瑞鳳「恵方巻きと願い事」 (25)


二月三日、今日は節分の日です

外では軽巡の何人かや戦艦の人が鬼役を引き受け、駆逐艦の子を中心に豆撒きが始まっています

この部屋の中からでも大きな声が聞こえて来て、とても楽しそうです

私、瑞鳳は今何をしているかと言うと――


提督「……終わる気がしないぞ」カキカキ

瑞鳳「書類が多すぎるよぉ……」カキカキ


――執務室で書類を書いていました



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提督「チクショー、さっさと終わらせて鬼役引き受けようとした矢先に仕事を積みまくりやがって……大本営の野郎、絶対許さねえ」カキカキ

瑞鳳「私も少しくらい参加したかったのにー」カキカキ

提督「きつかったら誰かと交代してもいいぞ。今日に限ってはずっと付き合わせるのが申し訳ないくらいだ」

瑞鳳「うーん。魅力的ではあるけど、提督がずっと頑張ってる中途中で抜けても素直に楽しめ無さそうだし、もうしばらくは付き合います!」

提督「そ、そうか……本当に辛くなったらバトンタッチしろよ」

瑞鳳「はーい」

――――――――――




提督「や、やっと終わったな……」

瑞鳳「終わったね……疲れたぁ」

提督「……結局、遅くなっちゃったから豆撒きも終わっちゃったし、後は恵方巻きを食べるくらいか」

瑞鳳「恵方巻きは食べたいね。でも疲れて取りに行く気力が……」


ガチャ


青葉「どうもー青葉ですー! 忙しかったお二人の恵方巻きを届けに来ましたー!」

提督「おおっ、青葉が珍しくまともなことを!?」

青葉「何ですかその言い方は! いつも私が変なことばかりしているみたいじゃないですか!」

瑞鳳(その通りだと思うよ……)


提督「まあそれはそれとして、届けてくれてサンキューな」

瑞鳳「ありがとう……」

青葉「いえいえー、ではここに置いておくので、早めに食べてくださいね。では、私は失礼しますね!」ガチャ 

提督「おう、お疲れー」

瑞鳳「お疲れ様ー」


バタン


提督「……とりあえず、食べるか」

瑞鳳「うん。私はお茶を用意してくるね」

提督「任せた」

提督「……さて、今年はどこを向いて食べるか調べとくか」

――――――――――


瑞鳳「えっと、扉の方を向けばいいんだっけ?」

提督「そうそう。南南東がちょうど扉の方だったからな」

瑞鳳「……今年もまた大きいね。食べられるかな」

提督「俺は平気そうだが、瑞鳳にはちょっと大変かもなー。んじゃ、食べますか」

瑞鳳「そうしましょ」

――――――――――


提督「……」モグモグ

提督(願い事と言っても、特に何も思いつかんな)

提督(今年一年、誰一人轟沈することなく過ごせるようには初詣でしたからな)

提督(んー、提督としては新しい艦娘と邂逅出来ますようにと願うべきでもあるかもしれんがいつも来てくれたらラッキーだと思うくらいだしなー)

提督(そういや、お袋が相手はまだ決まらないのかとしつこく聞いてきてたっけ)

提督(……よし、願い事はこれにしよう)

提督(――受け取ってくれますように)

――――――――――


瑞鳳「……」モゴモゴ

瑞鳳(口が小さいから大きくて食べにくい)

瑞鳳(去年も苦労したのに小さめの物を用意してもらえるか聞き忘れちゃった)

瑞鳳(来年こそは忘れずに伝えておこっと)

瑞鳳(……願い事はもうこれしかないよね。誰を選ぶのか分からないけど、叶ったらいいな)

瑞鳳(――私を選んでくれますように)


提督「……」チラッ

瑞鳳「……」モゴモゴ

提督(苦戦してるみたいだな。恵方巻きのサイズが瑞鳳の口より大きいのに、頑張って咥えようとして)

提督(別に少しずつ齧って食べればいいと思うが……これはこれで面白いからいいけどな)クスッ

瑞鳳(て、提督に苦戦してるところ見られてるみたい……は、恥ずかしい)カァァ

――――――――――


提督「さて、食べ終わったし今日はもう寝るか」

瑞鳳「その前にお風呂にも入らなきゃダメだよ?」

提督「分かってるよ。ただここまで疲れてると入浴中に寝てしまいそうだ」

瑞鳳「だ、ダメだよ!? 寝たら風邪引いちゃうよ?」

提督「……寝ないようにするから、そこまで慌てなくていいぞ」

瑞鳳「で、でも本当に眠そうだし……」

提督「瑞鳳は心配性だなー」ハハハ

提督「ま、そんなことにならないように気をつけるさ。おやすみな」

瑞鳳「お、おやすみなさい。提督」

――――――――――

風呂入るので出たら再開する

出たら日付が変わっていたけど再開


数日後

提督「よーし、今日の執務も終わり!」

瑞鳳「提督、お疲れ様」

提督「瑞鳳もお疲れ」

瑞鳳「今日の夕食はどうする?」

提督「今日は久しぶりに瑞鳳の玉子焼きが食べたいな」

瑞鳳「分かりました! 腕によりをかけて作るね!」

提督「あ、その前に瑞鳳に話しておきたいことがあるから、ちょっと座って待機してくれ」

瑞鳳「あ……はい」


ガチャ バタン


瑞鳳「……話したいことって、何だろう?」

―――
――


提督「お待たせ」ガチャ

瑞鳳「おかえり……その花束、どうしたの?」

提督「直接外に出る暇がなかったから、明石に頼んで取り寄せてもらったんだ」カチャリ

瑞鳳「そんな事出来たんだ……」

提督「まあその事は置いといて――瑞鳳、話がある」

瑞鳳「は、はい」

瑞鳳(て、提督がとても真剣な表情をしてる……)ドキドキ

提督「こっちへ来てくれ」

瑞鳳「は、はい!」スクッ テクテク


提督「……」

瑞鳳「……」ドキドキ

瑞鳳(どう見ても航空隊の視察の話じゃない……よね?)

提督(……少し緊張してきたな。でも、ここで臆すわけにはいかないな)


提督「……二つあるがまずは一つ目から話そう」

提督「瑞鳳の練度が限界に達してから今日まで、長い間秘書艦として俺のサポートをしてくれてとても助かった。本当にありがとう」

瑞鳳「ど、どういたしまして。ところでその花束って……」

提督「これは私からの感謝の気持ちだ」

瑞鳳「えっ!? わ、私に!? あ、あ、どうしよう……」カァァ

提督「……あまり嬉しくないか?」

瑞鳳「ぎゃ、逆です! 嬉しいです!」

提督「それなら良かった。はい」スッ

瑞鳳「そ、その……あ、あぁ、ありが、とう」

瑞鳳(こんな綺麗な花束をくれるなんて……今年一番のびっくりだよ)


提督「本当に、いつも助けてくれてありがとう」

瑞鳳「わ、私だって、提督に感謝してますよ。それに、一緒にいられるから嬉しくて――」アセアセ

提督「ん?」

瑞鳳「あっ」

瑞鳳(つ、つい本音を言っちゃったああああああ!)

瑞鳳(ど、どうしよう……嘘じゃないから嘘ですって誤魔化せないし、どどどどうしよう)アワアワ

提督(何だかすごい慌て始めたぞ……一応確認をしてみるか)

提督「瑞鳳、それは本当なのか?」

瑞鳳「え、えっと……うん」

提督「……そうか。つい頼ってしまっていたから嫌がられているだろうと思っていたのだが、瑞鳳はそう思ってくれていたのか」ニコッ

瑞鳳(あっ……少し嬉しそう)ジーッ


提督(おっと、つい気が緩んでしまったな。深呼吸深呼吸)スーッ ハーッ

提督(……よし)

提督「瑞鳳、俺は君の事をずっと前から――好きだったんだ」

瑞鳳「ふぇっ!?」

提督「そして練度が最大まで達して、いつこれを渡そうか悩んで悩んで結局渡せずじまいだった」スッ

瑞鳳「……もしかしてその箱って」

提督「ああ、ケッコンカッコカリの指輪だ」パカッ

瑞鳳(これが本物の……とても、綺麗)

瑞鳳「本当に……私にくれるの?」

提督「勿論。瑞鳳以外に渡す気はないさ」

瑞鳳「……」

瑞鳳(そこまで私の事を本気で好きでいてくれたんだ……嬉しい)


瑞鳳「……提督」

提督「何だ?」

瑞鳳「今、花束を持っててつけられそうに無いから、提督がつけて欲しいの」

提督「お安いご用だ」スッ

瑞鳳(提督が私の左手を取り、左手薬指に指輪を嵌めてくれた)

瑞鳳(本当にこんな日が来るなんて……私、とっても幸せだよ)ウルッ

瑞鳳「あれ? なんで涙が出てきちゃうんだろう。おかしいよね」

提督「嬉しくて泣いてしまう事は変では無いと思うぞ。言葉もあるくらいだし」

提督「……花束は机の上に置かせてもらうぞ」ヒョイッ

瑞鳳「あ、ありがとう……ぐすっ」

提督「どういたしまして。ほら、おいで」

瑞鳳「うん……」ギュッ

提督「……」ギュッ

瑞鳳「提督……ぐすっ……大……好き……です」

提督「……」ナデナデ

瑞鳳(温かくて……心地いい)


瑞鳳(この後も、私が落ち着くまでこのままでいました)

――――――――――


数日後

瑞鳳「航空母艦瑞鳳、ただいま帰投しました」

提督「お疲れさん。結果はどうだった?」

瑞鳳「えーっと、サーモン海域の敵補給部隊本体との戦闘で旗艦の補給艦とその随伴艦をすべて撃破しました」

提督「そうか。これでやっとサーモン海域北方や中部海域に行くことが出来るようになったな。被害状況は?」

瑞鳳「私も含めて全員小破未満だよ」

提督「おお、圧勝じゃないか。流石だな」

瑞鳳「えへへ」テレリ

提督「今日はもう出撃することは無いから、しっかり休みを取るよう伝えて来てくれ。ついでに……これも渡そう」サッ

瑞鳳「わーい。ありがとう提督! 後で玉子焼き、焼いてあげるね」ガチャ

提督「おー、楽しみにしてるぞ」

バタン

提督「……」


提督(まさか、あの時の願い事が叶うなんてな)

提督(――瑞鳳がこの指輪を受け取ってくれますようにって)

提督(そういや瑞鳳は何を願っていたんだ?)

提督(まあ、後で聞けばいいか。その前に、執務を終わらせないとな)

提督「なあ大淀、いつも思うんだがなんでいつもこんなに書類が多いんだ?」

大淀「それは私にも分かりません……」

提督「だよなー……」

――――――――――


間宮

瑞鳳「……」モグモグ

瑞鳳(こうして本当に指輪を貰えるなんて、思わなかったなー)

瑞鳳(――提督が私を選んでくれますようにって願ったけれど、こんなに早く叶うとも思わなかったなー)

瑞鳳(……ところで、提督はどんな願い事をしたのかな? 後で聞いてみよっと)

瑞鳳「……えへへ」

瑞鳳はしばらくパフェを食べながら一人浮かれていたそうな

――――――――――

終わり

昨日の朝から書き始めたせいで直す時間が無かった
スマン

依頼してくる

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