杏子「ガラの悪い主人公」(37)

1913年 仏国 イアン

「昨夜未明起きた猟奇殺人事件!?」

「被害者は旅行中の神父と判明」

「現場はまるで猛獣に襲われたかのように遺体が散乱」

「なお、同行していた一人娘は現在行方不明に」

同年、秋 南満州

もうすっかり、夜の帳が下り、夜鷹の啼く声が遠く聞こえる。

その日の月は明るい満月で、月光は夜の闇を暴こうと漆黒のカーテンを切り裂く。

しかし、今宵。月光ごときでは暴ききれぬ深い闇と光の物語が始まる。

仏国の事件を受けて中国大陸に駐在している日本軍による規制をうけ、満州を走る列車の客は入りは少なくなっていた。

そのためこの日もいつもと変わらず、機関車内は閑散としていた。

機関車内。

英国紳士が最後尾ラウンジカーを目指し、歩いている。

紳士は目の前に一人の老婆が通過しようとするところを、礼節を弁えた態度で優しく道を譲った。

列車内は乗客が少ないため静まり返り、紳士の革靴が鳴らす音と列車のゆれの音がよく響いていた。

紳士は毅然とした態度を忘れず、ラウンジカーへと足を運ばせる。

???「……」

去っていく紳士客の入りの少なさをいいことに1シートまるまる占領している客がいた。

秋の肌寒さに身を守るにはいささか頼りないボロボロのコートを羽織、頬杖を付いて眠っている。

顔はコートによって見えないが、身につけている衣服から若者だということはなんとなくわかる。

紳士は最近の若者のだらしなさを嘆くように心の中で毒吐くと、見なかったように若者を通り過ぎた。

紳士が若者を通り過ぎるとその背中を、若者はじっとみつめていた

最後尾ラウンジカー

少佐「11時過ぎ…か。奉天まではまだしばらくかかるな」

兵士「辻少佐…どういうことなんでしょう。こんな夜中に、特別列車まで出して護送しようなんて…自分には普通の娘にしか見えませんが」

少佐「さあな、帝都のお偉い方が考えていることはわからんよ。今度直接あったら聞いてみることにしよう」


いままでの車内と異なり、内装は豪華になり、ゆれも比較的少ない。

最近の客ではあまり使用しないラウンジであるが、今日では日本軍が奉天までの距離の間、その一室を借りていた。

それだけに扉の前にいは銃剣を持った日本軍兵士がいるなどと警備は固い。

その一室のさらに後ろの席に少女はいた。

少女は不機嫌そうに窓の外の風景を見つめていた。

その表情は、苛立ちを覚えながらも悲壮感を感じられる。

兵士1「ぐあああぁぁ!」

悲鳴がどこからか聞こえてくる。

少女は何事かとテーブルから立ち上がり、守るように身構える。

すると、別室で待機していた日本軍兵士とそれを指揮する少佐が部屋に入ってくる。

少佐は少女が無事であることを確認すると、すぐに守るように兵士たちを少女の周りを囲み、自分もそばで護衛する。

少女「おい! なにがあったんだ?」

辻少佐「襲撃だ」

兵士全員が身構えていると、部屋の扉が開く。

扉の外は待機していた兵士の死体が転がり落ち、凄惨な光景が広がっていた。

辻少佐「なにごとだ!」

扉から現れたのは先ほどの老紳士だった。

しかし、兵士の返り血を浴びている様子はない。

柔和な笑顔を崩さぬまま、少女の元へ歩く。

辻少佐「撃て!」


少佐が合図をした瞬間、少女を囲んでいた2人の兵士が手にしていた銃を発砲する。

しかし、不思議なことに老紳士にはひとつもあたらなかった。

いやこれははじかれているのだ。

なにかが老紳士の前にぼんやりと浮遊していて、それが弾丸をはじいていた。

兵士1「があぁぁあ!」

兵士2「ぎゃあああ!」

老紳士が兵士の前を通り過ぎると、兵士たちは理解できぬまま、謎の死を遂げた。

少佐は目の前で繰り広がれている光景に驚愕したが、軍人として自分の任務を思い出すと冷静になる。

少佐は懐から拳銃を取り出すと、老紳士にしっかりと狙いを定め1発、2発と発砲した。

しかし、さきほどと同じく弾は謎の生き物にはじかれては繰り返す。


少佐「この! この! この!」

攻撃が通じないことに苛立ちを覚えたのか、少佐はムキになりながら攻撃を続ける。

少佐「この…!」カチンカチン

少佐の拳銃がむなしく空撃ちする。どうやら、きづかぬうちに弾切れを起こしたらしい。

少佐の顔を老紳士の影が隠す。

少佐「ぐああああ!」

次の瞬間には少佐は見るも無残な肉塊へと成り果てていた。

少女「てめぇは…!」ギリ

少女は老紳士をにらみつける。

紳士「光栄です…このロジャーベーコンを覚えてもらえて」

少女は逃げ出そうとするが、目の前を先ほどの生き物にふさがれてしまう。

少女「く…」

ベーコン「逃げられませんよ…さぁ、一緒に参りましょう…シスター」

老紳士が少女を捕らえようしたそのとき、ラウンジカーの扉は開かれ部屋にもう一人の影が入ってくる。

老紳士が扉の方に振り返る。

そこには先ほどの若者がいた。

さっきはコートに隠れてわからなかったが、若者は護送されていた少女と同じくらいの年齢の少女であった。

ベーコン「これはシナリオにない出演者だ」

?「ガラの悪い主人公だと思った? 残念! さやかちゃんでした!」

さやかと名乗った少女に冷たい風が横切る。

すると少女の腕は音もなく切り落とされる。

だが、少女は余裕の表情で残った腕で空をつかむ。

qb「きゅいーきゅいー」

次の瞬間、少女の手には苦しそうにうめく見たこともない化け物が握られていた。

どうやら、先ほどから老紳士の周りを浮遊し、兵士たちを殺していた正体らしい。

少女は化け物の頭を豆腐のようにたやすく握りつぶした。

qb「もったいないじゃないか…」グシャリ

化け物の血が列車を赤く染める。

ベーコン「気に入っていたのに…」

老紳士は残念そうにつぶやいた。


少女は切り落とされた腕を拾い上げると、切られた腕の面とあわせた。

すると、不思議なことにみるみるうちに腕はくっつき、紳士が瞬きをおえるころには腕はすっかり再生していた。

さやか「さやかちゃんの回復能力をなめないでよね!」

少女は誇るように胸を張った。

常識を超えた光景が繰り広げられていたが、老紳士も常識の外を生きる人間。これくらいでは驚かなかった。

少女「…」

老紳士が突然やってきた少女に意識を奪われているうちにこの場から逃げ出そうとする。

ベーコン「おっと」

が、老紳士はすぐにそれに気づくと、少女の手を捕らえ、自分の手のひらを少女の顔にかざした。

老紳士の手のひらから淡い緑の光があふれると、少女は深い眠りに落ちた。

老紳士は眠った少女の体が落ちないように抱きかかえる。

さやか「…」

その隙にさやかは老紳士へ疾駆する。

しかし、少女が老紳士の元へたどり着いた瞬間、老紳士の双眸に怪しい光が宿る。

ベーコン「ドレインだっち!」

次の瞬間、少女の体を謎の力が数十メートル先の車両まで吹き飛ばした。

さやか「いてて、いきなしだなぁもう」

瓦礫をどかしながら立ち上がる。

さやか「ささっと終わらせないとまたあの声にやられちゃうよ。…ん?」

かまいたち が現れた。

さやか「へぇおあつらえ向きじゃないの」

さやか「それじゃ魔法少女さやかちゃんがさくっとやっちゃいますか!」

さやか「はっ、よっ」ザシュ

さやか「ふぅ…、やっと片付けた。さっきのおじさまの使い魔かな?」

ガタンガタン

さやか「足音…上ね!」シュバ

列車の硬い装甲をさやかは紙細工のように突き破る。

秋の夜風は切るように冷たく、肺の奥にまで浸透する。

今宵の舞台は月明かりに妖しく照らされる。

さやか「フハハハハハー!」

さやか「この世を闇が包もうと、正義を貫くこの拳! 弱気を助け、強気をくじく! 非道を許さぬこの血潮!」

さやか「とう! すちゃ」

さやか「愛と正義の魔法少女、さやかちゃん! 今宵も華麗に参上」

さやか「ふふ、このほとばしる汗の輝きを恐れぬのなら、かかってこい」

ベーコン「しつこいネズミですね」

さやか「にがさないわよ」

ベーコン「では…、お手並み拝見といきましょうか」

老紳士は肩に担いでいた少女をおろすと、礼儀正しく会釈をする。

さやか(あんまり使いたくないけど、あのおじさまやばそうな雰囲気だし…あまりそうはいってられないか)

さやか「こいつで一気に決める!」

フュージョン!

さやか「ぐ、ぐぁぁぁ」

ピキピキパリーン

オクタヴィア「ヴォヴォ」

ベーコン「フュージョン!? この娘、ハーモニクサーか!」

オクタヴィア「ヴォ(遅い、もらった!)」

ベーコン「甘い! アルアジフ…アルハザード!」

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        horizon ,i'゙´ `i、eternitatis

            sephira ヾ!||||lツ prima
             summa`´ corona
        systema ,ィゞ⌒゙ゝ、 sephiroticvm

        xdivino ;i=-ゞ、kム゙i、 rvmnominvm
               ゙i、シゝ、ュィミノ
    sephira iii   _,、-'"ヘミ⊥ゞヘ`゙'-、_  sephira ii
tntelhgena snt spi/mundw|_|chetypl\ summa sapuntic

    ,ィゞ⌒'ゝ、/ミ(∵八∵)シ」t!ミ(∵八∵)シ\ ,ィゞ⌒゙ゝ、
  i=-ゞ、kム゙k'  ミ(∵)シ   | |   ミ(∵)シ ゞ;i=-ゝ'ヾム゙i、
  ゙l、シゝ、ュィミノニニニニニニ ニニニニニニ゙l、シゞ、ュィミノ

   ヾミ⊥ゞ'゙   ¬     ! !    dalrth    ゞミ⊥ゞ'゙
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【黙示録】


オクタ「ちょっ、いきなり闇属性最強技(あっやべ喋っちゃった)」

オクタ「ヴォヴォォ!」

999damege!

ピカーン

さやか「くぅ…」

ベーコン「おもったより、やりますね」

さやか「くっ!」

ベーコン「さぁ、これで消えてなくなるがいい! 化け物め!」

さやか「あんたがいうなよ…」

老紳士が手をかざすと、紫電が集約、収束し、凶悪な光を宿し始める。

強大な黒い光が夜の闇を一層しりぞけたそのとき

ベーコン「な、なんだ!?」

突然、光は砕け散り、再び舞台に闇がもどる。

次の瞬間、戦闘の傍らで眠りについていた少女から白い光が発せられた。

あふれんばかりの光は洪水となって、隅まで夜の闇を退ける。

その光が老紳士の視界を焼いた一瞬をさやかは逃さなかった。

さやかは全身の力で老紳士へ駆け出し、全霊の力をもって、顔面に鉄拳を叩きつける。

老紳士の顔面は砕け、肉片と血が四散する。

老紳士「ぬかった…」

老紳士が狼狽えている間に、さやかは少女を抱きかかえると、跳躍し、夜の闇に姿を消した。

老紳士は消えていく、少女たちの影を残念そうに見つめ、自分の顔に手を当てて顔の再生をする。

こうして、光と闇はめぐり逢う。

これからはじまる彼女らに結ばれた数奇な運命の糸に導かれて。

プロローグ・了

1章

杏子「う、うん…」

さやか「あ、気がついた? 列車ならいっちゃった。へへ。スリルあったでしょ?ぞくぞくしなかった?このへんとか」モミ

杏子「このへんか?」モミ

さやか「きゃっ!どこ触ってんのよ!スケベ!」

杏子「あんたが先に触ってきたんだろ…やわっこかったな。もっと…」ズイ

さやか「こ…こないで!」

杏子「こないでって、まだ何もしてねぇよ」

さやか「いや…こないでー!」ピュー

杏子「ちょっと、どこ行くんだよ! あぶないだろ!…しょうがねぇな。まってよ、おいてかないで! おねえちゃーん!」

さやか「んぐっ!」ズキズキ

謎の声「…はじめ… つの光と闇が…会う の 彼女を…もり なさい…あな… 生きる…由を見つけ… …に」

さやか「今日は一段とはげし…」バタ

杏子「あ、おい! …気絶しちまった」

杏子「ははっ、なんだよ、おい! 寝ちゃってるよこんなとこで。あたしの方がゾクゾクしてきちゃうよ。どうしようかなぁへへへ。」スタスタ

さやか「……」

杏子「触っちゃおうかなー?」

さやか「……」

杏子「…あー、もう! おんなぁ! てめぇ! 弱弱しく倒れてんじゃねぇぞこら!」

さやか「ん…うわぁ!」

杏子「お前あたしを助けに着たんだろ? それなのに気絶?」

さやか「いや頭痛が」ズキズキ

杏子「頭痛? それよりも腹をすかせた狼やら生き血をすするこうもりやらがうようよしてるからな。気をつけろよ?」

さやか「なにこの子たくましすぎる」

杏子「とりあえず…一緒に行動するぞあぶないからな」

さやか「それこっちのせりふなんだけど…いうとおりにしないとあの声のおかげでまた私の頭ががんがん痛くなるから」

杏子「なんかいったか?」

さやか「なんかいったか? じゃなくて」

さやか「どっかの誰かがあなたを守れってうるさいの」

杏子「守る? 私を?」

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