧嘩を始めた訳だが、果たしてこの二人から京太郎を守ることはできるだろうか……。

数年後…………。

「はい、今日の夕飯です。ハンバーグカレー、健太郎と京太が食べたいと言ったので作らせてもらいました」

「うん、ありがとう。京太郎くんのご飯大好きだよ」

「僕もパパ大好き!」

「倫太郎、カレー大丈夫?☆」

「ぜんぜんオッケーです☆」

「いっぱい食べるぜー!」

今日も七人騒がしく食卓を囲む。

どうしてこうなった……。

「どうしてこうなったーー!!!!!!」

と、叫んだものの。

こんな幸せもありなんじゃないかってくらいには、幸せな毎日なんで、これはこれでいいだろう。

咏&アラフォー編、カンッ!

すまん純愛じゃなくコメディ色強くなりすぎたけどこんな幸せもありかもね

次安価は今日の15:00:00:00に一番近い人ー

さて、次は透華編ですねーがんばりまー(ry

ふむふむ、ネリー了解
ハートフルか……段階踏んでいけばそれっぽくなるかな?

じゃあ明日にでも透華の取っ掛かり投下しまーす

22日に来ると言ったな!
あれは嘘だ!

一時くらいからちょっとだけ投下します

結婚なんてもっとずっと未来の話、俺はずっとそう思っていた。

適当に就職して、誰かと付き合って、恋をして……なんてありがちな話だが、そもそも俺にそんな【当たり前の人生】を歩む権利が無いことくらい、十分理解していた。

須賀……父さんが一代で築き上げたその名前は、俺に自由なんてものを許さなかった。

管理された生活、敷かれたレール……逃げることもできない。

俺が生まれてきてから唯一の反抗が、清澄高校への入学だった。

元々東京の高校に一人で……メイドや執事も数十人着くので厳密には一人では無いのだが……通うことになっていたのを、三時間に及ぶ言い合いの末になんとか許可を得て、俺は期間付き学校限定の自由を手に入れた。

面倒くさい縛りも無い、醜いグループ争いもない、自分の立場を鼻にかけた奴もいない。

俺にとって一種の楽園だった。

そのうち、俺は人が足りないからと麻雀部に誘われ、部員としてかつどうすることになった。

麻雀というものを知らなかったが、生まれて初めての触れあいと誘われたことへの喜びから、積極的に先輩からの教えを受けた。

最初は三人だけだった部室も、手当たり次第に声をかけまくった成果で三人の女子部員が増えた。

四人で囲む初めての麻雀は、楽しくて難しかった。

最初のうちは全然分からなくて、そのたびにどこが悪いのかを一緒に考えあった。

家に帰ってプロの出している教本を寝るまで読み続け、今までは勉強のためだけに持っていたノートパソコンで麻雀を遊んだ。

結果的に、男子個人二位というところまで行き、全国に行くこともできた。

今となっては、遥か昔のように思える思い出。

卒業して間も無く、俺は政略結婚という時代錯誤な物によって、誰かの夫になる。

もう麻雀をやることもないんだろう。

部長や宮永、原村、片岡、染谷先輩に会うことも……。

「京太郎、行くぞ」

父さんに呼ばれて現実に引き戻された。

返事はせずに重い腰をあげて、あとを追う。

「須賀の名に泥を塗ったんだ。少しは私の役に立て」

「……はい」

扉が開かれ、視線をあげる。

二人の男女が座っているのが見えた。

片方はうちの父さんとは違い優しそうな雰囲気の40代くらいの男……そして……。

「おっ……!?」

「ふあっ!?」

俺とその女、龍門渕透華は揃ってすっとんきょうな声をあげたのだった。

――――――――

〆短いけど取っ掛かりだけ投下

ねっとり(嫌な気配が絡み付く)純愛……?
つまりヤ(ry

なんでこんなに乙がついてるんだろう……
すいません、他にやりたいことがあるので更新が亀になるけど明日休みだから続き投下しますよーと

おはようございます……(大声

書いていきます……(小声

――――――――



「まさかお相手が貴方とは思いませんでしたわ」

「俺もだよ。龍門渕……龍門渕ねぇ……」

「あら、不満ですの?」

「いや、貴女が相手だからとかではなく、それ以前に政略結婚自体に不満しか無いんだ」

「奇遇ですわね、私もですわ」

顔合わせの次の日。

あれからなんとか取り繕ってその場を穏やかに締めくくった俺たちは、何事もなく帰路についた。

そして今朝、父さんに「お前の家だ。好きに使え」と車で二時間ほどの距離を走った場所に連れていかれ、先に到着していた龍門渕と居間で寛ぐという現在に至る。

実家に比べれば大分小さいが、それでも十人程度暮らせそうな家だ。

これから二人で住むとなるとかなり持て余しそうだった。

「……俺たち、本当に結婚するんだな。あーったく! ワガママ言って清澄に入った事への嫌がらせかよ!」

「いえ、私とあなたが結婚することは前から決まっていましたわ。ご存じありませんでしたの?」

「マジかよ、聞いてないぜ俺は……」

「あら、そうなんですの。私はお父様に婚約者がいること、然るべき時に結婚することを伝えられていましたもの。時期が早まった、とは言われましたけれど」

なるほど、龍門渕が落ち着き払ってる理由が理解できた。

つまり彼女はとっくの昔に覚悟が出来ていた訳だ。

少しだけズルいと思いながら、さてどうしたものかと考える。

この状況から逃げることはできない、龍門渕の顔を潰すのはまずい。

龍門渕との生活……想像もつかない。

先に不安しか無いのだが、やらないといけないことは理解している。

「……とりあえずご飯にしようか。冷蔵庫は……」

ひんやり冷えているが、中には何も入っていない。

家具や電化製品は揃えられているようだが、そのくらい自分でやれということだろう。

カードは好きに使えというお達しはあるので、まずこれから使うことになるものを買いに行こう。

「なんもないし、買い物に行ってくるよ」

「私も付き合いますわ。料理はできますの?」

「あぁ、一応な。簡単なものだけなら」

「そうですの。では行きましょうか」

家を出て……。

「そういえば、スーパーってどこにあるんだろ?」

「…………さぁ……」

「ようやく着いたな……」

「普段使わないマップが役に立ちましたわね……」

あれから30分、なんとか近場のスーパーにたどり着くことができた。

適当に歩き回ればどこかしらに着くだろうと思って歩き始めたものの、土地勘なんて無い俺たちに正解を導き出せる筈もなく、スマホのマップ機能を駆使してようやくここまで来れた。

最初から見ておけば良かったとも思うが、ゆっくり付近を探索したということで流しておく。

「…………あ、なに食べたい? リクエストある?」

「いえ、お任せ致しますわ。好き嫌いは特にありませんから」

「そっか。分かった」

それならあまり難しい、凝ったものは止めておいた方が良いな。

初めが基準点になるのだから、そういうのを当たり前に作れると思われると料理に苦労が付く。

野菜炒めとか家庭の味雰囲気を出していこう。

「家庭の味……か」

「なんですの?」

「あ、いや……なんでもない」

笑顔で食卓を囲む夫婦を想像して、少しだけ微妙な気持ちになってしまう。

そのことは胸の奥に閉まっておこう、龍門渕だって好きでこんなところにいるわけじゃないんだ。

〆忘れた
ビミョーな空気の二人を作るのに相当時間かかったり、艦これやったり寝落ちしたりと申し訳ない
また近いうちに

あとで更新するよ。
ちょっと時間かけすぎたので、少しずつペースアップしないと……

あれ、というかもう五作以上書いてたのか……いつのまに……
ここまで
衣編→池田四姉妹編→淡編→エイスリン編→アラフォー編
と書いてきたけど、五つの内一つだけ続きを書くよーっと。
↓10までで一番多かったものを。
もし無い場合は無し、と書いてくれれば書かないでどんどん先に進むよ。
↓10まで届かなかった場合は自分が次来るときまでの集計でやらせてもらうねー

3 衣
4 池田
0 淡
0 エイスリン
3 アラフォー

池田で決定。
どんな話が良いか池田編から繋がるように安価取るよー
どんなものでも構わないのでお好きにどうぞ。
12時に一番近いもので安価
今かいてる透華の次に投下始めるので。
透華編続き書き始める

数日分の食料を購入して家に戻る。

会話の無い帰り道はかなり息苦しく、何か声をかけようと数回チャレンジしてみたものの、どうにも上手くコンタクトがとれないままの帰宅となってしまった。

「……じゃあ、俺が何か作るから……部屋とか、整理してていいよ」

「そうですわね……それではよろしくお願い致しますわ」

階段を登っていく龍門渕を見送ってから、深いため息を吐き出した。

正直、買い物の行き帰りをしただけで既に上手くいく自信がなくなってしまった。

そもそも龍門渕の印象が個人的にあまり良くないのも原因の一つだ。

俺は穏やかで物腰が柔らかくて優しい女性が好みだ。

だが龍門渕の印象は、目立ちたがりで騒々しいものしかない。

今のところは落ち着いているようにも見えるが、慣れればすぐに本性を表すだろう。

その日を考えると気が滅入って仕方がない。

「……さっさと飯食って、俺も自分の部屋を片付けないとな……」

一度考えるのを取り止めて、目の前のことに集中することにした。

考えてもどうしようもないことは忘れるようにする、それが俺のモットーだ。

――――

「ご馳走さまでした」

「お粗末さま」

龍門渕と食事を軽く済ませる。

会話は特にない、淡々としたものだ。

「食器は私が洗っておきますので、今度はそちらがお部屋の片付けをしてきても良いですわ」

「ん、じゃあ頼むわ」

申し出をありがたく受け取って、二階に上がっていく。

ダンボール積まれているのを見て、少しだけ気分が持ち直したのは、清澄で培われた雑用魂のせいかもしれない。

内心で自分を笑いながら、ダンボールを開けていく。

一時間くらい無心に作業をした頃、扉がノックされた。

「……ん? どうぞー」

「失礼しますわ。あら……ずいぶん片付きましたのね」

「あぁ、まぁな。それで、どうかしたのか?」

「いえ……ハッキリさせておきたいことがありますの」

「ハッキリさせておきたいこと?」

つかつかと俺の前まで迫ってきた龍門渕の威圧感に、やや圧されてしまう。

少しだけ怒ってるような、やや興奮してるような、そんな雰囲気を感じる。

「……私達は不本意ですが夫婦になりますの。それなのに、こんなに居心地を悪くしてどうしますの? 夫婦というのは何年も、何十年も連れ添うものですわ。こんな簡単なところで躓いては、未来なんてありませんわよ!」

早口で捲し立てるそれは、現在の状況改善を訴えるものだった。

龍門渕も俺同様に居心地を悪く感じており、それではダメだと正面からぶつかってきたらしい。

俺には考えもつかなかった龍門渕の行動力に、笑いが込み上げてきた。

「な、何がおかしいんですの!?」

「クックック……あぁいや……悪い。馬鹿にしてる訳では無いんだ」

馬鹿にしてる訳ではない。

ただ龍門渕という女性の、自分をぶつけていく気概が面白くなってしまった。

分からないことがあったら、気に食わないことがあったら、とにかくぶつかる。

分かるようになるまで、気に入るようになるまで、やれることはやる。

うん……そうだな。

「悪い、ちょっとまだ混乱しててさ。よそよそしくなったのは謝る。……そうだな、仲良くなる努力くらいはしないとだよな」

「え? ……えぇ、えぇ! そうですわ!」

「うし。もうとりあえず楽しんじまうか! もうどうにでもなれ、ってな!」

「その意気ですわ! こんな息苦しい中で生活するなんて耐えられませんもの!」

「そうだな! 空気が悪い! 明るく行こうぜ明るく!」

明るく行くために、二人で盛大に笑ってやった。

一頻り笑ってから我に返り、顔を赤くして立ち去る龍門渕。

「……楽しくやる。そうだ、父さんに無理矢理組まされたとは言え、この状況はすごく面白いんじゃないか?」

ポジティブに考えてみると、全てが新鮮だった。

黒く濁っていた視界が晴れ、周りが眩しく見えてくる。

そもそも、親元を離れて暮らすことになるのは俺の望んでいたことだ。

しかも、好みのタイプでは無いとは言え、美人の奥さん(仮)と同棲という状況。

手を出す勇気なんてあるわけ無いが、それでも男性としてはとても喜ばしいことだ。

そうと分かれば片付けなんてさっさと終わらせて、親交を深めよう。

そう考えて先程までとは違ったウキウキ気分で作業に戻っていくのだった。

一方その頃……

「……私としたことが恥ずかしいところを見せてしまいましたわね……ですが、主導権は絶対に確保してみせますわ! 覚悟してなさいませ!」

っと〆忘れ
それではまた。
投下スピード遅くて申し訳

おっと、>>395もよろしくー
12時に一番近いので

咏ちゃんで取られたのにアラフォー編になってる件w

>>408
そういえばそうだったや……
なんかアラフォーが強すぎて……

乙です
トーカ可愛い
京ちゃんと同い年の設定かな?

>>410
一応原作通りの年齢
イメージ的には透華が卒業したときに許嫁のことを聞かされて、京太郎が卒業してすぐに顔合わせ
その間透華は父親の仕事を手伝ったりなかったり

「片付け終わったぜー」

「あら、お疲れさま」

居間に降りると、龍門渕はパソコンに向かってネット麻雀を打っていた。

チラと見ても大差であることが分かるくらいには、他三人を圧倒している。

「ほ、流石だな。龍門渕のNo.2なだけはある」

「相手がヘボなだけですわ。須賀さんも中々打てるみたいですのね」

「まぁ男子個人全国ベスト4ってのは伊達じゃないぜ?」

「ふふ……そのうち打てるのを楽しみにしていますわ」

軽く会話をして、龍門渕は画面に集中し直した。

邪魔になら無い程度の距離に椅子を持ってきて、観戦することにした。

龍門渕の打ち方は基本的にどこを見ても合理的で、ミスも少なくフォローも早い。

時折謎の打ち方をすることもあるが、そのあとにしっかり良形に持っていくので、オカルト持ちにしか分からない不思議麻雀なのだろう。

そのうちに満貫確定のダマテンを張った、だがテンパイになっていることがあからさまなのでリーチをかけても良かったかもしれないな。

と思っていると対面があっという間にぶちこんで飛んでいった。

「なんだぁ? 最下位だから無理したくなるのも分かるけど見え見えのダマテンだったろ、突っ込んで死ぬより大人しくして好機を待った方が良かったんじゃねぇのかおい?」

口に出してから、あっ、と思ったがもう遅い。

見え見えのダマテン、と言うのは聞き方によっては悪口にも取られかねない。

気付かれてない、と思いながらダマテンしている人間には嫌みにしか聞こえないだろう。

龍門渕のことだから何かあるのだろうが(というか対面が気付かないのを見越してた可能性は高い)、口に出して言うべき発言ではなかった。

ましてや俺は今初めて場と対局相手の内筋を見ているので、なおのことである。

俺の発言に反応してか、ゆっくりと振り返った龍門渕の顔は……。

「わ、悪い邪魔して……別に悪気があった訳じゃ……え?」

般若、とかそういうお約束ではなく。

ただ無表情だった。

「…………あら? ……何か仰いました?」

それも一瞬のことで、心のそこから不思議そうにしている龍門渕が今は目の前にいる。

「あ……あぁいや。龍門渕の言う通りのヘボだな、って」

「でしょう? やってても面白くありませんから、もう今日はやめにしますわ。そうだ、よろしければ今度は須賀さんの対局を見せてもらっても?」

「俺の? まぁ、良いけど」

どうぞ、と譲られるまま、龍門渕が座っていた椅子に腰を下ろす。

あ……アカウント、そういえばなんだっけ?

自分のパソコンじゃないので、IDとパスワードも保存されていない。

スマホはここに来たときに新しく渡されたもので、前のものは没収済の打つ手無しだ。

「仕方ない、新しく作り直すか……」

「あら? こちらのサイトを使ったことが無いんですの?」

「いや、アカウント忘れちまった。スマホも没収されたから、もう思い出せなくて」

「ならこのまま私のアカウントでどうぞ。別に勝率とかは気にしていませんので」

「そうか? なら貸してもらおうかな」

お言葉に甘えてそのまま待機画面に移動する。

程無くして対戦相手が埋まり、対局画面が始まった。

フリーだからか、相手は全員低段位だった。

「……うーん……」

相手にもならないとは正にこの事で、一人が振り込み地獄にハマってあっさりとぶっ飛んだのは東三局のこと。

やり始めたばかりの自分を思い出しつつ、隣にいる龍門渕に苦笑いを向ける。

「まぁこんなもん」

「鋭い打ち方をされるんですわね。参考にしたのは瑞原プロかしら」

「色々勉強して、自分に一番合った打ち方をしたら自然とな」

「……やっぱり、ネット麻雀よりもちゃんとした麻雀がしたいですわね……」

それは俺も同じ気持ちだ。

ネット麻雀は技術を磨くのには都合がいいのだが、麻雀はそれだけではない。

「つっても、知り合いに連絡を取る術も無いしなぁ……会いに行くってのも」

「そうですわね……近くに、そういう場所は無いのかしら」

「雀荘ね。探せばあるかも? 調べてみるか」

現在の住所と合わせて雀荘と調べてみると、三件ヒットした。

一番近くので、歩いて20分か。

「……しばらく暇そうだし、明日でも行ってみるか?」

「良いですわね。そうしましょうか」

スマホのマップに雀荘の地図を保存しておく。

「……さて、と。んー……なんかしたいことあるか?」

お互いにネトマに飽きた空気が出来てきたので、ここで解散とせずに龍門渕に意見を聞いてみた。

「特にしたいことは。須賀さんは?」

返されて分かるが、非常に難しい質問だ。

心意気の知れた人間……例えば片岡なら、美味しいタコス探しでもしようとか提案できなくもないが、龍門渕のことを知らない俺にパッと思い付くことがあるはずもない。

「…映画でも借りにいくか」

「ええ。良いですわよ」

思い付きだが、いい提案だったんじゃないだろうか?

ここで龍門渕の趣味をなんとなく把握できるかも知れない。

どんなものに関心があるのか、どういうものが好きなのか、どういうところに感動するのか、どういう感性なのか。

映画を一緒にみればこれらの情報が落ちてくる可能性がある。

すぐにマップでビデオ屋を検索、マップは旅のお供だ。

――――


グダグダ?
こっから……こっからだから……

すまぬ
明日明後日休みなので、更新するよ

ボチボチ書きはじめるので、しばしのお待ちを

日が落ちた帰路を二人で並んで歩く。

収穫は上々だ。

アクション、ホラー、ファンタジー、感動物の面白い映画を何本か借りてきた。

幸いにも龍門渕は映画を借りて見たりすることが無かったらしく、テレビで放送されたものを見たことがある程度とのこと。

俺は面白ければ一度みた映画でも何度も見ることができる人間なので、俺のおすすめを借りてきた。

「こういうことが初めてだから、楽しみですわ。須賀さんは慣れていますのね?」

「まぁな。暇すぎて仕方ないときに借りて、それから月一くらいで借りに行ってたんだよ」

「そうなんですの。うちの純と智紀もよく借りてきたりしていたみたいなんですけど、「透華にはまだ早い」と言って見せてくれないんですわよ!」

「龍門渕には早い映画?」

エロいのか?

……いや、純と智紀、って井上と沢村のことだよな。

井上は男っぽいにしてもエロいのを二人で見る理由がない……となると、グロテスク系?

「なんていう映画なんだ?」

「……確か……キューブ? だったかしら……」

なるほどグロテスク。

今回借りた映画にはグロは無いので、まぁ問題はないだろう。

「っと、ただいま。先に飯食べるか」

「ええ。……あの、お願いしても?」

「おう」

そんな気はしていたが、龍門渕は料理ができないらしい。

それはそれとしてウキウキと料理をするためにキッチンに入った自分がいることに気付いた。

~~~~

食事のあと、早速DVDをセットする龍門渕。

食事中にずっと浮き足立っていたが、そこまで楽しみだったのか……。

「あら……? これ、どう使うのかしら……」

「貸して。ここを押して……」

メニューに入って、音声を日本語に設定して、再生ボタンを押す。

少しして、本編が始まった。

「なにか飲むか?」

「あ、ええ。紅茶をいただけます?」

「ん、了解」

台所に来て、お湯を温めてパックの紅茶を出したところで、ふと思う。

……そういえば、紅茶と言えど安物で良いのだろうか。

俺は飲めれば一緒だが、龍門渕だしなぁ……。

「す、須賀さん! 始まってしまいましたわよ!」

「んー。安物しか無いけどなんでも良いかー?」

「なんでも良いですわよ! ほら早く!」

別にそんなに急がなくても良いのになぁ。

多分俺が見逃さないようにと慌てているんだろう。

正直一度見たことがあるので、寝てても良いくらいだが、その辺りはちゃんと空気を読もう。

紅茶を淹れて、自分用の麦茶を持って戻る。

ちょうど主人公目覚めて、従弟に埃をかけられているところだった。

「遅いですわよ!」

「すまん。ほら」

机にコップを置いて、椅子に座る。

「んまぁ……! なんてことを……!」

食い入るように画面を見ている。

この様子だと、放っておいても大丈夫か。

それにしても懐かしいなぁ……今だとかなり古い作品だけど、忘れている部分も多いから、俺も楽しめそうだ。

………………………………。

あれから話は大分進み。

隣で大暴れする龍門渕に呆れながらも(時折殴ってくる)、ようやく終盤までやってきた。

舞台も大詰め……今は静かに状況を見守っている。

この辺りは鮮明に覚えている自分としては少しあくびを噛み殺して、龍門渕の観察をしながらの視聴となった。

別に下心があるわけではなくて、攻撃されないように……のつもりだったのだが。

……予想以上に刺激的だ。

龍門渕は、あまり意識して見ていなかったが、美人だ。

普段は喧しくてあれだが……。

胸は小さくて俺の好みじゃ無いからと思っていたが、ヤバい。

このまま見ていると、変な気分になりそうだ……慌てて目をそらす。

「……はぁー! 面白かったですわね!」

「んっ? あ、あぁそうだな」

「次は何を見ますの!?」

「ん……次か」

時間は10時過ぎか……大丈夫かな。

ファンタジーの次は、感動物でも見るか。

DVDをだして新しいDVDをセット。

「それも面白いんですの?」

「んー……評判は良いと思うよ」

「そうですか!」

嬉しそうに喜ぶ龍門渕を見て、ドキッとしてしまう。

いかんいかん……ダメだこれじゃあ。

おかしいな、変に意識してしまっている。

頭を振って席に戻る。

……よくよく考えたら、こんな美人といきなり同棲とか……俺、大丈夫か?

一応これでも健全な男子なんだが。

いや、夫婦だから良いのだろうが、俺たちは所詮仮初めの夫婦だからなぁ……。

って何を考えてる俺!

下心満載じゃないか!

気がついたら、結構先に進んでしまっていた。

……いやそれよりも。

龍門渕が寝息をたてて横になっている。

「……おいおい、寝ちまったのか」

DVDを止めて……さてどうしたものか。

部屋に運ぶ……マジで?

いやそれは流石に……今のこの気分で触れるのは……。

「…………ぐす……お母様……」

……………………。

泣いている龍門渕を見て、頭が冷えていく。

本気で何を考えてたんだ。

「……ここじゃ風邪引くから、部屋に運ぶか」

龍門渕は、無理矢理この結婚に納得しているんだ。

俺も、そうだ。

……先程までの自分が恥ずかしくなる。

今後も上手く付き合って行くために、俺は龍門渕を女として見ないようにすることを固く誓った。

短いけどここまで。

>>438の映画はさてなんでしょう?

それではまた。

コマンドーやろなぁ

>>446
残念外れ
>>440でファンタジーと言っているのでこれもヒント

当たれば何か良いこと起こるかもね!

一瞬でバレてたわろた

今回中途半端なところ(二人が恋心自覚してその後は不明瞭)で終わらせる予定だったけどちゃんとイチャイチャするところまで書ききることにするよ……

http://i.imgur.com/fF9gvAD.jpg
ネット上でゴンベッサと呼ばれている、都道府県SSの後書き「で、無視...と。」の作者。
2013年に人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者は自分であると詐称し、炎上した。
詳しくは「ゴンベッサ」で検索

なお、本人は現在も自分のヲチに一人で粘着して三年以上の自演活動を続けており、
さっさとネットから消えればいいものを自演による燃料投下をやめないため
現在も枯れない油田状態になっている模様 →http://goo.gl/HbQkN5

SS作者ゴンベッサとは何者か?
http://www64.atwiki.jp/ranzers/pages/10.html

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