エミヤ「今度こそ、誰も泣かずに済むように――」 (181)

第五次聖杯戦争をエミヤが戦い抜く話
過去作品で要望のあった改変版なので、一部使いまわしします
過去作読んでて使いまわし部分はいらないという方は>>8ぐらいからどうぞ

作者の過去作品
士郎「それで…誰も泣かずにすむのなら――」
士郎「それで…誰も泣かずにすむのなら――」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441109108/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454598039

視界がぶれる

頭を揺さぶられる気持ち悪さと同時に背中を地面に叩きつけられた

理解できたのは自分が守護者としてではなく召喚されたこと

どうやら自分は聖杯戦争とやらのために、アーチャーのサーヴァントとして召喚されたらしい

雑な召喚で記憶に混乱が見られ、自分のことがアーチャーだということぐらいしかわからない

またくだらない争いかという苛立ちを抑えるためと、頭の整理のために瓦礫に腰掛ける

どうやら生前死の間際まで持ち続け、英霊の座にまで持ち運んだペンダントも持ってこさせられたらしい

守護者として召喚されるときはいつも持っていなかったはずなのだが――

一人の少女が戸を蹴破りながら入ってくる

こんな年端もいかない少女でさえ争いに参加するというのか

「それで。アンタ、なに?」

「開口一番それか」

どうやら完全に貧乏クジを引かされたらしい

マスターの証を見せろと言っても、三回きりの大魔術の結晶である令呪とやらを見せてくる

その後の会話からしてもこの少女は未熟な魔術師らしい

「あったまきたぁ――――!!」

少女が叫びながら構える

その腕にあるのは令呪

アーチャー「な―――まさか!?」

自分の契約者、マスターの少女は躊躇いなく令呪を使った

絶対服従等というくだらない命令に令呪を使ったマスターに令呪の説明をしつつ、
自分にかけられた本来効果等一切ないはずの令呪の効果を確認する

呆れた事に、いや彼女は優れた才能を持っているのだろう

令呪の効果がはっきりと感じられる。心変わりだけでなく、身体への制限もある

これなら戦いに巻き込むことを心配する必要はなさそうだ

それに何故か、この少女との会話に何処か懐かしい、心地のよいものを感じる

「貴方、何のサーヴァント?セイバーじゃないの?」

アーチャー「残念ながら剣は持っていない」

その返答に対し隠すことなく落ち込む彼女に対し何故かもやっとした感情が湧き上がる

アーチャー「悪かったなセイバーでなくて」

「え?そりゃ痛恨のミスだから残念だけど、悪いのはわたしなんだから――」

アーチャー「ああ、どうせアーチャーでは派手さにかけるだろうよ。後で今の発言を悔やませてやる。その時になって謝っても聞かないからな」

柄にもなく自分は彼女に期待をされていないことに拗ねているようだ

「そうね、じゃあ必ずわたしを後悔させてアーチャー。そうなったら素直に謝らせてもらうから」

アーチャー「ああ、忘れるなよマスター」

彼女の言動で一喜一憂するとは、まるで自分が昔に戻ったようだ

……昔?

「それでアンタ、何処の英霊なのよ」

アーチャー「――」

「アーチャー?」

少女は怪訝そうな顔で見上げてくる

その顔を見て確信する、自分は彼女と生前知り合いであると――

アーチャー「私がどのような者だったかは答えられない。何故かと言うと――」

「あのね、つまんない理由だったら怒るわよ」

そう言われても困る

何故なら彼女と親しい間柄だったということぐらいしか思い出せないからだ

アーチャー「何故かというと自分でもわからない」

「はああああ!?何よそれ、アンタわたしの事バカにしてるわけ!?」

アーチャー「マスターを侮辱するつもりはない。だがこれは君の不完全な召喚のツケだぞ」

記憶の混乱が見られると続けていくと、少女の唖然とした顔がどんどん落ち込んでいく

何故かわからないが、どうやら自分は彼女のああいう態度に弱いらしい

アーチャー「…まあさして重要な欠落ではないから気にすることはない」

一応フォローしたつもりだったのだが

「気にするわよそんなの!!アンタがどんな英霊か知らなきゃどのぐらい強いのか判らないじゃない!!」

アーチャー「些末な問題だよそれは」

「些末ってアンタね。相棒の強さが判らないんじゃ作戦の立てようがないでしょ!?」

アーチャー「何をいう。私は君が呼び出したサーヴァントだ、それが最強でない筈がない」

「それじゃあ暫く貴方の正体は不問にしましょう。それじゃあアーチャー、最初の仕事だけど」

アーチャー「早速か、好戦的だな君は。それで敵はどこだ――」

どうやら自分は彼女に頼ってもらえることが嬉しいらしい

守護者としての仕事が嫌になっていた自分は、彼女に与えられる仕事にかなり期待しているようだ――

アーチャー「――む?」

何故かホウキとチリトリを投げつけられた

「下の掃除お願い。アンタが散らかしたんだから責任もってキレイにしといてね」

アーチャー「――――」

何を言われたか理解できすに十数秒かたまる

期待をしていた矢先にこの仕打ちはない

アーチャー「待て、君はサーヴァントを何だと思っている」

「使い魔でしょ?ちょっと生意気で扱いに困るけど」

アーチャー「――――」

迷いなく言い切った少女に唖然すること数秒

文句を言おうと口を開きかけるが、自分は先程の令呪で逆らうと体が重くなることを思い出す

悔しいが掃除をするしかないようだ

アーチャー「了解した。地獄に落ちろマスター」

負け犬みたいだが、このぐらいの悪態は吐かせてもらおう

朝九時過ぎになってもマスターの少女は起きてこない

サーヴァントはちゃんとした魔力の提供さえあれば、食事や睡眠を摂る必要はない

それ故に夜通し清掃を続け、自分が召喚された際に崩れた瓦礫を元に戻すだけでなく

元々よりも、そして他の場所も綺麗にし、少女の命令以上の仕事をしたというのに

ようやく起きてきた少女の一声に呆れる

「……うわ。見直したかも、これ」

アーチャー「日はとっくに昇っているぞ。また随分とだらしがないんだな、君は」

自分の仕事ぶりをこれで済まされた事に対する不満を込めて話しかける

それに対し嫌味で返され、皮肉で返す

少女はそれに返す事なく頭をかかえてるようだ

どうやら召喚の疲れが出てるらしい

アーチャー「――ふむ、紅茶で良ければご馳走しよう」

片づけの際に食器の位置は把握している

そして彼女が起きてくるタイミングを見計らって用意しておいた紅茶を注ぎ、彼女に手渡す

「あ、おいしい」

不機嫌そうだった少女の表情が幸福そうに変化する

アーチャー「ふむ」

それを見て思わず笑みがこぼれる

「なに笑ってんのよ、それよりアンタ自分の正体を思い出したの?」

アーチャー「いや」

正直に答える

この屋敷に見覚えはなかったし、思い出したのはこの紅茶が少女のお気に入りということぐらいか

「そう、貴方の記憶に関しては追々対策を考えとく。出かける支度をしてアーチャー、街を案内してあげるから」

アーチャー「その前にマスター。君、大切な事を忘れていないか?」

「え?大切なことってなに?」

アーチャー「……まったく。君、契約において最も重要な交換を、私たちはまだしていない」

「契約において最も重要な交換?」

少女は本気でわからないようで、考え込む

アーチャー「……君な。朝は弱いんだな、本当に」

相変わらずだと呆れながら言う自分に対し、彼女は苛立ちを見せ

「何よ君君って、――あ、しまった、名前」

アーチャー「思い当たったか。それでマスター、これからは何て呼べばいい?」

「わたし、遠坂凛よ。貴方の好きなように呼んでいいわ」

アーチャー「遠坂、凛…」

何処か懐かしいような、そして安心する響きだ

アーチャー「それでは凛と。……ああ、この響きは実に君に似合っている」

感じた事をそのまま伝えただけだが、咳き込んだ少女には勘違いされてしまったようだ

凛「どう?ここなら見通しがいいでしょ、アーチャー」

一日中、日が暮れるまで連れ回され、最後はここらで一番高いビルの屋上に連れてこられた

アーチャー「はあ。将来君と付き合う男に同情するな」

凛「え?何か言ったアーチャー?」

アーチャー「素直な感想を少し。確かに良い場所だ、始めからここに来れば歩き回る必要はなかったのだが」

少し会話をし、街の全貌を把握する

歩き回った時もそうだったが、自分はこの街に関する記憶は少ししかないようだ

そう、少しということは多少はあるということ

数年後、この街は地獄と化す――

それの原因はこの聖杯戦争の時点で生まれつつあった筈だ

ならば、この戦争の間にそれの元を排除してしまえば防げるのではないか

凛「……」

アーチャー「凛、敵を見つけたのか?」

少女の殺気を感じ声をかける、苛立った返答から察するに彼女の苦手な相手なのだろうか

凛「いいえ、ただの知り合い、一般人よ。それよりアンタこそ殺気出してたけど敵を見つけたの?」

アーチャー「ああ、場所はわからんが、アレは必ず消さねばいかん」

凛「何よソレ?」

帰り道、急に凛が陰にしゃがみ込み

アーチャー「凛、何を隠れている」

凛「あそこにいるの知り合いなの。今日学校休んだからあんまり顔を会わせたくないの」

少女の視線の先を追うと金髪の男と少女が話している

あの金髪の男は――

アーチャー「凛、知り合いとは外国人の方か?」

凛「いいえ知らない。ねえ、あいつ、人間?」

アーチャー「さあ、実体はあるから人間なのだろう。少なくともサーヴァントではない」

彼の正体は人間とは言い難いが、今注目すべきは別だ

金髪の男が去っていくのと反対の方向に、男と喋っていた少女が歩き出す

アーチャー「あちらの男ではないという事は少女の方が知り合いか?」

凛「ええ、そうよ」

アーチャー「……あの少女は君の身内か何かかね凛。君と親しい仲の者か?」

凛「――なんでそんなこと聞くのよ。……身内じゃないわ、親しくもなんともない、ただの知り合いよ」

アーチャー「そうか、なら話が早い。今から私がする事を止めてくれるな」

凛「ちょっとアーチャー?アンタ一体何を――」

アーチャー「ちょっといいかね」

少女「え…?」

突如目の前に出現した自分に少女は驚きを隠せず、辺りを見回している

アーチャー「今すぐここで私に殺されるか、それとも今すぐ自決するか、好きな方を選ぶといい」

少女「え――」

少女がこちらを向くと同時に二本の対となる剣で切り付ける

少女「あっ――――。いた――え、血……?あ、い、いや……」

思わず座り込み僅かに両耳を掠めただけですんだ少女は耳から溢れ落ちた血を見て、ようやく状況を悟ったようだ

アーチャー「む――。苦しまないように一思いにと思ったのだが、どうやら逆効果だったようだ」

少女「あ、ああ。何で、そんな……さっきまでは――」

アーチャー「サーヴァントを連れずに歩くという事はそういう事だ」

少女「っ!?」

アーチャー「いくら君が戦いを拒もうと関係はない。それに君以外が君のサーヴァントを連れていようともな」

少女「え、あ――」

アーチャー「悪いな。君には何の恨みもないが、君に生きていてもらっては色々と困るのでな」

少女「い、いや、助けて姉さん――――」

今度こそ仕留められるように確実に剣を振り下ろす――

凛「止まりなさいアーチャー!!」

アーチャー「くっ!?」

少女「ね、姉さ――」

剣がその少女の頭を切断するという寸前で、体の動きが強制的に止められる

あまりの恐怖に気絶したのか、少女はその場に倒れ込む

アーチャー「凛、令呪を――。一体どういうつもりだ」

凛「それはこっちの台詞だっつうの。アンタ一体何考えてんのよ」

アーチャー「見ての通り、敵マスターを殺そうとした。ただそれだけの話だが」

凛「何を開き直ってそう――はい?」

アーチャー「彼女の腕を見たまえ。令呪があるだろう」

凛「そんなはず――嘘、なんで桜に令呪が――?」

桜。それが今自分が殺そうとした少女の名前なのだろう

アーチャー「わかったのならば退きたまえ。今彼女の傍にサーヴァントはいない。殺るなら今がベストだ」

凛「桜がマスターなのはわかった。でもだからと言って話は別よ。アンタが桜を殺すっていうんなら力づくでも止めてみせる」

アーチャー「君が令呪を使ってでも止めるというのなら止めはしない。その場合君を殺してその少女を殺すだけだ」

凛「アンタ――そこまでして桜を殺したいわけ?」

アーチャー「無論だ。もっとも君もいずれ彼女を殺すべきだと選択するだろうが」

凛「どういうことよソレ?ちゃんと説明しなさい」

アーチャー「どちらにせよ私はその娘を完全に消すと言っているのだ。逃げるのなら今のうちだ、そこはもう安全ではない」

凛「だからちゃんと説明しなさいって言ってるでしょ」

今日はここまで

アーチャー「説明も何も言葉通りの意味だ」

凛「だから何でアンタがそこまで桜を――」

アーチャー「っ、伏せろ凛!!」

凛「へ――?」

飛んできた短剣を片手剣で弾き飛ばす

凛「敵襲!?」

アーチャー「凛、自分の身は自分で守りたまえ。もっとも敵は君を狙いはせんと思うが」

倒れている少女を担ぎ上げ、凛から距離を取ろうとし――

「逃がしません」

アーチャー「ぬ――」

体が動き辛い

凛「アーチャー!?」

アーチャー「寄るな凛!!魔眼の類だ」

「我がマスターを開放してもらいましょうか、アーチャーのサーヴァントよ」

アーチャー「何故そのように思う。アサシンやセイバーかもしれんぞ?」

ライダー「アサシンとは既に交戦したことがありますからね。それに魔眼への耐性を持ち合わせていないのにセイバーの筈がない」

アーチャー「そういう君はライダーのサーヴァントだな。魔眼を持つライダーとはな、ふむ、反英雄の類まで呼ばれるとはな」

ライダー「私の真名に気づきましたか」

アーチャー「ああ。君はこの娘に自分を重ねているのかね?」

ライダー「……」

アーチャー「ならば君もわかっている筈だ。彼女を今ここで、怪物になる前に始末するのが最善だとな」

ライダー「私は彼女がそうならないように守るため、召喚に応じたのです」

アーチャー「一人の犠牲で皆が助かるのだ。そのような危険を守るよりも確実だ」

ライダー「それは貴方のような偽善を良しとする英雄の考え方でしょう。ですが私は英雄等ではありません」

アーチャー「ふん、英雄……ね」

ライダー「?」

凛「ちょっと待ちなさいよアンタ達。全然話についていけてないんだけど――桜が怪物になるってどういうコト」

アーチャー「言葉通りの意味だ。私の薄れた記憶の中に彼女を討伐した記憶がある。それが生前なのか、死後なのかはわからんがな」

凛「な――!?」

アーチャー「英霊が討伐せねばならん存在。それを君達人間の言葉で表すとなると、怪物以外に当てはまるモノはないだろう」

凛「嘘――そんなのありえない。何で桜が――」

アーチャー「あり得ないという事はないだろう。そこのライダーも怪物に成り果てた例の一つだ」

ライダー「……」

アーチャー「人間何がきっかけで英霊や怪物になるかなどわかるものではない。もっとも君は元々人間ではなかったか」

ライダー「……アーチャーのマスターよ、貴方は桜が怪物となると知ってどうするのです。アーチャーと同じように始末しますか」

凛「桜が怪物になるのが本当で、それで多くの犠牲が出るっていうなら――私は遠坂の人間として桜を始末するわ」

アーチャー「ふ――ならばする事はわかっているな凛」

担ぎ上げていた少女を凛の傍に降ろす

ライダー「な――動けたのですか貴方は」

アーチャー「縛りを解くのには十分に時間があったからな」

ライダー「く――」

アーチャー「ライダーは私に任せろ。何眠っている少女を始末するの等赤子の手をひねるようなものだろう」

ライダー「そんなことはさせません、貴方達が桜を始末するというのならば、私はけして容赦はしません」

アーチャー「宝具を使うつもりか。だが、あの娘が死ぬまでの時間程度稼ぐのは簡単だ」

凛「そう、遠坂として桜は生かしておけない。――でもそれは、桜が怪物になってからの話よ」

アーチャー「なに――」

ライダー「……」

凛「桜はこのまま行けば怪物になるのかもしれない。でも今は怪物じゃない、私の大事な妹よ」

ライダー「そう、貴方は桜の姉なのですね……」

アーチャー「君は今その少女を始末しないというのか」

凛「そうよ。桜が怪物になってしまうというのならどんな手を使ってでも止めてみせるわ。聖杯の力を借りてでもね」

アーチャー「それでは君は――この少女を救うために。他人のために聖杯戦争に参加するというのか」

凛「違うわ。桜を救うは私のため、私は私が桜を助けたいから戦うのよ」

アーチャー「だが、もし君が救えず彼女が怪物になれば――」

凛「その時はきちんと始末をつけるわよ」

アーチャー「――という事だ。だが油断はするなよライダー、君が君のマスターから離れれば私はすぐに始末しよう」

ライダー「ええ、これからは私は傍で貴方達から桜を守りましょう」

凛「取りあえず一旦うちに連れて帰るわ、貴方がつけた傷も治療しなきゃいけないし。でも何で耳なんて斬ったのよ」

アーチャー「地面の血の片づけをする際に確認するといい」

凛「?どういうことよ――これは、桜のイヤリング?」

アーチャー「それをどうしてもその娘から外したくてな。手荒くなってしまったが」

凛「どういう事よ?」

桜「……うう。あれ…ここは――ねえさ、遠坂先輩?」

凛「桜、気がついたの?話は後よ、私の家で手当てしてから説明するわ、でも一つだけ聞いとく。前に確認した時は令呪なかったわよね?」

桜「それは……」

ライダー「桜は戦いを拒否したのです。そして一つ目の令呪を使い、他人にマスター権を譲渡していた」

アーチャー「私が斬った際にその令呪の効果が消え、マスター権が戻ったというところだろう」

ライダー「はい、そしてそのイヤリングは間桐臓硯によってつけられた枷でした」

凛「枷?」

桜「お爺様に逆らえば、私の体を暴走した刻印虫が蝕むように、です」

凛「刻印虫?それ長くなりそうね、家に着いてからじっくり聞かせてもらうわ」

桜「で、でも。そんなの遠坂先輩の迷惑に、治療も自分で――」

凛「迷惑なんかじゃないわ」

桜「でも――」

凛「あーもう鬱陶しいわね。アンタは私の妹なの、妹は黙って姉の言う事聞いてなさい!!」

桜「――はい、姉さん。あれ、ライダー?」

ライダー「いえ、少しトラウマが……」

凛「――何ソレ」

桜「……」

桜の口から聞かされた彼女が間桐で受けてきたことに、凛は唖然としている

幸せだと信じてきた実の妹が虐待を受けてきたというのだから無理はないのだろうが

凛「ちょっと間桐の家に乗り込んでくるわ」

アーチャー「よせ凛。乗り込んだところで君では間桐臓硯には敵うまい」

凛「じゃあアーチャー。ちょっと宝具で吹っ飛ばしなさい」

アーチャー「ふむ、後始末が大変になるが、それでもかまわないかね?」

凛「ええ。聖杯戦争の戦闘と言っとけば綺礼がやっといてくれるわよ」

アーチャー「ならば問題はないな。I am the bone of my sword」

桜「ま、待ってください。兄さんはあんなのでも昔は優しかったんです」

ライダー「今は慎二は学校にいます。私に結界を張らせようとしていましたから」

凛「そ、なら問題はないわアーチャー」

アーチャー「偽・螺旋剣」

ライダー「待ってください、間桐臓硯は殺せません。彼の魂はどこか安全な場所にあるのです」

凛「そう、でもその蟲蔵とやらは壊せるでしょう?やっちゃってアーチャー」

ライダー「それに間桐の家には桜の体を蝕んでいるものに対する記述があるかもしれません」

凛「――そう、なら中止よアーチャー」

アーチャー「――ちぇっ」

凛「それはそうと、こうなったら桜を間桐の家に帰すわけにはいかなくなったわね。桜、暫くうちに泊まりなさい」

桜「え、でも――」

凛「先代が決めた遠坂と間桐は不干渉なんてのは無視よ。遠坂の当主は私で、次の間桐の当主は桜でしょう」

桜「――」

凛「それで問題は間桐臓硯ね。桜とライダーを失ったとなれば別のサーヴァントを何らかの方法で用意するはずよ」

ライダー「そのような事が可能なのかと聞きたいところですが、あの老人ならばやりかねませんか」

凛「そうだ、桜これ」

桜「何ですかこれ?」

凛「お守りみたいなもんよ、厄払いのね」

桜「ありがとうございます、姉さん」

凛「べ、別に礼を言われる程たいしたもんじゃないわよ。ってアーチャー、アンタ何笑ってんのよ」

アーチャー「別に?それよりも凛、明日からどう動く」

凛「そうね…桜を一人にするのは心配だし――桜、私のやってることを手伝ってもらえる?」

桜「わ、私なんかでも良ければ」

凛「桜でも良いんじゃないわ。桜じゃないとダメなのよ」

桜「っ!!――ずるいです、姉さんは」

凛「?。何がよ」

ライダー「微笑ましいものですね」

アーチャー「……ああ、長く続けば良いのだが」

翌朝

アーチャー「む――間桐桜か。凛と違って君は朝早いのだな」

桜「おはようございますアーチャーさん」

アーチャー「昨日斬ってきた相手に対して警戒をしないのかね君は」

桜「姉さんは貴方の事を信頼していますから。キッチン、借りますね」

アーチャー「食事の用意か?言ってくれれば私が用意したが」

桜「私が作りたいんです。姉さんは普段どんなものを食べているんですか?」

アーチャー「凛は朝は食べない。君と違って朝弱いんだ」

桜「―――す」

アーチャー「もっとも彼女は朝食べなくても何も問題ないようだが――」

桜「――です」

アーチャー「む?何か言ったか」

桜「そんなのダメです!!朝はしっかりと食事を摂らないと――」

少女は何かスイッチが入ったようにキッチンに入っていく

アーチャー「待ちたまえ、何を――」

ライダー「アーチャー」

アーチャー「止めてくれるなライダー。今の彼女は家にある食物全てを調理しかねんぞ」

ライダー「手遅れです。ああなったサクラはもう――誰にも止められません」

凛「うぷ……」

桜「お弁当も用意していますからね、姉さん」

凛「そ、そう…ありがとね」

桜「晩御飯も腕によりをかけて作りますから」

凛「よ、夜は自分で作りたいかなあ」

桜「姉さんの手料理ですか?姉さんはどういったものが得意なんですか?」

凛「うーん、私は中華ね」

桜「じゃあ和食と洋食は任せてください!!」

アーチャー「和食も洋食も私は得意だぞ。それに他にも――」

桜「アーチャーさんは黙っててください」

凛「――そうね、家事の当番を決めなきゃね」

桜「全部私がやりますよ?」

凛「それは流石に悪いわよ」

桜「全然悪くありません!!」

凛「ほ、ほら、自分のことは自分でやらないと将来的に困るし――」

桜「大丈夫です、私に任せてください」

凛「いやでも――」

慎二「桜!!昨日は何処に行ってたんだ!!それにライダーも――って遠坂じゃないか」

凛「間桐君、私の大切な妹に何か御用ですか?」

慎二「何言ってんだ遠坂、桜の事は遠坂は口出さない契約だ――」

凛「アンタ達が桜にやってきたこと、知らないと言わせないわよ」

慎二「う、嘘だ…桜が間桐の当主としての教育を受けてきたんじゃないのかよ」

凛「違うわ。臓硯が桜にやってきたのは、桜の子供が間桐の魔術に合うようにするためだけのただの虐待よ」

慎二「そんな、じゃあ僕は…僕は――」

桜「兄さん……」

凛「放っておきなさい桜。頭を冷やさせる良い機会よ」

「お、桜。慎二が今ふらついて行ったけど何かあったのか?今朝も来なかったし――って遠坂!?」

凛「おはようございます衛宮君。では間桐さん、また今度」

桜「はい遠坂先輩、また昼休みに」

衛宮「桜、遠坂と知り合いなのか?」

桜「はい、遠坂先輩には入学した時から良くして頂いて――」

アーチャー「凛、君と桜の関係は周りには知られていないのか?」

凛「そうよ、桜にも今まで通りにするように言ってあるし。この時間だったら他の生徒もほとんど登校してないしね」

アーチャー「では、先ほどの間桐慎二や衛宮という小僧は例外か」

凛「そうね、慎二は桜と同じ弓道部で朝練でしょうし、衛宮君は――何でか知らないけどいつも早いのよね。部活も入ってないみたいなのに」

アーチャー「変わり者がいたもんだな。君とはどういう関係だ?」

凛「桜がよく世話になってるみたい、それだけね。クラスも同じになったことないし」

アーチャー「そうか……」

凛「なに?衛宮君がどうかした?」

アーチャー「よくわからない。なんとなくだが、何故か私はアレが気に食わん」

凛「何よソレ?生理的嫌悪ってヤツ?」



アーチャー「キャスターはもう去った後か」

凛「ここもか……」

桜「あの…これは――」

ライダー「魔力を奪った後のようですね」

凛「そ、私達はキャスターがやってる事を追ってるの」

ライダー「キャスターの本拠地に攻めないのですか?」

凛「攻めこめないの。キャスターは陣地作成のスキルを保有しているわ。工房相手に乗り込むなんてリスクが高いだけ」

ライダー「なるほど、外で活動している際に倒そうというコトですか」

「リスクが高いからって攻め込まねえとは、最近の魔術師共はヘタレたヤツばっかみてえだな」

ライダー「ランサー!!」

ランサー「ようライダー、今日はテメエにゃ用はねえ。が、まさかライダーが他の陣営と手を組んでるとはな」

ライダー「どうやら貴方は全ての陣営に挑んでいるようですね。アーチャー、ここは――」

アーチャー「手を出してくれるなよライダー。やっとの戦いだ」

ランサー「一騎打ちをご所望かい?オレは別に二体相手だってかまわねえんだぜ?」

アーチャー「何、ただでさえ私一人で十分なのに、二人がかりでは一方的になり過ぎる」

ランサー「ぬかせ、弓兵!!」

今日はここまで

凛「この狭い屋上じゃ不利よアーチャー、ここからなら教会が近いわ」

アーチャー「了解した。ライダー、凛を任せる」

ランサー「へ、逃がすかよ」

ランサーと何度か武器を交えながら教会の傍に移動する

ランサー「墓地か。遮蔽物がありゃオレの攻撃が限定されるとでも思ったか?」

アーチャー「ここならば目撃者に邪魔をされることもあるまい」

ランサー「とことん殺り合いてえってわけか、気に入ったぜ。だが、テメエ何処の英雄だ。二刀使いの弓兵なんざ聞いたことがない」

アーチャー「そういう君はわかりやすいな。これ程の槍手で獣の如き敏性さと言えば一人しかいない」

ランサー「ほう、よく言ったアーチャー――ならば食らうか、我が必殺の一撃を」

ライダー「宝具――」

凛「まずい――」

アーチャー「――む?」

ランサー「チ――乱入か。勝負はまた今度だ」

爆音と共に砂埃が舞い上がる

ライダー「新手です。桜下がって――」

「■■■■■■■■―――――ッ!!」

凛「バーサーカー!?何でこのタイミングで――」

「はあっ!!」

凛「嘘、他にも!?」

アーチャー「あれは――」

ランサー「見たことねえ奴だな…ありゃセイバーのサーヴァントってわけか」

凛「嘘、セイバーとバーサーカーが同時に!?アーチャー」

アーチャー「……」

凛「アーチャー?」

アーチャー「――命拾いしたな、あのまま宝具を放たれていれば危なかった」

凛「言ってる場合じゃないでしょ!?アンタ連戦なのよ」

アーチャー「その心配はないだろう。セイバーとバーサーカーは敵対しているようだ」

凛「ホントだ。それにしてもあのバーサーカー、セイバーよりずっと強い……」

アーチャー「向こうはまだこちらに気づいていない。ここは撤退するべきだろう凛、実際ランサーもそうしている」

凛「あいついつの間に…ライダー、桜と一緒に先に家に帰ってて」

桜「え、姉さんはどうするんですか?」

凛「私はセイバーとバーサーカーのマスターを確認する」

「それには及ばないわリン」

凛「な――」

「はじめましてリン。わたしはイリヤ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと言えばわかるでしょ?」

凛「アインツベルン――」

イリヤ「それにしても遠坂と間桐――まさか貴方達が手を組むなんて」

桜「姉さん、アインツベルンって?」

イリヤ「呆れた。マキリは後継者に何も教えてないのね」

凛「それで、今ここで私達と戦うつもりなのかしら」

イリヤ「いいえ、見逃してあげるわ。今はセイバーが先決だもの」

アーチャー「ふ、つまらないことは先に済ませたいというわけか。君も変わらないな」

イリヤ「――何処かで会ったことあったかしらアーチャー」

アーチャー「――いや、私の知人のホムンクルスにあまりにも似ていたのでついな」

イリヤ「ふーん、そう、そういうことにしておいてあげるわ。帰るわよバーサーカー」

アーチャー「セイバーは倒さなくてもいいのか?」

イリヤ「ええ、私貴方に興味が沸いたわ」

セイバー「逃げるのですかバーサーカーのマスター」

イリヤ「それを言うなら貴方のマスターもそうでしょう?」

セイバー「シロウは逃げたのではない」

イリヤ「さよならセイバー。次に会うときはマスター共々殺してあげる」

セイバー「……次は貴方達が相手か?」

アーチャー「いや、お互い今は本調子というには程遠いだろう」

セイバー「そうか、では戦いはまた今度だ」

凛「ようやく7体揃ったわねアーチャー」

アーチャー「ああ、ようやく聖杯戦争が動き出すだろう」

アーチャー「君の言うままに帰ってはきたが、セイバーのマスターを調べなくて良かったのかね?」

凛「セイバーを召喚できるほどのマスターよ、そう簡単に追跡できる程甘くないでしょう」

アーチャー「――ふむ、それではどうやってセイバーに辿り着く」

凛「そうね…どう動いてるのかも拠点もわからないし――ヒントはセイバーが言ったシロウって名前ぐらいか」

桜「……」

凛「桜?何か気になる事でもあるの?」

桜「い、いえ……何もありません」

凛「そう?ならいいけど……アーチャー」

アーチャー「何だね」

凛「貴方はどう動くのがベストだと思う?」

アーチャー「ランサーとセイバーの拠点がわからないのだ、わかっているアサシンとキャスターを叩くのが早い。だが」

凛「だが何よ」

アーチャー「君も知っての通りキャスターの根城の柳洞寺では分が悪い」

凛「今まで通りキャスターが外で活動してるとこに行けってこと?」

アーチャー「それではキャスターが力を蓄え続けるだけだろう」

凛「じゃあどうしろってのよ」

アーチャー「折角協力関係になっているのだ、彼女達に戦ってもらうべきだ」

凛「アンタそれ――」

桜「姉さん、私は大丈夫です。姉さんの力にならしてください」

凛「――わかった。じゃあ桜とライダーにもしっかり働いてもらおうじゃない」

翌日夜

凛「さて、昨日話した作戦通りに行くわよ」

桜「はい、でも姉さん、柳洞寺にいる人達は」

凛「キャスターの魔術で起きないようにされてるでしょう、心配はいらないわ」

アサシン「懲りずにまた来たか、ライダーのサーヴァントよ」

凛「あれがアサシンのサーヴァント?」

ライダー「ええ」

アサシン「……仲間を連れてきたか。だが何度来ようとここを通すわけにはいかんぞライダーよ」

ライダー「悪いですが戦う事無くここは通させてもらいます」

アサシン「門番である私が見逃すとでも――む!?体が――」

アーチャー「悪く思うなアサシン、君とまともにやり合うとキャスターを倒す余力がなくなる。行くぞ凛」

アサシン「く――これも魔術という奴か」

凛「ちょっとアーチャー、とどめは刺さなくていいの?」

アーチャー「ああ、放っておいて問題はない。彼はそのまま石化して消滅するだろうからな」

凛「そう、じゃあさっさとキャスターを叩きに行くわよ」

キャスター「まったくあの男も使えないわね」

アーチャー「そう言ってやるな。あれは君と違って魔眼への対処の術を持っていない」

キャスター「ふん、それで二体もサーヴァントを通したのだから門番として使えなかった事に変わりはないでしょう」

アーチャー「文句ならアサシンではなく、アサシンのマスターに言うべきだろう。山門前ではなく階段下に配置すべきだった」

キャスター「あれにマスターなんてものは存在しないのです。あれは私の手駒に過ぎない」

アーチャー「まさか――貴様、ルールを破ったな」

凛「ちょっと待って、キャスターがアサシンのマスターってこと!?」

キャスター「あら、魔術師である私がサーヴァントを呼び出して何が悪いのです?」

凛「サーヴァントがサーヴァントを召喚するなんて」

アーチャー「山門から離れられない、山門を依代として召喚したか」

凛「そんな事アンタのマスターが認めると思えない、アンタマスターを操ってるわね」

キャスター「聖杯戦争に勝つことなんて簡単ですもの。私が考えているのはその後のこと」

凛「へー、私達に勝てると思ってるの」

キャスター「ここでなら貴方達は私に掠り傷一つ負わせられないもの」

アーチャー「なめられたモノだな。その油断が命取りとなる」

懐に潜り込みキャスターを両断する

凛「アーチャー!!上よ!!」

アーチャー「空間転移か」

キャスター「残念ねアーチャー」

アーチャー「ああ、本当に残念だ、私は君を過剰に評価していたのかもしれん」

キャスター「負け犬の何とやらにしか聞こえないわね、空を飛べない貴方が――な!?」」

ライダー「貴女は私のクラスをお忘れだったようですね」

キャスター「ペガサス――くっ――」

ライダー「逃しはしません」

アーチャー「それに私のクラスも忘れてもらっては困る」

上空でペガサスの攻撃を辛うじて避けるキャスターに対し矢を放つ

キャスター「く――が――、はあ――アーチャーの矢はともかく――」

ライダー「この仔の攻撃力に驚きましたか?」

キャスター「普通の天馬はせいぜい魔獣程度のはず――なのに何故、竜種に近い強さを」

凛「行ける――」

桜「っ……」

凛「え――?」

ライダー「桜――」

キャスター「隙を見せたわねライダー」

ライダー「しま――」

倒れた桜に気を取られたライダーの胸目掛けてキャスターが短剣を振り下ろそうとする

アーチャー「チ――間に合うか、偽・螺旋剣」

凛「桜!一体何が……」

桜「っ…ああっ……」

凛「魔力切れ?それだけじゃない…まさか前に聞いた刻印蟲って奴」

アーチャー「君は治癒に詳しい魔術師は知っているのか?」

凛「綺礼……あいつなら何とかできるかもってアーチャー、キャスターは?」

アーチャー「あそこだ」

ボロボロになったキャスターとライダーが地面を這う

アーチャー「すまないなライダー、君を巻き込まずに助ける良い方法がなかった」

ライダー「……さ…桜…は?」

キャスター「あ……うぅ、はぁ…はぁ……今なら倒せたものを」

アーチャー「その短剣が君の宝具か。ライダーに使おうとしていたとこから察するに、真名を開放を必要としない系統か」

キャスター「何故とどめを刺さなかったのですアーチャー」

アーチャー「君なら彼女を救う方法を知っているかもしれないと思ったのでな」

凛「ちょっとアーチャー」

アーチャー「稀代の魔女と言われた彼女なら間桐臓硯に施された魔術程度どうにかなるかもしれんぞ?」

凛「そうかもしれないけど……」

キャスター「――気に入ったわアーチャー。良いわ、見て上げましょう。虫ね…このぐらいなら簡単に取り除けるわ」

凛「本当?」

キャスター「ええ、この程度のもの、聖杯を浄化するよりもよっぽど――な!?」

アーチャー「――っ!?」

キャスター「ぐ――あぁああああああ」

突如現れた影によってキャスターは飲み込まれてゆく

凛「何よアレ!?」

アーチャー「まずいな、ここから去るぞ凛」

凛「キャスターはどうするのよ!?」

アーチャー「アレはもう手遅れだ。このままここにいては巻き込まれかねん」

キャスター「……破戒すべき全ての符、あらゆる魔術を破戒するわ。それが契約関係だろうと――」

アーチャー「覚えておこう。行くぞ凛」

凛と桜を両腕でそれぞれ抱え、柳洞寺から離脱する

凛「追ってくるわよアレ」

アーチャー「振り切れる事を祈るしかあるまい」

凛「一旦止まって迎撃するとかは」

アーチャー「無駄だ。アレはサーヴァントである限り絶対に勝てん」

凛「アレの正体を知ってるの?」

アーチャー「ああ、私は守護者としてアレの後始末を続けてきた。アレを見て君はどう思う」

凛「放っておけないに決まってるでしょ。でもまずは桜よ、アレを振り切って教会に行ってちょうだい」

アーチャー「――了解した」

教会の外で凛達が出てくるのを待つ

アーチャー「ライダー、君はアレを見てもまだ守るつもりか」

ライダー「……アレの正体に気づいたのですか」

アーチャー「言っただろう。私には間桐桜を始末した記憶があると」

ライダー「そうですか……でも、それでも私は桜を守り続けます。たとえ彼女が怪物になってしまったとしても」

アーチャー「ならば君を斬るだけだ」

ライダー「やりますか、今ここで」

アーチャー「それは君ができないだろう。間桐桜はまだ君を実体化させる程の魔力を回復していない」

ライダー「……今回のあの影が出た原因は」

アーチャー「魔力不足が原因だろう。君の天馬だけなら問題はなかっただろうが、それで彼女の体内の蟲が反応したようだ」

ライダー「反応した、というよりさせられたというのが適切でしょう」

アーチャー「――あの場に間桐臓硯がいたと?」

ライダー「あくまでも可能性の範囲内で、確証はありませんが」

凛「いずれにせよ、ライダーに戦わせるわけにはいかないってわけね」

アーチャー「聞いていたのか凛。ならばするべきことはわかっているだろう」」

凛「でも貴方がここに連れて来たって事はまだ手遅れではないのでしょう?だったら答えは一つよ」

アーチャー「……何だね?」

凛「聖杯を手に入れる。後はセイバーとランサー、バーサーカーの三体だけなんだから」

アーチャー「ならば場所がわかっているバーサーカーが最初だろう。それにアインツベルンならば他のマスターを知っている可能性がある」

凛「でもイリヤスフィールって何処にいんのよ」

アーチャー「私が知ってるはずないだろう。君に心当りはないのかね?」

凛「昔父さんからアインツベルンは郊外の森に別荘を持ってるって聞いたけど……」

アーチャー「ならば調べてみる価値はあるだろう」

言峰「アインツベルンの城は確かに郊外の森にある」

凛「綺礼、桜の容態はどう?」

言峰「今は落ち着いている。しかし刻印蟲が体内にいる限りまた同じ事が起きる可能性は否定できん」

凛「取り除くことって出来る?」

言峰「やれというのならやるが、命の保証はできんな。それに今は魔術刻印を移植したばかりだ」

凛「体力が心配ってことか」

言峰「それにしても良かったのかね?父上から受け継いだ大事な魔術刻印を間桐の者になど渡してしまって」

アーチャー「ッ!?凛、正気か?一体何を考えて――」

凛「うるさいわね。桜は私の大事な妹よ、妹を守るのは姉の役目でしょう」

言峰「それに凛と間桐桜のパスを繋いだ事で共倒れする危険も高い。凛の魔力も一気に持っていかれる可能性もあるのだからな」

凛「でもそれでライダーを実体化さして多少戦わせるぐらいの魔力は保たれるはずよ」

言峰「それでアインツベルンの城の場所か、それなら私が知っている」

凛「教えてくれるの?」

言峰「ああ、此度の聖杯戦争は今までとは違うようなのでな」

今日はここまで
PCの調子悪く書き溜めが消えてしまったため展開がなんか早くなってしまった

アーチャー「それで場所はわかったが、すぐに攻め込むのかね?」

凛「そんなわけないでしょ。桜が回復するまでライダーに戦闘はさせられないし、貴方だけじゃバーサーカーに勝てない」

アーチャー「君と私の二人なら大した敵ではない」

凛「キャスターに攻め込むのは乗り気じゃなかったじゃない」

アーチャー「キャスターはスキルで拠点を作っていた上に魔力をかき集めていたからな」

凛「そのキャスターだってバーサーカーには手を焼いていたのよ」

アーチャー「相性の問題だ。キャスターとヘラクレスは同じ時代の英霊だからな」

凛「ヘラクレス!?それがバーサーカーの正体だっての!?」

アーチャー「ああ、間違いないだろう」

凛「それじゃあますます貴方に勝ち目はないじゃない。まだ正体思い出してないんでしょう?」

アーチャー「それは些末な問題だと言っただろう。宝具が使えないわけではない」

凛「貴方の宝具って何なのよ」

アーチャー「キャスターとの戦いのときに見せただろう。あれが私の宝具だ」

凛「あの最後にキャスターを撃った矢の事?」

アーチャー「そうだ」

ライダー「いえ、あれは貴方本来の宝具ではないのでしょう?」

アーチャー「ライダー、実体化できる程度には回復したか」

ライダー「はい。それで貴方の宝具の事ですが、一体どういうモノなのですか」

アーチャー「いつ敵になるかわからない君に教える必要はないと思うがね」

凛「敵になるってアンタ――」

アーチャー「事実だろう。間桐桜を救う事ができなければ間違いなく彼女達は敵に回る」

凛「アーチャー」

ライダー「良いのです凛、私は桜がどうなろうと桜の味方であり続けます。その時はアーチャーの言う通り敵対するでしょう」

アーチャー「それで、間桐桜からの魔力供給はどうだ」

ライダー「安定しています。凛の魔力が桜を満たしているおかげでしょう」

凛「そう、戦えるぐらいに回復するにはどのぐらいかかりそう?」

ライダー「桜の体調次第ですが、明後日の夜までにはかと」

凛「やっぱり明日アインツベルンの城に行くのは無理そうね。ってことは来週か」

アーチャー「待て。君は学校にまだ行くつもりなのか」

凛「当然でしょう?慎二がどう動いてるのかも気になるし」

アーチャー「間桐慎二か。あれなら正規のマスターではないのだから普通に暮らしているのではないのか」

凛「でもこの間までマスターとして活動してたのは慎二でしょ。てっきり教会に逃げ込んでると思ったけど」

アーチャー「間桐臓硯と共に行動を続けている可能性があるという事か」

凛「そういうこと。学校に来るかはわかんないけど確認してみる価値はあると思う」

アーチャー「ふむ、ではアインツベルンに攻め込むまでの一週間何をする」

凛「取りあえず明日は桜の看病。それからはそうね、残りのマスター探しってとこかしら」

良い匂いがする

この匂いは先輩の卵焼きの匂いだ

桜「ん…朝……?先輩の家じゃない、ここは――」

凛「桜起きた?」

桜「あ…姉さん、おはようございま――ッ!?」

凛「匂いと味きついけど我慢してこれ飲んで。少しは楽になるわよ」

桜「――この痛みは」

凛「魔術刻印の痛み、さっきのはそれを抑制するための薬よ」

桜「魔術刻印――?」

凛「私のを貴方に移植したの。後で薬の作り方教えてあげる」

桜「移植って姉さん、そんな大事なモノを――」

凛「良いの。桜だって遠坂の血を引いてるんだから」

アーチャー「仲睦まじい所悪いが、朝食の用意ができたぞ」

桜「え、アーチャーさんが?」

アーチャー「何をそんなに驚いている。英霊とて私も生前は人間だ、料理ぐらいできて何らおかしくはないだろう」

桜「これ全部アーチャーさんが?」

アーチャー「ああ、病み上がりなのでお粥にしようと思ったが、空腹だったようなのでな」

桜「え――」

アーチャー「眠っている間に君のぶべらっ」

凛「アンタってホントデリカシーないわね。さ、こんなの無視して食事にしましょ」

アーチャー「口に合うように和食にしたがどうかね?」

桜「美味しいです……」

凛「でしょ?アーチャーって本来料理人か何かだったんじゃないかしら」

アーチャー「確かに有名ホテルのシェフはだいたい友人だったが、私は料理人などではない」

桜「でもこの味何か懐かしい感じが……」

凛「お袋の味って奴かしら?でもお母様って洋食ばっか作ってたような気がするわね」

桜「……」

アーチャー「――ふむ、それならば昼食はそのようなモノにするとしよう」

桜「お、お昼は私が作ります」

アーチャー「無理をするな、君はまだ本調子じゃないだろう」

凛「そうよ。桜は今日一日は休んでなさい」

桜「大丈夫です。私洋食には自信あるんです、料理の師匠だって洋食でなら超えてます」

凛「料理の師匠?」

桜「はい、衛宮先輩に教えて貰ったんです」

凛「そういや桜は衛宮君の家に通ってたんだっけ?部活の先輩が怪我したからって大変ねえ」

桜「いえ、元はお爺様が監視しろって――あ」

凛「間桐臓硯が衛宮君を監視?それってどういうこと?衛宮君って一般人じゃないの?」

桜「えっと、何でも衛宮先輩の養父が前回の聖杯戦争の参加者だそうで……」

凛「嘘!?ちょっと待って衛宮…衛宮……思い出した魔術師殺しの衛宮切嗣。お父様に昔聞いた事があるわ」

桜「有名な方なんですか?」

凛「ええ、20年以上前に動いてた人らしいんだけど、最も魔術師らしからぬ方法で魔術師を殺すフリーランスの殺し屋よ」

桜「殺し屋?」

凛「その手段が問題よ。標的が乗り合わしたというだけで旅客機を撃ち落とした事もあるらしいわ」

アーチャー「っ!?」

凛「どうかしたアーチャー?」

アーチャー「いや、何でもない。恐らくその標的を降ろしたらまずい理由でもあったのだろう」

凛「いずれにせよ色々と外道な方法をとってた魔術師の風上にも置けない奴よ」

アーチャー「標的を放っておけば犠牲が増えるのであれば、多少の犠牲もやむを得ないという場合もある。それに――」

凛「ちょっと待って。ってことは衛宮君も魔術師!?」

桜「それでお爺様は監視をとの事だったんですけど、先輩も先輩の家にもそれらしいのは一切なくて」

凛「そうなの?」

桜「はい、でもセイバーのサーヴァントはシロウって。先輩の名前も士郎だから」

凛「――それは探ってみる必要あるかもしれないわね」

アーチャー「そもそも暗殺というものは手段を選んで行うモノではなくてだな。毒や狙撃というのは――」

凛「アーチャー、アンタ何でさっきから饒舌に説明してんの?聞いちゃいないけどさ」

アーチャー「む――、いや暗殺というのは生前の私も行っていたからな。アーチャーよりアサシンの方が適性があるかもしれん」

凛「家事出来て弓の上手い暗殺者?アンタほんと何処の英霊なのよ」

今日はここまで

アーチャー「それで、その衛宮士郎がセイバーのマスターだとしてどうする」

凛「どうするって?」

アーチャー「間桐桜が毎日通っていたという事はその衛宮士郎の家は近いのだろう」

凛「そうね、いつでも攻め込める。桜、衛宮君って今一人暮らしよね」

桜「はい、藤村先生が21時近くまでいることが多いですけど」

凛「そうね、今日の夜にいつも通りに衛宮君の家に夕食を作りに行きなさい」

桜「え?」

凛「貴女はぎりぎりセイバーに顔を見られていない筈よ。桜、目を閉じて私の魔力を感じてみなさい」

桜「はい――ッ、これって」

凛「私から桜に魔力が流れてるのを感じられるでしょ?今私と貴女は軽い契約状態にあるの」

桜「藤村先生が帰った事や、セイバーがいるかどうかを確かめて――」

凛「魔力行使を利用して私に連絡する。でもそれは明日の夜よ、今夜はこの宝石を衛宮君の家のある場所に置いてきて」

桜「ある場所…ですか?」

凛「監視役だったってことは衛宮君の家の間取りとかだいたいわかってるでしょ?この紙に書いて頂戴、そこに印をつけるわ」

桜「あ、はい」

凛「それが済んだら、その宝石の起動させ方と、私への連絡方法を練習しましょう」

昼食をとった後、少女は衛宮邸に向かった

凛「アーチャー」

アーチャー「何だね」

凛「貴方一人で戦うとしたらセイバーに勝てると思う」

アーチャー「無論だ、と言いたいところだが今回の作戦であれば単独での勝率は0に近いだろう」

凛「それはどういう理屈で?」

アーチャー「私は弓兵だぞ。剣士に接近戦で勝てると思うのかね」

凛「でも貴方剣でランサーと互角にやりあえてたじゃない」

アーチャー「は、アレを互角に見えたのか君は」

凛「な、なによ」

アーチャー「ライダー、凛に説明してやれ」

ライダー「凛、あのランサーは本気を一切出していません」

凛「でもそれはアーチャーもでしょ?余裕ありそうだったじゃない」

アーチャー「そのような隙を見せて勝ち目が見いだせるかね。それに彼があの場面でケリをつける気がないのはわかっていた」

ライダー「ランサーは私との勝負でも優勢だったに関わらず退きました。あのまま続ければ間違いなく私は倒されていたというのに」

凛「そんな事して何の意味があるのよ」

アーチャー「サーヴァントにとっては何の意味もない。恐らく彼のマスターに強制されたのだろう」

凛「令呪……全てのサーヴァントと戦って倒さずに帰って来いって?」

アーチャー「どちらかといえば引き分けて来いといったところだろうが、彼のマスターは勝つ事が目的ではないのだろう」

凛「勝つのが目的じゃないって、それじゃあ何のために参加してるの?まさか儀式を知らず巻き込まれた一般人?」

アーチャー「それはないだろう。そうであれば他のサーヴァントと引き分ける必要等あるまい」

凛「じゃあ聖杯戦争を知ってて参加してるマスター?」

アーチャー「それもかなり深く知っている者とみて違いないだろう」

凛「それだったら勝つ事以外の目的って何よ」

アーチャー「さあな、私はその者でないからそこまではわからぬさ。ただこの戦いを楽しんでいる事は間違いないだろう」

凛「戦争を楽しむ事が目的っていう可能性もあるのか」

アーチャー「どの道ろくな奴ではないだろう。それにランサーと私は色々相性が悪いからな、一番厄介な敵だ」

凛「相性が悪い?貴方本来の戦い方でも?」

アーチャー「むしろ本来の戦い方でこそ相性が悪い。ランサーのクラスには矢除けのスキルがあるからな」

凛「そっか…じゃあやっぱりセイバーともランサーとも、ライダーの協力があった方が良いってわけね」

アーチャー「ライダーの魔眼があれば相手の動きを抑えられるからな」

凛「でもキャスター戦と違って近距離戦闘になるんだし、アーチャーも動けなくなるんじゃないの?」

ライダー「その心配はないでしょう。アーチャーは既に二回私の魔眼を見ているので既に耐性はできてるかと」

凛「耐性、ね。セイバーのクラスには対魔力のスキルがあるはずでしょう?魔眼が効くのかしら」

ライダー「仮に石化は出来なくとも全能力を1ランク下げる重圧をかける事は出来ます。キャスターの時と同じです」

凛「そう、それじゃあ心配なのは衛宮君がどんな手段をとるかわからないってことね」

アーチャー「その心配は無用だと思うがね」

凛「そんなわけないでしょ。魔術師殺しの息子、油断なんてできない」

凛「おかえり桜」

桜「あ、――ただいま、です。姉さん」

凛「まだ慣れないわね、まあ時期に慣れるでしょ。それでどうだった?」

桜「セイバーのサーヴァントと普通に暮らしていました」

凛「そう、それじゃあ衛宮君がセイバーのマスターで確定ね」

桜「でも普通一般人にはサーヴァントを隠しませんか?藤村先生とも打ち解けていましたけど」

凛「藤村先生も魔術師ってこと?いや、それはないか」

アーチャー「セイバーの服装はどうだった?」

桜「藤村先生が買ってきたっていう服を着ていました」

アーチャー「ふむ――ということはセイバーは霊体化できないのだろう」

凛「サーヴァントなのに?」

アーチャー「彼女はまだ死んでいない英霊、いや英雄なのだろう」

凛「死んでいないのに召喚って、そんな事ありえるの?」

アーチャー「特殊な例だがありえる話だ。例えば死の前に聖杯を得たという伝承を持つのがそれだろう」

凛「生前に聖杯、セイバー、女……思いつかないわね。アーチャーはどう?」

アーチャー「男装だったとも考えられるからな。女性という事に拘る必要はないだろう」

凛「それでも絞り切れないわ。アンタは何か気付いた事ないの?」

アーチャー「バーサーカーとの戦闘を少し見ただけだからな。しかしあのヘラクレスと渡り合える剣士となると数は多くない」

翌朝

アーチャー「ふむ、相変わらず君は朝早いな」

桜「……アーチャーさん」

アーチャー「もう少し遅ければ起こしに行こうと思っていたところだ」

桜「え?」

アーチャー「君は朝も衛宮邸に行って食事の支度を手伝いに行け。その方がセイバーの警戒もとけるからな」

桜「でも姉さんの食事は――」

アーチャー「既に私が用意している。何、心配せずとも凛が起きる頃に食べ頃となる予定だ」」

桜「……アーチャーさんは姉さんの事よくわかっているんですね」

アーチャー「パートナーだからな。凛の事なら何でもわかる」

桜「……羨ましいです。私は妹なのに姉さんのこと何にも知らない」

アーチャー「凛には私がいる。君は凛の事ではなく、衛宮士郎とセイバーに警戒されないことだけを考えろ」

桜「そう、ですね。私にはそのぐらいしかできませんから」

アーチャー「衛宮士郎を騙すのが心苦しいのか?」

桜「い、いえ、そういうわけじゃありませんけど」

アーチャー「だろうな。今まで騙し続けて来たのだ、今更罪悪感等抱かぬのだろうよ」

桜「――ッ」

ライダー「アーチャー、桜を責めるのはやめてください」

アーチャー「仕事に集中して欲しかっただけで、そのようなつもりはなかったのだがね」

ライダー「貴方は本当に捻くれていますね」

凛「ふわぁ…おはようアーチャー。あれ、桜は?」

アーチャー「衛宮士郎の家に行って貰った。昨日の一度だけではセイバーを騙すのは弱いと感じたからな」

凛「それもそうか。衛宮君は今までの付き合いから簡単に騙せるかもだけど、セイバーにとっては全くの他人だもんね」

アーチャー「そういう事だ。昨晩と今朝である程度信頼させる必要がある」

凛「今更だけど二回の接触だけでセイバーを信頼させられるかしら」

アーチャー「その点は考えるだけ無駄だろう。接触が多いからといって信頼されるかは別問題だ」

凛「貴方みたいに何度会っても胡散臭い奴もいるもんね」

アーチャー「君な」

凛「冗談よ、私貴方の事は信頼してるわよ」

アーチャー「――こほん、話を変えるぞ凛。バーサーカーのマスターの事だ」

凛「バーサーカーのマスター…ああ、イリヤスフィールの事ね」

アーチャー「ああ、アインツベルンは君や間桐桜と同じ御三家だ。しかし彼女の素質は君より遥かに優れている」

凛「悔しいけど、そのために作られたホムンクルスなんだから当然でしょうね」

アーチャー「バーサーカーと対決する際にはそれが差として出るだろう。君は一対一では彼女には勝てない」

凛「それを言うなら貴方もでしょ」

アーチャー「ああ、だからそこで問題となるのは連携だ。私は君が出来る後方支援の魔術を知らないからな」

凛「そうね。あ、ライダー、少し席を外してもらえるかしら?」

ライダー「わかりました。少し付近を探索してきます」

凛「悪いわね」



凛「今日一日慎二を見張ってたけど聖杯戦争が始まる前とあまり変わってないみたいね。放課後に女子と出かけ帰宅、その後出てくる気配なし」

アーチャー「のんきなモノだ。まあそれは学校にセイバーを連れてきていない衛宮士郎にも言えることだが」

凛「それより本当にここセイバーに気付かれてないのよね?」

アーチャー「ああ、セイバーの魔力感知が出来る範囲は狭いからな」

凛「それで、何でアンタは弓構えてるのよ」

アーチャー「屋敷事吹き飛ばすのがてっとり早いと思ったのでな」

凛「そんな事したら桜も巻き添え食らうでしょ」

アーチャー「冗談だ。セイバーとやり合う前の前支度だ」

矢を数十と上空に目掛け撃つ

凛「ちょっとそんな事したら――」

アーチャー「既に藤村先生とやらが家を出たのは見えた」

凛「――っ、結界が起動したわ」

アーチャー「ああ、ギリギリだったが無事に矢は結界が閉じきる前に侵入できた」

凛「行くわよアーチャー」

アーチャー「ああ、先ほどの矢で我々が結界内に侵入するまでの時間は稼げるだろうよ」

時間は少し戻り衛宮邸

藤村「桜ちゃーん、送って行こうかー?」

桜「大丈夫です、先に帰っててください」

藤村「そう?じゃあ士郎、ちゃんと桜ちゃん送ってあげるのよー?」

士郎「桜、もう帰ったって良いんだぞ?」

桜「いえ、最近来れませんでしたから。その分しっかり掃除しないと」

士郎「別に良いんだって。桜には桜の付き合いがあるんだからさ」

桜「そ、そんなのじゃありません!!付き合いだなんてそんな――信じてください」

セイバー「桜は普段からシロウの家の掃除をしているのですね」

桜「はい。先輩には色々お世話になってますから」

士郎「世話になってるのは俺の方だよ。それより本当にまだ帰らなくて大丈夫なのか?」

桜「はい、家には誰もいませんから」

士郎「誰もって、慎二の奴こんな時間まで出かけてるのか?もう9時過ぎてるぞ」

セイバー「む――シロウ、この家に何かが近づいています」

士郎「何かって?ぐ――な、何だ今の感覚は!?」

セイバー「結界が張られました!!シロウ、桜下がって!!」

桜「きゃああ!?」

無数の何かが天井を破り襲い掛かる

セイバー「く――」

士郎「くそ、何だよこれ」

桜「先輩これは――」

桜の前に迫った何かをセイバーが弾き落とす

セイバー「大量の矢、敵はアーチャーだと思われます」

桜「先輩こっちです」

士郎「え、ああ。悪い桜、巻き込んじまって」

桜「いえ――こちらこそ」

士郎「え――?」

移動した先の部屋で桜は立ち止まる

士郎「おい桜――?」

桜を中心として魔法陣が展開される

セイバー「これは――シロウ一旦離脱します!!」

セイバーは士郎を担いで庭に出る

アーチャー「ああ、君ならばそう動くだろうと思っていた」

セイバー「アーチャー……!!」

セイバーと剣を交え、一旦距離をとる

士郎「とお、さか?」

凛「こんばんは衛宮君。まさか貴方がマスターだったなんてね」

セイバー「――お前達は無関係の人を巻き込んだのか」

今日はここまで

士郎「マスターってことは遠坂も魔術師!?いやそれよりも遠坂は無関係の桜を利用したのか?」

凛「あら、何の事かしら?」

セイバー「とぼけるな外道め!」

凛「外道?それは貴方のマスターじゃなくて」

セイバー「シロウは外道ではない」

凛「魔術師殺し、衛宮切嗣の息子が外道ではないって?」

セイバー「エミヤ…キリツグ……」

セイバーの放つ殺意が揺らぐ

彼女の前マスターであるその男と彼女は上手くは行っていなかったのだろう

士郎「親父が魔術師殺しだって――?どういうことだよ遠坂」

アーチャー「養父の事もちゃんと知らないか。それで憧れているとはよく言ったものだな」

士郎「なに――?」

アーチャー「無駄話はここまでだ。セイバー、君と私はサーヴァントだ、ならばするべき事は一つだろう?」

セイバー「そうだなアーチャーのサーヴァント。貴様達のような外道はここで斬り捨てる」

アーチャー「時間稼ぎは済んだ――やれるものならばやってみろ」

セイバー「時間稼ぎ?くっ――空から矢が!?事前に放っていたのか」

降ってきた矢を避けるセイバーを追いかけるようにして矢が降り注ぐ

セイバー「動きを読まれていたというのか!?――いやこれは矢が勝手に!?」

アーチャー「矢の軌道を曲げる程度造作もない事だ」

セイバー「小癪な――」

セイバーから魔力が放出され、それにより矢が弾き飛ばされる

アーチャー「ち――」

セイバー「はあっ!!」

魔力放出をブーストにセイバーが一気に距離をつめ斬りかかる

アーチャー「くっ――」

セイバーが扱う見えない剣を凌ぎながら徐々に後退する

セイバー「私の剣を読まれている?――ならば」

アーチャー「む?」

彼女らしくない無駄に大振りの太刀筋、それに違和感を覚えつつも難なく防ぐ

セイバー「やはりそうか。アーチャー、貴様は私の剣の間合いを知っているな」

アーチャー「――なるほど今のはそれを確認するための一撃か」

セイバー「名を名乗れアーチャー。貴様は私とかつて戦った事のある英霊なのだろう」

アーチャー「私はただの殺し屋だ。騎士王殿に名乗りを上げるほど大層なモノじゃない」

凛「騎士王?嘘、まさか――」

アーチャー「全力で来い騎士王。さもなければ、主諸共消える羽目になるぞ」

セイバー「私の正体を知った上で勝機があると?」

暴風が吹き荒れ、今まで隠れていたセイバーの黄金の剣が姿を現す

凛「黄金の剣!?やっぱり――」

アーチャー「決めに行くぞ。凛、魔力を回せ。――I am the bone of my sword」

アーチャー「Unknown to Death.Nor known to Life」

セイバー「詠唱?魔術も使えると言うのか――そうはさせない!!」

セイバーが再び猛スピードで突っ込んでくる

アーチャー「――unlimited blade works.」

炎が走る。そして世界が変わる

セイバー「ここは――固有結界なのか?」

セイバーは足を止め、見渡す限り荒れ果てた大地と成り代わった周囲に戸惑う

大地には無数の剣が生え、それは全て一本一本が伝説の物と酷似している

アーチャー「ここがオレの世界だセイバー」

セイバー「こんな荒野が貴様の目指した物だというのか」

アーチャー「この世界は展開は楽だが維持が大変でな。早いところケリをつけさせて貰おう」

手を挙げると同時に地面に突き刺さっている剣の数本が空中に浮き、切っ先をセイバーに向ける

セイバー「これだけの数の宝具……まさか四次のアーチャーと関わりのある英霊なのか」

アーチャー「そういえば君は四次の記憶を引き継いでいるんだったな」

セイバー「お前は今回以降の召喚で私と戦った事があるというのか?それなら私が知らずそちらが――いやだが」

アーチャー「英霊の座に時間の概念はないし、君のような例外でなければ記憶を引き継げるはずがない」

セイバー「ならば何故――」

アーチャー「簡単な話だ。私はかつてこの地で、この聖杯戦争を君と共に戦った」

セイバー「――ッ!?まさか貴方は――」

セイバー「キリツグなのか?」

アーチャー「――は?」

セイバー「勝つためには手段を選ばぬ外道な手口、人を馬鹿にしたような態度、遠距離からの射撃――間違いない」

アーチャー「はあ、セイバー、君という奴は――」

セイバー「何故銃から弓に変えたのかはわからないが、些末な問題だ」

アーチャー「あのなセイバー、私は――」

セイバー「かつてアイリスフィールにキリツグの魔術は固有がどうのこうと聞きましたが固有結界のことでしたか」

アーチャー「セイバー、私の話を――」

セイバー「キリツグ、私を裏切っただけでなく息子のシロウまでをも裏切るとは――貴様と話すことなど何もない!!」

アーチャー「チィ――」

剣から放出された魔力で物凄い勢いで突進するセイバーに空中の剣を射出するが難なく弾かれる

無数の剣を射出し続けながら後ろに下がり、地面に刺さっている剣の一本を手に取り矢に変え構える

セイバー「逃げ切れるとでも?」

アーチャー「逃げるつもりはない。ただこの矢を放つのには時間がかかってね」

追ってくるセイバーに対し、あらゆる方向から剣を飛ばし足止めしながら後ろに下がり続ける

セイバー「あの魔力、宝具か――」

アーチャー「赤原猟犬(フルンディング)」

セイバー「約束された勝利の剣――ッ!!」

閃光が辺りを埋め尽くす――

士郎「セイバー!!」

アーチャーが唱え終えると共にアーチャーとセイバーの姿はその場から消えた

凛「この間にマスターを仕留めろって事かしらね」

士郎「遠坂!!セイバーに何をした――」

ライダー「他人の心配をしている場合ですか?」

士郎「な――」

ライダー「貴方はもう少し自分の安全に気を向けるべきです」

士郎「サーヴァントがもう一体?なんで――ぐああっ!?くそ、さ、桜、逃げ――」

桜「ごめんなさい先輩。私もマスターなんです」

士郎「そん――な――」

桜「先輩に恨みはないけど、私遠坂先輩――姉さんの役に立ちたいんです」

士郎「姉さん?何言ってるんだ桜、お前遠坂に操られているんだ、お前は――」

桜「ライダー」

士郎「ぐあああ!?」

桜「姉さんを侮辱しないでください」

凛「やり過ぎないで桜、命まで奪うつもりはないわ」

桜「ごめんなさい姉さん」

士郎「くそ、遠坂お前桜に何を――がはっ」

ライダー「暴れないでください。大人しく令呪を差し出せば命は取りません」

士郎「そんなこと、できるもんか。俺は一緒に戦うってセイバーと約束したんだ」

凛「貴方の意思は聞いていないわ。さようなら衛宮君」

士郎「とおさ、か――」

とりあえず外出先から前の壊れたPCで書いてた書き溜分投下
続きはPC購入後(早くて三月末から遅くて九月末を予定)
ちょっと身内事情でここ一年で1000万以上の出費があってだな
今年度は厄年ですわ…来年度(来月)からは何も起こらなければいいな……俺、2016年度悪い事起きなければ彼女にプロポーズするんだ

ライダーの鎖に縛り上げられた衛宮士郎の頭に手を置こうとし

凛「――違う、これは衛宮君じゃない――衛宮君の姿をした人形――」

桜「え――?」

イリヤ「ふふ、その距離になるまで気付かないなんて、リンってばほんと間抜けね」

凛「イリヤスフィール!?まず――」

イリヤ「やっちゃえバーサーカー」

士郎の姿をした人形が内側から弾け飛び中から現れたモノは雄叫びをあげながらその腕を振り上げる

バーサーカー「■■■■■―――ッ!!!」

桜「ライダー!!」

ライダーが凛を抱え飛び振り下ろされた暴風は空をきる

凛「ありがとうライダー。イリヤスフィールが何でここに――」

慎二「そんなの決まってるだろ?衛宮とアインツベルンが同盟組んでるって事さ」

凛「慎二!?」

桜「何で兄さんまで――」

慎二「当たり前だろ。僕と衛宮は友人なんだぞ?」

士郎「悪いな桜、騙し討ちみたいな真似して」

慎二「謝る必要ないだろ?先に騙したのはあっちなんだからさ」

慎二「なんだよその顔、何か文句でもあるのか?」

桜「……」

慎二「あるわけないよなあ?だってお前は聖杯戦争が始まるずっと前から衛宮を騙していたんだもんな」

凛「慎二ッ、アンタ――」

イリヤ「害虫は放っておきましょリン」

慎二「害虫!?」

イリヤ「リンとそれは姉妹なのでしょう?ならこっちも姉弟で戦うってだけ」

凛「……そういえば魔術師殺し衛宮切嗣はアインツベルンのマスターだったらしいものね」

イリヤ「そう、エミヤキリツグは私の父親よ」

凛「だったら羽虫はともかく貴方達が組んでても何もおかしくなかったてわけか」

慎二「お前ら!!誰が虫だ!!」

ライダー「そうです、慎二は虫などではありません」

慎二「ライダー……。一時とはいえ僕の下僕だったもんな…言ってやれライダー!!僕が何者なのかを」

ライダー「わかめです、安物の」

慎二「おい!?」

士郎「慎二がワカメなんて言いすぎだぞ」

慎二「衛宮…お前だけだよ僕の味方は」

士郎「ワカメは栄養価が高くて色んな料理に使える役立つ奴だ。それを慎二なんかと一緒にするな」

慎二「おま、誰がサーヴァント召喚の呪文とかアインツベルンの城の場所教えてやったと思ってるんだ!?」

イリヤ「アーチャーの宝具だろうけど、セイバーと一緒にアーチャーを消したのは下策だったわねリン」

士郎「降参するなら今のうちだぞ桜、遠坂。俺はお前たちと戦いたくない」

凛「随分甘っちょろい事言ってくれるじゃない。でもお生憎様、この程度の逆境で諦めるつもりはないわ」

イリヤ「バーサーカーに勝てるわけないのに、シロウが折角最期のチャンスをあげたってのにバカね」

凛「ライダー、少しは戦えるわね?」

ライダー「しかし凛、桜の体調はまだ万全とは言えません」

桜「わ、私は戦えます。バーサーカーだけならきっと」

凛「桜が万全でもライダーじゃバーサーカーに勝つのは無理よ。時間稼ぎさえしてくれれば良いわ」

ライダー「アーチャーが戻ってくるまで、ですか。セイバーを倒していてくれれば有難いのですが」

凛「アーチャーなら大丈夫よ。あんなに自身満々だったんだし」

イリヤ「お喋りはお終い?じゃあ殺すね、バーサーカー」

バーサーカー「■■■■■■―――――ッ!!!!」

凛「桜は下がってなさい――Anfang……Fixierung, EileSalve――――!」

走りながら無数の攻撃をイリヤに向かって放つ

士郎「――投影、開始」

凛「な!?全部弾いた――いや、それよりあれは――」

イリヤ「シロウが無茶しなくても簡単に防げたけど、良いわ。シロウはリンをお願い。私はもう一人を殺るわ」

ライダー「桜!!」

イリヤの使い魔から放たれた魔弾を、凛の宝石魔術で出来た結界が弾く

凛「ライダー、桜は私が守るわ。気にせず突っ込んで!!」

ライダー「しかし、それではリンが――くっ」

イリヤ「それでいつまで持つかしら」

士郎「うおおお!!」

士郎の刀による攻撃と、イリヤの魔弾により結界に亀裂が走る

凛「く――」

桜「このままじゃ……ライダー、下がって宝具を!!」

ライダー「了解しました桜」

ライダーは後退し自分の首を短剣で勢いよく斬る

士郎「あいつ自分の首を――なんだ!?体が、うごか――」

イリヤ「魔眼――シロウ、見ちゃダメ――」

ライダーの首からの出血で魔法陣が描かれる

バーサーカー「■■■■■■――!!」

凛「駄目、ライダー!!貴方の宝具じゃバーサーカーは倒せない!!」

ライダー「騎英の手綱!!」

ライダーの突撃はバーサーカーの強靭な肉体をを殺す、が

殺されながらもバーサーカーは腕を振り上げ――

周囲を巨大な衝撃と閃光が襲う

凛「――ッ!!何が――ライダー!?それにバーサーカーは――」

吹き飛ばされボロボロのライダーは地面にめり込み、半壊した屋敷の瓦礫からバーサーカーの足が出ている

士郎「う、家が……」

アーチャー「すまん凛、失敗した……」

凛「アーチャー!?アンタ腕が――」

アーチャー「片腕を完全に持っていかれた。幸い消える程のダメージは負わずに済んだ、回復に努めれば数日でまた戦えるようになる」

セイバー「すみま、せんシロウ……、宝具を使用……にも関わら、ず、キリツ…を殺せ、なかった……」

士郎「お前酷い怪我じゃないか!?早く治療を――」

セイバー「敵が目の前に、いるというのに何を――。それにキリツグはここで消さねば……」

士郎「お前腹にでかい穴空いてるんだぞ!?早くしないと手遅れになる!!」

イリヤ「威力に耐え切れずに固有結界が壊れて聖剣の魔力が外に漏れたのね。それにライダーの宝具とアーチャーの攻撃も加わって」

アーチャー「固有結界を解いた位置が丁度バーサーカーの真横だったようだな。セイバーを貫いた一撃がバーサーカーに当たり爆発で屋敷諸共吹き飛ばしたようだ」

イリヤ「ライダーの攻撃で一回、セイバーの聖剣で六回、アーチャーの攻撃で二回……バーサーカーが九回も――」

凛「アーチャー、あとどのぐらい戦える」

アーチャー「正直もう戦える状態ではないが、どちらか片方にとどめを刺す事は可能だ」

凛「ライダーはもう動けない、ってことはとどめを刺さなかった方にやられるってわけね」

セイバー「キリツグ…貴様のような外道を、逃がすわけには――」

士郎「セイバーさっきから何を言ってるんだ。切嗣はとっくに死んでいないんだぞ」

イリヤ「サーヴァントが幻覚?それともまさか――」

アーチャー「凛、君の魔力はほとんど残っていない。ここは引くべきだ」

凛「そう簡単に逃げれる相手だとでも?それにこんなチャンスもう来ないかもしれないわ」

アーチャー「セイバーならば暫くは動けまい、しかしバーサーカーはまだピンピンしてるぞ」

凛「アンタさっきどちらかって言ったでしょ。まだバーサーカーを倒す余力はあるんでしょ?」

アーチャー「確かに固有結界に引き込み倒せる程の余力はある」

凛「だったら――」

アーチャー「一旦落ち着け凛」

イリヤ「リンの張った結界が壊れてる、すぐに人が集まってくるわ。今日はここまでにしましょう」

凛「ここまでやっておいてケリをつけないとか正気?人が来る前にせめてセイバーだけでも――」

藤村「何なのこれ――!?士郎の家が――」

アーチャー「引くぞ凛」

凛「――そうね、桜」

桜「はい」

藤村「桜ちゃん無事だった――って遠坂さん?あれ士郎がふた――」

アーチャー「ッ――」

藤村「ぎゃああ!?今何かぶよっとしたもの踏んだ――って間桐君何でこんなとこで寝てるの!?」

今日はここまで

現在の各陣営の状況
アーチャー陣営:アーチャー右腕喪失(戦闘不可)、桜と協力、令呪一画
ライダー陣営:ライダー満身創痍(戦闘不可)、ペガサス消滅、、凛と協力、令呪二画
セイバー陣営:正規の契約と召喚、セイバー腹に大穴(戦闘不可)、士郎は投影魔術を少し使える、イリヤ・慎二と協力、令呪三画
バーサーカー陣営:バーサーカー九回死亡(戦闘可能)、士郎と協力、令呪三画
ランサー陣営:ランサー無傷、令呪一画
キャスター陣営:敗退、マスター生存、令呪零画
アサシン陣営:アサシン石化(戦闘不可)、マスター不在、令呪三画(所有者なし)

凛「ふぅ、結界が壊れちゃうなんてね」

アーチャー「間桐桜でも張れるように宝石を設置するだけの単純なものを仕込むからだ」

桜「ごめんなさい……」

凛「桜は悪くない。それよりセイバーの正体よ、アーチャー貴方知っていたのに黙ってたわね」

アーチャー「確証がなかったのだ。私の魂は摩耗していて生前の記憶はほとんど残っていない」

凛「名高き騎士王アーサー・ペンドラゴン、まさか女だったとはね。そしてアンタはアーサー王の時代の人間ってわけ?」

アーチャー「私もまだ混乱している、一度その話題から離れよう」

凛「離れないわよ。貴方の宝具、あれは固有結界で間違いないのよね」

アーチャー「そうだ。あれの中でないとセイバー相手に優位に立てんからな」

凛「そして出てきてからセイバーは貴方の事をキリツグと呼んでいたわ」

アーチャー「先に言っておくが私は衛宮切嗣じゃないぞ。あれはセイバーの勘違いだ」

凛「でも何かしら関わりを持った人間なんでしょう?そういえば貴方は彼の肩を持ってたものね」

アーチャー「あれは単に彼の行動を責められるような生き方を私はしなかったからだ」

凛「じゃあセイバーは何故貴方を衛宮切嗣だと勘違いしたのかしら」

アーチャー「知らん。私は彼女と共に戦った事があると告げただけだ」

凛「……そう。腕の調子はどう?」

アーチャー「ご覧の通り見た目はもとに戻っている。だが戦える程に回復するまで少なくとも3日はかかるだろう」

凛「ライダーは?バーサーカーの一撃をまともに食らったでしょ」

ライダー「アーチャー同様戦線に復帰できるまで数日かかります、それより問題はバーサーカーの攻撃で宝具を失った事です」

凛「魔力供給で何とかならないの?」

ライダー「完全に消滅してしまいましたからね。今回の聖杯戦争中での使用は不可能です」

凛「そう。だったら次の――ッ」

桜「姉さん!?」

凛「……大丈夫、何でもないわ」

桜「でも――」

凛「ちょっと疲れたみたい。もう寝るわ、おやすみ桜」

桜「姉さん!!待って――ッぐ」

凛「ッ――ぁ、くそ」

アーチャー「凛、無茶をするな」

凛「わかってる。わかってるわよ……」

アーチャー「これ以上無茶をするというのなら――」

凛「令呪を使ってでも止めてやるわ」

アーチャー「そうなれば君との契約を破棄するまでだ。だが今は――」

桜「ァ――!?」

凛「桜!?アーチャーアンタッ」

アーチャー「体内の蟲の活動を強制的に止めただけだ」

凛「貴方そんなことできたの……?」

アーチャー「一時的なモノの上に、二度目は効かない代物だ」

凛「どういうつもり?」

アーチャー「それはこちらが聞きたいな。君のソレは正気の沙汰じゃない」

凛「……何の事かしら」

アーチャー「私と君は契約状態だ、隠し通せる等と思わない事だ」

少女の肩を軽く押しただけで少女はバランスを崩し倒れ、それを抱き上げる

凛「ちょっ降ろしなさいよ!!」

弱弱しく抵抗する少女を抱き上げ彼女のベッドに寝かせる

アーチャー「凛、君も十分理解していると思うが魔力とは生命力そのものだ。それが尽きると――」

凛「わかってるわよそのぐらい」

アーチャー「このままでは君が死ぬぞ」

凛「お生憎様、私は天寿をまっとうするまで死ぬ気なんて更々ないわよ」

アーチャー「その様でよく言う。もはや指先一つ動かせないのだろう」

凛「このぐらいすぐに回復するわよ」

アーチャー「ああ、私や間桐桜、ライダーに魔力を送っていなければな」

アーチャー「サーヴァント二体の宝具使用と大破した肉体の修復、それに加えて間桐の蟲に奪われる魔力の補充だ」

凛「アンタの消費が一番きつかった気がするけど?」

アーチャー「――ふん。とにかくだ、これ以上間桐桜やライダーに魔力を供給し続ける意味がない」

凛「供給をやめろって?そんな事したらあの影、今度は街中の人を襲うわよ」

アーチャー「だろうな。そして君が倒れてしまえばより悪い状況でそうなる」

凛「アーチャー、アンタ桜を殺せって言うの?」

アーチャー「そうだ、アレはこの地の汚染された聖杯ではどうにもならない。手遅れになる前に――」

凛「待った、汚染されたって何?」

アーチャー「む?まだ言っていなかったか、あの聖杯は呪いによって汚染されている。まともに願い等叶えられんだろうよ」

凛「言ってないわよそんな大事な事!!何で今まで黙っていたのよ」

アーチャー「君ほど優秀な魔術師ならとっくに気付いているモノだと思っていたのでね」

凛「褒めてるのソレ。それとも貶してるわけ?」

アーチャー「両方だ。君はどうも信じたくない事柄から目を逸らす傾向にあるらしい」

凛「……話を戻しましょう。聖杯が汚染されているってどういうこと?」

アーチャー「さっき言った通りだ。言葉通り呪いによって汚染されている、ただそれだけだ」

凛「それがどういうことかって聞いてんのよ」

アーチャー「詳しく知りたいのなら聖杯に詳しい者に聞くのが一番だ」

凛「聖杯に詳しい――それってアインツベルンってこと?でもさっき殺しあったイリヤスフィールが簡単に教えてくれるか……」

アーチャー「聖杯に詳しい者はもう一人いるだろう。何せ前回の結末をその目で見届けたのだからな」

凛「もしかして綺礼の事?」

アーチャー「そうだ」

凛「綺礼が知ってるはずないでしょ。いくらエセ神父だからってアイツは仕事はちゃんとするわよ」

アーチャー「第四次聖杯戦争の数少ない生存者であり、聖杯戦争の監督役だ。知らない方が無理があるだろう」

凛「じゃあ何?綺礼はソレを知っていて教会には黙ってるってこと?何が目的でそんな事を――」

アーチャー「さあな、私は本人ではないからな。そこまではわからんよ」

凛「てゆーか、何が目的かはわかんないけど、それって綺礼が良からぬ事を企んでるって事じゃない」

アーチャー「そういう事になるな」

凛「なるなじゃない。それじゃあ綺礼に聞けるはずないでしょ!?ラスボスみたいなもんじゃない!!」

アーチャー「ラスボスは間藤桜だ。臓硯は聖杯が汚染されていると知っていてソレを求めている。そして間桐桜は臓硯に色々と弄られている」

凛「それって――あの影の正体って……でももしアレが聖杯なら魔力を集める必要なんてないはずでしょ?」

アーチャー「君はこの地の聖杯の本来の目的、何故アインツベルン、遠坂、マキリがこの聖杯戦争を始めたのか知らないのだったな」

凛「聖杯戦争の目的が聖杯という願望器を手に入れる事じゃないってわけ?」

アーチャー「無論だ。この地の聖杯はそもそも本物の願望器ではなく規格外の魔術礼装だというのは凛も知っているだろう」

凛「ええ、アインツベルンが用意した小聖杯を、この地の龍脈から集めたあらゆる願いがかなえられる程莫大な魔力で満たしたモノでしょ」

アーチャー「それは少し違う。この地の龍脈で集める魔力は7騎のサーヴァントを呼ぶのに必要な魔力だけだ。小聖杯を満たすのは別の魔力だ」

凛「別の?」

アーチャー「凛が勘違いしたように60年も龍脈から集めた魔力は莫大だ。その莫大な魔力を以て何故サーヴァントを召喚する必要がある」

凛「まさか――」

アーチャー「サーヴァントは膨大な魔力の塊だ。それが6騎分もあれば並みの魔術師では一生扱いきれぬ程の量だ」

凛「つまり聖杯は純粋な魔力の塊でそれが汚染されて呪いの塊になったってわけ?でもそれじゃあ魔力を集める必要なんてますますないじゃない」

アーチャー「ああ、それが純粋な願望器であるのであればな」

凛「それが御三家が聖杯の本来の目的に関係してくるってわけ?ソレって一体何なのよ」

アーチャー「知らん」

凛「――はい?」

アーチャー「知らないと言ったのだ」

凛「ふっざけんじゃないわよ!!アンタ散々訳知り顔しといて知らないって――」

アーチャー「私には聖杯から与えられた知識はあるがそのような知識はないし、それに記憶も残っていない」

凛「アンタねえ……」

アーチャー「だから言っただろう。聖杯に詳しい者に聞くのが一番だと」

凛「確かにそう言ってたけどさ」

アーチャー「私が言える事はただ一つだ。呪われた聖杯の中身は厄災を招き、間桐桜はその厄災を呼ぶ媒体だということだ」

凛「媒体、ね。取りあえずイリヤスフィールに事情を聴くのが最優先ね」

アーチャー「最優先は君の魔力の回復だ。今のままでは最悪の事態に陥りかねんからな」

凛「でも――いえ、そうね。イリヤスフィールとは今敵対してるし話をするのも決着をつけなきゃ」

アーチャー「衛宮邸が崩壊した今イリヤスフィール達の拠点はアインツベルンの城だろう。それに暫く外には出てこまい」

凛「セイバーとバーサーカーも戦うのは暫く出来ないか。じゃあ当面の問題はランサーとそのマスター、綺礼と臓硯か」

アーチャー「今は自分の事だけ考えたまえ。他の事は君に負担がない範囲で私が何とかしよう」

凛「――そう、じゃあ今日の戦闘で壊した場所の修理と明日の朝食の用意をお願い」

アーチャー「――了解した、地獄に落ちろマスター」

翌日、昼

金槌を振り下ろす手を止め、首にかけた手拭で汗を拭う

アーチャー「――ふぅ、何故このような事になったのだ」

凛と間桐桜は今頃二人で自分の用意した昼食を食べているのだろう

藤村「こらー士郎!!サボってないで手を動かす!!」

アーチャー「藤ねえこそ学校はどうした」

藤村「今は昼休みですよーだ。後の作業は組の皆に任せて昼からでも学校に来ない?」

アーチャー「行かんと言ってるだろう。ここは私と――オレと切嗣の過ごした家だからな」

藤村「それにしてもガス爆発なんてねー。最近ガス漏れも多かったし、冬木のガス会社はどんな仕事してるんだか」

アーチャー「――それより藤ねえ、そろそろ学校に戻らなくて良いのか?昼休みはそんなに長くないだろう」

藤村「げえ!?それじゃあ士郎、明日は学校に来るのよー!!」

アーチャー「行ったか。藤ねえは相変わらずだな」

イリヤ「アーチャー」

アーチャー「イリヤか、いったいどういうつもりだ」

イリヤ「朝も言ったじゃない。貴方と話をしに来たのよ」

アーチャー「敵の戯言を信じろと?」

イリヤ「私があの女達に催眠をかけたから屋敷が崩壊してるのも、貴方がシロウって呼ばれているのも誰も違和感覚えてないんだからね」

アーチャー「おかげで罪のない冬木ガスに藤村組が殴り込みしてしまったがな」

イリヤ「ガス漏れだけじゃなくて爆発事故まで起こすなんてサイテー」

アーチャー「君な……」

今日はここまで

「僕はね、ジャンヌオルタが欲しかったんだ」

「欲しかったって諦めたのかよ」

「うん、残念ながらジャンヌオルタは期間限定で給料日前になると回すのが難しくなるんだ。もっと早くに告知があれば良かった」

「そっか、それじゃあしょうがないな」

「そうだね。ほんとにしょうがない」

「しょうがないから俺が代わりに出してやるよ。復刻ガチャの時にさ」

「そっか…安心した」


地獄を見た、地獄を見た、地獄を見た――

☆5鯖が一切出ない地獄を見た

「回して、回して、回し尽くした
己の理想を手に入れるために多くの諭吉を回して
ガチャと無関係な出費なぞどうでもよくなるぐらい回して、回した数の数倍のマナプリを手に入れたよ」

20万爆死しましたわ
やったねすまないさん、宝具レベルが増えるよ

何故このような事になったか

自分はマスターの少女の命令通り朝食の支度を終え、その後戦闘で破壊された衛宮邸の修理に来た

そして魔術で直せる部分を魔術で直し、残りの部分に手をつけようとしたときに藤村大河が藤村組を率いて現れたのだ

そしてイリヤも現れ、何やかんやで藤村組のメンツと共に家を修繕するはめになり現在に至るというわけだ

アーチャー「それで話とは何だ」

現在の自分は凛の負担を減らすために単独行動のスキルで動いており魔術の供給を受けていない

それにセイバーから受けたダメージも全く癒えていない。この状況で戦うのは――

イリヤ「警戒する必要はないわ。だってバーサーカーは連れてきてないもの」

アーチャー「令呪を使えば距離など関係ないだろう?」

イリヤ「そんな事より汗臭いから着替えてきたら?タンクトップにヘルメットでうろついてたら不審過ぎるわ」

アーチャー「む――どこかに移動するのか?」

イリヤ「そうね――それじゃあまずは散歩にでも行きましょう」

アーチャー「なに?」

イリヤ「ちゃんとエスコートしてねアーチャー、わたしこの地を観光したいわ。お母様とキリツグがいたこの街を」

アーチャー「そういうことでなら衛宮士郎に頼めばいいだろう」

イリヤ「シロウは今セイバーの看病をしてるもの。聖剣を使った時の消費魔力に供給が追い付いてないのよ」

アーチャー「なら仕方あるまい――」

一度霊体化し、服装を変えて再び実体化する

アーチャー「僭越ながらエスコートさせていただこう」

数時間後――

アーチャー「ふむ、これで一通り回ったか」

イリヤ「ここの公園、凄い怨念の溜まり場になってる。まるで固有結界みたいに人をよせつけないわね」

アーチャー「前回聖杯の降臨した地だからな。何も知らぬ一般人も気味悪がって誰も近づかんさ」

イリヤ「そんな場所に連れてきて何をするつもりなのかしら」

アーチャー「話をしに来たと言ったのは君だろう。ここなら誰にも聞かれる心配はない」

イリヤ「そうね――アーチャー、わたしが貴方に聞きたいことは――」

言峰「ふむ、このような場所にいたか」

イリヤ「言峰綺礼……教会の監督役がこんな場所で何をしているのかしら」

言峰「探し人だ。まさか敵陣営のマスターといるとは予想はしていなかったが、アレより先に見つけられたか」

アーチャー「その言い方だと私を探していたように聞こえるぞ」

言峰「そう言ったつもりなのだが?」

アーチャー「何?監督役が何故一介のサーヴァントを探す必要がある。お前は中立の立場の筈だろう」

言峰「飼い犬に手を噛まれたとでも言うべきか。私の制御下から離れた者がいてな」

アーチャー「犬?」

言峰「そやつがアーチャーを狙うと考え、阻止するために先に見つけようと探していたのだ。手遅れだったようだがな」

「その通りだ言峰。我の邪魔をしようと考えるとは、偉くなったものだな」

アーチャー「……英雄王、ギルガメッシュ」

ギルガメッシュ「ほう、我を知ってるか贋作者。ならば貴様が何するべきか心得ているだろうな?」

アーチャー「贋作を作る私が許せないか」

ギルガメッシュ「当前だ。それにだ、貴様は薄汚い贋作者の分際で我のセイバーに手を出した」

アーチャー「ふざけた事を言う。彼女は誰のモノでもない」

ギルガメッシュ「我の決定は絶対だ。我の財宝を怪我した咎、死だけで足ると思うなよ」

イリヤ「何、あれ…うそ―――あなた誰なの」

ギルガメッシュ「人形か…たわけ。見て判らぬか、この身はお前がよく知る英霊の一人であろう」

イリヤ「うそ――知らない。わたしあなたなんて知らない」

ギルガメッシュ「ふん、お前が知ってるか等どうでもいい。我の裁きの邪魔をするな、そうすれば此度だけは見逃してやる」

イリヤ「――わたしが知らないサーヴァントなんて存在しちゃいけないんだから!!」

イリヤの全身に令呪が浮かび上がる

アーチャー「待てイリヤ――」

イリヤ「来なさいバーサーカー!!今すぐアイツを殺して!!」

バーサーカー「■■■■――――!!」

ギルガメッシュ「言った傍から我の邪魔をする気か人形!!良いだろう贋作者もろともここで死ね」

アーチャー「チ――投影、開始」

片手剣を投影すると同時にイリヤを担ぎあげる

イリヤ「ちょっとアーチャー!?」

アーチャー「逃げるぞイリヤ、我々では奴に勝ち目は――くっ」

飛んできた武器の数本を何とか弾くが、弾ききれなかった剣が体を貫く

ギルガメッシュ「誰に許可を得て我に背を向ける」

言峰「待てギルガメッシュ今は昼だぞ。それに此処では人が――」

イリヤ「アーチャーあなた腕が、昨日の戦いからまだ――」

アーチャー「案ずるな、君を逃がすだけなら何とかなる」

イリヤ「バーサーカー!!アーチャーの治癒の時間を稼いで」

バーサーカー「■■■――!!」

ギルガメッシュ「こそこそ何をする気か知らんが、そのような時間我が与えるはずなかろう!!」

ギルガメッシュの背後から数本の剣が射出される

バーサーカー「■■■■―――ッ!!」

それをバーサーカーは嵐のような猛攻で薙ぎ払う

ギルガメッシュ「おのれ、邪魔だてする気か雑種!!」

無数の武器が周囲を囲むように展開され、あらゆる方向からバーサーカーを襲撃する

イリヤ「バーサーカー!!」

アーチャー「まずい――I am the bone of my sword.熾天覆う七つの円環!!」

短いけど今日はここまで

イスカンダルもケリィもアンリマユも実装されてないだけ、いいな?
金殺キターと思ったら女神様だったよ。持ってなかったからいいかな

そういや1は今年の総課金30万軽く越えるけど、☆5鯖は正月の確定モードレットとジャンヌとテスラだけだな

アーチャー「無事かイリヤ」

イリヤ「何とか…バーサーカーは!?」

アーチャー「致命傷はない」

ギルガメッシュ「ちぃ、業腹ながらソヤツには最上級の武具しか通用せんらしいな」

アーチャー「まずいな」

イリヤ「今の時間で貴方の腕は治ったはずよ」

アーチャー「ああそちらは完璧だ、流石はイリヤだ」

イリヤ「それじゃあ何がまずいのよ。貴方とバーサーカーの二人ならあんな奴」

アーチャー「剣以外の投影は魔力の消費が激しくてね。特に大量の宝具を受けきるモノとなればなおさらだ」

イリヤ「?」

アーチャー「イリヤ、三人分ぐらいなら君は耐えられるだろう?」

イリヤ「え、ええ。大丈夫だと思うけど」

アーチャー「ならばアレが来る前に奴を消すとしよう」

ギルガメッシュ「貴様のような贋作が本物を超えて我を倒すだと?面白い冗談よなフェイカー」

アーチャー「贋作が本物を超えぬ道理はないだろう?」

ギルガメッシュ「ならば試してみるか?本物の重みを知るがいい!!」

アーチャー「――偽・螺旋剣」

凛「学校に行かないと暇ねえ」

桜「そうですね。何もないのに学校を休んじゃうなんて、悪い事してるみたいで」

凛「何もないじゃないでしょ?桜は今病人なんだから」

桜「病人って、全然元気ですよ私。ほら」

凛「無理はしないの」

桜「無理なんてしてません。無理をしてるのは姉さんの方なんじゃないですか?」

凛「な、何の事かしら?」

桜「姉さんは嘘を吐くのが下手なんです。私やライダーの魔力を補ってるから歩くのもきついんじゃないんですか?」

凛「そんなことないわよ」

桜「階段でも躓いてましたし、さっきアーチャーさんが用意してくれたご飯だって零してたじゃないですか」

凛「……見られてたか」

桜「はい、ばっちり見てました」

凛「大丈夫よこのぐらい。地下で埋まってたらすぐ良くなるわ」

桜「埋まる?」

凛「あー、まだ言ってなかったっけ?この土地の――ッ」

桜「姉さん!?」

凛「あのバカ…衛宮君の家直しに行ったきり戻って来ないと思ったら……」

アーチャー「チィ――」

ギルガメッシュ「どうしたフェイカー。投影の速度が落ちているぞ」

バーサーカー「■■■■――ッ!!」

ギルガメッシュ「無駄だ。その天の鎖は神性が高ければ高いほど締め付ける」

イリヤ「バーサーカーは動きを封じられて、アーチャーは射出数と性能で完全におされてる……このままじゃ。そうだ」

綺礼「人払いはした。近くを通った者の記憶も消した…あとは戦いの痕跡を……むっ」

イリヤ「流石は代行者ね。完全に不意をついたはずなのに」

綺礼「何のつもりだイリヤスフィール。中立の監督役に攻撃するとは」

イリヤ「アレは貴方のサーヴァントでしょう、ならマスターの貴方を殺せば」

綺礼「弱体化が見込めると、だが残念だったな。私を攻撃したところで無意味だ」

イリヤ「わたしの攻撃ぐらい屁でもないと?甘く見られたものね」

綺礼「私はアレのマスター等ではない」

イリヤ「今更とぼけて誤魔化せると思ってるの?」

綺礼「ギルガメッシュは前回の聖杯戦争で受肉を果たしている。故に魔力の供給やマスターは必要としない」

イリヤ「そんな――」

綺礼「む――来たか」

アーチャー「く――間に合わなかったか」

ギルガメッシュ「ほう――」

ギルガメッシュ「貴様、我の裁定を邪魔立てする気か」

アーチャーに向けられていた剣先が全て現れた影に向けられる

アーチャー「やめろギルガメッシュ――」

ギルガメッシュ「失せよ」

無数の剣に影は貫かれ、引き裂かれる

その蹂躙は永遠に続くように感じられ、ほんの一瞬で終わった

ギルガメッシュ「ふん――興が削がれたわ。命拾いしたなフェイカー」

ギルガメッシュの殺意は完全に消え、背を向けて歩き出す

バーサーカーを縛っていた鎖が解けバーサーカーが地に倒れる

イリヤ「バーサーカー!!」

アーチャー「……ッ!?待てイリヤ!!」

イリヤ「へ――?」

バーサーカーに駆け寄ろうとした少女を引き寄せたと同時に、地面から伸びた無数の影にバーサーカーが貫かれる

イリヤ「バーサーカー!!」

ギルガメッシュ「何!?貴様よもやそこまで――くそ、贋作者、鎖を掴め!!」

アーチャー「気は進まんがアレにギルガメッシュを呑まれてはもうどうしようもなくなる――バーサーカーは諦めろイリヤ!!」

イリヤ「バーサーカー……」

ギルガメッシュ「たわけ!!もっとしっかり引っ張らんか!!」

アーチャー「煩い無茶を言うな、こちらにも影は伸びている!!」

ギルガメッシュ「我が完全に呑まれれば鎖が付いてる貴様も共に呑まれることになるぞ」

アーチャー「くそっ、何故この鎖は無駄に頑丈なのだ」

ギルガメッシュ「ふっ、我が友だぞ。斬ろう等と考える事が烏滸がましいわ」

イリヤ「そうだ、斬ればいいじゃない」

アーチャー「イリヤ、この鎖はとてもじゃないが斬れる代物では――」

イリヤ「違うわ。あのサーヴァントの体を影に飲まれてる部分より上で斬るの」

アーチャー「なるほど、そうすれば奴を引き上げるのと倒してイリヤに回収させることの両方が叶う」

ギルガメッシュ「貴様ら何を考えている!?」

イリヤ「あら、でもそのまま呑まれるよりマシでしょう?」

ギルガメッシュ「出来損ないよりは正規の器の方がましだが、そういう問題ではない。我は我が嫁セイバーを迎えるまでは――」

セイバー「はあ!!」

ギルガメッシュ「セイ、バー……」

セイバー「思わず切断してしまいましたが、何故アーチャーがこんなとこに?いえ、それより無事ですかイリヤスフィール!!」

イリヤ「よし、回収できた。ナイスタイミングよセイバー」

アーチャー「では退くぞ」

セイバー「しかしあの影はどうするのです。何か良くないもののようですし、とてもじゃないですが逃げ切れるとは」

綺礼「では私が時間を稼ぐとしよう。監督役としてアレの対処ができる人材を失うわけにはいかん」

今日はここまで

アーチャー「アレはバーサーカーと英雄王を回収したばかりだ、あの公園から離れれば追っては来れないだろう」

セイバー「英雄王?アーチャー…四次のアーチャーはかの古代のウルクの王でしたか。それよりも何故アーチャーがイリヤスフィールといるのです」

イリヤ「デートしてたの」

セイバー「でえと?」

アーチャー「街の案内をしていただけだ。君が衛宮切嗣と縁があるように、私もイリヤスフィールと縁が会ってな」

セイバー「貴方が何故キリツグと私の事を――」

イリヤ「そんなことよりどうしてセイバーがここにいるの。魔力切れでろくに動けなくなって城で休ませてたはずでしょう?」

セイバー「セラ達に黙って城を抜け出た上にバーサーカーを令呪で呼び寄せれば、貴女の身に何かあったという事は誰でもわかります」

イリヤ「それにしても移動が速すぎるわ。それに魔力も満ちてるし」

セイバー「シロウが令呪を二画使ったのです。一つ目に私の魔力の回復、二つ目にバーサーカーを追えと」

イリヤ「まったくあれだけ言ったのにシロウは…」

アーチャー「私のマスターの使った二画よりはよほど有意義な使い道だと思うがね」

イリヤ「凛は相変わらず愚かね。それよりも一旦シロウと凛と話してこれからを決めなきゃ」

セイバー「何故アーチャーのマスターとも話す必要が?」

イリヤ「聖杯戦争は既に破綻しているもの」

セイバー「――?」

アーチャー「それについては凛も交えて――ッ!?」

イリヤ「どうしたのアーチャー?」

アーチャー「凛に危険が迫っている――先に行かせてもらうぞ」

凛「あの…バカ――」

桜「姉さん!?そんな体でどこへ行くんですか!!」

凛「決まってるでしょ、あのバカのとこに行くのよ。かっこつけて無茶しちゃって……」

桜「無茶してるのは姉さんです!!そんな体で外に出るなんて正気じゃないです」

凛「わたしはアイツのマスターなんだから、アイツ一人に無茶させるわけにはいかないのよ」

桜「姉さん――私よりあのサーヴァントが……」フラッ

凛「え――?ちょっと桜!?しっかりしなさい桜!!いったん家に戻って桜を――」

臓硯「いやはや…サーヴァントも連れずに無防備な状態でわざわざ外にでてきてくれるとはのぅ?」

凛「間桐…臓硯!!」

臓硯「儂とて遠坂の陣地に踏み込むのは骨が折れるのでな…外に出てくる機会を伺っておったのじゃ」

凛「ライダー!!」

臓硯「無駄じゃ。ライダーは今実体化すれば桜が助からないのはわこうておる。たとえ化物になろうと死なすよりは良いと考えておるじゃろうよ」

凛「ちっ――」

臓硯「聖杯だけじゃなく、魔術師として優秀な姉の方も手に入るとはついておる」

凛「体が――」

臓硯「そう緊張するでない。今楽に――あ?」

動けない凛に手を伸ばしていた臓硯の肉体が両断される

ランサー「よう。何とか間に合ったみたいだな」

凛「ランサー!?」

臓硯「おのれ、ラン、サー……」

ランサー「ち、逃げられたか。ま、これでひとまずは安全だな」

凛「どうして貴方が敵のマスターの私を?」

ランサー「初めて会った時から嬢ちゃんの事は気にいってたからな。それに――」

凛「それに?」

ランサー「オレのマスターの最後の令呪だ。遠坂凛を聖杯戦争で死なせるなってな」

凛「どうして貴方のマスターが?」

ランサー「もう殺られちまったみてえだから別に話してもいいか。言峰は愛弟子のお前を死なせたくないと元々オレにお前を監視させてたんだ」

凛「綺礼?そう、やっぱり監督役のくせにサーヴァントを。それで綺礼は死んだの?」

ランサー「多分な。契約が切れたし、相手はバーサーカーを殺すような奴だ」

凛「バーサーカーを!?」

ランサー「それで嬢ちゃん。良かったらだが、オレと契約を結ばねえか?女をマスターにするなら嬢ちゃんみてえのが良い」

凛「え?」

アーチャー「凛、無事か!!」

凛「アーチャー!!」

アーチャー「私の留守を狙ってやってくるとは、どうやら君は正々堂々というタイプではなかったらしいな」

凛「待ってアーチャー。ランサーはわたしを助けてくれたの」

アーチャー「なに?」

ランサー「嬢ちゃんの危機はオレが救ったってわけだ。つまりお前は一足遅かったんだよ」

>>153訂正

アーチャー「街の案内をしていただけだ。君が衛宮切嗣からイリヤスフィールと縁があるように、私もイリヤスフィールと縁が会ってな」

セイバー「貴方が何故キリツグとイリヤスフィールの関係を――」

アーチャー「それに関しては礼を言おう。しかし昼間からこんな住宅街で何をしていた」

ランサー「マスターの命令で嬢ちゃんをずっと監視していたのさ」

アーチャー「御三家の一つである遠坂の動きを監視するのは当然だろうが――なら何故手助けをする必要がある」

凛「ランサーのマスターは綺礼だったのよ」

アーチャー「なに?――なるほど、凛を監視していれば間桐桜の行動も監視できたというわけか」

凛「何で綺礼が桜を監視する必要が――ってそうか、綺礼は聖杯の正体を知ってたんだったわね。桜の事も――ってそうだ、桜を早く家に運ばないと」

アーチャー「今の君ではきつかろう。私が代わりに――と言いたいところだが、私は少しの間霊体に戻る」

凛「あ、そっか。私が魔力切れってことはアンタも……」

アーチャー「そういう事だ。単独行動のスキルで動けない事もないが、それではいざというときに戦えなくなる」

ランサー「それならオレが――」

セイバー「私が運びましょう」

凛「セイバー!?何でここに――」

イリヤ「話は後よ凛、時間を無駄にできる程今の状況は軽視できるものじゃないの」

凛「イリヤスフィール!?」

イリヤ「今シロウもこっちに向かっているわ。シロウが着いたら今わたし達が置かれている状況を説明してあげる」

ランサー「そいつはオレもついて行っていいのかい嬢ちゃん」

イリヤ「ええ、今貴方の行動がわからなくなるのは避けたいもの」

イリヤ「この地の聖杯は願望器なんかじゃないわ。願望器としての機能は多少なりともあるけど、御三家の本来の目的はそれじゃない」

士郎「待ってくれよイリヤ、願望器を奪いあうのが聖杯戦争の目的のはずだろう?なのに聖杯が願望器じゃないって」

セイバー「そうです。願望器でないのであれば我々サーヴァントが召喚されるはずがない」

イリヤ「だから願望器だって偽るんじゃない。願いを叶えられると思ってやってきた魔術師とサーヴァントを目的のために利用する、それが聖杯戦争の正体」

凛「その本来の目的ってのは何なのよ?」

イリヤ「七騎分のサーヴァントとして召喚された英霊の魂が座に戻る際に生じる孔を固定して、そこから世界の外へ出て『根源』に至る。それが目的」

凛「七騎?」

イリヤ「ええ、それだけないと穴を固定するのに不十分だもの。願望器としてなら四騎分もあれば十分だけど」

士郎「根源って何なんだ?」

凛「ちょっと待って。衛宮君根源を知らないの?」

慎二「衛宮はど素人なんだよ」

凛「素人!?セイバーを召喚しててあんな凄い魔術を使ってたのに!?」

士郎「俺はあれしか使えないんだ。それにちゃんと教えてもらわなかったから、慎二やイリヤに教えてもらってようやく形になってきたとこだ」

凛「イリヤスフィールはともかく、魔術回路のない慎二がどうやって教えんのよ」

イリヤ「知識だけは無駄にあるのよソレ。覚えても意味ないのに」

慎二「お前らひょっとして僕の事嫌いなんじゃないか?」

凛「興味がないって言わなかったかしら?嫌い以前に関心がないのよ」

イリヤ「雑草なんて目障りだと思っても嫌悪はしないでしょう?」

慎二「」

ランサー「まあ、その、生きてりゃそのうち良い事あるってもんだ。気にすんな坊主」

凛「話を戻して根源ね…簡単に言うと魔術師が目指す最終到達点。全ての始まりであり、全ての終わりであり、全てがあるとされる場所よ」

士郎「?」

イリヤ「つまりそこに至れば未来過去現在全てを思い通りにできるってこと」

凛「それより七騎って事は自分のサーヴァントも含まれるんじゃない」

イリヤ「そうよ、令呪はその時に自害させるためにあるんだもの」

士郎「な!?そんなの許されていいはずないだろ!?」

イリヤ「今それは関係ないわ。今大事なのは聖杯の中身が汚染されているという事よ」

士郎「汚染?」

イリヤ「第三次の聖杯戦争の時にアインツベルンは不正をしたの。その時に呼ばれたのがこの世全ての悪」

士郎「アンリマユ?」

凛「人類最古の善悪二元論といわれる拝火教に伝わる、悪魔の王ね」

イリヤ「でも実際に呼ばれたのはそうであれという願いを押し付けられたただの人間。すぐにやられてしまって小聖杯に回収されたわ」

凛「それが汚染と何か関係あるの?」

イリヤ「ええ。アンリマユはこの世全ての悪であれという願いそのモノ、聖杯に取り込まれた際に聖杯がその願いを叶えてしまったのよ」

凛「聖杯自体がこの世全ての悪になったってこと?」

イリヤ「そう、だから汚染された聖杯で孔を開けると、呪いが地上に降り注ぎアンリマユが誕生する。そしてアンリマユは間藤の聖杯を使って生まれようとしている」

アーチャー「セイバー、君も見たあの影はアンリマユによって汚染された間藤桜だ」

士郎「つまり汚染された聖杯のせいで桜が苦しめられてるって事だよな」

凛「そう考えてもらってかまわないわ」

イリヤ「問題はここからよ。間桐の聖杯は既にサーヴァント六騎分の魂を回収してしまったわ」

>>163訂正

イリヤ「問題はここからよ。間桐の聖杯は既にサーヴァント三騎分の魂を回収してしまったわ」

イリヤ「私も三騎回収してるけど、アンリマユは早く誕生したがっている」

凛「三騎?まだアーチャーにセイバー、ライダーとランサーが残ってるのに何で両方が三騎ずつ」

セイバー「何故かはわかりませんが、第四次の時のアーチャーが冬木にいました」

イリヤ「ソイツがサーヴァント三体分の魂を持っていたの」

凛「とんだ化物ね…アーチャーが戦ってて、バーサーカーを倒したのはソイツか」

イリヤ「間桐の聖杯はわたしからソレを奪ってあと一体倒す、もしくは残りのサーヴァント全員を飲み込むかで完成する」

凛「でももう一体も倒れないように戦わなかったら桜が魔力を消費する心配はないんじゃないの?」

イリヤ「間桐臓硯の事を忘れてるの?」

凛「忘れてはないけれど、こっちにサーヴァントが四騎もいる状態なら流石に襲って来たりしないんじゃない?」

イリヤ「間桐の聖杯を作ったのは臓硯よ。それが何の対策もしてないはずがないでしょう?」

凛「臓硯が操ってまた影が出る可能性があるってこと?」

イリヤ「そうよ」

凛「警戒するに越した事はない、か。それじゃあ私とアーチャーは暫く埋まって魔力を回復させる。衛宮君は桜の看病任せてもいいかしら?」

士郎「ああ、任せてくれ」

ランサー「で、結局オレはどうしたら良いんだ?」

凛「そうね…魔力切れて消えて桜に回収されるような事になったら困るから…イリヤと契約すればいいんじゃないかしら?」

イリヤ「嫌、わたしのサーヴァントはバーサーカーだけだもの」

慎二「じゃあ僕と契約しようじゃないか」

アーチャー「イリヤ、サーヴァントではなく犬を飼うと思えばいいのではないか?」

ランサー「おい」

イリヤ「それなら…」

ランサー「釈然としねえ」

臓硯「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ」

臓硯「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

明りの少ない、多くの蟲が蠢く中で声が響く

臓硯「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返す都度に五度。ただ満たされる刻を破却する」

臓硯「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

臓硯「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

老人が詠唱しているのはサーヴァントを召喚するためのモノ

臓硯「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――」

そしてそれに狂化を付与する節を加え、無数の蟲と三つの人影が見守る中、老人は詠唱を続けていく

臓硯「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

暗い蟲蔵の中に本日四度目となる光が発生し、新たなバーサーカーが現れる

臓硯「四人…残っているのが四人じゃとこれが限界か。まあよい、これなら何とか霊脈は無事じゃろう」

臓硯「三騎士に対抗するためにこちらも三騎士が欲しかったが――手元にある触媒ではこの程度か」

臓硯「むう、十年に渡り桜から奪い続けてきた魔力も、儂が溜め込んだ魔力もかなりもっていかれたか…」

臓硯「しかし、これでようやく悲願が達成できる。それに遠坂とアインツベルン、衛宮を同時に消せるとは――楽しみじゃのう?」

バーサーカー「■■■■……Arr…」

今日はここまで

士郎と一緒に合流したんじゃ、描写不足ですまない

士郎「あれから二日か…」

イリヤ「臓硯は特に動きを見せていないのよね」

慎二「ああ、爺さんはいつも通り部屋の奥でじっとしてるだけだ」

ランサー「前から思ってたが、何で坊主を普通に間桐家に偵察に行かせてんだ?こっちの情報が洩れる可能性の方が高いだろ」

慎二「爺さんは僕の存在なんて全く気にしていないからね。魔術回路のない僕には何もしかけてこないよ」

ランサー「坊主じゃ気付けてねえ可能性は?」

イリヤ「使い魔で監視してるからその可能性は低いと思うけど、あのマキリだもの。油断はできないわ」

士郎「桜、ライダーの調子はどうなんだ?」

桜「バーサーカーとの闘いで負った傷はあと二、三日で治ります」

士郎「そっか、なら良かった」

イリヤ「ライダーを戦わせるのは余程の緊急時だろうけど……凛の様子はどう?」

桜「大分回復しています、明日にはもう上に出てこられると」

イリヤ「そう、セイバーはどう?」

セイバー「かなり回復はしましたが、宝具は撃てて一回でしょう」

イリヤ「一回撃てるなら十分よ」

士郎「戦闘はもうする必要ないんだから宝具は撃たなくて良いんじゃないのか?」

セイバー「絶対に安全とは言えません。あの黒い影が次に現れた場合、宝具を使ってでも消す必要が出ないと限りませんから」

士郎「そんなことはさせない」

イリヤ「させないって言ってもシロウにはどうにもできないよ」

士郎「何でさ」

イリヤ「一度の令呪でセイバーを完全に止める事は出来ないし、シロウが盾になってもランサーとアーチャーはシロウごと攻撃するもの。それともサーヴァント三体に勝てるとでも?」

士郎「う…それでも俺は……」

凛「大変よイリヤ」

イリヤ「凛、明日までは出ないんじゃなかったの?」

凛「それどころじゃなくなったのよ」

桜「どうしたんですか?」

凛「霊脈の力が一気に弱まった」

イリヤ「基点が破壊でもされた?」

凛「いいえ、溜まった力だけが何の以上もなく抜かれた」

イリヤ「まさか……」

士郎「それって何か問題あるのか?」

凛「大ありよ。衛宮君にもわかりやすく言うなら、十年間コツコツと溜めた定期預金が誰かに大半持っていかれた…それの魔力版ってとこかしら」

イリヤ「もちろん持って行った相手はマキリね」

凛「でも霊脈が弱まる程莫大な魔力を一体何に…」

士郎「待ってくれ遠坂。霊脈の溜めてた魔力ってサーヴァントを呼ぶためのものなんだろ?七人呼ばれた時点で空なんじゃないのか?」

凛「聖杯戦争には一つの陣営に全てのサーヴァントが入った場合、それに対抗するために更に7騎のサーヴァントを召喚するシステムがあるのよ」

イリヤ「凛のバカ。それってマキリが新たにサーヴァントを召喚したってことじゃない」

ライダー「サーヴァントが家にいる事にも気づかないとは…これだからワカメは」

イリヤ「使えない…初めから期待してなかったけど――ランサー」

慎二「そろそろ僕泣いてもいいと思うんだけど!?」

ランサー「何だいマスター」

イリヤ「マキリを偵察してきなさい、危なくなったらすぐ逃げること。バーサーカーとまともに戦った貴方なら難しい事じゃないでしょう」

ランサー「相手は7騎いるかもしれねえってのに無茶言いやがる。ま、引き分けで必ず生還しろという言峰よりはマシか…なんたって殺しても良いんだからな」

イリヤ「間桐桜に回収されたらいけないという話聞いてた?」

ランサー「どのみち殺らなきゃ殺られるんだろ?じゃあ別に、倒してしまって良いんだろ?」

アーチャー「君に出来るのであればな」

ランサー「何だと?」

アーチャー「私も行こう」

凛「アーチャー!?」

アーチャー「間桐臓硯にサーヴァントを数体を使える程の魔力があるとは思えん。ならば奴が補充するとなると――」

凛「一般人から――!!」

アーチャー「そういうことだ。衛宮士郎、お前はどうする」

士郎「どうするって――決まってんだろ。そんなの放っておけない」

アーチャー「では決まりだ。私とランサーと衛宮士郎で間桐家に襲撃をかける。凛達は間藤桜を守っておけ」

セイバー「私はシロウの剣となる。シロウが行くのであれば私も行く」

アーチャー「好きにしたまえ」

凛「アーチャー、なるべく削ってきなさい」

アーチャー「君にしては弱気だな。別に倒してしまっても構わんのだろう?」

凛「――そうね、全部やっつけちゃいなさい。聖杯の事は後で考える」

アーチャー「了解した、マスター」

久しぶりの更新で短いけどここまで
サーヴァント誰を生き残らさせるか未定なのじゃ…多くて4人、少なくて0人…
また暫く更新できないと思うのでおわびにちょっとネタバレ、臓硯が召喚した四人のサーヴァントは剣、殺、狂、術

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