【グラブル】グラン「愛に秩序は必要なのか」【ss】 (164)

グラブルのssです。酔いと勢いで書きます。
駄文地の文色々注意、持ってるキャラしか書けないのであんまり出てこないです。リーシャかわいい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454844548

グラン「グランサイファーの修理が長引きそう?」

ラカム「あぁ、機関の一部がかなり消耗してやがる。予備の部品はあるから修理に支障はねぇんだが、少しばかり時間がかかりそうだ」

ラカム「ここはガロンゾじゃねぇからな、オイゲンのおっさん達と頑張って三、四日ってとこだな」

グラン「そうか、そういえば前に整備してから大分経ってたな…」

ラカム「他にも色んなとこも疲れきってるからなぁ」

グラン「わかった、これを機に一度ガロンゾで大きく改装した方が良さそうだね」

ラカム「この船も今の部屋割りじゃ手狭になってきたからな。確かに団長の言うとおりだぜ」

グラン「平原にひっくり返ってた頃とは見違えるよ」

ラカム「違いねぇ」

グラン「ラカム達には負担かけるけど、修理よろしくね」

ラカム「おう、すぐにガロンゾまで飛べるようにしてやる」


同日夕刻 グランサイファー内食堂

グラン「みんな、聞いてくれ」

ナルメア「あらあら団長ちゃん、どうしたの?あら口もとにソースついてる、お姉ちゃんが拭いてあげようか?」

ヴァンピィ「けんぞくぅ、だらしなーい」

ナルメア「あらヴァンピィちゃんもついてるわよ、はい動かないでー」

グラン「…この騎空団の纏まりのなさは俺のせいか…?」

ルリア「あはは…皆さん個性豊かですから」

グラン「ゴホン…あー。皆には明日からの予定を伝えたい」

グラン「いまグランサイファーは修理が必要な状況だ。ラカム達の見立てじゃ四日かかるらしい」

クラリス「はいはーい!その間何してればいいの?うちに修理は無理だよ?」

カタリナ「あぁ、確かに修理期間半数以上の者が手持ち無沙汰になるな」

グラン「あぁ、そこで団を3つに分けたいと思う」

グラン「修理班、船内班、船外班の3つ。修理班はラカムが、船内班はローアインとドロシー、船外班はカタリナがそれぞれ班長だ」

ラカム「おうよ、任せな」

ローアイン「俺っちリーダー?マジリスペクトされてるべ?」

エルちゃん「ッベーわ」

トモちゃん「マジレジェンド的な?」

三馬鹿「ウェーーイ!」

ドロシー「はい御主人様、精一杯がんばりますね!」

カタリナ「修理班は言わずもがなだが、船内班、船外班はなにすればいいんだ?」

グラン「船内班は炊事洗濯を始めとした家事、そして船周辺の警邏を頼みたい」

グラン「そして船外班なんだが…まぁ説明してもらったほうが早いか」

シャロ畜「はいはーい、皆さん。ご無沙汰ですー。沢山の依頼きてますよー」

ルリア「シェロさん?!どうしてここに?」

グラン「この島に偶々立ち寄っていたらしい。とはいえいまの俺たちには渡りに船だ」

グラン「魔物退治や護衛の依頼を斡旋してくれる様に頼んだ。これで金も稼げる」

グラン「ガロンゾに着けばひとまず大きな休みになる、その前の一踏ん張りだ。みんな頼むぞ」

ランスロット「団長、班分けの指示は?」

グラン「明日の朝、通達するよ。今日はゆっくり休んでくれ」

パーシヴァル「良き国程人材を余らせることをしない…適材適所というわけだ。家臣の采配に期待しよう」

ランスロット「あぁ、団長なら心配はいらないな」

グラン「ありがとうランちゃん、パーさん」

パーさん「その呼び名はやめろ」
ランちゃん「その呼び名はやめてくれ!」

ベアトリクス「私、船内班がいいと思うんだ!」

ゼタ「…一応聞いておいてあげる、なんで?」

ベア「この私の料理の腕が活かされる時じゃないか!?」

ゼタ「お願いだからやめてよ、ベアにできるのは精々デザートくらいでしょ」

ベア「そんなことない!すこし甘めの味付けなだけだ!」

ゼタ「それがダメなの…」

ユーステス「……」

バザラガ「…どうしたユーステス、お前も料理に興味があるのか?」

ユーステス「…そういう訳ではない…静かな場所なら俺はどこでもいい」

バザラガ「そうか…そういえばこの島は名を忘れたがとある犬種の原産地だったな…すまない喋りすぎた」

ユーステス「それを先に言え、俺は船外班だ」

翌日朝

グラン「よく寝たなぁ…ビィはまだ寝てるか…。少し身体動かしてこよう…」


グラン「廊下は冷えてるなぁ…窓の取り付けも直してもらわなきゃ」

グラン「…ん?またこんなとこに本を置きっぱにして」

グラン「カリオストロか…クラリスか…」

グラン「渡す方を間違えると、どっちもどっちで面倒くさいことになるからなぁ」

クラリスの本をカリオストロに渡した時は「こんな低俗な技が俺様にはお似合いってか、あぁ?」と小一時間つつかれ、

カリオストロの本をクラリスに渡した時は「俺様の魔術の粋ともいうべきソイツを…よりによって小娘に引き渡すとはなぁ」と小一時間つつかれた。

グラン「…これカリオストロしか怒ってなくないか?まぁいいか、食堂にでも置いておこう」

グランサイファー 食堂
グラン「三人とも、おはよう」

ローアイン「あれぇ団長朝早いっすねえ?早起きは三文の徳ウィー的な?」

トモちゃん「マジパネェ、激マブ」

エルちゃん「マジリスペクト的な?」

三馬鹿「ウェーーイ!」

グラン「お前らそれ言いたいだけだろ」

ローアイン「なんてったって自分…この船の料理長、つまりテッペン自負してるんで」

トモちゃん「カッコつけてるけどぉー?」

エルちゃん「考えてるのはー」

ローアイン「キャタリナサーーン!」

三馬鹿「ウェーーイ!」

グラン「…うぇーい、とりあえず水くれ」



グラン(ここのところずっと夢を見てる…毎回決まって同じ、俺以外みんなが倒されていく夢)

グラン(あの戦いが終わってからだ。帝国によるアマルティア侵攻、そして中将ガンダルヴァ)

グラン(あいつは強かった、今までの敵の中でも抜きん出てる…)

グラン(だめだ、ガンダルヴァを斬り伏せるイメージが湧かない)

グラン「…クソっ」

グラン(奴との戦いが他の敵ーそれこそポンメルン達帝国兵や星晶獣ーと一番大きく違った点…)

グラン(みんなに対して無力すぎる自分を感じてしまった。これまではどれだけピンチであったとしても全員で乗り越えてこれた。これまでも、そしてこれからもそうだと思っていた)

グラン(でもガンダルヴァの力は想像以上だった。圧倒的な力に仲間達が一人、また一人と気絶していくのをむざむざと見せられた…!)

グラン「あの時俺は…なにもできなかった」

グラン(どうすれば奴を倒せる?そのために何をすればいい?)


グラン「そう簡単に答えは出ないか…考えるのはやめた!」

グラン(このまま少し眠ってしまおうか)

グラン「…って冷てぇ!」

「なにを止めるんですか、団長」

グラン「びっくりしたよ、リーシャ」

リーシャ「団長も少し驚きすぎなんじゃないですか?」

リーシャ「相変わらず重いですね、この木刀」

グラン「今では簡単に振れるようになったけどな、昔は振られてたよ。どっちが持ち主かわからないくらいにね」

リーシャ「なんだか、ちょっと想像できます」

グラン「多分想像通りなのが悔しい…」

リーシャ「それじゃあ団長、今日も剣の稽古よろしくお願いします」



稽古といってもやるのは模擬戦じみた打ち合いだ。
そもそもリーシャは幼い時から学んできた流派があるし、グランにも我流とはいえ培ってきた技術がある。
お互いそれを学ぶ良い機会であった。

木刀の鈍い剣戟の音を重ねながら言葉を交わす。

リーシャ「団長、最近悩みであるんです…かッ」

グラン「くッ…わかるのか」

リーシャ「もともと無茶苦茶だった太刀筋がもっとッ、無茶苦茶ですよっ!」
グラン「散々な言われ様だなッ!」

踏み込み、薙ぎ払い、受け流され、鍔迫り合いで肉薄した二人。
お互い退かず一進一退を繰り返す。

グラン「実はな…ッ!」
リーシャ「!」


グランが口を開こうとした時、2人をめがけて一つの光弾が飛来する。
お互い後ろに飛び退くと元いた場所、甲板が黒く焦げていた。

「グルアァァァァァァァァァ」

グラン「朝っぱらから魔物か!」

リーシャ「一度戻って誰か呼びましょう!」

グラン「あぁ!」

2人が船室に戻ろうと背を向ける、しかし魔物は翼で空を叩いて先回りするように滑空した。

リーシャ「速い…でも追いつけない程でもない」

リーシャ「団長、私がひきつけてる間に人を!」

グラン「いや…囮は任せろ。リーシャがいってくれ」

リーシャ「…わかりました!」

グランは木刀を構えて駆け出す。あっという間に間合いに踏み込み一閃、しかし鈍い音を立て弾かれる。

グラン「固い…皮を擦った程度か、やっぱり木刀じゃ厳しいな」

船室の扉の前から魔物を引きつけるべく何度も斬りかかるが一向に効いてる様子もない。
何度か仕掛けるが状況は好転せず、膠着が続いた。


その時グランの第六感がリーシャの方を振り向かせた。

グラン「リーシャ、危ない!」

リーシャの背後から魔物の凶刃が近づいているのを感じた。
気づいていないリーシャは怪訝な顔でこちらを見ている。
時の流れが減速していく感覚、自身の体もなにもかもゆっくりな世界で意識だけがはやる。
あと二、三歩、と踏み出したところで二体目の魔物が柵の向こうから姿を現した。
リーシャが振り向きその顔を驚愕に染める。木刀で守りの構えを取ろうとしているが恐らく間に合わない。

グラン(間に合え…)

左手を突き出し、リーシャの襟を掴むと後ろへ引き倒す。
右手だけで握った木刀を横に倒して突き出した。

グラン「ぐあっ…」

リーシャ「団長!?」

薙いだ腕に木刀は弾き飛ばされリーシャの足元まで転がる。

グラン「俺のことは気にするな!リーシャそいつは頭の角を殴れ!」

リーシャ「は、はい!」

グランの声に我に帰ったリーシャは風のように駆け、指示の通り木刀で力一杯魔物の頭部を殴打した。
角を叩かれ、その固い外骨格ごと頭を揺さぶられた魔物は声なき声を上げながらフラフラと甲板に堕ちる。
それに目をくれずリーシャはグランに駆け寄った。

リーシャ「団長、怪我は?!」

グラン「あぁ…右手を捻っただけ、問題ないよ」

リーシャ「どうしましょうか、これでは…」

グラン「そうだな、これじゃジリ貧だ…いっそ大声でもあげてやるか?」

リーシャ「聞こえるようならとっくにそうしてます…」

困り果てたその時勢いよく扉が開かれ、魔物が弾き飛ばされた。

?「昨日は飲みすぎたぜ…頭がカチ割れちまう」

グラ リー「ソリッズ(さん)!」

ソリッズ「あぁ?ンだオメェラ、朝っぱらから逢引…ってわけじゃなさそうだな」

ソリッズは転がる二体の魔物を見て顔を険しくする。

ソリッズ「オメェラよく踏ん張ったな、後は任せときな!」

そう言うとソリッズは船室に向かって大きな声を上げる。

ソリッズ「魔物がでたぞォ!さっさと準備しやがれぇ!」

その声に安堵した二人はその場にへたり込む。
ソリッズ、ガンダゴウザ、ヘイゲン達が駆けつけ、朝の魔物騒動はこうして収まったのだった。

グラブルはキャラの素材は素晴らしいのにss少なくて悲しい




レ・フィーレ「…骨に異常はなさそうですわね」

グラン「ちょっと、そんなに強く握らないで!」

フィーレ「握ってませんわよ!恐らくは捻挫でしょう、固定していれば治りますわ」

グラン「完治はどのくらいになりそう?」

フィーレ「ヒールで内出血も筋繊維もある程度治しましたから、ちゃんと安静にしていれば一週間もあれば治るでしょう」

グラン「…今何でちゃんと、を強調したの?」

フィーレ「自分の心にお聞きなさいな」

グラン「ぐぬぬ…。でも一週間はすこし長いな…どうにか短くならないかな?」

フィーレ「絶対にそう言うと思いましたわ…。手をお出しなさい」

グラン「なにその布…ってかなんか冷たい!」

フィーレ「なにも仰らないで!気が散りますわ!」

グラン「すいません」


グラン「手首が全然動かない…布が焼かれた粘土みたいだ」

フィーレ「宝石境にはこんな石もありましてよ」

グラン「ありがとう、本当に助かるよ」

フィーレ「お気になさらず、それでは」


グラン(空気が重い…)

グラン「にしても凄いよこれ、本当に動かないもん」

リーシャ「そう…ですね」

グラン(椅子に腰掛け俯いて、表情もよくわからないけど、落ち込んでいるのはわかる…)

グラン(なんとか話題を変えなくては)

グラン「世の中色んな宝石があるもんだなぁって…ほら俺のもらったコイツだってちょっと前まで呪い付きの…」

リーシャ「……」

グラン「あぁ…その、なんだ。リーシャもあんまり気にすんなよ。大した怪我じゃないしさ」

リーシャ「そんなこと出来ません!だって私のせいで!」

グラン(抱え込んじゃうタイプだもんなぁ。自分の非があっても、なくても人一倍責任感を抱くのはアマルティアでの戦い以前からわかっていたし、下手な言葉による慰めは無駄かな)


グラン「背後の敵に気づかなかったリーシャが悪い」

リーシャ「…はい」

グラン「んでもって、魔物が出る可能性を考えず、なんの用意もしてなかった俺も悪い」

リーシャ「…そんなこと」

グラン「ないって言える?」

リーシャ「それは…その…」

グラン「ね?だから二人とも悪いんだよ、それでおあいこ」

リーシャ「で、でも…」

グラン「それでも納得できないなら…罰を受けてもらおうかな」

リーシャ「…はい、どんな処罰だろうと」

グラン「これから四日間、俺の手伝いをしてくれ」

リーシャ「え?」

グラン「利き手が使えないって不便だろ?その間色々と助けてもらわなきゃな」

リーシャ「…はい!なんでも言ってください!」


そんな二人の会話を盗み聞く者たちがいた。

ドロシー「ぐぬぬぬぬ、御主人様のお手伝いはこのドロシーの役目です!そのはずです!」

クラウディア「ドロシー、行きますよ。ここにいてはグランさんの邪魔です。ルリアお嬢様もいらっしゃいませんし」

ドロシー「は、離してください!燃やします!燃やしてやります!」

ズルズルと引きづられていくドロシー。クラウディアは先を案じてため息をつくのだった。


朝 食堂

グラン(やっぱり喧嘩してる…)

カリオストロ「ねーえ、クラリスお姉ちゃん!私その本返して欲しいな☆」

クラリス「えーでもー、うちが見つけたものだしー」

カリオストロ「見つけようが盗み出そうが、俺様の本だぞ小娘」

グラン(仲裁役が完全に定着してるなぁ…俺)

グラン「あークラリス、その本はどうしたの?」

クラリス「置いてあったから貰った」

カリオストロ「俺様の本は求人広告でもチラシでもねぇ!」

グラン「あ、あはは…。悪いけどさ、その本は俺がカリオストロに渡そうと思って置いておいたんだよ」

グラン「な?ローアイン」

ローアイン「あぁそれ朝団長が置きっぱにしてたべ」

グラン(そこまで見ていたなら止めてくれよ…)

グラン「ね?」

クラリス「むぅ…はーい。ごめんなさーい」

グラン「ほら、カリオストロも」

カリオストロ「は?なんで俺様が」

グラン「盗んだとか、言いがかりは良くないだろ」

カリオストロ「んなこと知ったこっちゃねー…よ…」

カリオストロ「わかったわかった!だからその目で見つめるな…悪かったな小娘」

クラリス「カリオストロが謝った!うちは感激したよ…」

カリオストロ「口を開く度に腹立つな…」

グラン「まぁまぁ…」


グラン「班長は食後に集合してくれ、各班員はリーダーの指示に従って欲しい、以上。」

「船外班は用意が出来次第桟橋前に集合だ」
「修理班はすぐに機関室に集合だ、遅れんじゃねーぞ」
「船内班は甲板に集合にしましょう」
「クラウディア、御主人様に任されたのはドロシーですよ!」
「貴方では正直不安ですから」

イオ「ねぇグラン、ごはん食べないの?」

グラン「え、あぁ朝飯?実はもう食べた…」グウゥゥ

グラン「…じゃなくて!実はまだやらなきゃいけないことがあるからさ!ひと段落ついてから食べようと思ってて」

グラン(いきなりみんなに心配させないためにも、怪我をしたことは一部の団員ー治療を手伝ってくれたレ・フィーレやドロシー達ーにしか伝えていないんだった…)

イオ「ふーん、大変なのね団長って」

グラン「ま、まぁね…」


食後、団員たちはそれぞれの班長の元へと集まるために食堂を出る。
今回ばかりは無理を言って食器の片付けを後回しにしてもらったのでローアイン達もいない。
食堂にはグランとリーシャだけが残った。

リーシャ「はい団長の分」

木のトレイに乗せて、リーシャが料理を運んでくる。今朝のメニューは白パンとスクランブルエッグ、ベーコンにサラダだ。

グラン「ありがとう…っとと」

つい癖で右手が出掛けるのを抑える。リーシャはその間にテーブルの上にトレイを乗せた。

リーシャ「飲み物はいりますか?」

グラン「あ、じゃあ水がいいな」

リーシャ「はい!」

リーシャの背中を見送ると、グランは左手に箸を持った。がそもそもうまく握ることすらままならない。
なんとか形にしても思うように動かないので、掬うようにしてみても、柔らかな炒り卵はその間を無情にもこぼれ落ちる。

グラン「これは無理だな…ごめんリーシャ、スプーン頂戴!」



リーシャ「お待たせしました」

マグが手渡されるのを今度はちゃんと左手で受け取り、一口のんで息をつく。
今度こそ食事にありつこうと顔を上げると

グラン「…リーシャ…さん?」

木のスプーンに卵をのせ、こちらへ突き出しているリーシャがいた。

リーシャ「お箸じゃ食べるの難しいです…よね?」

グラン「…うんまぁ」

リーシャ「なら私が団長に食べさせますから、責任を持って!」

耳まで真っ赤に染めて、小刻みに震えているような気までする。
どうやら何を言っても聞かなそうな雰囲気に、グランは恐る恐る口に含んだ。

グラン(味がわからねぇ…)

何度咀嚼しようと、まるで無を噛みしめているようだった。

リーシャ「おいしいですか?」

首を小さく傾げてリーシャが聞く。
本当のことをいう訳にもいかないグランは軽く頷いてみせた。

リーシャ「よかったです…って私が作ったわけじゃないのに変ですね」

グラン「そんなことない、リーシャが食べさせてくれたからだよ」

リーシャ「そ、そうですか…」

グラン(俺はいったい何を言ってるんだ…)

よくわからない緊張感は二人を無言にさせた。黙々と手と口が動いていく。
戻って来たローアインが見たのは、サラダの皿に乗ったプチトマトのような二人だった。

雑くてすまない、こんな感じで進んでいくんだが、各自でイチャイチャは補完してほしい…


クラウディア「お二人には洗濯物を干していただきます」

グラン「すみません、無理言って仕事作ってもらって…」

クラウディア「お気になさらず、こちらは人が多いに越したことはありませんので」

ドロシー「御主人様!男物はこちらの籠です!甲板までお持ちしましょうか?!」

グラン「いやドロシーも仕事があるだろ?俺のことは大丈夫だから」

ドロシー「気遣っていただけて感激です!あ、女物はそれです」

リーシャ「あの…私の扱いがなにか違いませんか…」

クラウディア「本当に申し訳ありません…よく言い聞かせますので…」

クラウディア「すみませんが私達は持ち場に戻ります、何かあればお呼びください」

グラン「ありがとう」
リーシャ「ありがとうございます」

グラン「じゃ、早速こいつを運ぼうか」

リーシャ「そうですね、私が団長の分まで運びますから」

グラン「大丈夫大丈夫、こうやって…抱えちまえば」

グラン「ほら、左手は添えてるだけ」

リーシャ「…まぁしっかり固定されてるようですから、多少は目を瞑ります」


グラン「なんだこれ…甲板が眩しい…」

リーシャ「朝来た時は普通でしたよね…?」

ジョエル「団長じゃないか、てっきり外に出てると思っていたよ」

グラン「ジョエル、これ君がやったのか?」

ジョエル「あぁ…ちょっとね、張り切りすぎたみたいだ」

リーシャ「まるで鏡面仕上げみたいですね」

ジョエル「デッキブラシを握った時、あの悪夢の蟹船を思い出したのさ」

ジョエル「それに比べてこの船は本当に居心地がいい、水の中についで二番目くらいだ」

グラン「まぁ、あれと比べればな…」

ジョエル「それをきれいに保つのは当然のことだと思うと、つい力が入った」

ジョエル「さて、俺は次の仕事をしなくては。それじゃ」

レ・フィーエだね、すまん
なんでも闇マンだから光パクソ雑魚なのでお兄さん許して

続き行くよー
(エアプ、ご理解民では)ないです
でできたキャラの名前が間違ってたら指摘してくれると嬉しい


グラン「俺たちも仕事しなくちゃな」

リーシャ「そうですね」

グランとリーシャは甲板の柵と支柱にロープを吊るし、即席の洗濯竿とした。
それぞれの籠の中身を干していく。
男物は簡単だ。下着も紐に通すだけでいい。
それに比べると女物は形が崩れることもあるから、洗濯バサミで丁寧止める必要がある。
グランはかつて、それを妹ジータによって身をもって知らされた。

グラン「リーシャ…手伝おうか?」

リーシャ「だ、団長!ダメです!」

慌てたようにリーシャは手に持った布を隠す、ついでに籠も庇うように。

グラン「なんでさ」

リーシャ「団長はよくても干された方は嫌なんです!」

グラン「…そういうものか?」

リーシャ「そういうものです!…もう団長はデリカシーってものが…」

呟いた言葉は風にかき消されグランの耳にはとどかない。
暫く暇になったグランはピカピカな甲板に寝そべる。
吹き抜ける風と陽気に気を抜けば瞼が落ちてしまいそうだ。

ヤイア「グランちゃんグランちゃーん!」

グラン「ん、ヤイアか?どうしたまたフライパンが焦げ付いたのか?そういう時はな、重曹がいいってミズキさんが…」

ヤイア「ヤイアおしごとー!グランちゃんをよぶのー」

ヤイア「メイドのお姉さんがね、おせんたくができたんだって!」

グラン「そうか追加ね、わかるわ。よしじゃあ取りに行かなくちゃ」

ヤイア「それじゃあしゅっぱーつ」


ヤイアに連れられ船室に戻ると、各部屋から集めたシーツが布の山を作っていた。

クラウディア「グラン様、やはり私がお持ちいたしましょうか?」

グラン「いいっていいって、多少動かしても大丈夫だから」

ヤイア「グランちゃんおばけみたーい!」

両脇に抱え、背負いこむようにすると、まるで白い塊である。
二人と別れ元来た道を戻り始める。

グラン「…崩れて前が見えない」

ずり落ちてきたシーツがグランの視界を遮る。かろうじて足元が見える程度である。

グラン「まぁ…真っ直ぐ行くだけだし」


リーシャ「団長どこいってたんです…か?」

グラン「ごめんリーシャ手伝ってくれないか、意外に多くてさ!」

リーシャ「団長…ですよね?シーツお化けではなくて?」

グラン「そいつには少し会ってみたいな、頭の上のやつを取ってくれ」

リーシャ「あ、はい」

リーシャは上の方のシーツを床に降ろしていく。
暫くすると中からグランの顔が発掘された。

グラン「ふぅ助かった」

リーシャ「団長は怪我してるんですから、そういうことは私に任せてください!」

グラン「これくらい平気だって、心配してくれるのは嬉しいけどさ」

リーシャ「とりあえずその籠預かりますね」

リーシャがグランが右手に抱えた籠に手を伸ばしたその時。

リーシャ「きゃっ!」
グラン「うわっ」

足元のシーツ、そして磨き上げられた甲板はリーシャの足を掬う。
前のめりに倒れるリーシャを支えるべくグランもとっさに腕を出そうとするがやはり同じく後ろにに倒れてしまう。
宙を舞った籠から中身は飛び出し二人に被さるように舞い落ちた。

グラン「いたたたた…リーシャ大丈夫か?頭打ったりとか…ッ」

リーシャの顔が真ん前にあった。
鼻頭が着きそうなほどの距離から見るリーシャに、グランは茫然としていた。
綺麗だ、とグランは思った。長い睫毛に澄んだ瞳、あげればキリがない。
逞しい、とリーシャは思った。首や肩幅、腕は自分とは違う。

両者ともに息遣いをそばに感じ緊張していた。
共に同年代の異性というものをあまり意識したことがなかったために、初めて感じるそれに心を奪われていたのかもしれない。

退かなくてはいけないこと、頭ではわかっていても動くきっかけがなかった。

それはただ一瞬であったはずなのに2人にはとても長い時間に感じられた。

静寂を破ったのは微かに感じる足音だった。

グラン(誰か来る…?)

この状況を誰かに見られるわけにはいかない。リーシャはまだ少し惚けているようだった。
言ってすぐに退いてくれそうにはない。

グラン「ヤバい隠れるぞ」

咄嗟にグランはこのまま隠れることを思いつく。

辺りにはシーツの山が散乱しているし、階段からなら踏み台に使った箱でギリギリ隠れてるはず…という願望的予測。

リーシャ「えっちょっ…団長!」

グランはリーシャを抱き寄せると手近なシーツを掴み、被る。
何か抗議したそうなリーシャを人差し指で制し、小声で話す。

グラン「とにかく今はやりすごしてくれ!」

リーシャ「は、はい…」

ドロシー「御主人様ー洗剤をお届けにー…ってあれ?」

ヴィーラ「お姉さまから書類をいただいているのに…団長はいないようですが…」

ドロシー「おかしいですねぇ、どこかで入れ違ったのでしょうか…」

リーシャ「あの団長?仲間なんですから隠れなくても…なんでそんなに震えてらっしゃるんですか?」

グラン「…俺はまだキャンプファイアーにもコルクボードにもなりたくない…」

リーシャ「いったい何を言って…」

ドロシー「後で帰ってくるとは思いますから、ここに置いておきましょう」

ヴィーラ「私もこのあとお姉さまと共に討伐の予定ですから、そうさせていただきます」

リーシャ「ほら何もないじゃ…」

ドロ ヴィ「もし遊び呆けているようなら…」

リーシャ「ないで」

ドロシー 「消毒をしなくちゃいけませんね」
ヴィーラ 「試切りをしないといけませんね」

リーシャ「…」
グラン 「…」

グラン「いったか…」

リーシャ「あの二人は一体…?」

グラン「まぁ色々あったのさ…、心を開いてもらったけどやっぱり厳しいし、勘違いしそうなこと言われるし」

グラン「詳しくは是非ガチャで引いてフェイトエピソードをみてくれ(自戒の念)」

リーシャ「?」



ビィ「…なぁ、ところで二人とも何やってるんだ?」

グラン「え…あぁごめん!」

グラン(よく考えてみると…リーシャに申し訳ないことしたなぁ)

リーシャ「い、いえ!大丈夫です。
そこまで嫌な気は…しませんでしたし」

グラン「え?」

リーシャ「なんでもありません!それより早く終わらせましょう!」

ビィ「なぁ相棒、悪手だったんじゃねぇか?お世話係はよ」

グラン「…そうかもな」


グラン「なかなかにキツイな…これ。あと少しなのはわかってんだけど…」

リーシャ「水を吸ったシーツは重いですからね…」

グラン「…ふふっ」

リーシャ「団長?どうしたんですか?」

グラン「あはははは、リーシャ鼻に泡ついてるよ」

リーシャ「えぇ!あっ本当だ…って笑うことないじゃないですか!」

グラン「いやごめん…ふふ…あんまりにも普段とはちがうから…」

リーシャ「もう!私怒りましたから!えいっ」

グラン「あぁタンマ!タンマ!水かけるのはなし!」

リーシャ「しりません!」

グラン「あぁくそ!洗剤混ざってるからかけれねぇ!」

ビィ「何やってんだあいつら…」



グラン「ふぅ…やっとおわったぁ…」

リーシャ「びしょ濡れですね、私達」

グラン「びしょ濡れだな、俺達」

グラン「ははは」リーシャ「ふふ」

グランリーシャ「あはははははは」

グラン「洗濯でこんなに笑うの初めてだよ」

リーシャ「私もですよ、大体途中で団長がポンプ使い出したのがいけないんですからね」

グラン「確かにまぁやりすぎた感はあるな…」

リーシャ「途中でビィ君が止めてくれなきゃ今頃どうなってたか…」

グラン「久しぶりにこんなにはしゃいだかもしれない」

リーシャ「私もです」


グラン「…ザンクティンゼルにいた頃は同い年のやつがほとんどいなかったからさ、こういうのに少し憧れてたんだ」

リーシャ「…私も小さい頃から団に出入りしていたし、訓練ばかりしていたのでこういう経験はなくて…」

リーシャ「父さんの娘ってだけで色眼鏡で見られますから…どうしても」

グラン「…そっか」

グラン「似てるかもね、俺たち」

リーシャ「そうですね…うん、そう思います」


リーシャ「私、白い洗濯物が風になびいてる所好きなんです」

リーシャ「青空と相まって…なんだか凄く清々しい気分になるんです」

グラン「…その光景を目の前にして…なんだかわかる気がする」

グラン「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに、みんなが幸せになりますように…か」

リーシャ「そうかな?くだけた感じで人と話したこと少ないから…」

リーシャ「変じゃ…ない?」

グラン「ううん、ぜんぜん。リーシャが話しやすい風に話すのが一番だけど、
こっちもすごくいいと思う」

グラン「これからもよろしくね、リーシャ」

リーシャ「うん、グラン!」


グラン「長い一日だった…」

ビィ「えらくお疲れじゃねぇか、どうしたんだよ」

グラン「いや…昼飯のパスタは食べさせられるし、午後の用具倉庫の片付けは物凄く気遣われるし…」

ビィ「オイラのいないところでそんなことになってるなんてな…」

グラン「なんだか無理してるよう気がするんだ、負い目を感じてるならその必要はないのに」

ビィ「リーシャも初めての経験でテンパってんのかもな」

グラン「そうだといいんだけど…」

ビィ「とにかく今日はもう休もうぜ、オイラも疲れちまってよ」

グラン「明日も早いし…そうしようか」


夜 機関室

???「……」

???「……ッ!」ガシャーン

エネルギー効率の良すぎるアレクさんサイドに問題がある


翌日朝 とある通路の一角

グラン「誰かが機関を壊したかもしれない?」

ラカム「シッ…声が大きい!」

グラン「ご、ごめん…。でもそれは本当なのか?そんなことする人がいるなんて」

ラカム「俺だって信じたくはねぇが…詳しいやつじゃねぇと壊さないような場所だからな」

ラカム「修理班の誰かがやったと考えていいだろう」

グラン「…このことを知ってるのは?」

ラカム「修理班の一部数人と、今話したから団長くらいだ」

グラン「とりあえずこの件は内密に、責任を持って俺が調査するよ」

ラカム「団長がか?…そうか修理班の奴ら全員が容疑者だもんな」

グラン「その言い方はあまりしたくないけど…そういうことになるね」

ラカム「なんにせよまた壊されるんじゃ艇はだせねぇ、頼んだぜ団長」

ビィ「言いかた悪いが、裏切り者がいるなんてよう…信じられねぇぜ」

グラン「信じたくはないけど…事実は一つだ。突き止めないと他の皆にまで被害が被る…」

グラン「どっちもやらなきゃいけないのが…団長の辛いところだな」

ビィ「とは言ってもよう、どうやって犯人を探すんだ?」

グラン「俺に策がある…夜になればわかるよ」


ビィ「…策って…待ち伏せじゃねぇか…」

グラン「なに言ってんだよ、これこそ理にかなった完璧な作戦だろ」

グラン「ラカム達には頼んで昨日壊されたところを直しておいてもらった」

グラン「犯人の目的がこの艇を飛ばさないことなら…また来るはずだ」

ビィ「なるほどなぁ、意外と考えてんだな」

グラン「意外は余計だ!」


グラン「……ふぁ」

ビィ「おい相棒、なんだか眠そうだな」

グラン「…あぁ、昼間も正直キツかったからな。リーシャもよく手伝ってくれてるんだけどさ」

ビィ「家事作業ってのは大変なんだな…」

グラン「慣れてないってのもあるけどね。思い知ったよ…」

ビィ「やっぱりオメェは剣を振ってたほうが性に合うのかもしれねぇな」

グラン「かもね」

ビィ「ん?…オイ、上に誰かいるぜ」

グラン「上って格子戸の上か?こんな時間に甲板に誰が…」

グラン「酔っ払ったオイゲンとかじゃないのか?」

ビィ「…足音がバラバラで、なんか変な感じだぜ」

グラン「そんなに言うなら…梯子があるから登って様子を見てみるよ」

42訂正 コピペミスとか恥ずかしくないの?


グラン「リーシャさ、俺に敬語使うの…やめてみない?」

リーシャ「え?」

グラン「年も同じくらいだしさ、リーシャとは…気兼ねなくいたいよ。ダメかな?」

リーシャ「いえ、そんな…そのいいんで…いいの?」

グラン「まぁ気の向いた時でいいんだけど、でもそっちもいい感じだよ」

リーシャ「そうかな?くだけた感じで人と話したこと少ないから…」

リーシャ「変じゃ…ない?」

グラン「ううん、ぜんぜん」

グラン「これからもよろしくね、リーシャ」

リーシャ「うん、グラン!」


ビィ「暗くてよく見えねぇけどよ、あれって…」

グラン「…あぁリーシャだな」

「……さ…!お…い……くな………で!」

ビィ「誰に向かって言ってんだ?」

グラン「様子がおかしい、くそっ…この扉は開かないのか!」

グラン「一度甲板に行くぞ!」

ビィ「お、おい!オイラを置いていくなよ!」


リーシャ「父さん!どこにいるの父さん!」

…リーシャ…こっちだ…私はここにいる…

リーシャ「父さん…」

…リーシャ…私とともに…あの暁の空に…

グラン「リーシャ!」

リーシャ「…っ、グラン!あれ私はなにを…」

グラン「怪我はないか?何か変なところは?」

リーシャ「ない…と思うけど。ねぇなんで私はここにいるの?部屋にいたはずなのに」

グラン「…覚えてないのか?」

ビィ「おい相棒、機関室が!」

グラン「…やられた」

リーシャ「えーと、どういうこと?」


ラカム「…またしても壊されたか」

グラン「ごめんラカム、まんまとやらちまった」

ビィ「にしてもオイラ達が目を離した隙にやられたってことはよぉ」

グラン「あぁ…かなり計画的って感じだな」

ラカム「予備の部品もあと3回分くらいしかねぇ、早いうちに片付けねぇとな」

ラカム「とりあえず残骸は片付けておいた、今晩の事件は俺たちで留めておくか?」

グラン「…そうしよう」

ラカム「わかった…じゃあ俺は部屋に戻ってるな。おやすみ」

グラン「うん、おやすみ」


ビィ「よかったのか?みんなに知らせたほうが…」

グラン「いや、なんとなく引っかかることがあるんだ」

リーシャ「…あの、そろそろいいですか?」

グラン「あぁリーシャ、もう出てきて大丈夫だ」

ビィ「にしてもラカムからリーシャを隠す必要があったのか?」

グラン「実はよくわからない…そうした方がいい気がしたんだ」

ビィ「おめぇがそう言うなら…いいんだけどよ」

ビィ「その勘はたまにバカにならねぇからな」

リーシャ「それにしてもそんなことになっていたなんて…私に起きた異変と何か関係が…」

グラン「今の所はなんとも言えないけどね…」

グラン「とりあえず今日はもう休もう。おやすみ、リーシャ」

リーシャ「うん。おやすみ、グラン」

ほんとほんと、グラブルssもっとふえろ!


翌日 朝 グランサイファー 食堂

グラン「実は修理にもう少し時間が掛かりそうなんだ。みんなにはもう少し負担をかけるかもしれない」

グラン「そこで今日は全員休養を取ってくれ、修理班のみんなもだ。」

「老骨には嬉しい一言だねぇ」
「おっやすみおっやすみー」

グラン「後、俺とリーシャで街に買い出しに行く。船内、修理班で欲しいものがあるなら言ってくれ。それじゃ解散!」


ラカム「おいグラン…とりあえず皆には黙って、直しておけばいいんだな?」

グラン「あぁ…俺の見立てなら今夜は壊されない。俺も見張りは止めるつもりさ」

ラカム「お前が言うならそうしよう」

ラカム「それじゃあな、嬢ちゃんとのデート楽しめよ!」

グラン「そんなんじゃないよ!」


ユエル「なぁ団長、団長!うちな欲しいものあんねん!買うてきてくれへん?」

ティナ「ユエルさん!私達は船外班でしょ!ダメですよ!」

ユエル「ええやんなあ、減るもんちゃうやろ!」

ティナ「グランさんの時間が減ります!いいから行きますよ!」

ユエル「そんな殺生なー、あー堪忍、堪忍してー」

グラン「あはは…ユエルはまた外に出る機会あるだろうから、その時にね…」

リーシャ「グラン、みんなから大体聴き終わったから、私用意してくるね」

グラン「あぁ、ありがとう。じゃ俺も準備しなくちゃ…ん?」

アルルメイヤ「やぁグラン、君に少し話があるんだかいいかい?」


グラン「アルルに…ダヌア?一体どうしたの?」

アルルメイヤ「ほら…言うんだろう?」

ダヌア「…めー、…みーた」
「ダヌアは昨夜、夢を見たと言っている」
「それもとびきり怖えやつをナ!」

ダヌア「…みーな、…ぃなく…なぁ」
「ひとりぼっちになる夢だ」
「昔を思い出しちまったワケェ」

グラン「そうか…よしよし怖かったな」

ダヌア「…あ、りー」
「すまない、グラン。いつもありがとう」
「扱い方が板についてきやがったナ」

グラン「大丈夫だ、俺たちはダヌアを一人になんてさせないからな」

グラン「絶対に、しないから」

ダヌア「…う、ん」


アルルメイヤ「やはり君には、不思議な力があるようだ。さて実は私も君に言いたいことがあってね」

グラン「アルルが俺に?」

アルルメイヤ「以前私は君の未来を見ることができないと言ったね」

アルルメイヤ「だが短期的な、少し先の未来なら普通の占い同様見ることができる」

アルルメイヤ「私の予言を、頼ってはみないか?」


のどかな森林の間を拓いて作った広い街道をグラン達は荷馬車に乗って進んでいた。
目指すのは島の中心地、依頼の多い港周辺の小さな町とは比べ物にならない地域だ。
島はもともと川沿いに栄えたらしく、飛空挺の入る港は街の中心地から離れたところ、島の端に作られていた。
シェロ曰く片道一~二時間程度というから結構な外出である。

リーシャ「馬車なんていつのまに用意してたんだろう…」

御者台に座った二人。
グランが手綱を握り、リーシャはそのとなりに座っていた。
リーシャは物珍しげに周りを見回しながら言う。

グラン「クラウディアが昨日シェロに話を通しておいてくれてたらしい」

グランはあくびを一つ噛み殺して言う。
小刻みな振動はどうにも眠気を誘って困る。

リーシャ「あのメイドさん…一体何者なんだろう」

グラン「グランサイファーに乗ってる食料、生活雑貨、備品の数まで完璧に管理してくれるからなぁ」

リーシャ「ところでなんで私達が行くんですか?」

グラン「昨日クラウディアに『生活用水が変な減り方したんですよねぇ、何故でしょうか?』って笑顔で言われた時買い出しに立候補してしまって…」

リーシャ「あっ…」

グラン「目は笑ってなかったね」

嬉しいこと言ってくれるじゃないの



リーシャは懐中時計を取り出すと、時間を見てグランに言う。

リーシャ「そろそろ朝ごはん食べないと、お昼が微妙な時間になりそうですね」

グラン「え、朝飯あるの?」

リーシャ「はい…その私が作ってみました…食べてくれますか?」

グラン「食べる食べる!」

朝から出発まで二人きりになれる時間はなく、しかもよりによってローアインが焼き魚を出したために左手で食べるわけにもいかず。
正直なところ、グランは朝抜きを覚悟していた。

リーシャ「ちょっと待っててくださいね」

リーシャは荷台に移り、バスケットと皮の水筒を持ってきた。

リーシャ「お茶も入れてきたんです…どうぞ」

グラン「ありがとう…うんおいしい!」

リーシャから何時ぞやかの木製マグを受け取り一口飲む。
紅茶の芳醇な香りが鼻をくすぐる。
腹の虫がまた仕事をした。

グラン「最近よく鳴くんだよね…俺のお腹」

リーシャ「ふふ、慌てなくてもサンドイッチは逃げませんよ。はい」

右手は手綱、左手はコップ。
差し出された一口大のサンドイッチをグランはそのまま口にした。
なんということだろう、ここ二日でグランは食べさせられることへの抵抗が無くなってしまったのか。

リーシャ「どうですか?ローアインさんに教えてもらったりしたんですけど」

グラン「うまい、うまいよこれ」

薄く塗られたバター、よく水切りされたレタス、卵の味付けは濃すぎず、ハムの塩見といいバランスだ。
基本を押さえた完璧なサンドイッチだった。

リーシャ「良かった…」

グランの様子に胸をなでおろすリーシャ。

グラン「食べやすいし、しかも紅茶がめっちゃ合う」

リーシャ「そうなんです!ブラックダージリンっていう茶葉で、ストレートで入れたときに香りが…」

リーシャ「…はっ、ごめんなさい!私の紅茶の話なんてどうでもいいです…よね」

グラン「そんなことないよ。へぇ…合わせる食べ物で茶葉を変えたりするんだ…」

リーシャ「は、はい。私の細やかな趣味で、モニカさんにも付き合ってもらったりしてました」

グラン「へぇ…いい趣味してるね。俺もなんか趣味つくろうかなぁ」

リーシャ「何かないんですか?」

グラン「強いて言うなら…カジノでギャンブル…って冗談だから!マジで引かないでよ!」

リーシャ「ふふ、グランがそういう人じゃないことくらい知ってます。はい、おかわりどうぞ」


グラン「さてと、もうすぐ見えてくるはずなんだが…」

リーシャ「ここも奥の方は随分と鬱蒼としてますね」

二人が辺りを見回していると、突然森から男性の悲鳴が聞こえる。

「だ、誰かあああ!助けてくれえええ」

グラン「リーシャ!」

リーシャ「はい!」

二人は顔を見合わせるとすぐさま御者台を降りる。
リーシャはそのまま、グランは縄を木に括り付けてから駆け出した。
悲鳴の方向に向かうと、一人の男が木にもたれかかって座っていた。

リーシャ「大丈夫ですか?」

「あぁ…ま、魔物が…」

グラン「魔物…?」

リーシャ「見当たりませんが…逃げてしまったんでしょうか」

「あ、ありがとう!あんたらにビビって逃げてったんだろう。助かったよ!」

グラン「は、はぁ…」

男は立ち上がろうとするが腰が抜けたらしく足元が覚束ない。
偶然にも男は目的地の街に住んでいるらしく、グラン達は馬車に同乗させてやることにした。

「いやぁ助かりました、街道沿いに魔物が出ることなんてほとんどありませんから、油断していました」

リーシャ「よく整備されていましたからね」

グラン「ところでなんであんなところに?」

「お二人はこの島の方では?」

グラン「騎空士をやっていて、先日寄港したばかりです」

「あぁなるほどなるほど、騎空士の方でしたか。いいですねぇ新婚で各地を飛び回るのは」

リーシャ「し、ししし新婚?」

グラン「別に俺ら結婚してるわけでは…」

「そうなんですか?随分仲が宜しかったようですから」

グラン「あはは…」


「私はこの辺りで農場を経営しているのですが、ここ数日飼っている動物達がどうも様子おかしいので調査をしていたんです」

グラン「動物達の様子が?」

「はい、飼料や付近の土壌や水質の調査の一環であそこにいたわけです」

グラン「なるほど…ここ数日ってのが引っかかるな…」

グラン「リーシャはどう思…う?」

リーシャ「新婚…私とグランが新婚…新婚…」

グラン「リーシャ?リーシャ?」

リーシャ「…は、はい!なんですか?」

グラン「なんか呟いてたけど、どうかした?」

リーシャ「い、いえ!なんでもないです!」

グラン「そ、そう?ならいいんだけど…」


「すいません、ここまで送っていただいて」

グラン「いえ。でも外壁までもうすぐそこですけど、ここでいいんですか?」

「はい、私の農場はこの先ですから」

グラン「わかりました、では失礼します」

リーシャ「それにしても大きな外壁ですね」

グラン「街をぐるっと覆ってるっていうからな…。この列に並べばいいのかな」

リーシャ「通行許可を出してるんですね、一介の街なのに凄いですね」


衛兵「次の方、どうぞ」

グラン「あ、はい。俺たちの番みたいだ」

リーシャ「何も悪いことしてないのに緊張しますね」

衛兵「安全確認のため、荷馬車の中身を拝見しますがよろしいですか?」

グラン「お願いします」

衛兵2「失礼します…空の樽と木箱が複数あるのみです!」

衛兵「お通りいただいて結構です、ご協力感謝します」

衛兵「次の方どうぞ」

リーシャ「ありがとうございます」


グラン「ビィは連れてこなくて正解だったな」

リーシャ「なんでですか?」

グラン「魔物と間違えられて大変なことになってたかもしれない」

リーシャ「なるほど…」

リーシャ「まぁ帯剣してませんでしたから、杞憂だっかもしれませんね」

グラン「それじゃ悪いことしたかな」


グラン「さてと、シェロの店の近くに馬車は繋いだから盗まれることもないだろう」

リーシャ「買い物リストが結構ありますね、何処から周りますか?」

グラン「地図を見るという…一番近いのは生鮮食品の市場かな」

リーシャ「でもそういうのって痛みやすいですから最後にしたほうがいいですよね」

グランリーシャ「うーん…」

「お二人ともお困りのようですねー?」

リーシャ「し、シェロさん?」

シェロ「どうもー、この街のよろず屋には冷蔵室がありますよー」

リーシャ「冷蔵室、ですか?」

シェロ「はいー、食材などは新鮮なまま保存しておけますよー。しかもいつでも取り出せますー」

グラン「それは便利だ、重い荷物を持ったまま周る必要もないし」

シェロ「1枠宝晶石300個ですー」

グラン「じゃあ2つよろしくお願いします」

リーシャ「そ、即決なんですね…」

自分もお空でオリヴィエと邂逅できたから続けてる感あるね



シェロ「ありがとうございました~。ここらも最近物騒なので気をつけてください~」

グラン「じゃあさっそく買っていこうか」

リーシャ「そうですね、早く済ませてしまいましょう」

グラン「……」

リーシャ「難しい顔してどうしたんですか?」

グラン「え、そんな顔してた?緊張してんのかな買い物に、あはは…」



グラン「おっちゃん、豚と牛それぞれ20キロずつね」

「兄ちゃん気前いいね、あいよ!可愛い嫁さんに免じておまけしてやるよ」

リーシャ「よよよよ嫁さん!?」


グラン「鮮魚は数揃えるの難しいかな」

「しゃあねぇな!美人な奥さんのためにも一肌脱いでやるよ、組合にかけあっといてやる!」

リーシャ「おおおお奥さん!?」


リーシャ「じゃがいもを箱で3つください」

「あらま!あんたいい男捕まえたじゃないの。連れが逃げられないようにちゃんと縛っておくんだよ」

リーシャ「つつつつ連れ!?」


グラン「ワインと穀物酒を一樽ずつ」

「そんな綺麗な女房いたら、つまみなんていらねぇな!」ガハハ

リーシャ「……」プシュー

グラン「あはは…」


グラン「これで一通り回ったね…なんか物凄く疲れた…」

リーシャ「…私もです」

グラン「リーシャのお陰でおまけも色々してもらえたしね」

リーシャ「それは言わないでください…」

グラン「…リーシャはさ、俺とその…いや、なんでもない。時間もあるしあの喫茶店にでも寄ろうか」

リーシャ「あ、待ってください!…別に嫌な気分ではないです…ただそういうのは段階を踏むべきであって…ちゃんとした交際の…」

グラン「リーシャー、置いてくよー?」

リーシャ「ちょっと、歩くの早くないですか?!待ってください!」

今日中には終わらせたいよね




二人はとある喫茶店のテラス席へと案内される。
渡されたメニューはどれもみな目を引くものばかりであり、悩んだ末二人は注文を終えた。

グラン「カフェの隣では茶葉を売ってるんだな」

リーシャ「そういうお店は少なくないみたいですね」

グラン「後でそっちも覗いてみようか」

リーシャ「はい、楽しみです!」

グラン「団員の中に紅茶好きな人ってどれだけいるんだろう?男だとノイシュとかパーさんとかよく飲んでるな」

リーシャ「うーん、ロゼッタさんとか好きそうです。私はよくヴィーラさんと紅茶の話をしますね」

グラン「…そういやドロシーも結構好きそうだな」

リーシャ「あんまりお話ししたことないですがレディ・グレイさんやアンナさんも好きそうですよね」

グラン「その心は?」

リーシャ「アールグレイのグレイって人の名前なんです」

リーシャ「それと、きのこを発酵させてつくる紅茶きのこってのもあるんですよ」

グラン「へぇ…」

グラン(船の中ではお茶会はさせないようにしよう…)

紅茶キノコは見た目が似てるだけで実はキノコじゃないってシルベルがいってた

>>71 らしいね、なんか菌がどうこうって、物理選択には厳しい…

アンナを出したかっただけなのできのこ茶みたいなので補完オナシャス

紅茶なんてリプトンでいいんだ上等ダロォ!!



本文貼り忘れた…


「お待たせしました。アールグレイのケーキセット、アッサムのケーキセットでございます」

「それではごゆっくりどうぞ」

グラン「リーシャが頼んだアールグレイってどんなお茶なんだ?」

リーシャ「のんでみますか?」

グラン「…いいの?それじゃ…」

グラン「ん、味は美味しいけど…強い特徴があるわけじゃないね。でも…すごくいい匂いだ」

リーシャ「お茶の葉に香りをつけてるんです。グランのいうとおり口と鼻で香りを楽しめばいいんですよ」

グラン「へぇ…」

リーシャ「グランも…自分の飲んでみて」

グラン「アッサム…だっけ。ん、なんていうかコク?喉に引っかかって、甘さがけっこうあるね…」

リーシャ「苦手ですか?」

グラン「どうだろう、個人的には悪い感じはないから…結構好きかも」

リーシャ「それは良かったです、ミルクティーにするとすごく美味しいんですよ」

グラン「へぇ…やってみようかな。ちょっとミルクもらってくる」

また夜にきます


グランが席を立ち店内に入る。
リーシャはその姿を見送り、一口ティーカップに口をつけた。

リーシャ「…関節キス…かな」

その二文字はリーシャの頭の中を飛び回る。ここ数日でグランに抱いてる気持ちは大きくなり、無視できなくなっていた。自分で呟いて、自分で恥ずかしがる。
今までにない経験を、彼はすごくよく運んできてくれた。
彼は狭い自分の世界を広げてくれた。何処にだっていけるのに、どこにも行かなかった私の。
そんなことを思いながら何の気なしにあたりを眺める。

この時間は一般的な飲食店において一番暇な時間だと聞いたことがある。
昼でも夜でも、間食というのにもおかしな、そんな風にどの食事時間帯でもないからだという。
この辺りの飲食店街も例に漏れず、人の通りが今はほとんどない。
歩いているのは人形を抱えた1人の幼女くらいでー

リーシャ「ッ!」

今確かに、路地裏から伸びた腕が幼女を引き入れた。
「最近はここら辺も物騒ですから〜」
シェロの言葉が頭に浮かぶ、なら間違いない、誘拐だ。人目がないとはいえ白昼堂々と。
頭が理解するよりも先に、リーシャの体は動いていた。
元秩序の騎空団の長として、そしてなにより1人の騎空士として見過ごすわけにはいかない。
リーシャは腰の愛剣に手をかけた。


グラン「ラテアートってすごいな!あれで絵なんてかけるんだぜ…ってあれ?」

ミルクピッチャーを受け取り戻ってきたグランは誰もいない机と、まだ湯気の出てるカップに出迎えられる。

グラン「……」

全てのミルクを注ぎいれ、マドラーで無造作にかき混ぜると、一気に飲み干した。

グラン「…すっぽかされちゃった感じ?」

叩きつけるように代金をテーブルに置くと店を後にする。
言葉とは裏腹に、その顔に一切の笑みはなかった。

グラブルssの時代が来たな…

続きあくしろよ

俺も書いたけど自分のって驚くほどつまらなくて世に出せなくてな……

始めてそんなに経ってないからキャラ出るたびにどのキャラかググってる

>>81 すいません許してください、なんでもシャルロッテ!

>>82 今も書きながら凄く恥ずかしいです

>>83 キャラ多いからね、多少はね?
出てきた子は好きになってくれると嬉しい

ディケイド見てたのでなんかテンションおかしいです、許して

リーシャ「くっ…」

「そうだ、そのまま武器を置け!このガキがどうなってもしらねぇぞ」

背後から二人殴り倒したところまでは良かった。が、まさかこんなに仲間がいるとは。
リーシャは直情的すぎる己を呪う。
前も同じように迷惑をかけたばかりではないか。

「どうやら効いてきたみたいだな」

さっきばら撒かれた粉に何かしらの効力があるのか、リーシャは思うように身動きとれない。
体中が重く、立ってるのがやっと。
挙句睡魔すら襲ってくる。

リーシャ「ごめんなさい…グラン」

薄れる意識をなんとか保ちながら、リーシャはグランへと軽率さを詫びた。

「こいつなかなかいい面してますよ」
「おいガキみてろ」「へい」
「楽しんでから売り払ってやるか」
「その前に仲間の借りを返してから、だな!」

リーシャ「うぐっ…」

暴漢の蹴りが脇腹に刺さる、その直前でなんとか腕をいれたが衝撃は殺せずそのまま横に転がった。

「おらツラあげろ」

髪を引かれて無理やり上を向かされる。

「へへ、こりゃまた良い値がつきそうだ」「おら、立て!」

取り巻きの一人がリーシャの腕をつかもうとした時だった。


?「離せよ」

「あ?」

?「その薄汚い手を離せって、言ってるんだ」

「んだとコラ、舐めた口聞いてんじゃ…ぐはっ」

近くにいた取り巻きの一人が拳を掲げ殴りかかるが、何かを一閃しこれを吹き飛ばす。
動かない仲間をみて、誰かが叫んだ

「て、てめえ!一体何もんだ!」

?「俺か?」

影はゆっくりと前に踏み出す。光の刺さない影の中へと全身が踏み入れることで、暴漢達はその全身をみることが叶った。

グラン「通りすがりの騎空士だ、覚えておけ」

リーシャ「グラン…」

「ガキじゃねえか、ええいやっちまえ!」

一人、ボス格の男が声を上げると、数人の暴漢どもがグランに向かって行った。

グラン「邪魔だ!」

だがそれを手に持った杖で吹き飛ばす。数人がかかりでも止められないと悟ったボス格は、部下に命じて例の粉末をばらまかせた。

「これでお前も3ターン以内にお寝んねだな!今だやれ!」

勝利を確信し大声で叫ぶ男。グランは確かにその粉を吸ってしまっていた。
グランの体が揺れる、その効果は確かにグランを蝕んでいた。

グラン「…クリアオール」

リーシャ(か、体が動く…!)

「な!効いてないだと!お前ちゃんとまいたんだろうな!」

「は、はい!ちゃんと!」

グラン「テメェらのやることなんざ…カスが、効かねぇんだよ」

「ガキのくせに馬鹿にしやがってぇ!」

激昂した男は懐から瓶を取り出し、一気に煽る。

「あ、兄貴、それはヤバいんじゃ…」

「黙れ!あんなクソガキ、一発で仕留めてやる!」

グラン「薬か?やっぱり薬で作った偽りの肉体だったな。通りで弱いわけだ」

「この減らず口がぁ!」

薬の作用がボス格の筋肉は肥大化していた、確かに一撃を貰えばタダでは済まないだろう。

リーシャ「グラン!」



グラン「…フォーススナッチ」

大きくふりかぶられたコブシの一撃。リーシャは何も行動を起こさないグランを、その先の未来の予想ゆえに直視することができなかった。

パシン、という乾いた音が上がる。
リーシャが恐る恐る目を開けると、そこには

グラン「お前の拳は軽すぎる…ガンダゴウザに鍛え直してもらえよ」

ボス格の右拳を片手で受け止めるグランがいる。これにはグラン以外の全員が唖然となった。

「ば、馬鹿な…」

グラン「だから言ったろ、効かないって…グラビティ!」

「ガハッ」「ウグゥッ…動けねぇ…」

地面に縫い付けられる暴漢達を尻目に、グランはリーシャに目配せした。

リーシャ「う、うん!」

リーシャが駆ける。そのまま一人の男を蹴り飛ばし、幼女を救出した。

リーシャ「グラン!」

グラン「…お前ら全員、地獄で俺に詫び続けろ…ウェポンバースト…」

グラン「聖柱五星封陣!」

こんばんリーシャ

なんとか今夜中に書ききりたい…


グラン「とりあえず片付いたか…リーシャ!怪我はないか?」

リーシャ「グラン…あの、その」

グラン「ほらそっちの娘は?大丈夫、痛いとこ無い?とりあえずオールヒールを」

リーシャ「グラン、ごめんなさい!」

グラン「…リーシャ」

グラン「何も謝る必要なんかない、リーシャは正しいことをした。俺だってそうしたよ」

リーシャ「それでも、迷惑かけちゃって」

グラン「そんな遠慮すんなよ、迷惑掛け合ったって良いんだよ。仲間なんだからさ 」

リーシャ「…ありがとう」

グラン「どういたしまして」



グラン「ただなぁ…ここまで的確に予言されるとなんだか悔しいな」

リーシャ「予言?」

グラン「アルルメイヤがさ、街に入ったら気をつけろっていうから」

リーシャ「あぁ、だからあんな目つきで…ってそれなら先に教えてください!」

グラン「教えてたら、やめてた?」

リーシャ「…そ、それは」

グラン「ね?」


グラン「さてと、カラダ動かしたら少しお腹すいたなぁ」

リーシャ「ケーキ食べ損ねてしまいましたね」

グラン「大丈夫。ケーキならちゃんと食べといたから」

リーシャ「なのにお腹すいたんですか。…って本当だ、ちょっと動かないで下さい」

リーシャ「はい、取れましたよ。団長なんですから口元の汚れくらい気にしてください」

グラン「え、ついてた?本当に?それは恥ずかしいなぁ…」

「お兄ちゃん赤ちゃんみたい」

リーシャ「言われてますよ」

グラン「…勘弁してくれ。あ、いや先にこの娘を家に届けるのが先か」

リーシャ「ねぇあなた家まで道わかる?」

「…わかんない」

グラン「遠出しちゃったの?」

「パパを追いかけてたの…そしたら全然知らないとこに来ちゃった」

グラン「あぁ、そういう…」

リーシャ「どうしますか?」

グラン「放ってはおけないし…適当に歩いていれば、この娘もわかるところにでるだろ」

グラン「よし、じゃあついでになんか甘い物食べるか!」

グラン「お嬢ちゃん、なにか好きなものある?」

「あたしプリンがいい!」

グラン「ぷ、プリン?…リーシャ知ってる?」

リーシャ「卵を使ったお菓子です、本当に闘い以外はからっきしですね」

グラン「仕方ないだろ!ザンクティンゼルはマジで何もないんだからな!」

グラン「…それに知らないことはこれからも、リーシャが教えてくれるだろ?」

リーシャ「…はい、もちろんです」

グラン「…じゃ、プリン食いに行くか!」

「お兄ちゃんも食べるの?」

グラン「当たり前だ、今日からプリンマスターになるんだから」

リーシャ「なんですかそれ…」

ツチプラス戦力的に強すぎる、サラを迎えて揃えたい


一行は甘味処を探しながら街を練り歩く。
途中川沿いの道を進んでいくと、大きな建物の並ぶ広場に出た。
日も傾き始めてはいるが、人通りは多く露店や吟遊詩人が辺りを賑わせていた。

「あ、ここよく来るよ!」

グラン「お、じゃあお家に近づいてんのかな」

リーシャ「プリンはなかなか見つかりませんね」

グラン「…へぇ」

リーシャ「ち、違いますよ!お二人のために探してるんですから」

グラン「はいはい、そういうことにしておくよ」

「お姉ちゃんプリン嫌い?」

リーシャ「き、嫌いではないよ?」

グラン「じゃあリーシャはプリンなしかな」

リーシャ「好き!好きです!」

他愛なく言葉を交わしながら、冷やかしの要領で辺りを歩く。
その時とある露天商が三人に声をかけた。

「おっと、そこのご家族方!お土産にこの街自慢のガラス細工なんてどうだい?」

グラン「ん?俺たち?」

「そうそう、まぁちょっと覗くだけでもどうだ?」

グラン「ガラス細工かぁ、バルツじゃゆっくり見物もできなかったし…リーシャいい…ってリーシャ?」

リーシャ「ご家族…家族…家族」

グラン「まだ耐性なかったの…。二人で見てるからなー」

本当に申し訳ないんだけども、タイトル詐欺じみたことを謝ります

正しいタイトルは最後にパパッと書いて、終わり!


グラン「へぇ…面白い色のガラスだなぁ」

「お。お目が高いね!そうこの辺りの花から取れる成分を混ぜると綺麗な藍や黄土に色がつくのよ。だけど取り扱いが面倒でなぁ、昔間違えて花から蜜吸った時はまぁ…」

「お兄ちゃんあたしこれ持ってるよ!」

そう言って指をさしたのはネックレスのようなアクセサリーだ。螺旋を象った様な透明なガラスと鉄枠にそれぞれ色の違うガラス玉がはめられている。

「ママにもらったの!おまもりだよ!」

グラン「お守り、ね。なぁおっちゃん」

「その後眠くなって寝たら親父が怒りや…」

グラン「なぁおっちゃん!」

「お、おうすまんすまん。どうした?気に入ったのでもあったか?」

グラン「こいつはなんのお守りなんだ?」

「なにあんた、詳しいね?まぁお守りというか、願掛けというか。それぞれ色にあった願いを叶えてくれるんだ」

グラン「願い?」

「夢とか目標、希望っていってもいいな。恋愛成就、商売繁盛、無病息災とか、とにかく夢を叶えるんだ」

「かみさまがかなえてくれるの!」

グラン「神様?」

「おうよ、昔まだこの辺りが草原だった時から加護をくださる守り神様さ」

「それを象って作ってるってわけよ、ほらそこの図書館に祀られてるだろう?」

男の指差す方向には確かにお守りを拡大したような彫像が壁に嵌め込まれていた。巨大なガラス玉は夕日を受けて紫色を引き立たせていた。

「あの建物もかなり昔に建てられたそうだ、彫刻に至っては覇空戦争以前からのものらしい」

グラン「覇空戦争…より前?」

「な?すげぇよな、ご先祖さん達はよ」

グラン「夢を叶える…神様…ねぇ」

グランは赤、青、黄、緑にそれぞれ輝くガラスを眺めた。



グラン「これ、一ついくらだ?」

「この黄色いのか?一つ1500ルピだ」

グラブル「じゃあこれを2つ貰おうかな」

「毎度あり、ありがとな兄ちゃん!このケースは付けとくからよ」

「良かったら明後日からの地鎮祭の博覧展にも出すから見に来てくれよな」

グラン「地鎮祭?」

「なんだ、それ目当ての観光客じゃねぇのか?」

グラン「いや、そんなとこさ。博覧展楽しみにしてるよ」

「お、そうか?ありがとな!…ったく恋愛成就買って行くとか俺への当てつけか?」

グラン達が立ち去るのと、時を同じくして街に鐘の音が三つ響く。

「もうそんな時間か…さてと、そろそろ俺も帰って用意しなくちゃな…」

男が店じまいをはじめると、グランが駆け戻ってきた。

グラン「そうだ、おっちゃん!」

「ど、どうした急に戻ってきて…へ、返品は勘弁だぞ」

戸惑いながら聞く男に、グランは神妙な顔で尋ねる。

グラン「ここら辺にプリンを出す店はない?」


リーシャ「プリン食べたら寝ちゃいましたね」

グラン「あぁ…起こすのは可哀想だけど、道聞けないから困ったなぁ…」

リーシャ「ふふ、背負ってるとホントにお兄ちゃんみたいですね」

露店の男に聞いた店で、一通り甘味を堪能したグラン達。夕暮れが近づく中眠ってしまった幼女を背負い歩いていた。

グラン「なぁリーシャ。リーシャには夢があるか?」

グランは先程からふつふつと湧き上がった疑問を投げかけた。

リーシャ「夢、ですか?そう言われると…思いつかないですけど」

リーシャ「強いて言うなら、父さんやモニカさん。みんなに認めてもらう騎空士になることですかね」

グラン「なんだ、しっかりあるじゃん。俺は…どうなんだろう」

リーシャ「星の島へ行くことでは?」

グラン「どうだろう、イスタルシアに行くことは親父の夢だ。俺はただそれを追いかけてるだけ」

グラン「実際のところ俺は何をしたいのか。よくわかんない」

リーシャ「グラン…」

グラン「アマルティアでさ、リーシャに言ったこと。実はちょっと違うんだ」

リーシャ「どういうこと?」

グラン「リーシャは俺に、立派な父を持って苦労したか?って聞いたよな」

リーシャ「うん、隠れ家近くの森でのことね」

グラン「俺は寧ろ誇りに思うって答えた。でも本当はそれだけじゃない」

グラン「俺は星の島まで行った親父に嫉妬してる、越えれない壁を見てようでさ」

リーシャ「グラン…」

グラン「親父は凄いよ。星の島についてもそこは俺のゴールじゃない」

グラン「俺は何がしたいんだろうな」


リーシャ「…じゃあこれから探しましょう」

リーシャ「ルリアちゃんにビィさん、私や団のみんなで」

リーシャ「みんなで見つけましょう?グランの夢を」

グラン「…リーシャ」

リーシャ「みんな、仲間ですから」

グラン「…そうだった、俺たちの旅はまだ始まったばかりだった」

グラン「ごめん、なんか焦ってんだ最近。色々と考え込んでて」

リーシャ「ふふ、そういうところも私達似てますね」

SR石なんて ついてるかどうかで大分違うから多少はね?


「んん…」

グラン「あぁごめんね、起こしちゃった?」

リーシャ「ここ、どこだかわかる?」

「…あ、おうちのまえのみちだよ!」

「あ、パパとママだ!パパー、ママー!」

幼女の案内でグラン達はついに家に送り届けることができた。
しかもそこに住む家族というのは、今朝二人が助けた男の一家だった。

「本当にありがとうございます!私だけでなく娘まで助けて頂いて」

リーシャ「いえ、無事にお送りできて良かったです」

「お姉ちゃんとお兄ちゃんが助けてくれたんだよ!」

二人は誘拐に巻き込まれかけていたことを話すと、男の顔は蒼白になる。幼女を叱りつけようとするのをグランは止めた。

グラン「お嬢さんは、あなたに逢いたくて家を飛び出たと言っていました」

グラン「差し出がましいようですがもう少し彼女と関わってあげたらどうでしょう?」

リーシャ「グラン、さすがにそれは…」

「いえ、いいんです。最近はあまり構ってあげれなかったのは事実ですから。私も反省します」

「祭の前で何のおもてなしもできませんが、家内も喜びます。是非お茶でもいかがですか?」

グラン「ではお言葉に甘えて」

グラン「こう見えても、お茶には一家言ありまし…痛っ」

リーシャ「調子に乗らないでください。あ、お構いなく」



グラン「明後日からお祭りだそうですね」

「えぇ、年に一度の大イベントですから。数日間街中大騒ぎですよ」

リーシャ「あの、失礼ですが…あまりお祭り、って感じはしませんよね?」

「えぇ、まだ準備しておりませんもの」

リーシャ「まだ、してない?」

「はい。伝統でして、この後徹夜で用意をするんです」

グラン「て、徹夜で?」

「街中の明かりをつけ、夜の帳を下ろさず一日中昼にするんですよ」

「次の日は昼間に寝て、日付が変わるとともに祭を始めるんです」

「この昼間に夢で守り神様にあえると願いが成就するということで、街の内外問わず人がいらっしゃるんです」

「昼夜逆転して数日過ごしますから、終わった後感覚を戻すのが大変で大変で」

リーシャ「す、すごいですね。でも間に合うんですか?」

「細々とした飾りとかは既につくってありますし、住人全員がもう慣れてますからね」

グラン「なるほど…。ところでその守り神様にあったって人は多いんですか?」

「ははは、何人かそう言う人はいますがね。観光客への売り文句みたいなものでして」

「わたし見たことあるよ!お空に飛んでっちゃうの!」

「こう言う子供達が多くて。まぁこれくらいの子供は我々には見えないものが見えるからね」

「ほんとだもん!」

リーシャ「ふふ、微笑ましいですね」

グラン「確かに俺も絵本の中の怪物とか信じてたし、何度も読むたびに実際に見たような気分になってたなぁ」

リーシャ「刷り込み、みたいなものなんでしょうか?」

「恐らく近いものでしょうね、学校でもこの時期はこの話題で持ちきりですし」

「もし本当なら、たくさんの叶った子供達のお願いで島が大変なことになってますよ」


「今日は本当にありがとうごさいました。家族全員、揃って過ごせるのもお二人のおかげです」

「本当になんとお礼を申していいか」

リーシャ「いやそんな、顔をあげてください」

グラン「こちらこそ、お茶ご馳走様でした。では俺たちそろそろ行きますから」

グラン「祭りの準備、頑張ってください」

「本当にお世話になりました。ほらお前も挨拶しなさい」

「お兄ちゃんお姉ちゃんありがとう」

リーシャ「もうお父さんとお母さんに心配かけちゃダメだからね」

「うん!」

一家と別れて歩き出す二人。しかし数歩もしないうちに幼女に引き止められた。

「これあげる!」

グラン「…皮の袋?中身は…例の粉か」

リーシャ「これ、どうしたの?」

「こわいひとのぽっけにはいってたの!」

グラン「末恐ろしい娘だ、マリー以上にやばそう…」

「こんどこそばいばい!」

グラン「うん、ばいばい」

遠くで鐘の音が四つ、静かな空に響いていた。

グラン「こんなの何に使うんだろう、ちょっとばら撒いてみる?」

リーシャ「だ、駄目ですよ!絶対許しませんからね。それなら没収です、没収!」

グラン「ごめんごめん、冗談だって!」


グラン達はグランサイファーへ戻る為、足早によろず屋シェロへと向かう。
日はすでに落ちたが、言われた通り街には明かりが煌々と輝き、盛り上がりを見せ始めていた。
飾りを取り付ける者、何やら大荷物を抱える者に露店のテントを張る者。券を携え巡回する衛兵。
街は昼間以上に活気付いていた。

グラン「本当に徹夜でやるんだな…」

リーシャ「昼間人が少なかったのは、仮眠を取られていたのかもしれませんね」

一際大きな歓声が上がるので、二人は顔を上げる。街の高い建物にそれぞれ色の違う炎が上がっていた。

グラン「火事か?」

「違うぜ兄ちゃん、あれは色ガラスを応用した色つきの炎さ!この祭りの目玉の一つだぜ!」

グラン「そんなこともできるのか…」


そんな街中を抜け、二人は荷馬車へと戻ってきた。

シェロ「お帰りなさ〜い、荷物は積んでおきましたよ〜」

グラン「ありがとうシェロ、助かった」

シェロ「いえいえ〜、お帰りは気をつけてくださいね〜」

「いよいよ始まるな地鎮祭!」「今年こそは守り神さまに願いを聞き届けてもらうんだ!」
「なにお願いする?」「新しいカレシとかー?」

グラン「こっちの方はもう雰囲気出てるね」

リーシャ「街の入り口は特に気合が入るんでしょうね」

「今年も楽な仕事でいてほしいな」「そうか?俺はもう少しキツくていいけど」「おいおい滅多なこと言うなよ」「交代の時間だ、いくぞ」



リーシャ「もうすっかり夜ですね」

グラン「帰るころには日付ギリギリかもな…疲れた?」

リーシャ「そうですね…でもそれ以上に楽しかったです」

グラン「…そっか、そりゃよかった」

グラン「あ、そうだ。リーシャに渡そうと思って…はいこれ」

リーシャ「…ネックレス?」

グラン「リーシャはショートしてたから知らないかもしれないけど、あの街のお守りなんだって」

リーシャ「ありがとう、凄くうれしい…」

リーシャ「ねぇ、グランがつけて?」

グラン「え?」

リーシャ「…ダメ、かな?」

グラン「わかった、あっち向いてくれる?」

リーシャ(グランは気づいてないのかもしれないけど、それでも構わない)

リーシャ(いつかその意味を知って、笑える日が来るなら…)



リーシャ「昨夜から聞きたかったんですけど、今日はなんで機関室は壊されないと思ったんですか?」

グラン「あぁあれ?嘘だよあれ」

リーシャ「う、嘘なんですか!?じゃあもしかしたら」

グラン「今日も壊されるだろうね」

リーシャ「なに悠長なこと言ってるんですか!早く帰らないと」

グラン「大丈夫だって、今はまだ待つ時さ。それに…」

グラン「もうすぐ全てのピースが揃う気がする」


リーシャ「やっと戻れましたね…もう日付変わるまで一時間切りました」

グラン「もうみんな寝ちゃってるかな?荷物は今日はここに置いて、明日の朝搬入しよう」

グラン「そろそろいい時間か」

リーシャ「どういうことですか?」

グラン「説明は後だ、リーシャはルリアを叩き起こしてきてくれ」

リーシャ「は、はい」

グラン「その後すぐに機関室に来てくれ、もうあまり時間がない」

グラン「急ごう、それで全部終わるはずだ」


グランサイファー 機関室

?「……」

機関室の鍵が開けられる。
音もなく忍び込んだ影はゆっくりと暗闇の中を歩く。その足取りに迷いはない。とある機械の前にたどり着くと、その足を止めた。
そして大きく振りかぶり、手にした金槌を振り下ろすー

グラン「そこまでだ」

グランは部屋のランプを覆っていた暗幕を外した。
明かりは暖かな光で部屋を照らす。

リーシャ「そ、そんな…機械を壊してたのが…」

?「……」

リーシャ「貴方だったなんて…」

リーシャ「どうしてですか、ラカムさん!」


ラカム「……」

グラン「いや違うな、そいつはラカムじゃない」

ルリア「は、はい!確かにラカムさんの中から違和感を感じます」

リーシャ「つまり…そのラカムさんは偽物なんですか?」

グラン「いや、本物さ。ただ操られてるだけ、ってとこさ」

リーシャ「いったい誰に?」

グラン「さぁ?」

リーシャ「さぁ、って…」

グラン「だってラカムは、ラカム自身に操られてるんだからな」

リーシャ「…すいません、よくわからないです」

ルリア「あの、グラン…わたしもよくわからないんですが…」

グラン「…つまりだな」

グランが口を開いたその時。


…ゴーン…

鐘の音が響く。

グラン「ん?」

…ゴーン…

一つ、二つ。大気を震わすような鐘の音はグランサイファー中を駆け巡った。

…ゴーン……ゴーン…

ルリア「鐘の音…まるでジョヤさんみたいです…」

リーシャ「でもいったいどこから?」

グランサイファーにも鐘が無いわけではない。だが、それとはかけ離れた音色だった。

ラカム「……」

ラカムがグランに掴みかかる。不意をつかれたグランはその手を首にかけられた。

グラン「…グウッ!?」

利き手ではない左手で持った杖では上手く当てられない。そして詰められたこの距離では、昼間のように勢いに任せて振ることもできない。

リーシャルリア「グラン!」

グラン「…っどうやら…悠長に話してる暇はッ…ないらしいな!」

なんとか鳩尾に膝を入れ、緩んだ隙をついて組み付きを解く。

グラン「話はラカムを止めてからだ!」

リーシャ「はい!」


ラカム(縄で縛られ、芋虫状態)

リーシャ「いったい何が…」

ルリア「あのグラン?どういう…」

ドアを叩く音が響く。その感覚は恐ろしい速さで増えていき、扉は軋み始めた。

ルリア「きゃっ!」

怯えるルリアを背後に隠しながら、グランとリーシャは様子を伺った。

グラン「…一体どうなってるんだ」

そして一段大きな音を立てて扉が軋むと、兆番から外れたドアがそのまま倒れ、部屋の中に人が流れ込む。
どれもみなラカムと同様、何かに操られているようだった。

グラン「これはヤバいな、二人とも逃げるぞ!」

リーシャ「逃げるってどこへ?!」

一つしかない入り口には人が溢れ、とても通れそうにはない。
距離は既にじわじわと詰め寄られていた。

グラン「リーシャ!あの格子戸を壊せるか!?」

グランが杖を使ってなんとか押し戻そうと、もがきながら叫ぶ。その指示にリーシャは戸惑った。

リーシャ「こ、壊すんですか!?」

グラン「それしかない!」

リーシャ「で、でも…」

グラン「ガロンゾでもっといいのにするから!」

リーシャ「…わかりました、下がっていてください」

グラン「ルリアは俺の中に戻ってろ!」

ルリア「は、はい!」

リーシャ「ソニックブレード!」

グラン「よし、甲板にでよう!」


グランサイファー 甲板

バザラガ「団長…これはどういう状況だ…」

ロゼッタ「もう、夜更かしなんてしたらお肌ボロボロになっちゃうわ」

ユエル「ほんまどないなっとんねん!ウチは部屋で本読んどっただけやのに」

ティナ「人が寝てるところににカード持って突入してきた人が何言ってるんですか!」

ユエル「それはゴメンって、ウチ昼寝しすぎて寝れへんかったんや」

グラン「良かった、無事だったか!」

ゼタ「なんとかね、でも急にみんなの様子がおかしくなって」

グラン「やっぱり、みんな…」

ベア「んーー、あぁーーー」

ゼタ「…これは寝ぼけてるだけだかだから…ほら、起きなさい!」

ユーステス「…おちおち眠りにもつけん」

フェリ「鐘の音が聞こえて起きてみたらこの騒ぎだ…団長、どうすればいい?」

グラン「…説明しづらいんだけど、多分今みんなは自我のない状態だ」

グラン「幸い動きは遅い…なんとか船室に押し込めておいてくれ」

バザラガ「了解だ…だか何故彼らはあの様になっている?」

グラン「それがわからないんだ…まるで最後のピースが二つに割れていたかのような…」

グラン「答えのすぐ目の前まで、辿り着けているような気はするんだ」

?「ならば最後のその穴は、己の足で埋めるといい」

船体の壁を伝ってきたのか、柵を乗り越え名探偵が現れる。

グラン「バロワ!?…どうしてそんなところから」

バロワ「いやぁグラン君、夜中に相棒が騒ぎ出すものだから一体何事かと飛び起きてみたら」

バロワ「鐘の音で驚いて頭ぶつけるわ、突然仲間に襲われるわ。災難だったよ」

グラン「そ、そっか。でも無事で良かった」


バロワ「推理に行き詰まったのなら、先ずは捜査に立ち返るんだ。不思議な事、疑問な事について答えが探せるのなら徹底的に調べる」

バロワ「人に聞いてもいいし、本で探しても、何をしてもいい」

バロワ「わからないことを潰していけば必ず答えが見えるはずだ」

バロア「推理に反則はないのだからな」

グラン「…反則はない、か」

ユエル「へぇ。よぉわからんけど、なんかカッコええな!おっちゃん!」

バロワ「お、おっちゃん?こ、このバロワ、まだそのような年では」

グラン「人に聞いても…本に聞いても…そうか」

「グルラァァァァァァァア」

グラン「魔物まで来たか…大変だけどみんなを頼む!」

ロゼッタ「そういえば、夜に動くと健康にいいって聞くわねぇ」

フェリ「あぁ、まかせておけ」

ユエル「ウチにまかせとき!」

ティナ「早く終わらせて寝たいです…」

ゼタ「これくらい楽勝よ」

ユーステス「…あの程度の魔物、造作も無い」

ベア「…なんだかよくわからないが、任せろ!」

バザラガ「その目…どうやら為すべきことがあるようだな」

グラン「あぁ、実は…」

バザラガ「いや、いい。理由は聞くまい」

グラン「どうして?」

バザラガ「皆、団長を信じている。お前が必要だと思うならとことんそれをやるべきだ」

バロワ「グラン君、君なら大丈夫だ!」

グラン「…ありがとう!」


グラン「リーシャ!」

リーシャ「はい、言われた通り毛布は持ってきました」

グラン「じゃあ急いで戻ろう、この状況を解決するためには街に行くしかない」

グランは馬の背中に毛布を敷くとリーシャの前まで引いていった。

リーシャ「やっぱり…乗るんですね…」

グラン「馬は苦手?」

リーシャ「いえ、その…乗ったことないので」

グラン「大丈夫だって、安心しろよ」

そう言うとグランはリーシャの前に立つと、手を取り、片膝をついて跪いた。

リーシャ「ぐ、グラン!あのそういうのは、やっぱりまだ早いというか!順序というのが…」

グラン「リーシャ?早く乗ってくれないと困るんだけど…」

リーシャ「へ?」

グラン「あ、もしかして乗り方わからない?俺の肩使ってよじ登るんだけど」

リーシャ「……」

グラン「あ、今蹴った!絶対ちょっと蹴ったよね!」

リーシャ「知りません!」


グラン「よいしょっと」

リーシャを乗せた後、グランも続いてよじ登る。
馬上には前にリーシャ、後ろにグランが乗っているため、手綱を掴むグランは必然的にリーシャを後ろから抱くような格好となった。

グラン「…リーシャ?震えてないか?」

リーシャ「だ、大丈夫です。緊張してるだけで…」

グラン「あれだったら、向かい合わせで乗るか?その方が掴まれるものもあって…」

リーシャ「む、向かい合わせ!?いえ、私はこのままでいけますから!」

グラン「そ、そうか。じゃあ行こうか」

グランが手綱を引くと、馬は歩き出す。初めて経験する馬上の揺れにリーシャは小さく悲鳴をあげた。

グラン「大丈夫か?後ろから掴んどこうか?」

リーシャ「…そうしてください」

グランは恐る恐る、触れるように左手でリーシャの腰に手を回す。

リーシャ「…もっと強くです」

グラン「こ、こう?」

リーシャ「もっと」

グラン「こう?」

リーシャ「もっとです!」

グラン「…わかった」

グランは左腕に力を入れ、リーシャを引き寄せるように抱いた。
お互いの体温はおろか、鼓動までを直接感じる。
そして左手はリーシャの特徴的な服ゆえ、露出した脇腹に触れることになる。

リーシャ「……んっ」

その艶やかな声に、普段とは違う女性的な姿にグランはつい、その手でー

ユエル「こらぁ!なにイチャコラこいてんねん!はよいけや!」

ティナ「ユエルさん、遊んでないで手伝ってください!」

ー過ちを犯すことはなかった。

グラン(そりゃ甲板からまるみえだし…)

グラン「よし、行くぞ。準備はいいか?」

リーシャ「えぇ。でも意外、グランは乗馬経験あるなんて」

グラン「……」

リーシャ「あの、その沈黙はなんなんですか!怖くなってきたんですけど!」

グラン「…世の中知らなくていいこともある」

リーシャ「おろして!おろしてください!」



祭りの準備は街道沿いにも施されているようで、途中からは道すがらに松明が掲げられていた。
夜の闇の中を駆ける。
難なく一行は外周の門まで辿り着いた。

「止まってくれ!許可証を確認させてくれ」

衛兵が馬上のグランに声をかけた。
その内容に上ずった声でグランは疑問を口にする。

グラン「きょ、許可証?」

グランは馬から降りて衛兵に尋ねた。

「そうだ。祭の準備期間から開催までは住人と許可のあるものしか入れない決まりだ」

リーシャ「そんな決まりが…」

「すまないな、これも街の治安維持の為なんだ。あと鐘が二つも鳴れば市民は寝静まる」

「規則とはいえ白昼にも関わらずだ、危険な目に市民を遭わせるわけにはいかん」

「君たちを信用していないわけではない。寧ろ万が一の時に外の者を守る為でもあるんだ、理解してくれ」

リーシャ「…グラン」

リーシャのその目は、規則ならば仕方ないと言っているようにグランには思えた。

「もし街に用があるなら明日の夕方に出直すか、外門の宿所を案内するが…」

実際のところグランもこの衛兵の言葉に納得していたし、回り込んで人目のないところから忍び込むような真似をしたいわけではない。

ただ此方にも譲れぬ事情がある。ただそれを話しても相手にされることはないだろうが。

グランは考えた、今この場を切り抜ける方法を。
なんとか街に入れる正当な理由はー

ありがとナス!いま書き終わったから見とけよ見とけよー


グラン「それは困ったなぁ」

リーシャに顔を向けるために振り返った風を装い、グランは衛兵に背を向けた。
大袈裟に声をあげ、リーシャと目を合わせる。

グラン(あ・わ・せ・て)

リーシャ(…え?)

口の動きでそう伝えると、グランは懐から箱を取り出した。

グラン(頼む…)

箱は木目が美しいものだった。丁寧にやすりがけされているのか、手にした感触は非常に滑らか。
表は…何も書いていない。
裏にも、側面にも何も書いていない。

グラン(…頼む!)

グランが箱を開ける。
上蓋の裏に焼印がいれられてあった。

グラン(見つけた!)

それは工房の名前だった。恐らくはあのネックレスを作った、ガラス工房。
その名前を読み上げながら、グランは嘯く。

グラン「展示会に出す作品や商品のガラスに色をつける為の粉が足りないって言うんで届けに来たのに」

グラン「これじゃあ中に入れないから届けられないなぁ」

リーシャ「こ、ここ困りましたねぇ。もしかしたらお祭りの準備、間に合わないかもぉ」



それを聞いた衛兵達は顔を見合わせて思案顔になる。

「なぁ…あそこの工房って…」「結構大事なんじゃないか」
「代わりに誰か行くか?」
「いや、あそこの爺さん気難しいからな」
「それにもうすぐ交代だしなぁ」

「すまないが、品を確認させてもらっても」

グラン「あぁ、もちろん」

グランは皮袋を手渡す。衛兵は受け取り、中身を覗いてから再びグランに手渡した。

「…事情が事情だ、通行を許可する」

グラン「どうも!」

そのまま馬を引いて街へ入る一行。検問所が見えなくなると、グランは胸をなでおろした。

グラン「なんとか入れたか」

リーシャ「私、あそこを通るたびに罪悪感が生まれるんですが…」

グラン「緊急時だと割り切ろう」

グラン「ルリア、出てきていいぞ」

ルリア「はい!」

リーシャ「その光景は何度見ても慣れないですね…」

グランの胸からひょこっと飛び出てくるルリア。
馬を繋ぐため、シェロの店を目指しながら一行は進む。


グラン「ルリア、街から何か感じるか?」

ルリア「…いえ、特に異変と呼べるものは」

グラン「そうか…」

ルリア「ごめんなさい…」

グラン「謝ることなんてないよ、ルリア。いつも本当に助かってる、ありがとな」

グランはルリアの髪をくしゃっと撫でる。その行為にルリアは照れ臭い笑みを浮かべた。

ルリア「えへへ、くすぐったいです」

グラン「とにかく、今は図書かー」

グランの声を遮って、街には鐘の音が響きわたる。
今度は六回。

ルリア「…力が急に!」

グラン「…星晶獣か!?」

ルリア「でも、おかしいです!星晶獣とは思えないほど…弱く、微かで…」

グラン「どういうことだ…とにかく急ごう!リーシャとルリアは図書館に行ってくれ!」

リーシャ「図書館って…あの広場の?」

グラン「あぁ、そこでガラスに色をつける粉についてと」

グラン「この島の星晶獣について調べて欲しい!」

ルリア「わかりました!」

リーシャ「グランは?」

グラン「確認したいことがいくつかある、後で合流しよう!」

三人は活気に溢れる街の人ごみへと消えていった。



グランが図書館へ現れたのは、もう薄く空が明け始めた頃だった。

リーシャ「グラン!」

リーシャは声を上げてからはっと口元を押さえた。図書館では静かに、というルールを守ったのか。
今この建物には三人以外は司書くらいしかいないが、律儀である。

リーシャ「おかえりなさい、何か見つかった?」

グラン「あぁ、そっちは?」

リーシャ「なら私達の方から先に話しますね」

リーシャはグランを机の一角に連れた。そして積まれた数冊の本から、一冊を取り出す。

リーシャ「グランの言っていた粉なんだけど、色によって種類があったの」

リーシャ「例えば緑なら、銅。赤ならセキバンという物質を混ぜるそうです」

リーシャ「で、中でも黄色を出すために使うのはこの辺りに分布している植物の根をすり潰して乾燥させたもので」

リーシャ「催眠作用の他に、体の倦怠感とかを引き起こす、って」

グラン「植物の根…体に対して毒性…」



ルリア「星晶獣についてなんですが…よくわかりませんでした」

リーシャ「…もともとの土着の神への信仰が根強いせいか、他の島のように星晶獣信仰が見られないんです」

ルリア「伝承や口伝も守り神さまのものばかりでした」

そういってルリアは本の山を手で広げて見せた。グランも一冊手にとって表紙を見ても、星晶獣が出てくる雰囲気はない。

ペラペラ捲ってみる、がやはりそれらしい記述は見当たらなかった。
考え込んでいるも、横から覗き込んだルリアがページをめくっていく。

ルリア「うわぁ!これ見てください、こんな昔から信じられてたんですね!」

グラン(じゃあ…いったい何がこの状況を引き起こしてるんだ…)

ルリアが指差したページには挿絵が載せられていた。覇空戦争以前の人々だろうか。

ルリア「大きな焚き火ですよね、キャンプファイヤーみたいです!」

グラン「…焚き火?」

グランはその絵と説明文に目を落とす。
踊る者、瞑想する者、寝転ぶ者に囲まれ中央に鎮座する炎は、紅に高く燃え上がる。




グランの頭の中を一筋の閃光が駆け抜けた。




グラン「そうか…やっとわかった…」

グラン「脳細胞がフルチェインだぜ!」


♪ガリレオとか「シフトカーの活躍」でも聞いて、どうぞ


リーシャ「わ、わかったんですか!?この状況の原因が!」

グラン「あぁ、半信半疑だったがこれでわかった」

グラン「やはり、この事件は星晶獣によって引き起こされたんだ」

ルリア「で、でも星晶獣の力は感じないんですよ!?」

リーシャ「もしかして、この島の守り神が星晶獣に?」

グラン「いや、そうじゃない。まぁ順に追って説明していこうか」



グラン「リーシャ、まずこの事件は発端はなんだと思う?」

リーシャ「えっと、ラカムさんが1度目に機械を壊した時では?」

グラン「直接星晶獣が関与した、という意味では間違ってない。けど本当の始まり俺たちがこの島に寄港した時だったんだ」

グラン「港に乗り入れたのを1日目の朝として、その日はほぼ全員が船にいた」

グラン「夕飯前、ラカムと修理についての相談をした後にシェロが来て、『魔物の報告が増えた』と相談してきた」

リーシャ「えーと、グランはその後に団を3つに分けて…その日は特に何もおかしい事はなくないですか?」

グラン「そして次の日、俺達は魔物の襲撃を受けた」

リーシャ「えぇ、そうでした」

グラン「この時点でもうおかしいんだよ」

リーシャ「どういうことですか?」

グラン「もともと、この島は魔物による被害がほとんどない島だからだ」

リーシャ「そ、そういえる根拠は?」

グラン「道中会った農場のおっさんはなんであんなとこに丸腰でいけたんだと思う?」

リーシャ「そう言われると、確かに…」

グラン「それに俺たちが昨日の朝街に来た時、検問の兵士達はどうだった?」

リーシャ「…そうだ非武装だった!?」

グラン「そういうのが日常化する程度には、この島は魔物の被害が少ないんだ」

グラン「さっき巡回中の兵士に聞いたが、やはりこの島で起きる事件の大半が街の中でおきてる」

グラン「おとなしいはずの島の魔物が直接危害を加え始めた。第一の異変だ」

グラン「話を戻そう、魔物の襲撃で俺は怪我を負った。だけどそれは偶然の産物にすぎなかった」

グラン「本当の狙いはリーシャと、コイツだったんだ」

リーシャ「わ、私ですか?それに…コイツ?」

グランは懐から粉の入った瓶を取り出す。

グラン「まぁ無差別に狙った結果リーシャだったって感じだけど…これを見てくれ」

リーシャ「瓶ですか?」

グラン「正確には中身だ」

ルリア「うわぁ、綺麗な砂ですね!」


グラン「さっき甲板で探したんだ。ジョエルが磨き上げてくれてた床のおかげで、こんな夜なのにすぐ見つかったよ」


リーシャ「…それってまさか!」

グラン「そうだ、この袋の中のものと同じであると確認してもらった」

工房のおっさんにな、とグランは小さく付け加えた。

グラン「これは一昨晩、リーシャが立っていた場所の近くに落ちてた。クラウディアが掃除してなければ、船の中にも落ちてるだろうな」

リーシャ「っていうことは、私も操られていたってことですか?」

グラン「恐らくね、だがリーシャに着いたのはほんの一部。魔物の持ってきた粉の大半はどうなったか」

グラン「風に吹かれて甲板を転がり…そして格子戸を通って機関室に落ちた」

リーシャ「それじゃあラカムさんはそれを…?!」

グラン「火災や採光のための格子がまさか仇になるなんてな」

グラン「朝一番に機関室に入るラカムがそれを吸い込んじまったんだ」


ルリア「あの…でもどうやってリーシャさんやラカムさんを操ったんでしょう」

グラン「あの粉には催眠作用があった。多分…そしてそうやって眠りについた人間の頭の中を覗けるんだ」

リーシャ「あ、頭の中を?」

グラン「そして寝ている間に幻でも見せて行動に干渉するんだろう」

グラン「一昨日はリーシャという囮を使ってまで、機関室に忍び込んだのに」

グラン「さっきはラカム一人できた」

グラン「俺が今朝、ラカムに今日は見張りはやらないと伝えたのを知ったために単身できたと考えれば辻褄があう」

ルリア「で、でも寝てる人を歩かせたりできるんですか?」

リーシャ「確かに…グランはみんなが夢遊病にかかったって言いたいんですか?」

グラン「まぁ根本的には似ているかもしれない」

グラン「覚醒中の無意識下、っていう状態についてはね」


ルリア「かくせーちゅーのむいし…えと、なんですか?」

リーシャ「つまり起きているのに、意識はないってこと」

グラン「そう。ルリアが教えてくれたんだ」

ルリア「私が…ですか?」

グラン「この絵を見てくれ」

グラン「微笑ましい焚き火の光景じゃない、これは宗教儀式の一幕だ」

グラン「かつては神格の肯定手段として、こういう非日常性を感じるための儀式は多かったらしい」

グラン「この島の守護神信仰も、こうして儀式を行っていた。恐らくこの粉はそういったことに使われてたんだ」

リーシャ「つまり催眠作用の副作用として無意識状態を引き起こす力がある…?」

グラン「そしてその状態に働きかけてたんだろう」

グラン「今晩俺やリーシャ、ユエルにティナ、バロワが無事だったのは起きていたからだろうな」

グラン「成分は島全体を飛び回ってる。だから寝ていた奴らは…ああなったわけだ」


グラン「もちろん、こういうのは何時しか時代錯誤的だと消滅していく」

グラン「そして覇空戦争が起きて、宗教意識はさらに薄くなり」

グラン「ガラスに色をつけるという目的にしか粉は使われなくなったんだ」

リーシャ「この島でも、そんな儀式は行われなくなった…」

グラン「だが、戦争で失われた物にもう一つ大事なものがある」

グラン「二人とも、この図書館の前にある彫刻は見たか?」

ルリア「はい、明るくライトアップされてました!綺麗なガラスが嵌め込まれてるんです!」

リーシャ「もしかして…あれが星晶?」

グラン「俺はそう考えている」

ルリア「えぇ!?でもそんな力はあんまり…」

グラン「覇空戦争で本来の彫刻のガラス玉は壊れてしまった…」

グラン「だが恐らく、星の民が落とした星晶の一つがこの地に落ちた」

グラン「故意か不慮かはわからないが、そこで街のシンボルは入れ替わったんだろう」

リーシャ「守り神は知らぬうちに…星晶獣になっていた、ってことですか」


ルリア「星晶獣なら、元となった存在があるはずです!」

グラン「夢だ」

ルリア「へ?」

グラン「夢や希望、願いや望み。それがこの島の星晶獣の姿だ」

ルリアリーシャ「えええぇぇぇぇぇぇえええ!?」

グラン「証拠と言っちゃなんだが、この街のガラスで紫色はつくれない、なのにシンボルは紫色のガラス玉だ」

グラン「ロゼッタはともかく、バザラガやゼタ達が眠っていたのに無事だったのは、星晶獣の力を武器が食らったから。と考えると…」

グラン「これなら全ての事象に説明がつけられるんだよ」

リーシャ「ではフェリさんは?」

グラン「あいつは幽霊だからな」


グラン「もし星晶獣が夢や望みを本体に持つというなら、寝てる人の頭の中もとい夢に干渉してくるのは頷けるし」

グラン「望みを叶えようとするのにも頷ける」

リーシャ「望みをかなえようとする?そんな風には見えませんけど」

グラン「そりゃ、干渉できるのは頭の中だけだからな。他の星晶獣と違って大きな力はないわけだし」

グラン「…長い間人の欲望にあてられ続けた結果、歪んじまったのかもな」

リーシャ「空っぽの星晶が守り神に祭り上げられて…その結果暴走しかけている…」

ルリア「そんな…」

グラン「概念がはたして星晶獣になれるかは知らないけど、星晶についてまだわからないことが多すぎてなんとも言えないな」


グラン「ここからは俺の想像だが…ラカムの夢はグランサイファーで飛ぶことだろうな。」

グラン「だがそれは既に叶った結果、グランサイファーと共に居続けるっていう点だけがピックアップされたんだ」

ルリア「そのお願いだとしても、ラカムさんが船を壊すとは思えないです」

グラン「機関が壊れて飛ばなくなれば、戦うことも墜落することもなくなるからな」

グラン「星晶獣は願いを曲解してでも叶えようとしちまうんだろう」


グラン「あとは…農場のおっさんを覚えてるな?」

グラン「あのおっさんの願いがもっと儲けたい。だったとしよう」

グラン「普通なら商品の付加価値が上がったり、需要が増えたりで儲けは増えるはずだ」

グラン「だが、力のない星晶獣はそんな操作はできやしない」

グラン「だから替わりに魔物をウロつかせたんだ」

リーシャ「そうか、今までなかった魔物の目撃報告があれば物価は上昇する…!」

グラン「そしてその娘と、暴漢達だ」

グラン「それぞれ、父親に構ってもらいたい。なんでもいいから金を稼ぎたいとかそのあたりの願いが曲解されて」

グラン「お互い『誘拐』っていう点で一致したんだ」

ルリア「そんな…」


グラン「なんなら、最初から通しで追ってみようか」

グラン「誰かが俺に怪我をさせたい、もしくは誰かの世話を焼きたいとかその辺の願いを強く持ったとする。いないとは思うけどな」

リーシャルリア「あっ…」

グラン「願いに応えた星晶獣が魔物を操る、俺に怪我をさせリーシャとラカムに粉をつける

ラカムはグランサイファーと空を飛びたい、みたいなことを願ってると、その思いは曲解されて操られる。

次の日ラカムを経由して見張りがいることを知ったので、リーシャを使って破壊を実行する。

農場のおっさん、その娘に街のゴロツキ。彼らもまた願いを曲解された。

そして今夜、暴走した星晶獣の力が団の皆が眠ったところを操って…今に至るってわけ…だ…が…」

ルリア「す、すごいですグラン!まるで名探偵さんみたいです」

リーシャ「多少こじつけっぽいところはありましたが、確かに筋は通ります」

グラン「……」

リーシャ「グラン?」

グラン「まずい、まずいぞ…」

ルリア「ど、どうしたんですか?」

グラン「自分で言っていて気付いた、今日の星晶獣は暴走気味だ」

グラン「そして今この街には…あれを見て!四色の炎を掲げているがそのうち一つは黄色だ!」

リーシャ「じゃああの炎で燃やしてるのは…」

グラン「あぁ!それにもうすぐ祭りの準備をおえた人たちが眠りにつく!」

リーシャ「そうなれば、一気に夢が暴走した星晶獣に流れ込んで…」


ルリア「だ、大丈夫ですよ!だってもう朝ですから!」

ルリア「朝になれば寝てても星晶獣は関与できないんですよね?だってユエルさんは昨日ずっとお昼寝してましたし!」

ルリア「でも操られてないですから!」

グラン「いや…そうはならない」

グラン「星晶獣が概念ならそれを縛るのも概念だ。多分、時間という概念」

リーシャ「…そうか、今この街には夜が来てないことになってる」

グラン「この街の時の概念は鐘によって運行されてて、鐘のタイミングは半日に4回」

グラン「正午と零時に回数はリセットされるはずだけど、今日の夜を『昼』にするためにまだ増え続けてる…」

リーシャ「そういえば、確かにさっきの鐘は6回なりました」

グラン「だからこの街では、今はまだ夜…」

グラン「はやく知らせて、暴走を止めるまで起きててもらわないと!」

グラン「誰も寝ちゃいけない!」


グランが走り出し、図書館を出ようとしたその瞬間だった。

…ゴーン…

グラン「くそっ、もうそんな時間だったか!」

…ゴーン…ゴーン…ゴーン…ゴーン…ゴーン…ゴーン…

無慈悲にも鐘の音は七度。空気を街を揺らしていく。

ルリア「また急激に力が強くなりました!」

リーシャ「星晶獣は…?」

三人は広場へと躍りでる。
人っ子一人いない街並みは気味が悪いほどに静まり返っていた。

リーシャ「グラン、あれを!」

リーシャが指差した彫刻。そこに嵌められたガラス球はその中で何かが蠢いているように見える。

ルリア「なんだか…とても苦しそう…」

グラン「己の容量を超えたか?にしても嫌な雰囲気だ…」

リーシャ「姿形は持たなくとも、星晶獣たる力は持ち合わせているんですね…」

グラン「そうか、あの女の子は本当に見てたんだな、星晶獣を!」

リーシャ「なるほど、実体化した星晶獣を守り神としてみていたってことか」

グラン「大人達は寝てるから見れなくても、準備に参加しない子供たちは普通に寝起きしてるから、起きてれば見るチャンスがあったんだ!」

一行は身構え、その行く末を見つめる。
だが、いくら経ってもなにか変化が起きることはなかった。

グラン「何も…おきないのか?そんなはずはない、現に女の子は見ていたわけだし」

リーシャ「暴走、してることが関わってる?」

ルリア「確かに力を感じます…でもなんて言うんでしょう」

ルリア「壁一枚向こうにいる、そんな感じです…」

リーシャ「もしかして、星晶の外に出てこれない?これじゃあ治めることもままならない…」

ルリア「どうしましょう…来れないなら会いにいくしかないのに…。そんな方法は…」


グラン「…それだよ!」

ルリア「え?」

グラン「例え途中で入れ替わってたとして、街にとってあれが守り神であることは違わないはず」

グラン「なら…守り神さまなら、こいつで会いにいけるもんな!」

グランは懐から皮袋を取り出すと、近くに掲げられた松明を手にした。
力任さに取り外すと、グランは何かを探し始めた。

グラン「よし、ここでいいだろう」

リーシャ「ここって…ただの掘っ立て小屋ですよ?」

リーシャ「もしかして…この中で焚くんじゃ…」

グラン「あぁ、一発ぶん殴れば大人しくなるだろ。リーシャはここで待っていてくれ」

リーシャ「一人で行くんですか!」

グラン「あぁ、なにかあったら叩き起こしてくれよ。それとルリアを頼む」

リーシャ「そんなの、危険すぎます」

グラン「二人でいって、万が一両方になにかあったらどうする?それに俺が眠ってる間動ける奴がいなきゃ不便だろ」

リーシャ「……」

グラン「ルリアと二人で待っていてくれ、すぐ帰ってくるからさ」

そう言うとグランは小屋の中に入っていく。
しばらくすると薄い煙が立ち上り始めた。

ルリア「グラン…」

ルリアが心配そうにつぶやく中、リーシャは何も言わずに立っていた。


グランは小屋の中で一人、準備をしながら一人考えていた。

グラン(どうやって団の皆全員に付着したんだろう)

グラン(陸風に乗ってきた…それとも、やっぱり班にわけたのは失敗だったか?)

グラン(いや、そんなことより…なんで今になって暴走したんだ?)

見つけた鉄板の上に松明を置き、その前にあぐらをかいて座る。
迷いを振り切るように首を振って、グランは心を決めた。

グラン(今はみんなの為にも、星晶獣を止めないと)

皮袋から取り出した粉を一掴み、火の上にかけていく。
黄色い炎をパチパチとたてながら燃えたそれは、煙をたてはじめていた。
一つ深呼吸するとすぐに効果は出始める。

グラン(ね、眠い……瞼が…重い…)

十を数えるより先に、グランの意識は闇に飲まれた。


はっと目を覚ます。

どうやら草原の中で眠っていたようだ。
重たい上半身をあげ、辺りを見回す。

眼下に広がる雲海、所々に浮島があり、奥には険しい岩山が鎮座していた。

自分が丘の上にいることに気がつき立ち上がってみると、目の前の岸壁に突き出すように赤い屋根の家が見えた。

煙突からは白い煙が立ち上り、庭に張られたロープにかかった洗濯物が揺れている。

そのまま眺めていると、入り口から少女が飛び出てきた。

キョロキョロと周囲を伺っていると、丘の上のいる自分に気がついたのか手を振っている。

「お兄ちゃーん!ご飯だよー!」


ふと気がつくと、食卓の席についていた。

「あなた、今日はどうするの?」

「そうだな、二人を連れて釣りにでも行くか」

「ほんとに?やったぁ!お兄ちゃん、おでかけだって!」

ーおでかけ?ー

「そうだよ!お父さんが暇なの久しぶりでしょ!」

ーとうさん?ー

「どうした、釣りはいやか?」

ーイスタルシアにいるんじゃー

「ははは、どうした珍しいな冗談を言うなんて」

ー冗談?ー

「イスタルシアなんてあるわけないだろ、絵本の話だぞあれは」

「昔私が読んだのを覚えててくれたのかしらね」

「母さんはあの話好きだからなぁ」

ーかあさん?ー

「どうしたの、ご飯お代わり?」

ーかあさんは俺が幼い時にー

「今日はお弁当でも作って一緒にお出かけでもしましょうか」

「やったー!」

机の上で所在なさげに林檎が揺れた。


ふと気がつくと森の中にいた。

見覚えのある場所のはずなのに、全く思い出せない。

目の前に石造りの祠がある。

苔が生え、蔦が絡まり作られてからどれだけの時が経ったのだろうか。

無残に朽ち果てたそれに、何も感じることはない。

「古い祠だね」

ーそうだねー

「でも扉だけはちゃんと閉まってるんだ」

ーそうだねー

「開けてみちゃおうか」

ー…………ー

「ふうん、中々つよいんだね」

「まぁいいや。ねぇお昼食べよ?」

「お父さんとお母さんが待ってるよ」

ーとうさん と かあさん?ー

「そう、あなたのお父さんとお母さん」

「ねぇ、一緒にいこ?こっちの方が楽しいよ?」


ルリア「グラン…大丈夫でしょうか」

リーシャ「……」

白い煙が立ち始めて数秒の気がするし、数時間のような気もする。
リーシャは重い街の空気の中で、じっとしていることが出来ないでいた。

ルリア「…リーシャさん?」

リーシャ「ごめんね、ルリアちゃん」

リーシャは己の直情的な性格を呪った。
仲間の言いつけも守れぬ自分に。
それほどまでに人を愛してしまった自分に。

ルリア「リーシャさん!」

ルリアの制止に耳も貸さず、リーシャは小屋の扉を開け放つ。
素早く中に入ると、その辺りに転がった木材をかんぬきのように立て掛けた。

ルリア「リーシャさん、戻ってきてください!」

リーシャ「ごめんね、ルリアちゃん。私じっとしていられないみたい」

ルリア「そんな…」

リーシャ「私ね、グランのことが好き」

ルリア「え…?」

リーシャ「頼りないけど頼れる彼が。何も知らない彼が。色んなことを知ってる彼が。屈託無く笑う彼が。何事にも一生懸命な彼が」

リーシャ「他にも沢山の彼が好きなの」

ルリア「リーシャさん…」

リーシャ「だから、私ね?そんな彼を側で見ていたくて、支えてあげたいの」

リーシャ「許して欲しいとは言いません、これは私のワガママだから」

リーシャ「その、だから…」

ルリア「リーシャさん」

ルリア「絶対に、二人で帰ってきてくださいね!」

リーシャ「うん、ありがとうルリアちゃん!」

リーシャはグランの横に並んで座る。だらんと垂れたグランの左手を握り、リーシャは深く息を吸った。

リーシャ(まってて、グラン)

胸元のネックレスが、きらりと光った。

「ねぇ、一緒に行こうよ」

「何をそんなに迷ってるの、お兄ちゃん?」

「お父さんとお母さん、お兄ちゃんと私で、この島で仲良く暮らすのよ?」

ーなカよく…?ー

「そう!ね、いいでしょ?お兄ちゃんがずっと欲しかったモノ」

ーおレがずっと、ほしかっタものー

「ここにはぜんぶ、あるんだから」

ーぜンぶ、コこ二ー

「わたしの手をとって?ね、一緒に行こう?」

「みんな待ってるから」

「早くこないとなくなるぞ」
「あなた、少しは遠慮して!」

「ふふふ。ね?ほら。はやく、はや」

……ン!…ラ…!

ーこエがー

「ううん、気のせいだよ。だからは」

…ラン!グ……!

ーやっぱり、こえがきこえるー

「気のセい、キノせいだよ」

グラン!…ラン!

「あぁ…聞こえてるよ、俺を呼んでる声がするんだ」

「キノセイ、キノセイダヨ」

「一瞬でも騙されかけた自分が恥ずかしいよ。お前は、いやお前らは、親父でも、母さんでも、妹でもない」

「ただの偽物だ」

「・$>×○÷〒・$°#*〆5→☆|\:!」

グラン「ようやく名前を思い出せた、体も、好きな女も、仲間達のことも。旅の目的も」

グランは目の前のそれに背を向ける。ゆっくりと、しっかりとした足取りで祠へと向かった。

グラン「何にも変えられないんだよ、悪いけど」

祠の扉を開け放つ。
白い光が隙間から漏れていく、そしてグランの視界は全て白に覆われた。

リーシャ「グラン!」

光の向こうからリーシャが駆け寄ってくる。二人は何の示し合わせもないのに関わらず、互いを強く抱きとめた。

リーシャ「やっぱり、一人じゃ危険でしたね」

グラン「あえてね、来てくれるって信じてたよ」

リーシャ「…本当ですか?」

グラン「…あー」

グラン「…本当は少し、いやかなり怖かった。自分が自分で無くなっていく感覚はなかったけど、思い返すと足が震える」

グラン「勝手なことして、ごめん」

リーシャ「あの場でグランが私たちを残した選択は、間違ってなんかなかった…」

リーシャ「だから、それまで否定されてるみたいで、誤って欲しくないな」

グラン「…あぁ、そうだったな」

グラン「助けに来てくれて、ありがとう」

リーシャ「当たり前です、迷惑掛け合う…」

リーシャ「仲間ですから!」


白い光がいっそう輝き、二人を包み込む。
次に目を開けた時、二人はあの広場に立っていた。
だが夢の中の広場は白黒の、色のない世界だった。

リーシャ「戻ってきた…わけではなさそうですね」

グラン「やすやすと返してくれる気も無さそうだ」

グランの鋭い目が前を見据える。
視線の先を追うため、リーシャも振り返った。

「グウォォォォォォォォォォォォォ」

獣のような唸り声をあげながら一陣の黒い風が吹き、竜巻のように螺旋を描くと一つの人型を作った。

リーシャ「…あれが、星晶獣?」

グラン「人の欲望を抱えすぎて壊れてしまった、ね」

グラン「誰も悪くなんてない分余計たちが悪いけど」

リーシャ「ここで抑えないと、いけないんですね」

グラン「あぁ!」

二人は武器を構えー

グランリーシャ「武器がない!」

グラン「あぁやっぱり夢の中は持ち込みダメなのかな」

リーシャ「冗談いってる場合ですか!」

二人が話しているうちに、黒い人型は二つに分かれた。
一歩進んで、形を変えて。それぞれ二人がよく知る声で問い掛けた。

ーリーシャ…さぁ来なさいー

ーグラン…一緒に行こうー

グランリーシャ「……」

グラン「まだその手にかかると思われてるなら遺憾だな」

リーシャ「同感です」

グラン「にしてもあの髭と眼帯の人はリーシャの父さん?ダンディーだな…」

リーシャ「グランは…結構似てるんですね」


グラン「悪いけど」
リーシャ「残念ですが」

グラン「俺の親父はこんなとこに迎えに来てくれるようなタマじゃない!」

リーシャ「今の私を父さんが見ても、何も言ってはくれないですから!」

グラン「「偽物は引っ込んでろ!」」リーシャ


二人の叫びは人型を霧散させる。
その瞬間、世界が大きく揺れた。

グラン「じ、地震か?」

リーシャ「街が壊れていきます!」

建物は次々と崩落し、どこからか上がった火の手は瞬く間に燃え広がった。
広場の出口を塞ぐように火の手が回ると、散り散りになった影はまた風のように飛び回り、そして唸り声をあげて再び形を作った。

グラン「ガンダルヴァ…」

リーシャ「どうして…?」

目の前に現れた帝国中将ガンダルヴァに、グランは僅かに後ずさる。

グラン「そうか…暴走の原因は俺にもあったんだな…」

リーシャ「グラン?」

グラン「俺の強すぎる負の欲望、感情がお前の中で耐えきれなかったんだな」

グラン「ごめん。だから今、楽にしてやる」

グラン「俺の記憶の中から絶対的な恐怖としてそいつを選んだんだろけど」

グラン「でももう違う。俺には敗北の理由がもうわかってる」

グラン「だからもう、お前に負けることはないんだよ」


グラン「夢だっていうなら!もう少しご都合主義でいてくれ!」

グランは左手で地面を殴った。否、地面の中に手を突っ込んだのだ。
そしてそのまま何かを掴んで引き摺り出す。
その手には一振りの剣が握られていた。

グラン「はっ!」

グランは一気に距離を詰めるとガンダルヴァを逆袈裟に切り上げた。
甲高い金属音が響く。
緑色の大剣の鞘は傷一つつくことなくグランの刃を止めていた。

グラン「相変わらず堅いやつだな」

そのままグランを鞘で跳ね飛ばすと今度はその鞘を横に薙いだ。
グランは着地と同時に前転する。かわしつつ懐に潜って一発腹に拳を打ち込んだ。
その拳にはグローブが巻かれていた。

グラン「よっと!」

またもや地面に手を差し込むと今度は銃を手にして立ち上がった。

そのまま躊躇なく引き金を引く。一、二発は当たったがあとは全て弾かれる。

グラン「わかってきた、夢での戦い方ってやつが!」

撃ち尽くした銃を投げ捨てると、今度はすぐに杖を取り出した。
魔法を唱えるが、命中は叶わず地面に穴を穿つだけに留まる。

コピーとはいえ、グラン記憶の中のガンダルヴァを模しているだけあって恐ろしいスピードである。

接近されたグランは振り抜かれた一撃を杖で、両手で受けてしまった。
これでは剣や槍の構えのように傾斜を使って受け流すことができない。

耐えきれず柄が真っ二つに折れる。
とっさの判断でグランは横っ跳びで植え込みに飛び込んだ。

グラン「持病怪我は持ち込めるのか…」

また少し痛み始める右手首を気にしながら立ち上がるグラン。
しかし追撃はすぐそこまで迫っていた。

焔を迸しらせながら、鞘による斬撃が走る。
突き、薙ぎ払い、袈裟、逆袈裟を後退しながら見切る。
しかし顔を狙った大振りの斬撃、これを仰け反って避けてしまう。

グラン「…しまっ」

重心が上半身に残ったため、とっさに動けなくなってしまった。
そこを見逃す敵ではない。
腹部に深々と突き刺さった前蹴りは、グランを吹き飛ばした。

グラン「ぐふっ…!」

そのあまりの衝撃に膝を折り、這いつくばるような格好になる。
霞む視界の中で、振り下ろされた一撃が見えた。


リーシャ「私を、忘れるなぁ!」

リーシャがその剣で攻撃を弾く。
ガラ空きになった正面に繰り出した斬撃は横一文字に切り裂いた。

グラン「…ちょっと遅いんじゃない?」

リーシャ「このバカ!なんでいつも一人で行くんですか!」

リーシャ「大体グランが投げ捨てた剣を拾いに行ってたんです!もう少し上手く投げ捨ててください!」

リーシャ「そもそも、グランが勝手に」

グラン「あぁわかった、わかったってば!悪かったよ、もうしない。だから泣くなって」

リーシャ「な、泣いてません!これは、違いますから!…それより本当にもう無茶しませんか?」

グラン「約束するよ、馬鹿は死んでも治らないって言うだろ?」

グラン「今ので死んだからな、俺。それに実感できた」

リーシャ「何を?」

グラン「今までの俺は独りよがりだったよ、仲間と戦うってことの意味を履き違えてたんだ」

グラン「仲間は引き連れるもんじゃない、背中を預けあうもんだ」

グラン「頭じゃわかってても、それができてなかった」

リーシャ「…そっか」

グラン「だから自分だけじゃなくて、味方にまで迷惑かけてたんだよな」

グラン「ほんと、おこがましいよ。俺より強い奴だっていっぱい居んのに、多分肩書に奢ってたんだ」

グラン「そんな俺はもう死んだ、新しい俺のお披露目と行こうか!」

グラン「もう負ける気はないぞ、
ガンダルヴァ」


ガンダルヴァの刺突をグランが盾で弾き、その隙にリーシャが切り込んだ。
傷口から血はでないものの、黒い砂のようなものが零れ落ちていく。
盾は厄介と思われたのか、グランに突進をかまし、弾き飛ばした。

リーシャが斬りかかるがやはり鞘による守りは堅い。
鍔迫り合うと、やはりリーシャが力負けしてしまう。
だかリーシャは冷静に距離を取った。

しかしガンダルヴァにはリーチにも分がある。着地のタイミングを狙った攻撃を仕掛けられた。

これを真っ向から剣の腹で受けてしまった為に真っ二つにされてしまう。

リーシャ「そんな…!」

丸腰となったリーシャに向けて大きく振りかぶった。

グラン「除け者は勘弁だぜ?」トライン!

放たれた3発の弾丸はその手甲、柄と頭を穿つ。
その手を離れた大剣は地面に落ちる。

グラン「リーシャ、下がれ!」アローレイン!

つがえられた矢は灰色の空へと放たれると雨となって降り注ぐ。
数多の矢は針となってガンダルヴァを地に縫い付ける

グラン「今のうちに…!」アイス!

グランが放った氷塊は着弾と共に華が開くように広がり、全身を凍結させる。

グラン「リーシャ、こいつを使え!」

リーシャに新たな剣を投げよこす。
地面を滑る抜き身の刀身はリーシャからだいぶ離れたところで静止した。

リーシャ「グラン…下手、ですね」

グラン「左手なんだよ、許して!」

その時氷塊が動いた。
亀裂がはいり、そこから水が漏れる。そこを中心に石畳に水溜りが出来上がっていた。

「ラアアアアアアアアア!」

雄叫びと共に氷が弾け飛ぶ。湯気を立ち昇らせながら、リーシャに向けて飛びかかった。その手には氷剣が輝く。

グラン「器用なやつだな!」チェンジ!

グランはリーシャとその位置を交換する。
振り下ろされた氷剣を、グランは右腕で受け止めた。

リーシャ「グラン!」

氷剣は砕け散り、ガンダルヴァは投げ飛ばされる。だが、砕けたのはそれだけではなかった。

グラン「やっぱり…腕が軽いな」カウンター!

リーシャ「グラン!手首の固定が…!?」

グラン「こうなったら、全力でいくか。少しくらい無理しても夢だし大丈夫だろ」

リーシャ「そういうものなのかな…」

グラン「さぁ、構えろ!ここからが正念場だ」

言い忘れてたけどride the windかけて世界の破壊者風にお読み下さい



グランは立ち上がったガンダルヴァに声をかける。

グラン「お前さ、その剣抜けないんだろ?俺の記憶のコピーだもんな、俺が知らないものを知るわけないか」

その問いに答える者はいない。
それを気にした様子もなくグランは続けた。

グラン「まぁいいや…悪いけどここで、倒されてもらうぜ」ランページ!

グランとリーシャが駆ける。
それぞれの斬撃が二方向から切り刻んだ。
呻き声を上げながらも、隙をついて飛び上がり、獲物を手に取る。
そして構えをとって相対した。

リーシャ「グラン気を付けて!大きいのが来る!」

その溢れ出す覇気に、リーシャは顔色を変えてグランに向けて叫ぶ。
だがグランは顔色変えず、振り返ることもしなかった。

ガンダルヴァの後ろ足が沈む。
そして一気に加速し、グランへと迫った。

「アアアアアアアアア!」

リーシャ「グラン、避けて!」

グラン「…いいや」

物凄い衝撃が広場を震撼させた。
石畳の一部は大きく剥がれ、二人を中心にクレーターのようになっていた。

グラン「何の問題もないね」ファランクス!

リーシャが見たのは、軽々と盾でガンダルヴァを抑えるグランの姿と、二つにへし折られたガンダルヴァの剣だった。

グラン「…終わりにしよう」


グラン「リーシャ、いくぞ!」ウェポンバースト!

リーシャ「はい!」

二人は剣を構える。
まだダメージが回復していないのか、敵はフラついていた。

グラン「ライジングソード!」
リーシャ「サンライズブレード!」

光に満ちた斬撃はガンダルヴァの体を引き裂き、跡形もなく消し去った。



リーシャ「…何も起きないですね」

グラン「…そうか、本体はあっちか」

グランは振り返る、目線の先には黒く濁ったガラス球もとい星晶。
もう街は元の姿が想像できないほどに壊れていた。
広場の周りも例外ではなく、川もまた、瓦礫で堰き止めたようになっている。
二人は彫刻に近づいた。力は溢れ出し、誰が見ても暴走しているのを感じられる。

リーシャ「…すごいプレッシャー」

グラン「こいつをここまで追い詰めたのは、俺にも責任がある…」

グランは右手で剣を抜くと、そのまま突き落とした。

グラン「…ぐ、もう限界か」

そういうグランの右手は震え、何か握れるとは到底思えない。
突き立てようとした剣は弾かれると、地面に触れることなくそのまま砂と化して消えていく。

グラン「もう、この世界にも限界がきてるみたいだ」

リーシャ「……」

リーシャは自分の剣をグランに差し出す。グランはそれを左手で受け取った。
恐らくこれが最後のチャンスであることも直感的にわかった。

リーシャ「…なら、その責任を私にも背負わせてください」

リーシャはその左手に手を重ねた。

リーシャ「嫌って言っても、聞きませんけど」

グラン「…ありがとう」

二人は剣を高く掲げる。顔を見合わせると一気に突き下ろした。

グラン リーシャ「せーのッ!」

刃が星晶に突き刺さる。亀裂が生まれ、全体に広がった。

グラン 「オオオオオオオオオオ!」
リーシャ「ハアアアアアアアアア!」

二人はその手に込める力を強くする。
ゆっくりと、ゆっくりとではあるが徐々に刃は星晶に沈んでいく。
亀裂から光が漏れていく、黒い光はやがていつか眩い白へと変わり街を包み込んだ。

パリン

光は一層強くなり、そして消えた。


リーシャ「終わった…?」

二人は辺りを見回す。
星晶だったものは、今はただのガラスのように透明で…色もない。

グラン「リーシャ、あれ!」

グランは空を見上げる。
灰色の空がひび割れていく。天頂が壊れたのを皮切りに、世界に光が、色が降り注いだ。

リーシャ「街が…!」

眩い光を浴びた部分から、街は少しずつ消えていた。
崩れた家も、焼けた時計塔も。
少しずつ、この世界から消えつつあった。

グラン「元の世界に戻れるみたいだな」

リーシャ「…とても長かったです」

グラン「そうだな…帰ったらまずは」

グラン リーシャ「寝たい!」

二人は笑いあう。
かれこれ丸一日は寝ていないし、グランに至っては見張りのせいで更に半日寝ていないような気分だ。

グラン「あ、でも俺たちの体は今寝てるんだよな」

リーシャ「…すごく体に悪そう」


グラン「…お迎えが来たみたいだな」

ついに二人の頭上にも光が差し込んだ。
二人を中心に、円を小さくするように、ゆっくりと石畳の地面が消えていく。

リーシャ「こんなことを言うのはなんですけど…私グランと二人で色々できて楽しかった」

グラン「俺もだよ、色々といい経験になっ」

リーシャ「そういう意味じゃないんです!そういうのじゃ…」

グラン「リーシャ…」



リーシャ「私、グランのことが好きです」



リーシャ「い、いいですよね?ここは夢の中だから…きっと起きたら忘れてる」

リーシャ「卑怯かもしれないけど…だから伝えます。グランが好き」

リーシャ「現実で言えるかどうかわからな…ん!?」


グランはリーシャを引き寄せた。
後頭部を掴んで、無理やりとも言えるようなキス。
たった数秒の出来事だった。

グラン「…忘れないよ、絶対忘れない」

リーシャ「ぐ、グラン…今」

グラン「あんなこと女の子に言われたら無下になんでできないよ」

グラン「俺もリーシャのこと、好きだ…っておい泣くなよ」

グラン「現実で言える勇気がリーシャにないなら、俺が言いに行くよ」

リーシャ「…ありがとう」

光が二人を包む。
二つの影はもう一度一つになり、そして消えていった。


ラカム「にしてもすげぇ祭りだなぁ!お、花火があがるぜ!」

イオ「ねぇラカム、リンゴ飴って何?」

ラカム「なんだイオはリンゴ飴知らねぇのか?しゃあねぇ買ってやるから食ってみろ」

カタリナ「こらこら、新しい出店を冷やかすのはいいが、先に買ったものは食べきってくれよ?」

イオ「はーい」

ラカム「って、こんなに買ってたのかよ…太るぞ?」

ビィ「リンゴ飴かぁ…へへなんか美味そうじゃねぇか!」

カタリナ「ビィ君、リンゴ飴食べようか!」

イオ「ちょっとカタリナぁ!」

オイゲン「ハハハ、食い気もビィにゃ勝てないってか?」

ロゼッタ「もう…。折角お祭りに来たのに食べることばっかりなのね」

ラカム「にしてもシェロの奴、祭りがあるなら先に言っておいてくれれば良いのによ」

カタリナ「急な提案で驚いたが…まぁ、団の皆も楽しんで…」


パーシヴァル「中々に美味いな、庶民の味というのも」

ヴェイン「お、パーさん!イカ焼きとは通だねぇ、ちょっと頂戴!」

パーシヴァル「き、貴様ぁ!」

ランスロット「お、落ち着けパーシヴァル!」


カリオストロ「おじちゃん!オマケ、欲しいなぁー☆」

クラリス「あぁ!ずるいずるい、ウチにもちょうだーい!」

ファスティバ「あらあら、なら私にも欲しいわー」


ライアン「ビィ君人形いかがですかー」

ウィル「いかがですかー」



メーテラ「こういうお祭りの時なんて、逆ナンされる絶好の機会のはずじゃん?」

スーテラ「姉様、多分両手に抱えた焼きそばのせいですよ…」


ヤイア「おいしいチャーハンはいかがですかー」

アルドラ「ごはん炊けましたぁ」

アレク「おい、待て!なんで俺が動力なんだよ!」

アギエルバ「鉄板の火力落ちてるぞアレクぅ!」

アレク「助けてくれえええええ」


ゼヘク「ぬぅ、布が邪魔でうまく食べられない…」

ロザミサ「仮面が邪魔でうまく食べられない…」

アルタイル「本が邪魔で、うまく食べられない」

レ・フィーエ「一度置かれてみれば?」

「「「その手があった」」」


カタリナ「うん、楽しんでいるな、すまない私は急用ができた!」

ビィ「お、おい!…行っちまった」

ビィ「ところで、なぁルリア」

ルリア「ふぁい、ふぁんでひょうふぁ?」

ビィ「食べきってからでいいや…」

ルリア「…ごっくん。はい、なんでしょう?」

ビィ「そういやグランとリーシャの姿が見えねぇけどよ、どうしたんだ?」

ルリア「あぁ…お二人なら寝てらっしゃるんじゃないですか?」

ビィ「寝てんのかよ…しゃあねぇなぁ起こしに行ってやるか」

ルリア「あぁ、ダメですダメです!お二人とも物凄く疲れてらっしゃるから…」

ルリア「誰も起こしちゃだめですよ!」


終わり

くぅ疲、こに完。
お付き合いいただきありがとうございました。とりあえず依頼出してきます。
感想とかくれると嬉しいです。それではまた、どこかで

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