千早「せ、清純派ちーちゃんと、寂しい夜……」 (65)


千早「最近、人恋しいという感情を知りました」


千早「……もう21時ね」

千早「明日明後日とオフだけれど、特に予定もないし……」

千早「どうしようかしら」

(ピロリロリン♪)

千早「あっ、プロデューサーからメール!」パカッ

千早「ええと、『久しぶりのオフだし、しっかり休んでくれ』」

千早「返事返事……『ありがとうございます。プロデューサーも、体調には気を付けてください』、と」カチカチッ

(パタン)

千早「ふふっ、プロデューサーからのメール……」ニコニコ

千早「ココアでも飲もうかしら」

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(カチッボボッ)

千早「ええと、ココアは……」ガサガサ

千早「あっちの棚だったかしら」

(クルッ)

千早「確か、こっちの方の」テクテク

千早「……こうして見ると、私の部屋にも色んなものが増えたわね」チラッ

千早「ついこの間まで、殺風景な部屋だったのに」

千早「……」

千早「でも……色んな思い出が増えて、満たされたはずなのに」

千早「プロデューサーにもらったものも、一杯あるのに」

千早「……見ていれば見ているほど、寂しくなってくるのは、何故なのかしら」

千早「プロデューサー……会いたい……」


(ピーーーッ!)


千早「——っ?! あ、お湯……」


千早「ココアの文量は……」

(ピロリロリン♪)

千早「っプロデューサー!」パカッ

千早「……えっと、『みんなのためにも気を付けないとな。今日もまだまだ残業だけど』」

千早「もう……無理しないでください、プロデューサー……」

千早「……残業?」

千早「……!」ダッ

千早「ま、間に合うかしら……」

(ゴソゴソ)

千早「えっと、鍵、鍵は……あった」


(ガチャッ)

(バタン)


『間もなく……お忘れ物の無いよう……』


千早「……思いつきで飛び出してしまったけれど」

千早「うぅ……プロデューサー、迷惑かしら……」

千早「……待ってるくらいなら、多分良いわよね、うん」

(プシューッ)

千早「こんな時間に事務所に向かうのなんて初めて……」

千早「時間帯が違うだけで、なんだか新鮮ね」



(テクテク)

千早「私を見たら、プロデューサー、なんて言うかしら……驚かれるかしらね」

千早「『ち、千早?! こんな時間にどうして事務所に……』」

千早「『ち、ちーちゃん、プロデューサーに会いたくなっちゃったんだもん……』」

千早「……な、何を言ってるのよ私は」カァッ

(ヒュウウウッ)

千早「寒い……もうちょっと厚着してくるべきだったわね」

千早「……はぁっ。吐息が白い……」


千早「あ、765プロ。まだ灯りがついてる」

(ピタッ)

千早「って、仕事中だったら迷惑よね」

千早「プロデューサーのことだから、大事な仕事切り上げて、私を駅まで送ってから戻ってまた再開とかやりかねないわ」

千早「……入り口で待っていましょう」


(チカッチカッ)

千早「街灯が切れかけてる。なんだか、寂しいわね」

千早「……私が寂しいから、そう見えるだけかしら」

千早「夜空も……満月のせいで、他の星が一つも見えない」

千早「月も一人ぼっちなのかしら」

千早「……寒い。身体だけじゃなく」ブルッ


千早「プロデューサー……早く、来ないかな……」





——————

————

——


千早「……」コックリコックリ

千早「ん……うたた寝しちゃったみたいね」

千早「プロデューサーは……」チラッ

(フッ)

千早「! 灯りが消えた!」


(コツコツコツ)

P「んー、やっと終わった……って、そこに誰かいるのか?」

(トテテッ)

千早「プロデューサー!」ギュッ

P「ち、千早!? な、なんでこんな時間に!」

千早「す、すみません……家にいたら、なんだか人恋しくなってしまって」

P「だからって来るような時間じゃないぞ……」


千早「ご、ごめんなさい。残業してると聞いて、いてもたってもいられなくなって」

P「全く……千早は可愛いなぁ」クシャクシャ

千早「ふふふ……」ニコーッ

P「でも、こんな時間に出歩くのは良くないな。補導されたらどうするんだ」

千早「う……」

P「……まぁ、来てしまったものは仕方ないな」ギュッ

千早「わっ! ぷろでゅーさー……」カァァァ

P「千早、アイドルにしてもちょっと細すぎるぞ」

千早「でもそのお陰で、プロデューサーを全身で感じられま……くちゅんっ!」

P「可愛いくしゃみだな。ちょっと薄着すぎないか? 寒いだろう」

千早「だ、大丈夫です、これくらい」

P「なぁ千早。俺からやっといてなんだが、そろそろ放してくれないか?」

千早「いやです。もっとプロデューサーの暖かさを感じていたいです」

P「聞き分けの悪い子は嫌いだよ」

千早「うー……」


P「ほら、帰るぞ。家の前までタクシーで送ってやるから」

千早「もっと一緒にいたいんです」

P「ダメだ、帰るぞ」

千早「帰りません」

P「……仕方ない。コーヒー一杯分だけな」ハァ

千早「!」パァァァッ

P「ただし、今日は特別だ。これから先、あんまりわがままなようだと……サヨナラだからな?」

千早「!? い、イヤですっ! ごめんなさい、ごめんなさい!!」ウルッ

P「はいはい、涙ぐまないの。いい子でいてくれればいいだけだから、な?」ワシャワシャ

千早「ごめんなさい……」シュン

P「じゃ、近くのファミレスでも行くか。ほら、おいで」スッ

千早「!」ギュッ!

P「ったく、千早は可愛いなぁ……」

千早「ふふっ♪」


P「と、いうことが昨日あってな」

春香「あーあ、今日はコーヒー飲まなくて済むと思ったのになぁ」

P「大人としては強く諌めなきゃいけないとこだったけど……もう千早が可愛くて可愛くて、つい甘やかしちゃうんだよな」

春香「絶賛大好評胃痛タイム、大丈夫かな……胃が二重の原因で荒れないといいけど……」

P「そんなに気にするならコーヒー飲まなきゃいいじゃないか」

春香「飲まないと死んじゃいますよ。やってられませんよ。コーヒーなだけマシですよ」

P「そういえば春香、ここ最近、急にコーヒー党になったよな。豆やらミルやら凝りだして」

春香「手を出してみると意外と楽しいんですよ、コーヒー。お菓子と一緒に出してもいいかなって」

P「流石春香だな! 雪歩のお茶に春香のコーヒー……うんうん、事務所環境がより素晴らしくなるな」

春香「まぁ実際の目的は全く別のことなんですけどね」

P「ん?」

春香「いえ、知らないって罪だなーって思っただけです」

P「変なことも言うようになったなー」

春香(突っ込みたい……その口が言わせてるんですよって突っ込みたい……!)


(メトメガアウー♪)

春香「あ、ちーちゃんからメールだ。まさかの挟撃を受けなきゃいけないのかな私……」パカッ

P「千早からか? そういや今日、千早から返事が来ないんだよな……」

春香「……わっほい!?」

P「ま、まさか俺、嫌われ……どうした?」

春香「えーっと……ちーちゃん、古くなってた食品食べて、少し体調崩しちゃったみたいです」

P「えっ、大丈夫なのか?!」

春香「あ、別に大したことはないみたいです。今日明日のオフ中には戻すって言ってますし」

P「ち、千早……」オロオロ

春香「私がお見舞いに行ってきますから。プロデューサーさんは心配しないで、お仕事に集中してください」

P「で、でも……」オロオロ

春香「でももかももないです!」カッ!

P「は、はいっ!」


春香「そんなわけで、右往左往するプロデューサーさんを机に縛り付け、ちーちゃんの部屋にやってきたのでした」


(メトメガアウー♪)

春香「『鍵は開いてる』、か」パカッ

(ガチャッ)

春香「お邪魔しまーす」

春香「調子はどう?」ヒョコッ

千早「は、春香……けほっ」

春香「ああもう、ちーちゃん顔真っ赤だよ。結構熱出てるんじゃない?」

千早「計ってないから……分からないわ……」ゴホッ

春香「ほら、体温計持ってきてあげたから。上半身起こして」

千早「ん……ありがとう……」ムクッ

春香「はい、体温計を腋に挟んで」ギュッ

千早「うー……」

(ピピピッ)

春香「んー、38.1℃かぁ。結構熱あるよ」

千早「どうりで頭がクラクラするわけね……」


(ピタッ)

千早「冷えぴた気持ちいい……」

春香「今おかゆ作ってあげるから。食欲はある?」

千早「あまりないけれど……少しでも食べないと」

春香「へー、ちーちゃんにしては殊勝な心がけだね。台所借りるよー」

千早「プロデューサーに、体調に気を付けてくださいって言ったから……私も気を付けないと、と思って」

春香「夜の寒空の下、薄着で待つという暴挙の末に8度台の熱を出した人の言葉とは思えないね」

千早「うっ」

春香「そのせいで風邪引いたなんて知ったら、プロデューサーさんはどう思うかなぁ?」ニコッ

千早「……最近の春香、いじわるね……」

春香「ささやかな逆襲だよ、胃痛の」

千早「?」


春香「はいっ、できたよ。あーんして」

千早「あ、あーん……」パクッ

千早「……」モグモグ

春香「美味しい?」

千早「ん……美味しい」

春香「良かった良かった。一応多めに作っておいたから、もしお腹が空いたら暖めて食べてね」

春香「あとこの袋に、飲み物とゼリーが入ってるから」

千早「は、春香……」

春香「ん? なに?」

千早「……帰ってしまうの?」ウルッ

春香「ちーちゃん、それは卑怯だよ」キュンッ


春香「でもごめんね、夜に番組の収録入ってるから、もう行かないと……」

千早「そう……」

春香「明日また様子を見に来るから、しっかり寝ててね?」

千早「ええ、早く治せるように……けほっけほっ」

春香「はい、横になる」

千早「ん……」トスン

春香「じゃ、鍵かけるから借りてくね。おやすみ、ちーちゃん」ナデナデ

千早「ん……」ナデナデ

千早「おやすみ……」ナデナデ

千早「なさい……」ナデナデ




———————————

———————

———

おお、あなたか
過去作は
春香「清純派ちーちゃんの初めての悩み」
春香「清純派ちーちゃんと健やかな日々」
春香「清純派ちーちゃんが真心を込めて」
の3つかな?

>>18
あい。>>1に書こうと思って忘れてた。
まぁ一話完結だから読んでなくてもなんとなく楽しんでもらえれば。


(ナデナデ)

千早(ん……)

(ナデナデ)

千早(あったかい……)

(ナデナデ)

千早(柔らかい手……)

(ナデナデ)

千早「ん……」

「あ、起きた?」

千早「はる、か……?」


P「ありゃ、期待を裏切ってすまん。俺だ」

千早「?! ぷっ、ぷろっ……ごほっごほっ!」ムクッ

P「馬鹿、横になってろ」

千早「う……」トスン

P「勝手に上がって悪いな。春香に鍵を借りたんだ」

千早「いえ、悪いだなんて、そんな……」

P「冷えぴた張り替えるぞ」

千早「わ、私、汗くさいですから!」アワアワ

P「そんなん気にならないよ。あ、そういやもう夜だけど、腹減ってるか?」

(ピトッ)

千早「んっ……冷たい……お腹はまだ大丈夫です」

P「そうか。春香が作ってくれたおかゆが残ってるらしいな。腹減ったら言ってくれ」

千早「あ、はい——」

千早(……って!)

千早「あ、あのプロデューサー! こ、これは風邪などでは……!」アセアセ

P「……今更過ぎるだろ」


P「今時の食あたりは風邪と症状が全く同じなのか?」

千早「う……」

P「お腹が痛いわけでもなさそうだが」

千早「……」

P「……ごめんな。あんな寒空の下で待たせて」

千早「っ違います! 私が、私が勝手に待っていたから!」

P「千早……」

千早「部屋で、メールとか、貰ったプレゼントとか見ていたら、プロデューサーが隣にいないことが、無性に寂しくて……」

千早「私が、子供でわがままだから……自業自得です」

P「でも、寂しがらせちゃったのは俺なんだよな」ギュッ

千早「あう……」

P「ごめんな……って俺、しょっちゅう謝ってる気がするな」

千早「風邪……伝染っちゃいますよ……けほっ」

P「いいよ、伝染すと治るって言うしな。それに、千早の風邪なら気にならない」

千早「ぷろでゅーさぁ……」ギュゥッ

ちーちゃん可愛すぎてハゲそう
俺の家にもちーちゃん来てほしい


(クゥゥゥゥ)

千早「あ……」

P「可愛い音がお腹からしたぞ?」

千早「き、聞かなかったことにしてください……」

P「食欲があるのはいいことだ。今温めてくるな」スクッ

(テクテクテク)

千早「……」


千早(プロデューサーは台所に行っただけ。ここから数mしか離れていない)

千早(でも、ちょっと視界からいなくなっただけで、なんでこんなに心細くなるんだろう)

千早(風邪のせいもあるだろうけれど……)

千早(好きになればなるほど、僅かな寂しさにも耐えられない)

千早(ずっとずっと……一緒にいたい……)


P「ほら、温めてきたぞ」

千早「あ……」ギュッ

P「? どうした、裾を握ったりして」

千早「……いいえ、なんでもないです」コホッ


P「はい、あーん」

千早「あ、あーん……」

千早「……」モグモグ

P「ちょっと味見したけど、やっぱり春香って料理も上手いよな」

千早「ええ、春香のおかゆ、美味しいです。でも」

P「でも?」

千早「……プロデューサーが加えてくれたスパイスが、より美味しく感じさせてくれます」

P「え? 俺、何も手は加えてないけど」

千早「ふふっ、分からないなら、それでもいいです」

千早「おかゆ、もっと下さい」

P「やれやれ。この食欲なら明後日には良くなりそうだな。あーん」スッ

千早「あーんっ」パクッ

千早「ふふっ」


P「よし、食べ終わったな。ほら、薬だ」

千早「美味しかったです。薬、ありがとうございます」ゴクッ

P「春香は器用だからなぁ」

千早「それもそうですけれど……プロデューサーが、食べさせてくれたからです」ニコッ

P「……こほん。そういや、汗を拭いたりはしなくていいのか?」

千早「ん、そうですね。少し汗っぽ——」


千早(——汗を拭く?)


千早(つまりそれって)


千早(服を脱——)


千早「……っっっっっっ!?!?!?」カァァァァァァァァアアア!!


P「……あっ! す、すまん! 考えてみたら男にしてもらうことじゃないな! へ、変なこと言って悪い!」ダラダラ

千早「い、いえっ、私こそ、へ、変なことを……」

千早(え、えっと、えっと……!)

P「お、俺、食器を片づけてくるよ」スッ

千早「っ」

(ガシッ)

P「へっ?」

千早(あ、あれ?)

千早「あの、プロデューサー……」

千早(わ、私は何を言おうとしてるの……?!)


千早「……そ、その……背中とかだけでも、少し、拭いていただいても……?」


(フキフキ)

P「見えてない、前側は見えてないからな」

千早「わ、分かってます……」フキフキ

千早(ぷ、ぷろでゅーさーが、私の背中を……背中を……!)

P「千早の背中とかうなじとか……凄く、綺麗だな……」

P「なんというか……水着撮影の時とかとは、全然違う……」フキフキ

千早「っ……」カァァァァァァアッ

P「って俺は何を言ってるんだ! 変態か!」

千早「ぷ、ぷろでゅーさーの……へんたい……」

P「」グサッ

千早「……くすっ、冗談ですよ」

P「今一瞬、意識が飛びそうになったよ……」

千早「プロデューサーが恥ずかしいことを言うから、仕返しです」

P「ごめん……でも、変な意味じゃなくて、なんだかアイドルじゃない普段の千早を見てるって気がして、綺麗だなって素直に思ったんだ」

千早「うぅ……ま、また、そういうことを……」


P「こんなもんかな。少しはさっぱりしたか?」

千早「はい……さ、さっぱ、り……」カァッ

P「あ、赤くなるな! 俺だって恥ずかしかったんだから!」

千早「ご、ごめんなさい」

P「食器、片付けるな」カチャカチャ

千早「はい、ありがとうございます」

P「洗い物が終わったら何かしてほしいこととかあるか?」ザー

千早「あの、明日もお仕事が早いでしょうから、そろそろお帰りに——」

P「は? 何を言っているんだ千早は」

千早「へ?」

P「今夜は泊まりで看病するに決まってるだろう。ちゃんと服の替えも持ってきたし」

千早「えっ!?」ドキィッ!


P「迷惑なら帰るけれども」

千早「そ、そんな迷惑なわけがっ……けほっ」

P「ん、なら安心して寝てなさい」

千早「で、でもダメです! もし風邪が伝染ったりしたらお仕事が大変です!」アタフタ

P「確かに、それは否定はできないが」

千早「私は大丈夫ですから、帰ってしっかり休んで、明日も頑張ってください」ケホッ

P「千早……」

千早「体調に気を付けてくださいって、メールしたじゃないですか」

P「……はぁ、分かったよ。もし何かあったらすぐに携帯で知らせるんだぞ? 飛んでくるから」

千早「大丈夫です。もうあとは寝てるだけですから」ケホッ

P「しっかり安静にしてな。それじゃ、鍵借りてくぞ」チャリッ

千早「はい。おやすみなさい」ニコッ

P「ああ、おやすみ」ガチャッ


(バタン)


千早「あ……」

千早「プロデューサー、帰っちゃった……」

千早「もう寝ましょうか。電気を……」

(フラッ)

千早「う……」ドサッ

千早「ん……また熱が出てきたのかしら……薬飲んだのに……」

千早「熱い……」ハァッハァッ

千早「……寝ましょう」

やっぱり千早は多少依存心強い方が圧倒的に可愛い

多少……?

>>37
ちーちゃんのためにオブラートに包んだんだからそれ以上言ってはいけない


千早「……」

千早「やっぱり、泊まってもらえば良かった」

千早「寂しいです、プロデューサー」

千早「プロデューサーの仕事なんて、どうでもいいから、一緒に……」

千早「……私、悪い子、ですね」

千早「でも、こんなときくらい」

千早「辛いときくらい、悪い子でも、わがまま言っても、いいですよね……?」

千早「……熱い……うぅ……プロデューサー……」


春香「千早ちゃん、大変そうだね」ヒョコッ

千早「あ、春香……」

春香「でも、だからって悪い子なのは、どうかと思うよ」

千早「えっ?! わ、私、そんなつもりじゃ……!」

P「千早がそんなやつだったなんてな。がっかりだよ」テクテク

千早「っち、違うんです、プロデューサー!」

P「俺の仕事なんて、どうでもいいんだろ?」

千早「そ、それは……!」

春香「プロデューサーさん、こんな薄情な子、放っておきましょう?」

P「そうだな。行こうか、春香」ニコッ

春香「はいっ!」ニコッ

(ギュッ)

千早「え……」


千早「ぷ、ぷろっ——」

(ジャラッ!)

千早「いたっ!? な、なにこれ……鎖……?」

(ジャラッ)

P「——」

春香「——」

千早「待って! 待って、二人とも!」

(ジャラッ)

千早「お願い、行かないで!」

(ズシィッ!)

千早「っ……指先が……掌が、重い……」

千早「二人が、見えなくなっ……!」

千早「……あ、あぁ……」

千早「私、また、一人ぼっちに……」


千早「重い……手が締め付けられるみたいに……」

(ジャラッ)

千早「助けて……誰か、助けて……」

(ジャラッ)

千早「春香……」

(ジャラッ)

千早「プロデューサー……」

(ジャラッ)

千早「ぷろでゅーさぁっ……!」



(ギュッ)



千早「え……?」


千早「右手が、暖かい……」

千早「重さが、無くなって……」

(ギュゥッ)

千早「誰かが、柔らかく包んでくれてる……」

千早「軽くなっていく……」

千早「う……」ジワァッ

千早「私、一人じゃ、ないの……?」

(ギュッ)

千早「放さないで……」


千早「この手を、放さないで……!」


千早「放さな……ん……」ハッ

千早「いつの間にか、寝てたみたい……」

千早「額が冷たい……冷えぴたが貼り替えられてる?」ムクッ

千早「それに、右手に何か——」クルッ


P「ぐぅ……すぅ……」


千早「ぷろ、でゅーさー……」

P「ん……あ、千早……悪い、起こしちゃったか?」ゴシゴシ

千早「い、いえ。プロデューサー、何故ここに……?」

P「はは、やっぱり心配でさ。戻ってみたら、うなされてたから……」

千早「……」

P「も、もしやこれって不法侵入になるのか?!」

千早「……」

P「すまん、ちは——」


(ギュウッ)


千早「———っ」ポロポロ

P「きゅ、急に抱き着くなって……千早?」

千早「怖い夢を……見たんです……」

千早「プロデューサーが……春香と、どこかに行ってしまう夢……」

千早「私が、私が悪い子だから……!」

P「はいはい、泣かなくていいから」ナデナデ

千早「う……」

P「大丈夫だよ。俺はずっと一緒にいるから」

千早「ずっと……?」

P「あー……」ポリポリ

千早「……え?」

P「ノーカン。今のナシで」

千早「な、ナシにしないでください!!」ガバッ


千早「も、もう一回、もう一回言ってください!」

P「大分体調は良くなったみたいだな。薬のせいかな?」

千早「ぷーろーでゅーうーさーあー!!」ポカポカ

P「でもまだ治ったわけじゃないんだから。横になってなさい」

千早「プロデューサー……」ポロポロ

P「……その内また言ってやるから。もっとちゃんと、しっかりできたら」

千早「……!」

P「だから、今は寝なさい。分かったな?」

千早「はいっ! ……あの、プロデューサー」

P「ん?」

千早「……私、待ってますから、ね?」

千早「プロデューサーが自信を持って言える日まで、ずっと、いつまでも——」


春香「へぇー、そんなドラマチックな一夜を過ごしたんですねー……ごほっごほっ」

P「次の日、千早が調子よくなったと思ったら、案の定、俺も伝染されちゃったしな」

千早「ご、ごめんなさい」

春香「大変だったねー。ところでさ」ケホッケホッ

P「でもすぐに千早が見舞いに来てくれてさ。焦りながらも一生懸命看護してくれたんだ」

千早「だ、だって私が風邪を伝染してしまって、プロデューサーが大変で、それでそれで……!」

春香「ちーちゃんったら健気だなぁ。By the way...」コホンコホン

P「ははっ、こんな感じでテンパっててさ」ゴソゴソ

春香「Q.仕事場の知人達と会話が成り立ちません。どうしたらいいですか。 A.諦めてください」

P「可愛かったなぁ。ほら、写真」

千早「ま、また写真?! だから消してください!」

春香「あ、その画像あとでメールでください」ゲホッ


春香「それでね、あのね、二人に聞きたいんだけど」

P「うん」

千早「ええ」


【春香の部屋】


春香「……二人は何をしに来たのかな?」ゴホッゴホッ

P「え? そりゃ勿論お見舞いに決まってるじゃないか」

千早「ごめんなさい、春香……私が伝染した風邪が長引いてしまって……」

春香「嗚呼、誰か、誰かコーヒーを」ゴホッ

P「この前も胃を気遣ってたじゃないか。風邪のときくらい我慢しなさい」

千早「そうよ、春香。どうしたの、そんな薬物中毒みたいに」

春香「あーあどうしようこのままだと私糖分過多でわっほいしちゃうよ」コホッ

千早「プロデューサー、さっきから春香の言葉が……」

P「ちょっと熱が出てるのかもな。頭がはっきりしてないのかもしれない」

春香(映画とかで緊急事態を伝えようとして一笑に付される人たちってこんな気持ちなのかな……)


春香「ところでプロデューサーさん、こんなところで油売ってていいんですか?」ゲホゲホ

P「うっ」ギクッ

春香「風邪で穴開けたお陰で、律子さんにこっぴどく怒られてましたよね?」ゴホッ

P「だ、大丈夫だ。きっと」

千早「そろそろ行きましょうか、プロデューサー」

P「そうだな。それじゃ、またな、春香」ガチャッ

春香「やっと、やっと解放されるよ……」ケホッ

千早「あ、春香」クルッ

春香「へ、へい? まだ私に糖分を注入するつも——」

(ギュッ)

春香「……手?」ケホッ


千早「春香は、私の大切な、一番の友達だから」

千早「辛い時はいつも、傍にいるから……早く、良くなって」

春香「ちーちゃん……うん、早く治して、事務所に行くね」

千早「ええ。それじゃあ、また」ニコッ

春香「うん、ばいばい」

(バタン)

春香「……ちーちゃん。私も、ちーちゃんのこと、一番大切に思ってるよ」

春香「えへへ……握ってもらった手、暖かいなぁ……」

春香「……」

春香「それはそれとして」



春香「お母さーん、薬持ってきてくれない?」

春香「早く、一刻も早く。兎に角苦いやつを。迅速に早急に」



おしまい

久しぶりに若干めんどくさいちーちゃん
一応いくつかあるので、気になる方はよろしければどうぞ
http://www32.atwiki.jp/imasss/pages/1274.html


非常によござんした
このシリーズ以外で書いたものってある?

>>57
響「ぷ、プロデューサーが……ガンに……?」とか
もう5か月くらい前だけど

えっ、なんで頭皮マッサージを薦められてるんですかね……

お読みいただいた方、ありがとうございました

実は前回から結構間が空いてたから、もう続きはないのかと思ってたんだよな
次回も期待してます!

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