連続パンティひったくり事件の真相 (10)


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すっかりオレンジに変わった夏の西日が、私の影を背後に長く長く伸ばしている。この方向で助かった。きっと私だけがそう考えていた。

時刻は午後17時くらいだろう。

遠くなりつつあるグラウンドの掛け声に背中を押されながら夕日に向かって帰路をゆく。私はそんな連中の中に紛れて居た。

彼らは私を含め十数人ほどで、それぞれバラバラに歩いているのだが、もう10分も後には、たった2人にまで減るだろうことを私は知っていた。

つまりは、私と、彼女だけになる。そういうことだ。

そのためにも、20メートル先を行く彼女を見失わないようにしなければ! 私は犯人を尾ける探偵のような気分でいた。

少し歩くと、前方に右へ折れる小道が見えてくる。町役場へと続くゆるやかな坂だ。

確か、私の記憶によれば、私の少しうしろを並んで歩いているカップルの家は隣同士であり、場所も役場のすぐ近所だったはずだ。

よし。

予想通り、二人の話し声はどんどん右へと遠のいていく。

いちおう、首だけでちらっと振り返ってみると、もう背後には誰の姿も見えなくなっていた。そして、彼女とも相変わらずの距離が保たれている。順調だ。

さぁ、はやく私と彼女の二人だけにしておくれ。

そんなはやる気持ちでいっぱいだったが、普段この道をあまり通らない私だ。徹して、目立たないようにしなければ。なにせ、私の帰り道は反対方向なのだから。

幸い私は位置的には最後尾にいる。不自然な音を立てたりしなければ、誰も振り返ったりはするまい。大丈夫だ。

しばらく歩いている間に、もうほとんどの人間があちこちへ散っていった。もう、彼女と私と、あと2人ほどの人間しか居ない。

そして、そのあとの2人というのも、この先のY字路を左へ進むはずだ。彼女は右の小道へ逸れる為、こっそり彼女をつけている私も彼らとはここでわかれる形になる。

果たして、私は彼女とふたりきりになった。尤も、ふたりきりと呼ぶには少々距離が離れすぎていたが。

しかしそれもここまでの話だ。

私は、住宅地の手前である、この閑散とした小道を犯行現場と決めていた。

車道は最後まで残っていたあの2人が歩いている一本左の道であるから、ここを通る車はないに等しく、目撃される恐れのある住宅地もまだ300メートルは先にある。

よって、ここなら懸念される心配は殆どない。

そうと決まったら、私は速かった。

急ぎバッグから水泳帽を取り出して頭に被り、ゴーグルで両目を覆う。仕上げに使い捨てマスクという完全装備だ。

これで、どこからどうみても、私は私でなくなった。注意してジっと覗き見られでもしない限り、ひと目で正体を看破されるなんてことはないだろう。

彼女は背後を気にすることなく、相変わらずの20メートル先を呑気に歩いていた。太陽が東に沈んでいたら、彼女はとっくに私に気がついていたかもしれない。私は駆け出した。

5メートルも進んだところで、ようやく彼女が振り返り、目を剥いて慄いた。

彼女の目に映った光景を考えれば無理もない。

女子中学生らしい甲高い悲鳴を上げながら走りだした彼女だったが、助走の差で、すぐに私が追いついた。

捕まえようと手を伸ばすと、彼女はつんのめって前に転ぶ。なんとか顔は両手で守ったようだが、膝を打ったらしく痛みにのたうち回っている。

好都合!

当然怪我の心配など以ての外である私は、すぐに体操服姿の彼女のハーフパンツに手をかけ、パンティごとを思い切りひん剥いてやった。

つるん、とした白い尻があらわになる。

キャッ!という嬌声を漏らし、彼女は一瞬痛みを忘れたかのように目を丸くした。が、直後赤面し膝のあたりまで降りたそれらを掴んで抵抗を始めた。

「なにすんのよアンタッ!! もォっ! やめて! 離してよおお゙っ!」

目に涙を溜めながら、必死の形相で抵抗する彼女だったが、地面に足をつき、腰を入れて獲物を引っ張る私の力のほうが勝った。

マスクから洩れる息で規則的にゴーグルを曇らせながら、綱引きの要領でリズミカルに短パンごと仰向けの彼女を引きずり回し、ようやく彼女の両足から奪い取ることができた。

彼女は尚も私からそれらを取り返そうと縋りついたが、いい加減イライラした私は、横合いから彼女の顔に強めの蹴りを入れた。

なぜだか、たかが布切れ一枚に死にものぐるいになるこの女が醜く思えたのだ。

顎と首のあたりに綺麗につま先が食い込む感覚があり、彼女は鈍い音ともにズルズル転がる。一拍遅れて、大きくもどこか不自然な泣き声が上がった。

おそらく蹴られた勢いで舌を噛んだのか歯が折れたのか、なにかしらの怪我を負ったのだろう。

だが、罪悪感はない。

とりあえずこれ以上ここにいてはまずい。

私はパンティと紺のハーフパンツとを分け、用のないハーフパンツは半袖シャツ一枚でいる半裸の彼女目掛けて放り投げ、今度は来た道を全速力で引き返した。彼女の泣き喚く声が聞こえなくなるまで走った。

途中、彼女の汗で湿ったパンティをくしゃっと丸めてバッグへ突っ込んでおいた。レースの付いた白くスタンダードなデザインのものだった。

私は、パンツ男。

過疎山の町が生み出した、許されざる下着強奪犯である。

初回はここまでにしたいと思います。

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