文才ないけど小説かく 7 (482)

ここはお題をもらって小説を書き、筆力を向上させるスレです。



◆お題を貰い、作品を完成させてから「投下します」と宣言した後、投下する。


◆投下の際、名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』を記入。メール欄は無記入。

 (例 :『BNSK(お題:文才) 1/5』) ※タイトルは無くても構いません。

◆お題とタイトルを間違えないために、タイトルの有無に関わらず「お題:~~」という形式でお題を表記して下さい。

◆なお品評会の際は、お題がひとつならば、お題の表記は不要です。



※※※注意事項※※※

 容量は1レスは30行、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)

 お題を貰っていない作品は、まとめサイトに掲載されない上に、基本スルーされます。



まとめサイト:各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/

まとめwiki:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/

wiki内Q&A:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?Q%A1%F5A



文才ないけど小説かく(実験)

文才ないけど小説かく(実験)2

文才ないけど小説かく(実験)3
文才ないけど小説かく(実験)3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357221991/)

文才ないけど小説かく(実験)4
文才ないけど小説かく(実験)4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373526119/)

文才ないけど小説かく 5
文才ないけど小説かく 5 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391418769/)

文才ないけど小説かく 6 (前スレ)
文才ないけど小説かく 6 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405065955/)

【次スレについて】

次スレは>>950の人が立てるようにお願いします。
無理だった場合や反応がない場合>>955の人が、さらに無理だった場合>>960の人がという具合に
以後は>>5ずつ後ろの人が宣言をして立ててください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405065955


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454759856

▽書き手の方へ
・品評会作品、通常作を問わず、自身の作品はしたらばのまとめスレに転載をお願いします。
 スレが落ちやすいため、特に通常作はまとめスレへの転載がないと感想が付きづらいです。
 作業量の軽減にご協力ください。
 感想が付いていない作品のURLを貼れば誰かが書いてくれるかも。

※↑現在冷温停止中? 詳しくはスレ内で確認をお願いします。↑※


▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい。

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です。
・【!】お題:支援=ただ支援するのも何だから小説風に支援する=通常作扱いにはなりません。

▽その他
・作品投下時にトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
・ただし、作品投下時以外のトリップは嫌われる傾向にありますのでご注意を

▽BNSKスレ、もしくはSS速報へ初めて来た書き手の方へ。
文章を投下する場合はメール欄に半角で 「saga」 (×sag「e」)と入力することをお勧めします。
※SS速報の仕様により、幾つかのワードにフィルターが掛けられ、[ピーーー]などと表示されるためです。



ドラ・えもん→ [たぬき]
新・一 → バーーーローー
デ・ブ → [ピザ]
死・ね → [ピーーー]
殺・す → [ピーーー]

もちろん「saga」と「sage」の併用も可能です。

▲週末品評会
・毎週末に週末品評会なるものを開催しております。小説を書くのに慣れてきた方はどうぞご一読ください。
 wiki内週末品評会:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?%BD%B5%CB%F6%C9%CA%C9%BE%B2%F1
 ※人口減少のため、不定期の開催になり、月末品評会に遷移していてきました。また、てきすとぽい(http://text-poi.net/)を利用する試みが行われています。※
 ※↑管理者不在の為、週末・月末共に現在開催はされていない模様です。ボランティアの方の助力次第ではまた開催も……?
  (文才ないけど小説かく 6 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405065955/509)) 本当にお疲れさまでした

前スレのテンプレートを一つに纏めて、最後の品評会について自分が分かる範囲で修正しておきました
詳細をお知りの方は適宜補足をよろしくお願いします

http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?bnskのトップページのリンクを修正して参ります

それにしても、やる夫スレに嵌ってる間に落ちてるとは吃驚だ

お題下さい

再開したときの例に倣いつつ仕切っちゃうね
来月1日は水曜日なので日曜日しめきりということで投稿期間は5日にしますね
期日前投稿は・・・どうしましょうか
個人的にはアリだと思いますけど


投稿期間:2016/06/01(水)00:00~2016/06/05(日) 24:00
宣言締切:三日24:00に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2016/06/06(月)00:00~2016/02/12(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※

※※※注意事項※※※
容量は1レス30行・4000バイト、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)


あと月末品評会お題とレス数をささっと決めよう
お題は参加しやすいようにと再開ということで2つ決めます
どちらかのお題でもどちらのお題を使ってもok

みなさんの意見もあるでしょうから数レスあけておきます

お題>>135-136
レス数>>137

こんな感じでやってみましょうか

投票期間なんで2月になってんだよお・・・
6月12日の日曜日ですね・・・・サーセン・・・

幼稚園

10

いまさら気づいた6月〆切にしたら月末じゃねえじゃん・・・ww
今回は混乱をさけるため日程はこのままとします

2016年5月末品評会
お題『幼稚園』『異能』
制限 10レス以内

投稿期間:2016/06/01(水)00:00~2016/06/05(日) 24:00
宣言締切:三日24:00に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2016/06/06(月)00:00~2016/06/12(日)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※

※※※注意事項※※※
容量は1レス30行・4000バイト、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)

こんな感じで今回は開催します
テキストぽいとかはわからないです

投下します

 高校進学を機にスマートフォンを持つようになって、SNSが持つその一種の力のようなものを初めて実感し
たのはいつ頃だったろうか。
 それまでもTwitterというSNSが存在していることは知っていたし、それがどのような機能を持ち、人々が
どのように利用しているのかもある程度理解しているつもりだった。
 だが、実際自分がTwitterに登録して利用して見ると、それまで知っていた知識とは比べ物にならないほど
の大きさの人と人の繋がり、そうまるで巨大な組織のようなある種の大規模なコミュニティが形成されてい
ることに僕は気がついた。
 そう、思い出した。はじめにこのTwitterの恐ろしい力を実感したのは、去年、僕が高校一年生の時だ。
 クラスの所謂リア充グループに属する、仮にここではA君としよう、その彼が引き起こした、いや巻き込まれた、
被害にあったとも言えるそんな事件がきっかけだったと思う。
 一年生のはじめの頃、まだクラスのみんなが馴染めていないときだ。なんとなく近くの人同士で携帯電話の番号、
メールアドレス、そしてTwitterのアカウントを教えあおうという空気ができていた。人見知りするほうの僕ですら、
高校進学したばかりの高揚感とその場の空気に流されてアカウントを作ったものだった。
 しかし、ただ一人その空気に混ぜれない人間がいた。彼のことをここで仮にB君としよう。いまどき携帯を持って
いない高校生なんているはずがなくB君も携帯電話は持っていた。しかし、彼が持っていたのはスマートフォンでは
なく、かなり古いタイプのガラケーでTwitterをすることができなかったのだ。
 はじめはそのB君の持っていたガラケーの物珍しさと、彼をいじるネタな部分があり、別段険悪な雰囲気はなかった。
だが、やはり高校生活を送るうえで一人だけ情報をみんなと共有できないというのは、きっと、親や教師ほとんどの
人間が想像しているよりずっと大きな問題があったのだろう。
 次第にB君を弄る行為はエスカレートしていき、その中でも特に酷かったのは先ほどのA君だった。
 A君はクラスの人気者であり、成績も優秀、不良のような素行はなく教師からの評価も悪いものではなかったと思う。
そして彼はみんなを笑わせるのが得意で、つまりそういったお笑い芸人的な要素でクラスの地位を獲得した人間だった。
 彼はある時、ガラケーを操作しているB君をスマートフォンで撮影してTwitterのアカウントに画像つきでツイートした
のだった。そして、このA君のツイートはクラスの中で反響を呼んだ。良い意味で。
 このツイートはたちまちクラスの中で笑いの種となり、大量の「いいね」を生み、リツイートがリツイートが呼び、
やがてクラスの輪から飛び出し他のクラス、他の学年へと飛び火していった。
 これが、きっとA君が想像しているよりみんなにウケてしまったのが、この行為をエスカレートさせてしまった
原因だったのではないだろうか。

 やがて「今日のB君」というハッシュタグを付けられたB君の画像つきツイートが毎日のように投稿され、中には
それを真似する人間も出てきたが、やはり最初にはじめた人間というのは著作権や特許がそうであるように一番偉い
ものだ、A君は学校一の人気者という地位を不動のものにした。
 だがあるとき事件が起きた。
 数週間後に全校生徒での球技大会あり、体育の授業でそれぞれ出場する競技の練習をしていたときだった。
 B君はサッカーに出場することになっていたため、同じくサッカーに出場する生徒たちと校庭でボールを追いかけて
いた。その中にA君もいた。
 B君は足元に転がってきたボールを思いっきり蹴ろうと足を振りかぶり、ボール目掛けて勢いよく足を振り下ろした。
だが、B君の運動神経が悪いのか、ただ単に運が悪かったのかはわからないが、B君のシュートはそれはもう見事な
空振りに終わり、彼は勢いそのままに顔面から地面に転がったのだった。
 それを見たA君は、まるで大物が釣れたと言わんばかりに意気揚々とスマートフォンを取り出すと、B君の泥と鼻血に
塗れた無様な面を撮影して、すぐさま「今日のB君」をツイートしたのだった。
 それが不味かった。
 B君が間抜けに転がったのを見たほかの生徒たちも彼を囲み「大丈夫かよー」と笑いながら声をかけていたのだが、
そのB君を取り囲んでのはA君が撮影した画像はまるで、集団でリンチされている被害者の図そのものだった。
 そのツイートはたちまち波紋を呼び、やがて学校内の輪を飛び出し、まるで関係のない赤の他人の目にも晒され、
やがて全国区で取り沙汰されるニュースになった。
 A君、およびに「今日のB君」をツイートしたことのあるものは全員もれなく退学処分となった。
 学校側の処分に疑問視する声もでたそうだが、ではいったい誰が真に悪いのかどうやって線引きをする?
 全世界へと通ずるネット上に、毎日本人の預かり知らぬところでその画像を上げ続けることは間違いなく
モラルに反する悪なのだ。そして直接画像を上げていないがそれに反応したものも、やはり同じように加害者で
あることには変わりないのだ。
 ならば学校側としてはわかりやすく「今日のB君」をツイートしたことのある人間と、そうでないもので区別
するしかなかったのではないだろうか。

ねえB君、未だガラケーっていうのはどうなの?」
「だから、おれは家に自分用のパソコンあるからいらないの」
「ふーん、最近はTwitterよりLINEでみんなやりとりしてるんだよ」
「知ってる、けどおれ友達、お前しかいないからやっぱ必要ない気するんだよなあ」
「このLINEってのうまく使えば、また僕と君で裁き下せるんじゃない?」

「お前、ほんっとそういうの好きな」
「だって悪人を裁くのって気持ちよくない?」
「まあね」

 SNSというある種ひとつの力のようなものに僕が魅かれてしまったのはいつの頃からだったろうか。
 この力は別に僕だけが持っているものじゃない。
 A君も、B君も、そこら中にいる有象無象の人間たちの手のひらの中にその力は存在している

はい、30秒で間に合わなかったので時間外となります。ありがとうございます
小説らしきものを久しぶりに書いたので感想が欲しいです!

ちなみに今回主催しました。
締め切り期間などで不備があり大変申しわけございませんでした

次回開催はテキスポ?なども調べてそちらのほうでも呼びかけしてみようかなと思っております。

常生の牢獄(お題:幼稚園/異能)◆NSr7d3y3ORk4氏

求めたのは21グラムの魂と君の言葉ェ・・・・
自分も伊藤計劃好きなんですよ(屍者の帝国は劇場版を見ただけですが)
ほんとね「人間は死亡すると生前に比べて体重21グラムほど減少することが確認されてるいる」
ってこのフレーズとそこから始める冒頭部分大好きなんですよ!!

故にこの話はあまりにもその設定に頼りきった、ほんとんどそれだけで◆NSr7d3y3ORk4氏の加えたアレンジも、むしろ薄めただけ?で・・・
説明しないとあれな部分もあるけど説明部分をもう少し省いてでも、物語として昇華してほしかったなあ・・・
ところどころに散りばめられた伊藤計劃要素もあるけどうーんですね
そういえば「屍者たちの帝国」ってアンソロジーも出ているんですよね。読みたいし読む時間も欲しい。

今回自分は投票も関心票もなしにします。
それと自分の作品は時間外ですので、次のお題は2016/06/12(日)24:00投票期間終了後 ◆NSr7d3y3ORk4さんお題発表お願いいたします。

スケジュールの調整、テキストポイのほうへの呼びかけのなども調べて自分がやりたいと思いますので(遅れたらすいません!)お題のほうだけ考えておいてください!

すいませんほんとこんな感じでいいのかな?ってか人いんのかな?
こんな感じでやっていきたいと思いますー

問題点などございましたら指摘のほどお願いいたします

夕立

はいはーい品評会お題きめちゃいますよー
さくっと決めても締め切り2週間くらいしかないけど大丈夫かな?
意見あったらお願いします

あと勢いのないこのスレで安価もあれなので、お題に関して一つ制限を
お題の頭文字は「な」で決めてください
なんとなくの「な」です

お題>>174
レス数>>175

ななし

あ、あと(自分が書けなかったらイヤだから)お題もう一個決めましょう
こちらは7月に関するお題でお願いします
厳密にではなく7月っぽからアリです

お題2 >>176

おっとすいません自分で決めた安価すらよく見てなかった・・・・


お題2 >>177
レス数>>178

失礼しました・・・

ラムネ

7月の季語らしい

10

2016年7月末品評会
お題『ななし』『ラムネ』
制限 10レス以内

投稿期間:2016/07/01(金)00:00~2016/07/03(日) 24:00
宣言締切:三日24:00に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2016/07/04(月)00:00~2016/07/10(日)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※

※※※注意事項※※※
容量は1レス30行・4000バイト、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)


これで開催したいと思います
てきすとぽいのほうにも呼びかけしてみる予定・・

>>161のお題完成したので投下します

「しくじったなあ……」
 ユキコは空を仰ぎ見てぽつりとこぼした。
 図書室を後にする際、窓の外を見たときには降っていなかったのだが、
ユキコが校舎から出るといつの間にか空には暗雲が立ちこめぽつとぽつと小粒の雨滴を落としていた。
 いつもこうである。ユキコは雨が降るたびに自分の運の悪さ、
間の悪さのようなものを自覚せずにはいられなかった。

 ユキコが初めてこのことを自覚したのは小学生の時だった。
 小学一年時の運動会の日、共働きの両親がともに休暇を取り
ユキコの応援にと張り切っていたのだが、生憎の土砂降りだった。
 運動会は延期され、両親が仕事で来られない翌週に改めて開催された中、
一人で食べた冷たいおにぎりの味をいまでも思い出せる。
 この運動会に始まり、遠足、学芸会、修学旅行、卒業式と何か大きな行事があるたびにユキコには雨がついてまわった。
 それ以来ユキコは折り畳み傘を肌身離さず持ち歩くことを誰にともなく誓ったのだった。
 だが先日の気象庁の梅雨明け発表とその日は期末試験程度のイベントしかないからと油断をしていた。
今朝の天気予報でも一日快晴が続くと言っていたし、前日の雨で折り畳み傘をベランダに干していたことも
ユキコが珍しく傘を持たずに家を出ることに一役を買っていた。
 
「バス停まで走るしかないか……」
 こうしてぼんやりとしている間にも雨足は強まってきていた。先ほどまで小粒だった雨滴も
大粒なものとなり屋根や地面で弾けては大きな雨音を立てていた。
 ユキコは意を決してバス停へと走り出した。
 雨に打たれながらユキコは思う。雨に濡れるのはあの日以来だ。今でも時たま思い出すことはあるが、
こうして雨に打たれているとあのときの冷たい雨の記憶がより鮮明に浮かび上がってくる。
「うへー……」
 学校前までのバス停までは大した距離ではないのだが、それでも結構濡れてしまっていた。
濡れたブラウスからうっすらと下着の色が覗いているし、カバンの中の教科書類も心配だ。
 だが、図書室に残って少し勉強してから学校を出たこともあり、他にバスを待っている生徒はいなかった。
 バス停前のベンチに腰を下ろし、脚を投げ出してふーっと一息吐く。
 視界を線となって通り過ぎる雨をと、道路に叩きつけられて弾ける雨粒を眺めながらユキコは思う。

 自分は死神なのかもしれない、と。最近読んだ小説の中に出てきた死神だ。その死神は仕事のために下界に降りてくると
いつも雨が降っているのだ。そして、自分は晴れ間を見たことがないと。
 ユキコもこうして自分が雨に見舞われているときに誰かが死んでいるのかもしれないと想像してしまう。
そんなわけはないのに。でもいつも、降ってほしくないときに雨が降るものだから、雨と死神を結びつけて想像してしまう。
それに自分は雨女だ、と考えるより死神と思ったほうがなんとなく、かっこいい。
 そんなとりとめもない妄想を続けていると、やがてバスがやってきた。
 ユキコを乗せたバスはガタガタと揺れながら発進し、ゆったりと進んでいく。住宅街を抜けて小学校前、スーパーの前、
他に何もない歩道にぽつんとあるバス停の前を通りすぎ、やがて一つの高校の前で停車した。
 バスの中ほどから乗車してきた一人の女の子と目があってユキコははっと息を呑んだ。
 中学生の頃の友達だった。それも一番仲のよかった、アキだった。
 アキもユキコを見つけて目を見張り動きをとめるが、やがてガタガタと揺れて発進したバスに慌てて近くの席に座った。
 ユキコはバスに揺れるアキの背中を見つめながら、なんで!? どうして!? と頭の中で繰り返した。
 アキとは中学の卒業式以来、連絡を取っていなかった。いや、それ以前、高校の合格発表のあの日を境に連絡はおろか
口すら利かずまったくの疎遠となっていた。

 ユキコとアキは同じ高校を受験し、その日は父の運転で高校に張り出される合格者通知を共に見に行ったのだ。
そんな一大イベントであるにも関わらず、その日は珍しく晴れていたのを覚えている。
アキも「こんな日に晴れるなんてきっと良い結果だよ」と緊張を隠すように笑っていた。
「ひぃ~ウチ、死ぬかもしれへん。口から心臓が出て死ぬかもしれへん……」
 高校に到着し、いざ掲示板を前にしたユキコは緊張のあまり卒倒しそうになっていた。
 アキはそんなユキコを「よしよし」と宥めて「よし、せーので一緒に見ようか」と言った。
「う、うん。せーのね。せーの、ね!?」
「せーの!」
「ひぃ~!」
 ユキコは恐る恐る目を開き掲示板を見上げた。
 4446。それがユキコの受験番号だった。1000番台、2000番台、3000番台と飛ばし、4000番台から番号を目で追っていく。そして。
「あ、あった! あったあった! あった!」
 ユキコは自分の受験番号を見つけて、喜びのあまりアキに抱きかかった。
「アキは!? アキは受かった!?」


 喜び勇み、アキに抱きつくユキコの鼻頭に冷たい雨滴が当たった。
「あ……」
 見上げると薄暗い雲が空を覆い、まばらに雨が降り出していた。
 しばらく沈黙のまま掲示板を見上げていたアキがぽつりと言った。
「ごめん……」
 興奮していたユキコを現実に引き戻すようにさーっという雨音が辺りを包み込んでいた。
「ごめん……」 
 雨音にかき消されるくらい小さな声でアキがもう一度呟いた。
 その泣き顔を隠すように雨が一層強く降ってきていた。

 本当は知っていながら知らぬふりをしていたのだ。仲の良いアキが、滑り止めに受けた高校を、ユキコが知らないはずがなかった。
そして、自分の通う高校の前から出てるバスが、アキの高校前で停まることも。
 知らないはずがなかった。
 ただ、まさかという思いがユキコの中にはあった。この日、このタイミングで、まさかアキがこのバスに乗ってくるなんて。
 あの日以来、アキがユキコに連絡をしてくることはなかった。ユキコもまた、負い目のようなものを感じて声をかけることができずにいた。
そもそも、なんと声をかければ良かったのだ。一緒に受験した希望校に、自分だけが受かったのに。
 バスは直に終点の駅前に到着する。ここでまた、見なかったふりをして帰途につくのか。それではまるで、
二人の訣別を決定づけるような気がしてならなかった。でも、今更なんと声をかける。核心を避けて笑顔を取り繕って、
あの日のことなんてなかったかのように話すべきなのか。まるで、親しくない間柄の世間話のように。
 そんなこんなと考えているうちにバスは終点に到着してしまった。
 アキが一度、ちらとユキコの方を振り返った。一瞬、何かを言いたげに口ごもるが、すぐにそそくさとバスを降りていってしまった。
それを見てユキコは決意した。
 自分から話かけないと、きっとこれっきりだ、と。
 ユキコは急いでバスを降りると、傘を差して歩きだしたアキの背中に声をかけた。外は、小雨と言っていいほどに落ち着いてきていた。
「アキ!」
 振り返った彼女の表情は、どこか苦しげに歪んでいた。ユキコも声を掛けたものの、何を話すべきのか、まったくわからないままだった。
「あ、あのさ……」
 ユキコは苦笑いを浮かべながら空を指さした。
「傘忘れちゃったから入れてもらってもいい……?」
 アキは一瞬ぽかんと口を開けてから、ぷっ吹き出した。
「ユキコはほんともう……」
 そう言って笑うアキの顔は、前と変わらぬ屈託のないものだった。

 一つの傘の下で肩を寄せ合い歩きだした二人は、はじめのうちこそぎくしゃくしていたものの、次第に前と同じように笑って喋ることができていた。
 結局、とユキコは思う。思い詰めすぎていたのかもしれない。たいしたことではなかった、とはユキコの立場からは決して言えない。
それでもこのまま仲違いして二人の関係が終わってしまうことに比べたら、きっとたいしたことではなかったのだ。
「あ……」
 アキが傘を下ろして、空を見上げた。
 ほんとうに間が悪いな、とユキコも同じように空を見上げて思う。
 雨に濡れた道が、きらきらと光を乱反射させている。雲間から差した陽光が二人の行く先を照らし出していた。夕立はもうすっかりあがっていた。
 もう少し相合い傘しながら歩いていたかったのに。ユキコはこっそり思った。

以上です

感想いただけると幸いです

8レス投下します
連投規制とかあるかもしれないので、しばらく投下されなかったら虫してください

 夏の日暮れどき、縁側の網戸に丸々としたカナブンがとまっていた。居間で兄と夏休みの宿題をやっていた僕
はちゃぶ台に肘をつきながら、西日に照らされたカナブンの陰影をじっと眺めていた。隣の空き地から虫の鳴く
のが聞こえる。風が吹くと、青っぽい湿った匂いがした。目の前には絵日記が広げられているが、日付以外は真
っ白なままだ。かれこれ三日、日記をなまけている。絵にしろ文にしろ、何も書くことが思いつかなかった。
「夏祭り兄ちゃんと行っていい?」
 と僕は言った。
 兄はカリカリと数学の問題を解きながら、顔も上げずに「おう」と応えた。今年高校受験を控えている兄は、
春先から別人のように真面目に勉強をしている。進学先は偏差値の高くない地元の私立校だが、好成績で合格
し、授業料が免除される特待を取らなければならない。両親は特待でなければ私立に進むことを許さないと言っ
ている。兄はなにがしかの分けがあって、どうしてもそこへ入りたいらしい。
 受験も何もない小学生なのに、何故勉強しなければならないのかと、白紙を鉛筆で突きながら考える。それか
ら、山岸の姉のことを考える。
   +
 先週、夏休みに入ってすぐの頃、スーパーでクラスメイトの山岸に偶然出くわした。僕は母親に夕飯の買い出
しで連れてこられていたのだが、野菜を選んでいるのを見ても面白くないので、一人お菓子コーナーをうろうろ
していた。陳列棚の向こうに、山岸を見つけたのはその時だった。特に学校で親しい仲ではないが、体育のチー
ム分けや遠足のグループで同じになったことがあった。彼は背が高く、縁のない眼鏡をかけている。目立ったこ
とをしないが、勉強はできるほうで、僕が密かに一目置いている男だった。「よう」と声をかけると、山岸はポ
ケットに両手を突っ込んだまま、顔だけこちらに向けて「ああ」と応えた。少し驚いた風だったが、大して興味
もないという顔だった。「何してんの」と訊くと「なんもしてない。ただ…‥」といいかけて僕の後ろに視線を
やった。
 振り向くと、色の白い学生服姿の女の人が買い物かごを持ってこっちに向かって歩いている。「姉ちゃんだ」
と山岸は言った。彼女も気がついたようで近くまで来た。「リュウちゃんの友達?」と彼女は僕を見て言った。
僕は人見知りの質で、口を閉じていた。山岸は「ああ、クラスメイトの中川」と言いながら、姉の横についた。
僕は今更「こんちは」と頭を下げた。山岸はこれで終わりという風に「それじゃあな、中川」と背中を向けた。
山岸の姉もつられて歩き去って行った。
 また一人になったので、両手を頭の後ろに組んで、お菓子を物色しようと思った。その時、去って行く山岸の

姉の話し声が聞こえてきた。「かわいい子だったわね」
 僕はすっかり嬉しくなって、母親のところへ走って行った。それから荷物持ちを手伝って、夕飯を食べてる間
「今日の料理はウマイなぁ」等と言ったりした。テレビもいつもより面白かった。
   +
 それから夏休みの間、僕は山岸の家に遊びにいくことばかり考えた。しかしそれが実現することはなかった。
家がどこにあるか知らなかったし、連絡網で自宅の電話番号がわかっても、山岸の家族が出たらと思うと、行動
に移す気にならなかった。それに、僕が山岸と二人で遊ぶというのがそもそもおかしなことに思えた。今まで何
度か二人で話したことがあったが、気がつくと当たり障りのない内容を話している内に「それじゃあ」と言われ
て終わってしまう。二人の間柄はそのくらい浅いものだ。
 しかし山岸も夏祭りには来るだろう。そして姉も一緒にちがいない。根拠もないのに、僕はそう決めつけて考
えた。そしたら彼女が「あら、あの時の子ね」と話しかけてくれるように思える。山岸の家に遊びにいくよりも
彼女に会える可能性は高い。しかし会ってどうするのだか、僕も知らない。
 ただ一つ、ラムネでも一緒に飲んだら楽しいだろうなと思う。
   +
 今日の分でもさっさと終わらせようと適当にカナブンの絵を描いていると、遠くから太鼓の音が聞こえてき
た。
「兄ちゃん」
 と声をかけたが、兄はまだ問題を解いている。返事もよこさないので、僕は日記帳を閉じて鉛筆を筆箱にしま
った。とっくにカナブンはどこかへ消えていて、外は薄暗くなっていた。
「まだ終わんないの」
「うるさいな。急がんでもまだまだ時間あるだろ。もうちっと黙っとけ」
「はーい」
 僕はまたじっと兄を待たなければならなかった。
 母は病気の祖母の見舞いに出ていた。母の兄弟たちと話があるから帰ってくるのは遅いということだった。夕
飯のお金は兄が持っている。ゆえに兄の言うことを聞いていないと、夕飯にありつけるかも危ぶまれる。もちろ
ん夕飯は、夏祭りの屋台で食べることになるはずだ。
 そしてラムネも……と考えて思い当たる。どうやって山岸の姉の分のラムネを買ってもらえばいいんだろう? 
兄にはどうしても、二本ラムネを買ってもらわなければならない。僕は全然お金を持っていない。
 太鼓と笛の音が風に乗って聞こえる。商店街はすっかり人でいっぱいだろうな、と想像する。焼きそばとイカ
焼きと、かき氷と、水風船。金魚掬いはできない。うちの水槽には兄が以前掬った金魚が、鯉みたいに太って水

槽の中を狭そうに泳いでいる。一緒に入れていた金魚をみんな食べてしまった奴だ。だからこれ以上の犠牲を生
むわけにはいかない。
 仕方がないので黙って畳の上に仰向けになって寝転んだりブリッジしたりしていると、兄が勉強道具をしまい
出した。
「よし、じゃあ行こうぜ」
 大仰に伸びをしながら兄は言った。
「うん。ラムネ飲みたいな」
「ラムネ? いいよ。財布持ってくるからちょっと待ってな」
 兄は階段を二段飛ばしで登っていき、すぐに戻ってきた。「P」のマークの赤い野球帽をかぶって、尻ポケッ
トに折りたたみ傘を突っ込んでいる。「毎年この時期は夕立がすごいからな」と兄は言った。
   +
 暗い、静まり返った住宅地を抜けて大通りに出ると、夏祭りの香りがいっぱいに立ち込めていた。
 真っ直ぐの通り沿いに所狭しと屋台が並んでいる。浴衣姿もちらほらと見える。人の流れが切れることなくず
っと続いている。街灯と街灯の間に赤と白の提灯がぶら下がっていて、それを見るとなんだか嬉しい気持ちにな
った。僕は人混みの中を兄の背中にくっついて歩いた。
「エラくごった返してるなあ」兄は振り返って「何か食うか」と訊いた。
「焼きそばかな」と僕が言うと「焼きそばだろうな、まずは」と返した。
 しかしこれだけ多くの屋台があるくせに、食べようと思ったものの屋台は何故か近くにはなかった。人が多
く、行きたい方にさっさと進むこともできない。
「まあ、焼き鳥でも食うか」
 すぐ近くの屋台を指差して兄は言った。僕は頷いた。
 浴衣姿のカップルの後ろに並んでいると、「おい、中川じゃねえか」と声をかけてくるものがあった。振り向
くと四人組の男たちがすぐ近くにいた。彼らには見覚えがあった。兄は彼らに「おう」と片手をあげて応えた。
「中川の弟?」
 と誰かが言った。また誰かが「似てるな」とか「似てないな」とか言って笑った。僕は口を閉じて様子見し
た。
「ああ、ハヤトっていうんだ。こいつら俺のクラスメイト」
 兄は僕の肩を掴んだ。彼らがうちに遊びに来たのを、僕は見たことがあるのだが、彼らはみんな僕のことは忘
れているらしい。僕は初対面のような顔をしていいのだかなんだかわからなかった。
「なあちょっと焼き鳥買っといてくれよ。これ財布」

 と兄はボロボロに擦り切れた帆布の財布を手渡して四人の輪の中に入って行ってしまった。その時ちょうど、
前のカップルが買い物を終えた。仕方がないので、僕は一人で焼き鳥を注文しなくてはならなかった。店員のお
じさんは肌が真っ黒で、顔は汗でびっしょりだった。
「ボウズ」とおじさんは言った。「ボウズ」なんて呼ばれたのは初めてかもしれなかった。「どれがいい? い
まこれが焼きたてで、ウマいよ」
 と、一切れ一切れがごろりとした大きさの牛串を手に取った。僕は言われるがまま「それください。二本」と
指を二本立てて見せた。
 おじさんは舟皿に串を乗せて「八百円ね」と言った。僕は財布から千円札を出した。お釣りの二百円を、ちょ
っと考えてから、ポケットにしまった。
 ビニルの暖簾をくぐって通りに出ると、兄の姿がなかった。僕は左手に皿、右手に財布をもって辺りを見回し
た。人の流れの向こうに、赤い帽子が見えた。ほっとして、人の間を抜けながら、早足に歩いた。僕は買い物を
突然任せておいて、勝手に遠くに移動している兄に腹が立った。財布をポケットにしまって、牛串を一口かじっ
た。肉は硬く、味がなく、かんでもかんでも、塊のまま口の中に居座った。何故、牛串なんて買ったのだろう。
 その時、人混みの向こうに見える赤い帽子のマークが「C」なのに気がついた。僕はその瞬間、はっとその場
に立ち止まった。腹が立ったのも何もかもみんなスポーンと出て行った。
 さっきよりも速い足取りで元の焼き鳥屋に戻った。しかしやっぱり兄の姿はなかった。
 僕はしばらくの間歩き回った。歩いてきた通りを戻ったり、路地に入ってみたりした。そうしているうちに、
だんだん人通りが増えて、ほとんど流れに乗って歩くしかできなくなった。
 男たちの掛け声が響いた。みな、声の方を向いた。カメラを構えている人もいる。和太鼓がドンドンと打ち鳴
らされ、神輿が立ち上がった。ワッと声が上がって、神輿が動きだす。神輿の上で、髪をまとめ上げたサラシ姿
の若い女性が提灯を掲げて声を上げている。熱気がだんだんと高まっていくように見えた。しかし僕だけがひど
く孤独だった。ちっとも興味が湧かなかった。突然よそ者になったような疎外感を覚えた。
 僕は押しのけるようにして人混みを抜けた。
 すっかり冷えた牛串をみんな口にほうばって皿と串を設置されていたゴミ箱に入れた。湿った分厚い段ボール
を食べているようだった。
   +
 とうとう提灯が飾られていないところまで歩いてきてしまった。人通りは疎らで、屋台も並んでいない。祭り
の外までやってきたのだ。
 僕は小さい居酒屋の入り口で、水を張った大きなバケツの中に飲み物を冷やして売っているのを見つけた。バ
ケツの横に兄と同い年くらいの子供が座っていた。バケツの店番をやっているらしい。ぼうっとしながらうちわ

を扇いで、いかにも退屈そうに見えた。
 僕はポケットから二百円出して、ラムネを二本買った。ラムネを差し出しながら、店番が言った。
「君、一人で歩いてるの?」
「うん」
「それなら遅くなる前に、帰ったほうがいいよ。危ないからね。そろそろ酒の回った大人が現れる頃だから」
「でも、兄ちゃんとはぐれちゃったんだ」
「ふぅん。じゃあお兄ちゃんも探してるだろうな」片手で扇ぎ、片手で顎をさすりながら彼は言った。「最初に
はぐれたところに戻ってじっと待ってたほうがいいかもね。お互い居場所のヒントはそこしかないから……お
い、ずいぶんしょげた顔だな。オレも店番なんかしてなかったらね、一緒に探してあげるんだけどさ。悪いね」
「うん」と頷いて僕は背を向けた。
 それから気づいて振り向き、「ありがとう」と頭を下げた。店番はうちわを振った。
   +
 僕は店番の言った通り、焼き鳥屋に戻ることにした。指針が与えられて、少し元気も湧いてきた。
 遠くにお囃子が流れている。神輿の掛け声も聞こえる。しかしどこかへ移動していて、今はその姿が見えな
い。さっき神輿がいた場所に戻ってきたが、ずっと空いていて歩きやすくなっていた。
 その時、山岸が一人で歩いているのが見えた。向こうのほうが先に気づいていたらしく、人通りを抜けながら
こっちに向かってくるところだった。
 見知った顔に出会って嬉しくなった。
「よう、よく会うな」と山岸が手を挙げた。
 いつもクールぶっているが、今は祭りの空気のせいか、いつになく朗らかな顔つきだった。
「ひとりかい」と聞くと「いつも姉といるわけじゃないさ」と彼はにやりと笑った。
 もしかしたらそのままいつものように「それじゃあ」といって立ち去るのではと思ったが、今日に限っては僕
の歩くのに合わせて隣についた。一人で行動していて手持ち無沙汰だったのだろう。
「さっき神輿を見たか?」と山岸が口を開いた。「あれに乗ってるの、みんな姉ちゃんの友達なんだ。威勢のい
いこったよな」
「山岸の姉ちゃんもなんかやってるの?」
「ああ、そいつらの写真撮ってるよ。なんていうの、記録係っていうかさ」
「ふぅん」
 つまり神輿を見た時、近くにいたんだと僕は思った。
   +

 僕は話しながら、ひっそり、手に持っている二本のラムネのことを思った。山岸が何度か、そのラムネをちら
と見た気がした。しかしこのラムネは……。
 ひどく自分が貧乏くさく思えた。二本あるんだから、それを分けてやるのが普通じゃないか。
 それに、彼に秘密で山岸の姉と親しくなろうと思っていたことが、後ろめたい気もした。頭のいい山岸はそう
いう全てを見透かしている気もした。
 みんな僕の思い込みにすぎないけれど、それでも気持ちが良くないものは良くないのだ。
 僕は、まるで今気がついたというふうに「そうだ、これやるよ」と言って山岸にラムネを一本差し出した。彼
はなんでもないふうに「サンキュー」と言って瓶を開けて口にした。
 これで妙な夢想も泡と消えた。
「ちょっと前までは姉ちゃんと、姉ちゃんの友達と一緒に遊んでたのに、近頃は僕のことをのけものにするん
だ」山岸は言った。「何も言ってないのに、今日も、『あんたとは出かけないからね。いつまでも子供のお守り
はごめんなんだから』なんて言うんだぜ。ドラマの女優みたいな口調でさ。バカバカしいよな」
 山岸はビー玉をとりだして遊びだした。僕はそういう山岸の姉の性格を知って、全く意外に思った。大体、彼
女がどういう人かなんて一つも知りはしなかったのだ。なんだか夢から覚めたような気になった。そしてこの山
岸も、一人の「弟」に過ぎないのだと思った。
「上の兄弟なんて、みんなそんなもんなんだぜきっと。僕も今、兄ちゃんにおいてけぼりにされてるところなん
だ。勝手にどっか行っちゃってさ、しかも財布まで僕に渡したままでさ、アホなんだ」
山岸はふっと笑った。僕も同じ笑いをした。それは僕と山岸との間では今までなかったやりとりの形だった。
   +
 焼き鳥屋の屋台の通りまで僕らは来ていた。30分か40分か、下手したらもっと長いこと歩き通しだ。ここら
はまだ人が多く、流れに沿って進むしかなかった。
「おい、あれ」と山岸が不意に服を引いて指差した。彼の指差した先は提灯で照らされた通りから外れた、少し
広場のようになっている暗い三叉路だった。
 数人の大人たちがにらみあって何か話しているのが見えた。
  そして誰かが辺りに響くような怒鳴り声をあげた。大勢が歩みを緩めて、声の方を注目した。僕らも足を止
めて遠巻きに見ていた。
 一方がつかみ掛かっていき、殴りつけた。陰になって漠然とした動きしかわからなかったが、動物のようなう
なりやうめきをあげていた。僕は人がそんな風にむき出しになっているのを見るのは初めてだった。十メートル
以上は離れていたし人の壁もあったのに、すっかり怖気づいてしまった。野次馬たちが輪を作り始めていた。

 喧嘩を見物しようとする連中が寄り集まってくる流れに逆らって僕らは歩いた。喧嘩している人以外の声も上
がり始めていた。
 ちょっとの間黙って歩いていたが、山岸は「そろそろ姉ちゃんのところに行こうかな」と口を開いた。
 それとほぼ同時に、絶えず空を覆っていた太鼓と笛の音を割くように雷が低く轟いた。はっとして空を見上げ
ると、雨の香りが吹いて辺りを満たした。次の瞬間に、なだれ込むようにして雨粒が一斉に降り注いだ。叩きつ
けるような激しい雨だった。屋台の屋根やアスファルトを打つ雨音で耳の中がいっぱいになった。
 人々は走って軒下に飛び込んだり、もう諦めて雨に打たれるがままになったりした。僕と山岸は全身びしょ濡
れになって足早に歩いた。
「それじゃあ」と山岸は言った「姉ちゃんのとこ、行くから!」
 雨音に負けないように、声を張る必要があった。
「それじゃあ!」
 僕が手を振ったのを見るが早いか、土砂降りの中山岸は走り去っていった。
   +
 焼き鳥屋はすぐそこだった。その軒下には何人かが雨を逃れて集まっていたが、兄の姿はなかった。肌の黒い
おじさんは、屋台の周りに透明なビニルシートを張ってずぶ濡れになっていた。
 避難している数人は服を絞ったりしながら、雨の時間を過ごした。雨脚の強さに、地面が白んでいた。側溝に
流れができて川のようになっている。天にまします何者かが祭りを強制終了したように思えた。神輿の少女たち
の威勢が良すぎたのかもしれない。暴力沙汰が起きたせいかもしれない。だとしたら、なかなかいい判断だ。
 僕は自分のラムネを開けていないことに気がついた。歩き続けて、喉も渇いていた。
 キャップでビー玉を押し込むと、白い泡が盛り上がって瓶の口からこぼれ落ちていった。慌ててすすり口に含
むと、しゅわしゅわとはじけながら甘い香りが鼻腔を通り抜けて行った。すっかり温くなっていたし、炭酸も抜
けてしまった。なんでこんなもの、飲まなきゃならないんだろう? と僕は眉根を寄せた。そういえば、今日は
ずっとこんな思いばかりしている。
   +

 ビニルの向こうから人影がやってくるのが見えた。黄色い雨ガッパを着ているその影が、ビニルシートを開け
て中に入った。下ごしらえか何かをしていたおじさんは顔を上げて「いらっしゃい?」と言った。
 その人物がカッパのフードを脱いだ時、僕は声を上げた。
「お母さん!」
 髪の毛を頬にはりつけた顔で、母は目を見開いた。
「あっ、ハヤトみっけ」
 店員はそれを見て、わけを察して下ごしらえに戻った。
   +
 降ってきたのと同じように、雨が止んだもの唐突だった。視界を覆い尽くしていた雨は幕を引くようにあっと
いうまに消え去った。あとには水たまりと、湿った空気と、申し訳程度の星空だけがもたらされた。
 雨が降っていたのはちょっとの間だけで、すぐに祭りは再開された。
「お兄ちゃん、顔青ざめてたよ、かわいそうに。責任感じちゃってるの」
「おいてかれたの、僕の方だよ」
 僕と母は帰路についていた。祭りの中心を離れ、静かな住宅地を歩いている。どこかの家の庭から、虫たちが
慎ましく鳴いているのが聞こえる。祭りの囃子は、既に遠いものになっている。
 僕が迷子になった後(僕はそういう風に言われるのを遺憾に思う)、兄はすぐ家に帰って、母に電話したらし
い。母は予め、何かあった時の連絡先を兄に教えていたのだ。
 それから母はできるだけ早く切り上げて、帰って来たという。兄は電話した後、僕と同様に探し回っていたら
しい。それから搜索に加わった母が、先に僕を見つけたということだ。これらのことは思い返せば、ほんの一時
間とか、一時間半くらいのことにすぎない。なんだか随分長い出来事のように思えるので、不思議だった。
 家に帰って兄とようやく再会を果たすと、怒るでもなく喜ぶでもなく、鼻から息を吐いて、眉を寄せた変な顔
をした。それはおそらく、僕と同じ表情だったに違いない。今日はいろいろあったけど、これは何事でもない出
来事なのだ。
   +
 祭りから家に帰るとさっさと風呂に入って寝てしまったその翌日、僕は前日のことを絵日記に描いてしまおう
と思った。しかしよくよく考えると、やっぱり何か起きたようで、何も起きていない。書くことは山岸のこと
か、神輿のことか、雨のことか、思案しながら絵日記帳を開くと、既に絵を描く欄の真ん中に、丸々とした緑色
のカナブンの絵が描かれていた。

以上です

トリップつけてなかったんだけど大丈夫だろうか
ていうかこれトリつけられてるかな

【BNSK】2016年7月品評会 

投票期間2016.07.04 0時~2016.07.11 0時

No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
http://text-poi.net/vote/120/1/

No.02 処理業 (茶屋氏)
http://text-poi.net/vote/120/2/

No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
http://text-poi.net/vote/120/3/

No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
http://text-poi.net/vote/120/4/

No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
http://text-poi.net/vote/120/5/

No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
http://text-poi.net/vote/120/6/


感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。

投票は、本スレッドかてきすとぽいのいずれかのみでお願いします。

・本スレッドで投票する場合

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 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
                ―感想―
       <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
                ―感想―
 気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
 ********************************************************

・てきすとぽいの場合

 「この作品が最も良いと思った」と思われる作品にのみ5の評価を、
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投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。

たくさんの方の投票をお待ちしています。

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やばいすいません見落としてた

【BNSK】2016年7月品評会 


No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
http://text-poi.net/vote/120/1/

No.02 処理業 (茶屋氏)
http://text-poi.net/vote/120/2/

No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
http://text-poi.net/vote/120/3/

No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
http://text-poi.net/vote/120/4/

No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
http://text-poi.net/vote/120/5/

No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
http://text-poi.net/vote/120/6/

No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏
http://text-poi.net/vote/120/7/

全部で7作品です!

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:<<夕闇の彼方で>>◆大沢愛氏
  ―感想―
最初は女の子同士だった二人が、実は男の子同士だったというお話。
「ガラス玉隠し」の場面で結構ドキドキしてしまった。
男の子同士だったことは前半部でかなり巧妙に隠されていて、
偶然知り合った早苗という女の子と過ごしたことで、
実は男の子としての性徴が始まりつつあったななしの変貌に気づく、
というのはうまいな、と。
早苗は「自分は女の子」というおまじないが解けたことを示す役割かも。
早苗に対して反応が薄いのもななしの男の子的なくっきりした顔立ちに
惹かれていたと考えれば納得。
たとえおまじないが解けてもやっぱりななしとお祭りに行こうとするのが良かった。
小さく「頑張れ」と言いたくなる切ないラストで投票決定。

                     
 気になった作品:<<夏休み、暇だから>>◆(仮)氏
―感想―
ゴミ屋敷を持ち込んだ設定が好みだった。
現代の禁忌空間。
ただ、盛り上げたい部分を説明ですませるのが少し残念。
白骨死体、という言葉を出さない方が良かった。
最後の書きかけのお話はメルヘンではなくていい気も。

 ********************************************************

ななしのラムネ様 ID:Uf2E1B1ho氏
全体的にキレイにまとめてある作品だと思いました
テキストぽいの点数に当てはめると3より上だけど4までいかないくらい
気になったのはたぶん30前後と思われる登場人物にしては彼女のほうがとくに子供っぽいところ
それと30前後の人間が「大人になった」ということをやたら強調する3のが逆に子供っぽいというか・・・
同窓会で童心に帰ったと思えばわからなくもないけど、最後の文章も大人になったでしめちゃうののもクサいというかなんというか

No.02 処理業 (茶屋氏)
もうちょっとエピソード的な部分を書いてもよかったのでは?という印象
設定だけのお話な感じでその割に目新しさも魅力もないなと
そういえば火葬した骨の粉をたべるという話を最近読んだ小説でみたな

No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
ウェーイうっぜえなwwwって思いながらもちょっと笑った
学生のサークルやらなにやらの飲み会とかでもしれっと混ざりこんで食い逃げするって簡単にできそうな雰囲気は確かにあるよねw
そういった謎の食い逃げ常習犯を追えっていうミステリーを森見登美彦風に書いたらおもしろいかもとふと思った

No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
まず思ったのが登場人物たちは何歳なんだろうということ
20くらいの学生っぽい感じはするけど
それと「白を基調としたワンピース、長く美しい黒髪、少しつばの長い麦わら帽子。」っていうイメージとかけ離れた彼女のしゃべり方
な・い・しょのとことか子供っぽいかなあ?とか思ったりもした

No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
文章とか設定とか今回の作品の中で頭一つ抜けてると思いました
子供の無垢な感じを思わせる語りもすごい好き
気になったのは主人公が男に戻ったことをすんなり受け入れたこと、それとそれまでお風呂入ってたときはどうしたの!?
やっぱりうすうす感づいていたのかな。それとも女の子もあるものと思い込んでいたのか。あれそれだとななしの親父さんのを見た時の反応とかも・・
矛盾にせよなんにせよ、考える余地として捉えちゃうくらいこの話は好きでした

No.06 夏休み、暇だから
自作。
寝ながら考えているときにごみ屋敷を探索するというのとタイトルを決めていない小説っていう〆を思いついて書き始めた話
自分で言うのもあれだけどゴミ屋敷が出てくるまでに3000文字くらいかかってしまっておいふざけんなよ余計な事書きすぎだろどうすんだよこれってなりました・・・
猫の動きを見るためにyoutubeで時間を潰されたりゴミ屋敷どういう風に描写しようかとggったりゴキブリやらなにやら検索してうええ・・ってなったり
やたらと時間がかかってしまいました
もうちょっと書きたいことはあったけど間に合わないからと無理やり終わらせたにも関わらず関心票が入ってて正直驚いています

No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏
熱しやすく冷めやすい子供のうつろいやすい心情がよく書けているなと思いました
全体的にみるとタイトルや文章にもありましたけどやっぱり何事もなくて物足りなさを感じます
けれど話を考えるときってやっぱり山場や書きたい、見せたいという場面って頭に浮かぶと思うんですけど
それを極力抑えて「何事もなき夏の出来事」として話をまとめたと考えるとおもしろいというか、よくできてるのかなとも思いました
逆に◆W6mCFCW2q6氏はそういった子供の心情や何事もない雰囲気が書きたかったのかもしれませんけど
自分はけっこう好きでしたこの話

 ***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)

気になった作品:No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
       :No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏


全体的に似た雰囲気の話が多かったですね
それと、強制できることではないですけど
投票以外の作品に関しても一言でもいいので感想なんかあるといいですね
そのほうが感想や意見が盛んに行き交う場所なんだじゃあここで一つ書いてみようかなと思う人もでてくるでしょうし
自分もそういったことを望んで品評会の音頭を買って出たところもありましたので
あっちのコメントで主催になってくれて感謝とありましたけどそういうのはいいんです
自分がやりたくてやったわけですし、主催になったから偉いわけでもなんでもないので
ただ願わくばもっと感想や意見の飛び交う場になってくれたらなと思いました
みんなもそのほうがいいでしょ?

>>241 の主催者のご意見、至極もっともだと思うので、
遅ればせながら239での投票・関心票以外の作品についてのコメントを。

No.01 ななしのラムネ様
同窓会→回想→明かされる「ななしのラムネ様」の真実、という流れ。
人称の変化以外は、現時点での私と回想での俺の精神年齢があまり変わらないような?
地の文の言い回しがやや古臭くて紋切型が多いせいで子供の感覚が埋没した感じ。
それにしても過剰なまでに書き込んだ前半に対して後半はかなりスカスカ。
どちらかに統一した方が。

No.02 処理業 (茶屋氏)
伊藤たかみの芥川賞受賞作品「八月の路上に捨てる」を思い出した。
謎の先輩が齧っていたのはラムネではなくて骨だった、と。
匂いで一発で分かるような気もするが。
途中でハヤシさんが骨のことを言ってしまい、後はどうなるのかと思ったがなんとそのまま。
先輩のキャラをもう少し膨らませないと、謎にしても平板すぎる。

No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
大学によっては6月に中間試験があるのか?
大学のクラスは大抵は語学の選択で分かれるから顔見知りじゃないのか?
そして、食い逃げ常習犯のこの男の子。
コミュ障の女の子と話していれば確かに周囲から誰何されることもないけれど、
万が一拒否られたら逆に注目されて危険なのでは。
それもこれも、この男の子にもうちょっと魅力さえあれば解決する問題なのだが。

No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
この彼女は十年前に約束を破った相手だというのはいいけれど、果たしてこの世のものなのか。
偶然やってきた境内に居るあたり、どうも幽霊ではないかと。
幽霊譚の場合、主人公の独り言的な展開になりやすい。
そうじゃないにしても「彼女自身」的なものが何らかの形で表出できたらいいけれど、
途中から予定調和的な流れで進んでしまい、感興をそがれた。
時代がかった台詞から着物でも着ているのか、と思ってみたり。

No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏
語り手は田舎の小学生にしては偏差値だの受験の数学だの、あっさりと。
夏祭りの場面に山岸姉がまるっきり登場せず、
代わって関心を引くものも大して現れず、でかなり辛かった。
小学生っぽい感受性の鋭さがもう少しあれば祭りの場面にも広がりが。
山岸姉に出会えるかどうかも分からないのにすぐぬるくなってしまうラムネを2本買ったのを、
少年の無邪気さと見るか、無理やりラムネを登場させたかっただけだと見るか。

■本スレ
 投 関
1 2 No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
1 No.02 処理業 (茶屋氏)
1 No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
1 No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
3 No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
2 No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
1 No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏

■てきすとぽい
 投 関
1 No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
1 1 No.02 処理業 (茶屋氏)
4 No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
1 No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
1 1 No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
2 1 No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
2 No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏

■合計
投 関
1 3 No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
1 2 No.02 処理業 (茶屋氏)
1 4 No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
2 No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
4 1 No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
2 3 No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
2 1 No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏


優勝は、No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏) です!!

うわああ集計結果ズレまくってるうう

■本スレ
 投 関
 1  2   No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
   1   No.02 処理業 (茶屋氏)
 1     No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
 1     No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
 3     No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
   2   No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
   1   No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏

■てきすとぽい
 投 関

   1   No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
 1  1   No.02 処理業 (茶屋氏)
   4   No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
 1     No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
 1  1   No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)

 2  1   No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)
 2     No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏

■合計
投 関
1  3    No.01 ななしのラムネ様(ID:Uf2E1B1ho氏)
1  2    No.02 処理業 (茶屋氏)

1  4    No.03 BBQデビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.氏)
2      No.04 夏が訪れる(くっぱ氏)
4  1    No.05 夕闇の彼方で(大沢愛氏)
2  3    No.06 夏休み、暇だから((仮)氏)

2  1    No.07 何事もなき夏の出来事 ◆W6mCFCW2q6氏


大丈夫かな・・・

【BNSK】2016年8月品評会 

お題『制汗スプレー』『日焼け止め』
※片方のみを採用、両方採用のどちらでもOK
18,000文字以内=1レス、60文字×30行=10レス以内

投稿期間:2016/08/01(金)00:00~2016/08/14(日) 24:00
投票期間:2016/08/15(月)00:00~2016/08/21(日)24:00
集計発表:08/22(月)

てきすとぽい開催ページhttp://text-poi.net/vote/123/summary.html

告知遅れたのと、てきとぽいのほうで別イベントと日程が被るため、一応投稿期間および投票期間のほうはずらす形で開催したいと思います
また作品投稿締め切りがお盆期間と被るため、PCのない辺境に帰省するというかたがいるかもしれませんのと(スマホ投稿もできるかもしれませんがww)
品評会参加者を広く募るという建前で作品投稿は8/1からとします

こんな感じでよろしくお願いします!

お題が「制汗スプレー」「日焼け止め」ということは気になる異性への思いを仲介するアイテムとして用いられるのが定型だろうと思う。
定型通りに仕上げるのか、全く異なるアプローチをするのか。見どころはそこだと思い、4作を読ませて頂いた。

No1 救世主(茶屋)
http://text-poi.net/vote/123/1/
2つのお題を「うちゅうじん」と戦うための武器として用いたのは面白かった。定型に堕すことを拒む姿勢は買える。ただ字数制限1万8千字でわずか2千字というのはどうだろうか。少ない字数の中に凝縮して、という物語ではない。おかげでいろいろな部分の表現不足が際立つ結果になった。そもそも何で「私」は「うちゅうじん」と戦っているのか?組織の命令なのか義憤に駆られてなのか個人的な思いなのか。そのあたりがまるっきり示されていない。バトルアニメの途中の回だけを見せられた気分だ。途中で出てくる「彼」も唐突過ぎてラスト部分も、はあそうですか、としか思えない。おそらくこれは漫画なら何とか成立するだろう。主人公の表情や衣服、街の佇まいで背景を暗示したように思わせられなくもない。だがこれは小説だ。暗示というより単に書かれていない。読み返すと、感動的なはずのラストすらありがち感を催させた。最後に、この話だと別に制汗スプレーや日焼け止めでなくても、キンチョールやガスボンベでも構わないことになってしまう。そのあたりがほんの少し残念だった。

No2 海が聞こえない(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/123/2/
タイトルからして氷室冴子原作のジブリアニメのパロディだ。制汗スプレーの香りが年上の従姉と結び付けられた、定型通りの設定だ。制汗スプレーの香りが初出箇所ではフローラルなのにプールではグレープフルーツ、というのは意味があるのかどうか。兄と主人公の関係の設定は味があった。3枚だけのチケット部分は特に良い。ただこの作品の致命的な欠点はほとんどを説明で済ませているところだ。兄の性格を「極度の負けず嫌い、繊細」などと説明するよりは、それが表れたエピソードをきちんと書いた方が伝わる。両親の兄偏重も、説明されるとどんどん白けてしまう。言われたことしか理解できない読み手を想定しているのだろうか。それは自らの表現を狭めることにしかならないと思うが。活き活きしているのはエピソードの部分だけだった。そもそもなぜ「修一を海へ」連れて行ったのか。いじけて暗い主人公のどこにそんな魅力があるのか。アニメならそこそこイケメンに描いておけばなし崩しに受け入れられるけれど、小説だとやはりきつい。

No3 ぼくは友達がほしい((仮))
http://text-poi.net/vote/123/3/
某アニメのタイトルのもじりだろうか。ポケモンGOが出てくる以上、現代のお話だろう。現代の小学生はそこまでステーキに憧れるだろうか。むしろ焼肉の方を喜ぶけれど。主人公は夏休みの自由研究のクワガタムシ集めを山の神様に依頼した見返りに、山のゴミを一日集めることになる。ゴミ拾いに行った主人公はいつも自分をいじめるダイキが神様の使いのヌエをなぐって吹き飛ばされ、橋の縁に引っ掛かっているところに歩みより、助ける代わりに友だちになることを約束させる。制汗スプレーを顔にかけられたダイキは河原に転落し、主人公に暴言を吐く。友だちにもならない、と。主人公はヌエをダイキにけしかけ、ゴミ拾いを済ませて帰り、父の宝くじが当たった吉報に接する。結局友だちはできず、ダイキに復讐した満足感だけが残る。いかにも卑小な満足だが。山の神様がらみの部分がどうにもご都合主義的で、ヌエとの部分も意外に平板に見えた。そもそも主人公は本当に友だちが欲しいのか?貧乏ゆえの違和を痛感しているのに。その点が大いに疑問だった。

No4 夏のベリー(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/123/4/
制汗スプレーがここまで身も蓋もなく使われるとは思わなかった。女の子に飢えた男子高生たちが彼女と抱き合ってきた同級生のシャツの匂いを嗅いで興奮する。主人公は友だちの彼女のつけていたのと同じ香りの制汗スプレーを買って帰るが、姉に見つかり、意図まで見透かされる。翌朝、そのスプレーをつけた姉に思い切り抱き締められた主人公は憑き物が落ちたように学校へと向かう。この種のバカ話は語り手を常識人にして周囲のバカっぷりを批評させるのがパターンだが、それだとご都合主義が先走って作品世界は尻すぼみになる。この作品の場合、周囲の男子もヘンタイだが主人公もそれ以上におかしい。主人公を道化にして突っ切るのはかなり苦しいが、最後まで押し通したのは見事。主人公の一人称語りの割には周囲の状況も示されていて、ちりばめられたエピソードもなかなかだった。明らかなミスが一カ所あるけれど、姉のキャラクターといい、ラストはさまざまに解釈できるところといい、かなりの練達の士と見た。

***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:<<夏のベリー>>◆大沢愛氏

 
                     
 気になった作品:<<  >>◆


 ********************************************************


 「投稿された作品を用いての教授をしたらどうなるのか」という観点で批評をしてみます。
 「別にそんなこと必要ない」「エンタメを書くために書き下ろしたのだ」とおっしゃる方には、意味のない感想かと思います。お目汚し申し訳ありません。
 若干辛口です。

No1 救世主(茶屋)
http://text-poi.net/vote/123/1/
 「テーマ」は、「信じてた人から受ける裏切り。そのおかげでより自分の信念で行動できる」
 クライマックスは64行目「違う、これは……」
 変わったことは「主人公の『うちゅうじん退治』に対する気持ちの持ちよう」である。
 変わったことによって、「主人公はさらに『うじゅうじん退治』を行うであろう」である。
 変わった理由は、「信じてた彼が『うちゅうじん』の仲間だった」である。

○裏切りを描写したいなら、クライマックスに『うちゅうじん』を含めるのはどうかと。
 『うちゅうじん』は物語のテイストであり、中核ではない。クライマックスに置いてしまっては物語がブレます。
 『うちゅうじん』を中核にしたいのなら、まずテーマを宇宙人特有な何かにしなければ、読者にすとんと落ちないのでは。
○お題の捌き方は「とりあえずぶっこんだ」という感じ。

No2 海が聞こえない(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/123/2/
 「テーマ」は、「あの日みた彼女の姿を今でも思う。だから一歩も進むことができない」
 クライマックスは237行目「こらこら、五年ぶりの再会にどんなボケかましてんの」
 変わったことは「鳴海の肯定ではなく、『昔の鳴海の肯定』」である。
 変わったことによって、「主人公は今もなお昔の鳴海を思い続け」ている。
 変わった理由は、「今の鳴海に逢って、考え方や生き方に共感できなかったから」である。

○もしテーマが読み取った通りなら、上手に書けている作品だと思います。
 ただ、長い。そのことを書くにあたって、テーマには関係ない部分がたくさんあるような気がします。
 それを必要とするなら、(物語の書き方として)時代背景に食い込ませるか、兄との軋轢に鳴海を関わらせるか、プールでの出来事を現代に引きずるか、どちらにせよ意味のあるものにしないと「机の上の宝物=拾った石」になってしまいます。つまり、描写した文章の数々は拾った石ころで終わってしまうと思います。
○お題の捌き方はテーマに絡めて「思い出」として消化していて好感触でした。

No3 ぼくは友達がほしい((仮))
http://text-poi.net/vote/123/3/
 「テーマ」は、「気に入らない同級生に仕返しすると、何もかもうまくいく」
 クライマックスは258行目「ぼくはそれをダイキ君の顔に向かって噴射した」
 変わったことは「ダイキ君を抹消したことにより、主人公が生きやすい環境になった」である。
 変わったことによって、「主人公の学業も上手くいき、家庭も上手くいった」である。
 変わった理由は、「主人公は『神様』という超次元的な存在と慣れ親しんでおり、環境を変えるキッカケを掴むことができた」である。

○作者さんがこういう意図で作品を書いたかどうかは定かではありません。
 ですが、もしそうだとしたなら、たぶん、読み取ったもの以上でも以下でもないと思います。私にはそれ以上のものを読み取ることはできませんでした。
○お題の捌き方は「とりあえあずぶっこんだ」という感じ。

No4 夏のベリー(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/123/4/
 「テーマ」は、「制汗スプレーのにおいを思う。それはつまるところ、スプレーのにおいをつける誰かを思う」
 クライマックスは下から10行目「そういう感じなんだろ」
 変わったことは「女の匂い=制汗スプレーのにおい。が、制汗スプレーのにおいをつける女=かわいいと思い直すこと」である。
 変わったことによって、「制汗スプレーを吹き付ける人によって、スプレーは意味を成すということがわかった」である。
 変わった理由は「制汗スプレーを吹き付けた姉に抱きしめられたことによって主人公の意識が変わった」である。

○書いていて、下から七行目>「言いたいことはわかるけれど」がわからない。
 それはたぶん、主人公に感情移入して読み込んでいたから、急に現れた姉の考えを読み取ることができなかったからだと思います。
 制汗スプレーを吹き付け、主人公(弟)を抱きしめた姉は、主人公に何を伝えたかったのか。(作者様に明確なメッセージがあるのであれば)これを受け取れる読者とそうでない読者で、評価は分かれる気がします。私は受け取れませんでした。
 わかったらよい作品と思うのかもしれません。
○お題の捌き方は「そのものについてズバリ書いた」という感じ。

***********************【投票用紙】*********************
 【投票】:No2 海が聞こえない(古川遥人)
      http://text-poi.net/vote/123/2/
      ――感想――
      物語として読むことができました。
********************************************************
――総評――
 作品を投稿するつもりでしたができませんでした。次回は参加しようと考えています。
 今回の感想は、たくさんあるうちの一つの小説(特に物語小説)の読み取り方と思ってください。(私小説や歴史小説では、こんな読み取り方をしたのでは、重要な文章も読み落としてしまうものですから)

 物語序盤と終盤の変化(クライマックス)を通してテーマを読み取らせるのが基本となっている昨今、変化自体を投げ捨て、序盤の設定を終盤で強調するいわゆる「離陸」作品はとても書きやすいと感じます。(やっぱりそうだった。だから俺は一人でいる。という結びで終わる作品など)今回では『No.2 海が聞こえない』がそうでしょうか。
 だから悪いという意味ではなく、離陸作品は往々にしてオチが光らない作品と呼ばれています。だからこそ作者の腕が光る「テーマを絡めた中盤」が良かった作品だと感じました。

 小説はすべての文章が意味を持つといいます。それは、すべての文章が「テーマ」を強調する文章になっているという意味だと思います。
 そういう意味では、『No.4 夏のベリー』は作品全体を通して物語の世界観や雰囲気を上手に作り出していると感じました。ただ、私には何を伝えたいのかわかりませんでした。

 『No.1 救世主』や『No.3 ぼくは友達がほしい』は、クライマックスは容易しているが、それによって主人公の変わったことが書きたいであろうテーマと乖離しているような気がしました。

 偉そうにすいません。どれも長文で作品を書き上げるエネルギーがすごいと思いました。作者様方、運営の方お疲れ様でした。次回を楽しみにしています。

【BNSK】2016年9月品評会
お題『道化』『モキュメンタリー』
※片方のみを採用、両方採用のどちらでもOK
18000文字以内
目安 18,000文字以内=1レス、60文字×30行=10レス


投稿期間:2016/09/19(月)00:00~2016/09/25(日) 24:00
投票期間:2016/09/26(月)00:00~2016/10/02(日)24:00
集計発表:10/03(月)

てきすとぽい開催ページ:http://text-poi.net/vote/125/

日程とぽい開催ページ作りました!
3か月連続にはなってしまいますがあまり議論するのも面倒なので奇数月の隔月開催という方針で進めていくことにしますね

【BNSK】2016年9月品評会
投票期間 9/26(月)0時-10/3(月)0時

No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/125/1/

No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
http://text-poi.net/vote/125/2/

No3 タマフミ(都宮 京奈)
http://text-poi.net/vote/125/3/

No4 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
http://text-poi.net/vote/125/4/

No5 冴えない一日(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/125/5/

全5作品です!


感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。

投票は、本スレッドかてきすとぽいのいずれかのみでお願いします。

・本スレッドで投票する場合

 以下のテンプレートに記載し、投票してください。

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
                ―感想―
       <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
                ―感想―
 気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
 ********************************************************

・てきすとぽいの場合

 「この作品が最も良いと思った」と思われる作品にのみ5の評価を、
 「投票には至らないけど、気になったor良かった」と思われる作品にのみ4の評価を行ってください。

投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。

たくさんの方の投票をお待ちしています。

忘れていた・・・
時間外でもいいんだよー

No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/125/1
 テーマ「道化」を真摯に書いた小説だと感じました。
先生が連れて行ってくれた店のひとつ、高尚なお店を「道化」とすると、屋台が「道化」の反対の場所。
 ……かに思えたが、やはりチェリオ(曲芸集団)に熱狂する「道化」のひとつ。
 先生を称賛している作中内において、「道化」を悪いものととらえるのであれば、その反対は「正義」なのだという話でしょうか。
 しかし、最後には、
>皆道化師なのだから何に気を使う事があるものかと叱咤して頂いたのかも知れません。
と感じています。
 主人公は「道化」にならざるを得ず、そう自分をとらえて生きてくのでしょう。
 だとすれば、先生が頑として譲らなかった「正義」の落としどころはどこへ行ったのでしょう。
 先生から「人類皆道化」を学び、それならば、「なぜその大事な場面で道化を演じなかった?」と主人公は思わなかったのでしょうか。
 それぐらいは主人公は先生のもとに訪れて一言いってやっても良いかもしれません。


No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
http://text-poi.net/vote/125/2/
 モキュメンタリーのドキュメンタリーとなかなか手の込んでいる構成です。
読み進めていくにつれて事態が悪化していくのが、モキュメンタリーらしさを醸し出しています。
 ホラーモキュメンタリーにおいて、撮る側が一番生存確率が高いのも、ジャンルならではといえます(テープが切れてしまいますものね)。
 そうすると、
>ルチアーノがカメラを持ち撮影班を撮影するというものだ。
という文から、ルチアーノが最終的には生き残るという物語だといえます。
 しかし、最終場面ではルチアーノを殺害するという内容が書かれます。
 日付を見てみると、2016 1(最後から二場面目)と2016(最終場面)と書かれています。
 これではどちらが先でどちらが後かはわかりません。そのことによってオチをぼかしています。
 モキュメンタリーはオチがボカされるのもよくあること。
 「モキュメンタリー」らしさをとても高いレベルで表現していると感じました。


No3 タマフミ(都宮 京奈)
http://text-poi.net/vote/125/3/
 自作。テーマは「モキュメンタリー」。
 誤字がたくさんあります。
「一行目>▽占い師女子高生ERI→▽占い女子中学生ERI
 八行目>私の鼻孔をくすぐる→揚羽の鼻孔をくすぐる
 下から六行目>気味割るなって→気味悪くなって」
 誤字がこれだけあり、文章もすんなりと読めない部分があることなどを読んでくださった方々にお詫び申し上げます。
 駆け込み投稿で推敲する時間が取れなかったので誤字満載になってしまいました。申し訳ありません。

 書きたいことは書けましたが、そう(プロット通りに)すると余計わからないものになったのが面白かったです。小説って難しいですね。
 読んでくださった方ありがとうございました。


No4 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
http://text-poi.net/vote/125/4/
 サバのドキュメンタリー作品。
 ニシンの例もありますし、「美味だから誇り」とは短絡的なのでは。
 とはいえ、楽しく読ませてもらいました。


No5 冴えない一日(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/125/5/
 モキュメンタリーというよりドキュメンタリー。
 登場する主人公が架空の人物(作者)と考えれば、モキュメンタリーになりえるのでしょうか。
 風俗に行って小説の着想を得て、素晴らしい作品を書くことができた。
 私小説好きな小説家が描いた小説が宗教問題、移民問題を絡めたとってもドラマチックな短編、いわゆるノンフィクション作品だったっていうのが好きです。

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
      http://text-poi.net/vote/125/2/
                ―感想―
      「モキュメンタリー」という映像作品のジャンルを
      文章で上手に表現していました。
      また、「モキュメンタリー」という作品を
      知っている人ならではのオチが楽しめました。

 気になった作品:No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
      http://text-poi.net/vote/125/1
                ―感想―
       作品に時代感を持たせようとする意気込みと、
       テーマについて書こうとする真摯な姿勢がすばらしかったです。
 ********************************************************

 ――総評――
 今回はお題がとてもむずかしい。「道化」が書きやすそうだと思いましたが、それはオチが透けて見える(誰が道化なのかを探して読んでしまう)。「モキュメンタリー」はもともと映像手法のことなので文章で表現するのには限界がある。

 No.2はその難しさを巧みに表そうとしていました。なので投票。
 そして、No.3は「道化」を見事、作者自身でテーマを吟味して書き上げた。とても勉強になりました。ですから関心。

 No.5はモキュメンタリーをドキュメンタリーとして書き始めた様子がうかがえました。
 読み物としてはとても面白かったです。お題至上主義ではありませんが、お題がなければ魅力がないのも事実。
 話の流れよりも、途中のコメディがかなり好きでそればかり印象に残ってしまうのが残念。
 作品を包括して語りずらいものになってしまっています。作品としての一貫したテーマが見えませんでした。

 きっとbnskもてきすとぽいもこういうのを求めているのだなぁと感じるのはNo.4。
 パンチのある設定に、短い文章でとても読みやすい。作品全体の概要がすぐわかる。素晴らしい作品だと思います。
 投票に至らなかったのは、作品の完成度を見てみた場合少し低いと感じたからです。
 サバがどんな姿なのか、どんな様子で語っているのか、どんな匂いなのか、どんなしゃべり口調なのか、といった随所に気になる部分が書ける気がします。
 それによって、サバが本来どう思っているのか、どうしてほしいのか、そして人類と魚の共存は今後どうなっていくのかまで幅を持って読者に想像させることができます。インタビューを受けるまで、大変な目にあった、というエピソードを付け加えても後半の「でも、それはある意味誇りであって、私たちが生きていられる根底なんです」に重みを付けられますね。
 ここまで書く必要はないのかもしれません。ですが、これらがなかったので、「よくあるSFチックな短編か」と思い、流し読んでしまいました。

 総評としては、どれも素晴らしい作品だったと感じます。どの作品も3回は読めるほど読み応え抜群でした。5作といえども、随分多い作品量だと感じます。
 企画してくださった方、作品を投稿してくださった方々、そして感想・投票をしてくださった方お疲れさまでした。次回も楽しみにしています。

■本スレ
投 関
  1  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
1    No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
    No.03 タマフミ(都宮 京奈)
    No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
No.05 冴えない一日(古川遥人)

■てきすとぽい
投 関

2  2  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
4 1  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)

1  4  No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

■合計
投 関

2  3  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
5 1  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)

1  4  No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

集計けっかあああああ!
【BNSK】2016年9月品評会優勝は No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋氏)です!優勝おめでとうございます!!

ずれまくりとかマジ勘弁して・・・

■本スレ
投 関
  1  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
1     No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
    No.03 タマフミ(都宮 京奈)
    No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
No.05 冴えない一日(古川遥人)

■てきすとぽい
投 関
2  2  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
4 1 No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

■合計
投 関
2  3  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
5 1 No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

集計けっかあああああ!
【BNSK】2016年9月品評会優勝は No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋氏)です!優勝おめでとうございます!!

■本スレ
投 関
   1  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
1     No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
      No.03 タマフミ(都宮 京奈)
      No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
      No.05 冴えない一日(古川遥人)

■てきすとぽい
投 関
2  2  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
4  2  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
   1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
1  2  No.05 冴えない一日(古川遥人)

■合計
投 関
2  3  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
5  2  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
   1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道~mackerel’s load~ (スイカ(チコ))
1  2  No.05 冴えない一日(古川遥人)



です!!!

すいません何度も・・・

次回品評会は11月となり今年最後の開催となります
お題発表のほうはできるだけ早めにスレにて発表はしたいと思いますが
日程のほうにつきましては開催期間もあきますので、できれば中ごろがいい等の要望がございましたらできるだけ反映したいと思います
また今年開催いたしました品評会では投稿期間1週間、投票期間1週間という日程を取っていましたが
こちらのほうも見直してくれ、という要望がございましたらできる限り応えたいと思います

よろしければ意見のほうお聞かせください

【BNSK】2016年11月品評会

お題『冒頭が電車に乗っている場面から始まるストーリー』
※文字数等の制限はなし

投稿期間:2016/11/01(火)00:00~2016/11/20(日) 24:00
投票期間:2016/11/21(月)00:00~2016/11/30(水)24:00

てきすとぽい開催ページ:http://text-poi.net/vote/128/

開催ページ作成しました!
今年度ラストの品評会ですので投稿投票ともに少し期間をあけてあります!
ラスト盛り上がるといいですね!

投下します

 大学四年生のときに、私は彼と知り合った。
 仮に彼のことをサイトウと呼ぶことにする。
 四年のゼミの配属先が私とサイトウは同じだった。専攻が同じだったにもかかわらず、私と彼はそれまで一度
も顔を合わせたことがなかった。必修の科目でも私と彼は常に別のクラスを選び続け、一度も平行線が交わるこ
とがなかったということだ。ゆえに、最初の授業の日、少し早めにゼミの教室に入って彼を目にした時、別の専
攻の人か、留年生かと思った。
 ゼミの教室はあまり広くない。「口」の形にテーブルが並べられた、十五人程度しか収容できない小会議室の
ような部屋だった。
 部屋にはサイトウしかおらず、私はサイトウと対面する位置の席に着いた。
 講義の開始まで十分ほどあった。部屋の中は嫌に静かで、彼が読書か何かでもしてくれていればよかったが、
サイトウはぼんやりと椅子に深く座っているだけだったので、無視するということもし難かった。
 私は最初になんと声をかけただろうか。「どうも」とか「今日は寒いね」とか、そんなことだったと思う。サ
イトウはそれに答えて「僕はサイトウ。君は?」と言った。
 彼の声は見た目に反して低く響くようだった。どちらかといえば線が細く童顔だったので、そんなことを意外
に思ったのを覚えている。
 以上のようにつつがなくファーストコンタクトを終えた私たちだったが、しかしその後しばらく彼とはとくに
会話もしなかったし、仲を深めるようなことは何もなかった。四年のゼミは卒論を書くわけで、講義も毎週ある
わけではなかったのだ。月一程度の頻度で中間発表を行い、それ以外に教授に質問がある時や相談事がある場合
には、個々人が研究室を訪れたり、メールでやりとりする。中間発表の時も、私はゼミにいた他の友人と食事に
いく場合がほとんどで、サイトウとは一緒にならなかった。ゼミの飲み会に彼を誘った時もあったが、彼は参加
することが一度もなかった。ゼミの友人たちにもサイトウと深い仲を築いている人はいないように見えた。彼は
いつも静かな存在であり、彼が注目を集めることはなかった。
・・・・・

 その年の夏休み私は卒論の準備が順調だったため、実家に帰ることにした。ありがちなことではあるが、一人
暮らしのうちに身につけた私の価値観と両親の価値観とにズレが生じており、ほんの三日生活を共にしただけで
険悪な雰囲気が家族の間に生まれてしまった。そういうわけで私は帰省を後悔しながら東京の下宿に戻り、する
こともないので大学で研究資料を集めることにした。
 その時偶然出会ったのがサイトウだった。彼は私と同様に下宿にとどまり(私は一度は帰ったわけだが)、図
書館に通って勉強を続けていたという。
 彼と図書館で時間を過ごし、休憩がてらに二人で自販機のコーヒーを飲みながら世間話をした。両親との喧嘩
のために孤独な気分に追いやられていた私は、たいして仲が良いわけでもない彼に遭遇したことをやけに嬉しく
思った。それから初めて彼と夕飯を共にすることになった。
 私は彼と大学近くの有名なカレー屋に行き、それから食後にどこかへ行こうという段になり彼が酒は飲めない
と判明したので、カフェでコーヒーを飲むことにした。

「今更言うのもなんだけど」サイトウはブラックコーヒーの水面を見ながら言った。「昼間図書館で会った時、
ずいぶん顔色が悪かったね」
「そうかな? まあ、確かにいい気分ではなかったけど。勉強なんか大嫌いだからね俺は」
 彼は微笑んでコーヒーを一口飲んだ。
 彼が口を閉じてしまったので一瞬沈黙が流れる。私はつい、何か話そうとして口を開いた。
「実は実家に帰って親と言い合いになってね。早く自立しないといけないと強く実感したよ」
「言い合い?」

「そう。いや、ちょっとしたことでね。こっちで就活進めてたのに、今更地元に戻ってこいなんて言い出して
さ。実際、まだ本格的に動き出してないから強く言い返すこともできなかった。俺自身、なんで東京で就職した
いかと言われれば、特に理由もないんだ」
 私はそう話してからすぐ、余計なことを言ったな、と思った。しかし同時に、それほど親しい相手ではないか
らこそ、好きなだけ話したって構うものかという気になった。その日は酒の席でもないのに、私は妙に饒舌にな
っていた。
「だけど、自立したい気持ちがあり、親とのズレを感じている」
 サイトウは低く響く声で言う。私は頷いて続けて言った。
「そう。東京で働きたいという積極的な気持ちはない。けど、地元に戻りたくないという積極的な気持ちがある
わけだ。なんというか、母親と一緒にいるとあの話を思い出すんだ。『今昔物語』霊鬼についての話」
「母親が鬼になって子を食べようとする話」
「そう、それ。千年くらい前の話のくせに、よくできてるぜ。年をとった母親は子を食おうとする。手元に置い
て、ああしろこうしろって自由を奪うんだ。家にいると、自分が食われようとしてるのがわかる」
「それは怒り? 不安?」
「さあね。……まあ、どっちもだろうな。現実問題として学費を払ってもらってたり、世話してくれたのをありが
たく思う気持ちもある。だからそれを後ろ盾にされると反論もできない。それは不快な気分だよ。がんじがらめ
だ。向こうが正しい。でも、こっちは息苦しい。早く経済的に自立して、親に金を返して、独りになりたい」
 私のコーヒーは冷めていた。私自身は熱くなっていた。彼に話していると、実家にいた時の荒れた感情がむく
むくと蘇ってくるようだった。サイトウはそれを聞きながら頷き、ときに相槌を打ち、表情をほんの少しずつ変
えてみせた。
 結局その日、二時間近くカフェで話し込んでしまった。サイトウは寄るところがあると言って、カフェの前で
別れを告げ、駅とは反対方向に歩き去って行った。彼は夜の雑踏の中にあっというまに消えてしまった。
 私は独りで乗った電車の中でようやっと気がついた。彼のことは何一つわからなかったということに。一方で
私のことは何もかも話してしまったようなきがする。大学での交友関係や様々な思い出、考え方、思想、家の位
置まで。
 普段私は聞き役に回ることの方が多いというのに、奇妙な経験だった。サイトウは相当な聞き上手だ。自らの
沈黙を守る才能、そして相手から聞き出す才能、それらを隠す才能を持った男なのだ。
 その会合を境に彼への見方がすっかり変わった。
 それから私は度々彼と食事に行ったり、買い物に行ったりした。それでも彼は常にヴェールの内側に身を隠
し、何も明かすことはなかった。
・・・・・

 秋が去り、冬の季節に差し掛かった頃のこと。私は結局東京で就職先を見つけ、親との軋轢を残したまま自ら
の進路を決めていた。人生を生きて行くうちに、いくつか不和を抱えることになるのは、仕方のないことだ。そ
んな悟りを開き、卒論の仕上げに集中していた。
 十二月の最後のゼミの時、私はサイトウの異変に気がついた。
 いつもポーカーフェイスで、自らを隠している彼が、すっかり弱りきって見えたのだ。
 頬はこけ、青ざめ、目は落ち窪んでいる。いつでも決して目立たない彼なのに、ゼミの皆がチラチラと彼に視
線をやり、困惑していた。そんなことにも気がつかないのか、彼は背中を丸めて全くの無表情のまま、机の上に
視線を落としていた。
 発表が始まってからも、私は彼のことばかり気にかかって上の空だった。前回の発表のあと彼と食事に行き、
それから今日まではたしかに一度も会っていない。その間に、何があったのだろう。
 卒論はほぼ全員最後のまとめに差し掛かっており、発表の中で問題が発覚した者はそこを修正しなければなら
ない。冬休み図書館が開いている期間は短いので、作業を急ぐように、と教授がゼミを締めて解散となった。
 卒論が問題なく進んでいる連中で飲みに行くかという提案があったが、私は辞退し、幽霊のように教室から消
え去ったサイトウの後を追った。
 彼はいつもエレベーターではなく階段で下に降りるので、すぐに追いつけた。
「よう。体調が悪そうだな?」
 サイトウはちらとこちらを向いて、いつも通り微笑した。
「いや、そんなことはないよ」
 確かに実際話してみるとそれほど異常をきたしている風にも思えなかったので、少し安心した。
「夕飯でも食べないか?いつものカレー屋がいいか」
「いいや、酒が飲みたい気分だ」
 私は意外に思った。彼が酒を飲むなんて。
「僕もたまには飲むんだよ、実は」
 サイトウが隠していることを明かすのを見るのは、それが初めてだったかもしれない。

 私は店の選択を彼に任せ、電車に乗り、地下鉄を乗り継いで、銀座に行った。
 歌舞伎座の前を通り過ぎ、細い通りに入っていく。そんな通りにも立派な店が軒を連ね、いかにも高級そうな
服装の年寄りが行き来している。こんなところに、大学生二人で入る店があるのかと、私は不安に思った。
 サイトウは、さらに細い道に入った。路地裏のような通りだ。街灯もなく、壁にはスプレーで落書きがされて
いる。下水道の穴から白い煙が上っている。
 なぜこれほど奥まったところまで行くのか不思議だった。しかし、サイトウは文字通り隠れ家に私を連れて行
こうとしているのだろうと思った。
 戦後間もない頃に建てられたような古い建物にネオンの看板。入り口を開いたらそこは階段で、地下に続いて
いた。私は彼の後について階段を降りて行った。私はもうここがどこなのかわかっていなかった。
 木製の薄いドアを開けるとガランガランとちゃちな鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ」
 中は薄暗いバーで、カウンターに立っている男性が声をかけた。六十歳か、それ以上の年寄りに見えた。背は
高くひょろ長い。総白髪のオールバックで、芝居に出てきそうな風格があった。
 空いていたので、私とサイトウはテーブル席に座った。同じくらい年配の女性がメニューを持ってきて、愛想
よく「ご注文がお決まりになったら」と去って行った。
「おい、なんだかスゴイ店を知ってるな。銀座のバーなんて」
「僕だって行きつけってわけじゃないよ。買いかぶられちゃ困るけど、店はここしか知らないよ」
 私はカクテルはよく分からないので、彼に任せた。
 年配のウェイトレスが私の前にモスコミュールを、サイトウの前にアイリッシュコーヒーを置いた。
 モスコミュールは透明な液体で、ライムが飾ってある。アイリッシュコーヒーは見た目はコーヒーそのものの
ように見えた。真っ黒なコーヒーと真っ白なクリームがきっぱりとした境界線を描いている。
「やっと一休みできるな。卒論はまだ残ってるけど、だいたい完成してるし、就職も決まったし……いや、ゼミの
連中はどうなんだろうな」
「ハナヤマとイケタニはまだ決まってないみたいだね」
 とサイトウは言った。私は思わず「えっ」と声を出した。それはゼミの仲間の名前だった。

「あいつらと仲よかったっけ」
「いいや、仲がいいってほどじゃないけど、何度か話したことがあったからね」
 訊くと、サイトウはゼミのほぼ全員と交友があるということだった。それも、いつも一対一で話す関係を作っ
ている。しかし複数人で遊んだことは一度もないという。
「ゼミに限らない。僕は、あんまり大勢で行動するのが億劫だから、一対一で話せるときだけ誘ったり誘いを受
けたりするんだ。大学一年の頃から……いや、もっとずっと前からかもしれないけどね」
 私は彼が交友関係の少ない人間だと勝手に思い込んでいたので、少なからず驚いた。
「僕は人の話を聞くのが好きなんだ。人の表層的な部分はどうでもいいんだ。人の話にはその人の人生の一部分
が姿を現していて、それは無価値なものじゃない。それを一つ一つ聞いて、頭の中にしまっておくのは良いこと
だ。……でも本当はそうじゃないのかもしれないと、つい最近になって思い始めた」
 バーの暗い照明の下で、彼は瞳に悲しい光を宿らせていることに私は気がついた。彼は今、ヴェールの外に出
ている。
「つまりこういうことなんだ。人生には形も色もない。ただ何もせずとも時間は流れすぎていく。人々はその中
で様々な体験をする。『体験』それ自体は中立的に存在しないんだ。それは自らが綴る物語の形をとって個々人
の人生に内包される。わかるだろ? 君は君のパースペクティブでしか物事を経験できない。もちろん僕も」
 彼はアイリッシュコーヒーを飲んだ。私は続きを促した。
「人間は時間を、体験を切り取って生きているんだよ。無数の、おびただしい数の物語を書いてみんな暮らして
いる。それは、無意識のうちに行われる。その中の一部は物語と言わず『思い出』と言い換えることもできるだ
ろう。大切な思い出、辛い思い出……」
 私は、彼がもう酔ってしまったのではないかと疑った。これほど自分の考えを話すのを見るのは初めてだった
し、それは彼らしくない。彼らしい行為ではないと思った。
「話が下手ごめん。話すのは苦手なんだ。実は就職も決まってない。面接で不利だろう。話す練習をしておくん
だったよ。なんだっけ、そう、物語だ。原稿用紙を想像してみてくれ。君はある出来事についての物語を書く。
そしてファイリングする。しかし中には、ファイリングしたくないものがある。君はその原稿用紙をどうすれば
いいだろう。そうだ、丸めて、捨ててしまえば良い」

 私はモスコミュールを飲む。きつい、強い口当たりだ。苦く、しかし後味を残さずに抜けていく。
「僕は思うんだよ。この僕は、丸めた原稿用紙を捨てるためのゴミ箱なんじゃないか」
「それは、違うよ」
 私は言った。しかし、言葉は彼に届く前に消滅してしまったような気がした。
「違わないかな。それは愚痴を言うのとは異なる行為なんだ。原稿用紙を放って、放ったことも忘れてしまうと
いうことが重要だ。誰も彼も僕に話したことを忘れるのさ」
 私は、親しくない者にこそ話せない話をしてしまうものだと知っている。
 よく言われることだ。同じ客船に乗って旅をした者たちが、目的地について別れた後、互いに会おうとしなく
なる。船の中でつい不用意に話したことが気まずくて、会えなくなるからだ。
 サイトウはいつも客船の上で人と出会い、話を聞く。しかし彼らは、船を降りた後で彼に会おうとは思わな
い。彼の役目はそこで終わっている。
 何かが間違っているように私には思えた。彼自身が悪いのか、それとも皆間違っているのか。
 サイトウのアイリッシュコーヒーはクリームとコーヒーの境界が崩れ、混じり合い、泥のような色に混濁して
いる。
「問題は僕の中にあるんだよ。なぜなら、こんな物語を作ったのは僕だから。……今日は話を聞いてくれてありが
とう」サイトウは言った。疲れた声音だった。「僕の話は、誰も聞いてくれなかったんだ」
 二人とも次のカクテルを注文しないで、席を立った。
 相変わらず彼は用があるからといって駅と反対に去って行った。冬の夜風はひどく寒く身体を貫いた。

owari

以上です。ちょっと長いかもしれませんが読んでみてください。

お題ください

>>388
予見者の眼に映らない空谷の跫音

>>389
相分かった

あれ、書き込めない

 空谷の文字列をドラッグすると、私のAndroidスマートフォンはすぐさまサジェストを画面下部に表示した。ワンタップで検索画面に切り替わり、Googleのエンジンは考えうる最大の早さで結果を提示した。検索トップの辞書ページによると、空谷とは「人のいない寂しい谷間」のことを表し、空谷の跫音と続けることで、「孤独なときに受ける珍しくてうれしい訪問や便りのたとえ」という意味の慣用表現となるらしい。跫は一文字で足音の意であることは知っていたが、跫音として二字で熟語になることは今知った。これで昨日の自分よりかは少しは賢くなれただろうか。
 それから、「予見者の眼に写らない」という語句について考えた。
 予見者、つまり未来の物事を予め見ることが出来る者。その者の眼に写らないとなれば、一見矛盾しているように思える。
論理の世界に生きる人には腹立たしく感じられるかもしれないが、矛盾は往々にして詩的表現を生むものだ。柔軟に受け入れて考えてみよう。そうして整理してみると「予見者の眼に写らない空谷の跫音」というお題は、物語の予感を内包しているように見えなくもない。
 さて、ここで唐突ではあるが私は今小説を書こうとしていることを白状しよう。そしてこれは創作のメタ構造を無視し、読者であるあなたを想定した記述であることを先に述べておく。もっといえば、リアルタイムでこの文章を綴っている現実世界の私は、このあと勤め先の会議を控えているが、

会議場に予定時刻の二時間も前に着いてしまったために時間をもて余しているの間抜けな奴である。そして、
2ちゃんねるの創作スレッドでお題を貰って小説を書いている最中でもある。
 こういった記述は小説作法一般では禁じ手とまでは言わないにしろ、決して好ましい技法ではないことは勿論承知している。その前提の上で、私は小説の登場人物でありながら、書き手である「私」としてもあなたに問いかけながら物語を進めていくことを許してほしい。
 さて、「私」の位置付けを先に吐露してしまったのは、悪手ではないかと自問しつつも、私に残された道を考えてみようと思う。
 一つは、このまま何事もなかったかのように、劇中劇という形式で小説を書き、お題を消化するこ
と。そうした場合、モノローグで再び私が登場し、何らかの気の効いた締めの一言でも添えれば一応、小説としての体裁は整うだろう。

もう一つは、捻れたメタ構造を維持しつつ私の物語を着地させること。
 後者の解決策の抱える問題は、私が予見能力を持たない一般人であることか。
 と、ここまで書いたところであることに気がついた。「私」は小説の登場人物でありながら、物語の趨勢を左右できる作者としての「私」、つまり未来を思うがままに予見し、更には記述することあらゆる状況を産み出すことが出来る存在では
ないかということに。
 光明が見えた。
 「私」にとって空谷の跫音とは、寒空の下で会議が始まるのを一人待つ惨めな状況の中、思いがけず与えられた、「予見者の眼に写らない空谷の跫音」というお題そのものではないだろうか。ここにお題に対する私なりの解答を得た。ちょうど間もなく会議も始まろうとしている。それでは今日は、このあたりで筆を置かせてもらおうと思う。

書き込めた。終わり

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