勇者「魔王ッ! 死ぬなッ! 死ぬなァァァッ!」 (33)

勇者一行と魔王軍の死闘は熾烈を極めた……。



鋼鉄に命を吹き込まれ動き出した大巨人――

溶岩よりも熱い炎を吐くドラゴン――

魔王に絶対の忠誠を誓う四天王――

元英雄でありながら悪魔に魂を売った暗黒騎士――

魔界ナンバーワンの暗黒魔法の使い手といわれる側近――



いずれも強敵であった。

それでも勇者たち四人は全てを乗り越えてみせた。

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勇者「ここが魔王の部屋だ……みんな、準備はいいか!?」

戦士「おう、余裕だぜ!」

女魔法使い「私もバッチリよ!」

女僧侶「準備万端です!」

勇者「よし、いくぞ! 俺たちの力なら絶対に魔王を倒せる!」



自信たっぷりな言葉とは裏腹に、皆は予感していた。

自分たちが生還できる確率はおそらく五分五分、いやそれ以下であると。

しかし、それでいい。

それでこそ自分たちの冒険の終幕を飾るに相応しい相手なのだ。

四人は勇気を奮い立たせ、いざ扉を開く。



勇者「魔王ッ! 我らが今こそ、お前の野望を打ち砕くッ!」



バァンッ!

魔王「ふふふ……わざわざ死にに来るとはご苦労なことだな」



“邪悪”を具現化したかのような異形に、禍々しい鎧とマントを身に付けたその姿は、

まさに魔王の名に恥じぬものであった。

妖しい光を放つ瞳に睨まれただけで、膨大な殺意が降りかかってくる。



勇者「ぐっ……!」

戦士「これが……魔王か!」

女魔法使い「ゾクゾクするわ……こんなの初めて!」

女僧侶「こうして向き合ってるだけで生きた心地がしませんね……」

魔王「さて……始めようか」

魔王「お前たちを亡き者にし、人間どもをゆっくり根絶やしにするとしよう」



静かに、そしておごそかに戦闘開始を告げる。

威圧的な言葉がないせいで、かえって勇者たちの恐怖心は煽られる。



勇者(これが……これが魔王、か!)

勇者(まるで、今までの強敵が全員赤子にも思えてしまうほどの存在感だ……!)

勇者(だけど……負けるわけにはいかないッ!)

勇者「みんなぁっ!」

勇者「分かってるだろうが、こいつは今までの奴とはちがう!」

勇者「今までの常識を捨てて、かかっていこう!」

戦士「お……おうよ! よくいってくれた!」

女魔法使い「そうね……今までのセオリーなんざクソ喰らえよね!」

女僧侶「分かりましたっ!」



魔王「ふふふ……来るがいい。己が無力、思い知らせてくれよう」



ついに決戦の火蓋が切られた――

女僧侶「では私からっ!」

女僧侶「怨霊よ……敵を死へといざなえ!」

勇者(即死呪文……!)

勇者(通用しないのは分かりきってるが、普段はありえない一手をあえて打つことで)

勇者(俺たちも未知なる戦いへと気持ちを切り替えられる! 見事だ!)

戦士(ナイスだぜ!)

女魔法使い(やるわね!)

女僧侶(さぁ、皆さん、続いて下さい!)

魔王「――ウッ!?」







勇者「え?」

魔王「勇者たちよ……よくぞ我を倒した……」

勇者「え、ちょっと待って」

魔王「口惜しいが……見事といっておこうか……」

戦士「おいおいおい! どういうことだよ!」

魔王「まさか魔族の中の魔族といわれる我が……」

女魔法使い「なんで効いちゃうのよ! 耐性なかったの!?」

魔王「矮小なる人間などという……存在に……」

女僧侶「次の形態に変身するんですよね? ね?」

魔王「滅ぼされることに……なろうとは……」

勇者「えええええ!?」

魔王「だが……覚えておくがいい……」

勇者「いやいやいや、ちょっと待てって」

魔王「光あれば必ず闇が生まれるように……」

勇者「話してばっかいないで、こっちの話も聞けって!」

魔王「いつの日か……我の意志を継ぐ者は現れるであろう……」

勇者「おーい! もしもーし! もしもーし!」

魔王「我は倒されたが……次こそ闇が勝利するであろう……」

勇者「次じゃなくて今! 今を頑張ろう! ラストバトルよ、これ!? 頼むよォ!」

魔王「せいぜい束の間の平和を……楽しむの……だな……」ガクッ

勇者「…………!」

勇者「魔王ッ! 死ぬなッ! 死ぬなァァァッ!」










― THE END ―

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年04月05日 (水) 23:09:28   ID: no_sUpZg

おい

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